(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-30
(54)【発明の名称】架空導体被覆用組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 183/04 20060101AFI20230123BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20230123BHJP
C09D 5/16 20060101ALI20230123BHJP
C09D 5/33 20060101ALI20230123BHJP
【FI】
C09D183/04
C09D7/61
C09D5/16
C09D5/33
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022557206
(86)(22)【出願日】2020-11-26
(85)【翻訳文提出日】2022-07-22
(86)【国際出願番号】 GB2020053002
(87)【国際公開番号】W WO2021105673
(87)【国際公開日】2021-06-03
(32)【優先日】2019-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2019-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】LU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522206353
【氏名又は名称】ケーブル コーティングス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】クーガン ナイル
(72)【発明者】
【氏名】ジョンストン バリー
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038DL031
4J038HA186
4J038HA216
4J038HA376
4J038HA446
4J038HA466
4J038HA526
4J038KA03
4J038KA06
4J038KA08
4J038MA06
4J038NA03
4J038NA05
4J038NA21
4J038PA20
4J038PB09
4J038PC02
(57)【要約】
架空導体を被覆するための組成物であって、(i)反射剤、(ii)平均粒子サイズ(「aps」)≦100nmを有する≧70wt%アナターゼ二酸化チタン(TiO2)を含む光触媒剤、(iii)非水性溶媒、及び(iv)1種以上のアルキルシリケートバインダーを含む組成物が開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射剤と、
平均粒子サイズ(「aps」)≦100nmを有する≧70wt%アナターゼ二酸化チタン(TiO
2)を含む光触媒剤と、
非水性溶媒と、
1種以上のアルキルシリケートバインダーとを含む、架空導体を被覆するための組成物。
【請求項2】
前記反射剤が、≧100nmの平均粒子サイズを有するルチル二酸化チタン、アルミノケイ酸ナトリウム(AlNa
12SiO
5)、酸化亜鉛(ZnO)、又は酸化銅(CuO)を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物が、約5~約25wt.%の反射剤と、約1~約5wt.%の光触媒剤と、約24~約60wt.%の非水性溶媒と、約20~約70wt.%のアルキルシリケートバインダーとを含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物が、約10~約20wt.%の反射剤と、約2~約4wt.%の光触媒剤と、約28~約55wt.%の非水性溶媒と、約30~約60wt.%のアルキルシリケートバインダーとを含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記反射剤が白色充填剤を含み、好ましくは、前記白色充填剤が、(i)酸化マグネシウム(MgO)、(ii)酸化カルシウム(CaO)、(iii)酸化アルミニウム(Al
2O
3)、(iv)酸化亜鉛(ZnO)、(v)炭酸カルシウム(CaCO
3)、(vi)ケイ酸アルミニウム(Al
2SiO
5)、(vii)カオリン(Al
2O
3.2SiO
2)、(viii)二酸化チタン(TiO
2)、又は(viii)硫酸バリウム(BaSO
4)を含む、先行請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
放射剤をさらに含む、先行請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
前記放射剤が無機充填剤を含み、好ましくは、前記無機充填剤が、(i)炭酸カルシウム(CaCO
3)、(ii)仮焼カオリン(Al
2O
3.2SiO
2)、又は(iii)タルク(水和ケイ酸マグネシウム(H
2Mg
3(SiO
3)
4若しくはMg
3Si
4O
10(OH)
2))を含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記溶媒が、式(CH
3)
2C
6H
4を有するキシレン、キシロール、若しくはジメチルベンゼン、式(CH
3)C
6H
5を有するトルエン、式C
2H
5OHを有するエタノール、式CH
3CH(OH)CH
3を有するイソプロパノール、式C
2H
5OC
2H
4OHを有する2-エトキシエタノール、又は式CH
3C(O)OC
2H
4OC
2H
5を有する2-エトキシエチルアセテートを含む、先行請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
前記1種以上のアルキルシリケートバインダーが、75~100%加水分解まで前加水分解される、先行請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
前記アルキルシリケートバインダーが、メチルシリケート、エチルシリケート、プロピルシリケート、ブチルシリケート、ペンチルシリケート、ヘキシルシリケート、ヘプチルシリケート又はオクチルシリケートを含み、好ましくは、前記アルキルシリケートバインダーが、n-プロピルシリケート、イソプロピルシリケート、又はブチルオルトシリケートを含む、先行請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
前記アルキルシリケートバインダーが非フッ素化型である、先行請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
硬化剤をさらに含み、好ましくは、前記硬化剤が、(i)塩化亜鉛(ZnCl
2)又は(ii)塩化マグネシウム(MgCl
2)からなる群から選択される、先行請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項13】
フレキシビリティー剤及び/又はレオロジー剤をさらに含み、好ましくは、前記レオロジー剤が、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、疎水変性ヒドロキシエチルセルロース、アルカリ膨潤性エマルジョン、疎水性アルカリ膨潤性エマルジョン、疎水変性エチレンオキサイドウレタンレオロジー調整剤、オルガノクレー、ポリアミド、又はヒュームドシリカを含む、先行請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項14】
先行請求項のいずれかに記載の組成物で少なくとも部分的に被覆された架空導体であって、使用時、前記組成物が、前記架空導体の少なくとも一部分上にコーティング又は膜が形成されるように硬化される、架空導体。
【請求項15】
前記コーティング又は膜が、赤外スペクトル2.5~30.0μmにわたり平均熱放射率係数E≧0.90を有する、及び/又は
前記コーティング又は膜が、太陽スペクトル0.3~2.5μmにわたり平均日射反射率係数R≧0.80、好ましくは≧0.90を有する、及び/又は
前記コーティング又は膜が、実質的に白色の色であり、且つL
*≧80、L
*≧85、L
*≧90、又はL
*≧95を有する、請求項14に記載の架空導体。
【請求項16】
請求項14又は15に記載の架空導体を1つ以上含む、電力系統又は配電系統。
【請求項17】
架空導体に膜を被覆又は適用する方法であって、
前記架空導体の少なくとも一部分に請求項1~13のいずれか一項に記載の組成物を適用することと、
前記架空導体の少なくとも一部分上にコーティング又は膜が形成されるように湿気硬化のみにより前記組成物を硬化させることと、
を含む、方法。
【請求項18】
前記組成物を湿気硬化により硬化させる工程が、前記組成物を周囲温度超に加熱することを伴わない、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
架空導体を被覆するための組成物を形成するためのキットであって、
(i)反射剤、(ii)平均粒子サイズ(「aps」)≦100nmを有する≧70wt%アナターゼ二酸化チタン(TiO
2)を含む光触媒剤、及び(iii)1種以上のアルキルシリケートバインダーを含む第1のパーツと、
(i)非水性溶媒を含む第2のパーツと、
を含み、
使用時、前記第1及び第2のパーツが、前記架空導体の少なくとも一部分上にコーティング又は膜が形成されるように前記架空導体の少なくとも一部分に適用される組成物を形成するために混合一体化される、キット。
【請求項20】
1つ以上の架空導体を含む架空送電線又は配電線を改造する方法であって、
前記架空導体の少なくとも一部分上に組成物を噴霧、塗装、被覆、又は適用することであって、ここで、前記組成物は、(i)反射剤、(ii)平均粒子サイズ(「aps」)≦100nmを有する≧70wt%アナターゼ二酸化チタン(TiO
2)を含む光触媒剤、(iii)非水性溶媒、及び(iv)1種以上のアルキルシリケートバインダーを含むことと、次いで、
前記架空導体の少なくとも一部分上にコーティング又は膜が形成されるように湿気硬化のみにより前記組成物を硬化させることとを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
なし。
【0002】
本発明は、架空導電体に関する。各種好ましい実施形態は、導体の温度を低減することにより導体の抵抗を低減するとともに(電気抵抗が温度依存性であるため)ひいては導体での電力損失を低減する(電力損失が電気抵抗に依存するため)という目的で単一コーティングを有する高電圧架空導電体に関する。単一被覆高電圧架空導電体は、非水性溶媒系アルキルシリケートバインダー中に提供された光触媒セルフクリーニング剤を含む。
【背景技術】
【0003】
鉄塔間に懸架されるアルミニウムケーブルを含む各種異なるタイプの高電圧架空導電体が公知である。各種異なるタイプの公知の高電圧架空導電体は、2つのグループに分けることが可能である。第1のグループは、80℃の最高動作温度を有する導体を含む。第2のグループは、150~250℃の範囲内のより高い最高動作温度を有する導体を含む。
【0004】
高電圧架空導電体に関連する各種特定問題が存在し、これらの問題は、150~250℃の範囲内の上昇動作温度で動作可能な高電圧架空導電体ではとくに深刻になる可能性がある。かかる導体は、たとえば、米国南部、中東、オーストラリアなどの世界のとくに暑い地域に設置されうる。
【0005】
世界のとくに暑い地域に設置される高電圧架空導電体は、架空導体が1年の大半で強烈な太陽光による有意なソーラー加熱に晒されるという問題を抱える。1年を通して持続する太陽放射線に晒される架空導電体は、架空送電線若しくは配電線又は架空送電網若しくは配電網を管理しようとするユーティリティー会社にいくつかの有意な動作上の課題を提示する。
【0006】
当業者であれば理解されるであろうが、高電圧架空導電体の温度は、2つの主要因子により増加する傾向があろう。第1の因子は、導体を介する電流の伝達によるオーム損失が存在することにより、導体がジュール加熱されることである。第2の因子は、導体が相対的に強烈な太陽放射線(すなわち太陽光)に晒されるため、太陽放射線により加熱されることである。両因子とも導体の温度を上昇させる役割を果たすことは、明らかであろう。
【0007】
導体の温度を減少させる傾向のあるいくつかの他の潜在的因子も存在することもまた、理解されよう。たとえば、導体は、赤外(熱)線の放出によりエネルギーを失いうる。導体はまた、伝導により又は対流によりエネルギーを失いうる(たとえば、空気流、風などにより)。しかしながら、実際問題として、伝導によるエネルギー損失はごくわずかであり、対流によるエネルギー損失は、導体が設置される地理的位置に依存する。
【0008】
架空導電体がエネルギーを失う主な冷却機構が放射によることは、すなわち、熱エネルギー、特定的には2.5~30.0μmの赤外波長範囲内の赤外線の放射によることは、当業者であれば理解されよう。
【0009】
それゆえ、第一近似では、高電圧架空導電体の温度は、ジュール加熱と太陽放射線との組合せ効果により増加し、この温度増加は、導体が赤外線を放出することによるエネルギー損失により相殺される。
【0010】
例示目的で、裸架空アルミニウム導電体は、太陽スペクトル0.3~2.5μmにわたり0.5の平均日射吸収率係数Aを有するとみなされうる。裸アルミニウム導体が対応する0.5の平均日射反射率係数Rを有することは、理解されよう。それゆえ、太陽放射線(すなわち日光)に晒される裸アルミニウム導電体は、入射太陽放射線の約50%を吸収するであろう。
【0011】
導体の有意なジュール加熱を伴ってある持続期間にわたり入射太陽放射線のおおよそ50%を吸収する導体の正味の効果は、架空導体の温度を最高定格動作温度まで上昇させるであろう。導体の地理的位置に依存して、気流(すなわち風)によるエネルギー損失は、低いこともあれば又は無視できることもありうる。導体の最高動作温度は、80℃又は150~250℃の範囲内のどちらかでありうる。
【0012】
架空導体がその最高定格動作温度に達すると又は近づくと、送電線若しくは配電線又は送電網若しくは配電網を管理するユーティリティー会社は、ジュール加熱の影響を低減して架空導体を安全な動作温度範囲内に維持するために導体を介して伝達される電流を低減する必要がある。
【0013】
各種異なるタイプの導体が公知であり、次に、より詳細に以下で説明する。
【0014】
オールアルミニウム導体(「AAC」)は、BS EN50182又はIEC61089に準拠した導体を形成するように対向方向に逐次層状に撚り合わされた硬引きアルミニウムワイヤを含む。AAC導体は、相対的に短い間隔を有する架空配電線、架空給電線、及び変電所のバスバーに使用されうる。AAC導体は、鋼が存在しないので高耐食性を有する。従来のAAC導体は、典型的には80℃の最高動作温度までの定格である。
【0015】
オールアルミニウム合金導体(「AAAC」)は、IEC61089、BS EN50182、又はASTM B399に準拠した導体を形成するように対向方向に逐次層状に撚り合わされたオールアルミニウム合金(「ALMELEC」)ワイヤを含む。AAAC導体は、架空送電線及び相対的に長い間隔を有する配電網に主に使用される。それはまた、架空電気ケーブルを支持するためにメッセンジャーとして使用される。AAAC導体は、鋼が存在しないので高耐食性を有する。従来のAAAC導体は、典型的には80℃の最高動作温度までの定格である。
【0016】
アルミニウム導体鋼補強(「ACSR」)導体は、BS EN50182、ASTM B232、又はIEC61089に準拠した導体を形成するように亜鉛メッキ又は撚り鋼ワイヤの中心コアの周りに同心撚りされたアルミニウム導体の外側層を含む。ACSR導体は、長距離にわたる送電に広く使用される。ACSR導体はまた、架空電気ケーブルを支持するためにメッセンジャーとしても使用されうる。従来のACSR導体は、典型的には80℃の最高動作温度までの定格である。
【0017】
アルミニウム導体アルミニウムクラッド鋼補強(「ACSR/AW」)導体は、ASTM B549に準拠した導体を形成するようにアルミニウムクラッド鋼中実又は撚りケーブルの中心コアの周りに同心撚りされたアルミニウム導体の外側層を含む。ACSR/AW導体は、送電に使用され、ACSR導体のように長い架空線間隔に理想的であるが、良好な耐食性に加えてわずかにより良好な抵抗及び通電容量を有する。従来のACSR/AW導体は、典型的には80℃の最高動作温度までの定格である。
【0018】
架空集束ケーブル(「ABC」)は、ICEA S474-76又はBS EN50182に準拠した2本(二重)、3本(三重)、4本(四重)、又はそれ以上の導体を形成するようにXLPE絶縁により絶縁されて集成されたアルミニウム導体から作製される。それは、電柱上の二次架空線(相間600Vを超えない回路で)又は住宅敷地への給電線として使用される。
【0019】
150~250℃までの有意により高い動作温度で動作するように設計された各種高温低弛度(「HTLS」)導体もまた、公知である。
【0020】
公知のHTLS導体としては、アルミニウム導体複合コア(「ACCC」)導体、アルミニウム導体鋼支持(「ACSS/MA」)導体、アルミニウム導体アルミニウムクラッド鋼支持(「ACSS/AW」)導体、耐熱アルミニウム合金導体鋼補強(「TACSR」)導体、耐熱アルミニウム合金導体アルミニウムクラッド鋼補強(「TACSR/AW」)導体、及び超耐熱アルミニウム合金導体アルミニウムクラッドインバー補強(「STACIR/AW」)導体が挙げられる。
【0021】
アルミニウム導体複合コア(「ACCC」)導体は、軽量炭素-ガラス繊維複合材の中心コア上に台形状アニール1350-Oアルミニウムワイヤの1層以上を有する同心撚り導体を含む。ハイブリッド炭素複合コアを含むACCC導体は、伝統的鋼コアよりも強くて軽い。ACCC導体は、合計重量を増加させることなくおおよそ30%多いアルミニウムの使用を可能するそのより軽いコアに加えて、180℃までの連続動作温度用に設計された場合、ACCC導体は、伝統的ACSR導体の2倍の電流を運ぶ能力がある。ACCC導体を使用すると、同一直径及び重量の伝統的ACSR導体と比較して、等しい負荷条件下で線損失は30~40%低減する。ACCC導体は、より大きな強度、効果的な自己減衰、優れた耐疲労性、及び低い膨張係数を有することにより、大きな電気負荷条件下で導体弛度を低減する。結果として、ACCC導体は、より少ない又はより短い構造体間の間隔を増加させるために使用可能である。ACCC導体は、伝統的ACSR導体よりも大きな耐食性を有する。
【0022】
ACCC導体は、架空配電線及び送電線に使用され、既存の張力及びクリアランスで電流の増加を必要とする導体交換用途、導体弛度の低減により構造体を節約可能である新たな線用途、風による振動が問題であるかなり緊急の負荷及び線を必要とする新たな線用途にとくに有用である。ACCC導体はまた、その良好な耐食性に起因して腐食及び海岸環境で使用可能である。従来のACCC導体は、典型的には180℃の最高動作温度までの定格である。
【0023】
アルミニウム導体鋼支持(「ACSS/MA」)導体は、ACSS導体への機械的負荷のほとんど又はすべてに耐えるように設計された亜鉛-5%アルミニウムミッシュメタル合金被覆鋼ワイヤの中心コアの周りに撚り合わされたアニールアルミニウム1350-Oワイヤの1層以上を含む。ACSS導体は、ASTM B856に準拠して製造されうる。
【0024】
ACSS/MA導体は、ACSS/MA導体が損傷することなく250℃までの高温で連続動作可能であることを除いて伝統的ACSR導体に類似している。ACSS/MA導体は、緊急負荷下でACSR導体よりも緩みが小さく、自己減衰性を有し、且つ最終弛度がアルミニウムの長期クリープによる影響を受けない。
【0025】
ACSS/MA導体は、架空配電線及び送電線に使用され、既存の張力及びクリアランスで電流の増加を必要とする導体交換用途にとくに有用である。ACSS/MA導体はまた、導体弛度の低減により構造体を節約可能である新たな線用途、風による振動が問題であるかなり緊急の負荷及び線を必要とする新たな線用途にも使用される。従来のACSS/MA導体は、典型的には250℃の最高動作温度までの定格である。
【0026】
アルミニウム導体アルミニウムクラッド鋼支持(「ACSS/AW」)導体は、ACSS/AW導体への機械的負荷のほとんど又はすべてに耐えるように設計されたアルミニウムクラッド鋼ワイヤの中心コアの周りに撚り合わされたアニールアルミニウム1350-Oワイヤの1層以上を含む。ACSS/AW導体は、ASTM B856に準拠して製造されうる。
【0027】
ACSS/AW導体は、損傷することなく200℃までの高温で連続動作可能である。鋼全体にわたりアルミニウムの厚層(公称ワイヤ半径のおおよそ10%)からなるアルミニウムクラッド鋼コアは、鋼の高引張り強度及び耐久性と共にアルミニウムの軽量及び良導電性を伴ってACSS/AW導体にACSS導体の利点を与える。
【0028】
ACSS/AW導体は、架空配電線及び送電線に使用され、既存の張力及びクリアランスで電流の増加を必要とする導体交換用途にとりわけ有用である。ACSS/AW導体はまた、導体弛度の低減により構造体を節約可能である新たな線用途、風による振動が問題であるかなり緊急の負荷及び線を必要とする新たな線用途にも使用される。
【0029】
ACSS/AW導体は、綱コアワイヤのアルミニウムクラッディングに起因してわずかに大きなアンペア容量及び耐食性を伴ってACSS導体に類似した強度特性を有する。従来のACSS/AW導体は、典型的には200℃の最高動作温度までの定格である。
【0030】
耐熱アルミニウム合金導体鋼補強(「TACSR」)導体は、IEC62004及びIEC60888に準拠した並びに一般的にはIEC61089に準拠した亜鉛被覆鋼ワイヤの中心コアの周りに撚り合わされた耐熱アルミニウムジルコニウム合金(AT1)ワイヤの1層以上を含む。
【0031】
TACSR導体は、150℃までの連続動作温度用に設計された場合、伝統的ACSR導体よりも高い(150%)負荷電流を運ぶことが可能である。TACSR導体は、ACSR導体と同一の設置技術を有する。
【0032】
TACSR導体は、架空配電線及び送電線に使用され、電流の増加を必要とする新たな線用途にとくに有用である。従来のTACSR導体は、典型的には150℃の最高動作温度までの定格である。
【0033】
耐熱アルミニウム合金導体アルミニウムクラッド鋼補強(「TACSR/AW」)導体は、IEC62004及びIEC61232に準拠した並びに一般的にはIEC61089に準拠した撚りアルミニウムクラッド鋼(20SAタイプA)ワイヤの中心コアの周りに撚り合わされた耐熱アルミニウムジルコニウム合金(AT1)ワイヤの1層以上を含む。
【0034】
TACSR/AW導体は、150℃までの連続動作温度用に設計された場合、伝統的ACSR導体よりも高い負荷電流を運ぶことが可能である。TACSR/AW導体は、TACSR導体よりも増加した耐食性及び低い電気抵抗及び低い質量を有する。TACSR/AW導体は、ACSR導体と同一の設置技術を有する。
【0035】
TACSR/AW導体は、架空配電線及び送電線に使用され、電流の増加を必要とする新たな線用途にとくに有用である。TACSR/AWは、その良好な耐食性に起因して腐食及び海岸環境で使用されうる。従来のTACSR/AW導体は、典型的には150℃の最高動作温度までの定格である。
【0036】
超耐熱アルミニウム合金導体アルミニウムクラッドインバー補強(「STACIR/AW」)導体は、IEC62004に準拠した並びに一般的にはIEC61089及びIEC61232に準拠した撚りアルミニウムクラッドインバーワイヤの中心コアの周りに撚り合わされた超耐熱アルミニウムジルコニウム合金(AT3)ワイヤの1層以上を含む。インバーは、非常に低い線膨張係数を有する特殊Fe/Ni合金である。
【0037】
STACIR/AW導体は、210℃までの連続動作温度用に設計された場合、伝統的ACSR導体よりも高い(200%)負荷電流を運ぶことが可能である。ニーポイントを超えると、STACIR/AW導体は、高動作温度で弛度を制御するインバーコア単独の膨張に起因して弛度増加を経験する(きわめて低い値≦3.7×10-6/℃)。STACIR/AW導体は、増加した耐食性を有するとともに、ACSR導体と同一の設置技術を有する。
【0038】
STACIR/AW導体は、架空配電線及び送電線に使用され、電流の増加を必要とする新たな線用途にとくに有用である。STACIR/AW導体は、その良好な耐食性に起因して腐食及び海岸環境で使用されうる。従来のSTACIR/AW導体は、典型的には210℃の最高動作温度までの定格である。
【0039】
それゆえ、公知のHTLS導体は、150~250℃の範囲内の最高動作温度までの有意により高い温度で高電圧架空導電体の動作を可能にする。
【0040】
150~250℃の範囲内の最高動作温度で導電体を動作させた場合、オーム損失に起因して有意な電力損失が潜在的に存在しうることは、分かるであろう。導体の温度がたとえば150~250℃の最高動作温度に接近し始めた場合、導体を介して伝達される電流を低減させてジュール加熱効果を低減するために、ひいては導体の最高安全動作温度を超えないことを保証するために、電力演算器が必要とされる。とりわけ、伝達電力を低減させると電気に対する消費者又は企業の要求の増加が起こりうるので、ユーティリティー会社が導体を介して伝達される電流を低減しなければならないことには問題があることは、分かるであろう。
【0041】
中東などの世界の暑い地域に設置された高電圧架空電力線が高周囲温度たとえば>40℃で動作しうることは、分かるであろう。さらに、導体は、150~250℃の範囲内の高最高動作温度で動作しうる。かかる導体がかかる昇温で導体の高抵抗に起因して高エネルギー損失を有するという問題を抱えていることは、明らかであろう。さらに、導体のアンペア容量(すなわち最大通電容量)は低減するであろう。
【0042】
オーム損失(又はジュール加熱)に起因して架空導電体で発生する熱量は、下記関係:
オーム損失=I2R (1)
に従うであろう。ただし、Iは、架空導電体を通り抜ける電流であり、且つRは、導体の電気抵抗である。
【0043】
導電体の電気抵抗Rが温度依存性であることもまた、理解されよう。温度の関数としての導体の電気抵抗Rは、下記関係:
Rθ=R20[1+α(θ-20)]Ω/km (2)
により決定されうる。ただし、Rθは、θ℃での導体の電気DC抵抗であり、R20は、20℃での導体の電気DC抵抗であり、且つαは、導体の抵抗の温度係数である。アルミニウムでは、α=0.00403。
【0044】
完全を期して、ケーブルのアンペア容量又は通電容量は、導体がその最高動作温度で運ぶことが可能な連続最大電流として定義される。
【0045】
それゆえ、ジュール加熱と高周囲温度と高ソーラー加熱と気流(たとえば風)による冷却の不在との組合せは、導体の温度の急速な上昇をもたらすであろう。導体の温度が上昇すると、温度と抵抗との正の相関を考慮して、導体の電気抵抗が増加することにより、導体のさらなる電気損失(ひいてはさらなるジュール加熱)をもたらすことは、理解されよう。結果として、架空導電体の温度は、またさらに増加する傾向を示し、問題を単に悪化させるだけであろう。
【0046】
したがって、世界のとくに高温地域での架空導電体の動作が有意な動作問題を提示することは、明らかである。
【0047】
架空導体の温度を低減するために導体へのコーティングの適用により架空導電体の温度を低減しようとする試みは、公知である。
【0048】
第1の公知のアプローチは、A=0.96(R=0.04)の高日射吸収率だけでなくE=0.96の高放射率も有するカーボンブラックなどの黒色コーティングの利用を必要とする。第1の公知のアプローチは、導体が獲得した熱エネルギーを失わせることに焦点を当てる。
【0049】
国際公開第2015/105972号パンフレット(Ranganathan)には、第1の公知のアプローチの変形例があり、カーボンブラック系ポリマーの単一高分子層を有する導体を含む構成が開示されている。赤外線(「IR」)反射剤がカーボンブラック層に含まれうる。導体の放射率Eは≧0.85であると明記され、全吸収率Aは≦0.3(R≧0.7)であると明記されている。
【0050】
国際公開第2014/025420号パンフレット(Davis)には、非白色(すなわち、灰色、黒色など)無機コーティングで裸導体を被覆することが開示されている。非白色コーティングは、放射率E>0.8及び日射吸収率係数A>0.3(R<0.7)を有しうると明記されている。色は、CIE Publication 15.2(1986),section 4.2並びにL*、a*、及びb*軸を有する立方体として組織化されて開示されたCIE色空間を参照して定義されうる。L*の最小値は、完全黒色性を表す0である。国際公開第2014/025420号パンフレット(Davis)には、白色がL*≧80を有すると定義されている。それゆえ、国際公開第2014/025420号パンフレット(Davis)に開示される非白色コーティングは、L*<80を有する(すなわち、非白色である)と明記されている。
【0051】
第2の異なる公知のアプローチは、低日射吸光度そのため高日射反射率を有する白色コーティングで導電体を被覆することである。
【0052】
たとえば、国際公開第2007/034248号パンフレット(Simic)には、第2の公知のアプローチの例があり、いくつかの場合には放射率E≧0.7及び日射吸収係数A≦0.3(R≧0.7)を有する各種白色コーティングで裸導体を被覆することが開示されている。
【0053】
国際公開第2007/034248号パンフレット(Simic)に開示される一コーティングは、ケイ酸カリウムを含む酸化チタン(TiO
2)白色塗料である。白色塗料中の酸化チタンは、E=0.92の高放射率を有するコーティングを提供する。吸収率係数Aは0.17と明記されており、そのため、反射率係数Rは0.83である。酸化チタンの形態は、国際公開第2007/034248号パンフレット(Simic)には明記されていないが、酸化チタンは、二酸化チタン(TiO
2)の最も一般的な形態である且つ白色塗料で一般に使用されるルチル二酸化チタン(TiO
2)を含むと仮定される。さらに、本願の
図11に示されるように、ルチル二酸化チタン(TiO
2)は、あまり一般的でない二酸化チタン(TiO
2)の形態すなわちアナターゼ二酸化チタン(TiO
2)よりも高い太陽スペクトル反射率を有する。
【0054】
第1の公知のアプローチ(黒色コーティング)及び第2の公知のアプローチ(白色コーティング)のほか、他の問題を解決するためにコーティングの具体的配合物を提供することは、公知である。
【0055】
たとえば、仏国特許第2971617号明細書(Nexans)には、コーティングの耐老化性を改善するためにポリビニリデンジフルオライド(「PVDF」)高分子コーティングで導電体を被覆することが開示されている。PVDF高分子コーティングは、放射率E≧0.85及び日射吸収率A≦0.10(R≧0.90)を有すると明記されている。仏国特許第2971617号明細書(Nexans)には、PVDFを用いて架空導電体用の温度低減コーティングを作製すると、改善された耐紫外線性を有するそのため改善された耐老化性を有する導電体が得られると明記されている。
【0056】
仏国特許第2971617号明細書(Nexans)に開示されるPVDFコーティングは、バインダーとしてPVDFが溶解された有機溶媒を含む塗料の形態で導体に適用されうる。白色顔料(たとえば、硫酸バリウム、酸化マグネシウム、又は酸化アルミニウム)などの添加剤は、明記された放射率値及び日射吸収率値が達成されるように塗料に添加されうる。開示された構成によれば、液状塗料は、酸化マグネシウム(E=0.9、A=0.09、R=0.81)、酸化アルミニウム(E=0.9、A=0.09、R=0.81)、又は硫酸バリウム(E=0.88、A=0.06、R=0.94)のいずれかを含む白色顔料が添加されたKYNAR(RTM)500といわれるARKEMA(RTM)により市販されている液状塗料を含みうる。
【0057】
まとめると、導体の放射率Eを最大化するために黒色コーティングで架空導体を被覆すること、又は代替的に低日射吸光度Aそのため対応して高日射反射率Rを有する白色コーティングで架空導体を被覆することは、公知である。
【0058】
しかしながら、本発明者らは、従来のコーティングを試験したところ、公知のアプローチが両方とも、性能の限られた改善(すなわち小さな温度低減)をもたらすにすぎないか、又は実際上いくつかの場合には、たとえば、熱放出体添加剤などの白色コーティングが実際には裸未被覆導体よりも悪い性能もたらすことを見いだした。さらに、いくつかの公知の白色コーティングが不十分な耐食性を有するとともに迅速に変色するので商業的に利用不可能であることを見いだした。
【0059】
特定的には、導体の動作温度を低減するために酸化マグネシウム白色塗料を架空導体に適用しうることが提案されている。しかしながら、本発明者らは、いずれのかかる性能上の利点とされるものも再現できておらず、実際に、ある特定の白色塗装導体の理論計算(以下の表1を参照されたい)及び経験的試験では、導体の温度の低減ではなく導体の温度の増加をもたらすことが、本発明者らにより見いだされた。
【0060】
したがって、たとえば、酸化マグネシウム白色塗料自体で架空導体を被覆することは、性能上不利であり、不十分な耐食性の点できわめて問題であると、本発明者らを考えている。
【0061】
それゆえ、良好な又は優れた耐食性を伴って改善された温度低減性能を有するとともに長期にわたり白色を維持する改善された架空導体の必要性が残っている。さらに、本発明の各種実施形態は、150~250℃の範囲内の最高動作温度を有する高温低弛度(「HTLS」)導体に関する。かかる昇温では、公知の被覆導体が抱える問題はとくに深刻になる。
【0062】
とくに150~250℃の範囲内の上昇動作温度での有意な温度低減効果を提供可能な改善された架空導体は、より高いアンペア容量を伴って電力損失の有意な減少をもたらすであろう。
【0063】
良好な耐食性を伴って昇温(たとえば、150~250℃の範囲内)で動作可能であり、長期にわたり白色を維持し、且つ改善された温度低減性能を有する改善された架空導体を提供する能力がかなりの商業的関心であり、当技術分野で大幅な進歩をもたらすであろうことは、当業者であれば理解されよう。
【0064】
見過ごされることの多い白色被覆導体が抱えるとくに重大な問題は、導体が環境汚染物質に晒されると白色コーティングが汚れを付着して経時的に変色することである。結果として、初期の高日射反射率は、白色コーティングが変色するにつれて迅速に低下し、有意な性能低下をもたらす可能性がある。たとえば、>0.80の高い初期反射率Rを有する材料は、3年間にわたり平均で0.16の反射率Rの低減を経験するおそれがあると報告されている。
【0065】
他の研究では、屋根部材の日射反射率に及ぼす暗色化の影響により5~8年間の屋外暴露期間後に日射反射率の11~59%低減がもたらされることが示された。
【0066】
したがって、汚れ及び環境汚染物質の付着による変色を起こしにくい、そのため長期にわたり白色を維持する導体のおかげで低減された又は無視しうる経時的性能損失を示す、改善された架空導体を提供することも望まれる。
【0067】
アルキルシリケートコーティングは、卓越した耐食性、優れた機械的性質、非常に高い耐温度性、及び優れた耐薬品性に起因して、鋼基材上で主に防食プライマーとして使用される。
【0068】
アルキルシリケートコーティング組成物は、典型的には1又は2成分製品のどちらかを含む。製品が2成分である場合、第1の成分は、典型的には、シリケートバインダーと、コバインダーと、弛み防止剤と、溶媒と、の液状混合物からなり、第2の成分は、典型的には、金属顔料、ほとんどの場合、亜鉛末と通常いわれる金属亜鉛顔料を含有する。
【0069】
ケイ酸亜鉛は、クリーン鋼表面の上に直接適用される犠牲アノードとしてのその機能に起因して防食性に関して他のライニングよりも優れている。コーティング層が損傷したとき、亜鉛は、電気防食により損傷を保護するであろう。機能は、亜鉛メッキ鋼のものに類似している。
【0070】
プライマーとして、すなわち、エポキシやポリウレタンなどの好適な一般的タイプのコーティングの後続層を有する多重コート系のコーティング又は膜層として、アルキルシリケートバインダーを使用することは公知である。しかしながら、シリケートバインダーはまた、1コート系としても又は代替的にトップコートとしても使用可能である。
【0071】
エチルシリケートなどのアルキルシリケートは、さらなる加水分解を伴わないバインダー使用に好適な程度に十分に反応性ではない。エチルシリケートの加水分解は、酸又は塩基触媒のどちらかでありうる。酸触媒作用は、一般にいくらかより低速であり、より制御された方式で進行する。そのほか、酸の存在は、反応性シラノール(Si-OH)基を安定化させ、貯蔵安定性を増加させる傾向がある。エチルシリケートの安定性及び反応性の課題の概観は、“The Use of Ethyl Silicate in Zinc Rich Paints”,Steinmetz J.R.,Modern Paint and Coatings,June 1983に与えられている。酸安定化シリケートバインダーの液状部分にアルカリ性材料が導入された場合、液体は中性になり、シラノール基は反応性になり、不安定液体が形成される。
【0072】
酸安定化アルキルシリケートバインダー及びシリケートバインダーに導入されるアルカリ性材料のタイプに依存して、液状部分の安定性が製品の6ヵ月間以下の安定性からほぼ即時のゲル化まで変動しうることは、当業者には周知である。
【0073】
アルカリ性材料の例は、長石、タルク、マイカ、ドロマイト、カルサイト、ボーキサイト、又は各種タイプのシリケート材料などの充填剤である。
【0074】
実際に、当業者であれば、貯蔵安定性を確保するために組成物へのアルカリ性材料の導入を控えるであろう。当業者であれば、水に懸濁又は溶解させるとき、中性領域のpH又は7未満のpHを与える材料の中から成分を選択するであろう。
【0075】
酸安定化アルキルシリケートコーティングは、標準的噴霧装置での適用が容易である。しかしながら、シリケート塗料組成物の噴霧処理は、従来の塗料とは少し異なる。通常、塗料は、コーナーの溶接継目及びアクセス困難な領域に蓄積する傾向があり、シリケート塗料組成物が亜鉛などの金属顔料を含有する場合、問題はさらに顕在化する。この製品は、電気防食用の亜鉛粒子間の十分な接触を確保するためにCPVC比超のPVCで配合される。したがって、金属顔料を有するシリケートコーティングは、厚すぎる膜厚で適用された場合、亀甲割れのリスクが高くなるであろう。そのため、最終的に厚すぎる乾燥膜厚にならないように、多くの場合、余分な努力及び人時がここで費やされる。
【0076】
既存のシリケート製品は、40~125μm、典型的には75μmの合計乾燥膜厚が指定されるが、コーナー及びエッジでオーバーラップ及び厚い乾燥膜厚を生じることは避けがたい。とりわけ構造要素間に形成される角度の内側に関しては、指定されたよりもさらに厚い乾燥膜厚を生じるリスクが存在する。多くの場合、亀甲割れを回避するために、クリティカル領域でブラシにより後処理する必要がある。ブラシにより過剰の塗料を手作業で除去することは、時間がかかり、理想的な解決策ではないが、代案策はより悪い。あまりにも厚いコーティング厚さでは、多くの場合、正常許容限界を超えると、高硬化収縮応力を生じて、亀甲割れを引き起こす可能性がある。
【0077】
シリケート塗料組成物を厚すぎる膜厚で適用したとき、亀甲割れが現れる。これは、適用膜厚と乾燥プロセスと硬化との間で精密に規定された相関の「バランスが崩れた」ときに起こる。
【0078】
これまで、アスベスト繊維及び繊維状ケイ酸カルシウムが亜鉛アルキルシリケート組成物で使用されてきた(たとえば、米国特許第3056684号明細書)。
【0079】
近年、塩化亜鉛や又は塩化マグネシウムなどの促進剤を含むより速硬化性の製品が現れた。速硬化性は、塗装業者及び塗装請負業者にとって非常に重要なパラメーターになる全処理時間を低下させる。しかしながら、速硬化性は亀裂レベル(内部応力)に悪影響を及ぼすので、ある特定のレベルまで硬化を増加させることが可能であるにすぎない。したがって、添加可能な塩化亜鉛の量は限られる。
【0080】
硬化プロセスは、コーティングの表面で開始される。硬化が速すぎると、コーティングの軟質未硬化部分は、硬化時に蓄積された応力を「伝える」のに十分な強度を有していないであろう。また、表面に亀甲割れを生じ、続いて接着損失、凝集、及び腐食の問題をもたらすであろう。
【0081】
欧州特許第2231789号明細書には、耐亀裂性が改善されたアルキルシリケート塗料組成物が開示されている。
【0082】
導体の温度を低下させることにより導体の抵抗を低減するように設計された架空導体を被覆するための組成物に関して、組成物は水系である。
【0083】
しかしながら、従来の水系コーティングが抱える課題は、湿分安定性になるように200~300℃などで熱硬化させる必要があることである。
【0084】
80℃の最高動作温度までの定格であるにすぎない架空導体を熱硬化させるのが望ましくないことは、明らかであろう。さらに、150~250℃の最高動作温度の定格である架空導体を、200~300℃の範囲内の温度で、すなわち、導体の最高定格動作温度を超える可能性もある温度で、熱硬化させることもまた、望ましくないおそれがある。
【0085】
当業者であれば理解されるであろうが、80℃の最高動作温度までの定格であるアルミニウム導体を、潜在的に長時間(24時間)にわたり200~300℃の範囲内の高温熱硬化プロセスに付すことは、アルミニウムの焼鈍を引き起こしてアルミニウム導体の結晶構造及び性質の変化をもたらすリスクを高める。
【0086】
水系アルカリ金属シリケートで被覆された新しい架空導体を製造プロセスの一部として熱硬化工程に付すことは可能であるが、硬化して架空導体用の温度制御コーティングを形成する組成物を用いて既存の架空導体をin situで改造しようとするのであれば、かなり実用的及び経済的な問題を引き起こすこともまた、明らかであろう。実際に、多くの状況で、適用されたコーティングをたとえば24時間にわたり300℃までの温度で硬化させる試みにより、大きな架空導体網を改造しようと試みることが非実用的であることは、分かるであろう。
【0087】
それゆえ、その高レベルの熱要件が理由で、従来構成は、定格80℃の導体(市場の圧倒的大多数を占めるACSR)を排除し、改造に適用可能でない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0088】
したがって、架空導体を被覆するための改善された組成物を提供することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0089】
本発明の一態様によれば、
反射剤と、
平均粒子サイズ(「aps」)≦100nmを有する≧70wt%アナターゼ二酸化チタン(TiO2)を含む光触媒剤と、
非水性溶媒と、
1種以上のアルキルシリケートバインダーと、
を含む、架空導体を被覆するための組成物が提供される。
【0090】
欧州特許第2231789号明細書(Fiedler)には、とくに、平均粒子サイズ(「aps」)≦100nmを有する≧70wt%アナターゼ二酸化チタン(TiO2)を含む光触媒剤を含む、架空導体を被覆するための組成物を提供することが開示されていない。
【0091】
それゆえ、欧州特許第2231789号明細書(Fiedler)は、本発明に係るものとは考えられない。
【0092】
好ましい実施形態によれば、反射剤は、ルチル二酸化チタン(TiO2)を含む。
【0093】
ルチル二酸化チタン(TiO2)は、平均粒子サイズ(「aps」):(i)≧100nm、(ii)100~200nm、(iii)200~300nm、(iv)300~400nm、(v)400~500nm、(vi)500~600nm、(vii)600~700nm、(viii)700~800nm、(ix)800~900nm、及び(x)900~1000nmを有しうる。
【0094】
ルチル二酸化チタン(TiO2)は、好ましくは、実質的に球状の粒子を含む。
【0095】
他の実施形態によれば、反射剤は、アルミノケイ酸ナトリウム(AlNa12SiO5)、酸化亜鉛(ZnO)、又は酸化銅(CuO)を含みうる。
【0096】
光触媒剤は、≧75%、≧80%、≧85%、≧90%、≧95%、又は≧99%wt%アナターゼ二酸化チタン(TiO2)を含みうる。
【0097】
ある実施形態によれば、反射剤は白色充填剤を含みうる。
【0098】
白色充填剤は、(i)酸化マグネシウム(MgO)、(ii)酸化カルシウム(CaO)、(iii)酸化アルミニウム(Al2O3)、(iv)酸化亜鉛(ZnO)、(v)炭酸カルシウム(CaCO3)、(vi)ケイ酸アルミニウム(Al2SiO5)、(vii)二酸化チタン(TiO2)、又は(viii)硫酸バリウム(BaSO4)を含みうる。
【0099】
組成物は、放射剤、好ましくは無機充填剤を含むもの、たとえば、(i)炭酸カルシウム(CaCO3)、(ii)仮焼カオリン(Al2O3.2SiO2)、又は(iii)タルク(水和ケイ酸マグネシウム(H2Mg3(SiO3)4若しくはMg3Si4O10(OH)2))のいずれかを含むもの、をさらに含みうる。
【0100】
溶媒は、好ましくは、式(CH3)2C6H4を有するキシレン、キシロール、若しくはジメチルベンゼン、式(CH3)C6H5を有するトルエン、式C2H5OHを有するエタノール、式CH3CH(OH)CH3を有するイソプロパノール、式C2H5OC2H4OHを有する2-エトキシエタノール、又は式CH3C(O)OC2H4OC2H5を有する2-エトキシエチルアセテートを含む。
【0101】
1種以上のアルキルシリケートバインダーは、75~100%加水分解まで前加水分解されうる。
【0102】
アルキルシリケートバインダーは、メチルシリケート、エチルシリケート、プロピルシリケート、ブチルシリケート、ペンチルシリケート、ヘキシルシリケート、ヘプチルシリケート、又はオクチルシリケートを含みうる。
【0103】
アルキルシリケートバインダーは、n-プロピルシリケート、イソプロピルシリケート、又はブチルオルトシリケートを含みうる。
【0104】
好ましくは、アルキルシリケートバインダーは非フッ素化型である。
【0105】
アルキルシリケートバインダーは、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)、テトラメチルオルトシリケート(TMOS)、メチルトリメトキシシラン(MTMS)、ビニルトリメトキシシラン(VTMS)、トリメトキシフェニルシラン、(3-アミノプロピル)トリメトキシフェニルシラン(APTES)、トリエトキシ(オクチル)シラン(C8-TEOS)、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルジメトキシメチルシラン(AEAPS)、(3-グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン(GPTMS)、[3-(メタクリロイルオキシ)プロピル]トリメトキシシラン(MAPTS)、ヘキサデシルトリメトキシシラン、(3-メルカプトプロピル)トリメトキシシラン(MPTMS)、又はトリエトキシフェニルシランから選択されうる。
【0106】
組成物は、塩化亜鉛(ZnCl2)又は塩化マグネシウム(MgCl2)のどちらかを含む硬化剤をさらに含みうる。
【0107】
組成物は、レオロジー剤(たとえば、ヒドロキシエチルセルロース(CH2CH2OH))及び/又はフレキシビリティー剤(好ましくはポリジメチルシロキサン(「PDMS」(C2H6OSi)n))をさらに含みうる。
【0108】
本発明の他の一態様によれば、以上に記載の組成物で少なくとも部分的に被覆された架空導体が提供される。ただし、使用時、組成物は、架空導体の少なくとも一部分上にコーティング又は膜を形成するように硬化される。
【0109】
コーティング又は膜は、好ましくは、赤外スペクトル2.5~30.0μmにわたり平均熱放射率係数E≧0.90を有する。
【0110】
コーティング又は膜は、好ましくは、太陽スペクトル0.3~2.5μmにわたり平均日射反射率係数R≧0.80を有する。より好ましくは、コーティング又は膜は、太陽スペクトル0.3~2.5μmにわたり平均日射反射率係数R≧0.90を有する。
【0111】
コーティング又は膜は、好ましくは、色が実質的に白色であり、L*≧80、L*≧85、L*≧90、又はL*≧95を有する。
【0112】
コーティング又は膜は、好ましくは、ASTM E408(2013)に準拠して試験したときに赤外スペクトル2.5~30.0μmにわたり平均熱放射率係数E≧0.90及び/又はASTM E903(2012)に準拠して試験したときに太陽スペクトル0.3~2.5μmにわたり平均日射反射率係数R≧0.90及び/又は平均日射吸収率係数A≦0.10を有する。
【0113】
架空導体は、ANSI C119.4-2004に準拠して試験したとき、好ましくは、コーティングも膜も有していない同一の架空導体の温度よりも低い温度で動作する。
【0114】
架空導体は、好ましくは、使用時、≧2kV、2~50kV、50~100kV、100~150kV、150~200kV、200~250kV、250~300kV、300~350kV、350~400kV、400~450kV、450~500kV、500~550kV、550~600kV、600~650kV、650~700kV、700~750kV、750~800kV、又は≧800kVの電圧で電力を伝達するように構成及び適合化される。
【0115】
架空導体は、好ましくは、使用時、80℃、90℃、100℃、110℃、120℃、130℃、140℃、150℃、160℃、170℃、180℃、190℃、200℃、210℃、220℃、230℃、240℃、250℃、260℃、270℃、280℃、290℃、300℃、又は>300℃の最高動作温度まで動作するように構成及び適合化される。
【0116】
架空導体は、使用時、架空鉄塔間に懸架されるように構成及び適合化される。
【0117】
架空導体は、好ましくは、1種以上の金属導体を含む。
【0118】
架空導体は、好ましくは、1種以上の金属ケーブルを含む。
【0119】
1種以上の金属導体及び/又は1種以上の金属ケーブルは、好ましくは、アルミニウム又はアルミニウム合金を含む。
【0120】
架空導体は、(i)オールアルミニウム導体(「AAC」)、(ii)オールアルミニウム合金導体(「AAAC」)、(iii)アルミニウム導体鋼補強(「ACSR」)導体、(iv)アルミニウム導体アルミニウムクラッド鋼補強(「ACSR/AW」)導体、(v)架空集束ケーブル(「ABC」)、(vi)高温低弛度(「HTLS」)導体、(vii)アルミニウム導体複合コア(「ACCC」)導体、(viii)アルミニウム導体鋼支持(「ACSS/MA」)導体、(ix)アルミニウム導体アルミニウムクラッド鋼支持(「ACSS/AW」)導体、(x)耐熱アルミニウム合金導体鋼補強(「TACSR」)導体、(xi)耐熱アルミニウム合金導体アルミニウムクラッド鋼補強(「TACSR/AW」)導体、又は(xii)超耐熱アルミニウム合金導体アルミニウムクラッドインバー補強(「STACIR/AW」)導体を含む。
【0121】
コーティング又は膜は、好ましくは、1~10μm、10~20μm、20~30μm、30~40μm、40~50μm、50~60μm、60~70μm、70~80μm、80~90μm、90~100μm、100~110μm、110~120μm、120~130μm、130~140μm、140~150μm、150~160μm、160~170μm、170~180μm、180~190μm、190~200μm、200~300μm、300~400μm、400~500μm、500~600μm、600~700μm、700~800μm、800~900μm、900~1000μm、又は>1mmの範囲内の厚さを有する。
【0122】
本発明の他の一態様によれば、以上に記載の1つ以上の架空導体を含む電力又は配電系統が提供される。
【0123】
他の一態様によれば、
架空導体の少なくとも一部分に以上に記載の組成物を適用することと、
架空導体の少なくとも一部分上にコーティング又は膜が形成されるように湿気硬化のみにより組成物を硬化させることと、
を含む、架空導体に膜を被覆又は適用する方法が提供される。
【0124】
湿気硬化により組成物を硬化させる工程は、好ましくは、周囲温度超に組成物を加熱することを伴わない。
【0125】
本方法は、好ましくは、熱硬化工程を利用することなく架空導体の少なくとも一部分上にコーティング又は膜が形成されるように組成物を硬化させることをさらに含む。
【0126】
架空導体の少なくとも一部分上にコーティング又は膜が形成されるように組成物を硬化させる工程は、好ましくは、架空導体上に形成された組成物及び/コーティング又は膜の温度を100℃未満、90℃未満、又は80℃未満に維持することを含む。
【0127】
他の一態様によれば、
(i)反射剤、(ii)平均粒子サイズ(「aps」)≦100nmを有する≧70wt%アナターゼ二酸化チタン(TiO2)を含む光触媒剤、及び(iii)1種以上のアルキルシリケートバインダー、を含む第1のパーツと、
(i)非水性溶媒、を含む第2のパーツと、
を含む、架空導体を被覆するための組成物を形成するためのキットであって、
使用時、第1及び第2のパーツが、架空導体の少なくとも一部分上にコーティング又は膜が形成されるように架空導体の少なくとも一部分に適用される組成物を形成するために混合一体化される、キットが提供される。
【0128】
第1のパーツは、好ましくは、(i)放射剤、(ii)硬化剤、(iii)フレキシビリティー剤、及び(iv)レオロジー剤、の1種以上をさらに含む
【0129】
第2のパーツは、好ましくは、(i)放射剤、(ii)硬化剤、(iii)フレキシビリティー剤、及び(iv)レオロジー剤、の1種以上をさらに含む。
【0130】
キットは、好ましくは、コーティング又は膜が形成されるように1つ以上の架空導体の少なくとも一部分上に組成物を噴霧、塗装、又は適用するための第1のデバイスをさらに含む。
【0131】
他の一態様によれば、1つ以上の架空導体を含む架空送電線又は配電線を改造する方法であって、
架空導体の少なくとも一部分上に組成物を噴霧、塗装、被覆、又は適用することであって、組成物が、(i)反射剤、(ii)平均粒子サイズ(「aps」)≦100nmを有する≧70wt%アナターゼ二酸化チタン(TiO2)を含む光触媒剤、(iii)非水性溶媒、及び(iv)1種以上のアルキルシリケートバインダーを含む、ことと、次いで
架空導体の少なくとも一部分上にコーティング又は膜が形成されるように湿気硬化のみにより組成物を硬化させることと、
を含む、方法が提供される。
【0132】
各種実施形態によれば、コーティング又は膜は、赤外スペクトル2.5~30.0μmにわたり、0.90~0.91、0.91~0.92、0.92~0.93、0.93~0.94、0.94~0.95、0.95~0.96、0.96~0.97、0.97~0.98、0.98~0.99、又は0.99~1.00の範囲内の平均熱放射率係数Eを有しうる。
【0133】
各種実施形態によれば、コーティング又は膜は、太陽スペクトル0.3~2.5μmにわたり、0.80~0.81、0.81~0.82、0.82~0.83、0.83~0.84、0.84~0.85、0.85~0.86、0.87~0.88、0.88~0.89、0.89~0.90、0.90~0.91、0.91~0.92、0.92~0.93、0.93~0.94、0.94~0.95、0.95~0.96、0.96~0.97、0.97~0.98、0.98~0.99、若しくは0.99~1.00の範囲内の平均日射反射率係数R、及び/又は0.00~0.01、0.01~0.02、0.02~0.03、0.03~0.04、0.04~0.05、0.05~0.06、0.06~0.07、0.07~0.08、0.08~0.09、若しくは0.09~0.10の範囲内の平均日射吸収率係数Aを有しうる。そのため、平均日射反射率係数Rは、太陽スペクトル0.3~2.5μmにわたり、一般的にはR≧0.80、好ましくは≧0.90である。
【0134】
本発明に係る架空導体は、赤外スペクトル2.5~30.0μmにわたり高平均熱放射率係数E(すなわちE≧0.90)さらには太陽スペクトル0.3~2.5μmにわたり高平均日射反射率係数R(すなわちR≧0.90)の両方を有するので、本発明は、当技術分野で大幅な進歩を示す。
【0135】
単一黒色コーティングを有する公知の導体は、高熱放射率係数Eを有するが、不十分な日射反射率係数Rを有することが想起されよう。反対に、単一白色コーティングを有する他の公知の導体は、高日射反射率係数Rを有するが、不十分な熱放射率係数Eを有する。
【0136】
それゆえ、本発明に係る単一被覆導体は、従来の単一被覆導体と比べて温度低減性能に関して有意に改善された性能を有する。本発明に係るコーティング又は膜で被覆された導体はまた、酸化マグネシウム白色塗料などのいくつかの公知の単一コーティングとは対照的に良好な又は優れた耐食性を有する。
【0137】
重要なこととして、≧70wt%アナターゼ二酸化チタン(TiO2)を含む、好ましくは平均粒子サイズ≦100nmを有する光触媒剤の添加は、コーティングに接着された、さもなければ接着しうるいずれの有機物でも光触媒変換をもたらす。特定的には、アナターゼ二酸化チタン(TiO2)がUV光により励起されると、それはヒドロキシル(OH-)及びスーパーオキサイド(O2
-)ラジカルを生成して、表面有機物を二酸化炭素(CO2)及び水(H2O)に分解する。
【0138】
ある実施形態によれば、光触媒剤は、DEGUSSA(EVONIK)(RTM)P25又はAEROXIDE(RTM)TiO2P25として知られる二酸化チタン(TiO2)の市販の形態を含みうる。
【0139】
DEGUSSA(EVONIK)(RTM)P25酸化チタン(TiO2)は、二酸化チタン(TiO2)の従来の粉末形態である。P25酸化チタンの性質は、詳細に研究されており、Journal of Photochemistry and Photobiology A:Chemistry,216(2-3):179-182が参照される。この粉末は、78:14:8のアナターゼ:ルチル:アモルファス比で二酸化チタン(TiO2)を含むことが見いだされた。
【0140】
DEGUSSA(EVONIK)(RTM)P25は、通常、70:30、80:20、又は85:15のアナターゼ:ルチル微結晶を含むものとして報告され、多くの場合、二酸化チタン(TiO2)のアモルファス形態の存在についての言及はないことに留意されたい。
【0141】
DEGUSSA(EVONIK)(RTM)P25中のアナターゼ二酸化チタン(TiO2)の平均粒子サイズ(「aps」)は、おおよそ85nmであり、且つDEGUSSA(EVONIK)(RTM)P25中のルチル二酸化チタン(TiO2)の平均粒子サイズは、おおよそ25nmであることが報告されている。
【0142】
二酸化チタン(TiO2)は、化学的に安定であり且つ生物学的に良性であるため、有機汚染物質の分解のための本発明の実施形態に係る光触媒としてとくに好ましい。二酸化チタン(TiO2)のバンドギャップは、3eVよりも大きいので(ルチルでは約3.0及びアナターゼでは約3.2)、純二酸化チタン(TiO2)は、主にUV光に対して有効である。
【0143】
DEGUSSA(EVONIK)(RTM)P25中に存在する二酸化チタン(TiO2)の異なる多形体の具体的相混合物は相乗効果を有し、純相と比較して(すなわち、純ルチル二酸化チタン(TiO2)又は純アナターゼ二酸化チタン(TiO2)のどちらと比べても)光触媒活性の増加が観測されると考えられる。
【0144】
純アナターゼ二酸化チタン(TiO2)は、純ルチル二酸化チタン(TiO2)よりも高い光触媒活性を呈することも、一般に通説となっている。
【0145】
アナターゼ二酸化チタン(TiO2)は、ルチル二酸化チタン(TiO2)よりも大きなバンドギャップを有することが知られている。このため、吸収可能な光は低減されるが、吸着分子のレドックス電位と比べてより高いエネルギーレベルに価電子帯最大値を上昇させうる。それゆえ、電子の酸化力は増加しうるとともに、二酸化チタン(TiO2)から吸着分子への電子移動は促進されうる。
【0146】
米国特許第9595368号明細書(Ranganathan)には、導体の放射率を増加させるように設計された、架空導体上で直接及び無機ケイ酸塩コーティングや又はPVDF系コーティングなどの中間層のトップの両方での光触媒セルフクリーニングコーティングの使用が開示されている。しかしながら、かかる構成は、いくつかの理由で最適ではない。開示された構成は、開示されたセルフクリーニングコーティングの使用が日射反射性層の性能に実質的影響を及ぼす可能性があるので白色日射反射架空導体に好適ではない。
【0147】
たとえば、米国特許第9595368号明細書(Ranganathan)には、PVDFバインダー中に二酸化チタン(TiO2)を含む日射反射性層のトップに製造業者の適用説明書に従ってKON CORPORATION(RTM)セルフクリーニング層を適用したところ、白色コーティングの日射反射率が0.89から0.77に減少したことが開示されている。PVDFは、非常に低い表面エネルギーを有するフルオロポリマーである。結果として、PVDFは、大きな水接触角を有して水性及び溶媒系コーティングの両方に反撥して、一般的にはコーティング上に均一膜を形成するのは困難であろう。
【0148】
このため、米国特許第9595368号明細書(Ranganathan)に開示される中間層の使用は、経時的に日射反射率を維持するのに好適な解決策ではない。
【0149】
さらに、シリケートに直接適用したとき、中間層アプローチは、連続製造プロセスでの適用の費用を増加させる。
【0150】
これに対処するために、本発明は、日射反射率とセルフクリーニング光触媒活性とを単一層にインテグレートする。これにより、適用複雑性/費用が軽減されるだけでなく、セルフクリーニングトップコートが下側白色反射コーティングの光学特性に実質的影響を及ぼすことも回避される。
【0151】
本発明に係る単一導体は、より低い温度(たとえば80℃まで)で有意に改善された性能を有する。
【0152】
良好な又は優れた耐食性及び有機物(導体に付着するおそれのあるもの)を二酸化炭素及び水に変換するのに有効な光触媒剤を伴って、非常に高い放射率E(E≧0.90)さらには非常に高い日射反射率(R≧0.90)の両方を有するように構成された単一被覆導体を提供することは知られていない。
【0153】
各種実施形態によれば、コーティング又は膜で被覆された導体の放射率Eは、E≧0.91、E≧0.92、E≧0.93、E≧0.94、E≧0.95、E≧0.96、E≧0.97、E≧0.98、又はE≧0.99になりうる。同様に、各種実施形態によれば、反射率Rは、R≧0.91、R≧0.92、R≧0.93、R≧0.94、R≧0.95、R≧0.96、R≧0.97、R≧0.98、又はR≧0.99になりうる。
【0154】
次に、各種公知の従来のアプローチと本発明に係るアプローチとの差を以下でさらに詳細に考察する。
【0155】
国際公開第2015/105972号パンフレット(Ranganathan)には、良好な赤外線放射体であるカーボンブラック系ポリマーの単一高分子層を有する導体を含む構成が開示されている。放射率Eは、≧0.85(すなわち相対的に良好)であると明記されているが、吸収率Aは、≦0.3(すなわち不十分)にすぎないと明記されている。
【0156】
これとは対照的に、本発明に係るコーティング又は膜で被覆された導体は、より低い放射率E≧0.85を有する国際公開第2015/105972号パンフレット(Ranganathan)に開示されたコーティングと比較して、改善された放射率E≧0.90を有する。さらに、重要なこととして、本発明に係る導体はまた、R≧0.70のかなり低い反射率(明記された吸収率係数A≦0.3に基づく)を有すると明記された国際公開第2015/105972号パンフレット(Ranganathan)に開示された導体の反射率よりも有意に優れた有意に改善された日射反射率(R≧0.90)を有する。
【0157】
米国特許出願公開第2015/0194237号明細書(Ranganathan)には、アナターゼ酸化チタンなどの光触媒を含むセルフクリーニングコーティングを有する導体が開示されている。しかしながら、光触媒はバインダー中に提供されない - セルフクリーニング層は、ポリマーフリーであると記述され、光触媒は、高分子バインダーフリーあると記述されている。それゆえ、米国特許出願公開第2015/0194237号明細書(Ranganathan)には、無機バインダーを含むコーティングを提供することが開示されていない。米国特許出願公開第2015/0194237号明細書(Ranganathan)には、赤外域で高熱放射率E≧90%さらには太陽スペクトル0.3~2.5μmで高日射反射率R≧90%の両方を有するコーティングを提供することが開示されていない。
【0158】
国際公開第2014/025420号パンフレット(Davis)には、無機バインダー(たとえば、金属ケイ酸塩又はコロイドシリカ(SiO2))と、炭化ホウ素(B4C)、二酸化チタン(TiO2)、二酸化ケイ素(SiO2)などの熱放射剤と、を含む単層コーティングで架空導体を被覆することが開示されている。配合されたいくつかの異なるコーティングが開示され、試験された。
【0159】
国際公開第2014/025420号パンフレット(Davis)に開示されたすべての各種異なる配合物のうち、おそらく本発明に最も近い配合物は、シリケートバインダー(20重量%)と、二酸化ケイ素(37重量%)と、炭化ホウ素(3重量%)と、水(40重量%)と、を含むコーティング#7であると考えられる。公知のコーティングは全部、L*が43.495である暗灰色を有する。暗灰色コーティングは、本発明の要件、すなわち、導体がより高い放射率係数E≧0.90を有するという要件よりも低い0.882の放射率Eを有すると明記されている。
【0160】
さらに、国際公開第2014/025420号パンフレット(Davis)に開示された暗灰色コーティング#7の日射吸収率Aは、A=0.86であると明記されており、これは、日射吸収率係数A≦0.10を必要とする好ましい実施形態の要件よりも有意に高い。同様に、暗灰色コーティング#7の日射反射率は、導体が高日射反射率R≧0.90を有することを必要とする好ましい実施形態の要件よりも有意に低いR=0.14である。
【0161】
それゆえ、国際公開第2014/025420号パンフレット(Davis)に開示された各種組成物は、とくに本発明に係るものであるとは考えられない。
【0162】
米国特許出願公開第2016/0032107号明細書(Siripurapu)には、単一コーティングで導体を被覆するようにコーティングを形成するためのツーパーツ構成キットが開示されている。キットの第1のパーツは、充填剤(構成キットの2~55乾燥重量%)と、架橋剤(構成キットの5~20乾燥重量%)と、放射率剤(構成キットの6~42乾燥重量%)と、を含む。充填剤は、石英又は酸化アルミニウムを含みうる。架橋剤は、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)、酸化マグネシウム(MgO)、又は酸化亜鉛(ZnO)を含みうる。放射率剤は、二酸化ケイ素(SiO2)又は二酸化チタン(TiO2)を含みうる。キットの第2のパーツは、アルカリ土類金属ケイ酸塩バインダー(構成キットの20~65乾燥重量%)を含む。アルカリ土類金属ケイ酸塩バインダーは、ケイ酸カリウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸リチウム、ケイ酸カルシウム、又はケイ酸アルミニウムマグネシウムを含みうる。
【0163】
2つの例が米国特許出願公開第2016/0032107号明細書(Siripurapu)に示されている。実施例#1は、好ましい実施形態の要件(E≧0.90)未満である0.86の放射率Eを有する。さらに、実施例#1は、吸収率係数A≦0.10を必要とする好ましい実施形態の要件よりも有意に高い0.55の高日射吸収率Aを有する。
【0164】
米国特許出願公開第2016/0032107号明細書(Siripurapu)のパラグラフ[0004]及び[0006]には、本発明の好ましい実施形態に係るコーティングよりも太陽スペクトル0.3~2.5μmでかなり低い熱放射率E≧70%(赤外線域で)及びかなり低い日射反射率R≧70%(吸収率≦30%)を有するさまざまな白色コーティングが公知であると教示されている。
【0165】
E≧70%及び日射反射率R≧70%を有する従来の白色被覆導体が、E≧90%及び日射反射率R≧90%を有する本発明の好ましい実施形態に係る(白色)被覆導体よりも有意に劣ることは、当業者であれば理解されよう。
【0166】
米国特許出願公開第2016/0032107号明細書(Siripurapu)によれば、二酸化チタンを含みうる6~42wt%の放射率剤を含む導体用コーティング組成物が開示されている。2つの具体例が第7頁(「実施例1」及び「実施例2」)に与えられ、表1が参照されている。とりわけ光触媒について言及されていない本発明に係るあまり一般的ではないアナターゼ形態ではなくルチル形態で二酸化チタンが提供されると文脈から推定される。米国特許出願公開第2016/0032107号明細書(Siripurapu)で開示されると推定されるルチル形態は、おそらく、本発明の要件に反して100nm超の平均粒子サイズを有する。本発明の各種好ましい実施形態によれば、nmの百の平均粒子サイズを有するルチル二酸化チタンの形態での追加反射剤は、提供されうる。米国特許出願公開第2016/0032107号明細書(Siripurapu)に開示される実施例1の放射率及び日射吸収率が試験され、結果は、米国特許出願公開第2016/0032107号明細書(Siripurapu)の表3に示される。放射率Eが本発明の好ましい実施形態に係る≧90%要件よりも低い86%であると明記されていることに留意されたい。また、日射吸収率Aが55%であると明記されているので、対応する日射反射率Rは45%である。したがって、放射率Eは高いが(86%)、45%の日射反射率Rは、日射反射率R≧90%を必要とする本発明の好ましい実施形態の要件よりもかなり低いことは、明らかであろう。
【0167】
それゆえ、米国特許出願公開第2016/0032107号明細書(Siripurapu)には、本発明の好ましい実施形態により必要とされる放射率E≧90%及び日射反射率R≧90%を有するコーティングを提供する≧70wt%アナターゼ二酸化チタンを含む光触媒剤を有する単一被覆導体を提供することは、開示されていない。
【0168】
米国特許出願公開第2005/0266981号明細書(Nakajima)には、本質的に完全に加水分解されたオルガノシリケートを含む親水性バインダーに分散された光触媒材料を含む液状組成物を提供することが開示されている(パラグラフ[0002])。パラグラフ[0093]によれば、液状組成物は、高電圧ケーブルに適用されうる。しかしながら、本発明の好ましい実施形態は、架空送電線又は配電線のための単一被覆導体に関する。米国特許出願公開第2005/0266981号明細書(Nakajima)に開示される液状組成物を高電圧ケーブルに適用すると、2つのコーティング-第1の内側絶縁コーティング及び第2の外側親水性コーティングを有する導電体をもたらすであろうから、本発明の好ましい実施形態の要件を満たさないであろう。
【0169】
国際公開第2007/034248号パンフレット(Simic)には、いくつかの白色コーティングが開示されている。開示されたコーティングの1つは、酸化マグネシウム酸化アルミニウム塗料である。これは、低吸収率及び高放射率を有すると報告されている。この発明の好ましい実施形態は、アナターゼ二酸化チタン(TiO2)を含む光触媒剤が含まれる本発明に係るものとは異なる。さらに、酸化マグネシウム酸化アルミニウム塗料を試験したが、国際公開第2007/034248号パンフレット(Simic)に明記されたものよりも劣る性能を有することが分かった。また、塗料は、適用及び硬化に問題があり、耐久性であるとは考えられない。それゆえ、酸化マグネシウム酸化アルミニウム塗料は、商業的解決策を提示するとは考えられない。
【0170】
コーティングとして酸化マグネシウムを使用しようとする試みが抱える他の問題は、酸化マグネシウムが非常に容易に腐食するので犠牲腐食プライマーとして作用することである。それゆえ、酸化マグネシウムコーティングの光学的性質は、かなり迅速に劣化するであろう。マグネシウムは、工学用途で使用される電気化学的に最も活性な金属であり、いくつかの環境で非常に簡単に腐食するので、マグネシウム及びマグネシウム合金は、船殻や鋼パイプなどの鋼構造体で犠牲アノードとして意図的に利用される。室温又は湿潤大気条件で貯蔵されたマグネシウム及びマグネシウム合金は、酸化マグネシウムと水酸化マグネシウムと炭酸マグネシウムとからなる組成の変動した表面膜を発生する。これらの膜は、アルミニウムやステンレス鋼などの金属上に形成される不動態膜ほど安定ではない。
【0171】
また、マグネシウムリッチプライマーは、迅速に機能が損なわれ、防食コーティングの認証のための主要試験である塩水噴霧試験(ASTM B117)で非常に早期にかなりのブリスタリング発生を呈することも観測されている。
【0172】
それゆえ、国際公開第2007/034248号パンフレット(Simic)に開示される酸化マグネシウム白色塗料コーティングは、本発明に係るものであるとは考えられず、本発明が対処しようとする問題に対する実用的商業的解決策を提供するとは考えられない。
【0173】
国際公開第2007/034248号パンフレット(Simic)に開示される他の組成物は、ケイ酸カリウムを含む酸化チタン白色塗料である。しかしながら、これは、A=0.17と明記された吸収率、すなわち本発明の要件を超える吸収率を有する。
【0174】
それゆえ、国際公開第2007/034248号パンフレット(Simic)に開示される白色塗料組成物のいくつかは、初期に本発明に係るものである可能性があるように見えるかもしれないが、より詳細な検討及びさらなる研究により、その性能は本発明に係る単一被覆導体のものよりも劣ることが分かった。
【0175】
仏国特許第2971617号明細書(Nexans)には、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、又は硫酸バリウムなどの白色顔料を有する白色塗料が開示されている。高分子コーティングは、放射率E≧0.7及び日射吸収係数A≦0.3を有する。それゆえ、本発明の好ましい実施形態の要件を満たさないことは明らかである。
【0176】
したがって、架空導体の温度を低下させるコーティングを提供する各種公知のアプローチは、本発明の好ましい実施形態の二重要件、すなわち、非常に高い放射率E≧0.90さらには非常に高い日射反射率R≧0.90(又は反対に非常に低い日射吸収率A≦0.10)の両方を有する導体を提供するという要件を満たさない単一コーティングを提供することに限定されることは、明らかであろう。
【0177】
したがって、本発明に係る単一被覆導体は、有意に改善された温度性能を有するので、本発明が当技術分野で大幅な進歩を示すことは、明らかであろう。結果として、本発明に係るコーティング又は膜で被覆された導体は、有利に低減された電力損失を呈するとともに、さらに有利なことに、従来の単層被覆導体又は裸導体と比べてより高いアンペア容量を有する。
【0178】
本発明に係る単一被覆導体はまた、いくつかの公知のコーティングとは対照的に、良好な又は優れた耐食性を有する。
【0179】
さらに、本発明に係る単一コーティングの有意な利点は、導体上に付着されているおそれのある有機物を二酸化炭素及び水に変換するように好ましく作用する光触媒剤の存在である。結果として、本発明に係る単一被覆導体は、架空送電線又は配電線に適用される他の公知の温度低減白色コーティングよりも少ない変色を受けるであろう。そのため、本発明に係る被覆導体の性能は、長期にわたり高い状態を維持するであろう。これは、汚れ発生、変色、及び反射率の低減に起因して相対的に短い期間で顕著な性能の劣化を受ける公知の被覆導体とは対照的である。
【0180】
したがって、アナターゼ二酸化チタン(TiO2)の形態でセルフクリーニング光触媒剤を含む本発明に係るコーティング又は膜で被覆された導体にかなりの商業的関心が集まることは、分かるであろう。
【0181】
光触媒剤は、好ましくは、≧75%、≧80%、≧85%、≧90%、≧95%、又は≧99%wt%アナターゼ二酸化チタン(TiO2)をさらに含む。
【0182】
コーティング又は膜で被覆された導体は、使用時、周囲温度を超える60~300℃又は90~250℃の温度で動作するように構成及び適合化されうる。
【0183】
各種実施形態によれば、コーティング又は膜で被覆された導体は、反射剤をさらに含みうる。
【0184】
反射剤は、好ましくは、ルチル二酸化チタン(TiO2)を含む。ルチル二酸化チタン(TiO2)は、平均粒子サイズ(「aps」):(i)≧100nm、(ii)100~200nm、(iii)200~300nm、(iv)300~400nm、(v)400~500nm、(vi)500~600nm、(vii)600~700nm、(viii)700~800nm、(ix)800~900nm、及び(x)900~1000nmを有しうる。
【0185】
各種実施形態によれば、ルチル二酸化チタン(TiO2)は、実質的に球状の粒子(ナノロッド構造を有するものとは対照的)を含む。
【0186】
ある実施形態によれば、反射剤は、アルミノケイ酸ナトリウム(AlNa12SiO5)を含みうる。特定的には、アルミノケイ酸ナトリウム(AlNa12SiO5)は、ルチル二酸化チタン(TiO2)などの他の反射剤と共に提供されうる。
【0187】
反射剤は、(i)酸化マグネシウム(MgO)、(ii)酸化カルシウム(CaO)、(iii)酸化アルミニウム(Al2O3)、(iv)酸化亜鉛(ZnO)、(v)炭酸カルシウム(CaCO3)、(vi)ケイ酸アルミニウム(Al2SiO5)、(vii)二酸化チタン(TiO2)、(viii)硫酸バリウム(BaSO4)などの白色充填剤を含みうる。
【0188】
各種実施形態によれば、コーティング又は膜で被覆された導体は、放射剤をさらに含みうる。放射剤は、無機充填剤を含みうるとともに、無機充填剤は、(i)炭酸カルシウム(CaCO3)、(ii)仮焼カオリン(Al2O3.2SiO2)、又は(iii)タルク(水和ケイ酸マグネシウム(H2Mg3(SiO3)4若しくはMg3Si4O10(OH)2))のいずれかを含みうる。
【0189】
各種実施形態によれば、コーティング又は膜で被覆された導体は、硬化剤をさらに含みうる。硬化剤は、(i)塩化亜鉛(ZnCl2)又は(ii)塩化マグネシウム(MgCl2)からなる群から選択されうる。
【0190】
各種実施形態によれば、コーティング又は膜で被覆された導体は、ヒドロキシエチルセルロース(CH2CH2OH)などのレオロジー剤及び/又はポリジメチルシロキサン(「PDMS」(C2H6OSi)n)などのフレキシビリティー剤をさらに含みうる。
【0191】
コーティング又は膜は、好ましくは、色が実質的に白色であり、好ましくは、L*≧80、L*≧85、L*≧90、又はL*≧95を有する。すなわち、高度又は標準の白色を有する。
【0192】
コーティング又は膜は、好ましくは、ASTM E408(2013)に準拠して試験したときに赤外スペクトル2.5~30.0μmにわたり平均熱放射率係数E≧0.90及び/又はASTM E903(2012)に準拠して試験したときに太陽スペクトル0.3~2.5μmにわたり平均日射反射率係数R≧0.90及び/又は平均日射吸収率係数A≦0.10を有する。
【0193】
コーティング又は膜で被覆された導体は、ANSI C119.4-2004に準拠して試験したとき、好ましくは、コーティングも膜も有していない同一の1種以上の導電体の温度よりも低い温度で動作する。
【0194】
1種以上の導電体は、好ましくは、本発明に係る組成物で被覆され、組成物は、好ましくは、湿気硬化により硬化されて1種以上の被覆導体を形成する。1種以上の被覆導体は、好ましくは、使用時、≧2kV、2~50kV、50~100kV、100~150kV、150~200kV、200~250kV、250~300kV、300~350kV、350~400kV、400~450kV、450~500kV、500~550kV、550~600kV、600~650kV、650~700kV、700~750kV、750~800kV、又は≧800kVの電圧で電力を伝達するように構成及び適合化される。
【0195】
本発明の実施形態に係るコーティング又は膜で被覆された導体は、好ましくは、使用時、80℃、90℃、100℃、110℃、120℃、130℃、140℃、150℃、160℃、170℃、180℃、190℃、200℃、210℃、220℃、230℃、240℃、250℃、260℃、270℃、280℃、290℃、300℃、又は>300℃の最高動作温度まで動作するように構成及び適合化される。
【0196】
コーティング又は膜で被覆された導体は、好ましくは、使用時、架空鉄塔間で懸架されるように構成及び適合化される。
【0197】
1種以上の導電体は、好ましくは、1種以上の金属導体を含む。
【0198】
1種以上の導電体は、好ましくは、1種以上の金属ケーブルを含む。
【0199】
1種以上の金属導体及び/又は1種以上の金属ケーブルは、好ましくは、アルミニウム又はアルミニウム合金を含む。
【0200】
1種以上の導電体は、好ましくは、1種以上の(i)オールアルミニウム導体(「AAC」)、(ii)オールアルミニウム合金導体(「AAAC」)、(iii)アルミニウム導体鋼補強(「ACSR」)導体、(iv)アルミニウム導体アルミニウムクラッド鋼補強(「ACSR/AW」)導体、(v)架空集束ケーブル(「ABC」)、(vi)高温低弛度(「HTLS」)導体、(vii)アルミニウム導体複合コア(「ACCC」)導体、(viii)アルミニウム導体鋼支持(「ACSS/MA」)導体、(ix)アルミニウム導体アルミニウムクラッド鋼支持(「ACSS/AW」)導体、(x)耐熱アルミニウム合金導体鋼補強(「TACSR」)導体、(xi)耐熱アルミニウム合金導体アルミニウムクラッド鋼補強(「TACSR/AW」)導体、又は(xii)超耐熱アルミニウム合金導体アルミニウムクラッドインバー補強(「STACIR/AW」)導体を含む。
【0201】
コーティング又は膜は、好ましくは、1~10μm、10~20μm、20~30μm、30~40μm、40~50μm、50~60μm、60~70μm、70~80μm、80~90μm、90~100μm、100~110μm、110~120μm、120~130μm、130~140μm、140~150μm、150~160μm、160~170μm、170~180μm、180~190μm、190~200μm、200~300μm、300~400μm、400~500μm、500~600μm、600~700μm、700~800μm、800~900μm、900~1000μm、又は>1mmの範囲内の厚さを有する。
【0202】
本発明の態様によれば、以上に記載の1種以上の単一被覆導体を含む、架空導体、高電圧架空導体、又は電力線若しくは配電線が提供される。
【0203】
架空送電線又は配電線用の単一被覆導体を形成するために1種以上の導電体を被覆するためのキットが開示される。キットは、
(i)アルカリ金属シリケートを含む無機バインダー、
(ii)ナノシリカ(「nS」)又はコロイドシリカ(SiO2)を含む重合剤、及び
(iii)光触媒剤であって、平均粒子サイズ(「aps」)≦100nmを有する≧70wt%アナターゼ二酸化チタン(TiO2)を含む、光触媒剤、
を含む第1のパーツと、
(i)硬化剤、
を含む第2のパーツと、
を含み、
使用時、第1及び第2のパーツは、混合一体化されて第1の混合物を形成し、次いで、第1の混合物は、1種以上の導電体の少なくとも一部分上に噴霧、塗装、被覆、又は適用されてコーティング又は膜を形成し、コーティング又は膜は(好ましくは乾燥さもなければ脱水されたとき)、赤外スペクトル2.5~30.0μmにわたり平均熱放射率係数E≧0.90並びに太陽スペクトル0.3~2.5μmにわたり平均日射反射率係数R≧0.90及び/又は平均日射吸収率係数A≦0.10を有する。
【0204】
無機バインダーは、後続的に脱水、乾燥、又はさもなければ熱硬化される水系無機バインダーを含む。
【0205】
水系無機バインダーは、単に例示を目的として開示されているにすぎないことが理解されるべきである。本発明によれば、非水性溶媒系アルキルシリケートバインダーを含む組成物が開示される。
【0206】
第1のパーツは、(i)反射剤、(ii)放射剤、(iii)硬化剤、(iv)フレキシビリティー剤、(v)レオロジー剤の1種以上をさらに含みうる。
【0207】
第2のパーツは、(i)反射剤、(ii)放射剤、(iii)硬化剤、(iv)フレキシビリティー剤、及び(v)レオロジー剤の1種以上をさらに含みうる。
【0208】
キットは、コーティング又は膜が形成されるように1種以上の導電体の少なくとも一部分上に第1の混合物を噴霧、塗装、又は適用するための第1のデバイスをさらに含みうる。第1の混合物は、導電体に適用されたら、次いで、好ましくは、コーティング又は膜が形成されるように乾燥、脱水、又は硬化される。
【0209】
架空送電線又は配電線用の単一被覆導体を形成するために1種以上の導電体を被覆する方法であって、
1種以上の導電体の少なくとも一部分上にコーティング又は膜又は第1の混合物を噴霧、塗装、被覆、又は適用すること、
を含み、コーティング又は膜又は第1の混合物が、
(i)アルカリ金属シリケートを含む無機バインダー、
(ii)ナノシリカ(「nS」)又はコロイドシリカ(SiO2)を含む重合剤、及び
(iii)光触媒剤であって、平均粒子サイズ(「aps」)≦100nmを有する≧70wt%アナターゼ二酸化チタン(TiO2)を含む、光触媒剤、
を含み、
コーティング又は膜又は第1の混合物が、赤外スペクトル2.5~30.0μmにわたり平均熱放射率係数E≧0.90を有し、且つ太陽スペクトル0.3~2.5μmにわたり平均日射反射率係数R≧0.90及び/又は平均日射吸収率係数A≦0.10を有する、方法が開示される。
【0210】
無機バインダーは、水系無機バインダーを含むとともに、本方法は、無機バインダーを脱水又は乾燥することをさらに含む。第1の混合物は、コーティング又は膜が形成されるように乾燥される。
【0211】
本開示の方法は、コーティング又は膜又は第1の混合物を熱硬化することをさらに含む。
【0212】
しかしながら、本発明は、水系組成物に関するものではなく、非水性溶媒系アルキルシリケートバインダーを含む組成物に関するものであることが理解されるべきである。
【0213】
1種以上の導電体を含む架空送電線又は配電線を改造する方法であって、
1種以上の導電体の少なくとも一部分上にコーティング又は膜又は第1の混合物を噴霧、塗装、被覆、又は適用すること、
を含み、コーティング又は膜又は第1の混合物が、
(i)アルカリ金属シリケートを含む無機バインダー、
(ii)ナノシリカ(「nS」)又はコロイドシリカ(SiO2)を含む重合剤、及び
(iii)光触媒剤であって、平均粒子サイズ(「aps」)≦100nmを有する≧70wt%アナターゼ二酸化チタン(TiO2)を含む、光触媒剤、
を含み、
コーティング又は膜又は第1の混合物が、赤外スペクトル2.5~30.0μmにわたり平均熱放射率係数E≧0.90を有し、且つ太陽スペクトル0.3~2.5μmにわたり平均日射反射率係数R≧0.90及び/又は平均日射吸収率係数A≦0.10を有する、方法が開示される。
【0214】
各種実施形態によれば、コーティング又は膜は、赤外スペクトル2.5~30.0μmにわたり、0.90~0.91、0.91~0.92、0.92~0.93、0.93~0.94、0.94~0.95、0.95~0.96、0.96~0.97、0.97~0.98、0.98~0.99、又は0.99~1.00の範囲内の平均熱放射率係数Eを有しうる。
【0215】
各種実施形態によれば、コーティング又は膜は、太陽スペクトル0.3~2.5μmにわたり、0.90~0.91、0.91~0.92、0.92~0.93、0.93~0.94、0.94~0.95、0.95~0.96、0.96~0.97、0.97~0.98、0.98~0.99、若しくは0.99~1.00の範囲内の平均日射反射率係数R及び/又は0.00~0.01、0.01~0.02、0.02~0.03、0.03~0.04、0.04~0.05、0.05~0.06、0.06~0.07、0.07~0.08、0.08~0.09、若しくは0.09~0.10の範囲内の平均日射吸収率係数Aを有しうる。
【0216】
架空送電線又は配電線用の単一被覆導体を形成するために1種以上の導電体を被覆するためのキットであって、
(i)アルカリ金属シリケートを任意に含む無機バインダー、
(ii)ナノシリカ(「nS」)又はコロイドシリカ(SiO2)を任意に含む重合剤、及び
(iii)光触媒剤であって、任意に平均粒子サイズ(「aps」)≦100nmを有する≧70wt%アナターゼ二酸化チタン(TiO2)を含む、光触媒剤、
を含む第1のパーツと、
(i)硬化剤、
を含む第2のパーツと、を含み、
使用時、第1及び第2のパーツが、混合一体化されて第1の混合物を形成し、次いで、第1の混合物が、1種以上の導電体の少なくとも一部分上に噴霧、塗装、被覆、又は適用されてコーティング又は膜を形成する、キットが開示される。第1の混合物は、コーティング又は膜が形成されるように乾燥される。
【0217】
コーティング又は膜又は第1の混合物は、赤外スペクトル2.5~30.0μmにわたり平均熱放射率係数E≧0.90並びに太陽スペクトル0.3~2.5μmにわたり平均日射反射率係数R≧0.90及び/又は平均日射吸収率係数A≦0.10を有する。
【0218】
架空送電線又は配電線用の単一被覆導体を形成するために1種以上の導電体を被覆する方法であって、
1種以上の導電体の少なくとも一部分上にコーティング又は膜又は第1の混合物を噴霧、塗装、被覆、又は適用すること、
を含み、コーティング又は膜又は第1の混合物が、
(i)アルカリ金属シリケートを任意に含む無機バインダー、
(ii)ナノシリカ(「nS」)又はコロイドシリカ(SiO2)を任意に含む重合剤、及び
(iii)光触媒剤であって、任意に平均粒子サイズ(「aps」)≦100nmを有する≧70wt%アナターゼ二酸化チタン(TiO2)を含む、光触媒剤、
を含む、方法が開示される。
【0219】
コーティング又は膜又は第1の混合物は、好ましくは、赤外スペクトル2.5~30.0μmにわたり平均熱放射率係数E≧0.90を有し、且つ任意に太陽スペクトル0.3~2.5μmにわたり平均日射反射率係数R≧0.90及び/又は平均日射吸収率係数A≦0.10を有する。
【0220】
1種以上の導電体を含む架空送電線又は配電線を改造する方法であって、
1種以上の導電体の少なくとも一部分上にコーティング又は膜又は第1の混合物を噴霧、塗装、被覆、又は適用すること、
を含み、コーティング又は膜又は第1の混合物が、
(i)アルカリ金属シリケートを任意に含む無機バインダー、
(ii)ナノシリカ(「nS」)又はコロイドシリカ(SiO2)を任意に含む重合剤、及び
(iii)光触媒剤であって、任意に平均粒子サイズ(「aps」)≦100nmを有する≧70wt%アナターゼ二酸化チタン(TiO2)を含む、光触媒剤、
を含む、方法が開示される。
【0221】
コーティング又は膜又は第1の混合物は、赤外スペクトル2.5~30.0μmにわたり平均熱放射率係数E≧0.90を有し、且つ任意に太陽スペクトル0.3~2.5μmにわたり平均日射反射率係数R≧0.90及び/又は平均日射吸収率係数A≦0.10を有する。
【0222】
各種実施形態によれば、コーティング又は膜又は第1の混合物は、赤外スペクトル2.5~30.0μmにわたり、0.90~0.91、0.91~0.92、0.92~0.93、0.93~0.94、0.94~0.95、0.95~0.96、0.96~0.97、0.97~0.98、0.98~0.99、又は0.99~1.00の範囲内の平均熱放射率係数Eを有しうる。
【0223】
各種実施形態によれば、コーティング又は膜又は第1の混合物は、太陽スペクトル0.3~2.5μmにわたり、0.90~0.91、0.91~0.92、0.92~0.93、0.93~0.94、0.94~0.95、0.95~0.96、0.96~0.97、0.97~0.98、0.98~0.99、若しくは0.99~1.00の範囲内の平均日射反射率係数R及び/又は0.00~0.01、0.01~0.02、0.02~0.03、0.03~0.04、0.04~0.05、0.05~0.06、0.06~0.07、0.07~0.08、0.08~0.09、若しくは0.09~0.10の範囲内の平均日射吸収率係数Aを有しうる。
【0224】
単なる例にすぎないが、添付の図面を参照して、次に、本発明の各種実施形態を例示目的に与えられた他の構成と一緒に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0225】
【
図1】
図1は、太陽放射によるエネルギーの獲得並びに導体放射による及び対流(風)によるエネルギーの損失を含む架空導電体に関連する伝熱機構の一部を例示する。
【
図2A-B】
図2Aは、公知の被覆導体の側面図を示し、
図2Bは、公知の被覆導体の断面図を示す。
【
図3A-D】
図3Aは、公知の単一被覆導体の断面図を示し、
図3Bは、コーティングを有する公知の6/1ACSR導体の断面図を示し、
図3Cは、コーティングを有する公知の26/7ACSR導体の断面図を示し、且つ
図3Dは、コーティングを有する公知の54/19ACSR導体の断面図を示す。
【
図4】
図4は、本発明の好ましい実施形態に係る単一被覆導体を示す。
【
図5】
図5は、異なるタイプの導体のアンペア容量が日射量の関数としてどのように変動するかを示す。
【
図6】
図6は、本発明のある実施形態に係る高日射反射率を有する層のUV-VIS-NIR吸光度スペクトルを示す。
【
図7】
図7は、
図6との比較目的で太陽スペクトル0.3~2.5μmを示す。
【
図9】
図9は、ピーク日照時間にわたる異なる試験導体の平均温度に関する試験データを示す。
【
図10】
図10は、ピーク日照時間にわたる異なる試験導体の平均温度に関する試験データを示すとともに、250℃までの昇温で動作する構成で単一被覆導体の有意に改善された性能を例示する。
【
図11】
図11は、波長の関数としてアナターゼ及びルチル二酸化チタン(TiO
2)顔料の反射率を示す。
【
図12】
図12は、電流サイクリング試験の結果を示すとともに、ある構成による被覆導体がアルミニウム導体鋼補強(「ACSR」)導体の温度を低減するのにとくに効果的であったことを示す。
【
図13】
図13は、ある構成による被覆導体で実施された電流サイクリング試験の結果をサイクルごとの温度低減(%)に関して示す。
【
図14】
図14は、ある構成による被覆導体で実施された屋外冷却性能試験の結果を示す。
【
図15】
図15は、英国における5月の1週間にわたるある構成による被覆導体と未被覆導体との温度低減(%)の差を示す。
【
図16A-B】
図16Aは、本発明の好ましい実施形態に係る溶媒系シリケートで被覆されたACSRサンプルとの関連で電流サイクリングを示し、
図16Bは、本発明の好ましい実施形態に係る溶媒系シリケートで被覆されたACSRサンプルとの関連で電流サイクリングを示す。
【
図17】
図17は、未被覆(コントロール)サンプルと比較して、水系(比較例#2)及び溶媒系シリケート(本発明の実施例#1)の両方の屋外冷却性能を実証する。
【発明を実施するための形態】
【0226】
本発明の範囲内に包含されることが意図されるものではなく、例示目的に与えられるものであるが、次に、従来構成及び一般公開されていない他の構成の両方と一緒に、本発明の各種実施形態をより詳細に考察する。
【0227】
図1は、架空導体100に関連する伝熱機構の一部を例示する。
【0228】
導体100の温度を上昇させる2つの優位な伝熱機構が存在する。第1の伝熱機構は、導体100の太陽放射加熱である。導体100に入射する太陽放射線が導電体100の温度の増加をもたらすことは、理解されよう。
【0229】
導体100の温度を上昇させる第2の伝熱機構(
図1に示されていない)は、導体100を介する電流の伝達に起因するオーム損失効果である。導体100を介する電流の伝達に対する導体100の抵抗は、導体100のジュール加熱をもたらすであろう。
【0230】
それゆえ、導体100の太陽放射加熱とジュール加熱との組合せ効果は、導体の温度100を上昇させるであろう。
【0231】
導体100のエネルギーの獲得は、導体100がエネルギーを失いうる3つの伝熱機構により、すなわち、放射、伝導、及び対流により相殺されうる。
【0232】
伝導による熱損失は無視しうる。対流による(すなわち、気流又は風に起因する)熱損失は、導体100の地理的位置に依存するであろう。導体100は、米国南部、中東、オーストラリアなどの世界の暑い地域内に配置されうる。非海岸地域の風は、相対的に弱い可能性があり、そのため、対流による熱損失は、通常、有意な考慮点になりえない。それゆえ、導体100がエネルギーを失いうる主な機構は、熱線による。
【0233】
米国南部、中東、オーストラリアなどの世界の地域に従来から配置されている架空裸導体が、有意に上昇した温度に達する可能性があることは、当業者であれば理解されよう。それゆえ、米国南部、中東、オーストラリアなどの世界の地域に配置された架空導体の動作温度を低減可能であるという課題は、たとえばユーティリティー会社にとって商業的にかなりの関心事である。
【0234】
多くの国々の高電圧電力線は、国家インフラの一部を形成すると考えられるので、国家により所有及び統制されうる。
【0235】
架空送電線は、一般に、1種以上の伝導性ワイヤで形成されたコアを含む。各種異なるタイプの架空導体が知られている。
【0236】
オールアルミニウム導体(「AAC」)は、BS EN50182又はIEC61089に準拠した導体を形成するように対向方向に逐次層状に撚り合わされた硬引きアルミニウムワイヤを含む。AAC導体は、相対的に短い間隔を有する架空配電線、架空給電線、及び変電所のバスバーに使用されうる。AAC導体は、鋼が存在しないので高耐食性を有する。従来のAAC導体は、典型的には80℃の最高動作温度までの定格である。
【0237】
オールアルミニウム合金導体(「AAAC」)は、IEC61089、BS EN50182、又はASTM B399に準拠した導体を形成するように対向方向に逐次層状に撚り合わされたオールアルミニウム合金(「ALMELEC」)ワイヤを含む。AAAC導体は、架空送電線及び相対的に長い間隔を有する配電網に主に使用される。それはまた、架空電気ケーブルを支持するためにメッセンジャーとして使用される。AAAC導体は、鋼が存在しないので高耐食性を有する。従来のAAAC導体は、典型的には80℃の最高動作温度までの定格である。
【0238】
アルミニウム導体鋼補強(「ACSR」)導体は、BS EN50182、ASTM B232、又はIEC61089に準拠した導体を形成するように亜鉛メッキ又は撚り鋼ワイヤの中心コアの周りに同心撚りされたアルミニウム導体の外側層を含む。ACSR導体は、長距離にわたる送電に広く使用される。ACSR導体はまた、架空電気ケーブルを支持するためにメッセンジャーとしても使用されうる。従来のACSR導体は、典型的には80℃の最高動作温度までの定格である。
【0239】
アルミニウム導体アルミニウムクラッド鋼補強(「ACSR/AW」)導体は、ASTM B549に準拠した導体を形成するようにアルミニウムクラッド鋼中実又は撚りケーブルの中心コアの周りに同心撚りされたアルミニウム導体の外側層を含む。ACSR/AW導体は、送電に使用され、ACSR導体のように長い架空線間隔に理想的であるが、良好な耐食性に加えてわずかにより良好な抵抗及び通電容量を有する。従来のACSR/AW導体は、典型的には80℃の最高動作温度までの定格である。
【0240】
架空集束ケーブル(「ABC」)は、ICEA S474-76又はBS EN50182に準拠した2本(二重)、3本(三重)、4本(四重)、又はそれ以上の導体を形成するようにXLPE絶縁により絶縁されて集成されたアルミニウム導体から作製される。それは、電柱上の二次架空線(相間600Vを超えない回路で)又は住宅敷地への給電線として使用される。
【0241】
150~250℃までの有意により高い動作温度で動作するように設計された各種高温低弛度(「HTLS」)導体もまた、公知である。
【0242】
公知のHTLS導体としては、アルミニウム導体複合コア(「ACCC」)導体、アルミニウム導体鋼支持(「ACSS/MA」)導体、アルミニウム導体アルミニウムクラッド鋼支持(「ACSS/AW」)導体、耐熱アルミニウム合金導体鋼補強(「TACSR」)導体、耐熱アルミニウム合金導体アルミニウムクラッド鋼補強(「TACSR/AW」)導体、及び超耐熱アルミニウム合金導体アルミニウムクラッドインバー補強(「STACIR/AW」)導体が挙げられる。
【0243】
アルミニウム導体複合コア(「ACCC」)導体は、軽量炭素-ガラス繊維複合材の中心コア上に台形状アニール1350-Oアルミニウムワイヤの1層以上を有する同心撚り導体を含む。ハイブリッド炭素複合コアを含むACCC導体は、伝統的鋼コアよりも強くて軽い。ACCC導体は、合計重量を増加させることなくおおよそ30%多いアルミニウムの使用を可能するそのより軽いコアに加えて、180℃までの連続動作温度用に設計された場合、ACCC導体は、伝統的ACSR導体の2倍の電流を運ぶ能力がある。ACCC導体を使用すると、同一直径及び重量の伝統的ACSR導体と比較して、等しい負荷条件下で線損失は30~40%低減する。ACCC導体は、より大きな強度、効果的な自己減衰、優れた耐疲労性、及び低い膨張係数を有することにより、大きな電気負荷条件下で導体弛度を低減する。結果として、ACCC導体は、より少ない又はより短い構造体間の間隔を増加させるために使用可能である。ACCC導体は、伝統的ACSR導体よりも大きな耐食性を有する。
【0244】
ACCC導体は、架空配電線及び送電線に使用され、既存の張力及びクリアランスで電流の増加を必要とする導体交換用途、導体弛度の低減により構造体を節約可能である新たな線用途、風による振動が問題であるかなり緊急の負荷及び線を必要とする新たな線用途にとくに有用である。ACCC導体はまた、その良好な耐食性に起因して腐食及び海岸環境で使用可能である。従来のACCC導体は、典型的には180℃の最高動作温度までの定格である。
【0245】
アルミニウム導体鋼支持(「ACSS/MA」)導体は、ACSS導体への機械的負荷のほとんど又はすべてに耐えるように設計された亜鉛-5%アルミニウムミッシュメタル合金被覆鋼ワイヤの中心コアの周りに撚り合わされたアニールアルミニウム1350-Oワイヤの1層以上を含む。ACSS導体は、ASTM B856に準拠して製造されうる。
【0246】
ACSS/MA導体は、ACSS/MA導体が損傷することなく250℃までの高温で連続動作可能であることを除いて伝統的ACSR導体に類似している。ACSS/MA導体は、緊急負荷下でACSR導体よりも緩みが小さく、自己減衰性を有し、且つ最終弛度がアルミニウムの長期クリープによる影響を受けない。
【0247】
ACSS/MA導体は、架空配電線及び送電線に使用され、既存の張力及びクリアランスで電流の増加を必要とする導体交換用途にとくに有用である。ACSS/MA導体はまた、導体弛度の低減により構造体を節約可能である新たな線用途、風による振動が問題であるかなり緊急の負荷及び線を必要とする新たな線用途にも使用される。従来のACSS/MA導体は、典型的には250℃の最高動作温度までの定格である。
【0248】
アルミニウム導体アルミニウムクラッド鋼支持(「ACSS/AW」)導体は、ACSS/AW導体への機械的負荷のほとんど又はすべてに耐えるように設計されたアルミニウムクラッド鋼ワイヤの中心コアの周りに撚り合わされたアニールアルミニウム1350-Oワイヤの1層以上を含む。ACSS/AW導体は、ASTM B856に準拠して製造されうる。
【0249】
ACSS/AW導体は、損傷することなく200℃までの高温で連続動作可能である。鋼全体にわたりアルミニウムの厚層(公称ワイヤ半径のおおよそ10%)からなるアルミニウムクラッド鋼コアは、鋼の高引張り強度及び耐久性と共にアルミニウムの軽量及び良導電性を伴ってACSS/AW導体にACSS導体の利点を与える。
【0250】
ACSS/AW導体は、架空配電線及び送電線に使用され、既存の張力及びクリアランスで電流の増加を必要とする導体交換用途にとりわけ有用である。ACSS/AW導体はまた、導体弛度の低減により構造体を節約可能である新たな線用途、風による振動が問題であるかなり緊急の負荷及び線を必要とする新たな線用途にも使用される。
【0251】
ACSS/AW導体は、綱コアワイヤのアルミニウムクラッディングに起因してわずかに大きなアンペア容量及び耐食性を伴ってACSS導体に類似した強度特性を有する。従来のACSS/AW導体は、典型的には200℃の最高動作温度までの定格である。
【0252】
耐熱アルミニウム合金導体鋼補強(「TACSR」)導体は、IEC62004及びIEC60888に準拠した並びに一般的にはIEC61089に準拠した亜鉛被覆鋼ワイヤの中心コアの周りに撚り合わされた耐熱アルミニウムジルコニウム合金(AT1)ワイヤの1層以上を含む。
【0253】
TACSR導体は、150℃までの連続動作温度用に設計された場合、伝統的ACSR導体よりも高い(150%)負荷電流を運ぶことが可能である。TACSR導体は、ACSR導体と同一の設置技術を有する。
【0254】
TACSR導体は、架空配電線及び送電線に使用され、電流の増加を必要とする新たな線用途にとくに有用である。従来のTACSR導体は、典型的には150℃の最高動作温度までの定格である。
【0255】
耐熱アルミニウム合金導体アルミニウムクラッド鋼補強(「TACSR/AW」)導体は、IEC62004及びIEC61232に準拠した並びに一般的にはIEC61089に準拠した撚りアルミニウムクラッド鋼(20SAタイプA)ワイヤの中心コアの周りに撚り合わされた耐熱アルミニウムジルコニウム合金(AT1)ワイヤの1層以上を含む。
【0256】
TACSR/AW導体は、150℃までの連続動作温度用に設計された場合、伝統的ACSR導体よりも高い負荷電流を運ぶことが可能である。TACSR/AW導体は、TACSR導体よりも増加した耐食性及び低い電気抵抗及び低い質量を有する。TACSR/AW導体は、ACSR導体と同一の設置技術を有する。
【0257】
TACSR/AW導体は、架空配電線及び送電線に使用され、電流の増加を必要とする新たな線用途にとくに有用である。TACSR/AWは、その良好な耐食性に起因して腐食及び海岸環境で使用されうる。従来のTACSR/AW導体は、典型的には150℃の最高動作温度までの定格である。
【0258】
超耐熱アルミニウム合金導体アルミニウムクラッドインバー補強(「STACIR/AW」)導体は、IEC62004に準拠した並びに一般的にはIEC61089及びIEC61232に準拠した撚りアルミニウムクラッドインバーワイヤの中心コアの周りに撚り合わされた超耐熱アルミニウムジルコニウム合金(AT3)ワイヤの1層以上を含む。インバーは、非常に低い線膨張係数を有する特殊Fe/Ni合金である。
【0259】
STACIR/AW導体は、210℃までの連続動作温度用に設計された場合、伝統的ACSR導体よりも高い(200%)負荷電流を運ぶことが可能である。ニーポイントを超えると、STACIR/AW導体は、高動作温度で弛度を制御するインバーコア単独の膨張に起因して弛度増加を経験する(きわめて低い値≦3.7×10-6/℃)。STACIR/AW導体は、増加した耐食性を有するとともに、ACSR導体と同一の設置技術を有する。
【0260】
STACIR/AW導体は、架空配電線及び送電線に使用され、電流の増加を必要とする新たな線用途にとくに有用である。STACIR/AW導体は、その良好な耐食性に起因して腐食及び海岸環境で使用されうる。従来のSTACIR/AW導体は、典型的には210℃の最高動作温度までの定格である。
【0261】
それゆえ、公知のHTLS導体は、典型的には150~250℃の範囲内の最高動作温度までの有意により高い温度で高電圧架空導電体の動作を可能にする。
【0262】
図2Aは、国際公開第2015/105972号パンフレット(Ranganathan)に開示される公知の被覆導体200の側面図を示し、
図2Bは、その断面図を示す。公知の導体200は、外側高分子コーティング201に取り囲まれた19本のアルミニウムケーブル又はワイヤ202を含む。ギャップ203は、外側高分子コーティング201と個別伝導性ケーブル又はワイヤ202との間に存在しうる。外側高分子コーティング201は、ANSI C119.4に準拠して導体200を試験したときに導体200の温度が減少するように提供される。
【0263】
図3Aは、中心アルミニウムコア301と単一外側高分子コーティング302とを有する他の公知の導体の断面図を示す。
【0264】
図3Bは、6本のアルミニウム電気ワイヤ310のリングに取り囲まれた中心鋼補強要素303を含む公知の6/1ACSR導体の断面図を示す。6本のアルミニウムワイヤ310の各々は、高分子コーティング302を有する。
【0265】
図3Cは、アルミニウムワイヤ310の第2のリングにさらに取り囲まれたアルミニウムワイヤ310の第1のリングに取り囲まれた7本の中心鋼補強要素303を含む公知の26/7ACSR導体の断面図を示す。アルミニウムワイヤの第2の外側リングは、最外側高分子コーティング302により包囲される。
【0266】
図3Dは、アルミニウムワイヤ310の第2のリングにさらに取り囲まれたアルミニウムワイヤ310の第1のリングに取り囲まれた19本の中心鋼補強要素303を含む公知の54/19ACSR導体を示す。アルミニウムワイヤ310の第2のリングは、アルミニウムワイヤ310の第3のリングにさらに取り囲まれる。アルミニウムワイヤ310の第3の外側リングは、最外側高分子コーティング302により包囲される。
【0267】
図4は、本発明の好ましい実施形態に係る単一被覆導体を示す。コーティング又は膜で被覆された導体は、好ましくはアルミニウムの内側金属導体400を含む。内側金属導体400は、1本以上の鋼補強要素(図示せず)及び/又は1本以上の複合要素を含みうる。
【0268】
本発明の好ましい実施形態に係るコーティング又は膜で被覆された導体は、好ましくは金属導体400の周囲に第1の無機コーティング401を含む。コーティング又は膜401は、アナターゼ二酸化チタン(TiO2)を含むセルフクリーニング光触媒剤を含む。
【0269】
本発明によれば、平均熱放射率係数E≧0.90及び平均日射反射率係数R≧0.90及び/又は平均日射吸収率係数A≦0.10を有するコーティング又は膜又は層401を有する1種以上の導電体400が提供される。
【0270】
1種以上の導電体400は、架空送電線又は配電線の一部を形成しうる。
【0271】
コーティング、膜、又は層401は、好ましくは無機バインダーを含む。無機バインダーは、(i)アルカリ金属シリケート、(ii)ナノシリカ(「nS」)又はコロイドシリカ(SiO2)を任意に含む重合剤、(iii)任意に平均粒子サイズ≧250nmを有するルチル二酸化チタン(TiO2)などの反射剤、及び(iv)光触媒剤であって、平均粒子サイズ≦100nmを任意に有する≧70wt%アナターゼ二酸化チタン(TiO2)を任意に含む、光触媒剤、を含みうる。かかる無機バインダーは、水系組成物中に提供される。
【0272】
しかしながら、かかる構成は知られていないが、水系組成物は、本発明の意図される範囲内に包含されることは意図されない。
【0273】
その代わりに、本発明によれば、コーティング又は膜又は層401は、好ましくは、溶媒系組成物の好ましくは一部である無機バインダーを含む。本発明によれば、架空導体を被覆するための組成物が提供される。組成物は、好ましくは、コーティング、膜、又は層401が形成されるように湿気硬化により硬化する。組成物は、好ましくは、反射剤と、平均粒子サイズ(「aps」)≦100nmを有する≧70wt%アナターゼ二酸化チタン(TiO2)を含む光触媒剤と、非水性溶媒(すなわち、水系でない)と、1種以上のアルキルシリケートバインダーと、を含む。
【0274】
コーティング又は膜又は層401は、好ましくは、赤外スペクトル2.5~30.0μmの少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、又は90%にわたり、平均熱放射率係数E≧0.90を有する。
【0275】
コーティング又は膜又は層401は、好ましくは、太陽スペクトル0.3~2.5μmの少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、又は90%にわたり、平均日射反射率係数R≧0.90及び/又は平均日射吸収率係数A≦0.10を有する。
【0276】
ある実施形態によれば、コーティング又は膜401は、1種以上の導電体400の少なくとも一部分上に提供されうる。
【0277】
本発明に係る単一被覆導体を試験したところ、ASTM B117(塩水噴霧)試験手順に準拠して試験したときに良好な又は優れた耐食性を有することが分かった。
【0278】
次に、工業規格CIGRE 207-2002法を用いて導体温度を計算することにより、高太陽放射を受ける地域で高日射反射率コーティングを有する単一被覆導体を利用することの重要性を実証する。単に例示を目的としたものにすぎないが、北緯30°の位置に配置されて8月の太陽放射に12時間露出される電力線は、考慮対象になりうる。気温は、40℃であるとしてモデルされる。
【0279】
以上の条件下では、1000Aの定電流を伝達する異なるコーティングのDrake ACSR架空導電体は、下記の特性を有するであろう。
【0280】
【0281】
上記の表1に示される数量は、工業規格CIGREモデルを用いて計算されたものであり、高反射率及び高放射率の両方を有する本発明の好ましい実施形態に係る単一被覆導体が、灰色コーティングを有する従来の導体と比べてほぼ2倍の冷却作用をもたらすことを実証する(15.8℃対8.0℃で×1.975)。以下に詳述されるように、以上の計算は、2つの異なる試験リグを用いて経験的試験によりさらに確認された。
【0282】
増加した放射率及び同時に高反射率(すなわち日射吸収を増加させない)の両方を有する本発明の好ましい実施形態に係る単一被覆導体は、100℃までの温度(上記の表1による)さらには150~250℃の範囲内の昇温(以下に示されるデータ)で動作する従来構成と比べて、とくに効果的であり、有意に改善された性能を提供することが示される。
【0283】
コーティング又は膜401は、白色充填剤を含みうる。白色充填剤は、たとえば、(i)酸化マグネシウム(MgO)、(ii)酸化カルシウム(CaO)、(iii)酸化アルミニウム(Al2O3)、(iv)酸化亜鉛(ZnO)、(v)炭酸カルシウム(CaCO3)、(vi)ケイ酸アルミニウム(Al2SiO5)、(vii)二酸化チタン(TiO2)、又は(viii)硫酸バリウム(BaSO4)を含みうる。コーティング又は膜401は、1種以上の他の白色充填剤を含みうる。
【0284】
無機コーティング
各種実施形態によれば、コーティング又は膜401は、好ましくは無機バインダーを含む。無機バインダーは、水系無機バインダーを含みうるか、又はより好ましくは溶媒系無機バインダーを含みうる。本発明の各種実施形態によれば、無機バインダーは、溶媒系無機バインダーを含む。
【0285】
水系無機バインダーは本発明の主題ではないが、無機バインダーは、アルカリ(又はアルカリ性)金属ケイ酸塩を含みうる。たとえば、アルカリ(又はアルカリ性)金属ケイ酸塩は、ケイ酸カリウム(K2SiO3)を含みうる。代替的に、アルカリ(又はアルカリ性)金属ケイ酸塩は、ケイ酸ナトリウムを含みうる。ケイ酸ナトリウムは、メタケイ酸ナトリウム(Na2SiO3)、オルトケイ酸ナトリウム(Na4SiO4)、又はピロリン酸ナトリウム(Na6Si2O7)を含みうる。アルカリ(又はアルカリ性)金属ケイ酸塩は、ケイ酸リチウム(Li2SiO3)、ケイ酸カルシウム(Ca2SiO4)若しくはオルトケイ酸カルシウム、又はケイ酸アルミニウムマグネシウム(AlMgSiO4)を含みうる。
【0286】
水系無機バインダーとは対照的に、本発明によれば、無機バインダーは溶媒系バインダーを含む。溶媒系バインダーは、好ましくは、1種以上のアルキルシリケートバインダーを含む。
【0287】
第1の無機コーティング401は、1種以上のブレイド、セラミックファイバー、接着剤ヤーン、又は特殊テープを含みうる。
【0288】
第1の無機コーティング401は、半伝導性でありうるとともに、1012オーム・cm以下の体積抵抗率、好ましくは1010オーム・cm以下の体積抵抗率、さらに好ましくは、108オーム・cm以下の体積抵抗率を有しうる。
【0289】
第1の無機コーティング401は、140~150℃、150~160℃、160~170℃、170~180℃、180~190℃、190~200℃、200~210℃、210~220℃、220~230℃、230~240℃、240~250℃、250~260℃、260~270℃、270~280℃、280~290℃290~300℃、又は>300℃の範囲内の熱変形温度を有しうる。
【0290】
第1の無機コーティング401は、ASTM1960に準拠した2000時間の屋外耐候性試験後に50%以上の破断点伸びの保持しうる。
【0291】
第1の無機コーティング401は、0.15W/m以上の熱伝導率を有しうる。
【0292】
コーティング又は膜401は、それほど好ましいものではないが、0~10、10~20、20~30、30~40、40~50、50~60、60~70、70~80の範囲内の明度値L*を有しうる。より好ましくは、コーティング又は膜401は、白色であり、且つ80~90又は90~100の範囲内の明度値L*を有する。ただし、L*=0のとき、観察色は黒色であり、且つL*=100のとき、観察色は白色である。好ましい実施形態によれば、コーティング401はL*≧80を有する。
【0293】
第1の無機コーティング401は、撥水性添加剤、親水性添加剤、及び/又は誘電性流体が実質的にフリーでありうる。
【0294】
充填剤
本発明の各種実施形態に係る国際公開第2015/105972号パンフレット(Ranganathan)に開示される構成と同様に、第1の無機コーティング401は、1種以上の充填剤を含みうる。第1の無機コーティング401は、0~50%の濃度(合計組成物の重量を基準にして)で1種以上の充填剤を含有しうるとともに、1種以上の充填剤は、0.1~50μmの平均粒子サイズを有しうる。充填剤粒子は、球状、六角状形、フレーク状、繊維形、又はリボン状でありうる。
【0295】
IR反射性添加剤
本発明の各種好ましい実施形態に係る国際公開第2015/105972号パンフレット(Ranganathan)に開示される構成と同様に、第1の無機コーティング401は、1種以上の赤外反射性顔料又は添加剤を含みうる。1種以上の赤外反射性(「IR」)顔料又は添加剤は、たとえば0.1~10wt%の濃度で第1の無機コーティング401に含まれうる。IR反射性添加剤は、好ましくは白色である。
【0296】
安定剤
本発明の各種好ましい実施形態に係る国際公開第2015/105972号パンフレット(Ranganathan)に開示される構成と同様に、たとえば0.1~5%の濃度(合計組成物又はコーティングの重量を基準にして)で1種以上の安定剤が第1の無機コーティング401に含まれうる。
【0297】
1種以上の安定剤は、ベントナイトなどの光安定剤及び/又は分散安定剤を含みうる。安定剤は、好ましくは白色である。
【0298】
被覆プロセス
第1の無機コーティング401又は第1の混合物は、噴霧又は塗装により架空ケーブルなどの1つ以上の導体400に適用されうる。コーティング又は膜又は第1の混合物は、(それほど好ましいものではないが)水系でありうるとともに、任意にある時間にわたる熱硬化などにより脱水又は乾燥されうる。
【0299】
しかしながら、より好ましくは、コーティング又は膜は、溶媒系であり、且つ湿気硬化のみにより硬化される。すなわち、熱硬化に付されない。
【0300】
第1の無機コーティング401に対して導体400又は1種以上の伝導性ワイヤの表面を準備するために、1つ以上の前処理プロセスが使用されうる。たとえば、各種実施形態によれば、導体400又は1種以上の伝導性ワイヤは、化学処理、加圧空気クリーニング、熱水処理、スチームクリーニング、ブラシクリーニング、熱処理、サンドブラスティング、超音波、グレア除去、溶媒ワイプ、プラズマ処理などに付されうる。
【0301】
1つ以上の架空導体400の表面は、サンドブラスティングによりグレア除去されうる。架空導体は、コーティング又は膜401に対して導体400又は1種以上の伝導性ワイヤの表面を準備するために、熱処理プロセスの一部として23~250℃の温度に加熱されうる。温度は、コーティング又は膜401に応じて選択されうる。
【0302】
ある特定の実施形態では、被覆プロセスは、溶媒フリー又は本質的に溶媒フリーでありうる。溶媒フリー又は本質的に溶媒フリーとは、プロセスのいずれにおいても、製品の合計重量を基準にして約1%以下の溶媒が使用されることを意味しうる。
【0303】
しかしながら、好ましい実施形態によれば、被覆プロセスは、溶媒及び湿気硬化の使用が必要とされる。
【0304】
被覆導体の特性
分かるであろうが、単一コーティング又は単層401の適用は、セルフクリーニング性をはじめとするいくつかの優れた特性を有する架空導体などのケーブルを提供する。
【0305】
第1の無機コーティング401は、導体400又は1種以上の伝導性ワイヤの外側が均一厚さのケーブルを提供しうる。第1の無機コーティング401を施す各方法は、さまざまな量の不一様性を補償しうる。
【0306】
本発明の各種好ましい実施形態に係るコーティング又は膜層401は、裸導体のものと比べて増加した機械的強度を有する導体400又は1種以上の伝導性ワイヤを提供しうる。たとえば、各種実施形態によれば、単一被覆導体400又は1種以上の伝導性ワイヤは、10MPaの最小引張り強度を有しうるとともに、50%以上の最小破断点伸びを有しうる。
【0307】
他の利点として、単一コーティング401は、国際公開第2015/105972号パンフレット(Ranganathan)に開示される構成と同様に、導体400又は1種以上の伝導性ワイヤの腐食及びバードケージングに対する保護層の働きをしうる。分かるであろうが、裸又は液体被覆導体は、経時的にその構造インテグリティーを失うおそれがあるとともに、導体ワイヤストランド間のいずれの空間でもバードケージングの影響を受けやすくなるおそれがある。これとは対照的に、単一コーティング401を有する導体400又は1種以上の伝導性ワイヤは、シールドされてバードケージング問題を解消しうる。
【0308】
他の利点として、第1の無機コーティング401は、水透過を排除しうるうえに、氷及びダスト蓄積を低減しうるとともに耐コロナ性を改善しうる。
【0309】
他の利点として、単一コーティング401で被覆された導体400又は1種以上の伝導性ワイヤは、増加した熱伝導率、増加した放射率及び、減少した吸収率特性を有しうる。
【0310】
そのほかの利点として、第1の無機コーティング401は、140~150℃、150~160℃、160~170℃、170~180℃、180~190℃、190~200℃、200~210℃、210~220℃、220~230℃、230~240℃、240~250℃、250~260℃、260~270℃、270~280℃、280~290℃、290~300℃、又は>300℃の温度をはじめとするより高い温度で耐熱変形性を有しうる。
【0311】
有利には、第1の無機コーティング401は、より低い温度でフレキシビリティーを維持しうるとともに、より低い温範囲で改善されたシュリンクバック及び低い熱膨張を有しうる。
【0312】
第1の無機コーティング401の追加は、架空導体400に相対的にわずかな重量を追加しうる。たとえば、本発明の好ましい実施形態に係る単一被覆架空導体の重量増加は、<5%、5~10%、10~15%、又は15~20%でありうる。
【0313】
そのうえさらなる有意な利点は、第1の無機コーティング401が、いくつかの公知の単一コーティングとは対照的に、良好な耐食性又は優れた耐食性のどちらかを有することである。
【0314】
実験データ
CIGRE技術仕様601に従って各種シミュレーションを実施し、そのさらなる詳細を以下に与える。
【0315】
最大予想等級又は導体温度を計算するために、定常状態の状況で、固定された気象及び導体パラメーターを仮定した。環境データは、以下に詳述されるように、暑い雲のない晴天の亜熱帯砂漠位置を表すように選ばれた。
【0316】
【0317】
動作温度の低減
一般に、新しい未被覆導体は、放射率E=0.5及び日射吸収率A=0.5を有するであろう。1年間にわたり、導体の表面が有機物で被覆されるようになるので及び/又は汚染に晒されるので、未被覆導体の放射率Eは、たとえばおおよそ0.8に増加するであろう。同様に、吸収率もまた、その1年間で0.8に増加するであろう。これらの数量は位置に依存し、たとえば、導体がそれほど汚染されていない位置に位置すれば、最終値は、最終的に異なりうる(たとえば、より高く/より低くなりうる)ことが理解されよう。
【0318】
以下の表3は、表面特性の関数として電流及び温度を示す。
【0319】
【0320】
通常、Drake ACSR導体がCIGREシミュレーションに使用されることは、理解されよう。
【0321】
アンペア容量の増加
以下の表4は、完全導体、老化導体、新しい未被覆導体、及び好ましい実施形態に係る被覆導体に対して、アンペア容量が時刻及び対応する日射量に伴ってどのように変動するかを示す。
【0322】
【0323】
図5は、理論的完全導体と比較して、新しい導体、老化導体、及び二重被覆導体(単に例示を目的として含まれるにすぎない)に対して、時刻日射強度に対するアンペア容量又は電流容量のプロットを示す。
【0324】
図5は、改質導体のアンペア容量が理論的完全導体の性能に近い性能を発揮することを示す(この場合、アンペア容量は日射量の増加に伴って低減しない)。特定的には、
図5から、改質導体の性能が従来の導体とはきわめて対照的に8時間後に高レベルの性能示すことに留意されたい。
【0325】
実験室環境での技術検証
初期実験室スケールのプロトタイプを作製して、電力線と同一グレードであるが試験を容易にするためにフラットに構成されたフラットアルミニウムシートの性能に基づいて試験した。それゆえ、コーティングは、円柱状ケーブルではなくフラットシート適用された。
【0326】
光学的概念実証は、コーティング又は膜401が、最適放射冷却をもたらすのに必要とされる具体的波長で必要な光学性能(たとえば、高反射率、高放射率)を有することを実証することにより、実証された。
【0327】
さらに、電気的概念実証は、改質導体が、相対的に高い電流を伝達するときに未被覆導体のものよりも有意に低い温度で動作することを実証することにより、実証された。
【0328】
電気的概念実証試験は、(i)温度を出力として複数のフラット被覆導体が屋外で試験された定電流試験及び(ii)各々加熱に要するワット数を出力として同一温度で複数の異なるコーティングを試験することを必要とする定温度試験、の両方を必要とした。
【0329】
日射反射性層
日射反射性層のUV-VIS-NIR分光分析は、ISN-723積分球装着のJASCO(RTM)V670 UV-VIS-NIR分光計を用いてサードパーティーにより行われた。積分球装着は、サンプルにより反射された散乱線(約180°)の集光を可能にした。分析は、正反射率を除く反射率モードで行われた。1つのスペクトルは、サンプルの各側から収集された。サンプルは、第2の側の分析のために入射ビームを中心に90°回転させた。これは、太陽スペクトル(0.3~2.5μm)で低吸光度を有するべきである。改質導体はこれを実証する。
【0330】
図6は、本発明のある実施形態に係る日射反射性層のUV-VIS-NIR吸光度又は反射率スペクトルを示す。吸光度又は反射率スペクトルは、太陽エネルギーの90%超が吸収されずに直射太陽光下で冷却が促進されることを実証する。とりわけ、反射率は、2.5μmの方向に低減するので、波長範囲2.5~30.0μmの赤外線の熱放射の妨害も干渉もしないようにするのが有利である。
図6との関連で試験された特定日射反射性層は、好ましい実施形態に係る単一層反射性/放射性シリケートを含んでいた。
【0331】
図7は、
図6との比較目的で太陽スペクトルを示す。大気のトップの太陽スペクトルは、5250℃黒体スペクトルにほぼ対応する。海面レベルでの太陽放射は、O
2、H2O、及びCO
2分子による吸収に起因して各種吸収バンドを示す。
【0332】
定電流電気的概念実証
リグ設計及び実験方法
本発明の好ましい実施形態に係る改質コーティング401が、導電体の動作温度を低下するように機能することを実証するために、さらなる試験を実施した。導体の少なくとも1つを未被覆にして、合金1350のいくつかの長さのフラットアルミニウム導体を含む一連の導体を直列に接続して試験した。
【0333】
導体の各々の上表面を大気に暴露し、導体の下表面をCELOTEX(RTM)フォームボードに接着させることにより断熱した。次いで、DC電流を導体に印加したところ、ジュール加熱により熱くなった。被覆及び未被覆導体の温度測定を行って、アルミニウム導体400の温度の低減に関して本発明の好ましい実施形態に係る単一コーティング401の効能を実証した。太陽放射線に直接晒される側に接続した場合に誤差が導入されるおそれのある劣悪な熱接続の影響を低減するために、センサーを導体の背面に取り付けて導体と断熱材と間に配置した。
【0334】
実験デザインのアーチファクトに起因する性能測定の可能性を除去するために、いくつかのリグを設計し繰返し最適化した。環境条件が最終製品の動作条件を表すので、太陽光及び自然対流に暴露したときのさまざまなコーティングの性能を調べることが望ましい。
【0335】
外部環境での定電流試験には規格が存在しないので、屋外試験用に新しい専用リグを設計した。温度を測定するために断熱表面に取り付けられた熱電対を用いて屋外で太陽光下に試験するとき、いくつかの問題が生じうる。熱電対は、導体の表面に光学的不規則性を導入しうる。また、導体の表面から空気への温度勾配が生成されうるとともに、熱電対から導体までの距離の小さなずれは、熱電対間の温度測定精度の大きな差をもたらす可能性がある。
【0336】
続いて、熱電対を等しく断熱するとともにセンサーと導体との間の熱勾配の潜在的な差を最小限に抑えた試験リグを設計した。寸法50×450×600mmを有するCELOTEX(RTM)断熱材のピースを試験リグ用のベースとして使用した。
【0337】
CELOTEX(RTM)は、空気よりも低い熱伝導率を有し、定電流試験に必要とされるより高い温度で操作可能である。CELOTEX(RTM)断熱材の背面にドリルで穴をあけ、表面に熱電対センサーをネジ込んだ。次いで、数ミリメートルのセンサーケーブルを引き出し、センサーをCELOTEX(RTM)表面に平行に横たわるようにした。導体の中心線から1mm以内にくるように熱電対を固定するためにトップに配置された厚さ0.1mmの高温両面接着テープにより、熱電対センサーを試験ストリップから電気絶縁した状態に保った。次いで、熱電対がCELOTEX(RTM)とアルミニウム導体との間に隠れるようにアルミニウム導体をセンサーのトップに配置することにより、センサーと導体との間に存在する熱勾配の可能性を最小限に抑えた。
図8に示される波状又はサーペンタインパターン若しくは形状にカットされた導体のシングルピースを利用することにより、導体と電源との接続の数を最小限に抑えた。
【0338】
図8は、指示された各種寸法を有するアルミニウム試験導体を示す。導体は、10列を含むように構成され、そのうちの外側2列は、電気接続を行うために使用され、内側8列は、コーティング試験用に使用された。次いで、波状又はサーペンタイン形状の導体をセンサーのトップに配置し、両面熱安定性テープを用いて下側で固定した。アルミニウム導体は、合金1350を含み、0.7mmの厚さを有していた。1つのタイプのコーティングから他のタイプのコーティングへの移行点は、半円接続の曲線部分の中間にくるように構成された。
【0339】
100℃までの温度試験
4つの異なる導体ストリップ、すなわち、(i)未被覆ブライトアルミニウム(コントロール)導体、(ii)縮合硬化シリコーンゴムバインダー中に10wt%炭化ケイ素を含む灰色放射性コーティングを有する導体、(iii)アセトン中に1wt%カーボンブラックを含むカーボンブラック層を含む黒色放射性コーティングを有する導体、及び(iv)光触媒剤を含む第1の又は単一の層401を含む好ましい実施形態に係る導体400(ただし、光触媒剤は、平均粒子サイズ(「aps」)≦100nmを有する≧70wt%アナターゼ二酸化チタン(TiO2)を含む)を試験した。
【0340】
サンプルは、800W/m2超の太陽放射線レベルを有する弱風条件下の屋外で試験された。2つの公称温度範囲で試験した。100Aまでの電流を供給する1.5Vバッテリーを含む低電圧DC電源を試験リグに継続して接続した。これにより、温度を周囲よりもおおよそ0~100℃高い温度に増加した導体をもたらした。周囲温度は、典型的には20℃であったが、10~30℃の範囲内であった。
【0341】
平均温度は、ピークでコーティングの各々に対して計算された。主要環境条件は、(i)10~30℃周囲温度、(ii)弱風(ビューフォートスケールで典型的には2~3)、及び(iii)≧800W/m2垂直日射であった。
【0342】
結果は、ピーク時にわたる異なる導体の平均温度を示す
図9に示される。これらの温度では、本発明の好ましい実施形態に係る単一被覆導体がとくに有利であることは明らかである。経験的試験データは、表1を参照して以上に示され説明された計算値に一致する。それゆえ、試験データは、本発明の好ましい実施形態に係る単一被覆導体を利用することにより、太陽光の存在下で日射反射率の増加から生じる有意な性能上の利点を実証する。
【0343】
250℃までの温度試験
3つの異なる導体ストリップ、すなわち、(i)未被覆ブライトアルミニウム(コントロール)導体、(ii)アセトン中に1wt%カーボンブラックを含むカーボンブラック層を含む黒色放射性コーティングを有する導体、(iii)光触媒剤を含む白色コーティングを有する好ましい実施形態に係る導体(光触媒剤は、平均粒子サイズ≦100nmを有する≧70wt%アナターゼ二酸化チタン(TiO2)を含む)を試験した。
【0344】
サンプルは、弱風条件下の屋外で試験された。70AH公称容量を有する6V鉛酸バッテリーが使用された。バッテリーは、ストリップを約250℃まで加熱するためにジャンプリードで短絡された。電流は、100~150Aに設定され、試験リグに継続して接続され、未被覆コントロール導体が249.5℃の平均温度に達するように温度増加した導体をもたらした。
【0345】
平均温度は、ピークでコーティングの各々に対して計算された。
【0346】
結果は、ピーク時にわたる異なる導体の平均温度を示す
図10に示される。これらの昇温でも、本発明の好ましい実施形態に係る単一被覆導体がとくに有利であることは明らかである。特定的には、コントロール導体と比較して、単一被覆導体は、非常に有意な性能上の利点を提示する55.4℃の温度低減作用を提供することが、試験結果から示される。
【0347】
架空導体の容量を増加するセルフクリーニングフォトニックコーティング
本発明は、とくに、コーティングをセルフクリーニングにするために架空導体400上に設けられるコーティング401に光触媒剤を組み込むことに関する。特定的には、光触媒剤を紫外(「UV」)光で励起したときに、光触媒剤が、好ましくは、ヒドロキシル(OH-)及びスーパーオキサイド(O2
-)ラジカルを形成し、好ましくは、架空導体上に付着されているおそれのある表面有機物を分解して二酸化炭素(CO2)及び水(H2O)に変換するという点で、コーティングがセルフクリーニングであることが理解されるべきである。
【0348】
好ましい実施形態に係る、架空導体400上に設けられるコーティング401は、好ましくは白色である(又は、それほど好ましいものではないが、高い白色度を有しているとみなされうる)。好ましい実施形態によれば、白色は、L*≧80として定義されうる。
【0349】
次に、2つのとくに好ましい実施形態、すなわち、(i)ツーパーツキットから形成される単一無機層401、及び(ii)ワンパーツキットから形成される単一無機層401を以下でより詳細に考察する。
【0350】
表面改質は、最近、架空導体の性能を増加させるために費用効果的方法として現れた。これは、日射反射率及び熱放射率に関して架空導体の外表面を最適化することにより機能する。日射反射率(R)及び熱放射率(E)の両方を高い値(たとえば、≧0.9)にすると、架空導体上の有意な冷却作用が促進される。動作温度のこの低減は、導体の抵抗を低減し、通電容量を増加させる。
【0351】
いくつかコーティングに基づく解決策が、これを達成するために提案されている。たとえば、各種無機系及び有機系のコーティングは、架空線の動作温度を低下させることが知られている。
【0352】
しかしながら、公知のコーティングは主に非白色である。さらに、白色導体が抱える公知の問題は、時的に変色を受けることである。
【0353】
従来の単一層(又は単層)白色コーティング製品が、環境汚染物質に晒されると、汚れを付着し、例外なく経時的に暗色化することは、当業者であれば分かるであろう。
【0354】
このため、熱放射率の促進さらには日射吸収率の増加は、従来構成でとくに強調される点として存在する。架空導体は90℃超で動作しうるので、このアプローチはネットの冷却作用をもたらす。
【0355】
しかしながら、本発明によれば、日射反射率(R)も最大化され、有利には、これにより冷却能を増加させることが可能である。
【0356】
そのため、実質的性能利益は、本発明の各種実施形態に係る方法で導体に対して高反射性及び高放射性コーティングの両方を提供することにより存在する。
【0357】
これとは対照的に、たとえば、仏国特許第2971617号明細書(Nexan)及び国際公開第2007/034248号パンフレット(Simic)に開示される従来構成は、白色コーティングが経時的に暗色化及び変色する傾向があるため、商業的観点から非効果的であると考えられる。
【0358】
初期白色コーティングの経時による漸進的暗色化が起こると、回路網オペレーターが、日射反射率及び熱放射率の安定レベルに従って確信をもって線の熱的等級付けを可能にする必要があるため、従来の白色コーティングは、架空導体に対する解決策として除外される。
【0359】
そのため、エンドユーザー及び回路網オペレーターは、新しい又は初期の日射反射率ではなく老化日射反射率に従って計画しなければならない。日射反射率の有意な及び変動する低下は、架空線の熱的等級付けを可能にする必要のある回路網オペレーターの観点から実用的でないことは、分かるであろう。
【0360】
導体の表面はまた、ハイパワージェットウォッシュでも洗浄されうる。しかしながら、とりわけ配電線又は電力線が高電圧架空線であることを考慮すると、商業的、安全的、及びコスト的観点から、これは非実用的であることが、当業者であれば理解されよう。
【0361】
セルフクリーニング効果を提供する本発明に係る光触媒剤を有するコーティングを提供することが有利であることは、ただちに分かるであろう。
【0362】
本発明に係るコーティングにセルフクリーニング光触媒を組み込むことの特定の利点は、経時的保守をほとんど又はまったく必要としない耐久性白色コーティングを提供できる能力である。本発明の各種実施形態によれば、(白色)コーティングは、従来の白色コーティングよりも実質的に長い期間にわたり高い白色度(すなわちL*≧80)を維持するであろう。ある実施形態によれば、コーティングは、標準的空気汚染レベルに付されたとき、無期限にL*≧80を有する白色を維持するであろう。
【0363】
各種実施形態によれば、セルフクリーニング能力は、好ましくは白色反射性単層にインテグレートされる。
【0364】
セルフクリーニングコーティングは、いくつかの動作機構を有しうる。各種実施形態によれば、コーティングは、同時に、(i)帯電防止性であるため、表面への粒子の固着能を低下させ、(ii)超親水性であるため、表面水の水接触角が低減され、大気水の存在下でより効果的に表面上の表面微粒子状物質を集めて除去するように作用し、且つ(iii)光触媒性でありうる。
【0365】
とくに好ましい実施形態によれば、アナターゼ二酸化チタン(TiO2)が光触媒剤として利用されうる。アナターゼ二酸化チタン(TiO2)は、3.2eVのバンドギャップを有する半導体であり、UV光で励起されるとヒドロキシル(OH-)及びスーパーオキサイド(O2
-)ラジカルを形成し、好ましくは、コーティング上に付着された表面有機物を二酸化炭素(CO2)及び水(H2O)に分解するように作用する。
【0366】
ツーパーツキットから形成される単一無機層
それほど好ましくはない実施形態に係るセルフクリーニング白色フォトニックコーティングは、キットのツーパーツを混合一体化することにより形成されうる。
【0367】
ツーパーツ組成物は、(i)コーティングバインダー50~70wt%(パーツAの)、(ii)任意にナノシリカ(「nS」)2~5wt%(パーツAの)、(iii)任意に1種以上の光学活性顔料、たとえば、ルチル二酸化チタン(TiO2)10~20wt%(パーツAの)、(iv)光触媒、たとえば、アナターゼ二酸化チタン(TiO2)1.76%~2.75wt%(パーツAの)、(v)任意に不活性充填剤10~20wt%(パーツAの)、及び(vi)任意に亜鉛系共硬化剤0.4~1wt%(パーツAの)を含む第1の組成物(パーツA)を含みうる。
【0368】
ツーパーツ組成物は、好ましくは、(i)水50~70wt%(パーツBの)、(ii)任意にレオロジー調整剤0.3~1wt%(パーツBの)、(iii)任意にマグネシウム系共硬化剤10~15wt%(パーツBの)、(iv)任意に亜鉛系共硬化剤1~3wt%(パーツBの)、及び(v)任意に水性エマルジョン7~15wt%(パーツBの)を含む第2の組成物(パーツB)を含む。
【0369】
しかしながら、以下に詳述されるように、より好ましくは組成物は溶媒系組成物を含む。
【0370】
コーティングバインダー
光触媒剤は、好ましくは、有機材料を酸化することによりセルフクリーニング機能を発揮するので、有機バインダーは、好ましくは、いかなる有意な程度にも少なくともこの目的に使用されることはない。このため、バインダーは、好ましくは、無機バインダー又は実質的に無機バインダーを含む。
【0371】
単に例示を目的として開示されているにすぎない構成によれば、バインダーは、アルカリ又はアルカリ性金属ケイ酸塩バインダーを含みうるとともに、バインダーは、水系でありうる。たとえば、アルカリ(又はアルカリ性)金属ケイ酸塩は、好ましくは、ケイ酸カリウム(K2SiO3)を含む。代替的に、アルカリ(又はアルカリ性)金属ケイ酸塩は、ケイ酸ナトリウムを含みうる。ケイ酸ナトリウムは、メタケイ酸ナトリウム(Na2SiO3)、オルトケイ酸ナトリウム(Na4SiO4)、又はピロリン酸ナトリウム(Na6Si2O7)を含みうる。アルカリ(又はアルカリ性)金属ケイ酸塩は、ケイ酸リチウム(Li2SiO3)、ケイ酸カルシウム(Ca2SiO4)若しくはオルトケイ酸カルシウム、又はケイ酸アルミニウム(AlMgSiO4)を含みうる。
【0372】
しかしながら、本発明によれば、バインダーは、水系ではなく溶媒系の1種以上のアルキルシリケートバインダーを含む。
【0373】
ナノシリカ(「nS」)又はコロイドシリカ(SiO2)
ナノシリカ(「nS」)又はコロイドシリカ(SiO2)は、Si:アルカリ金属比が増加するように添加することによりコーティングの重合を増加させうる。得られるコーティングは、シロキサンポリマーを含みうる。ナノシリカ(「nS」)又はコロイドシリカ(SiO2)は、耐摩耗性及びアルミニウムへのシリケートの接着を増加させることが可能である。さらに、ナノシリカ(「nS」)又はコロイドシリカ(SiO2)の添加は、シリケートバインダーの固有放射率をさらに増加させて冷却作用をさらに改善する。
【0374】
シロキサン(シリコーン)ポリマー
各種構成によれば、シロキサン(シリコーン)ポリマーを少なくとも部分的に含む単一コーティングが形成されうる。
【0375】
参照目的で、いくつかの異なるシロキサンの化学構造が以下の表5に示される。
【0376】
【0377】
フレキシビリティー及び/又はレオロジー添加剤
フレキシビリティー及び/又はレオロジー性を改善するために、フレキシビリティー添加剤及び/又はレオロジー添加剤をコーティングに任意に添加しうる。ある実施形態によれば、コーティングに対するフレキシビリティー添加剤としては40~50%固形分の水性ポリジメチルシロキサン(「PDMS」)((C2H6OSi)n)を使用しうる。ポリジメチルシロキサン(「PDMS」)((C2H6OSi)n)は有機であるが、主要ビルディングブロックは、シロキサン系であり、それはコーティング中の光触媒剤により酸化されない。ヒドロキシエチルセルロース(CH2CH2OH)などのレオロジー添加剤もまた添加されうる。いずれの場合にも、フレキシビリティー添加剤及び/又はレオロジー添加剤は、好ましくは乾燥膜重量の5%未満を構成する。
【0378】
好適なレオロジー剤としては、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース(「HEC」)、カルボキシメチルセルロース(「CMC」)、ヒドロキシプロピルセルロース(「HPC」)、又は疎水変性HECが挙げられる。代替的に、アルカリ膨潤性エマルジョン(「ASE」)、疎水性アルカリ膨潤性エマルジョン(「HASE」)、疎水変性エチレンオキサイドウレタンレオロジー調整剤(「HUER」)、オルガノクレー、ポリアミド、及びヒュームドシリカが使用されうる。
【0379】
疎水化剤
湿分安定性を増加させるために、本発明の組成物/コーティングに疎水化剤を任意に添加しうる。好適な疎水化剤としては、強い疎水効果を付与する官能性ポリシロキサンが挙げられる。官能性ポリシロキサンは、1個以上のアミン又はフルオロ含有基で修飾されうる。ポリシロキサン添加剤は、合計配合物の約1~約5wt.%の量で添加されうるとともに、アミン基又はフルオロ含有基で修飾されうる。これらの系は、水系又は10溶媒フリーでありうる。市販の例としては、Silsan1300(RTM)、TEGO Phobe1505(RTM)、及びRUCOSIL B-HS(RTM)が挙げられる。
【0380】
光触媒活性顔料
とくに好ましい実施形態によれば、光触媒剤は、好ましくは導体コーティングに含まれる。
【0381】
好ましい実施形態によれば、光触媒剤は、≧70wt%アナターゼ二酸化チタン(TiO2)を含みうるとともに、さらに好ましくは平均粒子サイズ≦100nmを有する。
【0382】
光触媒剤は、好ましくは、導体上に設けられたコーティングに接着されているおそれのある有機物の光触媒変換をもたらす。特定的には、アナターゼ二酸化チタン(TiO2)がUV光により励起されると、それはヒドロキシル(OH-)及びスーパーオキサイド(O2
-)ラジカルを生成して、好ましくは表面有機物を二酸化炭素(CO2)及び水(H2O)に分解する。
【0383】
ある実施形態によれば、光触媒剤は、DEGUSSA(EVONIK)(RTM)P25又はAEROXIDE(RTM)TiO2P25のどちらかで知られる二酸化チタン(TiO2)の市販の形態を含みうる。
【0384】
DEGUSSA(EVONIK)(RTM)P25二酸化チタン(TiO2)は、二酸化チタン(TiO2)の粉末形態である。P25二酸化チタン(TiO2)の性質は、詳細に研究されており、Journal of Photochemistry and Photobiology A:Chemistry,216(2-3):179-182が参照される。これは、78:14:8のアナターゼ:ルチル:アモルファス比のアナターゼ、ルチル、及びアモルファス二酸化チタン(TiO2)の混合物を含む二酸化チタン(TiO2)の粉末形態に言及している。
【0385】
DEGUSSA(EVONIK)(RTM)P25二酸化チタン(TiO2)は、多くの場合(不適正に)、70:30、80:20、又は85:15アナターゼ:ルチル微結晶を含むとして報告されることに留意されたい。それゆえ、DEGUSSA(EVONIK)(RTM)P25二酸化チタン(TiO2)中の二酸化チタン(TiO2)のアモルファス形態の存在は、多くの場合(不適正に)、無視されるように思われる。
【0386】
DEGUSSA(EVONIK)(RTM)P25中のアナターゼ二酸化チタン(TiO2)の平均粒子サイズ(「aps」)は、おおよそ85nmであり、且つDEGUSSA(EVONIK)(RTM)P25中のルチル二酸化チタン(TiO2)の平均粒子サイズ(「aps」)は、おおよそ25nmであることが報告されている。
【0387】
二酸化チタン(TiO2)は、化学的に安定であり、且つ生物学的に良性であるため、有機汚染物質の分解のための光触媒として使用されうる。二酸化チタン(TiO2)のバンドギャップは、3eVよりも大きいので(ルチルでは約3.0及びアナターゼでは約3.2)、純二酸化チタン(TiO2)は、主にUV光に対して有効である。
【0388】
DEGUSSA(EVONIK)(RTM)P25中に存在する二酸化チタン(TiO2)の異なる多形体の具体的相混合物は相乗効果を有し、純相と比較して(すなわち、純ルチル二酸化チタン(TiO2)又は純アナターゼ二酸化チタン(TiO2)のどちらと比べても)光触媒活性の増加が観測されると考えられる。
【0389】
純アナターゼ二酸化チタン(TiO2)は、純ルチル二酸化チタン(TiO2)よりも高い光触媒活性を呈することも、一般に通説となっている。
【0390】
アナターゼ二酸化チタン(TiO2)は、ルチル二酸化チタン(TiO2)よりも大きなバンドギャップを有することが知られている。このため、吸収可能な光は低減されるが、吸着分子のレドックス電位と比べてより高いエネルギーレベルに価電子帯最大値を上昇させうる。それゆえ、電子の酸化力は増加しうるとともに、二酸化チタン(TiO2)から吸着分子への電子移動は促進されうる。
【0391】
光学活性顔料
組成物に依存して、コーティングは、非光触媒顔料をさらに含みうる。顔料は、色が好ましくは白色である。とくに好ましい実施形態によれば、コーティングは、90%超の合計日射反射率を有するように構成されうる。これは、好ましくは可視光の吸収を増加させることなく日射反射率を向上させる光学活性顔料をコーティングに組み込むことにより部分的に達成されうる。
【0392】
光学活性顔料は、ルチル二酸化チタン(TiO2)を含みうる。
【0393】
他の実施形態によれば、光学活性顔料は、二酸化ケイ素(SiO2)又は水酸化セリウム(Ce(OH)3)を含みうる。
【0394】
充填剤
無機充填剤は、体質顔料の組込み及び熱放射率の増加をはじめとするいくつかの目的で含まれうる。顔料は、好ましくは太陽放射線の吸収を増加させない。各種実施形態によれば、充填剤は、炭酸カルシウム(CaCO3)、仮焼カオリン(Al2O3.2SiO2)、又はタルク(たとえば、水和ケイ酸マグネシウム(H2Mg3(SiO3)4若しくはMg3Si4O10(OH)2))を含みうる。
【0395】
他の一実施形態によれば、合計日射反射率を増加させるために、アルミノケイ酸ナトリウムなどの高輝度充填剤が使用されうる。
【0396】
硬化剤-共硬化剤金属塩
構成によれば、コーティングは金属塩を含みうる。特定的には、Zn2+、Ca2+、Mg2+などの多価金属カチオンは、アルカリ金属シリケートコーティング(及びシロキサンコーティング)の粘度を増加させたり、硬化時間を減少させたりすることが可能である。これらは、ツーパーツ溶液を作製するように添加可能である。添加される金属塩の溶解性は、コーティングのポットライフを決定する。たとえば、硫酸マグネシウム(MgSO4)などの高溶解性金属塩は、アルカリ金属シリケートコーティング(又はシロキサンコーティング)と簡単に反応し、ポットライフを実質的に低減するであろう。好ましい塩としては、酸化亜鉛(ZnO)、亜鉛ステアレート(C36H70O4Zn)、オルトリン酸三マグネシウム(Mg3O8P2)、酸化マグネシウム(MgO)、及び炭酸マグネシウム(MgCO3)が挙げられる。
【0397】
コーティングの「ポットライフ」への参照は、化学反応を介して硬化するツーパック又は多成分コーティング系での通常の意味で理解されることが意図される。これらの系は、一般に、ベース成分(「パーツA」と呼ばれることが多い)と、触媒又は硬化剤成分(「パーツB」と呼ばれることが多い)と、からなる。これらの成分が混合一体化されたとき、化学反応が開始され、コーティングの硬化がもたらされる。実用的には、「ポットライフ」という用語は、混合コーティングがもはや使用可能でない点までコーティングのコンポーネントが組み合わされる時間とみなされうる。ポットライフは、通常、混合(触媒)コーティング系が表面への適用に十分な程度に低粘度を保持する時間の長さと考えられる(これは厳密に真実ではないが)。
【0398】
これらの材料は、アルミニウムに強く接着するとともに円筒ドラムの周りに巻き付けられた導体に適用するのに必要とされる十分なフレキシビリティーを提供する、セルフクリーニング性を有するツーパーツシリケートコーティングが作製されるように、組合せ可能である。亜鉛系共硬化剤は、迅速硬化及び不溶性膜の形成を可能にするうえでパーツA及びパーツBの両方で重要である。下記のセクションでは、セルフクリーニング速度がどのように白色表面上への汚れ付着と比較されるか実証する。
【0399】
セルフクリーニング速度対元素炭素堆積
ブラックカーボン(BC)が白色表面に堆積したとき、それは入射光を強く吸収し、日射反射率を減少させ、且つ審美的外観を劣化させるであろう。こうした吸光度の上昇の結果として表面温度が上昇し、かかるフォトニックコーティングの冷却能が低減されることになる。このシナリオで冷却能を維持するために、ブラックカーボンを除去する必要があろう。
【0400】
各種実施形態に係る導体は、元素炭素(EC)であるスートなどの微粒子状物質(PM)により汚れがつくようになりうる。表面上の元素炭素の量を測定する単純且つ非破壊の方法は、クリーン状態と比べて白色度(L*)を測定するものであり、この場合L*=0は最も暗い黒色であり、L*=100は最も明るい白色である。
【0401】
L*を測定することにより表面がどれくらいクリーンであるかを推測可能であることは、理解されよう。世界中の各種位置での光触媒セルフクリーニングコーティング性を予測して、日射反射率を維持する方法としてのその有効性を評価することも可能である。
【0402】
方法
光触媒二酸化チタン(TiO2)層の有効性を評価するために、2つのメトリック、すなわち、(i)8μg cm-2のブラックカーボンがコーティング表面上に蓄積するのに要する時間量、及び(ii)表面上の8μg cm-2のブラックカーボンを除去するのに必要とされる時間量を比較する。
【0403】
分析されるコーティングは、1.6wt%の濃度に光触媒固定された白色シリケートコーティングである。
【0404】
8μg cm-2のブラックカーボンを表面上に蓄積するのに要する時間は、粒子の大気中のブラックカーボンの平均濃度及び堆積速度に依存する。
【0405】
堆積速度は、粒子の空気力学的等価直径(「aed」)により支配される。ブラックカーボンは元素炭素(EC)であり、主にPM2.5によりホストされる。
【0406】
PM2.5は、空気力学的等価直径(「aed」)≦2.5μmを有する粒子群であり、このサイズの粒子の対応する堆積速度は、1.89×10-4ms-1である。
【0407】
大気中のブラックカーボンの平均濃度は、小地域では迅速に変化する可能性があり、交通量の多い道路や工業地域に隣接して濃度がピークに達する。
【0408】
濃度はまた、時刻、温度、及び湿度によっても大きく変動する。以下で使用されるデータは、年間平均として、可能であれば、都市周辺/全国各地の複数箇所で得られる。
【0409】
シンガポール、デリー、ロンドン、及びヘントでのブラックカーボン濃度は、文献に見いだされる。
【0410】
以下で参照される他のブラックカーボン濃度は、Surface PARTiculate mAtter Network(“SPARTAN”)により収集されたデータと組み合わせてPM2.5濃度から推定された。
【0411】
SPARTANは、フィルターサンプラー(テフロン(TEFLON)(RTM)及びNUCLEPORE(RTM))及びネフェロメーターを用いて、世界中のさまざまな環境でPM2.5の組成に関するデータを収集している。
【0412】
SPARTANデータによれば、PM2.5中のブラックカーボンの平均分率は11.9%であった(±8.2%)。次いで、8μg cm-2のブラックカーボンが蓄積するのに要する合計時間が得られるように、スケールアップして堆積速度を確定した。
【0413】
大気中のブラックカーボンの濃度は、位置ではなく工業及び自動車交通密度に強く相関するので、この問題へのより一般化されたアプローチを得ることが可能であり、下記推定値:(i)地方1.2~1.7μg m-3、(ii)小都市2.4~3.0μg m-3、及び(iii)大都市4.6~7.9μg m-3を計算した。
【0414】
固定光触媒二酸化チタン(TiO2)濃度では、8μg cm-2のブラックカーボンを除去するのに要する時間は、主に、表面に入射する光の強度に依存する。なぜなら、これは、光触媒プロセスを駆動するからである。
【0415】
光の強度は、位置によって変動するであろう。各々の位置に対する暦年の水平表面への蓄積合計太陽放射線の情報源は、NASA POWER(Prediction of Worldwide Energy resources)プロジェクトであった。このデータは、データが得られた場合、過去10年間にわたる平均であった。国の場合には、蓄積合計太陽放射線量は、国の各主要都市の日照データを平均することにより得られた。
【0416】
次いで、蓄積太陽放射線データを用いて、1日当たり表面白色度(L*)が光触媒クリーニングにより回復される速度の推定値である表面回復速度を計算した。これは、各位置での平均日射と、有効セルフメンテナンス(「SM」)係数と呼ばれるスカラーと、を乗算することにより行われた。セルフメンテナンス(「SM」)係数とは、研究環境中で対応する合計日射(すなわち、日射強度と日射持続時間との積)により規格化された8μg cm-2のブラックカーボンによる合計色(L*)変化を表すスカラーのことである。8μg cm-2のブラックカーボンローディングで1.6wt%光触媒二酸化チタン(TiO2)の場合、セルフメンテナンス係数は、1.9×10-4m2h-1W-1であることが分かった。
【0417】
次いで、表面回復速度を用いて、8μg cm-2のブラックカーボンにより汚れた表面により失われた表面白色度(L*)を十分に回復するのに必要とされる合計日数を計算した。
【0418】
1.6wt%二酸化チタン(TiO2)の場合、L*の損失は11.2であると観測された。
【0419】
【表6】
*注: 元素炭素(EC)に対する経験的データは入手可能でない。その代わりに、Surface PARTiculate mAtter Network (“SPARTAN”)プロジェクトから得られるパーセンテージでPM
2.5の経験的データのグローバルパーセンテージ(11.9%)を用いて推定した。
評価された位置では、平均表面回復時間は、8μg cm
-2のブラックカーボンの堆積速度のおおよそ100倍の速さである。
それゆえ、シリケート中の1.6wt%光触媒酸化チタン(TiO
2)は、コーティングが直面する標準条件では非常に効果的にセルフクリーニング層として作用するであろう。
【実施例】
【0420】
非光触媒実施例1A
下記の実施例は、ベース非光触媒コーティング組成物に関する。
【0421】
第1の組成物(パーツA)と第2の組成物(パーツB)とを含むツーパーツ水系無機フォトニックコーティングを作製した。
【0422】
第1の組成物(パーツA)は、(i)ケイ酸カリウム(BETOLIN(RTM)K35,Wollner GmbH,Ludwigshafen)68.3p.b.w.、(ii)500nmの平均粒子サイズを有するルチル二酸化チタン(TiO2)20p.b.w.、(iii)仮焼カオリン(Al2O3.2SiO2)7.4p.b.w.、(iv)タルク(たとえば、水和ケイ酸マグネシウム(H2Mg3(SiO3)4又はMg3Si4O10(OH)2))9.6p.b.w.、(v)亜鉛ステアレート(C36H70O4Zn)0.3p.b.w.、及び(vi)酸化亜鉛(ZnO)0.2p.b.w.を含んでいた。
【0423】
第2の組成物(パーツB)は、(i)水56.7p.b.w.、(ii)ヒドロキシエチルセルロース(CH2CH2OH)0.6p.b.w.、(iii)オルトリン酸三マグネシウム(Mg3O8P2)9.4p.b.w.、(iv)炭酸マグネシウム(MgCO2)6p.b.w.、及び(v)酸化亜鉛(ZnO)2.3p.b.w.を含んでいた。
【0424】
「p.b.w.」とは、「重量部」を意味し、各組成物に含まれる成分の相対割合を意味するものとして使用可能であることは、理解されよう。
【0425】
その順序で試薬を2つの個別ビーカーで混合した。次いで、これらを1:1比で混合し、均一分散が達成されるまで高速ミキサーで混合した。
【0426】
この配合物には光触媒活性ナノ粒子が含まれていなかったので、この実施例は光触媒活性ではないことに留意すべきである。
【0427】
しかしながら、ベース配合物として、下記の試験:(i)コーティング仕上げ、(ii)マンドレル曲げ試験、及び(iii)コーティング仕上げを実施した。結果は、以下の表7に示される。
【0428】
非光触媒実施例1B
下記の実施例は、ベース非光触媒コーティング組成物に関する。
【0429】
第1の組成物(パーツA)と第2の組成物(パーツB)とを含むツーパーツ水系無機フォトニックコーティングを作製した。
【0430】
第1の組成物(パーツA)は、(i)ケイ酸カリウム(BETOLIN(RTM)K35,Wollner GmbH,Ludwigshafen)68.3p.b.w.、(ii)500nmの平均粒子サイズを有するルチル二酸化チタン(TiO2)20p.b.w.、(iii)仮焼カオリン(Al2O3.2SiO2)7.4p.b.w.、(iv)タルク(たとえば、水和ケイ酸マグネシウム(H2Mg3(SiO3)4又はMg3Si4O10(OH)2))9.6p.b.w.、(v)亜鉛ステアレート(C36H70O4Zn)0.3p.b.w.、及び(vi)酸化亜鉛(ZnO)0.2p.b.w.を含んでいた。
【0431】
第2の組成物(パーツB)は、(i)水56.7p.b.w.、(ii)ヒドロキシエチルセルロース(CH2CH2OH)0.6p.b.w.、(iii)オルトリン酸三マグネシウム(Mg3O8P2)9.4p.b.w.、(iv)炭酸マグネシウム(MgCO2)6p.b.w.、(v)酸化亜鉛(ZnO)2.3p.b.w.、及び(vi)固形分40%アクリル系ラテックスエマルジョン添加剤3.5p.b.w.を含んでいた。
【0432】
その順序で試薬を2つの個別ビーカーで混合した。次いで、これらを1:1比で混合し、均一分散が達成されるまで高速ミキサーで混合した。
【0433】
この配合物には光触媒活性ナノ粒子が含まれていなかったので、この実施例は光触媒活性ではないことに留意すべきである。
【0434】
しかしながら、ベース配合物として、下記の試験:(i)コーティング仕上げ、(ii)マンドレル曲げ試験、及び(iii)コーティング仕上げを実施した。結果は、以下の表7に示される。
【0435】
非光触媒実施例1C
下記の実施例は、ベース非光触媒コーティング組成物に関する。
【0436】
第1の組成物(パーツA)と第2の組成物(パーツB)とを含むツーパーツ水系無機フォトニックコーティングを作製した。
【0437】
第1の組成物(パーツA)は、(i)ケイ酸カリウム(BETOLIN(RTM)K35,Wollner GmbH,Ludwigshafen)68.3p.b.w.、(ii)500nmの平均粒子サイズを有するルチル二酸化チタン(TiO2)20p.b.w.、(iii)仮焼カオリン(Al2O3.2SiO2)7.4p.b.w.、(iv)タルク(たとえば、水和ケイ酸マグネシウム(H2Mg3(SiO3)4又はMg3Si4O10(OH)2))9.6p.b.w.、(v)亜鉛ステアレート(C36H70O4Zn)0.3p.b.w.、(vi)酸化亜鉛(ZnO)0.2p.b.w.を含んでいた。
【0438】
第2の組成物(パーツB)は、(i)水56.7p.b.w.、(ii)ヒドロキシエチルセルロース(CH2CH2OH)0.6p.b.w.、(iii)オルトリン酸三マグネシウム(Mg3O8P2)9.4p.b.w.、(iv)炭酸マグネシウム(MgCO2)6p.b.w.、(v)酸化亜鉛(ZnO)2.3p.b.w.、及び(vi)固形分40%アクリル系ラテックスエマルジョン添加剤7.55p.b.w.を含んでいた。
【0439】
その順序で試薬を2つの個別ビーカーで混合した。次いで、これらを1:1比で混合し、均一分散が達成されるまで高速ミキサーで混合した。
【0440】
この配合物には光触媒活性ナノ粒子が含まれていなかったので、この実施例は光触媒活性ではないことに留意すべきである。
【0441】
しかしながら、ベース配合物として、下記の試験:(i)コーティング仕上げ、(ii)マンドレル曲げ試験、及び(iii)コーティング仕上げを実施した。結果は、以下の表7に示される。
【0442】
非光触媒実施例1D
下記の実施例は、ベース非光触媒コーティング組成物に関する。
【0443】
第1の組成物(パーツA)と第2の組成物(パーツB)とを含むツーパーツ水系無機フォトニックコーティングを作製した。
【0444】
第1の組成物(パーツA)は、(i)ケイ酸カリウム(BETOLIN(RTM)K35,Wollner GmbH,Ludwigshafen)68.3p.b.w.、(ii)500nmの平均粒子サイズを有するルチル二酸化チタン(TiO2)20p.b.w.、(iii)仮焼カオリン(Al2O3.2SiO2)7.4p.b.w.、(iv)タルク(たとえば、水和ケイ酸マグネシウム(H2Mg3(SiO3)4又はMg3Si4O10(OH)2))9.6p.b.w.、(v)亜鉛ステアレート(C36H70O4Zn)0.3p.b.w.、及び(vi)酸化亜鉛(ZnO)0.2p.b.w.を含んでいた。
【0445】
第2の組成物(パーツB)は、(i)水56.7p.b.w.、(ii)ヒドロキシエチルセルロース(CH2CH2OH)0.6p.b.w.、(iii)オルトリン酸三マグネシウム(Mg3O8P2)9.4p.b.w.、(iv)炭酸マグネシウム(MgCO2)6p.b.w.、(v)酸化亜鉛(ZnO)2.3p.b.w.、及び(vi)固形分40%ポリジメチルシロキサン(「PDMS」(C2H6OSi)n)ラテックスエマルジョン添加剤3.5p.b.w.を含んでいた。
【0446】
その順序で試薬を2つの個別ビーカーで混合した。次いで、これらを1:1比で混合し、均一分散が達成されるまで高速ミキサーで混合した。
【0447】
この配合物には光触媒活性ナノ粒子が含まれていなかったので、この実施例は光触媒活性ではないことに留意すべきである。
【0448】
しかしながら、ベース配合物として、下記の試験:(i)コーティング仕上げ、(ii)マンドレル曲げ試験、及び(iii)コーティング仕上げを実施した。結果は、以下の表7に示される。
【0449】
非光触媒実施例1E
下記の実施例は、ベース非光触媒コーティング組成物に関する。
【0450】
第1の組成物(パーツA)と第2の組成物(パーツB)とを含むツーパーツ水系無機フォトニックコーティングを作製した。
【0451】
第1の組成物(パーツA)は、(i)ケイ酸カリウム(BETOLIN(RTM)K35,Wollner GmbH,Ludwigshafen)68.3p.b.w.、(ii)500nmの平均粒子サイズを有するルチル二酸化チタン(TiO2)20p.b.w.、(iii)仮焼カオリン(Al2O3.2SiO2)7.4p.b.w.、(iv)タルク(たとえば、水和ケイ酸マグネシウム(H2Mg3(SiO3)4又はMg3Si4O10(OH)2))9.6p.b.w.、(v)亜鉛ステアレート(C36H70O4Zn)0.3p.b.w.、及び(vi)酸化亜鉛0.2p.b.w.を含んでいた。
【0452】
第2の組成物(パーツB)は、(i)水56.7p.b.w.、(ii)ヒドロキシエチルセルロース(CH2CH2OH)0.6p.b.w.、(iii)オルトリン酸三マグネシウム(Mg3O8P2)9.4p.b.w.、(iv)炭酸マグネシウム(MgCO2)6p.b.w.、(v)酸化亜鉛(ZnO)2.3p.b.w.、及び(vi)固形分40%ポリジメチルシロキサン(「PDMS」(C2H6OSi)n)ラテックスエマルジョン添加剤7.55p.b.w.を含んでいた。
【0453】
その順序で試薬を2つの個別ビーカーで混合した。次いで、これらを1:1比で混合し、均一分散が達成されるまで高速ミキサーで混合した。
【0454】
この配合物には光触媒活性ナノ粒子が含まれていなかったので、この実施例は光触媒活性ではないことに留意すべきである。
【0455】
しかしながら、ベース配合物として、下記の試験:(i)コーティング仕上げ、(ii)マンドレル曲げ試験、及び(iii)コーティング仕上げを実施した。結果は、以下の表7に示される。
【0456】
結果 - 適用/適用性、接着、及びコーティング仕上げ/フレキシビリティー
以上に詳述された実施例1A~1Eを下記の試験に付した。
【0457】
マンドレル曲げ試験:サンプルを6mm円柱状マンドレルの周りで曲げた。コーティングに亀裂を生じてアルミニウムサンプルから剥がれた場合、これを不合格としてカウントした。
【0458】
クロスハッチ接着試験:クロスハッチ接着試験でアルミニウムへのサンプル接着を試験した。
【0459】
コーティング仕上げ:コーティング欠陥の数及びコーティングの適用容易性に基づいて、コーティングの一般的有用性を「不合格」、「許可」、又は「合格」として評価した。
【0460】
【0461】
これは、アクリル系ラテックス添加剤は、コーティングのレオロジー及び有用性を改善可能であるが、一般にコーティングの機械的性質を損なうことを、実証する。PDMS((C2H6OSi)n)エマルジョン添加剤は、有用性又はフレキシビリティーに有意な影響を及ぼさないことを保証するために、5wt%未満で最小限に抑えるべきである。
【0462】
光触媒コーティング組成物
前のセクションでは、アルミニウムに対して高日射反射率を有するフレキシブルコーティングを得ることが実現可能であることを実証した。下記のセクションでは、本発明の各種実施形態に係るシリケート層内に光触媒能を組み込むための配合物バリアントを概説する。
【0463】
本発明の実施例2
2つの組成物を混合一体化することにより水系コーティングを調製した。
【0464】
第1の組成物(パーツA)は、(i)ケイ酸カリウム(BETOLIN(RTM)K35,Wollner GmbH,Ludwigshafen)26p.b.w.、(ii)光触媒二酸化チタン(TiO2)(DEGUSSA(EVONIK)(RTM)P25)15p.b.w.、(iii)コロイドシリカ(SiO2)(LUDOX(RTM)SK,Grace GMBH and Co)18p.b.w.、(iv)炭酸カルシウム(CaCO3)5μm 30p.b.w.、(v)アルミノケイ酸ナトリウム(AlNa12SiO5)1.5p.b.w.、及び(vi)安定剤1.5p.b.w.を含んでいた。
【0465】
第2の組成物(パーツB)は、(i)水70.4p.b.w.、(ii)ヒドロキシエチルセルロース(CH2CH2OH)0.6p.b.w.、(iii)炭酸マグネシウム(MgCO2)9.2p.b.w.、(iv)酸化マグネシウム(MgO)4.6p.b.w.、及び(v)酸化亜鉛(ZnO)2p.b.w.を含んでいた。
【0466】
2つの個別ビーカーで以上に列挙された順序で試薬又は組成物を混合した。次いで、2つのビーカーの内容物を1:1比で混合し、均一分散が達成されるまで高速ミキサーで混合した。
【0467】
本発明の実施例3
2つの組成物を混合一体化することにより水系コーティングを調製した。
【0468】
第1の組成物(パーツA)は、(i)ケイ酸カリウム(BETOLIN(RTM)K35,Wollner GmbH,Ludwigshafen)26p.b.w.、(ii)光触媒二酸化チタン(TiO2)(DEGUSSA(EVONIK)(RTM)P25)15p.b.w.、(iii)コロイドシリカ(SiO2)(LUDOX(RTM)SK,Grace GMBH and Co)18p.b.w.、(iv)仮焼カオリン(Al2O3.2SiO2)12p.b.w.、(v)タルク(たとえば、水和ケイ酸マグネシウム(H2Mg3(SiO3)4又はMg3Si4O10(OH)2))18p.b.w.、(vi)アルミノケイ酸ナトリウム(AlNa12SiO5)1.5p.b.w.、及び(vii)安定剤1.5p.b.w.を含んでいた。
【0469】
第2の組成物(パーツB)は、(i)水70.4p.b.w.、(ii)ヒドロキシエチルセルロース(CH2CH2OH)0.6p.b.w.、(iii)オルトリン酸三マグネシウム(Mg3O8P2)9.2p.b.w.、(iv)炭酸マグネシウム(MgCO2)4.6p.b.w.、及び(v)酸化亜鉛(ZnO)2p.b.w.を含んでいた。
【0470】
2つの個別ビーカーで以上に列挙された順序で試薬又は組成物を混合した。次いで、2つのビーカーの内容物を1:1比で混合し、均一分散が達成されるまで高速ミキサーで混合した。
【0471】
実施例2及び実施例3では、相対的に高い体積又はwt%の二酸化チタン(TiO2)(DEGUSSA(EVONIK)(RTM)P25)又は等価物及び他の高輝度材料(アルミノケイ酸ナトリウム(AlNa12SiO5)を含む)を用いて、高日射反射率を達成する。これらの実施例では、実施例1Aのコーティングの性質と光触媒性とを組み合わせて、架空線を冷却するための耐久性セルフクリーニングコーティングを提供する。コーティング又は膜又は混合物を導電体に適用したら、コーティング又は膜又は混合物は、好ましくは脱水又は乾燥される。好ましい実施形態によれば、導体及び適用されたコーティングは好ましくは熱硬化される。
【0472】
各種ツーパーツ組成物の実施例は、以上に与えられた。しかしながら、本発明の各種さらなる実施形態によれば、コーティング又は膜401を提供するのに必要な成分は、形成又は混合してから導体400に噴霧又は塗装される単一組成物として提供されうる。それゆえ、ツーパーツキットが好ましいこともあるが、マルチパートキットで単一コーティングを形成する各種成分を提供することは、必須でないことが好ましい。その代わりに、すべての成分は、単一混合物で提供されうる。
【0473】
水系アルカリ金属シリケート無機コーティング
各種開示された構成によれば、導電体上に提供されるコーティング又は混合物は、それほど好ましいものではないが水系アルカリ金属シリケートバインダーを含む無機バインダーを含みうる。水系ケイ酸塩コーティングは、以下の式3に示されるようにアルカリ金属カチオンにより安定されたシリケートアニオンを含む。
【化1】
【0474】
以上の式3は、未解離シラノール(Si-OH)基とアルカリ金属安定化シリケートアニオン(Si-O-)との平衡を例示する。
【0475】
アルカリ金属カチオンは、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、又はケイ酸リチウムを形成するナトリウム、カリウム、又はリチウムのいずれかを含みうる。
【0476】
以上の水系コーティングは、縮合反応により硬化されうる。この場合、以下に示されるように、シリケートアニオンは、縮合してシロキサン鎖を形成するとともに水を生成する。
【化2】
【0477】
式4は、2個のシラノール基と、副生成物として水を伴うシロキサン結合と、の平衡を示す。
【0478】
シリケートポリマーを完全に形成するには水の十分な除去が望ましい。すなわち、平衡を完全に右側に移行させる必要がある。水の十分な除去を伴わないと、膜は再可溶化するおそれがあり、コーティングは劣化するおそれがある。
【0479】
コーティングは、2価金属カチオンの添加により自己硬化され、及び/又は希リン酸により後硬化されうる。乾燥膜は、Mg2+やCa2+などの2価金属カチオンの添加により支援されうる。得られるコーティングは、周囲温度で湿分安定性である。
【0480】
アルカリ金属シリケート膜又はコーティングは、硬化されうる。コーティングは、数時間にわたりステップワイズ熱硬化プロセスに付されうる。熱硬化プロセスは、4~24時間にわたりうる。アルカリ金属シリケート膜又はコーティングは、<1時間、1~2時間、2~3時間、3~4時間、4~5時間、5~6時間、6~7時間、7~8時間、8~9時間、9~10時間、10~11時間、11~12時間、12~13時間、13~14時間、14~15時間、15~16時間、16~17時間、17~18時間、18~19時間、19~20時間、20~21時間、21~22時間、22~23時間、23~24時間、又は>24時間の時間にわたり熱硬化されうる。
【0481】
熱硬化プロセスは、セルフクリーニング光触媒剤を含むシリケート膜又は無機コーティングを脱水するように構成されうる。
【0482】
熱硬化プロセスは、漸増的に膜を脱水してコーティング又は膜又は混合物を固化させるために、さもなければ硬化させるために、ステップワイズ硬化プロセスを含みうる。
【0483】
最終硬化温度は、50~80℃の範囲内でありうる。たとえば、最終硬化温度は、で50~60℃、60~70℃、又は70~80℃の範囲内でありうる。特定的には、80℃の最高動作温度を有する導体にコーティングを適用する場合、最終硬化温度は、≦80℃、≦90℃、又は≦100℃となるように構成されうる。
【0484】
他の構成によれば、最終硬化温度は、150~250℃の範囲内でありうる。たとえば、最終硬化温度は、150~160℃、160~170℃、170~180℃、180~190℃、190~200℃、200~210℃、210~220℃、220~230℃230~240℃、又は240~250℃の範囲内でありうる。特定的には、コーティングは、250℃の最高動作温度を有する導体に適用されうるとともに、最終硬化温度は、≦250℃、≦260℃、≦270℃、≦280℃≦290℃、又は≦300℃となるように構成されうる。
【0485】
各種構成に係る導体に適用されるシリケートコーティングは、純無機性であり、UV及び一般的大気暴露による劣化が非常に限られるので、長寿命を有しうる。
【0486】
光触媒剤を含むシリケート無機コーティングはまた、実質的に白色のコーティングを長期間にわたり高レベルの白色度に維持するセルフクリーニング層としてとくに効果的である。
【0487】
本発明の実施例4
2つの組成物を混合一体化することにより水系コーティングを調製した。第1の組成物(パーツA)は、(i)ケイ酸カリウム(BETOLIN(RTM)20K35,Wollner GmbH,Ludwigshafen)64p.b.w.、(ii)ルチル二酸化チタン(500nm APS)8p.b.w.、(iii)光触媒二酸化チタン(TiO2)(DEGUSSA(EVONIK)(RTM)P25)3.2p.b.w.、(iv)仮焼カオリン(Mattex Pro BSF)1.88p.b.w.、(v)アルミノケイ酸ナトリウム(AlNa12SiO5)1.5p.b.w.、及び(vi)安定剤1.5p.b.w.を含んでいた。
【0488】
第2の組成物(パーツB)は、(i)水15p.b.w.、(ii)25ヒドロキシエチルセルロース(CH2CH2OH)0.6p.b.w.、(iii)オルトリン酸三マグネシウム(4.5p.b.w)、及び(iv)酸化亜鉛(ZnO)2p.b.w.を含んでいた。
【0489】
2つの個別ビーカーで以上に列挙された順序で試薬又は組成物を混合した。次いで、2つのビーカーの内容物を1:1比で混合し、均一分散が達成されるまで高速ミキサーで混合した。
【0490】
本発明の実施例4で実施された試験
下記の試験は、本発明の実施例4で実施された。
【0491】
コーティング仕上げ:コーティング欠陥の数及びコーティングの適用容易性に基づいて、コーティングの一般的有用性を「不合格」、「許可」、又は「合格」として評価した。
【0492】
クロスハッチ接着試験:クロスハッチ接着試験でアルミニウムへのサンプルの接着を試験した。
【0493】
マンドレル曲げ試験:サンプルを6mm円柱状マンドレルの周りで曲げた。コーティングに亀裂を生じてアルミニウムサンプルから剥がれた場合、これを不合格としてカウントした。
【0494】
日射反射率:UV-VIS-NIR分析は、ISN-723積分球装着のJasco V670 UVVIS-NIR分光計を用いて行われた。積分球装着は、サンプルにより反射された散乱線(約180°)の集光を可能にした。合計太陽光反射率を計算した。
【0495】
熱放射率:ASTM C1371-15室温近くの材料の放射率の決定のための標準試験法に準拠してポータブル放射計を使用。規格の項目6.1.5に記載の参照標準へのトレーサビリティーなしのD&S放射計を用いて放射率を測定した。サンプル表面の5つの異なる位置での結果を平均した。
【0496】
電流サイクリング:直列に接続された被覆及び未被覆導体で回路を構成した。導体は、アルミニウム導体鋼補強(「ACSR」)導体を含んでいた。熱電対は、導体コアに挿入された。導体の温度を上昇させる効果のある指定レベルの電流を導体に30分間伝達した。次いで、導体を30分間冷却させた。次いで、プロセスを繰返しサイクルさせた。この試験によりコーティングとアルミニウム導体との間の適合可能な熱膨張係数を実証する。
【0497】
屋外冷却性能:未被覆及び被覆アルミニウム導体鋼補強(「ACSR」)導体を直列に接続し、地上2メートルに懸架し、気象条件に全面暴露した。導体を200A電流に付し、導体コアに挿入された熱電対により得られた温度を1週間にわたり1秒ごとに記録した。この試験により、5月に英国で未被覆導体と比較して被覆導体の実世界の冷却性能を実証した。
【0498】
本発明の実施例4の試験結果
本発明の実施例4の試験結果は、以下にまとめられる。
【0499】
【0500】
図12は、電流サイクリング試験の結果を示すとともに、発明の実施例4がアルミニウム導体鋼補強(「ACSR」)導体の温度を低減するのにとくに効果的であったことを示す。
【0501】
図13は、本発明の実施例4で実施された電流サイクリング試験の結果をサイクルごとの温度低減(%)に関して示す。
【0502】
図14は、本発明の実施例4で実施された屋外冷却性能試験の結果を示す。
【0503】
図15は、英国における5月の1週間にわたる実施例4と未被覆導体との温度低減(%)の差を示す。
【0504】
以上の結果及び試験は、本発明の実施例4が、使用時、導体の温度の低減にとくに有効であり、さらには有益なセルフクリーニング性を有するコーティング又は膜を導体上に形成するとくに有益な組成物を含むことを例示する。
【0505】
溶媒系アルキルシリケートバインダーを含む組成物
アルカリ金属シリケートと、平均粒子サイズ(「aps」)≦100nmを有する≧70wt%アナターゼ二酸化チタン(TiO2)を含む光触媒剤と、を含む水系コーティングは、いくらか詳細に以上で考察された。
【0506】
アルカリ金属シリケートと、平均粒子サイズ(「aps」)≦100nmを有する≧70wt%アナターゼ二酸化チタン(TiO2)を含む光触媒剤と、を含む以上に記載の水系コーティングは、架空導体に適用されうる従来のコーティングと比較して、とくに有利であることが分かった。
【0507】
しかしながら、水系アルカリ金属シリケートコーティングが抱える課題は、湿分に安定であるように200~300℃などで熱硬化させる必要があることである。
【0508】
80℃の最高動作温度までの定格でありうるにすぎない架空導体を熱硬化させるのが望ましくないことは、明らかであろう。さらに、150~250℃のより高い最高動作温度の定格である架空導体を、200~300℃の範囲内の温度で、すなわち、導体の最高定格動作温度を超える可能性もある温度で、熱硬化させることもまた、望ましくないおそれがある。
【0509】
当業者であれば理解されるであろうが、80℃の最高動作温度までの定格であるアルミニウム導体を、潜在的に長時間(4~24時間)にわたり200~300℃の範囲内の高温熱硬化プロセスに付すことは、アルミニウムの焼鈍を引き起こしてアルミニウム導体の結晶構造及び性質の変化をもたらすリスクを高める。
【0510】
水系アルカリ金属シリケートで被覆された新しい架空導体を製造プロセスの一部として熱硬化工程に付すことは可能であるが、架空導体用の温度制御コーティングを形成するために熱硬化を必要とする組成物を用いて既存の架空導体をin situで改造しようとするのであれば、かなり実用的及び経済的な問題を引き起こすこともまた、明らかであろう。実際に、多くの状況で、適用されたコーティングをたとえば24時間までにわたり300℃までの温度で熱硬化させる試みにより、大きな架空導体網を改造しようと試みることが本質的に非実用的であることは、分かるであろう。
【0511】
それゆえ、その高レベルの熱硬化要件が理由で、従来の水系組成物は、定格80℃の導体(市場の大多数を占めるACSR)には適したおらず、改造に適用可能でない。
【0512】
本発明の好ましい実施形態によれば、当該分野で架空導体に必要なレベルの耐久性を提供する純無機ポリシロキサンコーティングが開発された。
【0513】
各種好ましい実施形態に係るコーティングの有意な利点は、熱硬化とは対照的な湿気硬化を介して純無機シロキサン膜を達成可能であることである。
【0514】
アルキルシリケートコーティング(たとえば、エチルシリケート)は、水系でなく溶媒系である。本発明に係る組成物は、水系コーティングと同一のポリマー膜をもたらし、他のタイプのコーティングと同一の最終性質及びそれよりも優れた利点を有する、湿気硬化のみにより硬化するコーティングを形成する。
【0515】
水系シリケートコーティングは、式3を参照して以上で考察されたアルカリ金属カチオンにより安定されたシリケートアニオンを含む。
【0516】
アルカリ金属カチオンは、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウムを形成するナトリウム、カリウム、又はリチウムでありうる。これらは、以上に記載されており、バインダーとして単独で又はその組合せで使用されうる。この水系コーティングは、式4を参照して以上で考察されたように、縮合反応により硬化し、その際、シリケートアニオンは、縮合してシロキサン鎖が形成するとともに、水を生成する。
【0517】
シリケートポリマーを完全に形成するには水の十分な除去が必要とされる。すなわち、式4の平衡を完全に右側に移行させる必要がある。水の十分な除去を伴わないと、膜は再可溶化する可能性があり、コーティングは劣化する可能性がある。
【0518】
乾燥膜は、Mg2+やCa2+などの2価金属カチオンの添加により達成されうる。かかるコーティングは、周囲温度で湿分安定性である。しかしながら、シリケート膜のこの溶解性は温度と共に増加する。そのため、熱硬化を伴わない2価金属カチオンにより触媒されるコーティングは、周囲温度近くでは湿分安定性を呈するであろうが、熱硬化されなければ、膜が高温(50℃超)付されても、高レベルの湿分に付されても、膜は再可溶化し消失するであろう。
【0519】
基材、架空線が典型的には50℃超で動作するという事実から、架空導体の被覆では、高温湿分安定性が必須であることは明らかであろう。それゆえ、湿度又は雨のどちらでも、湿分が存在するとき、コーティングは、コーティングの溶解を引き起こす可能性のある高温及び高湿分レベルの両方を経験する。
【0520】
水系シリケート膜の硬化は、数時間にわたるステップワイズ硬化プロセスを必要とする。典型的には、これは最小でも4時間であるが、理想的には24時間程度の長さであり得る。熱硬化プロセスは、シリケート膜の脱水を必要とする。しかしながら、これをあまり急速に行うと、膜中の炭酸塩と反応する可能性のある水の迅速な蒸発に起因してブリスタリングが発生する可能性がある。
【0521】
コーティングにブリスタリングが発生し炭酸塩と反応すると、接着及びフレキシビリティーが実質的に損なわれる。これを回避するために、数時間にわたりステップワイズ熱硬化を行って、徐々に膜を脱水し、ブリスタリングを起こさないようにすることが望ましい。さらに、最終硬化温度も重要である。たとえば、国際公開第2015/191736号パンフレットでは、いくつかの状況では200℃、他の状況では250℃、さらなる状況では325℃でありうる最終硬化温度が参照されている。本発明者らにより行われた研究からは、膜の十分な湿分安定性を達成するために、200℃の最小温度が望ましいことが示唆される。
【0522】
しかしながら、架空導体専用のコーティングに対するかかる熱硬化レジームは、問題になるおそれがある。最初に、これは、架空導体市場の有意部分が、80℃の定格のみの動作の導体、すなわち、アルミニウム導体鋼補強(「ACSR」)導体で構成されることが原因である。こうした導体中のアルミニウムは、焼鈍されていないが、このアルミニウムを長期にわたり100℃超にすると、焼鈍を受ける可能性がある。焼鈍アルミニウムは、実質的に低い機械的強度を有し、ひいては導体の基本的性質が損なわれる可能性がある。さらに、in situでかかるコーティングを線に適用しようすると、いくつかの実用上の問題が発生する。多くのシナリオでは、既存の送電線に水系シリケートを適用してから、4時間超にわたり、実際には24時間までにわたり150℃を超える温度で、in situで、架空線を熱硬化させることは実用的でない。
【0523】
それゆえ、高温硬化により水系アルカリ金属シリケート膜を十分に脱水する要件は、ACSR導体及び改造導体が抱える課題をもたらす。
【0524】
他の状況では、シリケートコーティングは、50年の寿命を実証することが知られている。これは、UV及び一般的大気暴露による劣化が非常に限られる純無機性に基づく。かかる寿命のコーティングは、架空送電線が30年間以上にわたり動作し、架空線の再被覆が高価で困難なプロセスであるという事実から、架空導体を被覆するために必要とされる。さらに、主に本質的に無機ケイ酸塩であるが、高レベルの熱硬化を必要としない、架空導体用のフォトニックコーティングを達成する手段の必要性が残っている。
【0525】
本発明に係る溶媒系アルキルシリケート組成物が、以上に挙げたことに対処し、その解決策を提供することは、理解されよう。
【0526】
本発明に係る架空導体用の無機ケイ酸塩コーティングは、熱硬化を必要としない。
【0527】
無機ケイ酸塩は、以下に例示されるように2つの形態の広義の形態で存在する。
【0528】
【0529】
アルカリ金属シリケートは水性である。アルカリ金属シリケートとしては、ケイ酸カリウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸リチウム、及びそれらの組合せが挙げられる。これらのコーティングは、アルカリ金属シリケートが縮合反応により硬化するので、十分に硬化させるために高レベルの熱硬化を必要とする。このことは、より低い温度で動作する導体には最適ではなく、改造目的のためのコーティングの使用は、経済的立場から実際上排除される。
【0530】
コーティングは、2価金属カチオンの添加により自己硬化可能であり、希リン酸で後硬化可能である。しかしながら、これらのアプローチはどちらも、同時に高温でも高湿分レベルでも再可溶化しない十分に脱水された膜をもたらさない。
【0531】
アルキル金属シリケートは、エチルシリケート、メチルシリケートなどのアルコキシ基により安定化されたシリケートアニオンを必要とする。最も普及しているコーティングバリアントは、エチルシリケートである。エチルシリケートは、高結合能を形成するために酸又はアルカリ触媒の存在下で水により加水分解される。エチルシリケート加水分解物からゲルを形成できるように、水で処理することによりエチルシリケートを加水分解することがきわめて望ましい。エチルシリケートは、アンモニア、水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウム、及びいくつかのアミンの使用により、アルカリ触媒可能である。
【0532】
エチルシリケートはまた、例として、塩酸、硫酸、リン酸、及びギ酸の使用により、酸触媒可能である。
【0533】
ゲル化及びコーティング形成の速度は、水の量、酸の量、及びアルキル基のサイズにより、注意深く制御可能である。
【0534】
シリカ含有率は、加水分解工程で使用される溶媒の量を制御することにより、変動可能である。典型的には、エチルシリケートコーティングは、高レベルの亜鉛末と組み合わせて使用される。これにより、導電性且つきわめて耐候性の亜鉛-シリケートポリマーマトリックスが形成される。こうしたコーティングの主な使用は鋼構造体の電気防食である。
【0535】
アルキルシリケートバインダーは、酸触媒であろうとアルカリ触媒であろうと、ワンパックまたはツーパックであろうと、加水分解によって硬化する。これにより、コーティングは、湿気硬化のみによって硬化するのに適したものとなる。次に、完全に硬化した無機膜は、熱硬化なしで達成することができる。その結果、コーティングはACSR導体に適し、コーティングは改造プロセスの一部としてその場で導体に適用できる。結果として、本発明によるアルキルシリケートバインダーを使用する架空導体のためのフォトニックコーティングは、当該技術分野における著しい進歩を表す。
【0536】
好ましい実施形態は、バインダーと、溶媒と、1種以上の光学剤と、セルフクリーニング剤と、任意に1種以上の充填剤と、を含む組成物に関する。
【0537】
バインダー
バインダーは、好ましくは、アルキルシリケートバインダーを含む。好適なアルキルシリケート樹脂としては、メチル及びエチルシリケート、さらには他のアルキルシリケートが挙げられる。アルキル基は、8個までの炭素原子を含有しうる。これらは、単独又は混合のどちらでも利用可能である。アルキルシリケート樹脂は、その主形態で使用可能であり、様々な程度の加水分解に好適である。これは、塩酸、硫酸、リン酸、及びギ酸をはじめとする好適な酸の添加により行うことが可能である。たとえば、エチルシリケートバインダーのための出発材料は、テトラエチルオルトシリケート(「TEOS」)である。これは、イソプロピルアルコール、水、及びHCL溶液を用いて加水分解することにより、部分加水分解バインダーが形成可能である。代替的に、既製のバインダー、たとえば、Wacker製のシリケートS100を使用可能である。
【0538】
好ましくは、バインダーは非フッ素化型である。
【0539】
バインダーは、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)、テトラメチルオルトシリケート(TMOS)、メチルトリメトキシシラン(MTMS)、ビニルトリメトキシシラン(VTMS)、トリメトキシフェニルシラン、(3-アミノプロピル)トリメトキシフェニルシラン(APTES)、トリエトキシ(オクチル)シラン(C8-TEOS)、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルジメトキシメチルシラン(AEAPS)、(3-グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン(GPTMS)、[3-(メタクリロイルオキシ)プロピル]トリメトキシシラン(MAPTS)、ヘキサデシルトリメトキシシラン(3-メルカプトプロピル)トリメトキシシラン(MPTMS)又はトリエトキシフェニルシランを含みうる。本発明の組成物は、組成物の合計重量を基準にして、好ましくは約20~約80wt.%、より好ましくは約30~約75wt.%、さらにより好ましくは約35~約70wt.%アルキルシリケートバインダーを含む。
【0540】
本発明の組成物は、組成物の合計重量を基準にして、好ましくは約24~約60wt.%、より好ましくは約28~約55wt.%非水性溶媒である。
【0541】
本発明の組成物は、組成物の合計重量を基準にして、代替的には約40~約60wt.%、より好ましくは約45~約55wt.%非水性溶媒を含みうる。
【0542】
光学剤
光学剤は、好ましくは、反射剤及び/又は放射剤を含む。
【0543】
好ましい実施形態によれば、反射剤は、ルチル二酸化チタン(TiO2)を含む。ルチル二酸化チタン(TiO2)は、好ましくは、平均粒子サイズ(「aps」):(i)≧100nm、(ii)100~200nm、(iii)200~300nm、(iv)300~400nm、(v)400~500nm、(vi)500~600nm、(vii)600~700nm、(viii)700~800nm、(ix)800~900nm、及び(x)900~1000nmを有する。
【0544】
ルチル二酸化チタン(TiO2)は、好ましくは、実質的に球状の粒子を含む。
【0545】
他の一実施形態によれば、反射剤は、アルミノケイ酸ナトリウム(AlNa12SiO5)、酸化亜鉛(ZnO)、又は酸化銅(CuO)を含みうる。
【0546】
光学剤は、白色充填剤を含む反射剤を含みうる。白色充填剤は、(i)酸化マグネシウム(MgO)、(ii)酸化カルシウム(CaO)、(iii)酸化アルミニウム(Al2O3)、(iv)酸化亜鉛(ZnO)、(v)炭酸カルシウム(CaCO3)、(vi)ケイ酸アルミニウム(Al2SiO5)、(vii)カオリン(Al2O3.2SiO2)、(viii)二酸化チタン(TiO2)、又は(viii)硫酸バリウム(BaSO4)を含みうる。
【0547】
光学剤は、放射剤を含みうる。放射剤は、(i)炭酸カルシウム(CaCO3)、(ii)仮焼カオリン(Al2O3.2SiO2)、又は(iii)タルク(水和ケイ酸マグネシウム(H2Mg3(SiO3)4若しくはMg3Si4O10(OH)2))のいずれかなどの無機充填剤を含みうる。
【0548】
本発明の組成物は、組成物の合計重量を基準にして、好ましくは約5~約25wt.%、より好ましくは、約10~約20のwt.%、さらにより好ましくは約12~約17wt.%反射剤を含む。
【0549】
本発明の組成物は、組成物の乾燥重量に基づいて好ましくは約25~約50wt.%、より好ましくは約30~約45のwt.%、さらにより好ましくは約35~約40wt.%反射剤を含む。
【0550】
セルフクリーニング又は光触媒剤
好ましい実施形態に係る組成物は、平均粒子サイズ(「aps」)≦100nmを有する≧70wt%アナターゼ二酸化チタン(TiO2)を好ましくは含む、セルフクリーニング又は光触媒剤を好ましくは含む。
【0551】
本発明の組成物は、組成物の合計重量を基準にして、好ましくは約1~約5wt.%、より好ましくは約2~約4wt.%、さらにより好ましくは約2~約3.5wt.%光触媒剤を含む。
【0552】
本発明の組成物は、組成物の乾燥重量を基準にして、好ましくは約5~約20wt.%、より好ましくは約6~約18wt.%、さらにより好ましくは約8~約15wt.%反射剤を含む。
【0553】
充填剤
組成物は、以上に記載の1種以上の充填剤を含みうる。
【0554】
補助樹脂
アルキルシリケート樹脂のフレキシビリティーは、シロキサンポリマーネットワークの一部を形成する補助樹脂の添加により劇的に改善可能である。それゆえ、各種実施形態によれば、組成物及び最終的には最終コーティングは、1種以上の補助剤樹脂を含みうる。
【0555】
フレキシビリティーは、生産性及び空気中で架空導体が経験する振動力の両方に関して導体コーティングの重要な性質である。シリケートポリマーは、高架橋ネットワークである。この結果として、たとえば、ポリマーネットワーク中の架橋部位が、結合を破壊することなくコンフォメーションを一時的に変化させる能力を有するエラストメリックコーティングと比較して、フレキシビリティーが制限される。組成物が、ポリジメチルシロキサン(「PDMS」)などの1種以上の補助樹脂を含む各種実施形態が企図され、これはシロキサンネットワーク中に架橋していくらかの弾性を導入可能である。補助樹脂は、合計バインダー重量%の3%、5%、10%、15% 25%、33%で添加可能である。
【0556】
実験結果
各種コーティングの性能を実証するために下記の試験を行った。
【0557】
【0558】
比較例#5
比較例#5は、以上に記載の水系アルカリ金属シリケートを含む。この配合物は、噴霧して、熱硬化を行うことなく周囲温度で硬化させた。
【0559】
比較例#6
比較例#6
比較例#6は、以上に記載の水系アルカリ金属シリケートを含む。このサンプルは、噴霧して、50℃から200℃~までステップワイズ増分で7時間にわたり熱硬化させた。
【0560】
本発明の実施例#7
本発明の実施例#7は、市販の“Jotun Resist part A”前加水分解エチルシリケートバインダー24g、ルチル二酸化チタン500nmAPS9g、仮焼カオリン2g、ケイ酸マグネシウム2g、アナターゼ二酸化チタン3g、キシレン溶媒0.84g、及び1-メトキシ-2-プロパノール0.92gを含む溶媒系組成物を含み、これらを高速ミキサーで混合し、均一組成物又はコーティングが形成されるまで、分散した。
【0561】
次いで、組成物又はコーティングを噴霧し、湿気硬化のみにより硬化させるように高値相対湿度(RH%>60%)に付した。
【0562】
【0563】
以上の試験では、(i)熱硬化アルカリ金属シリケート(非熱硬化サンプルは水浴中に配置したときに完全に溶解したため)、及び(ii)溶媒系アルキルシリケートバインダーを含む組成物の両方の利点を実証する。
【0564】
本発明の実施例#7及び比較例#6は、さらなる試験に供した。
【0565】
電流サイクリング
比較例#6
水系アルカリ金属シリケートの結果を
図16Aに示す。導体の平均冷却は24%であった。
【0566】
本発明の実施例#7
本発明の実施例#7の結果を
図16A及び16Bに示す。配合物は、水系アルカリ金属シリケートの改善を表す未被覆サンプルと比較して平均34%温度低減を示した。
【0567】
屋外試験性能
図17は、未被覆(コントロール)サンプルと比較して水系(比較例#6)及び溶媒系シリケート(本発明の実施例#7)の両方の屋外冷却性能を実証する。
【0568】
図17は、比較例#6(水系シリケート)、本発明の実施例#7(溶媒系シリケート)、及びコントロール(未被覆)に対する4日間にわたる屋外リグデータを示す。
【0569】
本発明の実施例#7は、4日間にわたり未被覆導体を有意に冷却する。28%までの冷却が実証され、比較例#6よりも常に優れた性能を示す。
【0570】
実験結論
本発明によれば、架空導体を被覆するために水系アルカリ金属シリケートを使用することに伴う主要な課題を克服する新規の組成物/コーティングが提供される。
【0571】
主要な課題は、十分な湿分安定性を達成するために水系アルカリ金属シリケートを熱硬化させる必要性を含む。このため、ACSR導体(100℃の定格のみ)の使用は本質的に排除される。つまり、コーティングは、既設線の改造に向かない。
【0572】
本発明は、安定性を達成するために熱硬化をなんら必要としない湿気硬化性シリケートを提供することによりこの問題に対処する。熱硬化の必要性に関連する課題を解決する一方、本発明の各種実施形態に係る溶媒系組成物/コーティングはまた、水系組成物/コーティングよりも優れた性能を呈する。
【0573】
したがって、本発明に係る溶媒系アルキルシリケート組成物は、当技術分野で大幅な進歩を示すことは、明らかであろう。
【0574】
好ましい実施形態を参照して本発明を説明してきたが、添付の特許請求の範囲に示される本発明の範囲から逸脱することなく形態及び詳細に各種変更を行いうることは、当業者であれば理解されよう。
【0575】
好ましい実施形態:
本発明のいくつかの好ましい実施形態を以下に示す:
実施形態1.
反射剤と、
平均粒子サイズ(「aps」)≦100nmを有する≧70wt%アナターゼ二酸化チタン(TiO2)を含む光触媒剤と、
非水性溶媒と、
1種以上のアルキルシリケートバインダーと
を含む、架空導体を被覆するための組成物。
【0576】
実施形態2.
反射剤がルチル二酸化チタン(TiO2)を含む、実施形態1に記載の組成物。
【0577】
実施形態3.
ルチル二酸化チタン(TiO2)が、平均粒子サイズ(「aps」):(i)≧100nm、(ii)100~200nm、(iii)200~300nm、(iv)300~400nm、(v)400~500nm、(vi)500~600nm、(vii)600~700nm、(viii)700~800nm、(ix)800~900nm、及び(x)900~1000nmを有する、実施形態2に記載の組成物。
【0578】
実施形態4.
ルチル二酸化チタン(TiO2)が実質的に球状の粒子を含む、実施形態2又は3に記載の組成物。
【0579】
実施形態5.
反射剤がアルミノケイ酸ナトリウム(AlNa12SiO5)、酸化亜鉛(ZnO)又は酸化銅(CuO)を含む、実施形態1に記載の組成物。
【0580】
実施形態6.
光触媒剤が、≧75%、≧80%、≧85%、≧90%≧95%、又は≧99%wt%アナターゼ二酸化チタン(TiO2)含む、実施形態1~5のいずれか一つに記載の組成物。
【0581】
実施形態7.
反射剤が白色充填剤を含む、実施形態1に記載の組成物。
【0582】
実施形態8.
白色充填剤が、(i)酸化マグネシウム(MgO)、(ii)酸化カルシウム(CaO)、(iii)酸化アルミニウム(Al2O3)、(iv)酸化亜鉛(ZnO)、(v)炭酸カルシウム(CaCO3)、(vi)ケイ酸アルミニウム(Al2SiO5)、(vii)カオリン(Al2O3.2SiO2)、(viii)二酸化チタン(TiO2)、又は(viii)硫酸バリウム(BaSO4)を含む、実施形態7に記載の組成物。
【0583】
実施形態9
放射剤をさらに含む、実施形態1~8のいずれか一つに記載の組成物。
【0584】
実施形態10.
放射剤が無機充填剤を含む、実施形態9に記載の組成物。
【0585】
実施形態11.
無機充填剤が、(i)炭酸カルシウム(CaCO3)、(ii)仮焼カオリン(Al2O3.2SiO2)、又は(iii)タルク(水和ケイ酸マグネシウム(H2Mg3(SiO3)4若しくはMg3Si4O10(OH)2))のいずれかを含む、実施形態10に記載の組成物。
【0586】
実施形態12.
溶媒が、式(CH3)2C6H4を有するキシレン、キシロール、若しくはジメチルベンゼン、式(CH3)C6H5を有するトルエン、式C2H5OHを有するエタノール、式CH3CH(OH)CH3を有するイソプロパノール、式C2H5OC2H4OHを有する2-エトキシエタノール、又は式CH3C(O)OC2H4OC2H5を有する2-エトキシエチルアセテートを含む、実施形態1~11のいずれか一つに記載の組成物。
【0587】
実施形態13.
1種以上のアルキルシリケートバインダーが、75~100%加水分解まで前加水分解される、実施形態1~12のいずれか一つに記載の組成物。
【0588】
実施形態14.
アルキルシリケートバインダーが、メチルシリケート、エチルシリケート、プロピルシリケート、ブチルシリケート、ペンチルシリケート、ヘキシルシリケート、ヘプチルシリケート、又はオクチルシリケートを含む、実施形態1~13のいずれか一つに記載の組成物。
【0589】
実施形態14a.
アルキルシリケートバインダーが非フッ素化型である、実施形態1~14いずれか一つに記載の組成物。
【0590】
実施形態15.
アルキルシリケートバインダーが、n-プロピルシリケート、イソプロピルシリケート、又はブチルオルトシリケートを含む、実施形態1~14aのいずれか一つに記載の組成物。
【0591】
実施形態16.
硬化剤をさらに含む、実施形態1~15のいずれか一つに記載の組成物。
【0592】
実施形態17.
硬化剤が、(i)塩化亜鉛(ZnCl2)又は(ii)塩化マグネシウム(MgCl2)からなる群から選択される、実施形態16に記載の組成物。
【0593】
実施形態18.
フレキシビリティー剤及び/又はレオロジー剤をさらに含む、実施形態1~17のいずれか一つに記載の組成物。
【0594】
実施形態19.
フレキシビリティー剤が、ヒドロキシエチルセルロース(CH2CH2OH)を含み、及び/又はレオロジー剤が、ポリジメチルシロキサン(「PDMS」(C2H6OSi)n)を含む、実施形態18に記載の組成物。
【0595】
実施形態19a.
組成物が約5~約25wt.%反射剤を含む、実施形態1~19のいずれか一つに記載の組成物。
【0596】
実施形態19b.
組成物が約10~約20wt.%反射剤を含む、実施形態1~19aのいずれか一つに記載の組成物。
【0597】
実施形態19c.
組成物が約12~約17wt.%反射剤を含む、実施形態1~19bのいずれか一つに記載の組成物。
【0598】
実施形態19d.
組成物が約1~約5wt.%光触媒剤を含む、実施形態1~19cのいずれか一つに記載の組成物。
【0599】
実施形態19e.
組成物が約2~約4wt.%光触媒剤を含む、実施形態1~19dのいずれか一つに記載の組成物。
【0600】
実施形態19f.
組成物が約2~約3.5wt.%光触媒剤を含む、実施形態1~19e.のいずれか一つに記載の組成物。
【0601】
実施形態19g.
組成物が約20~約80wt.%アルキルシリケートバインダーを含む、実施形態1~19fのいずれか一つに記載の組成物。
【0602】
実施形態19h.
組成物が約30~約75wt.%アルキルシリケートバインダーを含む、実施形態1~19gのいずれか一つに記載の組成物。
【0603】
実施形態19i.
組成物が約35~約70wt.%アルキルシリケートバインダーを含む、実施形態1~19hのいずれか一つに記載の組成物。
【0604】
実施形態19j.
組成物が約24~約60wt.%非水性溶媒を含む、実施形態1~19iのいずれか一つに記載の組成物。
【0605】
実施形態19k.
組成物が約28~約55wt.%非水性溶媒を含む、実施形態1~19jのいずれか一つに記載の組成物。
【0606】
実施形態19l.
組成物が約40~約55wt.%非水性溶媒を含む、実施形態1~19kのいずれか一つに記載の組成物。
【0607】
実施形態19m.
組成物が、
約5~約25wt.%反射剤、
約1~約5wt.%光触媒剤、
約24~約60wt.%非水性溶媒、及び
約20~約70wt.%アルキルシリケートバインダー
を含む、実施形態1~18のいずれか一つに記載の組成物。
【0608】
実施形態19n.
組成物が、
約10~約20wt.%反射剤、
約2~約4wt.%光触媒剤、
約28~約55wt.%非水性溶媒、及び
約30~約60のwt.%アルキルシリケートバインダー
を含む、実施形態1~18のいずれか一つに記載の組成物。
【0609】
実施形態20.
実施形態1~19nのいずれか一つに記載の組成物で少なくとも部分的に被覆された架空導体であって、使用時、架空導体の少なくとも一部分上にコーティング又は膜が形成されるように、組成物が硬化される、架空導体。
【0610】
実施形態21.
コーティング又は膜が赤外スペクトル2.5~30.0μmにわたり平均熱放射率係数E≧0.90を有する、実施形態20に記載の架空導体。
【0611】
実施形態22.
コーティング又は膜が太陽スペクトル0.3~2.5μmにわたり平均日射反射率係数R≧0.80を有する、実施形態20又は21に記載の架空導体。
【0612】
実施形態22a.
コーティング又は膜が太陽スペクトル0.3~2.5μmにわたり平均日射反射率係数R≧0.90を有する、実施形態20又は21に記載の架空導体。
【0613】
実施形態23.
コーティング又は膜が、実質的に白色の色であり、且つL*≧80、L*≧85、L*≧90、又はL*≧95を有する、実施形態20、21、22、又は22aのいずれか一つに記載の架空導体。
【0614】
実施形態24.
コーティング又は膜が、ASTM E408(2013)に準拠して試験したときに赤外スペクトル2.5~30.0μmにわたり平均熱放射率係数E≧0.90、並びに/又はASTM E903(2012)に準拠して試験したときに太陽スペクトル0.3~2.5μmにわたり平均日射反射率係数R≧0.80(好ましくは≧0.90)及び/若しくは平均日射吸収率係数A≦0.10を有する、実施形態20~23のいずれか一つに記載の架空導体。
【0615】
実施形態25.
架空導体が、ANSI C119.4-2004に準拠して試験したときに、コーティングも膜も有していない同一の架空導体の温度よりも低い温度で動作する、実施形態20~24のいずれかに記載の架空導体。
【0616】
実施形態26.
架空導体が、使用時、≧2kV、2~50kV、50~100kV、100~150kV、150~200kV、200~250kV、250~300kV、300~350kV、350~400kV、400~450kV、450~500kV、500~550kV、550~600kV、600~650kV、650~700kV、700~750kV、750~800kV、又は≧800kVの電圧で電力を伝達するように構成及び適合化される、実施形態20~25のいずれか一つに記載の架空導体。
【0617】
実施形態27.
架空導体が、使用時、80℃、90℃、100℃、110℃、120℃、130℃、140℃、150℃、160℃、170℃、180℃、190℃、200℃、210℃、220℃、230℃、240℃、250℃、260℃、270℃、280℃、290℃、300℃、又は>300℃の最高動作温度まで動作するように構成及び適合化される、実施形態20~26のいずれか一つに記載の架空導体。
【0618】
実施形態28.
架空導体が、使用時、架空鉄塔間に懸架されるように構成及び適合化される、実施形態20~27のいずれか一つに記載の架空導体。
【0619】
実施形態29.
架空導体が1種以上の金属導体を含む、実施形態20~28のいずれか一つに記載の架空導体。
【0620】
実施形態30.
架空導体が1種以上の金属ケーブルを含む、実施形態20~29のいずれか一つに記載の架空導体。
【0621】
実施形態31.
1種以上の金属導体及び/又は1種以上の金属ケーブルが、アルミニウム又はアルミニウム合金を含む、実施形態29又は30に記載の架空導体。
【0622】
実施形態32.
架空導体が(i)オールアルミニウム導体(「AAC」)、(ii)オールアルミニウム合金導体(「AAAC」)、(iii)アルミニウム導体鋼補強(「ACSR」)導体、(iv)アルミニウム導体アルミニウムクラッド鋼補強(「ACSR/AW」)導体、(v)架空集束ケーブル(「ABC」)、(vi)高温低弛度(「HTLS」)導体、(vii)アルミニウム導体複合コア(「ACCC」)導体、(viii)アルミニウム導体鋼支持(「ACSS/MA」)導体、(ix)アルミニウム導体アルミニウムクラッド鋼支持(「ACSS/AW」)導体、(x)耐熱アルミニウム合金導体鋼補強(「TACSR」)導体、(xi)耐熱アルミニウム合金導体アルミニウムクラッド鋼補強(「TACSR/AW」)導体、又は(xii)超耐熱アルミニウム合金導体アルミニウムクラッドインバー補強(「STACIR/AW」)導体を含む、実施形態20~31のいずれか一つに記載の架空導体。
【0623】
実施形態33.
コーティング又は膜が、1~10μm、10~20μm及び20~30μm、30~40μm、40~50μm、50~60μm、60~70μm、70~80μm、80~90μm、90~100μm、100~110μm、110~120μm、120~130μm、130~140μm、140~150μm、150~160μm、160~170μm、170~180μm、180~190μm、190~200μm、200~300μm、300~400μm、400~500μm、500~600μm、600~700μm、700~800μm、800~900μm、900~1000μm、又は>1mmの範囲内で厚さを有する、実施形態20~32のいずれか一つに記載の架空導体。
【0624】
実施形態34.
実施形態20~33のいずれか一つに記載の1つ以上の架空導体を含む、電力系統又は配電系統。
【0625】
実施形態35.
架空導体に膜を被覆又は適用する方法であって、
架空導体の少なくとも一部分に実施形態1~19のいずれか一つに記載の組成物を適用することと、
架空導体の少なくとも一部分上にコーティング又は膜が形成されるように湿気硬化のみにより組成物を硬化させることと、
を含む、方法。
【0626】
実施形態36.
湿気硬化により組成物を硬化させる工程が、周囲温度超で組成物を加熱することを必要としない、実施形態35に記載の方法。
【0627】
実施形態37.
熱硬化工程を利用することなく架空導体の少なくとも一部分上にコーティング又は膜が形成されるように組成物を硬化させることをさらに含む、実施形態35又は36に記載の方法。
【0628】
実施形態38.
架空導体の少なくとも一部分上にコーティング又は膜が形成されるように組成物を硬化させる工程が、架空導体上に形成された組成物及び/コーティング又は膜の温度を100℃未満、90℃未満、又は80℃未満に維持することを含む、実施形態35、36、又は37に記載の方法。
【0629】
実施形態39.
架空導体を被覆するための組成物を形成するためのキットであって、
(i)反射剤、(ii)平均粒子サイズ(「aps」)≦100nmを有する≧70wt%アナターゼ二酸化チタン(TiO2)を含む光触媒剤、及び(iii)1種以上のアルキルシリケートバインダー、
を含む第1のパーツと、
(i)非水性溶媒、
を含む第2のパーツと、
を含み、
使用時、第1及び第2のパーツが、架空導体の少なくとも一部分上にコーティング又は膜が形成されるように架空導体の少なくとも一部分に適用される組成物を形成するために混合一体化される、キット。
【0630】
実施形態40.
第1のパーツが、(i)放射剤、(ii)硬化剤、(iii)フレキシビリティー剤、及び(iv)レオロジー剤の1種以上をさらに含む、実施形態39に記載のキット。
【0631】
実施形態41.
第2のパーツが、(i)放射剤、(ii)硬化剤、(iii)フレキシビリティー剤、及び(iv)レオロジー剤の1種以上をさらに含む、実施形態39又は40に記載のキット。
【0632】
実施形態42.
コーティング又は膜が形成されるように1つ以上の架空導体の少なくとも一部分上に組成物を噴霧、塗装、又は適用するための第1のデバイスをさらに含む、実施形態39、40、又は41のいずれか一つに記載のキット。
【0633】
実施形態43.
1つ以上の架空導体を含む架空送電線又は配電線を改造する方法であって、
架空導体の少なくとも一部分上に組成物を噴霧、塗装、被覆、又は適用することであって、組成物が、(i)反射剤、(ii)平均粒子サイズ(「aps」)≦100nmを有する≧70wt%アナターゼ二酸化チタン(TiO2)を含む光触媒剤、(iii)非水性溶媒、及び(iv)1種以上のアルキルシリケートバインダー、を含む、ことと、次いで、
架空導体の少なくとも一部分上にコーティング又は膜が形成されるように湿気硬化のみにより組成物を硬化させることと、
を含む、方法。
【手続補正書】
【提出日】2022-07-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
≧100nmの平均粒子サイズを有するルチル二酸化チタン、アルミノケイ酸ナトリウム(AlNa
12
SiO
5
)、酸化亜鉛(ZnO)、又は酸化銅(CuO)を含む反射剤と、
平均粒子サイズ(「aps」)≦100nmを有する≧70wt%アナターゼ二酸化チタン(TiO
2)を含む光触媒剤と、
非水性溶媒と、
1種以上のアルキルシリケートバインダーとを含む、架空導体を被覆するための組成物。
【請求項2】
前記反射剤が、
≧100nmの平均粒子サイズを有するルチル二酸化チタンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物が、
5~25重量%の反射剤と、
1~5重量%の光触媒剤と、
24~60重量%の非水性溶媒と、
20~70重量%のアルキルシリケートバインダーとを含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物が、
10~20重量%の反射剤と、
2~4重量%の光触媒剤と、
28~55重量%の非水性溶媒と、
30~60重量%のアルキルシリケートバインダーとを含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記反射剤が白色充填剤を含
む、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記白色充填剤が、(i)酸化マグネシウム(MgO)、(ii)酸化カルシウム(CaO)、(iii)酸化アルミニウム(Al
2
O
3
)、(iv)酸化亜鉛(ZnO)、(v)炭酸カルシウム(CaCO
3
)、(vi)ケイ酸アルミニウム(Al
2
SiO
5
)、(vii)カオリン(Al
2
O
3
.2SiO
2
)、(viii)二酸化チタン(TiO
2
)、又は(viii)硫酸バリウム(BaSO
4
)を含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記溶媒が、式(CH
3)
2C
6H
4を有するキシレン、キシロール、若しくはジメチルベンゼン、式(CH
3)C
6H
5を有するトルエン、式C
2H
5OHを有するエタノール、式CH
3CH(OH)CH
3を有するイソプロパノール、式C
2H
5OC
2H
4OHを有する2-エトキシエタノール、又は式CH
3C(O)OC
2H
4OC
2H
5を有する2-エトキシエチルアセテートを含む、
請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記1種以上のアルキルシリケートバインダーが、75~100%加水分解まで前加水分解される、
請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記アルキルシリケートバインダーが、メチルシリケート、エチルシリケート、プロピルシリケート、ブチルシリケート、ペンチルシリケート、ヘキシルシリケート、ヘプチルシリケート又はオクチルシリケートを含み、好ましくは、前記アルキルシリケートバインダーが、n-プロピルシリケート、イソプロピルシリケート、又はブチルオルトシリケートを含む、
請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記アルキルシリケートバインダーが非フッ素化型である、
請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
硬化剤をさらに含み、好ましくは、前記硬化剤が、(i)塩化亜鉛(ZnCl
2)又は(ii)塩化マグネシウム(MgCl
2)からなる群から選択される、
請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
フレキシビリティー剤及び/又はレオロジー剤をさらに含み、好ましくは、前記レオロジー剤が、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、疎水変性ヒドロキシエチルセルロース、アルカリ膨潤性エマルジョン、疎水性アルカリ膨潤性エマルジョン、疎水変性エチレンオキサイドウレタンレオロジー調整剤、オルガノクレー、ポリアミド、又はヒュームドシリカを含む、
請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物で少なくとも部分的に被覆された架空導体であって、使用時、前記組成物が、前記架空導体の少なくとも一部分上にコーティング又は膜が形成されるように硬化される、架空導体。
【請求項14】
前記コーティング又は膜が、赤外スペクトル2.5~30.0μmにわたり平均熱放射率係数E≧0.90を有する、及び/又は
前記コーティング又は膜が、太陽スペクトル0.3~2.5μmにわたり平均日射反射率係数R≧0.80、好ましくは≧0.90を有する、及び/又は
前記コーティング又は膜が、実質的に白色の色であり、且つL
*≧80、L
*≧85、L
*≧90、又はL
*≧95を有する、
請求項13に記載の架空導体。
【請求項15】
前記コーティング又は膜が20~120μmの範囲内の厚さを有する、請求項13又は14に記載の架空導体。
【請求項16】
請求項14又は15に記載の架空導体を1つ以上含む、電力系統又は配電系統。
【請求項17】
架空導体に膜を被覆又は適用する方法であって、
前記架空導体の少なくとも一部分に
請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物を適用することと、
前記架空導体の少なくとも一部分上にコーティング又は膜が形成されるように湿気硬化のみにより前記組成物を硬化させることと、
を含む、方法。
【請求項18】
前記組成物を湿気硬化により硬化させる工程が、前記組成物を周囲温度超に加熱することを伴わない、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
架空導体を被覆するための組成物を形成するためのキットであって、
(i)
≧100nmの平均粒子サイズを有するルチル二酸化チタン、アルミノケイ酸ナトリウム(AlNa
12
SiO
5
)、酸化亜鉛(ZnO)、又は酸化銅(CuO)を含む反射剤、(ii)平均粒子サイズ(「aps」)≦100nmを有する≧70wt%アナターゼ二酸化チタン(TiO
2)を含む光触媒剤、及び(iii)1種以上のアルキルシリケートバインダーを含む第1のパーツと、
(i)非水性溶媒を含む第2のパーツと、
を含み、
使用時、前記第1及び第2のパーツが、前記架空導体の少なくとも一部分上にコーティング又は膜が形成されるように前記架空導体の少なくとも一部分に適用される組成物を形成するために混合一体化される、キット。
【請求項20】
1つ以上の架空導体を含む架空送電線又は配電線を改造する方法であって、
前記架空導体の少なくとも一部分上に組成物を噴霧、塗装、被覆、又は適用することであって、ここで、前記組成物は、(i)
≧100nmの平均粒子サイズを有するルチル二酸化チタン、アルミノケイ酸ナトリウム(AlNa
12
SiO
5
)、酸化亜鉛(ZnO)、又は酸化銅(CuO)を含む反射剤、(ii)平均粒子サイズ(「aps」)≦100nmを有する≧70wt%アナターゼ二酸化チタン(TiO
2)を含む光触媒剤、(iii)非水性溶媒、及び(iv)1種以上のアルキルシリケートバインダーを含むことと、次いで、
前記架空導体の少なくとも一部分上にコーティング又は膜が形成されるように湿気硬化のみにより前記組成物を硬化させることとを含む、方法。
【国際調査報告】