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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-01
(54)【発明の名称】医療器具支持装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/02 20060101AFI20230125BHJP
【FI】
A61M25/02 502
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022528255
(86)(22)【出願日】2020-11-02
(85)【翻訳文提出日】2022-06-08
(86)【国際出願番号】 EP2020080645
(87)【国際公開番号】W WO2021099098
(87)【国際公開日】2021-05-27
(31)【優先権主張番号】19383022.1
(32)【優先日】2019-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518164250
【氏名又は名称】バスキュラー バルセロナ デバイシズ,エス.エル.
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロシュ レボロ,エンリケ
(72)【発明者】
【氏名】リューサ メレンデス,ギウ
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA01
4C267AA28
4C267AA32
4C267AA33
4C267BB24
4C267CC07
4C267GG03
4C267GG04
4C267GG05
4C267GG06
4C267GG07
4C267GG08
4C267GG09
4C267GG10
4C267HH22
(57)【要約】
長尺な医療器具を支持するための装置は、ベースと、ベースを手術用タオルに固定するための把持システムと、ベース上に配置されてベースから上方に延在する少なくとも2つの保持部材であって、保持部材が医療器具を支持するように構成されるスリットを有し、それにより、医療器具が保持部材のスリットを挿通して実質的に第1の方向に沿って延在し、少なくとも2つの保持部材のうちの第1の保持部材が、実質的に第1の方向に沿って保持部材のうちの第2の保持部材の背後に配置される、少なくとも2つの保持部材とを備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺な医療器具を支持するための支持装置において、
ベースと、
前記ベースを手術用タオルに固定するための把持システムと、
前記ベース上に配置されて前記ベースから上方に延在する少なくとも2つの保持部材であって、前記保持部材が前記長尺な医療器具を支持するように構成されるスリットを有し、それにより、前記長尺な医療器具が前記保持部材の前記スリットを挿通して実質的に第1の方向に沿って延在し、前記少なくとも2つの保持部材のうちの第1の保持部材が、実質的に前記第1の方向に沿って前記保持部材のうちの第2の保持部材の背後に配置され、前記保持部材の前記スリットが第1のセグメントと第2のセグメントとを備え、前記第1のセグメントが前記第2のセグメントの下方に位置され、前記第1のセグメントが前記第2のセグメントよりも狭い、少なくとも2つの保持部材と、
を備える支持装置。
【請求項2】
前記保持部材が前記ベースと一体に形成される、請求項1に記載の支持装置。
【請求項3】
前記保持部材又は前記保持部材の一部が前記ベースに着脱可能に固定される、請求項1に記載の支持装置。
【請求項4】
前記保持部材が第1の材料から形成され、前記ベースが第2の材料から形成され、前記第1の材料が前記第2の材料とは異なる、請求項3に記載の支持装置。
【請求項5】
前記第1のセグメントがほぼ一定の幅を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の支持装置。
【請求項6】
前記第2のセグメントが略V字形の断面を有する、請求項5に記載の支持装置。
【請求項7】
前記スリットが第3のセグメントを備え、前記第2のセグメントが前記第3のセグメントの下方に位置される、請求項6に記載の支持装置。
【請求項8】
前記第3のセグメントが円形又は略楕円形の断面を有する、請求項7に記載の支持装置。
【請求項9】
前記第1の保持部材は、前記第2の保持部材とは異なる形状及び/又は異なる寸法を有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の支持装置。
【請求項10】
前記把持システムは、前記ベースの第1の縁部から実質的に前記第1の方向に沿って延在する前記ベースの第1の開口によって形成される、請求項1から9のいずれか一項に記載の支持装置。
【請求項11】
前記開口が実質的に正弦曲線である、請求項10に記載の支持装置。
【請求項12】
前記第1の縁部とは反対側の前記ベースの第2の縁部から延在して前記第1の方向に沿って延びる第2の開口を更に備える、請求項10又は11に記載の支持装置。
【請求項13】
保持部材の2つ以上のセットを備え、保持部材の各セットは、実質的に前記第1の方向に沿って第2の保持部材の背後に配置される第1の保持部材を備える、請求項1から12のいずれか一項に記載の支持装置。
【請求項14】
前記長尺な医療器具がガイドワイヤ及び/又はカテーテルである、請求項1から13のいずれか一項に記載の支持装置。
【請求項15】
前記保持部材は、0.254mm~11.3mmの範囲の直径を有する前記長尺な医療器具を受けるように構成される、請求項1から14のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年11月20日に出願された欧州特許出願第19 383 022.1号の利益を主張する。
【0002】
本開示は、一般に、医療器具を支持するための装置に関し、より具体的には、ガイドワイヤ及びカテーテルなどの長尺な医療器具を支持するための支持装置に関する。
【背景技術】
【0003】
今日、医療界の傾向は、患者へのより良いヘルスケア提供のための新たな技術の導入に集中している。開放手術はあまり頻繁に使用されておらず、低侵襲処置が患者及び医師によって現在支持されている。低侵襲処置は、感染のリスクが少なく、回復時間が短く、瘢痕が少なく、患者の痛みが少ないという潜在的な利点を与える。
【0004】
血管内修復、血管形成術などの低侵襲処置は、ガイドワイヤ、カテーテル、バルーン、及び、ステントなどの様々な異なる器具を伴い得る。そのような処置は、静脈又は器官にアクセスするために公知の技術(Seldinger technique:セルディンガー技術)を使用する場合がある。この技術では、動脈にアクセスするために皮膚に小さな穿刺を行なうべく針が使用され、また、検査又は治療を必要とする人間の解剖学的構造の任意の部分に到達するためにガイドワイヤが切開部を通過する(血管形成術、再開通、ステント移植など)。ガイドワイヤは、最初に治療部位に到達してもよい。その後、ガイドワイヤを通過させることによって、治療カテーテル、バルーンカテーテル、又は、ステントを治療部位に送達することができる。専門医は、超音波又は蛍光透視法(X線ビデオ)などの撮像を使用して、医療器具を上記治療部位に案内する。カテーテルを挿入して治療部位に到達させることができるようにするために、拡張器又は導入器を使用して、皮膚の切開が十分に大きくなるようにすることができる。更なる器具を案内するために案内カテーテルを使用することも知られている。
【0005】
したがって、ガイドワイヤは、他の医療器具を導入するために専門医が使用する中空器官の治療部位への通路をもたらす。ガイドワイヤ及び/又は他の医療器具が適所に配置された時点で、それらは一般に適所に留まる必要がある。そうでない場合、手術が適切に実行されない可能性がある。
【0006】
ガイドワイヤ及び/又は他の器具を治療部位の所望の位置に保持すること、又は、ガイドワイヤを所望の位置に保持することは、そのような介入を実行している間において重要な問題である。しかしながら、カテーテル又はガイドワイヤを意図せずに動かすリスクが常に存在する。医療器具の正しい位置が失われれば、外科処置を継続するために、専門医は、ガイドワイヤ及び/又は他の医療器具を手術野(治療部位)に再配置しなければならない。これは、処置を長引かせ、患者及び専門医にとってのリスク、例えば、長時間の麻酔薬又はとりわけ蛍光透視法の使用に起因するX線放射へのより高い暴露によるリスクを増大させ得る。
【0007】
現在、専門医は、介入を実行するときに医療器具を所定位置に固定するために湿潤滅菌タオルの層を使用する典型的な方法を実施する。タオルのかさばる層は制御が困難であり、したがって、器具が移動し易く、したがって信頼できない方法をもたらす。
【0008】
従来技術では、介入中にガイドワイヤ、カテーテルなどを所定位置に保持するための装置が提案されてきた。特に、特許文献1は、外科的設定におけるカテーテル及びガイドワイヤ管理のための装置、システム、及び、方法について言及する。そのような装置は、保持部材ハウジングと、ハウジング内に装着される保持部材とを含み、そのような保持部材は、1つ以上のガイドワイヤ、カテーテルなどを保持することができる。これらの装置は、かなり複雑であり、多数の医療器具が必要とされる血管内処置のために考慮され得る。
【0009】
特許文献2は、カテーテルなどの管状器具にガイドワイヤを装填するための装置について言及する。
【0010】
したがって、医療器具を保持して前述の問題の少なくとも幾つかを解決できる装置が依然として必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第8,523,824号明細書
【特許文献2】米国特許第8,366,638号明細書
【発明の概要】
【0012】
第1の態様では、長尺な医療器具を支持するように構成される装置が提供される。装置は、ベースと、ベースを手術用タオルに固定するための把持システムと、ベース上に配置されてベースから上方に延在する少なくとも2つの保持部材とを備える。保持部材は、長尺な医療器具を保持するように構成されるスリットを有し、それにより、長尺な医療器具は、保持部材のスリットを挿通して実質的に第1の方向に沿って延在する。少なくとも2つの保持部材のうちの第1の保持部材が、実質的に第1の方向に沿って第2の保持部材の背後に配置される。
【0013】
支持装置は、手術用タオルを把持することによって所定位置に固定されてもよい。好ましくは、長尺な医療器具は、保持部材が長尺な器具の前後の2つの位置で保持支持を行なう状態で、長尺な器具の方向で所定位置に固定される。或いは、保持部材のうちの一方は、1つの器具、例えばカテーテルを保持するために使用され、他方は、他の長尺な医療器具、例えばガイドワイヤのために使用され、ガイドワイヤの周囲にカテーテルが配置される。2つの保持部材は、他方の医療器具をしっかりと所定位置に残しつつ、一方の医療器具を移動又は取り外しできるようにする。
【0014】
本明細書中で使用される手術用タオルは、例えば治療領域を区切るために手術で使用される例えば綿を含む、任意のタイプの布又は織物を備えると理解され得る。手術用タオルは、吸収性であっても不透過性であってもよく、使い捨て可能又は再使用可能であってもよい。
【0015】
一例において、装置の保持部材は異なる形状のスリットを備えてもよい。保持部材のスリットは、第1のセグメント、第2のセグメント、及び、第3のセグメントを備えてもよく、第1のセグメントは一定の幅を有してもよい。第1のセグメントの幅は、長尺な医療器具の直径の範囲に依存し得る。第2のセグメントは、略V字形の断面を有してもよい。前記第2のセグメントが2つの表面から形成されてもよく、そのような表面は角度を成し、この角度は、長尺な医療器具の直径の範囲に依存し得る。また、第3のセグメントは、円形又は楕円形の断面を有してもよく、断面の寸法は、使用されるべき医療器具の直径に依存し得る。スリットの異なる形状は、汎用性を高めることができるとともに、異なる寸法の長尺な医療器具を保持することによって装置を多くの異なるタイプの介入で使用できるようにする。
【0016】
支持装置は、同じ形状を伴うスリットを有する少なくとも2つの保持部材を備えてもよく、一方、他の例では、装置は、各スリット内に異なる長尺な医療器具を受けるように少なくとも2つの保持部材のうちの一方が他方とは異なる形状及び/又は寸法を有する、保持部材を備えてもよい。更なる例において、支持装置は、2つ以上の長尺な器具のための支持を行なう、2つ以上のスリットを伴う保持部材を備えてもよい。異なる形状及びサイズのスリットを伴う保持部材を有するそのような支持装置は、異なる直径の複数の長尺な医療器具を所定位置に固定するために使用される装置を備える。スリットの異なる形状は、長尺な医療器具を支持するための汎用医療器具支持装置をもたらし、したがって、その有用性を高める。
【0017】
幾つかの例では、保持部材は、支持装置のベースに着脱可能に固定されてもよい。そのような支持装置は、保持部材の交換を可能にするとともに、外科的介入の進行中に必要とされ得る幾つかの異なる器具(異なるタイプ、形状又はサイズの器具)の固定を容易にする。手術用タオルを把持するベースを維持して装置の保持部材のみを変更することは、外科的介入を容易にし、手術時間の望ましい短縮に寄与する。
【0018】
他の例において、少なくとも2つの保持部材は、時間のかからない介入を容易にするシングルユース(すなわち、使い捨て可能)のものであってもよく、したがって、操作者は、既に使用された保持部材を滅菌することなく、その保持部材を取り外して新たな滅菌された保持部材を取り付けることがより容易である。
【0019】
更なる例では、支持装置が提供され、この場合、それを所定位置に固定するための把持システムは、少なくとも1つのチャネルが実質的に第1の軸に沿ってベース上に形成されるようにベース上に作られる切開部によって形成されてもよく、このチャネルは、装置を布地に固定するように正弦曲線形状を有してもよい。チャネルが開口を備えてもよく、この場合、この開口は、第1の軸に対して垂直な装置の側面に位置されてもよく、チャネルは保持部材と並んで形成されてもよい。そのようなチャネルの形状は、装置を手術用タオル又は任意の他の布片に効率的な態様で固定できるようにするとともに、手術野内での長尺な医療器具の位置を維持するために必要とされ得るように操作者が装置をタオルに沿って移動できるようにする。これにより、取り扱いが改善された装置が提供され、操作者がより正確で効率的な介入を実行できるようになる。
【0020】
他の例では、支持装置が提供され、この場合、把持システムが2つのチャネルを備えてもよく、チャネルは、随意的に、保持部材がチャネルの間に位置されるように実質的に第1の軸線に沿って延在してもよく、この2つのチャネルの向きは、2つのチャネルの開口がベースの異なる側面に位置されるように反対に配置されてもよく、側面は第1の軸に対して略垂直に延在する。これは、改善された人間工学的形態を有する支持装置を提供し、したがって、その機能が向上され、その有用性が高められる。
【0021】
幾つかの他の例において、チャネルの開口と隣り合うベースは、粗さが増大した少なくとも1つの部分を備えてもよい。そのような部分の形状及び表面テクスチャは、特にそのような装置が介入中に濡れている場合に、操作者による装置の操作を改善することができる。
【0022】
幾つかの例において、長尺な医療器具は、ガイドワイヤ及び/又はカテーテルであってもよい。
【0023】
本開示のこれら及び他の特徴及び利点は、添付図面及び添付の特許請求の範囲に従って見ると、特定の例の以下の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1a】本開示の一例に係る1つ又は複数の長尺な医療器具を支持装置上に支持するための装置の等角図を示す。
図1b】請求項1の支持装置の上面図を示す。
図2a】装置を所定位置に固定して長尺な医療器具を支持するための把持システムを例示するために同じ例の上面図を示す。
図2b】手術用タオル上に把持された支持装置を例示するために同じ例の等角図を示す。
図3a】2つの着脱可能に固定された保持部材を有する長尺な医療器具を支持するための支持装置の別の例を示す。
図3b図3aに示される例の着脱可能に固定された保持部材を示す。
図3c】同じ支持装置の側面図を示す。
図4a】本開示の例で使用され得る異なる形状の着脱可能に固定された保持部材を示す。
図4b】本開示の例で使用され得る異なる形状の着脱可能に固定された保持部材を示す。
図ac】本開示の例で使用され得る異なる形状の着脱可能に固定された保持部材を示す。
図4d】本開示の例で使用され得る異なる形状の着脱可能に固定された保持部材を示す。
図5】長尺な医療器具を支持するための支持装置の更なる例の等角図を示す。
図6】セルディンガー法のステップを示す。
図7】ガイドワイヤを支持する支持装置の一例を示す。
図8】カテーテルを支持する支持装置の一例を示す。
図9a】長尺な医療器具を支持するための支持装置の使用の一例を示す。
図9b】長尺な医療器具を支持するための支持装置の使用の一例を示す。
図9c】長尺な医療器具を支持するための支持装置の使用の一例を示す。
図10a】支持装置の更なる例を示す。
図10b】支持装置の更なる例を示す。
図11a】支持装置の更に別の例を示す。
図11b】支持装置の更に別の例を示す。
図12a】支持装置の更に別の例を概略的に示す。
図12b】支持装置の更に別の例を概略的に示す。
図12c】支持装置の更に別の例を概略的に示す。
図12d】支持装置の更に別の例を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1a及び図1bは、長尺な医療器具を支持するための支持装置100の一例の等角図及び上面図を概略的に示す。支持装置100は、ベース200と、把持システム300と、2つの保持部材400とを備える。この例におけるベース200は、平坦部210と、平坦部210の中央に位置される隆起部220とを備える。
【0026】
この特定の例では、保持部材400がベース200と一体的に形成されてもよい。以下により詳細に説明するように、保持部材は、例えばガイドワイヤ又はカテーテルなどの医療器具を保持するのに役立つ。支持装置は、手術台上の所定位置に固定されてもよい。把持システム300は、以下で同様に説明するようにその目的のために使用されてもよい。装置が手術台に固定される場合、装置に保持される医療器具(例えば、ガイドワイヤ、カテーテル)も所定位置に固定され得る。医療器具の計画されていない望ましくない動きを回避することができる。
【0027】
図1aに示されるような、ベース、特にベース200の平坦部210は、ガイドワイヤ挿通用の1つ以上の開口溝230と、把持システム300とを備えてもよい。ガイドワイヤ挿通用の溝230は、ガイドワイヤの端部がカテーテルの開口端を通過するのを容易にするべく、例えばガイドワイヤ500及びカテーテル600などの医療器具を受けるように構成され、すなわち、溝230は、医療専門家がガイドワイヤをカテーテルの開口端に通すことができるように寸法付けられて形成され得る。溝230は、装置100のベース200と一体的に形成されてもよい。この例において、溝230は、特に平坦部から隆起部へのベースの移行の変曲点において、ベース200の中央隆起部220の近くで、把持システムと保持部材との間に形成されるように示される。したがって、中央隆起部の側壁は、ガイドワイヤ挿通処置において支持体として使用されてもよい。
【0028】
溝230は、医療器具の寸法に応じて異なる半径及び深さを有する略半円形の断面を有してもよい。溝230の半径は、溝によって受けられる最大半径 を有する医療器具(カテーテル)の外径と実質的に一致してもよく、また、溝の深さは、カテーテルの外径より大きくてもよい。
【0029】
把持システム300は、装置のベース200と一体的に形成されてもよい。幾つかの例では、ベース200の縁部に開口330が設けられ、開口はベース内へと内側に延びる。したがって、実質的に装置の長さに沿って延在するチャネル320を形成することができる。図1bは、ベース200が正弦曲線形状の2つのチャネル320a,320bを備える装置を示し、各チャネルは反対の縁部から始まって反対方向に延びる。正弦曲線形形状は手術用タオルの把持を容易にし、手術用タオルは、縁部の開口から挿入され得るとともに、チャネル内にしっかりと突き刺さるようにチャネル内に押し込まれ得る。したがって、支持装置は、患者上へと及び/又は患者に隣接してまとわれる手術用タオルに対して固定され得る。したがって、支持装置の位置を固定することができる。そのため、保持部材に固定される医療器具も所定の位置に固定される。更に、装置の操作者がその位置を変更したい場合、そのような正弦曲線形状は、手術用タオル700に対する装置100の比較的滑らかなスライドを可能にする。
【0030】
この例における把持システムは、両方向からの手術用タオルの挿入を可能にする2つのチャネルを含む。また、把持システムは、ユーザ、例えば看護師又は医師による把持を容易にするために粗さが増大した表面を有することができる部分310a,310bを備えてもよい。
【0031】
一例では、支持装置が再利用されるように構成されてもよい。介入後、装置を滅菌して次の介入のために準備することができる。他の例において、装置は、シングルユースであり、1回のみ使用するように構成される。
【0032】
支持装置は、1つ以上の熱可塑性材料から形成されてもよい。適した熱可塑性材料としては、アクリル、ABS、ナイロン、PLA、ポリベンズイミダゾール、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリオキシメチレン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリエチレン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、テフロン(登録商標)、それらの誘導体のいずれか及びそれらの組み合わせが挙げられる。また、支持装置が熱硬化性ポリマーから形成されてもよい。適した熱硬化性ポリマーとしては、ポリエステル、ポリウレタン、ポリウレタン、加硫ゴム、ベークライト、デュロプラスト、尿素-ホルムアルデヒド、メラミン、ジアリルフタレート、エポキシ樹脂、エポキシノボラック樹脂、ベンゾオキサジン、ポリイミド、ビスマレイミド、シアネートエステル、ポリシアンウレート、フラン樹脂、シリコーン樹脂、チオライト、ビニル、これらの誘導体及び組み合わせが挙げられる。また、支持装置は、医療装置の製造で一般的に使用される金属から形成されてもよい。適した金属としては、ステンレス鋼及びチタンが挙げられる。
【0033】
フィンガ340a,340bはいずれも、ベース200の残りの部分よりも高い粗さを有する部分310a,310bを備えてもよい。これは、操作者が容易に把持することができ、更に、特に部分310a,310bが介入中に濡れている或いは生理食塩水又は体液を伴っている場合により正確に保持及び操作され得る支持装置100を提供する。粗部分310a,310bは、それぞれがフィンガ340a,340bの一部であってもよく、チャネルの開口330a,330b付近に位置される。上記部分の形状及び表面テクスチャは、装置が操作者によって容易に保持されるように形成されてもよく、それにより、装置のより効率的な操作がもたらされる。
【0034】
図3a及び図3cに示されるように、支持装置100は少なくとも2つの保持部材410,420を備える。特に、図3aは、保持部材がベース200に着脱可能に固定される例を示す。着脱可能な保持部材410,420はユーザによってカップリング221,222内に配置されてもよく、この場合、カップリングはベース200の隆起部220の一部であってもよい。保持部材は、保持部材410,420をカップリングに固定することによって保持部材をベース200に接続する対応する接続部417,427を備える。この特定の例において、保持部材410,420とカップリング417,427との間のカップリングは、雄-雌カップリングである。この特定の場合には、保持部材410,420が雄カップリング部を有し、ベースが保持部材を受けるための雌カップリング部を備える。勿論、他のカップリング、カップリング部、及び、コネクタも想定し得る。
【0035】
図3bは、保持部材410をより詳細に示す。この例の保持部材410は、開口、スリット411を形成する表面412,413を備える。スリット411は、カテーテル、ガイドワイヤなどの医療器具を受けるために保持部材410の上端に形成される。この例において、スリット411は、3つの異なるセグメント414,415,416を備えるように示されており、各セグメントは異なる形状及びサイズである。
【0036】
スリット411は、一定の幅を伴う小さい開口を有する第1のセグメント414から構成されるように示される。特に、スリット411の表面412,413は、第1のセグメント414に沿って互いに平行に形成され、したがって、介入中に使用され得る医療器具を保持するのに適した一定幅の断面を有する開口を形成する。そのようなセグメント414は、接続ポイント417により近く、すなわち、スリット411の底部又は下側セグメントにあってもよい。スリットの第1のセグメントは、特に、最小断面を有する長尺な器具を保持するために使用することができる。
【0037】
第1のセグメントの上方には、スリット411の第2のセグメント415が示され、この場合、表面412,413は略V字形の断面を形成する。表面は、異なる直径の医療器具を受けるのに適した角度を成してもよい。したがって、保持されるべき器具のタイプに応じて適した角度が選択されてもよい。器具をスリット内へと下方へ押し込むことによって、医療器具が保持され得るようになる。適切な角度は、2°~20°、具体的には3°~15°であってもよい。断面の幅が変化するV字形は、異なる断面の長尺な医療器具を保持できるようにする。医療器具が比較的小さい場合、その医療器具は、第2のセグメント415に沿って保持されず、むしろ最も細いセグメント414に保持される。
【0038】
この例では、別のセグメントである第3のセグメント416が、他の2つのセグメント415,414の上方に形成される。第3のセグメントは、表面412、413によって与えられ得る様々な曲率により形成される円形、楕円形、又は、いくらかCD形状の断面を備える。円形又は楕円形の断面は、カテーテルの標準的な端部を保持するように構成されてもよい。この例に示されるような1つのスリット411内の様々な異なる形状は、医療器具に対する異なる保持効果を伴う装置を提供するとともに、異なるサイズの複数の異なる医療器具が保持部材のスリットに嵌まり込むことができるようにする。
【0039】
スリットは、ガイドワイヤ、カテーテルなどの医療器具を支持するように構成されてもよい。各医療器具は、予期される用途、例えば介入のタイプに応じて異なる寸法を有し、したがって、異なる断面を伴ってスリット内に異なるセグメントを有することにより、任意のタイプの介入に必要な医療器具の保持が可能になる。例えば、一般に使用されるガイドワイヤは、異なる直径、例えば0.038インチ、0.035インチ、0.018インチ、0.014インチを有し得る。ガイドワイヤは、0.254mm(0.010インチ)~0.965mm(0.038インチ)の範囲の直径を有する場合があり、一方、カテーテルは、予期される用途に応じて、例えば3フレンチゲージ(1mm)~34フレンチゲージ(11.33mm)の範囲の直径を有する場合がある。スリットの別の形状及び寸法が後に示される。
【0040】
スリットの寸法(厚さ及び/又は角度及び/又は直径)は、保持されるべき医療器具に関連して選択されてもよい。また、他の態様もそのような装置の保持効率に寄与し得る。保持部材は、医療器具をそのような器具の直径に正確に適合する必要なく保持するように、例えば、可撓性ゴム状材料の使用など、装置の効率にも寄与する材料から形成されてもよい。
【0041】
本明細書に開示される実施形態のいずれにおいて、スリット又はスリットの一部は、粗さを増大させるための特定の処理を受けてもよい。例えば、射出用の型に局所的な化学エッチング処理を行なって、型に局所的にテクスチャを設けることができる。
【0042】
本明細書中に開示される実施形態のいずれかにおいては、スリットの底部付近で、1つ以上の小さな溝が射出に使用される型に設けられてもよい。そのような小さな溝は、支持装置のスリットの側壁に小さな切り欠きをもたらし得る。これらの切り欠きは、最小のガイドワイヤを保持するのを助けることができる。型の溝は、EDM(放電加工)を使用して製造されてもよい。
【0043】
2つの着脱可能に固定された保持部材410,420を備える支持装置100が図3a及び図3cに示される。前述のように、保持部材410,420は、接続部又はコネクタ417,427をカップリング内又はカップリング凹部221,222内に固定することによってベース200上に取り付けられ、また、保持部材のスリット411,421は医療器具を支持するように構成される。図3cが示すように、医療器具、例えばガイドワイヤ500は、その長さに沿う2つのポイントで保持部材410,420のスリット内に固定されて、実質的に第1の軸に沿ってスリット411,421を通じて延在され、この場合、保持部材は、そのような第1の軸に沿って互いの実質的に背後に配置される。この例では、第1の軸線がベースの長手方向の長さに沿って延びることは明らかである。医療器具(この場合にはガイドワイヤ500)を2つのポイントで保持する少なくとも2つの保持部材を備える支持装置100の形態は、医療器具のより強固な保持を行なう。医療器具の強固な支持は、操作者が医療器具の移動を伴うことなく、他の作業を安全且つ効果的に実行できるようにする。したがって、支持装置100は、手術野における固定の利益を享受する医療器具を伴う外科的介入を実行するための安全且つ効果的な方法を提供する。
【0044】
保持部材の可撓性は、スリットのセグメントの異なる断面と組み合わせて、医療器具支持装置が異なる寸法の長尺な医療器具と係合できるようにする。この態様において、保持部材は、1つ、2つ又は3つのセグメントを有するスリットを備えてもよく、この場合、各セグメントは異なる形状の断面を有してもよい。図4a~図4dは、別の形状のスリットを有する保持部材を示す。
【0045】
図4aは、一定の断面を有するスリット431を備える保持部材430を示す。スリット431は、互いに平行な2つの表面432,433によって形成され、それにより、一定の幅を有する断面を形成する。そのようなスリットの幅は、介入中に使用される医療器具の異なる直径に関連して選択されてもよい。例えば、弾性、弾力性、又は、可撓性のゴム状材料のような保持部材の材料は、異なる直径の医療器具の支持に寄与することができ、広範囲の直径の器具のために実装され得る保持部材を提供できる。図4b~図4dに示される保持部材に関しても同様の材料を使用することができる。
【0046】
スリット441を伴う保持部材440が図4bに示される。この例において、スリットは、2つの異なる形状の断面を有する2つのセグメント444,445を備える。第1のセグメント444は、図4aに示されるような一定の幅を伴う小さい断面を有する。第1のセグメントの上方において、第2のセグメント445は、図3bにも記載したように、異なる直径の医療器具を受けるのに適した角度を成す2つの表面442,443によって形成される。
【0047】
図4cは、保持部材450の他の例を示し、この場合、そのような保持部材のスリット451も2つのセグメントを備える。第1のセグメント454は、図4aに示されるような一定の幅を伴う小さい断面を有するが、第1のセグメントの上方には、他のセグメント456が形成される。そのようなセグメントは、図3bにも記載したように、表面452,453によって形成される略O字形の断面を備える。O字形セグメントは、医療器具の直径に基づいて選択される直径を有してもよい。そのようなスリットの他の態様(材料、サイズ、寸法)は、前述の様々な例と同じとなり得る。
【0048】
保持部材460の更に別の例が図4dで与えられる。この例の保持部材460は、互いに隣り合って配置される2つのスリット461a,461bを有する。この場合、2つのスリットは、図3bに示されるような3つの異なるセグメントを共に備えるが、異なる形態を伴う。すなわち、スリット461aは、図4bに示される形態を伴うセグメント464,465を備え、スリット461bはO字形セグメント466を備える。保持部材460は、前述の他の保持部材よりも大きな寸法を有する。この形態は、2つ以上の長尺な器具を同時に装置に係合できるようにする。
【0049】
前述の図は、異なる形状の断面を有する異なるセグメントを備える様々なスリットを備える保持部材を示し、したがって、異なる直径の複数の医療器具と共に実施することができる装置を提供する。前述の装置は、同じ形状を伴うスリットを有する少なくとも2つの保持部材を備えるが、他の別の装置も想定し得る。
【0050】
図5は、ベース200と、ベース200と一体的に形成される把持システム300とを伴う支持装置100を示す。また、装置100は、2つの着脱可能に固定された保持部材410,460も備え、この場合、保持部材410は、保持部材461のスリット461a,460bとは異なるスリット411を備える。特に、保持部材410は、図3bに記載されるようなスリット411を有し、一方、保持部材461のスリット461a、460bの形状は、図4dに示される保持部材のように形成される。そのような保持部材の使用は、装置100を異なる寸法の長尺な医療器具を支持するための汎用装置にし、したがって、装置100の有用性を高める。この例において、保持部材410,460、特に保持部材460は、そのような器具を受けるために利用可能な複数の位置に起因して、複数の長尺な医療器具を支持することができる。保持部材上の異なるスリットの別の組み合わせも装置100のために使用できる。そのような保持部材は、前述のように、装置の効率に寄与する1つ又は複数の材料から形成されてもよい。
【0051】
図6は、器官又は静脈にアクセスするためのセルディンガー技術を示す。別の技術が知られており、セルディンガー技術は、単に医療専門家が静脈などの器官へのアクセスを得ることができる方法の一例として示されるにすぎない。医療専門家は、例えば静脈21(又は他の中空器官)にアクセスするために針20を用いて穿刺を行ない(ステップA)、ガイドワイヤ22が中空針及び皮膚の穿刺孔を通過する(ステップB)。次に、ガイドワイヤ22が静脈又は中空器官の内部に留まる状態で針を引き抜く(ステップC)。外科用ブレードを使用して皮膚の切開を大きくして、カテーテルも静脈に到達できるようにしてもよい(ステップD)。導入カテーテル及びダイレータの使用が知られている。ガイドワイヤは、治療部位に到達するように患者の血管系を通って操向されてもよい。カテーテル(バルーンカテーテル、ステント、処置カテーテル、又は、他のもの)が、選択された部位での調査又は治療を可能にするようにガイドワイヤ上にわたって通り過ぎることによって治療部位へ送達され得る。その後、ガイドワイヤを引き込むことができる(ステップE)。他の介入では、ガイドワイヤが所定位置に留まることができる。介入に応じて、複数のカテーテルを使用することができ、これらのカテーテルを引き込むことができ、その後に、後続のカテーテルを導入してガイドワイヤによって再び案内することができる。
【0052】
様々な介入のために、既に論じたように、ガイドワイヤ及び様々なカテーテルの位置を所定位置に維持することが重要な場合がある。
【0053】
図7図9は、介入中に異なる長尺な医療器具が使用され得る際の、少なくとも長尺な医療器具、例えばカテーテル600及び/又はガイドワイヤ500を保持するための装置100の異なる実施を示す。幾つかの実施についてのみ説明するが、他の実施も想定し得る。装置100は、ベース200と、装置を布、例えば手術用タオルに固定するための把持システム300と、ベース200上に配置されてベースから上方に延びる少なくとも2つの保持部材410,420とを備える。図7では、ガイドワイヤが前後に配置される2つの保持部材に保持される。
【0054】
図8に示されるように、他の介入において又は同じ介入の異なる瞬間において、ガイドワイヤ500の周りに配置されるカテーテル600が装置100によって支持されてもよい。カテーテル600は、近位本体610と、患者の体内に挿入されて治療される必要がある部位に到達するように構成される挿入チューブ620とを備える。カテーテルの本体610はハブ611を備え、ハブ611はネック612を更に備え、ネック612は標準化された直径を有する。介入操作のために日々の実務で使用されるカテーテルは、同じ直径を伴うネック612を有する。したがって、保持部材410,420を有する装置100は、そのようなカテーテルを保持するのに適し得る。この例では、カテーテル600のネック612を装置100に保持するために、少なくとも第3の略円形又は略O字形のセグメント416,426(例えば、図3bに示されるような)を備えるスリット411,421を伴う保持部材410,420が実装される。この例において、カテーテル600は、カテーテルのネック612が保持部材410のスリット411内に固定されて挿入チューブ620の先端が保持部材420のスリット421内に固定されるように、その長さに沿う2つのポイントで握持される。
【0055】
殆どの介入で使用されるカテーテルは、それらの直径が意図する用途に応じて例えば3~34フレンチゲージの範囲である挿入チューブを有する。
【0056】
また、支持装置100は、図9aに示されるように、ガイドワイヤ500及びカテーテル600を保持するために使用されてもよい。この例では、ガイドワイヤ500を保持部材410のスリット411に固定することによって及びカテーテル600を保持部材420のスリット421に固定することによって、ガイドワイヤ500及びカテーテル600が装置100に保持される。カテーテルは、図8に記載されるようにカテーテル600のネック612を固定することによってスリット421内に固定され、また、ガイドワイヤは、図7に記載されるように装置100の保持部材410のスリット411内に固定される。操作者は、ガイドワイヤ500及びカテーテル600をスリットに配置し、その後、それらを固定するためにそのような器具をスリットへと押し下げることができる。この実装100は、一対の長尺な医療器具を保持する効率的な態様をもたらし、この場合、一方の器具が他方の器具に挿通され、その結果、医療器具を所定位置に保持するのではなく、介入の他の態様を操作者が実行するのを容易にすることによって、介入のプロセス全体に対するそのような装置の重要な貢献がもたらされる。
【0057】
別の方法では、ガイドワイヤ500をスリット411に配置することによって及びカテーテル600を保持部材420のスリット421に固定することによって、ガイドワイヤ500及びカテーテル600が装置100上に保持される。カテーテルは、図8に記載されるようにカテーテル600のネック612を固定することによってスリット421内に固定される。しかしながら、この例において、ガイドワイヤ500は、スリット411の第1のセグメント414に固定されず、強く締結されることなくスリット411の第3のO字形セグメント416を通過する。そのような組み付けは、カテーテルがスリット421に固定される状態で、介入の手順に応じて、カテーテル600からのガイドワイヤの交換を容易にする(図9c)。ガイドワイヤのそのような交換が完了すると、操作者1200は、図9aに示されるように、ガイドワイヤをスリット411、特にスリットのセグメント414に再び固定することができる。
【0058】
図10a及び図10bは、支持装置100の更なる例を示す。この例において、保持部材の一方は、他の支持装置100について先に示された保持部材とは異なる。この例の保持部材は、ベース200に着脱可能に固定されてもよい。着脱可能な保持部材470はユーザによってカップリング222内に配置されてもよく、前記カップリングはベース200の隆起部220の一部であってもよい。保持部材470は、カップリング222と嵌合する対応するコネクタ472を備える。この特定の例において、保持部材470とカップリング222との間の取り付けは、雄-雌カップリングである。図示の例のいずれにおいても、保持部材470は、カップリング220にスナップ嵌合されてもよい。
【0059】
保持部材470はベースを更に有し、該ベース上に複数のピン476が設けられる。細い長尺な医療機器をピン476間で保持することができる。互いに隣り合う複数の保持部材を形成するためにピン476の1つ以上の列が設けられてもよい。この特定の例において、保持部材は、複数列のピンが前後に並んだブラシ状又は櫛状の外観を有する。
【0060】
図10bは、ガイドワイヤ500がピン476間にどのように保持され得るかを概略的に示す。ガイドワイヤ500は、カテーテル600を案内するための介入で使用されてもよい。他方の保持部材410では、カテーテル600の近位端部にあるネック612が図10bの状況で保持されている。
【0061】
図11a及び図11bは、別の把持システム300を伴う支持装置100の更に別の例を示す。図示の例では、手術用タオル700がウイング360とベース200との間に把持されて固定されてもよい。ウイング360は、ベース200に対して、具体的には中央部分に対して回動できる。ウイングは、弾性を有してもよく、及び/又は、ばね荷重されてもよい。図示の例では、単一の支持装置100に2つのウイング360が設けられる。初期設定位置では、ウイングがベース200を押さえつけてもよいが、ユーザはウイングを開いてベース200とウイング360との間に手術用タオルを挟むことができる。図示の例では、装置が保持部材の両側に1つのウイングを含む。別の例では、単一のウイング360が使用されてもよく、又は、複数のより小さいウイングが保持部材の片側又は両側で使用されてもよい。
【0062】
更に他の図示しない例では、フィンガ340(例えば図2のような)がベース200の側面に当接できる平坦な内側面を有し得る把持システムが設けられてもよい。そのようなフィンガは、ある程度の可撓性を有してもよく、又は、フィンガをベースと接触させるためのばねを含んでもよい。ユーザは、フィンガを開き、フィンガとベースとの間に手術用タオルの一部を導入することができる。その後、フィンガは手術用タオルを締め付けることができる。
【0063】
本明細書中に開示される例のいずれにおいても、支持装置のベースは略長方形であってもよい。例における支持装置の長さは5~20cmであってもよい。具体的には、支持装置は7~15cmの長さを有してもよい。より具体的には、支持装置は8~12cmの長さを有してもよい。例における支持装置の幅は5~15cmであってもよい。具体的には、支持装置は7~12cmの幅を有してもよい。より具体的には、支持装置は6~9cmの幅を有してもよい。支持装置の高さは1~10cmであってもよい。具体的には、支持装置の高さは3~7cmであってもよい。1つの特定の例において、支持装置は、8~12cmの長さ、6~9cmの幅、及び、3~7cmの高さを有する。
【0064】
図12a~図12dは、支持装置の更に別の例を概略的に示す。図12に示される支持装置1000は、保持部材の複数のセット400A,400B,400C,400Dを備える。この例における保持部材400A~400Dの各セットは、実質的に第1の方向に沿って第2の保持部材の背後に配置される第1の保持部材を備える。この特定の例では、支持装置1000が保持部材の4つのセットを備える。
【0065】
ガイド及びカテーテルを使用して行なわれる血管内処置では、血管アクセスを通じて2つ以上のガイドを同時に使用する益々複雑な処置が開発されてきている。血管アクセスは、導入器又はシースと呼ばれるシステムを介して体内に導入されるガイド、カテーテル、又は、その他の形態の特定の医療機器の入口ポイントであり、前記システムは、これらの機器を血管(動脈又は静脈)内に安定した方法で保持できるようにする。
【0066】
複数の血管、例えば少なくとも3つから4つの血管のカテーテル法をそれらの埋め込みのために連続して必要とするが、一定期間、例えば30分以上の安定化を必要とする有窓エンドプロテアーゼの埋め込みのための処置がある。実際の時間は、カテーテル法及び分枝の埋め込みの速度に依存する。
【0067】
具体的には、エンドプロテアーゼシステムは、大動脈、上腸間膜動脈、2つの腎動脈(左右)及び腹腔幹を治療及び/又はアクセスすることができる。これらのガイドは、通常、操作が非常に正確でなければならず且つ位置の喪失を引き起こす突然の動きを回避するために十分な注意が維持されなければならない同じポート又はアクセス部又は導入器(大腿骨又は腋窩レベルにある)から導入される。
【0068】
ガイドがカテーテルに挿入された時点でガイドの正しい位置が失われないようにするために、ガイド及び/又はカテーテルのそれぞれを安定させてそれらの位置に維持できることが重要である。支持装置1000により、同時に4つのガイド又はガイド/カテーテルの組み合わせの正確な固定を確保することができる。図示の例において、ベース200は、各ガイドの正確な位置の制御を容易にするために各ガイドの識別マーク又は文字を含む。
【0069】
この例では、CTが腹腔幹を示し、SMが上腸間膜を示し、RRが右腎を示し、LRが左腎を示す。これらの文字及び表示を異なる用途のために変更できることは明らかである。別の例では、例えば、2つ又は3つのガイド或いはガイド/カテーテル組み合わせを使用することができ、また、支持装置1000を特定の必要性又は介入に適合させることができる。
【0070】
図12aを参照すると、支持装置1000が保持部材の4つのセットを備える。セット400A~400Dのそれぞれは、長尺な医療機器を同じ医療機器の2つの異なる部分に沿って所定の位置にクランプ又は他の方法で固定することができるように、前後に配置された第1及び第2の保持部材を備える。
【0071】
この例のセット400Aは、腹腔幹にアクセスする長尺な医療機器を定位置に固定することを意図している。ガイドワイヤ500は、前後に配置された両方の保持部材に固定される。ガイドワイヤ510は、保持部材のセット400Bによってガイドワイヤの2つの異なる部分に固定される。この例のガイドワイヤ510は、上腸間膜動脈にアクセス及び/又は治療するために使用することができる。同様に、右腎動脈及び左腎動脈をそれぞれ治療及び/又はアクセスするために使用されるガイドワイヤ520,530は、保持部材のセット400C,400Dによって定位置に固定される。
【0072】
前述の例と同様に、支持装置100は、ベース200を手術用タオルに固定するための把持システム300を含むことができる。
【0073】
図12bに示されるように、支持装置1000は、ガイドワイヤ挿通用に構成された1つ以上の溝230を含んでもよい。カテーテル600のチューブは溝230内に配置されてもよく、ガイドワイヤ500も溝230内に配置されてもよい。溝230を使用して、ガイドワイヤ500をカテーテル600に向かって押し、カテーテルの中に導入することができる。保持部材400Dと把持システム300との間の支持装置100の側面には、ガイドワイヤ挿通用の溝230が1つだけ示されている。同様の溝が、支持装置100の反対側、すなわち保持部材400Aと把持システム300との間に組み込まれてもよい。
【0074】
図12c及び図12dは、カテーテルを保持部材400Aのセットのうちの第1のセットに固定することができ、ガイドワイヤ500を保持部材400Aの同じセットのうちの第2のセットに固定することができる方法を概略的に示す。カテーテル600は、近位本体610と、患者の体内に挿入されて治療する必要がある部位に到達するように構成された挿入チューブ620とを備える。カテーテルの本体610はハブ611を備え、ハブ611はネック612を更に備え、ネック612は標準化された直径を有する。ネック612は、保持部材400Aに固定されてもよい。
【0075】
図12cに示されるように、介入中、カテーテルは、第1の保持部材400Aのクランプ力によって定位置に固定されたままであってもよい。同時に、ガイドワイヤをカテーテルに対して再配置及び移動させることができる。医療専門家は、ガイドワイヤを支持装置から取り外し、ガイドワイヤ500を保持部材400Aのセットのうちの第2のセットに(図12dのように)再配置及び固定することができる。
【0076】
完全を期すために、本開示の幾つかの態様が以下の番号を付した項に示される。
項1.長尺な医療器具を支持するための支持装置において、
ベースと、
ベースを手術用タオルに固定するための把持システムと、
ベース上に配置されてベースから上方に延在する少なくとも2つの保持部材であって、保持部材が長尺な医療器具を支持するように構成されるスリットを有し、それにより、長尺な医療器具が保持部材のスリットを挿通して実質的に第1の方向に沿って延在し、少なくとも2つの保持部材のうちの第1の保持部材が、実質的に第1の方向に沿って保持部材のうちの第2の保持部材の背後に配置される、少なくとも2つの保持部材と、
を備える支持装置。
項2.保持部材がベースと一体に形成される、項1の支持装置。
項3.保持部材又は保持部材の一部がベースに着脱可能に固定される、項1の支持装置。
項4.保持部材がシングルユースできるように構成される、項3の支持装置。
項5.保持部材が第1の材料から形成され、ベースが第2の材料から形成され、第1の材料が第2の材料とは異なる、項3又は4の支持装置。
項6.保持部材の2つ以上のセットを備え、保持部材の各セットは、実質的に第1の方向に沿って第2の保持部材の背後に配置される第1の保持部材を備える、項1から5のいずれか一項の支持装置。
項7.保持部材の4つのセットを備える、項6の支持装置。
項8.ベースは、長尺な医療器具が保持部材の1つ以上のセット内の位置であることを示すための1つ以上の識別マークを備える、項6又は7の支持装置。
項9.1つ以上の保持部材のスリットが第1のセグメントと第2のセグメントとを備え、
第1のセグメントが第2のセグメントの下方に位置され、
第1のセグメントが第2のセグメントよりも狭い、
項1から8のいずれか一項の支持装置。
項10.第1のセグメントがほぼ一定の幅を有する、項9の支持装置。
項10.第2のセグメントが略V字形の断面を有する、項9の支持装置。
項11.第2のセグメントを形成する第1の表面と第2の表面との間の角度が2°~20°である、項10の支持装置。
項12.スリットが第3のセグメントを備え、第2のセグメントが第3のセグメントの下方に位置される、項8から10のいずれか一項の支持装置。
項13.第3のセグメントが円形又は略楕円形の断面を有する、項11の支持装置。
項14.第2のセグメントが円形又は略楕円形の断面を有する、項9の支持装置。
項15.第1の保持部材は、第2の保持部材とは異なる形状及び/又は異なる寸法を有する、項1から14のいずれか一項の支持装置。
項16.把持システムは、ベースの第1の縁部から実質的に第1の方向に沿って延在するベースの第1の開口によって形成される、項1から15のいずれか一項の支持装置。
項17.開口が実質的に正弦曲線である、項16の支持装置。
項18.第1の縁部とは反対側のベースの第2の縁部から延在して第1の方向に沿って延びる第2の開口を更に備える、項16又は17の支持装置。
項19.ベースは、把持のために粗さが増大した部分を有し、随意的に、粗さが増大した部分、項1から18のいずれか一項の支持装置。
項20.ベースは、ガイドワイヤ挿通用に構成される1つ以上の溝を備える、項1から19のいずれか一項の支持装置。
項21.ガイドワイヤ挿通用の1つ以上の溝は、把持システムと保持部材との間に形成されるとともに、実質的に第1の方向に沿って延びる、項20の支持装置。
項22.長尺な医療器具がガイドワイヤ及び/又はカテーテルである、項1から21のいずれか一項の支持装置。
項23.支持装置が複数回使用して滅菌されるように構成される、項1から22のいずれか一項の支持装置。
項24.支持装置がステンレス鋼から形成される、項23の支持装置。
項25.装置がシングルユースできるように構成される、項1から24のいずれか一項の支持装置。
項26.装置がポリマーから形成される、項25の支持装置。
項27.保持部材は、0.254mm~11.3mmの範囲の直径を有する長尺な医療器具を受けるように構成される、項1から26のいずれか一項の装置。
【0077】
本明細書中では幾つかの例のみについて開示してきたが、他の代案、修正、使用、及び/又は、その均等物が想定し得る。したがって、本開示の範囲は、特定の例によって限定されるべきではなく、以下の特許請求の範囲を公正に読むことによってのみ決定されるべきである。
図1a
図1b
図2a
図2b
図3a
図3b
図3c
図4a
図4b
図4c
図4d
図5
図6
図7
図8
図9a
図9b
図9c
図10a
図10b
図11a
図11b
図12a
図12b
図12c
図12d
【国際調査報告】