(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-01
(54)【発明の名称】圧延装置及び、圧延装置を用いた圧延方法
(51)【国際特許分類】
B21B 39/08 20060101AFI20230125BHJP
B21B 37/48 20060101ALI20230125BHJP
B21B 1/22 20060101ALI20230125BHJP
B21B 37/26 20060101ALI20230125BHJP
【FI】
B21B39/08
B21B37/48 Z
B21B1/22 Z
B21B37/26
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022529567
(86)(22)【出願日】2020-11-24
(85)【翻訳文提出日】2022-07-19
(86)【国際出願番号】 DE2020100994
(87)【国際公開番号】W WO2021104574
(87)【国際公開日】2021-06-03
(31)【優先権主張番号】102019131761.4
(32)【優先日】2019-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522198874
【氏名又は名称】ウムラウフ ノルベルト
【氏名又は名称原語表記】UMLAUF, Norbert
【住所又は居所原語表記】Haferkamp 64, 58093, Hagen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100089026
【氏名又は名称】木村 高明
(72)【発明者】
【氏名】ウムラウフ ノルベルト
【テーマコード(参考)】
4E002
4E124
【Fターム(参考)】
4E002AD11
4E002BC03
4E002CA08
4E124AA07
4E124BB03
4E124EE02
4E124FF01
(57)【要約】
【要約】本発明は、被圧延材を圧延、特にステップ圧延するための装置であって、当該装置は少なくとも一対のロールと、圧延方向において当該一対のロールの下流に設けられ、当該一対のロールとともに当該被圧延材に対して引張応力を付与することが可能である、少なくとも一つのリニアアクチュエータと、当該引張応力を検出するための各手段とを有する。柔軟に被圧延材を圧延するための改善された方法を可能にするため、当該圧延装置は引張応力を検出するための各手段と、前記被圧延材に対して付与される引張応力を選択的に変化させるあるいはロールギャップの下流において駆動速度が変化しても引張応力を一定に保つために検出された引張応力との関連においてリニアアクチュエータの駆動力を制御する制御装置とを有することを特徴とする。本発明はさらにこのような装置を用いて当該被圧延材を圧延する方法に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被圧延材を圧延、特にステップ圧延するための装置であって、少なくとも一対のロールと、圧延方向において前記一対のロールの下流に設けられ、前記一対のロールとともに前記被圧延材に対して引張応力を付与することが可能である、少なくとも一つのリニアアクチュエータ(4、5)とを有する装置において、前記引張応力を検出するための各手段と、前記被圧延材に対して付与される前記引張応力を選択的に変化させるあるいは駆動速度が変化してもロールギャップの下流において前記引張応力を一定に保つために検出された引張応力との関連において前記リニアアクチュエータの駆動力を制御する制御装置とを有することを特徴とする装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記リニアアクチュエータ(4、5)に作用するトルクを決定および/または調整するように設計されていることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記リニアアクチュエータ(4、5)の消費電力と駆動速度とを決定する各手段を有し、前記消費電力と前記駆動速度に関する決定された情報から前記トルクを決定および/または設定するように設計されていることを特徴とする、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記被圧延材に付与される前記引張応力を決定するために前記リニアアクチュエータ(4、5)および/または前記一対のロールの軸受、特に前記リニアアクチュエータ(4、5)の各駆動軸の軸受において各力計測軸受を備えることを特徴とする、前項のうちいずれか一つに記載の装置。
【請求項5】
前記引張応力を検出するための前記各手段および/または前記制御装置は前記被圧延材の幅に亘る引張応力分布を計測するように設計されていることを特徴とする、前項のうちいずれか一つに記載の装置。
【請求項6】
前記制御装置は、前記一対のロールの接触圧を調整するための各手段と連結されていることを特徴とする、前項のうちいずれか一つに記載の装置。
【請求項7】
前記少なくとも一つのリニアアクチュエータ(4、5)は、作動中に前記リニアアクチュエータの前記被圧延材に対する位置を変更することが可能であり、特に駆動方向に対して実質的に直交する軸を中心に旋回可能である、少なくとも一つの調整装置を有することを特徴とする、前項のうちいずれか一つに記載の装置。
【請求項8】
前記リニアアクチュエータ(4、5)は、それぞれ上方および下方から前記被圧延材に対して作用し、フレーム(41)内に保持される上部駆動装置と下部駆動装置を有し、前記上部駆動装置および下部駆動装置は、前記固定フレーム内においてフレームに対して位置決めされ得ることを特徴とする、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記被圧延材の一方側において前記上部および下部駆動装置のための少なくとも一つの第一の調整装置が設けられており、前記調整装置を用いて前記上部および下部駆動装置が駆動方向に直交する方向へと変位可能であり、さらに前記被圧延材の反対側において前記上部および下部駆動装置のための少なくとも一つの第二の調整装置が設けられており、前記調整装置を用いて前記上部および下部駆動装置が実質的に垂直である軸を中心に旋回可能であることを特徴とする、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記調整装置は、前記リニアアクチュエータが少なくとも±10度、好ましくは少なくとも±20度旋回することを可能にするように形成されていることを特徴とする、請求項7から9のうちいずれか一つに記載の装置。
【請求項11】
前記リニアアクチュエータ(4、5)の前記上部および下部駆動装置は、前記被圧延材に接触するために圧延方向に対して前後に連続して配置された複数の接触要素(27、28)を有し、前記接触要素(27、28)は好ましくは前記被圧延材が圧延方向において異なる厚みを有する場合であっても前記被圧延材に確実に接触するように弾性的に形成されていることを特徴とする、前項のうちいずれか一つに記載の装置。
【請求項12】
前記リニアアクチュエータ(4、5)のうち少なくとも一つが、前記被圧延材を非接触で駆動または制動する、一つまたは複数の非接触型渦電流駆動装置を有することを特徴とする、請求項1から10のうちいずれか一つに記載の装置。
【請求項13】
前記被圧延材の厚みおよび/または速度を計測するために圧延方向において前記一対のローラの下流に少なくとも一つの計測装置(6、7)を有することを特徴とする、前項のうちいずれか一つに記載の装置。
【請求項14】
圧延方向において前記一対のローラの上流に一つのリニアアクチュエータ(4、5)と圧延方向において前記一対のローラの下流に一つのリニアアクチュエータ(4、5)を有することを特徴とする、前項のうちいずれか一つに記載の装置。
【請求項15】
上記請求項1から14のうちいずれか一つによる装置を用いて前記被圧延材を圧延する方法であって、前記被圧延材が前記一対のロールによって圧延され、圧延方向に対して前記一対のロールの下流に設けられたリニアアクチュエータ(4、5)が前記一対のロールおよび/または圧延方向に対して前記一対のロールの上流に設けられたリニアアクチュエータ(4、5)と協同することによって前記被圧延材に対して引張応力を付与し、前記リニアアクチュエータ(4、5)によって前記被圧延材に対して付与された前記引張応力が制御されることを特徴とする方法。
【請求項16】
前記ロールギャップの高さは、圧延中に前記制御装置との関連において変更されることを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記被圧延材を矯正するためあるいはサーベルエラーを最小化または回避するために前記リニアアクチュエータ(4、5)から前記被圧延材に付与される前記引張応力の方向が前記被圧延材の長手方向に対して制御された形で変更されることを特徴とする、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
前記被圧延材は、前記一対のロールの間を交互に反対方向に通過することを特徴とする、請求項15から17のうちいずれか一つに記載の方法。
【請求項19】
前記引張応力は、前記ロールギャップにおける前記被圧延材の変形を少なくとも50%を引き起こすように制御されることを特徴とする、請求項15から18のうちいずれか一つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被圧延材を圧延、特にステップ圧延するための装置であって、当該装置は少なくとも一対のロールと、圧延方向において当該一対のロールの下流に設けられ、当該一対のロールとともに被圧延材に対して引張応力を付与することが可能である、少なくとも一つのリニアアクチュエータと、当該引張応力を検出するための各手段とを有する。本発明はさらにこのような装置を用いて被圧延材を圧延する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属帯板を圧延および矯正するための装置は、金属帯板のための圧延、矯正および加工ラインにおいて用いられる。金属帯板は異なる目的のために圧延および矯正される。圧延では帯板は水平方向の力によって変形されることによってより薄くなるように圧延される。矯正では帯板は張力によって矯正される。特に延伸矯正では張力をかける帯板の部分をできるだけ小さくしようと試みる。変形の領域が小さければ小さいほど、ミクロ構造のバランスはよくなる。
【0003】
圧延の特殊な形態がステップ圧延であり、「フレキシブル圧延」とも称される。これは例えば特に軽量構造における荷重と重量を最適化した構成要素を製造するために用いられる。一対のローラ間の圧延ギャップのサイズを意図的に変えることで、自身の長さに沿って異なる帯板厚を有する様々な部分を有する金属帯板が製造される。異なる厚みを有する各帯板部分間の各移行部分は、異なるピッチを有し得る。
DE 38 07 399A1公報は、金属製の帯板を製造するための冷間圧延スタンドの各ワークロール間の圧延ギャップのギャップ幅を制御する方法と、この方法を実施するための装置とを開示している。当該制御は、入口側と出口側とにおける帯板速度の各計測信号と、当該入口側と出口側とにおける帯板厚とに基づいている。各応答時間および各制御時間が長すぎて、特に各移行部分において十分に良好な厚みの移行を得ることができない、あるいは短い各移行を全く実現できないという点で当該制御は不都合であると考えられている。
【0004】
制御システムの応答および補正までに必要な各制御時間から生じる各問題を解決するために、EP 3 097 992A1では、ロールギャップの大きさの変化に関係なく、各ワークロールによって金属帯板に付与される各力が一定あるいは少なくともほぼ一定に維持される方法が記載されている。このことは特に金属帯板に作用する帯板張力を制御することによって達成されるものである。当該帯板張力は、デコイラ装置(圧延される帯板がそこから巻き解かれる)とコイラ装置(圧延された帯板がその上に巻き付けられる)の各リール速度を変更することによって制御される。各ワークロールの速度および/または各ワークロールの回転速度ならびにデコイラ装置および/またはコイラ装置の各回転速度が予め計算されたデータにしたがって制御されることが特に有利であると考えられている。これは応答時間および制御時間による制御における各不都合を回避するためである。各コイラロールおよび各ワークロールの各速度のために必要な、各金属帯板によって異なる各プロセスパラメータを計算するために十分な基盤が得られる前に、まず数多くのデータを経験的に記録する必要がある点で当該方法は不都合であると思われる。
【0005】
US9、242、284A1において圧延された金属帯板を延伸する方法が記載されており、ここでは金属帯板が二つのリニアアクチュエータの間において延伸される。当該二つのリニアアクチュエータの間にロールスタンドも配置することで圧延および延伸ステップを組み合わせることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】DE 38 07 399A1公報
【特許文献2】EP 3 097 992A1公報
【特許文献3】US9、242、284A1公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方、本発明では冒頭で述べた類の圧延装置を提供するという課題を解決することを目的としており、当該装置を用いることにより被圧延材を柔軟に圧延することが可能であるため、従来公知であるステップ圧延の各方法について述べた各不都合が存在しない、あるいはせいぜいより少ない程度に存在するのみである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、本発明によると請求項1による装置と請求項15による方法とによって解決される。
ここで且つこれ以降において被圧延材について言及する場合、これは特に金属帯板の形における被圧延材を意味するが、これに限定されるものではない。本願発明は、スラブまたはその他の非帯板状の被圧延材を厚板に圧延、特にステップ圧延するのにも適している。
【0009】
ここで且つこれ以降においてリニアアクチュエータという用語を用いる場合、被圧延材のための駆動装置であって、駆動力を被圧延材に対して自身の曲面を介して伝達する、各ローラまたはロールによる駆動装置とは異なり、駆動力を駆動装置のより長い曲線部分に亘って当該被圧延材に伝達する駆動装置を意味するものとする。好適なリニアアクチュエータは、例えばUS9、242、284B2において開示されている。
意外にも被圧延材の厚みの代わりに被圧延材に作用する引張応力を計測および制御すると非常に良好な圧延結果を得ることが可能であることが判明した。被圧延材の横断面における引張応力を制御することにより、ロールギャップにおける各ロールによって付与される圧力によって生じる被圧延材の流れ、ひいては圧延によって達成できる厚みの減少に対して直接且つ著しく影響を与えることが可能になる。同時にロールギャップ内のミクロ構造の流れ、ひいては被圧延材の品質を著しく最適化することが可能である。これが特にリニアアクチュエータを使用することによって可能となるのは、リニアアクチュエータを用いると被圧延材に対して十分に高い引張応力を導入することが可能であるからである。特にリニアアクチュエータの駆動速度に関係なく、当該リニアアクチュエータによって被圧延材に対して付与される引張応力を可能な限り一定にすることを目的とする。しかしながら引張力を圧延パスの大きさとの関連において制御することも有益であり得る。
【0010】
決定された引張応力データとの関連において当該少なくとも一つのリニアアクチュエータによって被圧延材に付与される引張応力を制御することにより、特に厚みの減少が絶えず変化することによって各圧延ロールより下流の帯板速度が絶えず変化するステップ圧延シートの製造の間、引張応力を一定に保つことが可能である。当該制御は、好ましくは決定された引張応力との関連においてのみ実施され、被圧延材に作用する引張応力が維持されるように被圧延材の搬送速度を相応して調整する。
【0011】
本発明の好ましい実施形態において、制御装置は、被圧延材に作用する引張応力を決定および/または調整するためにリニアアクチュエータに作用するトルクを決定および/または調整するように設計されている。例えば、リニアアクチュエータに作用するトルク、ひいては被圧延材に付与される引張応力は、リニアアクチュエータの駆動速度とリニアアクチュエータによって消費される電力とによって決定され得る。したがってリニアアクチュエータの電力、ひいては被圧延材に作用する引張応力は、当該制御装置によって制御することが可能である。この点において制御装置がリニアアクチュエータの消費電力と駆動速度とを決定するための各手段を有し、決定された情報に基づいて引張応力を決定および/または設定するように設計されていることが好ましい。
【0012】
この目的のためには各サーボモータ、好ましくはリニアアクチュエータの上部駆動装置と下部駆動装置とのそれぞれのため二つのサーボモータが特に好適である。当該各サーボモータは、高機能駆動を可能にする。各リニアアクチュエータは被圧延材を相対移動なしに同調させることを可能とするため、各サーボモータによって生成された各トルクにおける変化は遅滞なく被圧延材に伝達される。とりわけステップ圧延においてはこのことは被圧延材の異なる厚みを有する各領域間の移行を比較的短くすることができるという利点を奏する。
【0013】
別法としてまたはさらに加えて本発明による装置は、被圧延材に付与される引張応力を決定するためにリニアアクチュエータおよび/または一対のロールの軸受、特にリニアアクチュエータの各駆動軸の軸受において各力計測軸受を有する。このような各力計測軸受は、十分に公知である。例えば転がり軸受の軸受シェルにギャップを設け、当該ギャップの両側において歪ゲージを取り付けることによって被圧延材に導入される引張応力における変化によるギャップ幅における変化を計測することが可能であるように設計され得る。このような各力計測軸受は、例えば各リニアアクチュエータの各駆動軸を支持するために好適に用いられ、その場合さらにこのように支持された駆動軸を駆動するための(各)駆動モータはギアボックスの介在なしに直接当該駆動軸に連結されることが好ましい。各力計測軸受を用いることにより被圧延材における引張応力の高機能計測が可能となる。
【0014】
原則として引張応力の検出手段および/または制御システムが被圧延材の幅に亘って応力分布を計測するように設計されていることが有利である。特に引張応力が被圧延材長手方向に対して両側において計測される場合、被圧延材の幅に亘る引張応力分布を十分に決定することが可能である。
ロールギャップにおける被圧延材の流れを最適化するためには制御装置が一対のロールの接触圧を調整する手段と連結されることも有利である。このことで当該ロールギャップにおける被圧延材に作用する全ての力を制御することが可能となる。
【0015】
本発明のさらに好ましい実施形態は、少なくとも一つのリニアアクチュエータが少なくとも一つの調整装置を有することを特徴とし、当該調整装置を用いることで作動中に被圧延材に対する当該リニアアクチュエータの位置を変更する、特に当該被圧延材の駆動方向に対して実質的に直交する軸を中心に旋回させることが可能である。リニアアクチュエータを旋回させることにより、被圧延材の幅に亘る引張応力分布を変更および調整することが可能である。これにより特に当該調整装置が制御装置に連結されており、当該調整装置が被圧延材の幅に亘って計測される引張応力分布との関連において駆動される場合に例えば圧延時に被圧延材に形成されるサーベルを初期の段階で補正することが可能となる。当該(各)リニアアクチュエータの調整可能性により、本発明による装置は圧延だけではなく同時に被圧延材の矯正にも使用することが可能である。
【0016】
リニアアクチュエータが湾曲した経路上で揺動可能であることが好ましい。帯板に対するリニアアクチュエータの位置は圧延中であっても調整可能であることが有意義である。さらに経路そのものの曲率半径も圧延中に調整可能であり得る。このことは一方のリニアアクチュエータが一対のロールの駆動方向に対して上流、他方が下流に設けられている場合、両リニアアクチュエータに適用することが可能である。
この目的のため典型的にはリニアアクチュエータ内に設けられ、被圧延材に対して上下から作用する、当該少なくとも一つの上部駆動装置と当該少なくとも一つの下部駆動装置とはそれぞれフレーム内において保持されており、リニアアクチュエータの当該上部および下部駆動装置を当該フレームに対して固定フレーム内において位置決めすることが可能である。ここで当該上部および下部駆動装置のための少なくとも一つの第一の調整装置が被圧延材の一方側に設けられることで当該上部および下部駆動装置を駆動方向に直交する方向に変位することが可能となり、当該上部および下部駆動装置のための当該少なくとも一つの第二の調整装置が当該被圧延材の他方側に設けられることで当該上部および下部駆動装置を実質的に垂直である軸を中心に旋回することが可能となることがさらに好ましい。したがってリニアアクチュエータの駆動方向は、被圧延材の長手方向に対して比較的自由に調整可能である。
【0017】
特に被圧延材の矯正を可能にするためにリニアアクチュエータが少なくとも±10度、好ましくは±20度の角度において被圧延材の長手方向に対して旋回可能であることが有利である。
可能な限り高い引張応力を確保するために、リニアアクチュエータの上部および下部駆動装置が被圧延材に接触するための、圧延方向に対して前後に連続して配置された複数の接触要素を有し、当該各接触要素が好ましくは被圧延材が圧延方向において異なる各厚みを有する場合であっても当該被圧延材に確実に接触するように弾性的に設計されていることが有利である。
【0018】
別法として各リニアアクチュエータのうち少なくとも一つは、被圧延材を非接触で駆動する非接触型渦電流駆動装置を有することが可能である。
被圧延材の厚みおよび/または速度を計測するために圧延方向において一対のロールより下流に計測装置、特にレーザを用いる計測装置が設けられることが好ましい。さらに一対のロールの下流における、駆動方向における被圧延材の平坦度、うねり度およびサーベル度を決定すべく当該計測装置を設計するか別の各計測装置を設けることが可能である。全ての決定された計測データは、引張応力を制御するためにも用いられ得る。
【0019】
本発明によるさらに別の実施形態において、圧延方向において一対のロールのそれぞれ前後にリニアアクチュエータが設けられ、当該各リニアアクチュエータは、例えば駆動方向において一対のロールの上流に設けられたリニアアクチュエータが被圧延材を制動し、下流に設けられたリニアアクチュエータが被圧延材を引っ張ることにより、被圧延材に対して共同で張力を付与するのに好適である。
【発明の効果】
【0020】
上記から既に明らかであるように、本発明の基礎となる課題は、本発明による装置を用いて被圧延材を圧延するための方法によって被圧延材が一対のロールによって圧延され、圧延方向に対して一対のロールの下流に設けられたリニアアクチュエータが当該一対のロールおよび/または圧延方向に対して当該一対のロールの上流に設けられたリニアアクチュエータと協同することによって被圧延材に対して引張応力を付与し、リニアアクチュエータによって被圧延材に対して付与される引張応力は制御されることによって解消される。
本発明による方法の特別な実施形態においてロールギャップの高さは、制御装置との関連において変更される。
【0021】
被圧延材を矯正するまたはサーベルエラーを最小化するまたは回避するために、リニアアクチュエータが被圧延材に付与する引張応力の方向を被圧延材の長手方向に対して制御された形で変更することが好ましい。
本発明による装置を用いて被圧延材が一対のロール間を交互に反対方向に通過する圧延工程を実施することも可能である。換言すれば、本発明による装置は、特に(しかしながらこれに限定するものではない)ロールギャップの上流および下流のそれぞれにリニアアクチュエータが設けられる場合に被圧延材の少なくとも個々の部分を反転モードにおいて圧延することを可能にする。
当該方法によるとロールギャップにおける被圧延材の変形の少なくとも50%を引き起こすように引張応力を制御することが可能であり有利である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明による圧延ラインの基本構造の側面図である。
【
図2】
図1に示すリニアアクチュエータ4の基本構造を示す側面一部断面図である。
【
図3a】均一な厚みを有する金属帯板を用いて圧延ラインの一対のロールの上流における 駆動ゾーンにおけるリニアアクチュエータの各弾性接触要素の挙動を示す概略図である。
【
図3b】ステップ圧延された金属帯板を用いて圧延ラインの一対のロールの下流における駆動ゾーンにおけるリニアアクチュエータの各弾性接触要素の挙動を示す概略図である。
【
図4a】均一な厚みを有する金属帯板を用いて圧延ラインの一対のロールの上流における駆動ゾーンにおける渦電流駆動装置の形におけるリニアアクチュエータを示す概略図である。
【
図4b】ステップ圧延された金属帯板を用いて圧延ラインの一対のロールの下流における駆動ゾーンにおける渦電流駆動装置の形におけるリニアアクチュエータを示す概略図である。
【
図5】
図1に示すリニアアクチュエータ4の基本構造を示す概略断面図である。
【
図6】
図2および
図5のリニアアクチュエータのアクチュエータの一部断面上面図である。
【
図7a】第1の作動位置における
図2および
図5のリニアアクチュエータの一部断面上面図である。
【
図7b】異なる作動位置における
図2および
図5のリニアアクチュエータの一部断面上面図である。
【
図8】
図5と同様ではあるもののここでは渦電流駆動装置を有するリニアアクチュエータの基本構造である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に本発明の好ましい各実施形態を図示する各図面を参照しつつ、本発明をより詳細に説明する。
図1は、本発明による圧延および延伸ラインを図示しており、当該ラインは一対のロール1および2を有するロールスタンド3と、当該ロールスタンド3の帯板走行方向に対して上流に設けられたリニアアクチュエータ4と、熱延または冷延された金属帯板をステップ圧延するのに特に好適である、ロールスタンド3の下流に設けられたリニアアクチュエータ5とを備える。計測装置6が帯板走行方向においてリニアアクチュエータ4の上流に設けられ、さらに計測装置7が帯板走行方向においてリニアアクチュエータの下流に設けられる。これら各計測装置6、7は、特に圧延および延伸ラインを通って案内される金属帯板8のストリップ速度ならびに平坦度、均一度、操縦性およびサーベル度を決定するために設けられている。当該ラインの終端にはコイラ9があり、その上に圧延された金属帯板8が巻き付けられる。
【0024】
特に
図2において見受けられるように、リニアアクチュエータ4は、
図2においては概略的にのみ示されている循環チェーン11を有する上部駆動装置と循環チェーン12を有する下部駆動装置とを有する。相応してリニアアクチュエータ5は、循環チェーン13を有する上部駆動装置と循環チェーン14を有する下部駆動装置とを有する。循環チェーン11、12、13、14はチェーンレール12a、14aにおいて循環し、それぞれの駆動装置の駆動軸21、22、23、24の両側に配置され、歯車25、26を介して各循環チェーン11、12に対して駆動トルクを伝達する、二つのサーボモータ15、16、17、18によってそれぞれ駆動される。各駆動軸21、22、23、24は、チェーンレール12a、14a上に取り付けられている。
【0025】
金属帯板8は、各リニアアクチュエータ4、5の各上部および下部循環チェーン11、12、13、14の間を案内される。各循環チェーン11、12の各チェーンリンク上には各接触要素27、28が設けられており、当該各接触要素は弾性的に設計されているため、特に
図3a(均一に圧延された金属帯板8の図)と
図3b(ステップ圧延された金属帯板8の図)における図示から見受けられるように、各リニアアクチュエータ4、5の接触領域の長さに亘って金属帯板の厚みが変化する場合であっても当該各接触要素は金属帯板をしっかりと掴むことが可能である。同様に、ばねによって取り付けられた比較的剛性の高い各接触要素を用いることが可能であるが、当該各ばねが取り付けに十分な剛性を有するように設計されていることを前提とする。
【0026】
接触型リニアアクチュエータの別法として非接触型リニアアクチュエータ、特にチェーンリンクが磁石を有する渦電流リニアアクチュエータを使用することも可能である。当該アクチュエータは非接触型であるため、自身の長さに亘って厚みが変化する金属帯板をも問題なく直線的に駆動することが可能である。
図4aおよび
図4bは、金属帯板8が渦電流リニアアクチュエータの上部および下部駆動装置の各磁石ないし各電気コイル35、36の間を案内される様子を図示しており、
図4aに図示される金属帯板8は平らに圧延され、
図4bに図示される金属帯板8はステップ圧延されている。
本実施形態において、金属帯板8における張力応力は、リニアアクチュエータ5によって付与される張力とリニアアクチュエータ4によって付与される反張力とによって生成される。この目的のため各リニアアクチュエータ4、5は技術的には同一であるが、180度回転されてラインに設置されるため、各モータがロールスタンド3と反対方向に向くそれぞれのリニアアクチュエータ4、5の側面にそれぞれ配置される。
【0027】
金属帯板8に付与される引張応力は、各力計測軸受31、32によって決定され、当該各力計測軸受は、
図2において見受けられるように各循環チェーン11、12によって画定される、リニアアクチュエータ4、5の駆動領域の各側面にそれぞれ配置されている。
【0028】
図5は、特に
図2に示されるリニアアクチュエータ4を位置決めするための各位置決め装置の動作を図示している。リニアアクチュエータ4は、横方向の支柱42、43を有する固定フレーム41を有する。特に
図6の断面図において見受けられるように、回転柱44、45が横方向の支柱42、43に取り付けられている。各回転柱44、45のそれぞれは、
図6において見受けられるように長尺部に亘って対向する各側面に開口する外壁46を有する。この部分において各回転柱44、45の内壁はガイド47として形成されている。各回転柱44、45を旋回するために当該回転柱の下端においてアクチュエータ48、49が設けられている。各回転柱44、45の角度位置は、比較的広範囲に亘って調整可能である(
図6において二つの可能な調整位置が図示されている)。
【0029】
上部駆動装置は、上部クロスビーム51によって、また下部駆動装置は下部クロスビーム52によって保持されている。両側において各循環チェーン11、12に隣接してガイド柱53、54が下部クロスビームの上に設けられ、その上に上部クロスビーム51が垂直方向に移動可能であるように取り付けられている。上部クロスビーム51は、フレーム41の上部に支持された、各油圧シリンダ55、56によって下部クロスビーム52に対して垂直に位置決めされ得る。下部クロスビーム52は、下部クロスビーム52の下方における各ガイド柱53、54の領域に設けられる各すべり軸受57、58上に支持される。ガイド柱53、ひいてはリニアアクチュエータ全体は、アクチュエータを介して自身の駆動ロッドがガイド柱53に対して連結されているアクチュエータ59を用いて搬送方向に対して直交する方向に調整可能である。
【0030】
上部クロスビーム51および下部クロスビーム52の各端部において各支持ローラ61、62、63、64が設けられており、当該各ローラは水平面において各回転柱44、45の各ガイド46、47へと案内される。上部クロスビーム51の各支持ローラ61、62は、各回転柱44、45において垂直方向に変位可能である。
各回転柱44、45の各ガイドの位置を調整可能である各アクチュエータ48、49と搬送方向に直交する方向に作用するアクチュエータ59との組み合わせによって特に被圧延材の中心にある仮想中心点を中心に実質的に部分円形の経路部分上でリニアアクチュエータ全体を旋回することが可能であり、当該仮想円形経路部分の半径または当該仮想中心円の位置は、特に当該仮想中心点Mがリニアアクチュエータの両側に設けられ得るように広い範囲内で調整可能である。その結果、
図7aおよび
図7bにおいて図示されるように特に当該仮想中心点を搬送方向においてそれぞれのリニアアクチュエータの上流に配置することが可能であり、被圧延材を反対の各搬送方向、すなわち反転動作において圧延ラインを通って案内することが可能である。
【0031】
図8に図示されるリニアアクチュエータの基本構造は、基本的に
図5に図示されるリニアアクチュエータの基本構造に相当する。唯一の違いは、各循環チェーン11、12が
図5に図示されている各駆動装置では被圧延材に接触する各接触要素を有するのに対し、ここでは各磁石または各電気コイル71、72を有するため、被圧延材は非接触で各循環チェーン間を搬送され得る。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、圧延装置及び、圧延装置を用いた圧延方法に係るものであることから、広く産業上の利用可能を有している。
【符号の説明】
【0033】
1 ロール
2 ロール
3 ロールスタンド
4 リニアアクチュエータ
5 リニアアクチュエータ
6 計測装置
7 計測装置
8 金属帯板
9 コイラ装置
11 循環チェーン
12 循環チェーン
12a チェーンレール
13 循環チェーン
14 循環チェーン
14a チェーンレール
15 サーボモータ
16 サーボモータ
17 サーボモータ
18 サーボモータ
21 駆動軸
22 駆動軸
23 駆動軸
24 駆動軸
25 歯車
26 歯車
27 接触要素
28 接触要素
31 力計測軸受
32 力計測軸受
35 磁石ないし電気コイル
36 磁石ないし電気コイル
41 固定フレーム
42 各支柱
43 各支柱
44 回転柱
45 回転柱
46 外壁
47 ガイド
48 アクチュエータ
49 アクチュエータ
51 上部クロスビーム
52 下部クロスビーム
53 ガイド柱
54 ガイド柱
55 油圧シリンダ
56 油圧シリンダ
57 すべり軸受
58 すべり軸受
59 位置決めシリンダ
61 支持ローラ
62 支持ローラ
63 支持ローラ
64 支持ローラ
71 磁石ないし電気コイル
72 磁石ないし電気コイル
【国際調査報告】