(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-30
(54)【発明の名称】リルピビリンを含む組成物及び腫瘍又は癌を治療するためのその使用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/505 20060101AFI20230123BHJP
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A61P 1/16 20060101ALI20230123BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20230123BHJP
A61P 11/02 20060101ALI20230123BHJP
A61P 11/04 20060101ALI20230123BHJP
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A61P 13/10 20060101ALI20230123BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20230123BHJP
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A61P 17/00 20060101ALI20230123BHJP
A61P 19/08 20060101ALI20230123BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20230123BHJP
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A61P 35/00 20060101ALI20230123BHJP
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A61K 39/00 20060101ALI20230123BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230123BHJP
A61K 31/704 20060101ALI20230123BHJP
A61K 31/675 20060101ALI20230123BHJP
A61K 33/24 20190101ALI20230123BHJP
A61K 31/7048 20060101ALI20230123BHJP
A61K 31/475 20060101ALI20230123BHJP
A61K 31/282 20060101ALI20230123BHJP
【FI】
A61K31/505
A61P1/02
A61P1/04
A61P1/16
A61P11/00
A61P11/02
A61P11/04
A61P13/08
A61P13/10
A61P13/12
A61P15/00
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A61P35/02
A61P43/00 105
A61K45/00
A61K39/00 H
A61K39/395 D
A61K31/704
A61K31/675
A61K33/24
A61K31/7048
A61K31/475
A61K31/282
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022527833
(86)(22)【出願日】2020-11-27
(85)【翻訳文提出日】2022-05-11
(86)【国際出願番号】 CN2020132422
(87)【国際公開番号】W WO2021104487
(87)【国際公開日】2021-06-03
(32)【優先日】2019-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522185461
【氏名又は名称】シピオ ライフ サイエンシズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SCIPIO LIFE SCIENCES LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100163991
【氏名又は名称】加藤 慎司
(72)【発明者】
【氏名】リー,ワイ イップ トマス
(72)【発明者】
【氏名】プーン,チュン シン ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ライ,カー ルン
(72)【発明者】
【氏名】フアン,ジャンツイ
(72)【発明者】
【氏名】リー,ホー イン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C084AA19
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4C206ZC41
(57)【要約】
本発明は、癌性腫瘍の増殖を抑止及び/又は治療するため、及び/又は、腫瘍開始細胞からの癌の発症を遅延させるための組成物及び/又はその使用を提供する。組成物は、有効量の式(I)又は式(II)の化合物、
【化1】
【化2】
又は、その薬学的に許容される塩を含んでいる。組成物は、単独で、又は、1つ若しくは複数の化学療法剤、生物学的薬剤、及び/又は抗癌剤と組み合わせて投与される。使用は、本発明の組成物を、化学療法剤、生物学的薬剤、若しくは他の癌治療剤と共に、又はそれらを伴わずに、それを必要とする対象に、静脈内、非経口、経鼻、局所的若しくは部分的、経口、又は、リポソーム、インプラント、若しくは血管標的化ナノ懸濁液送達を介して投与することを含み得る。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)又は式(II)の化合物の、それを必要とする対象における癌性腫瘍の増殖を抑止及び/又は治療するための、及び/又は、腫瘍開始細胞からの癌の発症を遅らせるための組成物の調製における使用であって、
【化1】
【化2】
前記組成物は、有効量の前記化合物又はその薬学的に許容される塩を含んでいる、使用。
【請求項2】
前記癌性腫瘍又は癌は、肥満細胞腫若しくは肥満細胞腫瘍、卵巣癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、肝癌、黒色腫、網膜芽細胞腫、乳癌、大腸癌、白血病、リンパ腫、急性リンパ芽球性白血病(ALL)若しくは急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病(AML)、組織球性肉腫、脳腫瘍、星細胞腫、膠芽腫、神経腫、神経芽腫、結腸癌、子宮頸癌、肉腫、前立腺腫瘍、膀胱腫瘍、細網内皮系組織の腫瘍、ウィルムス腫瘍、卵巣癌、骨癌、骨肉腫、腎癌、頭頸部癌、口腔癌、喉頭癌、又は口腔咽頭癌を含んでいる、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記癌性腫瘍又は癌は、神経芽細胞腫を含んでいる、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
前記対象は、成人、少年、子供、又は幼児を含むヒトである、請求項1に記載の使用。
【請求項5】
前記組成物中の前記化合物の前記有効量は、1日あたり約0.1mgから1000mgである、請求項1に記載の使用。
【請求項6】
前記組成物中の前記化合物の前記有効量は、1日あたり1mgから25mgである、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
前記組成物は、前記対象に少なくとも1日1回投与される、請求項5に記載の使用。
【請求項8】
前記組成物は、前記式(I)の前記化合物を含み、前記式(I)の前記化合物は、1つ又は複数の化学療法剤、1つ又は複数の生物学的薬剤、及び/又は、1つ又は複数の抗癌剤と組み合わせて前記対象に投与される、請求項1に記載の使用。
【請求項9】
前記1つ又は複数の化学療法剤は、1つ又は複数のアルキル化剤、代謝拮抗剤、抗腫瘍抗生物質、トポイソメラーゼ阻害剤、有糸分裂阻害剤、ステロイド、及び/又はそれらの任意の混合物を含んでおり;
前記1つ又は複数の生物学的薬剤は、1つ又は複数のワクチン、サイトカイン、抗体、及び/又はそれらの任意の混合物を含んでいる、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
前記アルキル化剤は、シクロホスファミド、メルファラン、テモゾロミド、カルボプラチン、シスプラチン、及び/又はオキサリプラチンから選択される1つ又は複数のアルキル化剤である、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
前記代謝拮抗剤は、5-フルオロウラシル、6-メルカプトプリン、シタラビン、ゲムシタビン、及び/又はメトトレキサートから選択される1つ又は複数の代謝拮抗剤である、請求項9に記載の使用。
【請求項12】
前記抗腫瘍抗生物質は、アクチノマイシン-D、ブレオマイシン、ダウノルビシン、及び/又はドキソルビシンから選択される1つ又は複数の抗腫瘍抗生物質である、請求項9に記載の使用。
【請求項13】
前記トポイソメラーゼ阻害剤は、エトポシド、イリノテカン、テニポシド、及び/又はトポテカンから選択される1つ又は複数のトポイソメラーゼ阻害剤である、請求項9に記載の使用。
【請求項14】
前記有糸分裂阻害剤は、ドセタキセル、エストラムスチン、パクリタキセル、及び/又はビンブラスチンから選択される1つ又は複数の有糸分裂阻害剤である、請求項9に記載の使用。
【請求項15】
前記ステロイドは、プレドニゾン、メチルプレドニゾロン、及び/又はデキサメタゾンから選択される1つ又は複数のステロイドである、請求項9に記載の使用。
【請求項16】
前記抗体は、Hu3F8、hu14.18K322A、Hu14.18-IL-2、ジヌツキシマブ、又はそれらの任意の組み合わせから選択される、請求項9に記載の使用。
【請求項17】
癌性腫瘍の増殖を抑止及び/又は治療するための、及び/又は、腫瘍開始細胞からの癌の発症を遅延させるための組成物であって、前記組成物は、
有効量の式(I)又は式(II)の化合物:
【化3】
【化4】
又は、その薬学的に許容される塩を含み、
前記組成物は、以下のA及びBのうちの1つ又は複数を更に含んでいる、組成物。
A:アルキル化剤、代謝拮抗剤、抗腫瘍抗生物質、トポイソメラーゼ阻害剤、有糸分裂阻害剤、又はステロイドから選択される1つ又は複数の化学療法剤;
B:ワクチン、サイトカイン、又は抗体から選択される1つ又は複数の生物学的薬剤。
【請求項18】
前記アルキル化剤は、シクロホスファミド、メルファラン、テモゾロミド、カルボプラチン、シスプラチン、及び/又はオキサリプラチンから選択される1つ又は複数のアルキル化剤である、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記代謝拮抗剤は、5-フルオロウラシル、6-メルカプトプリン、シタラビン、ゲムシタビン、及び/又はメトトレキサートから選択される1つ又は複数の代謝拮抗剤である、請求項17に記載の組成物。
【請求項20】
前記抗腫瘍抗生物質は、アクチノマイシン-D、ブレオマイシン、ダウノルビシン、及び/又はドキソルビシンから選択される1つ又は複数の抗腫瘍抗生物質である、請求項17に記載の組成物。
【請求項21】
前記トポイソメラーゼ阻害剤は、エトポシド、イリノテカン、テニポシド、及び/又はトポテカンから選択される1つ又は複数のトポイソメラーゼ阻害剤である、請求項17に記載の組成物。
【請求項22】
前記有糸分裂阻害剤は、ドセタキセル、エストラムスチン、パクリタキセル、及び/又はビンブラスチンから選択される1つ又は複数の有糸分裂阻害剤である、請求項17に記載の組成物。
【請求項23】
前記ステロイドは、プレドニゾン、メチルプレドニゾロン、及び/又はデキサメタゾンから選択される1つ又は複数のステロイドである、請求項17に記載の組成物。
【請求項24】
前記抗体は、Hu3F8、hu14.18K322A、Hu14.18-IL-2、ジヌツキシマブ、又はそれらの任意の組み合わせから選択される、請求項17に記載の組成物。
【請求項25】
前記組成物は、以下の1つ又は複数の投与形態中へと配合される、請求項17に記載の組成物:非経口製剤、水溶液、リポソーム、注射用溶液、注射用懸濁液、静脈内溶液、静脈内懸濁液/ナノ懸濁液、錠剤、丸剤、トローチ剤、カプセル剤、カプレット、パッチ、スプレー、吸入剤、粉末、凍結乾燥粉末、パッチ、ゲル、ゲルタブ、懸濁液、ナノ懸濁液、微粒子、ナノ粒子、ナノリポソーム、マイクロゲル、ペレット、坐剤、経口懸濁液、経口崩壊錠、経口分散錠、経口崩壊性フィルム、マイクロエマルジョン、ナノエマルジョン、自己乳化ドラッグデリバリーシステム、及び/又はそれらの任意の組み合わせ。
【請求項26】
それを必要とする対象における癌性腫瘍を治療するため、及び/又は、腫瘍開始細胞からの癌の進行を遅らせるために必要な1つ又は複数の化学療法剤の頻度又は量を低減するための組成物の調製における、式(I)又は式(II)の化合物の使用であって、
【化5】
【化6】
前記組成物は、有効量の前記化合物又はその薬学的に許容される塩であって、それを必要とする前記対象に1つ又は複数の化学療法剤と組み合わせて投与される前記化合物又は前記塩を含み、
前記1つ又は複数の化学療法剤は、アルキル化剤、代謝拮抗剤、抗腫瘍抗生物質、トポイソメラーゼ阻害剤、有糸分裂阻害剤、ステロイド、及び/又はそれらの任意の混合物から選択され、
投与される前記1つ又は複数の化学療法剤の頻度又は量は、有効量の前記式(I)又は式(II)の化合物を含んだ組成物を投与しない場合における前記対象に対する前記化学療法剤の標準プロトコルによる使用と比較して最大で約75%から90%低い、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照:
この出願は、(1)2019年11月29日に出願された米国仮特許出願番号第62/941,891号、及び、(2)2020年8月31日に出願された米国仮特許出願番号第63/072,281からの優先権を主張し、その開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、癌治療及び前癌状態の治療のためのリルピビリン(rilpivirine)を含んだ組成物に関する。特に、この組成物は、それを必要とする対象に、単独で、又は、1つ若しくは複数の化学療法剤、生物学的薬剤、及び/又は抗癌剤を含む1つ若しくは複数の治療剤と組み合わせて投与される。
【背景技術】
【0003】
癌は複雑な疾患であり、通常は1つの細胞又は細胞群における遺伝子の特異的な変化によって引き起こされ、正常な細胞機能の破壊をもたらす。正常細胞と癌細胞との間には少なくとも6つの大きな違いがある。(A)増殖:正常な細胞は、十分な数の細胞が存在すると増殖を停止する。しかしながら、癌細胞は増殖を止めず、正常な細胞よりも速く分裂する;このような制御されない細胞増殖が腫瘍の形成に繋がり得る。(B)細胞修復及び細胞死:正常な細胞は、損傷を受けたり老化したりすると、修復されるか又はプログラム細胞死を経験する(アポトーシス)。対照的に、癌細胞は、修復されないか、又は、アポトーシスを起こさない。(C)転移:正常な細胞は、身体のあるべき場所に留まっている;しかしながら、癌細胞は、血流やリンパ系を介して移動し、他の組織や臓器に侵入する。(D)外観:正常な細胞は、規則的で整然とした外観を示す;対照的に、癌細胞は変形しており、様々な形や大きさの細胞が無秩序に集まっているように見える。(E)成熟:正常細胞は、通常は成熟細胞に分化し、自然に機能化する;しかしながら、癌細胞は急速に成長して分裂し、未分化の状態を維持する。(F)ゲノムの安定性:正常な細胞は、標準的なDNA及び染色体数を有している;しかしながら、癌細胞の染色体には異常な数の染色体が含まれていることが多く、癌細胞のDNAに突然変異が蓄積するにつれて異常が増加することがある。
【0004】
癌治療には様々なアプローチがある。多くの種類の癌に対して、化学療法は、最も一般的でコンベンショナルな治療法の1つである。一般的に、この治療法は、癌細胞を破壊したり、癌細胞の増殖/分裂や他の部位への転移を阻止したりするために、細胞傷害性薬剤を投与することを含んでいる。100以上の化学療法剤が癌治療に使用されている。癌治療中に使用される薬には、以下のような幾つかのクラスがある:(a)細胞周期の全ての段階でDNAを損傷することによって細胞の再生を妨げるアルキル化剤;(b)DNA及びRNAの通常の構成要素を置換することによってDNA及びRNAの複製を妨げる抗代謝産物(anti-metabolites);(c)DNA複製のための酵素を阻害する抗生物質;(d)複製及び転写中にDNA鎖をほどく酵素、即ちトポイソメラーゼI又はトポイソメラーゼIIを阻害するトポイソメラーゼ阻害剤;(e)有糸分裂及び細胞分裂を阻害する有糸分裂阻害剤(mitotic inhibitors);(f)他の薬によって引き起こされる副作用を和らげるために使用されるコルチコステロイド。
【0005】
化学療法剤は、癌細胞及び正常細胞の両方を含む細胞の成長を阻害する;これらの正常な細胞には、骨髄の新しい血液細胞、体内の口腔、胃、皮膚、毛髪、又は生殖器の上皮細胞が含まれる。これは化学療法の主な制限又は欠点である:即ち、それは、体内の正常な細胞と異常な細胞とを区別することができない。したがって、患者は、化学療法治療中及び治療後に深刻な副作用を経験することがしばしばある。
【0006】
非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NNRTI)の抗増殖効果は、様々な研究の対象となっている。例えば、ネビラピン(nevirapine)及びエファビレンツ(efavirenz)などの特定の逆転写酵素阻害剤は、動物実験において、A-375メラノーマ及びPC3前立腺癌細胞株の腫瘍形成性増殖に拮抗することが示されている(Oncogene 24:3923-3931,2005)。ダピビリン(dapivirine)は、U87神経膠芽腫細胞の腫瘍増殖を阻害することが示されている(Journal of Cancer 9(1):117-128,2018)。in vitroでのエファビレンツ及びリルピビリン(HIV感染症の治療のためにFDAによって承認された第2世代NNRTI)は、膵臓癌細胞に対して高い毒性の可能性を有することが見出されている(PloS ONE 10(6):e0130277,2015)。しかしながら、特に忍容性が高く重篤な副作用が少ない新しい癌治療法を開発するニーズは依然として存在している。より具体的には、他の抗癌治療と組み合わせて安全に、効果的に、及び/又は相乗的に機能する更なる薬剤の必要性、並びに、追加の化学療法剤なしで安全且つ効果的であり得る癌治療の必要性が依然として存在している。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、以下の説明の何れかによって範囲が限定されるべきではない。以下の例又は実施形態は、例示のみを目的として提示されている。
【0008】
「癌」という用語は、乳房、気道、脳、神経組織、生殖器、消化管、尿路、眼、肝臓、皮膚、頭頸部、甲状腺、副甲状腺、及びそれらの遠隔転移の癌などの固形腫瘍だけでなく、リンパ腫、肉腫、及び白血病を含むがこれらに限定されない血液癌も指す。
【0009】
乳癌には、浸潤性乳管癌、浸潤性小葉癌、非浸潤性乳管癌、及び非浸潤性小葉癌が含まれるが、これらに限定されない。
【0010】
気道癌には、小細胞肺癌及び非小細胞肺癌、並びに、気管支腺腫及び胸膜肺芽腫が含まれるが、これらに限定されない。
【0011】
脳腫瘍には、脳幹及び視床下部グリオーマ、小脳及び大脳星細胞腫、膠芽腫、髄芽腫、上衣腫、並びに神経外胚葉及び松果体腫瘍が含まれるが、これらに限定されない。
【0012】
眼の癌には、眼内黒色腫及び網膜芽細胞腫が含まれるが、これらに限定されない。
【0013】
肝癌には、肝細胞癌(線維層板変異体を伴う又は伴わない肝細胞癌)、胆管癌(肝内胆管癌)、及び混合型肝細胞胆管癌が含まれるが、これらに限定されない。
【0014】
皮膚癌には、扁平上皮癌、カポジ肉腫、悪性黒色腫、メルケル細胞皮膚癌、及び非黒色腫皮膚癌が含まれるが、これらに限定されない。
【0015】
頭頸部癌には、喉頭癌/下咽頭癌/上咽頭癌/中咽頭癌、並びに口唇癌及び口腔癌が含まれるが、これらに限定されない。
【0016】
リンパ腫には、AIDS関連リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、ホジキン病、及び中枢神経系のリンパ腫が含まれるが、これらに限定されない。
【0017】
肉腫には、軟部組織肉腫、線維肉腫、骨肉腫、悪性線維性組織球腫、リンパ肉腫、及び横紋筋肉腫が含まれるが、これらに限定されない。
【0018】
白血病には、急性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、及び有毛細胞白血病が含まれるが、これらに限定されない。
【0019】
神経組織関連腫瘍には、神経芽細胞腫、神経節芽細胞腫、神経節細胞腫、神経鞘腫、又は神経線維肉腫が含まれるが、これらに限定されない。
【0020】
男性の生殖器腫瘍には、前立腺癌及び精巣癌が含まれるが、これらに限定されない。
【0021】
女性の生殖器腫瘍には、子宮内膜癌、子宮頸癌、卵巣癌、膣癌、外陰癌、及び子宮肉腫が含まれるが、これらに限定されない。
【0022】
消化管腫瘍には、肛門、結腸、結腸直腸、食道、胆嚢、胃、膵臓、直腸、小腸、及び唾液腺の癌が含まれるが、これらに限定されない。
【0023】
尿路腫瘍には、膀胱癌、陰茎癌、腎臓癌、腎盂癌、尿管癌、及び尿道癌が含まれるが、これらに限定されない。
【0024】
本明細書で使用される「前癌状態」は、癌化するリスクが高い異常細胞に関する。
【0025】
上記の疾患は、ヒトにおいて十分に特徴付けられており、本発明の1つ又は複数の治療剤を投与することによって治療することができる。
【0026】
薬学的に許容される賦形剤は、賦形剤に起因する副作用が活性成分の有益な作用を活性化しないように、活性成分の有効な活性と両立する濃度で患者に比較的毒性がなく無害である任意の賦形剤である。
【0027】
本発明の一態様は、癌性腫瘍の増殖を阻害又は抑止し、及び/又は癌性腫瘍を治療し、及び/又は腫瘍開始細胞からの癌の発症を遅延させるための組成物を提供する。この組成物は、以下を含んでいる:
有効量の式(I)又は式(II)の化合物:
【化1】
【化2】
又はその薬学的に許容される塩であって、前記組成物は、それを必要とする対象に単独で、又は以下の化学療法剤、生物学的薬剤、及び/又は抗癌剤(以下、「治療剤」と交換可能に使用する)の1つ又は複数と組み合わせて投与される。
【0028】
一態様では、1つ又は複数の化学療法剤は、アルキル化剤、代謝拮抗剤、抗腫瘍抗生物質、トポイソメラーゼ阻害剤、キナーゼ阻害剤、有糸分裂阻害剤、ステロイド、及び/又はそれらの任意の混合物であり得る。
【0029】
1つ又は複数の生物学的薬剤は、限定されるものではないが、ワクチン、サイトカイン、抗体、タンパク質及びペプチド薬、及び/又はそれらの任意の混合物を含み得る。リルピビリンによる治療は、放射線療法、T細胞療法などの他の癌治療と併用することもできる。
【0030】
一実施形態において、本発明の組成物は、限定されるものではないが、アスパラギナーゼ、ブレオマイシン、カルボプラチン、カルムスチン、クロラムブシル、シスプラチン、コラパーゼ、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、エピルビシン、エトポシド、5-フルオロウラシル、ヘキサメチルメラミン、ヒドロキシ尿素、イホスファミド、イリノテカン、ロイコボリン、ロムスチン、メクロレタミン、6-メルカプトプリン、メスナ、メトトレキサート、マイトマイシンC、ミトキサントロン、プレドニゾロン、プレドニゾン、プロカルバジン、ラロキシフェン、ストレプトゾシン、タモキシフェン、チオグアニン、トポテカン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、及びビンデシンを含む抗癌剤と組み合わせることができる。
【0031】
一実施形態において、本発明の組成物は、アミノグルテチミド、L-アスパラギナーゼ、アザチオプリン、5-アザシチジンクラドリビン、ブスルファン、ジエチルスチルベストロール、2’,2’-ジフルオロデオキシシチジン、ドセタキセル、エリスロヒドロキシノニルアデニン、エチニルエストラジオール、5-フルオロデオキシウリジン、5-フルオロデオキシウリジン、リン酸フルダラビン、フルダラビン、フルオキシステロン、フルタミド、カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、イダルビシン、インターフェロン、メドロキシプロゲステロン酢酸メゲストロール、メルファラン、ミトタン、パクリタキセル、ペントスタチン、N-ホスホノアセチル-L-アスパラギン酸塩(PALA)、プリカマイシン、セムスチン、テニポシド、テストステロンプロピオネート、チオテパ、トリメチルメラミン、ウリジン、ビノレルビン、キサリプラチン、ゲムシタビン、カペシタビン、エポチロン及びその天然又は合成誘導体、テモゾロミド、トシツモマブ(Bexxar)、トラベデクチン、並びにキネシンスピンドル蛋白Eg5の阻害剤を含むがこれに限定されない他の細胞毒性薬剤と組み合わせることができる。
【0032】
本発明の組成物は、限定されるものではないが、チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)、並びに、EGFRファミリー及びそれらの関連リガンドを標的とするシグナル伝達阻害剤を含む抗癌剤と組み合わせることができる。シグナル伝達阻害剤には、限定されるものではないが、ハーセプチン(トラスツズマブ)、アービタックス(セツキシマブ)、ペルツズマブ、ZD-1839/イレッサ、OSI-774/タルセバ、CI-1033、GW-2016、CP-724、714、HKI-272、及びEKB-569が含まれる。
【0033】
一実施形態では、本発明の組成物は、PD-325901及びARRY-142886を含むがこれらに限定されないRaf/MEK/ERK形質導入経路の阻害剤と組み合わせることができる。
【0034】
一実施形態では、本発明の組成物は、ラパチニブ、パロキセチン、ルカパリブ、ドキセピン、レボブノロール、ダリフェナシン、リスペリドン、フロバトリプタン、ロチゴチン、ロチゴチン、カルテオロール、イプラトロピウム、テストステロン、ダナゾール、及びそれらの誘導体を含むがこれらに限定されない、Rho関連プロテインキナーゼ2(ROCK 2)のタンパク質部位を標的とする阻害剤と組み合わせることができる。
【0035】
一実施形態では、本発明の組成物は、ジプラシドン、メチルテストステロン、エキセメスタン、パノビノスタット、ドラセトロン、レトロゾール、ラパチニブ、レンバチニブ、ロサルタン、アキシチニブ、フラボキサート、イルベサルタン、ニンテダニブ、ジブカイン、イロペリドン、エルロチニブ、パリペリドン、アルプラゾラム、ハルシオン、レゴラフェニブ、及びそれらの誘導体を含むがこれらに限定されない、オーロラAのタンパク質部位を標的とする阻害剤と組み合わせることができる。
【0036】
一実施形態では、本発明の組成物は、ニカルジピン、アルフェンタニル、シロスタゾール、アルフゾシン、ポマリスト、ベムラフェニブ、ロサルタン、サルメテロール、ネビボロール、ポドフィロックス、ミダゾラム、及びそれらの誘導体を含むがこれらに限定されない、ブロモドメイン含有タンパク質4(BRD4)のタンパク質部位を標的とする阻害剤と組み合わせることができる。
【0037】
一実施形態では、本発明の組成物は、限定されるものではないが、ボルテゾミブ及びCCI-779を含むプロテアソーム阻害剤及びmTOR阻害剤と組み合わせることができる。
【0038】
一実施形態では、本発明の組成物は、限定されるものではないが、免疫療法(ワクチン、サイトカイン、幾つか抗体など)、遺伝子療法、及び幾つかの標的療法を含む生物学的療法と組み合わせることができる。
【0039】
一実施形態では、本発明の組成物は、IL-2又はインターフェロン(IFN)を含むが、これらに限定されないサイトカインと組み合わせることができ、任意選択的に、インターフェロンは、α-IFN又はγ-IFNであり;任意選択的に、IL-2は組換えIL-2である。
【0040】
一実施形態では、本発明の組成物は、限定されるものではないが、Hu3F8、hu14.18K322A、Hu14.18-IL-2、及びジヌツキシマブ(Qarziba)を含むGD2タンパク質に対するモノクローナル抗体と組み合わせることができる。
【0041】
実施形態において、リルピビリンの好ましい投与量は、約0.1mgから1000mg、より好ましくは1mgから25mgである。例えば、それは、1日あたり、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、又は25mgの投与量で対象に投与され得る。
【0042】
本発明の別の態様は式(I)又は式(II)の化合物の、それを必要とする対象における、癌性腫瘍の増殖を抑止し、及び/又は癌性腫瘍を治療し、及び/又は腫瘍開始細胞からの癌の発症を遅らせるための組成物の調製における使用が提供される:
【化3】
【化4】
ここで、前記組成物は、それを必要とする対象に対して、有効量の前記化合物又はその薬学的に許容される塩を含んでいる。
【0043】
一実施形態では、組成物は、単独で、又は、1つ若しくは複数の化学療法剤、生物学的薬剤、及び/又は抗癌剤と組み合わせて、それを必要とする対象に投与することができる。
【0044】
一実施形態では、1つ又は複数の化学療法剤が、1つ又は複数のアルキル化剤、抗代謝物、抗腫瘍抗生物質、トポイソメラーゼ阻害剤、有糸分裂阻害剤、ステロイド、及び/又はそれらの任意の混合物を含み;1つ又は複数の生物学的薬剤が、1つ又は複数のワクチン、サイトカイン、抗体、タンパク質及びペプチド薬物、及び/又はそれらの任意の混合物を含んでいるような使用が企図される;
【0045】
一実施形態では、上記使用のための1つ又は複数のアルキル化剤は、シクロホスファミド、メルファラン、テモゾロミド、カルボプラチン、シスプラチン、及び/又はオキサリプラチンから選択される1つ又は複数である。
【0046】
一実施形態では、1つ又は複数の代謝拮抗剤は、5-フルオロウラシル、6-メルカプトプリン、シタラビン、ゲムシタビン、及び/又はメトトレキサートから選択される1つ又は複数である。
【0047】
一実施形態では、1つ又は複数の抗腫瘍抗生物質は、アクチノマイシン-D、ブレオマイシン、ダウノルビシン、及び/又はドキソルビシンから選択される1つ又は複数である。
【0048】
一実施形態では、1つ又は複数のトポイソメラーゼ阻害剤は、エトポシド、イリノテカン、テニポシド、及び/又はトポテカンから選択される1つ又は複数である。
【0049】
一実施形態では、1つ又は複数の有糸分裂阻害剤は、ドセタキセル、エストラムスチン、パクリタキセル、及び/又はビンブラスチンから選択される1つ又は複数である。
【0050】
一実施形態では、1つ又は複数のステロイドは、プレドニゾン、メチルプレドニゾロン、及び/又はデキサメタゾンから選択される1つ又は複数である。
【0051】
一実施形態では、1つ又は複数の抗体は、Hu3F8、hu14.18K322A、Hu14.18-IL-2、ジヌツキシマブ、又はそれらの任意の組み合わせから選択される。
【0052】
例示的な実施形態において、組成物中の式(I)又は(II)の化合物及び/又はその薬学的に許容される塩は、対象において神経芽細胞腫に成長又は発達することができる腫瘍開始細胞を標的とする。
【0053】
本明細書で使用される場合、例えば「癌の抑止」または「癌の増殖の抑止」のように、治療の文脈における「抑止する」又は「抑止」という用語は、癌の減少を指している。抑止は、症状の100%の除去を必要としない。
【0054】
1つの実施形態において、前記組成物は、以下の処方形態の1つ又は複数へと配合される:非経口製剤、水溶液、リポソーム、注射液、懸濁液若しくはエマルジョン、静脈内溶液、錠剤、丸剤、トローチ剤、カプセル剤、カプレット、パッチ剤、スプレー剤、吸入剤、粉末剤、凍結乾燥粉末剤、吸入剤、パッチ剤、ゲル剤、ゲルタブ剤、ナノ懸濁液、ナノ粒子、ナノリポソーム剤、マイクロゲル剤、ペレット剤、坐剤、経口懸濁液、経口崩壊錠、分散性錠剤、経口崩壊性フィルム、マイクロエマルジョン剤、ナノエマルジョン剤、自己乳化ドラッグデリバリーシステム、及び/又はそれらの任意の組み合わせ。
【0055】
実施形態では、前記癌性腫瘍又は癌は、肥満細胞腫若しくは肥満細胞腫瘍、卵巣癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、肝癌、黒色腫、網膜芽細胞腫、乳癌、大腸癌、白血病、リンパ腫、急性リンパ芽球性白血病(ALL)若しくは急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病(AML)、組織球性肉腫、脳腫瘍、星細胞腫、膠芽腫、神経芽腫、結腸癌、子宮頸癌、肉腫、前立腺腫瘍、膀胱腫瘍、細網内皮系組織の腫瘍、ウィルムス腫瘍、卵巣癌、骨癌、骨肉腫、腎癌、頭頸部癌、口腔癌、喉頭癌、又は口腔咽頭癌を含んでいる。
【0056】
好ましい実施形態では、前記癌性腫瘍又は癌は、神経芽細胞腫を含んでいる。例示的な実施形態では、癌性腫瘍又は癌は、対象の神経芽細胞腫開始細胞から発生する。言い換えれば、本組成物中の式(I)又は(II)の化合物及び/又はその薬学的に許容される塩は、対象において神経芽細胞腫に発達することができる腫瘍開始細胞の増殖を標的化及び阻害するためのものである。
【0057】
実施形態では、前記対象は、成人、少年、子供及び/又は乳児を含むヒトである。例示的な実施形態では、対象は、神経芽細胞腫を有する、神経芽細胞腫と診断された、神経芽細胞腫を有するリスクが認識されている、又は神経芽細胞腫治療の必要性が認識されているものであり得る。実施形態において、対象は、本明細書で企図される他の癌の1つを有する若しくは診断されたもの、又は、本明細書で企図される他の癌の1つを有するという認識されたリスクを有しているか、若しくは、癌治療の認識された必要性を有している。
【0058】
実施形態において、組成物は、静脈内、非経口的、筋肉内、皮下、鼻腔内、肺内、局所的(topically)若しくは部分的(locally)、経口的、口腔内、舌下、膣内、直腸内、点眼、注射、眼への移植、外科的移植、又は、リポソーム、インプラント、若しくは血管標的化ナノ懸濁液送達を介して、前記対象に投与される。
【0059】
実施形態において、組成物中の前記化合物の有効量は、1日あたり約0.1mgから1000mgであり、より好ましくは、組成物中の前記化合物の有効量は、1日あたり0.1mgから25mgである。例えば、組成物中の化合物は、1日あたり1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24又は25mgの有効量で対象に投与される。
【0060】
実施形態において、組成物は、少なくとも1日1回、例えば、1日1回、1日2回、1日3回、1日4回などで投与される。
【0061】
本明細書に記載の各薬剤の候補は、本発明の任意の態様において、本組成物に適用可能であるか、又は、本組成物と組み合わせることができると理解されるべきである。
【0062】
別の実施形態は、それを必要とする対象における癌性腫瘍を治療するために必要な1つ又は複数の化学療法剤の頻度又は量を減少させるための、及び/又は、腫瘍開始細胞からの癌の進行を遅延させるための組成物の調製における式(I)又は式(II)の化合物の使用に関する:
【化5】
【化6】
ここで、前記組成物は、有効量の前記化合物又はその薬学的に許容される塩を含み、1つ又は複数の化学療法剤と組み合わせて、それを必要とする前記対象に投与され、
前記1つ又は複数の化学療法剤は、アルキル化剤、抗代謝物、抗腫瘍抗生物質、トポイソメラーゼ阻害剤、有糸分裂阻害剤、ステロイド及び/又はそれらの任意の混合物から選択され;
ここで、投与される前記化学療法剤の頻度又は量は、有効量の式(I)又は式(II)の化合物を含む組成物を投与せずに前記対象中で前記化学療法剤を使用する標準プロトコルよりも最大で約75から90%少ない。
【図面の簡単な説明】
【0063】
本発明の実施形態は、以下により、図面を参照して詳細に説明される。
【0064】
図1A、
図1B、及び
図1Cは、リルピビリン単独処理下における神経芽細胞腫細胞IMR-32の阻害を示している。
図1Aは、対照群であって、薬物処理なしで24時間インキュベートしたIMR-32細胞を示しており;
図1Bは、リルピビリン(5μM)で24時間処理したIMR-32細胞を示しており、
図1Cは、種々の濃度のリルピビリンで処理した(72時間)IMR-32の細胞生存率のパーセンテージを示している。
【0065】
図2は、IMR-32細胞株に対するドキソルビシン(DOX)及びリルピビリン(RPV)の組み合わせ処理のアイソボログラム分析を示している。
【0066】
図3は、SK-N-SH細胞株に対するドキソルビシン(DOX)及びリルピビリン(RPV)の組み合わせ処理のアイソボログラム分析を示している。
【0067】
図4は、SK-N-BE(2)細胞株に対するドキソルビシン(DOX)及びリルピビリン(RPV)の組み合わせ処理のアイソボログラム分析を示している。
【0068】
図5は、SH-SY5Y細胞株に対するドキソルビシン(DOX)及びリルピビリン(RPV)の組み合わせ処理のアイソボログラム分析を示している。
【0069】
図6は、IMR-32細胞株に対する4-ヒドロペルオキシシクロホスファミド(CPA-OOH)及びリルピビリン(RPV)の組み合わせ処理のアイソボログラム分析を示している。
【0070】
図7は、SH-SY5Y細胞株に対する4-ヒドロペルオキシシクロホスファミド(CPA-OOH)及びリルピビリン(RPV)の組み合わせ処理のアイソボログラム分析を示している。
【0071】
図8は、SK-N-SH細胞株に対する4-ヒドロペルオキシシクロホスファミド(CPA-OOH)及びリルピビリン(RPV)の組み合わせ処理のアイソボログラム分析を示している。
【0072】
図9は、SK-N-BE(2)細胞株に対する4-ヒドロペルオキシシクロホスファミド(CPA-OOH)及びリルピビリン(RPV)の組み合わせ処理のアイソボログラム分析を示している。
【0073】
図10は、IMR-32細胞株に対する併用治療シスプラチン(CDDP)及びリルピビリン(RPV)のアイソボログラム分析を示している。
【0074】
図11は、SH-SY5Y細胞株に対する併用治療シスプラチン(CDDP)及びリルピビリン(RPV)のアイソボログラム分析を示している。
【0075】
図12は、SK-N-SH細胞株に対する併用治療シスプラチン(CDDP)及びリルピビリン(RPV)のアイソボログラム分析を示している。
【0076】
図13は、SK-N-BE(2)細胞株に対する併用治療シスプラチン(CDDP)及びリルピビリン(RPV)のアイソボログラム分析を示している。
【0077】
図14は、SH-SY 5 Y細胞株に対する併用治療エトポシド(ETOP)及びリルピビリン(RPV)のアイソボログラム分析を示している。
【0078】
図15は、SK-N-SH細胞株に対する併用治療エトポシド(ETOP)及びリルピビリン(RPV)のアイソボログラム分析を示している。
【0079】
図16は、IMR-32細胞株に対する併用治療エトポシド(ETOP)及びリルピビリン(RPV)のアイソボログラム分析を示している。
【0080】
図17は、SK-N-BE(2)細胞株に対する併用治療エトポシド(ETOP)及びリルピビリン(RPV)のアイソボログラム分析を示している。
【0081】
図18は、SH-SY5Y細胞株に対する併用治療ビンクリスチン(Vin)及びリルピビリン(RPV)のアイソボログラム分析を示している。
【0082】
図19は、IMR-32細胞株に対する併用治療ビンクリスチン(Vin)及びリルピビリン(RPV)のアイソボログラム分析を示している。
【0083】
図20は、SK-N-BE(2)細胞株に対する併用治療ビンクリスチン(Vin)及びリルピビリン(RPV)のアイソボログラム分析を示している。
【0084】
図21は、SK-N-SH細胞株に対する併用治療ビンクリスチン(Vin)及びリルピビリン(RPV)のアイソボログラム分析を示している。
【0085】
図22は、IMR-32細胞株に対する併用治療カルボプラチン(CBP)及びリルピビリン(RPV)のアイソボログラム分析を示している。
【0086】
図23は、SH-SY5Y細胞株に対する併用治療カルボプラチン(CBP)及びリルピビリン(RPV)のアイソボログラム分析を示している。
【0087】
図24は、SK-N-SH細胞株に対する併用治療カルボプラチン(CBP)及びリルピビリン(RPV)のアイソボログラム分析を示している。
【0088】
図25は、SK-N-BE(2)細胞株に対する併用治療カルボプラチン(CBP)及びリルピビリン(RPV)のアイソボログラム分析を示している。
【0089】
図26は、異なる濃度のリルピビリンを適用した後の神経芽細胞腫細胞株SK-N-SH、SK-N-BE(2)及びSH-SY5Yにおける切断されたPARP及びp-H2A.Xの発現を示している。
【0090】
図27は、異なる濃度のリルピビリン、ビンクリスチン及びリルピビリン+ビンクリスチンを適用した後の、神経芽細胞腫細胞株IMR-32における切断されたPARP、p-H2A.X及びBRCA1の発現を示している。
【0091】
図28は、動物モデルにおける、シスプラチン並びにシスプラチン及びリルピビリンの投与後の神経芽細胞腫の体積変化を示している。
【0092】
図29は、動物モデルにおける、カルボプラチン並びにカルボプラチン及びリルピビリンの投与後の神経芽細胞腫の体積変化を示している。
【0093】
図30は、動物モデルにおける、ビンクリスチン並びにビンクリスチン及びリルピビリンの投与後の神経芽細胞腫の体積変化を示している。
【0094】
図31は、動物モデルにおける、ビンクリスチン単独、並びに、異なる濃度のリルピビリン(それぞれ60mg及び160mg)及びビンクリスチンを投与した後の神経芽細胞腫の体積変化を示している。
【0095】
図32は、動物モデルにおいてリルピビリンのみを投与した後の神経芽細胞腫の体積変化を示している。
【発明を実施するための形態】
【0096】
本発明は、他の癌療法からの重篤な副作用を最小限に抑えながら癌を治療するための、リルピビリン、その塩基形態若しくはその塩の単独又は他の癌療法との組み合わせによる使用に関する。癌の発生の予防、並びに、悪性細胞及び/又は悪性腫瘍の発生及び転移に関連する症状の実質的な減少又は排除が企図される。前癌状態の治療も本明細書で企図されている。
【0097】
以下に示す式I又はIIの化合物を本発明で使用することができる:
【化7】
【化8】
【0098】
式IIの化合物は、一般に、リルピビリンの「塩基」形態と呼ばれる。式IIの化合物の薬学的に許容される塩、例えば、リン酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、及びそれらの硫酸塩を含むが、これらに限定されない塩も使用され得る。形態は、結晶性又はアモルファスであり得る。
【0099】
本発明において、式(I)、(II)のリルピビリン、又はその塩は、様々な癌を治療するために、単独で使用されるか、又は、様々な抗癌剤、生物学的薬剤、若しくは他の治療と組み合わされる。化学療法レジメン又は化学療法剤へのリルピビリンの添加は、腫瘍サイズを減少させるために必要な化学療法剤の量の実質的な減少を可能にし、それによって、これらの化学療法剤の有害な副作用を大幅に減少させる。幾つかの側面において、化学療法剤又は生物学的薬剤の減少量は、標準治療レジメンの量及び/又は頻度の最大75~90%であり得る。
【0100】
一側面において、本発明は、必要とする対象における癌性腫瘍の増殖を抑止し、及び/又は癌性腫瘍を治療し、及び/又は腫瘍開始細胞からの癌の開始を遅らせるための組成物の調製における式(I)又は式(II)の化合物の使用を含んでいる:
【化9】
【化10】
ここで、上記組成物は、有効量の上記化合物を含んでいる。
【0101】
或いは、式(II)の化合物の薬学的に許容される塩を使用することもできる。式(I)又は式(II)の化合物は、単独で、又は、1つ若しくは複数の化学療法剤、生物学的薬剤、及び/又は抗癌剤と組み合わせて投与される。「組み合わせて」とは、式(I)又は式(II)の組成物を、化学療法剤、生物学的薬剤及び/又は抗癌剤の1つ又は複数と、別々に、又は、シンクロさせて、クロノドージングで、同時注入若しくは別々の注入によって、同時に投与することができ、化学療法剤、生物学的薬剤及び/又は抗癌剤の1つを他の1つの前又は後に投与することができることを意味している。
【0102】
組成物は、静脈内、非経口、鼻腔内、局所的若しくは部分的に、経口的に、又は、リポソーム、インプラントによって、若しくは対象への血管標的化ナノ懸濁液送達を介して投与され得る。
【0103】
理論に束縛されるものではないが、式(I)又は(II)の化合物は、DNA複製を妨害することによって癌細胞複製を妨害し得ると考えられる。したがって、リルピビリンは、DNA損傷を増加させ、DNA修復メカニズムを低下させ、MYCNを分解し、及び/又は血管新生を阻害する可能性がある。更に、式(I)又は(II)の化合物は、キナーゼ阻害によって生存シグナルをシャットダウンする可能性がある。或いは、式(I)又は(II)の化合物は、p糖タンパク質及びBCRPなどの排出トランスポータを妨害することにより、化学療法薬の標的腫瘍細胞による取り込みを増加させる可能性がある。
【0104】
化学療法剤は、アルキル化剤、代謝拮抗剤、抗腫瘍抗生物質、トポイソメラーゼ阻害剤、有糸分裂阻害剤、ステロイド、及び/又はそれらの任意の混合物のうちの1つ又は複数であり得る。
【0105】
アルキル化剤は、シクロホスファミド、メルファラン、テモゾロミド、カルボプラチン、シスプラチン、及び/又はオキサリプラチンのうちの1つ又は複数であり得る。代謝拮抗剤は、5-フルオロウラシル、6-メルカプトプリン、シタラビン、ゲムシタビン、及び/又はメトトレキサートのうちの1つ又は複数であり得る。抗腫瘍抗生物質は、アクチノマイシン-D、ブレオマイシン、ダウノルビシン、及び/又はドキソルビシンのうちの1つ又は複数であり得る。トポイソメラーゼ阻害剤は、エトポシド、イリノテカン、テニポシド、及び/又はのうちの1つ又は複数であり得る。有糸分裂阻害剤は、ドセタキセル、エストラムスチン、パクリタキセル、及び/又はビンブラスチンのうちの1つ又は複数であり得る。ステロイドは、プレドニゾン、メチルプレドニゾロン、及び/又はデキサメタゾンのうちの1つ又は複数であり得る。
【0106】
本発明の組成物又は化合物の使用は、様々な癌を治療するために使用され得る。一態様では、癌性腫瘍又は癌は、肥満細胞腫若しくは肥満細胞腫、卵巣癌、膵臓癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、肝癌、黒色腫、網膜芽細胞腫、乳房腫瘍、結腸直腸癌、白血病、リンパ腫、急性リンパ芽球性白血病(ALL)若しくは急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病(AML)、組織球性肉腫、脳腫瘍、星状細胞腫、膠芽腫、神経腫、神経芽腫、結腸癌、子宮頸癌、肉腫、前立腺腫瘍、膀胱腫瘍、細網内皮細胞組織の腫瘍、ウィルム腫瘍、卵巣癌、骨癌、骨肉腫、腎癌、若しくは頭頸部癌、口腔癌、喉頭癌、又は口腔咽頭癌であり得る。
【0107】
本発明の組成物又は化合物の使用は、成人、少年、子供及び幼児を含むヒトに適用することが意図されている。
【0108】
組成物中の化合物の有効量は、1日あたり約0.1mgから1000mgである。当業者によって理解されるように、投薬は、癌のタイプ、癌の病期、投与の方法又は経路、及び同時投与される化学療法剤又は生物学的薬剤の量及びタイプに基づいて変化し得る。別の態様では、化合物量の範囲は、1日あたり0.1mgから25mgである。例えば、組成物中の化合物は、1日あたり、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、78、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、又は25mgの有効量で対象に処方され得る。
【0109】
投与期間は、実施されている他の治療並びに癌の種類及び病期に応じて、1日1回以上、1週間に数回、又は、1週間若しくは複数週間に1回であり得る。
【0110】
生物学的薬剤は、ワクチン、サイトカイン、抗体、タンパク質及びペプチド薬物、及び/又はそれらの任意の混合物のうちの1つ又は複数であり得る。抗体は、Hu3F8、hu14.18K322A、Hu14.18-IL-2、ジヌツキシマブ、又はそれらの任意の組み合わせのうちの1つ又は複数であり得る。一態様では、2つ以上の化学療法剤、生物学的薬剤、及び/又は他の抗癌剤が、対象への投与のために、式(I)又は(II)の上記化合物と共に処方される。
【0111】
式(I)又は(II)の化合物は、以下の処方形態の1つ又は複数に成形することができる:非経口製剤、水溶液、リポソーム、注射用溶液、注射用懸濁液、注射用エマルジョン、静脈内溶液、静脈内懸濁液/ナノ懸濁液、錠剤、丸剤、トローチ剤、カプセル剤、カプレット、パッチ、スプレー、吸入剤、粉末、凍結乾燥粉末、パッチ、ゲル、ゲルタブ、懸濁液、ナノ懸濁液、微粒子、ナノ粒子、ナノリポソーム、マイクロゲル、ペレット、坐剤、経口懸濁液、経口崩壊錠、経口分散錠剤、経口崩壊性フィルム、マイクロエマルジョン、ナノエマルジョン、及び自己乳化ドラッグデリバリーシステム、及び/又はそれらの任意の組み合わせ。
【0112】
まず、リルピビリン(RPV)と他の潜在的化学療法剤との間の薬物-薬物相互作用を評価するために、アイソボグラム及び併用指数分析を行った。アイソボログラム分析は、特定の効果レベルで2つの薬剤間の相互作用を評価するものである。リルピビリンと他の化学療法剤の間の薬物-薬物相互作用、CHP-100,CHP-126,CHP-134B,CHP-212,CHP-234,CHP-382,CHP-404(Schlesinger et al.,1976),GI-CA-N(Donti et al.,1988),GI-LI-N(Cornaglia et al.,1992),GI-ME-N(Ponzoni et al.,1988),GOTO(Sekiguichi et al.,1979),IGR-N-835(Bettan et al.,1989),IMR-32(Tumilocwicz et al.,1970),LA-N-1,LA-N-5(Seeger et al.,1977),MHH-NB11(Pietsch et al.,1988),NB-69(Gilbert et al.,1982),NB1-G(Carachi et al.,1987),NBL-W(Foley et al.,1991),NGP,NGP-2,NLF,NMB(Brodeur et al.,1977),RN-GA(Scarpa et al.,1989), SK-N-AS,SK-N-DZ,SK-N-FI,SK-N-LE,SK-PN-LO,SK-PN-LI,SK-PN-DW, VA-N-BR(Helson and Helson,1985),SK-N-BE(2)(Biedler and Spengler,1976),SK-N-SH(Biedler et al.,1983),SMS-KAN,SMS-KANR,SMS-KCN,SMS-KCNR(Reynolds et al.,1986),TC-32,TC-106,N1000,N1008,N1016,A4573(Whang-Peng et al.,1986),LAP-35(Bagnara et al.,1990),NUB-20(Yeger et al.,1990),SK-N-MC(Biedler et al.,1983),及びTC-268(Cavazzana et al,1988)などの神経芽細胞腫細胞株に対して分析した。これらの全てが参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0113】
神経芽細胞腫細胞株
【0114】
IMR-32細胞株は13か月齢の白人男性の腹部腫瘤から樹立されたヒト神経芽細胞腫細胞株であり(Tumilocwicz et al.,1970; Rostomily RC,et al.,1997; Maestrini E,et al.1996)、神経関連疾患のモデルとして広く使用されている。IMR-32細胞株に加えて、更に3つの神経芽細胞腫細胞株(SK-N-BE(2)、SK-N-SH、及びSH-SY5Y)の増殖も、リルピビリン処理下で成功裏に阻害された。
【0115】
アイソボログラム分析
【0116】
本発明では、IMR-32細胞株及び他の神経芽細胞腫細胞株の活性を阻害するのに必要なIC50濃度を、リルピビリン及び他の化学療法剤について測定した。これらは、2つの点(IC50,リルピビリン,0)と(0、IC50、化学療法剤)を形成する、x軸とy軸の2座標プロット上に表示されている。これらの2つの点を結ぶ線は、これら2つの薬剤の相加性を示している。更に、同じ阻害作用を示す化学療法剤と組み合わせた場合のリルピビリンの濃度又は比を、同じプロットにおいて、点(Cリルピビリン,50,C化学療法剤,50)として示している。この点が線より下、線上、線より上にあるとき、それぞれ、相乗作用、相加作用、拮抗作用を示している。
【0117】
コンビネーションインデックス(CI)分析
【0118】
コンビネーションインデックスは、所定の効果レベルでの薬物間相互作用の定量的測定を提供する。組み合わせ指数(CI)は、次の式で計算される。
【数1】
ここで、「IC
50(A)
ペア」は、薬剤Bと組み合わせて使用した場合の薬剤AのIC
50を示し、「IC
50(B)
ペア」は、薬剤Aと組み合わせて使用した場合の薬剤BのIC
50を示し 、「IC
50(A)」は、単独で使用される場合の薬物AのIC
50を指し、「IC
50(B)」は、単独で使用される場合の薬物BのIC
50を指している。
【0119】
CIが1未満、1に等しい、及び1より大きい場合は、それぞれ、相乗効果、相加効果、及び拮抗効果を示している。
【0120】
異種移植マウスモデル
この研究では、BioLasco Taiwan(Charles River Laboratories Licensee下)から入手した4~5週齢の雌のBALB/cヌードマウスを使用した。動物は個別に換気されたケージ(IVC、36ミニアイソレーターシステム)に収容された。4匹の動物への割り当てはcm単位で27x20x14であった。全ての動物は、温度(20~24℃)と湿度(30%~70%)を制御し、12時間の明暗サイクルで衛生的な環境に維持された。標準的な実験用食餌[MFG(オリエンタル酵母工業株式会社、日本)]とオートクレーブ処理された水道水への自由なアクセスが認容された。飼育、実験、動物の処分を含むこの作業の全ての側面は、本出願人のAAALAC認定の実験動物施設における「実験動物の管理と使用のためのガイド:第8版」(National Academies Press,Washington,D.C.,2011年)に従って実施された。更に、動物のケアと使用に関するプロトコルは、IACUCのPharmacology Discovery Services(台湾)で審査され、承認された。
【0121】
IMR-32腫瘍細胞株をAmerican Type Culture Collection(ATCC CCL-127、神経芽腫)から購入し、台湾のPharmacology Discovery Servicesで培養した。細胞は、10%ウシ胎仔血清(FBS)、1mMピルビン酸ナトリウム、及び1mM NEAAを含むMEM培地中、37℃、5%CO2インキュベータ中で培養した。先のセクションで説明したように、雌のBALB/cヌードマウスを使用した。生存IMR-32細胞(ATCC CCL-127)を雌BALB/cヌードマウスの右脇腹に皮下(SC)移植した(0.2mL/マウスで1:1マトリゲル/完全培地混合物に1×107細胞)。腫瘍細胞移植後41日目(群平均腫瘍容積範囲128mm3~130mm3)に、全動物を各々が8匹を含む16の試験群に無作為に割り付け、用量投与を開始した(Day 1と表記)。全ての実験は、施設の動物管理及び使用委員会によって承認されたプロトコル及び条件を使用して実施された。腫瘍の体積、体重、死亡率、及び明白な毒性の兆候を監視し、週に2回28日間記録した。
【0122】
細胞培養及び薬物治療
IMR-32,SK-N-SH,SH-SY5Y及びSK-N-BE(2)腫瘍細胞株をAmerican Type Culture Collection(ATCC,マナサス,ヴァージニア州)から購入した。IMR-32及びSK-N-SHは、10%ウシ胎児血清(FBS)、100 U/mLペニシリン、及び100U/mLストレプトマイシンを含有するEMEM培地中で、37℃、5% CO2インキュベータ中で培養した。SH-SY5Y及びSK-N-BE(2)は、10%FBS,100U/mLペニシリン、及び100U/mLストレプトマイシンを含むEMEM/F-12中で、37℃、5% CO2インキュベータ中で培養した。細胞を、培養培地中の1ウェル当たり3×103の細胞密度で96ウェルマイクロプレートにプレーティングした。24時間後、細胞を様々な濃度のリルピビリン及び化学療法剤で処理した。細胞を72時間インキュベートし、3-(4,5-ジメチル--2-チアゾリル)-2、5-ジフェニル-2 H-テトラゾリウムブロミド(MTT)比色アッセイ(シグマ・アルドリッチ社、ミズーリ州セントルイス)により細胞増殖を測定した。MTTアッセイは3回行った。各ウェルの吸光度を、分光光度計(uQuant SpectroMAX Gemini Dual-scanning microplate spectro,Bio-tek Instrument Inc.)を用いて550nmで測定した。増殖阻害は、対照のそれに対する処理された細胞の平均吸光度の比として表した。
【0123】
腫瘍体積評価
腫瘍体積(mm3)は、扁長楕円体の式に従って、次のように推定した:
長さx(幅)2x0.5
腫瘍増殖阻害(T/C)は、次の式で計算した:
%T/C=(Tn/Cn)x100%
Cn:対照群のn日目に測定された腫瘍体積
Tn:治療群のn日目に測定された腫瘍体積
腫瘍増殖阻害率(TGI)についても、次の式で計算した:
%TGI=(1-(Tn/Cn))×100%
双方向ANOVAとそれに続くBonferroni試験を用いて、研究におけるネガティブ対照群と比較して、抗腫瘍活性における統計的有意差を確認した(*p<0.05)。
【0124】
高リスク神経芽細胞腫患者の治療の標準レジメンの1つであるRapid COJEC(シスプラチン[C]、ビンクリスチン[O]、カルボプラチン[J]、エトポシド[E]、及びシクロホスファミド[C])に対するリルピビリンの影響を明らかにするために、in vivo研究を行った。リルピビリンをrapid COJEC由来の各々と組み合わせて、異種移植マウスモデルにおける神経芽細胞腫の治療における潜在的利益を評価した。以下の実施例4に見られるように、リルピビリンは、シスプラチン、カルボプラチン、及びビンクリスチンの治療効果を増強することが決定された。これらの化学療法剤の治療効果を増強することによって、神経芽細胞腫の治療中の細胞傷害性化学療法剤の投与頻度又は薬物濃度を、特には標準治療プロトコルの量の最大75~90%まで減少させることができる。更に、リルピビリンは化学療法薬(シクロホスファミド及びエトポシド)の治療効果を弱めることはなく、神経芽細胞腫の標準的な治療レジメンで使用できることが示された。
【0125】
In vitro分析
【0126】
実施例1(複数の神経芽細胞腫細胞株に対するリルピビリン単独のin vitroデータ)
【0127】
神経芽細胞腫細胞株の阻害に対するリルピビリンの効力を決定するために、IMR-32、SK-N-BE(2)、SK-N-SH、及びSH-SY5Yなどの神経芽細胞腫細胞株において、IC
50を測定した(表1)。更に、神経芽細胞腫細胞株IMR-32の増殖は、24時間のリルピビリン処理下で有意に阻害された(
図1A、
図1B)。種々の濃度のリルピビリンで処理したIMR-32の細胞生存率を
図1Cに示す。
【0128】
【0129】
実施例2(ドキソルビシン多発性神経芽細胞腫細胞株と組み合わせたリルピビリンのin vitroデータ)
【0130】
ドキソルビシン(DOX)は、乳癌、膀胱癌、カポジ肉腫、リンパ腫及び急性リンパ性白血病を含む癌治療の化学療法剤である。アイソボログラム分析は、IMR-32及びSK-N-SH細胞株に対して異なる比率におけるリルピビリンとDOXとの相乗効果を示している(
図2及び
図3)。コンビネーションインデックス分析は、CIが1未満であるという相乗効果も示している(表2及び表3)。SK-N-BE(2)及びSH-SY5Y細胞株については、アイソボログラム解析(
図4及び
図5)において相加効果が認められ、CIはほぼ1に近い値であった(表4及び表5)。
【0131】
【0132】
【0133】
【0134】
【0135】
実施例3(複数の神経芽細胞腫細胞株に対するペルホスファミドと組み合わせたリルピビリンのin vitroデータ)
【0136】
シクロホスファミド類似体である4-ヒドロペルオキシシクロホスファミド(又はペルホスファミド)は、急性骨髄性白血病などの血液癌治療のための実験薬である。アイソボログラム分析は、IMR-32(
図6),SH-SY5Y(
図7)、SK-N-SH(
図8)、及びSK-N-BE2細胞株(
図9)に対して異なる比率の4-ヒドロペルオキシシクロホスファミド及びリルピビリンによる相加的及び軽度の拮抗作用を示している。コンビネーションインデックス分析はまた、CIが0.9から1.1の間である相加的及びCIが1.1以上である拮抗作用を示している(表6から表9)。
【0137】
【0138】
【0139】
【0140】
【0141】
実施例4(複数の神経芽細胞腫細胞株に対するシスプラチンと組み合わせたリルピビリンのin vitroデータ)
【0142】
シスプラチン(CDDP)は、精巣癌、卵巣癌、頚部癌、胸癌、膀胱癌、頭頚部癌、食道癌、肺癌、中皮腫、脳腫瘍、及び神経芽腫などの癌治療のための化学療法剤である。アイソボログラム分析は、IMR-32(
図10)、SH-SY5Y(
図11)、SK-N-SH(
図12)、及びSK-N-BE2細胞株(
図13)に対する異なる比率によるリルピビリンとCDDPとの相加的及び軽度の拮抗作用を示している。コンビネーションインデックス分析はまた、CIが0.9と1.1の間である相加効果及びCIが1.1以上である拮抗効果を示している(表10から表13)。
【0143】
【0144】
【0145】
【0146】
【0147】
実施例5(複数の神経芽細胞腫細胞株に対するエトポシドと組み合わせたリルピビリンのin vitroデータ)。エトポシド(ETOP)は、精巣癌、肺癌、リンパ腫、白血病、神経芽細胞腫、及び卵巣癌などの癌治療に使用される化学療法薬である。アイソボログラム分析は、SH-SY5Y及びSK-N-SH細胞株に対するリルピビリン及びETOPの異なる比率による相乗効果を示し(
図14及び
図15)、コンビネーションインデックス分析もCIが1未満である相乗効果を示した(表14及び表15)。また、IMR-32細胞株及びSK-N-BE(2)細胞株については、アイソボログラム解析(
図16及び
図17)において相加効果が認められ、CIは概ね1に近い値を示した(表16及び表17)。
【0148】
【0149】
【0150】
【0151】
【0152】
実施例6(多発性神経芽細胞腫細胞株に対するビンクリスチンと組み合わせたリルピビリンのin vitroデータ)
【0153】
ビンクリスチン(Vin)は、急性リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病、ホジキン病、神経芽細胞腫、及び小細胞肺癌などの癌治療に使用される化学療法薬である。アイソボログラム分析は、SH-SY5Y細胞株(
図18)に対して異なる比のリルピビリンとVinとの相乗効果を示し、コンビネーションインデックス分析もCIが1未満である相乗効果を示した(表18)。また、IMR-32細胞株及びSK-N-BE(2)細胞株については、アイソボログラム解析(
図19及び
図20)において相加効果が認められ、CIは概ね1に近い値を示した(表19及び表20)。更に、SK-N-SH細胞株では、アイソボグラム解析(
図21)での併用割合の違いにより複数の影響が認められ、CIは0.5~1.5であった(表21)。
【0154】
【0155】
【0156】
【0157】
【0158】
実施例7(複数の神経芽細胞腫細胞株に対するカルボプラチンと組み合わせたリルピビリンのin vitroデータ)カルボプラチン(CBP)は、卵巣癌、肺癌、頭頸部癌、脳癌、及び神経芽腫などの癌治療に用いられる化学療法剤である。アイソボログラム分析は、IMR-32細胞株(
図22)に対して、リルピビリンとVinとの異なる組み合わせによる軽度の相乗効果を示し、コンビネーションインデックス解析もCIが1未満である相乗効果を示した(表22)。SH-SY5Y細胞株及びSK-N-SH細胞株では、アイソボログラム解析(
図23及び
図24)で相加効果を示し、CIはほぼ1に近い値を示した(表23及び表24)。また、SK-N-BE(2)細胞株では、アイソボログラム解析(
図25)で拮抗作用を示し、CIは1.3以上である(表25)。
【0159】
【0160】
【0161】
【0162】
【0163】
実施例8(他の癌細胞株に対するリルピビリン単独のin vitroデータ)
【0164】
神経芽細胞腫細胞株に加えて、他の癌細胞株においてもリルピビリン単独の効力が示されている(表26)。
【0165】
【0166】
図26を参照すると、SK-N-SH、SK-N-BE(2)及びSH-SY5Y神経芽細胞腫細胞株に適用したリルピビリンの濃度を増加させる(0.12、0.37、1.11、3.3及び10μM)ことによって、切断されたポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)及びリン酸-ヒストンH2A.X(p-H2A.X)の発現が徐々に増加し、リルピビリン単独でDNA損傷を引き起こし、神経芽細胞腫又は他の癌細胞の細胞アポトーシスにつながることが示唆された。更に、単剤治療と比較して、化学療法薬ビンクリスチンとリルピビリンとの併用は、切断されたPARPとP-H2A.Xの発現増加を示し、神経芽細胞腫細胞株IMR-32におけるDNA損傷及び細胞アポトーシスの増強を示唆し、腫瘍抑制遺伝子BRCA1もアップレギュレートされた(
図27)。
【0167】
In vivo分析
【0168】
本発明では、神経芽細胞腫の異種移植マウスモデルにおける治療効果を評価するために、リルピビリンを単独で、又は、シスプラチン、カルボプラチン、及びビンクリスチンなどの化学療法薬と組み合わせて使用した。in vivo試験の詳細については、上記の異種移植マウスモデルのセクションを参照のこと。
【0169】
実施例9(マウスモデルにおけるシスプラチンを伴うリルピビリンのin vivoデータ)
【0170】
図28に示すように、シスプラチン7mg/kgを1日目に腹腔内投与し、リルピビリン400mg/kgを1日1回21日間連続経口投与する併用療法の腫瘍体積は、シスプラチン7mg/kgを週1回3週間に腹腔内投与する単独療法群と比較して、、特に11日目において、統計学的に有意に小さく(アンペアドスチューデントのt検定,p<0.05)、腫瘍増殖抑制効果は約88%以上であった。約94%の最大%TGI値は28日目にみられる。
【0171】
実施例10(マウスモデルにおけるリルピビリン及びカルボプラチンのin vivoデータ)
【0172】
また、
図29に示すように、1日目に80mg/kgのカルボプラチンを腹腔内投与し、毎日400mg/kgのリルピビリンを経口投与する併用療法(QD×11)による腫瘍体積は、8mg/kgのカルボプラチンを週1回3週間腹腔内投与する単独療法群と比較して、特に8日目と11日目において、統計学的に有意に小さく(アンペアドスチューデントのt検定,p<0.05)、腫瘍増殖抑制率は約77%及び約84%超であった。約94%の最大%TGI値は28日目にみられる。
【0173】
実施例11(マウスモデルにおけるリルピビリン及びビンクリスチンのin vivoデータ)
【0174】
また、
図30に示すように、1日目に1mg/kgのビンクリスチンを腹腔内投与し、毎日400mg/kgのリルピビリンを経口投与する併用療法(QD×11)による腫瘍体積は、ビンクリスチン1mg/kgを週1回3週間、腹腔内投与する単独療法群と比較して、特に8日目と11日目において、統計学的に有意に小さく(アンペアドt検定,p<0.05)、腫瘍増殖抑制効果は約86%以上であった。約93%の最大%TGI値は28日目にみられる。
【0175】
なお、併用療法群の化学療法剤(実施例9~11)は第1日目のみに適用し、単独療法群は第1、8、15日目に適用したことは、注目に値する。このことは、リルピビリンの投与が細胞毒性化学療法薬の用量頻度又は量を低下させ、化学療法薬により生じる副作用を改善する可能性があることを示している。投与回数は、月3回から月1回、週2回から週1回へと概ね減少した。
【0176】
別の実施形態では、カルボプラチン又はビンクリスチンのリルピビリンとの併用療法の腹腔内注射は、11日目以降に全ての薬物治療が中止され、腫瘍体積は単剤療法群と統計学的に差がなく、リルピビリンの長期阻害作用が示唆された。
【0177】
高リスク神経芽細胞腫患者の治療の標準レジメンの1つであるrapid COJECに対するリルピビリンの影響を解明するために、上記のin vivo併用試験を実施した。リルピビリンをrapid COJEC(シスプラチン、カルボプラチン、ビンクリスチン、シクロホスファミド、及びエトポシドを含む)で各化学療法薬と併用し、その潜在的利益を異種移植マウスモデルで評価した。
【0178】
このin vivo研究のデータによると、リルピビリンは、神経芽細胞腫異種移植モデルに対するシスプラチン、カルボプラチン、及びビンクリスチンの有効性を増強した。一般的に言えば、併用療法は、カルボプラチン及びビンクリスチンでは8日目と11日目に、シスプラチンでは11日目に、単独療法群と比較して、腫瘍体積に統計的に有意な減少をもたらした(アンペアドスチューデントのt検定,p<0.05)。併用療法群の化学療法薬が1日目のみに投与されたことは注目に値する。一方、単剤療法群では、化学療法薬は1日目、8日目、15日目に投与された。このことは、リルピビリンが細胞毒性化学療法薬の投与頻度を減らす可能性があることを示している可能性がある。
【0179】
加えて、リルピビリン+シスプラチン群は、11~15日目にシスプラチン単独群と比較して同様の腫瘍サイズ(アンペアドスチューデントのt検定,p>0.05)を達成し、25日目まで差がないことが観察された。カルボプラチン及びビンクリスチンの併用群では、11日目に治療を中止したが、腫瘍サイズは化学療法単独群と統計的に異ならなかった。
【0180】
一方、リルピビリンは、異種移植モデルにおいて、シクロホスファミド及びエトポシドの治療効果に干渉したり、それを弱めたりしないことも観察された。シクロホスファミド単独とシクロホスファミド+リルピビリン及びエトポシド単独とエトポシド+リルピビリンとをそれぞれ比較した28日間のin vivo試験では、単独療法と併用療法との間に腫瘍サイズに有意差は認められなかった。
【0181】
このin vivo研究に基づいて、リルピビリンは、シスプラチン、カルボプラチン、及びビンクリスチンの治療効果を増強し、神経芽細胞腫の治療中の細胞毒性化学療法薬の投与頻度を潜在的に減少させることが見出された。一方、リルピビリンは、シクロホスファミド及びエトポシドの治療効果を弱めなかった。したがって、神経芽細胞腫に対する標準的な化学療法にリルピビリンを組み込むことにより、優越性と改善が観察される可能性がある。
【0182】
実施例12(マウスモデルにおけるリルピビリン単独のin vivoデータ)
図32に示すように、ヴィークル(0.5% HPMC)を経口投与により21日間連続して1日1回投与した陰性対照群と比較して、リルピビリン400mg/kgを1日1回21日間連続で経口投与した群において、腫瘍増殖が有意に抑制され(アンペアドスチューデントのt検定,p<0.05)、神経芽腫に対するリルピビリン単独の抗腫瘍活性が示唆された。投与の過程で、リルピビリンは忍容性が高く、体重減少を伴うことがなく、明白な毒性は観察されなかった。
【0183】
本明細書における「一実施形態」「ある実施形態」「例示的な実施形態」などへの言及は、記載された実施形態が特定の構成、構造、又は特徴を含むことができるが、全ての実施形態が特定の構成、構造、又は特徴を必ずしも含むとは限らないことを示している。また、そのような句は、必ずしも同じ実施形態を指すとは限らない。更に、特定の構成、構造、又は特徴が実施形態に関連して記載される場合、明示的に記載されているか否かにかかわらず、他の実施形態に関連してそのような構成、構造、または特徴に影響を及ぼすことは、当業者の知識の範囲内である。
【0184】
本明細書に記載されている製造方法では、時間的又は操作的シーケンスが明示的に記載されている場合を除き、工程は、本発明の原理から逸脱することなく任意の順序で実施することができる。最初の工程が実施され、次いで幾つかの他の工程がその後に実施される旨のクレームにおける記載は、第1の工程が他の工程の何れかの前に実施されるが、他の工程は、他の工程内で更に記載されない限り、任意の適切な順序で実施することができることを意味するものとする。例えば、「工程A、工程B、工程C、工程D、及び工程E」を記載するクレーム要素は、工程Aが最初に実施され、工程Eが最後に実施され、工程B、C及びDが工程Aと工程Eの間の任意の順序で実施され、その順序が依然としてクレームされたプロセスの文言の範囲内にあることを意味すると解釈される。特定の工程又は工程のサブセットを繰り返すこともできる。更に、特定の工程は、明示的なクレーム文言がそれらが別々に実施されることを記載しない限り、同時に実施することができる。
【0185】
本明細書で使用される選択された用語の定義は、本発明の詳細な説明の中に見出されるかもしれない。そして、その定義は、全体を通して適用され得る。他に定義されない限り、本明細書で使用される他のすべての技術用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般に理解されるのと同じ意味を有する。
【0186】
これらの教示を考慮すると、添付の特許請求の範囲に記載されているように、本発明の精神又は範囲から逸脱することなく、代替実施形態を実施することができることが当業者には理解されるだろう。本発明は、上記の明細書及び添付の図面と関連して見たときに、全てのそのような実施形態及び変形を含む、以下の請求項によってのみ限定されるべきである。
【国際調査報告】