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特表2023-503807基板上に成膜するためのマイクロ波補助装置、システムおよび方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-01
(54)【発明の名称】基板上に成膜するためのマイクロ波補助装置、システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/02 20060101AFI20230125BHJP
   B01J 19/12 20060101ALI20230125BHJP
   C23C 18/14 20060101ALI20230125BHJP
   C23C 16/02 20060101ALI20230125BHJP
   C23C 16/511 20060101ALI20230125BHJP
【FI】
H01L21/02 Z
B01J19/12 A
B01J19/12 G
C23C18/14
C23C16/02
C23C16/511
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022525614
(86)(22)【出願日】2020-11-02
(85)【翻訳文提出日】2022-06-28
(86)【国際出願番号】 IN2020050923
(87)【国際公開番号】W WO2021084561
(87)【国際公開日】2021-05-06
(31)【優先権主張番号】201941044241
(32)【優先日】2019-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.パイレックス
(71)【出願人】
【識別番号】517249934
【氏名又は名称】インディアン インスティテュート オブ サイエンス
(71)【出願人】
【識別番号】522172818
【氏名又は名称】インディアン スペース リサーチ オーガナイゼーション ヘッドクォーターズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】サイ,ラナジット
(72)【発明者】
【氏名】シヴシャンカル,スリニヴァサラオ アジャンプール
(72)【発明者】
【氏名】マニッシュ,クマール フーダー
【テーマコード(参考)】
4G075
4K022
4K030
【Fターム(参考)】
4G075AA24
4G075BA10
4G075BB04
4G075BD16
4G075CA26
4G075DA02
4G075DA04
4G075DA18
4G075EB01
4G075EB31
4G075ED08
4G075FB04
4G075FB06
4G075FB12
4G075FC20
4K022AA02
4K022AA04
4K022AA05
4K022AA13
4K022BA09
4K022BA11
4K022BA14
4K022BA15
4K022BA25
4K022DA08
4K022DB01
4K030AA11
4K030AA24
4K030BA07
4K030BA14
4K030BA21
4K030BA42
4K030BA47
4K030CA04
4K030CA05
4K030CA06
4K030CA12
4K030EA01
4K030FA01
4K030GA02
4K030JA01
4K030JA06
4K030JA09
4K030JA10
4K030JA16
4K030JA18
(57)【要約】
本発明は、少なくとも1種類の化学前駆体を有する溶液を含むカートリッジ内において、大型基板を含む基板上に薄膜を成膜するための装置を提供する。当該基板は、下向きに保持されることが好ましい。当該少なくとも1種類の化学前駆体は、マイクロ波透過性窓を透過する一様なマイクロ波の場に曝されると、基板上に薄膜を形成する。また、本発明は、マイクロ波を照射し、前記基板上に薄膜を成膜するための処理を制御するシステムを提供する。また、本発明は、基板上で一様な厚さおよび特性の膜を得るための、または、被制御の非一様性を基板にもたらすための処理を提供する。また、本発明は、連続的なバッチ処理により一連の基板上に成膜する装置および方法を提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に成膜するためのマイクロ波補助装置(100)であって、
(i)マイクロ波透過性窓(109)と、前記マイクロ波透過性窓(109)から介在距離「d」の所に配置された、複数のマイクロ波発生ユニット(103a)からマイクロ波エネルギーを受け取るための複数のポート(103)の配列と、を有するアプリケータ(101)と、
(ii)前記アプリケータ(101)上に取り付けられた、着脱可能なカバー(110a)を有する基板カートリッジチャンバ(110)と、
(iii)着脱可能な蓋(105a)と、前記着脱可能なカバー(110a)に接続されたステム(106)と、を有するマイクロ波透過性容器(105b)を含み、前記基板カートリッジチャンバ(110)内に着脱可能に配置されたカートリッジ(105)と、
(iv)化学前駆体を有する液体(107)を貯留するように構成された前記マイクロ波透過性容器(105b)であって、前記液体(107)は、前記マイクロ波透過性窓(109)の全体を通って伝播するマイクロ波により、一様なマイクロ波電界強度で照射され、その結果、前記化学前駆体がマイクロ波補助反応を受けるように配置されている、前記マイクロ波透過性容器(105b)と、
(v)前記着脱可能な蓋(105a)に取り外し可能に接続された基板(104)であって、前記基板(104)の表面上に、前記化学前駆体の反応生成物を膜(119)として堆積させるために、前記基板(104)の下向き部分が、照射された前記液体(107)と接触状態にあるように構成された、基板(104)と、
を備える、装置(100)。
【請求項2】
前記マイクロ波透過性窓(109)の材料は、溶融石英、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)または単結晶酸化アルミニウム(Al)である、請求項1に記載の装置(100)。
【請求項3】
複数のベント(108)は、前記着脱可能な蓋(105a)上に配置されている、請求項1に記載の装置(100)。
【請求項4】
前記カートリッジ(105)は、前記アプリケータ(101)内に配置されている、請求項1に記載の装置(100)。
【請求項5】
配列としての前記複数のポート(103)は、基準平面(111)に対して水平かつオフセットしており、かつ、前記マイクロ波透過性窓(109)の中心軸(112)に対して対称または非対称に配置されている、請求項1に記載の装置(100)。
【請求項6】
気体注入チャネルおよび真空チャネル(113、114、115、116)は、前記アプリケータ(101)および前記基板チャンバ(110)にそれぞれ接続されている、請求項1に記載の装置(100)。
【請求項7】
前記マイクロ波透過性容器(109)内の前記液体の特性および前記基板(104)上の前記膜(119)の成長を監視するためのプローブ(120)は、前記アプリケータ(101)内および前記基板チャンバ(110)内に配置されており、
前記プローブ(120)は、赤外線(IR)装置、紫外線(UV)装置、可視光(V)装置および超音波装置から選択された送受信機アセンブリである、請求項1に記載の装置(100)。
【請求項8】
前記基板カートリッジチャンバ(110)の複数の壁(121)の上部および側部は、マイクロ波吸収性材料、好ましくは、炭化ケイ素(SiC)またはストロンチウムヘキサフェライト(SrFe1219)でコーティングされている、請求項1に記載の装置(100)。
【請求項9】
デュアルモーションアクチュエータ(123)は、前記カートリッジ(105)の前記ステム(106)に接続されており、
前記カートリッジ(105)は、垂直軸(112)の周りを回転し、前記基準平面(111)に対して垂直に移動するように構成されている、請求項1に記載の装置(100)。
【請求項10】
前記着脱可能な蓋(105a)および前記マイクロ波透過性容器(105b)は、相互に差があるように回転するよう配置されている、請求項1に記載の装置(100)。
【請求項11】
前記基板(104)は、前記液体(107)内に浸漬されるように配置されている、請求項1に記載の装置(100)。
【請求項12】
前記着脱可能な蓋(105a)の厚さは、変更可能である、請求項1に記載の装置(100)。
【請求項13】
前記着脱可能な蓋(105a)の底面は、勾配輪郭(105a2)を有し、
前記勾配輪郭は、前記基準平面(111)に対して1~30度の範囲内の角度で傾斜している、請求項1に記載の装置(100)。
【請求項14】
ホルダ(105a3)は、前記着脱可能な蓋(105a)に接続されており、マイクロ波透過性材料、好ましくは、溶融石英またはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)から作製されている、請求項1に記載の装置(100)。
【請求項15】
導電層(117)は、前記着脱可能な蓋(105a)と前記基板(104)との間に配置されており、
前記導電層(117)は、連続したものであるか、またはパターン形成されたものである、請求項1に記載の装置(100)。
【請求項16】
金属層(118)は、前記マイクロ波透過性窓(109)に接続され前記アプリケータ(101)の内側部分に面しており、偏光子およびアンテナ(118a)として構成されている、請求項1に記載の装置(100)。
【請求項17】
前記マイクロ波透過性容器(105b)は、前記マイクロ波透過性窓(109)の代わりに配置されている、請求項1に記載の装置(100)。
【請求項18】
前記基板(104)の材料は、金属、金属合金、半導体または絶縁体から選択されたものである、請求項1に記載の装置(100)。
【請求項19】
前記基板(104)の大きさは、1~2000cmである、請求項1に記載の装置(100)。
【請求項20】
前記膜の平均表面粗さは、1~50nmであり、
前記膜の厚さは、10nm~100μmである、請求項1に記載の装置(100)。
【請求項21】
前記基板(104)は、1~100rpmの速さで回転するように構成されている、請求項1に記載の装置(100)。
【請求項22】
複数の基板上に薄膜およびコーティングを成膜するための装置(200)であって、
(i)マイクロ波透過性窓(209)と、前記マイクロ波透過性窓(209)から介在距離「d」の所に配置された、マイクロ波発生ユニット(203a)からマイクロ波エネルギーを受け取るための複数のポート(203)の配列と、を有するアプリケータ(201)と、
(ii)前記アプリケータ(201)上に取り付けられた、着脱可能な蓋(205a)を有するマイクロ波透過性容器(205b)であって、化学前駆体を有する液体(207)を貯留するように構成されており、前記液体(207)は、前記マイクロ波透過性窓(209)の全体を通って伝播するマイクロ波により、一様なマイクロ波電界強度で照射され、その結果、前記化学前駆体がマイクロ波照射反応を受けるように構成されている、マイクロ波透過性容器(205b)と、
(iii)前記マイクロ波透過性容器(205b)に接続された複数のプランジャ(212)によって作用可能な、着脱可能な蓋(205a)と、
(iv)前記着脱可能な蓋(205a)の内側部分と前記マイクロ波透過性容器(205b)の上側部分との間に配置された、複数の基板チャネル(210、211)と、
(v)前記着脱可能な蓋(205a)に接続された複数のプーリの第1のセット(208a)、および、前記マイクロ波透過性容器(205b)の内側に配置された複数のプーリの第2のセット(208a)と、
(vi)第1および第2の前記複数のプーリ(208a)と移動可能に接触するように配置された、ループ状基板運搬装置(208)と、
(vii)前記ループ状基板運搬装置(208)に接続されており、かつ、前記複数の基板チャネル(210、211)を通って前記マイクロ波透過性容器(205b)に出入りするように構成された、複数の可動ステム(206)と、
(viii)前記複数の可動ステム(206)に取り外し可能に接続された複数の基板(204)であって、前記液体(207)と接触状態にある前記基板(204)の表面上に、前記化学前駆体の反応生成物を膜として堆積させるために、複数の前記基板(204)の下向き部分が、照射された前記液体(207)と接触状態にあるように配置された、複数の基板(204)と、
を備える、装置(200)。
【請求項23】
バルブ(216)を有する入口(214)およびバルブ(216)を有する出口(215)は、前記マイクロ波透過性容器(205b)に接続されている、請求項22に記載の装置(200)。
【請求項24】
前記マイクロ波透過性容器(205b)内の前記液体の特性および前記膜(119)の成長を監視するためのプローブ(220)は、前記アプリケータ(201)内および前記マイクロ波透過性容器(205b)内に配置されており、
前記プローブ(220)は、赤外線(IR)装置、紫外線(UV)装置、可視光(V)装置および超音波装置から選択された送受信機アセンブリである、請求項22に記載の装置(200)。
【請求項25】
複数の前記基板(204)は、同じ幾何学的形状を有するか、または異なる幾何学的形状を有する、請求項22に記載の装置(200)。
【請求項26】
前記基板(204)の大きさは、1~2000cmである、請求項22に記載の装置(200)。
【請求項27】
基板上に成膜するためのシステム(300)であって、
(i)マイクロ波透過性窓(309)と、前記マイクロ波透過性窓(309)から介在距離「d」の所に配置された、マイクロ波発生ユニット(303a)からマイクロ波エネルギーを受け取るための複数のポート(303)の配列と、を有するアプリケータ(301)と、
(ii)前記アプリケータ(301)上に取り付けられた基板カートリッジチャンバ(310);着脱可能な蓋(305a)と、ステム(306)と、を有するマイクロ波透過性容器(305b)を含み、前記基板カートリッジチャンバ(310)内に着脱可能に配置されたカートリッジ(305);化学前駆体を有する液体(307)を貯留するように構成された前記マイクロ波透過性容器(305b)であって、前記液体(307)は、前記マイクロ波透過性窓(109)の全体を通って伝播するマイクロ波により、一様なマイクロ波電界強度で照射され、その結果、前記化学前駆体がマイクロ波照射反応を受けるように構成されている、前記マイクロ波透過性容器(305b);および、前記着脱可能な蓋(305a)に取り外し可能に接続された基板(304)であって、前記液体(307)と接触状態にある前記基板(304)の表面上に、前記化学前駆体の反応生成物を膜(319)として堆積させるために、前記基板(304)の下向き部分が、照射された前記液体(307)と接触状態にあるように構成された、基板(304)と、
(iii)複数の導波管(329)を介して前記複数のポート(303)に接続された、複数のマイクロ波エネルギー発生ユニット(330)と、
(iv)前記アプリケータ(301)内および前記基板カートリッジチャンバ(310)内に配置され、かつ、プローブ管理ユニット(331)に接続された、複数のプローブ(320)と、
(v)前記基板カートリッジチャンバ(310)および前記アプリケータ(301)にそれぞれ気体入口および真空入口(315、313)を介して接続された、気体注入ユニットおよび真空制御ユニット(327、328)と、
(vi)デュアルモーションアクチュエータ(323)を介してステム(306)に接続された、ステム移動制御ユニット(322)と、
(vii)前記複数のマイクロ波エネルギー発生ユニット(330)、導電層(318)、前記気体注入ユニットおよび真空制御ユニット(327、328)、前記ステム移動制御ユニット(322)、ならびに前記プローブ管理ユニット(331)に作用可能に接続された中央制御監視ユニット(332)であって、前記マイクロ波エネルギーおよび前記複数のポートの配置を調節し、かつ、前記マイクロ波エネルギーの電界強度を測定し、かつ、前記アプリケータ(301)および前記基板カートリッジチャンバ(310)の雰囲気を制御し、かつ、前記着脱可能な蓋(305a)と、前記ステム(306)と、を有する前記マイクロ波透過性容器(305b)を含む前記カートリッジ(305)、前記基板(304)および前記液体(307)の移動を制御し、かつ、前記液体の特性および前記膜の成長をプローブで調べるように構成された、中央制御監視ユニット(332)と、
を備える、システム(300)。
【請求項28】
前記複数のプローブ(320)は、赤外線(IR)装置、紫外線(UV)装置、可視光(V)装置および超音波装置から選択された送受信機アセンブリである、請求項27に記載のシステム(300)。
【請求項29】
前記複数のマイクロ波エネルギー発生ユニット(330)は、ソリッドステートMGUである、請求項27に記載のシステム(300)。
【請求項30】
基板上に成膜するためのマイクロ波補助処理であって、
(i)少なくとも1種類の化学前駆体および少なくとも1種類の溶媒からなる液体を調製し、基板カートリッジチャンバ内に配置された基板カートリッジのマイクロ波透過性容器内へと前記液体を移す工程と、
(ii)前記基板カートリッジの着脱可能な蓋上に基板を下向きに取り付けて、前記基板が前記液体と接触状態にあるように、好ましい液柱高さ(h)において前記基板を配置する工程と、
(iii)複数のポートの配列の選択された構成により達成される所望の強度の一様なマイクロ波の場のみを、アプリケータのマイクロ波透過性窓の全体を通して、前記基板カートリッジチャンバ内へと伝播させる工程と、
(v)得られる前記マイクロ波の電界強度の存在下において、前記液体を照射する工程と、
(vi)前記基板上に核生成の部位を形成するように前記化学前駆体を反応させ、その結果、前記液体と接触状態にある前記基板の表面上に、前記化学前駆体の反応生成物を、所望の一様な厚さ、組成および物理的特性を有する膜として堆積させる工程と、
(viii)前記基板カートリッジチャンバから前記膜を有する前記基板を取り外す工程と、
を含む、処理。
【請求項31】
前記少なくとも1種類の化学前駆体は、複数の金属塩から選択され、
前記複数の金属塩は、有機塩、無機塩または有機塩と無機塩との組み合わせであり、好ましくは、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、バリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)もしくはインジウム(In)のハロゲン化物、硝酸塩、酢酸塩、β-ジケトナトまたはチオ-β-ジケトナトである、請求項30に記載の処理。
【請求項32】
前記少なくとも1種類の溶媒は、極性溶媒、好ましくは、水、メタノール、エタノール、2-プロパノール、ブタノール、オクタノール、1-デカノール、エチレングリコール、ベンジルアルコールおよびジメチルスルホキシドから選択される、請求項30に記載の処理。
【請求項33】
前記基板は、金属コーティングした半導体もしくはコーティングのない半導体、好ましくはシリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、ヒ化ガリウム(GaAs)、窒化ガリウム(GaN)、リン化インジウム(InP)、炭化ケイ素(SiC)、Gaおよびダイアモンド、または、金属コーティングした絶縁体もしくはコーティングのない絶縁体、好ましくは酸化アルミニウム、溶融石英、MgO、ガラスもしくはポリマー材料である、請求項30に記載の処理。
【請求項34】
前記液柱高さ(h)は、1mm~50cmである、請求項30に記載の処理。
【請求項35】
前記アプリケータおよび前記基板カートリッジチャンバの雰囲気は、空気、酸素、窒素、アルゴンまたはこれらの組み合わせであり、
動作圧力は、1mtorr~1000torrである、請求項30に記載の処理。
【請求項36】
前記マイクロ波透過性窓を透過する前記マイクロ波の前記電界強度は、0~50kV/mである、請求項30に記載の処理。
【請求項37】
前記マイクロ波の放射振動数は、好ましくは2.45GHzまたは915MHzであり、
前記マイクロ波発生ユニットの出力パワーは、10W~5kWである、請求項30に記載の処理。
【請求項38】
前記核生成の密度は、最小で1000/μmである、請求項30に記載の処理。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
本発明の主題は、液体媒質中において、マイクロ波補助環境下にて基板上に成膜するための装置、システムおよび処理に関する。
【0002】
基板上への薄膜の成膜(堆積、付着)は、熱蒸発(thermal evaporation)、スパッタリング、化学蒸着(chemical vapour deposition:CVD)、電気めっき、ゾルゲル等を含む、さまざまな方法によって行われる。しかしながら、技術的に重要な特定の耐火材料(例えば、フェライト、ペロブスカイト)の結晶膜は、特に≦600℃の温度において、これらの公知の方法によっては成膜することができない。そのため、これらの方法は、CMOSに適合するものではない。さらに、フレキシブルエレクトロニクス(flexible electronics)の分野でも、低温処理が求められている。上述の問題を克服するために、マイクロ波補助システム(microwave-assisted system:MAS)に基づく処理を用いることができる。しかしながら、MASに基づくシステムおよび方法では、コーティングする基板または表面は、向きがランダムな状態で前駆体の溶液中に浸漬される。そのため、マイクロ波の電界強度が、基板表面の全体にわたって一様ではなくなる。加えて、このような装置/システムにおいては、成膜チャンバとマイクロ波空洞とが同一である。その結果、(成膜処理によって)マイクロ波空洞に汚染が生じ、溶液中のマイクロ波場分布だけではなく、基板表面全体のマイクロ波場分布にも悪影響が及ぶ可能性がある。
【0003】
公知の技術では、薄膜の成膜および基板の表面処理のために、マイクロ波生成プラズマが使用される(例えば、US4265730A、JPS62218575A、US5389197A、US5556475A)。マイクロ波プラズマ反応器には通常、気体を含んだ真空チャンバが含まれる。当該気体にエネルギーを与えることで、プラズマが形成される。マイクロ波エネルギーは、誘電性の窓または誘電性の障壁を通して、当該真空チャンバに導入される。当該誘電性の窓または誘電性の障壁は、マイクロ波エネルギーがチャンバ内に入ることを可能にしつつ、この処理チャンバ内の真空を維持する。このような誘電性窓は、生成するプラズマへの曝露による腐食を受けやすい。加えて、(ミリトールのオーダーの)かなり低い圧力を反応器の内部で維持することが必要であるため、装置の製造は煩雑なものとなり、さらに装置の運転は高価で複雑なものとなる。そのうえ、このような反応器は気体用であり、いかなる種類の液体または溶液のためにも用いるものではない。さらに、マイクロ波プラズマ中での薄膜(コーティング)の成膜では、高エネルギー荷電粒子が膜/基板に衝突し、これが、膜の損傷または膜/基板の欠陥を引き起こす可能性がある。加えて、一般に、マイクロ波プラズマ補助により成膜した膜には、成膜した膜を結晶質とするために、上昇した温度にて焼鈍を行うことが必要となる。このような焼鈍は、低温処理全般、特にCMOS処理には適合しないであろう。
【0004】
ペプチド合成および分析試料調製のためのマイクロ波‐誘電加熱の原理は、US7282184B2およびUS10390388B2に開示されている。しかしながら、このようなマイクロ波合成では、温浸のための液体試料を取り扱っている。このようなマイクロ波合成に関連する装置の特徴は、一般に、大きな体積(例えば、10000cc)上の全体において、マイクロ波電界強度が非一様であることである。具体的には、このような機器は、固体物質を取り扱うことを意図したものではなく、例えば、基板表面の全体にわたって一様な厚さの膜で、(300mmを上限とする拡がりを有する)大型基板等をコーティングすることを意図したものではない。
【0005】
US6867400B2には、マイクロ波照射を用いた連続流(化学)合成が開示されている。かかる合成のための装置には、関係する液体がマイクロ波空洞を通過するように、ごく小さな流入口管路と流出口管路とが設けられている。しかしながら、空洞の大きさが非常に小さく、扱うことができるのは分光フローセルのみである。このような装置では、大型基板上に薄膜を成膜するのは不可能である。
【0006】
公知の技術には、マイクロ波ポートの動的な移動または静的な移動にも制限がある。この制限によって、ポートが発するマイクロ波場に対して必要な操作が妨げられるため、広いエリアにわたり一様なマイクロ波電界強度を作り出すことができない。
【0007】
当技術分野で知られるMAS処理には、マイクロ波空洞内に配置された(基板が浸漬した)前駆体溶液を照射することが含まれている。結果として、照射中に発生する溶液の蒸気がマイクロ波空洞またはチャンバを満たし、それにより、マイクロ波空洞の(導電性)内壁が非導電層によりコーティングされる。このコーティングがマイクロ波空洞内のマイクロ波場分布を変化させ得、これによりMAS処理に影響が及ぶ。すなわち、基板全体にわたる膜の厚さ、組成の一様性が変わり、成膜速度が変化する。このように、公知のMAS処理には、半導体デバイス製造に使用される基板に対する成膜過程において通常必要な、「清浄さの条件(clean conditions)」を達成することにも制限がある。
【0008】
[本発明の対象]
したがって、本発明の最も重要な目的は、液体媒質中でのマイクロ波補助化学反応を用いた、大型基板を含む基板上に成膜するための装置を提供することである。
【0009】
本発明の一目的は、基板カートリッジチャンバおよびアプリケータ(マイクロ波アプリケータ)が物理的に分離した構成を有する、基板上に成膜するための装置を提供することである。
【0010】
本発明の別の目的は、基板表面全体にわたって厚さおよび組成が一様な膜を得るための、大型基板上に成膜するための装置を提供することである。
【0011】
本発明のさらに別の目的は、基板が下向き構成にて配置される、当該基板上に成膜するための装置を提供することである。
【0012】
本発明のもう1つの目的は、一様な薄膜の成膜に必要なマイクロ波場の強さの一様性を実現し制御するための装置を提供することである。
【0013】
さらに、本発明の一目的は、基板上に成膜して、基板上の核生成の密度を制御するための装置を提供することである。
【0014】
本発明のさらに別の目的は、単一の工程にて、パターン形成された膜およびコーティングを基板のうちの選択されたエリア上に成膜するための装置を提供することである。
【0015】
本発明のもう一つの目的は、基板の両面に同時に成膜するための装置を提供することである。
【0016】
さらに、本発明の一目的は、基板の表面全体にわたって厚さおよび組成に勾配のある膜を成膜するための装置を提供することである。
【0017】
本発明のさらに別の目的は、(1または複数の)適切な静止金属層または回転金属層を用いて、マイクロ波場の偏光を成膜中に動的あるいは静的に制御するための装置を提供することである。
【0018】
本発明のさらなる目的は、バッチ処理にて基板上に成膜するための装置を提供することである。
【0019】
さらに、本発明の一目的は、液体媒質中でのマイクロ波補助化学反応を用いた、大型基板を含む基板上に成膜するためのシステムおよび処理を提供することである。
【0020】
[発明の概要]
本発明は、少なくとも1種類の化学前駆体を有する溶液を含むカートリッジ内において、基板上に薄膜を成膜するための装置を提供する。当該基板は、下向きに保持されることが好ましい。当該少なくとも1種類の化学前駆体は、マイクロ波透過性窓を透過する一様なマイクロ波場に曝されると、基板上に薄膜を形成する。また、本発明は、マイクロ波を照射し、前記基板上に薄膜を成膜するための処理を制御するシステムを提供する。また、本発明は、基板上で一様な厚さおよび特性の膜を得るための、または、被制御の(controlled)非一様性を基板にもたらすための処理を提供する。また、本発明は、連続的なバッチ処理により一連の基板上に成膜する装置および方法を提供する。
【0021】
[図面の簡単な説明]
図1(a)は、本発明に係る装置の概略断面図であり、アプリケータからの基板カートリッジチャンバの物理的な分離を示す。
【0022】
図1(b)は、基板カートリッジチャンバのマイクロ波透過性蓋の概略上面図である。
【0023】
図1(c)は、基板カートリッジチャンバの概略断面図であり、基板上に成膜する膜を示す。
【0024】
図1(d)は、基板を有する基板カートリッジの概略分解断面図である。
【0025】
図2は、アプリケータ内部に基板カートリッジチャンバのある構成を示す概略断面図である。
【0026】
図3(a)は、それぞれマイクロ波発生ユニットを有する、アプリケータ内の複数のポートの一配置構成を示す概略断面図である。
【0027】
図3(b)は、それぞれマイクロ波発生ユニットを有する、アプリケータ内の複数のポートの例示的な配置構成を示す概略断面図である。
【0028】
図3(c)は、それぞれマイクロ波発生ユニットを有する、アプリケータ内の複数のポートの配置構成を示す概略上面図である。
【0029】
図4は、装置の概略断面図であり、アプリケータ内の雰囲気条件を制御するための手段を示す。
【0030】
図5は、装置の概略断面図であり、基板上に成膜した膜の厚さをその場で特性評価および測定するための送受信機アセンブリの配置構成を示す。
【0031】
図6は、装置の概略断面図であり、マイクロ波吸収性材料でコーティングされた基板カートリッジチャンバの複数の壁を示す。
【0032】
図7は、装置の概略断面図であり、基板カートリッジの垂直移動を示す。
【0033】
図8(a‐b)は、装置の概略断面図であり、基板カートリッジを垂直移動およびパルス状垂直移動(z軸移動)させるための構成を示す。
【0034】
図8(c)は、装置の概略断面図であり、基板がマイクロ波透過性容器内の液体と表面が接触した状態にある構成を示す。
【0035】
図8(d)は、装置の概略断面図であり、基板カートリッジを回転移動させるための構成を有する。
【0036】
図8(e)は、噛み合い構成の概略断面図であり、着脱可能な蓋の回転を示す。
【0037】
図9は、装置のカートリッジの概略断面図であり、マイクロ波透過性容器内の液柱高さの変化に関する構成、すなわちz軸移動を示す。
【0038】
図10は、装置のカートリッジの概略断面図であり、基板が勾配を有する構成を示す。
【0039】
図11は、装置のカートリッジの概略断面図であり、基板の両面コーティングのための構成を示す。
【0040】
図12(a)は、装置のカートリッジの概略断面図であり、導電金属層を有する蓋を示す。
【0041】
図12(b)は、装置のカートリッジの概略断面図および上面図であり、パターン形成された導電金属層を示す。
【0042】
図13(a)は、装置の概略断面図であり、導電金属層がアプリケータのマイクロ波透過性窓上にある構成を示す。
【0043】
図13(b)は、アプリケータのマイクロ波透過性窓上に配置された導電金属層の概略上面図である。
【0044】
図14は、装置の概略断面図であり、マイクロ波透過性容器がマイクロ波透過性窓を有しない構成を示す。
【0045】
図15は、基板のバッチ処理装置を示す概略断面図である。
【0046】
図16は、基板上に薄膜およびコーティングを堆積させるための、本発明に係る装置を用いた広範なシステムアーキテクチャである。
【0047】
図17は、本発明に係るシステムの気体注入手段を示す概略図である。
【0048】
図18は、本発明に係るシステムの真空制御手段を示す概略図である。
【0049】
図19(a~e)は、少なくとも1つの基板上に成膜するための処理工程を示すフローチャートである。
【0050】
図20は、Si/BPSG基板上における厚く一様な亜鉛フェライト膜の断面SEM像である。
【0051】
図21は、シリコン基板上における厚いが一様ではないニッケルフェライト膜の断面SEM像である。
【0052】
図22は、Si/BPSG基板上における厚く一様なマンガン-亜鉛フェライトの断面SEM像である。
【0053】
図23は、シリコン基板から掻き出した亜鉛フェライト膜の小片の断面SEM像であり、基板との接触状態にあった上記膜の表面を示す。
【0054】
図24は、シリコン基板上に成膜した(a)亜鉛フェライトおよび(b)ニッケルフェライトの滑らかで一様な膜の2つの断面SEM像である。
【0055】
図25は、厚さに勾配のある亜鉛フェライト膜が成膜したシリコン基板の一片の写真である。
【0056】
図26は、2工程(段階)の成膜処理による、シリコン基板上における亜鉛フェライトの厚い2層の膜のSEM像である。第1の工程の終了時に反応液を補充した後、続けて成膜が行われる。
【0057】
図27は、ニッケルフェライト膜を前面と同時に成膜したシリコン基板の後面のSEM像の上面図である。
【0058】
図28は、厚さ2μmのポリアミド層上に選択的に成膜した亜鉛フェライト膜のSEM像の上面図であり、パターン形成されたAl金属層がポリアミド層の下に位置している。フェライト膜がAl金属パターンに従って成膜したことを示す。
【0059】
[発明を実施するための形態]
以下、本発明の好ましい実施について、図面を用いて詳細に説明する。なお、本発明は、以下の複数の実施形態において説明される装置、システムおよび処理工程の具体的な構成に限定されるものではなく、同じ技術的努力による構成および工程をさらに含むものであるものと理解されたい。
【0060】
図1(a)は、本発明の一実施形態による装置100の一構成を示す。
【0061】
図1(a)に示すように、装置100は、基板104上に薄膜およびコーティングを堆積させるように構成されている。
【0062】
アプリケータ101は、第1のチャンバとして働く。アプリケータ101は、マイクロ波反射性、導電性および非磁性等の特性を示し得る適切な材料から作製されている。本発明では、有利には、ステンレス鋼、アルミニウム等の材料が、アプリケータ101を形成するために使用される。この例示的な実施形態では、装置100は、断面が長方形であるように示されているが、これは非限定的な要素であり、その他の適切な形状を、適宜、使用するために適合させることができる。複数のポート103の配列は、アプリケータ101の基部上に形成され、複数のMGU(図1(a)には図示せず)に接続されており、その結果、アプリケータ101内にマイクロ波エネルギーを受け取る。複数のポートは、その各々が1つのMGUに接続されており、複数のMGUからのマイクロ波エネルギーをアプリケータ101内へと導くように、選択された位置に配置されている。このようにして、アプリケータ101によって受け取られたマイクロ波エネルギーは、当該複数のMGUから基板カートリッジチャンバ(substrate cartridge chamber:SCC)に向かって、上方へと伝えられ、伝播する。窓109がマイクロ波透過性を有するので、当該窓109に入射する全てのマイクロ波エネルギーは、SCC内へと伝えられる。そのため、当該SCC内にマイクロ波場が作り上げられる。以下に説明する方法によって、この場の強さおよび一様性は、所望のとおり「調整」される。
【0063】
基準平面111または基準軸は、装置100の「底」を形成する水平(横方向)面である。複数のMGUは平面111に対して、所望の垂直オフセット(ずれ)にて配置される。その結果、SCCにおける所望のマイクロ波場の強さおよび一様性が得られる。
【0064】
マイクロ波透過性窓109は、アプリケータ101の上部に配置されている。図1(a)に示すように、マイクロ波透過性窓109が、適切なシールを介してアプリケータ101の上部に接続されるように、マイクロ波透過性窓109の周縁部は、アプリケータ101の上部の周縁部に、適切に接続または融合されている。当該適切なシールによって、アプリケータおよび/またはSCC内を、大気圧未満の圧力または大気圧を超える圧力に維持することができる。かかるシールは、当技術分野で周知のように、適切な形状のガスケットであってもよい。マイクロ波透過性窓109は、マイクロ波、赤外(IR)波、紫外(UV)波および可視光が透過できるように構成されている。このため、基板上の膜またはコーティングの厚さを、その形成過程の間、監視することができる。この例示的な実施形態では、マイクロ波透過性窓109に使用する、好ましい材料は、溶融石英である。また、マイクロ波透過性窓109は、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene:PTFE)またはサファイア(単結晶酸化アルミニウム)またはホウケイ酸ガラス/パイレックスガラス等の材料から作製することもできる。マイクロ波エネルギーを受け取り伝播させるために、マイクロ波透過性窓109および複数のポート103の配列とともにアプリケータ101は、シールされた単一のユニットを形成している。以下に記載するように、アプリケータ101はまた、大気圧未満または大気圧を超える所望の圧力条件を維持するように構成されている。
【0065】
複数のポート103の配列とマイクロ波透過性窓109との間の距離は、図1(a)において、「d」と示されている。距離「d」は、一定か可変かのいずれかである。SCCにおけるマイクロ波場の強さは、「d」に依存する。図3(b)に示すように、場の強さおよび一様性は、「d」に依存するだけでなく、平面111に対する複数のポート103の配列の垂直変位にも依存する。また、図3(c)に概略的に示すように、それらは、当該複数のポートの水平射影における相対的配置にも依存する。液柱107および基板表面104aにおいてマイクロ波場の所望の強さおよび一様性が得られるように、電磁気理論に基づく計算を通じて、これらの配置が決定される。言い換えれば、複数のポート103の配列内の間隔を変更することにより、また、一方のポートを他方のポートに対して、垂直方向にオフセットした位置に配置することにより、複数のポート103の配列から発するマイクロ波を同相(in-phase)または異相(out-of-phase)、あるいはその中間とすることができる。その結果、必要に応じて、複数のマイクロ波を適宜組み合わせることができる。このように、距離「d」は、場の一様性および場の強さ(強度)の要件と密接に結びついている。
【0066】
図1(a)に示すように、着脱可能なカバー110aを有する基板カートリッジチャンバ110は、アプリケータ101上に取り付けられている。着脱可能なカバー110aは、内部の雰囲気を大気圧以下に維持するように、ガスケット構成等の適切なシールを介して、基板カートリッジチャンバ110に接続されている。
【0067】
基板カートリッジチャンバ110は、当該基板カートリッジチャンバ110がアプリケータ101から物理的に分離可能であるように、アプリケータ101上に取り付けられている。基板カートリッジチャンバ110は、ガスケットとともにアプリケータ101上に取り付けられており、その結果、基板カートリッジチャンバ110内を、大気圧未満の圧力または大気圧を超える圧力に維持することができる。
【0068】
基板カートリッジチャンバ110は、底部の一部がマイクロ波透過性窓109に露出するように、アプリケータ101上に取り付けられている。言い換えれば、マイクロ波透過性窓109は、アプリケータ101の上部の縁部と、基板カートリッジチャンバ110の底部の縁部とに、固定されている。基板カートリッジチャンバ110は、アプリケータ101の上部に接続され、アプリケータ101から物理的に分離している。マイクロ波は、マイクロ波透過性窓109を通して、基板カートリッジチャンバ110内へと達することができる。マイクロ波透過性窓109の近くにおける、装置100の垂直Z軸112に対して垂直な(X-Y)平面内において、発生するマイクロ波場が可能な限り一様であるような構成で、(1または複数の)MGU103aは、複数のポート103の配列を介して、当該装置100に接続されている。MGUの個数、MGUのパワーおよびMGUの(XYZ)座標の関数として、マイクロ波場をモデル化することによって、これが実現される。アプリケータ101内部のX-Y平面における一様なマイクロ波場の描像は、基板カートリッジチャンバ110内へと、前方に伝えられる。アプリケータ101からマイクロ波透過性窓109を通り基板カートリッジチャンバ110内へとマイクロ波場が透過する度合いの高さが、基板カートリッジチャンバ110内部に強いマイクロ波場が存在することを可能にする。
【0069】
このように、上述の組立て構成では、基板カートリッジチャンバ110は、アプリケータ101の上部に接続され、アプリケータ101から物理的に分離している。かかる物理的分離によって、基板カートリッジチャンバ110内に、所望の気体雰囲気を維持することができる。気体雰囲気の維持は、カートリッジ内の液体中で化学反応が起こるために必要であり得る。さらに、基板カートリッジチャンバ110内を清浄な状態にすることもまた可能となる。当該清浄な状態は、例えば集積回路の製造の一部として薄膜を成膜するのに必要となる。
【0070】
基板カートリッジチャンバ110は、マイクロ波反射性、導電性および非磁性等の特性を示し得る適切な材料から作製されている。本発明では、有利には、ステンレス鋼、アルミニウム等の材料が、基板カートリッジチャンバ110を形成するために使用される。基板カートリッジチャンバ110の形状および大きさは、とりわけ基板の大きさを考慮して、適宜、選択される。
【0071】
マイクロ波透過性容器105bは、皿状のものとして例示的に図示されているが、中空容器であることが有利である。当該マイクロ波透過性容器は、マイクロ波をその表面に透過させ、かつ、2.45GHzまたは915MHzの振動数のマイクロ波エネルギーをその表面で反射しないような、(1種類または複数種類の)材料から作製される。また、成膜を行うために洗浄して繰り返し使用できるように、機械的に剛性かつ堅牢(ロバスト)である必要がある。また、それが保持する液体(溶液)によって、および液体がマイクロ波によって照射されるときに生じる化学反応によって影響されないように、化学的に不活性である必要がある。
【0072】
マイクロ波透過性容器105bは、化学前駆体を含む液体107を貯留するように設けられる。本発明に使用される化学前駆体は、例えば、金属β‐ジケトナトおよびその付加物、金属アルコキシドならびに金属アセテートである。ここで、その他の適切な金属ベースの前駆体を使用することもできることを理解されたい。アルコール、水等の誘電性溶媒に溶解できるような化学前駆体が選択される。金属β‐ジケトナトおよびその付加物の場合のように、もし化学前駆体がその分子構造中に直接的な金属‐酸素結合を含有するようなものであるならば、有利ではあるだろうが、このことは必須ではない。かかる直接的な金属‐酸素結合は、酸化物およびそれらの薄膜の形成を促進する。
【0073】
液体107は、マイクロ波透過性窓109を通り伝播するマイクロ波エネルギーにより照射されるように構成されている。その結果、化学前駆体は、マイクロ波照射反応を受ける。
【0074】
図1(a)に示すように、着脱可能な蓋105aは、その周端部によって、マイクロ波透過性容器105bの上部に接続されている。この蓋は、溶融石英、PTFE、ホウケイ酸ガラス、または、2.45GHzもしくは915MHzの振動数のマイクロ波照射に対する吸収性が非常に低いかもしくは当該照射を反射するその他の任意の材料等の、マイクロ波透過性材料から作製される。
【0075】
ステム106は、基準軸111に対して垂直な向きで、着脱可能な蓋105aに接続されている。このため、着脱可能な蓋105aの、マイクロ波透過性容器105b上への配置、および、マイクロ波透過性容器105bからの取り外しが補助される。当該ステムは、溶融石英等の、機械的に剛性で強くかつマイクロ波透過性を有する材料で作られている。着脱可能な蓋105aは、マイクロ波透過性容器105bを液体107で満たすために使用される。ドレンポンプ等の適切な排出手段を、利用に適するように適合させ、マイクロ波透過性容器105bから液体107を排出することができる。
【0076】
基板104は、下向き構成において、着脱可能な蓋105aの下部に、堅固に接続されている。「下向き」構成とは、膜でコーティングされる基板の表面は、下を向いており、液体に「曝され」、当該液体と接触する一方、他方の表面は、当該液体と接触しないように、基板ホルダに取り付けられていることを意味する。したがって、マイクロ波照射下では、基板の「下向き」部分のみが、液体中で起こる化学反応のため、膜でコーティングされる。
【0077】
この例示的な実施形態では、基板104は、真空吸引により、ホルダに接着している。基板104を基板ホルダ部にしっかりと取り付けるために適したその他の手段を、適宜使用することができる。例えば、蓋105aの下部に基板を保持するために、公知技術による真空チャネルを、ステム106を介して蓋105a内に組み込むことができ、装置外部の吸引ポンプに接続することができる。真空チャネルがない場合、液体107が基板の後面104bに到達できないように基板104を隙間なく保持するよう、機械的支持体を構成することができる。
【0078】
基板は、平坦な表面を有することが好ましく、基板ホルダよりも小さい限り、任意の形状および大きさであってもよい。基板は、例えば、円形、長方形または正方形であってもよい。
【0079】
この構成では、基板104は、図1(a)に示すように、マイクロ波透過性窓109の真上に配置され、マイクロ波透過性窓109を透過するマイクロ波に曝されている。本発明の基板は、半導体または絶縁体であることが好ましい。半導体または絶縁体上に薄膜金属パターンを有する当該半導体または絶縁体を使用することもまた、本発明の範囲に含まれる。基板は、例えば、SiおよびGe等のIV族半導体、GaAs、リン化インジウム(InP)およびGaN等のIII‐V半導体、CdTeおよびZnO等のII‐VI半導体、炭化ケイ素(SiC)、ポリマー、酸化アルミニウム、ガラス、Ga、MgO、ダイアモンドならびに溶融石英のウェハ、または、薄い金属コーティングを有する上記材料のウェハから選択される。
【0080】
(基板上に成膜することのできる)基板の大きさは、数ミリメートル(mm)の大きさから、基板カートリッジチャンバ110内の一様なマイクロ波場の大きさとほぼ同じ大きさまでの全範囲をとることができる。当該基板カートリッジチャンバ110内の一様なマイクロ波場の大きさは、マイクロ波透過性窓109の大きさ、および複数のポート103の配列の構成により、決定される。MGUの総数に固有の制限がないため、複数のポート109の配列に固有の制限はない。しかしながら、半導体装置製造のための薄膜の成膜という文脈では、基板の大きさ(面積)は、好ましくは、600cmであり得る。それゆえ、任意のより小さな大きさの基板もまた、本発明に係る装置と併せて使用するのに適しているだろう。このように、本発明に係る装置を用いる成膜のための基板(104)の大きさは、1~2000cmあることが好ましい。
【0081】
マイクロ波透過性容器105b、着脱可能な蓋105aおよびステム106のアセンブリは、カートリッジ105を構成する。ステム106を含むカートリッジアセンブリ105は、溶融石英等の、マイクロ波透過性を有し、剛性で、かつ加工可能な材料で作製される。カートリッジアセンブリ105のさまざまな構成要素は、厚さ等の寸法を有する。当該さまざまな構成要素として、機械的に堅牢で、化学的に不活性であり、かつ酸を含む適切な溶剤による洗浄に適したものが選択される。
【0082】
基板カートリッジ105は、基板カートリッジチャンバ110内部、かつ、マイクロ波透過性容器105b上に配置されている。
【0083】
図1(b)に示すように、着脱可能な蓋105aには、複数のベント108が設けられている。図1(b)に示すように、複数のベントは、基板ホルダのリム内の円に沿って形成された、適切な大きさの穴である。仮に、マイクロ波を照射したときに液体の蒸気が発生した場合、複数のベント108は、成膜処理の一部として、それを除去する役割を果たす。いかなるベントもない着脱可能な蓋105aを使用することもまた、本発明の範囲に含まれる。マイクロ波照射中に発生する蒸気を放出する目的のために、複数のベント108を用いることができる。別の態様では、成膜処理の間、および/または、成膜処理の中間段階において、マイクロ波透過性容器105b内に新鮮な液体107を供給するように、複数のベント108を転用することができる。別の態様では、成膜処理の完了後に、反応済みの液体を排出するために、複数のベント108を転用することができる。別の態様では、成膜処理の後にマイクロ波透過性容器を洗浄および乾燥するための液体洗浄溶液を供給するために、複数のベント108を使用することができる。
【0084】
カートリッジ105を組み立てた状態の図は、図1(c)に示す通りである。この組み立て図では、基板104の下向き部分上に成膜した、選択された化学前駆体の反応生成物の膜119が、図示されている。図1(c)において、「t」は、基板の厚さを示し、「h」は、基板表面/膜表面の下における、液柱の高さである。膜119の厚さは、明確にするために誇張して示されているが、マイクロメートルのオーダーであること、そして、「h」は、ミリメートルのオーダーであることに、留意されたい。
【0085】
図1(d)には、基板104の表面104(a)および表面104(b)を示すために、カートリッジ105の分解図が示されている。表面104(a)は、膜119の成膜に使用される、下向き表面であり、一方、表面104(b)は、基板ホルダとして働く着脱可能な蓋105(a)の下部に、基板を取り付けるために使用される。典型的には、マイクロ波照射補助化学反応により成膜する膜が基板104にしっかりと付着するように、表面104(a)を溶剤で洗浄する工程を含むプロトコルを通じて、当該表面104(a)が作成される。
【0086】
図1(d)に示すように、着脱可能な蓋105aは、対応する溝105a1にリベット105b1を係合することによって、当該リベット105b1を介して、マイクロ波透過性容器105(b)に接続されている。これにより、カートリッジアセンブリがステム106の垂直(縦)軸の周りを回転するときでさえ、容器105(b)上にしっかりと蓋が載っていることが可能となる。
【0087】
本発明の別の例示的な実施形態では、図2に示すように、カートリッジ105は、アプリケータ101内に配置されている。この構成では、反応液および基板は、MGUに対して、より近くにあるだろう。したがって、所与のMGUパワーに対して、マイクロ波場は、カートリッジが基板カートリッジチャンバ110内にある場合よりも、液体および基板において、より強いものとなるだろう。(ハロゲン化物等の無機塩が化学前駆体として使用される場合のように)基板上に成膜する化学反応に対してより強いマイクロ波場が必要である場合に、この構成は適しているだろう。また、所望の成膜のために「清浄さの条件」が必要とされる場合にも、この構成は適しているだろう。
【0088】
図3(a)に示すように、MGUアセンブリ103aの構成は、導波管103bを介して、複数のポート103の配列に接続されている。装置100の垂直(Z軸)112に対して垂直な(X-Y)平面内において、発生するマイクロ波場が可能な限り一様であるような構成となるように、(1または複数の)MGUは、アプリケータ101に接続されている。MGUの個数、MGUのパワーおよびMGUの(XYZ)座標の関数として、マイクロ波場をモデル化することによって、このことが実現される。アプリケータ101内部のX-Y平面における一様なマイクロ波場の描像は、基板カートリッジチャンバ110内へと、前方に伝えられる。アプリケータ101からマイクロ波透過性窓109を通り基板カートリッジチャンバ110内へとマイクロ波場が透過する度合いの高さが、基板カートリッジチャンバ110内部に強いマイクロ波場が存在することを可能にする。
【0089】
図3(b)および図3(c)は、複数のポートの種々の構成を示す。当該複数のポートを通じて、マイクロ波放射はアプリケータに入り、次いで、(マイクロ波透過性窓109を通して)SCCに入る。上述のように、これらの構成は、電磁気理論に基づく計算を通じて、液柱107および基板表面104aにおいてマイクロ波場の所望の強さおよび一様性が得られるように決定される。
【0090】
本発明のさらに別の態様では、図4に示すように、気体注入口115は、基板カートリッジチャンバ110内に大気圧未満の圧力を作り出し制御するための導管116とともに、基板カートリッジチャンバ110に設けられている。気体注入口115は、基板104上に所望の膜を成膜させる化学反応を補助するのに必要となる適切な気体により、基板カートリッジチャンバ110を満たすために使用される。また、必要に応じて、適切な気体を使用して、基板カートリッジチャンバ110の壁およびカートリッジ105の表面を清浄にしてもよい。導管116は、所望の圧力条件を達成するため、基板カートリッジチャンバ110を排気するために使用される。同様に、気体注入口113が、真空を制御するための導管114とともに、アプリケータ101に設けられている。気体はマイクロ波を吸収するのだが、この構成では、雰囲気の制御が確立されており、当該雰囲気の制御には、アプリケータ101を所望の低圧まで排気することが含まれている。そのため、マイクロ波場の強さ(強度)を適宜、制御することが可能である。気体入口と気体注入システムとの組み合わせにより、所望の気体をアプリケータ101に注入することが可能である。真空システム115との組み合わせにより、マイクロ波空洞101内における雰囲気の圧力は、所望に応じて制御されてもよい。さらに、真空システムを作動させないことによって、マイクロ波空洞101内の雰囲気の圧力を、大気圧以上に維持することができる。
【0091】
また、本発明のアプリケータ101には、マイクロ波透過性容器105bの液体の諸特性および基板104上の膜の成長または膜の厚さを監視するためのプローブ120が設けられている。図6に示すように、プローブ120は、アプリケータ101内、および、基板チャンバ110内に配置されている。この構成では、(1または複数の)膜の成長が、成膜中および成膜完了後に、測定および監視される。この構成では、プローブ220は、赤外線(IR)装置、紫外線(UV)装置、可視光(V)装置および超音波装置から選択される送受信機アセンブリであり、光のビームは、成長する膜119に入射するように形成される。当該ビームは、膜104aの表面および基板104の表面の両方により、反射する。これら2つのビーム間の干渉が、膜119の厚さの決定を容易にする。
【0092】
図6に示すように、基板カートリッジチャンバ110の壁121の上部および側部は、マイクロ波吸収性材料により、コーティングしてもよい。好ましいマイクロ波吸収性材料には、炭化ケイ素(SiC)またはストロンチウムヘキサフェライト(SrFe1219)が含まれる。かかるコーティングを採用する場合には、図3(b)および図3(c)に示す構成とともにかかるコーティングが作用することで、SCC110内における所望の位置において、所望のマイクロ波場の強さおよび一様性が実現される。
【0093】
さて、成膜に最適な状態を実現するための、本発明に係る装置100の基板カートリッジ105の移動に関する好ましい実施形態を説明する。図7に示すように、デュアルモーションアクチュエータ123がステム106に接続され、基板カートリッジ105の配置および移動に対する制御が行われる。基板カートリッジ105は、z軸112に沿って移動し(すなわち、垂直(縦)移動し)、z軸112の周りを回転するように、作動される。デュアルモーションアクチュエータ123には、ロータリアクチュエータとリニアアクチュエータとを組み合わせた構成が含まれており、これにより、独立した直線移動および回転移動が提供される。デュアルモーションアクチュエータ123は、機械式装置、電気機械式装置、液圧式装置または空圧式装置であってもよい。
【0094】
デュアルモーションアクチュエータ123の接続によって、基板カートリッジ105の制御されたパルス状垂直移動が可能となる。z軸に沿ったこのようなパルス状移動により、制御状態において、基板104が液体107に曝され、その結果、所望の成膜が実現される。
【0095】
デュアルモーションアクチュエータ123がステム106を介して基板カートリッジ105へ接続されることにより、制御された、パルス状の並進移動および回転移動の形式による、基板カートリッジ105の移動が可能となる。Z軸の周りのかかる移動により、基板カートリッジ105の回転が可能になり、その結果、特に、直径1インチ(1”)のウェハよりも大きな基板上に成膜するときに、膜の厚さおよび膜の組成をより一様にすることが確実になる。マイクロ波照射中における基板カートリッジ105の並進移動および回転移動の組み合わせによって、動的手段、すなわち、プローブから得られる厚さおよび組成に関するフィードバックに基づいて成膜処理中にリアルタイムで行われるステッパモータ様の制御が提供される。その結果、一様な膜を得るのに適した成膜の条件が均一化される。
【0096】
基板104の回転の速さは、好ましくは1~100rpmである。当該基板104の回転の速さは、ステム106に接続されたギアアセンブリ等の適切な駆動構成により、達成される。
【0097】
図8(a)に示すように、基板104を有する基板カートリッジ105は、マイクロ波透過性容器105bの液体107内に浸漬される。基板の下向き表面を液体107と接触状態にあるように置くこの配置は、基板表面104a上への所望の成膜における準備工程である。
【0098】
図8(a)に示すように、基板カートリッジ105は、浸漬によって、液体107と接触状態にある。基板カートリッジ105内に入れられる液体107の量と、基板104を液体107内に浸漬する程度とは、適宜選択することができる。言い換えれば、基板104の下側表面の下にある液体107の高さ「h」は、適宜選択される。
【0099】
図8(b)に示すように、マイクロ波透過性容器105bから基板カートリッジ105を持ち上げるために、デュアルモーションアクチュエータ123のパルス状垂直移動が、基板カートリッジチャンバ110の外部から、カートリッジステム106を介して行われる。図8(b)から、着脱可能な蓋(105a)は、基板カートリッジ105とともに、マイクロ波透過性容器105bから取り外されることが分かる。
【0100】
本発明のさらに別の態様では、図8(c)に示すような装置100は、基板104が液体107内に浸漬しないことが確実となるように、基板の前面104aのみを液体107と接触させるための、基板カートリッジ105の制御された垂直方向の変位または移動のための構成を示す。このような液体すれすれの基板104の配置により、基板104の側部(リム)上に膜が成膜することが防止されるだけでなく、基板の後面104b、すなわちステム106により近い方の表面上に膜が成膜することも防止される。なお、図8(c)において、「t」は、基板の厚さ、「h」は、基板表面/膜表面の下にある液柱の高さを示す。
【0101】
基板カートリッジ105のこの構造的構成には、Z軸112の周りの基板カートリッジ105の回転を実現する能力が含まれている。マイクロ波補助処理中にz軸周りに回転可能であるため、基板104の全域において成膜する膜の特性および厚さを、より一様にすることができる。液柱107に対する基板の回転により、液柱107の全域および基板の下向き表面104bの全域において、マイクロ波場の任意の非一様性が埋め合わせられる。こうして、液柱107の全域における化学反応の非一様性により生じ得るであろう、基板の全域における成膜する膜の特性および厚さの非一様性が、最小限に抑えられる。
【0102】
図8(e)は、基板カートリッジ105を回転させるための例示的な実施形態を示す。図8(e)に示すような構造的要素によって、基板カートリッジ105をz軸の周りに回転させることができる。しかしながら、図8(e)に示す代替手段を組み込むことによって、上半分105aおよび下半分105bを、別々に回転させることもできる。
【0103】
本発明の別の態様では、図9aおよび図9bに示すように、基板104上の膜119の厚さ「t」は、着脱可能な蓋105aの厚さ「H1」および「H2」、ならびに、マイクロ波透過性容器105bの底面と基板104の前面104aとの間の距離「h1」および「h2」を考慮することによって、事前決定される。膜の厚さのこの事前決定は、所与の「t」、すなわち基板の厚さに対する、正確に反復可能な距離(H1、h1)および(H2、h2)によるものである。所与の(H1、h1)に対して、107内のマイクロ波電界強度、および、104bにおけるマイクロ波電界強度が正確に定められる。これにより、特定の厚さの成膜を生ずる化学反応が引き起こされる。このプロセスを繰り返すことで、所与の(H1、h1)に対して、毎回、同じ厚さの膜を成膜することができる。所与の(H2、h2)に対しても同様である。こうして、同じ所望の特性および厚さを有する膜を、各「処理実行(process run)」中に、得ることができる。
【0104】
このように、本発明に係る装置100では、基板カートリッジ105の垂直移動を変化させることなく、マイクロ波透過性容器105b内の液体107の高さを変化させることができる。図9aに示すように、着脱可能な蓋105aの厚さ「H1」は、適宜、変更することができる。マイクロ波が通過しなければならない液体107の厚さが、基板表面(下向きの表面)におけるマイクロ波の強さ(強度)を決定することに留意されたい。そのため、基板カートリッジ105内の液柱「h1」の垂直高さは、MAS処理における、重要なパラメータである。この高さは、基板カートリッジ105の垂直移動を通じて、制御することもできる。
【0105】
さて、勾配を有する膜119を得るための基板カートリッジ105の構造的特徴を、図10を参照して説明する。この配置構成では、基板104は、基準平面111に対して水平な面に関して、所望の角度(θ)にて傾斜している。この配置構成によって、マイクロ波が通過する液体107の垂直高さを、基板104上の異なる点において異なるようにすることが可能になる。この結果、基板104上に成膜する膜に、勾配が存在するようになる。膜の厚さ「t」もしくは膜の組成に、またはこれらの両方に、この勾配が存在してもよい。基板全域における膜の厚さの勾配は、液体107内のマイクロ波場の強さにおける勾配から生じる。当該液体107内のマイクロ波場の強さの勾配は、基板表面104a上の所与の点における液柱の高さに依存する。膜の組成の勾配は、当該基板表面の全域におけるマイクロ波場の勾配ゆえに生じる。このような勾配は、成膜および膜の組成をもたらす化学反応に影響を及ぼす。あるいは、傾斜した基板104がz軸の周りを回転する場合には、基準軸111に対して傾斜が小さい(傾斜が数度である)とき、膜内により高い均質性が実現され得る。基板カートリッジ105の傾斜の小ささと回転とによって、もしそれらがなければ生じ得るであろう膜の特性の非一様性が、埋め合わせられる。上記の非一様性は、基板表面の全域におけるマイクロ波場の強さの微小な非一様性によって生じる。このため、基板カートリッジ105の傾斜の小ささと回転とによって、もしそれらがなければ生じ得るであろう膜の特性の非一様性を、埋め合わせることができる。
【0106】
さらに、本発明に係るカートリッジ構成により、マイクロ波により照射されたときの液体107中の核生成の密度に、所望の勾配がもたらされる。これは、窓109に最も近い107の層が、104aと接触状態にある107の層よりも強いマイクロ波場を受けるからである。したがって、温度および核生成の密度の勾配が107内で生じ、温度と核生成の密度との両方が、104bにおいてより低いものとなる。核生成の密度におけるこの勾配は、104bの方への核の拡散に有利であり、これはまさに、104b上への所望の成膜に有利である。
【0107】
本発明のさらに別の態様では、図11に示すように、着脱可能な蓋105aは、基板104の両面への成膜を容易にするように変更される。変更した着脱可能な蓋105a3には、内側突起105a4が含まれる。この突起105a4により、基板104を固定するための固定空間が提供される。言い換えれば、基板104を固定するための2つの異なる高さが、着脱可能な蓋105aの内側部分に設けられている。これにより、表面104aおよび表面104bを有する基板104が液体107内に浸漬するとき、基板104の表面104aと表面104bとの両方が、液体107によって取り囲まれる。マイクロ波を照射すると、マイクロ波補助(MAS)処理が起こり、その結果、基板104の表面104a上と表面104b上との両方に、膜が堆積する。しかしながら、マイクロ波場の強さが基板の2つの面で異なる可能性が高いので、膜の厚さは、表面104aおよび表面104b上で、異なるものであり得る。基板の表面104aおよび表面104bの両方における膜の厚さが同じであることが望ましい場合、定められた条件下で、図11(b)に示すように基板を配置して、成膜を行う。この成膜の後、基板が取り外され、逆さまにされて、図11(b)の構成で配置される。そして、上で定められたのと同じ条件下で、成膜を行う。この2つの成膜を合わせることで、所与の基板の両面に、同じ厚さの膜が与えられる。
【0108】
また、同時成膜のために2つ以上の基板を保持するため、より多くの固定空間を構築することも、本発明の範囲に含まれる。基板が薄くかつマイクロ波に対して透明性を有する場合には、その両面に同時かつ等しく成膜がなされ得ることに留意されたい。
【0109】
また、図12(a)に示すように、基板カートリッジ105は、基板カートリッジチャンバ110内を伝播するマイクロ波場を変更するように構成される。その結果、成膜処理(材料加工)は、動的にも静的にも、所望の方法で調整することができる。マイクロ波場のかかる変更および調整は、着脱可能な蓋105aの底部と基板104とに固定される導電層117を有することにより達成される。例えば、導電層117は、105bの底部と基板の表面104bとの間に挟まれた、適切な大きさ、形状および厚さの金属シートであってよい。金属層117は、当該導電層(金属または金属合金から作製されることが好ましい)の幾何学的詳細および材料的詳細に依存するように、マイクロ波場を変化させる。図12(b)は、所望のパターンを有する金属層117の底面図を示す。図12(a)および図12(b)に示す配置構成では、導電(金属)層のパターンによって引き起こされるマイクロ波場の変更によって、基板104の選択されたエリアにおける成膜を実現するよう、すなわち基板の選択された部分における成膜を他の部分における成膜なく実現するよう、このパターンを設計することができる。また、このパターンは、差異を有する成膜、すなわち、基板上の異なる点において異なる厚さを有する膜の成膜を実現するよう、設計することもできる。加えて、導電層117は、基板104(具体的にはマイクロ波吸収性基板)を、後面におけるマイクロ波の曝露から保護することができる。
【0110】
図13(a)および図13(b)は、カートリッジチャンバ110(成膜ゾーンまたは材料加工ゾーン)内におけるマイクロ波場の変更を実現するために使用される導電性パターンの別の例示的な実施形態を示す。この実施形態では、パターンを有する金属層118が、マイクロ波透過性窓109に対して設けられる。図13(b)は、さまざまな金属層または導電層のパターンを示す。これらのパターンは、基板104に入射するマイクロ波場を変更するために使用することができる。これにより、選択的に偏光したマイクロ波場と、基板104および液体107との、成膜中の相互作用が、動的な方法において可能になる。すなわち、マイクロ波場の偏光を、図13(b)に概略的に示すような金属パターンを使用することにより、変更することができる。また、複数のポート103の配列からマイクロ波を照射する間、金属パターンを回転させることによって、基板における場の偏光を、動的に変化させることもできる。基板104におけるマイクロ波場の偏光のかかる制御によって、成膜をもたらす化学反応を制御し、その結果、動的あるいは静的に成膜する膜の特性を制御する方法が提供される。アンテナ素子118aと称される、入射マイクロ波場の強度を測定するために転用される金属層118の一実施形態。このアンテナ素子は、マイクロ波電界強度を受け取り、次いで、当該マイクロ波電界強度を必要な信号処理エレクトロニクスにより処理して、電界強度の測定値をV/mの単位で返す。
【0111】
このように、選択された基板104上への薄膜および/またはコーティングの堆積は、本発明に係る装置100を使用することによって行われる。複数のMGU103aにより発生するマイクロ波は、複数のポート103の配列を通って、アプリケータ101に入る。次に、当該マイクロ波は、マイクロ波透過性窓109を透過し、基板カートリッジチャンバ110に入る。当該基板カートリッジチャンバ110内に、基板カートリッジ105が配置されている。基板カートリッジチャンバ110に入った当該マイクロ波は、液体107と、「下向き」構成で配置された基板104とを照射する。所望の化学前駆体を有する液体107にマイクロ波を照射すると、化学反応が起こり、基板104上で成膜またはコーティングを行うための所望の材料の「核」が生成する。マイクロ波が下方から、すなわちアプリケータ101から、基板カートリッジチャンバ110に入り、液体107を照射すると、基板104と接触する液体107の層の温度は、基板カートリッジ105の底部にある液体107の層の温度よりも、低くなる。この実装により、自然対流が促進され、その結果、化学反応において生成する核が基板表面へと運ばれ、成膜が生じる。
【0112】
また、本発明に係る装置100では、基板104の下に位置する液柱107「厚さ」を適宜、制御することができる。マイクロ波は液柱に吸収されるので、基板104の表面におけるマイクロ波場の強さを適宜、制御することができる。
【0113】
このように、基板(104)上に成膜するためのマイクロ波補助装置(100)は、アプリケータ(101)を備え、当該アプリケータ(101)は、マイクロ波透過性窓(109)と、当該マイクロ波透過性窓(109)から介在距離「d」の所に配置された、複数のマイクロ波発生ユニット(103a)からマイクロ波エネルギーを受け取るための複数のポート(103)の配列と、を有する。着脱可能なカバー(110a)を有する基板カートリッジチャンバ(110)は、当該アプリケータ(101)上に取り付けられている。着脱可能な蓋(105a)と、当該着脱可能なカバー(110a)に接続されたステム(106)と、を有するマイクロ波透過性容器(105b)を含むカートリッジ(105)は、当該基板カートリッジチャンバ(110)内に、着脱可能に配置されている。当該マイクロ波透過性容器(105b)は、化学前駆体を有する液体(107)を貯留するように構成されており、当該液体(107)は、当該マイクロ波透過性窓(109)の全体を通って伝播するマイクロ波により、一様なマイクロ波電界強度で照射され、その結果、当該化学前駆体がマイクロ波補助反応を受けるように配置されている。当該基板(104)は、当該着脱可能な蓋(105a)に取り外し可能に接続されており、当該基板(104)の下向き部分は、当該基板(104)の表面上に、当該化学前駆体の反応生成物を膜(119)として堆積させるために、照射された当該液体(107)と接触状態にあるように構成されている。
【0114】
本発明の一態様では、当該マイクロ波透過性窓(109)の材料は、溶融石英、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)または単結晶酸化アルミニウム(Al)である。
【0115】
本発明の別の態様では、複数のベント(108)は、当該着脱可能な蓋(105a)上に配置されている。
【0116】
本発明のさらに別の態様では、当該カートリッジ(105)は、当該アプリケータ(101)内に配置されている。
【0117】
また、本発明の別の態様では、当該配列としての当該複数のポート(103)は、基準平面(111)に対して水平かつオフセットしており、かつ、当該マイクロ波透過性窓(109)の中心軸(112)に対して対称または非対称に配置されている。
【0118】
本発明のさらに別の態様では、気体注入チャネルおよび真空チャネル(113、114、115、116)は、当該アプリケータ(101)および基板チャンバ(110)にそれぞれ接続されている。
【0119】
本発明のさらに別の態様では、当該マイクロ波透過性容器(109)内の当該液体の特性および当該基板(104)上の膜(119)の成長を監視するためのプローブ(120)は、当該アプリケータ(101)内および当該基板チャンバ(110)内に配置されており、当該プローブ(120)は、赤外線(IR)装置、紫外線(UV)装置、可視光(V)装置および超音波装置から選択された送受信機アセンブリである。
【0120】
本発明のさらに別の態様では、当該基板カートリッジチャンバ(110)の複数の壁(121)の上部および側部は、マイクロ波吸収性材料、好ましくは、炭化ケイ素(SiC)またはストロンチウムヘキサフェライト(SrFe1219)でコーティングされている。
【0121】
また、本発明の別の態様では、デュアルモーションアクチュエータ(123)は、当該カートリッジ(105)の当該ステム(106)に接続されており、当該カートリッジ(105)は、垂直(縦)軸(112)の周りを回転し、当該基準平面(111)に対して垂直(縦)に移動するように構成されている。
【0122】
本発明のさらに別の態様では、当該着脱可能な蓋(105a)および当該マイクロ波透過性容器(105b)は、互いに逆向きに、かつ異なって回転するよう配置されている。
【0123】
また、本発明の別の態様では、当該基板(104)は、当該液体(107)内に浸漬されるように配置されている。
【0124】
本発明のさらに別の態様では、当該着脱可能な蓋(105a)の厚さは、変更可能である。
【0125】
また、本発明の別の態様では、当該着脱可能な蓋(105a)の底面は、勾配輪郭(105a2)を有し、当該勾配輪郭は、当該基準平面(111)に対して1~30度の範囲内の角度で傾斜している。
【0126】
また、本発明の別の態様では、ホルダ(105a3)は、当該着脱可能な蓋(105a)に接続されており、マイクロ波透過性材料、好ましくは、溶融石英またはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)から作製されている。
【0127】
本発明のさらに別の態様では、導電層(117)は、当該着脱可能な蓋(105a)と当該基板(104)との間に配置されており、当該導電層(117)は、連続したものであるか、またはパターン形成されたものである。
【0128】
本発明のさらに別の態様では、金属層(118)は、当該マイクロ波透過性窓(109)に接続され当該アプリケータ(101)の内側部分に面しており、偏光子およびアンテナ(118a)として構成されている。
【0129】
本発明のさらに別の態様では、当該マイクロ波透過性容器(105b)は、当該マイクロ波透過性窓(109)の代わりに配置されている。
【0130】
本発明のさらに別の態様では、当該基板(104)の材料は、金属、金属合金、半導体または絶縁体から選択されたものである。
【0131】
本発明のさらに別の態様では、当該基板(104)の大きさは、1~2000cmである。
【0132】
本発明のさらに別の態様では、当該膜の平均表面粗さは、1~50nmであり、当該膜の厚さは、10nm~100μmである。
【0133】
本発明のさらに別の態様では、当該基板(104)は、1~100rpmの速さで回転するように構成されている。
【0134】
次に、図15を参照して、複数の基板204上に成膜するための装置200の好ましい実施形態について説明する。装置200は、アプリケータ201を含む。アプリケータ201は、第1のチャンバとして働く。アプリケータ201は、マイクロ波反射性、導電性および非磁性等の特性を示し得る、適切な材料から作製されている。複数のポート203の配列は、アプリケータ201の基部上に形成され、複数の導波管203bによりMGUアセンブリ203aに接続されており、その結果、アプリケータ201内にマイクロ波エネルギーを受け取る。マイクロ波透過性窓209は、アプリケータ101の上部に配置されている。マイクロ波透過性窓109が、適切なガスケットによって提供されるような適切なシールを介して、アプリケータ201の上部に接続されるように、マイクロ波透過性窓209の周縁部は、アプリケータ201の上部の周縁部に、適切に接続または融合されている。マイクロ波透過性窓209は、赤外線(IR)波、紫外線(UV)および可視光に対し、透過性を有するように構成されている。そのため、基板上の膜またはコーティングの厚さを、その形成過程の間に、監視することができる。マイクロ波エネルギーを受け取り伝播させるために、マイクロ波透過性窓209、および複数のポート203の配列とともにアプリケータ201は、シールされた単一のユニットを形成している。また、アプリケータ201は、以下に記載されるように、大気圧未満の所望の圧力条件を維持するように構成されている。
【0135】
液体の特性および膜の成長を監視するためのプローブ220は、アプリケータ201内および基板チャンバ210内に配置されている。当該プローブ220は、赤外線(IR)装置、紫外線(UV)装置、可視光(V)装置および超音波装置から選択された送受信機アセンブリである。
【0136】
側部フランジを有するマイクロ波透過性容器205bが、マイクロ波透過性窓209の上部に配置されている。この例示的な実施形態では、マイクロ波透過性容器205bは、膜を同時成膜する複数の基板を収容するための、大きな容器である。バルブ216を有する液体入口214およびバルブ216を有する液体出口215はそれぞれ、マイクロ波透過性容器205bの上部および下部に接続されている。バルブ216により、必要に応じて、マイクロ波曝露中の液体の動的補充が可能となる。
【0137】
着脱可能な蓋205aは、マイクロ波透過性容器205b上に取り付けられている。複数のプランジャ212は、着脱可能な蓋205aを通じて、マイクロ波透過性容器205bの側部フランジ内へと入れるようになっている。その結果、マイクロ波透過性容器205bを、外部環境からシールすることができる。着脱可能な蓋205aがマイクロ波透過性容器205bから取り外されるときはいつでも、複数のプランジャ212は除去される。着脱可能な蓋205aの取り外しおよび配置の補助となるように、着脱可能な蓋205aにステム213が接続されている。また、複数のプランジャ212は、アプリケータ201およびマイクロ波透過性容器205bからのマイクロ波放射の漏れがもしあれば、それを防止する。
【0138】
基板チャネル210、211は、着脱可能な蓋205の内側部分と、マイクロ波透過性容器205bの上側部分(フランジ)との間に形成されている。基板チャネル210、211は通路であり、複数のプランジャ212の調節を通じて、それらの大きさを適宜調節することができる。
【0139】
複数のプーリの第1のセット208aが接続された着脱可能な蓋205の下部に、ヒンジが接続されている。図15に示すように、複数のプーリの第2のセット208bは、マイクロ波透過性容器205bの内部に配置されている。
【0140】
ループ状基板運搬装置208は、第1および第2のプーリ208aに、移動可能に接続されている。ループ状基板運搬装置208は、第1および第2のプーリ208a上でループ状基板運搬装置208の移動が可能となるように、適切なもの(図面には示されていない)に接続されたケーブルアセンブリであることが好ましい。当該スプールは、モータアセンブリによって駆動することができる。
【0141】
複数の可動ステム206は、ループ状基板運搬装置208に接続され、その結果、ループ状基板運搬装置208から吊るされている。図15に示すように、複数の可動ステム206は、ループ状基板運搬装置208の移動に伴って移動し、基板チャネル210、211を通って、マイクロ波透過性容器205bに出入りする。ローディングおよびアンローディングプラットフォーム(図面には示されていない)を、ループ状基板運搬装置208に適切に接続して、基板204のローディングおよびアンローディングを容易にすることができる。
【0142】
複数の基板204は、複数の可動ステム206に取り外し可能に接続されている。液体207と接触状態にあるか、または液体207内に浸漬した複数の基板204の表面上に、化学前駆体の反応生成物を膜として堆積させるために、当該複数の基板の下向き部分は、照射された液体207と接触するように配置されている。液体207内へのマイクロ波の透過は、長さ「d」とともに変化する。複数の基板204を異なる深さに配置して、異なる深さで異なる厚さのコーティングを同時に得ることが可能である。マイクロ波照射の曝露中に液体207内の基板204に費やされる時間は、ループ状基板運搬装置208の移動の速さにより、決定される。
【0143】
このように、複数の基板上に薄膜およびコーティングを堆積させるための装置(200)は、アプリケータ(201)を備え、当該アプリケータ(201)は、マイクロ波透過性窓(209)と、当該マイクロ波透過性窓(209)から介在距離「d」の所に配置された、マイクロ波発生ユニット(203a)からマイクロ波エネルギーを受け取るための複数のポート(203)の配列と、を有する。着脱可能な蓋(205a)を有するマイクロ波透過性容器(205b)は、当該アプリケータ(201)上に取り付けられている。当該マイクロ波透過性容器(205b)は、化学前駆体を有する液体(207)を貯留するように構成されており、当該液体(207)は、当該マイクロ波透過性窓(209)の全体を通って伝播するマイクロ波により、一様なマイクロ波電界強度で照射され、その結果、当該化学前駆体がマイクロ波照射反応を受けるように構成されている。着脱可能な蓋(205a)は、当該マイクロ波透過性容器(205b)に接続された複数のプランジャ(212)によって作用可能である。複数の基板チャネル(210、211)は、当該着脱可能な蓋(205a)の内側部分と当該マイクロ波透過性容器(205b)の上側部分との間に配置されている。複数のプーリの第1のセット(208a)は、当該着脱可能な蓋(205a)に接続されており、かつ、複数のプーリの第2のセット(208a)は、当該マイクロ波透過性容器(205b)の内側に配置されている。ループ状基板運搬装置(208)は、第1および第2の当該複数のプーリ(208a)と移動可能に接触するように配置されている。複数の可動ステム(206)は、当該ループ状基板運搬装置(208)に接続されており、かつ、当該複数の可動ステム(206)は、当該複数の基板チャネル(210、211)を通って当該マイクロ波透過性容器(205b)に出入りするように構成されている。複数の基板(204)は、当該複数の可動ステム(206)に取り外し可能に接続されており、複数の当該基板(204)の下向き部分は、当該液体(207)と接触状態にある当該基板(204)の表面上に、当該化学前駆体の反応生成物を膜として堆積させるために、照射された当該液体(207)と接触状態にあるように配置されている。当該装置(200)において、バルブ(216)を有する入口(214)およびバルブ(216)を有する出口(215)は、当該マイクロ波透過性容器(205b)に接続されている。プローブ(220)は、当該マイクロ波透過性容器(205b)内の当該液体の特性および当該膜(119)の成長を監視するように、当該アプリケータ(201)内および当該マイクロ波透過性容器(205b)内に配置されている。当該プローブ(220)は、赤外線(IR)装置、紫外線(UV)装置、可視光(V)装置および超音波装置から選択された送受信機アセンブリであることが好ましい。当該装置(200)内で使用される複数の当該基板(204)は、同じ幾何学的形状を有するか、または異なる幾何学的形状を有する。言い換えれば、当該装置(200)は、異なる種類の基板上への成膜を同時に支援する。この好ましい実施形態では、当該基板(204)の大きさは、1~2000cmであるように選択される。
【0144】
次に、基板304上に成膜するためのシステム300の好ましい実施形態について説明する。本発明に係る装置300を使用した広範な概略的アーキテクチャを、図16に示す。
【0145】
システム300には、アプリケータ301が含まれる。アプリケータ301には、マイクロ波透過性窓309が設けられている。複数のポート303の配列は、複数のマイクロ波発生ユニット330から複数のマイクロ波導波管329を通してマイクロ波エネルギーを受け取るように配置されている。基板カートリッジチャンバ310は、アプリケータ301上に取り付けられている。着脱可能な蓋305aと、ステム306と、を有するマイクロ波透過性容器305bを含むカートリッジ305は、基板カートリッジチャンバ310内に、着脱可能に配置されている。マイクロ波透過性容器305bは、液体307を貯留するための容器であり、化学前駆体により満たされるように配置されている。液体307は、マイクロ波透過性窓309を通って伝播するマイクロ波放射に曝され、その結果、当該化学前駆体は、マイクロ波照射反応を受ける。基板304は、着脱可能な蓋305aに取り外し可能に接続されており、基板304の下向き部分は、液体307と接触状態にある基板304の表面上に、化学前駆体の反応生成物を膜319として堆積させるために、照射された液体307と接触状態にある。複数のマイクロ波発生ユニット330は、複数の導波管329を介して、複数のポート303の配列に接続されている。複数のマイクロ波発生ユニット330は、大きさ1Wの分解能(resolution)の刻み幅で0~5kWの範囲のマイクロ波出力パワーを生成するために、好ましくは、マグネトロンと、変圧器を含むその他の電気装置と、を備える。マイクロ波発生ユニットは、中央制御監視ユニット332に接続されており、かつ、当該中央制御監視ユニット332から命令を受けるように構成されている。複数のプローブ320は、アプリケータ301内および基板カートリッジチャンバ310内に配置され、かつ、プローブ管理ユニット331に接続されている。プローブ管理ユニット331は、中央制御監視ユニット332にフィードバックを与え、かつ、当該中央制御監視ユニット332からの命令を受けるための、デジタル信号処理ユニットおよびデジタル通信モジュールを備える。また、プローブ管理ユニット331は、送信機および受信機の駆動パワー要求、ならびに、命令記憶およびマイクロコントローラを制御することができる。
【0146】
気体注入ユニット327および真空制御ユニット328は、それぞれ気体入口および真空入口315、313を介して、基板カートリッジチャンバ310およびアプリケータ301に接続されている。気体注入制御ユニット327は、気体注入システム313aおよび315aの活動を制御および監視する。図17に示すように、(315aと同一である)気体注入システム313aの内部接続および主要部分は、各気体シリンダ313a1からの複数の気体入口、質量流制御器(マスフローコントローラ)の合同プール313a2、気体混合器313a3および調節弁313a4を備える。同様に、真空制御ユニット328は、気体排気システム314aおよび316aの活動を制御および監視する。気体排気システムの内部接続および主要部分の代表図を、図18に示す。ここには、調節弁314a1、真空ポンプ314a2、および排気気体管路314a3が示されている。
【0147】
ステム移動制御ユニット322は、デュアルモーションアクチュエータ323を介してステム306に接続されている。ステム移動制御ユニット322は、中央制御監視ユニット332に内部的に接続されている。ステム移動制御ユニット322は、中央制御監視ユニット332にフィードバックを与え、かつ、当該中央制御監視ユニット332からの命令を受けるように、当該中央制御監視ユニット332との双方向通信が可能である。
【0148】
中央制御監視ユニット332は、システムのさまざま他の構成要素と通信するように、配置および構成されている。当該システムのさまざま他の構成要素には、気体注入制御ユニット327、マイクロ波発生ユニット330、プローブ管理ユニット331、気体排気制御ユニット328およびステム移動制御ユニット322が含まれる。例示的な実施形態では、中央制御監視ユニット332は、プロセッサ、メモリおよびデータストレージを備える。当該プロセッサ、メモリおよびデータストレージが合わさって、プログラムされたコンピュータの少なくとも一部が形成されている。動作中の当該プログラムされたコンピュータは、本発明に係るシステム300のための論理演算を実行する。中央制御監視ユニット332は、1または複数のプロセッサを含む。当該1または複数のプロセッサは各々、データ上のプログラム命令を実行することができる。メモリユニットは、不揮発性メモリを含んでもよい。中央制御監視ユニット332は、マイクロ波エネルギーおよび複数のポートの配置を調節できるように、複数のマイクロ波エネルギー発生ユニット330に接続されている。
【0149】
中央制御監視ユニット332は、金属層318に接続されている。中央制御監視ユニット332は、アンテナ素子118aの一実施形態を使用することによって、複数のポート303の配列から伝播するマイクロ波場の強さを測定するように構成されている。当該アンテナ素子は、中央制御監視ユニット332へと場の強度の情報をリアルタイムでフィードする。次に、中央制御監視ユニット332は、複数のマイクロ波発生ユニット330の出力パワーと、複数のポート303の配列における各ポートの物理的構成とを反復的に調節して、アンテナ素子118aにおいて、所望の電界強度レベルを達成する。中央制御監視ユニット332は、気体注入ユニット327および真空制御ユニット328に接続されており、かつ、アプリケータ301および基板カートリッジチャンバ310の雰囲気を制御するように構成されている。中央制御監視ユニット332は、ステム移動制御ユニット322に接続されており、着脱可能な蓋305aと、ステム306と、を有するマイクロ波透過性容器305bを含むカートリッジ305、基板304および液体307の移動を制御できるようになっている。中央制御監視ユニット332は、プローブ管理ユニット331に接続されており、液体の特性および膜の成長をプローブで調べるように構成されている。
【0150】
このように、基板上に成膜するためのシステム(300)は、アプリケータ(301)を備え、当該アプリケータ(301)は、マイクロ波透過性窓(309)と、当該マイクロ波透過性窓(309)から介在距離「d」の所に配置された、マイクロ波発生ユニット(303a)からマイクロ波エネルギーを受け取るための複数のポート(303)の配列と、を有する。基板カートリッジチャンバ(310)は、当該アプリケータ(301)上に取り付けられている。カートリッジ(305)は、マイクロ波透過性容器(305b)と、着脱可能な蓋(305a)と、ステム(306)と、を含み、当該基板カートリッジチャンバ(310)内に着脱可能に配置されている。当該マイクロ波透過性容器(305b)は、化学前駆体を有する液体(307)を貯留するように構成されており、当該液体(307)は、当該マイクロ波透過性窓(109)の全体を通って伝播するマイクロ波により、一様なマイクロ波電界強度で照射され、その結果、当該化学前駆体がマイクロ波照射反応を受けるように構成されている。基板(304)は、当該着脱可能な蓋(305a)に取り外し可能に接続されており、当該基板(304)の下向き部分は、当該液体(307)と接触状態にある当該基板(304)の表面上に、当該化学前駆体の反応生成物を膜(319)として堆積させるために、照射された当該液体(307)と接触状態にあるように構成されている。複数のマイクロ波エネルギー発生ユニット(330)は、複数の導波管(329)を介して当該複数のポート(303)に接続されている。複数のプローブ(320)は、当該アプリケータ(301)内および当該基板カートリッジチャンバ(310)内に配置され、かつ、プローブ管理ユニット(331)に接続されている。気体注入ユニットおよび真空制御ユニット(327、328)は、当該基板カートリッジチャンバ(310)および当該アプリケータ(301)にそれぞれ気体入口および真空入口(315、313)を介して接続されている。ステム移動制御ユニット(322)は、デュアルモーションアクチュエータ(323)を介して、ステム(306)に接続されている。中央制御監視ユニット(332)は、当該複数のマイクロ波エネルギー発生ユニット(330)に作用可能に接続されており、かつ、当該マイクロ波エネルギーおよび当該複数のポートの配置を調節するように構成されている。また、当該中央制御監視ユニット(332)は、導電層(318)に接続されており、かつ、当該マイクロ波エネルギーの電界強度を測定するように構成されている。また、当該中央制御監視ユニット(332)は、当該気体注入ユニットおよび真空制御ユニット(327、328)に接続されており、かつ、当該アプリケータ(301)および当該基板カートリッジチャンバ(310)の雰囲気を制御するように構成されている。さらに、当該中央制御監視ユニット(332)は、当該ステム移動制御ユニット(322)に接続されており、かつ、当該着脱可能な蓋(305a)と、当該ステム(306)と、を有する当該マイクロ波透過性容器(305b)を含む当該カートリッジ(305)、当該基板(304)および当該液体(307)の移動を制御するように構成されている。また、当該中央制御監視ユニット(332)は、当該プローブ管理ユニット(331)に接続されており、かつ、当該液体の特性および当該膜の成長をプローブで調べるように構成されている。
【0151】
本発明に係るシステムでは、当該複数のプローブ(320)は、赤外線(IR)装置、紫外線(UV)装置、可視光(V)装置および超音波装置から選択された送受信機アセンブリである。複数のマイクロ波エネルギー発生ユニット(330)は、ソリッドステートMGUであることが好ましい。
【0152】
次に、マイクロ波補助条件下において、基板上に(1または複数の)膜を成膜する処理の好ましい実施形態について、図19a~図19gを参照しつつ説明する。
【0153】
初めに、既述の実施形態で説明したように、基板カートリッジチャンバおよびアプリケータを有する装置が選択される。
【0154】
少なくとも1種類の化学前駆体および少なくとも1種類の溶媒による反応液が調製される。好ましい化学前駆体は、有機金属塩または無機金属塩から選択される。好ましい金属塩には、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、バリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)等の金属のハロゲン化物、硝酸塩、酢酸塩およびβ-ジケトナトが含まれる。当該無機金属塩には、上記の複数の金属元素のハロゲン化物、硝酸塩、酢酸塩が含まれる。他方、当該有機金属塩には、上記の複数の金属元素のアセチルアセトナト等のβ‐ジケトナトが含まれるが、これに限定されるものではない。上記の化学前駆体は、酸化物の薄膜、一般には、ZnO等の二元酸化物、NiFe等の三元酸化物またはYBaCu等の四元酸化物の薄膜を成膜するのに適しているだろう。
【0155】
好ましい態様では、化学前駆体の反応生成物の成膜のために選択される当該化学前駆体は、所望の膜の組成内に含まれる金属の、有機金属化合物または無機塩である。例えば、所望の膜は、一般式ABの酸化物であってもよいだろう。ここで、Aは、Mn、Ni、Co、Cu、Zn、Cr、Feまたはこれらの金属の組合せのうちの1つであり、Bは、Feであり、Oは、酸素である。BがFeの場合、ABは、スピネルのフェライトになるだろう。一般式AB1219を有するその他のフェライト材料も、薄膜状に好適に成膜することができる。ここで、Aは、バリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)またはBa、Sr、Co、Ti、Al、Zn、Zr、Sn、Ru、Mnの組み合わせのうちの1つであり、Bは、Feであり、Oは、酸素である。
【0156】
所望の薄膜が金属カルコゲン化物の薄膜である場合、チオ‐β‐ジケトナト等の適切な化学前駆体が好ましい。ここで、β‐ジケトナト分子中の酸素(O)は、硫黄(S)で置換されている。その他のカルコゲン、すなわち、セレン(Se)およびテルル(Te)についても同様である。また、化学前駆体は、分子構造中にカルコゲンを有する種々の有機金属化合物から、マイクロ波エネルギーを吸収するのに適した溶媒中におけるそれらの溶解度を考慮しつつ、選択することができる。
【0157】
例示的な態様では、本発明において、有機金属化学前駆体の使用が例示されている。また、マイクロ波照射下で成膜を行うために、無機塩等のその他の化学前駆体を使用することも、本発明の範囲に含まれる。
【0158】
化学前駆体は、所望の最終生成物、例えば酸化物の内部における、金属イオン含有量の化学量論的な比に基づくモル比にて混合される。好ましい態様では、金属錯体の化学前駆体であるZn(II)アセチルアセトナトおよびFe(III)アセチルアセトナトが、比率1:2(0.5mmol:1mmol)のモル比にて用いられ、1‐デカノール(25ml)およびエタノール(15ml)を含有する混合溶媒内に溶解されて、基板上に亜鉛フェライト(ZnFe)膜を成膜するための反応液が形成される。
【0159】
処理に使用される溶媒は、極性溶媒、有機溶媒または水系溶媒(aqueous solvent)である。好ましい極性溶媒としては、水、メタノール、エタノール、2-プロパノール、ブタノール、オクタノール、1-デカノール、エチレングリコール、ベンジルアルコールおよびジメチルスルホキシド、またはこれらの溶媒の組み合わせが挙げられる。他方、好ましい有機溶媒としては、メタノール等の短炭素鎖を有する溶媒、1-デカノール等の長炭素鎖を有する溶媒、またはベンジルアルコール等の環状炭素鎖を有する溶媒が挙げられる。
【0160】
また、エタノール-水混合物等の水系溶媒も、本発明にかかる処理工程において、適切に使用することができる。
【0161】
本発明に係るマイクロ波補助による成膜処理では、約70℃(短炭素鎖アルコール、メタノールの沸点付近)~約250℃(長炭素鎖アルコール、1‐デカノールの沸点付近)の範囲内の沸点を有する溶媒を考慮して、好ましい溶媒が選択される。
【0162】
本発明に係る処理工程のための(1種類のまたは複数種類の)好ましい溶媒の選択により、それらの沸点が異なるものであるゆえに反応液の名目温度(nominal temperature)が制御され、その結果、基板上に成膜する膜の形成を生ずる反応機構が制御される。
【0163】
選択された(1種類または複数種類の)前駆体および(1種類または複数種類の)溶媒を有する、このようにして調製された反応液は、基板カートリッジチャンバ内に配置された基板カートリッジにおけるマイクロ波透過性容器内に移される。マイクロ波透過性容器は、アプリケータのマイクロ波透過性窓上に取り付けられるか、またはアプリケータのマイクロ波透過性窓上に置かれる。この構成では、化学前駆体の反応生成物が成膜する基板は、マイクロ波発生ゾーン(アプリケータ)から物理的に分離している。
【0164】
次いで、選択された化学前駆体の反応生成物によって成膜するために、適切な基板が選択される。基板の材料は、導電体、好ましくは銅(Cu)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)およびグラフェン、金属合金、好ましくはチタン合金(TaN)、銅合金およびパーマロイ等の材料から選択される。また、当該材料は、半導体等のその他の材料、好ましくはシリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、ヒ化ガリウム(GaAs)、窒化ガリウム(GaN)、リン化インジウム(InP)および炭化ケイ素(SiC)から好適に選択することができる。加えて、酸化アルミニウム、溶融石英、ケイ酸塩ガラス、ポリマー材料等の電気絶縁体も、基板材料として使用することができる。また、上述の材料の組み合わせは、Alコーティングされたシリコン、Cuコーティングされた溶融石英、またはシリカコーティングされたシリコンウェハ上のCrおよびAuの層状積層体等の基板に使用するのに、好適に適合させることができる。
【0165】
基板がマイクロ波エネルギーに曝されると、その基板はその誘電特性および導電性に応じてマイクロ波エネルギーを吸収し、その結果、基板の表面上の多数の離散スポットが、ホットスポットとして知られるエネルギーを得ておよび活性化した状態になり得る、ということを考慮して、基板が選択される。これらのホットスポットは、マイクロ波照射の曝露下において、液体中の化学前駆体の反応生成物により成膜するための、潜在的な核生成の部位(サイト)として働く。
【0166】
いったん所望の基板が選択されれば、次の工程において、選択された化学前駆体の反応生成物の成膜が基板上で行われる当該基板の表面もまた、選択される。
【0167】
選択された基板は、基板カートリッジの着脱可能な蓋の下に配置される。当該配置は、真空吸引機構によって、または、着脱可能な蓋にしっかりと(液密に)基板を保持するように構成された機械的支持体によって、下向きの配置構成にて行われる。当該下向きの配置構成において、成膜対象となる基板の面または表面は、液体に面するように配置される。この工程では、基板の他方の面(または反対の面)を使用して、基板カートリッジの着脱可能な蓋に、基板が接続される。
【0168】
次の工程において、基板表面が反応液と接触した状態で基板を配置するか、または、反応液中に基板を浸漬している間の、マイクロ波透過性容器内の反応液の液柱高さ(h)を決定する。言い換えれば、基板上に成膜する必要のある膜の厚さの程度により、反応液の液柱高さ(h)がその誘電特性に応じて決定され、その結果、基板のうち成膜の必要な部分のみが、反応液に曝される。例示的な態様では、本発明の処理工程では、好ましい液柱高さ(h)が、本発明の範囲内において、前述の溶媒に対して1mm~50cmであるように決定される。
【0169】
次に、基板を有する着脱可能な蓋を、所定の液柱高さ(h)にしたがって、マイクロ波透過性容器内に存在する液体の方へと、垂直に移動させる。
【0170】
あるいは、別の好ましい工程では、図9aおよび図9bに示すように、液柱高さ(h)は、着脱可能な蓋の厚さを変化させることによっても決定することができる。
【0171】
基板のうち成膜の必要な部分が、いったん、反応液の表面と接触状態になるか、または、反応液中に浸漬されると、アプリケータおよび基板カートリッジチャンバは、(1種類または複数種類の)気体の流れを調節し、真空レベルを監視することによって、所望の雰囲気条件を得るように構成される。基板カートリッジチャンバ内の所望の雰囲気は、成膜反応に固有であり、使用する前駆体、溶媒、基板、および作動温度等の処理条件に依存する。アプリケータおよびカートリッジチャンバに対して、空気、酸素、窒素、アルゴンまたはこれらの気体の組み合わせから選択される気体の存在下で、1mtorr~1000torrの範囲内の動作圧力にて、雰囲気が維持される。当該動作圧力は、一般的な圧力計により測定される。気体注入システムおよび排気システムが所望のレベルにある雰囲気を監視および維持することが当該圧力計により補助される。
【0172】
そして、アプリケータから、当該アプリケータのマイクロ波透過性窓を通して基板カートリッジチャンバ内へと、特定の成膜処理の要件に応じて選択される所望のマイクロ波電界強度のマイクロ波のみを伝播させる工程が続く。マイクロ波透過性窓を透過する当該マイクロ波電界強度は、0~50kV/mの範囲内となるように選択され、アンテナ素子により測定される。マイクロ波放射振動数は、好ましくは2.45GHzまたは915MHzであり、マイクロ波発生ユニットの出力パワーは、10W~5kWである。
【0173】
マイクロ波エネルギーの電界強度は、マイクロ波透過性窓の下方に配置された金属層の一実施形態として存在するアンテナ素子により、マイクロ波透過性窓において測定される。この情報は、中央制御監視ユニットへとフィードバックされ、次に、当該中央制御監視ユニットは、複数のマイクロ波発生ユニットの出力パワー、および、複数のポートの配列の個々のマイクロ波ポートの位置を反復的に制御して、マイクロ波場の所望の強度を達成する。
【0174】
反応物の液体が所望のマイクロ波照射(例えば、10kV/mの電界強度、2.45GHz)を受けると、当該液体が熱せられる。液体の温度が上昇するにつれ、(図1bに示すように、基板カートリッジの蓋上に、利用可能なベントがない場合)カートリッジ内の圧力は、上昇した溶媒の蒸気圧(約15バール)によって増大する。これにより、溶媒の沸点は、上昇するものの、200℃を超えない。マイクロ波照射下かつ上昇した温度および圧力下で、液体中で化学反応が起こり、その結果、(好ましくは酸化物材料の)固体ナノクリスタリットが形成され、これが、核となって、最終的に、浸漬した基板上に成膜する。化学前駆体および溶媒の選択に応じて、処理には、約20秒~1時間を要する。(厚さ10nm~100μmの)薄く一様な膜によって基板がコーティングされていることが、処理の終わりに見出される。このとき、当該クリスタリットの大きさは、(図23に示す電子顕微鏡の使用により推定されるように)約5nmである。
【0175】
基板の成膜表面上に形成される核生成の部位は、強く付着した滑らかな膜を得るための鍵となる。十分な付着性を有する膜が観察された場合、核生成の密度は非常に大きく、最小で1000/μmである。図23は、亜鉛フェライト膜がSi(100)基板上に成膜した場合の~1700の核生成の部位の密度を示す。
【0176】
本発明に係る処理工程により、マイクロ波照射条件の下、50℃~400℃、好ましくは200℃の温度で、磁性材料(フェライト、またはガーネット等)を含むがこれに限定されない付着性酸化物の、液体媒質中における基板上への急速な成膜が容易になる。
【0177】
基板上に酸化物材料を成膜するための本発明における記載の処理には、前駆体として、無毒であり、通常のアルコールに溶解する有機金属化合物が使用される。その結果、成膜処理の全体が、環境に優しいものとなる。
【0178】
本発明における記載の成膜処理では、マイクロ波の電磁(EM)場中で各溶媒分子が双極子回転できるように、適切な化学前駆体および溶媒が使用される。その結果、摩擦が生じ、それが反応液内に局所的な高温をもたらす。この結果、酸化物材料が急速に形成される。溶液全体がEM場下にあるとき、複数の酸化物部分が形成され、それらが小さなクリスタリットへと核生成し、その結果、溶液中に浸漬した基板上に、微細構造を有する酸化物膜が生じる。
【0179】
本発明の処理では、熱力学的平衡から遠ざかるように反応機構が化学反応を進める条件下において、溶液媒質中の化学反応が起こる。その結果、しばしばナノメートルの形態にて得られる酸化物材料中に、新規の機械的、電気的、磁気的および光学的特性がもたらされる。その一例が、顕著な室温磁化を有するナノ結晶亜鉛フェライトの形成である。これは、一般に、部分的結晶学的反転(partial crystallographic inversion)として知られる、材料の結晶構造内部における、平衡とは程遠い原子配列によるものである。これは、亜鉛フェライトのスピネル構造内に起こり、上記の条件下において、膜の形成中に生じる。
【0180】
液体は、所望のマイクロ波電界強度の存在下にて照射され、その結果、化学前駆体の反応が起こる。これにより、基板上に核生成の部位が形成され、続いて、当該液体と接触状態にある基板の表面上に、化学前駆体の反応生成物が、所望の一様な厚さ、組成および物理的特性を有する膜として堆積する。
【0181】
膜でコーティングされた当該基板は、着脱可能な蓋を持ち上げることによって、基板カートリッジチャンバから取り外される。
【0182】
図15に示すように、処理は、複数の基板上に一度に、または、複数の基板上に連続的なバッチ処理にて、成膜に適した(図19cのフローチャートに示すような)代替的な工程を提供する。
【0183】
また、図11bに示すように、処理は、基板カートリッジの蓋に取り付けられた基板ホルダを適切に変更することにより、基板の両面に成膜を可能にする、代替的な工程を提供する。
【0184】
また、図12aに示すように、処理は、基板と基板カートリッジの蓋との間に導電層を挿入することにより、マイクロ波吸収能力が乏しい基板に適用するための、代替的な工程を提供する。導電層の種類(例えば、CuまたはAlまたはFe等の材料)、導電層の厚さ(例えば、20nm~1mmの範囲内;その所与の材料における、2.45GHz放射の表皮厚さ未満)、および、導電層のパターン(例えば、図12bに示すパターン、ただしこれに限定されるものではない)に応じて基板表面が活性化し、核生成の部位の形成が可能となる。
【0185】
また、図10に示すように、処理は、勾配状の、すなわち膜の厚さに勾配のある成膜を、基板カートリッジの蓋の幾何学的形状を適切に変更することによって可能にする、代替的な工程を提供する。基板を保持する基板カートリッジの蓋の底面は、水平面に対して1°~30°の角度θだけ傾斜させられる。
【0186】
また、図19fのフローチャートに示すように、処理は、反復的な閉ループ制御工程により、所望の厚さの膜を成膜する工程を含む。その場で(in situ)厚さを測定するプローブにより、上記処理制御のための必要なフィードバックが提供される。
【0187】
処理は、10秒~1時間の持続時間においてパルス状のマイクロ波場または一定のマイクロ波場の照射下で成膜処理を継続させて、一様な膜またはあまり一様でない膜を実現することを可能にする工程を含む。
【0188】
処理は、基板カートリッジを回転させて、膜の厚さおよび組成がより一様になることが確実となるようにする工程を含む。基板の回転速度は、1~100rpmであり、基板カートリッジの蓋上に配置されたステムに取り付けられたギアアセンブリによって管理される。
【0189】
処理は、任意の設定パラメータの安全限界が侵された場合にマイクロ波照射を終了させる工程を含む。基板カートリッジ内に確立される処理温度および処理圧力の安全限界はそれぞれ、25~400℃、50~300psi(ポンド毎平方インチ)である。
【0190】
このように、基板上に成膜するためのマイクロ波補助処理は、以下の複数の工程を含む:少なくとも1種類の化学前駆体および少なくとも1種類の溶媒からなる液体を調製し、基板カートリッジチャンバ内に配置された基板カートリッジのマイクロ波透過性容器内へと当該液体を移す工程。当該基板カートリッジの着脱可能な蓋上に基板を下向きに取り付けて、当該基板が前記液体と接触状態にあるように、好ましい液柱高さ(h)において前記基板を配置する工程。複数のポートの配列の選択された構成により達成される所望の強度の一様なマイクロ波の場を、アプリケータのマイクロ波透過性窓の全体を通して、当該基板カートリッジチャンバ内へと伝播させる工程。得られる当該マイクロ波の電界強度の存在下において、当該液体を照射する工程。当該基板上に核生成の部位(場所)を形成するように当該化学前駆体を反応させ、その結果、当該液体と接触状態にある当該基板の表面上に、当該化学前駆体の反応生成物を、所望の一様な厚さ、組成および物理的特性を有する膜として堆積させる工程。当該基板カートリッジチャンバからコーティングされた当該基板を取り外す工程。
【0191】
本発明に係る処理工程では、前記少なくとも1種類の化学前駆体は、複数の金属塩から選択され、前記複数の金属塩は、有機塩、無機塩または有機塩と無機塩との組み合わせであり、好ましくは、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、バリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)もしくはインジウム(In)のハロゲン化物、硝酸塩、酢酸塩、β-ジケトナトまたはチオ-β-ジケトナトである。
【0192】
処理工程に用いる前記溶媒は、極性溶媒、好ましくは、水、メタノール、エタノール、2-プロパノール、ブタノール、オクタノール、1-デカノール、エチレングリコール、ベンジルアルコールおよびジメチルスルホキシドから選択される。
【0193】
本発明に係る処理工程では、前記基板は、金属コーティングした半導体もしくはコーティングのない半導体、好ましくはシリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、ヒ化ガリウム(GaAs)、窒化ガリウム(GaN)、リン化インジウム(InP)、炭化ケイ素(SiC)、Gaおよびダイアモンド、または、金属コーティングした絶縁体もしくはコーティングのない絶縁体、好ましくは酸化アルミニウム、溶融石英、MgO、ガラスもしくはポリマー材料である。
【0194】
さて、以下の複数の実施例により、本発明に係る処理を例証する。当業者ならば、これらの実施例は、単に例示として与えられており、発明を限定するものと見なされるべきではないことを認識するだろう。
【0195】
(実施例1)
金属錯体である化学前駆体(Zn(II)アセチルアセトナトおよびFe(III)アセチルアセトナト)を、比率1:2(0.5mmol:1mmol)のモル比にて用い、1‐デカノール(25ml)およびエタノール(15ml)を含有する混合溶媒内に溶解して、反応液を形成する。化学前駆体を有する当該反応液を、基板カートリッジチャンバのマイクロ波透過性容器内へと移す。この基板カートリッジチャンバは、当該基板カートリッジチャンバから物理的に分離したアプリケータのマイクロ波透過性窓上に取り付けられる。基板として、大きさ2cm×2cm、厚さ450μmのシリコンウェハSi(100)を選択する。当該基板は、1μmの厚さのホウリンケイ酸ガラス(borophosphosilicate glass:BPSG)の最上層を有する。当該基板を、基板カートリッジの着脱可能な蓋に取り外し可能に接続し、真空チャックによって基板カートリッジチャンバ内に配置する。当該基板の下向き部分を、マイクロ波透過性容器内に存在する反応液中に浸漬する。安全限界を、温度および圧力に対し、それぞれ、200℃および200psiに設定する。次いで、当該反応液に、振動数2.45GHzにて動作するマイクロ波発生アセンブリから、アプリケータのマイクロ波透過性窓を通して、10kV/m(±5%)という所望のマイクロ波電界強度を有する一様強度のマイクロ波照射を、成膜処理の全持続時間にわたって行う。当該マイクロ波照射は、2つのマイクロ波ポートを、互いに10cm離隔し、かつ、垂直オフセットをゼロにしてマイクロ波透過性窓から30cmの距離に置いた状態に保つことで得る。当該マイクロ波照射下かつ上昇した温度にて、液体中の化学前駆体は反応を受け、その結果、基板上に核生成の部位が形成され、亜鉛フェライト膜が成膜する。亜鉛フェライトは、当該液体と接触状態にある基板のBPSG層上に、15分という短時間で、膜として堆積する。堆積膜を有する基板を、基板カートリッジチャンバから取り出し、走査型電子顕微鏡(scanning electron microscopy:SEM)にかける。図20に示すように、対応するコーティングされた膜の断面像から、厚さ1.2μmの亜鉛フェライトの一様な膜が基板上に成膜したことが確認される。また、基板の長さと幅の全域において、亜鉛フェライト膜の厚さは<2%の変動において一様であることも観察される。
【0196】
(実施例2)
化学前駆体(Ni(II)アセチルアセトナトおよびFe(III)アセチルアセトナト)を、比率1:2(0.5mmol:1mmol)のモル比にて用い、1‐デカノール(25ml)およびエタノール(15ml)を含有する混合溶媒内に溶解して、反応液を形成する。化学前駆体を有する当該反応液を、基板カートリッジチャンバのマイクロ波透過性容器内へと移す。この基板カートリッジチャンバは、当該基板カートリッジチャンバから物理的に分離したアプリケータのマイクロ波透過性窓上に取り付けられる。基板として、大きさ2cm×2cm、厚さ450μmのシリコンウェハSi(110)を選択する。当該基板を、基板カートリッジの着脱可能な蓋に取り外し可能に接続し、基板カートリッジチャンバ内に配置する。当該基板の下向き部分を、マイクロ波透過性容器内に存在する反応液中に浸漬する。安全限界を、温度および圧力に対し、それぞれ、200℃と200psiに設定する。実施例1とは対照的に、本実施例の反応液に、2.45GHzの動作振動数のマイクロ波発生アセンブリから、アプリケータのマイクロ波透過性窓を通して、出力パワーが0~300Wの間で変化する可変強度のマイクロ波照射を、15分間という成膜処理の全持続時間にわたって行う。複数のポートの配置は、実施例1において最適化したものが維持される。このマイクロ波照射条件下および上昇した温度にて、液体中の化学前駆体は、動的な様態において、マイクロ波のパワーが0~300Wの間で変動する反応を受け、これにより、空間的に不均質な核生成が生じる。その結果、(~3から4μmの)厚いが非一様なニッケルフェライトの膜が、15分という短時間で、基板上に形成される。堆積膜を有する基板を、基板カートリッジチャンバから取り出し、走査型電子顕微鏡(SEM)にかける。図21に示すように、対応するコーティングされた膜の断面像から、~3から4μmの厚さを有する厚いが非一様なニッケルフェライト膜が成膜したことが確認される。
【0197】
(実施例3)
本実施例では、二価の亜鉛イオンの50%を二価のマンガンイオンで置き換えることにより形成される、マンガン‐亜鉛フェライトの厚く一様な膜の成膜が示される。この反応生成物を得るために、化学前駆体(Zn(II)アセチルアセトナト、Mn(II)アセチルアセトナトおよびFe(III)アセチルアセトナト)を、比率0.5:0.5:2(0.25mmol:0.25mmol:1mmol)のモル比にて用い、1‐デカノール(25ml)およびエタノール(15ml)を含有する混合溶媒内に溶解して、反応液を形成する。化学前駆体を有する当該反応液を、基板カートリッジチャンバのマイクロ波透過性容器内へと移す。この基板カートリッジチャンバは、当該基板カートリッジチャンバから物理的に分離したアプリケータのマイクロ波透過性窓に取り付けられる。基板として、厚さ450μmのシリコンウェハSi(100)を選択する。(直径4”の)当該基板は、厚さ1μmのホウリンケイ酸ガラス(BPSG)の最上層を有する。安全限界を、温度および圧力に対し、それぞれ、200℃および200psiに設定する。次いで、実施例1に記載したように、当該反応液に、アプリケータのマイクロ波透過性窓を通して、一様強度のマイクロ波照射を、成膜処理の全持続時間にわたって行う。当該マイクロ波照射下かつ上昇した温度にて、液体中の化学前駆体は反応を受け、その結果、マンガン‐亜鉛フェライト核の形成を引き起こす核生成が生じ、マンガン‐亜鉛フェライト核が形成される。当該マンガン‐亜鉛フェライト核は、液体と接触状態にある浸漬した基板表面上、すなわち、液体と接触状態にある基板のBPSG層上に堆積し、膜を形成する。堆積膜を有する基板を、基板カートリッジチャンバから取り出し、走査型電子顕微鏡(SEM)にかける。図22に示すように、対応するコーティングされた膜の断面像から、厚さ0.8μmのマンガン-亜鉛フェライトの厚く一様な膜が基板上に成膜したことが確認される。
【0198】
(実施例4)
本実施例では、実施例1にて得られるような亜鉛フェライト膜の基板-膜境界面を掻き出し、プローブで調べて、基板上の堆積膜の核生成の部位の密度を明らかにする。膜表面の高分解能SEM(high-resolution SEM:HRSEM)像を、図23に示す。膜表面のHRSEM像には、5nm未満の拡がりを有する多数の小さな球状粒子の存在が示される。これらの粒子は、初期の核として基板上で働き、その結果、最終的に膜を形成する。これらの核の密度は、~1500/μmであると決定される。
【0199】
(実施例5)
本実施例では、図24に示すように、840nmという所望の膜の厚さが実現されるように、IRプローブにより膜の厚さをその場で監視し、マイクロ波照射の持続時間を制御する。これにより、比厚さ(specific thickness)840nmの、実施例1に記載したような亜鉛フェライトの滑らかで一様な膜を、Si(100)基板上に成膜する。堆積膜の意図する厚さは、1000nmである。厚さ測定において、誤差は~15%である。他方、別の例では、実施例2に記載した化学前駆体の調合と、実施例1に記載したマイクロ波場の最適化とにしたがい、可視光プローブを用いて膜の厚さを監視することによって、滑らかで一様なニッケルフェライトの膜を成膜する。200nmという所望の膜の厚さが得られるように、処理条件を制御する。実際の膜の厚さは、~210nmであることが分かった。誤差は10%未満である。
【0200】
(実施例6)
基板に作用するマイクロ波の電界強度は、核生成の部位の形成において重要な役割を有しており、膜の厚さと膜表面の形態や構造を決定する。基板とマイクロ波透過性窓との間の反応液柱の誘電特性は、マイクロ波電界強度をスクリーニングする際に、非常に大きな役割を演じる。本実施例では、図25に示すように、Si(100)基板の略長方形(3cm×1cm)の一片を、反応液中に浸漬しつつ、水平面に対して傾斜角10°で配置し、実施例1に記載したような亜鉛フェライト膜を成膜した。ちょうど2分間、300W(マイクロ波振動数=2.45GHz)の一定出力のマイクロ波により、液体を照射する。本実施例では、基板の下の液柱の高さ(h)は、基板の一方の縁部から他方の縁部まで、基板の長さに沿って次第に変化する。本実施例では、基板は水平面に対して斜めに保たれ、その結果、当該基板は、異なる2つの「h」の値を有するに至る。「より薄い」液柱では、マイクロ波場が液体中へとより良好に透過することによって、核の急速な形成が促進される結果、より厚い膜の成長が生じる(すなわち、膜の成長速度がより大きい)。それと同時に、これとは対照的に、「より厚い」液柱がその下にある基板の部分上には、より薄い膜が形成される。
【0201】
(実施例7)
本実施例では、図26に示すように、視覚的には異なるが化学的には均質の亜鉛フェライト膜の2つの層を、異なる2つの工程により成膜する。初めに、化学前駆体(Zn(II)アセチルアセトナトおよびFe(III)アセチルアセトナト)を1:2(0.2mmol:0.4mmol)のモル比にて、1‐デカノール(7ml)およびエタノール(3ml)を含有する混合溶媒中に混合することによって、反応液を調製する。化学前駆体を有する当該反応液を、基板カートリッジチャンバのマイクロ波透過性容器内へと移す。この基板カートリッジチャンバは、当該基板カートリッジチャンバから物理的に分離したアプリケータのマイクロ波透過性窓上に取り付けられる。基板として、シリコンウェハSi(100)(3cm×1cm;厚さ450μm)を選択する。当該基板を、基板カートリッジの着脱可能な蓋に取り外し可能に接続し、基板カートリッジチャンバ内に配置する。当該基板の下向き部分を、マイクロ波透過性容器内に存在する反応液中に浸漬する。次いで、当該反応液に、振動数2.45GHzにて作動するマイクロ波発生アセンブリから、アプリケータのマイクロ波透過性窓を通して、出力パワー300Wの一定強度のマイクロ波照射を、30分間という成膜処理の全持続時間にわたって行う。次の工程では、膜の成長速度が遅くなった場合に、マイクロ波透過性容器内の反応液の交換を、カートリッジの着脱可能な蓋を基板とともに持ち上げることで行う。着脱可能な蓋を再び下ろすことで、新しい反応液中に基板を浸漬する。基板と液体とを、同様のマイクロ波出力により、再び照射する。2つの照射工程にて成膜した基板を、基板カートリッジチャンバから取り出し、走査型電子顕微鏡(SEM)にかける。図26に示すように、対応するコーティングされた膜の断面像は、結果として、合計厚さ1.7μmが得られたことを示す(すなわち、第1の照射工程において1μmの厚さが得られ、第2の照射工程において0.7μmの厚さが得られた)。
【0202】
(実施例8)
別の例では、基板の両面上に成膜ができるよう指定した基板ホルダ105a3を使用することで、ニッケルフェライト膜を、(本発明の上述の実施例2において説明したように)基板の前面上に成膜するのと同時に、(図27に示すように)Si(100)基板の後面上に成膜する。基板として、2cm×2cm、厚さ450μmのシリコン基板を使用する。基板をしっかりと保持するように設計されたホルダ上に存在する一対の溝を使用して、基板をホルダに固定する。成膜した後面の膜は、基板全体にわたって広がり、前面の膜と同様の形態的特性および化学的特性を有する。
【0203】
(実施例9)
実施例1に記載したような成膜処理に従い、ファウンドリにて得られたシリコンチップ(大きさ:2.5×2.5mm)上に、亜鉛フェライト膜を成膜した。このシリコンチップの最上層は、ポリマー材料、パッシベーション層(passivation layer)として知られる厚さ2μmのポリアミド、および、周知のマイクロ波透過性材料から構成される。このポリアミド層の下には、パターン形成された金属(厚さ0.8μmのAl)層が存在する。2つの金属ストリップ間の間隔は、ケイ酸塩ガラスで満たされている。図28は、金属パターンが下に存在するポリアミド表面上に選択的に成膜した亜鉛フェライト膜を示す。本実施例では、ポリアミド等のマイクロ波透過性基板の後方に導電層を有するときの結果と同様の、ポリマー基板上における成膜が示される。
【0204】
[本発明の利点]
本発明により、清浄な条件下で(基板上に)さまざまな材料の薄膜を成膜するための装置および方法が提供される。これは、本発明のマイクロ波透過性窓によって、液体(溶液)媒質内におけるマイクロ波補助化学処理において、マイクロ波空洞から成膜チャンバを分離できるようになるためである。
【0205】
本発明では、(マイクロ波エネルギー源に対して)基板が下向きである構成を採用することによって、上記の液体中に適切な温度勾配と核生成の密度勾配とが設定され、基板上に付着性の膜を成膜するための条件が作り出される。
【0206】
本発明に係る、液体に基づく処理には、薄膜の成膜において通常使用される高真空状態を作り出し維持するために必要となる高価な装置が必要とされない。
【0207】
本発明に係る液体に基づく処理により、成膜した結晶膜が得られる。このため、その他の成膜の方法において通常必要とされる高い基板温度での成膜または成膜後の焼鈍(処理)の必要性がなくなる。したがって、本発明により、清浄な、CMOSに適合する成膜の方法および処理が提供される。また、この処理および方法は、低温での成膜が望まれる場合(例えば、融点の低いポリマーから基板が作られる場合)は常に、有利である。
【0208】
本発明に係る装置および方法は、マイクロ波場を成膜ゾーンで一様な強度とするための条件を調整することで、一様な厚さおよび組成を有する膜を得るための方法を提供する。
【0209】
本発明は、(平坦な)基板の両面上に成膜するための装置および方法を提供する。
【0210】
本発明は、厚さおよび組成の非一様性が意図的に選択された膜を基板全体に成膜するための装置および方法を提供する。
【0211】
本発明は、液体に基づく化学反応成膜において、成膜する薄膜の厚さを監視および制御するための手段を提供する。
【0212】
上記の(同じ)監視および制御するための手段により、高品質の成膜を繰り返し確実に行うことができるように液体(溶液)を監視することが可能となる。
【0213】
本発明では、溶液をマイクロ波照射している間に基板を回転させることにより、一様な厚さおよび組成を有する膜を成膜することができる。
【0214】
本発明では、無毒の溶媒中に溶解した無毒の化学前駆体を使用することにより、環境に優しい成膜の方法および処理が提供される。
【0215】
本発明では、無毒の溶媒中に溶解した適切な無毒の化学前駆体の使用を可能とすることにより、酸化物およびカルコゲン化物を含む、多種多様な材料の薄膜の成膜を提供する。
【0216】
また、本発明では、「ベルトコンベア様の」方式にて「バッチ処理」の成膜を基板上に行う装置および方法が提供される。
【0217】
本発明に係る装置、方法および処理により、単一ウェハ方式とバッチ処理方式との両方において、高品質の薄膜の成膜に成功できるようにするための包括的な制御が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0218】
図1a】本発明に係る装置の概略断面図であり、アプリケータからの基板カートリッジチャンバの物理的な分離を示す。
図1b】基板カートリッジチャンバのマイクロ波透過性蓋の概略上面図である。
図1c】基板カートリッジチャンバの概略断面図であり、基板上に成膜する膜を示す。
図1d】基板を有する基板カートリッジの概略分解断面図である。
図2】アプリケータ内部に基板カートリッジチャンバのある構成を示す概略断面図である。
図3a】それぞれマイクロ波発生ユニットを有する、アプリケータ内の複数のポートの一配置構成を示す概略断面図である。
図3b】それぞれマイクロ波発生ユニットを有する、アプリケータ内の複数のポートの例示的な配置構成を示す概略断面図である。
図3c】それぞれマイクロ波発生ユニットを有する、アプリケータ内の複数のポートの配置構成を示す概略上面図である。
図4】装置の概略断面図であり、アプリケータ内の雰囲気条件を制御するための手段を示す。
図5】装置の概略断面図であり、基板上に成膜した膜の厚さをその場で特性評価および測定するための送受信機アセンブリの配置構成を示す。
図6】装置の概略断面図であり、マイクロ波吸収性材料でコーティングされた基板カートリッジチャンバの複数の壁を示す。
図7】装置の概略断面図であり、基板カートリッジの垂直移動を示す。
図8a】装置の概略断面図であり、基板カートリッジを垂直移動およびパルス状垂直移動(z軸移動)させるための構成を示す。
図8b】装置の概略断面図であり、基板カートリッジを垂直移動およびパルス状垂直移動(z軸移動)させるための構成を示す。
図8c】装置の概略断面図であり、基板がマイクロ波透過性容器内の液体と表面が接触した状態にある構成を示す。
図8d】装置の概略断面図であり、基板カートリッジを回転移動させるための構成を有する。
図8e】噛み合い構成の概略断面図であり、着脱可能な蓋の回転を示す。
図9a】装置のカートリッジの概略断面図であり、マイクロ波透過性容器内の液柱高さの変化に関する構成、すなわちz軸移動を示す。
図9b】装置のカートリッジの概略断面図であり、マイクロ波透過性容器内の液柱高さの変化に関する構成、すなわちz軸移動を示す。
図10】装置のカートリッジの概略断面図であり、基板が勾配を有する構成を示す。
図11a】装置のカートリッジの概略断面図であり、基板の両面コーティングのための構成を示す。
図11b】装置のカートリッジの概略断面図であり、基板の両面コーティングのための構成を示す。
図12a】装置のカートリッジの概略断面図であり、導電金属層を有する蓋を示す。
図12b】装置のカートリッジの概略断面図および上面図であり、パターン形成された導電金属層を示す。
図13a】装置の概略断面図であり、導電金属層がアプリケータのマイクロ波透過性窓上にある構成を示す。
図13b】アプリケータのマイクロ波透過性窓上に配置された導電金属層の概略上面図である。
図14】装置の概略断面図であり、マイクロ波透過性容器がマイクロ波透過性窓を有しない構成を示す。
図15】基板のバッチ処理装置を示す概略断面図である。
図16】基板上に薄膜およびコーティングを堆積させるための、本発明に係る装置を用いた広範なシステムアーキテクチャである。
図17】本発明に係るシステムの気体注入手段を示す概略図である。
図18】本発明に係るシステムの真空制御手段を示す概略図である。
図19a】少なくとも1つの基板上に成膜するための処理工程を示すフローチャートである。
図19b】少なくとも1つの基板上に成膜するための処理工程を示すフローチャートである。
図19c】少なくとも1つの基板上に成膜するための処理工程を示すフローチャートである。
図19d】少なくとも1つの基板上に成膜するための処理工程を示すフローチャートである。
図19e】少なくとも1つの基板上に成膜するための処理工程を示すフローチャートである。
図20】Si/BPSG基板上における厚く一様な亜鉛フェライト膜の断面SEM像である。
図21】シリコン基板上における厚いが一様ではないニッケルフェライト膜の断面SEM像である。
図22】Si/BPSG基板上における厚く一様なマンガン-亜鉛フェライトの断面SEM像である。
図23】シリコン基板から掻き出した亜鉛フェライト膜の小片の断面SEM像であり、基板との接触状態にあった上記膜の表面を示す。
図24】シリコン基板上に成膜した(a)亜鉛フェライトおよび(b)ニッケルフェライトの滑らかで一様な膜の2つの断面SEM像である。
図25】厚さに勾配のある亜鉛フェライト膜が成膜したシリコン基板の一片の写真である。
図26】2工程(段階)の成膜処理による、シリコン基板上における亜鉛フェライトの厚い2層の膜のSEM像である。第1の工程の終了時に反応液を補充した後、続けて成膜が行われる。
図27】ニッケルフェライト膜を前面と同時に成膜したシリコン基板の後面のSEM像の上面図である。
図28】厚さ2μmのポリアミド層上に選択的に成膜した亜鉛フェライト膜のSEM像の上面図であり、パターン形成されたAl金属層がポリアミド層の下に位置している。フェライト膜がAl金属パターンに従って成膜したことを示す。
図1a
図1b
図1c
図1d
図2
図3a
図3b
図3c
図4
図5
図6
図7
図8a
図8b
図8c
図8d
図8e
図9a
図9b
図10
図11a
図11b
図12a
図12b
図13a
図13b
図14
図15
図16
図17
図18
図19a
図19b
図19c
図19d
図19e
図19f
図19g
図20
図21
図22
図23
図24(a)】
図24(b)】
図25
図26
図27
図28
【国際調査報告】