(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-01
(54)【発明の名称】ハイコンテント分析法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/04 20060101AFI20230125BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20230125BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20230125BHJP
【FI】
C12Q1/04
C12M1/00 A
C12M1/34 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022520624
(86)(22)【出願日】2020-10-02
(85)【翻訳文提出日】2022-05-16
(86)【国際出願番号】 IB2020059250
(87)【国際公開番号】W WO2021064663
(87)【国際公開日】2021-04-08
(31)【優先権主張番号】102019000017975
(32)【優先日】2019-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518442240
【氏名又は名称】セルプライ・ソチエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ
【氏名又は名称原語表記】CELLPLY S.r.l.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【氏名又は名称】冨田 和幸
(72)【発明者】
【氏名】マッシモ ボッキ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレア ファエンツァ
(72)【発明者】
【氏名】ラウラ ロッキ
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029AA08
4B029BB11
4B029CC01
4B029FA02
4B029FA03
4B029FA12
4B063QA18
4B063QQ08
4B063QR77
4B063QX01
(57)【要約】
本発明は、細胞を含む複数のマイクロウェルをハイコンテントアッセイにかける方法であり、該方法は、a)前記複数のマイクロウェルの少なくとも一つの画像を取得することと、b)前記画像において、複数の対象領域を検出することであって、各対象領域が単一の細胞に対応することと、c)前記対象領域の少なくとも一つの派生プロパティ及び任意選択で少なくとも一つの直接プロパティを測定することであって、前記一以上のプロパティが選択プロパティであることと、d)前記複数のマイクロウェルのサブセットを選択することであって、該サブセットに属するマイクロウェルが少なくとも一つの選択プロパティに基づいて選択された対象領域を含むことと、e)選択される対象領域のセットで測定されたプロパティから出力パラメーターを推測することであって、該プロパティを出力プロパティと定義し、該出力プロパティが前記選択プロパティとは異なり、前記出力パラメーターが前記対象領域のセットで測定された出力プロパティを処理したものであることと、を含む方法である。さらなる形態では、細胞を含む複数のマイクロウェルをハイコンテントアッセイにかけるシステム及び細胞を含む複数のマイクロウェルをハイコンテントアッセイにかける命令を含むコンピュータプログラムを請求している。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞を含んだ複数のマイクロウェルをハイコンテントアッセイにかける方法であって、
a)前記複数のマイクロウェルの少なくとも一つの画像を取得することと、
b)前記画像において、複数の対象領域を検出することであって、各対象領域が単一の細胞に対応することと、
c)対象領域の少なくとも一つの派生プロパティ、及び、任意選択で、少なくとも一つの直接プロパティを測定することであって、前記一以上のプロパティが選択プロパティであることと、
d)前記複数のマイクロウェルのサブセットを選択することであって、該サブセットに属する前記マイクロウェルが前記少なくとも一つの選択プロパティに基づいて選択される対象領域を含むことと、
e)選択される対象領域のセットで測定されるプロパティから出力パラメーターを推定することであって、該プロパティを出力プロパティと定義し、該出力プロパティが前記選択プロパティとは異なり、前記出力パラメーターが前記対象領域のセットで測定された出力プロパティを処理したものであることと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記直接プロパティが単一の対象領域に関連するプロパティ、すなわち、単一の対象領域を評価することにより測定されるプロパティであり、前記派生プロパティが多数の対象領域に関連するプロパティ、すなわち、測定される二以上の対象領域の評価を必要とするプロパティである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記派生プロパティのうち一つが、同一のマイクロウェルに含まれる一以上の対象領域間の関係プロパティ又は共存プロパティである、請求項1又は2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記選択が組み入れ基準を課すことによって行われ、該組み入れ基準が、
-前記派生プロパティ、及び、任意選択で測定される直接プロパティから、一以上の選択プロパティを特定することと、
-前記選択プロパティの夫々について、閾値、又は前記選択プロパティが必ず入る値の範囲を課すことと、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記選択プロパティの少なくとも一つが累積プロパティである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
第一選択プロパティに基づく対象領域の第一セットの選択と、該対象領域の第一セット内における、第二選択プロパティに基づく対象領域のサブセットの選択と、を含み、好ましくは、前記第一選択プロパティが累積プロパティであり、前記対象領域の第一セットがマイクロウェルのサブセットに対応し、前記第二選択プロパティが直接又は相対プロパティであり、前記対象領域のサブセットが前記マイクロウェルのサブセットに埋め込まれた細胞のサブセットに対応する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記出力パラメーターが、選択される対象領域のセットに属する各対象領域で測定される出力プロパティの統計的処理の結果である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも一つの画像を、前記複数のマイクロウェルの少なくとも一つの画像を取得するよう構成された画像取得デバイスによって取得する、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記画像を分析及び処理して、前記プロパティの測定値を返し、前記分析及び処理プロセスが次のステップ:
-複数のマイクロウェルを含む画像において、マイクロウェルに対応するゾーンを特定することと、
-前記マイクロウェルに対応するゾーン内で、複数の対象領域を検出することであって、各対象領域が前記複数のマイクロウェルに含まれる前記細胞の一つに対応することと、
-前記対象領域の夫々の少なくとも一つのプロパティを測定することと、
-前記測定されたプロパティの一以上に基づいて対象領域のセットを選択することであって、前記一以上のプロパティを選択プロパティと定義することと、
-前記対象領域のセットで測定されたプロパティから出力パラメーターを推定することと、
を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記複数のマイクロウェルが、少なくとも15,000個、又は少なくとも18,000個の、好ましくは19,200個のマイクロウェルを含むマイクロ流体デバイスに埋め込まれている、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記マイクロウェルが、逆開口型マイクロウェル、すなわち、上端部と下端部が共に開いているマイクロウェルである、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
複数のマイクロウェルを動的試験にかけ、同一フィールドの幾つかの画像を連続時間(タイムラプス撮影)で取得し、時間t
0及びその後の時間t
1、t
2、…t
nで前記少なくとも一つのプロパティを測定することで、該プロパティの変化を経時的に反映した分析を返す、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記細胞を、前記複数のマイクロウェル中に保持しつつ、前記出力パラメーターに影響を与える一以上の薬剤に曝露する、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
細胞を含んでいる複数のマイクロウェルをハイコンテントアッセイにかけるシステム(1)であって、該システムが、画像取得デバイス(2)と、データ処理ユニット(4)と、を含み、
-前記画像取得デバイス(2)が、前記複数のマイクロウェル(3)の少なくとも一つの画像を取得するように構成されており、
-前記データ処理ユニット(4)が、
-前記画像において、複数の対象領域を検出し、ここで、各対象領域が単一の細胞に対応し、
-前記対象領域の少なくとも一つの派生プロパティ、及び、任意選択で、少なくとも一つの直接プロパティを測定し、ここで、前記一以上のプロパティが選択プロパティであり、
-前記複数のマイクロウェルのサブセットを選択し、ここで、該サブセットに属する前記マイクロウェルが前記少なくとも一つの選択プロパティに基づいて選択される対象領域を含み、
-選択される対象領域のセットで測定されるプロパティから出力パラメーターを推定し、ここで、該プロパティを出力プロパティと定義し、該出力プロパティが前記選択プロパティとは異なり、前記出力パラメーターが前記対象領域のセットで測定された出力プロパティを処理したものである、ように構成されている、
システム(1)。
【請求項15】
細胞を含んでいる複数のマイクロウェルをハイコンテントアッセイにかけるコンピュータプログラムであって、該プログラムがデータ処理ユニットによって実行されるとき、該処理ユニットに、次の
-前記対象領域の少なくとも一つの派生プロパティ、及び、任意選択で、少なくとも一つの直接プロパティを測定するステップであって、前記一以上のプロパティが選択プロパティである、ステップと、
-前記複数のマイクロウェルのサブセットを選択するステップであって、該サブセットに属する前記マイクロウェルが前記少なくとも一つの選択プロパティに基づいて選択された対象領域を含む、ステップと、
-選択される対象領域のセットで測定されるプロパティから出力パラメーターを推定するステップであって、該プロパティを出力プロパティと定義し、該出力プロパティが前記選択プロパティとは異なり、前記出力パラメーターが前記対象領域のセットで測定された出力プロパティを処理したものである、ステップと、
を実行させる命令を含む、
コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
機能性試験に基づく精密医薬は、急速に技術が発展する新しい分野である。
【0002】
今まで、予測機能試験によるパーソナライゼーションは、主に、腫瘍細胞のような特定の細胞集団の挙動をみるインビトロ分析と関連しており、薬剤を用いたインビトロ刺激後の生存率、免疫表現型、それらの変化量などのパラメーターを分析している。細胞は、患者から得たサンプルに由来する細胞であってもよい。
【0003】
個人化した医薬の用途に必須な、高い予測精度を有するデータを取得するには、細胞の相互作用を模倣するインビトロ条件や体内の腫瘍細胞を取り巻く微小環境を再現する必要がある。
【0004】
治療剤の存在下及び/又は非存在下で、細胞死を評価するために使う場合、フローサイトメトリーでは、微小環境と細胞-細胞間相互作用の情報収集ができない。
【0005】
したがって、より多くの予測データを得るためには、前記微小環境と前記細胞-細胞間相互作用を最も良く表すインビトロモデルをつくる必要がある。これは、インビトロ/インビボ相関を最大化させることにつながる最も適切なインビトロ環境を選択することで達成できる可能性があり、そのためには、細胞死に加えて、例えば、バイオマーカーの発現を含むプロパティを評価することが、異なる細胞集団間の相互作用及び細胞が見い出される微小環境を考慮するために必要である。これらのプロパティは、ハイコンテント技術を使用しない限り評価することはできない。
【0006】
非常に高価で、投与が可能な限り限定されなければならない、より一層個人化された治療法の市場への参入の必要性が、ますます感じられる。さらに、多くの疾患、特に癌では、急速な進行と抗癌治療の副作用により、当初から最善な治療方法であることが求められる。
【0007】
US2017356911は、PMBC(末梢血単核細胞)を患者の血液サンプルから単離し、それらをマルチウェルプレート、好ましくは、384-ウェルプレートに播種するインビトロシステムを開示しており、生理学的環境をうまく説明する実験モデルを得ている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
マルチウェルプレートで長年にわたって行われている実験では、各ウェル、例えば、同量の同一細胞懸濁液が播種されたウェルにおいて、異なる、非常に複雑な関係が、細胞間でどのように起こるかを示している。必ずしも、各前記ウェルと該ウェルに属する全ての細胞において、ウェルが生理学的環境を表すように最適な環境がつくりだされているとは限らない。
【0009】
逸脱したデータを除外することは、逸脱が非特異的である場合、すなわち、進行中の分析と相関がなく、サンプルが生理学的環境を表さないことに起因して頻繁である場合、現在、ハイコンテント分析プラットフォームで実行できない。
【0010】
したがって、細胞のサンプルにおいて、臨床的な実践で有用な指標を得るための、効率的で正確、精密な分析を可能とする方法の必要性を強く感じる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、生物学的試料のハイコンテント分析法に関するものであり、該方法は、インビトロモデルの規定を可能とする細胞及び/又はマイクロウェルのセット又はサブセットの選択の分析プロセスに基づき、前記モデルによって行われた測定と実際の生物学的インビボ挙動との間の相関が最大化される。一実施形態では、前記方法は、例えば、薬剤と生物学的試料との間の相互作用を観察することを可能にし、前記薬剤の活性化と関連のない干渉を排除する。さらなる実施形態では、前記方法は、インビトロ/インビボ相関が最大となるような最も適切なインビトロ状況を選択することを可能にする。例として、本発明による方法は、治療によってではなく、細胞がインビボでかけられる条件とは異なったインビトロ微小環境の条件により、細胞の機能性の変化の影響を表すデータを除く客観的な方法を提供し、患者細胞のサンプルのインビトロで得られた治療の効果の結果と、実際の同一の患者による同一の治療に対する臨床反応との間の相関を最大化することを可能にする。
【0012】
前記方法は、大規模であり、実行する特定の分析に最も適したサンプルに分析を集中させることができ、結果の統計的ロバスト性を確保するために、多くのデータを維持しながら、進行中の分析に関係せず、サンプルが生理学的な環境を代表しないことに起因する理由により、逸脱したデータにつながるサンプルを除去する。特に、本発明による方法は、分析を一組のマイクロウェルに集中させることを可能とし、各マイクロウェルは、マイクロウェルに含まれる細胞及び/又は薬剤間の、各マイクロウェルで作られる異なる関係に起因するそれぞれ異なる微小環境によって特徴づけられる。
【0013】
(定義)
他に定義しない限り、本明細書中で使用する全ての技術用語及び科学用語は、本発明の属する技術分野の当業者によって一般に理解される意味と同じである。
【0014】
本明細書で使用する「約」、「おおよそ」という用語は、所与の値又は範囲の10%以内、さらに好ましくは5%以内の変動性を示す。
【0015】
本明細書で使用する「マイクロウェル」は、高さ、断面積、例えば管状であるマイクロウェルの直径、体積等のサイズが、マイクロメートル寸法(1000マイクロメートル未満)である容器を意味する。
【0016】
「ハイコンテント」という用語は、一般的に、顕微鏡下、位相差及び/又は蛍光下で画像を取得し、それらを分析することにより行われる、同時に異なるパラメーターを読み取り、全細胞又は細胞成分の分析を含む、細胞中で行われる表現型分析方法を指す。
【0017】
本明細書中で使用する「細胞-細胞間相互作用」という用語は、免疫系の細胞間のもの又は組織の炎症に伴って生じる相互作用などの、細胞の又は一過性の若しくは一時的な接合によって生じるもののような、安定し得る、細胞表面間の直接的な相互作用を指す。また、前記相互作用は、間接的であってもよく、ここで、前記細胞は、接触していないものの、第一の細胞が接近した第二の細胞に機能的な影響を及ぼすことで、分子、例えばタンパク質を分泌するのに十分に近い。例として、CAR-Tの場合と同様に、薬又は操作による治療後に、T細胞は、十分接近したターゲットの死を引き起こすサイトカインを放出する。
【0018】
「治療」は、インビトロにおける細胞の治療上の処置又は対象の治療上の処置を意味し、その目的は、ターゲット疾患の状態や障害、一以上のそれに関連する症状を改善又は遅らせる(低減する)ことである。前記治療上の処置は、薬剤又は治療薬からなるものであってもよい。
【0019】
「応答」又は「応答性」は、治療後に少なくとも一つの変化した特徴を呈する細胞又は対象を指す。同様に、「応答する」又は「応答」及びこれらと同様の用語は、ターゲット疾患の状態又は一以上のそれに関連する症状が、インビトロにおける細胞内又は対象内において、予防又は改善又は減少する徴候を示す。例として、当業者に知られている基準に従って定義される血液学的応答ではなく、腫瘍細胞の数又は腫瘍量の減少が応答とみなされる。
【0020】
本発明による「治療剤」又は「薬剤」は、ポリペプチド、ペプチド、糖たんぱく質、核酸、合成又は天然由来の薬物、ペプチド、ポリエン、マクロサイト、グリコシド、テルペン、テルペノイド、脂肪族及び芳香族の化合物、及びこれらの誘導体などの分子からなる治療の類であるが、これらに限定されない。好ましい実施形態では、治療剤は、合成及び天然薬物等の化合物である。他の好ましい実施形態では、治療剤は、疾患、障害、症状、及び/又はそれらに付随する徴候の改善及び/又は治癒を引き起こす。
【0021】
適切な治療剤としては、GoodmanとGilmanによるThe Pharmacological Basis of Therapeutics 又はThe Merck Indexに示されるものが挙げられるが、これらに限定されない。治療剤の種類としては、炎症反応に作用する薬剤、体液の組成に作用する薬剤、電解質の代謝に作用する薬剤、化学療法剤(例えば、過剰増殖性疾患、特に癌、寄生虫感染症及び微生物性疾患)、抗悪性腫瘍剤、免疫抑制剤、血液と造血器官に作用する薬剤、ホルモン及びホルモン拮抗剤、ビタミン及び栄養素、ワクチン、オリゴヌクレオチド、遺伝子及び細胞治療が挙げられるが、これらに限定されない。当然のことながら、組み合わせ、例えば、二つの薬剤のような、混合物又は二以上の活性剤の混合物も、本発明に含まれる。
【0022】
一実施形態では、治療剤は、薬剤又はプロドラッグ、抗体、ワクチン又は細胞であり得る。本発明の方法は、患者に治療剤を投与することが治療剤への応答の引き金となるかどうかを予測するために使用してもよいし、実施中の治療に対する患者の応答をモニタリングするために使用してもよい。さらなる用途では、前記方法は、潜在的な薬理学的利益の対象に対する薬剤の効果を試験するために使用してもよい。
【0023】
治療剤の性質は、本発明の範囲を決して制限するものではない。非限定的な実施形態では、本発明の方法は、小さな合成分子、自然発生物質、自然発生の生物剤又は合成製品、或いは、それらの二以上の任意の組み合わせに対する応答を、任意選択で、賦形剤、ベクター又はキャリアーと組み合わせて、評価するために使用してもよい。
【0024】
「診断」という用語は、癌の特定などの、分子又は病理学的状態、疾患又は病状の特定、或いは、特定の治療計画から利益を得る癌患者の特定を指す。
【0025】
「予後診断」という用語は、特定の治療又は特定の病状に罹患している被験者に投与された治療剤に関係なく、疾患状態の変化、例えば、進行又は退行あるいは特定の臨床事象の発現が観察されるか否かの予測を指す。
【0026】
「予測」という用語は、患者が特定の治療剤に対して有利又は不利に応答する可能性を示すために使用される。一実施形態では、該予測は、治療、例えば、特定の治療剤による治療後に、疾患の進行なく一定期間、患者が生存又は改善するかどうか及び/又はその可能性に関するものである。
【0027】
本明細書に記載の一般的な方法及び技術は、特に明記しない限り、当該技術分野で周知の従来の方法に従って、また、本明細書で引用及び説明している様々な一般的及び具体的な参考文献に記載されているようにして、実施できる。例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2d ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (1989)、 Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing Associates (1992)、Harlow and Lane Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (1990)を参照されたい。
【0028】
「色素」又は「マーカー」は、比色、発光、生物発光、化学発光、燐光又は蛍光信号などの光学的に検出可能な信号を放ち得る分子、化合物又は物質を意味する。本発明の好適実施形態としては、色素は、蛍光色素である。色素の非限定的な例としては、CF 色素 (Biotium, Inc.)、Alexa Fluor 色素 (Invitrogen)、DyLight 色素 (Thermo Fisher)、Cy 色素 (GE Healthscience)、IRDye (Li-Cor Biosciences, Inc.)、 HiLyte 色素 (Anaspec, Inc.)が挙げられる。いくつかの実施形態では、色素の励起波長及び/又は発光波長は、350nmから900nm、又は400nmから700nm、又は450nmから650nmである。一実施形態では、マーカーは、免疫表現型を特徴づけるために使用される抗体、生存率のマーカー、アポトーシス、タンパク質リン酸化及び経路活性化を示す抗体である。
【0029】
本明細書中の「タイムラプス撮影」という用語は、連続して実行される同一フィールドの複数の画像の取得を意味する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】複数のマイクロウェルを細胞生存アッセイにかけて得られたデータを、累計派生プロパティ「マイクロウェル内の細胞密度」及び関係「同一マイクロウェル内に属する細胞からの各細胞の平均距離」に基づき選択した、細胞生存率のデータ(出力パラメーター=細胞死、プロパティ=細胞死%)を示すグラフである。
【
図2】FLAI-5療法の用量/応答測定を示すグラフであり、複数のマイクロウェルを細胞生存アッセイにかけ、対象領域で測定される「細胞死」プロパティから、出力パラメーター、すなわち、細胞死を推定し、一定の閾値を超える細胞死マーカーの強度を有し、累計派生プロパティ「ウェルあたりの細胞の数」に基づいて選択されたセットに属する対象領域の割合を計算し、すなわち、一定の閾値を超える細胞死マーカーの強度を有し、累計派生プロパティ「ウェルあたりの細胞の数」に基づいて選択したマイクロウェルのセットに属する対象領域の一部の数から、前記出力パラメーターを推定し、ここで、前記対象領域は、ウェルあたり同数の細胞を含むマイクロウェルに含まれる全ての対象領域を包含する多重度である。
【
図3】理論グラフ(A)と、二つの同種の細胞集団を連続して播種することによって得られた共局在性に関する理論値と実験値の比較(B)である。
【
図4】R1が変化したときに、ウェルあたりの細胞数cの変化として観察される共局在化頻度である。
【
図5】R2の二つの値について、R1の変化に伴い、ウェルあたりの細胞数が変化するときに観察される共局在化頻度である。
【
図6】画像取得及び処理プロセスに含まれるステップの説明図:マイクロウェルに対応する領域の特定(A);複数の対象領域の検出(B);前記対象領域(表C中の列A)のプロパティ(表C中の列B-G)の測定;二つの前記測定されたプロパティ(表D中の列C、G)に基づき選択された対象領域のセットから出力パラメーター(表D中の列F)を得ること。
【
図7】本発明による方法のブロック図(A)及びその二つの実施形態のブロック図(B、C)(μw=マイクロウェル)。
【
図8】本発明に従う方法のステップc)で測定されたプロパティを示す表。
【
図9】細胞死に対する抗CD38剤の効果(「-」は未処理のマイクロウェルを示し、「+」は処理されたマイクロウェルを示す。)
【
図11】(A)四つのマイクロウェルのサブセットを選択したICNPに基づく分析で、各サブセットは、以下で説明する4つの組み入れ基準(パターン)のうち1つを満たす。パターン1:直接プロパティ「NK細胞免疫表現型」を満たす少なくとも一つの対象領域及び直接プロパティ「形質細胞免疫表現型」を満たす少なくとも一つの対象領域を含むように選択されたマイクロウェルのサブセット(E/T共局在性);パターン2:直接プロパティ「形質細胞免疫表現型」を満たす少なくとも一つの対象領域を含み、直接プロパティ「NK細胞免疫表現型」を満たす対象領域を含まないマイクロウェルのサブセット;パターン3:直接プロパティ「NK細胞免疫表現型」を満たす少なくとも一つの対象領域を含み、直接プロパティ「形質細胞免疫表現型」を満たす対象領域を含まないマイクロウェルのサブセット;パターン4:直接プロパティ「形質細胞免疫表現型」を満たす対象領域及び直接プロパティ「NK細胞免疫表現型」を満たす対象領域のいずれも含まないマイクロウェルのサブセット;(B)図式的に表した、元の画像における、NK細胞と形質細胞との間の距離dの測定。(C)同一のマイクロウェル内のE(NK細胞)の数及びT(形質細胞)の数に基づいて特定された20パターンのそれぞれについて評価した形質細胞の死亡率。括弧内にパターンを示し、ウェルの%を示す。(D)一つの細胞レベルで分析されたタイムラプス画像の例。(E)NK細胞からゼロ(接触)から(μm)の間の距離でマイクロウェル内にあるターゲット細胞(形質細胞)の死滅の測定。この方法では、NK細胞がターゲット細胞に接触している死滅の頻度を、E(NK細胞)がない(NK無し)マイクロウェルで表されるコントロールで測定したターゲット細胞の自然な細胞死滅と比較することにより、活性NK細胞の割合を推定することができる。(F)1、3、4、5、6時間のタイムラプスの実験で測定された%で表されるターゲット細胞の生存率。表はマイクロウェル内に存在するNK細胞の数と形質細胞の数に関連して、選択したパターンで得られた結果を示している。データから明確な相関が明らかになっており、NK細胞が増加するにつれて、形質細胞の死滅が増加しており、すなわち、細胞死率は、グラフの右下のボックスほど高くなっている。効果は早い段階(3h)ですでに明らかである。(G)(比較)標準的なCr51放出アッセイで得られた結果。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図7Aのブロック図にあるように、本発明は、細胞を含んだ複数のマイクロウェルをハイコンテントアッセイにかける方法であって、
a)前記複数のマイクロウェルの少なくとも一つの画像を取得することと、
b)前記画像において、複数の対象領域を検出することであって、各対象領域が単一の細胞に対応することと、
c)前記対象領域の、少なくとも一つのプロパティ(直接プロパティ又は派生プロパティ)を測定することと、
d)一以上の前記プロパティに基づいて対象領域のセットを選択することであって、前記一以上のプロパティを選択プロパティと定義することと、
e)選択した対象領域のセットで測定したプロパティから出力パラメーターを推定することであって、該プロパティを出力プロパティと定義し、該出力プロパティが前記選択プロパティとは異なることと、
を含む方法である。
【0032】
好ましい形態では、前記ステップc)で、前記対象領域の少なくとも一つの派生プロパティを測定し、任意選択で、前記対象領域の少なくとも一つの直接プロパティを測定し、ここで、前記一以上のプロパティは選択プロパティである。
【0033】
好ましい形態では、前記ステップd)において、前記複数のマイクロウェルのサブセットを選択し、ここで、前記サブセットに属する前記マイクロウェルは、前記少なくとも一つの選択プロパティに基づいて選択される対象領域を含み、前記ステップe)において、選択した対象領域のセットで測定されたプロパティから出力パラメーターを推定し、ここで、該プロパティを出力プロパティと定義し、該出力プロパティは前記選択プロパティとは異なり、ここで、前記出力パラメーターは前記対象領域のセットで測定された出力プロパティを処理したものである。
【0034】
好ましい形態では、前記マイクロウェルは、少なくとも15,000個、又は少なくとも18,000個、好ましくは19,200個のマイクロウェルを含むプレートに埋め込まれている。
【0035】
前記選択は、組み入れ基準を課すことによって行われ、前記組み入れ基準は、
-前記直接プロパティ又は派生プロパティから、一以上の選択プロパティを特定することと、
-前記選択プロパティの夫々に対し、閾値、又は前記選択プロパティが必ず収まる値の範囲を課すこと
を含む。
【0036】
本明細書中で「パターン」という用語は、特定の出力パラメーターについて前記対象領域のセットの選択に採用される組み入れ基準を定義する。
【0037】
好ましい実施形態では、前記複数のマイクロウェルのサブセットを選択した場合には、該サブセットに属する前記マイクロウェルは、前記少なくとも一つの選択プロパティが組み入れ基準を満たす対象領域を含むため、選択される。
【0038】
本明細書と請求項において、「前記対象領域の、直接プロパティ又は派生プロパティ」という表現は、以下に示す意味を持つ。
【0039】
直接プロパティは、単一の対象領域に関連するプロパティ、すなわち、単一の対象領域を評価することによって測定できるプロパティ(例えば、免疫表現型、細胞生存率、細胞の形態、シグナル伝達活性)である。
【0040】
派生プロパティは、多数の対象領域に関連するプロパティ、すなわち、測定するために、同一のマイクロウェルに含まれる二以上の対象領域の評価を必要とするプロパティであり、例えば
-同一のマイクロウェルに含まれる二以上の対象領域間の関係のプロパティ(例えば、細胞-細胞間距離);又は
-対象領域の共存のプロパティ、例えば、一以上の免疫表現型のタイプ;又は
-同一のマイクロウェルに含まれる全ての対象領域の累積プロパティ(例えば、前記累積派生プロパティを計算する、対象領域が属するマイクロウェル中の細胞の数、マイクロウェルに含まれている細胞間の平均距離)である。
【0041】
前記直接プロパティは、画像分析から直接得られる。前記派生プロパティは、直接プロパティを処理することにより得られる。一実施形態では、組み入れ基準が免疫表現型である場合、前記選択プロパティは、直接プロパティ(免疫表現型)であり、組み入れ基準を満たす対象領域のセットが選択される。
【0042】
組み入れ基準として免疫表現型を維持するとき、一実施形態では、前記複数のマイクロウェルの少なくとも一つのサブセットを選択する場合、前記選択プロパティは派生プロパティであり、前記派生プロパティは、共存プロパティ、すなわち、単一のマイクロウェルに含まれる各対象領域の直接免疫表現型プロパティを評価し、このパターンに基づいて、前記複数のマイクロウェルのサブセットに起因するマイクロウェルの固有の免疫表現型パターンである派生プロパティを推定することによって形成されるプロパティである。
【0043】
さらなる例として、細胞-細胞間距離は、同一のマイクロウェルに含まれる二つの対象領域に起因する直接「位置」プロパティを処理することによって得られる派生プロパティである。多数の前記「細胞-細胞間距離」派生プロパティから、さらなる関係プロパティである更なる派生プロパティ、すなわち、選択される細胞から、選択される細胞を囲む所与のマイクロウェルに含まれる細胞間の平均距離が得られる。所与の対象領域が属する同一のマイクロウェルに含まれる全対象領域の累積プロパティである、さらなる派生プロパティ、すなわち、所与のマイクロウェルに含まれる細胞間の平均距離も導き出される。また、関係プロパティと直接プロパティの組み合わせから導き出される更なるプロパティを決定することも可能である。例えば、派生プロパティ「腫瘍細胞からの免疫細胞の距離」は、直接プロパティ「免疫表現型」と関係プロパティ「細胞-細胞間距離」の組み合わせを必要とする。
【0044】
派生プロパティは対象領域のプロパティであることに注意されたい。同一のマイクロウェルに属するいくつかの細胞は、同一の関係派生プロパティ値を持つ。同一のマイクロウェルに属する全細胞は、同一の累積派生プロパティ値を持つ。例えば、同一のマイクロウェルに含まれる二つの細胞は、前記二つの細胞間で計算されたとき、同一の派生プロパティ「細胞-細胞間距離」値を有する。さらに、各選択される細胞によって、それを取り囲む同一のマイクロウェル内の他の細胞からの距離が異なるため、関係プロパティ「選択される細胞によって選択された、細胞を囲む所与のマイクロウェルに含まれる細胞間の平均距離」は、各選択される細胞によって異なる値を示す。さらに、同一のマイクロウェルに属する全ての細胞は、同一の累積派生プロパティ「マイクロウェルあたりの細胞の数」値を持ち、この各細胞が置かれた環境(マイクロウェル)のプロパティは、各細胞によって、即ち、マイクロウェル自体に属する、各対象領域毎に決められることを意味する。この場合、又は同一のマイクロウェルに埋め込まれた各対象領域と等しい累積プロパティを説明する場合、このプロパティはマイクロウェルのプロパティと見なすことができ、このプロパティは前記マイクロウェル内に埋め込まれた全対象領域に当てはまることを意味する。
【0045】
前記対象領域のセットは、
-同一のウェルに埋め込まれていない二以上の対象領域のサブセット;及び/又は
-同一のマイクロウェルに含まれる二以上の対象領域のサブセット;及び/又は
-同一のマイクロウェルに含まれる全ての対象領域のサブセット
を含む。
【0046】
好ましい形態では、前記対象領域のセットは、同一のマイクロウェルに含まれる全ての対象領域のサブセットからなり、すなわち、前記対象領域のセットは、マイクロウェルのサブセットに対応する。
【0047】
一実施形態では、少なくとも一つの前記選択プロパティは、共存プロパティである。
【0048】
一実施形態では、少なくとも一つの前記選択プロパティは、同一のマイクロウェルに含まれる全対象領域の累積プロパティである。
【0049】
本明細書及び特許請求の範囲において、「選択された対象領域のセットで測定されるプロパティに由来する出力パラメーター」という表現は、前記選択されたセットが属する各対象領域で測定される出力プロパティの任意の統計処理の結果を示す。「統計処理」とは、例えば、平均値、中央値、二乗平均値などを意味する。
【0050】
一以上の前記選択プロパティが、同一マイクロウェルに含まれる全対象領域の累積プロパティである実施形態においては、前記対象領域のセットは、前記複数のマイクロウェルのサブセットに対応し、前記出力パラメーターは、前記複数のマイクロウェルのサブセットで測定された出力プロパティを処理したものである。
【0051】
一実施形態において、前記選択は、第一の選択プロパティに基づく第一の対象領域のセットの選択を含む。これに続いて、第一の対象領域のセット内において、第二の選択プロパティに基づく対象領域のサブセットの選択が成される。前記第一プロパティ、第二選択プロパティは、独立した直接プロパティ又は派生プロパティである。好ましい形態では、前記対象領域のセット及び/又は前記対象領域のサブセットは、複数のマイクロウェルのサブセットに対応する。
【0052】
さらなる実施形態では、前記処理は、第一選択、第二選択、第三選択及びさらなる選択を含む。
【0053】
前記少なくとも一つの画像は、前記複数のマイクロウェルの少なくとも一つの画像を取得するよう構成された画像取得デバイスを用いて取得する。
【0054】
適切かつ純粋に説明のためであり、決して本発明を限定するものではない
図6にあるように、一実施形態では、画像分析及び処理プロセスは、以下の、
-複数のマイクロウェルを含んだ画像において、マイクロウェルに対応するゾーンを特定するステップと(
図6、パネルA)、
-マイクロウェルに対応するゾーン内において、複数の対象領域を検出するステップであって、各対象領域が前記複数のマイクロウェルに含まれた前記細胞一つに対応する、ステップと(
図6、パネルB)、
-前記対象領域の少なくとも一つのプロパティを測定するステップと(
図6、パネルC;列A:対象領域;列B、C、D:直接プロパティ;列E、F、G:派生プロパティ)、
-対象領域のセットを一以上の前記プロパティに基づき選択するステップと(
図6、パネルD;選択プロパティの列は灰色で強調表示、選択された対象領域のセットは濃い灰色で強調表示)、
-出力パラメーターを前記セットで測定されたプロパティから推定するステップ(
図6、パネルD;出力プロパティを囲んでいる)
を含む。
【0055】
図6のパネルDのように、組み入れ基準は:プロパティC=Y及びG=Zである。出力パラメーターは、プロパティFから推定される。円で囲い、選択された対象領域のセットに関係するプロパティFを強調している。前記対象領域のセットで測定した前記出力プロパティFの統計処理の結果は、検査中のサンプルの分析における出力プロパティFを表す、本発明による方法によって提供される出力パラメーターである。
【0056】
簡略化のために、
図6Cと
図6Dのダイアグラムは、限られた数の対象領域を含んでおり、前記方法の実施において、前記対象領域は、好都合にも、非常に多数であることに留意されたい。例として、前記複数のマイクロウェルが19,200個のマイクロウェルのプレートに対応する場合、平均約20細胞/マイクロウェルと仮定すると、384,000個の対象領域が利用できる。
【0057】
画像を処理するのに適したソフトウェア製品を用いて、取得した画像をコンピュータで分析する。かかるソフトウェア製品の例として、ImageJ、BioImageXD(Kankaanpaa P et al. Nature Methods. 2012)、Icy (De Chaumont F et al. Nature Methods. 2012、Fiji (Schindelin J et al. Nature Methods. 2012)、Vaa3D (Peng H et al. Nat Biotechnol. 2010)、CellProfiler (Carpenter AE et al. Genome Biol. 2006)、3D Slicer、Image Sheer、Reconstruct (Fiala JC. J Microsc. 2005)、FluoRender、ImageSurfer、OsiriX (Rosset A et al. J Digit Imaging. 2004)、IMOD (Kremer JR et al. J Struct Biol [Internet] 1996)、その他(Eliceiri KW et al. Nature Methods. 2012)などがある。
【0058】
当業者は、上記ソフトウェア製品が単なる例であり、この方法をここで明言されていないアプローチを使用して実施しても、同じタイプの結果が得られることを簡単に理解できる。
【0059】
好ましい形態として、前記複数のマイクロウェルは、各マイクロウェルが流体及び/又は粒子及び/又は分子をウェルへ運ぶための一つ又は複数のマイクロチャンネルと流体連通しているマイクロ流体デバイスに埋め込まれている。
【0060】
一実施形態では、マイクロウェルは、逆開口型マイクロウェル、すなわち、上端部と下端部が共に開いたマイクロウェルであり、好ましくは、前記端部が、流体が存在する一以上のマイクロチャネル上で開口しており、細胞又は粒子又は分子又は空気若しくは他の気体を含む流体である。
【0061】
マイクロウェルは、中央軸のようなマイクロウェルの上部から下部までのびた垂直軸を有する。一実施形態では、前記マイクロウェルは、上側マイクロチャネルと呼ばれる、マイクロチャネル上の上端部が開いており、前記マイクロウェルは、流体を含み、下端部には空気や他の気体が存在する。この実施形態では、マイクロウェルに挿入された流体が毛細管現象によってマイクロウェルを満たし、一方で、表面張力により流体を開口型マイクロウェルの内部にとどめて、空気/流体の境界面でメニスカスを形成する。
【0062】
一実施形態では、前記マイクロウェルは、その直径以上の高さを持つように形成されている。
【0063】
さらに、より好ましい実施形態では、前記マイクロウェルは、WO2012072822で説明されているタイプのマイクロウェルである。
【0064】
前記細胞は、当業者に知られた方法により前記マイクロウェルに播種し、前記細胞は、同種の、すなわち、同一の免疫表現型を有する細胞集団を有する細胞集団、又は異種の、すなわち、異なる免疫表現型を有する細胞集団である。
【0065】
好ましい形態では、前記細胞は、WO2017216739で説明されている方法で播種する。
【0066】
前記細胞は、単一のステップ又は順序で播種する。例として、逆開口型マイクロウェルを使用することで、順序がそれぞれ異なり、それぞれが互いに同種の細胞を含む集団を装填することができ、細胞が入れられる容積に関して、異種の集団をつくることができる。
【0067】
例として、直径70μmのマイクロウェルを使用して、最大20、最大30又は最大50細胞/マイクロウェルを播種する。
【0068】
一実施形態では、異種の細胞集団を単一のステップでマイクロウェルのサブセットに播種する。さらなる実施形態では、様々な播種プロセスを順番に実施する。例として、濃度c1の集団1の第一の播種を行い、濃度c2の集団2で第二の播種を行う。前記濃度c1とc2が等しい場合、同量播種すると、平均してタイプ1の細胞数がタイプ2の細胞数に等しいサブセットに属するマイクロウェルのセットで、異種の集団となる。その代わりに、細胞は、タイプ1とタイプ2の細胞の変数と見なす分布、典型的にはポアソン分布に従ってマイクロウェル内に存在する。タイプ1又はタイプ2の細胞のみ含むウェルもあれば、どちらのタイプの細胞をも含むウェルもあり、依然として空であるかもしれないウェルもある。タイプ1の集団を二倍量播種することにより、平均してタイプ1の細胞の数がタイプ2の細胞の数に比べて二倍であるサブセットに属するマイクロウェルのセットにおいて、異種の集団が得られる。前のケースと比較して、マイクロウェル内のタイプ1の細胞の分布は、二倍の平均値と見なされる。
【0069】
一実施形態では、前記方法は、連続で繰り返し、同一の複数のマイクロウェルで行われる。つまり、この実施形態では、時間t0、続けて時間t1、t2、…tnにおいて、画像を取得し、多数の対象領域を検出して、少なくとも一つのプロパティを測定する。この実施形態において、アッセイを動的であると定義し、すなわち、同一のフィールドの多数の画像を連続した時間(タイムラプス画像)で取得し、時間t0で、続けて時間t1、t2、…tnにおいて、前記少なくとも一つのプロパティを測定することで、変化を経時的に反映した分析を返す。
【0070】
t0における前記プロパティは、t1における前記プロパティとは異なるものであるとして理解される。すなわち、プロパティC(Pc)を測定すると仮定した場合、Pct0とPct1は、明らかに区別して意図されるものである。
【0071】
結果として、同一のアッセイの実行の範囲内で、前記出力パラメーターは、選択された対象領域のセットにおける出力プロパティPct1に由来してよく、選択プロパティはPct0であった。
【0072】
さらなる実施形態では、派生プロパティは、t0で測定されるプロパティとt1で測定されるプロパティ間の変化(差異又は比率)又はこの逆の変化である。
【0073】
一実施形態では、前記複数のマイクロウェルに保持されている間、分析の目的の効果を促進又は抑制する、すなわち、出力パラメーターに影響を与える一以上の薬剤に、前記細胞を曝露する。本発明による動的方法は、経時的な前記薬剤の効果を明らかにすることを可能にする。
【0074】
例として、
図8の表のように、細胞に対応する各対象領域において(列A)、t
0(行2から20)における直接プロパティ「DAPI信号強度」、「FITC信号強度」、「Cy5信号強度」、「TRITC信号強度」、「X軸及びY軸のおける細胞位置」(列B-E、G、H)、及びt
1(行21から42)における同一のプロパティを測定する。列B-E、G、Hに表す前記直接プロパティを、各細胞が属するマイクロウェルに関連する情報と組み合わせることで、派生プロパティを計算することができ、例えば、各細胞において、同一のマイクロウェルに含まれる他の細胞からの平均距離を明らかにできる。
【0075】
プロパティ
以下の節では、いくつかのプロパティのカテゴリーをリストアップし、それらの測定を可能にする幾つかの技術的実験詳細を提供する。前記各手順に沿って、上記コンピュータによるアプローチを用いた画像取得及び処理ステップを含み、通常の数値タイプの情報である特定のプロパティに関連する情報を返すことができる。
【0076】
次のリストは例示的なものであり、決して各プロパティについて説明されている技術的実験アプローチを制限するものとして解釈されるものではない。プロパティが与えられれば、当業者は、その証拠を示すための最も適切な実験手法が分かる。さらに、このリストは、可能なプロパティを制限するものとして解釈してはならない。当業者は、本発明による方法で効果的に測定するために、さらなる直接又は派生プロパティのリストをどのように拡張するかを知っている。
【0077】
前記プロパティは、独立して選択プロパティ又は出力プロパティを構成し得ることが理解される。
【0078】
・免疫表現型(直接プロパティ)
当業者に知られた方法を使うことで、決定及び/又は検証することができる。例えば、検出マーカー/色素を使用することが挙げられる。そのようなマーカー/色素は、マイクロウェルに埋め込まれた一以上の亜集団に特有のものであってもよい。特定のマーカー/色素を使う場合、それらは、さまざまな疾患に対して役割を果たす細胞集団を強調表示するために選択してもよい。例えば、腫瘍の原因となるため、例えば血液癌の原因となるため、又は炎症反応及び/又は免疫反応の原因となるためである。
【0079】
染色は、複数の検出マーカーの使用を含むことがあり、例えば、特定のターゲット抗原と結びつく一次抗体及び該一次抗体と結びつく二次抗体により、細胞を染色してもよく、或いは、一次抗体と結合した分子は、検出マーカーと結合してもよい。間接的な結合の使用は、例えば、バックグラウンド結合を減らすことにより、及び/又は、信号増幅をもたらすことにより、信号ノイズ比率を改善し得る。
【0080】
また、染色は、直接的又は間接的に蛍光マーカーと結合した一次抗体又は二次抗体を含んでもよい。非網羅的な例として、蛍光マーカーは、Alexa Fluor 350、Alexa Fluor 405、Alexa Fluor 430、Alexa Fluor 488、Alexa Fluor 514、Alexa Fluor 532、Alexa Fluor 546、Alexa Fluor 555、Alexa Fluor 568、Alexa Fluor 568 594、Alexa Fluor 610、Alexa Fluor 633、Alexa Fluor 635、Alexa Fluor 647、Alexa Fluor 660、Alexa Fluor 680、Alexa Fluor 700、Alexa Fluor 750、Alexa Fluor 790、フルオレセインイソシアネート(FITC)、テキサスレッド、サイバーグリーン、Fluidi DyLight、緑色蛍光タンパク質(GFP)、TRIT (テトラメチルローダミンイソチオール)、NBD (7-ニトロベンゾ-2-オキサ-1,3-ジアゾール)、テキサスレッド色素、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ファーストクレシルバイオレット、クレシルブルーバイオレット、ブリリアントクレシルブルー、パラアミノ安息香酸、エリスロシン、ビオチン、ジゴキシゲニン、5-カルボキシ-4',5'-ジクロロ-2',7'-ジメトキシフルオレセイン、フタロシアニン類、アゾメチン類、シアニン類(例えばCy3、Cy3.5、Cy5)、キサンチン類、スクシニルフルオレセイン、N,N-ジエチル-4-(5'-アゾベンゾトリアゾリル)-フェニルアミン、アミノアクリジン、ブリリアントバイオレット421、フィコエリトリン(PE)からなる群から選択することができる。
【0081】
・細胞/マイクロウェルの数(派生プロパティ、同一のマイクロウェルに含まれる全対象領域の累積)
播種前又はマイクロウェルに播種するとき、細胞を蛍光細胞局在マーカー7-アミノ-4-クロロメチルクマリンなどの色素で染色する。
【0082】
・細胞-細胞間距離(派生プロパティ、関係プロパティに関連する直接プロパティ)
播種前又は播種後に、できる限り免疫表現型により細胞を識別する染色剤を用いて細胞を染色し、上記画像処理手法によって、各細胞について、該細胞の空間における位置である直接プロパティを得る。対象領域に関連する前記直接プロパティ「位置」を、異なる対象領域に関連する前記直接プロパティ「位置」と組み合わせることにより、所望の関係の派生プロパティ、すなわち、細胞-細胞間距離が得られる。
【0083】
・細胞生存率(直接プロパティ)
細胞周期の特定の段階にある細胞を特異的に識別する既知のマーカー/色素を、使用する。これらには、例えば、無傷の細胞膜を有する細胞の選択マーカー又は細胞死若しくは早期アポトーシスの進行した段階にある細胞の選択マーカーが含まれる。例えば、DNAターンオーバーを引き起こすシトクロムCに対する抗体、又はヨウ化プロピジウム(PI)及びカルセインなどの細胞生存/死を引き起こす色素、又は細胞増殖を引き起こす色素、又はアネキシンVのようなアポトーシスマーカー、又はアポトーシスを引きおこす色素、又はカスパーゼのような特定のたんぱく質及び酵素のシグナル伝達活性及び放出活性を測定することでアポトーシスを引き起こす色素を使用できる。好ましくは、前記マーカー/色素をマイクロウェルの細胞に加える。
【0084】
・シグナル伝達活性(直接プロパティ)
好ましくは、前もって、マイクロウェル内において、タンパク質のリン酸化又は細胞質におけるカルシウムイオンの放出を強調表示できる抗体などの、細胞のシグナル伝達を強調表示するマーカーで細胞を標識する。一実施形態では、「信号強度」プロパティは、t0におけるタイムラプス撮影及び使用マーカーに関連するt1、t2…tnにおける「信号強度」によって決定され、特定の閾値を超えた経時的な前記「信号強度」プロパティの変化があるように、細胞を選択する。
【0085】
・細胞形態(直接プロパティ)
説明された、当該技術分野で公知の方法の一つにより、できる限り染色された細胞の画像を取得し、上記で述べたコンピュータによるアプローチにより処理して、細胞形態についての情報を返す。
【0086】
好ましい実施形態では、前記選択は、少なくとも二つの選択プロパティ、又は少なくとも三つ、又は少なくとも四つ、又は少なくとも五つの選択プロパティに基づいて行う。
【0087】
一以上の前記選択プロパティは、好ましい形態において、出力パラメーターが導出されるマイクロウェルのサブセットに対応する対象領域のセットを選択することにつながる。
【0088】
うまく定義されたパターンは、アッセイ結果を最適化できる。
【0089】
当業者は、対象の出力パラメーターに最も適したパターンの確立方法を知っている。
【0090】
例として、サンプル中での細胞死を測定するためにアッセイを行う場合、単離された微小環境にあること及び隣接する他の細胞がないことによって、細胞生存率が悪影響を受けることを知っている当業者は、少なくとも一つの前記選択プロパティが細胞/マイクロウェルの数であることを確立し、このプロパティに最小閾値Xを課す。したがって、パターンは次のようになる:マイクロウェル細胞数>X。結果は、確立されたパターンを満たすマイクロウェルのセットから、出力パラメーターを推定することにより得られる。
【0091】
一実施形態では、アッセイが行われる特定の試料に最適となるように、本発明による方法を使用して、前記パターンを有利に確立する。例として、アッセイにおいて、出力パラメーターを最適化したコントロールのサブセットが使われ、その後、これらのコントロール値は、治療に曝されたサブグループの分類にも使われる。例として、薬剤に曝露されていない細胞を含む複数のマイクロウェルにおいて、各マイクロウェルの最小の細胞数が決まり、これにより24時間での最小の死亡率を得ることができる(t0における細胞数)。このt0における選択プロパティ「細胞数」の閾値は、薬剤に曝露された対象領域のセット、つまり、薬剤に曝露されたマイクロウェルのサブセットを選択するために使用され、ここで、出力プロパティが読み込まれて、24時間での死亡率(t24時間における細胞数)である出力パラメーターが推定される。すなわち、パターンを満たしているため、すなわち、t0において、上記で定義した閾値を超えた細胞数が示されているため、t24時間における出力パラメーター「細胞数」は、選択された薬剤に曝露されたマイクロウェルのサブセットに属する各マイクロウェルで測定したt24時間における出力プロパティ「細胞数」の統計的処理(特定の場合は平均値)の結果となる。これにより、パターンは、特定の試料の生物学的特徴に基づいて最適化される。
【0092】
さらなる態様では、
図10のように、細胞を含んでいる複数のマイクロウェルをハイコンテントアッセイにかけるシステム(1)が請求されており、該システムは、画像取得デバイス(2)及びデータ処理ユニット(4)を含み、
-画像取得デバイス(2)は、前記複数のマイクロウェル(3)の少なくとも一つの画像を取得するように構成されており;
-データ処理ユニット(4)は、
-前記画像において、複数の対象領域を検出し、ここで、各対象領域は単一の細胞に対応し、
-前記対象領域の少なくとも一つの直接プロパティ又は派生プロパティを測定し、
-前記プロパティの一以上に基づいて対象領域のセットを選択し、ここで、前記一以上のプロパティは選択プロパティと定義され、
-選択された対象領域のセットで測定されたプロパティから出力パラメーターを推定し、ここで、該プロパティは出力プロパティと定義され、該出力プロパティは前記選択プロパティとは異なる、ように構成されている。
【0093】
好ましい形態では、前記処理ユニットは、前記対象領域の少なくとも一つの派生プロパティ、及び、任意選択で、少なくとも一つの直接プロパティを測定するように構成されており、前記一以上のプロパティは選択プロパティである。
【0094】
好ましい形態では、前記処理ユニットは、前記複数のマイクロウェルのサブセットを選択するように構成されており、ここで、該サブセットに属する前記マイクロウェルは、少なくとも一つの選択プロパティに基づいて選択した対象領域を含む。
【0095】
好ましい形態では、前記処理ユニットは、選択された対象領域のセットで測定されたプロパティから出力パラメーターを推定するように構成されており、ここで、該プロパティを出力プロパティと定義し、該出力プロパティは前記選択プロパティと異なり、前記出力パラメーターは前記対象領域で測定された出力プロパティを処理したものである。
【0096】
さらなる態様では、細胞を含んでいる複数のマイクロウェルをハイコンテントアッセイにかけるためのコンピュータプログラムが請求され、該コンピュータプログラムは、データ処理ユニットによってプログラムが実行されるとき、該処理ユニットに以下の、
-前記複数のマイクロウェルの少なくとも一つの画像において、複数の対象領域を検出するステップであって、各対象領域が単一の細胞に対応する、ステップと、
-前記対象領域の少なくとも一つのプロパティを測定するステップと、
-一以上の前記プロパティに基づいて対象領域を選択するステップであって、前記一以上のプロパティを選択プロパティと定義する、ステップと、
-選択された対象領域のセットで測定されたプロパティから出力パラメーターを推定するステップであって、前記プロパティを出力プロパティとして定義し、該出力プロパティが前記選択プロパティと異なる、ステップと
を実行させる命令を含む。
【0097】
好ましい態様では、前記コンピュータプログラムは、データ処理ユニットによってプログラムが実行されるとき、処理ユニットに次の
-前記対象領域の少なくとも一つの派生プロパティ、及び、任意選択で、少なくとも一つの直接プロパティを測定するステップであって、前記一以上のプロパティが選択プロパティである、ステップと、
-前記複数のマイクロウェルのサブセットを選択するステップであって、サブセットに属する前記マイクロウェルが、少なくとも一以上の選択プロパティに基づいて選択された対象領域を含んでいる、ステップと、
-選択された対象領域のセットで測定されたプロパティから出力パラメーターを推定するステップであって、該プロパティを出力プロパティとして定義し、該出力プロパティは前記選択プロパティとは異なり、前記出力パラメーターが前記対象領域のセットで測定された出力プロパティを処理したものである、ステップと
を実行させる命令を含む。
【0098】
実施形態
一実施形態では、
図7Bのブロック図にあるように、前記選択を、t
0における選択プロパティ「マイクロウェルに含まれる細胞数」に基づいて実行し、前記出力パラメーターを、t
0において選択プロパティが閾値よりも大きいマイクロウェルのサブセットに対応する対象領域のセットで測定されたt
1における「細胞生存率」出力プロパティから推定する。この実施形態では、細胞を細胞生存率に影響を及ぼす薬剤に曝した後、前記選択プロパティを測定するために、前記出力プロパティを時間t
0より後の時間t
1において測定する。細胞が10個未満であると、マイクロウェルで無視できない程の細胞死が引き起こされるため、前記細胞の成長に最適な条件は、マイクロウェル内に少なくとも10個以上の細胞があることと仮定すると、10個より多くの細胞を含んだマイクロウェルが属するマイクロウェルのサブセットが選択される。該サブセットから前記出力パラメーターを推定する。したがって、細胞が曝された薬剤とは無関係であるものの実験条件と関連した高い細胞死を引き起こすため、得られた細胞生存率のデータは、「クリーン」データ、すなわち、はずれ値とみなされる10個未満の細胞を含んだウェルを読み込んだことによる影響を受けていないものである。
【0099】
さらなる実施形態では、
図7Cのブロック図のように、前記選択は3ステップからなる。
【0100】
第一ステップでは、第一対象領域のセットを、t0における対象領域の直接プロパティ「免疫表現型CT」に基づいて選択する。前記第一対象領域のセットは、前記選択プロパティを満たす対象領域があるマイクロウェル又はt0において免疫表現型CTをもつ少なくとも一つの細胞があるマイクロウェルを含んでいる複数のマイクロウェルのサブセットに対応する。
【0101】
第二ステップでは、前記複数のマイクロウェルのサブセットにおいて、第二サブセットを、t0における対象領域の直接プロパティ「免疫表現型CE」に基づいて選択し、したがって、前記第二サブセットは、t0において免疫表現型CTをもつ少なくとも一つの細胞及び免疫表現型CEをもつ少なくとも一つの細胞を有するマイクロウェルを含む。
【0102】
第三ステップでは、前記第二サブセットにおいて、第三サブセットをt0における対象領域の直接プロパティ「免疫表現型CT」に基づいて選択し、したがって、前記第三サブセットは、免疫表現型CEをもつ細胞も含んだマイクロウェルで見つけられる、免疫表現型CTをもつ細胞を含む。
【0103】
次に、前記選択された対象領域の第三のサブセットで測定されたt1におけるプロパティ「細胞生存率」から、出力パラメーターを推定する。
【0104】
すなわち、前記出力パラメーターは、t0において免疫表現型CEをもつ細胞の存在が同時に確認できるマイクロウェルに含まれている免疫表現型CTをもつ細胞のみに関して推定する。この実施形態では、細胞CTの生存率に影響を及ぼす薬剤に細胞を曝露した後、前記出力パラメーターは、時間t0より後の時間t1において、前記選択プロパティを測定するために提供され、前記薬剤の活性は、細胞CEによって媒介される。
【0105】
この実施形態は、免疫療法、すなわち、前記ターゲットに対する免疫系細胞の活性を促進することにより、ターゲットに作用する薬剤の効果を測定するアッセイを実行するときに特に好都合である。本発明による方法は、有利なことに、否定的なデータ、すなわち、免疫療法の薬剤に対する応答の欠如を必ず返す、免疫系の細胞を含まないマイクロウェルを結果から除外することを可能にし、前記応答の欠如は、分析中の化合物の無効性に関連するのではなく、それ自体を分析するのに適さない試料、すなわち、もし陽性ならば、ターゲットに対する薬剤の直接作用のメカニズムに関連し、免疫系細胞によって媒介されないデータに関連する。
【0106】
さらなる実施形態では、前記出力パラメーターは、t0において免疫表現型CEをもつ細胞の存在が同時に確認できるマイクロウェルに含まれている免疫表現型CTをもつ細胞のみに関して推定され、免疫表現型CTをもつ細胞からの距離は、前もって決定した閾値未満である。この実施形態は、薬剤の作用を働かせるために、効果を評価する薬剤が免疫表現型CTを持つ細胞と免疫表現型CEを持つ細胞に接触又は非常に接近している場合に、特に好都合である。
【0107】
各分析された細胞が、アッセイの影響に関する潜在的なアゴニスト又はアンタゴニストの機能を有する場合、好都合にも、前記選択プロパティは関係プロパティであり、例えば、細胞-細胞間距離、シグナル伝達活性である。例として、免疫系の細胞が腫瘍細胞の生存率に関して潜在的なアンタゴニスト作用を有する場合、アッセイは、免疫系の細胞と腫瘍細胞を含むように共存する「腫瘍免疫表現型」及び「腫瘍免疫表現型」の派生選択プロパティ、並びに、腫瘍細胞と免疫系の細胞が相互作用を可能にするような距離にあるようにするパターンを有する派生選択プロパティ「細胞-細胞間距離」に基づく選択の後に、本発明の方法により特定された対象領域で効果的に行われる。一実施形態では、該パターンは、前述の距離が、免疫細胞、例えば、ナチュラルキラー細胞(NK)と、ターゲット細胞、例えば、腫瘍細胞とを接触させる距離であるようにする。他の実施形態では、免疫系細胞により分泌された産物の濃度が所望の効果を生み出すのに十分であることを確実にするのに十分である限り、機能的効果が分泌物、例えば接触していないときでさえターゲット細胞に影響を及ぼすTリンパ球によって産出されるサイトカインによって生み出されるため、該パターンは、前記距離が免疫系細胞とターゲット細胞とを接触させる距離以上となるようにする。
【0108】
一実施形態では、免疫系細胞は、例えば、CAR-T細胞、自己移植するよう定められているNK細胞など、既知のプロセスによって分析の前に改変され、本明細書で説明する分析は、ターゲット細胞に対する所望の作用を生み出すよう改変された細胞の有効能力を検証することを目的としている。
【0109】
さらに、前記複数のマイクロウェルでの一以上の薬剤の追加の前後のt0及びt1において評価される細胞-細胞間距離は、一以上の薬剤により細胞-細胞間相互作用が変化しているか検証することを可能にする。
【0110】
例えば、さらなる実施形態では、複数のマイクロウェルを、最初に同種のサブグループ、例えば、2、又は3、又は4、又は16、又は32、又は64、又は96、又は128、又は384のサブグループに分け、前記各サブグループで異なる治療を試験し、ここで、各治療を特定の用量の特定の薬剤によって規定する。各サブグループに属するマイクロウェルは、t1における直接選択プロパティ「免疫表現型」について選択し、選択された対象領域のセットで測定されたプロパティ「細胞生存率」から、出力パラメーターを推定する。本発明による方法は、19,200個のマイクロウェルを含むプレートで実行することができ、自動分析を可能とすることにより、多数の異なる条件、例えば、最大16又は最大32の異なる実験条件を、各実験プレートで検証することを可能とし、ここで、数百又は数千のマイクロウェルが各実験条件に使われる。一実施形態では、プレートが各条件に対して1,200個のウェルを含み、複数のマイクロウェルを、2種又は3種又は4種又は16種又は32種又は64種又は96種又は128種又は384種の異なる条件に曝す。同一のサブセットに属する各マイクロウェルで得られるデータを、分析結果を返すために統計分析で処理する。例として、試験する薬剤の腫瘍細胞の細胞死を引き起こす作用を試験する場合、出力パラメーターは、マイクロウェルの各サブセット及び細胞死の程度が最も大きいことが最も適した薬剤を示すサブセットで測定されるプロパティ「細胞生存率」から推定し、ここで、最も適切な薬剤は、前記細胞を採取した患者の腫瘍細胞のインビボ細胞死を引き起こす効果が最も高い薬剤、又は、より一般的には、所望の効果が推定される出力パラメーターの変化を引き起こし得る薬剤自体の作用以外の原因を除外した、試験している生物学的試料に所望の効果を及ぼす薬剤を意味する。各実験条件のマイクロウェルの数は、前記選択プロパティによって行われた選択に続いて、実際に分析するウェルの数が大幅に減少した場合でも、高い統計的有意性を維持することを可能にする。したがって、多数のマイクロウェルを利用できることは、本明細書で述べている方法をサポートする基本的な要件を表しており、実際のウェルの数は、厳密に分析のタイプに関連している。統計的有意性を確保するために、出力パラメーターは、十分な数のサンプルを読み込まれなければならない。通常、十分なサンプルの数は、少なくとも30個又は100個又は300個である。
【0111】
マイクロウェルのサブセットの選択は、好都合にも、マイクロウェルのサブセットでの効果を検証することを可能にし、ここで、前記選択は、パターンに基づいて、すなわち、考慮する選択プロパティの同種の特徴に基づいて、実行する。
【0112】
一実施形態では、コントロールサンプル自体での最適な機能的特徴を確保するために、いかなる薬剤にも曝露されていないコントロールのサブセットで、パターンを決定する。次に、該パターンを、異なるインビトロ治療にかけられるサブセット又は異なる用量の異なる治療薬で処理したサブセットに課す。前記最適な機能的特徴は、例えば、細胞生存率の最大化、細胞増殖率の最大化、分析中の細胞が取り出された体内の予想増殖率に似た細胞増殖率の取得、前記体内で観察されるのと同様の細胞組成、すなわち、異なる免疫表現型を有する細胞間、又は異なる細胞集団に属する細胞間の関係比率の取得を通して得られる。
【0113】
さらなる実施形態では、選択パラメーターとして薬剤に対する応答の信号を決定することが望ましい場合、マーカーに関連する信号の強度は、タイプラプス撮影を介して、その後の時間に得られる。閾値を定義したら、マイクロウェルのサブセットを選択し、ここで、一以上のエフェクターが特定の薬剤の存在下又は非存在下で機能的効果を生み出す。
【0114】
利点
本発明の方法は、マイクロウェル内で実行され、本明細書に記載のデータ取得及び処理方法により、好都合にも、各マイクロウェルに含まれる各細胞に関連する全ての情報を観察及び処理することを可能にする。このことは、全てのニッチの情報を手に入れることを意味し、ここで、ニッチとは、細胞集団によって占められている微小環境を意味する。好都合にも、この情報は、パターンを定義することを可能にし、したがって、出力パラメーターは、アッセイが行われる状況で評価される。
【0115】
この方法は、好都合にも、分析の測定に関して偏差を導入又は分析で追加のファクターを導入し、それにより結果の変動を大きくするデータを除いたサンプルへのアッセイを実行できるようにする。したがって、本発明による方法は、行われるアッセイに依存しない理由により外れ値として識別されるマイクロウェル及びおそらくは細胞を、アッセイから除外することを可能にする。上記で定義されたものに最適なパターンのおかげで、前記選択が成されるため、試料で成される前記選択は、完全に制御され、客観的であり、インビトロ/インビボ相関を最大化する。
【0116】
任意選択で、対象領域のマイクロウェルが選択されると、この方法は、細胞レベルでさらなる選択を可能にし、これにより、マイクロウェル内で外れ値としてふるまう細胞を除外し、さらなる分析の改良を可能にする。
【0117】
本発明による方法により選択されたマイクロウェルのサブセットで行われるアッセイは、十分多数のマイクロウェルで行うことにより分析の十分な並列度を確保しているため、分析中に考慮されるデータの数を減らす選択基準の適用であるにも関わらず、高レベルの統計的有意性を持った結果につながる。例えば、アッセイが腫瘍細胞で細胞死を引き起こす薬剤の評価を含む場合、互いに離れた少数の細胞を含んでいるマイクロウェルでアッセイを実行することは、場合によっては、必然的に細胞生存率への影響の解釈につながり、ここで、前記影響は、試験薬剤の作用を全く示すものではなく、実験中の特定の試料が曝露される実験インビトロ条件であって、薬剤に起因しない、試料に対する人工的な毒性の影響を導入する実験インビトロ条件に関連する。そのような人工的な影響は、分析から排除されない場合、薬物の実際の効果の測定に関して誤った結論を導いてしまう。
【0118】
さらに、本発明による方法は、自動化された方法で前記プロパティの測定と処理を行うことを可能にし、取得した画像を処理すること及びコンピュータで取得したデータを処理することを可能にする。
【0119】
それらの特徴の組み合わせは、試験された試料の数が統計的に十分なデータを確保するようにする。
【0120】
したがって、本発明は、例えば、細胞サンプルに対する薬物ベースの治療の生物学的効果を定義する研究において、単一の細胞レベルでの正確な分析に基づき、生理学的に関係した複数の集団細胞のサンプルの使用を可能にする方法を提供し、これにより、迅速かつ正確なエクスビボ分析により分析中の被検体に最も効果的であることを示す薬剤の予測を可能にする。
【実施例】
【0121】
以下の例は、単に本発明を説明するためのものであり、本発明を多少なりとも限定せず、本発明の範囲は請求項で規定される。
【0122】
例1:細胞死の制御
HL-60細胞株の細胞を19,200個のマイクロウェルを有するマイクロ流体デバイスの逆開口型マイクロウェルの培地に播種する。t0時に、実験の全期間中、培地に保持される、細胞死滅マーカー(ヨウ化プロピジウム、PI)、及び蛍光細胞局在化マーカー(7-アミノ-4-クロロメチルクマリン)で細胞を標識する。次に、24時間培養(t24)後に画像を取得し、プロパティの範囲を対象領域で測定する。
【0123】
この例で用いた選択プロパティは、次のとおりであった。
-累積派生プロパティ:各マイクロウェルに含まれる細胞の数
-派生関係プロパティ:同一のマイクロウェルに属する他の細胞からの各細胞の平均距離
【0124】
推定した出力パラメーターは、細胞の死亡率(死んだ細胞、すなわち、PIマーカーによって放たれる蛍光信号の強度が特定の閾値を超える細胞の%として表される)である。
【0125】
図1にあるように、クラスを選択プロパティ「ウェルあたりの細胞の数」によって決定し、特には、
図1のグラフのx軸に書かれているデータのように、2~4、5~6、7~8、9~10、11~12、13~17、15~17細胞/マイクロウェルに等しい値によって、7つのクラスを決定する。次に、各ウェル内で、各細胞と同一のウェルに存在する細胞の平均距離から得られる、関係派生選択プロパティ「同一ウェルの細胞からの各細胞の平均距離」について、分類を行う。複数のマイクロウェルを、
図1のグラフのy軸に書かれているデータのように、接触している細胞と、接触しておらず、同一のマイクロウェルの細胞が徐々に離れていくと見なされる細胞とを含む、同一マイクロウェルの細胞の平均距離が0から2Dであるサブセットと、平均距離が2から2.5Dであるサブセットと、平均距離が2.5Dから2.7Dであるサブセットと、平均距離が2.7Dから3Dであるサブセットと、3Dを超えるサブセットに分類し、ここで、Dは、分析する細胞の平均直径を意味する
【0126】
出力パラメーター、すなわち、細胞の死亡率は、それぞれの前記サブセットで推定される。前記出力パラメーターは、
図1の灰色の目盛りで示されている。
【0127】
驚くべきことに、細胞の死亡率は、二つの課された選択プロパティに関して勾配挙動を有することが観察される。実際、より少ない細胞のマイクロウェルのサブセットに対応する対象領域のセット及び/又は同一のマイクロウェルの細胞からの平均距離が大きい対象領域のセットで、細胞死(グラフで暗い色)の増加が観測される。同数の細胞を含むと、細胞死は、実際に、他の細胞から離れている細胞ほど大きくなる。
【0128】
人工的な影響として許容され容認される最大死亡率を定義することによって、この例のアッセイは、この後及びその後の分析の目的で、最適なパターンを定義することを可能にし、選択プロパティ「細胞/マイクロウェルの数」の閾値及びプロパティ「平均細胞-細胞間距離」の閾値を確立し、ここで、前記閾値は、許容限界内に死亡率を維持できる値である。
【0129】
例として、許容限界を最大死亡率の10%と仮定すると、基準を満たすマイクロウェルのサブセットは、
図1Aにおいて記号(×)で強調されているものである。したがって、対象領域のマイクロウェルのサブセットを特定するパターンは次の関係で定義される。
【数1】
【0130】
ここで、Nはプロパティ「マイクロウェル当たりの細胞の数」、Pはプロパティ「平均細胞-細胞間距離」を示す。
【0131】
上記で確立したように、このパターンは、細胞生存率に影響を与える薬剤への応答アッセイの実行において、下記の例2のように、好都合に適用される。したがって、用量-応答分析では、参照分析は、通常コントロール下、例えば、最大生存率を確保するための最適な条件に試料を保ち、薬剤がない状態で行われ、前記パターンが決定される。また、分析は、一回分以上の用量で薬剤の投与を観察する他の条件でも行われ、薬剤の有効性の分析を、コントロール下の前記参照分析によって定義されたパターンに基づいて同定された対象領域のサブセットで実行する。
【0132】
例2:薬剤の有効性分析
HL-60細胞株の細胞を19,200個のマイクロウェルを有するマイクロ流体デバイスの逆開口型マイクロウェルの培地に播種し、三種類の異なる濃度(低、中、高)のFLAI-5:フルダラビン(FL)+Ara-C(A)+イダルビシン(I)で処理する。陽性コントロール(Ctrl+)として過酸化水素(H2O2)を10mM加えており、これはHL-60細胞株で確実に細胞死を起こさせることができる薬剤である。t0時に、実験の全期間にわたって培地に保持される、細胞死滅マーカー(PI)、及び蛍光細胞局在化マーカー(7-アミノ-4-クロロメチルクマリン)で細胞を標識する。プロパティは、t0とt24時に測定する。
【0133】
この例において選択プロパティとして使用したプロパティは、
-派生プロパティ:t0における各マイクロウェルに含まれている細胞の数
であった。
【0134】
出力パラメーターは、死んだ細胞、即ち、PIマーカーによって放たれる蛍光信号が特定の閾値を超える強度の細胞の%で表されるt24時間における細胞死亡率である。
【0135】
図2にあるように、t
0での選択プロパティ「ウェルあたりの細胞数」によって、クラスを選択し、具体的には、クラスは、マイクロウェルあたりの細胞数が1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12若しくは12より大きい値に等しいかによって、選択する。データを
図2のグラフのx軸に示す。
【0136】
出力パラメーター、すなわち、細胞の死亡率を、上記のように分類されたマイクロウェルのサブセットで推定する。
【0137】
図2のグラフのCtrl-線の灰色の目盛りで表されているように、コントロールサンプル、すなわち、薬剤に曝露されていないサンプルでは、上記閾値を超える細胞死は、マイクロウェルあたりの細胞数が8以下のサブセットでのみ測定されることに留意されたい。
【0138】
図2に示すデータは、基本となる低死亡率のマイクロウェルのサブセット、すなわち、マイクロウェルあたり細胞含有量が8個を超えるように選択されたマイクロウェルのみを選択することにより、薬剤の有効率が約80%となり、コントロールに対する治療されたサンプルでの細胞死の割合として測定される。含有量が最大7細胞/ウェルのマイクロウェルのサブセット、すなわち、本発明の方法によりアッセイから除外されたものでは、薬剤の効果の一部が高い基本死亡率によって隠されていたためか、有効率は約50%であった。
【0139】
結果は、いかにして、本発明による方法が、外的な要因又は環境要因によって影響を受けるが、いずれの場合も、進行中の分析とは相関づけられず、人工的なデータを返したマイクロウェルのサブセットを、処理から除外して、健全なデータを得ることを可能にするかを示している。
【0140】
例3:免疫治療の有効性分析
多発性骨髄腫の患者の血液サンプルを利用することができる。これらのサンプルをマイクロウェルに播種する。このアッセイで使われる選択プロパティは、以下のとおりである。
-直接プロパティ:「CD38免疫表現型」=腫瘍細胞、「CD16-CD56免疫表現型」=免疫細胞
-共存の派生プロパティ:同一マイクロウェル内の免疫細胞と腫瘍細胞の共局在性
【0141】
免疫系細胞(NK細胞)がCD38+腫瘍細胞と近接するマイクロウェルのサブセットを選択した。
【0142】
複数のマイクロウェルを抗CD38剤に曝露し、選択された対象領域のセット、すなわち、NK細胞と共局在化したマイクロウェルで発見された腫瘍細胞で測定した、前記薬剤により引き起こされた死亡率である出力パラメーターを推定した。このアプローチは、ADCCアッセイ(抗体依存性細胞障害)を高精度で、すなわち、対象の二種類の細胞が共局在化しているマイクロウェルに限定して、行うことを可能にする。
【0143】
得られた
図9で報告されているデータは、抗CD-38剤の活性が、腫瘍細胞と共局在化した免疫細胞で構成されたマイクロウェルのサブセット(列D)では、全細胞集団(列C)で得られる平均応答と比較して、大きいことを示している。
【0144】
また、この場合、逸脱したデータや、二種類の細胞の共局在化がないウェルなど、測定にノイズ効果を導入するデータを除去することにより、治療の有効な効果と患者に特異的な免疫システム細胞の活動レベルの、より正確な測定が可能となる。特定の場合では、薬剤により刺激されると、患者の70%のNK細胞が、接触したターゲット細胞の細胞死を引き起こす能力があると観察されている。
【0145】
薬剤の効果の更なる分析と評価は、同じ実験システムで行ってもよい。たとえば、NK細胞を含まず、CD38+細胞のみを含むマイクロウェルのサブセットの選択は、抗CD38剤の存在下で、ターゲット細胞に対する薬剤によって引き起こされ、NK細胞によって媒介されない直接的な細胞毒性を出力パラメーターとして評価することを可能にする(列B)。
【0146】
抗CD38剤の非存在下、NK細胞と共局在化しているCD38+腫瘍細胞を含むマイクロウェルのサブグループを選択することで、腫瘍細胞に対するNK細胞の自発的な活性を測定することができる(列A)。
【0147】
最後に、選択プロパティ内に派生プロパティ「腫瘍細胞からNK細胞までの距離」を加えて、NK細胞と腫瘍ターゲットとの間の距離が変化する際の薬物の活性を明らかにするために、さらなる評価を行うことができる。
【0148】
図6のパネルDで図式化されているように、
図6のパネルCにより全部のプロパティのパネルを取得すると、本明細書で説明されている評価及び当業者が実施を望む他の評価は、選択プロパティと出力プロパティを独立に選択し、データを利用できるよう処理することによって、実行してもよいことに留意されたい。
【0149】
例4:マイクロウェル内の異種の細胞集団の共局在性の制御
少なくとも一つのタイプA細胞と一つのタイプB細胞の共局在化を伴うマイクロウェルが配列される確率を最大化することを目的として、異なるアプローチを本明細書で定義し、以下に詳述する。
【0150】
以下の例では、以下の定義を想定している。
【0151】
R1=初期細胞集団の全細胞に対するエフェクター細胞(例えば免疫系細胞)の比率
【0152】
R2=初期細胞集団の全細胞に対するターゲット細胞(例えば腫瘍細胞)の比率
【0153】
E:T=エフェクター細胞の全細胞に対する比率
【0154】
C=共培養の濃度
【0155】
例4A
患者から単離されたサンプルについて、二つのチューブに分け、最初の濃縮ステップを実行すると、最初のチューブで約100%のR1が得られ、二番目のチューブで約100%のR2が得られる。
【0156】
そうすることで、二本のチューブの既知の内容量を混ぜ合わせることにより得られるE:Tを決定でき、所望のマイクロウェルあたりの平均細胞数を得られるようにcを定義することができる。
【0157】
理論的には、二つの純粋な集団を使用する場合、すなわち、R1とR2がほぼ100%である場合、順次二つの集団を播種することによって、平均10細胞/マイクロウェルであると仮定すると、100%に近い共局在化確率が得られる。
【0158】
上記で説明したように濃縮されたNK細胞と腫瘍細胞から得られる実験データは、予測される傾向をよい近似で示す(
図3B、実験データ)。
【0159】
例4B
分析中のサンプルは、頻度を変え、濃縮せずに、患者から単離したPBMC(末梢血単核細胞)中のエフェクター細胞を含む(例えば、分析された8つのサンプルではR1=5-20%)。
【0160】
腫瘍細胞を濃縮するか、あるいは、細胞株を使う(R2約100%)
【0161】
最適なE:Tは、確率論から知られている。
【0162】
エフェクター細胞とターゲット細胞を順次播種する。平均が10細胞/ウェルであると仮定すると、エフェクター細胞/ターゲット細胞の共局在化確率は、30%から70%である。特には、
図4のグラフに示されるように、R1=5の場合は、共局在の確率が30%であり、R1=20%の場合は、確率が70%に上昇する。また、グラフは、最大の共局在化を得るために理想的なマイクロウェルあたりの細胞数が約10細胞/マイクロウェルであることを示している。各条件で1,200個のマイクロウェルあるとき、30%の限界条件でマイクロウェルの減少を考慮すると、マイクロウェルの複製により、良い統計的有意性が維持される。
【0163】
例4C
この試験で、NKエフェクター細胞は、頻度を変えて患者から単離されたPBMCで利用することができる(例えばR1=5-20%)。
【0164】
また、腫瘍細胞は、同一患者のPBMCで可変頻度である。
【0165】
この場合、すなわち、5-20%の対象のエフェクター細胞と腫瘍細胞の可変範囲をもつ患者から取り出された単一の集団を使用することによって、共局在化確率の点において、非常に異なる状況を得ることができる。いくつかの例は、理論計算によって予測された値が良い近似で合うことを示している。二つの細胞集団の頻度範囲の使用可能な最小の極値は、利用可能なマイクロウェルの数と必要とされる統計的検出力に依存する。
【0166】
例として、
図5のグラフは、R2=50%又はR2=100%で、細胞/マイクロウェルの数が変化する際に観察される共局在化の頻度を示している。
【0167】
実際のケースでは、対象Aは、R1=17.3、R2=28.1を示した。理論計算では、マイクロウェルの57.2%で共局在化が推定された。実験データでは、マイクロウェルの48.1%で共局在化が観察された。さらなる実験では、対象Bは、R1=14.2、R2=10.0を示した。理論計算では、マイクロウェルの56%で共局在化が推定された。実験データでは、マイクロウェルの56.2%で共局在化が観察された。
【0168】
例5:多発性骨髄腫の患者の細胞のおけるアッセイ
EDTA骨髄サンプルを、多発性骨髄腫(MM)の13人の患者から集めた(7人初発、6人再発)。エフェクター細胞(E)とターゲット細胞(T)、すなわち、NK細胞と形質細胞を、元の構成を保ちながら単核細胞を得るために、8つの一次サンプルをそれぞれ密度遠心分離機(Ficoll-Pacque;Merck)で処理した。NK細胞を含み且つ形質細胞を激減させた集団である白血球(WBC)の集団を得るために、磁気ビーズ(Miltenyi Biotec)に結合したCD138抗体で、5つのサンプルを処理した。
【0169】
得られた細胞を、ターゲット細胞として、U-226またはNCI-H929細胞株で共培養した。U-226細胞は、10%ウシ胎児血清(Sigma-Aldrich)、1%L-グルタミン(Sigma-Aldrich)、1%ペニシリン/ストレプトマイシン混合物(Sigma-Aldrich)を補充した1640 RPMI培地(Sigma-Aldrich)で、5%CO2を使用して37℃で培養した。NCI-H929細胞は、20%ウシ胎児血清(Sigma-Aldrich)、1%L-グルタミン(Sigma-Aldrich)、1%ペニシリン/ストレプトマイシン混合物(Sigma-Aldrich)、1%ピルビン酸ナトリウム(Merck)を混合した1640 RPMI培地(Sigma-Aldrich)で、5%CO2を使用して37℃で培養した。
【0170】
一次サンプルからの細胞をCMAC(Thermo Fisher Scientific)で染色し、細胞トレーサーとして使用した。共培養実験では、白血球とターゲット細胞(U-266またはNCIH929)をそれぞれカルセインAM(Thermo Fisher Scientific)とCMACで染色した。NK細胞(エフェクター細胞、E)と形質細胞(ターゲット細胞、T)は、それぞれBV421マウス抗ヒトCD16/CD56(BD Biosciences)、AF647マウス抗ヒトCD138(BioRad)蛍光抗体を使用して標識した。ヨウ化プロピジウム(PI、Thermo Fisher Scientific)を、細胞傷害性マーカーとして使用した。
【0171】
・細胞の共局在化のための統計モデル
所望のエフェクター/ターゲット共局在化パターン(派生選択プロパティ、共存)を含む最大数のマイクロウェルを生成する最適な実験セットアップを定義するために、統計モデルを作成し、同一マイクロウェル内のTに対するEの比率であるエフェクター/ターゲット共局在化係数E/TCFにより定義する。
【0172】
このモデルは、E/TCF係数に影響を与える4つのパラメーターを考慮に入れている。
1)初期エフェクター/ターゲット混合比(E:T);
2)細胞の全体濃度(c);
3)エフェクター細胞と入力細胞集団(R1)の間の比率;及び
4)ターゲット細胞と入力細胞集団(R2)の間の比率
【0173】
パラメーターR1及びR2は、サンプルのタイプ(例えば、細胞株、患者の一次サンプル)のみに依存するが、E:T及びcは、通常、ユーザーがマイクロウェルのマトリックス内の対象の特定のモデルの頻度を最大化するために変更できる。E細胞とT細胞の両方が患者の一次サンプル細胞である実験では、E:Tは変更できず、cのみ最適化することができる。
【0174】
・細胞播種及び薬剤暴露
一次サンプル又は共培養サンプルの細胞を、2×105細胞/ウェルの最終濃度で、可変E:T比として、96ウェルプレートに播種した。さらに、E:T比が1:0(エフェクター細胞のみ)と0:1(ターゲット細胞のみ)の条件をコントロールとして使用した。ロボットマイクロ流体デバイスを使用して、細胞をマイクロ流体デバイスに装填し、マイクロウェルにトラップした。ダラツムマブモノクローナル抗体(抗CD38)を用いて、異なるマイクロチャンネル(0.1μg/mL、1μg/mL及び10μg/mL)を介して三回投与し、一方で薬剤を使用していない他のマイクロチャンネルをコントロールとして使用した。薬剤は、10%又は20%ウシ胎児血清(Sigma-Aldrich)、1%L-グルタミン(Sigma-Aldrich)、1%ペニシリン/ストレプトマイシン混合物(Sigma-Aldrich)を混合したRPMI 1640培地(Sigma-Aldrich)で希釈した。各実験は、最大12時間、蛍光顕微鏡を使用してタイムラプスで分析した。
【0175】
・ICNP画像及びデータ解析
ICNPは、多量の異種の細胞クラスタをランダムに作り出すこと及び類似した細胞-細胞間相互作用パターンを共有する細胞クラスタの特定のグループを分類及び分析することにより、前記多数のマイクロウェルを使用して可能となる分析法である(
図11A)。この例では、19,200個であるが、本発明による方法によって得られる多数のクラスタは、良い統計的有意性を維持しながら、比較的レアなパターンでさえも特定し、単一の実験で複数の相互作用パターンを評価することも可能にする。この例では、抗CD38(ダラツムマブ)の刺激下で、腫瘍細胞株及び一次腫瘍細胞に対するNK細胞の有効性を評価するADCCアッセイ(抗体依存性細胞傷害)を行うために、ICNP分析を最適化した。
【0176】
次に、前記複数のマイクロウェルの画像を取得し、検出アルゴリズムを用いて、各対象領域が単一の細胞に対応する対象領域、各前記対象領域について、共局在性を含むプロパティ、各蛍光チャンネルの特定マーカーの強度、細胞面積、重心の位置、及び形態を測定する。前記各プロパティに関連するデータを、異なる時間に順次、この場合では、T=0h、T=1h、T=2h、T=4h、T=12hに集め、データベースに保管する。
【0177】
次に、前記複数のマイクロウェルのサブセットを、前記プロパティに基づいて選択し、
図11Aに示されているように、前記選択は、4つの特定の共局在化パターンに基づいている。各パターンは、特定のE細胞の数及び特定のT細胞の数からなるE/T
CF値によって決まる。その結果、同じ細胞プール内で、マイクロ流体デバイスの各チャンネルについて、複数のE/T共局在化パターンを評価する。
【0178】
さらに、内部コントロール機能を果たすマイクロウェルもある。例えば、薬剤に刺激されたマイクロチャネルにターゲット細胞のみ含むウェルでは、薬剤により引き起こされる直接的な細胞傷害性を評価することができる。
【0179】
選択された前記複数のマイクロウェルのサブセットで、マイクロウェルの特定のサブセット内の細胞-細胞相互作用モデルを、免疫表現型、持続力、空間情報に基づいて評価することにより、対象領域のレベルで、第二の分類を行う。この分類では、重要なステップは、同一のマイクロウェルに含まれた対象領域間の距離と接触の評価である。この情報(
図11B)は、評価している対象領域の各ペアの中心及び半径rの座標(x,y)から導かれる。半径は、対象領域と同じ領域を持つ円形のオブジェクト、すなわち、分析中の単一の細胞をいう。
【0180】
この方法の目的では、ペアの細胞を、次の場合に「接触している」と定義する。
【数2】
【0181】
ここで、dist((x1,y1),(x2,y2))は、二つの中心間の距離dであり、r1とr2は対象領域の半径、tolは許容値で、ここでは4μmとしている。例えば、同一マイクロウェル内の免疫細胞からの距離に基づいて、ターゲット細胞を分類し、これにより、免疫細胞に接触しているターゲット細胞あるいはエフェクター細胞から一定の距離以内にあるターゲット細胞の特定を可能としている。
【0182】
この方法は、CD138+細胞からの距離に応じて、NK細胞の有効性(すなわち、腫瘍細胞によって引き起こされる細胞媒介性細胞傷害)がどのように変化するか評価することを可能としている。
【0183】
特に、
図11Aに示すように、4つの選択されたパターンは:パターン1)NK細胞と形質細胞を含むマイクロウェル(72.1%)、パターン2)形質細胞のみ(9.6%)、パターン3)NK細胞のみ(16.7%)、パターン4)対象の細胞なし(1.6%)である。
【0184】
好都合なことに、前記マイクロウェルのサブセットの選択により、NK媒介細胞傷害性のターゲット研究が可能となり、この研究は、パターン1の選択されたマイクロウェルのサブセットのみで行った。さらに、本発明における方法の重要な利点は、特定の実験について、特定の共局在化パターンを評価し得ることである。
【0185】
図11Cは、NK細胞及びU-266細胞の20種類の異なる共局在化パターンの実験の分析から得られたヒートマップの分析を示しており、ヒートマップの各ボックスは、パターンに関連している。抗CD38抗体に細胞を暴露し、各パターンは、同一のマイクロウェルに含まれているE細胞(NK細胞)及びT細胞(U-266細胞)の数が異なるため、ターゲット細胞の死滅におけるエフェクター:ターゲット比率の影響を評価できる。本発明の方法によりマイクロウェル内で評価された形質細胞の細胞死率は、E/T
CF比がより高いマイクロウェルサブセットにおいて、ターゲット細胞の死が高いことを明らかにした。Cr51放出アッセイで得られた比較データによって示されるように(
図11G)、データは、当該技術分野で知られている方法、すなわち、培養プレートで、得られたデータに重ね合わせることができ、同時に複数のパターンを測定することができ、単一の対象領域の分解能で測定できるという重要な利点を有している。
【0186】
マイクロウェルサブセットの分類後、単一細胞レベルでの詳細な分析をタイムラプスで取得した画像に対して行った。本発明に従う方法は、同種の相互作用パターンによってデータをグループ化し、細胞の「ネットワーク」の効果を調査することを可能とした。
図11Dは、NK細胞と形質細胞間の相互作用を詳細に調査するために分析された画像の例を示している。画像の各ラインは、異なる条件に対応している:パターン2のマクロウェルに属するターゲット細胞、すなわち、エフェクター細胞(NK-)がないターゲット細胞に対する直接的な抗CD38の効果;抗CD38刺激なし(CTRL-)又はNK細胞と形質細胞(抗CD38)間の接触がある抗CD38刺激ありの、パターン1のマイクロウェルに入っているターゲット細胞とエフェクター細胞間の自発的相互作用の効果である。パターン1のサンプル(抗CD38)は、ヨウ化プロピジウムの吸収と、1時間で現れ始め、2時間でより明白になるシグナルの出現(画像では矢印で示されている)を検知することによって、相互作用が形質細胞の死を引き起こすことを示している。一方で、形質細胞は、パターン2、すなわち、エフェクター細胞が存在しない代表画像では死滅していない。観察された毒性の原因となるNK細胞の実際の効果を推定することを目的として、パターン1のマイクロウェルの形質細胞の死を、NK細胞からの距離に関して評価した。
【0187】
図11Eは、10μg/mLの用量のダラツムマブで細胞を刺激した1,200個のマイクロウェルから収集したデータを示している。本発明による方法は、形質細胞がNK細胞と接触しているときに死滅が最大となり、形質細胞とNK細胞の距離が増加するにつれ死滅が減少することを観察できるようにした。形質細胞が直接接触していないが、NK細胞のすぐ近くにある場合は、細胞が遠い場合に比べて死亡率が増加することを示している。これらのデータは、NK細胞の活性化が、直接接触している細胞に影響を与えるだけでなく、周囲の環境、すなわち、観察している時間とは異なるときに起こりえるNK細胞との接触によって、あるいは接触によるNK細胞の最初の活性化後に、パーフォリンやグランザイムのような有毒な物質の分泌によって死滅する可能性のある、NK細胞から最小距離にある細胞にも影響を及ぼすという事実を示している。したがって、本発明における方法の価値は、前記細胞が含まれた環境を考慮に入れた単一の細胞の分析中においてさえも、対象環境の代表的なサブセットの選択を可能としている点にある。
【0188】
報告された実験において、この方法は、強力なNK細胞の一部、すなわち、ターゲットと接触したときにターゲットを死亡させることができるものが全体の12.82%であると推定することを可能とした。この数字は、パターン1に属する形質細胞の死亡率、したがって、NK細胞に接触している形質細胞の死亡率(23.68%)と、自然死又は抗CD38抗体の直接的効果に起因する、パターン2に属する形質細胞の死亡率(10.86%)との差として計算した。
図11Fのヒートマップは、異なるパターンで経時的に測定された細胞生存率の結果を示している。
【手続補正書】
【提出日】2021-11-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞を含んだ複数のマイクロウェルをハイコンテントアッセイにかける方法であって、
a)前記複数のマイクロウェルの少なくとも一つの画像を取得することと、
b)前記画像において、複数の対象領域を検出することであって、各対象領域が単一の細胞に対応することと、
c)対象領域の少なくとも一つの派生プロパティ、及び、任意選択で、少なくとも一つの直接プロパティを測定することであって、
前記派生プロパティが多数の対象領域に関連するプロパティ、すなわち、測定される二以上の対象領域の評価を必要とするプロパティであり、前記派生プロパティのうち一つが、同一のマイクロウェルに含まれる一以上の対象領域間の関係プロパティ又は共存プロパティであり、前記直接プロパティが単一の対象領域に関連するプロパティ、すなわち、単一の対象領域を評価することにより測定されるプロパティであり、前記一以上のプロパティが選択プロパティであることと、
d)前記複数のマイクロウェルのサブセットを選択することであって、該サブセットに属する前記マイクロウェルが前記少なくとも一つの選択プロパティに基づいて選択される対象領域を含むことと、
e)選択される対象領域のセットで測定されるプロパティから出力パラメーターを推定することであって、該プロパティを出力プロパティと定義し、該出力プロパティが前記選択プロパティとは異なり、前記出力パラメーターが前記対象領域のセットで測定された出力プロパティを処理したものであることと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記選択が組み入れ基準を課すことによって行われ、該組み入れ基準が、
-前記派生プロパティ、及び、任意選択で測定される直接プロパティから、一以上の選択プロパティを特定することと、
-前記選択プロパティの夫々について、閾値、又は前記選択プロパティが必ず入る値の範囲を課すことと、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記選択プロパティの少なくとも一つが累積プロパティである、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
第一選択プロパティに基づく対象領域の第一セットの選択と、該対象領域の第一セット内における、第二選択プロパティに基づく対象領域のサブセットの選択と、を含み、好ましくは、前記第一選択プロパティが累積プロパティであり、前記対象領域の第一セットがマイクロウェルのサブセットに対応し、前記第二選択プロパティが直接又は相対プロパティであり、前記対象領域のサブセットが前記マイクロウェルのサブセットに埋め込まれた細胞のサブセットに対応する、請求項1~
3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも一つの派生プロパティが、同一のマイクロウェル中で異なる免疫表現型を有する少なくとも二つの細胞の共局在性である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記異なる免疫表現型を有する少なくとも二つの細胞が、免疫細胞及び腫瘍細胞である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも一つの派生プロパティが、同一のマイクロウェルに属する他の細胞からの各細胞の平均距離である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記出力パラメーターが、選択される対象領域のセットに属する各対象領域で測定される出力プロパティの統計的処理の結果である、請求項1~
7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも一つの画像を、前記複数のマイクロウェルの少なくとも一つの画像を取得するよう構成された画像取得デバイスによって取得する、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記画像を分析及び処理して、前記プロパティの測定値を返し、前記分析及び処理プロセスが次のステップ:
-複数のマイクロウェルを含む画像において、マイクロウェルに対応するゾーンを特定することと、
-前記マイクロウェルに対応するゾーン内で、複数の対象領域を検出することであって、各対象領域が前記複数のマイクロウェルに含まれる前記細胞の一つに対応することと、
-前記対象領域の夫々の少なくとも一つのプロパティを測定することと、
-前記測定されたプロパティの一以上に基づいて対象領域のセットを選択することであって、前記一以上のプロパティを選択プロパティと定義することと、
-前記対象領域のセットで測定されたプロパティから出力パラメーターを推定することと
を含む、請求項1~
9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記複数のマイクロウェルが、少なくとも15,000個、又は少なくとも18,000個の、好ましくは19,200個のマイクロウェルを含むマイクロ流体デバイスに埋め込まれている、請求項1~
10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記マイクロウェルが、逆開口型マイクロウェル、すなわち、上端部と下端部が共に開いているマイクロウェルである、請求項1~
11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
複数のマイクロウェルを動的試験にかけ、同一フィールドの幾つかの画像を連続時間(タイムラプス撮影)で取得し、時間t
0及びその後の時間t
1、t
2、…t
3で前記少なくとも一つのプロパティを測定することで、該プロパティの変化を経時的に反映した分析を返す、請求項1~
12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記細胞を、前記複数のマイクロウェル中に保持しつつ、前記出力パラメーターに影響を与える一以上の薬剤に曝露する、請求項1~
13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
細胞を含んでいる複数のマイクロウェルをハイコンテントアッセイにかけるシステム(1)であって、該システムが、画像取得デバイス(2)と、データ処理ユニット(4)と、を含み、
-前記画像取得デバイス(2)が、前記複数のマイクロウェル(3)の少なくとも一つの画像を取得するように構成されており、
-前記データ処理ユニット(4)が、
-前記画像において、複数の対象領域を検出し、ここで、各対象領域が単一の細胞に対応し、
-前記対象領域の少なくとも一つの派生プロパティ、及び、任意選択で、少なくとも一つの直接プロパティを測定し、ここで、
前記派生プロパティが多数の対象領域に関連するプロパティ、すなわち、測定される二以上の対象領域の評価を必要とするプロパティであり、前記派生プロパティのうち一つが、同一のマイクロウェルに含まれる一以上の対象領域間の関係プロパティ又は共存プロパティであり、前記直接プロパティが単一の対象領域に関連するプロパティ、すなわち、単一の対象領域を評価することにより測定されるプロパティであり、前記一以上のプロパティが選択プロパティであり、
-前記複数のマイクロウェルのサブセットを選択し、ここで、該サブセットに属する前記マイクロウェルが前記少なくとも一つの選択プロパティに基づいて選択される対象領域を含み、
-選択される対象領域のセットで測定されるプロパティから出力パラメーターを推定し、ここで、該プロパティを出力プロパティと定義し、該出力プロパティが前記選択プロパティとは異なり、前記出力パラメーターが前記対象領域のセットで測定された出力プロパティを処理したものである、ように構成されている、
システム(1)。
【請求項16】
細胞を含んでいる複数のマイクロウェルをハイコンテントアッセイにかけるコンピュータプログラムであって、該プログラムがデータ処理ユニットによって実行されるとき、該処理ユニットに、次の
-前記対象領域の少なくとも一つの派生プロパティ、及び、任意選択で、少なくとも一つの直接プロパティを測定するステップであって、
前記派生プロパティが多数の対象領域に関連するプロパティ、すなわち、測定される二以上の対象領域の評価を必要とするプロパティであり、前記派生プロパティのうちの一つが、同一のマイクロウェルに含まれる一以上の対象領域間の関係プロパティ又は共存プロパティであり、前記直接プロパティが単一の対象領域に関連するプロパティ、すなわち、単一の対象領域を評価することにより測定されるプロパティであり、前記一以上のプロパティが選択プロパティである、ステップと、
-前記複数のマイクロウェルのサブセットを選択するステップであって、該サブセットに属する前記マイクロウェルが前記少なくとも一つの選択プロパティに基づいて選択された対象領域を含む、ステップと、
-選択される対象領域のセットで測定されるプロパティから出力パラメーターを推定するステップであって、該プロパティを出力プロパティと定義し、該出力プロパティが前記選択プロパティとは異なり、前記出力パラメーターが前記対象領域のセットで測定された出力プロパティを処理したものである、ステップと、
を実行させる命令を含む、
コンピュータプログラム。
【国際調査報告】