(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-31
(54)【発明の名称】積層固定床バイオリアクターおよびその使用方法
(51)【国際特許分類】
C12M 1/14 20060101AFI20230124BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20230124BHJP
C12M 3/00 20060101ALI20230124BHJP
【FI】
C12M1/14
C12M1/00 D
C12M3/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022529854
(86)(22)【出願日】2020-11-04
(85)【翻訳文提出日】2022-07-25
(86)【国際出願番号】 US2020058764
(87)【国際公開番号】W WO2021108094
(87)【国際公開日】2021-06-03
(32)【優先日】2019-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】ゴラール,ヴァシリー ニコラエヴィチ
【テーマコード(参考)】
4B029
【Fターム(参考)】
4B029AA02
4B029AA08
4B029BB13
4B029CC02
4B029DA04
4B029DB17
4B029DC07
4B029GB10
(57)【要約】
細胞培養空間内に細胞培養基質を収容するための内部空洞、その細胞培養空間に流体を供給するための流体入口、および空洞から流体を除去するための流体出口を有する独立型細胞培養サブユニットを備えたモジュール式積層細胞培養システム。その空洞は、流体が流体入口から流入し、次に、細胞培養空間を通り、次に、流体出口を通って流出するように配置されている。このサブユニットは、独立型細胞培養サブユニットの上部と底部の少なくとも一方にアライメント機構をさらに備え、そのアライメント機構は、別の独立型細胞培養サブユニットのアライメント機構と揃い、よって、多数の独立型細胞培養サブユニットが積み重ねられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モジュール式細胞培養システムにおいて、
独立型細胞培養サブユニットであって、
細胞培養空間内に細胞培養基質を収容するように作られた内部空洞と、
前記細胞培養空間に流体を供給するように作られた流体入口と、
前記内部空洞から流体を除去するように作られた流体出口であって、該内部空洞は、流体が前記流体入口から流入し、前記細胞培養空間を通り、該流体出口を通って流出するように作られている、流体出口と、
前記独立型細胞培養サブユニットの上部と底部の少なくとも一方に配置された少なくとも1つのアライメント機構と、
を有する独立型細胞培養サブユニット、
を備え、
前記少なくとも1つのアライメント機構は、別の独立型細胞培養サブユニットの少なくとも1つのアライメント機構と揃うように作られ、よって、該独立型細胞培養サブユニットは、該別の独立型細胞培養サブユニットと積み重ねられる、モジュール式細胞培養システム。
【請求項2】
前記流体入口と前記細胞培養空間との間に配置された第1の流れ分布板をさらに含む、請求項1記載のモジュール式細胞培養システム。
【請求項3】
前記第1の流れ分布板が、前記細胞培養空間の幅に亘り均一に前記流体入口から培地を分布させるように作られている、請求項2記載のモジュール式細胞培養システム。
【請求項4】
前記細胞培養空間と前記流体出口との間に配置された第2の流れ分布板をさらに含む、請求項1から3いずれか1項記載のモジュール式細胞培養システム。
【請求項5】
前記第2の流れ分布板が、前記細胞培養空間から出る培地の均一な流れを促進させるように作られている、請求項4記載のモジュール式細胞培養システム。
【請求項6】
前記第1と第2の流れ分布板が、前記細胞培養空間の上部と底部を画成する、請求項2から5いずれか1項記載のモジュール式細胞培養システム。
【請求項7】
前記細胞培養空間内に配置された細胞培養基質をさらに含み、前記細胞培養基質が、成形高分子格子、3D印刷高分子格子シート、織網シート、および可溶性発泡体足場の少なくとも1つから作られている、請求項1から6いずれか1項記載のモジュール式細胞培養システム。
【請求項8】
複数の前記独立型細胞培養サブユニットをさらに含み、該複数の独立型細胞培養サブユニットが積み重ねられている、請求項1から7いずれか1項記載のモジュール式細胞培養システム。
【請求項9】
前記アライメント機構が、前記複数の独立型細胞培養サブユニットの隣接する独立型細胞培養サブユニットを接続する取付機構である、請求項8記載のモジュール式細胞培養システム。
【請求項10】
前記取付機構により、前記隣接する独立型細胞培養サブユニットが開放可能に取り付けられ、前記取付機構が、前記隣接する独立型細胞培養サブユニットのアライメント機構のかみ合うプロファイル、スナップ式留め具のはめ合い部品、またはネジ式接続部の少なくとも1つである、請求項9記載のモジュール式細胞培養システム。
【請求項11】
前記内部空洞の内壁に配置された保持機構をさらに含み、該保持機構が、前記細胞培養基質に対して前記第2の流れ分布板を適所に保持するように作られている、請求項4記載のモジュール式細胞培養システム。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本出願は、その内容が依拠され、ここに全て引用される、2019年11月27日に出願された米国仮特許出願第62/941308号の米国法典第35編第120条の下での優先権の恩恵を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本開示は、広く、バイオプロセス分野に関し、より詳しくは、モジュール式積層充填床バイオリアクターおよび細胞培養を行うためにそのバイオリアクターを使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
バイオプロセス産業では、ホルモン、酵素、抗体、ワクチンの産生および細胞療法の開発を目的として、細胞の大規模な培養が行われている。バイオプロセスに使用される細胞のかなりの部分は、足場依存性であり、これは、細胞が、成長および機能するために付着する表面を必要とすることを意味する。従来、接着細胞の培養は、T-フラスコ、ペトリ皿、セルファクトリー、セルスタック容器、ローラーボトル、HYPERStack(登録商標)容器など、数多くの容器形式の内の1つに組み込まれた2次元(2D)細胞接着面上で行われている。これらのやり方には、治療法や細胞の大量生産が可能になるほど高い細胞密度を達成するのが困難であることなど、重大な欠点があり得る。
【0004】
培養細胞の体積密度を増加させるために、代替方法が提案されてきた。これらには、撹拌槽で行うマイクロキャリア培養が含まれる。この方法では、マイクロキャリアの表面に付着した細胞が一定のせん断応力を受け、その結果、増殖および培養性能が大きな影響を受ける。高密度細胞培養システムの別の例に、中空糸型バイオリアクターがあり、この場合、細胞は、繊維間隙で増殖しながら大きい三次元凝集塊を形成することがある。しかしながら、栄養素の不足により、細胞の増殖や性能が著しく阻害される。この問題を軽減するために、これらのバイオリアクターは小型化されており、大規模製造には適していない。
【0005】
足場依存性細胞のための高密度培養システムの別の例に、充填床バイオリアクターシステムがある。例えば、細胞を捕捉するための支持体またはマトリクスシステムの充填床を含む充填床バイオリアクターシステムが、以前、特許文献1から3に開示されていた。充填床マトリクスは、通常、基質としての多孔質粒子、または高分子の不織布マイクロファイバーで作られている。そのようなバイオリアクターは、再循環フロースルー型バイオリアクターとして機能する。そのようなバイオリアクターの重大な問題の1つは、充填床内部の細胞分布が不均一であることである。例えば、充填床は深層フィルターとして機能し、細胞は主に入口領域で捕捉され、その結果、接種工程中に細胞分布の勾配が生じる。さらに、繊維が無作為に実装されているため、充填床の断面の流れ抵抗や細胞捕捉効率は均一ではない。例えば、細胞の充填密度が低い領域では培地が速く流れ、捕捉された細胞の数が多いために抵抗が大きい領域では培地がゆっくり流れる。このため、体積細胞密度の低い領域では栄養素や酸素が効率よく供給され、細胞密度の高い領域では最適とはいえない培養状態に保たれるというチャネリング効果がもたらされる。従来技術に開示された充填床システムの別の重大な欠点に、培養過程の最後で、無傷の生存細胞を効率的に収穫できないことがある。特許文献4には、細胞採取工程中の充填床からの細胞回収効率を向上させるためのバイオリアクターの設計が開示されている。これは、充填床マトリクスを緩め、充填床粒子をかき混ぜまたは撹拌して、多孔質マトリクスを衝突させ、それによって細胞を分離させることに基づくものである。しかしながら、この方法は手間がかかり、細胞に大きな損傷を与える可能性があるため、全体的な細胞の生存率が低下してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第4833083号明細書
【特許文献2】米国特許第5501971号明細書
【特許文献3】米国特許第5510262号明細書
【特許文献4】米国特許第9273278号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
充填床バイオリアクターを使用する全ての既存のプラットフォームには、細胞密度が最大レベルに向かって増加するときに、バイオリアクターの後端(バイオリアクターを通る流路に関して)にある細胞は、十分な栄養素または酸素を得ることができず、それゆえ、細胞の増殖率が抑制されてしまうという制限がある。栄養素または酸素のこの欠乏は、充填床の流路を通る栄養素および/または酸素の供給の勾配と見ることができる。細胞機能にとって有害なそのような栄養素/酸素勾配の発生を低下させるために、固定床は、比較的短い培地灌流路を有するように設計することができる。しかしながら、そのような設計は、バイオプロセス治療の開発におけるリアクターの拡張性に著しい影響を与える。例えば、懸濁撹拌槽バイオリアクターは、2,000Lまで、または10,000Lまで拡張できるが、典型的な充填床バイオリアクターは、50Lの容量までしか拡張できない。初期段階の臨床試験のためのウイルスベクターの製造は既存のプラットフォームで可能であるが、後期段階の商業生産規模に達するために、高品質の製品をより多く製造できるプラットフォームが必要とされている。特に、充填床を通る細胞および栄養素の流体流を管理し、充填床の中の栄養素および/または酸素の勾配を減少させながら、充填床を区画化するためのプラットフォームおよび方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
独立型細胞培養サブユニットであって、細胞培養空間内に細胞培養基質を収容するための内部空洞、その細胞培養空間に流体を供給するための流体入口、内部空洞から流体を除去するための流体出口、および独立型細胞培養サブユニットの上部と底部の少なくとも一方に配置された少なくとも1つのアライメント機構を有する独立型細胞培養サブユニットを備えたモジュール式細胞培養システムが、ここに開示されている。その内部空洞は、流体が流体入口から流入し、細胞培養空間を通り、流体出口を通って流出するように配置されている。その少なくとも1つのアライメント機構は、別の独立型細胞培養サブユニットの少なくとも1つのアライメント機構と揃うことができ、よって、その独立型細胞培養サブユニットは、別の独立型細胞培養サブユニットと積み重ねられる。実施の形態によれば、そのシステムは、複数の独立型細胞培養サブユニットを備え、その複数の独立型細胞培養サブユニットは、互いに積層されている。
【0009】
本開示の追加の態様は、一部には、詳細な説明、図面、以下の任意の請求項に述べられており、一部には、その詳細な説明から導かれるか、または本開示の実施により習得することができる。先の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方とも、事例および説明にすぎず、開示された本開示の制限ではないことを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本開示は、添付図面と共に解釈されたときに、以下の詳細な説明を参照することによって、より完全に理解されるであろう。
【
図1】本開示の1つ以上の実施の形態による、細胞培養サブユニットの概略断面図
【
図2】本開示の1つ以上の実施の形態による、
図1のモジュール式細胞培養サブユニットの積層体の説明図
【
図3】本開示の別の実施の形態による、細胞培養サブユニットの概略断面図
【
図4】本開示の1つ以上の実施の形態による、
図3のモジュール式細胞培養サブユニットの積層体の説明図
【
図5A】本開示の1つ以上の実施の形態による、細胞培養サブユニット内部の保持機構の詳細図
【
図5B】本開示の1つ以上の実施の形態による、細胞培養サブユニット内部の保持機構の詳細図
【
図6】本開示の1つ以上の実施の形態による、別個の培地馴化容器を有するモジュール式細胞培養積層体を使用した細胞培養システムおよび流路の説明図
【
図7】本開示の1つ以上の実施の形態による、モジュール式細胞培養積層体および共通の培地馴化容器を使用した細胞培養システムおよび流路の説明図
【
図8A】本開示の1つ以上の実施の形態による、モジュール式細胞培養サブユニットの放射状流マニホールドの上面図
【
図8B】本開示の1つ以上の実施の形態による、細胞培養基質を有する、
図8Aの放射状流マニホールドの断面図
【
図9】本開示の1つ以上の実施の形態による、
図8Aおよび8Bの細胞培養サブユニットの積層配置の断面図
【
図10】本開示の1つ以上の実施の形態による、無菌プルタブを有するキャリア内の
図9の積層配置の説明図
【
図11】本開示の1つ以上の実施の形態による、
図10の2つのキャリアの積層配置の説明図
【
図12】本開示の1つ以上の実施の形態による、
図10のキャリアのより大型の積層配置の説明図
【
図13】本開示の実施の形態による、充填床バイオリアクターを組み込んだバイオプロセスシステムを示す概略図
【
図14】1つ以上の実施の形態による、細胞培養システムの灌流量を制御するための作動を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の非限定的な実施の形態による充填床バイオリアクターシステムおよびそのバイオリアクターシステムを使用する関連方法の様々な態様を示す図面を参照して、本開示の様々な実施の形態を議論する。以下の説明は、そのバイオリアクターシステムの実現可能な説明を提供することを意図しており、バイオリアクターシステムおよび方法の様々な態様は、非限定的な実施の形態を参照して、本開示を通じて具体的に詳細に議論され、これらの実施の形態は、本開示の文脈内で互いに交換可能である。
【0012】
本開示には、モジュール式固定床バイオリアクターおよびそのような固定床バイオリアクターの積層体を有するバイオリアクターシステムが記載されている。実施の形態は、固定床バイオリアクターの個々のモジュール、並びに接続ユニットの積層アセンブリを含む。組み合わせられる個々の充填床モジュールを使用すると、拡張可能であり、細胞培養中に充填床内の栄養素および/または酸素勾配により課せられる作動条件の制限をなくす解決策が提供される。各個別のモジュールは、短い培地灌流路を提供し、それゆえ、最適な細胞培養条件を支援する。多数の個々のモジュールは、1つのユニットに組み立てることができ、それゆえ、製造過程の融通性の拡張を提供する。製造バッチの目標収量に応じて、エンドユーザは、例えば、1から10以上の個々のユニットを同時に利用するシステムを構成することができる。
【0013】
図1を参照すると、本開示の1つ以上の実施の形態による、モジュール式細胞培養システムの単一の細胞培養ユニット100が示されている。細胞培養ユニット100は、バイオリアクターの作動中に培地を灌流させるための、細胞培養培地の入口1および細胞培養培地の出口2を有する容器を備える。ユニット100は、充填床内の均一な培地灌流を支援するために、細胞培養基質4の充填床層の両側に設けられた流れ分布板3、3’も備える。この流れ分布板3、3’は、充填床が細胞培養基質を適所に維持し、構造的に支持するための構造補強または格納バリアであることもある。入口1と出口2との間に細胞培養基質4を配置することにより、培地は、基質4内の矢印により示される方向Fに基質4を通って流れる。バイオリアクターの作動中、接着細胞は、バイオリアクターの床に充填された基質4の表面に付着し、増殖する。ユニット100は、充填床が、充填床を通る培地流路Fに沿った栄養素および酸素の勾配の発生を最小にする短い高さを有するように設計されている。
【0014】
細胞培養ユニット100は、ユニット100の上部および/または底部に設けられた1つ以上のアライメント機構5をさらに備える。アライメント機構5は、細胞培養サブユニット100と似た、多数の細胞培養サブユニットを揃えるために使用され、よって、バイオリアクターシステムを拡張することができる。
図2は、積層細胞培養システム110を形成するために、4つのユニット100A~100Dがこのように積み重ねられている1つの実施の形態の例を示す。
図2の挿入
図Aは、それぞれ、隣接するユニット100Aおよび100Bのアライメント機構5Aおよび5Bがどのように積み重ねられているかを示す。このように、アライメント機構により、それらのユニットをしっかりと積み重ね、揃えることを確実にできる。いくつかの実施の形態の一態様として、アライメント機構は、1つの細胞培養ユニットとして使用される場合、または積層体の最上部ユニットである場合、ユニット100に蓋またはキャップを固定するために使用することができる。アライメント機構は、
図1および2に示された単一直線壁を含む、数多くの形態を取ることができ、積層体の意図せぬ分離を防ぐためにかみ合う機構も含むことができる。
【0015】
例えば、
図3は、区域3Bおよび挿入
図Bに示されるように、意図せぬ分離を防ぐために、アライメント機構15Aおよび15Bが、かみ合うプロファイルを有している実施の形態による細胞培養ユニット150を示す。それに加え、
図3の挿入
図Bに示されるように、一体化出口ポート2を有する上蓋6が設けられている。同様に、細胞培養ユニット150の底部に設けられたアライメント機構は、ユニット150の下に積層される細胞培養容器の出口ポートであるように設計された一体化出口ポート7を有する。このようにして、個々のユニットを効率的に積み重ねることができ、各ユニットは、拡張可能であるが、コンパクトな細胞培養システムを提供するために、過剰な材料または嵩を必要とせずに、入口ポートと出口ポートを持つことができる。例えば、4つのユニット150を積み重ねると、
図4に示されるような細胞培養システム160が得られる。システム160において、
図3に示された構造を有する4つの個々のユニットが積み重ねられ、一体化されている。
図4のユニット1から4の各々は、培地用入口(それぞれ、1-1、1-2、1-3、および1-4)および培地用出口(それぞれ、2-1、2-2、2-3、および2-4)を有する。培地用出口の詳細図が、挿入
図Bに示されている。
【0016】
図5Aおよび5Bは、細胞培養ユニットの1つ以上の実施の形態の一態様を示しており、ここで、流れ分布板23または保持スクリーンが、保持機構15の下に配置されることによって、細胞培養基質4の上の適所に保持され得る。充填床基質を適所に保持することに加え、保持スクリーンまたは流れ分布板23は、その充填床を所望の充填密度に圧縮するために使用することができる。例えば、
図5Aにおいて、充填床は、保持スクリーンが適所に置かれていないので圧縮されておらず、比較的緩い充填密度となる。しかしながら、保持スクリーン23が保持機構15の下の適所に留められると、その充填床を圧縮することができる。保持機構15の厚さは、所定の用途に所望の充填密度を達成するために変えることができ、またはいくつかの実施の形態によれば、充填密度を増加させるために、多数の保持スクリーンを使用することができる。
【0017】
図6は、いくつかの実施の形態による、積層細胞培養システム250を示す。システム250は、図から分かるように、
図4に示された様式で積み重ねられた4つの個々の細胞培養ユニット1から4を有する。各ユニット内の細胞培養培地は、専用ポンプ8によって独立して、可撓性管類10を通じて灌流される。各ユニット内の細胞培養培地は、pH、温度、溶存酸素などを含む多数の要因のいずれかを調節することによって、馴化される。
図6の実施の形態において、この馴化は、専用の培地馴化容器9a~9d内で独立して行われる。
【0018】
図7は、積層細胞培養システム270の本開示の別の実施の形態を示す。システム270の個々のユニット1から4は、
図4および6のものと同様に積み重ねられている。しかしながら、システム270において、ユニット1~4は、共通の培地馴化容器279を使用して、並列で作動されている。各ユニット1~4内の細胞培養培地は、専用ポンプ8’によって、可撓性管類10を通じて灌流される。培地の流れは、流れ分配器12において個々のユニット間で等しく分配される。容器11内の静水圧の平衡によって、バイオリアクターユニット間の等しい流れ抵抗が達成される。培地は、容器11を通った後、重力によって、酸素を泡立て、培地に溶け込ませる酸素化カラム17を通って、培地馴化容器279に還流する。必要に応じて、システム270は、気体用出口18で大気に開かれている。
【0019】
本開示の実施の形態の上述した態様によれば、細胞または細胞由来産物(例えば、タンパク質、抗体、ウイルス粒子)のための任意の実用的な生産規模に容易に拡張できる、足場依存性細胞の充填床バイオリアクターシステムが提供される。1つ以上の実施の形態において、個々のバイオリアクターサブユニットには、接着細胞が付着し、増殖し、機能できる構造的に明確な細胞培養基質が充填されている。好ましい実施の形態において、細胞培養基質は、織られた高分子材料または網、もしくは織られたシートの積層体である。
【0020】
先に述べたように、これらの細胞培養サブユニットの実施の形態の異なる態様が、
図1および3に示されている。例えば、各バイオリアクターサブユニットは、培地用入口ポート1、培地用出口ポート2、および接着細胞が付着し、増殖し、機能するための充填床領域4を有する。充填床バイオリアクターに接着した細胞に栄養素および酸素を安定かつ均一に送達することを確実にするために、培地の均一なおよび/または一定の流れをバイオリアクターサブユニットに通す必要がある。培地灌流の均一性は、充填床の上流の真下に流れ再分布板3を組み込むことによって達成される(
図1および3)。培地用入口に位置付けられた流れ再分布板は、充填床を通る均一な培地灌流(
図1の矢印F)を確実にするように、培地流を中央入口地点から水平方向に向け直す。充填床バイオリアクターを通る培地灌流の充填流の性質のために、充填床に沿って、栄養素、pH、および酸素の勾配が生じる。この事実のために、充填床の全高に制限が課せられる。一般に、接着細胞の培養のための典型的な充填床の高さは、減少した培地勾配により課せられる制限のために、最大で10cmである。1つの10cmの充填床に可能なことを越えて充填床バイオリアクターの生産能力を増加させるために、モジュール式の積層可能なサブユニットの概念が、ここに開示される。個々のバイオリアクターサブユニットの充填床高さは、一定であり、減少した培地勾配が個々のサブユニットにおいて取るに足らない問題となるほど十分に小さい厚さ(例えば、約20cm以下、または約10cm以下)であり得る。
【0021】
生産設備におけるこのシステムの設置面積を最小にするために、多数のサブユニットを、1つのシステムに垂直に組み込むことができる。
図2および4の各々は、積層システム110および160を形成するために、互いの上に積み重ねられた4つの個々のサブユニットを示す。このアセンブリの物理的安定性を確実にするために、個々のサブユニットは、サブユニットの上面と底面から突出したかみ合う縁(例えば、
図2の挿入
図A参照)で揃えられている。あるいは、個々のサブユニットは、2つの同一のサブユニット上に位置しているネジ式接続部(例えば、
図3および4の挿入
図B参照)を使用することによって、かみ合わせることができる。1つのサブユニットを独立型ユニットとして作動させることが望ましい場合、
図3に示されるように、その上部を、作り付け出口2を有する蓋6と交換することができる。
【0022】
図4は、ネジ式接続部を使用することによって、垂直に組み込まれた4つのサブユニットを示す。各サブユニットは、個々の培地用入口ポート1および出口ポート2を有する。各サブユニットの底部は、下側のサブユニットの上部の機能を果たす。各サブユニットは、接着細胞の増殖および治療成分の産生のための充填床織り基質を備えた細胞培養領域を有する。先に述べたように、織網は、
図5Aおよび5Bに示されたような、保持格子3’によってバイオリアクター内に充填し、圧縮し、保持することができる。網基質4をバイオリアクターの空洞に重ねた後、保持格子3’を、バイオリアクターの内壁から突出した保持機構15によって、押し付けられ、適所に係止される。
【0023】
図2および4に示された垂直に積み重ねられた個々のバイオリアクターサブユニットは、個々のポンプ8により灌流され、個々の培地馴化容器9(
図6に示されるような)を有することによって、独立して作動させることができる。そのような構成は、バイオプロセス開発段階で、特に役立ち得る。異なる細胞培養条件(pH、DO、CO
2濃度、培地組成、供給スケジュール)を維持する融通性を持ちつつ、同一のバイオリアクターを同時に運転することにより、エンドユーザは、最適なバイオプロセス条件を迅速に特定することができる。
【0024】
生産過程において、個々のバイオリアクターサブユニットは、
図7に示されるように、1つの灌流ポンプ8’および共通の培地馴化容器279を利用することによって、並列に作動させることができる。全てのバイオリアクターサブユニット内の培地灌流を均一かつ等しくするために、特有の流体流路が、この実施の形態の一態様として示されている。具体的には、細胞培養培地を液体ポンプ8’によって個々のバイオリアクターサブユニットに通して灌流させた後、培地は、
図7に示されるように、流れ分布ユニット12に入る。このユニットからバイオリアクターサブユニットへの全ての培地用出口の直径は、等しい流れ抵抗を与えるために等しい。
図7は、例えば、4つの個々のバイオリアクターサブユニット(ユニット1からユニット4)のための4つの培地用出口を有するものとして、流れ分布ユニット12を示す。しかしながら、実施の形態には、それより少ないか多い培地用出口およびバイオリアクターサブユニットを有するシステムが含まれる。定常状態圧力駆動流に関する個々のバイオリアクターサブユニットを通る体積流量は、
Q=ΔP/R
と示すことができ、式中、ΔPは、
図7における培地用入口13と出口14との間の圧力差である。この圧力差は、流体が移動する抵抗による摩擦圧力損失、並び重力および培地用入口13と出口14との間の高度差Hによる静水圧損失からなる。4つのバイオリアクターサブユニット全てに関して、培地用入口13と出口14は、同じ高度に位置しており、それゆえ、静水圧損失は同じになる。バイオリアクターサブユニットの全てが、同じ体積の充填床および管類10の全長を有する場合、ひいては、動水圧は同じになる。その結果、培地用入口13と培地用出口14との間の全圧力差は、全ての個々のバイオリアクターサブユニット(
図7のユニット1からユニット4)について同じになる。このことは、1つの流体ポンプ8’が、通常の細胞培養中、全てのサブユニットにおいて均一な培地灌流を提供できることを意味する。全てのバイオリアクターサブユニットにおける同一の培地灌流量は、同一の細胞培養条件を与え、培地における適切なpH、酸素化、温度および栄養素濃度を維持するために、ただ1つの培地馴化容器279しか必要としない。
【0025】
出口で静水圧を平衡にするために、オーバーフローユニット11も設けられることがある。このユニットは、入口14と同じ高度に位置する管類出口および培地オーバーフローバリア16を有する。培地オーバーフローバリアにより、培地を重力で培地馴化容器279に戻るように供給することができる。オーバーフローユニットは、ポート18を介して外部環境に開かれているのに対し、そのシステムの無菌状態は、無菌ガスフィルタにより維持される。培地を培地馴化容器中に自由に流すことにより、気液界面の面積が著しく増加する。それに加え、戻り経路で、培地は酸素化カラム17を通過し、消耗した溶存酸素のレベルを補充する。培地を再び酸素化するために、培地馴化容器279に既混合ガス供給19も導入することができる。この気体(青い矢印により示される)は、酸素化カラム中に逆流を生じ、出口18でこのシステムから出る。酸素化カラム17中の培地に対して逆流の酸素化ガスを流すことにより、消耗した培地中の酸素濃度を著しく増加させることができる。
【0026】
本開示のいくつかの実施の形態の追加の態様として、充填床を通る細胞培養培地の放射状流を使用する、充填床バイオリアクター容器およびシステムが提供される。そのような実施の形態は、モジュール式システム全体の多数の固定床中に亘り制御された均一な環境を作り出すために、バイオリアクターの充填床細胞培養基質内に均一な流速を有する固定床バイオリアクターを提供する。このシステムは、さらに、バイオリアクターの設置面積ができるだけコンパクトであるようにバイオリアクター内の非床体積を減少させるように設計されている。さらにまた、そのシステムは、エンドユーザがシステムサイズを自身の製造要求に合わせて最適化できるようにモジュール式であるように設計されている。また、そのシステムは、閉じたシステムであるように設計されている。
【0027】
1つ以上の実施の形態によれば、薄い放射状流マニホールドが、細胞がその中で培養されている固定床サブユニット間に位置付けられている。放射状流マニホールド内の流量は、培地が、表面に亘り、固定床の芯を通じて、均一な流量で固定床に送達されるようなバイオリアクター設計における抵抗のために、変動する。ユニットは、基質材料および培地が装填されたときに、非常に重くなり得るので、モジュール式設計は、モジュールの質量を操作者にとって安全な取扱制限、例えば、持ち上げる目的のために25ポンド(例えば、約11.34kg)未満に制限することによって、非常に大型の使い捨て固定床バイオリアクターを手作業で作ることを可能にする。容器を使用しやすくするのを支援し、容器の閉じたシステムの性質を維持するために、無菌接続部を使用することができ、この接続部は、モジュールに作り付けることができるか、またはモジュールの周囲の管類に供給することができる。
【0028】
培地を固定床細胞培養基質に上方に通す供給を制御するために、マニホールド302が成形され、その中で、固定床の体積中ずっと均一な流れを送達し、それゆえ、細胞培養区域を通じて均一な流れの環境を作り出すために、マニホールド内で流速を変えることができる(速度変化が重要ではない場合)。
図8Aは、培地がそこを通って、分岐管で集配され、固定床に供給される支持構造を有する放射状流マニホールド302の上面図を示す。
図8Aの右側に、マニホールド302を通る培地の流量が、培地がマニホールド内で広がるときに変動するものとして示されている。
【0029】
図8Bは、この実施の形態による細胞培養サブユニット300の断面側面図を示す。このサブユニットは、培地がそこを通ってサブユニット300に送達される中央流カラム304を有する。矢印F
Rで示されるように、培地は中央流カラム304を上方に流れ、次いで、充填床基質306の真下のマニホールド302を放射状に通る。充填床基質306自体を通る流れは、充填床基質306内とマニホールド302内の均一な抵抗のために、均一である。
図9に示されるように、モジュール式サブユニット300A、300Bの2つ以上を積み重ねて、積層細胞培養システム310を形成することができる。このように、マニホールド302は、均一な流れを全ての固定床区域に維持しつつ、多数の充填床を一緒に留めることができる。
【0030】
図10は、4つのサブユニット322A~322Dからなるより大型の積層細胞培養システム320を示し、この設計のモジュール方式がどのようにシステムの拡張性を導くのに役立つかを示す。
図10は、閉じたシステムを維持するために適所に残すことができる、またはモジュール式システムをさらに拡大するために取り外せる、無菌プルタグ324も示す。モジュール式システム全体は、必要に応じて、ユーザが取り扱いし易いようにハンドルを有するキャリア326内に設けることができる。
図11に示されるように、これらのキャリア326の2つ以上を積み重ねることができ、無菌タブを引っ張って、隣接するキャリア326を接合することができる。この配置により、取扱いを容易にするためのモジュール方式を維持しつつ、このシステムをさらに拡大することができる。例えば、
図12は、各キャリアが4つの細胞培養サブユニットを収容している、接続された6つのキャリアを示す。結果として得られた積層システムの天板と底板は、それぞれ、培地用入口および培地用出口を有し、よって、培地は、システム全体を通じて供給することができる。結果として得られた設計は、非常にコンパクトであり、体積の90%程度が、細胞培養基質により占められている。
【0031】
本開示の実施の形態の一態様として、適切な細胞培養基質により、均一な細胞播種、細胞へ栄養素の均一な供給、および収穫のための細胞の均一な放出のため、充填床を通る培地の流れの均一性が促進される。そのような基質材料の例が、その内容がここに全て引用される、米国仮特許出願第62/801325号および同第62/910696号の各明細書、並びに国際公開第2019/104069号に開示されている。
【0032】
細胞培養基質は、細胞、培地、栄養素、および細胞副産物が基質を通じて灌流でき、細胞分泌物質(例えば、組換えタンパク質、抗体、ウイルス粒子、DNA、RNA、糖類、脂質、バイオディーゼル、無機粒子、ブタノール、代謝副産物)を含む使用済み培地を基質に通過させ、収穫できるように多孔質である。実施の形態による細胞培養基質のさらなる詳細が、下記に与えられている。
【0033】
ここに開示された容器またはサブユニットは、プラスチック、ガラス、セラミックまたはステンレス鋼であり得る。いくつかの実施の形態によれば、容器の全てまたは一部は、透明材料から作られることがある、もしくは裸眼または多数のセンサ、プローブ、カメラ、または監視装置のいずれかにより、容器の内部の検査を可能にするために、容器の外壁にある1つ以上の透明窓を備えることがある。例えば、いくつかの実施の形態の態様によれば、光学カメラまたはラマン分光法プローブを使用して、容器の空洞内の細胞培養の進行を監視することができる。
【0034】
図13は、1つ以上の実施の形態によるバイオプロセスシステム400に組み込まれた、ここに記載されたようなバイオリアクター402を示す。システム400は、例えば、pH、温度、および酸素化レベルなどの細胞培養培地のパラメータを適切に維持するための培地馴化容器411を備える。培地をバイオリアクター402に灌流させるために、自動的に制御されたポンプ409が使用される。バイオリアクターの入口413に、細胞接種または収穫された細胞の収集を促進するための追加の三方型ポートが備え付けられている。システム400は、インラインセンサ、並びに培地馴化容器411内のセンサを備えることがある。
【0035】
上述したように、本開示の実施の形態よるバイオリアクターは、容器内の培地および細胞培養環境を監視し、調節するための1つ以上のポートおよびセンサを備えることができる。しかしながら、いくつかの実施の形態によれば、細胞培養培地の検出および馴化は、バイオリアクターの外部にある第2の容器内で行うことができる。例えば、
図13は、バイオプロセスを良好に行うために要求される工程条件を支援する、培地馴化容器、バイオリアクター中への培地の流れを可能にするポンプ、および外部溶存酸素センサからなる主要な外部構成部材に接続されたバイオリアクター容器402の概略図を示す。細胞培養培地は培地馴化容器411内で馴化され、そこで、適切なpHレベル、温度ベル、および溶存酸素濃度が維持される。続いて、ポンプ409によって培地がバイオリアクターに灌流される。ポンプ409の流量は、バイオリアクターから出る培地中の溶存酸素の最小の所定の濃度を維持するように自動的に適応するフィードバック・ループに統合される。所定のバイオプロセスが要求する全てのトランスフェクション試薬、栄養素および追加の培地補給物を、バルク培地に導入することができ、使用済み培地は、培地馴化容器411を通じて除去することができる。このプロセスの終わりに、培地は、バイオリアクターから排出し、細胞収穫溶液を補充することができる。細胞が基質から分離するのに十分な所定の時間に亘り収穫溶液中で充填床をインキュベーションした後、細胞は、70ml/cm
2(充填床の断面積)/分の範囲の流量を達成するためにバイオリアクターの出口に空気圧を印加することによって、逆流で収穫される。細胞は、バイオリアクターの三方型ポート413で収穫される。細胞は、バイオリアクター内で直接的に溶解させることもでき、AVV粒子を含有する溶解物溶液は、三方型ポート413を通じて収集することができる。
【0036】
培地馴化容器411は、懸濁バッチ、供給バッチ、または灌流培養のためにバイオプロセス産業で使用される典型的なバイオリアクターに見られるセンサおよび制御構成部材を備えることができる。これらには、以下に限られないが、DO酸素センサ、pHセンサ、酸素化/気体散布装置、温度プローブ、および栄養素添加用と塩基添加用のポートが含まれる。散布装置に供給される気体混合物は、N2、O2、およびCO2ガスについてガス流量制御装置によって、制御することができる。培地馴化容器411は、培地混合のための羽根車も含む。先に列挙されたセンサにより測定される全ての培地パラメータは、培地馴化容器411と通信し、細胞培養培地406の状態を測定するおよび/または所望のレベルに調節することができる培地馴化制御装置により制御することができる。
【0037】
培地馴化容器411からの培地は、入口を通じてバイオリアクター402に送達され、このバイオリアクターは、播種すべき細胞接種材料の注入ポートも備え、細胞の培養を開始することもある。バイオリアクター容器402は、そこを通じて細胞培養培地が容器402から出る1つ以上の出口も備えることがある。それに加え、細胞または細胞産物は、その出口を通じて産出されることがある。バイオリアクター402からの流出物の内容物を分析するために、そのラインに1つ以上のセンサ412が設けられることがある。いくつかの実施の形態において、システム400は、バイオリアクター402中への流れを制御するための流量制御装置を備える。例えば、流量制御装置は、1つ以上のセンサ412からの信号を受信し、その信号に基づいて、バイオリアクター402への入口408の上流にあるポンプ(例えば、蠕動ポンプ)に信号を送信することによって、バイオリアクター402中への流れを調節することがある。それゆえ、センサ412により測定される要因の内の1つまたは組合せに基づいて、そのポンプは、バイオリアクター402中への流れを制御して、所望の細胞培養条件を得ることができる。
【0038】
培地灌流速度は、培地馴化容器411内のセンサおよび充填床バイオリアクターの出口に位置するセンサからの信号を収集し、比較する信号処理装置によって、制御される。充填床バイオリアクター402を通る培地灌流の充填流の性質のために、充填床に沿って、栄養素、pH、および酸素の勾配が生じる。バイオリアクターの灌流量は、
図14の流れ図に従う、蠕動ポンプに作動可能に接続された流量制御装置によって、自動的に制御することができる。
【0039】
図14は、
図13のシステム400などの灌流バイオリアクターシステムの流れを制御する方法450の一例を示す。方法450によれば、システム400の特定のパラメータは、バイオリアクターの最適化運転によって、工程S1で予め決定される。これらの最適化運転から、pH
1、pO
1、[グルコース]
1、pH
2、pO
2、[グルコース]
2、および最大流量の値を決定することができる。pH
1、pO
1、および[グルコース]
1の値は、工程S2で、バイオリアクター402の細胞培養チャンバ内で測定され、pH
2、pO
2、および[グルコース]
2の値は、工程S3で、培地馴化容器411内(またはここに述べられた実施の形態によるバイオリアクター内)のセンサ412により測定される。S2およびS3でのこれらの値に基づいて、灌流ポンプ制御装置は、灌流量を維持または調節するために、S4で決定を行う。例えば、細胞培養チャンバへの細胞培養培地の灌流量は、pH
2≧pH
2min、pO
2≧pO
2min、および[グルコース]
2≧[グルコース]
2minの少なくとも1つが成り立つ場合、現在の流量で継続されるであろう(S5)。現在の流量が、細胞培養システムの所定の最大流量以下である場合、灌流量を増加させる(S7)。さらに、現在の流量が細胞培養システムの所定の最大流量以下ではない場合、細胞培養システムの制御装置は、(1)pH
2min、pO
2min、および[グルコース]
2min;(2)pH
1、pO
1、および[グルコース]
1;および(3)バイオリアクター容器の高さ:の内の少なくとも1つを再評価することができる(S6)。
【0040】
本開示の実施の形態は、細胞または細胞由来産物(例えば、タンパク質、抗体、ウイルス粒子)の任意の現実的な生産規模への容易かつ効果的な拡大を可能にする足場依存性細胞のための細胞増殖マトリクスおよび/または充填床システムである基質を含む、ここに使用されるバイオリアクターおよび細胞培養基質を含む。1つの実施の形態において、接着細胞が接着し、増殖するための構造的に明確な表面区域であって、良好な機械的強度を有し、充填床または他のバイオリアクター内に取り付けられたときに、高度に均一な多様性の相互接続された流体網状構造を形成する表面区域を有するマトリクスが提供される。特別な実施の形態において、接着細胞の産生を支援するために、機械的な安定な非分解性織網を使用することができる。そのようなマトリクスの均一な細胞播種、並びにバイオリアクターの細胞または他の産物の効率的な収穫が達成可能である。それに加え、本開示の実施の形態は、開示されたマトリクス上の接着細胞のコンフルエントな単層または多層を達成するための細胞培養を支援し、栄養素の拡散が限定され、代謝産物濃度が増加した3D細胞凝集体の形成を避けることができる。1つ以上の実施の形態の構造的に明確なマトリクスにより、バイオリアクターの充填床からの完全な細胞回収および一貫した細胞収穫が可能になる。本開示の別の実施の形態において、治療用タンパク質、抗体、ウイルス粒子、またはウイルスベクターのバイオプロセス産生のためのマトリクスを有するバイオリアクターを使用して、細胞を培養する方法が提供される。
【0041】
1つ以上の実施の形態において、その細胞培養マトリクスは、高い体積密度形態の足場依存性細胞の付着および増殖を支援する。そのマトリクスは、ここに開示されたような灌流される充填床バイオリアクターなどのバイオリアクターシステムに、取り付けられ、使用され、接種工程中に均一な細胞分布を提供する一方で、そのマトリクスまたは充填床の内の大きいおよび/または制御不能な細胞凝集体の形成を防ぐことができる。それゆえ、そのマトリクスは、バイオリアクターの作動中の拡散限定をなくす。それに加え、マトリクスは、バイオリアクターからの容易かつ効率的な細胞収穫を可能にする。
【0042】
そのマトリクスは、比較的小さい厚さだけ隔てられた第一面と第二面を有する薄いシート状の構造の基質材料により形成することができる。言い換えると、そのシート状基質の厚さは、その基質の第一面と第二面の幅および/または長さと比べて小さい。それに加え、複数の孔または開口が、その基質の厚さを通じて形成されている。開口の間の基質材料は、細胞が、まるで二次元(2D)表面であるかのように、基質材料の表面に接着できつつ、基質材料の周りと、開口を通って適切な流体が流れられるサイズと形状のものである。いくつかの実施の形態において、基質は、高分子系材料であり、成形された高分子シート、厚さを通じて開口が打ち抜かれた高分子シート、メッシュ状の層に融合された多数のフィラメント、またはメッシュ層に編まれた複数のフィラメントとして形成することができる。このマトリクスの物理的構造は、足場依存性細胞を培養するために、高い表面積対体積比を有する。様々な実施の形態によれば、そのマトリクスは、均一な細胞播種、均一な培地灌流、および効率的な細胞収穫を達成するために、特定のやり方でバイオリアクター内に配置または充填することができる。
【0043】
この細胞培養基質は、第1の方向に伸びる第1の複数の繊維および第2の方向に伸びる第2の複数の繊維から作られた織網層であり得る。この基質の織り繊維は、複数の開口を形成する。開口のサイズと形状は、織り方のタイプ(例えば、フィラメントの数、形状およびサイズ;交差するフィラメント間の角度など)に基づいて様々であり得る。開口は、特定の幅または直径によって規定することができる。織網は、マクロスケール、二次元シートまたは層で考えられることがある。しかしながら、織網を厳密に検査すると、網の交差する繊維の上昇と下降のために、三次元構造であることが分かる。それゆえ、織網の厚さは、単繊維の厚さよりも厚いであろう。
【0044】
織網は、単一繊維または多繊維の高分子繊維からなり得る。1つ以上の実施の形態において、単一繊維は、約50μmから約1000μmの範囲の直径を有することがある。マイクロスケールでは、細胞と比べた繊維の規模のために(例えば、繊維の直径は、細胞よりも大きい)、単繊維の表面は、接着細胞が付着し、増殖するための規則的な2D表面として示される。そのような繊維は、規定のパターンおよび特定量の構造的硬直性を有する網に織り込まれる。繊維は、約100μm×100μmから約1000μm×1000μmに及ぶ開口を有する網に織り込むことができる。フィラメント径および開口径のこれらの範囲は、いくつかの実施の形態の例であるが、全ての実施の形態による網の可能な特徴サイズを限定する意図はない。
【0045】
基質メッシュは、例えば、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリビニルピロリドン、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンオキシド、ポリピロール、およびポリプロピレンオキシドを含む、細胞培養用途に適合する高分子材料の単繊維または多繊維から製造することができる。メッシュ基質は、例えば、ニット、縦編み、または織物(平織り、綾織り、畳織り、五本針織り(five needle weave))を含む、異なる構造パターンまたは織りを有することがある。
【0046】
メッシュフィラメントの表面の化学的性質は、所望の細胞接着特性を与えるように改質する必要があるかもしれない。そのような改質は、メッシュの高分子材料の化学処理または細胞接着分子のフィラメント表面へのグラフト化により行うことができる。あるいは、メッシュは、例えば、コラーゲンまたはMatrigel(登録商標)を含む、細胞接着特性を示す生体適合性ヒドロゲルの薄層で被覆することができる。あるいは、メッシュのフィラメント繊維の表面は、様々なタイプのプラズマ、処理ガス、および/または当該技術分野で公知の化学物質による処理過程によって、細胞接着特性を持たせることができる。
【0047】
織網基質は、ここに記載されたバイオリアクターの中心カラムを取り囲むように作られた中心孔を有する多数のディスクで設けられることがある。複数のそのようなディスクは、充填床を形成するために、バイオリアクターの外部領域に積み重ねることができる。
【0048】
いくつかの実施の形態によれば、細胞培養基質は、ペクチン酸;部分的にエステル化されたペクチン酸、部分的にアミド化されたペクチン酸およびその塩;の内の少なくとも1つから選択されるイオンチャンネル架橋ポリガラクツロン酸化合物;および表面活性を有する少なくとも1つの第1の水溶性高分子から作られた可溶性発泡体足場である。
【0049】
本開示の実施の形態は、バッチ当たり約1015から約1018またはそれより多いウイルスゲノムの規模のウイルスゲノムを産生できる実用的サイズのウイルスベクタープラットフォームを達成することができる。例えば、いくつかの実施の形態において、ウイルスゲノム収量は、バッチ当たり約1015から約1016のウイルスゲノム、またはバッチ当たり約1016から約1019のウイルスゲノム、またはバッチ当たり約1016~1018のウイルスゲノム、またはバッチ当たり約1017から約1019のウイルスゲノム、またはバッチ当たり約1018から約1019のウイルスゲノム、またはバッチ当たり約1018以上のウイルスゲノムであり得る。
【0050】
それに加え、ここに開示された実施の形態は、細胞培養基質に対する細胞付着と増殖だけでなく、培養細胞の生存した状態での収穫を可能にする。生存細胞を収穫できないことは、現行のプラットフォームにおける著しい欠陥であり、これは、産生能力のためにかなりの数の細胞を作り、維持する上での難点となる。本開示の実施の形態の態様によれば、細胞培養基質から生存細胞を収穫することが可能であり、これは、80%から100%生存、または約85%から約99%生存、または約90%から約99%生存を含む。例えば、収穫された細胞の内、少なくとも80%が生存可能である、少なくとも85%が生存可能である、少なくとも90%が生存可能である、少なくとも91%が生存可能である、少なくとも92%が生存可能である、少なくとも93%が生存可能である、少なくとも94%が生存可能である、少なくとも95%が生存可能である、少なくとも96%が生存可能である、少なくとも97%が生存可能である、少なくとも98%が生存可能である、または少なくとも99%が生存可能である。細胞は、例えば、トリプシン、TrypLE、またはAccutase(商標)を使用して、細胞培養基質から放出することができる。
【0051】
説明のための実施
以下は、開示された主題を実施する様々な態様を説明するものである。各態様は、開示された主題の様々な特徴、特性、または利点の内の1つ以上を含み得る。実施は、開示された主題のいくつかの態様を例示することを意図しており、全ての可能な実施の包括的または網羅的な説明と見なされるべきではない。
【0052】
態様1は、独立型細胞培養サブユニットであって、細胞培養空間内に細胞培養基質を収容するように作られた内部空洞と、その細胞培養空間に流体を供給するように作られた流体入口と、内部空洞から流体を除去するように作られた流体出口であって、その内部空洞は、流体が流体入口から流入し、細胞培養空間を通り、流体出口を通って流出するように作られている、流体出口と、独立型細胞培養サブユニットの上部と底部の少なくとも一方に配置された少なくとも1つのアライメント機構とを有する独立型細胞培養サブユニットを備え、その少なくとも1つのアライメント機構は、別の独立型細胞培養サブユニットの少なくとも1つのアライメント機構と揃うように作られ、よって、その独立型細胞培養サブユニットは、別の独立型細胞培養サブユニットと積み重ねられる、モジュール式細胞培養システムに関する。
【0053】
態様2は、流体入口と細胞培養空間との間に配置された第1の流れ分布板をさらに含む、態様1のモジュール式細胞培養システムに関する。
【0054】
態様3は、第1の流れ分布板が、細胞培養空間の幅に亘り均一に流体入口から培地を分布させるように作られている、態様2のモジュール式細胞培養システムに関する。
【0055】
態様4は、細胞培養空間と流体出口との間に配置された第2の流れ分布板をさらに含む、態様1~3のいずれか1つのモジュール式細胞培養システムに関する。
【0056】
態様5は、第2の流れ分布板が、細胞培養空間から出る培地の均一な流れを促進させるように作られている、態様4のモジュール式細胞培養システムに関する。
【0057】
態様6は、第1と第2の流れ分布板が、細胞培養空間の上部と底部を画成する、態様2~5のいずれか1つのモジュール式細胞培養システムに関する。
【0058】
態様7は、細胞培養空間内に配置された細胞培養基質をさらに含む、態様1~6のいずれか1つのモジュール式細胞培養システムに関する。
【0059】
態様8は、細胞培養基質が多孔質材料から作られている、態様7のモジュール式細胞培養システムに関する。
【0060】
態様9は、細胞培養基質が、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリビニルピロリドン、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンオキシド、ポリピロール、およびポリプロピレンオキシドの少なくとも1つから作られている、態様7または態様8のモジュール式細胞培養システムに関する。
【0061】
態様10は、細胞培養基質が、成形高分子格子、3D印刷高分子格子シート、および織網シートの少なくとも1つから作られている、態様8または態様9のモジュール式細胞培養システムに関する。
【0062】
態様11は、細胞培養基質が、1つ以上の繊維から作られた織網から作られている、態様7~10のいずれか1つのモジュール式細胞培養システムに関する。
【0063】
態様12は、1つ以上の繊維が、約50μmから約1000μm、約50μmから約600μm、約50μmから約400μm、約100μmから約325μm、または約150μmから約275μmの繊維径を有する、態様11のモジュール式細胞培養システムに関する。
【0064】
態様13は、織網が、1つ以上の繊維の格子間に複数の開口を含み、その複数の開口が、約100μmから約1000μm、約200μmから約900μm、または約225μmから約800μmの直径を有する、態様11または態様12のモジュール式細胞培養システムに関する。
【0065】
態様14は、細胞培養基質が、可溶性発泡体足場である、態様7または態様8のモジュール式細胞培養システムに関する。
【0066】
態様15は、可溶性発泡体足場が、ペクチン酸;部分的にエステル化されたペクチン酸、部分的にアミド化されたペクチン酸およびその塩の内の少なくとも1つから選択されるイオンチャンネル架橋ポリガラクツロン酸化合物;および表面活性を有する少なくとも1つの第1の水溶性高分子から作られている、態様14のモジュール式細胞培養システムに関する。
【0067】
態様16は、可溶性発泡体足場が、接着高分子コーティングを含む、態様14または態様15のモジュール式細胞培養システムに関する。
【0068】
態様17は、接着高分子コーティングがペプチドを含む、態様16のモジュール式細胞培養システムに関する。
【0069】
態様18は、接着高分子コーティングが、BSP、ビトロネクチン、フィブロネクチン、ラミニン、I型コラーゲン、IV型コラーゲン、変性コラーゲン、およびその混合物からなる群より選択されるペプチドを含む、態様17のモジュール式細胞培養システムに関する。
【0070】
態様19は、接着高分子コーティングが、Synthemax(登録商標)II-SCから作られている、態様17のモジュール式細胞培養システムに関する。
【0071】
態様20は、複数の前記独立型細胞培養サブユニットをさらに含み、この複数の独立型細胞培養サブユニットが積み重ねられている、態様1~19のいずれか1つのモジュール式細胞培養システムに関する。
【0072】
態様21は、アライメント機構が、複数の独立型細胞培養サブユニットの隣接する独立型細胞培養サブユニットを接続する取付機構である、態様20のモジュール式細胞培養システムに関する。
【0073】
態様22は、取付機構により、隣接する独立型細胞培養サブユニットが開放可能に取り付けられる、態様21のモジュール式細胞培養システムに関する。
【0074】
態様23は、取付機構が、隣接する独立型細胞培養サブユニットのアライメント機構のかみ合うプロファイル、スナップ式留め具のはめ合い部品、またはネジ式接続部の少なくとも1つである、態様21または態様22のモジュール式細胞培養システムに関する。
【0075】
態様24は、内部空洞の内壁に配置された保持機構をさらに含み、その保持機構が、細胞培養基質に対して第2の流れ分布板を適所に保持するように作られている、態様4のモジュール式細胞培養システムに関する。
【0076】
様々な開示された実施の形態は、特定の実施の形態に関して記載された特定の特徴、要素または工程を含むことがあると認識されよう。特定の特徴、要素または工程が、1つの特定の実施の形態に関して記載されているが、様々な説明されていない組合せまたは順序で、変わりの実施の形態と交換されても、または組み合わされてもよいことも認識されるであろう。
【0077】
ここに用いられているように、名詞は、別段に明白に示されていない限り、「少なくとも1つ」の対象を指し、「ただ1つ」の対象に限定されるべきではないことも理解すべきである。それゆえ、例えば、「開口」への言及は、文脈上明白に他の意味に解釈すべき場合を除いて、そのような「開口」を2つ以上有する例を含む。
【0078】
範囲は、ここでは、「約」1つの特定の値から、および/または「約」別の特定の値までとして表現することができる。このような範囲が表現される場合、例は、その1つの特定の値から、および/または他方の特定の値までを含む。同様に、値が、先行詞「約」の使用により、近似値として表現される場合、特定の値が別の態様を形成することが理解されるであろう。さらに、各範囲の端点は、他の端点との関係において、および他の端点から独立しての両方で有意であることが理解されるであろう。
【0079】
ここに表現される全ての数値は、別段に明白に示されていない限り、そのように記載されているか否かにかかわらず、「約」を伴うと解釈されるものとする。しかしながら、その値について「約」と表現されているか否かにかかわらず、列挙された各数値も同様に正確に意図されていることがさらに理解されよう。それゆえ、「10mm未満の寸法」および「約10mm未満の寸法」の両方とも、「約10mm未満の寸法」並びに「10mm未満の寸法 」の実施の形態を含む。
【0080】
特に明記のない限り、ここに記載されたどの方法も、その工程が特定の順序で実施されることを要求すると解釈されることは、決して意図されない。したがって、方法の請求項が、その工程が従うべき順序を実際に記載していない場合、または工程が特定の順序に限定されるべきであることが請求項または説明において他に具体的に記載されていない場合、いかなる特定の順序も暗示されることは決して意図されない。
【0081】
特定の実施の形態の様々な特徴、要素または工程は、移行句「含む」を使用して開示されることがあるが、移行句「からなる」または「から実質的になる」を使用して記載されることがあるものを含む、代わりの実施の形態が暗示されることを理解すべきである。それゆえ、例えば、A+B+Cを含む方法に対して暗示される代わりの実施の形態は、方法がA+B+Cからなる実施の形態、および方法がA+B+Cから実質的になる実施の形態を含む。
【0082】
本開示の多数の実施の形態が、添付図面に示され、先の詳細な説明に記載されてきたが、本開示は、開示された実施の形態に限定されず、以下の請求項によって記載され、定義されるように、本開示から逸脱せずに、多数の再配列、改変および置換が可能であることを理解するべきである。
【0083】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0084】
実施形態1
モジュール式細胞培養システムにおいて、
独立型細胞培養サブユニットであって、
細胞培養空間内に細胞培養基質を収容するように作られた内部空洞と、
前記細胞培養空間に流体を供給するように作られた流体入口と、
前記内部空洞から流体を除去するように作られた流体出口であって、該内部空洞は、流体が前記流体入口から流入し、前記細胞培養空間を通り、該流体出口を通って流出するように作られている、流体出口と、
前記独立型細胞培養サブユニットの上部と底部の少なくとも一方に配置された少なくとも1つのアライメント機構と、
を有する独立型細胞培養サブユニット、
を備え、
前記少なくとも1つのアライメント機構は、別の独立型細胞培養サブユニットの少なくとも1つのアライメント機構と揃うように作られ、よって、該独立型細胞培養サブユニットは、該別の独立型細胞培養サブユニットと積み重ねられる、モジュール式細胞培養システム。
【0085】
実施形態2
前記流体入口と前記細胞培養空間との間に配置された第1の流れ分布板をさらに含む、実施形態1に記載のモジュール式細胞培養システム。
【0086】
実施形態3
前記第1の流れ分布板が、前記細胞培養空間の幅に亘り均一に前記流体入口から培地を分布させるように作られている、実施形態2に記載のモジュール式細胞培養システム。
【0087】
実施形態4
前記細胞培養空間と前記流体出口との間に配置された第2の流れ分布板をさらに含む、実施形態1から3のいずれか1つに記載のモジュール式細胞培養システム。
【0088】
実施形態5
前記第2の流れ分布板が、前記細胞培養空間から出る培地の均一な流れを促進させるように作られている、実施形態4に記載のモジュール式細胞培養システム。
【0089】
実施形態6
前記第1と第2の流れ分布板が、前記細胞培養空間の上部と底部を画成する、実施形態2から5のいずれか1つに記載のモジュール式細胞培養システム。
【0090】
実施形態7
前記細胞培養空間内に配置された細胞培養基質をさらに含む、実施形態1から6のいずれか1つに記載のモジュール式細胞培養システム。
【0091】
実施形態8
前記細胞培養基質が多孔質材料から作られている、実施形態7に記載のモジュール式細胞培養システム。
【0092】
実施形態9
前記細胞培養基質が、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリビニルピロリドン、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンオキシド、ポリピロール、およびポリプロピレンオキシドの少なくとも1つから作られている、実施形態7または8に記載のモジュール式細胞培養システム。
【0093】
実施形態10
前記細胞培養基質が、成形高分子格子、3D印刷高分子格子シート、および織網シートの少なくとも1つから作られている、実施形態8または9に記載のモジュール式細胞培養システム。
【0094】
実施形態11
前記細胞培養基質が、1つ以上の繊維から作られた織網から作られている、実施形態7から10のいずれか1つに記載のモジュール式細胞培養システム。
【0095】
実施形態12
前記1つ以上の繊維が、約50μmから約1000μm、約50μmから約600μm、約50μmから約400μm、約100μmから約325μm、または約150μmから約275μmの繊維径を有する、態様11に記載のモジュール式細胞培養システム。
【0096】
実施形態13
前記織網が、前記1つ以上の繊維の格子間に複数の開口を含み、該複数の開口が、約100μmから約1000μm、約200μmから約900μm、または約225μmから約800μmの直径を有する、実施形態11または12に記載のモジュール式細胞培養システム。
【0097】
実施形態14
前記細胞培養基質が、可溶性発泡体足場である、実施形態7または8に記載のモジュール式細胞培養システム。
【0098】
実施形態15
前記可溶性発泡体足場が、
ペクチン酸;部分的にエステル化されたペクチン酸、部分的にアミド化されたペクチン酸およびその塩の内の少なくとも1つから選択されるイオンチャンネル架橋ポリガラクツロン酸化合物、および
表面活性を有する少なくとも1つの第1の水溶性高分子、
から作られている、実施形態14に記載のモジュール式細胞培養システム。
【0099】
実施形態16
前記可溶性発泡体足場が、接着高分子コーティングを含む、実施形態14または15に記載のモジュール式細胞培養システム。
【0100】
実施形態17
前記接着高分子コーティングがペプチドを含む、実施形態16に記載のモジュール式細胞培養システム。
【0101】
実施形態18
前記接着高分子コーティングが、BSP、ビトロネクチン、フィブロネクチン、ラミニン、I型コラーゲン、IV型コラーゲン、変性コラーゲン、およびその混合物からなる群より選択されるペプチドを含む、実施形態17に記載のモジュール式細胞培養システム。
【0102】
実施形態19
前記接着高分子コーティングが、「Synthemax」II-SCから作られている、実施形態17に記載のモジュール式細胞培養システム。
【0103】
実施形態20
複数の前記独立型細胞培養サブユニットをさらに含み、該複数の独立型細胞培養サブユニットが積み重ねられている、実施形態1から19のいずれか1つに記載のモジュール式細胞培養システム。
【0104】
実施形態21
前記アライメント機構が、前記複数の独立型細胞培養サブユニットの隣接する独立型細胞培養サブユニットを接続する取付機構である、実施形態20に記載のモジュール式細胞培養システム。
【0105】
実施形態22
前記取付機構により、前記隣接する独立型細胞培養サブユニットが開放可能に取り付けられる、実施形態21に記載のモジュール式細胞培養システム。
【0106】
実施形態23
前記取付機構が、前記隣接する独立型細胞培養サブユニットのアライメント機構のかみ合うプロファイル、スナップ式留め具のはめ合い部品、またはネジ式接続部の少なくとも1つである、実施形態21または22に記載のモジュール式細胞培養システム。
【0107】
実施形態24
前記内部空洞の内壁に配置された保持機構をさらに含み、該保持機構が、前記細胞培養基質に対して前記第2の流れ分布板を適所に保持するように作られている、実施形態4に記載のモジュール式細胞培養システム。
【符号の説明】
【0108】
1 入口
2 出口
3、3’、23 流れ分布板
4 基質
5、5A、5B、15A、15B アライメント機構
7 一体化出口ポート
8 専用ポンプ
9a~9d、279 培地馴化容器
10 可撓性管類
11 容器
12 流れ分配器
17 酸素化カラム
18 気体用出口
100、100A~100D、150 細胞培養ユニット
110、160、250、270、310 積層細胞培養システム
300、300A、300B、322A~322D サブユニット
302 マニホールド
304 中央流カラム
306 充填床基質
324 無菌プルタグ
326 キャリア
400 バイオプロセスシステム
402 バイオリアクター(容器)
406 細胞培養培地
409 ポンプ
411 培地馴化容器
412 センサ
413 バイオリアクターの入口
418 培地馴化制御装置
【国際調査報告】