(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-31
(54)【発明の名称】HIVに対する広域中和抗体
(51)【国際特許分類】
C07K 16/10 20060101AFI20230124BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230124BHJP
A61P 31/18 20060101ALI20230124BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20230124BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20230124BHJP
C12P 21/08 20060101ALN20230124BHJP
【FI】
C07K16/10
A61K39/395 S ZNA
A61P31/18
A61P37/04
C12N15/13
C12P21/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022558359
(86)(22)【出願日】2020-12-02
(85)【翻訳文提出日】2022-07-22
(86)【国際出願番号】 EP2020084309
(87)【国際公開番号】W WO2021110764
(87)【国際公開日】2021-06-10
(32)【優先日】2019-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】308027710
【氏名又は名称】ウニヴェルジテート・ツー・ケルン
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クライン フロリアン
(72)【発明者】
【氏名】グリュル ヘニング
(72)【発明者】
【氏名】ショマース フィリップ フレデリック
【テーマコード(参考)】
4B064
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA10
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4C085AA03
4C085AA14
4C085BA69
4C085EE01
4C085GG04
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA29
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、ヒト免疫不全ウイルスHIV-1のCD4結合部位に対するモノクローナルヒト抗体又はその結合フラグメント、かかるモノクローナルヒト抗体又はその結合フラグメントを含む医薬組成物、かかる抗体又はその結合フラグメントを備えるキット、並びに医薬として及びヒト免疫不全ウイルスHIV-1によって引き起こされる疾患の治療又は予防に用いられる、モノクローナル抗体又はその結合フラグメント、及び医薬組成物、及びキットに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト免疫不全ウイルスHIV-1のCD4結合部位に対するモノクローナルヒト抗体又はその結合フラグメントであって、前記抗体アミノ酸配列がV
H1-46遺伝子セグメント及び前記V
κ3-20遺伝子セグメントを含み、
前記抗体が、
a)重鎖アミノ酸配列
QXXXFQSGXEXKRPGASVXISCRADDDPYTDDDTFTKYXTHWIRQAPGQXPEWLGVISPHXARPIYSYKFXDRLTLTRDSSLTXVYXELXXLXXDDXGIYXCARDPFGXXXPHYNXHMDVWGXGTXXIVSX(コンセンサス配列番号1;配列番号47)、
及び軽鎖アミノ酸配列
EXVLTQSPAILSXSPGDRVXXSCXASZGLXXXXLAWYRFKXGQIPXLVJFXXSXRARGTPDRFXGXGSXXDFTLTIXXVZXEDFATYYCQRXGXTPITFGGGTXLDXX(コンセンサス配列番号2;配列番号48)、又は、
b)重鎖アミノ酸配列
QLXQXGGGVXXPGASVXXSCXXPEXTFTKYXJHWXRQAPGXGXEWXGXVSPHGGRPXXXXXFRDRLTXTRXIHXTTHXMXLXGLXXXDXXXYXCARDXXGEXXXXXXXXXXXMDXWGGGXXXXVXS(コンセンサス配列番号3;配列番号49)、
及び軽鎖アミノ酸配列
XXXLTQSPXTLSXSPGEXXXLSCRAXXGXXXXHXXWFQXXXGXXPRLLIFXXXRRAXGXXXRFXXXXXXSXXXXXLTIXXVEXXDFAXYXCQXYGXITPJXFGGGTXXDXK(コンセンサス配列番号4;配列番号50)を含み、
配列番号47~配列番号50のいずれかにおけるXは、任意のアミノ酸であってもよく若しくはアミノ酸がなくてもよく、
又は抗体アミノ酸配列が該配列に対して少なくとも80%同一である、モノクローナルヒト抗体又はその結合フラグメント。
【請求項2】
請求項1の代替b)の前記抗体がFWR1において2aaの欠失を含む、及び/又は前記抗体若しくはその結合フラグメントが16若しくは19のアミノ酸長を有するCDRH3を含まない、及び/又は前記抗体若しくはその結合フラグメントが18、20若しくは21のアミノ酸長を有するCDRH3を含む、請求項1に記載のモノクローナルヒト抗体又はその結合フラグメント。
【請求項3】
前記抗体又はその結合フラグメントが、TZM-bl細胞疑似ウイルス中和アッセイにおいて最大25μg/mlの抗体濃度で好ましくは全12株を試験した場合、de Camp et al., J Virol. 2014 Mar; 88(5): 2489-2507に記載されるグローバルリファレンスパネルの12株のHIV-1単離基準株のうち少なくとも11株の中和によって例示される広範な中和活性を示す、請求項1又は2に記載のモノクローナルヒト抗体又は結合フラグメント。
【請求項4】
前記抗体又はその結合フラグメントが、TZM-bl細胞疑似ウイルス中和アッセイにおいて最大20μg/mlの抗体濃度で試験した場合、少なくとも89.9%(119個中107個)、好ましくは少なくとも92.4%(119個中110個)、より好ましくは少なくとも96.6%(119個中115個)のSchoofs et al., Immunity, 2019 Jun 18;50(6):1513-1529.e9に記載される119マルチクレードウイルスパネルに含まれる疑似ウイルスの中和によって例示される広範な中和活性を示す、請求項1~3のいずれか一項に記載のモノクローナルヒト抗体又は結合フラグメント。
【請求項5】
前記抗体又はその結合フラグメントが、TZM-bl細胞疑似ウイルス中和アッセイにおいて最大25μg/mlの抗体濃度で試験した場合、de Camp et al., J Virol.2014 Mar; 88(5): 2489-2507に記載されるグローバルリファレンスパネルの中和株に対して、0.3μg/ml未満、好ましくは0.2μg/ml未満、より好ましくは0.15μg/ml未満、更により好ましくは0.1μg/ml未満、更により好ましくは0.05μg/ml未満、更に好ましくは0.048μg/ml以下、特に好ましくは0.035μg/ml以下の中和効力(中和株の幾何平均IC
50)を示す、請求項1~4のいずれか一項に記載のモノクローナルヒト抗体又は結合フラグメント。
【請求項6】
前記抗体又はその結合フラグメントが、TZM-bl細胞疑似ウイルス中和アッセイにおいて最大20μg/mlの抗体濃度で試験した場合、Schoofs et al., Immunity, 2019 Jun 18;50(6):1513-1529.e9に記載される119マルチクレードウイルスパネルの中和株に対して、0.2μg/ml未満、好ましくは0.1μg/ml未満、好ましくは0.08μg/ml未満、更により好ましくは0.05μg/ml未満の中和効力(中和株の幾何平均IC
50)を示す、請求項1~5のいずれか一項に記載のモノクローナルヒト抗体又は結合フラグメント。
【請求項7】
前記抗体又はその結合フラグメントが、TZM-bl疑似ウイルス中和アッセイにおいて試験した場合、HIV-1疑似ウイルス89-F1_2_25(89-F1_2_25
env;GenBank:HM215349.1)に対して0.05μg/ml未満、好ましくは0.02μg/ml未満、更により好ましくは0.01μg/ml未満の中和効力(IC
50)を示す、請求項1~6のいずれか一項に記載のモノクローナルヒト抗体又は結合フラグメント。
【請求項8】
前記抗体又は結合フラグメントが、TZM-bl疑似ウイルス中和アッセイにおいて試験した場合、IC
50濃度が0.1μg/ml未満、好ましくは0.05μg/ml未満で、エンベロープ変異N279K、N280Y、G458D、G459D、又はG471R(HIV-1 HXB2エンベロープ遺伝子;GenBank:K03455に従って番号が付与された残基)の1つを有するYU2エンベロープ遺伝子(GenBank:M93258.1)を含むYU2疑似ウイルス変異体の全てを中和する、請求項1~7のいずれか一項に記載のモノクローナルヒト抗体又は結合フラグメント。
【請求項9】
前記抗体又はその結合フラグメント1mgの初期皮下注射に続いて、3日~4日後に、Zhang et al., J Virol, 2002 Jun;76(12):6332-43に記載されるHIV-1 NL4-3/YU2に感染したヒト化マウスに対して、3日毎~4日毎に0.5mgの前記抗体又はその結合フラグメントの定期的な皮下注射を行うことが、治療の4週間後、好ましくは治療の6週間後、更により好ましくは治療の8週間後に測定した場合、治療開始時に少なくとも5000コピー/ml血漿のHIV-1 RNA負荷を有する治療マウスの少なくとも70%において、治療開始と比較して、少なくとも0.8 log
10、好ましくは少なくとも1.0 log
10の血漿中のHIV-1 RNA負荷の減少をもたらす、請求項1~8のいずれか一項に記載のモノクローナルヒト抗体又は結合フラグメント。
【請求項10】
前記ヒト化マウスを、3BNC117若しくはVRC01、又は両方の組合せ1mgの1回の初期皮下注射で4週間にわたって先に治療し、続いて3日~4日後に、0.5mgの3BNC117若しくはVRC01、又は両方の組合せの3日毎~4日毎の定期的な皮下注射を行う、請求項9に記載のモノクローナルヒト抗体又は結合フラグメント。
【請求項11】
前記抗体又はその結合フラグメント1mgの初期皮下注射に続いて、3日~4日後に、Zhang et al., J Virol, 2002 Jun;76(12):6332-43に記載されるHIV-1 NL4-3/YU2に感染したヒト化マウスに3日毎~4日毎に0.5mgの前記抗体又はその結合フラグメントの皮下注射を行うことが、少なくとも4週間は、投与された抗体に対する耐性を媒介するCD4結合部位エピトープ(ループD、CD4結合ループ、ベータ23鎖、V5ループ、及びベータ24鎖)における1つ以上の変異の発生をもたらさない、請求項1~10のいずれか一項に記載のモノクローナルヒト抗体又は結合フラグメント。
【請求項12】
NRGマウスへの0.5mgの前記抗体又はその結合フラグメントの静脈内注射が、注射の10日後に、少なくとも50μg IgG/ml血清の前記抗体又はその結合フラグメントの検出可能な血清レベルをもたらす、請求項1~11のいずれか一項に記載のモノクローナルヒト抗体又は結合フラグメント。
【請求項13】
前記抗体又はその結合フラグメントが、1-18(配列番号1の重鎖アミノ酸配列と配列番号2の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、1-21(配列番号3の重鎖アミノ酸配列と配列番号4の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、1-33(配列番号5の重鎖アミノ酸配列と配列番号6の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、1-54(配列番号7の重鎖アミノ酸配列と配列番号8の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、1-55(配列番号9の重鎖アミノ酸配列と配列番号10の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、2-10(配列番号11の重鎖アミノ酸配列と配列番号12の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、2-22(配列番号13の重鎖アミノ酸配列と配列番号14の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、2-27(配列番号15の重鎖アミノ酸配列と配列番号16の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、2-47(配列番号17の重鎖アミノ酸配列と配列番号18の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、3-59(配列番号19の重鎖アミノ酸配列と配列番号20の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、5-18(配列番号21の重鎖アミノ酸配列と配列番号22の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、8-10(配列番号23の重鎖アミノ酸配列と配列番号24の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、9-23(配列番号25の重鎖アミノ酸配列と配列番号26の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、10-7(配列番号27の重鎖アミノ酸配列と配列番号28の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、8-52(配列番号29の重鎖アミノ酸配列と配列番号30の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、9-89(配列番号31の重鎖アミノ酸配列と配列番号32の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、9-71(配列番号33の重鎖アミノ酸配列と配列番号34の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、1-23(配列番号35の重鎖アミノ酸配列と配列番号36の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、1-29(配列番号37の重鎖アミノ酸配列と配列番号38の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、2-12(配列番号39の重鎖アミノ酸配列と配列番号40の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、2-21(配列番号41の重鎖アミノ酸配列と配列番号42の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、3-07(配列番号43の重鎖アミノ酸配列と配列番号44の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、3-78(配列番号45の重鎖アミノ酸配列と配列番号46の軽鎖アミノ酸配列とからなる)を含む群からの1つの抗体、好ましくは1-18、1-33、1-55、2-27、1-23、1-29、2-12、2-21、3-07及び3-78を含む群からの1つの抗体、より好ましくは1-18、1-55及び2-12を含む群からの1つの抗体、更により好ましくは抗体1-18又は2-12、特に好ましくは抗体1-18の重鎖CDR1~CDR3及び軽鎖CDR1~CDR3のアミノ酸配列を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載のモノクローナルヒト抗体又は結合フラグメント。
【請求項14】
前記抗体又はその結合フラグメントが、1-18(配列番号1の重鎖アミノ酸配列と配列番号2の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、1-21(配列番号3の重鎖アミノ酸配列と配列番号4の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、1-33(配列番号5の重鎖アミノ酸配列と配列番号6の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、1-54(配列番号7の重鎖アミノ酸配列と配列番号8の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、1-55(配列番号9の重鎖アミノ酸配列と配列番号10の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、2-10(配列番号11の重鎖アミノ酸配列と配列番号12の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、2-22(配列番号13の重鎖アミノ酸配列と配列番号14の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、2-27(配列番号15の重鎖アミノ酸配列と配列番号16の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、2-47(配列番号17の重鎖アミノ酸配列と配列番号18の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、3-59(配列番号19の重鎖アミノ酸配列と配列番号20の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、5-18(配列番号21の重鎖アミノ酸配列と配列番号22の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、8-10(配列番号23の重鎖アミノ酸配列と配列番号24の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、9-23(配列番号25の重鎖アミノ酸配列と配列番号26の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、10-7(配列番号27の重鎖アミノ酸配列と配列番号28の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、8-52(配列番号29の重鎖アミノ酸配列と配列番号30の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、9-89(配列番号31の重鎖アミノ酸配列と配列番号32の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、9-71(配列番号33の重鎖アミノ酸配列と配列番号34の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、1-23(配列番号35の重鎖アミノ酸配列と配列番号36の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、1-29(配列番号37の重鎖アミノ酸配列と配列番号38の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、2-12(配列番号39の重鎖アミノ酸配列と配列番号40の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、2-21(配列番号41の重鎖アミノ酸配列と配列番号42の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、3-07(配列番号43の重鎖アミノ酸配列と配列番号44の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、3-78(配列番号45の重鎖アミノ酸配列と配列番号46の軽鎖アミノ酸配列とからなる)を含む群から選択される1つの抗体、好ましくは1-18、1-33、1-55、2-27、1-23、1-29、2-12、2-21、3-07及び3-78を含む群からの1つの抗体、より好ましくは1-18、1-55及び2-12を含む群からの1つの抗体、更により好ましくは抗体1-18又は2-12、特に好ましくは抗体1-18の重鎖及び軽鎖の組合せを含む、請求項1~13のいずれか一項に記載のモノクローナルヒト抗体又は結合フラグメント。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載のモノクローナルヒト抗体又はその結合フラグメントと、少なくとも1つの薬学的に許容され得る賦形剤とを含む医薬組成物であって、好ましくは前記医薬組成物がヒト被験体用のワクチン接種組成物である、医薬組成物。
【請求項16】
請求項1~14のいずれか一項に記載のモノクローナルヒト抗体又はその結合フラグメントと容器とを備えるキット。
【請求項17】
医薬として用いられる、好ましくはワクチンとして用いられる請求項1~14のいずれか一項に記載のモノクローナルヒト抗体若しくはその結合フラグメント、請求項15に記載の医薬組成物、又は請求項16に記載のキット。
【請求項18】
ヒト被験体におけるヒト免疫不全ウイルスHIV-1によって引き起こされる疾患の治療又は予防に用いられる、好ましくはヒト被験体における後天性免疫不全症候群(AIDS)の治療又は予防に用いられる、請求項1~14のいずれか一項に記載のモノクローナルヒト抗体若しくはその結合フラグメント、請求項15に記載の医薬組成物、又は請求項16に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒト免疫不全ウイルスHIV-1のCD4結合部位に対するモノクローナルヒト抗体又はその結合フラグメント、かかるモノクローナルヒト抗体又はその結合フラグメントを含む医薬組成物、かかる抗体又はその結合フラグメントを備えるキット、並びに医薬として及びヒト免疫不全ウイルスHIV-1によって引き起こされる疾患の治療又は予防に用いられる、モノクローナル抗体又はその結合フラグメント、及び医薬組成物、及びキットに関する。
【背景技術】
【0002】
HIV-1エンベロープタンパク質(Env)を標的とする広域中和抗体(bNAb)は、動物モデルにおける感染を予防することができ、臨床試験において受動免疫について調査されているところである。さらに、bNAbは、HIV-1感染個体における抗レトロウイルス療法(ART)の中断後にウイルス血症を抑制し、ウイルスリバウンドを遅らせることが実証されている。
【0003】
これらの結果は、bNAbの顕著な臨床的可能性を強調しているが、既往の及びde novoのHIV-1耐性は治療の失敗を引き起こし、ヒトにおけるbNAb適用を強く制限する可能性がある。したがって、ウイルスの逃避を予防及び克服するための戦略は、HIV-1の予防及び治療のためのbNAb媒介アプローチを効果的に実施するために重要である(非特許文献1)。
【0004】
近年、HIV-1エンベロープ(Env)三量体上の別個の脆弱なエピトープを標的とする強力なbNAbが、HIV-1感染ドナーから単離された。これらのエピトープは、CD4結合部位(CD4bs)、V1/V2ループ、V3ループグリカンパッチ、膜近位外部領域、及びgp120とgp41 Envサブユニットとの間の界面を含む。
【0005】
これらの部位の中で、CD4はウイルス侵入の主要な受容体としてはたらくため、CD4bsは特に興味深い。ほとんどの強力なCD4bs bNAbは、免疫グロブリン重鎖遺伝子セグメントIGVH1-2*02の使用、高レベルの体細胞超変異、軽鎖の5残基相補性決定領域3(CDRL3)、及びEnv-CD4相互作用の模倣を特徴とする。
【0006】
原型抗体VRC01(非特許文献2)にちなんで命名されたこれらの抗体は、VRC01クラスbNAbと称される。このクラスのその他のメンバーとしては、3BNC117、NIH45-46、N49-P7、N6、及びVRC07-523が挙げられる。
【0007】
CD4結合を模倣する他のbNAbは、VH1-46遺伝子セグメントに由来する。しかしながら、VH1-2由来のbNAbと比較して、これまでに報告されたVH1-46 bNAbは、その臨床使用の可能性を制限する低い効力及び幅を有する。例えば、このクラスの最良の抗体の1つであるCH235.12は、HIV-1 Env株の大きなパネルに対してin vitroで試験した場合、VRC01クラスのbNAb N6よりも広範ではなく、効力は10分の1にも満たない(非特許文献3)。
【0008】
したがって、臨床試験に進んだ全てのCD4bs bNAbは、VRC01クラスのメンバー(3BNC117、N6、VRC01、及びVRC07-523)である。しかしながら、VRC01からの逃避はウイルスの適応度の低下と関連しているのに対し、VRC01クラスの単独療法の効果は一過性に過ぎず、臨床試験(非特許文献4)とHIV-1感染の動物モデル(非特許文献5)の両方でウイルスエスケープ変異体の急速な出現と関連していた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Gruell, H., and Klein, F. (2018). Antibody-mediated prevention and treatment of HIV-1 infection. Retrovirology 15, 73
【非特許文献2】Wu, X., Yang, Z.Y., Li, Y., Hogerkorp, C.M., Schief, W.R., Seaman, M.S., Zhou, T., Schmidt, S.D., Wu, L., Xu, L., et al. (2010). Rational design of envelope identifies broadly neutralizing human monoclonal antibodies to HIV-1. Science 329, 856-861.
【非特許文献3】Bonsignori, M., Zhou, T., Sheng, Z., Chen, L., Gao, F., Joyce, M.G., Ozorowski, G., Chuang, G.Y., Schramm, C.A., Wiehe, K., et al. (2016). Maturation Pathway from Germline to Broad HIV-1 Neutralizer of a CD4-Mimic Antibody. Cell 165, 449-463.
【非特許文献4】Scheid, J.F., Horwitz, J.A., Bar-On, Y., Kreider, E.F., Lu, C.L., Lorenzi, J.C., Feldmann, A., Braunschweig, M., Nogueira, L., Oliveira, T., et al. (2016). HIV-1 antibody 3BNC117 suppresses viral rebound in humans during treatment interruption. Nature 535, 556-560.
【非特許文献5】Klein, F., Halper-Stromberg, A., Horwitz J.A., Gruell, H., Scheid J.F., Bournazos S., Mouquet H., Spatz L.A., Diskin R., Abadir A., et al. (2012) HIV Therapy by a Combination of Broadly Neutralizing Antibodies in Humanized Mice. Nature 492 (7427), 118-22
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
現在調査中の既知のbNAbの欠点のため、HIV-1感染生物で試験した場合に、既知の古典的VH1-2由来又はVH1-46由来bNAbの効力及び幅を超え、VRC01クラスのエスケープ変異体に対して強力な中和活性を有し、ウイルスの逃避を効果的に制限し、ウイルス抑制を維持する、CD4結合部位を標的とするHIV抗体の需要が依然として存在する。
【0011】
したがって、かかるウイルス株に対する高い中和効力と組み合わせて、幅広い選択の異なるウイルス株に対して幅広い中和活性を有するHIV-1に対する新規ヒトモノクローナル抗体を提供することを本発明の目的とする。本発明の更なる目的は、エスケープ変異の発生の著しい制限を示し、かかるエスケープ変異を示すウイルスに対して有効性を維持するHIV-1に対する新規ヒトモノクローナル抗体を提供することである。また、抗体単独療法中に顕著なウイルスリバウンドを伴わずに感染個体において完全なウイルス抑制を伝えるHIV-1に対する新規ヒトモノクローナル抗体を提供することも本発明の目的である。さらに、in vivoで好ましい薬物動態特性を有するCD4結合部位に対する新規なヒトモノクローナル抗体を提供することを本発明の目的とする。
【0012】
これらの目的は、以下に明示する本発明の態様によって解決された。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の態様によれば、ヒト免疫不全ウイルスHIV-1のCD4結合部位に対するモノクローナルヒト抗体又はその結合フラグメントが提供され、抗体アミノ酸配列がVH1-46遺伝子セグメント及びVκ3-20遺伝子セグメントを含み、抗体が、a)配列番号47の重鎖アミノ酸配列及び配列番号48の軽鎖アミノ酸配列、又はb)配列番号49の重鎖アミノ酸配列及び配列番号50の軽鎖アミノ酸配列のいずれかを含み、配列番号47~配列番号50のいずれかにおけるXは、任意のアミノ酸であってもよく若しくはアミノ酸がなくてもよく、又は抗体配列が該配列に対して少なくとも80%同一である。
【0014】
本発明の第1の態様の好ましい実施の形態によれば、本発明の第1の態様の代替b)の抗体は、FWR1において2aaの欠失を含む。
【0015】
本発明の第1の態様の別の好ましい実施の形態によれば、抗体又はその結合フラグメントは、TZM-bl細胞疑似ウイルス中和アッセイにおいて最大25μg/mlの抗体濃度で好ましくは全12株を試験した場合、de Camp et al., J Virol. 2014 Mar; 88(5): 2489-2507に記載されるグローバルリファレンスパネルの12株のHIV-1単離基準株のうち少なくとも11株の中和によって例示される広範な中和活性を示す。
【0016】
本発明の第1の態様の更に別の好ましい実施の形態によれば、抗体又はその結合フラグメントは、TZM-bl細胞疑似ウイルス中和アッセイにおいて最大20μg/mlの抗体濃度で試験した場合、少なくとも89.9%(119個中107個)、好ましくは少なくとも92.4%(119個中110個)、より好ましくは少なくとも96.6%(119個中115個)のSchoofs et al., Immunity, 2019 Jun 18;50(6):1513-1529.e9に記載される119マルチクレードウイルスパネルに含まれる疑似ウイルスの中和によって例示される広範な中和活性を示す。
【0017】
本発明の第1の態様の好ましい実施の形態によれば、抗体又はその結合フラグメントは、TZM-bl細胞疑似ウイルス中和アッセイにおいて最大25μg/mlの抗体濃度で試験した場合、de Camp et al., J Virol. 2014 Mar; 88(5): 2489-2507に記載されるグローバルリファレンスパネルの中和株に対して、0.3μg/ml未満、好ましくは0.2μg/ml未満、より好ましくは0.15μg/ml未満、更により好ましくは0.1μg/ml未満、更により好ましくは0.05μg/ml未満、更に好ましくは0.048μg/ml、特に好ましくは0.035μg/mlの中和効力(中和株の幾何平均IC50)を示す。
【0018】
本発明の第1の態様の好ましい実施の形態によれば、抗体又はその結合フラグメントは、TZM-bl細胞疑似ウイルス中和アッセイにおいて最大20μg/mlの抗体濃度で試験した場合、Schoofs et al., Immunity, 2019 Jun 18;50(6):1513-1529.e9に記載される119マルチクレードウイルスパネルの中和株に対して、0.2μg/ml未満、好ましくは0.1μg/ml未満、より好ましくは0.08μg/ml未満、更により好ましくは0.05μg/ml未満の中和効力(中和株の幾何平均IC50)を示す。
【0019】
本発明の第1の態様の別の好ましい実施の形態によれば、抗体又はその結合フラグメントは、TZM-bl疑似ウイルス中和アッセイにおいて試験した場合、HIV-1疑似ウイルス89-F1_2_25(89-F1_2_25env;GenBank:HM215349.1)に対して0.05μg/ml未満、好ましくは0.02μg/ml未満、更により好ましくは0.01μg/ml未満の中和効力(IC50)を示す。
【0020】
本発明の第1の態様の更に別の好ましい実施の形態によれば、抗体又は結合フラグメントは、TZM-bl疑似ウイルス中和アッセイにおいて試験した場合、IC50濃度が0.1μg/ml未満、好ましくは0.05μg/ml未満で、エンベロープ変異N279K、N280Y、G458D、G459D、又はG471R(HIV-1 HXB2エンベロープ遺伝子;GenBank:K03455に従って番号が付与された残基)のいずれか1つを有するYU2エンベロープ遺伝子(GenBank:M93258.1)を含むYU2疑似ウイルス変異体の全てを中和する。
【0021】
本発明の第1の態様の好ましい一実施の形態によれば、抗体又はその結合フラグメント1mgの初期皮下注射に続いて、3日~4日後に、Zhang et al., J Virol, 2002 Jun;76(12):6332-43に記載されるHIV-1 NL4-3/YU2に感染したヒト化マウスに対して、3日毎~4日毎に0.5mgの抗体又はその結合フラグメントの定期的な皮下注射を行うことは、治療の4週間後、好ましくは治療の6週間後、更により好ましくは治療の8週間後に測定した場合、治療開始時に少なくとも5000コピー/ml血漿のHIV-1 RNA負荷を有する治療マウスの少なくとも70%において、治療開始と比較して、少なくとも0.8 log10、好ましくは少なくとも1.0 log10の血漿中のHIV-1 RNA負荷の減少をもたらす。
【0022】
本発明の第1の態様の上記実施の形態のより好ましい実施の形態によれば、ヒト化マウスを、3BNC117若しくはVRC01、又は両方の組合せ1mgの1回の初期皮下注射で4週間にわたって先に治療し、続いて3日~4日後に、0.5mgの3BNC117若しくはVRC01、又は両方の組合せの3日毎~4日毎の定期的な皮下注射を行う。
【0023】
本発明の第1の態様の好ましい実施の形態によれば、抗体又はその結合フラグメント1mgの初期皮下注射に続いて、3日~4日後に、Zhang et al., J Virol, 2002 Jun;76(12):6332-43に記載されるHIV-1 NL4-3/YU2に感染したヒト化マウスに3日毎~4日毎に0.5mgの抗体又はその結合フラグメントの定期的な皮下注射を行うことが、少なくとも4週間は、投与された抗体に対する耐性を媒介するCD4結合部位(ループD、CD4結合ループ、ベータ23鎖、V5ループ、及びベータ24)における1つ以上の変異の発生をもたらさない。
【0024】
本発明の第1の態様の別の好ましい実施の形態によれば、NRGマウスへの0.5mgの抗体又はその結合フラグメントの静脈内注射は、注射の10日後に、少なくとも50μg IgG/ml血清の抗体又はその結合フラグメントの検出可能な血清レベルをもたらす。
【0025】
本発明の第1の態様の別の好ましい実施の形態によれば、抗体又はその結合フラグメントは、16又は19アミノ酸長を有するCDRH3を含まない。
【0026】
本発明の第1の態様の好ましい一実施の形態によれば、抗体又はその結合フラグメントは、18、20又は21アミノ酸長を有するCDRH3を含む。
【0027】
本発明の第1の態様の好ましい実施の形態によれば、抗体又はその結合フラグメントは、Freund et al., Sci. Transl. Med. 9, eaal2144 (2017)に記載される抗体NC37、NC133、AC40、AC41又はAC72のアミノ酸配列を含まない、又はこれらのみからなるものではない。
【0028】
本発明の第1の態様の別の好ましい実施の形態によれば、抗体又はその結合フラグメントは、1-18(配列番号1の重鎖アミノ酸配列と配列番号2の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、1-21(配列番号3の重鎖アミノ酸配列と配列番号4の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、1-33(配列番号5の重鎖アミノ酸配列と配列番号6の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、1-54(配列番号7の重鎖アミノ酸配列と配列番号8の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、1-55(配列番号9の重鎖アミノ酸配列と配列番号10の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、2-10(配列番号11の重鎖アミノ酸配列と配列番号12の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、2-22(配列番号13の重鎖アミノ酸配列と配列番号14の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、2-27(配列番号15の重鎖アミノ酸配列と配列番号16の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、2-47(配列番号17の重鎖アミノ酸配列と配列番号18の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、3-59(配列番号19の重鎖アミノ酸配列と配列番号20の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、5-18(配列番号21の重鎖アミノ酸配列と配列番号22の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、8-10(配列番号23の重鎖アミノ酸配列と配列番号24の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、9-23(配列番号25の重鎖アミノ酸配列と配列番号26の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、10-7(配列番号27の重鎖アミノ酸配列と配列番号28の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、8-52(配列番号29の重鎖アミノ酸配列と配列番号30の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、9-89(配列番号31の重鎖アミノ酸配列と配列番号32の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、9-71(配列番号33の重鎖アミノ酸配列と配列番号34の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、1-23(配列番号35の重鎖アミノ酸配列と配列番号36の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、1-29(配列番号37の重鎖アミノ酸配列と配列番号38の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、2-12(配列番号39の重鎖アミノ酸配列と配列番号40の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、2-21(配列番号41の重鎖アミノ酸配列と配列番号42の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、3-07(配列番号43の重鎖アミノ酸配列と配列番号44の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、3-78(配列番号45の重鎖アミノ酸配列と配列番号46の軽鎖アミノ酸配列とからなる)を含む群からの1つの抗体、好ましくは1-18、1-33、1-55、2-27、1-23、1-29、2-12、2-21、3-07及び3-78を含む群からの1つの抗体、より好ましくは1-18、1-55及び2-12を含む群からの1つの抗体、更により好ましくは抗体1-18又は2-12、特に好ましくは抗体1-18の重鎖CDR1~CDR3及び軽鎖CDR1~CDR3のアミノ酸配列を含む。
【0029】
本発明の第1の態様の別の好ましい実施の形態によれば、抗体又はその結合フラグメントは、1-18(配列番号1の重鎖アミノ酸配列と配列番号2の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、1-21(配列番号3の重鎖アミノ酸配列と配列番号4の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、1-33(配列番号5の重鎖アミノ酸配列と配列番号6の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、1-54(配列番号7の重鎖アミノ酸配列と配列番号8の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、1-55(配列番号9の重鎖アミノ酸配列と配列番号10の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、2-10(配列番号11の重鎖アミノ酸配列と配列番号12の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、2-22(配列番号13の重鎖アミノ酸配列と配列番号14の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、2-27(配列番号15の重鎖アミノ酸配列と配列番号16の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、2-47(配列番号17の重鎖アミノ酸配列と配列番号18の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、3-59(配列番号19の重鎖アミノ酸配列と配列番号20の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、5-18(配列番号21の重鎖アミノ酸配列と配列番号22の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、8-10(配列番号23の重鎖アミノ酸配列と配列番号24の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、9-23(配列番号25の重鎖アミノ酸配列と配列番号26の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、10-7(配列番号27の重鎖アミノ酸配列と配列番号28の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、8-52(配列番号29の重鎖アミノ酸配列と配列番号30の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、9-89(配列番号31の重鎖アミノ酸配列と配列番号32の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、9-71(配列番号33の重鎖アミノ酸配列と配列番号34の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、1-23(配列番号35の重鎖アミノ酸配列と配列番号36の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、1-29(配列番号37の重鎖アミノ酸配列と配列番号38の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、2-12(配列番号39の重鎖アミノ酸配列と配列番号40の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、2-21(配列番号41の重鎖アミノ酸配列と配列番号42の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、3-07(配列番号43の重鎖アミノ酸配列と配列番号44の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、3-78(配列番号45の重鎖アミノ酸配列と配列番号46の軽鎖アミノ酸配列とからなる)を含む群から選択される1つの抗体、好ましくは1-18、1-33、1-55、2-27、1-23、1-29、2-12、2-21、3-07及び3-78を含む群からの1つの抗体、より好ましくは1-18、1-55及び2-12を含む群からの1つの抗体、更により好ましくは抗体1-18又は2-12、特に好ましくは抗体1-18の重鎖及び軽鎖の組合せを含む。
【0030】
本発明の第2の態様によれば、本発明の第1の態様によるモノクローナルヒト抗体又はその結合フラグメントと、少なくとも1つの薬学的に許容され得る賦形剤とを含む医薬組成物が提供される。
【0031】
本発明の第2の態様の好ましい実施の形態によれば、医薬組成物はヒト被験体用のワクチン接種組成物である。
【0032】
本発明の第3の態様によれば、本発明の第1の態様によるモノクローナルヒト抗体又はその結合フラグメントと容器とを備えるキットが提供される。
【0033】
本発明の第4の態様によれば、医薬として用いられる、好ましくはワクチンとして用いられる本発明の第1の態様によるモノクローナルヒト抗体若しくはその結合フラグメント、本発明の第2の態様による医薬組成物、又は本発明の第3の態様によるキットが提供される。
【0034】
本発明の第5の態様によれば、ヒト被験体におけるヒト免疫不全ウイルスHIV-1によって引き起こされる疾患の治療又は予防に用いられる、好ましくはヒト被験体における後天性免疫不全症候群(AIDS)の治療又は予防に用いられる、本発明の第1の態様によるモノクローナルヒト抗体若しくはその結合フラグメント、本発明の第2の態様による医薬組成物、又は本発明の第3の態様によるキットが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】TZM-bl細胞疑似ウイルス中和アッセイにおいて試験した場合の異なるエンベロープアミノ酸配列を有する12個のグローバルリファレンス疑似ウイルス株のパネル(de Camp et al., J Virol. 2014 Mar; 88(5): 2489-2507に記載される)に対する本発明の抗体の中和活性を示す図である。試験された抗体は、中和された株に対して高い効力を実証し、試験された疑似ウイルスの少なくとも92%(11/12)及び最大では試験された全ての疑似ウイルスを中和する。
【
図2】漸増量の競合抗体(x軸)とのプレインキュベーション後の競合ELISAにおける、BG505
SOSIP.664のHIV-1 Envタンパク質に対する抗体1-18(
図2A)、抗体1-55(
図2B)、及び抗体2-12(
図2C)の結合を示す図である。試験された抗体は、抗体3BNC117、抗体VRC01及び抗体N6を標的とするCD4結合部位とのプレインキュベーション後にBG505
SOSIP.664エンベロープタンパク質への結合の低下を示し、抗体がCD4結合部位と重複するエピトープを共有することを示す。
【
図3】TZM-bl細胞疑似ウイルス中和アッセイにおいて試験した場合の異なるHIV-1エンベロープアミノ酸配列を有する119個の疑似ウイルスのマルチクレードパネル(Schoofs et al., Immunity, 2019 Jun 18;50(6):1513-1529.e9に記載される)に対する抗体の中和活性(IC
50)を示す図である。抗体1-18、抗体1-55、及び抗体2-12、臨床的に進んだVH1-2由来CD4結合部位抗体(3BNC117、VRC01、及びN6)、並びにV3ループ標的化抗体(10-1074、PGT121)についてのデータを示す。
【
図4】他のVH1-46由来HIV-1中和抗体と比較した抗体1-18、抗体1-55、抗体2-12の中和活性を示す図であり、合計62のHIV-1疑似ウイルスのパネルに対する結果は、抗体中和データベースCATNAP(Yoon et al., 2015)で入手可能であった。
【
図5】TZM-bl細胞疑似ウイルスアッセイによって測定される、異なるエンベロープアミノ酸配列を有する選択された疑似ウイルスに対する抗体の中和活性を示す図である。
【
図6】左に示されるようにCD4結合部位における単一アミノ酸変異の異なるエンベロープ配列を有するHIV-1 YU2疑似ウイルスのパネルに対する抗体1-18、抗体1-55、及び抗体2-12の中和活性を示す図であり、TZM-bl細胞疑似ウイルス中和アッセイにおいて測定した場合の中和活性をCD4結合部位抗体3BNC117、VRC01、N6、及びVH1-46由来抗体8ANC131と比較して示す。変異エンベロープ残基は、HIV-1
HXB2基準株に従って番号が付与される。
【
図7】HIV-1
YU2(エンベロープ遺伝子がYU2のものと置換されたNL4-3ウイルス)に感染したヒト化マウスにおけるHIV-1 RNA血漿コピー数(上段)及びそれらのlog
10変化(下段、ベースライン(-1日目のHIV-1 RNA血漿コピー数)と比較)を示す図である。マウスに抗体あたり1mgの負荷用量で皮下治療を行い、続いて3日~4日毎に抗体あたり0.5mgの皮下注射を行った。既知のCD4bs抗体3BNC117、VRC01、又は両方の抗体の組合せで治療したマウスは、ウイルス血症の一過性の減少を示し、続いて急速なウイルスリバウンドを示す。対照的に、本発明の抗体1-18単独で治療されたマウスは、8週間の治療期間を通してウイルス血症の持続的な減少を示す。黒の破線は、平均log
10変化を示す。
【
図8】4週間の抗体療法の後、
図7に示される選択されたマウスの単一ゲノム配列決定によって血漿から得られたHIV-1配列を示す図である。
図7に対応するマウスIDを左側に示す。配列は、上段に示すYU2野生型配列に対してアラインメントされる。YU2野生型配列とのアミノ酸配列の一致は点で示され、YU2野生型配列と比較した変異又は欠失は、それぞれアミノ酸1文字コード又は横線で示される。既知のCD4bs抗体3BNC117、VRC01、又はそれらの組合せで治療したマウスでは、YU2野生型配列と比較したCD4結合部位エピトープ(ループD、ベータ23鎖、V5ループ)における変異は、ウイルスリバウンドと関連していたが、かかる変異は、本発明の抗体1-18単独による4週間の治療法の後には観察されなかった。
【
図9】CD4結合部位抗体3BNC117、VRC01、又は両方の組合せ(
図7を参照されたい)で予備治療したHIV-1
YU2(NL4-3/YU2)に感染したヒト化マウスにおけるHIV-1 RNA血漿コピー数(上段)及びそれらのlog
10変化(下段、ベースライン(28日目におけるHIV-1 RNA血漿コピー数)と比較)を示す図である。4週間の治療後、抗体1-18を、全体を通して継続した以前の治療レジメンに追加した。1-18を1mgの負荷用量で皮下投与し、続いて3日~4日毎に0.5mg投与した。他のCD4結合部位抗体及びCD4結合部位に変異を有する循環ウイルス変異体による予備治療後のウイルスリバウンドにもかかわらず(
図8を参照されたい)、抗体1-18による治療は、18/19匹のマウスにおいてウイルス抑制の維持をもたらした。
【
図10】0日目(矢印で示す)に0.5mgの抗体を単回静脈内注射した後のNRGマウスにおいてELISAにより決定されたヒトIgGの血清中濃度を示す図である。既知のCD4結合部位抗体3BNC117、VRC01、及び45-46
G54Wと比較して、本発明の抗体1-18、抗体1-55、及び抗体2-12は、より遅い抗体濃度の低下を示し、これは、ヒトにおいて3BNC117よりも長い半減期を有するV3ループ標的化抗体10-1074により類似している(Mendoza et al., 2018)。
【
図11】TZM-bl細胞疑似ウイルスアッセイにおいて決定された異なるエンベロープアミノ酸配列を有する選択された疑似ウイルスに対する抗体の中和活性(IC
50)を示す図である。疑似ウイルスパネルを、世界的なHIV-1パンデミックの多様性を代表するものとして選択した(de Camp et al., 2014)。本発明の抗体を、VH1-46由来CD4結合部位抗体8ANC131と比較する。
【
図12】TZM-bl細胞疑似ウイルスアッセイにおいて決定された6545.v4.c1及び89-F1_2_25 HIV-1疑似ウイルス株に対する抗体の中和活性(IC
50)をそれぞれ示す図である。本発明の抗体を、HIV-1中和CD4結合部位抗体N6、3BNC117、VRC01、VRC07、VRC07-523-LS、8ANC131、NIH45-46及びNIH45-46G54Wと比較する。
【
図13】ベースライン(0日目)と比較した、HIV-1
BAL(エンベロープ遺伝子をHIV-1株BALのものに置換したNL4-3ウイルス)に感染したヒト化マウスにおけるHIV-1 RNA血漿コピー数のlog
10変化を示す図である。マウスに抗体あたり1mgの負荷用量で皮下治療を行い、続いて3日~4日毎に抗体あたり0.5mgの皮下注射を行った。CD4結合部位抗体3BNC117又はVRC01で治療されたマウスは、ウイルス血症の中程度の一過性の減少を示し、続いて急速なウイルスリバウンドを示す。対照的に、本発明の抗体1-18で治療されたマウスは、6週間の治療期間を通してウイルス血症の持続的な減少を示す。対照マウスには治療を行わなかった。縞模様の黒線は、ベースラインと比較した平均log
10変化を示す。数字は、個々のマウスをそれぞれのIDで示す。右側の表は、各治療コホートについて観察された最大平均log
10 HIV-1 RNA変化、21日目のlog
10 HIV-1 RNA変化、及び42日目のlog
10 HIV-1 RNA変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明者らは、本発明の課題の解決に専念し、既知の抗体の不利益及び欠点を克服するHIV-1に対する新規で有用なヒトモノクローナル抗体を見出すことに成功した。
【0037】
本明細書において、本発明者らは、古典的なVH1-46及びVH1-2に由来するbNAbの効力及び幅を超える新規なVH1-46及びVκ3-20に由来するCD4結合部位抗体を記載する。観察された高い活性の構造的根拠は、共通の構造特性によって引き起こされると考えられる。これらの特性は、VH1-46及びVκ3-20に由来する配列類似性の組合せに基づいており、それらの活性に決定的な残基を示すコンセンサス配列によって更に規定される。
【0038】
特に興味深いのは、2つの最も臨床的に進んだCD4bs bNAbである3BNC117及びVRC01と比較して、本発明による抗体は、HIV-1感染ヒト化マウスで試験した場合に、ウイルス逃避を効果的に制限し、VRC01クラスエスケープ変異体に対する中和活性及び完全なウイルス抑制の両方を維持する。したがって、本発明の抗体は、HIV-1感染を効果的に治療及び予防するための抗体媒介戦略の非常に有望な候補を含む。
【0039】
したがって、本発明は、ヒト免疫不全ウイルスHIV-1のCD4結合部位に対するモノクローナルヒト抗体又はその結合フラグメントであって、抗体配列がVH1-46遺伝子セグメント及びVκ3-20遺伝子セグメントを含み、
抗体が、
a)重鎖配列
QXXXFQSGXEXKRPGASVXISCRADDDPYTDDDTFTKYXTHWIRQAPGQXPEWLGVISPHXARPIYSYKFXDRLTLTRDSSLTXVYXELXXLXXDDXGIYXCARDPFGXXXPHYNXHMDVWGXGTXXIVSX(コンセンサス配列番号1;配列番号47)
及び軽鎖配列
EXVLTQSPAILSXSPGDRVXXSCXASZGLXXXXLAWYRFKXGQIPXLVJFXXSXRARGTPDRFXGXGSXXDFTLTIXXVZXEDFATYYCQRXGXTPITFGGGTXLDXX(コンセンサス配列番号2;配列番号48)、又は、
b)重鎖配列
QLXQXGGGVXXPGASVXXSCXXPEXTFTKYXJHWXRQAPGXGXEWXGXVSPHGGRPXXXXXFRDRLTXTRXIHXTTHXMXLXGLXXXDXXXYXCARDXXGEXXXXXXXXXXXMDXWGGGXXXXVXS(コンセンサス配列番号3;配列番号49)
及び軽鎖配列
XXXLTQSPXTLSXSPGEXXXLSCRAXXGXXXXHXXWFQXXXGXXPRLLIFXXXRRAXGXXXRFXXXXXXSXXXXXLTIXXVEXXDFAXYXCQXYGXITPJXFGGGTXXDXK(コンセンサス配列番号4;配列番号50)を含み、
配列番号47~配列番号50のいずれかにおけるXは、任意のアミノ酸であってもよく若しくはアミノ酸がなくてもよく、
又は抗体配列が該配列に対して少なくとも80%同一である、モノクローナルヒト抗体又はその結合フラグメントを提供する。
【0040】
本発明の文脈内で、本明細書において作製及び記載されている抗体は、完全なモノクローナルヒト抗体として、又はその任意の機能フラグメント若しくは結合フラグメントとして使用され、特許請求の範囲に記載され得る。好ましくは、モノクローナルヒト抗体、又はその任意の種類の機能フラグメント若しくは結合フラグメントは、少なくともヒトモノクローナル抗体の重鎖の相補性決定領域(CDR)1~3及び軽鎖のCDR1~3を含まなければならない。
【0041】
本明細書に記載の抗体配列のCDR領域は、好ましくは、Chothiaのナンバリングスキームの適応であるIMGTのナンバリングスキームに従って規定される(ImMunoGeneTics information system(商標);Lefranc et al., NAR 27:209-212 (1999);http://www.imgt.org)。
【0042】
好ましい一実施形態において、抗体は、結合特異性及び感染性病原体を中和する能力を保持するモノクローナル抗体又はそのフラグメントである。好ましい一実施形態において、抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4抗体である。例えば、抗体は、任意のヒトIgGアイソタイプ(例えばIgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4)のFcドメインを含む抗体であり得る。
【0043】
任意に、抗原結合化合物は、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab)2、Fv、ダイアボディ、一本鎖抗体フラグメント、又は複数の異なる抗体フラグメントを含む多重特異性抗体のみからなるか、又はそれらを含む。
【0044】
本発明内において、HIV-1のCD4結合部位に対する抗体又は結合フラグメントとは、無関係なエピトープ、タンパク質又はタンパク質領域と比較して、少なくとも10倍、より好ましくは少なくとも50倍、特に好ましくは少なくとも100倍増加した親和性を有するHIV-1のgp120エンベロープ糖タンパク質内のCD4結合部位領域に結合する抗体を意味する。一般に、本明細書においてCD4結合部位という用語は、HIV-1のgp120エンベロープ糖タンパク質内のCD4結合部位領域を指す。
【0045】
更に本発明内において、VH1-46遺伝子セグメント及びVκ3-20遺伝子セグメントを含む抗体アミノ酸配列は、それぞれ、上記遺伝子セグメントに基づく、及び/又は該遺伝子セグメントに由来する抗体アミノ酸配列を意味する。抗体アミノ酸配列をアセンブリするためにどのVH又はVκの遺伝子セグメントが使用されるかを決定する方法は、当該技術分野で一般的に知られている。上記遺伝子セグメントの変異は、天然抗体のアセンブリにおいて一般的に生じるが、特異的抗体を構成するためのVH1-46遺伝子セグメント及びVκ3-20遺伝子セグメントの使用を要求することによって、どの一次配列要件が定められるかは、当業者には容易に明らかであろう。
【0046】
したがって、モノクローナル抗体又はその結合フラグメントは、好ましくは、VH1-46遺伝子セグメントとVκ3-20遺伝子セグメントとの組合せから天然に誘導され得る配列を含むものとして理解されるものとする。これは、好ましくは、上記遺伝子セグメントの天然に存在する程度の変異誘発を含み得る。
【0047】
特許請求の範囲に記載される抗体の全体的な構造的基礎に対するこれら2つのセグメントの意義及び影響を理解するために、VH1-46は、コンセンサス配列番号1による重鎖中の合計131アミノ酸のうち104アミノ酸を担い、コンセンサス配列番号3による重鎖中の合計126アミノ酸のうち96アミノ酸を担うことに留意すべきである。
【0048】
同様に、Vκ3-20は、コンセンサス配列番号2による軽鎖中の合計108アミノ酸のうち96アミノ酸を占め、コンセンサス配列番号4による軽鎖中の合計111アミノ酸のうち98アミノ酸を占める。
【0049】
本発明者らが同定することができた機能的抗体の数に基づいて、VH1-46遺伝子セグメント及びVκ3-20遺伝子セグメントを含み、HIV-1のCD4結合部位に対する抗体について、2組のコンセンサス配列を組み立てることが更に可能となった。これら2つのセットは、CD4結合部位への高効率の結合、ウイルス逃避の制限、並びにウイルス中和の幅及び効力を実現するための異なる一次配列アプローチとなるようである。
【0050】
配列の第1のセットは、重鎖について配列番号47によるコンセンサス配列番号1及び軽鎖について配列番号48によるコンセンサス配列番号2からなる。これらのコンセンサス配列に適合する多くの個別化配列が本明細書で研究されており、それによって得られた結果は、コンセンサス配列と規定されたセグメントとの組合せが、一連の機能的抗体を得るのに十分な構造的指針を与えることを真実味のあるものとする。さらに、配列の第1のセットに適合する一連の抗体の2つの代表的ものは、更に詳細に研究されている抗体1-18及び抗体1-55である。
【0051】
配列の第2のセットは、重鎖について配列番号49によるコンセンサス配列番号3及び軽鎖について配列番号50によるコンセンサス配列番号2からなる。ここでも、多くの個別化配列がコンセンサス配列の第2のセットの例として本明細書で研究されており、それによって得られた結果はまた、これらのコンセンサス配列と規定されたセグメントとの組合せが機能的抗体を得るのに十分な構造的指針を与えることを真実味のあるものとする。さらに、配列の第2のセットに適合する一連の抗体の1つの代表的なものは、抗体2-12であり、これもまた、より詳細に研究されている。
【0052】
本明細書に記載のコンセンサス配列に関して、アミノ酸配列内のX又はXaaは、任意のアミノ酸又は非アミノ酸を表し得る。しかしながら、特許請求の範囲に記載された抗体がVH1-46遺伝子セグメント及びVκ3-20遺伝子セグメントを含むものとするという追加の要件に基づいて、各抗体の根底にある基礎を形成するこれらの遺伝子セグメントによって選択肢がより制限されることは当業者には明らかである。
【0053】
一般に、本明細書に記載されるモノクローナルヒト抗体又はその結合フラグメントは、更に、それらが依然としてヒト免疫不全ウイルスHIV-1のCD4結合部位に対するものである限り、上記で規定した配列に対して少なくとも80%同一である抗体アミノ酸配列を包含する。これは、CD4結合部位に対する抗体の構造的折り畳み及び親和性を妨げない抗体アミノ酸配列の些細な変異を有する配列を含むことを意味する。
【0054】
或る程度の同一性を示す抗体が、ヒト免疫不全ウイルスHIV-1のCD4結合部位に対するものであるかどうかを、上記又は一般的な常識に基づいて判断することは、当業者にとって些細な作業である。
【0055】
2つの配列間のパーセント同一性の決定は、Karlin及びAltschulの数学的アルゴリズムを用いて、本発明に従い、達成される(Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1993) 90:5873-5877)。かかるアルゴリズムは、Altschul et al.(J. Mol. Biol. (1990) 215:403-410)のBLASTN及びBLASTPプログラムの基礎である。BLASTヌクレオチド検索は、BLASTNプログラムを用いて行われる。比較の目的でギャップのあるアラインメントを取得するために、Altschul et al.(Nucleic Acids Res. (1997) 25:3389-3402)によって説明されているようにGapped BLASTを利用する。BLAST及びGapped BLASTプログラムを利用する場合、それぞれのプログラムのデフォルトパラメータを使用する。
【0056】
本発明の好ましい実施形態によれば、上に規定され、本明細書に開示される配列と少なくとも85%同一、より好ましくは少なくとも90%同一、更により好ましくは少なくとも95%同一である核酸配列のみからなる又はそれを含む抗体アミノ酸配列は、本発明の一部を形成する。
【0057】
本発明の好ましい実施形態によれば、本発明の第1の態様の代替b)の抗体は、FWR1において2aaの欠失を含む。
【0058】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、モノクローナルヒト抗体又はその結合フラグメントは、TZM-bl細胞疑似ウイルス中和アッセイにおいて、最大25μg/mlの抗体濃度で好ましくは全12株を試験した場合、de Camp et al., J Virol. 2014 Mar; 88(5): 2489-2507に記載されるグローバルリファレンスパネルの12株のHIV-1単離基準株のうち少なくとも11株の中和によって例示される広範な中和活性を示す。
【0059】
TZM-bl細胞疑似ウイルス中和アッセイは、様々なHIV-1株に対する抗体の中和効力の分析のため、当該技術分野及び本発明の技術分野において一般的に使用される非常に標準化されたアッセイである。簡単に言えば、抗体及びウイルス株を、TZM-bl標的細胞が添加される前に共にインキュベートする。これらの細胞は、感染が成功した場合にルシフェラーゼ活性を示し、細胞の溶解後にルシフェリンの存在下で検出可能な発光シグナルをもたらす。中和抗体は、感染、したがって発光の発生を防ぐことができる。中和抗体の効力は、ウイルス感染力を特定の量だけ低下させるのに必要な抗体の濃度によって決定される。
【0060】
このアッセイを設定及び採用する標準化された方法は、Sarzotti-Kelsoe et al.; J Immunol Methods. 2014 July ; 0: 131-146. doi:10.1016/j.jim.2013.11.022に開示され、詳細に記載されている。この説明を単独で、及び一般的な従来技術と組み合わせて、当業者は、本明細書で使用されるTZM-bl細胞疑似ウイルス中和アッセイの決定的な読み出しを確立し、決定することを可能にする。
【0061】
de Camp et al., J Virol.2014 Mar; 88(5): 2489-2507に記載されるグローバルリファレンスパネルは、選択された12個の代表的なHIV-1ウイルス変異体を含む。この12ウイルスパネルで見られるHIV-1血清中和活性のスペクトルは、サブタイプマッチウイルスで見られる活性に密接に近似するために一般的に受け入れられている。さらに、このパネルは、多くの既知の広域中和抗体の検出に対して感度が高い。このパネルで実施された研究は、所与の抗体の中和幅及び/又は効力の信頼できる予測を可能にする。
【0062】
本発明の第1の態様の別の好ましい実施形態によれば、抗体又はその結合フラグメントは、TZM-bl細胞疑似ウイルス中和アッセイにおいて最大20μg/mlの抗体濃度で試験した場合、少なくとも89.9%(119個中107個)、好ましくは少なくとも92.4%(119個中110個)、更により好ましくは少なくとも96.6%(119個中115個)のSchoofs et al., Immunity, 2019 Jun 18;50(6):1513-1529.e9に記載される119マルチクレードウイルスパネルに含まれる疑似ウイルスの中和によって例示される広範な中和活性を示す。
【0063】
Schoofs et al., 2019による、及びそこで参照されているより包括的なパネルは、多数の異なる疑似ウイルス(すなわち、HIV-1株)を試験することによって、幅及び効力を正確に特定するのに役立つ。この大きなパネルは、全ての主要な循環HIV-1クレードの代表として一般的に受け入れられており、検査された抗体の中和能力に関する詳細な情報を提供する。
【0064】
本発明の第1の態様の別の好ましい実施形態によれば、抗体又はその結合フラグメントは、TZM-bl細胞疑似ウイルス中和アッセイにおいて最大25μg/mlの抗体濃度で試験した場合、de Camp et al., J Virol. 2014 Mar; 88(5): 2489-2507に記載されるグローバルリファレンスパネルの中和株に対して、0.3μg/ml未満、好ましくは0.2μg/ml未満、より好ましくは0.15μg/ml未満、更により好ましくは0.1μg/ml未満、更により好ましくは0.05μg/ml未満、更に好ましくは0.048μg/ml、更により好ましくは0.035μg/mlの中和効力(幾何平均IC50)を示す。
【0065】
本明細書で規定される中和効力は、好ましくは、それぞれの抗体によって中和されていると肯定的に決定され得るそれらのウイルス変異体のみを考慮に入れる。次いで、肯定的に中和された変異体の選択に基づき、幾何平均IC50を中和された株に対して決定する。
【0066】
本発明の第1の態様の好ましい実施形態によれば、抗体又はその結合フラグメントは、TZM-bl細胞疑似ウイルス中和アッセイにおいて最大20μg/mlの抗体濃度で試験した場合、Schoofs et al., Immunity, 2019 Jun 18;50(6):1513-1529.e9に記載される119マルチクレードウイルスパネルの中和株に対して、0.2μg/ml未満、好ましくは0.1μg/ml未満、より好ましくは0.08μg/ml未満、更により好ましくは0.05μg/ml未満の中和効力(幾何平均IC50)を示す。
【0067】
本発明の第1の態様の別の好ましい実施形態によれば、抗体又はその結合フラグメントは、TZM-bl疑似ウイルス中和アッセイにおいて試験した場合、HIV-1疑似ウイルス89-F1_2_25(89-F1_2_25env遺伝子;GenBank:HM215349.1)に対して0.05μg/ml未満、好ましくは0.02μg/ml未満、より好ましくは多くとも0.01μg/ml、更により好ましくは0.01μg/ml未満の中和効力(IC50)を示す。
【0068】
本発明の第1の態様の別の好ましい実施形態によれば、抗体又はその結合フラグメントは、TZM-bl疑似ウイルス中和アッセイにおいて試験した場合、HIV-1疑似ウイルス6546.v4.c1(6546.v4.c1 env遺伝子、GenBank:HM215332.1)に対して、10μg/ml未満、好ましくは1μg/ml未満、より好ましくは0.5μg/ml未満、更により好ましくは0.05μg/ml未満、更により好ましくは多くとも0.01μg/ml、特に好ましくは0.01μg/ml未満の中和効力(IC50)を示す。
【0069】
HIV-1疑似ウイルス89-F1_2_25は、既知のCD4結合部位抗体による中和のための最も困難な株の1つであるようである。実際、CD4結合部位を標的とする以前より知られていた抗体のいずれも、0.194μg/ml未満のIC50値で上記疑似ウイルスの中和に成功したことが未だに実証されていない。しかしながら、本発明による抗体は、はるかに高い効力で上記株を中和することができる。
【0070】
HIV-1疑似ウイルス6545.v4.c1もまた、CD4結合部位抗体による中和に対して非常に困難な株であるようである。CD4結合部位を標的とする以前より知られている抗体のいずれも、0.091μg/ml未満のIC50値で上記疑似ウイルスの中和に成功したことが未だに実証されていない。しかしながら、はるかに高い効力で上記株を中和することができる本発明による抗体が存在する。
【0071】
本発明の好ましい一実施形態によれば、抗体又は結合フラグメントは、TZM-bl疑似ウイルス中和アッセイにおいて試験した場合、IC50濃度が0.1μg/ml未満、好ましくは0.05μg/ml未満で、エンベロープ変異N279K、N280Y、G458D、G459D、又はG471R(HIV-1 HXB2エンベロープ遺伝子;GenBank:K03455に従って番号が付与された残基)のいずれか1つを有するYU2エンベロープ遺伝子(GenBank:M93258.1)を含むYU2疑似ウイルス変異体の全てを中和する。
【0072】
変異N279K、N280Y、G458D、及びG459Dは、HIV-1感染のin vivoモデルにおけるCD4結合部位抗体による治療中のウイルスリバウンドの発生(すなわち、治療失敗)と関連しており、投与されたCD4結合部位抗体に対するウイルス耐性の発生を示す(非特許文献5、Horwitz et al, Proc Natl Acad Sci U S A, 2013 Oct 8;110(41):16538-43)。この場合も、本発明による抗体は、上述したYU2エンベロープ遺伝子中の変異が中和を消失させず、本発明による抗体に対するエスケープ変異として作用しないという点で、従来技術の既知のCD4結合部位抗体よりも優れている。
【0073】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、抗体又はその結合フラグメント1mgの初期皮下注射に続いて、3日~4日後に、Zhang et al., J Virol, 2002 Jun;76(12):6332-43に記載されるHIV-1 NL4-3/YU2に感染したヒト化マウスに対して、3日毎~4日毎に0.5mgの抗体又はその結合フラグメントの定期的な皮下注射を行うことが、治療の4週間後、好ましくは治療の6週間後、更により好ましくは治療の8週間後に測定した場合、治療開始時に少なくとも5000コピー/ml血漿のHIV-1 RNA負荷を有する治療マウスの少なくとも70%において、治療開始と比較して、少なくとも0.8 log10、好ましくは少なくとも1.0 log10の血漿中のHIV-1 RNA負荷の減少をもたらす。
【0074】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、抗体又はその結合フラグメント1mgの初期皮下注射に続いて、3日~4日後に、HIV-1 NL4-3/BALに感染したヒト化マウスに対して、3日毎~4日毎に0.5mgの抗体又はその結合フラグメントの定期的な皮下注射を行うことが、治療の4週間後、更により好ましくは治療の6週間後に測定した場合、治療開始時に少なくとも30000コピー/ml血漿のHIV-1 RNA負荷を有する治療マウスの少なくとも60%において、治療開始と比較して、少なくとも1.0 log10、好ましくは少なくとも1.5 log10、更により好ましくは少なくとも1.75 log10の血漿中のHIV-1 RNA負荷の減少をもたらす。
【0075】
上記実施形態のより好ましい実施形態によれば、ヒト化マウスを、3BNC117若しくはVRC01、又は両方の組合せ1mgの1回の初期皮下注射で4週間にわたって先に治療し、続いて3日~4日後に、0.5mgの3BNC117若しくはVRC01、又は両方の組合せの3日毎~4日毎の定期的な皮下注射を行う。
【0076】
HIV-1 NL4-3/YU2に感染したヒト化マウス(Zhang et al., J Virol, 2002;76: 6332-6343に記載されるNL4-3骨格中のYU2 env)は、in vivoでHIV-1抗体を中和する抗ウイルス活性を研究するための当該技術分野で十分に確立されたモデルを提供する。これらのマウスは、安定したレベルのウイルス血症(すなわち、血漿中のHIV-1 RNAコピー数)を維持することができ、env遺伝子においてヒトで観察されるものと類似したHIV-1配列多様化率を示すことができる(非特許文献5)。
【0077】
このモデルは、CD4結合部位抗体による単独療法の効果を調べるためにも使用されている(Freund et al., PLoS Pathog, 2015, Oct 30;11(10):e1005238、非特許文献5、Horwitz et al, Proc Natl Acad Sci U S A, 2013 Oct 8;110(41):16538-43、Freund et al., Sci Transl Med, 2017 Jan 18;9(373). pii: eaal2144)。単独療法として与えられる本発明による抗体は、治療されたマウスにおけるHIV-1ウイルス量抑制の維持をもたらし、したがって、抗体単独療法中のHIV-1ウイルス量の一過性の減少のみが観察される他の研究されたCD4結合部位抗体よりも優れている。さらに、1-18のin vivo活性は、マウスがCD4結合部位抗体3BNC117、VRC01、又はこれらの組合せによる先の治療の間にウイルスリバウンドを発生した後にもウイルス抑制の維持が達成されるという点で他のCD4結合部位抗体よりも優れている。
【0078】
本発明の第1の態様の好ましい一実施形態によれば、抗体又はその結合フラグメント1mgの初期皮下注射に続いて、3日~4日後に、Zhang et al., J Virol, 2002 Jun;76(12):6332-43に記載されるHIV-1 NL4-3/YU2に感染したヒト化マウスに3日毎~4日毎に0.5mgの抗体又はその結合フラグメントの定期的な皮下注射を行うことが、少なくとも4週間は、投与された抗体に対する耐性を媒介するCD4結合部位(ループD、CD4結合ループ、ベータ23鎖、V5ループ、及びベータ24鎖)における1つ以上の変異の発生をもたらさない。
【0079】
好ましくは、先の実施形態の状況で使用される投与された抗体に対する耐性を、この変異を含むウイルス配列で生成されたHIV-1疑似ウイルスが試験されるときに、TZM-bl中和疑似ウイルスアッセイにおいて少なくとも2.5μg/mlの投与された抗体のIC50をもたらすと規定することができる。
【0080】
抗体耐性をもたらす及び/又はウイルスリバウンドに関連するエスケープ変異の発生(すなわち、治療の失敗)は、他のCD4結合部位抗体の抗体単独療法研究において実証されている(Freund et al., PLoS Pathog, 2015, Oct 30;11(10):e1005238、非特許文献5、Horwitz et al, Proc Natl Acad Sci U S A, 2013 Oct 8;110(41):16538-43、Freund et al., Sci Transl Med, 2017 Jan 18;9(373). pii: eaal2144)。これらのCD4結合部位抗体と比較して、本発明の抗体は、CD4結合部位エピトープにおける変異の発生を防止し、したがって治療の失敗を防ぎ、抗ウイルス活性を維持することができる点で優れている。
【0081】
本発明の第1の態様の別の好ましい実施形態によれば、NRGマウスへの0.5mgの抗体又は結合フラグメントの静脈内注射は、注射の10日後に、少なくとも50μg IgG/ml血清の抗体又はその結合フラグメントの検出可能な血清レベルをもたらす。
【0082】
HIV-1中和抗体は、それらの薬物動態学的特性において変化し得る。ヒトにおいて、現在知られているCD4結合部位抗体は、V3ループを標的とする抗体よりも短い半減期を有するようであり(Mendoza et al., Nature, 2018 Sep;561(7724):479-484)、マウスモデルにおいても観察がなされている(非特許文献5、Horwitz et al, Proc Natl Acad Sci U S A, 2013 Oct 8;110(41):16538-43)。他のCD4結合部位抗体と比較して、本発明の抗体は、in vivoでより高い血清レベルをより長期間維持することから優れている。
【0083】
本発明の第1の態様の好ましい実施形態によれば、抗体若しくはその結合フラグメントは16若しくは19のアミノ酸長を有するCDRH3を含まない、及び/又は抗体若しくはその結合フラグメントは18、20若しくは21のアミノ酸長を有するCDRH3を含む。
【0084】
本発明の第1の態様の好ましい一実施形態によれば、抗体又はその結合フラグメントは、Freund et al., Sci.Transl. Med.9, eaal2144 (2017)に記載される抗体NC37、NC133、AC40、AC41又はAC72のアミノ酸配列を含まない、又はこれらのみからなるものではない。
【0085】
本発明の第1の態様の好ましい実施形態によれば、抗体又はその結合フラグメントは、1-18(配列番号1の重鎖アミノ酸配列と配列番号2の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、1-21(配列番号3の重鎖アミノ酸配列と配列番号4の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、1-33(配列番号5の重鎖アミノ酸配列と配列番号6の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、1-54(配列番号7の重鎖アミノ酸配列と配列番号8の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、1-55(配列番号9の重鎖アミノ酸配列と配列番号10の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、2-10(配列番号11の重鎖アミノ酸配列と配列番号12の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、2-22(配列番号13の重鎖アミノ酸配列と配列番号14の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、2-27(配列番号15の重鎖アミノ酸配列と配列番号16の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、2-47(配列番号17の重鎖アミノ酸配列と配列番号18の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、3-59(配列番号19の重鎖アミノ酸配列と配列番号20の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、5-18(配列番号21の重鎖アミノ酸配列と配列番号22の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、8-10(配列番号23の重鎖アミノ酸配列と配列番号24の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、9-23(配列番号25の重鎖アミノ酸配列と配列番号26の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、10-7(配列番号27の重鎖アミノ酸配列と配列番号28の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、8-52(配列番号29の重鎖アミノ酸配列と配列番号30の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、9-89(配列番号31の重鎖アミノ酸配列と配列番号32の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、9-71(配列番号33の重鎖アミノ酸配列と配列番号34の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、1-23(配列番号35の重鎖アミノ酸配列と配列番号36の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、1-29(配列番号37の重鎖アミノ酸配列と配列番号38の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、2-12(配列番号39の重鎖アミノ酸配列と配列番号40の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、2-21(配列番号41の重鎖アミノ酸配列と配列番号42の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、3-07(配列番号43の重鎖アミノ酸配列と配列番号44の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、3-78(配列番号45の重鎖アミノ酸配列と配列番号46の軽鎖アミノ酸配列とからなる)を含む群からの1つの抗体、好ましくは1-18、1-33、1-55、2-27、1-23、1-29、2-12、2-21、3-07及び3-78を含む群からの1つの抗体、より好ましくは1-18、1-55及び2-12を含む群からの1つの抗体、更により好ましくは抗体1-18又は2-12、特に好ましくは抗体1-18の重鎖CDR1~CDR3及び軽鎖CDR1~CDR3のアミノ酸配列を含む。
【0086】
本発明の特に好ましい実施形態によれば、抗体又はその結合フラグメントは、1-18(配列番号1の重鎖アミノ酸配列と配列番号2の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、1-21(配列番号3の重鎖アミノ酸配列と配列番号4の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、1-33(配列番号5の重鎖アミノ酸配列と配列番号6の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、1-54(配列番号7の重鎖アミノ酸配列と配列番号8の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、1-55(配列番号9の重鎖アミノ酸配列と配列番号10の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、2-10(配列番号11の重鎖アミノ酸配列と配列番号12の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、2-22(配列番号13の重鎖アミノ酸配列と配列番号14の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、2-27(配列番号15の重鎖アミノ酸配列と配列番号16の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、2-47(配列番号17の重鎖アミノ酸配列と配列番号18の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、3-59(配列番号19の重鎖アミノ酸配列と配列番号20の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、5-18(配列番号21の重鎖アミノ酸配列と配列番号22の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、8-10(配列番号23の重鎖アミノ酸配列と配列番号24の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、9-23(配列番号25の重鎖アミノ酸配列と配列番号26の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、10-7(配列番号27の重鎖アミノ酸配列と配列番号28の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、8-52(配列番号29の重鎖アミノ酸配列と配列番号30の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、9-89(配列番号31の重鎖アミノ酸配列と配列番号32の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、9-71(配列番号33の重鎖アミノ酸配列と配列番号34の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、1-23(配列番号35の重鎖アミノ酸配列と配列番号36の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、1-29(配列番号37の重鎖アミノ酸配列と配列番号38の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、2-12(配列番号39の重鎖アミノ酸配列と配列番号40の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、2-21(配列番号41の重鎖アミノ酸配列と配列番号42の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、3-07(配列番号43の重鎖アミノ酸配列と配列番号44の軽鎖アミノ酸配列とからなる)、3-78(配列番号45の重鎖アミノ酸配列と配列番号46の軽鎖アミノ酸配列とからなる)を含む群から選択される1つの抗体、好ましくは1-18、1-33、1-55、2-27、1-23、1-29、2-12、2-21、3-07及び3-78を含む群からの1つの抗体、より好ましくは1-18、1-55及び2-12を含む群からの1つの抗体、更により好ましくは抗体1-18又は2-12、特に好ましくは抗体1-18の重鎖及び軽鎖の組合せを含む。
【0087】
本出願の記載において、抗体の呼称が用いられる場合がある。抗体は、重鎖及び軽鎖からなることが指摘され、これらはまた本記載の一部を形成する。抗体をその呼称によって、又は配列番号に対して言及する場合、これらの参照方法は同じ意味を有することを理解されたい。
【0088】
本発明は、本明細書に規定され、更に記載される本発明によるモノクローナルヒト抗体又はその結合フラグメントと、少なくとも1つの薬学的に許容され得る賦形剤とを含む医薬組成物に更に関する。好ましくは、医薬組成物はヒト被験体用のワクチン接種組成物である。
【0089】
本発明はまた、本明細書で規定され、更に記載される本発明によるモノクローナルヒト抗体又はその結合フラグメントと容器とを備えるキットを包含する。
【0090】
一態様において、本発明はまた、医薬として用いるための、好ましくはワクチンとして用いるための本明細書に規定され、更に記載される本発明によるモノクローナルヒト抗体又はその結合フラグメント、本明細書に記載される医薬組成物、及びキットに関する。
【0091】
別の態様において、本発明はまた、ヒト被験体におけるヒト免疫不全ウイルスHIV-1によって引き起こされる疾患の治療又は予防に用いられる、好ましくはヒト被験体における後天性免疫不全症候群(AIDS)の治療又は予防に用いられる、本明細書に規定され、更に記載される本発明によるモノクローナルヒト抗体又はその結合フラグメント、本明細書に記載の医薬組成物、及びキットに関する。
【0092】
他の一態様において、本発明はまた、ヒト被験体においてヒト免疫不全ウイルスHIV-1によって引き起こされる疾患に罹患している患者の治療方法、好ましくはヒト被験体における後天性免疫不全症候群(AIDS)の治療又は予防に用いられる方法に関し、患者には、有効量の本発明によるモノクローナルヒト抗体若しくはその結合フラグメント、又は本発明の医薬組成物が投与される。
【0093】
別の態様において、本発明はまた、ヒト被験体におけるヒト免疫不全ウイルスHIV-1によって引き起こされる疾患の治療のための、好ましくはヒト被験体における後天性免疫不全症候群(AIDS)の治療又は予防のための医薬の製造における本発明によるモノクローナルヒト抗体若しくはその結合フラグメント、又は本発明の医薬組成物の使用に関する。
【0094】
本明細書に記載される本発明の全ての実施形態は、あらゆる組合せで、当業者がそのような組合せを何ら技術的な意味をなさないと考えない限りは組み合わせることができると見なされる。
【実施例】
【0095】
A)実験方法
モノクローナル抗体配列の単離
血液及び白血球アフェレーシスの試料を、ケルン大学の治験審査委員会によって承認されたプロトコル(プロトコル13-364及び16-054)に基づいて得て、参加者は書面によるインフォームドコンセントを提供した。末梢血単核球(PBMC)を密度勾配遠心分離によって単離し、90%FBS及び10%DMSO中、-150℃で保存した。B細胞を磁気細胞分離によってPBMCから単離し、抗ヒトCD19-AF700、抗ヒトIgG-APC、DAPI(BD)、及びHIV-1 Envベイトタンパク質(bait protein)で氷上で30分間標識した。HIV-1 Envベイトタンパク質は、BG505SOSIP.664-GFP(Sliepen et al., 2015)、又はストレプトアビジン-PEで標識されたビオチン化(EZ-Link Sulfo NHS Bioting及びLabeling Kit、Thermo Fisher)YU2gp140(Yang et al., 2000)のいずれかであった。Env反応性CD19+IgG+DAPI-単一細胞を、前に記載されるように選別した(Ehrhardt et al., 2019)。選別した細胞を、ランダムヘキサマープライマー、NP-40、及びRNaseフリーH2Oと共に65℃で1分間インキュベートした。続いて、RT Buffer、dNTP、DTT、H2O、RNasin、及びRNaseOUTの存在下で、SuperScript IVを用いてcDNAを作製した。単一細胞分析のための抗体配列を、Taqポリメラーゼ及び以前に記載されたプライマーCG_RT(Ozawa et al., 2006、第1のPCR)、IgG_Internal RT(Tiller et al., 2008、第2のPCR)、及びOPT5/oPR-プライマーミックス(Kreer et al., 2019、両方のPCR)を用いたセミネステッドPCRによって増幅した。
【0096】
抗体配列解析
平均Phredスコア28以上及び最小240ヌクレオチド長を有する第2のPCR産物の配列をIgBLASTで注釈を付け(Ye et al., 2013)、可変領域のフレームワーク領域(FWR)1からJ遺伝子の末端までトリミングした。Phredスコア16未満の塩基コールはマスクされ、15超のマスクされたヌクレオチド、フレームシフト、又は終止コドンを有する配列を更なる分析から除外した。潜在的なクローン性について配列を分析するために、全ての生産的重鎖配列を同一のV遺伝子によってグループ化し、それらのCDRH3の対毎のレーベンシュタイン距離を決定した。個々の配列を、同じV遺伝子を共有し、75%の最小CDRH3同一性を有していたクローンにグループ化した。配列のランダム化入力による10ラウンド後、割り当てられていない(非クローン)配列の数が最も少ない結果を、更なる分析のために選択した。全てのクローンを、共有変異を同定するために、研究者によって手動で再検証した。当初は異なるクローンに割り当てられていたが、同じVDJ遺伝子及びアミノ酸及び/又はサイレントヌクレオチド変異を共有していた配列を、その後サブクローンにグループ化した。生殖細胞系列に対するヌクレオチドの配列同一性を、IgBLASTを用いて算出した。
【0097】
モノクローナル抗体産生
単一細胞由来抗体のクローニングのため、単一細胞PCRの第1のPCR産物を鋳型として用い、Q5ハイフィデリティポリメラーゼ、並びにその後の配列及びライゲーション非依存性クローニング(SLIC)のための発現ベクターオーバーハングを含むV領域及びJ領域のそれぞれのヌクレオチド配列に類似した特異的フォワードプライマー及びリバースプライマー(Tiller et al., 2008)を用いて増幅させた。PCR産物を、以前に記載されるように(von Boehmer et al., 2016)SLICアセンブリによってヒト抗体発現ベクター(IgG1、カッパ、又はラムダ鎖)にクローニングした。抗体を、ポリエチレンイミンを用いたトランスフェクションによりHEK293-6E細胞において産生した。5日~7日後、プロテインGインキュベーション及びその後の0.1Mグリシン(pH=3.0)を用いたクロマトグラフィーカラムからの溶出後の上清から抗体を精製した。バッファー中和、PBSへのバッファー交換、及びフィルター滅菌後、抗体を4℃で保存した。
【0098】
疑似ウイルスの産生
疑似ウイルスを、以前に記載されるように(Doria-Rose et al., 2017、Sarzotti-Kelsoe et al., 2014、Hraber et al., 2017、Seaman et al., 2010)、pSG3ΔEnvプラスミドとの同時トランスフェクションによってHEK293T細胞において産生した。YU2疑似ウイルス変異パネルを生成するため、部位特異的変異誘発法を用いてYU2エンベロープ遺伝子をコードするプラスミドに点変異を導入した。
【0099】
TZM-bl細胞中和アッセイ
中和アッセイを、以前に記載されるように実施した(Sarzotti-Kelsoe et al., 2014、Seaman et al., 2010)。マウス白血病ウイルス(MuLV)偽型ウイルスを用いて、非特異的活性を判定した。抗体を二連で試験した。疑似ウイルス変異体(mutants)及びグローバルリファレンスパネルのアッセイでは、ルシフェリン/溶解バッファー(Tris-HCL中、10mM MgCl2、0.3mM ATP、0.5mM補酵素A、17mM IGEPAL(いずれもSigma-Aldrich)、及び1mM D-ルシフェリン(GoldBio))を添加した後に生物発光を判定した。
【0100】
HIV-1感染ヒト化マウス
ヒト化マウスを、以前の記載(非特許文献5)に変更を加えて作製した。NOD.Cg-Rag1tm1momIl2rgtm1Wjl/SzJ(NRG)マウスを、生後5日以内に、致死量以下の照射から3時間~6時間後にヒトCD34+造血臍帯血及び/又は胎盤組織幹細胞の肝内注射によりヒト化した。ヒト化マウスに、トランスフェクトされたHEK293T細胞の上清から採取した複製可能な組換えHIV-1YU2(NL4-3骨格中のYU2 env(Zhang et al., 2002))又はHIV-1BAL(NL4-3骨格中のBAL env)を用いて腹腔内チャレンジにより感染させた。
【0101】
HIV-1ウイルス量の測定
血漿RNAは、オンカラムDNase I消化工程を含むMinElute Virus Mini Spin Kitを用いてEDTA血漿試料から抽出した。ウイルス量を、以前に記載される(Horwitz et al., 2013)pol特異的プライマーを用いる定量的リアルタイムPCRにより決定した。qPCRを、Taqman RNA-to-Ct 1-Step-Kitを用いてLightCycler 480 IIで実施した。ウイルス量を、qPCR実行毎に既知のコピー数の試料から導出された標準曲線を含むことによって定量した。qPCRの精度の限界を384コピー/mlと決定した。ウイルス量384コピー/ml未満に対するLog10の変化を、コピー数が383コピー/mlであると仮定して計算した。
【0102】
HIV-1感染ヒト化マウスの抗体治療
PBSで希釈した抗体を皮下注射した。1mgの負荷用量に続いて、0.5mgの用量を3日~4日毎に注射した。
【0103】
ヒト化マウスにおけるHIV-1の単一ゲノムシーケンシング
HIV-1感染ヒト化マウスの抗体治療中のHIV-1 env遺伝子における潜在的なエスケープ変異の発生を判定するため、抽出された血漿RNAを用いて、SuperScript IV及びアンチセンスプライマーYB383を用いてcDNAを生成し(Horwitz et al., 2017)、続いてRNase Hインキュベーションを行った。続いて、Taqポリメラーゼと、第1のPCR用のプライマーYB383及びYB50と、第2のPCR用のプライマーYB49及びYB52とを用いて限界希釈ネステッドPCRを行って、単一ゲノムenv cDNAを増幅した(Schoofs et al., 2019)。PCR効率30%未満の希釈率での陽性PCR反応は、以前の記載(Kryazhimskiy et al., 2014、Schoofs et al., 2016)に変更を加えた、イルミナ色素シーケンシングを用いる配列であった。タグ付け、限定サイクルPCRによるインデックス及びアダプターの付加、並びに精製の後、PCR産物をイルミナMiSeq上で配列決定し、リードをアセンブルした(Gaebler et al., 2019)。10未満の曖昧さ(リード全体で75%未満ヌクレオチド同一性)を有する完全長env配列を解析した。
【0104】
HIV-1 Env結合の競合を判定するためのELISA
抗体1-18、抗体1-55及び抗体2-12を、製造業者の指示に従ってEZ Link Sulfo NHS Biotin及びLabeling Kit(Thermo Fisher)を用いてビオチン化し、続いてPBSにバッファー交換した。高結合ELISAプレートに抗6×Hisタグ抗体を2μg/mlで4℃にて一晩コーティングした。ウェルをPBS中3%BSAで37℃にて60分間ブロッキングし、BG505SOSIP.664-His(Sanders et al., 2013)と共にPBS中2μg/mlで37℃にて60分間インキュベートした。競合する抗体を、PBS中32μg/mlの濃度で開始して1:3希釈で室温にて60分間インキュベートした。目的のビオチン化抗体をPBS中3%BSAで0.5μg/mlに希釈し、室温で60分間インキュベートした後、PBS中1%BSA/0.05%Tween 20で1:5000に希釈したペルオキシダーゼ-ストレプトアビジンを加えた。415nmにおける吸光度を、ABTS溶液の添加後にマイクロプレートリーダーで決定した。プレートを各工程の間にPBS中0.05%Tween 20で洗浄した。
【0105】
in vivo抗体薬物動態分析
NRGマウスに、200μl PBS中の0.5mgの抗体を静脈内注射した。ヒトIgGの総血清中濃度を、以前の記載(非特許文献5)に軽微な変更を加えてELISAにより決定した。簡単に言えば、高結合ELISAプレートに室温で一晩2.5μg/mlの濃度の抗ヒトIgGをコーティングした。続いて、ウェルをブロッキングバッファー(PBS中の2%BSA、1μM EDTA及び0.1%Tween 20)でブロッキングした。ヒトIgG1カッパ標準物質の段階希釈(二連)及びPBS中の血清試料を室温で90分間インキュベートし、続いてブロッキングバッファー中で1:1000に希釈したHRP結合抗ヒトIgGを室温で90分間インキュベートした。ABTSの添加に続いて、415nmにおける光学濃度を、マイクロプレートリーダーを用いて決定した。プレートを各工程の間にPBS中0.05%Tween 20で洗浄した。抗体注射前に得られた血清試料を、ヒト血清IgGが存在しないベースラインを確認するために使用した。
【0106】
B)本発明の抗体の具体例
実施例I HIV-1感染エリートニュートラライザーからの広範で強力なVH1-46由来HIV-1中和抗体の単離
HIV-1エンベロープタンパク質に反応するヒトB細胞を、in vitroアッセイにおいてHIV-1に対して並外れた血清中和活性を有すると以前に同定されたHIV-1感染個体から単離した。
【0107】
この目的のため、単離されたB細胞を蛍光色素標識可溶性HIV-1 Envタンパク質(YU2gp140又はBG505SOSIP.664)と共にインキュベートし、単一細胞の選別を行った(Ehrhardt et al., 2019)。このアプローチにより、PCRによる個々のHIV-1 Env反応性B細胞からの重抗体及び軽抗体遺伝子セグメントのその後の増幅が可能となった。これにより、個々のB細胞によってコードされる対応する抗体の組換え産生用の発現ベクターへのPCR産物のクローニングが可能になり、抗体の機能試験が可能になった。
【0108】
HIV-1-Env反応性B細胞の配列の解析から、拡大VH1-46由来B細胞クローンを同定することができた。これらのクローンの1つは、重鎖CDR1領域への6つのアミノ酸(aa)挿入を特徴とし、このクローンは重鎖(配列番号47)及び軽鎖(配列番号48)のコンセンサス配列によって表される。3つの追加のB細胞クローンが同定され、それらは互いに、また以前に記載されるクローンと類似性を共有する。これらの追加のクローンは、6aaのCDRH1挿入を伴わないが、それらの軽鎖のフレームワーク領域1において2aaの欠失を示す。これらのクローンは、重鎖(配列番号49)及び軽鎖(配列番号50)に対する別々のコンセンサス配列によって表される。
【0109】
同定されたVH1-46由来B細胞クローンを代表する合計23個の抗体を、モノクローナル抗体として産生した。それらの全体的な中和効力及び幅を決定するため、これらの抗体を、「グローバルパネル」と称される12のHIV-1疑似ウイルス株のリファレンスパネルに対するTZM-bl細胞中和アッセイにおいてそれらの中和活性について試験した(
図1)。この疑似ウイルスのパネルは、以前は、世界的なHIV-1流行の多様性を表し、中和抗体の活性の標準化された評定を可能にするように設計されていた。
【0110】
注目すべきことに、単離されたVH1-46由来抗体の全ては、12株のHIV-1基準株のうち少なくとも11株に対して高い中和活性を示した(
図1)。配列番号47及び配列番号48で表されるVH1-46由来抗体は、試験された全ての株に対して活性を実証した。それらの中和幅に加えて、試験されたVH1-46由来抗体はまた、高い中和効力を実証した。中和効力は、通常50%阻害濃度(IC
50)によって表される。「グローバルパネル」に対して試験したところ、試験した全てのVH1-46由来抗体は、中和ウイルス株に対して0.2μg/ml以下の幾何平均IC
50で高活性であった(
図1)。
【0111】
実施例II 本発明の抗体の標的としてのCD4結合部位の同定
本発明による抗体のエピトープを決定するため、特異性がわかっている抗体の存在下でのBG505
SOSIP.664のHIV-1エンベロープ三量体への代表的な抗体1-18、抗体1-55、及び抗体2-12の結合を調べた。CD4結合部位抗体3BNC117、抗体N6、及び抗体VRC01との干渉を検出した(
図2)。このことは、本発明の抗体がCD4結合部位及びCD4結合部位に結合する他の抗体のエピトープと重複するエピトープを標的とすることを示す。
【0112】
実施例III 高い効力及び幅の抗体1-18、抗体1-55、及び抗体2-12
単離されたVH1-46由来HIV-1抗体の中和効力及び幅を確認するため、代表的な抗体1-18、抗体1-55及び抗体2-12を、Schoofs et al., 2019で以前に試験したように、119個のHIV-1疑似ウイルスの拡張パネルに対して個別に試験した。この疑似ウイルスのパネルは、Seaman et al., 2010に詳細に記載されている疑似ウイルスのパネルの開発を表す。これは、HIV-1 Env変異体の遺伝的及び全体的な多様性の表現を提供する。これは、伝染/創始者(transmitted/founder)ウイルス及び中和が困難なウイルスから単離された変異体を含む、異なるクレード又はサブタイプのHIV-1変異体を含む。
【0113】
注目すべきことに、試験された本発明のVH1-46由来抗体は、119-疑似ウイルスマルチクレードパネルで試験した場合、高い中和効力及び幅を実証した(
図3)。特に、最大20μg/mlの抗体濃度で試験した場合、抗体1-18は試験した疑似ウイルスの96.6%を中和し、中和された疑似ウイルスに対して0.048μg/mlの幾何平均IC
50を示した(
図3)。この幅及び効力は、CD4結合部位も標的とし、VH1-2遺伝子セグメントに由来し、臨床試験の段階が進んだ他のHIV-1中和抗体(3BNC117及びVRC01)に見られるよりも高い(
図3)。さらに、119マルチクレードパネルにおける抗体1-18の効力は、臨床試験における別のVH1-2由来CD4結合部位抗体であるN6の効力よりも高かった(
図3)。
【0114】
さらに、合計62個の同一のHIV-1疑似ウイルスに対する結果が利用可能であった(Yoon et al., 2015)CD4結合部位を標的とする他のVH1-46由来HIV-1中和抗体と比較すると、本発明の代表的なVH1-46由来抗体は、より高い効力及び幅を実証した(
図4)。
【0115】
実施例IV 他のCD4結合部位抗体によって十分に中和されていない疑似ウイルスに対する中和活性
CD4結合部位抗体は高レベルの中和幅を達成することができるが(すなわち、多数の異なるHIV-1 Env変異体に対して活性を有する)、抗体耐性HIV-1変異体が存在する。したがって、かかるHIV-1変異体に対して高活性である新規CD4結合部位抗体を同定することが重要である。
【0116】
臨床試験の段階が進んだCD4結合部位抗体(N6、3BNC117、VRC01)と比較して、本発明の抗体は、はるかに高い効力で(すなわち、それらはより低いIC
50を有する)幾つかの株を中和する(代表メンバーである1-18、1-55及び2-12を
図5に示す)。
【0117】
例えば、ウイルス株89-F1_2_25のHIV-1 Envタンパク質を含む疑似ウイルスは、TZM-bl疑似ウイルス中和アッセイにおいて最大20μg/mlの濃度で試験した場合、臨床試験においてCD4結合部位抗体(N6、3BNC117、VRC01)によって中和されない(すなわち、これらの抗体はこの特定のウイルスに対してIC
50に達しない)(
図5)。さらに、中和抗体データベースCATNAP(Yoon et al., 2015)内に収載されている30個のCD4結合部位IgG抗体のうち、89.7%(26/29)の抗体はこのウイルスを全く中和しない(すなわち、IC
50>20μg/ml)。このウイルスを中和する3つの抗体のうち、NC37は17.7μg/mlのIC
50を有し、VRC
16は3.12μg/mlのIC
50を有し、VH1-69遺伝子由来抗体VRC13は0.19μg/mlのIC
50を有する。対照的に、本発明の代表的な抗体(1-18、1-55、及び2-12)は、本発明の他の全ての抗体(全ての抗体にわたって0.006μg/ml~0.025μg/mlのIC
50、
図12を参照されたい)と同様に、非常に高い効力(それぞれ0.007μg/ml、0.014μg/ml、及び0.006μg/mlのIC
50)でHIV-1疑似ウイルス89-F1_2_25を中和する。一般的なCD4結合部位抗体に対して耐性が高い別のウイルス株は、6545.v4.c1株である。この株は、中和抗体データベースCATNAP(Yoon et al., 2015)内に収載された43個のCD4結合部位IgG抗体の75%に対して耐性である。最も重要なのは、段階が進んだCD4結合部位抗体のいずれも、この株を強力に(IC
50<10μ/ml)中和することはできないことである(N6のIC
50:16.23;3BNC117:20超;VRC01:20超;VRC07-523-LS:20超)。対照的に、本発明の全ての抗体は、0.008μg/ml~9.37μg/mlのIC
50でこの株を強力に中和する(
図12)。
【0118】
したがって、本発明の抗体は、CD4結合部位抗体によるウイルス89-F1_2_25及び6545.v4.c1の不十分な中和に対する解決策を提供する。89-F1_2_25に対して試験した場合、本発明の抗体は、前に記載したこのウイルスに対する最良のCD4結合部位抗体よりも約1 log10強力である。
【0119】
実施例V 他のCD4結合部位抗体に対する耐性を付与するCD4結合部位変異を有する疑似ウイルスに対する中和活性
CD4結合部位エスケープ変異の発生によって媒介される抗体耐性は、HIV-1感染の抗体療法の治療失敗をもたらす(非特許文献5)。したがって、これらのエスケープ変異の影響を受けないCD4結合部位抗体を同定することは、これらの変異を保有するHIV-1変異体に対する治療選択肢を提供するために重要である。
【0120】
CD4結合部位抗体を、特異的CD4結合部位変異を有するYU2疑似ウイルス変異体のパネルに対してTZM-bl細胞中和アッセイにおいて試験した(
図6)。CD4結合部位における変異は、以前に知られていたCD4結合部位抗体の活性に影響を与えた(
図6)。例えば、野生型YU2疑似ウイルスに対するCD4結合部位抗体VRC01及び8ANC131のIC
50は、それぞれ0.107μg/ml及び0.256μg/mlであったが、試験されたループD変異の変異体のいずれに対しても中和は観察されなかった(すなわち、試験された抗体濃度2.5μg/mlまでIC
50はなかった)。別のCD4結合部位抗体であるN6は、N279Kの変異の影響を受けた(
図6)。対照的に、試験された本発明の代表的な抗体(1-18、1-55、及び2-12)は、試験されたYU2疑似ウイルス変異体に対して高い中和活性を維持した(
図6)。
【0121】
したがって、本発明の抗体は、CD4結合部位に変異を有するウイルス変異体に対するCD4結合部位抗体の耐性に対する解決策を提供する。
【0122】
実施例VI HIV-1感染のin vivoモデルにおける抗体単独療法によるウイルス抑制の維持
HIV-1YU2に感染したヒト化マウス(Zhang et al., 2002)は、in vivoでHIV-1抗体を中和する抗ウイルス活性を研究するためのモデルを提供する。ヒト化マウスを作製するため、免疫不全NRGマウスに、生後最初の日以内に照射し、ヒト造血CD34+幹細胞を肝内注射する。これは、複製可能なHIV-1で感染させることができるヒトリンパ球の発生をもたらす。これらのマウスは、安定したレベルのウイルス血症(すなわち、血漿中のHIV-1 RNAコピー数)を維持することができ、ヒトで観察されるものと類似したHIV-1配列多様化率を示すことができる(非特許文献5)。このマウスモデルは、in vivoで単独療法として与えられた幾つかのCD4結合部位抗体の抗ウイルス活性を決定するために以前から用いられてきた(179NC75:Freund et al., 2015;3BNC117:Horwitz et al, 2013;45-46G54W:非特許文献5;NC37:Freund et al., 2017)。これらの研究の全てにおいて、ウイルス量に対する一過性の影響のみが観察され、ウイルスリバウンド(すなわち、ウイルス血症のベースラインレベルへの復帰)が急速に発生した。さらに、このウイルスリバウンドは、抗体標的部位における変異の発生と関連していた。したがって、単独療法として与えられた場合にウイルス抑制を維持できる新規なCD4結合部位抗体が必要とされている。
【0123】
HIV-1
YU2感染ヒト化マウスをCD4結合部位抗体3BNC117、VRC01、又はそれらの組合せで治療した場合(皮下に(s.c.)抗体あたり1mgの負荷用量を与え、続いて3日~4日毎に0.5mgをs.c.で与えた)、HIV-1 RNAコピー数の一過性の減少のみが観察され、ウイルス血症は2週間~3週間以内にほとんどのマウスでベースラインレベルに戻った(
図7)。対照的に、マウスを本発明の代表的な抗体1-18を用いて同じ投薬スキームに従って治療すると、治療開始時のウイルスコピー数と比較してウイルス抑制が、8週間の治療期間にわたって全ての治療マウスにおいて観察された(
図7)。マウスの80%以上において、HIV-1 RNA血漿コピー数は、使用されたアッセイの精度の限界(384コピー/ml)を下回るレベルまで減少した。
【0124】
したがって、本発明の抗体は、単独療法として与えられた場合であってもHIV-1YU2感染ヒト化マウスにおいてウイルス抑制を効果的に維持することができる。
【0125】
さらに、上記のようにHIV-1
BAL感染ヒト化マウスをCD4結合部位抗体3BNC117又はVRC01で治療した場合、HIV-1 RNAコピー数の軽微で一過性の減少のみが観察され、2週間以内にほとんどのマウスにおいてウイルス血症がベースラインレベルに戻った(
図13)。対照的に、マウスを本発明の代表的な抗体1-18を用いて同じ投薬スキームに従って治療した場合、治療開始時のウイルスコピー数と比較してウイルス抑制が、6週間の治療期間にわたって全ての治療されたマウスにおいて観察された(
図13)。
【0126】
したがって、本発明の抗体は、単独療法として与えられた場合でもHIV-1BAL感染ヒト化マウスにおいてウイルス抑制を効果的に維持することができる。
【0127】
実施例VII 抗体単独療法中のCD4結合部位におけるウイルス変異の発生の防止
CD4結合部位抗体を用いた抗体単独療法中のウイルスリバウンドは、典型的には、抗体標的部位におけるウイルス配列変異の発生と関連している(179NC75:Freund et al., 2015;3BNC117:Horwitz et al, 2013;45-46G54W:非特許文献5;NC37:Freund et al., 2017)。したがって、CD4結合部位抗体における変異の発生を防止することができる新規なCD4結合部位抗体は、かかる変異によって媒介される抗体耐性を防止するために必要とされる。
【0128】
CD4結合部位(ループD、ベータ23鎖/V5ループ)における変異は、実施例IVに記載されるように、3BNC117、VRC01、又は3BNC117+VRC01療法を受けた全ての試験マウスにおいて観察された(
図8)。対照的に、これらの部位の変異は、本発明の抗体1-18による抗体療法の4週間後に検出可能なウイルス血症が残存していた実施例IVに記載の実験のマウスにおける10個の配列のうちの1つにおいてのみ見出された(
図7)。注目すべきことに、この変異(G459D)をYU2疑似ウイルスパネルで試験したところ、1-18の活性は影響を受けなかった(
図6)。
【0129】
実施例VIII VRC01クラス療法からのウイルスリバウンド後のHIV-1感染のin vivoモデルにおける抗体単独療法によるウイルス抑制の維持
HIV-1感染ヒト化マウスにおけるCD4結合部位抗体を用いた抗体単独療法の失敗は、ウイルスリバウンドをもたらし、投与された抗体に対するウイルス耐性と関連している(Freund et al., 2015、Horwitz et al, 2013、非特許文献5、Freund et al., 2017)。したがって、CD4結合部位抗体療法の以前の失敗後にin vivo治療の選択肢を提供する新規なCD4結合部位抗体が必要とされている。
【0130】
3BNC117、VRC01、又はそれらの組合せ(実施例VIに記載される)による治療の4週間の間に観察されたウイルスリバウンドに続いて、本発明の抗体1-18を治療レジメンに追加すると(s.c.で1mgの負荷用量を与え、続いて3日~4日毎にs.c.で0.5mgを与えた)、治療されたマウスの95%(18/19)においてウイルス血症の持続的な減少をもたらした(
図9)。したがって、本発明の抗体は、他のCD4結合部位抗体による予備治療の失敗後であってもHIV-1のin vivo制御のための選択肢を提供する。
【0131】
実施例IX 他のCD4結合部位抗体と比較して好ましいin vivo半減期
HIV-1中和抗体は、中和効力及び幅だけでなく、in vivo半減期においても変化し得る。例えば、V3ループ標的化抗体10-1074は、HIV-1感染個体に与えられた場合、CD4結合部位抗体3BNC117よりも長い半減期を有する(Mendoza et al., 2018)。したがって、CD4結合部位を標的とする新規抗体は、現在入手可能なCD4結合部位抗体と比較して、in vivoで好ましい薬物動態学的特性を有するはずである。
【0132】
それらの薬物動態学的特性を決定するため、本発明の代表的な抗体(1-18、1-55、及び2-12)をNRGマウスに個々に静脈内注射した。CD4結合部位抗体3BNC117、VRC01、及び45-46
G54Wと比較して、試験された本発明の抗体は、総ヒトIgG ELISAによって決定されたそれらの血清IgG濃度のより遅い低下を示し、10-1074のものとより類似していた(
図10)。したがって、試験された本発明の抗体は、HIV-1を標的とする他のCD4結合部位抗体と比較して好ましい薬物動態学的特性を実証する。
【0133】
実施例欄の参照文献:
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【配列表】
【国際調査報告】