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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-01
(54)【発明の名称】皮膚障害の治療のための抗炎症化合物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/665 20060101AFI20230125BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20230125BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20230125BHJP
   A61P 17/14 20060101ALI20230125BHJP
   A61K 47/06 20060101ALI20230125BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20230125BHJP
   A61K 31/37 20060101ALI20230125BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20230125BHJP
【FI】
A61K31/665
A61P17/06
A61P17/02
A61P17/14
A61K47/06
A61K47/10
A61K31/37
A61K9/107
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022529348
(86)(22)【出願日】2020-11-23
(85)【翻訳文提出日】2022-07-07
(86)【国際出願番号】 IB2020061043
(87)【国際公開番号】W WO2021100027
(87)【国際公開日】2021-05-27
(31)【優先権主張番号】201911047906
(32)【優先日】2019-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508176500
【氏名又は名称】カウンシル オブ サイエンティフィック アンド インダストリアル リサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100182132
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100172683
【弁理士】
【氏名又は名称】綾 聡平
(74)【代理人】
【識別番号】100219265
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 崇大
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】コタムラジュ,スリジリダー
(72)【発明者】
【氏名】バトゥーラ,サレンダー・レッディ
(72)【発明者】
【氏名】シストラ,ラーマクリシュナ
(72)【発明者】
【氏名】アドラガッタ,アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】セナティ,ラジャマンナル
(72)【発明者】
【氏名】シャイフ,アルタブ
(72)【発明者】
【氏名】ジャングム,アルナ
(72)【発明者】
【氏名】サンガラジュ,ラジェンドラ
(72)【発明者】
【氏名】ニーリ,プラヴィーン・クマール
(72)【発明者】
【氏名】マドゥースダナ,クンチャ
(72)【発明者】
【氏名】ガジャラクシュミ,シングル
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA17
4C076BB31
4C076CC18
4C076CC19
4C076DD37R
4C076EE55F
4C076FF16
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA08
4C086DA37
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA28
4C086MA63
4C086NA14
4C086ZA89
4C086ZA92
(57)【要約】
本発明は、創傷、創傷の治癒不良、創傷およびその周辺の脱毛、創傷およびその周辺の瘢痕および/またはしわ、乾癬、およびそれらの任意の組み合わせの治療のための式Iの化合物の使用に関する。本発明はまた、このような化合物を使用する方法、および化合物を含有する組成物およびキットに関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
創傷、創傷の治癒不良、創傷およびその周辺の脱毛、創傷およびその周辺の瘢痕および/またはしわ、乾癬、またはそれらの任意の組み合わせを治療する方法であって、それを必要とする対象において、前記方法が、治療有効量の式Iの化合物を、前記対象の患部に局所的に投与することを含み、
式中、Xは任意のハロゲンである、方法。
【請求項2】
前記創傷が、糖尿病性創傷、切開創、外科的創傷、偶発的創傷、圧迫潰瘍/褥瘡、糖尿病性足部潰瘍、壊疽性膿皮症、熱傷、病変、または切り傷から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法が創傷を治療する、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記方法が、創傷の治癒不良を治療する、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記方法が創傷およびその周辺の脱毛を治療する、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記方法が、創傷およびその周辺の瘢痕および/またはしわを治療する、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記方法が乾癬を治療する、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記治療が、前記創傷部位およびその周辺の前記瘢痕および/またはしわの外観を低減、最小化、または消失させることによって特徴付けられる、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記治療が、前記創傷部位およびその周辺の発毛を増進および/または促進することによって特徴付けられる、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
XがBrまたはClである、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
式Iの前記化合物が、
である、方法。
【請求項12】
創傷、創傷の治癒不良、創傷およびその周辺の脱毛、創傷およびその周辺の瘢痕および/またはしわ、および乾癬から成る群から選択される一つ以上の状態の治療において、それを必要とする対象の患部に局所投与することによって使用するための式Iの化合物であり、
式中、Xは任意のハロゲンである、方法。
【請求項13】
前記創傷が、糖尿病性創傷、切開創、外科的創傷、偶発的創傷、圧迫潰瘍/褥瘡、糖尿病性足部潰瘍、壊疽性膿皮症、熱傷、病変、および切り傷から選択される、請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
前記状態が創傷である、請求項12または13に記載の化合物。
【請求項15】
前記状態が、創傷の治癒不良である、請求項12または13に記載の化合物。
【請求項16】
前記状態が、創傷およびその周辺の脱毛である、請求項12または13に記載の化合物。
【請求項17】
前記状態が、創傷およびその周辺の瘢痕および/またはしわである、請求項12または13に記載の化合物。
【請求項18】
前記状態が乾癬である、請求項12または13に記載の化合物。
【請求項19】
前記治療が、前記創傷部位およびその周辺の前記瘢痕および/またはしわの外観を低減、最小化、または消失させることによって特徴付けられる、請求項12または請求項13に記載の化合物。
【請求項20】
前記治療が、前記創傷部位およびその周辺の発毛を増進および/または促進することによって特徴付けられる、請求項12または請求項13に記載の化合物。
【請求項21】
XがBrまたはClである、請求項12~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
式Iの前記化合物が、化合物1である、請求項12~20のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項23】
創傷の治療、創傷の治癒不良、創傷およびその周辺の脱毛、創傷およびその周辺の瘢痕および/またはしわ、乾癬、またはそれらの任意の組み合わせ、および薬学的に許容可能な賦形剤の治療に使用するための局所用組成物であって、前記組成物が、式Iの化合物を含み、
式中、Xは、任意のハロゲンおよび薬学的に許容可能な賦形剤である、局所用組成物。
【請求項24】
がBrまたはClである、請求項23に記載の局所用組成物。
【請求項25】
がBr-である、請求項23に記載の局所用組成物。
【請求項26】
前記薬学的に許容可能な賦形剤が、乳化剤、防腐剤、またはそれらの任意の組み合わせのうちの一つ以上である、請求項23に記載の局所用組成物。
【請求項27】
創傷、創傷の治癒不良、創傷およびその周辺の脱毛、創傷およびその周辺の瘢痕および/またはしわ、乾癬、またはそれらの任意の組み合わせを治療するためのキットであって、式Iの化合物が式Iの化合物を含み、
式中、Xは任意のハロゲンであり、
任意で、キットを使用する手順を含む、キット。
【請求項28】
がBrまたはClである、請求項27に記載のキット。
【請求項29】
X-がBrである、請求項27に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年11月22日に出願されたインド特許出願第201911047906号の利益を主張するものであり、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、創傷、創傷の治癒不良、創傷およびその周辺の脱毛、創傷およびその周辺の瘢痕および/またはしわ、ならびに乾癬からなる群から選択される一つ以上の状態の治療に使用するための式Iの化合物(以下に示す)、ならびに式Iの化合物および薬学的に許容可能な賦形剤を含有する局所用組成物に関する。
【0003】
【化1】
【背景技術】
【0004】
酸化ストレスは、組織修復および再生プロセスを妨げる主要な事象の一つである。過剰に蓄積されたフリーラジカルを除去することで、おそらくは創傷部位での前提条件である血管新生および新血管形成を促進することによって、より速い治癒過程を誘発する。
【0005】
クマリンは、天然の植物に広く分布するフェノール化合物の群から成り、幅広い薬理学的活性を有する。例えば、Egan et al., Drug Metab. Rev., 22: 503-529, 1990を参照。これらのうち、エスクレチン(6,7-ジヒドロキシクマリン)(化合物2)は、t-ブチルヒドロペルオキシドで治療する前に腹腔内に投与された時、肝酵素マーカーALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)およびAST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)の血清レベルを低下させることが報告されている。例えば、Lin et al., Arch. Toxicol., 74, 467-72, 2000を参照。
【0006】
【化2】
【0007】
しかしながら、クマリンは典型的にはインビボでの生物学的利用能が乏しく、ミトコンドリア内に有意に蓄積しないため、その有効性は限定的なままである。このため、クマリンは通常、ミトコンドリア反応性酸素種を除去するために、より高い濃度で使用されなければならない。
【0008】
米国特許第9,580,452号は、抗アテローム性動脈硬化効果を有する式I(以下に示す)のトリフェニルホスホニウムカチオン(TPP+)結合エスクレチンを開示している。
【0009】
【化3】
【0010】
創傷関連の障害および乾癬の治療の必要性がある。
【発明の概要】
【0011】
本発明の発明者らは驚くべきことに、式Iの化合物は、様々な創傷関連の状態および乾癬の治療に使用されうることを見出した。一つの好ましい実施形態では、式Iの化合物は局所的に投与される。
【0012】
一つの実施形態は、創傷、創傷の治癒不良、創傷およびその周辺の脱毛、創傷およびその周辺の瘢痕および/またはしわ、および乾癬の一つ以上の治療に使用するための式Iの化合物である。
【0013】
【化4】
【0014】
一つの好ましい実施形態では、XはBrまたはClである。一つの好ましい実施形態では、XはBrである。
【0015】
別の実施形態は、それを必要とする対象において、創傷、創傷の治癒不良、創傷およびその周辺の脱毛、創傷およびその周辺の瘢痕および/またはしわ、乾癬、およびそれらの任意の組み合わせを治療する方法である。本方法は、治療有効量の式Iの化合物を対象に(好ましくは局所的に)投与することを含む:
【0016】
【化5】
【0017】
一つの好ましい実施形態では、XはBrまたはClである。一つの好ましい実施形態では、XはBrである。一つの好ましい実施形態では、方法は、対象の患部に、式Iの化合物の治療的に有効な濃度を局所的に適用することを含む。
【0018】
一実施形態では、式Iの化合物は化合物1である:
【0019】
【化6】
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、1日目から26日目まで、クリーム状溶媒(溶媒)を、糖尿病(db/db)マウス(溶媒対照群)の皮膚表面上の創傷に局所適用した後での、1日目、3日目、6日目、9日目、10日目、および26日目の効果を示す写真である。
図2図2は、1日目から10日目まで、糖尿病(db/db)マウスの皮膚の表面上の創傷に毎日局所適用された、溶媒中で調製された化合物1(0.625%w/w)の、1日目、3日目、6日目、9日目、および10日目の影響を示す写真である。
図3図3は、1日目から26日目まで、糖尿病(db/db)マウスの皮膚の表面上の創傷に局所的に毎日適用された、溶媒中で調製された化合物1(2.5%)の、1日目、3日目、6日目、9日目、10日目、および26日目の影響を示す写真である。
図4a図4aは、a)溶媒中で調製された化合物1(0.625%、1.25%および2.5%の各濃度)、b)溶媒中で調製された化合物2(2.5%)、およびc)溶媒を、糖尿病(db/db)マウスの皮膚表面上の創傷領域およびその周辺の創傷に局所適用した、0日目、3日目、6日目、9日目、12日目、および20日目の効果を示す写真である。
図4b図4bは、上記の群について、0日目から20日目まで(X軸)の時間的な創傷閉鎖(Y軸)の割合を示すグラフである。
図5図5は、a)溶媒中で調製された化合物1(0.625%、1.25%および2.5%の各濃度)、b)溶媒中で調製された化合物2(2.5%)、およびc)溶媒を、非糖尿病(C57)マウスの皮膚表面上の創傷に局所適用した効果、および創傷領域およびその周辺での発毛への効果を示す、0日目、10日目、および20日目の写真である。
図6図6は、a)溶媒、およびb)溶媒中で調製された化合物1(2.5%)を、ウサギの皮膚表面上の外科的切開創(切開創の深さ2mmおよび切開創の長さ3cm)へ局所適用した、0日、1~8日、および18日目の効果を示す写真である。
図7図7は、a)溶媒、およびb)溶媒中で調製された化合物1(2.5%)の、処置後20日目のウサギの皮膚表面上の創傷への局所適用の効果を示す写真である。
図8図8は、a)溶媒、b)溶媒中で調製された化合物1(0.625%)、c)溶媒で調製された化合物1(0.625%)とEX-527(6-クロロ-2,3,4,9-テトラヒドロ-1H-カルバゾール-1-カルボキサミド、別名selisistat、SIRT1阻害薬)(0.025%)の組み合わせ、およびd)溶媒中のEX-527(0.025%)の、糖尿病(db/db)マウスモデルの外科的切開創の治癒に対する局所投与の、0日目、4日目、および7日目の効果を示す写真である。
図9図9は、実施例5および表3に記載される7日間の処置後の、8日目に測定された皮膚組織の抗張力の測定を示す写真である。
図10図10は、乾癬モデルにおける、紅斑、落屑、皮膚の厚さおよび耳の厚さについての乾癬の面積・重症度指数(PASI)スコアリング、ならびに体重減少の割合を示す。
図11図11は、実施例6に記載した、0日目、2日目、4日目、6日目、および7日目の、異なる治療群からの代表的なマウスの背部皮膚の表現型画像を示す。
図12図12は、実施例6に記載した酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)を使用して測定された、皮膚組織における炎症誘発性サイトカインIL-17およびIL23(pg/mL)のレベルを示す。
図13図13は、実施例6に記載した、異なる治療群(10倍および40倍)からの代表的なマウスの背部皮膚におけるヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)染色を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本開示に従って利用される場合、別途指示が無い限り、全ての技術用語および学術用語は、当技術分野で一般的に理解される用語と同じ意味を有すると理解されるものとする。文脈上別途要求されない限り、単数形の用語は複数形を含み、複数形の用語は単数形を含むものとする。本明細書に提供される任意のおよびすべての実施例、または例示的な文言の使用は、実施形態をより良く説明することを意図するものであり、別段の記載がない限り、特許請求の範囲に制限をもたらさない。
【0022】
「創傷」という用語は、組織内の連続性を中断させ、皮膚が破れ、穿刺または切断されている、対象の皮膚の組織へのいかなる外傷を指す。創傷は、典型的には、例えば、切開、擦り傷、裂傷、切断、切り傷、擦過傷、穿刺創、外傷性皮膚損傷、熱傷、および穿通創を含む。創傷は、慢性的、例えば、糖尿病性創傷および糖尿病性足部潰瘍、褥瘡または圧迫潰瘍、静脈性下腿潰瘍などの組織損傷を引き起こす疾患または他の慢性創傷、または急性、例えば、事故、傷害、または手術により引き起こされる創傷であってもよい。医療処置はまた、皮膚科的処置または美容整形処置などの創傷も引き起こすことがある。
【0023】
「瘢痕」という用語は、創傷が完全に治癒せず、線維性結合組織が創傷の上およびその周囲で発達した、皮膚組織上に残された跡を指す。これは、創傷の治癒中または治癒後に、このような跡または線維性結合組織を形成することを含む。瘢痕の症状としては、例えば、皮膚瘢痕の変色(発赤または色素沈着の変化を含む)、紅斑、乾燥、剥皮、または皮膚の痒み、周囲の皮膚領域より高い突出、ケロイド形成、month thick bar、瘢痕の痛み、瘢痕化および/または周囲の組織の血管分布の減少、柔軟性の低下、および審美的外観の不良(瘢痕組織の量およびテクスチャを含む)が挙げられる。創傷によって引き起こされる瘢痕も、本発明に従って治療可能である。
【0024】
「創傷治癒」または「創傷の治癒」という用語は、組織の完全性の回復を指し、用語は同じ意味で使用されうる。当然のことながら、これらの用語は、組織の完全性を部分的または完全に回復させることを指しうる。したがって、創傷の治療は、創傷治癒プロセスに関連する一つ以上の段階またはプロセスの増進、改善、進行、促進、加速、または別の方法での前進を指す。本発明の目的による創傷治癒の不良には、創傷治癒に関連する一つ以上の段階またはプロセスの増進、改善、進行、促進、加速、または別の方法での前進の阻害、抑制、干渉、または遅延をしうる、あらゆる原因、手順が含まれる。本明細書に記載される創傷治癒の不良は、化学療法剤または抗血管新生薬によって引き起こされるものを含む。
【0025】
本明細書の「治療有効量」および「治療的に有効な濃度」という用語は、組織、系、動物、個体またはヒトにおいて生物学的または医薬的応答を誘発する活性化合物または医薬品の量または濃度を指し、これは、(1)疾患の防止、抑制、または遅延であって、例えば、疾患、状態または障害にかかりやすいものの、疾患の病理または総体症状をまだ経験または発現していない個体における疾患、状態または障害を予防する、抑制する、または遅らせること、(2)疾患の阻害であって、例えば、疾患の病理または総体症状を経験または発現している個体において、疾患、状態または障害を阻害すること(すなわち、病理および/または総体症状のさらなる発達を阻止すること)、(3)疾患の改善であって、例えば、疾患の病理または総体症状を経験または発現している個体において、疾患、状態または障害を改善すること(すなわち、病理および/または総体症状を逆転させること)、のうちの一つ以上を含む。
【0026】
局所用組成物中の化合物1などの活性成分のすべての濃度は、別段の指定がない限り、組成物の100%の合計重量に基づく重量パーセントである。
【0027】
式Iの化合物は、米国特許第9,580,452号に記載されるように調製することができる。
本発明の様々な実施形態を以下に記載する。
【0028】
一態様では、本発明は、創傷、創傷の治癒不良、創傷およびその周辺の脱毛、創傷およびその周辺の瘢痕および/またはしわ、および乾癬から成る群から選択される一つ以上の状態の治療に使用するための式Iの化合物に関し、それを必要とする対象に局所適用する(例えば、皮膚または創傷の患部に)ことによる。
【0029】
【化7】
【0030】
式中、Xは任意のハロゲン(BrまたはClなど)である。一つの好ましい実施形態では、XはBrまたはClである。一つの好ましい実施形態では、XはBrである。
【0031】
一実施形態では、本発明は、創傷の治療に使用するための式Iの化合物に関する。
【0032】
別の実施形態では、本発明は、創傷治癒の不良の治療に使用するための式Iの化合物に関する。
【0033】
さらなる実施形態では、本発明は、創傷およびその周辺の脱毛の治療に使用するための式Iの化合物に関する。創傷およびその周辺の脱毛の治療は、創傷部位およびその周辺の発毛を増進および/または促進することによって特徴付けられうる。
【0034】
なお別の実施形態では、本発明は、創傷およびその周辺の瘢痕および/またはしわの治療に使用するための式Iの化合物に関する。瘢痕および/またはしわの治療は、創傷部位およびその周囲の瘢痕および/またはしわの外観を最小化することによって特徴付けられうる。
【0035】
本明細書に記載される実施形態のいずれか一つによる式Iの化合物を使用して治療される創傷は、糖尿病性創傷、切開創、外科的創傷、偶発的創傷、圧迫潰瘍または褥瘡、糖尿病性足部潰瘍、壊疽性膿皮症、熱傷、病変、切り傷、またはそれらの任意の組み合わせであってもよい。
【0036】
別の実施形態では、本発明は、創傷の治癒不良の治療における使用のための式Iの化合物に関し、創傷治癒は、例えば、免疫抑制薬、化学療法薬、抗凝固薬、NSAID、血小板凝集阻害薬、抗血管新生薬、およびそれらの任意の組み合わせなどの一つ以上の薬剤の同時投与によって損なわれる。
【0037】
別の実施形態では、本発明は乾癬の治療に使用するための式Iの化合物に関する。
【0038】
本明細書に記載される任意の使用または方法の好ましい実施形態では、式Iの化合物は、化合物1である:
【0039】
【化8】
【0040】
別の態様では、本発明は、それを必要とする対象において、創傷、創傷の治癒不良、創傷およびその周辺の脱毛、創傷およびその周辺の瘢痕および/またはしわ、乾癬、またはそれらの任意の組み合わせを治療する方法である。方法は、治療有効量の式Iの化合物(例えば、XがBrである式1の化合物)を投与すること(例えば、患部に局所適用すること)を含む。一つの好ましい実施形態では、方法は、対象の患部に、式Iの化合物の治療的に有効な濃度を局所的に適用することを含む。
【0041】
一実施形態では、本発明は、それを必要とする対象において、創傷を治療する方法に関し、方法は、治療有効量の式Iの化合物(化合物1など)を対象に投与(例えば、局所適用)することを含む。一つの好ましい実施形態では、方法は、対象の患部に、式Iの化合物の治療的に有効な濃度を局所適用することを含む。
【0042】
別の実施形態では、本発明は、それを必要とする対象において、創傷治癒の不良を治療する方法に関し、方法は、式Iの化合物を対象に投与(例えば、局所適用)することを含む。一つの好ましい実施形態では、方法は、対象の患部に、式Iの化合物の治療的に有効な濃度を局所的に適用することを含む。
【0043】
さらなる実施形態では、本発明は、それを必要とする対象において、創傷およびその周辺の脱毛を治療する方法に関し、方法は、式Iの化合物を対象に投与(例えば、局所適用)することを含む。創傷およびその周辺の脱毛の治療は、創傷部位およびその周辺の発毛を増進および/または促進することによって特徴付けられうる。一つの好ましい実施形態では、方法は、対象の患部に、式Iの化合物の治療的に有効な濃度を局所適用することを含む。
【0044】
なお別の実施形態では、本発明は、それを必要とする対象において、創傷の上の瘢痕および/または周囲のしわを治療する方法に関し、方法は、式Iの化合物を対象に投与(例えば、局所適用)することを含む。瘢痕および/またはしわの治療は、創傷部位およびその周囲の瘢痕および/またはしわの外観を最小化することによって特徴付けられうる。一つの好ましい実施形態では、方法は、対象の患部に、式Iの化合物の治療的に有効な濃度を局所適用することを含む。
【0045】
本明細書に記載の創傷、創傷の治癒不良、創傷およびその周辺の脱毛、または創傷およびその周辺の瘢痕および/またはしわを治療する任意の方法において、創傷は、糖尿病性創傷、切開創、外科的創傷、偶発的創傷、圧迫潰瘍/褥瘡、糖尿病性足部潰瘍、壊疽性膿皮症、熱傷、病変または切り傷であってもよい。
【0046】
別の実施形態では、本発明は、乾癬を治療する方法に関し、方法は、それを必要とする対象に、式Iの化合物を投与(例えば、局所適用)することを含む。一つの好ましい実施形態では、方法は、対象の患部に、式Iの化合物(化合物1など)の治療的に有効な濃度を局所適用することを含む。
【0047】
本明細書に記載される任意の方法の好ましい実施形態では、式Iの化合物は、化合物1である:
【0048】
【化9】
【0049】
本明細書に記載される任意の実施形態において、創傷は、対象の皮膚の表面上に存在する。一実施形態では、対象は哺乳類である。好ましい実施形態では、対象はヒトである。本明細書に記載される方法は、ヒト治療薬および獣医用途の両方において有用である。獣医学的目的のために、「対象」という用語には、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマ、およびヤギを含む家畜、イヌおよびネコなどのコンパニオンアニマル、外来動物および/または動物園の動物、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、およびハムスターを含む実験動物、ならびにニワトリ、シチメンチョウ、アヒル、およびガチョウなどの家禽が含まれるが、これに限定されない。
【0050】
別の実施形態は、治療的に有効な濃度または量の式Iの化合物、および随意に、薬学的に許容可能な賦形剤を含む局所用組成物およびキットに関する。本明細書に記載される組成物は、創傷、創傷の治癒不良、創傷およびその周辺の脱毛、創傷およびその周辺の瘢痕および/またはしわ、乾癬、またはそれらの任意の組み合わせの治療のために有用である。
【0051】
一実施形態では、本発明は、創傷の治療のために治療有効量の式Iの化合物、および随意に薬学的に許容可能な賦形剤を含む局所用組成物に関する。
【0052】
別の実施形態では、本発明は、創傷治癒の不良の治療のために、治療有効量の式Iの化合物、および随意に薬学的に許容可能な賦形剤を含む局所用組成物に関する。
【0053】
一実施形態では、本発明は、創傷およびその周辺の脱毛の治療のために、治療有効量の式Iの化合物、および随意に薬学的に許容可能な賦形剤を含む局所用組成物に関する。創傷およびその周辺の脱毛の治療は、創傷部位およびその周辺の発毛を増進および/または促進することによって特徴付けられうる。
【0054】
なお別の実施形態では、本発明は、創傷およびその周辺の瘢痕および/またはしわの治療のために、治療有効量の式Iの化合物、および随意に薬学的に許容可能な賦形剤を含む局所用組成物に関する。瘢痕および/またはしわの治療は、創傷部位およびその周囲の瘢痕および/またはしわの外観を最小化することによって特徴付けられうる。
【0055】
別の実施形態では、本発明は、乾癬の治療のために、治療有効量の式Iの化合物、および随意に薬学的に許容可能な賦形剤を含む局所用組成物に関する。
【0056】
本明細書に記載される任意の組成物の好ましい実施形態では、式Iの化合物は、化合物1である。
【0057】
本明細書に記載される任意の局所用組成物は、当業者に公知の、一つ以上の適切な薬学的に許容可能な賦形剤をさらに含みうる。組成物は、局所投与形態、例えば、溶液、ゲル、軟膏、クリーム、ローション、ペースト、スプレーフォームまたはエアロゾルの形態でもよい。式Iの化合物(化合物1など)は、適切な薬学的に許容可能な担体または希釈剤を用いて局所用組成物にすることができ、半固体または液体の形態に製剤化することができる。
【0058】
別の態様によれば、本発明は、治療有効量の式Iの化合物(例えば、局所用組成物の形態)、および随意にキットを使用するための指示を含む、キットに関する。本明細書に記載されるキットは、創傷、創傷の治癒不良、創傷およびその周辺の脱毛、創傷およびその周辺の瘢痕および/またはしわ、乾癬、またはそれらの任意の組み合わせの治療のために有用である。
【0059】
以下の実施例は、上述の開示の特定の実施形態の特定の実施形態を例示したものである。それらは説明のみを目的として記載されており、本開示の範囲をいかなる方法でも制限していると解釈されるべきではない。
【0060】
[実施例]
一般的な方法および手順
【0061】
試験化合物の調製:以下の実施例における動物試験の目的において、試験化合物の局所用製剤を、乳化軟膏、防腐剤(p-クロロクレゾール)、および水を含む溶媒中で調製した。溶媒には、いかなる試験化合物も含まれていなかった。試験化合物(化合物1および2)を、倍散によって水性のクリーム状調製物に組み入れた。水性のクリームは、英国薬局方の手順に従って、乳化軟膏BP、p-クロロクレゾール(防腐剤)および水を使用して調製された。対照製剤には、いかなる活性成分も含まれていなかった。
【0062】
手順1:乳化軟膏の調製
乳化ワックス、白色軟質パラフィン、および流動パラフィンを使用して、乳化軟膏を調製した。これらの成分を溶解し、水浴中で60℃まで温め、その後、冷めるまで連続的に攪拌した。
【0063】
手順2:アニオン性乳化クリームの調製
乳化軟膏を溶融し、水槽中で最高60℃まで温め、必要な量のパラクロロクレゾールを冷水に溶解し(クロロクレゾールは冷水に可溶性)、温度計を使用して温度をチェックし、精製水を溶融した軟膏に添加し、冷めるまで連続的に攪拌した。
【0064】
手順3:化合物1および2のクリーム製剤の調製
必要な量の化合物1または化合物2をクリームに加え、ホモジナイザーと混合した。薬剤の適切な混合後、製剤を適切な容器に移し、4℃で保存した。
【0065】
【表1】
【0066】
【表2】
【0067】
【表3】
【0068】
【表4】
【0069】
【表5】
【0070】
【表6】
【0071】
[実施例1]
[糖尿病性(db/db)マウスモデルにおける、創傷治癒プロセスおよび創傷領域およびその周囲の発毛に対する化合物1の効果]
【0072】
方法:この研究では、db/db系統のマウス(年齢:13~14週)を使用した。この系統は、ヒトにおける糖尿病性創傷治癒との類似性が高いためである。1cmの創傷を、局所麻酔状態下で、db/dbマウスの背面にパンチ生検を使用して作製した。動物を各群5匹で、以下のように5つの群に分けた:
第1群(n=5):溶媒単独で処置した(糖尿病対照群)。
第2群(n=5):溶媒中で調製された化合物2(2.5%)で処置した。
第3群(n=5):溶媒中で調製された化合物1(0.625%)で処置した。
第4群(n=5):溶媒中で調製された化合物1(1.25%)で処置した。
第5群(n=5):溶媒中で調製された化合物1(2.5%)で処置した。
【0073】
化合物1の3つの濃度、すなわち0.625%、1.25%、および2.5%を、この研究のために試験した。局所用調製物を、12日間にわたり1日1回、創傷に適用した。創傷領域の画像を可視化し、試験の各日に創傷領域の測定値を記録した。
【0074】
結果:糖尿病対照群および第2群は、26日目までに創傷閉鎖を示した(図1および図3を参照)。第3~5群において、10日目までに、創傷の完全な閉鎖が観察された(図2および図4aおよび図4b(時間的な創傷閉鎖の割合)を参照)。表1は、各群で観察された創傷治癒率を示す。
【0075】
【表7】
【0076】
[実施例2]
[非糖尿病C-57マウスモデルにおける創傷領域および/またはその周囲の創傷治癒および発毛に対する化合物1の効果]
【0077】
方法:この研究では、C57BL/6jマウス系統(年齢:12週間)を、創傷治癒プロセスの研究に使用した。1cmの創傷を、C57マウスの背面にパンチ生検を使用して作製した。動物を各群5匹から成る以下の5つの群に分けた:
第6群(n=5):溶媒単独で処置した(非糖尿病対照群)。
第7群(n=5):溶媒中で調製された化合物2(2.5%)で処置した。
第8群(n=5):溶媒中で調製された化合物1(0.625%)で処置した。
第9群(n=5):溶媒中で調製された化合物1(1.25%)で処置した。
第10群(n=5):溶媒中で調製された化合物1(2.5%)で処置した。
【0078】
溶媒中で調製した化合物1の3つの濃度、すなわち0.625%、1.25%、および2.5%を、この研究で試験した。局所用製剤を、創傷が形成された12時間後から開始して12日間、創傷に1日1回適用した。創傷領域の画像を可視化し、試験の各日に領域の測定値を記録した。
【0079】
結果:非糖尿病対照群および第6群は、14日目までに創傷閉鎖を示した(図5を参照)。第8~10群において、9日目から12日目まで、創傷の完全な閉鎖が観察された。表2は、各群で観察された創傷治癒率を示す。
【0080】
【表8】
【0081】
[実施例3]
[ウサギの切開創治癒に対する化合物1の効果]
【0082】
方法:この研究では、体重2.0~2.5kgのニュージーランドウサギを使用し、2群に分けた。
対照群:溶媒のみで処置した。
試験群:溶媒中で調製した化合物1(2.5%)で処置した。
【0083】
それぞれ長さ2cmの傍脊椎の直線切開を、鋭利なメスを用いて、脊柱の両側の皮膚の全厚を通して行った。完全止血後、約1cm間隔の等距離の地点で断続縫合によって創傷を閉鎖した(図6を参照)。創傷した日から0日目~14日目まで、動物を1日1回処置した。試験期間中、画像を毎日撮影した。7日目に縫合を除去し、創傷閉鎖を観察した。
【0084】
結果:試験中の各時点での創傷閉鎖について、試験群のウサギを、溶媒ベース対照群のウサギと比較した。未処置の対照群のウサギと比較して、試験群のウサギでは、より早い外科的創傷治癒が8日以内に観察された。対照群のウサギと比較して、試験群のウサギでは外科的瘢痕は全く観察されなかった。図7を参照。
【0085】
[実施例4]
[糖尿病マウス(db/db)モデルにおける切開創治癒における化合物1の効果]
【0086】
方法:この研究では、db/db系統(年齢:12週間)のマウスを使用した。動物は4つの群に分けられた:
第11群:溶媒のみで処置されたマウス対照。
第12群:溶媒中で調製された化合物1(0.625%)で処置されたマウス。
第13群:溶媒中の化合物1(0.625%)およびEX-527(0.025%)で処置されたマウス。
第14群:溶媒中のEX-527(0.025%)で処置されたマウス。
【0087】
それぞれ長さ2cm、深さ1mmの傍脊椎の直線切開を、鋭利なメスを用いて、脊柱の両側の皮膚の全厚を通して行った。完全止血後、約1cm間隔の等距離の地点で断続縫合によって創傷を閉鎖した(図8を参照)。すべての群を、それぞれの試験製剤および対照製剤を用いて1日1回7日間処置した。創傷領域の画像を研究の各日に、写真撮影およびドップラー撮像した。治療前および治療中に透明なトレースシートを使用して創傷領域を測定し、4日間隔で創傷閉鎖を測定した。7日目に縫合を除去し、創傷閉鎖について動物を観察した。
【0088】
結果:第12群のマウスは、第11群、第13群、および第14群のマウスと比較して、7日以内に切開創の完全な治癒を示した。図8を参照。SIRT1阻害剤であるEX-527(0.025%)で処置された第13群は、化合物1との組み合わせで、化合物1によって誘発された創傷治癒プロセスを妨害した。この研究は、化合物1が、SIRT1活性を増強することによって創傷治癒を誘発することを示唆している。この結果は、化合物1が、EX-527の存在下で動揺を受けるインビトロ血管新生管形成を増進するという仮説を裏付ける。
【0089】
[実施例5]
[7日間の処置後、8日目の皮膚組織の抗張力の測定]
【0090】
方法:新しいマウスの皮膚を1日1回処理し、5mm/分の伸張速度で100kgの荷重で引張試験機の二つの端の間で伸張した(図9)。結果を表3に示す。
【0091】
【表9】
【0092】
[実施例6]
[Balb/cマウスにおけるIMQ誘発性乾癬の改善における化合物1の局所適用の効果]
【0093】
方法:乾癬の治療のための化合物1の局所投与の効果を、この動物研究で試験した。この研究では、Balb/cマウスの背部皮膚に6日間連続で5%w/wイミキモド(IMQ)クリームを適用することによって、乾癬の典型的な特徴、すなわち紅斑、落屑、および皮膚の厚さを誘発させた。乾癬様症状を発現した動物を、溶媒中で調製(上述の通り)された化合物1の有効性を試験するために使用した。この研究では、オスのBalb/cマウス(6~8週齢)を使用した。動物を、各群中10匹の動物からなる8群に分け、以下のようにした。
【0094】
疑似対照群:疑似対照:マウスの背中を剃り、動物には処置をしなかった。この群は対照としての役割を果たした。
IMQ対照群:この群の動物は、62.5mgの市販のイミキモドクリーム(5%)を、剃った背部に、6日間連続(試験の1日目から6日目)して、午前中の特定の時間に、局所的に処置した。この陰性対照群は、イミキモド5%(IMQ)によって誘発される典型的な乾癬モデルを表す。
IMQ+溶媒ベースの群:この群は、試験の1日目から6日目まで、イミキモドによる乾癬の誘発に続き、その12時間後に、動物の剃った背部に式Iの化合物の調製に使用される溶媒を用いた処置によるマウスを表す。
IMQ+プロピオン酸クロベタゾールクリーム0.05%:この群は、試験の1日目から6日目まで、イミキモドによる乾癬の誘発に続き、その12時間後に、動物の剃った背部に市販のプロピオン酸クロベタゾール(0.05%)クリーム(20μg/2 cm領域)を用いた処置によるマウスを表す。
IMQ+化合物1(0.313%)群:この群は、試験の1日目から6日目まで、イミキモドによる乾癬の誘発に続き、その12時間後に、動物の剃った背部に溶媒中で調製された化合物1(0.313%、これは82.6mg/cm領域に相当する)を用いた処置によるマウスを表す。
IMQ+化合物1(0.625%)群:この群は、試験の1日目から6日目まで、イミキモドによる乾癬の誘発に続き、その12時間後に、動物の剃った背部に溶媒中で調製された化合物1(0.625%、これは82.6mg/cm領域に相当する)を用いた処置によるマウスを表す。
本試験の活動スケジュールを以下の表4に記載する。
【0095】
【表10】
【0096】
病理組織研究:有効性研究の一部として、異なる治療群を代表するマウスの皮膚の形態学的観察を試験するために、病理組織研究を実施した。実験の終了時に、各群からのマウスの皮膚試料を4%のパラホルムアルデヒド中で固定し、パラフィン中に包埋した。各パラフィンブロックから、厚さ4μmの切片を作製し、ガラススライド上に載せた。切片をヘマトキシリンおよびエオシンで染色し、画像を撮影して評価した。
【0097】
結果:乾癬の面積・重症度指数(PASI)スコアリングを分析し、研究の一部として適切な対照を有する化合物1を含有する組成物の有効性を判定した。皮膚の炎症の重症度は、臨床PASIスコアに基づいて客観的なスコアリングシステムによって評価した。紅斑(0~4)および落屑(0~4)は独立してスコア付けされ、ここで、0-なし、1-軽度、2-中等度、3-高度、4-極めて高度であった。累積スコア(紅斑+落屑)は、炎症の重症度(スケール0~8)の尺度としての役目を果たした。
【0098】
図10は、試験中に決定された体重、紅斑、落屑、および皮膚の厚さを含むPASIスコアリングを示す。すべてのマウスの個々の体重を毎日記録した。体重の減少は、0日目の体重に対して計算された。一般的な乾癬の状態を表す陰性対照群は、すべてのパラメータに対して最も高いPASIスコアを示した。溶媒で調製された化合物1(0.313%および0.625%)で処置された群を含む治療群は、処置期間中、陽性対照とほぼ同様のPASIスコアの減少を示した。IMQ+化合物1(0.625%)群は、IMQ+化合物1(0.313%)群および陽性対照群と比較して、より大きなPASIスコアの低下を示した。PASIスコアリングに基づいて、治療群から目に見える抗乾癬効果は、市販のプロピオン酸クロベタゾールクリームで処置された陽性対照群に匹敵するものであった。
【0099】
図11は、試験の異なる群、すなわち、偽の群、陰性対照群、陽性対照群、および異なる濃度の化合物1の製剤で0日目から7日目まで処置された治療群を表すマウスの画像を示す。
【0100】
IMQ誘発性乾癬モデルは、ヒト乾癬性の病変に特徴的な生化学的パラメータおよび病理組織パラメータを再現する。IMQクリームの局所適用は、処置された皮膚組織におけるIL-23およびIL-17を含むサイトカインのレベルを増加させた。7日目に動物を安楽死させた。脾臓、肝臓、および皮膚組織を、すべての動物から収集した。脾臓および肝臓組織を秤量した。IL-17およびIL-23レベルを、市販のキットを使用してELISAにより測定した。IL-17およびIL-23レベルの定量化のために、異なる群のマウスから得られた皮膚ホモジネートを、ELISAを使用して分析した。これは、選択されたインターロイキンは、乾癬の典型的な炎症性マーカーであるためである。図12に示すように、IMQ群(p<0.01)およびIMQ+溶媒ベース(p<0.001)群は、偽の群と比較してIL-17レベルの有意な増加を示した。陰性対照と比較したとき、IL-17レベルの低下が、すべての治療群で見られた。IMQ群およびIMQ+溶媒ベース群は、偽の対照群と比較して、IL-23レベルの有意な増加を示した(p<0.01)。IL-23レベルの低下が、陰性対照と比較した場合、IMQ+化合物1(0.313%および0.625%)群およびIMQ+クロベタゾール(p<0.01)群を含む治療群で見られた。偽の対照群と比較して、IMQ群は、乾癬性炎症の発症を反映するインターロイキンレベルの有意な上昇を示した(p<0.01)。
【0101】
研究の陰性対照群(イミキモド処置動物)は、H&E染色時の典型的な乾癬性特徴の表皮肥厚、不全角化、角質増殖、および皮膚浸潤を表す。治療群のマウスから採取された皮膚の類似した染色は、表皮の肥厚の低下、角質層の肥厚の低下、および皮膚浸潤の数の減少を示した。病理組織像を図13に示す。皮膚および耳の両方からの病理組織結果は、IMQによって誘発された乾癬は、化合物1調製物(0.625%)によってより改善され、プロピオン酸クロベタゾールクリームの効果に匹敵することが示された。
図1
図2
図3
図4a
図4b
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【国際調査報告】