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特表2023-503652腫瘍微小環境における免疫抑制に打ち勝つための操作されたT細胞及び腫瘍浸潤リンパ球
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-31
(54)【発明の名称】腫瘍微小環境における免疫抑制に打ち勝つための操作されたT細胞及び腫瘍浸潤リンパ球
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/17 20150101AFI20230124BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230124BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20230124BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230124BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230124BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230124BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20230124BHJP
   A61K 31/713 20060101ALI20230124BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230124BHJP
   A61K 38/02 20060101ALI20230124BHJP
   C12N 5/0781 20100101ALN20230124BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALN20230124BHJP
【FI】
A61K35/17 Z
C12N5/10 ZNA
C12N15/09 110
C12N15/09 Z
A61P35/00
A61K45/00
A61P43/00 121
A61K31/7088
A61K31/713
A61K48/00
A61K38/02
C12N5/0781
C12N5/0783
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022531474
(86)(22)【出願日】2020-11-25
(85)【翻訳文提出日】2022-07-21
(86)【国際出願番号】 US2020062311
(87)【国際公開番号】W WO2021108619
(87)【国際公開日】2021-06-03
(31)【優先権主張番号】62/941,670
(32)【優先日】2019-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500039463
【氏名又は名称】ボード オブ リージェンツ,ザ ユニバーシティ オブ テキサス システム
【氏名又は名称原語表記】BOARD OF REGENTS,THE UNIVERSITY OF TEXAS SYSTEM
【住所又は居所原語表記】210 West 7th Street Austin,Texas 78701 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フィックス、サマンサ マリー
(72)【発明者】
【氏名】レズヴァニ、ケイティ
(72)【発明者】
【氏名】フー、パトリック
(72)【発明者】
【氏名】プント、シモーネ
(72)【発明者】
【氏名】マンリケ、ソラーヤ ゾロ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA94X
4B065AB01
4B065AC20
4B065BA03
4B065CA44
4B065CA46
4C084AA02
4C084AA13
4C084AA19
4C084BA44
4C084NA14
4C084ZB26
4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB26
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB43
4C087BB65
4C087NA14
4C087ZB26
4C087ZC75
(57)【要約】
本開示の実施形態は、癌の処置を促進する方法及び組成物を提供する。なぜならそれらの実施形態が少なくとも、腫瘍微小環境を逃れる治療に関するからである。具体的な実施形態では、腫瘍浸潤リンパ球及び/又は操作されたT細胞が、トランスフォーミング成長因子-β受容体2並びに/又はI細胞-Ig及びITIMドメイン並びに/又はCD7遺伝子の発現が低下する又は無くなるように操作されるので、腫瘍微小環境による免疫抑制から守られているそれらの細胞を使用する治療に組成物が用いられる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)操作された腫瘍浸潤リンパ球(TIL)であって、前記TILが、
(1)トランスフォーミング成長因子-β受容体2(transforming growth factor-beta receptor 2;TGFBR2)の発現及び/又は活性の破壊;
(2)T細胞-Ig及びITIMドメイン(T-cell-Ig-and-ITIM-domain;TIGIT)の発現及び/又は活性の破壊;
(3)CD7の発現及び/又は活性の破壊であって、これらのすべてが前記TILに対して内在性であり;
(4)プログラム細胞死タンパク質1(programmed cell death protein 1;PD-1)の発現の破壊;及び
(5)T細胞免疫グロブリン及びムチンドメイン含有-3(T-cell immunoglobulin and mucin-domain containing-3;TIM-3)の発現の破壊
のうちの1つ以上を含む、操作された腫瘍浸潤リンパ球(TIL);並びに/又は
(b)操作されたT細胞であって、前記T細胞は、
(1)前記TILに対して内在性のトランスフォーミング成長因子-β受容体2(TGFBR2)の発現及び/又は活性の破壊;
(2)T細胞-Ig及びITIMドメイン(TIGIT)の発現及び/又は活性の破壊;
(3)CD7の発現及び/又は活性の破壊;
(4)PD-1の発現の破壊;及び
(5)TIM-3の発現の破壊
のうちの1つ以上を含み、これらのすべてが前記T細胞に対して内在性である、操作されたT細胞
を含む、組成物。
【請求項2】
前記TILが、拡大されたTILであり、かつ/又は前記T細胞が、拡大されたT細胞である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
TGFBR2、TIGIT、CD7、PD-1及びTIM-3のうちの1つ以上の発現及び/又は活性の前記破壊が、核酸、ペプチド、タンパク質、小分子又はそれらの組み合わせを含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記核酸が、それぞれTGFBR2、TIGIT、CD7、PD-1及びTIM-3に対応する、siRNA、shRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド又はCRISPR用のガイドRNAを含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記TILが、TGFBR2の発現の破壊を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記TILが、TIGITの発現の破壊を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記TILが、CD7の発現の破壊を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記TILが、PD-1の発現の破壊を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記TILが、TIM-3の発現の破壊を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記T細胞が、TGFBR2の発現の破壊を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
前記T細胞が、TIGITの発現の破壊を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
前記T細胞が、CD7の発現の破壊を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
前記T細胞が、PD-1の発現の破壊を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
前記T細胞が、TIM-3の発現の破壊を含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
前記TIL又はT細胞が、1つ以上の癌抗原を標的化する1つ以上の異種抗原受容体を含む、請求項1、2、3、4、10、11、12、13又は14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
前記異種抗原受容体が、T細胞受容体、キメラ抗原受容体、ケモカイン受容体、キメラサイトカイン受容体又はそれらの混合物である、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか1項に記載の組成物の細胞の集団。
【請求項18】
請求項17に記載の集団を含む組成物。
【請求項19】
前記集団が、医薬的に許容される担体中に存在する、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
請求項1~16のいずれか1項に記載の細胞を調製する方法であって、前記TIL及び/又はT細胞に、それぞれ
(a)Cas9又はCas9をコードする核酸;並びに
(b)、(c)、(d)、(e)及び(f)のうちの1つ以上:
(b)CRISPR用の1つ以上のTGFBR2ガイドRNA;
(c)CRISPR用の1つ以上のTIGITガイドRNA;又は
(d)CRISPR用の1つ以上のCD7ガイドRNA;
(e)CRISPR用の1つ以上のPD-1ガイドRNA;及び
(f)CRISPR用の1つ以上のTIM-3ガイドRNA
をエレクトロポレートする工程を含む、方法。
【請求項21】
2つ以上のエレクトロポレーション工程であって、
第1のエレクトロポレーション工程は、前記TIL及び/又は操作されたT細胞をTGFBR2ガイドRNA、TIGITガイドRNA、CD7ガイドRNA、PD-1ガイドRNA及びTIM-3ガイドRNAのうちの1つ以上に供し、
第2のエレクトロポレーション工程は、前記TIL及び/又は操作されたT細胞を、前記第1のエレクトロポレーション工程において使用されなかったTGFBR2、TIGIT、CD7、PD-1及びTIM-3のうちの1つ以上に対するガイドRNAに供する、2つ以上のエレクトロポレーション工程、
を含むとさらに定義される、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記TIL及び/又はT細胞を拡大する少なくとも1つの工程をさらに含む、請求項20~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
エレクトロポレーション工程の前に、前記TIL及び/又はT細胞に対する拡大工程が存在する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
エレクトロポレーション工程の後に、前記TIL及び/又はT細胞に対する拡大工程が存在する、請求項22又は23に記載の方法。
【請求項25】
1つ以上の異種抗原受容体を発現するように前記T細胞又はTILを改変する工程をさらに含む、請求項20~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記異種抗原受容体が、T細胞受容体、キメラ抗原受容体、ケモカイン受容体、キメラサイトカイン受容体又はそれらの混合物である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記異種抗原受容体が、個体の癌細胞上の癌抗原を標的化するようにカスタマイズされている、請求項25又は26に記載の方法。
【請求項28】
個体における癌細胞を殺傷する方法であって、請求項1~16のいずれか1項に記載の組成物の治療上有効な量を前記個体に送達する工程を含む、方法。
【請求項29】
前記癌が、血液癌であるか、又は固形腫瘍を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記TIL及び/又はT細胞が、前記個体に対して同種異系のものである、請求項28~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記TIL及び/又はT細胞が、前記個体に対して自己のものである、請求項28~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
(a)前記個体から癌細胞を得ること;
(b)前記癌細胞からTILを拡大して、拡大されたTILを作製すること;
(c)前記拡大されたTILを、(1)前記TILに対して内在性のTGFBR2の発現又は活性が破壊されるように;及び/又は(2)前記TILに対して内在性のTIGITの発現又は活性が破壊されるように;及び/又は(3)前記TILに対して内在性のCD7の発現又は活性が破壊されるように;及び/又は(4)前記TILに対して内在性のPD-1の発現又は活性が破壊されるように;及び/又は(5)前記TILに対して内在性のTIM-3の発現又は活性が破壊されるように操作すること;並びに
(d)有効量の前記操作された細胞を前記個体に投与すること
とさらに定義される、請求項28、29又は31のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記個体にさらなる癌療法が施される、請求項28~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記さらなる癌療法が、手術、放射線照射、化学療法、ホルモン療法、免疫療法又はそれらの組み合わせを含む、請求項33に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2019年11月27日出願の米国仮特許出願第62/941,670号に対する優先権を主張する。この仮出願は、その全体が参照により本明細書中に援用される。
【0002】
[配列表]
本願は、ASCII形式で電子的に提出された配列表を含み、その全体が参照により本明細書に援用される。2020年11月12日作成の前記ASCIIのコピーは、名称がUTSC_P1200WO_SL.txtであり、サイズが3,664バイトである。
【0003】
本開示の実施形態は、少なくとも細胞生物学、分子生物学、免疫学及び医学の分野に関する。
【背景技術】
【0004】
細胞免疫療法は、癌の処置として大いに期待されている。しかしながら、ある特定の細胞療法は、癌細胞又は腫瘍微小環境における細胞からの阻害性シグナルのせいで成功が限られている。例えば、その微小環境における細胞(例えば、制御性T細胞又は骨髄由来サプレッサー細胞)の誘導により、免疫応答を抑制し、腫瘍細胞の増殖及び生存を促進する、トランスフォーミング成長因子-β(TGFβ)及びアデノシンなどの物質が放出される。このように、改善された細胞免疫療法の方法について満たされていないニーズがある。
【発明の概要】
【0005】
本開示の実施形態は、養子細胞療法による癌の処置のための方法及び組成物を包含する。本開示は特に、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)及び操作されたT細胞が、開示される方法及び組成物がそれぞれ存在しない場合よりも癌の処置に有効であるようにする方法及び組成物を提供する。具体的な実施形態において、本開示は、操作されたTIL及び/又は操作されたT細胞が、開示される方法及び組成物の非存在下においてTIL及び/又は操作されたT細胞を使用した場合よりも腫瘍微小環境において有効であるようにする方法及び組成物を提供する。特定の実施形態において、それらのTIL及び/又は操作されたT細胞は、レシピエント個体に対して自己であるが、いくつかの場合において、それらのTIL及び/又は操作されたT細胞は、レシピエント個体に対して同種異系である。
【0006】
本開示は、特に、操作されたTIL及び/又は操作されたT細胞の使用に関して、癌免疫療法を改善するアプローチを提供する。特定の実施形態において、TIL若しくはT細胞において1つ以上の特定の遺伝子をノックアウトすること、又はTIL及び/若しくはT細胞において1つ以上の特定の遺伝子をノックダウンすることにより、腫瘍微小環境における免疫抑制を克服する。具体的な実施形態において、ノックアウトされる遺伝子は、操作されたTIL又は操作されたT細胞が腫瘍微小環境における又は腫瘍微小環境からの1つ以上の阻害性シグナルを回避できるようにするので、腫瘍微小環境における免疫抑制を促進する遺伝子である。具体的な実施形態において、操作されたTIL及び/又は操作されたT細胞は、トランスフォーミング成長因子-β受容体2(TGFBR2)並びに/又はT細胞-Ig及びITIMドメイン(TIGIT)内在性遺伝子並びに/又はCD7並びに/又はプログラム細胞死タンパク質1(PD-1)並びに/又はT細胞免疫グロブリン及びムチンドメイン含有-3(TIM-3)の発現が低下しているか又は無くなっている。操作されたTIL及び/又は操作されたT細胞は、それらの細胞における内在性遺伝子を編集する任意の好適な手段を用いて操作され得るが、具体的な実施形態では、CRISPRが使用される。
【0007】
本開示の特定の態様において、自己のTIL及び/又はT細胞が、腫瘍を有する個体に使用されるが、代替の実施形態では、その個体は、血液悪性腫瘍を有する。ある特定の実施形態において、TIL及び/又はT細胞は、癌療法を必要とする個体から得られ、例えば、個体自身の癌(腫瘍)から得られる。いくつかの場合においては、その個体は、癌を有することが既知の場合があり、TILを得るために癌から採取される細胞を有する。他の場合では、個体は、癌を有することが既知でない場合があり、TILは、癌の診断の際に癌から得られる(例えば、生検によって)。いずれにしても、TILは、個体の癌から採取され、好適な数の拡大されたTILまで拡大され、TGFBR2及び/又はTIGIT及び/又はCD7及び/又はPD-1及び/又はTIM-3がノックアウト又はノックダウンされるように操作され、最初にTILを得た個体に戻されることがある。
【0008】
本開示の実施形態は、(a)操作された腫瘍浸潤リンパ球(TIL)であって、前記TILは、(1)トランスフォーミング成長因子-β受容体2(TGFBR2)の発現及び/又は活性の破壊;(2)T細胞-Ig及びITIMドメイン(TIGIT)の発現及び/又は活性の破壊;(3)CD7の発現及び/又は活性の破壊;(4)PD-1の発現の破壊;及び(5)TIM-3の発現の破壊のうちの1つ以上を含み、これらのすべてが前記TILに対して内在性である、操作された腫瘍浸潤リンパ球;及び/又は
【0009】
(b)操作されたT細胞であって、前記T細胞は、(1)上記TILに対して内在性のトランスフォーミング成長因子-β受容体2(TGFBR2)の発現及び/又は活性の破壊;(2)T細胞-Ig及びITIMドメイン(TIGIT)の発現及び/又は活性の破壊;及び(3)CD7の発現及び/又は活性の破壊;(4)PD-1の発現の破壊;及び(5)TIM-3の発現の破壊のうちの1つ以上を含み、これらのすべてがそれらのT細胞に対して内在性である、操作されたT細胞
を含む組成物を含む。
【0010】
具体的な実施形態において、上記TILは、拡大されたTILである。TGFBR2、TIGIT、CD7、PD-1及びTIM-3のうちの1つ以上の発現及び/又は活性の破壊は、核酸、ペプチド、タンパク質、小分子又はそれらの組み合わせを含み得る。その核酸は、それぞれTGFBR2、TIGIT、CD7、PD-1又はTIM-3に対応する、siRNA、shRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド又はCRISPR用のガイドRNAを含み得る。具体的な場合において、上記TIL及び/又はT細胞は、TGFBR2、TIGIT、CD7、PD-1及び/又はTIM-3の発現の破壊を含む。それらのT細胞は、1つ以上の癌抗原を標的化する異種抗原受容体(例えば、T細胞受容体、キメラ抗原受容体、ケモカイン受容体、キメラサイトカイン受容体又はそれらの混合物)を含み得る。
【0011】
いくつかの実施形態において、本開示の組成物の細胞の集団が存在し、例えば、その集団は、医薬的に許容され得る担体中に存在する。
【0012】
1つの実施形態において、本明細書中に包含される細胞を調製する方法が存在し、その方法は、TIL及び/又はT細胞に、それぞれ:(a)Cas9又はCas9をコードする核酸;並びに
(b)、(c)、(d)のうちの1つ以上:(b)CRISPR用のTGFBR2ガイドRNA;(c)CRISPR用のTIGITガイドRNA、(d)CRISPR用のCD7ガイドRNA、(e)CRISPR用のPD-1ガイドRNA、又は(f)CRISPR用のTIM-3ガイドRNAをエレクトロポレートする工程を含む。具体的な実施形態において、その方法は、2つ以上のエレクトロポレーション工程を含むとさらに定義され、第1のエレクトロポレーション工程は、上記TIL及び/又はT細胞をTGFBR2ガイドRNA、TIGITガイドRNA、CD7ガイドRNA、PD-1ガイドRNA又はTIM-3ガイドRNAのうちの1つ以上に供し、第2のエレクトロポレーション工程は、上記TIL及び/又はT細胞を、第1のエレクトロポレーション工程において使用されなかったTGFBR2、TIGIT、CD7、PD-1又はTIM-3のうちの1つ以上に対するガイドRNAに供する。第3の遺伝子を標的化するために第3のエレクトロポレーション工程を用いる一例において、その第3のエレクトロポレーション工程は、上記TIL及び/又はT細胞を、第1及び第2のエレクトロポレーション工程において使用されたガイドRNA以外のガイドRNAに供するなどする(所望の場合、第4及び第5のエレクトロポレーション工程を含む)。その方法は、TIL及び/又はT細胞を拡大する少なくとも1つの工程をさらに含み得る。具体的な場合において、エレクトロポレーション工程の前にTIL及び/又はT細胞に対する拡大工程が存在し、かつ/又はエレクトロポレーション工程の後にTIL及び/又はT細胞に対する拡大工程が存在する。
【0013】
1つの実施形態において、個体における癌細胞を殺傷する方法が存在し、その方法は、その個体に治療上有効な量の本開示の組成物を送達する工程を含む。その癌は、血液癌であり得るか、又は固形腫瘍を含む。具体的な実施形態において、上記TIL及び/又はT細胞は、個体に対して同種異系又は自己のものである。その方法は、(a)個体から癌細胞を得ること;(b)癌細胞からTILを拡大して、拡大されたTILを作製すること;(c)拡大されたTILを、(1)TILに対して内在性のTGFBR2の発現又は活性が破壊されるように;及び/又は(2)操作された細胞を作製するためにTIGITの発現又は活性が破壊されるように;及び/又は(3)CD7の発現又は活性が破壊されるように;及び/又は(4)PD-1の発現が破壊されるように;及び/又は(5)TIM-3の発現が破壊されるように操作すること、及び(d)有効量の操作された細胞を個体に投与すること、とさらに定義され得る。その方法は、(a)個体から癌細胞を得ること;(b)T細胞を拡大して、拡大されたT細胞を作製すること;(c)拡大されたT細胞を、(1)TILに対して内在性のTGFBR2の発現又は活性が破壊されるように;及び/又は(2)操作された細胞を作製するためにTIGITの発現又は活性が破壊されるように;及び/又は(3)CD7の発現又は活性が破壊されるように;及び/又は(4)PD-1の発現が破壊されるように;及び/又は(5)TIM-3の発現が破壊されるように操作すること、及び(d)有効量の操作された細胞を個体に投与すること、とさらに定義され得る。
【0014】
いくつかの場合において、上記個体にさらなる癌療法(例えば、手術、放射線照射、化学療法、ホルモン療法、免疫療法又はそれらの組み合わせ)が送達される。
【0015】
上記では、本開示の特徴及び技術的利点が、下記の詳細な説明がよりよく理解され得るためにかなり広く概説されている。本明細書中における請求項の主題を形成するさらなる特徴及び利点が本明細書中下記において記載されるであろう。開示される概念及び具体的な実施形態は、本件設計の同じ目的を実施するために他の構成を変更するための、又は設計するための基礎として容易に利用され得ることが、当業者によって理解されなければならない。そのような同等な組立ては、添付された請求項において示されるような精神及び範囲から逸脱しないこともまた、当業者によって認識されなければならない。さらなる目的及び利点と一緒にではあるが、構成及び操作方法の両方に関して、本明細書中に開示される設計に特徴的であると考えられる新規な特徴が、添付されている図面に関連して検討されたとき、下記の説明からよりよく理解されるであろう。しかしながら、図面のそれぞれが例示及び説明のためだけに提供されており、本開示の限界の定義として意図されないことが、明確に理解されなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本開示のより完全な理解のために、次に、添付されている図面と併せて理解される下記の説明が参照される。
【0017】
図1】エレクトロポレーションベースのトランスフェクションを用いて遺伝子編集するための、T細胞へのCas9リボ核タンパク質(RNP)複合体の効率的な送達。この図は、エレクトロポレーションの後、ほぼすべての細胞がCas9 RNP複合体が陽性であることを示している。
【0018】
図2】Cas9 RNP複合体のエレクトロポレーションベースの送達の5日後のマウスT細胞におけるモデル遺伝子(Selplg)のノックアウト。
【0019】
図3】Cas9 RNP複合体のエレクトロポレーションベースの送達を用いたマウスT細胞におけるTIGITのノックアウト。ここに提供されたデータは、RT-PCRによって評価されたRNAレベルでのTIGITノックアウトを示している。
【0020】
図4】エキソビボで拡大された患者由来TILにおけるトランスフェクション効率。TIGIT特異的RNP複合体をエレクトロポレーションによって移入することにより、76.5%(パーセント陽性細胞)という細胞送達効率がもたらされた。
【0021】
図5】予め拡大しておいたTILに、TIGITを標的化するCas9 RNP複合体をトランスフェクトすることにより、かなりのノックアウトがもたらされる。対照の場合(トランスフェクトしなかった場合)及び実施例の場合(TIGIT特異的RNPをトランスフェクトした場合)におけるTIGIT陽性の生存している全TILのパーセンテージが提供されている。
【0022】
図6A-B】プールされたshRNAのインビボにおけるスクリーニングによる、腫瘍へのT細胞浸潤を制御する遺伝子の同定。図6A:実験計画の模式図。活性化されたpmel T細胞に、その細胞表面上で発現されるタンパク質をコードする300個の遺伝子を標的化するプールされたshRNAライブラリーを形質導入し、細胞を、放射線照射済みのB16担癌マウスに養子移入(ACT)した。ACTの7日後、B16腫瘍及び脾臓のペアサンプルからpmel T細胞を単離し、DNAの単離及び配列決定を行った。図6B:密度プロット。密度プロットにおける矢印は、脾臓T細胞及び参照(ACT前に取得したサンプル)と比べたときの、TIL集団における濃縮ヘアピンを示している。1群あたり2~3つのサンプルについて解析を行った。代表的な表面T細胞スクリーニングが示されている。
【0023】
図7】shRNAバーコードに基づくCd7ノックダウンによる、脾臓と比較したときの腫瘍におけるT細胞浸潤の増強。脾臓サンプルと腫瘍サンプル(それぞれn=6)の両方におけるCd7を標的化する10個の異なる各shRNA構築物に対するshRNAバーコードリードの数が示されている。構築物の大部分が、脾臓サンプルと比べて、腫瘍サンプルにおいて濃縮を示す。
【0024】
図8】個々の遺伝子ノックダウンに基づく腫瘍対脾臓におけるCd7ノックダウンPmelの濃縮。Pmel T細胞に、Cd7 shRNA含有レンチウイルスベクター又は非標的化対照(NTC)ベクターを別々に形質導入し、ベクターによって発現されたGFPについてFACSで選別し、拡大した後、担癌マウスへのACTを行った。全腫瘍浸潤免疫リンパ球(TIL)をACTの12日後に腫瘍から単離し、計数した。Cd7ノックダウンPmelが、形質導入されなかったPmel T細胞又はNTC構築物を形質導入されたPmel T細胞と比べて多数見出されたことから、shRNAスクリーニングにおいて見出された効果が確認された。
【0025】
図9】種々のエレクトロポレーションパルスパラメータ(EH100、EN138、EH115及びEO115と表される)及び2つの異なる量のCas9投入量(5μg及び10μg)を使用し、モデル標的としてT細胞受容体α鎖遺伝子(TRAC)を用いたときの、患者由来TILにおけるCRISPR遺伝子ノックアウトの最適化。
【0026】
図10】患者由来TILにおけるTIGITのCRISPR遺伝子ノックアウトの最適化。様々なガイドRNA配列(TIGIT AA、AB、AC、AD及びAEと表される)を用いるTIGITノックアウトに供されたTILは、TIGITの表面発現の低下を示す。
【0027】
図11】患者由来TILにおけるTGFBR2のCRISPR遺伝子ノックアウトの最適化。TGFBR2を標的化するガイドRNA(TGFBR2 AA、AB、AC及びADによって表される種々のガイドRNA配列)を用いて、TILを遺伝的に改変した。
【0028】
図12】TGFBR2のCRISPR遺伝子ノックアウトを受けたTILは、外来性のTGF-β刺激の作用に対して抵抗性である。TGFBR2を標的化するガイドRNA(TGFBR2 AA、AB、AC及びADによって表される種々のガイドRNA配列)を用いて、TILを遺伝的に改変した。 表1.ヒトT細胞においてTIGIT及びTGFBR2を標的化するために使用されたガイドRNA配列。
【0029】
図13】TGFBR2のCRISPR遺伝子ノックアウトを受けたTILは、外来性のTGF-β刺激の作用に対して抵抗性である。未改変のTIL及び改変されたTILを、TGF-βの存在下において3日間培養した。データは、TGF-βで処置された(10ng/ml)TILからビヒクルで処置されたTILまでのサイトカイン濃度の倍率変化(比)として表されている。2人の無関係なドナーから単離されたTILからのデータが表されている。
【0030】
図14A-C】RNPトランスフェクションが、活性化されたマウスCD8+T細胞において高度に効率的なCas9/CRISPR媒介性PD-1ノックアウトを誘導する。トランスフェクションの6日後に、フローサイトメトリーによってPD-1タンパク質発現を評価した;FMOに基づいて判定された陽性発現(図14A)。(図14B)抗CD3及びインターロイキン(IL)-2によるインビトロでの活性化が、CD8 T細胞におけるPD-1の細胞表面発現をアップレギュレートする(非標的化対照RNPをトランスフェクトされた対照細胞、NTC条件)。(図14C)PD-1を標的化するCas9/gRNA RNPでトランスフェクトされたT細胞、つまりPD-1 KO条件は、PD-1発現の減少を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本明細書で使用される場合、「a」又は「an」は、1つ又はそれ以上を意味することがある。本明細書において請求項で使用されているように、単語「comprising」とともに使用される場合、単語「a」又は「an」は、1つ又はそれ以上を意味することがある。本明細書で使用される場合、「別の」は、少なくとも2つ目以上を意味する場合がある。さらに、用語「有する」、「含む」、「含む」、及び「からなる」は交換可能であり、当業者は、これらの用語がオープンエンドな用語であることを認識している。特定の実施形態において、本開示の態様は、例えば、本開示の1つ以上の配列から「本質的になる」又は「構成される」場合がある。本発明のいくつかの実施形態は、本開示の1つ以上の要素、方法ステップ、及び/又は方法から構成されるか、又は本質的に構成されてもよい。本明細書に記載される任意の方法又は組成物は、本明細書に記載される任意の他の方法又は組成物に関して実施され得ることが企図される。本願の範囲は、本明細書に記載されたプロセス、機械、製造、物質組成、手段、方法及びステップの特定の実施形態に限定されることを意図していない。本明細書で使用される場合、「又は」及び「及び/又は」という用語は、複数の成分を組み合わせて、又は互いに排他的に記述するために利用される。例えば、「x、y、及び/又はz」は、「x」単独、「y」単独、「z」単独、「x、y、及びz」、「(x及びy)又はz」、「x又は(y及びz)」、又は「x又はy又はz」を指すことができる。x、y、又はzが、実施形態から具体的に除外されてもよいことは、特に企図される。
【0032】
本明細書を通じて、「一実施形態」、「ある実施形態」、「特定の実施形態」、「関連する実施形態」、「ある実施形態」、「追加の実施形態」、又は「さらなる実施形態」又はそれらの組み合わせへの言及は、実施形態と関連して説明される特定の特徴、構造又は特性が本開示の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味している。したがって、本明細書中の様々な場所における前述の語句の出現は、必ずしも全てが同じ実施形態に言及しているわけではない。さらに、特定の特徴、構造、又は特性は、1つ以上の実施形態において、任意の適切な方法で組み合わされてもよい。
【0033】
本明細書中で使用される句「治療上有効な量」は、任意の医学的処置に適用可能な妥当なベネフィット/リスク比において、いくらかの所望の治療効果をもたらすのに有効な、例えば、対象の癌を処置する(すなわち、予防する及び/又は回復させる)のに有効な、又は他の分子とのTGF-βの相互作用を直接又は間接的に阻害するのに有効な、化合物、材料、又は本開示の化合物を含む組成物の量を意味する。一実施形態において、治療上有効な量は、少なくとも1つの症状を低減する又は排除するのに十分である。当業者は、ある量が、癌が完全に根絶されず、部分的にしか改善されなかったとしても治療的に有効であるとみなされ得ることを認識している。例えば、癌の広がりが停止するか、又は低減するか、又は発生が遅延することがあり、癌による副作用が部分的に低減するか、又は完全に排除されるか、又は発生が遅延することがあり、対象の寿命が延びることがあり、対象の疼痛が少なくなることがあり、対象の生活の質が、改善されることがあるなどであってもよい。
【0034】
語句「医薬的に許容され得る」は、適正な医学的判断の範囲内であって、過剰な毒性、刺激作用、アレルギー反応、又は他の問題若しくは合併症なしに、人間及び動物の組織との接触において使用するのに適しており、妥当なベネフィット/リスク比に見合う、化合物、材料、組成物及び/又は剤形のことを指すために本明細書中で使用される。
【0035】
本明細書中で使用されるとき、「哺乳動物」は、本発明の方法にとって適切な対象である。哺乳動物は、ヒトを含む、高等脊椎動物の哺乳綱(Mammalia)の任意のメンバーであり得、生児出生、体毛、及び子を養うための乳を分泌する雌性体の乳腺を特徴とし得る。さらに、哺乳動物は、気候条件の変動にもかかわらず体温を一定に維持する能力を特徴とする。哺乳動物の例は、ヒト、ネコ、イヌ、ウシ、マウス、ラット、ウマ、ヤギ、ヒツジ及びチンパンジーである。哺乳動物は、「患者」又は「対象」又は「個体」と称されることがある。
【0036】
本明細書で使用する場合、遺伝子の「破壊」は、破壊がない場合の遺伝子産物の発現レベルと比較して、細胞内の対象遺伝子によってコードされる1つ以上の遺伝子産物の発現の除去又は減少を指す。例示的な遺伝子産物には、遺伝子によってコードされるmRNA及びタンパク質産物が含まれる。ある場合の破壊は、一過性又は可逆性であり、他の場合は永続的である。いくつかの場合における破壊は、切断された又は非機能的な産物が生成され得るという事実にもかかわらず、機能的又は全長のタンパク質又はmRNAのものである。本明細書のいくつかの実施形態では、発現とは対照的に、遺伝子活性又は機能が破壊される。遺伝子破壊は、一般に、人工的な方法、すなわち、化合物、分子、複合体、又は組成物の添加又は導入によって、及び/又はDNAレベルなど、遺伝子の又は遺伝子に関連する核酸の破壊によって、誘導される。遺伝子破壊のための例示的な方法には、遺伝子サイレンシング、ノックダウン、ノックアウト、及び/又は遺伝子編集などの遺伝子破壊技術が含まれる。例としては、一般に一過性の発現低下をもたらすRNAi、siRNA、shRNA、及び/又はリボザイムなどのアンチセンス技術、並びに、例えば、切断及び/又は相同組換えの誘導によって、標的遺伝子の不活性化又は破壊をもたらす遺伝子編集技術などが挙げられる。例としては、挿入、変異、及び欠失が挙げられる。破壊は、典型的には、遺伝子によってコードされる正常又は「野生型」産物の発現の抑制及び/又は完全な欠如をもたらす。そのような遺伝子破壊の例示は、遺伝子全体の欠失を含む、遺伝子又は遺伝子の一部の挿入、フレームシフト及びミスセンス変異、欠失、ノックイン、及びノックアウトである。このような破壊は、コード領域、例えば、1つ以上のエキソンにおいて起こり得、その結果、終止コドンの挿入などにより、完全長生成物、機能的生成物、又は任意の生成物を生成することができなくなる。このような破壊は、遺伝子の転写を妨げるように、プロモーター又はエンハンサー、あるいは転写の活性化に影響を与える他の領域の破壊によっても起こり得る。遺伝子の破壊には、相同組換えによる標的遺伝子の不活性化など、ジーンターゲティングが含まれる。
【0037】
本明細書中で使用される用語「操作された」とは、細胞、核酸、ポリペプチド、ベクターなどをはじめとした、人間の手によって作製された実体のことを指す。少なくともいくつかの場合において、操作された実体は、合成物であり、天然に存在しないエレメント又は本開示において使用されるように構成されたエレメントを含む。いくつかの場合において、この用語は、自然界には見られない1つ以上の分子を有するように又は発現するように人間の手によって改変された細胞のことを指す。
【0038】
異種抗原受容体に関して、本明細書中で使用される用語「操作された」とは、人間の手によって作製された、自然界には見られない抗原受容体であって、それを発現している細胞にとって内在性ではない抗原受容体のことを指す。それらの受容体は、例えば標準的な組換え技術によって、合成的に作製され得る。この用語は、自然界では一緒に見られない(例えば、同じ分子において見られない)構成要素を含む融合タンパク質の作製を含む。例としては、T細胞受容体、キメラ抗原受容体、キメラサイトカイン受容体などが挙げられる。本明細書中で使用される用語「異種」とは、レシピエントとは異なる細胞型又は異なる種に由来することを指す。具体的な場合において、この用語は、合成であり、かつ/又はT細胞若しくはTILに由来しない、遺伝子又はタンパク質のことを指す。この用語は、合成的に得られた遺伝子又は遺伝子構築物のことも指す。例えば、あるサイトカインが、T細胞又はTILによって天然に産生されたとしても、それが遺伝的組換え(そのサイトカインをコードする核酸配列を有するベクターとしてそのT細胞又はTILに提供される場合を含む)などによって合成的に得られるので、そのサイトカインは、そのT細胞又はTILに対して異種と考えられる場合がある。
【0039】
本開示は、癌を有し、癌の処置を必要とする個体に対する細胞療法の改善に関する。それらの細胞は、非天然の細胞であり、それらの細胞の内在性遺伝子に対して1つ以上の遺伝子改変を有するように人間の手によって操作されている。特定の実施形態において、それらの細胞は、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)及び/又はT細胞である。特定の場合では、例えば養子細胞療法の状況において、TIL細胞及びT細胞の治療的機能を改善するための、TIL細胞上及び/又はT細胞上の阻害性受容体をコードする遺伝子がノックアウト又はノックダウンされる。本開示は、例えば、それらの細胞が患者の腫瘍から単離され、好適な数に拡大され、同じ患者に再注入される具体的な態様において、TIL療法及び/又はT細胞療法の改善を提供する。具体的な実施形態において、TGFBR2及び/又はTIGIT及び/又はCD7及び/又はPD-1及び/又はTIM-3のノックアウトにより、これらの細胞が腫瘍微小環境における重要な免疫抑制シグナルに打ち勝つことが可能になる。少なくともある特定の場合では、ノックアウトは、Cas9タンパク質及び各目的遺伝子を標的化するgRNAを含むCas9リボ核タンパク質(RNP)複合体をTIL細胞及び/又はT細胞にトランスフェクトすることによって行われる。本明細書中に包含されるように、この方法を用いた、ヒト及びマウスのT細胞並びにTIL及び/又はT細胞における遺伝子の効率的なノックアウトが存在する。
【0040】
I.操作された腫瘍浸潤リンパ球
本開示の実施形態は、任意の癌を処置するための1つ以上の細胞組成物を提供する。その細胞組成物は、遺伝的に改変されたTIL(例えば、天然の変異ではなく、人間の手によって1つ以上の内在性遺伝子の発現が低下されているもの)を含み得、癌の処置を必要とする個体に投与するための製剤を含む。その組成物は、保存、輸送及び/又は送達のために製剤化されていてもよいし、そうでなくてもよい。
【0041】
本開示の実施形態は、そのように操作されていないTILよりも癌の処置において有効であるように操作されたTILを含む、免疫療法用の細胞を含む。いくつかの実施形態において、それらのTILは、(1)内在性のTGF-β受容体2(TGFBR2)の発現が低下する若しくは無くなるように、及び/又はその発現されたタンパク質の活性が低下する若しくは無くなるように;並びに/又は(2)内在性のT細胞-Ig及びITIMドメイン(TIGIT)の発現が低下する若しくは無くなるように、及び/又はその発現されたタンパク質の活性が低下する若しくは無くなるように;並びに/又は(3)内在性のCD7の発現が低下する若しくは無くなるように、及び/又はその発現されたタンパク質の活性が低下する若しくは無くなるように;並びに/又は(4)内在性のPD-1の発現が低下する若しくは無くなるように、及び/又はその発現されたタンパク質の活性が低下する若しくは無くなるように;並びに/又は(5)内在性のTIM-3の発現が低下する若しくは無くなるように、及び/又はその発現されたタンパク質の活性が低下する若しくは無くなるように、操作されている。そのような操作は、任意の好適な手段によって行ってよい。したがって、それらのTILは、遺伝子編集され得、その遺伝子編集は、任意の手段によって行われ得る。その遺伝子編集は、一過性であってもよいし、そうでなくてもよい。具体的な場合において、その遺伝子編集は、永続的である。
【0042】
いくつかの実施形態において、上記遺伝子破壊は、所望の遺伝子の1つ以上において破壊(例えば、いくつかの例として、ノックアウト、挿入、ミスセンス変異若しくはフレームシフト変異(両アレルのフレームシフト変異を含む)、遺伝子の全部若しくは一部の欠失、例えば、1つ以上のエキソン若しくはその一部の欠失、及び/又はノックイン)をもたらすことによって行われる。ある特定の場合において、その破壊は、配列特異的ヌクレアーゼ又は標的化ヌクレアーゼによってもたらされ得、それらのヌクレアーゼとしては、例えば、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)及び転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)などのDNA結合標的化ヌクレアーゼ、並びに、例えばCRISPR関連ヌクレアーゼ(Cas)などのRNAガイドヌクレアーゼであり、詳細には、TGFBR2遺伝子若しくはその一部又はTIGIT遺伝子若しくはその一部又はCD7遺伝子若しくはその一部又はPD-1遺伝子若しくはその一部又はTIM-3遺伝子若しくはその一部の配列に対して標的化されるようにデザインされたヌクレアーゼが挙げられる。
【0043】
いくつかの実施形態において、TGFBR2遺伝子の破壊及び/又はTIGIT遺伝子の破壊及び/又はCD7遺伝子の破壊及び/又はPD-1遺伝子の破壊及び/又はTIM-3遺伝子の破壊は、その遺伝子において1つ以上の二本鎖切断及び/又は1つ以上の一本鎖切断を、例えば標的化された様式で、誘導することによって行われる。いくつかの実施形態において、その二本鎖切断又は一本鎖切断は、ヌクレアーゼ、例えば、エンドヌクレアーゼ、例えば、遺伝子標的化ヌクレアーゼによって行われる。いくつかの態様において、それらの切断は、当該遺伝子のコード領域、例えば、エキソンにおいて誘導される。例えば、いくつかの実施形態において、その誘導は、コード領域、N末端部分の近く(例えば、第1のエキソン、第2のエキソン又はそれ以降のエキソン)で生じる。
【0044】
いくつかの実施形態において、遺伝子破壊が、遺伝子の発現を選択的に抑制するために、又は選択的に阻止するために使用されるRNA干渉(RNAi)、短い干渉性RNA(siRNA)、短いヘアピン(shRNA)、及び/又はリボザイムによることを含めて様々なアンチセンス技術を使用して達成される。siRNA技術は、遺伝子から転写されるmRNAのヌクレオチド配列と相同的な配列と、このヌクレオチド配列と相補的な配列とを有する二本鎖RNA分子を用いるRNAiである。siRNAは一般に、遺伝子から転写されるmRNAの1つの領域と相同的/相補的であり、あるいは異なる領域と相同的/相補的である複数のRNA分子を含むsiRNAである場合がある。いくつかの態様において、siRNAはポリシストロン構築物に含まれる。
【0045】
標的遺伝子又は遺伝子産物の配列の知識を利用する手法を用いて破壊する場合、TIGIT核酸配列の例は、GenBank(登録商標)アクセッション番号EU675310にあり、その対応するタンパク質は、GenBank(登録商標)アクセッション番号ACD74757にある。TGFBR2の核酸配列の一例は、GenBank(登録商標)アクセッション番号NM_001024847にあり、その対応するタンパク質配列の例は、GenBank(登録商標)アクセッション番号NP_001020018にある。CD7の核酸配列の一例は、GenBank(登録商標)アクセッション番号NM_006137にあり、その対応するタンパク質配列の例は、GenBank(登録商標)アクセッション番号NP_006128にある。PD-1の核酸配列の一例は、GenBank(登録商標)アクセッション番号L27440にあり、その対応するタンパク質配列の例は、GenBank(登録商標)アクセッション番号AAC41700.1にある。TIM-3の核酸配列の一例は、GenBank(登録商標)アクセッション番号JX049979にあり、その対応するタンパク質配列の例は、GenBank(登録商標)アクセッション番号AFO66593.1にある。
【0046】
いくつかの実施形態において、破壊は、TGF-BR2遺伝子又はTIGIT遺伝子又はCD7遺伝子又はPD-1遺伝子又はTIM-3遺伝子にそれぞれ特異的に結合するか、又は特異的にハイブリダイゼーションする、DNA結合タンパク質又はDNA結合核酸などのDNA標的化分子、あるいはそのようなDNA標的化分子を含有する複合体、化合物又は組成物を使用して達成される。いくつかの実施形態において、DNA標的化分子は、DNA結合ドメイン、例えば、ジンクフィンガータンパク質(ZFP)のDNA結合ドメイン、転写活性化因子様タンパク質(TAL)又はTALエフェクター(TALE)のDNA結合ドメイン、クラスター化された規則的な配置の短い回文配列反復(clustered regularly interspaced short palindromic repeats;CRISPR)のDNA結合ドメイン、あるいはメガヌクレアーゼ由来のDNA結合ドメインを含む。ジンクフィンガー、TALE、及びCRISPRシステムの結合ドメインは、例えば、天然に存在するジンクフィンガータンパク質又はTALEタンパク質の認識らせん領域の操作(当該認識らせん領域の1つ以上のアミノ酸の改変)により、所定のヌクレオチド配列に結合するように操作することができる。操作されたDNA結合タンパク質(ジンクフィンガー又はTALE)は、天然に存在しないタンパク質である。設計のための合理的基準には、既存のZFP設計及び/又はTALE設計並びに結合データの情報を記憶するデータベースにおける情報を処理するための置換規則及びコンピューター化アルゴリズムの適用が含まれる。
【0047】
遺伝子改変が遺伝子における1つ以上の二本鎖切断並びに/あるいは1つ以上の一本鎖切断の誘導によって行われる場合、二本鎖又は一本鎖の切断は、例えば、非相同末端結合(NHEJ)又は相同組換え修復(HDR)などの細胞の修復プロセスを介して修復を受ける場合がある。いくつかの態様において、修復プロセスはエラーを起こしやすく、遺伝子の完全なノックアウトを生じさせることができるフレームシフト変異(例えば、二対立遺伝子フレームシフト変異)などの遺伝子の破壊を生じさせる。例えば、いくつかの態様において、破壊は、欠失、変異及び/又は挿入を誘導することを含む。いくつかの実施形態において、破壊は、早い終止コドンの存在をもたらす。いくつかの態様において、挿入、欠失、転座、フレームシフト変異、及び/又は早期終止コドンの存在は、遺伝子の発現、活性及び/又は機能の破壊をもたらす。
【0048】
いくつかの実施形態において、改変が、1つ以上のDNA結合核酸を使用して行われる:例えば、RNA誘導エンドヌクレアーゼ(RGEN)を介した改変など。例えば、改変を、クラスター化された規則的配置の短い回文配列反復(CRISPR)と、CRISPR関連(Cas)タンパク質とを使用して行うことができる。一般に、「CRISPRシステム」は、CRISPR関連(「Cas」)遺伝子の発現に関与する転写物又は他の構成要素を総称し、CRISPR-associated(「Cas」)遺伝子の発現又は活性を指図する転写物又は他の構成要素として、Cas遺伝子をコードする配列、tracr(トランス活性化CRISPR)配列(例えば、tracrRNA又は活性な部分tracrRNA)、tracr-mate配列(これは、内在性CRISPRシステムとの関連では「直列反復配列」及びRNAプロセシングされた部分的直列反復配列を包含する)、ガイド配列(これはまた、内在性CRISPRシステムとの関連では「スペーサー」として示される)、並びに/あるいはCRISPR遺伝子座からの他の配列及び転写物を含む。
【0049】
CRISPR/Casヌクレアーゼ又はCRISPR/Casヌクレアーゼシステムは、DNAに配列特異的に結合する非コードRNA分子(ガイド)RNAと、ヌクレアーゼ機能性(例えば、2つのヌクレアーゼドメイン)を有するCasタンパク質(例えば、Cas9)を含むことができる。CRISPRシステムの1つ以上の構成要素が、例えば、内在性CRISPRシステムを含む特定の生物(例えば、化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)など)から得られるI型、II型又はIII型のCRISPRシステムに由来することができる。
【0050】
TILには、ガイドRNA及びCRISPR酵素、又はCRISPR酵素をコードするmRNAを導入してもよい。CRISPR媒介破壊のために、ガイドRNA及びエンドヌクレアーゼが、限定されない例として、リポソーム送達手段、ポリマー担体、化学的担体、リポプレックス、ポリプレックス、デンドリマー、ナノ粒子、エマルション、天然のエンドサイトーシス経路又はファゴサイトーシス経路、同様にまた、エレクトロポレーションなどの物理的方法を含めて、使用することができる因子/化学物質及び分子(タンパク質及び核酸)の細胞内又は細胞内区画内への送達を可能にするためにこの技術分野において知られている任意の手段によりTILに導入されてもよい。具体的な態様において、エレクトロポレーションが、ガイドRNA及びエンドヌクレアーゼ、又はエンドヌクレアーゼをコードする核酸を導入するために使用される。
【0051】
1つの例示的な方法において、複数の遺伝子をCRISPRノックアウトするための方法は、個体の癌(腫瘍を含む)からTILを単離することを含み得る。そのTILを自己の目的で個体から得るとき、そのTILは、任意の好適な方法(例えば、生検又は任意の種類の日常的なサンプル収集(血液、骨髄などからの収集を含む))によって得ることができる。TILがレシピエント個体に対して同種異系である場合、そのTILの起源は、例えば、保管庫から、商業的供給源からのものや、ドナーから新鮮なものであり得る。
【0052】
TILを拡大する実施形態において、それらは、任意の好適な方法(例えば、最初に、IL-2との培養によって腫瘍断片からTILを拡大した後、末梢血単核球(PBMC)又は人工抗原提示細胞の存在下において、4-1BB/CD137を介したさらなる共刺激あり又はなしでのCD3架橋及びIL-2による刺激を含む迅速な拡大プロトコル)によって拡大され得る。
【0053】
拡大の前又は後において、それらのTILを、TIGIT及び/又はTGFBR2及び/又はCD7及び/又はPD-1及び/又はTIM-3のノックダウン又はノックアウトをもたらすような操作に供してもよい。CRISPRを用いる場合、TIGIT及び/又はTGFBR2及び/又はCD7及び/又はPD-1及び/又はTIM-3の操作は、同じエレクトロポレーション工程又は連続したエレクトロポレーション工程において行われ得る。エレクトロポレーション工程が連続するとき、TIGIT、TGFBR2、CD7、PD-1及びTIM-3のうちの1つ以上のノックアウト/ノックダウンは、それぞれ、まだノックダウン又はノックアウトされていないTIGIT、TGFBR2、CD7、PD-1及びTIM-3のうちの1つのノックアウト/ノックダウンの前又は後であり得る。例えば、所望の各遺伝子が、2、3、4又は5つのエレクトロポレーション工程の組み合わせにおいて編集される場合、TIGIT、TGFBR2、CD7、PD-1及びTIM-3のノックアウト/ノックダウンの任意の組み合わせが、任意の順序で行われ得る。単なる具体例の1つとして、TIGIT及びTGFBR2が、第1のエレクトロポレーション工程において編集され得、CD7が、第2又はその後のエレクトロポレーション工程(並びにPD-1及びTIM-3についても含む、それらの任意の組み合わせ)において編集され得る。TILのCRISPR編集の後、それらは、例えばCD3架橋及びIL2刺激による再刺激を介した、さらなる拡大工程に供されてもよいし、供されなくてもよい。
【0054】
いくつかの態様において、Casヌクレアーゼと、(標的配列について特異的なcrRNAと、固定されたtracrRNAとの融合物を含む)gRNAとがTILに導入される。一般に、gRNAの5’末端における標的部位は、Casヌクレアーゼを、相補的な塩基対形成を使用して標的部位に対して、例えば、TGF-BR2遺伝子、TIGIT遺伝子、CD7遺伝子、PD-1遺伝子又はTIM-3遺伝子に対して標的化する。標的部位は、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)配列(典型的にはNGG又はNAGなど)のすぐ5’側のその位置に基づいて選択される場合がある。この点で、gRNAは、標的DNA配列に対応するようにガイドRNAの最初の20、19、18、17、16、15、14、14、12、11又は10ヌクレオチドを改変することによって所望の配列に標的化される。一般に、CRISPRシステムは、標的配列の部位におけるCRISPR複合体の形成を促進させる構成要素によって特徴づけられる。典型的には、「標的配列」は一般には、ガイド配列が相補性を有するように設計される配列で、標的配列とガイド配列との間でのハイブリダイゼーションによりCRISPR複合体の形成を促進させる配列を示す。ハイブリダイゼーションを引き起こし、CRISPR複合体の形成を促進させるための十分な相補性が存在するならば、完全な相補性は必ずしも要求されない。
【0055】
CRISPRシステムは、標的部位における二本鎖切断(DSB)、続いて、本明細書中で議論されるような破壊又は改変を誘導することができる。他の実施形態において、「ニッカーゼ」とみなされるCas9バリアントが、標的部位において一本鎖に切れ目を入れるために使用される。一対の異なるgRNAによってそれぞれ指向化される対となったニッカーゼが、例えばニックを同時に導入する際に5’側突出部が導入されるように配列を標的化することにより、例えば、特異性を改善するために使用することができる。他の実施形態において、触媒不活性なCas9が、遺伝子発現に影響を及ぼすために異種のエフェクタードメイン(例えば、転写リプレッサー又は転写活性化因子など)に融合される。
【0056】
標的配列は、例えば、DNAポリヌクレオチド又はRNAポリヌクレオチドなど、任意のポリヌクレオチドを含む場合がある。標的配列は細胞の核又は細胞質に、例えば、細胞のオルガネラの内部などに位置する場合がある。一般に、標的配列を含む標的となった遺伝子座の中への組換えのために使用され得る配列又はテンプレートが、「編集用テンプレート」又は「編集用ポリヌクレオチド」又は「編集用配列」として示される。いくつかの態様において、外来性のテンプレートポリヌクレオチドが編集用テンプレートとして示される場合がある。いくつかの態様において、組換えは相同組換えである。
【0057】
典型的には、内在性CRISPRシステムとの関連において、(標的配列にハイブリダイゼーションし、1つ以上のCasタンパク質と複合体化するガイド配列を含む)CRISPR複合体の形成により、標的配列内又は標的配列の近傍(例えば、標的配列から1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、50塩基対以内、又はそれ以上の塩基対以内で)の一方又は両方のストランドの切断がもたらされる。tracr配列は、野生型tracr配列の全体又は一部(例えば、野生型tracr配列の約20、26、32、45、48、54、63、67、85、又はそれ以上のヌクレオチド)を含む場合があり、tracr配列はまた、CRISPR複合体の一部を、例えば、ガイド配列に機能的に連結されるtracrメイト配列の全体又は一部に対するtracr配列の少なくとも一部に沿ったハイブリダイゼーションなどによって形成する場合がある。tracr配列は、ハイブリダイゼーションし、CRISPR複合体の形成に加わるためにtracrメイト配列に対する十分な相補性を有しており、例えば、最適にアラインメントされたときには、tracrメイト配列の長さに沿って少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%又は99%などの配列相補性を有する。
【0058】
CRISPRシステムの1つ以上の構成要素を発現させる1つ以上のベクターを、CRISPRシステムの当該構成要素の発現により、CRISPR複合体の形成が1つ以上の標的部位で導かれるように細胞に導入することができる。構成要素はまたタンパク質及び/又はRNAとして細胞に送達されることが可能である。例えば、Cas酵素、tracrメイト配列に連結されたガイド配列、及びtracr配列はそれぞれが、別個のベクターにおいて別個の調節エレメントに機能的に連結され得るであろう。代替において、同じ調節エレメント又は異なる調節エレメントから発現される構成要素の2つ以上が、単一のベクターにおいて組み合わされてもよく、この場合、1つ以上のさらなるベクターにより、第1のベクターに含まれないCRISPRシステムの任意の構成要素が提供される。ベクターは、1つ以上の挿入部位、例えば、制限エンドヌクレアーゼ認識配列(これはまた、「クローニング部位」として示される)などを含む場合がある。いくつかの実施形態において、1つ以上の挿入部位が1つ以上のベクターの1つ以上の配列エレメントの上流側及び/又は下流側に位置する。複数の異なるガイド配列が使用されるときには、単一の発現構築物が、細胞内の複数の異なる対応する標的配列にCRISPR活性を標的化するのに使用してもよい。
【0059】
ベクターは、Casタンパク質などのCRISPR酵素をコードする酵素コード配列に機能的に連結される調節エレメントを含む場合がある。Casタンパク質の限定されない例には、Cas1、Cas1B、Cas2、Cas3、Cas4、Cas5、Cas6、Cas7、Cas8、Cas9(これはまた、Csn1及びCsx12として知られている)、Cas10、Csy1、Csy2、Csy3、Cse1、Cse2、Csc1、Csc2、Csa5、Csn2、Csm2、Csm3、Csm4、Csm5、Csm6、Cmr1、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr6、Csb1、Csb2、Csb3、Csx17、Csx14、Csx10、Csx16、CsaX、Csx3、Csx1、Csx15、Csf1、Csf2、Csf3、Csf4、それらのホモログ、又はそれらの改変型が含まれる。これらの酵素は知られており、例えば、S.pyogenesのCas9タンパク質のアミノ酸配列がSwissProtデータベースにおいてアクセッション番号Q99ZW2により見出され得る。
【0060】
CRISPR酵素はCas9(例えば、S.pyogenes又はS.pneumoniaから得られるもの)であり得る。CRISPR酵素は、標的配列の場所において、例えば、標的配列の内部及び/又は標的配列の相補体の内部などで一方の鎖又は両方の鎖の切断を導くことができる。ベクターは、変異させたCRISPR酵素が、標的配列を含有する標的ポリヌクレオチドの一方の鎖又は両方の鎖を切断する能力を欠くように、対応する野生型酵素に関して変異させられるCRISPR酵素をコードすることができる。例えば、S.pyogenes由来のCas9のRuvCI触媒ドメインにおけるアスパラギン酸からアラニンへの置換(D10A)により、Cas9は、両方の鎖を切断するヌクレアーゼからニッカーゼに変わる(一本鎖が切断される)。Integrated DNA Technologies, Inc.のものなど、オフターゲティング編集を低減するよう改変されたCRISPR酵素を利用することができる。いくつかの実施形態において、Cas9ニッカーゼがガイド配列(1つ以上)との組み合わせで、例えば、DNA標的のセンス鎖及びアンチセンス鎖をそれぞれ標的とする2つのガイド配列との組み合わせで使用される場合がある。この組み合わせは、両方の鎖に切れ目を入れ、両方の鎖が、NHEJ又はHDRを誘導するために使用されることを可能にする。
【0061】
いくつかの実施形態において、CRISPR酵素をコードする酵素コード配列が、真核生物細胞などの特定の細胞における発現のためにコドン最適化される。真核生物細胞は、特定の生物、例えば、限定されないが、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、イヌ又は非ヒト霊長類を含む哺乳動物などの細胞、あるいはそれらに由来する細胞である場合がある。一般に、コドン最適化は、目的とする宿主細胞における強化された発現のために、ネイティブ型配列の少なくとも1つのコドンを、ネイティブ型のアミノ酸配列を維持しながら、その宿主細胞の遺伝子においてより頻繁に、又は最も頻繁に使用されるコドンで置き換えることによって核酸配列を改変するプロセスを示す。様々な生物種が、特定のアミノ酸のある特定のコドンについて特定の偏りを示す。コドンの偏り(生物間のコドン使用頻度における差)は多くの場合、とりわけ、翻訳されているコドンの特性、及び特定の転移RNA(tRNA)分子の利用可能性に結果として依存していると考えられるメッセンジャーRNA(mRNA)の翻訳効率と相関する。選択されたtRNAが細胞において優勢であることは一般に、ペプチド合成において最も頻繁に使用されるコドンを反映している。したがって、遺伝子を、コドン最適化に基づいて、所与の生物における最適な遺伝子発現ができるように遺伝子を調整することができる。
【0062】
一般に、ガイド配列には、標的配列とハイブリダイゼーションし、標的配列に対するCRISPR複合体の配列特異的な結合を導くために標的ポリヌクレオチド配列との十分な相補性を有する任意のポリヌクレオチド配列が挙げられる。いくつかの実施形態において、好適なアラインメントアルゴリズムを使用して最適にアラインメントされたとき、ガイド配列と、その対応する標的配列との間における相補性の程度は、約50%又は約50%超、約60%又は約60%超、約75%又は約75%超、約80%又は約80%超、約85%又は約85%超、約90%又は約90%超、約95%又は約95%超、約97%又は約97%超、約99%又は約99%超、あるいはそれ以上である。
【0063】
最適なアラインメントは、配列をアラインメントするための任意の好適なアルゴリズムを使用することにより求めてもよく、そのようなアルゴリズムの限定されない例には、Smith-Watermanアルゴリズム、Needleman-Wunschアルゴリズム、Burrows-Wheeler変換に基づくアルゴリズム(例えば、Burrows Wheeler Aligner)、Clustal W、Clustal X、BLAT、Novoalign(Novocraft Technologies、ELAND(Illumina、San Diego、Calif.)、SOAP(soap.genomics.org.cnにおいて入手可能)、及びMaq(maq.sourceforge.netにおいて入手可能)が含まれる。
【0064】
CRISPR酵素は、1つ以上の異種タンパク質ドメインを含む融合タンパク質の一部である場合がある。CRISPR酵素融合タンパク質は、任意のさらなるタンパク質配列を含む場合があり、また、必要な場合にはリンカー配列をいずれか2つのドメインの間に含む場合がある。CRISPR酵素に融合され得るタンパク質ドメインの例には、限定されないが、エピトープタグ、レポーター遺伝子配列、並びに以下の活性:メチラーゼ活性、デメチラーゼ活性、転写活性化活性、転写抑制活性、転写放出因子活性、ヒストン修飾活性、RNA切断活性及び核酸結合活性、のうちの1つ以上を有するタンパク質ドメインが含まれる。エピトープタグの限定されない例には、ヒスチジン(His)タグ、V5タグ、FLAGタグ、インフルエンザ血球凝集素(HA)タグ、Mycタグ、VSV-Gタグ及びチオレドキシン(Trx)タグが含まれる。レポーター遺伝子の例には、グルタチオン-5-トランスフェラーゼ(GST)、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)βガラクトシダーゼ、β-グルクロニダーゼ、ルシフェラーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、HcRed、DsRed、シアン蛍光タンパク質(CFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、及び青色蛍光タンパク質(BFP)を含む自家蛍光タンパク質が含まれるが、これらに限定されない。CRISPR酵素は、マルトース結合タンパク質(MBP)、S-タグ、Lex AのDNA結合ドメイン(DBD)の融合物、GAL4AのDNA結合ドメインの融合物、及び単純ヘルペスウイルス(HSV)BP16タンパク質の融合物(これらに限定されない)を含めて、DNA分子と結合するタンパク質又は当該タンパク質のフラグメント、あるいは他の細胞分子と結合するタンパク質又は当該タンパク質のフラグメントをコードする遺伝子配列に融合される場合がある。CRISPR酵素を含む融合タンパク質の一部を形成し得るさらなるドメインが米国特許出願公開第20110059502号(これは参照によって本明細書中に組み込まれる)に記載される。
【0065】
いくつかの実施形態において、TGFBR2及び/又はTIGIT遺伝子及び/又はCD7遺伝子及び/又はPD-1遺伝子及び/又はTIM-3遺伝子の発現、活性及び/又は機能の改変が、対応する遺伝子を破壊することによって行われる。いくつかの態様において、遺伝子は、遺伝子改変がない場合、又は改変を行うために導入される成分がない場合における発現と比較して、その発現が少なくとも20%又は約20%、30%又は約30%、あるいは40%又は約40%低下するように、一般には少なくとも50%又は約50%、60%又は約60%、70%又は約70%、80%又は約80%、90%又は約90%、91%又は約91%、92%又は約92%、93%又は約93%、94%又は約94%、95%又は約95%、96%又は約96%、97%又は約97%、98%又は約98%、99%又は約99%、あるいは100%又は約100%低下するように改変される。
【0066】
特定の実施形態において、上記TILは、TGFBR2、TIGIT、CD7、PD-1及びTIM-3のうちの1つ以上の発現の低下に加えて、人間の手によってさらに改変され得る。
【0067】
いくつかの実施形態において、上記TILは、操作されたTILを作製するためのプロセスの前又は最中に、1つ以上のマーカーに対するネガティブ選択又はポジティブ選択による濃縮に供される。
【0068】
II.操作されたT細胞
本開示の実施形態は、任意の癌を処置するための1つ以上のT細胞組成物を提供する。その細胞組成物は、遺伝的に改変されたT細胞(例えば、天然の変異ではなく、人間の手によって1つ以上の内在性遺伝子の発現が低下されているもの)を含み得、癌の処置を必要とする個体に投与するための製剤を含む。その組成物は、保存、輸送及び/又は送達のために製剤化されていてもよいし、そうでなくてもよい。
【0069】
ある特定の実施形態において、上記T細胞は、1つ以上の内在性遺伝子の発現が低下するように又はそれらが発現しないように改変されている。特定の実施形態において、上記T細胞は、1つ以上の異種抗原受容体(例えば、操作されたTCR、CAR、キメラサイトカイン受容体、ケモカイン受容体、それらの組み合わせなど)を発現するように操作されている。それらの異種抗原受容体は、人間の手によって合成的に作製される。特定の実施形態において、それらのT細胞は、1つ以上の癌抗原に対して抗原特異性を有するCAR及び/又はTCRを発現するように改変されている。複数のCAR及び/又はTCR(例えば、異なる抗原に対するもの)が、それらのT細胞に付加され得る。いくつかの態様において、それらのT細胞は、CRISPRの使用などによって、特定の遺伝子座にCAR又はTCRをノックインすることによってそのCAR又はTCRを発現するように操作されている。いくつかの実施形態において、それらのT細胞は、1つ以上の内在性遺伝子の発現が低下するように操作されており、1つ以上の異種抗原受容体を発現するように操作されている。
【0070】
いくつかの実施形態において、上記T細胞は、血液、骨髄、リンパ液、臍帯及び/又はリンパ系器官に由来する。いくつかの態様において、それらの細胞は、ヒト細胞である。それらの細胞は、通常、初代細胞であり、例えば、対象から直接単離された細胞、及び/又は対象から単離され、凍結された細胞である。いくつかの実施形態において、それらの細胞には、T細胞又は他の細胞型の1つ以上のサブセット(例えば、T細胞集団全体、CD4+細胞、CD8+細胞、及びそれらの部分集団、例えば、機能、活性化状態、成熟度、分化の可能性、拡大、再循環、局在化及び/若しくは残存能、抗原特異性、抗原受容体のタイプ、特定の器官若しくはコンパートメントに存在すること、マーカー若しくはサイトカイン分泌のプロファイル、並びに/又は分化の程度によって定義される部分集団)が含まれる。いくつかの実施形態において、上記方法は、対象から細胞を単離する工程、それらを調製する工程、処理する工程、培養する工程、合成抗原受容体(例えば、非天然のTCR)を発現するように操作する工程、TGRBR2、TIGIT、CD7、PD-1及び/又はTIM-3の発現が低下する又は無くなるように操作する工程、並びに凍結保存の前又は後にそれらを同じ及び/又は異なる対象に再導入する工程を含む。そのような工程は、その特定の順序で行われてもよいし、そうでなくてもよい。例えば、T細胞を、内在性遺伝子が遺伝子編集されるように操作した後、その遺伝子編集された細胞を、合成抗原受容体を発現するように操作し得る。
【0071】
特定の実施形態では、ある特定のCRISPR核酸試薬が、上記T細胞において使用され得、それらの試薬としては、以下のとおり挙げられる(表1も参照のこと):
TGFBR2(エキソン5)
GACGGCTGAGGAGCGGAAGA(gRNA1)(配列番号11)
TGTGGAGGTGAGCAATCCCC(gRNA2)(配列番号12)
【0072】
マウス配列の例:
Mm.Cas9.TGFBR2.1.AA:ACGGCCACGCAGACTTCATG(配列番号13)
Mm.Cas9.TGFBR2.1.AB:GGACTTCTGGTTGTCGCAAG(配列番号14)
【0073】
T細胞(例えば、CD4+及び/又はCD8+T細胞)のサブタイプ及び部分集団に含まれるのは、ナイーブT(TN)細胞、エフェクターT細胞(TEFF)、メモリーT細胞及びそのサブタイプ(例えば、幹細胞メモリーT(TSCM)、セントラルメモリーT(TCM)、エフェクターメモリーT(TEM)又は最終分化型エフェクターメモリーT細胞)、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、未熟T細胞、成熟T細胞、ヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、粘膜関連インバリアントT(MAIT)細胞、天然に存在する及び獲得型(adaptive)の制御性T(Treg)細胞、ヘルパーT細胞(例えば、TH1細胞、TH2細胞、TH3細胞、TH17細胞、TH9細胞、TH22細胞、濾胞性ヘルパーT細胞)、α/βT細胞及びδ/γT細胞である。
【0074】
いくつかの実施形態において、操作されたT細胞集団の1つ以上は、表面マーカーなどの特異的マーカーが陽性であるか又は特異的マーカーが陰性である細胞が濃縮されているか、又は枯渇している。いくつかの場合において、そのようなマーカーは、ある特定のT細胞集団(例えば、非メモリー細胞)上に存在しないか又は比較的低レベルでしか発現されないが、ある特定の他のT細胞集団(例えば、メモリー細胞)上には存在するか又は比較的高レベルで発現されるマーカーである。
【0075】
いくつかの実施形態において、T細胞は、非T細胞(例えば、B細胞、単球又は他の白血球)上に発現されているマーカー(例えば、CD14)のネガティブ選択によってPBMCサンプルから分離される。いくつかの態様では、CD4+又はCD8+選択工程を用いることにより、CD4+ヘルパーT細胞及びCD8+細胞傷害性T細胞が分離される。そのようなCD4+及びCD8+集団は、1つ以上のナイーブ、メモリー及び/又はエフェクターT細胞の部分集団上に発現されている又は比較的高い程度に発現されているマーカーのポジティブ選択又はネガティブ選択によって、さらに部分集団に選別され得る。
【0076】
いくつかの実施形態において、CD8+T細胞は、それぞれの部分集団に関連する表面抗原に基づくポジティブ選択又はネガティブ選択などによって、ナイーブ、セントラルメモリー、エフェクターメモリー及び/又はセントラルメモリー幹細胞がさらに濃縮されるか又は枯渇される。いくつかの実施形態において、セントラルメモリーT(TCM)細胞の濃縮は、投与後の長期生存率、拡大及び/又は生着を改善するなどの有効性を高めるために行われ、これは、いくつかの態様において、そのような部分集団において特に頑健である。
【0077】
いくつかの実施形態において、操作されたT細胞は、自己T細胞である。この方法では、腫瘍サンプルを、癌の処置を必要とする個体から入手し、単一細胞の懸濁液を得てもよいし、そうでなくてもよい。その単一細胞の懸濁液は、任意の好適な様式で、例えば、機械的に(例えば、gentleMACSTMDissociator,Miltenyi Biotec,Auburn,Calif.を用いて腫瘍を脱凝集させて)又は酵素的に(例えば、コラゲナーゼ又はDNase)得ることができる。腫瘍の酵素消化物の単一細胞の懸濁液を、IL-2などの1つ以上の特定のインターロイキンとともに培養し得る。
【0078】
培養されたT細胞は、プールされ、急速に拡大され得る。約10~約14日間にわたる急速な拡大によって、抗原特異的T細胞の数が少なくとも約50倍(例えば、50、60、70、80、90若しくは100倍又はそれ以上)増加する。より好ましくは、約10~約14日間にわたる急速な拡大によって、少なくとも約200倍(例えば、200、300、400、500、600、700、800、900倍又はそれ以上)増加する。
【0079】
当該分野で公知であるようないくつかの方法のうちのいずれかによって、拡大が達成され得る。例えば、T細胞は、フィーダーリンパ球と、IL-2又はIL-15のいずれかとの存在下において非特異的T細胞受容体刺激を用いて容易に拡大され得る。その非特異的T細胞受容体刺激は、およそ30ng/mlの、マウスモノクローナル抗CD3抗体であるOKT3(Ortho-McNeil(登録商標),Raritan,N.J.から入手可能)を含み得る。あるいは、T細胞は、T細胞成長因子(例えば、300IU/mlのIL-2又はIL-15(IL-2が好ましい))の存在下において1つ以上の癌抗原(エピトープなどのその抗原性部分、又は細胞を含む)で末梢血単核球(PBMC)をインビトロにおいて刺激することによって容易に拡大され得、その癌抗原は、必要に応じてベクターから発現され得、例えば、ヒト白血球抗原A2(HLA-A2)結合ペプチドであり得る。そのインビトロで誘導されたT細胞は、HLA-A2を発現している抗原提示細胞に対してパルスされた同じ癌抗原による再刺激によって急速に拡大される。あるいは、それらのT細胞は、例えば、照射された自己リンパ球又は照射されたHLA-A2+同種異系リンパ球及びIL-2で再刺激され得る。
【0080】
上記T細胞は、1つ以上の異種抗原受容体を有すること、並びにTGFBR2、TIGIT、CD7、PD-1及びTIM-3のうちの1つ以上の発現を低下させることに加えて、それらのT細胞の増殖及び活性化を促進する1つ以上のT細胞成長因子を発現するように改変され得る。好適なT細胞成長因子としては、例えば、IL-2、IL-7、IL-15及びIL-12が挙げられる。好適な改変方法は、当該分野で公知である。例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3rd ed.,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,N.Y.2001;及びAusubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing Associates and John Wiley & Sons,NY,1994を参照のこと。特定の態様において、改変された自己T細胞は、T細胞成長因子を高レベルで発現する。T細胞成長因子のコード配列(例えば、IL-12のコード配列)は、T細胞成長因子コード配列への作動可能な連結が高レベル発現を促進するプロモーターと同様に、当該分野において容易に入手可能である。
【0081】
A.T細胞受容体
いくつかの実施形態において、操作された異種抗原受容体には、組換えTCR、及び/又は天然に存在するT細胞からクローニングされたTCRが含まれる。「T細胞受容体」又は「TCR」とは、可変a鎖及び可変β鎖(それぞれTCRα及びTCRβとしても知られる)又は可変γ鎖及び可変δ鎖(それぞれTCRγ及びTCRδとしても知られる)を含む分子であって、MHC受容体に結合した抗原ペプチドに特異的に結合することができる分子のことを指す。いくつかの実施形態において、TCRは、αβ型である。
【0082】
通常、αβ型及びγδ型として存在するTCRは、一般に構造が似ているが、それらを発現しているT細胞は、解剖学的位置又は機能が異なり得る。TCRは、細胞表面上に又は可溶型として見られ得る。一般に、TCRは、T細胞(又はTリンパ球)の表面上に見られ、通常、その表面上で、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子に結合した抗原の認識に関与する。いくつかの実施形態において、TCRは、定常ドメイン、膜貫通ドメイン、及び/又は短い細胞質テールも含み得る(例えば、Janeway et al,1997を参照のこと)。例えば、いくつかの態様において、TCRの各鎖は、1つのN末端免疫グロブリン可変ドメイン、1つの免疫グロブリン定常ドメイン、膜貫通領域、及びC末端に短い細胞質テールを有し得る。いくつかの実施形態において、TCRは、シグナル伝達の媒介に関わるCD3複合体のインバリアントタンパク質と会合される。別段述べられない限り、用語「TCR」は、その機能的TCRフラグメントを包含すると理解されるべきである。この用語は、αβ型又はγδ型のTCRをはじめとしたインタクトな又は完全長のTCRも包含する。
【0083】
したがって、本明細書中の目的では、TCRへの言及には、任意のTCR又は機能的フラグメント(例えば、MHC分子において結合した特異的な抗原ペプチド、すなわち、MHC-ペプチド複合体に結合するTCRの抗原結合部分)が含まれる。交換可能に使用され得る、TCRの「抗原結合部分」又は抗原結合フラグメントとは、TCRの構造ドメインの一部しか含まないが、完全なTCRが結合する抗原(例えば、MHC-ペプチド複合体)に結合する分子のことを指す。いくつかの場合において、抗原結合部分は、特異的なMHC-ペプチド複合体に結合するための結合部位を形成するのに十分なTCRの可変ドメイン(例えば、TCRの可変a鎖及び可変β鎖)を含み、例えば一般に、各鎖が3つの相補性決定領域を含む。
【0084】
いくつかの実施形態において、TCR鎖の可変ドメインは、会合してループ、又は免疫グロブリンに類似の相補性決定領域(CDR)を形成し、それにより、TCR分子の結合部位を形成することによって抗原認識がもたらされ、ペプチド特異性が決定される。通常、免疫グロブリンと同様に、CDRは、フレームワーク領域(FR)によって隔てられる(例えば、Jores et al.,1990;Chothia et al.,1988;Lefranc et al.,2003を参照のこと)。いくつかの実施形態において、CDR3は、プロセシングされた抗原の認識に関与する主要なCDRであるが、α鎖のCDR1は、抗原ペプチドのN末端部と相互作用するとも示されているのに対して、β鎖のCDR1は、そのペプチドのC末端部と相互作用する。CDR2は、MHC分子を認識すると考えられている。いくつかの実施形態において、β鎖の可変領域は、さらなる超可変性(HV4)領域を含み得る。
【0085】
いくつかの実施形態において、TCR鎖は、定常ドメインを含む。例えば、免疫グロブリンと同様に、TCR鎖の細胞外の部分(例えば、a鎖、β鎖)は、2つの免疫グロブリンドメインである、N末端における可変ドメイン(例えば、V又はVp;通常、KabatナンバリングであるKabat et al.,“Sequences of Proteins of Immunological Interest,US Dept.Health and Human Services,Public Health Service National Institutes of Health,1991,5th ed.に基づくアミノ酸1~116)、及び細胞膜に隣接した1つの定常ドメイン(例えば、a鎖定常ドメイン又はC、通常、Kabatに基づくアミノ酸117~259、β鎖定常ドメイン又はCp、通常、Kabatに基づくアミノ酸117~295)を含み得る。例えば、いくつかの場合、それらの2本の鎖によって形成されるTCRの細胞外の部分は、2つの膜近位定常ドメイン、及びCDRを含む2つの膜遠位可変ドメインを含む。TCRドメインの定常ドメインは、システイン残基がジスルフィド結合を形成する短い接続配列を含み、それにより、それらの2本の鎖の間に連結が形成される。いくつかの実施形態では、TCRが、定常ドメインに2つのジスルフィド結合を含むように、そのTCRは、α鎖及びβ鎖の各々に追加のシステイン残基を有してもよい。
【0086】
いくつかの実施形態において、TCR鎖は、膜貫通ドメインを含み得る。いくつかの実施形態において、膜貫通ドメインは、正に帯電している。いくつかの場合において、TCR鎖は、細胞質テールを含む。いくつかの場合において、その構造のおかげで、TCRはCD3のような他の分子と会合することができる。例えば、膜貫通領域とともに定常ドメインを含むTCRは、そのタンパク質を細胞膜に固定し得、CD3シグナル伝達装置又は複合体のインバリアントサブユニットと会合し得る。
【0087】
一般に、CD3は、哺乳動物においては3つの異なる鎖(γ、δ及びε)及びζ鎖を有し得る多タンパク質複合体である。例えば、哺乳動物では、この複合体は、CD3γ鎖、CD3δ鎖、2つのCD3ε鎖、及びホモ二量体のCD3ζ鎖を含み得る。CD3γ鎖、CD3δ鎖及びCD3ε鎖は、単一の免疫グロブリンドメインを含む免疫グロブリンスーパーファミリーの高度に関連した細胞表面タンパク質である。CD3γ鎖、CD3δ鎖及びCD3ε鎖の膜貫通領域は、負に帯電しており、これは、これらの鎖が、正に帯電したT細胞受容体鎖と会合できるようにする特性である。CD3γ鎖、CD3δ鎖及びCD3ε鎖の各細胞内テールは、免疫受容活性化チロシンモチーフ又はITAMとして知られる保存された単一のモチーフを含むのに対して、各CD3ζ鎖は、3つ含む。一般に、ITAMは、TCR複合体のシグナル伝達能に関わる。これらのアクセサリー分子は、負に帯電した膜貫通領域を有し、TCRから細胞へのシグナルの伝播において役割を果たす。CD3鎖及びζ鎖は、TCRと一体となって、T細胞受容体複合体として知られる複合体を形成する。
【0088】
いくつかの実施形態において、TCRは、2本の鎖α及びβ(又は必要に応じてγ及びδ)のヘテロ二量体であり得るか、又は一本鎖TCR構築物であり得る。いくつかの実施形態において、TCRは、1つ以上のジスルフィド結合によって連結された2本の別個の鎖(α鎖とβ鎖又はγ鎖とδ鎖)を含むヘテロ二量体である。いくつかの実施形態において、標的抗原(例えば、癌抗原)に対するTCRが特定され、細胞に導入される。いくつかの実施形態において、TCRをコードする核酸は、公的に入手可能なTCR DNA配列のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅などによって、種々の起源から得ることができる。いくつかの実施形態において、TCRは、生物学的起源、例えば、細胞、例えば、T細胞(例えば、細胞傷害性T細胞)、T細胞ハイブリドーマ又は他の公的に入手可能な起源から得られる。いくつかの実施形態において、T細胞は、インビボで単離された細胞から得ることができる。いくつかの実施形態において、高親和性T細胞クローンが、患者から単離され得、TCRが単離され得る。いくつかの実施形態において、T細胞は、培養されたT細胞ハイブリドーマ又はクローンであり得る。いくつかの実施形態において、標的抗原に対するTCRクローンは、ヒト免疫系遺伝子(例えば、ヒト白血球抗原系、すなわちHLA)で操作されたトランスジェニックマウスにおいて産生されたクローンである。例えば、腫瘍抗原(例えば、Parkhurst et al.,2009及びCohen et al.,2005)を参照のこと。いくつかの実施形態では、ファージディスプレイを用いて、標的抗原に対するTCRが単離される(例えば、Varela-Rohena et al.,2008及びLi,2005を参照のこと)。いくつかの実施形態において、TCR又はその抗原結合部分は、TCRの配列の知識によって合成的に作製され得る。
【0089】
B.キメラ抗原受容体(CAR)
いくつかの実施形態において、上記T細胞は、抗原に特異的に結合する1つ以上の細胞外の抗原認識ドメインを含む1つ以上のCARを発現するように操作される。いくつかの実施形態において、その抗原は、細胞表面上に発現されているタンパク質である。いくつかの実施形態において、CARは、TCR様CARであり、抗原は、TCRと同様に主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子の状況において細胞表面上で認識される、プロセシングを受けたペプチド抗原(例えば、細胞内タンパク質のペプチド抗原)である。
【0090】
いくつかの実施形態において、上記CARは、a)1つ以上の細胞内のシグナル伝達ドメイン、b)膜貫通ドメイン、及びc)具体的な実施形態では抗原に結合するscFvである、1つ以上の抗原結合領域を含む細胞外ドメインを含む。
【0091】
CAR及び組換えTCRをはじめとした例示的な抗原受容体、ならびにそれらの受容体を操作するための方法及び細胞に導入するための方法には、例えば、国際特許出願公開番号WO200014257、WO2013126726、WO2012/129514、WO2014031687、WO2013/166321、WO2013/071154、WO2013/123061、米国特許出願公開番号US2002131960、US2013287748、US20130149337、米国特許第6,451,995号、同第7,446,190号、同第8,252,592号、同第8,339,645号、同第8,398,282号、同第7,446,179号、同第6,410,319号、同第7,070,995号、同第7,265,209号、同第7,354,762号、同第7,446,191号、同第8,324,353号及び同第8,479,118号、ならびに欧州特許出願番号EP2537416に記載されているもの、及び/又はSadelain et al.,2013;Davila et al.,2013;Turtle et al.,2012;Wu et al.,2012によって記載されたものが含まれる。いくつかの態様において、遺伝的に操作された抗原受容体には、米国特許第7,446,190号に記載されているようなCAR、及び国際特許出願公開番号WO/2014055668Alに記載されているものが含まれる。
【0092】
いくつかの実施形態において、上記CARは、活性化型又は刺激型のCAR、共刺激型のCAR(WO2014/055668を参照のこと)及び/又は阻害型のCAR(iCAR、Fedorov et al.,2013を参照のこと)をはじめとしたCARが含まれる。それらのCARは、一般に、1つ以上の細胞内のシグナル伝達構成要素に、いくつかの態様ではリンカー及び/又は膜貫通ドメインを介して連結された、細胞外の抗原(又はリガンド)結合ドメインを含む。そのような分子は、通常、天然の抗原受容体を介するシグナル、共刺激受容体とともにそのような受容体を介するシグナル、及び/又は共刺激受容体のみを介するシグナルを模倣するか近似している。
【0093】
本開示のある特定の実施形態は、細胞内のシグナル伝達ドメイン、膜貫通ドメイン、及び1つ以上のシグナル伝達モチーフを含む細胞外のドメインを含む、抗原特異的CARポリペプチド(免疫原性を低減するためにヒト化されたCAR(hCAR)を含む)をコードする核酸を含む核酸の使用に関する。ある特定の実施形態において、そのCARは、1つ以上の抗原の間で共有される空間を含むエピトープを認識し得る。ある特定の実施形態において、結合領域は、モノクローナル抗体の相補性決定領域、モノクローナル抗体の可変領域、及び/又はそれらの抗原結合フラグメントを含み得る。別の実施形態において、その特異性は、受容体に結合するペプチド(例えば、サイトカイン)に由来する。
【0094】
ヒトCAR核酸は、ヒト患者に対する細胞免疫療法を増強するために使用されるヒト遺伝子であり得ると企図される。具体的な実施形態において、本開示は、CARの完全長cDNA又はコード領域を含む。その抗原結合領域又はドメインは、特定のヒトモノクローナル抗体に由来する一本鎖可変フラグメント(scFv)のVH鎖及びVL鎖のフラグメント(例えば、参照により本明細書中に援用される米国特許第7,109,304号に記載されているもの)を含み得る。そのフラグメントは、ヒト抗原特異的抗体の任意の数の異なる抗原結合ドメインでもあり得る。より具体的な実施形態において、そのフラグメントは、ヒト細胞における発現のためにヒトのコドン使用頻度に最適化された配列によってコードされる抗原特異的scFvである。
【0095】
配置は、多量体であり得る(例えば、ダイアボディ又は多量体)。その多量体は、軽鎖及び重鎖の可変部分がダイアボディに交差対形成することによって形成される可能性が最も高い。その構築物のヒンジ部分には、完全欠失から、1つ目のシステインが維持されること、セリン置換ではなくプロリン置換であること、1つ目のシステインまで切断されることにまで及ぶ複数の選択肢があり得る。Fc部分を欠失させることができる。安定したかつ/又は二量体化する任意のタンパク質が、この目的にかない得る。Fcドメインのうちの1つだけ、例えば、ヒト免疫グロブリンのCH2ドメイン又はCH3ドメインを使用することができる。二量体化を改善するように改変されたヒト免疫グロブリンのヒンジ、CH2及びCH3領域を使用することもできる。免疫グロブリンのヒンジ部分だけを使用することもできる。CD8αの部分を使用することもできる。
【0096】
いくつかの実施形態において、上記CAR核酸は、膜貫通ドメイン及び改変されたCD28細胞内シグナル伝達ドメインなどの、他の共刺激受容体をコードする配列を含む。他の共刺激受容体としては、CD28、CD27、OX-40(CD134)、DAP10、DAP12及び4-1BB(CD137)のうちの1つ以上が挙げられるが、これらに限定されない。CD3ζによって惹起される1次シグナルに加えて、ヒトCARに挿入されたヒト共刺激受容体によって提供されるさらなるシグナルが、NK細胞の完全な活性化にとって重要であり、インビボでの持続性及び養子免疫療法の治療の成功の改善を助け得る。
【0097】
いくつかの実施形態において、CARは、養子療法によって標的化される特定の細胞型において発現される抗原などの特定の抗原(又はマーカー又はリガンド)、例えば、癌マーカー及び/又は減衰応答を誘導することを目的とした抗原(例えば、正常細胞型上又は非罹患細胞型上に発現される抗原)に対する特異性を有するように構築される。したがって、上記CARは通常、その細胞外の部分に、1つ以上の抗原結合分子(例えば、1つ以上の抗原結合フラグメント、抗原結合ドメインもしくは抗原結合部分)又は1つ以上の抗体可変ドメイン、及び/又は抗体分子を含む。いくつかの実施形態において、上記CARは、抗体分子の抗原結合部分(例えば、モノクローナル抗体(mAb)の可変重鎖(VH)及び可変軽鎖(VL)に由来する一本鎖抗体フラグメント(scFv))を含む。
【0098】
キメラ抗原受容体のある特定の実施形態において、その受容体の抗原特異的部分(抗原結合領域を含む細胞外ドメインと称され得る)は、腫瘍関連抗原又は病原体特異的抗原結合ドメインを含む。抗原には、デクチン-1などのパターン認識受容体によって認識される糖鎖抗原が含まれる。腫瘍関連抗原は、腫瘍細胞の細胞表面上に発現される限り、任意の種類であってよい。腫瘍関連抗原の例示的な実施形態としては、CD19、CD20、癌胎児抗原、αフェトプロテイン、CA-125、MUC-1、CD56、EGFR、c-Met、AKT、Her2、Her3、上皮性腫瘍抗原、メラノーマ関連抗原、変異型p53、変異型rasなどが挙げられる。ある特定の実施形態において、CARは、例えば腫瘍関連抗原の量が少ないとき、持続性を改善するために1つ以上のサイトカインと同時発現され得る。例えば、CARは、IL-7、IL-2、IL-15、IL-12、IL-18、IL-21又はそれらの組み合わせなどの1つ以上のサイトカインと同時発現され得る。
【0099】
キメラ受容体をコードするオープンリーディングフレームの配列は、ゲノムDNA起源、cDNA起源から得ることができるか、又は合成することができるか(例えば、PCRを介して)、又はそれらの組み合わせであり得る。イントロンはmRNAを安定化すると見出されているので、ゲノムDNAのサイズ及びイントロンの数に応じて、cDNA又はそれらの組み合わせを使用することが望ましい場合がある。また、mRNAを安定化するために内在性又は外来性の非コード領域を使用することもさらに有益であり得る。
【0100】
上記キメラ構築物は、裸のDNAとして又は好適なベクターに入った状態で免疫細胞に導入され得ることが企図される。裸のDNAを用いたエレクトロポレーションによって細胞を安定的にトランスフェクトする方法は、当該分野で公知である。例えば、米国特許第6,410,319号を参照のこと。裸のDNAとは、一般に、発現にとって適切な向きでプラスミド発現ベクターに含められたキメラ受容体をコードするDNAのことを指す。
【0101】
あるいは、キメラ構築物を免疫細胞に導入するために、ウイルスベクター(例えば、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター又はレンチウイルスベクター)を用いることができる。本開示の方法に従って使用するのに適したベクターは、免疫細胞において非複製性のベクターである。細胞内に維持されるそのウイルスのコピー数は、その細胞の生存能を維持するほど十分低いウイルスに基づくベクターが多数知られており、例えば、HIV、SV40、EBV、HSV又はBPVに基づくベクターが挙げられる。
【0102】
いくつかの態様において、抗原に特異的に結合する構成要素又は抗原特異的認識構成要素は、1つ以上の膜貫通ドメイン及び細胞内のシグナル伝達ドメインに連結される。いくつかの実施形態において、上記CARは、CARの細胞外ドメインに融合された膜貫通ドメインを含む。1つの実施形態において、そのCARにおけるドメインの1つと天然に会合する膜貫通ドメインが使用される。いくつかの場合において、その膜貫通ドメインは、受容体複合体の他のメンバーとの相互作用を最小限に抑えるためにそのようなドメインが同じ又は異なる表面膜タンパク質の膜貫通ドメインに結合するのを回避するように、選択されるか又はアミノ酸置換によって改変される。
【0103】
膜貫通ドメインは、いくつかの実施形態において、天然起源又は合成起源に由来する。起源が天然である場合、そのドメインは、いくつかの態様において、任意の膜結合型タンパク質又は膜貫通タンパク質に由来する。膜貫通領域は、T細胞受容体のα鎖、β鎖又はζ鎖、CD28、CD3ζ、CD3ε、CD3γ、CD3δ、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154、ICOS/CD278、GITR/CD357、NKG2D及びDAP分子に由来する(すなわち、それらの分子の膜貫通領域を少なくとも含む)膜貫通領域を含む。あるいは、膜貫通ドメインは、いくつかの実施形態において、合成の膜貫通ドメインである。いくつかの態様において、合成の膜貫通ドメインは、ロイシン及びバリンなどの疎水性残基を主に含む。いくつかの態様では、フェニルアラニン、トリプトファン及びバリンのトリプレットが、合成の膜貫通ドメインの各末端に見られる。
【0104】
ある特定の実施形態において、T細胞を遺伝的に改変するための本明細書中に開示されるプラットフォーム技術としては、(i)エレクトロポレーションデバイス(例えば、ヌクレオフェクター)を用いた非ウイルス遺伝子導入、(ii)エンドドメイン(例えば、CD28/CD3-ζ、CD137/CD3-ζ又は他の組み合わせ)を介してシグナル伝達するCAR、(iii)長さが不定の細胞外ドメインであって抗原認識ドメインを細胞表面に接続する細胞外ドメインを有するCAR、及びいくつかの場合では、(iv)CAR免疫細胞を頑強かつ数値的に拡大することができる、K562に由来する人工抗原提示細胞(aAPC)(Singh et al.,2008;Singh et al.,2011)が挙げられる。
【0105】
C.抗原
遺伝的に操作された異種抗原受容体によって標的化される抗原には、養子細胞療法を介して標的化される疾患、状態又は細胞型の状況において発現される抗原が含まれる。それらの疾患及び状態には、血液癌、免疫系の癌(例えば、リンパ腫、白血病及び/又はミエローマ、例えば、B、T及び骨髄性白血病、リンパ腫並びに多発性骨髄腫)をはじめとした癌及び腫瘍を含む、増殖性、腫瘍性及び悪性の疾患及び障害が含まれる。いくつかの実施形態において、抗原は、正常細胞若しくは正常組織又は非標的化細胞若しくは非標的化組織と比べて、その疾患又は状態の細胞上、例えば、腫瘍細胞上又は病原性細胞上に、選択的に発現されるか又は過剰発現される。他の実施形態において、抗原は、正常細胞上に発現され、かつ/又は操作された細胞上に発現される。
【0106】
任意の好適な抗原が、本方法において標的化され得る。その抗原は、ある特定の癌細胞に関連することもあるが、いくつかの場合では、非癌性細胞と関連しないこともある。例示的な抗原としては、感染性物質、自己(auto)抗原/自己(self)抗原、腫瘍関連抗原/癌関連抗原、及び腫瘍新抗原に由来する抗原性分子(Linnemann et al.,2015)が挙げられるが、これらに限定されない。特定の態様において、抗原としては、CD19、EBNA、CD123、HER2、CA-125、TRAIL/DR4、CD20、癌胎児抗原、αフェトプロテイン、CD56、AKT、Her3、上皮性腫瘍抗原、CD319(CS1)、ROR1、葉酸結合タンパク質、HIV-1エンベロープ糖タンパク質gp120、HIV-1エンベロープ糖タンパク質gp41、CD5、CD23、CD30、HERV-K、IL-11Rα、カッパー鎖、ラムダ鎖、CSPG4、CD33、CD47、CLL-1、U5snRNP200、CD200、BAFF-R、BCMA、CD99、p53、変異型p53、Ras、変異型ras、c-Myc、細胞質セリン/トレオニンキナーゼ(例えば、A-Raf、B-Raf及びC-Raf、サイクリン依存性キナーゼ)、MAGE-A1、MAGE-A2、MAGE-A3、MAGE-A4、MAGE-A6、MAGE-A10、MAGE-A12、MART-1、メラノーマ関連抗原、BAGE、DAM-6、-10、GAGE-1、-2、-8、GAGE-3、-4、-5、-6、-7B、NA88-A、MC1R、mda-7、gp75、Gp100、PSA、PSM、チロシナーゼ、チロシナーゼ関連タンパク質、TRP-1、TRP-2、ART-4、CAMEL、CEA、Cyp-B、hTERT、hTRT、iCE、MUC1、MUC2、ホスホイノシチド3-キナーゼ(PI3K)、TRK受容体、PRAME、P15、RU1、RU2、SART-1、SART-3、ウィルムス腫瘍抗原(WT1)、AFP、-カテニン/m、カスパーゼ-8/m、CDK-4/m、ELF2M、GnT-V、G250、HAGE、HSP70-2M、HST-2、KIAA0205、MUM-1、MUM-2、MUM-3、ミオシン/m、RAGE、SART-2、TRP-2/INT2、707-AP、アネキシンII、CDC27/m、TPI/mbcr-abl、BCR-ABL、インターフェロン制御因子4(IRF4)、ETV6/AML、LDLR/FUT、Pml/RAR、腫瘍関連カルシウムシグナル伝達物質1(TACSTD1)TACSTD2、受容体チロシンキナーゼ(例えば、上皮成長因子受容体(EGFR)(特に、EGFRvIII)、血小板由来成長因子受容体(PDGFR)、血管内皮成長因子受容体(VEGFR))、VEGFR2、細胞質チロシンキナーゼ(例えば、src-ファミリー、syk-ZAP70ファミリー)、インテグリン結合キナーゼ(ILK)、シグナル伝達性転写因子STAT3、STATS及びSTATE、低酸素誘導因子(例えば、HIF-1及びHIF-2)、核因子-カッパーB(NF-B)、Notch受容体(例えば、Notch1~4)、NY ESO1、c-Met、mammalian targets of rapamycin(mTOR)、WNT、細胞外シグナル制御キナーゼ(ERK)及びそれらの調節サブユニット、PMSA、PR-3、MDM2、メソテリン、renal cell carcinoma-5T4、SM22-α、炭酸脱水酵素I(CAI)及びIX(CAIX)(G250としても知られる)、STEAD、TEL/AML1、GD2、プロテイナーゼ3、hTERT、肉腫転座切断点、EphA2、ML-IAP、EpCAM、ERG(TMPRSS2 ETS融合遺伝子)、NA17、PAX3、ALK、アンドロゲン受容体、サイクリンB1、ポリシアル酸、MYCN、RhoC、GD3、フコシルGM1、メソテリアン、PSCA、sLe、PLAC1、GM3、BORIS、Tn、GLoboH、NY-BR-1、RGsS、SAGE、SART3、STn、PAX5、OY-TES1、精子タンパク質17、LCK、HMWMAA、AKAP-4、SSX2、XAGE1、B7H3、レグマイン、TIE2、Page4、MAD-CT-1、FAP、MAD-CT-2、fos関連抗原1、CBX2、CLDN6、SPANX、TPTE、ACTL8、ANKRD30A、CDKN2A、MAD2L1、CTAG1B、SUNC1及びLRRN1が挙げられる。
【0107】
抗原に対する配列の例は、当該分野で、例えば、GenBank(登録商標)データベースにおいて既知であり、例えば、以下の例を含む:CD19(アクセッション番号NG_007275.1)、EBNA(アクセッション番号NG_002392.2)、WT1(アクセッション番号NG_009272.1)、CD123(アクセッション番号NC_000023.11)、NY-ESO(アクセッション番号NC_000023.11)、EGFRvIII(アクセッション番号NG_007726.3)、MUC1(アクセッション番号NG_029383.1)、HER2(アクセッション番号NG_007503.1)、CA-125(アクセッション番号NG_055257.1)、WT1(アクセッション番号NG_009272.1)、Mage-A3(アクセッション番号NG_013244.1)、Mage-A4(アクセッション番号NG_013245.1)、Mage-A10(アクセッション番号NC_000023.11)、TRAIL/DR4(アクセッション番号NC_000003.12)及び/又はCEA(アクセッション番号NC_000019.10)。
【0108】
腫瘍関連抗原は、例として、前立腺癌、乳癌、直腸結腸癌、肺癌、膵臓癌、腎臓癌、中皮腫、卵巣癌、肝臓癌、脳癌、骨癌、胃癌、脾臓癌、精巣癌、子宮頸癌、肛門癌、胆嚢癌、甲状腺癌又は黒色腫に由来し得る。例示的な腫瘍関連抗原又は腫瘍細胞由来抗原としては、MAGE1、3及びMAGE4(又は他のMAGE抗原、例えば、国際特許公開番号WO99/40188に開示されているもの);PRAME;BAGE;RAGE、Lage(NY ESO1としても知られる);SAGE;及びHAGE又はGAGEが挙げられる。腫瘍抗原のこれらの非限定的な例は、黒色腫、肺癌、肉腫及び膀胱癌などの広範囲の腫瘍タイプにおいて発現される。例えば、米国特許第6,544,518号を参照のこと。前立腺癌の腫瘍関連抗原としては、例えば、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、前立腺特異的抗原(PSA)、前立腺酸性リン酸塩、NKX3.1及び前立腺の6回膜貫通上皮抗原(STEAP)が挙げられる。
【0109】
他の腫瘍関連抗原としては、Plu-1、HASH-1、HasH-2、Cripto及びCriptinが挙げられる。さらに、腫瘍抗原は、多くの癌の処置において有用な自己ペプチドホルモン、例えば、短い10アミノ酸長のペプチドである完全長の性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)であり得る。
【0110】
腫瘍抗原には、HER-2/neuの発現などの腫瘍関連抗原の発現を特徴とする癌に由来する腫瘍抗原が含まれる。目的の腫瘍関連抗原には、系列特異的腫瘍抗原、例えば、メラノサイト-黒色腫系列抗原MART-1/Melan-A、gp100、gp75、mda-7、チロシナーゼ及びチロシナーゼ関連タンパク質が含まれる。
【0111】
抗原には、腫瘍細胞において変異した遺伝子由来の、又は正常細胞と比べて腫瘍細胞において異なるレベルで転写される遺伝子由来の、エピトープ領域又はエピトープペプチド(例えば、テロメラーゼ酵素、サバイビン、メソテリン、変異型ras、bcr/abl再配列、Her2/neu、変異型又は野生型p53、シトクロムP450 1B1、及びN-アセチルグルコサミン転移酵素-Vなどの異常に発現されるイントロン配列);ミエローマ及びB細胞リンパ腫においてユニークなイディオタイプを生成する免疫グロブリン遺伝子のクローン性再配列;オンコウイルスのプロセスに由来するエピトープ領域又はエピトープペプチドを含む腫瘍抗原(例えば、ヒトパピローマウイルスタンパク質E6及びE7);エプスタイン・バーウイルスタンパク質LMP2;腫瘍選択的に発現する変異していない腫瘍胎児性タンパク質(例えば、癌胎児抗原及びαフェトプロテイン)が含まれ得る。
【0112】
他の実施形態において、抗原は、病原性微生物又は日和見病原性微生物(本明細書中で感染症微生物とも呼ばれる)(例えば、ウイルス、真菌、寄生生物及び細菌)から得られるか又はそれらに由来する。ある特定の実施形態において、そのような微生物に由来する抗原には、完全長タンパク質が含まれる。
【0113】
本明細書中に記載される方法において使用が企図される抗原を有する例証的な病原性生物としては、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、単純ヘルペスウイルス(HSV)、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、サイトメガロウイルス(CMV)、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、インフルエンザA、B及びC、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、ポリオーマウイルス(例えば、BKウイルス及びJCウイルス)、アデノウイルス、メチシリン耐性Staphylococcus aureus(MRSA)を含むブドウ球菌属の種、ならびにStreptococcus pneumoniaeを含む連鎖球菌属の種が挙げられる。当業者が理解するように、本明細書中に記載されるような抗原として使用するためのこれら及び他の病原性微生物に由来するタンパク質、ならびにそれらのタンパク質をコードするヌクレオチド配列は、刊行物ならびにGENBANK(登録商標)、SWISS-PROT(登録商標)及びTREMBL(登録商標)などの公的データベースにおいて特定され得る。
【0114】
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に由来する抗原には、HIVビリオン構造タンパク質(例えば、gp120、gp41、p17、p24)、プロテアーゼ、逆転写酵素、又はtat、rev、nef、vif、vpr及びvpuによってコードされるHIVタンパク質のうちのいずれかが含まれる。
【0115】
単純ヘルペスウイルス(例えば、HSV1及びHSV2)に由来する抗原としては、HSV後期遺伝子から発現されるタンパク質が挙げられるが、これらに限定されない。後期群の遺伝子は、ビリオン粒子を形成するタンパク質を主にコードする。そのようなタンパク質としては、ウイルスカプシドを形成する(UL)の5つのタンパク質:UL6、UL18、UL35、UL38ならびに主要カプシドタンパク質UL19、UL45及びUL27が挙げられ、これらの各々が、本明細書中に記載されるような抗原として使用され得る。本明細書中で抗原としての使用が企図される他の例証的なHSVタンパク質としては、ICP27(H1、H2)、糖タンパク質B(gB)及び糖タンパク質D(gD)タンパク質が挙げられる。HSVゲノムは、少なくとも74個の遺伝子を含み、その各々が、抗原として使用され得る可能性があるタンパク質をコードする。
【0116】
サイトメガロウイルス(CMV)に由来する抗原としては、CMV構造タンパク質、ウイルス複製の前初期及び初期に発現されるウイルス抗原、糖タンパク質I及びIII、カプシドタンパク質、コートタンパク質、低分子マトリックスタンパク質(lower matrix protein)pp65(ppUL83)、p52(ppUL44)、IE1及び1E2(UL123及びUL122)、UL128~UL150の遺伝子クラスターのタンパク質産物(Rykman,et al.,2006)、エンベロープ糖タンパク質B(gB)、gH、gN、ならびにpp150が挙げられる。当業者が理解するように、本明細書中に記載される抗原として使用するためのCMVタンパク質は、GENBANK(登録商標)、SWISS-PROT(登録商標)及びTREMBL(登録商標)などの公的データベースにおいて特定され得る(例えば、Bennekov et al.,2004;Loewendorf et al.,2010;Marschall et al.,2009を参照のこと)。
【0117】
ある特定の実施形態において使用が企図されるエプスタイン・バンウイルス(EBV)に由来する抗原としては、EBV溶解性タンパク質gp350及びgp110、エプスタイン・バン核抗原(EBNA)-1、EBNA-2、EBNA-3A、EBNA-3B、EBNA-3C、EBNA-リーダータンパク質(EBNA-LP)、ならびに潜伏感染膜タンパク質(LMP)-1、LMP-2A及びLMP-2Bを含む、潜伏感染サイクル中に生成されるEBVタンパク質が挙げられる(例えば、Lockey et al.,2008を参照のこと)。
【0118】
本明細書中で使用が企図される呼吸器合胞体ウイルス(RSV)に由来する抗原には、RSVゲノムによってコードされる11個のタンパク質又はそれらの抗原性フラグメント:NS1、NS2、N(ヌクレオカプシドタンパク質)、M(マトリックスタンパク質)SH、G及びF(ウイルスコートタンパク質)、M2(第2のマトリックスタンパク質)、M2-1(伸長因子)、M2-2(転写制御)、RNAポリメラーゼ、ならびにリンタンパク質Pのうちのいずれかが含まれる。
【0119】
使用が企図される水疱性口内炎ウイルス(VSV)に由来する抗原には、VSVゲノムによってコードされる主要な5つのタンパク質及びそれらの抗原性フラグメント:大タンパク質(L)、糖タンパク質(G)、核タンパク質(N)、リンタンパク質(P)及びマトリックスタンパク質(M)のうちのいずれか1つが含まれる(例えば、Rieder et al.,1999を参照のこと)。
【0120】
ある特定の実施形態において使用が企図されるインフルエンザウイルスに由来する抗原としては、赤血球凝集素(HA)、ノイラミニダーゼ(NA)、核タンパク質(NP)、マトリックスタンパク質M1及びM2、NS1、NS2(NEP)、PA、PB1、PB1-F2、ならびにPB2が挙げられる。
【0121】
例示的なウイルス抗原としては、アデノウイルスのポリペプチド、アルファウイルスのポリペプチド、カリシウイルスのポリペプチド(例えば、カリシウイルスのカプシド抗原)、コロナウイルスのポリペプチド、ジステンパーウイルスのポリペプチド、エボラウイルスのポリペプチド、エンテロウイルスのポリペプチド、フラビウイルスのポリペプチド、肝炎ウイルス(AE)のポリペプチド(B型肝炎のコア又は表面抗原、C型肝炎ウイルスのE1もしくはE2糖タンパク質、コア又は非構造タンパク質)、ヘルペスウイルスのポリペプチド(単純ヘルペスウイルス又は水痘帯状疱疹ウイルスの糖タンパク質を含む)、感染性腹膜炎ウイルスのポリペプチド、白血病ウイルスのポリペプチド、マールブルグウイルスのポリペプチド、オルトミクソウイルスのポリペプチド、パピローマウイルスのポリペプチド、パラインフルエンザウイルスのポリペプチド(例えば、赤血球凝集素ポリペプチド及びノイラミニダーゼポリペプチド)、パラミクソウイルスのポリペプチド、パルボウイルスのポリペプチド、ペスチウイルスのポリペプチド、ピコルナウイルスのポリペプチド(例えば、ポリオウイルスのカプシドポリペプチド)、ポックスウイルスのポリペプチド(例えば、ワクシニアウイルスのポリペプチド)、狂犬病ウイルスのポリペプチド(例えば、狂犬病ウイルスの糖タンパク質G)、レオウイルスのポリペプチド、レトロウイルスのポリペプチド、及びロタウイルスのポリペプチドも挙げられるが、これらに限定されない。
【0122】
ある特定の実施形態において、抗原は、細菌抗原であり得る。ある特定の実施形態において、目的の細菌抗原は、分泌型ポリペプチドであり得る。他のある特定の実施形態において、細菌抗原には、細菌の細胞外面上に露出したポリペプチドの一部を有する抗原が含まれる。
【0123】
使用が企図される、メチシリン耐性Staphylococcus aureus(MRSA)を含むブドウ球菌属の種に由来する抗原としては、ビルレンス制御因子、例えば、Agr系、Sar及びSae、Arl系、Sarホモログ(Rot、MgrA、SarS、SarR、SarT、SarU、SarV、SarX、SarZ及びTcaR)、Srr系ならびにTRAPが挙げられる。抗原として役立ち得る他のブドウ球菌属のタンパク質としては、Clpタンパク質、HtrA、MsrR、アコニターゼ、CcpA、SvrA、Msa、CfvA及びCfvBが挙げられる(例えば、Staphylococcus:Molecular Genetics,2008 Caister Academic Press,Ed.Jodi Lindsayを参照のこと)。Staphylococcus aureusの2種(N315及びMu50)のゲノムが、配列決定済みであり、例えば、PATRIC(PATRIC:The VBI PathoSystems Resource Integration Center,Snyder et al.,2007)において公的に入手可能である。当業者が理解するように、抗原として使用するためのブドウ球菌属のタンパク質は、GenBank(登録商標)、Swiss-Prot(登録商標)及びTrEMBL(登録商標)などの他の公的データベースにおいても特定され得る。
【0124】
本明細書中に記載されるある特定の実施形態において使用が企図されるStreptococcus pneumoniaeに由来する抗原としては、ニューモリシン、PspA、コリン結合タンパク質A(CbpA)、NanA、NanB、SpnHL、PavA、LytA、Pht及びピリンタンパク質(RrgA;RrgB;RrgC)が挙げられる。Streptococcus pneumoniaeの抗原性タンパク質も、当該分野で公知であり、いくつかの実施形態において抗原として使用され得る(例えば、Zysk et al.,2000を参照のこと)。Streptococcus pneumoniaeの毒性株の全ゲノム配列は、配列決定済みであり、当業者が理解するように、本明細書中で使用するためのS.pneumoniaeタンパク質は、GENBANK(登録商標)、SWISS-PROT(登録商標)及びTREMBL(登録商標)などの他の公的データベースにおいても特定され得る。本開示に係る抗原として特に興味深いタンパク質としては、肺炎球菌の表面に露出すると予測される病原性因子及びタンパク質が挙げられる(例えば、Frolet et al.,2010を参照のこと)。
【0125】
抗原として使用され得る細菌抗原の例としては、アクチノマイセス属のポリペプチド、バチルス属のポリペプチド、バクテロイデス属のポリペプチド、ボルデテラ属のポリペプチド、バルトネラ属のポリペプチド、ボレリア属のポリペプチド(例えば、B.burgdorferi OspA)、ブルセラ属のポリペプチド、カンピロバクター属のポリペプチド、カプノサイトファーガ属のポリペプチド、クラミジア属のポリペプチド、コリネバクテリウム属のポリペプチド、コクシエラ属のポリペプチド、デルマトフィルス属のポリペプチド、エンテロコッカス属のポリペプチド、エーリキア属のポリペプチド、エシェリキア属のポリペプチド、フランシセラ属のポリペプチド、フソバクテリウム属のポリペプチド、ヘモバルトネラ属のポリペプチド、ヘモフィルス属のポリペプチド(例えば、H.influenzae b型外膜タンパク質)、ヘリコバクター属のポリペプチド、クレブシエラ属のポリペプチド、L型細菌のポリペプチド、レプトスピラ属のポリペプチド、リステリア属のポリペプチド、マイコバクテリウム属のポリペプチド、マイコプラズマ属のポリペプチド、ナイセリア属のポリペプチド、ネオリケッチア属のポリペプチド、ノカルジア属のポリペプチド、パスツレラ属のポリペプチド、ペプトコッカス属のポリペプチド、ペプトストレプトコッカス属のポリペプチド、肺炎球菌(Pneumococcus)のポリペプチド(すなわち、S.pneumoniaeのポリペプチド)、プロテウス属のポリペプチド、シュードモナス属のポリペプチド、リケッチア属のポリペプチド、ロシャリメア属のポリペプチド、サルモネラ属のポリペプチド、シゲラ属のポリペプチド、ブドウ球菌(Staphylococcus)属のポリペプチド、A群連鎖球菌のポリペプチド(例えば、S.pyogenesのMタンパク質)、B群連鎖球菌(S.agalactiae)のポリペプチド、トレポネーマ属のポリペプチド、及びエルシニア属のポリペプチド(例えば、Y pestisのF1及びV抗原)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0126】
真菌抗原の例としては、アブシディア属のポリペプチド、アクレモニウム属のポリペプチド、アルテルナリア属のポリペプチド、アスペルギルス属のポリペプチド、バシジオボラス属のポリペプチド、ビポラリス属のポリペプチド、ブラストミセス属のポリペプチド、カンジダ属のポリペプチド、コクシジオイデス属のポリペプチド、コニディオボルス属のポリペプチド、クリプトコッカス属のポリペプチド、カーバラリア属のポリペプチド、エピデルモフィトン属のポリペプチド、エクソフィアラ属のポリペプチド、ゲオトリクム属のポリペプチド、ヒストプラズマ属のポリペプチド、マヅレラ属のポリペプチド、マラセチア属のポリペプチド、ミクロスポルム属のポリペプチド、モニリエラ属のポリペプチド、モルチエレラ属のポリペプチド、ケカビ属(Mucor)のポリペプチド、ペシロマイセス属のポリペプチド、ペニシリウム属のポリペプチド、フィアレモニウム属(Phialemonium)のポリペプチド、フィアロフォラ属のポリペプチド、プロトテカ属のポリペプチド、シュードアレシェリア属のポリペプチド、シュードミクロドキウム属(Pseudomicrodochium)のポリペプチド、ピシウム属(Pythium)のポリペプチド、リノスポリジウム属のポリペプチド、クモノスカビ属(Rhizopus)のポリペプチド、スコレコバシジウム属(Scolecobasidium)のポリペプチド、スポロトリクス属のポリペプチド、ステンフィリウム属(Stemphylium)のポリペプチド、白癬菌属(Trichophyton)のポリペプチド、トリコスポロン属のポリペプチド及びキシロヒファ属(Xylohypha)のポリペプチドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0127】
原生動物の寄生生物抗原の例としては、バベシア属のポリペプチド、バランチジウム属のポリペプチド、ベスノイチア属(Besnoitia)のポリペプチド、クリプトスポリジウム属のポリペプチド、エイメリア属のポリペプチド、エンセファリトゾーン属のポリペプチド、エントアメーバ属(Entamoeba)のポリペプチド、ジアルジア属のポリペプチド、ハモンディア属(Hammondia)のポリペプチド、ヘパトゾーン属のポリペプチド、イソスポラ属のポリペプチド、リーシュマニア属のポリペプチド、微胞子虫門(Microsporidia)のポリペプチド、ネオスポラ属のポリペプチド、ノゼマ属のポリペプチド、ペンタトリコモナス属のポリペプチド、プラスモディウム属のポリペプチドが挙げられるが、これらに限定されない。蠕虫寄生生物抗原の例としては、アカントケイロネマ属のポリペプチド、アエルロストロンギルウス属(Aelurostrongylus)のポリペプチド、鉤虫属(Ancylostoma)のポリペプチド、住血線虫属(Angiostrongylus)のポリペプチド、回虫属(Ascaris)のポリペプチド、ブルギア属のポリペプチド、ブノストムム属のポリペプチド、キャピラリア属のポリペプチド、チャベルチア属(Chabertia)のポリペプチド、クーペリア属のポリペプチド、クレノソマ属(Crenosoma)のポリペプチド、ディクチオカウルス属のポリペプチド、ジオクトフィム(Dioctophyme)属のポリペプチド、ディペタロネマ属のポリペプチド、裂頭条虫属(Diphyllobothrium)のポリペプチド、ジプリジウム属のポリペプチド、イヌ糸状虫属(Dirofilaria)のポリペプチド、ドラクンクルス属のポリペプチド、エンテロビウス属のポリペプチド、フィラロイデス属(Filaroides)のポリペプチド、ヘモンクス属(Haemonchus)のポリペプチド、ラゴキルアスカリス属(Lagochilascaris)のポリペプチド、ロア糸状虫属(Loa)のポリペプチド、マンソネラ属のポリペプチド、ムエレリウス属(Muellerius)のポリペプチド、ナノフィエツス属(Nanophyetus)のポリペプチド、アメリカ鉤虫属(Necator)のポリペプチド、ネマトジルス属のポリペプチド、腸結節虫属(Oesophagostomum)のポリペプチド、オンコセルカ属のポリペプチド、オピストルキス属のポリペプチド、オステルタギア属のポリペプチド、パラフィラリア属(Parafilaria)のポリペプチド、肺吸虫属(Paragonimus)のポリペプチド、パラスカリス属(Parascaris)のポリペプチド、フィサロプテラ属のポリペプチド、プロトストロンギルス属(Protostrongylus)のポリペプチド、セタリア属のポリペプチド、スピロセルカ属(Spirocerca)のポリペプチド スピロメトラ属のポリペプチド、ステファノフィラリア属のポリペプチド、ストロンギロイデス属のポリペプチド、ストロンギルス属のポリペプチド、テラジア属(Thelazia)のポリペプチド、トキサスカリス属(Toxascaris)のポリペプチド、トキソカラ属(Toxocara)のポリペプチド、トリキネラ属(Trichinella)のポリペプチド、毛様線虫属(Trichostrongylus)のポリペプチド、鞭虫属(Trichuris)のポリペプチド、ウンシナリア属のポリペプチド及びウケレリア属(Wuchereria)のポリペプチド(例えば、P.falciparumのスポロゾイト周囲ポリペプチド(PfCSP))、スポロゾイト表面タンパク質2(PfSSP2)、肝臓状態抗原(liver state antigen)1のカルボキシル末端(PfLSA1 c末端)、ならびに搬出タンパク質1(PfExp-1)、ニューモシスチス属(Pneumocystis)のポリペプチド、サルコシスティス属のポリペプチド、住血吸虫属(Schistosoma)のポリペプチド、タイレリア属(Theileria)のポリペプチド、トキソプラズマ属のポリペプチド、ならびにトリパノソーマ属のポリペプチドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0128】
外寄生生物抗原の例としては、ノミ;カタダニ及びヒメダニを含むマダニ;ハエ、例えば、小虫、蚊、スナバエ、ブユ、ウマバエ、ノサシバエ、メクラアブ、ツェツェバエ、サシバエ、蠅蛆症の原因となるハエ及びヌカカ(biting gnats);アリ;クモ、シラミ;ダニ;ならびに半翅類の昆虫、例えば、トコジラミ及びサシガメのポリペプチド(抗原ならびにアレルゲンを含む)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0129】
V.本開示の方法
本開示の実施形態には、療法の一部としてTIL及び/又はT細胞を使用することにより、少なくとも癌(血液学的悪性腫瘍又は固形腫瘍を含む)を含む任意の種類の医学的状態を処置する、又は予防する改善された免疫療法方法が含まれる。血液学的悪性腫瘍には、少なくとも骨髄の癌、T細胞又はB細胞の悪性腫瘍、白血病、リンパ腫、芽細胞腫及び骨髄腫などが含まれる。具体的な例には、少なくとも急性骨髄性白血病、B細胞急性リンパ芽球性白血病、T細胞急性リンパ芽球性白血病、骨髄異形成症候群、慢性リンパ球性白血病/小リンパ球性リンパ腫、濾胞性リンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、ヘアリー細胞白血病、形質細胞骨髄腫又は多発性骨髄腫、及び成熟T/NK新生物などが含まれる。固形腫瘍の例には、脳、肺、乳房、前立腺、膵臓、胃、肛門、頭頸部、骨、皮膚、肝臓、腎臓、甲状腺、精巣、卵巣、子宮内膜、胆嚢、腹膜、子宮頸部、結腸、直腸、外陰部、脾臓、及びそれらの組み合わせなどの腫瘍が含まれる。
【0130】
癌は具体的には下記の組織学的タイプのものである場合があり、だが、それらに限定されない:新生物、悪性;癌腫;癌腫、未分化型;巨細胞癌及び紡錘細胞癌;小細胞癌;乳頭癌;扁平上皮癌;リンパ上皮性癌;基底細胞癌;毛母癌(pilomatrix carcinoma);移行上皮癌;乳頭状移行上皮癌;腺癌;ガストリノーマ、悪性;胆管癌;肝細胞癌;肝細胞癌と胆管癌との混合型;索状腺癌;腺様嚢胞癌;腺腫性ポリープにおける腺癌;腺癌、家族性大腸ポリポーシス;固形癌;カルチノイド腫瘍、悪性;鰓肺胞(branchiolo-alveolar)腺癌;乳頭状腺癌;嫌色素性癌;好酸性(acidophil)癌;好酸性(oxyphilic)腺癌;好塩基性癌;明細胞腺癌;顆粒細胞癌;濾胞腺癌;乳頭状濾胞腺癌;非被包性硬化性癌;副腎皮質癌;類内膜癌(endometroid carcinoma);皮膚付属器癌;アポクリン腺癌;皮脂腺癌;耳垢腺癌;粘表皮癌;嚢胞腺癌;乳頭状嚢胞腺癌;乳頭状漿液性嚢胞腺癌;粘液性嚢胞腺癌;粘液性腺癌;印環細胞癌;浸潤性乳管癌;髄様癌;小葉癌;炎症性乳癌;パジェット病、乳房;腺房細胞癌;腺扁平上皮癌;扁平上皮化生を伴う腺癌;胸腺腫、悪性;卵巣間質腫瘍、悪性;莢膜細胞腫、悪性;顆粒膜細胞腫、悪性;アンドロブラストーマ、悪性;セルトリ細胞癌;ライディッヒ細胞腫、悪性;脂質細胞腫瘍、悪性;パラガングリオーマ、悪性;乳房外パラガングリオーマ、悪性;褐色細胞腫;グロムス血管肉腫;悪性メラノーマ;無色素性メラノーマ;表在拡大型メラノーマ;悪性黒子型メラノーマ;末端黒子型メラノーマ;結節性メラノーマ;巨大色素性母斑における悪性メラノーマ;類上皮細胞メラノーマ;青色母斑、悪性;肉腫;線維肉腫;線維性組織球腫、悪性;粘液肉腫;脂肪肉腫;平滑筋肉腫;横紋筋肉腫;胎児性横紋筋肉腫;胞巣状横紋筋肉腫;間質性肉腫;混合腫瘍、悪性;ミュラー管混合腫瘍;腎芽細胞腫;肝芽細胞腫;癌肉腫;間葉腫、悪性;ブレンナー腫瘍、悪性;葉状腫瘍、悪性;滑膜肉腫;中皮腫、悪性;未分化胚細胞腫;胎児性癌;奇形腫、悪性;卵巣甲状腺腫、悪性;絨毛癌;中腎腫、悪性;血管肉腫;血管内皮腫、悪性;カポジ肉腫;血管周囲細胞腫、悪性;リンパ管肉腫;骨肉腫;傍骨性骨肉腫;軟骨肉腫;軟骨芽細胞腫、悪性;間葉性軟骨肉腫;骨の巨細胞腫;ユーイング肉腫;歯原性腫瘍、悪性;エナメル上皮歯牙肉腫;エナメル上皮腫、悪性;エナメル上皮線維肉腫;松果体腫、悪性;脊索腫;神経膠腫、悪性;上衣細胞腫;星細胞腫;原形質性星細胞腫;原線維性星細胞腫;星状膠芽細胞腫;神経膠芽細胞腫;乏突起膠腫;乏突起膠芽細胞腫;未分化神経外胚葉性;小脳肉腫;神経節芽細胞腫;神経芽細胞腫;網膜芽細胞腫;嗅神経原性腫瘍;髄膜腫、悪性;神経線維肉腫;神経鞘腫、悪性;顆粒細胞腫瘍、悪性;悪性リンパ腫;ホジキン病;ホジキン側肉芽腫;悪性リンパ腫、小リンパ球性;悪性リンパ腫、大細胞型、びまん性;悪性リンパ腫、濾胞性;菌状息肉腫;他の指定された非ホジキンリンパ腫;B細胞リンパ腫;低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL);小リンパ球性(SL)NHL;中悪性度/濾胞性NHL;中悪性度びまん性NHL;高悪性度免疫芽球性NHL;高悪性度リンパ芽球性NHL;高悪性度小非切れ込み核細胞リンパ腫(high grade small non-cleaved cell NHL);巨大病変NHL;マントル細胞リンパ腫;AIDS関連リンパ腫;ワルデンシュトレームマクログロブリン血症;悪性組織球腫;多発性骨髄腫;肥満細胞肉腫;免疫増殖性小腸疾患;白血病;リンパ性白血病;形質細胞性白血病;赤白血病;リンパ肉腫細胞白血病;骨髄性白血病:好塩基球性白血病;好酸球性白血病;単球性白血病;肥満細胞白血病;巨核芽球性白血病;骨髄性肉腫;有毛細胞白血病;慢性リンパ性白血病(CLL);急性リンパ芽球性白血病(ALL);急性骨髄性白血病(AML);及び慢性骨髄芽球性白血病。
【0131】
本開示の方法は、癌を処置するためのTIL(拡大されているか否かを問わない)及び/又はT細胞(拡大されているか否かを問わない)による免疫療法(養子細胞療法を含む)を包含し、その免疫療法は、放出される阻害性TGF-β(例えば、癌細胞から)を阻害するか、又は関連する相互作用(例えば、TGF-βとインテグリンとの関係)を阻害するか、又は(その細胞におけるその受容体をノックアウトすることによって)TGF-βが免疫細胞に結合する能力を阻害することによって、その免疫療法の有効性を高めるように改善されたものである。そのようなTIL及び/又はT細胞の改変により、癌の処置における有効性を高めることができる。
【0132】
いくつかの実施形態において、本開示は、有効量の本開示のTIL及び/又はT細胞を投与する工程を含む、免疫療法のための方法を提供し、そのTIL及び/又はT細胞は、特別に改変されている。1つの実施形態において、少なくとも、レシピエントにおいて免疫応答を誘発する特定のTIL及び/又はT細胞によって、医学的疾患又は医学的障害が処置される。本開示のある特定の実施形態では、免疫応答を誘発する特定のTIL及び/又はT細胞集団を移入することによって、任意の癌が処置される。TIL及び/又はT細胞が、所望の抗原を標的化できる分子(例えば、異種抗原受容体)を含むとき、有効量の抗原特異的細胞療法を個体に投与する工程を含む、個体の癌を処置するため又はその進行を遅延させるための方法が、本明細書中に提供される。
【0133】
本開示の特定の実施形態において、有効量のTIL及び/又はT細胞は、それを必要とする個体(例えば、任意の種類の癌を有する個体)に送達される。次いで、それらの細胞は、その個体の免疫系を増強して、癌細胞を攻撃する。いくつかの場合では、その個体にTIL及び/又は操作されたT細胞が1回以上提供される。個体にTIL及び/又はT細胞が2回以上提供される場合、投与間の時間は、その個体において増殖するのに十分な時間であるべきであり、具体的な実施形態では、投与間の時間は、1、2、3、4、5、6、7日間若しくはそれ以上であり得る。連続した投与は、互いに量が同一であってもよいし、そうでなくてもよい。いくつかの場合では、連続した投与の用量は、経時的に減少させるか、又は経時的に増加させる。
【0134】
本開示の方法は、TGFBR2及び/又はTIGIT及び/又はCD7及び/又はPD-1及び/又はTIM-3をノックアウトするために操作されたTIL及び/又はT細胞を含む有効量の組成物の送達を包含する。いくつかの場合では、複数の細胞の集団が存在し、その単一のTIL及び/又は単一のT細胞の各々は、TGFBR2及びTIGIT及びCD7及びPD-1及びTIM-3がノックアウトされているのに対して、他の場合において、その集団は、TGFBR2がノックアウトされているかつ/又はTIGITがノックアウトされているかつ/又はCD7がノックアウトされているかつ/又はPD-1がノックアウトされているかつ/又はTIM-3がノックアウトされている、TIL細胞及び/又はT細胞の混合物である。2つ以上の構成要素のある順序での送達が望まれる場合、送達が治療的に有効である限り、その順序は任意の種類であってよい。具体的な実施形態において、1つ以上の所望の遺伝子がノックアウトされているTIL細胞及び/又はT細胞の送達は、第2の治療の前に行われ、第2の治療が、最初のTIL及び/又は操作されたT細胞の工程が無い場合よりも有効になる。
【0135】
操作されたTILと操作されたT細胞の両方を、それを必要とする個体に投与する実施形態において、その操作されたTILと操作されたT細胞とは、同じ製剤に存在してもよいし、そうでなくてもよい。操作されたTILと操作されたT細胞とが同じ製剤に存在する場合、それらは、実質的に等量で存在してもよいし、そうでなくてもよい。例えば、操作されたTIL及び操作されたT細胞に対して用いられる特定の比が存在し得る。具体的な場合において、その比は、1:1、1:2、1:5、1:10、1:25、1:50、1:100、1:250、1:1000、1:10000、及びこれらの間で導き出せる任意の比であり得る。操作されたTILと操作されたT細胞とが、同じ製剤に存在しない場合、それらは、個体に同時に投与されてもよいし、そうでなくてもよい。それらは、個体に同時に投与されるか否かに関係なく、同じ投与経路によって送達されてもよいし、そうでなくてもよい。具体的な場合において、操作されたTIL及び操作されたT細胞は、同じ製剤における場合を含めて、静脈内に投与される。それらが別々に投与されるとき、それは任意の順序であってよい。別個の投与の場合、投与間の時間は、任意の好適な時間、例えば、1~60秒以内、1~60分以内、1~7日以内、1~4週間以内、1~12ヶ月以内又はそれ以上、及びこれらの間で導き出せる任意の時間であり得る。
【0136】
操作されたTILと操作されたT細胞の両方を個体に投与するいくつかの実施形態において、それらの全体的な影響は、その個体の癌の処置に関して相加的であってもよいし、相乗的であってもよい。
【0137】
IV.医薬組成物
本開示の医薬組成物は、医薬的に許容され得る担体に溶解又は分散された、TGFBR2及び/又はTIGIT及び/又はCD7及び/又はPD-1及び/又はTIM-3の発現が改変されている、有効量の操作されたTIL及び/又は操作されたT細胞(及び/又はエキソビボ若しくはインビボでそれを作製するための試薬)を含む。語句「医薬的に又は薬理学的に許容され得る」とは、例えばヒトなどの動物に適宜投与されたとき、有害反応、アレルギー反応又は他の不都合な反応をもたらさない分子実体及び組成物のことを指す。操作されたTIL及び/又は操作されたT細胞(及び/又はエキソビボ若しくはインビボにおいてそれを作製するための試薬)を含む医薬組成物の調製は、本開示に照らせば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,21stEd.Lippincott Williams and Wilkins,2005(参照により本明細書中に援用される)によって例示されているように、当業者に公知である。さらに、動物(例えば、ヒト)への投与の場合、調製物は、FDA Office of Biological Standardsが要求する無菌性、発熱性、一般的な安全性及び純度の規格を満たすべきであることが理解される。
【0138】
本明細書中で使用される場合、「医薬的に許容され得る担体」には、当業者には知られているであろう、任意のそしてすべての溶媒、分散媒体、被覆剤、界面活性剤、酸化防止剤、防腐剤(例えば、抗菌剤、抗真菌剤)、等張剤、吸収遅延剤、塩、防腐剤、薬物、薬物安定剤、ゲル、結合剤、賦形剤、崩壊剤、滑剤、甘味剤、矯味矯臭剤、色素など、及びそれらの組み合わせが含まれる(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第18版(Mack Printing Company、1990年、1289頁~1329頁)を参照のこと;これは参照によって本明細書中に組み込まれる)。任意の従来の担体は、有効成分と配合禁忌である場合を除いて、医薬組成物におけるその使用が意図される。
【0139】
医薬組成物は、固体形態、液体形態又はエアロゾル形態で投与されることになるかどうかに依存して、また、注射のような投与経路のために無菌である必要があるかどうかに依存して、異なるタイプの担体を含む場合がある。現時点で開示された組成物は、静脈内に、皮内に、経皮的に、クモ膜下腔内に、動脈内に、腹腔内に、鼻腔内に、膣内に、直腸内に、局所的に、筋肉内に、皮下に、粘膜に、経口的に、局所的に、局在的に、吸入(例えば、エアロゾル吸入)、注射、注入、持続注入、標的細胞を直接に浸ける限局性灌流、カテーテルを介して、洗浄(lavage)を介して、クリームで、脂質組成物(例えば、リポソーム)で、若しくは他の方法によって、又は当業者に知られているようなそれらの任意の組み合わせによって投与され得る。
【0140】
操作されたTIL及び/又は操作されたT細胞(並びに/あるいはこれらをエクスビボ又はインビボで生じさせるための試薬)は、フリーの塩基形態、中性形態又は塩形態で組成物に配合される場合がある。医薬的に許容され得る塩には、酸付加塩、例えば、タンパク質性組成物のフリーのアミノ基により形成される酸付加塩、あるいは無機酸(例えば、塩酸又はリン酸など)、又は、酢酸、シュウ酸、酒石酸若しくはマンデル酸のような有機酸により形成される酸付加塩が含まれる。フリーのカルボキシル基により形成される塩はまた、無機塩基(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム又は水酸化第二鉄など)、あるいはイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン又はプロカインのような有機塩基に由来することができる。配合されると、溶液が、投薬処方と適合する様式で、かつ、治療上有効な量で投与されるであろう。配合物は、様々な投薬形態物で、例えば、非経口投与のために配合される投薬形態物(例えば、注射可能な溶液、又は肺送達用エアロゾルなど)、又は消化管投与のために配合される投薬形態物(例えば、薬物放出カプセルなど)などで容易に投与される。
【0141】
さらに、本開示によれば、投与のために好適である本開示の組成物は、不活性な希釈剤を伴って、又は伴うことなく、医薬的に許容され得る担体において提供される。担体は同化可能でなければならず、担体には、液体担体、半固体担体(すなわち、ペースト)、又は固体担体が含まれる。従来の媒体、薬剤、希釈剤又は担体はどれも、レシピエントに対して、又はこれらに含有される組成物の治療有効性に対して有害である場合を除いて、本発明の方法を実施する際における使用のための投与可能な組成物におけるその使用は適切である。担体又は希釈剤の例には、脂肪、油、水、生理食塩水溶液、脂質、リポソーム、樹脂、結合剤及び増量剤など、又はそれらの組み合わせが含まれる。組成物はまた、1つ以上の成分の酸化を遅らせるための様々な酸化防止剤を含む場合がある。加えて、微生物の作用の防止は、防腐剤によって、例えば、パラベン類(例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン)、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール又はそれらの組み合わせ(これらに限定されない)を含めて様々な抗菌剤及び抗真菌剤などによってもたらすことができる。
【0142】
本開示に従って、組成物は、任意の好都合かつ実用的な様式で、すなわち、溶解、懸濁、乳化、混合、カプセル化及び吸収などによって担体と組み合わされる。そのような手順は当業者にとっては日常的である。
【0143】
本開示の具体的な実施形態において、組成物は半固体担体又は固体担体と組み合わされ、又は完全に混合される。混合を、任意の便利な様式で、例えば、粉砕などで行うことができる。安定化剤もまた、組成物を治療活性の喪失から保護するために、すなわち、胃における変性から保護するために、混合プロセスにおいて加えることができる。組成物における使用のための安定剤の例には、緩衝剤、アミノ酸(例えば、グリシン及びリシンなど)、炭水化物(例えば、デキストロース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、ラクトース、スクロース、マルトース、ソルビトール、マンニトールなど)が含まれる。
【0144】
さらなる実施形態において、本開示は、操作されたTIL及び/又は操作されたT細胞(並びに/あるいはこれらをエクスビボ又はインビボで生じさせるための試薬)と、必要な場合には水性溶媒とを含む医薬用脂質ビヒクル組成物の使用に関しても言及され得る。本明細書中で使用される場合、用語「脂質」は、水に特徴的に不溶性であり、かつ、有機溶媒により抽出可能である広範囲の様々な物質のどれも含むように定義されるであろう。この幅広いクラスの様々な化合物が当業者には広く知られており、用語「脂質」が本明細書中で使用される場合、脂質は、いずれか特定の構造に限定されない。例には、様々な長鎖脂肪族炭化水素及びそれらの誘導体を含有する様々な化合物が含まれる。脂質は、天然に存在するもの、又は合成されたもの(すなわち、人によって設計又は製造されたもの)である場合がある。しかしながら、脂質は通常、生物学的物質である。様々な生物学的脂質がこの技術分野では広く知られており、これらには、例えば、中性脂肪、リン脂質、ホスホグリセリド、ステロイド、テルペン、リゾ脂質、スフィンゴ糖脂質、糖脂質、スルファチド、エーテル結合脂肪酸及びエステル結合脂肪酸を伴う脂質、及び重合性脂質、並びにそれらの組み合わせが含まれる。当然のことながら、脂質として当業者によって理解される本明細書中に具体的に記載される化合物とは異なる化合物もまた、本発明の組成物及び方法によって包含される。
【0145】
当業者は、組成物を脂質ビヒクルに分散させるために用いることができる様々な技術の範囲に精通しているであろう。例えば、操作されたTIL及び/又は操作されたT細胞(並びに/あるいはこれらをエクスビボ又はインビボで生じさせるための試薬)は、脂質を含有する溶液に分散される場合があり、脂質とともに溶解される場合があり、脂質とともに乳化される場合があり、脂質と混合される場合があり、脂質と組み合わされる場合があり、脂質に共有結合される場合があり、脂質における懸濁物として含有される場合があり、ミセル若しくはリポソームとともに含有される場合があり、又はミセル若しくはリポソームと複合体化される場合があり、あるいは、他の場合には、当業者に知られている任意の手段によって脂質又は脂質構造体と会合させられる場合がある。分散により、リポソームの形成がもたらされる場合があり、又はもたらされない場合がある。
【0146】
動物患者に投与される本開示の組成物の実際の投与量を、様々な物理的要因及び生理学的要因によって、例えば、体重、状態の重篤度、処置されている疾患のタイプ、以前の治療的介入又は同時の治療的介入、患者の特発性疾患などによって、また、投与経路に基づいて決定することができる。投与量及び投与経路に依存して、好ましい投与量及び/又は有効な量の投与回数が、対象の応答に応じて変化する場合がある。投与責任者はどのような場合でも、組成物における有効成分(1つ以上)の濃度及び適切な服用(1回以上)を個体対象のために決定するであろう。
【0147】
ある特定の実施形態において、医薬組成物は、例えば、少なくとも約0.1%の活性な化合物を含む場合がある。他の実施形態において、活性な化合物は、例えば、単位物の重量の約2%~約75%の間、又は約25%~約60%の間、及びそれらにおいて導き出せる任意の範囲を含んでもよい。当然のこととして、それぞれの治療上有用な組成物における活性な化合物(1つ以上)の量は、当該化合物の任意の所与の単位用量物において適切な投与量が得られるような方法で調製され得る。様々な要因、例えば、溶解性、生物学的利用能、生物学的半減期、投与経路、製造物の貯蔵寿命など、同様にまた、他の薬理学的検討事項が、そのような医薬用配合物を調製する技術分野の当業者によって意図されるであろうし、また、そのような様々な投与量及び治療計画が望まれ得る。
【0148】
いくつかの実施形態では、細胞の用量は8~150×10細胞を使用することができる。他の限定されない例において、用量はまた、投与あたり、約1マイクログラム/kg/体重、約5マイクログラム/kg/体重、約10マイクログラム/kg/体重、約50マイクログラム/kg/体重、約100マイクログラム/kg/体重、約200マイクログラム/kg/体重、約350マイクログラム/kg/体重、約500マイクログラム/kg/体重、約1ミリグラム/kg/体重、約5ミリグラム/kg/体重、約10ミリグラム/kg/体重、約50ミリグラム/kg/体重、約100ミリグラム/kg/体重、約200ミリグラム/kg/体重、約350ミリグラム/kg/体重、約500ミリグラム/kg/体重から、約1000mg/kg/体重又はそれ以上まで、及びそれらから導き出せる任意の範囲を含む場合がある。本明細書中に列挙される数字から得られる導き出せる範囲の限定されない例において、上記の数字に基づいて、約5mg/kg/体重~約100mg/kg/体重、約5マイクログラム/kg/体重~約500ミリグラム/kg/体重などの範囲を、投与することができる。
【0149】
A.消化管用の組成物及び配合物
本開示のいくつかの実施形態において、操作されたTIL及び/又は操作されたT細胞(並びに/あるいはこれらをエクスビボ又はインビボで生じさせるための試薬)は、消化管経路を介して投与されるように配合される。消化管経路には、組成物が消化管と直接に接触しているすべての可能な投与経路が含まれる。具体的には、本明細書中に開示される医薬組成物は、経口投与、口腔投与、直腸投与又は舌下投与により投与される場合がある。そのようなものとして、これらの組成物は、不活性な希釈剤とともに、又は同化可能な食用担体とともに配合される場合があり、あるいは硬質ゼラチンカプセル又は軟質ゼラチンカプセルに封入される場合があり、あるいは錠剤に圧縮される場合があり、あるいは食事の食物とともに直接に取り込まれる場合がある。
【0150】
ある特定の実施形態において、活性な化合物は賦形剤とともに取り込まれ、摂取可能な錠剤、口腔タブレット、トローチ剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁物、シロップ剤及びウエハ剤などの形態で使用される場合がある(Mathiowitz他、1997;Hwang他、1998;米国特許第5,641,515号、同第5,580,579号及び同第5,792,451号、これらのそれぞれが特に、その全体において参照によって本明細書中に組み込まれる)。錠剤、トローチ剤、丸剤及びカプセル剤などはまた、下記のものを含有する場合がある:結合剤(例えば、トラガカントガム、アラビアガム、トウモロコシデンプン、ゼラチン又はそれらの組み合わせなど)、賦形剤(例えば、リン酸二カルシウム、マンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、ナトリウムサッカリン、セルロース、炭酸マグネシウム又はそれらの組み合わせなど)、崩壊剤(例えば、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、アルギン酸又はそれらの組み合わせなど)、滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウムなど)、甘味剤(例えば、スクロース、ラクトース、サッカリン又はそれらの組み合わせなど)、矯味矯臭剤(例えば、ペパーミント、冬緑油、サクランボ香味料、オレンジ香味料など)など。投薬単位形態物がカプセル剤であるとき、カプセル剤は、上記タイプの材料に加えて、液体担体を含有する場合がある。様々な他の材料が、被覆剤として、又は他の場合には投与単位物の物理的形態を改変するために存在する場合がある。例えば、錠剤、丸剤又はカプセル剤が、シェラック、砂糖又は両者により被覆される場合がある。投薬形態物がカプセル剤であるとき、カプセル剤は、上記タイプの材料に加えて、様々な担体(例えば、液体担体など)を含有する場合がある。ゼラチンカプセル剤、錠剤又は丸剤は、腸溶性被覆される場合がある。腸溶性被覆により、pHが酸性である胃又は上部腸における組成物の変性が防止される。例えば、米国特許第5,629,001号を参照のこと。小腸に達したとき、小腸における塩基性pHは被覆を溶解させ、組成物が放出され、特殊化な細胞(例えば、上皮腸細胞及びパイエル板M細胞)によって吸収されることを可能にする。エリキシルのシロップ剤は、活性な化合物、甘味剤としてのスクロース、防腐剤としてのメチルパラベン及びプロピルパラベン、色素、並びに香味矯臭剤(例えば、サクランボ香料又はオレンジ香料など)を含有する場合がある。当然のことながら、任意の投薬単位形態物の調製において使用される材料は、いずれも薬学的に純粋でなければならず、かつ、用いられる量において実質的に非毒性でなければならない。加えて、活性な化合物は、徐放性の調製物及び配合物に組み入れることができる。
【0151】
経口投与のために、本開示の組成物は、代替的に、口内洗浄剤、歯磨き剤、口腔錠剤、経口噴霧剤又は舌下用経口投与配合物の形態において1つ以上の賦形剤とともに組み込まれる場合がある。例えば、必要量での有効成分を適切な溶媒(例えば、ホウ酸ナトリウム溶液(ドーベル液)など)において組み込む口腔洗浄剤が調製される場合がある。代替において、有効成分は、経口用溶液(例えば、ホウ酸ナトリウム、グリセリン及び重炭酸カリウムを含有する経口用溶液など)に組み込まれる場合があり、又は歯磨き剤に分散される場合があり、又は、水、結合剤、研磨剤、矯味矯臭剤、発泡剤及び湿潤剤を含む場合がある組成物に治療上有効な量で加えられる場合がある。代替において、組成物は、舌下に置かれ得る、又はそうでない場合には口内で溶解し得る錠剤形態又は溶液形態にされる場合がある。
【0152】
他の様式の消化管投与のために好適であるさらなる配合物には、坐剤が含まれる。坐剤は、直腸内への挿入のための、通常の場合には薬物が添加された様々な重量及び形状の固体投薬形態物である。挿入後、坐剤は軟化し、溶融し、又は腔液に溶解する。一般には、坐剤のために、従来の担体には、例えば、ポリアルキレングリコール、トリグリセリド又はそれらの組み合わせが含まれる場合がある。ある特定の実施形態において、坐剤が、例えば、有効成分を約0.5%~約10%の範囲で、好ましくは約1%~約2%の範囲で含有する混合物から形成される場合がある。
【0153】
B.非経口用の組成物及び配合物
さらなる実施形態において、組成物は、非経口経路を介して投与される場合がある。本明細書中で使用される場合、用語「非経口」には、消化管を迂回する経路が含まれる。具体的には、本明細書中に開示される医薬組成物は、例えば、しかし、限定されないが、静脈内に、皮内に、筋肉内に、動脈内に、クモ膜下腔内に、皮下に、又は腹腔内に投与される場合がある。米国特許第6,613,308号、同第5,466,468号、同第5,543,158号、同第5,641,515号及び同第5,399,363号(これらのそれぞれが特に、その全体において参照によって本明細書中に組み込まれる)。
【0154】
遊離塩基又は薬理学的に許容され得る塩としての活性な化合物の溶液が、界面活性剤(例えば、ヒドロキシプロピルセルロースなど)と好適に混合される水において調製される場合がある。分散物もまた、グリセロール、液状ポリエチレングリコール及びそれらの混合物において、また、油において調製される場合がある。貯蔵及び使用の通常の条件のもとで、これらの調製物は、微生物の成長を防止するための防腐剤を含有する。注射剤使用のために好適である医薬用形態物には、無菌の水性溶液又は水性分散物、及び無菌の注射可能な溶液又は分散物の即時調製のための無菌粉末が含まれる(米国特許第5,466,468号、これは特に、その全体が参照によって本明細書中に組み込まれる)。すべての場合において、形態物は無菌でなければならず、かつ、容易な注射性が存在する程度に流動性でなければならない。形態物は製造及び貯蔵の条件のもとで安定でなければならず、かつ、微生物(例えば、細菌及び真菌など)の混入作用に逆らって保たれなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(すなわち、グリセロール、プロピレングリコール及び液状ポリエチレングリコールなど)、それらの好適な混合物、並びに/あるいは植物油を含有する溶媒又は分散媒体が可能である。適切な流動性が、例えば、被覆剤(例えば、レシチンなど)の使用によって、分散の場合には要求される粒子サイズの維持によって、また、界面活性剤の使用によって維持される場合がある。微生物の作用を防止することが、様々な抗菌剤及び抗真菌剤によって、例えば、パラベン類、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸及びチメロサールなどによってもたらされることが可能である。多くの場合において、等張剤(例えば、糖又は塩化ナトリウムなど)を含むことが好ましいであろう。注射可能な組成物の長期にわたる吸収が、吸収を遅らせる薬剤(例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチン)を組成物において使用することによってもたらされ得る。
【0155】
水性溶液での非経口投与のために、例えば、必要に応じて、溶液を好適に緩衝化し、液体希釈剤を最初に、十分な生理食塩水又はグルコースにより等張性しなければならない。これらの特定の水性溶液は、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与及び腹腔内投与のためにとりわけ適している。これに関連して、用いることができる様々な無菌の水性媒体が、本開示に照らして当業者には知られているであろう。例えば、1つの投薬物が等張性NaCl溶液に溶解され、皮下注入液に加えられる場合があり、又は注入予定部位において注射される場合がありそのどちらであってもよい(例えば、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」、第15版、1035頁~1038頁及び1570頁~1580頁を参照のこと)。処置されている対象の状態に依存して、投与量における何らかの変動が必然的に生じるであろう。投与責任者はいずれにせよ、個体対象のための適切な用量を決定するであろう。そのうえ、ヒトへの投与のためには、調製物は、FDA Office of Biologics(生物製剤部)の基準によって要求されるような無菌性基準、発熱性基準、一般的安全性基準及び純度基準を満たさなければならない。
【0156】
無菌の注射可能な溶液は、必要量の活性な化合物を必要に応じて上記で列挙される様々な他の成分とともに適切な溶媒に組み込み、その後、ろ過滅菌を行うことによって調製される。一般に、分散物は、様々な滅菌された有効成分を、基礎となる分散媒体と、上記で列挙される成分に由来する必要な他の成分とを含有する無菌ビヒクルに組み込むことによって調製される。無菌注射液の調製のための無菌粉末の場合、好ましい調製方法は、あらかじめ無菌濾過した溶液から活性成分+任意の追加所望成分の粉末を得る真空乾燥及び凍結乾燥技術である。粉末状の組成物は、安定化剤とともに、又は安定化剤なしで、液体担体(例えば、水又は生理食塩水溶液など)と組み合わされる。
【0157】
C.その他の医薬組成物及び配合物
本発明の他の好ましい実施形態において、活性な化合物である、操作されたTIL及び/又は操作されたT細胞(並びに/あるいはこれらをエクスビボ又はインビボで生じさせるための試薬)は、様々な多岐にわたる経路を介する投与のために、例えば、局所投与(すなわち、経皮投与)、粘膜投与(鼻腔内投与、膣投与など)及び/又は吸入のために配合される場合がある。
【0158】
局所投与のための医薬組成物は、薬用塗布物(例えば、軟膏、ペースト、クリーム又は粉末剤など)のために配合される活性な化合物を含む場合がある。軟膏は、吸着、乳化及び水溶性に基づく局所適用のすべての油性組成物を含み、一方で、クリーム及びローションは、乳化基剤のみを含むそのような組成物である。局所投与される医薬品は、皮膚を通した有効成分の吸着を容易にするための浸透増強剤を含有する場合がある。好適な浸透増強剤には、グリセリン、アルコール、アルキルメチルスルホキシド、ピロリドン類及びルアロカプラム(luarocapram)が含まれる。外用塗布用の組成物のための可能な基剤には、ポリエチレングリコール、ラノリン、コールドクリーム及びワセリン、同様にまた、任意の他の好適な吸収軟膏基剤、乳化軟膏基剤又は水溶性軟膏基剤が含まれる。局所用調製物はまた、有効成分を保ち、かつ、均質な混合物を提供するために、必要に応じて、乳化剤、ゲル化剤及び抗菌性防腐剤を含む場合がある。本開示の経皮投与はまた、「パッチ」の使用を含む場合がある。例えば、パッチは、1つ以上の活性な物質を所定の速度で、かつ、連続した様式で、一定の期間にわたって供給する場合がある。
【0159】
ある特定の実施形態において、医薬組成物は、点眼剤、鼻腔内スプレー剤、吸入及び/又は他のエアロゾル送達ビヒクルによって送達され得る。鼻腔エアロゾルスプレー剤を介して組成物を肺に直接送達するための方法は、例えば、米国特許第5,756,353号及び同第5,804,212号に記載されている(これらのそれぞれが特にその全体において参照によって本明細書中に組み込まれる)。同様に、薬物の送達で、鼻腔内微小粒子樹脂を使用する送達(Takenaga他、1998)、及びリゾホスファチジルグリセロール化合物を使用する送達(米国特許第5,725,871号、これは特にその全体が参照によって本明細書中に組み込まれる)もまた、製薬技術分野において広く知られている。同様に、ポリテトラフルオロエチレン支持体マトリックスの形態での経粘膜薬物送達が、米国特許第5,780,045号に記載される(これは特にその全体が参照によって本明細書中に組み込まれる)。
【0160】
エアロゾルという用語は、液化されたガス噴射剤又は加圧されたガス噴射剤に分散される微細に分割された固体粒子又は液体粒子のコロイド系を示す。吸入のための本発明の典型的なエアロゾルは、液体噴射剤における、又は液体噴射剤及び好適な溶剤の混合物における有効成分の懸濁物からなるであろう。好適な噴射剤には、炭化水素及び炭化水素エーテルが含まれる。好適な容器は、噴射剤の圧力要求に従って変化するであろう。エアロゾルの投与は、対象の年齢、体重、並びに症状の重篤度及び応答に従って変化するであろう。
【0161】
V.併用療法
ある特定の実施形態において、本実施形態の組成物及び方法には、操作されたTIL及び/又は操作されたT細胞を含む組成物に対して追加される癌療法を含む。追加の治療法は、放射線療法、手術(例えば、乳腺腫瘤摘出術及び乳房切除術)、化学療法、遺伝子療法、DNA療法、ウイルス療法、RNA療法、免疫療法(本開示の免疫療法以外のもの)、骨髄移植、ナノ療法、モノクローナル抗体療法、ホルモン療法、又は前述の組み合わせである場合がある。さらなる治療法はアジュバント療法又はネオアジュバント療法の形態である場合がある。
【0162】
いくつかの実施形態において、さらなる治療法は1つ以上の小分子酵素阻害剤及び/又は1つ以上の転移抑制剤(1つ以上)の投与である。いくつかの実施形態において、さらなる治療法は、副作用制限剤(例えば、処置の副作用の発生及び/又は重篤度を軽減するために意図される薬剤(例えば、制吐剤など)など)の投与である。いくつかの実施形態において、さらなる治療法は放射線療法である。いくつかの実施形態において、さらなる治療法は手術である。いくつかの実施形態において、さらなる治療法は放射線療法と手術との組み合わせである。いくつかの実施形態において、さらなる治療法はガンマ線照射である。いくつかの実施形態において、さらなる治療法は、PBK/AKT/mTOR経路を標的とする治療、HSP90阻害剤、チューブリン阻害剤、アポトーシス阻害剤、及び/又は化学予防剤(1つ以上)である。さらなる治療法は、この技術分野において知られている化学療法剤の1つ以上であってもよい。
【0163】
(本開示のTIL療法及び/又は細胞療法に加えて)免疫細胞療法が、さらなる癌療法(例えば、免疫チェックポイント療法など)の前に、その期間中に、その後で、又はそれに対して様々な組み合わせで施される場合がある。施すことが、同時から、数分にまで、数日にまで、数週間にまで及ぶ間隔で行われる場合がある。免疫細胞療法が本開示の組成物(1つ以上)とは別個に患者に与えられる実施形態においては一般に、かなりの期間がそれぞれの送達時との間で経過せず、その結果、2つの化合物が依然として、好適な併用効果を患者に及ぼされることが保証されるであろう。そのような場合、患者には免疫療法及び開示された組成物が互いに約12時間~24時間又は72時間の範囲内で、より具体的には互いに約6時間~12時間の範囲内で与えられ得ることが意図される。いくつかの状況では、処置のための期間を著しく延長することが望ましい場合があり、この場合、数日(2、3、4、5、6又は7)から数週間(1、2、3、4、5、6、7又は8)までがそれぞれの投与の間において経過する。
【0164】
本実施形態の任意の化合物又は細胞療法を患者に施すことは、因子の毒性がもし存在するならばそれを考慮したうえで、そのような化合物の投与のための一般的プロトコルに従うこととなる。したがって、いくつかの実施形態において、併用療法に起因し得る毒性をモニタリングする工程が存在する。
【0165】
A.化学療法
広範囲の様々な化学療法剤が本実施形態に従って使用される場合がある。用語「化学療法」は、癌を処置するために薬物を使用することを示す。「化学療法剤」が、癌の処置において投与される化合物又は組成物を含意するように使用される。これらの薬剤又は薬物は、細胞内におけるそれらの活性様式によって、例えば、それらが細胞周期に影響を与えるかどうか、及びどの段階で影響を与えるかによって分類される。代替において、薬剤が、DNAを直接に架橋し得るか、DNA内へのインターカレーションを生じさせ得るか、又は核酸合成に影響を与えることによって染色体異常及び有糸分裂異常を誘導し得るかに基づいて特徴づけられる場合がある。
【0166】
化学療法剤の例には、下記のものが含まれる:アルキル化剤(例えば、チオテパ及びシクロホスファミドなど);アルキルスルホナート(例えば、ブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファンなど);アジリジン系化合物(例えば、ベンゾドパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドパ(meturedopa)及びウレドパ(uredopa)など);エチレンイミン系化合物及びメチルメラミン系化合物(methylamelamines)(例えば、アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチイレンチオホスホラミド(triethiylenethiophosphoramide)及びトリメチロールメラミンなど);アセトゲニン類(とりわけ、ブラタシン及びブラタシノン);カンプトテシン類(例として、合成類似体のトポテカン);ブリオスタチン;カリスタチン;CC-1065(例として、その合成類似体であるアドゼレシン、カルゼレシン及びビゼレシン);クリプトフィシン類(特にクリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(例として、合成類似体のKW-2189及びCB1-TM1);エリュテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチン(sarcodictyin)類;スポンギスタチン(spongistatin);ナイトロジェンマスタード(例えば、クロラムブシル、クロルナファジン、コロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノベムビシン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン、トロホスファミド及びウラシルマスタードなど);ニトロソウレア系化合物(例えば、カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン及びラニムスチンなど);抗生物質、例えば、エンジイン系抗生物質(例えば、カリケアマイシン、とりわけ、カリケアマイシンガンマII及びカリケアミシンオメガII)など);ジネミシン(例えば、ジネミシンA);ビスホスホネート系化合物、例えば、クロドロナートなど;エスペラミシン類;同様にまた、ネオカルジノスタチンクロモフォア及び関連する色素タンパク質エンジイン系抗生物質クロモフォア、アクラシノマイシン類、アクチノマイシン、オートラルニシン(authrarnycin)、アザセリン、ブレオマイシン類、カクチノマイシン、カラビシン(carabicin)、カルミノマイシン、カルジノフィリン(carzinophilin)、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン(detorubicin)、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン(例として、モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン及びデオキシドキソルビシン)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン(marcellomycin)、マイトマイシン類(例えば、マイトマイシンCなど)、ミコフェノール酸、ノガラルニシン(nogalarnycin)、オリボマイシン類、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、ケラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン及びゾルビシン;代謝拮抗剤(例えば、メトトレキサート及び5-フルオロウラシル(5-FU)など);葉酸類似体(例えば、デノプテリン、プテロプテリン及びトリメトレキサートなど);プリン類似体(例えば、フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン及びチオグアニンなど);ピリミジン類似体(例えば、アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン及びフロクスウリジンなど);アンドロゲン類(例えば、カルステロン、ドロモスタノロンプロピオナート、エピチオスタノール、メピチオスタン及びテストラクトンなど);抗副腎剤(anti-adrenal)(例えば、ミトタン及びトリロスタンなど);葉酸補充剤(例えば、フロリン酸(frolinic acid)など);アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル(bestrabucil);ビサントレン;エダトラキサート(edatraxate);デフォファミン(defofamine);デメコルチン;ジアジクオン;エルホルミチン(elformithine);酢酸エリプチニウム(elliptinium);エポチロン類;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダイニン(lonidainine);メイタンシノイド(例えば、メイタンシン及びアンサミトシン類など);ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダンモール(mopidanmol);ニトラエリン(nitraerine);ペントスタチン;フェナメット(phenamet);ピラルビシン;ロソキサントロン;ポドフィリン酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSKポリサッカリド複合体;ラゾキサン;リゾキシン(rhizoxin);シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2’,2’’-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン類(とりわけ、T-2毒素、ベラクリン(verracurin)A、ロリジンA及びアングイジン(anguidine));ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;タキソイド(例えば、パクリタキセル及びドセタキセルゲムシタビン);6-チオグアニン;メルカプトプリン;白金配位錯体(例えば、シスプラチン、オキサリプラチン及びカルボプラチンなど);ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP-16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ノバントロン;テニポシド;エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロナート;イリノテカン(例えば、CPT-11);トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイド(例えば、レチノイン酸など);カペシタビン;カルボプラチン、プロカルバジン、プリコマイシン(plicomycin)、ゲムシタビエン(gemcitabien)、ナベルビン、ファルネシルタンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、トランスプラチナム(transplatinum)、並びに上記のいずれかの医薬的に許容され得る塩、酸又は誘導体。
【0167】
B.放射線療法
DNA損傷を引き起こし、広範囲に使用されている他の因子として、γ線、X線、及び/又は放射性同位体の腫瘍細胞への誘導送達として一般に知られているものが含まれる。他の形態のDNA損傷因子もまた意図される:例えば、マイクロ波、陽子線照射(米国特許第5,760,395号及び同第4,870,287号)、及びUV照射など。これらの因子のすべてが、DNAに関して、DNAの前駆体に関して、DNAの複製及び修復に関して、また、染色体の組み立て及び維持に関して広範囲の損傷に影響を及ぼす可能性が最も高い。X線についての適用量範囲は、長期間(3週間~4週間)にわたっての50レントゲン~200レントゲンの1日線量から、2000レントゲン~6000レントゲンの単回線量にまで及ぶ。放射性同位体についての適用量範囲は、放射性同位体の半減期、放射される放射線の強度及びタイプ、並びに腫瘍細胞による取り込みに依存して、多岐にわたる。
【0168】
C.免疫療法
当業者は、(開示された、操作されたTIL細胞の療法及び/又は操作されたT細胞の療法の範囲外である)さらなる免疫療法が本実施形態の方法との組み合わせで、又は本実施形態の方法との併用で使用され得ることを理解するであろう。癌処置との関連において、免疫療法剤は一般に、癌細胞を標的とし、破壊するための免疫エフェクター細胞及び免疫エフェクター分子の使用による。リツキシマブ(RITUXAN(登録商標))がそのような一例である。免疫エフェクターは、例えば、腫瘍細胞の表面における何らかのマーカーについて特異的な抗体であってもよい。抗体は単独では治療のエフェクターとして役立つ場合があり、又は抗体は、他の細胞を動員して、実際に細胞殺傷に影響を与えることもある。抗体はまた、薬物又は毒素(化学療法剤、放射性核種、リシンA鎖、コレラ毒素、百日咳毒素など)にコンジュゲート化され、標的化剤として役立つ場合がある。代替において、エフェクターは、腫瘍細胞標的と直接的又は間接的のどちらでも相互作用する表面分子を保持するリンパ球である場合がある。様々なエフェクター細胞には、TGFBR2及び/又はTIGITのノックダウン又はノックアウトを有するものとは異なる細胞傷害性T細胞及びNK細胞が含まれる。
【0169】
抗体-薬物コンジュゲートが、癌治療剤の開発に対する画期的な取り組みとして現れている。抗体-薬物コンジュゲート(ADC)は、細胞殺傷薬物に共有結合により連結されるモノクローナル抗体(MAb)を含む。このアプローチでは、MAbの、その抗原標的に対する高い特異性が、非常に強力な細胞毒性薬物と組み合わされ、これにより、抗原を高レベルで有する腫瘍細胞にペイロード(薬物)を送達する「武装」MAbがもたらされる。薬物の標的化された送達はまた、正常な組織におけるその曝露を最小限にし、これにより、毒性の低下及び治療指数の改善をもたらしている。FDAによる2つのADC薬物の承認により、すなわち、2011年におけるADCETRIS(登録商標)(ブレンツキシマブベドチン)及び2013年におけるKADCYLA(登録商標)(トラスツズマブエムタンシン又はT-DM1)の承認により、この取り組みが有効であることが証明された。現在では30を超えるADC薬物候補が、癌処置のための臨床試験の様々な段階にある(Leal他、2014)。抗体工学及びリンカー-ペイロード最適化がますます成熟しつつあるので、新しいADCの発見及び開発は、このアプローチに適した新しい標的の特定及び検証、並びに標的化用MAbの作製にますます依存している。ADC標的のための2つの基準は、腫瘍細胞におけるアップレギュレーションされた/高い発現レベルと、ロバストな内在化である。
【0170】
免疫療法の1つの態様において、腫瘍細胞は、標的化されやすい何らかのマーカー、すなわち、他の細胞の大部分には存在しない何らかのマーカーを有しなければならない。多くの腫瘍マーカーが存在しており、これらのどれもが、本実施形態との関連において標的化のために好適である場合がある。一般的な腫瘍マーカーには、CD20、癌胎児性抗原、チロシナーゼ(p97)、gp68、TAG-72、HMFG、シアリルルイス抗原、MucA、MucB、PLAP、ラミニン受容体、erbB、及びp155が含まれる。免疫療法の1つの代替となる態様が、抗癌作用を免疫刺激作用と組み合わせることである。免疫刺激分子もまた存在しており、これらには、サイトカイン(例えば、IL-2、IL-4、IL-12、GM-CSF、γ-IFNなど)、ケモカイン(例えば、MIP-1、MCP-1、IL-8など)、及び増殖因子(例えば、FLT3リガンドなど)が含まれる。
【0171】
現時点で検討中又は使用中である免疫療法の例には、免疫アジュバント、例えば、ウシ型結核菌(Mycobacterium bovis)、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)、ジニトロクロロベンゼン及び芳香族化合物(米国特許第5,801,005号及び同第5,739,169号;Hui及びHashimoto、1998;Christodoulides他、1998);サイトカイン療法、例えば、任意の種類のインターフェロン、IL-1、GM-CSF及びTNF(Bukowski他、1998;Davidson他、1998;Hellstrand他、1998);遺伝子療法、例えば、TNF、IL-1、IL-2及びp53(Qin他、1998;Austin-Ward及びVillaseca、1998;米国特許第5,830,880号及び同第5,846,945号);及びモノクローナル抗体、例えば、抗CD20、抗ガングリオシドGM2及び抗p185(Hollander、2012;Hanibuchi他、1998;米国特許第5,824,311号)がある。1つ以上の抗癌療法が本明細書中に記載される抗体療法とともに用いられる場合があることが意図される。
【0172】
いくつかの実施形態において、免疫療法は免疫チェックポイント阻害剤である場合がある。免疫チェックポイントはシグナル(例えば、共刺激分子)を強めるか、又はシグナルを弱めるかのどちらもある。免疫チェックポイント遮断によって標的とされ得る抑制性の免疫チェックポイントには、アデノシンA2A受容体(A2AR)、B7-H3(これはCD276としてもまた知られている)、Bリンパ球・Tリンパ球アテニュエーター(BTLA)、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4、これはCD152としてもまた知られている)、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)、キラー細胞免疫グロブリン(KIR)、リンパ球活性化遺伝子-3(LAG3)、プログラム細胞死1(PD-1)、T細胞免疫グロブリンドメイン及びムチンドメイン3(TIM-3)、並びにT細胞活性化のVドメインIgサプレッサー(VISTA)が含まれる。特に、免疫チェックポイント阻害剤はPD-1軸及び/又はCTLA-4を標的とする。
【0173】
D.手術
癌を有する人のおよそ約60%が、予防的、診断的又は病期分類、治療的及び緩和的な手術を含めて、何らかのタイプの手術を受けることになる。治療的手術は、癌性組織のすべて又は一部が物理的に除かれ、切除され、かつ/又は破壊される摘出を含んでおり、他の治療法との併用で、例えば、本実施形態の処置、化学療法、放射線療法、ホルモン療法、遺伝子療法、免疫療法及び/又は代替療法などとの併用で使用される場合がある。腫瘍摘出は、腫瘍の少なくとも一部を物理的に除くことを示す。腫瘍摘出に加えて、手術による処置には、レーザー手術、凍結手術、電気手術及び顕微鏡下手術(モース術)が含まれる。
【0174】
癌細胞、組織又は腫瘍の一部又はすべてを切除すると、空洞が体内に形成される場合がある。処置が、灌流、直接注入、又はさらなる抗癌療法による当該部位への局所適用によって達成される場合がある。そのような処置が、例えば、1日毎、2日毎、3日毎、4日毎、5日毎、6日毎若しくは7日毎に、又は1週間毎、2週間毎、3週間毎、4週間毎及び5週間毎に、又は1か月毎、2か月毎、3か月毎、4か月毎、5か月毎、6か月毎、7か月毎、8か月毎、9か月毎、10か月毎、11か月毎若しくは12か月毎に繰り返される場合がある。これらの処置は同様に、様々な適用量のものである場合がある。
【0175】
E.他の薬剤
処置の治療効力を改善するために、他の薬剤を本実施形態のある特定の態様との組み合わせで使用することが意図される。これらのさらなる薬剤には、細胞表面受容体及びGAP結合のアップレギュレーションに影響を与える薬剤、細胞増殖抑制剤及び分化剤、細胞接着の阻害剤、アポトーシス誘導剤に対する過剰増殖性細胞の感受性を増大させる薬剤、又は他の生物学的薬剤が含まれる。GAP結合の数を増加させることによる細胞間シグナル伝達の増加は、近傍の過剰増殖性細胞集団に対する抗過剰増殖効果を増大させるであろう。他の実施形態では、処置の抗過剰増殖効力を改善するために、細胞増殖抑制剤又は分化剤を本実施形態の特定の態様との組み合わせで使用することができる。細胞接着の阻害剤は、本実施形態の効力を改善するために意図される。細胞接着阻害剤の例は、フォーカルアドヒージョンキナーゼ(FAK)阻害剤及びロバスタチンである。過剰増殖性細胞のアポトーシスに対する感受性を増大させる他の薬剤(例えば、抗体c225など)が、処置効力を改善するために本実施形態のある特定の態様との組み合わせで使用され得るであろうことがさらに意図される。
【0176】
VI.本開示のキット
本明細書中に記載される任意の組成物が、キットに含められ得る。非限定的な例では、TIL及び/又はT細胞(及び/又はそれの操作されたものを作製するための試薬)並びにこれらは、本開示のキット内の適切な容器手段に含められ得る。
操作されたTIL及び/若しくは操作されたT細胞並びに/又はそれらを作製するための1つ以上の試薬を含む製品又はキットが提供される。そのTIL及び/又はT細胞は、任意の起源に由来してよく、具体的な実施形態において、そのTIL及び/又はT細胞は、本明細書中に包含される方法によって作製されたものである。具体的な実施形態において、そのTIL及び/又はT細胞は、遺伝子編集されており、そのTIL及び/又はT細胞が1つ以上の異種抗原受容体を発現するようにさらに改変され得るようにキット内に提供され得る。具体的な実施形態において、そのTIL及び/又はT細胞は、1つ以上の異種抗原受容体を発現するように改変されており、そのTIL及び/又はT細胞が遺伝子編集されてさらに改変され得るように、キット内に提供され得る。具体的な実施形態において、そのTIL及び/又はT細胞を作製するための1つ以上の試薬(例えば、特定の遺伝子を標的化する試薬、異種抗原受容体を含む試薬(又は異種抗原受容体を作製するための1つ以上の試薬)又はそれらの組み合わせ)が、キット内に提供される。一般的な実施形態において、それらの試薬には、DNA又はRNAを含む核酸、タンパク質、培地、緩衝液、塩、補助因子などが含まれ得る。具体的な場合において、そのキットは、所望の特定の遺伝子を標的化するためのものを含む1つ以上のCRISPR関連試薬を含む。
【0177】
キットの組成物は、水性媒質中に又は凍結乾燥された形態で、包装され得る。キットの容器手段としては、一般に、1つ以上の構成要素が入れられ得る、好ましくは、適切に等分され得る、少なくとも1つのバイアル、試験管、フラスコ、ボトル、シリンジ又は他の容器手段が挙げられる。2つ以上の構成要素がキットに存在する場合、そのキットは、通常、追加の構成要素が別々に入れられ得る、第2、第3又は他のさらなる容器も含み得る。しかしながら、構成要素の様々な組み合わせが、1つのバイアルに含められてもよい。本開示のキットはまた、典型的には、操作されたTIL及び/又は操作されたT細胞(及び/又はそれを作製するための試薬)を含めるための手段並びに他の任意の試薬容器を、商業的販売のために厳重に閉じ込められた状態で含む。そのような容器には、所望のバイアルを保持する、射出成形又はブロー成形されたプラスチック容器が含まれ得る。
【0178】
キットの成分が1つ及び/又は複数の液体溶液で提供されるとき、液体溶液は水溶液であり、この場合、無菌の水溶液が特に想定される。組成物はまた、シリンジ注入可能な組成物に配合される場合がある。そのような場合において、容器手段がそれ自体、シリンジ、ピペット及び/又は他の同様な装置である場合があり、これらから、配合物が身体の感染領域に適用される場合があり、動物体内に注入される場合があり、並びに/あるいは、それどころか、キットのそれ以外の成分とともに適用される場合があり、及び/又はキットのそれ以外の成分と混合される場合がある。
【0179】
しかしながら、キットの成分は、乾燥された粉末(1つ以上)として提供される場合がある。試薬及び/又は成分が乾燥粉末として提供されるとき、粉末は、好適な溶媒を加えることによって再構成することができる。溶媒もまた、別の容器手段において提供され得ることが想定される。
【0180】
容器の数及び/又はタイプにかかわらず、本開示のキットはまた、動物の体内への最終組成物の注射/投与及び/又は配置を補助するための器具を含む場合があり、かつ/又はそのような器具とともに包装される場合がある。そのような器具は、シリンジ、ピペット、鉗子、及び/又は任意のそのような医学的に承認された送達ビヒクルである場合がある。いくつかの実施形態において、様々な試薬又は装置又は容器がエクスビボ使用のためのキットに含まれる。
【実施例
【0181】
下記の実施例は、本発明の好ましい実施形態を明らかにするために含まれる。下記の実施例において開示される技術は、本発明の実施において十分に機能することが本発明者らによって見出された技術を表しており、したがって、その実施のための好ましい態様を構成するとみなされ得ることが、当業者によって理解されなければならない。しかしながら、当業者は本開示に照らして、多くの変化を開示される具体的な実施形態において行うことができ、かつ、多くの変化は依然として、同じ結果又は類似する結果を、本発明の精神及び範囲から逸脱することなくもたらすことを理解しなければならない。
【0182】
実施例1
腫瘍微小環境における免疫抑制に打ち勝つための、腫瘍浸潤リンパ球における遺伝子のノックアウト
本実施例では、腫瘍微小環境での活性を増強するための、TILにおける遺伝子編集を示す。具体的な方法では、TILにおける1つ以上の特定の内在性遺伝子をノックアウトする。この実施例は、特定のgRNA種と複合体化したCas9タンパク質の送達を用いることにより、マウスT細胞及びヒトTILを含む免疫細胞においてCRISPR遺伝子編集を効率的に行うことができるという証明を提供する。このアプローチを用いることにより、TGFBR2及び/又はTIGIT及び/又はCD7の発現が低下した又は無くなったTILが作製される。最初の研究として、図1は、一例として、エレクトロポレーションベースのトランスフェクションを用いて遺伝子編集するための、T細胞へのCas9 RNP複合体(Alt-R S.p.Cas9 Nuclease V3、Alt-R(登録商標)CRISPR-Cas9 tracrRNA-ATTOTM550、及びSelplg遺伝子に特異的な2つの異なるcrRNA(AA及びABと命名)を含む)の効率的な送達を示しており、Alt-R(登録商標)CRISPR-Cas9 tracrRNA-ATTOTM550を、トランスフェクトされた細胞の蛍光追跡に使用した。この手法を用いたとき、達成されたトランスフェクション効率は、マウスCD8+T細胞において>97%だった(すなわち、細胞の>97%が、エレクトロポレーションの24時間後にRNP複合体陽性だった)。この方法をモデル遺伝子(セレクチンPリガンド;Selplg)に適用したところ、Selplg遺伝子を標的化する2つの異なるcrRNA種(AA及びABと命名)を含むCas9 RNP複合体(図2)をエレクトロポレーションベースで送達した5日後に、マウスT細胞においてその遺伝子の90%がノックアウトされた。
【0183】
一例として、マウスT細胞において目的遺伝子をノックアウトする際に、上記方法を用いた。図3は、Cas9 RNP複合体のエレクトロポレーションベースの送達を用いて、マウスT細胞においてTIGITをノックアウトできることを示している。そこに提供されているデータは、RT-PCRによって評価したRNAレベルでのTIGITノックアウトを示している。図4において、本発明者らは、TILの効率的な操作を示した。エキソビボで拡大された患者由来TILにおけるTIGITのノックアウトは、>75%というトランスフェクション効率で達成される。TIGIT特異的RNP複合体をエレクトロポレーションによって移入することにより、76.5%(パーセント陽性細胞)という細胞送達効率がもたらされた。最後に、予め拡大しておいたTILに、TIGITを標的化するCas9 RNP複合体をトランスフェクトすることにより、かなりのノックアウトがもたらされる。対照の場合(トランスフェクトしなかった場合)及び実施例の場合(TIGIT特異的RNPをトランスフェクトした場合)におけるTIGIT陽性の生存している全TILのパーセンテージが、ここに示されている。特定の実施形態において、記載の方法は、TILにおいて異なる遺伝子(例えば、TGF-βR2など)をノックアウトするために用いられる。
【0184】
図6A~6Bは、インビボにおいて、プールされたshRNAのスクリーニングによる、腫瘍へのT細胞浸潤を制御する遺伝子の同定を示している。6A.実験計画の模式図。活性化されたpmel T細胞に、その細胞表面上で発現されるタンパク質をコードする300個の遺伝子を標的化するプールされたshRNAライブラリーを形質導入し、細胞を、放射線照射済みのB16担癌マウスに養子移入(ACT)した。ACTの7日後、B16腫瘍と脾臓のペアサンプルからpmel T細胞を単離し、DNAの単離及び配列決定を行った。6B.密度プロット。この密度プロットにおける矢印は、脾臓T細胞及び参照(ACT前に取得したサンプル)と比べたときの、TIL集団における濃縮ヘアピンを示している。1群あたり2~3つのサンプルについて解析を行った。代表的な表面T細胞スクリーニングを示す。
【0185】
図7は、shRNAバーコードに基づくCd7ノックダウンによる、脾臓と比較したときの腫瘍におけるT細胞浸潤の増強を示している。脾臓サンプルと腫瘍サンプル(それぞれn=6)の両方におけるCd7を標的化する10個の異なる各shRNA構築物に対するshRNAバーコードリードの数が示されている。構築物の大部分が、脾臓サンプルと比べて、腫瘍サンプルにおいて濃縮を示す。
【0186】
図8は、個々の遺伝子ノックダウンに基づく腫瘍対脾臓におけるCd7ノックダウンPmelの濃縮を示している。Pmel T細胞に、Cd7 shRNA含有レンチウイルスベクター又は非標的化対照(NTC)ベクターを別々に形質導入し、ベクターによって発現されたGFPについてFACSで選別し、拡大した後、担癌マウスへのACTを行った。全腫瘍浸潤免疫リンパ球(TIL)をACTの12日後に腫瘍から単離し、計数した。Cd7ノックダウンPmelが、形質導入されなかったPmel T細胞又はNTC構築物を形質導入されたPmel T細胞と比べて多数見出されたことから、shRNAスクリーニングにおいて見出された効果が確認された。
【0187】
Pmel T細胞に、Cd7 shRNA含有レンチウイルスベクター又は非標的化対照(NTC)ベクターを別々に形質導入し、ベクターによって発現されたmCherryについてFACSで選別し、拡大した後、担癌マウスへのACTを行った。ACTの前日に、Cd7 shRNAを形質導入されたPmel T細胞は、93.9%のmCherryを発現し、mCherry及び生死フローサイトメトリー解析によって解析したとき、95.1%が生存可能だった。qRT-PCR解析によって、Cd7 mRNA発現が、NTCを形質導入されたPmel T細胞と比べて84%低下したことが確認された。
【0188】
モデル標的としてT細胞受容体α鎖遺伝子(TRAC)を用いて、患者由来TILにおけるCRISPR遺伝子ノックアウトを最適化した(図9)。いくつかの異なるエレクトロポレーションパルスパラメータ(EH100、EN138、EH115及びEO115と表される)及び2つの異なる量のCas9投入量(5μg及び10μg)にわたって、αβT細胞受容体の頑健な(>90%)排除が達成された。これらのデータは、臨床的に妥当なトランスフェクションプロトコルを用いたときのヒトT細胞における頑健なCRISPR遺伝子編集を実証している。
【0189】
図10は、患者由来TILにおけるTIGITのCRISPR遺伝子ノックアウトの最適化に関する。未改変のTILは、TIGIT表面発現について94.3%の陽性を示す。様々なガイドRNA配列(TIGIT AA、AB、AC、AD及びAEと表される)を用いるTIGITノックアウトに供されたTILは、TIGITの表面発現の低下を示す。「TIGIT AB」及び「TIGIT AC」として識別されるガイドRNA配列(単なる例として)の使用は、最も高いノックアウト効率を示し、CRISPR遺伝子編集の後、TIGIT表面発現が陽性のままの細胞は<2%しかなかった。
【0190】
図11は、患者由来TILにおけるTGFBR2のCRISPR遺伝子ノックアウトの最適化を示している。TGFBR2を標的化するガイドRNA(例として、TGFBR2 AA、AB、AC及びADによって表される種々のガイドRNA配列)を用いて、TILを遺伝的に改変した。遺伝的に改変されたTILは、Cas9 mockをトランスフェクトされたTILと比べて、CRISPR切断部位における野生型TGFBR2配列のレベルが実質的に低いことを特徴とする。「TGFBR2 AC」及び「TGFBR2 AD」として識別されるガイドRNAによる遺伝的改変は、野生型DNAの最も頑健な排除を示す。
【0191】
TGFBR2のCRISPR遺伝子ノックアウトを受けたTILは、外来性のTGF-β刺激の作用に対して抵抗性である(図12)。未改変のTILは、外来性TGF-βに曝露されたとき、高レベルのリン酸化SMAD-2及びリン酸化SMAD-3を発現する。対照的に、TGFBR2を排除するCRISPR遺伝子編集を受けたTILは、TGF-β誘発性のSMADリン酸化に対して比較的抵抗性である。TGFBR2を標的化するガイドRNA(例として、TGFBR2 AA、AB、AC及びADによって表される種々のガイドRNA配列)を用いて、TILを遺伝的に改変した。「TGFBR2 AC」及び「TGFBR2 AD」と命名されたガイドRNAを用いて改変されたTILは、SMADリン酸化に対して最も強い抵抗性を示した。これらの結果は、いくつかの独立した患者由来TIL株の間で再現性があった。
【0192】
図面における表1は、ヒトT細胞においてTIGIT及びTGFBR2を標的化するために使用されたガイドRNAの配列の例を提供している。Integrated DNA Technologies(IDT)ウェブツールを用いて、ガイドRNAをデザインした。
【0193】
図13において、TGFBR2のCRISPR遺伝子ノックアウトを受けたTILは、外来性のTGF-β刺激の作用に対して抵抗性である。未改変のTILは、TGF-βの存在下において3日間培養されたとき、いくつかの炎症促進性サイトカインの分泌のレベルが低下する(TGF-βで処置された細胞:ビヒクルで処置された細胞からのサイトカイン濃度の倍率変化が<1.0であることによって証明されるように)。対照的に、TGFBR2を標的化するガイドRNA(TGFBR2 AC及びADによって表される種々のガイドRNA配列)を用いて遺伝的に改変されたTILは、TGF-βの存在下又は非存在下において培養されたとき、ほぼ等量の炎症促進性サイトカインを分泌する(TGF-β:ビヒクルの倍率変化が約1.0であることによって証明されるように)。データは、TGF-βで処置された(10ng/ml)TILからビヒクルで処置されたTILまでのサイトカイン濃度の倍率変化(比)として表されている。2人の無関係なドナーから単離されたTILからのデータが表されている。
【0194】
図14では、RNPトランスフェクションが、活性化されたマウスCD8+T細胞において高度に効率的なCas9/CRISPR媒介性PD-1ノックアウトを誘導する。(14B)抗CD3及びIL-2によるインビトロでの活性化が、CD8 T細胞におけるPD-1の細胞表面発現をアップレギュレートする(非標的化対照RNPをトランスフェクトされた対照細胞、NTC条件)。(14C)PD-1を標的化するCas9/gRNA RNPをトランスフェクトされたT細胞、つまりPD-1 KO条件は、NTC発現と比べて97%のノックアウト効率に相当する、PD-1発現の減少を示す。トランスフェクションの6日後に、フローサイトメトリーによってPD-1タンパク質発現を評価した。陽性発現をFMOに基づいて判定した(14A)。
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【0195】
本開示及びその利点を詳細に説明したが、添付の特許請求の範囲によって定義される設計の精神及び範囲から逸脱することなく、本明細書において様々な改変、置換及び改変を行うことができることが理解されるべきである。さらに、本願の範囲は、本明細書に記載されたプロセス、機械、製造、物質組成、手段、方法及びステップの特定の実施形態に限定されることを意図していない。当業者であれば本開示から容易に理解できるように、本明細書に記載された対応する実施形態と実質的に同じ機能を果たすか、又は実質的に同じ結果を達成する、現在存在する又は後に開発されるプロセス、機械、製造、物質の組成物、手段、方法、又はステップが、本開示に従って利用され得る。したがって、添付の請求項は、そのようなプロセス、機械、製造、物質の組成物、手段、方法、又はステップをその範囲内に含むことを意図している。
【0196】
【表1】
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14A
図14B
図14C
【配列表】
2023503652000001.app
【国際調査報告】