(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-01
(54)【発明の名称】血行動態を改変するための治療方法
(51)【国際特許分類】
A61K 38/07 20060101AFI20230125BHJP
A61K 38/04 20060101ALI20230125BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20230125BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230125BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20230125BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20230125BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20230125BHJP
A61P 9/14 20060101ALI20230125BHJP
C07K 2/00 20060101ALI20230125BHJP
【FI】
A61K38/07
A61K38/04
A61K38/16
A61P43/00 111
A61P9/00
A61P13/12
A61K9/08
A61P9/14
C07K2/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022520329
(86)(22)【出願日】2020-09-30
(85)【翻訳文提出日】2022-05-27
(86)【国際出願番号】 NL2020050605
(87)【国際公開番号】W WO2021066649
(87)【国際公開日】2021-04-08
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522128538
【氏名又は名称】イービーアイ アンチ セプシス ベーフェー
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】ピッケルス、ルロフス ペーテル
(72)【発明者】
【氏名】ヴェンスフォールト、ヘルト
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076AA12
4C076BB13
4C076BB14
4C076CC11
4C076FF11
4C076FF68
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA07
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA16
4C084BA17
4C084BA18
4C084BA19
4C084MA17
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZA36
4C084ZA44
4C084ZC41
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA13
4H045BA14
4H045BA15
4H045BA16
4H045BA17
4H045BA18
4H045EA20
4H045FA10
(57)【要約】
本発明は、AQGVペプチド又はその機能的アナログを、任意で腎機能障害を有する、ヒト対象に投与することを含む治療の方法であって、AQGVペプチドを投与する治療が、クラークソン病(CLS)を罹患している又は罹患していると考えられるヒト対象などのヒト対象での血行動態安定性を維持又は改善することを含む、方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血行動態安定性を維持又は改善する必要があると考えられるヒト対象の治療方法であって、アラニン(一文字表記でA)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)、及びアルギニン(R)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択される少なくとも50%のアミノ酸を含むペプチドを前記対象に投与することを含む、治療方法。
【請求項2】
有害な血管透過性を減少させる必要があると考えられるヒト対象の治療方法であって、アラニン(一文字表記でA)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)、及びアルギニン(R)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択される少なくとも50%のアミノ酸を含むペプチドを前記対象に投与することを含む、治療方法。
【請求項3】
有害な体液貯留を減少させる必要があると考えられるヒト対象の治療方法であって、アラニン(一文字表記でA)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)、及びアルギニン(R)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択される少なくとも50%のアミノ酸を含むペプチドを前記対象に投与することを含む、治療方法。
【請求項4】
前記ペプチドは前記オートファジー阻害アミノ酸の群から選択される少なくとも75%のアミノ酸を含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の治療方法。
【請求項5】
前記ペプチドは前記オートファジー阻害アミノ酸の群から選択されるアミノ酸からなる、請求項1から4のいずれか1項に記載の治療方法。
【請求項6】
前記ペプチドは、アラニン(A)、グルタミン(Q)、及びロイシン(L)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択される少なくとも50%のアミノ酸を含む、請求項1から5のいずれか1項に記載の治療方法。
【請求項7】
前記ペプチドは、グリシン(G)、バリン(V)、イソロイシン(I)、プロリン(P)、及びアルギニン(R)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択される多くとも30%のアミノ酸を含む、請求項1から6のいずれか1項に記載の治療方法。
【請求項8】
アラニン(一文字表記でA)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)、及びアルギニン(R)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択される少なくとも50%のアミノ酸をそれぞれが含む少なくとも2つの異なるペプチドを前記対象に投与することを含む、請求項1から7のいずれか1項に記載の治療方法。
【請求項9】
1つ又は複数の前記ペプチドは4-30アミノ酸の範囲の長さである、請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記対象は手術などの重症外傷を受けている、請求項1から9のいずれか1項に記載の治療方法。
【請求項11】
前記対象は抗悪性腫瘍剤又は免疫調節剤での治療などのがん治療を受けている、請求項1から9のいずれか1項に記載の治療方法。
【請求項12】
前記対象は薬物有害反応でみられる毛細血管漏出症候群に罹患していると考えられる、請求項1から9のいずれか1項に記載の治療方法。
【請求項13】
前記ヒト対象は腎機能障害を有する、請求項1から12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記方法は昇圧剤の減少された使用を含む、請求項1から13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記方法は減少された水分摂取量を含む、請求項1から14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記ペプチドは、アラニン(一文字表記でA)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、及びバリン(V)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択される少なくとも50%のアミノ酸を含む、請求項1から15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記ペプチドは、アラニン(一文字表記でA)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、及びバリン(V)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択されるアミノ酸からなる、請求項1から15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記ペプチドはペプチド-有機酸の群から選択される塩である、請求項1から17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
血行動態安定性を維持又は改善する必要があると考えられるヒト対象の治療での使用のためのペプチドであって、前記ペプチドは、アラニン(一文字表記でA)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)、及びアルギニン(R)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択される少なくとも50%のアミノ酸を含む、ペプチド。
【請求項20】
有害な血管透過性を減少させる必要があると考えられるヒト対象の治療での使用のためのペプチドであって、前記ペプチドは、アラニン(一文字表記でA)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)、及びアルギニン(R)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択される少なくとも50%のアミノ酸を含む、ペプチド。
【請求項21】
有害な水分を減少させる必要があると考えられるヒト対象の治療での使用のためのペプチドであって、前記ペプチドは、アラニン(一文字表記でA)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)、及びアルギニン(R)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択される少なくとも50%のアミノ酸を含む、ペプチド。
【請求項22】
前記対象は手術などの重症外傷を受けている、請求項19から21のいずれか1項に記載のペプチド。
【請求項23】
前記対象は抗悪性腫瘍剤又は免疫調節剤での治療などのがん治療を受けている、請求項19から21のいずれか1項に記載のペプチド。
【請求項24】
前記対象は薬物有害反応でみられる毛細血管漏出症候群に罹患していると考えられる、請求項19から21のいずれか1項に記載のペプチド。
【請求項25】
前記ヒト対象は腎機能障害を有する、請求項19から24のいずれか1項に記載のペプチド。
【請求項26】
前記使用は昇圧剤の減少された使用を含む、請求項19から25のいずれか1項に記載のペプチド。
【請求項27】
前記使用は減少された水分摂取量を含む、請求項19から26のいずれか1項に記載のペプチド。
【請求項28】
前記ペプチドは、アラニン(一文字表記でA)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、及びバリン(V)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択される少なくとも50%のアミノ酸を含む、請求項19から27のいずれか1項に記載のペプチド。
【請求項29】
前記ペプチドは、アラニン(一文字表記でA)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、及びバリン(V)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択されるアミノ酸からなる、請求項28に記載のペプチド。
【請求項30】
前記ペプチドは、ペプチド-酢酸塩、ペプチド-酒石酸塩、又はペプチド-クエン酸塩の群から選択される塩である、請求項29に記載のペプチド。
【請求項31】
請求項19から30のいずれか1項に記載のペプチドを含む医薬製剤。
【請求項32】
前記ペプチドは前記オートファジー阻害アミノ酸の群から選択される少なくとも75%のアミノ酸を含む、請求項31に記載の医薬製剤。
【請求項33】
前記ペプチドは前記オートファジー阻害アミノ酸の群から選択される100%のアミノ酸からなる、請求項31又は32に記載の医薬製剤。
【請求項34】
前記ペプチドは、アラニン(A)、グルタミン(Q)、及びロイシン(L)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択される少なくとも50%のアミノ酸を含む、請求項31から33のいずれか1項に記載の医薬製剤。
【請求項35】
前記ペプチドは、グリシン(G)、バリン(V)、イソロイシン(I)、プロリン(P)、及びアルギニン(R)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択される多くとも30%のアミノ酸を含む、請求項31から34のいずれか1項に記載の医薬製剤。
【請求項36】
アラニン(一文字表記でA)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)、及びアルギニン(R)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択される少なくとも50%のアミノ酸をそれぞれが含む少なくとも2つの異なるペプチドを含む、請求項31から35のいずれか1項に記載の医薬製剤。
【請求項37】
1つ又は複数の前記ペプチドは4-30アミノ酸で長さが異なる、請求項31から36のいずれか1項に記載の医薬製剤。
【請求項38】
少なくとも0.85モル/Lの1つ又は複数の前記ペプチドを含む、請求項31から37のいずれか1項に記載の医薬製剤。
【請求項39】
少なくとも1つの医薬上許容可能な添加剤及び請求項31から38のいずれか1項に記載の医薬製剤。
【請求項40】
請求項31から39のいずれか1項に記載の医薬製剤を含むストック溶液。
【請求項41】
血行動態安定性を維持又は改善する必要があると考えられるヒト対象の治療方法での使用のための、請求項31から40のいずれか1項に記載の製剤又は溶液。
【請求項42】
有害な血管透過性を減少させる必要があると考えられるヒト対象の治療方法での使用のための、請求項31から40のいずれか1項に記載の製剤又は溶液。
【請求項43】
有害な体液貯留を減少させる必要があると考えられるヒト対象の治療方法での使用のための、請求項31から40のいずれか1項に記載の製剤又は溶液。
【請求項44】
クラークソン病(CLS)を罹患している又は罹患していると考えられるヒト対象の治療方法での使用のための、請求項31から40のいずれか1項に記載の製剤又は溶液。
【請求項45】
血行動態安定性を維持又は改善する必要があると考えられるヒト対象の治療方法であって、請求項31から40のいずれか1項に記載の製剤又は溶液を前記対象に投与することを含む、治療方法。
【請求項46】
有害な血管透過性を減少させる必要があると考えられるヒト対象の治療方法であって、請求項31から40のいずれか1項に記載の製剤又は溶液を前記対象に投与することを含む、治療方法。
【請求項47】
有害な体液貯留を減少させる必要があると考えられるヒト対象の治療方法であって、請求項31から40のいずれか1項に記載の製剤又は溶液を前記対象に投与することを含む、治療方法。
【請求項48】
クラークソン病(CLS)を罹患している又は罹患していると考えられるヒト対象の治療方法であって、請求項31から40のいずれか1項に記載の製剤又は溶液を前記対象に投与することを含む、治療方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
ヒト対象が、重症外傷、特に、手術などの医療介入により引き起こされた外傷を受けた場合、例えば、開心術などの重度の医療介入を受けた場合、ヒト対象又は患者はバイタルサインを注意深く監視できる集中治療室(ICU)に入れられる。患者は回復を可能とする内科的治療を受け、バイタルサインが許容可能な境界内にある場合、患者はICUから解放され標準的な院内ケアにまわされ得る。患者が標準ケアで安定であることを示した場合、特に、十分な血行動態安定性を示した場合、患者は病院から解放され帰宅できる。その後、例えば患者の状態が悪化したなどの理由で必要性が生じた場合に、患者は病院に再入院され得る。前述のバイタルサインへのいかなる改善も、すなわち、ICUへの患者の滞在期間、病院での標準ケアでの滞在期間、及び/又は、患者再入院に影響する患者の健康及び回復のいかなる改善も、全般にヘルスケア及び患者への顕著な利益をもたらす。したがって、患者の健康及び回復(回復率)を改善するいかなる手段及び方法も注目に値する。
【0002】
ICU又は病院で、患者は、輸液で、例えば、生理食塩水(例えば、0.9%NaCl、食塩水とも呼ばれる)又は注入に適した任意の他の溶液などの塩含有水溶液で、処置されることが多い。ときとして、患者に必要であると決まった場合に、こうした水溶液に薬剤が添加されるかもしれない。普通、薬剤を含有する水溶液は、持続(点滴)注入により又は静脈内ボーラス注射により、静脈内(i.v.)に与えられる。輸液療法の他の経路として、前述の輸液の注入又はボーラス投与による腹腔内投与が挙げられる。輸液バランス(腎機能)はICUでの患者の転帰の決定基準の1つである。例えば、血液量増加症は、過剰な水分貯留又は体液貯留を有する又は一般的には水分又は体液過負荷とも既述される体内の体液が多すぎる医学的状態である。輸液療法は体液過負荷をもたらし得る。体液過負荷はヒト対象で生じ得、その症状は例えば体重増加及び水腫を含む。
【0003】
しばしば輸液及び/又は昇圧剤療法を施すことの認知された必要性を伴う、体液過負荷及びその結果生じる不適切な血流又は血行動態不安定性は、重病患者で比較的に高頻度に発生し、静脈内輸液療法による救命救急処置の結果であることが多い。良性であるという共通認識にもかかわらず、重病者での体液過負荷は独立して増加した罹患率及び死亡率と関連している。毛細管漏出による間質空間への体液血管外漏出は、認知障害、心収縮障害、並びに、創傷治癒遅延、褥瘡、及び創傷感染症をまねく皮膚及び筋肉での組織浮腫にわたる様々な症状で、複数の臓器系に有害な影響を与え得る。肺では、体液過負荷は、低酸素血症につながる呼吸仕事量増加及びガス交換障害を伴う、血管外肺水分量増加を引き起こす。体液過負荷の特に重篤な合併症が腎障害である。体液過負荷が集中治療室での滞在を60%まで病院での滞在を30%まで延長することが知られている。
【0004】
一般的に、体液過負荷(fluid overload、FO)は、ICUでの回復遅延及び病院での滞在期間延長に寄与し、増加したヘルスケアリソース使用及び費用につながる。最近の米国の研究(Child D等、Clinicoecon Outcomes Res.、2015年;7:1-8)では、FOコホートについての訪問当たりの合計入院費用は、平均で21000米ドル超となる非FOコホートよりも15000ドル前後高いと見積もられた。FOコホートについてのICU費用は非FOコホートよりも5000ドル超高かった。FO患者は、死亡率が16%高く、病院での滞在期間が31%延長された。これは、より重要には、ほぼ60%長いICUでの滞在、30日再入院の顕著な増加、及び、非FOコホートを上回る人工呼吸器使用(全てでP<0.05)をもたらした。利尿剤は臨床診断された体液過負荷を治療するために最も一般的に使用される薬である。しかし、利尿剤による治療が生存から退院又は入院時間などの主要な転帰を変えるという決定的な証拠はない。
【0005】
腎臓は、不適切な(不十分又は過剰な)血流に対して精巧に感受性である血管が多い被嚢臓器である。腎臓は静脈性鬱血に対して特に感受性であり、研究から減少した静脈還流量が動脈流欠如よりも度合いの高い腎損傷を引き起こすことが示されている。静脈内輸液注入は、微小循環でのリンパ排出の能力を超える場合、不可避的に間質浮腫を引き起こす。腎臓で、間質浮腫は、嚢下及び嚢内圧力を増加させ、順方向腎動脈血流の減少、静脈還流量及びリンパ排出の減少につながり、最終的には組織低酸素及びAKIを引き起こす。AKIでの不適切な尿量は組織浮腫をさらに悪化させ得るものであり、悪循環をなす。
【0006】
こうした急性腎障害は腎機能の急速な喪失を特徴とする。さらにいえば、急性障害は慢性状態に進行することが多く、最終的には末期腎臓病につながる。これらの患者は重病で透析又は腎代替療法を必要とすると考えられる。AKIは、重病患者での多臓器不全に寄与するのみならず、他の臓器及び系に直接的な影響を及ぼす。AKIに罹患する患者は毎年三百万人超、その死亡率は70%までであり、AKIは、患者の短期及び長期合併症と直接的に関連しており、その状態は40-70%の死亡率と関連している。AKI患者の死亡率はおよそ四人に一人である。現在、AKIに対する唯一の治療選択肢は、潜在的原因に向き合わず、さらなる損傷を制限せず、また、進行を予防しない、透析及び支援ケアである。現在、この状態を治療するために認可された薬はない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
AQGVペプチド(本明細書ではEA-230とも呼ぶ)の安全性及び認容性並びにその免疫調節効果を評価することを目的とした臨床試験での試験では、当該ペプチドが安全であることがわかったが、予想外にも治療患者を対照群と比べると免疫調節効果は観察されなかった。免疫調節効果は観察されないものの、本発明者等は、驚くべきことに、臨床試験で得られたデータの解析から、以前は観察されていなかった新しく有益性の高い性質がAQGVペプチドに起因し得たことを発見した。こうした性質は、既知の観察済みの免疫調節効果とは明らかに独立したものである。
【0008】
驚くべきことに、観察される免疫調節効果は一切ないが、AQGVペプチドで治療された患者の、ICU(集中治療室)での滞在期間、また、全般的な病院での滞在期間は、顕著に減少された。本試験中にヒト対象で監視されたパラメーターの徹底的な分析から、AQGVペプチドの使用が治療患者の血行動態を有利に調節することが発見された。これらの患者でAQGVペプチドによる治療に観察される免疫調節効果が一切ないにもかかわらず、ヒト患者での腎機能に関係するパラメーターが、顕著に改善されるか、又は、機能的レベルに維持されて劣化しないかのいずれかであることが示された。腎機能及び/又は血行動態に関係したパラメーターは、一般的に、患者で監視されて、ICU又は病院のいずれかでの滞在期間を決定する。そして、AQGVペプチド又はその機能的等価物の使用は、ヒト患者で監視されるパラメーターを有利に改善し、それにより、ICU又は病院のいずれかでの滞在期間を減少させることを可能とする(例えば、
図5、10、15、16参照)。
【0009】
したがって、本発明は、病院及び/又は集中治療への入院から退院までの期間が短縮され得るように病院及び/又は集中治療に入れられたヒト患者の臨床的パラメーターを改善するための、本明細書ではAQGVペプチドとも呼ばれるペプチド及びそのアナログ(機能的等価物)の使用に関する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一実施形態では、本発明は、血行動態安定性を維持又は改善する必要があると考えられるヒト対象の治療方法であって、AQGVペプチドを前記対象に投与することを含み、AQGVペプチドは、アラニン(一文字表記でA)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)、及びアルギニン(R)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択される、少なくとも50%の、より好ましくは、少なくとも75%の、最も好ましくは、100%のアミノ酸を含むペプチドとして定義される、治療方法を提供する。好ましい実施形態では、前記AQGVペプチドは、アラニン(一文字表記でA)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、及びプロリン(P)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択される、少なくとも50%の、より好ましくは、少なくとも75%の、最も好ましくは、100%のアミノ酸を含む。より好ましい実施形態では、本発明は、血行動態安定性を維持又は改善する必要があると考えられるヒト対象の治療方法であって、前記AQGVペプチドは、アラニン(一文字表記でA)、グルタミン(Q)、ロイシン(L)、及びプロリン(P)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択される、少なくとも50%の、より好ましくは、少なくとも75%の、最も好ましくは、100%のアミノ酸を含む、治療方法を提供する。別の実施形態では、本発明は、血行動態安定性を維持又は改善する必要があると考えられるヒト対象の治療方法であって、前記ペプチドは、アラニン(一文字表記でA)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、及びバリン(V)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択される、少なくとも50%の、より好ましくは、少なくとも75%の、最も好ましくは、100%のアミノ酸を含む、治療方法を提供する。AQGVペプチドは、アラニン(一文字表記でA)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、及びバリン(V)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択される、少なくとも50%の、より好ましくは、少なくとも75%の、最も好ましくは、100%のアミノ酸からなることが好ましい。前記ペプチドはAQGVであることが好ましい。
【0011】
別の好ましい実施形態では、本発明は、血行動態安定性を維持又は改善する必要があると考えられるヒト対象の治療方法であって、前記対象は手術などの重症外傷を受けている、治療方法を提供する。別の実施形態では、本発明は、血行動態安定性を維持又は改善する必要があると考えられるヒト対象の治療方法であって、前記対象は抗悪性腫瘍剤(例えば、化学療法及び/又は放射線療法)又は免疫調節剤による治療などのがん治療を受けている、治療方法を提供する。別の実施形態では、本発明は、血行動態安定性を維持又は改善する必要があると考えられるヒト対象の治療方法であって、前記対象は薬物有害反応でみられるものなどの毛細血管漏出症候群に罹患していると考えられる、治療方法を提供する。別の実施形態では、本発明は、血行動態安定性を維持又は改善する必要があると考えられるヒト対象の治療方法であって、前記ヒト対象は、臓器機能障害、特に、腎機能障害を有する、治療方法を提供する。別の実施形態では、本発明は、血行動態安定性を維持又は改善する必要があると考えられるヒト対象の治療方法であって、前記方法は昇圧剤の減少された使用を含む、治療方法を提供する。別の実施形態では、本発明は、血行動態安定性を維持又は改善する必要があると考えられるヒト対象の治療方法であって、前記方法は減少された水分摂取量を含む、治療方法を提供する。別の実施形態では、本発明は、有害な血管透過性を減少させる必要があると考えられるヒト対象の治療方法であって、アラニン(一文字表記でA)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)、及びアルギニン(R)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択される少なくとも50%のアミノ酸を含むペプチドを前記対象に投与することを含む、治療方法を提供する。好ましい実施形態では、前記AQGVペプチドは、アラニン(一文字表記でA)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、及びプロリン(P)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択される、少なくとも50%の、より好ましくは、少なくとも75%の、最も好ましくは、100%のアミノ酸を含む。より好ましい実施形態では、本発明は、有害な血管透過性を減少させる必要があると考えられるヒト対象の治療方法であって、前記AQGVペプチドは、アラニン(一文字表記でA)、グルタミン(Q)、ロイシン(L)、及びプロリン(P)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択される、少なくとも50%の、より好ましくは、少なくとも75%の、最も好ましくは、100%のアミノ酸を含む、治療方法を提供する。別の実施形態では、本発明は、有害な血管透過性を減少させる必要があると考えられるヒト対象の治療方法であって、前記ペプチドは、アラニン(一文字表記でA)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、及びバリン(V)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択される、少なくとも50%の、より好ましくは、少なくとも75%の、最も好ましくは、100%のアミノ酸を含む、治療方法を提供する。AQGVペプチドは、アラニン(一文字表記でA)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、及びバリン(V)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択される、少なくとも50%の、より好ましくは、少なくとも75%の、最も好ましくは、100%のアミノ酸からなることが好ましい。前記ペプチドはAQGVであることが好ましい。
【0012】
別の実施形態では、本発明は、有害な血管透過性を減少させる必要があると考えられるヒト対象の治療方法であって、前記対象は、前記対象へAQGVペプチドを投与することを含む手術などの重症外傷を受けている、治療方法を提供する。別の実施形態では、本発明は、有害な血管透過性を減少させる必要があると考えられるヒト対象の治療方法であって、前記対象は抗悪性腫瘍剤又は免疫調節剤による治療などのがん治療を受けている、治療方法を提供する。別の実施形態では、本発明は、有害な血管透過性を減少させる必要があると考えられるヒト対象の治療方法であって、前記対象は薬物有害反応でみられるものなどの毛細血管漏出症候群に罹患していると考えられる、治療方法を提供する。別の実施形態では、本発明は、有害な血管透過性を減少させる必要があると考えられるヒト対象の治療方法であって、前記ヒト対象は腎機能障害を有する、治療方法を提供する。別の実施形態では、本発明は、有害な血管透過性を減少させる必要があると考えられるヒト対象の治療方法であって、前記方法は昇圧剤の減少された使用を含む、治療方法を提供する。別の実施形態では、本発明は、有害な血管透過性を減少させる必要があると考えられるヒト対象の治療方法であって、前記方法は減少された水分摂取量を含む、治療方法を提供する。別の実施形態では、本発明は、有害な体液貯留を減少させる必要があると考えられるヒト対象の治療方法であって、アラニン(一文字表記でA)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)、及びアルギニン(R)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択される、少なくとも50%の、より好ましくは、少なくとも75%の、最も好ましくは、100%のアミノ酸を含むAQGVペプチドを前記対象に投与することを含む、治療方法を提供する。好ましい実施形態では、前記AQGVペプチドは、アラニン(一文字表記でA)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、及びプロリン(P)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択される、少なくとも50%の、より好ましくは、少なくとも75%の、最も好ましくは、100%のアミノ酸を含む。より好ましい実施形態では、本発明は、有害な体液貯留を減少させる必要があると考えられるヒト対象の治療方法であって、前記AQGVペプチドは、アラニン(一文字表記でA)、グルタミン(Q)、ロイシン(L)、及びプロリン(P)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択される、少なくとも50%の、より好ましくは、少なくとも75%の、最も好ましくは、100%のアミノ酸を含む、治療方法を提供する。別の実施形態では、本発明は、有害な体液貯留を減少させる必要があると考えられるヒト対象の治療方法であって、前記ペプチドは、アラニン(一文字表記でA)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、及びバリン(V)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択される、少なくとも50%の、より好ましくは、少なくとも75%の、最も好ましくは、100%のアミノ酸を含む、治療方法を提供する。前記AQGVペプチドは、アラニン(一文字表記でA)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、及びバリン(V)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択される、少なくとも50%の、より好ましくは、少なくとも75%の、最も好ましくは、100%のアミノ酸からなることが好ましい。前記ペプチドはAQGVであることが好ましい。
【0013】
別の好ましい実施形態では、本発明は、有害な体液貯留を減少させる必要があると考えられるヒト対象の治療方法であって、前記対象は手術などの重症外傷を受けている、治療方法を提供する。前記AQGVペプチドは、アラニン(一文字表記でA)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、及びバリン(V)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択される、少なくとも50%の、より好ましくは、少なくとも75%の、最も好ましくは、100%のアミノ酸からなることが好ましい。前記ペプチドはAQGVであることが好ましい。
【0014】
別の実施形態では、本発明は、有害な体液貯留を減少させる必要があると考えられるヒト対象の治療方法であって、前記対象は抗悪性腫瘍剤又は免疫調節剤による治療などのがん治療を受けている、治療方法を提供する。前記AQGVペプチドは、アラニン(一文字表記でA)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、及びバリン(V)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択される、少なくとも50%の、より好ましくは、少なくとも75%の、最も好ましくは、100%のアミノ酸からなることが好ましい。前記ペプチドはAQGVであることが好ましい。
【0015】
別の実施形態では、本発明は、有害な体液貯留を減少させる必要があると考えられるヒト対象の治療方法であって、前記対象は薬物有害反応でみられるものなどの毛細血管漏出症候群に罹患していると考えられる、治療方法を提供する。前記AQGVペプチドは、アラニン(一文字表記でA)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、及びバリン(V)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択される、少なくとも50%の、より好ましくは、少なくとも75%の、最も好ましくは、100%のアミノ酸からなることが好ましい。前記ペプチドはAQGVであることが好ましい。別の実施形態では、本発明は、有害な体液貯留を減少させる必要があると考えられるヒト対象の治療方法であって、前記ヒト対象は腎機能障害を有する、治療方法を提供する。前記AQGVペプチドは、アラニン(一文字表記でA)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、及びバリン(V)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択される、少なくとも50%の、より好ましくは、少なくとも75%の、最も好ましくは、100%のアミノ酸からなることが好ましい。前記ペプチドはAQGVであることが好ましい。別の実施形態では、本発明は、有害な体液貯留を減少させる必要があると考えられるヒト対象の治療方法であって、前記方法は昇圧剤の減少された使用を含む、治療方法を提供する。前記AQGVペプチドは、アラニン(一文字表記でA)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、及びバリン(V)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択される、少なくとも50%の、より好ましくは、少なくとも75%の、最も好ましくは、100%のアミノ酸からなることが好ましい。前記ペプチドは、AQGV、又は、例えば、その二量体若しくは三量体、四量体若しくは五量体であることが好ましい。別の実施形態では、本発明は、有害な体液貯留を減少させる必要があると考えられるヒト対象の治療方法であって、前記方法は減少された水分摂取量を含む、治療方法を提供する。前記AQGVペプチドは、アラニン(一文字表記でA)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、及びバリン(V)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択される、少なくとも50%の、より好ましくは、少なくとも75%の、最も好ましくは、100%のアミノ酸からなることが好ましい。前記ペプチドはAQGVであることが好ましい。
【0016】
別の実施形態では、本発明は、血行動態安定性を維持又は改善する必要があると考えられるヒト対象の治療での使用のための方法であって、前記AQGVペプチドは、有機酸の塩であり、好ましくは、当該有機酸は、マレイン酸、酢酸、酒石酸、クエン酸からなる群から選択される、方法を提供する。別の実施形態では、本発明は、血行動態安定性を維持又は改善する必要があると考えられるヒト対象の治療での使用についての方法であって、前記AQGVペプチドは、マレイン酸などの有機酸の、より好ましくは、酢酸の、より好ましくは、酒石酸の、最も好ましくは、クエン酸の、塩である、方法を提供する。
【0017】
別の実施形態では、本発明は、有害な血管透過性を減少させる必要があると考えられるヒト対象の治療での使用のための方法であって、前記AQGVペプチドは、有機酸の塩であり、好ましくは、当該有機酸は、マレイン酸、酢酸、酒石酸、クエン酸からなる群から選択される、方法を提供する。別の実施形態では、本発明は、有害な血管透過性を減少させる必要があると考えられるヒト対象の治療での使用についての方法であって、前記AQGVペプチドは、マレイン酸などの有機酸の、より好ましくは、酢酸の、より好ましくは、酒石酸の、最も好ましくは、クエン酸の、塩である、方法を提供する。
【0018】
別の実施形態では、本発明は、有害な体液貯留を減少させる必要があると考えられるヒト対象の治療での使用のための方法であって、前記AQGVペプチドは、有機酸の塩であり、好ましくは、当該有機酸は、マレイン酸、酢酸、酒石酸、クエン酸からなる群から選択される、方法を提供する。別の実施形態では、本発明は、有害な体液貯留を減少させる必要があると考えられるヒト対象の治療での使用についての方法であって、前記AQGVペプチドは、マレイン酸などの有機酸の、より好ましくは、酢酸の、より好ましくは、酒石酸の、最も好ましくは、クエン酸の、塩である、方法を提供する。
【0019】
別の実施形態では、本発明は、血行動態安定性を維持又は改善する必要があると考えられるヒト対象の治療での使用のための方法であって、前記AQGVペプチドは、AQGVペプチド-酢酸塩、AQGVペプチド-酒石酸塩、又はAQGVペプチド-クエン酸塩のストック溶液、好ましくは、水溶液から提供され、好ましくは、前記ストック溶液は、少なくとも0.85mol/L、より好ましくは、少なくとも0.9mol/L、より好ましくは、少なくとも1mol/L、より好ましくは、少なくとも1.2mol/L、より好ましくは、少なくとも1.4mol/L、より好ましくは、少なくとも1.6mol/L、最も好ましくは、少なくとも1.8mol/Lの、前記AQGVペプチド-酢酸塩、前記AQGVペプチド-酒石酸塩、又は前記AQGVペプチド-クエン酸塩を、備える、又は、含有するよう調製される、方法を提供する。より好ましい実施形態では、本発明は、血行動態安定性を維持又は改善する必要があると考えられるヒト対象の治療での使用のための方法であって、前記AQGVペプチドは、前記AQGVペプチドの濃度が2mol/Lから2.5mol/Lの範囲である、前記AQGVペプチド-酒石酸塩又は前記AQGVペプチド-クエン酸塩のストック溶液から提供される、方法を提供する。より好ましい実施形態では、本発明は、血行動態安定性を維持又は改善する必要があると考えられるヒト対象の治療での使用のための方法であって、前記AQGVペプチドは、前記AQGVペプチド-クエン酸塩の濃度が2.5mol/Lから3mol/Lの範囲である前記AQGVペプチド-クエン酸塩のストック溶液から提供される、方法を提供する。より好ましい実施形態では、本発明は、血行動態安定性を維持又は改善する必要があると考えられるヒト対象の治療での使用のための方法であって、前記AQGVペプチドは、前記前記ペプチド-クエン酸塩の濃度が3mol/Lから3.5mol/Lの範囲である前記ペプチド-クエン酸塩のストック溶液から提供される、方法を提供する。より好ましい実施形態では、本発明は、血行動態安定性を維持又は改善する必要があると考えられるヒト対象の治療での使用のための方法であって、前記AQGVペプチドは、前記ペプチド-クエン酸塩の濃度が3.5mol/Lから4.5mol/Lの範囲である前記ペプチド-クエン酸塩のストック溶液から提供される、方法を提供する。より好ましい実施形態では、本発明は、血行動態安定性を維持又は改善する必要があると考えられるヒト対象の治療での使用のための方法であって、前記AQGVペプチドは、前記ペプチド-クエン酸塩の濃度が4.5mol/Lから5.5mol/Lの範囲である前記ペプチド-クエン酸塩のストック溶液から提供される、方法を提供する。より好ましい実施形態では、本発明は、血行動態安定性を維持又は改善する必要があると考えられるヒト対象の治療での使用のための方法であって、前記AQGVペプチドは、前記ペプチド-クエン酸塩の濃度が5.5mol/L以上である前記ペプチド-クエン酸塩のストック溶液から提供される、方法を提供する。前記ストック溶液は水溶液であることが好ましい。
【0020】
別の実施形態では、本発明は、有害な血管透過性を減少させる必要があると考えられるヒト対象の治療での使用のための方法であって、前記AQGVペプチドは、AQGVペプチド-酢酸塩、AQGVペプチド-酒石酸塩、又はAQGVペプチド-クエン酸塩のストック溶液、好ましくは、水溶液から提供され、好ましくは、前記ストック溶液は、少なくとも0.85mol/L、より好ましくは、少なくとも0.9mol/L、より好ましくは、少なくとも1mol/L、より好ましくは、少なくとも1.2mol/L、より好ましくは、少なくとも1.4mol/L、より好ましくは、少なくとも1.6mol/L、最も好ましくは、少なくとも1.8mol/Lの、前記AQGVペプチド-酢酸塩、前記AQGVペプチド-酒石酸塩、又は前記AQGVペプチド-クエン酸塩を、備える、又は、含有するよう調製される、方法を提供する。より好ましい実施形態では、本発明は、有害な血管透過性を減少させる必要があると考えられるヒト対象の治療での使用のための方法であって、前記AQGVペプチドは、前記AQGVペプチドの濃度が2mol/Lから2.5mol/Lの範囲である、前記AQGVペプチド-酒石酸塩又は前記AQGVペプチド-クエン酸塩のストック溶液から提供される、方法を提供する。より好ましい実施形態では、本発明は、有害な血管透過性を減少させる必要があると考えられるヒト対象の治療での使用のための方法であって、前記AQGVペプチドは、前記AQGVペプチド-クエン酸塩の濃度が2.5mol/Lから3mol/Lの範囲である前記AQGVペプチド-クエン酸塩のストック溶液から提供される、方法を提供する。より好ましい実施形態では、本発明は、有害な血管透過性を減少させる必要があると考えられるヒト対象の治療での使用のための方法であって、前記AQGVペプチドは、前記ペプチド-クエン酸塩の濃度が3mol/Lから3.5mol/Lの範囲である前記ペプチド-クエン酸塩のストック溶液から提供される、方法を提供する。より好ましい実施形態では、本発明は、有害な血管透過性を減少させる必要があると考えられるヒト対象の治療での使用のための方法であって、前記AQGVペプチドは、前記ペプチド-クエン酸塩の濃度が3.5mol/Lから4.5mol/Lの範囲である前記ペプチド-クエン酸塩のストック溶液から提供される、方法を提供する。より好ましい実施形態では、本発明は、有害な血管透過性を減少させる必要があると考えられるヒト対象の治療での使用のための方法であって、前記AQGVペプチドは、前記ペプチド-クエン酸塩の濃度が4.5mol/Lから5.5mol/Lの範囲である前記ペプチド-クエン酸塩のストック溶液から提供される、方法を提供する。より好ましい実施形態では、本発明は、有害な血管透過性を減少させる必要があると考えられるヒト対象の治療での使用のための方法であって、前記AQGVペプチドは、前記ペプチド-クエン酸塩の濃度が5.5mol/L以上である前記ペプチド-クエン酸塩のストック溶液から提供される、方法を提供する。前記ストック溶液は水溶液であることが好ましい。
【0021】
別の実施形態では、本発明は、有害な体液貯留を減少させる必要があると考えられるヒト対象の治療での使用のための方法であって、前記AQGVペプチドは、AQGVペプチド-酢酸塩、AQGVペプチド-酒石酸塩、又はAQGVペプチド-クエン酸塩のストック溶液、好ましくは、水溶液から提供され、好ましくは、前記ストック溶液は、少なくとも0.85mol/L、より好ましくは、少なくとも0.9mol/L、より好ましくは、少なくとも1mol/L、より好ましくは、少なくとも1.2mol/L、より好ましくは、少なくとも1.4mol/L、より好ましくは、少なくとも1.6mol/L、最も好ましくは、少なくとも1.8mol/Lの、前記AQGVペプチド-酢酸塩、前記AQGVペプチド-酒石酸塩、又は前記AQGVペプチド-クエン酸塩を、備える、又は、含有するよう調製される、方法を提供する。より好ましい実施形態では、本発明は、有害な体液貯留を減少させる必要があると考えられるヒト対象の治療での使用のための方法であって、前記AQGVペプチドは、前記AQGVペプチドの濃度が2mol/Lから2.5mol/Lの範囲である、前記AQGVペプチド-酒石酸塩又は前記AQGVペプチド-クエン酸塩のストック溶液から提供される、方法を提供する。より好ましい実施形態では、本発明は、有害な体液貯留を減少させる必要があると考えられるヒト対象の治療での使用のための方法であって、前記AQGVペプチドは、前記AQGVペプチド-クエン酸塩の濃度が2.5mol/Lから3mol/Lの範囲である前記AQGVペプチド-クエン酸塩のストック溶液から提供される、方法を提供する。より好ましい実施形態では、本発明は、有害な体液貯留を減少させる必要があると考えられるヒト対象の治療での使用のための方法であって、前記AQGVペプチドは、前記ペプチド-クエン酸塩の濃度が3mol/Lから3.5mol/Lの範囲である前記ペプチド-クエン酸塩のストック溶液から提供される、方法を提供する。より好ましい実施形態では、本発明は、有害な体液貯留を減少させる必要があると考えられるヒト対象の治療での使用のための方法であって、前記AQGVペプチドは、前記ペプチド-クエン酸塩の濃度が3.5mol/Lから4.5mol/Lの範囲である前記ペプチド-クエン酸塩のストック溶液から提供される、方法を提供する。より好ましい実施形態では、本発明は、有害な体液貯留を減少させる必要があると考えられるヒト対象の治療での使用のための方法であって、前記AQGVペプチドは、前記ペプチド-クエン酸塩の濃度が4.5mol/Lから5.5mol/Lの範囲である前記ペプチド-クエン酸塩のストック溶液から提供される、方法を提供する。より好ましい実施形態では、本発明は、有害な体液貯留を減少させる必要があると考えられるヒト対象の治療での使用のための方法であって、前記AQGVペプチドは、前記ペプチド-クエン酸塩の濃度が5.5mol/L以上である前記ペプチド-クエン酸塩のストック溶液から提供される、方法を提供する。前記ストック溶液は水溶液であることが好ましい。
【0022】
別の実施形態では、本発明は、クラークソン病(Clarkson’s disease、CLS)を罹患している又は罹患していると考えられるヒト対象の治療での使用のための方法であって、前記AQGVペプチドは、AQGVペプチド-酢酸塩、AQGVペプチド-酒石酸塩、又はAQGVペプチド-クエン酸塩のストック溶液、好ましくは、水溶液から提供され、好ましくは、前記ストック溶液は、少なくとも0.85mol/L、より好ましくは、少なくとも0.9mol/L、より好ましくは、少なくとも1mol/L、より好ましくは、少なくとも1.2mol/L、より好ましくは、少なくとも1.4mol/L、より好ましくは、少なくとも1.6mol/L、最も好ましくは、少なくとも1.8mol/Lの、前記AQGVペプチド-酢酸塩、前記AQGVペプチド-酒石酸塩、又は前記AQGVペプチド-クエン酸塩を、備える、又は、含有するよう調製される、方法を提供する。より好ましい実施形態では、本発明は、クラークソン病(CLS)を罹患している又は罹患していると考えられるヒト対象の治療での使用のための方法であって、前記AQGVペプチドは、前記AQGVペプチドの濃度が2mol/Lから2.5mol/Lの範囲である、前記AQGVペプチド-酒石酸塩又は前記AQGVペプチド-クエン酸塩のストック溶液から提供される、方法を提供する。より好ましい実施形態では、本発明は、クラークソン病(CLS)を罹患している又は罹患していると考えられるヒト対象の治療での使用のための方法であって、前記AQGVペプチドは、前記AQGVペプチド-クエン酸塩の濃度が2.5mol/Lから3mol/Lの範囲である前記AQGVペプチド-クエン酸塩のストック溶液から提供される、方法を提供する。より好ましい実施形態では、本発明は、クラークソン病(CLS)を罹患している又は罹患していると考えられるヒト対象の治療での使用のための方法であって、前記AQGVペプチドは、前記ペプチド-クエン酸塩の濃度が3mol/Lから3.5mol/Lの範囲である前記ペプチド-クエン酸塩のストック溶液から提供される、方法を提供する。より好ましい実施形態では、本発明は、クラークソン病(CLS)を罹患している又は罹患していると考えられるヒト対象の治療での使用のための方法であって、前記AQGVペプチドは、前記ペプチド-クエン酸塩の濃度が3.5mol/Lから4.5mol/Lの範囲である前記ペプチド-クエン酸塩のストック溶液から提供される、方法を提供する。より好ましい実施形態では、本発明は、クラークソン病(CLS)を罹患している又は罹患していると考えられるヒト対象の治療での使用のための方法であって、前記AQGVペプチドは、前記ペプチド-クエン酸塩の濃度が4.5mol/Lから5.5mol/Lの範囲である前記ペプチド-クエン酸塩のストック溶液から提供される、方法を提供する。より好ましい実施形態では、本発明は、クラークソン病(CLS)を罹患している又は罹患していると考えられるヒト対象の治療での使用のための方法であって、前記AQGVペプチドは、前記ペプチド-クエン酸塩の濃度が5.5mol/L以上である前記ペプチド-クエン酸塩のストック溶液から提供される、方法を提供する。前記ストック溶液は水溶液であることが好ましい。
【0023】
別の実施形態では、本発明は、血行動態安定性を維持又は改善する必要があると考えられるヒト対象の治療での使用のためのAQGVペプチドであって、前記ペプチドは、アラニン(一文字表記でA)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)、及びアルギニン(R)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択される、少なくとも50%の、より好ましくは、少なくとも75%の、最も好ましくは、100%のアミノ酸を含み、前記AQGVペプチドは、より好ましくは、アラニン(一文字表記でA)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、及びプロリン(P)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択される、少なくとも50%の、より好ましくは、少なくとも75%の、最も好ましくは、100%のアミノ酸を含み、好ましくは、前記AQGVペプチドは、アラニン(一文字表記でA)、グルタミン(Q)、ロイシン(L)、及びプロリン(P)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択される、少なくとも50%の、より好ましくは、少なくとも75%の、最も好ましくは、100%のアミノ酸を含み、又は、前記AQGVペプチドは、アラニン(一文字表記でA)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、及びバリン(V)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択される、少なくとも50%の、より好ましくは、少なくとも75%の、最も好ましくは、100%のアミノ酸を含む、ペプチドを提供する。最も好ましくは、前記ペプチドは、アラニン(一文字表記でA)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、及びバリン(V)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択される、少なくとも50%の、より好ましくは、少なくとも75%の、最も好ましくは、100%のアミノ酸からなる。血行動態安定性を維持又は改善する必要があると考えられるヒト対象の治療での使用のための前記ペプチドはAQGVであることが好ましい。
【0024】
別の実施形態では、本発明は、有害な血管透過性を減少させる必要があると考えられるヒト対象の治療での使用のためのAQGVペプチドであって、前記ペプチドは、アラニン(一文字表記でA)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)、及びアルギニン(R)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択される、少なくとも50%の、より好ましくは、少なくとも75%の、最も好ましくは、100%のアミノ酸を含み、前記AQGVペプチドは、より好ましくは、アラニン(一文字表記でA)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、及びプロリン(P)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択される、少なくとも50%の、より好ましくは、少なくとも75%の、最も好ましくは、100%のアミノ酸を含み、好ましくは、前記AQGVペプチドは、アラニン(一文字表記でA)、グルタミン(Q)、ロイシン(L)、及びプロリン(P)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択される、少なくとも50%の、より好ましくは、少なくとも75%の、最も好ましくは、100%のアミノ酸を含み、又は、前記AQGVペプチドは、アラニン(一文字表記でA)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、及びバリン(V)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択される、少なくとも50%の、より好ましくは、少なくとも75%の、最も好ましくは、100%のアミノ酸を含む、ペプチドを提供する。最も好ましくは、前記ペプチドは、アラニン(一文字表記でA)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、及びバリン(V)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択される、少なくとも50%の、より好ましくは、少なくとも75%の、最も好ましくは、100%のアミノ酸からなる。血行動態安定性を維持又は改善する必要があると考えられるヒト対象の治療での使用のための前記ペプチドはAQGVであることが好ましい。
【0025】
別の実施形態では、本発明は、有害な体液貯留を減少させる必要があると考えられるヒト対象のAQGVペプチド治療であって、前記ペプチドは、アラニン(一文字表記でA)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)、及びアルギニン(R)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択される、少なくとも50%の、より好ましくは、少なくとも75%の、最も好ましくは、100%のアミノ酸を含み、前記AQGVペプチドは、より好ましくは、アラニン(一文字表記でA)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、及びプロリン(P)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択される、少なくとも50%の、より好ましくは、少なくとも75%の、最も好ましくは、100%のアミノ酸を含み、好ましくは、前記AQGVペプチドは、アラニン(一文字表記でA)、グルタミン(Q)、ロイシン(L)、及びプロリン(P)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択される、少なくとも50%の、より好ましくは、少なくとも75%の、最も好ましくは、100%のアミノ酸を含み、又は、前記AQGVペプチドは、アラニン(一文字表記でA)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、及びバリン(V)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択される、少なくとも50%の、より好ましくは、少なくとも75%の、最も好ましくは、100%のアミノ酸を含む、治療を提供する。最も好ましくは、前記ペプチドは、アラニン(一文字表記でA)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、及びバリン(V)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択される、少なくとも50%の、より好ましくは、少なくとも75%の、最も好ましくは、100%のアミノ酸からなる。有害な体液貯留を減少させる必要があると考えられるヒト対象の治療での使用のための前記ペプチドはAQGVであることが好ましい。
【0026】
別の実施形態では、本発明は、有害な体液貯留を減少させる必要があると考えられるヒト対象のAQGVペプチド治療であって、前記ペプチドは、アラニン(一文字表記でA)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)、及びアルギニン(R)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択される、少なくとも50%の、より好ましくは、少なくとも75%の、最も好ましくは、100%のアミノ酸を含み、前記AQGVペプチドは、より好ましくは、アラニン(一文字表記でA)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、及びプロリン(P)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択される、少なくとも50%の、より好ましくは、少なくとも75%の、最も好ましくは、100%のアミノ酸を含み、好ましくは、前記AQGVペプチドは、アラニン(一文字表記でA)、グルタミン(Q)、ロイシン(L)、及びプロリン(P)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択される、少なくとも50%の、より好ましくは、少なくとも75%の、最も好ましくは、100%のアミノ酸を含み、又は、前記AQGVペプチドは、アラニン(一文字表記でA)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、及びバリン(V)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択される、少なくとも50%の、より好ましくは、少なくとも75%の、最も好ましくは、100%のアミノ酸を含む、治療を提供する。最も好ましくは、前記ペプチドは、アラニン(一文字表記でA)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、及びバリン(V)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択される、少なくとも50%の、より好ましくは、少なくとも75%の、最も好ましくは、100%のアミノ酸からなる。有害な体液貯留を減少させる必要があると考えられるヒト対象の治療での使用のための前記ペプチドはAQGVであることが好ましい。
【0027】
別の実施形態では、本発明は、本発明に係るAQGVペプチドであって、対象が手術などの重症外傷を受けている、AQGVペプチドを提供する。
【0028】
別の実施形態では、本発明は、本発明に係るペプチドであって、対象が抗悪性腫瘍剤又は免疫調節剤による治療などのがん治療を受けている、ペプチドを提供する。別の実施形態では、本発明は、本発明に係るAQGVペプチドであって、対象が薬物有害反応でみられるものなどの毛細血管漏出症候群に罹患していると考えられる、AQGVペプチドを提供する。
【0029】
別の実施形態では、本発明は、本発明に係るAQGVペプチドであって、前記ヒト対象は腎機能障害を有する、AQGVペプチドを提供する。別の実施形態では、本発明は、本発明に係るAQGVペプチドであって、使用が昇圧剤の減少された使用を含む(もたらす)、AQGVペプチドを提供する。別の実施形態では、本発明は、本発明に係るAQGVペプチドであって、使用が減少された水分摂取量を含む(もたらす)、AQGVペプチドを提供する。別の実施形態では、本発明は、本発明に係るAQGVペプチドであって、前記ペプチドは、有機酸の塩であり、好ましくは、当該有機酸は、マレイン酸、酢酸、酒石酸、及びクエン酸からなる群から選択される、AQGVペプチドを提供する。別の実施形態では、本発明は、本発明に係るAQGVペプチドであって、前記AQGVペプチドは、マレイン酸などの有機酸の、より好ましくは、酢酸の、より好ましくは、酒石酸の、最も好ましくは、クエン酸の、塩である、AQGVペプチドを提供する。別の実施形態では、本発明は、AQGVペプチドがAQGVペプチド(好ましくは、前記AQGVペプチドは、AQGVペプチド-酢酸塩、AQGVペプチド-酒石酸塩、又はAQGVペプチド-クエン酸塩である)のストック溶液、好ましくは、水溶液から提供され、好ましくは、前記ストック溶液は、少なくとも0.85mol/L、より好ましくは、少なくとも0.9mol/L、より好ましくは、少なくとも1mol/L、より好ましくは、少なくとも1.2mol/L、より好ましくは、少なくとも1.4mol/L、より好ましくは、少なくとも1.6mol/L、最も好ましくは、少なくとも1.8mol/Lの、前記AQGVペプチド-酢酸塩、前記AQGVペプチド-酒石酸塩、又は前記AQGVペプチド-クエン酸塩を、備える、又は、含有するよう調製される、方法を提供する。より好ましい実施形態では、本発明は、前記AQGVペプチドの濃度が2mol/Lから2.5mol/Lの範囲である、前記AQGVペプチド-酒石酸塩又は前記AQGVペプチド-クエン酸塩のストック溶液を提供する。より好ましい実施形態では、本発明は、前記AQGVペプチド-クエン酸塩の濃度が2.5mol/Lから3mol/Lの範囲である前記AQGVペプチド-クエン酸塩のストック溶液を提供する。より好ましい実施形態では、本発明は、前記ペプチド-クエン酸塩の濃度が3mol/Lから3.5mol/Lの範囲である前記ペプチド-クエン酸塩のストック溶液を提供する。より好ましい実施形態では、本発明は、前記ペプチド-クエン酸塩の濃度が3.5mol/Lから4.5mol/Lの範囲である前記ペプチド-クエン酸塩のストック溶液を提供する。より好ましい実施形態では、本発明は、前記ペプチド-クエン酸塩の濃度が4.5mol/Lから5.5mol/Lの範囲である前記ペプチド-クエン酸塩のストック溶液を提供する。より好ましい実施形態では、本発明は、前記ペプチド-クエン酸塩の濃度が5.5mol/L以上である前記ペプチド-クエン酸塩のストック溶液を提供する。前記ストック溶液は水溶液であることが好ましい。
【0030】
別の実施形態では、本発明は、本発明に係るAQGVペプチドを含む医薬製剤を提供する。別の実施形態では、本発明は、本発明に係る医薬製剤及び少なくとも1つの医薬上許容可能な添加剤を提供する。前記製剤はAQGVペプチドのストック溶液であることが好ましい。好ましくは、AQGVペプチド-酢酸塩、AQGVペプチド-酒石酸塩、又はAQGVペプチド-クエン酸塩のストック溶液、好ましくは、水溶液であり、好ましくは、前記ストック溶液は、少なくとも0.85mol/L、より好ましくは、少なくとも0.9mol/L、より好ましくは、少なくとも1mol/L、より好ましくは、少なくとも1.2mol/L、より好ましくは、少なくとも1.4mol/L、より好ましくは、少なくとも1.6mol/L、最も好ましくは、少なくとも1.8mol/Lの、前記AQGVペプチド-酢酸塩、前記AQGVペプチド-酒石酸塩、又は前記AQGVペプチド-クエン酸塩を、備える、又は、含有するよう調製される。より好ましい実施形態では、本発明は、前記AQGVペプチドの濃度が2mol/Lから2.5mol/Lの範囲である、前記AQGVペプチド-酒石酸塩又は前記AQGVペプチド-クエン酸塩のストック溶液を含む、医薬製剤を提供する。より好ましい実施形態では、本発明は、前記AQGVペプチド-クエン酸塩の濃度が2.5mol/Lから3mol/Lの範囲である前記AQGVペプチド-クエン酸塩のストック溶液を含む医薬製剤を提供する。より好ましい実施形態では、本発明は、血行動態安定性を維持又は改善する必要があると考えられるヒト対象の治療方法であって、前記AQGVペプチドは、前記ペプチド-クエン酸塩の濃度が3mol/Lから3.5mol/Lの範囲である前記ペプチド-クエン酸塩のストック溶液から提供される、方法を提供する。より好ましい実施形態では、本発明は、前記AQGVペプチド-クエン酸塩の濃度が3.5mol/Lから4.5mol/Lの範囲である前記AQGVペプチド-クエン酸塩のストック溶液を含む医薬製剤を提供する。より好ましい実施形態では、本発明は、前記AQGVペプチド-クエン酸塩の濃度が4.5mol/Lから5.5mol/Lの範囲である前記AQGVペプチド-クエン酸塩のストック溶液を含む医薬製剤を提供する。より好ましい実施形態では、本発明は、前記AQGVペプチド-クエン酸塩の濃度が5.5mol/L以上である前記AQGVペプチド-クエン酸塩のストック溶液を含む医薬製剤を提供する。前記ストック溶液は水溶液であることが好ましい。
【0031】
一実施形態では、AQGVペプチド及びそのアナログの使用は、ヒト対象、特に、結果として生じる腎機能障害を持つ対象での血行動態を改変するための内科的治療での使用のためのものである。さらなる実施形態では、血行動態を改変するためのヒト対象での使用は、ヒト対象、特に、結果として生じる腎機能障害を持つ対象での、減少している望ましくない体液貯留(すなわち、望ましくない体液過負荷)の減少及び/又は昇圧/変力剤の減少された使用を伴う。別の実施形態では、AQGVペプチド及びそのアナログの使用は、毛細血管漏出を有するヒト対象、特に、結果として生じる腎機能障害を持つ対象での使用のためのものである。
【0032】
一実施形態では、AQGVペプチド又はその機能的アナログはヒト対象の治療での使用のために提供され、当該使用はヒト対象での血行動態を改変するための治療を含む。血行動態は、血流の動態、すなわち、ヒトの身体を通る血流を支配する物理的要因に関与する。ヒト患者での血行動態は、例えば、血圧及び/又は輸液バランスを測定することにより、監視できる。ヒト患者において血圧が低い及び/又は輸液バランスが乱されている場合、昇圧剤又は変力物質が、例えば、静脈内で、使用及び/又は輸液投与され得る。変力物質及び昇圧剤は、異なる薬理群に由来し、体内の最も基礎的な受容体及びシグナル伝達系の幾つかで作用する、生物学的及び臨床的に重要な血管作動性薬剤である。こうした薬剤の20超が一般的に臨床使用されており、生理学及び薬理学の教科書の他にはそれらの薬理のレビューはまだ僅かしか存在しない。重病患者での広範な使用にもかかわらず、これらの薬の病理での臨床効果の理解は乏しい。昇圧剤及び変力物質の有害効果は作用機序に依存する。β刺激作用を有する薬剤では、不整脈は減らすことが望まれる最も一般的な有害効果のひとつである。
【0033】
本発明者は、AQGVペプチド又はその機能的アナログを用いることにより外傷後のヒト患者での血行動態が例えば昇圧剤の減少された使用及び/又はヒト患者での改善された輸液バランスで示されるように顕著に改善されることを発見した。こうして、AQGVペプチド又はその(本明細書で定義するところの)機能的アナログの使用は、本明細書で記載のように、ヒト患者での血行動態安定性を改善する。ヒト対象での血行動態の改変または最適化は、手術後又は受傷後に、例えば、ヒト対象が外傷及び/又は失血を患っている場合に、重要である。したがって、AQGVペプチド又はそのアナログは血行動態療法に有利に使用できる。血行動態療法、すなわち、患者での血行動態の最適化は、周術期血行動態療法及び/又は目標指向血行動態療法を含む。こうした療法は患者での輸液管理及び/又は昇圧剤の使用を含み得る。
【0034】
機能的AQGVアナログは、本明細書では、量的には必ずしもそうではないが同様に、本明細書に記載のAQGVペプチドと類似の効果又は機能を奏するペプチドと定義される。これらは、本発明に基づき、単一種ペプチドとして、結果として生じる混合物の半減期を調節するために任意の所望の割合で他のアナログ及び/又はAQGVペプチドと組み合わせて用いられてもよい。機能的AQGVアナログは、配列同一性を有してもよく、すなわち、AQGVペプチドの少なくとも一部又は全体を含んでもよい。好ましくは、機能的AQGVアナログはAQGVペプチドの構造的アナログである。好ましい構造的アナログはLQGVペプチドであってもよい。AQGVペプチドの構造的アナログは、アラニン(一文字表記でA)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、及びプロリン(P)からなるアミノ酸の群から選択されるアミノ酸を含むペプチドから選択されてもよい。A、Q、G、V、及びLが好ましい。A、Q、G、及びVは、4-30アミノ酸の、好ましくは、4-12アミノ酸の長さで、他のものに対していかなる順番及び割合でも最も好ましい。好ましい実施形態では、本発明は、アラニン(一文字表記でA)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、プロリン(P)、及びアルギニン(R)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択される、少なくとも50%の、より好ましくは、少なくとも75%の、最も好ましくは、100%のアミノ酸を含む、構造的AQGVアナログを規定する。アミノ酸間の割合は変動し得うるが、本ペプチドは少なくとも3つの異なるアミノ酸を含まねばならず、Qは存在すべきである。好ましくは、AQGVペプチドの構造的アナログは、4-30アミノ酸の、より好ましくは、4-12アミノ酸の範囲の長さを有する。好ましくは、こうした構造的アナログは直鎖ペプチドである。AQGVの適切な構造的アナログは、4アミノ酸未満の長さ、例えば、3アミノ酸の長さを有してもよいが、こうしたペプチドの半減期がより短くそのためより好ましいことから、こうした長さはこうしたペプチドのより高い用量を要し得る。より長い構造的アナログ、例えば、30残基より長いものは、こうしたより長いペプチドの潜在的免疫原性のため、より好ましくない。本発明に係る構造的AQGVアナログは、AQLP、PLQA、LQGV、LAGV、PQVG、PQVA、VGQL、LQPL、LQVG、LQGA、AQGA、QPLA、PQVP、VGQA、QVGQ、VGQGの群から選択されるテトラペプチドを含むペプチドからなる群から選択されてもよい。
【0035】
昇圧剤は低血圧を上げることができる種類の薬物である。いくつかの昇圧剤は血管収縮剤として働き、他の昇圧剤はカテコールアミンー糖質コルチコイドに対してアドレナリン受容体を感作させ、別の種類の昇圧剤は心拍出量を増加させることができる。どの昇圧剤が用いられても、本発明は昇圧剤の使用の減少を可能とする。昇圧剤の使用の減少は用いられる昇圧剤の量の減少に関与し、すなわち、昇圧剤使用期間が減少され及び/又は昇圧剤の投与量が減少される。昇圧剤の例は、例えば、エピネフリン、ノルアドレナリン、フェニレフリン、ドブタミン、ドーパミン、及びバソプレッシンである。患者での輸液管理は、例えば、輸液の、経口、経腸、及び/又は、静脈内摂取量、並びに、体液排出量(例えば、尿)を監視し、その後に、例えば、体液貯留が観察された場合(すなわち、水分摂取量が体液排出量を超え、過負荷状況がある場合)に備えて、水分摂取量を管理することを伴う。際だったことに、AQGVペプチド又はそのアナログの使用は、体液貯留(本明細書では体液過負荷とも呼ぶ)を減少させることができる。したがって、AQGVペプチド又はその機能的アナログは、ヒト患者での血行動態を改善するための既知の介入に加えて、用いることができ、それにより、AQGVペプチド又はそのアナログを用いない場合に比べて血行動態のより迅速な改善をもたらす。
【0036】
別の実施形態では、AQGVペプチド又はその機能的アナログは、腎機能障害を有するヒト対象の治療での使用のために提供される。さらなる実施形態では、腎機能障害は急性腎障害(AKI)である。一実施形態では、AQGVペプチド又はその機能的アナログは、腎機能を改善するためのヒト対象の治療での使用のために提供される。腎機能は、糸球体濾過量(GFR)を決定することにより、例えば、血漿からのイオヘキソールのクリアランスを評価することにより、評価できる。腎機能は、クレアチニンの血漿レベルを測定し、性別、年齢、及び人種などの患者特性を考慮してMDRD(Modification of Diet in Renal Disease)式又は方程式とも呼ばれる推定GFR(eGFR)機能を当該血漿レベルから計算することによっても評価できる。腎機能は、RIFLE基準(
図3参照)を適用することによりGFR測定値(又はMDRDに基づくその推定値)に基づき評価できる。risk、injury、failure、loss、又はESKDのステージであるRIFLEスコアを有することは、腎障害及び/又は腎機能障害を意味し得る。ヒトで腎機能を(例えば、GFR、クレアチニンクリアランス、及び/又はeGFR/MDRDを決定することにより)評価することは、標準的な臨床診療である。AQGVペプチドを受けない場合と比較したときの腎機能の改善は、RIFLE基準下で評価した腎機能ステージが重症度がより低いステージに進行すること(例えば、患者が障害を有すること(injury)から障害の危険性がある(risk)又はAKIなしに進行すること)を含み得る。腎機能の改善は、GFR又はeGFRスコアの改善を有することも含む。どの評価がなされるかによらず、AQGVペプチド又はそのアナログの使用は、免疫調節効果を欠く対象での腎機能障害及び/又は腎障害を有するヒトでの腎機能を改善できる。
【0037】
AQGVペプチドの使用は、腎機能を改善することを可能とするが、腎機能の減少及び/又は障害も予防し得る(例えば、
図6、7、及び8参照)。その結果、AKIを防げるかもしれない。好ましくは、腎機能障害を有するヒト対象の予防では、AQGVペプチドは1時間当たり少なくとも50mg/kg患者体重(mg/kg/時間)の速度で投与される。好ましくは、この投与速度は、少なくとも60mg、少なくとも70、少なくとも80、又は、最も好ましくは、少なくとも90mg/kg/時間である。好ましくは、AQGVペプチドは、少なくとも1時間、より好ましくは、少なくとも1.5時間、最も好ましくは、少なくとも2時間にわたり投与される。好ましくは、AQGVペプチドの投与は、少なくとも70mg/kg/時間の速度で、少なくとも1時間、より好ましくは、少なくとも1.5時間、最も好ましくは、少なくとも2時間にわたり投与されるが、投与は3時間超などより長くてもよい。実投与時間は医者により決定されてもよい。したがって、一実施形態では、AQGVペプチド又はその機能的アナログの使用はヒト患者の腎機能を維持することを可能とする。したがって、AQGVペプチド又はそのアナログの使用はヒト患者での腎機能の保護を可能とする。別の実施形態では、AQGVペプチド又はそのアナログの使用はヒト患者での腎機能の減少及び/又は障害を予防する。例えば、AKIなし又は腎障害(AKIなど)を有する危険性があると分類されるかもしれないヒト患者は、こうした患者がAQGVペプチドによる治療を受ける場合に、重症度がより高いステージで腎機能欠如へと進行する代わりにその状態を維持するかもしれない。したがって、例えば(誘発性)外傷により腎障害を発症する危険性があるヒト患者は、AQGVペプチド又はそのアナログによる治療を受けた結果として、その腎機能状態を維持し得る。
【0038】
別の実施形態では、AQGVペプチド又はその機能的アナログは腎機能障害を有するヒト対象での使用のために提供され、当該使用はヒト対象での血行動態を改変することを含む。腎機能の治療と血行動態安定性の治療とはここで結び付けることができ、本発明に従うAQGVペプチド又はその機能的アナログの使用は、腎機能を保護し及び/又は腎機能を改善するために有利に使用することができ、血行動態を改変する。こうした組み合わせ使用は、例えば、改善された及び/若しくは維持された腎機能、並びに、昇圧剤の使用の減少、並びに/又は、ヒト対象での改善された輸液管理をもたらす(例えば、表1、3、4、及び
図14、18、19、及び20参照)。好ましくは、腎機能障害を有するヒト対象の治療では、AQGVペプチドは1時間当たり少なくとも50mg/kg患者体重(mg/kg/時間)の速度で投与される。好ましくは、この投与速度は、少なくとも60mg、少なくとも70、少なくとも80、又は、最も好ましくは、少なくとも90mg/kg/時間である。好ましくは、AQGVペプチドは、少なくとも1時間、より好ましくは、少なくとも1.5時間、最も好ましくは、少なくとも2時間にわたり投与される。好ましくは、AQGVペプチドの投与は、少なくとも70mg/kg/時間の速度で、少なくとも1時間、より好ましくは、少なくとも1.5時間、最も好ましくは、少なくとも2時間(少なくとも2.5時間など)、より好ましくは、少なくとも3.5時間、より好ましくは、少なくとも4.5時間にわたり投与される。
【0039】
さらなる実施形態では、本発明は、昇圧剤の減少された使用を規定する。昇圧剤の減少された使用が用いられる昇圧剤の量を減少させることを含むと理解される。昇圧剤の使用は昇圧剤の使用の期間を減少させることにより減少させることができる。昇圧剤の使用は昇圧剤の量を減少させること(例えば、投与量当たりの量を減少させる及び/又は投与間の時間間隔を増加させる)により減少させることができる。昇圧剤の使用は昇圧剤の量及び昇圧剤の使用の期間を減少させることにより減少させることができる。昇圧剤の使用を減少させることにより、ヒト対象は有利なことにAQGVペプチド又はそのアナログを受けていないヒト対象と比べてより迅速に回復する。好ましくは、昇圧剤の使用の量及び/又は期間を減少させる際の使用では、AQGVペプチドは1時間当たり少なくとも50mg/kg患者体重(mg/kg/時間)の速度で投与される。好ましくは、この投与速度は、少なくとも60mg、少なくとも70、少なくとも80、又は、最も好ましくは、少なくとも90mg/kg/時間である。好ましくは、AQGVペプチドは、少なくとも1時間、より好ましくは、少なくとも1.5時間、最も好ましくは、少なくとも2時間にわたり投与される。好ましくは、AQGVペプチドの投与は、少なくとも70mg/kg/時間の速度で、少なくとも1時間、より好ましくは、少なくとも1.5時間、最も好ましくは、少なくとも2時間(2.5時間以上など)にわたり投与される。別の実施形態では、AQGVペプチド又はその機能的アナログの使用は、ヒト対象での有害な体液貯留を減少させる。毛細血管の漏れやすさ、体液貯留又は体液過負荷がヒト対象で生じ得るが、その症状は、例えば、体重増加及び浮腫を含む。体液貯留(他にはむくみ又は浮腫としても知られる)又は毛細血管漏出は、体内での体液の蓄積である。血流から体液が漏出するにつれて、血液量及び血圧は低下する可能性がある。これは腎臓、脳、及び肝臓において当該臓器が正常に機能するために必要な酸素及び栄養を組織から欠乏させ得る。こうしたむくみは付属肢(足、足首、及び手など)に発症することが最も多いが、むくみは、臓器腔若しくは腹腔又は脳などの、体の他の部分にも発症し得る。むくみの原因は、薬剤、心臓病、肝臓病、又は腎不全に関連しているかもしれない。放射線治療又は幾つかの化学療法薬などのがん治療は、体内で体液貯留を生じさせ得る。この形態のがんのむくみは、足、足首、手、及び顔で最も目立つ。毛細血管内の体液が皮膚の層まで『漏出』する能力の増加を引き起こし、むくみをもたらすのは血管反応である。これは蕁麻疹単独に比べて生ずるのはごくまれである。体液貯留は、一般的に、舌、唇、又は瞼でむくみを引き起こす。気道のむくみは、呼吸困難、気道閉塞、また、最悪の場合は、死をもたらし得る。脳のむくみは血液脳関門の機能不全及び神経外傷後の浮腫形成と関連する又はこれらに追従することが多い。外傷性脳障害(traumatic brain injury、TBI)は発展途上国での主な死因及び長期の身体障害であり、特に、若年層及び高齢者が発症する。くも膜下出血又は脳内出血などの他種の脳障害と同様にTBIに関連する主要な臨床問題のひとつは、脳浮腫(制御できない場合には死をもたらすかもしれない神経組織の急激なむくみ)の形成である。
【0040】
別の懸念点は、血管から隣接する体腔及び筋肉への血漿の大量漏出の頻回再燃を特徴とする障害である毛細血管漏出症候群(capillary leak syndrome、CLS、全身性毛細血管漏出症候群(systemic capillary leak syndrome、SCLS)又はクラークソン病(CLS)とも呼ばれる))である。これは、治療されなければ臓器不全及び死をまねきうる血圧の急落をもたらす可能性がある。毛細血管漏出症候群(CLS)は深在性の血管漏出をともなう希少疾患であり、これは高い死亡率に関連する。当該疾患はがん患者でも生じ得るものであり、有効な治療戦略は未だ確立されていない。CLSは、自己免疫疾患、悪性血液病、ヘビ咬傷、及び、治療(化学療法及び治療的成長因子など)に特発又は続発し得る。CLSに有害に関連する薬物が実際には一般的に用いられていることが近年段々明らかとなっている。抗がん剤及び療法の有害作用としてCLSについて複数の報告が挙がってきており、抗がん薬の種類に応じたCLSの発症率が体系的に評価されてきている(PMID:30691103)。最多数の研究はインターロイキン-2(IL-2)治療中のCLS発症率について報告するものであり、次に多数の研究は抗表面抗原分類(抗CD)剤について報告するものであった。また、IL-2+イマチニブメシル酸塩及びリツキシマブなどのモノクローナル抗体(mAb)をはじめとする抗がん剤及び抗がん免疫療法剤などの抗悪性腫瘍薬又は免疫調節剤の使用は、抗がん治療の有害事象としてのCLSの発症率における用量依存的増加を示した。同様に、クラークソン病(CLS)は、(実験又は治験の)薬物試験への極めて一般的な有害応答としてヒト臨床試験で(疑い)薬物有害反応(adverse drug reaction、ADR)として一般的に報告されている。
【0041】
好ましくは、体液貯留を有するヒト対象の治療では、本明細書で定義するところのAQGVペプチドは1時間当たり少なくとも50mg/kg患者体重(mg/kg/時間)の速度で投与される。好ましくは、この投与速度は、少なくとも60mg、少なくとも70、少なくとも80、又は、最も好ましくは、少なくとも90mg/kg/時間である。好ましくは、AQGVペプチドは、少なくとも1時間、より好ましくは、少なくとも1.5時間、最も好ましくは、少なくとも2時間にわたり投与される。好ましくは、AQGVペプチドの投与は、少なくとも70mg/kg/時間の速度で、少なくとも1時間、より好ましくは、少なくとも1.5時間、最も好ましくは、少なくとも2時間(少なくとも2.5時間など)、より好ましくは、少なくとも3.5時間、より好ましくは、少なくとも4.5時間にわたり投与される。したがって、一実施形態では、AQGVペプチド又はそのアナログの使用は、ヒト対象において体液貯留を治療することを可能とする。したがって、AQGVペプチド又はそのアナログの使用は、ヒト対象において体液貯留を予防する。好ましい実施形態では、AQGVペプチド又はそのアナログの使用は、抗悪性腫瘍薬又は免疫調節剤による治療などの抗がん治療を受けているヒト患者において、クラークソン病(CLS)などの体液貯留を予防する。
【0042】
別の実施形態では、AQGVペプチド又はそのアナログの使用は、ヒト患者において体液貯留を予防する。ヒト対象での体液貯留の予防では、AQGVペプチドは1時間当たり少なくとも50mg/kg患者体重(mg/kg/時間)の速度で投与される。好ましくは、この投与速度は、少なくとも60mg、少なくとも70、少なくとも80、又は、最も好ましくは、少なくとも90mg/kg/時間である。好ましくは、AQGVペプチドは、少なくとも1時間、より好ましくは、少なくとも1.5時間、最も好ましくは、少なくとも2時間にわたり投与される。好ましくは、AQGVペプチドの投与は、少なくとも70mg/kg/時間の速度で、少なくとも1時間、より好ましくは、少なくとも1.5時間、最も好ましくは、少なくとも2時間、又は、少なくとも2.5時間以上にわたり投与される。好ましい実施形態では、AQGVペプチド又はそのアナログの使用は、毛細血管漏出に影響する抗悪性腫瘍薬又は免疫調節剤による治療などの抗がん治療を受けているヒト患者において、クラークソン病(CLS)などの体液貯留を予防する。別の好ましい実施形態では、AQGVペプチド又はそのアナログの使用は、しばしば抗悪性腫瘍薬又は免疫調節薬である毛細血管漏出に影響する薬物による(実験的)治療後のものなどの薬物有害反応を有するヒト患者において、クラークソン病(CLS)などの体液貯留を予防する。
【0043】
体液貯留は減少された腎機能及び/又は障害性血行動態の結果であり得る。したがって、AQGVペプチドの使用がヒト対象での腎機能及び/又は血行動態に影響し得ることから、AQGVペプチドの使用は体液貯留にも同様に影響し得る。体液貯留は漏出性毛細血管の結果であり得る。したがって、AQGVペプチド及び/又はそのアナログの使用は、毛細血管の漏出性に効果を有し、血管から周辺組織及び/又は臓器への血漿の漏出を減少させる可能性がある。最も好ましくは、浮腫はAQGVペプチドの使用により減少及び/又は回避され得る。浮腫は、患者への有害作用を有することから、有害体液貯留とも呼ばれるかもしれない。体液貯留の原因がなんであれ、AQGVペプチド及び/又はその機能的アナログの使用は、ヒト対象で体液貯留を改善し、これにより、体重増加及び浮腫などの体液貯留に関連する症状を緩和することができ、これは結果として利尿剤の使用を減少させ得る。好ましくは、体液貯留を有するヒト対象での使用では、本明細書で定義するところのAQGVペプチドは1時間当たり少なくとも50mg/kg患者体重(mg/kg/時間)の速度で投与される。好ましくは、この投与速度は、少なくとも60mg、少なくとも70、少なくとも80、又は、最も好ましくは、少なくとも90mg/kg/時間である。好ましくは、AQGVペプチドは、少なくとも1時間、より好ましくは、少なくとも1.5時間、最も好ましくは、少なくとも2時間にわたり投与される。好ましくは、AQGVペプチドの投与は、少なくとも70mg/kg/時間の速度で、少なくとも1時間、より好ましくは、少なくとも1.5時間、最も好ましくは、少なくとも2時間(少なくとも2.5時間など)、より好ましくは、少なくとも3.5時間、より好ましくは、少なくとも4.5時間にわたり投与される。
【0044】
別の実施形態では、本発明に従うAQGVペプチド又はその機能的アナログの使用は、腎障害を有する及び/又は血行動態療法を必要とする患者に限られるわけではない。本発明に従うAQGVペプチド及び/又はその機能的アナログの使用は、腎障害を有する危険性があると考えられている及び/又は血行動態療法を必要すると予期されるヒト患者の治療を含む。こうしたヒト患者は、集中治療に送られる予定である又は送られることが期待される患者を含む。したがって、AQGVペプチド又はその機能的アナログの使用は、例えば実施例で示されるような、手術などの誘発性外傷についての使用を含む。誘発性外傷は、人体への任意の物理的障害を含み、典型的には、失血及び/又はヒト対象の組織への傷害を含み得る。誘発性外傷は、例えば、手術を含む。したがって、好ましい実施形態では、誘発性外傷は手術である。手術などの誘発性外傷についてのAQGVペプチドの使用は、手術の、前、最中、及び/又は、後である。AQGVペプチド又はそのアナログの使用は手術中であることが好ましいかもしれない。特に、手術は、より好ましくは、心肺バイパスを必要としてもよい。有利には、実施例に示されるようなAQGVペプチドの使用は、特に、長期間の心肺バイパスを有し、ひいては、AQGVペプチドの注入を長期間、すなわち、2.5時間超受ける患者で、GFRを改善した。したがって、さらなる実施形態では、AQGVペプチド又はそのアナログの使用は、2.5時間を超える長さの心肺バイパスの最中であり、ここで、AQGVペプチド又はその(機能的)アナログは心肺バイパス中に投与される。好ましくは、AQGVペプチドは、AQGVペプチドは1時間当たり少なくとも50mg/kg患者体重(mg/kg/時間)の速度で投与される。好ましくは、この投与速度は、少なくとも60mg、少なくとも70、少なくとも80、又は、最も好ましくは、少なくとも90mg/kg/時間である。好ましくは、AQGVペプチドは、少なくとも1時間、より好ましくは、少なくとも1.5時間、最も好ましくは、少なくとも2時間にわたり投与される。好ましくは、AQGVペプチドの投与は、少なくとも70mg/kg/時間の速度で、少なくとも1時間、より好ましくは、少なくとも1.5時間、最も好ましくは、少なくとも2時間又は少なくとも2.5時間、より好ましくは、少なくとも3.5時間、より好ましくは、少なくとも4.5時間にわたり投与される。典型的には、本発明に係るAQGVペプチド(又はその組み合わせ)の投与は、介入手技の全体にわたり、また、ときにはその後にも、持続する可能性がある。しかし、治療されている対象で輸液バランスを調節することは本発明に係る組成物又は製剤の投与を必要とするかを介入中に決定し、介入中に当該投与を開始することが可能である。別の又はさらなる実施形態では、本発明に従う使用についてのAQGVペプチド又はその機能的アナログの使用は、心不全を有するヒト対象での使用についてのものである。好ましくは、心不全を有するヒト対象での使用では、AQGVペプチドは1時間当たり少なくとも50mg/kg患者体重(mg/kg/時間)の速度で投与される。好ましくは、この投与速度は、少なくとも60mg、少なくとも70、少なくとも80、又は、最も好ましくは、少なくとも90mg/kg/時間である。好ましくは、AQGVペプチドは、少なくとも1時間、より好ましくは、少なくとも1.5時間、最も好ましくは、少なくとも2時間にわたり投与される。好ましくは、AQGVペプチドの投与は、少なくとも70mg/kg/時間の速度で、少なくとも1時間、より好ましくは、少なくとも1.5時間、最も好ましくは、少なくとも2時間(少なくとも2.5時間など)、より好ましくは、少なくとも3.5時間、より好ましくは、少なくとも4.5時間にわたり投与される。
【0045】
別の実施形態では、本発明に従うAQGVペプチド又はその機能的アナログの使用は、腎障害を有する及び/又は血行動態療法を必要とする患者に限られるわけではない。本発明は、体液過負荷に罹患している又は体液過負荷に由来する危険性があると考えられる又は罹患しているヒト対象の治療での使用のためのAQGVペプチド又はその機能的アナログの使用を含み、当該使用はヒト対象で血行動態を改変することを含む。本発明に従うAQGVペプチド又はその機能的アナログの使用は、体液過負荷を有する危険性があると考えられている及び/又は血行動態療法を必要すると予期されるヒト患者の治療を含む。こうしたヒト患者は、集中治療に送られる予定である又は送られることが期待される患者を含む。したがって、AQGVペプチド又はその機能的アナログの使用は、例えば実施例で示されるような、輸液療法によるものなどの誘発性体液過負荷の予防のための使用を含む。好ましくは、誘導性体液過負荷の予防のための使用では、AQGVペプチドの投与は、少なくとも70mg/kg/時間の速度で、少なくとも1時間、より好ましくは、少なくとも1.5時間、最も好ましくは、少なくとも2時間又は少なくとも2.5時間、より好ましくは、少なくとも3.5時間、より好ましくは、少なくとも4.5時間にわたり投与される。
【0046】
別の実施形態では、本発明に従うAQGVペプチド又はその機能的アナログの使用は、腎障害を有する及び/又は血行動態療法を必要とする患者に限られるわけではない。本発明は、昇圧剤/変力治療が必要であると考えられるヒト対象の治療での使用のためのAQGVペプチド又はその機能的アナログの使用を含み、当該使用はヒト対象で血行動態を改変することを含む。本発明に従うAQGVペプチド又はその機能的アナログの使用は、昇圧剤又は変力薬剤による治療のために危険性があると考えられている及び/又は血行動態療法を必要すると予期されるヒト患者の治療を含む。こうしたヒト患者は、集中治療に送られる予定である又は送られることが期待される患者を含む。したがって、AQGVペプチド又はその機能的アナログの使用は、例えば実施例で示されるような、ドーパミン、ドブタミン、アドレナリン、ノルアドレナリン、フェニレフリン、バソプレッシン、及びミルリノンの群から選択される薬剤による治療などの昇圧剤又は変力剤の使用による治療に起因する危険性があると考えられるヒト患者の治療のための使用を含む。好ましくは、昇圧剤又は変力剤の使用による治療に起因する危険性があると考えられるヒト患者の治療のための使用では、AQGVペプチドは1時間当たり少なくとも50mg/kg患者体重(mg/kg/時間)の速度で投与される。好ましくは、この投与速度は、少なくとも60mg、少なくとも70、少なくとも80、又は、最も好ましくは、少なくとも90mg/kg/時間である。好ましくは、AQGVペプチドは、少なくとも1時間、より好ましくは、少なくとも1.5時間、最も好ましくは、少なくとも2時間にわたり投与される。好ましくは、AQGVペプチドの投与は、少なくとも70mg/kg/時間の速度で、少なくとも1時間、より好ましくは、少なくとも1.5時間、最も好ましくは、少なくとも2時間(少なくとも2.5時間など)、より好ましくは、少なくとも3.5時間、より好ましくは、少なくとも4.5時間にわたり投与される。
【0047】
別の実施形態では、本発明に従うAQGVペプチド又はその機能的アナログの使用は、腎障害を有する及び/又は血行動態療法を必要とする患者に限られるわけではない。本発明は、ICUへの対象の滞在期間を改善するための、さらには、ICUへの対象の滞在期間を短縮するための、ヒト対象の治療での使用のためのAQGVペプチド又はその機能的アナログの使用を含み、当該使用はヒト対象で血行動態を改変することを含む。本発明に従うAQGVペプチド又はその機能的アナログの使用は、昇圧剤又は変力薬剤による治療に起因する危険性があると考えられている及び/又は輸液療法による血行動態療法を必要すると予期されるヒト患者の治療を含む。こうしたヒト患者は、集中治療に送られる若しくは送られる予定である又は送られることが期待される患者を含み、このために、ICUでの滞在期間を短縮することが期待される。したがって、AQGVペプチド又はその機能的アナログの使用は、例えば実施例で示されるような、昇圧剤又は変力薬剤による及び/又は輸液療法による治療に起因する危険性があると考えられるヒト患者の治療のための使用を含む。好ましくは、特にICU入室などの際に危険性があると考えられるヒト患者におけるICUへの対象の滞在期間を短縮するための使用では、AQGVペプチドは1時間当たり少なくとも50mg/kg患者体重(mg/kg/時間)の速度で投与される。好ましくは、この投与速度は、少なくとも60mg、少なくとも70、少なくとも80、又は、最も好ましくは、少なくとも90mg/kg/時間である。好ましくは、AQGVペプチドは、少なくとも1時間、より好ましくは、少なくとも1.5時間、最も好ましくは、少なくとも2時間にわたり投与される。好ましくは、AQGVペプチドの投与は、少なくとも70mg/kg/時間の速度で、少なくとも1時間、より好ましくは、少なくとも1.5時間、最も好ましくは、少なくとも2時間(少なくとも2.5時間など)、より好ましくは、少なくとも3.5時間、より好ましくは、少なくとも4.5時間にわたり投与される。
【0048】
別の実施形態では、本発明に従うAQGVペプチド又はその機能的アナログの使用は、腎障害を有する及び/又は血行動態療法を必要とする患者に限られるわけではない。本発明は、病院への対象の滞在期間を改善する(すなわち、減少させる)ためのヒト対象の治療での使用のためのAQGVペプチド又はその機能的アナログの使用を含み、当該使用はヒト対象で血行動態を改変することを含む。本発明に従うAQGVペプチド又はその機能的アナログの使用は、昇圧剤又は変力薬剤による治療に起因する危険性があると考えられている及び/又は昇圧剤又は変力薬剤が必要であると期待される及び/又は輸液療法による血行動態療法を必要すると予期されるヒト患者の治療を含む。こうしたヒト患者は、集中治療又は病院に送られる若しくは送られる予定である又は送られることが期待される患者を含み、このために、病院での滞在期間を短縮することが期待される。したがって、AQGVペプチド又はその機能的アナログの使用は、例えば実施例で示されるような、昇圧剤又は変力薬剤による及び/又は輸液療法による治療に起因する危険性があると考えられるヒト患者の治療のための使用を含む。好ましくは、特にICU入室などの際に危険性があると考えられるヒト患者におけるICUへの対象の滞在期間を短縮するための使用では、AQGVペプチドは1時間当たり少なくとも50mg/kg患者体重(mg/kg/時間)の速度で投与される。好ましくは、この投与速度は、少なくとも60mg、少なくとも70、少なくとも80、又は、最も好ましくは、少なくとも90mg/kg/時間である。好ましくは、AQGVペプチドは、少なくとも1時間、より好ましくは、少なくとも1.5時間、最も好ましくは、少なくとも2時間にわたり投与される。好ましくは、AQGVペプチドの投与は、少なくとも70mg/kg/時間の速度で、少なくとも1時間、より好ましくは、少なくとも1.5時間、最も好ましくは、少なくとも2時間(少なくとも2.5時間など)、より好ましくは、少なくとも3.5時間、より好ましくは、少なくとも4.5時間にわたり投与される。
【0049】
本発明は、血行動態安定性を維持又は改善する必要があると考えられるヒト対象の治療での使用のためのAQGVペプチドであって、前記AQGVペプチドは、アラニン(一文字表記でA)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)、及びアルギニン(R)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択される少なくとも50%のアミノ酸を含む、AQGVペプチドも提供する。好ましい実施形態では、前記AQGVペプチドは、最良のオートファジー阻害性を有することが判明していた、アラニン(A)、グルタミン(Q)、及びロイシン(L)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択される、少なくとも50%の、より好ましくは、少なくとも60%の、最も好ましくは少なくとも70%のアミノ酸を含む。より好ましい実施形態では、前記AQGVペプチドは、グリシン(G)、バリン(V)、イソロイシン(I)、プロリン(P)、及びアルギニン(R)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択される、多くとも30%の、より好ましくは、多くとも20%の、最も好ましくは、多くとも10%のアミノ酸を含み、これらのアミノ酸の含有は必要に応じてAQGVペプチドにタンパク質分解感受性を付与するために望ましい。一実施形態では、AQGVペプチドはアラニン(一文字表記でA)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、及びバリン(V)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択されるアミノ酸からなることが好ましい。溶解性を改善するために、前記AQGVペプチドは、AQGVペプチド-酢酸塩の群、より好ましくは、AQGVペプチド-酒石酸塩の群、最も好ましくは、AQGVペプチド-クエン酸塩の群から選択される塩であることが好ましい。AQGVペプチドは4-30アミノ酸で長さが異なる。
【0050】
本発明は、有害な血管透過性を減少させる必要があると考えられるヒト対象の治療での使用のためのAQGVペプチドであって、前記AQGVペプチドは、アラニン(一文字表記でA)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)、及びアルギニン(R)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択される少なくとも50%のアミノ酸を含む、AQGVペプチドも提供する。好ましい実施形態では、前記AQGVペプチドは、最良のオートファジー阻害性を有することが判明していた、アラニン(A)、グルタミン(Q)、及びロイシン(L)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択される、少なくとも50%の、より好ましくは、少なくとも60%の、最も好ましくは少なくとも70%のアミノ酸を含む。より好ましい実施形態では、前記AQGVペプチドは、グリシン(G)、バリン(V)、イソロイシン(I)、プロリン(P)、及びアルギニン(R)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択される、多くとも30%の、より好ましくは、多くとも20%の、最も好ましくは、多くとも10%のアミノ酸を含み、これらのアミノ酸の含有は必要に応じてAQGVペプチドにタンパク質分解感受性を付与するために望ましい。一実施形態では、AQGVペプチドはアラニン(一文字表記でA)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、及びバリン(V)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択されるアミノ酸からなることが好ましい。溶解性を改善するために、前記AQGVペプチドは、AQGVペプチド-酢酸塩の群、より好ましくは、AQGVペプチド-酒石酸塩の群、最も好ましくは、AQGVペプチド-クエン酸塩の群から選択される塩であることが好ましい。AQGVペプチドは4-30アミノ酸で長さが異なる。
【0051】
本発明は、有害な体液を減少させる必要があると考えられるヒト対象の治療での使用のためのAQGVペプチドであって、前記AQGVペプチドは、アラニン(一文字表記でA)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)、及びアルギニン(R)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択される少なくとも50%のアミノ酸を含む、AQGVペプチドも提供する。好ましい実施形態では、前記AQGVペプチドは、最良のオートファジー阻害性を有することが判明していた、アラニン(A)、グルタミン(Q)、及びロイシン(L)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択される、少なくとも50%の、より好ましくは、少なくとも60%の、最も好ましくは少なくとも70%のアミノ酸を含む。より好ましい実施形態では、前記AQGVペプチドは、グリシン(G)、バリン(V)、イソロイシン(I)、プロリン(P)、及びアルギニン(R)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択される、多くとも30%の、より好ましくは、多くとも20%の、最も好ましくは、多くとも10%のアミノ酸を含み、これらのアミノ酸の含有は必要に応じてAQGVペプチドにタンパク質分解感受性を付与するために望ましい。一実施形態では、AQGVペプチドはアラニン(一文字表記でA)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、及びバリン(V)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択されるアミノ酸からなることが好ましい。溶解性を改善するために、前記AQGVペプチドは、AQGVペプチド-酢酸塩の群、より好ましくは、AQGVペプチド-酒石酸塩の群、最も好ましくは、AQGVペプチド-クエン酸塩の群から選択される塩であることが好ましい。AQGVペプチドは4-30アミノ酸で長さが異なる。
【0052】
本発明は、クラークソン病(CLS)を罹患している又は罹患していると考えられるヒト対象の治療での使用のためのAQGVペプチドであって、前記AQGVペプチドは、アラニン(一文字表記でA)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)、及びアルギニン(R)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択される少なくとも50%のアミノ酸を含む、AQGVペプチドも提供する。好ましい実施形態では、前記AQGVペプチドは、最良のオートファジー阻害性を有することが判明していた、アラニン(A)、グルタミン(Q)、及びロイシン(L)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択される、少なくとも50%の、より好ましくは、少なくとも60%の、最も好ましくは少なくとも70%のアミノ酸を含む。より好ましい実施形態では、前記AQGVペプチドは、グリシン(G)、バリン(V)、イソロイシン(I)、プロリン(P)、及びアルギニン(R)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択される、多くとも30%の、より好ましくは、多くとも20%の、最も好ましくは、多くとも10%のアミノ酸を含み、これらのアミノ酸の含有は必要に応じてAQGVペプチドにタンパク質分解感受性を付与するために望ましい。一実施形態では、AQGVペプチドはアラニン(一文字表記でA)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、及びバリン(V)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択されるアミノ酸からなることが好ましい。溶解性を改善するために、前記AQGVペプチドは、AQGVペプチド-酢酸塩の群、より好ましくは、AQGVペプチド-酒石酸塩の群、最も好ましくは、AQGVペプチド-クエン酸塩の群から選択される塩であることが好ましい。AQGVペプチドは4-30アミノ酸で長さが異なる。
【0053】
本発明は、本発明に係る医薬製剤であって、アラニン(一文字表記でA)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)、及びアルギニン(R)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択される少なくとも50%のアミノ酸をそれぞれが含む少なくとも2つの異なるAQGVペプチドを含む、医薬製剤も提供する。好ましい実施形態では、前記AQGVペプチドは、最良のオートファジー阻害性を有することが判明していた、アラニン(A)、グルタミン(Q)、及びロイシン(L)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択される、少なくとも50%の、より好ましくは、少なくとも60%の、最も好ましくは少なくとも70%のアミノ酸を含む。より好ましい実施形態では、前記AQGVペプチドは、グリシン(G)、バリン(V)、イソロイシン(I)、プロリン(P)、及びアルギニン(R)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択される、多くとも30%の、より好ましくは、多くとも20%の、最も好ましくは、多くとも10%のアミノ酸を含み、これらのアミノ酸の含有は必要に応じてAQGVペプチドにタンパク質分解感受性を付与するために望ましい。一実施形態では、AQGVペプチドはアラニン(一文字表記でA)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、及びバリン(V)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択されるアミノ酸からなることが好ましい。溶解性を改善するために、前記AQGVペプチドは、AQGVペプチド-酢酸塩の群、より好ましくは、AQGVペプチド-酒石酸塩の群、最も好ましくは、AQGVペプチド-クエン酸塩の群から選択される塩であることが好ましい。AQGVペプチドは4-30アミノ酸で長さが異なる。さらに、前記医薬製剤は1つ又は複数の前記AQGVペプチドを少なくとも0.85mol/L含むことが好ましい。別の実施形態では、前記医薬製剤は少なくとも1つの医薬上許容可能な添加剤を含む。こうした製剤の例は本明細書で提供するようなAQGVペプチドのストック溶液である。
【0054】
本発明は、クラークソン病(CLS)を罹患している又は罹患していると考えられるヒト対象の治療方法において、血行動態安定性を維持又は改善する必要があると考えられるヒト対象の治療方法において、有害な血管透過性を減少させる必要があると考えられるヒト対象の治療方法において、有害な体液貯留を減少させる必要があると考えられるヒト対象の治療方法において、使用するための、本発明に係る製剤又は溶液の使用も提供する。
【0055】
好ましくは、上記のような本発明に従うAQGVペプチド又はその機能的アナログの使用は、血流への前記ペプチドの投与を伴う。血流への投与は、例えば、静脈内投与又は動脈内投与を含むと理解される。例えばAQGVペプチド又はそのアナログが生理学上許容可能な溶液に含まれる注入を介する、AQGVペプチド又はそのアナログの一定供給が好ましい。適切な生理学上許容可能な溶液は、生理塩溶液(例えば、0.9%NaCl)、又は、注射及び/若しくは注入のための任意の他の適切な溶液を含んでもよい。こうした生理溶液は、ヒト対象にさらなる利益を与える可能性があるさらなる化合物(例えば、グルコースなど)を含んでもよく、また、他の医薬化合物を(例えば、昇圧剤を、典型的には、減少された割合で)含んでもよい。
【0056】
好ましくは、AQGVペプチドは1時間当たり少なくとも50mg/kg患者体重(mg/kg/時間)の速度で投与される。好ましくは、この投与速度は、少なくとも60mg、少なくとも70、少なくとも80、又は、最も好ましくは、少なくとも90mg/kg/時間である。好ましくは、AQGVペプチドは、少なくとも1時間、より好ましくは、少なくとも1.5時間、最も好ましくは、少なくとも2時間にわたり投与される。好ましくは、AQGVペプチドの投与は、少なくとも70mg/kg/時間の速度で、少なくとも1時間、より好ましくは、少なくとも1.5時間、最も好ましくは、少なくとも2時間(少なくとも2.5時間など)、より好ましくは、少なくとも3.5時間、より好ましくは、少なくとも4.5時間にわたり投与される。好ましくは、投与は手術中に行われる。より好ましくは、投与は手術の全期間の最中に行われる。
【0057】
実施例で示されるように、第II相臨床試験においてEA-230についてヒトでインビボで決定された平均動脈最大濃度(平均Cmax)は、12500から57500ng/mlの範囲で30500ng/mlであった。平均静脈Cmaxは、19600から113000ng/mlの範囲で68400ng/mlであった。したがって、どのような手段及び方法でもEA-230(又はAQGV)の投与に用いられるが、好ましくは、10,000から60,000ng/mlの範囲の動脈Cmax及び/又は15000から120000ng/mlの範囲の静脈Cmaxを得ることを可能とする手段及び方法が考えられる。それ故に、投与経路は、静脈内投与に必ずしも限られずともよく、同様の静脈及び/又は動脈Cmax濃度をもたらす他の投与経路を含んでもよい。
【0058】
別の実施形態では、AQGVペプチド又はその機能的アナログは、上記の本発明に従う任意の使用のために提供され、ここで、ヒト対象は集中治療に送られ、また、当該使用はヒト対象の測定されたパラメーターを改善し、ヒト対象の当該パラメーターは集中治療に留まるべきか否かを評価するために決定される。上記のように、ヒト患者が集中治療中である場合に評価されるパラメーターは、腎機能及び血行動態に関したパラメーターを含む。いずれにせよ、AQGVペプチド又はそのアナログの使用は、こうしたパラメーターを改善し、これにより、集中治療室での滞在期間を減少させるためのものである。AQGVペプチド又はそのアナログの使用は集中治療での滞在期間を減少させるのみならず、AQGVペプチド又はそのアナログの使用の効果は、病院での滞在期間も減少させ、また、病院への再入院も減少させる。
【0059】
いずれにせよ、AQGVペプチド又はその機能的アナログの使用は、ヒト対象での腎機能及び/又は血行動態への絶大な効果を有し、これにより、例えば誘発性外傷を受けている場合、例えば、心臓手術を受け心肺バイパスポンプ下にある場合に、ヒト対象を有利に助ける。したがって、一実施形態では、AQGVペプチド又はその機能的アナログの使用は心臓手術での使用のためのものである。別の実施形態では、AQGVペプチド又はその機能的アナログの使用は心肺バイパスポンプ下にあるヒト患者での使用のためのものである。
【0060】
理論に拘束されるものではないが、AQGVペプチド又はその機能的アナログの効果は血管収縮への効果を有するかもしれない。血管収縮は、血管の筋層の収縮に由来する血管の狭窄に関与する。したがって、一実施形態では、本発明に従うAQGVペプチド又はその機能的アナログの使用は血管収縮を誘導することに関与する。特に、AQGVペプチド又はそのアナログの使用は、末梢血管収縮及び/又は腎臓内の輸出細動脈での血管収縮を誘導するかもしれない。末梢血管収縮は血行動態を改善するかもしれず、一方、輸出細動脈での血管収縮は腎機能を改善するかもしれない。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【
図1】組み入れから追跡終了までのEASI試験(JMIR Res. Protol.、2019年2月6日、8(2):e11441。doi:10.2196/11441)の手順のタイムラインの概要図。EASI試験は、前向き無作為化二重盲検プラセボ対照試験であり、180名の同時弁手術を伴う又は伴わないオンポンプ冠動脈バイパス術(coronary artery bypass grafting、CABG)を受けている待機的患者が登録された。患者は、EA-230(90mg/kg/時間)又はプラセボを受ける群に1:1の比率で無作為に割り当てられ、外科手術開始から心肺バイパス(cardiopulmonary bypass、CBP)使用終了まで注入された。2-4時間の連続静脈内注入を介した静脈内投与により、89名の患者がプラセボを受け、91名の患者がEA-230を受けた。
【
図2】手術後の集中治療室(ICU)での最初の24時間における昇圧剤の必要性を示す。全群(上の図)では、また、治療期間に関連した。患者が心肺バイパス中である限りにおいて試験薬注入が継続されるので、治療期間は変動し得た(下の図)。ICU入室の最初の24時間の間の昇圧剤使用の調節は、複合変力スコア(composite inotropic score)、(ドーパミン用量×1μg/kg/分)+(ドプタミン用量×1μg/kg/分)+(アドレナリン用量×100μg/kg/分)+(ノルアドレナリン用量×100μg/kg/分)+(フェニレフリン×100μg/kg/分)+(バソプレッシン(m単位/kg/分)*10000)+(ミルリノン×10mcg/kg/分)、により決定及び表記される(Pediatric critical care medicine:a journal of the Society of Critical Care Medicine and the World Federation of Pediatric Intensive and Critical Care Societies。2010年3月;11(2):234-8頁。PMID:19794327。doi:10.1097/PCC.0b013e3181b806fc。)。反復測定二元配置分散分析のためにデータは対数変換された。
【
図3A】異なるステージの急性腎障害(acute kidney injury、AKI)の発症率へのEA-230の効果がRIFLE基準(RIFLE:risk、injury、failure、loss of kidney function(腎機能喪失)、及びend-stage kidney disease(末期腎臓病)への分類、Clin. Kidney J.、2013年2月;6(1):8-14頁)に基づいて決定された。EA-230群では、AKIなし患者の割合が増加する一方で、RIFLE基準のinjuryカテゴリの患者の割合が減少した。
図3Aでは、結果は完全なRIFLEスコアに基づいて得たものである。
図3Bでは、結果はクレアチニン及びGFRデータのみに基づいてグループ分けして得たものである。
【
図4】糸球体濾過量(GFR)へのEA-230の効果がMDRD(Am. J. Kidney Dis.、2002年2月;39(2補遺1):S1-266)により決定された。EA-230による処置は手術前(-1日目)のGFRと比較して手術後(+1日目)にGFRを有意に改善したが、プラセボによる処置はそうではなかった(左図)。右図では、EA-230による処置が停止された場合に、1日目から後ではMDRD効果が収束することが示される。
【
図5】腎機能のバイオマーカーとしての血漿クレアチニン濃度へのEA-230の効果。EA-230による処置は-1日目(手術前)と比較して手術後(+1日目)に有意なクレアチニンレベルの改善を示したが、プラセボによる処置はそうではなかった。
【
図6】血漿クレアチニンへのEA-230の効果は手術前の腎機能に関連していた。ベースラインの腎機能が60ml/分/1.73m
2未満の場合、EA-230はクレアチニンレベルを有意(p=0.012)に改善したが、腎機能が60ml/分/1.73m
2超の場合、群間で統計的に有意な差はみられなかった。反復測定二元配置分散分析。
【
図7】GFR(MDRD)へのEA-230の効果は手術前の腎機能に関連していた。ベースラインの腎機能が60ml/分/1.73m
2未満の場合、EA-230による処置は手術前(-1日目)の推定GFRと比較して手術後(+1日目)に推定GFRを有意(p=0.021)に改善したが、プラセボによる処置はそうではなかった。腎機能が60ml/分/1.73m
2超の場合、群間で統計的に有意な差はみられなかった。反復測定二元配置分散分析。
【
図8】MDRDへのEA-230の効果は、心肺バイパス(CPB)に、ひいては、試験薬注入期間に関連していた。EA-230による処置は心肺バイパスを長期間(>中央値長)有する(ひいては、より長い試験薬注入を有する)患者群では手術前(-1日目)のGFRと比較して手術後(+1日目)に有意にGFRを改善したが、プラセボによる処置はそうではなかった。CPB期間(ひいては、試験薬注入期間)が短い場合、群間では差がみられなかった。反復測定二元配置分散分析。
【
図9】EA-230の免疫調節効果はない。EA-230は、認容性が良く、良好な安全性プロファイルを示した。しかし、EA-230による処置は主要評価項目である血漿IL-6の有意な変化をもたらさなかった。本図では、IL-6試験の結果は短い又は長い心肺バイパス期間を有する患者のフルセットで示される。
【
図10】滞在期間へのEA-230の効果。EASI試験では、ICUへの患者の滞在期間及び病院での滞在期間(入院患者治療)が調査された。EA-230による処置は、ICU及び病院での滞在期間(LOS)の有意な減少をもたらした。ICU及び病院での滞在期間はEA-230群で減少し、ICU入室後24時間では、EA-230群の患者の12%がICUにいるのに対し対照群では22%であり(p=0.02)、院内滞在はEA-230群及びプラセボ群でそれぞれ195[171-265]時間及び234[192-295]時間であった(p=0.002)。EA-230により処置された患者は手術後90日までの再入院者数の相当の(p=0.09)減少も示した。
【
図11】処置群(プラセボ又はAQGV)毎のRIFLEスコアで評価した腎障害ステージと病院での滞在期間との相関。一般的に、文献によれば、本図のプラセボ群で観察されるように、腎障害がより重症になるほど長期間の滞在期間が関連することとなる。プラセボ群ではこうした関連性が観察されたが、AQGV群ではこうした関連性はなかったことから、AQGV群ではAKIがより迅速に回復されていることが示唆される。結論として、AQGVにより処置された患者群では、AKI罹患患者数は減少したが、患者がAKIを発症した場合、これらの患者はプラセボ群で観察されるような長期間の病院滞在期間を要せず、滞在期間はAKIなし患者又はAKIの危険性がある患者と同様であった。
【
図12】EA-230による処置は全体として主要評価項目である血漿IL-6の有意な変化をもたらさなかった。本図では、IL-6試験の結果は短い又は長い心肺バイパス期間を有する患者のフルセットで示される。
【
図13】EA-230による処置は、全体として、血漿IL-8、IL-10、IL-1RA、IL-17、MIP-1a、MIP-1b、MCP-1、ICAM、VCAM、及び、試験した他のサイトカインの有意な変化をもたらさず、免疫調節効果は観察されなかった。EA-230による処置はイオヘキソールのクリアランスへの効果を示さなかった。
【
図14】手術後の昇圧剤の使用(左)による及び正味の輸液バランスを調節するための輸液療法の使用による血行動態不安定性の治療の必要性は、EA-230ペプチドを与えられた患者において集中治療室(ICU)の最初の24時間で相当に改善された。それとともに、手術中に与えられたEA-230は手術後の血行動態回復を有意に改善し、血行動態安定性の有意な改善(必要とされる輸液療法及び血圧薬からなる複合的処置の減少、反復測定二元配置分散分析、p=0.006)をもたらす。
【
図15】手術中のEA-230によるCABG患者の処置は、集中治療室(ICU)への高度に有意な40%近く短い滞在期間をもたらした。平均で、プラセボ処置CABG患者はICUで40時間を要したが、EA-230で処置されたものは25時間後には退出を許可され、貴重なICUのスペースを他者に解放した。
【
図16】EA-230により処置された患者は病院での滞在期間の20%超の高度に統計的に有意な減少を示す。平均で、プラセボ処置患者はCABG手術からの回復のための継続的治療の入院日数としてほぼ12日を要し、EA-230により処置されたものは2.5日早く回復し病院を去った。結論として、EA-230による処置は待機的CABG手術を受けている患者の手術後の滞在期間の高度に有意な減少をもたらした。さらに、この滞在期間の有益な減少は再入院の危険性を増加させず、代わりに、EA-230は90日再入院に関して相当に低下した危険性(EA-230で4、プラセボで10、p=0.09)をもたらした。
【
図17】糸球体濾過量(GFR)として測定される、腎機能へのEA-230による長期間の(長い=中央値より長い)処置の、中央値処置より短期間に処置される患者と比べたときの、有益な効果。知見は、待機的手術中のEA-230による患者の長期間の処置による手術後の腎機能の高度に有意な統計学的な改善を示す。
【
図18】手術後の血行動態安定性への(昇圧剤/変力又は輸液療法の必要性として測定される)EA-230による長期間の(長い=中央値より長い)処置の、中央値処置より短期間に処置される患者と比べたときの、有益な効果。血行動態安定性は、手術中のEA-230の長期間の使用から有意に利益を受ける(POD=post- operative day;手術後日数)。
【
図19】炎症、腎臓、心血管、及び全般での有効性評価項目結果の概要。(a)炎症。左パネル:手術前の時点(ベースライン)から次の手術後の朝(postoperative morning、POM)までのインターロイキン(IL)-6の経時的な血漿濃度(p=0.99)。青背景囲みは試験薬が投与された期間を示す。右パネル:IL-6の血漿濃度-時間効果曲線下面積(AUEC)。データは中央値及び四分位範囲として提示。P値は反復測定二元配置分散分析(ANOVA、交互作用項、左パネル)又はマン・ホイットニーのU検定(右パネル)を用いて計算。(b)腎臓。左パネル:手術前日(ベースライン)から次のPOMまでのGFRイオヘキソール及びeGFRMDRDとして表される腎機能。データは平均値及び当該平均値の標準誤差として提示。P値は反復測定二元配置分散分析(ANOVA、交互作用項)を用いて計算。右パネル:RIFLE基準に基づく急性腎障害(AKI)の分類。患者は、『AKIなし』(EA-230群ではn=50、プラセボ群ではn=42)、『Risk』(EA-230群ではn=34、プラセボ群ではn=31)、又は、『Injury』(EA-230群ではn=6、プラセボ群ではn=16)に分類され、『Failure』、『Loss of function(機能喪失)』、又は『End stage of renal disease(末期腎臓病)』のステージに分類された患者はいなかった。データは患者の百分率とし提示。P値はピアソンのカイ二乗検定を用いて計算。(c)心血管。左パネル:集中治療室(ICU)入室後の最初の24時間の間の正味の累積輸液バランス(p=0.97)。右パネル:手術後1日目(POD1)(EA-230群ではn=90、プラセボ群ではn=89)、POD2(EA-230群ではn=90、プラセボ群ではn=89)、及びPOD3(EA-230群ではn=86、プラセボ群ではn=85)における手術後の正味の輸液バランス。利用可能なデータがほとんどないのでPOD4-7は不図示。データは平均値及び当該平均値の標準誤差として提示。P値は反復測定二元配置分散分析(ANOVA、交互作用項、左パネル)又はスチューデントのT検定(右パネル)を用いて計算。(d)全般。左パネル:ICUでの滞在期間(p=0.02)。右パネル:病院での滞在期間(p=0.001)。P値はログランク検定を用いて計算。CPB:心肺バイパス。(e)GFR:(推定)糸球体濾過量。MDRD:modification of diet in renal disease。pg:ピコグラム。ml:ミリリットル。h:時間。min:分。m:メートル。
【
図20】短い手術期間(n=90)及び長い手術期間(n=89)の下位群(中央値を用いて分割)を用いた事後解析。(a)処置群間での検定を伴うインターロイキン(IL)-6の血漿濃度-時間効果曲線下面積(AUEC)(短:EA-230対プラセボ:p=0.88、及び、長:EA-230対プラセボ:p=0.41)。データは中央値及び四分位範囲(IQR)として提示。(b)日毎の正味の輸液バランス(短:最初の集中治療室(ICU)の日、手術後1日目(POD1)、POD2、及びPOD3について、それぞれ、p=0.54、p=0.33、p=0.75、及びp=0.84。長:最初のICUの日、POD1、POD2、及びPOD3について、それぞれ、p=0.09、p=0.008、p=0.09、及びp=0.89)。データは平均値及び当該平均値の標準誤差(SEM)として提示。(c)ICU入室の最初の24時間の間に投与される昇圧剤及び変力剤を変力スコアとして示す(短:p=0.28、長:0.048)。データは中央値及びIQRとして提示。(d及びe)腎機能をGFRイオヘキソール(d)及びeGFRmdrd(e)として示す(短:GFRイオヘキソール:p=0.47、及び、eGFRmdrd:p=0.27。長:GFRイオヘキソール:p=0.02、及び、eGFRmdrd:p<0.0001。)。データは平均値及びSEMとして提示。P値はマン・ホイットニーのU検定又はスチューデントのT検定を用いて計算。*:p<0.05。♯:p<0.1。h:時間。
【
図21】腎機能パラメーター。青背景囲みは試験薬投与期間を示す。(a)ベースライン(手術前日)から手術後7日目(POD)までのクレアチニンの血漿濃度(p=0.022)及び対応するeGFRMDRD(p=0.663)(b)。ベースライン及びPOD1は本試験のために採取されたサンプルであり、POD2-7の測定は、電子患者記録から抽出された追加サンプルで、全ての患者で毎日利用可能というわけではなく、POD2、3、4、5、6、及び7について、それぞれ、n=60、48、68、21、21、及び17であった。(c)腎機能を内因性クレアチニンクリアランス(GFRECC)として示す(p=0.74)。このパラメーターのためのサンプル採取は手術の開始から手術後1日目まで朝に行われた。尿中の(d)クレアチニン(p=0.029)及び(e)尿素(p=0.004)の濃度。(f)プロエンケファリン血漿濃度(p=0.53)。(a)、(b)、及び(c)のデータは平均値±当該平均値の標準誤差として提示。(d)、(e)、及び(f)のデータは四分位範囲を伴う中央値として提示。(a)、(b)、(d)、(e)、及び(f)のP値は反復測定二元配置分散分析(ANOVA、交互作用項)を用いて計算。(c)のP値はスチューデントのT検定を用いて計算。CPB:心肺バイパス。POD:手術後日数。h:時間。(e)GFR:modification of diet in renal diseaseの式を用いて導出された(推定)糸球体濾過量。
【
図22】手術前時点(ベースライン)から次の手術後の朝(POM)までの、経時的に示した、ミリモル(mmol)クレアチニン(Cr)当たりの尿中腎障害マーカーである、(a)インターロイキン(IL)-18(p=0.78)、(b)kidney injury molecule(KIM)1(p=0.21)、(c)好中球ゼラチナーゼ結合性リポカリン(NGAL)(p=0.92)、(d)肝臓型脂肪酸結合タンパク質(L-FABP)(p=0.23)、(e)N-アセチル-β-D-グルコサミニダーゼ(NAG)(p=0.14)。青背景囲みは試験薬が投与された期間を示す。データは四分位範囲を伴う中央値として提示。P値は反復測定二元配置分散分析(ANOVA、交互作用項)を用いて計算。ng:ナノグラム。CPB:心肺バイパス。μg:マイクログラム。h:時間。
【
図24】
図22に示す結果に基づき、凝集ペプチド塩がそれ未満だと溶けやすくなるスクリーニングされた中性ペプチド塩の濃度(凝集点)が決定された。アニオンを変えることがAQGVの溶解性に有意に影響すると結論できる。AQGV-酢酸と比べて、AQGV-クエン酸(AQGV-クエン酸塩)及びAQGV-酒石酸(AQGV-酒石酸塩)の塩ではより高い溶解度(0.9%NaCl中の溶解度)、及び、それとともに、高い凝集点が観察され、一方、マレイン酸塩及びKHSO
4塩はより低い溶解度を示した。アデノシンモノリン酸又はアデノシンを用いることは溶解性をもたらさなかった。クエン酸は特殊例と思われる。高濃縮溶液は結晶化も凝集もしなかったが、高粘性溶液を形成しやすかった。
【発明を実施するための形態】
【0062】
(ペプチド合成)
AQGVペプチドは、例えば、古典的な固相合成又は他の本分野で既知の方法を用いて合成される。ペプチドの純度は高速液体クロマトグラフィー及び/又は高速原子衝撃質量分析により確認される。典型的には、ペプチドは2から50の間のアミノ酸からなる分子として定義され、タンパク質は50以上のアミノ酸で構成されている。また、ペプチドは、二次構造、三次構造、及び四次構造として知られる複雑な立体構造を取り得るタンパク質と比べて構造があまり良く定義されない傾向がある。ペプチドとタンパク質との間では機能的区別もなされるかもしれない。実際、大抵の研究者、並びに、本出願は、ペプチドという用語を、ペプチド、又は、さもなくば、50アミノ酸までの相対的に短いアミノ酸をとりわけ指すために用い、一方、ポリペプチドという用語は、タンパク質、又は、50超の若しくはずっと多くのアミノ酸の鎖を記述するために用いられる。
【0063】
(ペプチド投与)
臨床試験プロトコル(Groenendael等、JMIR Res Protoc、2019年2月;8(2):e11441)に示されるように、試験薬剤であるEA-230製剤は、800から1000mOsm/kgの重量モル浸透圧濃度をもって300mg/mLの最終濃度で注射するために水に溶解され、1500mg/バイアルの含有量で無菌5mLガラスバイアルに充填・提供される。プラセボ製剤は、同一の重量モル浸透圧濃度を有する溶液となるように29mg/mLの含有量で同一の無菌5mLガラスバイアル内に注射のために水で希釈された塩化ナトリウムからなる。EA-230及びプラセボは、無菌的条件下で適切な量のEA-230又はプラセボを1000mLの正常食塩水に添加することにより400mOsm/kg未満の重量モル浸透圧濃度での静脈内持続注入のために調製される。
【0064】
(高濃度活性物質を含むストック溶液の必要性)
本明細書で参照した臨床試験で用いられるEA-230製剤(ストック溶液)を含むバイアルは1.5グラムのEA-230を含有し、各バイアルは300mg/ml[(300g/L=0.8mol/L)AQGVは373g/molの分子量を有する]で5mlを含有した。上記治験では、活性物質の注入が、1時間当たり90mg/kgで、少なくとも1.5時間、好ましくは、少なくとも2.5時間、好ましくは、少なくとも3.5時間、より好ましくは、少なくとも4.5時間持続したときに最良の治療の実践が確立された。結果として、また、体重にも依存して、大抵12-17を超えるバイアルが有効な治療を継続するために必要とされたが、必要とされるケアのために手術室又はICUで多くの(多過ぎの)手間が掛かる投与の要件であった。EA-230製剤のストックの弱すぎる量での治療のこうした欠点は、入手可能なものと比べより多く且つより良好な濃縮ストック溶液を提供する必要性を明らかにした。
【0065】
(凝集点の決定)
多くの薬物様分子が水性媒体中で自己凝集し得るものであり、凝集物は実験結果及び臨床判断を歪める物理化学的性質を有すると、本明細書では認識される。ペプチド薬の凝集は、生物学的薬物開発の殆ど全ての相で遭遇する最も一般的でやっかいな過程の一つである。凝集は複数の異なる形態を取り得るが、この用語は多数の異なる過程を記述するために用いられ、当該過程の最中にペプチド分子が会合して複数のポリペプチド鎖からなるより大きな種になる。凝集物は、不定形であり、又は、高度に構造化され、例えば、アミロイド繊維であり得、吸収により表面上で又は溶液中で形成され得る。凝集物は、ポリペプチド鎖の非共有会合の結果として、又は、鎖の共有結合から、生じ得る。ある場合は凝集は可逆的であり、他の場合は事実上不可逆的である。いずれの場合でも、凝集は問題のペプチドの物理的安定性を減少させ、活性の喪失のみならず、毒性や免疫原性などの他の致命的な問題にもつながる。
【0066】
塩は、立体構造安定性及びコロイド安定性の両方に影響する生体分子の物理的安定性に複雑な効果を有する。それらの効果はペプチド上の表面電荷に従って頻繁に変わり、物理的安定性へのある塩の全体効果は、塩が水及び生体分子と相互作用する異なる複数の機構のバランスである。様々な塩が、ペプチド-溶媒系の性質(ホフマイスター効果)を変えることにより又は静電相互作用(デバイ-ヒュッケル効果)を変えることにより、物理的安定性に影響し得る。
【0067】
我々は改変フラスコ振盪法を用いてプロトタイプのオートファジー阻害ペプチドAQGVへの7つの異なる塩の溶解度を調べることを目指した。最初に、AQGV-酢酸塩が、遊離塩基に変換され、有機溶媒により抽出され、真空中で濃縮される。続いて、クエン酸塩、マレイン酸塩、硫酸塩(KHSO4)、アデノシンモノリン酸塩、アデノシン塩、酢酸塩、及び酒石酸塩が、調製され、その後にそれらの溶解度についてスクリーニングされる。
【0068】
(結果)
(遊離塩基への変換)
中和された溶液(pH=6-7)からの有機化溶媒によるAQGV-酢酸の抽出が不可能であることが判明した。そこで、AQGV-酢酸の水溶液が、イオン交換カラム(Amberlite、約100mL;IR120、H樹脂)に移された。このカラムは、脱塩水、及び、その後に続く、1Nアンモニア溶液を用いて、フラッシュされた。最初の3つの塩基性分画が濃縮され、4.7gの遊離塩基AQGVが得られた(1H-NMR)。
【0069】
(溶解度測定)
最初の試みとして、塩の濃縮DMSO溶液を得るために上記遊離塩基の溶液と酸とを混ぜ、その後に、溶解度を決定するためにこれを水に希釈した。しかし、試みた塩(アデノシン及びクエン酸)はDMSOに全く溶けなかった。実際、混合液は微量の水の添加後に清澄になった。そのため、溶解度決定は本来の計画通りには行えなかった。そこで、清澄溶液が得られるまで既知量の(可溶性でない)塩を希釈することにより必要とされる塩の溶解度を決定することとした。
【0070】
クエン酸については、1mmolのAQGV及び1mmolのクエン酸を0.5mLの0.9%NaCl中で混ぜた。これにより清澄溶液が得られた。より多くのAQGV及びクエン酸の両方の材料が添加され(0.5及び0.25mmolの量)、その結果、合計で2.75mmolが0.5mLの0.9%NaCl中に溶解された。混合液は清澄なままであったが、極めて濃厚/粘性になっていた。残りの実験は異なったやり方で行われ、1又は0.5mmolの塩が4mlバイアル中で計量され、清澄溶液が得られるまで少量の0.9%NaClが添加されたが、当該溶液は1週間を超えて清澄なままであった。アデノシン及びアデノシンモノリン酸の場合、清澄溶液は得られなかった。
【0071】
表1に示す結果に基づき、凝集ペプチド塩がそれ未満だと溶けやすくなるスクリーニングされた中性でオートファジー阻害性のペプチド塩の濃度(凝集点、表2参照)が決定された。アニオンを変えることがAQGVの溶解性に有意に影響すると結論できる。AQGV-酢酸(2mol/L)と比べて、AQGV-クエン酸(AQGV-クエン酸塩、>5.5mol/L)及びAQGV-酒石酸(AQGV-酒石酸塩)の塩ではより高い溶解度(0.9%NaCl中の溶解度)、及び、それとともに、高い凝集点が観察され、一方、マレイン酸塩及びKHSO4塩はより低い溶解度を示した。アデノシンモノリン酸又はアデノシンを用いることは溶解性をもたらさなかった。クエン酸は特殊例と思われる。高濃縮溶液は結晶化も凝集もしなかったが、高粘性溶液を形成しやすかった。
【0072】
凝集の危険性に注意して、これまで臨床試験で使用するためのAQGVペプチドのストック溶液を含むバイアルは溶液中に多くとも(0.8mol/Lの)活性基質しか含有していなかった。本発明に基づけば、今や、有機酸のAQGV塩のこうしたストック溶液、特に、AQGVペプチド-マレイン酸塩、AQGVペプチド-酢酸塩、AQGVペプチド-酒石酸塩、又はAQGVペプチド-クエン酸塩のストック溶液(但し、アデノシン又はアデノシンモノリン酸のものは含まず)は、少なくとも0.85mol/L、より好ましくは、少なくとも0.9mol/L、より好ましくは、少なくとも1mol/L、より好ましくは、少なくとも1.2mol/L、より好ましくは、少なくとも1.4mol/L、より好ましくは、少なくとも1.6mol/L、最も好ましくは、少なくとも1.8mol/Lの、前記AQGVペプチド-酢酸塩、前記AQGVペプチド-酒石酸塩、又は前記AQGVペプチド-クエン酸塩を、備える、又は、含有するよう調製される。より好ましい実施形態では、本発明は、前記AQGVペプチドの濃度が2mol/Lから2.5mol/Lの範囲である、前記AQGVペプチド-酒石酸塩又は前記AQGVペプチド-クエン酸塩のストック溶液を提供する。より好ましい実施形態では、本発明は、前記AQGVペプチド-クエン酸塩の濃度が2.5mol/Lから3mol/Lの範囲である前記AQGVペプチド-クエン酸塩のストック溶液を提供する。より好ましい実施形態では、本発明は、前記ペプチド-クエン酸塩の濃度が3mol/Lから3.5mol/Lの範囲である前記ペプチド-クエン酸塩のストック溶液を提供する。より好ましい実施形態では、本発明は、前記ペプチド-クエン酸塩の濃度が3.5mol/Lから4.5mol/Lの範囲である前記ペプチド-クエン酸塩のストック溶液を提供する。より好ましい実施形態では、本発明は、前記ペプチド-クエン酸塩の濃度が4.5mol/Lから5.5mol/Lの範囲である前記ペプチド-クエン酸塩のストック溶液を提供する。より好ましい実施形態では、本発明は、前記ペプチド-クエン酸塩の濃度が5.5mol/L以上である前記ペプチド-クエン酸塩のストック溶液を提供する。前記ストック溶液は水溶液であることが好ましい。
【0073】
本明細書でタンパク質又はペプチドの組成、構造、及び機能を記述する際は、アミノ酸を参照する。本明細書では、アミノ酸残基は後述の略称を用いて参照される。また、特記のない限り、ペプチド及びタンパク質のアミノ酸配列は、N末端からC末端へと、左端から右端へと、同定され、ここで、N末端が第1残基とされる。Ala:アラニン残基、Asp:アスパラギン酸残基、Glu:グルタミン酸残基、Phe:フェニルアラニン残基、Gly:グリシン残基、His:ヒスチジン残基、Ile:イソロイシン残基、Lys:リシン残基、Leu:ロイシン残基、Met:メチオニン残基、Asn:アスパラギン残基、Pro:プロリン残基、Gln:グルタミン残基、Arg:アルギニン残基、Ser:セリン残基、Thr:スレオニン残基、Val:バリン残基、Trp:トリプトファン残基、Tyr:チロシン残基、Cys:システイン残基。アミノ酸はそれらの従来の一文字表記で参照されることもある。A=Ala、T=Thr、V=Val、C=Cys、L=Leu、Y=Tyr、I=Ile、N=Asn、P=Pro、Q=Gln、F=Phe、D=Asp、W=Trp、E=Glu、M=Met、K=Lys、G=Gly、R=Arg、S=Ser、及びH=His。
【0074】
(選択アミノ酸によるオートファジーの阻害)
オートファジーは、細胞外物質及び細胞質内物質をオートファゴソームと呼ばれる二重膜小胞を介してリソソームへと送達する分解経路である。細胞質成分はオートファゴソーム内へと捕捉され、続いて、これはリソソームと融合し、そこでカーゴが分解される。細胞外物質は、エンドサイトーシス又はファゴサイトーシスにより取り込まれ、続いて、これはリソソームと融合し、やはり、そこでカーゴが分解される。オートファジーは、細胞代謝及びエネルギー収支をはじめとする細胞機能の多くの側面に関与する重要な機構であり、オートファジーにおける変化はヒトの様々な病理過程に結び付けられてきた。オートファジーは、オートリソソームにより細胞が細胞構成要素を除去し分解する自然な機構である。
【0075】
組織恒常性の維持におけるオートファジーの役割が比較的によく記述されている最近のレビュー(Cell.、2019年7月;8(7))にあるように、組織の修復及び再生の最中のその役割が評価されるようになったのはほんの最近である。本発明は、AQGVペプチド、すなわち、特徴的なアミノ酸又はその組み合わせにより強化されたペプチドは、一方でプロテオジェネシス(mTORキナーゼ活性)と他方でプロテオリシス(オートファジー)との間のバランスを他よりも制御することをもたらし、それとともに、オートファジー阻害アミノ酸が増強されたペプチドを当該アミノ酸が増強されていない他のペプチドに比べて組織修復の根底にあるプロテオジェネシスのより良い強化因子として特定する。ラパマイシン標的タンパク質複合体1(mTORC1)は細胞及び生物の成長の中心的な制御因子であり、この経路は多くのヒト疾患の病因に関連付けられている。mTORC1はアミノ酸などの栄養の利用可能性に応じて細胞及び組織の成長を促進し、栄養はmTORC1をその活性化部位であるリソソーム表面に駆り立てる。最近のデータ及び旧来のデータは、ロイシン(L)、バリン(V)、イソロイシン(I)、アラニン(A)、グルタミン(Q)、アルギニン(R)、グリシン(G)、プロリン(P)を、単独又は組み合わせで、他のアミノ酸、例えば、効果がない又は反対の効果があると報告されてきた、グルタミン酸(E)、スレオニン(T)、セリン(S)、リシン(K)、スレオニン(T)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、及びメチオニン(M)と比べ、より強力なmTORの活性化因子又はオートファジーの阻害因子として、特定する。したがって、本発明に係るAQGVペプチドへの包含のために本明細書で提供されるように、単独の又は(好ましくは)組み合わせでのロイシン(L)、バリン(V)、イソロイシン(I)、アラニン(A)、グルタミン(Q)、アルギニン(R)、グリシン(G)、プロリン(P)により増強されたペプチドは、細胞へのパッケージング及びターゲッティングに関して、ヒト細胞での使用のために最も好ましいmTORの活性化因子又はオートファジーの阻害因子である。AQGVペプチドは、A、Q、G、V、L、P、I、及びRの群から選択される、少なくとも50%の、より好ましくは、少なくとも75%の、最も好ましくは、100%のアミノ酸を含むことが好ましい。好ましくは、本明細書で提供されるAQGVペプチドは、4-12アミノ酸の、より好ましくは、4-8アミノ酸の範囲の長さを有する。好ましくは、こうしたAQGVペプチドは直鎖ペプチドである。本発明に係る機能的AQGVペプチドアナログは、より好ましくは、AQ、LQ、PQ、VQ、GQの群から選択されるジペプチド配列を含むペプチドからなる群から選択されてもよい。本発明に係る機能的AQGVペプチドは、より好ましくは、AQL、LQL、PQL、VQL、GQL、PLQ、LQG、PQV、VGQ、LQP、LQV、AQG、QPL、PQV、VGQ、GQGの群から選択されるトリペプチド配列を含むペプチドからなる群から選択されてもよい。ロイシン(L)、アラニン(A)、グルタミン(Q)、及びプロリン(P)といったアミノ酸は、ヒト細胞への最も卓越したmTOR関連オートファジー阻害効果を有すると報告されている(AJ Meijer等、Amino Acids、2015, 47, 2037-2063)。グリシン(G;Zhong Z、Wheeler MD、Li X、Froh M、Schemmer P、Yin M、Bunzendaul H、Bradford B、Lemasters JJ。l-Glycine:a novel antiinflammatory, immunomodulatory, and cytoprotective agent。Curr Opin Clin Nutr Metab Care 6:229)は、ラパマイシン(mTOR)複合体1活性化のアミノ酸刺激哺乳類標的を改善する。したがって、本発明に係るAQGVペプチドへの包含のために本明細書で提供されるように、単独の又は(好ましくは)組み合わせでのロイシン(L)、アラニン(A)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、及びプロリン(P)は、ヒト細胞での使用のために好ましいmTORの活性化因子又はオートファジーの阻害因子である。AQGVペプチドは、A、Q、G、V、L、及びPの群から選択される、少なくとも50%の、より好ましくは、少なくとも75%の、最も好ましくは、100%のアミノ酸を含むことがより好ましい。より好ましい実施形態では、AQGVペプチドは、A、Q、G、及びVの群から選択される、少なくとも75%の、最も好ましくは、100%のアミノ酸を含む。
【0076】
最も好ましい実施形態では、本発明に係るAQGVペプチドは、A、Q、G、及びVの群から選択される100%のアミノ酸を含むテトラペプチドである。こうした好ましいテトラペプチドの典型的な好ましい例は、AQGV、LQGV、VGQA、VGQL、AQVG、LQVGである。最も典型的で好ましいものは、以下で提供されるようなヒト臨床試験の対象であるAQGVである。
【0077】
本発明は、ICUへの対象の滞在期間を改善するための、さらには、ICUへの対象の滞在期間を短縮するための、ヒト対象の治療での使用のためのAQGVペプチド又はその機能的アナログの使用を含む。これが実現されるかもしれないひとつの方法はヒト対象で体液貯留を改変することによるものである。本発明に従うAQGVペプチド又はその機能的アナログの使用は、昇圧剤又は変力薬剤による治療に起因する危険性があると考えられている及び/又は輸液療法による血行動態療法を必要すると予期されるヒト患者の治療を含む。こうしたヒト患者は、集中治療に送られる若しくは送られる予定である又は送られることが期待される患者を含み、このために、ICUでの滞在期間を短縮することが期待される。したがって、AQGVペプチド又はその機能的アナログの使用は、例えば実施例で示されるような、昇圧剤又は変力薬剤による及び/又は輸液療法による治療に起因する危険性があると考えられる又は当該治療が必要であると期待されるヒト患者の治療のための使用を含む。好ましくは、危険性があると考えられるヒト患者におけるICUへの対象の滞在期間を短縮するための使用では、AQGVペプチドは1時間当たり少なくとも10mg/kg患者体重(mg/kg/時間)の速度で投与される。好ましくは、この投与速度は、少なくとも20mg、少なくとも30、少なくとも40、又は、最も好ましくは、少なくとも50mg/kg/時間である。好ましくは、AQGVペプチドは、少なくとも1時間、より好ましくは、少なくとも1.5時間、最も好ましくは、少なくとも2時間にわたり投与される。好ましくは、AQGVペプチドの投与は、少なくとも20mg/kg/時間の速度で、少なくとも1時間、より好ましくは、少なくとも1.5時間、最も好ましくは、少なくとも2時間又は少なくとも2.5時間など、より好ましくは、少なくとも3.5時間、より好ましくは、少なくとも4.5時間にわたり投与される。
【0078】
実施形態1:ヒト対象の治療での使用のためのAQGVペプチド又はその機能的アナログであって、当該使用は前記ヒト対象での血行動態を改変することを含む、AQGVペプチド又はその機能的アナログ。
実施形態2:体液過負荷に罹患している又は体液過負荷に由来する危険性があると考えられるヒト対象の治療での使用のためのAQGVペプチド又はその機能的アナログであって、当該使用は前記ヒト対象での血行動態を改変することを含む、AQGVペプチド又はその機能的アナログ。
実施形態3:過剰な昇圧剤/変力剤の使用を患っている又は過剰な昇圧剤/変力剤の使用に由来する危険性があると考えられるヒト対象の治療での使用のためのAQGVペプチド又はその機能的アナログであって、当該使用は前記ヒト対象での血行動態を改変することを含む、AQGVペプチド又はその機能的アナログ。
実施形態4:ヒト対象の治療での使用のためのAQGVペプチド又はその機能的アナログであって、前記ヒト対象は誘発性外傷を受けるものであり、当該使用は前記ヒト対象での血行動態を改変することを含む、AQGVペプチド又はその機能的アナログ。
実施形態5:腎機能障害を有するヒト対象の治療での使用のためのAQGVペプチド又はその機能的アナログであって、当該使用は前記ヒト対象での血行動態を改変することを含む、AQGVペプチド又はその機能的アナログ。
実施形態6:前記使用は前記ヒト対象での体液貯留を減少させる、実施形態1-5のいずれか1つに記載の使用のためのAQGVペプチド又はその機能的アナログ。
実施形態7:前記使用は昇圧剤の減少された使用を含む、実施形態1-6のいずれか1つに記載の使用のためのAQGVペプチド又はその機能的アナログ。
実施形態8:前記使用は減少された水分摂取量を含む、実施形態1-7のいずれか1つに記載の使用のためのAQGVペプチド又はその機能的アナログ。
実施形態9:前記昇圧剤の減少された使用は昇圧剤の使用の減少された期間を含む、実施形態7に記載の使用のためのAQGVペプチド又はその機能的アナログ。
実施形態10:前記対象は誘発性外傷を受けたものである、実施形態6-9のいずれか1つに記載の使用のためのAQGVペプチド又はその機能的アナログ。
実施形態11:前記使用は前記ヒト対象で腎機能を改善する、実施形態6-10のいずれか1つに記載の使用のためのAQGVペプチド又はその機能的アナログ。
実施形態12:改善された前記腎機能は改善されたGFR率を伴う、実施形態11に記載の使用のためのAQGVペプチド又はその機能的アナログ。
実施形態13:前記ヒト対象はAKIである腎機能障害を有する、実施形態6-12のいずれか1つに記載の使用のためのAQGVペプチド又はその機能的アナログ。
実施形態14:前記使用は血液から周辺の組織及び/又は臓器への血漿の漏出を減少させる、実施形態1-13のいずれか1つに記載の使用のためのAQGVペプチド又はその機能的アナログ。
実施形態15:前記使用は心不全に罹患している又は心不全の危険性があるヒト対象でのものである、実施形態1-14のいずれか1つに記載の使用のためのAQGVペプチド又はその機能的アナログ。
実施形態16:前記使用は浮腫を有する危険性があるヒト対象でのものである、実施形態1-15のいずれか1つに記載の使用のためのAQGVペプチド又はその機能的アナログ。
実施形態17:前記ヒト対象は手術である誘発性外傷を受けている、実施形態4-16のいずれか1つに記載の使用のためのAQGVペプチド又はその機能的アナログ。
実施形態18:前記手術は心肺バイパスを要する、実施形態17に記載の使用のためのAQGVペプチド又はその機能的アナログ。
実施形態19:前記ペプチドは血流内に投与される、実施形態1-18のいずれか1つに記載の使用のためのAQGVペプチド又はその機能的アナログ。
実施形態20:前記ペプチドは少なくとも70mg/kg体重/時間の速度で投与される、実施形態19に記載の使用のためのAQGVペプチド又はその機能的アナログ。
実施形態21:前記ペプチドは少なくとも1時間にわたり投与される、実施形態19又は20に記載の使用のためのAQGVペプチド又はその機能的アナログ。
実施形態22:前記投与が手術中である、実施形態17-21のいずれか1つに記載の使用のためのAQGVペプチド又はその機能的アナログ。
実施形態23:前記投与が抗がん治療中である、実施形態1-22のいずれか1つに記載の使用のためのAQGVペプチド又はその機能的アナログ。
実施形態24:前記投与が薬物有害反応中である、実施形態1-23のいずれか1つに記載の使用のためのAQGVペプチド又はその機能的アナログ。
実施形態25:前記ヒト対象は集中治療に送られ、前記使用は前記ヒト対象の測定されたパラメーターを改善し、前記ヒト対象の前記パラメーターは集中治療に留まるべきか否かを評価するために決定される、実施形態1-24のいずれか1つに記載の使用のためのAQGVペプチド又はその機能的アナログ。
実施形態26:パラメーターの改善は集中治療への減少された滞在期間をもたらす、実施形態25に記載の使用のためのAQGVペプチド又はその機能的アナログ。
実施形態27:前記使用は血管収縮を誘導する、実施形態1-26のいずれか1つに記載の使用のためのAQGVペプチド又はその機能的アナログ。
実施形態28:血行動態安定性を維持する必要があるヒト対象へAQGVペプチド又はその機能的アナログを投与することを含む治療の方法。
実施形態29:血行動態安定性を改善する必要があるヒト対象へAQGVペプチド又はその機能的アナログを投与することを含む治療の方法。
実施形態30:腎機能障害を有するヒト対象へAQGVペプチド又はその機能的アナログを投与することを含む治療の方法であって、AQGVペプチドの投与の前記治療は前記ヒト対象で血行動態安定性を維持又は改善することを含む、方法。
実施形態31:薬物有害反応を改善する必要があるヒト対象へAQGVペプチド又はその機能的アナログを投与することを含む治療の方法。
実施形態32:クラークソン病(CLS)を有する又は有する疑いがあるヒト対象へAQGVペプチド又はその機能的アナログを投与することを含む治療の方法。
実施形態33:毛細血管漏出に影響する薬物有害反応を有する又は有する疑いがあるヒト対象へAQGVペプチド又はその機能的アナログを投与することを含む治療の方法。
実施形態34:血行動態安定性を維持する必要があるヒト対象へAQGVペプチド又はその機能的アナログを投与することを含む治療の方法。
実施形態35:血行動態安定性を改善する必要があるヒト対象へAQGVペプチド又はその機能的アナログを投与することを含む治療の方法。
実施形態36:腎機能障害を有するヒト対象へAQGVペプチド又はその機能的アナログを投与することを含む治療の方法であって、AQGVペプチドの投与の前記治療は前記ヒト対象で血行動態安定性を維持又は改善することを含む、方法。
【0079】
(実施例)
第2相臨床試験が、臓器不全につながる血行動態不均衡をしばしば発症する心臓手術(CABG)患者でのEA-230(テトラペプチドAQGV)を試験するために設計された。本試験は2019年に終了し、その結果は、LOS(ICU及び病院での滞在期間)での統計的に高度に有意な減少及び再入院の減少を伴う、EA-230による処置後に顕著に改善された腎機能を示した。EA-230のこうした有益な効果は、EA-230により治療された開心術患者のより顕著に良好な回復につながり、明瞭な経済的利益をもたらす。肯定的な転帰は、体液過負荷の減少、昇圧剤の使用の減少、及び腎臓の機能の改善につながる、この第2相試験中に予想外に示された非常に有益な、集中治療患者の血行動態安定性へのEA-230の効果からおそらく生じた。
【0080】
心臓手術中、180名の患者(二重盲検、プラセボ対照、無作為化)が90mg/kg/時間でEA-230又はプラセボを受けた。主要評価項目は安全性であった。有効性は、免疫調節(血漿インターロイキン(IL)-6濃度)、腎機能(イオヘキソール及びクレアチニンを用いた糸球体濾過量(GFRイオヘキソール、eGFRMDRD)、及び急性腎障害(AKI、RIFLE基準)の発症率)、心血管効果(輸液バランス、血管作動剤)、及び一般的転帰(滞在期間)により評価された。
【0081】
中央[IQR]年齢は68[62-74]歳であり、158/180が男性であった。安全性への懸念は生じなかった。EA-230はIL-6を調節しなかった(曲線下面積で、EA-230及びプラセボ群について、それぞれ、2730[1968-3760]対2680[2090-3570]pg/ml*時間、p=0.80)。GFRは手術後に増加した(meanΔ±SEM GFRイオヘキソールは、それぞれ、19±2対16±2ml/min/1.73m2、p=0.13、eGFRMDRDは、それぞれ、6±1対2±1ml/min/1.73m2、p=0.01)。EA-230はAKIを予防する傾向を示した(ステージinjury:それぞれ、7%対18%、p=0.07)。EA-230群の患者は、プラセボ処置患者に比べて、より少ない輸液を必要とした(それぞれ、217±108対605±103ml、p=0.01)が、血管作動剤の使用は両群で同様であった(p=0.39)。病院での滞在期間はEA-230処置群でより短かった(それぞれ、8[7-11]対10[8-12]日、p=0.001)。
【0082】
(EA-230の安全性)
EASI試験の最終的な分析はEA-230による処置の良好な安全性プロファイルを示した。4時間までの90mg/kg/時間のEA-230の持続注入は、待機的CABG手術を受けている患者により、良好に認容される。薬物動態研究は、注入が終了された時、EA-230が急速に(5-10分以内に)循環から除かれることを示す。EA-230を受けた患者は、より少ない(重篤な)有害事象及びより少ない主要臨床有害事象を経験するように思われた。結論として、待機的CABG手術を受けている患者でのEA-230の安全性プロファイルは、プラセボの持続注入を受けている患者の安全性プロファイルよりも優れているとは言わないまでも匹敵していた。
【0083】
(EA-230の有効性)
待機的CABG手術を受けている患者での4時間までの90mg/kg/時間のEA-230の持続注入は、EA-230による処置の予想外だが明瞭な臨床的利益を示した。なによりも、EA-230による処置(n=90)は合計手術後滞在期間の約3日の高度に顕著な減少をもたらした。(主要評価項目であるIL-6による)CABG誘導性サイトカイン反応への効果はみられなかったが、EA-230による処置は、血圧(昇圧/変力)薬剤の減少された必要性、及び、輸液療法の減少された必要性に基づく、血行動態安定性の全体的で顕著な改善を明瞭に引き起こし、それとともに、手術後体液過負荷を予防した。また、腎機能の顕著な全体的改善がみられた。本明細書で詳述するように、手術中のEA-230による長期間の処置は、手術後の患者回復率の増加された臨床的利益をもたらす。本結果は、糸球体濾過量(GFR)として測定される、腎機能へのEA-230による長期間の(長い=中央値より長い)処置の、中央値処置より短期間に処置される患者と比べたときの、有益な効果も示す。我々の知見(
図17)は、待機的CABG手術中のEA-230による患者の長期間の処置による手術後の腎機能の高度に有意な統計学的な改善を示す。同様に、手術後の手術後血行動態安定性(
図18、昇圧剤/変力及び/又は輸液療法の必要性として測定される)は、手術中のEA-230の長期間の使用から有意に利益を受ける。
【0084】
(EA-230の効果の要約)
早期投与は、改善された血行動態安定性に関連する、血行動態、腎機能、ICU及び病院での滞在期間への、EA-230の新規で高度に有益な効果に気づくことへと我々を導いた。手術中のEA-230による患者の処置は、手術後の血行動態療法(組み合わされた輸液療法及び血圧薬剤)への必要性を有意に減少させた(p=0.006)。こうした改善された血行動態の他に、EA-230は、腎機能(糸球体濾過量へのその効果により決定される)及び腎機能バイオマーカーであるクレアチニンの血漿レベルを有意に改善した(p=0.003)。EA-230は、ICUでの手術後回復滞在も有意に短縮し、また、病院での滞在期間も有意に減少させた(
図1)。平均で、EA-230処置患者は約8日の院内ケアを要したが、プラセボ処置患者は約10日を要した。また、プラセボ処置患者に比べてより少数のEA-230処置患者が再入院を要した。
【0085】
(ヒト患者でのEA-230の効果)
前向き無作為化二重盲検プラセボ対照試験が行われたが、180名の同時弁手術を伴う又は伴わないオンポンプ冠動脈バイパス術を受けている待機的患者が登録された。患者は、EA-230(90mg/kg/時間)又はプラセボを受ける群に1:1の比率で無作為に割り当てられた。これらは、外科手術開始から心肺バイパス使用終了まで注入された。このファースト・イン・ペイシェントの試験での主な焦点はEA-230の安全性及び認容性であった。主要有効性評価項目は、手術後のインターロイキン-6血漿濃度における変化として定量されたEA-230による炎症反応の調節であった。主要副次評価項目は腎機能へのEA-230の効果であった。
【0086】
(設計及び設定)
本試験は、単施設実施前向き無作為化二重盲検プラセボ対照単回投与第II相試験であった。これは、同時弁手術を伴う又は伴わないオンポンプ冠動脈バイパス術(coronary artery bypass grafting、CABG)のためのオンポンプ心臓手術を受けている患者におけるEA-230の安全性及び免疫調節効果を評価するために、アダプティブデザインを有する。180名の適格患者が、組み入れられ、実薬又はプラセボ処置を受ける群に1:1の比率で無作為に割り当てられた。これは、ファースト・イン・ペイシェントの安全性及び認容性の試験であったが、この主要有効性目標はEA-230の免疫調節効果を評価することであった。主要副次有効性評価項目は、腎機能へのEA-230の効果であった。この試験は、Standard Protocol Items:Recommendations for Interventional Trial(SPIRIT)に従って記述され、NCT03145220の番号でclinicaltrials.govのサイトに登録された。
【0087】
(無作為化及び層別化)
手術の朝に、患者は非盲検独立試験担当者により実薬又はプラセボ処置に無作為化された。この過程で試験担当者はGCP(Good Clinical Practice)で認められたデータ管理ソフト(Castor EDC、アムステルダム、オランダ)を用いた。Castorシステムは、有害転帰についての既知危険因子を有する患者の実薬及びプラセボ処置の間の均等な配分を保証するために層別無作為化を適用する。1)同時弁手術を伴う又は伴わないCABG手術、2)≦30、31-90、及び>90ml/分/1.73m2の推定GFRを有する手術前腎機能、及び3)<4又は≧4のEuroSCORE II(Nashef等、Eur. J. Cardiothora. Surg.、2012年4月;41(4):734-44)、の三層が含まれた。
【0088】
(盲検化)
二重盲検条件は、全患者、全ての盲検化された、試験手順、データ収集、及び/又はデータ分析に関与する医学的試験チーム担当者、並びに主治医について、維持された。他の試験手順に関与しない非盲検試験担当者が試験薬剤を調製した。実薬及びプラセボ処置のための注入システム及び溶液は見た目及び質感が同じであった。盲検解除は、本試験の完了、盲検化データレビューの実行、及びデータベースのロックの後にスポンサーにより許可された。
【0089】
(試験介入)
EA-230(90mg/kg/時間)又はプラセボの静脈内注入は、自動注入ポンプを用いて最初の外科的切開の時に開始される。注入速度は250ml/時間に設定され、注入はCPBの中断又は4時間の持続注入経過のいずれか最初に該当した方まで継続された。
【0090】
EA-230製剤は、800から1000mOsm/kgの重量モル浸透圧濃度をもって300mg/mlの最終濃度で注射するために水に溶解され、1500mg/バイアルの含有量で無菌5mlガラスバイアルに充填された。プラセボ製剤は、同一の重量モル浸透圧濃度を有する溶液となるように29mg/mlの含有量で同一の無菌5mlガラスバイアル内に注射のために水で希釈された塩化ナトリウムからなった。EA-230及びプラセボは、無菌的条件下で適切な量のEA-230又はプラセボを1000mLの正常食塩水に添加することにより400mOsm/kg未満の重量モル浸透圧濃度での静脈内持続注入のために調製された。プラセボ及び実薬処置バイアルは、HALIX BV(ライデン、オランダ)により製造された。
【0091】
(有害事象(adverse event、AE))
全AEが有害事象共通用語規準(Common Terminology Criteria for Adverse Events guidelines)4.030に基づく重症度(『軽症、中等症、又は重症』)及び試験薬へのこれらの知覚された関連性(『関連性は、明らかにあり、おそらくあり、可能性あり、又はなし/おそらくなし』)について治験担当者(investigator)により判断された。SAE及びSUSARは、死亡、命を脅かす疾患、長期的及び/又は顕著な障害及び/又は無能力、並びに、入院及び/又は入院治療の延長を含む。
【0092】
(倫理的配慮、データ品質保証、及び、患者・市民参加)
本試験は、ヘルシンキ宣言(ICH E6(R1))、ヒトを含む医学研究に関する法律(Medical Research Involving Human Subjects Act)、GCPガイドライン、及び欧州指令(2001/20/CE)の倫理原則に基づき行われた。いずれの試験特有の手順が行われる前にもインフォームド・コンセントが得られた。データは秘密裏且つ匿名で取り扱われ、GCP基準が適用された。本試験での患者データの取り扱いはオランダの個人情報保護法(オランダ語では、Wet Bescherming Persoonsgegevens、WBP)に従った。患者及び市民は本試験プロトコルの設計及び/又は遂行には関与しなかった。試験転帰は全ての試験参加者に個別に送られた。介入の負荷は独立した倫理機関委員会であるCMO及びCCMOにより評価され、これは非専門家会員を含む。
【0093】
(結果)
臨床試験中に得られたデータを評価したところ、際だったことに、IL-8、IL-10、IL-1RA、IL-17、MCP-1、及びICAM、並びに、検定されたその他のサイトカインについてEA-230群及びプラセボ群の間の血漿レベルの有意な差が観察されなかったことから、免疫調節効果も抗炎症効果も明白には観察されなかった。これは、本試験の主要評価項目であるIL-6血漿レベル(
図12参照)、並びに、炎症性腎障害マーカーである、IL-18、KIM1、NGAL、L-FABP、及びNAG(
図22参照)にも当てはまった。際だったことに、体液貯留を患う患者はEA-230処置群では有意に少ないことがわかった(表1参照)。様々なパラメーターがさらに分析され、血行動態パラメーター(昇圧剤の使用及び/又は輸液バランス)及び/又は腎臓パラメーターはプラセボに比べてEA-230の使用により有利な影響を受けた。
【0094】
表1:EASI試験での有害事象(AE)
処置群間の差をともなう、AE、重篤な有害事象(serious adverse event、SAE)、及び、予測できない重篤な有害事象疑い(suspected unexpected serious adverse reaction、SUSAR)をここに列記する。EA-230処置群(217名)では、プラセボ処置群(283名)に比べて、有意に少ない(カイ二乗P<0.05)AEがみられた。EA-230処置群(n=2)では、プラセボ処置群(n=11)に比べて、体液貯留を患う患者が有意に少ない(カイ二乗P<0.05)ことがわかった(p<0.05)。
【表1】
【0095】
表2:患者平均年齢をともなう、ポンプ期間の、ひいては、治療期間の、四分位であるQ1、Q2、Q3、及びQ4に分割された、及び、検定された全患者(Q1-Q4)の、患者の平均オンポンプ期間
【表2】
【0096】
(EASI試験での血行動態安定性)
図2では、昇圧剤の使用が示される。概して、昇圧剤の使用はEA-230により処置された群で減少された。患者は治療期間に基づいて四分位に分けられた。表3に、バソプレッシンを受けた日数、及び、0-2日目(最初の72時間)の正味の輸液バランスという、2つの変数の記述度数を示す。群は、処置なしの患者(プラセボ)及びEA-230による処置ありの患者(実薬)に分けられるとともに、急性腎障害(AKI)を有しない患者及びAKIを有する患者に分けられた。EA-230は、AKIを有する患者及びAKIを有しない患者の両方で、正味の輸液バランスを減少させた。EA-230は、AKIを有する患者について、昇圧剤の必要性を減少させた。
【表3】
【0097】
(EA-230での処置による輸液バランス及び昇圧剤の使用の調節)
プラセボに対するEA-230の効果は単変量及び多変量モデルで検定された(表4参照)。入力/独立変数は、処置群(EA-230又はプラセボ)であった。出力/従属変数は、最初の72時間の輸液バランス、バソプレッシンを受けた日数又は昇圧剤スコア(曲線下面積)といった評価項目であった。プラセボに対するEA-230の効果は、モデルA(最初の72時間の輸液バランス+バソプレッシンを受けた日数)及びモデルB(最初の72時間の輸液バランス+昇圧剤スコアAUC)における2つの組み合わされた変数について検定された。両方の多変量モデルでの検定の結果は、EA-230を受けている患者での血行動態パラメーターの有意な改善を示した。これは、モデルA(最初の72時間の輸液バランス+バソプレッシンを受けた日数)(p=0.006)及びモデルB(最初の72時間の輸液バランス+昇圧剤スコアAUC)(p=0.008)で観察された。AKIを示さなかった患者の群では、EA-230の血行動態効果も顕著によくなっており、血行動態の改善は腎不全とは独立して生じ得ることが示された。
【0098】
表4:EA-230による目標指向血行動態療法
モデルAに関する分析を、全群及びRIFLE基準に従って分割した腎機能障害の下位群(AKIなし(プラセボ n=42、EA-230 n=50)、Risk(プラセボ n=31、EA-230 n=34)、及びInjury(プラセボ n=16、EA-230 n=6))について示す。対応するp値を列記した。
【表4】
【0099】
組み合わせれば、これらの結果は、昇圧剤の使用の期間、投与される昇圧剤の量、及び/又は輸液バランスに影響を与えることにより評価されるように、EA-230の使用がヒト患者での血行動態を改善及び/又は維持できることを示す。特に、EA-230はヒトにおける開心手術後の血行動態安定性を改善する。透過性は血管から漏出する体液の量を支配する。輸液療法の施行は一般的に漏出を増加させる。第II相試験患者観察結果に基づき、我々は、EA-230により処置された患者での有害な体液貯留(体液過負荷による体液漏出)の有意な減少を発見した(p=0.03)。また、収縮性は緊張度を支配する。これは血圧薬剤の投与により調節されることが多いが、こうした薬剤は主要有害副作用を示す可能性がある。第II相試験患者観察結果に基づき、我々は、EA-230により最も長く処置された患者の半分で必要とされる血圧薬剤の使用の相当の減少を発見した(>156分、p=0.093)。また、我々は、第II相臨床試験でEA-230についてヒトにおいてインビボで決定された平均最大濃度(平均Cmax)を決定した。平均動脈Cmaxは、30500ng/ml(範囲は12500から57500ng/ml)とわかった。平均静脈Cmaxは、68400ng/ml(範囲は19600から113000ng/ml)とわかった。
【0100】
(EA-230は腎機能に有利な効果を有する)
異なるステージの急性腎障害(acute kidney injury、AKI)の発症率の調節へのEA-230の効果がRIFLE基準(RIFLE:risk、injury、failure、loss of kidney function(腎機能喪失)、及びend-stage kidney disease(末期腎臓病)への分類、Clin. Kidney J.、2013年2月;6(1):8-14頁)に基づいて決定された。EA-230群では、AKIなし患者の数が増加する一方で、RIFLE基準のinjuryカテゴリの患者の数が減少した(
図3参照)。さらに、EA-230の使用は手術後のGFRを有意に改善した(
図4)。腎機能のバイオマーカーとしてのクレアチニンクリアランスがEA-230により処置された患者では手術後に有意に改善された(
図5)。手術前の腎機能を考慮した場合、クレアチニンのクリアランスは、EA-230が用いられ、手術前の腎機能が60ml/分未満であったときに、有意に改善された(
図6、左)。手術前の腎機能が60ml/分超であったときは、差は観察されなかった(
図6、右)。同様の観察がGFRパラメーターに基づいてなされた(
図7)。EA-230による処置は、手術前の推定GFRと比べたとき、手術後の推定GFRを有意に改善したが、プラセボによる処置はそうではなかった。腎機能が60ml/分/1.73m2超であった場合、群間で差はみられなかった。また、患者が心肺バイパスを長期間有していた場合、EA-230による処置は、手術前のGFRと比べたとき、手術後のGFRを有意に改善した(
図8、処置長さ>156分、p=0.001)。組み合わせれば、これらの結果は、EA-230の使用がヒト患者での腎機能を改善及び/又は維持できることを示す。
【0101】
(ICU、病院での滞在期間、及び再入院)
本試験では、ICUへの患者の滞在期間及び病院での滞在期間(入院患者治療)が調査された(
図10参照)。EA-230による処置は、ICU及び病院での滞在期間(LOS)の有意な減少をもたらした。ICU及び病院での滞在期間はEA-230群で減少した。EA-230により処置された患者は手術後90日までの再入院者数の相当の(p=0.09)減少も示した(表5参照)。
【0102】
表5:EASI試験(CABG試験)での再入院者数。手術後の期間に臨床疾患のため病院に再入院されねばならなかった患者の数。再入院は、手術後の90日の合計期間について、手術後の28日の期間及び手術後の29-90日の範囲の期間においてスコア化された。再入院は、EA-230を受けている患者の処置群で減少した。
【表5】
【0103】
さらに、AQGVにより処置された患者群では、AKI障害罹患患者数は減少したが、患者がAKI障害に罹患した場合、これらの患者はプラセボ群で観察されるような長期間の滞在期間を要せず、滞在期間はAKIなし患者又はAKIの危険性がある患者と同様であった(
図11参照)。
【0104】
それとともに、EA-230による処置は、回復への強力で有益な効果を示す。EA-230処置患者は、顕著に少ない血行動態療法を必要とし、手術後の腎機能を顕著に迅速に回復し、また、プラセボ処置群と比べて、集中治療室(ICU)及び病院に短い期間にわたり留まった。
【0105】
EA-230のこれらの新規の血行動態効果は、EA-230の抗炎症効果とは独立しているようにみえた。要するに、EA-230処置患者の、血行動態安定性、腎機能、及び手術後回復の顕著な改善は、血管透過性及び血管収縮性へのEA-230の新規の効果と関連する。手術中に与えられたEA-230は、プラセボ患者を上回る手術後の患者回復の顕著な改善を示す。EA-230処置患者は集中治療(p=0.0232)及び病院(p=0.0015)からより迅速に解放される。EA-230は、血行動態安定性(p=0.006)及び腎機能(p=0.003)を改善する。主要評価項目である短期炎症性サイトカイン(IL-6)減少は失われたが、長期患者回復はEA-230により顕著に改善された。手術をとおして、EA-230が安全であり良好に認容されることが示された。結論として、手術中に与えられたEA-230は手術後の回復を顕著に改善する。
【0106】
血行動態安定性の有意な改善(輸液療法及び血圧薬剤を減少させる、p=0.006)が発見されたが、これは、腎機能の有意な改善(改善された糸球体濾過量は血漿クレアチニンを減少させる、p=0.003)、回復中の有害な体液貯留に罹患している患者の有意な減少(EA-230については2名、プラセボについては9名、p=0.03)、及び、手術後の90日における病院への再入院の相当の減少(EA-230については4名、プラセボについては10名、p=0.09)を伴っていた。
【0107】
(血管収縮及び/又は血管拡張に関連したさらなる分析バイオマーカー)
血行動態及び腎機能で観察された効果を鑑み、選択バイオマーカーについて血漿サンプルがさらに分析された。対照患者及びEA-230を受けている患者の血漿サンプルが、エンドセリン-1、VEGF、アンジオテンシンII、及びcAMP、並びにナトリウム利尿ペプチドといったバイオマーカーについて、分析された。バイオマーカーのレベルを決定するために、後述のアッセイが用いられる。
【0108】
(EA-230及びAQGVアナログのインビトロ効果)
インビトロのトランスウェルアッセイで、AQGVペプチド(EA-230)及びそのアナログの効果がヒト血管内皮細胞上で試験された。簡単に説明すると、血管内皮細胞がトランスウェル培養皿内で培養され、培地に、AQGVペプチド及びそのアナログ、又は、内皮層透過性、血管収縮、及び/若しくは血管拡張に影響することが知られている対照化合物が、補充される。適切なヒト血管内皮細胞は、例えば、HUVEC(Park等、Stem Cell Rev.、2(2):93-102、2006;Jimenez等、Cytotechnology 65、1-14、2012)及びHMEC-1(Ades EW等、J. Invest. Dermatol.、99(6):683-690、1992)である。内皮層の透過性は巨大分子の通過を測定することにより決定される。さらに、バイオマーカーのレベルも培地中で決定される。実験は、例えば、Cox等(Shock、43(4):322-6;2015)に概要が述べられているようなやり方で実行される。HUVEC透過性試験では、血管を裏打ちする能力を持つ、確立されたヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)が、複数の試験形式において、篩上で細胞培養により増やされ(すなわち、n=5)、用いられたEA-230ペプチド又はプラセボ対照の様々な試験濃度に応じた漏出物の決定を可能とし、ヒト細胞での透過性へのEA-230ペプチド効果の薬理学的パラメーターが確立される。
【0109】
また、Bravo等(J. Pharmacol. Toxicol. Methods、2018年1月-2月;89:47-53)は、xCELLigence RTCA MPシステムを用いたインピーダンス型収縮アッセイを開発した。この技術は、電気的インピーダンスを実時間で記録することにより細胞接着を監視するために金の微小電極のアレイが個別のウェルに印刷された特別な96ウェルのEプレートを用いる。インピーダンス変化(対照に対する百分率)が細胞収縮についての読み取り値として用いられ得る。血管を収縮させる能力をもつ、確立されたヒト大動脈平滑筋細胞(HaSMC)が、複数の試験形式において、金電極上で細胞培養により増やされ(すなわち、n=3)、用いられたEA-230ペプチド又はプラセボ対照の様々な試験濃度に応じたエンドセリン-1誘導性平滑筋細胞収縮の電気的インピーダンス決定を可能とし、ヒト細胞での収縮性へのEA-230ペプチド効果の薬理学的パラメーターが確立される。加えて、差別的に血管を収縮させる能力を持つ、単離された動脈瘤(n=3)/対照(n=3)患者のヒト大動脈平滑筋細胞(APaSMC)が、複数の試験形式において、金電極上で細胞培養により増やされ、用いられたEA-230ペプチド又はプラセボ対照の様々な試験濃度に応じた患者対対照細胞のイオノマイシン誘導性平滑筋収縮の電気的インピーダンス決定を可能とし、患者細胞でのEA-230の効果が検出される。
【0110】
[付記]
[付記1]
血行動態安定性を維持又は改善する必要があると考えられるヒト対象の治療方法であって、アラニン(一文字表記でA)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)、及びアルギニン(R)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択される少なくとも50%のアミノ酸を含むペプチドを前記対象に投与することを含む、治療方法。
【0111】
[付記2]
有害な血管透過性を減少させる必要があると考えられるヒト対象の治療方法であって、アラニン(一文字表記でA)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)、及びアルギニン(R)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択される少なくとも50%のアミノ酸を含むペプチドを前記対象に投与することを含む、治療方法。
【0112】
[付記3]
有害な体液貯留を減少させる必要があると考えられるヒト対象の治療方法であって、アラニン(一文字表記でA)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)、及びアルギニン(R)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択される少なくとも50%のアミノ酸を含むペプチドを前記対象に投与することを含む、治療方法。
【0113】
[付記4]
前記ペプチドは前記オートファジー阻害アミノ酸の群から選択される少なくとも75%のアミノ酸を含む、付記1から3のいずれか1つに記載の治療方法。
【0114】
[付記5]
前記ペプチドは前記オートファジー阻害アミノ酸の群から選択されるアミノ酸からなる、付記1から4のいずれか1つに記載の治療方法。
【0115】
[付記6]
前記ペプチドは、アラニン(A)、グルタミン(Q)、及びロイシン(L)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択される少なくとも50%のアミノ酸を含む、付記1から5のいずれか1つに記載の治療方法。
【0116】
[付記7]
前記ペプチドは、グリシン(G)、バリン(V)、イソロイシン(I)、プロリン(P)、及びアルギニン(R)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択される多くとも30%のアミノ酸を含む、付記1から6のいずれか1つに記載の治療方法。
【0117】
[付記8]
アラニン(一文字表記でA)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)、及びアルギニン(R)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択される少なくとも50%のアミノ酸をそれぞれが含む少なくとも2つの異なるペプチドを前記対象に投与することを含む、付記1から7のいずれか1つに記載の治療方法。
【0118】
[付記9]
1つ又は複数の前記ペプチドは4-30アミノ酸の範囲の長さである、付記1から8のいずれか1つに記載の方法。
【0119】
[付記10]
前記対象は手術などの重症外傷を受けている、付記1から9のいずれか1つに記載の治療方法。
【0120】
[付記11]
前記対象は抗悪性腫瘍剤又は免疫調節剤での治療などのがん治療を受けている、付記1から9のいずれか1つに記載の治療方法。
【0121】
[付記12]
前記対象は薬物有害反応でみられる毛細血管漏出症候群に罹患していると考えられる、付記1から9のいずれか1つに記載の治療方法。
【0122】
[付記13]
前記ヒト対象は腎機能障害を有する、付記1から12のいずれか1つに記載の方法。
【0123】
[付記14]
前記方法は昇圧剤の減少された使用を含む、付記1から13のいずれか1つに記載の方法。
【0124】
[付記15]
前記方法は減少された水分摂取量を含む、付記1から14のいずれか1つに記載の方法。
【0125】
[付記16]
前記ペプチドは、アラニン(一文字表記でA)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、及びバリン(V)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択される少なくとも50%のアミノ酸を含む、付記1から15のいずれか1つに記載の方法。
【0126】
[付記17]
前記ペプチドは、アラニン(一文字表記でA)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、及びバリン(V)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択されるアミノ酸からなる、付記1から15のいずれか1つに記載の方法。
【0127】
[付記18]
前記ペプチドはペプチド-有機酸の群から選択される塩である、付記1から17のいずれか1つに記載の方法。
【0128】
[付記19]
血行動態安定性を維持又は改善する必要があると考えられるヒト対象の治療での使用のためのペプチドであって、前記ペプチドは、アラニン(一文字表記でA)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)、及びアルギニン(R)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択される少なくとも50%のアミノ酸を含む、ペプチド。
【0129】
[付記20]
有害な血管透過性を減少させる必要があると考えられるヒト対象の治療での使用のためのペプチドであって、前記ペプチドは、アラニン(一文字表記でA)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)、及びアルギニン(R)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択される少なくとも50%のアミノ酸を含む、ペプチド。
【0130】
[付記21]
有害な水分を減少させる必要があると考えられるヒト対象の治療での使用のためのペプチドであって、前記ペプチドは、アラニン(一文字表記でA)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)、及びアルギニン(R)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択される少なくとも50%のアミノ酸を含む、ペプチド。
【0131】
[付記22]
前記対象は手術などの重症外傷を受けている、付記19から21のいずれか1つに記載のペプチド。
【0132】
[付記23]
前記対象は抗悪性腫瘍剤又は免疫調節剤での治療などのがん治療を受けている、付記19から21のいずれか1つに記載のペプチド。
【0133】
[付記24]
前記対象は薬物有害反応でみられる毛細血管漏出症候群に罹患していると考えられる、付記19から21のいずれか1つに記載のペプチド。
【0134】
[付記25]
前記ヒト対象は腎機能障害を有する、付記19から24のいずれか1つに記載のペプチド。
【0135】
[付記26]
前記使用は昇圧剤の減少された使用を含む、付記19から25のいずれか1つに記載のペプチド。
【0136】
[付記27]
前記使用は減少された水分摂取量を含む、付記19から26のいずれか1つに記載のペプチド。
【0137】
[付記28]
前記ペプチドは、アラニン(一文字表記でA)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、及びバリン(V)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択される少なくとも50%のアミノ酸を含む、付記19から27のいずれか1つに記載のペプチド。
【0138】
[付記29]
前記ペプチドは、アラニン(一文字表記でA)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、及びバリン(V)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択されるアミノ酸からなる、付記28に記載のペプチド。
【0139】
[付記30]
前記ペプチドは、ペプチド-酢酸塩、ペプチド-酒石酸塩、又はペプチド-クエン酸塩の群から選択される塩である、付記29に記載のペプチド。
【0140】
[付記31]
付記19から30のいずれか1つに記載のペプチドを含む医薬製剤。
【0141】
[付記32]
前記ペプチドは前記オートファジー阻害アミノ酸の群から選択される少なくとも75%のアミノ酸を含む、付記31に記載の医薬製剤。
【0142】
[付記33]
前記ペプチドは前記オートファジー阻害アミノ酸の群から選択される100%のアミノ酸からなる、付記31又は32に記載の医薬製剤。
【0143】
[付記34]
前記ペプチドは、アラニン(A)、グルタミン(Q)、及びロイシン(L)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択される少なくとも50%のアミノ酸を含む、付記31から33のいずれか1つに記載の医薬製剤。
【0144】
[付記35]
前記ペプチドは、グリシン(G)、バリン(V)、イソロイシン(I)、プロリン(P)、及びアルギニン(R)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択される多くとも30%のアミノ酸を含む、付記31から34のいずれか1つに記載の医薬製剤。
【0145】
[付記36]
アラニン(一文字表記でA)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)、及びアルギニン(R)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択される少なくとも50%のアミノ酸をそれぞれが含む少なくとも2つの異なるペプチドを含む、付記31から35のいずれか1つに記載の医薬製剤。
【0146】
[付記37]
1つ又は複数の前記ペプチドは4-30アミノ酸で長さが異なる、付記31から36のいずれか1つに記載の医薬製剤。
【0147】
[付記38]
少なくとも0.85モル/Lの1つ又は複数の前記ペプチドを含む、付記31から37のいずれか1つに記載の医薬製剤。
【0148】
[付記39]
少なくとも1つの医薬上許容可能な添加剤及び付記31から38のいずれか1つに記載の医薬製剤。
【0149】
[付記40]
付記31から39のいずれか1つに記載の医薬製剤を含むストック溶液。
【0150】
[付記41]
血行動態安定性を維持又は改善する必要があると考えられるヒト対象の治療方法での使用のための、付記31から40のいずれか1つに記載の製剤又は溶液。
【0151】
[付記42]
有害な血管透過性を減少させる必要があると考えられるヒト対象の治療方法での使用のための、付記31から40のいずれか1つに記載の製剤又は溶液。
【0152】
[付記43]
有害な体液貯留を減少させる必要があると考えられるヒト対象の治療方法での使用のための、付記31から40のいずれか1つに記載の製剤又は溶液。
【0153】
[付記44]
クラークソン病(CLS)を罹患している又は罹患していると考えられるヒト対象の治療方法での使用のための、付記31から40のいずれか1つに記載の製剤又は溶液。
【0154】
[付記45]
血行動態安定性を維持又は改善する必要があると考えられるヒト対象の治療方法であって、付記31から40のいずれか1つに記載の製剤又は溶液を前記対象に投与することを含む、治療方法。
【0155】
[付記46]
有害な血管透過性を減少させる必要があると考えられるヒト対象の治療方法であって、付記31から40のいずれか1つに記載の製剤又は溶液を前記対象に投与することを含む、治療方法。
【0156】
[付記47]
有害な体液貯留を減少させる必要があると考えられるヒト対象の治療方法であって、付記31から40のいずれか1つに記載の製剤又は溶液を前記対象に投与することを含む、治療方法。
【0157】
[付記48]
クラークソン病(CLS)を罹患している又は罹患していると考えられるヒト対象の治療方法であって、付記31から40のいずれか1つに記載の製剤又は溶液を前記対象に投与することを含む、治療方法。
【手続補正書】
【提出日】2022-08-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血行動態安定性を維持又は改善する必要があると考えられるヒト対象の治療での使用のための
医薬製剤であって、
前記医薬製剤はペプチドを含み、前記ペプチドは、アラニン(一文字表記でA)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)、及びアルギニン(R)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択される少なくとも50%のアミノ酸を含む、
医薬製剤。
【請求項2】
有害な血管透過性を減少させる必要があると考えられるヒト対象の治療での使用のための
医薬製剤であって、
前記医薬製剤はペプチドを含み、前記ペプチドは、アラニン(一文字表記でA)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)、及びアルギニン(R)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択される少なくとも50%のアミノ酸を含む、
医薬製剤。
【請求項3】
有害な水分を減少させる必要があると考えられるヒト対象の治療での使用のための
医薬製剤であって、
前記医薬製剤はペプチドを含み、前記ペプチドは、アラニン(一文字表記でA)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)、及びアルギニン(R)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択される少なくとも50%のアミノ酸を含む、
医薬製剤。
【請求項4】
クラークソン病(CLS)を罹患している又は罹患していると考えられるヒト対象の治
療での使用のための
医薬製剤であって、前記医薬製剤はペプチドを含み、前記ペプチドは、アラニン(一文字表記でA)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)、及びアルギニン(R)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択される少なくとも50%のアミノ酸を含む、医薬製
剤。
【請求項5】
前記対象は手術などの重症外傷を受けている、請求項
1から
4のいずれか1項に記載の
医薬製剤。
【請求項6】
前記対象は抗悪性腫瘍剤又は免疫調節剤での治療などのがん治療を受けている、請求項
1から
4のいずれか1項に記載の
医薬製剤。
【請求項7】
前記対象は薬物有害反応でみられる毛細血管漏出症候群に罹患していると考えられる、請求項
1から
4のいずれか1項に記載の
医薬製剤。
【請求項8】
前記ヒト対象は腎機能障害を有する、請求項
1から
7のいずれか1項に記載の
医薬製剤。
【請求項9】
前記使用は昇圧剤の減少された使用を含む、請求項
1から
8のいずれか1項に記載の
医薬製剤。
【請求項10】
前記使用は減少された水分摂取量を含む、請求項
1から
9のいずれか1項に記載の
医薬製剤。
【請求項11】
前記ペプチドは、アラニン(一文字表記でA)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、及びバリン(V)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択される少なくとも50%のアミノ酸を含む、請求項
1から
10のいずれか1項に記載の
医薬製剤。
【請求項12】
前記ペプチドは、アラニン(一文字表記でA)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、及びバリン(V)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択されるアミノ酸からなる、請求項
1から11のいずれか1項に記載の
医薬製剤。
【請求項13】
前記ペプチドはペプチド-有機酸の群から選択される塩である、請求項1から
12のいずれか1項に記載の
医薬製剤。
【請求項14】
前記ペプチドは、ペプチド-酢酸塩、ペプチド-酒石酸塩、又はペプチド-クエン酸塩の群から選択される塩である、請求項
13に記載の
医薬製剤。
【請求項15】
前記ペプチドは前記オートファジー阻害アミノ酸の群から選択される少なくとも75%のアミノ酸を含む、請求項
1から14のいずれか1項に記載の医薬製剤。
【請求項16】
前記ペプチドは前記オートファジー阻害アミノ酸の群から選択される100%のアミノ酸からなる、請求項
1から15のいずれか1項に記載の医薬製剤。
【請求項17】
前記ペプチドは、アラニン(A)、グルタミン(Q)、及びロイシン(L)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択される少なくとも50%のアミノ酸を含む、請求項
1から
16のいずれか1項に記載の医薬製剤。
【請求項18】
前記ペプチドは、グリシン(G)、バリン(V)、イソロイシン(I)、プロリン(P)、及びアルギニン(R)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択される多くとも30%のアミノ酸を含む、請求項
1から
17のいずれか1項に記載の医薬製剤。
【請求項19】
アラニン(一文字表記でA)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)、及びアルギニン(R)からなるオートファジー阻害アミノ酸の群から選択される少なくとも50%のアミノ酸をそれぞれが含む少なくとも2つの異なるペプチドを含む、請求項
1から
18のいずれか1項に記載の医薬製剤。
【請求項20】
1つ又は複数の前記ペプチドは4-30アミノ酸で長さが異なる、請求項
1から
19のいずれか1項に記載の医薬製剤。
【請求項21】
少なくとも0.85モル/Lの1つ又は複数の前記ペプチドを含む、請求項
1から
20のいずれか1項に記載の医薬製剤。
【請求項22】
少なくとも1つの医薬上許容可能な添加剤
を含む、請求項
1から
21のいずれか1項に記載の医薬製剤。
【請求項23】
請求項
1から
22のいずれか1項に記載の医薬製剤を含むストック溶液。
【国際調査報告】