(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-01
(54)【発明の名称】金属-有機骨格押出物の製造方法
(51)【国際特許分類】
B01J 2/28 20060101AFI20230125BHJP
B01J 20/30 20060101ALI20230125BHJP
B01J 20/22 20060101ALI20230125BHJP
C07C 63/307 20060101ALI20230125BHJP
B01J 2/20 20060101ALI20230125BHJP
C07F 1/08 20060101ALN20230125BHJP
C07F 3/06 20060101ALN20230125BHJP
【FI】
B01J2/28
B01J20/30
B01J20/22 Z
C07C63/307
B01J2/20
C07F1/08 B
C07F3/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022530831
(86)(22)【出願日】2020-07-27
(85)【翻訳文提出日】2022-07-25
(86)【国際出願番号】 US2020043768
(87)【国際公開番号】W WO2021107993
(87)【国際公開日】2021-06-03
(32)【優先日】2019-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390023630
【氏名又は名称】エクソンモービル・テクノロジー・アンド・エンジニアリング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ExxonMobil Technology and Engineering Company
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156085
【氏名又は名称】新免 勝利
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】カペレフスキー,マシュー ティ
(72)【発明者】
【氏名】ビークマン,ジーン ダブリュー
(72)【発明者】
【氏名】マハノ,ヘラルド ホタ
【テーマコード(参考)】
4G004
4G066
4H006
4H048
【Fターム(参考)】
4G004LA09
4G004NA01
4G004NA03
4G004NA04
4G066AA04D
4G066AA14D
4G066AB06D
4G066AB07B
4G066AB07D
4G066AB24B
4G066AC12D
4G066AC16D
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4G066AC21D
4G066AC23D
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4G066FA38
4H006AA02
4H006AC90
4H006AD40
4H006BJ20
4H006BJ50
4H006BS30
4H006BS70
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4H048BB14
4H048VA56
4H048VA66
4H048VB10
4H048VB20
(57)【要約】
(a)金属-有機骨格材料を押出助剤と混合して金属-有機骨格押出混合物を形成する工程と、(b)金属-有機骨格混合物を押出機で押出して、金属-有機骨格押出物を生成する工程と、を含む、押出機で金属-有機骨格押出物を製造する方法であって、押出助剤なしで金属-有機骨格材料を押出したときの押出機内の圧力と比較して押出機内の圧力が約10%~約55%減少している製造方法。押出助剤は、液体押出助剤、固体押出助剤および/またはポリマー押出助剤であってよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属-有機骨格材料と押出助剤とを混合して、金属-有機骨格押出混合物を形成する工程;および
金属-有機骨格混合物を押出機で押出して金属-有機骨格押出物を製造する工程、
を含む、押出機で金属-有機骨格押出物を製造する方法であって、
押出機内の圧力を、押出助剤なしで金属-有機骨格材料を押出す際の押出機内の圧力と比較して、約10%~約55%減少させる、押出物を製造する方法。
【請求項2】
押出助剤が、液体押出助剤、固体押出助剤および/またはポリマー押出助剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
液体押出助剤が直鎖状C
3~C
10アルキルアルコールまたは分岐状C
3~C
10アルキルアルコールである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
液体押出助剤が、1-プロパノール、iso-プロパノール、1-ブタノール、iso-ブタノール、1-ヘキサノール、1-ヘプタノールの群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
液体押出助剤が約0.1体積%~95体積%の範囲の水を含む、請求項1に記載の押出助剤。
【請求項6】
固体押出し助剤がグラファイトである、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
固体押出助剤がステアリン酸マグネシウムである、請求項2記載の方法。
【請求項8】
固体押出助剤が飽和又は不飽和のC
10+有機酸又はその塩である、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
固体押出助剤を、約1重量%~約30重量%の範囲で金属-有機骨格材料と混合する、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
ポリマー押出助剤が、ポリビニルアミド、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエステル、ポリエーテル、ポリビニルアミン、ポリビニルアルコール、ポリビニルエステル、またはそれらの組み合わせである、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
ポリマー押出助剤がポリビニルアルコールである、請求項2記載の方法。
【請求項12】
金属-有機骨格混合物が約0.5重量%~10重量%のポリビニルアルコールを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
金属-有機骨格混合物が、ポリ酢酸ビニルおよび水を含み、ポリ酢酸ビニルと水の比が約1:1~約1:3である、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
金属-有機骨格押出物を、ロッド、リブ付きロッド、タブレット、リング、環状タブレット、球体、ペレット、ハニカム体、または顆粒として成形する、請求項1~13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
金属-有機骨格材料が、HKUST-1、UiO-66、ZIF-8、ZIF-7、MIL-100、MOF-74、M
2(m-dobdc)、MOF-274、Cu(Qc)
2およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
金属-有機骨格材料が、
1~10個の炭素原子を有するアルキル基の部分構造;または
1~5個の芳香環を有するアリール基の部分構造、
(ここで、1つ以上の部分構造は、それぞれ少なくとも2つのX基を有し、Xは、金属またはメタロイドに配位するように構成された官能基である。)
のうちの1つ以上を含む有機配位子を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
各Xが、CO
2H、OH、SH、OH
2、NH
2、CN、HCO、CS
2H、NO
2、SO
3H、Si(OH)
3、Ge(OH)
3、Sn(OH)
3、Si(SH)
4、Ge(SH)
4、Sn(SH)
3、PO
3H、AsO
3H、AsO
4H、P(SH)
3、As(SH)
3、CH(RSH)
2、C(RSH)
3、CH(RNH
2)
2、C(RNH
2)
3、CH(ROH)
2、C(ROH)
3、CH(RCN)
2、C(RCN)
3、CH(SH)
2、C(SH)
3、CH(NH
2)
2、C(NH
2)
2、CH(OH)
2、C(OH)
3、CH(CN)
2、C(CN)
3、窒素含有複素環、硫黄含有複素環、およびそれらの組み合わせ(Rは1~5の炭素原子を有するアルキル基または1~2のフェニル環から成るアリール基である。)の中性またはイオン形態からなる群から独立して選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
有機配位子が、1,3,5-ベンゼンジカルボキシレート、1,4-ベンゼンジカルボキシレート、1,3-ベンゼンジカルボキシレート、ビフェニル-4,4’-ジカルボキシレート、ベンゼン-1,3,5-トリス(1H-テトラゾール)、アセチレン-1,2-ジカルボキシレート、ナフタレンカルボキシレート、アダマンタンテトラカルボキシレート、ベンゼントリベンゾエート、メタンテトラベンゾエート、アダマンタンテトラベンゾエート、ビフェニル-4,4’-ジカルボキシレート、イミダゾール、2,5-ジヒドロキシ-1,4-ベンゼンジカルボン酸、4,4’-ジヒドロキシ-(1,1’-ビフェニル)-3,3’-ジカルボン酸およびその誘導体の組み合わせからなる群から選択される、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
金属-有機骨格材料が、金属-有機骨格材料が、Be
2+、Mg
2+、Ca
2+、Sr
2+、Ba
2+、Sc
3+、Y
3+、Ti
4+、Zr
4+、Hf
4+、V
4+、V
3+、V
2+、Nb
3+、Ta
3+、Cr
3+、Mo
3+、W
3+、Mn
3+、Mn
2+、Re
3+、Re
2+、Fe
3+、Fe
2+、Ru
3+、Ru
2+、Os
3+、Os
2+、Co
3+、Co
2+、Rh
2+、Rh
+、Ir
2+、Ir
+、Ni
2+、Ni
+、Pd
2+、Pd
+、Pt
2+、Pt
+、Cu
2+、Cu
+、Ag
+、Au
+、Zn
2+、Cd
2+、Hg
2+、Al
3+、Ga
3+、In
3+、Tl
3+、Si
4+、Si
2+、Ge
4+、Ge
2+、Sn
4+、Sn
2+、Pb
4+、Pb
2+、As
5+、As
3+、As
+、Sb
5+、Sb
3+、Sb
+、Bi
5+、Bi
3+、Bi
+、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される金属イオンを含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
金属-有機骨格押出物が、押出前の基材に対して、約40%~約100%の比較BET表面積を有する、請求項1~19のいずれか一項に記載の金属-有機骨格押出物。
【請求項21】
金属-有機骨格押出物を約40℃~約150℃の温度で約30分以上の期間熟成させる工程をさらに含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
金属-有機骨格押出物を約100℃~約300℃の温度で約1時間以上焼成する工程をさらに含む、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
金属-有機骨格を押出す工程を、約0.01mm~約50mmの直径を有するダイを通して行う、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
金属-有機骨格押出物を任意の溶媒で洗浄することをさらに含む、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
任意の溶媒が、水、メタノール、エタノール、ジメチルホルムアミド、アセトン、ジエチルエーテル、アセトニトリル、ケトン、アミド、エステル、エーテル、ニトリル、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
MOF押出混合物が、MOF押出混合物の総重量を基準にして、約20重量%~約70重量%の固体を含む、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、金属-有機骨格(「MOF」)押出物に関するものである。より具体的には、本開示は、MOF材料の構造的完全性を維持し、MOF押出物の機械的強度を強化する、MOF押出物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
細孔や流路によって定義される大きな内部表面積を持つ材料は、触媒作用、吸収および/または吸着技術、イオン交換、クロマトグラフィー、物質の貯蔵および/または取り込みなどの用途で主に注目されている。
【0003】
マイクロポーラスおよび/またはメソポーラス活物質を作るためのさまざまな戦略の中で、金属イオンと有機分子ビルディングブロックを用いた金属-有機骨格(MOF)の形成は特に有利である。MOF材料は、(i)現在使用されているゼオライトよりも大きな細孔サイズを実現できる、(ii)現在使用されている多孔質材料よりも内部表面積が大きい、(iii)細孔サイズおよび/またはチャネル構造を広い範囲で調整できる、(iv)内部表面の有機骨格成分を容易に機能化できる、などの多くの利点を備えている。
【0004】
MOFは、金属イオンやクラスターがマルチトピック有機リンカーに配位し、自己集合して配位ネットワークを形成するハイブリッド材料である。これらの材料は、ガス貯蔵、ガス分離、触媒作用、センシング、環境修復など、さまざまな用途に幅広く使用される可能性がある。これらの用途の多くでは、反応床での大きな圧力損失を回避したり、材料の取り扱いを容易にするために、成形された粒子がしばしば使用されている。材料の成形は、押出物、リング、ペレット、球体など、様々な形状を具現化できる。出荷時や使用時の微粉の発生を抑えるために、成形粒子は、方法条件によって、および触媒層の重量によって発揮される圧力によって発生する圧縮力に耐える十分な機械的強度を有していなければならない。しかし、MOFを含んでなる材料の押出成形は、これらの新規材料を多用途に配合するために必要である比較的未開拓の分野である。
【0005】
MOFは、押出成形の過程で、高圧および高温などの条件からダメージを受けることがある。さらに、押出物の機械的強度を向上させるためにバインダーが必要となることが多いが、相入れる表面がないことを主たる理由として、多くのバインダーはMOFと相容れない。
【0006】
したがって、MOF材料の構造的完全性を低下させることなくMOF押出物を製造する方法、およびMOF押出物の機械的強度を向上させる方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
本開示は、押出工程中の圧力を低減し、金属-有機骨格の構造的完全性を維持するために、1つ以上の押出助剤を使用する金属-有機骨格押出物の製造方法に関するものである。また、本方法により、金属-有機骨格系押出物の機械的強度を向上させることができる。
【0008】
本明細書に提供されるのは、(a)金属-有機骨格材料を押出助剤と混合して金属-有機骨格押出混合物を形成する工程;及び(b)押出機内で金属-有機骨格混合物を押出して金属-有機骨格押出物を製造する工程、を含む、押出機で金属-有機骨格押出物を製造する方法であって、押出機内の圧力が、押出助剤なしで金属-有機骨格材料を押出す際の押出機内の圧力と比べて約10%~約55%低減されている製造方法である。説明するように、押出助剤は、液体押出助剤、固体押出助剤および/またはポリマー押出助剤であってよい。液体押出助剤は、直鎖のC3~C10アルキルアルコール、または分岐のC3~C10アルキルアルコールであってよい。実施形態において、液体押出助剤は、1-プロパノール、iso-プロパノール、1-ブタノール、iso-ブタノール、1-ヘキサノール、1-ヘプタノールからなる群から選択される。実施形態において、液体押出助剤は、約0.5体積%~95体積%の範囲の水を含む。
【0009】
固体押出助剤としては、グラファイト、ステアリン酸マグネシウム、または飽和もしくは不飽和のC10+有機酸もしくはその塩を挙げることができる。実施形態では、固体押出助材は、約.5重量%~約30重量%の範囲で金属-有機骨格材料と混合される。
【0010】
ポリマー押出助剤は、ポリビニルアミド、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエステル、ポリエーテル、ポリビニルアミン、ポリビニルアルコール、ポリビニルエステル、またはそれらの組み合わせであってよい。実施形態では、ポリマー押出助剤は、ポリビニルアルコールである。一実施形態において、金属-有機骨格混合物は、約0.5重量%~10重量%のポリビニルアルコールを含む。金属-有機骨格混合物は、ポリ酢酸ビニルおよび水を含んでなることができる。実施形態において、ポリ酢酸ビニルと水の比は、約1:1~約1:3である。
【0011】
金属-有機骨格押出物は、ロッド、リブ付きロッド、タブレット、リング、環状タブレット、球体、ペレット、ハニカム体、または顆粒などの形状にできる。本方法で製造された金属-有機骨格押出物は、約40%~約100%の比較BET表面積を有し得る。実施形態において、金属-有機骨格材料は、HKUST-1、UiO-66、ZIF-8、ZIF-7、MIL-100、MOF-74、MOF-274、またはそれらの組み合わせである。実施形態において、金属-有機骨格材料は、約2Å~約50Åの細孔サイズを有する。本方法で製造された金属-有機骨格押出物は、約40%~約100%の比較BET表面積を有できる。
【0012】
実施形態において、本方法は、約20℃~約100℃の温度で約30分以上の期間、金属-有機骨格押出物を熟成させる工程をさらに含む。実施形態において、本方法は、約100℃~約300℃の温度で約1時間以上、金属-有機骨格押出物を活性化する工程をさらに含む。実施形態において、金属-有機骨格押出物を押出す工程は、約0.01mm~約50mmの直径を有するダイを通して行われる。実施形態では、金属-有機骨格押出物は、任意の溶媒で洗浄できる
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】長鎖アルコールを用いて押出した実施例1のHKUST-1試料の粉末X線回折(以下、「PXRD」という)パターンである。
【
図2】長鎖アルコールを用いて押し出した実施例1のHKUST-1サンプルのN
2吸着等温線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示の押出物及び押出方法をさらに詳細に説明する前に、本開示をよりよく理解するのを助けるために、用語のリストを以下に示す。
【0015】
本明細書および特許請求の範囲内のすべての数値は、示された値に関して「約」または「約」によって修正され、当業者によって予想される実験誤差および変動が考慮される。
【0016】
特に指定のない限り、室温は約25℃である。
【0017】
簡潔さのために、本明細書では特定の範囲のみを明示的に開示している。ただし、任意の下限値からの範囲を任意の上限値と組み合わせて、明示的に記述されていない範囲を記述できるのと同様に、任意の下限値からの範囲を他の任意の下限値と組み合わせて、明示的に記述されていない範囲を記述できる。また、明示的に記述されていなくても、ある範囲内には、その端点間のすべての点または個々の値が含まれる。したがって、すべての点または個々の値は、それ自身の下限または上限として、他の点または個々の値または他の下限または上限と組み合わせて、明示的に記載されていない範囲を示すことができる。
【0018】
本開示および特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上明らかに異なることが指示されない限り、複数形を含む。
【0019】
本明細書において、「Aおよび/またはB」などの表現で使用される「および/または」という用語は、「AおよびB」、「AまたはB」、「A」および「B」を含むことを意図する。
【0020】
用語「水系媒体」とは、5体積%以上の水を含む液体を指す。適切な水性媒体は、水または水と水混和性有機溶媒の混合物を含んでなる、または本質的になることができる。
【0021】
用語「押出成形」とは、流動性のある原料混合物を、所望の断面を持つダイに押し通す工程を指す言葉である。
【0022】
用語「押出物」は、押出成形の際に生じる細長い物体を意味する。
【0023】
用語「結晶化前」という用語は、材料、特に金属-有機骨格材料があらかじめ合成され(予備成形)、通常、材料が成形された反応媒体から分離されていることを意味する。
【0024】
用語「ペースト」とは、生地状の外観と粘性を有する溶媒和粉体を指す。
【0025】
本明細書で使用する「金属-有機骨格材料」、「MOF材料」という用語は、金属またはメタロイドと、金属またはメタロイドに配位できる有機配位子を意味する。特定の実施形態では、有機配位子と金属(またはメタロイド)のMOF配位ネットワークは、多孔質三次元構造を形成する。
【0026】
本明細書で使用する場合、「MOF押出物」という用語は、押出されたMOF材料を意味する。MOF押出物は、少なくとも1つの押出助剤で処理された1つ以上の金属-有機骨格材料を含んでなり、さらに任意の溶媒およびバインダー、細孔形成剤、潤滑剤、レオロジー助剤および安定性に寄与する他の材料(例えば、金属粉末)などの他の添加剤を含むことができる。
【0027】
一般に、金属-有機骨格(MOF)は、ガス貯蔵、ガスと液体の分離、異性体分離、廃棄物除去、触媒など、幅広い分野での応用が期待される比較的新しいタイプの高多孔性材料である。ゼオライトが純粋な無機物であるのに対し、MOFは有機配位子を用いて、金属原子や金属原子団を橋渡しする「支柱」の役割を果たす。MOFはゼオライトと同様、微小孔を持つ物質である。有機配位子や金属の選択により、MOFの細孔の形状や大きさを調整できる。MOFは有機配位子を修飾できるため、全体としてゼオライトとは異なる多様な構造を持っている。MOFの構造に影響を与える要因としては、例えば、配位子の歯質、配位基のサイズおよび種類、配位基の遠隔または近傍の追加置換、配位子のサイズおよび形状、配位子の疎水性または親水性、金属および/または金属塩の選択、溶剤の選択、温度、濃度などの反応条件などの1つまたは複数が挙げられる。
【0028】
MOFは、固まらない微結晶の粉末材料として合成されたり、商業的に入手されたりする。多くの工業製品や商業製品では、粉末状のMOFを、決められた形状を持つより大きなコヒーレントボディに成形することが望まれている。従来、粉末状のMOFをペレット化や押出などの方法で大型の体に固める場合、物理的および機械的特性が好ましくないことがよくあった。具体的には、粉末状のMOFを圧縮して加工すると、MOF構造の圧力感受性によりBET表面積がかなり低くなり、圧壊強度(圧縮強さ)が相対的に低くなることがある。さらに、処理条件を誤ると、粉末X線回折やBET表面積分析で証明されるように、最初のMOF構造の全体または部分的な相変態を引き起こす可能性がある。これらの各要因は、MOF押出物を成形体の形態で製造し、および/またはこの成形体を様々な用途に使用する上で問題となることがある。
【0029】
金属-有機骨格(MOF)粉末材料を、金属-有機骨格材料(「MOF材料」)を含んでなる、よりまとまった(形状の)本体に統合することが望ましいが、MOF材料の特性、特に圧力およびせん断に対する弱さは、例えば強い圧力(例えば約100psi~数千psi)および粉末状MOFを強化するために用いられるせん断、特に押出成形中に、MOF構造内の孔の少なくとも一部が崩壊し、BET表面積の望ましくない、しばしば著しい減少につながることがある。粉末状のMOFを成形体に固めるための条件は、MOF構造を少なくとも部分的に、場合によっては完全に別の結晶相などの別の材料に変換することにつながる可能性がある。MOFの連結物(MOF押出物など)は、圧壊強度が低いことが問題になることがある。例えば、圧壊強度の値が低いと、微粉末が発生し、特定の用途では不利になることがある。
【0030】
したがって、本開示は、MOFの変形が減少し、MOFの表面積が増加し、圧壊強度(圧縮強さ)が増加したMOF押出物の製造方法を提供する。本方法は、MOF材料に1つ以上の押出助剤を組み合わせて、MOF押出物を製造するものである。本方法に有用な押出助剤としては、液体押出助剤、固体押出助剤および/またはポリマー押出助剤の1種または2種以上を挙げることができる。
【0031】
本開示のMOF押出物を製造する方法は、予備結晶化MOF粉末材料(MOF材料)と押出助剤の混合物を撹拌して、押出処理に適したドウ(プレミックス)またはペーストを形成することを含むことができる。場合によっては、マリング(摩砕混合)による攪拌が行われることもある。マリングは、一定の圧力をかけず、混合の際にかかる力(エネルギー)が少ないという点で、ミリングと区別される。マリングは通常、MOF構造の別の結晶相への完全な変換を促進するのに十分なエネルギーをMOFに付与しない。MOFの中には、適度なエネルギーの入力に対しても不安定なものがあり、本明細書で開示する穏やかなマリング条件下でも、わずかな新しい結晶相の形成が起こり得る。
【0032】
本明細書に開示されるMOF材料は、その空隙率の観点から特徴付けることができる。MOF材料は、マイクロポア、メソポア、マクロポア、およびそれらの任意の組み合わせを含むことができる。本明細書では、マイクロポアは約2nm以下の細孔径を有するものと定義し、メソポアは約2nmから約50nmの細孔径を有するものと定義する。粒子間テクスチャーの空隙が存在する場合もある。
【0033】
望ましくは、本明細書の開示に従って形成されたMOF押出物は、それらが形成された結晶化前の金属-有機骨格粉末材料のBET表面積の少なくとも実質的過半数を保持している。具体的には、MOF押出物内の金属-有機骨格材料は、結晶化前の金属-有機骨格粉末材料のBET表面積に対して約50%、60%、70%、80%、90%またはそれ以上のBET表面積を特徴としてもよい。有利なことに、驚くべきことに、いくつかの例では、押出物内の金属-有機骨格連結材料のBET表面積は、結晶化前の金属-有機骨格粉末材料のBET表面積よりも大きい場合さえある。ペレット化された試料は、金属-有機骨格連結材料のBET表面積に近い値を示すことがある。
【0034】
本明細書に記載されるように、MOFは、ZIF(またはゼオライトイミダゾレートフレームワーク)、MIL(またはラヴワジエ研究所のマテリオ(Materiaux))、およびIRMOF(またはアイソレティキュラー金属-有機フレームワーク(IsoReticular Metal Organic Frameworks))の単独または他のMOFとの組み合わせであり得る。いくらかの実施形態において、MOFは、HKUST-1、MOF-74、MIL-100、ZIF-7、ZIF-8、ZIF-90、UiO-66、UiO-67、MOF-808、またはMOF-274から選択できる。
【0035】
MOFは、後述するように、有機配位子の組み合わせ、または1つもしくは2つ以上の有機配位子と、金属またはメタロイドとの組み合わせを介して調製できる。例えば、MOF-274は、Mg2+、Mn2+、Fe2+、Zn2+、Ni2+.Cu2+、Co2+またはそれらの組み合わせと4,4’-ジヒドロキシ-(1,1’-ビフェニル)-3,3’-ジカルボン酸との組み合わせである。さらに、MOF-274は、その構造内に、金属サイトに配位したアミンを含むことができる。
【0036】
本明細書で使用する「等温線」とは、系の温度を一定に保ったまま、濃度の関数として吸着物の吸着を行うことをいう。実施形態では、吸着物はCO2であり、濃度はCO2圧力として測定できる。本明細書に記載されているように、等温線は多孔質材料を用いて、見かけの表面積を計算するために適用される様々な数学的モデルを用いて実施できる。S.ブルナウアー、P.H.エメットとE・テラー、J.Am.Chem.Soc.1938,60,309-319;K.ウォルトンとR.Q.スヌール,J.Am.Chem.Soc.2007,129,8552-8556;I.ラングミュア,J.Am.Chem.Soc.1916,38,2221.
有機配位子
【0037】
本願明細書において使用するように、有機配位子としては、単座、二座、多座、またはそれらの組み合わせである配位子である。一般に、有機配位子は金属イオンに配位できるもので、原則としてそのような配位に適したすべての化合物を使用できる。有機配位子は、金属塩の金属イオンに配位できる、または金属やメタロイドに配位できる、少なくとも2つの中心を含むものであってよい。いくらかの実施形態において、有機配位子は、i)1~10個の炭素原子を有する、アルキル基部分構造、ii)1~5個の芳香環を有する、アリール基部分構造、iii)1~10個の炭素原子を有するアルキル基または1~5個の芳香環を有するアリール基からなる、アルキルまたはアリールアミン部分構造、を含み、ここで、部分構造には共有結合している少なくとも二つの官能基「X」があり、ここで、Xは金属またはメタロイドに配位できるものである。
【0038】
いくらかの実施形態では、各Xは、CO2H、OH、SH、NH2、CN、HCO、CS2H、NO2、SO3H、Si(OH)3、Ge(OH)3、Sn(OH)3、Si(SH)4、Ge(SH)4、Sn(SH)3、PO3H、AsO3H、AsO4H、P(SH)3、As(SH)3、CH(RSH)2、C(RSH)3、CH(RNH2)2、C(RNH2)3、CH(ROH)2、C(ROH)3、CH(RCN)2、C(RCN)3、CH(SH)2、C(SH)3、CH(NH2)2、C(NH2)2、CH(OH)2、C(OH)3、CH(CN)2、C(CN)3、窒素含有複素環、硫黄含有複素環、およびそれらの組み合わせ(Rは1~5の炭素原子を有するアルキル基、または1~2のフェニル環から成るアリール基である。)から独立的に選択される。
【0039】
いくらかの実施形態では、有機配位子としては、置換または非置換の、単核または多核の芳香族ジ-、トリ-およびテトラカルボン酸、ならびに置換または非置換の、少なくとも一つのヘテロ原子を含む芳香族ジ-、トリ-およびテトラカルボン酸(これらは一つまたは複数の核を有してよい)が挙げられる。
【0040】
いくらかの実施形態において、有機配位子は、ベンゼントリカルボキシレート(BTC)(1つ以上の異性体)、ADC(アセチレンジカルボキシレート)、NDC(ナフタレンジカルボキシレート)(任意の異性体)、BDC(ベンゼンジカルボキシレート)(任意の異性体)、ATC(アダマンタンテトラカルボキシレート)(任意の異性体)、BTB(ベンゼントリベンゾエート)(任意の異性体)、MTB(メタンテトラベンゾエート)、ATB(アダマンタントベンゾエート)(任意の異性体)、ビフェニル-4,4'-ジカルボキシレート、ベンゼン-1,3,5-トリス(1H-テトラゾール)、イミダゾールまたはその誘導体、あるいはそれらの組合せなどである。
【0041】
多座官能基を有する配位子は、対応する対カチオン、例えば、H+、Na+、K+、Mg2+,Ca2+、Sr2+、アンモニウムイオン、アルキル置換アンモニウムイオン、アリール置換アンモニウムイオン、または対アニオン、例えばF-、Cl-,Br-、I-、ClO-、ClO2
-、ClO3
-、ClO4
-、OH-、NO3
-、NO2
-、SO4
2-、SO3
2-、PO4
3-、CO3
2-などを包含してよい。
【0042】
いくらかの実施形態において、有機配位子は、単座の官能基を含む。単座の官能基とは、先に定義した有機配位子またはアミン配位子部分構造Lを含むことができる、金属イオンに1つの結合しか形成できない部分構造に結合した部位と定義される。この定義によれば、配位子は1つまたは複数の単座の官能基を含むことができる。例えば、シクロヘキシルアミンや4,4'-ビピリジンは、各官能基が1つの金属イオンにのみ結合できるので、単座の官能基を含む配位子であると言える。
【0043】
したがって、シクロヘキシルアミンは単座の官能基を含む単官能性配位子であり、4,4'-ビピリジンは2つの単座の官能基を含む二官能性配位子である。単座の官能基を有する配位子の具体例としては、単官能性配位子であるピリジン、二官能性配位子であるハイドロキノン、三官能性配位子である1,3,5-トリシアノベンゼンが挙げられる。
【0044】
単座の官能基を有する配位子と多座の官能基を有する配位子をブレンドして、適切な金属イオンおよび任意にテンプレート剤の存在下でMOF材料を作ることができる。単座配位子もテンプレート剤として使用できる。得られたMOF材料中の細孔を占有する目的で、反応混合物にテンプレート剤を添加してもよい。単座配位子および/またはテンプレート剤は、以下の物質および/またはその誘導体を含んでもよい。
A. アルキルまたはアリールアミンまたはホスフィンおよびそれらの対応するアンモニウム塩またはホスホニウム塩。アルキルアミンまたはホスフィンは、1~20個の炭素原子を有する、直鎖、分枝、または環状の脂肪族基(およびそれらの対応するアンモニウム塩)を含んでよく、アリールアミンまたはホスフィンは複素環を含む1~5の芳香環を含んでよい。単官能アミンの例は、メチルアミン、エチルアミン、n-プロピルアミン、iso-プロピルアミン、n-ブチルアミン、sec-ブチルアミン、iso-ブチルアミン、tert-ブチルアミン、n-ペンチルアミン、neo-ペンチルアミン、n-ヘキシルアミン、ピロリジン、3-ピロリン、ピペリジン、シクロヘキシルアミン、モルホリン、ピリジン、ピロール、アニリン、キノリン、イソキノリン、1-アザフェナンスレンおよび8-アザフェナンスレンである。二官能性および三官能性アミンの例は、1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ジアミノベンゼン、4,4'-ビピリジル、イミダゾール、ピラジン、1,3,5-トリアミノシクロヘキサン、1,3,5-トリアジン、1,3,5-トリアミノベンゼンである。
B. 1~20個の炭素原子を含むアルキル基またはシクロアルキル基、あるいは1~5個のフェニル環を含むアリール基を含むアルコール。単官能アルコールの例は、メタノール、エタノール、n-プロパノール、iso-プロパノール、アリルアルコール、n-ブタノール、iso-ブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、n-ペンタノール、iso-ペンタノール、sec-ペンタノール、ネオペンタノール、n-ヘキサノール、シクロヘキサノール、フェノール、ベンジルアルコールおよび2-フェニルエタノールである。二官能性および三官能性アルコールの例は、1,4-ジヒドロキシシクロヘキサン、ヒドロキノン、カテコール、レゾルシノール、1,3,5-トリヒドロキシベンゼン、1,3,5-トリヒドロキシシクロヘキサンである。
C. 1~20個の炭素原子を含むアルキル基またはシクロアルキル基、または1~5個のフェニル環を含むアリール基を含むエーテル。エーテルの例は、ジエチルエーテル、フラン、モルホリンである。
D. 1~20個の炭素原子を含むアルキル基またはシクロアルキル基、あるいは1~5個のフェニル環を含むアリール基を含むチオール。単官能チオールの例は、チオメタン、チオエタン、チオプロパン、チオシクロヘキサン、チオフェン、ベンゾチオフェン、およびチオベンゼンである。二官能性および三官能性チオールは、1,4-ジチオシクロヘキサン、1,4-ジチオベンゼン、1,3,5-トリチオシクロヘキサン、1,3,5-トリチオベンゼンである。
E. 1~20個の炭素原子を含むアルキル基またはシクロアルキル基、または1~5個のフェニル環を含むアリール基を含むニトリル。単官能ニトリルの例は、アセトニトリル、プロパンニトリル、ブタンニトリル、n-バレロニトリル、ベンゾニトリル、p-トルニトリルである。二官能性および三官能性ニトリルの例は、1,4-ジニトリロシクロヘキサン、1,4-ジニトリロベンゼン、1,3,5-トリニトロシクロヘキサン、1,3,5-トリニトロベンゼンである。
F. 硫酸(サルフェート)、硝酸(ナイトレート)、亜硝酸(ナイトライト)、亜硫酸、重亜硫酸、リン酸、リン酸水素、リン酸二水素、ジフォスフェート、トリフォスフェート、亜リン酸、塩素、臭素、ヨウ素、炭酸、重炭酸、チオシアン化物およびイソニトリルからなる群からの無機アニオン、並びに前記無機アニオンの対応する酸および塩。
G. 有機酸とそれに対応するアニオン(および塩)。有機酸としては、直鎖状、分岐状、または環状の脂肪族基を含み、1~20個の炭素原子を有するアルキル有機酸、または複素環を含んでもよい1~5個の芳香環を有するアリール有機酸およびそのアリール有機アニオンと塩を挙げることができる。
H.その他、アンモニア、二酸化炭素、メタン、酸素、エチレン、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ニトロベンゼン、ナフタレン、チオフェン、ピリジン、アセトン、1-2-ジクロロエタン、塩酸メチレン、テトラヒドロフラン、エタノールアミン、トリエチルアミンまたはトリフルオロメチルスルホン酸等の有機および無機物。
【0045】
さらに、テンプレート剤には、官能基を含まない他の脂肪族炭化水素および芳香族炭化水素が含まれていてもよい。いくらかの実施形態では、テンプレート剤は、シクロヘキサン、アダマンタン、またはノルボルネンなどのシクロアルカン類、および/またはベンゼン、トルエン、またはキシレンなどの芳香族類を含む。
金属イオン
【0046】
前記のように、MOFは、金属イオン、有機配位子、および任意に、適切なテンプレート剤を組み合わせることによって合成(製造)できる。適切な金属イオンには、様々な配位幾何学および酸化状態の金属およびメタロイドが含まれる。いくらかの実施形態では、MOFは、多座官能基を有する配位子と適切なテンプレート剤との組み合わせで、明確に異なる配位幾何学を有する金属イオンを使用して製造される。MOFは、コバルト(II)のような八面体配位を好む金属イオン、および/または亜鉛(II)のような四面体配位を好む金属イオンを用いて調製できる。MOF材料は、対応する金属塩の対イオンと共に、
Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+、Sc3+、Y3+、Ti4+、Zr4+、Hf4+、V4+、V3+、V2+、Nb3+、Ta3+、Cr3+、Mo3+、W3+、Mn3+、Mn2+、Re3+、Re2+、Fe3+、Fe2+、Ru3+、Ru2+、Os3+、Os2+、Co3+、Co2+、Rh2+、Rh+、Ir2+、Ir+、Ni2+、Ni+、Pd2+、Pd+、Pt2+、Pt+、Cu2+、Cu+、Ag+、Au+、Zn2+、Cd2+、Hg2+、Al3+、Ga3+、In3+、Tl3+、Si4+、Si2+、Ge4+、Ge2+、Sn4+、Sn2+、Pb4+、Pb2+、As5+、As3+、As+、Sb5+、Sb3+、Sb+、Bi5+、Bi3+、Bi+、Be2+、
の金属イオンの1種または2種以上を用いて製造できる。金属イオンという用語は、金属とメタロイドの両方のイオンを意味する。いくらかの実施形態では、MOF材料の製造に使用するのに適した金属イオンは、対応する金属塩の対アニオンと共に、
Sc3+、Ti4+、V4+、V3+、V2+、Cr3+、Mo3+、Mg2+、Mn3+、Mn2+、Fe3+、Fe2+、Ru3+、Ru2+、Os3+、Os2+、Co3+、Co2+、Rh2+、Rh+、Ir2+、Ir+、Ni2+、Ni+、Pd2+、Pd+、Pt2+、Pt+、Cu2+、Cu+、Ag+、Au+、Zn2+、Cd2+、Al3+、Ga3+、In3+、Ge4+、Ge2+、Sn4+、Sn2+、Pb4+、Pb2+、Sb5+、Sb3+、Sb+、Bi5+、Bi3+、Bi+、および/またはBe2+、
を含むことができる。いくらかの実施形態では、MOF材料の製造に使用するための金属イオンは、対応する金属塩の対イオンと共に、
Sc3+、Ti4+、V4+、V3+、Cr3+、Mo3+、Mn3+、Mn2+、Fe3+、Fe2+、Co3+、Co2+、Ni2+、Ni+、Cu2+、Cu+、Ag+、Zn2+、Cd2+、Al3+、Sn4+、Sn2+、Bi5+、Bi3+、および/またはBi+、
を含む。いくらかの実施形態では、MOF材料の製造に使用するための金属イオンは、対応する金属塩の対イオンと共に、
Mg2+、Mn3+、Mn2+、Fe3+、Fe2+、Co3+、Co2+、Ni2+、Ni+、Cu2+、Cu+、Pt2+、Ag+、およびZn2+、
からなる群から選択される。
MOF材料の製造
【0047】
剛直で安定したMOF材料の合成は、非常に穏やかな反応条件で行うことができる。多くの場合、試薬は水性または非水性の溶液に配合され、合成反応温度は0℃から100℃(開放ビーカー内)である。他の場合、溶液反応は密閉容器内で25℃から300℃の温度で行われる。いずれの場合も、大きな単結晶や微結晶の微多孔質(マイクロポーラス)固体が形成される。
【0048】
MOF材料の調製において、反応物は、1:10~10:1の金属イオンと多座官能基含有配位子とのモル比で添加できる。いくらかの実施形態では、金属イオン対多座官能基を含む配位子は、1:3~3:1、例えば、1:2~2:1である。テンプレート剤の量は、MOF材料の製造に影響を与えない場合があり、実際、テンプレート剤は、状況によっては、反応が行われる溶媒として採用できる。そのため、反応やMOF材料の調製に支障をきたすことなく、テンプレート剤を多量に使用できる。さらに、単座の官能基を含む配位子と多座の官能基を含む配位子を金属イオンと組み合わせて使用する場合、単座の官能基を含む配位子を過剰に利用してもよい。特定の状況では、単座の官能基を含む配位子を、反応が行われる溶媒として利用できる。さらに、特定の状況では、テンプレート剤と一座の官能基を含む配位子は同一であってもよい。一価の官能基を含む配位子であるテンプレート剤の例として、ピリジンが挙げられる。
【0049】
MOF材料の調製は、水系または非水系のいずれで実施してもよい。溶媒は極性でも非極性でもよく、テンプレート剤、または単座の官能基を含む任意の配位子であってもよい。非水系溶媒の例としては、ペンタン、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ニトロベンゼン、シアノベンゼン、アニリン、ナフタレン、ナフサなどのn-アルカン、メタノール、エタノール、n-プロパノールなどのn-アルコール類、イソプロパノール。イソプロパノール、アセトン、1,2,-ジクロロエタン、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、チオフェン、ピリジン、エタノールアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミンなどが挙げられる。適切な溶媒は、出発反応物の溶解度に基づいて選択でき、溶媒の選択は、MOF材料を得る上で重要でない場合がある。
【0050】
単結晶X線構造解析に適したマイクロポーラス材料の大きな単結晶の形成を助けるために、溶液反応は、ポリマー添加剤などの粘性材料の存在下で行ってもよい。具体的な添加剤としては、ポリエチレンオキサイド、ポリメチルメタクリル酸、シリカゲル、寒天、油脂、コラーゲンなどがあり、これらは高い収率と純粋な結晶性製品の達成を助けることがある。マイクロポーラス材料の大きな単結晶を成長させることで、マイクロポーラス骨格の明確なキャラクタリゼーションが可能になる。マイクロポーラス材料の大型単結晶は、磁気や電子センシングの応用に役立ち得る。
【0051】
本明細書で提供されるのは、上記のMOF材料を用いたMOF押出物の製造方法である。本方法では、MOF材料と押出し助剤を混合してMOF押出し混合物を形成する。そして、このMOF押出混合物を押出してMOF押出物を形成する。
【0052】
MOFの押出物を形成するために、押出機は、ラム押出機(押出プレスとも呼ばれる)、スクリュー押出機であってよい。ラム押出機では、MOF材料は、機械的または油圧的に作動するプランジャーまたはピストンによって、ダイを通して押し出される。スクリュー押出機では、オーガーなどの回転するスクリューによって、MOF材料を供給点からダイに搬送する。本明細書に記載されるように、形成後、MOF押出物は、乾燥および焼成され得る。
【0053】
一般に、押出機は、定義された断面形状を有する押出物を製造するために使用される機械装置である。押出機は、通常、原料を供給するホッパーと、原料が結合されるバレルまたは他の閉じ込め物と、押出物が形成されるダイ開口部を有するダイとを含む。バレル内で温度、圧力、せん断によって強制的に均質化された材料は、さまざまな断面形状を持つ金型開口部に通される。MOF押出物の形状は、ロッドまたはリブ付きロッド、タブレット、リング、環状タブレット、球体、ペレット、ハニカム体、顆粒、または同様の形状にできる。
【0054】
本明細書に記載されているように、本方法で使用されるMOF材料は、1つ以上の押出助剤、および任意に押出物の様々な物理的特性を変更できる添加剤と組み合わされる。添加剤は、押出成形の前に、または押出成形中にMOF材料と組み合わせることができる。他のタイプの押出物のための例示的な押出機および押出工程は、米国特許第4,441,990号(第12欄第23行~第19欄第64行)(参照により本明細書に組み込まれる)、および米国特許第6,517,807号(第5欄第35~50行)(参照により本明細書に組み込まれる)においてさらに詳細に説明されている。
【0055】
本開示に従った押出方法は、MOF材料を、より低い操作圧力でのMOFの押出を可能にする、および/またはMOF押出物の機械的特性を改善する1つ以上の押出助剤と混合または共供給することを含むことができる。押出し工程は、任意の溶媒または溶媒混合物を使用してもしなくても行うことができる。ある態様では、MOF押出物は、元のMOF材料と実質的に同じまたは改善された物理的品質を示し、商業用途に適した表面積および機械的強度を示す。押出助剤には、液体押出助剤、固体押出助剤、およびMOF押出時の圧力を低減し、出発MOF材料の結晶性、多孔性などの構造特性を保持または向上させるポリマー助剤などがある。
【0056】
本方法で使用され、以下の例で示されるように、押出助剤は押出方法中の圧力を下げるために使用され、大規模な押出機で特定の操作圧力を制限内に維持するためにも有益である。実施形態において、押出助剤は、MOF押出物中に残る材料、ならびにMOF押出物中に残らず、洗浄および/または熟成によって押出後に除去される材料を含むことができる。また、押出成形用助剤は、様々な金属ノード、細孔構造、結晶子サイズを有する幅広いMOF材料の機械的安定性を向上させることができる。その結果、本方法は、様々なMOF結晶や押出し助剤の種類に適用できる。全体として、本方法で使用されるような押出助剤は、押出中のMOF変形の減少、MOF押出物の表面積の増加、およびMOF押出物の圧壊強度の増加を提供する。
押出助剤
【0057】
本明細書に記載されているように、本開示のMOF押出物は、少なくとも1つのMOF材料と少なくとも1つの押出助剤とを含んでなる。本明細書で提供されるように、押出助剤は、液体押出助剤、固体押出助剤、及び/又はポリマー押出助剤であってよい。本方法において、押出助剤は、押出機内および押出方法中の圧力を低減する役割を果たし、それによって、MOF材料の機械的変形および/または表面積の減少を最小化または排除できる。押出助剤は、押出によって損傷を受ける可能性のあるMOF押出物の製造を可能にするために、本方法で使用される。
液体押出助剤
【0058】
本明細書で提供されるように、液体押出助剤は、水、および少なくとも2個の炭素を有するアルキル鎖を有する直鎖および分枝アルキルアルコールを含む。実施形態において、液体押出助剤は、1-プロパノール、iso-プロパノール、1-ブタノール、iso-ブタノール、1-ヘキサノール、1-ヘプタノールなどを含むC3~C10アルキルアルコール類を含むことができる。実施形態では、C10より大きい炭素数を有する液体押出助剤は、化合物が液体のままで、MOF材料と組み合わせることができる場合に使用できる。
【0059】
MOF押出物を製造する方法は、MOF材料を水のみと混合する工程、および/または1つ以上の押出助剤と混合して、MOF押出混合物を形成する工程を含む。オプションとして、水の代わりに溶媒を使用することも可能である。実施形態では、MOF押出混合物は、約0.5体積%~95体積%の範囲の体積パーセント(体積%)で水を含むことができる。
固体押出助剤
【0060】
固体押出助剤としては、黒鉛(グラファイト)や、モンモリロナイト、カオリン、ベントナイト、ハロイサイト、ディッカイト、ナクライト、アノーサイト等の粘土を挙げることができる。黒鉛は、比表面積OG(例えば約3~8m2/g以上)、粒子径D50が約45~150μm以下であることを特徴とできる。D50は、50%の粒子が表示値より小さいことを意味する。本方法で使用する目的で、黒鉛は、天然黒鉛、合成黒鉛、および膨張黒鉛、黒鉛層間化合物、黒鉛ナノファイバー(GNF)またはカーボンナノチューブ(CNT)、およびそれらの混合物を包含する黒鉛改質物を含む。黒鉛は、多くのメーカーやサプライヤーから、さまざまな特性のものを入手できる。
【0061】
実施形態において、固体押出助剤は、C10+固体有機酸及びその塩、例えばステアリン酸マグネシウムを含むことができる。また、固体押出助剤は、飽和および不飽和のC10+有機酸を含んでいる。
【0062】
固体押出助剤は、MOF材料と、重量パーセント(重量%)で約0.5重量%~約30重量%、約1重量%~約40重量%、約5重量%~約30重量%の範囲で組み合わされる。
ポリマー押出助剤
【0063】
MOF押出物を製造する本方法は、MOF材料を1つ以上のポリマー押出助剤と混合する工程を含むことができる。ポリマー押出助剤は、極性ポリマーであってもよく、エステル、アミド、酢酸塩、無水物などのホモポリマーおよびコポリマーを含み、例えば、エチレンおよび/またはプロピレンおよび/またはブテンなどのC2~C20オレフィンと酢酸塩、無水物、エステル、アルコール、および/またはアクリルなどの1以上の極性モノマーとのコポリマーなどがある。ポリマー押出助剤のさらなる例としては、ポリエステル、ポリアミド、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルアミンまたはその誘導体などが挙げられる。実施形態では、ポリマー押出助剤は、ポリビニルアルコールまたはその誘導体、例えば、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリ酪酸ビニル、またはポリプロピオネートを含んでなる。
【0064】
一実施形態において、ポリマー押出助剤は、2種以上のポリマーのポリマーブレンドである。ポリマー押出助剤は、第1のポリマーがポリマー混合物の重量パーセント(重量%)で約10重量%~約99重量%、例えば20重量%~95重量%、30重量%~90重量%、40重量%~90重量%、又は50重量%~90重量%の範囲に存在し、残りが第2のポリマー又はポリマーの組み合わせであるポリマーの混合物を含むことができる。実施形態では、ポリマー押出助剤は、ポリビニルアルコールとポリ酢酸ビニルとのポリマーブレンドを含んでなる。
【0065】
本開示のMOF押出物の製造方法は、MOF材料とポリマー押出助剤の1種以上とを混合してMOF押出混合物を形成する工程を含むものである。実施形態では、MOF押出混合物は、少なくともポリマーまたはポリマーブレンドを含むことができる。MOF材料とポリマー押出助剤には、任意の溶媒、さらに任意で1つ以上のポリマー押出助剤を混合できる。実施形態において、押出混合物は、1:1~1:3の範囲内のポリ酢酸ビニル対水の比を含むことができる。
押出助剤のブレンド
【0066】
押出助剤のブレンド(「押出助剤ブレンド」)は、1つまたは複数のポリマーを混合することにより(上述)、反応器を直列に接続して反応器ブレンドを作ることによって、または同じ反応器で1つを超える触媒を使用してポリマーの複数種を生産することによって、製造できる。ブレンドの場合、2つ以上の押出助剤を押出機に入れる前に一緒に混合でき、またはMOF材料と混合される前に押出機で混合できる。
【0067】
押出助剤ブレンドは、任意の適切な装置および方法、例えば、個々の成分をドライブレンドし、続いてミキサーで溶融混合することによって、または、例えば、バンバリーミキサー、ハーケミキサー、ブラベンダー内部ミキサー、または、重合方法の直接下流で使用される配合押出機およびサイドアーム押出機を含むことができる単軸もしくは二軸押出機で成分を直接一緒に混合することによって形成でき、フィルム押出機のホッパーにおける樹脂の粉末もしくはペレットのブレンドを含むことができる。
任意の添加剤
【0068】
さらに、MOFの押出物には、添加剤を配合することも可能である。このような添加剤としては、例えば、充填剤;酸化防止剤(例えば、チバガイギー社から入手可能なIRGANOX(登録商標)1010またはIRGANOX(登録商標)1076などのヒンダードフェノール類が挙げられる);亜リン酸塩(例:IRGAFOS(登録商標)168、Ciba-Geigy社から入手可能);凝集防止剤;ポリブテン、テルペン樹脂、脂肪族および芳香族炭化水素樹脂、アルカリ金属およびグリセロールステアレート、ならびに水添ロジンなどの粘着剤;紫外線安定剤;熱安定剤;アンチブロッキング剤;剥離剤;帯電防止剤;顔料;着色剤;色素;ワックス;シリカ;充填材;タルクをあげることができる。
【0069】
その他の任意の添加剤としては、沈殿シリカやフライアッシュなどの副産物に由来するシリカ、例えばシリカ-アルミナ、シリカ-カルシウム粒子、ヒュームドシリカなどがある。特定の実施形態では、シリカは粒子状物質であり、10μm以下、例えば5μm以下、又は1μm以下の平均粒子径を有する。一実施形態において、シリカは非晶質シリカである。
【0070】
その他の添加剤としては、二酸化チタン、水和酸化チタン、水和アルミナまたはアルミナ誘導体、ケイ素とアルミニウム化合物の混合物、ケイ素化合物、粘土鉱物、アルコキシシラン、両親媒性物質などの無機化合物が挙げられる。添加剤には、ケイ素、アルミニウム、ホウ素、リン、ジルコニウム、チタンなどの酸化物のような粉末状物質の接着に適した化合物も含まれることがある。さらに、添加剤としてマグネシウムの酸化物やベリリウムの酸化物を含めることができる。さらに、テトラアルコキシシランを添加剤として用いることもでき、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、類似のテトラアルコキシチタン、テトラアルコキシジルコニウム化合物、トリメトキシ-、トリエトキシ-、トリプロポキシ-、トリブトキシ-アルミニウム等が挙げられる。
【0071】
添加剤は、1つ以上の押出助剤の総重量に基づいて、0重量%~約40重量%の間、および約20重量%~約40重量%の間の濃度を有できる。
MOF押出物の製造方法
【0072】
本明細書に記載されるように、本方法は、MOF材料を押出助剤およびオプションとして他の添加剤と混合して押出混合物を形成する工程を含む。本方法はまた、押出混合物を押し出してMOF押出物を形成する工程を含む。本開示のMOF押出物の製造方法には、造粒体、すなわち成形体の製造が含まれる。このように、特定の実施形態において、MOF押出物は、形成され、顆粒または定形体を形成するために成形または造粒される。
【0073】
本方法は、押出物を任意の溶媒で洗浄する工程をさらに含むことができ、MOF押出物を乾燥および/または焼成する工程を含むことができる。任意の溶媒としては、水、アルコール、ケトン、アミド、エステル、エーテル、ニトリル、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、およびそれらの組合せを挙げることができる。特定の実施形態では、任意の溶媒は、水、メタノール、エタノール、ジメチルホルムアミド、アセトン、ジエチルエーテル、アセトニトリル、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。特定の実施形態では、任意の溶媒は水である。特定の実施形態では、任意の溶媒は、2つ以上の溶媒の混合物である。任意の溶媒は、方法の異なる段階において、MOF材料および/またはMOF押出物を洗浄するために使用できる。
【0074】
混合の工程は、例えば、個々の成分をドライブレンドし、その後ミキサーで溶融混合する、または成分をミキサーで直接一緒に混合する、例えば、バンバリーミキサー、ハーケミキサー、ブラベンダー内部ミキサーを含む任意の適切な方法で実施できる。高せん断ミキサー、ドラムミキサー、または単軸もしくは二軸押出機(重合方法の直接下流で使用されるコンパウンド押出機およびサイドアーム押出機を含むことができ、押出機のホッパーでのMOF材料の粉末またはペレットの混合を含むことができる)が挙げられる。特定の実施形態では、MOF材料と押出助剤を押出機で混合して押し出す場合など、混合する工程と押し出す工程は同時である。あるいは、MOF材料と押出助剤を任意の溶剤と混合してから押出成形する。
【0075】
MOF材料と押出助剤は、乾燥材料として予め混合しておくことができる。成分(MOF材料、押出助剤、任意の溶媒)の添加順序は、対象となる材料に依存することになる。押出助剤、MOF材料、任意溶剤の添加順序は問わないが、最適な順序は使用するミキサーの種類によって決定される。
【0076】
本明細書で説明するように、混合する工程は、材料加工や単位操作の方法によって達成できる。液相で混合する場合は攪拌を、混合する塊がペースト状である場合は混練および/または押出しを使用できる。固体成分や粉体をミキサーで混ぜることができる。また、使用する部品の状態により、霧化器、噴霧器、拡散器、ネブライザーを使用することも考えられる。ペースト状または粉末状のMOF材料には、スタティックミキサー、プラネタリーミキサー、回転容器付きミキサー、パンミキサー、パグミル、シャーリングディスクミキサー、遠心混合機、サンドミル、トラフニーダー、内部混合機、内部混練機、連続混練機などを用いることが望まれている。混合工程は、混合と押し出しが同時に行われる場合など、成形または押し出しを達成するのに十分なものであればよい。
【0077】
さらに、混合する工程は、連続的にまたはバッチで処理できる。混合がバッチ処理である場合、本方法は、Zアームを備えた混合機、またはカムを備えた混合機、あるいはプラネタリーミキサーのような別のタイプの混合機で実施することが可能である。混合する工程は、粉体成分の均質な混合物を提供できる。混合は5~60分間、例えば10~50分間行うことができ、最大混合時間は60分以下であることが望ましい。ミキサーアームの回転速度は、10~75rpm、例えば25~50rpmであってよい。
【0078】
MOF押出混合物は、1重量%~99重量%、例えば5重量%~99重量%、7重量%~99重量%、または10重量%~95重量%のMOF材料;1重量%~99重量%、例えば1重量%~90重量%、1重量%~50重量%、または1重量%~20重量%の押出助剤(任意の添加剤を含む);および任意に0重量%~20重量%、例えば1重量%~15重量%、1重量%~10重量%、または1重量%~7重量%の溶媒を含むことができる。重量%は、混合物中の化合物および/または粉末の総量に関して表され、混合物中の化合物および粉末の各々の量の合計は100%に等しい。いくらかの実施形態では、MOF押出混合物は、混合物の総重量を基準にして、約20重量%~約70重量%の固形物を含む。
【0079】
本方法において、押し出す工程(押出工程)は、一軸または二軸のラム押出機で行うことができる。MOF材料を調製する工程が押出と連続的に行われる場合、混合は、1つまたは複数の装置で押し出しと連動してもよい。この実施態様によれば、「混練ペースト」とも呼ばれるMOF押出混合物の押出は、例えば二軸型連続混合機の末端で直接押出するか、1台以上のバッチ型混合機を押出機に接続して行うかのいずれでもよい。押出物に形状を与えるダイスの形状は、円筒形、多葉形、溝形、スリット形など、任意の適切なダイスから選択できる。
【0080】
押出は、添加する押出助剤と任意の溶媒の量に影響される場合があり、使用する押出装置に依存する適切な圧力条件下でその押出を可能にするように、流動せず、過度に乾燥しない混合物またはペーストを得るように調整できる。いくらかの実施形態では、押出は、約1MPa以上、例えば、約0.1MPa~約20MPa、約2MPa~約15MPa、または約3MPa~約10MPaの押出圧力で実施される。
【0081】
MOF押出物はペレット化されたものを含み、製品はMOF押出物またはMOF押出物ペレットの形態であってもよい。ただし、得られたMOF材料は、例えば、タンブラーなどの表面を丸くする装置や球状化する装置に導入されることを排除しない。
【0082】
MOF押出物は、約1~約10mm、例えば約1.5~約5mmの直径を有していてもよい。いくらかの実施形態では、混合物は、約0.01mm~約50mm、例えば約0.05mm~約40mm、約0.1mm~約20mm、約0.2mm~約10mm、または約0.5mm~約7mmの直径を有するダイを通して押し出される。このような押出成形装置は、例えば、UllmannのEnzylopadie der Technischen Chemie、第4版、第2巻、295頁等、1972年に記載されている。また、押出機を使用する以外に、押出プレスを使用することもできる。
【0083】
MOF押出物については、MOF押出物を乾燥または固化するなどの熟成を任意に行うこともできる。熟成は、約0℃~約300℃、例えば、約20℃~約200℃、または約20℃~約150℃の温度を含んでもよい。熟成は、約1分~約72時間、例えば、約30分~約72時間、約1時間~約48時間、または約1時間~約24時間の期間行われ得る。いくらかの実施形態では、熟成は、20%~100%、例えば70%~100%の相対湿度を有する空気または加湿された空気中で実施されてもよい。加湿ガスによる処理は、材料の水和を可能にし、特定の押出助剤の固化に有益である場合がある。いくらかの実施形態では、熟成は、0%~10%、または0%~5%の相対湿度を有する空気など、除湿された空気または不活性ガス中で行われる。
【0084】
MOF押出物または成熟したMOF押出物は、任意で活性化を行うこともできる。活性化は、約50℃~約500℃、例えば、約100℃~約300℃の温度で行うことができる。活性化は、約1時間(「h」)~約6時間、例えば約1時間~約4時間の間行われ得る。活性化は、混合物の押出しを促進するために使用される溶媒の除去を助けることができる。活性化は、空気、不活性ガス、または酸素を含む混合ガス中で行うことができる。さらに、活性化は、真空中や大気圧より高い圧力など、減圧または増圧状態で行うことができる。特定の実施形態では、押出物は、乾燥空気または異なるレベルの湿度を有する空気下で焼成されるか、またはそれらは、窒素および/または酸素などの不活性ガスを含むガス混合物の存在下で熱処理される。特定の実施形態では、使用される混合ガスは、5体積%以上、例えば10体積%以上の酸素を含むことができる。代替実施形態では、混合ガスは、酸素を含まないか、または実質的に含まず、不活性ガスのみを含む。焼成温度は、約50℃からMOF材料の分解温度程度であってよい。
MOF押出物の性質
【0085】
本方法によって製造されるMOF押出物は、約0.2重量ポンド(ポンド力)(lb-force)~約80重量ポンド、例えば、約0.4重量ポンド~約50重量ポンド、約1重量ポンド~約20重量ポンド、または約4重量ポンド~約15重量ポンドのバルク圧壊強度を有してもよい。圧壊強度は、押出物サイズに関係してもよく、押出物は、空間内の各方向に約1mm以上まで延びる形状体を有していてもよい。バルク圧壊強度は、標準化された試験(ASTM D7084-04)である。
【0086】
本方法によって製造されるMOF押出物は、BET表面積(ASTM D3663を用いて測定)として、約50m2/g~約4,000m2/g、約50m2/g~約3,000m2/g、約50m2/g~約2,000m2/g、約100m2/g~約1,800m2/g、約100m2/g~約1,700m2/g、約100m2/g~約1,600m2/g、約100m2/g~約1,550m2/g、約100m2/g~約1,500m2/g、約100m2/g~約1,450m2/g、約100m2/g~約1,400m2/g、約100m2/g~約1,300m2/g、約100m2/g~約1,250m2/g、約100m2/g~約1,200m2/g、約100m2/g~約1,150m2/g、約100m2/g~約1,100m2/g、約100m2/g~約1,050m2/g、約100m2/g~約1,000m2/g、約100m2/g~約900m2/g、約100m2/g~約850m2/g、約100m2/g~約800m2/g、約100m2/g~約700m2/g、約100m2/g~約600m2/g、約100m2/g~約550m2/g、約100m2/g~約500m2/g、約100m2/g~約450m2/g、約100m2/g~約400m2/g、約100m2/g~約300m2/g、約100m2/g~約200m2/g、約300m2/g~約1,800m2/g、約300m2/g~約1,700m2/g、約300m2/g~約1,600m2/g、約300m2/g~約1,550m2/g、約300m2/g~約1,500m2/g、約300m2/g~約1,450m2/g、約300m2/g~約1,400m2/g、約300m2/g~約1,300m2/g、約300m2/g~約1,250m2/g、約300m2/g~約1,200m2/g、約300m2/g~約1,150m2/g、約300m2/g~約1,100m2/g、約300m2/g~約1,050m2/g、約300m2/g~約1,000m2/g、約300m2/g~約900m2/g、約300m2/g~約850m2/g、約300m2/g~約800m2/g、約300m2/g~約700m2/g、約300m2/g~約600m2/g、約300m2/g~約550m2/g、約300m2/g~約500m2/g、約300m2/g~約450m2/g、or 約300m2/g~約400m2/gを有してよい。特に、MOF押出物は、約300m2/g~約4,000m2/g、例えば約500m2/g~約1,600m2/gの総BET表面積を有していてもよい。
【0087】
さらに、本方法によって製造されるMOF押出物は、未加工(原料)のMOFの約30%~約100%、例えば約50%~約95%、または約70%~約90%(ASTM D3663を用いて測定)の比較BET表面積を有してもよい。比較BET表面積は、MOF押出物のBET表面積をMOF材料のBET表面積で除した値と定義される。例えば、HKUST-1を使用してMOF押出物を調製し、MOF押出物が1292m2/gのBET表面積を有する場合、1292m2/gは1615m2/g(HKUST-1の計算BET表面積)の80%であるので、MOF押出物は80%の比較BET表面積を有することになる。
【0088】
本方法によって製造されるMOF押出物は、孔容積(ASTM D3663を用いて測定)として、約0cm3/g~約1.6cm3/g、約0.2cm2/g~約1.6cm2/g、6cm3/g、約0.2cm2/g~約1.5cm3/g、約0.2cm3/g~約1.4cm3/g、約0.2cm3/g~約1.3cm3/g、約0.3cm3/g~約1.2cm3/g、約0.3cm3/g~約1.cm3/g、約0.4cm3/g~約1.1cm3/g、または約0.4cm3/g~約1cm3/gを有してもよい。MOF押出物は、未加工のMOF材料の約30%~約100%、例えば約50%~約95%、または約70%~約90%(ASTM D3663を用いて測定)の多孔度を有してよい。
【0089】
本方法によって製造されるMOF押出物は、約1Å~約40Å、例えば約2Å~約25Å、または約6Å~約23Åの平均孔径サイズ(ASTM D4365を用いて測定)を有してもよい。
用途
【0090】
MOF押出物は、触媒作用、分離、精製、捕獲などの用途に使用できる。例えば、MOF押出物は、固定床反応器、または放射状反応器、または流動床反応器あるいは吸収床のいずれかである反応器において処理されるべきガス状供給原料と接触させることができる。触媒や分離の分野で使用する場合、ACSの期待値は0.9 daN/mm以上、例えば1 daN/mm以上である。したがって、記載されたMOF押出物は、触媒や分離の分野で使用するのに十分な機械的強度を有している。
【0091】
MOF押出物は、多孔質体や流路を有することが固体や粉体よりも有利となるプロセスで使用できる。具体的には、触媒、触媒担体、吸着、流体貯蔵、乾燥剤、イオン交換体材料、分子ふるい(セパレータ)、クロマトグラフィー用材料、分子の選択的放出および/または取り込み用材料、分子認識、ナノチューブ、ナノリアクターなどがあげられる。
【0092】
用途のいくらかの実施形態では、MOF押出物は、固定床/充填床反応器において触媒として使用される。原則として、MOF押出物は、気相反応に用いても、液相反応に用いてもよく、その場合は、固体形状体をスラリー中に懸濁させる。さらに、MOF押出物は、そこに組み込まれたチャネルおよび/または細孔の存在が、反応の活性および/または選択性および/または収率を高めることが知られている、あるいは信じられている様々な反応の触媒に使用できる。
【0093】
また、化合物、特にガス状化合物の保存にも応用されている。MOF押出物の細孔径および多孔性は、エネルギー産業で特に関心の高いCO2、CH4、またはH2などのガス状化合物の優れた貯蔵または隔離、およびガスの分離を可能にできる場合がある。
【0094】
本発明の特徴は、以下の非限定的な実施例で説明される。
【実施例】
【0095】
金属-有機骨格HKUST-1(Cu3btc2、ただしbtcは1,3,5-ベンゼントリカルボキシレート)を用い,水と、液体押出助剤のアルキルアルコール(1-プロパノール,1-ブタノール,1-ヘキサノール)から1つとのマルミックスにおいて準備した。比較のためのアルコール添加剤としてエタノールを使用した。
【0096】
1-プロパノールを水と混合した後、押出成形用マルミックス(以下、MOF材料という)に添加し、1-ブタノールと1-ヘキサノールは水溶性でないため別途添加した。すべての実験は、水とアルコールの比を1:1にして行われた。すべてのマルミックスは、ラム押出機(通常名称:高温溶融押出機(HTME))において固形分43%で押出された。P1、P2、P3は、押出中に測定された、押出開始時、押出中間時、押出終了時の圧力である。この実験結果を以下の表1に示す。長鎖アルコールを押出助剤、具体的には液体押出助剤として使用することにより、押出時の圧力が低下することを示したものである。
【表1】
【0097】
表1に示すように、3種類のアルコールともエタノールを使用した場合に比べて圧力が低下しており、特に1-ヘキサノールが顕著に低下していることがわかる。長いアルコールの長い炭素鎖は、押し出し工程でより多くの潤滑油を提供し、このような低圧をもたらすようだ。
【0098】
図1は、各長鎖アルコールを用いて押し出したMOF、HKUST-1の結晶性の保持を示し、
図2は、押し出した各材料のBET表面積を決定するために用いたN
2吸着等温線を示している。
【0099】
さらに、グラファイトを押出助剤として使用することで、押出時の圧力をさらに低減できた。長鎖アルコールと同様に、押出時の圧力を下げることができる固体押出助剤である。具体的には、グラファイト(20μm以下)をペレット化する際の潤滑剤として、グラファイト2%と20%のペレットをそれぞれ500psiと1000psiでプレスする実験を行った。得られた表面積をHKUST-1粉末の表面積と比較して求め、グラファイトの表面積の不足を考慮して重み付けを行った。混合すると、グラファイトがHKUST-1粒子の外表面をコーティングしているように見えた。BET表面積の比較は、すぐ下の表2に示す。
【表2】
【0100】
表2において、グラファイトの割合は、全固形分の重量に対する重量%を表す。例えば、グラファイト2重量%とは、固形分の2%がグラファイトで、固形分の98%がHKUST-1粉末またはMOF材料であることを意味する。
【0101】
ペレット化実験の成功に基づき、HKUST-1をグラファイトとともに押し出し、グラファイト量の関数として圧力変化を観察した(GJM-2016-33584、MTK-026)。サンプルはHTMEハンドプレスの1/16”(インチ)シリンダーダイスを通して押し出した。2%のグラファイトサンプルは、押し出し加工の圧力を下げず、HKUST-1の表面積の大部分を保持した。20%のグラファイトを含むことで、圧力を大幅に下げることができた。また、グラファイトを使用せずに同じ固形分量で必要な圧力よりも大幅に低くなっている(GJM-2016-33396、MTK-017)。さらに、グラファイトを考慮して加重した表面積1327m2/gは、94%の表面積を保持しており、グラファイトがHKUST-1材の細孔を塞いでいないことが分かる。20重量%以下のグラファイトを使用することで、押出物中の金属-有機骨格の特性を維持したまま、押出成形機内の圧力を下げることができる。
【0102】
また、ポリビニルアルコール(PVA)をも押出助剤としてテストした。ZIF-8、HKUST-1ともにポリマー押出助剤としてPVAを使用した。ポリ酢酸ビニルをバインダーとして、ポリビニルアルコールを少量添加することで、圧壊強度が向上することが示された。例えば,HKUST-1の圧壊強度は,2重量%のポリビニルアルコール添加により53重量ポンド/inから213重量ポンド/inに向上し,ポリビニルアルコール無添加の場合と比較して表面積も大幅に保持されることが確認された。表4は、これら2つの金属-有機骨格(PVA:ポリビニルアルコール、PVAc/DI:ポリ酢酸ビニル/脱イオン水(w/w))の圧壊強度とBET表面積を示したものである。MOF押出物の圧壊強度は、ASTM D7084に準拠し、バリアンVK200で測定した。BET表面積は、ASTM D3663に準拠して測定した。
【表3】
【0103】
ポリビニルアルコール(PVA)を使用した押出は、PVAを使用しない押出と比較して、著しく高い圧壊強度を示す。押出助剤としてのPVAは、圧壊強度を向上させると同時に、機械的安定性を向上させることが可能である。さらに、さまざまな押出助剤と、異なる金属ノード、細孔径、および結晶構造を有するさまざまなMOF材料で実証されたように、押出助剤の含有は、MOF材料の結晶性および表面積に負の影響を与えない。本開示では、MOF材料用の異なるタイプの押出助剤を提供する。各押出助剤は、MOF材料の品質や空隙率を維持したまま押出成形が可能であり、かつ工業用途に十分な品質を有するMOF押出物を製造できることが共通点である。ある種のMOFでは、水とエタノールの混合液で押し出すことで、液体水にさらされたときの吸着熱によるMOFの劣化を軽減する必要がある。上記のように、エタノールを長鎖アルコールに置き換えることで、エタノールと同様の効果が得られるとともに、押出成形時の圧力上昇を抑えることができた。MOF材料の押出成形において、高圧にさらされる中でMOFの結晶性と空隙率を維持するためには、減圧が極めて重要である。さらに、触媒押出物の大規模製造に使用される大型スクリュー押出機には圧力制限があり、押出時の圧力を下げる必要がある。
【0104】
前述のように、金属-有機骨格の押出成形は比較的未開拓の分野であるが、これらの新材料を調合して様々な用途に使用するために必要な分野である。MOFは剛性が低いため、押出成形の際にさらされる高圧や高温からダメージを受ける可能性がある。さらに、得られた押出物の機械的強度を向上させるために、バインダーが必要となることも多い。しかし、多くのバインダーはMOFと相容れない。主に相容れる表面がないことが原因である。そこで、MOF材料の構造的完全性を維持するとともに、MOF押出物の機械的強度を向上させるために、押出中の圧力を低減する異なる押出助剤を用いてMOF押出物を製造する方法を本明細書に提供する。興味深いことに、減圧の改善は、最終的な押出物に残留しない溶媒と、最終的な押出物に残留する固体押出助剤の両方を使用することによって達成できる。押出助剤を使用することで、従来にない新しいアプローチが可能になる。
【手続補正書】
【提出日】2022-08-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属-有機骨格材料と押出助剤とを混合して、金属-有機骨格押出混合物を形成する工程;および
金属-有機骨格混合物を押出機で押出して金属-有機骨格押出物を製造する工程、
を含む、押出機で金属-有機骨格押出物を製造する方法であって、
押出機内の圧力を、押出助剤なしで金属-有機骨格材料を押出す際の押出機内の圧力と比較して
、10%
~55%減少させる、
金属-有機骨格押出物を製造する方法。
【請求項2】
押出助剤が、液体押出助剤
であり、直鎖状C
3~C
10アルキルアルコール
および分岐状C
3~C
10アルキルアルコール
から選択される、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
液体押出助剤が、1-プロパノール、iso-プロパノール、1-ブタノール、iso-ブタノール、1-ヘキサノール、1-ヘプタノールの群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
液体押出助剤
が0.1体積%~95体積%の範囲の水を含む、請求項
2に記載の
方法。
【請求項5】
押出助剤が、固体押出助剤
であり、グラファイト
、ステアリン酸マグネシウム、および飽和または不飽和のC
10+
有機酸またはその塩から選択される、請求項
1に記載の方法。
【請求項6】
固体押出助剤を
、1重量%
~30重量%の範囲で金属-有機骨格材料と混合する、請求項
5に記載の方法。
【請求項7】
押出助剤が、ポリマー押出助剤
であり、ポリビニルアミド、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエステル、ポリエーテル、ポリビニルアミン、ポリビニルアルコール、ポリビニルエステル、またはそれらの組み合わせ
から選択される、請求項1
に記載の方法。
【請求項8】
ポリマー押出助剤がポリビニルアルコールである、請求項
7記載の方法。
【請求項9】
金属-有機骨格混合物
が0.5重量%~10重量%のポリビニルアルコールを含む、請求項
8に記載の方法。
【請求項10】
金属-有機骨格混合物が、ポリ酢酸ビニルおよび水を含み、ポリ酢酸ビニルと水の比
が1:1
~1:3である、請求項
7に記載の方法。
【請求項11】
金属-有機骨格押出物を、ロッド、リブ付きロッド、タブレット、リング、環状タブレット、球体、ペレット、ハニカム体、または顆粒として成形する、請求項1~1
0のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
金属-有機骨格材料が、HKUST-1、UiO-66、ZIF-8、ZIF-7、MIL-100、MOF-74、M
2(m-dobdc)、MOF-274、Cu(Qc)
2およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~1
1のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
金属-有機骨格押出物が、押出前の
未加工の金属-有機骨格に対して
、40%
~100%の比較BET表面積を有する、請求項1~1
2のいずれか一項に記載の
方法。
【請求項14】
金属-有機骨格押出物
を40℃
~150℃の温度
で30分以上の期間熟成させる工程
、および/または金属-有機骨格押出物を100℃~300℃の温度で1時間以上焼成する工程をさらに含む、請求項1~
13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
金属-有機骨格を押出す工程を
、0.01mm
~50mmの直径を有するダイを通して行う、請求項1~
14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
金属-有機骨格押出物
を溶媒で洗浄することをさらに含む、請求項1~
15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
溶媒が、水、メタノール、エタノール、ジメチルホルムアミド、アセトン、ジエチルエーテル、アセトニトリル、ケトン、アミド、エステル、エーテル、ニトリル、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項
16に記載の方法。
【請求項18】
金属-有機骨格押出混合物が、
金属-有機骨格押出混合物の総重量を基準にして
、20重量%
~70重量%の固体を含む、請求項1~
17のいずれか一項に記載の方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0021
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0021】
用語「押出(押出成形)」とは、流動性のある原料混合物を、所望の断面を持つダイに押し通す工程を指す言葉である。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0023
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0023】
用語「結晶化前(予備結晶化)」という用語は、材料、特に金属-有機骨格材料があらかじめ合成され(予備形成)、通常、材料が形成された反応媒体から分離されていることを意味する。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0027
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0027】
一般に、金属-有機骨格(MOF)は、ガス貯蔵、ガスと液体の分離、異性体分離、廃棄物除去、触媒など、幅広い分野での応用が期待される比較的新しいタイプの高多孔性材料である。ゼオライトが純粋な無機物であるのに対し、MOFは有機配位子を用いて、金属原子や金属原子団を橋渡しする「支柱」の役割を果たす。MOFはゼオライトと同様、微小孔を持つ物質である。有機配位子や金属の選択により、MOFの細孔の形状や大きさを調整できる。MOFは有機配位子を修飾できるため、全体としてゼオライトとは異なる多様な構造を持っている。MOFの構造に影響を与える要因としては、例えば、配位子の配位座数(デンティシティ)、配位基のサイズおよび種類、配位基の遠隔または近傍の追加置換、配位子のサイズおよび形状、配位子の疎水性または親水性、金属および/または金属塩の選択、溶剤の選択、温度、濃度などの反応条件などの1つまたは複数が挙げられる。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0038
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0038】
いくらかの実施形態では、各Xは、CO2H、OH、SH、NH2、CN、HCO、CS2H、NO2、SO3H、Si(OH)3、Ge(OH)3、Sn(OH)3、Si(SH)4、Ge(SH)4、Sn(SH)3、PO3H、AsO3H、AsO4H、P(SH)3、As(SH)3、CH(RSH)2、C(RSH)3、CH(RNH2)2、C(RNH2)3、CH(ROH)2、C(ROH)3、CH(RCN)2、C(RCN)3、CH(SH)2、C(SH)3、CH(NH2)2、C(NH2)2、CH(OH)2、C(OH)3、CH(CN)2、C(CN)3、窒素含有複素環、硫黄含有複素環、およびそれらの組み合わせ(Rは1~5の炭素原子を有するアルキル基、または1~2のフェニル環から成るアリール基である。)の中性またはイオン形態から独立的に選択される。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0040
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0040】
いくらかの実施形態において、有機配位子は、ベンゼントリカルボキシレート(BTC)(1つ以上の異性体)、ADC(アセチレンジカルボキシレート)、NDC(ナフタレンジカルボキシレート)(任意の異性体)、BDC(ベンゼンジカルボキシレート)(任意の異性体)、ATC(アダマンタンテトラカルボキシレート)(任意の異性体)、BTB(ベンゼントリベンゾエート)(任意の異性体)、MTB(メタンテトラベンゾエート)、ATB(アダマンタントリベンゾエート)(任意の異性体)、ビフェニル-4,4'-ジカルボキシレート、ベンゼン-1,3,5-トリス(1H-テトラゾール)、イミダゾールまたはその誘導体、あるいはそれらの組合せなどである。
【国際調査報告】