(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-01
(54)【発明の名称】遷移金属化合物、これを含む触媒組成物およびこれを用いるオレフィン重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07F 17/00 20060101AFI20230125BHJP
C08F 4/6592 20060101ALI20230125BHJP
C08F 10/02 20060101ALI20230125BHJP
C07F 19/00 20060101ALI20230125BHJP
【FI】
C07F17/00
C08F4/6592
C08F10/02
C07F19/00 CSP
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022531481
(86)(22)【出願日】2020-12-01
(85)【翻訳文提出日】2022-05-27
(86)【国際出願番号】 IB2020061300
(87)【国際公開番号】W WO2021111282
(87)【国際公開日】2021-06-10
(31)【優先権主張番号】10-2019-0159015
(32)【優先日】2019-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0164792
(32)【優先日】2020-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515298556
【氏名又は名称】サビック エスケー ネクスレン カンパニー ピーティーイー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(72)【発明者】
【氏名】シン ドンチョル
(72)【発明者】
【氏名】オ ヨンオク
(72)【発明者】
【氏名】キム ミンジ
(72)【発明者】
【氏名】キム ミジ
(72)【発明者】
【氏名】チョン サン ベ
(72)【発明者】
【氏名】パク ドンキュ
(72)【発明者】
【氏名】シム チョン シク
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ミンホ
(72)【発明者】
【氏名】シン デ ホ
【テーマコード(参考)】
4H050
4J100
4J128
【Fターム(参考)】
4H050AA01
4H050AA03
4H050AB40
4J100AA02P
4J100AA03Q
4J100AA04Q
4J100AA07Q
4J100AA15Q
4J100AA16Q
4J100AA17Q
4J100AA19Q
4J100AA21Q
4J100CA01
4J100CA03
4J100CA04
4J100DA01
4J100DA13
4J100DA14
4J100DA42
4J100FA10
4J100FA19
4J100FA28
4J100FA29
4J100FA30
4J128AA01
4J128AC01
4J128AC10
4J128AC20
4J128AC28
4J128AD08
4J128AD11
4J128AD13
4J128BA00A
4J128BA02B
4J128BB00A
4J128BB01B
4J128BC12B
4J128BC13B
4J128BC14B
4J128BC15B
4J128BC16B
4J128BC17B
4J128BC24B
4J128BC25B
4J128EA01
4J128EB02
4J128EB03
4J128EB04
4J128EB05
4J128EB07
4J128EB08
4J128EB09
4J128EB10
4J128EC01
4J128EC02
4J128FA02
4J128FA07
4J128GA01
4J128GA05
4J128GA08
4J128GB01
(57)【要約】
本発明は、遷移金属化合物、これを含む触媒組成物およびこれを用いるオレフィン重合体の製造方法を提供し、特定の位置に特定の官能基が導入された本発明の遷移金属化合物は、溶解度および触媒活性が高く、これを用いるオレフィン重合体の製造方法は、単純な工程で容易に優れた物性を有するオレフィン重合体を製造することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表される、遷移金属化合物。
[化学式1]
【化1】
前記化学式1中、
Mは、周期表第4族の遷移金属であり、
Aは、CまたはSiであり、
Arは、置換されたアリールであり、前記Arのアリールの置換基は、C1-C20アルキル、C3-C20シクロアルキル、C6-C20アリール、C6-C20アリールC1-C20アルキル、C1-C20アルコキシ、C6-C20アリールオキシ、C1-C20アルキルアミノ、C6-C20アリールアミノ、C1-C20アルキルチオおよびC6-C20アリールチオからなる群から選択される一つ以上であり、前記Arの置換されたアリールは、14個以上の炭素数を有し、
Rは、C1-C20アルキル、C1-C20アルコキシ、C6-C20アリールまたはC6-C20アリールオキシであり、
R
1~R
4は、互いに独立して、水素またはC1-C20アルキルであり、
R
11~R
18は、互いに独立して、水素、C1-C20アルキル、C1-C20アルコキシ、C3-C20シクロアルキル、C6-C20アリール、C6-C20アルC1-C20アルキル、C1-C20アルキルC6-C20アリール、C1-C20アルキルシリルまたはC6-C20アリールシリルであるか、各置換基は、隣接した置換基と縮合環を含んでいるか含んでいないC3-C12アルキレンまたはC3-C12アルケニレンで連結されて脂環族環を形成するか、単環または多環の芳香族環を形成してもよく、
R
21およびR
22は、互いに独立して、C6-C20アリールであり、
前記Rのアルキル、アルコキシ、アリールおよびアリールオキシ、R
11~R
18のアルキル、アルコキシ、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール、アルキルシリル、アリールシリル、脂環族環または芳香族環およびR
21およびR
22のアリールは、C1-C20アルキル、C3-C20シクロアルキル、C6-C20アリール、C6-C20アルC1-C20アルキル、C1-C20アルコキシ、C6-C20アリールオキシ、C3-C20アルキルシロキシ、C6-C20アリールシロキシ、C1-C20アルキルアミノ、C6-C20アリールアミノ、C1-C20アルキルチオ、C6-C20アリールチオ、C1-C20アルキルホスフィンおよびC6-C20アリールホスフィンからなる群から選択される一つ以上の置換基でさらに置換されてもよい。
【請求項2】
前記化学式1において、Arは、炭素数8個以上のアルキルで置換されたC6-C20アリールであり、Rは、C1-C20アルキル、C1-C20アルキルC6-C20アリールオキシまたはC6-C20アリールC1-C20アルキルである、請求項1に記載の遷移金属化合物。
【請求項3】
前記化学式1において、Mは、チタン、ジルコニウムまたはハフニウムであり、
Rは、互いに独立して、C1-C4アルキル、C8-C20アルキルC6-C12アリールオキシまたはC6-C12アリールC1-C4アルキルであり、
R
1~R
4は、互いに独立して、水素またはC1-C4アルキルであり、
R
11~R
18は、水素である、請求項1に記載の遷移金属化合物。
【請求項4】
前記化学式1の遷移金属化合物は、下記化学式2または化学式3で表される、請求項1に記載の遷移金属化合物。
[化学式2]
【化2】
[化学式3]
【化3】
前記化学式2および化学式3中、
Mは、チタン、ジルコニウムまたはハフニウムであり、
Ar
1およびAr
2は、互いに独立して、置換されたC6-C20アリールであり、前記Arのアリールの置換基は、C1-C20アルキル、C3-C20シクロアルキル、C6-C20アリール、C6-C20アリールC1-C20アルキル、C1-C20アルコキシ、C6-C20アリールオキシ、C1-C20アルキルアミノ、C6-C20アリールアミノ、C1-C20アルキルチオまたはC6-C20アリールチオであり、前記置換されたC6-C20アリールは、C14以上の炭素数を有し、
Aは、CまたはSiであり、
R
1~R
4は、互いに独立して、水素またはC1-C4アルキルであり、
R
21およびR
22は、互いに独立して、C6-C20アリールまたはC1-C4アルキルで置換されたC6-C20アリールであり、
R
31は、C1-C20アルキルまたはC6-C20アリールC1-C20アルキルである。
【請求項5】
前記遷移金属化合物は、下記化合物から選択される、請求項1に記載の遷移金属化合物。
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【請求項6】
前記遷移金属化合物は、溶解度が25℃で1重量%(溶媒:メチルシクロヘキサン)以上である、請求項1に記載の遷移金属化合物。
【請求項7】
下記化学式1で表される遷移金属化合物と、
助触媒とを含むエチレン単独重合体またはエチレンとアルファ-オレフィン共重合体製造用の遷移金属触媒組成物。
[化学式1]
【化14】
前記化学式1中、
Mは、周期表第4族の遷移金属であり、
Aは、CまたはSiであり、
Arは、置換されたアリールであり、前記Arのアリールの置換基は、C1-C20アルキル、C3-C20シクロアルキル、C6-C20アリール、C6-C20アリールC1-C20アルキル、C1-C20アルコキシ、C6-C20アリールオキシ、C1-C20アルキルアミノ、C6-C20アリールアミノ、C1-C20アルキルチオおよびC6-C20アリールチオからなる群から選択される一つ以上であり、前記置換されたアリールは、14個以上の炭素数を有し、
Rは、C1-C20アルキル、C1-C20アルコキシ、C6-C20アリールまたはC6-C20アリールオキシであり、
R
1~R
4は、互いに独立して、水素またはC1-C20アルキルであり、
R
11~R
18は、互いに独立して、水素、C1-C20アルキル、C1-C20アルコキシ、C3-C20シクロアルキル、C6-C20アリール、C6-C20アルC1-C20アルキル、C1-C20アルキルC6-C20アリール、C1-C20アルキルシリルまたはC6-C20アリールシリルであるか、各置換基は、隣接した置換基と縮合環を含んでいるか含んでいないC3-C12アルキレンまたはC3-C12アルケニレンで連結されて脂環族環を形成するか、単環または多環の芳香族環を形成してもよく、
R
21およびR
22は、互いに独立して、C6-C20アリールであり、
前記Rのアルキル、アルコキシ、アリールおよびアリールオキシ、R
11~R
18のアルキル、アルコキシ、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール、アルキルシリル、アリールシリル、脂環族環または芳香族環およびR
21およびR
22のアリールは、C1-C20アルキル、C3-C20シクロアルキル、C6-C20アリール、C6-C20アルC1-C20アルキル、C1-C20アルコキシ、C6-C20アリールオキシ、C3-C20アルキルシロキシ、C6-C20アリールシロキシ、C1-C20アルキルアミノ、C6-C20アリールアミノ、C1-C20アルキルチオ、C6-C20アリールチオ、C1-C20アルキルホスフィンおよびC6-C20アリールホスフィンからなる群から選択される一つ以上の置換基でさらに置換されてもよい。
【請求項8】
前記助触媒は、アルミニウム化合物助触媒、ホウ素化合物助触媒、またはこれらの混合物である、請求項7に記載の遷移金属触媒組成物。
【請求項9】
下記化学式1で表される遷移金属化合物、助触媒および非芳香族炭化水素溶媒の存在下で、エチレンまたは共単量体から選択される一つまたは二つ以上のモノマーを溶液重合してオレフィン重合体を得るステップを含む、オレフィン重合体の製造方法。
[化学式1]
【化15】
前記化学式1中、
Mは、周期表第4族の遷移金属であり、
Aは、CまたはSiであり、
Arは、置換されたアリールであり、前記Arのアリールの置換基は、C1-C20アルキル、C3-C20シクロアルキル、C6-C20アリール、C6-C20アリールC1-C20アルキル、C1-C20アルコキシ、C6-C20アリールオキシ、C1-C20アルキルアミノ、C6-C20アリールアミノ、C1-C20アルキルチオおよびC6-C20アリールチオからなる群から選択される一つ以上であり、前記置換されたアリールは、14個以上の炭素数を有し、
Rは、C1-C20アルキル、C1-C20アルコキシ、C6-C20アリールまたはC6-C20アリールオキシであり、
R
1~R
4は、互いに独立して、水素またはC1-C20アルキルであり、
R
11~R
18は、互いに独立して、水素、C1-C20アルキル、C1-C20アルコキシ、C3-C20シクロアルキル、C6-C20アリール、C6-C20アルC1-C20アルキル、C1-C20アルキルC6-C20アリール、C1-C20アルキルシリルまたはC6-C20アリールシリルであるか、各置換基は、隣接した置換基と縮合環を含んでいるか含んでいないC3-C12アルキレンまたはC3-C12アルケニレンで連結されて脂環族環を形成するか、単環または多環の芳香族環を形成してもよく、
R
21およびR
22は、互いに独立して、C6-C20アリールであり、
前記Rのアルキル、アルコキシ、アリールおよびアリールオキシ、R
11~R
18のアルキル、アルコキシ、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール、アルキルシリル、アリールシリル、脂環族環または芳香族環およびR
21およびR
22のアリールは、C1-C20アルキル、C3-C20シクロアルキル、C6-C20アリール、C6-C20アルC1-C20アルキル、C1-C20アルコキシ、C6-C20アリールオキシ、C3-C20アルキルシロキシ、C6-C20アリールシロキシ、C1-C20アルキルアミノ、C6-C20アリールアミノ、C1-C20アルキルチオ、C6-C20アリールチオ、C1-C20アルキルホスフィンおよびC6-C20アリールホスフィンからなる群から選択される一つ以上の置換基でさらに置換されてもよい。
【請求項10】
前記非芳香族炭化水素溶媒は、メチルシクロヘキサン、シクロヘキサン、n-ヘプタン、n-ヘキサン、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、n-オクタン、イソオクタン、ノナン、デカンおよびドデカンから選択される一つまたは二つ以上である、請求項9に記載のオレフィン重合体の製造方法。
【請求項11】
前記非芳香族炭化水素溶媒は、前記遷移金属化合物の溶解度が25℃で1重量%(溶媒:メチルシクロヘキサン)以上である、請求項9に記載のオレフィン重合体の製造方法。
【請求項12】
前記助触媒は、アルミニウム化合物助触媒、ホウ素化合物助触媒、またはこれらの混合物である、請求項9に記載のオレフィン重合体の製造方法。
【請求項13】
前記ホウ素化合物助触媒は、下記化学式11~14で表される化合物であり、
前記アルミニウム化合物助触媒は、下記化学式15~19で表される化合物である、請求項12に記載のオレフィン重合体の製造方法。
[化学式11]
BR
21
3
[化学式12]
[R
22]
+[BR
21
4]
-
[化学式13]
[R
23
pZH]
+[BR
21
4]
-
[化学式14]
【化16】
前記化学式11~化学式14中、Bは、ホウ素原子であり、R
21は、フェニル基であり、前記フェニル基は、フッ素原子、C1-C20アルキル基、フッ素原子によって置換されたC1-C20アルキル基、C1-C20アルコキシ基またはフッ素原子によって置換されたC1-C20アルコキシ基から選択される3~5個の置換基でさらに置換されてもよく、R
22は、C5-C7芳香族ラジカル、C1-C20アルキルC6-C20アリールラジカルまたはC6-C20アリールC1-C20アルキルラジカルであり、Zは、窒素またはリン原子であり、R
23は、C1-C20アルキルラジカルまたは窒素原子とともに2個のC1-C10アルキル基で置換されたアニリニウムラジカルであり、R
24は、C5-C20アルキル基であり、R
25は、C5-C20アリール基またはアルキルアリール基であり、pは、2または3の整数である。
[化学式15]
-AlR
26-O-
m
[化学式16]
【化17】
[化学式17]
R
28
rAlE
3-r
[化学式18]
R
29
2AlOR
30
[化学式19]
R
29AlOR
30
2
前記式15~19中、R
26およびR
27は、互いに独立して、C1-C20アルキル基であり、mとqは、5~20の整数であり、R
28およびR
29は、互いに独立して、C1-C20アルキル基であり、Eは、水素原子またはハロゲン原子であり、rは、1~3の整数であり、R
30は、C1-C20アルキル基またはC6-C30アリール基である。
【請求項14】
前記溶液重合は、エチレン単量体の圧力6~150気圧、重合温度100~200℃で行われる、請求項9に記載のオレフィン重合体の製造方法。
【請求項15】
前記オレフィン重合体は、重量平均分子量が5,000~200,000g/molであり、分子量分布(Mw/Mn)が1.0~10.0である、請求項9に記載のオレフィン重合体の製造方法。
【請求項16】
前記オレフィン重合体は、エチレン含量が30~99重量%である、請求項9に記載のオレフィン重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遷移金属化合物、これを含む触媒組成物およびこれを用いるオレフィン重合体の製造方法に関し、より詳細には、制御された特定の官能基が導入されて溶解度が改善した遷移金属化合物、これを含む触媒組成物およびこれを用いるオレフィン重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エチレンの単独重合体またはα-オレフィンとの共重合体の製造には、一般的に、チタンまたはバナジウム化合物の主触媒成分とアルキルアルミニウム化合物の助触媒成分で構成される、いわゆるチーグラー・ナッタ触媒系が使用されてきた。
【0003】
しかし、チーグラー・ナッタ触媒系は、エチレン重合に対して高活性を示すものの、不均一な触媒活性点のため、一般的に生成重合体の分子量分布が広く、特に、エチレンとα-オレフィンの共重合体において組成分布が均一でないという欠点がある。
【0004】
最近、チタン、ジルコニウム、ハフニウムなど周期表第4族遷移金属のメタロセン化合物と助触媒であるメチルアルミノキサン(methylaluminoxane)で構成される、いわゆるメタロセン触媒系が開発されている。メタロセン触媒系は、単一種の触媒活性点を有する均一系触媒であることから、既存のチーグラー・ナッタ触媒系に比べて分子量分布が狭く、組成分布が均一なポリエチレンを製造できることを特徴とする。
【0005】
具体的な一例として、Cp2TiCl2、Cp2ZrCl2、Cp2ZrMeCl、Cp2ZrMe2、IndH42ZrCl2などのメタロセン化合物を助触媒であるメチルアルミノキサンで活性化させることで、高活性でエチレンを重合させて、狭い分子量分布(Mw/Mn)を有するポリエチレンを製造できるようになった。
【0006】
しかし、メタロセン触媒系では高分子量の重合体を得ることが難しい。特に、100℃以上の高温で実施される溶液重合法に適用する場合、重合活性が急激に低下し、優れたβ-水素脱離反応を示すため、重量平均分子量(Mw)が高い高分子量の重合体を製造するには適しないという欠点がある。
【0007】
一方、100℃以上の溶液重合条件で、エチレン単独重合またはエチレンとα-オレフィンとの共重合で高い触媒活性と高分子量の重合体を製造することができる触媒として遷移金属を環状に連結した、いわゆる幾何拘束型ANSA-typeメタロセン系触媒が使用され得ることが開示されている。ANSA-typeメタロセン系触媒は、メタロセン触媒に比べて、オクテン-注入および高温活性が著しく改善する。それにもかかわらず、従来知られているほとんどのANSA-typeメタロセン系触媒は、Cl官能基を含んでいるかメチル基などを含んでいるが、溶液工程に使用するには改善しなければならない問題が存在する。
【0008】
触媒に置換されたCl官能基は、工程の材質によっては腐食などの原因になることがあり、Clによる腐食の問題を避けるために、ジメチルで置換したANSA-typeメタロセン系触媒について研究されているが、これも溶解度が良好でなく、重合工程に触媒を注入することが困難である。これらの溶解度が低い触媒を溶解させるためにトルエンやキシレンなどを使用することはできるが、食品に接触する可能性がある製品を生産する場合、トルエンやキシレンなどの芳香族溶媒の使用が問題になっている。
【0009】
したがって、優れた溶解度、高温活性、高級アルファ-オレフィンとの反応性および高い分子量の重合体の製造能などの特性を有する競争力のある触媒に関する研究が切実に求められている状況である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、前記の問題点を改善するために制御された特定の官能基が導入された遷移金属化合物およびこれを含む触媒組成物を提供する。
【0011】
また、本発明は、本発明の遷移金属化合物を触媒として用いるオレフィン重合体の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、特定の官能基を導入することで非芳香族炭化水素に対する溶解度が著しく改善した遷移金属化合物を提供するものであり、本発明の遷移金属化合物は、下記化学式1で表される。
[化学式1]
【化1】
(前記化学式1中、
Mは、周期表第4族の遷移金属であり、
Aは、CまたはSiであり、
Arは、置換されたアリールであり、前記Arのアリールの置換基は、C1-C20アルキル、C3-C20シクロアルキル、C6-C20アリール、C6-C20アルC1-C20アルキル、C1-C20アルコキシ、C6-C20アリールオキシ、C1-C20アルキルアミノ、C6-C20アリールアミノ、C1-C20アルキルチオおよびC6-C20アリールチオからなる群から選択される一つ以上であり、前記Arの置換されたアリールは、14個以上の炭素数を有し、
Rは、C1-C20アルキル、C1-C20アルコキシ、C6-C20アリールまたはC6-C20アリールオキシであり、
R
1~R
4は、互いに独立して、水素またはC1-C20アルキルであり、
R
11~R
18は、互いに独立して、水素、C1-C20アルキル、C1-C20アルコキシ、C3-C20シクロアルキル、C6-C20アリール、C6-C20アルC1-C20アルキル、C1-C20アルキルC6-C20アリール、C1-C20アルキルシリルまたはC6-C20アリールシリルであるか、各置換基は、隣接した置換基と縮合環を含んでいるか含んでいないC3-C12アルキレンまたはC3-C12アルケニレンで連結されて脂環族環を形成するか、単環または多環の芳香族環を形成してもよく、
R
21およびR
22は、互いに独立して、C6-C20アリールであり、
前記Rのアルキル、アルコキシ、アリールおよびアリールオキシ、R
11~R
18のアルキル、アルコキシ、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール、アルキルシリル、アリールシリル、脂環族環または芳香族環およびR
21およびR
22のアリールは、C1-C20アルキル、C3-C20シクロアルキル、C6-C20アリール、C6-C20アルC1-C20アルキル、C1-C20アルコキシ、C6-C20アリールオキシ、C3-C20アルキルシロキシ、C6-C20アリールシロキシ、C1-C20アルキルアミノ、C6-C20アリールアミノ、C1-C20アルキルチオ、C6-C20アリールチオ、C1-C20アルキルホスフィンおよびC6-C20アリールホスフィンからなる群から選択される一つ以上の置換基でさらに置換されてもよい。)
【0013】
好ましくは、本発明の一実施形態による化学式1において、Arは、炭素数8個以上のアルキルで置換されたC6-C20アリールであり、Rは、C1-C20アルキル、C1-C20アルキルC6-C20アリールオキシまたはC6-C20アリールC1-C20アルキルであってもよく、より好ましくは、前記Mは、チタン、ジルコニウムまたはハフニウムであり、Rは、互いに独立して、C1-C4アルキル、C8-C20アルキルC6-C12アリールオキシまたはC6-C12アリールC1-C4アルキルであり、R1~R4は、互いに独立して、水素またはC1-C4アルキルであり、R11~R18は、水素であってもよい。
【0014】
好ましくは、本発明の一実施形態による化学式1の遷移金属化合物は、下記化学式2または化学式3で表されることができる。
[化学式2]
【化2】
[化学式3]
【化3】
(前記化学式2および化学式3中、
Mは、チタン、ジルコニウムまたはハフニウムであり、
Ar
1およびAr
2は、互いに独立して、置換されたC6-C20アリールであり、前記Arのアリールの置換基は、C1-C20アルキル、C3-C20シクロアルキル、C6-C20アリール、C6-C20アリールC1-C20アルキル、C1-C20アルコキシ、C6-C20アリールオキシ、C1-C20アルキルアミノ、C6-C20アリールアミノ、C1-C20アルキルチオまたはC6-C20アリールチオであり、前記Ar
1およびAr
2の置換されたC6-C20アリールは、C14以上の炭素数を有し、
Aは、CまたはSiであり、
R
1~R
4は、互いに独立して、水素またはC1-C4アルキルであり、
R
21およびR
22は、互いに独立して、C6-C20アリールまたはC1-C4アルキルで置換されたC6-C20アリールであり、
R
31は、C1-C20アルキルまたはC1-C20アルキルC6-C20アリールである。)
【0015】
具体的には、本発明の遷移金属化合物は、下記化合物から選択されることができる。
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【0016】
好ましくは、本発明の一実施形態による遷移金属化合物は、溶解度が25℃で1重量%(溶媒:メチルシクロヘキサン)以上であってもよい。
【0017】
また、本発明は、本発明の遷移金属化合物を含むエチレン単独重合体またはエチレンとアルファ-オレフィン共重合体製造用の遷移金属触媒組成物を提供することで、本発明の遷移金属触媒組成物は前記化学式1で表される遷移金属化合物;および助触媒;を含む。
【0018】
本発明の遷移金属触媒組成物に含まれる助触媒はアルミニウム化合物助触媒、ホウ素化合物助触媒またはこれらの混合物であってもよい。
【0019】
また、本発明は、本発明の遷移金属化合物を用いるオレフィン重合体の製造方法を提供する。
【0020】
本発明のオレフィン重合体の製造方法は前記化学式1で表される遷移金属化合物、助触媒および非芳香族炭化水素溶媒の存在下で、エチレンおよび共単量体から選択される一つまたは二つ以上のモノマーを溶液重合してオレフィン重合体を得るステップを含む。
【0021】
本発明の一実施形態による非芳香族炭化水素溶媒は、前記遷移金属触媒組成物の溶解度が25℃で1重量%(溶媒:メチルシクロヘキサン)以上であってもよい。
【0022】
好ましくは、本発明のオレフィン重合体の製造方法において、助触媒は、アルミニウム化合物助触媒、ホウ素化合物助触媒、またはこれらの混合物であってもよく、具体的には、ホウ素化合物助触媒は、下記化学式11~14で表される化合物であり、前記アルミニウム化合物助触媒は、下記化学式15~19で表されることができる。
[化学式11]
BR
21
3
[化学式12]
[R
22]
+[BR
21
4]
-
[化学式13]
[R
23
pZH]
+[BR
21
4]
-
[化学式14]
【化14】
(前記化学式11~化学式13中、Bは、ホウ素原子であり、R
21は、フェニル基であり、前記フェニル基は、フッ素原子、C1-C20アルキル基、フッ素原子によって置換されたC1-C20アルキル基、C1-C20アルコキシ基またはフッ素原子によって置換されたC1-C20アルコキシ基から選択される3~5個の置換基でさらに置換されてもよく、R
22は、C5-C7芳香族ラジカル、C1-C20アルキルC6-C20アリールラジカルまたはC6-C20アリールC1-C20アルキルラジカルであり、Zは、窒素またはリン原子であり、R
23は、C1-C20アルキルラジカルまたは窒素原子とともに2個のC1-C10アルキル基で置換されたアニリニウムラジカルであり、R
24は、C5-C20アルキル基であり、R
25は、C5-C20アリール基またはC1-C20アルキルC6-C20アリール基であり、pは、2または3の整数である。)
[化学式15]
-AlR
26-O-
m
[化学式16]
【化15】
[化学式17]
R
28
rAlE
3-r
[化学式18]
R
29
2AlOR
30
[化学式19]
R
29AlOR
30
2
(前記式15~19中、R
26およびR
27は、互いに独立して、C1-C20アルキル基であり、mとqは、5~20の整数であり、R
28およびR
29は、互いに独立して、C1-C20アルキル基であり、Eは、水素原子またはハロゲン原子であり、rは、1~3の整数であり、R
30は、C1-C20アルキル基またはC6-C30アリール基である。)
【0023】
好ましくは、本発明の一実施形態による溶液重合は、エチレン単量体の圧力6~150気圧、重合温度100~200℃で行われることができる。
【0024】
好ましくは、本発明の一実施形態によるオレフィン重合体は、重量平均分子量が5,000~200,000g/molであり、分子量分布(Mw/Mn)が1.0~10.0であってもよく、エチレン含量が30~99重量%であってもよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明の遷移金属化合物は、制御された特定の官能基を導入することで、非芳香族炭化水素溶媒に対する溶解度が著しく改善し、触媒活性が高く、溶液重合時に触媒活性が低下せず、維持される。
【0026】
それだけでなく、本発明の遷移金属化合物は、特定の位置に特定の官能基を導入することで、溶液工程時に、遷移金属化合物の注入および移動などが容易であり、重合工程を著しく改善し、商業化において非常に有利である。
【0027】
また、本発明の遷移金属化合物は、非芳香族炭化水素溶媒に対して優れた溶解度を有することからオレフィン類と反応性に優れ、オレフィンの重合が非常に容易であり、オレフィン重合体の収率が高い。
【0028】
したがって、本発明の一実施形態による遷移金属化合物を含む触媒組成物は、優れた物性を有するオレフィン重合体の製造において非常に有用に使用されることができる。
【0029】
また、本発明のオレフィン重合体の製造方法は、非芳香芳香族炭化水素溶媒に対する溶解度に優れた本発明の遷移金属化合物を触媒として使用することで、触媒の移送、注入などが容易であり、より環境にやさしくおよび効率よくオレフィン重合体を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の遷移金属化合物、これを含む触媒組成物およびこれを用いるオレフィン重合体の製造方法について詳述するが、ここで使用される技術用語および科学用語において他の定義がない限り、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が通常理解している意味を有し、下記説明で本発明の要旨を不明瞭にし得る公知の機能および構成に関する説明は省略する。
【0031】
本明細書で使用されている用語「アルキル」は、炭素数が特に限定されない場合、炭素数1~20を有する飽和された直鎖状または分岐状の非環(cyclic)式炭化水素を意味する。「低級アルキル」は、炭素数が1~6である直鎖状または分岐状アルキルを意味する。代表的な飽和直鎖状アルキルは、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニルとn-デシルを含み、一方、飽和分岐状アルキルは、イソプロピル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、イソペンチル、2-メチルヘキシル、3-メチルブチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、2-メチルヘキシル、3-メチルヘキシル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、2-メチルヘキシル、3-メチルヘキシル、4-メチルヘキシル、5-メチルヘキシル、2,3-ジメチルブチル、2,3-ジメチルペンチル、2,4-ジメチルペンチル、2,3-ジメチルヘキシル、2,4-ジメチルヘキシル、2,5-ジメチルヘキシル、2,2-ジメチルペンチル、2,2-ジメチルヘキシル、3,3-ジメチルペンチル、3,3-ジメチルヘキシル、4,4-ジメチルヘキシル、2-エチルペンチル、3-エチルペンチル、2-デチルヘキシル、3-エチルヘキシル、4-エチルヘキシル、2-メチル-2-エチルペンチル、2-メチル-3-エチルペンチル、2-メチル-4-エチルペンチル、2-メチル-2-エチルヘキシル、2-メチル-3-エチルヘキシル、2-メチル-4-エチルヘキシル、2,2-ジエチルペンチル、3,3-ジエチルヘキシル、2,2-ジエチルヘキシル、および3,3-ジエチルヘキシルを含む。
【0032】
本明細書において、「C1-C20」のように記載する場合、これは、炭素数が1~20個であることを意味する。例えば、C1-C20アルキルは、炭素数が1~20であるアルキルを意味する。
【0033】
また、本発明に使用されている用語「置換されたアリールは、14個以上の炭素数を有し」とは、アリールの炭素数とアリールが有する置換基の炭素数をすべて合算した値が14個以上であることを意味し、好ましくは、本明細書のArは、置換されたアリールであり、前記Arの置換されたアリールは、C1-C20アルキル、C1-C20アルコキシ、C3-C20シクロアルキル、C6-C30アリール、C6-C30アルC1-C20アルキル、C1-C20アルキルC6-C30アリール、C1-C20アルキルシリルおよびC6-C30アリールシリルから選択される一つ以上の置換基を有するアリールであり、置換基の炭素数とアリールの炭素数を合算した炭素数が14個以上であり、より好ましくは、総炭素数が14個以上であるC8-C20アルキル、C6-C20アルコキシ、C8-C20シクロアルキル、C-C30アリール、C6-C30アリールC1-C20アルキルおよびC8-C20アルキルC6-C30アリールから選択される一つ以上の置換基を有するC6-C30アリールであってもよい。一例として、置換基を有するC6-C30アリールであり、前記置換基は、C8-C20アルキル、C6-C20アルコキシ、C8-C20シクロアルキル、C-C30アリール、C6-C30アリールC1-C20アルキルおよびC8-C20アルキルC6-C30アリールから選択される一つ以上であり、アリールの炭素数とアリールに置換された置換基の炭素数を合算した総炭素数が14以上である。
【0034】
本発明のArの置換されたアリール以外の置換基は、置換基を含んでいない炭素数を意味する。具体的な一例として、本発明の化学式1において、RがC1-C20アルキルである場合、これは、アルキルに置換されてもよい置換基の炭素数を含んでいない。
【0035】
本明細書で使用されている用語「アルコキシ」は、-OCH3、-OCH2CH3、-OCH22CH3、-OCH23CH3、-OCH24CH3、-OCH25CH3、およびこれと類似するものを含む-O-アルキルを意味し、ここで、アルキルは、上記で定義したとおりである。
【0036】
本明細書で使用されている用語「低級アルコキシ」は、-O-低級アルキルを意味し、ここで、低級アルキルは、上記で定義したとおりである。
【0037】
本明細書で使用されている用語「アリール」は、5~10の環原子を含む炭素環芳香族基を意味する。代表的な例は、フェニル、トリル(tolyl)、キシリル(xylyl)、ナフチル、テトラヒドロナフチル、アントラセニル(anthracenyl)、フルオレニル(fluorenyl)、インデニル(indenyl)、アズレニル(azulenyl)などを含むが、これに限定されるものではない。炭素環芳香族基は、選択的に置換されてもよい。
【0038】
本明細書で使用されている用語「アリールオキシ」は、RO-であり、Rは、前記定義されたアリールである。「アリールチオ」は、RS-であり、Rは、前記定義されたアリールである。
【0039】
本明細書で使用されている用語「シクロアルキル」は、炭素および水素原子を有し、炭素-炭素多重結合を有していない単環式または多環式飽和環(ring)を意味する。シクロアルキル基の例は、C3-C10シクロアルキル、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルおよびシクロヘプチルを含むが、これに限定されるものではない。シクロアルキル基は、選択的に置換されてもよい。一実施形態において、シクロアルキル基は、単環式または二環式環である。
【0040】
本明細書で使用されている用語「置換された」は、置換される部分、例えば、アルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロサイクルまたはシクロアルキルの水素原子の代わりに置換基が使用されることを意味する。一実施形態において、置換される基のそれぞれの炭素原子は、2個の置換基以上置換されない。他の実施形態において、置換される基のそれぞれの炭素原子は、1個の置換基以上置換されない。ケト置換基の場合、二つの水素原子は、二重結合によって炭素に付着される酸素で置換される。置換体に関して別の記載がない限り、本発明の任意に置換された置換体としては、ハロゲン、ヒドロキシル、低級アルキル、ハロアルキル、モノ-またはジ-アルキルアミノ、C1-C20アルキル、C1-C20アルコキシ、C3-C20シクロアルキル、C6-C30アリール、C6-C30アルC1-C20アルキル、C1-C20アルキルC6-C30アリール、C1-C20アルキルシリル、C6-C30アリールシリル、C6-C20アリールオキシ、C3-C20アルキルシロキシ、C6-C20アリールシロキシ、C1-C20アルキルアミノ、C6-C20アリールアミノ、C1-C20アルキルチオ、C6-C20アリールチオ、C1-C20アルキルホスフィンおよびC6-C20アリールホスフィンから選択される一つ以上であってもよく、好ましくは、前記アルキルは、C1~C20アルキルまたはC8~C20アルキルであってもよく、アリールは、C6~C12であってもよい。
【0041】
本明細書で使用されている用語「オレフィン重合体」は、当業者が認識することができる範囲のオレフィンを用いて製造された重合体を意味する。具体的には、オレフィン単独重合体またはオレフィンの共重合体をすべて含み、オレフィン単独重合体またはオレフィンとアルファ-オレフィンの共重合体を意味する。
【0042】
本発明は、制御された特定の炭素数以上を有する官能基を導入することで、溶解度が改善し、熱安定性に優れ、オレフィン重合において非常に有用に使用されることができる、下記化学式1で表される遷移金属化合物を提供する。
【0043】
[化学式1]
【化16】
(前記化学式1中、
Mは、周期表第4族の遷移金属であり、
Aは、CまたはSiであり、
Arは、置換されたアリールであり、前記Arの置換基は、C1-C20アルキル、C3-C20シクロアルキル、C6-C20アリール、C6-C20アルC1-C20アルキル、C1-C20アルコキシ、C6-C20アリールオキシ、C1-C20アルキルアミノ、C6-C20アリールアミノ、C1-C20アルキルチオおよびC6-C20アリールチオからなる群から選択される一つ以上であり、前記Arの置換されたアリールは、14個以上の炭素数を有し、
Rは、C1-C20アルキル、C1-C20アルコキシ、C6-C20アリールまたはC6-C20アリールオキシであり、
R
1~R
4は、互いに独立して、水素またはC1-C20アルキルであり、
R
11~R
18は、互いに独立して、水素、C1-C20アルキル、C1-C20アルコキシ、C3-C20シクロアルキル、C6-C20アリール、C6-C20アルC1-C20アルキル、C1-C20アルキルC6-C20アリール、C1-C20アルキルシリルまたはC6-C20アリールシリルであるか、各置換基は、隣接した置換基と縮合環を含んでいるか含んでいないC3-C12アルキレンまたはC3-C12アルケニレンで連結されて脂環族環を形成するか、単環または多環の芳香族環を形成してもよく、
R
21およびR
22は、互いに独立して、C6-C20アリールであり、
前記Rのアルキル、アルコキシ、アリールおよびアリールオキシ、R
11~R
18のアルキル、アルコキシ、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール、アルキルシリル、アリールシリル、脂環族環または芳香族環およびR
21およびR
22のアリールは、C1-C20アルキル、C3-C20シクロアルキル、C6-C20アリール、C6-C20アルC1-C20アルキル、C1-C20アルコキシ、C6-C20アリールオキシ、C3-C20アルキルシロキシ、C6-C20アリールシロキシ、C1-C20アルキルアミノ、C6-C20アリールアミノ、C1-C20アルキルチオ、C6-C20アリールチオ、C1-C20アルキルホスフィンおよびC6-C20アリールホスフィンからなる群から選択される一つ以上の置換基でさらに置換されてもよい。)
【0044】
本発明の一実施形態による遷移金属化合物は、化学式1で表され、化学式1においてArに意図的に制御された14個以上の炭素数を有する置換されたアリールを導入することで、非芳香族炭化水素溶媒に対する溶解度が著しく改善し、触媒活性が非常に高く、簡単な工程で環境にやさしくオレフィン重合体の製造が可能である。
【0045】
具体的には、本発明のANSA-type触媒である本発明の遷移金属化合物は、特定の位置に制御された炭素数を有する官能基を導入することで、非芳香族炭化水素溶媒に対する溶解度を増加させて触媒活性を維持するとともに、溶液工程で容易にオレフィン重合体を製造することができる。
【0046】
好ましくは、本発明の一実施形態による化学式1において、Arは、炭素数8個以上のアルキルで置換されたC6-C20アリールであり、Rは、C1-C20アルキル、C1-C20アルキルC6-C20アリールオキシまたはC6-C20アリールC1-C20アルキルであってもよい。
【0047】
本発明の一実施形態による化学式1において、Arは、炭素数8~20個のアルキルで置換されたC6-C20アリールであってもよい。
【0048】
本発明の一実施形態による化学式1において、Arは、炭素数8個以上のアルキルで置換されたフェニル、ナフチル、アントラセニル、ピレニル、フェナントレニル、テトラセニルまたはテトラフェニルであってもよい。
【0049】
本発明の一実施形態によるArは、炭素数8個以上のアルキルで置換されたC6-C20アリールであり、Rは、C1-C20アルキル、C1-C20アルキルC6-C20アリールオキシまたはC6-C20アリールC1-C20アルキルであってもよく、好ましくは、Arは、炭素数8個以上のアルキルで置換されたC6-C12アリールであり、Rは、C1-C10アルキル、C1-C10アルキルC6-C12アリールオキシまたはC6-C12アリールC1-C10アルキルであってもよい。
【0050】
より好ましくは、本発明の一実施形態による化学式1において、Mは、チタン、ジルコニウムまたはハフニウムであり、Rは、互いに独立して、C1-C7アルキル、C8-C20アルキルC6-C12アリールオキシまたはC6-C12アリールC1-C7アルキルであり、R1~R4は、互いに独立して、水素またはC1-C7アルキルであり、R11~R18は、水素であってもよく、さらに好ましくは、Mは、チタンであり、Rは、互いに独立して、C1-C4アルキル、C8-C15アルキルC6-C12アリールオキシまたはC6-C12アリールC1-C4アルキルであり、R1~R4は、互いに独立して、水素またはC1-C4アルキルであってもよい。
【0051】
好ましくは、本発明の化学式1で表される遷移金属化合物は、下記化学式2または化学式3で表されることができる。
【0052】
【0053】
【0054】
(前記化学式2および化学式3中、
Mは、チタン、ジルコニウムまたはハフニウムであり、
Ar1およびAr2は、互いに独立して、置換されたC6-C20アリールであり、前記Arのアリールの置換基は、C1-C20アルキル、C3-C20シクロアルキル、C6-C20アリール、C6-C20アリールC1-C20アルキル、C1-C20アルコキシ、C6-C20アリールオキシ、C1-C20アルキルアミノ、C6-C20アリールアミノ、C1-C20アルキルチオまたはC6-C20アリールチオであり、前記置換されたC6-C20アリールは、C14以上の炭素数を有し、
Aは、CまたはSiであり、
R1~R4は、互いに独立して、水素またはC1-C4アルキルであり、
R21およびR22は、互いに独立して、C6-C20アリールまたはC1-C4アルキルで置換されたC6-C20アリールであり、
R31は、C1-C20アルキルまたはC1-C20アルキルC6-C20アリールである。)
【0055】
優れた非芳香族炭化水素溶媒に対する優れた溶解度を有するための面で、化学式2または化学式3において、Mは、チタン、ジルコニウムまたはハフニウムであり、Ar1およびAr2は、互いに独立して、炭素数8個以上のアルキルで置換されたC6-C20アリールであり、Rは、C1-C20アルキル、C1-C20アルキルC6-C20アリールオキシまたはC6-C20アリールC1-C20アルキルであってもよい。
【0056】
好ましくは、化学式2または化学式3において、Mは、チタン、ジルコニウムまたはハフニウムであり、Ar1およびAr2は、互いに独立して、C8-C20アルキルC6-C20アリールであり、Rは、C1-C7アルキル、C8-C20アルキルC6-C12アリールオキシまたはC6-C12アリールC1-C7アルキルであってもよく、より好ましくは、Mは、チタンであり、Ar1およびAr2は、互いに独立して、C8-C15アルキルC6-C12アリールであり、Rは、C1-C4アルキル、C8-C15アルキルC6-C12アリールオキシまたはC6-C12アリールC1-C4アルキルであってもよい。
【0057】
好ましくは、化学式2または化学式3において、Ar1およびAr2は、互いに独立して、炭素数8個以上のアルキルで置換されたC6-C20アリールであり、Rは、C1-C20アルキルであってもよく、より好ましくは、Ar1およびAr2は、互いに独立して、C8-C20アルキルで置換されたC6-C20アリールであり、Rは、C1-C4アルキルであってもよい。
【0058】
本発明の一実施形態による化学式2または化学式3において、Ar1およびAr2は、炭素数8個以上のアルキルで置換されたC6-C20アリールであってもよく、好ましくは、C8-20アルキルで置換されたフェニル、ナフチル、アントラセニル、ピレニル、フェナントレニル、テトラセニルまたはテトラフェニルであってもよい。
【0059】
好ましくは、本発明の一実施形態による化学式2または化学式3において、Ar1およびAr2で置換されたアルキルは、分岐鎖C1-C20アルキルではなく、直鎖C1-C20アルキルであってもよく、より好ましくは、直鎖C8-C20アルキル、より好ましくは、直鎖C8-C15アルキルであってもよい。
【0060】
好ましくは、本発明の一実施形態による遷移金属化合物は、下記化学式4または化学式5で表されることができる。
【0061】
【0062】
【0063】
(前記化学式4および5中、
Mは、チタン、ジルコニウムまたはハフニウムであり、
Aは、CまたはSiであり、
Rは、C1-C20アルキルであり、
R1~R4は、互いに独立して、水素またはC1-C4アルキルであり、
R11~R18は、互いに独立して、水素、C1-C20アルキル、C1-C20アルコキシ、C3-C20シクロアルキル、C6-C30アリール、C6-C30アルC1-C20アルキル、C1-C20アルキルC6-C30アリール、C1-C20アルキルシリルまたはC6-C30アリールシリルであるか、各置換基の隣接した置換体と縮合環を含んでいるか含んでいないC3-C12アルキレンまたはC3-C12アルケニレンで連結されて脂環族環を形成するか、単環または多環の芳香族環を形成してもよく、
R21およびR22は、互いに独立して、C6-C20アリールまたはC1-C4アルキルで置換されたC6-C20アリールであり、
R31~R40は、互いに独立して、C1-C20アルキルまたはC6-C20アリールである。)
【0064】
好ましくは、本発明の一実施形態による化学式4において、R31~R40は、互いに独立して、C1-C20アルキルであり、より好ましくは、直鎖C1-C20アルキルであってもよく、より好ましくは直鎖C8-C20アルキルであってもよい。
【0065】
本発明の一実施形態による遷移金属化合物は、非芳香族炭化水素溶媒に対する高い溶解度を有することで、触媒活性を維持しながら他のオレフィンとの重合反応性が良好であり、高分子量の重合体を高い収率で製造することができ、溶液工程により有利であり、商業化に非常に容易である。
【0066】
好ましくは、本発明の一実施形態による化学式4および5において、Mは、チタン、ジルコニウムまたはハフニウムであり、Aは、Cであり、Rは、互いに独立して、C1-C4アルキルであり、R1~R4は、互いに同様に、水素またはC1-C4アルキルであり、R11~R18は、互いに独立して、水素、C1-C20アルキル、C1-C20アルコキシまたはC6-C30アリールであり、R21およびR22は、互いに独立して、C6-C12アリールまたはC1-C4アルキルで置換されたC6-C12アリールであり、R31~R40は、互いに独立して、C1-C20アルキルであってもよい。
【0067】
より優れた溶解度、触媒活性およびオレフィンとの反応性を有するための面で、好ましくは、本発明の一実施形態による化学式4および5において、R31~R40は、互いに独立して、C1-C20アルキル、より好ましく直鎖C1-C20アルキルであってもよく、具体的には、R31~R40は、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル、n-ウンデシルまたはn-ドデシルであってもよい。
【0068】
具体的には、本発明の一実施形態による遷移金属化合物は、下記構造から選択される化合物であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0069】
【化21】
【化22】
【化23】
【化24】
【化25】
【化26】
【化27】
【化28】
【化29】
【化30】
【0070】
また、本発明は、本発明の遷移金属化合物および助触媒を含むオレフィン重合体製造用の遷移金属触媒組成物を提供する。
【0071】
本発明の一実施形態による助触媒は、ホウ素化合物助触媒、アルミニウム化合物助触媒およびこれらの混合物であってもよい。
【0072】
また、本発明の遷移金属化合物を用いるオレフィン重合体の製造方法であって、本発明のオレフィン重合体の製造方法は、
下記化学式1で表される遷移金属化合物、助触媒および非芳香族炭化水素溶媒の存在下で、エチレンおよび共単量体から選択される一つまたは二つ以上のモノマーを溶液重合してオレフィン重合体を得るステップを含む。
【0073】
【0074】
(前記化学式1中、
Mは、周期表第4族の遷移金属であり、
Aは、CまたはSiであり、
Arは、置換されたアリールであり、前記Arのアリールの置換基は、C1-C20アルキル、C3-C20シクロアルキル、C6-C20アリール、C6-C20アルC1-C20アルキル、C1-C20アルコキシ、C6-C20アリールオキシ、C1-C20アルキルアミノ、C6-C20アリールアミノ、C1-C20アルキルチオおよびC6-C20アリールチオからなる群から選択される一つ以上であり、前記置換されたアリールは、14個以上の炭素数を有し、
Rは、C1-C20アルキル、C1-C20アルコキシ、C6-C20アリールまたはC6-C20アリールオキシであり、
R1~R4は、互いに独立して、水素またはC1-C20アルキルであり、
R11~R18は、互いに独立して、水素、C1-C20アルキル、C1-C20アルコキシ、C3-C20シクロアルキル、C6-C20アリール、C6-C20アルC1-C20アルキル、C1-C20アルキルC6-C20アリール、C1-C20アルキルシリルまたはC6-C20アリールシリルであるか、各置換基は、隣接した置換基と縮合環を含んでいるか含んでいないC3-C12アルキレンまたはC3-C12アルケニレンで連結されて脂環族環を形成するか、単環または多環の芳香族環を形成してもよく、
R21およびR22は、互いに独立して、C6-C20アリールであり、
前記Rのアルキル、アルコキシ、アリールおよびアリールオキシ、R11~R18のアルキル、アルコキシ、シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール、アルキルシリル、アリールシリル、脂環族環または芳香族環およびR21およびR22のアリールは、C1-C20アルキル、C3-C20シクロアルキル、C6-C20アリール、C6-C20アルC1-C20アルキル、C1-C20アルコキシ、C6-C20アリールオキシ、C3-C20アルキルシロキシ、C6-C20アリールシロキシ、C1-C20アルキルアミノ、C6-C20アリールアミノ、C1-C20アルキルチオ、C6-C20アリールチオ、C1-C20アルキルホスフィンおよびC6-C20アリールホスフィンからなる群から選択される一つ以上の置換基でさらに置換されてもよい。)
【0075】
好ましくは、本発明の一実施形態によるオレフィン重合体の製造方法は、非芳香族炭化水素溶媒に高い溶解度を有する遷移金属化合物を触媒として用いることで、高い活性を維持するとともに、オレフィン重合体を容易に製造することができる。
【0076】
本発明の一実施形態による遷移金属化合物は、25℃で1重量%(溶媒:メチルシクロヘキサン)以上であってもよく、好ましくは25℃で1.2~40重量%(溶媒:メチルシクロヘキサン)であってもよい。
【0077】
好ましくは、本発明の一実施形態による非芳香族炭化水素溶媒は、限定されるものではないが、メチルシクロヘキサン、シクロヘキサン、n-ヘプタン、n-ヘキサンおよびn-ペンタンから選択される一つまたは二つ以上であってもよく、好ましくは、メチルシクロヘキサン、シクロヘキサン、n-ヘプタンおよびn-ヘキサンから選択される一つまたは二つ以上の混合溶媒であってもよい。
【0078】
好ましくは、本発明の一実施形態による非芳香族炭化水素溶媒は、本発明の遷移金属化合物の溶解度が25℃で1重量%(溶媒:メチルシクロヘキサン)以上であってもよく、より好ましくは25℃で1.2~40重量%(溶媒:メチルシクロヘキサン)であってもよい。
【0079】
本発明の一実施形態による助触媒は、アルミニウム化合物助触媒、ホウ素化合物助触媒またはこれらの混合物であってもよく、本発明の一実施形態による助触媒は、遷移金属化合物1モルに対して0.5~10000のモル比で含まれることができる。
【0080】
本発明において、助触媒として使用可能なホウ素化合物は、米国特許第5,198,401号に開示されているホウ素化合物が挙げられ、具体的には、下記の化学式11~14で表される化合物から選択されてもよい。
【0081】
[化学式11]
BR21
3
【0082】
[化学式12]
[R22]+[BR21
4]-
【0083】
[化学式13]
[R23
pZH]+[BR21
4]-
【0084】
【0085】
(前記化学式11~化学式14中、Bは、ホウ素原子であり、R21は、フェニル基であり、前記フェニル基は、フッ素原子、C1-C20アルキル基、フッ素原子によって置換されたC1-C20アルキル基、C1-C20アルコキシ基またはフッ素原子によって置換されたC1-C20アルコキシ基から選択される3~5個の置換基でさらに置換されてもよく、R22は、C5-C7芳香族ラジカル、C1-C20アルキルC6-C20アリールラジカルまたはC6-C20アリールC1-C20アルキルラジカルであり、Zは、窒素またはリン原子であり、R23は、C1-C20アルキルラジカルまたは窒素原子とともに2個のC1-C10アルキル基で置換されたアニリニウムラジカルであり、R24は、C5-C20アルキル基であり、R25は、C5-C20アリール基またはアルキルアリール基であり、pは、2または3の整数である。)
【0086】
前記ホウ素係助触媒の好ましい例としては、トリチルテトラキスペンタフルオロフェニルボレート、トリスペンタフルオロフェニルボラン、トリス2,3,5,6-テトラフルオロフェニルボラン、トリス2,3,4,5-テトラフルオロフェニルボラン、トリス3,4,5-トリフルオロフェニルボラン、トリス2,3,4-トリフルオロフェニルボラン、フェニルビスペンタフルオロフェニルボラン、テトラキスペンタフルオロフェニルボレート、テトラキス2,3,5,6-テトラフルオロフェニルボレート、テトラキス2,3,4,5-テトラフルオロフェニルボレート、テトラキス3,4,5-トリフルオロフェニルボレート、テトラキス2,2,4-トリフルオロフェニルボレート、フェニルビスペンタフルオロフェニルボレートまたはテトラキス3,5-ビストリフルオロメチルフェニルボレートが挙げられる。また、それらの特定の配合例としては、フェロセニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート、1,1’-ジメチルフェロセニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート、銀テトラキスペンタフルオロフェニルボレート、トリフェニルメチルテトラキスペンタフルオロフェニルボレート、トリフェニルメチルテトラキス3,5-ビストリフルオロメチルフェニルボレート、トリエチルアンモニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート、トリノルマルブチルアンモニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート、トリノルマルブチルアンモニウムテトラキス3,5-ビストリフルオロメチルフェニルボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート、N,N-2,4,6-ペンタメチルアニリニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス3,5-ビストリフルオロメチルフェニルボレート、ジイソプロピルアンモニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート、トリフェニルホスホニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート、トリメチルフェニルホスホニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート、またはトリジメチルフェニルホスホニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレートが含まれ、このうち最も好ましいものは、トリチルテトラキスペンタフルオロフェニルボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート、トリフェニルメチリニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレートおよびトリスペンタフルオロボランから選択されるいずれか一つまたは二つ以上であってもよい。
【0087】
本発明の一実施形態による触媒組成物において、助触媒として使用することができるアルミニウム化合物助触媒の一例としては、化学式15または16のアルミノキサン化合物、化学式17の有機アルミニウム化合物または化学式18または化学式19の有機アルミニウムアルキルオキシドまたは有機アルミニウムアリールオキシド化合物が挙げられる。
【0088】
[化学式15]
-AlR26-O-m
【0089】
【0090】
[化学式17]
R28
rAlE3-r
【0091】
[化学式18]
R29
2AlOR30
【0092】
[化学式19]
R29AlOR30
2
【0093】
(前記式15~19中、R26およびR27は、互いに独立して、C1-C20アルキル基であり、mとqは、5~20の整数であり、R28およびR29は、互いに独立して、C1-C20アルキル基であり、Eは、水素原子またはハロゲン原子であり、rは、1~3の整数であり、R30は、C1-C20アルキル基またはC6-C30アリール基である。)
【0094】
前記アルミニウム化合物として使用可能な具体的な例として、アルミノキサン化合物として、メチルアルミノキサン、修飾(modified)メチルアルミノキサン、テトライソブチルアルミノキサンがあり、有機アルミニウム化合物の例として、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、およびトリヘキシルアルミニウムを含むトリアルキルアルミニウム;ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジプロピルアルミニウムクロリド、ジイソブチルアルミニウムクロリド、およびジヘキシルアルミニウムクロリドを含むジアルキルアルミニウムクロリド;メチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、プロピルアルミニウムジクロリド、イソブチルアルミニウムジクロリド、およびヘキシルアルミニウムジクロリドを含むアルキルアルミニウムジクロリド;ジメチルアルミニウムヒドリド、ジエチルアルミニウムヒドリド、ジプロピルアルミニウムヒドリド、ジイソブチルアルミニウムヒドリドおよびジヘキシルアルミニウムヒドリドを含むジアルキルアルミニウムヒドリド;メチルジメトキシアルミニウム、ジメチルメトキシアルミニウム、エチルジエトキシアルミニウム、ジエチルエトキシアルミニウム、イソブチルジブトキシアルミニウム、ジイソブチルブトキシアルミニウム、ヘキシルジメトキシアルミニウム、ジヘキシルメトキシアルミニウム、ジオクチルメトキシアルミニウムを含むアルキルアルコキシアルミニウムが挙げられ、好ましくは、メチルアルミノキサン、修飾メチルアルミノキサン、テトライソブチルアルミノキサン、トリアルキルアルミニウム、トリエチルアルミニウムおよびトリイソブチルアルミニウムから選択される単独またはこれらの混合物であってもよく、より好ましくは、トリアルキルアルミニウム、さらに好ましくは、トリエチルアルミニウムおよびトリイソブチルアルミニウムである。
【0095】
好ましくは、本発明の一実施形態による触媒組成物において、アルミニウム化合物助触媒は、金属M:アルミニウム原子Alの比が、モル比として1:50~1:5,000であり、化学式1の遷移金属化合物と助触媒との比率の好ましい範囲は、モル比として金属M:ホウ素原子:アルミニウム原子の比が1:0.1~100:10~1,000であり、より好ましくは1:0.5~5:25~500である。
【0096】
本発明の一実施形態によるさらに他の面として、前記遷移金属化合物を用いたオレフィン重合体の製造方法は、非芳香族炭化水素溶媒の存在下で、前記の遷移金属化合物、助触媒、およびエチレンまたは必要時にビニル系共単量体を接触させて行われることができる。この場合、遷移金属化合物および助触媒成分は、別に反応器内に投入するかまたは各成分を予め混合して反応器に投入してもよく、投入順序、温度または濃度などの混合条件は別に制限されない。
【0097】
前記製造方法に使用可能な好ましい有機溶媒は、非芳香族炭化水素溶媒であってもよく、好ましくはC3-C20の非芳香族炭化水素であり、その具体的な例としては、ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、ノナン、デカン、ドデカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどが挙げられる。
【0098】
具体的には、エチレンとα-オレフィンの共重合体を製造する場合には、エチレンとともに、共単量体として、C3~C18のα-オレフィンを使用することができ、好ましくは、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-ヘプテン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-アイトセンおよび1-オクタデセンからなる群から選択されることができる。より好ましくは、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、または1-デセンとエチレンを共重合させることができる。この場合、好ましいエチレンの圧力および重合反応温度は、圧力の場合、1~1000気圧であり、さらに好ましくは10~150気圧であってもよい。また、重合反応温度は、100℃~200℃であり、好ましくは、100℃~150℃で行われることが効果的である。
【0099】
また、本発明の方法によって製造された共重合体は、エチレン含量が30~99重量%であってもよく、好ましくは、エチレン50重量%以上を含有し、好ましくは、60重量%以上のエチレンを含み、さらに好ましくは60~99重量%の範囲でエチレンを含む。
【0100】
本発明のオレフィン重合体に含まれたエチレンの含量は、共単量体の含量を13C-NMR(nuclear magnetic resonance)スペクトル分析法(spectroscopy)を用いて測定した値から換算する方法で確認した。
【0101】
上述のように、共単量体としてC4~C10のα-オレフィンを使用して製造された直鎖状低密度ポリエチレンLLDPEは、0.940g/cc以下の密度領域を有し、0.900g/cc以下の超低密度ポリエチレンVLDPEまたはULDPEまたはオレフィンエラストマー領域まで拡張が可能である。また、本発明によるエチレン共重合体の製造時に、分子量を調節するために水素を分子量調節剤として使用することができ、通常、80,000~500,000g/mol範囲の重量平均分子量Mwを有する。
【0102】
本発明の一実施形態による触媒組成物によって製造されるオレフィン-ジエン共重合体の具体的な例として、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体は、エチレンの含量が30~80wt.%であり、プロピレンの含量が20~70wt.%であり、ジエンの含量が0~15wt.%であるエチレン-プロピレン-ジエン共重合体を製造することができる。本発明において使用可能なジエンモノマーは、二重結合が2個以上のものであり、その例としては、1,4-ペンタジエン、1,4-ヘキサジエン、1,5-ヘキサジエン、1,5-ヘプタジエン、1,6-ヘプタジエン、1,6-オクタジエン、1,7-オクタジエン、1,7-ノナジエン、1,8-ノナジエン、1,8-デカジエン、1、9-デカジエン、1,12-テトラデカジエン、1,13-テトラデカジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン、3-メチル-1,4-ヘキサジエン、3-メチル-1,5-ヘキサジエン、3-エチル-1,4-ヘキサジエン、3-エチル-1,5-ヘキサジエン、3,3-ジメチル-1,4-ヘキサジエン、3,3-ジメチル-1,5-ヘキサジエン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ノルボルネン(Norbonene)、5-ビニル-2-ノルボルネン、2,5-ノルボルナジエン、7-メチル-2,5-ノルボルナジエン、7-エチル-2,5-ノルボルナジエン、7-プロピル-2,5-ノルボルナジエン、7-ブチル-2,5-ノルボルナジエン、7-フェニル-2,5-ノルボルナジエン、7-ヘキシル-2,5-ノルボルナジエン、7,7-ジメチル-2,5-ノルボルナジエン、7-メチル-7-エチル-2,5-ノルボルナジエン、7-クロロ-2,5-ノルボルナジエン、7-ブロモ-2,5-ノルボルナジエン、7-フルオロ-2,5-ノルボルナジエン、7,7-ジクロロ-2,5-ノルボルナジエン、1-メチル-2,5-ノルボルナジエン、1-エチル-2,5-ノルボルナジエン、1-プロピル-2,5-ノルボルナジエン、1-ブチル-2,5-ノルボルナジエン、1-クロロ-2,5-ノルボルナジエン、1-ブロモ-2,5-ノルボルナジエン、5-イソプロピル-2-ノルボルネン、1,4-シクロヘキサジエン、ビシクロ2,2,1ヘプタ-2,5-ジエン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-メチレン-2-ノルボルネン、ビシクロ2,2,2オクタ-2,5-ジエン、4-ビニルシクロヘキサ-1-エン、ビシクロ2,2,2オクタ-2、6-ジエン、1,7,7-トリメチルビシクロ-2,2,1ヘプタ-2,5-ジエン、ジシクロペンタジエン、ペチルテトラヒドロインデン、5-アリールビシクロ2,2,1ヘプタ-2-エン、1,5-シクロオクタジエン、1,4-ジアリールベンゼン、ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチルブタジエン-1,3,1,2-ブタジエン-1,3,4-メチルペンタジエン-1,3,1,3-ペンタジエン、3-メチル-1,3-ペンタジエン、2,4-ジメチル-1,3-ペンタジエン、3-エチル-1,3-ペンタジエンなどがあり、最も好ましくは、5-エチリデン-2-ノルボルネン、ジシクロペンタジエンである。前記ジエンモノマーは、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体の加工特性に応じて選択されることができ、必要に応じて、2種以上のジエンモノマーを混合して使用することができる。
【0103】
この場合、好ましい反応器の圧力および温度は、圧力の場合、1~1000気圧であり、好ましくは6~150気圧であり、さらに好ましくは5~100気圧である。また、重合反応の温度は、100~200℃であり、好ましくは100~150℃で行われることが効果的である。
【0104】
本発明の一実施形態によって製造されたエチレン-オレフィン-ジエン共重合体のうちエチレンの含量は30~80wt.%であり、オレフィンの含量は20~70wt.%であり、ジエンの含量は0~15wt.%であってもよい。
【0105】
一般的に、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体を製造する場合、プロピレンの含量を増加させると、共重合体の分子量が低下する現象が現れるが、本発明によるエチレン-プロピレン-ジエン共重合体の製造の場合、プロピレンの含量が50%まで増加しても、分子量の減少なく相対的に高い分子量の製品を製造することができた。
【0106】
本発明で提示されている触媒組成物は、重合反応器内で均一な形態で存在することから、当該重合体の溶融点以上の温度で実施する溶液重合工程に適用することが好ましい。しかし、米国特許第4,752,597号に開示されているように、多孔性金属オキシド支持体に前記遷移金属化合物および助触媒を支持させて得られる非均一触媒組成物の形態でスラリー重合や気相重合工程に用いられることもある。
【0107】
以下、実施例により、本発明を具体的に説明するが、下記の実施例によって本発明の範疇が本発明を限定しない。
【0108】
別に言及する場合を除き、すべての遷移金属化合物の合成実験は、窒素雰囲気下で、標準シュレンク(Schlenk)またはグローブボックス技術を使用して行われ、反応に使用される有機溶媒は、ナトリウム金属とベンゾフェノン下で還流させて水分を除去し、使用直前に蒸留して使用した。合成された遷移金属化合物の1H-NMR分析は、常温でBruker400または500MHzを使用して行った。
【0109】
重合溶媒であるノルマルヘプタンは、一例の分子体5Åと活性アルミナが充填された管を通過させ、高純度の窒素でパブリングさせて、水分、酸素およびその他の触媒毒物質を十分に除去してから使用した。重合された重合体は、下記に説明されている方法によって分析された。
【0110】
1.溶融流動指数MI
ASTM D1238分析法により、190℃で2.16kgの荷重で測定した。
【0111】
2.密度
ASTM D792分析法で測定した。
【0112】
3.分子量および分子量分布
3段の混合カラムで構成されているゲルクロマトグラフィにより測定した。この時に使用した溶媒は1,2,4-卜リクロロベンゼンであり、測定温度は120℃であった。
【0113】
[実施例1]遷移金属化合物1の合成
【化34】
窒素雰囲気で250mLの丸底フラスコに9-フルオレニル1-ジフェニルメチルシクロペンタジエニルジルコニウムジクロリド(S-PCI社製、10.0g、18.0mmol)をトルエン100mLに溶解させた。これを-15℃に温度を下げた後、1.5Mのメチルリチウム(24.0mL、35.9mmol)を徐々に注入した後、常温に温度を上げて3時間撹拌させた。反応混合物を強く撹拌させながら4-ドデシルフェノール(4.72g、18.0mmol)を添加し、60℃で3時間撹拌させた後、溶媒を真空下で除去した。濃縮液をノルマルヘキサン200mLに溶解した後、乾燥したセライト(celite)で満たされたフィルタで濾過し、固形分を除去した。ろ液の溶媒をすべて除去し、黄色の遷移金属化合物1を得た(13.2g、収率91.7%)
【0114】
1H NMR (CDCl3, 500 MHz): δ = 8.17 (d, 1H), 8.10 (d, 1H), 7.98 (d, 1H), 7.87 (d, 2H), 7.78 (d, 1H), 7.40 (m, 2H), 7.31 (m, 2H), 7.25 (m, 3H), 7.08 (m, 2H), 6.92 (t, 1H), 6.80 (t, 1H), 6.67 (d, 1H), 6.43 (d, 1H), 6.30 (d, 1H), 6.24 (d, 1H), 6.08 (d, 1H), 5.79 (m, 2H), 5.61 (dd, 2H), 2.64 (t, 2H), 1.62 (m, 2H), 1.31 (m, 18H), 0.87 (m, 3H), -1.36 (s, 3H).
【0115】
[実施例2]遷移金属化合物2の製造
【化35】
実施例1で、4-ドデシルフェノールの代わりに4-ペンタデカニルフェノールを使用した以外は、実施例1と同様に実施して遷移金属化合物2を製造した(18.7g、収率:95.4%)。
【0116】
1H NMR (CDCl3, 500 MHz): δ = 8.16 (d, 1H), 8.10 (d, 1H), 7.95 (d, 1H), 7.88 (d, 2H), 7.78 (d, 1H), 7.39 (m, 2H), 7.30 (m, 2H), 7.25 (m, 3H), 7.08 (m, 2H), 6.92 (t, 1H), 6.78 (t, 1H), 6.65 (d, 1H), 6.41 (d, 1H), 6.29 (d, 1H), 6.24 (d, 1H), 6.05 (d, 1H), 5.79 (m, 2H), 5.60 (dd, 2H), 2.65 (t, 2H), 1.63 (m, 2H), 1.30 (m, 24H), 0.88 (m, 3H), -1.35 (s, 3H).
【0117】
[実施例3]遷移金属化合物3の製造
【化36】
窒素雰囲気で250mLの丸底フラスコに9-フルオレニル1-ジフェニルメチルシクロペンタジエニルジルコニウムジクロリド(S-PCI社製、10.0g、18.0mmol)をトルエン100mLに溶解させた。-15℃に温度を下げた後、1.5Mのメチルリチウム(24.0mL、35.9mmol)を徐々に注入した後、常温に温度を上げて3時間撹拌させた。これに、強い撹拌下で4-(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)フェノール(7.41g、35.9mmol)を添加して60℃で3時間撹拌させた後、溶媒減圧下で溶媒を除去した。これをノルマルヘキサン200mLに溶解した後、乾燥したセライトで満たされたフィルタで濾過し、固形分を除去した。ろ液の溶媒をすべて除去し、黄色の遷移金属化合物3を得た(15.5g、収率96.3%)。
【0118】
1H NMR (CDCl3, 500 MHz): δ = 8.24 (d, 2H), 7.95 (dd, 4H), 7.45 (t, 2H), 7.35 (m, 4H), 7.21 (m, 2H), 7.05 (t, 2H), 6.87 (t, 2H), 6.71 (d, 2H), 6.48 (d, 2H), 6.05 (m, 2H), 5.98 (m, 4H), 5.85 (m, 2H), 1.36 (s, 4H), 0.92 (s, 30H).
【0119】
[実施例4]遷移金属化合物4の製造
【化37】
実施例3で、4-(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)フェノールの代わりに4-ドデシルフェノールを使用した以外は、実施例3の方法と同様に実施して遷移金属化合物4を製造した(17.3g、収率:95.5%)。
【0120】
1H NMR (CDCl3, 500 MHz): δ = 8.25 (d, 2H), 7.94 (dd, 4H), 7.45 (t, 2H), 7.35 (m, 4H), 7.20 (m, 2H), 7.08 (t, 2H), 6.88 (t, 2H), 6.70 (d, 2H), 6.47 (d, 2H), 6.03 (m, 2H), 5.98 (m, 4H), 5.85 (m, 2H), 2.64 (t, 4H), 1.62 (m, 4H), 1.31 (m, 36H), 0.87 (m, 6H).
【0121】
[実施例5]遷移金属化合物5の製造
【化38】
実施例3で、4-(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)フェノールの代わりに3-ペンタデカニルフェノールを使用した以外は、実施例3と同様に実施して遷移金属化合物5を製造した(19.1g、収率:97.4%)。
【0122】
1H NMR (CDCl3, 500 MHz): δ = 8.24 (d, 2H), 7.94 (dd, 4H), 7.45 (t, 2H), 7.35 (m, 4H), 7.22 (m, 2H), 7.09 (t, 2H), 6.88 (t, 2H), 6.71 (d, 2H), 6.47 (d, 2H), 6.03 (m, 2H), 5.99 (m, 4H), 5.85 (m, 2H), 2.63 (t, 4H), 1.63 (m, 4H), 1.30 (m, 48H), 0.89 (m, 6H).
【0123】
[比較例1]比較例1の化合物
【化39】
S-PCI社から購入して使用した。
【0124】
[比較例2]比較例2化合物の製造
【化40】
窒素雰囲気で250mL丸底のフラスコに9-フルオレニル1-ジフェニルメチルシクロペンタジエニルジルコニウムジクロリド(S-PCI社製、10.0g、18.0mmol)をトルエン100mLに溶解させた。-15℃に温度を下げた後、1.5Mのメチルリチウム(24.0mL、35.9mmol)を徐々に注入した後、常温に温度を上げて3時間撹拌させた後、乾燥したセライトで満たされたフィルタで濾過し、固形分を除去した。濾過の後ろ液の溶媒をすべて除去し、黄色の比較例2の化合物を得た(8.5g、収率 91.4%)。
【0125】
1H NMR (CDCl3, 500 MHz): δ = 8.20 (d, 2H), 7.85 (dd, 4H), 7.41 (m, 4H), 7.28 (m, 4H), 6.89 (m, 2H), 6.28 (m, 4H), 5.54 (m, 2H), -1.69 (s, 6H).
【0126】
[比較例3]比較例3化合物の製造
【化41】
実施例3で、4-(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)フェノールの代わりに4-tert-ブチルフェノールを使用し、実施例3と同様に実施して比較例3を製造した(12.8g、収率:91.4%)。
【0127】
1H NMR (CDCl3, 500 MHz): δ = 8.24 (d, 2H), 7.94 (dd, 4H), 7.45 (t, 2H), 7.35 (m, 4H), 7.22 (m, 2H), 7.09 (t, 2H), 6.88 (t, 2H), 6.70 (d, 2H), 6.47 (d, 2H), 6.03 (m, 2H), 5.99 (m, 4H), 5.85 (m, 2H), 1.30 (t, 18H).
【0128】
<製造された遷移金属化合物の溶解度の測定>
窒素雰囲気で、25℃で遷移金属化合物1gを下記表に記載のそれぞれの溶媒4gに溶解して飽和溶液を製造した後、0.45μmのフィルタで固形物を除去した。溶媒をすべて除去し、残っている触媒の重量を測定し、これより触媒の溶解度を計算し、下記表1に示した。
【0129】
【0130】
表1を参照すると、本発明の実施例1、2、4、5で製造された遷移金属化合物が、非芳香族炭化水素溶媒に対して驚くほど優れた溶解度を示すことが分かる。
【0131】
[実施例6~8および比較例4~5]回分式重合装置を使用したエチレンと1-オクテン共重合
回分式重合装置を使用して、以下のように、エチレンと1-オクテンとの共重合を行った。
【0132】
十分に乾燥した後、窒素で置換させた容量1500mLのステンレス鋼の反応器にヘプタン600mLと1-オクテン60mLを入れた後、トリイソブチルアルミニウム(1.0Mヘキサン溶液)2mLを反応器に投入した。次に、反応器の温度を加熱した後、実施例2、3、5および比較例1~2で製造された遷移金属化合物1.0wt%のトルエン溶液0.7mLと1.8gの修飾メチルアルミノキサン(20wt%、Nouryonヘプタン溶液)を順次投入した後、エチレンを反応器内の圧力が10kg/cm2になるように満たした後、エチレンを連続して供給して重合されるようにした。5分間反応を行った後、回収された反応生成物を40℃の真空オーブンで8時間乾燥させた。下記表2に反応温度、ΔT、触媒活性度、密度および分子量を示した。
【0133】
【0134】
表2に示されているように、エチレンと1-オクテン共重合で、本発明の遷移金属化合物が、比較例4および5の遷移金属触媒と対等であるかより優れた活性を示すことが分かる。
【0135】
[実施例9~10および比較例6]連続溶液重合工程によるエチレンと1-オクテン共重合
連続式重合装置を使用して、以下のように、エチレンと1-オクテンとの共重合を行った。
【0136】
触媒として実施例2,5および比較例2で製造された遷移金属化合物を使用し、溶媒はヘプタンを使用し、触媒使用量は下記表3に記載のとおりである。Zrは触媒、Alは助触媒である修飾メチルアルミノキサン(20wt%、Nouryon)を示す。各触媒は、トルエンにそれぞれ0.2g/lの濃度で溶解させて注入し、共単量体として1-オクテンを使用して合成を実施した。反応器の転化率は、それぞれの反応条件で一つ重合体として重合する時の反応条件および反応器内の温度勾配により推測することができた。分子量は、単一活性点触媒の場合、反応器温度および1-オクテン含量の関数で制御し、下記表3にその条件と結果を記載した。
【0137】
【0138】
表3を参照すると、本発明の遷移金属化合物を触媒として使用した実施例9と実施例10は、比較例2で製造された遷移金属化合物を使用した比較例6に比べて、より優れたエチレン転化率、低密度および低いMI値を有することから、本発明の遷移金属化合物を触媒として用いた場合よりも優れた物性および高い分子量を有する重合体を容易に製造することができることが分かる。
【0139】
[実施例11~12]連続溶液重合工程による高温でのエチレンと1-オクテン共重合
連続式重合装置を使用して、以下のように、高温でエチレンと1-オクテンとの共重合を行った。
【0140】
触媒として実施例2で製造された遷移金属化合物を使用し、溶媒はヘプタンを使用し、触媒使用量は下記表4に記載のとおりである。Zrは触媒、Bは助触媒であるN,N-ジオクタデシルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、Alは助触媒であるトリイソブチルアルミニウムを示す。各触媒はトルエンにそれぞれ0.2g/lの濃度で溶解させて注入し、共単量体として1-オクテンを使用して合成を実施した。反応器の転化率は、それぞれの反応条件で一つの重合体として重合する時の反応条件および反応器内の温度勾配により推測することができた。分子量は、単一活性点触媒の場合、反応器の温度および1-オクテン含量の関数で制御し、下記表4にその条件と結果を記載した。
【0141】
【0142】
表4を参照すると、本発明の遷移金属化合物を触媒として使用した実施例11~12は、高温でも触媒活性に優れることから、本発明の遷移金属化合物を触媒として用いた場合よりも様々な反応条件で重合反応を容易に行うことができることが分かる。
【0143】
以上のとおり、本発明の実施例について詳細に記述しているが、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者であれば、添付の請求の範囲に定義されている本発明の思想および範囲から逸脱しないとともに、本発明を様々に変形して実施することができる。したがって、本発明の今後の実施例の変更は、本発明の技術から逸脱することができない。
【国際調査報告】