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特表2023-503936マイクロポンプを介した内耳への薬物の短期的及び長期的な送達用の経正円窓膜カテーテルの挿入を補助するための手工具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-01
(54)【発明の名称】マイクロポンプを介した内耳への薬物の短期的及び長期的な送達用の経正円窓膜カテーテルの挿入を補助するための手工具
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/142 20060101AFI20230125BHJP
   A61B 17/34 20060101ALI20230125BHJP
   A61F 11/20 20220101ALI20230125BHJP
【FI】
A61M5/142 524
A61B17/34
A61F11/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022529969
(86)(22)【出願日】2020-11-20
(85)【翻訳文提出日】2022-07-05
(86)【国際出願番号】 US2020061565
(87)【国際公開番号】W WO2021102298
(87)【国際公開日】2021-05-27
(31)【優先権主張番号】62/938,561
(32)【優先日】2019-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502362426
【氏名又は名称】ザ チャールズ スターク ドレイパー ラボラトリー, インク.
【氏名又は名称原語表記】THE CHARLES STARK DRAPER LABORATORY, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100225543
【弁理士】
【氏名又は名称】上原 真
(72)【発明者】
【氏名】ヴィシャル タンドン
(72)【発明者】
【氏名】アーネスト キム
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー ボレンシュテイン
【テーマコード(参考)】
4C066
4C160
【Fターム(参考)】
4C066AA06
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD11
4C066EE11
4C066FF03
4C066HH01
4C066QQ27
4C066QQ85
4C066QQ92
4C160FF47
(57)【要約】
本解決策は、経正円窓膜薬物送達用のシステム及び方法を提供する。概要として、システムは、可撓性カニューレに接続されるマイクロポンプを含むことができる。カニューレは、患者の正円窓膜を突き刺すために使用できるハンドピースに通すことができる。ハンドピースを使用すると、カニューレを正円窓膜に挿入でき、送達された薬物の内耳全体への分配を改善することができる。本解決策は、慢性および急性の経正円窓膜薬物送達に使用できる小型の埋め込み型または装着型のデバイスとして機能することができる。この構成により、マイクロポンプは、数日から数ヶ月の期間にわたって、内部リザーバーから少量の薬剤を常時または断続的に送達することができる。
【選択図】図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内耳に流体を供給する方法であって、以下のものを含むことを特徴とする、内耳に流体を供給する方法。
ハンドピースのツールシャフトによって画定されたチャネルにカニューレを導入するステップであって、該ハンドピースは、さらに、以下を備えるステップと工具軸に結合され、チャネルと連通する出口を含む先端部分;および出口から所定の距離で先端部分と結合されたカラーであって、患者の解剖学的構造に適合し、先端部分が患者の蝸牛の中に突出する距離を制御するように構成されたカラー。
前記ハンドピースの先端部分により、患者の解剖学的構造を覆う解剖学的膜を穿孔する工程とカニューレをハンドピースの出口を介して患者に移植し、カニューレが、マイクロポンプと結合された第1の端部と、カニューレの先端を解剖膜を通して患者の蝸牛に挿入できるように構成されたストッパーを含む第2の端部とからなること。
カニューレのストッパーを患者の解剖学的構造に着座させること、および
患者の耳からハンドピースを引き抜くこと。
【請求項2】
マイクロポンプを患者に移植することをさらに含み、マイクロポンプが、化合物を貯蔵する薬剤リザーバを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
マイクロポンプによって、化合物を薬物貯蔵器からカニューレを介して患者の蝸牛に送り込むことをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
薬物貯蔵器からカニューレを介して蝸牛に化合物をポンプで送ることに応答して、マイクロポンプによって、患者の蝸牛から所定量の流体を引き出すことをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
マイクロポンプが、第1の弁、第2の弁、ポンプ、装填室、およびカニューレに流体接続された出口を備え、化合物を薬剤貯蔵器からカニューレを介して患者の蝸牛に圧送することが、以下を含む、請求項3に記載の方法。第1バルブを開き、ポンプを作動させることにより、薬物リザーバーからロードチャンバーに化合物を引き込むこと。第1バルブを閉じ、第2バルブを開き、ポンプを作動させることにより、化合物を出口からカニューレに強制的に送り込む。
【請求項6】
患者の耳からハンドピースを引き抜く前に、ストッパー又は接着剤の少なくとも1つを使用してカニューレを所定の位置に固定することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
外部リザーバーを介して薬剤リザーバーに化合物の追加容量を提供することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
患者のコンピュータ断層撮影スキャン又は磁気共鳴画像スキャンに基づいて、ハンドピースの先端部分の長さを選択することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
マイクロポンプと結合された第1端と、カニューレ先端を解剖学的膜を通して患者の蝸牛に挿入できるように構成されたストッパーを含む第2端とを備えるカニューレおよび前記カニューレを前記患者に導入するように構成されたハンドピースであって、該ハンドピースは、以下を備える、ハンドピース。前記ハンドピースのツールシャフトによって画定されたチャンネルであって、前記カニューレを受け入れるように構成されたチャンネルシステム、からなる。ツールシャフトと結合され、チャネルと連通する出口を含む先端部分であって、患者の解剖学的膜を突き刺すように構成された先端部分、および出口から所定の距離で先端部分と結合されたカラーであって、該カラーは、患者の解剖学的構造に適合し、先端部分が患者の蝸牛の中に突出することができる距離を制御するように構成されているカラー。 前記ハンドピースは、前記カニューレを前記患者の解剖学的構造に装着することに応答して、前記患者の耳から引き出されるように構成される、方法。
【請求項10】
マイクロポンプが患者への移植用に構成され、マイクロポンプが化合物を貯蔵する薬剤リザーバを含む、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
マイクロポンプが、薬剤リザーバーからカニューレを介して患者の蝸牛に化合物をポンプで送るようにさらに構成される、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
マイクロポンプが、薬剤リザーバーからカニューレを介して蝸牛に化合物をポンピングすることに応答して、患者の蝸牛から所定量の流体を引き出すようにさらに構成される、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
マイクロポンプが、第1のバルブ、第2のバルブ、ポンプ、装填チャンバ、およびカニューレに流体接続された出口をさらに備え、マイクロポンプが以下のように構成されている、請求項11に記載のシステム。第1の弁を開き、ポンプを作動させることにより、薬剤リザーバーから装填チャンバーに化合物を引き込むこと;および第1バルブを閉じ、第2バルブを開き、ポンプを作動させることにより、化合物を出口からカニューレに強制的に送り込む。
【請求項14】
ハンドピースが、先端部分をツールシャフトに結合する角度付き部分をさらに備え、角度付き部分が、チャネルと先端部分の出口とに連通する第2のチャネルを有する、請求項9に記載のシステム。
【請求項15】
角度付き部分または先端部分の少なくとも一方が、ツールシャフトから分離可能であり、スナップオンコネクタ、摩擦嵌め接続、圧入接続、ローレットナット、またはLuerロック接続の1つ以上を使用して結合することができる、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
角度付き部分、先端部分、および工具シャフトが、ステンレス鋼またはプラスチックの少なくとも一方から成る材料の単一の連続した部分から製造される、請求項14に記載のシステム。
【請求項17】
請求項14に記載のシステムにおいて、角度付き部分または先端部分の少なくとも一方は、工具軸に結合された状態で、工具軸の長さに平行な軸の周りを回転することができる。
【請求項18】
ハンドピースの先端部分が針状先端部分をさらに含み、針状先端部分が患者の解剖学的膜を突き刺すように構成されている、請求項9に記載のシステム。
【請求項19】
先端部分の出口が先端部分の遠位端に配置され、先端部分の遠位端が出口と先端部分の間に角度を形成し、その角度が70度から170度の間、75度から130度の間、90度から120度の間、または110度から120度の間である、請求項9に記載のシステム。
【請求項20】
工具シャフトの長さが、約130mmと約170mmの間、約140mmと約160mmの間、又は約140mmと約150mmの間である、請求項9に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【関連出願との相互参照】
【0001】
本出願は、2019年11月21日に出願された「HAND TOOL FOR AIDING INSERTION OF A TRANS-ROUND WINDOW MEMBRANE CATHETER FOR MICROPP-MEDIATED ACUTE AND CHRONIC INNER-EAR DRUG DELIVERY」と題する米国仮特許出願番号62/938,561の35合衆国法典第119(e)に基づく優先権を主張しており、参照によりその全体を本出願に取り込むものとする。
【背景技術】
【0002】
薬理学的技術の進歩により、突発性騒音性難聴や加齢性難聴の治療薬として数多くの化合物が提供されている。これらの新しい化合物は有望な結果を示しているが、それらの多くは、血液-蝸牛関門のために全身的に送達すると効果が得られず、患者の円窓膜への沈着による局所送達は、円窓膜を通る化合物の浸透が低いことがあるのでしばしば効果的でないことがあった。化合物の浸透性が低いため、化合物の濃度レベルが治療閾値以下になることがある。
【発明の概要】
【0003】
本開示は、内耳への薬物(またはより一般的には化合物)の効果的な局所送達のための堅牢な手順を提供することができるシステムおよび方法について説明する。システム及び方法は、丸窓膜を通して挿入され、移植されたマイクロポンプに接続されたカニューレ(本明細書ではカテーテルとも呼ばれる)を用いた経丸窓膜(trans-round window membrane)アプローチを介して内耳に化合物を送達することができる。マイクロポンプは、化合物を急性的または慢性的に送達することができる。マイクロポンプは、鼓膜周囲のリンパ液に直接送達される化合物の量を制御することができる。このシステムおよび方法は、円窓膜を通過する薬物の量が少ないこと、内耳全体に薬物が不均一に分布すること、および蝸牛内の薬物の生物学的利用率が低いことなど、鼓膜内注射から生じる多くの困難を克服することが可能である。本システムと方法は、薬物動態研究、in vivo創薬、ヒトの内耳疾患の治療のいずれにも応用可能である。トランス円窓膜ドラッグデリバリーは、低分子からタンパク質、ウイルス、リポソームなどの大型複合分子まで、多くの種類の薬物に対応することができる。
【0004】
本開示のシステムおよび方法はまた、慢性的な治療のためにカニューレを患者に移植することに関わる課題を克服するために使用され得る。例えば、本開示は、本明細書においてハンドピースと呼ばれる、患者の丸窓膜、または耳の他の解剖学的膜を通るカニューレの挿入を容易にするために使用することができるツールを提供する。カニューレは、ハンドピースに含まれるチャネルを通して通すことができ、ハンドピースは、丸窓膜を貫通するために使用され得る。その後、ハンドピースは、中耳から引き離すことができるが、カニューレは、カニューレと丸窓膜との間の摩擦により、後ろに残る。カニューレは、カニューレを丸窓膜内に着座させるのを容易にするため、また、カニューレが内耳内に突出する深さを制御するために、ブッブまたはストッパーを含むこともできる。
【0005】
本開示の少なくとも1つの側面は、内耳に流体を送達する方法に向けられている。 この方法は、ハンドピースのツールシャフトによって画定されたチャネルにカニューレを導入することを含むことができる。ハンドピースは、ツールシャフトと結合された先端部分を含むことができ、チャネルと連通する出口を含む。ハンドピースは、出口から所定距離離れた先端部分と結合されたカラーを含むことができる。カラーは、患者の解剖学的構造に着座し、先端部分が患者の蝸牛の中に突出する距離を制御するように構成することができる。本方法は、ハンドピースの先端部分で患者の解剖学的構造を覆う解剖学的膜を刺し通すことを含むことができる。本方法は、ハンドピースの出口を介して患者にカニューレを移植することを含むことができる。カニューレは、マイクロポンプと結合された第1の端部と、ストッパーを含む第2の端部とを含むことができる。ストッパーは、カニューレ先端が解剖膜を通って患者の蝸牛の中に挿入されることを可能にするように構成されることができる。本方法は、カニューレのストッパを患者の解剖学的構造に着座させることを含むことができる。本方法は、患者の耳からハンドピースを引き抜くことを含むことができる。
【0006】
いくつかの実施態様において、本方法は、患者にマイクロポンプを移植することを含むことができる。マイクロポンプは、化合物を貯蔵する薬物リザーバを備える。いくつかの実施態様において、本方法は、マイクロポンプによって、化合物を薬物リザーバーからカニューレを介して患者の蝸牛にポンピングすることを含むことができる。いくつかの実施態様では、本方法は、マイクロポンプによって、化合物を薬剤リザーバーからカニューレを介して蝸牛にポンピングすることに応答して、患者の蝸牛から所定量の流体を引き出すことを含むことができる。いくつかの実施態様では、マイクロポンプは、第1のバルブ、第2のバルブ、ポンプ、ロードチャンバ、およびカニューレに流体的に接続された出口を含むことができる。
【0007】
いくつかの実施態様において、本方法は、第1の弁を開き、ポンプを作動させることによって、薬剤リザーバーから装填チャンバーに化合物を引き込むことを含むことができる。いくつかの実施態様において、本方法は、第1の弁を閉じ、第2の弁を開き、ポンプを作動させることによって、化合物を出口からカニューレに強制的に送り込むことを含むことができる。いくつかの実施態様において、本方法は、患者の耳からハンドピースを引き抜く前に、ストッパーまたは接着剤の少なくとも1つを使用して、カニューレを所定の位置に固定することを含むことができる。いくつかの実施態様において、本方法は、外部リザーバを介して薬剤リザーバに化合物の追加容量を提供することを含むことができる。いくつかの実施態様において、本方法は、患者のコンピュータ断層撮影スキャン又は磁気共鳴画像スキャンに基づいて、ハンドピースの先端部分の長さを選択することを含むことができる。
【0008】
本開示の少なくとも1つの他の態様は、システムに向けられている。システムは、カニューレを含むことができる。カニューレは、マイクロポンプと結合された第1の端部を有することができる。カニューレは、ストッパーを含む第2の端部を有することができる。ストッパーは、カニューレ先端を解剖学的膜を通して患者の蝸牛の中に挿入できるように構成され得る。システムは、カニューレを患者に導入するように構成されたハンドピースを含むことができる。ハンドピースは、ハンドピースのツールシャフトによって画定されたチャネルを含むことができる。チャネルは、カニューレを受け入れるように構成され得る。ハンドピースは、ツールシャフトに結合された先端部分を含み、チャネルと連通する出口を構成することができる。先端部分は、患者の解剖学的膜を突き刺すように構成され得る。ハンドピースは、出口から所定距離離れた先端部分と結合されたカラーを含むことができる。カラーは、患者の解剖学的構造と着座し、先端部分が患者の蝸牛の中に突出することができる距離を制御するように構成され得る。ハンドピースは、カニューレを患者の解剖学的構造に着座させることに応答して、患者の耳から引き出されるように構成されることができる。
【0009】
いくつかの実施態様では、マイクロポンプは患者に移植することができる。 いくつかの実施態様では、マイクロポンプは、化合物を貯蔵する薬物リザーバを含むことができる。いくつかの実施態様では、マイクロポンプは、薬剤リザーバーからカニューレを介して患者の蝸牛に化合物を送り込むことができる。いくつかの実施態様では、マイクロポンプは、化合物を薬剤リザーバーからカニューレを介して蝸牛にポンプ搬送した後、患者の蝸牛から所定量の流体を引き抜くことができる。いくつかの実施態様では、マイクロポンプは、第1バルブ、第2バルブ、ポンプ、装填チャンバー、およびカニューレに流体的に接続された出口を含むことができる。いくつかの実施態様では、マイクロポンプは、第1の弁を開き、ポンプを作動させることにより、薬剤リザーバーからローディングチャンバーに化合物を引き込むことができる。いくつかの実施態様では、マイクロポンプは、第1の弁を閉じ、第2の弁を開き、ポンプを作動させることにより、化合物を出口からカニューレに強制的に送り込むことができる。
【0010】
いくつかの実施態様において、ハンドピースは、先端部分をツールシャフトに結合する角度付き部分を含むことができる。角度付き部分は、チャネル及び先端部分の出口と連通する第2のチャネルを有することができる。いくつかの実施態様において、角度付き部分又は先端部分の少なくとも一方は、ツールシャフトから分離可能であり、スナップオンコネクタ、摩擦嵌め接続、プレスフィット接続、ローレットナット、又はルアーロック接続の1以上を使用して一緒に結合されることができる。いくつかの実施態様では、角度付き部分、先端部分、およびツールシャフトは、ステンレス鋼またはプラスチックの少なくとも一方を含む材料の単一の連続した部分から製造される。いくつかの実施態様では、角度付き部分または先端部分の少なくとも一方は、ツールシャフトに結合されている間、ツールシャフトの長さに平行な軸を中心に回転することができる。
【0011】
いくつかの実施態様において、ハンドピースの先端部分は、針状先端部分を含む。いくつかの実施態様では、針先端部分は、患者の解剖膜を突き刺すことができる。いくつかの実施態様では、先端部分の出口は、先端部分の遠位端に配置される。 いくつかの実施態様において、先端部分の遠位端は、出口と先端部分との間に角度を形成し、その角度は、70度から170度の間、75度から130度の間、90度から120度の間、または110度から120度の間である。いくつかの実施態様において、工具シャフトの長さは、約130mmと約170mmの間、約140mmと約160mmの間、または約140mmと約150mmの間である。
【0012】
これらおよび他の態様および実施態様を以下に詳細に説明する。前述の情報および以下の詳細な説明は、様々な態様および実装の例示的な例を含み、請求された態様および実装の性質および特徴を理解するための概要または枠組みを提供するものである。図面は、様々な態様および実施態様の例示およびさらなる理解を提供し、本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成するものである。側面は組み合わせることができ、本発明の1つの側面の文脈で説明された特徴は、他の側面と組み合わせることができることが容易に理解されるであろう。側面は、任意の便利な形態で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
添付の図面は、縮尺通りに描かれていることを意図していない。様々な図面における同様の参照番号や呼称は、同様の要素を示している。明瞭化のために、全ての構成要素が全ての図面においてラベル付けされるとは限らない。本開示の上記及び他の目的、態様、特徴、及び利点は、添付図面と併せて取られる以下の説明を参照することによって、より明らかになり、よりよく理解されるであろう。
図1図1は、1つ以上の実施態様による、患者の内耳に流体を供給する例示的なハンドピースを示している。
図2図2は、1つ以上の実施態様による、図1に図示された例示的なハンドピースの側面図を示す。
図3図3は、1つ以上の実施態様による、図1に図示された例示的なハンドピースの断面図を示す。
図4図4は、1つ以上の実施態様による、図1に図示された例示的なハンドピースの側面図を示す。
図5図5は、1つ以上の実施態様による、図1に図示されたハンドピースのための例示的な先端部分を示す図である。
図6図6は、1つ以上の実施態様による、圧縮継手を有する例示的なハンドピースを示す図である。
図7図7は、1つ以上の実施態様による、図1に示された例示的なハンドピースの先端部の拡大図である。
図8図8Aおよび図8Bは、1つ以上の実施態様による、丸窓の中に挿入された例示的なハンドピースの先端を示す図である。
図9図9は、1つ以上の実施態様による、内耳に化合物を注入するシステムの一例を示す図である。
図10図10は、1つ以上の実施態様による、図9に例示された例示的なシステムで使用するための例示的なマイクロポンプの上面図を示す。
図11図11は、1つ以上の実施態様に従って、図9に例示された例示的なシステムで使用することができるカニューレの例示的な先端を示す。
図12図12は、1つ以上の実施態様に従って、患者の丸窓膜内にカニューレを着座させることを容易にするために使用できる配置で、図1の例示的ハンドピースを図9の例示的カニューレと共に描写している。
図13図13は、1つ以上の実施態様による、図9に例示された例示的なシステムを用いて患者の内耳に流体を流す例示的な方法のブロック図である。
図14図14は、1つ又は複数の実施態様による、異なる送達方法にわたる薬物動態(PK)及び薬力学(PD)のプロットを示す。
図15図15は、1つ又は複数の実施態様による、異なる送達方法にわたる薬物動態(PK)及び薬力学(PD)のプロットを示す。
【0014】
上で紹介され、以下でより詳細に議論される様々な概念は、説明された概念が実装の特定の態様に限定されないので、多数の態様のいずれかで実装され得る。特定の実装およびアプリケーションの例は、主に説明のために提供される。
【0015】
本ソリューションは、経円窓膜薬物送達を提供する。概要として、システムは、可撓性カニューレに接続されるマイクロポンプを含むことができる。カニューレは、ハンドピース工具を使用して丸窓膜を通して挿入することができる。本ソリューションは、慢性及び急性の両方の経丸窓膜薬物送達に使用できる小型の移植可能又は装着可能な装置として機能することができる。この構成では、マイクロポンプは、数日から数ヶ月の期間にわたって、内部リザーバーから少量の薬剤を常時または断続的に送達することができる。ある実施態様では、シリンジポンプを急性処置に使用することができる。マイクロポンプは、カニューレを通して流体を駆動し、事前にプログラムされたスケジュールで複数回投与することができる。このソリューションは、複数の薬剤の時限的な連続投与に適合している。
【0016】
本発明の溶液は、全身的な薬物送達の代わりに(またはそれと併用して)使用することができる。全身的な送達は、本発明の溶液によって提供される局所的な化合物送達と比較すると、より高用量の化合物を必要とし得る。全身的な送達に関連する高用量は、しばしば望ましくない副作用を生じ、場合によっては、患者の治療継続を思いとどまらせることがある。さらに、全身投与された薬物は、薬物が肝系を通過すると肝細胞酵素によって修飾されることが多く、薬物活性がさらに低下し、内耳における治療効果が乏しくなる。本発明の解決策は、化合物を内耳に直接送達することにより、化合物が蝸牛液に直接注入されるため、全身的な薬物送達のこれらの問題を克服することができる。蝸牛液への化合物の直接注入は、全身投与と比較してより少ない投与量を可能にする。
【0017】
本開示はまた、本明細書においてハンドピースと呼ばれる、患者の丸窓膜などの解剖学的膜を通るカニューレの挿入を容易にするために使用され得る道具を提供する。ハンドピースは、例えば、外科医によって操作することができる。カニューレは、ハンドピースに含まれるチャネルに通すことができ、ハンドピースは、丸窓膜を貫通するために使用することができる。その後、ハンドピースは、中耳から引き離すことができるが、カニューレは、カニューレと丸窓膜との間の摩擦により、後ろに残る。カニューレは、丸窓膜内にカニューレを装着するのを容易にし、またカニューレが内耳に突出する深さを制御するためのブッブまたはストッパーを含んでもよい。ハンドピースとカニューレ、およびその両方を使用する技術については、以下でさらに説明する。
【0018】
図1は、患者の内耳に流体を供給する例示的なハンドピース100を図示している。 流体は、任意の治療物質又は治療剤であり得る。ハンドピース100は、ツールシャフト102と、アングル部分104と、先端部分106とを含む。 先端部分106はまた、カラー108を含むことができる。ハンドピース100は、丸窓114を介して蝸牛112に流体を経管的に送達するために、患者の外耳道110に挿入される。先端部分106は、流体が蝸牛112に送達されることを可能にするために、丸窓膜を突き刺すために使用され得る。
【0019】
ツールシャフト102は、外科医またはロボット外科装置の手に保持され得、その中心を通る空洞、またはチャネルを画定し得る。チャネルは、例えば、図3と併せて本明細書で後述するマイクロ流体チャネル300と同様とすることができる。ツールシャフト102は、アルミニウム、ステンレス鋼、又は他の合金若しくは金属などの金属を含む様々な材料から製造することができる。いくつかの実施態様では、ツールシャフト102は、エチレンクロロトリフルオロエチレン(ETCFE)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)などの1つまたは複数のプラスチックまたはポリマーから製造することができる。フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリフェニルサルホン(PPSU)、またはポリスルホン(PSU)など、特に、これらのうちの1つ以上のプラスチックまたはポリマーからなる。工具シャフト102は、先端部分106が患者の耳内に容易に配置されるように、その全幅よりも大きい長さを有する細いシャフトとなるように製造することができる。しかしながら、患者の所望の解剖学的構造内にハンドピースを位置決めすることを容易にするために、ツールシャフト102の他の構成が可能であることを理解されたい。
【0020】
角度付き部分104は、患者の丸窓膜のような解剖学的構造内に先端部分106を位置決めすることを容易にするように角度付きにすることができる。角度付き部分104は、角度付き部分104が必要に応じてツールシャフト102に取り付けまたは取り外され得るように、ハンドピース100の別個の構成要素として製造され得る。別個の材料として製造される場合、角度付き部分104は、ガスケット、Oリング、スナップオンコネクタ、摩擦嵌め接続、プレスフィット接続、またはルアーロック接続などの種類のコネクタを使用してツールシャフト102に結合されることが可能である。角度付き部分104は、流体またはカニューレがツールシャフト102のチャネルを通って、角度付き部分104を通り、先端部分106を通って先端部分106の出口に伝達され得るように、ツールシャフト102のマイクロ流体チャネルと連絡する第2のマイクロ流体チャネルを含むことができる。いくつかの実施態様において、ツールシャフト102および角度付き部分104は、本明細書に記載されるように、材料の単一の連続した部分または材料の組み合わせとして製造され得る。
【0021】
角度付き部分104の角度は、ハンドピース100を使用して処置を受ける患者の解剖学的特徴に基づいて選択することができる。例えば、角度付き部分104の異なる角度は、外耳道110内の先端部分106の位置決めを容易にし得る。角度付き部分は、アルミニウム、ステンレス鋼、又は他の許容又は金属のような様々な材料から製造され得る。いくつかの実施態様では、角度付き部分104は、1つ以上のプラスチックまたはポリマー、例えば、エチレンクロロトリフルオロエチレン(ETCFE)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)から製造することができる。フッ化エチレンプロピレン(FEP)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリフェニルサルホン(PPSU)、またはポリスルホン(PSU)などの、1つ以上のプラスチックまたはポリマーからなる。角度付き部分104は、先端部分が患者の外耳道110または患者の中耳をよりよくナビゲートできるように、ある程度柔軟であるように製造することができる。 いくつかの実施態様では、角度付き部分104は存在せず、ハンドピース100は、代わりに、ツールシャフト102及び先端部分106から構成される。
【0022】
先端部分106は、工具シャフト102の一部として、または角度付き部分104の一部として製造することができる。いくつかの実施態様において、先端部分106は、ツールシャフト102又は角度付き部分104の一方から着脱可能であり得る。いくつかの実施態様において、ハンドピースの部分の任意の組み合わせは、単一ピースとして製造され得る。例えば、先端部分106及び角度付き部分104は、1つ以上の材料の単一ピースとして製造することができ、ツールシャフト102及び角度付き部分104は、1つ以上の材料の単一ピースとして製造することができ、又はツールシャフト102及び先端部分106は、(例えば、角度付き部分104が存在しない場合の実施態様において)1つ以上の材料の単一ピースとして製造することができる。先端部分106は、アルミニウム、ステンレス鋼、または他の許可または金属などの様々な材料から製造することができる。いくつかの実施態様において、先端部分106は、1つ以上のプラスチックまたはポリマー、例えば、エチレンクロロトリフルオロエチレン(ETCFE)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)から製造することができる。フッ化エチレンプロピレン(FEP)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリフェニルサルフォン(PPSU)、またはポリスルフォン(PSU)などである。
【0023】
図1に描かれているように、先端部分106は、カニューレまたは他の流体の送達のために患者の外耳道110を通って中耳に位置決めすることを容易にするために、その長さに沿ってテーパーを付けることができる。先端部分106は、ツールシャフト102または角度付き部分104のマイクロ流体チャネルを通って伝達された流体が、先端部分106を通って先端部分106の出口に伝達され得るように、先端部分106の中央部分にマイクロ流体チャネルを画定し得る。先端部分は、カラー108を含むことができ、このカラーは、先端部分106の溝付き領域の周りに着座することができ、又は接着剤又は他のタイプの接着剤を使用して先端部分106に貼付されることができる。いくつかの実施態様において、カラー108は、先端部分106と同じ材料から製造される。
【0024】
先端部分106は、丸窓114のような患者の解剖学的構造と着座するように構成された形状を有することができる。先端部分106は、ツールシャフト102、アングル部分104、及び先端部分106内に画定されたマイクロ流体チャネルのための出口を有することができ、これらの各々は互いに連通することができる。先端部分106の出口は、先端部分106の針状先端部分上に配置され得る。先端部分106の針先部分は、患者の蝸牛112の中に延びることができる。
【0025】
図2は、例示的なハンドピース100の側面図である。ハンドピース100は、ツールシャフト102と、アングル部分104と、先端部分106とを含む。外科医は、ツールシャフト102を使用して、ハンドピース100及び先端部分106の位置を保持し、操作することができる。ツールシャフト102の外表面は、外科医によるハンドピース100のより良いグリップを可能にするためにローレットを含むことができる。いくつかの実施態様において、ハンドピース100の1つ以上の部分は、外科用ロボットに結合され得る。そのような実施態様では、ハンドピース100の部分は、ハンドピースを外科ロボットに結合することができるファスナーまたは他の結合装置もしくは構造を含むことができる。ツールシャフト102は、近位端200及び遠位端202を含むことができる。ツールシャフト102は、約4mm、約5mm、または約6mmの直径を有することができる。ツールシャフト102は、約90mmと約150mmの間、約90mmと約130mmの間、または約100mmと約120mmの間の長さを有することができる。いくつかの実施態様では、工具シャフト102の長さは110mmである。
【0026】
ツールシャフト102の遠位端は、角度付き部分104の近位端204と結合され得る。 先端部分106は、角度付き部分104の遠位端206と結合される。角度付き部分104は、先端部分106が低侵襲処置において外耳道(例えば、図1に描かれた外耳道110)を横断し、患者の耳における丸窓または別の解剖学的構造に到達できるように角度を付けられる。角度付き部分104は、ツールシャフト102と先端部分106との間に角度208を形成する。角度208は、約170°と約90°との間、約170°と約110°との間、約170°と約120°との間、約170°と約140°との間、又は約165°と約155°との間とすることができる。角度208は、工具シャフト102の長手方向軸と先端部分106の長手方向軸との間の角度として定義することができる。角度208は、患者の丸窓における先端部分106の経菅的な位置決めを可能にするように構成される。 角度208は、外科医が先端部分106を丸窓で位置決めし、外科医に外耳道への視覚的アクセスを提供することを可能にするように選択され得る。
【0027】
先端部分106は、アングル部分104の遠位端206と結合することができる。先端部分106の遠位部分は、角度を付けることができる。角度210は、約70°と約140°の間、約75°と約130°の間、約90°と約120°の間、約100°と約120°の間、または約110°と約120°の間であることができる。例えば、角度210は、約105°、106°、107°、108°、109°、110°、111°、112°、113°、114°、115°、116°、117°、118°、119°、又は120°とすることができる。角度210は、ハンドピース100が外耳道を通して挿入されたときに、先端部分106の遠位部分を丸窓に対して実質的に垂直に配置するように選択することができる。角度210は、患者の内耳又は中耳の解剖学的構成に基づいて選択されることができる。例えば、外科医は、丸窓の位置及び角度と丸窓ニッチとに基づいて、適切な角度210を有するハンドピース100を選択することができる。いくつかの実施態様では、外科医は、中耳及び内耳のCT又はMRI画像を使用して、どの角度210を選択するかを決定することができる。ハンドピース100は、異なる角度210の構成で製造することができる。いくつかの実施態様において、外科医は、処置中に角度210を変更するために先端部分106を曲げることができる。
【0028】
先端部分106は、カラー108を含むことができる。カラー108は、丸い窓の中に座るように構成され得る。例えば、カラー108は、患者の中耳の丸窓に適合し得る半可撓性材料で作ることができ、又は患者の耳内の異なる解剖学的構造に適合し得るものである。カラー108は、ハンドピース100の所望の部分以上が患者の蝸牛(例えば、図1に描かれた蝸牛112)の中に延びることを防止するのに十分な剛性を有し得る。カラー108の柔軟な適合性は、患者の中耳の1つ以上の解剖学的構造とのシールを形成することができる。例えば、カラー108は、先端部分106が丸窓膜を貫通すると、丸窓をシールすることができる。カラー108はまた、先端部分106の端部が蝸牛の中に挿入され得る深さを制御することができる。カラー108は、医療グレードのシリコーン、または別のタイプの半可撓性材料もしくは生体適合性材料を含むことができる。カラー108は、実質的にドーム状または半球状であり得る。カラー108の、最も広い部分における直径は、約0.5mmと約3mmの間、約0.5mmと約2.5mmの間、約1mmと約2mmの間、または約1.5mmと約2mmの間であることが可能である。
【0029】
ハンドピース100は、約130mmと約170mmの間、約140mmと約160mmの間、又は約140mmと約150mmの間の全長212を有することができる。異なる部分として説明されているが、ツールシャフト102、アングル部分104、及び先端部分106はそれぞれ、単一又は複数の部分として製造することができる。例えば、ハンドピース100は、1つ、2つ、又は3つの別個のピースを含むことができる。ハンドピース100は、ツールシャフト102、アングル部分104、及び先端部分106のいずれかの間の界面で分離可能であることができる。いくつかの実施態様において、ツールシャフト102、アングル部分104、及び先端部分106の間の界面は、ツールシャフト102、アングル部分104、又は先端部分106の1つ以上が材料の単一の連続した部分から形成される場合、又はツールシャフト102、アングル部分104、又は先端部分106の1つ以上が永久的又は半永久的に一緒に結合される場合など、その部分が分離可能であることを示さない。例えば、ツールシャフト102、角度付き部分104、及び先端部分106は、単一ピースとして製造することができる。他の実施態様では、角度付き部分104及びツールシャフト102は、第1のピースを形成することができ、先端部分106は、第2のピースを形成することができる。いくつかの実施態様において、ハンドピース100は再使用可能である。他の実施態様では、ハンドピース100は、使い捨てである。ハンドピース100は、医学的に承認された滅菌可能な材料から製造することができる。例えば、ハンドピース100は、316ステンレス鋼、又は本明細書に記載される任意の他のタイプの金属、又は本明細書に記載される滅菌可能なプラスチック若しくはポリマーから製造することができる。
【0030】
図3は、例示的なハンドピース100の断面図である。ハンドピース100は、マイクロ流体チャネル300を含む。マイクロ流体チャンネル300は、入口302及び出口304を含む。入口302は、リザーバと結合され得る。リザーバは、図9及び図10に関連して更に説明される。マイクロ流体チャネル300は、約22のゲージを有することができる。マイクロ流体チャネルのゲージは、約12と28の間、約16と約24の間、約18と約22の間、又は約20と22の間とすることができる。マイクロ流体チャネル300は、約10μLと約25μLとの間、約15μLと約25μLとの間、又は約20μLと約25μLとの間のデッドボリュームを有することができる。
【0031】
マイクロ流体チャネル300は、異なる部分を含むことができる。例えば、ツールシャフト102、アングル部分104、及び先端部分106の各々は、マイクロ流体チャネル300の異なる部分を含むことができる。異なる部分は、単一チャネル、連続チャネルとすることができる。いくつかの実施態様では、マイクロ流体チャネル300は、1つ以上の部分の間の界面で分離可能である。いくつかの実施態様では、マイクロ流体チャンネル部分は、ハンドピース100の異なる部分の間の界面付近で分離可能である。例えば、先端部分106内のマイクロ流体チャンネル部分は、先端部分106を越えて(図4に図示されるように)延びることができ、角度付き部分104内のマイクロ流体チャンネル部分は、先端部分106から延びるマイクロ流体チャンネルの部分が角度付き部分104によって受けられるように遠位端206の前で停止することができる。いくつかの実施態様において、ハンドピース100は、複数のマイクロ流体チャネル300を含むことができる。例えば、ハンドピース100は、異なる治療薬を送達するための異なるマイクロ流体チャネル300を含むことができる。いくつかの実施態様において、第2のマイクロ流体チャンネル300は、蝸牛から流体を排出するために使用され得る。マイクロ流体チャンネル300は、図9と関連して本明細書に記載されたカニューレ904などのカニューレを患者の蝸牛112に提供するか、さもなければ着座させるように構成されることができる。
【0032】
図4は、例示的なハンドピース100の側面図である。いくつかの実施態様において、ハンドピース100の1つ以上の部分は、互いに分離可能である。図4は、分離可能な先端部分106を有する例示的なハンドピース100を図示している。先端部分106は、ハンドピース100の滅菌を容易にするために、ツールシャフト102及びアングル部分104から分離することができる。先端部分106は、先端部分106を異なる回転角度で角度付き部分104と再連結できるように、角度付き部分104から分離可能であることができる。先端部分106は、先端部分106を角度付き部分104から分離させることなく、角度付き部分104に対して回転させることができる。先端部分106は、外科医に丸窓への改善されたアクセスを提供するために、角度付き部分104に対して回転させることができる。例えば、外科医、または外科用ロボットは、患者の解剖学的構造間の変動性を考慮するために、先端部分106のデフォルト位置を適合させることができる。ハンドピース100は、分離可能な部分の間の界面にガスケット又はOリングを含むことができる。分離可能な部分は、スナップオンコネクタ、摩擦嵌めまたはプレスフィット接続、またはルアーロック接続で一緒に結合されることができる。
【0033】
図5は、例示的なハンドピース100のための例示的な先端部分106を説明する図である。図5に例示された先端部分106は、ハンドピース100のアングル部分104及び工具シャフト102から離間している。 先端部分106は、チップ500を含むことができる。先端部500は、先端部分106の本体から延びるマイクロ流体チャネル300の部分とすることができ、又はそれを含むことができる。いくつかの実施態様では、先端部分106の全ては、角度付き部分104に対して回転させることができる。 他の実施態様では、先端部500は、先端部分106内で回転させることができる。いずれの例においても、先端部500は、図4に図示された位置から、破線で図示された第2の位置502に回転させることができる。示されるように、先端部分500は、カラー108を丸窓のような患者の中耳の解剖学的構造に着座させることを容易にするために、曲げられるかまたは角度が付けられることが可能である。先端部分500の曲がった部分は、先端部分の出口と先端部分の本体106との間に角度を形成することができ、ここで、角度は約90度から約175度の間である。
【0034】
図6は、圧縮フィッティング600を有する例示的なハンドピース100を示す。 圧縮継手600は、ローレットナットとすることができる。圧縮継手600は、角度付き部分104を先端部分106と結合させることができる。圧縮継手600は、先端部分106が角度付き部分104に対して回転することを可能にするために、緩められ得る。外科医が回転の程度を選択すると、外科医は、圧縮フィッティング600を締めて、角度付き部分104と先端部分106との間の回転の程度を所定の位置にロックすることができる。他の実施態様では、先端部分106と角度付き部分104は、先端部分106を先端部分106に対して回転させることを可能にする摩擦嵌合で一緒に保持され得る。そのような実施態様では、先端部分106および角度付き部分104は、所望の回転度合いまで回転させ、その後、外科手術のために回転度合いを固定するためにツールシャフト102の摩擦フィット部分に押し込むことが可能である。着脱可能な先端部及び角度付き部分は、ハンドピース100を使用して処置を受ける患者の解剖学的特性に適合する先端材料及び寸法を選択することを可能にする。
【0035】
図7は、例示的なハンドピース100の先端部500の拡大図を示している。先端部500は、ニードルエンド700を含むことができる。針端700は、出口304を含む。針端700は、鈍端とすることができ、又は、面取りして点を形成することができる。針端700は、患者の耳における丸窓膜又は別の解剖学的構造を貫通するように構成することができる。針端700は、約1mmと約4mmの間、約2mmと約3mmの間、または約2.5mmと約3mmの間の長さだけカラー108を越えて延びることができる。例えば、針端部700は、2.7mmの長さを有することができる。針端700は、約25と約30の間、約26と約30の間、または約27と約30の間のゲージサイズを有することができる。カラー108が丸窓の中に着座すると、針端700だけが蝸牛の中に突出する。カラー108は、針端700が蝸牛(例えば、図1に描かれた蝸牛112など)の中に突出する深さを制御することができる。
【0036】
針端部700は、針端部700が蝸牛の中に突出しすぎることを防止することができる。針端700は、針端700が蝸牛の中に突出しすぎて蝸牛を損傷するのを防止することができる。カラー108は、治療物質が蝸牛(例えば、図1に描かれた蝸牛112など)を通して適切に分散するように、蝸牛内の出口304を適切に位置決めすることができる。例えば、出口304が蝸牛の中に浅く位置決めされた場合、治療物質は丸窓の近くに集中し、蝸牛を通って分散しない可能性がある。出口304が蝸牛の中に深すぎる位置にある場合、針先700は蝸牛に損傷または外傷を与える可能性がある。いくつかの実施態様では、先端部500は、外科医が先端部500を曲げて角度210を変更できるように、可鍛性材料から製造される。カラー108は、接着剤で先端部500に結合され得る。いくつかの実施態様において、先端部500は、カラー108が着座する溝を含むことができる。
【0037】
図8A及び図8Bは、丸い窓に挿入された先端部500を図示している。図8Aは、先端部500が丸窓114、又は患者の耳内の別のタイプの解剖学的構造に挿入された状態で、外耳道を通して挿入されたハンドピース100を図示している。図8Bは、丸い窓114に挿入された先端部500の、図8Aからの拡大図を示している。先端部500は、丸窓の膜を貫通させるために使用され得る。先端部500は、丸窓114に挿入することができる。カラー108は、流体が蝸牛112に注入されると、ラウンドウィンドウ114に着座してラウンドウィンドウ114を密閉することができる。カラー108は、丸窓114の直径より小さい直径から丸窓114の直径より広い直径までテーパ状である。カラー108が丸窓114に対して押し下げられると、カラー108は丸窓114を閉塞することができる。カラー108は、チップ500の蝸牛112への挿入深さを制御するために使用することも可能である。例えば、カラー108は、チップ500がカラー108を越えて蝸牛に挿入されることを防止することができる。丸窓114の直径よりも広い直径を有するカラー108の部分は、チップ500が蝸牛112の中に遠くに挿入されるのを実質的に止めることができる。カラー108を先端部500の出口116の方に移動させると、先端部500が挿入され得る深さが減少する。カラー118は、先端部500が蝸牛112の中に過度に挿入されることを防止することができる。
【0038】
図9は、内耳に化合物を注入するための例示的なシステム900を示す。システム900は、マイクロポンプ902を含むことができる。システム900は、カニューレ904を含むことができる。カニューレ904は、カテーテル904とも呼ばれることができる。カニューレ904は、マイクロポンプ902の出口906と結合させることができる。カニューレ904は、丸窓膜908を通して、内耳に挿入することができる。カニューレ904は、本明細書で上述したハンドピース100を使用して、丸窓膜908を通して挿入することができる。
【0039】
マイクロポンプ902は、特に図10に関連してさらに説明される。概要として、マイクロポンプ902は、往復運動する自動化された流体注入システムであり得る。マイクロポンプ902は、統合された薬物リザーバを含むことができる。薬物リザーバに貯蔵される薬物は、化合物と呼ぶことができ、薬物リザーバは、化合物リザーバと呼ぶことができる。マイクロポンプ902は、化合物リザーバから、カニューレ904を介して、所定の間隔で、内耳に化合物を吐出することができる。マイクロポンプ902は、内耳に加えられる正味の体積が実質的にゼロとなるように、内耳に化合物を注入することと、内耳から流体を引き出すことの両方を行うように構成することができる。マイクロポンプ902は、マイクロポンプへの引き出し及びマイクロポンプからの注入流体を制御することができる1つ以上の内部ポンプ及び弁を含むことができる。慢性送達用途の場合、マイクロポンプ902は、頭部の周りに装着されるか、または移植され得る。例えば、図9に示されるように、マイクロポンプ902は、密閉されたハウジングに収容され、耳の後ろまたは近くの頭皮の下に移植され得る。
【0040】
システム900はまた、カニューレ904を含む。カニューレ904は、鋭利で滑らかな先端を含むことができる。例えば、カニューレ904の先端は、鋭利なベベルを含むことができる。 鋭利で滑らかな先端部は、カニューレ904が丸窓膜908を貫通することを可能にし得る。いくつかの実施態様では、鋭利で滑らかな先端部は、カニューレ904が、丸窓膜908を崩壊させることなく丸窓膜908を突き刺すことを可能にし得る。カニューレ904は、特に、図11に関連してさらに説明される。
【0041】
図10は、例示的なマイクロポンプ902の上面図を示している。マイクロポンプ902は、薬剤リザーバ200及び流体貯蔵コンデンサ1002を含むことができる。薬物含有流体は、出口906を介してマイクロポンプ902から分注され得る。マイクロポンプ902は、ポンプ1006を含むことができる。マイクロポンプ902は、複数のバルブ208及び流体コンデンサ1004を含むことができる。
【0042】
マイクロポンプ902は、多層デバイスとすることができる。マイクロポンプ902は、流体ルーティング層を含むことができる。例えば、流体ルーティング層は、薬物リザーバ200、流体貯蔵コンデンサ1002、流体コンデンサ1004、チャネル1010、及びローディングチャンバ1012を含むことができる。マイクロポンプ902は、1つ又は複数の活性層を含むことができる。アクティブ層は、バルブ208及びポンプ1006のアクチュエータ、バルブ208及びポンプ1006を制御するコントローラ、並びにマイクロポンプ902に電力を供給するための電源を含むことができる。流体ルーティング層は、膜によって活性層から分離され得る。流体ルーティング層は、ポリエーテルイミド(PEI)を含むことができる。 流体ルーティング層と活性層とを分離する膜は、ポリイミド及びバイトンなどの可撓性膜を含むことができる。
【0043】
マイクロポンプ902は、薬物リザーバ200を含むことができる。薬物リザーバ200は、流体ルーティング層の1つ又は複数に機械加工(例えば、レーザーエッチング)することができる。薬物リザーバ200は、蛇行又は他のチャネル構造として構成することができる。薬物リザーバ200は、薬物リザーバ200の出口からチャネル1010の1つに薬物を強制的に送り込むために、流体を入口に送り込むことができるように、入口及び出口を有するチャネルとして構成されることができる。薬物リザーバ200は、約300μmと約1200μmの間、約400μmと約1000μmの間、約500μmと約900μmの間、約600μmと約800μmの間、又は約700μmと約800μmの間のチャネル幅を有することが可能である。薬物リザーバ200は、約300μmと約1200μmの間、約400μmと約1000μmの間、約500μmと約900μmの間、約600μmと約800μmの間、または約700μmと約800μmの間のチャネル高さを有することが可能である。薬物リザーバ200は、約300mmと約100mmの間、約300mmと約800mmの間、又は約300mmと約600mmの間の全チャネル長を有することができる。
【0044】
マイクロポンプ902は、流体貯蔵コンデンサ1002を含むことができる。流体貯蔵コンデンサ1002は、流体ルーティング層に形成されたシリンダとすることができる。流体貯蔵キャパシタ1002は、約10mmと約20mmの間、約12mmと約18mmの間、又は約14mmと約16mmの間の直径を有することができる。流体貯蔵コンデンサ1002は、患者の内耳から引き出された流体を貯蔵するように構成することができる。流体貯蔵コンデンサ1002は、薬物貯蔵器200の出口から薬物を強制的に取り出すために、薬物貯蔵器200の入口に流体を供給することもできる。
【0045】
マイクロポンプ902はまた、複数の流体コンデンサ1004を含むことができる。流体コンデンサ1004は、流体ルーティング層の流体チャネル1010及びローディングチャンバ1012と一直線上に機械加工されることができる。流体コンデンサ1004は、約2mmと約10mmの間、約2mmと約8mmの間、約2mmと約6mmの間、又は約4mmと約6mmの間の直径を有することができる。流体貯蔵キャパシタ1002及び流体キャパシタ1004は、流体ルーティング層と活性層とを分離する膜によって形成される天井を有することができる。
【0046】
流体コンデンサ1004は、電力効率を向上させ、ピーク流量を調整するのに役立ち、流体貯蔵を提供することができる。例えば、マイクロポンプ902のチャネル1010は、比較的高い流体抵抗を有し得、これは、マイクロポンプ902から流体を排出することに関連する比較的大きな時定数を引き起こし得る。したがって、比較的大きな時定数では、弁208は、弁を開くため、及びポンプチャンバが完全に排出又は充填する時間を有することを可能にするために、数秒間電力を供給する必要がある場合がある。流体チャネル1010と並んでいる流体コンデンサ1004は、より低い流体抵抗を有し、流体コンデンサ1004の圧力平衡に関連する受動的な流体の流れが続くポンプ室への、およびポンプ室からの比較的速い流体の移送を可能にすることができる。これは、弁208が開いたままにされる時間の量を(数十ミリ秒のオーダーに)減らすことができ、電力消費を減らすことができる。流体コンデンサ1004、例えば出口906の近くの流体コンデンサ1004は、ポンプストロークによって発生する流量バーストを減衰させ、大きなピーク流量を低減させることができる。
【0047】
マイクロポンプ902は、1つ又は複数のポンプ1006を含むことができる。ポンプ1006は、マイクロポンプ902の活性層内にアクチュエータを含むことができる。アクチュエータは、電磁石を所定の位置に保持することができる。電磁石に電力が供給されていないとき、バネは、アクチュエータヘッドをポリイミド膜に対して押された状態に保つことができる。ポリイミド膜に対する圧力は、流体層に形成されたバルブ1008のシリンダへの開口部に対してバイトン層を押し付け、ポンプ1006のバルブを閉鎖する流体シールを形成する。
【0048】
ポンプ1006のアクチュエータを循環させると、ポンプ1006の流体チャンバ内で流体変位が生じ得る。バルブ1008は、マイクロポンプ902を通る流体の流れの方向を制御するために循環させる(例えば、開く又は閉じる)ことができる。例えば、各ストロークタイプについて、1つの弁は吸気弁として作用し、別の弁は排出弁として作用することができる。ポンプストロークの開始時に、吸気弁が開き、次に、ポンプアクチュエータに電力が供給され、隣接する流体コンデンサからポンプチャンバに流体が吸引されることになる。次に、吸入弁が閉じる。次に排出バルブが開き、ポンプアクチュエータが停止すると、流体はポンプ室から別の流体コンデンサに押し出される。最後に、排出バルブが閉じる。どの弁が吸気弁および排出弁として選択されるかに応じて、ポンプは、3つの異なるタイプのポンプストロークを生成することができる:注入(例えば、流体がマイクロポンプ902から送り出される)、引き出し(例えば、流体が外部源からマイクロポンプ902に送り込まれる)、および薬剤リフレッシュまたはプライミング(例えば、最後の注入ストロークでマイクロポンプ902から送り出すために流体が装填室1012に送り出される)。
【0049】
マイクロポンプ902は、1つ又は複数のバルブ1008を含むことができる。バルブ1008は、ポンプ1006と同様の構造を有することができる。例えば、バルブ1008は、流体層に形成されたシリンダチャンバを含むことができる。弁1008は、電磁石を所定の位置に保持する活性層内のアクチュエータを含むことができる。電磁石が非力であるとき、弁は、アクチュエータを膜に対して付勢して弁1008のシリンダー室の開口部にシールを形成するばねによって閉鎖位置に保持され得る。アクチュエータの作動は、流体がバルブ1008を通って流れることを可能にするために、電磁石をバネに抗して膜から離れるように強制し得る。
【0050】
図11は、カニューレ904の例示的な先端部1100を示す。カニューレ904は、先端部1100と、本開示においてブッブ1102とも呼ばれ得るストッパー1102とを含み得る。先端1100は、先端1100およびカニューレ904への流体の流入および流出を可能にする出口1104を含むことができる。
【0051】
カニューレ904は、複数の異なる材料を含むことができる。カニューレ904は、複数の異なる部分を含むことができ、異なる部分の各々は、異なる材料を含むことができる。例えば、カニューレ904の第1の部分は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)チューブを含むことができる。カニューレの第1の部分904は、マイクロポンプ902と結合することができる。カニューレの第1の部分904は、約2cmと約10cmの間、約2cmと約8cmの間、又は約3cmと約6cmの間とすることができる。カニューレの第1の部分904は、約50μmと約300μmの間、約100μmと約200μmの間、又は約150μmと約200μmの間の内径(ID)を有することができる。
【0052】
カニューレ904は、第2の部分を含むことができる。第2の部分は、先端1100を含むことができる。第2の部分は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)チューブを含むことができる。第2の部分は、約1cmと約5cmの間、約2cmと約5cmの間、または約3cmと約5cmの間の長さであることができる。いくつかの実施態様では、カニューレ904の第1部分および第2部分は、Tygon(R)チューブによって結合され得る。カニューレ904は、ハンドピース100を使用して、図1の上に本明細書で示す蝸牛112のような患者の蝸牛に導入することができる。ハンドピース100を用いた患者へのカニューレ904の導入は、本明細書において以下にさらに詳細に説明される。
【0053】
先端部1100は、10μm以上200μm以下、約10μm以上約150μm以下、又は約50μm以上約100μm以下の外径を有することができる。先端部1100は、5μm以上約200μm以下、約15μm以上約150μm以下、又は約50μm以上約110μm以下の内径を有することができる。先端部1100は、ハンドピース100の部分(例えば、ツールシャフト102、アングル部分104、又は先端部分106など)に画定されたチャネルのうちの1つ又は複数を介して提供されるのに十分狭くすることができる。
【0054】
先端部1100は、先端部1100が丸窓膜を貫通することを可能にするベベルを含むことができる。ベベルの角度は、約10度と約45度の間、約15度と約45度の間、又は約25度と約45度の間とすることができる。いくつかの実施態様では、ベベルは30度である。ベベルは、患者の耳における1つ以上の解剖学的構造を突き刺すために使用され得る点または鋭いエッジを形成し得る。
【0055】
先端1100は、カニューレ904の先端1100が鼓膜周囲液を浴びるように、丸窓膜908を通して(例えば、ハンドピース100などを用いて)挿入することができる。先端部1100は、カニューレ904の本体よりも実質的に大きい硬度(または剛性)を有し得る。硬くなった先端部1100は、丸窓膜908の貫通を容易にすることができる。いくつかの実施態様では、カニューレ904は、丸窓膜908を通る挿入を容易にするために、中耳の解剖学的構造に実質的に一致する角度で曲げられる。いくつかの実施態様では、カニューレ904の曲げは、先端1100の近くにあることができる。
【0056】
先端部1100は、鼓膜鞘に数ミリメートル貫入することができる。例えば、先端部1100は、約1mmと約5mmとの間、又は約1mmと約3mmとの間で鼓膜腔に侵入することができる。先端部1100は、先端部1100が鼓膜鞘に深く侵入するのを防止することができるストッパ1102(ブッブ1102とも呼ばれる)を含むことができる。例えば、ストッパ1102は、ストッパ1102が丸窓膜908と接触したときに先端1100が鼓膜鞘の中に3mm位置するように、先端1100の端部から約3mmに位置付けることができる。いくつかの実施態様では、ストッパー1102は、カニューレ904と丸窓膜908との間にシールを形成して、内耳からの流体漏れを実質的に防止するのに役立つことができる。
【0057】
先端1100は、丸窓膜908を通る挿入後に丸窓膜908に対して密封する、柔らかいシリコーン様材料で被覆され得る。カニューレ904は、外科的処置中に丸窓膜908を通る挿入を容易にするために、可撓性であり得る。カニューレ904は、移植後のカニューレ904の移動を防止するために、中耳空間内にロックすることができる。
【0058】
カニューレ904は、中耳炎を制御するために抗炎症性化合物を放出する材料でコーティングされ得る。例えば、カニューレ904は、デキサメタゾンおよび/またはメチルプレドニゾロンでコーティングすることができる。 いくつかの実施態様では、カニューレ904は、数週間または数ヶ月間、定位置に留まることができる。 他の実施態様では、カニューレ904は、急性に使用され、その後除去され得る。
【0059】
図12は、患者の丸窓膜内にカニューレ904を着座させることを容易にするために使用することができる配置で、図1の例示的なハンドピース100を図9の例示的なカニューレ904と共に描写している。示されるように、カニューレ904は、ハンドピース100によって画定されるチャネル内に位置決めされ得る。例えば、ユーザ(例えば、外科医)は、カニューレ904の一部、ならびにストッパ1102が、ハンドピース100の針端700を通って突出するように、ハンドピース100にカニューレ904を通すことが可能である。ハンドピース100のチャネルの1つ以上にカニューレ904を通すことで、カニューレ904を中耳の丸窓膜などの患者の解剖学的構造に導入することができる。いくつかの実施態様では、カニューレ904は、外科医または手術ロボットによって解放されるまで、ハンドピース100の先端部分600の定位置に保持され得る。カニューレ904は、例えば、ハンドピース100のカラー108が患者の丸窓に対して着座すると、解放され得る。
【0060】
いくつかの実施態様において、ハンドピース100及びカニューレ904の材料及び寸法は、図12に示される配置を達成するためにカニューレ904をハンドピース100に通すのを容易にするように選択され得る。例えば、カニューレ904は、ポリ(テトラフルオロエチレン)(PTFE)のような柔軟な生体適合性ポリマーから作ることができ、それによって、904を曲げてハンドピース100に通すことができるようにする。カニューレ904を形成するチューブは、ハンドピース100によって画定されるチャネルの内径よりも小さい外径を有し得る。いくつかの実施態様では、ストッパ1102は、カニューレ904の端部から所定の距離で位置決めすることもできる。例えば、所定距離は、約1ミリメートルから約3ミリメートルの範囲であってもよい。
【0061】
操作において、カニューレ904は、ハンドピース100に通され得、次いで、ハンドピース100は、丸窓膜を貫通するために使用され得る。ハンドピース100の端部にあるカラー108は、上述したように、ハンドピース100を丸窓膜に正しく着座させるのに役立つことができる。カニューレ904は、ハンドピース100の針端700が丸窓膜を貫通した後に、ハンドピース100の針端700から押し出され、丸窓膜を貫通させることができる。その後、ハンドピース100は、中耳から引き離すことができるが、カニューレ904は、カニューレ904と丸窓膜との間の摩擦により、後ろに残る。したがって、摩擦は、カニューレ904を丸窓膜内の定位置に保持することができる。カニューレ904は、ハンドピース100が患者から完全に引き抜かれた後でも中耳又は内耳に残ることができ、従って、ハンドピース100は、患者の耳の所望の領域にカニューレ904を正確に着座させることができる。ストッパ1102は、カニューレ904が内耳に突出する距離を制御するために使用され得る。いくつかの実装では、ストッパー1102は、カニューレ904が蝸牛(例えば、図1に示される蝸牛112など)のような患者の解剖学的構造内に突出する距離を制御するために使用され得る。いくつかの実装では、ストッパ1102は、内耳に配置され得る。いくつかの他の実施態様では、ストッパ1102は、中耳に配置することができる。
【0062】
図13は、患者の内耳に流体を流すための例示的な方法1300のブロック図である。この方法は、例えば、ハンドピース(例えば、本明細書に記載されたハンドピース100など)を利用する外科医、又はハンドピースを利用する外科用ロボットによって実行することができる。方法1300は、ハンドピースのチャネルにカニューレを導入することを含むことができる(BLOCK1302)。方法1300は、患者の丸窓膜を穿孔することを含むことができる(BLOCK 1304)。方法1300は、ハンドピースを介して患者にカニューレを埋め込むことを含むことができる(BLOCK1306)。方法1300は、丸窓の中にストッパーを着座させることを含むことができる(BLOCK1308)。方法1300は、患者の耳からハンドピースを引き抜くことを含むことができる(BLOCK1310)。
【0063】
方法1300は、カニューレ(例えば、カニューレ904など)をハンドピースのチャネルに導入することを含むことができる(BLOCK1302)。図9図12も参照すると、カニューレは、上述したように、カニューレ904とすることができ、ハンドピースは、ハンドピース100とすることができる。カニューレ904は、カニューレ904がハンドピース100のチャネル内に操縦されることを可能にする、PTFEのような可撓性材料から形成されることが可能である。いくつかの実施態様では、カニューレ904は、ハンドピース100のチャネルにねじ込まれることができる。カニューレ904は、カニューレ904の端部がハンドピース100のチャネルの出口又はその近傍(例えば、ハンドピース100の先端部分又はその近傍)に位置決めできる距離までチャネルに挿入することができる。いくつかの実施態様では、カニューレ904は、ハンドピース100の針部分700から突出し得る(例えば、図12に描かれているように、など)。いくつかの実施態様では、カニューレ904は、ハンドピース100が患者の解剖学的構造(例えば、中耳の丸窓など)に対して適切に装着されるまで、ハンドピース100の針部分700内に留まることができる。
【0064】
方法1300は、患者の丸窓膜、又は中耳若しくは内耳内の別の解剖学的構造を刺し通すことを含むことができる(ブロック1304)。いくつかの実施態様において、丸窓膜又は他の解剖学的構造は、ハンドピース100の先端部分で刺し通すことができる。例えば、提供されたハンドピース100は、外耳道(例えば、図1に描かれたような外耳道110など)を通して挿入されることができる。ハンドピース100が挿入される間、カニューレ904は、ハンドピース100のチャネル内に留まることができる。ハンドピース100の角度付き部分104は、丸窓の経管アクセスを可能にするように構成され得る。先端部分106の先端500は、針端700を丸窓および丸窓膜、または患者の耳内の別の解剖学的構造に対して実質的に垂直に位置付けるように角度が付けられ得る。針端700は、丸窓膜に押し付けて丸窓膜を貫通させることができる。いくつかの実施態様では、針端700は、患者の耳内の別の解剖学的構造に対して押されて、解剖学的構造を突き刺すことができる。カラー108は、針端700が蝸牛、または他の内耳器官もしくは解剖学的構造の中に過度に突出し、蝸牛または前記他の解剖学的器官に損傷を与えることを防止することができる。しかしながら、カラー108は、カニューレ904を患者に導入して貼り付けるために、針端700が丸窓膜、または他の解剖学的構造の中に十分に遠く突出することを可能にすることができる。
【0065】
カラー108は、流体が蝸牛に注入されるときに丸窓を密閉するために、丸窓、または患者の耳内の別の解剖学的構造に着座することができる。患者の解剖学的構造に基づいて、外科医は、ハンドピース100の先端部分と角度付き部分との間の回転オフセットを設定して、針端700が円形窓にアクセスすることを可能にすることができる。また、患者の解剖学的構造に基づいて、外科医は、出口304が丸窓及び丸窓膜に対して実質的に垂直に配置されるように、針端700と先端部分との間の角度210を設定することが可能である。患者の中耳及び内耳のCTスキャン又はMRIスキャンを実施することができる。 外科医は、先端部分106の角度210を選択するために、患者の内耳及び中耳の解剖学的な角度を測定することができる。また、CT又はMRIスキャンに基づいて、外科医は、カラー108が丸窓内に着座したときに出口304が蝸牛内に適切に配置されるように、針端700の長さを選択することができる。 出口304の適切な位置は、蝸牛に損傷を与えないが、蝸牛を通る流体の分配を可能にする蝸牛内の深さであることができる。
【0066】
方法1300は、ハンドピースを介して患者にカニューレを移植することを含むことができる(BLOCK 1306)。カニューレ904は、ハンドピース100の出口を介して移植することができる。例えば、カニューレ904は、丸窓膜を突き刺すために使用されたハンドピース100の針端700から押し出すことができ、丸窓膜を通して挿入されることが可能である。いくつかの実施態様では、カニューレ904が挿入される長さは、ストッパー1102の位置に基づいて制御することができる。あるいは、カニューレ904は、ハンドピース100を使用することなく、手動で挿入され得る。例えば、カニューレ904が挿入される前に丸窓膜を突き破るために別の道具が使用され得るか、または、丸窓膜を突き破るためにカニューレ904自体が使用され得る。しかしながら、このようなアプローチは、実施するのが困難であり、中耳への視覚的及び空間的アクセスを提供するために、外科的に侵襲的な手順を必要とする場合がある。さらに、ハンドピース100自体は、カニューレを使用せずに薬物または他の治療物質を投与するために使用され得る。 しかしながら、そうすることは、慢性的な薬物投与に適合しないであろう。ハンドピースと共にカニューレを使用することで、これらの技術的課題の両方に対処することができる。
【0067】
方法1300は、丸窓内にストッパーを着座させることを含むことができる(BLOCK 1308)。また、図11を参照すると、とりわけ、カニューレ904は、ストッパ1102を含むことができる。ストッパー1102は、円錐形であり得、丸窓内または先端1100によって丸窓膜内に作られたピアス内に着座するように構成され得る。丸窓膜にストッパー1102を着座させると、先端部1100を内耳に所定長さ突出させることができる。いくつかの他の実施態様では、カニューレ904はストッパー1102を含まず、カニューレ904は、先端1100が丸窓膜に突き刺さると、シリコーンベースの接着剤で所定の位置に保持されることが可能である。
【0068】
方法1300は、患者の耳からハンドピース100を引き抜くことを含むことができる(BLOCK1310)。ハンドピース100は、移植されたカニューレを乱さないように、慎重に引き抜くことができる。したがって、ハンドピース100の除去は、カニューレを後に残すことができる。カニューレ904は、永久的または半永久的に内耳内に留まることができる。本明細書で上述したように、カニューレ904は、患者の耳内の丸窓膜、または別の解剖学的構造物に着座させることができる。いくつかの実施態様では、カニューレ904は、患者の中耳に着座させることができる。いくつかの実施態様では、カニューレ904は、患者の内耳に着座させることができる。カニューレ904の一部(例えば、出口1104を有する先端1100など)は、蝸牛(例えば、図1に描かれた蝸牛112など)のような内耳の解剖学的器官または構造内に延在することができる。
【0069】
カニューレ904は、慢性的な薬物送達に適合し得る。例えば、カニューレ904は、長期間にわたって患者に移植されたままであることができる。いくつかの実施態様では、方法1300はまた、患者にマイクロポンプを移植することを含むことができる。図9図11も参照すると、マイクロポンプは、図9および図10に図示されたマイクロポンプ902であり得る。マイクロポンプ902を移植することは、図9に図示されているように、患者の頭蓋骨付近の領域にマイクロポンプを移植するために追加の外科的処置を行うことを含むことができる。マイクロポンプ902を移植することは、カニューレ904の先端1100の出口1104と流体連通しているマイクロチャネルにマイクロポンプを結合させることを含むことができる。したがって、マイクロポンプ902は、マイクロチャネル、カニューレ904、及び患者の内耳の蝸牛又は他の器官に、薬剤リザーバからの流体などの流体を圧送することができる。マイクロポンプ902及び904は、永久的又は半永久的に移植することができるため、連続的又は長期的な薬物送達が可能である。
【0070】
マイクロポンプ902は、患者の内耳に注入される薬物又は他の流体を貯蔵するための薬物リザーバ200を含むことができる。マイクロポンプ902は、流体貯蔵コンデンサ1002を含むことができる。内耳に流体を注入した後、マイクロポンプ902は、内耳から流体を引き出し、マイクロポンプ902による注入からの正味の流体変位が注入段階及び引き出し段階を含むサイクルについて実質的にゼロであるように流体貯蔵キャパシタ1002に流体を貯蔵することができる。マイクロポンプ902は、薬物リザーバ200から内耳に流体を圧送することができ、流体貯蔵コンデンサ1002に貯蔵するために内耳から流体を引き抜くことができるポンプ1006を含むことができる。正味の流体変位をほぼゼロに維持することにより、内耳に余剰圧力が生じること、及びその中の解剖学的構造に対する潜在的な損傷を防止することができる。
【0071】
いくつかの実施態様では、方法1300は、内耳に流体を流すことを含むことができる。内耳に流体を流すことは、マイクロポンプ902をプライミングすること、内耳に流体を注入すること、及びその後内耳から流体を引き出すことを含むことができる。例えば、マイクロポンプ902をプライミングするために、薬剤リザーバ200の第1の端部と結合された第1の弁1008を開き、ポンプ1006を作動させて薬剤リザーバ200から出口906と結合された装填チャンバに薬剤含有流体を吸引することが可能である。第1の弁1008が閉じられると、薬物リザーバ200の第2の端部と結合された第2の弁1008が開かれ、装填チャンバ内に以前にあった(そして薬物含有流体によって置き換えられた)流体を、薬物含有流体が引き出された薬物リザーバ200の反対の端部に入れることができる。内耳に薬物含有流体を注入するために、流体貯蔵コンデンサ1002から出口906に向かって流体をポンピングすることができ、これにより、装填チャンバ内の薬物含有流体を出口906を通して強制的に排出させることができる。薬剤が内耳でしばらくの間拡散するようにされた後、マイクロポンプ902は、蝸牛から流体の体積を引き抜くことができる。引き出された体積は、蝸牛に注入された薬物の体積と実質的に同じ体積であることができる。いくつかの実施態様では、薬物リザーバ200内の化合物のレベルが所定のレベルより低くなったときに、追加の化合物又は薬物を外部リザーバから薬物リザーバ200に導入することができる。
【0072】
上記の方法は、他の方法による内耳への送達に適さない可能性のある大型または疎油性化合物を注入するためにも用いることができる。例えば、他の方法は、液体またはゲル製剤内にこれらの化合物を配置することによって、これらの化合物を内耳に送達することができる。次に、この製剤を円窓膜上に配置することができる。化合物は、丸窓膜を通る受動輸送によって蝸牛に通過することができる。この輸送機構は、大きな薬物や疎油性薬物には有効でない場合があり、そのような薬物は、ゆっくりとした能動輸送機構によってのみ丸窓膜を通過することができる。また、経円窓膜送達の薬物動態を予測することは困難である場合がある。さらに、丸窓膜送達は、内耳全体にわたる薬物の不均一な分布、および蝸牛内の薬物の不十分なバイオアベイラビリティをもたらす可能性がある。不均一な分布と蝸牛内の薬物の低レベルとを補償するために、大量の薬物が中耳に送達され、潜在的な局所毒性を生じさせる。経円窓膜薬物送達のためのシステム900を使用する上述の方法は、大分子化合物および疎油性化合物などの多くの種類の化合物の使用を可能にすることができる。上述の方法は、蝸牛のリンパ周囲液への直接アクセスを提供し、内耳内における化合物のより均等な分配を可能にし得る。化合物が内耳に均一に直接分配されるため、前記薬剤の量が少なくて済む可能性があり、他の無駄な技術に比べて明確な治療改善を提示することができる。
【0073】
図14および図15は、異なる送達方法にわたるPK(図14)およびPD(図15)のプロットを示す図である。ある薬物をモルモットの内耳に投与した。モルモットは3つの異なるグループに分けられた。 異なる群のモルモットに、異なる投与方法を介して薬物を投与した。 第一の投与方法は、薬剤の鼓膜内注入(IT)である。 第二の投与方法は、蝸牛切除術により内耳にカニューレを挿入する方法である。第3の投与方法は、丸窓膜を介した内耳へのカニューレの挿入を含んでいた。第3の投与方法の経円形窓膜法は、図13に関連して上述した方法と同様である。
【0074】
蝸牛切除術と経円窓膜の実験では、0.35 μgの薬剤を内耳に流した。IT実験については、50μgの薬剤を内耳に注入した。図14を参照すると、プロット1400は、蝸牛穿孔注入薬物対IT注入薬物について、注入薬物の総質量に正規化したPKを図示している。プロット1402は、経円窓膜注入薬物対IT注入薬物について、注入薬物の総質量に対して正規化されたPKを示す図である。プロット1400及びプロット1402に示されるように、PKは、図13に関連して上述した方法と同様の方法でマイクロポンプを用いて薬剤を注入した実験において最も高かった。図15を参照すると、プロット1500は、IT注入薬物に対する蝸牛注入薬物について、注入薬物の総質量に正規化されたPDを図示している。プロット1502は、経円窓膜注入薬物対IT注入薬物について、注入薬物の総質量に対して正規化されたPDを図示している。プロット1500及びプロット1502に示されるように、PDは、図13に関連して上述した方法と同様の方法でマイクロポンプを用いて薬剤を注入した実験において最も高かった。
【0075】
動作が特定の順序で図面に描かれているが、そのような動作は、示された特定の順序で、又は順次に実行する必要はなく、図示された全ての動作は実行される必要はない。本明細書に記載された動作は、異なる順序で実行することができる。
【0076】
様々なシステム構成要素の分離は、すべての実装において分離する必要はなく、記載されたプログラム構成要素は、単一のハードウェアまたはソフトウェア製品に含まれる。
【0077】
さて、いくつかの例示的な実施例を説明したが、前述は例示的に提示されたものであり、限定的なものではないことは明らかである。特に、本明細書に提示された例の多くは、方法行為またはシステム要素の特定の組み合わせを含むが、それらの行為およびそれらの要素は、同じ目的を達成するために他の方法で組み合わされてもよい。ある実施態様に関連して論じられた行為、要素、及び特徴は、他の実施態様における同様の役割を排除することを意図していない。
【0078】
本明細書で使用される言い回しおよび用語は、説明のためのものであり、限定的であると見なすべきではない。本明細書における「含む」、「備える」、「有する」、「含む」、「含む」、「によって特徴付けられる」、「それにおいて特徴付けられる」、およびそのバリエーションの使用は、その後に列挙された項目、その同等物、および追加の項目、ならびにその後に列挙された項目のみからなる代替実装を包含することを意図するものである。一実施態様では、本明細書に記載のシステムおよび方法は、記載された要素、行為、または構成要素のうちの1つ、2つ以上の各組み合わせ、またはすべてから構成されている。
【0079】
本明細書で使用される場合、用語「約」及び「実質的に」は、当業者によって理解され、それらが使用される文脈に応じてある程度変化することになる。 用語が使用されている文脈から当業者にとって明確でない用語の使用がある場合、「約」は特定の用語のプラスまたはマイナス10%までを意味することになる。
【0080】
単数形で言及される本明細書におけるシステムおよび方法の実装または要素または行為へのいかなる言及も、これらの要素の複数を含む実装を包含することもでき、本明細書における任意の実装または要素または行為への複数形の言及は、単一の要素のみを含む実装を包含することもできる。単数形または複数形の参照は、現在開示されているシステムまたは方法、それらの構成要素、行為、または要素を単一または複数の構成に限定することを意図していない。任意の行為または要素が任意の情報、行為、または要素に基づいていることへの言及は、行為または要素が任意の情報、行為、または要素に少なくとも部分的に基づいている実装を含む場合がある。
【0081】
本明細書に開示された任意の実装は、他の任意の実装又は実施形態と組み合わせることができ、「ある実装」、「いくつかの実装」、「ある実装」等への言及は、必ずしも相互に排他的ではなく、実装に関連して説明される特定の特徴、構造、又は特性が少なくとも1つの実装又は実施形態に含まれ得ることを示すことが意図されている。本明細書で使用されるそのような用語は、必ずしもすべてが同じ実装を指すわけではない。任意の実装は、本明細書に開示された態様及び実装と一致する任意の方法で、包括的又は排他的に、他の任意の実装と組み合わされ得る。
【0082】
本明細書および特許請求の範囲で使用される不定冠詞「a」および「an」は、明確に反対の指示がない限り、"少なくとも1つ "を意味すると理解されるべきである。
【0083】
「または」を用いて説明される任意の用語が、単一の用語、複数の用語、および説明される全ての用語のいずれかを示すことができるように、「または」への言及は、包括的なものとして解釈され得る。例えば、「『A』及び『B』の少なくとも1つ」という言及は、『A』のみ、『B』のみ、並びに『A』及び『B』の両方を含むことができる。構成する」または他のオープンな用語と組み合わせて使用されるこのような言及は、追加の項目を含むことができる。
【0084】
図面、詳細な説明、または請求項の技術的特徴の後に参照符号が付されている場合、参照符号は、図面、詳細な説明、および請求項の分かりやすさを高めるために付されたものである。したがって、参照符号は、その有無にかかわらず、請求項の要素の範囲に何ら限定的な影響を与えるものではない。
【0085】
本明細書に記載されたシステム及び方法は、その特徴から逸脱することなく、他の具体的な形態で具現化することができる。前述の実施態様は、記載されたシステムおよび方法を限定するのではなく、例示するものである。したがって、本明細書に記載されたシステムおよび方法の範囲は、前述の説明よりもむしろ添付の請求項によって示され、請求項の意味および等価性の範囲内に入る変更はそこに包含される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
【誤訳訂正書】
【提出日】2022-12-05
【誤訳訂正1】
【訂正対象書類名】明細書
【訂正対象項目名】全文
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願の相互参照>
本出願は、2019年11月21日に出願された「HAND TOOL FOR AIDING IN INSERTION OF A TRANS-ROUND WINDOW MEMBRANE CATHETER FOR MICROPUMP-MEDIATED ACUTE AND CHRONIC INNER-EAR DRUG DELIVERY」という題名の米国仮特許出願第62/938,561号に対する米国特許法第119条(e)の優先権を主張し、その全体を参照により本明細書に組み込む。
【背景技術】
【0002】
薬理学的技術の進歩は、突発性のノイズ及び加齢による難聴を処置するためのいくつかの化合物をもたらした。これらの新たな化合物は有望な結果を示しているが、その多くは、全身送達されるときに、血液蝸牛関門が原因で効果を発揮できず、患者の正円窓膜への付着による局所送達では、正円窓膜を通じての化合物の浸透度が低いことがあるため、効果が得られないことも多い。化合物の浸透度が低いと、送達される化合物の濃度レベルが治療しきい値未満となる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本開示は、医薬(又はより一般には化合物)を内耳に効果的に局所送達するための確固とした医療行為を提供することができる、システム及び方法を記述している。本システム及び方法は、正円窓膜を通じて挿入され、植込み型マイクロポンプに連結されたカニューレ(本明細書では、カテーテルとも呼ばれる)を使用する経正円窓膜(trans-round window membrane)方式の手法によって、化合物を内耳に送達することができる。マイクロポンプは、化合物を短期的又は長期的に送達することができる。マイクロポンプは、鼓室階の外リンパ液中に直接送達される化合物の量を制御することができる。本システム及び方法は、正円窓膜を通過する薬物の量が少ないこと、薬物が内耳全体に不均一に分配されること、及び、蝸牛内における薬物の生物学的利用能(bioavailability)が不十分なこと等の、鼓室内注射に起因する数多くの難点を克服することができる。本システム及び方法は、インビボ創薬における薬物動態研究と、ヒトの内耳疾患の処置との両方に適用することが可能である。経正円窓膜方式の薬物送達は、低分子と、タンパク質、ウイルス及びリポソーム等の大型の複雑な分子とを含む数多くの薬物の種類に適合可能である。
【0004】
本開示のシステム及び方法は、長期的な処置のためにカニューレを患者に植え込むことに伴う難点を克服するために使用することもできる。例えば、本開示は、本明細書においてハンドピースと呼ばれるツールを提供し、ハンドピースは、正円窓膜又は患者の耳の中にある他の解剖学的な膜を通じてカニューレを挿入することを容易化するために、使用することができる。カニューレは、ハンドピースが備えるチャネルに通すことが可能であり、また、ハンドピースを使用することで、正円窓膜に穿孔することができる。その後、ハンドピースは中耳から引き抜くことができるが、カニューレは、カニューレと正円窓膜との摩擦により、後方に留まる。正円窓膜内にカニューレを据え置くことと、カニューレが内耳の中に突出する深さを制御することとを容易化するために、カニューレは、ブレブ(bleb)又はストッパーを備えることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の少なくとも1つの態様は、流体を内耳に送達する方法を対象とする。本方法は、ハンドピースのツールシャフトによって画定されたチャネル内にカニューレを導入することを含むことができる。ハンドピースは、ツールシャフトに連結されており、且つ、チャネルと連絡した出口を備える、先端部分を備えることができる。ハンドピースは、出口から所定の距離だけ離れた先端部分と連結されたカラーを備えることができる。カラーは、患者の解剖学的構造物に据わり、且つ、先端部分が患者の蝸牛内に突出する距離を制御するように構成されてもよい。本方法は、ハンドピースの先端部分によって、患者の解剖学的構造物を覆っている解剖学的な膜に穿孔することを含むことができる。本方法は、ハンドピースの出口を介してカニューレを患者に植え込むことを含むことができる。カニューレは、マイクロポンプと連結された第1の端部、及び、ストッパーを備える第2の端部を備えることができる。ストッパーは、解剖学的な膜を通じて患者の蝸牛内へカニューレの先端を挿入できるように構成されてもよい。本方法は、カニューレのストッパーを患者の解剖学的構造物内に据え置くことを含むことができる。本方法は、患者の耳からハンドピースを抜き取ることを含むことができる。
【0006】
一部の実装形態において、本方法は、マイクロポンプを患者に植え込むことを含むことができる。マイクロポンプは、化合物を貯蔵している薬物貯蔵器を備える。一部の実装形態において、本方法は、マイクロポンプによって、薬物貯蔵器からカニューレを介して患者の蝸牛に化合物を圧送することを含むことができる。一部の実装形態において、本方法は、薬物貯蔵器からカニューレを介して蝸牛に化合物を圧送したことに応答して、マイクロポンプによって患者の蝸牛から所定の体積の流体を抜き取ることを含むことができる。一部の実装形態において、マイクロポンプは、第1のバルブ、第2のバルブ、ポンプ、装入チャンバ、及び、カニューレと流体連通した出口を備えることができる。
【0007】
一部の実装形態において、本方法は、第1のバルブを開き、ポンプを作動させることによって、薬物貯蔵器から装入チャンバ内に化合物を抜き出すことを含むことができる。一部の実装形態において、本方法は、第1のバルブを閉じ、第2のバルブを開き、ポンプを作動させることによって、化合物を、カニューレの出口を通じて押し出すことを含むことができる。一部の実装形態において、本方法は、患者の耳からハンドピースを抜き取る前に、ストッパー又は糊のうちの少なくとも一方を使用して、カニューレを所定位置に固定することを含むことができる。一部の実装形態において、本方法は、外部貯蔵器を介してさらなる体積の化合物を薬物貯蔵器に供給することを含むことができる。一部の実装形態において、本方法は、患者のコンピュータ断層撮影によるスキャン又は磁気共鳴イメージングによるスキャンに応じて、ハンドピースの先端部分の長さを選択することを含むことができる。
【0008】
本開示の少なくとも1つの他の態様は、システムを対象とする。システムは、カニューレを備えることができる。カニューレは、マイクロポンプと連結された第1の端部を有することができる。カニューレは、ストッパーを備える第2の端部を有することができる。ストッパーは、解剖学的な膜を通じて患者の蝸牛内へカニューレの先端を挿入できるように構成されてもよい。システムは、カニューレを患者に導入するように構成されたハンドピースを備えることができる。ハンドピースは、ハンドピースのツールシャフトによって画定されたチャネルを備えることができる。チャネルは、カニューレを受け入れるように構成されてもよい。ハンドピースは、ツールシャフトに連結されており、且つ、チャネルと連絡した出口を備える、先端部分を備えることができる。先端部分は、患者の解剖学的な膜に穿孔するように構成されてもよい。ハンドピースは、出口から所定の距離だけ離れた先端部分と連結されたカラーを備えることができる。カラーは、患者の解剖学的構造物に据わり、且つ、先端部分が患者の蝸牛内に突出できる距離を制御するように構成されてもよい。ハンドピースは、カニューレを患者の解剖学的構造物内に据え置いたことに応答して、患者の耳から抜き取られるように構成されてもよい。
【0009】
一部の実装形態において、マイクロポンプは、患者に植え込むこむことができる。一部の実装形態において、マイクロポンプは、化合物を貯蔵している薬物貯蔵器を備えることができる。一部の実装形態において、マイクロポンプは、薬物貯蔵器からカニューレを介して患者の蝸牛に化合物を圧送することができる。一部の実装形態において、マイクロポンプは、薬物貯蔵器からカニューレを介して蝸牛に化合物を圧送した後に、患者の蝸牛から所定の体積の流体を抜き出すことができる。一部の実装形態において、マイクロポンプは、第1のバルブ、第2のバルブ、ポンプ、装入チャンバ、及び、カニューレと流体連通した出口を備えることができる。一部の実装形態において、マイクロポンプは、第1のバルブを開き、ポンプを作動させることによって、薬物貯蔵器から装入チャンバ内に化合物を抜き出すことができる。一部の実装形態において、マイクロポンプは、第1のバルブを閉じ、第2のバルブを開き、ポンプを作動させることによって、化合物を、カニューレの出口を通じて押し出すことができる。
【0010】
一部の実装形態において、ハンドピースは、先端部分をツールシャフトに連結している角度付き部分を備えることができる。角度付き部分は、チャネル及び先端部分の出口と連絡した第2のチャネルを有することができる。一部の実装形態において、角度付き部分又は先端部分のうちの少なくとも一方は、ツールシャフトから分離可能であり、また、スナップ式コネクタ、フリクションフィット接続、プレスフィット接続、きざみ付きナット又はルアーロック式接続のうちの1つ以上を用いてつなぎ合わされてもよい。一部の実装形態において、角度付き部分、先端部分及びツールシャフトは、ステンレス鋼又はプラスチックのうちの少なくとも1つを含む間断のない単一の材料ピースから製造されている。一部の実装形態において、角度付き部分又は先端部分のうちの少なくとも一方は、ツールシャフトに連結された状態のままで、ツールシャフトの長さに対して平行な軸を中心にして回転することができる。
【0011】
一部の実装形態において、ハンドピースの先端部分は、ニードル先端部を備える。一部の実装形態において、ニードル先端部は、患者の解剖学的な膜に穿孔することができる。一部の実装形態において、先端部分の出口は、先端部分の遠位端に配置されている。一部の実装形態において、先端部分の遠位端は、出口と先端部分との間で角度を成し、この角度は、70°~170°、75°~130°、90°~120°又は110°~120°である。一部の実装形態において、ツールシャフトの長さは、約130mm~約170mm、約140mm~約160mm又は約140mm~約150mmである。
【0012】
上記及び他の態様及び実装形態については、以下で詳細に論述する。上記の情報及び下記の詳細な説明は、様々な態様及び実装形態を説明する例を含み、特許請求された態様及び実装形態の性質及び特徴を理解するための概要又は枠組みを提供する。図面は、様々な態様及び実装形態を例示して理解を深めさせるものであり、本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する。態様同士を組み合わせることも可能であり、本発明の一態様の文脈において記載された特徴を他の態様と組み合わせることができることは容易に理解されよう。態様は、任意の好都合な形態で実装することができる。
【0013】
添付の図面は、縮尺どおりに描かれることを意図したものではない。様々な図面中の類似の参照番号及び名称は、類似の要素を示している。わかりやすくするために、すべての構成要素がすべての図面中において参照符号を付与されているとは限らないこともあり得る。添付の図面と一緒に用いられる下記の記述を参照することにより、本開示に関する上記及び他の目的、態様、特徴及び利点はより明白になり、より深く理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】1つ以上の実装形態による、流体を患者の内耳に送達する例示的なハンドピースである。
図2】1つ以上の実装形態による、図1に示された例示的なハンドピースの側面図である。
図3】1つ以上の実装形態による、図1に示された例示的なハンドピースの断面図である。
図4】1つ以上の実装形態による、図1に示された例示的なハンドピースの側面図である。
図5】1つ以上の実装形態による、図1に示されたハンドピースの例示的な先端部分である。
図6】1つ以上の実装形態による、コンプレッションフィッティングを有する例示的なハンドピースである。
図7】1つ以上の実装形態による、図1に示された例示的なハンドピースの先端の拡大図である。
図8A】1つ以上の実装形態による、正円窓に挿入された例示的なハンドピースの先端である。
図8B】1つ以上の実装形態による、正円窓に挿入された例示的なハンドピースの先端である。
図9】1つ以上の実装形態による、化合物を内耳に注入するための例示的なシステムである。
図10】1つ以上の実装形態による、図9に示された例示的なシステムに使用するための例示的なマイクロポンプの上面図である。
図11】1つ以上の実装形態による、図9に示された例示的なシステムに使用することができるカニューレの例示的な先端である。
図12】患者の正円窓膜内へカニューレを据え置くことを容易にするために用いることが可能な構成で、1つ以上の実装形態による図1の例示的なハンドピースと、図9の例示的なカニューレとを一緒に図示している。
図13】1つ以上の実装形態による、図9に示された例示的なシステムを使用して流体を患者の内耳に流し込むための例示的な方法のブロック図である。
図14】1つ以上の実装形態による、異なる送達方法の薬物動態(PK)のプロットである。
図15】1つ以上の実装形態による、異なる送達方法の薬力学(PD)のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
上記で導入され以下でさらに詳述する様々な概念は、記載された概念がいかなる特定の実装様式にも限定されないため、数多くの様式のいずれかによって実装することができる。特定の実装形態及び用途の例は、主に例示を目的として提供されている。
【0016】
本解決法は、経正円窓膜方式の薬物送達を提供する。概して、本システムは、可撓性のあるカニューレに接続されたマイクロポンプを備えることができる。カニューレは、ハンドピース型ツールを使用して、正円窓膜を通じて挿入することができる。本解決法は、長期と短期の両方における経正円窓膜方式の薬物送達のために使用することができる、小型の植込み型デバイス又はウェアラブルデバイスとして機能することができる。この構成を用いた場合、マイクロポンプは、数日~数か月の期間にわたって、内部貯蔵器から少量の薬物を絶え間なく又は断続的に送達することができる。一部の実装形態において、シリンジポンプは、短期的な医療行為のために使用することができる。マイクロポンプは、カニューレの中を通るように流体の流れを動かして、あらかじめプログラムされたスケジュールで複数回分の用量を送達することができる。本解決法は、一連のいくつかの作用物質を時間設定して連続で送達するのに適している。
【0017】
本解決法は、薬物を全身送達する代わりに(又は薬物を全身送達することと併用して)用いることができる。全身送達は、本解決法によって実現される化合物の局所送達と比較すると、より多くの用量の化合物を必要とする場合がある。全身送達に伴い用量が多くなることは、望ましくない副作用を発生させることが多く、場合によっては、この副作用によって、患者が処置の継続を思いとどまることもある。さらに、全身投与された薬物は、一旦薬物が肝臓系を通過すると、肝細胞の酵素によって修飾されることが多く、さらには薬物活性も低下し、内耳の治療効果が不十分になる。化合物を内耳に直接送達することにより、化合物が蝸牛液に直接注入されるため、本解決法は、薬物の全身送達に伴うこれらの課題を克服することができる。化合物を蝸牛液に直接注入することにより、全身送達と比較すると、用量をより少なくすることができる。
【0018】
本開示は、本明細書においてハンドピースと呼ばれるツールも提供し、ハンドピースは、正円窓膜等の患者の解剖学的な膜を通じてカニューレを挿入することを容易化するために使用することができる。ハンドピースは、例えば、外科医によって操作することが可能である。カニューレは、ハンドピースが備えるチャネルに通すことができ、また、ハンドピースを使用することで、正円窓膜に穿孔することができる。その後、ハンドピースは中耳から引き抜くことができるが、カニューレは、カニューレと正円窓膜との摩擦によって後方に留まる。正円窓膜内にカニューレを据え置くことと、カニューレが内耳の中に突出する深さを制御することとを容易化するために、カニューレは、ブレブ又はストッパーを備えることもできる。ハンドピース及びカニューレ並びにこれらを両方とも使用するための技法については、以下でさらに記述する。
【0019】
図1は、流体を患者の内耳に送達する、例示的なハンドピース100を示している。流体は、任意の治療物質又は治療剤であってもよい。ハンドピース100は、ツールシャフト102、角度付き部分104及び先端部分106を備える。先端部分106は、カラー108をさらに備えることができる。ハンドピース100は、正円窓114を介して流体を蝸牛112に経外耳道送達するために、患者の外耳道110に挿入される。先端部分106を使用することで正円窓膜に穿孔でき、これにより、蝸牛112へ流体を送達することが可能になる。
【0020】
ツールシャフト102は、外科医の手又はロボット手術用デバイス内に保持することが可能であり、また、ツールシャフト102は、ツールシャフト102の中心を通る空洞又はチャネルを画定することができる。チャネルは、例えば、図3と一緒に本明細書において後述するマイクロ流体チャネル300に類似していてもよい。ツールシャフト102は、アルミニウム、ステンレス鋼又は他の合金若しくは金属等の金属を含む種々の材料から製造することができる。一部の実装形態において、ツールシャフト102は、とりわけ、エチレンクロロトリフルオロエチレン(ETCFE)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ペルフルオロアルコキシアルカン(PFA)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニルスルホン(PPSU)又はポリスルホン(PSU)等、1つ以上のプラスチック又はポリマーから製造することができる。ツールシャフト102は、患者の耳の中で先端部分106を容易に位置決めできるようにするために、全幅より長さの方が大きい、細いシャフトとして製造することができる。しかしながら、患者の所望の解剖学的構造物内でのハンドピースの位置決めを容易にするために、ツールシャフト102の他の構成も可能であることを理解すべきである。
【0021】
角度付き部分104は、正円窓膜等の患者の解剖学的構造物内で先端部分106を容易に位置決めするために、角度が付けられていてもよい。角度付き部分104は、ハンドピース100の独立した構成要素として製造することが可能であり、この結果、角度付き部分104は、必要に応じて、ツールシャフト102に取り付け、又はツールシャフト102から取り外すことができる。独立した複数の用具として製造された場合、角度付き部分104は、とりわけ、ガスケット、Oリング、スナップ式コネクタ、フリクションフィット接続、プレスフィット接続又はルアーロック式接続等のある種類のコネクタを使用して、ツールシャフト102に連結されていてもよい。角度付き部分104は、ツールシャフト102のマイクロ流体チャネルと連絡した第2のマイクロ流体チャネルを備えることが可能であり、この結果、流体又はカニューレを、ツールシャフト102のチャネルと、角度付き部分104と、先端部分106とを通じて、先端部分106の出口に移送することができる。一部の実装形態において、ツールシャフト102及び角度付き部分104は、本明細書に記載されたように、1つの材料又は複数の材料の組合せからなる間断のない単一のピースとして製造することもできる。
【0022】
角度付き部分104の角度は、ハンドピース100を使用した医療行為を受ける患者の解剖学的な特徴に応じて選択することができる。例えば、角度付き部分104の角度が異なれば、外耳道110の中で先端部分106を容易に位置決めすることができる。角度付き部分は、アルミニウム、ステンレス鋼又は他の合金若しくは金属等の種々の材料から製造することができる。一部の実装形態において、角度付き部分104は、とりわけ、エチレンクロロトリフルオロエチレン(ETCFE)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ペルフルオロアルコキシアルカン(PFA)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニルスルホン(PPSU)又はポリスルホン(PSU)等の、1つ以上のプラスチック又はポリマーから製造することができる。角度付き部分104は、先端部分が患者の外耳道110又は患者の中耳をよりうまく通り抜けることができるようにすべく、ある程度の可撓性を有するように製造することができる。一部の実装形態では、角度付き部分104が存在せず、代わりに、ハンドピース100は、ツールシャフト102及び先端部分106を備える。
【0023】
先端部分106は、ツールシャフト102の一部又は角度付き部分104の一部として製造することができる。一部の実装形態において、先端部分106は、ツールシャフト102又は角度付き部分104のうちの一方から取り外し可能なものであってよい。一部の実装形態では、ハンドピースの部分のうち任意の組合せを、単一のピースとして製造することができる。例えば、先端部分106及び角度付き部分104が、1つ以上の材料からなる単一のピースとして製造されてもよいし、ツールシャフト102及び角度付き部分104が、1つ以上の材料からなる単一のピースとして製造されてもよいし、又は、ツールシャフト102及び先端部分106が、(例えば、角度付き部分104が存在しない場合の実装形態では)1つ以上の材料からなる単一のピースとして製造されてもよい。先端部分106は、アルミニウム、ステンレス鋼又は他の合金若しくは金属等の種々の材料から製造することができる。一部の実装形態において、先端部分106は、とりわけ、エチレンクロロトリフルオロエチレン(ETCFE)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ペルフルオロアルコキシアルカン(PFA)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニルスルホン(PPSU)又はポリスルホン(PSU)等の、1つ以上のプラスチック又はポリマーから製造することができる。
【0024】
図1に図示するように、カニューレ又は他の流体の送達を目的として、患者の外耳道110を通じて中耳内へ容易に位置決めするために、先端部分106は、先端部分106の長さに沿って先細状であってもよい。先端部分106は、ツールシャフト102又は角度付き部分104のマイクロ流体チャネルを通じて移送された流体を、先端部分106を通じて先端部分106の出口に移送することができるように、先端部分106の中心部分にマイクロ流体チャネルを画定することができる。先端部分はカラー108を備えることができ、カラー108は、先端部分106の溝付き領域の周りに据え置くこともできるし、又は、糊若しくは別の種類の接着剤を使用して先端部分106に固定することもできる。一部の実装形態において、カラー108は、先端部分106と同じ材料ピースから製造されている。
【0025】
先端部分106は、正円窓114等の患者の解剖学的構造物に据わるように構成された形状を有することができる。先端部分106は、ツールシャフト102、角度付き部分104及び先端部分106の中に画定されたマイクロ流体チャネルのための出口を有することができ、ツールシャフト102、角度付き部分104及び先端部分106はそれぞれ、互いに連絡していてもよい。先端部分106の出口は、先端部分106のニードル先端部に配置されていてもよい。先端部分106のニードル先端部は、患者の蝸牛112の中にまで延在することができる。
【0026】
図2は、例示的なハンドピース100の側面図を示している。ハンドピース100は、ツールシャフト102、角度付き部分104及び先端部分106を備える。外科医は、ツールシャフト102を使用して、ハンドピース100と、先端部分106の位置とを保持及び操作することができる。ツールシャフト102の外面は、外科医によるハンドピース100のグリップ性の向上を可能にするために、ローレットを備えることができる。一部の実装形態において、ハンドピース100の1つ以上の部分は、手術ロボットに連結されていてもよい。このような実装形態において、ハンドピース100の一部は、ハンドピースを手術ロボットに連結することができるファスナー又は他の連結装置若しくは連結用構造物を備えることができる。ツールシャフト102は、近位端200及び遠位端202を備えることができる。ツールシャフト102は、約4mm、5mm又は約6mmの直径を有することができる。ツールシャフト102は、約90mm~約150mm、約90mm~約130mm又は約100mm~約120mmの長さを有することができる。一部の実装形態において、ツールシャフト102の長さは、110mmである。
【0027】
ツールシャフト102の遠位端は、角度付き部分104の近位端204と連結されていてもよい。先端部分106は、角度付き部分104の遠位端206と連結されている。角度付き部分104は、侵襲性が最小限の医療行為中に、先端部分106が外耳道(例えば、図1に図示の外耳道110)を通り抜け、正円窓又は患者の耳の中にある別の解剖学的構造物に到達することができるように、角度を付けられている。角度付き部分104は、ツールシャフト102と先端部分106との間で角度208を成している。角度208は、約170°~約90°、約170°~約110°、約170°~約120°、約170°~約140°又は約165°~約155°であってよい。角度208は、ツールシャフト102の長手方向軸と、先端部分106の長手方向軸とが成す角度として規定することができる。角度208は、患者の正円窓への先端部分106の経外耳道位置決めを可能にするように構成される。角度208は、外科医が先端部分106を正円窓に位置決めし、且つ、外科医が外耳道を視認できるように、選択することができる。
【0028】
先端部分106は、角度付き部分104の遠位端206と連結されていてもよい。先端部分106の遠位部分は、角度210を付けられていてもよい。角度210は、約70°~約140°、約75°~約130°、約90°~約120°、約100°~約120°又は約110°~約120°であってよい。例えば、角度210は、約105°、106°、107°、108°、109°、110°、111°、112°、113°、114°、115°、116°、117°、118°、119°又は120°であってもよい。角度210は、外耳道を介してハンドピース100を挿入するときに、先端部分106の遠位部分を正円窓に対して実質的に垂直に位置決めするように選択することができる。角度210は、患者の内耳又は中耳の解剖学的構造に応じて選択することができる。例えば、外科医は、正円窓及び正円窓窩の位置及び角度に応じて、適切な角度210を有するハンドピース100を選択することができる。一部の実装形態において、外科医は、中耳及び内耳のCT又はMRI画像を使用して、どの角度210を選択すべきかを決定することができる。ハンドピース100は、異なる角度210の構成で製造することもできる。一部の実装形態において、外科医は、医療行為中に角度210を変更するために、先端部分106を曲げることができる。
【0029】
先端部分106は、カラー108を備えることができる。カラー108は、正円窓内に据わるように構成されてもよい。例えば、カラー108は、患者の中耳の中にある正円窓に順応し、又は、患者の耳の中にある異なる解剖学的構造物に順応することができる、半可撓性材料から製造されていてもよい。カラー108は、ハンドピース100のうち所望よりも多くの部分が患者の蝸牛(例えば、図1に図示の蝸牛112)内に伸長することを防止する程度に充分剛直なものであってもよい。カラー108の可撓的な順応性により、患者の中耳の1つ以上の解剖学的構造物との間にシールを形成することができる。例えば、先端部分106が正円窓膜に穿孔したら、カラー108は正円窓を密封することができる。カラー108は、蝸牛内に挿入することができる先端部分106の端部の深さも制御することができる。カラー108は、医療用シリコーン、又は、別の種類の半可撓性若しくは生体適合性材料を含むことができる。カラー108の形状は、実質的にドーム状又は半球状であってもよい。カラー108の直径は、最も広い部分で、約0.5mm~約3mm、約0.5mm~約2.5mm、約1mm~約2mm又は約1.5mm~約2mmであり得る。
【0030】
ハンドピース100は、約130mm~約170mm、約140mm~約160mm又は約140mm~約150mmの全長212を有することができる。ツールシャフト102、角度付き部分104及び先端部分106は別々の部分として記述されているが、これらのそれぞれを単一又は複数のピースとして製造することもできる。例えば、ハンドピース100は、1個のピース、2個の別個のピース又は3個の別個のピースを含むことができる。ハンドピース100は、ツールシャフト102、角度付き部分104及び先端部分106のいずれかの間の境界部で分離可能あってもよい。一部の実装形態において、ツールシャフト102、角度付き部分104及び先端部分106の間に境界部があったとしても、ツールシャフト102、角度付き部分104若しくは先端部分106のうちの1つ以上が間断のない単一の材料ピースから形成された場合、又は、ツールシャフト102、角度付き部分104若しくは先端部分106のうちの1つ以上が恒久的に若しくは半永久的につなぎ合わされている場合等に、ツールシャフト102、角度付き部分104及び先端部分106が分離可能であることを示唆しているわけではない。例えば、ツールシャフト102、角度付き部分104及び先端部分106は、単一のピースとして製造されていてもよい。他の実装形態において、角度付き部分104及びツールシャフト102は、第1のピースを形成することができ、先端部分106は、第2のピースを形成することができる。一部の実装形態において、ハンドピース100は、再使用可能なものである。他の実装形態において、ハンドピース100は、使い捨て式のものである。ハンドピース100は、医療用として承認された滅菌可能な材料から製造されていてもよい。例えば、ハンドピース100は、316ステンレス鋼若しくは本明細書に記載された任意の他の種類の金属、又は本明細書に記載された滅菌可能なプラスチック若しくはポリマーから製造されていてもよい。
【0031】
図3は、例示的なハンドピース100の断面図を示している。ハンドピース100は、マイクロ流体チャネル300を備える。マイクロ流体チャネル300は、入口302及び出口304を備える。入口302は、貯蔵器と連結されていてもよい。貯蔵器については、図9及び図10と関連してさらに記述する。マイクロ流体チャネル300は、約22ゲージを有することができる。マイクロ流体チャネルのゲージは、約12~28、約16~約24、約18~約22又は約20~22であってもよい。マイクロ流体チャネル300は、約10μL~約25μL、約15μL~約25μL又は約20μL~約25μLのデッドボリュームを有してもよい。
【0032】
マイクロ流体チャネル300は、別々の部分を備えることもできる。例えば、ツールシャフト102、角度付き部分104及び先端部分106はそれぞれ、マイクロ流体チャネル300の別々の部分を備えることができる。これらの別々の部分は、間断のない単一のチャネルであってもよい。一部の実装形態において、マイクロ流体チャネル300は、これらの別々の部分のうちの1つ以上の間の境界部で分離可能なものである。一部の実装形態では、マイクロ流体チャネル部分同士が、ハンドピース100の別々の部分間の境界部の付近で分離可能である。例えば、先端部分106内のマイクロ流体チャネル部分は、(図4に示されたように)先端部分106を超えて延在することができ、角度付き部分104内のマイクロ流体チャネル部分は、遠位端206より手前で止まり、この結果、先端部分106から延在するマイクロ流体チャネルの部分を、角度付き部分104が受け入れることができる。一部の実装形態において、ハンドピース100は、複数のマイクロ流体チャネル300を備えることができる。例えば、ハンドピース100は、異なる治療剤を送達するための異なるマイクロ流体チャネル300を備えることもできる。一部の実装形態では、第2のマイクロ流体チャネル300を使用して、蝸牛から流体を取り除くことができる。マイクロ流体チャネル300は、図9と一緒に本明細書において記述したカニューレ904等のカニューレを患者の蝸牛112の中に用意し、又は据え置くように構成されてもよい。
【0033】
図4は、例示的なハンドピース100の側面図を示している。一部の実装形態において、ハンドピース100の部分のうちの1つ以上は、互いに分離可能である。図4は、分離可能な先端部分106を有する例示的なハンドピース100を示している。先端部分106は、ハンドピース100の滅菌を容易にするために、ツールシャフト102及び角度付き部分104から分離することができる。先端部分106は、異なる回転角で先端部分106を角度付き部分104と再連結できるように、角度付き部分104から分離可能なものであってよい。先端部分106は、角度付き部分104から先端部分106を分離しなくても、角度付き部分104に対して回転させることができる。先端部分106は、外科医による正円窓へのアクセスを改善するために、角度付き部分104に対して回転させることができる。例えば、外科医又は手術ロボットは、患者の解剖学的構造の多様性を考慮するために、先端部分106の初期位置を適合させることができる。ハンドピース100は、分離可能な部分間の境界部に、ガスケット又はOリングを備えることができる。分離可能な部分同士は、スナップ式コネクタ、フリクションフィット若しくはプレスフィット接続又はルアーロック式接続によってつなぎ合わされてもよい。
【0034】
図5は、例示的なハンドピース100のための例示的な先端部分106を示している。図5に示された先端部分106は、ハンドピース100の角度付き部分104及びツールシャフト102から分離されている。先端部分106は、先端500を備えることができる。先端500は、先端部分106のボディから延在するマイクロ流体チャネル300の一部であってもよいし、又は、このマイクロ流体チャネル300の一部を含んでもよい。一部の実装形態では、先端部分106のすべてを、角度付き部分104に対して回転させることができる。他の実装形態では、先端部分106の中で先端500を回転させることができる。いずれの例においても、先端500は、図4に示された位置から点線によって示された第2の位置502まで回転させることができる。図示のように、先端500は、正円窓等の患者の中耳内にある解剖学的構造物へカラー108を据え置くことを容易化するように、曲げられ又は角度を付けられていてもよい。先端500の屈曲部分は、先端部分106の出口と、先端部分106のボディとの間に角度を成すことができ、この角度は、約90°~約175°である。
【0035】
図6は、コンプレッションフィッティング600を有する例示的なハンドピース100を示している。コンプレッションフィッティング600は、きざみ付きナットであってもよい。コンプレッションフィッティング600によって、角度付き部分104を先端部分106と連結することができる。コンプレッションフィッティング600を緩めることで、角度付き部分104に対して先端部分106を回転させることができる。外科医は、回転の度数を選択したら、コンプレッションフィッティング600を締めて、角度付き部分104と先端部分106との間の回転の度数を所定位置にロックすることができる。他の実装形態では、先端部分106に対する先端部分106の回転を可能にするフリクションフィットによって、先端部分106及び角度付き部分104を一緒に保持することが可能である。このような実装形態では、先端部分106及び角度付き部分104を、所望の回転の度数に回転させ、次いで、ツールシャフト102のフリクションフィット部分に押し込むことで、外科手術のために回転の度数を固定することができる。取り外し式の先端及び角度付き部分により、ハンドピース100を使用した医療行為を受ける患者の解剖学的特性に適合した先端の材料及び寸法の選択を可能にする。
【0036】
図7は、例示的なハンドピース100の先端500の拡大図を示している。先端500は、ニードル端部700を備えることができる。ニードル端部700は、出口304を備える。ニードル端部700は、鈍端であってもよいし、又は、突端を形成するように面取りされていてもよい。ニードル端部700は、正円窓膜又は患者の耳の中にある別の解剖学的構造物に穿孔するように構成されてもよい。ニードル端部700は、約1mm~約4mm、約2mm~約3mm又は約2.5mm~約3mmの長さだけ、カラー108を超えて延在することができる。例えば、ニードル端部700は、2.7mmの長さを有することができる。ニードル端部700は、約25~約30、約26~約30又は約27~約30のゲージサイズを有することができる。一旦カラー108が正円窓内に据え置かれたら、ニードル端部700のみが蝸牛内に突出する。カラー108は、蝸牛(例えば、図1に図示された蝸牛112等)内に突出するニードル端部700の深さを制御することができる。
【0037】
ニードル端部700は、ニードル端部700が蝸牛内に突出しすぎることを防止することができる。ニードル端部700は、ニードル端部700が蝸牛内に突出しすぎて蝸牛を損傷させることを防止することができる。カラー108は、治療物質が蝸牛(例えば、図1に図示の蝸牛112等)内に適切に分散されるように、出口304を蝸牛内で適切に位置決めすることができる。例えば、出口304が蝸牛内の浅すぎる位置に位置決めされた場合、治療物質は、正円窓の付近に集中し、蝸牛内に分散しない可能性がある。出口304が蝸牛内の深すぎる位置に位置決めされた場合、ニードル端部700が蝸牛に損傷又は外傷を生じさせる可能性がある。一部の実装形態では、外科医が先端500を曲げて角度210を変えることができるように、先端500が展性材料から製造されている。カラー108は、接着剤によって先端500と連結されていてもよい。一部の実装形態において、先端500は、カラー108が据え置かれる溝を備えることができる。
【0038】
図8A及び図8Bは、正円窓に挿入された先端500を示している。図8Aは、先端500が正円窓114又は患者の耳の中にある別の種類の解剖学的構造物に挿入されている状態の、外耳道を通じて挿入されたハンドピース100を示している。図8Bは、図8Aの正円窓114に挿入された先端500の拡大図を示している。先端500を用いることで、正円窓膜に穿孔することができる。先端500は、正円窓114に挿入することができる。カラー108は、正円窓114内に据え置くことが可能であり、また、流体が蝸牛112内に注入されているときには、正円窓114を密封することができる。カラー108は、正円窓114の直径より小さい直径から、正円窓114の直径より大きい直径にかけて、先細状である。カラー108が正円窓114に押し付けられると、カラー108は、正円窓114を塞ぐことができる。カラー108は、蝸牛112内への先端500の挿入の深さを制御するためにも使用される。例えば、カラー108は、先端500がカラー108を超えて蝸牛内に挿入されることを防止することができる。カラー108のうち、正円窓114の直径より大きい直径を有する部分により、先端500が蝸牛112にさらに挿入されることがないように、先端500を実質的に止めることができる。先端500の出口116に向けてカラー108を移動させると、先端500を挿入可能な深さが浅くなる。カラー118は、先端500が蝸牛112内に過度に挿入されることを防止することができる。
【0039】
図9は、化合物を内耳に注入するための例示的なシステム900を示している。システム900は、マイクロポンプ902を備えることができる。システム900は、カニューレ904を備えることができる。カニューレ904は、カテーテル904と呼ばれることもある。カニューレ904は、マイクロポンプ902の出口906と連結されていてもよい。カニューレ904は、正円窓膜908を通じて内耳に挿入することができる。カニューレ904は、本明細書の上記に記載されたハンドピース100を使用して、正円窓膜908を通じて挿入することができる。
【0040】
マイクロポンプ902については、とりわけ、図10と関連してさらに記述する。概して、マイクロポンプ902は、往復運動式の自動流体注入システムであり得る。マイクロポンプ902は、一体型薬物貯蔵器を備えることができる。薬物貯蔵器内に貯蔵された薬物は、化合物と呼ばれることもあり、薬物貯蔵器は、化合物貯蔵器と呼ばれることもある。マイクロポンプ902は、化合物貯蔵器からカニューレ904を介して内耳に所定の間隔で化合物を吐出することができる。マイクロポンプ902は、化合物を内耳に注入することと、内耳に加えられる正味体積が実質的に0になるように内耳から流体を抜き出すこととを両方とも行うように構成されてもよい。マイクロポンプ902は、マイクロポンプからの流体の抜き取り及びマイクロポンプへの注入を制御することができる、1個以上の内部ポンプ及びバルブを備えることができる。長期送達用途の場合、マイクロポンプ902は、頭部に装着されてもよいし、又は植え込まれてもよい。例えば、図9に示されているように、マイクロポンプ902は、密封されたハウジングの中に収容することが可能であり、また、耳の後ろ又は近くの頭皮に植え込むこともできる。
【0041】
システム900は、カニューレ904をさらに備える。カニューレ904は、鋭利で滑らかな先端を備えることができる。例えば、カニューレ904の先端は、鋭利にした面取り部(bevel)を備えることができる。鋭利で滑らかな先端により、カニューレ904で正円窓膜908に穿孔することが可能になり得る。一部の実装形態において、鋭利で滑らかな先端により、正円窓膜908を崩壊させることなく、カニューレ904で正円窓膜908に穿孔することが可能になり得る。カニューレ904については、とりわけ、図11と関連してさらに記述する。
【0042】
図10は、例示的なマイクロポンプ902の上面図を示している。マイクロポンプ902は、薬物貯蔵器200及び流体貯蔵キャパシタ1002を備えることができる。マイクロポンプ902から出口906を介して、薬物含有流体を吐出することができる。マイクロポンプ902は、ポンプ1006を備えることができる。マイクロポンプ902は、複数のバルブ208及び流体キャパシタ1004を備えることができる。
【0043】
マイクロポンプ902は、多層構造デバイスであってもよい。マイクロポンプ902は、流体配給層を備えることができる。例えば、流体配給層は、薬物貯蔵器200、流体貯蔵キャパシタ1002、流体キャパシタ1004、チャネル1010及び装入チャンバ1012を備えることができる。マイクロポンプ902は、1つ以上のアクティブ層を備えることができる。アクティブ層は、バルブ208及びポンプ1006のアクチュエータ、バルブ208及びポンプ1006を制御するコントローラ、並びに、マイクロポンプ902に電力を供給するための電源を備えることができる。流体配給層は、膜によってアクティブ層から分離されていてもよい。流体配給層は、ポリエーテルイミド(PEI)を含むことができる。流体配給層とアクティブ層を分離している膜としては、ポリイミド及びバイトン(登録商標)等の可撓性のある膜を挙げることができる。
【0044】
マイクロポンプ902は、薬物貯蔵器200を備えることができる。薬物貯蔵器200は、流体配給層のうちの1つ以上の中に機械加工(例えば、レーザーエッチング)されてもよい。薬物貯蔵器200は、サーペインタイン型チャネル構造又は他のチャネル構造として構成されてもよい。薬物貯蔵器200は、流体を入口に圧送することにより、薬物を薬物貯蔵器200の出口から出てチャネル1010のうちの1つに入るように押し出すことができるような入口及び出口を有するチャネルとして構成されてもよい。薬物貯蔵器200は、約300μm~約1200μm、約400μm~約1000μm、約500μm~約900μm、約600μm~約800μm又は約700μm~約800μmのチャネル幅を有することができる。薬物貯蔵器200は、約300μm~約1200μm、約400μm~約1000μm、約500μm~約900μm、約600μm~約800μm又は約700μm~約800μmのチャネル高さを有することができる。薬物貯蔵器200は、約300mm~約100mm、約300mm~約800mm又は約300mm~約600mmのチャネル全長を有することができる。
【0045】
マイクロポンプ902は、流体貯蔵キャパシタ1002を備えることができる。流体貯蔵キャパシタ1002は、流体配給層内に形成されたシリンダーであってもよい。流体貯蔵キャパシタ1002は、約10mm~約20mm、約12~約18mm又は約14~約16mmの直径を有することができる。流体貯蔵キャパシタ1002は、患者の内耳から抜き出された流体を貯蔵するように構成されてもよい。流体貯蔵キャパシタ1002は、流体を薬物貯蔵器200の入口に供給して、薬物を薬物貯蔵器200の出口から出るように押し出すこともできる。
【0046】
マイクロポンプ902は、複数の流体キャパシタ1004を備えることもできる。流体キャパシタ1004は、流体配給層の流体チャネル1010及び装入チャンバ1012に連なるように機械加工することができる。流体キャパシタ1004は、約2mm~約10mm、約2mm~約8mm、約2mm~約6mm又は約4mm~約6mmの直径を有することができる。流体貯蔵キャパシタ1002及び流体キャパシタ1004は、流体配給層とアクティブ層を分離している膜によって形成された天井を有することができる。
【0047】
流体キャパシタ1004は、電力効率を改善し、ピーク流量の調整を補助し、流体を貯蔵することができる。例えば、マイクロポンプ902のチャネル1010は、比較的高い流体抵抗を有する場合があり、このため、マイクロポンプ902からの流体の排出に関連する時定数が、比較的大きくなる場合がある。したがって、時定数が比較的大きい場合、バルブを開くため、及び、ポンプチャンバに完全な排水又は充填を行う時間を用意できるようにするために、バルブ208が、数秒間電力供給を受けることを必要とする場合がある。流体チャネル1010に連なる流体キャパシタ1004は、より低い流体抵抗を有するものであり、ポンプチャンバの内外に流体を比較的高速で移送することが可能であり、その後は、流体キャパシタ1004の圧力の平衡化に伴って受動的に流体が流れる。これにより、バルブ208が開いたままになる時間の長さを(数十ミリ秒程度にまで)短縮することが可能であり、電力消費を低減することができる。流体キャパシタ1004、例えば、出口906の付近にある流体キャパシタ1004は、ポンプストロークによって発生する流量の突発的な増大を減衰させ、大きなピーク流量も抑制することができる。
【0048】
マイクロポンプ902は、1個以上のポンプ1006を備えることができる。ポンプ1006は、マイクロポンプ902のアクティブ層中にアクチュエータを備えることができる。アクチュエータは、電磁石を所定位置に保持することができる。電磁石が電力供給を受けていないときは、ばねにより、アクチュエータヘッドがポリイミド膜に押し付けられた状態を保つことができる。ポリイミド膜にかかる圧力により、バイトン層が、流体層中に形成されたバルブ1008のシリンダーへの開口部に押しつけられ、ポンプ1006のバルブを閉じる流体シールが形成される。
【0049】
ポンプ1006のアクチュエータをサイクル運転することにより、ポンプ1006の流体チャンバの中の流体を排水することができる。バルブ1008をサイクル運転することで(例えば、開閉することで)、マイクロポンプ902の中を通る流体の流れの方向を制御することができる。例えば、ストローク種別毎に、あるバルブは吸気弁として働くことができ、別のバルブは排気弁として働くことができる。ポンプストロークの開始時には吸気弁が開き、次いで、ポンプアクチュエータが電力供給を受けると、流体は、隣接する流体キャパシタからポンプチャンバ内に抜き出される。次に、吸気弁が閉じる。次いで排気弁が開き、続いてポンプアクチュエータの動作が停止すると、流体は、ポンプチャンバから異なる流体キャパシタの中に押し出される。最後に、排気弁が閉じる。どのバルブが吸気弁及び排気弁として選択されるかに応じて、ポンプは、3つの異なる方式のポンプストローク、すなわち、注入(例えば、流体をマイクロポンプ902から外に圧送すること)、抜き出し(例えば、外部供給源からマイクロポンプ902内に流体を圧送すること)、並びに、薬物のリフレッシュ又はプライミング(例えば、流体を装入チャンバ1012内に圧送して、最後の注入型ストロークでマイクロポンプ902から外に圧送する)を発生させることができる。
【0050】
マイクロポンプ902は、1個以上のバルブ1008を備えることができる。バルブ1008は、ポンプ1006に類似した構造を有することができる。例えば、バルブ1008は、流体層内に形成されたシリンダーチャンバを備えることができる。バルブ1008は、アクティブ層中に、電磁石を所定位置に保持するアクチュエータを備えることができる。電磁石が電力供給を受けていないときは、アクチュエータを膜に押し付けることでバルブ1008のシリンダーチャンバの開口部にシールを形成するばねによって、バルブを閉位置に保持することが可能である。アクチュエータが作動すると、電磁石がばねに押しつけられて膜から離れ、これにより、流体は、バルブ1008の中を通って流れることが可能になる。
【0051】
図11は、カニューレ904の例示的な先端1100を示している。カニューレ904は、先端1100及びストッパー1102を備えることができ、ストッパー1102は、本開示において、ブレブ1102とも呼ばれることがある。先端1100は、流体が先端1100及びカニューレ904に流れ込み、先端1100から流れ出ることを可能にする、出口1104を備えることができる。
【0052】
カニューレ904は、複数の異なる材料を含むことができる。カニューレ904は、複数の別々の部分を含むことが可能であり、これらの別々の部分はそれぞれ、異なる材料を含むことができる。例えば、カニューレ904の第1の部分は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)チューブを備えることができる。カニューレ904の第1の部分は、マイクロポンプ902と連結していてもよい。カニューレ904の第1の部分は、約2cm~約10cm、約2cm~約8cm又は約3cm~約6cmであってよい。カニューレ904の第1の部分は、約50μm~約300μm、約100μm~約200μm又は約150μm~約200μmの内径(ID)を有していてもよい。
【0053】
カニューレ904は、第2の部分を備えることができる。第2の部分は、先端1100を備えることができる。第2の部分は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)チューブを備えることができる。第2の部分は、長さが約1cm~約5cm、約2cm~約5cm又は約3cm~約5cmであってもよい。一部の実装形態において、カニューレ904の第1の部分及び第2の部分は、タイゴン(登録商標)チューブによってつなぎ合わされてもよい。カニューレ904は、ハンドピース100を使用して、本明細書において上記の図1に示された蝸牛112等の患者の蝸牛に導入することができる。ハンドピース100を使用してカニューレ904を患者に導入することについては、本明細書の以下でさらに詳細に記述する。
【0054】
先端1100は、10μm~200μm、約10μm~約150μm又は約50μm~約100μmの外径を有することができる。先端1100は、5μm~約200μm、約15μm~約150μm又は約50μm~約110μmの内径を有することができる。先端1100は、ハンドピース100の一部(例えば、ツールシャフト102、角度付き部分104又は先端部分106等)の中に画定されたチャネルのうちの1つ以上を介して送り込める程度に充分細いものであり得る。
【0055】
先端1100は、先端1100による正円窓膜の穿孔を可能にする面取り部を備えることができる。面取り部の角度は、約10°~約45°、約15°~約45°又は約25~約45°であってもよい。一部の実装形態において、面取り部は、30°である。面取り部は、患者の耳の中にある1つ以上の解剖学的構造物に穿孔するために使用可能な突端又は鋭利な縁部を形成することができる。
【0056】
先端1100は、カニューレ904の先端1100が鼓室階の外リンパ液に浸かるように、(例えば、ハンドピース100等を使用して)正円窓膜908を通じて挿入することができる。先端1100は、カニューレ904のボディよりも大幅に高い硬度(又は剛性)を有することができる。先端1100が剛性化すると、正円窓膜908の貫通を容易化することができる。一部の実装形態において、カニューレ904は、正円窓膜908を通じて挿入することを容易化するために、中耳の解剖学的構造に実質的に適合する角度で曲げられている。一部の実装形態において、カニューレ904の屈曲部分は、先端1100の付近にあってもよい。
【0057】
先端1100は、鼓室階の中に数ミリメートル進入することができる。例えば、先端1100は、鼓室階の中に約1mm~約5mm又は約1mm~約3mm進入することができる。先端1100は、先端1100が鼓室階に深く進入しすぎることを防止することができる、ストッパー1102(ブレブ1102とも呼ばれる)を備えることができる。例えば、ストッパー1102が正円窓膜908と接触したときに、先端1100が、鼓室階の中に3mm入った位置に配置されるように、ストッパー1102を、先端1100の端部から約3mmの位置に配置することができる。一部の実装形態において、ストッパー1102は、カニューレ904と正円窓膜908との間にシールを形成して、内耳からの流体の漏れを実質的に防止するのに役立つことができる。
【0058】
先端1100は、正円窓膜908を通じて挿入した後に正円窓膜908に対してシールを形成する、シリコーンに似た柔軟な材料によってコーティングすることができる。カニューレ904は、外科手術中に正円窓膜908を通じて挿入することを容易化するために、半可撓性のものであってもよい。カニューレ904は、植込み後のカニューレ904の移動を防止するために、中耳のスペース内でロックすることが可能である。
【0059】
カニューレ904は、抗炎症性化合物を放出して中耳炎を抑制する物質によってコーティングすることができる。例えば、カニューレ904は、デキサメタゾン及び/又はメチルプレドニゾロンによってコーティングすることができる。一部の実装形態において、カニューレ904は、数週間又は数か月間、所定位置に留まることができる。他の実装形態において、カニューレ904は、短期間使用した後、取り出すことができる。
【0060】
図12は、患者の正円窓膜内にカニューレ904を据え置くことを容易にするために用いられ得る構成で、図1の例示的なハンドピース100と、図9の例示的なカニューレ904とを一緒に図示している。図示のように、カニューレ904は、ハンドピース100によって画定されたチャネル内に位置決めすることができる。例えば、使用者(例えば、外科医)は、カニューレ904の一部及びストッパー1102がハンドピース100のニードル端部700を通って突出するように、カニューレ904をハンドピース100に通すことができる。カニューレ904をハンドピース100のチャネルの1つ以上に通すことにより、中耳の正円窓膜等の患者の解剖学的構造物へ、カニューレ904を導入することが可能になり得る。一部の実装形態において、カニューレ904は、外科医又は手術ロボットが解放するまで、ハンドピース100のニードル部分700の所定位置に保持することが可能である。カニューレ904は、例えば、ハンドピース100のカラー108が患者の正円窓に据え置かれたら、解放されてもよい。
【0061】
一部の実装形態では、カニューレ904をハンドピース100に通しやすくして、図12に示された構成を達成するように、ハンドピース100及びカニューレ904の材料及び寸法を選択することができる。例えば、カニューレ904は、ポリ(テトラフルオロエチレン)(PTFE)等の可撓性を有する生体適合性ポリマーから製造されていてもよく、これにより、カニューレ904を曲げて、ハンドピース100に通すことが可能になる。カニューレ904を形成するチューブは、ハンドピース100によって画定されたチャネルの内径より小さい外径を有することができる。一部の実装形態において、ストッパー1102は、カニューレ904の端部から所定の距離のところに位置決めされてもよい。例えば、所定の距離は、約1ミリメートル~約3ミリメートルの範囲であってもよい。
【0062】
操作中は、カニューレ904をハンドピース100に通すことができ、その後、ハンドピース100を使用して、正円窓膜に穿孔することができる。ハンドピース100の端部にあるカラー108は、上記のように、ハンドピース100を正円窓膜内に正しく据え置くことを補助することができる。ハンドピース100のニードル端部700が正円窓膜に穿孔した後は、カニューレ904を、ハンドピース100のニードル端部700から正円窓膜を通じて押し出すことが可能である。その後、ハンドピース100は中耳から引き抜くことができるが、カニューレ904は、カニューレ904と正円窓膜との摩擦によって、後方に留まる。したがって、この摩擦により、カニューレ904を正円窓膜内の所定位置に保持することができる。カニューレ904は、ハンドピース100が患者から完全に抜き取られた後であっても中耳又は内耳の中に留まることが可能であり、したがって、ハンドピース100は、患者の耳の所望の領域内にカニューレ904を正確に据え置くことができる。ストッパー1102を使用することで、カニューレ904が内耳の中に突出する距離を制御することができる。一部の実装形態では、ストッパー1102を使用することで、カニューレ904が蝸牛(例えば、図1に示された蝸牛112等)等の患者の解剖学的構造物の中に突出する距離を制御することができる。一部の実装形態では、ストッパー1102を内耳の中に位置決めすることができる。一部の他の実装形態では、ストッパー1102を中耳の中に位置決めすることができる。
【0063】
図13は、流体を患者の内耳に流し込むための例示的な方法1300のブロック図を示している。本方法は、例えば、ハンドピース(例えば、本明細書に記載のハンドピース100等)を用いる外科医によって実施されてもよいし、又は、ハンドピースを用いる手術ロボットによって実施されてもよい。方法1300は、カニューレをハンドピースのチャネル内に導入すること(ブロック1302)を含むことができる。方法1300は、患者の正円窓膜に穿孔すること(ブロック1304)を含むことができる。方法1300は、ハンドピースを介してカニューレを患者に植え込むこと(ブロック1306)を含むことができる。方法1300は、ストッパーを正円窓内に据え置くこと(ブロック1308)を含むことができる。方法1300は、患者の耳からハンドピースを抜き取ること(ブロック1310)を含むことができる。
【0064】
方法1300は、カニューレ(例えば、カニューレ904等)をハンドピースのチャネル内に導入すること(ブロック1302)を含むことができる。図9図12も参照すると、カニューレは、カニューレ904であってもよく、ハンドピースは、上記のように、ハンドピース100であってもよい。カニューレ904は、カニューレ904を操作してハンドピース100のチャネルに入れることを可能にする、PTFE等の可撓性のある材料から形成されてもよい。一部の実装形態では、カニューレ904を、ハンドピース100のチャネル内に通すことが可能である。カニューレ904は、カニューレ904の端部をハンドピース100のチャネルの出口又は出口付近に(例えば、ハンドピース100の先端部分又は先端部分付近に)位置決めすることが可能な距離まで、チャネル内に挿入することができる。一部の実装形態において、カニューレ904は、(例えば、図12等に図示するように)ハンドピース100のニードル部分700から突出することができる。一部の実装形態において、カニューレ904は、ハンドピース100が患者の解剖学的構造物(例えば、正円窓又は中耳等)に適切に据え置かれるまで、ハンドピース100のニードル部分700の中に留まることができる。
【0065】
方法1300は、正円窓膜又は患者の中耳若しくは内耳の中にある別の解剖学的構造物に穿孔すること(ブロック1304)を含むことができる。一部の実装形態において、正円窓膜又は他の解剖学的構造物は、ハンドピース100の先端部分によって穿孔されてもよい。例えば、用意されたハンドピース100を、外耳道(例えば、図1に図示の外耳道110等)を通じて挿入することができる。ハンドピース100が挿入されている間、カニューレ904は、ハンドピース100のチャネル内に留まることができる。ハンドピース100の角度付き部分104は、外耳道を通って正円窓にアクセスできるように構成されてもよい。先端部分106の先端500は、ニードル端部700が、正円窓及び正円窓膜又は患者の耳の中にある別の解剖学的構造物に対して実質的に垂直に位置決めされるように、角度を付けられていてもよい。ニードル端部700を正円窓膜に押しつけることで、正円窓膜に穿孔することができる。一部の実装形態では、ニードル端部700を患者の耳の中にある別の解剖学的構造物に押しつけることで、解剖学的構造物に穿孔することができる。カラー108は、ニードル端部700が蝸牛又は他の内耳器官若しくは解剖学的構造物内に突出しすぎて、蝸牛又は前記他の解剖学的器官を損傷させることを防止することができる。しかしながら、カラー108は、カニューレ904を患者に導入及び固定するのに十分な程度まで、ニードル端部700を正円窓膜又は他の解剖学的構造物内に突出させることを可能にし得る。
【0066】
カラー108は、正円窓又は患者の耳の中にある別の解剖学的構造物に据わることで、流体が蝸牛に注入されているときに正円窓を密封することができる。患者の解剖学的構造に応じて、外科医は、ハンドピース100の先端部分と角度付き部分との間の回転オフセットを設定して、正円窓へのニードル端部700のアクセスを可能にすることができる。さらに、患者の解剖学的構造に応じて、外科医は、出口304が正円窓及び正円窓膜に対して実質的に垂直に位置決めされるように、ニードル端部700と先端部分とが成す角度210を設定することができる。患者の中耳及び内耳のCT又はMRIスキャンを実施することもできる。外科医は、患者の内耳及び中耳の解剖学的角度を測定して、先端部分106の角度210を選択することができる。さらに、CT又はMRIスキャンに基づいて、外科医は、カラー108が正円窓内に据え置かれたときに出口304が蝸牛内に適切に位置決めされるように、ニードル端部700の長さを選択することができる。出口304の適切な位置は、蝸牛を損傷させることなく蝸牛内への流体の分配を可能にする、蝸牛内の深さであり得る。
【0067】
方法1300は、ハンドピースを介してカニューレを患者に植え込むこと(ブロック1306)を含むことができる。カニューレ904は、ハンドピース100の出口を介して植え込むことができる。例えば、カニューレ904は、正円窓膜に穿孔するのに使用したハンドピース100のニードル端部700から押し出すことが可能であり、正円窓膜を通じて挿入することができる。一部の実装形態において、カニューレ904が挿入される長さは、ストッパー1102の位置に基づいて制御することができる。代替的には、カニューレ904は、ハンドピース100を使用せずとも、手動で挿入することが可能である。例えば、別のツールを使用して正円窓膜に穿孔した後で、カニューレ904を挿入してもよいし、又は、カニューレ904自体を用いて、正円窓膜に穿孔してもよい。しかしながら、このような手法では実施が困難な場合もあるし、中耳を視認して空間的にアクセスするのに外科的な侵襲を伴う医療行為が必要な場合もある。さらに、ハンドピース100自体は、カニューレを使用せずに薬物又は他の治療物質を投与するために使用可能なものであってもよい。しかしながら、このようにすることは、長期的な薬物送達には適さないものと思われる。カニューレ及びハンドピースを併用することによって、これらの技術的難点のどちらにも対処することができる。
【0068】
方法1300は、ストッパーを正円窓内に据え置くこと(ブロック1308)を含むことができる。とりわけ、図11を参照すると、カニューレ904は、ストッパー1102を備えることができる。ストッパー1102は円錐形であってもよく、正円窓内に据わり、又は、先端1100によって作られた正円窓膜の穿孔部に据わるように構成されてもよい。ストッパー1102を正円窓膜内に据え置くことにより、所定の長さだけ先端1100を内耳の中に突出させることができる。一部の他の実装形態において、カニューレ904は、ストッパー1102を備えず、また、一旦先端1100が正円窓膜に穿孔したら、シリコーンをベースとする糊によって、カニューレ904を所定位置に保持することが可能である。
【0069】
方法1300は、患者の耳からハンドピース100を抜き取ること(ブロック1310)を含むことができる。ハンドピース100は、植え込まれたカニューレを妨害しないように慎重に抜き取られてもよい。したがって、ハンドピース100を取り出すと、カニューレを後方に残すことができる。カニューレ904は、恒久的に又は半永久的に内耳の中に留まることができる。本明細書の上記に記載のように、カニューレ904は、正円窓膜又は患者の耳の中にある別の解剖学的構造物内に据え置くことができる。一部の実装形態において、カニューレ904は、患者の中耳内に据え置くことができる。一部の実装形態において、カニューレ904は、患者の内耳内に据え置くことができる。カニューレ904の一部(例えば、出口1104を有する先端1100等)は、蝸牛(例えば、図1に図示の蝸牛112等)等の、内耳の中にある解剖学的器官又は構造物の中にまで延在することができる。
【0070】
カニューレ904は、長期的な薬物送達に適合し得る。例えば、カニューレ904は、長期間にわたって患者に植え込まれたままにすることができる。一部の実装形態において、方法1300は、マイクロポンプを患者に植え込むことをさらに含むことができる。図9図11も参照すると、マイクロポンプは、図9及び図10に示されたマイクロポンプ902であってもよい。マイクロポンプ902を植え込むことは、図9に図示するように、さらなる外科手術を実施して、患者の頭骨付近の領域にマイクロポンプを植え込むことを含むことができる。マイクロポンプ902を植え込むことは、マイクロポンプを、カニューレ904の先端1100の出口1104と流体連通したマイクロチャネルに連結することを含むことができる。したがって、マイクロポンプ902は、マイクロチャネル及びカニューレ904を通じて、薬物貯蔵器から出た流体等の流体を、蝸牛又は患者の内耳の中にある他の器官の中に圧送することができる。マイクロポンプ902及びカニューレ904を恒久的に又は半永久的に植え込むことが可能であるため、継続的な又は長期間にわたる薬物送達が可能である。
【0071】
マイクロポンプ902は、患者の内耳に注入すべき薬物又は他の流体を貯蔵するための薬物貯蔵器200を備えることができる。マイクロポンプ902は、流体貯蔵キャパシタ1002を備えることができる。流体を内耳に注入した後、マイクロポンプ902は、マイクロポンプ902による注入に起因する正味の流体排水量が、注入段階と抜き出し段階とを含む1回のサイクルの間にわたって実質的に0となるように、内耳から流体を抜き出し、また、流体貯蔵キャパシタ1002内に流体を貯蔵することができる。マイクロポンプ902は、薬物貯蔵器200から内耳内に流体を圧送することが可能であり、且つ、流体貯蔵キャパシタ1002内に貯蔵するために内耳から流体を抜き出すことができる、ポンプ1006を備えることができる。正味の流体の排水量をほぼ0に維持することにより、内耳内における余計な圧力の発生、及び、内耳内にある解剖学的構造物の潜在的な損傷を防止することができる。
【0072】
一部の実装形態において、方法1300は、流体を内耳に流し込むことを含むことができる。流体を内耳に流し込むことは、マイクロポンプ902をプライミングし、流体を内耳に注入した後、内耳から流体を抜き取ることを含むことができる。例えば、マイクロポンプ902をプライミングするために、薬物貯蔵器200の第1の端部と連結された第1のバルブ1008を開くことが可能であり、また、ポンプ1006を作動させて、薬物貯蔵器200から、出口906と連結された装入チャンバ内に、薬物含有流体を抜き出すことができる。第1のバルブ1008が閉じたら、薬物貯蔵器200の第2の端部と連結された第2のバルブ1008を開いて、装入チャンバの中にそれまであった(薬物含有流体によって排水される)流体を、薬物含有流体を抜き出した薬物貯蔵器200の反対側端部に入れることが可能である。薬物含有流体を内耳に注入するために、流体を、流体貯蔵キャパシタ1002から出口906に向けて圧送することが可能であり、こうすることで、装入チャンバ内の薬物含有流体を出口906から押し出すことができる。薬物が内耳内である程度の時間にわたって拡散するままにした後では、マイクロポンプ902は、ある体積の流体を蝸牛から抜き出すことができる。抜き出される体積は、蝸牛内に注入された薬物の体積と実質的に同じ体積であってもよい。一部の実装形態において、薬物貯蔵器200内の化合物のレベルが所定のレベルを下回ったときに、外部貯蔵器からさらなる化合物又は薬物を薬物貯蔵器200内に導入することができる。
【0073】
上記方法は、他の方法による内耳への送達には適さない可能性がある大型の又は疎油性の化合物を注入するために使用されてもよい。例えば、他の方法では、これらの化合物を液体状又はゲル状製剤の中に入れることによって、これらの化合物を内耳に送達することができる。その後、正円窓膜に製剤を配置することができる。化合物は、正円窓膜を通る受動輸送によって蝸牛に入り込むことができる。この輸送メカニズムは、大型の又は疎油性の薬物の場合には効果的でないこともあり、このような大型の又は疎油性の薬物は、緩やかな能動輸送メカニズムによってのみ、正円窓膜を通過することができる。さらに、経正円窓膜送達の薬物動態も、予測が困難な可能性がある。さらに、正円窓膜送達により、薬物が内耳全体に不均一に分配される可能性もあるし、加えて、蝸牛内における薬物の生物学的利用能が不十分になる可能性もある。蝸牛内での薬物の不均一な分配及び薬物の低レベル化を補償するために、大量の薬物が中耳内に送達されるが、これにより、潜在的な局所的毒性が発生する。経正円窓膜方式の薬物送達のためのシステム900を使用する上記方法では、大型の分子及び疎油性の化合物等の、多くの種類の化合物を使用することが可能になり得る。上記方法は、蝸牛の外リンパ液に直接アクセスすることができ、これにより、内耳の中で化合物をより均一に分配することが可能になり得る。化合物が内耳に直接均一に分配されるため、必要とされる薬物をより少量にすることが可能であり、これにより、むだの多い他の技法に比べて、処置が明確に改善される。
【0074】
図14及び図15は、異なる送達方法のPK(図14)及びPD(図15)のプロットを示している。薬物をモルモットの内耳に投与した。モルモットは、異なる3種の群に分けられた。薬物は、異なる投与方法によって異なる群のモルモットに投与された。第1の投与方法は、薬物を鼓室内注射(IT)することを含んでいた。第2の投与方法は、蝸牛切開術(cochleostomy)によってカニューレを内耳に挿入することを含んでいた。第3の投与方法は、正円窓膜を介してカニューレを内耳に挿入することを含んでいた。経正円窓膜方式の方法である第3の投与方法は、図13と関連して上述した方法と同様である。
【0075】
蝸牛切開術及び経正円窓膜の実験のために、0.35μgの薬物を内耳に流し込んだ。IT実験のために、50μgの薬物を内耳に注入した。図14を参照すると、プロット1400は、蝸牛切開術によって注入された薬物と、IT注射された薬物とを対比させた場合の、注入された薬物の総質量に対して正規化されたPKを示している。プロット1402は、経正円窓膜方式で注入された薬物と、IT注射された薬物とを対比した場合の、注入された薬物の総質量に対して正規化されたPKを示している。プロット1400及びプロット1402に示されているように、PKは、図13と関連して上述した方法に類似の方法でマイクロポンプを用いて薬物を注入した実験のときに最も高かった。図15を参照すると、プロット1500は、蝸牛切開術によって注入された薬物と、IT注射された薬物とを対比させた場合の、注入された薬物の総質量に対して正規化されたPDを示している。プロット1502は、経正円窓膜方式で注入された薬物と、IT注射された薬物とを対比した場合の、注入された薬物の総質量に対して正規化されたPDを示している。プロット1500及びプロット1502に示されているように、PDは、図13と関連して上述した方法に類似の方法でマイクロポンプを用いて薬物を注入した実験のときに最も高かった。
【0076】
図面では操作が特定の順番で図示されているが、このような操作は、示された特定の順番又は連番で実施される必要はなく、図示されたすべての操作が実施される必要もない。本明細書に記載の行為は、異なる順番で実施することもできる。
【0077】
様々なシステムの構成要素が分離されていることは、すべての実装形態において分離されていることを要求するわけではなく、また、記載されたプログラムのコンポーネントは、単一のハードウェア製品又はソフトウェア製品に組み込むことができる。
【0078】
ここでいくつかの例示的な実装形態について記述してきたが、上記は例示的なものであって、限定を加えるものではなく、例として与えられていることは明らかである。特に、本明細書において提示された例の多くは、方法の行為又はシステムの要素の特定の組合せを含むが、このような方法の行為及びシステムの要素を他のやり方で組み合わせても、同じ目的を達成することもできる。一実装形態に関連して論述した行為、要素及び特徴は、他の実装形態における同様の役割から排除されることを意図していない。
【0079】
本明細書において使用されている表現及び用語は、説明を目的としたものであり、限定を加えるものとして考えるべきではない。「含む」、「備える」、「有する」、「含有する」、「包含する」、「特徴とする」及びこれらの変形形態の使用は、これらの後に列記された事物、これらの均等物及びさらなる事物、並びに、これらの後に列記された事物のみからなる代替的な実装形態を包摂することを意味する。一実装形態において、本明細書に記載のシステム及び方法は、記載された要素、行為若しくは構成要素のうちの1つ、1つ以上の各組合せ、又は、全てからなる。
【0080】
本明細書において使用されているとき、「約」及び「実質的に」という用語は、当業者によって理解され、これらの用語が利用されている文脈に応じてある程度変動する。その用語が使用されている文脈を考えても当業者にとって明確ではない用語の使用があった場合、「約」は、その特定の用語の±10%までを意味する。
【0081】
本明細書において単数形で言及されたシステム及び方法の実装形態又は要素若しくは行為へのいかなる言及も、当該要素を複数含む実装形態も包含する可能性があり、本明細書における複数形での任意の実装形態又は要素若しくは行為へのいかなる言及も、単一の要素のみを含む実装形態も包含する可能性がある。単数形の又は複数形での言及は、本明細書で開示されたシステム又は方法、これらの構成要素、行為又は要素を、単一の構成又は複数の構成に限定するようには意図されていない。任意の行為又は要素が任意の情報、行為又は要素に基づくということへの言及は、その行為又は要素が任意の情報、行為又は要素に少なくとも部分的に基づく実装形態を含む可能性がある。
【0082】
本明細書において開示された実装形態は、任意の他の実装形態又は実施形態と組み合わせることも可能であり、「ある実装形態」、「一部の実装形態」又は「一実装形態」等への言及は、互いに対して必ずしも排他的なものであるとは限らず、その実装形態と関連付けて記述された特定の特徴、構造又は特性が、少なくとも1つの実装形態又は実施形態に含まれてもよいことを示すように意図されている。本明細書において使用されているこのような用語は、必ずしもすべてが同じ実装形態に言及しているとは限らない。いかなる実装形態も、本明細書において開示された態様及び実装形態と整合する任意の様式で、包括的に又は排他的に、任意の他の実装形態と組み合わせることができる。
【0083】
本明細書及び特許請求の範囲において使用されている「1つの」及び「一」という不定冠詞は、そうではないと明記されていない限り、「少なくとも1つ」を意味するものとして理解すべきである。
【0084】
「又は」への言及は、「又は」を使用して記載された任意の用語が、記載された用語のうちの1つ、1つ以上、及び全てのいずれをも示し得るような包括的なものとして解釈することができる。例えば、「A」及び「B」の「少なくとも1つ」への言及は、「A」のみへの言及、「B」のみへの言及及び「A」と「B」の両方への言及を含み得る。「備える」又は他のオープンな用語と一緒に使用されているこのような言及は、さらなる事物を含み得る。
【0085】
図面、詳細な説明又は任意の請求項に含まれる技術的特徴の後に参照符号がある場合、参照符号は、図面、詳細な説明及び請求項の理解度を高めるために含まれている。したがって、参照符号があってもなくても、いかなる特許請求項の要素の範囲に限定が加えられることは決してない。
【0086】
本明細書に記載のシステム及び方法は、これらのシステム及び方法の特徴から逸脱することなく、他の特定の形態においても具体化され得る。上記の実装形態は、記載されたシステム及び方法を限定するのではなく、例示用のものである。したがって、本明細書に記載のシステム及び方法の範囲は、上記の説明ではなく添付の特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲に均等な意味及び範囲に含まれる変更も、添付の特許請求の範囲に包含される。
【誤訳訂正2】
【訂正対象書類名】特許請求の範囲
【訂正対象項目名】全文
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を内耳に送達する方法において、
ハンドピースのツールシャフトによって画定されたチャネル内にカニューレを導入することであって、前記ハンドピースは、
前記ツールシャフトに連結されており、且つ、前記チャネルと連絡した出口を備える、先端部分、及び、
前記出口から所定の距離だけ離れた前記先端部分と連結されているカラーであり、該カラーは、患者の解剖学的構造物に据わり、且つ、前記先端部分が前記患者の蝸牛内に突出する距離を制御するように構成された、カラー
を備える、導入することと、
前記ハンドピースの先端部分によって、前記患者の解剖学的構造物を覆っている解剖学的な膜に穿孔することと、
前記ハンドピースの出口を介して前記患者に前記カニューレを植え込むことであって、前記カニューレは、マイクロポンプと連結された第1の端部、及び、前記解剖学的な膜を通じて前記患者の蝸牛内へ前記カニューレの先端を挿入できるように構成されたストッパーを備える第2の端部を備える、植え込むことと、
前記カニューレのストッパーを前記患者の解剖学的構造物内に据え置くことと、
前記患者の耳から前記ハンドピースを抜き取ることと
を含む、流体を内耳に送達する方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記マイクロポンプを患者に植え込むことをさらに含み、前記マイクロポンプが、化合物を貯蔵している薬物貯蔵器を備える、方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法において、前記マイクロポンプによって、前記薬物貯蔵器から前記カニューレを介して前記患者の蝸牛に前記化合物を圧送することをさらに含む、方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法において、前記薬物貯蔵器から前記カニューレを介して前記蝸牛に前記化合物を圧送したことに応答して、前記マイクロポンプによって前記患者の蝸牛から所定の体積の流体を抜き取ることをさらに含む、方法。
【請求項5】
請求項3に記載の方法において、前記マイクロポンプが、第1のバルブ、第2のバルブ、ポンプ、装入チャンバ、及び、前記カニューレと流体連通した出口を備え、前記薬物貯蔵器から前記カニューレを介して前記患者の蝸牛に前記化合物を圧送することが、
前記第1のバルブを開き、前記ポンプを作動させることによって、前記薬物貯蔵器から前記装入チャンバ内に前記化合物を抜き出すことと、
前記第1のバルブを閉じ、前記第2のバルブを開き、前記ポンプを作動させることによって、前記化合物を、前記カニューレの出口を通じて押し出すことと
を含む、方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法において、前記患者の耳から前記ハンドピースを抜き取る前に、前記ストッパー又は糊のうちの少なくとも一方を使用して、前記カニューレを所定位置に固定することをさらに含む、方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法において、外部貯蔵器を介してさらなる体積の化合物を薬物貯蔵器に供給することをさらに含む、方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法において、前記患者のコンピュータ断層撮影によるスキャン又は磁気共鳴イメージングによるスキャンに応じて、前記ハンドピースの先端部分の長さを選択することをさらに含む、方法。
【請求項9】
マイクロポンプと連結された第1の端部、及び、解剖学的な膜を通じて患者の蝸牛内へカニューレの先端を挿入できるように構成されたストッパーを備える第2の端部を備える、カニューレと、
前記カニューレを前記患者に導入するように構成されたハンドピースであって、
前記ハンドピースのツールシャフトによって画定されており、且つ、前記カニューレを受け入れるように構成された、チャネル、
前記ツールシャフトに連結されており、且つ、前記チャネルと連絡した出口を備え、前記患者の解剖学的な膜に穿孔するように構成された、先端部分、及び、
前記出口から所定の距離だけ離れた前記先端部分と連結されており、前記患者の解剖学的構造物に据わり、且つ、前記先端部分が前記患者の蝸牛内に突出できる距離を制御するように構成された、カラー
を備える、ハンドピースと
を備える、システムにおいて、
前記ハンドピースが、前記カニューレを前記患者の解剖学的構造物内に据え置いたことに応答して、前記患者の耳から抜き取られるように構成された、システム。
【請求項10】
請求項9に記載のシステムにおいて、前記マイクロポンプが、患者への植込み用に構成されており、前記マイクロポンプは、化合物を貯蔵している薬物貯蔵器を備える、システム。
【請求項11】
請求項10に記載のシステムにおいて、前記マイクロポンプが、前記薬物貯蔵器から前記カニューレを介して前記患者の蝸牛に前記化合物を圧送するようにさらに構成された、システム。
【請求項12】
請求項11に記載のシステムにおいて、前記マイクロポンプが、前記薬物貯蔵器から前記カニューレを介して前記蝸牛に前記化合物を圧送することに応答して、前記患者の蝸牛から所定の体積の流体を抜き出すようにさらに構成された、システム。
【請求項13】
請求項11に記載のシステムにおいて、前記マイクロポンプが、第1のバルブ、第2のバルブ、ポンプ、装入チャンバ、及び、前記カニューレと流体連通した出口をさらに備え、前記マイクロポンプは、
前記第1のバルブを開き、前記ポンプを作動させることによって、前記薬物貯蔵器から前記装入チャンバ内に前記化合物を抜き出し、
前記第1のバルブを閉じ、前記第2のバルブを開き、前記ポンプを作動させることによって、前記化合物を、前記カニューレの出口を通じて押し出す
ように構成された、システム。
【請求項14】
請求項9に記載のシステムにおいて、前記ハンドピースが、前記先端部分を前記ツールシャフトに連結している角度付き部分をさらに備え、前記角度付き部分は、前記チャネル及び前記先端部分の出口と連絡した第2のチャネルを有する、システム。
【請求項15】
請求項14に記載のシステムにおいて、前記角度付き部分又は前記先端部分のうちの少なくとも一方が、前記ツールシャフトから分離可能であり、また、スナップ式コネクタ、フリクションフィット接続、プレスフィット接続、きざみ付きナット又はルアーロック式接続のうちの1つ以上を用いてつなぎ合わせることができる、システム。
【請求項16】
請求項14に記載のシステムにおいて、前記角度付き部分、前記先端部分及び前記ツールシャフトが、ステンレス鋼又はプラスチックのうちの少なくとも一方を含む間断のない単一の材料ピースから製造された、システム。
【請求項17】
請求項14に記載のシステムにおいて、前記角度付き部分又は前記先端部分のうちの少なくとも一方が、前記ツールシャフトに連結された状態のままで、前記ツールシャフトの長さに対して平行な軸を中心にして回転することができる、システム。
【請求項18】
請求項9に記載のシステムにおいて、前記ハンドピースの先端部分が、ニードル先端部をさらに備え、前記ニードル先端部が、前記患者の解剖学的な膜に穿孔するように構成された、システム。
【請求項19】
請求項9に記載のシステムにおいて、前記先端部分の出口が、前記先端部分の遠位端に位置決めされ、前記先端部分の遠位端が、前記出口と前記先端部分との間で角度を成し、前記角度が、70°~170°、75°~130°、90°~120°又は110°~120°である、システム。
【請求項20】
請求項9に記載のシステムにおいて、前記ツールシャフトの長さが、約130mm~約170mm、約140mm~約160mm又は約140mm~約150mmである、システム。
【国際調査報告】