(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-01
(54)【発明の名称】紡績ユニットおよびこのような紡績ユニットを備える空気紡績機械
(51)【国際特許分類】
B65H 59/22 20060101AFI20230125BHJP
D01H 1/115 20060101ALI20230125BHJP
D01H 13/10 20060101ALI20230125BHJP
【FI】
B65H59/22
D01H1/115 Z
D01H13/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022531496
(86)(22)【出願日】2020-11-27
(85)【翻訳文提出日】2022-06-24
(86)【国際出願番号】 EP2020083665
(87)【国際公開番号】W WO2021105382
(87)【国際公開日】2021-06-03
(32)【優先日】2019-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521553287
【氏名又は名称】ザウラー インテリジェント テクノロジー エイ・ジー
【氏名又は名称原語表記】Saurer Intelligent Technology AG
【住所又は居所原語表記】Textilstrasse 9, 9320 Arbon, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフガング ラーデマッハー
(72)【発明者】
【氏名】ハンス-ペーター モーア
(72)【発明者】
【氏名】パトリック ヴェアハイト
(72)【発明者】
【氏名】ユアゲン ヒュルス
【テーマコード(参考)】
3F111
4L056
【Fターム(参考)】
3F111BD02
3F111CA09
4L056AA19
4L056BD12
4L056BE05
4L056CA52
4L056CB04
4L056EA04
4L056EC02
4L056EC03
4L056ED01
4L056ED05
(57)【要約】
本発明は、供給されたスライバから糸を製造するための空気紡績機械用の紡績ユニットおよび供給されたスライバから糸を製造するための空気紡績機械のほか、さらに、空気紡績機械の紡績ユニットで製造された糸の、目標値を下回る糸強度を検出するための方法に関する。過度に低い糸強度を有する、空気紡績機械から進出した糸を確実に認識することを可能にする紡績ユニットおよび空気紡績機械ならびに方法を提供するために、紡績ユニットもしくは空気紡績機械の紡績ユニットには、空気紡績装置と巻取り装置との間の領域に、糸に機械的に作用する糸処理ユニットが配置されており、糸処理ユニットは、糸張力を可変に高めるために、調整可能な糸張力影響力、特に調整可能な制動力、押圧力および/または緊締力を糸に加えることが特定されている。方法には、空気紡績装置と巻取り装置との間の領域に配置されていて、糸に機械的に作用する糸処理ユニットを介して、調整可能な糸張力影響力を糸に加え、糸切れおよび/または糸切れ率を検出し、予め設定された目標率と比較し、糸切れおよび/または所定の限界値を超えた糸切れ率の偏差を表示しかつ/または評価することが特定されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給されたスライバから糸を製造するための空気紡績機械用の紡績ユニットであって、
- ドラフト装置(4)を介して供給された少なくとも1つのスライバ(14)から糸(15)を形成するための空気紡績装置(5)と、
- 巻取りパッケージ(9)に前記糸を巻き上げるための巻取り装置と
を備える、紡績ユニットにおいて、
前記空気紡績装置(5)と前記巻取り装置との間の領域に、前記糸(15)に機械的に作用する糸処理ユニット(17)が配置されており、該糸処理ユニット(17)は、糸張力を可変に高めるために、調整可能な糸張力影響力、特に調整可能な制動力、押圧力および/または緊締力を前記糸(15)に加えることを特徴とする、紡績ユニット。
【請求項2】
前記糸処理ユニット(17)は、前記糸(15)に向かう方向に移動可能な緊締手段(23a,23b)を有することを特徴とする、請求項1記載の紡績ユニット。
【請求項3】
前記緊締手段(23a,23b)は、前記糸を調整可能に引き留めるためのプレート形テンショナおよび/またはレーキ形テンショナによって形成されていることを特徴とする、請求項2記載の紡績ユニット。
【請求項4】
前記糸処理ユニット(17)は、糸走路を可変に変化させるための移動可能な変向手段、特に移動可能な糸穴を有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項または複数項記載の紡績ユニット。
【請求項5】
前記調整可能な力は、電気的に調整可能であることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項または複数項記載の紡績ユニット。
【請求項6】
前記糸処理ユニット(17)によって影響を与えることができるかまたは影響が与えられた糸区分の糸引張力を測定するためのセンサを備えることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項または複数項記載の紡績ユニット。
【請求項7】
前記糸処理ユニット(17)は、前記空気紡績装置(5)と糸引出しユニット(6a,6b)との間の領域に配置されていることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項または複数項記載の紡績ユニット。
【請求項8】
供給されたスライバから糸を製造するための空気紡績機械において、
請求項1から7までのいずれか1項または複数項記載の少なくとも1つの紡績ユニット(2)を備えることを特徴とする、空気紡績機械。
【請求項9】
前記紡績ユニット(2)における糸切れおよび/または糸切れ率を検出し、前記糸切れ率を、予め設定可能な目標率と比較するための割り当てられた評価ユニットを備えることを特徴とする、請求項8記載の空気紡績機械。
【請求項10】
前記紡績ユニット(2)に配置された糸引張力センサによって糸引張力を検出し、前記糸処理ユニット(17)の糸張力影響力を調整するための割り当てられた調整ユニットを備えることを特徴とする、請求項8または9記載の空気紡績機械。
【請求項11】
空気紡績機械の紡績ユニットで製造された糸の、目標値を下回る糸強度を検出するための方法であって、
- 空気紡績装置(5)と巻取り装置との間の領域に配置されていて、糸に機械的に作用する糸処理ユニット(17)を介して、調整可能な糸張力影響力を前記糸(15)に加え、
- 糸切れおよび/または糸切れ率を検出し、予め設定された目標率と比較し、前記糸切れおよび/または所定の限界値を超えた糸切れ率の偏差を表示しかつ/または評価する、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、供給されたスライバから糸を製造するための紡績ユニットおよび少なくとも1つの紡績ユニットを備える空気紡績機械であって、
- ドラフト装置を介して供給されたスライバから糸を形成するための空気紡績装置と、
- 巻取りパッケージに糸を巻き上げるための巻取り装置と
を備える、紡績ユニットおよびこのような紡績ユニットを備える空気紡績機械に関する。
【0002】
さらに、本発明は、空気紡績機械の紡績ユニットで製造された糸の、目標値を下回る糸強度を検出するための方法に関する。
【0003】
紡績ユニットおよび相並んで配置された多数の紡績ユニットを備えた空気紡績機械は、多種多様の構成が従来技術に基づいて公知である。空気紡績機械は、ロータ紡績機およびリング紡績機と並んで、繊維材料から糸を製造するための最も頻繁に使用される機械である。空気紡績では、典型的に、スライバが、得るべき糸繊度に相応してドラフト装置を用いて延伸され、次いで、空気紡績装置に供給される。空気紡績装置の内部で、スライバの外側の繊維が、1つまたは複数の紡績空気ノズルによって発生させられた空気渦流を用いて、スライバの内部に位置しているコア繊維の周りに巻き付けられ、これによって、糸の所望の糸強度のために重要な巻付き繊維を形成する。これによって形成された糸は、最終的に空気紡績装置の引出し通路を介して引き出され、例えば巻管に巻き取られる。
【0004】
プロセスに基づいて、紡績工程中には、時おり、例えば空気紡績ノズルもしくは空気紡績ノズルの直ぐ上流の領域の目詰まりもしくは汚染または空気紡績装置の空気圧/紡績圧の変動が生じることがある。目詰まりもしくは汚染は、第一に、空気紡績ノズルの上流に集まるスライバの繊維が原因であり、これによって、巻付き繊維がもはや所定の形式でコア繊維の周りに巻き付けられないことが生じる。糸強度に対する巻付き繊維の意味に基づいて、これによって、空気紡績装置から進出する糸は、もはや要求された糸強度を有しなくなってしまう。欠陥を含む糸は、ウィークプレース(weak place)と呼ばれる脆弱箇所を有しているが、このような脆弱箇所は、例えば光学的な方法のような公知の方法を用いては確実に認識することができない。
【0005】
このことから出発して、本発明の根底にある課題は、過度に低い糸強度を有する、空気紡績装置から進出した糸を確実に認識することを可能にする紡績ユニットおよび空気紡績機械を提供することである。さらに、本発明の根底にある課題は、空気紡績機械の紡績ユニットで製造された糸の、所定の目標値を下回る糸強度を検出するための方法を提供することである。
【0006】
本発明は、これらの課題を、請求項1記載の特徴を有する紡績ユニット、請求項7記載の特徴を有する空気紡績機械および請求項11記載の特徴を有する方法によって解決する。紡績ユニットおよび空気紡績機械の有利な発展形態は、従属請求項に記載してある。
【0007】
本発明に係る紡績ユニットは、空気紡績装置と巻取り装置との間の領域に、糸に機械的に作用する糸処理ユニットが配置されており、この糸処理ユニットは、糸張力を可変に高めるために、調整可能な糸張力影響力を糸に加えることを特徴としている。
【0008】
本発明に係る紡績ユニットの糸処理ユニットは、空気紡績装置から進出した糸の糸張力を空気紡績装置と巻取り装置との間の領域で、規定された形式で規定値に決定することを可能にする。調整可能な糸張力は、紡績された糸の所望の糸強度に合わせられていて、例えば、糸強度の、許容可能な誤差範囲内にある変動では、紡績プロセスに何ら影響を及ぼさないように選択することができる。しかしながら、糸強度が最大許容限界値を下回った場合には、糸処理ユニットによって生じたより高い糸張力に基づいて、糸切れが生じる。この糸切れは、減じられた糸強度に対する原因である紡績プロセス中の障害に対する徴候と見なすことができる。
【0009】
糸処理ユニットは、機械的な形式で糸に作用し、糸張力が、紡績すべき糸に関連して、糸に作用する調整可能な糸張力影響力によって可変に調整可能であるように形成されている。糸張力影響力は、好ましくは、調整可能な制動力、押圧力および/または緊締力によって生じさせることができる。
【0010】
このようにして、糸処理ユニットによって糸張力を高めることによって、誘発された糸切れにより、脆弱箇所を有する糸を確実に識別することができ、その結果、紡績ユニットにおける、脆弱を生じさせる原因を排除するための措置を直ちに講じることができる。これによって、本発明に係る紡績ユニットでは、障害を早期に認識しかつ排除することができることに基づいて、過度に低い糸強度を有する糸の製造および後続の巻取りを確実に阻止することができる。
【0011】
機械的に糸に作用する糸処理ユニットを介した、糸張力を高める糸張力影響力の調整は、基本的に任意に行うことができる。しかしながら、本発明の有利な発展形態によれば、糸処理ユニットは、糸に向かって、少なくとも1つの移動可能な緊締手段を有することが特定されている。好ましくは糸走行方向に対して横方向で糸に作用する緊締手段によって、糸に作用する緊締力ひいては糸張力を簡単かつ確実に所定の値に調整することができる。緊締手段は、緊締手段が点でまたは糸走路の方向で見て1つの区分で糸に接触し、これにより、十分に高い糸張力影響力もしくは緊締力が生じるように形成されていてよい。
【0012】
特に、糸の1つの区分に少なくとも1つの緊締手段が面接触していることによって、緊締手段との接触長さに基づいて、緊締力を、緊締手段との協働に基づく糸の損傷を生じさせないように調整することができる。
【0013】
糸張力を高めるための少なくとも1つの緊締手段の、好適に特定された使用のほかに、さらに、糸張力を代替的にまたは補足的に糸走路の変化によって高める可能性もある。そのために、糸処理ユニットは、糸走路を可変に調整することができる相応に適切な変向手段を有する。このようにして、変向手段による糸の変位に関連して、糸張力を特に確実に決定することができ、変向手段は、その位置に関連して、糸に押圧力を加える。変向手段の構成は基本的に自由に選択可能である。本発明の特に有利な構成によれば、糸処理ユニットは、糸走路を可変に変化させるための移動可能な糸穴を有することが特定されている。本発明のこの好適な構成によれば、糸は糸処理ユニットの移動可能な糸穴を通って走行し、糸に係合している糸穴の位置決めによって、糸走路は変化させられ、糸に押圧力が加えられる。押圧力は、糸走路が糸処理ユニットによる影響を受けていない位置に対する糸穴の位置によって規定される。これによって、移動可能な糸穴は、特に確実に糸処理ユニットと糸との協働を保証する。同時に、糸穴の構成、例えば表面特性によって、糸穴と協働する糸の損傷を確実に回避することができる。
【0014】
好適に特定された少なくとも1つの緊締手段の構成もまた、基本的に自由に選択可能であり、このことは、糸を丁寧に扱う構成を設けるという可能性を開示している。本発明の特に有利な構成によれば、緊締手段は、プレート形テンショナおよび/またはレーキ形テンショナによって形成されていることが特定されている。このようなテンショナの使用は、このようなテンショナが緊締作用ひいては緊締力の特に正確な調整を可能にするという利点を有している。例えばプレート形テンショナの使用時には、プレート形テンショナは、調整可能なばね応力で糸に作用し、糸とのプレートの接触長さによって、緊締力が糸に確実に加えられ、同時に接触長さに基づいて、糸の損傷は特に確実に回避される。
【0015】
さらに好適な実施形態による糸処理ユニットは、走行する糸と接触するための糸接触区分を備える糸制動手段を有していてよく、この糸制動手段は、走行する糸を、糸に作用する制動力を用いて確実に制動するように構成されている。例えば糸制動手段は、変向手段によって形成されていてよい。通常、糸接触手段は、走行する糸に可能な限り僅かしか影響を及ぼさない表面を有している。糸走路を純粋に可変に変向するために、好適な実施形態によれば、変向手段は、糸に接触する表面コーティングを備えて構成されていてよく、これによって、糸には、糸張力への影響のために、実質的に単に変向を生じさせる押圧力だけが加えられる。別の好適な実施形態によれば、変向は、糸に接触して摩擦を高める表面コーティングによって行うことができ、このような表面コーティングは、押圧力のみならず、制動力をも糸に加える。代替的な好適な実施形態によれば、糸制動手段は、紡績ユニットに割り当てられたかまたは割当て可能な部材によって形成されていてよく、このような部材は、糸の変向なしに、走行する糸と接触するために設けられた表面区分を有する。
【0016】
糸処理ユニットを介した糸張力影響力の調整、例えば、有利に設けられた変向手段の移動および/または有利に設けられた、糸に作用する緊締手段の移動および/または有利に糸に作用する糸制動手段の移動は、手動で行うことができる。そのために、例えば機械オペレータは、糸処理ユニットの相応の調整を行う。しかしながら、本発明の特に好適な構成によれば、糸張力影響力は、電気的に調整可能であることが特定されている。糸張力影響力の電気的な調整は、1つには、糸処理ユニットの調整の快適性を高め、もう1つには、糸張力影響力の特に正確な調整を可能にする。糸張力影響力を電気的に調整するために、例えば適切なサーボモータを使用することができ、このサーボモータを用いて、有利に設けられた変向手段または緊締手段または糸制動手段の位置を糸に対して相対的に正確に移動させることができる。
【0017】
糸張力の調整は、例えば、有利に設けられた変向手段および/または緊締手段および/または糸制動手段に対する適切なスケーリングでの位置決めによって行うことができる。
【0018】
本発明の有利な構成によれば、糸処理ユニットによって影響を与えることができるまたは影響が与えられた糸区分の糸引張力を測定するためのセンサが設けられている。
【0019】
さらに、糸処理ユニットによって調整された糸張力の視覚的な表示を、センサに無線でまたはケーブル接続されて接続可能なまたは接続された適切な表示ユニットを介して可能にするようなセンサの使用は、糸張力を特に正確に調整することを可能にする。さらに、糸張力影響力の、有利に特定された電気的な調整可能性と組み合わせられたこのようなセンサの使用は、糸張力を自動化して適切な開ループ制御および閉ループ制御ユニットを介して中央ユニットによって調整しかつコントロールする可能性を提供する。このとき、そのために機械オペレータによる手動の移動は必要ない。これによって、このようなセンサの使用は、不変の糸張力を持続的に維持することを可能にする。
【0020】
糸処理ユニットは、基本的に、紡績ユニットにおいて空気紡績装置と巻取り装置との間の任意の箇所に配置されていてよい。しかしながら、本発明の特に有利な構成によれば、糸処理ユニットは、空気紡績装置と、空気紡績装置に続く糸引出しユニットとの間の領域に配置されていることが特定されている。糸引出しユニットは、例えば、糸を空気紡績装置から引き出す駆動される引出しローラ対である。この領域では、糸張力が、糸処理ユニットの作用なしに通常一定であるので、この領域は、特に有利には、糸処理ユニットを介して糸張力を変化させるために適している。さらに、紡績ユニットのこの領域は、通常、糸処理ユニットを簡単に配置するために利用することができる十分に大きな構成スペースを有している。
【0021】
本発明は課題を、さらに、上述した少なくとも1つの本発明に係る紡績ユニットまたは発展形態による紡績ユニットを備える、供給されたスライバから糸を製造するための空気紡績機械によって解決する。空気紡績機械は、通常、相並んで配置された多数の紡績ユニットを有し、これらの紡績ユニットで同時に、供給されたスライバから多数の糸が紡績される。本発明に係る空気紡績機械は、過度に低い糸強度を有する糸を早期に認識し、その結果、糸強度を低減させる、場合により存在する障害を排除するための措置を直ちに講じることができるという利点を有している。
【0022】
本発明の特に有利な構成によれば、空気紡績機械は、紡績ユニットにおける糸切れおよび/または糸切れ率を検出する評価ユニットを有し、この評価ユニットは、さらに、糸切れ率と、予め設定可能な目標率との比較を実施する。本発明のこの発展形態のように形成された空気紡績機械は、評価ユニットを介して個々の紡績ユニットを自動化して監視し、個々の紡績ユニットにおける糸切れを認識しかつ/または糸切れ率を検出する。これによって、選択可能なインジケータに関連して、オペレータにこのことを表示することができ、次いで、オペレータは、原因調査および場合によっては障害排除のための適切な措置を講じることができる。このようにして、糸切れを評価ユニットを介して表示することができ、オペレータによる検査を行うことができる。代替的に、評価ユニット、例えば空気紡績機械のインフォメータを介して検出された糸切れ率に応じて、つまり、糸切れ率が、予め設定された形式で所望の値から逸脱した場合に、表示を行うことができる。
【0023】
本発明の特に有利な構成によれば、空気紡績機械はさらに調整ユニットを有し、この調整ユニットは、紡績ユニットに配置された糸引張力センサによって糸引張力を検出し、糸処理ユニットの糸張力影響力を調整するために働く。調整ユニットの使用は、個々の紡績ユニットにおいて、紡績された糸の糸強度が過度に低い場合に糸切れを生じさせる糸固有の糸張力を自動化して調整することができる。調整ユニットの使用は、個々の紡績ユニットの紡績プロセスの、自動化された特に快適な調整および監視を可能にする。
【0024】
本発明は課題を、さらに、空気紡績機械の紡績ユニットで製造された糸の、目標値を下回る糸強度を検出するための方法によって解決し、本発明に係る方法によれば、空気紡績装置と巻取り装置との間の領域に配置されていて、糸に機械的に作用する糸処理ユニットを介して、調整可能な糸張力影響力を糸に加え、糸切れおよび/または糸切れ率を検出し、予め設定された目標率と比較し、糸切れおよび/または所定の限界値を超えた糸切れ率の偏差を表示しかつ/または、特に措置を初期化するために、評価することが特定されている。
【0025】
本発明に係る方法は、空気紡績装置の紡績プロセスにおける障害が、紡績された糸の糸強度を低減させるという事情を利用する。糸処理ユニットを介して、糸張力を、所望の糸強度に相当する値に固定することができる。糸強度が、紡績プロセスにおける欠陥に基づいて所望の強度を下回った場合には、糸処理ユニットによって生じた高められた糸張力に基づいて糸切れが発生し、この糸切れは、例えば空気紡績装置における汚染に基づく紡績プロセスの障害に対する徴候と見なすことができる。
【0026】
本発明に係る方法によれば、個々の紡績ユニットにおける糸切れおよび/または糸切れ率が検出される。調整すべきプロセスパラメータに関連して、糸切れは、紡績プロセスにおける障害が存在していることに対する徴候と見なすことができ、これによって、糸切れがオペレータに表示され、オペレータは、次いで、適切な措置を講じる。追加的にまたは代替的に、所望の糸切れ率を上回った場合に初めて、オペレータに紡績プロセスの障害の可能性が信号化されてもよく、オペレータは、次いで、同様に検査または場合によっては障害の排除を行う。
【0027】
紡績ユニットもしくは空気紡績機械は、好適な実施形態のうちの1つの実施形態による、特に上述した紡績ユニットまたは空気紡績機械であってよい。
【0028】
次に本発明の1つの実施例について、図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】好適な実施例による、複数の紡績ユニットを有する空気紡績機械を概略的に示す図である。
【
図2】通常の紡績運転における、
図1に示した空気紡績機械の紡績ユニットを示す図である。
【
図3】
図2に示した紡績ユニットの、緊締手段を有する糸処理ユニットを示す図である。
【0030】
図1には、相並んで配置された多数の紡績ユニット2を有する好適な実施例による空気紡績機械1が概略的に示してある。各々の紡績ユニット2は、例えば紡績ケンスとして形成されていてよいスライバ源3と、ドラフト装置4と、空気紡績装置5と、引出しローラ対6a,6bと、糸クリアラ7と、糸トラバース装置8と、糸処理ユニット17と、巻取り装置の綾巻きパッケージ9とを備えている。操作キャリッジ10が、空気紡績機械1に沿って延在するレール11,12に沿って走行可能に支持されている。空気紡績機械1の長手方向側の端部には、空気紡績機械1を運転するために必要な中央装置を配置するための機械端部ハウジング13が設けられている。
【0031】
図2には、通常の紡績運転中における好適な実施例による紡績ユニット2が示してある。スライバ源3によって準備されたスライバ14が、ドラフト装置4を通過し、このドラフト装置4でスライバ14は延伸される。延伸されたスライバ14は、次いで、ドラフト装置4の出口ローラ対16a,16bを介して空気紡績装置5に供給される。空気紡績装置5では、スライバ14の外側の繊維が、空気紡績装置5の内部に発生させられた空気流に基づいて、スライバ14の内部に位置するコア繊維の周りに巻き付けられ、これによって、糸15の所望の強度のために重要な巻付き繊維を形成する。紡績された糸15は、引出しローラ対6a,6bを介して空気紡績装置5から引き出され、糸クリアラ7および糸トラバース装置8の通過後に巻取り装置の綾巻きパッケージ9に巻き上げられる。
【0032】
空気紡績装置5と引出しローラ対6a,6bとの間の領域で、糸は糸処理ユニット17を通過し、この糸処理ユニット17を用いて、糸張力を高める糸張力影響力が糸15に機械的に加えられる。糸張力影響力によって調整可能な糸張力は、所望の糸強度に合わせられていて、糸強度が所望の値を下回っている場合に、高められた糸張力に基づいて糸切れが発生するように数値設定されている。
【0033】
糸15に糸張力影響力を加えるための糸処理ユニット17の1つの実施例が、
図3に示してある。糸処理ユニット17は、互いに間隔を置いて移動可能な2つの緊締ディスク23a,23bを有しており、両緊締ディスク23a,23bの間を糸15が通過する。糸15に作用する緊締力は、圧縮コイルばね21により加えられるばね応力によって規定されており、このばね応力は、緊締ディスク23aと、軸20に沿って移動可能なストッパ22との間の間隔から生じ、緊締ディスク23aとストッパ22とには、圧縮コイルばね21の互いに反対側の端部が接触している。ストッパ22の移動ひいては緊締ディスク23aとストッパ22との間の間隔の調整は、支持体19に配置された、軸20を回転させるサーボモータ18を介して行われ、このサーボモータ18は、空気紡績機械の開ループ制御および閉ループ制御ユニット(図示せず)に接続されている。
【0034】
本明細書には図示されていない1つの実施例によれば、糸処理ユニット17は、糸15によって貫通される糸穴を有しており、この糸穴は、糸走行方向に対して横方向に移動可能である。糸穴の変位によって糸走路が変向させられ、糸穴の位置に応じて、糸に作用する糸張力影響力は、押圧力、特に付加的に制動力の形態で調整可能であり、ひいては、糸張力が調整可能である。好適に提供される付加的な制動力は、1つの好適な実施例によれば、糸穴の、糸に接触するかもしくは糸を変向させる表面区分の相応の表面コーティングによって実現されていてよい。
【0035】
同様に図示されていない1つの実施例によれば、このような制動力を発生させるために糸制動手段が設けられており、この糸制動手段は、走行する糸に接触するための糸接触区分を備えていて、この糸接触区分は、走行する糸を、糸に作用する制動力を用いて確実に制動するように形成されている。
【符号の説明】
【0036】
1 空気紡績機械
2 紡績ユニット
3 スライバ源
4 ドラフト装置
5 空気紡績装置
6a,6b 引出しローラ対
7 糸クリアラ
8 糸トラバース装置
9 綾巻きパッケージ
10 操作キャリッジ
11 レール
12 レール
13 機械端部ハウジング
14 スライバ
15 糸
16a,16b 出口ローラ対
17 糸処理ユニット
18 サーボモータ
19 支持体
20 軸
21 圧縮コイルばね
22 ストッパ
23a,23b 緊締ディスク
【国際調査報告】