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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-31
(54)【発明の名称】糖尿病患者を階層化する方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 7/08 20060101AFI20230124BHJP
   C12Q 1/26 20060101ALI20230124BHJP
   C12Q 1/6869 20180101ALI20230124BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALI20230124BHJP
   C07K 14/00 20060101ALI20230124BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20230124BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20230124BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20230124BHJP
   A61K 38/10 20060101ALI20230124BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20230124BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20230124BHJP
【FI】
C07K7/08
C12Q1/26 ZNA
C12Q1/6869 Z
C12Q1/686 Z
C07K14/00
C12N5/0783
A61K39/00 H
A61P3/10
A61K38/10
A61K38/16
A61K35/17 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022530960
(86)(22)【出願日】2020-11-27
(85)【翻訳文提出日】2022-07-25
(86)【国際出願番号】 EP2020083642
(87)【国際公開番号】W WO2021105371
(87)【国際公開日】2021-06-03
(31)【優先権主張番号】19211796.8
(32)【優先日】2019-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518370219
【氏名又は名称】アンシス・エスア
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンサン・カルリエ
【テーマコード(参考)】
4B063
4B065
4C084
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B063QA05
4B063QA13
4B063QA19
4B063QQ02
4B063QQ03
4B063QQ08
4B063QQ42
4B063QR48
4B063QS39
4B063QS40
4B063QX10
4B065AA90X
4B065AC20
4B065BD39
4B065CA44
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA07
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA18
4C084BA23
4C084NA14
4C084ZC35
4C085AA03
4C085EE01
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB37
4C087NA14
4C087ZC35
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA16
4H045BA17
4H045BA18
4H045BA19
4H045CA40
4H045DA89
4H045EA20
4H045FA10
4H045FA30
4H045FA33
(57)【要約】
本発明は、インスリンのMHCII T細胞エピトープ及び酸化還元酵素モチーフを含む免疫原性ペプチドによる処置に対する1型糖尿病患者の応答を予測する方法に関し、上記方法は、該患者のMHCクラスII HLAハプロタイプを決定する工程を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化還元酵素モチーフ及びこのモチーフから0~7アミノ酸分離された(プロ)インスリンMHCクラスII T細胞エピトープ配列を含む、12~50アミノ酸の長さを有する免疫原性ペプチドによる治療に対する1型糖尿病患者の応答を予測するin vitro方法であって、前記酸化還元酵素モチーフが、モチーフ:
Zm[CST]XnC又はZmCXn[CST]
(式中、nは、0~6の整数であり、
mは、0~2の整数であり、
Cはシステインを、Sはセリンを、Tはトレオニンを、Xは任意のアミノ酸を、Zは任意のアミノ酸、好ましくは塩基性アミノ酸を表す)
を含み、前記方法が、該患者のMHCクラスII HLAハプロタイプを決定する工程を含み、HLA-DR4陽性(HLA-DR4+)と決定された患者が、前記治療に対して応答性であると予測される、方法。
【請求項2】
前記(プロ)インスリンMHCクラスII T細胞エピトープ配列が、アミノ酸配列LALEGSLQK[配列番号3]によって規定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記応答性患者が、ホモ接合性又はヘテロ接合性HLAタイプDR4陽性である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記患者における前記ハプロタイプ決定が、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)ベースの分析、配列分析、電気泳動分析を使用して、又は抗体試験を通して実施される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
患者における(プロ)インスリン又はC-ペプチドから選択される自己免疫抗原に対する免疫応答を低減させる方法であって、酸化還元酵素モチーフ及びこのモチーフから0~7アミノ酸分離された(プロ)インスリンMHCクラスII T細胞エピトープ配列を含む、12~50アミノ酸の長さを有する免疫原性ペプチドを前記患者に投与する工程を含み、前記酸化還元酵素モチーフが、モチーフ:
Zm[CST]XnC又はZmCXn[CST]
(式中、nは、0~6の整数であり、
mは、0~2の整数であり、
Cはシステインを、Sはセリンを、Tはトレオニンを、Xは任意のアミノ酸を、Zは任意のアミノ酸、好ましくは塩基性アミノ酸を表す)
を含み、前記患者が、DR4陽性MHCクラスII HLAハプロタイプの存在に基づいて選択される、方法。
【請求項6】
DR4陽性MHCクラスII HLAハプロタイプの存在に基づいて選択される患者における1型糖尿病の治療又は予防における使用のための、酸化還元酵素モチーフ及びこのモチーフから0~7アミノ酸分離された(プロ)インスリンMHCクラスII T細胞エピトープ配列を含む、12~50アミノ酸の長さを有する免疫原性ペプチドであって、前記酸化還元酵素モチーフが、モチーフ:
Zm[CST]XnC又はZmCXn[CST]
(式中、nは、0~6の整数であり、
mは、0~2の整数であり、
Cはシステインを、Sはセリンを、Tはトレオニンを、Xは任意のアミノ酸を、Zは任意のアミノ酸、好ましくは塩基性アミノ酸を表す)
を含む、使用のための免疫原性ペプチド。
【請求項7】
1型糖尿病の治療又は予防の方法であって、DR4陽性(HLA-DR4+)及び任意選択的にHLA-DR3陰性(HLA-DR3-)MHCクラスII HLAハプロタイプの存在に基づいて選択される患者に、有効投与量の、酸化還元酵素モチーフ及びこのモチーフから0~7アミノ酸分離された(プロ)インスリンMHCクラスII T細胞エピトープ配列を含む、12~50アミノ酸の長さを有する免疫原性ペプチドを投与する工程を含み、前記酸化還元酵素モチーフが、モチーフ:
Zm[CST]XnC又はZmCXn[CST]
(式中、nは、0~6の整数であり、
mは、0~2の整数であり、
Cはシステインを、Sはセリンを、Tはトレオニンを、Xは任意のアミノ酸を、Zは任意のアミノ酸、好ましくは塩基性アミノ酸を表す)
を含む、方法。
【請求項8】
前記(プロ)インスリンMHCクラスII T細胞エピトープ配列が、アミノ酸配列LALEGSLQK[配列番号3]によって規定される、請求項5又は7に記載の方法、又は請求項6に記載の使用のための免疫原性ペプチド。
【請求項9】
前記患者の前記MHCクラスII HLAハプロタイプが、治療前に決定されたか、又は治療中に決定されている、請求項5、7及び8のいずれか一項に記載の方法、又は請求項6に記載の使用のための免疫原性ペプチド。
【請求項10】
前記ハプロタイプ決定が、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)ベースの分析、配列分析、電気泳動分析を使用して、又は抗体試験を通して実施される、請求項5、及び7~9のいずれか一項に記載の方法、又は請求項6に記載の使用のための免疫原性ペプチド。
【請求項11】
HLAタイプDR4+に関してホモ結合性である患者が、応答性が最も高いとされ、及び/又はHLAタイプDR4+に関してヘテロ結合性である患者、例えばDR4+及びDR3+である患者が、応答性が中程度であるとされる、請求項5、及び7~10のいずれか一項に記載の方法、又は請求項6に記載の使用のための免疫原性ペプチド。
【請求項12】
前記患者における前記ハプロタイプ決定が、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)ベースの分析、配列分析、電気泳動分析を使用して、又は抗体試験を通して実施される、請求項5、及び7~11のいずれか一項に記載の方法、又は請求項6に記載の使用のための免疫原性ペプチド。
【請求項13】
前記ペプチドが、50~1500μg、好ましくは100~1200μgの投薬レジメンで投与される、請求項5、及び7~12のいずれか一項に記載の方法、又は請求項6に記載の使用のための免疫原性ペプチド。
【請求項14】
前記ペプチドが、単回用量で、又は2回、3回、4回、5回、又はそれよりも多い用量で、同時に又は連続して投与される、請求項5、及び7~13のいずれか一項に記載の方法、又は請求項6に記載の使用のための免疫原性ペプチド。
【請求項15】
前記ペプチドが、下記のスキーム:
1)前記ペプチド50μgによる第1の皮下注射、続く前記ペプチド25μgの3回連続した皮下注射、それぞれ2週空けて実施、
2)前記ペプチド150μgによる第1の皮下注射、続く前記ペプチド75μgの3回連続した皮下注射、それぞれ2週空けて実施、及び
3)前記ペプチド450μgによる第1の皮下注射、続く前記ペプチド225μgの3回連続した皮下注射、それぞれ2週空けて実施
のいずれか1つに従って4回の隔週の皮下又は筋肉内注射を通して投与される、請求項5、及び7~14のいずれか一項に記載の方法、又は請求項6に記載の使用のための免疫原性ペプチド。
【請求項16】
前記患者が更に、HLA-DR3陰性(HLA-DR3-)である、請求項5、及び7~15のいずれか一項に記載の方法、又は請求項6に記載の使用のための免疫原性ペプチド。
【請求項17】
前記ペプチドが、前記ペプチド及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物として投与される、請求項5、及び7~16のいずれか一項に記載の方法、又は請求項6に記載の使用のための免疫原性ペプチド。
【請求項18】
前記ペプチドが、前記ペプチド及びアジュバントを含む医薬組成物として投与される、請求項5、及び7~17のいずれか一項に記載の方法、又は請求項6に記載の使用のための免疫原性ペプチド。
【請求項19】
- 末梢血細胞を供給する工程と、
- 前記細胞を、酸化還元酵素モチーフ及びこのモチーフから0~7アミノ酸分離された(プロ)インスリンMHCクラスII T細胞エピトープ配列を含む、12~50アミノ酸の長さを有する免疫原性ペプチドとin vitroで接触させる工程であって、前記酸化還元酵素モチーフが、モチーフ:
Zm[CST]XnC又はZmCXn[CST]
(式中、nは、0~6の整数であり、
mは、0~2の整数であり、
Cはシステインを、Sはセリンを、Tはトレオニンを、Xは任意のアミノ酸を、Zは任意のアミノ酸、好ましくは塩基性アミノ酸を表す)
を含む、接触させる工程と、
- 前記細胞をIL-2の存在下で増殖させる工程と
を含む方法によって得られる、インスリンエピトープを提示するAPCに対する細胞溶解性CD4+T細胞の集団による治療に対する1型糖尿病患者の応答を予測するin vitro方法であって、前記予測方法が、該患者の該MHCクラスII HLAハプロタイプを決定する工程を含み、HLA-DR4陽性(HLA-DR4+)である患者が、前記治療に対して応答性であると予測される、方法。
【請求項20】
前記患者が更に、HLA-DR3陰性(HLA-DR3-)である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
患者における(プロ)インスリン又はC-ペプチドから選択される自己免疫抗原に対する免疫応答を低減する方法であって、
- 末梢血細胞を供給する工程と、
- 前記細胞を、酸化還元酵素モチーフ及びこのモチーフから0~7アミノ酸分離された(プロ)インスリンMHCクラスII T細胞エピトープ配列を含む、12~50アミノ酸の長さを有する免疫原性ペプチドとin vitroで接触させる工程であって、前記酸化還元酵素モチーフが、モチーフ:
Zm[CST]XnC又はZmCXn[CST]
(式中、nは、0~6の整数であり、
mは、0~2の整数であり、
Cはシステインを、Sはセリンを、Tはトレオニンを、Xは任意のアミノ酸を、Zは任意のアミノ酸、好ましくは塩基性アミノ酸を表す)
を含む、接触させる工程と、
- 前記細胞をIL-2の存在下で増殖させる工程と
を含む方法によって得られる、インスリンエピトープを提示するAPCに対する細胞溶解性CD4+T細胞の集団を前記患者に投与する工程を含み、前記患者が、DR4陽性MHCクラスII HLAハプロタイプの存在に基づいて選択される、方法。
【請求項22】
選択された前記患者が更に、HLA-DR3陰性(HLA-DR3-)である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
DR4陽性MHCクラスII HLAハプロタイプの存在に基づいて選択される患者における1型糖尿病の治療又は予防における使用のための、
- 末梢血細胞を供給する工程と、
- 前記細胞を、酸化還元酵素モチーフ及びこのモチーフから0~7アミノ酸分離された(プロ)インスリンMHCクラスII T細胞エピトープ配列を含む、12~50アミノ酸の長さを有する免疫原性ペプチドとin vitroで接触させる工程であって、前記酸化還元酵素モチーフが、モチーフ:
Zm[CST]XnC又はZmCXn[CST]
(式中、nは、0~6の整数であり、
mは、0~2の整数であり、
Cはシステインを、Sはセリンを、Tはトレオニンを、Xは任意のアミノ酸を、Zは任意のアミノ酸、好ましくは塩基性アミノ酸を表す)
を含む、接触させる工程と、
- 前記細胞をIL-2の存在下で増殖させる工程と
を含む、インスリンエピトープを提示するAPCに対する細胞溶解性CD4+T細胞の集団を生成するin vitro方法によって得られる、インスリンエピトープを提示するAPCに対する細胞溶解性CD4+T細胞の集団。
【請求項24】
前記患者が更に、HLA-DR3陰性(HLA-DR3-)である、請求項23に記載の使用のための細胞の集団。
【請求項25】
前記酸化還元酵素モチーフが、モチーフ:
Zm[CST]XnC又はZmCXn[CST]
(式中、nは、0~3の整数であり、
mは、0~2の整数を表し、
Cはシステインを、Sはセリンを、Tはトレオニンを、Xは任意のアミノ酸を、Zは塩基性アミノ酸を表す)
を含む、請求項5、7~18及び21~24のいずれか一項に記載の方法、又は請求項6に記載の使用のための免疫原性ペプチド。
【請求項26】
前記酸化還元酵素モチーフが、テトラペプチド配列Cxx[CST][配列番号1]又は[CST]xxC[配列番号2]を含む、請求項5、7~18及び21~25のいずれか一項に記載の方法、又は請求項6に記載の使用のための免疫原性ペプチド。
【請求項27】
前記MHCクラスII T細胞インスリンエピトープが、配列LALEGSLQK[配列番号3]によって規定され得る、請求項5、7~18及び21~26のいずれか一項に記載の方法、又は請求項6に記載の使用のための免疫原性ペプチド。
【請求項28】
前記ペプチドが、配列Cxx[CST]SLQPLALEGSLQK[配列番号4]又は[CST]xxCSLQPLALEGSLQK[配列番号5]を含む、請求項5、7~18及び21~27のいずれか一項に記載の方法、又は請求項6に記載の使用のための免疫原性ペプチド。
【請求項29】
前記ペプチドが、配列CxxCSLQPLALEGSLQK[配列番号6]を含む、請求項5、7~18及び21~28のいずれか一項に記載の方法、又は請求項6に記載の使用のための免疫原性ペプチド。
【請求項30】
前記ペプチドが、配列HCxx[CST]SLQPLALEGSLQK[配列番号7]又はH[CST]xxCSLQPLALEGSLQK[配列番号8]を含む、請求項5、7~18及び21~29のいずれか一項に記載の方法、又は請求項6に記載の使用のための免疫原性ペプチド。
【請求項31】
前記ペプチドが、配列HCxxCSLQPLALEGSLQK[配列番号9]を含む、請求項5、7~18及び21~30のいずれか一項に記載の方法、又は請求項6に記載の使用のための免疫原性ペプチド。
【請求項32】
前記ペプチドが、配列Cxx[CST][配列番号1]又は[CST]xxC配列番号2]酸化還元モチーフ配列及び配列SLQPLALEGSLQKRG[配列番号20]を含む、請求項5、7~18及び21~31のいずれか一項に記載の方法、又は請求項6に記載の使用のための免疫原性ペプチド。
【請求項33】
前記ペプチドが、アミノ酸配列HCPYCSLQPLALEGSLQKRG[配列番号26]を含むか、又はアミノ酸配列HCPYCSLQPLALEGSLQKRG[配列番号26]からなる、請求項5、7~18及び21~32のいずれか一項に記載の方法、又は請求項6に記載の使用のための免疫原性ペプチド。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
抗原に対する望ましくない免疫応答の生成を阻止するために、いくつかの戦略が記載されている。WO2008/017517は、所与の抗原性タンパク質のMHCクラスII T細胞エピトープ及び酸化還元酵素モチーフを含むペプチドを使用した新しい戦略を記載する。これらのペプチドは、CD4+T細胞を細胞溶解性CD4+T細胞と呼ばれる細胞溶解特性を有する細胞型に変換する。これらの細胞は、アポトーシス誘発を通して、ペプチドが由来する抗原を提示する抗原提示細胞(APC)を死滅させることが可能である。WO2008/017517は、アレルギー及び自己免疫疾患、例えば1型糖尿病のためにこの概念を実証する。本明細書では、インスリンは自己抗原として作用することができる。
【0002】
WO2009101207及びCarlierら(2012)Plos one 7,10 e45366は、抗原特異的細胞溶解性細胞をより詳細に更に記載する。
【0003】
WO2016059236は、追加のヒスチジンが酸化還元酵素モチーフに近接して存在する更に改変されたペプチドを開示する。
【0004】
WO2018162498は更に、更なるヒスチジンを有する酸化還元酵素モチーフ及びインスリン由来のMHCII T細胞エピトープを含むペプチド、並びに1型糖尿病(T1D)の処置におけるその使用を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2008/017517
【特許文献2】WO2009101207
【特許文献3】WO2016059236
【特許文献4】WO2018162498
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Carlierら(2012)Plos one 7,10 e45366
【非特許文献2】McCluskeyら、Current Protocols in Immunology(2017)、118、A.1S.1-A.1S.6
【非特許文献3】Marshら、Tissue Antigens(2010)、75、291頁
【非特許文献4】Liebersら(1996)Clin. Exp. Allergy 26、494~516頁
【非特許文献5】Tomazzolliら(2006) Anal. Biochem. 350、105~112頁
【非特許文献6】Holmgren(2000) Antioxid. Redox Signal. 2、811~820頁
【非特許文献7】Jacquotら(2002) Biochem. Pharm. 64、1065~1069頁
【非特許文献8】Fomenkoら(2003) Biochemistry 42、11214~11225頁
【非特許文献9】Fomenkoら(2002) Prot. Science 11、2285~2296頁
【非特許文献10】Vijayasaradhiら(1995) J. Cell. Biol. 130、807~820頁
【非特許文献11】Copierら(1996) J. lmmunol. 157、1017~1027頁
【非特許文献12】Mahnkeら(2000) J. Cell Biol.151、673~683頁
【非特許文献13】Bonifacio及びTraub(2003) Annu. Rev. Biochem. 72、395~447頁
【非特許文献14】Schnelzer & Kent(1992) lnt. J. Pept. Protein Res. 40、180~193頁
【非特許文献15】Tamら、(2001) Biopolymers 60、194~205頁
【非特許文献16】「McCutcheon's Detergents and Emulsifiers Annual」(MC Publishing Crop.社、Ridgewood、New Jersey、1981)
【非特許文献17】「Tensid-Taschenbucw」、第2版(Hanser Verlag社、Vienna、1981)
【非特許文献18】「Encyclopaedia of Surfactants」(Chemical Publishing Co.社、New York、1981)
【非特許文献19】Mackら、2009年、Tissue Antigens. 2009年1月; 73(1):17~32項
【非特許文献20】https://www.onelambda.com/en/product/labtype-sso.html
【非特許文献21】https://www.gendx.com/products/ngsengine
【非特許文献22】Greenbaumら(Diabetes.2012、61(8):2066~73頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記を考慮した場合でも、処置の大部分が恩恵を受けるT1D患者亜集団を階層化及び選択し、必要に応じて応答性の低い他の患者亜集団に関して上記処置を調整する方法が依然必要とされている。これまでのところ、T1D患者における酸化還元酵素モチーフにカップリングされたインスリンT細胞エピトープを含む免疫原性ペプチドの使用の効果及びそれに対する患者応答に関する情報は入手可能ではなかった。
【0008】
本発明は、良好な応答の可能性に関してT1D患者を階層化する方法を明らかにした。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、インスリン抗原及び酸化還元酵素モチーフを含む免疫原性ペプチドによる治療に対する1型糖尿病患者の応答性を予測するための階層化方法及びツール並びに上記免疫原性ペプチドによるそのような1型糖尿病患者の治療に関する方法を提供する。
【0010】
更に、本発明者らは、患者において、応答性の上記レベルが、MHCクラスIIハプロタイプに応じ得ることを見出した。
【0011】
したがって、本発明は、下記態様を提供する:
【0012】
1.酸化還元酵素モチーフ及びこのモチーフから0~7アミノ酸分離されて(プロ)インスリンMHCクラスII T細胞エピトープ配列を含む12~50アミノ酸の長さを有する免疫原性ペプチドによる治療に対する1型糖尿病患者の応答を予測するin vitro方法であって、該患者のMHCクラスII HLAハプロタイプを決定する工程を含み、HLA-DR4陽性(HLA-DR4+)である患者が、前記治療に対して応答性であると予測される、方法。
【0013】
「HLA DR4陽性」という言語は、ヘテロ接合性又はホモ接合性HLA DR4陽性である患者両方を包含する。
【0014】
一実施形態では、前記患者はまた、HLA-DR3陰性(HLA-DR3-)である。
【0015】
「HLA-DR3陰性」という用語は、ホモ接合性HLA-DR3陰性である患者である。
【0016】
より詳細には、前記階層化方法は、本発明による免疫原性ペプチドによる処置から特に良好に恩恵を受ける患者を特定する。
【0017】
より詳細には、前記階層化方法は、HLA-DR4陰性である患者を上回る応答性である場合に、HLA-DR4陽性ハプロタイプ及び任意選択的にHLA-DR3陰性ハプロタイプを有する患者を同定する。
【0018】
この応答性は、例えば:
- 1kg当たり総1日インスリン用量を計数すること(ここで、非処置又は非応答性患者に対する上記総数の低減は、処置に対して肯定的な応答を示す)によって、又は
- C-ペプチド分泌を測定するMMTT検査を使用すること(ここで、応答性患者は、非処置又は非応答性患者と比較した場合に改善の傾向を示す(C-ペプチドの減少のメジアンが、参照モデルよりも低い、デルタ比が0を上回る))によって
測定することができる。
【0019】
一部の実施形態では、前記患者における前記ハプロタイプ決定は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)ベースの分析、配列分析、電気泳動分析を使用して、又は抗体試験を通して実施される。
【0020】
2.患者における(プロ)インスリン又はC-ペプチドから選択される自己免疫抗原に対する免疫応答を低減させる方法であって、酸化還元酵素モチーフ及びこのモチーフから0~7アミノ酸分離されて(プロ)インスリンMHCクラスII T細胞エピトープ配列を含む12~50アミノ酸の長さを有する免疫原性ペプチドを投与する工程を含み、前記患者が、DR4陽性(HLA-DR4+)及び任意選択的にHLA-DR3陰性(HLA-DR3-)MHCクラスII HLAハプロタイプの存在に基づいて選択された、方法。
【0021】
3.DR4陽性(HLA-DR4+)及び任意選択的にHLA-DR3陰性(HLA-DR3-)MHCクラスII HLAハプロタイプの存在に基づいて選択される患者における1型糖尿病の治療又は予防における使用のための、酸化還元酵素モチーフ及びこのモチーフから0~7アミノ酸分離されて(プロ)インスリンMHCクラスII T細胞エピトープ配列を含む12~50アミノ酸の長さを有する免疫原性ペプチド。
【0022】
4.1型糖尿病の治療又は予防の方法であって、有効投与量の、酸化還元酵素モチーフ及びこのモチーフから0~7アミノ酸分離されて(プロ)インスリンMHCクラスII T細胞エピトープ配列を含む12~50アミノ酸の長さを有する免疫原性ペプチドを、DR4陽性(HLA-DR4+)及び任意選択的にHLA-DR3陰性(HLA-DR3-)MHCクラスII HLAハプロタイプの存在に基づいて選択される患者に投与する工程を含む、方法。
【0023】
5.態様2~4のある特定の実施形態では、前記患者の前記MHCクラスII ハプロタイプは、治療前に決定されたか、又は治療中に決定されている。
【0024】
一部の実施形態では、前記ハプロタイプ決定は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)ベースの分析、配列分析、電気泳動分析を使用して、又は抗体試験を通して実施される。
【0025】
6.態様1~5のいずれか1つのある特定の形態では、前記酸化還元酵素モチーフは、一般式:
Zm[CST]XnC又はZmCXn[CST]
(式中、nは、0~6の整数であり、好ましくは0~3であり、より好ましくは、0、1、2、又は3であり、
mは、0~2の整数を表し、
Cはシステインを、Sはセリンを、Tはトレオニンを、Xは任意のアミノ酸を、Zは任意のアミノ酸、好ましくは塩基性アミノ酸を表す)
を含むことができる。
【0026】
一部の実施形態では、mが0であり、N末端酸化還元酵素モチーフ(酸化還元酵素モチーフが免疫原性ペプチドのN末端開始に位置する)の場合、モチーフの最初のシステイン、トレオニン又はセリンは、N-アセチル化、N-メチル化、N-エチル化又はN-プロピオニル化を通して化学的に改変され得る。
【0027】
一部の実施形態では、mが0であり、C末端酸化還元酵素モチーフ(酸化還元酵素モチーフが免疫原性ペプチドのC末端終了に位置する)の場合、モチーフの最後のシステイン、トレオニン又はセリンは、そのC末端アミド又は酸基のアセチル、メチル、エチル又はプロピオニル基によるC末端置換を通して化学的に改変され得る。
【0028】
これらのモチーフは、以下で例示される。
【0029】
好ましい実施形態では、前記酸化還元酵素モチーフは、任意選択的にHCXXC、KCXXC、RCXXC、KHCXXC、HKCXXC、RHCXXC、HRCXXC、KRCXXC、又はRKCXXC等の1つ又は複数の塩基性アミノ酸が先行するテトラペプチド配列Cxx[CST][配列番号1]又は[CST]xxC[配列番号2]を含み得る。
【0030】
好ましい実施形態では、前記酸化還元酵素モチーフは、T細胞エピトープに隣接するN又はC末端にある11アミノの領域内に天然に存在せず、より好ましくは、前記酸化還元酵素モチーフは、T細胞エピトープに天然に存在しない。
【0031】
ある特定の実施形態では、MHCクラスII T細胞インスリンエピトープは、配列LALEGSLQK[配列番号3]によって規定され得る。
【0032】
7.前記ペプチドが、配列Cxx[CST]SLQPLALEGSLQK[配列番号4]又は[CST]xxCSLQPLALEGSLQK[配列番号5]を含む、態様1~6のいずれか1つによる方法又は使用。
【0033】
8.前記ペプチドが、配列CxxCSLQPLALEGSLQK[配列番号6]を含む、態様1~7のいずれか1つによる方法又は使用。
【0034】
9.前記ペプチドが、配列HCxx[CST]SLQPLALEGSLQK[配列番号7]又はH[CST]xxCSLQPLALEGSLQK[配列番号8]を含む、態様1~8のいずれか1つによる方法又は使用。
【0035】
10.前記ペプチドが、配列HCxxCSLQPLALEGSLQK[配列番号9]を含む、態様1~9のいずれか1つによる方法又は使用。
【0036】
11.前記ペプチドが、配列Cxx[CST][配列番号1]又は[CST]xxC[配列番号2]酸化還元モチーフ配列及び配列SLQPLALEGSLQKRG[配列番号20]を含む、態様1~10のいずれか1つによる方法又は使用。
【0037】
12.前記ペプチドが、アミノ酸配列HCPYCSLQPLALEGSLQKRG[配列番号26]を含むか、又はアミノ酸配列HCPYCSLQPLALEGSLQKRG[配列番号26]からなる、態様1~11のいずれか1つによる方法又は使用。
【0038】
13.前記ペプチドが、前記ペプチド及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物として投与される、態様1~12のいずれか1つによる方法又は使用。
【0039】
14.前記ペプチドが、50~1500μg、好ましくは100~1200μgの投薬レジメンで投与される、態様2~13のいずれか1つによる方法又は使用。
【0040】
15.前記ペプチドが、単回用量で、又は2回、3回、4回、5回、又はそれよりも多い用量で、同時に又は連続して投与される、態様2~14のいずれか1つによる方法又は使用。
【0041】
16.前記ペプチドが、下記のスキーム:
1)前記ペプチド50μgによる第1の皮下注射、続く前記ペプチド25μgの3回連続した皮下注射、それぞれ2週空けて実施、
2)前記ペプチド150μgによる第1の皮下注射、続く前記ペプチド75μgの3回連続した皮下注射、それぞれ2週空けて実施、及び
3)前記ペプチド450μgによる第1の皮下注射、続く前記ペプチド225μgの3回連続した皮下注射、それぞれ2週空けて実施
のいずれか1つに従って4回の隔週の皮下又は筋肉内注射を通して投与される、態様2~15のいずれか1つによる方法又は使用。
【0042】
17.前記患者が更に、HLA-DR3陰性(HLA-DR3-)である、態様2~16のいずれか1つによる方法又は使用。
【0043】
18.前記ペプチドが、前記ペプチド及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物として投与される、態様2~17のいずれか1つによる方法又は使用。
【0044】
19.前記ペプチドが、前記ペプチド及びアジュバントを含む医薬組成物として投与される、態様2~18のいずれか1つによる方法又は使用。
【0045】
本明細書中で開示される実施形態又は態様のいずれか1つで使用される免疫原性ペプチドの他の特定の実施形態は、下記配列:
Cxx[CST]SLQPLALEGSLQKRG [配列番号10]、
[CST]xxCSLQPLALEGSLQKRG [配列番号11]、
CxxCSLQPLALEGSLQKRG [配列番号12]、
HCxx[CST]SLQPLALEGSLQKRG [配列番号13]、
H[CST]xxCSLQPLALEGSLQKRG [配列番号14]、又は
HCxxCSLQPLALEGSLQKRG [配列番号15]
のいずれか1つからなる。
【0046】
そのような免疫原性ペプチド配列の特定の実施形態では、Cxx[CST][配列番号1]は、CPY[CST][配列番号16]であり、及び/又は[CST]xxC[配列番号2]は、[CST]PYC[配列番号17]であり、より特定のCxxC[配列番号18]は、CPYC[配列番号19]である。
【0047】
特定の実施形態では、ペプチドは、配列HCPYCVRSLQPLALEGSLQKRG[配列番号25]又はHCPYCSLQPLALEGSLQKRG[配列番号26]からなる。
【0048】
上記態様又は実施形態のいずれか1つでは、酸化還元モチーフは、エピトープのN末端側に存在する。
【0049】
上記態様又は実施形態の代替組では、ペプチドは、エピトープのC末端側に酸化還元モチーフを有する。
【0050】
20.本発明の別の態様は、特に1型糖尿病の治療又は予防における、或いは1型糖尿病の症状を低減するための医薬としての使用のための上記で開示されるようなペプチドのいずれか1つに関し、ここで、患者又は対象は、MHCクラスII分子のDR4 HLAハプロタイプに関して陽性及び任意選択的にHLA-DR3陰性(HLA-DR3-)であると決定された。
【0051】
前記態様20の一部の実施形態では、前記患者における前記ハプロタイプ決定は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)ベースの分析、配列分析、電気泳動分析を使用して、又は抗体試験を通して実施される。
【0052】
前記態様20の一部の実施形態では、HLAタイプDR4+に関してホモ結合性である患者は、応答性が最も高いとされ、及び/又はHLAタイプDR4+に関してヘテロ結合性である患者、例えばDR4+及びDR3+である患者は、応答性が中程度であるとされる。
【0053】
21.別の態様は、1型糖尿病の治療又は予防における、或いは1型糖尿病の症状を低減するための使用のための、上記で開示されるようなペプチドのいずれか1つ及び薬学的に許容可能な担体を含む医薬組成物に関し、ここで、患者又は対象は、MHCクラスII分子のDR4 HLAハプロタイプに関して陽性及び任意選択的にHLA-DR3陰性(HLA-DR3-)であると決定された。
【0054】
22.代替的な実施形態では、MHCクラスII分子のDR4 HLAハプロタイプに関して陽性及び任意選択的にHLA-DR3陰性(HLA-DR3-)であると決定されるか、又は決定された患者又は対象は、
- 末梢血細胞を供給する工程と、
- 前記細胞を、上記で開示されるような免疫原性ペプチドのいずれか1つとin vitroで接触させる工程と、
- 前記細胞をIL-2の存在下で増殖させる工程と
を含む、インスリンエピトープを提示するAPCに対する細胞溶解性CD4+T細胞の集団の生成に関する上記in vitro方法によって得られる、インスリンエピトープを提示するAPCに対する細胞溶解性CD4+T細胞の集団を使用して治療され得る。
【0055】
23.別の態様は、1型糖尿病の治療又は予防における、或いは1型糖尿病の症状を低減するための使用のための上記方法によって得られ得るインスリン提示APCに対する細胞溶解性CD4+T細胞の集団に関し、ここで、患者又は対象は、MHCクラスII分子のDR4 HLAハプロタイプに関して陽性及び任意選択的にHLA-DR3陰性(HLA-DR3-)であると決定された。
【0056】
上記態様22又は23の一部の実施形態では、前記患者における前記ハプロタイプ決定は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)ベースの分析、配列分析、電気泳動分析を使用して、又は抗体試験を通して実施される。
【0057】
上記態様22又は23の一部の実施形態では、HLAタイプDR4+に関してホモ結合性である患者は、応答性が最も高いとされ、及び/又はHLAタイプDR4+に関してヘテロ結合性である患者、例えばDR4+及びDR3+である患者は、応答性が中程度であるとされる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
図1】配列HCPYCVRSLQPLALEGSLQKRG(配列番号25)及びHCPYCSLQPLALEGSLQKRG(配列番号26)によって規定される2つの試験ペプチドの、DRB1*0301組換えMHC IIタンパク質又はDRB1*0401組換えMHC IIタンパク質への結合を表す図である。試験ペプチド結合は、蛍光的にタグ付けされた対照高親和性結合剤ペプチドとの競合に起因した蛍光シグナル(RFU)の減少によって用量依存的に実証される。
図2】自己樹状細胞によって提示される配列HCPYCVRSLQPLALEGSLQKRG(配列番号25)を有する免疫原性ペプチドによる1回、4回及び6回の特異的な再刺激後の生応答性CD4+T細胞を数えることによって測定される異なるT1D患者の反応性を表す図である。
図3】HCPYCSLQPLALEGSLQKRG(配列番号26)によって規定される免疫原性ペプチドによるフェーズIb研究設計のスキームを表す図である。
図4】異なるHLA-遺伝子型亜群におけるMMTT後の負荷の2時間後のC-ペプチドAUCのボックスプロットを表す図である。Pl=プラセボ、C1=コホート1、C2=コホート2、C3=コホート3。データは、フェーズIb研究に入った6ヶ月後の応答の変動のパーセント((V8-V2)/V2)として表す。
図5】異なるHLA-遺伝子型亜群における1Kg当たりのインスリンの用量のボックスプロットを表す図である。Pl=プラセボ、C1=コホート1、C2=コホート2、C3=コホート3。データは、フェーズIb研究に入った6ヶ月後の応答の変動のパーセント((V8-V2)/V2)として表す。
図6】異なるHLA-遺伝子型亜群におけるMMTTの2時間後の負荷後のC-ペプチドAUCの測定値対予測値のボックスプロットを表す図である。Pl=プラセボ、C1=コホート1、C2=コホート2、C3=コホート3。データは、フェーズIb研究に入った3ヶ月後(V6)及び6ヶ月後(V8)の応答(デルタ比)の変動のパーセントとして表す。
図7】V3からV8にわたる異なるHLA-遺伝子型亜群における1Kg当たりのインスリンの用量のボックスプロットを表す図である。データは、フェーズIb研究における応答の変動のパーセント((来院X-V2)/V2)として表す。
【発明を実施するための形態】
【0059】
本発明は特定の実施形態に関して記載されるが、本発明はそれに限定されず、請求項によって限定されるだけである。請求項の中のいかなる参照符号も、請求範囲を限定するものと解釈されるべきでない。以下の用語又は定義は、本発明の理解を助けるためにだけ提供される。本明細書で特記されない限り、本明細書で使用される全ての用語は、それらが本発明の分野の当業者にとってのものと同じ意味を有する。本明細書で提供される定義は、当業者が理解するもの未満の請求範囲を有するものと解釈されるべきでない。
【0060】
別途指示されない限り、具体的に詳細に記載されない全ての方法、工程、技術及び操作は、当業者に明らかになるように、それ自体公知の様式で実行することができ、及び実行されている。例えば標準のハンドブック、上で言及した一般的な背景技術、及びその中の更なる引用文献に再び言及される。
【0061】
本明細書で使用されるように、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が明らかに別途指図しない限り、単数及び複数の両方の指示を含む。用語「任意の」は、本明細書で使用される通り、態様、請求項又は実施形態に関して使用される場合、任意の単一のもの(すなわち誰か)、並びに、言及される前記態様、請求項又は実施形態の全ての組合せを指す。
【0062】
本明細書で使用される用語「含んでいる(comprising)」、「含む(comprises)」及び「含む(comprised of)」は、「含んでいる(including)」、「含む(includes)」又は「含有している(containing)」、「含有する(contains)」と同義であり、包括的又はオープンエンドであり、追加の列挙されていないメンバーも、要素も、方法工程も排除しない。前記用語は、実施形態「事実上からなる」及び「からなる」も包含する。
【0063】
エンドポイントによる数値範囲の列挙は、それぞれの範囲の中に包含される全ての数字及び分数、並びに列挙されるエンドポイントを含む。
【0064】
測定可能な値、例えばパラメーター、量、期間等を指す場合に本明細書で使用される用語「約」は、そのような変動が開示される発明で実行するのに適当である限り、指定値の及びそれから+/-10%以下、好ましくは+/-5%以下、より好ましくは+/-1%以下、更により好ましくは+/-0.1%以下の変動を包含するものである。修飾子「約」が指す値は、それ自体も具体的に、及び好ましくは開示されることを理解すべきである。
【0065】
本明細書で使用されるように、「疾患の処置で使用するための組成物」で使用される用語「使用するための」は、対応する処置方法、及び疾患の処置のための医薬の製造のための調製物の対応する使用も開示するものとする。
【0066】
本明細書で使用される用語「ペプチド」は、ペプチド結合によって連結される12~200アミノ酸のアミノ酸配列を含む分子を指すが、それは非アミノ酸構造を含むことができる。
【0067】
本発明によるペプチドは、従来の20アミノ酸又はその改変バージョンのいずれかを含有することができるか、又は、化学的ペプチド合成によって、若しくは化学的若しくは酵素的改変によって組み込まれる天然に存在しないアミノ酸を含有することができる。
【0068】
本明細書で使用される用語「抗原」は、巨大分子、一般的にはタンパク質(多糖の有無にかかわらず)の、又は1つ又は複数のハプテンを含み、T細胞エピトープを含むタンパク質性の組成物で作製される構造を指す。
【0069】
本明細書で使用される用語「抗原性タンパク質」は、1つ又は複数のT細胞エピトープを含むタンパク質を指す。本明細書で使用される自己抗原又は自己抗原性タンパク質は、体内に存在するヒト又は動物タンパク質を指し、それは同じヒト又は動物の体の中で免疫応答を導き出す。
【0070】
用語「エピトープ」は、抗原性タンパク質の1つ又はいくつかの部分(コンホメーション依存エピトープを規定することができる)を指し、それは、抗体又はその部分(Fab'、Fab2'等)又はB若しくはT細胞リンパ球の細胞表面に提示される受容体が特異的に認識、結合し、それは、前記結合によって免疫応答を誘導することができる。
【0071】
本発明との関連で、用語「T細胞エピトープ」は、優勢、亜優勢又は劣勢のT細胞エピトープ、すなわち、MHCクラスII分子と複合体形成される場合にTリンパ球の細胞表面で発現される受容体によって特異的に認識及び結合される抗原性タンパク質の部分を指す。エピトープが優勢、亜優勢又は劣勢であるかどうかは、エピトープに対して導き出される免疫反応に依存する。優勢は、タンパク質の全ての可能なT細胞エピトープの中で、そのようなエピトープがT細胞によって認識され、それらを活性化することができる頻度に依存する。
【0072】
T細胞エピトープは、MHC II分子の溝にフィットする、+/-9アミノ酸の配列からなる、MHCクラスII分子によって認識され、MHCクラスII分子に結合するエピトープである。T細胞エピトープを表すペプチド配列の中で、エピトープのアミノ酸はP1~P9と番号付けされ、エピトープのN末端のアミノ酸はP-1、P-2等と番号付けされ、エピトープのC末端のアミノ酸はP+1、P+2等と番号付けされる。MHCクラスII分子によって認識され、MHCクラスI分子によって認識されないペプチドは、MHCクラスII限定T細胞エピトープと呼ばれる。
【0073】
用語「MHC」は、「主要組織適合抗原」を指す。ヒトでは、MHC遺伝子はHLA(「ヒト白血球抗原」)遺伝子として知られる。一貫して追従される規則はないが、一部の文献ではHLAタンパク質分子を指すのにHLAを使用し、HLAタンパク質をコードする遺伝子を指すのにMHCを使用する。このように、本明細書で使用する場合、用語「MHC」及び「HLA」は同等物である。ヒトのHLA系は、マウスでのその同等物、すなわちH2系を有する。最も熱心に研究されたHLA遺伝子は、9つのいわゆる古典的MHC遺伝子:HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-DPA1、HLA-DPB1、HLA-DQA1、HLA DQB1、HLA-DRA及びHLA-DRB1である。ヒトでは、MHCは3つの領域:クラスI、II及びIIIに分類される。A、B及びC遺伝子はMHCクラスIに属すが、6つのD遺伝子はクラスIIに属する。MHCクラスI分子は、細胞表面でベータ2ミクログロブリンと会合する、3つのドメイン(アルファ1、2及び3)を含有する単一の多形鎖で構成される。クラスII分子は、2つの鎖(アルファ1及び2、並びにベータ1及び2)を各々含有する、2つの多形鎖で構成される。
【0074】
クラスI MHC分子は、事実上全ての有核細胞で発現される。
【0075】
クラスI MHC分子との関連で提示されるペプチド断片は、CD8+Tリンパ球(細胞溶解性Tリンパ球又はCTL)によって認識される。CD8+ Tリンパ球は、刺激性抗原を有する細胞を溶解することができる細胞溶解性エフェクターに頻繁に成熟する。クラスII MHC分子は活性化リンパ球及び抗原提示細胞の上で主に発現される。CD4+ Tリンパ球(ヘルパーTリンパ球又はTh)は、マクロファージ又は樹状細胞のような抗原提示細胞の上で通常見出されるクラスII MHC分子によって提示される特異なペプチド断片の認識で活性化される。CD4+ Tリンパ球は増殖し、抗体媒介及び細胞媒介の応答を支持するIL-2、IFN-ガンマ及びIL-4等のサイトカインを分泌する。
【0076】
機能的HLAは、内因性並びに外来の、潜在的に抗原性のペプチドが結合する深い結合溝によって特徴付けられる。溝は、明確な形状及び物理化学的性質によって更に特徴付けられる。ペプチド末端が溝の末端にピン留めされるという点で、HLAクラスI結合部位は閉鎖的である。それらは、保存されたHLA残基との水素結合のネットワークにも関与する。これらの制限を考慮すれば、結合するペプチドの長さは8、9又は10残基に限定される。しかし、最高12アミノ酸残基のペプチドもHLAクラスIに結合することが可能であることが実証された。異なるHLA複合体の構造の比較は、ペプチドが比較的直線状の伸長した立体配置を採用するか又は溝からはみ出る中央の残基を含むことができる、結合の一般様式を確認した。
【0077】
HLAクラスI結合部位と対照的に、クラスII部位は両端が開放的である。これは、ペプチドが実際の結合領域から伸長し、それによって両端で「張り出す」ことを可能にする。したがって、クラスII HLAは、9から25を超えるアミノ酸残基の様々な長さのペプチドリガンドに結合することができる。HLAクラスIに類似して、クラスIIリガンドの親和性は「定常」及び「可変」構成要素によって決定される。定常部分は、HLAクラスII溝の中の保存された残基と結合したペプチドの主鎖の間で形成される水素結合のネットワークから再びもたらされる。しかし、この水素結合パターンはペプチドのN-及びC末端残基に制限されず、全鎖に分布する。後者は、それが複合型ペプチドの立体配置を厳密に直線状の様式の結合に制限するので重要である。これは、全てのクラスIIアロタイプに共通する。ペプチドの結合親和性を決定する第2の構成要素は、クラスII結合部位の中の多型のある特定の位置のために変動する。異なるアロタイプは溝の中に異なる相補的ポケットを形成し、それによって、ペプチドのサブタイプ依存性選択又は特異性を説明する。重要なことに、クラスIIポケットの中に保持されるアミノ酸残基への制約は、クラスIの場合より一般に「ソフト」である。異なるHLAクラスIIアロタイプの間に、ペプチドの大いにより多くの交差反応性がある。MHC II分子の溝にフィットするMHCクラスII T細胞エピトープの+/-9アミノ酸(すなわち8、9又は10)の配列は、通常P1~P9と番号付けされる。エピトープのN末端の追加のアミノ酸はP-1、P-2等と番号付けされ、エピトープのC末端側のアミノ酸はP+1、P+2等と番号付けされる。
【0078】
遺伝子レベルで、MHCクラスIIクラスターは、6番染色体の短アーム上に位置する(6p21)。クラスターは、3つの古典的なクラスII遺伝子(HLA-DP、HLA-DQ及びHLA-DR)及び2つの非古典的なクラスII遺伝子(HLA-DM及びHLA-DO)を含む。MHCクラスIIの構造は、MHCクラスIIの抗原結合裂け目を創出する、α及びβと呼ばれる2つの膜結合鎖の結合によって達成される。α及びβ鎖はともに、α及びβ遺伝子の対として密接に関連している別個の遺伝子座、すなわち、DRα/DRβ、DQα/DQβ及びDPα/DPβにコードされる。HLA-DP、HLA-DQ及びHLA-DR遺伝子座は、特にクラスII分子の抗原結合ポケットにおいて高度に多型である。HLA-DP及びHLA-DQは、-α鎖遺伝子及び-β鎖遺伝子の両方において多型を含有する(DPA、DPB、DQA及びDQB)。HLA-DRでは、多型は、DRβ鎖(DRB遺伝子)のみに関連する。9つのDRB遺伝子座(DRB1からDRB9まで付番されている)が存在するが、DRB1遺伝子座のみが、全てのハプロタイプで見出されており、したがって、古典的なDR血清学の主要決定基を構成している(McCluskeyら、Current Protocols in Immunology(2017)、118、A.1S.1-A.1S.6)。
【0079】
HLA-DRB1群を例にとると、40個を超える異なるハプロタイプの存在が文献で報告されている(Marshら、Tissue Antigens(2010)、75、291頁)。ヒト集団全体にわたって最も関連するのはDRB1*03及びDRB1*04ハプロタイプ群である。DRB1*03群では、2つの対立遺伝子、すなわち、DRB1*0301及びDRB1*0302が一般的であるが、DRB1*0303、DRB1*0304及びDRB1*0307等の他の対立遺伝子が報告されている。DRB1*04群では、10個の主要対立遺伝子、すなわち、DRB1*0401、DRB1*0402、DRB1*0403、DRB1*0404、DRB1*0405、DRB1*0406、DRB1*0407、DRB1*0408、DRB1*0410及びDRB1*0411を見出すことができる。本出願全体にわたって使用される用語「DR4陽性」又は「DR4+」は、対象がDRB1*04ハプロタイプの1つに関して陽性であることを示す。同様に、本出願全体にわたって使用される用語「DR3陽性」又は「DR3+」は、対象がDRB1*03ハプロタイプの1つに関して陽性であることを示す。本出願全体にわたって使用される用語「DR4陰性」又は「DR4-」は、対象がDRB1*04ハプロタイプのいずれも有さないことを示す。同様に、本出願全体にわたって使用される用語「DR3陰性」又は「DR3-」は、対象がDRB1*03ハプロタイプのいずれも有さないことを示す。
【0080】
HLAタイピングは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)ベースの分析、配列分析、及び電気泳動分析を含むが限定されない当該技術分野で公知の技法を使用して実施され得る。PCRベースの分析の非限定的な例として、Applied Biosystems社から入手可能なTaqman(登録商標)対立遺伝子識別アッセイが挙げられる。配列分析の非限定的な例として、Maxam-Gilbert配列決定、Sanger配列決定、キャピラリーアレイDNA配列決定、サーマルサイクル配列決定、固相配列決定、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化飛行時間型質量分析等の質量分析を用いた配列決定、及びハイブリダイゼーションによる配列決定が挙げられる。電気泳動分析の非限定的な例として、ラブゲル電気泳動、例えばアガロース又はポリアクリルアミドゲル電気泳動、キャピラリー電気泳動、及び変性剤濃度勾配ゲル電気泳動が挙げられる。マーカーにおいて多型部位で個体の遺伝子型決定する他の方法として、例えば、Third Wave Technologies社のINVADER(登録商標)アッセイ、制限断片長多型(RFLP)分析、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーション、ヘテロ二本鎖移動度アッセイ、及び単鎖コンホメーション多型(SSCP)分析が挙げられる。
【0081】
或いは、HLAタイピングは、抗体試験によって実施され得る。
【0082】
本発明との関連で使用されるエピトープに関して本明細書で使用される用語「相同体(homologue)」は、天然に存在するエピトープと少なくとも50%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%又は少なくとも98%のアミノ酸配列同一性を有し、それによって抗体又はB及び/又はT細胞の細胞表面受容体に結合するエピトープの能力を維持する分子を指す。エピトープの特定の相同体は、多くても3つ、特に多くても2つ、特に1つのアミノ酸で改変される天然のエピトープに対応する。
【0083】
本発明のペプチドに関して本明細書で使用される用語「誘導体」は、少なくともペプチド活性部分(すなわち、酸化還元モチーフ及び細胞溶解CD4+ T細胞活性を導き出すことが可能なMHCクラスIIエピトープ)を含有し、及び、それに加えてペプチドを安定させるか又はペプチドの薬物動態学的若しくは薬力学的特性を変更すること等の異なる目的を有することができる相補部分を含む分子を指す。
【0084】
本明細書で使用される、2つの配列の「配列同一性」という用語は、同一のヌクレオチド又はアミノ酸を有する位置の数を、2つの配列を整列させたときの短い方の配列におけるヌクレオチド又はアミノ酸の数で割り算したものに関する。特に、配列同一性は70%~80%、81%~85%、86%~90%、91%~95%、96%~100%、又は100%である。
【0085】
本明細書で使用される用語「ペプチドをコードするポリヌクレオチド(又は、核酸)」及び「ペプチドをコードするポリヌクレオチド(又は、核酸)」は、適当な環境で発現されるとき、関連するペプチド配列又はその誘導体若しくは相同体の生成をもたらすヌクレオチド配列を指す。そのようなポリヌクレオチド又は核酸には、そのペプチドをコードする正常な配列、並びに要求される活性を有するペプチドを発現することが可能であるこれらの核酸の誘導体及び断片が含まれる。本発明によるペプチド又はその断片をコードする核酸は、哺乳動物を起源とするか、又は哺乳動物、特にヒトのペプチド断片に対応するペプチド又はその断片をコードする配列である。
【0086】
用語「免疫障害」又は「免疫疾患」は、免疫系の反応が生物体における機能不全又は非生理的状況の責任を負うか又は維持する疾患を指す。免疫障害には、とりわけ、アレルギー性障害及び自己免疫性疾患が含まれる。
【0087】
用語「自己免疫性疾患」又は「自己免疫性障害」は、生物体がそれ自身の構成成分部分を「自己」として認識する(分子未満のレベルまで)ことができないことによる、それ自身の細胞及び組織に対する生物体の異常な免疫応答からもたらされる疾患を指す。疾患の群は、2つのカテゴリー(臓器特異的で全身性疾患)では分裂され得る。「アレルゲン」は、素因のある、特に遺伝的に素因のある個体(アトピー性)患者において、lgE抗体の生成を導き出す物質、通常巨大分子又はタンパク質性組成物として定義される。同様の定義が、Liebersら(1996)Clin. Exp. Allergy 26、494~516頁に提示されている。
【0088】
用語「1型糖尿病」(T1D)又は「糖尿病1型」(「1型真性糖尿病」又は「免疫媒介性糖尿病」としても公知であり、若しくは以前は「若年発症糖尿病」又は「インスリン依存性糖尿病」としても公知)は、通常小児期中の感受性個体において発症する自己免疫障害である。自己免疫メカニズムによるほとんどのインスリン産生膵ベータ細胞の破壊がTID病因の根底にある。簡潔に述べると、生物は、インスリン産生を管理する膵ベータ細胞に対する免疫寛容を損失して、ベータ細胞の自己破壊を招く自己抗体の産生と関連付けられる免疫応答、主に細胞媒介性の免疫応答を誘導する。
【0089】
用語「治療的有効量」は、患者で所望の治療的又は予防的効果をもたらす本発明のペプチド又はその誘導体の量を指す。例えば、疾患又は障害に関して、それは、疾患又は障害の1つ又は複数の症状をある程度低減する量、特に、疾患又は障害に関連するかそれを引き起こす生理的又は生化学的パラメーターを部分的又は完全に正常に戻す量である。一般的に、治療的有効量は、正常な生理的状況の改善又は復旧へ導く、本発明のペプチド又はその誘導体の量である。例えば、免疫障害によって侵された哺乳動物を治療的に処置するために使用される場合、それは前記哺乳動物の体重1kg当たりの1日量のペプチドである。或いは、投与が遺伝子療法による場合、裸のDNA又はウイルスベクターの量は、本発明のペプチド、その誘導体又は相同体の妥当な投薬量の局所生成を確実にするように調整される。
【0090】
ペプチドを指す場合の用語「天然」は、配列が天然に存在するタンパク質(野生型又は変異体)の断片と同一であるという事実に関する。それと対照的に、用語「人工」は、そのように天然に存在しない配列を指す。人工配列は、限定的な改変、例えば天然に存在する配列の中で1つ又は複数のアミノ酸を変更/削除/挿入することによって、又は、天然に存在する配列のN若しくはC末端でアミノ酸を付加/除去することによって天然配列から得られる。
【0091】
本明細書では、アミノ酸はそれらのフルネーム、それらの3文字略記号又はそれらの1文字略記号で呼ばれる。
【0092】
本明細書では、アミノ酸配列のモチーフは、Prositeのフォーマットに従って書かれる。モチーフは、配列の特異的部分でのある特定の配列多様性を記載するために使用される。記号Xは、任意のアミノ酸が受け入れられる位置のために使用される。角括弧(「[]」)の間に所与の位置のための許容されるアミノ酸を掲載することによって、代替物が指示される。例えば、[CST]は、Cys、Ser又はThrから選択されるアミノ酸を表す。代替物として排除されるアミノ酸は、中括弧(「{}」)の間にそれらを掲載することによって指示される。例えば、{AM}は、Ala及びMet以外の任意のアミノ酸を表す。任意選択的にモチーフの中の異なる要素は、ハイフン(-)によって互いから分離される。モチーフ内の同一要素の反復は、その要素の後ろに括弧間の数値又は数値範囲を置くことによって示され得る。例えば、X(2)は、X-X又はXXに相当し、X(2,5)は、2、3、4又は5のXアミノ酸に相当し、A(3)は、A-A-A又はAAAに相当する。
【0093】
アミノ酸Xを識別するために、HとCとの間のアミノ酸を、外部アミノ酸X(上記配列で一重下線を付してある)と呼び、酸化還元モチーフ内のアミノ酸は、内部アミノ酸X(上記配列で二重下線を付してある)と呼ぶ。Xは、任意のアミノ酸、特にL-アミノ酸、より詳細には、20個の天然に存在するL-アミノ酸の1つを表す。
【0094】
T細胞エピトープ及び還元活性を有する改変されたペプチドモチーフ配列を含むペプチドは、抗原提示細胞への抗原特異的細胞溶解性CD4+ T細胞の集団を生成することが可能である。
【0095】
したがって、その最も広い意味で、本発明は、免疫反応を誘発する能力を有する抗原(自己又は非自己)の少なくとも1つのT細胞エピトープ、及びペプチドジスルフィド結合に還元活性を有する「酸化還元酵素」、「チオレダクターゼ」、「チオレドックス」、又は「酸化還元」(用語は全て、本明細書中で交換可能に使用され得る)配列モチーフを含むペプチドの使用に関する。MHCクラスII T細胞エピトープ及び改変された酸化還元モチーフ配列はペプチドの中で互いに直近していることができるか、又は任意選択的に1つ又は複数のアミノ酸(いわゆる、リンカー配列)によって分離されてもよい。任意選択的に、ペプチドはエンドソーム標的配列及び/又は追加の「隣接(flanking)」配列を更に含む。
【0096】
本明細書中に開示されるペプチドは、免疫反応を誘発する能力を有するインスリン抗原のMHCクラスII T細胞エピトープ、及び改変された酸化還元モチーフを含む。ペプチドの中のモチーフ配列の還元活性は、例えばインスリンの溶解性が還元後に変更されるインスリン溶解性アッセイで、又はインスリン等の蛍光標識基質によって、スルフヒドリル基を還元するその能力について検査することができる。そのようなアッセイの例は蛍光ペプチドを使用し、Tomazzolliら(2006) Anal. Biochem.350、105~112頁に記載される。FITC標識を有する2つのペプチドは、それらがジスルフィド架橋を通して互いと共有結合するときに自己失活する。本発明によるペプチドによる還元の結果、還元された個々のペプチドは再び蛍光性になる。
【0097】
(改変された)酸化還元モチーフは、T細胞エピトープのアミノ末端側に、又はT細胞エピトープのカルボキシ末端に配置され得る。
【0098】
還元活性を有するペプチド断片は、グルタレドキシン、ヌクレオレドキシン、チオレドキシン及び他のチオール/ジスルフィド酸化還元酵素を含む小ジスルフィド還元酵素であるチオレダクターゼに遭遇される(Holmgren(2000) Antioxid. Redox Signal. 2、811~820頁、Jacquotら(2002) Biochem. Pharm. 64、1065~1069頁)。還元活性を有するペプチド断片は、多官能性で偏在性であり、多くの原核生物及び真核生物中に見出される。還元活性を有するペプチド断片は、保存される活性ドメインコンセンサス配列:CXXC[配列番号18]、CXXS[配列番号23]、CXXT[配列番号24]、SXXC[配列番号21]、TXXC[配列番号22]内の酸化還元活性システインを通してタンパク質(例えば、酵素)上のジスルフィド結合に関して還元活性を発揮する(Fomenkoら(2003) Biochemistry 42、11214~11225頁、Fomenkoら(2002) Prot. Science 11、2285~2296頁)(式中、Xは任意のアミノ酸を表す)。そのようなドメインはまた、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI)及びホスホイノシチド特異的ホスホリパーゼC等の、より大きなタンパク質においても見出される。
【0099】
例えばFomenko及びWO2008/017517から公知であるような4つのアミノ酸酸化還元モチーフは、位置1及び/又は4にシステインを含み、したがって、モチーフは、CXX[CST][配列番号1]又は[CST]XXC[配列番号2]のいずれかである。そのようなテトラペプチド配列は、「モチーフ」と称される。ペプチド内のモチーフは、代替物CXXC[配列番号18]、SXXC[配列番号21]、TXXC[配列番号22]、CXXS[配列番号23]又はCXXT[配列番号24]のいずれかであり得る。特に、ペプチドは、配列モチーフCXXC[配列番号18]を含有する。
【0100】
更に詳細に説明する場合、本発明で使用するペプチドは、化学合成によって作製することができ、化学合成は、非天然アミノ酸を取り込むことを可能にする。したがって、上記で列挙される酸化還元改変酸化還元モチーフ中の「C」は、システイン、或いはメルカプトバリン、ホモシステイン又はチオール官能基を有する他の天然若しくは非天然アミノ酸等の、チオール基を有する別のアミノ酸を表す。還元活性を有するためには、改変された酸化還元モチーフ中に存在するシステインは、システインジスルフィド架橋の部分として存在すべきではない。それにもかかわらず、酸化還元改変酸化還元モチーフは、メチル化システイン等の改変されたシステインを含んでもよく、それは、遊離チオール基を有するシステインにin vivoで変換される。Xは、S、C、又はTを含む20個の天然アミノ酸のいずれかであり得るか、或いは非天然アミノ酸であり得る。特定の実施形態では、Xは、Gly、Ala、Ser又はThr等の小側鎖を有するアミノ酸である。更なる特定の実施形態では、Xは、Trp等のかさ高い側鎖を有するアミノ酸ではない。更なる特定の実施形態では、Xはシステインではない。更なる特定の実施形態では、改変された酸化還元モチーフ中の少なくとも1つのXが、Hisである。他の更なる特定の実施形態では、改変された酸化還元中の少なくとも1つのXが、Proである。
【0101】
ペプチドは、安定性又は溶解度を高めるための改変、例えば、N末端NH2基又はC末端COOH基の改変(例えば、COOHの、CONH2基への改変)を更に含み得る。
【0102】
用語「酸化還元酵素モチーフ」、「チオール-酸化還元酵素モチーフ」、「チオレダクターゼモチーフ」、「チオオキシレドックスモチーフ」又は「酸化還元モチーフ」は、本明細書で同義語として使用され、1つの分子(還元体、水素又は電子供与体とも呼ばれる)から別のもの(酸化体、水素又は電子受容体とも呼ばれる)への電子の移動に関与するモチーフを指す。
【0103】
特に、用語「酸化還元酵素モチーフ」は、公知の[CST]XXC又はCXX[CST]モチーフを指し得るが、特に、より一般的な配列モチーフZm[CST]XnC又はZmCXn[CST]
(式中、nは、0~6の整数、例えば、0、1、2、3、4、5又は6であり、
mは、0~2の整数、例えば、0、1又は2を表し、
Cはシステインを、Sはセリンを、Tはトレオニンを、Xは任意のアミノ酸を、Zは任意のアミノ酸、好ましくは塩基性アミノ酸を表す)
を指す。
【0104】
還元活性を有するためには、改変された酸化還元酵素モチーフ中に存在するシステインは、システインジスルフィド架橋の部分として存在すべきではない。
【0105】
通常、酸化還元酵素モチーフは、一般式ZmCXnC
(式中、Xは、任意のアミノ酸であり
Zは、好ましくはH、K又はRから選択される塩基性アミノ酸であり、
nは、0~3の整数であり、
mは、0~2の整数である)
を含み得る。
【0106】
用語「塩基性アミノ酸」はブレンステッド-ローリー及びルイス塩基のように作用する任意のアミノ酸を指し、天然の塩基性アミノ酸、例えばアルギニン(R)、リジン(K)又はヒスチジン(H)、又は非天然の塩基性アミノ酸、例えば、限定されずに以下のものが含まれる:
- リジンバリアント、例えばFmoc-β-Lys(Boc)-OH(CAS番号219967-68-7)、L-オルニチン又はオルニチンとも呼ばれるFmoc-Orn(Boc)-OH(CAS番号109425-55-0)、Fmoc-β-Homolys(Boc)-OH(CAS番号203854-47-1)、Fmoc-Dap(Boc)-OH(CAS番号162558-25-0)又はFmoc-Lys(Boc)OH(DiMe)-OH(CAS番号441020-33-3);
- チロシン/フェニルアラニンバリアント、例えばFmoc-L-3Pal-OH(CAS番号175453-07-3)、Fmoc-β-HomoPhe(CN)-OH(CAS番号270065-87-7)、Fmoc-L-β-HomoAla(4-ピリジル)-OH(CAS番号270065-69-5)又はFmoc-L-Phe(4-NHBoc)-OH(CAS番号174132-31-1);
- プロリンバリアント、例えばFmoc-Pro(4-NHBoc)-OH(CAS番号221352-74-5)又はFmoc-Hyp(tBu)-OH(CAS番号122996-47-8);
- アルギニンバリアント、例えばFmoc-β-Homoarg(Pmc)-OH(CAS番号700377-76-0)。
【0107】
したがって、本明細書中に開示する一般に公知のチオレドックスモチーフCXXC及びそのバリアントの他に、2つのシステイン部分が互いに隣接しているモチーフ(CC)又は2つのシステイン部分が1、3、4、5、又は6個のアミノ酸で分離されているモチーフ、例えばCXC、CXXXC、CXXXXC、CXXXXXC又はCXXXXXXCも存在する。上記実施形態のいずれか1つにおいて、システインの1つはまた、S又はTに変更され得る。
【0108】
通常、例えばH、K、又はRから選択される1つ又は複数の塩基性アミノ酸「Z」は、H-モチーフ、K-モチーフ、R-モチーフ、KH-モチーフ、HK-モチーフ、RH-モチーフ、HR-モチーフ、KR-モチーフ、又はRK-モチーフ等のチオレドックスモチーフに付加させることができる。
【0109】
本発明で使用することができるチオレドックスモチーフの特に興味深い例は、
CC、HCC、KCC、RCC;
CXC、HCXC、KCXC、RCXC、KHCXC、HKCXC、RHCXC、HRCXC、RKCXC、KRCXC;
CXXC、HCXXC、KCXXC、RCXXC、KHCXXC、HKCXXC、RHCXXC、HRCXXC、RKCXXC、KRCXXC;
CXXXC、HCXXXC、KCXXXC、RCXXXC、KHCXXXC、HKCXXXC、RHCXXXC、HRCXXXC、RKCXXXC、KRCXXXC;
CXXXC、HCXXXC、KCXXXC、RCXXXC、KHCXXXC、HKCXXXC、RHCXXXC、HRCXXXC、RKCXXXC、KRCXXXC;
CXXXXC、HCXXXXC、KCXXXXC、RCXXXXC、KHCXXXXC、HKCXXXXC、RHCXXXXC、HRCXXXXC、RKCXXXXC、KRCXXXXC;
CXXXXXC、HCXXXXXC、KCXXXXXC、RCXXXXXC、KHCXXXXXC、HKCXXXXXXXC、RHCXXXXXC、HRCXXXXXC、RKCXXXXXC、KRCXXXXXC;
CXXXXXXC、HCXXXXXXC、KCXXXXXXC、RCXXXXXXC、KHCXXXXXXC、HKCXXXXXXC、RHCXXXXXXC、HRCXXXXXXC、RKCXXXXXXC、KRCXXXXXXC;
である。
【0110】
CXCモチーフの具体例は、CHC、CKC、CRC、CGC、CAC、CVC、CLC、CIC、CMC、CFC、CWC、CPC、CSC、CTC、CYC、CNC、CQC、CDC、及びCECである。これらの例示的なCXCモチーフのいずれか1つは、1つ又は複数のアミノ酸(Zm)(式中、mは、0~3の整数、好ましくは0又は1であり、Zは、任意のアミノ酸、好ましくは塩基性アミノ酸、例えばH、K、若しくはR、又は本明細書中で定義されるような非天然塩基性アミノ酸である)に先行され得る。そのようなモチーフの好ましい例は、KCHC、KCKC、KCRC、KCGC、KCAC、KCVC、KCLC、KCIC、KCMC、KCFC、KCWC、KCPC、KCSC、KCTC、KCYC、KCNC、KCQC、KCDC、KCEC、HCHC、HCKC、HCRC、HCGC、HCAC、HCVC、HCLC、HCIC、HCMC、HCFC、HCWC、HCPC、HCSC、HCTC、HCYC、HCNC、HCQC、HCDC、HCEC、RCHC、RCKC、RCRC、RCGC、RCAC、RCVC、RCLC、RCIC、RCMC、RCFC、RCWC、RCPC、RCSC、RCTC、RCYC、RCNC、RCQC、RCDC、及びRCECである。
【0111】
好ましい実施形態では、上記酸化還元酵素モチーフは、CX3C、すなわちCXXXC、通常CX1X2X3C(式中、X1、X2、及びX3はそれぞれ独立して、G、A、V、L、I、M、F、W、P、S、T、C、Y、N、Q、D、E、K、R、及びHからなる群から選択される任意のアミノ酸、又は本明細書中で定義されるような非天然塩基性アミノ酸であり得る)である。好ましくは、上記モチーフ中のX1、X2、及びX3は、C、S、又はTを除く任意のアミノ酸である。特定の実施形態では、上記モチーフ中のX1、X2、又はX3の少なくとも1つは、塩基性アミノ酸、例えば、H、K、若しくはR、又は本明細書中で定義されるような非天然塩基性アミノ酸である。
【0112】
CXXXCモチーフの具体例は、CXPYC、CPXYC、及びCPYXC(式中、Xは、任意のアミノ酸であり得る)、より好ましくはCXPYC、例えば:CKPYC、CRPYC(配列番号55)、CHPYC、CGPYC、CAPYC、CVPYC、CLPYC、CIPYC、CMPYC、CFPYC、CWPYC、CPPYC、CSPYC、CTPYC、CCPYC、CYPYC、CNPYC、CQPYC、CDPYC、及びCEPYC;又はCPXYC、例えば:CPKYC、CPRYC、CPHYC、CPGYC、CPAYC、CPVYC、CPLYC、CPIYC、CPMYC、CPFYC、CPWYC、CPPYC、CPSYC、CPTYC、CPCYC、CPYYC、CPNYC、CPQYC、CPDYC、CPEYC、及びCPLYC;又はCPYXC、例えば: CPYKC、CPYRC、CPYHC、CPYGC、CPYAC、CPYVC、CPYLC、CPYIC、CPYMC、CPYFC、CPYWC、CPYPC、CPYSC、CPYTC、CPYCC、CPYYC、CPYNC、CPYQC、CPYDC、CPYEC、及びCPYLCである。
【0113】
CXXXCモチーフの更なる具体例は、CXHGC、CHXGC、及びCHGXC(式中、Xは、任意のアミノ酸であり得る)、より好ましくはCXHGC、例えば:CKHGC、CRHGC、CHHGC、CGHGC、CAHGC、CVHGC、CLHGC、CIHGC、CMHGC、CFHGC、CWHGC、CPHGC、CSHGC、CTHGC、CCHGC、CYHGC、CNHGC、CQHGC、CDHGC、CEHGC、及びCKHGC;又はCGXHC、例えば:CGKHC、CGRHC、CGHHC、CGGHC、CGAHC、CGVHC、CGLHC、CGIHC、CGMHC、CGFHC、CGWHC、CGPHC、CGSHC、CGTHC、CGCHC、CGYHC、CGNHC、CGQHC、CGDHC、CGEHC、及びCGLHC;又はCHGXC、例えば:CHGKC、CHGRC、CHGHC、CHGGC、CHGAC、CHGVC、CHGLC、CHGIC、CHGMC、CHGFC、CHGWC、CHGPC、CHGSC、CHGTC、CHGCC、CHGYC、CHGNC、CHGQC、CHGDC、CHGEC、及びCHGLCである。
【0114】
CXXXCモチーフの更なる具体例は、CXGPC、CGXPC、及びCGPXC(式中、Xは、任意のアミノ酸であり得る)、より好ましくはCXGPC、例えば:CKGPC、CRGPC、CHGPC、CGGPC、CAGPC、CVGPC、CLGPC、CIGPC、CMGPC、CFGPC、CWGPC、CPGPC、CSGPC、CTGPC、CCGPC、CYGPC、CNGPC、CQGPC、CDGPC、CEGPC、及びCKGPC;又はCGXPC、例えば:CGKPC、CGRPC、CGHPC、CGGPC、CGAPC、CGVPC、CGLPC、CGIPC、CGMPC、CGFPC、CGWPC、CGPPC、CGSPC、CGTPC、CGCPC、CGYPC、CGNPC、CGQPC、CGDPC、CGEPC、及びCGLPC;又はCGPXC、例えば:CGPKC、CGPRC、CGPHC、CGPGC、CGPAC、CGPVC、CGPLC、CGPIC、CGPMC、CGPFC、CGPWC、CGPPC、CGPSC、CGPTC、CGPCC、CGPYC、CGPNC、CGPQC、CGPDC、CGPEC、及びCGPLCである。
【0115】
CXXXCモチーフの更なる具体例は、CXGHC、CGXHC、及びCGHXC(式中、Xは、任意のアミノ酸であり得る)、より好ましくはCXGHC、例えば:CKGHC、CRGHC、CHGHC、CGGHC、CAGHC、CVGHC、CLGHC、CIGHC、CMGHC、CFGHC、CWGHC、CPGHC、CSGHC、CTGHC、CCGHC、CYGHC、CNGHC、CQGHC、CDGHC、CEGHC、及びCKGHC;又はCGXFC、例えば:CGKFC、CGRFC、CGHFC、CGGFC、CGAFC、CGVFC、CGLFC、CGIFC、CGMFC、CGFFC、CGWFC、CGPFC、CGSFC、CGTFC、CGCFC、CGYFC、CGNFC、CGQFC、CGDFC、CGEFC、及びCGLFC;又はCGHXC、例えば:CGHKC、CGHRC、CGHHC、CGHGC、CGHAC、CGHVC、CGHLC、CGHIC、CGHMC、CGHFC、CGHWC、CGHPC、CGHSC、CGHTC、CGHCC、CGHYC、CGHNC、CGHQC、CGHDC、CGHEC、及びCGHLCである。
【0116】
CXXXCモチーフの更なる具体例は、CXGFC、CGXFC、及びCGFXC(式中、Xは、任意のアミノ酸であり得る)、より好ましくはCXGFC、例えば:CKGFC、CRGFC、CHGFC、CGGFC、CAGFC、CVGFC、CLGFC、CIGFC、CMGFC、CFGFC、CWGFC、CPGFC、CSGFC、CTGFC、CCGFC、CYGFC、CNGFC、CQGFC、CDGFC、CEGFC、及びCKGFC;又はCGXFC、例えば:CGKFC、CGRFC、CGHFC、CGGFC、CGAFC、CGVFC、CGLFC、CGIFC、CGMFC、CGFFC、CGWFC、CGPFC、CGSFC、CGTFC、CGCFC、CGYFC、CGNFC、CGQFC、CGDFC、CGEFC、及びCGLFC;又はCGFXC、例えば:CGFKC、CGFRC、CGFHC、CGFGC、CGFAC、CGFVC、CGFLC、CGFIC、CGFMC、CGFFC、CGFWC、CGFPC、CGFSC、CGFTC、CGFCC、CGFYC、CGFNC、CGFQC、CGFDC、CGFEC、及びCGFLCである。
【0117】
CXXXCモチーフの更なる具体例は、CXRLC、CRXLC、及びCRLXC(式中、Xは、任意のアミノ酸であり得る)、より好ましくはCXRLC、例えば:CKRLC、CRRLC、CHRLC、CGRLC、CARLC、CVRLC、CLRLC、CIRLC、CMRLC、CFRLC、CWRLC、CPRLC、CSRLC、CTRLC、CCRLC、CYRLC、CNRLC、CQRLC、CDRLC、CERLC、及びCKRLC;又はCRXLC、例えば:CRKLC、CRRLC、CRHLC、CRGLC、CRALC、CRVLC、CRLLC、CRILC、CRMLC、CRFLC、CRWLC、CRPLC、CRSLC、CRTLC、CRCLC、CRYLC、CRNLC、CRQLC、CRDLC、CRELC、及びCRLLC;又はCRLXC、例えば:CRLKC、CRLRC、CRLHC、CRLGC、CRLAC、CRLVC、CRLLC、CRLIC、CRLMC、CRLFC、CRLWC、CRLPC、CRLSC、CRLTC、CRLCC、CRLYC、CRLNC、CRLQC、CRLDC、CRLEC、及びCRLLCである。
【0118】
CXXXCモチーフの更なる具体例は、CXHPC、CHXPC、及びCHPXC(式中、Xは、任意のアミノ酸であり得る)、より好ましくはCXHPC、例えば:CKHPC、CRHPC、CHHPC、CGHPC、CAHPC、CVHPC、CLHPC、CIHPC、CMHPC、CFHPC、CWHPC、CPHPC、CSHPC、CTHPC、CCHPC、CYHPC、CNHPC、CQHPC、CDHPC、CEHPC、及びCKHPC;又はCHXPC、例えば:CHKPC、CHRPC、CHHPC、CHGPC、CHAPC、CHVPC、CHLPC、CHIPC、CHMPC、CHFPC、CHWPC、CHPPC、CHSPC、CHTPC、CHCPC、CHYPC、CHNPC、CHQPC、CHDPC、CHEPC、及びCHLPC;又はCHPXC、例えば:CHPKC、CHPRC、CHPHC、CHPGC、CHPAC、CHPVC、CHPLC、CHPIC、CHPMC、CHPFC、CHPWC、CHPPC、CHPSC、CHPTC、CHPCC、CHPYC、CHPNC、CHPQC、CHPDC、CHPEC、及びCHPLCである。
【0119】
これらの例示的なCXXXCモチーフのいずれか1つは、1つ又は複数のアミノ酸(Zm)(式中、mは、0~3の整数、好ましくは0又は1であり、Zは、任意のアミノ酸、好ましくは塩基性アミノ酸、例えばH、K、若しくはR、又は本明細書中で定義されるような非天然塩基性アミノ酸である)に先行され得る。
【0120】
好ましい実施形態では、上記酸化還元酵素モチーフは、CX4C、すなわちCXXXXC、通常CX1X2X3X4C(式中、X1、X2、X3及びX4はそれぞれ独立して、G、A、V、L、I、M、F、W、P、S、T、C、Y、N、Q、D、E、K、R、及びHからなる群から選択される任意のアミノ酸、又は本明細書中で定義されるような非天然塩基性アミノ酸であり得る)である。好ましくは、上記モチーフ中のX1、X2、X3及びX4は、C、S、又はTを除く任意のアミノ酸である。特定の実施形態では、上記モチーフ中のX1、X2、X3又はX4の少なくとも1つは、塩基性アミノ酸、例えば、H、K、若しくはR、又は本明細書中で定義されるような非天然塩基性アミノ酸である。
【0121】
CXXXXCモチーフの具体例は、CLAVLC、CTVQAC又はCGAVHC及びC及びそれらのバリアント、例えばCX1AVLC、CLX2VLC、CLAX3LC、又はCLAVX4C;CX1VQAC、CTX2QAC、CTVX3AC、又はCTVQX4C;CX1AVHC、CGX2VHC、CGAX3HC、又はCGAVX4C(式中、X1、X2、X3及びX4はそれぞれ独立して、G、A、V、L、I、M、F、W、P、S、T、C、Y、N、Q、D、E、K、R、及びHからなる群から選択される任意のアミノ酸、又は本明細書中で定義されるような非天然塩基性アミノ酸であり得る)である。
【0122】
これらの例示的なCXXXXCモチーフのいずれか1つは、1つ又は複数のアミノ酸(Zm)(式中、mは、0~3の整数、好ましくは0又は1であり、Zは、任意のアミノ酸、好ましくは塩基性アミノ酸、例えばH、K、若しくはR、又は本明細書中で定義されるような非天然塩基性アミノ酸である)に先行され得る。
【0123】
好ましい実施形態では、上記酸化還元酵素モチーフは、CX5C、すなわちCXXXXXC、通常CX1X2X3X4X5C(式中、X1、X2、X3、X4及びX5はそれぞれ独立して、G、A、V、L、I、M、F、W、P、S、T、C、Y、N、Q、D、E、K、R、及びHからなる群から選択される任意のアミノ酸、又は本明細書中で定義されるような非天然塩基性アミノ酸であり得る)である。好ましくは、上記モチーフ中のX1、X2、X3、X4及びX5は、C、S、又はTを除く任意のアミノ酸である。特定の実施形態では、上記モチーフ中のX1、X2、X3、X4又はX5の少なくとも1つは、塩基性アミノ酸、例えば、H、K、若しくはR、又は本明細書中で定義されるような非天然塩基性アミノ酸である。
【0124】
CXXXXXCモチーフの具体例は、CPAFPLC又はCDQGGEC及びそれらのバリアント、例えばCX1AFPLC、CPX2FPLC、CPAX3PLC、CPAFX4LC、又はCPAFPX5C;CX1QGGEC、CDX2GGEC、CDQX3GEC、CDQGX4EC、又はCDQGGX5C(式中、X1、X2、X3、X4及びX5はそれぞれ独立して、G、A、V、L、I、M、F、W、P、S、T、C、Y、N、Q、D、E、K、R、及びHからなる群から選択される任意のアミノ酸、又は本明細書中で定義されるような非天然塩基性アミノ酸であり得る)である。これらの例示的なCXXXXXCモチーフのいずれか1つは、1つ又は複数のアミノ酸(Zm)(式中、mは、0~3の整数、好ましくは0又は1であり、Zは、任意のアミノ酸、好ましくは塩基性アミノ酸、例えばH、K、若しくはR、又は本明細書中で定義されるような非天然塩基性アミノ酸である)に先行され得る。
【0125】
好ましい実施形態では、上記酸化還元酵素モチーフは、CX6C、すなわちCXXXXXXC、通常CX1X2X3X4X5X6C(式中、X1、X2、X3、X4、X5及びX6はそれぞれ独立して、G、A、V、L、I、M、F、W、P、S、T、C、Y、N、Q、D、E、K、R、及びHからなる群から選択される任意のアミノ酸、又は本明細書中で定義されるような非天然塩基性アミノ酸であり得る)である。好ましくは、上記モチーフ中のX1、X2、X3、X4、X5及びX6は、C、S、又はTを除く任意のアミノ酸である。特定の実施形態では、上記モチーフ中のX1、X2、X3、X4、X5又はX6の少なくとも1つは、塩基性アミノ酸、例えば、H、K、若しくはR、又は本明細書中で定義されるような非天然塩基性アミノ酸である。
【0126】
CXXXXXXCモチーフの具体例は、CDIADKYC又はそれらのバリアント、例えばCX1IADKYC、CDX2ADKYC、CDIX3DKYC、CDIAX4KYC、CDIADX5YC、又はCDIADKX6C(式中、X1、X2、X3、X4及びX5はそれぞれ独立して、G、A、V、L、I、M、F、W、P、S、T、C、Y、N、Q、D、E、K、R、及びHからなる群から選択される任意のアミノ酸、又は本明細書中で定義されるような非天然塩基性アミノ酸であり得る)である。
【0127】
これらの例示的なCXXXXXXCモチーフのいずれか1つは、1つ又は複数のアミノ酸(Zm)(式中、mは、0~3の整数、好ましくは0又は1であり、Zは、任意のアミノ酸、好ましくは塩基性アミノ酸、例えばH、K、若しくはR、又は本明細書中で定義されるような非天然塩基性アミノ酸である)に先行され得る。
【0128】
そのような酸化還元酵素モチーフの特に好ましい例はC[KHR]C、CX[KHR]XC、CXX[KHR]C、C[KHR]XXC、[KHR]CC、[KHR]CXC、[KHR]XXXC CC[KHR]、CXC[KHR]、CXXXC[KHR]、[KHR]CC[KHR]、[KHR]CXC[KHR]、[KHR]CXXXC[KHR]、[KHR]C[KHR]C、C[KHR]C[KHR]、[KHR]CXX[KHR]C、[KHR]CX[KHR]XC、[KHR]C[KHR]XXC、CXX[KHR]C[KHR]、CX[KHR]XC[KHR]、C[KHR]XXC[KHR]、等である。
【0129】
本明細書中のモチーフ実施形態のいずれか1つでは、mが0であり、N末端酸化還元酵素モチーフ(酸化還元酵素モチーフが免疫原性ペプチドのN末端開始に位置する)の場合、モチーフの最初のシステイン、トレオニン又はセリンは、N-アセチル化、N-メチル化、N-エチル化又はN-プロピオニル化を通して化学的に改変され得る。
【0130】
本明細書中のモチーフ実施形態のいずれか1つでは、mが0であり、C末端酸化還元酵素モチーフ(酸化還元酵素モチーフが免疫性ペプチドのC末端終了に位置する)の場合、モチーフの最後のシステイン、トレオニン又はセリンは、そのC末端アミド又は酸基のアセチル、メチル、エチル又はプロピオニル基によるC末端置換を通して化学的に改変され得る。
【0131】
改変された酸化還元モチーフを含む本発明で使用するペプチドでは、モチーフは、エピトープがMHC溝にフィットする場合、モチーフがMHC結合溝の外側に留まるように位置する。改変された酸化還元モチーフは、ペプチドの中のエピトープ配列の直近に[言い換えると、モチーフとエピトープとの間のゼロアミノ酸のリンカー配列]置かれるか、又は、7アミノ酸以下のアミノ酸配列を含むリンカーによってT細胞エピトープから分離される。特に、リンカーは1、2、3、4、5、6又は7アミノ酸を含む。特定の実施形態は、エピトープ配列と、改変された酸化還元モチーフ配列との間に0、1、2、3又は4アミノ酸のリンカーを有するペプチドである。好ましくは、リンカーは、4アミノ酸のアミノ酸配列を含む。改変された酸化還元モチーフがエピトープ配列に隣接しているペプチドでは、これは、エピトープ配列と比較して、位置P-4からP-1又はP+1からP+4として示される。ペプチドリンカーの他に、ペプチドの部分を互いに(例えば改変された酸化還元モチーフ配列とT細胞エピトープ配列を)連結するリンカーとして、他の有機化合物を使用することができる。
【0132】
本発明で使用するペプチドは、T細胞エピトープ及び改変された酸化還元モチーフを含む配列のN又はC末端に、追加の短いアミノ酸配列を更に含むことができる。そのようなアミノ酸配列は、本明細書では「隣接配列」と一般的に呼ばれる。隣接配列は、エピトープと、エンドソーム標的配列との間に、及び/又は改変された酸化還元モチーフと、エンドソーム標的配列との間に配置することができる。エンドソーム標的配列を含まないある特定のペプチドでは、ペプチド中の改変された酸化還元モチーフ及び/又はエピトープ配列のN及び/又はC末端に短いアミノ酸配列が存在してよい。特に隣接配列は、1~7アミノ酸の配列、最も詳細には2アミノ酸の配列である。
【0133】
改変された酸化還元モチーフは、エピトープからN末端に位置され得る。
【0134】
本発明のある特定の実施形態では、単一エピトープ配列及び改変された酸化還元モチーフ配列を含む、使用されるペプチドが提供される。更なる特定の実施形態では、改変される酸化還元モチーフは、ペプチド中で数回(1、2、3、4回又は更に多い回)、例えば、1つ又は複数のアミノ酸によって互いと間隔を取り得る改変された酸化還元モチーフの繰り返しとして、又は互いと直近している繰り返しとして現れる。或いは、1つ又は複数の改変された酸化還元モチーフは、T細胞エピトープ配列のN及びC末端の両方で提供される。
【0135】
本発明のペプチドに関して想定される他の変形として、各エピトープ配列が、改変された酸化還元モチーフに先行され、及び/又は改変された酸化還元モチーフが続くT細胞エピトープ配列の繰り返し(例えば、「改変された酸化還元モチーフ-エピトープ」の繰り返し又は「改変された酸化還元モチーフ-エピトープ-改変された酸化還元モチーフ」の繰り返し)を含有するペプチドが挙げられる。本明細書中では、改変された酸化還元モチーフは全て、同じ配列を有するが、必須ではない。改変された酸化還元モチーフをそれ自体が含むエピトープを含むペプチドの反復性配列はまた、「エピトープ」及び「改変された酸化還元モチーフ」の両方を含む配列を生じることが知られている。そのようなペプチドでは、1つのエピトープ配列内の改変された酸化還元モチーフは、第2のエピトープ配列の外側の改変された酸化還元モチーフとして機能を果たす。
【0136】
通常、本発明の中で使用されるペプチドは、唯一のT細胞エピトープを含む。以下で記載するように、タンパク質配列中のT細胞エピトープは、機能性アッセイ及び/又は1つ又は複数のin silica予測アッセイによって同定され得る。T細胞エピトープ配列中のアミノ酸は、MHCタンパク質の結合溝中のそれらの位置に従って付番される。ペプチド内に存在するT細胞エピトープは、8~25アミノ酸、更に詳細には8~16アミノ酸からなり、更に最も詳細には8、9、10、11、12、13、14、15又は16アミノ酸からなる。
【0137】
より詳細な実施形態では、T細胞エピトープは、9アミノ酸の配列からなる。更なる特定の実施形態では、T細胞エピトープは、MHCクラスII分子によってT細胞に提示されるエピトープ[MHCクラスII制限T細胞エピトープ]である。通常、T細胞エピトープ配列は、MHC IIタンパク質の裂け目にフィットするオクタペプチド又はより具体的にはノナペプチド配列を指す。
【0138】
本発明のペプチドのT細胞エピトープは、タンパク質の天然のエピトープ配列に対応することができるか、又は、天然のT細胞エピトープ配列と同様に改変されたT細胞エピトープがMHC裂け目内で結合するその能力を保持する場合には、その改変バージョンであってもよい。改変されたT細胞エピトープは、MHCタンパク質に対して天然のエピトープと同じ結合親和性を有することができるが、より低い親和性を有することもできる。特に、改変されたペプチドの結合親和性は、元のペプチドより10分の1以上、特に5分の1以上低い。本発明のペプチドは、タンパク質複合体に安定化効果を有する。したがって、ペプチド-MHC複合体の安定化効果は、MHC分子への改変されたエピトープのより低い親和性を補償する。
【0139】
ペプチドの中にT細胞エピトープ及び還元性化合物を含む配列は、MHCクラスII決定因子の中でのプロセシング及び提示のために後期エンドソームへのペプチドの取り込みを促進するアミノ酸配列(又は、別の有機化合物)に更に連結することができる。後期エンドソーム標的化はタンパク質の細胞質テールに存在するシグナルによって媒介され、良好に同定されたペプチドモチーフに対応する。後期エンドソーム標的配列は、MHCクラスII分子による抗原由来のT細胞エピトープのプロセシング及び効率的な提示を可能にする。そのようなエンドソーム標的化配列は、例えば、gp75タンパク質(Vijayasaradhiら(1995) J. Cell. Biol. 130、807~820頁)、ヒトCD3ガンマタンパク質、HLA-BM 11(Copierら(1996) J. lmmunol. 157、1017~1027頁)、DEC205受容体の細胞質テール(Mahnkeら(2000) J. Cell Biol.151、673~683頁)の中に含有される。エンドソームへの選別シグナルとして機能するペプチドの他の例は、Bonifacio及びTraub(2003) Annu. Rev. Biochem. 72、395~447頁のレビューの中で開示される。或いは、配列は、抗原に対するT細胞応答を克服することなく後期エンドソームでの取り込みを促進する、タンパク質からの亜優勢又は劣勢なT細胞エピトープのそれであってよい。後期エンドソーム標的化配列は、効率的な取り込み及びプロセシングのために抗原由来のペプチドのアミノ末端又はカルボキシ末端に位置することができ、最高10アミノ酸のペプチド配列等の隣接配列を通してカップリングさせることもできる。標的化目的のために劣勢なT細胞エピトープを使用する場合、後者は抗原由来のペプチドのアミノ末端に一般的に位置する。
【0140】
したがって、本発明は、抗原性タンパク質のペプチドの使用及び特異的免疫反応を導き出すことにおけるそれらの使用を想定する。これらのペプチドは、それらの配列の中に、すなわち、多くても10、好ましくは7アミノ酸以下で分離されている還元性化合物及びT細胞エピトープを含む、タンパク質の断片に対応することもできる。或いは、及びほとんどの抗原性タンパク質では、本発明のペプチドは、還元性化合物、特に本明細書に記載される還元性の改変された酸化還元モチーフを、抗原性タンパク質のT細胞エピトープのN末端又はC末端に結合させることによって生成される(それの直近に、又は多くても10、特に多くても7アミノ酸のリンカーにより)。更に、タンパク質のT細胞エピトープ配列及び/又は改変された酸化還元モチーフを改変することができ、及び/又は、天然に存在する配列と比較して、1つ又は複数の隣接配列及び/又は標的配列を導入すること(又は、改変すること)ができる。したがって、本発明の特色を目的の抗原性タンパク質の配列の中で見出すことができるかどうかによって、本発明のペプチドは「人工の」又は「天然に存在する」配列を含むことができる。
【0141】
本発明のペプチドは、実質的に長さが多様であり得る。ペプチドの長さは、13又は14アミノ酸と様々であってよく、すなわち、ヒスチジンを有する改変された酸化還元モチーフ5アミノ酸、最大20、25、30、40又は50アミノ酸がエピトープに隣接している8~9アミノ酸のエピトープからなる。例えば、ペプチドは、40アミノ酸のエンドソーム標的配列、約2アミノ酸の隣接配列、5アミノ酸の本明細書中に記載するようなモチーフ、4アミノ酸のリンカー及び9アミノ酸のT細胞エピトープペプチドを含み得る。
【0142】
したがって、特定の実施形態では、完全ペプチドは、13アミノ酸から最大20、25、30、40、50、75又は100アミノ酸からなる。より詳細には、還元化合物が本明細書中に記載するような改変された酸化還元モチーフである場合、エンドソーム標的配列を有さない、任意選択的にリンカーに結合されたエピトープ及び改変された酸化還元モチーフを含む(人工又は天然)配列(本明細書中で、「エピトープ改変酸化還元モチーフ」配列と称される)の長さは、重要である。「エピトープ改変酸化還元モチーフ」はより詳細には、13、14、15、16、17、18又は19アミノ酸の長さを有する。13又は14~19アミノ酸のそのようなペプチドは、任意選択的にそのサイズがあまり重要ではないエンドソーム標的シグナルにカップリングされ得る。
【0143】
上記で詳述するように、特定の実施形態では、本発明のペプチドは、T細胞エピトープ配列に連結された本明細書中に記載するような還元改変酸化還元モチーフを含む。
【0144】
更なる特定の実施形態では、本発明で使用するペプチドは、それらの天然配列内に酸化還元特性を有するアミノ酸配列を含まないT細胞エピトープを含むペプチドである。
【0145】
しかしながら、代替的な実施形態では、T細胞エピトープは、エピトープの、MHC裂け目への結合を保証するアミノ酸の任意の配列を含み得る。抗原性タンパク質の目的のエピトープが、そのエピトープ配列内に本明細書中に記載するような改変された酸化還元モチーフを含む場合、本発明による免疫原性ペプチドは、本明細書中に記載するような改変された酸化還元モチーフの配列及び/又は(裂け目内に埋まっているエピトープ内に存在する改変された酸化還元モチーフに反して)結合された改変された酸化還元モチーフが還元活性を保証することができるようにエピトープ配列にN又はC末端でカップリングされた別の還元配列を含む。
【0146】
したがって、T細胞エピトープ及びモチーフは、互いに直近しているか、又は分離されており、重複しない。「直近している」又は「分離されている」の概念を評価するために、MHC裂け目にフィットする8又は9アミノ酸配列が決定され、ヒスチジンを含む酸化還元テトラペプチド若しくは改変された酸化還元モチーフペンタペプチドを有するこのオクタペプチド又はノナペプチド間の距離が決定される。
【0147】
概して、本発明で使用するペプチドは天然ではなく(したがって、それ自体タンパク質の断片でない)、T細胞エピトープに加えて、それにより改変された酸化還元モチーフが最大7、より詳細には最大4又は最大2アミノ酸からなるリンカーによってT細胞エピトープから即座に分離される本明細書中に記載するような改変された酸化還元モチーフを含有する人工ペプチドである。
【0148】
本明細書中に開示するペプチド(又はそのようなペプチドを含む組成物)の哺乳動物への投与(すなわち、注射)後、ペプチドは、抗原由来T細胞エピトープを認識するT細胞の活性化を導き出し、表面受容体の還元を通して更なるシグナルをT細胞に提供することが示されている。この最適上限の活性化は、T細胞エピトープを提示する細胞に対する細胞溶解性特性、並びにバイスタンダーT細胞に関する抑制特性を獲得するT細胞を生じる。このようにして、抗原由来T細胞エピトープ、及びエピトープの外側に改変された酸化還元モチーフを含有する本発明で記載するペプチド又はペプチドを含む組成物は、人間を含む哺乳動物の直接的な免疫化に使用することができる。したがって、本発明は、医薬としての使用のための本明細書中に開示するペプチド及びそれらの誘導体の使用を提供する。したがって、本発明は、本明細書中に開示する1つ又は複数のペプチドを、それを必要とする患者に投与することを含む治療方法を提供する。
【0149】
本発明は、細胞溶解性特性を持つ抗原特異的なT細胞が小ペプチドによる免疫化によって導き出され得る方法を提供する。(i)抗原由来のT細胞エピトープをコードする配列及び(ii)酸化還元特性を有するコンセンサス配列を含有し、更に任意選択的に効率的なMHCクラスII提示のためのペプチドの、後期エンドソームへの取り込みを促進する配列も含むペプチドは、サプレッサーT細胞を導き出すことが見出されている。
【0150】
開示されるペプチドの免疫原性特性は、免疫反応の処置及び防止において特に目的となる。
【0151】
本明細書に記載されるペプチドは医薬として使用され、特に哺乳動物、特にヒトにおける免疫障害の予防又は治療のための医薬の製造のために使用される。
【0152】
本発明は、本明細書中に開示するペプチド、その相同体又は誘導体を使用することによってそのような治療又は予防を必要とする哺乳動物の免疫障害の治療又は予防の方法であって、上記方法は、例えば、免疫障害の症状を低減するために、免疫障害を患うか、又は免疫障害のリスクがある上記哺乳動物に、治療上有効な量の本明細書中に開示するペプチド、その相同体又は誘導体を投与する工程を含む方法について記載している。ヒト及び動物、例えばペット及び畜産動物の両方の処置が想定される。ある実施形態では、処置される哺乳動物はヒトである。上で言及される免疫障害は、特定の実施形態では、アレルギー性疾患及び自己免疫性疾患から選択される。
【0153】
本明細書中で規定するようなペプチドを含む本発明における使用のためのペプチド又は医薬組成物は好ましくは、皮下又は筋肉内投与を通して投与される。好ましくは、ペプチド又はそれを含む医薬組成物は、肘と肩の中間の上腕の側部の領域で皮下に注射する(SC)ことができる。2回以上の別個の注射が必要な場合、それらは両腕に同時投与することができる。
【0154】
本発明における使用のためのペプチド又はそれを含む医薬組成物は、治療上有効な用量で投与される。例示的であるが非限定的な投薬レジメンは、50~1500μg、好ましくは100~1200μgである。より具体的な投薬スキームは、患者の状態及び疾患の重症度によって50~250μg、250~450μg又は850~1300μgであってよい。投薬レジメンは、同時に又は連続的に、単回投与又は2、3、4、5若しくはそれより多い回数の用量での投与を含むことができる。例示的な非限定的投与スキームは、以下の通りである:
- 各々25μg(各々100μL)の2回の別個の注射による50μgのペプチドのSC投与と、続く各々12.5μg(各々50μL)の2回の別個の注射による25μgのペプチドの3回の連続注射を含む低用量スキーム。
- 各々75μg(各々300μL)の2回の別個の注射による150μgのペプチドのSC投与と、続く各々37.5μg(各々150μL)の2回の別個の注射による75μgのペプチドの3回の連続投与を含む中間用量スキーム。
- 各々225μg(各々900μL)の2回の別個の注射による450μgのペプチドのSC投与と、続く各々112.5μg(各々450μL)の2回の別個の注射による225μgのペプチドの3回の連続投与を含む高用量スキーム。
【0155】
上記ペプチド全てに関して、更なるバリアントが想定され、ここでは、ヒスチジンとシステインの間に、1つ又は2つのアミノ酸Xが存在する。通常、これらの外部アミノ酸は、His、Cys、Ser又はThrではない。
【0156】
本発明における使用のためのペプチドは、試料中のクラスII制限CD4+T細胞を検出するin vitro診断方法で使用することもできる。この方法では、試料をMHCクラスII分子及び本明細書中に開示するペプチドの複合体と接触させる。CD4+T細胞は、複合体の試料中の細胞との結合を測定することによって検出され、ここで、細胞への複合体の結合は試料中のCD4+T細胞の存在の指標となる。
【0157】
複合体は、ペプチド及びMHCクラスII分子の融合タンパク質であってよい。或いは、複合体中のMHC分子は四量体である。複合体は可溶性分子として提供することができるか、又は担体に結合していてよい。
【0158】
したがって、特定の実施形態では、本発明の処置及び防止の方法は、本明細書中に記載するような免疫原性ペプチドの投与を含み、ここで、ペプチドは、処置されるべき疾患において役割を果たす抗原性タンパク質のT細胞エピトープ(例えば、上述したようなもの)を含む。更なる特定の実施形態では、使用されるエピトープは、上記処置のほとんどに有益であると考えられる患者の階層化又は選択の方法と組み合わせた優勢エピトープである。
【0159】
本発明による使用のためのペプチドは、ペプチドを合成することによって調製することができ、ここで、T細胞エピトープ及び改変された酸化還元モチーフは、0~5アミノ酸で分離されている。ある特定の実施形態では、改変された酸化還元モチーフは、タンパク質中に存在するような配列構成を保存するようにエピトープ配列の外側に1、2又は3つの変異を導入することによって得られ得る。通常、P-2及びP-1におけるアミノ酸、並びにP+10及びP+11におけるアミノ酸は、天然配列の部分であるノナペプチドに関して、ペプチド配列において保存される。これらの隣接残基は概して、MHCクラスIIへの結合を安定化する。他の実施形態では、エピトープのN末端又はC末端にある配列は、T細胞エピトープ配列を含有する抗原性ペプチドの配列とは無関係である。
【0160】
したがって、ペプチドを設計する上記方法に基づいて、ペプチドは、化学的ペプチド合成、組換え発現方法、又はより例外的な場合では、タンパク質のタンパク質分解性又は化学的断片化によって生成される。
【0161】
上記方法において生成されるようなペプチドは、in vitro及びin vivo方法で、T細胞エピトープの存在に関して検査することができ、in vitroアッセイでそれらの還元活性に関して検査することができる。最終的な品質管理として、ペプチドをin vitroアッセイで検査して、ペプチドが、改変された酸化還元モチーフを有するペプチド中にも存在するエピトープ配列を含有する抗原を提示する抗原提示細胞に関して、アポトーシス経路を介して細胞溶解性であるCD4+T細胞を生成することができるかどうかを検証することができる。
【0162】
本発明における使用のためのペプチドは、組換えDNA技法を使用して、細菌、酵母、昆虫細胞、植物細胞又は哺乳動物細胞において生成され得る。ペプチドの限定長さを考慮して、ペプチドは、化学的ペプチド合成によって調製することができ、ここで、ペプチドは、異なるアミノ酸を互いにカップリングすることによって調製される。化学的合成は、例えばD-アミノ酸、天然に存在しない側鎖を有するアミノ酸又はメチル化システイン等の改変された側鎖を有する天然アミノ酸のインクルージョンに特に適している。
【0163】
化学的ペプチド合成は十分に記述されており、ペプチドは、Applied Biosystems社及び他の企業等の企業に発注され得る。
【0164】
ペプチド合成は、固相ペプチド合成(SPPS)又は逆に溶液相ペプチド合成のいずれかとして実施され得る。最良の公知のSPPS方法は、t-Boc及びFmoc固相化学である:
【0165】
ペプチド合成中に、いくつかの保護基が使用される。例えば、ヒドロキシル及びカルボキシ官能基は、t-ブチル基によって保護され、リジン及びトリプトファンは、T-Bocによって保護され、アスパラギン、グルタミン、システイン及びヒスチジンは、トリチル基によって保護され、アルギニンは、pbf基によって保護される。適切である場合、そのような保護基は、合成後にペプチド上に残され得る。ペプチドは、SPPSの範囲を超えるタンパク質合成を達成する非常に大きな可能性を提供する、元々Kentによって記載され(Schnelzer & Kent(1992) lnt. J. Pept. Protein Res. 40、180~193頁)、例えばTamら、(2001) Biopolymers 60、194~205頁に概説されたようにライゲーション戦略(無保護のペプチド断片の化学選択的カップリング)を使用して、互いに連結させてより長いペプチドを形成することができる。100~300残基のサイズを有する多くのタンパク質が、この方法によって首尾よく合成されている。合成ペプチドは、SPPSの大きな前進のため、生化学、薬理学、神経生物学、酵素学及び分子生物学の研究分野においてますます重大な役割を果たし続けている。
【0166】
或いは、ペプチドは、コードヌクレオチド配列を含む適切な発現ベクターにおいて本発明のペプチドをコードする核酸分子を使用することによって合成され得る。そのようなDNA分子は、自動DNA合成機及び遺伝子コードの周知のコドンアミノ酸関係を使用して、容易に調製することができる。そのようなDNA分子はまた、オリゴヌクレオチドプローブ及び従来のハイブリダイゼーション方法論を使用してゲノムDNAとして又はcDNAとして得られ得る。そのようなDNA分子は、細菌、例えば大腸菌(Escherichia coli)、酵母細胞、動物細胞又は植物細胞等の適切な宿主におけるDNAの発現及びポリペプチドの産生に適応しているプラスミドを含む発現ベクターに取り込まれてもよい。
【0167】
目的のペプチドの物理特性及び化学特性(例えば、溶解度、安定性)を検査して、ペプチドが治療用組成物における使用に適している/適する予定であるかどうかを決定する。通常、これは、ペプチドの配列を調節することによって最適化される。必要に応じて、ペプチドは、合成後に当該技術分野で公知の技法を使用して修飾され得る(化学的修飾、例えば官能基を付加/欠失させる)。
【0168】
T細胞エピトープ自体、抗原提示細胞の表面上の適切なHLA分子に結合させることと、関連するT細胞亜集団を刺激することによって、Tヘルパー細胞のレベルで初期事象を導き出すと考えられる。これらの事象は、T細胞増殖、リンホカイン分泌、局所炎症反応、更なる免疫細胞の、当該部位への動員、及びB細胞カスケードの活性化をもたらして、抗体の産生をもたらす。これらの抗体のアイソタイプの1つであるIgEは、アレルギー症状の発症において根本的に重要であり、その産生は、Tヘルパー細胞のレベルで、分泌されるリンホカインの性質によって事象のカスケードにおいて早期に影響される。T細胞エピトープは、T細胞受容体による認識の基本要素又は最小ユニットであり、そこで、エピトープは受容体認識に必須のアミノ酸残基を含み、これは、タンパク質のアミノ酸配列において連続的である。
【0169】
しかしながら、T細胞エピトープ及び酸化還元モチーフを有するペプチドの投与時に、下記の事象が起きると考えられる:
抗原の活性化(i)MHCクラスII分子によって提示される抗原由来ペプチドとのコグネイト相互作用(cognate interaction)から生じる特定のT細胞。還元酵素配列は、CD4分子等のT細胞表面タンパク質を還元し、その第2のドメインは、拘束されたジスルフィド架橋を含有する。このことが、シグナルをT細胞に伝達する。酸化経路の増加に関連する一連の結論の中で、カルシウム流入及びNF-κB転写因子の核へのトランスロケーションの増加が重要な事象である。後者は、IFN-ガンマ及びグランザイムの転写の増加をもたらし、このことが細胞にアポトーシス誘導メカニズムを介して細胞溶解性特性を獲得させ、細胞溶解性特性は、グランザイムB分泌、及びFas-FasL相互作用を包含するメカニズムによってペプチドを提示する細胞に影響を及ぼす。細胞死滅効果がアポトーシス経路を介して得られるため、細胞溶解性細胞は、細胞障害性細胞よりもこれらの細胞に関してより適切な用語である。抗原提示標的細胞の破壊は、同じ抗原上に位置されるエピトープに特異的な他のT細胞の活性化を防止するか、又は同じ抗原提示細胞によってプロセシングされる未関係の抗原に対して;T細胞活性化の更なる結論は、細胞間接触依存性メカニズムによるバイスタンダーT細胞の活性化を抑制することである。そのような場合では、細胞溶解性及びバイスタンダーT細胞の両方は近接近している、すなわち、同じ抗原提示細胞の表面上で活性化される場合、異なる抗原提示細胞によって提示される抗原によって活性化されるT細胞はまた抑制される。
【0170】
上記で仮定した作用機序は、上記で引用したPCT出願WO2008/017517で開示されている実験データを用いて実証されている。
【0171】
本発明は、抗原特異的細胞溶解性CD4+T細胞をin vivo又はin vitroのいずれかで生成する方法、及び上記治療のほとんどに有益であるとして階層化又は選択された患者を治療する工程におけるそれらの使用を提供する。それらとは独立して、細胞溶解性CD4+T細胞を、特徴的な発現データに基づくFoxp3+Treg等の他の細胞集団と区別する方法が想定され得る。
【0172】
本発明は、本発明を鑑みて治療に使用される抗原特異的CD4+T細胞の産生に関するin vivo方法について記載する。特定の実施形態は、本明細書に記載されるペプチドで動物(ヒトを含む)を免疫化し、次に、免疫化された動物からCD4+ T細胞を単離することによってCD4+ T細胞を生成又は単離する方法に関する。本発明は、APCに対する抗原特異的細胞溶解性CD4+ T細胞の生成のためのin vitro方法を記載する。本出願はまた、APCに対する抗原特異的細胞溶解性CD4+T細胞を生成する方法も開示する。
【0173】
一実施形態では、末梢血細胞の単離、本明細書に記載される免疫原性ペプチドによるin vitroでの細胞集団の刺激、及び刺激された細胞集団の、特にIL-2の存在下での増殖を含む方法が提供される。本発明による方法は、多数のCD4+ T細胞が生成され、抗原性タンパク質に特異的であるCD4+ T細胞を生成することができる(抗原特異的エピトープを含むペプチドを使用することによって)という利点を有する。
【0174】
代わりの実施形態では、CD4+ T細胞はin vivoで、すなわち本明細書に記載される免疫原性ペプチドの対象への注射、及びin vivoで生成される細胞溶解性CD4+ T細胞の収集によって生成することができる。
【0175】
本明細書中で開示する方法によって得られ得るAPCに対する抗原特異的細胞溶解性CD4+T細胞は、アレルギー反応の防止及び自己免疫疾患の治療における免疫療法のための哺乳動物への投与に関して特に関心が持たれる。同種異系細胞及び自己細胞の使用はともに想定される。
【0176】
細胞溶解性CD4+T細胞集団は、以下で本明細書中に記載するように得られる。本明細書中に記載するような抗原特異的細胞溶解性CD4+T細胞は、医薬として、より詳細には、養子細胞療法における使用のために、より詳細には、急性アレルギー反応及び多発性硬化症等の自己免疫疾患の再発の処置において使用することができる。記載される通りに生成した単離された細胞溶解性CD4+ T細胞又は細胞集団、特に抗原特異的細胞溶解性CD4+ T細胞集団は、免疫障害の予防又は治療のための医薬の製造のために使用される。単離又は生成された細胞溶解性CD4+ T細胞を使用した治療の方法が、開示される。
【0177】
WO2008/017517で説明される通り、APCに対する細胞溶解性CD4+ T細胞は、細胞の発現特性に基づいて天然のTreg細胞から区別することができる。特に、細胞溶解性CD4 + T細胞集団は、天然のTreg細胞集団と比較して以下の特徴の1つ又は複数を実証する:
活性化の後のCD103、CTLA-4、Fasl及びICOSを含む表面マーカーの発現の増加、CD25の中間的発現、CD4、ICOS、CTLA-4、GITRの発現、及びCD127(IL7-R)の低い発現か無発現、CD27の無発現、転写リプレッサーFoxp3のではなく、転写因子T-bet及びegr-2 (Krox-20)の発現、IFN-ガンマの高い生成、及びIL-10、IL-4、IL-5、IL-13又はTGF-ベータの無又は極微量の生成。
【0178】
更に、細胞溶解性T細胞はCD45RO及び/又はCD45RAを発現し、CCR7、CD27を発現せず、高レベルのグランザイムB及び他のグランザイム並びにFasリガンドを提示する。
【0179】
本発明における使用のためのペプチドは、生きている動物、一般的にヒトへの投与の後に、バイスタンダーT細胞に抑制性活性を発揮する特異的T細胞を導き出す。
【0180】
具体的な実施形態では、本明細書に開示される細胞溶解性細胞集団は、FasL及び/又はインターフェロンガンマの発現によって特徴付けられる。具体的な実施形態では、本発明の細胞溶解性細胞集団は、グランザイムBの発現によって更に特徴付けられる。
【0181】
本発明のペプチドは、ある特定の抗原の特異的なT細胞エピトープを含むが、同じ抗原の他のT細胞エピトープに対する免疫反応によって導き出される障害の防止又は処置に、或いはある特定の状況では、更には他の異なる抗原が、本発明のペプチドによって活性化されるT細胞の近傍でMHCクラスII分子による同じメカニズムを通して提示される場合に他の異なる抗原の他のT細胞エピトープに対する免疫応答によって導き出される障害の処置のために使用することができることを、このメカニズムはまた暗示し、実験結果がそのことを示している。
【0182】
上述する特徴を有し、更に抗原特異的であり、すなわち、抗原特異的な免疫応答を抑制することが可能な細胞型の単離細胞集団が開示される。
【0183】
本発明は、薬学的に許容可能な担体を更に含む本発明による1つ又は複数のペプチドを含む医薬組成物の使用を提供する。上記で詳述するように、本発明はまた、医療としての使用のための組成物に、或いは上記処置のほとんどに有益であると仮定される患者の階層化又は選択の方法と組み合わせて、免疫障害の防止又は処置のための医薬の製造のための組成物の使用に関する。医薬組成物は、例えば、免疫障害、特に風媒性のアレルギー及び食品が媒介するアレルギー、並びにアレルギーが原因の疾患を処置又は防止するのに適したワクチンである。本明細書で更に記載される医薬組成物の一例として、本発明によるペプチドは、水酸化アルミニウム(ミョウバン)等の、哺乳動物への投与に好適なアジュバントの上に吸着される。通常、本明細書中に記載するような所望の投薬量、例えば、ミョウバン上に吸着されたペプチド50μg~1500μgは、皮下経路によって2週間隔で3回注射される。経口、鼻腔内又は筋肉内を含めて他の投与経路が可能であることは、当業者に明らかなはずである。更に、注射の回数及び注射する量は、処置する状態によって異なることができる。更に、それらがMHC-クラスII提示及びT細胞活性化においてペプチド提示を促進するならば、ミョウバン以外の他のアジュバントを使用することができる。したがって、有効成分を単独で投与することが可能であるが、それらは医薬製剤として一般的に提示される。獣医及びヒト使用のための本発明の製剤は、上記の少なくとも1つの有効成分を、1つ又は複数の薬学的に許容される担体と一緒に含む。本開示は、有効成分として、本明細書中に記載する1つ又は複数のペプチドを、薬学的に許容可能な担体と混合して含む医薬組成物に関する。医薬組成物は、処置又は予防の方法に関して以降指示されるもの等の有効成分の治療的有効量を含むべきである。必要に応じて、組成物は他の治療成分を更に含む。好適な他の治療成分、並びにそれらが属するクラスに依存するそれらの通常の投薬量は当業者に周知であり、免疫障害を処置するために使用される他の公知の薬物から選択することができる。
【0184】
本明細書で使用される用語「薬学的に許容される担体」は、例えば組成物を溶解、分散若しくは拡散することによって処置する部位へのその適用若しくは伝播を容易にするために、及び/又はその有効性を損なうことなくその保存、輸送若しくは取扱いを容易にするために、それと一緒に有効成分が製剤化される任意の材料又は物質を意味する。それらには、全溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌及び抗真菌剤(例えばフェノール、ソルビン酸、クロロブタノール)、等張剤(糖又は塩化ナトリウム等)等が含まれる。組成物中の免疫原性ペプチドの作用期間を制御するために、追加の成分が含まれてもよい。薬学的に許容される担体は、固体又は液体又は液体を形成するために圧縮される気体であってよく、すなわち、この発明の組成物は濃縮液、乳剤、溶液、粒状体、粉剤、噴霧剤、エアゾール、懸濁液、軟膏、クリーム、錠剤、ペレット又は粉末として好適に使用することができる。医薬組成物及びそれらの製剤で使用するための好適な医薬担体は当業者に周知であり、本発明の中でのそれらの選択に特に制限はない。それらには、添加剤、例えば湿潤剤、分散剤、展着剤、接着剤、乳化剤、溶媒、コーティング、抗菌及び抗真菌剤(例えば、フェノール、ソルビン酸、クロロブタノール)、等張剤(糖又は塩化ナトリウム等)等が含まれてもよいが、それらが製薬慣行と一貫している場合に限られ、すなわち哺乳動物に恒久的な傷害を与えない担体及び添加剤に限る。本発明の医薬組成物は、任意の公知の方法で、例えば有効成分を選択された担体材料及び適当な場合には界面活性剤等の他の添加剤と一緒に、一段階又は多段階手順で均一に混合し、コーティングし、及び/又は磨砕することによって調製することができる。それらは、例えば通常約1~10μmの直径を有するマイクロスフェアの形でそれらを得る目的で、すなわち、有効成分の制御されたか又は持続的放出のためのマイクロカプセルの製造のために、微粉化によって調製することもできる。
【0185】
本発明の医薬組成物で使用するのに好適である、搾出剤又は乳化剤としても知られる界面活性剤は、優れた乳化、分散及び/又は湿潤特性を有する非イオン性、カチオン性及び/又はアニオン性の材料である。好適なアニオン性界面活性剤には、水溶性石鹸及び水溶性の合成界面活性剤の両方が含まれる。好適な石鹸は、アルカリ若しくはアルカリ土類金属塩、高級脂肪酸(C10~C22)の非置換の若しくは置換されたアンモニウム塩、例えばオレイン酸若しくはステアリン酸のナトリウム若しくはカリウム塩、又はヤシ油若しくは獣脂オイルから入手できる天然脂肪酸混合物のものである。合成界面活性剤には、ポリアクリル酸のナトリウム又はカルシウム塩;脂肪スルホン酸塩及び硫酸塩;スルホン化されたベンズイミダゾール誘導体及びアルキルアリールスルホン酸塩が含まれる。脂肪スルホン酸塩又は硫酸塩は通常アルカリ又はアルカリ土類金属塩、非置換のアンモニウム塩又は8~22の炭素原子を有するアルキル若しくはアシル基で置換されるアンモニウム塩、例えば、リグニンスルホン酸又はドデシルスルホン酸のナトリウム又はカルシウム塩、又は天然脂肪酸から得られる脂肪アルコール硫酸塩の混合物、硫酸又はスルホン酸エステル(ラウリル硫酸ナトリウム等)及び脂肪アルコール/エチレンオキシド付加物のスルホン酸のアルカリ又はアルカリ土類金属塩の形である。好適なスルホン化されたベンズイミダゾール誘導体は、8~22の炭素原子を一般的に含有する。アルキルアリールスルホン酸の例は、ドデシルベンゼンスルホン酸又はジブチル-ナフタレンスルホン酸又はナフタレン-スルホン酸/ホルムアルデヒド縮合生成物のナトリウム、カルシウム又はアルカノールアミン塩である。対応するリン酸塩、例えばリン酸エステルの塩、及びp-ノニルフェノールとエチレン及び/又はプロピレンオキシドの付加物、又はリン脂質も好適である。例えば、この目的のための好適なリン脂質は、ケファリン又はレシチンタイプの天然(動物又は植物細胞を起源とする)又は合成リン脂質、例えば、ホスファチジル-エタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセリン、リゾレシチン、カルジオリピン、ジオクタニルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン及びそれらの混合物である。
【0186】
好適な非イオン性界面活性剤には、分子中に少なくとも12の炭素原子を含有するアルキルフェノール、脂肪アルコール、脂肪酸、脂肪族アミン又はアミドのポリエトキシル化及びポリプロポキシル化誘導体、アルキルアレーンスルホン酸塩及びジアルキルスルホコハク酸塩、例えば、脂肪族及び脂環式アルコールのポリグリコールエーテル誘導体、飽和及び不飽和脂肪酸及びアルキルフェノールが含まれ、誘導体は、(脂肪族)炭化水素部分に3~10のグリコールエーテル基及び8~20の炭素原子を、アルキルフェノールのアルキル部分に6~18の炭素原子を一般的に含有する。更なる好適な非イオン性界面活性剤は、アルキル鎖に1~10の炭素原子を含有するポリプロピレングリコール、エチレンジアミノポリプロピレングリコールとのポリエチレンオキシドの水溶性付加物であり、その付加物は20~250のエチレングリコールエーテル基及び/又は10~100のプロピレングリコールエーテル基を含有する。そのような化合物は、プロピレングリコール単位につき1~5のエチレングリコール単位を通常含有する。非イオン性界面活性剤の代表的な例は、ノニルフェノール-ポリエトキシエタノール、ヒマシ油ポリグリコールエーテル、ポリプロピレン/ポリエチレンオキシド付加物、トリブチルフェノキシポリエトキシエタノール、ポリエチレングリコール及びオクチルフェノキシポリエトキシエタノールである。ポリエチレンソルビタン(ポリオキシエチレントリオレイン酸ソルビタン等)、グリセロール、ソルビタン、スクロース及びペンタエリスリトールの脂肪酸エステルも、好適な非イオン性界面活性剤でもある。好適なカチオン性界面活性剤には、ハロ、フェニル、置換されたフェニル又はヒドロキシで必要に応じて置換される4炭化水素基を有する四級アンモニウム塩、特にハライドが含まれる;例えば、N置換基として少なくとも1つのC8C22アルキル基(例えば、セチル、ラウリル、パルミチル、ミリスチル、オレイル等)及び、更なる置換基として、非置換であるかハロゲン化された低級アルキル、ベンジル及び/又はヒドロキシ-低級アルキル基を含有する四級アンモニウム塩。
【0187】
この目的のために好適な界面活性剤のより詳細な記載は、例えば、「McCutcheon's Detergents and Emulsifiers Annual」(MC Publishing Crop.社、Ridgewood、New Jersey、1981)、「Tensid-Taschenbucw」、第2版(Hanser Verlag社、Vienna、1981)及び「Encyclopaedia of Surfactants」(Chemical Publishing Co.社、New York、1981)に見出すことができる。本発明によるペプチド、その相同体又は誘導体(並びに、用語「有効成分」に全て含まれるそれらの生理的に許容される塩又は医薬組成物)は、処置される状態に適当であり、化合物、ここでは投与されるタンパク質及び断片、に適当である任意の経路によって投与することができる。可能な経路には、領域性、全身性、経口(固体の形又は吸入)、直腸、経鼻、局所(目、口内及び舌下を含む)、経膣及び非経口(皮下、筋肉内、静脈内、皮内、動脈内、クモ膜下及び硬膜外を含む)が含まれる。好ましい投与経路は、例えばレシピエントの状態で、又は処置される疾患で異なることができる。本明細書で記載されるように、担体は、製剤の他の成分に適合し、レシピエントに有害でないという意味において、最適には「許容される」。製剤には、経口、直腸、経鼻、局所(口内及び舌下を含む)、経膣又は非経口(皮下、筋肉内、静脈内、皮内、動脈内、クモ膜下及び硬膜外を含む)投与に適するものが含まれる。
【0188】
非経口投与に適する製剤には、抗酸化剤、緩衝剤、静菌薬、及びその製剤を予定レシピエントの血液と等張にする溶質を含有することができる水性及び非水性の無菌注射溶液;並びに懸濁剤及び増粘剤を含むことができる水性及び非水性の無菌懸濁液が含まれる。製剤は、単位用量又は多回用量容器、例えば密封アンプル及びバイアルで提示することができ、使用直前に無菌の液体担体、例えば注射用水を付加するだけでよい、フリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存することができる。即時使用の注射溶液及び懸濁液は、前に記載した種類の無菌の粉末、顆粒及び錠剤から調製することができる。
【0189】
一般的な単位薬量製剤は、本明細書で上に挙げたような有効成分の日用量又は単位下位日用量、又はその適当な分数を含有するものである。上で特に指摘した成分に加えて、本発明の製剤は、問題の製剤タイプに関係する技術分野で慣用される他の薬剤を含むことができることを理解すべきであり、例えば、経口投与に適するものは着香料を含むことができる。本発明によるペプチド、その相同体又は誘導体は、より低い頻度の投薬を可能にするために、又は所与の発明化合物の薬物動態学的若しくは毒性プロファイルを改善するために有効成分の放出を制御及び調節することができる、有効成分として1つ又は複数の本発明の化合物を含有する制御放出医薬製剤(「制御放出製剤」)を提供するために使用することができる。個別の単位が1つ又は複数の本発明の化合物を含む経口投与のために適合させた制御放出製剤は、従来の方法によって調製することができる。組成物中の有効成分の作用期間を制御するために、追加の成分が含まれてもよい。したがって、制御放出組成物は、適当なポリマー担体、例えばポリエステル、ポリアミノ酸、ポリビニルピロリドン、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、硫酸プロタミン等を選択することによって達成することができる。薬物放出の速度及び作用期間は、有効成分をポリマー物質、例えばヒドロゲル、ポリ乳酸、ヒドロキシメチルセルロース、ポリニエチルメタクリレート及び他の上記のポリマーの粒子、例えばマイクロカプセル、に組み込むことによって制御することもできる。そのような方法には、リポソーム、マイクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子、ナノカプセル等のようなコロイド薬物送達系が含まれる。投与経路によっては、医薬組成物は、保護コーティングを必要とすることがある。注射のために好適な医薬形態には、無菌の水性溶液又は分散液、及びその即時使用の調製のための無菌の粉末が含まれる。したがって、この目的のための一般的な担体には、生体適合性の水性緩衝液、エタノール、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等及びそれらの混合物が含まれる。いくつかの有効成分を組合せて使用する場合、それらは処置される哺乳動物において必ずしも共同の治療効果を同時に直接的にもたらすとは限らないという事実を考慮して、対応する組成物は、2つの成分を別々であるが隣接したリポジトリ又はコンパートメントに含有する医療用のキット又はパッケージの形であってもよい。後者との関連で、各有効成分は、したがって、他の成分のそれと異なる投与経路に好適な方法で製剤化することができ、例えば、それらのうちの1つは経口又は非経口製剤の形であってよく、他は静脈内注射又はエアゾールのためのアンプルの形である。
【0190】
本明細書中に記載するように得られるような細胞溶解性CD4+T細胞は、in vitro及びin vivoで実証されるように、MHCクラスII依存性のコグネイトな活性化後にAPCアポトーシスを誘導して、樹状細胞及びB細胞の両方に影響を及ぼして、(2)IL-10及び/又はTGF-βの非存在下で接触依存性メカニズムによってバイスタンダーT細胞を抑制する。WO2008/017517で詳細に議論されるように、細胞溶解性CD4+T細胞は天然及び適応性のTregから区別することができる。
【0191】
本発明は、限定する意図のない以下の実施例によってここから例示される。更に、本明細書に記載される全ての参考文献は、参照により本明細書に明示的に含まれる。
【実施例
【0192】
(実施例1)
インスリンMHCII T細胞エピトープ及び酸化還元酵素モチーフを含む免疫原性ペプチドの、可溶性DRB1*0301又はDRB1*0401組換えMHC IIタンパク質への結合
プロインスリン領域C20_A1由来のMHCクラスII T細胞エピトープ及び酸化還元酵素モチーフを含むペプチドの結合を検査するために、可溶性相競合アッセイを実施し、ここで、増加濃度の配列HCPYCVRSLQPLALEGSLQKRG(配列番号25)及びHCPYCSLQPLALEGSLQKRG(配列番号26)を有するペプチドは、可溶性DRB1*0301又はDRB1*0401組換えヒトMHC IIタンパク質への結合に関して標識対照ペプチド(高親和性結合剤;ビオチン化されている)と競合する。結合が平衡に近づくと(18時間)、ペプチド-MHC II複合体を捕捉して、未結合の試薬と分離する。捕捉されたペプチド-MHC II複合体を、時間分解蛍光(Eu3+ストレプトアビジン)によって定量的に検出し、データを加工処理して、プロットして、試験ペプチドの用量依存性結合特性を確認して、IC50を決定する(蛍光強度の減少がペプチドの結合を反映する)。これらのペプチドを用いた検査は全て、三重反復で実施し、検査はそれぞれ、2回行った。図1は、1つの実験の結果を示す。配列HCPYCVRSLQPLALEGSLQKRG(配列番号25)及びHCPYCSLQPLALEGSLQKRG(配列番号26)を有するペプチドは、それらがアッセイで使用される高親和性参照エピトープ結合剤と競合することが可能であるため、DRB1*0301及びDRB1*0401ハプロタイプに関して良好な結合剤である。
【0193】
(実施例2)
インスリンMHCII T細胞エピトープ及び酸化還元酵素モチーフを含む免疫原性ペプチドの、様々なインスリン依存性真性糖尿病患者由来のCD4+T細胞をプライミング及び増殖する能力。
様々な1型糖尿病(T1D)患者由来のナイーブCD4+T細胞を、配列HCPYCVRSLQPLALEGSLQKRGによって規定されるペプチドに対するそれらの反応性に関して検査した。T1D患者のHLA DRB1タイピングをまず検査した(table1(表1)を参照)。
【0194】
【表1】
【0195】
次に、血液試料を加工処理して、ナイーブCD4+T細胞を磁気単離技法によって精製した。これらのナイーブCD4+T細胞をプライミング及び増殖するペプチドの能力を、ペプチドを予め負荷した自己樹状細胞(GM-CSF及びIL-4の存在下で分化させ、続いてTNF-αによる成熟を行った単球由来DC)を抗原提示細胞として使用して検査した。
【0196】
図2は、連続的な再刺激(S1、S4及びS6)にわたる自己樹状細胞による特異的なペプチド刺激後のCD4+T細胞数の進化によって測定される反応性を示す。データは、細胞反応性が顕著に観察されず、またすでに刺激2後で死亡と関連付けられた2名の患者(T1D02 & T1D06;S2からS6まで細胞n=0)を除いて、検査した患者のほとんどに関して良好な応答性(細胞維持及び増殖)を示す。データにより、DRB1*04ハプロタイプを発現しない患者は、上記処置検査条件下でのペプチド刺激に対して著しい応答を示さなかったことが示される。より顕著なことには、これらの非応答性T1D患者は、DRB1*03ハプロタイプを発現し、これに関して、ペプチドは、競合HLA結合アッセイにおいて良好な結合能を示した。
【0197】
(実施例3)
配列HCPYCSLQPLALEGSLQKRGによる免疫原性ペプチドを用いたT1D患者におけるフェーズIb臨床試験。
配列HCPYCSLQPLALEGSLQKRGを有する免疫原性ペプチドの安全性、臨床効率及び誘導される免疫応答を、最近発症した(6ヶ月以内)成人T1D患者においてフェーズIb臨床試験で評価した。この用量上昇のプラセボ対照研究では、患者に、3つの試験用量又は適合するプラセボの1つの隔週で4回の皮下注射を付与した。ペプチドをアジュバントとしてミョウバンとともに注射した。患者は、6ヶ月間追跡調査して、ペプチドの安全性及び誘導される免疫応答を評価した。
【0198】
主な選択基準は、
- 18歳から30歳の男性及び女性、BMI 17~28kg/m2
- 過去6ヶ月以内のADA/WHO基準に従う1型糖尿病の初期診断、
- 研究者によって決定されるインスリン必要性、
- HLA-DR3陽性及び/又はHLA-DR4陽性、
- 少なくとも1つの自己抗体(GAD65、IA 2又はZnT8)の存在、
- スクリーニング時の空腹時Cペプチド≧02nmol/L及び/又は刺激Cペプチド≧04nmol/L
であった。
【0199】
図3は、フェーズIb研究設計のスキームを示す。患者を3つのコホートに分けた:
- 低用量コホート(コホート1)には、ペプチド50μgを用いてSC注射し、続いてペプチド25μgの3回の連続した注射を行った8名の患者(処置6名及びプラセボ2名)が含まれた。4回の注射は、2週空けて実施された。続いて、患者を24週まで追跡調査した。
- 中用量(コホート2)には、ペプチド150μgを用いてSC注射し、続いてペプチド75μgの3回の連続した注射を行った12名の患者(処置9名及びプラセボ3名)が含まれた。4回の注射は、2週空けて実施された。続いて、患者を24週まで追跡調査した。
- より高用量(コホート3)には、ペプチド450μgを用いてSC注射し、続いてペプチド225μgの3回の連続した注射を行った21名の患者(処置16名及びプラセボ5名)が含まれた。4回の注射は、2週空けて実施された。続いて、患者を24週まで追跡調査した。
【0200】
Ariana Pharma社の商品名KEM(登録商標)(Knowledge Extraction and Management)人工知能技術を用いた全てのデータ関連の系統的分析を使用したデータマイニング分析を、臨床試験からの完全データセットで実施した。このアプローチは、臨床パラメーターの改善の傾向がみられる患者の亜群を同定することを目的とした。この分析中、HLA遺伝子型は、重要要素として取り上げられ、将来の臨床応答を評価する場合に考慮した。初期のデータマイニングの結果から、コホート3(検査したより高い用量)では、多重時点での多重パラメーターは、HLA-DRA4(+)遺伝子型を有する患者において、並びにHLA-DR3(-)遺伝子型を有する患者において改善していたようである。重要なことに、またこの見解を強化して、HLA-DR4(-)遺伝子型を有する患者は、これらのフェーズIb検査条件下の異なる時点で、同じパラメーターの改善を示さなかった。これらの初期発見を以下のTable2(表2)に要約する。
【0201】
【表2】
【0202】
IMGMによって提供される分析プランに従って、Hamilton Robot用のChemagic STAR DNA Bloodキット(Chemagen社)を使用することによって、DNA単離を実施して、Tris-HCL(pH 8.0)150μlに溶出させた。低解像度HLAタイピングは、蛍光でコードされたミクロスフェアに結合された配列特異的なオリゴヌクレオチド(SSO)プローブを使用して、LABType(登録商標)SSO Method配列特異的なオリゴヌクレオチドプローブLABType SSOに従って実施して、試料DNAによってコードされる対立遺伝子を同定した。LABTypeは、Luminex(登録商標)技術を、逆向きのSSO DNAタイピング法に応用して(https://www.onelambda.com/en/product/labtype-sso.html)、HLA FusionTMソフトウェアを用いて評価した。高解像度HLAタイピングに関して、SOP AA-1550に従ういわゆるロングレンジPCRを使用し、これは、Illumina技術を用いて配列決定された。これらの配列の評価は、GenDX NGSengine Version 2.13.0(https://www.gendx.com/products/ngsengine)を用いて実施した。
【0203】
この初期の仮説のない駆動見解に基づいて、HLA遺伝子型、より正確にはHLA-DR3及びHLA-DR4ハプロタイプの発現に従って、臨床試験の異なる亜集団内で臨床パラメーターを検証した。Table3(表3)は、治験における異なる遺伝子型の分布について要約している。観察され得るように、異なる群(プラセボ、コホート1、コホート2及びコホート3)は、異なる遺伝子型の組合せに関して均衡が保たれていない。この不均衡は、純粋に研究の小規模に起因する。
【0204】
【表3】
【0205】
臨床パラメーターの例として、混合食負荷試験(MMTT)中のC-ペプチド曲線下面積(AUC)の進展及び1kg当たりの1日の総インスリン用量を、様々な患者のHLA-DR遺伝子型に従って検討した(それぞれ、図4及び図5)。とりわけ、中用量又は高用量のペプチドHCPYCSLQPLALEGSLQKRGで処置し、HLA-DR4(DR4(+)又はDR3(-))を発現する患者は、研究に入った(=来院2、V2)後の6ヶ月(=来院8、V8)で、これらの2つの評価項目に関して肯定的な傾向を示した。このことは、フェーズIb臨床試験の検査条件下でHLA-DR4を発現しない集団(DR4(-))では観察されない。
【0206】
診断後の最初の2年にわたる暫定T1D疾患進展モデルは、7歳~45歳のこの集団の新たに診断された患者による異なる臨床試験において蓄積された多数のデータに基づいて、Greenbaumら(Diabetes.2012、61(8):2066~73頁)に記載されている。この集団において患者の86%は、DR3又はDR4陽性であった。モデルは、2時間又は4時間のMMTT試験を通して測定される場合のC-ペプチド分泌を使用した。本発明者らは、このモデルを使用して、本発明者らの患者の進展を、2つの目標で比較した:第1は、本発明者らの処置患者が疾患の増悪を示していない(すなわち、モデルよりも早く進展しないようである)ことを確認させた安全性局面、及び第2は、処置患者がモデルよりも遅く進展することを示す予測を伴う有効性局面である。第2の局面と合致して、DR4+及びDR3-亜集団は、コホート2及びコホート3において3ヶ月(V6)及び6ヶ月(V8)で改善する傾向を提示し(C-ペプチドの減少のメジアンがモデルよりも遅い、デルタ比は0よりも大きい)、プラセボ群でもまた同様であるのに対して、HLA-DR4(-)亜集団は、フェーズIb臨床試験の検査条件下で逆の臨床応答を有することを、本発明者らは観察した(図6)。興味深いことに、コホート3(検査した最も高い用量)では、HLA-DR4(+)及びHLA-DR4(-)亜集団の進展の有意な差がみられる。この有意性は、他のコホートにおいて、又はプラセボ群において達成されない。
【0207】
同じ亜群の差はまた、1kg当たりの1日の総インスリン用量に関して期間を通じて観察される。このパラメーターは、コホート2及びコホート3において、HLA-DR4+及びDR3(-)患者の亜集団に関して減少する傾向を示し、それは、処置に対して肯定的な応答である。他方で、患者HLA-DR4(-)は、フェーズIb臨床試験の検査条件下でこの肯定的な成果を提示しない(図7)。このパラメーターに関して、プラセボ群における期間を通じた進展は、より不均一である。DR3+及びDR4+個体における配列番号26のペプチドの有効性は、より大きな試料サイズを用いた大規模な研究及びHLAタイプに関する階層化においてより更に検討される。
図1a
図1b
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【配列表】
2023503630000001.app
【国際調査報告】