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特表2023-503725溶存気体を含む冷凍保存された細胞組成物の凍結乾燥方法
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  • 特表-溶存気体を含む冷凍保存された細胞組成物の凍結乾燥方法 図1
  • 特表-溶存気体を含む冷凍保存された細胞組成物の凍結乾燥方法 図2A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-31
(54)【発明の名称】溶存気体を含む冷凍保存された細胞組成物の凍結乾燥方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/04 20060101AFI20230124BHJP
   C12N 1/20 20060101ALI20230124BHJP
【FI】
C12N1/04
C12N1/20 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022558360
(86)(22)【出願日】2020-12-02
(85)【翻訳文提出日】2022-07-20
(86)【国際出願番号】 FR2020052241
(87)【国際公開番号】W WO2021111074
(87)【国際公開日】2021-06-10
(31)【優先権主張番号】1913627
(32)【優先日】2019-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】522217728
【氏名又は名称】ジュニアリス
【氏名又は名称原語表記】GENIALIS
(71)【出願人】
【識別番号】522219087
【氏名又は名称】ラレーナ
【氏名又は名称原語表記】LARENA
(74)【代理人】
【識別番号】100080447
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 恵一
(72)【発明者】
【氏名】ジレ,ギヨーム
(72)【発明者】
【氏名】クイール,サラ
(72)【発明者】
【氏名】ポール,フランソワ
(72)【発明者】
【氏名】カイエ,マノン
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA72X
4B065AA83X
4B065AA87X
4B065AC20
4B065BD11
4B065BD12
4B065CA41
4B065CA44
(57)【要約】
本発明は、生物学的材料の凍結乾燥物の分野に関する。より詳細には、本発明は、「加圧下」の低温技術ステップを含む細胞凍結乾燥物の新規の調製方法に関する。好ましい実施形態において、この方法は乳酸菌に適用される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞組成物の凍結乾燥方法において、凍結ステップが加圧下の低温技術によって実現されることを特徴とし、
a)水性媒質中に細胞を含む細胞組成物を準備するステップと、
b)気体分子密度が高いゾーン内を通過させることによって前記組成物中で気体を溶解させるステップであって、このような密度が、(i)低温流体の蒸発によって生成される気体の流れによってか、(ii)圧力の上昇によってか、または(iii)2つの現象の組合せによって得られるステップと、
c)急速冷凍された顆粒、粒子またはビーズを得るために前記組成物中で溶解した状態に前記気体を維持することを可能にする圧力下で、ステップb)で得た気体を富有する前記組成物を冷凍保存するステップと、
d)凍結乾燥された細胞調製物を得るために、前記急速冷凍された顆粒、粒子またはビーズを凍結乾燥するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
加圧下の低温技術によって凍結された細胞組成物の調製方法において、
a)マトリックスの形態で、水性媒質中に細胞を含む細胞組成物を準備するステップと、
b)気体分子密度が高いゾーン内を通過させることによって前記マトリックス中で気体を溶解させるステップであって、このような密度が、(i)低温流体の蒸発によって生成される気体の流れによってか、(ii)10バールにまで至り得る圧力の上昇によってか、または(iii)(i)で言及された気体の流れと圧力上昇の組合せによって得られるステップと、
c)急速冷凍された顆粒、粒子またはビーズを得るために前記マトリックス中で溶解した状態に前記気体を維持することを可能にする圧力下で、ステップb)で得た気体を富有する前記マトリックスを冷凍保存するステップと、
を含む方法。
【請求項3】
前記気体が窒素である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記細胞組成物が、プロバイオティクス乳酸菌、微生物叢を形成する細菌、酵母、植物細胞、微細藻類、生殖細胞、血液細胞、幹細胞を含む、請求項1から3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
前記細胞組成物が、ヒトおよび動物のためのプロバイオティクス細菌を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記細胞組成物が、凍結保護剤を含まない、請求項1から5のいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
前記細胞組成物が、糞便微生物叢試料である、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
請求項1、3から7のいずれか一つに記載の方法によって得られる凍結乾燥された細胞組成物。
【請求項9】
過乾燥マルトデキストリンをさらに含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
細胞組成物が、プロバイオティクス細菌を含む、請求項8または9に記載の組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物学的材料の凍結乾燥物の分野に関する。より詳細には、本発明は、「加圧下」の低温技術ステップを含む細胞凍結乾燥物の新規の調製方法に関する。好ましい実施形態において、この方法は乳酸菌に適用される。
【背景技術】
【0002】
凍結した形態での細胞の保存は、長年にわたり公知である。この方法は、わずかな設備しか必要としない。原理は単純である。凍結は温度の低下を誘発し、これが細胞の全ての生化学的反応を遅延させその後停止させる。これらの反応は、解凍後に再活性化され得る。しかしながら、利用される方法の如何に関わらず、しかも凍結段階の期間が長くなればなるほどいっそう、特に細胞内結晶形成によってひき起こされる解凍時の生存能力の著しい損失が確認される。
【0003】
代替的には、細胞を凍結乾燥することが可能である。凍結乾燥は、予め凍結された生成物の、昇華による脱水方法である。したがって、この方法によると、4℃または周囲温度で保存可能である乾燥生成物が得られる。しかしながら、この方法は、時間がかかり、高価で、非常に多くのエネルギーを消費する。
【0004】
従来、細胞の凍結乾燥方法には、細胞を含む試料の調製ステップ、試料の遠心分離および脱水を可能にする凍結保護媒質内での細胞ペレットの回収ステップ、試料の凍結ステップ、そして凍結乾燥ステップが含まれる。凍結ステップは概して、-20℃(緩慢凍結)と-80℃(急速凍結)の間の温度で実施され、急速凍結は細胞にとって悪影響が少ないものの、工業規模で実施することがより困難である。
【0005】
単独でのまたは凍結乾燥を目的とした低温技術による細胞凍結の試みが行なわれてきたが、細胞の劣化が大きいことから、ほぼ説得力の無いものであることが判明した。この劣化は恐らく、従来技術の方法では、凍結ステップおよび凍結乾燥ステップの際に生成物中に存在する水および酸素の数量を制御できないという事実の結果である。ところが、水および酸素は、細胞の品質およびそれらの長期生存能力を悪化させる2つの要因である。したがって、これまでに提案されてきた低温技術解決策のいずれも、凍結乾燥生成物の特性を大幅に向上させることができなかった。詳細には、提案された解決策の大部分が、凍結段階の際に印加される負圧に基づいている。反対に、国際公開第2018/138461号は、高圧下、すなわち10~1000バールの圧力下での低温技術による生物学的材料の冷却方法について記載している。この方法は、ラクトバチルス ブルガリクス(Lactobacillus bulgaricus)株の生存率をほぼ400倍向上させることができる。
【0006】
これまでに利用可能な方法に付随する多くの欠点の中でも、周囲温度で長期にわたり安定しているプロバイオティクス乳酸菌の調製物を得ることができないのは残念なことである。
【0007】
より一般的には、あらゆるタイプの細胞、特に生細胞の長期保存方法を入手する必要性が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2018/138461号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
発明者らは、凍結乾燥前に凍結すべきマトリックス内での気体の溶解を可能にする加圧下の低温技術を介して凍結ステップを実施する場合に、特にプロバイオティクス細菌株の凍結乾燥細胞の品質および長期生存能力を著しく改善することができるということを示した。
【0010】
したがって、本発明は、凍結の直前に生じる生成物中における気体の大規模溶解と該凍結ステップが結合されていることを特徴とする細胞組成物の凍結乾燥方法に関する。溶解は、加圧下のチャンバ内での凍結の実施によってか、または過剰圧力が必ずしも観察されることなく、非常に高密度の気体分子に生成物を晒すことによって実現される。これら2つの実現形態は、マトリックスが低温技術によって凍結される前に気体分子密度の高いゾーンを通過する(マトリックス内での気体の溶解ステップ)という意味において、結果的に等価である。
【発明の効果】
【0011】
発明者らは、特に乳酸菌などの細菌の生物学的材料の凍結方法としての加圧下の低温技術の利点を示した。
【0012】
実際、この方法は、凍結ステップおよび凍結乾燥ステップの際の細胞の保存の向上、ひいては凍結された細胞調製物の生産収率の改善を可能にする。
【0013】
まず第1に、加圧下の低温技術は単独で、他の凍結方法と比較した場合に、細胞の完全性および/または生存能力の保存に関して有利であることが見出された。
【0014】
さらには、以下のような複数の理由から、加圧下の低温技術による凍結ステップを凍結乾燥と組合せることが極めて有利である:
- 生産収率がより良く、方法の後、細胞をより一層富有する凍結乾燥組成物が回収される。その結果として、凍結乾燥物の細胞濃度が改善される;
- 細胞の損傷がより少なく、その膜完全性は維持される;このことは、細胞の生存能力を保つためのみならず、損傷を受けた膜または壁を有する損傷した細胞または死細胞の場合にも有利である。実際、数年前から、生存能力を失った細菌が一定のプロバイオティクス活性(接着力、免疫系の刺激など)を保存できるということが示された。
- 細胞の生存能力は、従来の凍結乾燥方法によって得られる生成物と比べて凍結乾燥ステップの後増大される。
- 細胞の凍結乾燥物の安定性は同様に、長期にわたって、つまり数ヵ月間、周囲温度と同様4℃でも観察される。
【0015】
この方法に付随する利点は、出発細胞組成物が凍結保護剤を含む場合に観察される。極めて興味深いことに、これらの利点は、一定の細胞、特に一定の細菌で、凍結保護剤の無い状態でも同様に観察できる;凍結保護剤を利用しないことで、批判が高まっている添加物の添加が制限される。
【0016】
さらには、この方法は、形成されるビーズのサイズが7~8mmに達し得るマトリックスならびに凝集体を処理することを可能にする;サイズパラメータは、方法の有効性に対しても、得られる凍結乾燥物の品質に対しても影響を及ぼさない。
【0017】
この方法の後、特に酸化によりひき起こされる変質を回避するために、保護雰囲気下で凍結乾燥物を包装することが提案されている。酸素との接触を可能なかぎり制限するために、包装の密封前に不活性ガスでの凍結乾燥物の掃気を実施して、経時的な凍結乾燥物の安定性をさらに向上させることが有利である。このようにすることで、1年以上に達し得る向上した安定性が期待される。
【0018】
こうして、気体を溶解した状態に維持できるようにする非常に急速な冷却と結合された気体の取込み、および該方法全体を通した嫌気状態の維持によって、凍結乾燥細胞の品質は大幅に改善される。
【0019】
本発明に係る方法は、凍結乾燥細胞の調製物の品質に関係する3つの重要なパラメータ、すなわち細胞濃度、酸化および自由水の数量(水の存在は、周囲温度および4℃における凍結乾燥細胞の安定性にとって有害である)を制御できるようにし、かつ、このようにして、特性が長期にわたり保存されるプロバイオティクス細菌の凍結乾燥物の調製を可能にする。生成物に応じて、4℃での保存が、多少の差こそあれ適している。プロバイオティクス細菌の調製物の場合、周囲温度での保存は、使用をさらに容易にする(輸送、保管、利用)。したがって、周囲温度で保存可能なプロバイオティクス細菌調製物を入手することは有利である。
【0020】
この方法は、多くの細胞タイプ、すなわちプロバイオティクス細菌および農産物加工用細菌(特にチーズ製造に利用されるもの)、酵母、植物細胞、微細藻類、腸内微生物叢または糞便微生物叢由来の微生物(クロストリジウム ディフィシル(Clostridium difficile)感染症の治療における糞便微生物叢の移植用)、動物およびヒトの生殖のための生殖細胞(卵母細胞および精子)、血液細胞および幹細胞に適用することができる。
【0021】
理論に束縛されることなく、発明者らは、凍結細胞および/または凍結乾燥細胞の調製のための本発明に係る方法のメリットが、完全に溶解した大量の気体を含む非多孔性の急速冷凍された生成物を「加圧下の」低温技術により得ることができるという事実にあるとみなしている。この気体は酸素でないことから、酸化反応は回避される。その上、このような生成物の凍結乾燥は、生成物中に含まれる水の大部分を除去できるようにする。その結果として、この方法において使用される条件は全体として細胞にとってより穏やかで、攻撃性が低くかつ細胞の構造の破壊が少ない。
【0022】
この方法は、従来の凍結乾燥条件に耐えられない脆弱な細菌株の凍結乾燥を可能にする。
【0023】
同様に、この方法は、24ヵ月に至る長い期間にわたり20℃、さらには25℃の温度で安定した細菌凍結乾燥物を調製することを可能にし、輸送、保管および保存の際の制約を削減するべく温度変化に対する耐性がより高い凍結乾燥生成物を入手することを望む企業経営者の期待に応えるものである。
【0024】
現状のままでの凍結乾燥方法およびその工業化の観点から見ても、「加圧下の」低温技術ステップはまた、結果として改善をも可能にする。まず、調製時間ははるかに高速である。低温技術は、ほぼ瞬間的な方法であり、当初流動性のある生成物のビーズを、連続的にかつ高速(現在の設備で、毎時数百kg)で生産することができる。低温チャンバが非常に低い温度(概して-40℃~-80℃)で機能する場合を含めて、低温チャンバでの凍結に比べて時間の節約は多大なものである。冷凍保存されたビーズは、概して-80℃~-120℃の温度で抽出され、そのため、予備冷却ステップ無しで、温度が-60℃に近い生成物で凍結乾燥を直接始動させることができる。凍結乾燥時間はそれ自体、非常に大きく短縮される(少なくとも2分の1)。最終的に、この方法は、処理時間を短縮することによってさらに大量の原料を処理することを可能にする。この最後の利点によって、凍結保護剤を使用しない場合でさえ高品質の生成物を得ることが可能になる。
【0025】
この方法は、活性分子レベルと同様に全細胞の生存能力のレベルにおいても、その特性が凍結乾燥方法の間保たれかつ再溶解後に復元される凍結乾燥物の形態の細胞の保存に新たな展望を開く。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明の第1の目的は、細胞組成物の凍結乾燥方法において、凍結ステップが低温技術によって実現されることを特徴とし:
a)水性媒質中に細胞を含む細胞組成物を準備するステップと;
b)気体分子密度が高いゾーン内を通過させることによって前記組成物中で気体を溶解させるステップであって、このような密度が、(i)低温流体の蒸発によって生成される気体の流れによってか、(ii)圧力の上昇によってか、または(iii)2つの現象の組合せによって得られるステップと;
c)急速冷凍された顆粒、粒子またはビーズを得るために溶解した状態に前記気体を維持することを可能にする圧力下で、ステップb)で得た気体を富有する前記組成物を冷凍保存するステップと;
d)凍結乾燥された細胞調製物を得るために、前記急速冷凍された顆粒、粒子またはビーズを凍結乾燥するステップと;
を含む方法に関する。
【0027】
したがって、この方法は、気体と接触した時点で低温技術により細胞組成物で構成されたマトリックスを凍結させて、前記マトリックス中で気体を溶解させることを特徴とする。溶解は、気体分子密度の高いゾーン内での前記マトリックスの通過によって得られる。
【0028】
低温気体を格納するチャンバの内部の気体分子を富有するゾーンは、3つの手法、すなわち、i)低温流体の蒸発によって生成される気体の流れによってか、(ii)圧力の上昇によってか、または(iii)2つの現象を組合せることによって得ることができる。
【0029】
分子密度の高いゾーンが、低温流体の蒸発によって生成される気体の流れによって得られる場合、マトリックス中の溶存気体の量は典型的には、いかなる圧力も加えられない場合に、0.001バール~2バールの相対圧力の適用によって得られることになる量と同等である。この条件は、実験の部において「クライオゼロ」と呼ばれている。
【0030】
分子密度の高いゾーンが圧力の上昇によって得られる場合、この圧力は大気圧よりも高く、特に0.1バール、0.5バール、1バール、2バール、5バール、10バール、15バール、20バール、25バール、30バール、50バールまたは100バールより高い可能性がある。
【0031】
本発明における「加圧下」なる用語は、マトリックス中での気体の溶解および/または急速冷凍中の前記マトリックス中で溶解した状態での気体の維持を可能にする条件を意味する。加圧は、圧力の上昇によってか、または、この気体の蒸発が加圧と等価の気体分子密度を創出して気体分子がマトリックス中に溶解することになるため、マトリックスを低温流体と接触させることによってか、あるいはこれら2つの現象の組合せによって得ることができる。その上、「加圧」は、相対圧力の適用、すなわち0バールの圧力といったような大気圧とみなされる相対圧力の適用に対応する。本明細書中で表現されている全ての圧力は、相対圧力である。本発明の好ましい実施形態においては、方法は、部分真空下で実施されない。
【0032】
したがって、ステップb)は、マトリックス中での気体の溶解を可能にするのに十分な相対圧力で行なわれ、冷凍保存の際にマトリックスの内部で溶解した状態に気体を保存するために、ステップc)において同等の圧力が維持される。本発明の特定の一実施形態において、ステップc)で適用される圧力は、大気圧以上である。
【0033】
気体は不活性ガスであり得る。気体は窒素、亜酸化窒素、二酸化炭素、アルゴンなどの希ガス、またはこれらの気体の混合物であり得る。
【0034】
好ましい一実施形態においては、使用される気体は窒素であり、低温流体は液体窒素である。
【0035】
該方法の使用全体に関して、該方法のステップを互いに連鎖させ、特に低温技術ステップの直後に凍結乾燥ステップを実施することが可能である。その上、該方法は、連続的に行なわれてよい。同様に、ステップc)の後で急速冷凍された形態で生成物を保存し、生成物を固体状態に保つためのマイナス低温(例えば-40℃)での保管時間の後、後日凍結乾燥を実施することも可能である。両方の場合において、該方法の利点は保たれる。
【0036】
該方法の条件、特に低温技術ステップの際の圧力および凍結乾燥パラメータは、脱水すべき生成物に応じて適応させることができる。当業者であれば、このような適応を実施できるものである。
【0037】
本発明での「細胞」とは、原核細胞または真核細胞を意味する。原核細胞としては、乳酸菌、プロバイオティクス細菌、(腸、糞便などの)微生物叢を構成する細菌を挙げることができる。真核細胞としては、酵母、生殖細胞、血液細胞および幹細胞、植物細胞および微細藻類を挙げることができる。本明細書中に記載の方法によって処理される細胞は、生きていてもいなくてもよい。これは、詳細には、チンダル間欠減菌された細菌、すなわち予め熱によって殺された細菌であり得る。細胞は互いに単離されていてもよいしあるいは、組織形態に組織されていてよい。好ましい実施形態において、細胞組成物は、ヒトおよび動物のためのプロバイオティクス細菌で構成されている。
【0038】
別の好ましい実施形態では、細胞組成物は、糞便微生物叢の試料で構成される。
【0039】
「水性媒質」とは、水、培地、植物の水性抽出物を意味する。この水性媒質は、凍結保護剤を含んでいてもいなくてもよい。
【0040】
こうして、特定の実施形態においては、細胞組成物は凍結保護剤を含まない。
【0041】
本発明の第2の目的は、加圧下の低温技術によって凍結された細胞の組成物の調製方法において:
a)マトリックスの形態で、水性媒質中に細胞を含む細胞組成物を準備するステップと;
b)気体分子密度が高いゾーン内を通過させることによって前記マトリックス中で気体を溶解させるステップであって、このような密度が、(i)低温流体の蒸発によって生成される気体の流れによってか、(ii)10バールまでに至り得る圧力の上昇によってか、または(iii)(i)で言及された気体の流れと圧力上昇を組合せることによって得られるステップと;
c)急速冷凍された顆粒、粒子またはビーズを得るために前記マトリックス中で溶解した状態に前記気体を維持することを可能にする圧力下で、ステップb)で得た気体を富有する前記マトリックスを冷凍保存するステップと;
を含む方法に関する。
【0042】
この方法は、前述の凍結方法に比べて生存率が増大した凍結細胞を得ることを可能にする。
【0043】
ステップb)で適用される圧力は10バール未満であるが、いくつかの実施形態においては5バール未満、さらには2バール未満であり得る。
【0044】
好ましい一実施形態において、前記マトリックス中で溶解した状態に前記気体を維持することを可能にする圧力は、大気圧以上である。
【0045】
本発明の第3の目的は、先に定義された凍結乾燥方法によって得られる凍結乾燥された細胞組成物に関する。
【0046】
特定の実施形態において、組成物は凍結乾燥物および過乾燥マルトデキストリンを含む。
【0047】
特定の実施形態において、凍結乾燥された細胞組成物は、上記で定義されている方法によって得られ凍結乾燥され安定化されたプロバイオティクス細菌、および過乾燥マルトデキストリンを含む。好ましい実施形態においては、このような組成物は、20~25%の凍結乾燥物および75~80%の過乾燥マルトデキストリンを含む。
【0048】
本発明は、例示を目的として提供され、いかなる場合でも本発明の範囲を制限するものとみなされるべきではない以下の実施例を読むことで、より良く理解されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1】「加圧下の」低温技術による凍結後のラクトバチルス プランタルム(Lactobacillus plantarum)株ATCC SD-5209の生存能力を示す。
図2A】ラクトバチルス プランタルム(Lactobacillus plantarum)株BL3504の凍結乾燥物のCFUおよびIC濃度を示す。
図2B】ラクトバチルス プランタルム(Lactobacillus plantarum)株ATCC SD-5209の凍結乾燥物の生存能力およびICの収率を示す。
図2C】ラクトバチルス サリバリウス(Lactobacillus salivarius)株BL2201の凍結乾燥物のサイトメトリプロファイルを示す。
図3A】3ヵ月にわたるビフィドバクテリウム アニマリス(Bifidobacterium animalis)株 亜種 ラクティス(ssp lactis)BL3803の凍結乾燥物の加速された熟成条件(30℃/65%RH)下での生存能力損失を示す。
図3B】12ヵ月にわたるラクトバチルス プランタルム(Lactobacillus plantarum)株BL3504の凍結乾燥物の加速された熟成条件(30℃/65%RH)下での生存能力損失を示す。
図4】凍結保護剤を伴うまたは伴わないラクトバチルス プランタルム(Lactobacillus plantarum)株ATCC SD-5209の凍結乾燥物のインタクト細胞の収率の比較を示す。
【実施例
【0050】
実施例1:凍結乳酸菌組成物の特性に対する低温技術の影響
市販のラクトバチルス プランタルム(Lactobacillus plantarum)株ATCC SD-5209から試料を調製する。
【0051】
糖質無し+サッカロース1%+マルトデキストリン5%(凍結保護剤)で再構成された植物MRS媒質中で細菌を可溶化して、インタクト細胞濃度が5×10個/mLに調整されるようにする。-80℃の対照群は、40mLを最低48時間-80℃で凍結したものに対応する。-20℃対照群は、40mLを最低48時間-20℃で凍結したものに対応する。低温技術によって凍結された株については、異なる圧力を試験した。欧州特許第07858410号明細書に記載の方法の実施を可能にする設備によって、低温技術用チャンバ内で8バールの相対圧力下で試料を得る。凍結ステップの後で、全ての試料を、分析まで-80℃のチャンバ内で保存する。その後、試料を解凍(37℃で1時間)し、生存能力を測定する。
【0052】
得られた結果を図1に提示する。
【0053】
-20℃で凍結された対照群の生存能力損失が、8バールでの低温技術によって凍結された試料の場合よりもはるかに大きいことが観察される。この結果は、極めて大きな意味を持つものであり、低温技術の真の恩恵を示している。
【0054】
実施例2:凍結乾燥された乳酸菌組成物の特性に対する低温技術の影響
A- 培養したばかりのラクトバチルス プランタルム(Lactobacillus plantarum)BL3504組成物の研究
植物MRSタイプの培地(Biokar Diagnostics社のRef BK176HA)500mL中で24時間、細菌試料を培養する。その後、培地を3400gの速度で10分間遠心分離する。研究対象の微生物を含むペレットを、インタクト細胞濃度が5×10個/mLに調整されるように新鮮な培地内に再度取上げる。
【0055】
このとき、以下のような異なる4つの凍結方法を試験することを可能にする4つの画分に、調製物を分離する。
- 30mL入りフラスコに調製物を等分し、生成物全体が凍結され-80℃の温度に達していることを保証するような形で少なくとも48時間、-80℃のチャンバ内にこれらの調製物を入れることによって、「標準方法対照群」試料を作製する;
- 大気圧および周囲温度で、液体窒素が入っているボウルまたはサラダボウルなどの開放した容器の上方にシリンジを用いて手作業で滴下を作り出すことによって、「窒素ビーズ対照群」試料を作製する;
- 欧州特許第07858410号明細書中に記載の方法の実施を可能にする設備によって、低温技術用チャンバ内で5バールの相対圧力下で「5バール低温技術」試料を得る;
- 得られた溶解窒素飽和が、「窒素ビーズ対照群」で同じ圧力で得られることになるものよりも約3倍高くなるような形で、0バールの相対圧力下で低温技術ステップの実施を可能にする設備によって、「クライオゼロ」試料を得る。
【0056】
凍結ステップの後で、全ての試料を分析まで-80℃のチャンバ内で保存する。
【0057】
4つの方法にしたがって凍結された試料をさらに、48時間~72時間の間、Drywinner CT60凍結乾燥機(Heto Holten)内で凍結乾燥する。試料を乳鉢と乳棒を用いて慎重に粉砕して、粉末状にする。これらを次に、分析まで-20℃の無菌ポット内で保存する。分析のためには、粉末状の試料を、1%(w/v)のTween80が添加されたペプトン緩衝液中に予め分散させ、ストマッカーを用いて均質化する。MRS寒天中での計数およびサイトメトリ解析(国際標準ISO 19344 IDF 232 v2015のプロトコルB)によって、CFUおよびICの数量を得る。
【0058】
図2Aの結果は、ラクトバチルス プランタルム(Lactobacillus plantarum)BL3504株で得られる。
【0059】
このグラフは、以下の2つのパラメータにしたがって得られた結果を示す:
- 凍結乾燥物の生細胞のCFU濃度(寒天培地上でコロニーを形成する細菌の能力を試験することからなる生存能力試験)、
- フローサイトメトリによって測定されるインタクト細胞(IC)で表現された、凍結乾燥物の細胞の膜完全性。
【0060】
これらの結果は、より高速の冷却速度の利用(低温技術:「窒素ビーズ対照群」)により、「標準方法対照群(-80℃)」に比べて凍結乾燥物のCFU濃度およびIC濃度を2倍および3倍にすることができる、ということを示している。「クライオゼロ」条件は、「標準方法対照群(-80℃)」の3倍および4倍のCFU濃度およびIC濃度が達成されることから、これらの濃度をさらに増大させることを可能にする。最終的に、「5バール低温技術」条件は、標準方法のものに比べて4倍および6倍高い最高のCFUおよびIC濃度の達成を可能にする。
【0061】
B-市販のラクトバチルス プランタルム(Lactobacillus plantarum)ATCC SD-5209組成物の研究
市販のラクトバチルス プランタルム(Lactobacillus plantarum)ATCC SD-5209株から、試料を調製する。
【0062】
5%(w/w)のマルトデキストリン(凍結保護剤)が添加されたペプトン緩衝液(トリプトン1.0g/L+NaCl8.5g/L+KHPO2.5g/L+KHPO2.5g/L)中に乾燥物質10%程度で細菌を可溶化させる。-80℃対照群は、10mLを最低48時間、-80℃で凍結したものに対応する。-40℃対照群は、10mLを最低48時間、-40℃で凍結したものに対応する。低温技術により凍結した試料については、異なる圧力を試験した。欧州特許第07858410号明細書中に記載の方法の実施を可能にする設備によって、低温技術用チャンバ内で0~5バールの相対圧力下で試料を得る(「クライオゼロ」および「5バール低温技術」試料)。低温技術によって凍結させた試料を、分析まで-80℃のチャンバ内で保存する。試料の一部をその後解凍し(周囲温度で30分間)、生存能力を測定する。
【0063】
4つの方法にしたがって凍結された試料をさらに、72時間の間、Drywinner CT60凍結乾燥機(Heto Holten)内で凍結乾燥する。試料を乳鉢と乳棒を用いて慎重に粉砕して、粉末状にする。これらを次に、分析まで-20℃のアルミニウム袋内で保存する。分析のためには、粉末状の試料を、1%(w/v)のTween80が添加されたペプトン緩衝液中に予め分散させ、ストマッカーを用いて均質化する。MRS寒天中での計数およびサイトメトリ解析(国際標準ISO規格 19344 IDF 232 v2015のプロトコルB)によって、CFUの数量およびICの数量を得る。
【0064】
得られた結果は、図2Bに提示されている。
【0065】
このグラフは、生存能力により測定される生細胞濃度(CFU)から、またはフローサイトメトリによって測定されるインタクト細胞濃度(IC)から計算された以下の3つの収率を提示している:
- 「凍結」収率:凍結前の濃度に対する凍結試料の濃度、
- 「凍結乾燥」収率:凍結試料濃度に対する凍結乾燥物の濃度、
- 「包括的」収率:凍結前の濃度に対する凍結乾燥物の濃度。
【0066】
結果は、乳酸菌試料の凍結方法としての低温技術の利用により、凍結乾燥ステップのレベルで、ならびに包括的方法について、生存能力の収率およびインタクト細胞の収率の増大が可能となる、ということを示している。実際には、凍結ステップ後の収率は、利用される方法による影響を受けず、試料の如何に関わらず、100%のCFUの収率およびICの収率が得られる。低温技術による凍結のプラスの効果は、凍結乾燥の際に明らかに生じ、-40℃対照群および-80℃の対照群についての30~50%に対して、収率は70~80%である。この効果は、方法全体についても同様に観察される(包括的収率)。しかしながら、これらの結果は、2つの低温技術条件の区別を可能にするものではなく、「クライオゼロ」および「5バール低温技術」試料について同じ収率が得られる。したがって、ここから、前述の分子密度条件における加圧下の低温技術が、インタクト細胞をより良く保存しひいては凍結乾燥によって生産された乳酸菌の試料の生存能力を改善する1つの手段であるということを演繹することができる。
【0067】
C-ラクトバチルス サリバリウス(Lactobacillus salivarius)BL2201組成物の研究
実施例2B中に記載の方法にしたがって、ラクトバチルス サリバリウス(Lactobacillus salivarius)BL2201株から試料を調製する。
【0068】
得られた結果は、図2Cに提示されている。
【0069】
このグラフは、該方法の各ステップにおいて(凍結前の試料、凍結された試料および凍結乾燥物)、フローサイトメトリによって測定された、試料のインタクト細胞、損傷細胞および死細胞組成を提示している。
【0070】
これらの試験の目的は、利用された初期調製物が45%の損傷細胞および死細胞を含んでいることから、脆弱とみなされた株についてさえ加圧下の低温技術による凍結がもたらす利点を示すことである。得られた結果は、同様に、低温技術の効果が凍結乾燥ステップのレベルで生じるということも示している。実際に、凍結した異なる試料のサイトメトリプロファイルは、インタクト細胞約55%で、凍結前の調製物のものと同じである。しかしながら、凍結乾燥された試料のサイトメトリプロファイルについては、差異が観察される。すなわち、-80℃対照群および-40℃対照群の凍結乾燥物がそれぞれ4%および5%のICを含んでいるのに対して、クライオゼロおよび5バール条件で冷凍保存された試料の凍結乾燥物は、13%のICを含んでいる。したがって、「加圧下の」低温技術により凍結ステップを実施することは、標準凍結乾燥方法に耐えることが困難な脆弱な株の凍結乾燥調製物のインタクト細胞率を保つ1つの手段であると結論づけることができる。
【0071】
実施例3:凍結乾燥された細菌組成物(乾燥粉末)の生存能力に対する凍結乾燥方法の経時的影響
A.培養したばかりのビフィドバクテリウム アニマリス(Bifidobacterium animalis)亜種 ラクティス(spp lactis)BL3803組成物の安定性研究
実施例2A中に記載の方法にしたがって試料を調製する。粉末凍結乾燥物を、過乾燥トウモロコシマルトデキストリン中で希釈した後、3ヵ月間、紙/アルミニウム/PEの3層袋の中に入れて保存し、分析まで30℃、相対湿度65%で維持する。分析のためには、粉末試料を、実施例2A中で示されたように、予め分散させる。試料の生産直後t=0、そしてその後それぞれ1.5ヵ月および3ヵ月の保管後に、MRS寒天中での計数により、CFUの数量を得る。生存能力の損失を、時間tにおけるCFUの数量とt=0に対応する数量との間の差異によって計算する。
【0072】
ビフィドバクテリウム アニマリス(Bifidobacterium animalis)亜種 ラクティス(spp lactis)株 BL3803を使用して、実験を行なった。
【0073】
得られた結果は、図3Aに提示されている。
【0074】
生存能力の損失は、標準条件(「-80℃対照群」)において非常に大きく、当初存在したCFUの半分に近いことが観察される。これに反して、5バール下の低温技術に由来する試料について観察された損失は、非常に少なく0に近い。窒素ビーズ対照群についておよび「クライオゼロ」条件について得られた結果は、これに匹敵しかつ中間的なものであり、このことは、凍結乾燥された形態での株の保存のために提案される方法に対する「加圧下の」低温技術のプラスの効果もまた示している。
【0075】
B- 培養したばかりのラクトバチルス プランタルム(Lactobacillus plantarum) BL3504組成物の安定性研究
実施例2A中に記載の方法にしたがって試料を調製する。粉末凍結乾燥物を、過乾燥トウモロコシマルトデキストリン中で希釈した後、12ヵ月間、紙/アルミニウム/PEの3層袋の中に入れて保存し、分析まで30℃、相対湿度65%で維持する。分析のためには、粉末試料を、実施例2A中で示されたように、予め分散させる。試料の生産直後t=0、そしてその後1.5ヵ月、3ヵ月、4.5ヵ月、6ヵ月、9ヵ月および12カ月の保管後に、MRS寒天中での計数により、CFUの数量を得る。生存能力の損失を、時間tにおけるCFUの数量とt=0に対応する数量との間の差異によって計算する。
【0076】
ラクトバチルス プランタルム(Lactobacillus plantarum)株BL3504を使用して、実験を行なった。
【0077】
得られた結果は、図3Bに提示されている。
【0078】
生存能力の損失は1.5ヵ月後にすでに50%を超え、4.5ヵ月以降は生細胞の割合が20%未満であることから、生存能力の損失は標準条件(「-80℃対照群」)において非常に大きいことが観察される。これに反して、低温技術に由来する試料について観察される損失は、はるかに緩慢である。この損失は、6ヵ月目以降に初めて有意なもの(>20%)となり、12ヵ月の保管後、約60%の細胞がなおも生存可能である。これと比較して、-80℃での凍結条件下でなおも生存可能であるのは、せいぜい10%超の細胞でしかない。
【0079】
窒素ビーズ対照群および加圧下の低温技術について得られた結果は、これに匹敵するものである。生存能力損失は3つの条件において十分緩慢なものであるため、これらの条件間の差異は有意なものではない。
【0080】
実施例4:凍結乾燥された乳酸菌組成物の膜完全性に対する凍結保護剤の存在の影響
凍結保護剤(マルトデキストリン5%(w/w))を伴ってまたは伴わずに、実施例2B中に記載の方法にしたがって、市販のラクトバチルス プランタルム(Lactobacillus plantarum)株ATCC SD-5209から試料を調製する。
【0081】
得られた結果は、図4に提示されている。
【0082】
このグラフは、凍結前の濃度に対する凍結乾燥物のインタクト細胞(IC)の濃度(フローサイトメトリによって測定されたもの)から計算された、包括的方法の収率を提示している。試験はトリプリケートで実施されており、各条件の標準偏差に対応するエラーバーが表わされている。
【0083】
これらの結果は、試料中の凍結保護剤の存在により、凍結および凍結乾燥方法の間のインタクト細胞のより良い保存が可能となるということを示している。実際、凍結条件の如何に関わらず、マルトデキストリンを含む試料についてより高いIC収率が観察される。したがって、ここから、凍結保護剤と低温技術の組合せ利用により乳酸菌凍結乾燥物の品質改善が可能であることを演繹することができる。
【0084】
結論:「加圧下の」低温技術によって実施される凍結ステップを含む細胞組成物の凍結乾燥方法は、細胞の凍結乾燥物の生産を量的にも質的にも改善することができる。
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4
【国際調査報告】