(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-31
(54)【発明の名称】好酸球性喘息の処置のためのmasitinibの使用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/496 20060101AFI20230124BHJP
A61P 11/14 20060101ALI20230124BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20230124BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230124BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230124BHJP
【FI】
A61K31/496
A61P11/14
A61P11/06
A61P43/00 121
A61K45/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022558358
(86)(22)【出願日】2020-12-02
(85)【翻訳文提出日】2022-07-25
(86)【国際出願番号】 EP2020084251
(87)【国際公開番号】W WO2021110737
(87)【国際公開日】2021-06-10
(32)【優先日】2019-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2019-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515084258
【氏名又は名称】エービー サイエンス
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】マウジー,アライン
(72)【発明者】
【氏名】キネット,ジャン-ピエール
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084MA52
4C084NA05
4C084ZA591
4C084ZA621
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC50
4C086GA08
4C086GA10
4C086GA12
4C086GA14
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA59
4C086ZA62
4C086ZC75
(57)【要約】
本発明は、高レベルの好酸球を有するそれを必要とする対象の喘息の処置に使用するための、2-アミノアリールチアゾール誘導体またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物、特にはmasitinibまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物に関する。特に、本発明は、150個の細胞/μL~300個の細胞/μLの範囲のベースラインでの好酸球の血球数を有する対象の喘息の処置に使用するための、2-アミノアリールチアゾール誘導体またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物、特にはmasitinibまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それを必要とする対象の喘息の処置に使用するためのmasitinibまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物であって、前記対象が、150個の細胞/μL~300個の細胞/μLの範囲のベースラインでの好酸球の血球数を有する、masitinibまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物。
【請求項2】
喘息が、2型炎症を伴う喘息である、請求項1に記載の使用のためのmasitinibまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物。
【請求項3】
喘息がコントロールされていない、請求項1または請求項2に記載の使用のためのmasitinibまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物。
【請求項4】
喘息が、吸入副腎皮質ステロイドおよび/または経口副腎皮質ステロイドでコントロールされていない、請求項1~3のいずれか1項に記載の使用のためのmasitinibまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物。
【請求項5】
喘息が、生物製剤でコントロールされていない、請求項1~4のいずれか1項に記載の使用のためのmasitinibまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物。
【請求項6】
masitinibの薬学的に許容される塩または溶媒和物が、masitinibのメシル酸塩である、請求項1~5のいずれか1項に記載の使用のためのmasitinibまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物。
【請求項7】
masitinibまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物が、経口投与される、請求項1~6のいずれか1項に記載の使用のためのmasitinibまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物。
【請求項8】
masitinibまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物が、約1mg/kg/日~約12mg/kg/日、好ましくは約3mg/kg/日~約6mg/kg/日の範囲の用量で投与される、請求項1~7のいずれか1項に記載の使用のためのmasitinibまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物。
【請求項9】
masitinibまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物が、約3mg/kg/日、4.5mg/kg/日、または6mg/kg/日の用量で投与される、請求項1~8のいずれか1項に記載の使用のためのmasitinibまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物。
【請求項10】
masitinibまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物が、少なくとも別の薬学的に有効な作用物質と投与される、請求項1~9のいずれか1項に記載の使用のためのmasitinibまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物。
【請求項11】
前記少なくとも別の薬学的に有効な作用物質が、生物製剤、副腎皮質ステロイド、気管支拡張剤、ロイコトリエン修飾因子、救急薬、およびそれらのいずれかの組み合わせからなる群から選択される、請求項10に記載の使用のためのmasitinibまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物。
【請求項12】
前記少なくとも別の薬学的に有効な作用物質が、抗IgE剤および抗サイトカイン剤からなる群から選択される生物製剤である、請求項10または請求項11に記載の使用のためのmasitinibまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物。
【請求項13】
前記生物製剤が、抗IL-5剤である、請求項12に記載の使用のためのmasitinibまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物。
【請求項14】
前記少なくとも別の薬学的に有効な作用物質が、第1選択処置として投与され、masitinibまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物が、第2選択処置として投与される、請求項10~13のいずれか1項に記載の使用のためのmasitinibまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、それを必要とする対象の喘息の処置、特には好酸球性喘息の処置に関する。
【背景技術】
【0002】
喘息は、可変性の気流閉塞、気道の過敏応答性、および気道炎症を特徴とする気道の慢性炎症性疾患である。喘息は慢性疾患であるため、喘息の処置の目的は、疾患のコントロールを達成すること、特に症状を弱めること、および喘息の増悪を低減し、よって、クオリティオブライフを改善することである。
【0003】
好酸球は、炎症性顆粒球の一種であり、喘息の病態生理学に関与している。好酸球数の増加が、喘息を有する対象の気管支肺胞洗浄検査、痰、および/または末梢血で報告されている。特に気道における好酸球の蓄積は、好酸球由来の神経毒、好酸球の陽イオン性タンパク質、好酸球ペルオキシダーゼ、および主要塩基性タンパク質などの炎症性メディエーターの脱顆粒および放出により、気道の炎症および狭小をもたらし得る。好酸球性炎症は、喘息の重症度、特には喘息の増悪の頻度と相関している。重篤な喘息は、全般的に、疾患のコントロールを達成することの困難さと関連している。
【0004】
多くの対象では、喘息は、たとえば副腎皮質ステロイド、特には吸入副腎皮質ステロイドおよび/または気管支拡張剤を含む維持薬剤により良好にコントロールされる疾患である。しかしながら、喘息を罹患している対象の一部、特に好酸球が多い対象および好酸球性喘息を有する対象では、喘息は、依然としてこのような維持薬剤ではコントロールされていない。よって、一部の対象において、喘息は、副腎皮質ステロイド、特に吸入副腎皮質ステロイドおよび/または気管支拡張剤などの全般的に有効な維持薬剤では効果がない。難治性喘息(コントロールされていない喘息とも称される)を罹患した対象は、通常、高用量の副腎皮質ステロイド、特に経口副腎皮質ステロイドを投与され、よって、喘息のコントロールを達成するために経口コルチコイドに依存するようになり得る。しかしながら、経口副腎皮質ステロイドは、重篤な副作用を誘導する可能性があり、よってそれらの長期間の使用は避けるべきである。さらに、一部の対象では、喘息はまた、経口コルチコイドに対する応答が不十分である。
【0005】
よって、喘息、特にはたとえば好酸球性炎症を有する対象および/または好酸球性喘息を有する対象における現在利用可能な維持薬剤で処置することが困難な喘息の有効な処置が、依然として必要とされている。特に、たとえば喘息の増悪を低減することにより、喘息のコントロールを達成する有効な処置が必要とされている。
【0006】
よって本発明は、それを必要とする対象の喘息の処置に使用するための、2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にmasitinib、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物であって、前記対象が、高レベルの好酸球を有し、特に前記対象が、150個の細胞/μL以上のベースラインでの好酸球の血球数、たとえば150個の細胞/μL~300個の細胞/μLの範囲のベースラインでの好酸球の血球数を有する、2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にmasitinib、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物に関する。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、それを必要とする対象の喘息の処置に使用するための、2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にmasitinib、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物であって、前記対象が、150個の細胞/μL以上のベースラインでの好酸球の血球数を有する、2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にmasitinib、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物に関する。また本発明は、それを必要とする対象の喘息を処置するための方法であって、前記対象が、150個の細胞/μL以上のベースラインでの好酸球の血球数を有し、2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にmasitinib、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を前記対象に投与するステップを含む、方法に関する。
【0008】
一実施形態では、2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にmasitinib、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、それを必要とする対象の喘息の処置に使用するためのものであり、対象は、150個の細胞/μL~300個の細胞/μLの範囲のベースラインでの好酸球の血球数を有する。一実施形態では、2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にmasitinib、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、それを必要とする対象の喘息の処置に使用するためのものであり、対象は、300個の細胞/μL以上、好ましくは300個の細胞/μL超のベースラインでの好酸球の血球数を有する。
【0009】
よって、一実施形態では、本発明は、それを必要とする対象の喘息を処置するための方法であって、前記対象は、150個の細胞/μL~300個の細胞/μLの範囲のベースラインでの好酸球の血球数を有し、2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にmasitinib、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を前記対象に投与するステップを含む、方法に関する。一実施形態では、本発明は、それを必要とする対象の喘息を処置するための方法であって、前記対象は、300個の細胞/μL以上、好ましくは300個の細胞/μL超のベースラインでの好酸球の血球数を有し、2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にmasitinib、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を前記対象に投与するステップを含む、方法に関する。
【0010】
一実施形態では、喘息は、2型喘息としても知られている、2型炎症を伴う喘息である。
【0011】
一実施形態では、喘息は、コントロールされていない。言い換えると、一実施形態では、喘息は、副腎皮質ステロイドおよび/または生物製剤などの維持薬剤に対し難治性である。一実施形態では、喘息は、吸入副腎皮質ステロイドおよび/または経口コルチコイドでコントロールされていない。言い換えると、一実施形態では、喘息は、吸入副腎皮質ステロイドおよび/または経口コルチコイドに対して難治性である。一実施形態では、喘息は、生物製剤でコントロールされない。言い換えると、一実施形態では、喘息は、生物製剤に対し難治性である。
【0012】
一実施形態では、請求項1~5のいずれか1項に記載の使用のための2-アミノアリールチアゾール誘導体またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、式(II):
【化1】
(式中、
R
1は、独立して、水素、ハロゲン、(C1 C10)アルキル、(C3 C10)シクロアルキル基、トリフルオロメチル、アルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、可溶化基、および可溶化基で置換された(C
1-C
10)アルキルから選択され、
mは、0~5である)
を有する。
【0013】
1つの好ましい実施形態では、2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、masitinib、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物である。一実施形態では、masitinibの薬学的に許容される塩または溶媒和物は、masitinibのメシル酸塩である。
【0014】
一実施形態では、2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にmasitinib、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、経口投与される。
【0015】
一実施形態では、2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にmasitinib、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、約1mg/kg/日~約12mg/kg/日、好ましくは約3mg/kg/日~約6mg/kg/日の範囲の用量での投与のためのものである。一実施形態では、2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にmasitinib、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、約3mg/kg/日、4.5mg/kg/日、または6mg/kg/日の用量での投与のためのものである。一実施形態では、2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にmasitinib、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、最初に少なくとも4週間約3mg/kg/日の用量、その後少なくとも4週間約4.5mg/kg/日の用量、その後に約6mg/kg/日の用量での投与のためのものであり、各用量の増加は、毒性コントロールに従うものである。
【0016】
一実施形態では、2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にmasitinib、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、少なくとも別の薬学的に有効な作用物質との投与のためのものである。一実施形態では、少なくとも別の薬学的に有効な作用物質は、生物製剤、副腎皮質ステロイド、気管支拡張剤(LABAを含む)、ロイコトリエン修飾因子、救急薬、およびそれらのいずれかの組み合わせからなる群から選択される。実施形態では、少なくとも別の薬学的に有効な作用物質は、抗IgE剤および抗サイトカイン剤からなる群から選択される生物製剤、たとえば抗IL-5剤である。一実施形態では、生物製剤は、抗IL-5剤である。一実施形態では、少なくとも別の薬学的に有効な作用物質は、第1選択処置としての投与のためのものであり、2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にmasitinib、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、第2選択処置としての投与のためのものである。
【0017】
定義
本発明では、以下の用語は、以下の意味を有する。
【0018】
数字に先行する「約」は、上記数値の±10%以下を包有する。用語「約」が表す値は、それ自体もまた具体的であり、好ましくは開示されていることを理解されたい。
【0019】
「喘息の増悪」または「喘息発作」または「喘息のエピソード」、または「喘息の再発(flare-up)」は、以下:
喘息の症状の徴候および/または進行性の悪化(worsening)(悪化(deterioration)とも称される);
肺機能の悪化;
救急薬の使用の増加
のうちの少なくとも1つを特徴とするエピソードを表す互換可能な表現である。
【0020】
喘息の症状の例として、限定するものではないが、喘鳴、咳、息切れ(呼吸困難としても知られている)、および胸部絞扼感が挙げられる。喘息の増悪は、通院および/または入院を必要とし得る。喘息の増悪は、中程度または重篤であり得る。一実施形態では、中程度の喘息の増悪は、特に少なくとも2日間続く、喘息の症状の悪化、肺機能の悪化、および/または救急薬の使用の増加として定義される。一実施形態では、中程度の喘息の増悪は、特に少なくとも2日間続く、喘息の症状の悪化、肺機能の悪化、および/または救急薬の使用の増加として定義され、喘息の処置の変更(全身性副腎皮質ステロイドの用量の増加または入院以外)を必要とする。一実施形態では、重篤な喘息の増悪は、特に少なくとも3日間の、入院および/または安定した用量の副腎皮質ステロイドなどのコントロール薬剤の増大を必要とする喘息の悪化として定義される。
【0021】
「喘息のコントロール」または「喘息の臨床上のコントロール」は、特に気道炎症の予防もしくは減少、喘息の症状および/もしくは喘息に関連する制限の阻止もしくは減少、ならびに喘息の増悪の予防を目的とする薬剤での喘息の臨床上の管理を表す。たとえば、喘息がコントロールされている対象では、喘息は、通常の運動および/または日常生活に関する制限などの制限がほとんどないもしくは全くないこと;夜間の覚醒などの睡眠の質の喪失がほとんどまたは全くないことを誘導し、救命処置の必要性を頻繁にもたらさない。またこのようなコントロール薬剤は、維持投薬とも称される。コントロール薬剤は、たとえば、気道の炎症を低減するか、または気道の開口の維持を支援し得る。コントロール薬剤の例として、限定するものではないが、副腎皮質ステロイド(特に吸入副腎皮質ステロイド)、ロイコトリエン修飾因子、長時間作用型β刺激薬(LABA)、副腎皮質ステロイドおよびLABAの組み合わせ、ならびに気管支拡張剤、たとえばテオフィリンが挙げられる。
【0022】
「ベースライン」は、本明細書中使用される場合、本明細書中記載の2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にmasitinib、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物での処置の開始に先行する時間を表す。たとえば、所定の対象での、ベースラインでの好酸球の血球数は、本明細書中記載の2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にmasitinib、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物の対象への投与の前の好酸球の血球数である。
【0023】
「BID」は、吸入型の喘息の処置に関連して本明細書中使用される場合、1日2回を意味する。
【0024】
「好酸球」(場合により好酸球(acidophil)としても知られている)は、炎症誘発性白血球(WBC)の一種、より正確には、特にエオシンにより容易に染色される分葉核および細胞質の顆粒形成を特徴とする顆粒球を表す。好酸球は、炎症、特には気道炎症においてある役割を果たす。
【0025】
「好酸球の計数」は、好酸球の数の測定値を表す。たとえば、好酸球の数は、組織、気管支肺胞洗浄検査、痰、または血液において測定され得る。本明細書中後述されるように、血液で測定された好酸球の数は、好酸球の血球数(eosinophil blood count)として知られている。
【0026】
「好酸球の血球数」(絶対好酸球計数としても知られている)は、好酸球である白血球の血液における数を表す。対象の好酸球の血球数を評価するための方法は、規定の方法にて、臨床検査室で使用されている。たとえば、測定は、100個の細胞あたりの好酸球の数を計測し、得られたパーセンテージを白血球の計数(すなわち白血球の総数)と乗算することにより行われ得る。好酸球の血球数は、通常、1μLの血液または1mm3の血液あたりの細胞(すなわち好酸球)の数として表される。
【0027】
「増悪比率」は、所定の期間にわたり対象で起こる喘息の増悪の回数を表す。たとえば、1年ごとまたは毎年の増悪比率は、1年にわたり対象で起こる喘息の増悪の回数を表す。
【0028】
「肺機能」は、本明細書中使用される場合、気流を反映しており、肺機能の減少は、気流の限定を反映している。一実施形態では、肺機能、よって気流の限定は、努力性呼出量(FEV)、1秒での努力性呼出量(FEV1)、予測FEV1のパーセンテージ(本明細書中使用される場合、喘息を有する対象がどれくらい呼息できるかを、喘息を有さない対象がどれくらい呼息できるかと比較する)、最大呼気流量(PEF)および/または努力肺活量(FVC)の測定を介して評価され得る。肺機能、よって気流の限定を評価するための方法は、よく知られており、特にスパイロメトリーを含む。
【0029】
「薬学的に許容される賦形剤」または「薬学的に許容される担体」は、哺乳類、好ましくはヒトに投与される場合に有害な反応、アレルギー反応、または他の望ましくない反応をもたらさない賦形剤または担体を表す。これは、あらゆる溶媒、たとえば分散媒体、コーティング剤、抗細菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤を含む。薬学的に許容される賦形剤または担体は、任意の種類の非毒性の固体、半固体または液体のフィラー、希釈剤、カプセル化物質、または製剤化助剤を表す。ヒト投与では、製剤は、FDA(アメリカ食品医薬品局)またはEMA(欧州医薬品庁)などの規制局が要求する無菌性、発熱性、一般的な安全性、および純度の基準を満たすべきである。
【0030】
「救急薬」は、本明細書中使用される場合、喘息の症状を即座に軽減することを目的とする迅速に作用する(または速く作用する)医薬を表す。特に、救急薬は、本明細書中使用される場合、喘息の増悪を軽減することを目的とする迅速に作用する(または速く作用する)医薬を表す。救急薬の例として、限定するものではないが、気管支拡張剤、たとえば短時間作用型β刺激薬およびイプラトロピウム、コルチコイド、たとえば経口または静脈内副腎皮質ステロイドが挙げられる。
【0031】
「対象」は、哺乳類、好ましくはヒトを表す。本発明では、対象は、喘息を罹患している哺乳類、好ましくはヒトである。一実施形態では、対象は、「患者」、すなわち医療の受診を待機しているか、または医療を受診しているか、または過去/現在/将来に医療の対象であった/ある/あり得るか、または喘息の発症に関してモニタリングされている哺乳類、好ましくはヒトであり得る。一実施形態では、対象は、患者、すなわち、医療、特に維持薬剤を投与されているか、かつ/または喘息に関してモニタリングされている哺乳類、好ましくはヒトである。
【0032】
「治療上有効量」または「治療上有効用量」は、処置を必要とする対象に有意な負または有害な副作用を引き起こすことなく、以下:
喘息の増悪の低減、たとえば中程度の喘息の増悪の低減、重篤な喘息の増悪の低減、および/もしくは全体的な喘息の増悪の低減;
喘息の症状のうちの1つ以上の予防もしくは減少;
気道炎症の予防もしくは減少;
肺機能の悪化の予防もしくは減少;
救急薬の必要性の減少;
吸入副腎皮質ステロイドおよび/もしくは長期間の経口副腎皮質ステロイドの必要とされる用量の減少による、ステロイド節約効果の促進;
維持薬剤の用量の増大の必要性の予防;
通院および/もしくは入院(hospital admission)の頻度の減少、言い換えると入院(hospitalization)の頻度の減少;
通院および/もしくは入院の長さの短縮、言い換えると入院の長さの短縮;ならびに/または
クオリティオブライフの改善
のうちの少なくとも1つをもたらすことを目的とする、本明細書中定義される2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にmasitinib、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物の量または濃度を表す。
【0033】
一実施形態では、治療上有効量または治療上有効用量は、処置を必要とする対象に有意な負または有害な副作用を引き起こすことなく、喘息の増悪、特に喘息の増悪の比率、たとえば喘息の増悪の毎年の比率の低減を目的とする、本明細書中定義される2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にmasitinib、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物の量または濃度を表す。一実施形態では、喘息の増悪は、中程度の喘息の増悪および/または重篤な喘息の増悪であり、喘息の増悪の比率は、(それぞれ)中程度の喘息の増悪の比率および/または重篤な喘息の増悪の比率、たとえば中程度の喘息の増悪の毎年の比率および/または重篤な喘息の増悪の毎年の比率である。一実施形態では、喘息の増悪は、中程度の喘息の増悪および重篤な喘息の増悪を含む全体的な喘息の増悪であり、喘息の増悪の比率は、全体的な喘息の増悪の比率、たとえば全体的な喘息の増悪の毎年の比率である。
【0034】
「処置すること」または「処置」は、治療上の処置、防止的(または予防的)処置、または治療上の処置および防止的(または予防的)処置の両方を表し、この目的は、それを必要とする対象の喘息の症状または兆候のうちの1つ以上を予防、低減、または遅延(減少)することであり、好ましくはこの目的は、喘息の増悪、たとえば中程度の喘息の増悪、重篤な喘息の増悪、および/または全体的な喘息の増悪を低減することである。一実施形態では、本出願に係る処置の目的は、以下:
喘息の増悪の低減、たとえば中程度の喘息の増悪の低減、重篤な喘息の増悪の低減、および/もしくは全体的な喘息の増悪の低減;
喘息の症状のうちの1つ以上の予防もしくは減少;
気道炎症の予防もしくは減少;
肺機能の悪化の予防もしくは減少;
救急薬の必要性の減少;
吸入副腎皮質ステロイドおよび/もしくは長期間の経口副腎皮質ステロイドの必要とされる用量の減少による、ステロイド節約効果の促進;
維持薬剤の用量の増加の必要性の予防;
通院および/もしくは入院の頻度の減少、言い換えると入院の頻度の減少;
通院および/もしくは入院の長さの短縮、言い換えると入院の長さの短縮;ならびに/または
クオリティオブライフの改善
のうちの少なくとも1つをもたらすことである。
【0035】
よって、喘息を罹患している対象は、本明細書中定義される2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にmasitinib、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物の治療上有効量を投与された後に、対象が、以下:
喘息の増悪、特に喘息の増悪の比率、たとえば中程度の喘息の増悪、重篤な喘息の増悪、および/もしくは全体的な喘息の増悪の比率の低下;
喘息の症状、たとえば喘鳴、咳、息切れ(呼吸困難としても知られている)、および胸部絞扼感のうちの1つ以上の減少;
気道炎症の減少;
救急薬の必要性の減少;
通院および/もしくは入院の頻度の減少、言い換えると入院の頻度の減少;
通院および/もしくは入院の長さの短縮、言い換えると入院の長さの短縮;ならびに/または
クオリティオブライフの改善
のうちの少なくとも1つから利益を受ける場合、「処置」が成功しているとみなされる。
【0036】
「2型喘息」または「2型炎症を伴う喘息」は、多くの場合アレルゲンの認識後に適応免疫系により産生されるインターロイキン(IL)-4、IL-5、およびIL-13などのサイトカインの産生を特徴とする喘息の表現型を表す。多くの場合、2型炎症は、好酸球を特徴とし、アトピーを併発し得、対して非2型炎症は、多くの場合好中球を特徴とする。軽度または中程度の喘息を有する対象では、2型炎症は、吸入副腎皮質ステロイド(ICS)を定期的かつ正確に摂取する場合に迅速に改善する。重篤な喘息では、2型炎症は、高用量のICSに対して比較的難治性である。重篤な2型喘息は、経口副腎皮質ステロイド(OCS)に応答し得るが、それらの重篤な副作用は、別の処置を考えるべきことを意味している。対象が高用量のICSを摂取するかまたは毎日OCSを摂取する場合に血中好酸球≧150個/μLが見出される場合、難治性2型炎症の可能性が考慮される[Global Initiative for Asthma. Global Strategy for Asthma Management and Prevention, 2019.:www.ginasthma.orgから利用可能]。
【0037】
「コントロールされていない喘息」は、「難治性喘息」としても知られており、維持薬剤、特に気管支拡張剤および/またはコルチコイド、たとえば吸入コルチコイド、またはさらには場合により経口コルチコイドによりコントロールされない喘息を表す。言い換えると、コントロールされていない喘息または難治性喘息を罹患している対象では、維持薬剤は、それらの目的、たとえば気道炎症の予防もしくは減少、喘息の症状および/または喘息に関連する制限の予防もしくは減少、および喘息の増悪の予防の目的を達成しない。一実施形態では、コントロールされていない喘息は、以下:活動の制限、睡眠の質の損失、特には夜間の覚醒、および/または1週間あたり少なくとも2回の救命処置の必要性のうちの少なくとも1つの存在により定義される。
【0038】
詳細な説明
本発明は、高レベルの好酸球、特にはベースラインで高レベルの好酸球を有するそれを必要とする対象の喘息の処置に使用するための、本明細書中記載の2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にmasitinib、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物に関する。
【0039】
一実施形態では、好酸球のレベルは、対象由来の生体サンプルにおける好酸球のレベルまたは数またはパーセンテージである。生体サンプルの例として、限定するものではないが、組織サンプル、血液サンプル、痰サンプル、気管支肺胞洗浄液が挙げられる。一実施形態では、好酸球のレベルは、痰サンプル、肺組織サンプルもしくは気管支組織サンプルなどの組織サンプル、気管支肺胞洗浄液サンプル、または血液サンプルにおける好酸球のレベルまたは数またはパーセンテージである。
【0040】
本発明では、好酸球性喘息(EA)は、場合により重篤な好酸球性喘息(SEA)と呼ばれ、高レベルの好酸球を特徴とする喘息のサブタイプを表す。よって、本発明の1つの対象は、それを必要とする好酸球性喘息(EA)の処置に使用するための、本明細書中記載の2-アミノアリールチアゾール誘導体、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物である。本発明の別の対象は、それを必要とする対象の重篤な好酸球性喘息(SEA)の処置に使用するための、本明細書中記載の2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にmasitinib、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物である。
【0041】
一実施形態では、好酸球のレベルは、好酸球の血球数である。一実施形態では、本出願では、高レベルの好酸球は、150個の細胞/μL以上の好酸球の血球数(すなわち血液1μLあたり150個の好酸球)である。一実施形態では、高レベルの好酸球は、150個の細胞/μL~300個の細胞/μLの範囲の好酸球の血球数である。一実施形態では、高レベルの好酸球は、300個の細胞/μL以上の好酸球の血球数(すなわち血液1μLあたり300個の好酸球)、好ましくは300個の細胞/μL超の好酸球の血球数である。
【0042】
本発明の1つの対象は、150個の細胞/μL以上のベースラインでの好酸球の血球数を有するそれを必要とする対象の喘息の処置に使用するための、本明細書中記載の2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にmasitinib、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物である。一実施形態では、本明細書中記載の2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にmasitinib、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、150個の細胞/μL以上のベースラインでの好酸球の血球数を有するそれを必要とする対象の好酸球性喘息の処置に使用するためのものである。
【0043】
本発明の1つの目的は、150個の細胞/μL~300個の細胞/μLの範囲のベースラインでの好酸球の血球数を有するそれを必要とする対象の喘息の処置に使用するための、本明細書中記載の2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にmasitinib、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物である。一実施形態では、本明細書中記載の2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にmasitinib、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、150個の細胞/μL~300個の細胞/μLの範囲のベースラインでの好酸球の血球数を有するそれを必要とする対象の好酸球性喘息の処置に使用するためのものである。
【0044】
本発明の1つの目的は、300個の細胞/μL以上、好ましくは300個の細胞/μL超のベースラインでの好酸球の血球数を有するそれを必要とする対象の喘息の処置に使用するための、本明細書中記載の2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にmasitinib、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物である。一実施形態では、本明細書中記載の2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にmasitinib、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、300個の細胞/μL以上、好ましくは300個の細胞/μL超のベースラインでの好酸球の血球数を有するそれを必要とする対象の好酸球性喘息の処置に使用するためのものである。
【0045】
一実施形態では、本明細書中記載のように処置される対象は、重篤な喘息、特には重篤な好酸球性喘息を罹患している。喘息の重症度は、従来より、処置を開始する前の臨床上の特徴の存在、気流の限定、および/または最適処置で必要とされる1日薬剤量により分類される[Global Strategy for Asthma Management and Prevention, Global Initiative for Asthma (GINA) 2007; http://www.ginasthma.org]。
【0046】
喘息の重症度は、たとえば、喘息の症状、たとえば喘鳴、咳、息切れ(呼吸困難としても知られている)、および胸部絞扼感の頻度および強度;たとえば1秒での努力性呼出量(FEV1)の測定および/または最大呼気流量(PEF)の測定を介して評価され得る気流の限定のレベル;喘息の増悪の頻度もしくは喘息の増悪の比率;睡眠の質および/または夜間の覚醒などの夜間の喘息症状の頻度;身体的活動の限定を考慮することにより評価され得る。また喘息の重症度は、良好な喘息コントロールを達成するために必要とされる維持処置の強度により評価され得る。
【0047】
一実施形態では、重篤な喘息は、良好なコントロールを維持するための維持薬剤、たとえば経口副腎皮質ステロイドによる高い強度の処置を必要とする喘息として、またはたとえば経口副腎皮質ステロイドなどの高い強度の処置にも関わらず良好なコントロールを達成しなかった喘息として、定義される。
【0048】
一実施形態では、本明細書中記載の重篤な喘息は、重篤な遷延性喘息である。
【0049】
一実施形態では、重篤な遷延性喘息は、最適な管理にも関わらず、対象による処置のコンプライアンス、および喘息の専門家による少なくとも6カ月の観察期間による診断の大規模な再評価をコントロールすることが依然として困難である喘息を表す。
【0050】
一実施形態では、重篤な遷延性喘息は、毎日の喘息の症状(喘鳴、咳、息切れ(呼吸困難としても知られている)、および胸部絞扼感など)の存在、頻繁な喘息の増悪(たとえば少なくとも1年に2回の喘息の増悪)、夜間の覚醒などの頻繁な夜間の喘息の症状、身体的活動の限定、FEV1またはPEF≦60%の予測FEV1またはPEF、ならびに/またはPEFまたはFEV1のばらつき>30%を特徴とする。
【0051】
一実施形態では、本明細書中記載のように処置される対象は、コントロール下にない喘息、特には重篤かつ/または好酸球性喘息を罹患している。よって一実施形態では、本明細書中記載のように処置される対象は、コントロールされていない喘息、特にはコントロールされていない重篤かつ/または好酸球性喘息を罹患している。言い換えると、本明細書中記載のように処置される対象は、維持薬剤に難治性の喘息、特には重篤かつ/または好酸球性喘息を罹患している。
【0052】
よって、一実施形態では、本明細書中記載の2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にmasitinib、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物での喘息の処置は、処置の第2選択(またはさらなる選択)である。
【0053】
一実施形態では、維持薬剤は、副腎皮質ステロイドである。よって一実施形態では、本明細書中記載のように処置される対象は、副腎皮質ステロイドでコントロールされていない喘息、特には重篤かつ/または好酸球性喘息を罹患している。言い換えると、一実施形態では、本明細書中記載のように処置される対象は、副腎皮質ステロイドに対し難治性の喘息、特には重篤かつ/または好酸球性喘息を罹患している。喘息の処置のための維持薬剤として使用されるコルチコイドの例として、限定するものではないが、フルチカゾン、ブデソニド、モメタゾン、ベクロメタゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、ベタメタゾン、およびデキサメタゾンが挙げられる。
【0054】
一実施形態では、いずれかの時点で、2つ以上の副腎皮質ステロイドが同時に投与される場合、その後、重複期間中に企図される副腎皮質ステロイドの用量は、全ての個々のプレドニゾンに相当する用量の合計である。
【0055】
公開されているステロイドの換算係数(用量の均等物)が、たとえばLefebvre et al. J Allergy Clin Immunol. 2015 Dec;136(6):1488-1495などにおいて、プレドニゾンの一般的な標準物質に対してステロイドの用量を正規化するために使用されることは、当業者に共通して知られている。
【0056】
一実施形態では、維持薬剤は、吸入副腎皮質ステロイド(ICS)である。よって一実施形態では、本明細書中記載のように処置される対象は、吸入副腎皮質ステロイド(ICS)でコントロールされていない喘息、特には重篤かつ/または好酸球性喘息を罹患している。言い換えると、一実施形態では、本明細書中記載のように処置される対象は、ICSに対し難治性の喘息、特には重篤かつ/または好酸球性喘息を罹患している。喘息の処置のための維持薬剤として使用されるICSの例として、限定するものではないが、フルチカゾン、ブデソニド、モメタゾン、およびベクロメタゾンが挙げられる。
【0057】
一実施形態では、維持薬剤は、フルチカゾン、ブデソニド、モメタゾン、ベクロメタゾン、およびそれらのいずれかの組み合わせを含むかまたはからなる群から選択される。
【0058】
一実施形態では、本出願で使用される場合、ICSはまた、コルチコイドおよび別の作用物質、特には、長時間作用型β刺激薬(LABA)の組み合わせを含む。LABAと組み合わせたコルチコイドを含むかまたはからなる喘息の処置のための維持薬剤として使用されるICSの例として、限定するものではないが、フルチカゾンおよびサルメテロールの組み合わせ、ブデソニドおよびホルモテロールの組み合わせ、ならびにモメタゾンおよびホルモテロールの組み合わせが挙げられる。
【0059】
一実施形態では、維持薬剤は、フルチカゾンおよびサルメテロールの組み合わせ(たとえばDPI(ドライパウダー吸入器)処方:500/50μgのBID(BIDは1日に2回を意味する)またはMDI(定量噴霧式吸入器)処方:460/42μg呼気活性型デジタル吸入器(breath-activated digital inhaler:BID)、ブデソニドおよびホルモテロールの組み合わせ(たとえば320/9μgのBID)ならびにモメタゾンおよびホルモテロールの組み合わせ(たとえば(400/10μgのBID)を含むかまたはからなる群から選択される。一実施形態では、維持薬剤は、好ましくは少なくとも6、9、12、15、18、または24カ月間投与、より好ましくは少なくとも12カ月間投与される、フルチカゾンおよびサルメテロールの組み合わせ(たとえばDPI処方:500/50μgのBIDまたはMDI処方:460/42μgのBID)、ブデソニドおよびホルモテロールの組み合わせ(たとえば320/9μgのBID)、またはモメタゾンおよびホルモテロールの組み合わせ(たとえば(400/10μgのBID)である。
【0060】
一実施形態では、維持薬剤は、経口副腎皮質ステロイド(OCS)である。よって一実施形態では、本明細書中記載のように処置される対象は、経口副腎皮質ステロイド(OCS)でコントロールされていない喘息、特には重篤かつ/または好酸球性喘息を罹患している。言い換えると、一実施形態では、本明細書中記載のように処置される対象は、OCSに対し難治性の喘息、特には重篤かつ/または好酸球性喘息を罹患している。喘息の処置のための維持薬剤として使用されるOCSの例として、限定するものではないが、プレドニゾン、プレドニゾロン、ベタメタゾン、およびデキサメタゾンが挙げられる。
【0061】
一実施形態では、維持薬剤は、プレドニゾン、プレドニゾロン、ベタメタゾン、デキサメタゾン、およびそれらのいずれかの組み合わせを含むかまたはからなる群から選択される。一実施形態では、維持薬剤は、プレドニゾンである。一実施形態では、維持薬剤は、好ましくは少なくとも1、2、3、4、5、または6カ月間、少なくとも2.5mg、5mg、7.5mg、10mg、12.5mg、15mg、17.5mg、20mgの一日用量で投与されるプレドニゾンである。一実施形態では、維持薬剤は、好ましくは少なくとも3カ月間、少なくとも5mgの一日用量で投与されるプレドニゾンである。一実施形態では、維持薬剤は、好ましくは少なくとも3カ月間、少なくとも7.5mgの一日用量で投与されるプレドニゾンである。一実施形態では、維持薬剤は、好ましくは少なくとも3カ月間、少なくとも15mgの一日用量で投与されるプレドニゾンである。
【0062】
一実施形態では、本明細書中記載の2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にmasitinib、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物の、本明細書中記載のように処置される対象への投与は、本明細書中上述される吸入副腎皮質ステロイドおよび/または長期間の経口副腎皮質ステロイドの対象の摂取の低減を可能にし;すなわち、本明細書中記載の2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にmasitinib、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物の投与は、ステロイド節約効果を促進する。
【0063】
維持薬剤の他の例は、限定するものではないが、生物製剤、気管支拡張剤、およびロイコトリエン修飾因子を含み得る。生物製剤、気管支拡張剤、およびロイコトリエン修飾因子の非限定的な例は、本明細書中列挙されている。
【0064】
一実施形態では、維持薬剤は、生物製剤である。一実施形態では、維持薬剤は、デュピルマブ、メポリズマブ、レスリズマブ、ベンラリズマブ、およびそれらのいずれかの混合物を含むかまたはからなる群から選択される生物製剤である。
【0065】
一実施形態では、処置を必要とする対象は雄性である。別の実施形態では、処置を必要とする対象は雌性である。一実施形態では、処置を必要とする対象は成年である。本発明では、成年は、18、19、20、または21歳を超える対象である。一実施形態では、処置を必要とする対象は、20、25、または30歳超である。一実施形態では、処置を必要とする対象は小児である。本発明では、小児は、21、20、19、または18歳を下回る対象である。
【0066】
一実施形態では、対象は、患者、すなわち、医療、特に維持薬剤を受けており、かつ/または喘息に関してモニタリングされているヒトである。一実施形態では、対象は、患者、すなわち、医療、特に維持薬剤を受けており、かつ喘息に関してモニタリングされているヒトである。
【0067】
一実施形態では、対象は、本明細書中上述される重篤な喘息を罹患している。
【0068】
一実施形態では、本発明の2-アミノアリールチアゾール誘導体での処置の前に(すなわちベースラインで)、対象は、吸入コルチコイド(ICS)、長時間作用型β刺激薬(LABA)と組み合わせたICS、または経口コルチコイド(OCS)のいずれかのコルチコイドを受けている。一実施形態では、本発明の2-アミノアリールチアゾール誘導体での処置の前に、対象は、少なくとも5mg、7.5mg、10mg、12.5mg、15mg、17.5mg、または20mg、好ましくは少なくとも7.5mgの最小一日用量で、OCS、たとえばプレドニゾンを受けている。一実施形態では、本発明の2-アミノアリールチアゾール誘導体での処置の前に、対象は、少なくとも100μg、200μg、300μg、400μg、500μg、600μg、800μg、1,000μg、または1,200μgの最小一日用量でICSを受けている。一実施形態では、本発明の2-アミノアリールチアゾール誘導体での処置の前に、対象は、LABAと組み合わせたICS、たとえばフルチカゾンおよびサルメテロールの組み合わせ(たとえばDPI(ドライパウダー吸入器)処方:500/50μgのBID(BIDは1日に2回を意味する)またはMDI(定量噴霧式吸入器)処方:460/42μg呼気活性型デジタル吸入器(breath-activated digital inhaler:BID)、ブデソニドおよびホルモテロールの組み合わせ(たとえば320/9μgのBID)、またはモメタゾンおよびホルモテロールの組み合わせ(たとえば(400/10μgのBID)を受けている。
【0069】
一実施形態では、本発明の2-アミノアリールチアゾール誘導体での処置の前に、対象は、少なくとも1、2、3、4、5、または6カ月間、好ましくは少なくとも3カ月間、ICS、LABAと組み合わせたICS、またはOCSのいずれかのコルチコイドを受けている。一実施形態では、本発明の2-アミノアリールチアゾール誘導体での処置の前に、対象は、少なくとも1、2、3、4、5、または6カ月間、好ましくは少なくとも3カ月間、少なくとも5mg、7.5mg、10mg、12.5mg、15mg、17.5mg、または20mg、好ましくは少なくとも7.5mgの最小一日用量で、OCS、たとえばプレドニゾンを受けている。一実施形態では、本発明の2-アミノアリールチアゾール誘導体での処置の前に、対象は、少なくとも1、2、3、4、5、または6カ月間、好ましくは少なくとも3カ月間、少なくとも100μg、200μg、300μg、400μg、500μg、600μg、800μg、1,000μg、または1,200μgの最小一日用量でICSを受けている。一実施形態では、本発明の2-アミノアリールチアゾール誘導体での処置の前に、対象は、少なくとも3、6、9、12、15、18、または24カ月間、好ましくは少なくとも12カ月間、LABAと組み合わせたICS、たとえばフルチカゾンおよびサルメテロールの組み合わせ(たとえばDPI処方:500/50μgのBIDまたはMDI処方:460/42μgの呼気活性型デジタル吸入器(breath-activated digital inhaler :BID)、ブデソニドおよびホルモテロールの組み合わせ(たとえば320/9μgのBID)、またはモメタゾンおよびホルモテロールの組み合わせ(たとえば(400/10μgのBID)を受けている。
【0070】
一実施形態では、本発明の2-アミノアリールチアゾール誘導体での処置の前の年に、対象は、少なくとも7、14、21、28、または35日間の少なくとも1つの期間、好ましくは少なくとも21日間、ICS、LABAと組み合わせたICS、またはOCSのいずれかのコルチコイドを受けていた。一実施形態では、本発明の2-アミノアリールチアゾール誘導体での処置の前の年に、対象は、少なくとも7、14、21、28、または35日間の少なくとも1つの期間、好ましくは少なくとも21日間、少なくとも5mg、7.5mg、10mg、12.5mg、15mg、17.5mg、または20mg、好ましくは少なくとも7.5mgの最小一日用量でOCS、たとえばプレドニゾンを受けていた。一実施形態では、本発明の2-アミノアリールチアゾール誘導体での処置の前の年に、対象は、少なくとも7、14、21、28、または35日間の少なくとも1つの期間、好ましくは少なくとも21日間、少なくとも100μg、200μg、300μg、400μg、500μg、600μg、800μg、1,000μg、または1,200μgの最小一日用量でICSを受けていた。
【0071】
一実施形態では、本発明の2-アミノアリールチアゾール誘導体での処置の前に(すなわちベースラインで)、対象は、約500mg、1000mg、または1500mgを超える年換算の累積副腎皮質ステロイドの用量でコルチコイドを受けているか、受けたことがあるか、または受けていた。
【0072】
本明細書中使用される場合、年換算の累積副腎皮質ステロイドの用量は、1年(すなわち12カ月)の連続期間にわたり喘息を罹患している対象が受けた副腎皮質ステロイドの総用量を表す。一実施形態では、年換算の累積副腎皮質ステロイドの用量は、累積のプレドニゾンに相当する副腎皮質ステロイドの用量である。実際に、上述されるように、一実施形態では、2つ以上の副腎皮質ステロイドが同時に投与される場合、重複期間中に企図される副腎皮質ステロイドの用量は、個別のプレドニゾンに相当する用量の全ての合計である。
【0073】
年換算の累積副腎皮質ステロイドの用量は、あるいは、異なる期間にわたり、用量を適切に調節することにより、表され得る。一実施形態では、累積副腎皮質ステロイドの用量は、企図される期間(たとえば1年)の各日に投与される副腎皮質ステロイドの一日用量を合算することにより、病歴から(たとえば医療の記録および患者/介護士の病歴の想起から)遡及的に決定される。
【0074】
一実施形態では、本発明の2-アミノアリールチアゾール誘導体での処置の前に(すなわちベースラインで)、対象は、約500mg、1000mg、または1500mgを超える年換算の累積全身性副腎皮質ステロイドの用量で全身性副腎皮質ステロイドを受けているか、受けたことがあるか、または受けていた。一実施形態では、本発明の2-アミノアリールチアゾール誘導体での処置の前に(すなわちベースラインで)、対象は、約500mg、1000mg、または1500mgを超える年換算の累積のプレドニゾンに相当する全身性副腎皮質ステロイドの用量で全身性副腎皮質ステロイドを受けているか、受けたことがあるか、または受けていた。一実施形態では、全身性副腎皮質ステロイドは、経口副腎皮質ステロイドおよび静脈内副腎皮質ステロイドを含む。よって一実施形態では、全身性副腎皮質ステロイドは、吸入副腎皮質ステロイドを含まない。
【0075】
一実施形態では、本発明の2-アミノアリールチアゾール誘導体での処置の前に(すなわちベースラインで)、対象は、約500mg、1000mg、または1500mgを超える年換算の累積OCSの用量でOCSを受けているか、受けたことがあるか、または受けていた。一実施形態では、本発明の2-アミノアリールチアゾール誘導体での処置の前に(すなわちベースラインで)、対象は、約500mg、1000mg、または1500mgを超える年換算の累積のプレドニゾンに相当するOCSの用量でOCSを受けているか、受けたことがあるか、または受けていた。
【0076】
一実施形態では、本発明の2-アミノアリールチアゾール誘導体での処置の前に(すなわちベースラインで)、対象は、維持薬剤、たとえば生物製剤、気管支拡張剤、およびロイコトリエン修飾因子などを受けている。生物製剤、気管支拡張剤、およびロイコトリエン修飾因子の非限定的な例は、本明細書中列挙されている。
【0077】
一実施形態では、本発明の2-アミノアリールチアゾール誘導体での処置の前に(すなわちベースラインで)、対象は、維持薬剤、たとえば生物製剤、気管支拡張剤、およびロイコトリエン修飾因子などを受けたことがある。一実施形態では、本発明の2-アミノアリールチアゾール誘導体での処置の前の年に、対象は、維持薬剤、たとえば生物製剤、気管支拡張剤、およびロイコトリエン修飾因子などを受けたことがある。
【0078】
一実施形態では、本発明の2-アミノアリールチアゾール誘導体での処置の前に(すなわちベースラインで)、対象は、予測される正常値の35%(包含)~80%(除外)の範囲のFEV1を有する。よって、一実施形態では、本発明の2-アミノアリールチアゾール誘導体での処置の前に(すなわちベースラインで)、対象は、35%≦FEV1<80%を有する。
【0079】
一実施形態では、対象は、本発明の2-アミノアリールチアゾール誘導体での処置の前に3、6、9、12、15、18、または24カ月以内、好ましくは12カ月以内に、少なくとも2回の喘息の増悪を経験したことがある。一実施形態では、対象は、本発明の2-アミノアリールチアゾール誘導体での処置の前に、3、6、9、12、15、18、または24カ月以内、好ましくは12カ月以内に、少なくとも1回の重篤な喘息の増悪を含む少なくとも2回の喘息の増悪を経験したことがある。一実施形態では、対象は、本発明の2-アミノアリールチアゾール誘導体での処置の前に、3、6、9、12、15、18、または24カ月以内、好ましくは12カ月以内に、少なくとも2回の重篤な喘息の増悪を経験したことがある。
【0080】
一実施形態では、本発明により処置される対象、特に、本明細書中上記で定義される好酸球のレベルが高い対象は、2型喘息を有する対象、すなわち2型炎症を提示する喘息を有する対象である。
【0081】
本発明では、2-アミノアリールチアゾール誘導体は、2位(すなわち複素環の窒素と硫黄原子との間)で二級または三級アミンで置換されたチアゾリル基の存在を特徴とする化合物を表し、このアミンの窒素原子は、少なくとも1つのアリール基で置換されている。
【0082】
一実施形態では、アリール基は、アリールアミド基(すなわち-NH-CO-アリール)で置換されている。
【0083】
一実施形態では、本発明の2-アミノアリールチアゾール誘導体は、以下の式(I):
【化2】
(式中、
R
1およびR
2は、独立して、水素、ハロゲン、(C
1-C
10)アルキル、(C
3-C
10)シクロアルキル基、トリフルオロメチル、アルコキシ、シアノ、ジアルキルアミノ、可溶化基、および可溶化基で置換された(C
1-C
10)アルキルから選択され;
mは、0~5であり;
nは、0~4であり;
R
3は、以下:
(i)任意選択でハロゲン、(C
1-C
10)アルキル基、トリフルオロメチル、シアノ、およびアルコキシなどの1つ以上の置換基で置換されている、アリール基(たとえばフェニル);
(ii)任意選択でハロゲン、(C
1-C
10)アルキル基、トリフルオロメチル、およびアルコキシなどの1つ以上の置換基で置換されている、ヘテロアリール基(たとえば2、3、または4-ピリジル基など);
(iii)任意選択でハロゲン、(C
1-C
10)アルキル基、トリフルオロメチル、およびアルコキシなどの1つ以上の置換基で置換されている、5員環芳香族複素環基(たとえば2-チエニル、3-チエニル、2-チアゾリル、4-チアゾリル、5-チアゾリルなど)
のうちの1つである)
を有する。
【0084】
一実施形態では、式(I)のR1およびR2は、独立して、水素、ハロゲン、(C1-C10)アルキル、(C3-C10)シクロアルキル基、トリフルオロメチル、アルコキシ、シアノ、ジアルキルアミノ、および可溶化基から選択される。
【0085】
よって一実施形態では、本発明の2-アミノアリールチアゾール誘導体またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、本明細書中上述される式(I)の2-アミノアリールチアゾール誘導体またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物である。
【0086】
一実施形態では、本発明の2-アミノアリールチアゾール誘導体は、以下の式(II):
【化3】
(式中、
R
1は、独立して、水素、ハロゲン、(C
1-C
10)アルキル、(C
3-C
10)シクロアルキル基、トリフルオロメチル、アルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、可溶化基、および可溶化基で置換された(C
1-C
10)アルキルから選択され、
mは、0~5である)
を有する。
【0087】
一実施形態では、式(I)のR1は、独立して、水素、ハロゲン、(C1-C10)アルキル、(C3-C10)シクロアルキル基、トリフルオロメチル、アルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、および可溶化基から選択される。
【0088】
一実施形態では、式(I)のR1は、可溶化基である。一実施形態では、式(I)のR1は、可溶化基で置換された(C1-C10)アルキルである。
【0089】
一実施形態では、式(I)のR1は、(C1-C10)アルキル-(C2-C11)ヘテロシクロアルキル-(C1-C10)アルキル-である。一実施形態では、式(I)のR1は、(C1-C4)アルキル-(C2-C11)ヘテロシクロアルキル-(C1-C10)アルキル-、好ましくは(C1-C2)アルキル-(C2-C11)ヘテロシクロアルキル-(C1-C10)アルキル-である。一実施形態では、式(I)のR1は、(C1-C10)アルキル-(C2-C11)ヘテロシクロアルキル-(C1-C4)アルキル-、好ましくは(C1-C10)アルキル-(C2-C11)ヘテロシクロアルキル-(C1-C2)アルキル-である。一実施形態では、式(I)のR1は、(C1-C10)アルキル-(C2-C6)ヘテロシクロアルキル-(C1-C10)アルキル-、好ましくは(C1-C10)アルキル-(C4)ヘテロシクロアルキル-(C1-C10)アルキル-である。一実施形態では、式(I)のR1は、(C1-C4)アルキル-(C2-C6)ヘテロシクロアルキル-(C1-C4)アルキル-、好ましくは(C1-C2)アルキル-(C4)ヘテロシクロアルキル-(C1-C2)アルキル-である。一実施形態では、式(I)のR1は、(C1-C4)アルキル-ピペラジニル-(C1-C4)アルキル-、好ましくは(C1-C2)アルキル-ピペラジニル-(C1-C2)アルキル-である。一実施形態では、式(I)のR1は、メチルピペラジニル-(C1-C2)アルキル-、好ましくはメチルピペラジニル-メチル-、より好ましくは4-メチルピペラジニル-メチル-である。
【0090】
よって、一実施形態では、本発明の2-アミノアリールチアゾール誘導体またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、本明細書中上述される式(II)の2-アミノアリールチアゾール誘導体またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物である。
【0091】
本明細書中使用される場合、用語「アリール基」は、通常5~12個の原子、好ましくは6~10個の原子を含み、少なくとも1つの環が芳香環である、単一の芳香環(すなわちフェニル)または共に縮合した複数芳香環(たとえばナフチル)もしくは共有結合した複数芳香環を有するポリ不飽和芳香族ヒドロカルビル基を表す。芳香環は、任意選択で、それに縮合した1~2個のさらなる環(シクロアルキル、ヘテロシクリル、またはヘテロアリール)を含み得る。またアリールは、本明細書中記載される炭素環系の部分的に水素付加した誘導体を含むように意図されている。適切なアリール基の例として、限定するものではないが、フェニル、トリル、アントラセニル、フルオレニル、インデニル、アズレニル、およびナフチル、ならびにベンゾ縮合炭素環式部分、たとえば5,6,7,8-テトラヒドロナフチルが挙げられる。アリール基は、置換されていなくてもよく、または1以上の置換基で置換され得る。一実施形態では、アリール基は、環が本明細書中「(C6)アリール」と称される6個の炭素原子を含む単環である。
【0092】
本明細書中使用される場合、用語「アルキル基」は、1~10個の炭素原子、好ましくは1~6個の炭素原子を有する飽和した直鎖または分枝の非環式の炭化水素を表す。代表的な飽和直鎖アルキルとして、限定するものではないが、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、およびn-デシルが挙げられる。飽和分岐アルキルとして、限定するものではないが、イソプロピル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、イソペンチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、2-メチルヘキシル、3-メチルヘキシル、4-メチルヘキシル、5-メチルヘキシル、2,3-ジメチルブチル、2,3-ジメチルペンチル、2,4-ジメチルペンチル、2,3-ジメチルヘキシル、2,4-ジメチルヘキシル、2,5-ジメチルヘキシル、2,2-ジメチルペンチル、2,2-ジメチルヘキシル、3,3-ジメチル(dimtheyl)ペンチル、3,3-ジメチルヘキシル、4,4-ジメチルヘキシル、2-エチルペンチル、3-エチルペンチル、2-エチルヘキシル、3-エチルヘキシル、4-エチルヘキシル、2-メチル-2-エチルペンチル、2-メチル-3-エチルペンチル、2-メチル-4-エチルペンチル、2-メチル-2-エチルヘキシル、2-メチル-3-エチルヘキシル、2-メチル-4-エチルヘキシル、2,2-ジエチルペンチル、3,3-ジエチルヘキシル、2,2-ジエチルヘキシル、3,3-ジエチルヘキシルが挙げられる。本発明の化合物に含まれるアルキル基は、任意選択で1つ以上の置換基で置換され得る。
【0093】
本明細書中使用される場合、用語「アルコキシ」は、酸素原子により別の部位に結合したアルキル基を表す。アルコキシ基の例として、限定するものではないが、メトキシ、イソプロポキシ、エトキシ、tert-ブトキシが挙げられる。アルコキシ基は、任意選択で、1つ以上の置換基で置換され得る。
【0094】
本明細書中使用される場合、用語「シクロアルキル」は、3~10個の炭素原子を有する飽和環式アルキルラジカルを表す。代表的なシクロアルキルとして、シクロプロピル、1-メチルシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、およびシクロデシルが挙げられる。シクロアルキル基は、任意選択で1つ以上の置換基で置換され得る。
【0095】
本明細書中使用される場合、用語「ハロゲン」は、-F、-Cl、-Br、または-Iを表す。
【0096】
本明細書中使用される場合、用語「ヘテロアリール」は、炭素原子の環のメンバーと、1つ以上のヘテロ原子の環のメンバー(たとえば酸素、硫黄、または窒素)とを含む単環式または多環式のヘテロ芳香環を表す。通常、ヘテロアリール基は、1~約5個のヘテロ原子の環のメンバーと、1~約14個の炭素原子の環のメンバーとを含む。代表的なヘテロアリール基として、限定するものではないが、ピリジル、1-オキソ-ピリジル、フラニル、ベンゾ[1,3]ジオキソリル、ベンゾ[1,4]ジオキシニル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、イミダゾリル、チアゾリル、イソオキサゾリル、キノリニル、ピラゾリル、イソチアゾリル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、トリアゾリル、チアジアゾリル、イソキノリニル、インダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾフリル、インドリジニル、イミダゾピリジル、テトラゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾキサジアゾリル、インドリル、テトラヒドロインドリル、アザインドリル、イミダゾピリジル、キナゾリニル、プリニル、ピロロ[2,3]ピリミジニル、ピラゾロ[3,4]ピリミジニル、イミダゾ[1,2-a]ピリジル、およびベンゾ(b)チエニルが挙げられる。ヘテロ原子は、当業者に知られている保護基で置換されてよく、たとえば、窒素上の水素は、tert-ブトキシカルボニル基で置換され得る。ヘテロアリール基は、任意選択で、1つ以上の置換基で置換され得る。さらに、窒素または硫黄のヘテロ原子の環のメンバーは、酸化され得る。一実施形態では、ヘテロ芳香環は、5~8員環の単環式ヘテロアリール環から選択される。ヘテロ芳香環またはヘテロアリール環の別の基への結合点は、ヘテロ芳香環またはヘテロアリール環の炭素原子またはヘテロ原子であり得る。
【0097】
本明細書中使用される場合、用語「複素環」は、集合的にヘテロシクロアルキル基およびヘテロアリール基を表す。
【0098】
本明細書中使用される場合、用語「ヘテロシクロアルキル」は、O、N、またはSから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を有し、2~11個の炭素原子を有し、飽和または不飽和であり得るが、芳香族ではない、単環式または多環式の基を表す。ヘテロシクロアルキル基の例として、限定するものではないが、ピペリジニル、ピペラジニル、2-オキソピペラジニル、2-オキソピペリジニル、2-オキソピロリジニル、4-ピペリドニル(piperidonyl)、ピロリジニル、ヒダントインイル、バレロラクタミル(valerolactamyl)、オキシラニル、オキセタニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、テトラヒドロピリンジニル、テトラヒドロピリミジニル、テトラヒドロチオピラニルスルホン、テトラヒドロチオピラニルスルホキシド、モルフォリニル、チオモルフォリニル、チオモルフォリニルスルホキシド、チオモルフォリニルスルホン、1,3-ジオキソラン、テトラヒドロフラニル、ジヒドロフラニル-2-オン、テトラヒドロチエニル、およびテトラヒドロ-1,1-ジオキソチエニルが挙げられる。通常、単環式ヘテロシクロアルキル基は、3~7個のメンバーを有する。好ましい3~7員環の単環式ヘテロシクロアルキル基は、5~6個の環原子を有する基である。ヘテロ原子は、当業者に知られている保護基で置換されてよく、例えば、窒素上の水素は、tert-ブトキシカルボニル基で置換され得る。さらに、ヘテロシクロアルキル基は、任意選択で1つ以上の置換基で置換され得る。さらに、複素環の別の基への結合点は、複素環の炭素原子またはヘテロ原子のいずれかであり得る。このような置換された複素環基の安定したアイソマーのみが、この定義で企図される。
【0099】
本明細書中使用される場合、用語「置換基」または「置換された」は、化合物または基の上の水素ラジカルが、保護されていない形式でかまたは保護基を使用して保護される場合に反応条件に対して実質的に安定しているいずれかの望ましい基と置き換えられていることを意味する。好ましい置換基の例として、限定するものではないが、ハロゲン(クロロ、ヨード、ブロモ、もしくはフルオロ);アルキル;アルケニル;アルキニル;ヒドロキシ;アルコキシ;ニトロ;チオール;チオエーテル;イミン;シアノ;アミド;ホスホナート;ホスフィン;カルボキシル;チオカルボニル;スルホニル;スルホンアミド;ケトン;アルデヒド;エステル;酸素(-O);ハロアルキル(たとえばトリフルオロメチル);単環式もしくは縮合もしくは非縮合した多環式であり得るシクロアルキル(たとえばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、もしくはシクロヘキシル)、または単環式もしくは縮合もしくは非縮合した多環式であり得るヘテロシクロアルキル(たとえばピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルフォリニル、もしくはチアジニル(thiazinyl))、単環式もしくは縮合もしくは非縮合した多環式アリールもしくはヘテロアリール(たとえばフェニル、ナフチル、ピロリル、インドリル、フラニル、チオフェニル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピラゾリル、ピリジル、キノリニル、イソキノリニル、アクリジニル、ピラジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチオフェニル、もしくはベンゾフラニル);アミノ(一級、二級、もしくは三級);CO2CH3;CONH2;OCH2CONH2;NH2;SO2NH2;OCHF2;CF3;OCF3が挙げられ、このような部分はまた、任意選択で縮合した環構造またはブリッジ、たとえば-OCH2O-で置換され得る。これら置換基は、任意選択で、当該基から選択される置換基でさらに置換され得る。特定の実施形態では、用語「置換基」または形容詞「置換された」は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、ハロアルキル、-C(O)NR11R12、-NR13C(O)R14、ハロ、-OR13、シアノ、ニトロ、ハロアルコキシ、-C(O)R13、-NR11R12、-SR13、-C(O)OR13、-OC(O)R13、-NR13C(O)NR11R12、-OC(O)NR11R12、-NR13C(O)OR14、-S(O)rR13、-NR13S(O)rR14、-OS(O)rR14、S(O)rNR11R12、-O、-S、および-N-R13からなる群から選択される置換基を表す(式中、rは1または2であり;R11およびR12は、それぞれ存在するごとに、独立して、H、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルキニル、任意選択で置換されたシクロアルキル、任意選択で置換されたシクロアルケニル、任意選択で置換されたヘテロシクロアルキル、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたヘテロアリール、任意選択で置換されたアリールアルキル、または任意選択で置換されたヘテロアリールアルキルであるか;またはR11およびR12は、結合する窒素と共に、任意選択で置換されたヘテロシクロアルキルまたは任意選択で置換されたヘテロアリールであり;R13およびR14は、それぞれ存在するごとに、独立して、H、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルキニル、任意選択で置換されたシクロアルキル、任意選択で置換されたシクロアルケニル、任意選択で置換されたヘテロシクロアルキル、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたヘテロアリール、任意選択で置換されたアリールアルキル、または任意選択で置換されたヘテロアリールアルキルである)。特定の実施形態では、用語「置換基」または形容詞「置換された」は、可溶化基を表す。
【0100】
本明細書中使用される場合、用語「可溶化基」は、実質的にイオン化することができ、化合物を望ましい溶媒、たとえば水または水含有溶媒(「水可溶化基」)などに可溶化できるいずれかの基を表す。さらに、可溶化基は、化合物または複合体の親油性を増大させる基であり得る。一実施形態では、可溶化基は、N、O、Sなどの1つ以上のヘテロ原子で置換されたアルキル基(それぞれが任意選択で、独立してアルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、カルボキシル、シアノで置換またはシクロヘテロアルキルもしくはヘテロアリールで置換されたアルキル基で置換されている)、またはホスフェートまたはスルフェート、またはカルボン酸から選択される。一実施形態では、可溶化基は、以下のうちの1つである:
少なくとも1つの窒素または酸素のヘテロ原子を含み、かつ/または基が少なくとも1つのアミノ基もしくはオキソ基(限定するものではないが、2-オキソピペラジニル、2-オキソピペリジニル、2-オキソピロリジニル、4-ピペリドニル(piperidonyl)、ヒダントインイル、バレロラクタミル(valerolactamyl)、オキシラニル、オキセタニル、テトラヒドロピラニル、モルフォリニル、1,3-ジオキソラン、テトラヒドロフラニル、およびジヒドロフラニル-2-オンを含む)で置換されているアルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール基;
アルキル、アルコキシカルボニル、ハロゲン、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、アミノ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、カルバモイル、モノアルキルカルバモイル、およびジアルキルカルバモイル(限定するものではないがメチル-ピペリジニル、メチル-ピペラジニル、およびメチル-ピロリジニルを含む)からなる群で置換され得る飽和環式アミノ基(限定するものではないが、ピペリジニル、ピペラジニル、およびピロリジニルを含む)であり得るアミノ基;
以下に示す構造a)~i)のうちの1つ(式中、波線および矢印の線が、本発明の2-アミノアリールチアゾール誘導体、たとえば式(I)または(II)のコア構造に対する結合点に対応する):
【化4】
【0101】
一実施形態では、可溶化基は、以下のうちの1つである:
少なくとも1つの窒素もしくは酸素のヘテロ原子を含み、または基が少なくとも1つのアミノ基もしくはオキソ基で置換されているアルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール基;
アルキル、アルコキシカルボニル、ハロゲン、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、アミノ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、カルバモイル、モノアルキルカルバモイル、およびジアルキルカルバモイルからなる群で置換され得る飽和環式アミノ基であり得るアミノ基;
上記に示す構造a)~i)のうちの1つ(式中、波線および矢印の線が、本発明の2-アミノアリールチアゾール誘導体、たとえば式(I)または(II)のコア構造に対する結合点に対応する)。
【0102】
一実施形態では、可溶化基は、アルキル、アルコキシカルボニル、ハロゲン、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、アミノ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、カルバモイル、モノアルキルカルバモイル、およびジアルキルカルバモイル(限定するものではないがメチル-ピペリジニル、メチル-ピペラジニル、およびメチル-ピロリジニルを含む)からなる群で置換され得る飽和環式アミノ基(限定するものではないが、ピペリジニル、ピペラジニル、およびピロリジニルを含む)である。
【0103】
一実施形態では、可溶化基は、上記に示される構造c)であり、波線は、本発明の2-アミノアリールチアゾール誘導体、たとえば式(I)または(II)のコア構造に対する結合点に対応する。
【0104】
本明細書中使用される場合、「薬学的に許容される塩」は、生物学的に望ましくないものではなく、全般的に遊離塩基を適切な有機酸もしくは無機酸と反応させるかまたは遊離酸を適切な有機塩基もしくは無機塩基と反応させることにより調製される遊離酸または遊離塩基の塩を表す。適切な酸付加塩は、非毒性の塩を形成する酸から形成される。例として、酢酸塩、アジピン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベシル酸塩、炭酸水素塩/炭酸塩、重硫酸塩/硫酸塩、ホウ酸塩、カンシル酸塩、クエン酸塩、サイクラミン酸塩、エジシル酸塩、エシル酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、ヒベンズ酸塩、塩酸塩/塩化物、臭化水素酸塩/臭化物、ヨウ化水素酸塩/ヨウ化物、イセチオン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メシル酸塩、メチルスルファート、ナフチル酸塩(naphthylate)、ナプシル酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オロト酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、リン酸塩/水素、リン酸塩/二水素、リン酸塩、ピログルタミン酸塩、糖酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、トシル化物、トリフルオロ酢酸塩、およびキシノホ酸(xinofoate)塩が挙げられる。適切な塩基塩は、非毒性の塩を形成する塩基から形成される。例として、アルミニウム、アルギニン、ベンザチン、カルシウム、コリン、ジエチルアミン、ジオラミン、グリシン、リジン、マグネシウム、メグルミン、オラミン;カリウム、ナトリウム、トロメタミン、2(ジエチルアミノ)エタノール、エタノールアミン、モルフォリン、4(2ヒドロキシエチル)モルフォリン、および亜鉛の塩が挙げられる。酸および塩基のヘム塩、たとえばヘミ硫酸塩およびヘミカルシウム塩もまた形成され得る。
【0105】
一実施形態では、薬学的に許容される塩は、たとえば塩酸、硫酸、もしくはリン酸などの無機酸、または適切な有機のカルボン酸もしくはスルホン酸、たとえば脂肪族モノもしくはジカルボン酸、たとえばトリフルオロ酢酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、ヒドロキシマレイン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸もしくはシュウ酸、またはアルギニンもしくはリジンなどのアミノ酸、芳香族カルボン酸、たとえば安息香酸、2-フェノキシ-安息香酸、2-アセトキシ-安息香酸、サリチル酸、4-アミノサリチル酸、芳香族-脂肪族カルボン酸、たとえばマンデル酸またはケイ皮酸、ヘテロ芳香族カルボン酸、たとえばニコチン酸またはイソニコチン酸、脂肪族スルホン酸、たとえばメタン-、エタン-、または2-ヒドロキシエタン-スルホン酸、特にはメタンスルホン酸もしくは芳香族スルホン酸、たとえばベンゼン-、p-トルエン-、またはナフタレン-2-スルホン酸を用いた、薬学的に許容される酸付加塩である。
【0106】
一実施形態では、本発明の2-アミノアリールチアゾール誘導体の薬学的に許容される塩は、メシル酸塩である。
【0107】
他の意味が記載されない限り、用語「メシル酸塩」は、名前を付された薬学的な物質(式(I)または(II)の2-アミノアリールチアゾール誘導体など)とメタンスルホン酸の塩を表すように本明細書中使用される。メシル酸塩(mesylate)よりもメシル酸塩(mesilate)の使用は、WHOが発行するINNM(International nonproprietary names modified)に応じたものである(たとえばWorld Health Organization (February 2006). International Nonproprietary Names Modified. INN Working Document 05.167/3. WHO)。
【0108】
本明細書中使用される場合、「薬学的に許容される溶媒和物」は、本発明の2-アミノアリールチアゾール誘導体と、1つ以上の薬学的に許容される溶媒分子、たとえばエタノールの化学量論的または準化学量論的な量とを含む分子複合体を表す。用語「水和物」は、上記溶媒が水である場合を表す。
【0109】
1つの特定の実施形態では、本発明の2-アミノアリールチアゾール誘導体またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、masitinibまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物である。
【0110】
masitinibの化学名は、4-(4-メチルピペラジン-1-イルメチル)-N-[4-メチル-3-(4-ピリジン-3イルチアゾール-2-イルアミノ)フェニル]ベンズアミド-CAS番号790299-79-5である:
【化5】
【0111】
masitinibは、最初に米国特許第7,423,055号および欧州特許公開公報第1 525 200号に記載された。
【0112】
一実施形態では、本発明の2-アミノアリールチアゾール誘導体またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、masitinibのメシル酸塩である。よって一実施形態では、本明細書中上述されるmasitinibの薬学的に許容される塩は、masitinibのメシル酸塩である。言い換えると、本明細書中上述されるように、masitinibの薬学的に許容される塩は、masitinibのメタンスルホン酸塩である。
【0113】
masitinibのメシル酸塩の合成のための詳細な手法は、国際特許公開公報第2008/098949号に提供されている。
【0114】
一実施形態では、「masitinibのメシル酸塩」は、経口的に生体利用可能なmasitinibのメシル酸塩-CAS1048007-93-7(MsOH);C
28H
30N
6OS.CH
3SO
3H; MW 594.76を表す:
【化6】
【0115】
一実施形態では、本明細書中上述される2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にmasitinib、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、治療上有効用量で投与される。
【0116】
一実施形態では、本明細書中上述される2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にmasitinib、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、約1~約12mg/kg/日(1日あたり体重1kgあたりのmg)の範囲の用量で投与される。一実施形態では、本明細書中上述される2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にはmasitinib、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、約1.5~約7.5mg/kg/日の範囲の用量で投与される。一実施形態では、本明細書中上述される2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にはmasitinib、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、約3~約12mg/kg/日、好ましくは約3~約6mg/kg/日の範囲の用量で投与される。
【0117】
一実施形態では、本明細書中上述される2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にmasitinib、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12mg/kg/日の用量で投与される。一実施形態では、本明細書中上述される2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にmasitinib、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、約1.5、3、4.5、6、7.5、9、10.5、または12mg/kg/日の用量で投与される。
【0118】
一実施形態では、本明細書中上述される2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にmasitinib、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、約3、4.5、または6mg/kg/日の用量で投与される。
【0119】
一実施形態では、本明細書中上述される2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にmasitinib、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、最大約7.5mg/kg/日、より好ましくは約4.5または約6mg/kg/日に達するために、約1.5mg/kg/日の増分ごとに増大する用量であり得る。各用量の増加は、いずれの毒性イベントもなく用量の増加が起こるのを許容する毒性コントロールに従うものである。
【0120】
一実施形態では、2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にmasitinib、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物の用量の増加は、最初の用量の投与から少なくとも4週間後かつ最初の用量の投与後26週間より前のいずれかの時点、たとえば最初の用量の投与から4週間後、8週間後、12週間後、16週間後、20週間後、または24週間後に起こる。各用量の増加は、限定するものではないが、一定用量の試験処置での以前の4週間の処置期間を含む毒性コントロールに従うものであり、疑わしい重篤な有害なイベントが報告されず、疑わしい有害なイベントが処置の中断をもたらさず、疑わしい有害なイベントがその重症度に関わらず用量が増加する時点で進行中ではない。
【0121】
一実施形態では、本明細書中上述される2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にmasitinib、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、6週間、約3mg/kg/日の最初の用量で投与され、その後約4.5mg/kg/日の用量で投与される。別の実施形態では、本明細書中上述される2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にmasitinib、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、12週間、約3mg/kg/日の最初の用量で投与され、その後約4.5mg/kg/日の用量で投与される。
【0122】
一実施形態では、本明細書中上述される2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にmasitinib、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、少なくとも4週間の間約3mg/kg/日の最初の用量で投与され、次に少なくとも4週間の間約4.5mg/kg/日の用量で投与され、その後約6mg/kg/日の用量で投与される。ここで各用量の増加は毒性コントロールに従うものである。別の実施形態では、本明細書中上述される2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にmasitinib、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、少なくとも6週間、約4.5mg/kg/日の最初の用量で投与され、その後約6mg/kg/日の用量で投与される。ここで各用量の増加は毒性コントロールに従うものである。
【0123】
一実施形態では、本明細書中記載される全ての用量は、有効成分自体の量を表し、その薬学的に許容される塩または溶媒和物の形態の量を表さない。よって、本発明の2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にmasitinibの薬学的に許容される塩または溶媒和物の組成のバリエーションは、投与される用量に影響しない。
【0124】
一実施形態では、本明細書中上述される2-アミノアリールチアゾール誘導体、好ましくはmasitinib、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、経口投与、静脈内投与、非経口投与、局所投与、吸入、特に吸入スプレーによる投与、直腸投与、経鼻投与、またはバッカル投与され得る。一実施形態では、本明細書中上述される2-アミノアリールチアゾール誘導体、好ましくはmasitinib、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、経口投与される。
【0125】
一実施形態では、本明細書中上述される2-アミノアリールチアゾール誘導体、好ましくはmasitinib、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、少なくとも1日1回、好ましくは1日に2回投与される。一実施形態では、本明細書中上述される2-アミノアリールチアゾール誘導体、好ましくはmasitinib、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、長期間、たとえば少なくとも1、2、3、6、9、または12カ月間投与される。
【0126】
一実施形態では、本明細書中上述される2-アミノアリールチアゾール誘導体、好ましくはmasitinib、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、経口投与に適した形態である。経口投与に適した形態の例として、限定するものではないが、液体、ペースト、または固体の組成物、より具体的には、錠剤、丸剤、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー、および懸濁剤が挙げられる。
【0127】
一実施形態では、本明細書中上述される2-アミノアリールチアゾール誘導体、好ましくはmasitinib、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、錠剤、好ましくは100mgまたは200mgの錠剤として投与される。
【0128】
一実施形態では、本明細書中上述される2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にmasitinib、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、少なくとも別の薬学的に有効な作用物質と共に投与される。
【0129】
本発明では、本明細書中上述される2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にmasitinib、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、上記少なくとも別の薬学的に有効な作用物質と同時、別々、または連続して投与され得る。一実施形態では、本明細書中上述される2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にmasitinib、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、上記少なくとも別の薬学的に有効な作用物質と併用して、好ましくは組み合わせた製剤、医薬組成物、また医薬において投与される。
【0130】
本発明で記載される喘息を有する対象に投与され得る他の薬学的に有効な作用物質の例として、限定するものではないが、抗IgE剤および抗サイトカイン剤などの生物製剤、副腎皮質ステロイド、長時間作用型β刺激薬(LABA)を含む気管支拡張剤、救急薬、およびそれらのいずれかの組み合わせが挙げられる。一実施形態では、少なくとも別の薬学的に有効な作用物質は、生物製剤、副腎皮質ステロイド、LABAを含む気管支拡張剤、救急薬、およびそれらのいずれかの組み合わせを含むかまたはからなる群から選択される。
【0131】
一実施形態では、少なくとも別の薬学的に有効な作用物質は、生物製剤である。本明細書中使用される場合、「生物学的薬物」または手短に「生物製剤」は、生物から生産されるかまたは生体の成分を含む化合物である。よって、生物製剤の例として、抗体、組み換えタンパク質、細胞、血液成分が挙げられる。
【0132】
一実施形態では、生物製剤は、抗IgE剤および抗サイトカイン剤、たとえば抗IL-5剤から選択される。一実施形態では、生物製剤は、抗IgE抗体および抗サイトカイン抗体、たとえば抗IL-5抗体から選択される抗体である。
【0133】
一実施形態では、生物製剤は、抗IgE剤である。抗IgE剤の例として、限定するものではないが、モノクローナル抗体オマリズマブが挙げられる。一実施形態では、抗IgE剤は、オマリズマブである。
【0134】
一実施形態では、生物製剤は、抗サイトカイン剤、好ましくは抗サイトカイン抗体である。抗サイトカイン剤の例として、限定するものではないが、デュピルマブ、メポリズマブ、レスリズマブ、およびベンラリズマブが挙げられる。一実施形態では、抗サイトカイン剤は、デュピルマブ、メポリズマブ、レスリズマブ、ベンラリズマブ、およびそれらのいずれかの混合物を含むかまたはからなる群から選択される。
【0135】
一実施形態では、抗サイトカイン剤は、抗IL-5剤である。よって一実施形態では、生物製剤は、抗IL-5剤である。抗IL-5剤は、IL-5(インターロイキン-5)またはその受容体(IL-5R)を標的とするモノクローナル抗体である。抗IL-5剤の例として、限定するものではないが、メポリズマブ、レスリズマブ、およびベンラリズマブが挙げられる。一実施形態では、抗IL-5剤は、メポリズマブ、レスリズマブ、ベンラリズマブ、およびそれらのいずれかの混合物を含むかまたはからなる群から選択される。
【0136】
一実施形態では、少なくとも別の薬学的に有効な作用物質は、オマリズマブ、デュピルマブ、メポリズマブ、レスリズマブ、ベンラリズマブ、およびそれらのいずれかの混合物を含むかまたはからなる群から選択される生物製剤である。一実施形態では、少なくとも別の薬学的に有効な作用物質は、デュピルマブ、メポリズマブ、レスリズマブ、ベンラリズマブ、およびそれらのいずれかの混合物を含むかまたはからなる群から選択される生物製剤である。一実施形態では、少なくとも別の薬学的に有効な作用物質は、メポリズマブ、レスリズマブ、ベンラリズマブ、およびそれらのいずれかの混合物を含むかまたはからなる群から選択される生物製剤である。
【0137】
一実施形態では、少なくとも別の薬学的に有効な作用物質は、副腎皮質ステロイドである。副腎皮質ステロイドは、気道炎症を低減するために投与される抗炎症性化合物である。副腎皮質ステロイドの例として、限定するものではないが、フルチカゾン、ブデソニド、モメタゾン、ベクロメタゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、ベタメタゾン、およびデキサメタゾンが挙げられる。
【0138】
一実施形態では、副腎皮質ステロイドは、吸入副腎皮質ステロイドおよび/または経口コルチコイドである。一実施形態では、副腎皮質ステロイドは、フルチカゾン、ブデソニド、モメタゾン、ベクロメタゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、ベタメタゾン、デキサメタゾン、およびそれらのいずれかの混合物を含むかまたはからなる群から選択される。
【0139】
一実施形態では、副腎皮質ステロイドは、吸入副腎皮質ステロイド(ICS)である。ICSの例として、限定するものではないが、フルチカゾン、ブデソニド、モメタゾン、およびベクロメタゾンが挙げられる。一実施形態では、ICSは、フルチカゾン、ブデソニド、モメタゾン、ベクロメタゾン、およびそれらのいずれかの混合物を含むかまたはからなる群から選択される。
【0140】
一実施形態では、副腎皮質ステロイドは、経口副腎皮質ステロイド(OCS)である。OCSの例として、限定するものではないが、プレドニゾロン、ベタメタゾン、およびデキサメタゾンが挙げられる。一実施形態では、OCSは、プレドニゾロン、ベタメタゾン、デキサメタゾン、およびそれらのいずれかの混合物を含むかまたはからなる群から選択される。
【0141】
一実施形態では、少なくとも別の薬学的に有効な作用物質は、気管支拡張剤である。気管支拡張剤は、気道周辺の筋肉を弛緩させることにより気道の開口の保持を支援する。気管支拡張剤の例として、限定するものではないが、本明細書中記載のテオフィリンおよびLABAが挙げられる。一実施形態では、気管支拡張剤は、本明細書中記載のLABAおよびテオフィリンを含むかまたはからなる群から選択される。
【0142】
一実施形態では、気管支拡張剤は、LABAである。よって一実施形態では、少なくとも別の薬学的に有効な作用物質は、LABAである。LABAは、狭い気道を開口し、喘息の増悪を予防するために投与される。LABA(長時間作用型β2刺激薬または長時間作用型β2アドレナリン作動性受容体アゴニストとしても知られている)の例として、限定するものではないが、サルメテロール、ホルモテロール、アルホルモテロール、およびビランテロールが挙げられる。
【0143】
一実施形態では、LABAは、サルメテロール、ホルモテロール、アルホルモテロール、ビランテロール、およびそれらのいずれかの混合物を含むかまたはからなる群から選択される。一実施形態では、LABAは、サルメテロール、ホルモテロール、アルホルモテロール、およびそれらのいずれかの混合物を含むかまたはからなる群から選択される。
【0144】
一実施形態では、少なくとも別の薬学的に有効な作用物質は、テオフィリン、サルメテロール、ホルモテロール、アルホルモテロール、ビランテロール、およびそれらのいずれかの混合物を含むかまたはからなる群から選択される気管支拡張剤である。
【0145】
一実施形態では、少なくとも別の薬学的に有効な作用物質は、副腎皮質ステロイドおよびLABAの組み合わせである。一実施形態では、LABAは、副腎皮質ステロイド、特に吸入副腎皮質ステロイドと共に投与される。LABAおよび吸入副腎皮質ステロイドの組み合わせの例として、限定するものではないが、フルチカゾンおよびサルメテロールの組み合わせ、ブデソニドおよびホルモテロールの組み合わせ、モメタゾンおよびホルモテロールの組み合わせ、フルチカゾンおよびビランテロールの組み合わせが挙げられる。一実施形態では、LABAおよび吸入副腎皮質ステロイドの組み合わせは、フルチカゾンおよびサルメテロールの組み合わせ、ブデソニドおよびホルモテロールの組み合わせ、モメタゾンおよびホルモテロールの組み合わせ、フルチカゾンおよびビランテロールの組み合わせ、ならびにそれらのいずれかの混合物を含むかまたはからなる群から選択される。
【0146】
一実施形態では、少なくとも別の薬学的に有効な作用物質は、ロイコトリエン修飾因子である。ロイコトリエン修飾因子は、喘息の症状の軽減を支援するために投与される。ロイコトリエン修飾因子の例として、限定するものではないが、モンテルカスト、ザフィルルカスト、およびジロートンが挙げられる。一実施形態では、ロイコトリエン修飾因子は、モンテルカスト、ザフィルルカスト、ジロートン、およびそれらのいずれかの混合物を含むかまたはからなる群から選択される。
【0147】
一実施形態では、少なくとも別の薬学的に有効な作用物質は、救急薬である。一実施形態では、少なくとも別の薬学的に有効な作用物質は、上述の作用物質および本明細書中後述される救急薬である。
【0148】
救急薬は、喘息の増悪の最中の短期間で迅速な症状の軽減のため、必要に応じて投与され得る。救急薬の例として、限定するものではないが、気管支拡張剤、たとえば短時間作用型β刺激薬およびイプラトロピウム、コルチコイド、たとえば経口または静脈内副腎皮質ステロイドが挙げられる。
【0149】
短時間作用型β刺激薬(短時間作用型β2刺激薬としても知られている)の例として、限定するものではないが、アルブテロール(サルブタモールとしても知られている)およびレブアルブテロールが挙げられる。経口または静脈内副腎皮質ステロイドの例として、限定するものではないが、プレドニゾンおよびメチルプレドニゾロンが挙げられる。
【0150】
一実施形態では、救急薬は、アルブテロール、レブアルブテロール、イプラトロピウム、プレドニゾン、メチルプレドニゾロン、およびそれらのいずれかの混合物を含むかまたはからなる群から選択される。
【0151】
一実施形態では、少なくとも別の薬学的に有効な作用物質は、オマリズマブ、デュピルマブ、メポリズマブ、レスリズマブ、ベンラリズマブ、フルチカゾン、ブデソニド、モメタゾン、ベクロメタゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、ベタメタゾン、デキサメタゾン、テオフィリン、サルメテロール、ホルモテロール、アルホルモテロール、ビランテロール、フルチカゾンおよびサルメテロールの組み合わせ、ブデソニドおよびホルモテロールの組み合わせ、モメタゾンおよびホルモテロールの組み合わせ、フルチカゾンおよびビランテロールの組み合わせ、モンテルカスト、ザフィルルカスト、ジロートン、アルブテロール、レブアルブテロール、ならびにそれらのいずれかの混合物を含むかまたはからなる群から選択される。一実施形態では、少なくとも別の薬学的に有効な作用物質は、オマリズマブ、デュピルマブ、メポリズマブ、レスリズマブ、ベンラリズマブ、フルチカゾン、ブデソニド、モメタゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、フルチカゾンおよびサルメテロールの組み合わせ、ブデソニドおよびホルモテロールの組み合わせ、モメタゾンおよびホルモテロールの組み合わせ、テオフィリン、アルブテロール、レブアルブテロール、ならびにそれらのいずれかの混合物を含むかまたはからなる群から選択される。
【0152】
一実施形態では、少なくとも別の薬学的に有効な作用物質は、オマリズマブ、デュピルマブ、メポリズマブ、レスリズマブ、ベンラリズマブ、プレドニゾン、プレドニゾロン、フルチカゾンおよびサルメテロールの組み合わせ、ブデソニドおよびホルモテロールの組み合わせ、モメタゾンおよびホルモテロールの組み合わせ、ならびにそれらのいずれかの混合物を含むかまたはからなる群から選択される。
【0153】
一実施形態では、本明細書中上述される2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にはmasitinib、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、第1選択処置として投与される。
【0154】
一実施形態では、本明細書中上述される2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にはmasitinib、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、本明細書中上述される少なくとも別の薬学的に有効な作用物質での処置の後および/またはそれと同時に投与される。一実施形態では、本明細書中上述される2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にはmasitinib、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、本明細書中上述される生物製剤での処置の後および/またはそれと同時に投与される。一実施形態では、本明細書中上述される2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にはmasitinib、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、本明細書中上述される抗IL-5剤での処置の後および/またはそれと同時に投与される。
【0155】
一実施形態では、本明細書中上述される2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にはmasitinib、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、第2選択処置として投与される。一実施形態では、本明細書中上述される2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にはmasitinib、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、第1選択処置の後および/またはそれと同時に、第2選択処置として投与される。一実施形態では、本明細書中上述される2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にはmasitinib、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、本明細書中上述される少なくとも別の薬学的に有効な作用物質の投与を含む第1選択処置の後および/またはそれと同時に、第2選択処置として投与される。一実施形態では、本明細書中上述される2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にはmasitinib、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、上述の生物製剤の投与を含む第1選択処置の後および/またはそれと同時に、第2選択処置として投与される。一実施形態では、本明細書中上述される2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にはmasitinib、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、本明細書中上述される抗IL-5剤の投与を含む第1選択処置の後および/またはそれと同時に、第2選択処置として投与される。
【0156】
本発明の別の目的は、高レベルの好酸球、特には本明細書中上述されるようにベースラインで高レベルの好酸球を有するそれを必要とする対象の喘息を処置するための方法であって、本明細書中上述される2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にはmasitinib、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を対象に投与するステップを含む、方法である。
【0157】
本発明は、150個の細胞/μL以上のベースラインでの好酸球の血球数を有するそれを必要とする対象の喘息、特には本明細書中上述される重篤かつ/または好酸球性の喘息を処置するための方法であって、本明細書中上述される2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にはmasitinib、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を対象に投与するステップを含む、方法に関する。
【0158】
また本発明は、150個の細胞/μL~300個の細胞/μLの範囲のベースラインでの好酸球の血球数を有するそれを必要とする対象の喘息、特には本明細書中上述される重篤かつ/または好酸球性の喘息を処置するための方法であって、本明細書中上述される2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にはmasitinib、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を対象に投与するステップを含む、方法に関する。
【0159】
また本発明は、300個の細胞/μL以上、好ましくは300個の細胞/μL超のベースラインでの好酸球の血球数を有するそれを必要とする対象の喘息、特には本明細書中上述される重篤かつ/または好酸球性の喘息を処置するための方法であって、本明細書中上述される2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にはmasitinib、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を対象に投与するステップを含む、方法に関する。
【0160】
一実施形態では、本発明の方法は、本明細書中上述される2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にはmasitinib、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物の本明細書中上述される治療上有効用量を対象に投与するステップを含む。
【0161】
一実施形態では、本発明の方法は、本明細書中上述される少なくとも別の薬学的に有効な作用物質を対象に投与するステップを含む。
【0162】
本発明の別の目的は、高レベルの好酸球、特には本明細書中上述されるようにベースラインで高レベルの好酸球を有するそれを必要とする対象の喘息の処置に使用するための本明細書中上述される2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にはmasitinib、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物と、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物である。また本発明は、高レベルの好酸球、特には本明細書中上述されるようにベースラインで高レベルの好酸球を有するそれを必要とする対象の喘息の処置に使用するための医薬組成物であって、本明細書中上述される2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にはmasitinib、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物と、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤とを含む、医薬組成物に関する。
【0163】
一実施形態では、本発明の医薬組成物は、本明細書中上述される少なくとも別の薬学的に有効な作用物質と併用して使用するためのものである。
【0164】
本発明の別の目的は、高レベルの好酸球、特には本明細書中上述されるようにベースラインで高レベルの好酸球を有するそれを必要とする対象の喘息の処置に使用するための本明細書中上述される2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にはmasitinib、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物と、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物である。また本発明は、高レベルの好酸球、特には本明細書中上述されるようにベースラインで高レベルの好酸球を有するそれを必要とする対象の喘息の処置のための医薬組成物であって、本明細書中上述される2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にはmasitinib、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物と、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤とを含む、医薬組成物に関する。
【0165】
一実施形態では、本発明は、高レベルの好酸球、特には本明細書中上述されるようにベースラインで高レベルの好酸球を有するそれを必要とする対象の喘息の処置のための、本明細書中上述される少なくとも別の薬学的に有効な作用物質と組み合わせた、本明細書中上述される2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にはmasitinib、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物と、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物に関する。
【0166】
本発明の別の目的は、高レベルの好酸球、特には本明細書中上述されるようにベースラインで高レベルの好酸球を有するそれを必要とする対象の本明細書中上述される喘息の処置用の医薬の製造のための、本明細書中上述される2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にはmasitinib、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物の使用である。
【0167】
一実施形態では、本発明は、本明細書中上述される少なくとも別の薬学的に有効な作用物質と組み合わせた、高レベルの好酸球、特には本明細書中上述されるようにベースラインで高レベルの好酸球を有するそれを必要とする対象の本明細書中上述される喘息の処置用の医薬の製造のための、本明細書中上述される2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にはmasitinib、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物の使用に関する。
【0168】
一実施形態では、本発明は、高レベルの好酸球、特には本明細書中上述されるようにベースラインで高レベルの好酸球を有するそれを必要とする対象の喘息の処置用の医薬の製造のための、本明細書中上述される少なくとも別の薬学的に有効な作用物質と組み合わせた、本明細書中上述される2-アミノアリールチアゾール誘導体、特にはmasitinib、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物の使用に関する。
【0169】
実施例
本発明を、さらに以下の実施例により示す。
【0170】
実施例:
前向き、多施設、無作為化、二重盲検、プラセボ対照の2並行群の第3相試験を行い、経口副腎皮質ステロイドで処置した重篤な遷延性喘息を有する対象の処置における6mg/kg/日のmasitinib対プラセボの有効性および安全性を比較した。上記臨床試験(参照番号AB07015)は、EudraCT number: 2010-020803-63の下およびClinicalTrials.gov identifier: NCT01449162の下登録されている。
【0171】
方法
患者
患者を、それぞれ2:1のmasitinib:プラセボの無作為化の比率で2つのグループに無作為化した:
グループ1:6mg/kg/日のmasitinibを投与した患者
グループ2:プラセボを投与した患者。
【0172】
主要な参入基準は、以下の通りである:
重篤な喘息を有し、スクリーニング訪問の前に少なくとも3カ月間経口副腎皮質ステロイドを最小一日用量7.5mgのプレドニゾンまたは均等物ですでに処置された患者;
スクリーニング訪問前に少なくとも4週間通常の喘息薬剤で有意な変化がなく、重篤な喘息の増悪がない患者;
過去に10パック/年未満のたばこを消費しており、少なくとも1年間禁煙している患者;
スクリーニング訪問前に1年以上喘息の病歴を有し、以下の基準にも一致した患者:
短時間作用型β2刺激薬から少なくとも6時間後または長時間作用型β2刺激薬(LABA)から少なくとも12時間後に示される35≦ベースラインFEV1<80%の予測正常値、
プロトコルの定義あたり1つの重篤な喘息の増悪を含むスクリーニング訪問前の1年以内での少なくとも2回の喘息の増悪
スクリーニング訪問前1週間以内での以下の特性のうちの2つ以上として定義されるコントロールされていない喘息(ACQ(喘息コントロールアンケート:asthma control questionnaire)の項目):
1週間あたり2回超の日中の症状
何らかの活動の制限の症状
なんらかの夜間の症状/覚醒
1週間あたり2回超の緩和薬/救命処置の必要。
【0173】
主要な除外基準は、以下の通りである:
喘息以外の活性肺疾患(たとえば慢性気管支炎)を有する患者;
喘息のコントロールに影響するアレルゲンもしくは誘発因子にすでに曝露した喘息性の患者;および/または
スクリーニング訪問前4週間以内に急性感染性副鼻腔炎もしくは気道感染症の病歴を有する患者。
【0174】
試験設計&処置投与
試験は、以下の期間からなる:
Run-In期:
参入基準/除外基準を満たした患者を、2週間の単盲検のプラセボrun-in期間からなるrun-in期間に入れた。このrun-in期間は、症状、救急薬の必要性および処置のコンプライアンスを含む患者の状態を評価するための参照期間として作用した。
【0175】
無作為化の対象とするために、各患者は、2週間のrun in期間の間に、良好な試験処置(すなわちプラセボ)のコンプライアンス(≧80%);1日の平均症状スコア≧2;および喘息の増悪(中程度または重篤)がないことを示さなければならない。
【0176】
最初の処置期(W0-W36):
36週間の処置期間の間、患者に、一定用量6mg/kg/日のmasitinibまたはこれに一致するプラセボを投与した。
【0177】
経口副腎皮質ステロイドのウィーニング期間(W36-W44):
36週目に15mg/日超のプレドニゾンで処置した患者は、8週間のフォローアップ経口副腎皮質ステロイド節約期間に入った。この期間の間、最初の経口副腎皮質ステロイドの用量は、喘息の悪化が起こるまで週ごとに25%減少した。患者が喘息の悪化を経た後はすぐに、調査者は、前の週の用量で副腎皮質ステロイドを再導入した。その後、さらなる副腎皮質ステロイドの用量の低下は行わなかった。
【0178】
延長期:
15mg/日以下のプレドニゾンの患者では36週目または15mg/日超のプレドニゾンの患者では44週目に、調査者が医学的に適切と判断した場合、処置延長期に直接入ることができた。
【0179】
登録された対象は、表1に記載されるように一日総用量6mg/kgのmasitinibまたは一致するプラセボを、食事中に摂取するように投与された。
【0180】
【0181】
許可されている付随する喘息処置は:
長時間作用型β刺激薬(ウォッシュアウトの要件:各試験訪問の12時間前);
スポンサーにより償還された救急薬としての短時間作用型β刺激薬(サルブタモール)(ウォッシュアウトの要件:各試験訪問の6時間前);
安定した用量での吸入副腎皮質ステロイド;
最初の36週間の処置の間での安定した用量の経口副腎皮質ステロイド
であった。
【0182】
有効性の解析
試験AB07015(バージョン1.0、日付:2019年10月18日)の統計分析プランにより、全体的に評価可能な集団を、「スクリーニング前に少なくとも3カ月間最小一日用量5mg超のプレドニゾンまたは均等物での経口副腎皮質ステロイドですでに処置した重篤な喘息を有する最大の解析対象集団(FAS)における全ての患者」と定義した。
【0183】
最大の解析対象集団(FAS)は、以下の患者:
a)重大な優良臨床試験基準(GCP)違反を有する場所に由来する患者;
b)治験の生成物で処置しなかった患者;
c)無作為化が誤っている患者(2つの異なる場所で2回無作為化);
d)スクリーニングおよびベースライン時に参照経口副腎皮質ステロイド(OCS)の投与がなかった患者
を除く全ての無作為化した患者と定義されている。
【0184】
サブグループの分析を、ベースラインでの好酸球の血球数により重篤な喘息患者のコホート分類で行った。
【0185】
プライマリーエンドポイントを、完全な曝露(主要期間+延長/ウィーニング期)での利用可能な人-時(処置の終了までの時間)で調節された重篤な喘息の増悪比率として定義した。
【0186】
重篤な喘息の増悪の比率は、ポアソン回帰(logリンク関数およびポアソン分布)モデルを適用することにより分析した。
【0187】
一次分析で包括的なカットオフを、最後の無作為化から36週間後として定義される試験AB07015の終了時に適用した。
【0188】
セカンダリーエンドポイントは、以下を含んでいた:
36週目での重篤な喘息の増悪比率;
最初の重篤な喘息の増悪までの時間;
36週目および試験全体で少なくとも1回の重篤な喘息の増悪を経験した患者のパーセンテージ;
36週目および試験全体での全体的な(重篤および中程度の)喘息の増悪比率;
最初の喘息の増悪までの時間(重篤または中程度);
36週目および試験全体での少なくとも1回の重篤または中程度の喘息の増悪を経た患者のパーセンテージ;
36週目でのACQスコア;
36週目でのAQLQ;
36週目でのFEV1;
36週目での努力肺活量(FVC);
36週目のベースライン後の経口副腎皮質ステロイドの用量の変化。
【0189】
結果
合計419名の患者を試験AB07015に無作為化した。最大の解析対象集団(FAS)は、402名の患者を含み、このうち269名の患者がmasitinib処置アームに含まれ、133名の患者がプラセボアームに含まれていた。プライマリーエンドポイント解析のための評価可能な集団(すなわちスクリーニング前に少なくとも3カ月間最小一日用量5mg超のプレドニゾンまたは均等物での経口副腎皮質ステロイドですでに処置した重篤な喘息を有する患者)は、355名の患者を含み;このうち240名の患者がmasitinib処置アームに含まれ、115名の患者がプラセボアームに含まれていた。これらのうち、masitinib処置アームの181名の患者およびプラセボアームの87名の患者の、合計268名の患者が、150個の細胞/μL以上の高い血中好酸球レベルを有していた。
【0190】
処置アーム間の薬物曝露の平均(masitinibまたはプラセボ)は、集団全体でかつ全てのサブグループを通して良好に合致していた(すなわち約1:1)。それぞれ2:1のmasitinib:プラセボの無作為化の比率では、全体的な試験への曝露(年)もまた、約2:1、たとえばそれぞれ、プライマリー分析集団では273年対132.5年であり、150個の細胞/μL以上の高い血中好酸球レベルを有するコホートではそれぞれ198.6年vs97.8年であった。
【0191】
好酸球の炎症は喘息の重症度と相関しているため、血中好酸球レベルによりサブグループの解析を行うことに興味が集まっていた。以下の表2は、様々な血中好酸球レベルで定義されたコホートおよびそれらの補足コホート(主要有効性解析集団による)でのプラセボに対するmasitinibでの処置効果に関する結果(ステロイド療法を必要とする喘息の増悪に関する比率の比)を提示している。喘息の増悪の比率は、目的の一次変数(共変数)として処置グループ(masitinib、プラセボ)でポアソン回帰を使用し分析した。
【0192】
150個の細胞/μL以上の血中好酸球を有するコホート(masitinib処置アームおよびプラセボ処置アームにおいてそれぞれ181vs87名の患者)において、masitinibを投与した患者の増悪比率は、プラセボで処置した患者での1年あたりの0.48の重篤な増悪と比較して、1年あたり0.34の重篤な増悪であった。喘息の増悪に関する対応する比率の比は0.66であり、これは、プラセボで処置した患者に対するmasitinibを投与した患者での重篤な増悪の33%の低下(改善)に相当する。比較して、補足コホート、すなわち150個の細胞/μL未満の血中好酸球を有するサブグループ(masitinib処置アームおよびプラセボ処置アームにおいてそれぞれ59vs28名の患者)は、増悪比率において識別できる差異を示さなかった(それぞれ1年あたり0.36vs0.37の重篤な増悪であった)。喘息の増悪に関する対応する比率の比は0.97であり、これは、プラセボで処置した患者に対するmasitinibを投与した患者での重篤な増悪の3%の低下に相当する。
【0193】
さらなる分析は、2型炎症の重篤な喘息の表現型のサブグループを利用した。150~300個の細胞/μLの範囲の血中好酸球を有するコホート(masitinib処置アームおよびプラセボ処置アームにおいてそれぞれ89対35の患者)では、masitinibを投与した患者の増悪比率は、1年あたり0.38の重篤な増悪であり、プラセボで処置した患者では1年あたり0.53の重篤な増悪であった。喘息の増悪に関する対応する比率の比は、0.72であり、これは、プラセボで処置した患者に対するmasitinibを投与した患者での重篤な増悪の28%の低下(改善)に相当する。同様に、300個の細胞/μL以上の血中好酸球を有するコホート(masitinib処置アームおよびプラセボ処置アームにおいてそれぞれ95対52名の患者)では、masitinibを投与した患者の増悪比率は、プラセボで処置した患者での1年あたり0.50の重篤な増悪と比較して1年あたり0.29の重篤な増悪であった。喘息の増悪に関する対応する比率の比は0.59であり、これは、プラセボで処置した患者に対するmasitinibを投与した患者での重篤な増悪の41%の低下(改善)に相当する。比較して、150個の細胞/μL未満の血中好酸球を有する上述のサブグループは、増悪比率において識別できる差異を示さなかった。
【0194】
これら結果から、masitinibが、2型炎症を伴う喘息を有する患者に対応する、高レベルの好酸球を伴う重篤な喘息を有する患者に好適であると結論付けることができる。注目すべきことに、masitinibは、150~300個の細胞/μLの範囲の好酸球を有する処置することが困難であるサブグループを含む、上記2型炎症の重篤な喘息の表現型に明らかな処置効果をもたらす。
【0195】
【国際調査報告】