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特表2023-504068焼成したベーカリー製品を保存する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-01
(54)【発明の名称】焼成したベーカリー製品を保存する方法
(51)【国際特許分類】
   A21D 15/08 20060101AFI20230125BHJP
   A21D 13/00 20170101ALI20230125BHJP
   A21D 2/14 20060101ALI20230125BHJP
【FI】
A21D15/08
A21D13/00
A21D2/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022531023
(86)(22)【出願日】2020-11-26
(85)【翻訳文提出日】2022-05-26
(86)【国際出願番号】 FR2020052178
(87)【国際公開番号】W WO2021105616
(87)【国際公開日】2021-06-03
(31)【優先権主張番号】1913214
(32)【優先日】2019-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506261567
【氏名又は名称】ルサッフル・エ・コンパニー
【氏名又は名称原語表記】LESAFFRE ET COMPAGNIE
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ブリカート,エミリ
(72)【発明者】
【氏名】デルシャンブル,フロランス
(72)【発明者】
【氏名】スピロン,ロラン
【テーマコード(参考)】
4B032
【Fターム(参考)】
4B032DB01
4B032DG02
4B032DK03
4B032DK06
4B032DK12
4B032DK45
4B032DK51
4B032DK54
4B032DL07
4B032DP13
4B032DP25
4B032DP26
4B032DP27
4B032DP33
4B032DP40
4B032DP59
4B032DP71
4B032DP75
(57)【要約】
本発明は、20~55g/Lのエタノール、好ましくは35~50g/Lのエタノールを含有するポーリッシュを使用してスポンジ・ドウタイプの製パン方法により得られる生地を焼成する工程を含む、防カビ性を有する焼成したベーカリー製品を製造する方法であって、焼成する工程の後に、生発酵種および/または生酵母を含む溶液を前記焼成したベーカリー製品の表面に適用する工程を含む方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
20~55g/Lのエタノール、好ましくは35~50g/Lのエタノールを含有するポーリッシュを使用してスポンジ・ドウタイプの製パン方法により得られる生地を焼成する工程を含む、防カビ性を有する焼成したベーカリー製品を製造する方法であって、
焼成する工程の後に、生発酵種および/または生酵母を含む溶液を前記焼成したベーカリー製品の表面上に適用する工程を含む、方法。
【請求項2】
前記ポーリッシュは、穀粉、水、ならびに、任意選択的に、糖および/または酵素を含む組成物を、ワイン酵母、醸造酵母および/またはパン酵母を含む群から選択される少なくとも1つの酵母により発酵させることによって得られることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
酵母は、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)株の培養により得られることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ポーリッシュの発酵時間は、少なくとも4時間、好ましくは少なくとも8時間、さらにより好ましくは少なくとも12時間であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ポーリッシュの穀粉は、穀粉全体の20~65%、好ましくは穀粉全体の25~55%、さらにより好ましくは穀粉全体の30%または50%に相当することを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記焼成したベーカリー製品の表面上に適用される前記生発酵種は、任意の製パン穀粉の発酵種、好ましくは、小麦粉、硬質小麦粉、ライ麦粉、白ライ麦粉またはソバ粉の発酵種である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記生発酵種の組成物は、1200~1900cmの表面積に対して2~8gの液状発酵種、好ましくは3~7gの液状発酵種、さらにより好ましくは4~6gの液状発酵種という割合で、焼成したベーカリー製品の表面上に適用され、
前記液状発酵種は、乾燥物質を15~20%有する、
請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記生酵母の組成物は、1200~1900cmの表面積に対して2~8gの液状組成物、好ましくは3~7gの液状組成物、さらにより好ましくは4~6gの液状組成物という割合で、焼成したベーカリー製品の表面上に適用され、
前記液状組成物は、10~1010CFU/Lのオーダーの量の生酵母、好ましくは10CFU/Lのオーダーの量の生酵母を有する、
請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記生発酵種の組成物は、浸漬または噴霧によって塗られる、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
サワードウブレッド、サンドイッチブレッド、ミルクブレッド、ミルクローフ、ブリオッシュ、バンまたは他の任意の保存寿命が長い製品を製造するための、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
紙パッケージまたは食品グレードのプラスチックフィルム製パッケージで包装することを意図した、焼成したベーカリー製品を製造する方法であって、特に、スライスされた当該焼成したベーカリー製品を製造するための、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
焼成したベーカリー製品の表面上に生発酵種の組成物および/または生酵母の組成物を適用することに加え、20~55g/Lのエタノール、好ましくは35~50g/Lのエタノールを含有するポーリッシュを使用することであって、
前記焼成したベーカリー製品上にカビが出現することを、特に当該焼成したベーカリー製品がスライスされている場合に遅らせるための、使用。
【請求項13】
前記ポーリッシュの穀粉は、前記ポーリッシュがパン中に存在する当該パンの穀粉全体の20~65重量%、好ましくは穀粉全体の25~55重量%、特に穀粉全体の30重量%または50重量%に相当することを特徴とする、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
前記生発酵種の組成物および/または前記生酵母の組成物は、それが中に保存される密閉包装内にさらに噴霧されてもよい、請求項12または13に記載の使用。
【請求項15】
好ましくはスライスされており、
少なくとも21日間の保存寿命、好ましくは少なくとも28日間の保存寿命を有し、
かつ、非天然添加物を含まない、
請求項1~11のいずれか一項に記載の方法で製造された、焼成したベーカリー製品。
【請求項16】
サワードウブレッド、サンドイッチブレッド、ミルクブレッド、ミルクローフ、ブリオッシュ、バンまたは他の任意の保存寿命が長い製品から選択される、請求項16に記載の焼成したベーカリー製品。
【請求項17】
紙パッケージまたは食品グレードのプラスチックフィルム製パッケージから選択される密閉包装に包装された、スライスしたローフである、請求項15または16に記載の焼成したベーカリー製品。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、カビが出現することなく長期間保存できるようにする、焼成したベーカリー製品を製造する方法に関する。
【0002】
本発明の目的は、外観、味および風味を劣化させることも非天然製品を添加することもなく数週間の保存が可能な、プロフェッショナル用および消費者用の防カビ性を有する焼成したベーカリー製品を提供することである。
【0003】
特に、糖の含有量が少ないか、または糖を全く含有しない場合、および、スライスした状態で販売される場合に、製パン製品または焼成したベーカリー製品には、保存中にカビが繁殖しやすい。カビは、数日間保存した後に出現する。
【0004】
カビは、パン屋の空気中に常に存在する汚染物質によるものであり、この汚染物質が、スライスしたパン上に堆積する。ある種のカビは、摂取すれば健康に有害な毒素を産生する。このため、例えば、酢酸または酢酸塩、プロピオン酸またはプロピオン酸塩、および、ソルビン酸またはソルビン酸塩等の防カビ剤または抗真菌剤を、パンの製造時に、パンの組成に、より具体的には、長期保存用のスライスしたパンの組成に加えることが、しばしば不可欠となる。食品分野で従来から使用されているその他の保存料には、安息香酸および安息香酸塩、(PHBまたはパラベンとも称される)p‐ヒドロキシ安息香酸エステルまたはp‐ヒドロキシ安息香酸塩エステルがある。一般に、カビ抑制剤は、弱酸および/または弱酸塩であり、「カビ抑制剤(mold inhibitor)」という表現は、これらの製品のすべてを意味する。これにはすべての弱酸が含まれ、酸性化剤としても使用される。
【0005】
これらの抗真菌剤または防カビ剤は、非天然の保存料である。保存料を含まない製品を求める消費者は、今日、ますます多くなっている。「クリーンラベル(clean label)」の流行は非常に盛んであるため、非天然保存料を避ける必要がある。
【0006】
アルコールもまた、その抗真菌特性ゆえに、焼成した製品上に噴霧されるか、または、焼成した製品内に注入されることがある。しかしながら、アルコールをこのように加えることで得られる製品は、子供、およびアルコールを吸収できない一部の人々には、適したものではない。
【0007】
これらの抗真菌剤は、パン酵母に対し、さまざまな阻害作用を有する。実際に、製パンに最も使用されているのはプロピオン酸カルシウムである。プロピオン酸カルシウムは、パン酵母に対して、穏やかではあるが明確な阻害作用を有する。その使用によって、パンのプルーフタイムはより長いものとなり、また、パンのクラムは、より穴の開いたものとなる。
【0008】
フランスでは「パンドミー(pain de mie)」、米国では「サンドイッチブレッド(sandwich bread)」と称されるパンは、脂肪および糖が含まれた、スライスされたパンである。このパンには長期保存が意図されている。この目的のため、防カビ剤の添加が必要となる。同じことは、ブリオッシュ、ミルクブレッド、バンまたは長期保存用のその他の製パン製品にも当てはまる。
【0009】
一般に、サンドイッチブレッドまたはバンは、間接的な製パン法によって製造される。
【0010】
間接的な製パン法は、レシピ全体から一部の穀粉、水および酵母を使用する第1の予備発酵工程を含む方法である。フランスのベーカリー用語では、この第1の予備発酵工程は、生地の粘稠性に応じて、酵母発酵種またはポーリッシュ(poolish)またはスポンジと称される。パン酵母による予備発酵を伴うこれらの間接的な方法は、フランスではほとんど利用されていないものの、アメリカ合衆国(USA)では主要な方法として利用されている。上記工程は、酵母発酵種(酵母によるアルコール発酵におけるペースト状の塊形態の予備発酵体)の形成に対応しており、スポンジという米国用語でより良く知られている。
【0011】
スポンジ(sponge)は、レシピ全体において使用される穀粉のうちの、一般には少なくとも40%と、レシピ全体において使用される酵母および水のうちの大部分とによる、第1の予備発酵工程を意味する。生地(ドウ)(フランス語では「pa^te」)という用語は、製パンの全工程(パンの焼成までの最後の工程)に対応する。
【0012】
予備発酵工程の利点は、当該工程によって、得られるパンの味および食感を改善する代謝産物の一式を、酵母が産生できるようになることである。一般に、レシピ全体の穀粉のうちより高い割合の穀粉をスポンジが含有するにつれて、これはより顕著になる。
【0013】
この予備発酵工程は、酵母の発酵能力を最大限に発現することを意図するものである。酵母は、発酵の最初の45分間に、環境に対して非常に敏感であると考えられている(Baking Science and Technology、E.J. Pyler、第二巻、629頁;591頁の標準製法も参照)。そのため、製パンの第2の工程の間に、すなわち生地工程の間に、カビ抑制剤または複数のカビ抑制剤を添加することが、一般的なルールである。この第2の、最後の工程には、従来の製パン工程が含まれる。すなわち、この第2の、最後の工程には、特に、全ての材料(例えば、穀粉、水、塩、酵母、ポーリッシュ等)の混捏、生地の分割、成形および成型、オーブン中での最終発酵またはプルーフタイム、ならびに焼成が含まれる。このように、カビ抑制剤または複数のカビ抑制剤は一般に、生地工程として上に定められた工程において添加される。
【0014】
パン、および酵母で膨らませるその他の製品に、カビ抑制剤を使用することには、当該カビ抑制剤によって、望ましからぬカビが阻害されるのと同時に、酵母細胞が阻害されてしまう、という問題が伴う。この結果、酵母の活性およびガスの発生が低減してしまう。
【0015】
これらの問題を克服するために、さまざまな方法が用いられてきた。上述のように、最も一般的なのは、抑制剤を、必ず生地工程のときに添加するようにして、スポンジまたは液状培養スターターの工程のときには決して添加しないことである。これは、この第1の工程中に、抑制剤が有害に作用する可能性が最も高いからである。しかしながら、この方法にもまた、その限界が示されつつある。
【0016】
これらの非天然抑制剤の使用は、現行の「クリーンラベル」の流行ゆえに不適切である。さらに、たとえアルコールに防カビ活性の効果があることが証明されたとしても、アルコールの使用は全ての人々に適するものではない。酢は、数少ない「クリーンラベル」代替物のうちの1つであるものの、効果がより小さい。
【0017】
カビとの闘いのための他の手段の中から、WO2009/097333に記載の手段と、US2003/0161911に記載の手段とを挙げることができる。
【0018】
WO2009/097333によって提案された保存方法は、保存対象の製品上に生酵母を含む組成物を適用する工程から構成される。この適用は、保護対象の製品を包装する直前に、任意の手段によって実施されてよい。しかしながら、この方法による保存期間は、最大でも21日間である。
【0019】
US2003/0161911には、少なくとも5%の糖を含む生地からパンを製造することを意図した酵母株が記載されている。US2003/0161911にはまた、カビの繁殖に対して十分な耐性を与える1.5%(w/w)未満のエタノールレベルを有するパンを得ることを可能にする、対応する製パン方法も記載されている。
【0020】
パン、特にスライスしたローフ(パン塊)の保存時間の点において市場のニーズを満たすものではなく、また、パン屋の仕事をより複雑にし得るものである限り、上述の解決策は完全に満足できるものではない。プロフェッショナルおよび消費者の要求はますます厳しくなっており、特性および官能特性がすべて維持されつつ、非天然製品の添加なしに数週間良好な保存状態にあることが可能な、スライスしたローフの製造が求められている。
【0021】
多数の実験によって、本発明者らは、スポンジ・ドウタイプの製パン方法により得られる生地を焼成(加熱調理)する工程を含む方法によってパンを製造し、かつ、生発酵種および/または生酵母を含む組成物を表面に適用する(塗る)ことによってパンを処理する場合、フレンチサンドイッチブレッドあるいはアメリカンブレッド等のスライスしたローフ上のカビの出現が少なからず遅くなることを見出した。
【0022】
〔発明の概要〕
20~55g/Lのエタノール、好ましくは35~50g/Lのエタノールを含有するポーリッシュを使用してスポンジ・ドウタイプの製パン方法により得られる生地を焼成する工程と、生発酵種(生きた発酵種)および/または生酵母(生きた酵母)を含む組成物の焼成したパン上への適用と、を含む、防カビ性を有する焼成したベーカリー製品を製造する方法が提案される。本発明の有利な一実施形態によれば、前記ポーリッシュは、混捏工程において、製パン材料の全てと混ぜ合わされる。
【0023】
別の態様によれば、焼成したベーカリー製品の表面上に生発酵種の組成物および/または生酵母の組成物を適用することに加え、20~55g/Lのエタノール、好ましくは35~50g/Lのエタノールを含有するポーリッシュを使用することであって、
前記焼成したベーカリー製品上にカビが出現することを、特に当該焼成したベーカリー製品がスライスされている場合に遅らせるための使用が提案される。
【0024】
さらに別の態様によれば、本発明は、好ましくはスライスされており、少なくとも21日間の保存寿命、好ましくは少なくとも28日間の保存寿命を有し、かつ、非天然添加物を含まない、焼成したベーカリー製品に関する。
【0025】
〔発明の開示〕
本発明は、20~55g/Lのエタノール、好ましくは35~50g/Lのエタノールを含有するポーリッシュを使用してスポンジ・ドウタイプの製パン方法により得られる生地を焼成する工程と、生発酵種および/または生酵母を含む組成物の焼成したパン上への適用と、を含む、防カビ性を有する焼成したベーカリー製品を製造する方法に関する。
【0026】
この方法は、例えばサンドイッチブレッドまたはアメリカンブレッド等の、糖および脂肪が含まれる焼成したベーカリー製品に対して、特に有用である。多くの場合、これらの焼成したベーカリー製品は、包装された、スライスした製品の形態で、顧客に提供される。それらは、数週間保存可能であることが重要である。
【0027】
本発明の意味において、「保存」とは、焼成したベーカリー製品の表面上にカビが繁殖することなく、当該焼成したベーカリー製品の官能特性が少なくとも21日間、好ましくは少なくとも28日間、室温にて維持されることを意味する。
【0028】
焼成する工程の後に、生発酵種および/または生酵母を適用することを、ポーリッシュによる間接的な方法と組み合わせて用いることで、カビの形成を遅らせつつ焼成したベーカリー製品の保存寿命を増大させることが可能になる。
【0029】
予備発酵体(プレファーメント)またはポーリッシュまたはスポンジという用語は、以下では、区別なしに使用される。
【0030】
本発明による方法において使用されるポーリッシュ中のエタノール含有量がたとえ高いものであったとしても、最終的に得られる焼成したベーカリー製品の官能特性への影響はない。多くのエタノール、あるいは大部分のエタノールは、焼成工程の間に蒸発する。焼成工程後のエタノール含有量は、数%(w/w)のオーダーであり、一般には0.4~3%(w/w)、好ましくは0.5~1.5%(w/w)である。
【0031】
本発明の一実施形態によれば、前記ポーリッシュは、穀粉、水、ならびに、任意選択的に、糖および/または酵素を含む組成物を、ワイン酵母、醸造酵母および/またはパン酵母を含む群から選択される少なくとも1つの酵母により発酵させることによって得られる。本発明によれば、「20~55g/Lのエタノール、好ましくは35~50g/Lのエタノールを含有するポーリッシュ」とは、穀粉、水、ならびに、任意選択的に、糖および/または酵素を含む組成物を、ワイン酵母、醸造酵母および/またはパン酵母により発酵させる間に、20~55g/Lのエタノール、好ましくは35~50g/Lのエタノールを生成するポーリッシュを意味する。
【0032】
穀粉、水、ならびに、任意選択的に、糖および/または酵素を含む組成物の発酵に使用される、ワイン酵母、醸造酵母および/またはパン酵母は、「予備発酵酵母」と称されてもよい。好ましくは、この予備発酵酵母は、Saccharomyces(サッカロミセス)株の培養、好ましくはSaccharomyces cerevisiae(サッカロミセス・セレビシエ)株の培養によって得られる酵母である。例えば、以下の市販品を挙げることができる:Safale S04、Saflager W34/70、Safale US-05、Safbrew F2、Saflager S-189、Safbrew T58、Safoeno BC S103、Safale BE-134、Safale BE-256、Safale K97、Safoeno CK S102、Safbrew WB06、Safale S23、Florapan Lallemand、UCLM S377、Saf Instant Red、Saf Instant Gold、Hirondelle Bleue圧搾酵母、Hirondelle Or圧搾酵母。
【0033】
本発明の一実施形態によれば、ポーリッシュ製造工程の持続時間、すなわち発酵時間は、スポンジ・ドウ法に係る予備発酵工程の従来の持続時間、すなわち3~12時間と同様であってよいが、これより長くてもよい。この持続時間は一般に、少なくとも4時間、または、少なくとも8時間、さらには少なくとも12時間である。この持続時間は、24時間までであってもよい。一例として、18時間という持続時間、好ましくは16時間という持続時間を挙げることができる。さらに一例として、4時間という持続時間を挙げてもよいだろう。しかしながら、時間が短すぎる(3時間未満)場合、保存効果が最適でない可能性がある。しかしながら、経済的な理由から、24時間を超える持続時間が推奨されないことは明らかである。
【0034】
本発明の別の実施形態によれば、ポーリッシュ/全穀粉の比率は、パンの官能特性を変更しないように調整される。
【0035】
特に、前記ポーリッシュ中の穀粉の量は、穀粉全体の20~65%、好ましくは穀粉全体の25~55%、より好ましくは穀粉全体の30%または50%を占める。20%未満では、防カビ効果が不十分となる可能性があるだろう。
【0036】
本発明による製造方法は、生発酵種および/または生酵母を含む組成物を、前記焼成したベーカリー製品の表面上に適用する工程を含む。
【0037】
一実施形態によれば、前記焼成したベーカリー製品の表面上に適用される組成物は、生発酵種と生酵母とを含んでもよい。さらに別の実施形態によれば、前記焼成したベーカリー製品の表面上に適用される組成物は、生発酵種または生酵母を含んでもよい。
【0038】
本発明によれば、「生発酵種を含む組成物」とは、その製造方法とは無関係に、液状発酵種の任意の組成物を意味する。
【0039】
本発明の一実施形態によれば、使用される前記発酵種は、製パン穀粉の発酵種、例えば、小麦粉、硬質小麦粉(強力粉)、ライ麦粉、白ライ麦粉またはソバ粉の発酵種である。
【0040】
本発明の別の実施形態によれば、液状生発酵種の組成物は、1200~1900cmの総表面積に対して2~8gの液状発酵種、好ましくは3~7gの液状発酵種、さらにより好ましくは4~6gの液状発酵種という割合で、焼成したベーカリー製品の表面上に適用され、前記液状発酵種は、乾燥物質を15~20%有する。
【0041】
前記焼成したベーカリー製品の表面上に適用される本発明による生酵母の組成物において、当該酵母は、前記ポーリッシュに使用されるものと同じものであるか、あるいは異なるものである。当該酵母は、ワイン酵母、醸造酵母および/またはパン酵母である。
【0042】
好ましくは、この酵母は、Saccharomyces株の培養、好ましくはSaccharomyces cerevisiae株の培養によって得られる。例えば、以下の市販品を挙げることができる:Safale S04、Saflager W34/70、Safale US-05、Safbrew F2、Saflager S-189、Safbrew T58、Safoeno BC S103、Safale BE-134、Safale BE-256、Safale K97、Safoeno CK S102、Safbrew WB06、Safale S23、Florapan Lallemand、UCLM S377、Saf Instant Red、Saf Instant Gold、Hirondelle Bleue圧搾酵母、Hirondelle Or圧搾酵母。
【0043】
本発明のさらに別の実施形態によれば、液状生酵母の組成物は、1200~1900cmの総表面積に対して2~8gの液状組成物、好ましくは3~7gの液状組成物、さらにより好ましくは4~6gの液状組成物という割合で、焼成したベーカリー製品の表面上に適用され、前記液状組成物は、10~1010CFU/Lのオーダーの量の生酵母、好ましくは10CFU/Lのオーダーの量の生酵母を有する。
【0044】
本発明のさらに別の実施形態によれば、前記組成物は、焼成したベーカリー製品の表面全体上に適用される。特に、スライスされた焼成したベーカリー製品の場合、有利には、当該組成物はスライスの全ての外表面上に適用される。
【0045】
生発酵種の組成物および/または液状酵母の組成物は、噴霧または浸漬等の、任意の公知の手段によって適用されても(塗られても)よい。好ましい手段は、噴霧である。
【0046】
本発明による方法は専ら、サワードウブレッド、サンドイッチブレッド、ミルクブレッド、ミルクローフ、ブリオッシュ、バンまたは他の任意の保存寿命が長い製品の製造に適している。
【0047】
特に、本発明に係る方法にしたがって製造される前記焼成したベーカリー製品は、紙パッケージまたは食品グレードのプラスチックフィルムのパッケージに包装されることが意図されている。
【0048】
特定の一実施形態によれば、本発明の方法は、前記焼成したベーカリー製品を包装する工程と、生発酵種の組成物および/または生酵母の組成物を、前記パッケージが密閉される前に当該パッケージ内に噴霧する工程と、をさらに含む。
【0049】
別の態様によれば、焼成したベーカリー製品の表面上に生発酵種の組成物および/または生酵母の組成物を適用することに加え、20~55g/Lのエタノール、好ましくは35~50g/Lのエタノールを含有するポーリッシュを使用することであって、前記焼成したベーカリー製品上にカビが出現することを、特に当該焼成したベーカリー製品がスライスされている場合に遅らせるための使用が提案される。
【0050】
本発明の有利な一実施形態によれば、前記ポーリッシュの穀粉は、前記ポーリッシュがパン中に存在する当該パンの穀粉全体の20~65重量%、好ましくは少なくとも穀粉全体の25~55重量%、特に穀粉全体の30重量%または50重量%に相当する。
【0051】
別の実施形態によれば、使用される前記ポーリッシュは、少なくとも、4時間、好ましくは8時間、さらにより好ましくは12時間発酵したポーリッシュである。
【0052】
別の実施形態によれば、前記生発酵種の組成物および/または前記生酵母の組成物は、それが中に保存される密閉包装内にさらに噴霧されてもよい。
【0053】
さらに別の態様によれば、本発明はさらに、好ましくはスライスされており、少なくとも21日間の保存寿命、好ましくは少なくとも28日間の保存寿命を有し、かつ、非天然添加物を含まない、焼成したベーカリー製品に関する。
【0054】
本発明の別の実施形態によれば、好ましくはスライスした、前記焼成したベーカリー製品は、サワードウブレッド、サンドイッチブレッド、ミルクローフ、ミルクブレッド、ブリオッシュ、バン、または他の任意の保存寿命が長い製品から選択される。
【0055】
本発明の一実施形態によれば、前記焼成したベーカリー製品は、スライスされており、紙パッケージまたは食品グレードのプラスチックフィルムのパッケージの密閉包装に包装される。
【0056】
前記焼成したベーカリー製品は、上述の方法よって製造されてもよい。
【0057】
単に例示の目的で与えられる以下の実施例と、図面とを用いて、本発明をより詳細に説明する。
【0058】
図1
図1]は、実施例1にしたがって製造されたローフの保存寿命を示すチャートである。
【0059】
図2
図2]は、実施例2にしたがって製造されたローフの保存寿命を示すチャートである。
【0060】
図3
図3]は、実施例3にしたがって製造されたローフの保存寿命を示すチャートである。
【0061】
図4
図4]は、実施例4にしたがって製造されたローフの保存寿命を示すチャートである。
【0062】
図5
図5]は、実施例5にしたがって製造されたローフの保存寿命を示すチャートである。
【0063】
〔実施例〕
[実施例1]
本出願人によって使用された基準となる方法は、スポンジ・ドウ法であり、スポンジ工程および生地(ドウ)工程は、以下の特徴を有する。
【0064】
この方法を用いて、4バッチ(焼き分)のサンドイッチブレッドを製造した。各バッチは、8つのサンドイッチローフを含む。第1のバッチは、ポーリッシュを有しない参照バッチである。このバッチでは、焼成したサンドイッチローフ1つあたり4gの割合で、焼成したサンドイッチローフ上にアルコールを噴霧した。その他の3つのバッチは、本発明によるものであり、各々、ポーリッシュ中で異なる酵母を使用する。すなわち:
バッチ1:Safoeno UCLM S377の名称でLesaffre(ルサッフル)により市販されている酵母、
バッチ2:Safbrew T58の名称でLesaffreにより市販されている酵母、
バッチ3:Safbrew F2の名称でLesaffreにより市販されている酵母。
【0065】
次いで、これらの各バッチのポーリッシュにより得られた焼成したサンドイッチローフに、Livendo(登録商標)LVBD発酵種組成物を噴霧する。
【0066】
「Hirondelle bleue(登録商標)」圧搾酵母(以下、LP HBと記す)を、全てのバッチについて、生地に使用した。Ibis Violet(登録商標)改良剤は、Lesaffreによって市販されている製パン改良剤である。Ibis Violet(登録商標)は、乳化剤から構成され、ローフの体積および生地の保存寿命(shelf life)をより良好にする。「Enz Pro 404」は、α‐アミラーゼとアミログルコシダーゼとの混合物の市販品である。
【0067】
各工程で使用する材料は以下の通りである。
【0068】
【表1】
【0069】
ポーリッシュを30℃で16時間発酵させる。
【0070】
(噴霧プロトコル)
Dubor(uはウムラウト付き)の噴霧器(TSA5 Dubor手動マイクロスプレー装置)を用いて、Livendo(登録商標)LVBD発酵種の噴霧を行う。滅菌上の注意=オーブン内のグリルを滅菌する+ローフを取り扱う前にアルコールで手を清浄にする。噴霧は、サンドイッチローフのすべての面に対して、製品から20~30cmの距離で行う。噴霧する発酵種の溶液の意図される総量は、1ローフあたり約4~5gである。ローフは、スライスせずに噴霧し、(中心温度(core temperature)T=35℃で)90分間湿気を帯びさせた後、個別に包装する。ローフをベーカリーの保存棚に、室温で保存する。
【0071】
(保存所の監視)
サンドイッチローフ上のカビの繁殖を目視評価する。カビあり/なしのローフの個数を毎日記録する。その結果を図1に示す。ローフは3つのバッチに分かれている;実施例1のように、各バッチを処理、包装して保存する。カビの形成は毎日、肉眼で観察する。
【0072】
結果を図1に示す。図1から、ポーリッシュに使用する酵母の性質にかかわらず、発酵種を噴霧することによって処理した、ポーリッシュを有するローフは、アルコールを噴霧することによって処理した、ポーリッシュを有しないローフよりも、長い保存寿命を有することが分かる。
【0073】
[実施例2]
本出願人によって使用された基準となる方法は、スポンジ・ドウ法であり、スポンジ工程および生地工程は、以下の特徴を有する。
【0074】
この方法を用いて、3バッチのサンドイッチブレッドを製造した。各バッチは、8つのサンドイッチローフを含む。第1のバッチは、ポーリッシュを有しない参照バッチである。このバッチでは、焼成したサンドイッチローフ1つあたり4gの割合で、焼成したサンドイッチローフ上にアルコールを噴霧した。その他の2つのバッチは、本発明によるものであり、各々、焼成したサンドイッチローフ上に噴霧する際、異なる発酵種を使用する。すなわち:
バッチ1:Livendo(登録商標)LVBD硬質小麦発酵種(+ポーリッシュ中にはSaf Instantの名称でLesaffreにより市販されている酵母)、
バッチ2:Livendo(登録商標)LVSNソバ(sarrasin)発酵種(+ポーリッシュ中にはSaf Instant(登録商標)の名称でLesaffreにより市販されている酵母)。
【0075】
「Hirondelle bleue(登録商標)」圧搾酵母(以下、LP HBと記す)を、全てのバッチについて、生地に使用した。
【0076】
各工程で使用する材料は以下の通りである。
【0077】
【表2】
【0078】
ポーリッシュを30℃で16時間発酵させる。
【0079】
(噴霧プロトコル)
Duborの噴霧器(TSA5 Dubor手動マイクロスプレー装置)を用いて、Livendo(登録商標)LVBD発酵種およびLivendo(登録商標)LVSN発酵種の噴霧を行う。滅菌上の注意=オーブン内のグリルを滅菌する+ローフを取り扱う前にアルコールで手を清浄にする。噴霧は、サンドイッチローフのすべての面に対して、製品から20~30cmの距離で行う。噴霧する発酵種の溶液の意図される総量は、1ローフあたり約4~5gである。ローフは、スライスせずに噴霧し、(中心温度(core temperature)T=35℃で)90分間湿気を帯びさせた後、個別に包装する。ローフをベーカリーの保存棚に、室温で保存する。
【0080】
(保存所の監視)
サンドイッチローフ上のカビの繁殖を目視評価する。カビあり/なしのローフの個数を毎日記録する。
【0081】
目視評価の結果を図2に示す。図2から、噴霧に使用する生発酵種にかかわらず、発酵種を噴霧することによって処理した、ポーリッシュを有するローフは、アルコールを噴霧することによって処理した、ポーリッシュを有しないローフよりも、長い保存寿命を有することが分かる。
【0082】
[実施例3]
上記の方法を用いて、3バッチのサンドイッチブレッドを製造した。各バッチは、8つのサンドイッチローフを含む。第1のバッチは、ポーリッシュを有しない参照バッチである。このバッチでは、焼成したサンドイッチローフ1つあたり4gの割合で、焼成したサンドイッチローフ上にアルコールを噴霧した。その他の2つのバッチは、本発明によるものであり、さまざまな含水量による予備発酵を用いる(この予備発酵の工程で製造される酵母発酵種は、含水量に応じて、ポーリッシュまたはスポンジと称される):
ポーリッシュを製造するためのレシピおよびプロセス:
(レシピ)
‐従来の小麦粉 100%、
‐水(32℃) 100%、
‐Enz Pro 404 1%、
‐SAF Instant(登録商標)酵母 0.5%、
‐グルコース 10%、
(プロセス)
‐24時間の発酵、
‐30℃、
‐撹拌なし、
スポンジを製造するためのレシピおよびプロセス:
(レシピ)
従来の小麦粉 100%、
‐水(32℃) 50%、
‐Enz Pro 40 1%、
‐SAF Instant(登録商標) 0.5%、
‐グルコース 10%、
(プロセス)
‐24時間の発酵、
‐30℃、
‐撹拌なし。
【0083】
以下の表3は、ポーリッシュを有しないサンドイッチブレッド(対照)のレシピおよびプロセスを示す。
【0084】
【表3】
【0085】
【表4】
【0086】
以下の表5は、ポーリッシュまたはスポンジを有するサンドイッチブレッドのレシピおよびプロセスを示す。
【0087】
【表5】
【0088】
(噴霧プロトコル)
手動噴霧器を用いて、Livendo LVBD発酵種の手動噴霧を行う。滅菌上の注意=オーブン内のグリルを滅菌する+ローフを取り扱う前にアルコールで手を清浄にする。噴霧は、サンドイッチローフのすべての面に対して、製品から20~30cmの距離で行う。LVBD発酵種をあらかじめ遠心分離して、噴霧器ノズルの目詰まりを防止した。園芸噴霧器により噴霧する発酵種の溶液の意図される総量は、約4~5gである。ローフは、スライスせずに噴霧し、(中心温度(core temperature)T=35℃で)90分間湿気を帯びさせた後、個別に包装する。ローフをベーカリーの保存棚に、室温で保存する。
【0089】
(保存所の監視)
サンドイッチローフ上のカビの繁殖を目視評価する。カビあり/なしのローフの個数を毎日記録する。注意:工業サンドイッチローフは、従来、21~28日の賞味期限(best before date:BBD)を有する。
【0090】
目視の観察を行った。結果を図3に示す。図3から、予備発酵における含水量にかかわらず(ポーリッシュまたはスポンジ)、発酵種を噴霧することによって処理した、ポーリッシュまたはスポンジを有するローフは、アルコールを噴霧することによって処理した、ポーリッシュを有しないローフよりも、長い保存寿命を有することが分かる。
【0091】
[実施例4]
本出願人によって使用された基準となる方法は、スポンジ・ドウ法であり、スポンジ工程および生地工程は、以下の特徴を有する。
【0092】
この方法を用いて、2バッチのサンドイッチブレッドを製造した。各バッチは、8つのサンドイッチローフを含む。第1のバッチは、ポーリッシュを有しない参照バッチである。このバッチでは、焼成したサンドイッチローフ1つあたり4gの割合で、焼成したサンドイッチローフ上にアルコールを噴霧した。他方のバッチは、本発明によるものであり、Saf Instant酵母を接種したポーリッシュが混ぜ合わされ、生酵母の溶液(30℃の水中で、各々0.01%w/wずつ添加したSaf Instant酵母とSaccharomyces chevalieriとの混合物を希釈したもの)が、焼成した製品に噴霧される。
【0093】
「Hirondelle bleue(登録商標)」圧搾酵母(以下、LP HBと記す)を、全てのバッチについて、生地に使用した。
【0094】
各工程で使用する材料は以下の通りである:
【0095】
【表6】
【0096】
ポーリッシュを30℃で16時間発酵させる。
【0097】
(噴霧プロトコル)
Duborの噴霧器(TSA5 Dubor手動マイクロスプレー装置)を用いて、生酵母の溶液の噴霧を行う。滅菌上の注意=オーブン内のグリルを滅菌する+ローフを取り扱う前にアルコールで手を清浄にする。噴霧は、サンドイッチローフのすべての面に対して、製品から20~30cmの距離で行う。噴霧する酵母の溶液の意図される総量は、1ローフあたり約4~5gである。ローフは、スライスせずに噴霧し、(中心温度(core temperature)T=35℃で)90分間湿気を帯びさせた後、個別に包装する。ローフをベーカリーの保存棚に、室温で保存する。
【0098】
(保存所の監視)
サンドイッチローフ上のカビの繁殖を目視評価する。カビあり/なしのローフの個数を毎日記録する。その結果を図4に示す。カビの形成は毎日、肉眼で観察する。
【0099】
結果を図4に示す。図4から、酵母の溶液を噴霧することによって処理した、ポーリッシュを有するローフは、アルコールを噴霧することによって処理した、ポーリッシュを有しないローフよりも、長い保存寿命を有することが分かる。
【0100】
[実施例5]
本実施例は、ポーリッシュと、焼成したベーカリー製品の表面への生発酵種を含む溶液の噴霧との間の相乗効果を例証するものである。
【0101】
本出願人によって使用された基準となる方法は、スポンジ・ドウ法であり、スポンジ工程および生地工程は、以下の特徴を有する。
【0102】
この方法を用いて、4バッチのサンドイッチブレッドを製造した。各バッチは、8つのサンドイッチローフを含む。第1のバッチは、ポーリッシュを有しない参照バッチである。このバッチでは、焼成したサンドイッチローフ1つあたり4gの割合で、焼成したサンドイッチローフ上にアルコールを噴霧した。第2のバッチでは、サンドイッチローフは、Safbrew F2の名称でLesaffreにより市販されている酵母から出発してスポンジ・ドウ法により製造されているが、焼成工程の後に噴霧をしていない。第3のバッチは、サンドイッチローフにポーリッシュが含まれず、Livendo(登録商標)LVBD発酵種組成物が、焼成工程の後に噴霧されている。第4のバッチは、本発明によるものである;Safbrew F2の名称でLesaffreにより市販されている酵母から出発して、ポーリッシュが製造されている。次に、このポーリッシュにより得られる焼成したサンドイッチブレッドに、Livendo(登録商標)LVBD発酵種組成物を噴霧している。
【0103】
「Hirondelle bleue(登録商標)」圧搾酵母(以下、LP HBと記す)を、全てのバッチについて、生地に使用した。
【0104】
各工程で使用する材料は以下の通りである。
【0105】
【表7】
【0106】
ポーリッシュを30℃で24時間発酵させる。
【0107】
【表8】
【0108】
(噴霧プロトコル)
Duborの噴霧器(TSA5 Dubor手動マイクロスプレー装置)を用いて、Livendo(登録商標)LVBD発酵種の噴霧を行う。滅菌上の注意=オーブン内のグリルを滅菌する+ローフを取り扱う前にアルコールで手を清浄にする。噴霧は、サンドイッチローフのすべての面に対して、製品から20~30cmの距離で行う。噴霧する発酵種の溶液の意図される総量は、1ローフあたり約4~5gである。ローフは、スライスせずに噴霧し、(中心温度(core temperature)T=35℃で)90分間湿気を帯びさせた後、個別に包装する。ローフをベーカリーの保存棚に、室温で保存する。
【0109】
(保存所の監視)
サンドイッチローフ上のカビの繁殖を目視評価する。カビの形成は毎日、肉眼で観察する。カビあり/なしのローフの個数を毎日記録する。
【0110】
注意:工業サンドイッチローフは、従来、21~28日のBBDを有する。
【0111】
視覚的評価の結果を図5に示す。図5から、ポーリッシュを有する、発酵種を噴霧しないサンドイッチローフ、および、ポーリッシュを有しない、発酵種を噴霧したサンドイッチローフは、ポーリッシュを有する、発酵種を噴霧したサンドイッチローフよりも、早期にカビが出現することが分かる。これは、ポーリッシュと、発酵種の噴霧との間の相乗効果の証拠である。天然物のみを用いて防カビ効果を増大することを可能にするのは、2つの要素(ポーリッシュ+噴霧)の組み合わせ作用である。
【図面の簡単な説明】
【0112】
図1】実施例1にしたがって製造されたローフの保存寿命を示すチャートである。
図2】実施例2にしたがって製造されたローフの保存寿命を示すチャートである。
図3】実施例3にしたがって製造されたローフの保存寿命を示すチャートである。
図4】実施例4にしたがって製造されたローフの保存寿命を示すチャートである。
図5】実施例5にしたがって製造されたローフの保存寿命を示すチャートである。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】