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2023-504055フィルムの特性量プロファイルの決定を伴うインフレーションフィルムの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-01
(54)【発明の名称】フィルムの特性量プロファイルの決定を伴うインフレーションフィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 48/92 20190101AFI20230125BHJP
   B29C 48/10 20190101ALI20230125BHJP
   B29C 48/325 20190101ALI20230125BHJP
   B29C 48/33 20190101ALI20230125BHJP
   B29C 48/25 20190101ALI20230125BHJP
【FI】
B29C48/92
B29C48/10
B29C48/325
B29C48/33
B29C48/25
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022530971
(86)(22)【出願日】2020-11-09
(85)【翻訳文提出日】2022-06-09
(86)【国際出願番号】 EP2020081488
(87)【国際公開番号】W WO2021104841
(87)【国際公開日】2021-06-03
(31)【優先権主張番号】1913386
(32)【優先日】2019-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522130863
【氏名又は名称】アレフ・ソシエテ・パール・アクシオン・サンプリフィエ
【氏名又は名称原語表記】ALEPH SAS
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【弁理士】
【氏名又は名称】徳山 英浩
(72)【発明者】
【氏名】アヴィラ,ジャン-ノエル
【テーマコード(参考)】
4F207
【Fターム(参考)】
4F207AJ08
4F207AM23
4F207AP11
4F207AR07
4F207AR12
4F207KA01
4F207KA17
4F207KL88
4F207KM06
4F207KM15
4F207KM16
(57)【要約】
インフレーションフィルム(F)を製造する方法は、ダイ(D)を介して押出すこと、変化する折り角度で前記インフレーションフィルムを扁平化すること、インフレーションフィルムの特性量であって、扁平化されたインフレーションフィルムの壁の2つの並置部分にわたって合計される特性量の横方向プロファイルを測定すること、および、横方向プロファイルに基づいて、極プロファイルを推定すること、を含む。上記方法は、さらに、フィルムの横方向の位置に対応する偏平化されたインフレーションフィルムの外周の極位置を決定すること、極位置のそれぞれを挟む離散化角度値を決定すること、離散化角度値に基づいて、フィルムの極プロファイルとフィルムの離散化された極プロファイルとを関連付ける補間係数を算出すること、および、補間係数に基づいて、カルマンフィルタを適用してフィルムの離散化された極プロファイルの推定を更新すること、をさらに含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム成形装置を用いてインフレーションフィルム(F)を製造する方法であって、
ダイ(D)を介した押出しによりインフレーションフィルムを成形する工程(S10)と、
回転を生成する部材の駆動により変化する折り角度(folding angle)で前記インフレーションフィルムを扁平化する工程(S30)と、
前記インフレーションフィルムの特性量の横方向プロファイルを測定する工程であって、前記特性量は、扁平化されたインフレーションフィルムの壁の2つの並置部分にわたって合計される、測定工程(S50)と、
前記横方向プロファイルに基づいて、前記インフレーションフィルムの前記特性量の離散化された極プロファイル(discretized polar profile)を推定する工程と、
前記インフレーションフィルムの前記離散化された極プロファイルの推定に応答して、前記フィルム成形装置を制御する工程と、を含み、
前記方法は、測定システムにおいて、前記横方向プロファイルが測定される測定点ごとに、
前記回転を生成する部材の角度位置(α)を取得すること(S50)、
前記角度位置に基づいて、前記測定点の横方向位置(x)について、前記横方向位置に位置付けられた、前記扁平化されたインフレーションフィルムの外周の2つの極位置
【数41】
を決定すること(S70)、
前記2つの極位置のそれぞれについて、その極位置を挟む2つの離散化角度値(discretized angle values)を決定すること(S80)、
前記離散化角度値に基づいて、前記インフレーションフィルムの極プロファイルと前記離散化された極プロファイルとを関連付ける補間係数
【数42】
を計算すること(S90)、
前記補間係数に基づいて、メインカルマンフィルタの観測行列を決定すること(S100)、および
前記測定工程(S50)で取得された前記横方向プロファイルが前記メインカルマンフィルタに入力され、前記メインカルマンフィルタによって、前記インフレーションフィルムの前記離散化された極プロファイルの前記推定を更新すること(S110)、
をさらに含むことを特徴とする、インフレーションフィルムの製造方法。
【請求項2】
前記メインカルマンフィルタの1回目の反復のために、前記方法は、第1の測定された横方向プロファイルにわたって合計され平均化された前記特性量の1/2に等しい定数値を有する平坦なプロファイルで、前記離散化された極プロファイルを初期化すること(S55)をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載のインフレーションフィルムの製造方法。
【請求項3】
前記メインカルマンフィルタの1回目の反復のために、前記方法は、複数の成分(components)のプロファイルによって前記離散化された極プロファイルを初期化すること(S55)をさらに含み、前記複数の成分のそれぞれは、その成分の離散極位置に最も近い横方向位置で測定された、第1の測定された横方向プロファイルの値の1/2として規定されることを特徴とする、請求項1に記載のインフレーションフィルムの製造方法。
【請求項4】
前記インフレーションフィルムの前記離散化された極プロファイルの前記推定の前記更新に応答して、前記方法は、前記インフレーションフィルムの形成を規制するためのアクチュエータを制御すること(S120、S120’)をさらに含むことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のインフレーションフィルムの製造方法。
【請求項5】
前記回転は、回転が交互に反対方向に行われる交互回転であり、
前記方法は、
前記インフレーションフィルムに対する測定によって取得された前記特性量の複数の横方向プロファイルに基づいて、前記インフレーションフィルムの前記特性量の、各回転方向に対して1つの離散化された極プロファイルである、離散化された2つの極プロファイルを並行して推定することであって、それぞれが前記2つの極プロファイルのうちの1つに専用である2つの補助カルマンフィルタを使用することによって、請求項1に記載の方法を用いて推定すること、
前記2つの極プロファイルの相互相関を表す相互相関曲線を計算すること(S210)、
前記相互相関曲線の最大値の位置を決定し(S220)、前記位置を1/2にして角度修正シフトを得ること、および
前記メインカルマンフィルタに、修正された横方向プロファイルを供給することによって、前記インフレーションフィルムの前記離散化された極プロファイルの前記推定の前記更新を決定すること(S240)、をさらに含むことを特徴とする、請求項1から4のいずれか1つに記載のインフレーションフィルムの製造方法。
【請求項6】
前記特性量は厚さであり、前記極プロファイルは、前記インフレーションフィルムの厚さの極プロファイルであり、前記離散化された極プロファイルは、前記インフレーションフィルムの厚さの離散化された極プロファイルであることを特徴とする、請求項1から5のいずれか1つに記載のインフレーションフィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インフレーションフィルムの製造方法であって、製造中にフィルムの特性量プロファイルを測定することを含む方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インフレーションフィルムは、プラスチック材料を環状ダイまたは「押出機リング」を通して押出すことによって製造されるチューブ状(筒状)のフィルムである。
【0003】
ダイの出口では、ダイの中心から空気を吹き込み、チューブに圧力をかけて伸ばす。チューブはバブルを形成し、その後、バブルの壁の厚さの2倍の平均厚さの2層構造を得るように、折りたたみパネルによって折られる(folded)ことにより、折りたたまれて(collapsed)「扁平化」される。その後、フィルムはロール状に巻き取られる。
【0004】
ダイの出口を起点とする厚さ欠陥が、膨張中にロールの所定の横方向位置に集積するのを防止するために、環状ダイや折りたたみパネルなどの回転生成部材が回転運動に従って、「折り角度(folding angle)」で特定されるフィルムの折り位置にその回転を付与し、厚さ欠陥をロール上に均一に分布させることができる。
【0005】
回転は、連続回転でも、交互回転(一方向に回転した後、他の方向に回転する、周期的な回転)でもよい。
【0006】
しかし、得られるフィルムを特徴付けるために、また、必要に応じてフィルムの製造方法に作用することができるように、フィルムの厚さを監視および制御する必要がある。
【0007】
実際には、バブルの段階でインフレーションフィルムの厚さを正確に測定することは困難である。システムの幾何学的形状により、センサ素子をバブル内に位置させる必要のある透過法による厚さの測定は不可能であり、後方散乱による測定ソリューションも不正確であるからである。
【0008】
そこで、バブルを扁平化した、すなわち折りたたんだ後のフィルムの厚さを推定する方法が開発されている。このような方法は、扁平化した後のバブルの厚さを測定することに基づいている。
【0009】
例えば、特許出願US2011/0112677は、インフレーションフィルムの厚さプロファイルを測定する方法を開示している。この方法では、フィルムの縦方向に切り分けられた複数の断片(縦断片longitudinal sections)がバブル上で特定され、フィルムの扁平化によって相互に並置される縦断片の組の厚さの合計が測定される。その後、ダイの回転を利用して、バブルの全周にわたってフィルムの厚さプロファイルを再構築する。
【0010】
ダイが回転することによって、扁平化されたフィルムの異なる時点での厚さの測定は、縦断片の異なる組み合わせの厚さの合計に対応する。それによって、フィルムの厚さプロファイルを、その周囲にわたって決定するのに十分な連立方程式を確立することができる。
【0011】
しかし、この種の方法は、「バケット」システムまたは複数のプロファイル断片(profile sections)のリストに基づいており、複数の断片の重なりの程度に関して不確実になり、フィルムが複数の縦断片に分割されることにより厚さプロファイルがスムージングされ、断片ごとに測定した厚さを平均化することでプロファイルの分解能(resolution)が不十分になる。これに加えて、フィルムの端に位置する断片間の結合による測定誤差を避けるために、無視できない割合がプロファイル測定に使用されないようになる。
【発明の概要】
【0012】
本発明の目的は、インフレーションフィルムの特性量プロファイルの推定を、特に測定の分解能およびそのノイズレベルに関して改善し、それによって、そのフィルムの製造方法に対する監視および制御の改善を実現できるようにすることである。
【0013】
この目的のために、本発明は、フィルム成形装置によってインフレーションフィルムを製造する方法を提供する。この方法は、ダイを介した押出しによりインフレーションフィルムを成形する工程と、回転を生成する部材(回転生成部材)の駆動により変化する折り角度で前記インフレーションフィルムを扁平化する工程と、前記インフレーションフィルムの特性量の横方向プロファイルを測定する工程であって、前記特性量は、扁平化された前記インフレーションフィルムの壁の2つの並置部分にわたって合計される、測定工程と、前記横方向プロファイルに基づいて、前記インフレーションフィルムの前記特性量の離散化された極プロファイル(離散化極プロファイル、discretized polar profile)を推定する工程と、前記インフレーションフィルムの前記離散化された極プロファイルの推定に応答して、前記フィルム成形装置を制御する工程と、を含み、前記方法は、測定システムにおいて、前記横方向プロファイルが測定される測定点ごとに、
前記回転を生成する部材の角度位置を取得すること、
前記角度位置に基づいて、前記測定点の横方向位置について、前記横方向位置に位置付けられた、前記扁平化されたインフレーションフィルムの外周の2つの極位置を決定すること、
前記2つの極位置のそれぞれについて、その極位置を挟む2つの離散化角度値を決定すること、
前記離散化角度値に基づいて、前記インフレーションフィルムの極プロファイルと前記離散化された極プロファイルとを関連付ける補間係数を計算すること、
前記補間係数に基づいて、メインカルマンフィルタの観測行列を決定すること、および
前記測定工程で取得された前記横方向プロファイルが前記メインカルマンフィルタに入力され、前記メインカルマンフィルタによって、前記インフレーションフィルムの前記離散化された極プロファイルの前記推定を更新すること、をさらに含む。
【0014】
本発明のインフレーションフィルムの製造方法は、さらに、扁平化されたインフレーションフィルムに対して逐次測定された前記特性量の横方向プロファイルに基づいて、前記インフレーションフィルムの特性量の極性プロファイルを決定し更新することを含む。この方法によれば、高解像度で信頼性に優れた推定プロファイルの安定した決定に基づき、フィルムの形成を制御するためのフィードバック制御ループが高い反応性を有することが可能になる。
【0015】
また、本発明の製造方法は、以下の特徴を有していてもよい。
前記メインカルマンフィルタの1回目の反復(first iteration)のために、前記方法は、第1の測定された横方向プロファイル(第1の測定横方向プロファイル、first measured transverse profile)にわたって合計され平均化された前記特性量の1/2に等しい定数値を有する平坦なプロファイルで、前記離散化された極プロファイルを初期化することをさらに含んでもよい。
前記メインカルマンフィルタの1回目の反復のために、前記方法は、複数の成分(components)のプロファイルによって前記離散化された極プロファイルを初期化することをさらに含んでもよい。前記複数の成分のそれぞれは、その成分の離散(discrete)極位置に最も近い横方向位置で測定された、第1の測定された横方向プロファイルの値の1/2として規定されてもよい。
前記インフレーションフィルムの前記離散化された極プロファイルの前記推定の前記更新に応答して、前記方法は、前記インフレーションフィルムの形成を規制するためのアクチュエータを制御することをさらに含んでもよい。
前記回転は、回転が交互に反対方向に行われる交互回転であってもよい。前記方法は、
前記インフレーションフィルムに対する測定によって取得された前記特性量の複数の横方向プロファイルに基づいて、前記インフレーションフィルムの前記特性量の、各回転方向に対して1つの離散化された極プロファイルである、離散化された2つの極プロファイルを並行して推定することであって、それぞれが前記2つの極プロファイルのうちの1つに専用である2つの補助カルマンフィルタを使用することによって、上記方法を用いて推定すること、
前記2つの極プロファイルの相互相関を表す相互相関曲線を計算すること、
前記相互相関曲線の最大値の位置を決定し、前記位置を1/2にして角度修正シフト(correction angular shift)を得ること、および
前記メインカルマンフィルタに、修正された横方向プロファイルを供給することによって、前記インフレーションフィルムの前記離散化された極プロファイルの前記推定の前記更新を決定すること、をさらに含んでもよい。
前記特性量は厚さであり、前記極プロファイルは前記インフレーションフィルムの厚さの極プロファイルであり、前記離散化された極プロファイルは前記インフレーションフィルムの厚さの離散化された極プロファイルであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本発明は、非限定的な例として、添付の図面を参照して与えられる実施形態の以下の詳細な説明を読めば、よりよく理解され、他の利点も明らかになり得る。
【0017】
図1図1は、インフレーションフィルムを形成し、それを折る、すなわち折りたたむ方法を示す。
図2A図2Aは、図1の様々なレベルにおけるフィルムの断面を同一平面上に示す。
図2B図2Bは、図1の折りたたまれたフィルムの位置の特定を示す図である。
図2C図2Cは、離散化における、図1のフィルムの極プロファイルの点の補間を示す。
図3A図3Aは、図1のフィルムの厚さの極プロファイルを決定するために使用される値の表を示す。
図3B図3Bは、図1のフィルムの極プロファイルを規定する表である。
図4図4は、本発明の第1の実施形態における図1のフィルムの製造方法のフローチャートである。
図5A図5Aは、それぞれがダイの異なる回転方向について得られた、フィルムの2つの極プロファイルを示す。
図5B図5Bは、図5Aのプロファイルの相互相関曲線を示す。
図6図6は、本発明の第2の実施形態における図1のフィルムの製造方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の方法の第1の実施形態の説明
第1の実施形態では、連続回転ダイ、すなわち同じ方向に連続的に回転するダイによってインフレーションフィルムを製造する方法について検討する。この方法の間には、インフレーションフィルムに付加される特性量、すなわちこの例では厚さが監視され、かつ、制御される。
【0019】
以下の説明の第1部は、インフレーションフィルムの極プロファイルを決定する方法の実施に使用されるデータを収集するためのシステムを説明する。
【0020】
この例では、極プロファイルは、インフレーションフィルムの厚さを、インフレーションフィルムの外周(periphery)の各点と関連付けるものであり、各点は極位置によって特定される。
【0021】
図1は、インフレーションフィルムの形成方法を示す。この方法では、筒状のインフレーションフィルムFは、押出機Exによって、ダイDを通して押し出されることによって形成される。ダイDは、交互に反対方向に回転している、または同じ方向に連続して回転している。ダイDは、圧力下でフィルムに空気を吹き込み、それによってバブルBを形成する送風装置Blowを備える。
【0022】
この例では、フィルムを形成するポリマーの押し出しは、ダイの固定リップと調整可能リップとの間の推力によって行われる。押し出されたフィルムの厚さは、ダイの外周の調整可能リップに沿って配置された複数のアクチュエータACTによって制御可能である。これらのアクチュエータの動作は個別に調整可能である。
【0023】
この他にも、例えば、流量または温度が変化するエアリングを制御するためのアクチュエータ、赤外線放射によってインフレーションフィルムを加熱するパネルを制御するためのアクチュエータなどの、インフレーションフィルムの厚さを規制するための他のアクチュエータに基づいて、フィルムの厚さを制御する方法が存在する。
【0024】
ダイの上方では、ローラRol-1が、フィルムを扁平化、すなわちフィルムを折りたたみ、ローラRol-2が、扁平化されたフィルムを送り、方向転換させて、放射線放出装置Cap-Eと放射線検出装置Cap-Dの間を通過させる。これら2つの装置によって、好ましくは透過式(in transmission)で動作し、フィルムの特性量を測定する厚みセンサCapが構成される。
【0025】
この特性量は、フィルム全体としての単位面積当たりの質量もしくは「面密度」、フィルムの一成分の面密度、または、フィルムが多層フィルムである場合にはフィルムの一部である1つの層の面密度であり得る。
【0026】
本実施形態では、当該特性量は、フィルム全体としての面密度から推測される、インフレーションフィルムの壁の厚さ(肉厚、wall thickness)である。
【0027】
以下、フィルムの「単一厚さ」という用語は、フィルムの単一の壁の厚さを意味し、「合計厚さ」という用語は、扁平化されたフィルムの壁のうち、扁平化によって相互に並置される2つの部分の厚さの合計を意味するために使用される。
【0028】
厚みセンサは、フィルムの合計厚さの横方向のプロファイルを測定するように設計されている。厚みセンサは、扁平化されたフィルムへのX線の透過によって面密度を検出することに基づいてもよい。
【0029】
あるいは、厚みセンサは、ベータ放射の透過または後方散乱に基づくことも可能である。
【0030】
一般的に、厚さの測定は、電磁波、超音波、もしくは粒子の透過または後方散乱で行われてもよいが、測定精度の理由から、透過による検出が好ましい。
【0031】
厚みセンサは、コンピュータCALC、コンピュータメモリMEM、スキャナ(図示せず)を備える測定システムMESに統合されている。スキャナは、監視制御システムC/Cから指示を受けて、折りたたまれたフィルムの幅にわたって厚みセンサを走査することが可能である。
【0032】
監視制御システムC/Cは、コンピュータCALCとも機能的に通信しており、送風装置、ダイ、およびアクチュエータを備えるフィルム製造システムを監視および制御するように構成されている。
【0033】
測定システムMESは、角度指示器ANGと通信している。角度指示器ANGは、測定システムが角度位置を取得することができるように、各時点において、ダイが回転しているときの当該ダイの角度位置を、測定システムMESに伝達するように設計されている。
【0034】
ダイの回転により、フィルムの折り位置が回転する。この実施形態では、回転するダイが回転発生部材として作用する。
【0035】
フィルムの折り位置の回転が折りたたみパネルによって引き起こされる場合、角度位置は、当該パネルが回転しているときのパネルの角度位置となる。
【0036】
測定システムの下流において、フィルムは2つに切断され、切断された2つのフィルムは、2つの巻き取りローラRol-3にそれぞれ巻き取られる。
【0037】
図2Aは、(1)ダイDから出るときのフィルムの断面F、(2)バブルBの扁平化されている途中の部分におけるフィルムの断面F、および(3)測定システムMESにおけるフィルムの断面FMESを示す。
【0038】
実際には、(3)において、インフレーションフィルムの2つの向かい合う部分が互いに接触し、場合によって残留空気の薄い層によって分離され、それによって、2層構造Biが形成されている。
【0039】
わかりやすくするために、これらの部分は図中では互いに分離して示されている。
【0040】
ダイの回転運動は、測定システムを通過する部分を含め、巻き取りローラまでフィルム全体に伝播する。
【0041】
本発明によると、バブルが形成されている間、監視制御装置C/Cの監視制御下で、測定システムは、扁平化されたフィルムの幅にわたって横方向に厚みセンサを走査し、扁平化されたフィルムによって形成された2層構造Biの厚さの横方向プロファイルをコンピュータメモリMEMに連続して記録し、現在の横方向プロファイルにおける、インデックスiによって特定される1つの点で測定された合計厚さCTiを、第1列がインデックス1を示す表の第2列の行iに格納される。
【0042】
並行して、現在の横方向プロファイルの点iにおける2層構造の厚さ測定ごとに、角度検出器は、テーブルの第3列の行iに、当該の現在の横方向プロファイルの点iにおける2層構造の厚さ測定時点のダイの角度位置αを記録する。
【0043】
図2Bは、ダイの基準角度位置Refとバブルの折点との間の角度に対応する折り角度位置
【0044】
【数1】
を示す。位置0°は、回転がない場合の基準位置とバブルの折点との間が正確に対応する位置に定義される。
【0045】
折り角度位置
【0046】
【数2】
は、ダイから測定装置へのフィルムの搬送に要する時間に相当する時間遅れと、バブルの慣性による変形とを考慮しながら、ダイの角度位置αから推測され、表の4列目に格納される。
【0047】
これらのパラメータは、本方法を実施するために使用される生産ラインの動作パラメータに基づいて測定および/又は推定されてもよい。
【0048】
実際には、回転方向が一定である連続回転が使用される場合、角度位置αから、上述の時間遅れおよびダイの回転によって生じる角度シフトαshiftを減算して、折り角度位置
【0049】
【数3】
を得る。
【0050】
回転方向が周期的に変化する交互回転を用いる場合、時間遅れを補償するように、測定時の回転方向に応じて角度シフトαshiftを加算または減算する。
【0051】
図2Bは、測定システムMESにおけるフィルム上の位置の特定も示す。正規化されたx座標によって特定される折りたたまれたフィルムの横方向の位置は、0から1の範囲にあり、これらの極値は、扁平化されたフィルムの折り返された端部に対応している。
【0052】
図3Aは、n個の測定点における厚さおよび角度のデータを表TAB1に記録したものを示す。表TAB1では、第1列Col.1に示されるインデックスiによって行が特定されている。第2列Col.2は、2層構造Biの厚さの測定値を示し、第3列Col.3は、厚さ測定時のダイの角度位置を示している。第4列Col.4は、厚みセンサでのそれぞれの厚さ測定時のフィルムの角度位置を示している。
【0053】
説明の第2部は、フィルムの各角度位置におけるインフレーションフィルムの単一厚さと、扁平化されたフィルムの各横方向位置におけるフィルムの合計厚さの測定値との間に、どのように関係が確立されるかを説明する。
【0054】
扁平化されたフィルムの各横方向位置xは、図2Bによって示されるように、フィルムの扁平化によって相互に並置された、折りたたまれたフィルムの上層SUPおよび下層INFのそれぞれにおける、筒状フィルムの外周の2つの極位置αsupおよびαinfに対応する。
【0055】
これら2つの極位置αsup、αinfは、対応する横方向位置xおよび折り角度位置αΓの関数として、式(Eq.1)、(Eq.2)のそれぞれで規定されるように、0°から360°の範囲にある角度で表される。
【0056】
【数4】
【0057】
横方向位置xにおける合計厚さは、式(Eq.3)により、対応する2つの極位置αsupおよびαinfの2つの単一厚さの合計で表すことができる。
【0058】
【数5】
ここで、関数polpfは、インフレーションフィルムの単一厚さと当該フィルムの各極位置とを関連付け、関数flatpfは、フィルムの合計厚さの測定値と扁平化されたフィルムの各横方向位置とを関連付けている。
【0059】
それを解くことで、測定された合計厚さから所望の単一厚さを導き出すことの可能な連立一次方程式を確立するために、関数flatpfおよびpolpfが離散化される。
【0060】
0からm-1の範囲にある整数のインデックスjで特定される極位置の数mを使用する。
【0061】
例えば、mを500に設定すると、角度分解能Δαが0.72°の、360°にわたる厚さ極プロファイルが得られる。各離散角(discrete angle)は、そのインデックスjにΔαを乗じた積に等い。
【0062】
したがって、m=500 POLPF[j]=polpf(α)の関係が成り立つ。離散極位置αはj×Δαであり、角度分解能Δαは360°/mである。POLPFは、関数polpfを、m点にわたって離散化したものを表わす。
【0063】
測定システムによる平坦化フィルムの合計厚さの測定中に、n個の測定点における関数flatpfの均一なサンプリングFLATPFが得られる。
【0064】
離散化POLPFおよびFLATPFのサイズは、それぞれmおよびnで規定される。
【0065】
FLATPFは、図3Aの表TAB1の列Col.1およびCol.2に示されている。列Col.1およびCol.2は、各測定点に対応するインデックスiおよび合計厚さCTiをそれぞれ示す。
【0066】
nが例えば2500に設定される場合、n=2500 FLATPF[i]=flatpf(x)の関係が成り立つ。離散正規化(discrete normalized)横方向位置xはi×Δxであり、Δxは1/nである。整数インデックスiは0から(n-1)まであり、測定点を示す。
【0067】
flatpfのサンプリング値の数nは、polpfのサンプリングの数mよりもはるかに大きくてもよいことに留意されたい。これによって、極プロファイルの決定において、例えば2倍から10倍の範囲、好ましくは4倍から8倍の範囲で、精度および信頼性が向上することが保証される。
【0068】
関数polpfと関数flatpfとの関係を、離散化POLPFと離散化FLATPFとの関係に変換するためには、正規化横方向位置xの測定点iごとに、対応する極位置
【0069】
【数6】
におけるpolpfの値を近似する関係が、その間に当該
【0070】
【数7】
の値が位置する隣接する離散極位置α(p)、α(p+1)に基づいて確立される。
【0071】
同様に、対応する極位置
【0072】
【数8】
において、その間に当該
【0073】
【数9】
の値が位置する隣接する極位置α(q)およびα(q+1)の関数として、polpfの値の近似が行われる。
【0074】
インデックスp、qは0~(m-1)範囲内にある整数であり、直下の2つの離散角と角度位置
【0075】
【数10】
とを、それぞれp×Δα、q×Δαの関係によって関連付ける。
【0076】
このように、横方向位置xに対応する極位置
【0077】
【数11】
に対して、POLPF[p]およびPOLPF[p+1]に基づいて
【0078】
【数12】
の近似値が検討される。ここで、pは、図2Cに示すように、
【0079】
【数13】
の直下の離散角α(p)を特定する。
【0080】
例えば、1.22°である極位置
【0081】
【数14】
は、pを1、mを500とすると、隣接する離散角度値0.72°から1.44°までの範囲にある。
【0082】
この方法は、極位置
【0083】
【数15】
についても同様に進められる。
【0084】
本実施形態では、近似は、以下の式(Eq.4)および(Eq.5)に従って、一次線形近似によって行われる。
【0085】
【数16】
ここで、係数
【0086】
【数17】
は、POLPH[p]およびPOLPH[q]のそれぞれの相対重みを表し、以下の式(Eq.6)および(Eq.7)のそれぞれによって表される。
【0087】
【数18】
【0088】
および/またはqが値(m-1)をとるとき、(p+1)および/または(q+1)にはそれぞれ値0が代入される。
【0089】
この例では、近似は1次線形補間であるが、極位置
【0090】
【数19】
におけるフィルムの単一厚さが離散極位置におけるフィルムの単一厚さの関数として表される限り、他のいくつかのタイプの近似を用いることもできる。
【0091】
前式から、POLPF離散化とFLATPF離散化とをn個の一次方程式で関連付けた式(Eq.8)が導かれる。
【0092】
【数20】
【0093】
このような、測定した合計厚さを所望の単一厚さに関連付ける方法には、さまざまな利点がある。
【0094】
まず、ダイと測定システムとの間のフィルムの1つの点の経路を正確に決定することが可能であれば、フィルムの幅にわたる厚みセンサの走査中のフィルムの折り角度の変化と同様に、ダイのいかなる動きも考慮することが可能になる。
【0095】
そのため、プロファイル断片のリストに基づく方法とは異なり、極プロファイルに対して選択された離散化点の数とは無関係に、したがってその解像度とは無関係に、断片間の重複誤差のリスクなく、測定点と同じ数の方程式を生成することが可能である。
【0096】
また、この方法により、例えば、結果を歪める可能性のある過度のノイズのために低品質である測定ゾーンを除外することによって、FLATPFの部分集合に対して方程式を規定することも可能である。
【0097】
説明の第3部では、インフレーションフィルムの極プロファイルを決定するためのカルマンフィルタの適用について詳細に説明する。
【0098】
一般的に、このようなフィルタは、動的線形システムの隠れ状態の推定を、そのシステムの測定値の形でもたらされるシステムの新規の観測値ごとに反復して改良する。したがって、上記フィルタは、システムの変化のモデル化とシステムの観測値のモデル化との組み合わせに基づくものである。
【0099】
本発明の方法に適用される、行列計算の形で表されたカルマンフィルタの形式では、システムの隠れ状態のベクトル は、POLPFに対応する所望の極プロファイルであり、システムの観測ベクトル は、観測反復回kにおける、FLATPFに対応する測定された横方向プロファイルを表す。これら2つのベクトルは2つの一般状態方程式(Eq.9)および(Eq.10)のそれぞれを用いて表される。
【0100】
したがって、ベクトル およびベクトル は、それぞれ、POLPFおよびFLATPFのサイズ、すなわちmおよびnに等しいサイズを有する。
【0101】
式(Eq.9)は、システムの隠れ状態の変化をモデル化したものである。
【0102】
【数21】
ここで、Fは、システムの隠れ状態における自然変化のモデル化を表す行列、 は、生産ラインのフィルムの厚さ規制システムに対する既知の作用のプロファイル、Γは、極プロファイルに対する、規制システムのゾーンの影響の行列、 は、隠れ状態における予期しない変化の未知のベクトル、Gは、システムの隠れ状態に対する予期しない変化のインパクトの行列である。
【0103】
式(Eq.10)は、システムの観測値をモデル化したものである。
【0104】
【数22】
ここで、Hは、隠れ状態 と観測値 とを関連付ける「観測」行列、Dは、観測に対する作用の影響を表す行列、 は、測定器について既知の特性量の測定ノイズと極プロファイルの過渡的な変動を表すベクトルである。
【0105】
本発明によると、当該システムは、インフレーションフィルム自体だけでなく、インフレーションフィルムを製造し、評価するための装置も含まれる。
【0106】
ここでは、上記で一般的に説明された特性量は、この実施形態について以下に説明するように、インフレーションフィルムの製造方法に適用される。
【0107】
隠れ状態 は、サイズmの所望のベクトルであり、その各座標は、極プロファイルの所定の極位置における筒状のフィルムの単一厚さを示し、関数polpfを表す。
【0108】
本実施形態では、隠れ状態 は、POLPF離散化に戻される(reduced)。
【0109】
行列Fは、単位行列(identity matrix)Iである。バブルの極プロファイルは、経時的に安定していると考えられる、すなわち外乱や干渉がない場合、ある反復回から別の反復回まで同一に保存されると考えられるからである。
【0110】
ベクトル は、製造ラインのアクチュエータ(ヒーターボルト、エアリング、赤外線パネルなどのダイ・レギュレータ)に対する作用を表す。ベクトル のサイズは、考慮されるアクチュエータの数、例えば、筒状フィルムの外周にわたるアクチュエータの数に対応する。例えば、バブルが、その周囲にわたって、それぞれがアクチュエータを受ける30のゾーンで規制されている場合、 はサイズ30のベクトルとなる。
【0111】
このベクトルの各共座標は、例えば、エアリングの周りに分布する送風ノズルの開口の割合(開度、開口率)を表してもよい。
【0112】
行列Γは、極プロファイルに対するアクチュエータゾーンの影響を表し、すなわち、アクチュエータの相互影響(動作の近接性)の効果と、極プロファイルの点に対してアクチュエータが有するアンダーサンプリング効果とを組み合わせた構造の行列である。
【0113】
この行列を構成する要素は、例えば、アクチュエータが送風ノズルの場合、所定のアクチュエータに適用される開口の割合に対応した、極プロファイルの所定の点におけるフィルムの単一厚さの変化を反映して、実験的に決定されてもよい。
【0114】
ベクトル は、ランダムなベクトルであり、例えば、センタリングされたホワイトノイズである。
【0115】
行列Gは、本方法において、単位行列Iで簡略化される。
【0116】
観測値 は、サイズnのベクトルで、その各座標は、扁平化されたフィルムの所定の横方向位置における2層構造の測定厚さを示し、関数flatpfを表す。
【0117】
本実施形態では、観測値 は、FLATPF離散化に戻される。
【0118】
行列Hは、サイズm×nの行列であり、FLATPFをPOLPFの関数として示す式(Eq.8)の連立一次方程式を表す。
【0119】
ベクトル は、ランダムなベクトルであり、例えば、センタリングされたホワイトノイズである。
【0120】
したがって、本発明のこの実施形態では、システムの状態方程式(Eq.9)、(Eq.10)を、それぞれ、状態方程式(Eq.11)、(Eq.12)に簡略化することができる。
【0121】
【数23】
【0122】
このシステムを記述する状態方程式(Eq.11)、(Eq.12)にカルマンフィルタを適用することで、当該システムの変化を推定することが可能となり、インフレーションフィルムの厚さ極プロファイルとその変化を決定することができる。
【0123】
そのため、各プロファイル測定の反復の後に、以下の様々な特性量を更新するための計算が行われる。
の推定誤差の共分散行列Pk|k-1
反復回(k-1)の情報が既知であるとき、ランクkの の推定量(estimator)
【0124】
【数24】
反復回kの情報が既知であるとき、ランクkの の推定量
【0125】
【数25】
反復回(k-1)の情報が既知であるとき、反復回kの -Hk・ k|k-1に等しく、その共分散行列は
【0126】
【数26】
である予測誤差
【0127】
【数27】
【0128】
上記に規定されたシステムにカルマンフィルタを適用すると、以下の式(Eq.13)~(Eq.19)のそれぞれに対応する計算工程が実行される。
【0129】
【数28】
【0130】
式(14)において、Qは、極プロファイルの予期せぬ変化 の共分散行列を表し、評価可能である。例えば、プロファイルの上記変化が一定の標準偏差σのホワイトノイズを持っているとみなすことによって、Qをσ ・I(Iはサイズmの単位行列)に等しいと規定することができる。
【0131】
10マイクロメートル(μm)の単一厚さを有するフィルムのσの典型的な値は、例えば0.02μmであり、本質的にバブルの安定性の関数として調整される。
【0132】
式(15)において、Rは測定ノイズ の共分散行列を表し、評価可能である。例えばノイズを一定の標準偏差σのホワイトノイズとみなすことにより、Rをσ ・I(Iはサイズnの単位行列)に等しいと規定することができる。
【0133】
10μmの単一厚さを有するフィルムのσの典型的な値は、例えば、0.2μmである。
【0134】
式(17)および
【0135】
【数29】
の逆数を用いる代わりに、式
【0136】
【数30】
の解法を用いることが好ましい場合がある。このような方法は計算量の点でより経済的である。
【0137】
式(19)において、 の共分散行列の推定誤差の共分散行列Pk|kが次の反復回のために更新される。
【0138】
上述した反復計算では、必要な初期化値は、第1観測値(最初の観測値) に基づいて、すなわち、第1の測定横方向プロファイル(最初に測定された横方向プロファイル、first measured transverse profile)に基づいて計算される。
【0139】
したがって、第1の反復回(1回目の反復、first iteration)における隠れ状態のベクトル は、それぞれが第1の測定横方向プロファイルの平均合計厚さの1/2に等しい、全て同一のm個の成分のベクトルとして規定される。
【0140】
言い換えれば、単一厚さプロファイルは、第1の測定横方向プロファイルの平均合計厚さの1/2に等しい一定の厚さを有する平坦なプロファイルによって初期化される。
【0141】
あるいは、第1の反復回における隠れ状態のベクトル は、それぞれが対応する離散極位置に最も近い横方向位置で測定された第1横方向プロファイルの値の1/2として規定される、m個の成分のベクトルとして規定されることも可能である。
【0142】
このように、ベクトル の各成分jを規定するためには、式8における複数の組
【0143】
【数31】
から、当該jの値を有する2番目のメンバーに対して1番目のメンバーが最大となるものを選択し、次に、第1の測定横方向プロファイルに対応する値FLATPF[i]を選択し、それを2分の1にして得られた値を の成分jに割り当てることが可能である。
【0144】
また、 の共分散の初期推定量の共分散行列Pは、サイズmの単位行列に第1観測値 の分散の1/2を乗じた積として規定される。
【0145】
この値Pは、システムの収束速度を条件づけるデータの一部であり、開始プロファイルを統計的に調べることで、より正確な推定が可能である。
【0146】
上記アルゴリズムの第1の反復回は、主に、第1の測定されたプロファイルセット全体にわたって平均化された厚さプロファイルに対応する の安定化された推定に向かって収束するのに使用される。
【0147】
システムが収束したことを示す判断基準は、以下の通りである。
【0148】
統計的標準偏差を、
【0149】
【数32】
に等しい修正後の残留誤差プロファイルσ(ε k|k)の座標にわたって計算し、次に、システムが平均極プロファイルの正しい近似値に収束したかどうかを判定するために、方法の安定性を示す閾値と比較する。
【0150】
閾値は、インフレーションフィルム製造システムにカルマンフィルタを適用した過去の事例を考慮した人間のオペレータによって決定される。
【0151】
σ(ε k|k)が上記閾値より小さい場合、残留誤差は、制御不能な変動によって発生する、極プロファイルの時間的な過渡変動によるものと判断する。
【0152】
実際には、製造方法の第1の実施形態は、押出されたフィルムの一部分のトラッキングに対応する図4のフローチャート10に示されるように、以下の工程に従う。本方法は連続した方法であり、各工程は、フィルムの他の部分についての他の工程と並行して繰り返されることが理解される。
【0153】
第1の工程S10において、インフレーションフィルムFは、筒形状のフィルムが得られるように、ダイDを介して1つ以上のポリマー材料を押し出すことによって形成される。フィルムは、単層フィルムであってもよいし、多層フィルムであってもよい。
【0154】
第2の工程S20では、送風装置Blowによって筒状のフィルムに圧力下で空気が吹き込まれることによって、バブルが形成され、その後、フィルムは、2層構造を形成するように、工程S30の間にローラRol-1によって扁平化、すなわち、折りたたまれる。
【0155】
工程S40において、ローラRol-2は、扁平化されたフィルムを測定システムMESに送る。
【0156】
工程S50において、測定システムMESは、扁平化されたフィルムによって形成された2層構造Biの厚さの横方向プロファイルを取得すると同時に、正規化された横方向位置xによって特定される厚さの取得点iごとに、当該ダイが回転しているときのダイの角度位置αを取得する。
【0157】
工程S60において、コンピュータCALCは、回転するダイの角度位置αに基づいて、折り角度位置
【0158】
【数33】
を決定する。
【0159】
工程S50、S60で得られたデータは、メモリMEMに記憶され、例えば、図3Aの表TAB1のような形式で表すことができる。
【0160】
厚さの横方向プロファイルは、連続的に取得される。各プロファイルは、それ自身の値の表を有する。各横方向プロファイルは、カルマンフィルタの方法を用いた、厚さの極プロファイルの推定値の更新に使用される。
【0161】
動作開始の特定の状況において、カルマンフィルタは、工程S55の間に、上述の原理およびデータを用いて、第1の厚さ横方向プロファイルに基づき初期化される。
【0162】
その後の横方向プロファイルは、それぞれフィルタの新しい反復回に使用される。
【0163】
工程S70において、厚さプロファイルの各取得点iに対応するダイの角度位置
【0164】
【数34】
およびフィルム内の横方向位置xに基づいて、コンピュータCALCは、筒状フィルムの外周の2つの極位置
【0165】
【数35】
を決定する。
【0166】
工程S80において、コンピュータは、各測定点iについて極位置
【0167】
【数36】
を挟む離散化された角度の値(離散化角度値)を決定し、それらをメモリMEMの、図3Aの表TAB1の列Col.5およびCol.6のそれぞれの行iに記録する。
【0168】
なお、離散化角度値を決定することは、それらを識別するインデックスpおよびqを決定することと等価であり、これらの特性量は、選択された角度分解能によって直接相互に関連付けられる。
【0169】
工程S90において、コンピュータは、工程S80で得られた離散化角度値に基づいて、かつ、式(Eq.6)および(Eq.7)に基づいて、補間により、極位置
【0170】
【数37】
のそれぞれについて、測定点iごとに、極プロファイルpopfと離散極プロファイルpolphfとを関連付ける係数
【0171】
【数38】
を計算する。
【0172】
係数
【0173】
【数39】
は、表TAB1の列Col.7およびCol.8の行iのそれぞれに記録される。
【0174】
工程S100において、コンピュータは、式(Eq.8)で規定される連立一次方程式に基づいて、カルマンフィルタの観測行列Hを決定し、所望の単一厚さの極プロファイルと、工程S50で測定された、扁平化されたフィルムで形成された2層構造の厚さの横方向プロファイルとを関連付ける。
【0175】
工程S110において、また、既に初期化されているカルマンフィルタの計算を考慮することによって、ベクトル の推定値を表す推定量
【0176】
【数40】
の更新、したがって単一厚さの極プロファイルPOLPFの更新が計算され、推定誤差の共分散行列Pk|kの更新も計算される。これらのデータはメモリMEMに記憶される。
【0177】
工程S110の終了時に、最後に得られた(最新の)横方向プロファイルの情報から恩恵を受けるベクトル によって表される極プロファイルPOLPFの推定値が得られる。これは、図3Bに示すように、現在の極プロファイルPOLPFを規定する2列を有する表TAB2の形で、メモリMEM内に記憶される。
【0178】
TAB2の第1列Col.1は、極プロファイルの当該極位置を特定するインデックスjを示す。
【0179】
TAB2の第2列Col.2は、インデックスjの極位置におけるフィルムの単一厚さを示し、この厚さは、ベクトル のj番目の更新要素 (j)の値を有する。
【0180】
工程S120において、コンピュータCALCは、現在の極プロファイルPOLPFと、オペレータによって確立されたターゲットプロファイル targetとの間の比較を行う。この実施形態では、座標のそれぞれについて、 target との差を計算することによって、上記比較を行う。
【0181】
工程FBKにおいて、監視制御システムC/Cは、上記比較に応答して、フィルム成形用装置を制御する。この制御は、オペレータによって手動で行われる調整、または、監視制御システムをフィルム成形用装置(例えばダイのアクチュエータACT)に連結するフィードバック制御ループによって自動的に行われる調整の後に行われる。
【0182】
アクチュエータの制御は、カルマンフィルタの入口で使用されるベクトル に対応する。
【0183】
このようにして、フィルムの単一厚さは、扁平化されたインフレーションフィルムの合計厚さの測定値に基づいて推定された極プロファイルの関数として、ダイにおいて監視および制御される。
【0184】
この実施形態は、上記フィルムの厚さの監視および制御に基づいてフィルムを形成するための技術的解決策を提供するが、本発明は、当業者によって関連すると考えられる他の代替の特性量に基づく監視および制御にも及ぶ。
【0185】
本発明の方法の第2の実施形態の説明
この第2の実施形態では、交互回転、すなわち一方向およびその反対方向に交互に回転するダイによってインフレーションフィルムを製造する方法について検討する。
【0186】
そこで、ダイの回転方向に加えて、ダイの回転方向が変わるたびに定常状態が確立されるまで発生する周期的な位相シフト現象を考慮する必要がある。
【0187】
この位相シフトは、バブルの慣性と変形によるもので、バブルの膨張が小さいほど変形が大きくなり、回転方向が変わると、バブルの慣性の影響をモデル化することが困難である。
【0188】
したがって、ダイが交互に回転するときに、適用すべきシフトの値を正確に確立して、各時点の厚さプロファイルを正しく再構築することは困難である。
【0189】
逆に、上記のようなインフレーションフィルムの厚さプロファイルの測定に基づいて、ダイの回転の交互の態様を利用して、バブルの回転が定常領域であるときに適用するシフトαshiftを正確に決定することが可能である。
【0190】
その原理は、2つの補助カルマンフィルタによって、シフトを導入せずに、「パラレルプロファイル」と呼ばれる厚さ極プロファイルの2つの再構築を並列して行うことである。パラレルプロファイルの一方は、ダイの正の回転方向について得られたデータに基づいて再構築され、他方のパラレルプロファイルは、ダイの負の回転方向について得られたデータに基づいて再構築される。
【0191】
従って、プロファイルの大きな変動がフィルムに導入されないように十分に短い時間間隔で再構築されたパラレルプロファイルの場合、正および負の回転方向のそれぞれについて、POLPF(+αshift)とPOLPF(-αshift)という2つの類似した極プロファイルが得られる。一方は、これらのシフトを考慮したプロファイルに対して、+αshiftのシフト値で、他方は、-αshiftのシフト値でシフトされている。
【0192】
図5Aは、2×αshiftの角度値だけ相対的にシフトしていること以外は同様であるパラレルプロファイルを示す。
【0193】
図5AのパラレルプロファイルPOLPF(+αshift)とPOLPF(-αshift)との相互相関を表す相互相関曲線ICの最大値を、例えば放物線回帰によって決定することによって、図5Bに示すように、これら2つのプロファイル間の角度シフト2×αshiftを決定することが可能である。
【0194】
このシフトを1/2にすることにより、角度修正シフトαshiftが得られる。角度修正シフトαshiftは、第1の実施形態において極プロファイルの推定を更新するためにメインカルマンフィルタの入力データに導入可能である。
【0195】
図6のフローチャート20は、本発明のインフレーションフィルムの製造方法の第2の実施形態を示す。
【0196】
フローチャート10と同じように番号付けされた工程については、第1の実施形態を参照することができる。
【0197】
第2の実施形態は、以下の点で第1の実施形態とは異なっている。
【0198】
扁平化されたフィルムの合計厚さプロファイルを測定する工程S50’の時に、角度指示器ANGは、角度位置に加えて、ダイの回転方向を示す信号を工程S25の間に測定システムMESに送信し、それによって、フィルムの回転方向を決定することが可能である。
【0199】
代わりに、インフレーションフィルムの回転が折りたたみパネルの回転に起因する場合、上記回転方向は、折りたたみパネルの回転方向であり得る。
【0200】
また、代わりに、センサの走査方向と指示角度の変化を調べることに基づいて、(ダイの回転または折りたたみパネルの回転によって発生する)フィルムの回転方向を決定することも可能である。
【0201】
フィルムの回転方向を決定することに応答して、測定システムMESは、第1の実施形態の工程S60~S100に相当する工程S60A~S100AおよびS60B~S100Bをそれぞれ含む、2つの補助カルマンフィルタの使用に基づく方法を用いて、取得されたデータを並行して処理する。
【0202】
より具体的には、工程S60A~S110Aでは、第1の実施形態と同様に、正方向の回転の期間に得られた横方向プロファイルを、負方向の回転の期間に得られた横方向プロファイルとは独立して処理する。
【0203】
同様に、工程S60B~S110Bでは、第1の実施形態と同様に、負方向の回転の期間に得られた横方向プロファイルを、正方向の回転の期間に得られた横方向プロファイルとは独立して処理する。
【0204】
このように、フィルムの厚さの2つのパラレル極プロファイルが、所望のシフトに関連する修正なしに、交互に更新され、その結果、互いに対して2×αshiftだけ角度的にシフトされる。
【0205】
初期化工程S55’は、第1の実施形態の工程S55と同様の方法で、それぞれが2つのパラレルプロファイルのうちの1つの専用である2つの異なるカルマンフィルタを初期化することを含む。
【0206】
工程S210の間、コンピュータCALCは、2つのパラレル極プロファイルの相互相関曲線を計算する。
【0207】
工程S220の間、コンピュータCALCは、上記相互相関曲線の最大値の位置を決定し、当該位置の角度値を1/2にして角度修正シフトαshiftを取得する。
【0208】
工程S230の間、コンピュータCALCは、現在の横方向プロファイルに、すなわち最新に取得された横方向プロファイルに、上記角度修正シフトによる修正を適用する。
【0209】
より具体的には、修正は、工程S220で得られた角度修正シフトに等しい振幅の正または負のシフトを、現在の横方向プロファイルについて、工程S50の厚さ取得点の折り角度に適用することを含む。正の方向の回転中に厚さが得られたフィルムの点の折り角度は-αshiftだけシフトされ、負の方向の回転中に厚さが得られたフィルムの点の折り角度は+αshiftだけシフトされる。
【0210】
上記の修正は、回転生成部材の角度位置に適用され、その後で、修正された位置に基づいて折り角度が決定されてもよい。または、上記の修正は、実際に直接折り角度に適用されてもよい。
【0211】
工程S240の間、コンピュータCALCは、第1の実施形態の工程S50~S110を用いて、フィルムの厚さのメイン極プロファイルを得るために、修正された角度位置の横方向プロファイルと、負の方向の回転中に得られた横方向プロファイルと、正の方向の回転中に得られた横方向プロファイル(回転の反転を含むプロファイルを除く)と、をメインカルマンフィルタに供給する。
【0212】
工程S120’において、コンピュータCALCは、第1の実施形態の工程S120における比較と同様の方法で、現在のメイン極プロファイルと、オペレータによって確立されたターゲットプロファイルとの間の比較を行う。
【0213】
工程FBKにおいて、監視制御システムC/Cは、上記比較に応答して、オペレータによって手動で行われるフィルム成形用装置の調整、または、監視制御システムをフィルム成形用装置(例えばダイのアクチュエータACT)に連結するフィードバック制御ループによって自動的に行われる調整の後に、フィルム成形用装置を制御する。
【0214】
なお、第1の実施形態と同様に、フィルムの折り位置の回転は、折りたたみパネルまたは他の回転発生部材によって発生させてもよい。この場合、考慮すべき角度位置は、回転発生部材の角度位置であってもよい。
【0215】
当然のことながら、本発明は、上述の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の範囲を超えることなく変更され得る。
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図6
【国際調査報告】