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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-01
(54)【発明の名称】接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C09J 175/04 20060101AFI20230125BHJP
【FI】
C09J175/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022527787
(86)(22)【出願日】2020-11-04
(85)【翻訳文提出日】2022-05-12
(86)【国際出願番号】 US2020058830
(87)【国際公開番号】W WO2021108097
(87)【国際公開日】2021-06-03
(31)【優先権主張番号】102019000022356
(32)【優先日】2019-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(71)【出願人】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】ディグノーティ、ヴィンチェンツォ
(72)【発明者】
【氏名】ウー、チエ
(72)【発明者】
【氏名】シュミット、トルステン
(72)【発明者】
【氏名】ピソーニ、ピエルルイジ
(72)【発明者】
【氏名】デフィリッピ、ジャンカルロ
(72)【発明者】
【氏名】リー、ツォーチ
【テーマコード(参考)】
4J040
【Fターム(参考)】
4J040EF011
4J040GA29
4J040JA13
4J040KA23
4J040MA10
4J040NA06
(57)【要約】
レトルト用途のための積層構造を生成する際に使用するための積層接着剤組成物であって、(A)成分Aとして少なくとも1つのイソシアネート成分と、(B)成分Bとして少なくとも1つのイソシアネート反応性成分と、の混合物を含み、成分Bである少なくとも1つのイソシアネート反応性成分が、(Bi)少なくとも1つのシリルポリマー、および(Bii)少なくとも1つのポリオール化合物、ならびに上記の積層接着剤組成物を使用して作製された積層構造を含む、積層接着剤組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
部分シリルポリマーであって、
(a)少なくとも1つのポリオール化合物と、
(b)部分シリルポリマーを形成するための少なくとも1つのイソシラン化合物と、の反応生成物を含む、部分シリルポリマー。
【請求項2】
前記少なくとも1つのポリオール化合物が、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリウレタンポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリアクリレートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、天然油ポリオール、およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの化合物である、請求項1に記載の部分シリルポリマー。
【請求項3】
最終シリルポリマーであって、
(i)請求項1に記載の部分シリルポリマーと、
(ii)最終シリルポリマーを形成するための少なくとも1つのアミノシラン化合物と、の反応生成物を含む、最終シリルポリマー。
【請求項4】
シリルポリマーを生成するプロセスであって、
(I):第1のステップにおいて、
(Ia)少なくとも1つのポリオール化合物と、
(Ib)少なくとも1つのイソシラン化合物と、を反応させるステップであって、前記第1の反応ステップ(I)が、第1の所定の温度で、かつ前記第1の温度で第1の所定の期間実施されて、部分シリルポリマーを形成する、反応させるステップと、
(II)第2のステップにおいて、
(IIa)ステップ(I)から生じる前記部分シリルポリマーと、
(IIb)少なくとも1つのアミノシラン化合物と、を反応させるステップであって、第2の反応が、第2の所定の温度で、かつ前記第2の温度で第2の所定の期間実施されて、最終シリルポリマーを形成する、反応させるステップと、を含む、プロセス。
【請求項5】
溶剤系レトルト接着剤組成物であって、
(A)成分Aとして少なくとも1つのイソシアネート化合物と、
(B)成分Bとして少なくとも1つのイソシアネート反応性成分と、の混合物を含み、成分Bである前記少なくとも1つのイソシアネート反応性成分が、(Bi)請求項1または請求項3に記載の少なくとも1つのシリルポリマーと、
(Bii)少なくとも1つのポリオール化合物と、を含む、接着剤組成物。
【請求項6】
成分Aである前記少なくとも1つのイソシアネート成分が、少なくとも1つの脂肪族系イソシアネート化合物であるか、または成分Aである前記少なくとも1つのイソシアネート成分が、(1)少なくとも1つの脂肪族系イソシアネート化合物と(2)少なくとも1つの芳香族系イソシアネート化合物と、のブレンドである、請求項5に記載の接着剤組成物。
【請求項7】
成分Aである前記少なくとも1つのイソシアネート成分が、(1)少なくとも1つのイソシアネート化合物と、(2)少なくとも1つのポリオール化合物と、の反応生成物を含む、イソシアネートプレポリマーである、請求項5に記載の接着剤組成物。
【請求項8】
成分(Bii)である前記少なくとも1つのポリオール化合物が、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリウレタンポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリアクリレートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、天然油ポリオール、およびそれらのブレンドからなる群から選択される、請求項5に記載の接着剤組成物。
【請求項9】
酢酸エチル、メチルエーテルケトン、トルエン、およびこれらのうちの2つ以上の混合物からなる群から選択される溶剤をさらに含む、請求項5に記載の接着剤組成物。
【請求項10】
触媒、界面活性剤、レベリング剤、消泡剤、充填剤、レオロジー調整剤、着色顔料、およびこれらのうちの2つ以上の混合物からなる群から選択される添加剤をさらに含む、請求項5に記載の接着剤組成物。
【請求項11】
積層を生成するための溶剤系ポリウレタンレトルト接着剤組成物を生成するためのプロセスであって、
(A)成分Aとして少なくとも1つのイソシアネート成分と、
(B)成分Bとして少なくとも1つのイソシアネート反応性成分と、を混合することを含み、成分Bである前記少なくとも1つのイソシアネート反応性成分が、(Bi)請求項1または請求項3に記載の少なくとも1つのシリルポリマーと、
(Bii)少なくとも1つのポリオール化合物と、を含む、プロセス。
【請求項12】
積層であって、
(α)フィルムまたは基材の少なくとも1つの第1の層と、
(β)フィルムまたは基材の少なくとも第2の層と、
(γ)(1)前記少なくとも1つの第1の層(α)、(2)前記少なくとも1つの第2の層(β)、または(3)前記少なくとも1つの第1の層(α)および前記少なくとも1つの第2の層(β)の両方の片側の表面の少なくとも一部に配置された請求項5に記載の接着剤組成物の少なくとも1つの層と、を含む、積層。
【請求項13】
請求項12に記載の積層から作製されたレトルト物品。
【請求項14】
積層を生成するプロセスであって、
(A’)(α)フィルムまたは基材の少なくとも1つの第1の層と、(β)フィルムまたは基材の少なくとも1つの第2の層と、(γ)請求項5に記載の接着剤組成物と、を提供するステップと、
(B’)ステップ(A’)の前記接着剤組成物(γ)を、(1)前記少なくとも1つの第1の層(α)、(2)前記少なくとも1つの第2の層(β)、または(3)前記少なくとも1つの第1の層(α)および前記少なくとも1つの第2の層(β)の片側の表面の少なくとも一部に塗布するステップであって、前記接着剤組成物が、接着剤層を形成する、塗布するステップと、
(C’)前記第1および第2の層を、多層積層構造を形成するのに十分な前記第1および第2の層の間にはさまれたステップ(B’)の前記接着剤層と組み合わせるステップと、
(D’)ステップ(C’)の前記多層積層構造を硬化させて、前記第1および第2の層を一緒に結合して、硬化した多層積層生成物を形成するステップと、を含む、プロセス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イソシアネート成分およびイソシアネート反応性成分を含む、接着剤組成物に関し、より具体的には、本発明は、イソシアネート反応性成分が、少なくとも1つのシリルポリマーと、少なくとも1つのポリオール化合物(ヒドロキシル基含有化合物)と、を含む、溶剤系積層接着剤組成物に関する。接着剤組成物は、レトルト用途に特に有用である。
【背景技術】
【0002】
これまで、様々な二成分(2K)タイプのポリウレタン(PU)接着剤組成物が、様々な用途で使用するために生成されている。当技術分野で知られているように、2K PU組成物は、ポリイソシアネート化合物などのイソシアネート成分と、ポリオール化合物などのイソシアネート反応性成分との反応混合物に基づいており、そのような2K PU組成物は、積層を生成するための接着剤として長い間使用されてきた。2つの成分(例えば、ポリイソシアネートおよびポリオール)を混合すると、ポリイソシアネートおよびポリオールが反応して、硬化ポリウレタン接着剤を形成し、この反応により、多くの種類のフィルムおよび基材を結合する強力な接着剤結合を形成することができる。
【0003】
接着促進剤を含有する溶剤系ポリウレタン接着剤組成物は、レトルト用途の接着剤組成物として有用であることが知られている。「高性能」用途(例えば、レトルト用途)において食品包装で使用される一般的な接着促進剤は、エポキシシランに基づいている。最近の政府の発表(例えば、EU委員会から)は、エポキシシランおよび/または同様の誘導体に基づく接着促進剤が潜在的変異原性を有し、近い将来、接着促進剤のこのファミリーは、EUの規制によって禁止または制限される可能性があることを接着業界に警告している。結果として、接着剤組成物中の接着促進剤としてのエポキシシランの使用を禁止すること、および接着剤組成物中の接着促進剤としてのエポキシシランの非存在により、そのような接着剤組成物から作製された積層が必要とする性能、特に高性能またはレトルト用途で使用するために必要とする性能を達成する接着剤組成物に問題を起こし得る。したがって、高性能またはレトルト用途で使用でき、既知のエポキシシラン促進剤と同等かそれ以上の性能を発揮する代替の接着剤組成物および/または代替の接着促進剤を提供することが望ましい。
【0004】
様々な用途で使用するための2Kポリウレタン接着剤組成物に関して当技術分野でいくらかの進展があったが、接着剤の分野ではまだ開発の余地がある。特に、接着剤組成物が、例えば、一般的な柔軟な食品包装用途だけでなく、レトルト用途でも使用するためのホイルベースの複合積層フィルム構造および積層物品または生成物を生成するために適切に使用できるように、例えば、結合強度、成形性、および耐熱性が向上した特性を示す積層接着剤組成物を提供することが依然として望まれる。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的のうちの1つは、レトルト用途およびレトルト用途と同様の他の用途で使用するために設計された接着剤組成物を提供することである。
【0006】
本明細書に記載の本発明は、2つ以上のフィルム、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、またはシーラント層としてプロピレンもしくはエチレンに基づくコポリマーを用いた金属ホイルベースの積層構造と、ポリエチレンテレフタレート(PET)の外層、金属ホイルの第1の上部中間層、ナイロンの第2の下部中間層、および無延伸ポリプロピレン(CPP)の内層を備えた4層構造と、に基づく薄い多層フィルム可撓性積層を調製するのに有用である接着剤組成物の調製および使用に関する。形成された積層は、結合強度性能の低下を最小限に抑えるとともに、フィルム積層がレトルト処理条件(例えば、121℃で1時間~2時間、132℃で30分間~45分間、および/または135℃で30分間~45分間)に耐えることができる性能特性を維持できる必要がある。本発明の接着剤組成物は、例えば、食品パウチ、すぐに食べられる食事、缶コーティングなどで使用するための有用性を有する。
【0007】
一実施形態では、本発明は、(a)少なくとも1つのポリオール化合物(例えば、少なくとも1つのポリエステルポリオール)と、(b)「部分シリルポリマー」(本明細書では「PSP」と略記する)を形成するための少なくとも1つのイソシラン化合物と、の反応生成物に基づくシラン変性ポリマーまたはシリルポリマーを含む。
【0008】
別の実施形態では、本発明は、(i)前述のPSPと、(ii)「最終シリルポリマー」(本明細書では「FSP」と略記する)を形成するための少なくとも1つのアミノシラン化合物と、の反応生成物に基づくシラン変性ポリマーまたはシリルポリマーを含む。
【0009】
さらに別の実施形態では、本発明は、(I)第1の反応ステップにおいてPSPを予備形成することと、次に(II)第2のステップにおいて、第1のステップのPSPをアミノシラン、および/またはその誘導体と反応させることと、を含むプロセスに関する。
【0010】
さらに別の実施形態では、本発明は、(A)少なくとも1つのイソシアネート成分と、(B)少なくとも1つのイソシアネート反応性成分と、の混合物を含み、少なくとも1つのイソシアネート反応性成分が、(Bi)上記のPSPおよび/または上記のFSPなどのシリルポリマーと、(Bii)少なくとも1つのポリオール化合物と、を含む、接着剤組成物を含む。
【0011】
なおさらに別の実施形態では、本発明は、積層であって、(α)フィルムまたは基材の少なくとも1つの第1の層(一次層)、(β)フィルムまたは基材の少なくとも1つの第2の層(二次層)、および(γ)第1および第2の層を一緒に結合するための上記の接着剤組成物の少なくとも1つの層を含み、接着剤組成物が、(1)第1の層、(2)第2の層、または(3)第1の層および第2の層の両方の片側の表面の少なくとも一部に配置される、積層を含む。
【0012】
さらに別の実施形態では、本発明は、上記の積層から作製されたレトルト物品を含む。
【0013】
好ましい実施形態では、本発明は、シリルポリマーを生成するプロセスであって、
(I)第1のステップにおいて、
(Ia)少なくとも1つのポリオール化合物と、
(Ib)少なくとも1つのイソシラン化合物と、を反応させるステップであって、第1の反応ステップ(I)が、第1の所定の温度で、かつ前述の第1の温度で第1の所定の期間実施されて、PSPを形成する、反応させるステップと、
(II)第2のステップにおいて、
(IIa)ステップ(I)から生じるPSPと、
(IIb)少なくとも1つのアミノシラン化合物と、を反応させるステップであって、第2の反応ステップ(II)が、第2の所定の温度で、かつ前述の第2の温度で第2の所定の時間実施されて、FSPを形成する、反応させるステップと、を含む、プロセスを含む。
【0014】
さらに他の実施形態では、本発明は、上記の接着剤組成物、および上記の積層を作製するプロセスを含む。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書における「レトルト条件」とは、食品が蒸気または他の加熱方法によって容器に密封された後の食品の滅菌を意味する。通常、滅菌温度は230°F(110℃)~275°F(135℃)で変化する。
【0016】
本明細書における「イソシラン」とは、イソシアネート官能基およびシラン官能基を有する化合物を意味する。
【0017】
本明細書における「シリルポリマー」とは、少なくとも1つのシラン基を有するシラン変性化合物またはポリマーを意味する。
【0018】
本明細書における「部分シリルポリマー」とは、(Ia)少なくとも1つのポリオール化合物と、(Ib)少なくとも1つのイソシラン化合物と、の反応によって形成されるポリマーを意味する。
【0019】
本明細書における「最終シリルポリマー」とは、(IIa)上記の部分シリルポリマーと、(IIb)少なくとも1つのアミノシラン化合物と、の反応によって形成されるポリマーを意味する。
【0020】
この明細書全体で使用されているように、以下に示す略語は、文脈で明確に示されていない限り、次の意味を有する:「=」は「等しい」を意味し、@は「~で」を意味し、「<」は「未満」を意味し、「>」は「より大きい」を意味し、「e.g.」は「例えば」を意味し、g=グラム、g/mまたは「gsm」=平方メートルあたりのグラム数、g/m=1立方メートルあたりのグラム数、mg=ミリグラム、kg=キログラム、Da=ダルトン、L=リットル、mL=ミリリットル、g/L=リットルあたりのグラム数、m=メートル、μm=ミクロン、mm=ミリメートル、cm=センチメートル、min=分、s=秒、hr=時間、m/min=1分あたりのメートル、kW=キロワット、mm/分=1分あたりのミリメートル、℃=摂氏度、mPa.s=ミリパスカル-秒、PSI=平方インチあたりのポンド数、MPa=ミリパスカル、mm=ミリメートルの2乗、%=パーセント、eq%=同等のパーセント、およびwt%=重量パーセントを意味する。
【0021】
特に明記されていない限り、すべてのパーセンテージ、部、比率、および同様の量は、重量で規定される。本明細書に記載されたすべてのパーセンテージは、特に指示がない限り、重量パーセント(重量%)である。
【0022】
温度は摂氏度(℃)であり、「周囲温度」または「室温」とは、特に明記しない限り、20℃~25℃を意味する。
【0023】
接着剤の分野では、二液型(二成分型)接着剤系または接着剤組成物を作製することは、イソシアネート成分(本明細書では「成分A」)を含む第1の部分を提供すること、イソシアネート反応性成分(本明細書では「成分B」)を含む第2の部分を提供すること、次に成分Aと成分Bとを合わせるか、または混合して、二液型反応混合物接着剤系または接着剤組成物を形成する。
【0024】
広範な一実施形態では、本発明は、上記のように、成分Aであるイソシアネート成分と、成分Bであるイソシアネート反応性成分と、を含む積層を生成するための溶剤系ポリウレタンレトルト接着剤組成物に関する。しかしながら、本発明では、(Bi)少なくとも1つのシリルポリマーと、(Bii)少なくとも1つのポリオール化合物と、の組み合わせを含む新規の成分Bが使用される。
【0025】
部分シリルポリマー
一実施形態では、本発明の部分シリルポリマー(PSP)は、ポリオール化合物とイソシラン化合物とを反応させることによって生成される。ポリオール化合物は、ポリオール化合物上に存在するヒドロキシル基と、イソシラン化合物のイソシアネート官能基と、の反応を介してイソシラン化合物と反応し、化合物の配合物または組成物混合物を含む反応生成物を形成する。上記のポリオール/イソシラン反応中に、ポリオール化合物のポリオール官能基のすべてではないがいくつかがイソシラン化合物のイソシアネート官能基と反応するため、組成物混合物が形成される。したがって、上記のポリオール/イソシラン反応から生じる反応生成物、すなわち、PSPは、少なくとも1つのシリルポリマー(すなわち、少なくとも1つのシラン官能基を含む化合物)と、残留未反応ポリオール化合物および/または残留未反応イソシラン化合物と、を含む配合物または組成物混合物である。PSPのOH数は、一般に、一実施形態では1~100、別の実施形態では2~50、さらに別の実施形態では2~30である。
【0026】
本発明のPSPを調製するのに有用なポリオール化合物は、例えば、単一の化合物、または2つ以上の化合物の組み合わせ、ブレンドもしくは混合物を含むことができる。例えば、ポリオール化合物は、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリウレタンポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリアクリレートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、天然油ポリオール、およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの化合物である。
【0027】
本発明のPSPを調製するのに有用なイソシラン化合物は、例えば、イソシアナート-エトキシ-シラン、イソシアナート-メトキシ-シラン、およびそれらの混合物を含むことができる。1つの好ましい実施形態では、本発明において有用なイソシラン化合物は、例えば、イソシアナート-エトキシ-シランである。他の実施形態では、イソシラン化合物は、必要に応じて任意の添加剤と組み合わせて使用することができる。
【0028】
別の好ましい実施形態では、イソシラン化合物は、例えば、SILQUEST(商標)A-LINK-25(ガンマ-イソシアナートプロピルトリ-エトキシシラン)、SILQUEST(商標)A-LINK-35(ガンマ-イソシアナートプロピルトリメトキシシラン)、およびそれらの混合物を含む1つ以上の市販の化合物を含むことができ、分子量247.3を有するSILQUEST(商標)A-LINK-25および分子量205.2を有するSILQUEST(商標)A-LINK-35の両方は、Momentive Incから入手可能である。
【0029】
一般に、本発明のPSPを形成するプロセスは、例えば、(a)少なくとも1つのポリオール化合物と、(b)少なくとも1つのイソシラン化合物と、を反応させることを含む。イソシラン化合物の濃度は、反応混合物中の総成分に基づいて、一実施形態では0.1重量%~10重量%、別の実施形態では0.1重量%~5重量%、さらに別の実施形態では0.1重量%~3重量%である。他の任意の材料、添加剤または薬剤を、上記の成分(a)および/または(b)に加えることができる。
【0030】
最終シリルポリマー
一実施形態では、FSPは、(i)上記のPSPと、(ii)少なくとも1つのアミノシラン化合物と、の反応生成物を含む。成分(i)のPSPは、上記で説明されている。成分(ii)の少なくとも1つのアミノシラン化合物(すなわち、シラン基およびNH基の両方を含む化合物)は、例えば、Momentive Companyから入手可能なアミノシラン化合物であるSILQUEST(商標)A1100を含むことができる。上記反応混合物で使用されるアミノシラン化合物の量は、反応混合物中の成分の総重量に基づいて、一般的な一実施形態では0.1重量%~5重量%、別の実施形態では0.1重量%~3重量%、およびさらに別の実施形態では0.2重量%~2重量%の範囲であり得る。
【0031】
本発明のFSP、すなわち上記のPSP/アミノシラン反応から生じる反応生成物は、少なくとも1つのシリルポリマー(すなわち、少なくとも1つのシラン官能基を含む化合物)と、残留未反応ポリオール化合物および/または残留未反応アミノシラン化合物と、を含む配合物または組成物混合物である。PSPのOH数は、一般に、一実施形態では1~100、別の実施形態では2~50、さらに別の実施形態では2~30である。
【0032】
広範な一実施形態では、本発明のFSPを作製するためのプロセスは、第1に、上記のように、予備形成されたポリマーまたはヒドロキシル基で終端されたポリマーの少なくとも1端を有するプレポリマーであるPSPを調製することと、次に、第2に、PSPをアミノシラン化合物と反応させることと、を含み、第1および第2の反応が、別々の温度および別々の期間で実施される。別の実施形態では、本発明のFSPを形成するプロセスは、一般に、FSPを形成するために、例えば、(i)上記のPSP、およびPSPと組み合わせた任意に1つ以上の他の異なるポリオール化合物と、(ii)少なくとも1つのアミノシラン化合物と、を反応させることを含む。好ましい実施形態では、アミノシラン化合物は、さらなる反応性添加剤としてPSPにブレンドされる。
【0033】
例えば、別の好ましい実施形態では、FSPを作製するためのプロセスは、以下の2ステッププロセスであって、
ステップ(I)第1のステップにおいて、
(Ia)少なくとも1つのポリオール化合物(例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールまたはそれらのブレンドなどのヒドロキシル化合物)と、
(Ib)少なくとも1つのイソシラン化合物と、を反応させるステップであって、第1の反応ステップ(I)が、第1の所定の温度で、かつ前述の第1の温度で第1の所定の期間実施されて、PSPを形成する、反応させるステップと、
ステップ(II)第2のステップにおいて、
(IIa)ステップ(I)および任意に他の異なるポリオール化合物から生じるPSPと、
(IIb)少なくとも1つのアミノシラン化合物と、を反応させるステップであって、第2の反応が、第2の所定の温度で、かつ前述の第2の温度で第2の所定の時間実施されて、本発明の接着剤組成物の成分B中の最終ヒドロキシル化合物を表す少なくとも1つの化合物を含むFSPを形成する、反応させるステップと、を含む、2ステッププロセスを含む。
【0034】
本発明の上記プロセスの第1のステップ(I)は、一般的な一実施形態では50℃~100℃、別の実施形態では50℃~80℃、および50℃~70℃の第1の所定の温度を含む。加熱時間、すなわち、本発明の上記プロセスの第1のステップにおける第1の所定の時間は、一般的一実施形態では2時間~10時間、別の実施形態では4時間~6時間である。
【0035】
本発明の上記プロセスの第2のステップ(II)は、一般的な一実施形態では50℃~100℃、別の実施形態では60℃~70℃の第2の所定の温度を含む。加熱時間、すなわち、本発明の上記プロセスの第2のステップにおける第2の所定の時間は、一般的な一実施形態では1時間~10時間、別の実施形態では2時間~6時間である。
【0036】
上記の2ステッププロセスによって調製された本発明の得られるFSPは、一般的な実施形態では、残存化合物が少なくとも1つの溶剤である反応器内の樹脂組成物に基づいて、30重量%~100重量%、別の実施形態では40%~80%、さらに別の実施形態では50%~70%の制御された総固形分量を有する。
【0037】
本発明の得られるFSPは、一般的な実施形態では、25℃で1,000mPa.s~30,000mPa.s、別の実施形態では2,000mPa.s~10,000mPa.s、さらに別の実施形態では2,000mPa.s~6,000mPa.sの制御された粘度を有する。
【0038】
FSPの形成においてアミノシラン化合物を使用すると、アミノシラン化合物が金属フィルム、金属酸化物コーティングフィルム、またはポリマーフィルムの反応部位と複合体を形成して接着性を向上させることができるため、有利である。
【0039】
前述のように、FSPを調製するプロセスは、(i)PSPおよび任意に別の異なるポリオール化合物との組み合わせと、(ii)アミノシラン化合物と、を混合および反応させることを含む。一実施形態では、成分(i)および(ii)は、互いに接触させ、一緒に混合されて、FSPを形成する。成分(i)であるPSPと組み合わせる任意のポリオール化合物は、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリウレタンポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリアクリレートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、天然油ポリオール、およびそれらの混合物であり得る。
【0040】
第1の反応において、ポリオール化合物とイソシラン化合物との反応後、および第2の反応においてPSPとアミノシラン化合物との反応後、得られるFSP反応生成物(接着剤組成物の成分Bとして使用された)の所望のOH数は、一実施形態では1~100、別の実施形態では1~50、さらに別の実施形態では1~30、さらに別の実施形態では1~20である。
【0041】
一般に、FSPは、一実施形態では200Da~50,000Da、別の実施形態では10,000Da~30,000Daの分子量を有する。高分子量(例えば、>50,000Da)のFSPを使用すると、FSPコールドの粘度が高くなりすぎて、機能しなくなり、低分子量(例えば、<200Da)のFSPを使用すると、最終的に硬化した接着剤は、EU規制で要望または要求される最終性能を備えていない。
【0042】
有利には、第1の反応においてイソシラン化合物を使用し、第2の反応においてアミノシラン化合物を使用すると、PSPおよび/またはFSPなどの少なくとも1つのシリルポリマーを含有する反応生成物混合物が得られる。ポリオール化合物と組み合わせたシリルポリマーは、接着剤組成物の成分Bとして使用することができ、接着剤組成物に使用される場合、これまでにレトルト用途に使用されたエポキシシラン促進剤を使用して調製された接着剤組成物と同じまたは同様の性能を有する接着剤組成物を生成する。イソシラン化合物は、食品接触が承認されていないため、柔軟な食品包装の接着促進剤としては一般的に使用されていない。しかしながら、本発明で使用されるPSPおよびFSPの合成手順では、接着促進剤(シラン基)を、使用されるポリエステル樹脂の主鎖に連結する。したがって、イソオクタンでの抽出試験は、食品接触のリストに収載されていない分子に対してEU規制によって課せられた制限である10ppbの制限を下回る遊離イソシランのレベルを示している。有利には、本発明のシラン変性接着促進剤は、EU規則および上記の必要な制限に準拠している。
【0043】
接着剤組成物
一般的な一実施形態では、本発明の接着剤配合物または接着剤組成物は、レトルト用途に有用な二液型ポリウレタン接着剤組成物(2K PU接着剤組成物)を含む。例えば、接着剤組成物は、(A)第1の部分または成分Aとして少なくとも1つのイソシアネート成分と、(B)第2の部分または成分Bとして少なくとも1つのイソシアネート反応性成分と、を含む。成分Bである少なくとも1つのイソシアネート反応性成分は、(Bi)上記のPSPおよび/または上記のFSPなどのシリルポリマーと、(Bii)少なくとも1つのポリオール化合物と、を含む。
【0044】
本発明の成分Aであるイソシアネート成分(NCO成分)は、例えば、芳香族イソシアネート化合物、脂肪族イソシアネート化合物、芳香族イソシアネート化合物と脂肪族イソシアネート化合物とのブレンド、プレポリマーイソシアネート誘導体、およびそれらの混合物を含むポリウレタン接着剤組成物を形成する技術で知られている従来のイソシアネート化合物のいずれかを含む。
【0045】
本発明の成分Bであるイソシアネート反応性成分は、例えば、(Bii)少なくとも1つのポリオール化合物(すなわち、ヒドロキシル基含有化合物)との組み合わせで(Bi)上記のPSPおよび/またはFSPの混合物またはブレンドを含み、ポリオール化合物、成分(Bii)が、1つ以上の異なる従来のポリオール化合物を含むことができる。
【0046】
好ましい実施形態では、本発明は、成分Aとしてイソシアネート成分(例えば、芳香族および/または脂肪族化合物)と、成分Bとしてイソシアネート反応性成分、例えば、上記PSP、上記FSP、およびポリオール化合物の混合物と、を含む溶剤系2K PU接着剤組成物を含み、成分Bが、ヒドロキシル末端ポリオール基(OH基)などの反応性基を有し、成分Aのイソシアネートと反応する少なくとも1つの化合物を有する。上記の接着剤組成物に使用される溶剤は、例えば、酢酸エチル、メチルエチルケトン、酢酸メチル、シクロヘキサン、酢酸プロピル、または他の適切な溶剤、もしくは溶剤混合物であり得る。
【0047】
好ましい実施形態では、成分Bで使用されるポリオール化合物、成分(Bii)は、例えば、The Dow Chemical Companyから入手可能なポリオール化合物であるADCOTE(商標)810A EAを含む1つ以上の市販の化合物を含むことができる。
【0048】
接着剤組成物の成分Bであるイソシアネート反応性成分の量は、一般に、接着剤組成物中の成分の総重量に基づいて、一実施形態では5重量%~99.5重量%、別の実施形態では30重量%~98重量%、さらに別の実施形態では50重量%~97重量%の範囲であり得る。
【0049】
本発明は、二液型系に関するが、本発明の接着剤組成物は、接着剤組成物の優れた利点/特性を維持しながら、任意の添加剤の特定機能の性能を可能にする、多種多様な任意の添加剤とともに配合されてもよい。2K PU接着剤組成物に添加することができる任意の成分、化合物、薬剤または添加剤は、成分A、成分B、または成分AとBとのブレンドに加えることができる。例えば、一実施形態では、接着剤組成物中の有用な任意の添加剤は、ガスおよび水スカベンジャー、相溶化剤、化学レオロジー調整剤、充填剤、ポリマー樹脂、鎖延長剤、触媒などのさらなる接着促進剤を含み得る。
【0050】
広範な一実施形態では、本発明の積層接着剤組成物を作製するためのプロセスは、(A)上記の少なくとも1つのイソシアネート成分と、(B)少なくとも1つのPSPまたは少なくとも1つのFSP、および任意で異なるポリオール化合物と、(C)混合物を作製するために使用される従来の混合装置および手法を介して処理することができる接着剤組成物または接着剤混合物を形成するための任意の成分と、を完全に混合する(mix)、混合する(admix)、またはブレンドすることを含む。成分(A)、(B)および(C)は、適切な固形分を有する接着剤組成物を得て、所望の性能を有する硬化接着剤を提供するために、ヒドロキシル基/イソシアネート基の好ましい特定の混合比で混合されなければならない。一実施形態では、ヒドロキシル基/イソシアネート基のそのような混合比は、100/2~100/15であり、別の実施形態では、100/2~100/30である。成分Aであるイソシアネート成分、および成分Bであるイソシアネート反応性成分は、例えば、一般的な一実施形態では、1対5の化学量論比(NCO対OH)で存在する。
【0051】
成分の混合順は重要ではなく、2つ以上の成分を一緒に混合した後、残存成分を加えることができる。成分の混合の順序は重要ではないが、適切なコーティング重量、固形分、および粘度を提供するために、十分な量の溶剤(例えば、酢酸エチル)が混合物に加えられる。例えば、以下の表Aは、接着剤組成物を調製するための一般的な希釈表を表している。例えば、表Aは、用途において特定の固形分%に対して100/10のヒドロキシル/イソシアネート成分の混合比で、酢酸エチルで希釈することを記載する。
【表1】
【0052】
上記のプロセスに従って接着剤組成物が作製されると、得られた接着剤組成物を使用して積層を調製することができ、これを使用してレトルトパウチを作製する。上記のプロセスに従って生成され、得られた接着剤組成物によって示されるいくつかの有利な特性には、例えば、接着剤組成物がフィルムおよびアルミホイルに対して強い結合接着性能を有することが含まれ得る。例えば、一実施形態では、使用されるイソシアネート成分に基づいて、接着剤組成物の接着性能特性は、パウチをレトルトプロセスにかけた後、4N/15mm~10N/15mmになり得る。接着剤組成物の接着性能特性は、ASTM F904に記載の手順を使用して測定することができる。
【0053】
好ましい実施形態では、本発明は、2K PU接着剤組成物を含み、2K PU接着剤組成物は、例えば、(A)成分Aとして芳香族または脂肪族イソシアネート化合物(NCO基を有する化合物)と、(B)成分Bとして、ヒドロキシル末端ポリオール基(OH基)などの反応性基を有し、イソシアネートと反応する、イソシアネート反応性成分と、を含む。金属/ポリマーフィルム積層などの積層を作製するために使用される本発明の接着剤組成物は、結合強度性能の低下を最小限に抑える(例えば、積層は、134℃で測定して4N/15mm以上の結合強度を1時間維持する)とともに、フィルム積層がレトルト処理条件(例えば、121℃で1時間もしくは2時間、132℃で30分間もしくは45分間、および/または135℃で30分間~45分間)に耐えることができる性能特性を維持することができる。
【0054】
広範な実施形態では、本発明の積層生成物は、本発明の接着剤組成物から形成された接着剤層によって一緒に接着された少なくとも2つのフィルムまたは基材層の組み合わせを含む。例えば、積層生成物は、(α)第1のフィルムまたは基材層、(β)第2のフィルムまたは基材層、ならびに(γ)層(α)および(β)を結合するための上記の接着剤組成物の層を含む。必要に応じて、1つ以上の他の任意のフィルムまたは基材層を使用して、多層積層構造を生成し得る。
【0055】
本発明の第1または一次層(α)は、例えば、プラスチックフィルム、金属化フィルム、金属基材、およびそれらの組み合わせのうちの1つ以上の層を含むことができる。一実施形態では、第1の層(一次フィルム)は、例えば、ポリエステル(PET)フィルム、配向ポリアミド(OPA)フィルム、またはそれらの組み合わせを含むことができる。他の実施形態では、本発明で有用な一次フィルムは、例えば、PET SIOX、PET AlOX、およびそれらの組み合わせを含むことができる。好ましい実施形態では、第1の層(一次フィルム)は、例えば、少なくとも1つのPETフィルム、または化学的にもしくはコーティング処理されたPETの同様の変性バージョンであるフィルムを含むことができる。
【0056】
本発明の多層積層生成物を形成するために使用される第1の層の厚さは、例えば、一実施形態では10μm~50μm、別の実施形態では10μm~30μmであり得る。
【0057】
本発明の第2または二次層(β)は、例えば、アルミホイル、無延伸ポリプロピレン(CPP)、ポリエチレン(PE)、およびそれらの組み合わせのうちの1つ以上の層を含むことができる。好ましい一実施形態では、第2の層(二次層)は、例えば、アルミホイルを含むことができる。
【0058】
本発明の多層積層生成物を形成するために使用される第2の層の厚さは、例えば、一実施形態では5μm~150μm、別の実施形態では5μm~100μm、さらに別の実施形態では5μm~20μm、さらに別の実施形態では5μm~15μm、なおさらに別の実施形態では5μm~9μmであり得る。
【0059】
第1の層(α)および第2の層(β)をそれぞれ結合するために使用される接着剤組成物(γ)の層は、上に記載されている。本発明の多層積層生成物を形成するために第1および第2の層を一緒に結合するように使用される接着剤層の厚さは、例えば、一般的な一実施形態では1μm~10μm、またはコーティング重量に関しては、2g/m~10g/mであり得る。
【0060】
本発明の積層生成物は、上記の接着剤組成物を第1のフィルムまたは基材の表面に塗布して、フィルムまたは基材の表面に接着剤層を形成することによって生成される。接着剤組成物の塗布は、逆グラビア、直接グラビア、スムーズローラーシステム、および他の従来の方法などの一般的な塗布システムによって実施され得る。例えば、接着剤組成物は、溶剤系積層装置を使用するなど、従来の装置およびプロセスを使用して塗布することができる。
【0061】
一般的な実施形態では、本発明の積層物生成物を生成するためのプロセスは、例えば、
(A’)(α)フィルムまたは基材の少なくとも1つの第1の層と、(β)フィルムまたは基材の少なくとも第2の層と、(γ)上記の接着剤組成物と、を提供するステップと、
(B’)接着剤層を形成するためにステップ(A’)の接着剤組成物(γ)を、(1)フィルムもしくは基材の第1の層、(2)フィルムもしくは基材の第2の層、または(3)フィルムもしくは基材の第1の層およびフィルムもしくは基材の第2の層の片側の表面の少なくとも一部に塗布するステップと、
(C’)第1および第2のフィルムまたは基材を一緒に、多層積層構造を形成するのに十分な第1および第2の層の間にはさまれた接着剤層と組み合わせるステップと、
(D’)多層積層構造を硬化させて、第1の層および第2の層を結合して、多層積層生成物を形成するステップと、を含む。
【0062】
一実施形態では、硬化した積層構造の最大の化学的および熱的特性は、例えば、周囲温度で、2日~14日、別の実施形態では2日~10日の硬化期間内に出現する。
【0063】
別の実施形態では、硬化プロセスは、例えば、一実施形態では30℃~60℃、別の実施形態では、30℃~50℃の温度に固定された高温室を使用して増加させることができる。上記の硬化温度での硬化時間は、一実施形態では1日~14日、別の実施形態では2日~10日の期間であり得る。
【0064】
好ましい一実施形態では、積層生成物を作製するために使用されるプロセス条件は、例えば、表Bに記載の条件を含むことができる。
【表2】
【0065】
本発明の接着剤組成物は、例えば、上記のようなレトルト用途のための積層生成物を生成するために有用である。上記のプロセスに従って生成された得られる積層生成物によって示されるいくつかの有利な特性には、例えば、多くの能力が試される構造包装用途に優れた性能の解決策を提供する積層生成物が含まれ得る。これらには、すぐに食べられる食事、食品の冷凍庫から電子レンジまでの要件、ならびに医薬品用途に伴う厳しい要件が含まれる。さらに、本発明の接着剤組成物は、例えば、レトルト可能な透明バリアフィルムへの優れた接着性、製品耐性の向上、耐熱性の向上、耐化学性の向上、および製品ライフサイクルの信頼性の拡大を提供する。本発明の接着剤組成物は、食品接触可能材料に関連するほとんどの米国FDAおよび欧州規則に準拠している。
【実施例
【0066】
以下の実施例は、本発明をさらに詳細に説明するために提示されるが、特許請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。他に指示がない限り、すべての部およびパーセンテージは重量による。
【0067】
以下の発明例(Inv.Ex.)および比較例(Comp.Ex.)で使用される様々な用語および呼称を、以下で説明する。
「PRELAM」は、プレ積層を表す。
「CPP」は、無延伸ポリプロピレンを表す。
「PET」は、ポリエチレンテレフタレートを表す。
「ALU」は、アルミニウムを表し、より具体的にはアルミホイルを表す。
「ホイル」とは、アルミホイルを意味する。
「AKG(商標)」は、CPPであり、Bipack(Company)の商標である。
「CO-REACTANT F(商標)」とは、The Dow Chemical Companyの商標である共試薬を意味する。
「CAT F」は、CATALYST F(商標)を表す。
「AMI」は、アミノシランを表す。
「ISO」は、イソシアネートを表す。
「ISO-PET」は、イソシアネート-ポリエステル樹脂を表す。
【0068】
発明例および比較例で使用される様々な原材料を、以下に説明する。
【0069】
実施例で使用されるイソシアネート化合物は、以下の通りである:
(1)「イソシアネート1」は、脂肪族イソシアネート化合物(例えば、MOR-FREE(商標)200C)である。
(2)「イソシアネート2」は、脂肪族イソシアネート化合物(例えば、CATALYST 9L10(商標)[「9L10」])である。
(3)「イソシアネート3」は、脂肪族イソシアネート化合物(例えば、ADCOTE(商標)811B)である。
(4)「イソシアネート4」は、芳香族イソシアネート化合物(例えば、CATALYST F(商標))である。
【0070】
実施例で使用されるポリマー樹脂は、以下の通りである。
(1)「ポリマー樹脂1」は、標準ポリエステルポリオール樹脂(例えば、ADCOTE(商標)811A EA)である。
(2)「ポリマー樹脂2」は、ポリエステルポリオール樹脂(例えば、ADCOTE(商標)L810)である。
【0071】
実施例で使用される接着促進剤は、以下の通りである。
(1)「添加剤1」は、3-イソシアナートプロピルトリエトキシシランである。
(2)「添加剤2」は、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシランである。
(3)「添加剤3」は、3-アミノプロピルトリエトキシシランである。
【0072】
シラン官能化ポリエステルポリオールを調製するための一般的な手順
一般的なプロセスステップ(1)-PSPの形成
上記の接着促進剤を使用して、上記のポリエステルポリマー樹脂の主鎖を官能化した。例えば、溶剤系ポリエステルポリオール樹脂、例えば、ADCOTE(商標)L810(98.756%w/w)などのポリエステルポリオール樹脂5,925.4gまたは酢酸エチルなどの溶剤中のポリマー樹脂2を、オーバーヘッドスターラーと周囲条件下の温度計とを備えた丸型フラスコ(例えば、6.5Lガラス反応器)に充填した。ガラス反応器内の溶液を油浴中で撹拌しながら約60℃に加熱し、窒素を流し、オーバーヘッド撹拌しながら徐々に70℃に加熱した。溶剤を、0℃未満の温度に維持された冷却器を介して反応器に還流した。ポリマー樹脂2の温度を70℃で30分間~45分間安定させた後、ある所定量の接着促進剤、例えば44.8gのイソシラン化合物SILQUEST(商標)A Link 25(0.746%w/w)または添加剤1をガラス反応器にすばやく充填した。
【0073】
SILQUEST(商標)A Link 25およびADCOTE(商標)L810の発熱反応による温度の漸増が観察された。そのような温度の漸増の後、油浴でガラス反応器の温度を70℃に上げ、得られた反応混合物を70℃に維持した。得られた混合物を様々な時間にわたり反応させ、例えば、使用した異なる反応時間間隔には、2時間、4時間、6時間、および8時間が含まれた。例えば、得られた反応混合物を70℃で6時間維持した。70℃で6時間後、反応溶液中のSILQUEST(商標)A Link 25(イソシラン)の残留イソシアネート基(NCO)の存在を、赤外スペクトル分析によって制御した。赤外スペクトル分析によって測定し、反応溶液中に存在するNCOピークがゼロになったら、このステップ(1)の反応溶液から得られた生成物を70℃から60℃の温度に冷却した。
【0074】
反応混合物の反応発熱は、3℃未満の温度上昇が観察されるように反応器温度が維持されたことを確認する反応器温度のモニタリングによって制御した。シラン官能化ポリエステルポリオール組成物(例えば、ISO-PET-1~ISO-PET-6およびAMI)を調製するための添加剤1~3の充填レベルおよび反応時間を表Iに記載する。所望の反応時間に達したとき、得られた生成物、PSPを室温に冷却し、反応器から注ぎ出し、包装し、後で使用するために保存した。
【0075】
一般的なプロセスステップ(2)-FSPの形成
上記のステップ(1)に記載のすでに形成された生成物(例えば、PSP)を60℃に冷却すると、アミノシラン化合物がガラス反応器に迅速に加えられ、上記のステップ(1)ですでに形成された生成物と混合されて反応混合物が形成された。例えば、29.9gのSILQUEST(商標)A1100(0.498%w/w)の充填をガラス反応器に追加した。得られた混合物を様々な時間にわたり、例えば、2時間、4時間、6時間、および8時間の時間間隔で反応させた。例えば、得られた反応混合物を撹拌しながら60℃で2時間維持した。2時間の反応後、得られた生成物を約30℃に冷却した。次に、得られた生成物をガラス反応器から放出した。上記のように調製し、得られた生成物であるFSPは、58重量%~62重量%の制御された総固形分量を有し、粘度が25℃で6,000~7,000に制御されている。
【0076】
アミノシラン化合物(例えば、添加剤2およびAMI)を使用した場合、上記のステップ(1)に記載のようにこれらの化合物を配合することによって化学反応は起こらなかった。溶剤系ポリエステルポリオールを周囲条件下で丸底フラスコに充填し、窒素を流しながらオーバーヘッド混合しながら徐々に60℃に加熱した。次に、ある所定量の添加剤2を60℃の反応器にすばやく充填し、2時間ブレンドした。2時間、ブレンドおよび加熱した後、得られた生成物を室温に冷却し、注ぎ出し、包装し、後で使用するために保存した。添加剤2の充填レベルおよびブレンド時間を表Iに記載する。
【0077】
上記と同じ手順を使用して、添加剤1(70℃で6時間)と添加剤3(60℃で2時間)とを組み合わせてISO-PET6を調製した(表Iを参照)。
【表3】
【0078】
接着剤組成物を調製するための一般的な手順
上記の表Iに記載の様々なポリエステルポリオール樹脂、すなわち、シラン官能化ポリエステルポリオール組成物(またはシラン変性ヒドロキシル末端ポリマーもしくはシリルポリマー)のそれぞれを、イソシアネート化合物(例えば、MOR-FREE(商標)200Cまたは9L10)と混合して、例えば、表II、IIIおよびIVに記載の接着剤組成物を形成した。
【0079】
実施例1~7-接着剤の調製
表IIに記載の様々なポリオール(例えば、ISO-PET-1~ISO-PET-5およびAMI)をイソシアネート化合物(例えば、MOR-FREE(商標)200Cまたはイソシアネート1)と、実施例(表IIを参照)で明記した比率で混合して、発明例1~発明例7の接着剤組成物を形成した。MOR-FREE(商標)200Cで硬化した接着剤組成物を表IIに記載する。
【表4】
【0080】
実施例8~12-接着剤の調製
表IIIに記載の様々なポリオール(例えば、ISO-PET-2~ISO-PET-5およびAMI)をイソシアネート化合物(例えば、9L10またはイソシアネート2)と、実施例(表IIIを参照)に明記した比率で混合して、発明例8~発明例12の接着剤組成物を形成した。9L10で硬化した接着剤組成物を表IIIに記載する。
【表5】
【0081】
比較例A~C-接着剤の調製
比較のために、表IVに記載の様々な接着剤組成物を実施例(表IVを参照)に明記した比率で調製して、比較例A~Cの接着剤組成物を形成した。MOR-FREE(商標)200Cまたは9L10で硬化した比較接着剤組成物を表IVに記載する。
【表6】
【0082】
実施例13~16-接着剤の調製
表Vに記載のポリオール(例えば、ISO-PET-6)をイソシアネート化合物(例えば、MOR-FREE(商標)200Cおよび/または9L10)と、実施例(表Vを参照)に明記した比率で混合して、発明例13~発明例16の接着剤組成物を形成した。実施例では、Labo Combiマシンを使用した。接着剤組成物を表Vに記載する。
【表7】
【0083】
比較例D~G-接着剤の調製
表VIに記載のポリオール(例えば、ADCOTE(商標)811A EAまたはポリマー樹脂1)をイソシアネート化合物(例えば、MOR-FREE(商標)200Cおよび/または9L10)と、実施例(表VIを参照)に明記した比率で混合して、比較例D~比較例Gの接着剤組成物を形成した。実施例では、Labo Combiマシンを使用した。接着剤組成物を表VIに記載する。
【表8】
【0084】
フィルムを調製するための一般的な手順
手動式積層手順を使用して、2.0ポンド/リーム(3.26g/m)~2.3ポンド/リーム(3.26g/m)の範囲でむらのない接着剤組成物コーティング重量を与えるMeyerロッド#3を使用して、接着剤組成物混合物の各々を一次フィルム(バックホイル)に塗布した。次に、接着剤組成物コーティングを90℃の対流式オーブン内で1分間乾燥させた。
【0085】
積層を調製するための一般的な手順
上記のように接着剤組成物コーティングを乾燥させた後、コーティングを、65℃のニップロール温度および20PSI(0.14MPa)のニップ圧力を有する手動式積層装置を使用して二次フィルム(CPP)で積層した。すべての接着剤組成物について、成型中、固形分は30重量%~32重量%に維持した。2つのフィルム間の結合強度は、積層後、以下に記載の90°T剥離試験を使用して、様々な時間間隔(例えば、積層から1日、3日、および7日後、45℃の高温室に7日間保存した後)で測定した。
【0086】
上記の手順を使用して実施例で作製された積層は、以下の表VIIに記載の機械パラメータに従って作製された多層積層であった。
【表9】
【0087】
以下の実施例17~実施例32および比較例H~Nの積層には、イソシアネート化合物(例えば、MOR-FREE(商標)200C、9L10、ADCOTE(商標)811B[イソシアネート3]およびCAT F[イソシアネート4])と混合されたポリオール化合物、ISO-PET6の層が含まれる。得られた積層を、同じイソシアネート化合物と混合した標準ADCOTE(商標)811A EAと比較した。
【0088】
PET/ALU/CPP積層は、Labo Combi400マシンを使用して、各層間に4gsm~4.5gsmの接着剤組成物を塗布して調製した。上記の積層を硬化させた後、レトルト試験を行い、レトルト試験の熱サイクルを表Xに示す。
【0089】
実施例17~32および比較例H~N-積層の調製
発明例17~32、PET/ALU/CPP積層構造は、PRELAM構造(The Dow Chemical Companyから入手可能)を使用して作製した。PRELAMは、ADCOTE(商標)577/CO-REACTANT F(商標)を用いて0.00035ミルのアルミホイル上に積層された12μm(48ゲージ)のポリエステル(PET)フィルムを含む多層構造である。積層は、3.26g/m(2.0ポンド/リーム)で実施する。上記のPRELAMに加えて、厚さ3ミルのCPPを使用した。1.5ゲージのアルミホイルも使用して、積層構造を調製した。
【0090】
比較例H~Nでは、コロナ処理で前処理された厚さ12μmのPET層と、厚さ9μmのALU層と、AKGが65μmの厚さであるCPP層と、を使用してPET/ALU/CPP積層構造を作製した。
【0091】
上記の一般的な手順を使用して、様々な積層を調製し、試験した。フィルムの試験結果を表VIII、IXおよびXに記載する。
【0092】
パウチを調製するための一般的な手順
上記の積層を45℃、相対湿度30%で7日間硬化させた後、上記の積層構造を使用してパウチを作製した。積層は、上記のようにPRELAM/CPPおよびPET/ALU/CPPから作製した。9インチ×12インチ(23cm×30.5cm)シートの積層のうちの1つを、一方の層のポリマーフィルムが他方の層のポリマーフィルムと接触するように折り返して、約9インチ×6インチ(23cm×15.3cm)の二重層を得た。フィルムの両端部をペーパーカッターでトリミングして、約5インチ×7インチ(12.7×17.8cm)サイズの折り返し片を得た。フィルムの2つの長辺およびフィルムの1つの短辺を端部でヒートシールして、4インチ×6インチ(10.2cm×15.2cm)の内部サイズを有する完成したパウチを得た。420°F(216℃)で1秒間、40PSI(276kPa)の水圧で、フィルムのヒートシールを行った。
【0093】
各試験のために、2つまたは3つのパウチを作製した。パウチの開放端部から、100±5mLの脱イオン(DI)水を満たした。ヒートシール領域が充填物と接触すると、試験中にヒートシール不良を引き起こし得るので、ヒートシール領域上への充填物が接触しないようにした。充填後、パウチの内側への空気の封じ込めを最小限に抑える様式で、パウチの上部を密封した。試験中にパウチの漏れを引き起こす密封部に傷がないことを確実にするために、パウチの4側面すべてのシールの完全性を検査した。少しでも欠陥のあるパウチは、廃棄し、欠陥のないパウチと交換した。場合によっては、積層の傷に印を付けておき、試験中にさらなる傷が新たに発生したか否かを識別した。脱イオン水で満たされたパウチを密封した後、パウチを以下に記載のレトルト試験にかけた。
【0094】
試験手順
結合強度測定
幅15mmの細片にカットした積層試料を、50Nロードセルを備えたThwing Albert(商標)QC-3A剥離試験機上で、0.7N/mmの速度で引っ張る90°T剥離試験を行った。積層内の2つのフィルムが分離(剥離)したときに、引っ張り中の力の平均を記録した。フィルムのうちの1つが伸びた、または破断した場合、最大力または破断時の力を記録した。値は、3つの別々の試料細片の平均であった。破壊モード(FM)または破壊のモード(MOF)を、以下のように記録した。
「FS」は、フィルムの伸びを指す。
「FT」は、フィルムの裂離または破断を指す。
「DL」は、剥離を指す(例えば、二次フィルムが一次フィルムから分離する)。
「AT」は、接着剤の移動を指す(例えば、接着剤が一次フィルムに接着し損ない、二次フィルムに移動する)。
「AS」は、接着剤の分裂または凝集破壊を指す(例えば、接着剤が一次フィルムおよび二次フィルムの両方にみられる)。
【0095】
レトルト試験手順
DI水含有パウチを、(1)加熱/加圧段階、(2)等温段階、および(3)121℃で1時間、128℃で1時間、または134℃で1時間で設定された等温段階とともに冷却/減圧段階を含むレトルトサイクルを受けるようにプログラムされたレトルトチャンバーに配置した。レトルト試験後、パウチを取り出し、トンネリング、水膨れ形成、層間剥離、漏れなどのいずれの欠陥の程度を、印を付けた既存の傷のいずれかと視覚的に比較した。欠陥の観察は、上記の破壊モードの指定に従って記録した。パウチを切り開き、空にし、周囲条件下で乾燥させた。1つ以上の1インチ(15mm)の細片をパウチから切り取り、前述の標準結合強度試験に従って、積層結合強度を測定した。パウチの中身を取り出した後、できるだけ早く結合強度試験を行った。パウチの内部を検査し、任意の他の視覚的欠陥を記録した。
【0096】
結合強度およびレトルト性能のデータを表VIII、IX、Xに記載する。例えば、表VIIIは、MOR-FREE(商標)200Cで硬化したホイル/CPP積層構造の結合強度およびレトルト性能の結果を記載する。表IXは、9L10で硬化したホイル/CPP積層構造の結合強度およびレトルト性能の結果を記載する。また、表Xは、ADCOTE(商標)811A EAおよびISO-PETと(MOR-FREE(商標)200C、9L10、CAT FおよびADCOTE(商標)811B-Labo Combiの結果)を組み合わせて作製したPET/ALU/CPP積層構造の結合強度およびレトルト性能の結果を記載する。
【表10】
【表11】
【表12】
【0097】
結果の考察
上記の表に報告されている結果は、レトルトの熱サイクル後に測定された結合強度の値を示しており、エポキシシランに基づく標準製品に匹敵する。
【0098】
本発明の接着剤組成物に基づく積層は、レトルト条件で抵抗し、耐え、機能することができる最終パウチを形成した。
【0099】
このプロセスで使用されるシリルポリマーを調製する手順は、食品用途のための非食品承認シランの使用を有利に提供する。
【0100】
他の実施形態
一実施形態では、本発明のPSPは、成分(b)である少なくとも1つのイソシラン化合物を含み、イソシラン化合物は、イソシアナート-エトキシ-シラン、イソシアナート-エトキシ-シラン、またはそれらの混合物を含む。
【0101】
別の実施形態では、本発明の溶剤系レトルト接着剤組成物は、(A)成分Aとして少なくとも1つのイソシアネート成分であって、イソシアネート成分が芳香族イソシアネート化合物、脂肪族イソシアネート化合物、およびそれらの混合物であり得る、イソシアネート成分と、(B)成分Bとして少なくとも1つのイソシアネート反応性成分であって、成分Bである少なくとも1つのイソシアネート反応性成分が、(Bi)少なくとも1つのシリルポリマーおよび(Bii)少なくとも1つのポリオール化合物を含む、イソシアネート反応性成分と、の混合物を含む。ポリオール化合物は、芳香族ポリオール化合物、脂肪族ポリオール化合物、芳香族プレポリマー、脂肪族プレポリマー、およびそれらの混合物であり得る。
【0102】
さらに別の実施形態では、本発明の積層は、(α)フィルムまたはポリエステルフィルムなどの基材の少なくとも1つの第1の層を含む。
【0103】
好ましい実施形態では、本発明の積層は、(α)(1)フィルム、(2)基材、または(3)フィルムと基材の組み合わせを含む少なくとも2つの層を含む、フィルムまたは基材の少なくとも1つの第1の層を含み、本発明の接着剤組成物の層は、層(1)および(2)を一緒に結合するために、(1)、(2)または(3)の層のうちの少なくとも1つの表面に配置される。
【0104】
さらに別の実施形態では、本発明の積層生成物を使用して、レトルト物品を作製する。好ましい実施形態では、レトルト物品は、パウチであり得る。
【0105】
本発明のシリルポリマーを生成するプロセスは、以下の第1および第2のステップであって、(I)第1のステップにおいて、(Ia)少なくとも1つのポリオール化合物と、(Ib)少なくとも1つのイソシラン化合物と、を反応させるステップであって、第1の反応ステップ(I)が、50℃~100℃の第1の所定の温度で、かつ1時間~8時間の第1の所定の時間実施されて、部分シリルポリマーを形成する、反応させるステップと、(II)第2のステップにおいて、(IIa)ステップ(I)から生じる部分シリルポリマーと、(IIb)少なくとも1つのアミノシラン化合物と、を反応させるステップであって、第2の反応が、50℃~70℃の第2の所定の温度で、かつ1時間~4時間の第2の所定の時間実施されて、最終シリルポリマーを形成する、反応させるステップと、を含む、第1および第2のステップを含む。
【0106】
本発明の上記のプロセスは、成分Aを成分Bと混合する混合ステップを含み、この混合ステップは15℃~60℃の温度で実施される。
【0107】
本発明の積層生成物を生成するプロセスは、例えば、ポリエステル樹脂で作製されたフィルムまたは基材の少なくとも1つの第1の層を使用することを含む。
【0108】
なおさらに別の実施形態では、本発明の積層生成物を生成するプロセスは、(i)(a)フィルムまたは基材の第1の層と、(b)フィルムまたは基材の第2の層と、(c)本発明の積層接着剤組成物と、を提供するステップと、(ii)ステップ(i)からの接着剤組成物を、ステップ(i)の第1または第2の層の少なくとも1つの表面の少なくとも一部に塗布して、接着剤層を形成するステップと、
(iii)積層構造を形成するのに十分な接着剤層と第1および第2の層を組み合わせるステップと、
(iv)ステップ(iii)の積層構造を硬化させて、多層積層生成物を形成するステップと、を含む。

【国際調査報告】