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特表2023-503782局所的イオン注入空隙を有する光共振器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-01
(54)【発明の名称】局所的イオン注入空隙を有する光共振器
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/03 20060101AFI20230125BHJP
   G01S 7/4911 20200101ALI20230125BHJP
【FI】
G02F1/03
G01S7/4911
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022519741
(86)(22)【出願日】2019-12-28
(85)【翻訳文提出日】2022-05-23
(86)【国際出願番号】 US2019068846
(87)【国際公開番号】W WO2021066866
(87)【国際公開日】2021-04-08
(31)【優先権主張番号】16/589,006
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522122916
【氏名又は名称】ジーエム クルーズ ホールディングス エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(72)【発明者】
【氏名】シンガー,スコット
(72)【発明者】
【氏名】マレキ,ルトフォラ
(72)【発明者】
【氏名】グルジーニン,イワン
(72)【発明者】
【氏名】アルバレス,セルジオ
(72)【発明者】
【氏名】イルチェンコ,ウラジミール
【テーマコード(参考)】
2K102
5J084
【Fターム(参考)】
2K102AA21
2K102BA16
2K102BC04
2K102BD09
2K102CA28
2K102DB01
2K102DD05
2K102DD10
2K102EA02
2K102EA16
5J084AA05
5J084AA07
5J084AD01
5J084BA04
5J084BA31
5J084BA48
5J084BB04
5J084CA08
5J084EA31
(57)【要約】
イオン注入空隙を有する高Qウィスパリングギャラリーモード共振器が記載される。共振器装置が、電気光学材料で形成された共振器ディスクを含む。共振器ディスクは、上面と、上面に実質的に平行な底面と、上面と底面との間の側面構造と、を含む。側面構造は、共振器ディスクの外周に沿った軸面を含み、中央平面が軸面を通過して軸面を対称の半分に分割する。ウィスパリングギャラリーモード共振器ディスクは、上面から特定の深さに局在する空隙を含む。上面から特定の深さに局在する空隙のうちの少なくとも1つが、共振器ディスクの外周に向かって外側端に配置される。共振器装置は、上面に設けられた第1の電極および底面に設けられた第2の電極をさらに含むことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共振器装置であって、
電気光学材料で形成されたウィスパリングギャラリーモード共振器ディスクであって、
上面、
前記上面に実質的に平行な底面、
前記上面と前記底面との間の側面構造であって、前記側面構造が前記ウィスパリングギャラリーモード共振器ディスクの外周に沿った軸面を備え、中央平面が前記軸面を通過して前記軸面を対称な半分に分割する、側面構造、および
前記上面から特定の深さに局在する空隙であって、前記上面から前記特定の深さに局在する前記空隙のうちの少なくとも1つが、前記ウィスパリングギャラリーモード共振器ディスクの外周に向かって外側端に配置される、空隙
を備える、ウィスパリングギャラリーモード共振器ディスクと、
前記ウィスパリングギャラリーモード共振器ディスクの前記上面に設けられた第1の電極と、
前記ウィスパリングギャラリーモード共振器ディスクの前記底面に設けられた第2の電極と
を備える、共振器装置。
【請求項2】
前記ウィスパリングギャラリーモード共振器ディスクの前記側面構造が、
前記上面と前記軸面との間の第1の面取り縁部と、
前記底面と前記軸面との間の第2の面取り縁部と
をさらに備える、請求項1に記載の共振器装置。
【請求項3】
前記軸面、前記第1の面取り縁部、および前記第2の面取り縁部が、前記ウィスパリングギャラリーモード共振器ディスクの凸状側面構造を形成する、請求項2に記載の共振器装置。
【請求項4】
前記ウィスパリングギャラリーモード共振器ディスクが、
前記底面から特定の深さに局在する空隙であって、前記底面から前記特定の深さに局在する前記空隙のうちの少なくとも1つが、前記ウィスパリングギャラリーモード共振器ディスクの前記外周に向かって外側端に配置される、空隙
をさらに備える、請求項1に記載の共振器装置。
【請求項5】
前記ウィスパリングギャラリーモード共振器ディスクが、
前記上面から異なる特定の深さに局在する空隙であって、前記上面から前記異なる特定の深さに局在する前記空隙のうちの少なくとも1つが、前記ウィスパリングギャラリーモード共振器ディスクの前記外周に向かって外側端に配置される、空隙
をさらに備える、請求項1に記載の共振器装置。
【請求項6】
前記共振器装置が、前記中央平面内に配置された基本モードを支持する、請求項1に記載の共振器装置。
【請求項7】
前記空隙が局在する前記上面からの前記特定の深さが、前記上面から10マイクロメートル~20マイクロメートルの範囲内に局在する、請求項1に記載の共振器装置。
【請求項8】
ライダーセンサシステムであって、
レーザと、
前記レーザに結合される光カプラと、
前記光カプラに結合されるウィスパリングギャラリーモード共振器装置と
を備え、前記ウィスパリングギャラリーモード共振器装置が、電気光学材料で形成された共振器ディスクを備え、前記共振器ディスクが、
上面と、
前記上面に実質的に平行な底面と、
前記上面と前記底面との間の側面構造であって、前記側面構造が前記共振器ディスクの外周に沿った軸面を備え、中央平面が前記軸面を通過して前記軸面を対称な半分に分割する、側面構造と、
前記上面から特定の深さに局在する空隙であって、前記上面から前記特定の深さに局在する前記空隙のうちの少なくとも1つが、前記共振器ディスクの前記外周に向かって外側端に配置される、空隙と
を備える、ライダーセンサシステム。
【請求項9】
前記ウィスパリングギャラリーモード共振器装置が、
前記共振器ディスクの前記上面に設けられた第1の電極と、
前記共振器ディスクの前記底面に設けられた第2の電極と
をさらに備える、請求項8に記載のライダーセンサシステム。
【請求項10】
前記共振器ディスクの前記側面構造が、
前記上面と前記軸面との間の第1の面取り縁部と、
前記底面と前記軸面との間の第2の面取り縁部と
をさらに備える、請求項8に記載のライダーセンサシステム。
【請求項11】
前記共振器ディスクが、
前記底面から特定の深さに局在する空隙であって、前記底面から前記特定の深さに局在する前記空隙のうちの少なくとも1つが、前記共振器ディスクの前記外周に向かって外側端に配置される、空隙
をさらに備える、請求項8に記載のライダーセンサシステム。
【請求項12】
前記共振器ディスクが、
前記上面から異なる特定の深さに局在する空隙であって、前記上面から前記異なる特定の深さに局在する前記空隙のうちの少なくとも1つが、前記共振器ディスクの前記外周に向かって外側端に配置される、空隙
をさらに備える、請求項8に記載のライダーセンサシステム。
【請求項13】
前記ウィスパリングギャラリーモード共振器装置が、前記中央平面内に配置された基本モードを支持する、請求項8に記載のライダーセンサシステム。
【請求項14】
前記空隙が局在する前記上面からの前記特定の深さが、前記上面から10マイクロメートル~20マイクロメートルの範囲内にある、請求項8に記載のライダーセンサシステム。
【請求項15】
ウィスパリングギャラリーモード共振器装置を製造する方法であって、
イオンビームを電気光学材料で形成されたウェハの上面に向けて、前記イオンビーム中のイオンが前記ウェハ内に注入され、前記ウェハの前記上面から特定の深さに分散された空隙を形成するようにするステップと、
前記上面から前記特定の深さに分散された前記空隙を有する前記ウェハを切断して、少なくとも前記ウィスパリングギャラリーモード共振器装置を生産するステップと
を含む方法。
【請求項16】
前記イオンビームを前記ウェハの底面に向けて、前記イオンビーム中のイオンが前記ウェハ内に注入され、前記ウェハの前記底面から特定の深さに分散された空隙を形成するようにするステップであって、前記上面から前記特定の深さに分散された前記空隙および前記底面から前記特定の深さに分散された前記空隙を有する前記ウェハが切断されて、少なくとも前記ウィスパリングギャラリーモード共振器装置を生産する、ステップ
をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記イオンビームを前記ウェハの前記上面に向けて、前記イオンビーム中のイオンが前記ウェハ内に注入され、前記ウェハの前記上面から異なる深さに分散された空隙を形成するようにするステップであって、前記上面から前記特定の深さに分散された前記空隙および前記上面から前記異なる深さに分散された前記空隙を有する前記ウェハが切断されて、少なくとも前記ウィスパリングギャラリーモード共振器装置を生産する、ステップ
をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記ウィスパリングギャラリーモード共振器装置がディスク形状である、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記ウィスパリングギャラリーモード共振器装置がリング形状である、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記イオンビームの注入エネルギーおよびイオン電流密度が、前記上面から前記特定の深さに形成される前記空隙の密度を制御するように調整される、請求項15に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
様々な従来のアーキテクチャが、共振器に注入ロックされるレーザを使用している。例えば、レーザは、共振器に送られる光ビームを放射することができる。レーザおよび共振器は、レーザからの光ビームが共振器に供給され、内部全反射を受けて共振器内を循環し、共振器からレーザに戻されるように光学的に結合される。注入ロックされると、レーザの周波数は共振器の周波数のスレーブである(例えば、共振器は、レーザに、共振器の周波数と比べて実質的に同様の周波数で光ビームを放射させることができる)。
【0002】
注入ロッキング(injection locking)に利用され得る例示的な共振器が、高品質因子(Q)ウィスパリングギャラリーモード共振器(whispering gallery mode resonator)である。この種の共振器の電気光学特性およびサイズにより、ウィスパリングギャラリーモード共振器の周波数は、比較的狭い線幅で線形変調することができる。一例によれば、共振器に印加される、のこぎり波形の電圧は、共振器に注入ロックされたレーザに、のこぎり波形をたどる周波数を有する光ビームを放射させることができる。
【背景技術】
【0003】
従来のウィスパリングギャラリーモード共振器は、共振波長間隔(FSR)につき複数のモードを本質的に支持することができる。従来の共振器におけるモード位置は、共振器の幾何形状によって決定することができ、この幾何形状は、限られた製作精度のせいでばらつきを有し得る。したがって、製作された多くの共振器が、動作モード(例えば、一定の周波数範囲内)の近くにサイドモード(side modes)を有する可能性があり、このことは、かかる共振器を使用不能にする可能性がある。したがって、従来の共振器の共振器生産歩留まりが、有害な影響を受ける可能性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
以下は、本明細書でより詳細に記載される主題の概要である。この概要は、特許請求の範囲に関して限定するものではない。
【0005】
本明細書では、イオン注入空隙を有する高Qウィスパリングギャラリーモード共振器に関連する様々な技術について説明する。ウィスパリングギャラリーモード共振器装置は、電気光学材料で形成されたウィスパリングギャラリーモード共振器ディスクを含むことができる。ウィスパリングギャラリーモード共振器ディスクは、上面と、上面に実質的に平行な底面と、上面と底面との間の側面構造と、を含むことができる。側面構造は、ウィスパリングギャラリーモード共振器ディスクの外周に沿った軸面を含むことができ、中央平面が軸面を通過して軸面を対称の半分に分割する。さらに、ウィスパリングギャラリーモード共振器ディスクは、上面から特定の深さに局在する空隙を含む。上面から特定の深さに局在する空隙のうちの少なくとも1つが、ウィスパリングギャラリーモード共振器ディスクの外周に向かって外側端に配置される。ウィスパリングギャラリーモード共振器装置は、ウィスパリングギャラリーモード共振器ディスクの上面に設けられた第1の電極とウィスパリングギャラリーモード共振器ディスクの底面に設けられた第2の電極とをさらに含むことができる。
【0006】
イオン注入を用いてウィスパリングギャラリーモード共振器ディスク内に空隙を形成することができる。様々な実施形態によれば、イオンビームを電気光学材料で形成されたウェハの上面に向けて、イオンビーム中のイオンがウェハ内に注入され、ウェハの上面から特定の深さに分散された空隙を形成するようにすることができる。空隙がウェハ内に形成された後、上面から特定の深さに分散された空隙を有するウェハを切断して、ウィスパリングギャラリーモード共振器装置を生産することができる。ウィスパリングギャラリーモード共振器装置の外周に向かって外側端に配置された空隙(複数可)は、屈折率の差によるサイドモード(複数可)を抑制することができる。さらに、ウェハから共振器装置を切り取る前にイオン注入を実行してウェハ内に空隙を生成することにより、共振器装置に対して欠陥を並列に作ることが可能になり、このことは、サイドモードを抑制する局所的空隙を有するウィスパリングギャラリーモード共振器装置の大量生産を支援する。
【0007】
上記の概要は、本明細書で論じられるシステムおよび/または方法のいくつかの態様の基本的な理解を与えるために、簡略化された概要を提示する。この概要は、本明細書で論じられるシステムおよび/または方法の広範な概観ではない。この概要は、主要な/重要な要素の特定を意図するものではない、あるいはかかるシステムおよび/または方法の範囲を詳細に描写するものではない。この概要の唯一の目的は、後で提示されるより詳細な説明の前置きとして、いくつかの概念を簡略化した形で提示することである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】局所的イオン注入空隙を含む例示的なウィスパリングギャラリーモード共振器装置の断面図である。
【0009】
図2】局所的イオン注入空隙を含む別の例示的なウィスパリングギャラリーモード共振器装置の断面図である。
【0010】
図3】空隙のない例示的なウィスパリングギャラリーモード共振器装置の断面図である。
【0011】
図4】局所的空隙を有するウィスパリングギャラリーモード共振器装置を製造するための例示的な技法を示す図である。
【0012】
図5】局所的空隙を有するウィスパリングギャラリーモード共振器装置を製造するための別の例示的な技法を示す図である。
【0013】
図6】例示的なライダーセンサシステム(lidar sensor system)のブロック図である。
【0014】
図7】ウィスパリングギャラリーモード共振器装置を製造する例示的な方法を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
ここで、局所的イオン注入空隙を有する光共振器に関する様々な技術について、全体を通して同様の要素を参照するために同様の参照番号が使用されている図面を参照しながら説明する。以下の記述では、例示の目的のために、多数の具体的な詳細が1つまたは複数の態様の完全な理解を与えるために記載される。しかしながら、そのような態様(複数可)は、これらの具体的な詳細なしで実施され得ることは明らかであり得る。他の例では、1つまたは複数の態様の説明を容易にするために、周知の構造および装置がブロック図形式で示される。さらに、特定のシステム構成要素によって実行されるものとして説明される機能は、複数の構成要素によって実行され得ることを理解されたい。同様に、例えば、ある構成要素は、複数の構成要素によって実行されるものとして説明される機能を実行するように構成され得る。
【0016】
さらに、「または(or)」という用語は、排他的な「または」ではなく、包括的な「または」を意味することを意図している。すなわち、特に指定のない限り、または文脈から明らかでない限り、「XはAまたはBを使用する」という言い回しは、自然な包括的置換のいずれかを意味することを意図している。すなわち、「XはAまたはBを使用する」という言い回しは、以下の例、すなわち、XはAを使用する、XはBを使用する、またはXはAとBの両方を使用する、のいずれかによって満たされる。
さらに、本出願および添付の特許請求の範囲で使用される冠詞「a」および「an」は、特に指定のない限り、または単数形を対象とすることが文脈から明らかでない限り、一般に「1つまたは複数(one or more)」を意味すると解釈されるべきである。
【0017】
本明細書で使用される場合、「構成要素(component)」および「システム(system)」という用語は、プロセッサによって実行されるときに特定の機能を実行させるコンピュータ実行可能命令で構成されたコンピュータ可読データストレージを包含することを意図している。コンピュータ実行可能命令は、ルーチン、機能、または同様のものを含むことができる。「構成要素」および「システム」という用語はまた、光信号に関して様々な機能を実行するように互いに構成または結合され得る1つまたは複数の光学要素を包含することを意図している。また、構成要素またはシステムは、単一装置上に局在化されるか、またはいくつかの装置にわたって分散されてもよいことも理解されたい。さらに、本明細書で使用される場合、「例示的(exemplary)」という用語は、「何かの実例または例として役立つ」ことを意味することを意図している。
【0018】
ここで図面を参照すると、図1は、局所的イオン注入空隙を含む例示的なウィスパリングギャラリーモード共振器装置100(本明細書では共振器装置100とも呼ばれる)の断面図を示す。本明細書で使用される場合、「共振器装置(resonator device)」および「共振器(resonator)」という用語は区別なく使用される。共振器装置100は、電気光学材料で形成されたウィスパリングギャラリーモード共振器ディスク102(本明細書では共振器ディスク102とも呼ばれる)を含む。例えば、ウィスパリングギャラリーモード共振器ディスク102は、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、シリコンなどの様々な結晶材料のいずれかで形成することができる。
【0019】
ウィスパリングギャラリーモード共振器ディスク102は、ウィスパリングギャラリーモード共振器ディスク102の外周に沿った軸面104を含む。中央平面106が軸面104を通過して軸面104を対称の半分に分割する。したがって、図示のように、軸面104の上半分は第1の中央平面106の上方にあり、軸面104の下半分は第1の中央平面106の下方にある。ウィスパリングギャラリーモード共振器ディスク102は、上面108および底面110をさらに含む。底面110は、上面108に実質的に平行である。したがって、図1の例では、中央平面106は、上面108と底面110との間の実質的に等距離の所にある。
【0020】
様々な例によれば、ウィスパリングギャラリーモード共振器ディスク102はまた、第1の面取り縁部112および第2の面取り縁部114を含むことができる。第1の面取り縁部112は上面108と軸面104との間にあり、第2の面取り縁部114は底面110と軸面104との間にある。さらに、軸面104、第1の面取り縁部112、および第2の面取り縁部114は、ウィスパリングギャラリーモード共振器ディスク102の凸状側面構造を形成することができる(例えば、軸面104、第1の面取り縁部112、および第2の面取り縁部は、共振器装置100の外部の視点から凸形状を有する)。ウィスパリングギャラリーモード共振器ディスク102の凸状側面構造は、(凹状側面構造とは対照的に)共振器装置100の製作、研磨、洗浄などを単純化することができる。他の例によれば、ウィスパリングギャラリーモード共振器ディスク102は、第1の面取り縁部112および第2の面取り縁部114がなくてもよい(例えば、軸面104は、上面108と底面110との間に延びることができる)と考えられる。
【0021】
共振器装置100は、ウィスパリングギャラリーモード共振器ディスク102の上面108に設けられた第1の電極116とウィスパリングギャラリーモード共振器ディスク102の底面110に設けられた第2の電極118とをさらに含む。
実質的に任意のタイプの電極116および118が、ウィスパリングギャラリーモード共振器ディスク102の上面108および底面110上にあってもよい。一実例によれば、光学絶縁体が、ウィスパリングギャラリーモード共振器ディスク102の電気光学材料に隣接することができる。さらに、クロムやチタンなどのボンディング金属の層が光学絶縁体上に付着することができ、電極はボンディング金属上に付着することができる。この実例に続いて、光学絶縁体層およびボンディング金属層が、上面108と第1の電極116との間にあり得る。同様に、光学絶縁体層およびボンディング金属層が、底面110と第2の電極118との間にあり得る。しかしながら、特許請求される主題は前述の実例に限定されないことを理解されたい。さらに、一例によれば、電極116および118は金で形成され得るが、電極116および118は他の材料で形成され得ると考えられる。
【0022】
ウィスパリングギャラリーモード共振器ディスク102は、上面108から深さ122に局在する空隙120をさらに含む。空隙120は、ウィスパリングギャラリーモード共振器ディスク102内の欠陥である。空隙120は、ウィスパリングギャラリーモード共振器ディスク102の残りの部分と比べて異なる屈折率を有する。屈折率差により、空隙120は、ウィスパリングギャラリーモード共振器ディスク102内の空隙120の位置におけるサイドモード(複数可)を抑制することができる。したがって、上面108から深さ122の所にウィスパリングギャラリーモード共振器ディスク102の外周に向かって外側端に配置された空隙120のうちの1つまたは複数が、上面108から深さ122の近傍内の外周に向かって外側端にあるサイドモード(複数可)を抑制することができる。図1に示されているように、空隙120のうちの2つが、第1の面取り縁部112にまたはその近傍に配置される。この2つの空隙120は、ウィスパリングギャラリーモード共振器ディスク102内の上面108から深さ122の近傍内の第1の面取り縁部112でのまたはその付近でのサイドモード(複数可)を抑制することができる。
【0023】
光ウィスパリングギャラリーモード共振器装置は、この装置が支持する光学モードファミリのセットを有することができる。各ファミリにおけるモードの周波数は、材料特性で決定することができる。さらに、モードファミリのセットは、ウィスパリングギャラリーモード共振器装置の形状で決定することができる。ウィスパリングギャラリーモード共振器装置100は、中央平面106内に配置された基本モード124を支持することができる。基本モードは、(ウィスパリングギャラリーモード共振器装置100がライダーセンサシステムの一部として利用される場合)ライダー動作モードと呼ぶこともできる。中央平面106内の基本モード124は、ウィスパリングギャラリーモード共振器ディスク102の外周に向かって(例えば、中央平面106内の軸面104に向かって)外側端に配置される。
【0024】
さらに、サイドモード(高次モードとも呼ばれる)が、ウィスパリングギャラリーモード共振器装置内の基本モードの位置から徐々に離れて配置され得る。サイドモードは基本モードの近傍に存在することができ、その結果、高密度の共振器スペクトルが得られる。サイドモードは、横モードおよび半径モードを含むことができる。横モードは、基本モードの位置から軸線(例えば、上下)方向に延びることができ、半径モードは、基本モードの位置から共振器装置の中心に向かって半径方向に延びることができる。サイドモード126およびサイドモード128は、例示の目的のために図1に示されている。特許請求される主題は、2つのサイドモードを含む共振器装置100に限定されるものではないと考えられる。
【0025】
様々な実施形態によれば、ウィスパリングギャラリーモード共振器ディスク102の厚さ130は、40~60マイクロメートルの範囲内とすることができる。本明細書に記載されているように、範囲は包括的範囲とすることができる、したがって、40マイクロメートルおよび60マイクロメートルは、前述の範囲の範囲内にあることが意図されている。一例によれば、ウィスパリングギャラリーモード共振器ディスク102の厚さ130は、50マイクロメートルとすることができる。
上面108と中央平面106との間の距離は、ウィスパリングギャラリーモード共振器ディスク102の厚さ130の半分とすることができ、底面110と中央平面106との間の距離は、ウィスパリングギャラリーモード共振器ディスク102の厚さ130の半分とすることができる。さらに、空隙120の上面108からの深さ122は、10~20マイクロメートルの範囲内とすることができ、空隙120の深さ122は、空隙120のうちの1つまたは複数が基本モード124を抑制しないように、中央平面106からオフセットされる。さらに、ウィスパリングギャラリーモード共振器ディスク102の直径132は、1.2~1.4マイクロメートルの範囲内とすることができる。一例によれば、ウィスパリングギャラリーモード共振器ディスク102の直径132は、1.3ミリメートルとすることができる、しかしながら、本明細書に記載の手法は、他の厚さ130(例えば、40~60マイクロメートルの範囲外)、他の直径132(例えば、1.2~1.4ミリメートルの範囲外)、および他の深さ(例えば、10~20マイクロメートルの範囲外)に拡張可能であるので、異なる厚さ130、直径132、および深さ122が、本明細書に添付の特許請求の範囲内にあることが意図されていることを理解されたい。
【0026】
図1に示されているように、軸方向の広がり(例えば、ディスク軸に沿って上下)が大きいサイドモードの数は、上面108からの深さ122の所に空隙120を含めることにより(空隙のない対称ウィスパリングギャラリーモード共振器装置と比べて)減らすことができる。したがって、図1の例では、中央平面106と上面108との間のサイドモード(複数可)(例えば、軸方向の広がりが高い横モード(複数可))(またはそのようなサイドモードの少なくともサブセット)は、空隙120とウィスパリングギャラリーモード共振器ディスク102が形成される材料との間の屈折率差により抑制することができるが、基本モード124は、(基本モード124の光が空隙を通って伝播しないため)比較的影響を受けないままであり得る。
【0027】
本明細書に記載の例の多くは、ディスク形状の共振器(例えば、共振器ディスク102)を説明しているが、他の共振器形状も、本明細書に添付の特許請求の範囲内にあることが意図されていると考えられる。例えば、共振器装置100は、その代わりに、共振器リングまたは非対称共振器ディスクを含むことができる。空隙は、サイドモード(複数可)を抑制するように、本明細書に記載の例と同様の方法で共振器リングまたは非対称共振器ディスク(または異なる形状に形成された共振器)内に配置することができる。
【0028】
ここで図2を参照すると、局所的イオン注入空隙を含む別の例示的なウィスパリングギャラリーモード共振器装置200(共振器装置200)の断面図が示されている。図1の共振器装置100と同様に、共振器装置200は、電気光学材料で形成されたウィスパリングギャラリーモード共振器ディスク202を含む。ウィスパリングギャラリーモード共振器ディスク202は、この場合も外周に沿って軸面104を含み、中央平面106は軸面104を通過して軸面204を対称な半分に分割する。ウィスパリングギャラリーモード共振器ディスク202は、上面108、底面110、第1の面取り縁部112、および第2の面取り縁部114をさらに含むが、他の実施形態では、ウィスパリングギャラリーモード共振器ディスク202は、第1の面取り縁部112および第2の面取り縁部114を含む必要がないと考えられる。
【0029】
ウィスパリングギャラリーモード共振器装置200はまた、第1の電極116および第2の電極118を含む。第1の電極116は、ウィスパリングギャラリーモード共振器ディスク202の上面108上にある。第2の電極118は、ウィスパリングギャラリーモード共振器ディスク202の底面110上にある。
【0030】
図1の共振器装置100と同様に、ウィスパリングギャラリーモード共振器ディスク202は、上面108から深さ122に局在する空隙120を含む。さらに、ウィスパリングギャラリーモード共振器ディスク202は、底面110から深さ206に局在する空隙204を含む。一例によれば、空隙120の深さ122は、空隙204の深さ206と実質的に同様とすることができるが、空隙120および空隙204は、それぞれ表面108および表面110から異なる深さ122および204にあり得ると考えられる。上面から深さ122の所にウィスパリングギャラリーモード共振器ディスク202の外周に向かって外側端に配置された空隙120のうちの1つまたは複数が、上面108から深さ122の近傍内の外周に向かって外側端にあるサイドモード(複数可)を抑制することができる。同様に、底面110から深さ206の所にウィスパリングギャラリーモード共振器ディスク202の外周に向かって外側端に配置された空隙204のうちの1つまたは複数が、底面110から深さ206の近傍内の外周に向かって外側端にあるサイドモード(複数可)を抑制することができる。図示の例では、空隙120のうちの2つが、第1の面取り縁部112にまたはその近くに配置され、空隙204のうちの1つが、第2の面取り縁部114にまたはその近くに配置され、これらの空隙は、本明細書に記載されているようにサイドモードを抑制することができる。
【0031】
ウィスパリングギャラリーモード共振器装置200は、中央平面106内に配置された基本モード124を支持することができる。さらに、図示されていないが、サイドモード(複数可)は、共振器装置200内の基本モード124の位置から徐々に離れて配置され得る(例えば、すべてのサイドモードが空隙120および空隙204によって抑制されなくてもよい)。
【0032】
図1の共振器装置100と同様に、図2の共振器装置200は、空隙のないウィスパリングギャラリーモード共振器装置と比べて、軸方向の広がり(例えば、ディスク軸に沿って上下)が大きいサイドモードの数を減らすことができる。図2の例では、中央平面106と上面108との間のサイドモード(複数可)(例えば、軸方向の広がりが高い横モード(複数可))(またはそのようなサイドモードの少なくともサブセット)は、空隙120とウィスパリングギャラリーモード共振器ディスク202が形成される材料との間の屈折率差により抑制することができる。同様に、中央平面106と底面110との間のサイドモード(複数可)(例えば、軸方向の広がりが高い横モード(複数可))(またはそのようなサイドモードの少なくともサブセット)は、空隙204とウィスパリングギャラリーモード共振器ディスク202が形成される材料との間の屈折率差により抑制することができる。
さらに、基本モード124は、(基本モード124の光は空隙を通って伝播しないため)比較的影響を受けないままであり得る。
【0033】
図1および図2は、上面108または底面110から特定の深さにある空隙を記載しているが、空隙は、上面108または底面110からある深さの範囲内にあり得ると考えられる。例えば、空隙120は、上面108から10マイクロメートル~15マイクロメートルの深さ範囲内にあり得るが、特許請求される主題は前述の例に限定されるものではない。他の実施形態によれば、空隙は、上面108または底面から複数の深さに局在することができる。例として、第1組の空隙は、上面108から10マイクロメートルの深さに局在することができ、第2組の空隙は、上面108から15マイクロメートルの深さに局在することができるが、この場合も、特許請求される主題はこの例に限定されるものではないことを理解されたい。
【0034】
図3を参照すると、空隙のない例示的なウィスパリングギャラリーモード共振器装置300(共振器装置300)の断面図が示されている。
共振器装置300は、電気光学材料で形成されたウィスパリングギャラリーモード共振器ディスク302(共振器ディスク302)を含む。ウィスパリングギャラリーモード共振器ディスク302は、外周に沿って軸面304を含み、中央平面306が軸面304を通過して軸面304を対称な半分に分割する。
【0035】
ウィスパリングギャラリーモード共振器ディスク302はまた、上面308、底面310、第1の面取り縁部312、および第2の面取り縁部314を含むことができる。中央平面306はまた、上面308と底面310との間の実質的に等距離の所にある。ウィスパリングギャラリーモード共振器装置300はまた、上面308に設けられた第1の電極316と底面310に設けられた第2の電極318とを含む。
【0036】
ウィスパリングギャラリーモード共振器装置300は、共振器装置300の中央平面306内の基本モード320を支持する。サイドモードが、共振器ディスク302の中央平面306内の基本モード320から徐々に離れて配置され得る。図3に示される例では、4つのサイドモード(例えば、サイドモード322、サイドモード324、サイドモード326、およびサイドモード328)が基本モード320の近傍に配置されているが、4つより多いまたは少ないサイドモードがウィスパリングギャラリーモード共振器ディスク302の外周付近に配置され得ると考えられる。上述したように、図1のウィスパリングギャラリーモード共振器装置100および図2のウィスパリングギャラリーモード共振器装置200は、サイドモードの数を(例えば、ウィスパリングギャラリーモード共振器ディスク内に配置されたサイドモードを抑制する空隙を有することにより)図3に示すウィスパリングギャラリーモード共振器装置300と比べて減らすことができる。
【0037】
図4を参照すると、局所的空隙を有するウィスパリングギャラリーモード共振器装置(例えば、ウィスパリングギャラリーモード共振器装置100)を製造するための例示的な技法が示されている。本技法の第1の段階が400に示されており、上面404、底面406、および中央平面408を有するウェハ402が示されている。ウェハ402は、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、シリコンなどの様々な結晶材料で形成することができる。イオンビーム410がウェハ402の上面404に向けられ、したがって、ウェハ402は、上面404を通してイオンビーム410のイオンの衝撃を受ける。イオンは、ウェハ402内に注入され、上面404からある深さ(例えば、上述の空隙120の深さ122)の所に分散された空隙412(例えば、欠陥)を形成する。例えば、注入されたイオンは、ウェハ402内の上面404に実質的に平行な平面の近傍に分散された気泡(例えば、空隙412)を形成することができる。様々な実施形態によれば、水素イオン(H+イオン)が空隙412を形成するためにウェハ402に注入され得るが、他のイオンが追加的または代替的にウェハ402内に注入され得ると考えられる。
【0038】
ウェハ402の上面404に衝撃を与えるイオンビーム410の注入エネルギーおよびイオン電流密度は、上面404から所望の深さ(または複数の深さ)に所望の密度の空隙412を作るように調整することができる。ウェハ402内に形成される空隙412の密度は、ウェハ402からコア抜きされた共振器装置がそれぞれ、閾値(例えば、99%、99.9%、99.99%)を上回る確率で共振器装置のそれぞれの外周にまたはその付近に空隙412のうちの少なくとも1つを含むように制御される。したがって、上面404から較正された深さにあるウェハ402の材料内の空隙412の密度は、共振器装置を製作する前に生成することができ、上面404からの較正された深さは、ウェハ402から製作された共振器装置内の基本モードに有利になるようにサイドモードを抑制することができる。
【0039】
本技法の第2の段階が420に示されており、共振器装置がウェハ402から切り取られる。生産される共振器装置は、440に示されている(例えば、共振器装置は、440においてウェハ402の残りの部分から分離される)。簡単にするために、2つの共振器装置422および424が図4に示されているが、ウェハ402から実質的に任意の数の共振器装置を切り取ることができると考えられる。ウェハ402内の空隙412の密度は、共振器装置がウェハ402から切り取られる位置が正確に制御される必要がないようなものである(例えば、少なくとも1つの空隙が共振器装置の外周にまたはその近くにある可能性は、ウェハ402が共振器装置を形成するために切り取られる場所にかかわらず、閾値を上回る)。
【0040】
さらに、図示されていないが、イオン注入の後でかつ共振器装置が切断される前に、ウェハ402に対して追加の製作ステップが実行され得ることを理解されたい。例えば、ウェハ402の上面404および底面406に層を追加することができ、そのような層は、結果として得られる共振器装置の電極を形成することができる。
【0041】
図4に示されている共振器装置422および424は、面取り縁部のないディスク形状の共振器装置である。その代わりに他の形状を有する共振器装置をウェハ402から切り取ることができる(例えば、共振器装置は面取り縁部を有するディスク形状とすることができる、共振器装置は非対称のディスク形状とすることができる、共振器装置はリング形状とすることができる)ことを理解されたい、したがって、特許請求される主題は、図4に示されている例に限定されるものではない。さらに、図示されていないが、切断の後で共振器装置422および424に対して追加の製作ステップが実行され得ると考えられる(例えば、共振器装置422および424の側面構造を、研磨や洗浄などをすることができる)。
【0042】
一例によれば、共振器装置422は(同様に、ウェハ402から製作された他の共振器装置も)、中央平面408内の基本モードを支持することができ、共振器装置422の外周にまたはその付近にある空隙は、共振器装置422内のサイドモード(複数可)を抑制することができる。ウェハ402から共振器装置を切り取る前にイオン注入を実行してウェハ402内に空隙412を生成することにより、共振器装置に対して欠陥を並列に作ることが可能になり、このことは、サイドモードを抑制するために局所的空隙を有するウィスパリングギャラリーモード共振器装置の大量生産を支援する。
【0043】
ここで図5を参照すると、局所的空隙を有するウィスパリングギャラリーモード共振器装置(例えば、ウィスパリングギャラリーモード共振器装置200)を製造するための別の例示的な技法が示されている。本技法の第1の段階が500に示されており、この場合も、ウェハ502は、上面504、底面506、および中央平面508を含む。上記と同様に、イオンビーム510がウェハ502の上面504に向けられる。したがって、イオンビーム510のイオンが、ウェハ502内に注入され、上面504からある深さ(例えば、上述の空隙122の深さ122)の所に分散された空隙512を形成する。上述したように、ウェハ502の上面504に衝撃を与えるイオンビーム510の注入エネルギーおよびイオン電流密度は、上面504から所望の深さ(または複数の深さ)の所に所望の密度の空隙512を作るように調整することができる(例えば、ウェハ502内に形成された空隙512の密度は、ウェハ502からコア抜きされた共振器装置がそれぞれ、閾値を上回る確率で共振器装置のそれぞれの外周にまたはその付近に空隙512のうちの少なくとも1つを含むように制御される)。
【0044】
本技法の第2の段階が520に示されている。イオンビーム522がウェハ502の底面506に向けられる(例えば、ウェハ502は、図5に520で示されているように反転させることができる)。イオンビーム522は、イオンビーム510と実質的に同様とすることができる(例えば、実質的に同様のイオンを注入することができ、注入エネルギーは実質的に同様とすることができ、イオン電流密度は実質的に同様とすることができる)が、特許請求される主題はそのように限定されるものでない。イオンビーム522のイオンが、ウェハ502内に注入され、底面506からある深さ(例えば、空隙204の深さ206)の所に分散された空隙524を形成する。上記と同様に、ウェハ502の底面506に衝撃を与えるイオンビーム522の注入エネルギーおよびイオン電流密度は、底面506から所望の深さ(または複数の深さ)の所に所望の密度の空隙524を作るように調整することができる(例えば、ウェハ502内に形成された空隙524の密度は、ウェハ502からコア抜きされた共振器装置がそれぞれ、閾値を上回る確率で共振器装置のそれぞれの外周にまたはその付近に空隙524のうちの少なくとも1つを含むように制御される)。
【0045】
本技法の第3の段階が540に示されており、共振器装置がウェハ502から切り取られる。生産された共振器装置は560に示されている
(例えば、共振器装置は、560においてウェハ502の残りの部分から分離される)。この場合も、2つの共振器装置542および544が図5に示されているが、ウェハ502から実質的に任意の数の共振器装置を切り取ることができることを理解されたい。ウェハ502内の空隙512および空隙524の密度は、共振器装置がウェハ502から切り取られる位置が正確に制御される必要がないようなものである。例えば、空隙512のうちの少なくとも1つが共振器装置の外周にまたはその近くにある確率は閾値を上回り、空隙524のうちの少なくとも1つが共振器装置の外周にまたはその近くにある確率は、ウェハ502がかかる共振器装置を形成するために切り取られる場所にかかわらず、閾値を上回る。
【0046】
この場合も、上述したように、イオン注入の後でかつ共振器装置が切断される前に、ウェハ502に対して追加の製作ステップが実行され得ることを理解されたい。さらに、ウェハ502から切り取られた共振器装置は、ディスク形状(面取り縁部の有無にかかわらず)、非対称ディスク形状、リング形状、または同様の形状とすることができると考えられる。さらに、切断の後で共振器装置542および544に対して追加の製作ステップが実行され得る。さらに、前述の手法を用いて製造された共振器装置は、上面504および底面506からの複数の深さの所に空隙を含めることによりサイドモードを抑制しながら、基本モード(例えば、中央平面508内に配置される)を支持することができる。ウェハ502から共振器装置を切り取る前にイオン注入を実行してウェハ502内に空隙512および空隙524を生成することにより、共振器装置に対して欠陥を並列に作ることが可能になり、このことは、サイドモードを抑制するために局所的空隙を有するウィスパリングギャラリーモード共振器装置の大量生産を支援する。
【0047】
図6を参照すると、図6は例示的なライダーセンサシステム600を示す。ライダーセンサシステム600は、周波数変調連続波(FMCW)ライダーセンサシステムとすることができるが、特許請求される主題はそのように限定されるものではない。ライダーセンサシステム600は、レーザ602、光カプラ604、および共振器装置606を含む。光カプラ604はレーザ602に結合され、共振器装置606は光カプラ604に結合される。共振器装置606は、図1のウィスパリングギャラリーモード共振器装置100、図2のウィスパリングギャラリーモード共振器装置200、または同様のものとすることができる。
【0048】
レーザ602は、半導体レーザ、レーザダイオード、または同様のものとすることができる。光カプラ604は、レーザ602によって出力された光を共振器装置606に結合するように構成することができる。さらに、光カプラ604は、共振器装置606から戻ってきた光をレーザ602に結合するように構成することができる。
【0049】
本明細書に記載されているように、共振器装置606は、電圧を印加することができる電極を含むことができる。共振器装置606に電圧を印加すると、共振器装置606の電気光学材料の光学特性を変化させることができる。例えば、電圧を印加すると、共振器装置606の電気光学材料の屈折率を変化させることができる。
【0050】
レーザ602は、共振器装置606に光学的に注入ロックされる。レーザ602は、共振器装置606の基本モードに注入ロックすることができる。さらに、本明細書に記載されているように、サイドモード(複数可)を抑制することができる。さらに、レーザ602は共振器装置606に光学的に注入ロックされるので、共振器装置606に印加される電圧は、レーザ602に周波数変動を与えることができる。
【0051】
ライダーセンサシステム600は、レーザ602によって生成された光信号の少なくとも一部をライダーセンサシステム600の環境内に伝送するように構成されたフロントエンド光学系608をさらに含む。様々な例によれば、フロントエンド光学系608は、環境内の視野にわたって光信号を導くことができるスキャナを含むことができる。フロントエンド光学系608はまた、1つまたは複数のレンズ、光アイソレータ、1つまたは複数の導波路、光増幅器、干渉計などの他の光学要素を含むことができる。この種の光学要素は、コリメーション、発散角、線幅、パワーなどの所望の特性を有する光信号を生成することを可能にすることができる。この種の光学要素は、個々に組み立てられるか、またはチップ上に集積されるか、または両方を組み合わせたものでよい。フロントエンド光学系608はまた、環境からの反射光信号を受信するように構成することもできる。反射光信号は、環境内の物体に反射した、環境内に伝送された光信号の少なくとも一部に対応することができる。
【0052】
さらに、ライダーセンサシステム600は、検出器610(例えば、光検出器)および処理回路612を含むことができる。検出器610は、フロントエンド光学系608によって受信された反射光信号を、レーザ602によって生成された光信号の局部発振器部分と混合するように構成することができる。処理回路612は、検出器610の出力に基づいて環境内の物体の距離および速度データを計算するように構成することができる。
【0053】
図7は、本明細書に記載のウィスパリングギャラリーモード共振器装置を製造することに関する例示的な方法を示す。本方法は、シーケンスで実行される一連の行為であると示され説明されるが、本方法は、シーケンスの順序によって限定されないことを理解および認識されたい。例えば、いくつかの行為は、本明細書に記載されたものとは異なる順序で行うことができる。加えて、ある行為は、別の行為と同時に行うことができる。さらに、場合によっては、本明細書に記載された方法を実施するために、すべての行為が必要とされるわけではない。
【0054】
図7は、ウィスパリングギャラリーモード共振器装置を製造する方法700を示す。702において、イオンビームを電気光学材料で形成されたウェハの上面に向けることができる。イオンビームをウェハの上面に向けることにより、イオンビーム中のイオンがウェハ内に注入され、ウェハ内の上面から特定の深さに分散された空隙を形成する。イオンビームの注入エネルギーおよびイオン電流密度は、上面から特定の深さに形成される空隙の密度を制御するように調整することができる(例えば、深さは注入エネルギーの関数とすることができ、空隙の密度はイオン電流密度の関数とすることができる)。一例によれば、イオンビームをウェハの底面にも向けることができ、この例に続いて、イオンビームをウェハの底面に向けることにより、イオンビーム中のイオンがウェハ内に注入され、ウェハ内の底面から特定の深さに分散された空隙を形成する。追加的または代替的に、イオンビームは、イオンビーム中のイオンがウェハ内に注入され、ウェハの上面から異なる深さに分散された空隙を形成するように、ウェハの上面にさらに向けることができる。704において、上面から特定の深さに分散された空隙(ならびにウェハ内に形成された他の空隙)を有するウェハは、少なくともウィスパリングギャラリーモード共振器装置を生産するために切断することができる。実質的に任意の数のウィスパリングギャラリーモード共振器装置をウェハから切り取ることができると考えられる。一例によれば、ウィスパリングギャラリーモード共振器装置は、ディスク形状(面取り縁部の有無にかかわらず)、リング形状、または同様の形状とすることができる。
【0055】
以上の説明は、1つまたは複数の実施形態の例を含む。もちろん、前述の態様を説明する目的で、上記の装置または方法の考えられるすべての修正および変更を説明するのは不可能であり、当業者は、様々な態様の多くのさらなる修正および置換が可能であることを認識することができる。したがって、上述の態様は、添付の特許請求の範囲内にあるようなすべての変更、修正、および変形を包含することが意図されている。さらに、「含む(includes)」という用語が詳細な説明か特許請求の範囲のどちらかで使用される限りは、かかる用語は、「備える」が請求項において使用されるときに移行語として解釈されるときのように、「備える(comprising)」という用語と同様に包括的であることが意図されている。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】