(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-01
(54)【発明の名称】セリウム系粒子、その製造方法及び研磨でのその使用
(51)【国際特許分類】
C01F 17/241 20200101AFI20230125BHJP
C09K 3/14 20060101ALI20230125BHJP
C09G 1/02 20060101ALI20230125BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20230125BHJP
【FI】
C01F17/241
C09K3/14 550D
C09K3/14 550Z
C09G1/02
H01L21/304 622B
H01L21/304 622D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022530840
(86)(22)【出願日】2020-11-25
(85)【翻訳文提出日】2022-05-25
(86)【国際出願番号】 EP2020083304
(87)【国際公開番号】W WO2021105174
(87)【国際公開日】2021-06-03
(32)【優先日】2019-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508079739
【氏名又は名称】ローディア オペレーションズ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】プリッソノー, マリ
(72)【発明者】
【氏名】トス, レカ
(72)【発明者】
【氏名】ル メルシェ, ティエリー
(72)【発明者】
【氏名】ビュイセット, ヴァレリー
(72)【発明者】
【氏名】湯浅 学
(72)【発明者】
【氏名】須田 栄作
【テーマコード(参考)】
4G076
5F057
【Fターム(参考)】
4G076AA02
4G076AA18
4G076CA15
4G076CA25
4G076CA26
4G076CA28
4G076CA40
4G076DA30
5F057AA03
5F057AA21
5F057AA28
5F057AA49
5F057BA11
5F057BA15
5F057BB16
5F057CA11
5F057DA03
5F057EA01
5F057EA09
5F057EA11
5F057EA16
5F057EA17
5F057EA18
5F057EA21
5F057EA26
5F057EA27
5F057EA32
(57)【要約】
本発明は、粗い表面を有するセリウム系粒子及び、とりわけ化学機械研磨のための、研磨組成物の構成要素としてのそれらの使用に関する。本発明はまた、セリウム系粒子の調製方法に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
その上に突起がある1つ以上の面を有する多面体の形状を実質的に有するセリウム系粒子であって、前記突起が前記セリウム系粒子と一体化して形成されている粒子。
【請求項2】
前記突起は、前記面の表面の、少なくとも60%、特に少なくとも70%、特に少なくとも80%、特に少なくとも90%にわたって延びている、請求項1に記載のセリウム系粒子。
【請求項3】
前記突起はとがっていない、請求項1又は2に記載のセリウム系粒子。
【請求項4】
突起を実質的に含まない少なくとも1つのエッジ部及び/又は角を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のセリウム系粒子。
【請求項5】
前記多面体は、立方体、切頭八面体又はそれらの組合せである、請求項1~4のいずれか一項に記載のセリウム系粒子。
【請求項6】
前記粒子は、酸化セリウムで又はセリウムと好ましくはランタン、プラセオジム及びネオジムの中で選択される、より好ましくはランタンである、少なくとも1種の金属(M)との混合酸化物でできている、請求項1~5のいずれか一項に記載のセリウム系粒子。
【請求項7】
セリウムと少なくとも1種の金属(M)との混合酸化物でできた前記粒子が、0.01~0.15、より特に0.01~0.12、更により特に0.01~0.04、とりわけ0.02~0.03に含まれるモル比M/(M+Ce)を有する、請求項6に記載のセリウム系粒子。
【請求項8】
16~55m
2/g、より特に17~50m
2/g、更により特に18~45m
2/g、とりわけ19~42m
2/gに含まれる比表面積(BET)によって特徴付けられる、請求項1~7のいずれか一項に記載のセリウム系粒子。
【請求項9】
75nm~1000nm、より特に80nm~500nm、更により特に85nm~300nm、とりわけ90nm~240nmに含まれる動的光散乱により測定される流体力学的平均径Dhによって特徴付けられる、請求項1~8のいずれか一項に記載のセリウム系粒子。
【請求項10】
70nm~200nm、より特に75nm~170nm、更により特に79nm~150nmに含まれるレーザー回折により測定されるメディアン径D50によって特徴付けられる、請求項1~9のいずれか一項に記載のセリウム系粒子。
【請求項11】
55nm~200nm、より特に60nm~150nm、更により特に65nm~110nmに含まれるレーザー回折により測定される直径D10によって特徴付けられる、請求項1~10のいずれか一項に記載のセリウム系粒子。
【請求項12】
80nm~300nm、より特に90nm~260nm、更により特に94nm~230nmに含まれるレーザー回折により測定される直径D90によって特徴付けられる、請求項1~11のいずれか一項に記載のセリウム系粒子。
【請求項13】
90nm~400nm、より特に100nm~385nm、更により特に107nm~370nmに含まれるレーザー回折により測定される直径D99によって特徴付けられる、請求項1~12のいずれか一項に記載のセリウム系粒子。
【請求項14】
0.60未満、特に0.42未満の分散指数σ/mによって特徴付けられる、請求項1~13のいずれか一項に記載のセリウム系粒子であって、σ/m=(D90-D10)/2D50であり、D10、D50及びD90がレーザー回折によって測定される粒子。
【請求項15】
1.10~1.60に含まれる比D90/D50によって特徴付けられ、D50及びD90がレーザー回折によって測定される、請求項1~14のいずれか一項に記載のセリウム系粒子。
【請求項16】
液体媒体中の請求項1~15のいずれか一項に記載のセリウム系粒子の分散液。
【請求項17】
300μS/cm未満、より特に150μS/cm未満、更により特に100μS/cm、とりわけ50μS/cm未満の導電率を示す、請求項16に記載の分散液。
【請求項18】
研磨組成物、より特に化学機械研磨組成物の調製のための請求項1~15のいずれか一項に記載のセリウム系粒子又は請求項16又は17に記載の分散液の使用。
【請求項19】
請求項1~15のいずれか一項に記載のセリウム系粒子又は請求項16又は17に記載の分散液を含む研磨組成物。
【請求項20】
以下の成分:請求項1~15のいずれか一項に記載のセリウム系粒子以外の研磨粒子;及び/又はpH調整剤;及び/又は界面活性剤;並びに/又は粘度向上剤及び凝固剤などの、レオロジー制御剤;並びに/又はカルボン酸モノマー、スルホン化モノマー、若しくはホスホン酸化モノマーと、アクリレート、ポリビニルピロリドン、若しくはポリビニルアルコールとのアニオン性コポリマー(例えば、2-ヒドロキシエチルメタクリル酸とメタクリル酸とのコポリマー);ポリビニルピロリドン若しくはポリエチレングリコールである、非イオン性ポリマー;アミノシラン、ウレイドシラン、若しくはグリシジルシランである、シラン;官能化ピリジンのN-オキシド(例えば、ピコリン酸N-オキシド);デンプン;シクロデキストリン(例えば、アルファ-シクロデキストリン若しくはベータ-シクロデキストリン)、並びにそれらの組合せから選択される添加物から選択される添加物の1つ以上を更に含む、請求項19に記載の研磨組成物。
【請求項21】
基板の一部の除去方法であって、前記方法が、前記基板を請求項19又は20に記載の研磨組成物で研磨する工程を含む方法。
【請求項22】
請求項21に記載の方法によって研磨された基板を含む半導体。
【請求項23】
請求項1~15のいずれか一項に記載のセリウム系粒子の製造方法であって、以下の工程:
(a)不活性雰囲気下で、塩基の水溶液とNO
3
-、Ce
III、任意選択的にCe
IV、任意選択的にM
n+(価数nの金属Mの)を含む水溶液とを接触させる工程(ここで、前記塩基/全(Ce+任意選択のM)モル比と前記NO
3
-/Ce
IIIモル比との差は2未満である);
(b)工程(a)において得られた混合物を熱処理に供する工程であって、ここで、温度は55~75℃に含まれる工程;
(c)工程(b)において得られた混合物を任意選択的に酸性化する工程;
(d)工程(b)又は(c)の終わりに得られた固体材料を水で任意選択的に洗浄する工程;
(e)工程(d)の終わりに得られた前記固体材料を機械的処理に任意選択的に供して粒子を解凝集させる工程
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年11月26日出願の欧州特許出願第19306525.7号の優先権を主張するものであり、この出願の全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、セリウム系粒子に、その製造方法に及び研磨のための、とりわけ化学機械研磨のための組成物の構成要素としてのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
酸化第二セリウムは、研磨用途向けに一般に使用されている。エレクトロニクス産業の発展は、ディスク又は誘電体コンパウンドなどの様々な部品を研磨するための組成物の増加中の重要な使用を必要とする。分散液の形態で通常商業化されている、これらの組成物は、一定数の特性を示さなければならない。例えば、それらは、それらの研磨能力を反映する、材料の高度の除去を提供しなければならない。それらはまた、できるだけ低い欠陥を有さなければならず;用語「欠陥」は、組成物で一度処理された基板によって示される擦り傷の量を特に意味することを意図する。安定性及び使用の容易さから、これらの分散液は、通常、サブミクロンの寸法、すなわち、一般に300nm未満の粒子を含む。加えて、これらの分散液中の余りにも細かい粒子の存在は、それらの研磨能力を低下させ、余りにも大きい粒子は、欠陥の増加の一因になり得る。
【0004】
研磨組成物に使用される粒子の研磨特性を改善するための試みが行われてきた。例えば、米国特許出願公開第2015/0072522号明細書は、小さい補助粒子がより大きい母粒子の表面上に形成されている酸化セリウム研磨粒子を記載している。しかしながら、そのような補助粒子は、研磨プロセス中に母粒子から脱離し;それは、研磨基板の欠陥の増加をもたらし得;脱離した補助粒子はまた、数回の洗浄工程の後でさえも基板にくっついている場合がある。それは、基板損失及び頻発する研磨組成物交換による許容できない費用をもたらすであろう。
【0005】
これに関連して、我々は、上述の不利点なしの改善された研磨特性を有するセリウム系粒子が必要とされていると考える。
【0006】
簡単であり、且つ、工業規模で実施するのが容易である改善されたセリウム系粒子の製造方法もまた必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
これらの問題は、粗い表面を示すとりわけ新しいセリウム系粒子、並びにその製造方法を提供する本発明によって解決される。
【0008】
本発明の1つの目的は、したがって、その上に突起がある1つ以上の面を有する多面体の形状を実質的に有するセリウム系粒子であって、前記突起が前記セリウム系粒子と一体化して形成されている粒子に関する。
【0009】
本発明はまた、液体媒体中の上に開示された粒子の分散液に関する。
【0010】
本発明の別の目的は、そのようなセリウム系粒子の製造方法であって、以下の工程:
(a)不活性雰囲気下で、塩基の水溶液とNO3
-、CeIII、任意選択的にCeIV、任意選択的にMn+(価数nの金属Mの)を含む水溶液とを接触させる工程(ここで、塩基/全(Ce+任意選択のM)モル比とNO3
-/CeIIIモル比との差は2未満である);
(b)工程(a)において得られた混合物を熱処理に供する工程(ここで、温度は55~75℃に含まれる);
(c)工程(b)において得られた混合物を任意選択的に酸性化する工程;
(d)工程(b)又は(c)の終わりに得られた固体材料を水で任意選択的に洗浄する工程;
(e)工程(d)の終わりに得られた固体材料を機械的処理に任意選択的に供して粒子を解凝集させる工程
を含む、方法に関する。
【0011】
本発明はまた、この方法によって得られることになるセリウム系粒子及びその分散液に関する。
【0012】
本発明のセリウム系粒子及び分散液は、とりわけCMP用途に適合する、研磨組成物を調製するために有利に使用することができる。
【0013】
有利には、本発明の粒子の粗い表面は、表面が滑らかな酸化セリウム粒子と比べるとそれらの比表面積を増加させる。したがって、粒子と研磨される基板との間の接触表面を増加させることによって、本発明の表面が粗い粒子の研磨特性は、改善され、化学機械研磨プロセスにおいてそれらを有利に使用することを可能にする。同等のサイズの表面が滑らかな酸化セリウムと比べると、本発明の表面が粗い粒子は、適切なサイズ分布のおかげで低い欠陥を維持しながら、より高い除去速度を可能にする。
【0014】
米国特許出願公開第2015/0072522号明細書に開示されたものなどの補助粒子が母粒子の表面上に形成された酸化セリウム粒子に反して、本発明の粒子の粗い表面を形成する突起は、それと一体化して形成されている。研磨プロセスでの一定期間の使用にわたって、本発明の粒子の表面は、恐らく摩滅し得るが、補助粒子のように除去され得ない。有利にも、本発明の粒子は、使用がより長続きし、且つ、エンドユーザーによる製造廃棄物を最小限にする。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施例1、2、3、5及び6によってそれぞれ得られた本発明による粒子のSEM写真である。
【
図2】実施例1、2、3、5及び6によってそれぞれ得られた本発明による粒子のSEM写真である。
【
図3】実施例1、2、3、5及び6によってそれぞれ得られた本発明による粒子のSEM写真である。
【
図4】実施例1、2、3、5及び6によってそれぞれ得られた本発明による粒子のSEM写真である。
【
図5】実施例1、2、3、5及び6によってそれぞれ得られた本発明による粒子のSEM写真である。
【
図6】比較例1~3によってそれぞれ得られた酸化セリウムの粒子のSEM写真である。
【
図7】比較例1~3によってそれぞれ得られた酸化セリウムの粒子のSEM写真である。
【
図8】比較例1~3によってそれぞれ得られた酸化セリウムの粒子のSEM写真である。
【
図10】その突起のとがっていない態様を例示するTEMによる粒子の図である。
【
図11】実施例7において詳述されるような超音波の適用後の実施例1において調製された粒子のTEM写真である。
【0016】
SEM画像は、Hitachi High-Technologies CorporationのSEM S-5500で得られた。TEM画像は、Gatanカメラ:Orius 2k-2k付きのTEM JEOL JEM 1400 120kVで得られた。
【0017】
定義
本開示において、表現「1つを含む」又は「1つを有する」は、「少なくとも1つを含む」を意味するとして理解されるべきである。表現「…~…に含まれる」は、限界値を含むとして理解されるべきである。
【0018】
用語「セリウム系」は、本発明の粒子に関連して、酸化セリウムの粒子又はセリウムとセリウム以外の少なくとも1種の金属(M)との混合酸化物の粒子を言う。そのような混合酸化物はまた、いくつかの実施形態では、固溶体を意味し得る。その場合に、金属(M)原子は、セリウム酸化物結晶構造中へ均質に拡散している。酸化セリウムは、一般に、酸化物の重量に対して少なくとも99.8重量%の純度を有する。酸化セリウムは、一般に、結晶性酸化第二セリウムである。セリウム及び前記少なくとも1種の金属(M)以外の、いくらかの不純物が酸化物中に存在し得る。不純物は、セリウム系酸化物の調製プロセスで使用される原材料又は出発原料に由来し得る。不純物の合計割合は、一般に、セリウム系酸化物に対して0.2重量%未満である。残留硝酸塩は、本出願では不純物と見なされない。
【0019】
表現「分散液」は、セリウム系粒子の分散液に関連して、液体媒体中に安定して分散した、サブミクロン寸法の固体の微細なセリウム系粒子からなるシステムを意味し、前記粒子が、例えば、硝酸塩若しくはアンモニウムなどの、残存量の結合した若しくは吸着したイオンをまた任意選択的に含有することは可能である。
【0020】
異なるパラメータが、本発明の粒子のサイズ及びサイズの分布を特徴付けるために用いられ得る。
【0021】
粒子の分散液に関連して:
- n(100超)個の粒子の平均サイズは、SEM(走査電子顕微鏡法)によって得られるその分散液の写真を用いて測定され得;
- 本出願において述べられる標準偏差もまた、SEM方法から決定される。それは、その通常の数学的意味を有する。それは、分散の平方根であり、式:
【数1】
[nは、測定において考慮に入れられる粒子の数であり、
x
iは、粒子iのサイズであり、
【数2】
は、粒子のサイズの平均値(1/nΣ
ix
i)である]
によって表される。
【0022】
粉末形態の粒子(乾燥粒子)に関連して、比表面積は、Brunauer-Emmett-Teller法(BET法)によって窒素の吸着により粉末に関して測定され得る。この方法は、規格ASTM D3663-03(2015年再承認)に開示されている。この方法は、定期刊行物「The Journal of the American Chemical Society,60,309(1938)」にも記載されている。比表面積は、製造者のガイドラインに従って、Micromeriticsの装置TriStar 3000で自動的に測定され得る。測定の前に、粉末形態のサンプルは、吸着されている化学種を除去するために最大210℃の温度で加熱することによって静的空気下で脱気されるものとする。
【0023】
粒子のサイズの分布は、様々なパラメータによって特徴付けられ得る。前記パラメータは、体積による及び数によらない分布に基づく:
- 流体力学的平均径Dhは、動的光散乱(DLS)によって測定され得る。この技法は、その値が粒子の凝集体の存在によって影響を受ける、固体物体の流体力学的平均径Dhの測定を可能にする。それ故、測定は通常、水中の粒子の分散液に関して行われる。Dhは、製造者のガイドラインに従って、Marvernの装置Zetasizer Nano-ZSで測定される。サンプルは、通常、脱イオン水に希釈される必要がある。30,000倍の希釈係数が適用され得る;
- レーザー回折もまた、粒子のサイズの分布を測定するために用いられ得る。Horiba LA-910のようなレーザー粒径分析計が、製造者のガイドラインに従って用いられ得る。測定のために、1.7の相対屈折率が用いられ得る。レーザー回折によって得られた体積での分布から、D10、D50、D90及び分散指数のような統計学で通常用いられる様々なパラメータが推定され得る。D10は、粒子の体積で10%がD10未満の直径を有する、レーザー回折によって得られる分布から測定される直径である。D50は、レーザー回折によって得られる分布から測定されるメディアン径である。D90は、粒子の体積で90%がD90未満の直径を有する、レーザー回折によって得られる分布から測定される直径である。「分散指数」は、以下の式σ/m=(D90-D10)/2D50によって定義される。
【発明を実施するための形態】
【0024】
粒子
本発明は、その上に突起がある1つ以上の面を有する多面体の形状を実質的に有するセリウム系粒子であって、前記突起が前記セリウム系粒子と一体化して形成されている粒子に関する。
【0025】
第一に、本発明の粒子は、実質的に多面体として記載され得る。粒子は、SEM(走査型電子顕微鏡法)によって得られた写真でとりわけ観察され得る。写真の観察は、粒子の形状を明確に識別することを可能にする大きさ及び装置で行われなければならない。それ故、粒子を個別に明確に識別することが好ましい。観察のために用いられる大きさは、例えば40,000倍~500,000倍の範囲であってもよい。Hitachi High-Technologies Corporationの電界放出型SEM S-5500が用いられ得る。
【0026】
多面体粒子は、本発明の枠組み内では、実質的に、多角形面、真っ直ぐなエッジ及びとがった角を示す粒子を意味する。本発明の粒子の1つの特殊性は、SEMによって得られた粒子の画像で、1つ以上の粒子面上の突起の存在にもかかわらず、その目に見えるエッジ及び/又は角によって粒子の多面体形状を見つけることが可能であるという事実にある。
【0027】
それらの多面体形状に言及すると、本発明のセリウム系粒子は特に、立方体、切頭八面体又はそれらの組合せの形状を実質的に有する。
とりわけ、観察される粒子が、6つの実質的に正方形面からなる6つの面を有する場合、それは、立方体と言われる。
【0028】
それぞれ、観察される粒子が、(i)6つの実質的に正方形面、及び(ii)8つの実質的に六角形面からなる14の面を有する場合、それは、切頭八面体と言われる。
【0029】
「実質的に正方形」は、SEMによって観察される粒子面に関連して、同じ長さを実質的に有する4つのエッジを、目に見える角及び/又はエッジを一緒に連結することによって見る又は容易に推測することができることを意味する。更に、画像は、これらの4つのエッジの隣接するエッジが実質的に90°に等しい角度を形成するようなものである。これらの4つのエッジの隣接するエッジによって形成される角度は、88°~92°又は89°~91°に含まれ得る。
【0030】
「実質的に六角形」は、SEMによって観察される粒子面に関連して、それぞれ、同じ長さを実質的に有する6つのエッジを、目に見える角及び/又はエッジを一緒に連結することによって見る又は容易に推測することができることを意味する。更に、画像は、これらの6つのエッジの隣接するエッジが実質的に120°に等しい角度を形成するようなものである。これらの6つのエッジの隣接するエッジによって形成される角度は、118°~122°又は119°~121°に含まれ得る。
【0031】
それらの多面体形状に加えて、本発明のセリウム系粒子はまた、それらの面の1つ以上がそれらの上に突起を有するという事実によって特徴付けられる。突起は、これから、本発明による1つのセリウム系粒子に関連して詳述される。
【0032】
突起は、セリウム系粒子の、少なくとも1つの面の、若しくは幾つかの面の、又は各面さえの部分にわたって延びていてもよい。
【0033】
突起部分は、粒子面上に集中していてもよい。突起部分は、粒子面の中心から放射状に延びていてもよい。突起部は、とりわけ、粒子面の中心から粒子面のエッジまで放射状に延びていてもよい。突起は、特に、粒子面の表面の、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、特に少なくとも90%、少なくとも95%さえにわたって延びていてもよい。それは、当業者に公知の任意の好適な方法によって、とりわけ、例えば以下の方法に従って、SEM写真で測定され得る:
1)面の幾何学的形状が写真上で体系化される:
図3の粒子の場合に、
図9に例示されるように、面は、正方形として体系化される。
2)面の突起エリアの幾何学的形状が、次いで同じ写真上で体系化される:
図3の粒子の場合に、
図9に例示されるように、突起エリアは、正八角形で体系化される。
3)各体系化された幾何学的形状の面積が計算される。例えば、
図9の粒子の場合に、正方形は、Lと記される長さの側面を有する:その面積Aは、そのときA=L
2に等しい。八角形は、lと記される長さの側面を有する:その面積aは、そのときa=2l
2(1+√2)に等しい。それは写真で直接測定することができるので、
【数3】
である:計算される比a/Aは、その結果として約0.89である。言い換えれば、突起は粒子面の表面の89%にわたって延びていると考えることができる。
【0034】
セリウム系粒子は、突起を実質的に含まない少なくとも1つのエッジ部及び/又は少なくとも1つの角を有し得る(例えば
図3を参照のこと)。
【0035】
互いに隣接する突起は、互いに相隔たっていてもよいし、互いに接触していてもよい。1つの好ましい実施形態によれば、互いに隣接する突起は、互いに接触している。
【0036】
突起は、とがっていなくてもよい。「とがっていない」とは、円形を意味する:とりわけ、とがった突起の不在は、セリウム系粒子を、研磨用途において研磨粒子として使用する場合に有利である。それは、研磨基板上のミクロ擦り傷の発生を最小限にする。突起のとがっていない形態は、顕微鏡法によって、例えば、
図10に例示されるように、TEM写真で観察することができる:とがっていない突起の側面は、写真上で直角又は鈍角(すなわち、90℃以上)を一緒に形成する。比較して、とがった突起は、鋭角(すなわち、90℃未満)を一緒に形成する側面を有するであろう。
【0037】
一実施形態によれば、セリウム系粒子の突起面は、「カリフラワー」の表面形態を有するとして記載され得る:突起は、とがっておらず、互いに接触しており、粒子面の中心から放射状に延びている。
【0038】
セリウム系粒子の1つの面当たりの突起の数は、2~200、特に2~150、より特に35~135に含まれ得る。それは、少なくとも1つのSEM写真、典型的には2つの写真に基づいて計算される平均値と定義され得る。とりわけ、セリウム系粒子が立方体である場合、1立方体面当たりの突起の数は、2~200、特に2~150、より特に65~135に含まれ得る。それぞれ、セリウム系粒子が切頭八面体である場合:1立方体面当たりの突起の数は、2~150、特に2~120、より特に20~60に含まれ得;1六角形面当たりの突起の数は、2~150、特に2~120、より特に30~100に含まれ得る。
【0039】
突起の平均直径は、2nm~50nm、特に5nm~30nmに含まれ得る。それは、少なくとも1つのSEM写真、典型的には2つの写真で複数の突起の直径を測定することによって決定することができる。突起直径は、前記突起について測定された最大の直径と最小直径との平均と定義され得る。
【0040】
SEMによる観察は、統計分析を行うことが可能であるように、好ましくは多数の粒子に関して行われる。これは通常、セリウム系粒子の同じサンプルの2つ以上の写真で成し遂げられる。観察のための粒子の数は、好ましくは200個超であってもよい。保持される粒子は、それらの面が写真でよく見えるようなものである。より特に、保持される多面体粒子の数は、サンプリングされた粒子の少なくとも80.0%、より特に少なくとも90.0%、更により特に少なくとも95.0%に相当する。本発明の粒子の平均サイズは、SEMによって測定されるように、10nm~200nm、好ましくは30nm~150nm、より好ましくは50nm~110nmの範囲であってもよい。
【0041】
本発明のセリウム系粒子はまた、1つ以上のその面上で延びる突起が前記粒子と一体化して形成されるという事実によって特徴付けられる。この特徴は、とりわけ、米国特許出願公開第2015/0072522号明細書によって例示される最先端技術によって提案されるように、別個の段階で形成された母粒子上により小さい粒子を凝集させる代わりに一沈殿工程中に直接粒子面をテクスチャー化することを可能する制御された沈殿方法によって進行する、本発明による合成方法に由来する。したがって、本発明の枠組みでの突起は、1つの一体化して形成されたセリウム系粒子のテクスチャー化表面と見ることができる。突起は、セリウム系粒子の粗さを改善し、それは、粒子を研磨プロセスにおける研磨粒子として使用する場合に有利である。上に説明されたように、補助粒子に反して、一体化して形成された突起は、とりわけ除去速度を向上させながら、研磨プロセス中にセリウム系粒子から脱離しそうにない。突起が本発明の粒子と「一体化して形成されて」いることによる特徴に由来するこの有利な効果はまた、実施例7において詳述される条件において本発明による分散液に超音波を適用することによってチェックすることができ、それは、突起の非脱離を顕微鏡観察によって確認することを可能にする。
【0042】
本発明のセリウム系粒子はまた、特有の組成を有し得る。セリウム系粒子は、特に酸化セリウム、典型的には酸化第二セリウム製であってもよい。セリウム系粒子は、或いはまた、セリウムとセリウム以外の少なくとも1種の金属(M)との混合酸化物製であってもよい。
【0043】
セリウム以外の前記少なくとも1種の金属(M)は、より具体的には、遷移金属元素、特に、La、Pr及びNdなどの、希土類元素;並びにSrなどの、アルカリ土類金属元素からなる群から選択され得る。より好ましくは、前記少なくとも1種の金属(M)は、ランタン、プラセオジム及びネオジムからなる群から選択される。更にいっそう好ましくは、前記少なくとも1種の金属(M)はランタンである。
【0044】
セリウム系粒子が、セリウムと少なくとも1種の金属(M)との混合酸化物でできている場合、モル比M/(M+Ce)は、0.01~0.15、より特に0.01~0.12、更により特に0.01~0.04、とりわけ0.02~0.03に含まれ得る。特に、セリウム系粒子が、セリウムとランタンとの混合酸化物でできている場合、モル比La/(La+Ce)は、0.01~0.15、より特に0.01~0.12、更により特に0.01~0.04、とりわけ0.02~0.03に含まれ得る。
【0045】
本発明のセリウム系粒子のいくらかを特徴付け得る立方形は、セリウム系粒子が酸化セリウムで又はセリウムとランタンとの混合酸化物でできている場合にとりわけ得られ得る(例えば
図3及び5を参照のこと)。本発明のセリウム系粒子のいくらかを特徴付け得る切頭八面体形は、セリウム系粒子が酸化セリウムでできている場合にとりわけ得られ得る。(例えば
図1を参照のこと)。
【0046】
セリウム系粒子は、16~55m2/g、より特に17~50m2/g、更により特に18~45m2/g、とりわけ19~42m2/gに含まれる比表面積(BET)を示し得る。BET法による測定は、定義セクションにおいて上で明記されている。
【0047】
セリウム系粒子はまた、それらのサイズの分布に関連した様々なパラメータによって特徴付けられ得る。
【0048】
セリウム系粒子は、特に、75nm~1000nm、より特に80nm~500nm、更により特に85nm~300nm、とりわけ90nm~240nmに含まれる流体力学的平均径Dhを示し得る。流体力学的平均径Dhは、定義セクションにおいて上で説明されているように、動的光散乱によって測定される。
【0049】
レーザー回折がまた、セリウム系粒子を特徴付けるために用いられ得る。その技法は、定義セクションにおいて上で詳述されている。セリウム系粒子は、したがって、以下の特徴:
- 70nm~200nm、より特に75nm~170nm、更により特に79nm~150nmに含まれるメディアン径D50;及び/又は
- 55nm~200nm、より特に60nm~150nm、更により特に65nm~110nmに含まれる直径D10;及び/又は
- 80nm~300nm、より特に90nm~260nm、更により特に94nm~230nmに含まれる直径D90;及び/又は
- 90nm~400nm、より特に100nm~385nm、更により特に107nm~370nmに含まれる直径D99;及び/又は
- 0.60未満、特に0.42未満の分散指数σ/m(ここで、σ/m=(D90-D10)/2D50である);及び/又は
- 1.10~1.60に含まれる比D90/D50
の少なくとも1つ又は任意の組合せを示し得る。
【0050】
本特許出願の実施例において、Dh、D10、D50、D90、D99の最小値がそれぞれ選択される場合がある。本特許出願の実施例において、Dh、D10、D50、D90、D99の最大値がそれぞれ選択される場合がある。
【0051】
調製の方法
本発明はまた、上記のセリウム系粒子の製造方法であって、以下の工程:
(a)不活性雰囲気下で、塩基の水溶液とNO3-、CeIII、任意選択的にCeIV、任意選択的にMn+(価数nの金属Mの)を含む水溶液とを接触させる工程(ここで、塩基/全(Ce+任意選択のM)モル比とNO3-/CeIIIモル比との差は2未満である);
(b)工程(a)において得られた混合物を熱処理に供する工程(ここで、温度は55~75℃に含まれる);
(c)工程(b)において得られた混合物を任意選択的に酸性化する工程;
(d)工程(b)又は(c)の終わりに得られた固体材料を水で任意選択的に洗浄する工程;
(e)工程(d)の終わりに得られた固体材料を機械的処理に任意選択的に供して粒子を解凝集させる工程
を含む、方法に関する。
【0052】
工程(a)
セリウムIIIは、硝酸セリウムIIIであってもよい塩によって供給される。セリウムIVは、存在する場合、硝酸セリウムIV又は硝酸セリウムアンモニウムであってもよい塩によって供給される。Mn+イオンは、存在する場合、金属M硝酸塩であってもよい塩によって供給される。特に、Mn+がLa3+である場合、その塩は硝酸ランタンであってもよい。NO3-イオンは、これらの塩の1つ以上によって及び任意選択的に硝酸の添加によって供給される。モル比NO3-/CeIIIは、1/3~5、特に1~4に含まれ得る。工程(a)において使用される水溶液の酸性度は、好ましくは0.8N~12.0Nに含まれる。工程(a)において使用される水溶液は、異なる化合物を水、好ましくは脱イオン水と単に混合することによって調製され得る。
【0053】
高純度の塩及び成分を使用することが有利である。塩の純度は、少なくとも99.5重量%、より特に少なくとも99.9重量%のものであってもよい。
【0054】
工程(a)は、水溶液を塩基の水溶液と反応させることに存する。水酸化物型の製品を、特に塩基として使用することができる。アルカリ金属又はアルカリ土類金属水酸化物及び水性アンモニアが挙げられ得る。第二級、第三級又は第四級アミンも使用することができる。塩基の水溶液はまた、不活性ガスでバブリングすることによって予め脱気することができる。工程(a)は、水溶液を塩基の水溶液へ導入することによって実施され得る。工程(a)は、好ましくは、不活性雰囲気下で、とりわけ閉鎖型反応器中か又は不活性ガスで掃引しながら半閉鎖型反応器中で実施される。接触は、一般に撹拌反応器中で実施される。
【0055】
本発明のセリウム系粒子の調製方法は、とりわけ、工程(a)における塩基/全(Ce+任意選択のM)モル比とNO3
-/CeIIIモル比との差が2.0未満、特に1.8未満、より特に1.7未満、より特に1.6未満、より特に1.4未満、更により特に1.2未満であるという事実によって特徴付けられる。これらの2つのモル比の差が2.0以上である場合、突起が粒子の表面上に全く形成されないことが観察された。塩基/全(Ce+任意選択のM)モル比とNO3
-/CeIIIモル比との差は、0,1以上、特に0,5以上であってもよい。
【0056】
セリウムIVが反応時間を減らすために反応媒体に有利に導入され得ることが観察された。セリウムIVが存在する場合、CeIV/全Ceモル比は、有利には1/300000~1/50、特に1/100000~1/50、特に1/10000~1/100、特に1/5000~1/1000、更により特に1/3500~1/2500に含まれ得る。
硝酸と水和酸化第二セリウムとの反応によって得られる硝酸第二セリウム水溶液がこの点で使用され得る。酸化第二セリウムは、CeIIIカチオンをCeIVカチオンへ変換するための水性過酸化水素の存在下での第一セリウム塩溶液とアンモニア水溶液との反応によって従来通りに調製される。仏国特許第2570087号明細書に開示されたような硝酸第一セリウム溶液の電気化学的酸化の方法に従って得られる硝酸第二セリウム溶液を使用することがまた特に有利である。仏国特許第2570087号明細書の教示に従って得られる硝酸第二セリウムの溶液は、ほぼ0.6Nの酸性度を示し得る。
【0057】
別の実施形態によれば、セリウムIVは、工程(a)において又は本発明による方法のいかなる他の工程においても導入されない。
【0058】
出発溶液中の遊離酸素の量は、注意深く制御され、最小限にされるべきである。この目的のために、出発溶液は、不活性ガスでバブリングすることによって脱気され得る。用語「不活性ガス」又は「不活性雰囲気」は、酸素を含まない雰囲気又はガスを意味することを意図し、ガスが、例えば窒素又はアルゴンであることが可能である。
【0059】
工程(a)は、一般に、5℃~50℃に含まれる温度で実施される。この温度は20~25℃であってもよい。
【0060】
工程(b)
工程(b)は、先行工程の終わりに得られた反応媒体の熱処理である。それは、(i)加熱サブ工程及び(ii)熟成サブ工程に存する。本発明のセリウム系粒子の調製方法はまた、加熱サブ工程(i)が、媒体を55℃~75℃、より特に60℃~70℃、更により特に65℃~70℃に含まれる温度で加熱することに存するという事実によって特徴付けられる。余りにも高い温度は、目標の突起の代わりに滑らかな表面を有する粒子をもたらすことが観察された。熟成サブ工程(ii)は、媒体を55℃~75℃、より特に60℃~70℃、更により特に65℃~70℃に含まれる温度に維持することに存する。熟成サブ工程(ii)の継続時間は、2時間~20時間であってもよい。
【0061】
工程(b)中に、CeIIIのCeIVへの酸化が起こる。この工程において、加熱サブ工程(i)は、好ましくは不活性雰囲気下で実施される。工程(a)に関連して記載された不活性雰囲気条件が同様に当てはまる。CeIIIの酸化を促進するために、熟成サブ工程(ii)は、そのとき好ましくは不活性雰囲気下で実施されない。同様に、熱処理は、撹拌反応器中で実施され得る。
【0062】
工程(c)
工程(c)において、工程(b)の終わりに得られた混合物は、任意選択的に酸性化され得る。この工程(c)は、硝酸、ピコリン酸、プロピオン酸、塩酸、スルホン酸、炭酸、及びそれらの混合物などの好適な酸、好ましくは硝酸を使用することによって行われ得る。反応混合物は、3.0未満、より特に1.5~2.5に含まれるpHに酸性化され得る。
【0063】
工程(d)
工程(d)において、工程(b)又は工程(c)の終わりに得られた固体材料は、水、好ましくは脱イオン水で任意選択的に洗浄され得る。両方が行われる場合、工程(c)及び(d)は、任意の順で行われ得る。この操作は、分散液中の残留アニオン、とりわけ硝酸塩の量を減らすこと、及び目標の導電率を得ることを可能にする。この工程は、混合物から固体を濾過し、固体を水に再分散させることによって実施され得る。濾過及び再分散は、必要に応じて数回行われ得る。
【0064】
工程(e)
工程(e)において、粒子を解凝集させるために、工程(d)の終わりに得られた固体材料は、任意選択的に機械的処理に供せられ得る。この工程は、ダブルジェット処理又は超音波解凝集によって実施され得る。この工程は、通常、シャープな粒度分布を、及び大きな凝集粒子の数の減少をもたらす。一実施形態によれば、セリウム系粒子は、解凝集の機械的処理を受けている。別の実施形態によれば、セリウム系粒子は、解凝集の機械的処理を受けていない。
【0065】
工程(e)の後に、固体材料は、粉末形態のセリウム系粒子を得るために乾燥させられ得る。工程(e)の後に、水又は水と混和性液体有機化合物との混合物が、液体媒体中のセリウム系粒子の分散液を得るために添加され得る。分散液のpHはまた、4~6に典型的には含まれる値に調整され得る。
【0066】
セリウム系粒子の分散液
分散液は、本発明のセリウム系粒子と液体媒体とを含む。液体媒体は、水であっても水と水混和性有機液体との混合物であってもよい。水混和性有機液体は、粒子を沈殿又は凝集させないものであるべきである。水混和性有機液体は、例えば、イソプロピルアルコール、エタノール、1-プロパノール、メタノール、1-ヘキサノールのようなアルコール;アセトン、ジアセトンアルコール、メチルエチルケトンのようなケトン;ギ酸エチル、ギ酸プロピル、酢酸エチル、酢酸メチル、乳酸メチル、乳酸ブチル、乳酸エチルのようなエステルであってもよい。水/有機液体の割合は、80/20~99/1(wt/wt)であってもよい。
【0067】
分散液中のセリウム系粒子の割合は、0.5重量%~40.0重量%に含まれ得、この割合は、分散液の総重量で割ったセリウム系粒子の重量として表される。この割合は、10.0重量%~35.0重量%に含まれ得る。
【0068】
本発明の分散液中に含まれるセリウム系粒子のゼータ電位は、有利にはプラスである。それは、4~9,5に含まれる分散液のpH値で測定され得る。ゼータ電位は、重量で1%での分散液に関してQuantachrome製のゼータメーターDT300で測定され得る。
【0069】
分散液はまた、300μS/cm未満、より特に150μS/cm未満、更により特に100μS/cm又は50μS/cm未満の導電率を示し得る。導電率は、HORIBA,Ltd.の導電率計9382-10Dで測定される。
【0070】
セリウム系粒子の又は分散液の使用
本発明のセリウム系粒子又は本発明の分散液は、研磨組成物、より特にCMP組成物を調製するために使用され得る。それらは、研磨組成物、より特にCMP組成物の構成要素として使用され得る。
【0071】
CMP組成物(つまり化学-機械研磨組成物)は、基板の表面からの材料の選択的除去のために使用される研磨組成物である。それは、集積回路及び他の電子デバイスの分野で使用されている。実際には、集積回路及び他の電子デバイスの製造において、導電性、半導体性、及び誘電性の材料の複数の層が、基板の表面上へ堆積される又は表面から除去される。材料の層が逐次的に基板上へ堆積され、基板から除去されるので、基板の最上面は非平面になり、平坦化を必要とする場合がある。表面の平坦化(又は表面の「研磨」)は、基板の表面から材料を除去して、概して滑らかで、平らな表面を形成するプロセスである。平坦化は、粗い表面、凝集した材料、結晶格子損傷、擦り傷、及び汚染された層又は材料などの、望ましくない表面トポグラフィ及び表面欠陥を除去するのに有用である。平坦化はまた、フィーチャを埋めるために並びにメタライゼーション及び処理の後続レベルのための均一な表面を提供するために使用された余分な堆積材料を除去することによって基板上にフィーチャを形成するのに有用である。
【0072】
研磨組成物又はCMP組成物で研磨することができる基板は、例えば、二酸化ケイ素タイプの基板、ガラス、半導体又はウェハーであってもよい。
【0073】
研磨組成物又はCMP組成物は、通常、セリウム系粒子以外の異なる成分を含有する。研磨組成物は、以下の成分:
- セリウム系粒子以外の研磨粒子(本明細書では「追加の研磨粒子」と言われる);及び/又は
- pH調整剤;及び/又は
- 界面活性剤;並びに/又は
- 粘度向上剤及び凝固剤などの、レオロジー調整剤;並びに/又は
- カルボン酸モノマー、スルホン化モノマー、又はホスホン酸化モノマーと、アクリレート、ポリビニルピロリドン、又はポリビニルアルコールとのアニオン性コポリマー(例えば2-ヒドロキシエチルメタクリル酸とメタクリル酸とのコポリマー);ポリビニルピロリドン又はポリエチレングリコールである、非イオン性ポリマー;アミノシラン、ウレイドシラン、又はグリシジルシランである、シラン;官能化されたピリジンのN-オキシド(例えばピコリン酸N-オキシド);デンプン;シクロデキストリン(例えばアルファ-シクロデキストリン又はベータ-シクロデキストリン);及びそれらの組合せから選択される添加剤
の1種以上を含んでいてもよい。
【0074】
研磨組成物のpHは、一般に1~6に含まれる。典型的には、研磨組成物は、3.0以上のpHを有する。また、研磨組成物のpHは、典型的には6.0以下である。
【0075】
本発明はまた、したがって、基板の一部の除去方法であって、基板を上記などの研磨組成物で研磨する工程を含む方法に関する。
【0076】
本発明は最後に、この方法によって研磨される半導体に関する。
【実施例】
【0077】
実施例1
硝酸セリウム溶液を、2.9mol/L(密度1.7kg/L)での13.8kgの硝酸三価セリウム、4.2kgの68重量%のHNO3及び0.5kgの脱イオン水を混合することによって調製した。この溶液を20Lの半閉鎖型容器中へ入れた。アンモニア水溶液を、14.3mol/L(密度0.9kg/L)での8.8kgのアンモニア水及び79kgの脱イオン水を添加することによって調製した。この溶液をジャケット付きの100L半閉鎖型反応器中へ入れ、撹拌しながら1時間N2ガスでバブリングした。上記の硝酸セリウム溶液を、周囲温度で並びに撹拌及びN2バブリングの同じ条件下におよそ30分でアンモニア水溶液と混合した。(モル比NH4OH/全Ce-NO3
-/CeIII=1.1)反応混合物の温度をおよそ1時間で67℃まで加熱し、N2バブリングなしの同じ撹拌条件でおよそ6.5時間維持した。反応混合物を冷却し、68重量%のHNO3でpH2に酸性化した。反応混合物を濾過し、脱イオン水で洗浄した。洗浄液の導電率が0.05mS/cm未満になるまで洗浄を繰り返した。最終的に得られた分散液を、ダブルインパクトジェット処理機を用いることによって解凝集し、10%のCeO2に調整した。
【0078】
分散液の一部を200℃でのオーブン中で乾燥させ、それによってCeO
2の粉末を得た。窒素吸着によって測定されるBET比表面積は23,1m
2/gであった。分散液をSEMによって観察した。一次粒子は単分散であり、平均サイズは約54nmであった。SEM写真を
図1に報告する。動的光散乱(DLS)によって測定される流体力学的平均径Dhは204nmであった。二次粒径を、レーザー粒径分析計(Horiba LA-910)によって水中のCeO
2の相対屈折率1.7で測定した。メディアン径D50は146nmであった。D10、D50及びD90は、それぞれ、106、146及び226nmであった。計算された分散σ/mは0,41であった。
【0079】
実施例2
硝酸セリウム溶液を、2.9mol/L(密度1.7kg/L)での13.6kgの硝酸三価セリウム溶液、8.4kgの68重量%のHNO3溶液及び0.2kgの脱イオン水を混合することによって調製した。この溶液を20Lの半閉鎖型容器中へ入れた。アンモニア水溶液を、14.4mol/L(密度0.9kg/L)での11.6kgのアンモニア水及び73kgの脱イオン水を添加することによって調製した。この溶液をジャケット付きの100L半閉鎖型反応器中へ入れ、撹拌しながら1時間N2ガスでバブリングした。上記の硝酸セリウム溶液を、周囲温度で並びに撹拌及びN2バブリングの同じ条件下におよそ30分でアンモニア水溶液と混合した。(モル比NH4OH/全Ce-NO3
-/CeIII=1.1)反応混合物の温度をおよそ1時間で67℃まで加熱し、N2バブリングなしの同じ撹拌条件でおよそ4,5時間維持した。反応混合物を冷却し、68重量%のHNO3でpH2に酸性化した。反応混合物を濾過し、脱イオン水で洗浄した。洗浄液の導電率が0.05mS/cm未満になるまで洗浄を繰り返した。最終的に得られた分散液を、ダブルインパクトジェット処理機を用いることによって解凝集し、10%のCeO2に調整した。
【0080】
分散液の一部を200℃でのオーブン中で乾燥させ、それによってCeO
2の粉末を得た。窒素吸着によって測定されるBET比表面積は41,2m
2/gであった。分散液をSEMによって観察した。一次粒子は単分散であり、平均サイズは約60nmであった。SEM写真を
図2に報告する。動的光散乱(DLS)によって測定される流体力学的平均径Dhは92nmであった。二次粒径を、レーザー粒径分析計(Horiba LA-910)によって水中のCeO
2の相対屈折率1.7で測定した。メディアン径D50は81nmであった。D10、D50及びD90は、それぞれ、67、81及び96nmであった。計算された分散σ/mは0,18であった。
【0081】
実施例3
硝酸セリウム溶液を、3.0mol/L(密度1.7kg/L)での13.6kgの硝酸三価セリウム溶液、2.1kgの68重量%のHNO3溶液及び0.7kgの脱イオン水を混合することによって調製した。この溶液を20Lの半閉鎖型容器中へ入れた。アンモニア水溶液を、14.4mol/L(密度0.9kg/L)での7.3kgのアンモニア水及び82kgの脱イオン水を添加することによって調製した。この溶液をジャケット付きの100L半閉鎖型反応器中へ入れ、撹拌しながら1時間N2ガスでバブリングした。上記の硝酸セリウム溶液を、周囲温度で並びに撹拌及びN2バブリングの同じ条件下におよそ30分でアンモニア水溶液と混合した。(モル比NH4OH/全Ce-NO3
-/CeIII=1.0)反応混合物の温度をおよそ1時間で67℃まで加熱し、N2バブリングなしの同じ撹拌条件でおよそ10時間維持した。反応混合物を冷却し、68重量%のHNO3でpH2に酸性化した。反応混合物を濾過し、脱イオン水で洗浄した。洗浄液の導電率が0.05mS/cm未満になるまで洗浄を繰り返した。最終的に得られた分散液を、ダブルインパクトジェット処理機を用いることによって解凝集し、10%のCeO2に調整した。
【0082】
分散液の一部を200℃でのオーブン中で乾燥させ、それによってCeO
2の粉末を得た。窒素吸着によって測定されるBET比表面積は23,1m
2/gであった。分散液をSEMによって観察した。一次粒子は単分散であり、平均サイズは約79nmであった。SEM写真を
図3に報告する。動的光散乱(DLS)によって測定される流体力学的平均径Dhは139nmであった。二次粒径を、レーザー粒径分析計(Horiba LA-910)によって水中のCeO
2の相対屈折率1.7で測定した。メディアン径D50は96nmであった。D10、D50及びD90は、それぞれ、79、96及び123nmであった。計算された分散σ/mは0,23であった。
【0083】
実施例4
硝酸セリウム溶液を、1.5mol/L(密度1.7kg/L)での約8gの硝酸四価セリウム溶液、2.9mol/L(密度1.7kg/L)での13.8kgの硝酸三価セリウム溶液、4.2kgの68重量%のHNO3溶液及び0.6kgの脱イオン水を混合することによって調製した。この溶液を20Lの半閉鎖型容器中へ入れた。アンモニア水溶液を、14.4mol/L(密度0.9kg/L)での8.7kgのアンモニア水及び79kgの脱イオン水を添加することによって調製した。この溶液をジャケット付きの100L半閉鎖型反応器中へ入れ、撹拌しながら1時間N2ガスでバブリングした。上記の硝酸セリウム溶液を、周囲温度で並びに撹拌及びN2バブリングの同じ条件下におよそ30分でアンモニア水溶液と混合した。(モル比NH4OH/全Ce-NO3
-/CeIII=1.1)反応混合物の温度をおよそ1時間で67℃まで加熱し、N2バブリングなしの同じ撹拌条件でおよそ3.5時間維持した。反応混合物を冷却し、68重量%のHNO3でpH2に酸性化した。反応混合物を濾過し、脱イオン水で洗浄した。洗浄液の導電率が0.05mS/cm未満になるまで洗浄を繰り返した。最終的に得られた分散液を、ダブルインパクトジェット処理機を用いることによって解凝集し、10%のCeO2に調整した。
【0084】
分散液の一部を200℃でのオーブン中で乾燥させ、それによってCeO2の粉末を得た。窒素吸着によって測定されるBET比表面積は27,5m2/gであった。分散液をSEMによって観察した。一次粒子は単分散であり、平均サイズは約58nmであった。動的光散乱(DLS)によって測定される流体力学的平均径Dhは105nmであった。二次粒径を、レーザー粒径分析計(Horiba LA-910)によって水中のCeO2の相対屈折率1.7で測定した。メディアン径D50は84nmであった。D10、D50及びD90は、それぞれ、68、84及び97nmであった。計算された分散σ/mは0,17であった。
【0085】
実施例5
硝酸セリウム溶液を、2.9mol/L(密度1.7kg/L)での13.7kgの硝酸三価セリウム溶液、3.1kgの68重量%のHNO3溶液及び0.8kgの脱イオン水を混合することによって調製した。この溶液を20Lの半閉鎖型容器中へ入れた。アンモニア水溶液を、14.4mol/L(密度0.9kg/L)での8.8kgのアンモニア水及び79kgの脱イオン水を添加することによって調製した。この溶液をジャケット付きの100L半閉鎖型反応器中へ入れ、撹拌しながら1時間N2ガスでバブリングした。上記の硝酸セリウム溶液を、周囲温度で並びに撹拌及びN2バブリングの同じ条件下におよそ30分でアンモニア水溶液と混合した。(モル比NH4OH/全Ce-NO3
-/CeIII=1.6)反応混合物の温度をおよそ1時間で70℃まで加熱し、N2バブリングなしの同じ撹拌条件でおよそ10時間維持した。反応混合物を冷却し、68重量%のHNO3でpH2に酸性化した。反応混合物を濾過し、脱イオン水で洗浄した。洗浄液の導電率が0.05mS/cm未満になるまで洗浄を繰り返した。最終的に得られた分散液を、ダブルインパクトジェット処理機を用いることによって解凝集し、10%のCeO2に調整した。
【0086】
分散液の一部を200℃でのオーブン中で乾燥させ、それによってCeO
2の粉末を得た。窒素吸着によって測定されるBET比表面積は19,3m
2/gであった。分散液をSEMによって観察した。一次粒子は単分散であり、平均サイズは約99nmであった。SEM写真を
図4に報告する。動的光散乱(DLS)によって測定される流体力学的平均径Dhは152nmであった。二次粒径を、レーザー粒径分析計(Horiba LA-910)によって水中のCeO
2の相対屈折率1.7で測定した。メディアン径D50は116nmであった。D10、D50及びD90は、それぞれ、93、116及び152nmであった。計算された分散σ/mは0,25であった。
【0087】
実施例6
硝酸セリウム溶液を、2.9mol/L(密度1.7kg/L)での13.8kgの硝酸三価セリウム溶液、2.9mol/L(密度1.7kg/L)での0.36kgの硝酸ランタン溶液、4.3kgの68重量%のHNO3溶液及び0.3kgの脱イオン水を混合することによって調製した。この溶液を20Lの半閉鎖型容器中へ入れた。アンモニア水溶液を、14.3mol/L(密度0.9kg/L)での9kgのアンモニア水及び79kgの脱イオン水を添加することによって調製した。この溶液をジャケット付きの100L半閉鎖型反応器中へ入れ、撹拌しながら1時間N2ガスでバブリングした。上記の硝酸セリウム溶液を、周囲温度で並びに撹拌及びN2バブリングの同じ条件下におよそ30分でアンモニア水溶液と混合した。(モル比NH4OH/全(Ce+La)-NO3
-/CeIII=0.93)反応混合物の温度をおよそ1時間で67℃まで加熱し、N2バブリングなしの同じ撹拌条件でおよそ10時間維持した。反応混合物を冷却し、68重量%のHNO3でpH2に酸性化した。反応混合物を濾過し、脱イオン水で洗浄した。洗浄液の導電率が0.05mS/cm未満になるまで洗浄を繰り返した。最終的に得られた分散液を、ダブルインパクトジェット処理機を用いることによって解凝集し、10%のCeO2に調整した。
【0088】
分散液の一部を200℃でのオーブン中で乾燥させ、それによって混合酸化物Ce/Laの粉末を得た。窒素吸着によって測定されるBET比表面積は32,6m
2/gであった。分散液をSEMによって観察した。一次粒子は単分散であり、平均サイズは約104nmであった。SEM写真を
図5に報告する。動的光散乱(DLS)によって測定される流体力学的平均径Dhは156mであった。二次粒径を、レーザー粒径分析計(Horiba LA-910)によって水中のCeO
2の相対屈折率1.7で測定した。メディアン径D50は113nmであった。D10、D50及びD90は、それぞれ、96、113及び142nmであった。計算された分散σ/mは0,20であった。
【0089】
実施例7:脱離試験
実施例1において調製された10mLの10重量%CeO
2分散液を含有する30mLのガラス容器を使用した。超音波システム:Converters CV154+Boosters(Part No:BHNVC21)+19mmのProbe(Part No:630-0208)を備えた1500W発電機型Sonics Vibracell VC1500/VCX1500で、90%の出力で、超音波検査をガラス容器中で直接5分間行った。
図11で見ることができるように、粒子からの突起の有意の脱離は全く観察されなかった。
【0090】
比較例1
硝酸セリウム溶液を、1.5mol/L(密度1.7kg/L)での0.3gの硝酸四価セリウム溶液、2.9mol/L(密度1.7kg/L)での13.9kgの硝酸三価セリウム溶液、2.1kgの68重量%のHNO3溶液及び0.5kgの脱イオン水を混合することによって調製した(CeIV/全Ceモル比=1/80000)。この溶液を20Lの半閉鎖型容器中へ入れた。アンモニア水溶液を、14.5mol/L(密度0.9kg/L)での9.3kgのアンモニア水及び90kgの脱イオン水を添加することによって調製した。この溶液をジャケット付きの100L半閉鎖型反応器中へ入れ、撹拌しながら1時間N2ガスでバブリングした。上記の硝酸セリウム溶液を、撹拌及びN2バブリングの同じ条件下におよそ30分でアンモニア水溶液と混合した(モル比NH4OH/全Ce-NO3
-/CeIII=2.4)。反応混合物の温度をおよそ1時間で80℃まで加熱し、N2バブリングなしの同じ撹拌条件でおよそ4時間維持した。反応混合物を冷却し、68重量%のHNO3でpH2に酸性化した。反応混合物を濾過し、脱イオン水で洗浄した。洗浄液の導電率が0.05mS/cm未満になるまで洗浄を繰り返した。最終的に得られた懸濁液を解凝集し、10%のCeO2に調整した。
【0091】
分散液の一部を200℃でのオーブン中で乾燥させ、それによってCeO
2の粉末を得た。窒素吸着によって測定されるBET比表面積は12,9m
2/gであった。懸濁液をSEMによって観察した。一次粒子は単分散であり、平均サイズは約140nmであった。SEM写真を
図6に報告する。動的光散乱(DLS)によって測定される流体力学的平均径Dhは153nmであった。二次粒径を、レーザー粒径分析計(Horiba LA-910)によって水中のCeO
2の相対屈折率1.7で測定した。メディアン径D50は109nmであった。D10、D50及びD90は、それぞれ、91、109及び133nmであった。計算された分散σ/mは0,19であった。
【0092】
比較例2
硝酸セリウム溶液を、1.5mol/L(密度1.7kg/L)での0.30gの硝酸四価セリウム溶液、2.9mol/Lでの13.8kgの硝酸三価セリウム溶液、2.1kgの68重量%のHNO3溶液及び0.5kgの脱イオン水を混合することによって調製した(CeIV/全Ceモル比=1/80000)。この溶液を20Lの半閉鎖型容器中へ入れた。アンモニア水溶液を、14.6mol/L(密度0.9kg/L)での8.6kgのアンモニア水及び80kgの脱イオン水を添加することによって調製した。この溶液をジャケット付きの100L半閉鎖型反応器中へ入れ、撹拌しながら1時間N2ガスでバブリングした。上記の硝酸セリウム溶液を、撹拌及びN2バブリングの同じ条件下におよそ30分でアンモニア水溶液と混合した(モル比NH4OH/全Ce-NO3
-/CeIII=2.0)。反応混合物の温度をおよそ1時間で67℃まで加熱し、N2バブリングなしの同じ撹拌条件でおよそ14時間維持した。反応混合物を冷却し、68重量%のHNO3でpH2に酸性化した。反応混合物を濾過し、脱イオン水で洗浄した。洗浄液の導電率が0.05mS/cm未満になるまで洗浄を繰り返した。最終的に得られた懸濁液を解凝集し、10%のCeO2に調整した。
【0093】
分散液の一部を200℃でのオーブン中で乾燥させ、それによってCeO
2の粉末を得た。窒素吸着によって測定されるBET比表面積は15,8m
2/gであった。懸濁液をSEMによって観察した。一次粒子は単分散であり、平均サイズは約90nmであった。SEM写真を
図7に報告する。動的光散乱(DLS)によって測定される流体力学的平均径Dhは154nmであった。二次粒径を、レーザー粒径分析計(Horiba LA-910)によって水中のCeO
2の相対屈折率1.7で測定した。メディアン径D50は105nmであった。D10、D50及びD90は、それぞれ、86、105及び134nmであった。計算された分散σ/mは0,23であった。
【0094】
比較例3
硝酸セリウム溶液を、2.9mol/L(密度1.7kg/L)での13.8kgの硝酸三価セリウム、4.2kgの68重量%のHNO3及び0.5kgの脱イオン水を混合することによって調製した。この溶液を20Lの半閉鎖型容器中へ入れた。アンモニア水溶液を、14.4mol/L(密度0.9kg/L)での14.5kgのアンモニア水及び72kgの脱イオン水を添加することによって調製した。この溶液をジャケット付きの100L半閉鎖型反応器中へ入れ、撹拌しながら1時間N2ガスでバブリングした。上記の硝酸セリウム溶液を、周囲温度で並びに撹拌及びN2バブリングの同じ条件下におよそ30分でアンモニア水溶液と混合した。(モル比NH4OH/全Ce-NO3
-/CeIII=5.1)反応混合物の温度をおよそ1時間で67℃まで加熱し、N2バブリングなしの同じ撹拌条件でおよそ6.5時間維持した。反応混合物を冷却し、68重量%のHNO3でpH2に酸性化した。反応混合物を濾過し、脱イオン水で洗浄した。洗浄液の導電率が0.05mS/cm未満になるまで洗浄を繰り返した。最終的に得られた分散液を、ダブルインパクトジェット処理機を用いることによって解凝集し、10%のCeO2に調整した。
【0095】
分散液の一部を200℃でのオーブン中で乾燥させ、それによってCeO
2の粉末を得た。窒素吸着によって測定されるBET比表面積は14,3m
2/gであった。分散液をSEMによって観察した。一次粒子は単分散であり、平均サイズは約110nmであった。SEM写真を
図8に報告する。動的光散乱(DLS)によって測定される流体力学的平均径Dhは162nmであった。二次粒径を、レーザー粒径分析計(Horiba LA-910)によって水中のCeO
2の相対屈折率1.7で測定した。メディアン径D50は115nmであった。D10、D50及びD90は、それぞれ、99、115及び145nmであった。計算された分散σ/mは0,20であった。
【0096】
比較例4
公文書米国特許出願公開第2015/0072522号明細書の実験の部に従って粒子を調製することを試みた。
【0097】
ステージ1:セリウム(III)塩と脱イオン水とを、3:1の混合比(2kgのセリウム(III)塩及び1.125kgの脱イオン水)で混合してセリウム(III)水溶液を調製し、セリウム(IV)塩と脱イオン水とを1:1750の混合比(2gのセリウム(IV)塩及び4.75kgの脱イオン水)で混合してセリウム(IV)水溶液を調製した。セリウム(IV)水溶液と硝酸とを50:1の混合比(3kgのセリウム(IV)溶液及び2.55kgの硝酸)で混合してセリウム(IV)混合物溶液を調製した。また、セリウム(III)水溶液とセリウム(IV)混合物溶液とを混合してセリウム混合物溶液を調製した。更に、アンモニアと脱イオン水とを、不活性雰囲気中で反応容器に1:6の混合比(3kgのアンモニア及び25.5kgの脱イオン水)でロードし、次いで撹拌してアルカリ性水溶液を調製した。セリウム混合物溶液を反応容器に入れ、次いで不活性雰囲気中に維持しながら撹拌する状態で、セリウム混合物溶液を80℃に加熱して2.5時間の期間熱処理を行った。上記のように熱処理を行うことによって、突起のない母粒子を含有する溶液が得られると考えられた。
【0098】
ステージ2:その後、この溶液を30℃の温度に冷却し、セリア粒子混合物溶液及びアンモニアを反応容器に入れ、6:1の混合比(54kgのセリア粒子混合物溶液及び7kgのアンモニア)で混合し、不活性雰囲気中で6分間撹拌した。次いで、2.5kgのセリウム(III)塩、2.5kgのセリウム(IV)塩、5kgの脱イオン水及び2.55kgの硝酸が混合された第二のセリウム混合物溶液を、アンモニアが添加されたセリア混合物溶液に添加し、撹拌し、80℃に加熱して2.5時間熱処理を行った。上記のような熱処理を完了することによって、突起形状を有する最初の補助粒子を含有する溶液が、ステージ1において得られると考えられる母粒子の表面上に形成されると考えられた。
【0099】
ステージ3:ステージ2の終わりに得られた溶液から出発してステージ2を繰り返した。突起形状を有する二次補助粒子を含有する溶液が、ステージ1及び2において調製されると考えられる母粒子の表面上に形成されると考えられた。
【0100】
ステージ4:この溶液を室温に冷却して溶液のpHを4以下の酸性pHに調整し、それによって反応を完了させた。反応が完了した溶液を室温のままにしてセリア粒子を沈殿させ、次いで沈殿及び脱イオン水を使用する洗浄を2回繰り返し、次いで溶液の遠心分離を行って最終的に
図12に示される粒子を得た。写真で見ることができるように、母粒子及び補助粒子が実際に生じ、互いに別々に成長した。そのような粒子は、基板に深刻なダメージを与えるので、化学機械研磨プロセスに使用できない。
【0101】
研磨のために用いられる条件
水中のセリウム系粒子の分散液を、以下の条件下で試験した。用いられる研磨機はStruers Tegraminである。研磨される表面は非晶質シリカ製である。パッドを脱イオン水できれいにし、次いでサンプルを試験する。分散液を、研磨される表面上に制御された流量で導入する。
・ ヘッドにかけられる圧力:50N;
・ 回転速度:150rpm;
・ パッド:ネオプレン(MD-Chem)-試験される分散液ごとに新しいパッド;
・ 分散液の流量:15mL/分;
・ 分散液:セリウム系粒子の量は1重量%であり;
・ 分散液のpHは、希釈NH4OHの添加によって得られる、6~6.1であり;
・ 研磨時間:10分である。
【0102】
基板の重量損失を記録する。次いで、nm/分単位で表される除去速度(RR)を以下の通りに計算する:
【数4】
式中:
・ Δmは基板の重量損失であり;
・ Rは基板の半径であり;
・ ρは基板の密度であり;
・ Δtは研磨時間である。
【0103】
結果を表Iに詳述する。最先端技術の滑らかな粒子と比較して本発明の粒子を使用する場合に除去速度/SEMサイズ比が増加することを理解することができる。
【0104】
研磨試験の終わりに、研磨された基板及び粒子を目視検査する。本発明のセリウム系粒子の突起は研磨中にセリウム系粒子から除去されなかったことが確認される。
【0105】
【国際調査報告】