(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-01
(54)【発明の名称】バイオインク供給システム及びそれを用いた3Dバイオプリンティング方法
(51)【国際特許分類】
B29C 64/336 20170101AFI20230125BHJP
B33Y 40/00 20200101ALI20230125BHJP
【FI】
B29C64/336
B33Y40/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022530870
(86)(22)【出願日】2019-12-13
(85)【翻訳文提出日】2022-05-26
(86)【国際出願番号】 KR2019017653
(87)【国際公開番号】W WO2021107250
(87)【国際公開日】2021-06-03
(31)【優先権主張番号】10-2019-0153502
(32)【優先日】2019-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0153493
(32)【優先日】2019-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517336290
【氏名又は名称】ティーアンドアール バイオファブ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】T & R BIOFAB CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】542ho,237 Sangidaehak-ro Siheung-si Gyeonggi-do 15073 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100087491
【氏名又は名称】久門 享
(74)【代理人】
【識別番号】100104271
【氏名又は名称】久門 保子
(72)【発明者】
【氏名】アン グンソン
(72)【発明者】
【氏名】キム ミンキョン
(72)【発明者】
【氏名】ミン キョンヒョン
(72)【発明者】
【氏名】リー インギュ
(72)【発明者】
【氏名】ソク ドンウォン
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AP06
4F213AR07
4F213WA25
4F213WB01
4F213WF21
4F213WL02
4F213WL22
4F213WL32
4F213WL74
(57)【要約】
本発明は、バイオインク供給システムに関し、より詳細には、ヒドロゲル(hydrogel)貯蔵部;細胞貯蔵部;ヒドロゲル貯蔵部及び細胞貯蔵部からヒドロゲルと細胞溶液の供給を受ける混合部;シリンジ内部のバイオインクの水位を測定するセンサー部;及びセンサー部から信号を受けてシリンジ内部のバイオインクの水位を一定に維持させる制御部;を含み、前記混合部は、ヒドロゲルと細胞溶液とを混合して製造したバイオインクをシリンジへ供給するバイオインク供給システムに関する。本発明のバイオインク供給システムは、活性のあるバイオインクを3Dバイオプリンティング中にも連続的にバイオプリンターのシリンジへ供給することができるため、大型(large-sclae)の生体組織や多数のオルガノイド(organoid)、臓器チップ(organ-on-a-chip)などを連続的にプリントすることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロゲル(hydrogel)貯蔵部と、
細胞貯蔵部と、
ヒドロゲル貯蔵部及び細胞貯蔵部からヒドロゲルと細胞溶液の供給を受けて混合させる混合部と、
シリンジ内部のバイオインクの水位を測定するセンサー部と、
センサー部から信号を受けてシリンジ内部のバイオインクの水位を一定に維持させる制御部と、を含み、
前記混合部は、ヒドロゲルと細胞溶液とを混合して製造したバイオインクをシリンジへ供給する、バイオインク供給システム。
【請求項2】
前記ヒドロゲル貯蔵部はpH調節手段を含む、請求項1に記載のバイオインク供給システム。
【請求項3】
前記細胞貯蔵部は攪拌手段を含む、請求項1に記載のバイオインク供給システム。
【請求項4】
前記細胞貯蔵部は5%CO
2、37℃及びpH7~7.5が維持されることを特徴とする、請求項1に記載のバイオインク供給システム。
【請求項5】
前記混合部は混合手段としてインペラー(Impeller)を含む、請求項1に記載のバイオインク供給システム。
【請求項6】
前記センサー部はレーザセンサー又はストレッチセンサーを含む、請求項1に記載のバイオインク供給システム。
【請求項7】
ヒドロゲルをヒドロゲル貯蔵部に保管するステップと、
生きている細胞が含まれた細胞溶液を細胞貯蔵部に保管するステップと、
ヒドロゲル貯蔵部及び細胞貯蔵部からヒドロゲルと細胞溶液を混合部に供給するステップと、
混合部でヒドロゲルと細胞溶液を混合してシリンジへ供給するステップと、
シリンジ内部のバイオインクの水位を一定に維持するステップと、を含む、3Dバイオプリンティング方法。
【請求項8】
前記ヒドロゲルは、アルジネート、フィブリノゲン、カルボキシルメチルセルロース、ヘパラン硫酸、ヒアルロン酸、コラーゲン又はデキストランを含む、請求項7に記載の3Dバイオプリンティング方法。
【請求項9】
ヒドロゲルを保管するステップは、10~15℃及びpH5~6の条件で行われることを特徴とする、請求項7に記載の3Dバイオプリンティング方法。
【請求項10】
細胞溶液を保管するステップは5%CO
2、37℃及びpH7~7.5の条件で行われることを特徴とする、請求項7に記載の3Dバイオプリンティング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオインク供給システムに関し、より詳細には、3Dバイオプリンティング工程中にリアルタイムでヒドロゲルと細胞とを混合して連続的にバイオインクを供給することができるバイオインク供給システム及びそれを用いた3Dバイオプリンティング方法に関する。
【0002】
また、本発明は、3Dプリンターヘッドに関し、より具体的には、高温部ヘッドの断熱性能を改善して低温部ヘッドに結露が発生しない3Dプリンターヘッド及びそれを含む3Dプリンターに関する。
【0003】
さらに、本発明は、バイオクリーンベンチシステムに関し、より詳細には、生物学的に安定な環境で3Dプリンティングを行うことができる3Dプリンティングシステム及びそれを用いた3Dプリンティング方法に関する。
【0004】
本発明は、産業通商資源部が後援する産業技術革新プログラム(産業技術革新プログラム第20000325号)の支援によるものである(This work was supported by the Industrial Technology Innovation Program(No.20000325) funded by the Ministry Of Trade, Industry & Energy(MI, Korea))。
【背景技術】
【0005】
3Dバイオプリンティング技術とは、バイオプリンター、バイオインク、細胞、成長因子などに基づいて、ユーザ所望の形状を造形及び積層して特定の形状を作製することができる技術をいう。
【0006】
この種の3Dバイオプリンティング技術を利用して、疾病の治癒に役立つ様々な研究、例えば、オルガノイド(Organoid)、臓器チップ(Organ-on-a-chip)、動物実験代替のための組織及び臓器類似体などについての研究が盛んに行われている。3Dバイオプリンティング素材であるバイオインクには、増殖及び分化が可能な、生きている細胞や人間の組織のように、長い間特定の形状や構造が維持できるコラーゲン、ゼラチン、アルジネートなどのヒドロゲルが混合された材料が活用されたりもする。しかし、細胞の生存条件とバイオプリンティングのためのヒドロゲルの保管条件が互いに異なるため、細胞とヒドロゲルとを混合して製造した大容量のバイオインクを長時間保管することには限界がある。また、従来のバイオプリンターは、シリンジに少量のバイオインクのみを収容することができるだけであって、大型(large-scale)の人工臓器をプリントしたり、多数のオルガノイド(organoid)、臓器チップ(organ-on-a-chip)などを連続的にプリントしたりすることが難しいという問題点を持っている。
【0007】
一方、3Dプリンティング技術とは、3Dプリンターを介してプリンティング用材料組成物を、予め決められたパターンで積層して3次元構造物を製造する技術をいい、特に、生体適合性のあるプリンティング組成物を用いて生体組織を3Dプリントする技術を3Dバイオプリンティングと定義している。このような3Dバイオプリンティングシステムを用いて、病気の治癒に役立つ様々な研究、例えば、オルガノイド(organoid)、臓器チップ(organ-on-a-chip)、動物実験代替のための組織及び臓器類似体などについての研究が盛んに行われている。3Dバイオプリンティングに用いられるプリンティング組成物としては、ヒドロゲル(hydrogel)、熱可塑性高分子などをベースとし、細胞或いは成長因子(growth factor)などが含まれ得る。
【0008】
このような3Dバイオプリンティングシステムを用いて、オルガノイド(organoid)、臓器チップ(organ-on-a-chip)、動物実験代替のための組織及び臓器類似体などの3D構造物を製造するとき、多くの場合、ヒドロゲルなどの生体適合性のあるプリンティング組成物と熱可塑性高分子組成物を一緒に吐出又はプリントすることができる多重ヘッドを使用する。ヒドロゲル(hydrogel)、熱可塑性高分子などをベースとするプリンティング組成物を用いて3Dプリンティングを行うためには、前記プリンティング組成物が3Dプリンターヘッド内から吐出できるように流動性のある液相(liquid phase)に維持されなければならない。
【0009】
熱可塑性高分子を含むプリンティング組成物は、3Dプリンターのヘッド内で流動性のある液相である半固体状態に維持できるように、吐出或いはプリントする3Dプリンターヘッドの内部で高温に維持されなければならないが、このとき、外部との温度差により3Dプリンターヘッドの表面に外部の空気中の水分が凝縮して結露が発生する。
【0010】
また、ヒドロゲルのような生体適合性のあるプリンティング組成物を用いて3Dプリンティングを行うためには、常温又はそれ以下の低温に維持されれば相変化が起こらず、プリントするのに適した流動性のある液相(liquid phase)を維持することができる。このとき、外部との温度差により、3Dプリンターヘッドの表面に外部の空気中の水分が凝縮して結露が発生することもある。
【0011】
したがって、互いに異なる複数の素材を使用するプリンターのマルチヘッドの場合には、このような使用温度範囲の差異により、3Dプリンターヘッドの表面に外部の空気中の水分が凝縮して結露が生じることがある。このような結露は、周辺の汚染物質を容易に捕集する性質があるため、結露の発生は、クリーンなプリンティング環境が維持されるべき3Dバイオプリンティングにおいて非常に致命的である。また、3Dプリンターヘッドの表面に発生した結露が互いに凝集すると、プリンティング中の印刷物に落ちるという問題が発生する。
【0012】
実際も、
図1に示されているように、互いに異なる温度に維持される3Dプリンターヘッドが(3Dプリンターの内部構造により)隣接するように配置される場合、相対的に高い温度(16℃)に維持されるプリンターヘッドから放出される熱により、相対的に低い温度(4℃)で運転されるプリンターヘッドの外周面に結露が発生する(3Dプリンターが位置するクリーンルームの露点温度は約9℃である)。
【0013】
従来は、このような結露防止のための温度調節のために、3Dプリンターヘッドの背面にファンを装着して3Dプリンターヘッドを冷却させたが、このようにファンを用いて温度調節を行う場合には、3Dプリンターヘッドだけでなく、3Dプリンティング空間全体の温度を変化させるので、結露が依然として発生するという問題があるだけでなく、このような温度調節用ファンの作動により、3Dプリンター装置の周囲の汚染物質がプリンティング中の印刷物に集中するという問題点も発生するおそれがある。
【0014】
前記3Dバイオプリンティングに用いられるバイオプリンティング組成物は、ヒドロゲル(hydrogel)などをベースとして細胞、成長因子(growth factor)などが含まれた3Dプリンティング材料である。バイオプリンティング組成物に含まれた細胞の生存のためには、3Dバイオプリンティング環境が無菌状態に維持され、温度及び湿度も一定に維持されなければならない。一般に、クリーンルーム(clean room)に3Dバイオプリンターを配置することにより、クリーンな3Dバイオプリンティング環境を造成することができるが、これは、費用が多くかかり、特殊認証設備を備えなければならないという問題点がある。また、クリーンルームを介して清浄な空気を供給しても、空気の流れ(気流)によって停滞領域が発生し、このような停滞領域に微粒子などの汚染源が集まり、これによりプリンティング結果物が物理的或いは生物学的に汚染されるという問題点が発生する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、3Dバイオプリンティング中にも活性のあるバイオインクをバイオプリンターのシリンジに連続的に供給することができるバイオインク供給システム及びそれを用いた3Dバイオプリンティング方法を提供しようとする。
【0016】
また、本発明は、熱伝導度が非常に低い高分子素材を用いてプリンティングヘッドにカバーを形成することにより、断熱性能に優れるため、低温で運転される3Dプリンターヘッドの表面に結露が生じない3Dプリンターヘッド、それを含む3Dプリンター、及び3Dプリンティングシステムを提供しようとする。
【0017】
また、本発明は、高価なクリーンルーム(clean room)設備を使用しなくても、生物学的に安定なクリーン環境で駆動装置の作動(例えば、3Dプリンティング等)を行うことにより、汚染されていない安定な結果物を得ることができるバイオクリーンベンチシステム及びその運転方法を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の一実施形態としては、ヒドロゲル(hydrogel)貯蔵部1100;細胞貯蔵部1200;ヒドロゲル貯蔵部1100及び細胞貯蔵部1200からヒドロゲルと細胞溶液の供給を受ける混合部1300;シリンジ1400内部のバイオインクの水位を測定するセンサー部1500;及びセンサー部1500から信号を受けてシリンジ1400内部のバイオインクの水位を一定に維持させる制御部1600;を含み、前記混合部1300は、ヒドロゲルと細胞溶液とを混合して製造したバイオインクをシリンジ1400へ供給する、バイオインク供給システムが挙げられる。
前記ヒドロゲル貯蔵部1100はpH調節手段を含むことができ、前記細胞貯蔵部200は攪拌手段を含むことができる。
また、前記細胞貯蔵部1200は、5%CO2、37℃、及びpH7~7.5が維持されることが好ましい。
【0019】
前記混合部1300は、混合手段1310としてインペラー(Impeller)を含むことができ、前記センサー部1500は、レーザセンサー又はストレッチセンサー1510を含むことができる。
【0020】
一方、本発明の実施形態は、3Dバイオプリンティング方法を含むが、ヒドロゲルをヒドロゲル貯蔵部1100に保管するステップと、生きている細胞が含まれた細胞溶液を細胞貯蔵部1200に保管するステップと、ヒドロゲル貯蔵部1100及び細胞貯蔵部1200からヒドロゲルと細胞溶液を混合部1300に供給するステップと、混合部1300でヒドロゲルと細胞溶液を混合してシリンジ1400に供給するステップと、シリンジ1400内部のバイオインクの水位を一定に維持するステップと、を含む。
【0021】
前記ヒドロゲルは、アルジネート、フィブリノゲン、カルボキシルメチルセルロース、ヘパラン硫酸、ヒアルロン酸、コラーゲン又はデキストランを含むことができる。
【0022】
ヒドロゲルを保管するステップは、10~15℃及びpH5~6の条件で行われることが好ましく、細胞溶液を保管するステップは、5%CO2、37℃及びpH7~7.5の条件で行われることが好ましい。
【0023】
本発明の他の実施形態としては、3Dプリンティングヘッドを挙げることができ、プリンティング組成物1が収容され、下部のノズル部150を介してプリンティング組成物1が吐出されるシリンジ100;前記シリンジ100の外周面に形成されたヒーティングブロック120;及び前記加熱部材を包み込むカバー130;を含み、前記ヒーティングブロック120を介して前記シリンジ100の内部へ熱を伝達し、カバー130によって前記熱の外部放出が遮断されることを特徴とする。
【0024】
前記プリンティング組成物1には熱可塑性高分子が含まれ、前記カバー130は、断熱及び耐熱特性に優れたエンジニアリングプラスチック又はセラミック素材であることが好ましい。
【0025】
また、カバー130は、前記ヒーティングブロック120が収容されるメインカバー131;前記メインカバー131の上端に結合され、前記ヒーティングブロック120の上端を包み込む上部カバー132;及び前記メインカバー131の下端に結合され、前記ヒーティングブロック120の下端を包み込む下部カバー133;を含むプレハブ構造であるか、或いはこれらのそれぞれが一体型からなる一体型構造で形成できる。
【0026】
また、前記カバー130の厚さは1~10mmであり、前記ヒーティングブロック120を加熱するカートリッジヒーターは熱線、熱電対素子或いはペルチェ素子を含むことができる。
【0027】
本発明の他の実施形態としては、前述した3Dプリンターヘッドを高温ヘッド160として含み、ヒドロゲルが収容され、下部のノズル部を介してヒドロゲルが吐出されるシリンジ101を低温ヘッド170として含む、マルチ3Dプリンターヘッドが挙げられる。
【0028】
このような低温ヘッド170を構成するシリンジ101の外周面に吸湿部141がさらに含まれることができるが、前記吸湿部141は、吸収性に優れたウール(wool)又は綿(cotton)素材、或いはシリカゲル、塩化カルシウム又はゼオライトを含むことができる。
【0029】
また、前記吸湿部141は、磁石、面ファスナー又はボルト固定式で前記シリンジ101の外周面に対して着脱可能である。
【0030】
本発明の別の実施形態として、熱可塑性高分子を含むプリンティング組成物1が収容され、下部のノズル部150を介してプリンティング組成物1が吐出されるシリンジ100;前記シリンジ100の外周面に形成されたヒーティングブロック120;及び前記加熱部材を包み込むカバー130;を含み、前記ヒートブロック120を介して前記シリンジ100の内部に熱を伝達し、カバー130によって前記熱の外部放出が遮断されることを特徴とする3Dプリンティング高温ヘッド160と;ヒドロゲルが収容され、下部のノズル部を介して吐出されるシリンジ101、及び前記シリンジ101の外周面に付着する吸湿部141を備える3Dプリンティング低温ヘッド170と;を含む、マルチヘッド3Dプリンターが含まれる。
【0031】
また、本発明は、上述したマルチヘッド3Dプリンターを用いて、生体組織を3Dプリントする3Dバイオプリンティングシステムをさらに含むことができる。
【0032】
本発明の別の実施形態によるクリーンベンチシステムは、ハウジング;前記ハウジングの内部に空気を供給する空気供給ユニット;前記ハウジングの内部に位置する駆動装置;及び前記駆動装置を覆うように形成され、供給される空気の気流を制御する気流ガイド;を含む。
【0033】
前記駆動装置は、機械的作動或いは動きを伴う3Dプリンター、攪拌装置、培養器及び自動ピペット装置よりなる群から選択される少なくとも一つであり、前記気流ガイドをなす複数の面は、供給される空気の気流方向に対して90度以下の角度をなすように形成され、空気供給ユニットから供給される気流の方向を下方に誘導することにより、気流の停滞領域を除去することを特徴とする。
【0034】
前記空気供給ユニットは、空気供給ユニットの下部に形成された空気供給口;及び前記空気供給口に設置されたフィルター;を含むことができ、本発明によるクリーンベンチシステムは、温度又は湿度が調節された空気を前記空気供給ユニットへ供給する温湿度調節部をさらに含むことができる。
【0035】
また、ハウジングは、内部が肉眼で確認できるように透明窓が備えられることができ、前記フィルターは、ヘパフィルター(HEPA Fiter)又はプレフィルター(Pre Filter)が使用できる。
【0036】
前記気流ガイドは、3Dプリンターのステージを覆うステージカバー;或いは3Dプリンターのケーブルを覆うケーブルカバー;をさらに含むことができるが、前記ケーブルカバーは、気流ガイドの前後移動に応じてレール構造を介してスライドできる。
【0037】
本発明の変形例として、クリーンベンチシステムを運転する方法が挙げられるが、温湿度調節部を介して温度及び/又は湿度が調節された空気を空気供給ユニットへ供給する温湿度調節ステップと、前記空気供給ユニットに供給された空気をフィルターで濾過してハウジングの内部へ供給する空気供給ステップと、前記ハウジングの内部に供給された空気をハウジングの下部に形成された通気口を介して排出する空気排出ステップと、を含み、前記ハウジングの内部に位置する駆動装置を覆うように形成された気流ガイドを介して、前記空気供給ユニットによって供給される空気の気流を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0038】
本発明のバイオインク供給システムは、活性のあるバイオインクを3Dバイオプリンティング中にも連続的にバイオプリンターのシリンジへ供給することができるため、大型(large-scale)の生体組織や多数のオルガノイド( organoid)、臓器チップ(organ-on-a-chip)などを連続的にプリントすることができる。
【0039】
また、バイオプリンティング中にもシリンジ内部のバイオインクの水位を一定に維持させることができるため、精密なバイオプリンティングが可能である。
【0040】
本発明によるマルチ3Dプリンターヘッドは、熱伝導度が非常に低く、耐熱性に優れた高分子で形成されたカバーを高温ヘッドに含むことにより、一緒に使用される低温専用3Dプリンターヘッドの表面に結露が発生しないため、クリーンな3Dプリンティング環境を維持することができる。
【0041】
また、本発明のカバーは、3Dプリンターヘッドの内部の熱が外部へ放出されるのを抑制するので、3Dプリンターヘッドの内部温度を一定に維持するための電力消費量を低めることができる。
【0042】
本発明によるクリーンベンチシステムは、高価なクリーンルーム(clean room)設備を使用することなく、無菌状態の環境を提供することができる。
【0043】
本発明のクリーンベンチシステムは、気流ガイドを含むことにより、供給される空気の流れ(気流)を円滑にして、ハウジング内に位置する駆動装置、特に3Dプリンティングシステムに停滞した微粒子(汚染物質)が伝達されて汚染されるのを効果的に防止することができる。
【0044】
また、本発明によるクリーンベンチシステムは、3Dプリンティングシステムを内部に収容し、温度及び湿度調節、及び汚染源の制御が可能であるので、生物学的に安定な環境でバイオ3Dプリンティング工程を安定的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】従来技術によるマルチ3Dプリンターヘッドに結露が発生する例を示す写真である。
【
図2】本発明の一実施例によるマルチ3Dプリンター用高温ヘッド160の斜視図である。
【
図3】本発明の一実施例によるマルチ3Dプリンター用高温ヘッド160の断面図である。
【
図4】本発明の高温ヘッド160に使用されるカバー130の分解図である。
【
図5】本発明の一実施例によるマルチ3Dプリンター用低温ヘッド170の断面図である。
【
図6】本発明の一実施例による3Dプリンターヘッドの断熱性能を測定して示すグラフである。
【
図7】本発明の他の実施例によるクリーンベンチシステムの斜視図である。
【
図8】本発明の他の実施例によるクリーンベンチシステムの内部を示す図である。
【
図9】本発明の他の実施例によるクリーンベンチシステムの内部に収容できる3Dプリンターの斜視図である。
【
図10】本発明の他の実施例によって、3Dプリンターと結合された気流ガイドの斜視図である。
【
図11】本発明の他の実施例による3Dプリンターと結合された気流ガイドの背面図である。
【
図12】本発明の他の実施例による3Dプリンターと結合された気流ガイドの側面図である。
【
図13】本発明の別の実施例によるバイオインク供給システムの概略的な構成を示す概念図である。
【
図14】本発明の別の実施例によるバイオインク供給システムのセンサー部を示す図である。
【
図15】本発明の別の実施例によるバイオインク供給システムが適用された3Dバイオプリンターの斜視図である。
【
図16】本発明の別の実施例によるバイオインク供給システムが適用された3Dバイオプリンターの斜視図である。
【
図17】本発明の別の実施例によるバイオインク供給システムが適用された3Dバイオプリンターの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、本発明の好適な実施例によって詳細に説明する前に、本明細書及び請求の範囲に使用された用語又は単語は、通常又は辞典的な意味に限定して解釈されてはならず、本発明の技術的思想に符合する意味と概念で解釈されるべきであることを明らかにする。
【0047】
本明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」とするとき、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。また、本明細書で記述した「部」とは、特定の機能を行う1つの単位又はブロックを意味する。
【0048】
各ステップは、文脈上明らかに特定の順序を記載しない限り、明示された順序とは異なる方式で実施できる。すなわち、各ステップは、明示された順序と同一に実施されてもよく、実質的に同時に実施されてもよく、逆の順序で実施されてもよい。
以下では、本発明のバイオインク供給システム及びそれを用いた3Dバイオプリンティング方法についてより詳細に説明する。
【0049】
本発明は、3Dプリンターの構成要素のうち、プリンティング組成物が収容及び吐出される3Dプリンターヘッドに関する発明であり、特に、互いに異なる温度範囲で運転されるマルチ3Dプリントヘッドの表面に結露が発生する現象を効果的に防止することができるヘッド構造及びそれを含む3Dプリンター、3Dプリンティングシステムに関する。本発明を説明するにあたり、不要な3Dプリンターのその他の構成要素についての説明は省略する。
【0050】
以下では、本発明の断熱性能が向上して結露を防止することができる3Dプリンターヘッドについてより詳細に説明する。
【0051】
図2は本発明の一実施例による3Dプリンター用高温ヘッド160の斜視図であり、
図3は本発明の一実施例による3Dプリンター用高温ヘッド160の断面図である。
【0052】
図2及び
図3を参照して説明すると、本発明の一実施形態による3Dプリンター用高温ヘッド160は、プリンティング組成物1を吐出するシリンジ100と、前記シリンジ100の外周面に形成されたヒーティングブロック120と、前記ヒーティングブロック120を包み込むように形成されたカバー130と、を含む。
【0053】
本発明の3Dプリンター用高温ヘッド160は、3Dプリンターの駆動装置及び制御装置によって移動しながらプリンティング組成物1を吐出することができる。
【0054】
シリンジ100は、
図3に示されているように、プリンティング組成物1が収容される収容部140と、前記収容部140に収容されたプリンティング組成物1が吐出されるノズル部150と、を含む。
【0055】
前記プリンティング組成物1は、熱可塑性高分子を含むことができ、前記熱可塑性高分子は、特に限定されないが、加熱を介して流体のような流動性を有することができる高分子、例えば、ラクチド(lactide)、カプロラクトン(caprolactone),グリコリド(glycolide)、ジオキサノン(dioxanone)、プロピレン(Propylene)、エチレン(Ethylene)、塩化ビニル(vinylchloride)、ブタジエン(butadiene)、メチルメタクリレート(methyl methacrylate)、アクリル酸、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(2-hydroxyethylmethacrylate)、カーボネート(carbonate)及びポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate)、ABS(acrylonitrile butadiene styrene)、PCL(polycaprolactone)、ASA(acrylonitrile-styrene-acrylate)、SAN(styrene-acrylonitrile copolymer)、PS(polystyrene)、PPSF/PPSU(polyphenylsulfone)、ポリエーテルイミド(polyetherimide)、PLA(polylactic acid)、PDL(poly-d-lysine)などの3Dプリンティングが可能な材料よりなる群から選択された1種以上を含むことができる。
【0056】
このようなプリンティング組成物1がノズル部150を介して吐出されるためには、プリンティング組成物1が流動性のある半固体(semi-solid)状態のような流体状態に維持されなければならないが、このためには、プリンティング組成物1の温度が一定温度以上に維持されなければならない。前記ヒーティングブロック120は、シリンジ100の収容部140に収容されたプリンティング組成物1が流体のような半固体(semi-solid)状態に維持できるように、前記シリンジ100に熱を伝達する役割を果たす。
【0057】
前記ヒーティングブロック120は、シリンジ100に収容されたプリンティング組成物1に熱を均一に伝達することができるように、シリンジ100の外周面に形成されることが好ましく、ヒーティングブロック120は、後面部に取り付けられたカートリッジヒーターによって熱の伝達を受けて加熱され、熱伝導度に優れたアルミニウム素材からなることが好ましく、前記カートリッジヒーターは、熱線、熱電対素子或いはペルチェ素子などが含まれることができる。
【0058】
前記カバー130は、ヒーティングブロック120によって発生した熱が外部へ伝達されるのを遮断することにより、相対的に低温で運転される他の3Dプリンターヘッドに結露が発生することを防止するためのものであり、熱伝導度が非常に低く、同時に高温にも耐える耐熱性に優れた素材を使用することが好ましい。
【0059】
このようなカバー130として使用される素材は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK、Polyetherether ketone)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE、Polytetrafluoroethylene)、ポリイミド(PI、Polyimide)、ポリフェニレンスルフィド(PPS、polyphenylen sulfide)、ポリエーテルスルホン(PES、polyethersulfone)などの耐熱エンジニアリングプラスチック又はセラミックなどよりなる群から選択される1種以上を含むことができ、好ましくは、ポリエーテルエーテルケトン(polyetherether ketone)であり得る。
【0060】
ポリエーテルエーテルケトン(PEEK、Polyetherether ketone)は、耐熱性と加工性に優れるうえ、熱伝導度が約0.25W/mkと非常に低いため、ヒーティングブロック120により発生した熱が外部へ伝達されることを防止するのに適する。
【0061】
前記カバー130は、
図4に示すように、前記ヒーティングブロック120が収容されるメインカバー131と、前記メインカバー131の上端に結合され、前記ヒーティングブロック120の上端を包み込む上部カバー132と、前記メインカバー131の下端に結合され、前記ヒーティングブロック120の下端を包み込む下部カバー133と、を含むことができる。このように、カバー130が分離型に形成されることにより、カバー130の加工を容易にし、且つ加工コストを下げることができる。
また、前記カバー130を構成するメインカバー131、上部カバー132及び下部カバー133が一体型に形成されることも可能である。
【0062】
分離型カバー130の場合、上部カバー132は、上部カバー132の外側に形成された第1結合孔134、及び上部カバー132の中心に形成され、前記シリンジ100が貫通しうる第1貫通孔135を含むことができる。メインカバー131と上部カバー132とは、前記第1結合孔134を介して螺合などで結合されるか、或いは高温で使用可能なエポキシ樹脂などの接着剤を介して結合されることができる。また、下部カバー133は、前記下部カバー133の外側に形成された第2結合孔136、及び前記下部カバー133の中心に形成され、前記シリンジ100が貫通しうる第2貫通ホール137を含むことができる。メインカバー131と下部カバー133も、上部カバー132と同様に前記第2結合孔136を介して螺合などで結合されるか、或いは高温で使用可能な樹脂などの接着剤を介して結合されることができる。このとき、螺合が使用される場合、使用されるねじは、断熱効果を極大化するために、カバー130と同じ素材で製作されたねじを使用することが好ましい。
【0063】
前記カバー130の厚さは、特に限定されないが、好ましくは1~10mmの範囲で使用でき、少なくとも1mmよりも大きいほど断熱性能の側面で有利であるが、ヘッドの精巧な動きを考慮するとき、10mmを超える場合には、印刷物の精度を阻害することができる。
【0064】
また、前記カバー130は、
図3に示すように、前記下部カバー133から延びて前記ヒーティングブロック120とノズル部150との間に形成されたノズルカバー138をさらに含むことができるが、前記ノズルカバー138は、ノズル部150の熱が外部へ伝達されるのを遮断してノズル部150の内部の温度を一定に維持させ、ノズル部150に結露が発生することを防止することができる。
【0065】
カバー130を構成する、メインカバー131、上部カバー132、下部カバー133及びノズルカバー138は、必要に応じて、保温効果に優れた空気層を活用することができるように中空構造体の形態で構成できる。
【0066】
また、本発明のマルチ3Dプリンターヘッドは、このような高温ヘッド160と共に、
図5に提示された低温ヘッド170を含むことができる。このような3Dプリンティング用低温ヘッド170は、
図5に示すように、ヒドロゲルが収容され、下部のノズル部から吐出されるシリンジ101を含み、さらにヘッドの表面に発生する結露を吸収することが可能な吸湿部141をさらに含むことができる。
【0067】
前記ヒドロゲル(hyrogel)は、アルジネート(alginate)、フィブリノゲン(fibrinogen)、カルボキシメチルセルロース(carboxymethyl cellulose)、ヘパラン硫酸(heparan sulfate)、ヒアルロン酸(hyaluronic acid)、コラーゲン(collagen)及びデキストラン(dextran)よりなる群から選択される1種以上を含むことができる。
【0068】
前記吸湿部141は、吸湿性物質を低温ヘッド130のシリンジ101の外面にコーティングするか、或いは着脱可能な形態で形成でき、水分が凝縮して形成された結露を吸収して3Dプリンティング中の印刷物に結露が落ちることを防止する。
【0069】
前記吸湿部141に含まれる吸湿性物質としては、シリカゲル(slica gel)、塩化カルシウム(CaCl2)、ゼオライト(zeolite)等が使用されるか、或いは吸収性に優れたウール(wool)又は綿(cotton)素材などが使用されることができ、このような吸湿部141がシリンジ101の外周部に着脱可能な形態で結合される場合には、磁石、面ファスナー又はボルト固定式で前記シリンジ101の外周面に付着することが好ましいが、複数の吸湿部141をシリンジ101の外周面に付着させることも可能である。
【0070】
本発明によるマルチ3Dプリンターヘッドは、高温ヘッド160と低温ヘッド170を同時に含むことができ、このようなマルチヘッド構造を有する3Dプリンター及び3Dプリンティングシステムに効果的に適用でき、それぞれのヘッドの温度差による結露の発生を効果的に防止し、3Dプリンティング構造物の汚染を最小限に抑えることができるため、生体組織を3Dプリントするバイオ3Dプリンティングシステムにさらに有用である。
【0071】
[実施例]
プリンティング組成物を吐出するシリンジの外周面にヒーティングブロックを形成した後、ポリエーテルエーテルケトン( polyetherether ketone)で前記ヒーティングブロックを包み込むようにカバーを3mmの厚さに形成して3Dプリンター用高温ヘッドを構成した。
【0072】
[比較例]
プリンティング組成物を吐出するシリンジの外周面にヒーティングブロックを形成した後、別途のカバーが備えられていない3Dプリンター用高温ヘッドを製造した。
【0073】
[実験例1:断熱性能の測定]
本発明の3Dプリンターヘッドの断熱性能を測定するために、実施例及び比較例のヒーティングブロックの温度を100℃に設定した後、1時間の間、実施例のカバーの表面温度及び比較例のヒーティングブロックの表面温度を測定して、その結果を
図6に示す。
【0074】
図6の結果を参照すると、比較例の場合には、初期23.8℃から10分間103.9℃まで上昇した後、この温度が一定に維持された。これに対し、実施例の場合には、初期24.7℃から10分間81.9℃まで上昇した後、この温度が一定に維持されることからみて、カバーを含む実施例の場合、約20℃の断熱効果があることを確認することができた。
【0075】
図7は本発明の別の実施例によるクリーンベンチシステムの斜視図であり、
図8は本発明の一実施例によるクリーンベンチシステムの内部を例示として示す図である。
【0076】
図7及び
図8を参照して説明すると、本発明のクリーンベンチシステムは、ハウジング310と、前記ハウジング310の上部に形成され、ハウジング310の内部に空気を供給する空気供給ユニット320と、前記ハウジング310の内部に備えられる駆動装置である3Dプリンター330と、前記3Dプリンター330を覆うように形成された気流ガイド340と、前記ハウジング310の下部に形成された通気口313と、を含む。
【0077】
前記ハウジング310は、クリーンベンチ内にクリーンエリアを提供するためのもので、内部に3Dプリンター330などの駆動装置が収容できる。駆動装置の例として3Dプリンターを挙げて説明したが、クリーンベンチ内へ機械的な動きのある全ての駆動機械装置が特別な制限なく含まれることができるが、3Dプリンター、自動ピペット装置、攪拌機、培養器などの各種実験装置が含まれ、さらに好ましくは、精密に印刷結果物の形態及び構造を制御することができる3Dプリンターが含まれることができる。
【0078】
このようなハウジング310は、スチール(steel)、ステンレススチール(stainless steel)、アルミニウム(aluminum)、チタン(titanium)などの様々な金属材料で形成でき、ハウジング310の形状は、このような駆動装置を取り囲むことができる形状であれば特に限定されない。例えば、前記ハウジング310の形状は、円柱、立方体又は直方体などであってもよい。
【0079】
前記ハウジング310には、内部を肉眼で確認することができる透明窓311が形成できるが、このような透明窓311を介して、ハウジング310の内部に設置される駆動装置である3Dプリンター330を確認するか、或いは駆動装置である3Dプリンター330の動作状態などを確認することができる。前記透明窓311は、透明な材質であるガラス或いはプラスチックなどの材質で形成できる。
【0080】
空気供給ユニット320は、ハウジング310の内部へ空気を供給するためのもので、前記ハウジング310の上部に形成され、前記空気供給ユニット320を介して供給された空気は、ハウジング310の下部に形成された通気口313を介してハウジング310の外部へ排出される。このような方式で、本発明のクリーンベンチシステムは、駆動装置である3Dプリンター330を横切るように空気の流れを一方向(すなわち、ハウジングの上方から下方向の垂直方向に)に誘導することができる。
【0081】
前記空気供給ユニット320は、ハウジング310の外部の空気を吸入する吸入口325と、前記吸入口325から吸入された空気をハウジング310の内部へ供給する供給口321と、前記供給口321に設置されたフィルター323と、を含む。
【0082】
前記フィルター323としては、ヘパフィルター(High Efficiency Particulate Air filter、HEPA Filter)又はプレフィルター(Pre Filter)が使用でき、好ましくは、95~99.9%の効率を有するクラスEU10のヘパフィルター(HEPA Filter)、さらに好ましくは、99.999995%の効率を有するクラスU17のヘパフィルターであり得る。このようなフィルター323を介してハウジング310の外部の空気を濾過してハウジング310の内部へ供給することにより、ハウジング310の内部の環境を清浄に維持させることができる。
【0083】
代表的な駆動装置である3Dプリンター330は、クリーン環境が維持される空間であるハウジング310の内部に備えられることができるが、このような駆動装置は、ハウジング310と一体に形成されるか或いは着脱可能に別途形成されることができる。
【0084】
前記3Dプリンター300は、
図9に示すように、プリンティング組成物1を吐出するプリンターヘッド3と、吐出されたプリンティング組成物1が積層される支持板200と、前記プリンターヘッド3を移動させるヘッド移動ユニット4と、前記ヘッド移動ユニット4の移動をガイドするステージ5と、を含むことができる。
【0085】
前記プリンターヘッド3は、ヘッド移動ユニット4によってステージ5に沿って移動しながらプリンティング組成物1を吐出して3次元構造物をプリントする。このとき、空気圧によってプリンターヘッド3から支持板200へプリンティング組成物1が吐出されることができ、吐出されるプリンティング組成物1の吐出量及び吐出速度は、プリンティング組成物1の濃度、プリンターヘッド3のノズルの直径に応じて空気圧を適切に制御することにより調節できる。
【0086】
前記プリンティング組成物1は、熱可塑性高分子、ヒドロゲル又はこれらの混合物を含むことができ、必要に応じては、前記熱可塑性高分子又はヒドロゲルに細胞がさらに含まれることができる。
【0087】
前記熱可塑性高分子は、特に限定されないが、例えば、ラクチド(lactide)、カプロラクトン(caprolactone)、グリコリド(glycolide)、ジオキサノン(dioxanone)、プロピレン(Propylene)、エチレン(Ethylene)、塩化ビニル(vinylchloride)、ブタジエン(butadiene)、メチルメタクリレート(methyl methacrylate)、アクリル酸、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(2-hydroxyethylmethacrylate)、カーボネート(carbonate)及びポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate)よりなる群から選択された1種以上を含むことができる。
【0088】
前記ヒドロゲル(hyrogel)は、アルジネート(alginate)、フィブリノゲン(fibrinogen)、カルボキシメチルセルロース(carboxymethyl cellulose)、ヘパラン硫酸(heparan sulfate)、ヒアルロン酸(hyaluronic acid)、コラーゲン(collagen)、及びデキストラン(dextran)よりなる群から選択されるいずれか1種を含むことができる。
【0089】
図10は本発明の別の実施例による3Dプリンター330と結合された気流ガイド340の斜視図であり、
図11は本発明の別の実施例による3Dプリンター330と結合された気流ガイドの背面図である。
【0090】
図10及び
図11を参照して説明すると、気流ガイド340は、3Dプリンター330により発生するハウジング310内の空気の逆流を防止するだけでなく、空気供給ユニット320を介して駆動装置としての3Dプリンター330の外部へ供給される空気の流れである空気流を制御するためのものであり、3Dプリンター330を覆う構造で形成されることが好ましい。
【0091】
具体的には、前記気流ガイド340は、3Dプリンター330のプリンターヘッド3及びヘッド移動ユニット4を覆うことができるように形成され、必要に応じて、3Dプリンター330のステージ5を覆うステージカバー343、或いは3Dプリンター330のケーブルを覆うケーブルカバー345をさらに含むことができる。このとき、前記ケーブルカバー345は、気流ガイド340の前後移動に応じてレール構造等を介してスライドされるように形成されることも可能である(
図11参照)。
【0092】
図12に示すように、気流ガイド340を構成する面が気流の流入方向に対して90度以下の角度をなすように形成できるが、それぞれの面と気流とがなす角度(例えばP1、P2、P3、P4を図面に示したが、これらのみに限定されるものではない)が下方向に90°以下の角度で形成されることが好ましい。
【0093】
さらに好ましくは、前記気流ガイド340を構成する面が水平面ではなく、傾斜面のみで構成され、気流とそれぞれの傾斜面とがなす角度(
図12のP1、P2、P3)が90°以下の角度で形成されることがよく、さらに好ましくは、気流と傾斜面が90°未満の角度を持つように形成されることがよい。気流ガイド340の構造、形態及び大きさを考慮すると、これらの角度が約40~45°の範囲に設定されることができる。
【0094】
このような構造で気流ガイド340が形成されることにより、空気供給ユニット320を介してハウジング310の上部から供給される空気の流れである気流は、ハウジング310の下部に形成された通気口313の方向に効果的に誘導されることができ、ハウジング310内の微粒子が一定の領域で停滞して停滞領域が形成されるのが効果的に防止されることができる。
【0095】
以上のように、気流ガイド340が駆動装置としての3Dプリンターを包み込む構造と形態を中心に説明したが、駆動装置がこのような3Dプリンターのみに限定されるのではないことを明らかにしておき、このような気流ガイド340は、クリーンベンチ内で固定されて駆動装置を包み込むことができ、必要に応じて気流ガイド340がレールなどの補助手段によって移動することも可能である。
【0096】
ハウジング310の内部には別途のUV光源が備えられることができる。紫外線は、殺菌能力があるため、ハウジング310の内部に別途のUV光源が備えられ、3Dプリンターを包み込む気流ガイド340の外部領域に紫外線が照射されることにより、無菌環境で駆動装置の作動(例えば、3Dプリンティング工程)が行われることができる。このようなUV光源は、ハウジング310の内部全体領域に紫外線が均一に照射できるように、空気供給ユニット320の下端に形成されることが好ましい。
【0097】
また、本発明のクリーンベンチシステムは、
図8に示されているように、温度又は湿度が調節された空気を前記空気供給ユニット320へ供給する温湿度調節部350をさらに含むことができる。このような温湿度調節部350は、空気が流入する流入口353、及び空気が排出される排出口355を有するケース351と;前記ケース351の内部に備えられ、ケース351の内部の空気を冷却或いは加熱する温度調節手段と;前記ケース351の内部に備えられ、ケース351の内部を除湿又は加湿する湿度調節手段と;を含む。
【0098】
前記流入口353は、ハウジング310の通気口313に連結され、ハウジング310から排出される空気が温湿度調節部350に流入し、前記排出口355は、空気供給ユニット320の吸入口325に連結され、温度及び湿度が調節された空気がハウジング310の内部へ供給されることが好ましい。
【0099】
このように温度及び湿度が一定に調節された空気をハウジング310内に持続的に循環させることにより、ハウジング310の内部の温度及び湿度を一定に維持させることができる。
【0100】
一方、本発明の他の実施例によるクリーンベンチ運転方法は、前述したクリーンベンチを使用する方法に関するものであり、温湿度調節部350を介して温度及び湿度が調節された空気を空気供給ユニット320へ供給する温湿度調節ステップと、前記空気供給ユニット320に供給された空気をフィルター323で濾過してハウジング310の内部へ供給する空気供給ステップと、前記ハウジング310の内部に供給された空気を、ハウジング310の下部に形成された通気口313を介して排出する空気排出ステップと、を含み、前記ハウジング310の内部に位置する駆動装置を覆うように形成された気流ガイド340を介して、前記空気供給ユニット320によって供給される空気の気流を制御する。
【0101】
このような空気気流の制御方式と原理は、既に前述したので、そのついての詳細な説明は省略する。
【0102】
前記温湿度調節ステップは、ケース351の内部に備えられた温度調節手段及び湿度調節手段を用いてケース351の内部空気の温度及び湿度を調節した後、温度及び湿度が調節された空気を排出口355を介して空気供給ユニット320の吸入口325へ排出して空気供給ユニット320へ供給する。
【0103】
空気供給ユニット320に供給された空気は、空気供給口321に設置されたフィルター323を介して濾過され、ハウジング310の内部へ供給されることにより、前記空気供給ステップが行われる。前記フィルター323は、ヘパフィルター(High Efficiency Particulate Air filter、HEPA Filter)或いはプレフィルター(Pre Filter)、好ましくは、95~99.9%の効率を有するクラスEU10のヘパフィルター(HEPA Filter)、さらに好ましくは、99.999995%の効率を有するクラスU17のヘパフィルターであり得る。
【0104】
前記空気供給ステップを介して、ハウジング310の内部は、温度及び湿度が調節されたクリーンな空気で充填され、生物学的に安定かつクリーンな環境を提供する。
【0105】
このようにクリーンな環境が備えられたハウジング310の内部に駆動装置として3Dプリンターが備えられる場合には、ハウジング310の内部に備えられた3Dプリンター330のプリンターヘッド3を介してプリンティング組成物1を吐出する吐出ステップが行われることができる。プリンターヘッド3から吐出されたプリンティング組成物1は、支持板200に積層されて3次元構造物を形成する。
【0106】
このとき、3Dプリンター330は、前記3Dプリンター330を覆うように形成される気流ガイド340と結合されることが好ましい。3Dプリンター330と気流ガイド340とが結合されることにより、空気供給ユニット320を介してハウジング310の上部へ供給される空気の流れを、ハウジング310の下部に形成された通気口313の方向に円滑にして、ハウジング310の内部の微粒子が一定領域に停滞する停滞区域が形成されることを防止する。
【0107】
前記プリンティング組成物1は、熱可塑性高分子、ヒドロゲル又はこれらの混合物を含むことができ、必要に応じては、前記熱可塑性高分子又はヒドロゲルに細胞を添加することもできる。
【0108】
前記熱可塑性高分子としては、特に限定されないが、例えば、ラクチド(lactide)、カプロラクトン(caprolactone)、グリコリド(glycolide)、ジオキサノン(dioxanone)、プロピレン(Propylene)、エチレン(Ethylene)、塩化ビニル(vinylchloride)、ブタジエン(butadiene)、メチルメタクリレート(methyl methacrylate)、アクリル酸、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(2-hydroxyethylmethacrylate)、カーボネート(carbonate)及びポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate)よりなる群から選択された1種以上を含むことができ、前記ヒドロゲル(hyrogel)としては、アルジネート(alginate)、フィブリノゲン(fibrinogen)、カルボキシメチルセルロース(carboxymethyl cellulose)、ヘパラン硫酸(heparan sulfate)、ヒアルロン酸(hyaluronic acid)、コラーゲン(collagen)、及びデキストラン(dextran)よりなる群から選択される1種以上を含むことができる。
【0109】
このように高分子、ヒドロゲル又はこれらの混合物をプリンティング組成物1として用いて3Dプリンター330を介してバイオ3Dプリンティング工程が行われる場合、本発明によるクリーンベンチシステムは、物理化学的汚染源だけでなく、生物学的汚染源を効果的に除去することができるため、さらに有用であり得る。
【0110】
前記空気排出ステップは、ハウジング310の内部に供給された空気が、ハウジング310の下部に形成された通気口313を介して排出されるステップであり、通気口313は温度調節部350の流入口353に連結され、排出された空気は温度調節部350に流入することが好ましい。
【0111】
本発明の別の実施形態によるバイオインク供給システムを
図13を参照して説明すると、ヒドロゲル貯蔵部1100と、細胞貯蔵部1200と、ヒドロゲル貯蔵部1100及び細胞貯蔵部1200からヒドロゲルと細胞の供給を受ける混合部1300と、シリンジ1400内のバイオインクの水位を測定するセンサー部1500と、センサー部1500から信号を受けてシリンジ1400内のバイオインクの水位を一定に維持させる制御部1600と、を含むことができる。
【0112】
ヒドロゲル貯蔵部100は、物性の変化なしにヒドロゲルを保管するためのものであり、外部と遮断された構造であることが好ましい。前記ヒドロゲルは、アルジネート、フィブリノゲン、カルボキシメチルセルロース、ヘパラン硫酸、ヒアルロン酸、コラーゲン、デキストランなどの天然高分子物質を含むことができるが、これらに限定されない。コラーゲン又はアルジネートをはじめとするヒドロゲルは、水分含有量が高く、生体適合性に優れるため、バイオインクとしての使用に適する。
【0113】
物性の変化なしにヒドロゲルを保管するために、ヒドロゲル貯蔵部1100は、温度調節手段及びpH調節手段を含むことができる。温度調節手段は、輻射加熱器、対流加熱器、伝導性加熱器などの加熱部材と、輻射冷却器、対流冷却器、ファン冷却器などの冷却部材とで構成でき、ヒドロゲル貯蔵部1100の内部をヒドロゲルのゲル化が発生しない温度に維持させることができる。具体的には、ヒドロゲルがコラーゲンである場合、温度調節手段を介して、ヒドロゲル貯蔵部1100の内部を15℃以下の温度に維持させることが好ましい。
【0114】
また、ヒドロゲル貯蔵部100のpH調節手段は、ヒドロゲル貯蔵部1100の内部に備えられたpH変化を感知するpHセンサー、及び該センサーから信号を受けて塩基性溶液をヒドロゲル(hydrogel)貯蔵部1100の内部に注入する自動注入器で構成できる。pHセンサーは、ヒドロゲル貯蔵部1100に保管されているヒドロゲルのpHを測定し、pHの変化に応じて塩基性溶液の注入量を決定して自動注入器へ信号を送って適量の塩基性溶液を注入することにより、ヒドロゲル貯蔵部1100内のpHを、ヒドロゲルのゲル化が起こらないpH範囲に維持させることができる。
【0115】
このようなヒドロゲル貯留部1100は、混合部1300と管を介して連結されており、ヒドロゲル貯蔵部1100に保管されたヒドロゲルは、ポンプなどを介して混合部1300へ供給される。
【0116】
細胞貯蔵部1200は、生きている細胞が含まれた細胞溶液を保管するためのものであり、外部と遮断された構造であることが好ましい。細胞生存のための条件とヒドロゲルのゲル化が起こらない条件とが異なるので、生きている細胞が含まれた細胞溶液を長時間保管するためには、細胞溶液はヒドロゲルとは別に保管されなければならない。
【0117】
生きている細胞が含まれた細胞溶液を保管するために、細胞貯蔵部1200は、細胞貯蔵部1200内部の温度、pH及びCO2濃度を一定に維持させる調節器を含むことができる。このような調節器は、一般に使用される細胞培養用インキュベーターの調節器であり得るが、これに限定されるものではない。
【0118】
細胞貯蔵部1200の内部は、細胞生存のために温度、pH及びCO2濃度が一定条件に維持されることができ、具体的には37℃、pH7~7.5及び5%CO2の条件に維持されることが好ましい。
【0119】
このような細胞貯蔵部1200は、混合部300と管を介して連結されており、細胞貯蔵部1200に保管された細胞溶液は、ポンプ等を介して混合部1300へ供給される。
【0120】
細胞貯蔵部1200内で細胞が沈殿する現象を防止するために、細胞貯蔵部1200は、攪拌手段を含むことができる。このような攪拌手段としては、磁気撹拌機(Magnetic Stirrer)又はスクリュータイプのインペラー(Impeller)を使用することができる。このように攪拌手段を使用する場合には、細胞が沈殿することを防止し、細胞溶液内の細胞の濃度を均一に維持することができるため、一定の細胞濃度を有する細胞溶液を混合部1300へ供給することができる。
前記細胞は、バイオプリンティングしようとする人工組織の種類に応じて幹細胞、線維芽細胞、肝細胞などの多様な細胞であり得る。
【0121】
混合部1300は、ヒドロゲル貯蔵部1100及び細胞貯蔵部1200からそれぞれヒドロゲルと細胞溶液の供給を受けて混合させるためのものであり、混合手段1310を含むことができる。ヒドロゲルと細胞溶液とが混合されてバイオインクが製造され、前記バイオインクはシリンジ1400へ供給される。混合手段1310は、相対的に高粘度のヒドロゲルと低粘度の細胞溶液とを均一に混合させることができる混合手段1310であることが好ましい。
【0122】
本発明の一実施例による混合手段1310としては、別途の動力によって回転するインペラー(Impeller)を使用することができる。別途の動力としてはモーターなどが使用でき、モーターが混合部1300の内部のインペラー(Impeller)と連動してモーターによってインペラーが強く回転することにより、ヒドロゲルと細胞溶液とを効果的に混合させることができる。
【0123】
また、本発明の他の実施例による混合手段としては、磁気撹拌機(Magnetic Stirrer)を使用することができる。混合部1300内の攪拌機を、混合部の外部に配置された磁石を介して回転させ、ヒドロゲルと細胞溶液とを混合させる。磁気撹拌機を用いる場合には、混合部1300内部のヒドロゲルと細胞溶液とを機械的な接触なしに混合することができるため、ヒドロゲルと細胞溶液の変性を防止することができるという利点がある。
【0124】
このような混合部1300は、シリンジ1400と管を介して連結されており、混合部1300で混合されて製造されたバイオインクは、ポンプ1320などを介してシリンジ1400へ供給される。
【0125】
本発明の一実施例によるバイオインク供給システムは、シリンジ1400内のバイオインクの水位を測定するセンサー部1500、及び該センサー部1500から信号を受けてシリンジ1400内部のバイオインクの水位を一定に維持させる制御部1600を含むことができる。
【0126】
センサー部1500は、シリンジ1400に供給されたバイオインクの水位を測定し、測定値を制御部1500へ送信する。制御部1500は、設定された基準値と測定値とを対比して、バイオインクをシリンジ1400へ供給するポンプ1320を作動又は停止させることにより、シリンジ1400内部のバイオインクの水位を一定に維持する。具体的には、制御部1600は、測定値が基準値以下である場合には、シリンジ1400からバイオインクが吐出されるのと同時にポンプ1320を作動させてバイオインクを供給するか、或いはシリンジ1400からバイオインクが吐出されることを停止させ、ポンプ1320を作動させてバイオインクを供給する。また、制御部1600は、測定値が基準値以上である場合、ポンプ1320を停止させてバイオインクの供給を中断することにより、シリンジ1400内部のバイオインクの水位を一定に維持させる。
【0127】
シリンジ1400内部のバイオインクの水位を一定に維持する場合、バイオプリンティングを行う過程で、シリンジ1400を介して吐出されるバイオインクの量を一定に維持することができるため、精密なバイオプリンティングを行うことができるという利点がある。
【0128】
センサー部1500は、
図13に示されているようなレーザセンサー、又は
図14に示されているようなストレッチセンサー(stretch sesnsor)を含むことができる。
【0129】
ストレッチセンサー1510は、フレキシブル(flexible)な伝導性ゴム材質で長さの伸縮に応じて電気抵抗値が変わるセンサーであり、
図14に示すように、ストレッチセンサー1510の両端は、シリンジ1400の内側上端に形成されたセンサーケーブル1520と連結されることができる。前記ストレッチセンサー1510にはキャップ1530が連結されており、シリンジ1400内のバイオインクの水位に応じてキャップ1530が上昇又は下降することで、ストレッチセンサー1510を伸縮させて変化する電気抵抗値を介してシリンジ1400内部のバイオインクの水位を測定することができる。
【0130】
このようにストレッチセンサー1510を使用する場合には、キャップ1530を介して空気圧集中現象を防止することができ、ストレッチセンサー1510がバイオインクに接触しないため、バイオインクの物性が変わるのを防止することができるという利点がある。
【0131】
本発明の一実施例によるバイオインク供給システムは、
図15に示すように、シリンジ1401、1402、1403を介してバイオインクを支持台1710上に吐出する出力方式の3Dバイオプリンター1700に適用できる。ヒドロゲル貯蔵部1100、細胞貯蔵部1200及び混合部1300がヘッド移動ユニット1720に形成され、1つの混合部300からそれぞれのシリンジ401、402、403にバイオインクが供給されることができる。
【0132】
図16は本発明の他の実施例によるバイオインク供給システムを適用した3Dバイオプリンター1701の斜視図である。
図16を参照して説明すると、シリンジ1401、1402、1403ごとに、それぞれのヒドロゲル貯蔵部1101、1102、1103、細胞貯蔵部1201、1202、1203及び混合部1301、1302、1303がヘッド移動ユニット1720に形成されることができる。このような実施例の場合、それぞれのシリンジ1401、1402、1403ごとに異なる種類のバイオインクを供給することができるという利点がある。
【0133】
図17は本発明の別の実施例によるバイオインク供給システムを適用した3Dバイオプリンターの斜視図であり、ヒドロゲル貯蔵部1104、1105、1106及び細胞貯蔵部1204、1205、1206が、ヘッド移動ユニット1720とは別途に形成できる。それぞれの混合部1304、1305、1306は、別途に形成されたヒドロゲル貯蔵部1104、1105、1106及び細胞貯蔵部1204、1205、1206からヒドロゲルと細胞溶液の供給を受けることができる。このように、ヒドロゲル貯蔵部1104、1105、1106及び細胞貯蔵部1204、1205、1206がヘッド移動ユニット1720とは別に形成された実施例の場合、ヒドロゲル貯蔵部1104、1105、1106及び細胞貯蔵部1204、1205、1206の容量を大きく形成することができるため、より多量のバイオインクをシリンジ1401、1402、1403に連続的に供給することができるという利点がある。
【0134】
本発明の別の実施形態として、前述したバイオインク供給システムを用いた3Dバイオプリンティング方法が挙げられるが、本発明による3Dバイオプリンティング方法は、ヒドロゲルをヒドロゲル(hydrogel)貯蔵部1100に保管するステップと、細胞溶液を細胞貯蔵部1200に保管するステップと、ヒドロゲル貯蔵部1100及び細胞貯蔵部1200からヒドロゲルと細胞溶液を混合部1300に供給するステップと、混合部1300でヒドロゲルと細胞溶液とを混合してシリンジ1400へ供給するステップと、シリンジ1400内のバイオインクの水位を一定に維持するステップと、を含む。
【0135】
ヒドロゲルをヒドロゲル貯蔵部1100に保管するステップのヒドロゲルは、アルジネート、フィブリノゲン、カルボキシルメチルセルロース、ヘパラン硫酸、ヒアルロン酸、コラーゲン、デキストランなどの天然高分子物質を含むことができるが、必ずしもこれに限定されない。
【0136】
ヒドロゲルがコラーゲンである場合、ヒドロゲルをヒドロゲル貯蔵部1100に保管するステップは、10~15℃、pH5~6の条件で行われることが好ましい。上記の条件を外れる場合、コラーゲンのゲル化が起こり、3Dバイオプリンティングに使用できなくなる。
【0137】
細胞溶液を細胞貯蔵部1200に保管するステップは、細胞溶液に含まれた細胞が生存し得るように5%CO2、37℃及びpH7~7.5の条件で行われることが好ましい。
【0138】
また、細胞溶液を細胞貯蔵部1200に保管するステップは、細胞が沈殿する現象を防止するために、細胞溶液を攪拌するステップを含むことができる。細胞溶液を撹拌するための手段としては、磁気撹拌機(Magnetic Stirrer)又はスクリュータイプのインペラー(Impeller)が使用できる。
【0139】
混合部1300でヒドロゲルと細胞溶液とを混合してシリンジ1400へ供給するステップでは、ヒドロゲルと細胞溶液とが混合されてバイオインクが製造され、前記バイオインクは、シリンジ1400へ供給される。混合手段1310としては、前述したインペラー(Impeller)又は磁気撹拌機(Magnetic Stirrer)が使用できる。
【0140】
シリンジ1400内部のバイオインクの水位を一定に維持するステップは、センサー部1500を介してバイオインクの水位を測定し、測定値に応じて混合部1300からシリンジ400へ供給されるバイオインクの量を調節することにより行われることができる。前記センサー部1500としては、前述したレーザセンサー又はストレッチセンサーなどが使用できるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0141】
センサー部1500を介して測定された測定値が基準値以下である場合には、シリンジ1400からバイオインクが吐出されるのと同時にバイオインクを供給するか、或いはシリンジ1400からバイオインクが吐出されることを停止させてバイオインクを供給し、測定値が基準値以上である場合には、バイオインクの供給を中断することにより、シリンジ400内部のバイオインクの水位を一定に維持することができる。
【0142】
実験例2:バイオインクの水位によるプリンティング結果物の測定
空気圧やシリンジの移動速度などの条件を同一にして3Dバイオプリンティングを行うが、シリンジ内のバイオインクの水位のみを異にして、シリンジから吐出されたバイオインクの吐出量を測定し、その結果値を表1に示した。
【0143】
【0144】
表1の結果から確認されるように、シリンジ内のバイオインクの水位が0.5mlである場合は、バイオインクの水位が2.0mlである場合に比べて約17%さらに多い量が吐出される。これは、シリンジ内のバイオインクの水位に応じて、バイオプリンティングの際にシリンジを介して吐出されるバイオインクの量が変わることを意味する。これにより、精密なバイオプリンティングのためには、シリンジ内のバイオインクの水位が一定に維持されなければならないことが分かる。
【0145】
以上、本発明の詳細な説明では具体的な実施例について説明したが、本発明の範囲から逸脱することなく様々な変形が可能であり、それぞれの実施例が有機的に多様な組み合わせで結合されて実施され得るのは、本発明の属する分野における通常の知識を有する者にとって自明であろう。
【産業上の利用可能性】
【0146】
本発明は、3Dバイオプリンティング中にも活性のあるバイオインクをバイオプリンターのシリンジに連続的に供給することができるバイオインク供給システム及びそれを用いた3Dバイオプリンティング方法を提供するためのものであり、活性のあるバイオインクを連続的にバイオプリンターのシリンジへ供給することができるため、大型(large-scale)の生体組織や多数のオルガノイド(organoid)、臓器チップ(organ-on-a-chip)などを連続的にプリントすることができ、かつ、バイオプリンティング中にもシリンジ内部のバイオインクの水位を一定に維持させることができるため、精密なバイオプリンティングが可能であるという利点があるので、産業上利用可能性が存在する。
【符号の説明】
【0147】
1 プリンティング組成物
3 ヘッド
4 ヘッド移動ユニット
5 ステージ
100 シリンジ
120 ヒーティングブロック
130 カバー
131 メインカバー
132 上部カバー
133 下部カバー
134 第1結合孔
135 第1貫通孔
136 第2結合孔
137 第2貫通孔
138 ノズルカバー
140 収容部
141 吸湿部
150 ノズル部
160 高温ヘッド
170 低温ヘッド
180 複合ヘッド
310 ハウジング
311 透明窓
313 通気口
320 空気供給ユニット
321 空気供給口
323 フィルター
325 吸込口
330 3Dプリンター
340 気流ガイド
343 ステージカバー
345 ケーブルカバー
350 温湿度調節部
351 ケース
353 流入口
355 排出口
1100、1101、1102、1103、1104、1105、1106 ヒドロゲル貯蔵部
1200、1201、1202、1203、1204、1205、1206 細胞貯蔵部
1300、1301、1302、1303、1304、1305、1306 混合部
1310 混合手段
1320 ポンプ
1400、1401、1402、1403 シリンジ
1500 センサー部
1510 ストレッチセンサー
1520 センサーケーブル
1530 キャップ
1600 制御部
1700、1701、1702 3Dバイオプリンター
1710 支持台
1720 ヘッド移動ユニット
1730 X軸ステージ
【手続補正書】
【提出日】2022-05-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0023
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0023】
本発明の他の実施形態としては、3Dプリンティングヘッドを挙げることができ、プリンティング組成物1が収容され、下部のノズル部150を介してプリンティング組成物1が吐出されるシリンジ100;前記シリンジ100の外周面に形成されたヒーティングブロック120;及び前記ヒーティングブロックを包み込むカバー130;を含み、前記ヒーティングブロック120を介して前記シリンジ100の内部へ熱を伝達し、カバー130によって前記熱の外部放出が遮断されることを特徴とする。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0030
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0030】
本発明の別の実施形態として、熱可塑性高分子を含むプリンティング組成物1が収容され、下部のノズル部150を介してプリンティング組成物1が吐出されるシリンジ100;前記シリンジ100の外周面に形成されたヒーティングブロック120;及び前記ヒーティングブロックを包み込むカバー130;を含み、前記ヒートブロック120を介して前記シリンジ100の内部に熱を伝達し、カバー130によって前記熱の外部放出が遮断されることを特徴とする3Dプリンティング高温ヘッド160と;ヒドロゲルが収容され、下部のノズル部を介して吐出されるシリンジ101、及び前記シリンジ101の外周面に付着する吸湿部141を備える3Dプリンティング低温ヘッド170と;を含む、マルチヘッド3Dプリンターが含まれる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0061
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0061】
前記カバー130は、
図3に示すように、前記ヒーティングブロック120が収容されるメインカバー131と、前記メインカバー131の上端に結合され、前記ヒーティングブロック120の上端を包み込む上部カバー132と、前記メインカバー131の下端に結合され、前記ヒーティングブロック120の下端を包み込む下部カバー133と、を含むことができる。このように、カバー130が分離型に形成されることにより、カバー130の加工を容易にし、且つ加工コストを下げることができる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0068
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0068】
前記吸湿部141は、吸湿性物質を低温ヘッド170のシリンジ101の外面にコーティングするか、或いは着脱可能な形態で形成でき、水分が凝縮して形成された結露を吸収して3Dプリンティング中の印刷物に結露が落ちることを防止する。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0084
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0084】
前記3Dプリンター
330は、
図9に示すように、プリンティング組成物1を吐出するプリンターヘッド3と、吐出されたプリンティング組成物1が積層される支持板200と、前記プリンターヘッド3を移動させるヘッド移動ユニット4と、前記ヘッド移動ユニット4の移動をガイドするステージ5と、を含むことができる。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0112
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0112】
ヒドロゲル貯蔵部1100は、物性の変化なしにヒドロゲルを保管するためのものであり、外部と遮断された構造であることが好ましい。前記ヒドロゲルは、アルジネート、フィブリノゲン、カルボキシメチルセルロース、ヘパラン硫酸、ヒアルロン酸、コラーゲン、デキストランなどの天然高分子物質を含むことができるが、これらに限定されない。コラーゲン又はアルジネートをはじめとするヒドロゲルは、水分含有量が高く、生体適合性に優れるため、バイオインクとしての使用に適する。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0114
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0114】
また、ヒドロゲル貯蔵部1100のpH調節手段は、ヒドロゲル貯蔵部1100の内部に備えられたpH変化を感知するpHセンサー、及び該センサーから信号を受けて塩基性溶液をヒドロゲル(hydrogel)貯蔵部1100の内部に注入する自動注入器で構成できる。pHセンサーは、ヒドロゲル貯蔵部1100に保管されているヒドロゲルのpHを測定し、pHの変化に応じて塩基性溶液の注入量を決定して自動注入器へ信号を送って適量の塩基性溶液を注入することにより、ヒドロゲル貯蔵部1100内のpHを、ヒドロゲルのゲル化が起こらないpH範囲に維持させることができる。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0126
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0126】
センサー部1500は、シリンジ1400に供給されたバイオインクの水位を測定し、測定値を制御部1600へ送信する。制御部1600は、設定された基準値と測定値とを対比して、バイオインクをシリンジ1400へ供給するポンプ1320を作動又は停止させることにより、シリンジ1400内部のバイオインクの水位を一定に維持する。具体的には、制御部1600は、測定値が基準値以下である場合には、シリンジ1400からバイオインクが吐出されるのと同時にポンプ1320を作動させてバイオインクを供給するか、或いはシリンジ1400からバイオインクが吐出されることを停止させ、ポンプ1320を作動させてバイオインクを供給する。また、制御部1600は、測定値が基準値以上である場合、ポンプ1320を停止させてバイオインクの供給を中断することにより、シリンジ1400内部のバイオインクの水位を一定に維持させる。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0131
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0131】
本発明の一実施例によるバイオインク供給システムは、
図15に示すように、シリンジ1401、1402、1403を介してバイオインクを支持台1710上に吐出する出力方式の3Dバイオプリンター1700に適用できる。ヒドロゲル貯蔵部1100、細胞貯蔵部1200及び混合部1300がヘッド移動ユニット1720に形成され、1つの混合部
1300からそれぞれのシリンジ401、402、403にバイオインクが供給されることができる。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0140
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0140】
シリンジ1400内部のバイオインクの水位を一定に維持するステップは、センサー部1500を介してバイオインクの水位を測定し、測定値に応じて混合部1300からシリンジ1400へ供給されるバイオインクの量を調節することにより行われることができる。前記センサー部1500としては、前述したレーザセンサー又はストレッチセンサーなどが使用できるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0141
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0141】
センサー部1500を介して測定された測定値が基準値以下である場合には、シリンジ1400からバイオインクが吐出されるのと同時にバイオインクを供給するか、或いはシリンジ1400からバイオインクが吐出されることを停止させてバイオインクを供給し、測定値が基準値以上である場合には、バイオインクの供給を中断することにより、シリンジ1400内部のバイオインクの水位を一定に維持することができる。
【手続補正12】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【国際調査報告】