(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-31
(54)【発明の名称】四座配位白金(II)錯体の製造及び使用
(51)【国際特許分類】
C07F 15/00 20060101AFI20230124BHJP
C09K 11/06 20060101ALI20230124BHJP
C07D 401/12 20060101ALI20230124BHJP
H10K 50/00 20230101ALI20230124BHJP
【FI】
C07F15/00 F CSP
C09K11/06 660
C07D401/12
H05B33/14 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022531548
(86)(22)【出願日】2020-09-19
(85)【翻訳文提出日】2022-05-27
(86)【国際出願番号】 CN2020116336
(87)【国際公開番号】W WO2021114802
(87)【国際公開日】2021-06-17
(31)【優先権主張番号】201911268943.1
(32)【優先日】2019-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515177907
【氏名又は名称】広東阿格蕾雅光電材料有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100146374
【氏名又は名称】有馬 百子
(72)【発明者】
【氏名】康 健
(72)【発明者】
【氏名】戴 雷
(72)【発明者】
【氏名】蔡 麗菲
【テーマコード(参考)】
3K107
4C063
4H050
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC04
3K107CC21
3K107DD53
3K107DD59
3K107DD64
3K107DD67
3K107DD69
4C063AA01
4C063CC17
4C063DD12
4C063EE05
4H050AA01
4H050AB92
4H050WB11
4H050WB13
4H050WB14
4H050WB21
(57)【要約】
本発明は、新規な四座配位白金(II)錯体の製造及び使用に関し、OLED有機エレクトロルミネッセンス材料分野に属する。本発明の錯体は、下記の構造式を有し、OLED発光素子の発光層において発光作用を果たすリン光ドーパント材料として用いられる。本発明における錯体は、高い蛍光量子効率、良好な熱安定性及び低い消光定数を有し、高発光効率、低ロールオフの緑色光OLED素子を製造することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式で示される構造を有する四座配位白金(II)錯体。
(式中、R
1~R
21は、独立に水素、重水素、硫黄、ハロゲン元素、ヒドロキシ基、アシル基、アルコキシ基、アシルオキシ基、アミノ基、ニトロ基、アシルアミノ基、シアノ基、カルボキシ基、スチリル基、アミノカルボニル基、カルバモイル基、ベンジルカルボニル基、アリールオキシ基、ジアリールアミノ基、C1~30の飽和アルキル基、C2~20の不飽和アルキル基、置換もしくは無置換のC5~30のアリール基、及び置換もしくは無置換のC5~30のヘテロアリール基のうちから選ばれるか、あるいは、隣接するR
1~R
21同士で、共有結合により環を形成し、前期置換は、ハロゲン元素、重水素、C1~C20のアルキル基、C1~C10のシリル基、又はシアノ基による置換であり、前記ヘテロアリール基におけるヘテロ原子はN、O及びSのうちの1種又は2種以上である。)
【請求項2】
R
1~R
21は、独立に水素、ハロゲン元素、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、ジアリールアミノ基、C1~10の飽和アルキル基、ハロゲン元素又は1個もしくは複数個のC1~C4のアルキル基により置換されているか、あるいは置換されていないC5~20のアリール基、及びハロゲン元素又は1個もしくは複数個のC1~C4のアルキル基により置換されているか、あるいは置換されていないC5~20のヘテロアリール基のうちから選ばれるか、あるいは、隣接するR
1~R
21同士と、共有結合により環を形成し、前記ハロゲン元素はF、Cl及びBrのうちから選択される、請求項1に記載の錯体。
【請求項3】
R
1~R
21の21個の基のうちの0~3個の基は、独立にジアリールアミノ基、ハロゲン元素もしくは1~3個のC1~C4のアルキル基により置換されているか、あるいは置換されていないC5~10のアリール基、及びハロゲン元素もしくは1~3個のC1~C4のアルキル基により置換されているか、あるいは置換されていないC5~10のN含有ヘテロアリール基のうちから選択され、その他の基は、独立に水素又はC1~8の飽和アルキル基であり、前記ハロゲン元素はF又はClである、請求項2に記載の錯体。
【請求項4】
前記R
1~R
21の21個の基のうちの0~3個の基は、独立にジフェニルアミノ基、フェニル基、ピリジル基及びカルバゾリル基のうちから選択され、その他の基は、独立に水素、フッ素又はC1~4の飽和アルキル基から選択される請求項3に記載の錯体。
【請求項5】
以下の式で示される構造を有する請求項1に記載の錯体。
(式中、R
1
’~R
6
’は、独立に水素、ハロゲン元素、ジアリールアミノ基、C1~10の飽和アルキル基、ハロゲン元素又は1個もしくは複数個のC1~C4のアルキル基により置換されているか、あるいは置換されていないC5~20のアリール基、及びハロゲン元素又は1個もしくは複数個のC1~C4のアルキル基により置換されているか、あるいは置換されていないC5~20のアリール基のうちから選ばれるか、あるいは、隣接するR
1
’~R
6
’同士が、共有結合により環を形成し、前記ハロゲン元素はF、Cl及びBrのうちから選択され、前記ヘテロアリール基において、ヘテロ原子はN、O及びSのうちのいずれか1種である。)
【請求項6】
R
1
’~R
6
’の6個の基のうちの0~3個の基は、独立にジアリールアミノ基、ハロゲン元素もしくは1~3個のC1~C4のアルキル基により置換されているか、あるいは置換されていないC5~10のアリール基、及びハロゲン元素もしくは1~3個のC1~C4のアルキル基により置換されている、かあるいは置換されていないC5~10のヘテロアリール基のうちから選択され、その他の基は、独立に水素、ハロゲン元素又はC1~8の飽和アルキル基であり、前記ハロゲン元素はF又はClである、請求項5に記載の錯体。
【請求項7】
R
1
’~R
6
’の6個の基のうちの0~3個の基は、独立にジフェニルアミノ基、C1~C4のアルキル基、置換もしくは無置換のフェニル基、ピリジル基及びカルバゾリル基のうちから選択され、その他の基は、独立に水素、F、及びC1~4の飽和アルキル基のうちから選択される、請求項1に記載の錯体。
【請求項8】
以下の構造を有する請求項1に記載の錯体。
【請求項9】
以下の構造を有する、請求項1~8のいずれかに記載の錯体の配位子。
(式中、R
1~R
21は、独立に水素、重水素、硫黄、ハロゲン元素、ヒドロキシ基、アシル基、アルコキシ基、アシルオキシ基、アミノ基、ニトロ基、アシルアミノ基、シアノ基、カルボキシ基、スチリル基、アミノカルボニル基、カルバモイル基、ベンジルカルボニル基、アリールオキシ基、ジアリールアミノ基、C1~30の飽和アルキル基、C2~20の不飽和アルキル基、置換もしくは無置換のC5~30のアリール基、及び置換もしくは無置換のC5~30のヘテロアリール基のうちから選ばれるか、あるいは、隣接するR
1~R
21同士が、共有結合により環を形成し、前記置換は、ハロゲン元素、重水素、C1~C20のアルキル基、C1~C10のシリル基、又はシアノ基による置換であり、前記ヘテロアリール基におけるヘテロ原子はN、O及びSのうちの1種又は複数種である。)
【請求項10】
初期基質S1とS2とをSuzuki-Miyauraカップリング反応させて基質S3を得る工程と、S3とS4とをBuchwald-Hartwigカップリング反応させて基質S5を得る工程と、S5とS6とをBuchwald-Hartwigカップリング反応させて基質S7を得る工程と、S7をピリジン塩酸塩の作用により高温加熱して脱メチル化してS8を得る工程と、S8とK
2PtCl
4とをキレート反応させて白金(II)錯体TMを得る工程と、を含み、以下の式で表される、請求項5に記載の四座配位白金(II)錯体の合成方法。
【請求項11】
請求項1~8のいずれかに記載の錯体の、OLED発光素子への使用。
【請求項12】
前記錯体は、発光層において発光作用を果たすリン光ドーパント材料である、請求項11に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な四座配位白金(II)錯体金属有機材料に関し、特にOLED発光素子の発光層において発光作用を果たすリン光ドーパント材料に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光ダイオード(Organic Light-Emitting Diode,OLED)は、有機電界発光表示、有機発光半導体とも称され、アメリカ国籍の中国系科学家であるトウ青雲(Ching W. Tang)教授により、1987年、コダック社実験室において発見されたものである(Appl. Phys. Lett. 1987,51,913)。従来のLCD(Liquid Crystal Display,液晶ディスプレイ)表示技術と比べて、OLED表示技術は、自己発光、広視野角、ほぼ無限に高いコントラスト、低い電力消費量、極めて高い反応速度及び潜在的なフレキシブル性、折畳可能などの利点を有し、広く注目及び研究されており、新規なOLED材料の開発は、OLED技術研究の重点及び難問でありつつある。
【0003】
無機材料系のLED(Light-Emitting Diode,発光ダイオード)と比べて、有機材料系のOLEDは、替えがきかない優れた性能を有し、主な原因が以下の通りである。(1)有機材料は、任意の基板上に成膜しやすく、超薄型平板表示パネルに作製することができる。(2)有機分子構造は、分子設計により材料の発光性能が調整制御可能であり、修飾及び改造が容易である。(3)有機発光材料の蛍光量子効率が高く、ほぼ100%に達することができる。(4)無機材料系のLEDが点光源であるのに対し、有機材料系のOLEDパネルは、面光源に作製することができる。(5)有機エレクトロルミネッセンスのOLED素子の駆動電圧が比較的に低いのに対し、無機LEDの駆動電圧が一般的に高い。
【0004】
現在のOLED材料において、発光層にドーパントされて発光作用を果たすのは、主に遷移金属類リン光材料であり、その中、イリジウム(III)及び白金(II)錯体類が多く研究されている。一般的に、二座配位子と3価イリジウムとが形成した金属錯体は、八面体配位構造を呈し、イリジウム原子が八面体の中心に位置して二座配位子とキレート配位する。イリジウム(III)錯体の八面体配位構造により、その分子は強い立体性を有し、錯体分子同士が互いに堆積するのを避けることができ、OLED素子の作製過程において、高濃度でドーパントするときにエキシマー発光は形成しにくい。しかし、幾つかの非対称型二座配位子に対して、イリジウム(III)錯体は、異性体を生成する可能性があり、配位子の配位配向に応じてフェイシャル及びメリディオナルの2種類の構造が存在するため、イリジウム(III)錯体を分離しにくく、目標イリジウム(III)錯体の収率が低下してしまう。
【0005】
イリジウム(III)錯体リン光材料が発展し続けるとともに、近年、白金(II)系リン光OLED材料が徐々に発展して、かなりの研究成果を成し遂げた。通常のイリジウム(III)が八面体配位構造を形成するのと異なり、白金(II)は、四座配位であるので、一般的には平面構造の錯体を形成し、普通の配位子が主に二座、三座及び四座配位子に分けられる。二座又は三座配位子と比べて、四座配位子白金(II)錯体は以下の利点を有する。
1)配位子のワンステップ反応により白金(II)錯体を合成でき、白金(II)錯体の製造及び精製が容易となる。
2)白金(II)錯体の合成過程において、異性体の生成がなく、構造が単一である。
3)キレート配位し、構造が安定的である。
4)相対的に良いリン光発光効率を有する。
【0006】
四座配位子白金(II)錯体は、その独特な性能により、多く研究及び注目され、特に香港大学の支志明院士のプロジェクトチームは、このような錯体に対して鋭意な研究を行い、卓越した成果を取得した(Chem. Sci. 2016,7,1653)。
【0007】
四座配位子類白金(II)錯体は、良好な性能を示すとともに、白金(II)錯体の平面構造の特性により、分子同士が堆積しやすく、エキシマーを形成しやすいなど、OLED素子の性能が低下してしまう。
【発明の概要】
【0008】
本願は、緑色光を発光して緑色光リン光OLED材料としてOLED素子において適用される四座配位子類の新規なPt(II)錯体を提供する。このような新規なPt(II)錯体は、ONCNキレート配位モデルを有し、分子骨格上にスピロ環構造を有し、このような構造により分子の立体性が大幅に増強し、分子同士の相互作用を低減させ、錯体分子の堆積を避け、エキシマーの形成を抑制し、OLED素子の効率及び寿命を向上させるのに有利である。
【0009】
本発明に係る新規な四座配位白金(II)錯体金属有機材料は、下記の式で示される構造を有する。
【0010】
[式中、R1~R21は、独立に水素、重水素、硫黄、ハロゲン元素、ヒドロキシ基、アシル基、アルコキシ基、アシルオキシ基、アミノ基、ニトロ基、アシルアミノ基、シアノ基、カルボキシ基、スチリル基、アミノカルボニル基、カルバモイル基、ベンジルカルボニル基、アリールオキシ基、ジアリールアミノ基、C1~30のシリル基、C1~30の飽和アルキル基、C2~20の不飽和アルキル基、置換もしくは無置換のC5~30のアリール基、置換もしくは無置換のC5~30のヘテロアリール基から選ばれるか、あるいは、隣接するR1~R21同士は、共有結合により環を形成し、置換は、ハロゲン元素、重水素、C1~C20のアルキル基、シアノ基による置換であり、前記ヘテロアリール基においてヘテロ原子がN、O、Sのうちの1種又は2種以上である。]
【0011】
好ましくは、R1~R21は、独立に水素、ハロゲン元素、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、ジアリールアミノ基、C1~10の飽和アルキル基、ハロゲン元素もしくは1個又は複数個のC1~C4のアルキル基により置換されいるかあるいは置換されていないC5~20のアリール基、ハロゲン元素もしくは1個又は複数個のC1~C4のアルキル基により置換されいるかあるいは置換されていないC5~20のヘテロアリール基から選ばれるか、あるいは、隣接するR1~R21同士は、共有結合により環を形成し、前記ハロゲン元素はF、Cl、Brである。
【0012】
好ましくは、R1~R21の21個の基のうち、0~3個の基は、独立にジアリールアミノ基、ハロゲン元素もしくは1~3個のC1~C4のアルキル基により置換されいるかあるいは置換されていないC5~10のアリール基、ハロゲン元素もしくは1~3個のC1~C4のアルキル基により置換されいるかあるいは置換されていないC5~10のN含有ヘテロアリール基を表し、その他の基は、独立に水素又はC1~8の飽和アルキル基を表し、前記ハロゲン元素はF、Clである。
【0013】
好ましくは、前記R1~R21の21個の基のうち、0~3個の基は、独立にジフェニルアミノ基、フェニル基、ピリジル基、カルバゾリル基を表し、その他の基は、独立に水素、フッ素又はC1~4の飽和アルキル基を表す。
【0014】
【0015】
[式中、R1
’~R6
’は、独立に水素、ハロゲン元素、ジアリールアミノ基、C1~10の飽和アルキル基、ハロゲン元素もしくは1個又は複数個のC1~C4のアルキル基により置換されいるかあるいは置換されていないC5~20のアリール基、ハロゲン元素もしくは1個又は複数個のC1~C4のアルキル基により置換されているかあるいは置換されていないC5~20のアリール基から選ばれるか、あるいは、隣接するR1
’~R6
’同士は、共有結合により環を形成し、前記ハロゲン元素はF、Cl、Brであり、前記ヘテロアリール基において、ヘテロ原子はN、O、Sのいずれか1種である。]
【0016】
好ましくは、R1
’~R6
’の6個の基のうち、0~3個の基は、独立にジアリールアミノ基、ハロゲン元素もしくは1~3個のC1~C4のアルキル基により置換されいるかあるいは置換されていないC5~10のアリール基、ハロゲン元素もしくは1~3個のC1~C4のアルキル基により置換されいるかあるいは置換されていないC5~10のヘテロアリール基を表し、その他の基は、独立に水素、ハロゲン元素又はC1~8の飽和アルキル基を表し、前記ハロゲン元素はF、Clである。
【0017】
好ましくは、R1
’~R6
’の6個の基のうち、0~3個の基は、独立にジフェニルアミノ基、C1~C4のアルキル基、置換もしくは無置換のフェニル基、ピリジル基、カルバゾリル基を表し、その他の基は、独立に水素、フッ素、C1~4の飽和アルキル基を表す。
【0018】
【0019】
本願の目的のために、特に記載がない限り、用語ハロゲン元素、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アシル基、アルコキシ基及びヘテロ環芳香族系又はヘテロ環芳香族基は、下記の意味を有してもよい。
【0020】
上記ハロゲン元素又はハロゲノ-は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素を含み、好ましくは、F、Cl、Brであり、特に好ましくは、F又はClであり、最も好ましくはFである。
【0021】
上記共有結合により形成する環、アリール基、ヘテロアリール基は、炭素数5~30であり、好ましくは炭素数5~20であり、より好ましくは炭素数5~10であって1個の芳香環又は複数の縮合した芳香環からなるアリール基である。好適なアリール基は、例えばフェニル基、ナフチル基、アセナフテニル基(acenaphthenyl)、ジヒドロアセナフテニル基(acenaphthenyl)、アントリル基、フルオレニル基、フェナントリル基(phenalenyl)である。当該アリール基は、無置換(即ち、全ての置換可能な炭素原子が水素原子を有する)、あるいはアリール基の1つ、1つ以上又は全ての置換可能な位置において置換されてもよい。好適な置換基は、例えばハロゲン元素であり、好ましくはF、Br又はClである。アルキル基は、炭素数1~20、炭素数1~10又は炭素数1~8のアルキル基であり、特に好ましくは、メチル基、エチル基、イソプロピル基又はtert-ブチル基である。アリール基は、好ましくは再度置換可能な、あるいは無置換のC5、C6のアリール基又はフルオレニル基である。ヘテロアリール基は、好ましくは少なくとも1個の窒素原子を含有するヘテロアリール基であり、特に好ましくは、ピリジル基である。アリール基は、特に好ましくは、F、メチル基及びtert-ブチル基から選ばれる置換基を有するか、あるいは、任意に少なくとも1個の上記置換基により置換されるC5、C6のアリール基であり、C5、C6のアリール基は、特に好ましくは、0、1又は2個の上記置換基を有し、C5、C6のアリール基は、特に好ましくは、無置換のフェニル基又は置換のフェニル基であり、例えば、ビフェニル基、2つのブチル基によりメタ位において置換されたフェニル基である。
【0022】
C1~20の不飽和アルキル基は、好ましくは、アルケニル基であり、より好ましくは、1つの二重結合を有するアルケニル基であり、特に好ましくは、二重結合を有して炭素数1~8のアルケニル基である。
【0023】
上記アルキル基は、炭素数1~30、好ましくは炭素数1~10、より好ましくは炭素数1~4のアルキル基である。当該アルキル基は、分岐鎖又は直鎖であってもよいし、環状であってもよく、かつ、1個又は複数個のヘテロ原子、好ましくはN、O又はSにより中断されてもよい。また、当該アルキル基は、1個又は複数個のハロゲン元素あるいは上記のアリール基に関する置換基により置換されてもよい。同様に、アルキル基について、1個又は複数個のアリール基を有することが可能であり、上記のアリール基の全ても当該目的に適し、アルキル基は、特に好ましくは、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n-プロピル基、イソブチル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、s-ブチル基、イソペンチル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基から選ばれる。
【0024】
上記アシル基は、単結合でCO基に連結し、例えば本明細書で用いられるアルキル基である。
【0025】
上記アルコキシ基は、単結合で酸素と直接に連結し、例えば本明細書で用いられるアルキル基である。
【0026】
上記ヘテロアリール基は、芳香族、C3~C8の環基に関すると理解され、かつ、1個の酸素原子又は硫黄原子又は1~4個の窒素原子、あるいは1個の酸素原子又は硫黄原子と最大2個の窒素原子との組み合わせ、ならびにこれらにより置換されているもの及びベンゾ-及びピリド-縮合誘導体をさらに含み、例えば、そのうちの1つの環形成炭素原子を介して連結し、前記ヘテロアリール基が、アリール基について記載されている1個又は複数個の置換基により置換されてもよい。
【0027】
幾つかの実施形態において、ヘテロアリール基は、上記の、独立に0、1又は2個の置換基を含有する5、6員芳香族ヘテロ環系を含み得る。ヘテロアリール基の代表例として、無置換のフラン、ベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、ピロール、ピリジン、インドール、オキサゾール、ベンゾオキサゾール、イソオキサゾール、ベンゾイソオキサゾール、チアゾール、ベンゾチアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、ピラゾール、インダゾール、テトラゾール、キノリン、イソキノリン、ピリダジン、ピリミジン、プリン及びピラジン、フラン、1,2,3-ジアゾール、1,2,3-チアジアゾール、1,2,4-チアジアゾール、トリアゾール、ベンゾトリアゾール、プテリジン、ベンゾオキサゾール、ジアゾール、ベンゾピラゾール、キノリジン、シンノリン、フタラジン、オクラトキシン及びキノキサリンならびにそのモノ-又はジ-置換の誘導体が挙げられるが、これらに限られない。幾つかの実施形態において、置換基は、ハロゲノ、ヒドロキシ基、シアノ基、O-C1~6アルキル基、C1~6アルキル基、ヒドロキシ基C1~6アルキル基及びアミノ-C1~6アルキル基である。
【0028】
以下に示す具体例のように、以下の構造が挙げられるが、これらに限られない。
【0029】
上記錯体のOLED発光素子への使用を提供する。
【0030】
上記構造を有する白金(II)錯体を採用することにより、熱蒸着及び溶液処理したOLED素子を製造することができる。
【0031】
1種又は複数種の上記錯体を含む有機発光素子を提供する。
【0032】
熱蒸着により当該素子において当該錯体を層の形で施す。
【0033】
スピンコートにより当該素子において当該錯体を層の形で施す。
【0034】
インクジェット印刷により当該素子において当該錯体を層の形で施す。
【0035】
上記有機発光素子は、電流を印加する時に当該素子は、オレンジレッド光を発光する。
【0036】
本発明における有機金属錯体は、高い蛍光量子効率、良好な熱安定性及び低い消光定数を有し、高い発光効率、低いロールオフのオレンジレッド光発光OLED素子に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】
図1は本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の構造概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、実施例を組み合わせて本発明をさらに詳しく説明する。
【0039】
上記錯体の製造方法は、
以下のように、初期基質S1とS2とをSuzuki-Miyauraカップリング反応して基質S3を得る工程と、S3とS4とをBuchwald-Hartwigカップリング反応して基質S5を得る工程と、S5とS6とをBuchwald-Hartwigカップリング反応して基質S7を得る工程と、S7をピリジン塩酸塩の作用により高温加熱して脱メチル化してS8を得る工程と、S8とK
2PtCl
4とをキレート反応して目標白金(II)錯体TMを得る工程と、を含む。
【0040】
本発明の化合物の合成に係る初期基質、中間体及び溶媒などの試薬は、いずれも安耐吉社、百霊威社、Aladdin社等、当業者によく知られているサプライヤーから購入される。
【0041】
【0042】
化合物3の合成:20.0gの化合物1(0.10mol)と、19.8gの化合物2(0.125mol)と、3.46gのテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.03eq.、3.0mmol)と、27.6gの炭酸カリウム(2.0eq.、0.20mol)と、をフラスコに入れて、210mLのジオキサンと60mLの水とを添加して窒素ガス保護下で8時間加熱還流して反応した。反応終了後、室温に冷却して回転蒸発により溶媒を除去し、適量の水と酢酸エチルとを添加して抽出を行い、有機相を収集して乾燥し、回転蒸発により溶媒を除去した後にフラッシュシリカゲルクロマトグラフィー(移動相n-ヘキサン/酢酸エチル=10:1)で分離してさらに再結晶して20.0gの目標生成物化合物3を得、収率が85%であり、純度が99.9%であった。
【0043】
化合物5の合成:11.7gの化合物3(50mmol)と、9.3gの化合物4(50mmol)と、450mgの酢酸パラジウム(0.04eq.、2mmol)と、0.40gのトリ-tert-ブチルホスフィン(0.08eq.、4mmol)と、11.22gのtert-ブトキシカリウム(2.0eq.、0.10mol)とを、フラスコに入れて、200mLのトルエンを添加し、窒素ガス保護下で8時間加熱還流して反応した。反応終了後、室温に冷却して回転蒸発により溶媒を除去し、適量の水と酢酸エチルとを添加して抽出を行い、有機相を収集して乾燥し、回転蒸発により溶媒を除去した後にフラッシュシリカゲルクロマトグラフィー(移動相n-ヘキサン/酢酸エチル=15:1)で分離してさらに再結晶させて23.83gの目標生成物化合物5を得、収率が88%であり、純度が99.9%であった。
【0044】
化合物7の合成:4.9gの化合物5(20mmol)と、7.9gの化合物6(20mmol)と、225mgの酢酸パラジウム(0.02eq.、1mmol)と、0.20gのトリ-t-ブチルホスフィン(0.04eq.、2mmol)と、4.5gのtert-ブトキシカリウム(2.0eq.、0.04mol)とを、フラスコに入れて、100mLのトルエンを添加し、窒素ガス保護下で8時間加熱還流して反応した。反応終了後、室温に冷却して回転蒸発により溶媒を除去し、適量の水と酢酸エチルとを添加して抽出を行い、有機相を収集して乾燥し、回転蒸発により溶媒を除去した後にフラッシュシリカゲルクロマトグラフィー(移動相n-ヘキサン/酢酸エチル=10:1)で分離してさらに再結晶させて8.9gの目標生成物化合物7を得、収率が75%であり、純度が99.9%であった。
【0045】
化合物8の合成:5.9gの化合物7(10mmol)と、50gのピリジン塩酸塩とを取り、窒素ガス保護下で200℃に加熱して8時間反応した。反応終了後、適量の水と酢酸エチルとを添加して抽出を行い、有機相を収集して乾燥し、回転蒸発により溶媒を除去した後にフラッシュシリカゲルクロマトグラフィー(移動相n-ヘキサン/酢酸エチル=15:1)で分離し、さらにメタノールで再結晶させて5.0gの目標生成物化合物8を得、収率が86%であり、純度が99.9%であった。質量スペクトル(ESI-)([M-H]-)C41H27N3O理論値:576.22;実際値:576.21。
【0046】
化合物Pt-1の合成:1.15gの化合物8(2.0mmol)と、160mgのテトラブチルアンモニウムブロミド(0.25eq.、0.5mmol)と、930mgのテトラクロロプラチネートジカリウム塩(1.2eq.、2.4mmol)とを、50mLの酢酸に溶解し、真空引きし、窒素ガスを導入して数回置換し、撹拌しながら130℃に加熱して12hrs反応した。反応終了後、冷却して、回転蒸発により溶媒を除去し、さらに適量の水と酢酸エチルとを添加して抽出を行い、有機相を収集し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後に回転蒸発により溶媒を除去し、フラッシュシリカゲルクロマトグラフィー(移動相n-ヘキサン/ジクロロメタン=10:1)で分離し、さらにメタノールで再結晶させ、得られた粗品を真空昇華して616mgの赤色の固体を得、総収率が40%であり、純度が99.95%であった。質量スペクトル(ESI-)([M+H]-)C41H25N3OPt理論値:771.16;実際値:771.19。
【0047】
実施例2:
Pt-2の製造方法がPt-1の合成ルートと同じであり、単に化合物4の代わりに化合物9を用いた点で相違する。化合物9の分子式は以下に示す通りである。
【0048】
実施例3:
Pt-3の製造方法がPt-1の合成ルートと同じであり、単に化合物4の代わりに化合物9を用い、化合物6の代わりに化合物10を用いた点で相違する。化合物10の分子式は以下に示す通りである。
【0049】
実施例4:
Pt-12の製造方法がPt-1の合成ルートと同じであり、単に化合物2の代わりに化合物11を用い、化合物4の代わりに化合物12を用い、化合物6の代わりに化合物10を用いた点で相違する。化合物11の分子式は以下に示す通りである。
【0050】
以下は、本発明の化合物の適用例である。
ITO/ TAPC(70nm)/TCTA:Pt(II)(40nm)/TmPyPb(30nm)/LiF(1nm)/Al(90nm)
【0051】
素子の製造方法
透明陽極インジウムスズ酸化物(ITO)(10Ω/sq)ガラス基板をアセトン、エタノール及び蒸留水で順次に超音波洗浄し、さらに酸素ガスで5分間プラズマ処理した。
【0052】
その後、ITO基板を真空気相蒸着装置の基板固定器に取り付けた。蒸着装置において、系の圧力を10-6torr.に制御する。
【0053】
次いで、ITO基板上に厚さ70nmの正孔輸送層(HTL)材料TAPCを蒸着した。
【0054】
次いで、厚さ40nmの発光層材料(EML)TCTAを蒸着し、その中に10質量%の白金(II)錯体がドーパントされている。
【0055】
次いで、厚さ30nmの電子輸送層(ETL)材料TmPyPbを蒸着した。
【0056】
次いで、厚さ1nmのLiFを電子注入層(EIL)として蒸着した。
【0057】
最後に、厚さ90nmのAlを陰極として蒸着して素子のパッケージングを完成した。それを
図1に示す。
【0058】
素子STD、素子1、素子2、素子3、素子4を順次に作製し、素子の構造及び作製方法が全く同じであり、単に白金(II)錯体STD、Pt-1、Pt-2、Pt-3、Pt-12を発光層におけるドーパント剤として用いた点で相違する。ここで、ドーパント材料STDは、従来のONCN配位構造を有する緑色光材料である。
【0059】
表1は、素子の比較結果を示しており、素子STDの性能を基準とし、-は、データが同一レベルであることを表し、--は、基準に対して性能が5%以上低下したことを表し、+は、基準に対して性能が5%向上したことを表し、++は、基準に対して性能が10%向上したことを表す。
【0060】
【0061】
上記の表に示す通り、本発明の白金(II)錯体により製造された有機エレクトロルミネッセンス素子の性能は、基準素子と比べて、異なる程度の性能向上を示す。このような新規なPt(II)錯体分子は、立体性が強く、分子同士の相互作用が弱く、錯体分子同士が互いに堆積するのを避け、エキシマーの形成を大幅に抑制したため、OLED素子の効率を向上させた。以上より、本発明で製造された有機エレクトロルミネッセンス素子の性能は、基準素子と比べて、良好な性能向上が見られ、係る新規な四座配位白金(II)錯体金属有機材料は、大きな応用価値を有する。
【国際調査報告】