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特表2023-503576半導体デバイス製造用のガラスウェハ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-31
(54)【発明の名称】半導体デバイス製造用のガラスウェハ
(51)【国際特許分類】
   C03C 17/34 20060101AFI20230124BHJP
   H01L 21/67 20060101ALI20230124BHJP
   H01L 21/68 20060101ALI20230124BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20230124BHJP
【FI】
C03C17/34 Z
H01L21/68 L
H01L21/68 M
H01L21/31 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022529539
(86)(22)【出願日】2020-11-24
(85)【翻訳文提出日】2022-06-23
(86)【国際出願番号】 US2020061990
(87)【国際公開番号】W WO2021108393
(87)【国際公開日】2021-06-03
(31)【優先権主張番号】62/940,996
(32)【優先日】2019-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ヤー-ホイ
(72)【発明者】
【氏名】コッホ,カール ウィリアム ザ サード
(72)【発明者】
【氏名】リン,ジェン-ジエ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ジエン-ジー ジェイ
【テーマコード(参考)】
4G059
5F045
5F131
【Fターム(参考)】
4G059AA06
4G059AB11
4G059AC07
4G059AC30
4G059EA05
4G059EA12
4G059EA13
4G059EB02
4G059GA02
4G059GA04
4G059GA12
5F045AA08
5F045AA18
5F045AA19
5F045AB03
5F045AB32
5F045AB33
5F045AF09
5F045BB10
5F045CA01
5F131AA02
5F131AA03
5F131CA18
5F131DA02
5F131DA22
5F131DA42
5F131FA12
5F131FA32
5F131FA34
5F131FA35
5F131KA12
5F131KA45
5F131KA63
5F131KB03
5F131KB04
5F131KB05
5F131KB32
5F131KB54
5F131KB55
(57)【要約】
本明細書では、半導体製造プロセス用のガラスウェハの実施形態について説明する。いくつかの実施形態では、ガラスウェハは、上面と、上面と反対にある下面と、上面と下面との間の縁端面と、を備えるガラス基板と、ガラス基板の上に配置される、100~1,000,000オーム/スクエアのシート抵抗を有するドープ結晶シリコン被膜である第1の被膜と、ガラス基板の上に配置される1つ以上の層を有する第2の被膜であって、シリコン含有被膜を含む第2の被膜と、を含み、ガラスウェハの400nm~1000nmの波長域全域における平均透過率(T)が50%未満である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面(102)と、前記上面と反対にある下面(104)と、前記上面と前記下面との間の縁端面(106)と、を備えるガラス基板と、
前記ガラス基板の上に配置される、100~1,000,000オーム/スクエアのシート抵抗を有するドープ結晶シリコン被膜である第1の被膜(108)と、
前記ガラス基板の上に配置される1つ以上の層を有する第2の被膜(110)であって、シリコン含有被膜を含む第2の被膜と、
を含む半導体デバイス用のガラスウェハ(100)であって、
400nm~1000nmの波長域全域における平均透過率(T)が50%未満であるガラスウェハ。
【請求項2】
400nm~2500nmの波長域全域における平均透過率(T)が50%未満である、請求項1記載のガラスウェハ。
【請求項3】
前記波長域の各波長における透過率が50%未満である、請求項2記載のガラスウェハ。
【請求項4】
(a)前記第1の被膜が、前記ガラス基板の前記上面の上に直接配置され、前記第2の被膜が、前記第1の被膜の上に直接配置される、
(b)前記第2の被膜が少なくとも2つの層を含み、前記第1の被膜が前記第2の被膜の前記少なくとも2つの層の間に配置される、
のうちのいずれかである、請求項1記載のガラスウェハ。
【請求項5】
前記第2の被膜が、非ドープアモルファスシリコン層を含む、請求項1記載のガラスウェハ。
【請求項6】
前記第2の被膜が、窒化ケイ素層、非ドープアモルファスシリコン層、および二酸化ケイ素層を含み、
前記窒化ケイ素層が、前記非ドープアモルファスシリコン層の上に配置され、
前記非ドープアモルファスシリコン層が、前記二酸化ケイ素層の上に配置され、
前記二酸化ケイ素層が、前記ドープ結晶シリコン被膜の上に配置される、
請求項1記載のガラスウェハ。
【請求項7】
前記ガラス基板の前記上面、前記下面、および前記縁端面の上にパッシベーション被膜(112)をさらに含み、
前記パッシベーション被膜が、SiN、SiO、SiONのうちいずれか1つから成る、
請求項1記載のガラスウェハ。
【請求項8】
上面(102)と、前記上面と反対にある下面(104)と、前記上面と前記下面との間の縁端面(106)と、を備えるガラス基板と、
前記ガラス基板の上に配置される1つ以上の層を有する被膜(110)であって、シリコン含有被膜を含む被膜と、
を含む半導体デバイス用のガラスウェハ(100)であって、
400nm~1000nmの波長域全域における平均透過率(T)が50%未満であるガラスウェハ。
【請求項9】
(a)前記被膜が、前記ガラス基板の前記上面全体を被覆する、
(b)前記被膜が、前記ガラス基板の前記上面のうち、前記縁端面から該上面の中心に向かって半径方向距離2mmまでの部分を被覆する、
のうちのいずれかである、請求項8記載のガラスウェハ。
【請求項10】
前記波長域の各波長における透過率が50%未満である、請求項8記載のガラスウェハ。
【請求項11】
400nm~2500nmの波長域全域における前記ガラス基板の平均透過率(T)が50%未満である、請求項8記載のガラスウェハ。
【請求項12】
前記波長域の各波長における透過率が50%未満である、請求項11記載のガラスウェハ。
【請求項13】
前記被膜が、窒化ケイ素層、非ドープアモルファスシリコン層、および二酸化ケイ素層を含み、
前記窒化ケイ素層が、前記非ドープアモルファスシリコン層の上に配置され、
前記非ドープアモルファスシリコン層が、前記二酸化ケイ素層の上に配置される、
請求項8記載のガラスウェハ。
【請求項14】
電子デバイスを製造する方法において、
光源と、前記光源からの光線を検出するように構成された光センサと、を備える基板位置合わせチャンバ内の基板支持体にガラスウェハを載置するステップであって、前記ガラスウェハが、
上面(102)と、前記上面と反対にある下面(104)と、前記上面と前記下面との間の縁端面(106)と、を備えるガラス基板と、
前記ガラス基板の上に配置される、100~1,000,000オーム/スクエアのシート抵抗を有するドープ結晶シリコン被膜である第1の被膜(108)と、
前記ガラス基板の上に配置される1つ以上の層を有する第2の被膜(110)であって、シリコン含有被膜を含む第2の被膜と、を含み、
400nm~1000nmの波長域全域における平均透過率(T)が50%未満であるガラスウェハである、載置するステップと、
前記基板支持体を回転させて、前記ガラスウェハを前記基板位置合わせチャンバ内の所定位置に配置するステップであって、前記所定位置が、前記ガラスウェハが到達すると前記光センサが前記光源からの前記光線を検出する位置である、配置するステップと、
さらなる加工を行うため、前記ガラスウェハを半導体加工チャンバに搬送するステップと、
を含む方法。
【請求項15】
上面(102)と、前記上面と反対にある下面(104)と、前記上面と前記下面との間の縁端面(106)と、を備えるガラス基板と、
前記ガラス基板の上に配置され、少なくとも2つのシリコン含有層を含み、隣接層間の屈折率値の差が0.5より大きいシリコン含有被膜と、
を含む半導体デバイス用のガラスウェハであって、
前記被膜が、窒化ケイ素層と、非ドープアモルファスシリコン層と、および二酸化ケイ素層と、リンドープ結晶シリコン層とを含み、
前記窒化ケイ素層が、前記非ドープアモルファスシリコン層の上に配置され、
前記非ドープアモルファスシリコン層が、前記二酸化ケイ素層の上に配置され、
前記二酸化ケイ素層が、前記リンドープ結晶シリコン層の上に配置される、
半導体デバイス用のガラスウェハ。
【発明の詳細な説明】
【優先権】
【0001】
本出願は、2019年11月27日を出願日とする米国仮特許出願第62/940,996号の米国特許法第120条に基づく優先権の利益を主張するものであり、この仮出願の開示内容は、本明細書が依拠するところであり、かつ参照することによって本明細書の一部をなすものとする。
【技術分野】
【0002】
本開示の実施形態は、概して、半導体製造加工に関し、より詳細には、半導体デバイス製造用のガラスウェハに関する。
【背景技術】
【0003】
過去数十年に亘り、集積回路を製作する目的で様々な形態のシリコンウェハが使用されてきた。これに伴い、今日の半導体製造設備は、シリコンウェハの検出・加工を行う構成を有している。
【0004】
例えば、集積回路などのデバイスの製造プロセスで使用される製造ツールは、特に、自動ロード・アンロード設備(例えば、リソグラフィ設備、エッチング設備などへのロード・アンロード(ウェハの載置・取り出し)を行うカセットオートローダなど)を備えている。これらのカセットオートローダは、ウェハをツールに出し入れする際に、各種センサによってウェハの設置、位置合わせ、位置確認などを判定する。この判定には、ウェハの縁端部に設けられるオリフラ(wafer flat)や切り欠きなどの手段が使われるが、そのためにはツール内でウェハの向きを正しく合わせる必要がある。
【0005】
現在、半導体材料の主流はシリコンである。そして、シリコンウェハを検出・加工するように設計された専用の製造設備でガラスを使用するためには、半導体製造設備をガラスに対応させるための設備調整が必要となる。ここで、1つの問題点として、例えば、センサの多くがシリコンウェハを感知するように設計されていることが挙げられる。既存のセンサは、機械式、光学式、および/または、誘導式/静電容量式である。機械式センサであれば、シリコン以外の材料でも機能するかもしれないが、電気式センサや光センサの場合、シリコン以外の材料では必ずしも機能するとは限らない。各ツールに搭載されたセンサをすべて、他の材料(すなわち、非シリコン)のウェハを感知できるように変更することも可能ではあるが、製造環境上望ましいものではない。また、半導体製造設備で一般的に使用されている静電チャックは、静電界を利用してウェハを適所に保持するものだが、シリコンウェハ用に構成された静電チャックは、ガラス材などの誘電体のように静電界の影響を受けにくいウェハ材料では機能しないという点も、他の問題点として挙げられる。
【0006】
そこで、本発明者らは、半導体デバイス製造プロセス用の改良したガラス基板を開発した。
【発明の概要】
【0007】
本明細書では、半導体デバイス用のガラスウェハの実施形態について説明する。いくつかの実施形態では、半導体デバイス用のガラスウェハは、上面(102)、上面と反対にある下面(104)、および上面と下面との間の縁端面(106)を備えるガラス基板と、ガラス基板の上に配置される、100~1,000,000オーム/スクエアのシート抵抗を有するドープ結晶シリコン被膜である第1の被膜(108)と、ガラス基板の上に配置される1つ以上の層を有する第2の被膜(110)であって、シリコン含有被膜を含む第2の被膜と、を含み、ガラスウェハの400nm~1000nmの波長域全域における平均透過率(T)が50%未満である。
【0008】
いくつかの実施形態では、半導体デバイス用のガラスウェハは、上面(102)、上面と反対にある下面(104)、および上面と下面との間の縁端面(106)を備えるガラス基板と、ガラス基板の上に配置される1つ以上の層を有する被膜(110)であって、シリコン含有被膜を含む被膜と、を含み、ガラスウェハの400nm~1000nmの波長域全域における平均透過率(T)が50%未満である。
【0009】
いくつかの実施形態では、電子デバイスを製造する方法は、光源と、光源からの光線を検出するように構成された光センサと、を備える基板位置合わせチャンバ内の基板支持体にガラスウェハを載置するステップと、基板支持体を回転させて、ガラスウェハを基板位置合わせチャンバ内の所定位置に配置するステップと、さらなる加工を行うため、ガラスウェハを半導体加工チャンバに搬送するステップと、を含む。なお、ガラスウェハは、上面、上面と反対にある下面、および上面と下面との間の縁端面を備えるガラス基板と、ガラス基板の上に配置される、100~1,000,000オーム/スクエアのシート抵抗を有するドープ結晶シリコン被膜である第1の被膜と、ガラス基板の上に配置される1つ以上の層を有する第2の被膜であって、シリコン含有被膜を含む第2の被膜と、を含み、ガラスウェハの400nm~1000nmの波長域全域における平均透過率(T)が50%未満である。また、所定位置は、ガラスウェハが到達すると光センサが光源からの光線を検出する位置である。
【0010】
いくつかの実施形態では、半導体デバイス用のガラスウェハは、上面(102)、上面と反対にある下面(104)、および上面と下面との間の縁端面(106)を備えるガラス基板と、ガラス基板の上に配置され、少なくとも2つのシリコン含有層を含み、隣接層間の屈折率値の差が0.5より大きいシリコン含有被膜と、を含む。
【0011】
以下に、本開示の他の実施形態およびさらなる実施形態について説明する。
【0012】
以上で簡単に要約し、以下でより詳細に議論する本開示の実施形態は、添付の図面に示す本開示の例示的な実施形態を参照することによって理解することができるであろう。しかしながら、添付の図面は、本開示の代表的な実施形態を例示するものに過ぎず、したがって、本開示の範囲を限定するものと見なされるべきものではないことに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1A】本開示のいくつかの実施形態に係る例示的なガラス基板を示す図
図1B】本開示のいくつかの実施形態に係る例示的なガラス基板を示す図
図2】本開示のいくつかの実施形態に係るパッシベーション被膜を有する例示的なガラス基板を示す図
図3A】本開示のいくつかの実施形態に係る例示的なガラスウェハを示す図
図3B】本開示のいくつかの実施形態に係る例示的なガラスウェハを示す図
図4】本開示のいくつかの実施形態に係る例示的なガラスウェハを、本開示のいくつかの実施形態に係る例示的な半導体製造システム内に配置した様子を示す図
図5A】本開示のいくつかの実施形態に係る例示的なガラスウェハの透過率対波長グラフを示す図
図5B】本開示のいくつかの実施形態に係る例示的なガラスウェハの透過率対波長グラフを示す図
図6A】本開示のいくつかの実施形態に係る例示的なガラスウェハの反射率対波長グラフを示す図
図6B】本開示のいくつかの実施形態に係る例示的なガラスウェハの反射率対波長グラフを示す図
図6C】本開示のいくつかの実施形態に係る例示的なガラスウェハの反射率対波長グラフを示す図
図6D】本開示のいくつかの実施形態に係る例示的なガラスウェハの反射率対波長グラフを示す図
図7A】各層の厚さのばらつきを10%とした場合の、表1に示す例示的な被膜の透過率対波長グラフを示す図
図7B】各層の厚さのばらつきを10%、屈折率のばらつきを5%とした場合の、表1に示す例示的な被膜の透過率対波長グラフを示す図
図8A】各層の厚さのばらつきを10%とした場合の、表2に示す例示的な被膜の透過率対波長グラフを示す図
図8B】各層の厚さのばらつきを10%、屈折率のばらつきを5%とした場合の、表2に示す例示的な被膜の透過率対波長グラフを示す図
図9A】石英ガラス基板上に厚さ300nmのa-Ge層を形成した場合の透過率を示す図
図9B】石英ガラス基板上に、厚さ300nmのa-Ge層と厚さ50nmのドープナノ結晶Si層を重ねて形成した場合の透過率を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
なお、説明をわかりやすくするため、各図面に共通する同一の要素は、可能な限り同一の参照番号を用いて示す。また、図面は、縮尺通りに描かれたものではなく、分かりやすくするために簡略化している場合がある。また、特に記載がない場合でも、ある実施形態の要素や特徴を他の実施形態に適宜組み込むことが可能であると企図されている。
【0015】
以下の詳細な説明では、本開示の種々の原理を完全に理解してもらうために特定の詳細を開示する例示的な実施形態を示す。なお、これら実施形態は、説明を目的としたものであり、限定を目的とするものではない。しかしながら、本明細書に開示される特定の詳細から逸脱した他の実施形態でも本開示を実施し得ることは、当業者であれば明らかであろう。さらに、本開示の種々の原理の説明を不明瞭とすることがないよう、周知の装置、方法、および材料については、説明を省略する場合がある。また、同様の要素については、可能な限り同様の参照番号で示す。
【0016】
特に明記しない限り、本明細書に記載のいかなる方法も、各ステップ(工程)を特定の順序で実施することを要請していると解釈されることを意図するものではない。したがって、方法クレームにおいてそのステップの順序を実際に記載している場合を除き、または、各ステップが特定の順序に限定される旨の記載が請求の範囲または発明の詳細な説明において他に明確になされている場合を除き、各ステップの順序が推測されることは、いかなる点においても意図していない。これは、各ステップの並びまたは操作の流れについての論法の問題、文法的な構成または句読点から導き出される通俗的な意味、本明細書に記載の実施形態の数または種類など、解釈の根拠となり得るあらゆる非明示的事項に対して該当する。
【0017】
本明細書において、「および/または」という用語を2つ以上の項目の列記において使用する場合、列記された項目のうちいずれか1つを単独で使用してもよく、または列記された項目のうち2つ以上を任意の組み合わせで使用してもよいことを意味している。例えば、組成物が成分A、Bおよび/またはCを含有すると記載している場合、この組成物は、A単独、B単独、C単独、AとBとの組み合わせ、AとCとの組み合わせ、BとCとの組み合わせ、またはAとBとCとの組み合わせを含有することができる。
【0018】
半導体デバイスは、薄膜形成、酸化処理または窒化処理、エッチング、研磨、熱処理、およびリソグラフィ処理などの一連の製造工程を経て製造される。複数の製造工程を1つの加工装置で行うことが可能であるものの、少なくとも一部の製造工程では、異なる加工ツール間でウェハを搬送する必要がある。
【0019】
各半導体製造工程は、自動化された機械を利用して実施される。ウェハはキャリアに格納された状態で加工ツール間や他の位置の間を搬送される。加工ツールが所要の製造工程を完了することを可能にするためには、キャリアおよびウェハを当該加工ツールに搬送する前に、キャリアおよびウェハの位置合わせを適切に行う必要がある。
【0020】
向きを正しく合わせる一般的な方法においては、典型的には可視光源である光源と、光線を生成・検出するための検出器とを有する光センサが用いられる。そして、縁に切り欠きを有するシリコンウェハを、回転支持面上に配置する。シリコンウェハの表面は不透明であるため、光源と検出器との間を光線が通過することが阻止される。しかし、切り欠きが光線の位置に来るようにシリコンウェハを回転させると、検出器が光線を感知して、支持面の回転を停止させる。こうしてシリコンウェハを保持した状態で停止した支持面は、例えば、回路形成のための加工をウェハに行うためにリソグラフィ装置に、ウェハを搬送するのに適した位置となる。
【0021】
一方、ガラスウェハは透明であるため、光源からの光線は切り欠きだけでなくガラスウェハ自体も通過してしまう。つまり、センサはガラスウェハと切り欠きを区別することができない。したがって、ガラスウェハの回転が止まらず、製造ツールへの搬送が行われないという事態が生じてしまう。
【0022】
本開示は、ガラスウェハではセンサが機能しないことに関連する問題を解決する半導体デバイス製造用のガラスウェハを説明するものである。本明細書において、「ウェハ(wafer)」という用語は、その上に電子デバイスを形成するのに適した支持面を指す。また、ガラスは、ガラスが持つ固有の特性のために特定の用途では最適なものである。例えば、無線周波数(RF)成分に関して、一般に、ガラスはシリコンと比べてRF損失や非線形性が小さい。このため、次世代ネットワークや携帯電話におけるRFスイッチやアンテナチューナなどの製品では、ガラスによるメリットが得られると見込まれる。本明細書に記載のガラスウェハの実施形態は、種々の被膜をウェハ上に形成したガラスウェハである。なお、便宜上、「被膜(coating)」という用語は、表面上に配置される膜、被膜、または層を包含することを意図している。
【0023】
ガラスウェハ上に配置される被膜は、不連続成膜処理または連続成膜処理を含む、当技術分野において公知の任意の方法によって形成される。いくつかの実施形態では、当技術分野で一般的に使用されるプラズマ化学気相成長法(PECVD)で被膜を成膜する。いくつかの実施形態では、当技術分野で一般的に使用される物理的気相成長法(PVD)で被膜を成膜する。本明細書において(例えば、ガラスウェハ100に関連して用いる場合)、「配置する(dispose)」という用語は、当技術分野において公知の任意の方法を用いて、表面上に材料を被膜、成膜、および/または形成することを包含する。そして、本明細書に定義する被膜は、このように配置された材料によって構成され得る。また、「上に配置される(disposed on)」という表現は、材料が表面と直接接触するように当該材料を表面上に形成する例と、配置される材料と表面との間に1つ以上の介在材料がある状態で、当該材料を表面上に形成する例とを包含する。この介在材料も、本明細書に定義する被膜を構成することができる。
【0024】
本明細書に記載のガラスウェハの実施形態は、上面102、上面102と反対にある下面104、および上面102と下面104との間の縁端面106を備えるガラス基板118と、第1の被膜と、第2の被膜とを備える。図1Aは、上面102と、上面102と反対にある下面104と、上面102と下面104との間の縁端面106と、を備えるガラス基板118を示す図である。上面102は、本明細書に記載される種々の被膜がその上に配置されるガラス基板118の表面である。いくつかの実施形態では、ガラス基板118は、既存の半導体製造設備で使用するのに適した任意のサイズであってよい。例えば、いくつかの実施形態では、ガラス基板118は、300mmの直径を有していてもよい。いくつかの実施形態では、ガラス基板118は、200mmの直径を有してもよい。いくつかの実施形態では、ガラス基板118は、300mmの直径を有し、0.3mm~1mm、好ましくは0.5mm~0.8mm、より好ましくは0.75mm~0.8mmの厚さを有する。いくつかの実施形態では、ガラス基板118は、300mmの直径と、0.775mmの厚さを有する。いくつかの実施形態では、ガラス基板118は、200mmの直径と0.725mmの厚さを有する。
【0025】
いくつかの実施形態では、ガラス基板118は、高純度石英ガラス(HPFS(登録商標))、または無アルカリケイ酸塩ガラス、またはホウケイ酸塩ガラス、またはアルカリアルミノケイ酸塩ガラス、またはアルカリアルミノホウケイ酸塩ガラス、またはアルカリ土類アルミノホウケイ酸塩ガラス等であってよい。高純度石英ガラス(コーニング社(Corning Incorporated)製「HPFS」などの高純度石英ガラス7980等)は、その製法上、純度が極めて高く、基板工程(FEOL)環境にも100%対応することができる。基板工程(FEOL)とは、集積回路製造の最初の部分であり、個々のデバイス(例えば、トランジスタ、コンデンサ、抵抗など)を半導体にパターニングする工程を指す。したがって、基板工程(FEOL)は、汚染物質(すなわち、通常、集積回路製造に存在しない物質)の混入による影響を受けやすい。さらに、基板工程の多くでは、非Si系金属は許されていない。したがって、後述の被膜は、アモルファスシリコン、ポリシリコン、窒化ケイ素、二酸化ケイ素、または酸窒化ケイ素などのケイ素含有材料である。いくつかの実施形態では、後述の被膜は、アモルファスゲルマニウム(a-Ge)であってもよい。後述するように、干渉多層被膜は広帯域で低透過率を実現できるが、光センサによっては極めて低い透過率を必要とするものがあり、そのような透過率は反射フィルタまたは吸収フィルタでなければ実現できない。また、金属の多くは、優れた反射材料ではあるものの、基板工程との相性が悪いため、一般的な半導体製造では採用されていない。一方、ゲルマニウムは、半導体製造プロセスに適した材料として広く受け入れられている。アモルファスゲルマニウムは、可視光領域での低透過率と1000nmまでの近赤外線(NIR)領域全域での40%を下回る透過率を有する被膜を実現できる吸収・透過特性を有する例示的な材料である。図9Aは、775μmの石英ガラス基板上に厚さ300nmのa-Ge層を形成した場合の透過率を示している。図9Bは、775μmの石英ガラス基板上に、厚さ300nmのa-Ge層と厚さ50nmのドープナノ結晶Si層を重ねて形成した場合の透過率を示している。被膜を重ねた後者の構成は、Siウェハを扱う一般的な半導体製造工場で要求される光学性能と電気性能の両方を実現するものである。厚さ300nmのa-Ge層が、LED光源で使用される一般的なセンサ波長である650nmの波長で0.01%を下回る透過率を実現する。
【0026】
いくつかの実施形態では、ガラス基板118は、フュージョン成形されたガラスである。フュージョンドロープロセスによって、高解像度TFTバックプレーンおよびカラーフィルタに使用した場合に表面介在性の歪みを低く抑えられる清浄な火仕上げされたガラス表面が得られ得る。ダウンドロー・シート延伸プロセスおよび、特に、(いずれもドカーティ(Dockerty)の)米国特許第3338696号明細書および同第3682609号明細書に記載のフュージョンプロセスを本開示に用いることができる。上記2つの特許明細書は参照することによって本明細書の一部をなすものとする。特定の動作理論に束縛されるものではないが、フュージョンプロセスにより、研磨不要のガラス基板を製造できると考えられる。フュージョンプロセスで製造されたガラス基板は、原子間力顕微鏡で測定した平均表面粗さが0.2nm(Ra)未満である。このように粗さが小さいため、平坦な面への接着が必要とされる精密な用途に適している。
【0027】
いくつかの実施形態では、図2に示すように、ガラス基板118はパッシベーション被膜112を有していてもよい。ガラス基板118が純粋なSiO(すなわち100質量%のSiO)ではない場合、パッシベーション被膜112によって、非シリコンガラス成分が外に出て半導体製造設備を汚染してしまうことが防がれる。いくつかの実施形態では、パッシベーション被膜112は、ガラス基板118の上面102、下面104、および縁端面106上に配置される。いくつかの実施形態では、パッシベーション被膜112は、SiN、SiO、またはSiONのうちのいずれか1つから成る。パッシベーション被膜112の厚さは、パッシベーション被膜の密度および気孔率に基づいて、並びに半導体製造プロセス中の被膜の温度および温度曝露時間に基づいて、調整することができる。いくつかの実施形態では、パッシベーション被膜112は、100オングストローム~10,000オングストローム、好ましくは500オングストローム~1,000オングストロームの厚さを有する。
【0028】
図3Aおよび図3Bは、パッシベーション層112(ただし、任意選択的)と、第1の被膜108と、第2の被膜110とが設けられたガラス基板118を有するガラスウェハ100を示す。
【0029】
第1の被膜108は、シリコン結晶サイズがナノメートルからマイクロメートルの範囲(ナノ結晶からマイクロ結晶の範囲)にあるドープ結晶シリコン被膜である。使用可能なドーパントの例としては、リン、ホウ素、またはヒ素が挙げられる。半導体製造設備に搭載されている一般的な静電チャックは、シリコンウェハをチャックするように設計されているため、ガラスウェハをチャックするためには動作電圧を大幅に高くする必要がある。よって、ガラス基板118の一面上に配置された第1の被膜108により、ガラス基板を一般的な静電チャックに(すなわち、シリコンウェハをチャックするのに適した動作電圧で)チャックするのに十分な導電性が得られる。ガラスウェハ100を静電チャックにチャック可能とするため、ドープ結晶シリコン被膜は、100オーム/スクエア~1,000,000オーム/スクエア、好ましくは100オーム/スクエア~250,000オーム/スクエア、より好ましくは100オーム/スクエア~50,000オーム/スクエアのシート抵抗を有している。本明細書において、「シート抵抗」という用語は、層の厚さに対する該層の等方的な抵抗率を示す。シート抵抗の測定は4探針法で行うことができる。4探針法は、あらゆる半導体材料の抵抗率の測定に一般的に用いられる試験方法である。4探針プローブは、4本の有限半径のタングステン金属の針を等間隔に並べた構成を有する。各針の反対側の端部はばねで支持されており、これにより測定時のサンプルへのダメージが最小限に抑えられる。これら4本の金属針は、測定中に上下移動する自動機械式ステージの一部として組み込まれている。そして、高インピーダンス電流源で外側の2本のプローブ針に電流を流し、電圧計で内側の2本のプローブ針間の電圧を測定して、サンプルの抵抗率を求める。一般的なプローブ針の間隔は約1mmである。
【0030】
いくつかの実施形態では、ドープ結晶シリコン被膜108は、少なくとも100オングストローム、好ましくは、少なくとも500オングストロームの厚さを有する。いくつかの実施形態では、ドープ結晶シリコン被膜108は、500オングストロームの厚さと2000オーム/スクエアのシート抵抗とを有するリンドープナノ結晶シリコンである。
【0031】
いくつかの実施形態では、第2の被膜110は、1以上の層で構成されるシリコン含有被膜である。いくつかの実施形態では、第2の被膜110は、非ドープアモルファスシリコン層を含む。いくつかの実施形態では、第2の被膜110は、非ドープアモルファスゲルマニウム層を含む。いくつかの実施形態では、第2の被膜110は、窒化ケイ素層と、非ドープアモルファスシリコン層と、二酸化ケイ素層とを含み、窒化ケイ素層は、非ドープアモルファスシリコン層の上に配置され、非ドープアモルファスシリコン層は、二酸化ケイ素層の上に配置され、二酸化ケイ素層は、ドープ結晶シリコン被膜の上に配置される。なお、これらの被膜およびその順序は例示的なものであり、当業者であれば、これに変更を加えて後述の透過率(T)範囲を有するガラス基板を実現することができる。
【0032】
いくつかの実施形態では、第2の被膜110と第1の被膜108との合計厚さは、5マイクロメートル未満である。いくつかの実施形態では、第2の被膜110と第1の被膜108との合計厚さは、4マイクロメートル未満である。いくつかの実施形態では、第2の被膜110と第1の被膜108との合計厚さは、3マイクロメートル未満である。いくつかの実施形態では、第2の被膜110と第1の被膜108との合計厚さは、2マイクロメートル未満である。いくつかの実施形態では、第2の被膜110と第1の被膜108との合計厚さは、1マイクロメートル未満である。いくつかの実施形態では、第2の被膜110と第1の被膜108との合計厚さは、0.1マイクロメートルより大きく5マイクロメートル未満である。いくつかの実施形態では、第2の被膜110と第1の被膜108との合計厚さは、0.1マイクロメートルより大きく1マイクロメートル未満である。
【0033】
いくつかの実施形態では、ドープ結晶シリコン被膜108は、ガラス基板118の上面102上に配置される。いくつかの実施形態では、図3Aおよび図3Bに示すように、ドープ結晶シリコンは、ガラス基板118の上面102全体の上に配置される。いくつかの実施形態では、ドープ結晶シリコン被膜108は、ガラス基板118の上面102上に直接配置される(すなわち、ガラス基板118とドープ結晶シリコン被膜108との間に介在する被膜がない)。いくつかの実施形態では、図3Aに示すように、ドープ結晶シリコン被膜108は、パッシベーション被膜112上に直接配置される。いくつかの実施形態では、図3Bに示すように、ドープ結晶シリコン被膜108は、(後述するように)第2の被膜と共に多積層体を形成し、その多積層体の一部を成してもよい。この場合、第2の被膜は少なくとも2層から成り、第2の被膜のこれら少なくとも2層110a,110bの間に第1の被膜108が配置されている。
【0034】
いくつかの実施形態では、図3Aに示すように、第2の被膜110は、ドープ結晶シリコン被膜108上に直接配置される。いくつかの実施形態では、第2の被膜110は、ガラス基板118上に直接配置される(すなわち、パッシベーション層および第1の被膜がない)。いくつかの実施形態では、第2の被膜110は、パッシベーション層112上に直接配置される(すなわち、第1の被膜がない)。いくつかの実施形態では、第2の被膜110は、直下の層の上面全体(例えば、ガラス基板118の表面全体)を被覆する。いくつかの実施形態では、第2の被膜110は、直下にある表面のうち、縁端部から中心に向かって半径方向距離2mmまでの部分を被覆する。
【0035】
下記の表1に、本開示のいくつかの実施形態に係るガラスウェハの一例を示す。この例では、ガラス基板118は高純度石英ガラスから成り、この高純度石英ガラス基板の上に配置されるリンドープナノ結晶シリコン層と、リンドープナノ結晶シリコン層の上に配置される二酸化ケイ素(SiO)層と、二酸化ケイ素層の上に配置されるアモルファスシリコン層と、アモルファスシリコン層の上に配置される窒化ケイ素層とが設けられている。表1はさらに、ガラス基板の上に配置される各シリコン含有被膜層の屈折率も示す。表1に示す被膜は、4つのシリコン含有層を有し、隣接層間の屈折率値の差は0.5より大きい。いくつかの実施形態では、隣接層間の屈折率値の差は1より大きい。いくつかの実施形態では、隣接層間の屈折率値の差は2より大きい。表1に示す実施形態では、最外層(すなわち、基板から最も遠い層)は窒化ケイ素層である。いくつかの実施形態では、最外層は、二酸化ケイ素層または酸窒化ケイ素層であってもよい。いくつかの実施形態では、窒化ケイ素層または酸窒化ケイ素層を最外層とすることにより、ガラスウェハの耐機械摩耗性が得られる。
【0036】
【表1】
【0037】
図7Aに示す透過率対波長グラフでは、表1の各被膜層の厚さを、平均値を設計層厚、分散を設計層厚の10%とするガウス分布に従う乱数によってランダムに変化(例えば、増減)させた。そして、このようにランダムに変化させた被膜の透過率を、400nm~1000nmの波長域で算出した。この処理を100回行い、図7Aに示す曲線を生成した。図7Aに示すように、10%のばらつきで膜厚をランダムに変化させた場合の表1の被膜の透過率は、400nm~1000nmの波長域で40%未満であった。
【0038】
図7Bに示す透過率対波長グラフでは、表1の各被膜層の厚さを、平均値を設計層厚、分散を設計層厚の10%とするガウス分布に従う乱数によってランダムに変化(例えば、増減)させ、さらに各層の屈折率を、平均値を層屈折率、分散を層屈折率の5%とするガウス分布に従う乱数によってランダムに変化(例えば、増減)させた。そして、このようにランダムに変化させた被膜の透過率を、400nm~1000nmの波長域で算出した。この処理を100回行い、図7Bに示す曲線を生成した。図7Bに示すように、10%のばらつきで膜厚をランダムに変化させ、5%のばらつきで屈折率をランダムに変化させた場合の表1の被膜の透過率は、400nm~1000nmの波長域で50%未満であった。
【0039】
下記の表2に、本開示のいくつかの実施形態に係るガラスウェハの一例を示す。この例では、ガラス基板118は、高純度石英ガラスから成り、この高純度石英ガラス基板の上に配置されるナノ結晶シリコン層と、ナノ結晶シリコン層の上に配置される二酸化ケイ素(SiO)層と、二酸化ケイ素層の上に配置されるアモルファスシリコン層と、アモルファスシリコン層の上に配置される二酸化ケイ素層とが設けられている。表2にはさらに、ガラス基板の上に配置される各シリコン含有被膜層の屈折率も示す。
【0040】
【表2】
【0041】
図8Aに示す透過率対波長グラフでは、表2の各被膜層の厚さを、平均値を設計層厚、分散を設計層厚の10%とするガウス分布に従う乱数によってランダムに変化(例えば、増減)させた。そして、このようにランダムに変化させた被膜の透過率を、400nm~1000nmの波長域で算出した。この処理を100回行い、図8Aに示す曲線を生成した。図8Aに示すように、10%のばらつきで膜厚をランダムに変化させた場合の表2の被膜の透過率は、400nm~1000nmの波長域で40%未満であった。
【0042】
図8Bに示す透過率対波長グラフでは、表2の各被膜層の厚さを、平均値を設計層厚、分散を設計層厚の10%とするガウス分布に従う乱数によってランダムに変化(例えば、増減)させ、さらに各層の屈折率を、平均値を層屈折率、分散を層屈折率の5%とするガウス分布に従う乱数によってランダムに変化(例えば、増減)させた。そして、このようにランダムに変化させた被膜の透過率を、400nm~1000nmの波長域で算出した。この処理を100回行い、図8Bに示す曲線を生成した。図8Bに示すように、10%のばらつきで膜厚をランダムに変化させ、5%のばらつきで屈折率をランダムに変化させた場合の表2の被膜の透過率は、400nm~1000nmの波長域で60%未満であった。
【0043】
ガラスウェハ100の400nm~1000nmの波長域全域での透過率(T)平均値は、50%未満、好ましくは40%未満、より好ましくは30%未満である。本明細書において、「透過率平均値」とは、指定波長域内の各波長における透過率値の合計を、当該指定波長域における波長の数で除したものをいう。いくつかの実施形態では、ガラスウェハ100の400nm~2500nmの波長域全域での透過率(T)平均値は、50%未満、好ましくは40%未満、より好ましくは30%未満である。いくつかの実施形態では、指定波長域内(例えば、400nm~1000nmまたは400nm~2500nm)の各波長におけるガラスウェハ100の透過率値は、50%未満、好ましくは40%未満、およびより好ましくは30%未満である。本明細書において、「透過率」という用語は、所定の波長域内の波長の入射光がガラスウェハ100を通過する光パワーの割合として定義される。一般に、透過率は特定の線幅で測定される。
【0044】
図4は、本開示のいくつかの実施形態に係る例示的なウェハを、本開示のいくつかの実施形態に係る例示的な半導体製造システム内に配置した様子を示す図である。形成プロセスの各工程においてガラスウェハの位置または向きを適切なものとするために、ガラスウェハは縁の一部に切り欠きを有してよい。この切り欠きは、基板位置合わせチャンバ408内でウェハの向きを正しく合わせるために用いられる。図1Bに、縁に切り欠き114を有するガラスウェハ100を示す。なお、切り欠きについては、半導体ウェハに関するSEMI(商標)規格に定められている。
【0045】
いくつかの実施形態では、電子デバイスの製造方法は、上述の実施形態に記載のガラスウェハ400を、基板位置合わせチャンバ408内の基板支持体(図示せず)上に、載置することを含む。基板位置合わせチャンバ408は、光源404と、光源404からの光線を検出するように構成された光センサ406と、を備える。ガラスウェハ400は、上面と、上面と反対にある下面と、上面と下面との間の縁端面と、上述の実施形態に記載の第1の被膜と、上述の実施形態に記載の第2の被膜と、を備える。いくつかの実施形態では、ガラスウェハ400は、パッシベーション層をさらに備えていてもよい。基板支持体は、ガラスウェハ400を、基板位置合わせチャンバ内の所定位置まで回転させる。ガラスウェハ400が所定位置に到達すると、光センサが光源からの光線を検出する。図4に示す基板位置合わせチャンバ408内でガラスウェハ400が回転する間、ガラスウェハ400上に配置される第2の被膜110のために、光センサ406は光源404からの光を読み取ることができない。しかし、切り欠き402が光線に到達すると、光センサ406が光線を読み取り、その結果、ガラスウェハ400は、さらなる加工を行うため製造ツール410に搬送するのに適した位置にある。
【0046】
いくつかの実施形態では、半導体製造加工の間に、ガラスウェハが加熱を伴う処理を受け、その後室温まで冷却される場合がある。本明細書に記載のガラスウェハの実施形態は、350℃の熱処理を2時間行い、その後毎分10℃の冷却速度で室温(例えば25℃)まで冷却した後においても、波長域内の平均透過率と各波長における透過率を共に、50%未満、好ましくは30%未満に維持するものである。
【0047】
図5Aおよび図5Bは、ガラスウェハ100の上面102上にドープナノ結晶シリコン被膜を直接配置し、さらに、窒化ケイ素層と、非ドープアモルファスシリコン層と、二酸化ケイ素層とを有する例示的なガラスウェハの透過率対波長グラフである。なお、窒化ケイ素層は、非ドープアモルファスシリコン層の上に配置されている。非ドープアモルファスシリコン層は、二酸化ケイ素層の上に配置されている。二酸化ケイ素層は、ドープナノ結晶シリコン被膜の上に配置されている。
【0048】
図5Aに示すグラフ500は、350℃の熱処理を2時間行い、毎分10℃の冷却速度で室温(例えば25℃)まで冷却した(「熱処理」)後の例示的なガラスウェハの透過率曲線504と、当該熱処理を行う前のガラスウェハの透過率曲線502とを示している。グラフ500では、ガラスウェハの非被膜面の縁沿いの2点から透過率データを収集している。図5Bに示すグラフ506は、350℃の熱処理を2時間行い、毎分10℃の冷却速度で室温(例えば25℃)まで冷却した後の例示的なガラスウェハの透過率曲線508と、当該熱処理を行う前のガラスウェハの透過率曲線510とを示している。グラフ506では、ガラスウェハの被膜面の縁沿いの2点から透過率データを収集している。グラフ500およびグラフ506によれば、例示的なガラスウェハは、上述の熱処理後においても、波長400nm~1100nmの波長域における平均透過率と各波長における透過率を、いずれも50%未満に維持していることがわかる。
【0049】
図6A図6Dは、図5Aおよび図5Bに関連させて上述した例示的なガラスウェハの反射率対波長グラフを示す。図6Aは、350℃の熱処理を2時間行い、毎分10℃の冷却速度で室温(例えば25℃)まで冷却した後のガラスウェハの反射率曲線602と、当該熱処理を行う前のガラスウェハの反射率曲線604とを示す反射率対波長グラフ600であり、反射率は、5度の入射角でガラスウェハの非被膜面から測定されたものである。
【0050】
図6Bは、350℃の熱処理を2時間行い、毎分10℃の冷却速度で室温(例えば25℃)まで冷却した後のガラスウェハの反射率曲線608と、当該熱処理を行う前のガラスウェハの反射率曲線610とを示す反射率対波長グラフ606であり、反射率は、45度の入射角でガラスウェハの非被膜面から測定されたものである。
【0051】
図6Cは、350℃の熱処理を2時間行い、毎分10℃の冷却速度で室温(例えば25℃)まで冷却した後のガラスウェハの反射率曲線614と、当該熱処理を行う前のガラスウェハの反射率曲線616とを示す反射率対波長グラフ612であり、反射率は、5度の入射角でガラスウェハの被膜面から測定されたものである。図6Cから、熱処理後のガラスウェハの400nm~1100nmの波長域における反射率は、熱処理前の反射率とほぼ同じ値であることがわかる。
【0052】
図6Dは、350℃の熱処理を2時間行い、毎分10℃の冷却速度で室温(例えば25℃)まで冷却した後のガラスウェハの反射率曲線620と、当該熱処理を行う前のガラスウェハの反射率曲線622とを示す反射率対波長グラフ618であり、反射率は、45度の入射角でガラスウェハの被膜面から測定されたものである。
【0053】
いくつかの実施形態において、半導体加工設備で使用されるウェハは、半導体加工設備がウェハの存在を感知できる最小の反射率値を有している。図6Dは、一般的なウェハ材料であるシリコンの400nm~1100nmの波長域における反射率値を示す。図6Dに示すように、上述の例示的な被膜を有するガラスウェハは、約510nm~1100nmの波長域においてシリコンに匹敵ないし上回る反射率平均値を有している。また、いくつかの実施形態では、約510nm~1100nmの波長域内の各波長における反射率値も、シリコンに匹敵ないし上回っている。本明細書において、「反射率平均値」とは、指定波長域(例えば510nm~1100nm)内の各波長における反射率の合計を、当該指定波長域における波長の数で除したものをいう。
【0054】
なお、上述の説明は、本開示の各実施形態に向けられたものであるが、本開示の基本的な範囲から逸脱しない範囲で、本開示の他の実施形態およびさらなる実施形態を考案することも可能である。
【0055】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0056】
実施形態1
上面(102)と、前記上面と反対にある下面(104)と、前記上面と前記下面との間の縁端面(106)と、を備えるガラス基板と、
前記ガラス基板の上に配置される、100~1,000,000オーム/スクエアのシート抵抗を有するドープ結晶シリコン被膜である第1の被膜(108)と、
前記ガラス基板の上に配置される1つ以上の層を有する第2の被膜(110)であって、シリコン含有被膜を含む第2の被膜と、
を含む半導体デバイス用のガラスウェハ(100)であって、
400nm~1000nmの波長域全域における平均透過率(T)が50%未満であるガラスウェハ。
【0057】
実施形態2
前記波長域の各波長における透過率が50%未満である、実施形態1記載のガラスウェハ。
【0058】
実施形態3
400nm~2500nmの波長域全域における平均透過率(T)が50%未満である、実施形態1記載のガラスウェハ。
【0059】
実施形態4
前記波長域の各波長における透過率が50%未満である、実施形態3記載のガラスウェハ。
【0060】
実施形態5
400nm~1000nmの波長域全域における透過率(T)が30%未満である、実施形態1記載のガラスウェハ。
【0061】
実施形態6
前記波長域の各波長における透過率が30%未満である、実施形態5記載のガラスウェハ。
【0062】
実施形態7
400nm~2500nmの波長域全域における透過率(T)が30%未満である、実施形態1記載のガラスウェハ。
【0063】
実施形態8
前記波長域の各波長における透過率が30%未満である、実施形態7記載のガラスウェハ。
【0064】
実施形態9
前記第1の被膜が、前記ガラス基板の前記上面の上に直接配置され、
前記第2の被膜が、前記第1の被膜の上に直接配置される、
実施形態1記載のガラスウェハ。
【0065】
実施形態10
前記第2の被膜が少なくとも2つの層を含み、
前記第1の被膜が前記第2の被膜の前記少なくとも2つの層の間に配置される、
実施形態1記載のガラスウェハ。
【0066】
実施形態11
前記ドープ結晶シリコン被膜が、リンドープ結晶シリコン、ホウ素ドープ結晶シリコン、およびヒ素ドープ結晶シリコンのうちのいずれか1つから成る、実施形態1記載のガラスウェハ。
【0067】
実施形態12
前記ドープ結晶シリコン被膜と前記第2の被膜との合計厚さが1000マイクロメートル(10000オングストローム)未満である、実施形態1記載のガラスウェハ。
【0068】
実施形態13
前記ドープ結晶シリコン被膜が、少なくとも100オングストロームの厚さを有する、実施形態12記載のガラスウェハ。
【0069】
実施形態14
前記第2の被膜が、非ドープアモルファスシリコン層を含む、実施形態1記載のガラスウェハ。
【0070】
実施形態15
前記第2の被膜が、窒化ケイ素層、非ドープアモルファスシリコン層、および二酸化ケイ素層を含み、
前記窒化ケイ素層が、前記非ドープアモルファスシリコン層の上に配置され、
前記非ドープアモルファスシリコン層が、前記二酸化ケイ素層の上に配置され、
前記二酸化ケイ素層が、前記ドープ結晶シリコン被膜の上に配置される、
実施形態1記載のガラスウェハ。
【0071】
実施形態16
前記ガラス基板の前記上面、前記下面、および前記縁端面の上にパッシベーション被膜(112)をさらに含む、実施形態1記載のガラスウェハ。
【0072】
実施形態17
前記パッシベーション被膜が、SiN、SiO、SiONのうちいずれか1つから成る、実施形態16記載のガラスウェハ。
【0073】
実施形態18
前記パッシベーション被膜が、100~10,000オングストロームの厚さを有する、実施形態17記載のガラスウェハ。
【0074】
実施形態19
上面(102)と、前記上面と反対にある下面(104)と、前記上面と前記下面との間の縁端面(106)と、を備えるガラス基板と、
前記ガラス基板の上に配置される1つ以上の層を有する被膜(110)であって、シリコン含有被膜を含む被膜と、
を含む半導体デバイス用のガラスウェハ(100)であって、
400nm~1000nmの波長域全域における平均透過率(T)が50%未満であるガラスウェハ。
【0075】
実施形態20
前記被膜が、前記ガラス基板の前記上面全体を被覆する、実施形態19記載のガラスウェハ。
【0076】
実施形態21
前記被膜が、前記ガラス基板の前記上面のうち、前記縁端面から該上面の中心に向かって半径方向距離2mmまでの部分を被覆する、実施形態19記載のガラスウェハ。
【0077】
実施形態22
前記波長域の各波長における透過率が50%未満である、実施形態19記載のガラスウェハ。
【0078】
実施形態23
400nm~2500nmの波長域全域における前記ガラス基板の平均透過率(T)が50%未満である、実施形態19記載のガラスウェハ。
【0079】
実施形態24
前記波長域の各波長における透過率が50%未満である、実施形態23記載のガラスウェハ。
【0080】
実施形態25
400nm~2500nmの波長域全域における平均透過率(T)が30%未満である、実施形態19記載のガラスウェハ。
【0081】
実施形態26
前記波長域の各波長における透過率が30%未満である、実施形態25記載のガラスウェハ。
【0082】
実施形態27
400nm~1000nmの波長域全域における平均透過率(T)が30%未満である、実施形態19記載のガラスウェハ。
【0083】
実施形態28
前記波長域の各波長における透過率が30%未満である、実施形態27記載のガラスウェハ。
【0084】
実施形態29
前記被膜の厚さが1マイクロメートル未満である、実施形態19記載のガラスウェハ。
【0085】
実施形態30
前記被膜が、非ドープアモルファスシリコン層を含む、実施形態19記載のガラスウェハ。
【0086】
実施形態31
前記被膜が、窒化ケイ素層、非ドープアモルファスシリコン層、および二酸化ケイ素層を含み、
前記窒化ケイ素層が、前記非ドープアモルファスシリコン層の上に配置され、
前記非ドープアモルファスシリコン層が、前記二酸化ケイ素層の上に配置される、
実施形態19記載のガラスウェハ。
【0087】
実施形態32
前記ガラス基板の前記上面、前記下面、および前記縁端面の上にパッシベーション被膜(112)をさらに含む、実施形態19記載のガラスウェハ。
【0088】
実施形態33
前記パッシベーション被膜が、SiN、SiO、SiONのうちいずれか1つから成る、実施形態32記載のガラスウェハ。
【0089】
実施形態34
前記パッシベーション被膜が、100~10,000オングストロームの厚さを有する、実施形態32記載のガラスウェハ。
【0090】
実施形態35
電子デバイスを製造する方法において、
光源と、前記光源からの光線を検出するように構成された光センサと、を備える基板位置合わせチャンバ内の基板支持体にガラスウェハを載置するステップであって、前記ガラスウェハが、
上面(102)と、前記上面と反対にある下面(104)と、前記上面と前記下面との間の縁端面(106)と、を備えるガラス基板と、
前記ガラス基板の上に配置される、100~1,000,000オーム/スクエアのシート抵抗を有するドープ結晶シリコン被膜である第1の被膜(108)と、
前記ガラス基板の上に配置される1つ以上の層を有する第2の被膜(110)であって、シリコン含有被膜を含む第2の被膜と、を含み、
400nm~1000nmの波長域全域における平均透過率(T)が50%未満であるガラスウェハである、載置するステップと、
前記基板支持体を回転させて、前記ガラスウェハを前記基板位置合わせチャンバ内の所定位置に配置するステップであって、前記所定位置が、前記ガラスウェハが到達すると前記光センサが前記光源からの前記光線を検出する位置である、配置するステップと、
さらなる加工を行うため、前記ガラスウェハを半導体加工チャンバに搬送するステップと、
を含む方法。
【0091】
実施形態36
上面(102)と、前記上面と反対にある下面(104)と、前記上面と前記下面との間の縁端面(106)と、を備えるガラス基板と、
前記ガラス基板の上に配置され、少なくとも2つのシリコン含有層を含み、隣接層間の屈折率値の差が0.5より大きいシリコン含有被膜と、
を含む半導体デバイス用のガラスウェハ。
【0092】
実施形態37
前記被膜が、窒化ケイ素層と、非ドープアモルファスシリコン層と、および二酸化ケイ素層と、リンドープ結晶シリコン層とを含み、
前記窒化ケイ素層が、前記非ドープアモルファスシリコン層の上に配置され、
前記非ドープアモルファスシリコン層が、前記二酸化ケイ素層の上に配置され、
前記二酸化ケイ素層が、前記リンドープ結晶シリコン層の上に配置される、
実施形態36記載のガラスウェハ。
【符号の説明】
【0093】
100、400 ガラスウェハ
102 上面
104 下面
106 縁端面
108 第1の被膜
110 第2の被膜
110a、110b 被膜の層
112 パッシベーション被膜、パッシベーション層
114、402 切り欠き
118 ガラス基板
404 光源
406 光センサ
408 基板位置合わせチャンバ
410 製造ツール
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図6D
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
【国際調査報告】