(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-01
(54)【発明の名称】産業設備の音響監視方法および装置
(51)【国際特許分類】
G05B 23/02 20060101AFI20230125BHJP
G01H 3/00 20060101ALI20230125BHJP
【FI】
G05B23/02 301W
G01H3/00 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022530284
(86)(22)【出願日】2020-11-25
(85)【翻訳文提出日】2022-07-22
(86)【国際出願番号】 EP2020083324
(87)【国際公開番号】W WO2021105186
(87)【国際公開日】2021-06-03
(32)【優先日】2019-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515153152
【氏名又は名称】プライメタルズ・テクノロジーズ・オーストリア・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】アドナン・フサコヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】アンナ・マイアホーファー
(72)【発明者】
【氏名】クラウス・ジャクス
(72)【発明者】
【氏名】フランツ・ハートル
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス・ロアホーファー
【テーマコード(参考)】
2G064
3C223
【Fターム(参考)】
2G064AB01
2G064AB02
2G064AB13
2G064AB22
2G064CC05
2G064CC43
2G064CC54
2G064DD08
2G064DD14
3C223AA11
3C223BA01
3C223CC01
3C223DD01
3C223EB05
3C223FF04
3C223FF08
3C223FF13
3C223FF24
3C223FF35
3C223FF45
3C223GG01
3C223HH03
(57)【要約】
本発明は、産業設備の分野、具体的には産業設備の音響監視に関する。本発明の課題は、産業設備を確実に監視することができ、早期の段階で故障または変化を指摘することができる方法を提供することである。この課題は、収集された音響信号を時間信号として記憶装置(8)に保存される方法および装置によって解決される。適応フィルタによって評価信号が算出され、この評価信号が同様に記憶装置(8)に保存される。電力密度スペクトル信号が評価信号から算出され、閾値に基づく評価によって限界値を上回るまたは下回ることが監視される。限界値を上回るまたは下回ることが確認された場合、警報が発せられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定センサ(6)によって音響信号が収集される、産業設備の音響監視方法であって、
-収集された前記音響信号が少なくとも1つの時間信号として記憶装置(8)に保存され、
-適応フィルタを用いて、少なくとも1つの前記時間信号から少なくとも1つの評価信号が算出され、前記評価信号それぞれが前記記憶装置(8)に保存され、
-少なくとも1つの前記評価信号から少なくとも1つの電力密度スペクトル信号が算出され、
-少なくとも1つの前記電力密度スペクトル信号について、所定の周波数帯における閾値に基づく評価によって閾値が決定され、限界値を上回るまたは下回る場合に警報が発せられる、方法において、
前記適応フィルタが線形予測符号化フィルタであることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記閾値に基づく評価が、少なくとも2つの電力スペクトル信号の中央値を決定する方法と、スペクトル帯域幅を決定する方法と、スペクトルのロールオフ周波数を決定する方法と、信号の実効値を決定する方法と、スペクトル尖度を決定する方法と、のうちの少なくとも1つによって行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記閾値が基準値と比較され、そこから連続的な運転パラメータまたは運転状態が算出されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記産業設備がエアナイフ(1)であり、運転パラメータが、前記エアナイフの金属槽に対する角度(4)、圧力、または間隔(5)であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記閾値が基準値と比較され、前記適応フィルタのフィルタパラメータがそれに応じて調整されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記限界値が監視の期間中に変化することを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記音響信号が走査信号として少なくとも44100Hzの走査速度で収集されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
測定センサと記憶装置とを含む、産業設備の監視装置であって、評価装置が前記測定センサと前記記憶装置とに接続されており、前記評価装置が請求項1から7のいずれか1項に記載の方法を実施することを特徴とする、監視装置。
【請求項9】
請求項8に記載の装置のエアナイフまたはフリップフロップ型篩機の監視のための使用。
【請求項10】
請求項8に記載の設備の監視装置に請求項1から7のいずれか1項に記載の方法工程を実施させる指令を含むコンピュータプログラム。
【請求項11】
請求項10に記載のコンピュータプログラムが保存されているコンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は産業設備の分野に関する。
【0002】
一方では、本発明は、測定センサによって音響信号が収集される、産業設備の音響監視方法に関する。
【0003】
他方では、本発明は産業設備の音響監視装置に関する。
【0004】
さらに、本発明はこの装置の使用にも関する。
【0005】
本発明は、産業設備の音響監視方法を実施するコンピュータプログラムをも含む。
【0006】
本発明のさらなる主題は、このコンピュータプログラムを保存するコンピュータ可読媒体である。
【背景技術】
【0007】
産業設備の監視はますます重要な課題となっている。生産設備は運転中に、必ずしも一見して明らかではない故障を有することがある。さらに、発生する故障が既に早期の段階で、生産に重大な影響を及ぼす前から表面化することがある。そのため、既に早期の段階で故障を認識できることが望ましい。生産設備では、時間の経過とともに、その後の故障につながる摩耗の兆候が生じる。この摩耗の兆候はすぐに故障につながるのではなく、時間の経過とともに激しくなる。したがって、例えば摩耗が進行した段階では、生産における所与の許容差範囲をもはや確実に遵守することができなくなる。このような摩耗の兆候が認識されれば、設備の運転者は、不良品が生産される前から、相応の保守措置を講じる、または相応の保守措置を早期に計画することが可能になる。さらなる監視の課題は、例えば、特定の中間工程が正しく実施されたかどうか検査することである。
【0008】
特許文献1には、流体流動制御装置の状態を維持するために流体流動制御装置に連結された音響放射センサを備えた装置が記載されている。
【0009】
特許文献2には、風力タービンの監視システムが記載されている。この監視システムは、音響放射を収集するためのマイクを含んでいる。監視では、受信された音響信号のレベルが限界値と比較され、受信された音響信号のレベルが限界値を上回る場合に警報が生成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第20190086311号明細書
【特許文献2】米国特許第20140133981号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、産業設備を確実に監視することができ、早期の段階で故障または変化を指摘することができる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この課題は、測定センサによって収集された音響信号が時間信号として記憶装置に保存されることによって解決される。適応フィルタを用いて少なくとも1つの時間信号から少なくとも1つの評価信号が算出され、各評価信号が同様に記憶装置に保存される。
【0013】
少なくとも1つの評価信号から少なくとも1つの特定の時点、好ましくは全ての時点について、少なくとも1つの電力密度スペクトル信号が算出される。
【0014】
この少なくとも1つの電力密度スペクトル信号について、所定の周波数帯における閾値に基づく評価によって閾値が決定され、限界値を上回るまたは下回る場合に警報が発せられる。時間信号は、特定の期間にわたって収集される。この期間は、例えば、監視対象の作業工程の期間、運転期間、予想される摩耗状態が生じる時期、またはその他の監視プロセスに特有の基準によって決まる。
【0015】
電力密度スペクトルは、特定の時点について、ある時間窓にわたって算出される。例えば、電力密度スペクトルは、常に50msの時間窓について算出される。
【0016】
適応フィルタは、それぞれの運転状態に適合される。各運転状態に応じて産業設備の異なる構成部品が使用され得るので、それによって、フィルタパラメータも予想される音響信号に対応するように適合される。
【0017】
この発明に関連して、閾値に基づく評価とは、信号の特有の特徴を表す閾値が上限値および/または下限値と比較されることと理解される。これは、例えば、最大の電力振幅が生じる周波数が上および/または下の閾値と比較されることであってもよい。
【0018】
どの産業設備も、特有の性質を運転中に有している。健全な産業設備は、例えば、特定の周波数範囲において最大の電力振幅を有するが、これを特性周波数としてとらえることができる。この特性周波数を産業設備について決定することができる。これは、例えば、運転開始時に基準測定を実施することによって行うことができる。
【0019】
しかし、周囲の騒音に起因して、より高いまたはより低い周波数においてより大きい振幅が生じることが考えられる。さらに、産業設備が複数の特性周波数を有しているが、いくつかは起こり得る故障に特有のものではないことがあり得る。設備の異なる処理段階または運転点によっても様々な特性周波数が生じ得る。そのため、極大値が決定される周波数帯が評価のために予め定義されてもよい。参照値は、各設備について個別に確定されなければならない。それぞれの生産においてどのような許容差が確定されるかに応じて、許容される周波数偏移が特性周波数に対して小さくまたは大きくなる。少なくとも2つの電力密度スペクトル信号の特性周波数の減算による評価が行われると、監視対象の設備等の監視対象の生産工程の許容される許容差に応じた所定の許容差が確定される。許容差はたいていの場合、経験値から得られるか、または実験において確定される。
【0020】
適応フィルタは線形予測符号化(LPC)フィルタである。これは、線形予測符号化(LPC)法によって確定される。
【0021】
線形予測符号化は、音声信号および言語の処理方法である。LPC法は、主にデジタル方式の音声伝送、音声圧縮、音声認識システム、および音楽の用途において使用されている。産業設備または機械の監視を対象とすることはこれまでのところ公知ではない。この方法を用いた評価は特に有効であることが分かっている。線形予測符号化法を用いた時間信号の算出によって、スペクトルのピークおよび調波構造をより容易に決定することができる。線形予測符号化法が適応フィルタを確定する次数は、確実な監視方法を得るために決定的である。低次では、LPC信号によって非常に顕著な共振が明らかになる。次数が高いほど、より明確に調波のピークを決定することができる。あまりに高い次数を選定すると、騒音につながる。
【0022】
次数を確定するために、1以上の例示的な時間信号によってフーリエ変換(FFT)が実施される。加えて、これらの時間信号によって、LPC法を用いて、異なる次数のいくつかの評価信号が決定され、それぞれのフーリエ変換と比較される。評価信号が包絡線によって最もよくフーリエ変換を表す次数は、さらなる分析のために使用される。近似性を高めるために、異なる近い次数の評価信号を決定し、それによって、評価信号の最適な次数を帰納的に決定してもよい。
【0023】
好ましい一実施形態では、閾値に基づく評価が、少なくとも2つの電力スペクトル信号の中央値を決定する方法と、スペクトル帯域幅を決定する方法と、スペクトルのロールオフ周波数を決定する方法と、信号の実効値(RMSエネルギー)を決定する方法と、スペクトル尖度を決定する方法と、のうちの少なくとも1つによって行われる。
【0024】
中央値の確立の場合、この中央値が代表的な周波数を表す。中央値の確立によって、より良好でより確実な評価が得られる。
【0025】
中央値を使用する利点は、異常値の影響が最小化されることである。一方では、複数の連続する時間的な数列の中央値を使用することによってデータが平均化され、他方では、中央値は、例えば平均値の確立のような他の平均化方法と比較して、異常値に対してより安定している。
【0026】
ロールオフ周波数とは、一時的な電力密度スペクトルが信号電力の80%~90%に達する周波数と理解される。スペクトル帯域幅とは、瞬間的な中心周波数に対する周波数の一時的な標準偏差と理解される。
【0027】
ロールオフ周波数の評価によって、例えば、平滑面への噴流の衝突を認識することができる。エアナイフの除塵プロセスでは、特性周波数およびその時間的挙動から見分けられる、ある特定のスペクトルパターンが生じる。このパターンは、複数の電力密度スペクトルについてのスペクトルロールオフ周波数あるいはスペクトル帯域幅の評価によって見分けられる。
【0028】
実効値は、例えば噴流が妨げられずに表面に衝突するかどうか、または噴流が例えば側方において制限されているかどうか、を判定するのに特に適している。例えば、エアナイフのバッフルの作動時である。バッフルは、表面張力によって特に金属バンドの縁に発生する作用を最小化する機能を有する。エアナイフの領域では、金属バンドはバッフルによって両側が拡張され、その結果、人為的により幅広いバンドが形成される。
【0029】
スペクトル尖度とは、算術平均値の幾何平均値に対する割合として理解される。この方法は、噴流から表面までの間隔を算定するのに特に適している。さらなる用途は、噴流が衝突する加工対象物に対する噴射口の角度を算定することである。
【0030】
有利な一実施形態では、閾値が基準値と比較され、そこから連続的な運転パラメータまたは運転状態が算出されることを意図している。この実施例の利点は、ある特定の時点の閾値から運転パラメータのさらなる推移を決定することができることである。したがって、例えば基準値に基づいて、次の保守がいつ行われるか、あるいは間違った設定がされていないかを予知することができる。
【0031】
実用的な一実施形態では、産業設備がエアナイフであり、運転パラメータが、エアナイフの角度であることを意図している。
【0032】
エアナイフは、特に鉄鋼生産において、金属槽を出た金属バンドから純亜鉛または様々な組み合わせの合金を拭い去るために使用される。エアナイフの使用は、金属被覆の高水準の精度および制御を可能にし、様々な種類の被覆の幅広い分野をカバーしている。
【0033】
エアナイフの正しい設定は表面品質に重要な影響を与える。エアナイフの間違った設定は、その際に生じる騒音によって認識することができる。
【0034】
音響分析によって、例えば金属バンドに対する噴射の衝突角度、圧力、金属槽に対するエアナイフの間隔、およびエアナイフの除塵の時間間隔といった様々なパラメータの間違った設定を認識することが可能になる。パラメータの推定あるいは決定は同様に実施することができる。
【0035】
有利な一実施例では、閾値が基準値と比較され、適応フィルタのフィルタパラメータがそれに応じて適合されることを意図している。この実施例によって、例えば、産業設備の特定の運転状態を認識し、それから適応フィルタをその運転状態に対応するように適合することが可能になる。その一例は、バッフルの作動時のエアナイフにある。これは、例えば実効値の評価によって認識することができる。バッフルが作動すると、フィルタの帯域幅が対応するように変更されることによって、エアナイフの監視対象のパラメータを確実に監視することができる。
【0036】
特別な一実施形態では、限界値が監視の期間中に変化することを意図している。
【0037】
例えば、産業設備の特に摩耗しやすい特定の構成部品のみを監視すべきであることが考えられる。しかし、産業設備全体としては、産業設備の運転の過程で挙動が同様に変化するさらなる構成部品を有する。そのため、限界値も監視の期間中に推移する可能性がある。したがって、収集された音響信号は、産業設備の監視されていない構成部品に起因して変化する可能性がある。限界値は、記憶装置に保存されている経験値または基準値に基づいて自動的に適合される。
【0038】
好ましい一実施形態では、音響信号が走査信号として少なくとも44100Hzの走査速度で収集されることを意図している。これは、可聴周波数のほぼ2倍、したがっての可聴範囲のナイキスト周波数の2倍に相当する。
【0039】
本発明に係る課題は、冒頭で述べた装置によっても解決される。評価装置が測定センサと記憶装置とに接続されており、評価装置が前述の方法を実施する。この装置は、特に産業設備を確実に監視するのに適している。この装置によって産業設備における故障の正確な予知を行えることが実験において示されている。
【0040】
本発明による方法および装置の他に、この装置の、設備の監視、またはエアナイフもしくはフリップフロップ型篩機用の産業設備における生産工程の監視のための使用によっても課題が解決される。
【0041】
篩機は、様々な生産現場において、細粒状あるいは砂状の材料を分離するために使用される。材料の性質が異なるため、異なる篩機が使用される。
【0042】
フリップフロップ型篩機は、ふるい分けが極めて困難なふるい分け材料にとって最適な解決策である。2つの可動枠に篩横材が取り付けられている。その上に固定された柔軟性を有する篩マットは、機械的に交互に張られ、弛められる。最大加速力および篩マットの張りによって、篩表層に材料が詰まったり固着したりすることが防止される。
【0043】
しかし、この機械力は、篩機の摩耗にもつながる。最適な処理を保証するには、例えば篩機の破断または側壁の破損といった摩耗の兆候を可能な限り早く認識し修復しなければならない。本発明による装置によって、そのような摩耗の兆候を早期に認識することが可能になる。
【0044】
エアナイフは、特に鉄鋼生産において、例えば亜鉛めっき槽を出た金属バンドから純亜鉛または様々な組み合わせの合金を拭い去るために使用される。
【0045】
課題はさらに、前述の装置に先に説明した方法工程を実施させる指令を含むコンピュータプログラムによって解決される。
【0046】
課題は、このコンピュータプログラムが保存されているコンピュータ可読媒体によっても解決される。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】本発明による方法を示すフローチャートである。
【
図2】金属バンドに対するエアナイフの概略的な配置である。
【
図5】中央値を用いる閾値に基づく評価の例である。
【
図6】スペクトル尖度を用いる閾値に基づく評価の例である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
図1には、本発明による方法をどのように実施可能であるかを示すフローチャートが描かれている。作業工程S1において、音響信号が収集される。その次の作業工程S2において、適応フィルタのフィルタパラメータが設定される。これらのフィルタパラメータは、線形予測符号化(LPC)法によって確定される。これらのフィルタパラメータは、設備の各方法工程に応じて設定されるか、またはその他の結果に基づいて継続的に決定または適合される。作業工程S3において、収集された音響信号から適応フィルタを用いて評価信号が算出される。作業工程S4では、少なくとも1つの電力スペクトル信号が算出される。そして、作業工程S5では、電力スペクトル信号の閾値に基づく評価が行われる。その後、作業工程S6では、閾値に基づく評価が示され、閾値を上回るまたは下回る場合に警報が発せられる。
【0049】
図2には、金属バンド2に向かい合ったエアナイフ1の配置が概略的に描かれている。金属バンド2は、流体金属槽3に通され、その後、両側に配置されたエアナイフ1によって流体状の金属が拭い取られる。この場合、エアナイフ1の様々な調節パラメータが存在する。流体金属槽に対する角度4および間隔5は決定的なパラメータであり、監視されなければならない。測定センサ6によって音響信号が収集されて評価装置7に伝達され、評価装置7がこの信号を記憶装置8に保存した後、相応に評価する。
【0050】
図3には、エアナイフの複数の電力密度スペクトル信号が描かれている。この場合、適応フィルタのフィルタ効率は、LPC法によって決定される。これは、その後の閾値に基づく評価にとって有利であることが分かっている。
【0051】
曲線10は圧力設定が高い場合の電力密度スペクトルを、曲線11は圧力設定が低い場合の電力密度スペクトルを示している。圧力設定は、電力密度スペクトルの最大値が生じる周波数に基づいて決定される。
【0052】
図4には、閾値に基づく評価の実施形態の変形例が描かれている。具体的な場合において、エアナイフの角度設定は、スペクトル尖度を算出することによって決定される。閾値に基づく評価は、スペクトル尖度の算出に基づいて行われる。算出されたスペクトル尖度点16は、例えば特定の作業工程について算出されたものである。したがって、例えば作業工程ごとに5つの電力密度スペクトルが決定されるとともに、これらのスペクトルが時間軸t上の同じ時点に表示され、これらの時点からスペクトル尖度の中央値15が決定される。電力密度スペクトルは、それぞれ特定の間隔期間、例えば50msまたは数秒について決定される。したがって、スペクトル尖度13の曲線は、多数の作業工程にわたる正の角度設定の中央値の推移を表している。スペクトル尖度14の曲線は、エアナイフの負の角度設定の中央値の推移を表している。限界線12によって、角度が負から正に変わるスペクトル尖度の値が表されている。
【0053】
図5には、中央値を用いた閾値に基づく評価が描かれている。図示のグラフでは、x軸上に時間が、y軸上に周波数が表示されている。x軸上に表された時間は、例えば産業設備の作業過程、1時間、1日、または1週間であってよい。小さい点は、それぞれ電力スペクトル20aの最大値が生じる周波数である。これは、例えば10秒間にわたって信号が記録され、適応フィルタリングの後に評価信号が算出され、この評価信号から電力スペクトルが決定されることを意味する。その後、電力密度スペクトルから最大の振幅が生じる周波数が決定される。この処理が複数回繰り返され、例えば10秒、50秒、または110秒の信号が記録され、上述のように評価される。次に、最大の振幅が生じるそれぞれの周波数は、小さい点によって表されてグラフに表示され、これらの点から中央値20が決定される。中央値20は大きいドットによって表されている。事前警告限界22によって、進行した摩耗が示される。警報限界23は、この限界を下回れば保守措置を実施すべきまたは実施しなければならないことを示す。このような保守措置は、グラフに保守線21として表されている。保守線21がグラフに記載された時点で、保守措置が既に実施されている。保守措置の後に中央値20が再び明らかに事前警告限界22の上方に位置していることが分かる。
【0054】
図6には、液体金属槽に対するエアナイフの実際の距離31およびスペクトル尖度の評価によって決定された距離30が描かれている。スペクトル尖度の決定によって、距離の変化を推測することが可能である。
【0055】
本発明を好ましい実施例によって細部にわたって詳細に説明および記述したが、本発明は開示された例によって限定されず、ここから当業者によって他の変形例が、特許請求の範囲によって定義される本発明の保護範囲から逸脱することなく導き出され得る。
【符号の説明】
【0056】
1 エアナイフ、2 金属バンド、3 液体金属槽、4 角度、5 間隔、6 測定センサ、7 評価装置、8 記憶装置、10 圧力設定が高い場合の電力密度スペクトル、11 圧力設定が低い場合の電力密度スペクトル、12 限界線、13,14 スペクトル尖度の中央値、14 算出されたスペクトル尖度、15 中央スペクトル尖度、20 電力スペクトルの中央値、20a 電力スペクトルの最大値、21 保守線、22 事前警告限界、23 警報限界、S1~S6 作業工程、SS スペクトル尖度、LDS 電力密度スペクトル、t 時間、f 周波数、d 距離
【国際調査報告】