(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-31
(54)【発明の名称】セパシア菌群の細菌に対する4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)アルキルケトン型の化合物の使用
(51)【国際特許分類】
A01N 35/02 20060101AFI20230124BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20230124BHJP
C02F 1/50 20230101ALI20230124BHJP
C12N 1/20 20060101ALN20230124BHJP
【FI】
A01N35/02
A01P3/00
C02F1/50 510A
C02F1/50 510D
C02F1/50 520L
C02F1/50 532C
C12N1/20 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022530964
(86)(22)【出願日】2020-11-26
(85)【翻訳文提出日】2022-05-26
(86)【国際出願番号】 EP2020083516
(87)【国際公開番号】W WO2021105288
(87)【国際公開日】2021-06-03
(32)【優先日】2019-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】391023932
【氏名又は名称】ロレアル
【氏名又は名称原語表記】L’OREAL
【住所又は居所原語表記】14 Rue Royale,75008 PARIS,France
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】シルヴィ・クフェルマン
(72)【発明者】
【氏名】フロランス・マナール-シュチェバラ
【テーマコード(参考)】
4B065
4H011
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065BB06
4B065BB08
4B065CA60
4H011AA02
4H011BB05
4H011BC07
4H011DA13
(57)【要約】
本発明は、セパシア菌群(Bcc)の細菌に対する製造物、特に水性又は非水性組成物、好ましくは水及び水性組成物の処理における、式(I):
式(I)
(式中、- R2は、水素原子又はメチル若しくはエチル基を表し;- R3は、ヒドロキシル基で任意選択的に置換された直鎖C
1~C
12アルキル基(飽和);又はヒドロキシル基で任意選択的に置換された直鎖C
2~C
12アルケニル基(C=C不飽和)を表す)の化合物の使用並びにまた水性組成物又は水をBcc菌群の菌株に対して処理するための方法におけるその使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
式(I)
(式中、
- R2は、水素原子又はメチル若しくはエチル基を表し;
- R3は、ヒドロキシル基で任意選択的に置換された直鎖C
1~C
12アルキル基(飽和);又はヒドロキシル基で任意選択的に置換された直鎖C
2~C
12アルケニル基(C=C不飽和)を表す)
の少なくとも1種の化合物及びまたその有機若しくは無機の酸若しくは塩基の塩又は水和物等のその溶媒和物の、セパシア菌群(Bcc)の細菌に対する使用であって、特に前記Bcc菌群の細菌によって汚染され得る製造物の処理、特にi)水又は水性組成物、ii)産業用又は家庭用であり得る、食品、化粧品又は医薬品用の設備、iii)産業用又は家庭用調合物に使用される溶媒、特に水性組成物又は水、及びiv)産業用又は家庭用無水組成物の、前記セパシア菌群の細菌に対する処理における使用。
【請求項2】
前記Bcc菌群の細菌によって汚染され得る製造物の汚染を防止するため、特にi)水又は水性組成物、ii)産業用又は家庭用であり得る、食品、化粧品又は医薬品用の設備、iii)産業用又は家庭用調合物に使用される溶媒、及びiv)産業用又は家庭用無水組成物の汚染の防止、特にバークホルデリア(Burkholderia)属の細菌から選択される1種又は複数の微生物による水及び水性組成物の汚染の防止のためのものであり、前記製造物、特に前記水又は前記水性組成物に含まれる水は、特に、家庭用又は産業用水、特に産業用貯槽からのもの、水媒質からの水、水泳プール/温泉水及び空調システムの水だけでなく、化粧品からも選択される、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記Bcc菌群の細菌によって汚染され得る製造物を処理するため、特にi)水又は水性組成物、ii)産業用又は家庭用であり得る、食品、化粧品又は医薬品用の設備、iii)産業用又は家庭用調合物に使用される溶媒、及びiv)産業用又は家庭用無水組成物の汚染の処理、特にバークホルデリア(Burkholderia)属の細菌から選択される1種又は複数の微生物によって汚染された水及び水性組成物の処理のためのものであり、前記製造物、特に前記水又は前記水性組成物に含まれる水は、特に、家庭用又は産業用水、特に産業用貯槽からのもの、水媒質からの水、水泳プール/温泉水及び空調システムの水だけでなく、化粧品からも選択される、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
式(I)は、
- R2が水素及びメチルから選択され;一層より良好には、R2が表し、及び/又は
- R3が、(i)C
1~C
10アルキル基;(ii)C
2~C
10アルケニル基、特に-CH=CH-R4基(ここで、R4は、直鎖C
1~C
6アルキル基を表す);又はさもなければ(iii)構造-CH
2-CH(OH)-R5(ここで、R5は、直鎖C
1~C
10、好ましくはC
4~C
10アルキル基を表す)を有するヒドロキシアルキル基を表す
ようなものである、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
前記式(I)の化合物は、以下の化合物:
【化2】
から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
前記式(I)の化合物は、以下の式:
【化3】
を有する4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オンである、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
前記式(I)の化合物は、単独で又は混合物として、処理される水又は水性組成物の総質量に対して少なくとも0.06質量%、好ましくは少なくとも0.1質量%、一層より良好には少なくとも0.5質量%の比率で使用される、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
製造物、特に水及び水性組成物を処理するための方法であって、i)前記製造物、特に水及び水性組成物の、セパシア菌群の細菌を含む1種又は複数の微生物による汚染を防止すること、又はii)前記汚染された製造物、特に前記Bcc菌群の細菌を含む1種又は複数の微生物によって汚染された水及び水性組成物を処理することのいずれかを可能にし、前記製造物、特に処理される水若しくは水性組成物のサンプル又は処理される水の流れを、連続的又は回分式に、請求項1~6のいずれか一項に記載の式(I)の少なくとも1種の化合物と接触させる少なくとも1つのステップを含む方法。
【請求項9】
前記製造物、特に水又は水性組成物に含まれる水は、請求項1~6のいずれか一項に記載の式(I)の化合物を有する、家庭用又は産業用製造物、特に家庭用又は産業用水、特に産業用貯槽からのもの、水媒質からの水、水泳プール/温泉水及び空調システムの水だけでなく、化粧品からも選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記式(I)の化合物は、単独で又は混合物として、処理される水又は水性組成物の総質量に対して少なくとも0.06質量%、好ましくは少なくとも0.1質量%、一層より良好には少なくとも0.5質量%の比率で使用される、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
セパシア菌群の細菌によって汚染され得る製造物を処理、特に防腐するための方法であって、前記製造物に、その製造中又はその製造後及び好ましくは貯蔵前に、請求項1~6のいずれか一項に記載の式(I)の1種又は複数の化合物を組み込むステップを含む方法。
【請求項12】
請求項1~6のいずれか一項に記載の式(I)の1種又は複数の化合物を、前記製造物を製造する段階中に組み込むステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記組み込みは、調合槽に予め式(I)の1種又は複数の化合物を好ましくは80℃以下の温度、より良好には周囲温度(25℃)及び特に大気圧において導入し、その後、前記槽に、処理及び防腐される前記製造物又は前記製造物を製造するために必要な成分を導入することによって実施される、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記製造物の前記製造に必要な各成分は、請求項1~6のいずれか一項に記載の式(I)の1種又は複数の化合物で予め処理されているか、又はさもなければ、各成分は、式(I)の1種又は複数の化合物との混合物として導入され;その後、前記製造物は、防腐され、且つ請求項1~6のいずれか一項に記載の式(I)の1種又は複数の化合物の存在下で使用者に提供される、請求項11又は13に記載の方法。
【請求項15】
請求項1~6のいずれか一項に記載の式(I)の1種又は複数の化合物を、前記製造物を製造する前記段階後に組み込むステップを含み、前記製造物は、製造されると、式(I)の1種又は複数の化合物と接触され、その後、前記製造物は、防腐され、且つ式(I)の1種又は複数の化合物の存在下で使用者に提供される、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項16】
請求項1又は4~6のいずれか一項に記載の式(I)の1種又は複数の化合物を含む「無水」組成物、即ち5%未満、好ましくは3%以下、一層より詳細には1%以下の量の水を有し、特に水を含まない組成物。
【請求項17】
i)アニオン性、非イオン性、カチオン性又は両イオン性界面活性剤、ii)脂肪物質、特に天然若しくは合成の油又は炭化水素から誘導された油、iii)アニオン性、非イオン性、カチオン性又は両イオン性の、会合性又は非会合性の増粘性又は非増粘性ポリマー、iv)染料、v)顔料、vi)充填剤、及びvii)これらの混合物;特に1種又は複数の脂肪物質、特に油、特に天然油等、周囲温度及び大気圧において液体であるものから選択される1種又は複数の成分を含む、請求項16に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セパシア菌群(Burkholderia cepacia complex)(Bcc)の細菌に対する水性又は非水性の製造物又は組成物、好ましくは水及び水性組成物の処理における、4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)アルキルケトン型の化合物の使用並びにまたBcc菌群の菌株に対する処理方法におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
抗菌剤は、医療機関、住居、農場及び産業において、有害生物の繁殖を抑制し、潜在的病原性生物を死滅させるために広く使用されている。
【0003】
工業製造物の製造時における微生物汚染は、たとえ前記製造物に導入される出発成分が「清浄」である、即ち汚染微生物が存在しない場合でもよく発生する。特に、殆どの化粧品、医薬品又は食品中に普遍的に存在する水は、微生物に汚染されたものであってはならない。これらの工業製造物の製造、内容物の加工及び容器の充填時の清浄度に関して、工業設備と同様に、細心の注意を払って監視しなければならない。このような予防措置にも関わらず、微生物に対する製造物の完全性を保つには、一般に、製造物と適合性を有する1種又は複数の防腐剤の存在及び組成物の安定性が必要である。製造物は、汚染微生物の増殖も生存も許容してはならない。たとえ無菌環境下で制限しながら製造を行うことが工業的に可能であったとしても、指、化粧品塗布具及び更に周囲の空気が無菌ではないため、使用中に安定性を維持することは、不確実である。したがって、通常の使用中に消費者が持ち込む微生物による汚染を低減させるために、防腐剤が必要である。原則として、販売されている全ての製造物、特に化粧品中に病原性微生物が存在してはならない((非特許文献1)及び規格(非特許文献2))。
【0004】
産業では、微生物汚染から保護するために、防腐剤として抗菌剤の組合せが最終製造物及び出発原料に低濃度で組み込まれる。これらの防腐系が機能しない場合、かなりの経済的損失を招く可能性があり、汚染物質によっては、消費者の健康が損なわれる危険性もある。製造物の汚染に関与し得る酵母、カビ、真菌及び細菌の種類は、多岐にわたる。グラム陰性菌は、産業、特に医薬品産業及び化粧品産業において遭遇する可能性があり、特に、セパシア菌群の細菌は、製品回収の圧倒的多数に関与している(非特許文献3、非特許文献4)。
【0005】
産業において、幅広い抗菌スペクトルを有し、微生物の増殖を防ぎ、耐性微生物を発達させない、堅牢な防腐系を含む製造物を配合することが必要とされている。この問題は、防腐剤の使用に課される制限と、製造物、特に化粧品のためのより作用の穏やかな防腐剤を求める消費者の働きかけとによって一層複雑化している。Bcc菌群の細菌に対して非常に有効性の高いイソチアゾリノン等の防腐剤は、エストロゲン様作用及び皮膚感作性の問題に関連する安全性の問題を示すことから、ここ数年で使用量が大幅に低減されている(非特許文献5)。このため、Bcc菌群の細菌等の主要な危険種に対して非常に有効性の高い新規な防腐剤の必要性が高まっている。
【0006】
セパシア菌群(Bcc)は、バークホルデリア(Burkholderia)属に属する、近縁であるが、遺伝子的に異なる20を超える種を含む。Bccは、順応性が非常に高い自然耐性菌であり、植物の成長促進、バイオレメディエーション及び植物病害虫の生物学的防除における生物工学的応用の可能性が研究されている(非特許文献6)。
【0007】
Bccは、幾つかの宿主に感染症を起こす、例えば嚢胞性線維症(CF)に罹患している個体に慢性呼吸器感染症を起こす可能性がある日和見病原菌として広く研究されている(非特許文献7)。Bcc菌は、産業における汚染物質として、石油製品(非特許文献8)、(非特許文献9)、医薬品及びまた化粧品並びにまたトイレタリー製品(非特許文献3)から分離されている。稀ではあるが、汚染された工業製造物の使用が原因となって、弱った個体にBcc感染が流行し[(非特許文献9)、(非特許文献10)]、現在、これらの細菌は、微生物汚染の危険種と見なされている(非特許文献11)。
【0008】
Bcc菌が汚染物質として生存する能力の一部は、生来の高い薬剤耐性及び高い環境適応能力に由来している(非特許文献6)。産業に使用されている主要な防腐剤群に対するBccの感受性に関する最近の研究から、菌種間で感受性に差があることが判明しており、例えば、使用された安息香酸ナトリウム及び塩化ベンゼトニウムの量は、Bcc菌群の細菌による汚染に対して効果がないようである[(非特許文献5)]。更に、産業的起源から分離されたBcc菌株は、ホルムアルデヒド放出剤に対する耐性が高くなっていることが示され、これは、Bccの突然変異を示唆しており、問題である(非特許文献5)。これらの日和見病原菌は、生来の耐性を有し、産業製造物の汚染の原因であるか又はその一因となっている。
【0009】
更に、水は、病原性微生物の繁殖を媒介することが知られており、したがって、汚染された水は、多くの疾患の原因となる可能性がある。
【0010】
水性組成物及び水中で認められる病原性微生物の中には、Bcc菌群の細菌がある。したがって、これらの日和見微生物には、好気性グラム陰性病原性細菌の群集が含まれ、その大部分は、ヒト、動物及び植物の日和見病原菌である。
【0011】
したがって、公衆衛生上の理由から、Bcc菌群の細菌によって汚染され得る製造物、例えば食品、水並びに水性及び非水性組成物の処理に有効な新規な活性剤を提供することが依然として実際に必要とされている。特に、i)産業用又は家庭用製造物、特に水又は水性若しくは無水組成物の、バークホルデリア(Burkholderia)属細菌を含む1種又は複数の微生物による汚染を防止すること、又はii)Bcc菌群の細菌を含む1種又は複数の微生物に汚染された消費製造物、特に水又は水性若しくは無水組成物を処理することのいずれかを可能にする新規な活性剤を見出すことが依然として実際に必要とされている。前記産業用又は家庭用製造物、特に家庭用又は産業用水性組成物に含まれる水、特に産業用及び家庭用貯槽に由来する製造物、水媒質からの水、水泳プール/温泉水及び空調システムの水並びに化粧品、医薬品及び食品に由来する水である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Kirk Othmer Encyclopedia,Cosmetics,Martin M.Rieger,04/12/2000;https://doi.org/10.1002/0471238961.0315191318090507.a01
【非特許文献2】ISO 17516 Cosmetics - Microbiology - Microbiological limits
【非特許文献3】Jimenez,L.,Microbial diversity in pharmaceutical product recalls and environments.PDA Journal of Pharmaceutical Science and Technology,2007.61(5):p.383-399
【非特許文献4】Rushton,L.Rapid Alert System Weekly Notification Reports.2005-2014
【非特許文献5】Rushton,L.,et al.,Key role for efflux in the preservative susceptibility and adaptive resistance of Burkholderia cepacia complex bacteria.Antimicrobial Agents and Chemotherapy,2013.57(7):p.2972-2980
【非特許文献6】Mahenthiralingam,E.,A.Baldwin,and C.G.Dowson,Burkholderia cepacia complex bacteria:Opportunistic pathogens with important natural biology.Journal of Applied Microbiology,2008.104(6):p.1539-1551
【非特許文献7】Depoorter,E.,et al.,Burkholderia:an update on taxonomy and biotechnological potential as antibiotic producers.Applied Microbiology and Biotechnology,2016.100(12):p.5215-5229
【非特許文献8】White,J.,et al.,Culture-independent analysis of bacterial fuel contamination provides insight into the level of concordance with the standard industry practice of aerobic cultivation.Applied and Environmental Microbiology,2011.77(13):p.4527-4538
【非特許文献9】Alvarez-Lerma,F.,et al.,Moisturizing body milk as a reservoir of Burkholderia cepacia:Outbreak of nosocomial infection in a multidisciplinary intensive care unit.Critical Care,2008.12(1)
【非特許文献10】Kutty,P.K.,et al.,Multistate outbreak of Burkholderia cenocepacia colonization and infection associated with the use of intrinsically contaminated alcohol-free mouthwash.Chest,2007.132(6):p.1825-1831
【非特許文献11】Torbeck,L.,et al.,Burkholderia cepacia:This decision is overdue.PDA Journal of Pharmaceutical Science and Technology,2011.65(5):p.535-543
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、こうした必要性を満たすことである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
驚くべきことに、本発明者らは、以下で定義する式(I)の少なくとも1種の化合物、特に4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)アルキルケトン又はエチルジンゲロン(EZ)を使用することにより、汚染された製造物中のセパシア菌群の細菌の増殖を抑制できることを見出した。以下で定義する式(I)の少なくとも1種の化合物、特に4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)アルキルケトン又はエチルジンゲロン(EZ)を使用することにより、Bcc菌群のバークホルデリア(Burkholderia)属細菌を含む1種又は複数の微生物と接触している可能性のある製造物の、セパシア菌群の細菌による汚染を防止することが可能になる。実際、式(I)の化合物は、セパシア菌群の細菌に対して高い活性を示す防腐剤として作用し、特に生存率を数時間後に数log(4時間後に6log)低下させるようである。
【0015】
予想外にも、式(I)の化合物、特にEZは、Bcc菌群の細菌によって汚染され得る製造物、例えば水、産業用又は家庭用水性組成物、産業用又は家庭用調合槽等の産業用又は家庭用設備、産業用若しくは家庭用調合物又は産業用設備に使用される溶媒或いは更に産業用又は家庭用無水組成物において、新規な多元的作用様式に基づき、バークホルデリア(Burkholderia)属に対して強力な活性を発揮し、更に抵抗性を促進してその耐性グラム陰性菌にさせることがない新規な防腐剤である。
【0016】
式(I)の化合物を使用することにより、Bcc菌群で汚染され得る製造物を処理することに加えて、水と接触する器具、例えば送水管等の表面又は産業用若しくは家庭用貯槽の表面に存在するバイオフィルムを処理することも可能になる。
【0017】
本発明の主題は、セパシア菌群の細菌によって汚染され得る製造物、特に組成物、特に生理学的に許容される媒体を含む組成物、より詳細には化粧用又は医薬用組成物を処理、特に防腐するための方法において、前記製造物に、その製造中又はその製造後及び好ましくは貯蔵前に、式(I)の1種又は複数の化合物、好ましくはEZを組み込むことを含むことを特徴とする方法でもある。
【0018】
したがって本発明は、式(I):
【化1】
(式中、
- R2は、水素原子又はメチル若しくはエチル基を表し;
- R3は、ヒドロキシル基で任意選択的に置換された直鎖C
1~C
12アルキル基(飽和);又はヒドロキシル基で任意選択的に置換された直鎖C
2~C
12アルケニル基(C=C不飽和)を表す)
の少なくとも1種の化合物及びまたその有機若しくは無機の酸若しくは塩基の塩又は水和物等のその溶媒和物の使用であって、特にBcc菌群の細菌によって汚染され得る製造物、例えば水、水性組成物、無水組成物、産業用又は家庭用であり得る、特に食品、化粧品又は医薬品用の設備、産業用又は家庭用調合物に使用される溶媒、好ましくは水性組成物又は水の、セパシア菌群の細菌に対する処理における使用に関する。
【0019】
本発明は、Bcc菌群の細菌によって汚染され得る製造物を処理する、特にi)水又は水性組成物、ii)産業用又は家庭用であり得る設備、例えば産業用又は家庭用の食品、化粧品又は医薬品調合槽、iii)産業用又は家庭用調合物に使用される溶媒、及びiv)産業用又は家庭用無水組成物を処理するための方法であって、上に定義した式(I)の1種又は複数の化合物を接触させる、特にi)水又は水性組成物、ii)産業用又は家庭用であり得る、好ましくは化粧品、医薬品又は食品用の設備、iii)産業用又は家庭用調合物に使用される溶媒、及びiv)産業用又は家庭用無水組成物と接触させる少なくとも1つのステップを含む方法にも関する。
【0020】
より詳細には、本発明は、水又は水性組成物を処理するための方法であって、処理される水若しくは水性組成物のサンプル又は処理される水の流れに連続的若しくは回分式(回分方式)を、上に定義した式(I)の1種又は複数の化合物と接触させる少なくとも1つのステップを含み、前記処理される水は、家庭用又は産業用水、水媒質からの水、水泳プール/温泉水及び空調システムの水から選択される、方法に関する。
【0021】
本発明は、食品、化粧品又は医薬品、好ましくは化粧品に含まれる水の、セパシア菌群の細菌に対する処理にも関する。
【0022】
本発明は、「無水」製造物又は組成物、即ち5%未満、好ましくは3%以下、一層より詳細には1%以下の量の水を有し、特に水を含まない製造物又は組成物の、セパシア菌群の細菌に対する処理にも関する。これらの無水製造物は、食品、化粧品又は医薬品であり得、好ましくは化粧品である。
【0023】
本発明は、水性又は無水の非食品、化粧品又は医薬品の、セパシア菌群に対する処理にも関する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
定義
「製造物の処理又は複数の製造物の処理」という表現は、製造物をセパシア菌群の細菌に対して処理することを意味することを意図しており、前記製造物のセパシア菌群の細菌による汚染を防止すること又は前記処理される製造物からセパシア菌群の細菌の一部若しくは全部を除染することのいずれかを目的として、処理される製造物のサンプルに連続的又は回分式(回分方式)に物質を添加することを含む。
【0025】
「水の処理」という用語は、セパシア菌群の細菌に対して連続的又は回分式(回分方式)に処理を行うことを意味することを意図しており、セパシア菌群の細菌による水の汚染を防止すること又は前記処理される水からセパシア菌群の細菌の一部若しくは全部を除染することのいずれかを目的として、処理される水のサンプル又は処理される水の流れに物質を添加することを含む。
【0026】
好ましくは、本発明に関連して実施される水及び水性組成物の処理は、処理される水及び水性組成物の汚染物質の一部又は全部を除染することを目的として、前記処理される水のサンプル又は処理される水の流れに物質(上に定義した式(I)の化合物、特にEZ)を連続的又は回分式に添加することを含む。
【0027】
本発明による汚染物質は、セパシア菌群の細菌を含む。
【0028】
「水媒質からの水」という用語は、湖、川の支流、貯水池、川の本流、海又は海水浴場の水、地中水、例えば井戸水及び地下水並びに水族館の水を意味することを意図する。
【0029】
「水性組成物」という用語は、少なくとも5%、特に5%~99.9%の水、より詳細には10%~90%の水、優先的には20%~80%の水、より優先的には30%~70%の水を含み、任意選択的に1種又は複数の有機溶媒、特に以下に定義するもの、即ち14.5<δa<30且つ15<δd<22であるようなハンセン溶解度空間パラメータを有する有機溶媒を含む組成物を意味することを意図している。水性組成物は、より詳細には、水性-アルコール性であり、即ち水に加えて、少なくとも1種のエタノール等の(C2~C6)アルカノール又はグリセロール等のポリヒドロキシ(C2~C6)アルカノールを含む。
【0030】
前記「水性」組成物は、1種又は複数の脂肪物質、特に周囲温度及び大気圧において液体であるもの、例えば油、特に天然の油等も含むことができる。水性組成物は、食品、化粧品又は医薬品に従来使用されている他の成分、例えばアニオン性、非イオン性、カチオン性又は両イオン性界面活性剤、脂肪物質、例えば天然若しくは合成の油又は炭化水素から誘導された油、天然又は非天然の、アニオン性、非イオン性、カチオン性又は両イオン性の、会合性又は非会合性の増粘性又は非増粘性ポリマー、染料及び顔料から選択されるものも含むことができる。
【0031】
「無水」組成物という用語は、5%未満、好ましくは3%以下、一層より詳細には1%以下の量の水を含み、特に水を含まない組成物を意味することを意図している。
【0032】
無水組成物は、食品、化粧品又は医薬品に従来使用されている他の成分、例えばi)アニオン性、非イオン性、カチオン性又は両イオン性界面活性剤、ii)脂肪物質、特に天然若しくは合成の油又は炭化水素から誘導された油、iii)天然又は非天然の、アニオン性、非イオン性、カチオン性又は両イオン性の、会合性又は非会合性の増粘性又は非増粘性ポリマー、iv)染料、v)顔料、vi)充填剤、及びvii)これらの混合物から選択されるものを含むことができる。
【0033】
前記無水組成物は、1種又は複数の脂肪物質、特に周囲温度及び大気圧において液体であるもの、例えば油、特に天然の油も含むことができる。
【0034】
本発明の目的に関する「家庭用又は産業用水」は、浄水場で処理される前の廃水、浄水場で処理を受けている水、飲料水処理施設で処理される前の水、飲料水処理施設で処理を受けている水及び更に飲料水又は非飲料水の都市網、例えば配管を循環する水を含む。
【0035】
「バイオフィルム」という用語は、水又は溶媒と接触する器具表面の微生物の堆積物を意味することを意図しており、この堆積物は、特に、前記器具表面に微生物が吸着されることにより形成される。水又は溶媒と接触する器具としては、例えば、導管、特に送水管、冷却塔等を挙げることができる。
【0036】
「産業用又は家庭用の設備」という用語は、天然又は合成の化学製品、生化学製品又は生物学的製品の、生成又は調合、処理、変換若しくは貯蔵を支援する任意の産業用又は家庭用の道具又は機械を意味することを意図している。前記設備は、圧力を調節する、即ち大気圧未満又は大気圧を超える圧力、好ましくは1atmを超える圧力に調節することができ、且つ温度を高温又は低温、即ち周囲温度である25℃を超える温度又は周囲温度よりも低い温度、好ましくは30℃を超える温度に調節することができる。特に、前記設備の一部は、金属、ガラス、セラミック及び/若しくはPVC等のプラスチック又はゴムから構成される。好ましくは、本発明の設備は、産業用である。優先的には、本発明の設備の一部(これは、貯槽又は反応器、配管等であり得る)は、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、鋼、ステンレス鋼、鋳鉄等の金属、より優先的には鋼又はステンレス鋼から構成される。
【0037】
「槽」という用語は、天然又は合成の化学製品、生化学製品又は生物学的製品を調合、処理、変換又は貯蔵するための任意の家庭用又は産業用容器を意味することを意図している。前記容器は、圧力を調節する、即ち大気圧を超える又は大気圧未満の圧力、好ましくは1atmを超える圧力に調節することができ、且つ温度を高温又は低温、即ち周囲温度である25℃を超える温度又は周囲温度よりも低い温度、好ましくは30℃を超える温度に調節することができる。特に、前記容器は、金属、ガラス、セラミック及び/又は等のプラスチックから構成され、貯槽は、好ましくは、金属製である。好ましくは、本発明の貯槽は、産業用貯槽である。優先的には、本発明の貯槽は、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、鋼、ステンレス鋼、鋳鉄等の金属、より優先的には鋼又はステンレス鋼から構成される。
【0038】
使用
以下の式(I):
【化2】
式(I)
(式中、
- R2は、水素原子又はメチル若しくはエチル基を表し;
- R3は、ヒドロキシル基で任意選択的に置換された直鎖C
1~C
12アルキル基(飽和);又はヒドロキシル基で任意選択的に置換された直鎖C
2~C
12アルケニル基(C=C不飽和)を表す)
の化合物及びまたその有機若しくは無機の酸若しくは塩基の塩又は水和物等のその溶媒和物。
【0039】
好ましくは、化合物は、式(I)に対応し、式中、
- R2は、水素原子及びCH3基から選択され;一層より良好には、R2は、水素原子を表し;及び/又は
- R3は、(i)C1~C10アルキル基;(ii)C2~C10アルケニル基、特に-CH=CH-R4基(ここで、R4は、直鎖C1~C6アルキル基を表す);又はさもなければ(iii)構造-CH2-CH(OH)-R5(ここで、R5は、直鎖C1~C10、好ましくはC4~C10アルキル基を表す)を有するヒドロキシアルキル基を表す。
【0040】
式(I)の化合物の混合物を使用することができる。
【0041】
特に、以下の式(I):
【化3】
の化合物を挙げることができる。
【0042】
式(I)の化合物は、当業者が一般的な知識に基づいて容易に調製することができる。特に、以下の参考文献を挙げることができる:J.Asian Natural Products Research,2006,8(8),683-688;Helv.Chimica Acta,2006,89(3),483-495;Chem.Pharm.Bull.,2006,54(3),377-379;及びBioorg.Med.Chem.Lett.,2004,14(5),1287-1289。Med.Chem.Lett.,2004,14(5),1287-1289。
【0043】
したがって、これらは、公開特許出願国際公開第2011/039445号パンフレットに記載されている方法でエチルバニリンから調製することができる。
【0044】
本発明の好ましい一実施形態では、以下の式:
【化4】
を有する4-(3-エトキシ-4-ヒドロキシフェニル)ブタン-2-オンが使用される。
【0045】
式(I)の化合物は、アニオン性、カチオン性、非イオン性又は両イオン性界面活性剤、スケール除去剤、凝固剤及びこれらの混合物から選択される少なくとも1種の活性剤と組み合わせて使用することができる。
【0046】
好ましい一実施形態において、式(I)の化合物は、有効量の、14.5<δa<30且つ15<δd<22であるようなハンセン溶解度空間に従う溶解度パラメータを有する少なくとも1種の有機溶媒と組み合わせて使用される。
【0047】
有利には、本発明に関連して使用される有機溶媒は、公開特許出願国際公開第2012/130953号パンフレットに記載されているものから選択することができる。
【0048】
ハンセン溶解度空間による溶解度パラメータの合計δは、書籍Eric A.Grulke著“Polymer Handbook”,3rd Edition,Chapter VII,pages 519-559の記事“Solubility parameter values”において、関係式:
【数1】
(式中、
- δdは、分子の影響中に誘起される双極子の生成に由来するロンドン分散力を特徴付け;
- δpは、永久双極子間のDebye相互作用による力を特徴付け;
- δhは、特殊な相互作用による力(水素結合、酸/塩基、供与体/受容体等)を特徴付ける)
で定義されている。ハンセン溶解度の三次元空間における溶解度の定義は、C.M.Hansenによる論文:“The three dimensional solubility parameters”J.Paint Technol.39,105(1967)に記載されている。Hansen:“The three dimensional solubility parameters”J.Paint Technol.39,105(1967)。
【0049】
パラメータδaは、以下の関係式で定義される。
【数2】
【0050】
パラメータδd、δp、δh及びδaは、(J/cm3)1/2単位で表される。
【0051】
好ましくは、有機溶媒の溶解度パラメータは、14.5<δa<28且つ15<δd<20であるようなものである。
【0052】
本発明に従って使用される有機溶媒は、エタノール(δa=20.20;δd=15.10)、1,2-プロピレングリコール(δa=25.00;δd=16.00)、1,3-プロパンジオール(δa=26.32;δd=18.00)、PEG-8(8個のエチレングリコール単位を含むポリエチレングリコール)(δa=14.80;δd=17.90)、プロピレンカーボネート(δa=18.46;δd=20.00)、ジプロピレングリコール(δa=19.48;δd=16.20)、1,2-ヘキシレングリコール(δa=19.20;δd=16.40)、PEG-4(δa=18.60;δd=18.00)から選択することができる。
【0053】
好ましくは、有機溶媒は、エタノール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、PEG-8及びプロピレンカーボネートから選択される。
【0054】
溶媒は、セパシア菌群Bccの細菌を含む、処理される水の総質量に対して0.05質量%~10質量%の範囲、好ましくは0.1質量%~5質量%の範囲、優先的にはセパシア菌群Bccの細菌を含む、処理される水の総質量に対して0.1質量%~2.5質量%の範囲の含有量で使用することができる。
【0055】
式(I)の化合物は、単独で又は混合物として、セパシア菌群Bccの細菌を含む、処理される水の総質量に対して少なくとも0.06質量%、好ましくは少なくとも0.1質量%、一層より良好には少なくとも0.5質量%の比率で使用することができる。
【0056】
好ましい一実施形態において、式(I)の化合物は、単独で又は混合物として、セパシア菌群の細菌を含む、処理される水の総質量に対して少なくとも1質量%の比率で使用することができる。式(I)の化合物は、単独で又は混合物として、セパシア菌群の細菌を含む、処理される水の総質量に対して0.06質量%~10質量%、好ましくは0.06質量%~10質量%、一層より良好には0.06質量%~5質量%の範囲の濃度で使用することができる。好ましい一実施形態において、式(I)の化合物は、単独で又は混合物として、セパシア菌群の細菌を含む、処理される水の総質量に対して0.05質量%~2質量%の範囲、好ましくは0.1質量%~1質量%の範囲の濃度で使用することができる。
【0057】
水をセパシア菌群のそれに対して処理するための方法
好ましくは、処理される水及び水性組成物を式(I)の化合物と接触させる前記ステップは、特に、前記化合物を液体形態で注入することによるか、前記化合物を含むフィルター若しくは濾過カートリッジを通過させることによるか、又は前記化合物を固体形態、特に顆粒形態、薬用ドロップ形態若しくはペレット形態で投与することによって実施することができる。
【0058】
セパシア菌群の細菌によって汚染され得る製造物を処理するための方法
本発明による特定の一実施形態によれば、セパシア菌群の細菌によって汚染され得る製造物を処理、特に防腐するための方法は、上に定義した式(I)の1種又は複数の化合物、好ましくはEZを、前記製造物を製造する段階中に組み込むステップを含む。
【0059】
この組み込みは、調合槽に予め式(I)の1種又は複数の化合物、好ましくはEZを好ましくは80℃以下の温度、より良好には周囲温度(25℃)及び特に大気圧において導入し、その後、前記槽に、防腐される製造物又は前記製造物を製造するために必要な成分を導入することによって実施することができる。一変形形態によれば、製造物の製造に必要な各成分を式(I)の1種又は複数の化合物、特にEZで予め処理しておくか、又はさもなければ各成分を式(I)の1種又は複数の化合物、特にEZとの混合物として導入する。こうすることにより、製造物は、防腐され、且つ式(I)の1種又は複数の化合物、特にEZの存在下で使用者に提供される。
【0060】
本発明による他の特定の実施形態によれば、セパシア菌群の細菌によって汚染され得る製造物を防腐するための方法は、上に定義した式(I)の1種又は複数の化合物、好ましくはEZを、前記製造物を製造する段階後に組み込むするステップを含む。この製造物は、製造されると、式(I)の1種又は複数の化合物、特にEZと好ましくは80℃以下の温度、より良好には周囲温度(25℃)及び特に大気圧において接触され、その後、製造物は、防腐され、且つ式(I)の1種又は複数の化合物、特にEZの存在下で使用者に提供される。
【0061】
本発明による更なる他の実施形態によれば、セパシア菌群の細菌によって汚染され得る製造物を防腐するための方法は、上に定義した式(I)の1種又は複数の化合物、好ましくはEZを、前記製造物を製造する段階後に組み込むステップを含む。この製造物は、製造されると、不活性雰囲気中に保存され、その後、使用者が開封すると、式(I)の1種又は複数の化合物、特にEZと好ましくは周囲温度(25℃)及び大気圧において接触され、その後、製造物は、式(I)の1種又は複数の化合物、特にEZの存在下で防腐される。
【0062】
好ましくは、製造物は、組成物であり、特に生理学的に許容される媒体を含み、より詳細には化粧用又は医薬用組成物である。
【0063】
本発明の他の実施形態によれば、この防腐方法の製造物は、化粧品ではない。
【0064】
「...~...」という表現及び「...~...の範囲」、「少なくとも...」又は「最大で」という表現は、特に明記されない限り、境界値を含むと理解すべきである。
【0065】
以下の実施例及び図は、本発明の分野を限定しない例示として提供される。
【実施例】
【0066】
感受性試験
本発明の式(I)の化合物、特にEZの最小阻害濃度(MIC)及び最小致死濃度(MBC)を、Rushton et al.Key role for efflux in the preservative susceptibility and adaptive resistance of Burkholderia cepacia complex bacteria.Antimicrobial Agents and Chemotherapy,2013.57(7):p.2972-2980 Key role for efflux in the preservative susceptibility and adaptive resistance of Burkholderia cepacia complex bacteria.Antimicrobial Agents and Chemotherapy,2013.に記載されている標準化された寒天希釈試験及びブロス希釈試験により、TSA/TSBを用いて決定した。産業製造物の製造及び保存を代表するように、培養を30℃で行った。DMSO(Sigma-Aldrich、United Kingdom)中で防腐剤原液(50%w/v)を調製し、試験濃度となる量で培地に添加した。細菌が存在するDMSOの最終濃度が無毒であることを確認し(4%v/v以下)、増殖への影響を排除するため、対照条件として試験に含めた。MICを、培養液OD(630nm)が80%低下するか又は寒天培地上で被験生物の増殖が目視で確認できなくなる防腐剤の最小濃度と定める。MBCを、死滅率が99%となり、且つ回復培地(TSA)上で増殖が停止する最小濃度として求めた。回復及び被験菌の生菌数の計数を行う前に、防腐剤を、Rushtonらによる科学論文(Rushtonらの同文献)に記載されている通りに、レシチン3%を含むTween 80を1.5%v/v含む中和液で希釈することにより不活性化した。(Rushton et al,ibid).実験を行う前に、中和液の有効性及び毒性を、J.C.Learらによる科学論文(J.C.,et al.,Chloroxylenol- and triclosan-tolerant bacteria from industrial sources - Susceptibility to antibiotics and other biocides.International Biodeterioration and Biodegradation,2006.57(1):p.51-56)International Biodeterioration and Biodegradation,2006.に記載されている通りに評価した。
【0067】
実施例1:式(I)の化合物のセパシア菌群に対する阻害活性の評価
細菌株及び培養条件
式(I)の化合物、特にEZに対する感受性のプロファイリングに使用する59種のバークホルデリア(Burkholderia)属のパネルを作成した。このコレクションは、セパシア菌群(Bcc)の現時点における20の菌種群、Bcc実験菌株のパネルの参照株(Mahenthiralingam,E.,et al.,Diagnostically and experimentally useful panel of strains from the Burkholderia cepacia complex.Journal of Clinical Microbiology,2000.38(2):p.910-913)Journal of Clinical Microbiology,2000.及びRushtonらによって防腐剤の感受性に関して既にプロファイリングされた39種の菌株(Rushton,L.,et al.,Key role for efflux in the preservative susceptibility and adaptive resistance of Burkholderia cepacia complex.bacteria.Antimicrobial Agents and Chemotherapy,2013.57(7):p.2972-2980)からなるものとした。Antimicrobial Agents and Chemotherapy,2013.57(7):p.2972-2980).バークホルデリア(Burkholderia)属菌株のパネルは、臨床(n=28)、環境(n=23)及び産業(n=8)由来の菌株から分離したものである。菌株をトリプトンソイ(TSB/TSA)(Oxoid Ltd、United Kingdom)上で30℃において1回培養した。菌株を、ジメチルスルホキシド(DMSO)(Sigma-Aldrich、UK)8%v/vを含むTSB中、-80℃で保存した。
【0068】
【0069】
【0070】
【0071】
BCCM/LMG:Belgian co-ordinated collections of micro-organisms,Ghent
ATCC:American type culture collection BCC
CLIN:臨床;ENV:環境;ENVI:産業環境
T:基準株
ESP:実験用セパシア菌群菌株の実験用パネル
【0072】
式(I)の化合物、特にEZは、セパシア菌群Bccの細菌に対する有効性が非常に高い。本発明の化合物、特にEZは、汚染物質としてよく遭遇する代表的な菌種であるバークホルデリア(Burkholderia)属に属する57の菌株の多様なパネルに対して優れた有効性を示した。
【0073】
【0074】
図1では、
- 中央の線は、中央値を示し;「箱」の境界は、フリー統計ソフトRで求められた25%目及び75%目を示し;ひげ(即ち箱ひげ図形式でデータを表す方法であり、上のグラフの第1四分位数から第3四分位数までの範囲の長方形が紫色の中央値で区切られている)は、25%目及び75%目の四分位範囲の1.5倍の範囲にわたり;
- データ点は、白抜き丸で表し;
- 異常値は、点で表し;
- 十字は、平均値の例を表し;
- 箱の幅は、サンプルのサイズの平方根に比例する。
【0075】
本発明の式(I)の化合物、特にEZは、セパシア菌群の細菌に対して高い活性を示す防腐剤として作用し、特に生存率を数時間後に数log(4時間後に6log)低下させるようである。
【0076】
これらの実験結果の全ては、式(I)の化合物、特にEZがセパシア菌群の細菌に対して非常に高い阻害活性を有することを示している。
【国際調査報告】