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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-01
(54)【発明の名称】近海海底掘削
(51)【国際特許分類】
   E21B 19/08 20060101AFI20230125BHJP
   E21B 7/12 20060101ALI20230125BHJP
【FI】
E21B19/08
E21B7/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022529308
(86)(22)【出願日】2020-11-05
(85)【翻訳文提出日】2022-07-14
(86)【国際出願番号】 NL2020050692
(87)【国際公開番号】W WO2021107771
(87)【国際公開日】2021-06-03
(31)【優先権主張番号】2024306
(32)【優先日】2019-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521523349
【氏名又は名称】エフエヌブイ アイピー ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】FNV IP B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】リチャーズ, ピーター デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】エイモス, ジェームズ アレクサンダー
【テーマコード(参考)】
2D129
【Fターム(参考)】
2D129AA01
2D129AB16
2D129AB20
2D129BA03
2D129BA21
2D129DC51
2D129EC28
(57)【要約】
ドリルアセンブリと、垂直送りシステムとを有する海底垂直掘削機であって、ドリルアセンブリが、第1の端部、第2の端部、及び第1の端部と第2の端部との間に延在する長さを有するライザ管と、ライザ管の第1の端部に結合された、掘削ヘッドを含む掘削機本体とによって形成され、垂直送りシステムが、ドリルアセンブリを垂直方向に前進させるように構成されている、海底垂直掘削機を開示する。ライザ管には、ライザ管の長さの少なくとも一部に沿って延在する少なくとも1つのラックが設けられており、垂直送りシステムはピニオンに結合されたモータを備え、ピニオンは、ドリルアセンブリを前進させるためにラックと係合するように配置されている。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドリルアセンブリと、送りシステムとを備える海底掘削機であって、
前記ドリルアセンブリが、
第1の端部、第2の端部、及び前記第1の端部と前記第2の端部との間に延在する長さを有するライザ管と、
前記ライザ管の前記第1の端部に結合された、掘削ヘッドを備える掘削機本体と
を備え、
前記送りシステムが、前記ドリルアセンブリを第1の方向に前進させるように構成されており、
前記ライザ管に、前記ライザ管の前記長さの少なくとも一部に沿って延在する少なくとも1つのラックが設けられており、
前記送りシステムがピニオンに結合されたモータを備え、前記ピニオンが、前記ドリルアセンブリを前記第1の方向に前進させるために前記ラックと係合するように配置されている、海底掘削機。
【請求項2】
前記少なくとも1つのラックが、前記ライザ管の略全長にわたって延在している、請求項1に記載の海底掘削機。
【請求項3】
前記ライザ管に複数の前記ラックが設けられており、これらの前記ラックが前記ライザ管の外周に沿って割り振られており、前記ラックの各々が前記ライザ管の前記長さの少なくとも一部に沿って延在し、前記送りシステムが対応する複数のピニオン又は複数の組のピニオンを備え、前記ピニオンの各々又は前記ピニオンの組が1つの前記ラックと協働するように配置されている、請求項1又は2に記載の海底掘削機。
【請求項4】
前記送りシステムが、前記ラックごとに複数のピニオンを備える、請求項1~3のいずれか一項に記載の海底掘削機。
【請求項5】
前記送りシステムが垂直送りシステムであり、前記第1の方向が垂直方向である、請求項1~4のいずれか一項に記載の海底掘削機。
【請求項6】
前記ライザ管が、複数のライザ管モジュールを備え、前記ライザ管モジュールの各々が、前記ライザ管モジュールの長さに沿って延在する少なくとも1つのラックを備え、
前記ライザ管モジュールが、異なる前記ライザ管モジュールの前記少なくとも1つのラックが互いに略整列するように互いに結合されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の海底掘削機。
【請求項7】
前記送りシステムがチューブに結合されており、前記チューブが、テンプレートの掘削機受け部などの二次的エンティティに結合し、前記二次的エンティティに対して前記送りシステムを実質的に固定するように構成されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の海底掘削機。
【請求項8】
前記掘削ヘッド及び前記ライザ管を通って延在する導管と、前記ライザ管の前記第2の端部に設けられた掘削物排出部とを備える掘削物除去システムをさらに備える、請求項1~7のいずれか一項に記載の海底掘削機。
【請求項9】
前記掘削機本体に配置されたポンプであって、掘削物を前記掘削ヘッドから前記掘削物排出部に圧送するように構成されたポンプをさらに備える、請求項8に記載の海底掘削機。
【請求項10】
前記掘削機本体が、前記掘削ヘッドを動作させるための掘削ヘッド駆動システムをさらに備える、請求項1~9のいずれか一項に記載の海底掘削機。
【請求項11】
前記送りシステム、特に掘削ヘッド駆動システムのような前記掘削機、及び/又は前記掘削物除去システムのうちの1つ又は複数の動作を制御するように構成された制御ユニットをさらに備える、請求項1~10のいずれか一項に記載の海底掘削機。
【請求項12】
ドリルアセンブリと、送りシステムとを備える海底掘削機であって、
前記ドリルアセンブリが、
第1の端部、第2の端部、及び前記第1の端部と前記第2の端部との間に延在する長さを有するライザ管と、
前記ライザ管の前記第1の端部に結合された、掘削ヘッドを備える掘削機本体と
を備え、
前記送りシステムが、 前記ドリルアセンブリを第1の方向に前進させるように構成されており、
前記送りシステムが、
第1のグリッパの前記第1の方向に沿った移動を誘導するように配置された第1の組の油圧アクチュエータを備える第1の送りサブシステムであって、前記第1のグリッパが、第1の把持手段の作動中に前記ライザ管を把持及び/又は締め付けするための前記第1の把持手段を備える、第1の送りサブシステムと、
第2のグリッパの前記第1の方向に沿った移動を誘導するように配置された第2の組の油圧アクチュエータを備える第2の送りサブシステムであって、前記第2のグリッパが、第2の把持手段の作動中に前記ライザ管を把持及び/又は締め付けするための前記第2の把持手段を備える、第2の送りサブシステムと
を備える、海底掘削機。
【請求項13】
前記送りシステムがチューブに結合されており、前記チューブが、テンプレートの掘削機受け部などの二次的エンティティに結合し、前記二次的エンティティに対して前記送りシステムを実質的に固定するように構成されている、請求項12に記載の海底掘削機。
【請求項14】
前記掘削ヘッド及び前記ライザ管を通って延在する導管と、前記ライザ管の前記第2の端部に設けられた掘削物排出部とを備える掘削物除去システムをさらに備える、請求項12又は13に記載の海底掘削機。
【請求項15】
ドリルアセンブリと、送りシステムと、掘削物除去システムとを備える海底掘削機であって、
前記ドリルアセンブリが、
第1の端部、第2の端部、及び前記第1の端部と前記第2の端部との間に延在する長さを有するライザ管と、
前記ライザ管の前記第1の端部に結合された、掘削ヘッドを備える掘削機本体と
を備え、
前記送りシステムが、前記ドリルアセンブリを第1の方向に前進させるように構成されており、
前記掘削物除去システムが、前記掘削ヘッド及び前記ライザ管を通って延在する導管と、前記ライザ管の前記第2の端部に設けられた掘削物排出部とを備える、海底掘削機。
【請求項16】
前記掘削機本体に配置されたポンプであって、掘削物を前記掘削ヘッドから前記掘削物排出部に圧送するように構成されたポンプをさらに備える、請求項15に記載の海底掘削機。
【請求項17】
海底に孔を掘削するための方法であって、
ライザ管と、前記ライザ管の第1の端部に結合された、掘削ヘッドを備える掘削機本体とを備えるドリルアセンブリを設けるステップと、
前記ドリルアセンブリを第1の方向に前進させるように構成された送りシステムを設けるステップと、
掘削機を形成するように前記ドリルアセンブリと前記送りシステムとを組み立てるステップと、
前記海底に1つ又は複数の掘削機受け部を備えるテンプレートを配置するステップと、
前記掘削機を前記掘削機受け部のうちの1つに配置するステップと、
前記送りシステムを前記テンプレートに対して固定するステップと、
前記掘削ヘッドを動作させながら、前記送りシステムを動作させて、前記ライザ管を前記送りシステムに対して略連続的に移動させることによって前記ドリルアセンブリを前記海底中に前進させるステップと、
垂直に掘削された前記孔の最終深さに達した後に前記ドリルアセンブリを前記孔から後退させるステップと
を含む、方法。
【請求項18】
前記ドリルアセンブリを前記前進させるステップが、前記ライザ管の長さの少なくとも一部に沿って延在するラックと係合する回転ピニオンによって実行される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ドリルアセンブリを前記前進させるステップが、第1の送りサブシステムと第2の送りサブシステムとを交互に動作させることによって実行され、前記第1の送りサブシステム及び前記第2の送りサブシステムの一方が、前記第1の送りサブシステム及び前記第2の送りサブシステムの他方がリセットされている間に、前記ドリルアセンブリを前進させるように動作する、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記掘削機を前記掘削機受け部のうちの1つに配置する前記ステップの前に、ケーシングを前記掘削機本体を実質的に囲むように配置するステップをさらに含む、請求項17~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記ケーシングが、前記ドリルアセンブリと共に前記海底中に進められる、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記ドリルアセンブリを前記海底中に前進させる前記ステップの間、前記掘削ヘッドが前記ケーシングの前方に突出する、請求項20又は21に記載の方法。
【請求項23】
前記ドリルアセンブリを前記海底中に前進させる前記ステップの間、前記掘削ヘッドが前記ケーシング内に配置される、請求項20又は21に記載の方法。
【請求項24】
前記ケーシングがケーシング深さまで前記海底に挿入されたときに、前記掘削ヘッドを地中にさらに前進させるステップを含む、請求項20~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記掘削機本体及び前記ライザ管内に配置された掘削物戻し管を介して掘削物を除去し、前記ライザ管の第2の端部に配置された掘削物排出部で前記掘削物を排出するステップ
をさらに含む、請求項20~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記後退させるステップが、前記垂直送りシステムを逆に動作させることによって実行される、請求項17~25のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、海底掘削のための、特に、海洋基礎を形成するために海底中に杭又はケーシングを設置し、埋め込むための海底垂直掘削機及び関連付けられる方法に関する。本発明は、例えば風力エネルギー設備用の基礎杭を形成するための近海用途に特に適する。
【背景技術】
【0002】
[0002]再生可能エネルギーシステムへの関心は、洋上風力発電基地などの様々な海洋エネルギー資源の応用につながっている。洋上風力発電基地の分野が発展するにつれて、海岸からより遠い場所、海のより深い水深を有する場所に移動したいという要望が認められている。
【0003】
[0003]これを実現するために、風車などのエネルギー設備は、海底中及び/又は海底に固定された、安定した基礎を有しなければならない。水深の増加及び海岸からの距離の増加に向けた発展は、基礎を形成する際の課題をもたらす。同時に、海底における掘削及び杭打ちの海洋環境への影響、例えば、海洋生物に対するかく乱を引き起こす騒音及び振動は、抑制されなければならない。
【0004】
[0004]「Bauer Maritime Technologies」、(著作権)BAUER Maschinen GmbH 1.2016、及びhttp://www.bauer-renewables.co.uk/export/shared/documents/pdf/bst/print/905_042_2_Seabed-Drilling-for-Marine-Energy.pdfからダウンロードできる、「Seabed Drilling for Marine Energy」には、海底掘削のための様々なシステムが示されている。
【0005】
[0005]http://www.tms.nl/documents/news-items/subsea-pile-drilling-tool.xml?lang=enには、ジャケット杭のリリーフ掘削のための海底杭掘削工具が記載されている。
【0006】
[0006]しかしながら、これらは生産速度及び押し下げ能力が限られており、岩石などの様々な異なる地盤条件において十分な掘削深さの可能性を提供しない。さらに、一般に、これらの掘削工具は、掘削作業中に掘削工具に締め付けて留めるためのケーシングを必要とし、ケーシングは既に地中に設置されているか、又は掘削作業中に地中に埋め込まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
[0007]本発明の目的は、掘削速度が増加した海底掘削機を提供することである。
【0008】
[0008]本発明のさらなる目的は、海底に杭又はシャフトを設置し、埋め込む生産速度を向上させる海底掘削機を提供することである。
【0009】
[0009]本発明のさらなる目的は、より深い水深で深い掘削深さを可能にする海底掘削機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
[0010]これらの目的のうちの少なくともいくつかは、請求項1に記載の海底掘削機、請求項11に記載の海底掘削機、及び/又は請求項14に記載の海底掘削機によって達成される。
【0011】
[0011]本発明の実施形態が、従属請求項に記載されている。
【0012】
[0012]第1の態様では、
第1の端部、第2の端部、及び前記第1の端部と前記第2の端部との間に延在する長さを有するライザ管と、
前記ライザ管の第1の端部に結合された、掘削ヘッドを備える掘削機本体と
を備えるドリルアセンブリと、
前記ドリルアセンブリを第1の方向に前進させるように構成された送りシステムと
を備える海底掘削機であって、前記ライザ管に、ライザ管の長さの少なくとも一部に沿って延在する少なくとも1つのラックが設けられており、前記送りシステムがピニオンに結合されたモータを備え、前記ピニオンが、前記ドリルアセンブリを前進させるために前記ラックと係合するように配置されている、海底掘削機が提供される。
【0013】
[0013]ラックとピニオンとは協働して、掘削ヘッドが海底に入る略連続的な前進、及び掘削ヘッドが海底から出る略連続的な後退を可能にする。ストロークの終わりにシステムをリセットするなどのために掘削動作を中断すること、又は同様の解決策は不要である。また、ラックアンドピニオンシステムは、ドリルの海底への押し下げ力の増加も可能にする。これにより、掘削速度の増加を達成することができる。
【0014】
[0014]送りシステムは、掘削速度及び掘削ヘッドの切断面で加えられる掘削力の精密な送り制御を可能にする。これにより、掘削機が、緩い砂から堅い粘土及び硬い岩にまで及ぶ様々な異なる地盤条件に適用されることが可能になる。
【0015】
[0015]代替の解決策では、本発明の第2の態様に関して以下でさらに詳細に説明するように、協働するラックアンドピニオンを油圧装置で置き換えることができる。
【0016】
[0016]上記のように、掘削ヘッドを備える掘削機本体は、ライザ管から吊り下げられ、ライザ管によって打ち込まれる。
【0017】
[0017]本明細書で定義されるドリルアセンブリにより、ライザ管は、動作掘削トルク、クラウン力、及び後退力を受け取り、それらに反応し、かつ/又はそれらを伝達する。また、ライザ管は、環境の波、風及び電流負荷にも反応する。掘削ヘッドからのトルクは、ライザ管を介して送りシステムに伝達され、さらに、例えば締め付けによって送りシステムが固定されている構造物に伝達される。
【0018】
[0018]ラックは、好ましくは、ライザ管の一体構造を形成する。
【0019】
[0019]ライザ管の長さ及びライザ管に沿ったラックの延長により、動作を中断することなく達成することができる掘削深さが設定される。したがって、海底掘削機はシングルパスシステムと呼ばれる。
【0020】
[0020]少なくとも1つのラックは、好ましくは、ライザ管の略全長にわたって延在する。これにより、機械によって可能とされる掘削深さを最大にすることができる。
【0021】
[0021]好ましくは、ライザ管には複数の前記ラックが設けられており、前記ラックは前記ライザ管の外周に沿って割り振られており、各ラックは前記ライザ管の長さの少なくとも一部に沿って延在し、前記送りシステムは対応する複数のピニオン又は複数の組のピニオンを備え、各ピニオン又は各組のピニオンは1つのラックと協働するように配置されている。ラックは、好ましくは、ライザ管の略全長に沿って延在し、その外周に沿って対称に割り振られている。好ましくは、ライザ管には、2つ、3つ又は4つのラックが設けられている。これにより、送りシステムに対するライザ管の安定した位置決め及び移動を実現することができる。
【0022】
[0022]垂直送りシステムは、ラックごとに複数のピニオンを備えてもよい。複数のピニオンを各ラックと係合するように配置することにより、前進動作の安定性及び/又は信頼性を高めることができる。
【0023】
[0023]また、所望の孔深さに達した掘削作業の終わりにドリルアセンブリを後退させるために、垂直送りシステムを逆に動作させることもできる。また、以下でさらに詳細に説明するように、例えばケーシングが海底に設置され、埋め込まれるときに、作業中に掘削ヘッドを部分的に後退させるために垂直送りシステムを逆に動作させてもよい。
【0024】
[0024]送りシステムは一般に垂直送りシステムであり、前記第1の方向は垂直方向である。海底掘削機は地盤又は海底を略垂直に掘削するように設計されているため、海底掘削機を垂直掘削機と呼ぶこともできる。しかしながら、掘削機は、例えば、洋上又は近海の構造物にラック付き杭を設置するために、垂直以外の方向に掘削するように配置されてもよい。
【0025】
[0025]掘削ヘッドには、掘削場所の土壌又は地盤条件に応じて選択され得るドリルユニット及び/又はカッタが設けられる。これにより、掘削ヘッドを様々な異なる地盤条件に適合させることができる。
【0026】
[0026]掘削ヘッドは、アンダーリーマを備えてもよい。これらのアンダーリーマは、作動されると、掘削ヘッドから半径方向外側に延長し、海底掘削機の切削径を延長する。アンダーリーマの作動、例えば動力は、一般に、掘削ヘッドにおいて提供される。
【0027】
[0027]掘削ヘッド、特にドリルユニット及び/又はカッタは、掘削機本体に配置された海底ギヤボックス及びモータによって局所的に駆動され得る。
【0028】
[0028]掘削ヘッドは、好ましくは、その直径を変えることができるように設計される。直径は、一般に、2~3.5メートル、又はそれ以上の範囲内に及ぶ。多くの用途では、3メートルの呼び径又はデフォルト直径が使用される。
【0029】
[0029]また、掘削機本体の外径は、掘削径と一致するように調整可能であってもよい。このために、掘削機本体は、調整可能及び/又は交換可能な外部スキーを備えてもよい。これらを掘削径に応じて設置することにより、ドリル前進中に掘削機本体に安定性を与えることができる。
【0030】
[0030]掘削機本体に配置された構成要素に制御、電力供給、及び/又は他のサービスを提供するための油圧及び/又は電気のアンビリカルケーブル配線又はルーティングが、ライザ管の内部に配置されてもよい。これにより、これらの構成要素を環境要素及び/又は動作要素から保護することができる。
【0031】
[0031]ライザ管は、さらに好適には、その第2の端部、又は上端部に、ドリルアセンブリを水中に、また水中から持ち上げるための持ち上げ工具に結合するためのドッキング機構又はドッキングステーションを装備している。
【0032】
[0032]ライザ管は、好ましくは、複数のライザ管モジュールを備え、各ライザ管モジュールは、その長さに沿って延在する少なくとも1つのラックを備え、前記ライザ管モジュールは、異なるモジュールの少なくとも1つのラックが互いに略整列するように互いに結合される。これにより、ライザ管の長さを杭基礎の長さにほぼ対応するように設定することができる。ライザ管は、その長さが杭基礎の長さに対応するように組み立てることができる。モジュールは、掘削作業の前に、好ましくは互いにボルト止めされ、完全なライザ管を形成する。これにより、掘削作業中にライザ管モジュール又はセクションを追加する必要がなくなる。ライザ管モジュール又はライザ管セクションの長さは、5~15メートルの範囲、好ましくは10メートルである。
【0033】
[0033]送りシステムは、オーバーショットチューブとも呼ばれるチューブに結合されてもよく、前記チューブは、テンプレートの掘削機受け部などの二次的エンティティ(二次的実体物)に結合し、前記二次的エンティティに対して前記送りシステムを実質的に固定するように構成され得る。このために、チューブには、着地インターフェースとも呼ばれることがあるカラーが設けられ得る。これにより、送りシステムを、海底に打ち込まれるように、海底テンプレート、コンダクタテンプレート及び/又はパイルゲートなどのテンプレートに締め付け、かつ/又は他の方法で固定的に結合することができる。ソケットは、ケース付きソケット掘削及びオープンソケット掘削ではテンプレートに対して外側から、又は杭のリリーフ掘削では杭に対して内側から締め付けて留めるように構成され得る。これにより、掘削負荷及び環境負荷をテンプレート又はリリーフ掘削された杭に伝達することができる。この装置により、回転切削速度が増加し、高い掘削生産速度が提供され得る。回転トルクを増加させ、高い掘削力を提供することができる。ケーシング設置のために、高い押し下げ容量を達成することができる。これにより、先行技術のシステムよりも高い生産速度を達成することができる。
【0034】
[0034]オーバーショットチューブは、掘削作業の前及び/又は後に前記掘削ヘッドをさらに保護する。オーバーショットは、テンプレートへのドリルの挿入前及び挿入中に掘削ヘッドを囲む。掘削作業の後、テンプレート及び/又は掘削作業中に海底に挿入された犠牲ケーシングからドリルを持ち上げる前に、掘削ヘッドをオーバーショットチューブ内に後退させることができる。
【0035】
[0035]いくつかの実施形態では、海底掘削機は、さらに好ましくは、掘削物(spoil)除去システムを備え、前記掘削物除去システムは、前記掘削ヘッド及び前記ライザ管を通って延在する導管と、前記ライザ管の第2の端部に設けられた掘削物排出部とを備える。したがって、ライザ管及び掘削ヘッドの内部には中空ではない掘削物管が設けられており、前記ライザ管によって保護されている。掘削物管は、掘削物切断片を、掘削ヘッド及びその上に設けられたドリル切断面から離して、掘削物排出部に移送するように構成されている。海底掘削機は、好ましくは、前記掘削機本体内に、特に掘削ヘッド内又は掘削ヘッドの近くに配置された、浚渫ポンプとも呼ばれるポンプを備え、前記ポンプは、前記掘削物を、前記掘削ヘッドから前記掘削物排出部に圧送するように構成されている。これにより、空気揚水掘削物除去システムと比較して、掘削物除去容量、よって掘削速度を増加させることができる。
【0036】
[0036]あるいは、他の実施形態では、掘削機を、空気揚水掘削物除去を使用するように構成することもできる。
【0037】
[0037]上記に従い、掘削機の構成要素、すなわち、好適には互いにボルト止めされた複数のセクション又はモジュールで構成されたライザ管と、掘削ヘッドを含む掘削機本体と、送りシステムとは、クレーンによって船舶から持ち上げ、テンプレートに対して位置決めし、下降させることができる単一のユニットを形成するように組み立てられ、その後クレーンから取り外される。掘削作業中、クレーンは不要である。これにより、船舶のクレーンは、船舶上で、又は船舶から行われる他の作業に利用可能である。
【0038】
[0038]海底掘削機は、送りシステム、掘削機、特に掘削ヘッド駆動システム、及び/又は掘削物除去システムのうちの1つ又は複数の動作を制御するように構成された1つ又は複数の制御ユニットをさらに備えてもよい。制御ユニットは、送りシステム、掘削機、及び/又は掘削物除去システムの1つ又は複数の部品又は構成要素の動作を制御するように構成され得る。これにより、海底掘削機、又はその少なくとも一部は、自己完結型の(半)自律動作のために構成され得る。
【0039】
[0039]第2の態様によれば、
第1の端部、第2の端部、及び前記第1の端部と前記第2の端部との間に延在する長さを有するライザ管と、
前記ライザ管の第1の端部に結合された、掘削ヘッドを備える掘削機本体と
を備えるドリルアセンブリと、
前記ドリルアセンブリを第1の方向に前進させるように構成された送りシステムであって、
第1のグリッパの前記第1の方向に沿った移動を誘導するように配置された第1の組の油圧アクチュエータを備える第1の送りサブシステムであって、前記第1のグリッパが、第1の把持手段の作動中にライザ管を把持及び/又は締め付けするための第1の把持手段を備える、第1の送りサブシステムと、
第2のグリッパの前記第1の方向に沿った移動を誘導するように配置された第2の組の油圧アクチュエータを備える第2の送りサブシステムであって、前記第2のグリッパが、第2の把持手段の作動中にライザ管を把持及び/又は締め付けするための第2の把持手段を備える、第2の送りサブシステムと
を備える送りシステムと
を備える海底掘削機が提供される。
【0040】
[0040]第2の態様による掘削機の送りシステムは、第1の態様の掘削機の送りシステム、及びライザ管に設けられた1つ又は複数のラックの代替形態を形成する。第1の把持手段及び第2の把持手段は、ブラダ手段を備えてもよく、ブラダ手段は、ライザ管の重量を支持し、ドリルアセンブリを地中又は海底中に前進させる押圧力を加えるのに十分な力で、ライザ管を把持又は締め付けするために油圧及び/又は空気圧で動作し得る。
【0041】
[0041]ドリルアセンブリ、特に掘削ヘッドは、第1の送りサブシステムと第2の送りサブシステムとを交互に動作させることによって、略連続的に前進させることができる。第1の組の油圧アクチュエータが、ライザを把持又は締め付けするように作動される第1の把持手段を介して、ライザを第1の方向に沿って移動させるように動作している間、第2の把持手段は、ライザを把持も締め付けもしないように作動停止状態にあり、第2の組の油圧アクチュエータは、第1の組の油圧アクチュエータがそれらのストローク又は作動間隔の終わりに達したときに、作動できる状態であるように、初期状態に設定又はリセットされる。第1の組の油圧アクチュエータがそれらのストロークの終わり、すなわちそれらの移動範囲の終わりに達すると、第2の把持手段が作動され、第1の把持手段が作動停止され、第2の組の油圧アクチュエータが作動され、それによってライザ管の前進が継続される。したがって、第1の送りサブシステムと第2の送りサブシステムとを交互に動作させることによって、ドリルアセンブリを略連続的に前進させることができる。
【0042】
[0042]ラックアンドピニオンによって達成される第1の態様に関して説明した利点を、油圧アクチュエータを使用することによって、これにより、少なくとも大部分において代替的に達成することができる。
【0043】
[0043]第1の態様の掘削機の様々な実施形態を、第2の態様の掘削機に適用することができる。
【0044】
[0044]第3の態様によれば、
第1の端部、第2の端部、及び前記第1の端部と前記第2の端部との間に延在する長さを有するライザ管と、
前記ライザ管の第1の端部に結合された、掘削ヘッドを備える掘削機本体と
を備えるドリルアセンブリと、
前記ドリルアセンブリを第1の方向に前進させるように構成された送りシステムと、
前記掘削ヘッド及び前記ライザ管を通って延在する導管と、前記ライザ管の第2の端部に設けられた掘削物排出部とを備える掘削物除去システムと
を備える海底掘削機が提供される。
第1の態様による掘削機の掘削物除去システムに関して上述したように、内部掘削物除去システムは、効率的な掘削物除去を可能にし、掘削速度の増加に寄与する。
【0045】
[0045]掘削機は、好ましくは、前記掘削機本体内に配置された、浚渫ポンプとも呼ばれるポンプを備え、前記ポンプは、前記掘削ヘッドから前記土壌の排出部に前記土壌を圧送するように配置される。
【0046】
[0046]第3の態様の海底掘削機は、第1の態様の海底掘削機の任意の1つ又は複数の特徴及び/又は実施形態をさらに備えてもよい。
【0047】
[0047]第1の態様、第2の態様、及び第3の態様の海底掘削機は、それぞれ、上述したように、対応する特徴及び/又は実施形態、それらの対応する技術的効果及び利点を備え得る。
【0048】
[0048]第4の態様によれば、海底に孔を掘削するための方法が提供され、方法は、
ライザ管と、前記ライザ管の第1の端部に結合された、掘削ヘッドを備える掘削機本体とを備えるドリルアセンブリを設けるステップと、
前記ドリルを第1の方向に前進させるように構成された送りシステムを設けるステップと、
掘削機を形成するように前記ドリルアセンブリと前記送りシステムとを組み立てるステップと、
海底に1つ又は複数の掘削機受け部を備えるテンプレートを配置するステップと、
前記掘削機を前記掘削機受け部のうちの1つに配置するステップと、
前記送りシステムを前記テンプレートに対して固定するステップと、
前記掘削ヘッドを動作させながら、前記送りシステムを動作させて、前記ライザ管を前記送りシステムに対して略連続的に移動させることによって前記掘削ヘッドを前記海底中に前進させるステップと、
前記垂直掘削孔の最終深さに達した後に前記ドリルを前記掘削孔から後退させるステップと
を含む。
【0049】
[0049]第4の態様による方法は、好適には、第1の態様又は第2の態様による海底掘削機を使用して実行される。これにより、上述したような技術的効果及び利点がこの方法を用いて達成される。
【0050】
[0050]前記掘削ヘッドを前進させるステップは、好適には、前記ライザ管の長さの少なくとも一部に沿って延在するラックと係合する回転ピニオンによって実行される。これは、第1の態様の海底掘削機によって実行されてもよい。
【0051】
[0051]あるいは、前記ドリルアセンブリを前進させるステップは、第1の送りサブシステムと第2の送りシステムとを交互に動作させることによって実行することもでき、第1の送りサブシステム及び第2の送りサブシステムの一方が、第1の送りサブシステム及び第2の送りサブシステムの他方がリセットされている間に、前記ドリルアセンブリを前進させるように動作する。これは、第2の態様の海底掘削機によって実行されてもよい。
【0052】
[0052]方法は、
前記掘削機を前記掘削機受け部のうちの1つに配置する前記ステップの前に、ケーシングを掘削機本体を実質的に囲むように配置するステップ
をさらに含み得る。
【0053】
[0053]本発明による掘削機は、掘削ヘッドを地中に前進させるためにケーシング又はケース付きの孔を必要としないので、ケーシングの長さが掘削深さに対応する必要がない。ケーシングの長さは、掘削作業中及び掘削孔への杭の導入などの後続の作業中に掘削孔を安定させるように選択され得る。このため、地盤又は海底の不安定な層の深さに対応するケーシング長さがあれば十分であり得る。掘削作業後に孔に残される場合、ケーシングは犠牲ケーシングと呼ばれることがある。
【0054】
[0054]ケーシングは、好適には、掘削機本体に設けられた、例えばブラダの形態のクランプユニットによって、掘削機本体に対して締め付けられ、又は固定され得る。ブラダを膨張/収縮させることにより、ケーシングを掘削機本体に対して締め付ける/緩めることができる。
【0055】
[0055]ケーシングは、ケーシングに被せてドリルアセンブリを下降させることによって掘削機上に配置されてもよく、それによって掘削機本体がケーシング内に入る。ケーシングと掘削機本体との間の指定された関係が達成されると、クランプユニットは、ケーシングを掘削機本体に対して一時的に止め付けるように作動され得る。ケーシングと掘削機とを海底まで同時に下降させてもよい。ケーシングと掘削機とは、少なくとも特定の深さまで、同時に前進させ、1つのユニットとして海底に収容されてもよい。
【0056】
[0056]第1の態様を参照して上述したようにドリルアセンブリにオーバーショットチューブが設けられている実施形態では、ケーシングは、好ましくは、掘削機を水中に下降させるときにオーバーショットチューブと掘削機本体との間に実質的に完全に配置されるようにオーバーショットチューブと掘削機本体との間に配置される。
【0057】
[0057]ケーシングは、好適には、ドリルアセンブリと一緒に海底中に前進させ得る。
【0058】
[0058]ケーシングの外端に対するドリルヘッドの位置は、掘削場所における地盤条件に従って設定され得る。このため、本発明による掘削機は、広範囲の異なる地盤条件に適する。必要に応じて、ケーシングに対するドリルヘッドの位置を、掘削作業中に調整することができる。
【0059】
[0059]ドリルアセンブリを海底中に前進させる前記ステップの間、前記掘削ヘッドはケーシングの前方に突出し得る。これは、岩石を掘削する場合に有利である。掘削ヘッドがケーシングから突出することにより、掘削ヘッドは、ケーシングを掘削ヘッドの動作によって形成された孔内に前進させることができるように、ケーシングの前方で移動する。これにより、ケーシングを、岩場で掘削ヘッドと共に地中に前進させることができる。
【0060】
[0060]あるいは、ドリルアセンブリを海底中に前進させる前記ステップの間、前記掘削ヘッドが前記ケーシング内に配置されてもよい。これは、砂及び/又は粘土層などの不安定な層を掘削する場合に有利である。ケーシング内側でドリルヘッドを動作させることは、砂及び/又は粘土の掘削中の安定した掘削作業に寄与する。
【0061】
[0061]方法は、ケーシングがケーシング深さまで海底に挿入されたときに、前記掘削ヘッドを前記地中にさらに前進させるステップを含み得る。上述したように、この深さは、ドリル位置で不安定な層を覆い、掘削孔を安定させるように設定され得る。
【0062】
[0062]前記掘削ヘッドを前進させるステップは、前記掘削ヘッドのアンダーリーマカッタを、例えば前記ケーシングの外径以上の直径で掘削するように前進及び動作させるステップを含み得る。
【0063】
[0063]方法は、前記掘削機本体及び前記ライザ管内に配置された掘削物戻し管を介して掘削物を除去し、前記ライザ管の第2の端部に配置された掘削物排出部で前記掘削物を排出するステップ、をさらに含み得る。
【0064】
[0064]後退させるステップは、好適には、前記送りシステムを逆に動作させることによって実行され得る。
【0065】
[0065]送りシステムはまた、例えば、ドリルアセンブリを前進させている間に巨礫などに当たる場合に、掘削作業の一部の間に逆に動作させてもよい。そのような状況では、ドリルアセンブリの前進は中断されてもよく、ドリルアセンブリはその後、ドリルアセンブリの前進を継続する前にリセット又は再位置決めされる。
【0066】
[0066]上述したように、ケーシングを備えたドリルアセンブリを前進させるとき、送りシステムを、ドリルアセンブリ及びケーシングの前進を再開する前に、例えばケーシングの位置及び/又は向きを調整するために逆に動作させてもよい。
【0067】
[0067]上述した方法は、好適には半自律的に実行され得る。本明細書で上述したステップのうちの1つ又は複数が、(半)自律的に、又は自動的に実行されてもよい。
【0068】
[0068]垂直海底掘削機とも呼ばれる本明細書に記載の海底掘削機は、好適には、例えば、洋上風力発電基地などの海上のエネルギー設備のための基礎を形成するために、杭掘削及び杭打ちに適用され得る。これは、例えば潮力タービンなどの他の種類の海洋エネルギー設備にも等しく適用可能である。
【0069】
[0069]本明細書に記載の掘削機は、50~100メートル、例えば70メートルの水深、及び最大50メートルの掘削深さで使用されることが期待される。しかしながら、最大200メートルの水深で使用される可能性もある。
【0070】
[0070]上述したように、掘削機は、オープンソケット掘削、ケース付きソケット掘削、及び杭リリーフ掘削を提供する。
【0071】
[0071]掘削深さに一致するように組み立てられ、垂直送りシステムのピニオンと協働するラックを備えたライザ管によって、シングルパス掘削システムが実現されている。
【0072】
[0072]本明細書で上述したように、掘削機は、自己完結的、半自律的な方法で動作するように構成されてもよい。
【0073】
[0073]掘削機は、砂などの不安定な層を含む様々な地盤条件で使用することができ、基礎杭を高い安定性で海底中に設置し、埋め込むことができる。本明細書で上述したような機械及び方法を使用して、ケース付き掘削孔が不安定な層及び下にある岩盤中に設置され、埋め込まれ得る。
【0074】
[0074]本発明のさらなる特徴及び利点は、非限定的かつ非排他的な実施形態による本発明の説明を読めば明らかになるであろう。これらの実施形態は、保護の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。当業者は、本発明の範囲から逸脱することなく、本発明の他の代替形態及び同等の実施形態を考案し、実施に移すことができることを理解するであろう。本発明の実施形態を、添付の図面の図を参照して説明し、図面において、同様の又は同じ参照符号は、同様の、同じ、又は対応する部分を表す。
【図面の簡単な説明】
【0075】
図1】洋上風力エネルギー設備の概略図である。
図2a】一実施形態による海底掘削機の斜視図である。
図2b図2aの概略断面図である。
図3a図2aに示す掘削機の一部分の詳細を示す図である。
図3b】一実施形態による送りシステムの詳細を示す、図3aの断面図である。
図4】一実施形態による掘削ヘッドの詳細を示す図である。
図5】代替の実施形態による海底掘削機の概略図である。
図6a】海底に配置された海底テンプレートを概略的に示す図である。
図6b】実施形態による海底掘削機が配置された、海底テンプレートの断面を示す図である。
図7a】掘削機本体へのケーシングの取り付けを示す図である。
図7b】本発明の実施形態による掘削機の送りプロセスの第1のステップを概略的に示す図である。
図7c】本発明の実施形態による掘削機の送りプロセスの第2のステップを概略的に示す図である。
図7d】本発明の実施形態による掘削機の送りプロセスの第3のステップを概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0076】
[0086]図1に、基礎2を介して海底に取り付けられた、又は海底に固定された風車1の形態のエネルギー設備を概略的に示す。図1は、異なる種類の基礎2を示しており、これらはすべて、海底6に埋め込まれ、海底6に形成された杭4を備える。風車は、海中の水深d1に配置されており、杭4は掘削深さd2を有する。上述したように、海上風車をさらに深い水中に配置することに対する関心が高まっており、劣悪な地盤条件であっても、より深い水深で掘削し、より深い掘削深さに到達することを含む、様々な課題につながっている。本発明は、典型的には約70~100メートル、さらには最大200メートルの水深において、高い掘削速度又は生産速度で掘削するための海底掘削機を提供する。
【0077】
[0087]図2a及び図2bに、本発明による、垂直海底掘削機とも呼ばれる海底掘削機8の実施形態を示す。図2aは、掘削機8の斜視図を示しており、図2bは、その概略断面図を示している。本明細書では、垂直掘削機について説明するが、同じ概念を、垂直方向に対して傾斜した方向に掘削する掘削機にも適用できることが分かる。
【0078】
[0088]図2a、図2bから明らかなように、掘削機は、ライザ管10と、掘削ヘッド14を備える掘削機本体12とを備える。掘削機本体12は、ライザ管10の第1の端部とも呼ばれる下端16に配置されている。ライザ管と掘削機本体とは組み立てられ、本明細書でドリルアセンブリと呼ばれるものを形成する。
【0079】
[0089]ライザ管10の第2の端部とも呼ばれる上端18には、ライザ管内に配置された掘削物管48に連結された掘削物排出部20が設けられている。さらに、持ち上げ装置用のドッキングステーション22が、ライザ管の上端18に設けられ、かつ/又は結合されている。
【0080】
[0090]掘削機8は、垂直送りシステムに対して垂直方向にドリルアセンブリを前進させるようにライザ管10の移動を誘導するように配置された垂直送りシステム24をさらに備える。これにより、掘削ヘッドは掘削作業中に海底中に進められる。
【0081】
[0091]図3a及び図3bからより詳細に分かるように、ライザ管10には、ライザ管10の略全長に沿って延在する複数のラック26が設けられている。垂直送りシステム24は、モータ28によって各々駆動される対応する複数の組のピニオン27を備える。ピニオン27は、ドリルアセンブリを前進させるようにラック26と係合する。
【0082】
[0092]ラック26は、ライザ管の外周に対称に割り振られている。垂直送りシステム24は、複数の組のピニオン27と関連付けられたモータ28とを備え、各組のピニオンはラック26のうちの1つと関連付けられている。図示の実施形態では、4つのラックと4組のピニオンとが設けられており、これはドリルアセンブリの安定した正確な前進が実現されることが分かっている。ピニオンの各組は、各ラックと関連付けられた4つのピニオンを備える。しかしながら、他の数も可能であり得る。
【0083】
[0093]掘削機本体12は、ライザ管10から吊り下げられ、図3bから詳細に分かる、協働するラックアンドピニオンシステムによって、掘削作業中に海底中に進められる。ライザ管10の長さに沿って延在するラック26、及びラック26と係合するピニオン27によって、掘削機本体を略連続的に前進させることができる。掘削深さは、主にライザ管10の長さ、特にその上に設けられたラック26の延長部に制限される。
【0084】
[0094]図2bから明らかなように、ライザ管10は、1本のライザ管10を形成するように互いにボルト止めされた複数のライザ管モジュール又はライザ管セクション30で構成されている。異なるモジュール30は、ラックが整列するように互いに対して方向づけられている。この配置により、ライザ管10の長さを、意図される掘削深さd2に応じて設定することができる。モジュールは、掘削作業の開始前に相互に取り付けられる。
【0085】
[0095]図2a及び図2bに示すように、垂直送りシステム24は、以下でさらに説明するように、テンプレートの掘削機受け部に結合するように構成されたカラー34を備えたオーバーショットチューブ32に結合される。カラー34は、着地ロック用カラーとも呼ばれ得る。これにより、垂直送りシステム24を、海底テンプレート及び/又はケーシングに対して実質的に固定することができる。
【0086】
[0096]ライザ管10と掘削機本体12とを備えるドリルアセンブリは、単一のドリルを形成するように、垂直送りシステム24及びオーバーショットチューブ32と組み立てられ得る。この単一のドリルを、以下でさらに説明するように、海底テンプレート上に下降させるために、ドックステーション22を介して船舶から持ち上げて海中に下降させることができる。オーバーショットチューブは、掘削作業の前及び/又は後に、特にドリルアセンブリを海底テンプレート内に下降させる間に、掘削ヘッド14を保護するようにさらに機能する。
【0087】
[0097]図4に、掘削ヘッド14の詳細を示す。
【0088】
[0098]図4から明らかなように、掘削ヘッド14は、掘削作業中に切削動作及び/又は掘削動作を形成する、ドリルユニットとも呼ばれる複数のカッタ38を備える。カッタは、掘削現場の地盤条件に従って選択される。掘削ヘッド14は、掘削作業中に半径方向に延長して掘削径を増加させるように作動され得る複数のアンダーリーマ40をさらに備えてもよい。
【0089】
[0099]掘削ヘッドを制御及び操作するために、すなわち、カッタ38及び該当する場合にはアンダーリーマカッタ40を操作するために、掘削機本体にドリルヘッド駆動システムが設けられ得る。
【0090】
[0100]掘削機は、掘削機の構成要素、特に送りシステム24、掘削ヘッド14を含む掘削機本体12、及び/又は(本明細書で後述する)掘削物除去システムのうちの1つ又は複数の動作を制御するための1つ又は複数の制御ユニット(図示せず)をさらに備えてもよい。これにより、掘削機は、半自律動作用に構成され得る。
【0091】
[0101]図2bに示すように、海底掘削機は掘削物除去システムをさらに備え、掘削物除去システムは、掘削ヘッド14、掘削機本体12、及びライザ管10の内部に配置され、それらを少なくとも部分的に貫通して延在する掘削物管48を備える。浚渫ポンプが、掘削ヘッド内又は掘削ヘッドの近くに配置された掘削物入口46内にドリル切断片又は掘削物を吸引し、それを掘削物管に通して、掘削物排出部20を介して排出するように配置されている。
【0092】
[0102]代替の解決策によれば、図2a、図2b、図3a及び図3bを参照して上述した、ライザ管に設けられたラックと協働するピニオンを備える送りシステムを、図5に示す油圧装置で置き換えることができる。
【0093】
[0103]図5に、油圧装置に基づく代替の送りシステムを含む海底掘削機108の一部分を示す。掘削機108は、ラックを備える必要がないライザ管110を備える。掘削機108の他の特徴は、図2a、図2b、図3a及び図3bを参照して上述したものと同様である。特に垂直送りシステムである送りシステム124は、第1の送りサブシステム126及び第2の送りサブシステム128を備える。
【0094】
[0104]第1の送りサブシステム126は、垂直方向に沿った第1のグリッパ132の移動を誘導するように配置された第1の組の油圧アクチュエータ130又はシリンダを備える。第1のグリッパは、第1の把持手段の作動中にライザ管110を把持及び/又は締め付けするための第1の把持手段(図示せず)を備える。
【0095】
[0105]第2の送りサブシステム128は、垂直方向に沿った第2のグリッパ136の移動を誘導するように配置された第2の組の油圧アクチュエータ又はシリンダ134を備える。第2のグリッパ136は、第2の把持手段の作動中にライザ管を把持及び/又は締め付けするための第2の把持手段(図示せず)を備える。
【0096】
[0106]第1の把持手段及び第2の把持手段は、ライザ管の重量を支持し、ドリルアセンブリを地中又は海底中に前進させる押圧力を加えるのに十分な力で、ライザ管を把持又は締め付けするための、油圧又は空気で動作するブラダ手段を備えてもよい。
【0097】
[0107]第1の組の油圧アクチュエータが、ライザを把持又は締め付けするように作動される第1の把持手段を介して、ライザを第1の方向に沿って移動させるように動作している間、第2の把持手段は、ライザを把持も締め付けもしないように作動停止状態にあり、第2の組の油圧アクチュエータは、第1の組の油圧アクチュエータがそれらのストローク又は作動間隔の終わりに達したときに、作動できる状態であるように、初期状態に設定又はリセットされる。第1の組の油圧アクチュエータがそれらのストロークの終わり、すなわちそれらの移動範囲の終わりに達すると、第2の把持手段が作動され、第1の把持手段が作動停止され、第2の組の油圧アクチュエータが作動され、それによってライザ管の前進が継続される。したがって、第1の送りサブシステムと第2の送りサブシステムとを交互に動作させることによって、ドリルアセンブリを略連続的に前進させることができる。
【0098】
[0108]海底掘削機は、掘削作業中に海底に対して取り付け、かつ/又は保持するために、図6aに示す海底テンプレート50などのテンプレートと併用されるように構成される。テンプレート50は、一般に、船舶上に配置されたクレーンを使用して船舶から持ち上げられて海底に降ろされ、その後、公知の方法で水平にされる。
【0099】
[0109]海底テンプレート50は、ドリルアセンブリ及び垂直送りシステムを受けるための1つ又は複数の掘削機受け部52を備える。掘削機が受け部52のうちの1つに降ろされると、テンプレートに設けられたアクチュエータ54(図7bに示す)が作動されて、当技術分野で公知の方法で掘削機を位置決めし、方向づける。掘削機が正確に位置決めされると、テンプレートのアクチュエータは作動停止され、送りシステム24はカラー34を介してテンプレートに対して固定される。
【0100】
[0110]図6bに、海底掘削機8がその中に配置された、海底6をある程度の距離掘削した海底テンプレートの掘削機受け部52を概略的に示す。カラー34は、海底テンプレートの受け部52と係合する。
【0101】
[0111]海底テンプレートに向かって掘削機を下降させる、掘削機を海底テンプレートに結合するなどの海底掘削機及び海底掘削システムの動作、並びに掘削ヘッドの動作は、通常、そこから掘削機が展開される船舶に配置されたオペレータコンソールから操作される。
【0102】
[0112]さらに、海底掘削機の動作と関連付けられた様々なパラメータを監視及び/又は表示するための機械監視システムが提供される。そのようなパラメータには、掘削深さ、掘削前進速度、掘削前進力、切断面回転速度、浚渫ポンプ圧力、機械診断などが含まれ得る。機械監視システムは、掘削機を自律的又は半自律的な動作のために構成する、上述したような1つ又は複数の制御ユニットを備えてもよい。
【0103】
[0113]図7a~図7dに、上述の海底掘削機を使用して海底に垂直孔又は掘削孔を掘削するための方法の初期ステップを示す。本明細書ではラックアンドピニオンシステムによる送りを使用する、第1の実施形態による掘削機を参照して説明するが、以下の方法は、油圧送りシステムを使用する、第2の実施形態による掘削機に同様に適用することができる。説明を容易にするために、図7b~図7dは、1つの掘削機受け部52だけを示している。海底テンプレートは、1つ又は複数のそのような受け部52を備え得ることが当業者には理解される。
【0104】
[0114]図7aは、掘削機本体上への、犠牲ケーシングとして使用され得るケーシング64の配置を示している。上述したように、このケーシングは、掘削ヘッドを地中に、特に、掘削されている孔の周囲の不安定な地盤層を安定させるような特定の深さまで前進させるのと同時に、地中に埋め込むことができる。また上述したように、ケーシングの外端に対する掘削ヘッドの位置を、掘削場所における地盤条件に基づいて調整することもできる。
【0105】
[0115]図7aの左側に示すように、オーバーショットチューブ32を備えた掘削機8が、ケーシング64に被せて降ろされる。この作業は、一般に、そこから掘削作業が行われる船舶上で実行される。
【0106】
[0116]図7aの中央部分は、掘削機本体12とオーバーショットチューブ32との間に実質的に完全に挿入されたケーシング64を示している。ケーシングは、掘削機本体に設けられた、例えばブラダの形態のクランプユニットによって、掘削機本体に対して一時的に締め付けられ、又は固定される。
【0107】
[0117]図7aの左側に示すように、ケーシングが掘削機本体に取り付けられ固定された後、掘削機を、それに配置されたケーシングと共に、水中に展開するために1つの単一ユニットとして持ち上げることができる。
【0108】
[0118]海底テンプレートは、図6aに示すように、海底に配置されており、好ましくは、受け部52の中心軸線の略垂直な向きを提供するように、海底に対して水平にされている。これにより、孔又は杭を、例えば垂直な向きの基礎を形成するように、略垂直に掘削することができる。
【0109】
[0119]図7bに示す、掘削作業の第1のステップでは、掘削機8は、受け部52内に位置決めされるように、掘削機受け部52に向かって垂直方向56に降ろされる。ドリルを受け部内に下降させる間及び/又は下降させた後に、海底テンプレートに設けられたアクチュエータ54によって、例えば、ドリルを受け部の中央位置に設置し、ドリルを垂直方向に向けるように、ドリルの位置及び向きを調整することができる。
【0110】
[0120]図7bには示していないが、掘削機受け部52に向かって下降させる前に、掘削機に、図7aを参照して説明したようにケーシング64が設けられてもよい。しかしながら、これはすべての用途に必要であるとは限らず、以下の説明は、そのようなケーシングが設けられるか否かとは無関係に適用される。
【0111】
[0121]正しく位置決めされ、方向づけられると、垂直送りシステム24は、上述のように海底テンプレートに対して固定される。
【0112】
[0122]図7cに示すように、掘削作業中、掘削ヘッド14は、ケーシング64と共に適用可能な場合、上述のラックアンドピニオンシステムによって海底6中に垂直方向56に進められる。垂直方向の前進中、掘削ヘッドは、例えば掘削動作を実行するように、そのドリルユニットが回転方向58に回転されることによって動作する。掘削中に生成された掘削物は、上述した掘削物除去システムを介して除去される。
【0113】
[0123]図7dに示すように、掘削作業、及び関連付けられた掘削ヘッド14の海底6への前進を、ライザ管10の長さ及びライザ管に沿ったラックの延長によって設定される距離にわたって、略連続的に継続することができる。
【0114】
[0124]意図された掘削深さが達成されると、かつ/又は掘削作業中に必要とされる場合、垂直送りシステムを逆に動作させることによって、すなわちピニオンを逆方向に駆動することによって、掘削ヘッド14を掘削孔から後退させることができる。これにより、掘削ヘッド、実際にはドリルアセンブリの後退も、略連続的に実行することができる。
【0115】
[0125]本発明の範囲は前述の例に限定されず、添付の特許請求の範囲に定義される本発明の範囲から逸脱することなく、いくつかの修正及び改変が可能であることが、当業者には明らかであろう。本発明は、図面及び説明において詳細に図示及び説明されているが、そのような図示及び説明は、説明又は例示にすぎず、限定ではないとみなされるべきである。本発明は、開示の実施形態に限定されず、有利になり得る開示の実施形態の任意の組み合わせを含む。
【0116】
[0126]図面、説明及び添付の特許請求の範囲を考察すれば、開示の実施形態に対する変形が、特許請求される発明の実施に際して当業者によって理解及び達成され得る。本明細書及び特許請求の範囲において、「含む」という語は他の要素を除外せず、不定冠詞「a」又は「an」は複数を除外しない。実際には、「少なくとも1つ」を意味すると解釈されるべきである。特定の特徴が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの特徴の組み合わせを有利に使用することができないことを示すものではない。特許請求の範囲におけるいかなる参照符号も、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。上述の実施形態及び態様の特徴は、それらの組み合わせが明らかな技術的矛盾をもたらさない限り、組み合わせることができる。
図1
図2a
図2b
図3A
図3B
図4
図5
図6a
図6b
図7a
図7b
図7c
図7d
【国際調査報告】