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特表2023-503514ナノポアを使用する標的ペプチドの特徴付けの方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-30
(54)【発明の名称】ナノポアを使用する標的ペプチドの特徴付けの方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/68 20180101AFI20230123BHJP
   C12Q 1/34 20060101ALI20230123BHJP
   G01N 33/68 20060101ALI20230123BHJP
   C12N 15/11 20060101ALN20230123BHJP
【FI】
C12Q1/68 ZNA
C12Q1/34
G01N33/68
C12N15/11
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022531468
(86)(22)【出願日】2020-12-01
(85)【翻訳文提出日】2022-05-27
(86)【国際出願番号】 GB2020053082
(87)【国際公開番号】W WO2021111125
(87)【国際公開日】2021-06-10
(31)【優先権主張番号】1917599.1
(32)【優先日】2019-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】2015479.5
(32)【優先日】2020-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511252899
【氏名又は名称】オックスフォード ナノポール テクノロジーズ ピーエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100196966
【弁理士】
【氏名又は名称】植田 渉
(72)【発明者】
【氏名】ヘロン,アンドリュー ジョン
(72)【発明者】
【氏名】グラハム,ジェームス エドワード
(72)【発明者】
【氏名】ストライチャラスカ,メラニア スラワ
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
【Fターム(参考)】
2G045AA25
2G045DA36
4B063QA05
4B063QA11
4B063QQ79
4B063QR32
4B063QS36
4B063QS39
4B063QX04
(57)【要約】
本明細書で提供されるのは、標的ポリペプチドがナノポアに対して移動するときに標的ポリペプチドを特徴付ける方法である。そのような方法を実行するための関連するキット、システム、および装置も提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的ポリペプチドを特徴付ける方法であって、
-前記標的ポリペプチドをポリヌクレオチドにコンジュゲート化して、ポリヌクレオチド-ポリペプチドコンジュゲートを形成することと、
-前記コンジュゲートを、ナノポアに対する前記ポリヌクレオチドの移動を制御することができるポリヌクレオチドハンドリングタンパク質と接触させることと、
-前記コンジュゲートが前記ナノポアに対して移動するときに、前記ポリペプチドに特徴的な1つ以上の測定を行うことと、を含み、
それにより前記ポリペプチドを特徴付ける、方法。
【請求項2】
前記ナノポアが、前記ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質と前記ナノポアの狭窄領域との間の距離を延長するように修飾されている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ディスプレーサーユニットを使用して前記ポリペプチドハンドリングタンパク質を前記ナノポアから分離し、それにより前記ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質と前記ナノポアとの間の前記距離を延長することを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ディスプレーサーユニットが1つ以上のタンパク質を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質が、前記ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質の活性部位から前記ナノポアまでの距離を延長するように修飾されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質の前記活性部位と接触している前記コンジュゲートの部分がポリペプチドを含む場合、前記ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質が前記コンジュゲートに結合したままであることが可能である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質が、ポリペプチドを含む前記コンジュゲートの部分と接触するときに、前記ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質が前記コンジュゲートから離脱するのを防ぐように修飾されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質が、ポリヌクレオチド鎖が結合を解くことができる未修飾タンパク質の少なくとも1つのコンフォメーション状態に存在する開口部を完全にまたは部分的に閉じるように修飾されている、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質がヘリカーゼである、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記コンジュゲートが複数のポリペプチドセクションおよび/または複数のポリヌクレオチドセクションを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記ポリペプチドが2~約50ペプチド単位の長さを有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記ポリペプチドが線形化された形態で保持される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記ポリヌクレオチドが約10~約1000ヌクレオチドの長さを有する、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
1つ以上のアダプターおよび/または1つ以上のテザーおよび/または1つ以上のアンカーが、前記コンジュゲート中の前記ポリヌクレオチドに付着している、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
i)前記ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質が前記ナノポアのシス側に位置し、前記ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質が、前記ナノポアの前記シス側から前記ナノポアのトランス側への前記コンジュゲートの移動を制御するか、または
ii)前記ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質が前記ナノポアの前記トランス側に位置し、前記ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質が、前記ナノポアの前記トランス側から前記ナノポアの前記シス側への前記コンジュゲートの前記移動を制御する、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質が前記ナノポアの前記シス側に位置し、前記ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質が、前記ナノポアの前記シス側から前記ナノポアの前記トランス側への前記ポリヌクレオチドの前記移動を制御し、それにより前記ナノポアを通る前記ポリペプチドの前記移動を制御する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質が前記ナノポアの前記トランス側に位置し、前記ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質が、前記ナノポアの前記トランス側から前記ナノポアの前記シス側への前記ポリヌクレオチドの前記移動を制御し、それにより前記ナノポアを通る前記ポリペプチドの前記移動を制御する、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記コンジュゲートが、L-{P-N}-Pの形態の1つ以上の構造を含み、
-Lはリーダーであり、Lは任意選択でN部分であり、
-Pはポリペプチドであり、
-Nはポリヌクレオチドを含み、かつ
-mは0または1であり、
前記方法は、前記リーダー(L)を前記ナノポアを通してスレッディングし、それにより前記ポリペプチド(P)を前記ナノポアと接触させることを含み、
i)前記ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質は前記ナノポアの前記シス側に位置し、前記方法は、前記ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質が、前記ナノポアの前記シス側から前記ナノポアの前記トランス側への前記ポリヌクレオチド部分(N)の前記移動を制御することを可能にし、それにより前記ナノポアを通る前記ポリペプチド(P)の前記移動を制御することを含むか、または
ii)前記ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質は前記ナノポアの前記トランス側に位置し、前記方法は、前記ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質が、前記ナノポアの前記トランス側から前記ナノポアの前記シス側への前記ポリヌクレオチド部分(N)の前記移動を制御することを可能にし、それにより前記ナノポアを通る前記ポリペプチド(P)の前記移動を制御する、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記コンジュゲートが、L-P-N-{P-N}-Pの形態の1つ以上の構造を含み、
-nは正の整数であり、
-Lはリーダーであり、Lは任意選択でN部分であり、
-同じであっても異なっていてもよい各Pはポリペプチドであり、
-同じであっても異なっていてもよい各Nはポリヌクレオチドを含み、かつ
-mは0または1であり、
前記方法は、前記リーダー(L)を前記ナノポアを通してスレッディングし、それによりポリペプチド(P)を前記ナノポアと接触させることを含み、
i)前記ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質は前記ナノポアの前記シス側に位置し、前記方法は、前記ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質が、前記ナノポアの前記シス側から前記ナノポアの前記トランス側への各ポリヌクレオチド(N)の前記移動を連続的に制御することを可能にし、それにより前記ナノポアを通る各ポリペプチド(P)の前記移動を連続的に制御することを含むか、または
ii)前記ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質は前記ナノポアの前記トランス側に位置し、前記方法は、前記ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質が、前記ナノポアの前記トランス側から前記ナノポアの前記シス側への各ポリヌクレオチド(N)の前記移動を連続的に制御することを可能にし、それにより前記ナノポアを通る各ポリペプチド(P)の前記移動を連続的に制御することを含む、請求項18に記載の方法
【請求項20】
i)前記ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質は前記ナノポアのシス側に位置し、前記ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質は、前記ナノポアのトランス側から前記ナノポアの前記シス側への前記コンジュゲートの移動を制御するか、または
ii)前記ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質は前記ナノポアの前記トランス側に位置し、前記ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質は、前記ナノポアの前記シス側から前記ナノポアの前記トランス側への前記コンジュゲートの前記移動を制御する、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質が前記ナノポアの前記シス側に位置し、前記ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質が、前記ナノポアの前記トランス側から前記ナノポアの前記シス側への前記ポリヌクレオチドの前記移動を制御し、それにより前記ナノポアを通る前記ポリペプチドの前記移動を制御する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質が前記ナノポアの前記トランス側に位置し、前記ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質が、前記ナノポアの前記シス側から前記ナノポアの前記トランス側への前記ポリヌクレオチドの前記移動を制御し、それにより前記ナノポアを通る前記ポリペプチドの前記移動を制御する、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記コンジュゲートが、L-{P-N}-Pの形態の1つ以上の構造を含み、
-Lはリーダーであり、Lは任意選択でN部分であり、
-Pはポリペプチドであり、
-Nはポリヌクレオチドを含み、
-mは0または1であり、
前記方法は、前記リーダー(L)を前記ナノポアを通してスレッディングし、それにより前記ポリペプチド(P)を前記ナノポアと接触させることを含み、
i)前記ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質は前記ナノポアの前記シス側に位置し、前記方法は、前記ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質が、前記ナノポアの前記トランス側から前記ナノポアの前記シス側への前記ポリヌクレオチド(N)の前記移動を制御することを可能にし、それにより前記ナノポアを通る前記ポリペプチド(P)の前記移動を制御することを含むか、または
i)前記ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質は前記ナノポアの前記トランス側に位置し、前記方法は、前記ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質が、前記ナノポアの前記シス側から前記ナノポアの前記トランス側への前記ポリヌクレオチド(N)の前記移動を制御することを可能にし、それにより前記ナノポアを通る前記ポリペプチド(P)の前記移動を制御することを含む、請求項1~14または20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記コンジュゲートが、任意選択のリンカーを介して前記ポリペプチドに付着したブロッキング部分を含み、前記方法が、
i)前記ブロッキング部分が前記ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質に対して前記ナノポアの反対側にあるように、前記コンジュゲートを前記ナノポアと接触させることと、
ii)前記コンジュゲートの前記ポリヌクレオチドを前記ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質と接触させることと、
iii)前記ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質が前記ナノポアに対する前記ポリヌクレオチドの前記移動を制御することを可能にし、それにより前記ナノポアを通る前記ポリペプチドの移動を制御することと、
iv)前記ブロッキング部分が前記ナノポアに接触し、それにより前記ナノポアを通る前記コンジュゲートのさらなる移動を防ぐ場合、前記ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質が前記ポリヌクレオチドから一時的に結合を解き、これにより、適用された力の下で、前記ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質によって制御された移動方向と反対方向に前記コンジュゲートが前記ナノポアを通って移動することを可能にすることと、
v)任意選択でステップ(ii)~(iv)を繰り返して、前記ナノポアを通して前記ポリペプチドを振動させることと、を含む、請求項1~14または20~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記1つ以上の測定が、(i)前記ポリペプチドの長さ、(ii)前記ポリペプチドの同一性、(iii)前記ポリペプチドの配列、(iv)前記ポリペプチドの二次構造、および(v)前記ポリペプチドが修飾されているかどうかから選択される、前記ポリペプチドの1つ以上の特徴に特徴的である、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
狭窄領域を含むナノポアであって、前記ナノポアが、前記狭窄領域と、前記ナノポアと接触しているポリヌクレオチドハンドリングタンパク質との間の距離を増加させるように修飾されている、ナノポア。
【請求項27】
-狭窄領域を含むナノポアと、
-ポリヌクレオチドにコンジュゲート化されたポリペプチドを含むコンジュゲートと、
-ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質と、
を含むシステムであって、
i)前記ナノポアは、前記ポリヌクレオチドハンドリング酵素が前記ナノポアと接触しているときに、前記狭窄領域と前記ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質の活性部位との間の距離を増加させるように修飾されており、かつ/または
ii)前記システムは、前記ナノポアと前記ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質との間に配置され、それにより前記ナノポアと前記ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質の前記活性部位との間の前記距離を延長する、1つ以上のディスプレーサーユニットをさらに含む、システム。
【請求項28】
前記ナノポア、コンジュゲートおよび/またはポリヌクレオチドハンドリングタンパク質、ならびに任意選択で、存在する場合は前記1つ以上のディスプレーサーユニットが、請求項2~14のいずれか一項に定義される通りである、請求項27に記載のシステム。
【請求項29】
-狭窄領域を含むナノポアと、
-標的ポリヌクレオチドにコンジュゲート化するための反応性官能基を含むポリヌクレオチドと、
-ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質と、を含む、キット。
【請求項30】
(i)前記ナノポアは、前記ポリヌクレオチドハンドリング酵素が前記ナノポアと接触しているときに、前記狭窄領域と前記ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質との間の距離を増加させるように修飾され、かつ/または(ii)前記キットは、前記ナノポアと前記ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質の活性部位との間の距離を延長するための1つ以上のディスプレーサーユニットをさらに含む、請求項29に記載のキット。
【請求項31】
前記ナノポア、ポリヌクレオチドおよび/またはポリヌクレオチドハンドリングタンパク質、ならびに任意選択で、存在する場合は前記1つ以上のディスプレーサーユニットが、請求項2~14のいずれか一項に定義される通りである、請求項29または30に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、標的ポリペプチドとポリヌクレオチドとのコンジュゲートを形成し、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質を使用してナノポアに対するコンジュゲートの移動を制御することにより、標的ポリペプチドを特徴付ける方法に関する。本開示はまた、そのような方法を実行するためのキット、システム、および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生物学的分子の特徴付けは、生物医学および生物工学の適用でますます重要になっている。例えば、核酸の配列決定により、ゲノムおよびそれらがコードするタンパク質の研究が可能になり、例えば、核酸変異と疾患徴候などの観察可能な現象との間の関連付けが可能になる。核酸配列決定は、生物間の関係を研究するために進化生物学で使用することができる。メタゲノミクスは、サンプルに存在する生物、例えばマイクロバイオーム中の微生物を同定することを含み、核酸配列決定によりそのような生物の同定が可能になる。ポリヌクレオチドを特徴付ける(例えば配列決定する)技術は広く開発されてきたが、ポリペプチドを特徴付ける技術は、非常に重要な生物工学的重要性があるにもかかわらず、あまり進歩していない。例えば、タンパク質配列の知識により、構造活性相関を確立することができ、特定の受容体のリガンドを開発するための合理的な医薬品開発戦略に影響を及ぼしてきている。翻訳後修飾の同定も、多くのタンパク質の機能特性を理解するための鍵となる。例えば、真核生物では、典型的には、タンパク質種の30~50%がリン酸化されている。一部のタンパク質は、タンパク質を活性化もしくは不活性化するか、その分解を促進するか、またはタンパク質パートナーとの相互作用を調節するのに役立つ複数のリン酸化部位を有する場合がある。したがって、タンパク質および他のポリペプチドを特徴付ける方法が差し迫って必要とされている。
【0003】
ポリペプチドを特徴付ける既知の方法には、質量分析およびエドマン分解が含まれる。
【0004】
タンパク質質量分析は、イオン化された形でタンパク質全体またはその断片を特徴付けることを含む。タンパク質質量分析の既知の方法には、エレクトロスプレーイオン化(ESI)およびマトリックス支援レーザー脱離/イオン化(MALDI)が含まれる。質量分析にはいくつかの利点があるが、得られる結果は混入物質の存在によって影響を受ける可能性があり、壊れやすい分子を断片化せずにプロセシングすることは困難な場合がある。さらに、質量分析は単一分子技術ではなく、調査されたサンプルに関するバルク情報のみを提供する。質量分析は、ポリペプチドサンプルの集団内の違いを特徴付けるには不適切であり、隣接する残基を区別しようとする場合には扱いにくい。
【0005】
エドマン分解は、ポリペプチドの残基ごとの配列決定を可能にする質量分析の代替手段である。エドマン分解は、N末端アミノ酸を連続的に切断し、クロマトグラフィーまたは電気泳動を使用して個々に切断された残基を特徴付けることにより、ポリペプチドを配列決定する。しかしながら、エドマンシーケンシングは遅く、高価な試薬を使用する必要があり、質量分析のように単一分子技術ではない。
【0006】
このように、特に単一分子レベルで、ポリペプチドを特徴付けるための新しい技術の差し迫った必要性がなおある。ポリヌクレオチドなどの生体分子を特徴付けるための単一分子技術は、それらの高い忠実度および増幅バイアスの回避のために特に魅力的であることが証明されている。
【0007】
ポリペプチドなどの生体分子の単一分子特徴付けの魅力的な方法の1つは、ナノポアセンシングである。ナノポアセンシングは、分析物分子とイオン伝導チャネルとの間の個々の結合または相互作用事象の観察に依存する分析物の検出および特徴付けへのアプローチである。ナノポアセンサーは、ナノメートル寸法の単一ポアを絶縁膜内に置き、分析物分子の存在下でポアを通る電圧駆動イオン電流を測定することによって作製することができる。ナノポアの内部または近くに分析物が存在する場合、ポアを通るイオン流が変化し、チャネルにわたって測定されるイオン電流または電流の変化がもたらされるであろう。分析物の同一性は、その特有の電流シグネチャ、とりわけ電流ブロックの期間および程度、ならびにポアとの相互作用時間中の電流レベルの変動を通して明らかになる。ナノポアセンシングは、迅速かつ安価なポリペプチドの特徴付けを可能にする潜在能力を有する。
【0008】
ポリペプチドのナノポアセンシングおよび特徴付けが当技術分野で提案されている。例えば、WO2013/123379は、NTP駆動型タンパク質プロセシングアンフォルダーゼ(unfoldase)酵素を使用し、タンパク質をプロセシングしてナノポアを通って転座させることを開示している。しかしながら、ポリペプチドを特徴付ける代替のおよび/または改善された方法の必要性が残っている。
【発明の概要】
【0009】
本開示は、標的ポリペプチドを特徴付ける方法に関する。この方法は、標的ポリペプチドをポリヌクレオチドにコンジュゲート化して、ポリペプチド-ポリヌクレオチドコンジュゲートを形成することを含む。この方法は、コンジュゲートをポリヌクレオチドハンドリングタンパク質と接触させることを含む。ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質は、ナノポアに対するポリヌクレオチドの移動を制御することができる。コンジュゲートがナノポアに対して移動するときに、ポリペプチドに特徴的な1つ以上の測定が行われる。このようにして、コンジュゲートに含まれる標的ポリペプチドが特徴付けられる。
【0010】
したがって、本明細書で提供されるのは、標的ポリペプチドを特徴付ける方法であって、
-標的ポリペプチドをポリヌクレオチドにコンジュゲート化して、ポリヌクレオチド-ポリペプチドコンジュゲートを形成することと、
-コンジュゲートを、ナノポアに対するポリヌクレオチドの移動を制御することができるポリヌクレオチドハンドリングタンパク質と接触させることと、
-コンジュゲートがナノポアに対して移動するときに、ポリペプチドに特徴的な1つ以上の測定を行うことと、を含み
それによりポリペプチドを特徴付ける、方法である。
【0011】
いくつかの実施形態では、ナノポアは狭窄領域を有する。いくつかの実施形態において、ナノポアは、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質とナノポアの狭窄領域との間の距離を延長するように修飾される。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質は、ディスプレーサーユニットを使用してナノポアから分離され、それによりポリヌクレオチドハンドリングタンパク質の活性部位とナノポアとの間の距離を延長する。いくつかの実施形態では、ディスプレーサーユニットは、1つ以上のタンパク質を含む。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質は、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質の活性部位からナノポアまでの距離を延長するように修飾される。
【0012】
いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質は、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質の活性部位と接触しているコンジュゲートの部分がポリペプチドを含む場合、コンジュゲートに結合したままであることが可能である。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質は、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質がポリペプチドを含むコンジュゲートの部分と接触するときに、それがコンジュゲートから離脱するのを防ぐように修飾される。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質は、ポリヌクレオチド鎖が結合を解くことができる未修飾タンパク質の少なくとも1つのコンフォメーション状態に存在する開口部を完全にまたは部分的に閉じるように修飾される。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質はヘリカーゼである。
【0013】
いくつかの実施形態において、コンジュゲートは、複数のポリペプチドセクションおよび/または複数のポリヌクレオチドセクションを含む。
【0014】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、2~約50ペプチド単位の長さを有する。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、線形化された形態で保持される。
【0015】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、約10~約1000ヌクレオチドの長さを有する。いくつかの実施形態において、1つ以上のアダプターおよび/または1つ以上のテザーおよび/または1つ以上のアンカーが、コンジュゲート中のポリヌクレオチドに付着している。
【0016】
開示される方法のいくつかの実施形態において、
i)ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質はナノポアのシス側に位置し、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質は、ナノポアのシス側からナノポアのトランス側へのコンジュゲートの移動を制御するか、または
ii)ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質はナノポアのトランス側に位置し、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質は、ナノポアのトランス側からナノポアのシス側へのコンジュゲートの移動を制御する。
【0017】
いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質はナノポアのシス側に位置し、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質は、ナノポアのシス側からナノポアのトランス側へのポリヌクレオチドの移動を制御し、それによりナノポアを通るポリペプチドの移動を制御する。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質はナノポアのトランス側に位置し、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質は、ナノポアのトランス側からナノポアのシス側へのポリヌクレオチドの移動を制御し、それによりナノポアを通るポリペプチドの移動を制御する。
【0018】
いくつかの実施形態では、コンジュゲートは、L-{P-N}-Pの形態の1つ以上の構造を含み、
-Lはリーダーであり、Lは任意選択でN部分であり、
-Pはポリペプチドであり、
-Nはポリヌクレオチドを含み、かつ
-mは0または1であり、
方法は、リーダー(L)をナノポアを通してスレッディングし、それによりポリペプチド(P)をナノポアと接触させることを含み、
i)ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質はナノポアのシス側に位置し、方法は、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質が、ナノポアのシス側からナノポアのトランス側へのポリヌクレオチド部分(N)の移動を制御することを可能にし、それによりナノポアを通るポリペプチド(P)の移動を制御することを含むか、または
ii)ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質はナノポアのトランス側に位置し、方法は、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質が、ナノポアのトランス側からナノポアのシス側へのポリヌクレオチド部分(N)の移動を制御することを可能にし、それによりナノポアを通るポリペプチド(P)の移動を制御することを含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、コンジュゲートは、L-P-N-{P-N}-Pの形態の1つ以上の構造を含み、
-nは正の整数であり、
-Lはリーダーであり、Lは任意選択でN部分であり、
-同じであっても異なっていてもよい各Pはポリペプチドであり、
-同じであっても異なっていてもよい各Nはポリヌクレオチドを含み、かつ
-mは0または1であり、
方法は、リーダー(L)をナノポアを通してスレッディングし、それによりポリペプチド(P)をナノポアと接触させることを含み、
i)ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質はナノポアのシス側に位置し、方法は、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質が、ナノポアのシス側からナノポアのトランス側への各ポリヌクレオチド(N)の移動を連続的に制御することを可能にし、それによりナノポアを通る各ポリペプチド(P)の移動を連続的に制御することを含むか、または
ii)ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質はナノポアのトランス側に位置し、方法は、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質が、ナノポアのトランス側からナノポアのシス側への各ポリヌクレオチド(N)の移動を連続的に制御することを可能にし、それによりナノポアを通る各ポリペプチド(P)の移動を連続的に制御することを含む。
【0020】
開示される方法のいくつかの実施形態において、
i)ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質はナノポアのシス側に位置し、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質は、ナノポアのトランス側からナノポアのシス側へのコンジュゲートの移動を制御するか、または
ii)ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質はナノポアのトランス側に位置し、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質は、ナノポアのシス側からナノポアのトランス側へのコンジュゲートの移動を制御する。
【0021】
いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質はナノポアのシス側に位置し、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質は、ナノポアのトランス側からナノポアのシス側へのポリヌクレオチドの移動を制御し、それによりナノポアを通るポリペプチドの移動を制御する。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質はナノポアのトランス側に位置し、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質は、ナノポアのシス側からナノポアのトランス側へのポリヌクレオチドの移動を制御し、それによりナノポアを通るポリペプチドの移動を制御する。
【0022】
いくつかの実施形態では、コンジュゲートは、L-{P-N}-Pの形態の1つ以上の構造を含み、
-Lはリーダーであり、Lは任意選択でN部分であり、
-Pはポリペプチドであり、
-Nはポリヌクレオチドを含み、
-mは0または1であり、
方法は、リーダー(L)をナノポアを通してスレッディングし、それによりポリペプチド(P)をナノポアと接触させることを含み、
i)ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質はナノポアのシス側に位置し、方法は、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質が、ナノポアのトランス側からナノポアのシス側へのポリヌクレオチド(N)の移動を制御することを可能にし、それによりナノポアを通るポリペプチド(P)の移動を制御することを含むか、または
i)ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質はナノポアのトランス側に位置し、方法は、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質が、ナノポアのシス側からナノポアのトランス側へのポリヌクレオチド(N)の移動を制御することを可能にし、それによりナノポアを通るポリペプチド(P)の移動を制御することを含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、コンジュゲートは、任意選択のリンカーを介してポリペプチドに付着したブロッキング部分を含み、方法は、
i)ブロッキング部分がポリヌクレオチドハンドリングタンパク質に対してナノポアの反対側にあるように、コンジュゲートをナノポアと接触させることと、
ii)コンジュゲートのポリヌクレオチドをポリヌクレオチドハンドリングタンパク質と接触させることと、
iii)ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質がナノポアに対するポリヌクレオチドの移動を制御することを可能にし、それによりナノポアを通るポリペプチドの移動を制御することと、
iv)ブロッキング部分がナノポアに接触し、それによりナノポアを通るコンジュゲートのさらなる移動を防ぐ場合、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質がポリヌクレオチドから一時的に結合を解き、これにより、適用された力の下で、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質によって制御された移動方向と反対方向にコンジュゲートがナノポアを通って移動することを可能にすることと、
v)任意選択でステップ(ii)~(iv)を繰り返して、ナノポアを通してポリペプチドを振動させることと、を含む。
【0024】
いくつかの実施形態において、1つ以上の測定は、(i)ポリペプチドの長さ、(ii)ポリペプチドの同一性、(iii)ポリペプチドの配列、(iv)ポリペプチドの二次構造および(v)ポリペプチドが修飾されているかどうかから選択されるポリペプチドの1つ以上の特徴に特徴的である。
【0025】
狭窄領域を含むナノポアも本明細書で提供され、このナノポアは、狭窄領域と、ナノポアと接触しているポリヌクレオチドハンドリングタンパク質との間の距離を増加させるように修飾されている。
【0026】
また、提供されるのは、
-狭窄領域を含むナノポアと、
-ポリヌクレオチドにコンジュゲート化されたポリペプチドを含むコンジュゲートと、
-ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質と、
を含むシステムであって、
i)このナノポアは、ポリヌクレオチドハンドリング酵素がナノポアと接触しているときに、狭窄領域とポリヌクレオチドハンドリングタンパク質の活性部位との間の距離を増加させるように修飾され、かつ/または
ii)このシステムは、ナノポアとポリヌクレオチドハンドリングタンパク質との間に配置され、それによりナノポアとポリヌクレオチドハンドリングタンパク質の活性部位との間の距離を延長する、1つ以上のディスプレーサーユニットをさらに含む。
【0027】
いくつかの実施形態において、ナノポア、コンジュゲートおよび/またはポリヌクレオチドハンドリングタンパク質、ならびに任意選択で、存在する場合、1つ以上のディスプレーサーユニットは、本明細書で定義される通りである。
【0028】
また、提供されるのは、
-狭窄領域を含むナノポアと、
-標的ポリヌクレオチドにコンジュゲート化するための反応性官能基を含むポリヌクレオチドと、
-ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質と、を含む、キットである。
【0029】
いくつかの実施形態において、(i)このナノポアは、ポリヌクレオチドハンドリング酵素がナノポアと接触している場合、狭窄領域とポリヌクレオチドハンドリングタンパク質との間の距離を増加させるように修飾され、かつ/または(ii)このキットは、ナノポアとポリヌクレオチドハンドリングタンパク質の活性部位との間の距離を延長するための1つ以上のディスプレーサーユニットをさらに含む。いくつかの実施形態において、ナノポア、ポリヌクレオチドおよび/またはポリヌクレオチドハンドリングタンパク質、ならびに任意選択で、存在する場合、1つ以上のディスプレーサーユニットは、本明細書で定義される通りである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】ナノポアのシス側のポリヌクレオチドハンドリングタンパク質が、ポリペプチドにコンジュゲート化されたポリヌクレオチド(DNA2)を含むコンジュゲートのナノポアのシス側からナノポアのトランス側への移動を制御し、したがって、ポリペプチドがナノポアに対して移動するときにポリペプチドを特徴付けることを可能にする、開示される方法の実施形態の非限定的な例を示す概略図。示されているように、任意選択のリーダー(DNA1)がコンジュゲートに付着して、ナノポアを通るポリペプチドのスレッディングを促進する。RED(本明細書で考察される)は、ナノポア中の狭窄とポリヌクレオチドハンドリングタンパク質の活性部位との間の概念的な距離として示されている。(A)基質は、膜のトランス側に例えば正の電圧を印加することにより、例えば膜のシス側からナノポアに捕捉され得る。ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質は、ポリヌクレオチドセクションに沿って点線の矢印で示される方向に移動し、基質をポアに供給し、状態(B)に進む。ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質がポリヌクレオチドに沿って移動するにつれて(例えば、1ヌクレオチド燃料駆動ステップで)、コンジュゲートがナノポア内に供給され、ペプチドセクションがナノポアを通過する。
図2図1に示す一般的なセットアップの実施形態を示す概略図。この非限定的な例では、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質は、まず、コンジュゲートのポリヌクレオチド部分(DNA)のスペーサー(X)で失速する。アダプターは、コンジュゲートのポリヌクレオチド部分に付着しており、それにテザーが付着して、特徴付けのためにナノポア領域の膜にコンジュゲートを局在化させる。ステップ(A)および(B)は、図1で説明した通りである。ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質がポリヌクレオチドをプロセシングするとき、このタンパク質がアダプターを置換し得る。
図3図1に示す一般的なセットアップのさらなる実施形態を示す概略図。この非限定的な例において、コンジュゲートは、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質の制御下でナノポアを通って連続的に移動される複数のポリヌクレオチドおよびポリペプチドセクションを含む。示されているように、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質は、まず、コンジュゲートの第1のポリヌクレオチド部分(DNA1)上に装填され、コンジュゲートのその部分を、ナノポアを通して移動させる。ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質は、コンジュゲートから解離することなく、コンジュゲートの第1のポリペプチドセクションをナノポアを通して通過させる。次に、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質は、コンジュゲートの第2のポリヌクレオチド部分(DNA2)と接触し、ナノポアを通るその移動を制御する。さらなるポリペプチドおよびポリヌクレオチド部分(未提示)は、ナノポアに対して同様に連続的に移動し得る。
図4-1】図3に記載された実施形態で使用するための基質の非限定的な例を示す概略図。A:コンジュゲートの第1のポリヌクレオチド部分(DNA1)は、ナノポアでの捕捉を促進するリーダー(点線)を備えたシーケンシングYアダプターと、ナノポアの領域にコンジュゲートを局在化させるための膜へのテザリングを可能にするテザーと、スペーサー(X)によって失速したポリヌクレオチドハンドリングタンパク質とを含む。示されているように、コンジュゲートのポリヌクレオチド部分は二本鎖DNAを含む。B:(A)に示される基質の実施形態の変形。テザー(または追加のテザー)を、コンジュゲートの第2のポリヌクレオチド部分(DNA2)に配置できる。「トップ」と「ボトム」の表記は、純粋に理解を容易にするためのものである。C:4(A)に示される基質を使用する本発明の方法を示す概略図。
図4-2】図4-1の続きである。
図5】開示される方法で使用するための基質のさらなる非限定的な例を示す概略図。コンジュゲートは、複数のポリヌクレオチドおよびポリペプチドセクション(n>0)を含み得、これらは、本明細書に記載されるように、ナノポアによる特徴付けのためにポリヌクレオチドハンドリングタンパク質によって連続的にプロセシングされ得る。
図6】ナノポアのシス側のポリヌクレオチドハンドリングタンパク質が、ポリペプチドにコンジュゲート化されたポリヌクレオチド(DNA2)を含むコンジュゲートのナノポアのトランス側からナノポアのシス側への移動を制御し、したがって、ポリペプチドがナノポアに対して移動するときにポリペプチドを特徴付けることを可能にする、開示される方法の実施形態の非限定的な例を示す概略図。示されているように、任意選択のリーダーがコンジュゲートに付着して、ナノポアを通るポリペプチドの最初のスレッディングを促進する。(A)基質は、膜のトランス側に例えば正の電圧を印加することにより、例えば膜のシス側からナノポアに捕捉され得る。ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質は、ポリヌクレオチドセクションに沿って点線の矢印で示される方向に移動して、基質をポアから外に移動させ、状態(B)に進む。ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質がポリヌクレオチドに沿って移動するにつれて(例えば、1ヌクレオチド燃料駆動ステップで)、このタンパク質はコンジュゲートをナノポアから追い出す。したがって、コンジュゲートのポリペプチドセクションは、ナノポア(状態C)を通過し、したがって特徴付けられる。
図7】ナノポアと接触したときにナノポアを通るコンジュゲートの移動を防ぐブロッキング部分(黒い四角)の使用の非限定的な例を示す概略図。示されるような非限定的な例において、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質は、コンジュゲートのポリヌクレオチド部分の伸長によってコンジュゲートの移動を制御することができるポリメラーゼである。鎖の伸長は、ブロッキング部分がナノポアに到達するまで続く可能性がある。新たに合成された鎖の解離により、コンジュゲートはナノポアを通ってシスからトランスに戻ることができ、ポリヌクレオチドは、コンジュゲートのナノポアを通るトランスからシスへの移動を再循環させることができる。このようにして、コンジュゲートを、ナノポアを通して「フロス」することができる。他のポリヌクレオチドハンドリングタンパク質は、類似の方法で使用することができる。
図8】ナノポア(例えば、ナノポア内の狭窄)と、ナノポアに対するコンジュゲートの移動を制御するために使用されるポリヌクレオチドハンドリングタンパク質の活性部位との間の距離を増加させるための戦略の非限定的な例を示す概略図。A:未修飾のREDを示す未修飾のポアの概略図。B:REDを拡張するためにナノポアを修飾し得る。C:ディスプレーサーユニットを使用して、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質をナノポアから置換し、こうしてREDを拡張することができる。D:複数のポリヌクレオチドハンドリングタンパク質を使用して、ナノポアに対するコンジュゲートのナノポアからの移動を制御する活性ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質を置換することができる。これらの実施形態は、本明細書でより詳細に記載されている。
図9】わかりやすくするために、対応する構築物の模式図を使用した実施例1の代表的な電流対時間のトレース。状態A~Dは、図4Fで説明されている状態に対応する。A-ナノポアによるリーダー鎖の捕捉、B-ナノポアリーダーヘッド(RED)を横切るYアダプターの転座、C-REDを横切るポリペプチドの転座、D-ポリヌクレオチドテール(DNA2)の転座。第1のトレースは、Yアダプターのみの部分的な転座事象(状態AおよびBのみ)を表す一方、第2のトレースは、ナノポアを横切るコンジュゲート化ポリヌクレオチド-ポリペプチド全体の転座を示す。実施例1に記載されるように得られたデータ(配列番号20の配列のペプチドを含むポリヌクレオチド-ペプチドコンジュゲートに関するこのデータ)。
図10】データ収集のハイスループットを示す電流対時間のトレース。3秒間の期間に、5つの捕捉事象があり、4つは完全なポリヌクレオチド-ポリペプチドコンジュゲートに対応する(事象3はYアダプターのみの部分的な転座である)。実施例1に記載のデータ(配列番号20の配列のペプチドを含むポリヌクレオチド-ペプチドコンジュゲートに関するこのデータ)。
図11】ペプチド配列GGSGRRSGSG(配列番号21)に対応する、図4Bおよび実施例1に記載のポリヌクレオチド-ペプチドコンジュゲートの転座の電流トレース。A:図4および図9で説明されている状態に関して整列されたトレースの11の例。B:同じ11のトレースのオーバーレイ。C:主要なトレース特徴の最適な整列を促進する動的時間伸縮アルゴリズムを使用した、時間軸の正規化を示す、11のトレース例の積み上げプロット。
図12】ペプチド配列GGSGYYSGSG(配列番号22)に対応する図4Bおよび実施例1に記載のポリヌクレオチド-ペプチドコンジュゲートの転座の電流トレース。A:図4および図9で説明されている状態に関して整列しているトレースの12の例。B:同じ12のトレースのオーバーレイ。C:12のトレース例の積み上げプロット。
図13】ペプチド配列GGSGDDSGSG(配列番号20)に対応する、図4Bおよび実施例1に記載のポリヌクレオチド-ペプチドコンジュゲートの転座の電流トレース。A:図4および図9で説明されている状態に関して整列しているトレースの11の例。B:同じ11のトレースのオーバーレイ。C:11のトレース例の積み上げプロット。
図14】配列番号22のペプチドを使用して得られた構築物の概略構造。配列番号11、12および13のポリヌクレオチド鎖を含むYアダプター;ならびに配列番号14および16のポリヌクレオチド鎖を含むポリヌクレオチドテール(実施例1に記載)。
図15】実施例1と比較した実施例2の代表的な電流対時間のトレース。状態A~Dは、図4Fで説明されている状態に対応する。A-ナノポアによるリーダー鎖の捕捉、B-ナノポアリーダーヘッド(RED)を横切るYアダプターの転座、C-REDを横切るポリペプチドの転座、D-ポリヌクレオチドテール(DNA2)の転座。上部パネルのトレースは、実施例1のプロトコルに従って収集された(合成中に事前に修飾されたペプチドを使用)。下部パネルのトレースは、実施例2のプロトコルに従ってコンジュゲート化されたポリヌクレオチド-ポリペプチドの転座を示す(配列番号23の未修飾ペプチド;すなわち、実施例1の対応するトレースと同じ配列を使用)。
図16】21アミノ酸ペプチド(下部パネル;配列番号24)と比較した10アミノ酸ペプチド(上部パネル:配列番号20)のポリヌクレオチド-ペプチドコンジュゲートの転座に関する代表的な電流対時間のトレース。状態A~Dは、図4Fで説明されている状態に対応する。A-ナノポアによるリーダー鎖の捕捉、B-ナノポアリーダーヘッド(RED)を横切るYアダプターの転座、C-REDを横切るポリペプチドの転座、D-ポリヌクレオチドテールの転座。結果を実施例3に示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明は、特定の実施形態に関して、かつある特定の図面を参照して説明されるが、本発明はそれらに限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。特許請求の範囲内のいずれの参照符号も、その範囲を限定するものと解釈されるべきではない。言うまでもなく、必ずしもすべての態様または利点が本発明のいずれかの特定の実施形態に従って達成され得るとは限らないことを理解されたい。したがって、例えば、当業者であれば、本明細書で教示または示唆され得る他の態様または利点を必ずしも達成することなく、本明細書で教示される1つの利点または一群の利点を達成または最適化する様式で本発明が具体化または実行され得ることを認識するであろう。
【0032】
本発明は、編成および動作方法の両方に関して、その特徴および利点とともに、添付の図面と併せて読まれたときに以下の発明を実施するための形態を参照することにより最もよく理解され得る。本発明の態様および利点は、以下に記載の実施形態を参照して明らかになり、解明されるであろう。本明細書を通して「一実施形態」または「ある実施形態」への言及は、その実施形態に関連して記載される特定の特徴、構造、または特性が本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書を通して様々な場所での「一実施形態では」または「ある実施形態では」という語句の出現は、必ずしもすべて同じ実施形態を指すとは限らないが、そうである場合もある。同様に、本発明の例示的な実施形態の説明では、本開示を簡素化し、かつ様々な発明態様のうちの1つ以上の理解を支援するために、本発明の様々な特徴が、単一の実施形態、図、またはそれらの説明にまとめられることもあることを理解されたい。しかしながら、本開示の方法は、特許請求される発明が各々の特許請求項に明示的に列挙されているよりも多くの特徴を必要とするという意図を反映するものと解釈されるべきではない。むしろ、以下の特許請求の範囲が反映するように、発明態様は、単一の前述の開示される実施形態のすべての特徴に満たない。
【0033】
文脈が別途指示しない限り、本開示の「実施形態」が具体的に一緒に組み合わせられ得ることを理解されたい。すべての開示される実施形態の特定の組み合わせは(文脈により別途暗示されない限り)、特許請求される発明のさらに開示された実施形態である。
【0034】
加えて、本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が別途明確に指示しない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「ポリヌクレオチド」への言及は2つ以上のポリヌクレオチドを含み、「モータータンパク質」への言及は2つ以上のかかるタンパク質を含み、「ヘリカーゼ」への言及は2つ以上のヘリカーゼを含み、「モノマー」への言及は2つ以上のモノマーを指し、「ポア」への言及は2つ以上のポアを含む。
【0035】
上記または下記の本明細書で引用されるすべての出版物、特許、および特許出願は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0036】
定義
単数名詞を指すときに不定冠詞または定冠詞、例えば、「a」または「an」、「the」が使用される場合、他のことが明記されない限り、これは、その名詞の複数形を含む。「含む」という用語が本説明および特許請求の範囲で使用される場合、これは、他の要素またはステップを除外しない。さらに、本説明および特許請求の範囲における第1、第2、第3などの用語は、類似の要素を区別するために使用され、必ずしも起こった順序または経時的順序を説明するために使用されるとは限らない。そのように使用されるそれらの用語が適切な状況下で交換可能であり、かつ本明細書に記載される本発明の実施形態が本明細書に記載または例証される順序以外の順序で動作可能であることを理解されたい。以下の用語または定義は、本発明の理解を助けるためのみに提供される。本明細書で具体的に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての用語は、本発明の当業者が理解する意味と同じ意味を有する。熟練者は、定義および技術用語について、特にSambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,4th ed.,Cold Spring Harbor Press,Plainsview,New York(2012)、およびAusubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology(Supplement 114),John Wiley&Sons,New York(2016)を参照する。本明細書に提供される定義は、当業者によって理解される範囲よりも狭いと解釈されるべきではない。
【0037】
量および時間的持続時間などの測定可能な値を指す際に本明細書で使用される「約」は、指定された値から±20%または±10%、より好ましくは±5%、さらにより好ましくは±1%、なおより好ましくは±0.1%の変動を包含するよう意図されており、かかる変動は開示される方法を行うのに適切である。
【0038】
本明細書で使用される「ヌクレオチド配列」、「DNA配列」、または「核酸分子」とは、リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドのいずれかの任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態を指す。この用語は、その分子の一次構造のみを指す。したがって、この用語には、二本鎖および一本鎖DNAおよびRNAが含まれる。本明細書で使用される「核酸」という用語は、各ヌクレオチドの3’末端および5’末端がホスホジエステル結合によって連結されている、一本鎖または二本鎖の共有結合したヌクレオチド配列である。ポリヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド塩基で構成されていてもリボヌクレオチド塩基で構成され得る。核酸は、インビトロで合成的に製造され得るか、または天然源から単離され得る。核酸には、修飾されたDNAもしくはRNA、例えば、メチル化されているDNAもしくはRNA、または翻訳後修飾、例えば、7-メチルグアノシンでの5’-キャッピング、切断およびポリアデニル化などの3’-プロセシング、ならびにスプライシングに供されているRNAがさらに含まれ得る。核酸には、ヘキシトール核酸(HNA)、シクロヘキセン核酸(CeNA)、トレオース核酸(TNA)、グリセロール核酸(GNA)、ロックド核酸(LNA)、およびペプチド核酸(PNA)などの合成核酸(XNA)も含まれ得る。本明細書で「ポリヌクレオチド」とも称される核酸のサイズは、典型的には、二本鎖ポリヌクレオチドの塩基対(bp)の数で、または一本鎖ポリヌクレオチドの場合にはヌクレオチド(nt)の数で表される。1000bpまたはntは、キロベース(kb)に相当する。約40ヌクレオチド長未満のポリヌクレオチドは、典型的には「オリゴヌクレオチド」と呼ばれ、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などによるDNAの操作に使用するためのプライマーを含み得る。
【0039】
本開示との関連での「アミノ酸」という用語は、その最も広い意味で使用され、各アミノ酸に特異的な側鎖(例えば、R基)とともに、アミン(NH)およびカルボキシル(COOH)官能基を含む有機化合物を含むよう意図されている。いくつかの実施形態では、アミノ酸は、天然に存在するL α-アミノ酸または残基を指す。天然に存在するアミノ酸について一般に使用される1文字および3文字略語:A=Ala、C=Cys、D=Asp、E=Glu、F=Phe、G=Gly、H=His、I=Ile、K=Lys、L=Leu、M=Met、N=Asn、P=Pro、Q=Gln、R=Arg、S=Ser、T=Thr、V=Val、W=Trp、およびY=Tyrが本明細書で使用される(Lehninger,A.L.,(1975)Biochemistry,2d ed.,pp.71-92,Worth Publishers,New York)。「アミノ酸」という一般用語は、D-アミノ酸、レトロ-インベルソアミノ酸、ならびにアミノ酸類似体などの化学的に修飾されたアミノ酸、ノルロイシンなどのタンパク質に通常組み込まれない天然に存在するアミノ酸、およびβ-アミノ酸などのアミノ酸の特徴を示す当該技術分野で既知の特性を有する化学的に合成された化合物をさらに含む。例えば、天然PheまたはProと同じペプチド化合物の立体構造上の制限を可能にするフェニルアラニンまたはプロリンの類似体または模倣物は、アミノ酸の定義内に含まれる。かかる類似体および模倣物は、本明細書でそれぞれのアミノ酸の「機能的等価物」と称される。アミノ酸の他の例は、参照により本明細書に組み込まれる、Roberts and Vellaccio,The Peptides:Analysis,Synthesis,Biology,Gross and Meiehofer,eds.,Vol.5 p.341,Academic Press,Inc.,N.Y.1983により挙げられる。
【0040】
「ポリペプチド」および「ペプチド」という用語は、アミノ酸残基のポリマー、ならびにその変異形および合成類似体を指すために、本明細書で互換的に使用される。したがって、これらの用語は、1つ以上のアミノ酸残基が対応する天然に存在するアミノ酸の化学類似体などの天然に存在しない合成アミノ酸であるアミノ酸ポリマー、ならびに天然に存在するアミノ酸ポリマーに適用される。ポリペプチドは、グリコシル化、タンパク質分解的切断、脂質化、シグナルペプチド切断、プロペプチド切断、リン酸化などを含み得るが、これらに限定されない、成熟または翻訳後修飾プロセスも受け得る。ペプチドは、組換え技法を使用して、例えば、組換えまたは合成ポリヌクレオチドの発現により作製され得る。組換えにより産生されたペプチドは、典型的には、培養培地を実質的に含まず、例えば、培養培地は、タンパク質調製物の体積の約20%未満、より好ましくは約10%未満、最も好ましくは約5%未満に相当する。
【0041】
「タンパク質」という用語は、二次または三次構造を有する折り畳まれたポリペプチドを説明するために使用される。タンパク質は、単一のポリペプチドから構成され得るか、または集合して多量体を形成する複数のポリペプチドを含み得る。多量体は、ホモオリゴマーであってもヘテロオリゴマーであってもよい。タンパク質は、天然に存在するタンパク質または野生型タンパク質であってもよく、または修飾されたタンパク質もしくは天然に存在しないタンパク質であってもよい。タンパク質は、例えば、1つ以上のアミノ酸の付加、置換、または欠失が野生型タンパク質とは異なり得る。
【0042】
タンパク質の「変異形」は、問題となっている未修飾または野生型タンパク質と比較してアミノ酸置換、欠失、および/または挿入を有し、かつそれらが由来する未修飾タンパク質と類似の生物学的および機能的活性を有する、ペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、タンパク質、および酵素を包含する。本明細書で使用される「アミノ酸同一性」という用語は、配列が比較ウィンドウにわたってアミノ酸ごとに同一である程度を指す。したがって、「配列同一性のパーセンテージ」は、比較ウィンドウにわたって2つの最適にアラインされた配列を比較し、同一のアミノ酸残基(例えば、Ala、Pro、Ser、Thr、Gly、Val、Leu、Ile、Phe、Tyr、Trp、Lys、Arg、His、Asp、Glu、Asn、Gln、Cys、およびMet)が両方の配列に生じる位置の数を決定して一致した位置の数を算出し、一致した位置の数を比較ウィンドウ内の位置の総数(すなわち、ウィンドウサイズ)で割り、その結果に100を掛けて配列同一性のパーセンテージを算出することによって計算される。
【0043】
本発明のすべての態様および実施形態について、「変異形」は、対応する野生型タンパク質のアミノ酸配列に対して少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、または99%完全な配列同一性を有する。配列同一性は、完全長ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの断片または部分に対するものである場合もある。したがって、配列は、完全長参照配列と全体的に50%のみの配列同一性を有し得るが、特定の領域、ドメイン、またはサブユニットの配列は、参照配列と80%、90%、または99%もの配列同一性を共有し得る。
【0044】
「野生型」という用語は、天然に存在する源から単離された遺伝子または遺伝子産物を指す。野生型遺伝子は、ある集団で最も頻繁に観察され、したがって、その遺伝子の任意に設計された「正常」または「野生型」形態である。対照的に、「修飾された」、「変異体」、または「変異形」という用語は、野生型遺伝子または遺伝子産物と比較して、配列の修飾(例えば、置換、切断、もしくは挿入)、翻訳後修飾、および/または機能的特性(例えば、改変された特徴)を呈する遺伝子または遺伝子産物を指す。天然に存在する変異体を単離することができることに留意されたく、これらは、野生型遺伝子または遺伝子産物と比較して改変された特徴を有するという事実によって特定される。天然に存在するアミノ酸を導入または置換するための方法が当該技術分野で周知である。例えば、メチオニン(M)は、変異体モノマーをコードするポリヌクレオチド中の関連する位置でメチオニンのコドン(ATG)をアルギニンのコドン(CGT)に置き換えることにより、アルギニン(R)で置換され得る。天然に存在しないアミノ酸を導入または置換するための方法も当該技術分野で周知である。例えば、天然に存在しないアミノ酸は、変異体モノマーを発現させるために使用されるIVTT系中に合成アミノアシル-tRNAを含めることによって導入され得る。あるいは、それらは、特定のアミノ酸の合成(すなわち、天然に存在しない)類似体の存在下で、それらの特定のアミノ酸に対して栄養要求性であるE.coli中で変異体モノマーを発現させることによって導入され得る。それらは、変異体モノマーが部分的ペプチド合成を使用して産生される場合、ネイキッドライゲーション(naked ligation)によって生成される場合もある。保存的置換は、アミノ酸を、類似の化学構造、類似の化学的特性、または類似の側鎖体積の他のアミノ酸で置き換える。導入されるアミノ酸は、それらが置き換えるアミノ酸と類似の極性、親水性、疎水性、塩基性、酸性、中性、または荷電性を有し得る。あるいは、保存的置換は、既存の芳香族または脂肪族アミノ酸の代わりに芳香族または脂肪族である別のアミノ酸を導入し得る。保存的アミノ酸変化は、当該技術分野で周知であり、以下の表1に定義される20個の主なアミノ酸の特性に従って選択され得る。アミノ酸が類似の極性を有する場合、これはまた表2におけるアミノ酸側鎖の疎水性スケールを参照して決定し得る。
【表1】

【表2】
【0045】
変異体または修飾タンパク質、モノマー、またはペプチドは、任意の方法および任意の部位で化学的に修飾することもできる。変異体または修飾モノマーまたはペプチドは、好ましくは、1つ以上のシステインへの分子の付着(システイン結合)、1つ以上のリジンへの分子の付着、1つ以上の非天然アミノ酸への分子の付着、エピトープの酵素修飾、または末端の修飾によって化学的に修飾される。かかる修飾を実行するための好適な方法が当該技術分野で周知である。修飾タンパク質、モノマー、またはペプチドの変異体は、任意の分子の付着によって化学的に修飾され得る。例えば、修飾タンパク質、モノマー、またはペプチドの変異体は、色素またはフルオロフォアの付着によって化学的に修飾され得る。
【0046】
開示される方法
本開示は、ポリヌクレオチドとコンジュゲートを形成し、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質を使用してナノポアに対するコンジュゲートの移動を制御することにより、ポリペプチドを特徴付ける方法に関する。
【0047】
ポリペプチドハンドリング酵素を使用してナノポアに対するポリペプチドの移動を制御しようとする方法とは対照的に、本開示の方法は、ポリヌクレオチドハンドリング酵素を使用してナノポアに対してポリペプチドの移動を制御することを可能にする。
【0048】
本明細書に開示される方法は、ポリヌクレオチドだけを含むのではないコンジュゲートの移動を制御するポリヌクレオチドハンドリングタンパク質の能力を利用する。特に、ポリペプチドを含むコンジュゲートは、本明細書に記載されるように、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質を使用して制御された方式で移動され得る。開示される方法での使用に適したポリヌクレオチドハンドリングタンパク質は、本明細書でより詳細に記載されている。
【0049】
したがって、本明細書で提供されるのは、標的ポリペプチドを特徴付ける方法であって、
-標的ポリペプチドをポリヌクレオチドにコンジュゲート化して、ポリヌクレオチド-ポリペプチドコンジュゲートを形成することと、
-コンジュゲートを、ナノポアに対するポリヌクレオチドの移動を制御することができるポリヌクレオチドハンドリングタンパク質と接触させることと、
-コンジュゲートがナノポアに対して移動するときに、ポリペプチドに特徴的な1つ以上の測定を行うことと、を含み、
それによりポリペプチドを特徴付ける、方法である。
【0050】
任意の適切なポリペプチドは、本明細書に開示される方法を使用して特徴付けることができる。いくつかの実施形態において、標的ポリペプチドは、タンパク質または天然に存在するポリペプチドである。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、合成ポリペプチドである。開示される方法に従って特徴付けることができるポリペプチドは、本明細書でより詳細に記載されている。
【0051】
本明細書に開示される方法で使用するためのコンジュゲートを形成する際に、任意の適切なポリヌクレオチドを使用することができる。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、特徴付けられるべき標的ポリペプチドの部分と少なくとも同じ長さを有する。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、特徴付けられるべき標的ポリペプチドの部分よりも長い長さを有する。これは、以下でより詳しく考察される。開示される方法での使用に適したポリヌクレオチドは、本明細書でより詳細に開示されている。
【0052】
開示される方法において、標的ポリペプチドは、任意の適切な手段を使用してポリヌクレオチドにコンジュゲート化され得る。いくつかの例示的な手段が本明細書でより詳細に記載されている。
【0053】
開示される方法で形成されたコンジュゲートは、ナノポアに対するポリヌクレオチドの移動を制御することができるポリヌクレオチドハンドリングタンパク質と接触させられる。例示的なポリヌクレオチドハンドリングタンパク質は、本明細書でより詳細に記載されている。
【0054】
ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質は、ナノポアに対するポリヌクレオチドの移動を制御する。したがって、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質は、ナノポアに対するコンジュゲートの移動を制御する。開示される方法では、任意の適切なナノポアを使用することができる。開示される方法での使用に適したナノポアは、本明細書でより詳細に記載されている。
【0055】
開示される方法は、コンジュゲートがナノポアに対して移動するときに、ポリペプチドに特徴的な1つ以上の測定を行うことを含む。1つ以上の測定は、任意の適切な測定であり得る。典型的には、1つ以上の測定は電気的測定、例えば電流測定、および/または1つ以上の光学的測定である。適切な測定を記録するための装置、およびそのような測定が提供できる情報は、本明細書でより詳細に記載されている。
【0056】
標的ポリペプチドの特徴付け
本明細書に開示されるように、ポリヌクレオチドは、ナノポアに対するポリペプチドの移動を制御するために使用され得る。ポリヌクレオチドの移動は、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質によって制御される。ポリヌクレオチドはコンジュゲート中のポリペプチドにコンジュゲート化されているため、ポリヌクレオチドの移動はポリペプチドの移動を駆動する。
【0057】
ポリヌクレオチドの移動、したがってポリペプチドの移動を制御するためのポリヌクレオチドハンドリングタンパク質の使用は、当技術分野で知られているポリペプチドを特徴付けるための方法と比較した利点と関連し得る。例として、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質は、ポリペプチドハンドリング酵素と比較してより高い代謝回転率でポリヌクレオチドのハンドリングをプロセシングすることができる。これは、以前に知られている方法と比較して、開示される方法に従って特徴付けられたポリペプチドについて、特徴付けデータがより迅速に得られ得ることを意味する。
【0058】
これらおよび他の利点は、本開示を通して明らかになるであろう。
【0059】
本開示の方法を開発する際に、本発明者らは、より短いバレルまたはチャネルを有するナノポアと比較して、より長いバレルまたはチャネルを有するナノポアが使用される場合、特徴付けられ得るポリペプチドの長さが典型的には改善されることを見出している。理論に拘束されることなく、本発明者らは、これは、開示される方法のようにポリヌクレオチドハンドリングタンパク質と組み合わせて使用される場合、より長いバレルまたはチャネルを有するポアが、より短いバレルまたはチャネルを有するポアよりも、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質の活性部位とナノポア中の狭窄との間のより長い距離をもたらすためである可能性があると考える。この距離は、RED(リーダー-酵素距離)と呼ばれ得る。当業者は、(以下で考察されるように)ナノポアの形態が限定的ではないことを理解するであろう。ナノポアは、タンパク質ナノポアまたは固体ナノポアであり得る。ナノポアがナノポアのチャネル内に狭窄を有しない場合、本明細書で使用される狭窄は、例えば、一実施形態では、ナノポアの開口部で同定され得る。
【0060】
理論に拘束されることなく、ナノポアによって特徴付けられ得るコンジュゲート内のポリペプチドの部分の長さは、REDに対応するか、またはREDによって決定され得ると推測される。言い換えれば、ナノポアは読み取りヘッドを含み得、1つ以上の測定は、ポリペプチドの「読み取り部分」に特徴的であり、読み取り部分の長さは、読み取りヘッドとポリヌクレオチドハンドリングタンパク質の活性部位との間の距離に対応するか、またはそれにより決定される。
【0061】
これを考慮して、開示される方法のいくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、特徴付けられるべき標的ポリペプチドの部分と少なくとも同じ長さを有する。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、特徴付けられるべき標的ポリペプチドの部分よりも長い長さを有する。これにより、特徴付けられ得るポリペプチド部分の長さが、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質が移動を制御するためのポリヌクレオチドの量によって制限されないことが保証される。
【0062】
この方法は、開示される方法の1つの非限定的な例を示す図1を参照することによって理解され得る。コンジュゲートは、ポリヌクレオチドおよびポリペプチドを含み得、ポリペプチドがナノポアをスレッディングするように、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質と接触させられる。例示される実施形態では、さらなるポリヌクレオチドを使用して、ナノポアを通るポリペプチドのスレッディングを促進する。そのような使用は開示される方法の範囲内であるが、これは必須ではない。
【0063】
ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質は、ポリペプチドにコンジュゲート化されたポリヌクレオチドをプロセシングする。ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質がポリヌクレオチドをプロセシングするとき、コンジュゲートはナノポアを通過し、したがってポリペプチドはナノポアを通過する。ポリペプチドがナノポアを通過するとき、ポリペプチドは特徴付けられる。
【0064】
図1に示す例では、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質は、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質の「視点」から、コンジュゲートをポアの「中」に移動させる。例えば、示されているように、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質は、ナノポアのシス側に位置し、コンジュゲートをポア内に、すなわちシス側からトランス側に移動させる。反対の設定も使用され得る。
【0065】
言い換えれば、いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質はナノポアのシス側に位置し、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質は、ナノポアのシス側からナノポアのトランス側へのコンジュゲートの移動を制御する。したがって、いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質はナノポアのシス側に位置し、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質は、ナノポアのシス側からナノポアのトランス側へのポリヌクレオチドの移動を制御し、それによりナノポアを通るポリペプチドの移動を制御する。
【0066】
他の実施形態において、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質はナノポアのトランス側に位置し、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質は、ナノポアのトランス側からナノポアのシス側へのコンジュゲートの移動を制御する。したがって、いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質はナノポアのトランス側に位置し、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質は、ナノポアのトランス側からナノポアのシス側へのポリヌクレオチドの移動を制御し、それによりナノポアを通るポリペプチドの移動を制御する。
【0067】
本明細書で説明されるように、コンジュゲートはリーダーを含み得る。本明細書で説明されるように、任意の適切なリーダーを使用することができる。場合により、リーダーはポリヌクレオチドであり得る。リーダーは、コンジュゲート中のポリヌクレオチドと同じであっても、異なっていてもよい。上で説明したように、リーダーは、ナノポアを通るコンジュゲートのスレッディングを促進し得る。
【0068】
言い換えれば、いくつかの実施形態では、コンジュゲートは、L-{P-N}-Pの形態の1つ以上の構造を含み、
-Lはリーダーであり、Lは任意選択でN部分であり、
-Pはポリペプチドであり、
-Nはポリヌクレオチドを含み、かつ
-mは0または1であり、
方法は、リーダー(L)をナノポアを通してスレッディングし、それによりポリペプチド(P)をナノポアと接触させることを含み得る。
【0069】
いくつかのそのような実施形態において、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質はナノポアのシス側に位置し、方法は、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質が、ナノポアのシス側からナノポアのトランス側へのポリヌクレオチド部分(N)の移動を制御することを可能にし、それによりナノポアを通るポリペプチド(P)の移動を制御することを含む。他の実施形態において、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質はナノポアのトランス側に位置し、方法は、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質が、ナノポアのトランス側からナノポアのシス側へのポリヌクレオチド部分(N)の移動を制御することを可能にし、それによりナノポアを通るポリペプチド(P)の移動を制御することを含む。
【0070】
本明細書でより詳細に説明されるように、コンジュゲートは、1つ以上のアダプターおよび/またはアンカーを含み得る。このような設定の非限定的な例を図2に示す。
【0071】
本明細書でより詳細に説明されるように、いくつかの実施形態では、コンジュゲートは、複数のポリヌクレオチドおよびポリペプチドを含む。そのような実施形態では、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質は、ナノポアに対するポリヌクレオチドの移動を連続的に制御し、したがって、ナノポアに対してポリペプチドを連続的に移動させる。このようにして、コンジュゲート内の各ポリペプチドは、開示される方法において連続的に特徴付けられ得る。
【0072】
例えば、コンジュゲートは、L-P-N-{P-N}-Pの形態の1つ以上の構造を含み得、
-nは正の整数であり、
-Lはリーダーであり、Lは任意選択でN部分であり、
-同じであっても異なっていてもよい各Pはポリペプチドであり、
-同じであっても異なっていてもよい各Nはポリヌクレオチドを含み、かつ
-mは0または1であり、
方法は、リーダー(L)をナノポアを通してスレッディングし、それによりポリペプチド(P)をナノポアと接触させることを含み得る。
【0073】
典型的には、そのような実施形態では、nは1~約1000、例えば2~約100、例えば約3~約10、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9または10である。
【0074】
いくつかのそのような実施形態において、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質はナノポアのシス側に位置し、方法は、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質が、ナノポアのシス側からナノポアのトランス側への各ポリヌクレオチド(N)の移動を連続的に制御することを可能にし、それにより各ポリペプチド(P)がナノポアを連続的に通過する移動を制御することを含む。他のそのような実施形態において、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質はナノポアのトランス側に位置し、方法は、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質が、ナノポアのトランス側からナノポアのシス側への各ポリヌクレオチド(N)の移動を連続的に制御することを可能にし、それにより各ポリペプチド(P)がナノポアを連続的に通過する移動を制御することを含む。
【0075】
当業者は、コンジュゲートが1つより多いポリペプチドを含む場合、(本明細書でより詳細に記載されるように)ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質が、ポリペプチドと接触するときに解離せずにコンジュゲートに結合したままであり得ることが有利であり得ることを理解するであろう。例えば、図3に示すように、これにより、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質は、ナノポアに対するコンジュゲートの移動を制御するために、ポリヌクレオチドの連続した部分上を移動するため、コンジュゲート中のポリペプチド部分に接触するにつれて、それらを通過することが可能になる。
【0076】
図3に示される実施形態によるより複雑な設定の非限定的な例が図4に示され、この図では、ポリペプチドの特徴付けを促進するために様々なアダプターおよびテザーが使用される。図5に概略的に示されるように、当業者は複数のそのようなセクションを組み込むことができることを理解するであろうが、ただ1つのポリペプチドセクションが図4に示されている。
【0077】
開示される方法の別の非限定的な実施形態が図6に概略的に示されている。コンジュゲートは、ポリヌクレオチドおよびポリペプチドを含み得、ポリペプチドがナノポアをスレッディングするように、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質と接触させられる。図示の実施形態では、リーダー(任意選択でさらなるポリヌクレオチドである)を使用して、ナノポアを通るポリペプチドのスレッディングを促進する。そのような使用は開示される方法の範囲内であるが、これは必須ではない。
【0078】
ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質は、ポリペプチドにコンジュゲート化されたポリヌクレオチドをプロセシングする。ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質がポリヌクレオチドをプロセシングするとき、コンジュゲートはナノポアを通過し、したがってポリペプチドはナノポアを通過する。ポリペプチドがナノポアを通過するとき、ポリペプチドは特徴付けられる。
【0079】
図6に示す例では、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質は、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質の「視点」から、コンジュゲートをポアの「外」に移動させる。例えば、示されているように、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質はナノポアのシス側に位置し、コンジュゲートをポア内に、すなわちトランス側からシス側に移動させる。反対の設定も使用され得る。
【0080】
言い換えれば、いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質はナノポアのシス側に位置し、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質は、ナノポアのトランス側からナノポアのシス側へのコンジュゲートの移動を制御する。したがって、いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質はナノポアのシス側に位置し、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質は、ナノポアのトランス側からナノポアのシス側へのポリヌクレオチドの移動を制御し、それによりナノポアを通るポリペプチドの移動を制御する。
【0081】
他の実施形態において、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質はナノポアのトランス側に位置し、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質は、ナノポアのシス側からナノポアのトランス側へのコンジュゲートの移動を制御する。したがって、いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質はナノポアのトランス側に位置し、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質は、ナノポアのシス側からナノポアのトランス側へのポリヌクレオチドの移動を制御し、それによりナノポアを通るポリペプチドの移動を制御する。
【0082】
上記と同様の表記法を使用して、いくつかの実施形態では、コンジュゲートは、L-{P-N}-Pの形態の1つ以上の構造を含み、
-Lはリーダーであり、Lは任意選択でN部分であり、
-Pはポリペプチドであり、
-Nはポリヌクレオチドを含み、
-mは0または1であり、
方法は、リーダー(L)をナノポアを通してスレッディングし、それによりポリペプチド(P)をナノポアと接触させることを含み得る。
【0083】
いくつかのそのような実施形態において、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質はナノポアのシス側に位置し、方法は、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質が、ナノポアのトランス側からナノポアのシス側へのポリヌクレオチド(N)の移動を制御することを可能にし、それによりナノポアを通るポリペプチド(P)の移動を制御することを含む。他のそのような実施形態において、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質はナノポアのトランス側に位置し、方法は、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質が、ナノポアのシス側からナノポアのトランス側へのポリヌクレオチド(N)の移動を制御することを可能にし、それによりナノポアを通るポリペプチド(P)の移動を制御することを含む。
【0084】
いくつかの実施形態、特に上で考察されるようにポリヌクレオチドハンドリングタンパク質がナノポアの「外」へのコンジュゲートの移動を制御する実施形態では、コンジュゲートは、任意選択のリンカーを介してポリペプチドに付着したブロッキング部分を含み得る。ブロッキング部分は、典型的には、ナノポアを通過するには大きすぎるため、ナノポアに対するコンジュゲートの移動がブロッキング部分をナノポアと接触させると、ナノポアを通るコンジュゲートのさらなる移動が妨げられる。そのようなとき、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質は、コンジュゲートから一時的に結合を解くことができる可能性がある。コンジュゲートが適用された力(例えば、電位または化学ポテンシャル)の下でナノポアに対して移動する、開示される方法の実施形態では、コンジュゲートは、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質によって制御される移動とは反対の方向にポアを通って「戻る」ことができる。コンジュゲートがポアを通って戻る移動により、コンジュゲートのポリペプチド部分を再び特徴付けることができる。
【0085】
このプロセスは、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質をコンジュゲートに連続的に結合および再結合させることにより、複数回繰り返すことができる。このようにして、コンジュゲートはポアを通して振動する可能性がある(すなわち、ナノポアを通して「フロス」される可能性がある)。この「フロッシング」により、コンジュゲートのポリペプチド部分をナノポアによって繰り返し特徴付けることができる。いくつかの実施形態では、これにより、特徴付け情報の精度を高めることができる。
【0086】
そのような実施形態では、任意の適切なブロッキング部分を使用することができる。例えば、コンジュゲートはビオチンで修飾することができ、ブロッキング部分は例えばストレプトアビジン、アビジンまたはニュートラアビジンであり得る。ブロッキング部分は、デンドリマーなどの大きな化学基であり得る。ブロッキング部分は、ナノ粒子またはビーズであり得る。他の適切なブロッキング部分は、当業者には明らかであろう。
【0087】
このような方法の非限定的な例を図7に示す。
【0088】
したがって、いくつかの実施形態では、本方法は、
i)ブロッキング部分がポリヌクレオチドハンドリングタンパク質に対してナノポアの反対側にあるように、コンジュゲートをナノポアと接触させることと、
ii)コンジュゲートのポリヌクレオチドをポリヌクレオチドハンドリングタンパク質と接触させることと、
iii)ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質がナノポアに対するポリヌクレオチドの移動を制御することを可能にし、それによりナノポアを通るポリペプチドの移動を制御することと、
iv)ブロッキング部分がナノポアに接触し、それによりナノポアを通るコンジュゲートのさらなる移動を防ぐ場合、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質がポリヌクレオチドから一時的に結合を解き、これにより、適用された力の下で、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質によって制御された移動方向と反対方向にコンジュゲートがナノポアを通って移動することを可能にすることと、
v)任意選択でステップ(ii)~(iv)を繰り返して、ナノポアを通してポリペプチドを振動させることと、を含む。
【0089】
ディスプレーサーユニット
上記のように、理論に拘束されることなく、本発明者らは、より短いバレルまたはチャネルを有するナノポアと比較して、より長いバレルまたはチャネルを有するナノポアが使用される場合、特徴付けられ得るポリペプチドの長さが典型的には改善されることを見出した。上で説明したように、これは、図8A(A)に概略的に示されているように、「RED」距離と相関しているか、それにより決定されると考えられる。
【0090】
したがって、いくつかの実施形態において、ナノポアは、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質とナノポアの狭窄領域との間の距離を延長するように修飾される。ナノポアは、典型的には、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質がナノポアに対するコンジュゲートの移動を制御するために使用されるときに決定されるように、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質とナノポアの狭窄領域との間の距離を延長するように修飾される。いくつかの実施形態において、ナノポアに対するコンジュゲートの移動を制御するために使用される場合、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質は、ナノポアと接触する、例えば、ナノポアのシスまたはトランス開口と接触する、「着座位置」にある。これは、本明細書でより詳細に説明されており、図8A(B)に概略的に示されている。
【0091】
いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質の活性部位とナノポアとの間の距離は、ディスプレーサーユニットを使用することによって延長され得る。ディスプレーサーユニットの使用法を図8A(C)に模式的に示す。したがって、いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、ディスプレーサーユニットを提供することを含む。いくつかの実施形態において、ディスプレーサーユニットは、ポリペプチドハンドリングタンパク質をナノポアから分離し、それによりポリヌクレオチドハンドリングタンパク質とナノポアとの間の距離を延長するためのものである。
【0092】
そのような実施形態では、任意の適切なディスプレーサーユニットを使用することができる。例えば、ディスプレーサーユニットをタンパク質として提供することができる。
【0093】
任意の適切なタンパク質をディスプレーサーユニットとして使用することができる。例示的なタンパク質には、例えば多量体などのリング状のコンフォメーションを採用し、したがってナノポアの入口に容易に配置することができるタンパク質が含まれる。本明細書に記載のナノポア、ヘリカーゼ(例えば、T7ヘリカーゼ)およびその変異体などを含む、多くの適切なリング状タンパク質が当技術分野で知られている。ディスプレーサーが、それ自体の活性を有する必要はない。いくつかの実施形態において、ディスプレーサーユニットは、コンジュゲート中のポリヌクレオチドまたはペプチドのいずれかのいかなる有意な識別も提供しない。
【0094】
いくつかの実施形態において、ディスプレーサーユニットは、1つ以上のポリヌクレオチドハンドリングタンパク質またはその不活性変異体を含み得る。これは、図8Bに概略的に示されている。示されるように、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質(E)は、ナノポアに対するコンジュゲートの移動を制御するために使用される。ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質E…Eは、最初はコンジュゲートのポリペプチド部分と接触しているため、ナノポアに対するコンジュゲートの移動を制御しない。しかしながら、それらはポリヌクレオチドハンドリングタンパク質Eをナノポアから置換し、REDを増加させる。
【0095】
そのような実施形態では、ディスプレーサーユニットとして使用されるポリヌクレオチドハンドリングタンパク質は、コンジュゲートの移動を制御するために使用されるポリヌクレオチドハンドリングタンパク質と同じであっても異なっていてもよい。いくつかの実施形態において、ディスプレーサーユニットとして使用されるポリヌクレオチドハンドリングタンパク質は、コンジュゲートの移動を制御するために使用される同じポリヌクレオチドハンドリングタンパク質の不活性変異体から形成される。
【0096】
1つ以上のディスプレーサーユニット、例えば、本明細書に記載の1つ以上のディスプレーサーユニットは、ナノポアに付着(例えば、共有結合または非共有結合)することができる。あるいは、1つ以上のディスプレーサーユニットを、例えば、ポリヌクレオチドを使用してナノポアに対するそれらの位置を制御することによって、ナノポアに会合させることができる。
【0097】
他の実施形態において、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質は、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質の活性部位からナノポアまでの距離を延長するように修飾される。ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質は、典型的には、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質がナノポアに対するコンジュゲートの移動を制御するために使用されるときに決定されるように、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質の活性部位とナノポアとの間の距離を延長するように修飾される。これは、本明細書により詳細に記載される。
【0098】
ポリペプチド
上で説明したように、開示される方法は、コンジュゲートがナノポアに対して移動するときに、コンジュゲート内の標的ポリペプチドを特徴付けることを含む。
【0099】
任意の適切なポリペプチドは、開示される方法で特徴付けられ得る。
【0100】
いくつかの実施形態において、標的ポリペプチドは、未修飾タンパク質もしくはその部分、または天然に存在するポリペプチドもしくはその部分である。
【0101】
いくつかの実施形態において、標的ポリペプチドは、細胞から分泌される。あるいは、標的ポリペプチドは、開示される方法による特徴付けのために細胞から抽出されなければならないように、細胞内で産生され得る。ポリペプチドは、プラスミド、例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,4th ed.,Cold Spring Harbor Press,Plainsview,New York(2012)、およびAusubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology(Supplement 114),John Wiley&Sons,New York(2016)に記載されている方法に従ってタンパク質のクローニングに使用されるプラスミドの細胞発現の産物を含み得る。
【0102】
ポリペプチドは、任意の生物または微生物から得られ得るか、またはそれらから抽出され得る。ポリペプチドは、ヒトまたは動物から、例えば、尿、リンパ液、唾液、粘液、精液、もしくは羊水から、または全血、血漿、もしくは血清から得られ得る。ポリペプチドは、植物、例えば、穀草類、マメ科植物、果物、または野菜から得られ得る。
【0103】
標的ポリペプチドは、1つ以上のポリペプチドおよび1つ以上の不純物の不純な混合物として提供され得る。不純物は、開示される方法における特徴付けのための「標的ポリペプチド」とは異なる標的ポリペプチドの一部切除(truncated)型を含み得る。例えば、標的ポリペプチドは完全長タンパク質であり得、不純物はタンパク質の画分を含み得る。不純物はまた、標的タンパク質以外のタンパク質も含み得、これらは例えば、細胞培養物から同時精製され得るか、またはサンプルから得られ得る。
【0104】
ポリペプチドは、任意のアミノ酸、アミノ酸類似体、および修飾アミノ酸(すなわち、アミノ酸誘導体)の任意の組み合わせを含み得る。ポリペプチド中のアミノ酸(および誘導体、類似体など)は、それらの物理的サイズと電荷によって区別することができる。
【0105】
アミノ酸/誘導体/類似体は、天然に存在するものであっても人工的なものであってもよい。
【0106】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、任意の天然に存在するアミノ酸を含み得る。20のアミノ酸が普遍的な遺伝暗号によってコードされている。これらは、アラニン(A)、アルギニン(R)、アスパラギン(N)、アスパラギン酸(D)、システイン(C)、グルタミン酸/グルタメート(E)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、ヒスチジン(H)、イソロイシン(I)、ロイシン(L)、リジン(K)、メチオニン(M)、フェニルアラニン(F)、プロリン(P)、セリン(S)、スレオニン(T)、トリプトファン(W)、チロシン(Y)、およびバリン(V)である。他の天然に存在するアミノ酸には、セレノシステインとピロリシンが含まれる。
【0107】
いくつかの実施形態では、ポリペプチドは修飾されている。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、開示される方法を使用する検出のために修飾される。いくつかの実施形態において、開示される方法は、標的ポリペプチドにおける修飾を特徴付けるためのものである。
【0108】
いくつかの実施形態では、ポリペプチド中のアミノ酸/誘導体/類似体の1つ以上が修飾されている。いくつかの実施形態において、ポリペプチド中のアミノ酸/誘導体/類似体の1つ以上が、翻訳後修飾されている。したがって、本明細書に開示される方法は、ポリペプチドにおける翻訳後修飾の存在、非存在、位置の数を検出するために使用することができる。開示される方法は、ポリペプチドが翻訳後修飾されている程度を特徴付けるために使用することができる。
【0109】
任意の1つ以上の翻訳後修飾がポリペプチドに存在し得る。典型的な翻訳後修飾には、疎水性基による修飾、補因子による修飾、化学基の付加、糖化(糖の非酵素的結合)、ビオチン化およびペグ化が含まれる。翻訳後修飾は、生物工学または生物医学の目的で、実験室で行われる化学修飾であるなど、非自然的である場合もある。これにより、天然の対応物とは対照的に、実験室で製造されたペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質のレベルを監視することが可能となり得る。
【0110】
疎水性基による翻訳後修飾の例には、ミリストイル化、ミリスチン酸、C14飽和酸の付着;パルミトイル化、パルミチン酸、C16飽和酸の付着;イソプレニル化またはプレニル化、イソプレノイド基の付着;ファルネシル化、ファルネソール基の付着;ゲラニルゲラニル化、ゲラニルゲラニオール基の付着;およびグリピエーション、およびアミド結合を介したグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカー形成が含まれる。
【0111】
補因子による翻訳後修飾の例には、リポイル化、リポエート(C)官能基の付着;フラビン化、フラビン部分(例えばフラビンモノヌクレオチド(FMN)またはフラビンアデニンジヌクレオチド(FAD))の付着;例えばシステインとのチオエーテル結合を介したヘムCの付着;ホスホパンテテイニル化、4’-ホスホパンテテイニル基の付着;およびレチニリデンシッフ塩基の形成が含まれる。
【0112】
化学基の付加による翻訳後修飾の例には、アシル化、例えば、O-アシル化(エステル)、N-アシル化(アミド)またはS-アシル化(チオエステル);アセチル化、例えばN末端またはリジンへのアセチル基の付着;ホルミル化;アルキル化、メチルまたはエチルなどのアルキル基の付加;メチル化、例えばリジンまたはアルギニンへのメチル基の付加;アミド化;酪酸化;ガンマカルボキシル化;グリコシル化、例えばアルギニン、アスパラギン、システイン、ヒドロキシリジン、セリン、スレオニン、チロシンまたはトリプトファンへのグリコシル基の酵素的付着;ポリシアリル化、ポリシアル酸の付着;マロニル化;ヒドロキシル化;ヨウ素化;臭素化;シトルリン化;ヌクレオチド付加、上で考察されるもののうちのいずれかなどの任意のヌクレオチドの付着、ADPリボシル化;酸化;リン酸化、例えばセリン、スレオニンもしくはチロシン(O-結合)またはヒスチジン(N-結合)へのリン酸基の付着;アデニリル化、例えばチロシン(O-結合型)またはヒスチジンもしくはリジン(N-結合型)へのアデニリル部分の付着;プロピオン化;ピログルタミン酸の形成;S-グルタチオン化;スモイル化(Sumoylation);S-ニトロシル化;スクシニル化、例えばリジンへのスクシニル基の結合;セレノイル化、セレンの取り込み;およびユビキチン化、ユビキチンサブユニット(N-結合型)の追加が含まれる。
【0113】
ポリペプチドが分子標識で標識されることは、本明細書で提供される方法の範囲内である。分子標識は、本明細書で提供される方法におけるポリペプチドの検出を促進するポリペプチドへの修飾であり得る。例えば、標識は、コンジュゲートが特徴付けられるときに得られるシグナルを改変させるポリペプチドへの修飾であり得る。例えば、標識はナノポアを通るイオンの流れに干渉し得る。このようにして、標識は方法の感度を向上させ得る。
【0114】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、1つ以上の架橋されたセクション、例えば、C-Cブリッジを含む。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、開示される方法を使用して特徴付けられる前に架橋されない。
【0115】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、硫化物含有アミノ酸を含み、したがって、ジスルフィド結合を形成する可能性を有する。典型的には、そのような実施形態において、ポリペプチドは、開示される方法を使用して特徴付けられる前に、DTT(ジチオスレイトール)またはTCEP(トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン)などの試薬を使用して還元される。
【0116】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、全長タンパク質または天然に存在するポリペプチドである。いくつかの実施形態において、タンパク質または天然に存在するポリペプチドは、ポリヌクレオチドにコンジュゲート化される前に断片化される。いくつかの実施形態では、タンパク質またはポリペプチドは、化学的または酵素的に断片化されている。いくつかの実施形態において、ポリペプチドまたはポリペプチド断片は、より長い標的ポリペプチドを形成するためにコンジュゲートされ得る。
【0117】
ポリペプチドは、任意の適切な長さのポリペプチドであり得る。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、約2~約300ペプチド単位の長さを有する。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、約2~約100ペプチド単位、例えば、約2~約50ペプチド単位、例えば、約2~約40ペプチド単位、例えば、約2~約30ペプチド単位、例えば、約2~約25ペプチド単位、例えば約2~約20ペプチド単位;または、約3~約50ペプチド単位、例えば、約3~約40ペプチド単位、例えば、約3~約30ペプチド単位、例えば、約3~約25ペプチド単位、例えば、約3~約20ペプチド単位;または、約5~約50ペプチド単位、例えば、約5~約40ペプチド単位、例えば、約5~約30ペプチド単位、例えば、約5~約25ペプチド単位、例えば、約5~約20ペプチド単位;例えば、約7~約16のペプチド単位、例えば、約9~約12ペプチド単位;または、約16~約25ペプチド単位、例えば、約18~約22ペプチド単位の長さを有する。
【0118】
任意の数のポリペプチドを、開示される方法で特徴付けることができる。例えば、方法は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、50、100、またはそれ以上のポリヌクレオチドの特徴付けに関し得る。2つ以上のポリペプチドが使用される場合、それらは、異なるポリペプチドまたは同じポリペプチドの2つ以上の例であり得る。
【0119】
したがって、開示される方法で行われる測定は、典型的には、(i)ポリペプチドの長さ、(ii)ポリペプチドの同一性、(iii)ポリペプチドの配列、(iv)ポリペプチドの二次構造、および(v)ポリペプチドが修飾されているかどうかより選択されるポリペプチドの1つ以上の特性に特徴的であることが明らかである。典型的な実施形態では、測定は、ポリペプチドの配列、またはポリペプチドが、例えば、1つ以上の翻訳後修飾によって修飾されているかどうかに特徴的である。いくつかの実施形態では、測定は、ポリペプチドの配列の特徴である。
【0120】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、弛緩した形態である。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、線形化された形態で保持される。線形化された形態でポリペプチドを保持することは、ナノポア内のポリペプチドの「バンチング」が防止されるため、残基ごとにポリペプチドの特徴付けを促進し得る。
【0121】
ポリペプチドは、任意の適切な手段を使用して線形化された形態で保持され得る。
【0122】
例えば、ポリペプチドが帯電している場合、電圧を印加することにより、ポリペプチドを線形化された形態で保持することができる。
【0123】
ポリペプチドが帯電していないか、わずかにしか帯電していない場合は、pHを調整することで電荷を変更または制御できる。例えば、ポリペプチドの相対的な負電荷を増加させるために高pHを使用することにより、ポリペプチドを線形化された形態で保持することができる。ポリペプチドの負電荷を増加させると、例えば正の電圧下で線形化された形態で保持することができる。あるいは、ポリペプチドの相対的な正電荷を増加させるために低pHを使用することにより、ポリペプチドを線形化された形態で保持することができる。ポリペプチドの正電荷を増加させると、例えば負の電圧下で線形化された形態で保持することができる。開示される方法において、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質は、ナノポアに対するポリヌクレオチドの移動を制御するために使用される。ポリヌクレオチドは典型的には負に帯電しているため、ポリヌクレオチドと同様に、pHを上げることによってポリペプチドの線形化を高め、それによりポリペプチドをより負に帯電させることが一般に最も適切である。このようにして、コンジュゲートは全体的に負の電荷を保持するため、印加電圧の下で容易に移動できる。
【0124】
ポリペプチドは、適切な変性条件を使用することにより、線形化された形態で保持され得る。適切な変性条件には、例えば、グアニジンHClおよび/または尿素などの適切な濃度の変性剤の存在が含まれる。開示される方法で使用するそのような変性剤の濃度は、方法で特徴付けられる標的ポリペプチドに依存し、当業者によって容易に選択することができる。
【0125】
ポリペプチドは、適切な界面活性剤を使用することにより、線形化された形態で保持され得る。開示される方法で使用するのに適した洗剤には、SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)が含まれる。
【0126】
ポリペプチドは、開示される方法を高温で実施することにより、線形化された形態で保持され得る。温度を上げると、鎖内結合が克服され、ポリペプチドが線形化された形をとることができる。
【0127】
ポリペプチドは、強い電気浸透力の下で開示される方法を実行することにより、線形化された形態で保持され得る。そのような力は、非対称の塩条件を使用することによって、および/またはナノポアのチャネルに適切な電荷を提供することによって提供され得る。タンパク質ナノポアのチャネルの電荷は、例えば変異誘発によって改変させることができる。ナノポアの電荷を変更することは、当業者の能力の範囲内である。ナノポアの電荷を変えると、電位がナノポアを横切って印加されたときに、ナノポアを通る陽イオンと陰イオンの不均衡な流れから強い電気浸透力が生成される。
【0128】
ポリペプチドは、ナノピラーのアレイなどの構造、ナノスリットを通過またはナノギャップを横切ることにより、線形化された形態で保持され得る。いくつかの実施形態において、そのような構造の物理的制約は、ポリペプチドに線形化された形態を採用させることができる。
【0129】
コンジュゲートの形成
本明細書でより詳細に説明されるように、コンジュゲートは、標的ポリペプチドにコンジュゲート化されたポリヌクレオチドを含む。
【0130】
標的ポリペプチドは、任意の適切な位置でポリヌクレオチドにコンジュゲート化され得る。例えば、ポリペプチドは、ポリペプチドのN末端またはC末端でポリヌクレオチドにコンジュゲート化され得る。ポリペプチドは、ポリペプチド中の残基(例えば、アミノ酸残基)の側鎖基を介してポリヌクレオチドにコンジュゲート化され得る。
【0131】
いくつかの実施形態において、標的ポリペプチドは、ポリヌクレオチドへのコンジュゲート化を促進するために使用され得る天然に存在する反応性官能基を有する。例えば、システイン残基を使用して、ポリヌクレオチドまたはその上の修飾基へのジスルフィド結合を形成することができる。
【0132】
いくつかの実施形態において、標的ポリペプチドは、ポリヌクレオチドへのそのコンジュゲート化を促進するために修飾される。例えば、いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、ポリヌクレオチドに付着させるための反応性官能基を含む部分を付着することによって修飾される。例えば、いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、ポリヌクレオチド上の対応する反応性官能基と反応するための1つ以上の反応性官能基を含む1つ以上の残基(例えばアミノ酸残基)によってN末端またはC末端で伸長され得る。例えば、いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、1つ以上のシステイン残基によってN末端および/またはC末端で伸長され得る。このような残基は、例えばマレイミド化学による(例えばシステインのアジド-[Pol]-マレイミドなどのアジド-マレイミド化合物との反応、ここで[Pol]は典型的にはPEG、例えば、PEG2、PEG3、またはPEG4などの短鎖ポリマーである;続いて、適切に官能化されたポリヌクレオチド、例えば、アジドとの反応のためのBCN基を所持するポリヌクレオチドへのカップリングによる)、コンジュゲートのポリヌクレオチド部分への付着に使用され得る。そのような化学的性質は実施例2に記載されている。誤解を避けるために、ポリペプチドがN末端および/またはC末端に適切な天然に存在する残基(例えば、N末端および/またはC末端に天然に存在するシステイン残基)を含む場合、そのような残基を、ポリヌクレオチドへの付着のため、使用することができる。
【0133】
いくつかの実施形態において、標的ポリペプチド中の残基は、標的ポリペプチドのポリヌクレオチドへの付着を促進するように修飾される。いくつかの実施形態において、ポリペプチド中の残基(例えば、アミノ酸残基)は、ポリヌクレオチドへの付着のために化学的に修飾されている。いくつかの実施形態において、ポリペプチド中の残基(例えば、アミノ酸残基)は、ポリヌクレオチドへの付着のために酵素的に修飾される。
【0134】
コンジュゲート中のポリヌクレオチドとポリペプチドとの間のコンジュゲート化化学は、特に限定されない。反応性官能基の任意の適切な組み合わせを使用することができる。多くの適切な反応性基およびそれらの化学的標的が当技術分野で知られている。いくつかの例示的な反応性基およびそれらの対応する標的には、アミンと反応し得るアリールアジド、アミンおよびカルボキシル基と反応し得るカルボジイミド、炭水化物と反応し得るヒドラジド、アミンと反応し得るヒドロキシメチルホスフィン、アミンと反応し得るイミドエステル、ヒドロキシル基と反応し得るイソシアナート、ヒドラジンと反応し得るカルボニル、スルフヒドリル基と反応し得るマレイミド、アミンと反応し得るNHS-エステル、アミンと反応し得るPFP-エステル、チミンと反応し得るソラレン、スルフヒドリル基と反応し得るピリジルジスルフィド、スルフヒドリルアミンおよびヒドロキシル基と反応し得るビニルスルホン、ビニルスルホンアミドなどが含まれる。
【0135】
ポリペプチドをポリヌクレオチドにコンジュゲート化させるための他の適切な化学には、クリックケミストリーが含まれる。多くの適切なクリックケミストリー試薬が当技術分野で知られている。クリックケミストリーの好適な例には、以下が含まれるが、これらに限定されない。
(a)銅(I)触媒によるアジド-アルキン環化付加(アジドアルキンヒュスゲン環化付加)、
(b)歪み促進アジド-アルキン環化付加;アルケンとアジドの[3+2]環化付加;アルケンとテトラジンの逆需要ディールスアルダー反応;およびアルケンとテトラゾールのフォトクリック反応を含む、
(c)アジドが、例えばシクロオクタン環中、例えば二環[6.1.0]ノニン(BCN)中の歪みを受けているアルキンと反応する、1,3双極性環化付加反応の銅不含バリアント、
(d)一方のリンカー上の酸素求核試薬の、他方のエポキシドまたはアジリジン反応性部分との反応、ならびに
(e)アルキン部分をアリールホスフィンで置換して、アジドとの特異的反応をもたらして、アミド結合を付与することができる、Staudinger連結。
【0136】
コンジュゲートを形成するために任意の反応性基を使用することができる。いくつかの適切な反応性基には、[1,4-ビス[3-(2-ピリジルジチオ)プロピオンアミド]ブタン;1,1 1-ビス-マレイミドトリエチレングリコール;3,3’-ジチオジプロピオン酸ジ(N-ヒドロキシスクシンイミドエステル);エチレングリコール-ビス(コハク酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステル);4,4’-ジイソチオシアナトスチルベン-2,2’-ジスルホン酸二ナトリウム塩;ビス[2-(4-アジドサリチルアミド)エチル]ジスルフィド;3-(2-ピリジルジチオ)プロピオン酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステル;4-マレイミド酪酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステル;ヨード酢酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステル;S-アセチルチオグリコール酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステル;アジド-PEG-マレイミド;およびアルキン-PEG-マレイミドが含まれる。反応基は、WO2010/086602、特にその出願の表3に開示されているもののうちのいずれであってもよい。
【0137】
いくつかの実施形態では、コンジュゲート化ステップの前に、反応性官能基はポリヌクレオチドに含まれ、標的官能基はポリペプチドに含まれる。他の実施形態では、コンジュゲート化ステップの前に、反応性官能基はポリペプチドに含まれ、標的官能基はポリヌクレオチドに含まれる。いくつかの実施形態において、反応性官能基は、ポリペプチドに直接付着している。いくつかの実施形態では、反応性官能基は、スペーサーを介してポリペプチドに付着している。任意の適切なスペーサーを使用することができる。適切なスペーサーには、例えば、エチルジアミンなどのアルキルジアミンなどが含まれる。
【0138】
上記の考察から明らかなように、いくつかの実施形態では、コンジュゲートは、複数のポリペプチドセクションおよび/または複数のポリヌクレオチドセクションを含む。例えば、コンジュゲートは、Pがポリペプチドであり、Nがポリヌクレオチドである、形態…-P-N-P-N-P-N…の構造を含み得る。そのような実施形態において、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質は、ナノポアに対してコンジュゲートのN部分を連続的に制御し、したがって、ナノポアに対するPセクションの移動を連続的に制御し、したがって、Pセクションの連続的な特徴付けを可能にする。そのような実施形態において、複数のポリヌクレオチドおよびポリペプチドは、同じまたは異なる化学によってともにコンジュゲート化され得る。
【0139】
本明細書で説明されるように、コンジュゲートはリーダーを含み得る。本明細書で説明されるように、任意の適切なリーダーを使用することができる。いくつかの実施形態では、リーダーはポリヌクレオチドである。リーダーがポリヌクレオチドである実施形態において、リーダーは、コンジュゲート中で使用されるポリヌクレオチドと同じ種類のポリヌクレオチドであり得るか、またはリーダーは、異なるタイプのポリヌクレオチドであり得る。例えば、コンジュゲート中のポリヌクレオチドはDNAであり得、リーダーはRNAであり得るか、またはその逆であり得る。
【0140】
いくつかの実施形態では、リーダーは、帯電したポリマー、例えば、負に帯電したポリマーである。いくつかの実施形態では、リーダーは、PEGまたは多糖などのポリマーを含む。そのような実施形態では、リーダーは、10~150のモノマー単位(例えば、エチレングリコールまたは糖単位)の長さ、例えば、20~120、例えば、30~100、例えば、40~80、例えば、50~70のモノマー単位(例えば、エチレングリコールまたは糖類単位)の長さであり得る。
【0141】
ポリヌクレオチド
本明細書でより詳細に説明されるように、本明細書で提供される方法は、ポリペプチドをポリヌクレオチドにコンジュゲート化し、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質を使用してナノポアに対するコンジュゲートの移動を制御することを含む。
【0142】
開示される方法において、任意の適切なポリヌクレオチドを使用することができる。
【0143】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは細胞から分泌される。あるいは、ポリヌクレオチドは、開示される方法で使用するために細胞から抽出されなければならないように、細胞内で産生され得る。
【0144】
ポリヌクレオチドは、1つ以上のポリヌクレオチドおよび1つ以上の不純物の不純な混合物として提供され得る。不純物は、コンジュゲートの形成に使用するためのポリヌクレオチドとは異なる、一部切除型のポリヌクレオチドを含み得る。例えば、コンジュゲートの形成に使用するためのポリヌクレオチドは、ゲノムDNAであり得、不純物は、ゲノムDNA、プラスミドなどの画分を含み得る。標的ポリヌクレオチドは、ゲノムDNAのコード領域であり得、望ましくないポリヌクレオチドは、DNAの非コード領域を含み得る。
【0145】
ポリヌクレオチドの例には、DNAおよびRNAが含まれる。DNAおよびRNAにおける塩基は、それらの物理的サイズによって識別される場合がある。
【0146】
ポリヌクレオチドまたは核酸は、任意のヌクレオチドの任意の組み合わせを含み得る。ヌクレオチドは、天然に存在しても人工であってもよい。ポリヌクレオチド中の1つ以上のヌクレオチドは、酸化されてもメチル化されてもよい。ポリヌクレオチド中の1つ以上のヌクレオチドは、損傷している場合がある。例えば、ポリヌクレオチドは、ピリミジンダイマーを含み得る。かかるダイマーは、典型的には、紫外線による損傷に関連しており、皮膚メラノーマの主な原因である。
【0147】
ポリヌクレオチド中の1つ以上のヌクレオチドは、例えば、標識またはタグで修飾され得、その好適な例は当業者に知られている。ポリヌクレオチドは、1つ以上のスペーサーを含み得る。アダプター、例えば配列決定アダプターは、ポリヌクレオチド中に含まれ得る。アダプター、タグおよびスペーサーは、本明細書でより詳細に記載されている。
【0148】
修飾された塩基の例は、本明細書に開示され、当技術分野で知られている手段によって、例えば、鎖コピー中の修飾ヌクレオチド三リン酸のポリメラーゼ取り込み(例えば、PCR)によって、またはポリメラーゼ充填法によって、ポリヌクレオチドに組み込まれ得る。いくつかの実施形態において、1つ以上の塩基は、当技術分野で知られている試薬を使用する化学的手段によって修飾され得る。
【0149】
ヌクレオチドは、典型的には、核酸塩基、糖、および少なくとも1つのリン酸基を含む。核酸塩基および糖がヌクレオシドを形成する。核酸塩基は、典型的には、複素環である。核酸塩基には、プリンおよびピリミジン、より具体的には、アデニン(A)、グアニン(G)、チミン(T)、ウラシル(U)、およびシトシン(C)が含まれるが、これらに限定されない。糖は、典型的には、五炭糖である。ヌクレオチド糖には、リボースおよびデオキシリボースが含まれるが、これらに限定されない。糖は、好ましくは、デオキシリボースである。ポリヌクレオチドは、好ましくは、以下のヌクレオシド:デオキシアデノシン(dA)、デオキシウリジン(dU)および/またはチミジン(dT)、デオキシグアノシン(dG)、ならびにデオキシシチジン(dC)を含む。ヌクレオチドは、典型的には、リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドである。ヌクレオチドは、典型的には、一リン酸、二リン酸、または三リン酸を含む。ヌクレオチドは、3個より多くのリン酸、例えば、4個または5個のリン酸を含み得る。リン酸は、ヌクレオチドの5’側または3’側に付着し得る。ポリヌクレオチド中のヌクレオチドは、任意の様式で互いに付着し得る。ヌクレオチドは、典型的には、核酸と同様に、それらの糖およびリン酸基によって付着する。ヌクレオチドは、ピリミジンダイマーと同様に、それらの核酸塩基を介して接続され得る。
【0150】
ポリヌクレオチドは二本鎖でも一本鎖でもよい。
【0151】
いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは一本鎖DNAである。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは一本鎖RNAである。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、一本鎖DNA-RNAハイブリッドである。DNA-RNAハイブリッドは、一本鎖DNAをRNAにライゲーションするか、またはその逆を行うことで調製され得る。ポリヌクレオチドは、最も典型的には一本鎖デオキシリボ核酸(DNA)または一本鎖リボ核酸(RNA)である。
【0152】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは二本鎖DNAである。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは二本鎖RNAである。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、二本鎖DNA-RNAハイブリッドである。二本鎖DNA-RNAハイブリッドは、cDNA補体を逆転写することにより一本鎖RNAから調製され得る。
【0153】
ポリヌクレオチドは、任意の長さであり得る。例えば、ポリヌクレオチドは、少なくとも10、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも150、少なくとも200、少なくとも250、少なくとも300、少なくとも400、または少なくとも500ヌクレオチドまたはヌクレオチド対の長さであり得る。ポリヌクレオチドは、1000ヌクレオチド長もしくはヌクレオチド対長以上、5000ヌクレオチド長もしくはヌクレオチド対長以上、または100000ヌクレオチド長もしくはヌクレオチド対長以上であり得る。
【0154】
より典型的には、ポリヌクレオチドは、約1~約10,000ヌクレオチドまたはヌクレオチド対の長さを有する。例えば、約1~約1000ヌクレオチドまたはヌクレオチド対(例えば、約10~約1000ヌクレオチドまたはヌクレオチド対)、例えば、約5~約500ヌクレオチドまたはヌクレオチド対、例えば、約10~約100ヌクレオチドまたはヌクレオチド対、例えば、約20~約80ヌクレオチドまたはヌクレオチド対、例えば約30~約50ヌクレオチドまたはヌクレオチド対。
【0155】
任意の数のポリヌクレオチドを開示される方法で使用することができる。例えば、方法は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、50、100、またはそれ以上のポリヌクレオチドを使用することを含み得る。2つ以上のポリヌクレオチドを使用する場合、それらは、異なるポリヌクレオチドであるか、または同じポリヌクレオチドの2つの例であり得る。ポリヌクレオチドは、天然に存在しても人工であってもよい。
【0156】
ヌクレオチドは、任意の同一性を有し得、ヌクレオチドには、アデノシン一リン酸塩(AMP)、グアノシン一リン酸塩(GMP)、チミジン一リン酸塩(TMP)、ウリジン一リン酸塩(UMP)、5-メチルシチジン一リン酸塩、5-ヒドロキシメチルシチジン一リン酸塩、シチジン一リン酸塩(CMP)、環状アデノシン一リン酸塩(cAMP)、環状グアノシン一リン酸塩(cGMP)、デオキシアデノシン一リン酸塩(dAMP)、デオキシグアノシン一リン酸塩(dGMP)、デオキシチミジン一リン酸塩(dTMP)、デオキシウリジン一リン酸塩(dUMP)、デオキシシチジン一リン酸塩(dCMP)、およびデオキシメチルシチジン一リン酸塩が含まれるが、これらに限定されない。ヌクレオチドは、好ましくは、AMP、TMP、GMP、CMP、UMP、dAMP、dTMP、dGMP、dCMP、およびdUMPから選択される。ヌクレオチドは、脱塩基であり得る(すなわち、核酸塩基を欠き得る)。ヌクレオチドは、核酸塩基および糖も欠き得る(すなわち、C3スペーサーである)。
【0157】
ポリヌクレオチドは、PCR反応の産物、ゲノムDNA、エンドヌクレアーゼ消化の産物、および/またはDNAライブラリーを含み得る。ポリヌクレオチドは、任意の生物または微生物から得られ得るか、またはそれらから抽出され得る。ポリヌクレオチドは、ヒトまたは動物から、例えば、尿、リンパ液、唾液、粘液、精液、もしくは羊水から、または全血、血漿、もしくは血清から得られ得る。ポリヌクレオチドは、植物、例えば、穀草類、マメ科植物、果物、または野菜から得られ得る。ポリヌクレオチドは、ゲノムDNAを含み得る。ゲノムDNAは断片化され得る。DNAは任意の好適な方法によって断片化され得る。例えば、DNAを断片化する方法は当該技術分野で既知であり、かかる方法は、MuAトランスポザーゼなどのトランスポザーゼを使用することができる。好ましくは、ゲノムDNAは断片化されない。
【0158】
ポリヌクレオチドが分子標識で標識されることは、本明細書で提供される方法の範囲内である。分子標識は、本明細書で提供される方法においてポリヌクレオチドまたはコンジュゲートの検出を促進するポリヌクレオチドへの修飾であり得る。例えば、標識は、コンジュゲートが特徴付けられるときに得られるシグナルを改変する、ポリヌクレオチドへの修飾であり得る。例えば、標識はナノポアを通るイオンの流れに干渉し得る。このようにして、標識は方法の感度を向上させる可能性がある。
【0159】
アダプター
本明細書で提供される方法のいくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、それに付着したポリヌクレオチドアダプターを有する。アダプターは、典型的には、ポリヌクレオチドの末端に付着することができるポリヌクレオチド鎖を含む。
【0160】
いくつかの実施形態において、アダプターは、ポリペプチドとのコンジュゲートが形成される前に、ポリヌクレオチドに付着される。いくつかの実施形態において、アダプターは、ポリヌクレオチドおよびポリペプチドのコンジュゲートに付着される。
【0161】
したがって、いくつかの実施形態では、方法は、アダプター(例えば本明細書に記載のアダプター)をポリヌクレオチドに付着させ、ポリヌクレオチド/アダプター構築物を標的ポリペプチドにコンジュゲート化することによってコンジュゲートを形成することを含む。いくつかの実施形態において、コンジュゲートは、アダプター(例えば本明細書に記載のアダプター)をポリヌクレオチドに付着させ、アダプターを標的ポリペプチドに付着させることによってコンジュゲートを形成することによって形成される。
【0162】
いくつかの実施形態において、アダプターは、ポリヌクレオチドへのコンジュゲート化のための特定の部位を提供するために選択または修飾され得る。
【0163】
アダプターは、ポリヌクレオチドまたはコンジュゲートの一端だけに付着させることができる。ポリヌクレオチドアダプターは、ポリヌクレオチドまたはコンジュゲートの両末端に付加され得る。あるいは、異なるアダプターがポリヌクレオチドまたはコンジュゲートの2つの末端に付加され得る。
【0164】
二本鎖ポリヌクレオチドの両方の鎖にアダプターを付加することができる。一本鎖ポリヌクレオチドにアダプターを付加することができる。アダプターをポリヌクレオチドに付加する方法は、当該技術分野で既知である。アダプターは、例えば、ライゲーションによって、クリックケミストリーによって、タグメンテーションによって、トポイソメラーゼ変換によって、または任意の他の好適な方法によってポリヌクレオチドに付着し得る。
【0165】
一実施形態では、当該または各アダプターは、合成または人工である。典型的には、当該または各アダプターは、本明細書に記載のポリマーを含む。いくつかの実施形態において、当該または各アダプターは、本明細書に記載されるようなスペーサーを含む。いくつかの実施形態では、当該または各アダプターは、ポリヌクレオチドを含む。当該または各ポリヌクレオチドアダプターは、DNA、RNA、修飾DNA(例えば脱塩基DNA)、RNA、PNA、LNA、BNA、および/またはPEGを含み得る。通常、当該または各アダプターは、一本鎖および/または二本鎖DNAまたはRNAを含む。アダプターは、それが付着しているポリヌクレオチド鎖と同じタイプのポリヌクレオチドを含み得る。アダプターは、それが付着しているポリヌクレオチド鎖とは異なるタイプのポリヌクレオチドを含み得る。いくつかの実施形態において、開示される方法で使用されるポリヌクレオチド鎖は一本鎖DNA鎖であり、アダプターは、DNAまたはRNA、典型的には一本鎖DNAを含む。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは二本鎖DNA鎖であり、アダプターは、DNAまたはRNA、例えば二本鎖または一本鎖DNAを含む。
【0166】
いくつかの実施形態において、アダプターは、架橋部分であり得る。二本鎖ポリヌクレオチドの2つの鎖を接続するために、架橋部分を使用することができる。例えば、いくつかの実施形態において、架橋部分は、二本鎖ポリヌクレオチドのテンプレート鎖を二本鎖ポリヌクレオチドの相補鎖に接続するために使用される。
【0167】
架橋部分は、典型的には、二本鎖ポリヌクレオチドの2つの鎖を共有結合する。架橋部分は、二本鎖ポリヌクレオチドの2つの鎖を連結することができる任意のものであり得るが、但し、架橋部分が、ナノポアに対するポリヌクレオチドの移動に干渉しないことを条件とする。好適な架橋部分には、ポリマーリンカー、化学リンカー、ポリヌクレオチド、またはポリペプチドが含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、架橋部分は、DNA、RNA、修飾DNA(例えば、脱塩基DNA)、RNA、PNA、LNA、またはPEGを含む。架橋部分は、より好ましくは、DNAまたはRNAである。
【0168】
いくつかの実施形態では、架橋部分はヘアピンアダプターである。ヘアピンアダプターは、単一のポリヌクレオチド鎖を含むアダプターであり、ポリヌクレオチド鎖の末端は互いにハイブリダイズすることができるか、または互いにハイブリダイズされ、ポリヌクレオチドの中央部分がループを形成する。好適なヘアピンループアダプターは、当該技術分野で既知の方法を使用して設計され得る。いくつかの実施形態において、ヘアピンループは、典型的には、4~100ヌクレオチドの長さ、例えば、4~50、例えば、4~20、例えば、4~8ヌクレオチドの長さである。いくつかの実施形態において、架橋部分(例えばヘアピンアダプター)は、二本鎖ポリヌクレオチドの一端に付着している。架橋部分(例えばヘアピンアダプター)は、典型的には、二本鎖ポリヌクレオチドの両端に付着していない。
【0169】
いくつかの実施形態では、アダプターは直鎖アダプターである。直鎖アダプターは、一本鎖ポリヌクレオチドのいずれかまたは両方の末端に結合することができる。ポリヌクレオチドが二本鎖ポリヌクレオチドである場合、直鎖アダプターは、二本鎖ポリヌクレオチドのいずれかまたは両方の鎖のいずれかまたは両方の末端に結合することができる。直鎖アダプターは、本明細書に記載されるようなリーダー配列を含み得る。直鎖アダプターは、本明細書に記載されるようなタグ(ポアタグなど)とのハイブリダイゼーションのための部分を含み得る。直鎖アダプターは、10~150ヌクレオチドの長さ、例えば、20~120、例えば、30~100、例えば、40~80、例えば、50~70ヌクレオチドの長さであり得る。直鎖アダプターは一本鎖でもよい。直鎖アダプターは二本鎖でもよい。
【0170】
いくつかの実施形態では、アダプターは、Yアダプターであり得る。Yアダプターは、典型的には、ポリヌクレオチドアダプターである。Yアダプターは、典型的には二本鎖であり、(a)一方の末端に2つの鎖が一緒にハイブリダイズされる領域と、(b)他方の末端に2つの鎖が相補的ではない領域とを含む。鎖の非相補的部分は、典型的には、オーバーハングを形成する。Yアダプター中の非相補領域の存在は、二本鎖部分とは異なり2本の鎖が典型的には互いにハイブリダイズしないため、アダプターにY形状を与える。Yアダプターの2つの一本鎖部分は、同じ長さであっても、異なる長さであってもよい。例えば、Yアダプターの一方の一本鎖部分は、10~150ヌクレオチドの長さ、例えば、20~120、例えば、30~100、例えば、40~80、例えば、50~70ヌクレオチドの長さであり得、かつYアダプターの他方の一本鎖部分は、独立して、10~150ヌクレオチドの長さ、例えば、20~120、例えば、30~100、例えば、40~80、例えば、50~70ヌクレオチドの長さであり得る。Yアダプターの二本鎖「ステム」部分は、例えば、10~150ヌクレオチドの長さ、例えば、20~120、例えば、30~100、例えば、40~80、例えば、50~70ヌクレオチドの長さであり得る。
【0171】
アダプターは、当該技術分野で既知の任意の好適な手段によって標的ポリヌクレオチドに連結され得る。アダプターは、別個に合成され、標的ポリヌクレオチドに化学的に付着するか、またはそれに酵素的にライゲーションされ得る。代替的には、アダプターは、標的ポリヌクレオチドのプロセシング中に生成されてもよい。いくつかの実施形態において、アダプターは、標的ポリヌクレオチドの1つの末端において、またはその近くで標的ポリヌクレオチドに連結される。いくつかの実施形態において、アダプターは、標的ポリヌクレオチドの末端の50以内、例えば、20以内、例えば、10ヌクレオチド以内で、標的ポリヌクレオチドに連結される。いくつかの実施形態において、アダプターは、標的ポリヌクレオチドの末端で標的ポリヌクレオチドに連結されている。アダプターが標的ポリヌクレオチドに連結されている場合、アダプターは、標的ポリヌクレオチドと同じタイプのヌクレオチドを含み得るか、または標的ポリヌクレオチドに対して異なるヌクレオチドを含み得る。
【0172】
開示される方法での使用に特に適したアダプターは、直鎖ホモポリマー領域(例えば約5~約20ヌクレオチド、例えば、約10~約30ヌクレオチド、例えば、チミンまたはシチジン)および/または1つ以上のテザーもしくはアンカーにハイブリダイズするためのハイブリダイゼーション部位(本明細書でより詳細に説明されるようなもの)を含み得る。そのようなアダプターはまた、標的ポリペプチドに結合するための反応性官能基を含み得る。クリックケミストリー基は、この点で特に適している。例えば、アダプターに含めるための例示的な基には、銅を含まないクリックケミストリーにおいて粒子状になり(particulate)得る基、例えば、BCN(ビシクロ[6.1.0]ノニン)およびその誘導体に基づく基、ジベンゾシクロオクチン(DBCO)基などが含まれる。そのような基の反応は当技術分野で周知である。例えば、BCN基は、典型的には、例えばポリペプチドに取り込むことができるアジド、テトラジンおよびニトロンなどの基と反応する。DBCO基はアジド基に対して高い反応性を示す。特に適切な他の化学基には、2-ピリジンカルボキシアルデヒド(2-PCA)基およびそれらの誘導体が含まれる。例えば、6-(アジドメチル)-2-ピリジンカルボキシアルデヒドは、ペプチドのN末端アミノ基と反応し得る。
【0173】
スペーサー
本明細書で提供される方法のいくつかの実施形態では、ポリヌクレオチド、ポリペプチドとの反応によって形成されるコンジュゲート、または本明細書に記載のアダプターは、スペーサーを含み得る。例えば、1つ以上のスペーサーがポリヌクレオチドアダプターに存在し得る。例えば、ポリヌクレオチドアダプターは、1~約20のスペーサー、例えば、1~約10、例えば、1~約5のスペーサー、例えば、1、2、3、4、または5のスペーサーを含み得る。スペーサーは、任意の好適な数のスペーサー単位を含み得る。スペーサーは、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質の移動を妨げるエネルギー障壁を提供し得る。例えば、スペーサーは、ポリヌクレオチド上のポリヌクレオチドハンドリングタンパク質の牽引力を低下させることによって、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質を失速させる可能性がある。これは、例えば、脱塩基スペーサー、すなわち、塩基がポリヌクレオチドアダプター中の1つ以上のヌクレオチドから除去されたスペーサーを使用することによって達成され得る。スペーサーは、例えば、大きい化学基を導入してポリヌクレオチドハンドリングタンパク質の移動を物理的に妨げることによって、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質の移動を物理的に遮断し得る。
【0174】
いくつかの実施形態において、1つ以上のスペーサーは、それらがナノポアを通過するときまたはナノポアを横切るとき、すなわちそれらがナノポアに対して移動するときに、特有のシグナルを提供するため、本明細書に請求する方法で使用されるようなポリヌクレオチドもしくはコンジュゲート中、またはアダプター中に含まれる。
【0175】
いくつかの実施形態では、スペーサーは、ポリマーなどの直鎖状分子を含み得る。典型的には、かかるスペーサーは、コンジュゲート中で使用されるポリヌクレオチドとは異なる構造を有する。例えば、ポリヌクレオチドがDNAである場合、当該または各スペーサーは、典型的には、DNAを含まない。とりわけ、ポリヌクレオチドがデオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)である場合、当該または各スペーサーは、好ましくは、ペプチド核酸(PNA)、グリセロール核酸(GNA)、トレオース核酸(TNA)、ロックド核酸(LNA)、またはヌクレオチド側鎖を有する合成ポリマーを含む。いくつかの実施形態では、スペーサーは、1つ以上のニトロインドール、1つ以上のイノシン、1つ以上のアクリジン、1つ以上の2-アミノプリン、1つ以上の2-6-ジアミノプリン、1つ以上の5-ブロモ-デオキシウリジン、1つ以上の逆位チミジン(逆位dT)、1つ以上の逆位ジデオキシ-チミジン(ddT)、1つ以上のジデオキシ-シチジン(ddC)、1つ以上の5-メチルシチジン、1つ以上の5-ヒドロキシメチルシチジン、1つ以上の2’-O-メチルRNA塩基、1つ以上のイソ-デオキシシチジン(Iso-dC)、1つ以上のイソ-デオキシグアノシン(Iso-dG)、1つ以上のC3(OCOPO)基、1つ以上の光切断可能な(PC)[OC-C(O)NHCH-CNO-CH(CH)OPO]基、1つ以上のヘキサンジオール基、1つ以上のスペーサー9(iSp9)[(OCHCHOPO]基、もしくは1つ以上のスペーサー18(iSp18)[(OCHCHOPO]基、または1つ以上のチオール結合を含み得る。スペーサーは、これらの基の任意の組み合わせを含み得る。これらの基のうちの多くは、IDT(登録商標)(Integrated DNA Technologies(登録商標))から市販されている。例えば、C3、iSp9、およびiSp18スペーサーはすべてIDT(登録商標)から入手可能である。スペーサーは、スペーサー単位として任意の数の上記の基を含み得る。
【0176】
いくつかの実施形態では、スペーサーは、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質を失速させる1つ以上の化学基を含み得る。いくつかの実施形態では、好適な化学基は、1つ以上のペンダント化学基である。1つ以上の化学基は、ポリヌクレオチド、構築物またはアダプター中の1つ以上の核酸塩基に付着し得る。1つ以上の化学基は、ポリヌクレオチドアダプターの骨格に付着し得る。2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12個、またはそれ以上などの任意の数の適切な化学基が存在し得る。好適な基には、フルオロフォア、ストレプトアビジンおよび/またはビオチン、コレステロール、メチレンブルー、ジニトロフェノール(DNP)、ジゴキシゲニンおよび/または抗ジゴキシゲニン、ならびにジベンジルシクロオクチン基が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、スペーサーはポリマーを含み得る。いくつかの実施形態では、スペーサーは、ポリペプチドまたはポリエチレングリコール(PEG)であるポリマーを含み得る。
【0177】
いくつかの実施形態では、スペーサーは、1つ以上の脱塩基ヌクレオチド(すなわち、核酸塩基を欠くヌクレオチド)、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12個、またはそれ以上の脱塩基ヌクレオチドを含み得る。核酸塩基は、脱塩基ヌクレオチドにおける-H(idSp)または-OHによって置き換えられ得る。脱塩基スペーサーは、1つ以上の隣接するヌクレオチドから核酸塩基を除去することによって、標的ポリヌクレオチド中に挿入され得る。例えば、ポリヌクレオチドは、3-メチルアデニン、7-メチルグアニン、1,N6-エテノアデニンイノシン、またはヒポキサンチンを含むように修飾され得、核酸塩基は、ヒトアルキルアデニンDNAグリコシラーゼ(hAAG)を使用してこれらのヌクレオチドから除去され得る。代替的には、ポリヌクレオチドは、ウラシルを含むように修飾され得、核酸塩基は、ウラシルDNAグリコシラーゼ(UDG)によって除去され得る。一実施形態では、1つ以上のスペーサーは、いずれの脱塩基ヌクレオチドも含まない。
【0178】
スペーサーを使用してポリヌクレオチドアダプター上でヘリカーゼなどのポリヌクレオチドハンドリングタンパク質を失速させる方法は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるWO2014/135838に記載されている。
【0179】
アンカー
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチド、ポリペプチドとのそのコンジュゲート、またはそれに付着したアダプターは、例えばアダプターに付着した膜アンカーまたは膜貫通ポアアンカーを含み得る。一実施形態では、アンカーは、本明細書に開示される方法によるコンジュゲートの特徴付けを助ける。例えば、膜アンカーまたは膜貫通ポアアンカーは、膜のナノポアの周りのコンジュゲートの局在化を促進し得る。
【0180】
アンカーは、膜に挿入することができるポリペプチドアンカーおよび/または疎水性アンカーであり得る。一実施形態では、疎水性アンカーは、脂質、脂肪酸、ステロール、カーボンナノチューブ、ポリペプチド、タンパク質、またはアミノ酸であり、例えば、コレステロール、パルミチン酸塩、またはトコフェロールである。アンカーは、チオール、ビオチン、または界面活性剤を含み得る。
【0181】
一態様では、アンカーは、(ストレプトアビジンへの結合のための)ビオチン、(マルトース結合タンパク質または融合タンパク質への結合のための)アミロース、(ポリ-ヒスチジンまたはポリ-ヒスチジンタグ付きタンパク質への結合のための)Ni-NTA、または(抗原などの)ペプチドであり得る。
【0182】
一実施形態では、アンカーは、1つのリンカー、または2、3、4、もしくはそれ以上のリンカーを含み得る。好ましいリンカーには、ポリマー、例えば、ポリヌクレオチド、ポリエチレングリコール(PEG)、多糖、およびポリペプチドが含まれるが、これらに限定されない。これらのリンカーは直鎖状、分岐状、または環状であってもよい。例えば、リンカーは環状ポリヌクレオチドであってもよい。アダプターは、環状ポリヌクレオチドリンカー上の相補的配列にハイブリダイズし得る。1つ以上のアンカーまたは1つ以上のリンカーは、切断または分解することができる成分、例えば制限部位または光解離性基を含み得る。リンカーは、マレイミド基で官能化されて、タンパク質のシステイン残基に付着する。好適なリンカーは、WO2010/086602に記載されている。
【0183】
一実施形態では、アンカーは、コレステロールまたは脂肪アシル鎖である。例えば、ヘキサデカン酸などの6~30の炭素原子長を有する任意の脂肪アシル鎖が使用され得る。好適なアンカーおよびアンカーをアダプターに付着させる方法の例は、WO2012/164270およびWO2015/150786に開示されている。
【0184】
ナノポアに対するコンジュゲートの移動の制御
上でより詳細に説明されるように、本明細書で提供される方法は、コンジュゲートを、ナノポアに対するポリヌクレオチドの移動を制御することができるポリヌクレオチドハンドリングタンパク質と接触させることと、コンジュゲートがナノポアに対して移動するときに、ポリペプチドに特徴的な1つ以上の測定を行うことと、を含む。
【0185】
ナノポアに対するコンジュゲートの移動は、任意の適切な手段によって駆動され得る。いくつかの実施形態では、コンジュゲートの移動は、物理的または化学的力(電位)によって駆動される。いくつかの実施形態では、物理的な力は、電気的(例えば電圧)電位または温度勾配などによって提供される。
【0186】
いくつかの実施形態では、電位がナノポアを横切って印加されると、コンジュゲートはナノポアに対して移動する。ポリヌクレオチドは負に帯電しているため、ナノポアを横切って電位を印加すると、ポリヌクレオチドは、印加された電位の影響下でナノポアに対して移動する。例えば、正の電位がナノポアのシス側に対してナノポアのトランス側に印加されると、負に帯電した分析物がナノポアのシス側からナノポアのトランス側に移動するように誘導される。同様に、正の電位がナノポアのシス側に対してナノポアのトランス側に印加される場合、これは、ナノポアのトランス側からナノポアのシス側への負に帯電した分析物の移動を妨げる。負の電位がナノポアのシス側に対してナノポアのトランス側に印加されると、逆のことが起こる。適切な電圧を印加する装置および方法は、本明細書でより詳細に記載されている。
【0187】
いくつかの実施形態では、化学的力は、濃度(例えば、pH)勾配によって提供される。
【0188】
いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質は、物理的または化学的力(電位)と同じ方向へのコンジュゲートの移動を制御する。例えば、いくつかの実施形態では、正の電位が、ナノポアのシス側に対してナノポアのトランス側に印加され、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質は、ナノポアのシス側からナノポアのトランス側へのコンジュゲートの移動を制御する。いくつかの実施形態において、正の電位は、ナノポアのトランス側に対してナノポアのシス側に印加され、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質は、ナノポアのトランス側からナノポアのシス側へのコンジュゲートの移動を制御する。
【0189】
いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質は、物理的または化学的力(電位)とは反対の方向へのコンジュゲートの移動を制御する。例えば、いくつかの実施形態では、正の電位が、ナノポアのシス側に対してナノポアのトランス側に印加され、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質は、ナノポアのトランス側からナノポアのシス側へのコンジュゲートの移動を制御する。いくつかの実施形態では、正の電位が、ナノポアのトランス側に対してナノポアのシス側に印加され、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質は、ナノポアのシス側からナノポアのトランス側へのコンジュゲートの移動を制御する。
【0190】
いくつかの実施形態では、コンジュゲートの移動は、電位が印加されていない状態で、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質によって駆動される。
【0191】
開示される方法において、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質は、ナノポアに対するポリヌクレオチドの移動を制御することができる。言い換えれば、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質は、コンジュゲートの移動を制御することができる。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質は、ポリヌクレオチドおよびポリペプチドの移動を制御することができる。
【0192】
適切なポリヌクレオチドハンドリングタンパク質は、モータータンパク質またはポリヌクレオチドハンドリング酵素としても知られている。適切なポリヌクレオチドハンドリングタンパク質は当技術分野で知られており、いくつかの例示的なポリヌクレオチドハンドリングタンパク質は、以下により詳細に記載されている。
【0193】
一実施形態では、モータータンパク質は、ポリヌクレオチドハンドリング酵素であるか、またはそれに由来する。ポリヌクレオチドハンドリング酵素は、ポリヌクレオチドと相互作用し、かつその少なくとも1つの特性を修飾することができるポリペプチドである。酵素は、個々のヌクレオチドまたはヌクレオチドのより短い鎖、例えばジ-またはトリヌクレオチドを形成するために、ポリヌクレオチドを切断することによってポリヌクレオチドを修飾してもよい。酵素は、それを配向するか、またはそれを特定の位置に移動させることによって、ポリヌクレオチドを修飾してもよい。
【0194】
いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質は、ナノポアとの接触の前にコンジュゲート上に存在することができる。例えば、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質は、コンジュゲート中のポリヌクレオチド上に存在することができる。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質は、コンジュゲートの一部を含むアダプター上に存在するか、またはコンジュゲートの部分上に存在することができる。
【0195】
いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質は、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質の活性部位と接触しているコンジュゲートの部分がポリペプチドを含む場合、コンジュゲートに結合したままであることができる。言い換えれば、いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質は、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質がコンジュゲートのポリペプチド部分と接触するとき、コンジュゲートから解離しない。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質は、コンジュゲートの1つ以上の後続のポリヌクレオチド部分が接触するまで、ポリペプチド部分に対して自由に移動する。
【0196】
いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質は、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質がポリペプチドを含むコンジュゲートの部分と接触するときに、コンジュゲート、ポリヌクレオチドまたはアダプターから(コンジュゲート、ポリヌクレオチドまたはアダプターの末端から外れる(pass off)ことによる以外で)離脱するのを防ぐように修飾される。そのような修飾されたポリヌクレオチドハンドリングタンパク質は、開示される方法での使用に特に適している。
【0197】
ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質を任意の好適な方法で適合させることができる。例えば、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質は、ポリヌクレオチド、コンジュゲート、またはアダプター上に装填され、その後、それが離脱するのを防ぐために修飾され得る。あるいは、ポリヌクレオチド、コンジュゲート、またはアダプター上に装填する前に、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質を修飾して、タンパク質が離脱するのを防ぐことができる。ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質がポリヌクレオチド、コンジュゲートまたはアダプターから離脱するのを防ぐためのポリヌクレオチドハンドリングタンパク質の修飾は、当技術分野で既知の方法、例えば、参照により全体が本明細書に組み込まれるWO2014/013260において考察されている方法を使用して、かつポリヌクレオチドハンドリングタンパク質がポリヌクレオチド鎖から離脱するのを防ぐためのヘリカーゼなどのポリヌクレオチドハンドリングタンパク質(ポリヌクレオチド結合タンパク質)の修飾について記載する一節を特に参照して達成することができる。
【0198】
例えば、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質は、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質がポリヌクレオチド鎖から離脱したときにその鎖が通過することができるポリヌクレオチド非結合開口部、例えば、空洞、溝、または空隙を有し得る。いくつかの実施形態では、所与のモータータンパク質(ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質)のポリヌクレオチド非結合開口部は、その構造を参照することにより、例えば、そのX線結晶構造を参照することにより決定することができる。X線結晶構造は、ポリヌクレオチド基質の存在下および/または不在下で得ることができる。いくつかの実施形態では、所与のポリヌクレオチドハンドリングタンパク質におけるポリヌクレオチド非結合開口部の位置は、当該技術分野で既知の標準パッケージを使用して分子モデリングによって推定または確認され得る。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチド非結合開口部は、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質の1つ以上の部分、例えば、1つ以上のドメインの移動によって一時的に生成され得る。
【0199】
ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質(モータータンパク質)は、ポリヌクレオチド非結合開口部を閉鎖することによって修飾され得る。したがって、ポリヌクレオチド非結合開口部を閉鎖することは、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質がコンジュゲートのポリペプチド部分から離脱するのを防ぐだけでなく、それがポリヌクレオチドまたはアダプターから離脱するのを防ぐことができる。例えば、モータータンパク質は、ポリヌクレオチド非結合開口部を共有結合的に閉鎖することによって修飾され得る。いくつかの実施形態では、このように対処するのに好ましいモータータンパク質は、本明細書に記載するようなヘリカーゼである。したがって、開示される方法のいくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質は、ポリヌクレオチド鎖が結合を解くことができる未修飾タンパク質の少なくとも1つのコンフォメーション状態に存在する開口部を完全にまたは部分的に閉鎖するように修飾される。
【0200】
ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質は、本明細書に開示される方法で特徴付けられるコンジュゲートで使用されるポリヌクレオチドに従って選ばれるかまたは選択され得る。あるいは、ポリヌクレオチドは、コンジュゲートの移動を制御するために使用されるポリヌクレオチドハンドリングタンパク質に従って選ばれるかまたは選択され得る。例えば、ポリヌクレオチドがDNAである場合、典型的には、DNAモータータンパク質を使用することができる。ポリヌクレオチドがRNAの場合、RNAモータータンパク質を使用できる。ポリヌクレオチドがDNAとRNAのハイブリッドである場合、DNAとRNAの両方をプロセシングできるモータータンパク質を使用できる。
【0201】
一実施形態では、モータータンパク質は、より好ましくは、酵素分類(EC)群3.1.11、3.1.13、3.1.14、3.1.15、3.1.16、3.1.21、3.1.22、3.1.25、3.1.26、3.1.27、3.1.30、および3.1.31のうちのいずれかのメンバーに由来する。
【0202】
特許請求される方法のいくつかの実施形態では、モータータンパク質は、ヘリカーゼ、ポリメラーゼ、エキソヌクレアーゼ、トポイソメラーゼ、またはそれらの変異体である。
【0203】
一実施形態では、モータータンパク質は、エキソヌクレアーゼである。好適な酵素には、E.coli由来のエキソヌクレアーゼI(配列番号1)、E.coli由来のエキソヌクレアーゼIII酵素(配列番号2)、T.thermophilus由来のRecJ(配列番号3)およびバクテリオファージラムダエキソヌクレアーゼ(配列番号4)、TatDエキソヌクレアーゼ、ならびにそれらの変異形が含まれるが、これらに限定されない。配列番号3に示される配列またはその変異形を含む3つのサブユニットが相互作用して、トリマーエキソヌクレアーゼを形成する。
【0204】
一実施形態では、モータータンパク質は、ポリメラーゼである。ポリメラーゼは、PyroPhage(登録商標)3173 DNAポリメラーゼ(Lucigen(登録商標)Corporationから市販されている)、SDポリメラーゼ(Bioron(登録商標)から市販されている)、NEB製のKlenow、またはそれらの変異形であり得る。一実施形態では、酵素は、Phi29 DNAポリメラーゼ(配列番号5)またはその変異形である。開示する方法に使用され得るPhi29ポリメラーゼの修飾されたバージョンが米国特許第5,576,204号に開示されている。
【0205】
ポリヌクレオチドに相補的な鎖を合成することによってコンジュゲートの移動を制御することを含む、本明細書で提供される方法の実施形態では、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質は、典型的にはポリメラーゼ、例えば本明細書に記載のポリメラーゼである。
【0206】
一実施形態では、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質は、トポイソメラーゼである。一実施形態では、トポイソメラーゼは、好ましくは、部分分類(EC)群5.99.1.2および5.99.1.3のうちのいずれかのメンバーである。トポイソメラーゼは、RNA鋳型からのcDNAの形成を触媒することができる酵素である逆転写酵素であり得る。それらは、例えば、New England Biolabs(登録商標)およびInvitrogen(登録商標)から市販されている。
【0207】
一実施形態では、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質は、ヘリカーゼである。任意の好適なヘリカーゼを本明細書に提供される方法に従って使用することができる。例えば、本開示に従って使用される当該または各モータータンパク質は独立して、Hel308ヘリカーゼ、RecDヘリカーゼ、TraIヘリカーゼ、TrwCヘリカーゼ、XPDヘリカーゼ、およびDdaヘリカーゼ、またはそれらの変異形から選択され得る。単量体ヘリカーゼは、一緒に付着したいくつかのドメインを含み得る。例えば、TraIヘリカーゼおよびTraIサブグループヘリカーゼは、2つのRecDヘリカーゼドメイン、リラクゼースドメイン、およびC末端ドメインを含み得る。これらのドメインは、典型的には、オリゴマーを形成することなく機能することができる単量体ヘリカーゼを形成する。好適なヘリカーゼの具体的な例には、Hel308、NS3、Dda、UvrD、Rep、PcrA、Pif1、およびTraIが挙げられる。これらのヘリカーゼは、典型的には、一本鎖DNAに作用する。二本鎖DNAの両方の鎖に沿って移動することができるヘリカーゼの例には、FtfKおよび六量体酵素複合体、またはRecBCDなどのマルチサブユニット複合体が挙げられる。NS3ヘリカーゼは、DNAとRNAの両方をプロセシングすることができ、したがって、標的二本鎖核酸がDNA-RNAハイブリッドである開示される方法の実施形態において使用され得るため、開示される方法での使用に特に適している。
【0208】
Hel308ヘリカーゼは、全内容が参照により組み込まれるWO2013/057495などの出版物に記載されている。RecDヘリカーゼは、全内容が参照により組み込まれるWO2013/098562などの出版物に記載されている。XPDヘリカーゼは、全内容が参照により組み込まれるWO2013/098561などの出版物に記載されている。Ddaヘリカーゼは、各々の全内容が参照により組み込まれるWO2015/055981およびWO2016/055777などの出版物に記載されている。
【0209】
一実施形態では、ヘリカーゼは、配列番号6に示される配列(Trwc Cba)もしくはその変異形、配列番号7に示される配列(Hel308 Mbu)もしくはその変異形、または配列番号8に示される配列(Dda)もしくはその変異形を含む。変異形は、本明細書で考察される方法のうちのいずれかで天然配列とは異なり得る。配列番号8の例示的な変異形は、E94C/A360Cを含む。配列番号8のさらなる例示的な変異形は、E94C/A360C、次いで(ΔM1)G1G2(すなわち、M1の欠失、次いでG1およびG2の付加)を含む。
【0210】
いくつかの実施形態では、モータータンパク質(例えば、ヘリカーゼ)は、少なくとも2つの活性動作モード(モータータンパク質が移動を促進するのに必要なすべての成分、例えば、本明細書で考察されるATPおよびMg2+などの燃料および補因子を備えている場合)および1つの不活性動作モード(モータータンパク質が移動を促進するのに必要な成分を備えていない場合)でコンジュゲートの移動を制御することができる。
【0211】
移動を容易にするのに必要なすべての成分を備えている場合(つまり、活性モードで)、モータータンパク質(エゲリカーゼ)は、ポリヌクレオチドに沿って5’から3’または3’から5’の方向(モータータンパク質によって異なる)に移動する。モータータンパク質を使用して、コンジュゲートをポアから(例えば、適用された力に反して)遠ざける(例えば、外に出す)、またはコンジュゲートをポアに(例えば、適用された力とともに)向かって(例えば中に入れる)移動させることができる。例えば、モータータンパク質が向かって移動するコンジュゲートの末端がポアによって捕捉されると、モータータンパク質は、力の方向に逆らって作用し、ねじ状(threaded)のコンジュゲートをポアから(例えばシスチャンバー内に)引き抜く。しかしながら、モータータンパク質が離れて移動する端がポア内で捕捉されると、モータータンパク質は、力の方向に従って作用し、ねじ状コンジュゲートをポア内に(例えば、トランスチャンバー内に)押し込む。
【0212】
モータータンパク質(例えば、ヘリカーゼ)が移動を促進するのに必要な成分を備えていない場合(すなわち、不活性モードで)、モータータンパク質は、コンジュゲートに結合し、例えば力によってポア内に引き込まれることによってそれがナノポアに対して移動するときに構築物の移動を遅延させるブレーキとして機能することができる。不活性モードでは、コンジュゲートのどちらの末端が捕捉されるかは問題ではなく、コンジュゲートのポアに対する移動を決定する適用された力が重要であり、ポリヌクレオチド結合タンパク質はブレーキとして機能する。不活性モードの場合、ポリヌクレオチド結合タンパク質によるコンジュゲートの移動の制御は、ラチェッティング、スライディング、およびブレーキングを含むいくつかの方法で説明することができる。
【0213】
モータータンパク質は、典型的には、ポリヌクレオチドのプロセシングをハンドリングするために燃料を必要とする。燃料は、典型的には、遊離ヌクレオチドまたは遊離ヌクレオチド類似体である。遊離ヌクレオチドは、アデノシン一リン酸(AMP)、アデノシン二リン酸(ADP)、アデノシン三リン酸(ATP)、グアノシン一リン酸(GMP)、グアノシン二リン酸(GDP)、グアノシン三リン酸(GTP)、チミジン一リン酸(TMP)、チミジン二リン酸(TDP)、チミジン三リン酸(TTP)、ウリジン一リン酸(UMP)、ウリジン二リン酸(UDP)、ウリジン三リン酸(UTP)、シチジン一リン酸(CMP)、シチジン二リン酸(CDP)、シチジン三リン酸(CTP)、環状アデノシン一リン酸(cAMP)、環状グアノシン一リン酸(cGMP)、デオキシアデノシン一リン酸(dAMP)、デオキシアデノシン二リン酸(dADP)、デオキシアデノシン三リン酸(dATP)、デオキシグアノシン一リン酸(dGMP)、デオキシグアノシン二リン酸(dGDP)、デオキシグアノシン三リン酸(dGTP)、デオキシチミジン一リン酸(dTMP)、デオキシチミジン二リン酸(dTDP)、デオキシチミジン三リン酸(dTTP)、デオキシウリジン一リン酸(dUMP)、デオキシウリジン二リン酸(dUDP)、デオキシウリジン三リン酸(dUTP)、デオキシシチジン一リン酸(dCMP)、デオキシシチジン二リン酸(dCDP)、およびデオキシシチジン三リン酸(dCTP)のうちの1つ以上であり得るが、これらに限定されない。遊離ヌクレオチドは、通常、AMP、TMP、GMP、CMP、UMP、dAMP、dTMP、dGMP、またはdCMPから選択される。遊離ヌクレオチドは、典型的には、アデノシン三リン酸(ATP)である。
【0214】
モータータンパク質の補因子は、モータータンパク質が機能することを可能にする因子である。補因子は、好ましくは、二価金属カチオンである。二価金属カチオンは、好ましくは、Mg2+、Mn2+、Ca2+、またはCo2+である。補因子は、最も好ましくは、Mg2+である。
【0215】
本明細書で説明するように、いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質が、ナノポアに対するコンジュゲートの移動を制御するために使用される場合、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質とナノポアとの間の距離を延長するために、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質が修飾される。
【0216】
ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質は、任意の適切な方法で修飾され得る。ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質などのタンパク質の修飾は、当業者の知識の範囲内である。
【0217】
ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質は、タンパク質構造に追加のアミノ酸を導入することによって修飾され得る。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質は、タンパク質の自然の範囲を超えて延びる1つ以上のループ領域を導入することによって修飾される。ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質が複数のサブユニットを含む実施形態において、1つ以上のループ領域が、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質の1つ以上のサブユニットに導入され得る。
【0218】
ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質は、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質がナノポアに対して「着座位置」にあるときに、ナノポアを置換するために、1つ以上の追加のドメインの融合によって修飾され得る。
【0219】
ナノポア
上で説明したように、本明細書に開示される方法は、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質を使用して、ナノポアに対するコンジュゲートの移動を制御することを含む。
【0220】
開示される方法では、任意の適切なナノポアを使用することができる。一実施形態では、ナノポアは、膜貫通ポアである。
【0221】
膜貫通ポアは、膜をある程度横断する構造である。それにより、印加電位によって駆動される水和イオンが膜を横切って流れるまたは膜内に流れることが可能になる。膜貫通ポアは、典型的には、膜全体を横断し、これにより、水和イオンが膜の片側から膜の反対側に流れることができるようになる。しかしながら、膜貫通ポアは膜を横断する必要はない。一方の末端が閉鎖していてもよい。例えば、ポアは、膜中のウェル、間隙、チャネル、溝、またはスリットであり得、それに沿ってまたはその中に水和イオンが流れることができる。
【0222】
任意の膜貫通ポアが本明細書に提供される方法で使用され得る。ポアは、生物学的であっても人工であってもよい。好適な細孔は、タンパク質細孔、ポリヌクレオチド細孔、および固体細孔を含むが、これらに限定されない。一実施形態では、固体ポアは、ナノチャネルを含み得る。細孔は、DNA折り紙細孔であり得る(Langecker et al.,Science,2012;338:932-936)。好適なDNA折り紙ポアは、WO2013/083983に開示されている。
【0223】
一実施形態では、ナノポアは、膜貫通タンパク質ポアである。膜貫通タンパク質ポアは、ポリヌクレオチドなどの水和イオンが膜の片側から膜の反対側へ流れることを可能にするポリペプチドまたはポリペプチドの集合体である。本明細書に提供される方法では、膜貫通タンパク質ポアは、印加電位によって駆動される水和イオンが膜の片側から反対側に流れることを可能にするポアを形成することができる。膜貫通タンパク質ポアは、好ましくは、ポリヌクレオチドがトリブロックコポリマー膜などの膜の片側から反対側に流れることを可能にする。膜貫通タンパク質ポアは、ポリヌクレオチドをポアを通して移動させることを可能にする。
【0224】
一実施形態では、ナノポアは、モノマーまたはオリゴマーである膜貫通タンパク質ポアである。ポアは、好ましくは、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、または少なくとも16のサブユニットなどのいくつかの繰り返しサブユニットから構成されている。ポアは、好ましくは、六量体、七量体、八量体、または九量体ポアである。ポアは、ホモオリゴマーであってもヘテロオリゴマーであってもよい。
【0225】
一実施形態では、膜貫通タンパク質ポアは、イオンが通って流れることができるバレルまたはチャネルを含む。ポアのサブユニットは、典型的には、中心軸を取り囲み、鎖を膜貫通βバレルもしくはチャネルまたは膜貫通α-ヘリックスバンドルもしくはチャネルに寄与する。
【0226】
典型的には、膜貫通タンパク質ポアのバレルまたはチャネルは、標的ポリヌクレオチド(本明細書に記載のもの)などの分析物との相互作用を促進するアミノ酸を含む。これらのアミノ酸は、好ましくは、バレルまたはチャネルの狭窄の近くに位置する。膜貫通タンパク質ポアは、典型的には、アルギニン、リジン、もしくはヒスチジンなどの1つ以上の正電荷アミノ酸、またはチロシンもしくはトリプトファンなどの芳香族アミノ酸を含む。これらのアミノ酸は、典型的には、ポアと、ヌクレオチド、ポリヌクレオチド、または核酸との間の相互作用を促進する。
【0227】
一実施形態では、ナノポアは、βバレルポアまたはαヘリックスバンドルポアに由来する膜貫通タンパク質ポアである。β-バレルポアは、β鎖から形成されるバレルまたはチャネルを含む。好適なβ-バレルポアには、β-毒素、例えば、α-溶血毒、炭疽毒素、およびロイコシジン、ならびに細菌の外膜タンパク質/ポリン、例えば、Mycobacterium smegmatisポリン(Msp)、例えば、MspA、MspB、MspC、またはMspD、CsgG、外膜ポリンF(OmpF)、外膜ポリンG(OmpG)、外膜ホスホリパーゼA、およびNeisseriaオートトランスポーターリポタンパク質(NalP)、ならびに他のポア、例えば、リセニンが含まれるが、これらに限定されない。α-ヘリックスバンドルポアは、α-ヘリックスから形成されるバレルまたはチャネルを含む。好適なα-ヘリックスバンドル細孔は、内膜タンパク質およびα外膜タンパク質、例えばWZAおよびClyA毒素を含むが、これらに限定されない。
【0228】
一実施形態では、ナノポアは、Msp、α-溶血素(α-HL)、リセニン、CsgG、ClyA、Sp1、もしくは溶血性タンパク質フラガセアトキシンC(FraC)に由来するか、またはそれらに基づく膜貫通ポアである。
【0229】
一実施形態では、ナノポアは、CsgG、例えば、E.coli株K-12亜株MC4100由来のCsgGに由来する。かかるポアはオリゴマーであり、典型的には、CsgGに由来する7、8、9、または10個のモノマーを含む。ポアは、同一のモノマーを含むCsgGに由来するホモオリゴマーポアであり得る。あるいは、ポアは、他とは異なる少なくとも1つのモノマーを含むCsgGに由来するヘテロオリゴマーポアであり得る。CsgGに由来する好適なポアの例は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるWO2016/034591に開示されている。
【0230】
一実施形態では、ナノポアは、リセニンに由来する膜貫通ポアである。リセニンに由来する好適なポアの例は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるWO2013/153359に開示されている。
【0231】
一実施形態では、ナノポアは、α-溶血素(α-HL)に由来するか、またはそれに基づく膜貫通ポアである。野生型α-溶血毒ポアは、7つの同一のモノマーまたはサブユニットから形成される(すなわち、それは七量体である)。α-溶血素ポアは、α-溶血素-NNまたはその変異形であり得る。変異形は、好ましくは、E111位およびK147位にN残基を含む。
【0232】
一実施形態では、ナノポアは、Mspに由来する、例えば、MspAに由来する膜貫通タンパク質ポアである。MspAに由来する好適なポアの例は、WO2012/107778に開示されている。
【0233】
一実施形態では、ナノポアは、ClyAに由来するか、またはそれに基づく膜貫通ポアである。
【0234】
上で説明したように、いくつかの実施形態では、ナノポアは狭窄を含む。狭窄は、典型的には、ナノポアを通るチャネルの狭小化であり、これは、コンジュゲートがナノポアに対して移動するときに得られるシグナルを決定または制御し得る。本明細書で使用される場合、タンパク質および固体ナノポアの両方は、典型的には、「狭窄」を含む。
【0235】
いくつかの実施形態において、ナノポアは、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質とナノポアの狭窄領域との間の距離を延長するように修飾される。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質が、ナノポアに対するコンジュゲートの移動を制御するために使用されている場合、ナノポアは、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質とナノポアの狭窄領域との間の距離を延長するように修飾される。いくつかの実施形態において、ナノポアは、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質がナノポアと接触しているときに、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質とナノポアの狭窄領域との間の距離を延長するように修飾される。
【0236】
いくつかの実施形態において、ナノポアは、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質の活性部位とナノポアの狭窄領域との間の距離を延長するように修飾される。そのような実施形態では、距離は、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質がナノポアに対するコンジュゲートの移動を制御するために使用されている場合、および/またはポリヌクレオチドハンドリングタンパク質がナノポアと接触している場合、ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質の活性部位とナノポアの狭窄との間の距離であり得る。
【0237】
ナノポアは、任意の適切な方法で修飾され得る。タンパク質ナノポアなどのナノポアの修飾は、当業者の知識の範囲内である。固体ナノポアの修飾はルーチンであり、ナノポアが形成される基板を制御する(例えば厚さ)かまたはナノポアが形成される構成要素を制御することによって達成され得る。
【0238】
例えば、ナノポアは、ポアを通るチャネルの長さを延長するように修飾され得る。
【0239】
タンパク質ナノポアは、ポア構造に追加のアミノ酸を導入することによって修飾され得る。いくつかの実施形態において、タンパク質ナノポアは、ナノポアの自然の範囲を超えて延びる1つ以上のループ領域を導入することによって修飾される。ナノポアが複数のサブユニットを含む実施形態では、1つ以上のループ領域を、ナノポアの1つ以上のサブユニットに導入することができる。ループ領域は、例えば、ナノポアのシス入口を超えて延びることができる。
【0240】
タンパク質ナノポアは、ポアを通るバレルまたはチャネルの長さを延長するように修飾され得る。例えば、ベータバレルのポアは、バレルを形成する部分のタンパク質配列に追加のアミノ酸を導入することによって修飾され、それによりバレルの長さを延長し得る。そのような修飾に関連する位置の合理的な設計は、例えば、タンパク質および/またはそのモノマーサブユニットの構造(例えば、X線)構造を参照することによって行うことができる。
【0241】
タンパク質ナノポアは、1つ以上の追加ドメインの融合によって修飾されて、ナノポアに対するポリヌクレオチドハンドリングタンパク質の「着座位置」を上げることができる。
【0242】
いくつかの実施形態では、タンパク質ナノポアを別のタンパク質ナノポアに融合することによってタンパク質ナノポアを修飾することが可能である。このようにして、ナノポアの鎖を、それを通る単一のチャネルを含めて作製して、チャネルの狭窄とポリヌクレオチドハンドリングタンパク質との間の距離を伸ばすことができる。このような場合、複数のナノポアは同じであっても異なっていてもよい。
【0243】
タグ
本明細書で提供される方法のいくつかの実施形態では、例えば、ナノポアによるコンジュゲートの捕捉を促進するために、ナノポア上のタグを使用することができる。
【0244】
ナノポア上のタグとポリヌクレオチド上の結合部位との間の相互作用(例えばコンジュゲートのポリヌクレオチド部分、またはコンジュゲートに付着したアダプターに存在する結合部位、ここで、結合部位はアダプターのアンカーもしくはリーダー配列によって、またはアダプターの二本鎖ステム内の捕捉配列によって提供することができる)は、可逆的であってもよい。例えば、ポリヌクレオチドは、例えばそのアダプターを介してナノポア上のタグに結合し、例えばナノポアによるポリヌクレオチドの特徴付け中および/またはモータータンパク質によるプロセシング中のある時点で放出することができる。強い非共有結合(例えば、ビオチン/アビジン)は依然として可逆的であり、本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態において有用である。例えば、相補体が(ナノポアから分離して拡散することなく)ナノポアの近傍に保持されるが、プロセシングされるときにナノポアから放出できるように、二本鎖ポリヌクレオチドの相補体(またはその相補体に付着しているアダプターの部分)とナノポアとの間の十分な相互作用を提供するために、ポアタグおよびポリヌクレオチドアダプターのペアを設計してもよい。
【0245】
ポアタグとポリヌクレオチドアダプターは、ナノポア上のタグへのポリヌクレオチド上の結合部位(例えば、アダプターのアンカーもしくはリーダー配列によって、またはアダプターの二本鎖ステム内の捕捉配列によって提供される結合部位)の結合強度またはアフィニティが、適用された力がかかり、結合したポリヌクレオチドをナノポアから放出するまで、ナノポアとポリヌクレオチドの間のカップリングを維持するのに十分であるように、構成され得る。
【0246】
いくつかの実施形態では、タグまたはテザーは荷電されていない。これにより、電位差が存在するならば、その影響下でタグまたはテザーがナノポア内に引き込まれないことを確実にすることができる。
【0247】
コンジュゲート、ポリヌクレオチドもしくはアダプターを引き付けるかまたはこれらに結合する1つ以上の分子が、ナノポアに連結されていてもよい。コンジュゲート、アダプターおよび/またはポリヌクレオチドにハイブリダイズする任意の分子を使用してもよい。ポアに付着した分子は、PNAタグ、PEGリンカー、短いオリゴヌクレオチド、正荷電アミノ酸およびアプタマーから選択してもよい。そのような分子がポアに結合していることは当該分野において既知である。例えば、短いオリゴヌクレオチドが付着したポアは、Howarka et al(2001)Nature Biotech.19:636-639およびWO2010/086620に開示されており、ポアのルーメン内に付着したPEGを含むポアは、Howarka et al(2000)J.Am.Chem.Soc.122(11):2411-2416に開示されている。
【0248】
コンジュゲート中(例えばアダプター中のリーダー配列または別の一本鎖配列中)の配列に相補的な配列を含む、ナノポアに付着した短いオリゴヌクレオチドを使用して、本明細書記載の方法において、コンジュゲートの捕捉を増強してもよい。
【0249】
いくつかの実施形態では、タグまたはテザーは、オリゴヌクレオチド(例えば、DNA、RNA、LNA、BNA、PNA、またはモルフォリノ)を含んでも、またはそれであってもよい。オリゴヌクレオチドは、約10~30ヌクレオチドの長さまたは約10~20ヌクレオチドの長さを有することができる。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、他の修飾箇所または例えばビーズを含む固体基材表面へのコンジュゲート化のために修飾された少なくとも1つの末端(例えば、3´-または5´-末端)を有することができる。末端修飾剤は、結合に使用することができる反応性官能基を付加してもよい。付加することができる官能基の例としては、アミノ、カルボキシル、チオール、マレイミド、アミノオキシ、およびそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。官能基は、オリゴヌクレオチド配列の末端から官能基の物理的距離を加えるために、異なる長さのスペーサー(例えば、C3、C9、C12、スペーサー9および18)と組み合わせることができる。
【0250】
オリゴヌクレオチドの3´および/または5´末端修飾の例としては、化学結合のための3´アフィニティタグおよび官能基(例えば、3´-ビオチン、3´-一級アミン、3´-ジスルフィドアミド、3´-ピリジルジチオ、およびそれらの任意の組み合わせを含む);5´末端修飾(例えば、5´-一級アンミン、および/または5´-ダブシルを含む);クリックケミストリーのための修飾(例えば、3´-アジド、3´-アルキン、5´-アジド、5´-アルキンを含む)、およびそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0251】
いくつかの実施形態では、タグまたはテザーは、例えば、ナノポアへのカップリングを促進するために、ポリマーリンカーをさらに含んでもよい。例示的なポリマーリンカーは、ポリエチレングリコール(PEG)を含むが、これに限定されない。ポリマーリンカーは、約500Da~約10kDa(両端を含む)、または約1kDa~約5kDa(両端を含む)の分子量を有してもよい。ポリマーリンカー(例えば、PEG)は、例えば、これらに限定されないが、マレイミド、NHSエステル、ジベンゾシクロオクチン(DBCO)、アジド、ビオチン、アミン、アルキン、アルデヒド、およびそれらの任意の組み合わせを含む異なる官能基で官能化することができる。
【0252】
タグまたはテザーの他の例には、Hisタグ、ビオチンまたはストレプトアビジン、検体に結合する抗体、検体に結合するアプタマー、DNA結合ドメインなどの検体結合ドメイン(例えば、ロイシンジッパーのようなペプチドジッパー、一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)を含む)、およびそれらの任意の組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0253】
当技術分野で既知の任意の方法を使用して、タグまたはテザーをナノポアの外面、例えば、膜のシス側上に付着させてもよい。例えば、1つ以上のタグまたはテザーは、1つ以上のシステイン(システイン結合)、1つ以上のリジンなどの一級アミン、1つ以上の非天然アミノ酸、1つ以上のヒスチジン(Hisタグ)、1つ以上のビオチンまたはストレプトアビジン、1つ以上の抗体に基づいたタグ、エピトープの1つ以上の酵素修飾(例えば、アセチルトランスフェラーゼを含む)、およびそれらの任意の組み合わせを介してナノ細孔に付着することができる。そのような修飾を実施するための好適な方法は、当技術分野で周知である。好適な非天然アミノ酸には、4-アジド-L-フェニルアラニン(Faz)、およびLiu C.C.and Schultz P.G.,Annu.Rev.Biochem.,2010,79,413-444の図1中の1~71が付番されたいずれかのアミノ酸を含むが、これらに限定されない。
【0254】
1つ以上のタグまたはテザーがシステイン結合を介してナノポアに付着しているいくつかの実施形態では、1つ以上のシステインを、ナノポアを形成する1つ以上のモノマーに、置換により、導入することができる。いくつかの実施形態では、ナノポアは、以下の付着によって化学的に修飾され得る:(i)4-フェニルアゾマレイナニル、1.N-(2-ヒドロキシエチル)マレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、1.3-マレイミドプロピオン酸、1.1-4-アミノフェニル-1H-ピロール,2,5,ジオン、1.1-4-ヒドロキシフェニル-1H-ピロール,2,5,ジオン、N-エチルマレイミド、N-メトキシカルボニルマレイミド、N-tert-ブチルマレイミド、N-(2-アミノエチル)マレイミド、3-マレイミド-プロキシル、N-(4-クロロフェニル)マレイミド、1-[4-(ジメチルアミノ)-3,5-ジニトロフェニル]-1H-ピロール-2,5-ジオン、N-[4-(2-ベンズイミダゾリル)フェニル]マレイミド、N-[4-(2-ベンゾオキサゾリル)フェニル]マレイミド、N-(1-ナフチル)-マレイミド、N-(2,4-キシリル)マレイミド、N-(2,4-ジフルオロフェニル)マレイミド、N-(3-クロロ-パラ-トリル)-マレイミド、1-(2-アミノ-エチル)-ピロール-2,5-ジオンヒドロクロリド、1-シクロペンチル-3-メチル-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-2,5-ジオン、1-(3-アミノプロピル)-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-2,5-ジオンヒドロクロリド、3-メチル-1-[2-オキソ-2-(ピペラジン-1-イル)エチル]-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-2,5-ジオンヒドロクロリド、1-ベンジル-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-2,5-ジオン、3-メチル-1-(3,3,3-トリフルオロプロピル)-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-2,5-ジオン、1-[4-(メチルアミノ)シクロヘキシル]-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-2,5-ジオントリフルオロ酢酸、SMILES O=C1C=CC(=O)N1CC=2C=CN=CC2、SMILES O=C1C=CC(=O)N1CN2CCNCC2、1-ベンジル-3-メチル-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-2,5-ジオン、1-(2-フルオロフェニル)-3-メチル-2,5-ジヒドロ1H-ピロール-2,5-ジオン、N-(4-フェノキシフェニル)マレイミド、N-(4-ニトロフェニル)マレイミドなどのジアブロモマレイミドを含むマレイミド、(ii)3-(2-ヨードアセトアミド)-プロキシル、N-(シクロプロピルメチル)-2-ヨードアセトアミド、2-ヨード-N-(2-フェニルエチル)アセトアミド、2-ヨード-N-(2,2,2-トリフルオロエチル)アセトアミド、N-(4-アセチルフェニル)-2-ヨードアセトアミド、N-(4-(アミノスルホニル)フェニル)-2-ヨードアセトアミド、N-(1,3-ベンゾチアゾール-2-イル)-2-ヨードアセトアミド、N-(2、6-(ジエチルフェニル)-2-ヨードアセトアミド、N-(2-ベンゾイル-4-クロロフェニル)-2-ヨードアセトアミドなどのヨードアセトアミド、(iii)N-(4-(アセチルアミノ)フェニル)-2-ブロモアセトアミド、N-(2-アセチルフェニル)-2-ブロモアセトアミド、2-ブロモ-n-(2-シアノフェニル)アセトアミド、2-ブロモ-N-(3-((トリフルオロメチル)フェニル)アセトアミド、N-(2-ベンゾイルフェニル)-2-ブロモアセトアミド、2-ブロモ-N-(4-フルオロフェニル)-3-メチルブタンアミド、N-ベンジル-2-ブロモ-N-フェニルプロピオンアミド、N-(2-ブロモ-ブチル)-4-クロロ-ベンゼンスルホンアミド、2-ブロモ-N-メチル-N-フェニルアセトアミド、2-ブロモ-N-フェネチル-アセトアミド、2-アダマンタン-1-イル-2-ブロモ-N-シクロヘキシル-アセトアミド、2-ブロモ-N-(2-メチルフェニル)ブタンアミド、モノブロモアセトアニリドなどのブロモアセトアミド、(iv)アルドリチオール-2、アルドリチオール-4、イソプロピルジスルフィド、1-(イソブチルジスルファニル)-2-メチルプロパン、ジベンジルジスルフィド、4-アミノフェニルジスルフィド、3-(2-ピリジルジチオ)プロピオン酸、3-(2-ピリジルジチオ)プロピオン酸ヒドラジド、3-(2-ピリジルジチオ)プロピオン酸N-スクシンイミジルエステル、am6amPDP1-βCDなどのジスルフィド、および(v)4-フェニルチアゾール-2-チオール、パーパルド、5,6,7,8-テトラヒドロ-キナゾリン-2-チオールなどのチオール。
【0255】
いくつかの実施形態では、タグまたはテザーは、ナノポアに直接または1つ以上のリンカーを介して付着してもよい。タグまたはテザーは、WO2010/086602に記載のハイブリリンカーを用いてナノ細孔に付着してもよい。あるいは、ペプチドリンカーを使用してもよい。ペプチドリンカーはアミノ酸配列である。ペプチドリンカーの長さ、可撓性、および親水性は、典型的には、モノマーおよび細孔の機能を妨げないように設計される。好ましい可撓性ペプチドリンカーは2~20個、例えば、4、6、8、10、または16個のセリン、および/またはグリシンアミノ酸のストレッチである。より好ましい可撓性リンカーは、(SG)、(SG)、(SG)、(SG)、(SG)、および(SG)を含み、Sはセリンであり、Gはグリシンである。好ましい剛性リンカーは、2~30個、例えば4、6、8、16、または24個のプロリンアミノ酸のストレッチである。より好ましい剛性リンカーは、Pがプロリンである、(P)12を含む。
【0256】

典型的には、開示される方法において、ナノポアは典型的には膜に存在する。任意の好適な膜を系で使用することができる。
【0257】
膜は、好ましくは、両親媒性層である。両親媒性層は、親水特性および親油特性の両方を有するリン脂質などの両親媒性分子から形成された層である。両親媒性分子は、合成または天然に存在するものであり得る。天然に存在しない両親媒性物質および単分子層を形成する両親媒性物質は、当該技術分野で既知であり、それらには、例えば、ブロックコポリマー(Gonzalez-Perez et al.,Langmuir,2009,25,10447-10450)が含まれる。ブロックコポリマーは、2つ以上のモノマーサブユニットが一緒に重合されて単一ポリマー鎖を作製するポリマー材料である。ブロックコポリマーは、典型的には、各モノマーサブユニットによって寄与される特性を有する。しかしながら、ブロックコポリマーは、個々のサブユニットから形成されたポリマーが有しない固有の特性を有し得る。ブロックコポリマーは、モノマーサブユニットのうちの1つが疎水性(すなわち、親油性)である一方で、他のサブユニットが水性媒体中で親水性であるように操作され得る。この場合、ブロックコポリマーは、両親媒特性を有し得、生体膜を模倣する構造を形成し得る。ブロックコポリマーは、ジブロック(2つのモノマーサブユニットからなる)であり得るが、3つ以上のモノマーサブユニットから構築されて両親媒性物質として挙動するより複雑な配置を形成し得る。コポリマーは、トリブロック、テトラブロック、またはペンタブロックコポリマーであり得る。膜は、好ましくは、トリブロックコポリマー膜である。
【0258】
古細菌二極性テトラエーテル脂質は、脂質が単分子層膜を形成するように構築される天然に存在する脂質である。これらの脂質は、一般に、厳しい生物環境下で生き残る好極限性細菌、好熱菌、好塩菌、および好酸菌で見つけられる。それらの安定性は、最終二分子層の融合性質から得られると考えられている。一般モチーフ親水性-疎水性-親水性を有するトリブロックポリマーを作製することによってこれらの生物学的実体を模倣するブロックコポリマーを構築することは簡単である。この材料は、脂質二分子層と同様に挙動するモノマー膜を形成し、ベシクルから層状膜に至るまでの幅広い相挙動を包含し得る。これらのトリブロックコポリマーから形成された膜は、生体脂質膜に優るいくつかの利点を有する。トリブロックコポリマーが合成されたものであるため、その正確な構造を慎重に制御して、膜を形成し、かつポアおよび他のタンパク質と相互作用するのに必要な正しい鎖長および特性を提供することができる。
【0259】
ブロックコポリマーは、脂質サブ材料として分類されないサブユニットから構築される場合もあり、例えば、疎水性ポリマーは、シロキサンまたは他の非炭化水素系モノマーから作製され得る。ブロックコポリマーの親水性サブセクションは低いタンパク質結合特性も有し得、これは、生の生体試料に曝露されたときに高度に耐性である膜の作製を可能にする。このヘッド基単位は、非分類脂質ヘッド基に由来する場合もある。
【0260】
トリブロックコポリマー膜は、生体脂質膜と比較して増加した機械的および環境的安定性、例えば、はるかに高い動作温度またはpH範囲も有する。ブロックコポリマーの合成性質は、ポリマー系膜を幅広い用途のためにカスタマイズする基盤を提供する。
【0261】
いくつかの実施形態では、膜は、国際出願第WO2014/064443号または同第WO2014/064444号に開示される膜のうちの1つである。
【0262】
両親媒性分子は、ポリヌクレオチドのカップリングを容易にするように化学的に修飾されても官能化されてもよい。両親媒性層は、単分子層であっても二分子層であってもよい。両親媒性層は、典型的には、平面である。両親媒性層は、湾曲していてもよい。両親媒性層は、支持されていてもよい。
【0263】
両親媒性膜は、典型的には、およそ10-8cm s-1の脂質拡散速度を有する二次元流体として本質的に作用する天然に移動性である。これは、ポアおよびカップリングされたポリヌクレオチドが典型的には両親媒性膜内で移動することができることを意味する。
【0264】
膜は、脂質二分子層であり得る。脂質二分子層は、細胞膜のモデルであり、幅広い実験研究のための優れた基盤として機能する。例えば、脂質二分子層は、単一チャネル記録による膜タンパク質のインビトロ調査のために使用することができる。あるいは、脂質二分子層は、幅広い物質の存在を検出するためのバイオセンサーとして使用することができる。脂質二分子層は、任意の脂質二分子層であり得る。好適な脂質二分子層には、平面脂質二分子層、支持二分子層、またはリポソームが含まれるが、これらに限定されない。脂質二分子層は、好ましくは、平面脂質二分子層である。好適な脂質二分子層は、WO2008/102121、WO2009/077734、およびWO2006/100484に開示されている。
【0265】
脂質二分子層を形成するための方法は、当該技術分野で既知である。脂質二分子層は、Montal and Mueller(Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,1972;69:3561-3566)の方法によって一般に形成され、この方法において、脂質一分子層は、水溶液/空気界面上で、その界面に対して直角な孔の両側を通り過ぎて担持される。脂質は、通常、最初にそれを有機溶媒中に溶解し、次いで少量の溶媒を孔の両側で水溶液の界面上で蒸発させることによって、電解質水溶液の界面に添加される。有機溶媒が蒸発すると、開口の両側の溶液/空気界面は、二分子層が形成されるまで開口を越えて物理的に上下に移動する。平面脂質二分子層は、開口を横切って膜内にまたは開口部を横切って陥凹部内に形成され得る。
【0266】
Montal&Muellerの方法は、タンパク質ポア挿入に好適な良質の脂質二分子層を形成するための費用対効果の高い、比較的簡単な方法であるため、好評である。二分子層形成の他の一般的な方法には、先端浸漬(tip-dipping)、二分子層の塗装(painting bilayers)、およびリポソーム二分子層のパッチクランプが含まれる。
【0267】
先端浸漬二分子層形成は、脂質の単分子層を担持する試験溶液の表面上に開口面(例えば、ピペットチップ)を接触させることを伴う。この場合もやはり、脂質単分子層は、最初に有機溶媒中に溶解した少量の脂質を溶液表面で蒸発させることによって溶液/空気界面で生成される。その後、二分子層はラングミュア-シェーファー法によって形成され、溶液表面に対して開口を移動させるための機械的自動化を必要とする。
【0268】
二分子層の塗装の場合、有機溶媒中に溶解した少量の脂質が試験水溶液中に浸した開口に直接塗布される。脂質溶液は、塗装用刷毛または同等のものを使用して開口にわたって薄く広げられる。溶媒を薄くすることにより、脂質二分子層の形成がもたらされる。しかしながら、二分子層から溶媒を完全に除去することは困難であり、その結果として、この方法によって形成された二分子層は安定性が低く、電気化学的測定中にノイズを生じやすい。
【0269】
パッチクランプは、生体細胞膜の研究で一般に使用されている。細胞膜は吸引によりピペットの端部に留められ、膜のパッチが開口にわたって付着するようになる。この方法は、リポソームを留めてから破裂させて脂質二分子層をピペットの開口にわたって密封することによって脂質二分子層を産生するように適合されている。この方法は、安定した巨大な単分子層リポソーム、およびガラス表面を有する材料に小さい開口を製造することを必要とする。
【0270】
リポソームは、超音波処理、押出、またはMozafari法(Colas et al.(2007)Micron 38:841-847)によって形成することができる。
【0271】
いくつかの実施形態では、脂質二分子層は、国際出願第WO2009/077734号に記載されるように形成される。この方法では有利に、脂質二分子層は乾燥脂質から形成される。最も好ましい実施形態では、脂質二分子層は、WO2009/077734に記載されるように、開口を横切って形成される。
【0272】
脂質二分子層は、脂質の2つの対向する層から形成される。これらの2つの脂質層は、それらの疎水性テール基が互いに向き合って疎水性内部を形成するように配置される。脂質の親水性ヘッド基は、二分子層の両側で水性環境に向かって外側に向いている。二分子層は、液体無秩序相(流体層状)、液体秩序相、固体秩序相(層状ゲル相、櫛型ゲル相)、および平面二分子層結晶(層状サブゲル相、ラメラ結晶相)を含むが、これらに限定されない、いくつかの脂質相に存在し得る。
【0273】
脂質二分子層を形成するいずれの脂質組成物も使用することができる。脂質組成物は、必要な特性、例えば、表面荷電、膜タンパク質を支持する能力、充填密度、または機械的特性を有する脂質二分子層が形成されるように選択される。脂質組成物は、1つ以上の異なる脂質を含むことができる。例えば、脂質組成物は、最大100個の脂質を含むことができる。脂質組成物は、好ましくは、1~10個の脂質を含む。脂質組成物は、天然に存在する脂質および/または人工脂質を含み得る。
【0274】
脂質は、典型的には、ヘッド基、界面部分、および同じであっても異なってもよい2つの疎水性テール基を含む。好適なヘッド基には、中性ヘッド基、例えば、ジアシルグリセリド(DG)およびセラミド(CM)、双性イオンヘッド基、例えば、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、およびスフィンゴミエリン(SM)、負に帯電したヘッド基、例えば、ホスファチジルグリセロール(PG)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジン酸(PA)、およびカルジオリピン(CA)、ならびに正に帯電したヘッド基、例えば、トリメチルアンモニウム-プロパン(TAP)が含まれるが、これらに限定されない。好適な界面部分には、天然に存在する界面部分、例えば、グリセロール系部分またはセラミド系部分が含まれるが、これらに限定されない。好適な疎水性テール基には、飽和炭化水素鎖、例えば、ラウリン酸(n-ドデカノール酸(n-Dodecanolic acid))、ミリスチン酸(n-テトラデコノニン酸(n-Tetradecononic acid))、パルミチン酸(n-ヘキサデカン酸)、ステアリン酸(n-オクタデカン酸)、およびアラキジン酸(n-エイコサン酸)、不飽和炭化水素鎖、例えば、オレイン酸(シス-9-オクタデカン酸)、ならびに分岐炭化水素鎖、例えば、フィタノイルが含まれるが、これらに限定されない。不飽和炭化水素鎖中の鎖の長さならびに二重結合の位置および数は異なり得る。分岐炭化水素鎖中のメチル基などの鎖の長さならびに分岐の位置および数は異なり得る。疎水性テール基は、エーテルまたはエステルとして界面部分に連結され得る。脂質は、ミコール酸であり得る。
【0275】
脂質は、化学的に修飾することもできる。脂質のヘッド基またはテール基は化学的に修飾され得る。ヘッド基が化学的に修飾されている好適な脂質には、PEG修飾脂質、例えば、1,2-ジアシル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[メトキシ(ポリエチレングリコール)-2000]、官能化PEG脂質、例えば、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3ホスホエタノールアミン-N-[ビオチニル(ポリエチレングリコール)2000]、ならびにコンジュゲーションのために修飾された脂質、例えば、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-(スクシニル)および1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-(ビオチニル)が含まれるが、これらに限定されない。テール基が化学的に修飾されている好適な脂質には、重合性脂質、例えば、1,2-ビス(10,12-トリコサジイノイル(tricosadiynoyl))-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、フッ化脂質、例えば、1-パルミトイル-2-(16-フルオロパルミトイル)-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、重水素化脂質、例えば、1,2-ジパルミトイル-D62-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、およびエーテル結合脂質、例えば、1,2-ジ-O-フィタニル-sn-グリセロ-3-ホスホコリンが含まれるが、これらに限定されない。脂質は、ポリヌクレオチドのカップリングを容易にするように化学的に修飾されても官能化されてもよい。
【0276】
両親媒性層、例えば、脂質組成物は、典型的には、層の特性に影響を及ぼすであろう1つ以上の添加剤を含む。好適な添加剤には、脂肪酸、例えば、パルミチン酸、ミリスチン酸、およびオレイン酸、脂肪アルコール、例えば、パルミチンアルコール、ミリスチンアルコール、およびオレインアルコール、ステロール、例えば、コレステロール、エルゴステロール、ラノステロール、シトステロール、およびスチグマステロール、リゾリン脂質、例えば、1-アシル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、およびセラミドが含まれるが、これらに限定されない。
【0277】
別の実施形態では、膜は、固体層を含む。固体層は、マイクロ電子材料、絶縁材料、例えば、Si、A1、およびSiO、有機および無機ポリマー、例えば、ポリアミド、プラスチック、例えば、Teflon(登録商標)、またはエラストマー、例えば、二成分付加硬化シリコンゴム、およびガラスを含むが、これらに限定されない、有機材料および無機材料の両方から形成することができる。固体層は、グラフェンから形成され得る。好適なグラフェン層は、WO2009/035647に開示されている。膜が固体層を含む場合、ポアは、典型的には、固体層内、例えば、固体層内の穴、ウェル、間隙、チャネル、溝、またはスリット内に含まれる両親媒性膜または層に存在する。当業者であれば、好適な固体/両親媒性ハイブリッド系を調製することができる。好適な系は、WO2009/020682およびWO2012/005857に開示されている。上で考察される両親媒性膜または層のうちのいずれかを使用することができる。
【0278】
本明細書に開示される方法は、典型的には、(i)ポアを含む人工両親媒性層、(ii)ポアを含む単離された天然に存在する脂質二分子層、または(iii)ポアが内部に挿入された細胞を使用して実行される。この方法は、典型的には、人工トリブロックコポリマー層などの人工両親媒性層を使用して実行される。層は、ポアに加えて、他の膜貫通タンパク質および/または膜内タンパク質、ならびに他の分子を含み得る。好適な装置および条件は、以下で考察される。開示される方法は、典型的には、インビトロで実施される。
【0279】
条件
上で説明したように、開示される方法は、ポリペプチドが含まれるコンジュゲートがナノポアに対して移動するにつれて、ポリペプチドを特徴付けることを含む。
【0280】
特徴付け方法は、ポアが膜内に挿入される膜/ポア系の調査に好適な任意の装置を使用して実行され得る。特徴付け方法は、膜貫通ポアセンシングに好適な任意の装置を用いて実行され得る。例えば、装置は、水溶液を含むチャンバと、チャンバを2つの区分に分離する障壁とを備え得る。障壁は、膜貫通ポアを含む膜が形成される開口を有し得る。膜貫通ポアは、本明細書に記載されている。
【0281】
特徴付け方法は、WO2008/102120、WO2010/122293、またはWO00/28312に記載の装置を使用して実行され得る。
【0282】
特徴付け方法は、典型的には電流の測定によって、ポアを通るイオン電流の流れを測定することを含み得る。あるいは、ポアを通るイオンの流れは、Heron et al:J.Am.Chem.Soc.9 Vol.131,No.5,2009によって開示されるように、光学的に測定され得る。したがって、装置は、電位を印加し、かつ膜およびポアを横切って電気信号を測定することができる電気回路も備え得る。特徴付け方法は、パッチクランプまたは電圧クランプを使用して実行され得る。特徴付け方法は、好ましくは、電圧クランプの使用を伴う。
【0283】
特徴付け方法は、各アレイが128、256、512、1024、2000、3000、4000、6000、10000、12000、15000、またはそれ以上のウェルを備えるシリコンベースのウェルアレイで実行され得る。
【0284】
特徴付け方法は、ポアを流れる電流を測定することを含み得る。この方法は、典型的には、電圧が膜およびポアを横切って印加された状態で実行される。使用される電圧は、典型的には+2V~-2V、典型的には-400mV~+400mVである。使用される電圧は、好ましくは、-400mV、-300mV、-200mV、-150mV、-100mV、-50mV、-20mV、および0mVから選択される下限と、+10mV、+20mV、+50mV、+100mV、+150mV、+200mV、+300mV、および+400mVから独立して選択される上限とを有する範囲内である。使用される電圧は、より好ましくは100mV~240mVの範囲内、最も好ましくは120mV~220mVの範囲内である。増加した印加電位を使用することによって、ポアごとに異なるヌクレオチド間の識別を増加させることが可能である。
【0285】
特徴付け方法は、典型的には、金属塩、例えば、アルカリ金属塩、ハロゲン化物塩、例えば、塩化物塩、例えば、アルカリ金属塩化物塩などの任意の電荷担体の存在下で実行される。電荷担体には、イオン性液体または有機塩、例えば、塩化テトラメチルアンモニウム、塩化トリメチルフェニルアンモニウム、塩化フェニルトリメチルアンモニウム、または1-エチル-3-メチルイミダゾリウムクロリドが含まれ得る。上で考察される例示的な装置では、塩は、チャンバ内の水溶液に存在する。塩化カリウム(KCl)、塩化ナトリウム(NaCl)、または塩化セシウム(CsCl)が典型的に使用される。KClが好ましい。塩は、塩化カルシウム(CaCl)などのアルカリ土類金属塩であり得る。塩濃度は、飽和時のものであり得る。塩濃度は、3M以下であり得、典型的には、0.1~2.5M、0.3~1.9M、0.5~1.8M、0.7~1.7M、0.9~1.6M、または1M~1.4Mである。塩濃度は、好ましくは、150mM~1Mである。特徴付け方法は、好ましくは、少なくとも0.3M、例えば、少なくとも0.4M、少なくとも0.5M、少なくとも0.6M、少なくとも0.8M、少なくとも1.0M、少なくとも1.5M、少なくとも2.0M、少なくとも2.5M、または少なくとも3.0Mの塩濃度を使用して実行される。高い塩濃度は、高いシグナル対ノイズ比を提供し、正常な電流変動のバックグラウンドに対する結合/結合なしを示す電流の特定を可能にする。
【0286】
特徴付け方法は、典型的には、緩衝液の存在下で実行される。上で考察される例示的な装置では、緩衝液は、チャンバ内の水溶液に存在する。任意の好適な緩衝液が使用され得る。典型的には、緩衝液は、HEPESである。別の好適な緩衝液は、Tris-HCl緩衝液である。本方法は、典型的には、4.0~12.0、4.5~10.0、5.0~9.0、5.5~8.8、6.0~8.7、または7.0~8.8、または7.5~8.5のpHで実行される。使用されるpHは、好ましくは、約7.5である。
【0287】
特徴付け方法は、0℃~100℃、15℃~95℃、16℃~90℃、17℃~85℃、18℃~80℃、19℃~70℃、または20℃~60℃で実施され得る。特徴付け方法は、典型的には、室温で実行される。特徴付け方法は、任意選択で、酵素機能を支持する温度、例えば、約37℃で実行される。
【0288】
修飾ナノポア
狭窄領域を含むナノポアも提供され、このナノポアは、狭窄領域と、ナノポアと接触しているポリヌクレオチドハンドリングタンパク質との間の距離を増加させるように修飾される。ナノポアは、本明細書に記載されている通りであり得る。ナノポアは、本明細書に記載されるように修飾され得る。
【0289】
システム
-狭窄領域を含むナノポアと、
-ポリヌクレオチドにコンジュゲート化されたポリペプチドを含むコンジュゲートと、
-ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質と、
を含むシステムも提供され、
i)このナノポアは、ポリヌクレオチドハンドリング酵素がナノポアと接触しているときに、狭窄領域とポリヌクレオチドハンドリングタンパク質の活性部位との間の距離を増加させるように修飾され、かつ/または
ii)このシステムは、ナノポアとポリヌクレオチドハンドリングタンパク質との間に配置され、それによりナノポアとポリヌクレオチドハンドリングタンパク質の活性部位との間の距離を延長する、1つ以上のディスプレーサーユニットをさらに含む。
【0290】
いくつかの実施形態において、ナノポア、コンジュゲートおよび/またはポリヌクレオチドハンドリングタンパク質、ならびに任意選択で、存在する場合、1つ以上のディスプレーサーユニットは、本明細書に記載される通りである。
【0291】
キット
-狭窄領域を含むナノポアと、
-標的ポリヌクレオチドにコンジュゲート化するための反応性官能基を含むポリヌクレオチドと、
-ポリヌクレオチドハンドリングタンパク質と、を含む、キットも提供される。
【0292】
いくつかの実施形態において、このナノポアは、ポリヌクレオチドハンドリング酵素がナノポアと接触しているときに、狭窄領域とポリヌクレオチドハンドリングタンパク質との間の距離を増加させるように修飾される。
【0293】
いくつかの実施形態において、このキットは、ナノポアとポリヌクレオチドハンドリングタンパク質の活性部位との間の距離を延長するための1つ以上のディスプレーサーユニットをさらに含む。
【0294】
いくつかの実施形態において、ナノポア、ポリヌクレオチドおよび/またはポリヌクレオチドハンドリングタンパク質、ならびに任意選択で、存在する場合、1つ以上のディスプレーサーユニットは、本明細書に記載される通りである。
【0295】
キットは、コンピュータシステム上で実行されるように適合された、本明細書でも提供されるアルゴリズムとともに使用するように構成され得る。アルゴリズムは、ポリペプチドに特徴的な(例えば、ポリペプチドの配列および/またはポリペプチドが修飾されているかどうかに特徴的な)情報を検出し、ポリヌクレオチドにコンジュゲート化されたポリペプチドを含むコンジュゲートがナノポアに対して移動する際に得られたシグナルを選択的にプロセシングするように適合させることができる。ポリペプチドに特徴的な(例えば、ポリペプチドの配列および/またはポリペプチドが修飾されているかどうかに特徴的な)情報を検出し、ポリヌクレオチドにコンジュゲート化されたポリペプチドを含むコンジュゲートがナノポアに対して移動する際に得られたシグナルを選択的にプロセシングするように構成されたコンピューティング手段を含むシステムも提供される。いくつかの実施形態では、システムは、ポリペプチドの検出からデータを受信するための受信手段、コンジュゲートがナノポアに対して移動する際に得られるシグナルをプロセシングするためのプロセシング手段、およびこうして得られた特徴付け情報を出力するための出力手段を含む。
【0296】
特定の実施形態、特定の構成、ならびに材料および/または分子が、本発明による方法について本明細書で考察されているが、形態および詳細の様々な変更または修正が本発明の範囲および趣旨から逸脱することなく行われてもよいことを理解されたい。前述の実施形態および以下の実施例は、例示のためにのみ提供されており、用途を限定するとみなされるべきではない。本出願は、特許請求の範囲のみによって制限される。
【実施例
【0297】
実施例1
この例は、2片のポリヌクレオチド;dsDNA Yアダプター(DNA1)とdsDNAテール(DNA2)に隣接するポリペプチドを含むコンジュゲートの制御された転座を示す。ナノポアのシス側にあるポリヌクレオチドハンドリングタンパク質は、最初にDNA1を巻き戻し、ssDNA上で5’-3’で転座し、次にポリペプチドセクションにわたってスライドして最後にDNA2セグメントを巻き戻すことにより、コンジュゲートの移動を制御する。この構築物がナノポアのシス側からトランス側に移動し、REDを通過すると、ポリペプチドセクションを電流対時間のプロットで視覚化できるため、特徴付けが可能になる。
【0298】
Yアダプターは、DNAオリゴヌクレオチド(配列番号11、配列番号12、配列番号13)をアニーリングすることによって調製された。WO2014/013260に記載されているように、DNAモーター(Ddaヘリカーゼ)をアダプターに装填して閉鎖した。その後の材料をHPLC精製した。Yアダプターには、ナノポアによる捕捉を容易にする30のC3リーダーセクションと、膜にテザリングするためのサイドアームが含まれている。DNAテールは、DNAオリゴヌクレオチド(配列番号14、配列番号16)をアニーリングすることによって作製された。
【0299】
この例では、モデルポリペプチド分析物(配列番号20、21、22)は、N末端と、ペプチド骨格に沿ったエチルジアミンスペーサーを使用して、C末端の直後で、事前合成されたアジド部分を含み、得られた。次に、各分析物は、アジドとBCN(ビシクロ[6.1.0]ノニン)部分の間の銅を含まないクリックケミストリー反応を介して、YアダプターとDNAテールにコンジュゲート化された。得られた構築物の概略図を図4Aに示す。サンプルは、Agencourt AMPure XP(Beckman Coulter)ビーズを使用して精製され、Oxford Nanopore Technologiesシーケンスキット(SQK-LSK109)のLNBで2回洗浄された。コンジュゲート化された基質を10mM Tris-Cl、50mM NaCl(pH8.0)に溶出した。
【0300】
電気的測定は、Oxford Nanopore TechnologiesのMinION Mk1bと、MspAナノポアを備えたカスタムMinIONフローセルを使用して取得された。フローセルは、50nMのDNAテザーとATPを欠くシーケンシング緩衝液を含むテザーミックスでフラッシュされた。最初に800μLのテザーミックスを5分間追加し、次にさらに200μLのミックスを、SpotONポートを開いた状態でシステムに流した。DNA-ペプチド構築物は、ATPを欠くシーケンシング緩衝液とOxford Nanopore Technologiesシーケンシングキット(SQK-LSK109)のLBで、0.5nMの濃度で調製され、「シーケンシングミックス」を生じた。75μLのシーケンシングミックスを、SpotONフローセルポートを介してMinIONフローセルに追加した。混合物をフローセル上で5~10分間インキュベートして、構築物のテザリングとそれに続くナノポアによる捕捉を可能にした。ATPがない場合、DNAモーターはYアダプターのスペーサー領域で停止したままになり、コンジュゲートはナノポアに捕捉されるが、転座しない。インキュベーション後、ATPを含む200μLのシーケンシング緩衝液を添加し、ATPの存在下では、捕捉されたDNA-ペプチドコンジュゲートはヘリカーゼによってナノポアを横切って移動し、再現性のある電流フットプリントをもたらす。
【0301】
180mVで標準シーケンシングスクリプトを30分~1時間実行し、1分ごとに静的フリップを実行して拡張ナノポアブロックを除去した。生データは、MinKNOWソフトウェア(Oxford Nanopore Technologies)を使用してバルクFAST5ファイルに収集された。
【0302】
DNA Yアダプターとテールにコンジュゲート化されたモデルペプチド(配列番号20)の1つについて、電流対時間のトレースの例を図9に示す。YアダプターセクションとdsDNAテールは、「曲がりくねった曲線」(トレース)のペプチド部分から分離して、ペプチドの特徴付けを可能にすることができる。
【0303】
1秒当たりに複数の転座事象が観察され、ハイスループットが達成された。複数の捕捉および転座事象を示す電流対時間のトレース例を、図9で使用したものと同じ構築物(すなわち、配列番号20のペプチド領域を含むもの)について図10に示す。
【0304】
他のコンジュゲート化されたポリヌクレオチド-ポリペプチド構築物の特徴付けを、上記のように実施した。図11~13は、正に帯電したアミノ酸(配列番号21;図11);芳香族アミノ酸(配列番号22、図12)および負に帯電したアミノ酸(配列番号20、図13)を含むペプチド領域を組み込んだ構築物の特徴付けを可能にする再現可能な電流対時間のトレースを示す。
【0305】
参照を容易にするために、配列番号22のペプチドを使用して得られた構築物の概略構造を図14に示す。
【0306】
実施例2
この実施例は、付着基を含むように事前合成されていないペプチドから得られたポリヌクレオチド-ポリペプチド構築物を特徴付けることにおける、開示される方法の有用性を実証している。
【0307】
この実施例では、Yアダプターは実施例1と同じであり、dsDNAテールは、DNAオリゴヌクレオチド(配列番号15、配列番号16)をアニーリングすることによって調製された。データ収集は、実施例1で確立されたプロトコルを使用して、Oxford Nanopore TechnologiesのMinION Mk1bと、MspAナノポアを備えたカスタムMinIONフローセルで実行された。
【0308】
この実施例で使用されるペプチド分析物は、実施例1で使用されるモデルペプチド(GGSGDDSGSG、実施例1の配列番号20;実施例2の配列番号23)とほぼ同一であったが、ポリヌクレオチドアダプターとテールのクリックケミストリーコンジュゲート化用の事前合成されたアジド分子を欠いた。マレイミド化学を可能にするために、追加のC末端システインが含まれた。ペプチドのN末端はテトラジン-NHSエステル化合物(BroadPharm、製品コード:BP-22946)で官能化された。非コンジュゲート化テトラジンは、アミノ官能化磁性粒子(Sigma Aldrich、製品コード:53572)で除去された。
【0309】
次に、ペプチドをDNAテール(配列番号15、配列番号16)とともに4℃で一晩インキュベートして、テトラジンとTCO(トランスシクロオクテン)との間のクリック反応を促進した。インキュベーション後、C末端ペプチドシステイン間の可能なジスルフィド結合を5mM DTTで室温で30分間還元し、ペプチド-DNAコンジュゲートをAgencourt AMPure XPビーズ(Beckman Coulter)を使用して精製し、未反応のペプチドとDTTを除去した。次に、曝露されたシステインをアジド-PEG3-マレイミド(BroadPharm、製品コード:BP-22468)と反応させた。過剰なマレイミドリンカーをAgencourt AMPure XPビーズで除去し、BCNとアジド間のクリックケミストリーを介して構築物をYアダプターと4℃で一晩反応させた。ペプチドのC末端とYアダプター、およびN末端とDNAテールとの間のコンジュゲート化によって形成された、生じた構築物を、Agencourt AMPure XPビーズを使用して精製し、ペプチド-DNAテールから完全な構築物を分離した。
【0310】
最終構築物を、図15に示されている例示的な電流トレースを使用して、実施例1に示されているように評価した。見てわかるように、ペプチドの特徴付けは、付着点の事前合成を必要とせずに可能であった。
【0311】
実施例3
この実施例は、10アミノ酸ペプチドと比較して21アミノ酸ペプチドを特徴付ける際の、開示される方法を比較する。
【0312】
21アミノ酸ペプチドのポリヌクレオチド-ポリペプチドコンジュゲートを、実施例1に記載の方法に従って調製および分析した。21アミノ酸構築物で得られた電流対時間のトレースを、実施例2からの10アミノ酸構築物で得られたものと比較した。使用したペプチド配列は、GDDDGSASGDDDGSASGDDDG(21aa;配列番号24)およびGGSGDDSGSG(10aa;配列番号20)であった。
【0313】
10アミノ酸ペプチドと21アミノ酸ペプチドのポリヌクレオチド-ペプチドコンジュゲートの転座に関する電流対時間のトレースを示すデータを図16に示す。同じタイムスケールに配置された2つのトレースは、21アミノ酸のポリペプチドの電流セクションが10アミノ酸のポリペプチドの約2倍の長さであることを示す。
【0314】
したがって、この実施例は、開示される方法を使用して、様々で拡張された長さのポリペプチドを特徴付けることができることを確認する。
【0315】
配列表の説明
配列番号1は、E.coli由来の(ヘキサヒスチジンタグ付き)エキソヌクレアーゼI(EcoExo I)のアミノ酸配列を示す。
配列番号2は、E.coli由来のエキソヌクレアーゼIII酵素のアミノ酸配列を示す。
配列番号3は、T.thermophilus由来のRecJ酵素(TthRecJ-cd)のアミノ酸配列を示す。
配列番号4は、バクテリオファージラムダエキソヌクレアーゼのアミノ酸配列を示す。この配列は、トリマーを構築する3つの同一のサブユニットのうちの1つである。(http://www.neb.com/nebecomm/products/productM0262.asp)。
配列番号5は、Bacillus subtilis由来のPhi29 DNAポリメラーゼのアミノ酸配列を示す。
配列番号6は、Trwc Cba(Citromicrobium bathyomarinum)ヘリカーゼのアミノ酸配列を示す。
配列番号7は、Hel308 Mbu(Methanococcoides burtonii)ヘリカーゼのアミノ酸配列を示す。
配列番号8は、腸内細菌ファージT4由来のDdaヘリカーゼ1993のアミノ酸配列を示す。
配列番号11は、実施例1に記載されるようなYアダプターの生成に使用される第1のポリヌクレオチド鎖(C3[(OCOPO))リーダー、3’BCNクリック付着、および酵素失速化学;8=iSp18[(OCHCHOPO])を有するDNA1-トップ)の配列を示す。
配列番号12は、実施例1に記載されるようなYアダプターの生成に使用される第2のポリヌクレオチド鎖(テザー用のサイドアームを備えたDNA1-バック)の配列を示す。
配列番号13は、実施例1に記載されるようなYアダプターの生成に使用される第3のポリヌクレオチド鎖(DNA1-ボトム)の配列を示す。
配列番号14は、実施例1に記載されるようなdsDNAテールの生成に使用される第1のポリヌクレオチド鎖(DNA2-トップ鎖、5’BCNクリックケミストリー)の配列を示す。
配列番号15は、実施例1に記載されるようなdsDNAテールの生成に使用される第2のポリヌクレオチド鎖(DNA2-トップ鎖、5’TCO(直交クリックケミストリー))の配列を示す。
配列番号16は、実施例2に記載されるようなdsDNAテールの生成に使用されるポリヌクレオチド鎖(DNA2-ボトム鎖、サイドアームなし)の配列を示す。
配列番号20は、実施例1に記載されるような第1のポリヌクレオチド-ポリペプチド構築物の生成に使用される第1のペプチド断片のアミノ酸配列を示す。
配列番号21は、実施例1に記載されるような第2のポリヌクレオチド-ポリペプチド構築物の生成に使用される第2のペプチド断片のアミノ酸配列を示す。
配列番号22は、実施例1に記載されるような第3のポリヌクレオチド-ポリペプチド構築物の生成に使用される第3のペプチド断片のアミノ酸配列を示す。
配列番号23は、実施例2に記載されるようなポリヌクレオチド-ポリペプチド構築物の生成に使用されるペプチド断片のアミノ酸配列を示す。
配列番号24は、実施例3に記載されるようなポリヌクレオチド-ポリペプチド構築物の生成に使用される21アミノ酸ペプチド断片のアミノ酸配列を示す。
【0316】
配列表
【配列表1】
【0317】
【配列表2】
【0318】
【配列表3】
【0319】
【配列表4】
【0320】
【配列表5】
【0321】
【配列表6】
【0322】
【配列表7】
【0323】
【配列表8】
【0324】
【配列表9】
【0325】
【配列表10】
【0326】
【配列表11】
【0327】
【配列表12】
【0328】
【配列表13】
【0329】
【配列表14】
【0330】
【配列表15】
【0331】
【配列表16】
【0332】
【配列表17】
【0333】
【配列表18】
【0334】
【配列表19】
【0335】
図1
図2
図3
図4-1】
図4-2】
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【配列表】
2023503514000001.app
【国際調査報告】