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特表2023-503589固定床細胞培養・収穫システムおよびそれを使用する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-31
(54)【発明の名称】固定床細胞培養・収穫システムおよびそれを使用する方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 3/00 20060101AFI20230124BHJP
   C12N 5/07 20100101ALI20230124BHJP
【FI】
C12M3/00 A
C12N5/07
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022529853
(86)(22)【出願日】2020-11-04
(85)【翻訳文提出日】2022-07-25
(86)【国際出願番号】 US2020058763
(87)【国際公開番号】W WO2021108093
(87)【国際公開日】2021-06-03
(31)【優先権主張番号】62/941,010
(32)【優先日】2019-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】ゴラール,ヴァシリー ニコラエヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】クレブス,キャスリーン アン
(72)【発明者】
【氏名】レイシー,ウィリアム ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】マローニー,マッケンジー アンナ
(72)【発明者】
【氏名】ウェザリル,トッド マーシャル
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA02
4B029BB11
4B029CC02
4B029CC08
4B029DA06
4B029DF05
4B029DF06
4B029DG06
4B029DG08
4B065AA90X
4B065AA95X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA01
4B065BC02
4B065BC13
4B065BC14
4B065BC23
(57)【要約】
細胞培養空間内に細胞培養基質を収容する内部空洞と、その内部空洞への流体入口およびその内部空洞からの流体出口の少なくとも一方のための少なくとも1つのポートとを有する細胞培養容器を備えた細胞培養システムが提供される。このシステムは、細胞培養空間の上方の細胞培養容器内に配置された遠位端を有するピストンをさらに備え、そのピストンの遠位端は、内部空洞内の気密シールによって密封されている。このシステムは、遠位端と細胞培養空間との間の距離を増減させるようにピストンを動かす、このピストンに結合された駆動装置も備える。この駆動装置は、少なくとも1つのポートを通じて細胞培養空間から細胞を収穫するために、ピストンの作動により内部空洞を加圧することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞培養システムにおいて、
細胞培養容器であって、
細胞培養空間内に細胞培養基質を収容するように作られた内部空洞と、
前記内部空洞への流体入口および該内部空洞からの流体出口の少なくとも一方のために作られた少なくとも1つのポートと、
を有する細胞培養容器、
前記細胞培養空間の上方の前記細胞培養容器内に配置された遠位端を有するピストンであって、該ピストンの遠位端は、前記内部空洞内の気密シールによって密封されている、ピストン、および
前記ピストンに結合され、前記遠位端と前記細胞培養空間との間の距離を増減させるように該ピストンを動かすように作られた駆動装置、
を備え、
前記駆動装置は、前記少なくとも1つのポートを通じて前記細胞培養空間から細胞を収穫するために、前記ピストンの作動により前記内部空洞を加圧するように作られている、細胞培養システム。
【請求項2】
前記少なくとも1つのポートに流体接続され、前記細胞培養空間から収穫された前記細胞を捕捉するように作られた細胞収穫チャンバをさらに含む、請求項1記載の細胞培養システム。
【請求項3】
前記少なくとも1つのポートに流体接続され、解離溶液を収容するように作られた解離溶液チャンバをさらに含む、請求項1または2記載の細胞培養システム。
【請求項4】
前記解離溶液が、前記細胞培養空間内の細胞基質から細胞を放出するように作られている、請求項3記載の細胞培養システム。
【請求項5】
前記システムが、前記解離溶液を前記内部空洞内に引き込むために、前記ピストンの遠位端と前記細胞培養空間との間の距離を増加させるように作られている、請求項3または4記載の細胞培養システム。
【請求項6】
前記システムが、前記解離溶液を前記内部空洞から放出するために、前記ピストンの遠位端と前記細胞培養空間との間の距離を減少させるように作られている、請求項5記載の細胞培養システム。
【請求項7】
前記少なくとも1つのポートに流体接続され、洗浄溶液を収容するように作られた洗浄チャンバをさらに含む、請求項1から6いずれか1項記載の細胞培養システム。
【請求項8】
前記駆動装置、培地温度、培地流量、および前記内部空洞への培地、酸素、苛性アルカリ、および細胞栄養素の少なくとも1つの供給の少なくとも1つを制御するように作られた制御装置をさらに含む、請求項1から7いずれか1項記載の細胞培養システム。
【請求項9】
前記容器内の1つ以上の条件を測定するように作られた1つ以上のセンサをさらに含み、該1つ以上の条件が、pH、溶存酸素、温度、組成、被分析物濃度、およびスペクトル特性を含む、請求項8記載の細胞培養システム。
【請求項10】
充填床バイオリアクター内で細胞を培養する方法において、
入口、出口、および細胞培養基質を収容する内部空洞を有する細胞培養容器であって、該細胞培養基質が、その上で細胞を培養するように作られた表面を有し、該入口と該出口が該内部空洞に流体接続されている細胞培養容器を提供する工程、
前記細胞培養基質上に細胞を播種する工程、
前記内部空洞に細胞培養培地を提供して、前記細胞を培養する工程、および
前記内部空洞から、前記細胞、前記細胞培養培地、および1種類以上の細胞副産物の少なくとも1つを収穫する工程、
を有してなり、
前記収穫する工程が、前記内部空洞に加圧流体を充填して、該内部空洞から、前記細胞、前記細胞培養培地、および前記1種類以上の細胞副産物の前記少なくとも1つを押し出す工程を含む、方法。
【請求項11】
前記細胞培養培地が、前記入口を通じて前記内部空洞に提供され、前記細胞の培養中に、前記出口を通じて除去れる、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記加圧流体が、前記入口および前記出口の一方を通じて前記内部空洞に提供され、
前記細胞、前記細胞培養培地、および前記1種類以上の細胞副産物の前記少なくとも1つが、前記入口および前記出口の他方により前記内部空洞から除去される、請求項10または11記載の方法。
【請求項13】
前記収穫する工程の前に、少なくとも一部には、前記細胞培養基質の表面から前記細胞を分離するように作られた収穫溶液を前記内部空洞に供給する工程をさらに含む、請求項10から12いずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記収穫する工程が、前記内部空洞に前記加圧流体を充填して、該内部空洞から前記収穫溶液を押し出す工程をさらに含む、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記内部空洞に加圧流体を充填する工程が、ポンプ、ピストン、または前記細胞培養容器の動く壁を使用して、該内部空洞内の流体を加圧する工程の少なくとも1つを含む、請求項10から14いずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本出願は、その内容が依拠され、ここに全て引用される、2019年11月27日に出願された米国仮特許出願第62/941010号の米国法典第35編第120条の下での優先権の恩恵を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本開示は、広く、バイオプロセス分野に関し、より詳しくは、充填床バイオリアクターおよび細胞収穫を含む細胞培養を行うためにそのバイオリアクターを使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
バイオプロセス産業では、ホルモン、酵素、抗体、ワクチンの産生および細胞療法の開発を目的として、細胞の大規模な培養が行われている。バイオプロセスに使用される細胞のかなりの部分は、足場依存性であり、これは、細胞が、成長および機能するために付着する表面を必要とすることを意味する。従来、接着細胞の培養は、T-フラスコ、ペトリ皿、セルファクトリー、セルスタック容器、ローラーボトル、HYPERStack(登録商標)容器など、数多くの容器形式の内の1つに組み込まれた2次元(2D)細胞接着面上で行われている。これらのやり方には、治療法や細胞の大量生産が可能になるほど高い細胞密度を達成するのが困難であることなど、重大な欠点があり得る。
【0004】
培養細胞の体積密度を増加させるために、代替方法が提案されてきた。これらには、撹拌槽で行うマイクロキャリア培養が含まれる。この方法では、マイクロキャリアの表面に付着した細胞が一定のせん断応力を受け、その結果、増殖および培養性能が大きな影響を受ける。高密度細胞培養システムの別の例に、中空糸型バイオリアクターがあり、この場合、細胞は、繊維間隙で増殖しながら大きい三次元凝集塊を形成することがある。しかしながら、栄養素の不足により、細胞の増殖や性能が著しく阻害される。この問題を軽減するために、これらのバイオリアクターは小型化されており、大規模製造には適していない。
【0005】
足場依存性細胞のための高密度培養システムの別の例に、充填床バイオリアクターシステムがある。例えば、細胞を捕捉するための支持体またはマトリクスシステムの充填床を含む充填床バイオリアクターシステムが、以前、特許文献1から3に開示されていた。充填床マトリクスは、通常、基質としての多孔質粒子、または高分子の不織布マイクロファイバーで作られている。そのようなバイオリアクターは、再循環フロースルー型バイオリアクターとして機能する。そのようなバイオリアクターの重大な問題の1つは、充填床内部の細胞分布が不均一であることである。例えば、充填床は深層フィルターとして機能し、細胞は主に入口領域で捕捉され、その結果、接種工程中に細胞分布の勾配が生じる。さらに、繊維が無作為に実装されているため、充填床の断面の流れ抵抗や細胞捕捉効率は均一ではない。例えば、細胞の充填密度が低い領域では培地が速く流れ、捕捉された細胞の数が多いために抵抗が大きい領域では培地がゆっくり流れる。このため、体積細胞密度の低い領域では栄養素や酸素が効率よく供給され、細胞密度の高い領域では最適とはいえない培養状態に保たれるというチャネリング効果がもたらされる。従来技術に開示された充填床システムの別の重大な欠点に、培養過程の最後で、無傷の生存細胞を効率的に収穫できないことがある。特許文献4には、細胞採取工程中の充填床からの細胞回収効率を向上させるためのバイオリアクターの設計が開示されている。これは、充填床マトリクスを緩め、充填床粒子をかき混ぜまたは撹拌して、多孔質マトリクスを衝突させ、それによって細胞を分離させることに基づくものである。しかしながら、この方法は手間がかかり、細胞に大きな損傷を与える可能性があるため、全体的な細胞の生存率が低下してしまう。
【0006】
市場で入手できる他の現行の解決策では、標準的な酵素法を用いて灌流バイオリアクターから細胞を容易に採取することができない。その代わりに、洗剤による細胞溶解によるウイルス回収が使用され、これにより、ウイルスの下流精製に時間と複雑さが加わる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第4833083号明細書
【特許文献2】米国特許第5501971号明細書
【特許文献3】米国特許第5510262号明細書
【特許文献4】米国特許第9273278号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
初期段階の臨床試験のためのウイルスベクターの製造は既存のプラットフォームで可能であるが、後期段階の商業生産規模に達するために、高品質の製品をより多く製造できるプラットフォームが必要とされている。特に、充填床を通る細胞および栄養素の流体流、並びに細胞培養培地の通気性を管理しながら、充填床を区画化するためのプラットフォームおよび方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
細胞培養空間内に細胞培養基質を収容するための内部空洞と、その内部空洞への流体入口およびその内部空洞からの流体出口の少なくとも一方のための少なくとも1つのポートとを有する細胞培養容器を備えた細胞培養システムが、ここに開示されている。このシステムは、細胞培養空間の上方の細胞培養容器内に配置された遠位端を有するピストンをさらに備え、そのピストンの遠位端は、内部空洞内の気密シールによって密封されている。このシステムは、遠位端と細胞培養空間との間の距離を増減させるようにピストンを動かす、このピストンに結合された駆動装置も備える。この駆動装置は、少なくとも1つのポートを通じて細胞培養空間から細胞を収穫するために、ピストンの作動により内部空洞を加圧することができる。
【0010】
細胞培養容器の少なくとも部分的に内部に配置されたピストンの作動を使用して、細胞を培養し、その容器から細胞を収穫するために細胞培養システムを使用する方法も、開示されている。このピストンは、洗浄溶液および基質から細胞を分離するための解離溶液を含む、1種類以上の溶液をその容器中に引き込むために使用される。次に、そのピストンは、解離溶液、細胞、および任意の細胞副産物を含有する流体を、その容器から収穫器中に引き出すために使用される。
【0011】
本開示の追加の態様は、一部には、詳細な説明、図面、以下の任意の請求項に述べられており、一部には、その詳細な説明から導かれるか、または本開示の実施により習得することができる。先の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方とも、事例および説明にすぎず、開示された本開示の制限ではないことを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本開示は、添付図面と共に解釈されたときに、以下の詳細な説明を参照することによって、より完全に理解されるであろう。
図1】本開示の実施の形態による、細胞の収穫を可能にする細胞培養システムの概略図
図2】本開示の実施の形態による、細胞の収穫を可能にする細胞培養システムの概略図
図3】本開示の実施の形態による、細胞を培養する方法を示す流れ図
図4】本開示の実施の形態による、充填床バイオリアクターを組み込んだバイオプロセスシステムを示す概略図
図5】1つ以上の実施の形態による、細胞培養システムの灌流量を制御するための作動を示す図
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示の非限定的な実施の形態による充填床バイオリアクターシステムおよびそのバイオリアクターシステムを使用する関連方法の様々な態様を示す図面を参照して、本開示の様々な実施の形態を議論する。以下の説明は、そのバイオリアクターシステムの実現可能な説明を提供することを意図しており、バイオリアクターシステムおよび方法の様々な態様は、非限定的な実施の形態を参照して、本開示を通じて具体的に詳細に議論され、これらの実施の形態は、本開示の文脈内で互いに交換可能である。
【0014】
図1を参照すると、本開示の1つ以上の実施の形態による充填床バイオリアクターシステム100の概略図が提供される。バイオリアクターシステム100により、接着細胞の培養および細胞副産物(例えば、トランスフェクトされたウイルス)の収穫だけでなく、細胞自体の収穫も可能になる。図から分かるように、バイオリアクターシステム100は、細胞培養基質104を含む容器102を備える。この細胞培養基質は、様々な形態をとることができるが、一体構造(発泡体基質または単一織網(woven mesh)シートなど)または基質材料103の複数の断片の充填床形態で提供される多孔質材料であることが好ましい。好ましい1つの実施の形態において、例えば、基質材料103の複数の断片は、1つ以上の高分子繊維から作られた多孔質高分子のシートまたはディスクである。例えば、その多孔質高分子材料は、容器102内にシートまたはディスクの積層体として提供される織網基質材料であり得る。
【0015】
図1の容器102は、本開示の実施の形態による、細胞の収穫を可能にする細胞培養容器の一般的な構造および作動を説明するための簡略化されたプランジャー設計である。具体的には、容器102は、方向D1およびD2に、細胞培養基質104に向かったり、離れたりするように容器内で少なくとも部分的に動くように配置されたプランジャー106を含む。このポンプ作用は、下記に記載されるように、容器102の内部を加圧または減圧して、供給源108および110(例えば、収穫溶液またはDPBS(ダルベッコリン酸緩衝食塩水)洗浄)から1種類以上の溶液を引き込み、細胞培養基質104から接着細胞を放出するのを助け、またそれらの放出された細胞を容器の内部から排出し、それらは全て、細胞またはウイルス産物を損傷しないように行う。供給源108および110は、細胞・基質間および細胞間の相互作用を標的とするために、異なる酵素的および非酵素的解離剤を含有することができる。
【0016】
本開示のバイオリアクターシステムおよび方法は、自動化、生存細胞収穫量、および拡張性に関する利点を提供する。いくつかの実施の形態の態様によれば、ここに開示されたバイオリアクターシステムは、容器を加圧し、細胞または収穫産物に損傷を与えない安全な流量を生じることができる。収穫のための加圧の動作は、自動化し、バイオリアクター制御システムに完全に統合することができる。例えば、プランジャーは、空気圧ピストンまたは制御装置によって制御される他の何らかの電気機械的駆動装置によって作動させることができる。さらに、ここに提供される解決策は、産業界で使用されるより大型のバイオリアクター(例えば、50L以上の容器)に拡大することができる。本開示の実施の形態は、例えば、細胞培養基質を押し下げ、その後、持ち上げる空気圧シリンダーを使用することによって、バイオリアクターシステム内に高圧および流れを生じさせ、その空気圧シリンダーをポンプで継続的に上げ下げして、解離剤による基質の処理後に基質からの細胞分離を引き起こしてもよい。
【0017】
現行の市販品は、不均一な基質を使用する傾向があり、取付けの最中に基質内に細胞を不均一に捕捉してしまう。これは、不均一な細胞増殖と、その後の、細胞へのDNAプラスミドの非効率的なトランスフェクションをもたらす。このことは、細胞によって生産される全ウイルスに悪影響を及ぼす。それに加え、細胞の多くが捕捉されるため、後で遺伝子治療に使用するために細胞内のウイルスを効率的に回収することができない。現在、次善策として、細胞を溶解し、ウイルスをその場で放出するために洗浄剤が使用されている。しかしながら、洗浄剤の添加により、下流のウイルス精製工程にコストと複雑さが加わってしまう。本開示の実施の形態では、自動ピストンから供給される圧力により、バイオリアクター基質からの細胞放出が促進されるはずなので、細胞溶解の必要性がなくなる。本開示の実施の形態の一態様として、適切な細胞培養基質により、流れの均一性および収穫のための細胞の放出が促進される。そのような基質材料の例が、その内容がここに全て引用される、米国特許出願第16/781685号、同第16/781723号、および同第17/039218号の各明細書、並びに国際公開第2019/104069号に開示されている。
【0018】
図2は、1つ以上の実施の形態による細胞培養システム200の概略図である。システム200は、細胞培養基質204が少なくとも部分的に充填された内部空洞を有する細胞培養容器202と、空気と細胞培養培地を含む流体を、内部空洞に送ったり、内部空洞から取り出したりするように配置された1つ以上の流体入口および/または出口220、222とを備える。駆動装置205(空気圧駆動装置またはエアシリンダーなど)が、細胞培養容器202の上方に配置され、接続部207(例えば、クレビス)を介して、細胞培養容器202中に少なくとも部分的に挿入されたピストン206に連結されている。システム200は、駆動装置制御部216をさらに備える。駆動装置制御部216は、駆動装置205の作動を制御することができる当該技術分野で公知のどの制御部であっても差し支えない。図2に示すように、システム200は、ガスまたは空気供給源に接続された圧力調整器218も備える。圧力調整器218、ガスまたは空気供給源、バルブ、および駆動装置制御部216は、バイオリアクターへの空気および培地の進入を制御する。入口および/または出口220、222は、1つ以上の流体供給源に接続されている。様々な実施の形態によれば、入口および/または出口220、222は、両方とも同じ流体供給源に、または異なる流体供給源に接続することができ、入口および/または出口220、222からの流体の流入または流出を制御するために、各々、1つ以上のバルブによって制御されている。細胞収穫中の流体の流れおよび駆動装置の作動を制御するための制御装置214は、システム200に組み込むことができる、もしくは公知の有線または無線接続方法にしたがってそのシステムと通信する別のコンピュータに収容することができる。
【0019】
収穫の最中、基質と細胞は解離緩衝液または酵素に浸される。その後、調整器218を通じて空気供給源から空気が来るであろう。ここで、空気の圧力は調整器218によって制御される。バルブが開かれて、加圧空気が駆動装置205に移動できるようになる。その結果、流入した加圧空気は、容器202の上部の内部に密封されているピストン206を押し下げることになる。ピストン206が下に動くと、容器202内の液体に圧力がかかり、その結果、細胞は液体と共に基質を通って下に移動し、出口222で容器202の底部から収穫物収集容器208に排出される。
【0020】
実施の形態によれば、容器202に入り、容器202を通る解離剤の流量を増加させて、細胞収穫量を改善することができる。解離剤の流量は、例えば、約1ml/分から約500ml/分、または約250ml/分とすることができ、より多い流量は、より大きな収穫量をもたらすことができる。
【0021】
実施の形態の以下の態様は、上述したシステム200から細胞を収穫する方法を説明する。細胞培養中、ピストン206は、少なくとも部分的に容器202内にある。収穫前の細胞培養中のピストン206の位置は、細胞培養基質204の上部に支えられて、培養中にその基質を適所に、固定化された状態に保持することができる。あるいは、容器202は、細胞培養基質204を制限および/または支持するために、別の細胞培養チャンバまたは他の支持体を含むことができる。図3を参照すると、細胞培養の初期段階は、細胞接着段階S1であり、その最中にバイオリアクター容器202に培地を灌流させ、細胞を入口から容器202中に播種し、制御装置は容器202および培地を所望の温度(例えば、37℃)に設定し、細胞培養培地を指定速度で容器202を通して送り、関連栄養素、酸素、およびCOの濃度が設定される。
【0022】
次に、細胞培養は、細胞増殖段階S2に入る。この期間中、細胞培養の進行を監視するために、データを収集することができる。このデータは、細胞代謝産物、pHレベル、気体測定、細胞コンフルエンスまたはバイオマス、および温度についての情報を含み得る。細胞増殖段階は、このデータが監視されている数日間に亘り継続することができ、前記システムは、必要に応じて、馴化培地で再び満たされる。細胞培養段階の少なくとも一、二日後、工程S3で細胞収穫を開始することができる。ピストン206は、収穫の開始時に、基質204の上部を押したままであることがあり、容器212と容器202との間のバルブ、並びに容器208と容器202との間のバルブが開かれる。次に、このシステムを加圧するか、または容器208に接続されたポンプを作動させて、容器208から容器202中にDPBS洗浄剤を供給し、過剰なDPBS洗浄剤は、工程S4で容器212内に収集することができる。次に、容器212へのバルブを閉じ、入口222のバルブを、容器208においてDPBS洗浄剤の供給から収穫溶液の供給に切り換える。次いで、ピストン206は、制御システムにしたがって、上下に動き、これにより、工程S5で解離剤を容器202中に吸い上げる。ピストン206からの圧力と、結果として生じた解離剤の流入によって、細胞に対する剪断応力が生じて、細胞が基質204から放出される。ピストン206は、解離剤の全てが容器202内に入って、細胞が十分な時間に亘り解離剤に暴露されるように所定の期間に亘り上昇位置に置かれたままである。この暴露時間後、工程S6で、ピストン206は、強制的に押し下げられ、培地、解離剤、細胞、および細胞副産物の組合せをボトル中に放出させ、これが、「収穫溶液」となる。この収穫溶液は、容器208のある区画内に収集される。収穫溶液が収集された後、入口222が閉じられ、入口220が開けられるように、入口220および222でバルブを作動させることによって、工程S7で、DPBSによる洗浄が行われる。ピストン206が引き上げられたときに、DPBS洗浄剤が容器212から容器202に入って、洗浄が行われる。次に、入口222のバルブを開き、入口220のバルブを閉じることができ、よって、ピストン206が下降するときに、DPBS洗浄剤が、容器208内の収穫溶液収集区画に収集される。上述した方法によれば、生存細胞をここに記載されたように高収量で収穫することが可能である。
【0023】
細胞培養中、培地は、細胞代謝のために、消耗する。それゆえ、システム200は、例えば、システムへのPIDフィードバック・ループによって、バイオリアクター200の監視および制御を可能にするために、環境状態(例えば、pH、CO、DO、温度、流体の流れ、剪断応力、細胞密度)を読み取るための多数のセンサ(例えば、プローブ、使い捨てパッチ、RAMANなど)を備えることがある。一例として、溶存酸素(DO)が低すぎる場合には、細胞培養基質を通じて再充填される培地の流れを増加させることができる。それに加え、1つ以上の入口220、222は、液体供給物(例えば、苛性アルカリ(caustic)、グルコース、培地、ボーラス添加)を容器202の細胞培養空間中に迅速に供給できる入口を提供することがある。それに加え、1つ以上のプローブ(例えば、バイオマスプローブ、ラマンプローブ)を細胞培養基質204内またはその近くに提供してもよい。
【0024】
細胞培養基質は、細胞、培地、栄養素、および細胞副産物が基質を通じて灌流でき、細胞分泌物質(例えば、組換えタンパク質、抗体、ウイルス粒子、DNA、RNA、糖類、脂質、バイオディーゼル、無機粒子、ブタノール、代謝副産物)を含む使用済み培地を基質に通過させ、収穫できるように多孔質である。実施の形態による細胞培養基質のさらなる詳細が、下記に与えられている。
【0025】
容器202は、プラスチック、ガラス、セラミックまたはステンレス鋼であり得る。いくつかの実施の形態によれば、容器202の全てまたは一部は、透明材料から作られることがある、もしくは裸眼または多数のセンサ、プローブ、カメラ、または監視装置のいずれかにより、容器202の内部の検査を可能にするために、容器202の外壁にある1つ以上の透明窓を備えることがある。例えば、いくつかの実施の形態の態様によれば、光学カメラまたはラマン分光法プローブを使用して、容器202の空洞内の細胞培養の進行を監視することができる。
【0026】
図4は、1つ以上の実施の形態によるバイオプロセスシステム400に組み込まれた、ここに記載されたようなバイオリアクター402を示す。システム400は、例えば、pH、温度、および酸素化レベルなどの細胞培養培地のパラメータを適切に維持するための培地馴化容器411を備える。培地をバイオリアクター402に灌流させるために、自動的に制御されたポンプ409が使用される。バイオリアクターの入口413に、細胞接種または収穫された細胞の収集を促進するための追加の三方型ポートが備え付けられている。システム400は、インラインセンサ、並びに培地馴化容器411内のセンサを備えることがある。
【0027】
上述したように、本開示の実施の形態よるバイオリアクターは、容器内の培地および細胞培養環境を監視し、調節するための1つ以上のポートおよびセンサを備えることができる。しかしながら、いくつかの実施の形態によれば、細胞培養培地の検出および馴化は、バイオリアクターの外部にある第2の容器内で行うことができる。例えば、図4は、バイオプロセスを良好に行うために要求される工程条件を支援する、培地馴化容器、バイオリアクター中への培地の流れを可能にするポンプ、および外部溶存酸素センサからなる主要な外部構成部材に接続されたバイオリアクター容器402の概略図を示す。細胞培養培地は培地馴化容器411内で馴化され、そこで、適切なpHレベル、温度ベル、および溶存酸素濃度が維持される。続いて、ポンプ409によって培地がバイオリアクターに灌流される。ポンプ409の流量は、バイオリアクターから出る培地中の溶存酸素の最小の所定の濃度を維持するように自動的に適応するフィードバック・ループに統合される。所定のバイオプロセスが要求する全てのトランスフェクション試薬、栄養素および追加の培地補給物を、バルク培地に導入することができ、使用済み培地は、培地馴化容器411を通じて除去することができる。このプロセスの終わりに、培地は、バイオリアクターから排出し、細胞収穫溶液を補充することができる。細胞が基質から分離するのに十分な所定の時間に亘り収穫溶液中で充填床をインキュベーションした後、細胞は、70ml/cm(充填床の断面積)/分の範囲の流量を達成するためにバイオリアクターの出口に空気圧を印加することによって、逆流で収穫される。細胞は、バイオリアクターの三方型ポート413で収穫される。細胞は、バイオリアクター内で直接的に溶解させることもでき、AVV粒子を含有する溶解物溶液は、三方型ポート413を通じて収集することができる。
【0028】
培地馴化容器411は、懸濁バッチ、供給バッチ、または灌流培養のためにバイオプロセス産業で使用される典型的なバイオリアクターに見られるセンサおよび制御構成部材を備えることができる。これらには、以下に限られないが、DO酸素センサ、pHセンサ、酸素化/気体散布装置、温度プローブ、および栄養素添加用と塩基添加用のポートが含まれる。散布装置に供給される気体混合物は、N、O、およびCOガスについてガス流量制御装置によって、制御することができる。培地馴化容器411は、培地混合のための羽根車も含む。先に列挙されたセンサにより測定される全ての培地パラメータは、培地馴化容器411と通信し、細胞培養培地406の状態を測定するおよび/または所望のレベルに調節することができる培地馴化制御装置418により制御することができる。
【0029】
培地馴化容器411からの培地406は、入口を通じてバイオリアクター402に送達され、このバイオリアクターは、播種すべき細胞接種材料の注入ポートも備え、細胞の培養を開始することもある。バイオリアクター容器402は、そこを通じて細胞培養培地が容器402から出る1つ以上の出口も備えることがある。それに加え、細胞または細胞産物は、その出口を通じて産出されることがある。バイオリアクター402からの流出物の内容物を分析するために、そのラインに1つ以上のセンサ412が設けられることがある。いくつかの実施の形態において、システム400は、バイオリアクター402中への流れを制御するための流量制御装置を備える。例えば、流量制御装置は、1つ以上のセンサ412からの信号を受信し、その信号に基づいて、バイオリアクター402への入口408の上流にあるポンプ(例えば、蠕動ポンプ)に信号を送信することによって、バイオリアクター402中への流れを調節することがある。それゆえ、センサ412により測定される要因の内の1つまたは組合せに基づいて、そのポンプは、バイオリアクター402中への流れを制御して、所望の細胞培養条件を得ることができる。
【0030】
培地灌流速度は、培地馴化容器411内のセンサおよび充填床バイオリアクターの出口に位置するセンサからの信号を収集し、比較する信号処理装置によって、制御される。充填床バイオリアクター402を通る培地灌流の充填流の性質のために、充填床に沿って、栄養素、pH、および酸素の勾配が生じる。バイオリアクターの灌流量は、図5の流れ図に従う、蠕動ポンプに作動可能に接続された流量制御装置によって、自動的に制御することができる。
【0031】
図5は、図4のシステム400などの灌流バイオリアクターシステムの流れを制御する方法450の一例を示す。方法450によれば、システム400の特定のパラメータは、バイオリアクターの最適化運転によって、工程S1で予め決定される。これらの最適化運転から、pH、pO、[グルコース]、pH、pO、[グルコース]、および最大流量の値を決定することができる。pH、pO、および[グルコース]の値は、工程S2で、バイオリアクター402の細胞培養チャンバ内で測定され、pH、pO、および[グルコース]の値は、工程S3で、培地馴化容器411内(またはここに述べられた実施の形態によるバイオリアクター内)のセンサ412により測定される。S2およびS3でのこれらの値に基づいて、灌流ポンプ制御装置は、灌流量を維持または調節するために、S4で決定を行う。例えば、細胞培養チャンバへの細胞培養培地の灌流量は、pH≧pH2min、pO≧pO2min、および[グルコース]≧[グルコース]2minの少なくとも1つが成り立つ場合、現在の流量で継続されるであろう(S5)。現在の流量が、細胞培養システムの所定の最大流量以下である場合、灌流量を増加させる(S7)。さらに、現在の流量が細胞培養システムの所定の最大流量以下ではない場合、細胞培養システムの制御装置は、(1)pH2min、pO2min、および[グルコース]2min;(2)pH、pO、および[グルコース];および(3)バイオリアクター容器の高さ:の内の少なくとも1つを再評価することができる(S6)。
【0032】
本開示の実施の形態は、細胞または細胞由来産物(例えば、タンパク質、抗体、ウイルス粒子)の任意の現実的な生産規模への容易かつ効果的な拡大を可能にする足場依存性細胞のための細胞増殖マトリクスおよび/または充填床システムである基質を含む、ここに使用されるバイオリアクターおよび細胞培養基質を含む。1つの実施の形態において、接着細胞が接着し、増殖するための構造的に明確な表面区域であって、良好な機械的強度を有し、充填床または他のバイオリアクター内に取り付けられたときに、高度に均一な多様性の相互接続された流体網状構造を形成する表面区域を有するマトリクスが提供される。特別な実施の形態において、接着細胞の産生を支援するために、機械的な安定な非分解性織網を使用することができる。そのようなマトリクスの均一な細胞播種、並びにバイオリアクターの細胞または他の産物の効率的な収穫が達成可能である。それに加え、本開示の実施の形態は、開示されたマトリクス上の接着細胞のコンフルエントな単層または多層を達成するための細胞培養を支援し、栄養素の拡散が限定され、代謝産物濃度が増加した3D細胞凝集体の形成を避けることができる。1つ以上の実施の形態の構造的に明確なマトリクスにより、バイオリアクターの充填床からの完全な細胞回収および一貫した細胞収穫が可能になる。本開示の別の実施の形態において、治療用タンパク質、抗体、ウイルス粒子、またはウイルスベクターのバイオプロセス産生のためのマトリクスを有するバイオリアクターを使用して、細胞を培養する方法が提供される。
【0033】
1つ以上の実施の形態において、その細胞培養マトリクスは、高い体積密度形態の足場依存性細胞の付着および増殖を支援する。そのマトリクスは、ここに開示されたような灌流される充填床バイオリアクターなどのバイオリアクターシステムに、取り付けられ、使用され、接種工程中に均一な細胞分布を提供する一方で、そのマトリクスまたは充填床の内の大きいおよび/または制御不能な細胞凝集体の形成を防ぐことができる。それゆえ、そのマトリクスは、バイオリアクターの作動中の拡散限定をなくす。それに加え、マトリクスは、バイオリアクターからの容易かつ効率的な細胞収穫を可能にする。
【0034】
そのマトリクスは、比較的小さい厚さだけ隔てられた第一面と第二面を有する薄いシート状の構造の基質材料により形成することができる。言い換えると、そのシート状基質の厚さは、その基質の第一面と第二面の幅および/または長さと比べて小さい。それに加え、複数の孔または開口が、その基質の厚さを通じて形成されている。開口の間の基質材料は、細胞が、まるで二次元(2D)表面であるかのように、基質材料の表面に接着できつつ、基質材料の周りと、開口を通って適切な流体が流れられるサイズと形状のものである。いくつかの実施の形態において、基質は、高分子系材料であり、成形された高分子シート、厚さを通じて開口が打ち抜かれた高分子シート、メッシュ状の層に融合された多数のフィラメント、またはメッシュ層に編まれた複数のフィラメントとして形成することができる。このマトリクスの物理的構造は、足場依存性細胞を培養するために、高い表面積対体積比を有する。様々な実施の形態によれば、そのマトリクスは、均一な細胞播種、均一な培地灌流、および効率的な細胞収穫を達成するために、特定のやり方でバイオリアクター内に配置または充填することができる。
【0035】
この細胞培養基質は、第1の方向に伸びる第1の複数の繊維および第2の方向に伸びる第2の複数の繊維から作られた織網層であり得る。この基質の織り繊維は、複数の開口を形成する。開口のサイズと形状は、織り方のタイプ(例えば、フィラメントの数、形状およびサイズ;交差するフィラメント間の角度など)に基づいて様々であり得る。開口は、特定の幅または直径によって規定することができる。織網は、マクロスケール、二次元シートまたは層で考えられることがある。しかしながら、織網を厳密に検査すると、網の交差する繊維の上昇と下降のために、三次元構造であることが分かる。それゆえ、織網の厚さは、単繊維の厚さよりも厚いであろう。
【0036】
織網は、単一繊維または多繊維の高分子繊維からなり得る。1つ以上の実施の形態において、単一繊維は、約50μmから約1000μmの範囲の直径を有することがある。マイクロスケールでは、細胞と比べた繊維の規模のために(例えば、繊維の直径は、細胞よりも大きい)、単繊維の表面は、接着細胞が付着し、増殖するための規則的な2D表面として示される。そのような繊維は、規定のパターンおよび特定量の構造的硬直性を有する網に織り込まれる。繊維は、約100μm×100μmから約1000μm×1000μmに及ぶ開口を有する網に織り込むことができる。フィラメント径および開口径のこれらの範囲は、いくつかの実施の形態の例であるが、全ての実施の形態による網の可能な特徴サイズを限定する意図はない。
【0037】
基質メッシュは、例えば、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリビニルピロリドン、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンオキシド、ポリピロール、およびポリプロピレンオキシドを含む、細胞培養用途に適合する高分子材料の単繊維または多繊維から製造することができる。メッシュ基質は、例えば、ニット、縦編み、または織物(平織り、綾織り、畳織り、五本針織り(five needle weave))を含む、異なる構造パターンまたは織りを有することがある。
【0038】
メッシュフィラメントの表面の化学的性質は、所望の細胞接着特性を与えるように改質する必要があるかもしれない。そのような改質は、メッシュの高分子材料の化学処理または細胞接着分子のフィラメント表面へのグラフト化により行うことができる。あるいは、メッシュは、例えば、コラーゲンまたはMatrigel(登録商標)を含む、細胞接着特性を示す生体適合性ヒドロゲルの薄層で被覆することができる。あるいは、メッシュのフィラメント繊維の表面は、様々なタイプのプラズマ、処理ガス、および/または当該技術分野で公知の化学物質による処理過程によって、細胞接着特性を持たせることができる。
【0039】
織網基質は、ここに記載されたバイオリアクターの中心カラムを取り囲むように作られた中心孔を有する多数のディスクで設けられることがある。複数のそのようなディスクは、充填床を形成するために、バイオリアクターの外部領域に積み重ねることができる。
【0040】
いくつかの実施の形態によれば、細胞培養基質は、ペクチン酸;部分的にエステル化されたペクチン酸、部分的にアミド化されたペクチン酸およびその塩;の内の少なくとも1つから選択されるイオンチャンネル架橋ポリガラクツロン酸化合物;および表面活性を有する少なくとも1つの第1の水溶性高分子から作られた可溶性発泡体足場である。
【0041】
本開示の実施の形態は、バッチ当たり約1015から約1018またはそれより多いウイルスゲノムの規模のウイルスゲノムを産生できる実用的サイズのウイルスベクタープラットフォームを達成することができる。例えば、いくつかの実施の形態において、ウイルスゲノム収量は、バッチ当たり約1015から約1016のウイルスゲノム、またはバッチ当たり約1016から約1019のウイルスゲノム、またはバッチ当たり約1016~1018のウイルスゲノム、またはバッチ当たり約1017から約1019のウイルスゲノム、またはバッチ当たり約1018から約1019のウイルスゲノム、またはバッチ当たり約1018以上のウイルスゲノムであり得る。
【0042】
それに加え、ここに開示された実施の形態は、細胞培養基質に対する細胞付着と増殖だけでなく、培養細胞の生存した状態での収穫を可能にする。生存細胞を収穫できないことは、現行のプラットフォームにおける著しい欠陥であり、これは、産生能力のためにかなりの数の細胞を作り、維持する上での難点となる。本開示の実施の形態の態様によれば、細胞培養基質から生存細胞を収穫することが可能であり、これは、80%から100%生存、または約85%から約99%生存、または約90%から約99%生存を含む。例えば、収穫された細胞の内、少なくとも80%が生存可能である、少なくとも85%が生存可能である、少なくとも90%が生存可能である、少なくとも91%が生存可能である、少なくとも92%が生存可能である、少なくとも93%が生存可能である、少なくとも94%が生存可能である、少なくとも95%が生存可能である、少なくとも96%が生存可能である、少なくとも97%が生存可能である、少なくとも98%が生存可能である、または少なくとも99%が生存可能である。細胞は、例えば、トリプシン、TrypLE、またはAccutase(商標)を使用して、細胞培養基質から放出することができる。
【0043】
様々な開示された実施の形態は、特定の実施の形態に関して記載された特定の特徴、要素または工程を含むことがあると認識されよう。特定の特徴、要素または工程が、1つの特定の実施の形態に関して記載されているが、様々な説明されていない組合せまたは順序で、変わりの実施の形態と交換されても、または組み合わされてもよいことも認識されるであろう。
【0044】
発明の具体例
以下は、開示された主題を実施する様々な態様を説明するものである。各態様は、開示された主題の様々な特徴、特性、または利点の内の1つ以上を含み得る。実施は、開示された主題のいくつかの態様を例示することを意図しており、全ての可能な実施の包括的または網羅的な説明と見なされるべきではない。
【0045】
態様1は、細胞培養システムにおいて、細胞培養空間内に細胞培養基質を収容するように作られた内部空洞と、その内部空洞への流体入口およびその内部空洞からの流体出口の少なくとも一方のために作られた少なくとも1つのポートとを有する細胞培養容器;細胞培養空間の上方の細胞培養容器内に配置された遠位端を有するピストンであって、そのピストンの遠位端は、内部空洞内の気密シールによって密封されている、ピストン;およびこのピストンに結合され、遠位端と細胞培養空間との間の距離を増減させるようにピストンを動かすように作られた駆動装置を備え、この駆動装置は、少なくとも1つのポートを通じて細胞培養空間から細胞を収穫するために、ピストンの作動により内部空洞を加圧するように作られている、細胞培養システムに関する。
【0046】
態様2は、少なくとも1つのポートに流体接続され、細胞培養空間から収穫された細胞を捕捉するように作られた細胞収穫チャンバをさらに含む、態様1の細胞培養システムに関する。
【0047】
態様3は、少なくとも1つのポートに流体接続され、解離溶液を収容するように作られた解離溶液チャンバをさらに含む、態様1または態様2の細胞培養システムに関する。
【0048】
態様4は、解離溶液が、細胞培養空間内の細胞基質から細胞を放出するように作られている、態様3の細胞培養システムに関する。
【0049】
態様5は、このシステムが、解離溶液を内部空洞内に引き込むために、ピストンの遠位端と細胞培養空間との間の距離を増加させるように作られている、態様3または態様4の細胞培養システムに関する。
【0050】
態様6は、このシステムが、解離溶液を内部空洞から放出するために、ピストンの遠位端と細胞培養空間との間の距離を減少させるように作られている、態様5の細胞培養システムに関する。
【0051】
態様7は、少なくとも1つのポートに流体接続され、洗浄溶液を収容するように作られた洗浄チャンバをさらに含む、態様1~6のいずれかの細胞培養システムに関する。
【0052】
態様8は、洗浄溶液がDPBSである、態様7の細胞培養システムに関する。
【0053】
態様9は、このシステムが、少なくとも1つのポートを通じて洗浄溶液を内部空洞中に送り込むように作られている、態様7または態様8の細胞培養システムに関する。
【0054】
態様10は、細胞培養空間内に配置された細胞培養基質をさらに含む、態様1~9のいずれかの細胞培養システムに関する。
【0055】
態様11は、駆動装置、培地温度、培地流量、および内部空洞への培地、酸素、苛性アルカリ、および細胞栄養素の少なくとも1つの供給の少なくとも1つを制御するように作られた制御装置をさらに含む、態様1~10のいずれかの細胞培養システムに関する。
【0056】
態様12は、容器内の1つ以上の条件を測定するように作られた1つ以上のセンサをさらに含む、態様11の細胞培養システムに関する。
【0057】
態様13は、1つ以上の条件が、pH、溶存酸素、温度、組成、被分析物濃度、およびスペクトル特性を含む、態様12の細胞培養システムに関する。
【0058】
態様14は、細胞培養基質が多孔質材料から作られている、態様1~13のいずれかの細胞培養システムに関する。
【0059】
態様15は、細胞培養基質が、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリビニルピロリドン、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンオキシド、ポリピロール、およびポリプロピレンオキシドの少なくとも1つから作られている、態様14の細胞培養システムに関する。
【0060】
態様16は、細胞培養基質が、成形高分子格子、3D印刷高分子格子シート、および織網シートの少なくとも1つから作られている、態様14または態様15の細胞培養システムに関する。
【0061】
態様17は、細胞培養基質が、1つ以上の繊維から作られた織網から作られている、態様14~16のいずれかの細胞培養システムに関する。
【0062】
態様18は、1つ以上の繊維が、約50μmから約1000μm、約50μmから約600μm、約50μmから約400μm、約100μmから約325μm、または約150μmから約275μmの繊維径を有する、態様17の細胞培養システムに関する。
【0063】
態様19は、織網が、1つ以上の繊維の格子間に複数の開口を含み、その複数の開口が、約100μmから約1000μm、約200μmから約900μm、または約225μmから約800μmの直径を有する、態様17または態様18の細胞培養システムに関する。
【0064】
態様20は、細胞培養基質が、可溶性発泡体足場である、態様14の細胞培養システムに関する。
【0065】
態様21は、可溶性発泡体足場が、ペクチン酸;部分的にエステル化されたペクチン酸、部分的にアミド化されたペクチン酸およびその塩の内の少なくとも1つから選択されるイオンチャンネル架橋ポリガラクツロン酸化合物;および表面活性を有する少なくとも1つの第1の水溶性高分子から作られている、態様20の細胞培養システムに関する。
【0066】
態様22は、可溶性発泡体足場が、接着高分子コーティングを含む、態様20または態様21の細胞培養システムに関する。
【0067】
態様23は、接着高分子コーティングがペプチドを含む、態様22の細胞培養システムに関する。
【0068】
態様24は、接着高分子コーティングが、BSP、ビトロネクチン、フィブロネクチン、ラミニン、I型コラーゲン、IV型コラーゲン、変性コラーゲン、およびその混合物からなる群より選択されるペプチドを含む、態様23の細胞培養システムに関する。
【0069】
態様25は、接着高分子コーティングが、Synthemax(登録商標)II-SCから作られている、態様24の細胞培養システムに関する。
【0070】
態様26は、充填床バイオリアクター内で細胞を培養する方法において、入口、出口、および細胞培養基質を収容する内部空洞を有する細胞培養容器であって、細胞培養基質が、その上で細胞を培養するように作られた表面を有し、入口と出口が内部空洞に流体接続されている細胞培養容器を提供する工程;細胞培養基質上に細胞を播種する工程;内部空洞に細胞培養培地を提供して、細胞を培養する工程;および内部空洞から、細胞、細胞培養培地、および1種類以上の細胞副産物の少なくとも1つを収穫する工程を有してなり、この収穫する工程が、内部空洞に加圧流体を充填して、内部空洞から、細胞、細胞培養培地、および1種類以上の細胞副産物の少なくとも1つを押し出す工程を含む、方法に関する。
【0071】
態様27は、細胞培養培地が、入口を通じて内部空洞に提供される、態様26の方法に関する。
【0072】
態様28は、細胞の培養中に、細胞培養培地を出口から除去する工程をさらに含む、態様26または態様27の方法に関する。
【0073】
態様29は、細胞培養容器が灌流バイオリアクターである、態様28の方法に関する。
【0074】
態様30は、加圧流体が、入口および出口の一方を通じて内部空洞に提供され、細胞、細胞培養培地、および1種類以上の細胞副産物の少なくとも1つが、入口および出口の他方により内部空洞から除去される、態様26~29のいずれかの方法に関する。
【0075】
態様31は、収穫する工程の前に、少なくとも一部には、細胞培養基質の表面から細胞を分離するように作られた収穫溶液を内部空洞に供給する工程をさらに含む、態様26~30のいずれかの方法に関する。
【0076】
態様32は、収穫する工程が、内部空洞に加圧流体を充填して、内部空洞から収穫溶液を押し出す工程をさらに含む、態様31の方法に関する。
【0077】
態様33は、内部空洞に加圧流体を充填する工程が、ポンプ、ピストン、または細胞培養容器の動く壁を使用して、内部空洞内の流体を加圧する工程の少なくとも1つを含む、態様26~32のいずれかの方法に関する。
【0078】
ここに用いられているように、名詞は、別段に明白に示されていない限り、「少なくとも1つ」の対象を指し、「ただ1つ」の対象に限定されるべきではないことも理解すべきである。それゆえ、例えば、「開口」への言及は、文脈上明白に他の意味に解釈すべき場合を除いて、そのような「開口」を2つ以上有する例を含む。
【0079】
範囲は、ここでは、「約」1つの特定の値から、および/または「約」別の特定の値までとして表現することができる。このような範囲が表現される場合、例は、その1つの特定の値から、および/または他方の特定の値までを含む。同様に、値が、先行詞「約」の使用により、近似値として表現される場合、特定の値が別の態様を形成することが理解されるであろう。さらに、各範囲の端点は、他の端点との関係において、および他の端点から独立しての両方で有意であることが理解されるであろう。
【0080】
ここに表現される全ての数値は、別段に明白に示されていない限り、そのように記載されているか否かにかかわらず、「約」を伴うと解釈されるものとする。しかしながら、その値について「約」と表現されているか否かにかかわらず、列挙された各数値も同様に正確に意図されていることがさらに理解されよう。それゆえ、「10mm未満の寸法」および「約10mm未満の寸法」の両方とも、「約10mm未満の寸法」並びに「10mm未満の寸法 」の実施の形態を含む。
【0081】
特に明記のない限り、ここに記載されたどの方法も、その工程が特定の順序で実施されることを要求すると解釈されることは、決して意図されない。したがって、方法の請求項が、その工程が従うべき順序を実際に記載していない場合、または工程が特定の順序に限定されるべきであることが請求項または説明において他に具体的に記載されていない場合、いかなる特定の順序も暗示されることは決して意図されない。
【0082】
特定の実施の形態の様々な特徴、要素または工程は、移行句「含む」を使用して開示されることがあるが、移行句「からなる」または「から実質的になる」を使用して記載されることがあるものを含む、代わりの実施の形態が暗示されることを理解すべきである。それゆえ、例えば、A+B+Cを含む方法に対して暗示される代わりの実施の形態は、方法がA+B+Cからなる実施の形態、および方法がA+B+Cから実質的になる実施の形態を含む。
【0083】
本開示の多数の実施の形態が、添付図面に示され、先の詳細な説明に記載されてきたが、本開示は、開示された実施の形態に限定されず、以下の請求項によって記載され、定義されるように、本開示から逸脱せずに、多数の再配列、改変および置換が可能であることを理解するべきである。
【0084】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0085】
実施形態1
細胞培養システムにおいて、
細胞培養容器であって、
細胞培養空間内に細胞培養基質を収容するように作られた内部空洞と、
前記内部空洞への流体入口および該内部空洞からの流体出口の少なくとも一方のために作られた少なくとも1つのポートと、
を有する細胞培養容器、
前記細胞培養空間の上方の前記細胞培養容器内に配置された遠位端を有するピストンであって、該ピストンの遠位端は、前記内部空洞内の気密シールによって密封されている、ピストン、および
前記ピストンに結合され、前記遠位端と前記細胞培養空間との間の距離を増減させるように該ピストンを動かすように作られた駆動装置、
を備え、
前記駆動装置は、前記少なくとも1つのポートを通じて前記細胞培養空間から細胞を収穫するために、前記ピストンの作動により前記内部空洞を加圧するように作られている、細胞培養システム。
【0086】
実施形態2
前記少なくとも1つのポートに流体接続され、前記細胞培養空間から収穫された前記細胞を捕捉するように作られた細胞収穫チャンバをさらに含む、実施形態1に記載の細胞培養システム。
【0087】
実施形態3
前記少なくとも1つのポートに流体接続され、解離溶液を収容するように作られた解離溶液チャンバをさらに含む、実施形態1または実施形態2に記載の細胞培養システム。
【0088】
実施形態4
前記解離溶液が、前記細胞培養空間内の細胞基質から細胞を放出するように作られている、実施形態3に記載の細胞培養システム。
【0089】
実施形態5
前記システムが、前記解離溶液を前記内部空洞内に引き込むために、前記ピストンの遠位端と前記細胞培養空間との間の距離を増加させるように作られている、実施形態3または実施形態4に記載の細胞培養システム。
【0090】
実施形態6
前記システムが、前記解離溶液を前記内部空洞から放出するために、前記ピストンの遠位端と前記細胞培養空間との間の距離を減少させるように作られている、実施形態5に記載の細胞培養システム。
【0091】
実施形態7
前記少なくとも1つのポートに流体接続され、洗浄溶液を収容するように作られた洗浄チャンバをさらに含む、実施形態1から6のいずれか1つに記載の細胞培養システム。
【0092】
実施形態8
前記洗浄溶液がDPBSである、実施形態7に記載の細胞培養システム。
【0093】
実施形態9
前記システムが、前記少なくとも1つのポートを通じて前記洗浄溶液を前記内部空洞中に送り込むように作られている、実施形態7または実施形態8に記載の細胞培養システム。
【0094】
実施形態10
前記細胞培養空間内に配置された細胞培養基質をさらに含む、実施形態1から9のいずれか1つに記載の細胞培養システム。
【0095】
実施形態11
前記駆動装置、培地温度、培地流量、および前記内部空洞への培地、酸素、苛性アルカリ、および細胞栄養素の少なくとも1つの供給の少なくとも1つを制御するように作られた制御装置をさらに含む、実施形態1から10のいずれか1つに記載の細胞培養システム。
【0096】
実施形態12
前記容器内の1つ以上の条件を測定するように作られた1つ以上のセンサをさらに含む、実施形態11に記載の細胞培養システム。
【0097】
実施形態13
前記1つ以上の条件が、pH、溶存酸素、温度、組成、被分析物濃度、およびスペクトル特性を含む、実施形態12に記載の細胞培養システム。
【0098】
実施形態14
前記細胞培養基質が多孔質材料から作られている、実施形態1から13のいずれか1つに記載の細胞培養システム。
【0099】
実施形態15
前記細胞培養基質が、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリビニルピロリドン、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンオキシド、ポリピロール、およびポリプロピレンオキシドの少なくとも1つから作られている、実施形態14に記載の細胞培養システム。
【0100】
実施形態16
前記細胞培養基質が、成形高分子格子、3D印刷高分子格子シート、および織網シートの少なくとも1つから作られている、実施形態14または実施形態15に記載の細胞培養システム。
【0101】
実施形態17
前記細胞培養基質が、1つ以上の繊維から作られた織網から作られている、実施形態14から16のいずれか1つに記載の細胞培養システム。
【0102】
実施形態18
前記1つ以上の繊維が、約50μmから約1000μm、約50μmから約600μm、約50μmから約400μm、約100μmから約325μm、または約150μmから約275μmの繊維径を有する、実施形態17に記載の細胞培養システム。
【0103】
実施形態19
前記織網が、前記1つ以上の繊維の格子間に複数の開口を含み、該複数の開口が、約100μmから約1000μm、約200μmから約900μm、または約225μmから約800μmの直径を有する、実施形態17または実施形態18に記載の細胞培養システム。
【0104】
実施形態20
前記細胞培養基質が、可溶性発泡体足場である、実施形態14に記載の細胞培養システム。
【0105】
実施形態21
前記可溶性発泡体足場が、
ペクチン酸;部分的にエステル化されたペクチン酸、部分的にアミド化されたペクチン酸およびその塩の内の少なくとも1つから選択されるイオンチャンネル架橋ポリガラクツロン酸化合物;および
表面活性を有する少なくとも1つの第1の水溶性高分子、
から作られている、実施形態20に記載の細胞培養システム。
【0106】
実施形態22
前記可溶性発泡体足場が、接着高分子コーティングを含む、実施形態20または実施形態21に記載の細胞培養システム。
【0107】
実施形態23
前記接着高分子コーティングがペプチドを含む、実施形態22に記載の細胞培養システム。
【0108】
実施形態24
前記接着高分子コーティングが、BSP、ビトロネクチン、フィブロネクチン、ラミニン、I型コラーゲン、IV型コラーゲン、変性コラーゲン、およびその混合物からなる群より選択されるペプチドを含む、実施形態23に記載の細胞培養システム。
【0109】
実施形態25
前記接着高分子コーティングが、「Synthemax」II-SCから作られている、実施形態24に記載の細胞培養システム。
【0110】
実施形態26
充填床バイオリアクター内で細胞を培養する方法において、
入口、出口、および細胞培養基質を収容する内部空洞を有する細胞培養容器であって、該細胞培養基質が、その上で細胞を培養するように作られた表面を有し、該入口と該出口が該内部空洞に流体接続されている細胞培養容器を提供する工程、
前記細胞培養基質上に細胞を播種する工程、
前記内部空洞に細胞培養培地を提供して、前記細胞を培養する工程、および
前記内部空洞から、前記細胞、前記細胞培養培地、および1種類以上の細胞副産物の少なくとも1つを収穫する工程、
を有してなり、
前記収穫する工程が、前記内部空洞に加圧流体を充填して、該内部空洞から、前記細胞、前記細胞培養培地、および前記1種類以上の細胞副産物の前記少なくとも1つを押し出す工程を含む、方法。
【0111】
実施形態27
前記細胞培養培地が、前記入口を通じて前記内部空洞に提供される、実施形態26に記載の方法。
【0112】
実施形態28
前記細胞の培養中に、前記細胞培養培地を前記出口から除去する工程をさらに含む、実施形態26または実施形態27に記載の方法。
【0113】
実施形態29
前記細胞培養容器が灌流バイオリアクターである、実施形態28に記載の方法。
【0114】
実施形態30
前記加圧流体が、前記入口および前記出口の一方を通じて前記内部空洞に提供され、
前記細胞、前記細胞培養培地、および前記1種類以上の細胞副産物の前記少なくとも1つが、前記入口および前記出口の他方により前記内部空洞から除去される、実施形態26から29のいずれか1つに記載の方法。
【0115】
実施形態31
前記収穫する工程の前に、少なくとも一部には、前記細胞培養基質の表面から前記細胞を分離するように作られた収穫溶液を前記内部空洞に供給する工程をさらに含む、実施形態26から30のいずれか1つに記載の方法。
【0116】
実施形態32
前記収穫する工程が、前記内部空洞に前記加圧流体を充填して、該内部空洞から前記収穫溶液を押し出す工程をさらに含む、実施形態31に記載の方法。
【0117】
実施形態33
前記内部空洞に加圧流体を充填する工程が、ポンプ、ピストン、または前記細胞培養容器の動く壁を使用して、該内部空洞内の流体を加圧する工程の少なくとも1つを含む、実施形態26から32のいずれか1つに記載の方法。
【符号の説明】
【0118】
100 充填床バイオリアクターシステム
102、212 容器
103 基質材料
104、204 細胞培養基質
106 プランジャー
108、110 供給源
200 細胞培養システム
202 細胞培養容器
205 駆動装置
206 ピストン
207 接続部
208 収穫物収集容器
214 制御装置
216 駆動装置制御部
218 圧力調整器
220 入口
222 出口
400 バイオプロセスシステム
402 バイオリアクター(容器)
406 細胞培養培地
409 ポンプ
411 培地馴化容器
412 センサ
413 バイオリアクターの入口
418 培地馴化制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】