(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-01
(54)【発明の名称】素子およびその製造方法と、有機半導体レーザダイオード
(51)【国際特許分類】
H01S 5/36 20060101AFI20230125BHJP
H01S 5/026 20060101ALI20230125BHJP
【FI】
H01S5/36
H01S5/026 610
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022528541
(86)(22)【出願日】2020-11-27
(85)【翻訳文提出日】2022-05-17
(86)【国際出願番号】 JP2020044186
(87)【国際公開番号】W WO2021107083
(87)【国際公開日】2021-06-03
(31)【優先権主張番号】P 2019214757
(32)【優先日】2019-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519423895
【氏名又は名称】株式会社KOALA Tech
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】ベンシュイク ファティマ
(72)【発明者】
【氏名】藤原 隆
(72)【発明者】
【氏名】リビエル ジーン チャールズ モーリス
(72)【発明者】
【氏名】小松 龍太郎
(72)【発明者】
【氏名】安達 千波矢
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 賢人
(72)【発明者】
【氏名】武石 信弘
【テーマコード(参考)】
5F173
【Fターム(参考)】
5F173AB13
5F173AB53
5F173AD06
5F173AD11
5F173AH36
5F173AP30
(57)【要約】
【解決手段】基板および少なくとも2つの異なる光電子デバイスを備える素子と、その製造方法が開示される。上記少なくとも2つの異なる光電子デバイスは上記基板上にモノリシックに作製される。また、基板、絶縁回折格子、第1の電極、有機層および第2の電極をこの順序で含む有機半導体レーザダイオードも開示される。
【選択図】
図6-1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板および少なくとも2つの異なる光電子デバイスを備える素子であって、前記少なくとも2つの異なる光電子デバイスが前記基板上にモノリシックに作製される、素子。
【請求項2】
前記少なくとも2つの異なる光電子デバイスが、異なる波長で発光する少なくとも2つの光励起型有機固体レーザである、請求項1に記載の素子。
【請求項3】
前記少なくとも2つの異なる光電子デバイスが、異なる波長で発光する少なくとも2つの有機半導体レーザダイオードである、請求項1に記載の素子。
【請求項4】
前記少なくとも2つの異なる光電子デバイスが、有機固体レーザ、および有機発光ダイオードである、請求項1に記載の素子。
【請求項5】
前記少なくとも2つの異なる光電子デバイスが有機固体レーザダイオードを含み、前記有機固体レーザダイオードが、基板、絶縁回折格子、第1の電極、有機層および第2の電極をこの順序で含む、請求項1に記載の素子。
【請求項6】
前記少なくとも2つの異なる光電子デバイスが有機固体レーザダイオードを含み、素子が下面から発光する請求項1~5のいずれか一項に記載の素子。
【請求項7】
前記少なくとも2つの異なる光電子デバイスが有機固体レーザダイオードを含み、素子が上面から発光する請求項1~5のいずれか一項に記載の素子。
【請求項8】
基板、絶縁回折格子、第1の電極、有機層および第2の電極をこの順序で含む、有機半導体レーザダイオード。
【請求項9】
基板および少なくとも2つの異なる光電子デバイスを備える素子を製造する方法であって、前記少なくとも2つの異なる光電子デバイスを前記基板上にモノリシックに作製することを含む、方法。
【請求項10】
前記素子が基板および少なくとも2つの異なる光電子デバイスを備え、前記少なくとも2つの異なる光電子デバイスが有機固体レーザダイオードを含み、方法が前記基板上に絶縁回折格子を形成してから、前記少なくとも2つの異なる光電子デバイスための有機層を形成することを含む、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板および少なくとも2つの異なる光電子デバイスを備える素子であって、上記少なくとも2つの異なる光電子デバイスが上記基板上にモノリシックに作製される、素子に関する。本発明はまた、上記素子の製造方法と、基板、絶縁回折格子、第1の電極、有機層および第2の電極をこの順序で含む有機半導体レーザダイオードとに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の無機エレクトロニクスでは、機能が異なるデバイスには、異なる結晶性半導体材料と異なる作製プロセスが必要になる。例えば、同一基板上に異なるデバイス(発光ダイオード、レーザダイオード、トランジスタなど)を組み込むには、同一基板上に異なる結晶性無機材料を成長させる必要がある。同一基板上に異なる結晶性の材料を成長させることは、それらが個別の格子定数を持っているため難しい。こういった問題により、汎用性の高い基板の使用と、チップの集積密度に制限が生じ、製造コストが増大する。
【0003】
さらに、従来の無機発光半導体を使用したRGBレーザダイオードの技術には、小型化と量産に関して大きな問題がある。実際、赤色、緑色および青色のレーザダイオードの利得材料は、それぞれGaN、GaInN、AlGaInPである。これらの結晶性の半導体が持つ格子定数は同じではない。したがって、同一基板上に3つの異なるレーザダイオードを成長させることは非常に難しい。こういった問題により、ガラス、プラスチック、紙などの汎用性の高い基板の使用にも制限が生じる。さらに、従来のRGBレーザダイオードを組み込んでコンパクトなシステムを作ろうとしても、コネクタの使用と様々な駆動条件により制限がかかり、それによってチップや高解像度を必要とするマイクロディスプレイの集積密度が大幅に制限される。例えば、バンドギャップエネルギーが異なる緑発光用と赤発光用の2つの材料をモノリシックに集積するには、AlGaInPベースとInGaNベースの両LDを1つの基板に集積するために、接着剤によるボンディングと化学ウェットエッチングプロセスを使用する。究極のチップ小型化に向けて前進するには、各光電子デバイスを、共通の作製プロセスを使用してモノリシックに組み込むことが重要である。
【0004】
一方、最近、有機材料を用いた電流注入半導体レーザダイオードが実証された。特許文献1は、一対の電極、光共振器構造、および1つまたは複数の有機層を含む電流注入有機半導体レーザダイオードを開示している。上記1つまたは複数の有機層は、有機半導体で構成された光増幅層を含む。この光増幅層は、電流が注入されてレーザ光を放出している間、励起子密度分布と共振光学モードの電界強度分布との間に十分な重なりを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これらの状況を考慮して、本発明者らは、無機半導体材料の使用によって生じる上記の問題を解決する、少なくとも2つの異なる光電子デバイスを備える素子を提供することを目的として、たゆみない研究を行ってきた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
たゆみない研究の結果、本発明者らは以下の発明を行った。
(1)基板および少なくとも2つの異なる光電子デバイスを備える素子であって、上記少なくとも2つの異なる光電子デバイスが上記基板上にモノリシックに作製される、素子。
(2)上記少なくとも2つの異なる光電子デバイスが、異なる波長で発光する少なくとも2つの光励起型有機固体レーザである、(1)に記載の素子。
(3)上記少なくとも2つの異なる光電子デバイスが、異なる波長で発光する少なくとも2つの有機半導体レーザダイオードである、(1)に記載の素子。
(4)上記少なくとも2つの異なる光電子デバイスが、有機固体レーザ、および有機発光ダイオードである、(1)に記載の素子。
(5)上記少なくとも2つの異なる光電子デバイスが有機固体レーザダイオードを含み、上記有機固体レーザダイオードが、基板、絶縁回折格子、第1の電極、有機層および第2の電極をこの順序で含む、(1)に記載の素子。
(6)上記少なくとも2つの異なる光電子デバイスが有機固体レーザダイオードを含む、(1)~(5)のいずれか一項に記載の素子であって、下面から発光する素子。
(7)上記少なくとも2つの異なる光電子デバイスが有機固体レーザダイオードを含む、(1)~(5)のいずれか一項に記載の素子であって、上面から発光する素子。
(8)基板、絶縁回折格子、第1の電極、有機層および第2の電極をこの順序で含む、有機半導体レーザダイオード。
(9)基板および少なくとも2つの異なる光電子デバイスを備える素子を製造する方法であって、上記少なくとも2つの異なる光電子デバイスを上記基板上にモノリシックに作製することを含む、方法。
(10)上記素子が基板および少なくとも2つの異なる光電子デバイスを備え、上記少なくとも2つの異なる光電子デバイスが有機固体レーザダイオードを含む、(9)に記載の方法であって、上記基板上に絶縁回折格子を形成してから、上記少なくとも2つの異なる光電子デバイスための有機層を形成することを含む、方法。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】光励起されている、本発明によるモノリシックに集積されたRGB有機固体レーザの図である。
【
図2】モノリシックに集積された、光励起型有機固体レーザ、OLEDおよび有機光検出器の図である。
【
図3】a)特許文献1で使用されているOSLDおよびb)本発明の新規のOSLD設計の概略図である。
【
図4】a)OSLD1、b)OSLD2、c)OSLD3およびd)OSLD4の共振波長におけるDFB共振空洞の電界分布図である。
【
図5】モノリシックに集積されたRGB有機半導体レーザダイオードの概略図である。
【
図6-1】回折格子がITO電極の上にある、a)上面発光検出構成およびb)下面発光検出構成の、モノリシックに集積された有機半導体レーザダイオード、有機発光ダイオードおよび有機光検出器の概略図である。
【
図6-2】回折格子がITO電極の下にある、c)上面発光検出構成およびd)下面発光検出構成の、モノリシックに集積された有機半導体レーザダイオード、有機発光ダイオードおよび有機光検出器の概略図である。
【
図7】モノリシックに集積された赤色、緑色および青色の有機固体レーザのレーザスペクトル図である。
【
図8】a)青色有機固体レーザのレーザスペクトル図、b)OLEDの電流-電圧曲線図、c)OLEDの外部量子効率(EQE)-電流曲線図、d)OLEDの電界発光スペクトル図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の内容を以下に詳細に説明する。各構成要素については、本発明の代表的な実施形態および特定の実施例を参照して以下に説明され得るが、本発明は、これらの実施形態および実施例に限定されない。本明細書の説明において、「~」と表現される数値範囲は、上限および/または下限を含む範囲を意味する。
【0010】
本発明の素子は、基板および少なくとも2つの異なる光電子デバイスを備える。これらの少なくとも2つの異なる光電子デバイスは、上記基板上にモノリシックに作製される。光電子デバイスは、電気を光に、または光を電気に変換する機能を有する。光電子デバイスの例には、光励起型有機固体レーザ(OSL)、有機半導体レーザダイオード(OSLD)、有機発光ダイオード(OLED)、有機光検出器および有機太陽電池が含まれる。本発明の素子内にある少なくとも2つの光電子デバイスは互いに異なっているが、同じ光電子デバイスタイプに属していてもよい。本発明のいくつかの実施形態では、上記少なくとも2つの光電子デバイスは、異なる波長で発光する少なくとも2つの光励起型有機固体レーザである。本発明のいくつかの実施形態では、上記少なくとも2つの光電子デバイスは、異なる波長で発光する少なくとも2つの有機半導体レーザダイオードである。本発明のいくつかの実施形態では、上記少なくとも2つの光電子デバイスは、有機固体レーザと有機発光ダイオードである。本発明の素子は、互いに異なる少なくとも2つの光電子デバイスを備えてさえいれば、その少なくとも2つの光電子デバイスのどちらかと同じ光電子デバイスを少なくとも1つ追加で備えることができる。本発明の素子はまた、有機光検出器、有機電界効果トランジスタ、有機熱発電器などを備え得る。
【0011】
少なくとも2つの異なる光電子デバイスが、一基板上にモノリシックに作製される。本発明のいくつかの実施形態では、少なくとも2つの異なる光電子デバイスが、単一の基板上にモノリシックに作製される。本発明のいくつかの実施形態では、上記少なくとも2つの異なる光電子デバイスは、一体に封止される。本発明のいくつかの実施形態では、上記少なくとも2つの異なる光電子デバイスは、同じ組成の少なくとも1つの共通の有機層を含む。各デバイスの上記共通の有機層は同じ厚さであり得る。本発明のいくつかの実施形態では、上記共通の有機層の数は、少なくとも2つ、少なくとも3つ、または少なくとも4つであり得る。いくつかの実施形態では、上記少なくとも2つの異なる光電子デバイスの互いの間隔は1mm未満である。上記間隔は、10マイクロメートル未満、1マイクロメートル未満または100ナノメートル未満であり得る。
本発明は、以下の4つの態様を含む。
【0012】
(1)発明の第1の態様
(背景)
発光ダイオード(LED)や有機発光ダイオード(OLED)などの従来技術の代わりに、RGBレーザをディスプレイに使用することは、非常に魅力的である。レーザ光源を用いることによって、非常に狭いスペクトル線幅(~0.2nm)による高い色純度と、高い輝度、高いパワー効率が実現し、それらがディスプレイシステムの小型化に貢献する。
【0013】
従来の無機発光半導体を使用したRGBレーザダイオードの技術には、小型化と量産に関して大きな問題がある。実際、赤色、緑色および青色のレーザダイオードの利得材料は、それぞれGaN、GaInN、AlGaInPである。これらの結晶性の半導体が持つ格子定数は同じではない。したがって、同一基板上に3つの異なるレーザダイオードを成長させることは非常に難しい。こういった問題により、ガラス、プラスチック、紙などの汎用性の高い基板の使用にも制限が生じる。さらに、従来のRGBレーザダイオードを組み込んでコンパクトなシステムを作ろうとしても、コネクタの使用と様々な駆動条件により制限がかかり、それによってチップや高解像度を必要とするマイクロディスプレイの集積密度が大幅に制限される。例えば、バンドギャップエネルギーが異なる緑発光用と赤発光用の2つの材料をモノリシックに集積するには、AlGaInPベースとInGaNベースの両LDを1つの基板に集積するために、接着剤によるボンディングと化学ウェットエッチングプロセスを使用する。究極のチップ小型化に向けて前進するには、各光電子デバイスを、共通の作製プロセスを使用してモノリシックに組み込むことが重要である。
【0014】
(発明)
有機半導体を使用すると、無機半導体に固有の問題を解決することができる。実際、有機半導体を使用すると、ガラス、プラスチック、さらには紙など、様々な基板上に高密度のモノリシック回路を作製することが可能になる。この興味深い特徴は、有機半導体がアモルファスであり、結晶である必要がないということによってもたらされる。さらに、有機半導体は、インクジェット印刷や熱蒸着などの量産に適した様々な単純な技術を使用して成膜させることができる。
【0015】
本発明の第1の態様が提供するのは、基板および異なる波長で発光する少なくとも2つの光励起型有機固体レーザ(OSL)を備える素子であって、上記少なくとも2つの有機固体レーザが上記基板上にモノリシックに作製される、素子である。
【0016】
より具体的には、RGBの各光励起型OSLを、同一基板上に同一の作製プロセスを使用してモノリシックに集積することをここに提案する。2色、3色またはそれ以上の色(波長)を集積することが可能である。赤色、緑色および青色の代わりに、またはそれらに加えて、他の色が使用され得る。
【0017】
本発明の第1の態様は、以下の実施形態を含む。
[実施形態1-1]異なる波長(例えば、赤色、緑色および青色)で発光する有機固体レーザが同一基板上に作製される(モノリシック集積)。
[実施形態1-2]可撓性および/または透明性を有する基板へのモノリシック集積。
[実施形態1-3]作製方法:溶液プロセス(インクジェット、スピンコート)および熱蒸着。
【0018】
本発明のいくつかの実施形態では、OSLの構造は、以下で構成される。
1.励起光源
2.基板
3.回折格子
4.有機利得材料(半導体)
5.封止材
【0019】
回折格子は、有機利得材料の上側、または基板の上側かつ有機利得材料の下側に存在し得る。本発明の一実施形態では、基板、回折格子および有機利得材料が、下からこの順序で形成される。本発明の一実施形態では、基板、有機利得材料および回折格子が、下からこの順序で形成される。本発明の一実施形態では、回折格子は有機利得材料と接触している。本発明の一実施形態では、回折格子は基板と接触している。一実施形態では、有機材料は回折格子と接触し、回折格子は基板と接触している。
【0020】
本発明の利点は以下のとおりである。
-モノリシック集積による、究極のチップ小型化に向けたデバイス集積密度の向上、
-可撓性および透明性を有する基板の使用、
-インクジェット印刷や熱蒸着などの量産に適した単純な作製プロセス、
-全有機電子プラットフォームへの大きな前進。
【0021】
図1は、光励起されている、本発明によるモノリシックに集積されたRGB有機固体レーザを示している。
【0022】
(実施例:赤色、緑色および青色の有機固体レーザのモノリシック集積)
赤色、緑色および青色の面発光有機固体レーザ(
図1)を、同一基板ガラス上に、上記3色のための熱蒸着プロセスを使用して作製した。このOSLは、2次分布帰還(DFB)回折格子上に熱蒸着によって成膜してから、サイトップ(登録商標)とサファイアのリッドを使用して封止したエミッタを含んでいる。上記DFB回折格子は、電子ビームリソグラフィと反応性イオンエッチングを使用して二酸化ケイ素の表面に直接刻んだ。
図7は、モノリシックに集積された赤色、緑色および青色の有機固体レーザのレーザスペクトルを示している。青色、緑色および赤色の有機固体レーザの周期はそれぞれΛ=270、310、380nmで、λ=470、511、601nmのレーザ発光を放出する。
【0023】
(2)発明の第2の態様
(背景)
電子部品の小型化によって、スマートウォッチや医療用ハンドヘルドモニタ、ヘッドマウントディスプレイなどといった、ウェアラブルな小型のスマートデバイスで、スマートフォンのほぼ全ての機能を実行することが可能になっている。究極のチップ小型化に向けて前進するには、各光電子デバイスを、共通の作製プロセスを使用してモノリシックに組み込むことが重要である。
【0024】
従来の無機エレクトロニクスでは、機能が異なるデバイスには、異なる結晶性半導体材料と異なる作製プロセスが必要になる。例えば、同一基板上に異なるデバイス(発光ダイオード、レーザダイオード、トランジスタなど)を組み込むには、同一基板上に異なる結晶性無機材料を成長させる必要がある。同一基板上に異なる結晶性の材料を成長させることは、それらが個別の格子定数を持っているため難しい。こういった問題により、汎用性の高い基板の使用と、チップの集積密度に制限が生じ、製造コストが増大する。
【0025】
有機半導体などの革新的な材料を使用すると、無機半導体に固有の問題を解決することができる。実際、有機半導体を使用すると、ガラス、プラスチック、さらには紙など、様々な基板上にモノリシック回路を作製することが可能になる。この興味深い特徴は、有機半導体がアモルファスであり、結晶である必要がないということによってもたらされる。したがって、有機半導体は、スピンコート、インクジェット印刷、および熱蒸着などの様々な単純な技術を使用して成膜させることができる。さらに、複数の有機半導体デバイスをモノリシックに集積することは、全有機電子プラットフォームを早期実現するための非常に重要な特徴になる。
【0026】
今日、例えば有機太陽電池や有機センサ、有機電界効果トランジスタ(OFET)、有機発光ダイオード(OLED)、有機メモリ、有機レーザなど、多くの電子デバイスを有機材料で作製することができる。OLEDと有機光学センサは実用化されており、無機デバイス市場を上回っている。
OSLを全有機電子プラットフォームに集積することによって、センシングやディスプレイなどの用途のデバイス機能を追加し向上させることができる。
【0027】
(発明)
本発明の第2の態様が提供するのは、基板、光励起型有機固体レーザ、および有機発光ダイオードを備える素子であって、上記有機固体レーザおよび上記有機発光ダイオードが上記基板上にモノリシックに作製される、素子である。
【0028】
いくつかの実施形態では、全有機電子プラットフォームにモノリシックに集積された光励起型OSLの実証を目的として、OSL、OLEDおよび有機光検出器が同一基板上に作製される。
【0029】
全有機電子プラットフォームにOSLをモノリシックに集積することをここに提案する。この全有機光電子システムは、光励起型OSL、OLED、有機太陽電池、光学光検出器、有機電界効果トランジスタ、有機メモリおよび有機熱電発電器で構成され得る。
【0030】
図2は、同一領域に作製された光励起型OSL、OLED、および有機光検出器の集積を示している。この実施形態では、これらのデバイスは、同一基板上に作製される。上記OLEDは、輸送層(TL)・電極の組同士の間に挟まれた有機発光層で構成される。上記OLEDは上面または下面から発光し得る。上記OSLは、分布帰還(DFB)回折格子と有機利得材料で構成される。上記DFBは、基板上または有機利得材料の上面に配置され得る。上記光検出器は、輸送層(TL)・電極の組同士の間に挟まれた有機活性層で構成される。上記3つのデバイスは共通の基板上に作製される。
【0031】
本発明の第2の態様は、以下の実施形態を含む。
[実施形態2-1]有機固体レーザ、有機発光ダイオードおよび光学光検出器がモノリシックに集積される(同一基板上への作製)。
[実施形態2-2]可撓性および/または透明性を有する基板へのモノリシック集積。
[実施形態2-3]本発明は、以下の組み合わせを含む。
[実施形態2-4]OLED+OSL
[実施形態2-5]OLED+OSL+有機太陽電池
[実施形態2-6]OLED+OSL+有機光検出器
[実施形態2-7]OLED+OSL+有機電界効果トランジスタ
[実施形態2-8]OLED+OSL+有機熱発電器
[実施形態2-9]OLED+OSL+有機太陽電池+有機光検出器+有機電界効果トランジスタ+有機熱発電器
図2は、モノリシックに集積されたOLED、OSLおよび有機光検出器の図である。
【0032】
(実施例:有機レーザとOLEDをモノリシックに集積する)
これらのデバイスの作製は真空成膜によって行った。まず、100nmの厚さでパターン形成したITOをコーティングしたガラス基板を、中性洗剤、純水、アセトン、およびイソプロパノールを使用して超音波処理した後、UV-オゾン処理して洗浄した。マスクを使用してOLED領域を保護し、スパッタリングでSiO
2を成膜した。SiO
2層上に、電子ビームリソグラフィと反応性イオンエッチングを使用して、ITOでない部分にDFB回折格子を形成した。次に、有機層、注入層、および金属電極層を、マスクを使用して真空蒸着した。このメタルマスクはDFB回折格子領域を保護する(DFB回折格子領域には金属を成膜しない)。これらのデバイスを、窒素を充填したグローブボックス内で、ガラスリッドとUV硬化エポキシを使用して封止した。
図8(a、b、c、d)はそれぞれ、青色有機固体レーザのレーザスペクトル、OLEDの電流-電圧曲線、OLEDの外部量子効率(EQE)-電流曲線、およびOLEDの電界発光スペクトルを示している。
【0033】
(3)発明の第3の態様
(背景)
発光ダイオード(LED)や有機発光ダイオード(OLED)などの従来技術の代わりに、赤色、緑色および青色(RGB)レーザをディスプレイに使用することは、非常に魅力的である。レーザ光源を用いることによって、非常に狭いスペクトル線幅(~0.2nm)による高い色純度と、高い輝度、高いパワー効率が実現し、それらがディスプレイシステムの小型化に貢献する。
【0034】
従来の無機発光半導体を使用したRGBレーザダイオードの技術には、小型化と量産に関して大きな問題がある。実際、赤色、緑色および青色のレーザダイオードの利得材料は、それぞれGaN、GaInN、AlGaInPである。これらの結晶性の半導体が持つ格子定数は同じではない。したがって、同一基板上に3つの異なるレーザダイオードを成長させることは非常に難しい。こういった問題により、ガラス、プラスチック、紙などの汎用性の高い基板の使用にも制限が生じる。さらに、従来のRGBレーザダイオードを組み込んでコンパクトなシステムを作ろうとしても、コネクタの使用と様々な駆動条件により制限がかかり、それによってチップや高解像度を必要とするマイクロディスプレイの集積密度が大幅に制限される。例えば、バンドギャップエネルギーが異なる緑発光用と赤発光用の2つの材料をモノリシックに集積するには、AlGaInPベースとInGaNベースの両LDを1つの基板に集積するために、接着剤によるボンディングと化学ウェットエッチングプロセスを使用する。究極のチップ小型化に向けて前進するには、各光電子デバイスを、共通の作製プロセスを使用してモノリシックに組み込むことが重要である。
【0035】
(発明)
有機半導体を使用すると、無機半導体に固有の問題を解決することができる。実際、有機半導体を使用すると、ガラス、プラスチック、さらには紙など、様々な基板上に高密度のモノリシック回路を作製することが可能になる。この興味深い特徴は、有機半導体がアモルファスであり、結晶である必要がないということによってもたらされる。さらに、有機半導体は、インクジェット印刷や熱蒸着などの量産に適した様々な単純な技術を使用して成膜させることができる。
【0036】
本発明の第3の態様が提供するのは、基板、絶縁回折格子、第1の電極、有機層および第2の電極をこの順序で含む有機半導体レーザダイオードと、2つ以上の異なる有機半導体レーザダイオードをモノリシックに集積することである。
【0037】
本発明の第3の態様は、以下の実施形態を含む。
[実施形態3-1]異なる波長(赤色、緑色および青色)で発光する有機半導体レーザダイオードが同一領域に作製される。この実施形態では、これらのデバイスは同一基板上に作製される(モノリシック集積)。分布帰還共振器は、基板の上かつ電極の下に形成される。モノリシックに集積された有機半導体レーザダイオードは、上面または下面から発光し得る。
[実施形態3-2]モノリシックに集積された有機半導体レーザダイオードは、可撓性を有し得る。
[実施形態3-3]モノリシックに集積された有機半導体レーザダイオードは透明性を有し得る。
【0038】
本発明の第3の態様は、以下の2つの発明コンセプトを提供する。
<1>回折格子の上側に透明電極を含んだ新規のOSLD設計
OSLD(特許文献1)の最初の実証では、ITO電極の上側(特許文献1では、上面)に絶縁回折格子を使用している。回折格子の役割は、光の帰還を生成することである。
図3(a)に示されているように、電極から発光層への電荷注入を可能にするには電極の上にある絶縁体を完全に除去する必要があるため、電極の上への絶縁回折格子の形成は複雑になる。本発明で提案する新規のOSLD設計では、
図3(b)に示されているように、回折格子が電極の下側(この実施形態では、下面)にある。電極が絶縁回折格子の上にあると、電荷キャリアはデバイス領域全体から注入される。したがって、デバイス内で励起子が均一に生成され得る。それにより、励起子密度と光共振モードの分布の重なり部分が増えることで、利得が大きくなる。
【0039】
図4(a~d)に示されているOSLD構造を設計するために、光学シミュレーションを実行した。共振波長λ
0を調整することと、Q値および閉じ込め係数Γを増大させることを目的として、ITO電極の厚さd
ITOと有機膜の厚さd
FILMをそれぞれ最適化している。光学的最適化の結果を表1に示す。
図4は、a)OSLD1、b)OSLD2、c)OSLD3およびd)OSLD4の共振波長におけるDFB共振空洞の電界分布を示している。OSLD1~4では、DFB回折格子は基板の上かつITO電極の下に作製されている。OSLD-refでは、DFB回折格子はITO電極の上に作製されている(以前に特許を取得したOSLD、特許文献1)。OSLD1~4は全て、OSLD-refよりも高いQ値と閉じ込め係数を示した。OSLD4の共振空洞が最高の光学性能を示した。
【0040】
【0041】
<2>2つ以上の異なる有機半導体レーザダイオードのモノリシック集積
図5に、好ましい実施形態として、RGB色のモノリシック集積を示している。2色、3色またはそれ以上の色(波長)を集積することが可能である。赤色、緑色および青色の代わりに、またはそれに加えて、他の色を使用することができる。
【0042】
OSLDの構造は、以下であり得る。
1.基板、電極、低屈折率材料製の分布帰還(DFB)回折格子、電子輸送層、有機利得層、正孔輸送層および透明または半透明電極の順で構成される上面発光OSLD構造。
2.基板、電極、低屈折率材料製のDFB回折格子、正孔輸送層、有機利得層、電子輸送層および透明または半透明電極の順で構成される下面発光OSLD構造。
【0043】
どちらの構造の場合も、DFB回折格子を、基板の同じ領域(この実施形態では、基板の上)かつITO電極の片側(この実施形態では、電極の下)に形成することができる。例えば、本発明には以下のOSLD構造が含まれる。
1.基板、低屈折率材料製の分布帰還(DFB)回折格子、透明または半透明電極、電子輸送層、有機利得層、正孔輸送層および透明または半透明電極の順で構成される上面発光OSLD構造。
2.基板、低屈折率材料製のDFB回折格子、透明または半透明電極、正孔輸送層、有機利得層、電子輸送層および透明または半透明電極の順で構成される下面発光OSLD構造。
【0044】
本発明の第3の態様の利点は以下のとおりである。
-モノリシック集積による、究極のチップ小型化に向けたデバイス集積密度の向上、
-可撓性を有する基板の使用、
-インクジェット印刷や熱蒸着などの量産に適した単純な作製プロセス、
-全有機電子プラットフォームへの大きな前進。
【0045】
(4)発明の第4の態様
(背景)
電子部品の小型化によって、スマートウォッチや医療用ハンドヘルドモニタなどといった、ウェアラブルな小型のスマートデバイスで、スマートフォンのほぼ全ての機能を実行することが可能になっている。究極のチップ小型化に向けて前進するには、各光電子デバイスを、共通の作製プロセスを使用してモノリシックに組み込むことが重要である。
【0046】
従来のエレクトロニクスと比較して、有機エレクトロニクスでは、製造コストが低い、高速で単純な、量産に適した作製プロセスが行われ、超可撓性、折り曲げ可能性、伸展性および生体適合性を有するデバイスを作り出す可能性が開かれる。分子設計により、様々な特性および様々な発光波長を有する、汎用性の高い分子が簡単に実現され得る。無機エレクトロニクスでは、異なる色の発光ダイオード(LED)とレーザダイオード(LD)には、異なる結晶性半導体材料と異なる作製プロセスチャンバが必要になる。したがって、無機LEDとLDのモノリシック集積は、共通の基板上で行うことはできない。
【0047】
これに対して、有機材料を使用すると、その応用性に富む特性により、有機レーザ、OLED、有機太陽電池、光学センサなど、様々な光電子機能を備えた幾つものデバイスの作製が可能になる。実際、有機電子デバイスのアーキテクチャは、界面層・電極の組同士の間に積み重ねられた有機活性層で構成される。このデバイスアーキテクチャは、諸有機電子デバイスの共通の特徴である。したがって、有機半導体を使用すると、ガラス、プラスチック、さらには紙など、様々な基板上にモノリシック回路を作製することが可能になる。この興味深い特徴は、有機半導体がアモルファスであり、結晶である必要がないということによってもたらされる。したがって、有機半導体は、スピンコート、インクジェット印刷、および熱蒸着などの様々な単純な技術を使用して成膜させることができる。複数の有機半導体デバイスをモノリシックに集積することは、全有機電子プラットフォームを早期実現するための非常に重要な特徴になる。
今日、例えば有機太陽電池や有機センサ、有機電界効果トランジスタ(OFET)、有機発光ダイオード(OLED)、有機メモリ、有機レーザなど、多くの電子デバイスを有機材料で作製することができる。OLEDと有機光学センサは実用化されており、無機デバイス市場を上回っている。
【0048】
(発明)
最近、有機半導体レーザダイオード(OSLD)の実証が行われた。興味深いことに、OSLDはOLEDと同様の構造を有している。主な違いは、OSLDでは、光の帰還を提供するために共振空洞が必要になることである。したがって、OSLDの作製方法はOLEDの技術と親和性がある。
【0049】
本発明の第4の態様が提供するのは、基板および異なる波長で発光する少なくとも2つの有機半導体レーザダイオードを備える素子であって、上記少なくとも2つの有機半導体レーザダイオードが上記基板上にモノリシックに作製される、素子である。本発明の第4の態様はさらに、基板、有機半導体レーザダイオード、および有機発光ダイオードを備える素子であって、上記有機半導体レーザダイオードおよび上記有機発光ダイオードが上記基板上にモノリシックに作製される、素子を提供する。
【0050】
いくつかの実施形態では、モノリシックに集積されたOSLD、OLEDおよび光学光検出器の実証を目的として、OSLD、OLEDおよび有機光検出器が同一基板上に作製される。
【0051】
本発明の第4の態様は、以下の実施形態を含む。
[実施形態4-1]有機半導体レーザダイオード、有機発光ダイオードおよび光学光検出器がモノリシックに集積される(同一基板上への作製)。下面発光検出と上面発光検出のシステムをここに提案する。分布帰還共振器が、基板の上側(例えば、基板の上面)、かつ電極の下側(例えば、電極の下面)に作製され得る。
[実施形態4-2]可撓性および/または透明性を有する基板へのモノリシック集積
図6(a~d)に、同じ技術を使用した、基板の同一領域にあるOSLD、OLED、および光学光検出器で構成された有機光電子システムを示す。これらの図は、ITO電極の片側(この実施形態では、表面上)に回折格子を備えた上面発光検出構成と下面発光検出構成を示している。
図6(c、d)では、ITO電極の下側(この実施形態では、下面)に回折格子を備えた上面発光検出構成と下面発光検出構成を示している。ITO電極の下側(この実施形態では、下面)に回折格子を形成することにより、注入が強化される。
【0052】
1.上面発光検出構成は、以下を含む(
図6(a))。
a.基板、電極、電子輸送層、有機発光層、正孔輸送層および透明または半透明電極の順で構成される上面発光OLED構造。
b.基板、電極、低屈折率材料製の分布帰還(DFB)回折格子、電子輸送層、有機利得層、正孔輸送層および透明または半透明の電極の順で構成される上面発光OSLD構造。
c.基板、電極、電子輸送層、有機活性(吸収)層、正孔輸送層および透明または半透明電極の順で構成される上面検出有機光検出器。
【0053】
2.下面発光検出構成は、以下を含む(
図6(b))。
a.透明または半透明の基板、透明または半透明の電極、正孔輸送層、有機発光層、電子輸送層および電極の順で構成される下面発光OLED構造。
b.透明または半透明の基板、透明または半透明の電極、低屈折率材料製のDFB回折格子、正孔輸送層、有機利得層、電子輸送層および電極の順で構成される下面発光OSLD構造。
c.透明または半透明の基板、透明または半透明の電極、正孔輸送層、有機活性(吸収)層、電子輸送層および電極の順で構成される下面検出有機光検出器。
【0054】
3.上面発光検出構成は、以下を含む(
図6(c))。
a.基板、電極、電子輸送層、有機発光層、正孔輸送層および透明または半透明電極の順で構成される上面発光OLED構造。
b.基板、低屈折率材料製のDFB回折格子、電極、電子輸送層、有機利得層、正孔輸送層および透明または半透明電極の順で構成される上面発光OSLD構造。
c.基板、電極、電子輸送層、有機活性(吸収)層、正孔輸送層および透明または半透明電極の順で構成される上面検出有機光検出器。
【0055】
4.下面発光検出構成は、以下を含む(
図6(d))。
a.透明または半透明の基板、透明または半透明の電極、正孔輸送層、有機発光層、電子輸送層および電極の順で構成される下面発光OLED構造。
b.透明または半透明の基板、低屈折率材料製のDFB回折格子、透明または半透明の電極、正孔輸送層、有機利得層、電子輸送層および電極の順で構成される下面発光OSLD構造。
c.透明または半透明の基板、透明または半透明の電極、正孔輸送層、有機活性(吸収)層、電子輸送層および電極の順で構成される下面検出有機光検出器。
【0056】
本発明は、以下の組み合わせを含む。
OLED+OSLD
OLED+OSLD+有機太陽電池
OLED+OSLD+有機光検出器
OLED+OSLD+有機電界効果トランジスタ
OLED+OSLD+有機熱発電器
OLED+OSLD+有機太陽電池+有機光検出器+有機電界効果トランジスタ+有機熱発電器
【0057】
本発明は、以下の実施形態を含む。
[1]基板および異なる波長で発光する少なくとも2つの光励起型有機固体レーザを備える素子であって、上記少なくとも2つの有機固体レーザが上記基板上にモノリシックに作製される、素子。
[2]異なる波長で発光する少なくとも3つの有機固体レーザを備える、[1]に記載の素子。
[3]青色光を放出する有機固体レーザ、緑色光を放出する有機固体レーザ、および赤色光を放出する有機固体レーザを備える、[2]に記載の素子。
[4]上記基板が可撓性を有する、[1]~[3]のいずれか一項に記載の素子。
[5]上記基板が透明性を有する、[1]~[4]のいずれか一項に記載の素子。
(注)本願「透明」という用語は、透明と半透明の両方を含む。本願の「透明」基板または「透明」電極の透過率は、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも99%である。
[6]基板および異なる波長で発光する少なくとも2つの光励起型有機固体レーザを備える素子を製造する方法であって、上記有機固体レーザを上記基板上にモノリシックに作製することを含む、方法。
[7]上記素子が、異なる波長で発光する少なくとも3つの有機固体レーザを備える、[6]に記載の素子製造方法。
[8]上記素子が、青色光を放出する有機固体レーザ、緑色光を放出する有機固体レーザおよび赤色光を放出する有機固体レーザを備える、[7]に記載の素子製造方法。
[9]上記基板が可撓性を有する、[6]~[8]のいずれか一項に記載の素子製造方法。
[10]基板が透明性を有する、[6]~[9]のいずれか一項に記載の素子製造方法。
[11]溶液プロセスによって、上記有機固体レーザを上記基板上にモノリシックに作製することを含む、[6]~[10]のいずれか一項に記載の素子製造方法。
[12]インクジェットプロセスによって、上記有機固体レーザを上記基板上にモノリシックに作製することを含む、[6]~[10]のいずれか一項に記載の素子製造方法。
[13]スピンコートプロセスによって、上記有機固体レーザを上記基板上にモノリシックに作製することを含む、[6]~[10]のいずれか一項に記載の素子製造方法。
[14]熱蒸着プロセスによって、上記有機固体レーザを上記基板上にモノリシックに作製することを含む、[6]~[10]のいずれか一項に記載の素子製造方法。
【0058】
[15]基板、光励起型有機固体レーザ、および有機発光ダイオードを備える素子であって、上記有機固体レーザおよび上記有機発光ダイオードが上記基板上にモノリシックに作製される、素子。
[16]上記基板、上記有機固体レーザ、上記有機発光ダイオードおよび光学光検出器を含んだ[15]に記載の素子であって、上記有機固体レーザ、上記有機発光ダイオードおよび上記光学光検出器が上記基板上にモノリシックに作製される、素子。
[17]上記基板、上記有機固体レーザ、上記有機発光ダイオードおよび有機太陽電池を含んだ[15]に記載の素子であって、上記有機固体レーザ、上記有機発光ダイオードおよび上記有機太陽電池が上記基板上にモノリシックに作製される、素子。
[18]上記基板、上記有機固体レーザ、上記有機発光ダイオードおよび有機電界効果トランジスタを含んだ[15]に記載の素子であって、上記有機固体レーザ、上記有機発光ダイオードおよび上記有機電界効果トランジスタが上記基板上にモノリシックに作製される、素子。
[19]上記基板、上記有機固体レーザ、上記有機発光ダイオードおよび有機熱発電器を含んだ[15]に記載の素子であって、上記有機固体レーザ、上記有機発光ダイオードおよび上記有機熱発電器が上記基板上にモノリシックに作製される、素子。
[20]上記基板が可撓性を有する、[15]~[19]のいずれか一項に記載の素子。
[21]上記基板が透明性を有する、[15]~[19]のいずれか一項に記載の素子。
[22]基板、光励起型有機固体レーザ、および有機発光ダイオードを備える素子を製造する方法であって、上記有機固体レーザおよび上記有機発光ダイオードを上記基板上にモノリシックに作製することを含む、方法。
[23]上記有機固体レーザ、上記有機発光ダイオード、および有機光検出器を上記基板上にモノリシックに作製することを含む、[22]に記載の素子製造方法。
[24]上記有機固体レーザ、上記有機発光ダイオード、および有機太陽電池を上記基板上にモノリシックに作製することを含む、[22]または[23]に記載の素子製造方法。
[25]上記有機固体レーザ、上記有機発光ダイオード、および有機電界効果トランジスタを上記基板上にモノリシックに作製することを含む、[22]~[24]のいずれか一項に記載の素子製造方法。
[26]上記有機固体レーザ、上記有機発光ダイオード、および有機熱発電器を上記基板上にモノリシックに作製することを含む、[22]~[25]のいずれか一項に記載の素子製造方法。
[27]溶液プロセスによって、モノリシックに上記作製が行われる、[22]~[26]のいずれか一項に記載の素子製造方法。
[28]インクジェットプロセスによって、モノリシックに上記作製が行われる、[22]~[26]のいずれか一項に記載の素子製造方法。
[29]スピンコートプロセスによって、モノリシックに上記作製が行われる、[22]~[26]のいずれか一項に記載の素子製造方法。
[30]熱蒸着プロセスによって、モノリシックに上記作製が行われる、[22]~[26]のいずれか一項に記載の素子製造方法。
【0059】
[31]基板、絶縁回折格子、第1の電極、有機層および第2の電極をこの順序で含む、有機半導体レーザダイオード。
[32]上記絶縁回折格子が上記第1の電極と接触している、[31]に記載の有機半導体レーザダイオード。
[33]上記絶縁回折格子が上記基板と接触している、[31]または[32]に記載の有機半導体レーザダイオード。
[34]上記第1の電極および上記基板が透明性を有する、[31]~[33]のいずれか一項に記載の有機半導体レーザダイオード。
[35]下面から(上記第1の電極側から)発光する、[34]に記載の有機半導体レーザダイオード。
[36]上記第2の電極が透明性を有する、[31]~[35]のいずれか一項に記載の有機半導体レーザダイオード。
[37]上面から(上記第2の電極側から)発光する、[36]に記載の有機半導体レーザダイオード。
[38]上記第1電極の上記有機層側の表面に回折格子が形成されていない、[31]~[37]のいずれか一項に記載の有機半導体レーザダイオード。
[39]電荷キャリアが、上記第1の電極の表面から、回折格子に妨げられることなく上記有機層に注入される、[31]~[38]のいずれか一項に記載の有機半導体レーザダイオード。
[40]上記第1の電極の厚さと上記有機膜の厚さが、共振波長を調整し、Q値と閉じ込め係数を増大させることによって最適化される、[31]~[39]のいずれか一項に記載の有機半導体レーザダイオード。
[41]少なくとも450のQ値を有する、[31]~[39]のいずれか一項に記載の有機半導体レーザダイオード。
[42]少なくとも60%の閉じ込め係数を有する、[31]~[39]のいずれか一項に記載の有機半導体レーザダイオード。
[43]基板上またはその上方に絶縁回折格子を形成することと、
上記絶縁回折格子上またはその上方に第1の電極を形成することと、
上記第1の電極上またはその上方に有機層を形成することと、
上記有機層上またはその上方に第2の電極を形成することと、
を含む、有機半導体レーザダイオード作製方法。
[44]上記第1の電極が、上記絶縁回折格子を完全に覆うように、その絶縁回折格子上に直に形成される、[43]に記載の有機半導体レーザダイオード作製方法。
[45]上記絶縁回折格子が上記基板上に直に形成される、[43]または[44]に記載の有機半導体レーザダイオード作製方法。
[46]上記第1の電極および上記基板が透明性を有する、[43]~[45]のいずれか一項に記載の有機半導体レーザダイオード作製方法。
[47]第2の電極が透明性を有する、[43]~[46]のいずれか一項に記載の有機半導体レーザダイオード作製方法。
[48]上記第1電極の上記有機層側の表面に回折格子が形成されていない、[43]~[47]のいずれか一項に記載の有機半導体レーザダイオード作製方法。
[49]上記第1の電極の厚さと上記有機層の厚さが、共振波長を調整し、Q値と閉じ込め係数を増大させることによって最適化される、[43]~[48]のいずれか一項に記載の有機半導体レーザダイオードの作製方法。
[50][43]~[49]のいずれか一項に記載の方法で作製された有機半導体レーザダイオード。
【0060】
[51]基板および異なる波長で発光する少なくとも2つの有機半導体レーザダイオードを備える素子であって、上記少なくとも2つの有機半導体レーザダイオードが上記基板上にモノリシックに作製される、素子。
[52]異なる波長で発光する少なくとも3つの有機半導体レーザダイオードを備える、[51]に記載の素子。
[53]青色光を放出する有機半導体レーザダイオード、緑色光を放出する有機半導体レーザダイオード、および赤色光を放出する有機半導体レーザダイオードを備える、[52]に記載の素子。
[54]上記基板が可撓性を有する、[51]~[53]のいずれか一項に記載の素子。
[55]上記基板が透明性を有する、[51]~[54]のいずれか一項に記載の素子。
[56]上記少なくとも2つの有機半導体レーザダイオードが下面から発光する、[55]に記載の素子。
[57]上記少なくとも2つの有機半導体レーザダイオードが、透明基板、透明性を有する第1の電極、分布帰還(DFB)回折格子、正孔輸送層、有機利得層、電子輸送層および第2の電極をこの順序で含む、[56]に記載の素子。
[58]上記少なくとも2つの有機半導体レーザダイオードが、透明基板、分布帰還(DFB)回折格子、透明性を有する第1の電極、正孔輸送層、有機利得層、電子輸送層および第2の電極をこの順序で含む、[56]に記載の素子。
[59]上記少なくとも2つの有機半導体レーザダイオードが上面から発光する、[51]~[55]のいずれか一項に記載の素子。
[60]上記少なくとも2つの有機半導体レーザダイオードが、基板、第1の電極、分布帰還(DFB)回折格子、電子輸送層、有機利得層、正孔輸送層および透明性を有する第2の電極をこの順序で含む、[59]に記載の素子。
[61]上記少なくとも2つの有機半導体レーザダイオードが、基板、分布帰還(DFB)回折格子、第1の電極、電子輸送層、有機利得層、正孔輸送層および透明性を有する第2の電極をこの順序で含む、[59]に記載の素子。
[62]上記少なくとも2つの有機半導体レーザダイオードの1つまたは複数が、[31]~[42]および[50]のいずれか一項に記載の有機半導体レーザダイオードである、[51]~[61]のいずれか一項に記載の素子。
[63]上記少なくとも2つの有機半導体レーザダイオードの全てが、[31]~[42]および[50]のいずれか一項に記載の有機半導体レーザダイオードである、[51]~[61]のいずれか一項に記載の素子。
【0061】
[64]基板および異なる波長で発光する少なくとも2つの有機半導体レーザダイオードを備える素子を製造する方法であって、上記有機半導体レーザダイオードを上記基板上にモノリシックに作製することを含む、方法。
[65]上記素子が、異なる波長で発光する少なくとも3つの有機半導体レーザダイオードを備える、[64]に記載の素子製造方法。
[66]上記素子が、青色光を放出する有機半導体レーザダイオード、緑色光を放出する有機半導体レーザダイオードおよび赤色光を放出する有機半導体レーザダイオードを備える、[65]に記載の素子製造方法。
[67]上記基板が可撓性を有する、[64]~[66]のいずれか一項に記載の素子製造方法。
[68]上記基板が透明性を有する、[64]~[67]のいずれか一項に記載の素子製造方法。
[69]上記少なくとも2つの有機半導体レーザダイオードの作製が、
基板上またはその上方に絶縁回折格子を形成することと、
上記絶縁回折格子上またはその上方に第1の電極を形成することと、
上記第1の電極上またはその上方に有機層を形成することと、
上記有機層上またはその上方に第2の電極を形成することと、
によって行われる、[64]~[68]のいずれか一項に記載の素子製造方法。
[70]上記少なくとも2つの有機半導体レーザダイオードが、[44]~[49]のいずれか一項の方法によって作製される、[69]に記載の素子製造方法。
[71]上記少なくとも2つの有機半導体レーザダイオードの作製が、
基板上またはその上方に第1の電極を形成することと、
上記第1の電極上またはその上方に絶縁回折格子を形成することと、
上記絶縁回折格子上またはその上方に有機層を形成することと、
上記有機層上またはその上方に第2の電極を形成することと、
によって行われる、[64]~[68]のいずれか一項に記載の素子製造方法。
[72]溶液プロセスによって、上記有機半導体レーザダイオードを上記基板上にモノリシックに作製することを含む、[64]~[71]のいずれか一項に記載の素子製造方法。
[73]インクジェットプロセスによって、上記有機半導体レーザダイオードを上記基板上にモノリシックに作製することを含む、[64]~[71]のいずれか一項に記載の素子製造方法。
[74]スピンコートプロセスによって、上記有機半導体レーザダイオードを上記基板上にモノリシックに作製することを含む、[64]~[71]のいずれか一項に記載の素子製造方法。
[75]熱蒸着プロセスによって、上記有機半導体レーザダイオードを上記基板上にモノリシックに作製することを含む、[64]~[71]のいずれか一項に記載の素子製造方法。
【0062】
[76]基板、有機半導体レーザダイオード、および有機発光ダイオードを備える素子であって、上記有機半導体レーザダイオードおよび上記有機発光ダイオードが上記基板上にモノリシックに作製される、素子。
[77]上記基板、上記有機半導体レーザダイオード、上記有機発光ダイオードおよび光学光検出器を含んだ[76]に記載の素子であって、上記有機半導体レーザダイオード、上記有機発光ダイオードおよび上記光学光検出器が上記基板上にモノリシックに作製される、素子。
[78]上記基板、上記有機半導体レーザダイオード、上記有機発光ダイオードおよび有機太陽電池を含んだ[76]に記載の素子であって、上記有機半導体レーザダイオード、上記有機発光ダイオードおよび上記有機太陽電池が上記基板上にモノリシックに作製される、素子。
[79]上記基板、上記有機半導体レーザダイオード、上記有機発光ダイオードおよび有機電界効果トランジスタを含んだ[76]に記載の素子であって、上記有機半導体レーザダイオード、上記有機発光ダイオードおよび上記有機電界効果トランジスタが上記基板上にモノリシックに作製される、素子。
[80]上記基板、上記有機半導体レーザダイオード、上記有機発光ダイオードおよび有機熱発電器を含んだ[76]に記載の素子であって、上記有機半導体レーザダイオード、上記有機発光ダイオードおよび上記有機熱発電器が上記基板上にモノリシックに作製される、素子。
[81]上記基板が可撓性を有する、[76]~[80]のいずれか一項に記載の素子。
[82]上記基板が透明性を有する、[76]~[80]のいずれか一項に記載の素子。
[83]上記有機半導体レーザダイオードおよび上記有機発光ダイオードが下面から発光する、[82]に記載の素子。
[84]上記有機半導体レーザダイオードが、透明基板、透明性を有する第1の電極、分布帰還(DFB)回折格子、正孔輸送層、有機利得層、電子輸送層および第2の電極をこの順序で含む、[83]に記載の素子。
[85]上記有機半導体レーザダイオードが、透明基板、分布帰還(DFB)回折格子、透明性を有する第1の電極、正孔輸送層、有機利得層、電子輸送層および第2の電極をこの順序で含む、[83]に記載の素子。
[86]上記有機半導体レーザダイオードが上面から発光する、[77]~[82]のいずれか一項に記載の素子。
[87]上記有機半導体レーザダイオードが、基板、第1の電極、分布帰還(DFB)回折格子、電子輸送層、有機利得層、正孔輸送層および透明性を有する第2の電極をこの順序で含む、[86]に記載の素子。
[88]上記有機半導体レーザダイオードが、基板、分布帰還(DFB)回折格子、第1の電極、電子輸送層、有機利得層、正孔輸送層および透明性を有する第2の電極をこの順序で含む、[86]に記載の素子。
[89]上記有機半導体レーザダイオードが、[31]~[42]および[50]のいずれか一項に記載の有機半導体レーザダイオードである、[77]~[88]のいずれか一項に記載の素子。
【0063】
[90]基板、有機半導体レーザダイオード、および有機発光ダイオードを備える素子を製造する方法であって、上記有機半導体レーザダイオードおよび上記有機発光ダイオードを上記基板上にモノリシックに作製することを含む、方法。
[91]上記有機半導体レーザダイオード、上記有機発光ダイオード、および有機光検出器を上記基板上にモノリシックに作製することを含む、[90]に記載の素子製造方法。
[92]上記有機半導体レーザダイオード、上記有機発光ダイオード、および有機太陽電池を上記基板上にモノリシックに作製することを含む、[90]または[91]に記載の素子製造方法。
[93]上記有機半導体レーザダイオード、上記有機発光ダイオード、および有機電界効果トランジスタを上記基板上にモノリシックに作製することを含む、[90]~[92]のいずれか一項に記載の素子製造方法。
[94]上記有機半導体レーザダイオード、上記有機発光ダイオード、および有機熱発電器を上記基板上にモノリシックに作製することを含む、[90]~[93]のいずれか一項に記載の素子製造方法。
[95]上記基板が可撓性を有する、[90]~[94]のいずれか一項に記載の素子製造方法。
[96]上記基板が透明性を有する、[90]~[95]のいずれか一項に記載の素子製造方法。
[97]上記有機半導体レーザダイオードの作製が、
基板上またはその上方に絶縁回折格子を形成することと、
上記絶縁回折格子上またはその上方に第1の電極を形成することと、
上記第1の電極上またはその上方に有機層を形成することと、
上記有機層上またはその上方に第2の電極を形成することと、
によって行われる、[90]~[96]のいずれか一項に記載の素子製造方法。
[98]上記有機半導体レーザダイオードが、[44]~[49]のいずれか一項の方法によって作製される、[97]に記載の素子製造方法。
[99]上記有機半導体レーザダイオードの作製が、
基板上またはその上方に第1の電極を形成することと、
上記第1の電極上またはその上方に絶縁回折格子を形成することと、
上記絶縁回折格子上またはその上方に有機層を形成することと、
上記有機層上またはその上方に第2の電極を形成することと、
によって行われる、[90]~[96]のいずれか一項に記載の素子製造方法。
[100]溶液プロセスによって、モノリシックに上記作製が行われる、[90]~[99]のいずれか一項に記載の素子製造方法。
[101]インクジェットプロセスによって、モノリシックに上記作製が行われる、[90]~[99]のいずれか一項に記載の素子製造方法。
[102]スピンコートプロセスによって、モノリシックに上記作製が行われる、[90]~[99]のいずれか一項に記載の素子製造方法。
[103]熱蒸着プロセスによって、モノリシックに上記作製が行われる、[90]~[99]のいずれか一項に記載の素子製造方法。
【国際調査報告】