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特表2023-503615循環からミトコンドリアDNA又はゲノムDNAを枯渇させることにより疾患及び症状を治療する組成物及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-31
(54)【発明の名称】循環からミトコンドリアDNA又はゲノムDNAを枯渇させることにより疾患及び症状を治療する組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20230124BHJP
   A61K 38/02 20060101ALI20230124BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230124BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230124BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230124BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20230124BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20230124BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20230124BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230124BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20230124BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230124BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20230124BHJP
   A61K 31/337 20060101ALI20230124BHJP
   A61K 31/704 20060101ALI20230124BHJP
   A61K 31/282 20060101ALI20230124BHJP
   A61K 31/4745 20060101ALI20230124BHJP
   A61K 31/513 20060101ALI20230124BHJP
   A61K 31/616 20060101ALI20230124BHJP
   A61K 31/727 20060101ALI20230124BHJP
   A61K 31/21 20060101ALI20230124BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230124BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20230124BHJP
   C07K 14/735 20060101ALI20230124BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20230124BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20230124BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20230124BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20230124BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20230124BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230124BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230124BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20230124BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20230124BHJP
   A61K 33/243 20190101ALI20230124BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
A61K38/02 ZNA
A61K45/00
A61P43/00 121
A61P35/00
A61P9/10
A61P9/00
A61P17/02
A61P25/00
A61P31/00
A61P29/00
A61P37/02
A61K31/337
A61K31/704
A61K31/282
A61K31/4745
A61K31/513
A61K31/616
A61K31/727
A61K31/21
A61K39/395 N
A61K39/395 D
A61K35/12
C07K14/735
C07K19/00
C12N15/13
C12N15/12
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12M1/34 F
G01N33/53 M
A61K33/243
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022530781
(86)(22)【出願日】2020-11-25
(85)【翻訳文提出日】2022-07-05
(86)【国際出願番号】 US2020062330
(87)【国際公開番号】W WO2021108637
(87)【国際公開日】2021-06-03
(31)【優先権主張番号】62/940,457
(32)【優先日】2019-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514135801
【氏名又は名称】シーダーズ-サイナイ メディカル センター
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100124453
【弁理士】
【氏名又は名称】資延 由利子
(74)【代理人】
【識別番号】100135208
【弁理士】
【氏名又は名称】大杉 卓也
(74)【代理人】
【識別番号】100183656
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100224786
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 卓之
(74)【代理人】
【識別番号】100225015
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 彩夏
(72)【発明者】
【氏名】ボーラ,スプリヤ
(72)【発明者】
【氏名】ボーミック,ニール
(72)【発明者】
【氏名】ハルダー,サブハッシュ
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
4C084
4C085
4C086
4C087
4C206
4H045
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029BB15
4B029BB20
4B029CC03
4B029CC04
4B029FA12
4B029FA15
4B029GB10
4B065AA01X
4B065AA57
4B065AA72X
4B065AA90X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA44
4C084AA19
4C084BA02
4C084BA03
4C084BA22
4C084CA53
4C084MA02
4C084NA14
4C084ZA01
4C084ZA36
4C084ZA89
4C084ZB05
4C084ZB07
4C084ZB11
4C084ZB26
4C084ZB31
4C084ZC41
4C084ZC42
4C084ZC43
4C084ZC75
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB42
4C085CC22
4C085CC23
4C085CC32
4C085DD62
4C085EE01
4C085EE03
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA02
4C086BC43
4C086CB22
4C086EA10
4C086HA12
4C086HA24
4C086HA26
4C086HA28
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA01
4C086ZA36
4C086ZA89
4C086ZB05
4C086ZB07
4C086ZB11
4C086ZB26
4C086ZB31
4C086ZC41
4C086ZC42
4C086ZC43
4C086ZC75
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC30
4C087CA09
4C087MA02
4C087NA14
4C087ZA01
4C087ZA36
4C087ZA89
4C087ZB05
4C087ZB07
4C087ZB11
4C087ZB26
4C087ZB31
4C087ZC41
4C087ZC42
4C087ZC43
4C087ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206EA07
4C206JB16
4C206KA01
4C206MA02
4C206MA04
4C206NA14
4C206ZA01
4C206ZA36
4C206ZA89
4C206ZB05
4C206ZB07
4C206ZB11
4C206ZB26
4C206ZB31
4C206ZC41
4C206ZC42
4C206ZC43
4C206ZC75
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA30
4H045CA40
4H045DA50
4H045DA80
4H045DA83
4H045EA20
(57)【要約】
本発明は、mtDNA及び/又はgDNAと結合することができ、循環mtDNA及び/又はgDNAの枯渇を必要としている対象から循環mtDNA及び/又はgDNAを枯渇させることができるタンパク質を記載する。本タンパク質は、癌、心筋梗塞、及び外傷性脳損傷等の疾患及び症状の治療に使用可能である。本タンパク質は、循環mtDNA及びgDNAの検出及び測定にも使用可能である。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミトコンドリアDNA(mtDNA)、ゲノムDNA(gDNA)、又はその両方と結合するポリペプチドと、
IgG受容体ガンマのFc断片(FcgRIIb)又はその断片と、
を含む、タンパク質。
【請求項2】
mtDNA、gDNA、又はその両方と結合する前記ポリペプチドは、DEC205の断片又は1つ以上のアミノ酸欠失、付加、若しくは置換を持つDEC205の断片を含む、請求項1に記載のタンパク質。
【請求項3】
前記DEC205の断片は、リシンB型レクチンドメイン、フィブロネクチンII型レクチンドメイン、及び少なくとも1つのC型レクチンドメインからなる群より選択される少なくとも1種のドメインと少なくとも90%同一であるポリペプチドである、請求項1に記載のタンパク質。
【請求項4】
前記DEC205の断片は、リシンB型レクチンドメイン、フィブロネクチンII型レクチンドメイン、及び少なくとも1つのC型レクチンドメインからなる群より選択される少なくとも2種のドメインと少なくとも90%同一であるポリペプチドである、請求項1に記載のタンパク質。
【請求項5】
前記DEC205の断片は、リシンB型レクチンドメイン、フィブロネクチンII型レクチンドメイン、及び少なくとも1つのC型レクチンドメインからなる群より選択される少なくとも3種のドメインと少なくとも90%同一であるポリペプチドである、請求項1に記載のタンパク質。
【請求項6】
前記DEC205の断片は、リシンB型レクチンドメイン、フィブロネクチンII型レクチンドメイン、又はその両方と少なくとも90%同一であるポリペプチドである、請求項1に記載のタンパク質。
【請求項7】
前記DEC205の断片は、リシンB型レクチンドメイン及びフィブロネクチンII型レクチンドメインと少なくとも90%同一であるポリペプチドである、請求項1に記載のタンパク質。
【請求項8】
前記DEC205の断片は、リシンB型レクチンドメイン、フィブロネクチンII型レクチンドメイン、及び少なくとも1つのC型レクチンドメインと少なくとも90%同一であるポリペプチドである、請求項1に記載のタンパク質。
【請求項9】
前記DEC205の断片は、少なくとも1つのC型レクチンドメインと少なくとも90%同一であるポリペプチドである、請求項1に記載のタンパク質。
【請求項10】
前記DEC205の断片は、少なくとも2つのC型レクチンドメインと少なくとも90%同一であるポリペプチドである、請求項1に記載のタンパク質。
【請求項11】
前記DEC205の断片は、配列番号1、配列番号2、及び配列番号3からなる群より選択される配列と少なくとも90%同一であるポリペプチドを含む、請求項1に記載のタンパク質。
【請求項12】
前記DEC205の断片は、配列番号1、配列番号2、及び配列番号3からなる群より選択される配列を有するポリペプチドを含む、請求項1に記載のタンパク質。
【請求項13】
前記DEC205の断片は、配列番号4を含む配列と少なくとも90%同一であるポリペプチドを含む、請求項1に記載のタンパク質。
【請求項14】
前記DEC205の断片は、配列番号4の中の少なくとも168個の連続アミノ酸を有するポリペプチドを含む、請求項1に記載のタンパク質。
【請求項15】
前記DEC205の断片は、配列番号4の中の168個~414個の連続アミノ酸を有するポリペプチドを含む、請求項1に記載のタンパク質。
【請求項16】
前記DEC205の断片は、配列番号4の中の183個~368個の連続アミノ酸を有するポリペプチドを含む、請求項1に記載のタンパク質。
【請求項17】
前記DEC205の断片は、配列番号4の中の202個~322個の連続アミノ酸を有するポリペプチドを含む、請求項1に記載のタンパク質。
【請求項18】
前記DEC205の断片は、配列番号4の中の220個~276個の連続アミノ酸を有するポリペプチドを含む、請求項1に記載のタンパク質。
【請求項19】
前記IgG受容体ガンマのFc断片(FcgRIIb)は、ヒトIgG1のFcドメイン又は最高22のアミノ酸付加、欠失、及び/又は置換を持つヒトIgG1のFcドメインを含む、請求項1~18のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項20】
前記IgG受容体ガンマのFc断片(FcgRIIb)又は前記その断片は、配列番号5に明記されるとおりの少なくとも205個の連続アミノ酸を含む、請求項1~18のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項21】
前記IgG受容体ガンマのFc断片(FcgRIIb)又は前記その断片は、配列番号5と少なくとも90%配列同一性を持つ配列を含む、請求項1~18のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項22】
前記IgG受容体ガンマのFc断片(FcgRIIb)は、配列番号5に明記されるとおりの配列を有するポリペプチドを含む、請求項1~18のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項23】
前記IgG受容体ガンマのFc断片(FcgRIIb)は、マウスIgG1のFcドメイン又は最高21のアミノ酸付加、欠失、及び/又は置換を持つマウスIgG1のFcドメインである、請求項1~18のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項24】
前記IgG受容体ガンマのFc断片(FcgRIIb)又は前記その断片は、配列番号6に明記されるとおりの少なくとも209個の連続アミノ酸を含む、請求項1~18のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項25】
前記IgG受容体ガンマのFc断片(FcgRIIb)又は前記その断片は、配列番号6と少なくとも90%配列同一性を持つ配列を含む、請求項1~18のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項26】
前記IgG受容体ガンマのFc断片(FcgRIIb)は、配列番号6に明記されるとおりの配列を有するポリペプチドを含む、請求項1~18のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項27】
シグナル配列、リンカー、又はその両方を更に含む、請求項1~26のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項28】
前記シグナル配列は、配列番号7に明記されるとおりのアミノ酸を含む、請求項27に記載のタンパク質。
【請求項29】
配列番号8の中のアミノ酸24番~435番、配列番号9の中のアミノ酸24番~583番、配列番号10の中のアミノ酸24番~529番、配列番号11の中のアミノ酸24番~440番、配列番号12の中のアミノ酸24番~588番、又は配列番号13の中のアミノ酸24番~534番のうちいずれか1つに明記されるとおりの配列を有するタンパク質から選択される、請求項1に記載のタンパク質。
【請求項30】
配列番号1及び配列番号5、又は、
配列番号2及び配列番号5、又は、
配列番号3及び配列番号5、又は、
配列番号1及び配列番号6、又は、
配列番号2及び配列番号6、又は、
配列番号3及び配列番号6、
の配列を含むタンパク質から選択される、請求項1に記載のタンパク質。
【請求項31】
配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、又は配列番号13のうちいずれか1つに明記されるとおりの配列を有するタンパク質から選択される、請求項1に記載のタンパク質。
【請求項32】
mtDNA、gDNA、又はその両方と結合する前記ポリペプチドは、toll様受容体9(TLR9)の断片又は1つ以上のアミノ酸欠失、付加、若しくは置換を持つTLR9の断片を含む、請求項1に記載のタンパク質。
【請求項33】
抗体のFc領域又はその断片を更に含む、請求項1~32のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項34】
循環mtDNAを枯渇させることができる、請求項1~33のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項35】
循環ゲノムDNA(gDNA)を枯渇させることができる、請求項1~33のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項36】
請求項1~35のいずれか1項に記載のタンパク質をコードする、核酸。
【請求項37】
請求項1~35のいずれか1項に記載のタンパク質を産生する細胞、又は請求項36に記載の核酸を含む細胞。
【請求項38】
細菌細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、又はベビーハムスター腎臓細胞(BHK)である、請求項37に記載の細胞。
【請求項39】
前記細菌細胞は、バチルス・サブチルス又はラクトコッカス・ラクチスである、請求項38に記載の細胞。
【請求項40】
請求項1~35のいずれか1項に記載のタンパク質と、
治療薬と、
を含む、組み合わせ。
【請求項41】
前記治療薬は、抗腫瘍剤、化学療法薬、アンドロゲンアブレーション剤、心筋梗塞治療薬、外傷性脳損傷治療薬、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項40に記載の組み合わせ。
【請求項42】
前記治療薬は、タキサン、アントラサイクリン、又は白金系抗悪性腫瘍薬である、請求項40に記載の組み合わせ。
【請求項43】
前記治療薬は、ドセタキセル、パクリタキセル、カバジタキセル、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、バルルビシン、シスプラチン、オキサリプラチン、カルボプラチン、イリノテカン、又はフルオロウラシル(5FU)である、請求項40に記載の組み合わせ。
【請求項44】
前記治療薬は、アンドロゲン受容体アンタゴニスト、アンドロゲン合成阻害剤、又は抗ゴナドトロピンである、請求項40に記載の組み合わせ。
【請求項45】
前記治療薬は、ビカルタミド、エンザルタミド、アパルタミド、フルタミド、ニルタミド、ダロルタミド、酢酸シプロテロン、酢酸メゲストロール、クロルマジノン酢酸エステル、スピロノラクトン、オキセンドロン、ケトコナゾール、アビラテロン酢酸エステル、セビテロネル、アミノグルテチミド、フィナステリド、デュタステリド、エプリステリド、アルファトラジオール、ノコギリヤシエキス、リュープロレリン、セトロレリックス、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項40に記載の組み合わせ。
【請求項46】
前記治療薬は、アスピリン、血栓溶解剤、ヘパリン、血小板凝集阻害薬、ニトログリセリン、ベータ遮断薬、ACE阻害剤、スタチン、及びそれらの組み合わせである、請求項40に記載の組み合わせ。
【請求項47】
前記治療薬は、利尿薬、抗痙攣薬、昏睡導入薬、又はそれらの組み合わせである、請求項40に記載の組み合わせ。
【請求項48】
少なくとも1つの入口と、
少なくとも1つの出口と、
固形基材を備える少なくとも1つのチャンバーと、
前記固形基材に固定された請求項1~35のいずれか1項に記載のタンパク質と、
を備える、デバイス。
【請求項49】
マイクロ流体デバイスである、請求項48に記載のデバイス。
【請求項50】
前記固形基材は、デキストランビーズ又はセファロースビーズである、請求項48に記載のデバイス。
【請求項51】
固形基材に固定された請求項1~35のいずれか1項に記載のタンパク質
を備える、デバイス。
【請求項52】
前記固形基材は、マルチウェルプレートである、請求項51に記載のデバイス。
【請求項53】
前記固形基材は、ビーズである、請求項51に記載のデバイス。
【請求項54】
前記タンパク質は、更に、導電性基材と結合して又は導電性基材に固定されていて、mtDNA、gDNA、又はその両方との結合に際して検出可能なシグナルを生成する、請求項51に記載のデバイス。
【請求項55】
前記導電性基材は、金、銀、白金、イリジウム、又は銅である、請求項51に記載のデバイス。
【請求項56】
前記タンパク質は、更に、シリコーンと結合している又はシリコーンに固定されている、請求項51に記載のデバイス。
【請求項57】
哺乳類対象において循環ミトコンドリアDNA(mtDNA)、ゲノムDNA(gDNA)、又はその両方を減少させる方法であって、
前記哺乳類対象に、請求項1~35のいずれか1項に記載のタンパク質を投与すること、又は、
前記哺乳類対象に、請求項40~47のいずれか1項に記載の組み合わせを投与すること、又は、
前記哺乳類対象の血液から循環mtDNA、gDNA、又はその両方を除去すること、又は、
前記哺乳類対象に、請求項38又は39の細菌細胞を投与すること、
を含む、方法。
【請求項58】
前記哺乳類対象は、循環ミトコンドリアDNA(mtDNA)、ゲノムDNA(gDNA)、若しくはその両方のレベル上昇が原因である又はそのレベル上昇に関連した疾患又は症状を有する又は有することが疑われる、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記疾患又は症状は、腫瘍、癌、心筋梗塞、心疾患、身体外傷、外傷性脳損傷、感染症、脳卒中、炎症、自己免疫疾患、悪液質、及び狼瘡からなる群より選択される、請求項57に記載の方法。
【請求項60】
前記癌は、固形腫瘍癌である、請求項57に記載の方法。
【請求項61】
前記癌は、前立腺癌又は乳癌である、請求項57に記載の方法。
【請求項62】
前記哺乳類対象の血液から循環mtDNAを除去することは、前記対象の血液を、請求項48~56のいずれか1項に記載のデバイスに通過させることを含む、請求項57に記載の方法。
【請求項63】
循環ミトコンドリアDNA(mtDNA)、ゲノムDNA、又はその両方を測定する方法であって、
生体試料を得ることと、
請求項1~35のいずれか1項に記載のタンパク質を前記生体試料に接触させることと、
前記タンパク質と前記mtDNA、gDNA、又はその両方との結合を検出することと、
タンパク質mtDNA結合複合体、タンパク質gDNA結合複合体、又はその両方の量を定量することと、
を含む、方法。
【請求項64】
前記タンパク質は、検出可能なシグナルを生成する標識を更に含む、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記検出可能なシグナルは、比色シグナル、蛍光、又は発光である、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記タンパク質は、請求項48~56のいずれか1項に記載のデバイスを用いて、前記生体試料に接触させられる、請求項63に記載の方法。
【請求項67】
前記デバイスは、導電性基材を備え、前記タンパク質は、前記導電性基材と結合して又は前記導電性基材に固定されていて、mtDNA、gDNA、又はその両方との結合に際して検出可能なシグナルを生成し、
前記検出可能なシグナルは、インピーダンス、抵抗、電流変化、又は電気化学的インピーダンススペクトルの変化であり、
前記導電性基材は、金、銀、白金、イリジウム、銅からなる群より選択される、請求項66に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、2019年11月26日に出願された米国仮特許出願第62/940,457号の米国特許法第119条(e)項に基づく優先権の主張を含み、この出願の全体は引用することにより本明細書の一部をなす。
【0002】
本発明は、疾患及び症状、例えば、癌、心筋梗塞、及び外傷性脳損傷等を治療する治療法に関する。
【背景技術】
【0003】
本明細書中の全ての刊行物は、個別の刊行物又は特許出願それぞれが、具体的にかつ個別に、引用することにより本明細書の一部をなすように示されているのと同程度に、引用することにより本明細書の一部をなす。以下の記載には、本発明を理解する上で有用と思われる情報が含まれる。このことは、本明細書中に提供される情報のどれ1つとして、それが先行技術である又は本特許出願にかかる発明に関連するとする承認ではないし、具体的若しくは暗黙のうちに参照される刊行物のどれ1つとして、それが先行技術であるとする承認でもない。
【0004】
前立腺癌(PCa)は、米国における男性の癌関連死の死因第二位である。2004年以来、タキサンは、進行PCaの治療の重要な中心となってから、今もなお中心であり続けている。タキサンは、ドセタキセル、パクリタキセル、及びカバジタキセルも含めて、多数の固形腫瘍型に関して、微小管を高度安定化して、細胞内輸送及びシグナル伝達を阻害し、有糸分裂停止を引き起こし、及びアポトーシス細胞死を誘導する。そのような固形腫瘍型には、卵巣、乳房、肺、頭頚部、及び前立腺が含まれる。ドセタキセルは、転移性、去勢抵抗性前立腺癌である男性に全生存期間延長効果をもたらした最初のタキサンであった。アンドロゲンシグナル伝達さえも阻害するドセタキセルの能力は、PCa抗癌活性におけるドセタキセルの重要性を支持する。第II相臨床試験では、アンドロゲン標的特化療法が失敗する前のタキサン使用について試験され、正の生化学的腫瘍反応が実証された。有意義なことに、CHAARTED(前立腺癌における広範疾患に関する化学ホルモン療法対アンドロゲンアブレーションの無作為化試験)治験において、高疾患体積の去勢感受性PCa患者にホルモン療法とドセタキセルとを併用することで、去勢療法単独に比べて有意な生存期間の利点がもたらされた。STAMPEDE(進行性又は転移性前立腺癌の全身療法:薬物有効性の評価)治験において、ドセタキセルは、主に転移性去勢感受性前立腺癌である男性に関して生存期間を改善した。PCaの管理におけるタキサンの重要性にも関わらず、その有用性は、毒性及び化学療法耐性の獲得により限定される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、これらの課題を克服する治療が当該技術分野で必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下の実施の形態及びそれらの態様を、組成物及び方法と合わせて説明及び解説するが、これらは、例示及び解説を意味するものであって、範囲を限定するものではない。
【0007】
様々な実施の形態において提供されるのは、ミトコンドリアDNA(mtDNA)、ゲノムDNA(gDNA)、又はその両方と結合するポリペプチドと、IgG受容体ガンマのFc断片(FcgRIIb)又はその断片とを含む、タンパク質である。
【0008】
様々な実施の形態において、mtDNA、gDNA、又はその両方と結合するポリペプチドは、DEC205の断片又は1つ以上のアミノ酸欠失、付加、若しくは置換を持つDEC205の断片を含むことができる。
【0009】
様々な実施の形態において、DEC205の断片は、リシンB型レクチンドメイン、フィブロネクチンII型レクチンドメイン、及び少なくとも1つのC型レクチンドメインからなる群より選択される少なくとも1種のドメインと少なくとも90%同一であるポリペプチドとすることができる。様々な実施の形態において、DEC205の断片は、リシンB型レクチンドメイン、フィブロネクチンII型レクチンドメイン、及び少なくとも1つのC型レクチンドメインからなる群より選択される少なくとも2種のドメインと少なくとも90%同一であるポリペプチドとすることができる。様々な実施の形態において、DEC205の断片は、リシンB型レクチンドメイン、フィブロネクチンII型レクチンドメイン、及び少なくとも1つのC型レクチンドメインからなる群より選択される少なくとも3種のドメインと少なくとも90%同一であるポリペプチドとすることができる。様々な実施の形態において、DEC205の断片は、リシンB型レクチンドメイン、フィブロネクチンII型レクチンドメイン、又はその両方と少なくとも90%同一であるポリペプチドとすることができる。様々な実施の形態において、DEC205の断片は、リシンB型レクチンドメイン及びフィブロネクチンII型レクチンドメインと少なくとも90%同一であるポリペプチドとすることができる。様々な実施の形態において、DEC205の断片は、リシンB型レクチンドメイン、フィブロネクチンII型レクチンドメイン、及び少なくとも1つのC型レクチンドメインと少なくとも90%同一であるポリペプチドとすることができる。様々な実施の形態において、DEC205の断片は、少なくとも1つのC型レクチンドメインと少なくとも90%同一であるポリペプチドとすることができる。様々な実施の形態において、DEC205の断片は、少なくとも2つのC型レクチンドメインと少なくとも90%同一であるポリペプチドとすることができる。様々な実施の形態において、DEC205の断片は、配列番号1、配列番号2、及び配列番号3からなる群より選択される配列と少なくとも90%同一であるポリペプチドを含むことができる。様々な実施の形態において、DEC205の断片は、配列番号1、配列番号2、及び配列番号3からなる群より選択される配列を有するポリペプチドを含むことができる。様々な実施の形態において、DEC205の断片は、配列番号4を含む配列と少なくとも90%同一であるポリペプチドを含むことができる。様々な実施の形態において、DEC205の断片は、配列番号4の中の少なくとも168個の連続アミノ酸を有するポリペプチドを含むことができる。様々な実施の形態において、DEC205の断片は、配列番号4の中の168個~414個の連続アミノ酸を有するポリペプチドを含むことができる。様々な実施の形態において、DEC205の断片は、配列番号4の中の183個~368個の連続アミノ酸を有するポリペプチドを含むことができる。様々な実施の形態において、DEC205の断片は、配列番号4の中の202個~322個の連続アミノ酸を有するポリペプチドを含むことができる。様々な実施の形態において、DEC205の断片は、配列番号4の中の220個~276個の連続アミノ酸を有するポリペプチドを含むことができる。
【0010】
様々な実施の形態において、IgG受容体ガンマのFc断片(FcgRIIb)は、ヒトIgG1のFcドメイン又は最高22のアミノ酸付加、欠失、及び/又は置換を持つヒトIgG1のFcドメインを含む。様々な実施の形態において、IgG受容体ガンマのFc断片(FcgRIIb)又はその断片は、配列番号5に明記されるとおりの少なくとも205個の連続アミノ酸を含むことができる。様々な実施の形態において、IgG受容体ガンマのFc断片(FcgRIIb)又はその断片は、配列番号5と少なくとも90%配列同一性を持つ配列を含むことができる。様々な実施の形態において、IgG受容体ガンマのFc断片(FcgRIIb)は、配列番号5に明記されるとおりの配列を有するポリペプチドを含むことができる。
【0011】
様々な実施の形態において、IgG受容体ガンマのFc断片(FcgRIIb)は、マウスIgG1のFcドメイン又は最高21のアミノ酸付加、欠失、及び/又は置換を持つマウスIgG1のFcドメインとすることができる。様々な実施の形態において、IgG受容体ガンマのFc断片(FcgRIIb)又はその断片は、配列番号6に明記されるとおりの少なくとも209個の連続アミノ酸を含むことができる。様々な実施の形態において、IgG受容体ガンマのFc断片(FcgRIIb)又はその断片は、配列番号6と少なくとも90%配列同一性を持つ配列を含むことができる。様々な実施の形態において、IgG受容体ガンマのFc断片(FcgRIIb)は、配列番号6に明記されるとおりの配列を有するポリペプチドを含むことができる。
【0012】
様々な実施の形態において、タンパク質は、シグナル配列、リンカー、又はその両方を更に含むことができる。様々な実施の形態において、シグナル配列は、配列番号7に明記されるとおりのアミノ酸を含むことができる。
【0013】
様々な実施の形態において、タンパク質は、配列番号8の中のアミノ酸24番~435番、配列番号9の中のアミノ酸24番~583番、配列番号10の中のアミノ酸24番~529番、配列番号11の中のアミノ酸24番~440番、配列番号12の中のアミノ酸24番~588番、又は配列番号13の中のアミノ酸24番~534番のうちいずれか1つに明記されるとおりの配列を有するタンパク質から選択することができる。
【0014】
様々な実施の形態において、タンパク質は、配列番号1及び配列番号5、又は配列番号2及び配列番号5、又は配列番号3及び配列番号5、又は配列番号1及び配列番号6、又は配列番号2及び配列番号6、又は配列番号3及び配列番号6の配列を含むタンパク質から選択することができる。
【0015】
様々な実施の形態において、タンパク質は、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、又は配列番号13のうちいずれか1つに明記されるとおりの配列を有するタンパク質から選択することができる。
【0016】
様々な実施の形態において、mtDNA、gDNA、又はその両方と結合するポリペプチドは、toll様受容体9(TLR9)の断片又は1つ以上のアミノ酸欠失、付加、若しくは置換を持つTLR9の断片を含む。
【0017】
様々な実施の形態において、タンパク質は、抗体のFc領域又はその断片を更に含むことができる。
【0018】
様々な実施の形態において、タンパク質は、循環mtDNAを枯渇させることができる。様々な実施の形態において、タンパク質は、循環ゲノムDNA(gDNA)を枯渇させることができる。
【0019】
本発明の様々な実施の形態において提供されるのは、本明細書中に記載されるとおりの本発明のタンパク質のいずれか1種をコードする核酸である。
【0020】
本発明の様々な実施の形態において提供されるのは、本発明のタンパク質のいずれか1種を産生する細胞である。
【0021】
本発明の様々な実施の形態において提供されるのは、本発明の核酸のいずれか1種を含む細胞である。
【0022】
様々な実施の形態において、細胞は、細菌細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、又はベビーハムスター腎臓細胞(BHK)とすることができる。様々な実施の形態において、細菌細胞は、バチルス・サブチルス(Bacillus subtilis)又はラクトコッカス・ラクチス(Lactococuslactis)である。
【0023】
本発明の様々な実施の形態において提供されるのは、本発明のタンパク質のいずれか1種と、治療薬とを含む組み合わせである。
【0024】
様々な実施の形態において、治療薬は、抗腫瘍剤、化学療法薬、アンドロゲンアブレーション剤、心筋梗塞治療薬、外傷性脳損傷治療薬、及びそれらの組み合わせからなる群より選択することができる。様々な実施の形態において、治療薬は、タキサン、アントラサイクリン、又は白金系抗悪性腫瘍薬とすることができる。様々な実施の形態において、治療薬は、ドセタキセル、パクリタキセル、カバジタキセル、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、バルルビシン、シスプラチン、オキサリプラチン、カルボプラチン、イリノテカン、又はフルオロウラシル(5FU)とすることができる。様々な実施の形態において、治療薬は、アンドロゲン受容体アンタゴニスト、アンドロゲン合成阻害剤、又は抗ゴナドトロピンとすることができる。様々な実施の形態において、治療薬は、ビカルタミド、エンザルタミド、アパルタミド、フルタミド、ニルタミド、ダロルタミド、酢酸シプロテロン、酢酸メゲストロール、クロルマジノン酢酸エステル、スピロノラクトン、オキセンドロン、ケトコナゾール、アビラテロン酢酸エステル、セビテロネル、アミノグルテチミド、フィナステリド、デュタステリド、エプリステリド、アルファトラジオール、ノコギリヤシエキス、リュープロレリン、セトロレリックス、及びそれらの組み合わせからなる群より選択することができる。様々な実施の形態において、治療薬は、アスピリン、血栓溶解剤、ヘパリン、血小板凝集阻害薬、ニトログリセリン、ベータ遮断薬、ACE阻害剤、スタチン、及びそれらの組み合わせとすることができる。様々な実施の形態において、治療薬は、利尿薬、抗痙攣薬、昏睡導入薬(coma-inducing drug)、又はそれらの組み合わせとすることができる。
【0025】
本発明の様々な実施の形態において提供されるのは、少なくとも1つの入口と、少なくとも1つの出口と、固形基材を備えた少なくとも1つのチャンバーと、固形基材に固定された本発明のタンパク質のいずれか1種とを備えたデバイスである。
【0026】
様々な実施の形態において、デバイスは、マイクロ流体デバイスが可能である。
【0027】
様々な実施の形態において、固形基材は、デキストランビーズ又はセファロースビーズが可能である。
【0028】
本発明の様々な実施の形態において提供されるのは、固形基材に固定された本発明のタンパク質のいずれか1種を備えたデバイスである。
【0029】
様々な実施の形態において、固形基材は、マルチウェルプレートとすることができる。様々な実施の形態において、固形基材は、ビーズとすることができる。
【0030】
様々な実施の形態において、タンパク質は、更に、導電性基材と結合して又は導電性基材に固定されていて、mtDNA、gDNA、又はその両方との結合に際して検出可能なシグナルを生成することができる。
【0031】
様々な実施の形態において、導電性基材は、金、銀、白金、イリジウム、又は銅とすることができる。
【0032】
様々な実施の形態において、タンパク質は、更に、シリコーンと結合することもできるし、シリコーンに固定することもできる。
【0033】
本発明の様々な実施の形態において提供されるのは、哺乳類対象における循環ミトコンドリアDNA(mtDNA)、ゲノムDNA(gDNA)、又はその両方を減少させる方法であって、哺乳類対象に本発明のタンパク質のいずれか1種を投与すること、又は哺乳類対象に本発明の組み合わせのいずれか1つを投与すること、又は哺乳類対象の血液から循環mtDNA、gDNA、若しくはその両方を除去すること、又は哺乳類対象に、本発明の細菌細胞のいずれか1種を投与することを含む、方法である。
【0034】
様々な実施の形態において、哺乳類対象は、循環ミトコンドリアDNA(mtDNA)、ゲノムDNA(gDNA)、若しくはその両方のレベル上昇が原因である又はそのレベル上昇に関連した疾患又は症状を有する又は有することが疑われる可能性がある。
【0035】
様々な実施の形態において、疾患又は症状は、腫瘍、癌、心筋梗塞、心疾患、身体外傷、外傷性脳損傷、感染症、脳卒中、炎症、自己免疫疾患、悪液質、及び狼瘡からなる群より選択することができる。
【0036】
様々な実施の形態において、癌は、固形腫瘍癌とすることができる。様々な実施の形態において、癌は、前立腺癌又は乳癌とすることができる。
【0037】
様々な実施の形態において、哺乳類対象の血液から循環mtDNAを除去することは、対象の血液を本発明のデバイスのいずれか1つに通過させることを含むことができる。
【0038】
本発明の様々な実施の形態において提供されるのは、循環ミトコンドリアDNA(mtDNA)、ゲノムDNA、又はその両方を測定する方法であって、生体試料を得ることと、本発明のタンパク質のいずれか1種を生体試料と接触させることと、タンパク質とmtDNA、gDNA、又はその両方との結合を検出することと、タンパク質mtDNA結合複合体、タンパク質gDNA結合複合体、又はその両方の量を定量することとを含む、方法である。
【0039】
様々な実施の形態において、タンパク質は、検出可能なシグナルを生成する標識を更に含むことができる。様々な実施の形態において、検出可能なシグナルは、比色シグナル、蛍光、又は発光が可能である。
【0040】
様々な実施の形態において、タンパク質は、本発明のデバイスのいずれか1つを用いて生体試料と接触させることができる。
【0041】
様々な実施の形態において、デバイスは、導電性基材を備えることができ、タンパク質は、導電性基材と結合して又は導電性基材に固定されていて、mtDNA、gDNA、又はその両方との結合に際して検出可能なシグナルを生成し、検出可能なシグナルは、インピーダンス、抵抗、電流変化、又は電気化学的インピーダンススペクトルの変化であり、導電性基材は、金、銀、白金、イリジウム、銅からなる群より選択される。
【0042】
本発明の他の特長及び利点は、以下の詳細な説明を、添付の図面と合わせて解釈することから明らかとなるだろう。これらの図面は、例として、本発明の実施形態の様々な特長を解説する。
【0043】
例示実施形態を、参照される図で解説する。本明細書中に開示される実施形態及び図は、限定するものではなく例示するものであると解釈すべきであることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】パネルA~Hは、mtDNAによるTLR9及びC3aの活性化を示す。A:48時間インキュベーション後、前立腺上皮の条件培地(CM)のミトコンドリアDNAを測定した(n=3)。B:LNCaP-CMで処理したCAF中のタンパク質発現を、ウエスタンブロットで可視化した。C:LNCaP-CMで処理したNAF及びCAF中のDEC205発現を、ウエスタンブロットで測定した。D:CAFをLNCaP-CMとともにインキュベートした後、DEC205を免疫沈降させ、架橋させ、MT-CO2に関してmtDNAのPCR増幅に供した。免疫沈降前のCAF細胞ライセート又はIgG免疫沈降物を、それぞれ、合計インプット及び陰性対照として用いた。E:LNCaP-CMとともにインキュベートしたCAFにおけるNF-κBシグナル伝達標的のmRNA発現プロファイルを、ヒートマップで対称CMと比較した(n=4)。F:CAF及びLNCaP-CMとともにインキュベートしたCAF中の差示的mRNA発現レベルの分布を示すボルケーノプロット。ヒートマップでは分泌タンパク質のみが図示されるものの、ボルケーノプロットではNF-κB標的遺伝子84種全てが表示される。G:DNアーゼ1処理あり又はなしでインキュベートした場合の、LNCaP-CMとともにインキュベートしたCAF中のTLR9及びアナフィラトキシンC3aタンパク質発現を、可視化した。DNアーゼ活性は、10分後、熱で不活化した。H:LNCaP-CMは、CAF細胞に内部移行し続いてTLR9シグナル伝達及びアナフィラトキシンC3a発現するためにDEC205と結合するmtDNAを含有する。*P<0.05、**P<0.01。
図2】パネルA~Gは、CAFによるC3a産生機構を示す。A:DNアーゼ1処理の存在下又は不在下、CpG-ODN又はLNCaP-CMで処理した野生型(WT)又はTLR9ノックアウト(TLR9-/-)マウス培養物由来のマウス前立腺線維芽細胞で、TLR9シグナル伝達を試験した。B:CpG-ODN、LNCaP-CM、又はTRAMPC2-CMを用いた処理後、CAF及びNAF条件培地の分泌C3aを、ELISAで測定した(n=3)。C:フローサイトメトリーを用いて、7AADで染色されないDCFDA+細胞を定量して求められるように、対照、CpG-ODN、又はLNCaP-CMとともにインキュベートしたCAF中の細胞内反応性酸素をDCFDA蛍光により定量した。D:緑色DCFDA蛍光は、DAPI核対比染色を用い蛍光顕微鏡観察したところ、細胞質に局在していた。スケールバーは、16 μmを表す。E:新鮮培地(対照)、CpG-ODN、又はLNCaP-CMとともにインキュベーションした後、CAF中のカタラーゼ活性を定量した。F:CAF中の補体C3及びアナフィラトキシンC3aのタンパク質発現についてウエスタンブロットを行った。カタラーゼ阻害剤、3-アミノ-1,2,4-トリアゾール(3AT)の存在下若しくは不在下でCpG-ODN、又は反応性酸素阻害剤、n-アセチルシステイン(NAC)の存在下若しくは不在下でLNCaP-CMのいずれかとともに、CAFをインキュベートした。G:LNCaP-CM中のMtDNAは、CAF細胞に内部移行し、続いてTLR9シグナル伝達するために、DEC205と結合する。LNCaP-CMがカタラーゼ活性を阻害することにより、CAF中でROSが産生されてC3aを生成することが可能になる。*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、及びns-有意ではない。
図3】パネルA~Eは、PCa進行におけるC3aの役割を示す。A:C3a受容体アゴニストペプチドの不在下及び存在下でインキュベート(48時間)したPCa細胞株で、細胞生存度及び増殖タンパク質発現についてウエスタンブロットを行った。B:C57BL/6マウスに、野生型(wt)又はTlr9-/-線維芽細胞にルシフェラーゼ発現TRAMPC2を組換え導入した組織を同種移植した。マウスを、生理食塩水又はTLR9アンタゴニストであるSB290157で処置した。ルシフェラーゼ生体発光を用いて、腫瘍進行を撮影した。C:各処理条件での平均腫瘍体積(mm3)及び標準偏差(S.D.)を示す(n=8)。
図3-1】D:腫瘍組織のリン酸化AKT、リン酸化ヒストン-H3、及びTUNELのH&E染色並びに免疫組織化学染色を行い、定量した。対応するグラフは、染色の平均及びS.D.表示を示す(n=4)。*P<0.05;**P<0.01。スケールバーは、10 μmを表す。E:腫瘍組織のFACS分析から、C3aアンタゴニスト及びTLR9ノックアウト線維芽細胞は、対照と比べると、CD3+T細胞浸潤は類似していたが、それらの活性化状態は、CD8+/CD69+発現により特定した場合、有意に異なっていたことが実証された。
図4】パネルA~Gは、ドセタキセルがPCa細胞からのmtDNA放出を促進し、パラ分泌TLR9シグナル伝達が治療抵抗性の一因であることを示す。A:ドセタキセル治療前及び後のPCa患者でmtDNAの血漿レベルを定量した(n=9)。B:ドセタキセルで処置したマウス由来血漿のMtDNA含有量を定量した(n=3)。データは、平均±S.D.を表し、*P<0.05である。C:ドセタキセルで処理したPCa細胞株によるMtDNA分泌は、用量依存的様式で上昇した(n=3)。繰り返し測定分散分析により有意性を確定した。D:ビヒクル又はドセタキセルで処理したLNCaP細胞を、サブ細胞分取に供した。マイトファジーマーカー、p62、Pink1、及びベクリンのミトコンドリア局在を、Tom20の同時発現により確認した。細胞質画分を、Rho Aの発現により確認した。E:ERストレスから生じるMtDNA分泌は、CHOP発現により示されるとおり、ドセタキセルで処理したLNCaP細胞及びPC3細胞で明らかであった。F:PC3細胞及びCAF細胞の三次元共培養モデルをドセタキセル及びTLR9アンタゴニストであるSB290157で処理することで、FACS分析でEPCaM+/Ki-67+細胞を定量することからも特定されるとおりの差示的上皮増殖が支持された(n=3)。G:ドセタキセル及びSB290157を用いた処理後MTTアッセイで測定されたPC3細胞生存度において、Chou-Talalay法を通じて、相乗的協同性が同定された(n=4)。信頼区間(Cl)1(直線)未満の値は、相乗的組み合わせを示すと見なされる。
図5】パネルA~Cは、ドセタキセル及びSB290157の相乗効果が腫瘍成長を阻害することを示す。A:皮下異種移植したPC3及びCAF腫瘍体積を、長手方向に測定した。腫瘍平均体積が80 mm3に達した時点で、マウスを、SB290157の存在下又は不在下で20日間、ビヒクル又はドセタキセルで処置した(n=4)。マウスの各群について代表的な画像を示す(嵌め込み)。B:各処置の腫瘍組織の免疫ブロットを示す(n=3)。
図5-1】C:腫瘍組織中のリン酸化TAK1、補体C3、リン酸化AKT、リン酸化ヒストンH3、及びTUNEL発現の免疫局在特定(褐色)を、ヘマトキシリン(青色)で対比染色した。対応する棒グラフは、それぞれの染色の平均及びS.D.表示を示す(n=5)。データは、一元配置分散分析による平均±S.D.を表す(*P<0.05;**P<0.01)。スケールバーは、10 μmを表す。
図6】PCa上皮とCAFの相互作用の模式図を示す。PCa細胞は、CAF細胞表面の形質膜陥入DEC205と結合可能なmtDNAを産生する。上皮由来mtDNAの下流のTLR9シグナル伝達は、NF-κB介在型C3発現をもたらす。CAF中にROSが蓄積することで、C3a成熟及びPCa細胞とのパラ分泌シグナル伝達が可能になり、これにより、細胞の生存及び増殖が可能になる。PCa細胞のドセタキセル処理は、CAFによる更なるC3a発現を永続化するmtDNAの分泌を拡大させるための、ERストレス及びマイトファジーの増強をもたらす。
図7】パネルA~Fは、以下を示す。A:BPH1条件培地(CM)及びLNCaP-CMの存在下又は不在下、培養NAF又はCAF中のTLR9の相対mRNA発現を測定した。B:培養ヒト前立腺癌細胞の条件培地でテロメアDNA濃度及びミトコンドリアDNA濃度を測定。C:LNCaP-CMで処理した培養CAFでカスパーゼ1及びIL-1βのタンパク質発現。LNCaP-CMにより誘導される低分子量切断型カスパーゼ1及び成熟活性IL1βは、DNアーゼ1処理及びその後の熱不活性化により制限された。s-アクチン発現をローディング対照として用いた。D:培養CAFによるLNCaP-CM誘導型TLR9 mRNA発現は、DNアーゼ1により制限されたが、条件培地の超音波処理により制限されなかった。E:ダイナソアの用量増加に伴うダイナミン介在型エキソソーム分泌の阻害は、LNCaP細胞によるmtDNA分泌に影響を及ぼさなかった。F:NAF及びCAFによるHMGB1及びHMGA2タンパク質発現を、LNCaP-CM処理後、ウエスタンブロット法に供した。*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001。
図8】パネルA~Cは、以下を示す。A:C3a受容体(C3a-R)mRNA発現は、培養LNCaP、PC3、及びTrampC2細胞により同様に発現した。B:DEC205、TLR9、HMGB1、及びC3aの発現について、示されるPCa上皮細胞株でウエスタンブロットを行った。C:LNCaP、PC3、及びTrampC2細胞の増殖を、C3aRアゴニスト又はスクランブルペプチドを用いて48時間処理後、FACS分析を通じてKi-67を測定することにより定量した(n=3)。
図9】パネルA~Cは、以下を示す。A:PC3細胞を指定の処理濃度でSB290157及びドセタキセル処理した場合のそれらの間の相乗的関係性をMTT生存度アッセイにより特定するため、Chou-Talalay法によりnn相互作用指数及び信頼区間を計算した。B:PC3/CAF腫瘍の皮下異種移植片を保有するマウスで、生理食塩水、ドセタキセル単独、又はSB290157と併用の治療過程全体を通じて、体重測定した。データは、一元配置分散分析による群内の平均±S.D.を表す(ns-有意ではない)。C:皮下異種移植マウスの各治療群から得られた腫瘍のH&E画像。
図10】DEC205の細胞外ドメインが、複数のレクチンドメイン:リシンB型レクチンドメイン、フィブロネクチンII型レクチンドメイン、及び10個のC型レクチンドメインを含むことを示す図である。リシンB型ドメイン及びフィブロネクチンII型ドメインを有するもの(RF-Fc)、リシンB型ドメイン、フィブロネクチンII型ドメイン、及びC型レクチンドメインを有するもの(RFL-Fc)、並びに2個のC型レクチンドメインを有するものという3種の抗体Fcドメイン複合体を生成させた。
図11】IgG1のFcドメインと複合体形成した3種のDEC205断片RF、RFL、及び2Lを示す図である。それぞれの構築物を安定発現するCHO-K1細胞の条件培地を、10%アクリルアミドゲルで行うタンパク質Gアフィニティー精製に供し、クーマシー染色で可視化した。
図12】(A)mtDNA及び(B)gDNAのRF-Fc及びRFL-Fcの結合についてのELISA試験を示す。RF-Fcは、gDNAの2倍、mtDNAと結合する。RFL-Fcは、mtDNA及びgDNAとの結合に類似した能力を有する。吸光度は、570 nmで測定した。OD値は、それぞれのFc濃度で正規化している。**P<0.01、***P<0.001、****P<0.0001。
図13】mtDNAにより増強されたドセタキセル耐性の根拠が、癌関連線維芽細胞性細胞による補体C3の発現にあることを示す(PNAS 2020 11:8515)。前立腺癌細胞(PC3)由来の条件培地を癌関連線維芽細胞性細胞とともにインキュベートした場合、C3発現は、RF-Fcを用いるmtDNAの枯渇により有意に下方制御された。**P<0.01。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本明細書中で引用される全ての参照は、完全に明記されているかのごとく、その全体が引用することにより本明細書の一部をなす。特に定義されない限り、本明細書中で使用される技術用語及び科学用語は、本発明の属する技術分野の当業者が一般的に理解するのと同じ意味を有する。Singleton et al., Dictionary of Microbiology and MolecularBiology 3rd ed., Revised, J. Wiley & Sons (New York, NY 2006)、March, Advanced Organic Chemistry Reactions, Mechanisms andStructure 7th ed., J. Wiley & Sons (New York, NY 2013)、及びSambrook and Russel, Molecular Cloning: A Laboratory Manual 4thed., Cold Spring Harbor Laboratory Press (Cold Spring Harbor, NY 2012)は、本出願で使用される用語の多くについて、当業者にとって総合案内となる。抗体をどのように調整するかについての参照は、以下:D. Lane, Antibodies: A Laboratory Manual 2nd ed.(Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor NY, 2013)、Kohler and Milstein, (1976) Eur. J. Immunol. 6: 511、Queen et al. U. S. Patent No. 5,585,089、及びRiechmannet al., Nature 332: 323 (1988)、米国特許第4,946,778号、Bird, Science 242:423-42 (1988)、Huston etal, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879- 5883 (1988)、Wardet al, Nature 334:544-54 (1989)、Tomlinson I. andHolliger P. (2000) Methods Enzymol, 326, 461-479、HolligerP. (2005) Nat. Biotechnol. Sep; 23(9): 1126-36)を参照。
【0046】
当業者なら分かるだろうが、本明細書中に記載されるものと同様な又は等価な方法及び材料が多数存在し、それらは本発明の実施において使用可能である。実際、本発明は、記載される方法及び材料に何ら限定されない。本発明の目的に関して、以下の用語を下記で定義する。
【0047】
本明細書中で使用される場合、「約」という用語は、参照される数字表記と合わせて使用される場合、本明細書にて特に具体的に提示されない限り、参照される数字表記±参照される数字表記の最大5%までを意味する。例えば、「約50%」という言葉は、45%~55%の範囲を包含する。様々な実施形態において、「約」という用語は、参照される数字表記と合わせて使用される場合、特許請求の範囲で具体的に提示されるならば、参照される数字表記±参照される数字表記の最大9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、又は1%を意味することができる。
【0048】
「生体試料」という用語は、本明細書中で使用される場合、生物学的生物から採取又は単離された試料を指す。生体試料の例として、体液、全血、血漿、血清、糞便、腸液又は腸吸引液、及び胃液又は胃吸引液、脳脊髄液(CSF)、尿、汗、唾液、涙液、肺分泌物、乳吸引液、前立腺液、精液、子宮頚部擦過物、羊水、眼内液、粘液、及び呼気中水分が挙げられるが、これらに限定されない。様々な実施形態において、生体試料は、全血の場合がある。様々な実施形態において、生体試料は、血清の場合がある。様々な実施形態において、生体試料は、血漿の場合がある。この用語は、上記試料の混合物も包含する。
【0049】
本明細書中で使用される場合、「標識」という用語は、標的の存在を示す検出可能なシグナルを生成することができる組成物を示す。適切な標識として、蛍光分子、放射性同位体、ヌクレオチド発色団、酵素、基質、化学発光部分、磁気粒子、生物発光部分等が挙げられる。そのため、標識は、本明細書中に記載される方法及びデバイスに必要な、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、電気的、光学的、又は化学的手段により検出可能な任意の組成物である。例えば、ペプチドは、標識に特異的な抗体を用いて検出可能である、検出可能タグで標識することができる。
【0050】
蛍光標識試薬の例として、ヒドロキシクマリン、スクシンイミジルエステル、アミノクマリン、メトキシクマリン、カスケードブルー、ヒドラジド、パシフィックブルー、マレイミド、パシフィックオレンジ、ルシファーイエロー、NBD、NBD-X、R-フィコエリトリン(PE)、PE-Cy5複合体(シトクロム、R670、トリカラー、Quantum Red)、PE-Cy7複合体、レッド613、PE-テキサスレッド、PerCP、ペリジニンクロロフィルタンパク質、TruRed(PerCP-Cy5.5複合体)、FluorX、イソチオシアン酸フルオレセイン(FITC)、BODIPY-FF、TRITC、X-ローダミン(XRITC)、リサミンローダミンB、テキサスレッド、アロフィコシアニン(APC)、APC-Cy7複合体、AlexaFluor 350、Alexa Fluor 405、AlexaFluor 430、Alexa Fluor 488、AlexaFluor 500、Alexa Fluor 514、AlexaFluor 532、Alexa Fluor 546、AlexaFluor 555、Alexa Fluor 568、AlexaFluor 594、Alexa Fluor 610、AlexaFluor 633、Alexa Fluor 647、AlexaFluor 660、Alexa Fluor 680、AlexaFluor 700、Alexa Fluor 750、AlexaFluor 790、Cy2、Cy3、Cy3B、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、又はCy7が挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
参照ポリペプチド配列を基準とする配列同一性パーセント(%)とは、配列を整列させ、必要であればギャップを導入して、最大配列同一性パーセントを達成した後の、参照ポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセンテージであり、どのような保存的置換も配列同一性の一部として考慮することはしない。アミノ酸配列同一性パーセントを特定する目的での整列は、既知である様々なやり方で、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN、又はMegalign(DNASTAR)ソフトウェア等の一般提供されているコンピュータソフトウェアを使用して達成可能である。配列を整列させるのに適切なパラメーターは、比較する配列の全長にわたり最大整列を達成するために必要なアルゴリズムを含めて、決定することができる。しかしながら、本明細書中の目的に関して、アミノ酸配列同一性%の値は、配列比較コンピュータープログラムALIGN-2を使用して生成させる。ALIGN-2配列比較コンピュータープログラムは、Genentech, Inc.の著作物であり、ソースコードは、ユーザー文書とともに米国著作権局(Washington D.C., 20559)に提出済みであり、これは、米国著作権登録番号第TXU510087号で登録されている。ALIGN-2プログラムは、Genentech, Inc., South San Francisco, Calif.から一般提供されており、又はソースコードからコンパイルすることが可能である。ALIGN-2プログラムは、デジタルUNIX(登録商標) V4.0Dを含むUNIX(登録商標)オペレーティングシステムで使用するためにはコンパイルしなければならない。全ての配列比較パラメーターは、ALIGN-2プログラムにより設定されており、変化しない。
【0052】
ALIGN-2をアミノ酸配列比較に使用する状況では、所与のアミノ酸配列Aの、所与のアミノ酸配列Bに対する、Bとの、又はBと対比したアミノ酸配列同一性%(これらは、所与のアミノ酸配列Bに対して、Bと、又はBと対比して、或る特定のアミノ酸配列同一性%を有する又は含む所与のアミノ酸配列Aとして選択的に表現することができる)は、以下のとおり計算される:分数X/Yを100倍する、式中、Xは、配列整列プログラムALIGN-2によるA及びBの整列において、そのプログラムにより完全一致としてスコアリングされたアミノ酸残基の個数であり、Yは、Bのアミノ酸残基の総数である。当然のことながら、アミノ酸配列Aの長さが、アミノ酸配列Bの長さと等しくない場合、Bに対するAのアミノ酸配列同一性%は、Aに対するBのアミノ酸配列同一性%と等しくならない。特に具体的に指定されない限り、本明細書中で使用される全てのアミノ酸配列同一性%の値は、ALIGN-2コンピュータープログラムを使用して直前の段落において記載のとおりにして得られる。
【0053】
本明細書中の記載で、本発明者らは、ドセタキセル薬剤耐性におけるPCa微小環境の役割を試験した。間質上皮相互作用は、腫瘍の開始、進行、及び治療抵抗性を規定する。前立腺腫瘍微小環境において、間質線維芽細胞は、相互関係の中で癌上皮と共進化する。癌関連線維芽細胞(CAF)が存在しない場合、腫瘍体積の減少がもたらされることが分かったことで、CAFの中心的役割が認識された。CAFは、恐らく腫瘍細胞からの合図に反応して、パラ分泌増殖因子、タンパク質分解酵素、及び細胞外基質の構成要素を産生することが示されている。実際、ドセタキセルで治療された乳癌患者由来のCAFは、治療ナイーブな患者由来のCAFに比べてより多くの腫瘍支援因子を分泌することがわかった。しかしながら、このクロストークの発生を調節する機構は、化学療法の観点からは十分に解明されていない。
【0054】
PCaにおけるミトコンドリアDNA(mtDNA)の役割を説明する証拠は、大量に存在する。酸化的リン酸化に関与するミトコンドリア複合体I、III、IV、及びVのタンパク質は、mtDNAがコードする。mtDNAで見つかる変異は、PCaにおける腫瘍形成性を上昇させ、ミトコンドリア代謝の無秩序化は、前立腺発癌を促進することが既知である。PCa細胞は、ミトコンドリア含有量が良性前立腺上皮よりも多く、mtDNAコピー数の変更は、正常前立腺の腺構造の崩壊を反映している可能性がある。そのうえさらに、mtDNAの不安定さは、ヒトの癌の特徴である。PCa患者は血清中に測定可能な濃度でmtDNAを有することが分かっている。更に本明細書中の記載で、本発明者らは、分泌されたmtDNAが上皮CAFクロストークのメディエータとして機能するのかどうかを試験した。本発明者らは、mtDNAが、パターン認識受容体、例えば、toll様受容体9(TLR9)を通じて、隣接細胞にシグナル伝達する可能性が考えられるのではないかと推論した。本発明者らは、ドセタキセルにより開始される間質上皮相互シグナル伝達カスケードが、CAFにおけるTLR9シグナル伝達と関連し、PCa上皮による下流パラ分泌反応が、タキサン療法耐性の一因であることを突き止めた。
【0055】
本明細書中に更に記載されるとおり、ミトコンドリアDNA(mtDNA)は、化学療法、アンドロゲンアブレーション治療、心筋梗塞、及び外傷性脳損傷等の刺激に反応して、ストレスを受けている細胞により排出され、多くの場合、ストレスは小胞体ストレス(ERストレス)の形をしている。それぞれの場合において、細胞が放出したmtDNAは、特殊化した受容体であるToll様受容体9(TLR9)を通じて、隣接細胞により認知されることが可能であり、離れた細胞でもその可能性がある。TLR9シグナル伝達は、炎症カスケードを促進する可能性があり、この炎症カスケードは、炎症細胞の動員、腫瘍細胞増殖の促進を引き起こし、より長期の派生効果、例えば心臓事象又は脳の認知症関連疾患のリスク上昇等を引き起こす。したがって、TLR9が活性化されないようにmtDNA本体を取り除くことは、複数の病理の一因となる下流の炎症性シグナルを予防する可能性がある。本発明者らは、腫瘍増大及び治療抵抗性に対するmtDNAの影響を見出した。本発明者らは、更に、肝脈管構造を標的とすることにより排出用mtDNAを捕捉する方法として、本出願のTLR9 mtDNA結合ドメイン及びDEC205を含む改変抗体により循環からmtDNAを枯渇させる方法を設計した。
【0056】
ステロイド薬及び非ステロイド系鎮痛薬等の炎症抑制因子が、利用可能である。しかし、mtDNA分泌と関連するそのような炎症カスケードの開始因子を除去する阻害剤は存在しない。本発明者らは、TLR9又はDEC205を模倣する抗体可変領域を使用することにより循環からmtDNAを捕捉する方法を設計した。
【0057】
本研究は、腫瘍進行及び治療抵抗性の一因である、腫瘍上皮と癌関連線維芽細胞性細胞とのクロストークを機能的に定義する上で、進歩をもたらす。タンパク質系シグナル伝達分子とは無関係に、前立腺癌細胞は、正のフィードバックループにおいて、ミトコンドリアDNAを分泌して、関連線維芽細胞を誘導し、アナフィラトキシンC3aを産生させ、腫瘍進行を支援した。興味深いことに、去勢抵抗性前立腺癌の治療に使用される標準治療の化学療法であるドセタキセルは、この新規パラ分泌シグナル伝達軸を更に増強して治療抵抗性を仲介することが分かった。アナフィラトキシンC3aシグナル伝達の遮断は、協同的に、前立腺癌腫瘍をドセタキセルに対して感作させた。本発明者らは、ドセタキセル耐性が癌細胞自律的現象ではないこと、及び癌関連線維芽細胞に由来する免疫モジュレーターを標的とすることにより、ドセタキセル耐性腫瘍の増大を制限することが可能であることを明らかにした。
【0058】
本発明者らのデータは、PCaと関連線維芽細胞との間の相互パラ分泌シグナル伝達が、癌進行及びドセタキセル耐性を促進することを示す。本発明者らは、mtDNAが、PCa細胞により産生されたパラ分泌シグナル伝達分子である可能性があると仮定した(図6)。ドセタキセルに誘導されたPCa細胞から腫瘍微小環境へのmtDNA分泌は、PCa細胞により分泌されるmtDNAの基礎レベルよりも有意に高かった。したがって、マウスモデル及び前立腺腫瘍を有するヒト(men)における前立腺腫瘍は両方とも、ドセタキセルで処置された場合に、循環mtDNAの上昇を実証した。その後のCAFシグナル伝達のため、mtDNAは、TLR9活性化のため細胞質への進入を必要とした。樹状細胞におけるCpGのDEC205捕捉の以前の実証に基づき(24)、類似したシナリオを前立腺CAFで調査した。非メチル化細菌DNAの代わりに、本発明者らは、実際に、DEC205が、TAK1及びNF-κBの古典的パターン認識受容体TLR9の活性化のため、CAF細胞のmtDNAと直接結合することが可能であることを実証した(37)。TLR9は、mtDNAに反応してCAFが補体C3を発現するのに必須であることが特定されたが、PCa-CMから生じる反応性酸素の蓄積が、C3切断及びアナフィラトキシンC3a生成の一因であった。腫瘍微小環境中に放出されたC3aは、癌細胞の増殖を増大させるとともにドセタキセル治療に対する抵抗性を増強した。
【0059】
CAFにおけるPCa誘導型パラ分泌NF-κB活性化が、補体C3発現を劇的に増強することは明らかである(12log倍超、図1)。細菌性病原体に関する免疫防御は十分に説明されており、この免疫防御にはToll様受容体介在型補体発現及びアナフィラトキシン産生が含まれる。しかしながら、CAF細胞におけるPCa由来mtDNAパラ分泌シグナル伝達機構によるTLR9誘導という新規機構は、NAF細胞では観察されなかった(図1)。細胞不含循環mtDNAが、細胞ストレス下、血漿中に低レベルで放出されることは、癌、外傷、感染症、脳卒中、自己免疫疾患、代謝疾患、及びリウマチ性疾患の症例で報告される。活性化T細胞がmtDNAのエキソソームに基づく送達を通じて樹状細胞にシグナル伝達することが可能であるものの、これは、PCaとCAFとの間のパラ分泌情報交換手段ではないように思われた。PCa-CMのダイナミン阻害又は超音波処理は、CAFによるTLR9発現/活性にほとんど影響を及ぼさなかった(図7)。PCaが分泌するテロメアDNAのレベルが極度に低いことは、これがTLR9シグナル伝達を阻害することが知られていることから、注目すべきである。他に例を見ないことに、DEC205は、PCa-CMという状況で、mtDNAの形質膜陥入送達及びTLR9活性化のため、CAFにより発現する。これは、DEC205の免疫沈降後にミトコンドリアMT-CO2遺伝子のPCR増幅が報告された初めての例である。ドセタキセルは、PCaによるmtDNA放出を5倍超増強した(図1及び図4)。ドセタキセル治療は、前立腺癌細胞においてmTOR介在型オートファジーを誘導することが報告されている。化学療法薬を用いた治療は、細胞からのオートファジー性排出を向上させるERストレスを引き起こす可能性がある。本発明者らが特定したERストレスとマイトファジーとの組み合わせは、PCa細胞から無劣化mtDNAを分泌させる手段であることが明らかとなった(図2)。すなわち、線維芽細胞性炎症カスケードの開始は、腫瘍由来mtDNAシグナル伝達及び補体C3発現の一因となる可能性がある。しかしながら、病原体に反応した補体系の活性化は、3つの主要経路が関与する:1)抗原抗体複合体を介した、古典的経路、2)パターン認識マンノースと結合レクチンの結合を介した、レクチン経路、及び3)任意の許容される微生物表面を介した、代替経路。3つの補体活性化経路全てにおいて、C3コンバターゼ複合体は、C3分子を切断して、アナフィラトキシンC3aを形成する。好中球で特定された、過酸化水素関連酸素ラジカル、例えば次亜塩素酸ラジカルが関与するC3変換の更に別の機構は、間質上皮シグナル伝達軸に関して検討される機構であった。本発明者らは、PCa細胞によるCAF中でのカタラーゼ阻害が、ROS蓄積及びC3からアナフィラトキシンC3aへの成熟に必須であることを見出した(図2)。これらの知見は、CpG-ODN処理したCAF細胞中に、NF-κB活性化にも関わらずC3aが存在しないことを説明した。mtDNAを介した腫瘍間質相互作用は、前立腺線維芽細胞によるC3a発現をもたらすが、この相互作用は、TLR9活性化及びROS介在型補体成熟に依存していた。
【0060】
本発明者らの知見は、補体の活性化が腫瘍成長の促進に紛れもなく重要であったというパラダイムを提供する。癌における補体の正の増殖効果を報告した研究が存在する。補体タンパク質の全身レベルは、腫瘍に対する宿主の免疫応答を改変させることにより、癌増殖に間接的効果を有する。Wangらは、B16黒色腫増殖が、C3欠損マウスにおいて、野生型マウスでの増殖よりも遅くなることを示した。アナフィラトキシン受容体は、癌細胞においてPI3K/AKT経路を通じてシグナル伝達し、C5aR及びC3aR刺激の増殖効果は、AKTサイレンシングにより排除することができる。ここで、本発明者らは、PCa細胞がC3aの受容体を発現することを示す(図8)。CAF由来C3aは、PCa上皮で、リン酸化AKT、リン酸化ERK1/2、及びBCL2の上方制御をもたらした(図3)。TLR9-C3a軸をSB290157でアンタゴナイズすること又はTLR9を間質でノックアウトすることは、腫瘍増大を顕著に阻害した。本発明者らは、TLR9-C3aシグナル伝達改変に関係なく同様なCD3+T細胞浸潤を見出した。しかしながら、CD8+/CD69+活性化細胞傷害性T細胞は、C3アンタゴニストにより顕著に減少し、TLR9ノックアウト線維芽細胞を持つ腫瘍中では対照のほぼ3分の1へと更に減少した。したがって、T細胞介在型腫瘍細胞溶解は、腫瘍寸法で観察された減少の機構ではなかった。そうではなく、C3aは、パラ分泌様式で腫瘍細胞に直接作用しているように思われた。
【0061】
ドセタキセル耐性は、PCaを含む多くの癌において大きな臨床課題である。複数の生存シグナル伝達経路の活性化は、ドセタキセル治療に反応して抵抗性表現型を促進する可能性がある。PCa上皮において、ドセタキセル及び補体シグナル伝達は、そのような生存シグナル伝達経路(例えば、BCL2発現を伴うAKT及びERK)並びにオートファジーを活性化することが観察された(図3及び図4)。オートファジーは、それ自体、細胞内異化を通じた隣接細胞の生存手段であるものの、今回、本発明者らは、オートファジーが、オートファジーからマイトファジーへの拡張において、PCa細胞からのドセタキセル誘導型mtDNA分泌にも寄与していることを示した。マイトファジーを通じたミトコンドリア分解は、そのDNAを含む。しかしながら、ERストレスという状況で、マイトファジーは、不適切なmtDNA分解をもたらす可能性がある。驚くことではないが、ドセタキセルは、PCa細胞でERストレスを誘発した。PCaのERストレスに対するCAFの寄与は、ありそうではあるものの、調査されていなかった。しかしながら、CAFは、TLR9-C3パラ分泌軸によりPCa由来mtDNAシグナルに往復反応して、PCa細胞において生存/増殖シグナルを引き起こした。マウス前立腺腫瘍での研究から、ドセタキセル治療は、C3aアナフィラトキシン形成を向上させるとともに増殖シグナル伝達の増加を仲介したことが明らかとなった。この増殖シグナル伝達は、C3a受容体を遮断することにより減少した(図4)。注目すべきことに、SB290157でアナフィラトキシンC3aシグナル伝達をアンタゴナイズすることにより、他の抵抗性PC3細胞株をドセタキセルに感作させることができた。ドセタキセルとSB290157との相乗性により、ドセタキセル用量を減少させても腫瘍成長を有効に制限することが可能であった。補体シグナル伝達軸の意義は、現在タキサンで治療されている多くの種類の癌に対して大規模な影響を及ぼす可能性があることから、癌細胞における補体シグナル伝達軸をより深く理解することが必要である。現在、ドセタキセルは、浸潤性細胞傷害性T細胞を刺激する上での協同活性の可能性を調査するため、免疫チェックポイント阻害療法との併用で臨床試験中である。ドセタキセルが介在する間質アナフィラトキシンC3aの誘導は、免疫介在型癌細胞死の一因である可能性がある(図3)。本発明者らの観察では、SB290157をドセタキセルと併用しても、ドセタキセル単独に比べてアポトーシスが増える結果とはならなかった(図5)。しかし、補体阻害は、ドセタキセル単独の場合よりも増殖を大幅に制限し、腫瘍寸法を有効に減少させた。すなわち、ドセタキセルが誘導する免疫サーベイランスの利益を、補体シグナル伝達の腫瘍固有の増殖的役割と、天秤にかけなければならない。
【0062】
本発明者らによる結果の別の意義は、タキサン療法に対する線維芽細胞の反応が、結果的に、癌上皮治療反応になることである。循環mtDNAは、PCa患者に関して転帰不良の予後因子となることが報告されてきた。しかし、解析した患者数が限られたため、本発明者らは、循環中のmtDNAレベルとドセタキセル反応性の長さとの相関性を実証することができなかった。ドセタキセルに対する上皮反応は間質線維芽細胞のものと分離させることが可能であるものの、治療抵抗性に対する間質の影響は、パラ分泌シグナル伝達軸の結果であり、今回の報告では、PCa上皮から開始される。またしても、本発明者らは、上皮生存度にも影響する可能性のあるCAFに対するドセタキセルの直接の影響を除外することができないのである。なお、TLR介在型NF-κBシグナル伝達は、哺乳類に限った現象ではない。これは、元々は、ショウジョウバエ(Toll)で同定されたものであり、Toll9は、造血系及び消化管発生に関与する。NF-κB調節は保存されたままであるものの、遺伝子標的は、種、組織、及び細胞型に特異的であり、今回に関しては、DEC205発現に依存するように思われる。NF-κBが線維芽細胞性補体C3発現を見事に仲介し、化学療法耐性に関してシグナル伝達軸を別目的に利用するように作用するという事実は、この経路の配線が、間葉系細胞に起源を有することを示唆している。
【0063】
本発明者らは、部分的にこれらの知見に基づいて、本発明の、組成物、治療法、mtDNA及びgDNAの検出、並びに診断法を記載する。
【0064】
作用剤及び組成物
本発明の様々な実施形態において提供されるのは、タンパク質である。タンパク質は、細胞不含、循環mtDNA、ゲノムDNA(gDNA)と結合し、循環から循環mtDNA及びgDNAを枯渇させるのに有用である。タンパク質は、構造的に抗体と類似しており、タンパク質の或る断片は、循環mtDNA、gDNA、又はその両方と結合し、タンパク質の或る断片は、mtDNA、gDNA、又はその両方の処理及び除去のためタンパク質全体を肝臓に向かわせる。様々な実施形態において、これら2つの断片は、循環半減期を維持又は延長させるため抗体骨格上にある。
【0065】
本発明の様々な実施形態において提供されるのは、ミトコンドリアDNA(mtDNA)と結合するポリペプチドと、IgG受容体ガンマのFc断片(FcgRIIb)又はその断片とを含むタンパク質である。
【0066】
本発明の様々な実施形態において提供されるのは、ゲノムDNA(gDNA)と結合するポリペプチドと、IgG受容体ガンマのFc断片(FcgRIIb)又はその断片とを含むタンパク質である。
【0067】
本発明の様々な実施形態において提供されるのは、ミトコンドリアDNA(mtDNA)及びゲノムDNA(gDNA)の両方と結合するポリペプチドと、IgG受容体ガンマのFc断片(FcgRIIb)又はその断片とを含む、タンパク質である。
【0068】
様々な実施形態において、mtDNA、gDNA、又はその両方と結合するポリペプチドは、DEC205の断片又は1つ以上のアミノ酸欠失、付加、若しくは置換を持つDEC205の断片を含む。様々な実施形態において、1~10、11~20、21~30、31~40、41~50、51~60、61~70、71~80、81~90、又は91~100のアミノ酸欠失、付加、又は置換が存在する。
【0069】
様々な実施形態において、DEC205の断片は、リシンB型レクチンドメイン、フィブロネクチンII型レクチンドメイン、及び少なくとも1つのC型レクチンドメインからなる群より選択される少なくとも1種のドメインと少なくとも90%同一であるポリペプチドである。様々な実施形態において、DEC205の断片は、リシンB型レクチンドメイン、フィブロネクチンII型レクチンドメイン、及び少なくとも1つのC型レクチンドメインからなる群より選択される少なくとも1種のドメインと少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%同一であるポリペプチドである。様々な実施形態において、DEC205の断片は、リシンB型レクチンドメイン、フィブロネクチンII型レクチンドメイン、及び少なくとも1つのC型レクチンドメインからなる群より選択される少なくとも1種のドメインを含むポリペプチドである。
【0070】
様々な実施形態において、DEC205の断片は、リシンB型レクチンドメイン、フィブロネクチンII型レクチンドメイン、及び少なくとも1つのC型レクチンドメインからなる群より選択される少なくとも2種のドメインと少なくとも90%同一であるポリペプチドである。様々な実施形態において、DEC205の断片は、リシンB型レクチンドメイン、フィブロネクチンII型レクチンドメイン、及び少なくとも1つのC型レクチンドメインからなる群より選択される少なくとも2種のドメインと少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%同一であるポリペプチドである。様々な実施形態において、DEC205の断片は、リシンB型レクチンドメイン、フィブロネクチンII型レクチンドメイン、及び少なくとも1つのC型レクチンドメインからなる群より選択される少なくとも2種のドメインを含むポリペプチドである。
【0071】
様々な実施形態において、DEC205の断片は、リシンB型レクチンドメイン、フィブロネクチンII型レクチンドメイン、及び少なくとも1つのC型レクチンドメインからなる群より選択される少なくとも3種のドメインと少なくとも90%同一であるポリペプチドである。様々な実施形態において、DEC205の断片は、リシンB型レクチンドメイン、フィブロネクチンII型レクチンドメイン、及び少なくとも1つのC型レクチンドメインからなる群より選択される少なくとも3種のドメインと少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%同一であるポリペプチドである。様々な実施形態において、DEC205の断片は、リシンB型レクチンドメイン、フィブロネクチンII型レクチンドメイン、及び少なくとも1つのC型レクチンドメインからなる群より選択される少なくとも3種のドメインを含むポリペプチドである。
【0072】
様々な実施形態において、DEC205の断片は、リシンB型レクチンドメイン、フィブロネクチンII型レクチンドメイン、又はその両方と少なくとも90%同一であるポリペプチドである。様々な実施形態において、DEC205の断片は、リシンB型レクチンドメイン、フィブロネクチンII型レクチンドメイン、又はその両方と少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるポリペプチドである。様々な実施形態において、DEC205の断片は、リシンB型レクチンドメイン、フィブロネクチンII型レクチンドメイン、又はその両方を含むポリペプチドである。
【0073】
様々な実施形態において、DEC205の断片は、リシンB型レクチンドメイン及びフィブロネクチンII型レクチンドメインと少なくとも90%同一であるポリペプチドである。様々な実施形態において、DEC205の断片は、リシンB型レクチンドメイン及びフィブロネクチンII型レクチンドメインと少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるポリペプチドである。様々な実施形態において、DEC205の断片は、リシンB型レクチンドメイン及びフィブロネクチンII型レクチンドメインを含むポリペプチドである。
【0074】
様々な実施形態において、DEC205の断片は、リシンB型レクチンドメイン、フィブロネクチンII型レクチンドメイン、及び少なくとも1つのC型レクチンドメインと90%同一であるポリペプチドである。様々な実施形態において、DEC205の断片は、リシンB型レクチンドメイン、フィブロネクチンII型レクチンドメイン、及び少なくとも1つのC型レクチンドメインと少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるポリペプチドである。様々な実施形態において、DEC205の断片は、リシンB型レクチンドメイン、フィブロネクチンII型レクチンドメイン、及び少なくとも1つのC型レクチンドメインを含むポリペプチドである。
【0075】
様々な実施形態において、DEC205の断片は、少なくとも1つのC型レクチンドメインと90%同一であるポリペプチドである。様々な実施形態において、DEC205の断片は、少なくとも1つのC型レクチンドメインと少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるポリペプチドである。様々な実施形態において、DEC205の断片は、少なくとも1つのC型レクチンドメインを含むポリペプチドである。
【0076】
様々な実施形態において、DEC205の断片は、少なくとも2個のC型レクチンドメインと90%同一であるポリペプチドである。様々な実施形態において、DEC205の断片は、少なくとも2個のC型レクチンドメインと少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるポリペプチドである。様々な実施形態において、DEC205の断片は、少なくとも2個のC型レクチンドメインを含むポリペプチドである。
【0077】
DEC205上には、10個のC型レクチンドメインが存在する。したがって、本発明の様々な実施形態において、少なくとも1つのC型レクチンドメインは、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、又は10個のC型レクチンドメインである可能性がある。
【0078】
様々な実施形態において、DEC205の断片は、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、又は10個のC型レクチンドメインと少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるポリペプチドである。様々な実施形態において、DEC205の断片は、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、又は10個のC型レクチンドメインを含むポリペプチドである。
【0079】
様々な実施形態において、DEC205の断片は、配列番号1、配列番号2、及び配列番号3からなる群より選択される配列と少なくとも90%同一であるポリペプチドを含む。様々な実施形態において、DEC205の断片は、配列番号1、配列番号2、及び配列番号3からなる群より選択される配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるポリペプチドを含む。様々な実施形態において、DEC205の断片は、配列番号1、配列番号2、及び配列番号3からなる群より選択される配列を有するポリペプチドを含む。
【0080】
様々な実施形態において、DEC205の断片は、配列番号4を含む配列と少なくとも90%同一であるポリペプチドを含む。様々な実施形態において、DEC205の断片は、配列番号4を含む配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるポリペプチドを含む。様々な実施形態において、DEC205の断片は、配列番号4に明記されるとおりの配列を有するポリペプチドを含む。
【0081】
様々な実施形態において、DEC205の断片は、配列番号4の中の少なくとも168個の連続アミノ酸を有するポリペプチドを含む。様々な実施形態において、DEC205の断片は、配列番号4の中の168個~414個の連続アミノ酸を有するポリペプチドを含む。様々な実施形態において、DEC205の断片は、配列番号4の中の183個~368個の連続アミノ酸を有するポリペプチドを含む。様々な実施形態において、DEC205の断片は、配列番号4の中の202個~322個の連続アミノ酸を有するポリペプチドを含む。様々な実施形態において、DEC205の断片は、配列番号4の中の220個~276個の連続アミノ酸を有するポリペプチドを含む。連続アミノ酸の決定は、配列番号4のアミノ酸番号1~292から開始することができる。例えば、連続アミノ酸がアミノ酸番号292から開始される場合、これは、配列番号4の終端までの全てのアミノ酸を含むことになる。様々な実施形態において、これらのDEC205の断片は、1つ以上のアミノ酸付加、欠失、又は置換、例えば、1~5、6~10、11~15、16~20、又は21~25のアミノ酸付加、欠失、又は置換を有する。
【0082】
様々な実施形態において、IgG受容体ガンマのFc断片(FcgRIIb)は、ヒトIgG1のFcドメイン、又はアミノ酸付加、欠失、及び/又は置換を最高22まで持つヒトIgG1のFcドメインを含む。様々な実施形態において、これは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、又は22のアミノ酸付加、欠失、及び/又は置換を有する。
【0083】
様々な実施形態において、IgG受容体ガンマのFc断片(FcgRIIb)又はその断片は、配列番号5に明記されるとおりの少なくとも205の連続アミノ酸を含む。様々な実施形態において、IgG受容体ガンマのFc断片(FcgRIIb)又はその断片は、配列番号5に明記されるとおりの205~215、216~227の連続アミノ酸を含む。連続アミノ酸の決定は、アミノ酸番号1~22から開始することができる。
【0084】
様々な実施形態において、IgG受容体ガンマのFc断片(FcgRIIb)又はその断片は、配列番号5と少なくとも90%の配列同一性を持つ配列を含む。様々な実施形態において、IgG受容体ガンマのFc断片(FcgRIIb)又はその断片は、配列番号5と少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%の配列同一性を持つ配列を含む。様々な実施形態において、IgG受容体ガンマのFc断片(FcgRIIb)又はその断片は、配列番号5に明記されるとおりの配列を有するポリペプチドを含む。
【0085】
様々な実施形態において、IgG受容体ガンマのFc断片(FcgRIIb)は、配列番号5に明記されるとおりの配列を有するポリペプチドを含む。
【0086】
様々な実施形態において、IgG受容体ガンマのFc断片(FcgRIIb)は、マウスIgG1のFcドメイン、又はアミノ酸付加、欠失、及び/又は置換を最高21まで持つマウスIgG1のFcドメインである。様々な実施形態において、これは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、又は21のアミノ酸付加、欠失、及び/又は置換を有する。
【0087】
様々な実施形態において、IgG受容体ガンマのFc断片(FcgRIIb)又はその断片は、配列番号6に明記されるとおりの少なくとも209の連続アミノ酸を含む。様々な実施形態において、IgG受容体ガンマのFc断片(FcgRIIb)又はその断片は、配列番号6に明記されるとおりの209~214、215~219、220~224、225~229、230~232の連続アミノ酸を含む。連続アミノ酸の決定は、アミノ酸番号1~23から開始することができる。
【0088】
様々な実施形態において、IgG受容体ガンマのFc断片(FcgRIIb)又はその断片は、配列番号6と少なくとも90%の配列同一性を持つ配列を含む。様々な実施形態において、IgG受容体ガンマのFc断片(FcgRIIb)又はその断片は、配列番号6と少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%の配列同一性を持つ配列を含む。様々な実施形態において、IgG受容体ガンマのFc断片(FcgRIIb)は、配列番号6に明記されるとおりの配列を有するポリペプチドを含む。
【0089】
様々な実施形態において、タンパク質は、シグナル配列、リンカー、又はその両方を更に含む。様々な実施形態において、シグナル配列は、配列番号7に明記されるとおりのアミノ酸を含む。様々な実施形態において、シグナル配列は、タンパク質のN末端にある。様々な実施形態において、リンカーは、ミトコンドリアDNA(mtDNA)、ゲノムDNA(gDNA)、又はその両方と結合するポリペプチドと、IgG受容体ガンマのFc断片(FcgRIIb)又はその断片との間にある。様々な実施形態において、リンカーは、シグナル配列と、ミトコンドリアDNA(mtDNA)、ゲノムDNA(gDNA)、又はその両方と結合するポリペプチドとの間にある。様々な実施形態において、リンカーは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、又は15アミノ酸長である。
【0090】
様々な実施形態において、タンパク質は、配列番号8~13のうちいずれか1つに明記されるとおりの配列を有するタンパク質から選択される。様々な実施形態において、タンパク質は、配列番号8に明記されるとおりの配列を有するタンパク質である。様々な実施形態において、タンパク質は、配列番号8と少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一である配列を有するタンパク質である。様々な実施形態において、タンパク質は、配列番号9に明記されるとおりの配列を有するタンパク質である。様々な実施形態において、タンパク質は、配列番号9と少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一である配列を有するタンパク質である。様々な実施形態において、タンパク質は、配列番号10に明記されるとおりの配列を有するタンパク質である。様々な実施形態において、タンパク質は、配列番号10と少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一である配列を有するタンパク質である。様々な実施形態において、タンパク質は、配列番号11に明記されるとおりの配列を有するタンパク質である。様々な実施形態において、タンパク質は、配列番号11と少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一である配列を有するタンパク質である。様々な実施形態において、タンパク質は、配列番号12に明記されるとおりの配列を有するタンパク質である。様々な実施形態において、タンパク質は、配列番号12と少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一である配列を有するタンパク質である。様々な実施形態において、タンパク質は、配列番号13に明記されるとおりの配列を有するタンパク質である。様々な実施形態において、タンパク質は、配列番号13と少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一である配列を有するタンパク質である。
【0091】
様々な実施形態において、タンパク質は、配列番号8の中のアミノ酸24番~435番、配列番号9の中のアミノ酸24番~583番、配列番号10の中のアミノ酸24番~529番、配列番号11の中のアミノ酸24番~440番、配列番号12の中のアミノ酸24番~588番、又は配列番号13の中のアミノ酸24番~534番のうちいずれか1つに明記されるとおりの配列を有するタンパク質である。
【0092】
様々な実施形態において、タンパク質は、配列番号1及び配列番号5、又は配列番号2及び配列番号5、又は配列番号3及び配列番号5、又は配列番号1及び配列番号6、又は配列番号2及び配列番号6、又は配列番号3及び配列番号6の配列を含むタンパク質から選択される。
【0093】
様々な実施形態において、mtDNA、gDNA、又はその両方と結合するポリペプチドは、toll様受容体9(TLR9)の断片又は1つ以上のアミノ酸欠失、付加、若しくは置換を持つTLR9の断片を含む。
【0094】
様々な実施形態において、タンパク質は、抗体のFc領域又はその断片を更に含む。
【0095】
様々な実施形態において、本発明のタンパク質は、循環mtDNAを枯渇させることができる。
【0096】
様々な実施形態において、本発明のタンパク質は、循環ゲノムDNA(gDNA)を枯渇させることができる。
【0097】
本発明の様々な実施形態において提供されるのは、本明細書中に記載されるとおりの本発明のタンパク質のいずれか1種をコードする核酸である。
【0098】
本発明の様々な実施形態において提供されるのは、本明細書中に記載されるとおりの本発明のタンパク質のいずれか1種を産生する細胞である。
【0099】
本発明の様々な実施形態において提供されるのは、本明細書中に記載されるとおりの本発明のタンパク質のいずれか1種をコードする核酸を含む細胞である。
【0100】
様々な実施形態において、細胞は、細菌細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、又はベビーハムスター腎臓細胞(BHK)である。
【0101】
様々な実施形態において、細菌細胞は、バチルス・サブチルス又はラクトコッカス・ラクチスである。様々な実施形態において、細菌細胞は、エンドトキシンを作らないグラム陽性細菌であり、そのような細菌として、以下が挙げられるが、それらに限定されない:ラクトコッカス・キムチイ(Lactococcus kimchii)、他のラクトコッカス・ラクチス亜種;Lc.ラクチス亜種クレモリス(cremoris)、Lc.ラクチス亜種ホールドニアエ(hordniae)、Lc.ラクチス亜種ラクチス(lactis)、及びLc.ラクチス亜種ツルクタエ(tructae)。更なるバチルス属として、バチルス・クラウシイ(Bacillus clausii)及びバチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0102】
様々な実施形態において提供されるのは、本明細書中に記載されるとおりの本発明のタンパク質を生成する方法であって、本明細書中に記載されるとおりの本発明の細胞を培養することと、細胞又は細胞培養培地からタンパク質を単離することとを含む、方法である。
【0103】
本発明の様々な実施形態において提供されるのは、本明細書中に記載されるとおりの本発明のタンパク質のいずれか1種と、治療薬とを含む組み合わせである。
【0104】
様々な実施形態において、治療薬は、抗腫瘍剤、化学療法薬、アンドロゲンアブレーション剤、心筋梗塞治療薬、外傷性脳損傷治療薬、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される。様々な実施形態において、治療薬は、タキサン、アントラサイクリン、又は白金系抗悪性腫瘍薬である。様々な実施形態において、治療薬は、ドセタキセル、パクリタキセル、カバジタキセル、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、バルルビシン、シスプラチン、オキサリプラチン、カルボプラチン、イリノテカン、又はフルオロウラシル(5FU)である。様々な実施形態において、治療薬は、アンドロゲン受容体アンタゴニスト、アンドロゲン合成阻害剤、又は抗ゴナドトロピンである。様々な実施形態において、治療薬は、ビカルタミド、エンザルタミド、アパルタミド、フルタミド、ニルタミド、ダロルタミド、酢酸シプロテロン、酢酸メゲストロール、クロルマジノン酢酸エステル、スピロノラクトン、オキセンドロン、ケトコナゾール、アビラテロン酢酸エステル、セビテロネル、アミノグルテチミド、フィナステリド、デュタステリド、エプリステリド、アルファトラジオール、ノコギリヤシエキス、リュープロレリン、セトロレリックス、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される。様々な実施形態において、治療薬は、アスピリン、血栓溶解剤、ヘパリン、血小板凝集阻害薬、ニトログリセリン、ベータ遮断薬、ACE阻害剤、スタチン、及びそれらの組み合わせである。様々な実施形態において、治療薬は、利尿薬、抗痙攣薬、昏睡導入薬、又はそれらの組み合わせである。
【0105】
デバイス
本発明の様々な実施形態において提供されるのは、少なくとも1つの入口と、少なくとも1つの出口と、固形基材を備えた少なくとも1つのチャンバーと、固形基材に固定された本明細書中に記載されるとおりの本発明のタンパク質のいずれか1種とを備えたデバイスである。
【0106】
様々な実施形態において、デバイスは、マイクロ流体デバイスである。様々な実施形態において、固形基材は、デキストランビーズ又はセファロースビーズである。
【0107】
本発明の様々な実施形態において提供されるのは、固形基材に固定された本明細書中に記載されるとおりの本発明のタンパク質のいずれか1種を備えたデバイスである。
【0108】
様々な実施形態において、固形基材は、マルチウェルプレートである。様々な実施形態において、デバイスは、ELISAアッセイに適したプレートである。
【0109】
様々な実施形態において、固形基材は、ビーズである。様々な実施形態において、ビーズは、マルチプレックスアッセイに適している。
【0110】
様々な実施形態において、タンパク質は、更に、導電性基材と結合して又は導電性基材に固定されていて、mtDNA、gDNA、又はその両方との結合に際して検出可能なシグナルを生成する。様々な実施形態において、導電性基材は、金、銀、白金、イリジウム、又は銅である。様々な実施形態において、タンパク質は、更に、シリコーンと結合している又はシリコーンに固定されている。
【0111】
様々な実施形態において、2016年9月22日に出願された国際出願PCT/US2016/053145号に記載されるとおりのデバイス又はシステムを使用して、mtDNAを検出する。その特許文献の全体は、引用することにより本明細書の一部をなす。
【0112】
例えば、デバイスは、少なくとも1つの分析物入口を有する試料チャンバーと、導電性金属基材又は導電性金属を基材上に被着若しくは形成させて含むセンサー要素とを備える、それらからなる、又は本質的にそれらからなる。導電性金属は、硫黄を含む又は硫黄を含むように修飾された官能基を有する循環mtDNAと結合することができる反応表面を提供する。センサー要素は、電極を更に含み、この電極は、導電性金属と、mtDNAが金属表面に結合したその後の、金属の電気的パラメーターを特定する構成要素と電気的にカップリングしており、電気的パラメーターとは、例えば、インピーダンス、抵抗、及び/又はコンダクタンス等である。例えば、パラメーターがインピーダンスである場合、デバイスは、インピーダンス測定用の構成要素を更に含む。導電性金属は、任意の適切な金属が可能であるが、典型的には、金、銀、白金、イリジウム、及びそれらの組み合わせから選択され、金が特に適切な金属である。導電性金属は、分析物溶液が流れる流体流路を画定する場合があり、金属は、典型的には、厚さが1ナノメートル~500ナノメートル、幅が0.1ミリメートル~約20ミリメートル、及び長さが約0.1ミリメートル~約200ミリメートルである。導電性金属は、直線、曲線、屈曲、及び/又は蛇行路として構成することができる。試料チャンバーは、複数の電気絶縁反応表面を画定する場合がある。デバイスは、複数の試料チャンバーを含むこともでき、複数の試料チャンバーは、並列して又は直列して配置される。開示される実施形態は、ポイントオブケアデバイス、更により詳細には、対象由来の試料中のmtDNA量を検出するポイントオブケアデバイスであることが可能である。
【0113】
本発明の或る特定の態様は、分子が金属表面、例えば金表面と反応することで、金属にインピーダンス変化が誘導され、このインピーダンス変化を、金属表面と反応している分子の量、又は金属表面に、典型的には共有結合で、結合した捕捉分子と相互作用している量と、直接相関させることが可能であるという認識に関する。例えば、導電性金属基材は、チオール官能基を通じて金属表面の一部分にカップリングさせて、受容体生体分子を含むことができる。そのような実施形態において、金属表面の残部は、標的分子が表面に結合するのを防止するため、チオール化ポリエチレングリコール等のブロック剤を含むことができる。或る特定の実施形態において、受容体分子は、金属表面にカップリングさせたペプチド、例えば、抗体又は細胞外受容体ドメインである。ペプチドを表面にカップリングさせる1つの方法は、ペプチドを修飾して少なくとも1つのペンダントシステインを持たせることによるものである。
【0114】
開示されるデバイスの実施形態を含むシステムも、開示される。開示されるシステムは、使い捨てセンサーユニットを規定するセンサーデバイスを備えることができ、使い捨てセンサーユニットは、mtDNAと結合したその後の導電性金属の電気的パラメーターの変化を検出するための検出デバイスとカップリングさせるための導電性金属を含む。或いは、システムは、導電性金属を含む再利用可能なセンサーユニットを備えることができる。開示されるシステムは、システムの機能を制御するための中央演算ユニットと、温度センサーと、データ記憶ユニットと、分析物及び/又は酵素溶液をデバイスに及び/又はデバイスを通じて流すための流体ポンプと、試料コレクターと、試料リザーバー又はカートリッジと、システムに入る又はシステムの構成要素間の流体の流れを濾過するように配置された1つ以上の濾過モジュールと、酵素リザーバー又はカートリッジと、酵素反応モジュールと、緩衝剤リザーバー又はカートリッジと、電源と、それらの組み合わせとを、1つ以上更に備えることができる。
【0115】
或る特定の開示される方法の実施形態は、試料中のmtDNAを測定するのにデバイス又はシステムを使用することを含む。mtDNAは、典型的には、硫黄原子を含む又は硫黄原子を含むように修飾された官能基を有する。或いは、mtDNAは、酵素的、化学的、又は熱的に、チオールへと変換される官能基を有することができる。更に別の代替形態として、mtDNAは、システインと反応して、デバイスを用いた検出及び測定用の末端システイン部分を提供することができる。
【0116】
電気的パラメーターを使用して、mtDNAが検出され、mtDNA量が定量される。電気的パラメーターがインピーダンスである場合、測定されたインピーダンス値を、例えば標準曲線を用いることによって、試料中のmtDNA量と相関させることができる。
【0117】
或る特定の開示される実施形態は、デバイスの使用を含み、このデバイスにおいて、導電性金属基材は、チオール官能基を通じて金属表面の一部分とカップリングした受容体生体分子を含む。金属表面の残部は、標的分子が表面と結合するのを防止するためのブロック剤を含むことができる。受容体分子は、例えば、システインにより金属表面にカップリングしたペプチド又は細胞外受容体ドメインであることが可能である。ペプチドを修飾してペンダントシステインアミノ酸を持たせることができる。
【0118】
方法
本発明の様々な実施形態において提供されるのは、治療方法である。様々な方法で、治療薬を循環mtDNA枯渇剤と併用して患者を治療する。検討されたとおり、mtDNAは、疾患又は症状の治療に使用されている治療薬が原因であるストレスを受けている細胞により排出される。そのため、循環mtDNAが増加し、これにより炎症カスケードが促進され、炎症カスケードは、腫瘍増大及び治療抵抗性に影響を及ぼす。どのような特定の理論にも固執するつもりはないが、循環からmtDNAを枯渇させることにより、治療薬が機能し続けることが可能になり、及び/又は腫瘍増大を低下させることが可能になる。
【0119】
本発明の様々な実施形態において提供されるのは、疾患又は症状を治療する方法であって、哺乳類対象に、本発明のタンパク質を投与して、疾患又は症状を治療することを含む、方法である。
【0120】
本発明の様々な実施形態において提供されるのは、疾患又は症状を治療する方法であって、哺乳類対象に、本発明のタンパク質と治療薬との組み合わせを投与して、疾患又は症状を治療することを含む、方法である。
【0121】
様々な実施形態において、疾患又は症状は、腫瘍、癌、心筋梗塞、及び外傷性脳損傷からなる群より選択される。
【0122】
様々な実施形態において、癌は、固形腫瘍癌である。様々な実施形態において、癌は、前立腺癌又は乳癌である。
【0123】
本発明の様々な実施形態において提供されるのは、哺乳類対象において循環ミトコンドリアDNA(mtDNA)を減少させる方法であって、哺乳類対象に、本明細書中に記載されるとおりの本発明のタンパク質のいずれか1種を投与することを含む、方法である。
【0124】
本発明の様々な実施形態において提供されるのは、哺乳類対象において循環ミトコンドリアDNA(mtDNA)を減少させる方法であって、哺乳類対象に、本明細書中に記載されるとおりの本発明の組み合わせのいずれか1種を投与することを含む、方法である。
【0125】
本発明の様々な実施形態において提供されるのは、哺乳類対象において循環ミトコンドリアDNA(mtDNA)を減少させる方法であって、哺乳類対象の血液から、循環mtDNAを除去することを含む、方法である。
【0126】
本発明の様々な実施形態において提供されるのは、哺乳類対象において循環ミトコンドリアDNA(mtDNA)を減少させる方法であって、本明細書中に記載されるとおりの本発明の細菌細胞のいずれか1種を投与することを含む、方法である。
【0127】
本発明の様々な実施形態において提供されるのは、哺乳類対象において循環ゲノムDNA(gDNA)を減少させる方法であって、哺乳類対象に、本明細書中に記載されるとおりの本発明のタンパク質のいずれか1種を投与することを含む、方法である。
【0128】
本発明の様々な実施形態において提供されるのは、哺乳類対象において循環ゲノムDNA(gDNA)を減少させる方法であって、哺乳類対象に、本明細書中に記載されるとおりの本発明の組み合わせのいずれか1種を投与することを含む、方法である。
【0129】
本発明の様々な実施形態において提供されるのは、哺乳類対象において循環ゲノムDNA(gDNA)を減少させる方法であって、哺乳類対象の血液から、循環mtDNAを除去することを含む、方法である。
【0130】
本発明の様々な実施形態において提供されるのは、哺乳類対象において循環ゲノムDNA(gDNA)を減少させる方法であって、本明細書中に記載されるとおりの本発明の細菌細胞のいずれか1種を投与することを含む、方法である。
【0131】
様々な実施形態において、哺乳類対象は、循環ミトコンドリアDNA(mtDNA)のレベル上昇が原因である又はそのレベル上昇が関連する、疾患又は症状を有するか又は有することが疑われる。様々な実施形態において、哺乳類対象は、ゲノムDNA(gDNA)のレベル上昇が原因である又はそのレベル上昇が関連する、疾患又は症状を有するか又は有することが疑われる。
【0132】
様々な実施形態において、哺乳類対象は、循環ミトコンドリアDNA(mtDNA)及びゲノムDNA(gDNA)のレベル上昇が原因である又はそれらのレベル上昇が関連する、疾患又は症状を有するか又は有することが疑われる。
【0133】
様々な実施形態において、mtDNA、gDNA、又はその両方のレベル上昇が原因である又はそのレベル上昇が関連する疾患又は症状は、腫瘍、癌、心筋梗塞、心疾患、身体外傷、外傷性脳損傷、感染症、脳卒中、炎症、自己免疫疾患、悪液質、及び狼瘡からなる群より選択される。様々な実施形態において、mtDNAのレベル上昇が原因である又はそのレベル上昇が関連する疾患又は症状は、腫瘍、癌、心筋梗塞、心疾患、身体外傷、外傷性脳損傷、感染症、脳卒中、炎症、自己免疫疾患、及び悪液質からなる群より選択される。様々な実施形態において、gDNAのレベル上昇が原因である又はそのレベル上昇が関連する疾患又は症状は、狼瘡である。
【0134】
様々な実施形態において、癌は、固形腫瘍癌である。様々な実施形態において、癌は、前立腺癌又は乳癌である。
【0135】
様々な実施形態において、哺乳類対象の血液から循環mtDNAを除去することは、対象の血液を本発明のデバイスのいずれか1つに通過させることを含む。
【0136】
様々な実施形態において、循環mtDNAの除去は、化学療法と合わせて行うことが可能であり、これにより、対象を化学療法に感作させることができる。例えば、mtDNAを除去する治療サイクルを1回以上、対象で行うことができる。限定ではない例において、第1サイクルでは、1日目及び4日目に、初期用量として、1日目、1回の用量に3 mg/kgをIVで用い、続いて4日目、7 mg/kgを用い、続いて完全用量レジメンとして8日目、15日目、及び22日目、1回の用量に10 mg/kgをIVで用いる。第2サイクルは、1日目、8日目、15日目、及び22日目、1回の用量に10 mg/kgをIVで用いるものが可能である。投薬量のこうした計算は、最大体重85 kgに基づいている。当業者なら、対象の体重及び健康状態に基づいて、投薬量を調節できる。このように、様々な実施形態において、本方法は、対象の血液から循環mtDNAを除去することと、対象に化学療法薬治療を投与することとを含む。
【0137】
本発明の様々な実施形態において提供されるのは、循環ミトコンドリアDNA(mtDNA)、ゲノムDNA、又はその両方を測定する方法であって、生体試料を得ることと、本明細書中に記載されるとおりの本発明のタンパク質のいずれか1種を生体試料と接触させることと、タンパク質とmtDNA、gDNA、又はその両方との結合を検出することと、タンパク質mtDNA結合複合体、タンパク質gDNA結合複合体、又はその両方の量を定量することとを含む。
【0138】
様々な実施形態において、タンパク質は、検出可能なシグナルを生成する標識を更に含む。標識は、本明細書中例示されるとおりの標識のどれでも可能である。
【0139】
様々な実施形態において、検出可能なシグナルは、比色シグナル、蛍光、又は発光である。
【0140】
様々な実施形態において、タンパク質は、本明細書中に記載されるとおりの本発明のデバイスのいずれか1つを用いて生体試料と接触させる。
【0141】
様々な実施形態において、デバイスは、導電性基材を備え、タンパク質は、導電性基材と結合して又は導電性基材に固定されていて、mtDNA、gDNA、又はその両方との結合に際して検出可能なシグナルを生成し、検出可能なシグナルは、インピーダンス、抵抗、電流変化、又は電気化学的インピーダンススペクトルの変化であり、導電性基材は、金、銀、白金、イリジウム、銅からなる群より選択される。
【0142】
様々な実施形態において、循環ミトコンドリアDNA(mtDNA)、ゲノムDNA、又はその両方を測定する方法は、ELISA系アッセイを用いることを含む。様々な実施形態において、循環ミトコンドリアDNA(mtDNA)、ゲノムDNA、又はその両方を測定する方法は、マルチプレックス系アッセイを用いることを含む。
【0143】
様々な実施形態で同じく提供されるのは、循環mtDNAを測定する方法である。これらの方法は、本発明のmtDNA枯渇剤を必要としている対象を同定するのに有用である可能性がある。
【0144】
様々な実施形態で提供されるのは、循環ミトコンドリアDNA(mtDNA)を測定する方法であって、生体試料を得ることと、本発明のタンパク質を、生体試料と接触させることと、タンパク質とmtDNAとの結合を検出することと、タンパク質mtDNAの量を定量することとを含む、方法である。
【0145】
様々な実施形態において、タンパク質は、検出可能なシグナルを生成する標識を更に含む。標識は、本明細書中例示されるとおりの標識のどれでも可能である。
【0146】
様々な実施形態において、タンパク質は、更に、mtDNAとの結合に際して検出可能なシグナルを生成するように、導電性基材に結合されている。様々な実施形態において、導電性基材は、金、銀、白金、イリジウム、又は銅である。様々な実施形態において、タンパク質は、更に、シリコーンに結合されている。様々な実施形態において、検出可能なシグナルは、インピーダンス、抵抗、コンダクタンス、電流変化、又は電気化学的インピーダンススペクトル変化である。
【0147】
様々な実施形態において、本発明は、薬学上許容される賦形剤を、治療上有効量の本発明の発明タンパク質と、又は本発明の組み合わせと合わせて含む医薬組成物を提供する。「薬学上許容される賦形剤」は、概して安全、無毒、かつ望ましい医薬組成物の調製に有用である賦形剤を意味し、そのような賦形剤には、ヒト製薬使用と同様に獣医学使用に許容される賦形剤も含まれる。そのような賦形剤は、固体、液体、半固体であってもよく、又はエーロゾル組成物の場合には、気体であってもよい。
【0148】
様々な実施形態において、医薬組成物は、この機構による凝集を防ぐ補助となり得る、界面活性剤(例えば、ポリソルベート20及び80)、炭水化物(例えば、シクロデキストリン誘導体)、及びアミノ酸(例えば、アルギニン及びヒスチジン)を1種以上含む。他の成分もタンパク質を安定させるために使用可能であり、そのような成分として以下が挙げられるが、それらに限定されない:シクロデキストリン、プルロニック(登録商標)F68、トレハロース、グリシン、並びにアミノ酸、例えば、アルギニン、グリシン、グルタミン酸、及びヒスチジン等。
【0149】
或る特定の実施形態において、本発明の化合物は、1つ以上の酸性官能基を有する場合があり、したがって、薬学上許容される塩基と薬学上許容される塩を形成することができる。「薬学上許容される塩、エステル、アミド、及びプロドラッグ」という用語は、本明細書中で使用される場合、本発明の化合物のカルボン酸塩、アミノ酸付加塩、エステル、アミド、及びプロドラッグを示し、これらは、合理的な医学的判断の範囲内で、患者の組織と接触させる使用に適しており、過度の毒性、刺激、アレルギー反応等を伴わず、合理的な利益/リスク比に見合うものであり、本発明の化合物の意図する使用にとって有効なものである。「塩」という用語は、本発明の化合物の、比較的無毒の無機及び有機酸付加塩を示す。こうした塩は、化合物の最終単離及び精製中にin situで調製することも可能であれば、別途、遊離塩基形である精製した化合物を適切な有機酸又は無機酸と反応させ、そうして形成された塩を単離することにより調製することも可能である。これらは、アルカリ及びアルカリ土類金属、例えば、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム等に基づくカチオン、並びに無毒のアンモニウム、第四級アンモニウム、及びアミンカチオンを含むことができ、アンモニウム、第四級アンモニウム、及びアミンカチオンとして、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エチルアミン等が挙げられるが、これらに限定されない(例えば、Berge S. M., et al. (1977) J. Pharm. Sci. 66, 1を参照、これは引用することにより本明細書の一部をなす)。
【0150】
「薬学上許容されるエステル」という用語は、本発明の化合物の比較的無毒のエステル化生成物を示す。こうしたエステルは、化合物の最終単離及び精製中にin situで調製することも可能であれば、別途、遊離酸形又はヒドロキシルである精製した化合物を適切なエステル化剤と反応させることにより調製することも可能である。カルボン酸は、触媒の存在下、アルコールで処理することにより、エステルに変換することができる。この用語は、更に、生理学的条件下、溶媒和することができる低級炭化水素基、例えば、アルキルエステル、メチルエステル、エチルエステル、及びプロピルエステル等を包含するものとする。
【0151】
本明細書中で使用される場合、「薬学上許容される塩又はプロドラッグ」とは、合理的な医学的判断の範囲内で、対象の組織と接触する使用に適しており、過度の毒性、刺激、アレルギー反応等を伴わず、合理的な利益/リスク比に見合うものであり、それらの意図する使用にとって有効である塩又はプロドラッグである。
【0152】
「プロドラッグ」という用語は、in vivoで迅速に変換されて機能的に活性な本明細書中に開示されるとおりの1種以上のペプチド又はそれらの変異体、バリアント、類似体、若しくは誘導体をもたらす化合物を示す。徹底した検討は、T. Higachi and V. Stella, ''Pro-drugs as Novel Delivery Systems,'' Vol. 14 of the A. C. S. Symposium Series、及び Bioreversible Carriers in: Drug Design, ed. Edward B. Roche, American Pharmaceutical Association and Pergamon Press, 1987に提供されており、これらは両方とも、引用することにより本明細書の一部をなす。本明細書中で使用される場合、プロドラッグとは、in vivoでの投与に際し、代謝されるかそれ以外で変換されて、生物学的、薬学的、又は治療的に活性型の化合物になる化合物である。本明細書中に開示されるとおりの1種以上のペプチド又はそれらの変異体、バリアント、類似体、若しくは誘導体のプロドラッグは、本明細書中に開示されるとおりの1種以上のペプチド又はそれらの変異体、バリアント、類似体、若しくは誘導体の代謝安定性又は輸送特性を改変するように、副作用又は毒性をマスクするように、化合物の風味を改善するように、又は化合物の他の特徴又は性質を改変するように、設計することができる。薬動力学プロセス及びin vivoでの薬物代謝についての知見により、本明細書中に開示されるとおりの1種以上のペプチド又はそれらの変異体、バリアント、類似体、若しくは誘導体の薬学的活性型が分かってしまえば、製薬分野の当業者なら、一般に、化合物のプロドラッグを設計することができる(例えば、Nogrady (1985) Medicinal Chemistry A Biochemical Approach, Oxford University Press, N. Y., pages 388-392を参照)。適切なプロドラッグを選択及び調製する従来手順は、例えば、''Design of Prodrugs,'' ed. H. Bundgaard, Elsevier, 1985に記載されている。プロドラッグの適切な例として、対応する酸のメチル、エチル、及びグリセロールエステルが挙げられる。
【0153】
様々な実施形態において、本発明による医薬組成物は、任意の投与経路を介した送達用に配合することができる。「投与経路」は、当該技術分野で既知である任意の投与の経路を示すことができ、そのような投与経路として、エーロゾル、経鼻、経口、経粘膜、経皮、又は非経口が挙げられるが、これらに限定されない。「経皮」投与は、外用クリーム若しくは軟膏を使用することで、又は経皮パッチ手段により、達成することができる。「非経口」は、一般に注射と関連した投与経路を示し、そのような経路として、眼窩内、点滴、動脈内、関節包内、心臓内、皮内、筋肉内、腹腔内、肺内、脊髄内、胸骨内、くも膜下腔内、子宮内、静脈内、くも膜下、嚢下、皮下、経粘膜、又は経気管が挙げられる。非経口経路を介する場合、組成物は、点滴用若しくは注射用の液剤若しくは懸濁剤の形状にあってもよく、又は凍結乾燥粉末であってもよい。経腸経路を介する場合、医薬組成物は、錠剤、ゲルカプセル剤、糖衣錠剤、シロップ剤、懸濁剤、液剤、散剤、顆粒剤、乳剤、又は制御放出を可能にするマイクロスフェア若しくはナノスフェア若しくは脂質小胞若しくは重合体小胞の形状にあることが可能である。非経口経路を介する場合、組成物は、点滴用又は注射用の液剤又は懸濁剤の形状にあってもよい。外用経路を介する場合、本発明による化合物に基づく医薬組成物は、皮膚及び粘膜の治療用に配合されてもよく、軟膏(ointments)、クリーム剤、ミルク、膏薬(salves)、散剤、含浸パッド、液剤、ゲル剤、スプレー剤、ローション剤、又は懸濁剤の形状にある。これらは、制御放出を可能にする、マイクロスフェア又はナノスフェア又は脂質小胞又は重合体小胞又は重合体パッチ及びヒドロゲルの形状にあることも可能である。これらの外用経路組成物は、臨床適応に応じて、無水型又は含水型いずれかにあることが可能である。眼内経路を介する場合、医薬組成物は、点眼剤の形状にあってもよい。
【0154】
本発明による医薬組成物は、任意の薬学上許容されるキャリアも含有することができる。「薬学上許容されるキャリア」は、本明細書中で使用される場合、関心対象の化合物を、身体の1つの組織、臓器、又は部分から、身体の別の組織、臓器、又は部分へと運搬又は輸送することに関与する、薬学上許容される材料、組成物、又はビヒクルを示す。例えば、キャリアは、液体又は固体の、充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒、若しくはカプセル化材料、又はそれらの組み合わせであってもよい。キャリアの各要素は、その要素が、製剤の他の成分と適合性でなければならないという点において、「薬学上許容される」ものでなければならない。要素は、接触する可能性のあるあらゆる組織又は臓器についてそれと接触する用途に適切でなければならず、このことは、要素が、毒性、刺激、アレルギー反応、免疫原性、又はその治療効果を過度に上回る任意の他の合併症のリスクを保有してはならないことを意味する。
【0155】
本発明による医薬組成物は、経口投与用に、カプセル化、錠剤化、又は乳剤若しくはシロップ剤へと調製することも可能である。薬学上許容される固体又は液体キャリアを加えて、組成物を向上させる若しくは安定化する、又は組成物の調製を促進することができる。液体キャリアとして、シロップ、ピーナッツ油、オリーブ油、グリセリン、生理食塩水、アルコール、及び水が挙げられる。固体キャリアとして、デンプン、ラクトース、硫酸カルシウム、二水和物、石膏粉(terra alba)、ステアリン酸マグネシウム若しくはステアリン酸、タルク、ペクチン、アカシアゴム、寒天、又はゼラチンが挙げられる。キャリアは、徐放性材料、例えば、モノステアリン酸グリセリル又はジステアリン酸グリセリル等を、単独で、又はロウとともに含むこともできる。
【0156】
医薬製剤は、薬学の従来技法に従って作製され、そのような技法には、錠剤形の場合、粉砕、混合、造粒、及び必要であれば、圧縮;又は、硬ゼラチンカプセル剤形の場合、粉砕、混合、及び充填が関与する。液体キャリアが使用される場合、製剤は、シロップ剤、エリキシル剤、乳剤、又は水性若しくは非水性の懸濁剤の形状になる。そのような液体製剤は、直接p.o.で、又は軟ゼラチンカプセルに充填して投与することができる。
【0157】
本発明による医薬組成物は、治療上有効量で送達することができる。正確な治療上有効量は、所与の対象において、治療効果の観点から最も有効である結果をもたらすことになる組成物量である。この量は、様々な要因に応じて変化することになり、そのような要因として、治療化合物の特性(活性、薬物動態学的特性、薬物動力学的特性、及び生体利用度を含む)、対象の生理的条件(年齢、性別、疾患の種類及びステージ、全般的な身体状態、所与の投薬量に対する反応性、及び薬物療法の種類を含む)、製剤中の薬学上許容される単数又は複数のキャリアの性質、及び投与経路が挙げられるが、これらに限定されない。臨床分野及び薬理学分野の当業者なら、常用実験を通じて、例えば、化合物の投与に対する対象の反応をモニタリングし、それに従って投薬量を調節することにより、治療上有効量を特定することが可能となる。更なるガイダンスについては、Remington: The Science and Practice of Pharmacy (Gennaro ed. 20th edition, Williams & Wilkins PA, USA) (2000)を参照。
【0158】
キット
本発明は、本明細書中に記載されるとおりの疾患若しくは症状を治療する、又は循環mtDNA、gDNA、若しくはその両方の量を測定する、キットにも関する。キットは、本明細書中に記載されるとおりの疾患若しくは症状を治療する、又は循環mtDNA、gDNA、若しくはその両方の量を測定する本発明の方法を実施するのに有用である。キットは、材料又は構成要素の集合体であり、このキットには、少なくとも1つの本発明の構成要素が含まれる。すなわち、一部の実施形態において、キットは、上記のとおり、本発明のタンパク質を含む組成物を含む。
【0159】
本発明のキットを構成する構成要素の正確な性質は、それが意図する目的に依存する。例えば、一部の実施形態は、疾患又は症状の治療を目的として構成されており、また一部の実施形態は、循環mtDNA、gDNA、又はその両方の測定を目的として構成されている。1つの実施形態において、キットは、特に哺乳類対象の治療を目的として構成されている。別の実施形態において、キットは、特にヒト対象の治療を目的として構成されている。更なる実施形態において、キットは、獣医学用途用に、構成されており、これが治療する対象は、例えば、家畜動物、家庭用動物、及び実験動物であるが、これらに限定されない。
【0160】
使用説明書がキットに含まれていてもよい。「使用説明書」には、典型的には、所望の結果をもたらすために、例えば、疾患若しくは症状を治療するために、又は循環mtDNA、gDNA、若しくはその両方を測定するために、キットの構成要素を使用する上で採用することになる技法を説明する実際的な表現が含まれる。任意選択で、キットは、当業者にすぐわかるとおりの、他の有用構成要素、例えば、希釈剤、緩衝剤、薬学上許容されるキャリア、シリンジ、カテーテル、アプリケーター、ピペット操作若しくは測定道具、結束材料、又は他の有用な備品一式も含む。
【0161】
キットに組み込まれる材料又は構成要素は、それらの操作性及び実用性を保存する任意の簡便かつ適切なやり方で貯蔵されて、利用者に提供されることが可能である。例えば、構成要素は、溶解形状、脱水形状、又は凍結乾燥形状にあることが可能であり、それらは、室温、冷蔵温度、又は凍結温度で提供することが可能である。構成要素は、典型的には、適切な包装材料(複数の場合もある)に入れられている。本明細書中で使用される場合、「包装材料」という語句は、キットの内容物、例えば、本発明の組成物等を収容するのに使用される1つ以上の物理的構造体を示す。包装材料は、既知の方法により、好ましくは、滅菌された、汚染不含環境をもたらすように構成される。本明細書中で使用される場合、「包装」という用語は、個々のキット構成要素を保持することができる、適切な固体マトリクス又は材料、例えば、ガラス、プラスチック、紙、箔等を示す。したがって、例えば、包装は、本発明の発明タンパク質又は本発明の組み合わせを含有する本発明組成物を適切な量で入れるのに使用されるガラスバイアルであることが可能である。包装材料は、一般に、キット及び/又はその構成要素の内容物及び/又は目的を示す外部ラベルを有する。
【0162】
【表1】
【表1-1】
【表1-2】
【実施例
【0163】
以下の実施例は、特許請求される発明をより良く解説するために提供されるものであり、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。具体的な材料が記述される限りにおいて、それは、例示を目的とするにすぎず、本発明を限定することを意図しない。当業者なら、発明能力を行使することなく、本発明の範囲から逸脱することなく、等価な手段又は反応物を開発することができる。
【0164】
実施例1
動物実験及び培養細胞:7週齢~8週齢のオスC57BL/6マウスを、Cedars-Sinai医療センター動物施設において、機関付属の動物実験委員会の承認(第3679号)の下、病原体不含環境で収容した。野生型マウス線維芽細胞(6×105)又はTLR9-/-マウス線維芽細胞(6×105)にマウス前立腺上皮細胞TRAMP-C2(2×105)を組み合わせて用い、腎被膜下移植を行った。移植の2週間後に、SB290157(1 mg/kg、i.p.、毎日)での処置を開始し、これを5週間続けた。5週間処置後、全てのマウスの腎臓、脾臓、リンパ節を収集して、IHC用にパラフィン包埋して固定するか、又はFACS分析用に分離させた。7週齢~8週齢のオスヌードマウスで、PC3(5×105)とCAF(15×105)とを組み合わせて皮下異種移植を行った。ドセタキセル(6 mg/kg/週)及びSB290157(1 mg/kg、IP、毎日)を用いた処置の時間経過全体を通じて、移植片をノギスによりモニタリングした。収集した組織を、IHC用にパラフィン包埋して固定するか、又は免疫ブロット分析用に分離させた。
【0165】
培養した一次NAF及びCAF(本発明者らの実験室に由来)を、LNCaP-CM、CpG-ODN(5 μM、InvivoGen, San Diego, CA)、ドセタキセル(10 nM、SanofiAventis)、N-アセチルシステイン(10 mM、Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)、SB290157(1 μM、Calbiochem)で、48時間処理した。条件培地を、DNアーゼ1(0.1 mg/ml、Sigma-Aldrich)を用いて37℃で1時間処理し、続いて熱不活化した。
【0166】
免疫検出:パラフィン包埋した組織を処理して、以前に記載されたとおりに(52、53)、免疫組織化学的局在検査を、p-AKT、p-TAK、p-ヒストンH3(Cell Signaling, Danvers, MA)、C3(Santa Cruz Biotechnology, Santa Cruz, CA)、及びTUNEL(Thermo Fisher Scientific Inc.)に対する抗体を用いて行った。Leica SCN400(Leica Micro System, Buffalo Grove, IL)を用いて、全てのスライドをスキャンし、Tissue IA Optimizer(Leica)で分析した。陽性染色された細胞の値を、不偏様式で測定した。培養した培地及び血清のC3a濃度を、ヒトC3a ELISAキット(BD Bioscience, San Jose, CA)を用い、取扱説明書に従ってサンドイッチELISAで、アッセイした。10%、12%、又は15%SDS-ポリアクリルアミドゲルで分離させたウエスタンブロットを、TLR9、DEC205(LS Bio Seattle, WA)、ホスホ-TAK1、TAK1、ホスホ-AKT、AKT、ホスホル-ERK1/2、ERK、BCL2、ベクリン、CHOP(Cell Signaling)、LC3(Abeam, Cambridge, MA)、C3(Santa Cruz Biotechnology)、及びp62(ProgenBiotechnik, Heidelberg, Germany)の一次抗体とともにインキュベートした。アルカリホスファターゼ結合二次抗体(Sigma-Aldrich)を用いてウエスタンブロットを可視化した。アナフィラトキシンC3aのELISAは、製造元ガイドラインに従って行った(LSBio Inc.)。
【0167】
DNA定量:総DNAを、血清又は培養培地から、quick-cfDNA(商標)血清及び血漿キット(Zymo Research, Irvine, CA)により単離した。血清及び培養培地から精製した総DNAを、ミトコンドリア特異的MT-CO2遺伝子(以下のプライマーを用いる:5'-CCT GCG ACT CCT TGA CGT TG-3'(配列番号14)及び5'-AGC GGT GAA AGT GGT TTG GTT-3'(配列番号15))によりPCR増幅させた。リアルタイムPCRによる標準曲線法の使用を通じて、定量を達成した。テロメア特異的配列(TTAGGG)14(配列番号16)は、TRAPEZE(商標)RTテロメラーゼ検出キット(Millipore, Burlington, MA)を用いて測定した。
【0168】
ミトコンドリアDNA免疫沈降(mDIP):Zymo-Spin CHIPキット(Zymo Research)の製造元のChIPプロトコルに従った。簡単に述べると、条件培地由来のmtDNAを、陰性対照としての正常ウサギIgG抗体又は抗DEC205抗体(Santa Cruz Biotechnology)のいずれかにより免疫沈降させた。ミトコンドリアDNA 100 ngを、陽性対照として条件培地に加えた。免疫沈降しないDNAを、総インプット対照として用いた。精製した免疫沈降DNAを、上記のとおりミトコンドリア特異的プライマー(MT-CO2)によりPCR増幅させ、インプットDNAと比較した。
【0169】
活性酸素種の検出:2',7'-ジクロロフルオレセイン二酢酸塩(H2-DCFDA)(Sigma-Aldrich)を用いて、CAFでROSを検出するためFACS及び蛍光染色を行った。暗中37℃で30分間、10 μMのH2-DCFDAで細胞を標識し、蛍光顕微鏡下でROS生成をモニタリングし、フローサイトメトリー分析を通じて定量した。FACS分析にFlowJoソフトウェア(Tree Star Inc. Ashland, OR)を用いた。
【0170】
カタラーゼ活性アッセイ:OxiSelect(商標)カタラーゼ活性アッセイキット(Cell Biolabs, INC San Diego, CA)を用い、製造元のプロトコルに従って、CAFライセート中のカタラーゼ活性を測定し、吸光度は、96ウェルプレート中520 nmで測定した。10 mMの3-アミノ-1,2,4-トリアゾール(Santa Cruz Biotechnology)を、カタラーゼ阻害剤として用いた。
【0171】
3D器官型共培養:コラーゲンマトリクス中で3D器官型共培養を行った。PC3及びCAFを、コラーゲンマトリクス中1:3の比で混合した。コラーゲンマトリクスは、50%のラット尾部コラーゲンI、20%のマトリゲル、10%の10倍DMEM培地及び5%の1倍調整済み(ready)DMEM、5%の1倍調整済み(ready)RPMI、5%のFBS及び5%のNu血清を含有する。マトリクス中で72時間増大させた後、細胞を、ドセタキセル及びSB290157で48時間処理した。細胞を、Ki67 FACS分析用に、コラゲナーゼ及びディスパーゼを用いてマトリクスから解離させた。
【0172】
統計分析:実験は、最低でも3回行った。結果は、平均±S.D単位で示す。群間で比較するためステューデントのt検定及び一元配置分散分析を用い、繰り返し測定した分散分析を用いて2つ以上のデータシリーズの有意性を特定した。使用した統計検定は、図の凡例に記録し、それに合わせて関連P値を、Originソフトウェア(OriginLab, Northampton, MA)を用いて計算した。細胞生存度は、MTTアッセイを利用して、製造元(Thermo Fisher, Canoga Park, CA)の指示どおりに試験し、相乗的薬物相互作用の計算を、Chou-Talalay法(R Package)により行った。
【0173】
実施例2
癌関連線維芽細胞におけるミトコンドリアDNAを通じたTLR9及びアナフィラトキシンC3aの活性化。PCa患者血液で報告されたmtDNA上昇に基づき、本発明者らは、前立腺細胞株について条件培地中のmtDNA含有量を測定した。本発明者らは、PCa株(PC3、LNCaP、及びTRAMPC2)が、良性前立腺上皮細胞株BPH1より3倍~10倍多いmtDNAを条件培地中で発現したことを見出した(図1A)。PCa上皮増殖のパラ分泌機構が存在するかどうかを確定するため、本発明者らは、CAFをPCa上皮由来の条件培地とともにインキュベートした。本発明者らは、mtDNA同族受容体TLR9及びその下流エフェクターの発現を試験した。正常前立腺組織関連線維芽細胞(NAF)に比べて、又はCAF/NAFいずれかをBPH1-CMで処理した場合に比べて、LNCaP条件培地(CM)によってのみ、CAFによるTLR9のmRNA発現が大幅に上方制御されることがわかった(図7A)。LNCaP-CMのDNA含有量を検査することで、mtDNAがテロメアDNAより約10倍多いことがわかった(図7B)。CAFをPCa上皮条件培地で処理すると、TLR9並びに下流のリン酸化TAK1、NF-κBのp65リン酸化、切断型カスパーゼ1、及びIL-1βタンパク質発現の上方制御がもたらされた(図1B及び図7C)。条件培地の超音波処理は、DNアーゼ処理と比較した場合、TLR9発現を有意に変化させなかった。このことは、エキソソームに基づくシグナル伝達が関与していない可能性を示した(図7D)。このことは、ダイナソア(ダイナミン阻害剤)を用いてLNCaP細胞によるエキソソーム産生を阻害した結果、培地中のmtDNA含有量に認識できる変化がなかった(図7E)ことにより、更に裏付けられた。熱不活化は、血清中の増殖因子を活性化する可能性があることから、熱不活化単独を、対照として用いた。TLR9は細胞質受容体であるため、DNAが細胞に進入するためのメディエータを特定することを試みた。DNAと結合する能力をもつ候補メディエータ、例えば、HMGB1、HMGA2、及びDEC205は、LNCaP-CMに反応してCAFにより発現することがわかった(図7F)。HMGB1発現は、NAF細胞によるもの及びCAF細胞によるもののどちらも、LNCaP-CMに反応して同様に誘導されたが、HMGA2発現は、LNCaP-CM処理に関係なく、恒常的に発現した。LNCaP-CMは、CAFではDEC205を有効に誘導したが、NAFではそうならなかった(図1C)。DEC205は、樹状細胞による非メチル化CpGの結合及び内部移行が報告されている膜貫通型形質膜陥入受容体である。本発明者らは、CAF細胞においてmtDNAがDEC205と結合可能であるかどうかについて、クロマチン免疫沈降アッセイの方法を応用することにより試験し、これを、mtDNA免疫沈降法(mDIP)と名付けた。DEC205の免疫沈降後、ミトコンドリアMT-CO2遺伝子をPCR増幅することは、LNCaP-CMの存在下では可能であったが、不在下では可能ではなかった(図1D)。CAF中のNF-κBシグナル伝達がPCa由来mtDNAの結果であるという発見に従って、本発明者らは、集中qPCRアレイ法(focused qPCR array)を行い、下流標的遺伝子に対するNF-κBの効果を特定した。予想どおり、LNCaP-CMは、CAFによる複数の炎症性サイトカインの発現を誘導し、そのようなサイトカインには、IL-6、CXCL8、及びCCL11が含まれた(図1E)。興味深いことに、補体C3は、発現の差が12Log倍を超えて最も大きかったCAF遺伝子であり、このことは、ボルケーノプロットに表れていた(図1F)。侵入病原体と戦う上での補体C3の役割は、十分に説明されている。更に最近では、C3は、腫瘍細胞増殖の増強に関連するとされた。しかしながら、活性構成要素であるアナフィラトキシンC3aは、C3の緊密に調節されたタンパク質切断の産物である。興味深いことに、本発明者らは、LNCaP-CMがTLR9を誘導し、C3a発現がDNアーゼ処理に感受性であったことを見出した(図1G)。すなわち、PCa上皮の分泌したmtDNAは、CAF細胞表面のDEC205と結合することができ、TLR9及びC3a変異に関連している(図1H)。
【0174】
批判的に言えば、C3aは、癌上皮増殖を促進することが報告されているが、腫瘍関連補体活性化の経路は不明である。C3a発現におけるTLR9の役割を調査するため、野生型マウス及びTLR9ノックアウトマウス由来の前立腺線維芽細胞を、CpGオリゴヌクレオチド、ODN 1826(TLR9の合成リガンド、CpG-ODN)、又はLNCaP条件培地で処理した。LNCaP-CMによるTAK1リン酸化及びC3a発現は、TLR9発現に依存することがわかった(図2A)。LNCaP-CMのDNアーゼ1処理は、野生型マウス線維芽細胞によるTLR9タンパク質発現及びC3a発現を減少させた。TLR9ノックアウトマウスから生成させた前立腺線維芽細胞の試験により、同じ条件下でTAK1活性化もC3a発現もないことが実証された。しかしながら、前立腺線維芽細胞をCpG-ODNで処理すると、C3aの生成は、LNCaP-CMで処理した場合に比べて劇的に少なくなり、LNCaP-CMをDNアーゼで処理した場合に見られるものに匹敵した。ELISA試験により、TRAMPC2-CM及びLNCaP-CMは、NAFより有意に高いレベルでCAFの培地へのC3a放出を引き起こすが、CpG-ODNはそうならなかったことが裏付けられた(図2B)。これらの結果は、LNCaP-CMがTLR9及びC3aタンパク質発現を誘導し、これはCMのDNアーゼ処理により阻害されることを示した。このことは、PCa由来mtDNAが、TLR9下流シグナル伝達を誘導するためにCAFでパラ分泌シグナル伝達を仲介することができることを示す。
【0175】
CpG/mtDNAはCAFにおいてDEC205下流のTLR9を活性化するのに十分であったものの、PCa上皮CMしか、C3aの発現及び分泌に十分ではなかったことは、興味深く強調される。補体処理は、酵素活性化カスケード又は結果的に補体C3の切断になる代替経路を通じて生じる可能性がある。C3の切断は、C3a及びC3bの生成をもたらし、この生成は、微生物オプソニン化及び炎症促進性シグナル伝達の活性化に関して十分に説明されている。C3切断に関して補体タンパク質C1b及びC2bの複合体が関与する古典的経路は培養線維芽細胞ではあり得そうでないことから、反応性酸素介在型切断が関与する代替経路を、CAFで試験した。予想どおり、CAFをLNCaP-CMで処理すると、反応性酸素の生成がもたらされ、これはFACS分析によるDCFDA蛍光定量により示されるとおりであり、蛍光顕微鏡法により可視化されるとおりであった(図2C図2D)。CpG-ODN処理は、そのような反応性酸素シグナルを何も助長せず、N-アセチルシステイン(反応性酸素阻害剤として使用)は、LNCaP誘導型反応性酸素及びC3a生成を抑制した。カタラーゼは細胞の反応性酸素含有量を軽減する可能性があることから、カタラーゼ活性をCAFで測定した。CAF中のカタラーゼ活性は、未処理の対照又はCpG-ODN処理いずれと比べても、LNCaP-CMにより有意に抑制されることがわかった(図2E)。ウエスタンブロット法により、N-アセチルシステイン抑制が、LNCaP-CMに誘導されるC3からC3aへの変換を遮断することが実証された(図2F)。3-アミノ-1,2,4-トリアゾールによるカタラーゼの阻害は、CpG-ODNと組み合わせた場合、C3a生成に影響を及ぼさなかった。最終的に、CpG-ODN及びLNCaP-CMは両方とも、CAFにおいてC3発現を誘導したが、C3a発現は、カタラーゼ活性の抑制及びLNCaP-CMによる反応性酸素の誘導に依存していた(図2G)。
【0176】
C3aシグナル伝達は、PCa増大を増強する。CAFにより発現したアナフィラトキシンC3aに対する相互上皮反応を特定する試みの中で、本発明者らは、確立された補体アゴニスト及びアンタゴニストのPCa増大に対する影響を試験した。LNCaP、PC3、及びTRAMPC2は全て、アナフィラトキシンC3a受容体を発現することがわかった(C3aR、図8A)。パラ分泌TLR9介在型アナフィラトキシンC3aシグナル伝達軸の必要性を補強する中で、本発明者らは、HMGB1は不均一に発現されるものの、3種のPCa上皮株によるDEC205、TLR9、及びC3aの発現は、制限されることを見出した(図8B)。次に、LNCaP、PC3、及びTRAMPC2を、C3aRのアゴニストペプチド又はスクランブルペプチドとともにインキュベートすることにより、PCa細胞に対するC3aシグナル伝達の効果を試験した。アナフィラトキシンは極度に不安定であるため、C3aそのものではなくC3aRに対するアゴニストペプチドを使用した。0.1 μMのC3aRアゴニストと48時間接触させると、スクランブルペプチド処理した細胞に比べて、Ki67発現により測定して、LNCaP(28%)、PC3(30%)、及びTRAMPC2(21%)で増殖が増加した(図8C)。本発明者らは、PCa細胞におけるPI3K/AKTシグナル伝達経路に対するC3aRアゴニストペプチドの効果を更に調査し、C3aRの刺激の結果としてAKTのリン酸化が増強されることを見つけた(図3A)。本発明者らは、C3aが、p42/44MAPKのリン酸化(p-ERK1/2)により下流MAPキナーゼシグナル伝達経路を強力に活性化することも見つけた。Bcl-2発現の上方制御は、細胞生存を支持して、AKTの下流シグナル伝達分子として同定された。
【0177】
C3aシグナル伝達の観察を裏付けるため、本発明者らは、マウス前立腺線維芽細胞をPCa上皮とともに、同系C57B/6マウスに同種移植した。本発明者らは、野生型線維芽細胞又はTLR9ノックアウト線維芽細胞いずれかを移植し、それらを、腎被膜下でルシフェラーゼ発現TRAMPC2細胞と再結合させた。腫瘍を生物発光撮影により可視化した後、マウスを、ビヒクル(対照)又はC3aRアンタゴニストであるSB290157いずれかで処理した。移植から3週間以内に、野生型線維芽細胞を用いた腫瘍は、再現性よく増大したが、SB290157を用いた処置では、ビヒクル処置したマウスより有意に小さい腫瘍寸法となった(図3B図3C)。興味深いことに、TLR9ノックアウト線維芽細胞を用いた同種移植は、無視できる腫瘍成長となり、関連するパラ分泌シグナル伝達軸の役割がTLR9及びC3aに依存することを裏付けた。TLR9ノックアウト線維芽細胞を用いた移植片からは十分な組織を得ることができなかったため、野生型線維芽細胞及びTRAMPC2を用いた移植片でしか免疫組織化学検査を行うことができなかった。腫瘍細胞有糸分裂は、リン酸化ヒストンH3発現により特定した場合、宿主マウスがSB29157で処理されていた場合に有意に減少していた(図3D)。AKTの活性化は、リン酸化AKT染色により局在特定した場合、野生型線維芽細胞を同種移植したマウスの腫瘍細胞では上昇したが、SB290157処理したマウスでは反転した。SB290157は、TUNEL染色により局在特定した場合、腫瘍増殖を有意に減少させるとともに細胞死を上昇させることがわかった。
【0178】
補体アナフィラトキシンは、広範囲の炎症促進性効果を有する。C3aは、肥満細胞、好塩基球、及び好酸球の走化性に特に関係している。Tリンパ球は、腫瘍進行のレギュレーターであることが確認されておりC3aに反応することが知られていることから、本発明者らは、腫瘍へのT細胞動員に対するC3a拮抗作用の影響を測定した。CD3+T細胞のFACS分析は、これらの細胞が、C3aアンタゴニスト又は線維芽細胞TLR9状態に関係なく腫瘍に同様に動員されることを示した(図3E)。しかしながら、CD8+T細胞活性化は、共刺激分子CD69+の発現により特定した場合、C3aアンタゴニストにより目に見えて下方制御され、TLR9ノックアウト線維芽細胞を用いた腫瘍では更に下方制御された。これらの知見から、細胞傷害性T細胞の動員は、腫瘍の間質上皮相互TLR9/C3aシグナル伝達軸のメディエータではなさそうであることが示唆された。
【0179】
ドセタキセルとSB290157との相乗効果は、腫瘍増大を阻害する。PCa上皮で観察されたC3aによるAKT活性化に基づき、本発明者らは、細胞死のメディエータ、例えば化学療法の観点から見たこの生存促進性シグナルの役割に興味を抱いた。PCa患者におけるTLR9/C3aシグナル伝達軸の臨床的関連性を最初に特定するため、本発明者らは、治療前の男性及びドセタキセル治療を受けている男性で、対にした様式で、血漿mtDNA含有量を測定した。ドセタキセルは、PCa患者における循環mtDNAの劇的な上昇を誘導した(P=0.006、図4C)。並行して、ドセタキセル(6 mg/kg/週)で3週間処置したマウスは、血漿mtDNA含有量の有意な上昇を示した(P<0.05、図4B)。PCa上皮に対するドセタキセルの直接効果を試験する中で、ドセタキセルは、用量依存的様式でLNCaP、PC3、及びTRAMPC2細胞によるmtDNA分泌を大きく上昇させることがわかった(図4C)。なお、PC3細胞には、その固有の耐性のため、他の2種の株よりも高用量のドセタキセルが使用された。なぜより多くのmtDNA分泌がドセタキセル治療と関連するのかを特定する試みの中で、細胞成分の細胞質画分及びミトコンドリア画分両方において、上昇したLC3活性化、p62、及びベクリン発現が明らかとなった。これらは、オートファジー及びマイトファジー誘導両方を示唆する(図4D)。不思議なことに、化学療法誘導型細胞死は、mtDNAの分解を伴わずにその放出をもたらした。LNCaP及びPC3における、小胞体(ER)ストレスタンパク質p62及びCHOP、マイトファジーの付随、及びベクリン上方制御のドセタキセルによる誘導は、mtDNAの分解回避手段を支持するものであった(図4E)。ドセタキセル耐性の発生における間質上皮クロストークの影響を、コラーゲンI及びマトリゲルの三次元マトリクス内でのPC3細胞及びCAの共培養で試験した。EpCAM+/Ki67+増殖性上皮とPC3及びCAFとの共培養は、PC3細胞を単独で増殖させた場合の2倍であった(図4F)。ドセタキセルを用いた追加処置は、CAF誘導型増殖性上皮画分を目に見えるほど減少させはしなかった。C3アンタゴニストであるSB290157は、PC3細胞のドセタキセル感受性を修復した。薬物相互作用試験から、低用量のSB290157が、相乗的様式で他の耐性PC3細胞をドセタキセルに対して感作したことが明らかとなった(部分阻害濃度指数(fractional inhibitory concentration index)0.5未満、図4G図9A)。
【0180】
観察された間質上皮クロストークの治療的意義を、CAF細胞及びPC3細胞の組織組換え異種移植片を持つオスヌードマウスで試験した。腫瘍体積を示す腫瘍成長曲線は、ビヒクル処置に比べて、低用量のドセタキセル(6 mg/kg/週)単独の処置により有意に低下しなかった(図5A)。しかしながら、ドセタキセルとSB290157との併用処置は、腫瘍成長を有意に制限した(P<0.05)。体重に対する有意な影響は、どの治療群でも観察されず、タキサン治療戦略が最小限の毒性しか持たないことを支持した(図9B)。腫瘍組織のウエスタンブロットから、ビヒクル処置に比べて、ドセタキセル処置したマウスにおいてTAK1、AKT、及びERK1/2が活性化したことが明らかとなった(図5B)。ドセタキセル処置したマウスにおける血漿mtDNAの上方制御は、TAKリン酸化の上昇を支持した。SB290157がドセタキセルの誘導するAKT及びERK1/2リン酸化を減少させ、下流のC3aはSB290157による影響を受けなかったことも観察された。重要なことは、Blc2がSB290157により減少したことである。腫瘍の組織診断及び対応する組織の免疫組織化学検査により、関連するシグナル伝達分子を局在特定及び定量することができた(図5C図9C)。リン酸化TAK1、C3、及びTUNEL染色のドセタキセルによる顕著な誘導は、C3拮抗作用により変化しなかった。しかしながら、細胞生存経路及び有糸分裂はそれぞれAKTのリン酸化及びリン酸化ヒストン-H3により定量されるが、これらのドセタキセル処置による誘導は、ドセタキセルとSB290157との併用処置により有意に減少した。SB290157と低用量ドセタキセルの併用は、腫瘍成長の制限ももたらした。
【0181】
実施例3
DEC205(LY75、CD205、DEC-205)がミトコンドリアDNA(mtDNA;PNAS 2020 11:8515)と結合するという同定に基づいて、mtDNAに関与しているタンパク質ドメインを特定した(図10及び図11)。mtDNA又はゲノムDNA(gDNA)を96ウェルプレートに固定し、続いてRF-Fc又はRFL-Fcとともにインキュベーションするように設計されたELISAにより、Fcドメイン単独に比べて両DNAサブタイプが濃度依存的様式で結合することが実証された。リシンB型レクチン及びフィブロネクチンII型レクチンドメイン(RF)をIgG1 Fcと結合させたもの(RF-Fc)は、gDNAより2倍高いmtDNA親和性を実証した(図12)。比較して、リシンB型レクチン、フィブロネクチンII型レクチンドメイン、及び1つのC型レクチンドメイン(RFL)をIgG1 Fcと結合させたもの(RFL-Fc)は、mtDNA及びgDNAに対して類似した親和性を実証した。残りのC型レクチンドメインは、2L-Fc及び6L-Fcの結合分析に基づき、類似した親和性でゲノムDNA(gDNA)及びmtDNAの両方と結合することがわかった(データは示さず)。DEC205ドメインと抗体Fcドメインとを結合させることで、優れたタンパク質フォールディング、発現、及び安定性が可能になった。RF-Fc及びRFL-FcとDNAとの結合を、それぞれの同じ濃度でのFc結合のものを基準に正規化した。DEC205の各ドメインを、マウスIgG1抗体Fcドメインと結合させた。高度に保存されたヒトIgG1抗体Fcドメインは、ヒト治療用途のためマウスFcドメインと置き換えることが可能である。
【0182】
癌細胞が生成したmtDNAに反応して癌関連線維芽細胞により補体C3が発現することは、前立腺癌細胞における化学療法、すなわちドセタキセルの耐性に介在することが実証された(PNAS 2020 11:8515)。RF-FcによるmtDNAの枯渇は、C3発現を有意に減少させた(図13)。
【0183】
実施例4
RF-Fc又はRFF-Fcの応用
1)RF-Fc及びRFL-Fcは、血中mtDNA含有量の検出に使用することができる。現在のところ、mtDNA含有量のPCR系アッセイが必要になる前に、DNAを最初に抽出する必要がある。すなわち、mtDNA検出用のRF-Fcを用いた簡単なサンドイッチELISA系アッセイである。RFL-Fcも、循環中の総DNA(gDNA及びmtDNA)の検出に、同様に使用できる。検出アッセイは、図12で実証したものと同様なELISAを含むことが可能であり、この場合、対象由来の血漿を、その後のインキュベート用に96ウェルプレート中でRF-Fc又はRFL-Fcでコーティングし、このRF-Fc又はRFL-Fcは、標準比色ペルオキシダーゼ反応による現像のため、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)と直接又は二次抗体戦略を介して結合されている。RF-Fc又はRFL-Fcを用いる他の反復としては、サンドイッチELISA技法のため、血漿インキュベーションの前にFc複合体をプレートに固定し、洗浄し、及び続いてHRPと架橋したRF-FcをmtDNAの検出に用いる場合が可能である。同様に、HRPと架橋したRFL-FcをgDNA検出に使用することができる。或いは、RF-Fc又はRFL-Fcいずれかを、マルチプレックスアッセイ(例えば、Lumina box)においてビーズアレイの一部としてビーズに固定することができる。他の直接固定技法、例えば、金基材への固定は、インピーダンスの変化を可能にすることができる。循環している細胞不含DNAは、全身性炎症のメディエータである。循環mtDNAの上昇は、癌、外傷、感染症、脳卒中、自己免疫、悪液質、及び心疾患の患者で見られる。狼瘡患者は、循環している細胞不含DNAの検出により診断される。細胞不含mtDNA分泌の引き金は、炎症性サイトカイン及び癌患者で使用される治療薬(例えばドセタキセル、シスプラチン、ドキソルビシン、及びアンドロゲン標的特化療法)も含めて、多数存在する。循環中のmtDNA又はgDNAの手軽な検出は、DNA枯渇療法を必要とする可能性のある対象を特定することができる。
【0184】
2)RF-Fc及びRFL-Fcを使用して、循環mtDNA/gDNAを枯渇させることで、腫瘍を化学療法に感作させることができる。
【0185】
i)直接静脈注射。循環mtDNA又はgDNAが上昇している個体へのRF-Fc又はRFL-Fcの導入を使用して、肝臓内皮細胞で見つかるFcガンマ受容体を経由して抗原を枯渇させることができる。捕捉されたmtDNA又はgDNAは、その後、糞便を通じて排泄されると思われる。
【0186】
Fc複合体は、化学療法治療期間中、28日間、以下のとおりの投薬スケジュールで投与することができる:分割用量レジメン(用量計算の最大体重=85 kg):
サイクル1の間、1日目及び4日目:初期用量:1日目に3 mg/kg IVを1回の用量として、続いて4日目に7 mg/kg、続いて完全用量レジメン:8日目、15日目、及び22日目に10 mg/kg IVを1回の用量として。
サイクル2以降:1日目、8日目、15日目、及び22日目に10 mg/kg IVを1回の用量として
【0187】
ii)RF-Fc又はRFL-Fcを、血液を血液濾過システムに通過させるためのデキストランビーズ又はセファロースビーズ又は他の固体基材に固定する。この血液濾過システムは、循環血液からmtDNA/gDNAを選択的に取り出すことができる。血液は、医療用チューブを通じてデバイスに入ると思われ、濾過チャンバーは、対象の血液と接触して、DNAを捕捉する機会がもたらされると思われる。次いで、血液は、個体中に戻されると思われる。そのようなプロセスは、癌患者の化学療法点滴サイクルの前に使用することができる。
【0188】
iii)バチルス・サブチルス(又は他の腸内細菌、例えば、ラクトコッカス・ラクチス)が発現し、摂取により腸内微生物叢に導入されたRF-Fc又はRFL-Fcタンパク質。腸内細菌のコロニー形成は、化学療法治療の前に行うことができる。化学療法は、「漏出性腸」、すなわち結腸内容物と循環とを隔てる結腸上皮の密接結合の崩壊を引き起こすことが知られている。化学療法感作は、循環中にRF-Fc又はRFL-Fcが導入され、排出する肝臓Fcガンマ受容体によりmtDNA/gDNAが枯渇することにより、可能となり得る。バチルス・サブチルス及びラクトコッカス・ラクチスを含む腸内細菌は、腸の健康を改善することが既知である。
【0189】
RF-Fc又はRFL-Fcの適用は、癌患者を含み、悪液質患者も、筋肉の消耗を引き起こすtoll様受容体介在型炎症と関連した循環中のmtDNA上昇を有することが知られている。悪液質患者におけるmtDNAの枯渇は、筋肉の消耗を制限する可能性がある。同様に、狼瘡患者は、疾患炎症と関連した循環中のgDNAを有すると広く認識されている。RFL-Fcは、狼瘡対象に使用することができる。
【0190】
本発明の様々な実施形態が、上記の詳細な説明で記載されている。これらの記載は、上記実施形態を直接説明するものであるが、当然のことながら、当業者なら本明細書中示され、記載される具体的な実施形態に対する修飾及び/又は改変を着想することができる。そのような修飾又は改変で本説明の範囲内に来るものはどれでも、同じくその範囲内に含まれるものとする。具体的に記されない限り、本明細書及び特許請求の範囲中の単語及び語句には、関連分野(複数の場合もある)の当業者にとって通常の及び習慣的な意味が与えられるというのが、本発明者らの意図である。
【0191】
本発明の様々な実施形態の上記説明は、本出願の出願時点で出願人に既知であるものについて提供されてきており、これらは例示及び説明を目的とするものである。本説明は、本発明を包括することも、本発明を開示されるまさにその形に限定することも意図せず、多くの修飾及び改変が、上記の教示に照らして可能である。記載される実施形態は、本発明の原則及びその実用的応用を説明するとともに、様々な実施形態において企図される特定用途に適切である様々な修飾を用いて当業者が本発明を利用できるようにするのに役立つ。したがって、本発明は、本発明の実行に関して開示された特定の実施形態に限定されないものとする。
【0192】
本発明の特定の実施形態が示され、記載されてきたものの、当業者には明らかであるだろうが、本明細書中の教示に基づき、本発明及びその広範囲の態様から逸脱することなく変更及び修正を行うことができ、したがって、添付の特許請求の範囲は、全てのそのような変更及び修正を、本発明の真の趣旨及び範囲内にあるものとして、特許請求の範囲内に包含する。当業者には当然のことながら、概して、本明細書中で使用される用語は、一般に「非限定」用語であることを意図する(例えば、「含む(including)」という用語は、「~を含むが、それらに限定されない」と解釈されるべきであり、「有する(having)」という用語は、「少なくとも~を有する」と解釈されるべきであり、「含む(includes)」という用語は、「~を含むが、それらに限定されない」と解釈されるべきである、等)。
【0193】
本明細書中で使用される場合、「含む(comprising)」又は「含む(comprises)」という用語は、或る実施形態にとって有用である組成物、方法、及びそれらの各構成要素(複数の場合もある)を言及するのに使用されるが、有用であるか否かにかかわらず、明示されていない要素の包含を更に受け入れる。当業者には当然のことながら、概して、本明細書中で使用される用語は、一般に「非限定」用語であることを意図する(例えば、「含む(including)」という用語は、「~を含むが、それらに限定されない」と解釈されるべきであり、「有する(having)」という用語は、「少なくとも~を有する」と解釈されるべきであり、「含む(includes)」という用語は、「~を含むが、それらに限定されない」と解釈されるべきである、等)。非限定用語である「含む(comprising)」は、含む(including)、含有する(containing)、又は有する(having)等の用語の同義語として、本発明を説明及び特許請求するために本明細書中で使用されるものの、本発明又はそれらの実施形態は、「~からなる(consisting of)」又は「~から本質的になる(consisting essentially of)」等の代替用語を用いて、代替的に説明される場合がある。
【0194】
特に指定されない限り、用途の特定の実施形態を説明する文脈(特に特許請求の範囲の文脈)で使用される数を具体的に指定しない用語(terms "a" and "an" and "the")という用語及び同様な記述は、単数及び複数の両方を包含すると解釈することができる。本明細書中の値の範囲の記述は、その範囲内に含まれる別個の値を個々に示す省略型の方法としての役目を果たすことを意図するにすぎない。本明細書にて特に記載がない限り、個別の値はそれぞれ、値が本明細書で個別に列挙されたかのごとく本明細書に組み込まれる。本明細書中に記載される全ての方法は、本明細書にて特に記載がない限り又は文脈から別途明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で行うことができる。本明細書中の或る特定の実施形態に関して提供されるありとあらゆる例、又は例示の言葉(例えば、「等(such as)」)の使用は、本出願をより詳しく理解させることを意図するにすぎず、本出願の範囲に特許請求による以外の制限をかけることはない。略語「e.g.」は、ラテン語の「exempli gratia」に由来し、本明細書中、制限をかけない例を示すのに使用される。すなわち、「e.g.」という略語は、「例えば(for example)」という用語と同義である。本明細書中の言葉には、どれ1つとして、特許請求されない要素のいずれかが本出願の実施に必須であることを示すと解釈されるべきものはない。
【0195】
図面訳
図1A
conditionedmedia 条件培地
図1B
β-actin β-アクチン
図1C
β-actin β-アクチン
図1D
Input インプット
control 対照
cond.media 条件培地
図1E
control 対照
図1F
Log10(p value) Log10(P値)
Log2fold change Log2倍数変化
図1G
DNAse DNアーゼ
heat 熱
β-actin β-アクチン
図2A
DNase DNアーゼ
heat 熱
β-actin β-アクチン
図2D
control 対照
図2E
control 対照
catalaseU/ml カタラーゼU/ml
図2F
β-actin β-アクチン
図2G
catalase カタラーゼ
図3A
C3aAgonist C3aアゴニスト
β-actin β-アクチン
図3B
allograft 同種移植
wtfibro. 野生型線維芽細胞
Tlr9-/-fibro. Tlr9-/-線維芽細胞
saline 生理食塩水
Luminescence 発光
図3C
tumorvolume 腫瘍体積
control 対照
TLR9-/-fibro. TLR9-/-線維芽細胞
図3D
control 対照
normalizedexp. 正規化発現量
図3E
control 対照
TLR9-/-fibro. TLR9-/-線維芽細胞
図4A
humanplasma mtDNA ヒト血漿mtDNA
pvalue P値
control 対照
図4B
mouseplasma mtDNA マウス血漿mtDNA
control 対照
図4C
cond.media 条件培地
pvalue P値
図4D
cyto 細胞質
mito ミトコンドリア
Beclin ベクリン
図4E
Beclin1 ベクリン1
β-actin β-アクチン
図4F
cellcount 細胞数
control 対照
図4G
antagonism 拮抗作用
synergy 相乗作用
図5A
tumorvolume 腫瘍体積
Days 日数
control 対照
図5B
control 対照
β-actin β-アクチン
図5C
control 対照
norm.expression 正規化発現量
図6
PCaprogression PCa進行
DOCETAXEL ドセタキセル
図7A
relativemRNA expression 相対mRNA発現
図7B
DNAconc. DNA濃度
図7C
heat 熱
DNase DNアーゼ
caspase1 カスパーゼ1
cleavedcaspase 1 切断型カスパーゼ1
proIL-1β プロIL-1β
activeIL-1β 活性IL-1β
β-actin β-アクチン
図7D
relativemRNA exp. 相対mRNA発現
heat 熱
DNase DNアーゼ
sonication 超音波処理
図7F
β-actin β-アクチン
con. 対照
図8B
β-actin β-アクチン
図8C
cellcount 細胞数
図9A
Docetaxel ドセタキセル
Interactionindex 相互作用指数
Lowerbound Conf interval 信頼区間の下限値
Upperbound Conf interval 信頼区間の上限値
図9B
mouseweight マウス体重
control 対照
days 日数
図9C
control 対照
図10
RicinB-type domain リシンB型ドメイン
Fibronectiontype II domain フィブロネクチンII型ドメイン
C-typelectin domain C型レクチンドメイン
Fcdomain Fcドメイン
図12A
mtDNAbinding with DEC205 fragments mtDNAとDEC205断片との結合
Absorbance(OD) 吸光度(OD)
図12B
gDNAbinding with DEC205 fragments gDNAとDEC205断片との結合
Absorbance(OD) 吸光度(OD)
図13
C3Relative Expres. C3相対発現
図1
図2
図3
図3-1】
図4
図5
図5-1】
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【配列表】
2023503615000001.app
【国際調査報告】