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特表2023-503928結節性硬化症の治療での使用のためのガナキソロン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-01
(54)【発明の名称】結節性硬化症の治療での使用のためのガナキソロン
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/57 20060101AFI20230125BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230125BHJP
   A61P 25/08 20060101ALI20230125BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20230125BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20230125BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230125BHJP
【FI】
A61K31/57
A61P35/00
A61P25/08
A61K9/10
A61K9/48
A61P43/00 105
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022529846
(86)(22)【出願日】2020-12-07
(85)【翻訳文提出日】2022-05-23
(86)【国際出願番号】 US2020063648
(87)【国際公開番号】W WO2021113834
(87)【国際公開日】2021-06-10
(31)【優先権主張番号】62/944,549
(32)【優先日】2019-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522047963
【氏名又は名称】マリナス ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】アイメッティ, アレックス
(72)【発明者】
【氏名】フーリハン, ジョゼフ
(72)【発明者】
【氏名】ブラウンスタイン, スコット
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA22
4C076AA53
4C076BB01
4C076CC01
4C076CC26
4C086AA01
4C086AA02
4C086DA10
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA23
4C086MA37
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZA06
4C086ZB21
4C086ZB26
(57)【要約】
結節性硬化症または結節性硬化症関連てんかんを治療するための方法に関する本開示は、それを必要とする対象に対して、医薬として許容可能なプレグネノロン神経ステロイド、例えば、ガナキソロンの治療有効量を投与して、結節性硬化症または結節性硬化症関連てんかんの1つ以上の症状を緩和させることを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結節性硬化症または結節性硬化症関連てんかんを治療するための方法であって、それを必要とする対象に対して、医薬として許容可能な治療有効量のプレグネノロン神経ステロイド、または医薬として許容可能なその塩を投与することを含む、前記方法。
【請求項2】
前記プレグネノロン神経ステロイドが、ガナキソロンである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記プレグネノロン神経ステロイドを、1日3回投与する、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項4】
前記プレグネノロン神経ステロイドを、1日2回投与する、請求項1~2のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記対象に、約200mg/日~約1,800mg/日のガナキソロンを投与する、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記対象に、最大で、約1,800mg/日のガナキソロンを投与する、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
ガナキソロンを、約1,500mg/日のガナキソロンで投与する、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
ガナキソロンを、最大で、63mg/kg/日の量で投与する、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記プレグネノロン神経ステロイドを、経口投与する、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記プレグネノロン神経ステロイドを、経口懸濁液として投与する、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記プレグネノロン神経ステロイドを、経口カプセルで投与する、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記結節性硬化症関連てんかんが、点頭てんかんである、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記結節性硬化症関連てんかんが、焦点性意識障害発作である、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記結節性硬化症関連てんかんが、焦点性発作である、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記結節性硬化症関連てんかんが、全般発作である、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記プレグネノロン神経ステロイドを投与すると、ベースラインと比較して、対象における発作の頻度及び/または発作の重症度が低減される、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記プレグネノロン神経ステロイドを投与すると、ベースライン発作頻度と比較して、発作頻度が、約20%以上低減される、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記プレグネノロン神経ステロイドを投与すると、ベースライン発作頻度と比較して、発作頻度が、少なくとも約35%以上低減される、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記対象が、脳波(EEG)でモニタリングされる、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記対象での発作の機能活動が、脳波(EEG)でモニタリングされる、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
ガナキソロンを、対象に対して、約100ng/mLのガナキソロン血漿濃度を、1日24時間の約70%以上にわたって、対象に対して提供する上で十分な量で投与する、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
ガナキソロンを、1日3回投与する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記プレグナノロン神経ステロイドを投与する前に、前記対象での内因性神経ステロイドのレベルを測定することであって、対象が低いレベルの内因性神経ステロイドレベルを有することが、前記対象が前記プレグネノロン神経ステロイドに応答することを示す、前記測定すること、及び、
前記内因性神経ステロイドレベルが低い対象に対して、治療有効量の前記プレグネノロン神経ステロイドを投与することをさらに含む、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記内因性神経ステロイドが、アロプレグナノロン硫酸塩である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記低レベルの内因性神経ステロイドが、2500pg mL-1以下の量である、請求項23または24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記プレグネノロン神経ステロイドが、ガナキソロンである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
結節性硬化症または結節性硬化症関連てんかんを治療するための方法であって、それを必要とする対象に対して、ガナキソロンを、少なくとも100ng/mlのガナキソロン血漿濃度を、1日24時間の約70%以上にわたって、対象に対して提供するのに十分な量で投与することを含む、前記方法。
【請求項28】
ガナキソロンを、1日3回投与する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
ガナキソロンを、経口投与する、請求項27または28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
ガナキソロンを、経口懸濁液として投与する、請求項27~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
ガナキソロンを、経口カプセルとして投与する、請求項27~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
ガナキソロンを、最大で、63mg/kg/日の量で投与する、請求項27~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
ガナキソロンを、最大で、1,800mg/日の量で投与する、請求項27~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
ガナキソロンを、最大で、1,500mg/日の量で投与する、請求項27~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記結節性硬化症関連てんかんが、点頭てんかん、焦点性意識障害発作、焦点性発作、または全般発作である、請求項27~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
ガナキソロンを投与すると、ベースラインと比較して、対象における発作の頻度及び/または発作の重症度が低減される、請求項27~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
ガナキソロンを投与すると、ベースラインと比較して、対象における大運動頻度が低減される、請求項27~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
ガナキソロンを投与すると、ベースライン発作頻度と比較して、発作頻度が、約20%低減される、請求項27~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
ガナキソロンを投与すると、ベースライン発作頻度と比較して、発作頻度が、少なくとも約35%低減される、請求項27~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記対象を、脳波(EEG)でモニタリングする、請求項27~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記対象での発作の機能活動を、脳波(EEG)でモニタリングする、請求項27~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
結節性硬化症に関連するてんかんを有する、または有する疑いのある対象を治療する方法であって、
前記対象が、低レベルの内因性神経ステロイドを有するか否かを決定すること、及び、
前記対象が、低レベルの内因性神経ステロイドを有している場合に、前記対象に対して、治療有効量の医薬として許容可能なプレグネノロン神経ステロイド、または医薬として許容可能なその塩を投与することを含む、前記方法。
【請求項43】
前記内因性神経ステロイドが、アロプレグナノロン硫酸塩であり、プレグネノロン神経ステロイドが、ガナキソロンである、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記内因性神経ステロイドが、アロプレグナノロン硫酸塩であり、前記低レベルの内因性ステロイドが、2500pg mL-1以下のレベルである、請求項42または43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記プレグネノロン神経ステロイドが、式IA:
【化10】

の化合物、または、医薬として許容可能なその塩であり、式中:
Xは、O、S、またはNR10であり、
は、水素、ヒドロキシル、-CHA、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたヘテロアルキル、任意に置換されたアリール、または任意に置換されたアリールアルキルであり、
Aは、ヒドロキシル、O、S、NR11、任意に置換された窒素含有5員ヘテロアリール、任意に置換された窒素含有5員ヘテロアリール、または任意に置換された窒素含有二環式ヘテロアリール、もしくは二環式ヘテロシクリルであり、
は、水素、ヒドロキシル、オキソ、任意に置換されたアルキル、または任意に置換されたヘテロアルキルであり、
、R、R、R、及びRは、それぞれ独立して、存在しない、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、任意に置換されたC-Cアルキル、任意に置換されたC-Cアルコキシル(例えば、メトキシル)、または任意に置換されたヘテロアルキルであり、
及びRは、それぞれ独立して、水素、C-Cアルキル(例えば、メチル)、ハロゲン化C-Cアルキル(例えば、トリフルオロメチル)、またはC-Cアルコキシル(例えば、メトキシル)からなる群から選択される、またはR及びRは、オキソ基を形成し、
10は、水素、ヒドロキシル、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたヘテロアルキル、任意に置換されたアリール、または任意に置換されたアリールアルキルであり、ここでそれぞれのアルキルは、C-C10アルキル、C-Cシクロアルキル、(C-Cシクロアルキル)C-Cアルキルであり、及び、任意に、二重結合または三重結合で置換された単結合を含み、
それぞれのヘテロアルキル基は、1つ以上のメチル基が、独立して選択される、-O-、-S-、-N(R10)-、-S(=O)-または-S(=O)で置換されたアルキル基であり、R10は、水素、アルキル、または1つ以上のメチレン基が-O-、-S-、-NH、または-N-アルキルで置換されたアルキルであり、
11は、-Hまたは-HR12であり、
12は、C-Cアルキル、またはC-Cアルコキシである、請求項42~44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
前記プレグネノロン神経ステロイドは、アロプレグナノロン、プレグネノロン、5-アルファDHP(5-アルファジヒドロプロゲステロン)、プレグナノロン、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)、ガナキソロン、3α-ヒドロキシ-3β-メチル-21-(4-シアノ-1H-ピラゾール-1’-イル)-19-ノル-5β-プレグナン-20-オン、医薬として許容可能な上記したものの塩、及び上記したもののあらゆる組み合わせからなる群から選択される、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記プレグネノロン神経ステロイドを、経口投与する、請求項42~46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
前記対象に、最大で、約63mg/kg/日のガナキソロンを投与する、請求項42~47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
前記対象に、最大で、約33mg/kg/日のガナキソロンを投与する、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記対象に、最大で、約1,800mg/日のガナキソロンを投与する、請求項42~47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
前記対象に、最大で、約1,500mg/日のガナキソロンを投与する、請求項42~47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
前記結節性硬化症に関連するてんかんは、焦点性運動発作、焦点性発作、及び全般発作からなる群から選択される、請求項42~51に記載の方法。
【請求項53】
ガナキソロンを投与すると、ベースラインと比較して、対象における発作の頻度及び/または発作の重症度が低減される、請求項42~52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
ガナキソロンを投与すると、ベースラインと比較して、対象における大運動頻度が低減される、請求項42~53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
ガナキソロンを投与すると、ベースライン発作頻度と比較して、発作頻度が、約20%以上低減される、請求項42~53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
ガナキソロンを投与すると、ベースライン発作頻度と比較して、発作頻度が、少なくとも約35%以上低減される、請求項42~53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
前記対象を、脳波(EEG)でモニタリングする、請求項42~56のいずれか1項に記載の方法。
【請求項58】
前記対象での発作の機能活動を、脳波(EEG)でモニタリングする、請求項42~56のいずれか1項に記載の方法。
【請求項59】
前記内因性神経ステロイドが、アロプレグナノロンであり、低レベルのアロプレグナノロンが、200pg mL-1以下である、請求項42に記載の方法。
【請求項60】
前記内因性神経ステロイドが、アロプレグナノロン、アロプレグナノロン-硫酸塩、プレグネノロン、プレグネノロン-硫酸塩、及びそれらの混合物を含む、請求項42に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年12月6日に出願した米国仮出願第62/944,549号の利益を主張し、同仮出願は、参照により、その全内容を本明細書で援用する。
【背景技術】
【0002】
1.背景
結節性硬化症(TSC)とも呼ばれる結節性硬化症は、身体の数多くの箇所で認められる多数の非がん性(良性)腫瘍の増殖を特徴とする希少な多系統遺伝性疾患である(Northrup et al.,(2013),Pediatr Neurol.,49(4):243-254)。これらの腫瘍は、皮膚、脳、腎臓、及びその他の臓器で発生し、多くの場合、重大な健康問題を引き起こす(同文献)。
【0003】
てんかんは、TSCの患者で最も一般的な神経学的症状(「TSC関連てんかん」)であり、また、罹患率と死亡率の大きな原因となっている。Julich and Sahin(2014),Pediatric Neurol.,50:290-296。点頭てんかんは、乳児期に出現する最も一般的なタイプの発作であり、患者の50%で、てんかんの初期症状となっている(同文献)。年長の子どもと大人とでは、焦点性意識障害発作(以前は、複雑部分発作と称された)が最も一般的である(同文献)。その他の焦点性発作及び全般発作も発生し得る(同文献)。
【0004】
TSC関連てんかんは、最大で、患者の約90%が罹患し、その内の約70%は治療抵抗性である(Portocarrero et al.,(2018),An Bras Dermatol.,93(3):323-331)。さらに、難治性てんかんの患者では、対照のてんかんの患者と比較して、自閉症、精神遅滞、気分障害などの知的障害の有病率が高く、そして、罹患した個人の生涯にわたって疾患の発現が続く(同文献)。てんかんが認知発達、ならびに生活の質に及ぼす悪影響により、発作の予防と管理がTSCの治療における重要な目標となっている(Vergeer et al.,(2019)、Epilepsia Open、4:581-592)。
この障害には、治療法がない。TSC関連の点頭てんかんの第一選択療法は、ビガバトリンである(Uliel-Sibony et al.,(2020)、Child’s Nervous System、36:2511-2517)。しかしながら、ビガバトリンは、重篤な副作用を伴う(同文献)。例えば、患者の約21~34%では、ビガバトリンは不可逆的な網膜損傷を伴う。他の可能性のある副作用として、視床、大脳基底核、脳幹被蓋、及び小脳歯状核の脳異常、多動性運動障害、及び急性脳症がある(同文献)。さらに、TSC関連てんかんの重症度または発生率を著しく抑制する他の抗てんかん薬は無い。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Northrup et al.,(2013),Pediatr Neurol.,49(4):243-254
【非特許文献2】Julich and Sahin(2014),Pediatric Neurol.,50:290-296
【非特許文献3】Portocarrero et al.,(2018),An Bras Dermatol.,93(3):323-331
【非特許文献4】Vergeer et al.,(2019)、Epilepsia Open、4:581-592
【非特許文献5】Uliel-Sibony et al.,(2020)、Child’s Nervous System、36:2511-2517
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、TSCを治療する効果的な治療法が待望されている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
2.概要
本開示は、TSC及び/またはTSC関連てんかんを治療するための方法に関する。上記したように、TSC及び/TSC関連のてんかんは、治療が非常に複雑で困難な病態である。症例の70%で、患者には治療抵抗性が認められており、てんかんは、難治性である。難治性てんかんは、通常、著しい行動上及び発達上の結果が伴う。本明細書に記載し、例を示したように、本発明者らは、ガナキソロンが、TSC及び/またはTSC関連てんかんに対して効果的な治療を提供できると考える。
【0008】
TSC及びTSC関連てんかんの治療の複雑性と困難性とを考慮して、本発明者らは、効果的な治療には、高用量の薬物(例えば、ガナキソロン)が必要であると考えた。例えば、焦点発作を有する成人を対象とした臨床試験では、ガナキソロンを、1800mg/日(900mgを1日2回投与)で投与したが、臨床評価項目は達成されなかった。本発明者らは、驚くべきことに、ガナキソロンを、1日に、さらに低用量で、より頻繁に投与することで、TSC及びTSC関連てんかんの効果的な治療法を提供できることを発見した。特定の理論または機序に拘束されることを望むものではないが、ガナキソロンをより頻繁(例えば、1日3回)であるが、以前に使用していたよりも低用量で投与すると、ガナキソロン血清レベルを閾値レベル(例えば、トラフ濃度)を超えて長期間にわたって維持することにより、薬物曝露が改善され、効果的な治療をもたらす考えられる。例えば、経口ガナキソロンを、1日3回(または、それ以上)、1日の総投与量1800mg以下、1700mg以下、1600mg以下、1500mg以下、または63/mg/kg/日で投与すると、24時間で、少なくとも約100ng/mlのガナキソロンの血漿濃度を約70%以上で、発作を効果的に軽減させることができる。また、一般的に、1日3回(または、それ以上)投与することで、ガナキソロンのトラフ濃度を高めるのに必要なガナキソロンが少なくなり、このことは、治療対象にとっても有益である。実際のところ、1日に2回投与でのトラフガナキソロンレベルは、一般的には、24時間の治療期間にわたって、100ng/ml未満のままであった。
【0009】
また、本発明者らは、驚くべきことに、TSC関連てんかんを有する患者の亜集団では、アロプレグナノロン硫酸塩(Allo-S)の血漿濃度が低く(例えば、2,500pg/ml未満)、また、ガナキソロンを用いた治療より反応し得ることを発見した。
【0010】
したがって、本開示は、TSC及び/またはTSC関連てんかんを効果的に治療するための方法に関する。本明細書に開示した方法は、それを必要とする対象に対して、治療有効量の神経ステロイド、好ましくは、ガナキソロン、または医薬として許容可能なその塩を投与することを含む。ガナキソロンは、好ましくは、約100ng/ml以上のトラフガナキソロンレベル(例えば、ガナキソロン血漿濃度)、約70%以上、24時間提供する量で投与する。
【0011】
約100ng/ml以上のガナキソロンの血漿中濃度を、24時間にわたって約70%以上提供するために、ガナキソロンを、1日3回(または、それ以上)、最大で約1,800mg/日投与することができる。体重が40kg未満の対象では、ガナキソロンを1日3回(または、それ以上)、最大量63mg/kg/日で投与することができる。一般的に、最大で約1,500mg/日のガナキソロンは、1日3回投与すると、1日24時間にわたり、約70%を超えて、約100ng/ml以上の血漿濃度を生じる。ガナキソロンは、約500mgの用量で、1日3回投与できる。熟練した臨床医であれば、総量がガナキソロンの最大日用量を超えない限り、1日3回(例えば、経口で)投与するガナキソロンの量を調整して、所望のガナキソロントラフ濃度を達成できることが理解される。
【0012】
好ましくは、ガナキソロンは、(例えば、経口懸濁液または経口カプセルで)経口投与する。理論に拘束されるものではないが、本発明者らは、3回投与すると、血漿ガナキソロン曝露が高まるが故に、改善した抗発作活性をもたらす(すなわち、発作頻度、及び/または発作の重症度を抑制する)と考える。これは、治療効果を達成するために、高用量(例えば、1日あたりの用量)のガナキソロンを投与することを教示していた従前の治療プロトコルとは反対である。例えば、ガナキソロンを、1日2回、高用量で投与することである。
【0013】
少なくとも約100ng/ml以上のガナキソロン血漿濃度を、24時間にわたって、約70%以上達成する量のガナキソロンを投与すると、ベースラインと比較して、対象の発作の頻度及び/または発作の重症度が低下する。一般的には、ベースライン発作頻度と比較して、少なくとも約20%以上の発作頻度の減少が達成される。治療の間に対象のガナキソロンの血漿濃度をモニタリングすることができる、及び/または、対象は、EEGを使用して発作の機能活動についてモニタリングすることができる。対象に発作の兆候(例えば、発作の再発)が認められると、投与するガナキソロンの量を、それに応じて調整することができる。
【0014】
本明細書に開示する方法は、TSCまたはTSC関連てんかんに関連するあらゆる形態の発作を治療する上で適している。例えば、点頭てんかん、複雑部分発作、焦点発作、または全般発作などがあるが、これらに限定されない。
【0015】
本開示の1つの目的は、結節性硬化症の治療を提供することである。本開示の1つの目的は、結節性硬化症(TSC)関連てんかんの治療を提供することである。本開示のさらなる1つの目的は、TSC関連てんかんに関連する発作の治療を提供することである。本開示の別の1つの目的は、ガナキソロンのガンマアミノ酪酸(GABA)作動性作用機序を利用して、TSC及びTSC関連てんかんを有するヒトに対して、治療上の利益を提供することである。
【0016】
上記した目的及び他の目的を促すために、本開示は、部分的に、結節性硬化症に罹患しているヒトを治療する方法に関しており、医薬として許容可能な治療有効量のプレグネノロン神経ステロイドを、ヒトの1つ以上の結節性硬化症(複数可)の症状を軽減または抑制するのに有効な量で、ヒトに対して投与することを含む。医薬として許容可能なプレグネノロン神経ステロイドは、非経口で及び/または経口で、約1mg/日~約5000mg/日の量で投与され得る。医薬として許容可能なプレグネノロン神経ステロイドの投与を受けて治療上の利益を受け得るヒトは、低レベルのアロプレグナノロン硫酸塩を有するヒトである。
【0017】
アロプレグナノロン-硫酸塩の血漿レベルは、アロプレグナノロンの血漿レベルとの間に正の相関があるようであり、脳内のアロプレグナノロンレベルを定性的に表し得る。したがって、低レベルのアロプレグナノロン硫酸塩は、脳内のアロプレグナノロンの欠乏を示し得る。約2500pg/ml以下の血漿アロプレグナノロン-硫酸塩レベルが低レベルでであるとみなされ、ヒトの内因性神経ステロイドの欠乏を示し得る。低レベルのアロプレグナノロン硫酸塩は、2400pg/ml以下、2300pg/ml以下、2200pg/ml以下、2100pg/ml以下、2000pg/ml以下、1900pg/ml以下、1800pg/ml以下、1700pg/ml以下、1600pg/ml以下、1500pg/ml以下、1400pg/ml以下、1300pg/ml以下、1200pg/ml以下、1100pg/ml以下、1000pg/ml以下、900pg/ml以下、850pg/ml以下、800pg/ml以下、750pg/ml以下、700pg/ml以下、650pg/ml以下、600pg/ml以下、550pg/ml以下、500pg/ml以下、450pg/ml以下、400pg/ml以下、350pg/ml以下、300pg/ml以下、250pg/ml以下、200pg/ml以下、150pg/ml以下、100pg/ml以下、90pg/ml以下、80pg/ml以下、70pg/ml以下、60pg/ml以下、50pg/ml以下、40pg/ml以下、30pg/ml以下、20pg/ml以下、15pg/ml、10pg/ml以下、9pg/ml以下、8pg/ml以下、7pg/ml以下、6pg/ml以下、5pg/ml以下、4pg/ml以下、3pg/ml以下、2pg/ml以下、1pg/ml以下であり得る。
【0018】
脳内のアロプレグナノロンが欠乏すると、結節性硬化症の1つ以上の症状が引き起こされ得るので、本明細書に開示した方法に従って医薬として許容可能なプレグネノロン神経ステロイドを投与すると、この欠乏が解消され、その結果、本明細書に開示した方法で結節性硬化症の1つ以上の症状(複数可)の重症度が緩和及び/または軽減され、頻度が低下し得る。医薬として許容可能なプレグネノロン神経ステロイドを投与して緩和または軽減し得る結節性硬化症の症状として、例えば、発作、知的障害、発達遅延、異常行動、皮膚の異常、肺疾患、及び腎疾患があるが、これらに限定されない。発作としては、例えば、意識または自覚の障害を伴わない焦点性運動発作、意識または自覚の障害を伴う焦点性発作、両側性全般痙攣発作に至る焦点性発作、強直性間代痙攣発作、及び、例えば、強直性間代、両側性強直、両側性間代、または脱力/欠神発作など、計数可能な運動要素を伴う全般発作がある。
【0019】
また、本開示は、結節性硬化症に罹患しているヒトを治療する方法に関するものであり、ヒトでの結節性硬化症の1つ以上の症状(複数可)を緩和または抑制する上で有効な量の治療有効量のガナキソロンを、当該ヒトに対して投与することを含む。ガナキソロンは、非経口で及び/または経口で投与し得る。ガナキソロンを投与して治療上の利益を受け得るヒトは、低レベルのアロプレグナノロン硫酸塩を有するヒトである。
【0020】
ガナキソロンを経口投与する場合、治療有効量のガナキソロンは、例えば、約600mg/日~約2000mg/日であり得る。ある特定の実施形態では、この用量は、約2100mg/日、2200mg/日、2300mg/日、またはそれ以上にまで増量して、低用量のときよりも改善した応答を提供し得、これに対する制限要因は、高用量に起因する副作用である。一般的に、約1,500mg/日、または1,800mg/日のガナキソロンを投与する。ある特定の実施形態では、高用量でヒトにおいて認められた副作用(複数可)を緩和する、または重症度を軽減するために、用量を、約550mg/日、500mg/日、450mg/日、300mg/日、または300mg/日未満にまで減らし得る。本明細書で開示した方法に従ってガナキソロンを投与して緩和し得る、及び/またはその頻度及び/または重症度を軽減し得る結節性硬化症の症状として、例えば、発作、知的障害、発達遅延、異常行動、皮膚の異常、肺疾患、及び腎疾患があるが、これらに限定されない。発作としては、例えば、意識または自覚の障害を伴わない焦点性運動発作、意識または自覚の障害を伴う焦点性発作、両側性全般痙攣発作に至る焦点性発作、強直性間代痙攣発作、及び、例えば、強直性発作、両側性強直、両側性発作、または脱力/欠神発作など、計数可能な運動要素を伴う全般発作がある。
【0021】
また、本開示は、TSCまたはTSC関連てんかんを有するヒトを治療する方法に関するものであり、ヒトでの発作頻度を減らすのに有効な量の、医薬として許容可能なプレグネノロン神経ステロイド(例えば、ガナキソロン)を、ヒトに対して、慢性的に投与することを含み、当該ヒトは、内因性神経ステロイド(複数可)(例えば、先述したように、アロプレグナノロン硫酸塩(Allo-S))の血漿レベルが低い。
【0022】
また、本開示は、TSCまたはTSC関連てんかんを有するヒトを治療する方法に関するものであり、この方法は、医薬として許容可能なプレグネノロン神経ステロイド(例えば、ガナキソロン)を含む固形経口速効性放出製剤を、1日に2回(例えば、10~13時間ごと)、ヒトに経口投与することを含み、神経ステロイドの半減期は、約18時間から約24時間であり、この製剤は、人工胃腸液(人口胃液(SGF)及び/または人工腸液(SIF))に45分置いた時点で、少なくとも約70%または約80%のガナキソロンを放出し、最初の投与の28日前での発作頻度と比較して、ヒトにおいて、28日あたりの発作頻度が、少なくとも約35%、約40%、約45%、または約50%減少する。
【0023】
さらに、本開示は、TSCまたはTSC関連てんかんを有するヒトを治療する方法に関するものであり、この方法は、医薬として許容可能なプレグネノロン神経ステロイド(例えば、ガナキソロン)を含む液体経口速効性放出製剤を、1日に3回(例えば、6~8時間ごと)にヒトに経口投与することを含み、神経ステロイドの半減期は、約18時間~約24時間であり、この製剤は、人工胃腸液(人口胃液(SGF)及び/または人工腸液(SIF))に45分置いた時点で、少なくとも約70%または約80%のガナキソロンを放出し、最初の投与の28日前の発作頻度と比較して、ヒトにおいて、28日あたりの発作頻度が、少なくとも約35%、約40%、約45%、または約50%減少する。
【0024】
また、本開示は、プレグネノロン神経ステロイドを有するヒトを治療する方法に関するものであり、当該ヒトは、TSCまたはTSC関連てんかんに罹患しており、この方法は、ヒトから生物学的試料(例えば、血液の試料)を回収する、または回収して、ヒトが低レベルの内因性神経ステロイド(例えば、Allo-S)を有するか否かを決定するこステップと、生物学的試料に対してアッセイを実施する、または実施を施して、生物学的試料での内因性神経ステロイド(複数可)の血漿レベルを決定するステップを含む。2500pg mL-1以下、2000pg mL-1以下、1500pg mL-1以下、1000pg mL-1以下、900pg mL-1以下、800pg mL-1以下、700pg mL-1以下、600pg mL-1以下、500pg mL-1以下、400pg mL-1以下、300pg mL-1以下、200pg mL-1以下、100pg mL-1以下、75pg mL-1以下、50pg mL-1以下、または25pg mL-1以下の内因性神経ステロイドのレベルは、ヒトの内因性ステロイドが低レベルであることを示す。低レベルの内因性ステロイド(例えば、Allo-S)を有する対象(例えば、ヒト)は、1mg/kg/日~約63mg/kg/日、約2mg/kg/日~約63mg/kg/日、約3mg/kg/日~約63mg/kg/日、約4mg/kg/日~約63mg/kg/日、約5mg/kg/日~約63mg/kg/日、約6mg/kg/日~約63mg/kg/日、または約7mg/kg/日~約63mg/kg/日の用量のプレグネノロン神経ステロイド(例えば、ガナキソロン)を、少なくとも1日、2回または3回の分割投与で経口投与することができる。
【0025】
これらの実施形態の一部では、2500pg mL-1以下、2000pg mL-1以下、1500pg mL-1以下、1000pg mL-1以下、900pg mL-1、800pg mL-1以下、700pg mL-1以下、600pg mL-1以下、500pg mL-1以下、400pg mL-1以下、300pg mL-1以下、200pg mL-1以下、100pg mL-1以下、75pg mL-1以下、50pg mL-1以下、または25pg mL-1以下の内因性神経ステロイドのレベルが、上記したガナキソロンの投与が、最初の投与の前の28日の期間での発作頻度と比較して、投与後28日間、患者の発作頻度を、例えば、35%以上、約40%以上、約45%以上、または約50%以上低減させる可能性が高いことを示す。内因性神経ステロイドは、プレグナノロン、硫酸プレグナノロン、5-αDHP、アロプレグナノロン、アロプレグナノロン-S、プレグナノロン、プレグナノロン-S、DHEA、及び、それらの組み合わせを含む、またはそれからなる群から選択され得、例えば、プレグネノロン神経ステロイドは、例えば、アロプレグナノロン、ガナキソロン、アルファキソロン、アルファドロン、ヒドロキシジオン、ミナキソロン、プレグナノロン、アセトロコール、またはテトラヒドロコルチコステロン、及び医薬として許容可能なそれらの塩を含む、またはそれからなる群から選択され得る。これらの実施形態の一部では、この方法は、プレグネノロン神経ステロイドの投与の前後に、アッセイの結果を、患者または医療提供者に伝えることをさらに含む。ガナキソロンが、好ましいプレグネノロン神経ステロイドである。
【0026】
また、本開示は、ガナキソロンでヒトを治療する方法に関しており、当該ヒトは、TSCまたはTSC関連てんかんに罹患しており、この方法は、当該ヒトが、2500pg mL-1以下のアロプレグナノロン硫酸塩(Allo-S)のレベルを有するか否かを決定するステップと、当該ヒトのアロプレグナノロン硫酸塩のレベルが2500pg mL-1以下であれば、1mg/kg/日~約63mg/kg/日、約2mg/kg/日~約63mg/kg/日、約3mg/kg/日~約63mg/kg/日、約4mg/kg/日~約63mg/kg/日、約5mg/kg/日~約63mg/kg/日、約6mg/kg/日~約63mg/kg/日、または約7mg/kg/日~約63mg/kg/日の用量のガナキソロンを、少なくとも1日間、2回または3回に分けて経口投与するステップを含む。これらの実施形態の一部では、2500pg mL-1以下のアロプレグナノロン硫酸塩は、当該ガナキソロンの投与が、ヒトでの発作頻度を、最初の投与の前の28日の期間での発作頻度と比較して、投与後28日間、例えば、少なくとも約35%、約40%、約45%、または約50%低減させる可能性が高いことを示す。
【0027】
さらに、本開示は、TSCまたはTSC関連てんかんを罹患しているヒトを治療する方法に関しており、この方法は、当該ヒトが、2500pg mL-1以下のアロプレグナノロン硫酸塩のレベルを有するか否かを決定するステップと、ヒトのアロプレグナノロン硫酸塩のレベルが2500pg mL-1以下であれば、内因性神経ステロイド(アロプレグナノロン、プレグナノロンなど)、または合成神経ステロイド(例えば、Co26749/WAY-141839、Col34444、Co177843、Sage-217(3α-ヒドロキシ-3β-メチル-21-(4-シアノ-1H-ピラゾール-1’-イル)-19-ノル-5β-プレグナン-20-オン、ガナキソロンなど)を、1mg/kg/日~約200mg/kg/日、約2mg/kg/日~約150mg/kg/日、約3mg/kg/日~約100mg/kg/日、約4mg/kg/日~約90mg/kg/日、約5mg/kg/日~約80mg/kg/日、約6mg/kg/日約70mg/kg/日、または約7mg/kg/日~約65mg/kg/日の用量で、少なくとも1日間、2回または3回に分けて経口投与し、ヒトのアロプレグナノロン硫酸塩のレベルが2500pg mL-1を超える場合には、内因性または合成神経ステロイドをヒトに投与すること、及び/または別の抗痙攣薬を投与することを控えるステップを含む。別の抗痙攣薬は、例えば、ベンゾジアゼピン(例えば、クロバザム、ジアゼパム、クロナゼパム、ミダゾラムなど)、クロラゼピン酸、レベチラセタム、フェルバメート、ラモトリギン、脂肪酸誘導体(例えば、バルプロ酸)、カルボキサミド誘導体(ルフィナミド、カルバマゼピン、オクスカルバゼピンなど)、アミノ酸誘導体(例えば、レボカミチン)、バルビツレート(例えば、フェノバルビタール)、またはこれらの作用物質の2つ以上の組み合わせからなる群から選択され得る。任意の個数の他の抗痙攣薬を投与し得る。当業者は、抗痙攣薬に精通している。
【0028】
また、本開示は、TSCまたはTSC関連てんかんを罹患しているヒトを治療する方法に関しており、この方法は、当該ヒトが、2500pg mL-1以下のアロプレグナノロン硫酸塩のレベルを有するか否かを決定するステップと、ヒトのアロプレグナノロン硫酸塩のレベルが2500pg mL-1以下であれば、ガナキソロンを、1mg/kg/日~約63mg/kg/日、約2mg/kg/日~約63mg/kg/日、約3mg/kg/日~約63mg/kg/日、約4mg/kg/日~約63mg/kg/日、約5mg/kg/日~約63mg/kg/日、約6mg/kg/日~約63mg/kg/日、または約7mg/kg/日~約65mg/kg/日の用量で、少なくとも1日間、2回または3回に分けて経口投与するステップを含む。これらの実施形態の一部では、2500pg mL-1以下のアロプレグナノロン硫酸塩は、当該ガナキソロンの投与が、ヒトでの発作頻度を、最初の投与の前の28日の期間での発作頻度と比較して、投与後28日間、例えば、少なくとも約35%、約40%、約45%、または約50%低減させる可能性が高いことを示す。
【0029】
さらに、本開示は、TSCまたはTSC関連てんかんを罹患しているヒトを治療する方法に関しており、この方法は、当該ヒトが、200pg mL-1以下のアロプレグナノロンのレベルを有するか否かを決定するステップと、200pg mL-1以下のレベルのアロプレグナノロンを有しておれば、1mg/kg/日~約80mg/kg/日、約2mg/kg/日~約75mg/kg/日、約3mg/kg/日~約70mg/kg/日、約4mg/kg/日~約65mg/kg/日、約5mg/kg/日~約63mg/kg/日、約6mg/kg/日~約63mg/kg/日、または約7mg/kg/日~約63mg/kg/日の用量で、少なくとも1日間、2回または3回に分けて経口投与し、200pg mL-1のレベルを超えるアロプレグナノロンを有しておれば、ヒトに対するガナキソロンの投与を控えるステップを含む。これらの実施形態の一部では、200pg mL-1以下のアロプレグナノロンは、当該ガナキソロンの投与が、ヒトでの発作頻度を、最初の投与の前の28日の期間での発作頻度と比較して、投与後28日間、例えば、少なくとも約35%、約40%、約45%、または約50%低減させる可能性が高いことを示す。
【0030】
本明細書で開示した方法は、TSCまたはTSC関連てんかんを有するヒトでのアロプレグナノロンの血漿レベルを測定するステップをさらに含み得る。約200pg/ml以下のアロプレグナノロン血漿レベルは低レベルであり、ヒトが内因性神経ステロイドの欠乏を有し得ることを示し得る。したがって、一部の実施形態では、ヒトでの神経ステロイドの内因性低レベルは、例えば、200pg/ml以下、199pg/ml以下、198pg/ml以下、197pg/ml以下、196pg/ml以下、195pg/ml以下、194pg/ml以下、193pg/ml以下、192pg/ml以下、191pg/ml以下、190pg/ml以下、189pg/ml以下、188pg/ml以下、187pg/ml以下、186pg/ml以下、185pg/ml以下、184pg/ml以下、183pg/ml以下、182pg/ml以下、181pg/ml以下、180pg/ml以下、179pg/ml以下、178pg/ml以下、177pg/ml以下、176pg/ml以下、175pg/ml以下、174pg/ml以下、173pg/ml以下、172pg/ml以下、171pg/ml以下、170pg/ml以下、169pg/ml以下、168pg/ml以下、167pg/ml以下、166pg/ml以下、165pg/ml以下、164pg/ml以下、163pg/ml以下、162pg/ml以下、161pg/ml以下、160pg/ml以下、159pg/ml以下、158pg/ml以下、157pg/ml以下、156pg/ml以下、155pg/ml以下、154pg/ml以下、153pg/ml以下、152pg/ml以下、151pg/ml以下、150pg/ml以下、149pg/ml以下、148pg/ml以下、147pg/ml以下、146pg/ml以下、145pg/ml以下、144pg/ml以下、143pg/ml以下、142pg/ml以下、141pg/ml以下、140pg/ml以下、139pg/ml以下、138pg/ml以下、137pg/ml以下、136pg/ml以下、135pg/ml以下、134pg/ml以下、133pg/ml以下、132pg/ml以下、131pg/ml以下、130pg/ml以下、129pg/ml以下、128pg/ml以下、127pg/ml以下、126pg/ml以下、125pg/ml以下、124pg/ml以下、123pg/ml以下、122pg/ml以下、121pg/ml以下、120pg/ml以下、119pg/ml以下、118pg/ml以下、117pg/ml以下、116pg/ml以下、115pg/ml以下、114pg/ml以下、113pg/ml以下、112pg/ml以下、111pg/ml以下、110pg/ml以下、109pg/ml以下、108pg/ml以下、107pg/ml以下、106pg/ml以下、105pg/ml以下、104pg/ml以下、103pg/ml以下、102pg/ml以下、101pg/ml以下、100pg/ml以下、99pg/ml以下、98pg/ml以下、97pg/ml以下、96pg/ml以下、95pg/ml以下、94pg/ml以下、93pg/ml以下、92pg/ml以下、91pg/ml以下、90pg/ml以下、89pg/ml以下、88pg/ml以下、87pg/ml以下、86pg/ml以下、85pg/ml以下、84pg/ml以下、83pg/ml以下、82pg/ml以下、81pg/ml以下、80pg/ml以下、79pg/ml以下、78pg/ml以下、77pg/ml以下、76pg/ml以下、75pg/ml以下、74pg/ml以下、73pg/ml以下、72pg/ml以下、71pg/ml以下、70pg/ml以下、69pg/ml以下、68pg/ml以下、67pg/ml以下、66pg/ml以下、65pg/ml以下、64pg/ml以下、63pg/ml以下、62pg/ml以下、61pg/ml以下、60pg/ml以下、59pg/ml以下、58pg/ml以下、57pg/ml以下、56pg/ml以下、55pg/ml以下、54pg/ml以下、53pg/ml以下、52pg/ml以下、51pg/ml以下、50pg/ml以下、49pg/ml以下、48pg/ml以下、47pg/ml以下、46pg/ml以下、45pg/ml以下、44pg/ml以下、43pg/ml以下、42pg/ml以下、41pg/ml以下、40pg/ml以下、39pg/ml以下、38pg/ml以下、37pg/ml以下、36pg/ml以下、35pg/ml以下、34pg/ml以下、33pg/ml以下、32pg/ml以下、31pg/ml以下、30pg/ml以下、29pg/ml以下、28pg/ml以下、27pg/ml以下、26pg/ml以下、25pg/ml以下、24pg/ml以下、23pg/ml以下、22pg/ml以下、21pg/ml以下、20pg/ml以下、19pg/ml以下、18pg/ml以下、17pg/ml以下、16pg/ml以下、15pg/ml以下、14pg/ml以下、13pg/ml以下、12pg/ml以下、11pg/ml以下、10pg/ml以下、9pg/ml以下、8pg/ml以下、7pg/ml以下、6pg/ml以下、5pg/ml以下、4pg/ml以下、3pg/ml以下、2pg/ml以下、1pg/ml以下、または0pg/mlであり得る。
【0031】
本開示は、TSCまたはTSC関連てんかんを治療する方法にさらに関しており、この方法は、当該ヒトが、200pg mL-1以下のアロプレグナノロンのレベルを有するか否かを決定するステップと、200pg mL-1以下のレベルのアロプレグナノロンを有しておれば、ガナキソロンを、1mg/kg/日~約100mg/kg/日、約2mg/kg/日~約80mg/kg/日、約3mg/kg/日~約70mg/kg/日、約4mg/kg/日~約65mg/kg/日、約5mg/kg/日~約65mg/kg/日、約6mg/kg/日~約65mg/kg/日、または約7mg/kg/日~約65mg/kg/日の用量で、少なくとも1日間経口投与するステップを含む。
【0032】
また、本開示は、それを必要とするヒトでの内因性神経ステロイド欠乏症を治療する方法に関しており、医薬として許容可能なプレグネノロン神経ステロイド(例えば、ガナキソロン)を、少なくとも1日間、約1800mg以下の用量で当該ヒトに投与することを含み、当該ヒトは、染色体9q34に位置するTSC1遺伝子、及び/または染色体16p13.3に位置するTSC2遺伝子に遺伝子変異を有しており、ならびに、低色素斑(≧3、少なくとも5mmの直径)、血管線維腫(≧3)または前額部頭部のプラーク、爪周囲線維腫(≧2)、シャルリンパッチ、多発性の網膜の過誤腫、大脳皮質の異型性、脳室上衣下結節、脳室上衣下巨大細胞性星状細胞腫、心臓横紋筋腫、リンパ脈管筋腫症(LAM)血管筋脂肪腫(≧2)、「散在性」小白斑、歯のエナメル質の多発性小腔(≧3)、口腔内線維腫(≧2)、網膜無色素斑、多発性腎嚢胞、腎以外の過誤腫の群から選択される1つ以上の症状を有する。
【0033】
これらの実施形態の一部では、医薬として許容可能なプレグネノロン神経ステロイドはガナキソロンであり、約200mg/日~約2500mg/日、約200mg/日~約2250mg/日、約200mg/日~約2000mg/日、約300mg/日~約1800mg/日、約400mg/日~約1800mg/日、約450mg/日~約1800mg/日、約675mg/日~約1800mg/日、約900mg/日~約1800mg/日、約1125mg/日~約1800mg/日、約1350mg/日~約1800mg/日、約1575mg/日~約1800mg/日、または約1800mg/日の量を、2回または3回に分けて経口投与する。一部の実施形態では、発作を経験しており、かつ、医薬として許容可能なプレグネノロン神経ステロイドの投与を受けたヒトは、最初の投与の前の28日の期間での発作頻度と比較して、28日間あたりの平均発作頻度は、35%以上(例えば、約40%、約45%、約50%、約55%)にまで低減する。一部の実施形態では、改善は、50%以上である。
【0034】
本明細書で開示した方法はさらに、投与した医薬として許容可能なプレグネノロンニューロステロイド(複数可)(例えば、ガナキソロン)、及び/または、存在するのであれば、併用AED薬(複数可)、及び/または、アロプレグナノロン(3α-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オン)、及び/または、関連する内因性CNS活性ステロイドの血漿レベルの定期的な測定を含む。一部の実施形態では、肝臓酵素(AST、ALT、及びALK Phos)の血漿レベルもまた、医薬として許容可能なプレグネノロンニューロステロイドを用いた治療を開始する前、治療の間、または治療した後に測定する。血漿レベルは、例えば、毎週、2週毎、3週毎、4週毎、5週毎、6週毎、7週毎、8週毎、9週毎、10週毎、11週毎、または12週毎に測定し得る。
【0035】
プレグネノロン神経ステロイド(例えば、ガナキソロン)は、本明細書に記載した方法で慢性的に経口でまたは非経口で投与し得る。ある特定の好ましい実施形態では、プレグネノロン神経ステロイドは、ガナキソロンであり、経口懸濁液または経口固形剤形(例えば、経口カプセル)として、合計で最大63mg/kg/日の用量で投与し、ガナキソロンは、好ましくは、最大1800mg/日の量で投与する。好ましくは、ガナキソロンは、例えば、患者が治療の中止を必要とする望ましくない副作用なしに、治療上の利益を受ける限り、長期投与する。ある特定の実施形態では、ガナキソロンは、少なくとも1日間、少なくとも2日間、少なくとも3日間、2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも5週間、少なくとも6週間、少なくとも7週間、少なくとも8週間、少なくとも9週間、少なくとも10週間、少なくとも11週間、または、少なくとも12週間投与する。一部の実施形態では、ガナキソロンを、2週間~100年の期間、またはヒトの生涯にわたって投与し得る。
【0036】
プレグネノロン神経ステロイドを、経口懸濁液で投与する場合、例えば、1日あたり1~約3回のいずれでも、投与し得る。ある特定の好ましい実施形態では、プレグネノロン神経ステロイド(例えば、ガナキソロン)の経口投与は、食物と一緒に(良好な吸収のために)投与し得る、あるいは、食物なしで投与し得る。プレグネノロン神経ステロイドは、経口錠剤またはカプセルで投与する場合、例えば、1日あたり1~約4回のいずれでも、投与し得る。プレグネノロン神経ステロイドを、非経口的に投与する場合、例えば、1日あたり1~約3回のいずれでも、投与し得る。
【0037】
本開示は、(i)プレグネノロン神経ステロイド(例えば、ガナキソロン)、及び(ii)医薬として許容可能な1つ以上の賦形剤(複数可)含む粒子を含む即放性製剤(例えば、経口懸濁液、錠剤、またはカプセル)に関し、粒子は、TSC及び/またはTSC関連てんかんでの使用に供するために、人工胃腸液(SGF及び/またはSIF)で分散させた後に凝集がないことを確実にする粒径を有しており、かつ、25℃/60%相対湿度にて、1ヶ月間製剤を保存しても変質しない。好ましい実施形態では、この製剤は、500mlの溶解媒体(例えば、5%SLSを含むSGF(人工胃液)、及び/または5%SLSを含むSIF(人工腸液))に37℃で製剤を入れて45分間、及び0.5℃でUSP装置1(Basket)を使用して、100rpmで、約70%または約80%以上のプレグネロン神経ステロイドを放出し、単回用量及び/または複数回用量を投与した後、プレグネノロン神経ステロイドの血漿レベルを、少なくとも約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、または約12時間、約55ng/mL、約60ng/ml、または約65ng/mlから約240ng/ml~400ng/ml(例えば、262ng/mL)のプレグネノロン神経ステロイドの血漿レベルとする。これらの実施形態の一部では、粒子の体積加重中央径は、約250nm~約450nm(例えば、約332nm)である。一部の実施形態では、粒子は、D(10)粒径が、約200nm~約220nmであり、D(50)粒径が、約250nm~約450nmであり、D(90)粒径が、約480nm~約700nmであり、製剤は、スルホアルキルエーテルシクロデキストリンや、その修飾型を含むシクロデキストリンを含んでおらず、TSC関連てんかんを治療するためのものである。
【0038】
また、本開示は部分的に、TSC及び/またはTSC関連発作での使用に供する(i)ガナキソロン、及び(ii)医薬として許容可能な1つ以上の賦形剤(複数可)を含む粒子を含む経口即放性製剤(例えば、経口の懸濁液、錠剤、またはカプセル)に関し、これらの粒子は、約0.3ミクロンの平均粒子サイズ(すなわち、約0.3ミクロンの体積加重中央径(D50))を有し、これらの粒子は、25℃/60%相対湿度にて、製剤を1ヶ月間保存しても変質しない。この製剤は、500mlの溶解媒体(例えば、5%SLSを含むSGF(人工胃液)、及び/または5%SLSを含むSIF(人工腸液))に37℃で製剤を入れて45分間、及び0.5℃でUSP装置1(Basket)を使用して、100rpmで、約70%または約80%以上のガナキソロンを放出し、これらの製剤を単回投与及び/または複数回投与した後、投与後、少なくとも6~12時間、ガナキソロンの血漿レベルを、約55ng/mL、約60ng/ml、または約65ng/mlから、約240ng/ml~400ng/ml(例えば、262ng/mL)の血漿レベルとし、これはTSCまたはTSC関連てんかんの治療のためのものである。約55ng/mL、約60ng/ml、または約65ng/mlから、約240ng/ml~400ng/mlの血漿レベルのガナキソロンの血漿レベル(例えば、262ng/mL)を、絶食、及び/または食後の製剤投与後に提供することができる。
【0039】
これらの実施形態の一部では、約0.3ミクロンの平均粒径は、製剤を人工胃腸液(SGF及び/またはSIF)での45分間で、約70%または約80%以上のプレグネロン神経ステロイドの溶解、及び、少なくとも6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、または約12時間にわたって、約55ng/mL、約60ng/ml、または約65ng/mlのプレグネノロン神経ステロイドの血漿レベルをから約240ng/ml~400ng/ml(例えば、262ng/mL)のプレグネノロン神経ステロイドの血漿レベルを提供するために重要である。
【0040】
また、本開示は部分的に、TSC及び/またはTSC関連てんかんで使用するための(i)ガナキソロン、及び(ii)医薬として許容可能な1つ以上の賦形剤(複数可)を含む粒子を含む即放性放出製剤(例えば、経口懸濁液、錠剤、またはカプセル)に関し、また、粒子は、約0.3ミクロンの平均粒径を有し、粒径は、25℃/60%相対湿度にて、2ヶ月間、及び/または3ヶ月間、及び/または4ヶ月間保存しても変質しない。この製剤は、500mlの溶解媒体(例えば、5%SLSを含むSGF(人工胃液)、及び/または5%SLSを含むSIF(人工腸液)に37℃で製剤を入れて45分間、及び0.5℃でUSP装置1(Basket)を使用して、100rpmで、80%以上のガナキソロンを放出し、この製剤は、投与後、少なくとも6時間~12時間、ガナキソロンの血漿レベルを、約55ng/mL、約60ng/ml、または約65ng/mlから約240ng/ml~400ng/ml(例えば、262ng/mL)の血漿レベルとする。
3.図面の簡単な説明
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】レスポンダーと非レスポンダーとで階層化したPCDH19関連てんかんの女性患者でのベースライン内因性アロプレグネノロン硫酸塩(「Allo-S」)レベルを示す。アロプレグナノロン硫酸塩(Allo-S)レベルが、2.5ng mL-1未満の患者を階層化すると、ベースラインと比較して、発作頻度の中央値の50%減少が認められた(n=7)。この分析は、小規模な非盲検コホートについて遡及的に実施した。にもかかわらず、レスポンダーと非レスポンダーとの間で、アロプレグナノロン硫酸塩レベルが、1.5~2桁も相違していることは、アロプレグナノロン硫酸塩の血漿レベルを使用して、医薬として許容可能なプレグネノロン神経ステロイドの有効性を予測し得ることを示唆している。これらのデータは、アロプレグナノロン硫酸塩の血漿レベルを、ガナキソロンの向上した治療効果を経験し得る患者(複数可)を、予め特定するための予測バイオマーカーとして使用し得る、との予備的な証拠を提供する。
図2】Biosample Repositoryの血漿試料に基づいて、TSC患者とコントロールとの間でのアロプレグナノロン硫酸塩(Allo-S)レベルを示す。この目的は、独自の検証済み分析方法(LC/MS/MS)を使用して、内因性神経ステロイドレベルを定量して、それらのレベルを、健康な(罹患していない)年齢を一致させたコントロール試料と比較することであった。てんかんのTSC患者から得た血漿試料を、コントロール(n=60、中央値4.1ng mL-1)と比較すると、Allo-Sレベルの低下(n=47、中央値1.8ng mL-1)の傾向を示した。この知見は、1~14歳の患者/対象だけに絞った場合に顕著であった(n=28 TSC、n=28コントロール)。患者/対象の内訳は、29名の女性、18名の男性であった。女性の年齢の中央値は、15歳(範囲2~27歳)であった。男性の年齢の中央値は、10.5歳(範囲2~33歳)であった。思春期後の神経ステロイドレベルの変動は、すべての患者の分析に交絡を生じさせ得る。
図3】TSC患者、及び罹患していない対象(すべての個人)でのAllo-S分布を示す。
図4】PCDH19とTSCとでのアロプレグナノロン-硫酸塩(Allo-S)の比較と、TSCにおいてAllo-Sバイオマーカーの調査範囲を拡げる潜在的な機会とを示す。
図5】アロプレグナノロン(Allo)とアロプレグナノロン硫酸塩(Allo-S)との間の正の相関を示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
4.詳細な説明
TSC及び/またはTSC関連てんかんの効果的の治療は難しく、従来の治療プロトコルは、数多くの患者に対して効果的でない。実際のところ、患者の約70%は、治療に対して抵抗性があり、てんかんは難治性である。大抵の発作は、生後12か月以内に始まっており、そのため、知的障害の有病率が高くなる。発作を制御すると、そのような発達上の障害を低減させることができる。そのため、TSC及び/またはTSC関連てんかんを治療する改善した方法が切実に待望されている。
【0043】
本開示は、SEを治療する新規の方法に関する。本明細書に例示及び記載するように、これらの方法による治療は、発作頻度を低減させ、及び/またはTSC関連てんかんの発作を抑制する。これらの方法は、あらゆる形態のTSC関連てんかんの治療に使用できる。例えば、点頭てんかん、意識または自覚の障害を伴わない焦点性運動発作、意識または自覚の障害を伴う焦点性発作、両側性に至る焦点発作、また、強直間代性、両側強直性、両側間代性、計数可能な弛緩性/失立発作、ミオクローヌス発作、またはてんかん発作などの全般発作、運動発作などがあるが、これらに限定されない。
【0044】
本明細書に記載する方法は、治療有効量の神経ステロイドを、対象に対して投与することを含む。ガナキソロンが、好ましい神経ステロイドである。
【0045】
本明細書に記載した方法は、治療有効量でガナキソロンを投与して、24時間、約70%以上で、100ng/ml以上のガナキソロンの血漿濃度を達成することをさらに含むことができる。これは、ガナキソロンを、少なくとも、1日3回投与することで達成できる。1日3回が好ましいが、一部の事例では、ガナキソロンの所望のトラフ濃度を達成するために、1日3回を超える回数でガナキソロンを投与することが適切となり得る。1日24時間、約70%以上で、少なくとも約100ng/ml以上の血漿濃度とすることにより、発作の軽減及び/または発作の抑制を改善する。例えば、ベースライン発作頻度と比較して、少なくとも20%以上の発作減少を達成することができる。ガナキソロンを、より低い最大用量で1日3回投与すると、ガナキソロンの望ましいトラフ濃度を達成することができる。一般的には、約1,800mg、及び、好ましくは1、500mgのガナキソロンの最大1日用量を投与する。ガナキソロンの最大1日用量を、24時間以内に、少なくとも3つの間隔で、同じまたは異なる用量で投与する。
【0046】
本明細書に開示した方法は、TSCまたはTSC関連てんかんを有する患者が、神経ステロイド(例えば、ガナキソロン)を用いた治療の利益を得るか否かを決定することをさらに含むことができる。TSC関連てんかんを有する患者の亜集団は、Allo-Sの血漿濃度が低く(例えば、2,500pg/ml未満)、ガナキソロンを用いた治療に対してより良好に反応し得る。本明細書に記載する方法は、神経ステロイド(例えば、ガナキソロン)を用いた治療を開始する前に、当該対象の内因性神経ステロイドのレベルを測定することを含むことができる。低レベルの内因性神経ステロイドは、当該対象が、神経ステロイドを用いた治療に反応することを示す。当該対象は、内因性神経ステロイドレベルが低いと決定され次第、治療有効量の神経ステロイドを対象に投与することができる。
【0047】
本方法のさらなる記載、及び本方法を実施するためのガイダンスを本明細書に示す。説明を簡潔にするために、ガナキソロンを使用した好ましい態様に関して、さらなる詳細及びガイダンスを示す。また、さらなる詳細及びガイダンスは、その他の神経ステロイドを用いた治療にも関連することを意図している。
【0048】
I.定義
数値範囲の列挙は、単に、本明細書で特記しない限り、範囲内の別個のそれぞれの値に個々に言及する簡潔な方法として機能することを意図しており、また、別個のそれぞれの値は、本明細書で個々に記載するかの如く、本明細書で援用する。すべての範囲の端点は、範囲内に含まれ、そして独立して組合せることができる。本明細書に記載した方法はすべて、本明細書で特記しない限り、または文脈と明らかに矛盾しない限り、適切な順序で実行することができる。あらゆるすべての実施例、または例示の表現(例えば「など(such as)」)の使用は、単に例示のみを意図し、特許請求が特にされていない限りは、本発明の範囲を限定するものではない。本明細書での文言が、特許請求していないいかなる要素も、本発明の実施に不可欠であると示すものと解釈すべきではない。
【0049】
「a」及び「an」という用語は、数量を限定するものではなく、参照した項目の少なくとも1つの存在を示す。
【0050】
「約(about)」という用語は、「おおよそ(approximately)」という用語と同義に使用される。当業者が理解するように、「約」の正確な境界は、組成の構成要素によって定まる。実例として、「約」という用語の使用は、引用する値の僅かに外側の値、すなわちプラスまたはマイナス0.1%~10%外側であることを示すが、これらもまた、有効かつ安全である。したがって、引用する範囲の僅かに外側の組成もまた、本特許請求の範囲に含まれる。
【0051】
「活性成分」は、患者に対して、単独で、または別の作用物質と組み合わせて投与した場合に、患者に生理学的効果を直接的または間接的に与える任意の化合物、要素、または混合物である。活性成分が化合物である場合、塩、遊離化合物、または塩の溶媒和物(水和物を含む)、結晶形態及び非結晶形態、ならびに化合物の種々の多形が含まれる。化合物は、ステレオジェニック中心、及びステレオジェニック軸などの1つ以上の非対称の原子、例えば、不斉炭素原子を含み得るので、化合物は、様々な立体異性形態で存在することができる。これらの化合物は、例えば、ラセミ化合物、または光学的に活性な形態であり得る。2つ以上の不斉原子を有する化合物では、これらの化合物は、さらに、ジアステレオマーの混合物であり得る。不斉中心を有する化合物では、純粋な形態の光学異性体、及びそれらの混合物を、すべて含むことを理解するべきである。さらに、炭素-炭素二重結合を有する化合物は、Z型及びE型で存在し得、化合物のすべての異性形態が本発明に含まれる。これらの状況では、単一の鏡像異性体、すなわち、光学活性形態は、不斉合成、光学的に純粋な前駆体からの合成によって、または、ラセミ体の分割によって得ることができる。また、ラセミ化合物の分割は、例えば、分割剤の存在下での結晶化、または、例えば、キラルHPLCカラムを使用する、クロマトグラフィなどの従来の方法によって達成することもできる。
【0052】
「内因性神経ステロイド」という用語は、脳内で生成され、神経膜受容体及びイオンチャネル、主に、GABA-A受容体との相互作用によって神経興奮性を調節することができるステロイドのことを意味し、例えば、プレグナン神経ステロイド(例えば、アロプレグナノロン、アロテトラヒドロデオキシコルチコステロンなど)、アンドロスタン神経ステロイド(例えば、アンドロスタンジオール、エチオコラノンなど)、及び硫酸化神経ステロイド(例えば、硫酸プレグナノロン、硫酸デヒドロエピアンドロステロン(DHEAS))がある。
【0053】
「プレグネノロン神経ステロイド」という用語は、神経膜受容体及びイオンチャネル、主に、GABA-A受容体との相互作用によって神経興奮性を調節することができる内因性ステロイドまたは外因性ステロイドのことを意味し、例えば、内因性神経ステロイド、及び、プレグネノロンから、インビトロ、そしてインビボで合成または誘導する合成神経ステロイドを含む。
【0054】
「バイオマーカー」という用語は、薬物レスポンダーを、非レスポンダーから区別する神経ステロイドの血清レベルまたは血漿レベルのことを意味する。
【0055】
本明細書で開示した「血清」及び「血漿」という用語は、互換可能に使用され得る。
【0056】
「含む(comprising)」、「含む(including)」、及び「含む(containing)」という用語は、非限定的である。その他の列挙していない要素が、これらの移行句によって特許請求する実施形態内に存在し得る。「含む(comprising)」、「含む(including)」、及び「含む(containing)」を移行句として使用する場合、他の要素が含まれ得、そしてなおも、特許請求の範囲内の実施形態を形成する。オープンエンドの移行句「含む(comprising)」は、中間の移行句「から本質的になる(consisting essentially of)」、及びクローズドエンドの句「からなる(consisting of)」を含む。
【0057】
「ボーラス用量」は、短期間、例えば、1~30分以内に投与する、比較的に大量の薬剤である。
【0058】
「Cmax」は、最大濃度点での血漿における活性成分の濃度である。
【0059】
「ガナキソロン」は、3α-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オンとしても知られており、本明細書では代わりに「GNX」と称する。
【0060】
「注入」投与は、非経口投与、一般的には、静脈内投与であるが、一部の実施形態では、硬膜外投与などのその他の非経口経路を含む。注入投与は、ボーラス投与よりも長い期間にわたって、例えば、少なくとも15分間、少なくとも30分間、少なくとも1時間、少なくとも2時間、少なくとも3時間、または少なくとも4時間の期間にわたって行われる。
【0061】
「患者」は、医学的処置を必要とするヒトまたは非ヒト動物である。医学的処置として、障害または外傷などの既存の症状の処置がある。また、ある特定の実施形態では、処置として、予防的処置または診断的処置がある。
【0062】
「子ども」とは、18歳を含む、生後1日~18歳(例えば、生後1日~15歳)のヒトを意味する。
【0063】
「成人」とは、18歳超のヒトを意味する。
【0064】
「医薬組成物」は、式(I)の化合物または塩、溶媒和物、または水和物などの少なくとも1つの活性成分、及び担体などの少なくとも1つの他の物質を含む組成物である。医薬組成物は、任意に、1つ以上のさらなる活性成分を含む。具体的には、医薬組成物は、ヒトまたは非ヒト薬物に関する米国FDAのGMP(適正製造基準)基準を満たしている。「医薬品の組み合わせ」は、発作障害などの障害を治療するために、単一の剤形に組み合わされ得る、または活性成分を併用する旨の指示とともに別々の剤形で一緒に提供され得る少なくとも2つの活性成分の組み合わせである。
【0065】
「ポビドン」は、ポリビドン及びポリビニルピロリドン(PVP)としても知られており、モノマーであるN-ビニルピロリドンから作成される水溶性ポリマーである。プラスドンC-12及びC-17は、N-ビニルピロリドンの医薬品グレードのホモポリマーである。プラスドンC-12のK値は、10.2~13.8であり、公称分子量は4000dである。プラスドンC-17のK値は、15.5~17.5であり、公称分子量は10,000dである。
【0066】
「滅菌」とは、試料、製剤、または生成物での実質的にすべての生物学的汚染物質を不活化することを意味する。また、バイオバーデンの100万倍の引下げも、大抵の医療用途について「滅菌済み」とみなす。
【0067】
発作または発作活性を「抑制する」という用語は、発作の頻度、重症度、及び/または持続時間の検出可能な減少のことを指す。発作の頻度、重症度、及び/または持続時間の減少は、自己評価(例えば、患者の報告)または訓練を受けた臨床観察者が測定し得る。発作の頻度、重症度、及び/または持続時間の減少の判定は、処置前後の患者の状態を比較して行うことができる 。
【0068】
「治療有効量」または「有効量」は、薬理効果を達成する医薬の量である。「治療有効量」という用語には、例えば、予防的に有効な量が含まれる。神経ステロイドの「有効量」は、所望の薬理効果または治療上の改善を、過度の有害な副作用なしに達成する上で必要な量である。神経ステロイドの有効量は、特定の患者及び疾患に応じて、当業者によって選択される。「有効量」または「治療有効量」は、神経ステロイドの代謝の変化、対象の年齢、体重、全身状態、処置する症状、処置する症状の重症度、及び処方する医師の判断に基づいて、対象ごとに異なり得ることを理解されたい。
【0069】
「処置する(Treat)」または「処置(treatment)」とは、障害または疾患を抑制する、例えば障害または疾患の進行を阻止する、障害または疾患を緩和する、障害または疾患を退行させる、疾患または障害が引き起こす病状を緩和する、または疾患または障害の病徴を軽減するなど、障害または疾患のあらゆる処置のことを指す。
【0070】
「アルキル」は、分枝状または直鎖状の飽和脂肪族炭化水素基であり、指定した個数の炭素原子、一般的に、1~約8個の炭素原子を有する。本明細書で使用するC-Cアルキルという用語は、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つの炭素原子を有するアルキル基を示す。他の実施形態では、1~6個の炭素原子、1~4個の炭素原子、または1個または2個の炭素原子を有するアルキル基、例えば、C-Cアルキル、C-Cアルキル、及びC-Cアルキルがある。アルキルの例として、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、3-メチルブチル、t-ブチル、n-ペンチル、及びsec-ペンチルがあるが、これらに限定されない。
【0071】
「アリール」は、芳香族環内に炭素だけを含む芳香族基のことを示す。一般的なアリール基は、1~3個の別個の、縮合した、またはペンダントの環、及び6~約18個の環原子を含有しているが、環メンバーとしてのヘテロ原子は含んでいない。指示がある場合、そのようなアリール基は、炭素または非炭素の原子または基でさらに置換し得る。アリール基として、例えば、フェニル、ナフチルがあり、例えば、1-ナフチル、2-ナフチル、及びビフェニルがある。「アリールアルキル」置換基とは、置換する基にアルキレンリンカーを介して結合する、本明細書で定義するアリール基である。アルキレンは、二価であることを除いて、本明細書に記載したアルキル基である。
【0072】
「シクロアルキル」は、指定した個数の炭素原子を有する飽和炭化水素環基である。単環式シクロアルキル基は、一般的には、3~約8個の炭素環原子、または3~6個(3つ、4つ、5つ、または6つ)の炭素環原子を有する。シクロアルキル置換基は、置換された窒素、酸素、または炭素原子からペンダントとし得る、または、2つの置換基を有し得る置換された炭素原子は、スピロ基として結合するシクロアルキル基を有し得る。シクロアルキル基の例として、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、及びシクロヘキシルがある。
【0073】
「ヘテロアルキル」基は、少なくとも1つの炭素が、ヘテロ原子、例えば、N、O、またはSで置換される、ここで記載したアルキル基である。
【0074】
本明細書で使用する用語「置換された(substituted)」は、指定した原子の通常の原子価を超えていなければ、指定した原子または基のいずれか1つ以上の水素が、そこに示した選択肢の基と置換されることを意味する。置換基がオキソ(すなわち、=O)である場合、原子上の2つの水素が置き換えられる。オキソ基がヘテロ芳香族部分を置換する場合、生じる分子は、互変異性形態となることがある。例えば、2位または4位にてオキソで置換されるピリジル基は、ピリジンまたはヒドロキシピリジンと記載できる場合がある。置換基及び/または可変部分の組合せは、そのような組合せが、安定した化合物または有用な合成中間体をもたらす場合にのみ、許容される。安定した化合物または安定した構造は、反応混合物からの単離、及びその後の有効な治療剤への製剤を可能ならしめるほど十分に安定した化合物を意味することを意図する。特記しない限り、置換基は、コア構造に対して名称が付される。例えば、アミノアルキルは、この置換基のコア構造への結合点がアルキル部分内にあることを意味しており、アルキルアミノは、結合点がアミノ基と窒素との結合である、ことを意味していることが理解される。
【0075】
「置換された」または「任意に置換された」位置に存在し得る適切な基として、例えば、ハロゲン;シアノ;-OH;オキソ;-NH;ニトロ;アジド;アルカノイル(例えば、C-Cアルカノイル基);C(O)NH;1~約8個の炭素原子、または1~約6個の炭素原子を有するアルキル基(シクロアルキル、及び(シクロアルキル)アルキル基など);1つ以上の不飽和結合、及び2~約8個、または2~約6個の炭素原子などを有するアルケニル及びアルキニル基;1つ以上の酸素結合、及び1~約8個、または1~約6個の炭素原子などを有するアルコキシ基;フェノキシ等のアリールオキシ;1つ以上のチオエーテル結合、及び1~約8個の炭素原子、または1~約6個の炭素原子などを有するアルキルチオ基;1つ以上のスルフィニル結合、及び1~約8個の炭素原子、または1~約6個の炭素原子などを有するアルキルスルフィニル基;1つ以上のスルホニル結合、及び1~約8個の炭素原子、または1~約6個の炭素原子などを有するアルキルスルホニル基;1つ以上のN原子、及び1~約8個、または1~約6個の炭素原子などを有するアミノアルキル基;1~約6個の炭素原子のアルキル基などを有するモノ-またはジアルキルアミノ基;約1~約6個の炭素原子のアルキル基などを有するモノ-またはジアルキルアミノカルボニル基(すなわち、アルキルNHCO-または(アルキル1)(アルキル2)NCO-);6個以上の炭素などを有するアリールがあるが、これらに限定されない。
【0076】
II.結節性硬化症
結節性硬化症(TSC)は、過誤腫として知られている良性腫瘍の異常増殖を通じて数多くの臓器に影響を与える胚性皮質発達の多系統障害である。症状の組み合わせとして、発作、知的障害、発達遅延、異常行動、皮膚の異常、肺疾患、及び腎臓病があり得る。TSCの疾患表現型は非常に多様であるが、てんかんなどの神経学的症状は、TSC患者の最大で90%に認められる(Krueger et al.,2013)。この病態は、染色体9q34にあるTSC1遺伝子、または染色体16p13.3にあるTSC2遺伝子のいずれかの遺伝性突然変異が引き起こす。TSCは、1:6,000の頻度で発生しており、患者の85%で変異が認められている(Julich & Sahin,2014)。遺伝子産物であるハマルチン(TSC1)とツベリン(TSC2)は、脳内(Rheb)に豊富な小さなGTPアーゼRasホモログを阻害して、成長と代謝の重要な細胞間調節遺伝子であるラパマイシン複合体1(mTORCl)の哺乳類標的の活性を制限する調節複合体を形成する(Krueger et al.,2013)。mTOR阻害剤であるエベロリムスは、発作を低減させることが示されている(French et al.,2016;Mizuguchi et al.,2019)。
【0077】
TSCは、てんかんの最も一般的な遺伝的原因の1つであり、発作の症候は発症年齢によって異なる(Mich & Sahin,2014)。効果的な治療選択肢として、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)の使用があり、ガナキソロンの使用と一致する可能性のあるメカニズムを含む。ACTHは、様々な神経ステロイドにさらに合成されるデオキシコルチコステロン(DOC)に対して刺激効果があることが示されている。具体的には、ACTHは、アロプレグナノロンの内因性血漿及び脳レベルを急速に高めることを示されており、ISに対する有益な効果をさらに説明でき得る。
【0078】
点頭てんかん(「IS」)は、乳児期に出現する最も一般的な発作タイプであり、患者の50%で、てんかんの最初の症状が出現する。年長の子どもと大人では、焦点性意識障害発作(かつては、複雑部分発作として知られていた)が最も一般的である。他の焦点性及び全般発作が発生する可能性もあり、患者の30%以上が、治療抵抗性てんかんを発症している(Julich & Sahin、2014)。一般的に、発作は、結節とその周囲の皮質に起因しているが、発作は、他の脳領域で発生する、または、結節の無いTSC患者で発生することもあるので、TSCのてんかんは、多因子性と見なすことができる(Julich & Sahin、2014)。
【0079】
明確なTSCの臨床診断では、以下の表7に示した、2つの大症状、または1つの大症状と2つ以上の小症状とを含む。
【表7】
【0080】
γ-アミノ酪酸(GABA)は、内因性GABA受容体モジュレーターの発現の変化が原因で、TSC関連てんかんの発症に中心的な役割を果たしているようである(di Michele et al.,2003)。
【0081】
TSCのてんかん原性の原因として、神経活性ステロイド、3α、5α-テトラヒドロプロゲステロン(THP)、またはアロプレグナノロンの欠乏を支持する証拠がある。アロプレグナノロンは、GABAA受容体の正のモジュレーターであり、実験動物とヒトを用いた実験で、抗てんかん効果が認められている。TSC関連てんかんの患者では、機能的なGABAAアンタゴゴニストである3β-THRに対してアロプレグナノロンが減っているが、てんかんを持たないTSC患者やコントロールでは減少しない(di Michele et al.,2003)。この減少した比率は、GABAA受容体が媒介する神経の興奮性を変化させて、てんかんの発症を招く可能性がある。GABAA受容体媒介の役割は、他のてんかんと比較して、TSCに起因する発作でのGABAアミノトランスフェラーゼの特異的かつ不可逆的な阻害剤であるビガバトリンの大きな有効性が裏付けている(di Michele et al.,2003)。
【0082】
てんかんのTSC患者は、PCDH19の以前の報告と同様に、内因性神経ステロイド、特に、Alioのレベルが低下している。すべてのTSC患者の約25%は、アロプレグネナロン硫酸塩の血漿レベルが、6ng/ml未満である。
【0083】
抗痙攣作用のある神経活性ステロイドは、TSC及びTSC関連てんかんの治療で有用であり得る。抗痙攣作用のある神経活性ステロイドは、GABAAを介したシグナル伝達を高め、そして、発作の制御を改善するだけでなく、TSC及びTSC関連てんかんを有する個人の行動異常を改善し得る。
【0084】
TSC-mTOR経路のアップレギュレーションは、炎症反応の高め、受容体4(TLR4)シグナル伝達などの炎症誘発性トールを増やす証拠がある。Alloを含む神経ステロイドは、GABAA受容体を積極的に調節し、そして、これらの化合物の作用機序を拡大するTLR4を含む様々な神経炎症経路の阻害剤として作用することが示されている。
【0085】
III.神経ステロイド
内因性神経ステロイドは、脳活動の恒常性を維持する上で重要な役割を果たす。神経ステロイドは、脳環境の変化に応じて脳の変化を迅速に作動させる能力を有する。神経ステロイドは、遺伝子転写を調節する古典的なステロイドホルモン受容体との相互作用がなく、主に、神経膜受容体及びイオンチャネルとの相互作用によって、脳の興奮性を調節する。
【0086】
神経ステロイドは、ステロイド分子の化学構造に応じて、GABA受容体機能の正または負のレギュレータとなり得る(Pinna and Rasmussen,2014、Reddy,2003)。GABA受容体は、CNSにおけるシナプス抑制の大きな役割を媒介する。構造的に、GABA受容体は、塩素イオンチャネルを形成する5つのタンパク質サブユニットのヘテロペンタマーである。サブユニットには7つの異なるクラスがあり、その内のういくつかは、複数の相同変異体(α1~6、β1~3、γ1~3、σ1~3、δ、ε、θ)を有している。ほとんどのGABA受容体は、α、β、及びγ、またはδサブユニットで構成されている。神経伝達物質GABAは、塩素イオンチャネルの開口部を活性化して、塩素イオンの流入と、引き続いて起こる過分極を可能にする。GABA受容体は、興奮性神経伝達によって生じる脱分極を回避することで、活動電位の発生を妨げる。GABA受容体を介して媒介される抑制性神経伝達には、シナプス(一過性)抑制及びシナプス外(持続性)抑制の2種類がある。神経ステロイドは、シナプス及びシナプス外の双方のGABA受容体を調節し、それにより、一過性電流及び持続性電流の双方を増強する。一過性抑制は、シナプス前のGABA作動性のニューロン間の軸索末端から放出するミリモル濃度のGABAの断続的放出による、シナプスでのγ2含有受容体の活性化に起因する。対照的に、持続性抑制は、GABAトランスポータによる再取込みを逃れた低レベルの周囲GABAによるシナプス間隙の外側のδ含有シナプス外受容体の継続的な活性化により媒介される。持続性抑制は、興奮性のベースラインを設定することにより、海馬の興奮性を制御する上でユニークな役割を果たす(Reddy,2010)。
【0087】
ガナキソロンなどの神経ステロイドは、GABA受容体の強力な正のアロステリックモジュレーターである(Akk et al,2009)。神経ステロイドが、GABA受容体が媒介するGABA誘発応答を増強するという最初の観察は、1984年にアルファキソロンについて報告された(Harrison and Simmonds,1984)。神経ステロイドのこの調節作用は、α-及びβ-サブユニットの膜貫通ドメイン内に位置するGABA受容体での個別の部位に対する結合によって生じる(Hosier et al,2007;Hosier et al,2009)。神経ステロイドのための結合部位は、GABA、ベンゾジアゼピン、バルビツラートとははっきりと異なる。神経ステロイド結合部位の正確な位置は、現在のところ不明ではあるが、α-サブユニットのM1ドメイン内の位置241で高度に保存されたグルタミンが、神経ステロイド調節において重要な役割を果たすことが示されている(Hosie et al,2009)。結合部位に加えて、神経ステロイドとベンゾジアゼピンとの間には、GABA受容体とのそれぞれの相互作用に関して差異もある。神経ステロイドは、ほとんどのGABA受容体アイソフォームを調節するが、ベンゾジアゼピンは、γ2サブユニットを含有しており、α4-またはα6-サブユニットを含まないGABA受容体にのみ作用する(Lambert et al,2003、Reddy、2010)。特定のαサブユニットは、神経ステロイドの有効性に影響し得、一方γサブユニットタイプは、GABA受容体の神経ステロイド調節に関する有効性及び効力の双方に影響を及ぼし得る(Lambert et al,2003)。
【0088】
最近の研究では、GABA受容体に、少なくとも3つの神経ステロイド結合部位が存在することを示している。1つは、アロプレグナノロンによるGABA誘発電流のアロステリック増強、1つは、アロプレグナノロンによる直接活性化、そして、1つは硫酸プレグネノロンなどの、低(nM)濃度の硫酸化神経ステロイドの拮抗作用である(Lambertetal、2003;Hosieetal、2007)。GABA受容体の塩化物電流の神経ステロイドによる増強は、チャネル開放頻度とチャネル開放期間の両方の増加を通じて起こる(Reddy,2010)。したがって、神経ステロイドは、大量の塩化物イオンの流入を可能にするGABA受容体クロライドチャネル開口の可能性を大幅に高め、それにより、抑制性GABA作動性伝達の増強を促す。これらの効果は、神経ステロイドの生理学的濃度で発生する。したがって、内因性神経ステロイドレベルは、GABA受容体の機能を継続的に調節する(Reddy,2010)。
【0089】
シナプス外δサブユニット含有GABA受容体は、神経ステロイドに対する感受性の増大を示し、このことは、持続性抑制における主要な調節的役割を示唆している(Wohlfarth et al.,2002)。δサブユニットを含有するGABA受容体は、GABA応答の神経ステロイド誘導増強に対して、より感受性である(Stell et al,2003)。δサブユニットを欠くマウスは、神経ステロイドに対する感受性の劇的な低下を示す(Mihalek et al,1999)。δ-サブユニットは、神経ステロイド結合部位に寄与しないが、神経ステロイドが受容体に結合した後に、神経ステロイド作用のトランスダクションを増強するようである。δサブユニットを含有するGABA受容体の脱感作度が低く、細胞外空間において周囲濃度のGABAが活性化する持続性GABA受容体電流の媒介を助ける。持続性GABA受容体電流は、ニューロンの安定した阻害を引き起こし、その興奮性を引き下げる。GABAは、高い親和性で結合するが、有効性が比較的低いδ含有GABA受容体のアゴニストである(Glykys and Mody,2007)。したがって、神経ステロイドは、飽和GABA濃度の存在下でも、δ含有GABA受容体によって生成する電流を著しく高めることができる。神経活性の間に、シナプス周囲δサブユニット含有GABA受容体、及びシナプス外δサブユニット含有GABA受容体と相互作用することができる、活性GABA作動性介在神経からのGABAの大幅な放出があることが考えられる。全体として、神経ステロイドの堅実な作用は、シナプス及びシナプス周囲/シナプス外GABA受容体の双方に及ぼす作用に起因する可能性が高い(Reddy,2010)。
【0090】
プレグナン神経ステロイド及びプレグネノロン神経ステロイドは、麻酔薬、鎮静剤、催眠薬、抗不安薬、抗鬱薬、抗振戦薬、自閉症行動の治療薬、及び抗痙攣薬として有用な化合物のクラスである。これらの化合物は、水溶性が非常に低い特徴があり、これにより、製剤形態の選択肢に制限がある。経口的でも、非経口的でも生物が利用できるプレグナン神経ステロイド、及びプレグネノロン神経ステロイドのナノ粒子製剤が使用できる。
【0091】
プレグナン神経ステロイド、及びプレグネノロン神経ステロイドの注射可能な製剤は、それら化合物が、麻酔などの経口投与ができない臨床的適応症、特に、活動性発作の緊急処置に使用されるので、特に望ましい。
【0092】
本開示は、注射可能なナノ粒子神経ステロイド製剤を含む。
【0093】
本発明のプレグナン神経ステロイド、及び、プレグネノロン神経ステロイドは、それぞれ、式IA:
【化1】

の化合物、または、医薬として許容可能なその塩であり得、式中、
Xは、O、S、またはNR10であり、
は、水素、ヒドロキシル、-CHA、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたヘテロアルキル、任意に置換されたアリール、または任意に置換されたアリールアルキルであり、
Aは、ヒドロキシル、O、S、NR11、または任意に置換された窒素含有5員ヘテロアリール、もしくは任意に置換された窒素含有二環式ヘテロアリール、もしくは二環式ヘテロシクリルであり、
は、水素、ヒドロキシル、オキソ、任意に置換されたアルキル、または任意に置換されたヘテロアルキルであり、
、R、R、R、及びRは、それぞれ独立して、存在しない、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、任意に置換されたC-Cアルキル、任意に置換されたC-Cアルコキシル(例えば、メトキシル)、または任意に置換されたヘテロアルキルであり、
及びRは、それぞれ独立して、水素、C-Cアルキル(例えば、メチル)、ハロゲン化C-Cアルキル(例えば、トリフルオロメチル)、またはC-Cアルコキシル(例えば、メトキシル)からなる群から選択されるか、またはR及びRは、オキソ基を形成し、
10は、水素、ヒドロキシル、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたヘテロアルキル、任意に置換されたアリール、または任意に置換されたアリールアルキルであり、ここでそれぞれのアルキルは、C-C10アルキル、C-Cシクロアルキル、(C-Cシクロアルキル)C-Cアルキルであり、及び、任意に、二重結合または三重結合で置換された単結合を含み、
それぞれのヘテロアルキル基は、1つ以上のメチル基が、独立して、-O-、-S-、-N(R10)-、-S(=O)-または-S(=O)で置換しているアルキル基であり、R10は、水素、アルキル、または1つ以上のメチレン基が-O-、-S-、-NH、または-N-アルキルで置換されたアルキルであり、
11は、-Hまたは-HR12であり、
12は、C-Cアルキル、またはC-Cアルコキシである。
【0094】
本発明のプレグナン神経ステロイド、及び、プレグネノロン神経ステロイドは、それぞれ、式IAの化合物であり得、式中、
Xは、Oであり、
は、水素、-CH、-CHOH、1H-イミダゾール-1-イル、1-オキシドキノリン-6-イルオキシ、及び4-シアノ-1H-ピラゾール-1’-イルであり、
は、水素、オキソ、任意に置換されたアルキル、または任意に置換されたヘテロアルキルであり、
、R、R、R、及びRは、それぞれ独立して、存在しない、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、任意に置換されたC-Cアルキル、任意に置換されたC-Cアルコキシル(例えば、メトキシル)、または任意に置換されたヘテロアルキルであり、
及びRは、それぞれ独立して、水素、C-Cアルキル(例えば、メチル)、ハロゲン化C-Cアルキル(例えば、トリフルオロメチル)、またはC-Cアルコキシル(例えば、メトキシル)からなる群から選択されるか、またはR及びRは、オキソ基を形成し、
10は、水素、ヒドロキシル、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたヘテロアルキル、任意に置換されたアリール、または任意に置換されたアリールアルキルであり、ここでそれぞれのアルキルは、C-C10アルキル、C-Cシクロアルキル、(C-Cシクロアルキル)C-Cアルキルであり、及び、任意に、二重結合または三重結合で置換された単結合を含み、
それぞれのヘテロアルキル基は、1つ以上のメチル基が、独立して、-O-、-S-、-N(R10)-、-S(=O)-または-S(=O)で置換されたアルキル基であり、R10は、水素、アルキル、または1つ以上のメチレン基が-O-、-S-、-NH、または-N-アルキルで置換されたアルキルである。
【0095】
本発明のプレグナン神経ステロイド、及び、プレグネノロン神経ステロイドは、それぞれ、式IB:
【化2】

の化合物、または、医薬として許容可能なその塩であり得、式中、
Xは、O、S、またはNR10であり、
は、水素、ヒドロキシル、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたヘテロアルキル、任意に置換されたアリール、または任意に置換されたアリールアルキルであり、
は、水素、ヒドロキシル、オキソ、任意に置換されたアルキル、または任意に置換されたヘテロアルキルであり、
、R、R、R、及びRは、それぞれ独立して、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、任意に置換されたアルキル、または任意に置換されたヘテロアルキルであり、
は、水素またはアルキル、及びRはヒドロキシルであるか、または
及びRは、それらが互いに結合して、オキソ基を形成し、
10は、水素、ヒドロキシル、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたヘテロアルキル、任意に置換されたアリール、または任意に置換されたアリールアルキルであり、ここでそれぞれのアルキルは、C-C10アルキル、C-Cシクロアルキル、(C-Cシクロアルキル)C-Cアルキルであり、及び、任意に、二重結合または三重結合で置換された単結合を含み、
それぞれのヘテロアルキル基は、1つ以上のメチル基が、独立して選択された-O-、-S-、-N(R10)-、-S(=O)-、または-S(=O)-で置換されたアルキル基であり、R10は、水素、アルキル、または、1つ以上のメチレン基が、-O-、-S-、-NH、または-N-アルキルで置換されたアルキルである。
【0096】
式IA及び式IBの化合物として、例えば、アロプレグナノロン、ガナキソロン、アルファキサロン、アルファドロン、ヒドロキシジオン、ミナキソロン、プレグナノロン、アセブロコール、またはテトラヒドロコルチコステロン、及び医薬として許容可能なそれらの塩がある。
【0097】
本発明のプレグナン神経ステロイド、及び、プレグネノロン神経ステロイドは、それぞれ、式II:
【化3】

の化合物、または、医薬として許容可能なその塩でもあり得、式中、
Xは、O、S、またはNR10であり、
は、水素、ヒドロキシル、-CHA、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたヘテロアルキル、任意に置換されたアリール、または任意に置換されたアリールアルキルであり、
Aは、ヒドロキシル、O、S、NR11、または任意に置換された窒素含有二環式ヘテロアリールもしくは二環式ヘテロシクリルであり、
は、水素、ヒドロキシル、オキソ、任意に置換されたアルキル、または任意に置換されたヘテロアルキルであり、
、R、R、R、及びRは、それぞれ独立して、存在しない、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、任意に置換されたC-Cアルキル、任意に置換されたC-Cアルコキシル(例えば、メトキシル)、または任意に置換されたヘテロアルキルであり、
及びRは、それぞれ独立して、水素、C-Cアルキル(例えば、メチル)、ハロゲン化C-Cアルキル(例えば、トリフルオロメチル)、またはC-Cアルコキシル(例えば、メトキシル)からなる群から選択されるか、またはR及びRは、オキソ基を形成し、
10は、水素、ヒドロキシル、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたヘテロアルキル、任意に置換されたアリール、または任意に置換されたアリールアルキルであり、ここでそれぞれのアルキルは、C-C10アルキル、C-Cシクロアルキル、(C-Cシクロアルキル)C-Cアルキルであり、及び、任意に、、二重結合または三重結合で置換された単結合を含み、
それぞれのヘテロアルキル基は、1つ以上のメチル基が、独立して選択された-O-、-S-、-N(R10)-、-S(=O)-、または-S(=O)-で置換されたアルキル基であり、R10は、水素、アルキル、または、1つ以上のメチレン基が、-O-、-S-、-NH、または-N-アルキルによって置換するアルキルであり、
11は、-Hまたは-HR12であり、
12は、C-CアルキルまたはC-Cアルコキシである。
【0098】
本発明のプレグナン神経ステロイド、及び、プレグネノロン神経ステロイドは、それぞれ、式III:
【化4】

の化合物、または、医薬として許容可能なその塩でもあり得、式中、
Xは、O、S、またはNR10であり、
は、水素、ヒドロキシル、-CHA、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたヘテロアルキル、任意に置換されたアリール、または任意に置換されたアリールアルキルであり、
Aは、ヒドロキシル、O、S、NR11、または任意に置換された窒素含有二環式ヘテロアリールまたは二環式ヘテロシクリルであり、
は、水素、ヒドロキシル、オキソ、任意に置換されたアルキル、または任意に置換されたヘテロアルキルであり、
、R、R、R、及びRは、それぞれ独立して、存在しない、水素、ヒドロキシル、ハロゲン、任意に置換されたC-Cアルキル、任意に置換されたC-Cアルコキシル(例えば、メトキシル)、または任意に置換されたヘテロアルキルであり、
及びRは、それぞれ独立して、水素、C-Cアルキル(例えば、メチル)、ハロゲン化C-Cアルキル(例えば、トリフルオロメチル)、またはC-Cアルコキシル(例えば、メトキシル)からなる群から選択される、またはR及びRは、それらが互いに結合して、オキソ基を形成し、
10は、水素、ヒドロキシル、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたヘテロアルキル、任意に置換されたアリール、または任意に置換されたアリールアルキルであり、ここでそれぞれのアルキルは、C-C10アルキル、C-Cシクロアルキル、(C-Cシクロアルキル)C-Cアルキルであり、任意に、二重結合または三重結合で置換された単結合を含み、
それぞれのヘテロアルキル基は、1つ以上のメチル基が、独立して選択された-O-、-S-、-N(R10)-、-S(=O)-、または-S(=O)-で置換されたアルキル基であり、R10は、水素、アルキル、または、1つ以上のメチレン基が、-O-、-S-、-NH、または-N-アルキルによって置換されたアルキルであり、
11は、-Hまたは-HR12であり、
12は、C-CアルキルまたはC-Cアルコキシである。
【0099】
a)ガナキソロン
ガナキソロン(CAS Reg.No.38398-32-2、3α-ヒドロキシ-3β-メチル-5α-プレグナン-20-オン)は、CNS GABAA受容体の内因性アロステリックモジュレーターであるアロプレグナノロンの3β-メチル化合成類似体である。ガナキソロンの構造式は、次のとおりである。
【化5】
【0100】
ガナキソロンは、ベンゾジアゼピン、及びバルビツール酸塩とは異なる部位で、シナプス及びシナプス外GABAA受容体を活性化することにおいて、アロプレグナノロンに匹敵する効果と有効性を示す(Carter 1997)ガナキソロンは、様々な齧歯類の発作モデルで保護作用を示す(Reddy 2012,Bialer 2010)。臨床試験では、ガナキソロンが成人と子どもで、900~1800mgの用量範囲で許容できる安全性と忍容性プロファイルで抗痙攣作用を有することが示されている(Sperling,2017、Laxer,2000、Kerrigan,2000、Pieribone,2007)。さらに、ガナキソロンは、IS及び難治性の小児てんかんの発作を軽減する。非盲検(OL)試験では、難治性発作と、ISの病歴のある2ヶ月~60ヶ月の小児患者を、最大で、36mg/kgのガナキソロン用量で、最長で3か月間治療した(Kerrigan,2000)。20名の患者の内の16名が治療を完了し、その内、15名はISの病歴があった。15名の患者の内の5名は、痙攣の数が、ベースラインから50%以上減少し、5名は25~50%減少し、5名は、25%未満減少した。1名の患者は痙攣が解消し、1名の非レスポンダー(<25%の減少)は、2週目~7週目までに痙攣が解消した。
【0101】
ガナキソロンは、その抗痙攣作用に加えて、脆弱X症候群の子どもたちの不安、多動性、注意を軽減することが示されている(Ligsay,2016)。同様の行動の問題は、TSCを有する個人にも認められており、ADHDと自閉症では、約50%の割合である(Mich&Sahin,2014)。したがって、ガナキソロン治療は、GABAAを介したシグナル伝達を高めて、発作の制御を改善するのみならず、TSC及びTSC関連てんかんを有する個人の行動異常を改善し得る。
【0102】
ガナキソロンは、アロプレグナノロンと同じコア化学構造を有するが、核ホルモン受容体において活性な実体に戻る変換を防ぐように設計された3βメチル基が加わることで、望ましくないホルモン作用の機会を排除しながら、神経ステロイドの生体利用性を高め、所望するCNS活性を維持する。
【0103】
アロプレグナノロンと同様に、ガナキソロン(神経活性ステロイド)は、中枢神経系(CNS)内でγ-アミノ酪酸タイプA(GABAA)受容体をアロステリックに調節することで、動物において強力な抗てんかん活性、抗不安活性、鎮静活性、及び催眠活性を示す。ガナキソロンは、ベンゾジアゼピン部位とは異なる部位にてシナプス及びシナプス外のGABAA受容体を活性化することにおいて、アロプレグナノロンに匹敵する効果と有効性を示す。
【0104】
ガナキソロンは、このクラスに固有の結合部位にてシナプス及びシナプス外の双方のGABA受容体と相互作用することで機能する。シナプスの外側では、ガナキソロンは細胞膜に吸収されて拡散することができ、シナプス外GABA受容体を活性化して、過興奮した神経を落ち着かせるGABA抑制シグナルの安定した、または持続性の調節を実現する。
【0105】
ガナキソロンは、水に対して不溶性である。95%アルコール、プロピレングリコール、及びポリエチレングリコールでの溶解度は、それぞれ、13mg/mL、3.5mg/mL、及び3.1mg/mLである。
【0106】
ガナキソロンは、肝臓酵素のCYP3Aファミリーにより主に代謝されるが、肝臓の代謝に基づく相互作用は、ケトコナゾールなどのその他の作用物質によって、CYP3A4/5の誘導または阻害が引き起こされる相互作用に限定される。
【0107】
インビトロでは、ガナキソロンのクリアランスは、主に、CYP3A4により引き起こされるようである。成人での臨床試験では、グレープフルーツの投与により、健康なボランティアでのガナキソロンの曝露が増加した。ガナキソロンのレベルが、酵素誘導AEDで同時に処置した患者では減少した。これらのデータはさらに、CYP3A4が、ヒトにおけるガナキソロンのクリアランスに大きく貢献する、という仮説を支持している。
【0108】
成人において、経口投与後のガナキソロンの血漿濃度は、変動性の高さが特徴である。単回用量のPKパラメーターは、ガナキソロン吸収の速度及び程度、そして対象者が摂食状態にあったか、または絶食状態にあったかによって強く影響された。
【0109】
小児集団では、CYP3A4の発現のレベルは、個人間に高度な変動性はあるが、約2歳までに成人のレベルに近づく(de Wildt et al,2003)。したがって、2歳を超える患者は、ガナキソロンのクリアランス率が成人と同様である、と考えられる。
【0110】
ガナキソロンは、半減期が比較的長く、経口投与した後のヒト血漿において約20時間である(Nohria,V.and Giller,E.,Neurotherapeutics,(2007)4(1):102-105)。さらに、ガナキソロンは、Tmaxが短く、これは、治療上の血中レベルに迅速に達したことを意味する。したがって、最初のボーラス用量(負荷用量)を必要としない可能性があり、これは、その他の治療法に勝る利点を表している。ガナキソロンは、成人及び小児のてんかん患者の発作の治療に有用である。
【0111】
ガナキソロンは、ベンゾジアゼピンなどのその他のアロステリックGABAA受容体モジュレーターとは異なる認識部位と相互作用することで、GABAA受容体に影響を及ぼす。ガナキソロンは、シナプス内受容体及びシナプス外受容体に結合して、一過性及び持続性の双方の調節をそれぞれ媒介する。これらの2つの受容体に対するガナキソロンの固有な結合は、ベンゾジアゼピンで認められる耐性をもたらさない。アロプレグナノロンとは対照的に、ガナキソロンは、経口的に生物が利用可能であり、体内で、プロゲステロンなどの中間体に逆変換され得ず、古典的なステロイドホルモン活性があるので、直接的にも、代謝変換を介して間接的にも、プロゲステロン受容体を活性化しない。
【0112】
また、静脈内投与するガナキソロンについても評価されており、本来であれば正常なラットにおいて、バースト抑制のような脳波(EEG)パターンを誘導して、臨床てんかん重積状態(SE)を表すモデルにおいて発作反応の阻止を示した。ガナキソロンは、鎮静応答を引き起こしたが、完全な麻酔応答を引き起こさなかった。
【0113】
抗痙攣活性に加えて、ガナキソロンは、抗不安特性、ならびに自閉症に関連する行動を改善することを示した。心的外傷後ストレス障害(PTSD)のマウスモデルでは、ガナキソロンで治療することにより、攻撃性及び社会的孤立によって誘導される不安のような行動が減少した(Pinna and Rasmussen,2014)。別の研究では、ガナキソロン治療は、自閉症のBTBRマウスモデルにおける社会性を向上させた(Kazdoba et al,2016)。脆弱X症候群(FXS)の子ども及び青年期の男女のガナキソロン治療の臨床試験では、ガナキソロンは、不安及び活動亢進を軽減し、ベースライン不安がより高い人々の注意力を改善した(Ligsay et al,2017)。
【0114】
ガナキサロンは、70nM(n=2)の測定濃度で、ヒト遅延整流性カリウムイオンチャネル遺伝(hERG)受容体と相互作用しなかった。ガナキサロンは、イヌにおいて、最大15mg/kg(最大濃度[Cmax]が1000ng/mL、そして、濃度時間曲線下面積(AUC)(0~24)が、10000ng・時間/mL)の単回投薬の後に、心血管パラメーターに影響を及ぼさなかった。1歳のイヌ毒性研究(Cmax>1500ng/mL)において、4頭の動物に対して3ヶ月投薬した後に、一過性の洞性頻脈(>190拍動/分[bpm])が認められ、そして、PR及びQTの間隔の減少を伴ったが、QRS期間または補正したQ-T間隔(QTc)に及ぼす処置の効果はなかった。雌ラットでは、最大40mg/kgの用量でも、肺に対する影響は認められなかった。
【0115】
高い心拍数に応じて、PR及びQTの間隔に、生理学的に正常な短縮が認められた。QRS期間またはQTc間隔に及ぼす影響は認められなかった。雌ラットでは、最大40mg/kgの用量でも、肺に対する影響は認められなかった。
【0116】
ガナキサロンは、雄ラットではなく、雌ラットにおいて、主要なチトクロームP450(CYP)アイソザイム1A1/2及び2B1/2を誘導する。また、自己誘導が、マウス及びラットにおいて認められる一方で、イヌでは自己誘導は認められていない。
【0117】
マウスとラットにおける組織分配研究は、[14C]-ガナキソロンが、全身を通って、高度に灌流した臓器、腸、及び脂肪組織へと急速に分布され、脳のガナキソロン濃度が血漿での濃度よりも約5倍高かったことを示した。
【0118】
すべての種において、排出される大半の放射能は、糞便を介したものであり(70%超)、残りは尿中に排出される。
【0119】
毒性学研究において、ガナキサロンで処置した後の最も共通した効果は、GABA受容体の正のモジュレーターについて予想される薬理効果である用量関連鎮静であった。経口プログラム及びIVプログラムの双方において、ガナキソロンによる単回用量治療または複数回用量治療のいずれかに関連する標的臓器または全身毒性の証拠は、ほとんどなかった。造血組織内、または肝臓、腎臓、消化管(GI)系などの特定のいかなる臓器内の機能的変化も解剖学的変化も、反復用量研究において認められなかった。ラットでは、ガナキサロンは肝臓酵素を誘導し、雌では効果がより顕著であった。これは、6ヶ月の研究における肝臓重量の増大と、用量に関連した肝細胞の肥大と相関していた。
【0120】
イヌにおける長期間にわたる経口毒性研究では、1500ng/mL(10及び15mg/kg/日)を超えるCmaxの平均レベルが、体重及び総血漿コレステロールレベルの増大と関連していた。
【0121】
ラット及びイヌに対して静脈内投与したところ、主な用量制限毒性所見は、鎮静であった。ラットでは、14日間の静脈内投与後に、最大無毒性量(NOAEL)は、雄で42mg/kg/日、そして、雌で30mg/kg/日で確立された。イヌでは、IVボーラスによるガナキソロンの投与と、それに続く28日間の継続的なIV注射後のNOAELは、7.20mg/kg/日であり、これは、約330ng/mL、及び333ng/mLの定常状態の濃度に相当していた。ウサギでは、局所耐性研究における所見はなかった。最後に、インビトロでのガナキサロンは、溶血を引き起こさず、そして、ヒト血漿と適合した。
【0122】
ガナキサロンは、ラットまたはマウスにおいて催奇形性はなく、後代の成長に大きな影響を与えなかった。ガナキサロンは、ラットにおいて、生殖能力及び初期の胚発生に影響を与えなかった。変異原性の可能性は検出されなかった。ガナキサロンによる新生児ラットの処置は、鎮静の予想する徴候をもたらしたが、発達に影響を与えたり、死後に何らかの変化を示すこともなかった。
【0123】
b)アロプレグナロン
アロプレグナノロン(CAS登録番号516-54-1、3α,5α-テトラヒドロプロゲステロン)は、抗痙攣作用を有する内因性プロゲステロン誘導体である。
【化6】
【0124】
アロプレグナノロンの半減期は比較的短く、ヒト血漿中では約45分である。
【0125】
アロプレグナノロンは、そのGABAA受容体調節活性により、動物において強力な抗てんかん活性、抗不安活性、鎮静活性、及び催眠活性を示す。
【0126】
アロプレグナノロンを、発作の治療におけるその有効性に加えて、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、及び筋萎縮性側索硬化症が認められる神経変性疾患の治療における使用に関して、そして、コレステロール合成の異常を特徴とするリソソーム蓄積症、例えば、ニーマンピックA、B、及びC、ゴーシェ病、ならびにテイサックス病の治療について評価されている(神経学的障害を治療するためのアロプレグナノロンの使用に関する教示については、参照により、本明細書で援用する米国特許第8,604,011号明細書を参照されたい)。
【0127】
プロゲステロンと、その代謝産物であるアロプレグナノロンと、発作との関係は、月経周期の様々な段階に関連する発作の頻度に変化が認められる症状である月経てんかんを有する女性において、広く研究がされている。プロゲステロンが低い月経周期(例えば、閉経周辺期)での時点では、発作の可能性が高くなる傾向がある(French,2005)。循環アロプレグナノロンレベルは、プロゲステロンのレベルに対応する。プロゲステロンの生殖に対する影響は、細胞内プロゲステロン受容体との相互作用に関連しているが、プロゲステロンの抗痙攣作用はそうではない(Reddy and Rogawski,2009)。プロゲステロンの抗発作活性は、神経ステロイドであるアロプレグナノロンへの変換に由来する(Kokate et al,1999)。アロプレグナノロンは、GABAA受容体に及ぼす作用に起因して、いくつかの動物モデルにおいて発作活性から保護することが示されている(Reddy and Rogawski,2009)。プロゲステロン関連作用が無いアロプレグナノロンの合成類似体であるガナキソロンは、PCDH19関連てんかんに関連する発作の治療に有用であり得る。
【0128】
c)アルファキサロン
アルファキサロン(alphaxalone)(アルファキサロン(alfaxalone)としても知られる)(CAS Reg.No.23930-19-0、3α-ヒドロキシ-5α-プレグナン-11,20-ジオン)は、麻酔活性のある神経ステロイドである。アルファキサロンは、獣医学的に全身麻酔薬として使用される。麻酔薬は、難治性発作の治療用抗痙攣薬と組み合わせて投与することがよくある。アルファキサロンを単独で、またはガナキソロンまたはアロプレグナノロンのいずれかと組み合わせて含む注射可能なナノ粒子神経ステロイド剤型は、本開示の範囲内である。
【化7】
【0129】
d)アファドロン
アルファドロン(alphadolone)(アルファドロン(alfadolone)としても知られる)(CAS Reg.No.14107-37-0、3α、21-ジヒドロキシ-5α-プレグナン-11、20-ジオン)は、麻酔特性を有する神経ステロイドである。その塩である酢酸アルファドロンは、アルファキサロンと組み合わせて、獣医用麻酔薬として使用される。
【化8】
【0130】
e)さらなる神経ステロイド
本開示のナノ粒子神経ステロイド製剤、及び本明細書で開示した方法に使用し得る、さらなる神経ステロイドとして、ヒドロキシジオン(CAS登録番号303-01-5、(5β)-21-ヒドロキシプレグナン-3,20-ジオン)、ミナキソロン(CAS Reg.No.62571-87-3、2β,3α,5α,11α)-11-(ジメチルアミノ)-2-エトキシ-3-ヒドロキシプレグナン-20-オン)、プレグナノロン(CAS Reg.No.128-20-1、(3α,5β)-d-ヒドロキシプレガナン-20-オン)、レナノロン(CAS登録番号565-99-1、3α-ヒドロキシ-5β-プレグナン-11,20-ジオン)、またはテトラヒドロコルチコステロン(CAS登録番号68-42-8、3α,5α-プレグナン-20-ジオン)がある。
【0131】
本開示のナノ粒子神経ステロイド製剤、及び本明細書で開示した方法に使用し得る、さらなる神経ステロイドとして、Co26749/WAY-141839、Co134444、Co177843、ならびにSage-217、Sage-324、及びSage-718がある。Co26749/WAY-141839、Co134444、Co177843、及びSage-217は、以下の構造を有する:
【表10】
【0132】
本開示のナノ粒子神経ステロイド製剤、及び本明細書で開示した方法に使用し得る、さらなる神経ステロイドとして、米国特許出願公開第2016-0229887号明細書(2016年2月23日出願の米国特許出願第14/913,920号明細書)に開示される化合物があり、その出願の全内容を参照により本明細書で援用する。
【0133】
IV.投与量
本明細書で開示した方法で使用するプレグネノロン神経ステロイドは、約1mg/日~約5000mg/日の量で、1、2、3、または4回の分割用量で投与することができる。ある特定の実施形態では、1600mg/日及び2000mg/日の用量は、傾眠を招きかねず、1800mg/日の用量が、薬物曝露、投薬の利便性、及び忍容性の最適な組合せを定義する。
【0134】
プレグネノロン神経ステロイドが、ガナキソロンである場合、ガナキソロンの標的及び最大用量は、約1800mg/日である。これらの実施形態では、この用量は、ガナキソロンの非線形動態に基づいて、最も高い実現可能な曝露を実現する。したがって、プレグネノロン神経ステロイドが、ガナキソロンであるであると、本発明の方法において投与するガナキソロンの量は、一般的には、約200mg/日~約1800mg/日、約300mg/日~約1800mg/日、約400mg/日~約1800mg/日、約450mg/日~約1800mg/日、約675mg/日~約1800mg/日、約900mg/日~約1800mg/日、約1125mg/日~約1800mg/日、約1350mg/日~約1800mg/日、約1575mg/日~約1800mg/日、または約1800mg/日、1mg/kg/日~約80mg/kg/日の量で、1回、2回、3回、または4回に分けて投与する。ある特定の実施形態では、ガナキソロンの標的及び最大用量は、必要に応じて、副作用(複数可)(例えば、傾眠)に応じて制限して、改善した治療効果を達成するために高用量にし得る。
【0135】
ある特定の実施形態では、約300mg~約2000mg、約900mg~約1800mg、約950mg~約1800mg、約1000mg~約1800mg、約1100mg~約1800mg、または約1200mgからのガナキソロンを、1日あたり2日以上連続して(例えば、1週間から50年の期間、または患者の生涯にわたって)経口投与する。ガナキソロンは、1日1回、2回、3回、または4回の用量で、経口または非経口投与し得る。
【0136】
ヒトがガナキソロンを1日2回服用する、または3回服用するかは、製剤によって定まる。経口即時放出カプセルの投薬を受ける患者では、ガナキソロンは、一般的に、1日2回投与し、それぞれの用量は、次の用量、及び/または前の用量から8~12時間あける。経口懸濁液を服用している患者では、ガナキソロンは、一般的に、1日3回投与され、それぞれの用量は、次の用量、及び/または前の用量から4~8時間あける。
【0137】
プレグネノロン神経ステロイドが、ガナキソロンである場合、本発明の方法は、投与するガナキソロンの総量が2000mg/日を超えないことを条件として、約1mg/kg/日~約80mg/kg/日の用量でガナキソロンを投与する。
【0138】
本明細書に記載した方法は、治療有効量でガナキソロンを投与して、24時間で、約70%以上で、100ng/ml以上のガナキソロンの血漿濃度を達成する、ことをさらに含むことができる。例えば、ガナキソロンの血漿濃度は、24時間で、少なくとも約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、またはそれ以上で、100ng/mlより高くなり得る。
【0139】
血漿濃度100ng/ml以上を、24時間で、約70%以上で達成するために、ガナキソロンを、1日3回以上投与することができる。1日3回が好ましく、必要に応じて、または所望であれば、ガナキソロンを1日3回以上投与して、ガナキソロンの所望のトラフ濃度を達成することができる。例えば、ガナキソロンを、1日3回、1日4回、1日5回、1日6回、1日7回、1日8回、またはそれ以上投与することができる。
【0140】
本明細書で開示した方法に従って投与するガナキソロンは、臨床試験で使用されているのと同じ、またはより低日用量で投与することができき、ガナキソロン血清濃度を、例えば、24時間の少なくとも約70%以上で、少なくとも約100ng/mlに維持することで薬物曝露を増やすことができる。1日総量を3回以上に分けて投与して、(好ましくは、それぞれが同じ用量のガナキソロンを含む)24時間の少なくとも約70%以上において、少なくとも約100ng/mlの血清ガナキソロン濃度を生成することを条件として、約1800mg、約1700mg、約1600mg、約1500mg、または63mg/kg/日の1日総量のガナキソロンを投与することができる。一般的に、ガナキソロンの1日あたりの総投与量の1500mgは、1日3回投与する場合、24時間の約70%以上で、少なくとも約100ng/ml以上の血漿濃度を生成し得る。
【0141】
例えば、ガナキソロンを1日1500mg投与すると、1日3回、約500mgを投与することができる。例えば、1日に総量で1800mgのガナキソロンを投与する場合、1日3回、600mgを投与することができる。ガナキソロンの最大1日量は、24時間以内に、少なくとも3つの間隔で、同じ用量または異なる用量で投与される。熟練した臨床医であれば、総量がガナキソロンの最大1日量を超えない限り、少なくとも1日に3回投与するガナキソロンの量を調整して、所望のガナキソロントラフレベルを達成できる、ことを理解するであろう。
【0142】
少なくとも約100ng/mlの血漿濃度が好ましいが、例えば、対象の体重、代謝、年齢、発作の期間、及び発作の重症度の相違に基づいて、若干が変動あり得る。
【0143】
ガナキソロンは、経口投与(例えば、経口懸濁液、または経口カプセルとして)または静脈内製剤で投与することができる。好ましくは、ガナキソロンを、経口投与する。経口投与として、経口懸濁液製剤、及び経口カプセルがあるが、これらに限定されない。
【0144】
24時間の約70%以上を、少なくとも約100ng/ml以上の血漿濃度とすることで、発作の軽減及び/または発作の抑制が改善される。例えば、ベースライン発作頻度と比較して、少なくとも20%以上の発作減少を達成することができる。例えば、ベースライン頻度と比較して、少なくとも35%以上の発作の減少を達成することができる。発作の負担、及び/または頻度は、EEGを使用してモニタリングすることができる。
【0145】
即時放出0.3ミクロン粒子を含む製剤(例えば、実施例2の製剤)でのガナキソロンの薬物動態は、約1200mg/日(1日2回の投与(「BID」))まで直線的であり、1600mg/日の用量での曝露では、ほどほどの増大があり、そして、2000mg/日の用量での曝露では、ほとんど、または、さらには増えない。したがって、すべての対象において可能な限り高いトラフレベルを維持するために、一般的に、1800mgの用量を標的とするが、最適な治療効果を提供するために、個人ごとに加減調整し得る。
【0146】
ある特定の実施形態では、ガナキソロンは、1800mg/日を超えないことを条件に、5mg/kg/日を超える用量、例えば、約6mg/kg/日~約80mg/kg/日の用量で投与される。
【0147】
ある特定の実施形態では、ガナキソロンの用量は、治療の間、15mg/kg/日~100mg/kg/日まで、最大用量の1800mg/日まで調整される。
【0148】
ある特定の実施形態では、治療の方法は、少なくとも33mg/kg/日のガナキソロンを、1回、2回、3回、または4回の用量で投与することを含み、最大1日用量は、約1800mgである。
【0149】
ある特定の実施形態では、ヒトは、約0.6歳から約7歳であり、かつ、約1.5mg/kg(1日2回(「BID」)(3mg/kg/日)~12mg/kg(1日3回(「TID」)(36mg/kg/日)で投与される。この実施形態では、ヒトが、12mg/kgのTID投与レジメンを受け、少なくとも約38.5±37.4ng/mLのトラフ濃度を達成する。
【0150】
ある特定の実施形態では、ガナキソロンが、β-シクロデキストリン製剤において、6mg/kg BID(12mg/kg/日)~12mg/kg TID(36mg/kg/日)の用量で食物とともに経口投与し、投与の4週目と8週目に、それぞれ、最大で、22.1ng/mLと5.7~43.7ng/mLのガナキソロンの血漿濃度を達成する。
【0151】
ある特定の実施形態では、ガナキソロンを、1~12mg/kg TID(3~36mg/kg/日)の用量で、食物とともに経口投与し、最大で、5.78ng/mL(1mg/kg TID)から10.3~16.1ng/mL(12mg/kg TID)のガナキソロン血漿濃度を達成する。
【0152】
ある特定の実施形態では、ガナキソロンを、3~18mg/kg TID(9~54mg/kg/日)の用量で、経口懸濁液製剤で経口投与し、約123ng/mLのガナキソロンCmax及び約23ng/mLのトラフ濃度を達成する。
【0153】
ある特定の実施形態では、平均ガナキソロンCmin(トラフ)は、55ng/ml~約100ng/mlであり、Cmaxレベルは、1日あたり3回の1000mgのガナキソロンの経口投与に基づいて、約240ng/ml~400ng/ml(例えば、262ng/mL)である。
【0154】
ある特定の実施形態では、これらの方法は、1000mgガナキソロンの1日2回の投与に基づいて、平均Cmin(トラフ)及びCmaxレベルが、それぞれ、約56.9ng/ml及び約262ng/mLである結果となる。
【0155】
ある特定の実施形態では、ガナキソロンの投与は、3、3.5、4、4.5、5、または6を超えるCmin/Cmax比を提供する。このCmin/Cmax比は、単回投与後、及び/または定常状態での投与後に提供され得る。ある特定の実施形態では、投与するガナキソロンの用量に関係なく、Cmin/Cmax比は同じままである。
【0156】
ある特定の実施形態では、投与する用量は、小児の薬物動態モデルから決定され、このもでるは、様々な小児年齢範囲において、成人のてんかん集団において決定した有効な用量に従って達成するものと同様のCmax及びAUC曝露をもたらすガナキソロンの用量の決定を可能とする。このモデルは、例えば、本出願における薬物動態データを考慮して、標準的な方法で構築することができる。
【0157】
ある特定の実施形態では、プレグネノロン神経ステロイドは、治療的に有効な投薬レジメンが達成するまで、いくつかの滴定ステップを用いて患者に投与し得る。例えば、患者のサイズに応じて、約6~8回の滴定ステップを用い得る。
【0158】
ある特定の実施形態では、本明細書で開示される方法は、患者のベースライン発作頻度を確立することと、最初にガナキソロンの用量を、約0.5mg/kg/日~約15mg/kg/日の量で患者に投与すること、及び、4週間にわたってガナキソロンの用量を約18mg/kg/日~約60mg/kg/日の量にまで徐々に増やすこととをみ、ガナキソロンの総用量は、体重が30kgを超える患者については、最大約1800mg/日である。体重が30kg以下の患者では、1日あたりのガナキソロンの総投与量は少なくし得る(例えば、約63mg/日)。ある特定の好ましい実施形態では、ガナキソロンの最初の用量は、約4.5mg/kg/日である。ある特定の好ましい実施形態では、ガナキソロンの用量を、約36mg/kg/日にまで増やす。ある特定の好ましい実施形態では、ガナキソロンの用量は、患者が用量制限有害事象を経験すれば、従前のレベルにまで下げる。
【0159】
ある特定の実施形態では、体重が30kgを超える対象の治療は、900mg/日の用量を分割用量で開始する。その後、現在の用量が、所望の有効性を達成する、または、最大耐量(MTD)レベルに達するまで、無理なく耐容可能であれば、用量を、3日以上2週間以下の間隔にて、約20~50%増やす(例えば、900mg/日から1200mg/日への増大は、33%の増大である)。安全上必要である場合を除いて、その後の用量調整は、約20~50%の増分で、用量変化の間に最低3日をおいて行い得る。これらの実施形態での最大許容用量は、1800mg/日である。
【0160】
ある特定の実施形態では、体重が30kg以下の対象の治療は、18mg/kg/日から開始する。現在の用量が、所望の有効性を達成している、または、最大耐量(MTD)レベルに達するまで、無理なく耐容可能であれば、用量を、3日以上2週間以下の間隔にて、約20%~50%増やし得る。安全上必要である場合を除いて、その後の用量調整は、約20~50%の増量を、用量変化の間に最低3日をおいて行い得る。これらの実施形態での最大許容用量は、63mg/日である。
【0161】
体重が、28kg(62ポンド)以上のヒトについて、ガナキソロンは、約300mg/日~約600mg/日(例えば、400mg/日)の用量にて分割用量で開始し得る。用量は、1800mg/日または最大耐量に達するまで、7日毎に、450mg/日ずつ増やす。
【0162】
体重が28kg(62ポンド)未満のヒトについて、ガナキソロンは、約10mg/kg/日~約30mg/kg/日(例えば、18mg/kg/日)の用量で開始し得る、そして、63mg/kg/日に達するまで、毎週約15mg/kg/日ずつ増やす。
【0163】
ある特定の実施形態では、ガナキソロンは、経口懸濁液として、10mg/日~20mg/日(例えば、15mg/kg/日)、最大63mg/kg/日(最大1800mg/日)に増量して、または、経口カプセルとして、225mg/日~900mg/日(例えば、450mg/日)に増量して投与する。これらの実施形態のいくつかでは、ガナキソロンは、例えば、次のように投与し得る:6mg/kgを、1日3回(TID)(18mg/kg/日)(懸濁液)/225を、1日2回(BID)(450mg/日)(カプセル)、1~7日目;11mg/kgを、TID(33mg/kg/日)(懸濁液)/450を、BID(900mg/日)(カプセル)、8~14日目;16mg/kgを、TID(48mg/kg/日)(懸濁液)/675を、BID(1350mg/日)(カプセル)、15~21日目;21mg/kgを、TID(63mg/kg/日、1800mg/日を超えない)(懸濁液)/900を、BID(1800mg/日)(カプセル)、22~28日目。
【0164】
ある特定の実施形態では、ガナキソロンを経口懸濁液で投与し、以下の滴定スケジュールを使用する:
【表11】
【0165】
ある特定の実施形態では、ガナキソロンをカプセルで投与し、以下の滴定スケジュールを使用する:

【表12】
【0166】
ある特定の実施形態では、最大有効性に関連するトラフ濃度は、約55ng/mL、約60ng/ml、または約65ng/ml(0.3ミクロンの懸濁液、TID投与)の範囲内であり、1800mg/日の用量(0.3ミクロンのカプセル、BID投与)が、この範囲内のトラフ血漿濃度を実現する。
【0167】
本明細書に開示する治療の方法は、食物とともに、または食物なしでの神経ステロイド(例えば、ガナキソロン)の投与を含む。ある特定の実施形態では、ガナキソロンは、食物とともに投与する。
【0168】
V.治療期間
本発明に従う治療期間は、1日~2年超に及び得る。例えば、治療期間は、約1日~約80年、約1日~約70年、約1日~約60年、約1日~約50年、約1日~約45年、約2日~約45年、約2日~約40年、約5日~約35年、約10日~約30年、約10日~約30年、約15日~約30年の範囲であり得る。一部の実施形態では、治療期間は、当該対象が、神経ステロイド(例えば、ガナキソロン)の投与から治療利益を引き出し続ける限りである。一部の実施形態では、治療期間は、14日間、28日間、30日間、6週間、8週間、10週間、12週間、6ヶ月間、1年間、2年間、2.5年間、3年間、3.5年間、4年間、4.5年間、5年間、5.5年間、6年間、6.5年間、7年間、7.5年間、8年間、8.5年間、9年間、9.5年間、または10年間である。
【0169】
ある特定の実施形態では、治療期間の終了時に、または治療を中止したら、用量を、対象の年齢、体重、用量、及び治療期間に基づいて、1~4週間にわたって徐々に減らす。
【0170】
VI.製剤
プレグネノロン神経ステロイド(例えば、ガナキソロン)、及び医薬として許容可能な1つ以上の賦形剤(複数可)を含む、いかなる所望の製剤も、本明細書で開示した方法に従って投与することができる。プレグネノロン神経ステロイドは、TSCまたはTSC関連てんかんの1つ以上の症状(複数可)を治療するために、治療有効量で含まれる。ある特定の実施形態では、製剤は、スルホアルキルエーテルシクロデキストリン、及びその修飾形態を含むシクロデキストリンを含まない。
【0171】
好ましい実施形態では、製剤でのプレグネノロン神経ステロイドの量は、TSC関連てんかんの症状を、例えば、1週間及び/または2週間及び/または3週間及び/または4週間及び/または6週間及び/または7週間及び/または8週間及び/または9週間及び/または10週間及び/または11週間及び/または12週間、またはそれ以上の期間にわたって効果的に治療する製剤の量である。
【0172】
好ましい実施形態では、プレグネノロン神経ステロイド(例えば、ガナキソロン)は、経口投与のための医薬として許容可能な組成物に組み込まれる。ある特定の好ましい実施形態でのそのような製剤は、液体(例えば、水性の液体(懸濁液、溶液等を含む))であり得る。他の好ましい実施形態では、経口製剤は、経口固形剤形(例えば、経口のカプセルまたは錠剤)であり得る。最も好ましい実施形態では、経口製剤は、プレグネノロン神経ステロイドを含む経口懸濁液、または、プレグネノロン神経ステロイドを含む経口カプセルである。好ましくは、経口製剤の単位用量は、(例えば、ヒト)患者(例えば、乳児、子ども、青年期の男女、または成人)に経口投与することができる治療有効量のプレグネノロン神経ステロイドを含む。ある特定の実施形態では、経口懸濁液は、経口シリンジの使用を介して患者に投与される。例えば、経口懸濁液は、体重が30kg未満(例えば、約28kg)の子どもに利用することが企図される。一方で、経口懸濁液は、固体経口剤形を飲み込むことが困難であろう患者に投与し得る。30kgを超える子どもは、例えば、ガナキソロンカプセルなどの固形剤形を服用し得る。ガナキソロン経口懸濁液は、例えば1日3回、経口投薬シリンジを介して投与してよい。ガナキソロンカプセルは、例えば1日2回、投与してよい。患者は、食事(牛乳)により、ガナキソロンのより良好な吸収を経験する。
【0173】
米国特許第8,022,054号に記載したように、液体製剤は安定したプレグネノロン神経ステロイド(例えば、ガナキソロン)粒子の水性分散液であり得、粒子は、ガナキソロン、親水性ポリマー、湿潤剤、及び初期粒子成長とエンドポイントに達した後に粒子成長を安定化させる有効量の錯化剤を含み、錯化剤は、分子量が550未満であり、かつフェノール部分、芳香族エステル部分、及び芳香族酸部分からなる群から選択される部分を含有する有機小分子の群から選択され、安定化粒子は、粒子の体積加重中央径(D50)が約50nm~約500nmであり、錯化剤は、粒子の重量基準で約0.05%~約5%(w/w)の量で存在し、粒子は、微生物の増殖を阻害するのに十分な量である少なくとも2種の保存料をさらに含有する水溶液に分散されている。親水性ポリマーは、固体粒子の重量基準で約3%~約50%(w/w)の量であり得る。湿潤剤は、固体粒子の重量基準で約0.01%~約10%(w/w)の量であり得る。プレグネノロン神経ステロイド(例えば、ガナキソロン)は、安定化粒子の重量基準で約10%~約80%(ある特定の実施形態では、約50%~約80%を形成する)の量であり得る。安定化粒子は、人工胃液(SGF)または人工腸液(SIF)に濃度0.5~1mgガナキソロン/mLで粒子を分散させ、36℃~38℃の熱浴に1時間静置した場合に、同じ条件下で粒子を蒸留水に分散させたときの安定化粒子の体積加重平均径(D50)と比較して、約150%を超えるD50の増加を呈することはない。この場合、SGFまたはSIFに分散させた安定化粒子の体積加重中央径(D50)は約750nm未満である。安定化粒子は、15mLのSGFまたはSIFに、濃度0.5~1mgガナキソロン/mLで製剤を分散させた場合に、同じ条件下で粒子を蒸留水に分散させたときの安定化粒子の体積加重中央径(D50)と比較して、約150%を超えるD50の増加を呈することはない。この場合、SGFまたはSIFに分散させた安定化粒子の体積加重中央径(D50)は約750nm未満である。当該錯化剤は、パラベン、安息香酸、フェノール、安息香酸ナトリウム、アントラニル酸メチルなどからなる群から選択される。親水性ポリマーは、セルロース系ポリマー、ビニルポリマー、及びそれらの混合物であり得る。セルロース系ポリマーは、セルロースエーテル、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロースとし得る。ビニルポリマーは、ポリビニルアルコール、例えば、ビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー(S630)であり得る。湿潤剤はラウリル硫酸ナトリウム、ドクサートの医薬として許容可能な塩、及びそれらの混合物とし得る。水性分散液は、甘味剤、例えば、スクラロースをさらに含み得る。保存料は、ソルビン酸カリウム、メチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸、ブチルパラベン、エチルアルコール、ベンジルアルコール、フェノール、塩化ベンザルコニウム、及び上記したいずれかの混合物からなる群から選択される。
【0174】
一部の実施形態では、本明細書に記載したプレグネノロン神経ステロイド(例えば、ガナキソロン)製剤と、対象への経口投与のための少なくとも1種の分散剤または懸濁剤とを含む液体ガナキソロン製剤を提供する。このガナキソロン製剤は、懸濁用の粉末及び/または顆粒であり得、水と混合すると実質的に均一な懸濁液が得られる。本明細書に記載したように、有効粒子径が小さいガナキソロン粒子は迅速に吸収され、有効粒子径が大きいガナキソロン粒子は緩慢に吸収されるように、複数の有効粒子径からなるアモルファス及び非アモルファスのガナキソロン粒子を水性分散液に含有することができる。ある特定の実施形態では、水性分散液または懸濁液は、即時放出製剤である。別の実施形態では、アモルファスのガナキソロン粒子を含有する水性分散液は、投与後約3時間以内にガナキソロン粒子の約50%が吸収され、投与後約10時間以内にガナキソロン粒子の約90%が吸収されるように製剤化される。他の実施形態では、水性分散液に錯化剤を添加することで、ガナキソロンを含有する粒子間の距離を広げ、最初の3時間で粒子の50~80%が吸収され、約10時間までに約90%が吸収されるように薬物吸収段階を延長する。
【0175】
懸濁液が概ね均一である場合、すなわち、懸濁液での任意の箇所でほぼ同濃度のプレグネノロン神経ステロイド(例えば、ガナキソロン)によって懸濁液が構成されている場合、懸濁液は「実質的に均一」である。好ましい実施形態は、振盪後のガナキソロン水性経口製剤において様々な箇所で測定したときに本質的に同濃度(15%以内)を示すものである。特に好ましいのは、振盪後2時間で測定したときに均一性(最大15%の変動)を維持する水性懸濁液及び分散液である。組成物全体の均一性の決定に関しては、一貫したサンプリング方法によって均一性を決定するべきである。一実施形態では、1分未満継続する物理的撹拌によって、水性懸濁液を再懸濁して均一な懸濁液にすることができる。別の実施形態では、45秒未満継続する物理的撹拌によって、水性懸濁液を再懸濁して均一な懸濁液にすることができる。さらに別の実施形態では、30秒未満継続する物理的撹拌によって、水性懸濁液を再懸濁して均一な懸濁液にすることができる。なおも別の実施形態では、均一な水性分散液を維持するために撹拌を必要としない。
【0176】
一部の実施形態では、本明細書に記載した水性分散液のためのプレグネノロン神経ステロイド(例えば、ガナキソロン)粉末は、有効粒子径が重量基準で500nmを超えるガナキソロン粒子と共に製剤化した、有効粒子径が重量基準で500nm未満の安定なガナキソロン粒子を含む。そのような実施形態では、製剤は、約10重量%~約100重量%のガナキソロン粒子が約75nm~約500nmであり、約0重量%~約重量90%のガナキソロン粒子が約150nm~約400nmであり、約0重量%~約30重量%のガナキソロン粒子が約600nmより大きい粒子径分布を有する。本明細書に記載したガナキソロン粒子は、アモルファス、半アモルファス、結晶性、半結晶性、またはそれらの混合物とし得る。
【0177】
ある実施形態では、本明細書に記載した水性懸濁液または分散液は、懸濁液の約20mg/ml~約150mg/mlの濃度でガナキソロン粒子またはガナキソロン複合体を含む。別の実施形態では、本明細書に記載した水性経口分散液は、溶液の約25mg/ml~約75mg/mlの濃度でガナキソロン粒子またはガナキソロン複合体粒子を含む。さらに別の実施形態では、本明細書に記載した水性経口分散液は、懸濁液の約50mg/mlの濃度でガナキソロン粒子またはガナキソロン複合体を含む。本明細書に記載した水性分散液は、乳児(2歳未満)、10歳未満の小児、及び固体経口剤形を嚥下または摂取することができない任意の患者群へのガナキソロンの投与に特に有益である。
【0178】
経口投与用のプレグネノロン神経ステロイド(例えば、ガナキソロン)製剤形態は、医薬として許容可能な水性経口分散液、エマルジョン、溶液、及びシロップを含むがこれらに限定されない群から選択される水性懸濁液であり得る。例えば、Singh et al.,Encyclopedia of Pharmaceutical Technology,2nd Ed.,pp.754-757(2002)を参照されたい。ガナキソロン粒子に加えて、液体剤形は、(a)崩壊剤、(b)分散剤、(c)湿潤剤、(d)少なくとも1種の保存料、(e)粘度増強剤、(f)少なくとも1種の甘味剤、(g)少なくとも1種の着香剤、(h)錯化剤、及び(i)イオン性分散調節剤のような添加剤を含み得る。一部の実施形態では、水性分散液は、結晶阻害剤をさらに含み得る。
【0179】
水性懸濁液及び分散液に使用するための崩壊剤の例として、デンプン、例えば、トウモロコシデンプンもしくはジャガイモデンプンなどの天然デンプン、National 1551もしくはAmijele(登録商標)などのアルファ化デンプン、またはPromogel(登録商標)もしくはExplotab(登録商標)などのデンプングリコール酸ナトリウム;セルロース、例えば、木製品、微結晶性セルロース(例えば、Avicel(登録商標)、Avicel(登録商標)PH101、Avicel(登録商標)PH102、Avicel(登録商標)PH105、Elcema(登録商標)P100、Emcocel(登録商標)、Vivacel(登録商標)、Ming Tia(登録商標)、及びSolka-Floc(登録商標))、メチルセルロース、クロスカルメロース、または架橋セルロース(架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム(Ac-Di-Sol(登録商標)、架橋カルボキシメチルセルロース、または架橋クロスカルメロースなど);デンプングリコール酸ナトリウムなどの架橋デンプン;クロスポビドンなどの架橋ポリマー;架橋ポリビニルピロリドン;アルギン酸などのアルギン酸塩、またはアルギン酸ナトリウムなどのアルギン酸の塩;Veegum(登録商標)HV(ケイ酸アルミニウムマグネシウム)などの粘土;寒天、グアー、イナゴマメ、カラヤ、ペクチン、またはトラガカントなどのガム;デンプングリコール酸ナトリウム;ベントナイト;天然スポンジ;界面活性成分;陽イオン交換樹脂などの樹脂;柑橘類果肉;ラウリル硫酸ナトリウム;混合デンプン中のラウリル硫酸ナトリウムなどがあるが、これらに限定されない。
【0180】
一部の実施形態では、本明細書に記載した水性懸濁液及び分散液に適した分散剤は、当該技術分野において公知であり、例えば、親水性ポリマー、電解質、Tween(登録商標)60または80、PEG、ポリビニルピロリドン(PVP;商品名Plasdone(登録商標))、炭水化物系分散剤、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、及びヒドロキシプロピルセルロースエーテル(例えば、HPC、HPC-SL、及びHPC-L)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びヒドロキシプロピルメチルセルロースエーテル(例えば、HPMC K100、HPMC K4M、HPMC K15M、及びHPMC K100M)、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートステアレート、非結晶性セルロース、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、トリエタノールアミン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー(Plasdone(登録商標)、例えばS-630)、エチレンオキシド及びホルムアルデヒド含有4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-フェノールポリマー(別名、チロキサポール)、ポロキサマー(例えば、Pluronics F68(登録商標)、F88(登録商標)、及びF108(登録商標)、これらはエチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロックコポリマー);ならびに、ポロキサミン(例えば、Tetronic 9080、別名、ポロキサミン9080、これは、エチレンジアミンへのプロピレンオキシド、及びエチレンオキシドを連続添加して誘導される四官能性ブロックコポリマー(BASF Corporation,Parsippany,N.J.))がある。他の実施形態では、分散剤は、以下の作用物質:親水性ポリマー;電解質;Tween(登録商標)60または80;PEG;ポリビニルピロリドン(PVP);ヒドロキシプロピルセルロース、及びヒドロキシプロピルセルロースエーテル(例えば、HPC、HPC-SL、及びHPC-L);ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びヒドロキシプロピルメチルセルロースエーテル(例えば、HPMC K100、HPMC K4M、HPMC K15M、HPMC K100M、及びPharmacoat(登録商標)USP2910(Shin-Etsu);カルボキシメチルセルロースナトリウム;メチルセルロース;ヒドロキシエチルセルロース;ヒドロキシプロピルメチル-セルロースフタレート;ヒドロキシプロピルメチル-セルロースアセテートステアレート;非結晶性セルロース;ケイ酸アルミニウムマグネシウム;トリエタノールアミン;ポリビニルアルコール(PVA);エチレンオキシド及びホルムアルデヒド含有4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-フェノールポリマー;ポロキサマー(例えば、Pluronics F68(登録商標)、F88(登録商標)、及びF108(登録商標)、これらは、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロックコポリマーである);または、ポロキサミン(例えば、Tetronic 908(登録商標)、別名ポロキサミン908%)の内の1つを含まない群から選択される。
【0181】
本明細書に記載した水性懸濁液及び分散液に適した湿潤剤(界面活性成分を含む)は当該技術分野において公知であり、アセチルアルコール、モノステアリン酸グリセロール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(例えば、商品名Tweens(登録商標)、例えば、Tween 20(登録商標)、及びTween 80(登録商標)(ICI Specialty Chemicals)など)、及びポリエチレングリコール(例えば、Carbowaxs 3350(登録商標)及び1450(登録商標)、ならびにCarpool 934(登録商標)(Union Carbide))、オレイン酸、モノステアリン酸グリセリル、モノオレイン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、オレイン酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、オレイン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ドクサートナトリウム、トリアセチン、ビタミンE TPGS、タウロコール酸ナトリウム、シメチコン、ホスホチジルコリンなどがあるが、これらに限定されない。
【0182】
本明細書に記載した水性懸濁液または分散液に適した保存料として、例えば、ソルビン酸カリウム、パラベン(例えば、メチルパラベン及びプロピルパラベン)、及びそれらの塩、安息香酸及びその塩、ブチルパラベンなどのパラヒドロキシ安息香酸などのその他のエステル、エチルアルコール、またはベンジルアルコールなどのアルコール、またはフェノールなどのフェノール化合物、または塩化ベンザルコニウムなどの第四級化合物がある。本明細書で使用する保存料は、微生物の増殖を阻害する上で十分な濃度で製剤に取り入れられる。ある実施形態では、水性液体分散液は、水性分散液の重量に対して約0.01重量%~約0.3重量%のメチルパラベン、及び水性分散液の総重量に対して0.005重量%~0.03重量%のプロピルパラベンという範囲の濃度でメチルパラベン及びプロピルパラベンを含み得る。さらに別の実施形態では、水性液体分散液は、水性分散液の0.05~約0.1重量%のメチルパラベン、及び0.01~0.02重量%のプロピルパラベンを含み得る。
【0183】
本明細書に記載した水性懸濁液または分散液に適した粘度増強剤として、メチルセルロース、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、Plasdone.RTM.S-630、カルボマー、ポリビニルアルコール、アルギン酸塩、アカシア、キトサン、及びそれらの組み合わせがあるが、これらに限定されない。粘度増強剤の濃度は、選択した薬剤及び望ましい粘度に応じて異なる。
【0184】
本明細書に記載した水性懸濁液または分散液に適した天然及び人工の甘味剤の例として、例えば、アカシアシロップ、アセスルファムK、アリテーム、アニス、リンゴ、アスパルテーム、バナナ、ババロア、ベリー、ブラックカラント、バタースコッチ、クエン酸カルシウム、樟脳、キャラメル、サクランボ、サクランボクリーム、チョコレート、シナモン、バブルガム、柑橘類、柑橘類のパンチ、柑橘類のクリーム、綿菓子、ココア、コーラ、クールサクランボ、クールシトラス、チクロ、シラメート、デキストロース、ユーカリ、オイゲノール、フルクトース、フルーツパンチ、ジンジャー、グリチルレチン酸塩、カンゾウ(リコリス)シロップ、ブドウ、グレープフルーツ、蜂蜜、イソマルト、レモン、ライム、レモンクリーム、グリリス酸モノアンモニウム(MagnaSweet(登録商標))、マルトール、マンニトール、メープル、マシュマロ、メンソール、ミントクリーム、ミックスベリー、ネオヘスペリジンDC、ネオテーム、オレンジ、ナシ、ピーチ、ペパーミント、ペパーミントクリーム、Prosweet(登録商標).Powder、ラズベリー、ルートビア、ラム、サッカリン、サフロール、ソルビトール、スピアミント、スピアミントクリーム、ストロベリー、ストロベリークリーム、ステビア、スクラロース、スクロース、サッカリンナトリウム、サッカリン、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、マンニトール、タリン、スクラロース、ソルビトール、スイスクリーム、タガトース、タンジェリン、ソーマチン、トゥッティフルッティ、バニラ、クルミ、スイカ、ワイルドサクランボ、ウィンターグリーン、キシリトール、またはこれら着香成分の任意の組み合わせ、例えば、アニスとメントール、サクランボとアニス、シナモンとオレンジ、サクランボとシナモン、チョコレートとミント、ハニーとレモン、レモンとライム、レモンとミント、メンソールとユーカリ、オレンジとクリーム、バニラとミント、及びそれらの混合物がある。ある実施形態では、水性液体分散液は、水性分散液の約0.0001重量%~約10.0重量%の範囲の濃度で甘味剤または着香剤を含み得る。別の実施形態では、水性液体分散液は、水性分散液の約0.0005重量%~約5.0重量%の範囲の濃度で甘味剤または着香剤を含み得る。さらに別の実施形態では、水性液体分散液は、水性分散液の約0.0001重量%~0.1重量%、約0.001重量%~約0.01重量%、または0.0005%~0.004%の範囲の濃度で甘味剤または着香剤を含み得る。
【0185】
上記に列挙した添加剤に加えて、液体プレグネノロン神経ステロイド(例えば、ガナキソロン)は、水またはその他の溶媒、可溶化剤、及び乳化剤などの当該技術分野において一般的に使用する不活性希釈剤も含み得る。
【0186】
一部の実施形態では、本明細書に記載する医療用プレグネノロン神経ステロイド(例えば、ガナキソロン)製剤は、自己乳化型薬物送達システム(SEDDS)であり得る。エマルジョンは、ある非混和相が別の相に分散したもので、通常は液滴の形態である。一般的に、エマルジョンは強力な機械的分散によって作製される。SEDDSは、エマルジョンまたはマイクロエマルジョンとは対照的に、過剰の水に添加すると、何らの外部の機械的分散または撹拌をせずとも自発的にエマルジョンを形成する。SEDDSの優位点は、溶液全体に液滴を分散させるために穏やかな混合しか必要としないことである。加えて、投与の直前に水または水相を添加できるため、不安定性または疎水性の活性成分の安定性が確保される。したがって、SEDDSは、疎水性の活性成分の経口送達及び非経口送達のための有効な送達システムを提供する。SEDDSは、疎水性の活性成分のバイオアベイラビリティに改善をもたらすことができる。自己乳化型剤形の製造方法は当該技術分野において公知であり、例えば、米国特許第5,858,401号、同第6,667,048号、及び同第6,960,563号があるが、これらに限定されず、参照により、それら文献の各々は本明細書で援用される。
【0187】
例示的な乳化剤は、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、ラウリル硫酸ナトリウム、ドクサートナトリウム、コレステロール、コレステロールエステル、タウロコール酸、ホスホチジルコリン、油(綿実油、落花生油、トウモロコシ胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、及びゴマ油など)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、ソルビタンの脂肪酸エステル、またはこれらの物質の混合物などである。
【0188】
特定の好ましい実施形態では、液体医薬製剤は、ガナキソロン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ラウリル硫酸ナトリウム、シメチコン、メチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸ナトリウム、クエン酸、及びクエン酸ナトリウムを含み、pH3.8~4.2である。懸濁液は、50mg/mlの濃度でガナキソロンを含み得る。製剤は、医薬として許容可能な甘味剤(例えば、スクラロース)、及び/または医薬として許容可能な着香剤(例えば、サクランボ)をさらに含み得る。製剤は、例えば、120mL、180mL、240mL、または480mLのボトルに封入することができる。
【0189】
ある特定の好ましい実施形態では、経口固体製剤は、参照により、その全内容を援用する、本出願人の先行特許である「Solid Ganaxolone Formulations and Methods for the Making and Use Thereof」の名称の米国特許第7,858,609号に記載されたものを使用して調製する。プレグネノロン神経ステロイドの経口固形剤形(例えば、経口カプセルまたは錠剤)は、任意の適切な方法に従って調製し得る。
【0190】
例えば、米国特許第7,858,609号に記載されるように、経口固体製剤は安定化粒子を含み得、当該粒子は、プレグネノロン神経ステロイド(例えば、ガナキソロン)、親水性ポリマー、湿潤剤、及び初期粒子成長とエンドポイントに達した後に粒子成長を安定化する有効量の錯化剤を含有しており、当該錯化剤は、分子量が550未満であり、かつフェノール部分、芳香族エステル部分、及び芳香族酸部分からなる群から選択される部分を含有する有機小分子であり、安定化粒子は、粒子の体積加重中央径(D50)が約50nm~約500nmであり、錯化剤は、固体の粒子重量基準で、約0.05%~約5%(w/w)の量で存在する。親水性ポリマーは、固体粒子の重量基準で約3%~約50%(w/w)の量とし得る。湿潤剤は、固体粒子の重量基準で、約0.01%~約10%(w/w)の量とし得る。プレグネノロン神経ステロイド(例えば、ガナキソロン)は、安定化粒子の重量基準で約10%~約80%(ある特定の実施形態では、約50%~約80%を形成する)の量とし得る。安定化粒子は、人工胃液(SGF)または人工腸液(SIF)に、濃度0.5~1mgガナキソロン/mLで粒子を分散させ、36℃~38℃の熱浴に1時間静置した場合に、同じ条件下で粒子を蒸留水に分散させたときの安定化粒子の体積加重中央径(D50)と比較して、約150%を超えるD50にまで増えることはない。この場合、SGFまたはSIFに分散させた安定化粒子の体積加重平中央径(D50)は、約750nm未満である。安定化粒子は、15mLのSGFまたはSIFに、濃度0.5~1mgガナキソロン/mLで製剤を分散させた場合に、同じ条件下で粒子を蒸留水に分散させたときの安定化粒子の体積加重中央径(D50)と比較して、約150%を超えるまでD50を増やすことはない。この場合、SGFまたはSIFに分散させた安定化粒子の体積加重中央径(D50)は、約750nm未満である。固体安定化粒子は、任意の賦形剤と組み合わせて、粉末形態での投与用に調製すること、または錠剤またはカプセル剤からなる群から選択される剤形に組み込むこともできる。錯化剤は、パラベン、安息香酸、フェノール、安息香酸ナトリウム、アントラニル酸メチルなどであり得る。親水性ポリマーは、セルロース系ポリマー、ビニルポリマー、及びそれらの混合物であり得る。セルロース系ポリマーは、セルロースエーテル、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロースであり得る。ビニルポリマーは、ポリビニルアルコール、例えば、ビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー(S630)であり得る。湿潤剤は、ラウリル硫酸ナトリウム、医薬として許容可能なドキュセートの塩、及びそれらの混合物であり得る。粒子を固体剤形に組み込む場合、その固体剤形は、少なくとも1種の医薬として許容可能な賦形剤、例えば、イオン性分散調節剤、水溶性スペーサー、崩壊剤、結合剤、界面活性成分、可塑剤、滑沢剤、希釈剤、及び、それらの任意の組み合わせ、または混合物をさらに含み得る。水溶性スペーサーは、糖類またはアンモニウム塩、例えば、フルクトース、スクロース、グルコース、ラクトース、マンニトールであり得る。界面活性成分は、例えば、ポリソルベートであり得る。可塑剤は、例えば、ポリエチレングリコールであり得る。崩壊剤は、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム、クロスポビドン、それらの混合物などであり得る。
【0191】
カプセルは、例えば、上記した本明細書に記載したバルク混合プレグネノロン神経ステロイド(例えば、ガナキソロン)製剤を、カプセル内部に入れて調製することができる。一部の実施形態では、ガナキソロン製剤(非水性懸濁液及び溶液)を軟質ゼラチンカプセルに入れる。他の実施形態では、ガナキソロン製剤を、標準的なゼラチンカプセルまたはHPMC含有カプセルなどの非ゼラチンカプセルに入れる。他の実施形態では、ガナキソロン製剤をスプリンクルカプセルに入れ、その場合、カプセル全体を嚥下することも、カプセルを開けて、食前に内容物を食物に振りかけることもできる。治療用量を複数の(例えば、2つ、3つ、または4つの)カプセルに分割することができる。一部の実施形態では、ガナキソロン製剤の全用量がカプセル形態で送達される。
【0192】
好ましくは、それぞれのカプセルは、約200~約600mgのガナキソロン、約300~約600mgのガナキソロン、約400~約600mgのガナキソロン、約500~約600mgのガナキソロン、約200mgのガナキソロン、約250mgのガナキソロン、約300mgのガナキソロン、約500mgのガナキソロン、または約600mgのガナキソロンを含有する。
【0193】
ある特定の実施形態では、各カプセルは、200mgまたは225mgいずれかのガナキソロン、ならびにヒドロキシプロピルメチルセルロース、スクロース、ポリエチレングリコール3350、ポリエチレングリコール400、ラウリル硫酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、無水クエン酸、ナトリウムメチルパラベン、微結晶性セルロース、30%シメチコンエマルジョン、ゼラチンカプセル、ポリソルベート80、及び塩化ナトリウムを含有する。実施形態のいくつかでは、カプセルのサイズは00である。
【0194】
あるいは、本発明の経口剤形は、米国特許第7,858,609号に記載されるような放出制御剤形の形態とし得る。
【0195】
本発明での使用に適したプレグネノロン神経ステロイド(例えば、ガナキソロン)製剤は、非経口的にも投与し得る。そのような実施形態では、製剤は、筋肉内注射、皮下注射、または静脈内注射に適しており、生理学的に許容可能な無菌の水性または非水性の溶液、分散液、懸濁液、またはエマルジョン、及び無菌の注射溶液または分散液への再構成用の無菌粉末を含み得る。適切な水性及び非水性の担体、希釈剤、溶剤、またはビヒクルの例として、水、エタノール、ポリオール(プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロール、及びクレモホールなど)、それらの適切な混合物、植物油(オリーブオイルなど)、及び注射可能な有機エステル、例えば、オレイン酸エチルがある。加えて、ガナキソロンは、水溶性ベータシクロデキストリン(例えば、ベータ-スルホブチル-シクロデキストリン、及び2-ヒドロキシプロピルベータシクロデキストリン)を使用して、1mg/ml未満の濃度で溶解し得る。特に適切なシクロデキストリンは、置換β-シクロデキストリンであり、Captisol(登録商標)である。適切な流動性が、例えば、レシチンなどのコーティングの使用、分散液の場合には、必要とする粒径の維持、及び界面活性成分の使用によって維持され得る。皮下注射に適したガナキソロン製剤は、保存料、湿潤剤、乳化剤、及び分配剤等の添加剤も含み得る。微生物の増殖の防止は、パラベン、安息香酸、ベンジルアルコール、クロロブタノール、フェノール、及びソルビン酸等の種々の抗菌剤及び抗真菌剤によって確実にされ得る。糖及び塩化ナトリウムなどの等張剤を含めることが望ましい場合がある。モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンなどの吸収を遅らせる薬剤を使用することで、注射可能な医薬形態の薬物吸収の延長をもたらすことができる。皮下注射または筋肉内注射を介した持続放出用にデザインしたガナキソロン懸濁液製剤は、初回通過代謝を回避することができ、そして、低用量のガナキソロンが、約50ng/mlの血漿レベルを維持する上で必要となる。そのような製剤では、ガナキソロン粒子の粒径、及びガナキソロン粒子の粒径の広がりを使用して、製剤の放出を、脂肪または筋肉内での溶解速度を制御することができる。
【0196】
特に有用な注射用製剤が、本出願人の米国特許出願公開第2017/0258812号明細書(2016年10月14日出願の米国特許出願第15/294,135号明細書)に開示されており、その全内容は、参照により、本明細書に援用される。当業者に公知のプレグネノロン神経ステロイドのその他の有用な注射可能な製剤を使用することもできる。
【0197】
VII.併用療法
本開示は、神経ステロイドが唯一の活性成分である実施形態、及び神経ステロイドが、1つ以上のさらなる活性成分と組み合わせて投与される実施形態を含む。さらなる活性成分と組み合わせて使用する場合、神経ステロイド、及びさらなる活性成分は、同じ製剤内で組み合わし得る、また、別個に投与し得る。神経ステロイドは、さらなる活性成分が投与するのと同時に投与し得る(同時投与)、またはさらなる活性成分を投与する前後に投与され得る(逐次投与)。
【0198】
本開示は、さらなる活性成分が抗痙攣薬である実施形態を含む。抗痙攣薬として、GABAA受容体モジュレーター、ナトリウムチャネルブロッカー、GAT-1 GABAトランスポータモジュレーター、GABAトランスアミナーゼモジュレーター、電位依存性カルシウムチャネルブロッカー、及びペルオキシソーム増殖因子活性化アルファモジュレータがある。
【0199】
本開示は、患者に、神経ステロイドと組み合わせて麻酔薬または鎮静剤を投与する実施形態を含む。麻酔薬または鎮静剤は、医学的に昏睡を誘導する上で十分な濃度または全身麻酔を誘導する上で有効な濃度など、患者が意識を失うのに十分な濃度で投与し得る。麻酔薬または鎮静剤は、鎮静に有効であるが、意識の喪失を誘導するほど十分ではない低用量で投与し得る。
【0200】
ベンゾジアゼピン類が、抗痙攣薬及び麻酔薬の双方として使用される。麻酔薬として有用なベンゾジアゼピンとして、ジアゼパム、フルニトラゼパム、ロラゼパム、及びミダゾラムがある。
【0201】
ある特定の実施形態では、神経ステロイドは、ベンゾジアゼピン(例えば、クロバザム、ジアゼパム、クロナゼパム、ミダゾラム、クロラゼピン酸、レベチラセタム、フェルバマート、ラモトリジン、脂肪酸誘導体(例えば、バルプロ酸)、カルボキサミド誘導体(ルフィナミド、カルバマゼピン、オキシカルバゼピン等)、アミノ酸誘導体(例えばレボカルニチン)、バルビツラート(例えば。フェノバルビタール)、または先述した作用物質の2つ以上の組合せと併用して投与される。
【0202】
本開示の神経ステロイドナノ粒子の注射可能製剤は、別の抗痙攣剤と共に投与し得る。抗痙攣薬は、いくつかの薬物クラスを含んでおり、神経ステロイドと組み合わせて使用し得る昏睡誘導薬、麻酔薬、及び鎮静薬とある程度は重複する。本開示の神経ステロイドナノ粒子の注射製剤と組み合わせて使用し得る抗痙攣薬として、アルデヒド、例えば、パラアルデヒド;芳香族アリルアルコール、例えば、スチリペントール;バルビツラート(上記したもの、ならびにメチルフェノバルビタール、及びバルベキサクロンがある);ベンゾジアゼピン(アルプラゾラム、ブレタゼニル、ブロマゼパム、ブロチゾラム、クロリダゼポキシド、シノラゼパム、クロナゼパム、コラゼパート、クロパザム、クロチアゼパム、クロキサゾラム、デロラゼパム、ジアゼパム、エスタゾラム、エチゾラム、ロフラゼプ酸エチル、フルニトラゼパム、フルラゼパム、フルトプラゼパム、ハラゼパム、ケタゾラム、ロプラゾラム、ロラゼパム、ロルメタゼパム、メダゼパム、ミダゾラム、ニメタゼパム、ニトラゼパム、ノルダゼパム、オキサゼパム、フェネナゼパム、ピナゼパム、プラゼパム、プレマゼパム、ピラゾラム、クアゼパム、テマゼパム、タトラゼパム、及びトリアゾラムがある);ブロミド、例えば、臭化カリウム;カルボキサミド、例えば、カルバマゼピン、オキシカルバゼピン、及び酢酸エスリカルバゼピン;脂肪酸、例えば、バルプロ酸、バルプロ酸ナトリウム、及びジバルプロエクスナトリウム;フルクトース誘導体、例えば、トピラマート;GABA類似体、例えば、ガバペンチン及びプレガバリン、ヒダントイン、例えば、エトトイン、フェニトイン、メフェニトイン、及びホスフェニトイン;その他の神経ステロイド、例えば、アロプレグナノロン、オキサソリジンジオン、例えば、パラメタジオン、トリメタジオン、及びエタジオン、プロピオナート、例えば、ベクラミド;ピリミジンジオン、例えば、プリミドン、ピロリジン、例えば、ブリバラセタム、レベチラセタム、及びセレトラセタム、スクシンイミド、例えば、エトスクシミド、ペンスクシミド、及びメスクシミド;スルホンアミド、例えば、アセタゾロアミド、スルチアム、メタゾラミド、及びゾニサミド;トリアジン、例えば、ラモトリジン、尿素、例えば、フェネツリド及びフェナセミド;NMDAアンタゴニスト、例えば、フェルバマート、ならびにバルプロイルアミド、例えば、バルプロミド及びバルノクタミド;ならびにペランパネルがある。
【0203】
VIII.バイオマーカー
予測バイオマーカーが、より均質であり、かつ治療に応答する傾向がさらに高い患者集団を確認するために使用される。
【0204】
プロゲステロンの代謝物であるアロプレグナノロンは、GABAA受容体の正のアロステリックモジュレータ(PAM)である。TSC関連てんかんを患っているヒトは、このアロプレグナノロン欠乏症を示しており、このことは、医薬として許容可能なプレグネノロン(ガナキソロンなど)による治療が、発作の頻度を減らし、また、おそらくは、TSC関連てんかんのさらなる症状を改善し得る、という仮説を支持し得る。
【0205】
したがって、本発明のある特定の実施形態では、アロプレグナノロン硫酸塩(Allo-S)を、アロプレグナノロンの類似体であるガナキソロンに対する応答に関する予測バイオマーカーとして使用する。これらの実施形態では、2,500pg mL-1以下のAllo-S血漿レベルは、対象がガナキソロン療法に応答して利益を得る可能性が高いことを示す。そして、血漿レベルが2,500pg mL-1を超えるAllo-S血漿レベルでは、対象がガナキソロン療法に応答する可能性が低いこと、そして異なる治療剤を使用するべきである、ことを示す。
【実施例
【0206】
5.実施例
本発明に関する以下の実施例での製剤は、本発明に対して、どのような限定も加えるものではなく、本明細書に記載した様々な製剤のサンプルにすぎないものと解釈すべきである。
【0207】
ガナキソロン製剤の開発の過程で、適切な薬物動態(「PK」)パラメーターを示し、かつ開発及び商品化に適している製剤を確立するために、種々の製剤を評価した。使用したガナキソロンの他の製剤として、ラウリル硫酸ナトリウムと、溶液でのヒドロキシプロピル-ベータ-シクロデキストリン(HP-β-CD)と、そして種々の懸濁液として投与するベータシクロデキストリン(β-CD)と混合したガナキソロン、ならびに懸濁液製剤、錠剤製剤、及び制御放出カプセル製剤でのガナキソロン0.5ミクロン粒子、ならびにガナキソロンを可溶化するためにスルホブチルエーテルシクロデキストリン(Captisol(登録商標))を使用するIV溶液があった。開発努力によって、実施例1に記載する0.3ミクロンのガナキソロン即時放出粒子を含む経口懸濁液、及び実施例2に記載する0.3ミクロンのガナキソロン即時放出粒子を含む経口カプセル製剤を得た。
【0208】
実施例1
以下の表1に記載した成分を有する、50mg/mlのガナキソロン懸濁液を調製した。
【表1】
【0209】
表2に、50mg/mlガナキソロン懸濁液に使用した賦形剤の機能を示す。
【表2】
【0210】
50mg/mlガナキソロン懸濁液の経口生体利用性は、関連する生理学的環境におけるナノ粒子薬物溶解の速度と程度に依存する。粒子サイジングの方法及び仕様は、ガナキソロン薬物生成物が、疑似胃腸液での分散後に凝集の不在を示すことを確実にする、ことを意図している。
【0211】
分散ナノミリングプロセスを使用して、ガナキソロンの粒径を小さくして、安定したガナキソロンナノ粒子を得る。ナノミリングプロセスには、ナノミル内での高エネルギー撹拌下でのイットリア安定化ジルコニア(YTZ)ミリング媒体の使用が含められた。分散ナノミリングの前に一貫したスラリー粒径を確実にするために、Marinusは、VakuMix DHO-1を使用した高エネルギーのローター/ステータープレミリングプロセスを開発した。ナノミリングの後に、分散液を、25w/w%ガナキソロンから20w/w%ガナキソロンに希釈して、20ミクロンフィルターで濾過し、そして安定剤(メチルパラベン、安息香酸ナトリウム、及び無水クエン酸)を加えて、室温において、5~10日の硬化期間の制御成長を、約300nmになるまで促した。安定化した300nmナノ粒子は、小児用懸濁液医薬組成物フォーマット、及びカプセル化医薬組成物フォーマットでの粒子成長に対して、良好な安定性を示す。安定化プロセスは、水溶性安定剤であるパラベンを正確に添加及び溶解して制御された。硬化プロセスは、懸濁液希釈(50mg/mlガナキソロン懸濁液の事例では)、または流動床ビーズコーティング(実施例2に記載した225mgガナキソロンカプセルの事例では)に先立って、安定化分散液の保持時間及び温度を調整して制御された。
【0212】
分散ナノミリングスケールアップ試験において調製した3つの分散バッチを、メチルパラベンナトリウム、安息香酸ナトリウム、及び無水クエン酸を添加し、希釈して安定化させて、7日間硬化させた。硬化した後に、粒径を測定した。それを表3に示す。
【表3】
【0213】
ここに示すように、D(50)粒子サイズは、250~450nmの範囲内で安定化された。
【0214】
実施例2:
ガナキソロンカプセル(225mg)を、以下の表4及び5に記載する成分を有するように調製した。
【表4】
【0215】
表5は、225mgのガナキソロンカプセル製剤で使用する賦形剤の機能の概要である。
【表5】
【0216】
これらのカプセルの調製に使用する製造プロセスは、同じ医薬組成物仕様及び同じ定量的組成、ならびに同じナノミリング分散希釈、及び分散安定化プロセスを利用する。したがって、実施例2の生成物は、実施例1の生成物と共通する、安定化した分散中間体を利用する。メチルパラベンナトリウムを、メチルパラベンに置き換えることができる。
【0217】
表6は、ガナキソロン速効性放出(IR)225mgカプセルの36か月間にわたる正式な安定性データの結果をまとめたものである。

【表6】
【0218】
実施例3
TSC関連てんかんにおける過去のてんかん臨床試験の概要
【表13】
【0219】
実施例4
TSC関連てんかんでのガナキソロンの第2相臨床試験を実施する。TSC関連てんかんを有する2歳~65歳まで(2歳及び65歳を含む)の約30名の男性及び/または女性患者をスクリーニングし、登録をする。これらの患者は、TSCの臨床診断が確認されており、TSC1またはTSC2遺伝子のいずれかに変異がある。患者は、発作に対するガナキソロンの効果について毎日日記をつける。
【0220】
治療段階には、2つの段階:パートAとパートBが含まれる。パートAでは、患者は、標準的な抗てんかん治療に加えて、合計で12週間(4週間の滴定、8週間の維持)、ガナキソロンが投与される。患者には、4週間にわたって、63mg/kg/日(最大1800mg/日)で滴定を行い、その後、さらに8週間、その用量を維持する。ガナキソロンを、15mg/kg/日の増加で、63mg/kg/日まで、食物と一緒に経口懸濁液として投与する。28kg以下の患者には、mg/kgベースで投与する。28kgを超える患者には、450mg/日の増加で、1800mg/日まで固定レジメンで投与する。ガナキソロンを、4週間の滴定期間にわたって、次のように投与する。






【表14】
【0221】
次の用量ステップで耐容性を示さない患者は、次の用量に移行する前に、さらなる日数の間、より低用量のステップを維持する。次の用量で、それでもなお耐容性が示されない場合には、次の低用量ステップに戻すことができる。例えば、傾眠などの忍容性の問題が故に、スポンサーがその低用量に合意しない限り、維持期間の間でのエスカレーション期間の後に、一般的に、33mg/kg/日または900mg/日の最小用量が必要となる。
【0222】
代替の投薬パラダイム(例えば、日中の低用量と、夕方の高用量)を含む用量変更を、変更を行う前後の48時間以内にスポンサーの医療モニタリングと話し合う。パートAの維持期間が完了する前にガナキソロン治療を中止した患者は、プロトコルに従って引き続き経過観察を受け、少なくとも、パートAが完了するまで毎日の発作について日記をつけ続けることを奨励する。また、これらの患者は、安全性のフォローアップ評価のために、記録を終えた2週間後に診察を受ける。
【0223】
ベースラインと比較して、パートAの12週間の治療期間(例えば、4週間のベースライン期間)での発作頻度の減少率が35%以上であり、また、継続治療に対するその他の禁忌が認められず、ガナキソロンによる治療を試験OLE相(パートB)で継続する患者は、パートB(「OLE適格」)へと継続し得る。パートBは、非盲検延長試験であり、約24週間続く。したがって、パートBは、プロトコルで定義するようにガナキソロンに反応する患者が参加できる。パートAとパートBとの主な相違点は、治療期間、評価の頻度が少ないこと、そして、患者の臨床経過の評価に基づいた薬剤投与量(ガナキソロンと、その他の医薬の開始と停止を含むその他のAED治療との両方)を変更できることにある。
【0224】
パートBでは、ガナキソロン患者は、パートAの完了時の用量でガナキソロン治療を継続する。パートBの間、体重が28kgを超える患者では、ガナキソロンの用量を、最大で600mg TIDに調整され得、28kg以下の患者は、21/mg/kg TIDの最大用量に調整され得る。他の抗てんかん薬の投与量は、治験責任医師の裁量に基づいて、(漸減及び治療の開始を含めて)パートBの間に調整し得る。
【0225】
パートAを完了し、パートBを継続しない、またはパートBを完了する、またはGNX治療を中止する患者は、医学的に禁忌でない限り、2週間の薬物脱エスカレーション(漸減)期間を経て、安全性を経過観察するために2週間後に実施機関に戻り、診察を受ける。
【0226】
パートAを完了し、パートBに適格であるとみなされた患者は、パートBにおいて、パートAの完了時と同じ用量で、ガナキソロンを継続して服用し、さらに24週間の治療を受ける。
【0227】
患者は、日中は低用量を投与され、夕方には高用量を投与されてもよい。
【0228】
ガナキソロンを中止する人は、薬物誘発性発疹などの医学的禁忌が認められない限り、2週間かけて漸減する。
【0229】
治療維持期間が完了する前にガナキソロンを中止した患者は、プロトコルに従って追跡を行い、少なくとも、パートAの治療期間が完了するまで、患者は、毎日の発作について日記をつけ続けることを推奨される。これらの患者は、安全性のフォローアップ評価のために、漸減の2週間後に実施機関に戻り、診察を受ける。
【0230】
患者は、2週間の経過観察安全性確認のために再来院し得る(例えば、パートAまたはBの早期中止、パートBに参加しない、または、パートBを完了することによる)。
【0231】
主要な有効性エンドポイントは、12週間にわたるTSC関連てんかんでのガナキソロンの可能性、及び/またはパートAの12週間の治療(滴定及び維持)期間が終了するまでの一次発作頻度の変化率(%)を評価することにある。基本的な発作のタイプとして、意識または自覚の障害を伴わない焦点性運動発作、意識または自覚の障害を伴う焦点性発作、両側性の全身性痙攣発作に至る焦点性発作、及び計数可能な運動要素を伴う全般発作がある。
【0232】
二次目的は、パートAの12週間にわたる治療(滴定及び維持)期間のエンドポイントまでの補助療法としてのガナキソロンの安全性と忍容性を評価すること、試験全体を通して最大で63mg/kg/日(または、最大で1800mg/日)のガナキソロン用量を投与する患者の薬物動態(PK)パラメーターを評価すること、試験全体を通して最大で63mg/kg/日(または、最大で1800mg/日)のガナキソロン用量を投与する患者の薬物動態(PK)パラメーターを評価すること、パートB全体において補助療法として投与した場合のGNXの長期的な安全性と忍容性を評価することである。
【0233】
探索的目的は、生活の質の変化を評価すること、パートAの12週間にわたる治療(滴定及び維持)期間のエンドポイントまでの補助療法としてガナキソロンの投与を受ける患者の行動/神経精神医学的変化を評価すること、ガナキソロンに対する有効性反応とバイオマーカーレベル(神経ステロイドなど)との関係を評価すること、EEG活動に対するガナキソロンの影響の可能性を評価する、TSCでの他のタイプの発作(非原発性)の変化を評価すること、一次発作の無い日に対するガナキソロンの効果を評価すること、乳児/点頭てんかんの無い日に対するガナキソロンの効果を評価すること、乳児/点頭てんかんの無い日にガナキソロンの効果を評価することである。
【0234】
A.薬物動態評価:
PK集団は、少なくとも1用量のGNXを受け、少なくとも1つの試料が回収され、有効な生物分析結果が得られたすべての患者を含む。これらの試料は、パートA及びパートBの間の最後の投与から1~5時間後、または4~8時間後に回収する。薬物動態分析は、十分な濃度-時間データが、Cmax、AUC、またはtmaxなどのノンコンパートメント分析には利用できないので、薬物動態データは、濃度のリストに限定される。この試験から得た薬物動態データは、この試験とは別に実施され、かつ、別々に報告する母集団PK分析に使用し得る。
【0235】
B.神経ステロイド血清、及び随伴性AEDレベル:
血液試料を、スクリーニング訪問時、パートAの第12週、及びパートBの最後の訪問時に回収して、神経ステロイド(アロプレグナノロン、及び関連する内因性CNS活性ステロイド、及び硫酸代謝物、例えば、アロプレナノロン硫酸塩など)のレベルを測定する。
【0236】
実施例5.バイオマーカー
PCDH19変異が確認されており、かつ発作負担が最小の個人(n=11)を、2015年5月~2015年11月の間に、米国及びイタリアの6つのセンターに登録した。発作頻度変化(%)を、主要エンドポイントとして評価して、レスポンダーは、発作率が25%以上低下したものと定義した。先に公開されたGC/MS法(doi:10.1016/S0028-3908(99)00149-5)を使用して、血漿神経ステロイドレベルを定量した。2つの事例では、ベースライン神経ステロイドレベルを測定しなかった。これらの事例では、神経ステロイドレベルが経時的に大きく変化しないことが認められたので、6ヶ月の値を使用した。
【0237】
全来訪者(n=11)のベースラインからの28日発作頻度(全発作タイプ)の中央値変化は、26%の減少であった。この群では、平均血漿アロプレグナノロン硫酸塩(Allo-S)濃度は、4,741pg mL-1(中央値=433pg mL-1)であった。レスポンダー分析、及びAllo-Sとの相関は、2つの別個の集団を示した。レスポンダー(n=6)(発作率が25%以上低下)、及び非レスポンダー(n=5)の血漿Allo-S濃度は、それぞれ、501±430pg mL-1、及び9,829±6,638pg mL-1(平均±SD、p=0.05、Mann-Whitney)であった。
【0238】
ベースラインと6ヶ月目で、発作頻度を比較すると、バイオマーカー陽性群は有意に改善し(p=0.02、Wilcoxon)、バイオマーカー陰性(高いAllo-S)群では改善が認められず、また有意な悪化も認められなかった(p=0.25、Wilcoxon)。バイオマーカー陽性(n=7、Allo-S<2,500pg mL-1)と、バイオマーカー陰性(n=4、Allo-S>2,500pg mL-1)対象との遡及的分析では、それぞれ、-53.9%及び247%の発作率の中央値変化%を示した(p=0.006、Mann-Whitney)。さらに、ベースラインと6ヶ月目で、発作頻度を比較すると、バイオマーカー陽性群は、有意に改善しており(p=0.02、Wilcoxon符号順位)、バイオマーカー陰性群は、有意には悪化しなかった(p=0.25、Wilcoxon符号順位)。
【0239】
実施例6.非盲検第2相試験のパートAに登録したTSC対象の症例報告1
結節性硬化症を有する対象(対象001)が、実施例4に記載した試験プロトコルに従って、結節性硬化症関連てんかんにおける補助的ガナキソロン(GNX)治療の非盲検第2相試験のパートAに登録された。対象のベースライン発作負荷は、28日あたり、132.41であった。ガナキソロンを、1日3回、最大で、1日量1800mgで、11週間(78日間)経口投与した。この対象はプロトコルを完了し、ベースラインと比較して発作が64%減少した。これは、プロトコルを完了した最初の対象である。さらなる対象は、現在登録はされているが、試験は完了していない。
【表8】
【0240】
実施例7.予備的薬物動態学的及び薬力学的(PK/PD)分析
予備的PK/PD分析を実施して、ガナキソロンレベルと大運動発作頻度の変化率との間の関係の有無を調査した。
【0241】
a)研究デザイン
CDDに関連する発作の治療のための補助的ガナキソロンの安全性と有効性を評価するためのグローバルな無作為化二重盲検プラセボコントロール第3相臨床試験。CDKL5遺伝子の病原性または病原性の可能性のある変異、神経発達障害、及びスクリーニング前の2か月間に28日あたり少なくとも16回の発作を経験し、従前の抗てんかん薬による治療に対して少なくとも2回の抵抗性の発作を示す2~21歳の患者が、登録の資格がある。試験は、6週間のベースラインと、それに続く17週間の二重盲検相(ガナキソロンまたはプラセボ、1:1)で構成された。ガナキソロン50mg/mL懸濁液の用量は、4週間にわたって、63mg/kg/日(21mg/kg TID)まで、1800mg/日(600mg TID)を超えずに滴定され、または最大耐量まで滴定された。PK分析のための採血は、訪問3(5週目)、訪問4(9週目)、及び訪問5(17週目)に行われるように予定された。
【0242】
b)方法
平均ガナキソロン濃度を、二重盲検期の間に、最大で、3回の実験室測定から得た利用可能な結果を使用して、それぞれの対象について計算した。線形回帰を、大運動発作の、算術及び自然対数変換したパーセント減少(log[パーセント減少+100])を従属変数として使用して、自然対数変換した平均ガナキソロン濃度を、単一の説明変数として使用して実行した。回帰診断には、残差プロットと正規確率プロットの検査、及び、外れ値及び影響値の決定を含めた。標準化した残差が、2より大きい、または-2未満の事例をモデルから除外し、回帰を繰り返した。
【0243】
得られた試料は、ピアソン相関係数の決定に利用(対数変換した値を使用)した。加えて、Kruskal-Wallis検定を使用して、対象あたりのガナキソロン濃度の平均値を、低(N=13)、中(N=13)、高(N=12)の3つの三分位で、発作の減少率を比較した。
【0244】
ガナキソロン治療を受けた参加者における潜在的な用量関連毒性(傾眠、鎮静、嗜眠、注意障害、流涎症、及び筋緊張低下)を示唆するCNS関連有害事象の数、ならびに事象の発症及び期間を表にまとめ、二重盲検相のそれぞれの週の間にCNS有害事象を有していた参加者の数を計算した。
【0245】
c)結果
発作減少データがある44名の参加者に、少なくとも1回の血漿ガナキソロンレベル測定を行った(平均+標準偏差=103.5+79.2ng/mL)。従属変数として発作減少率、及び独立変数として平均血漿ガナキソロン濃度を使用した線形回帰では、6つの事例が、調整した残差>2または<-2のために外れ値であると判断した。これらの事例を除いて(N=38)線形回帰を繰り返すと、調整済みRは、0.227(F(1,36)=l1.89)、p=0.001)となった。同じ試料を使用した、平均血漿ガナキソロン濃度と大運動発作の減少率の相関係数は、-0.499(p=0.001)であった。この分析の結果を再現したすべての観察値(N=44)を含めて、ロバスト回帰を実行した。
【0246】
大運動発作の平均及び中央値の減少率を、ガナキソロン濃度の低、中、高の三分位について計算した(表9)。大運動発作頻度の減少率に関して、グループ間に統計的に有意な差が認められた(H(2)=9.087、p=0.011)(図2)。3つのグループの試料分布の事後ペアワイズ比較では、低GNXレベルグループと、高GNXレベルグループとの間で統計的に有意な差が認められたが、他のグループ間の試験では認められなかった。
【表9】
【0247】
まとめると、血漿ガナキソロンレベルの対数と、大運動発作頻度の変化率には負の相関が認められた。血漿GNXレベルの増加は、CDKL5欠乏障害(CDD)患者での発作頻度の27~333ng/mLの範囲での大幅な低下と関連していた。対数値の逆変換は、約100ng/mL(CDD母集団の平均)の血漿濃度が、この試験の参加者において、約40%発作を低減させることを予測している。
【0248】
従前の第1相研究に基づいてモデル化したPK曲線は、TID投与が、BID投与と比較してトラフGNXレベルを増加させることができることを実証している。PK/PDの予備分析の結果は、血漿ガナキソロン濃度の増加が、改善された発作の低減と関連しており、約100ng/mLの濃度が、発作頻度の有意な変化と関連していることを示唆している。モデル化したPK曲線に基づくと、TID投与は、BID投与を使用して得た53%と比較して、24時間の約78%において、100ng/mLを超える血漿ガナキソロンレベルを実現し得る。これらの分析は、無作為化を維持しておらず、それ故に、発作頻度の変化に対するGNXの因果関係を示さないかもしれないが、TID投与が、増加した抗てんかん効果をもたらし得ることを示唆している。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】