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特表2023-503958バット光重合プリンタ用の光硬化樹脂の粘度を決定する方法及びシステム
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  • 特表-バット光重合プリンタ用の光硬化樹脂の粘度を決定する方法及びシステム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-01
(54)【発明の名称】バット光重合プリンタ用の光硬化樹脂の粘度を決定する方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/393 20170101AFI20230125BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20230125BHJP
   B29C 64/124 20170101ALI20230125BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20230125BHJP
【FI】
B29C64/393
B33Y50/02
B29C64/124
B33Y10/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022530298
(86)(22)【出願日】2020-11-19
(85)【翻訳文提出日】2022-05-24
(86)【国際出願番号】 US2020061382
(87)【国際公開番号】W WO2021108228
(87)【国際公開日】2021-06-03
(31)【優先権主張番号】62/941,653
(32)【優先日】2019-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518113546
【氏名又は名称】ネクサ3ディー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100123607
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 徹
(72)【発明者】
【氏名】メダルジー イズハル
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AP04
4F213AP16
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL12
4F213WL73
4F213WL85
(57)【要約】
バット光重合プロセスによって3D物品を形成する方法及びシステムを提供する。かかる方法及びシステムにおいて、造形プロセスを開始する前に、及び、選択的には造形プロセスの間の両方において、造形プレートをバット内の樹脂の中で上昇させたり下降させたりするのに必要とされるトルクを測定する。それによって、樹脂の粘度を決定する。樹脂を加熱するのがよく、3D物品を製造するのに採用された光エンジンを使用してバット内の樹脂を加熱することによって、樹脂の粘度を変更する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バット光重合プリンタ(100)に使用される光硬化樹脂(18)の粘度を決定する方法であって、
バット光重合プリンタ(100)を使用する造形プロセスを開始する前に、バット光重合プリンタ(100)のタンク(10)を樹脂(18)で充填し、バット光重合プリンタ(100)の造形プレート(20)を樹脂(18)の中に下降させることと、
造形プレート(20)を樹脂(18)内で上昇させるようにモータ(30)を作動させ、造形プレート(20)を上昇させるのに必要とされるトルクの測定値をトルクメータ(32)によって記録することと、
トルクの測定値を使用して、バット光重合プリンタ(100)のタンク(10)内の樹脂(18)の粘度を決定するために、樹脂の既知の粘度におけるトルクの測定値を一覧にした表を検索することと、を含む方法。
【請求項2】
トルクメータ(32)は、モータ(30)と一体であり、トルクの測定値を電気信号に変換するように構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
トルクメータ(32)は、モータ(30)による作動の下で造形プレート(20)を上昇させたり下降させたりするように構成されたリードスクリュー(12)と一直線に配置された回転トルクセンサを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
回転トルクセンサは、光トルクセンサ又は表面音響波(SAW)トルクセンサを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
コントローラ(28)がトルクメータ(32)の一部分として構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
トルクの測定値が、表の中の一覧にされた樹脂の粘度の値と値の間にあるとき、バット光重合プリンタ(100)のタンク(10)内の樹脂(18)の粘度を、トルクの測定値に最も近い一覧にされた粘度の値として決定する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
トルクの測定値が、表の中の一覧にされた樹脂の粘度の2つの値の間にあるとき、バット光重合プリンタ(100)のタンク(10)内の樹脂(18)の粘度を、トルクの測定値を内挿した粘度の値として決定する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
更に、造形プロセスの間、モータ(30)を使用して樹脂(18)内の造形プレート(20)を上昇させる及び/又は下降させることによって、タンク(10)内の樹脂(18)の粘度を決定することと、造形プレート(20)を上昇させる及び/又は下降させるのに必要とされるトルクの現在の測定値をトルクメータ(32)によって記録することと、現在のルックアップテーブルを使用して、樹脂(18)の現在の粘度を決定することと、を含む請求項1に記載の方法。
【請求項9】
更に、造形プロセスの間、バット光重合プリンタ(100)の光源(26)を使用して、バット光重合プリンタ(100)のタンク(10)内の樹脂(18)の現在の粘度を変更することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
更に、バット光重合プリンタ(100)のタンク(10)内の樹脂(18)の現在の粘度を変更している間、モータ(30)を使用して樹脂(18)内の造形プレート(20)を上昇させる及び/又は下降させることによって、樹脂(18)の現在の粘度を測定し、造形プレート(20)を上昇させる及び/又は下降させるのに必要とされるトルクの現在の測定値をトルクメータ(32)によって記録することと、現在のルックアップテーブルを使用して、タンク(10)内の樹脂(18)の現在の粘度を決定することと、を含む請求項9に記載の方法。
【請求項11】
バット光重合プリンタ(100)に使用される光硬化樹脂(18)の粘度を決定するためのシステムであって、
或る容量の樹脂(18)を保持するタンク(10)を有するバット光重合プリンタ(100)と、
タンク(10)内で上昇させたり下降させたりするように構成された造形プレート(20)と、
造形プレート(20)を上昇させる及び/又は下降させるのに結合されたモータ(30)と、
樹脂(18)内の造形プレート(20)を上昇させる及び/又は下降させるのに必要とされるトルクを測定するように構成されたトルクメータ(32)と、
コントローラ(28)と、を有し、
コントローラ(28)は、樹脂(18)内の造形プレート(20)を上昇させる及び/又は下降させるためにモータ(30)を作動させるように構成され、トルクメータ(32)からトルクの測定値を受取るように構成され、トルクの測定値を使用し、樹脂の既知の粘度におけるトルクの測定値を一覧にした表を検索することによって、バット光重合プリンタ(100)のタンク(10)内の樹脂(18)の粘度を決定するように構成される、システム。
【請求項12】
トルクメータ(32)は、モータ(30)と一体であり、トルクを電気信号に変換するように構成される、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
トルクメータ(32)は、モータ(30)による作動の下で造形プレート(20)を上昇させたり下降させたりするように結合されたリードスクリュー(12)と一直線に配置された回転トルクセンサを含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項14】
回転トルクセンサは、光トルクセンサ又は表面音響波(SAW)トルクセンサを含む、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
コントローラ(28)は、トルクメータ(32)として部分的に構成される、請求項11に記載のシステム。
【請求項16】
コントローラ(28)は、更に、トルクの測定値が、表の中の一覧にされた樹脂の粘度の2つの値の間にあるとき、バット光重合プリンタ(100)のタンク(10)内の樹脂(18)の粘度を、トルクの測定値に最も近い一覧にされた粘度の値として決定するように構成される、請求項11に記載のシステム。
【請求項17】
コントローラ(28)は、更に、トルクの測定値が、表の中の一覧にされた樹脂の粘度の2つの値の間にあるとき、バット光重合プリンタ(100)のタンク(10)内の樹脂(18)の粘度を、トルクの測定値に関して内挿した粘度の値として決定するように構成される、請求項11に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2019年11月27日に出願された米国仮特許出願第62/941,653の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、積層造形プロセスに関し、特に、バット重合プリンタに使用される光硬化樹脂の粘度を決定する方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
積層造形、又は、3D印刷は、知られているように、種々の物品の直接的な生産の様々な手段を提供する様々な技術の集合である。かかる技術の1つは、バット光重合であり、バット光重合は、光造形法(SLA)、直接光処理(DLP)、及び液晶ディスプレイ(LCD)直接印刷を含む。これらの技術は、一般的には、紫外線(UV)光源を(典型的には)使用して、バット内に収容された樹脂の選択的に硬化させることを含む。樹脂は、一層ごとに硬化され、製造下の物品は、連続し且つ互いに接着される一連の断面によって形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第WO2015/074088号
【特許文献2】国際公開第WO2016/078838号
【特許文献3】米国特許出願公開第US2019/0202112号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらの一層ごとの印刷プロセスにおいて、樹脂粘度が重要なパラメータであることが知られている。粘度は、動きに対する流体の内部抵抗、即ち、変形に対する流体の抵抗を表す。どろどろした流体は、高い粘度を有する。例えば、油の粘度は、水の粘度よりも高い。バット光重合プロセスにおいて、低粘度樹脂が層形成と層形成の間の造形領域における比較的迅速な補充を可能にするので、一般的には、低粘度樹脂が望ましい。しかしながら、低粘度樹脂で形成された製品は、硬化後の固化の間にシュリンク及び反りを被る傾向がある。そのため、高粘度樹脂は、かかる望ましくない副作用を受けない(少なくとも低粘度樹脂と同程度ではない)ので、高粘度樹脂が望ましい。高粘度樹脂はまた、射出成形プロセスで形成された製品と同程度で、更に望ましい製品特徴を生成する。
【0006】
粘度は、液体の分子間の凝集力によって生じ、温度によって変化する。液体において、粘度(μ)は、μ=a10b/(T-c)として近似され、ここで、Tは、絶対温度であり、a、b、及びcは、実験的に決定される定数である。かくして、高粘度樹脂を加熱することにより、その粘度を低下させることが知られており、それにより、加熱しなければバット光重合プリンタにおけるプロセスには困難である高粘度樹脂を、かかる装置で使用することにより順応させる。特許文献1は、抵抗加熱要素を露出ゾーンの縁に使用することによって、樹脂を加熱することを提案する。特許文献2は、透明な電導性コーティングをバットの底に使用して、樹脂を加熱することを提案する。特許文献3は、(光源から)独立した電磁放射線源を使用して、樹脂を加熱することを提案する。また、バットを炉のような包囲体内に配置するバット光重合装置が知られており、造形プロセス全体が包囲体内で行われる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1つの実施形態では、本発明は、バット光重合プリンタで使用される光硬化樹脂の粘度を決定するための方法を提供する。バット光重合プリンタを使用する造形プロセスを開始する前、バット光重合プリンタのタンクに樹脂を充填し、バット光重合プリンタの造形プレートを、樹脂の中に下降させる。樹脂内の造形プレートを上昇させるように、モータを作動させ、造形プレートを上昇させるのに必要とされるトルクの測定値を、トルクメータによって記録する。トルクの測定値を使用して、樹脂の既知の粘度におけるトルクの測定値を一覧にした表を検索して、バット光重合プリンタのタンク内の樹脂の粘度を決定する。トルクメータは、モータと一体であってもよいし、トルクを電気信号に変換するように構成されていてもよい。幾つかの場合、トルクメータは、モータによる作動の下で造形プレートを上昇させたり下降させたりするように構成されたリードスクリューと一直線に配置された回転トルクセンサを含むのがよい。かかる回転トルクセンサは、光トルクセンサであってもよいし、表面音響波(SAW)トルクセンサであってもよい。また、幾つかの例では、コントローラが、トルクメータの一部分として構成されてもよい。トルクの測定値が、表の中で一覧にされた樹脂の粘度の2つの値の間のあるとき、バット光重合プリンタのタンク内の樹脂の粘度を、トルクの測定値に最も近い一覧にされた粘度の値として決定し、変形例として、トルクの測定値に関して内挿した粘度の値として決定する。
【0008】
造形プロセスの間、バット光重合プリンタのタンク内の樹脂の現在の粘度を決定するのがよく、このことは、モータを使用して、樹脂内の造形プレートを上昇させ及び/又は下降させ、造形プレートを上昇させる及び/又は下降させるのに必要とされるトルクの現在の測定値をトルクメータによって記録し、ルックアップテーブルを使用して、タンク内の樹脂の現在の粘度を決定することによって行われる。また、造形プロセスの間、光重合プリンタの(例えば、樹脂を加熱するための)光源を使用して、バット光重合プリンタのタンク内の樹脂の現在の粘度を変更し又は制御してもよい。バット光重合プリンタのタンク内の樹脂の現在の粘度を変更する間、樹脂の現在の粘度を測定してもよく、このことは、モータを使用して、樹脂内の造形プレートを上昇させ及び/又は下降させ、造形プレートを上昇させる及び/又は下降させるのに必要とされるトルクの現在の測定値をトルクメータによって記録し、現在のルックアップテーブルを使用して、タンク内の樹脂の現在の粘度を決定することによって行われる。
【0009】
本発明の1つの実施形態では、光重合プリンタに使用される光硬化樹脂の粘度を決定するためのシステムは、かくして、或る容量の樹脂を保持するように構成されたタンクを有するバット光重合プリンタと、タンク内で上昇させたり下降させたりするように構成された造形プレートと、造形プレートを上昇させる及び/又は下降させるのに結合されたモータと、樹脂内の造形プレートを上昇させる及び/又は下降させるのに必要とされるトルクを測定するように構成されたトルクメータと、コントローラと、を有し、コントローラは、樹脂内の造形プレートを上昇させる及び/又は下降させるためにモータを作動させるように構成され、トルクメータからトルクの測定値を受取るように構成され、トルクの測定値を使用して、樹脂の既知の粘度におけるトルクの測定値を一覧にした表を検索することによって、バット光重合プリンタのタンク内の樹脂の粘度を決定するように構成される。システムは、また、光エンジンを有していてもよい。
【0010】
本発明を、添付図面の図において、限定ではなく、例示として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】光硬化液体樹脂を収容するタンク(バット)内で物体の製造がおこなわれる本発明の実施形態に従って構成された3D印刷システムの概略的な断面図である。
図2図1に示した3D印刷システムのコントローラの例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
3D物品をバット光重合プロセスによって形成するための方法及びシステムを本明細書で開示し、かかる方法及びシステムにおいて、造形プロセスの開始前、及び、選択的には造形プロセス中の両方において、樹脂の粘度を決定し、このことは、造形プレートをバット内の樹脂の中で上昇させたり下降させたりするのに必要とされるトルクを測定することによって行われる。樹脂を加熱して、樹脂の粘度を変更してもよく、このことは、3D物品を製造するのに採用された光エンジン、(光源と)独立したヒーター、又は、その他の手段を使用して、バット内の樹脂を加熱することによって行われる。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に従って構成された3D印刷システム100の断面を示し、3D印刷システム100では、物体(例えば、3D物体)22を製造するために、光硬化液体樹脂(典型的には、液体ポリマ)18を硬化させる電磁放射線(例えば、UV光)が使用される。物体22は、1層ずつ製造され(即ち、物体22の新しい層が、物体22の底面に隣接した液体ポリマ18の層を光硬化させることによって形成され)、新しい層を形成するとき、物体を造形プレート20によって上昇させ、光硬化液体樹脂18の次の層が、新しく形成された層の下に引かれることを可能にする。追加の層を形成するこのプロセスを、物体の製造が完了するまで、多数回繰返す。
【0014】
3D印刷システム100は、光硬化液体樹脂18を収容するためのタンク10を含む。タンク10の底部(又は、タンク10の少なくとも一部分)は、可撓性膜14によってシールされ(即ち、光硬化液体ポリマ18がタンク10の外に漏れることを防止し)、可撓性膜14は、光源26からの電磁放射線がタンク10内に入ることを可能にするために、樹脂を硬化させるのに興味のある波長において透明である(又は、ほぼ透明である)。液体樹脂の選択的な硬化を可能にする(3D物体を所望の形状/パターンに製造することを可能にする)マスク24(例えば、液晶層)が、光源26と光硬化液体樹脂18の間に配置される。種々の実施形態において、レンズ、反射器、フィルタ、及び/又はフィルム等のコリメーション要素及び発散要素が、マスク24と光源26の間に位置決めされてもよい。これらの要素は、図面を不必要に不明瞭にしないために、図示していない。
【0015】
ホウケイ酸塩ガラス又はその他の材料で形成されたプラテン又はバッキング部材16が、マスク24と可撓性膜14の間に配置され、構造的支持部を構成する。プラテンはまた、樹脂を硬化させるのに興味のある1つ又は2つ以上の波長において透明である(又は、ほぼ透明である)。他の例では、プラテン16は、金属またはプラスチックであり、光源26からの電磁放射線がタンク10内に入ることを可能にする透明窓を含んでいてもよい。他の実施形態では、マスク24自体が、別体の窓の代わりに使用され、その周囲がガスケットでシールされてもよい。マスク24、プラテン16、及び可撓性膜14を、ある距離だけ互いから離れて配置されるように示されているけれども、実際には、これらの構成要素が互いに接触し、任意の空気インタフェースにおける屈折を防止するように位置決めされるのがよいことに注目すべきである。可撓性膜14は、タンクの縁又はその他の開口のところで液密な周囲部を維持するように(「液密な」は、通常の使用中にタンクが漏れないことを意味する。)、タンク10の縁又は交換式カートリッジ組立体(図示せず)に固着される。
【0016】
3D印刷システム100を使用して、物体22の1つの層を製造するとき、電磁放射線を放射線源26から放射させ、マスク24、プラテン16、及び可撓性膜14を通過させてタンク10内に到達させる。電磁放射線は、物体22の底部に隣接した画像平面上に画像を形成する。画像内の高(又は中)強度の領域により、光硬化液体樹脂18の局所領域を硬化させる。新しく硬化させた層は、物体22の以前の底面に接着するが、可撓性膜14の存在により、タンク10の底面に実質的に接着しない。新しく硬化させた層が形成された後、造形プレート20をタンクの底部から遠ざかるように上昇させる間、電磁放射線の放射を一時的に中断するのがよく(又は「連続印刷」の場合にはそうしない)、そのようにして、物体22の別の新しい層を印刷する。
【0017】
造形プレート20は、リードスクリュー12又はその他の構成を駆動するモータ(M)30の作動によって、上昇したり下降したりする。モータシャフトの回転によるリードスクリュー12の回転により、造形プレート20をタンク10の底部に対して上昇させたり下降させたりする。別の実施形態では、線形アクチュエータ又はその他の構成を、造形プレート20を上昇させたり下降させたりするのに使用してもよい。
【0018】
印刷プロセスの幾つかの側面は、プロセッサベースのシステムとして実施されるコントローラ28によって指図され、コントローラ28は、プロセッサが実行可能な命令を記憶し且つプロセッサが読取り可能である記憶媒体を有し、その結果、プロセッサがこれらの命令を実行すると、プロセッサは、上述した動作を生じさせるオペレーションを実行する。例えば、特にコントローラ28は、モータ30による造形プレート20の上昇/下降、光源26の作動及び非作動、及びマスク24を介する製造における物体の断面画像の投影を指示する。図2は、かかるコントローラ28の例を提供するが、かかるコントローラの全てがコントローラ28の全ての特徴を有している必要はない。例えば、表示機能がコントローラに通信可能に接続されたクライアントのコンピュータによって提供されれば、又は、表示機能が必要なければ、幾つかのコントローラは、ディスプレイを含んでいなくてもよい。かかる詳細は、本発明に重要ではない。
【0019】
コントローラ28は、情報を伝達するためのバス202又はその他の伝達機構と、情報を処理するためにバス202と接続されたプロセッサ204(例えば、マイクロプロセッサ)を含む。コントローラ28はまた、情報及びプロセッサ204によって実行すべき命令(例えば、Gコード)を記憶するためにバス202に接続されたメインメモリ206、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)又はその他の動的記憶装置を含む。メインメモリ206はまた、プロセッサ204によって実行すべき命令の実行中、一時的な変数又はその他の中間情報を記憶するのに使用されてもよい。コントローラ28は更に、静的情報及びプロセッサ204のための命令を記憶するためにバス202に接続されたリードオンリーメモリ(ROM)208又はその他の静的記憶装置を含む。記憶装置210、例えば、ハードディスク、フラッシュメモリベースの記憶媒体、又はプロセッサ204が読取ることができるその他の記憶媒体が設けられ、情報及び命令(例えば、オペレーティングシステム、スライサーアプリケーション等のアプリケーションプログラム等)を記憶するためにバス202に接続される。
【0020】
コントローラ28は、情報をコンピュータのユーザに表示するために、ディスプレイ212、例えば、フラットパネルディスプレイにバス202を介して接続される。情報及び命令の選択をプロセッサ204に伝達するための入力装置214が、バス202に接続され、入力装置214は、例えば、英数字キー及びその他のキーを含むキーボードである。別の種類のユーザ入力装置は、命令情報及び命令の選択をプロセッサ204に伝達したり、ディスプレイ212上のカーソルの移動を制御したりするカーソル制御装置216であり、カーソル制御装置216は、例えば、マウス、トラックパッド、又はそれと同様の入力装置である。その他のユーザインタフェース装置、例えば、マイクロフォン、スピーカー等は、詳細には図示されていないが、ユーザの入力の受入れ及び/又は出力の呈示と関連していてもよい。
【0021】
コントローラ28はまた、バス202に接続された通信インタフェース218を含む。通信インタフェース218は、上述した種々のコンピュータシステムへの接続及びかかるコンピュータシステム内での接続を提供するコンピュータネットワークとの双方向データ通信チャネルを構成するのがよい。例えば、通信インタフェース218は、互換性のあるLANへのデータ通信接続を提供するローカルエリアネットワーク(LAN)カードであり、LAN自体は、1つ又は2つ以上のインターネットサービスプロバイダーネットワークを介してインターネットに通信接続されている。かかる通信経路の正確な詳細は、本発明に重要ではない。重要なことは、コントローラ28がメッセージ及びデータ、例えば、プリンタ100を使用して生産すべき3D物品を表現するデジタルファイルを、通信インタフェース218を介して送信及び受信できること、及び、このようにインターネットを通じてアクセス可能なホストと通信することである。コントローラ28の構成要素は、単一の装置内に配置されていてもよいし、物理的及び/又は地理的に離れた複数の装置内に配置されていてもよいことに注意すべきである。
【0022】
本発明の側面によれば、印刷システム100を使用して造形プロセスを開始する前に、タンク10を樹脂で充填し、造形プレート20を樹脂の中に下降させる。コントローラ28は、モータ30を作動させ、造形プレート20を樹脂内で上昇させ、造形プレートを上昇させるのに必要とされるトルクを、トルクメータ32によって記録する。1つの実施形態では、トルクメータ32は、モータ30と一体であり、トルクを電気信号に変換するセンサ又はトランスデューサを含む。センサは、例えば、リードスクリュー12と一直線に配置された回転トルクセンサであり、かかる回転トルクセンサは、造形プレート20を樹脂内で移動させるためにリードスクリューを回転させるのに必要とされるトルクの直接的な測定値を提供する。光トルクセンサ又は表面音響波(SAW)トルクセンサは、この適用例に非常に適した2つの種類のセンサである。他の実施形態では、トルクメータは、コントローラ38の1つの機能であってもよいし、独立型ユニットであってもよく、独立型ユニットは、コントローラ38のように、プロセッサベースであり、メモリ又はその他の記憶装置に記憶され且つプロセッサが実行可能な命令の制御の下で作動する。
【0023】
造形プレートを樹脂内で移動させるのに必要とされるトルクは、樹脂の粘度に比例する。低粘度樹脂には、比較的小さいトルクしか必要とされないが、高粘度樹脂には、比較的大きいトルクが必要とされる。トルクモータ及び造形プレートの所定の組合せに必要とされる絶対トルクを、既知の粘度の様々な樹脂について決定し、一覧にしておくのがよい。一覧にした結果を、表の形態で、例えば、コントローラ28又はトルクメータ32の不揮発性メモリ内に記憶するのがよい。この場合、造形プロセスの前に、造形プレート20を樹脂内で上昇させるためにコントローラ28がモータ30を作動させるとき、造形プレートを上昇させるのに必要とされる測定されたトルクを、タンク10内の樹脂の粘度を決定するための表を検索するのに使用するのがよい。測定されたトルクが、一覧にされた樹脂の粘度の2つの値の間にあれば、測定されたトルクに最も近い粘度の値を提供してもよいし、測定されたトルクに関して内挿した粘度の値を提供してもよい。
【0024】
造形プロセスの間、同様のプロセスを使用してもよい。即ち、定期的に又はその他の所望の時間ごとに、上述したルックアップテーブル手順を使用して、樹脂の粘度を決定してもよい。造形プロセス中の樹脂は、光源26からのUV光に露出される理由で加熱されるので、造形プロセスの間、樹脂の粘度が変化することが非常に起こり得る。光重合プロセスは、発熱性であり、熱を生成し、この熱は、バット内の樹脂全体に(必ずしも一様にではないけれども)伝達される。幾つかの実施形態では、樹脂循環システム、例えば、本発明の譲受人に譲渡されている米国特許出願第16/676,940号に開示されている樹脂循環システムを、樹脂の温度を造形プロセス全体にわたって比較的一定に維持するために採用してもよい。
【0025】
造形プロセスの前、樹脂の所望の粘度を達成するために、樹脂の温度を変化させるのがよい。例えば、上で参照した特許出願に開示されている樹脂循環システムを、かかる目的のために使用してもよい。変形例として、マスク24を暗状態に維持しながら光源26を作動させることによって、樹脂を加熱してもよい。この暗状態は、樹脂を硬化させるUV光がタンク10内に入射しないことが必要とされる。光源26及びマスク24自体からの熱は、タンク内の樹脂に伝達され、樹脂が温まると、その粘度が変化する。造形プレートを樹脂の中で移動させるために必要とされるトルクを測定することを介して樹脂の粘度を測定する上述した手順を、この加熱プロセス中、造形プロセスを開始することを可能にする所望の粘度に達するまで使用するのがよい。
【0026】
樹脂の粘度を決定するためにトルクを使用することに関する例示として、造形プレートを樹脂の中で上昇させたり下降させたりするのに必要とされるトルクは、
トルク = 力×(長さ×sin(角度))
のように表現され、ここで、「長さ」は、リードスクリューの上下方向移動距離であり、「角度」は、リードスクリューが特定された「長さ」にわたって駆動される間の回転角度であり、「長さ」及び「角度」の各々を測定するのがよい。上述したように、トルクを、トルクメータによって提供された測定値から決定するのがよく、かくして、「力」は、
力 = (長さ×sin(角度))/トルク
のように決定される。
【0027】
この「力」を、造形プレートを樹脂の中で上昇/下降させたときに経験する抗力とみなすのがよい。抗力(FD)は、
D = 1/2×ρv2D
のように、樹脂の密度(ρ)に関連する。ここで、vは、樹脂(本発明の目的のために、造形プレートの移動中、静止しているものとみなす)に対する造形プレートの速度であり、「A」は、造形プレートの断面積であり、CDは、樹脂の無次元抗力係数である。樹脂の密度は、通常、その製造者から入手可能であり、典型的には、1.05~1.25g/cm3の範囲内にある。異なるプリンタのための個々の造形プレートの抗力係数を、異なる樹脂ごとに実験的に決定し、使用のために一覧にするのがよい。更に、特定のアスペクト比(長さ:深さ)を有する矩形で平らなプレートに共通の抗力係数が、種々の商業的刊行物内で利用されており、一般的には、1.5~2の間で変化する。特定の造形プレートのための決定された抗力係数がない場合、造形プレートが滑らかな矩形表面を有することを仮定すれば、1.8の値を良好な近似値として使用してもよい。樹脂の密度は、温度によって変化するので、種々の造形プレートと樹脂の組合せのための抗力係数を一覧にすることを求めるとき、作動環境に似せた温度スペクトル全体の抗力の測定を実行するべきである。
【0028】
低速度において、樹脂を非圧縮性流体として取扱うとき、3D印刷適用例において予想されるように、移動している造形プレートを越える樹脂の流れを、層流又はほぼ層流であると仮定する。更に、(もし存在すれば)製造中の物体に対する造形プレートの寸法は、支配的であると仮定する。したがって、(物体の製造中でさえも)抗力は、
D = aηv
のように、樹脂の粘度(η)に関係する。ここで、「a」は、造形プレートの「寸法」であり、「v」は、造形プレートを樹脂の中で上昇/下降させたときの造形プレートの速度である。所定の造形プレートの「寸法」を、実験的に決定するのがよい。例えば、所定のプリンタ/造形プレート/樹脂の組合せについて、抗力を、上で特定したように、測定されたトルクから計算する。樹脂の製造者は、普通、基準温度、典型的には25℃における樹脂の粘度を特定する。かくして、この樹脂におけるトルクの測定値をその基準温度で取っていれば、造形プレートの「寸法」を
a = FD/ηv = ρvCDA/2η
のように計算するのがよい。上述したように、この寸法は、印刷作業中、共通の物体組立体にわたって不変であるとみなされ、したがって、異なる温度のための異なる粘度の値をトルクの関数として一覧にすることを可能にする。
【0029】
かくして、バット重合プリンタに使用される光硬化樹脂の粘度を決定する方法及びシステムを記載した。
図1
図2
【国際調査報告】