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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-01
(54)【発明の名称】外科用システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 34/20 20160101AFI20230125BHJP
   A61B 34/30 20160101ALI20230125BHJP
   A61B 17/15 20060101ALI20230125BHJP
【FI】
A61B34/20
A61B34/30
A61B17/15
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022531516
(86)(22)【出願日】2020-11-26
(85)【翻訳文提出日】2022-05-27
(86)【国際出願番号】 EP2020083555
(87)【国際公開番号】W WO2021105310
(87)【国際公開日】2021-06-03
(31)【優先権主張番号】19212185.3
(32)【優先日】2019-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516312682
【氏名又は名称】デピュイ・アイルランド・アンリミテッド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】DEPUY IRELAND UNLIMITED COMPANY
【住所又は居所原語表記】Loughbeg Industrial Estate, Ringaskiddy, County Cork, Ireland
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ウルボイ・フランソワ
(72)【発明者】
【氏名】バートン・アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】デマンジェット・ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】ジラード-モントー・ダニエル
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160LL01
4C160LL12
4C160LL27
4C160LL28
4C160LL29
(57)【要約】
本開示は、複数の目標面及び/又は軸に従って解剖学的構造を処置するための外科用システムであって、ロボットデバイス(1)であって、現在の面又は軸を画定するエンドエフェクタ(2)と、エンドエフェクタ(2)に連結されている作動ユニット(11)と、を備える、ロボットデバイス(1)と、現在の面又は軸の姿勢を判定するよう構成されている追跡ユニット(3)と、追跡ユニットに連結されている制御ユニットであって、解剖学的構造を処置するためにエンドエフェクタ(2)の現在の面又は軸を複数の目標面及び/又は軸のそれぞれ1つと整合させるように、作動ユニット(11)を制御するよう構成されている、制御ユニットと、を備え、ロボットデバイスが、少なくとも以下のモード:作業モードであって、処置が、作動ユニットによって1つの目標面又は軸に拘束されたエンドエフェクタを用いて行われている、作業モード、及び待機モードであって、処置が行われておらず、作動ユニットが、別の目標面又は軸と整合してエンドエフェクタを移動するよう動作可能である、待機モードで動作可能であり、制御ユニットが、(a)ロボットデバイス(1)が待機モードにあることを判定するよう、(b)少なくとも1つの第1の方向で、エンドエフェクタ(2)及び/又は作動ユニット(11)に適用されるトリガ力を検出するよう、(c)判定(a)及び検出(b)の結果として、現在の面又は軸を次の目標面又は軸と整合させるように、作動ユニット(11)によってエンドエフェクタ(2)の位置変化をトリガするよう、更に構成されている、外科用システムに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の目標面及び/又は軸に従って解剖学的構造を処置するための外科用システムであって、
ロボットデバイス(1)であって、
現在の面又は軸を画定するエンドエフェクタ(2)と、
前記エンドエフェクタ(2)に連結されている作動ユニット(11)と
を備える、前記ロボットデバイス(1)と、
前記現在の面又は軸の姿勢を判定するよう構成されている追跡ユニット(3)と、
前記追跡ユニットに連結されている制御ユニットであって、前記解剖学的構造を処置するために前記エンドエフェクタ(2)の前記現在の面又は軸を前記複数の目標面及び/又は軸のそれぞれ1つと整合させるように、前記作動ユニット(11)を制御するよう構成されている、前記制御ユニットと
を備え、
前記ロボットデバイスが、少なくとも以下のモード:
作業モードであって、処置が、前記作動ユニットによって1つの目標面又は軸に拘束された前記エンドエフェクタを用いて行われている、前記作業モード、及び
待機モードであって、処置が行われておらず、前記作動ユニットが、別の目標面又は軸と整合して前記エンドエフェクタを移動するよう動作可能である、前記待機モード
で動作可能であり、
前記制御ユニットが、
(a)前記ロボットデバイス(1)が前記待機モードにあることを判定するよう、
(b)少なくとも1つの第1の方向で、前記エンドエフェクタ(2)及び/又は前記作動ユニット(11)に適用されるトリガ力を検出するよう、
(c)判定(a)及び検出(b)の結果として、前記現在の面又は軸を次の目標面又は軸と整合させるように、前記作動ユニット(11)によって前記エンドエフェクタ(2)の位置変化をトリガするよう、
更に構成されている、
前記外科用システム。
【請求項2】
前記エンドエフェクタ(2)が、鋸などの切断ツール、バー又はドリル、切断ガイド及びガイド用ツールのうちの少なくとも1つを備える、請求項1に記載の外科用システム。
【請求項3】
前記追跡ユニット(3)が、前記エンドエフェクタ(2)及び/又は前記作動ユニット(11)にしっかりと取り付けられたトラッカー(31、32)を備える、請求項1又は2に記載の外科用システム。
【請求項4】
複数の目標面及び/又は軸に従って解剖学的構造を処置するためのロボットデバイス(1)の位置変化をトリガする方法であって、前記ロボットデバイスが、現在の面又は軸を画定するエンドエフェクタ(2)、及び前記エンドエフェクタ(2)に連結されている作動ユニット(11)を備えており、前記ロボットシステムが、少なくとも以下のモード:
作業モードであって、処置が、前記作動ユニットによって1つの目標面又は軸に拘束された前記エンドエフェクタを用いて行われている、前記作業モード、及び
待機モードであって、処置が行われておらず、前記作動ユニットが、別の目標面又は軸と整合して前記エンドエフェクタを移動するよう動作可能である、前記待機モード
で動作可能であり、
(a)前記ロボットデバイス(1)が前記待機モードにあることを判定するステップと、
(b)少なくとも1つの第1の方向で、前記エンドエフェクタ(2)及び/又は前記作動ユニット(11)に適用されるトリガ力を検出するステップと、
(c)ステップ(a)及び(b)において行われた前記判定及び前記検出の結果として、前記エンドエフェクタ(2)を次の目標面又は軸と整合させるために、前記作動ユニット(11)によって前記エンドエフェクタの位置変化をトリガするステップと、
を含む、前記方法。
【請求項5】
前記トリガ力が、線形力及びトルクのうちの少なくとも1つを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(b)が、第1の閾値よりも大きな、前記作動ユニット(11)の少なくとも1つのサーボモータにおける電流値を感知するステップを含む、請求項4又は請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ステップ(b)が、第2の閾値よりも大きな、前記エンドエフェクタ(2)の変位を感知するステップを含む、請求項4~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記追跡ユニット(3)の追跡データに基づいて前記エンドエフェクタ(2)の前記変位を感知するステップを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ステップ(b)が、前記エンドエフェクタ及び/又は前記作動ユニットに適用される一連の外部線形力及び/又はトルクを検出するステップを含む、請求項4~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記エンドエフェクタが、トリガを含む動力付きツールを備えており、ステップ(b)が、前記ツールがオフ状態にある間、前記トリガに働く圧力を検出するステップを更に含む、請求項4~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記エンドエフェクタの前記位置変化が、前記第1の方向に従って実質的に実行される、請求項5~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記トリガ力とは異なる外力を前記検出する結果として、前記ロボットデバイスのトリガされた移動を停止させるステップを更に含む、請求項4~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
ステップ(a)が、医療画像及び/又は解剖学的目印を使用して、前記解剖学的構造(B)に対する前記エンドエフェクタ(2)の位置を決定するステップを含む、請求項4~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
ステップ(b)が、前記外力が適用された持続期間を感知するステップ、及び前記感知された持続期間と持続期間の閾値を比較するステップを更に含む、請求項4~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
ステップ(c)において、前記制御ユニットが、前記第1の方向における求められたオフセット振幅によって、前記エンドエフェクタ(2)の変位をトリガし、前記オフセットが、前記トリガ力が解放されると取り消される、請求項4~14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ロボットデバイスを備える外科用システム、及びこのようなロボットデバイスの位置変化をトリガする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一部の外科手技は、解剖学的構造が処置される、複数のステップを行うことを必要とする。
【0003】
例えば、全膝関節形成術は、通常、損傷した骨及び軟骨を除去し、人工膝関節を装着するために、大腿骨骨端及び脛骨骨端の両方を切断する必要がある。その目的のために、外科医は、切断ブロックを介して振動鋸を使用することによって、大腿骨に対して5回以上及び脛骨に対して1回以上の切断を行う必要がある。
【0004】
図1は、大腿骨コンポーネントFC及び脛骨コンポーネントTCを含む人工膝関節を受容することが意図された膝の概略斜視図である。一般に、大腿骨Fに対して行われる切断は、平面F1に沿った遠位切断、平面F2に沿った前方切断、平面F3に沿った後方切断、並びに遠位面を前方面及び後方面にそれぞれ接続する前方面取りF4及び後方面取りF5である。平面T1に沿った脛骨Tの切断を行う必要がある。
【0005】
外科医がこれらすべての面を正確にかつ短時間で行うために、ロボットシステムが開発されてきた。
【0006】
例えば、文書WO2018/103945は、電動作動ユニット、作動ユニットの端子セグメントに取り付けられた第1の端部を有する平面機構、鋸であるエンドエフェクタにしっかりと取り付けられた第2の端部を備えるロボットシステムを教示している。鋸は、本体、本体に対して可動性の鋸刃、及び切断を行うために外科医によって把持されるよう構成されているハンドルを備える。このロボットシステムはまた、鋸及び切断される骨の相対位置をリアルタイムで決定するために、鋸及び患者にそれぞれ取り付けられたトラッカー(図示せず)、並びに鋸刃と切断が行われる必要がある所定の面との整合を維持するために、患者又は外科医からの小さな動きを補償するよう構成されている制御ユニットを備える。図2A図2Fは、それぞれ脛骨切断、遠位切断、前方切断、後方切断、前方面取り切断及び後方面取り切断を実施している最中の、このようなロボットデバイス1の斜視図を示している。
【0007】
各切断ステップを行うためのエンドエフェクタの位置の制御は、通常、ループで実行される3つの以下のステップの並びとして定義することができる:
段階1:ロボットデバイスは、切断の前及びその最中に切断位置を維持する;ロボットデバイスは、骨の切断が完了していないかぎり、所望の切断位置から逸脱することがない;
段階2:切断が完了する;ロボットデバイスは、次の切断位置まで移動する指示を受けるよう待機している;その間に、一般に、ロボットデバイスは、エンドエフェクタの位置を前の切断位置に維持する;
段階3:ロボットデバイスは、安全上の理由のため、一般にユーザからの指示を受信した後、次の切断位置へとエンドエフェクタを変位させる。
【0008】
段階2から段階3への変更をトリガするため、ユーザは、エンドエフェクタ又はロボットデバイスに設けられているボタン、すなわちフットスイッチ、又はソフトウェアグラフィックユーザインターフェースに一体化されており、かつタッチスクリーン上に表示されている仮想ボタンを使用しなければならないことがある。
【0009】
このトリガステップは、ユーザが、非可視ゾーンでフットスイッチを探し、ユーザの手をエンドエフェクタから外し、かつ/又はロボットデバイスを作動させるために別の人に指示をする必要があることがあり、これらは、時間をとり、ユーザのワークフローの妨げとなるものであり、ユーザを苛つかせるおそれがある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
したがって、ユーザにとって一層の人間工学的な、ロボットデバイスの位置変化をトリガするためのシステム及び方法を求めることが望ましい。
【0011】
実施形態は、複数の目標面及び/又は軸に従って解剖学的構造を処置するための外科用システムであって、
ロボットデバイスであって、
現在の面又は軸を画定するエンドエフェクタと、
エンドエフェクタに連結されている作動ユニットと、
を備える、ロボットデバイスと、
現在の面又は軸の姿勢を判定するよう構成されている追跡ユニットと、
追跡ユニットに連結されている制御ユニットであって、解剖学的構造を処置するためにエンドエフェクタの現在の面又は軸を複数の目標面及び/又は軸のそれぞれ1つと整合させるように、作動ユニットを制御するよう構成されている、制御ユニットと、
を備え、
ロボットデバイスが、少なくとも以下のモード:
作業モードであって、処置が、作動ユニットによって1つの目標面又は軸に拘束されたエンドエフェクタを用いて行われている、作業モード、及び
待機モードであって、処置が行われておらず、作動ユニットが、別の目標面又は軸と整合してエンドエフェクタを移動するよう動作可能である、待機モード
で動作可能であり、
制御ユニットが、
(a)ロボットデバイスが待機モードにあることを判定するよう、
(b)少なくとも1つの第1の方向で、エンドエフェクタ及び/又は作動ユニットに適用されるトリガ力を検出するよう、
(c)判定(a)及び検出(b)の結果として、現在の面又は軸を次の目標面又は軸と整合させるように、作動ユニットによってエンドエフェクタの位置変化をトリガするよう、
更に構成されている、
外科用システムに関する。
【0012】
当該システムのために、ユーザは、その前にあるロボットデバイスに直接、トリガ力を適用することができるので、このトリガステップは一層容易かつ迅速になる。
【0013】
一部の実施形態では、エンドエフェクタは、鋸などの切断ツール、バー又はドリル、切断ガイド及びガイド用ツールのうちの少なくとも1つを備える。
【0014】
一部の実施形態では、追跡ユニットは、エンドエフェクタ及び/又は作動ユニットにしっかりと取り付けられたトラッカーを備える。
【0015】
実施形態は、複数の目標面及び/又は軸に従って、解剖学的構造を処置するためのロボットデバイスの位置変化をトリガする方法であって、ロボットデバイスが、現在の面又は軸を画定するエンドエフェクタ、及びエンドエフェクタに連結されている作動ユニットを備えており、ロボットシステムが、少なくとも以下のモード:
作業モードであって、処置が、作動ユニットによって1つの目標面又は軸に拘束されたエンドエフェクタを用いて行われている、作業モード、及び
待機モードであって、処置が行われておらず、作動ユニットが、別の目標面又は軸と整合してエンドエフェクタを移動するよう動作可能である、待機モード
で動作可能である、方法であって、
(a)ロボットデバイスが待機モードにあることを判定するステップと、
(b)少なくとも1つの第1の方向で、エンドエフェクタ及び/又は作動ユニットに適用されるトリガ力を検出するステップと、
(c)ステップ(a)及び(b)において行われた判定及び検出の結果として、エンドエフェクタを次の目標面又は軸と整合するために、作動ユニットによってエンドエフェクタの位置変化をトリガするステップと、
を含む、方法に関する。
【0016】
トリガ力は、線形力及びトルクの少なくとも1つを含むことができる。
【0017】
一部の実施形態では、ステップ(b)は、第1の閾値よりも大きな、作動ユニットの少なくとも1つのサーボモータにおける電流値を感知するステップを含む。
【0018】
一部の実施形態では、ステップ(b)は、第2の閾値よりも大きな、エンドエフェクタの変位を感知するステップを含む。エンドエフェクタの当該変位は、追跡ユニットの追跡データに基づいて感知され得る。
【0019】
一部の実施形態では、ステップ(b)は、エンドエフェクタ及び/又は作動ユニットに適用される一連の外部線形力及び/又はトルクを検出するステップを含む。
【0020】
一部の実施形態では、エンドエフェクタは、トリガを含む動力付きツールを備えており、ステップ(b)は、ツールがオフ状態にある間、トリガにかかる圧力を検出するステップを更に含む。
【0021】
一部の実施形態では、エンドエフェクタの位置変化は、第1の方向に従って実質的に行われる。
【0022】
一部の実施形態では、本方法は、トリガ力とは異なる外力を検出する結果として、ロボットデバイスのトリガされた移動を停止させるステップを含んでもよい。
【0023】
一部の実施形態では、ステップ(a)は、医療画像及び/又は解剖学的目印を使用して、解剖学的構造に対するエンドエフェクタの位置を決定するステップを含む。
【0024】
一部の実施形態では、ステップ(b)は、外力が適用された持続期間を感知するステップ、及び当該感知された持続期間と持続期間の閾値を比較するステップを更に含む。
【0025】
一部の実施形態では、ステップ(c)において、制御ユニットは、第1の方向における求められたオフセット振幅によって、エンドエフェクタ(2)の変位をトリガし、当該オフセットは、トリガ力が解放されると取り消される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
更なる実施形態及び利点は、添付されている図面を参照して、以下の詳細説明に記載されている。
図1】人工膝関節をインプラントするために、大腿骨及び脛骨に行われる切断を例示する概略図である。
図2A】脛骨切断を実施する、ロボットデバイスの斜視図である。
図2B】遠位切断を実施する、ロボットデバイスの斜視図である。
図2C】前方切断を実施する、ロボットデバイスの斜視図である。
図2D】後方切断を実施する、ロボットデバイスの斜視図である。
図2E】前方面取り切断を実施する、ロボットデバイスの斜視図である。
図2F】後方面取り切断を実施する、ロボットデバイスの斜視図である。
図3】実施形態による、外科用システムの斜視図である。
図4】実施形態による、ロボットデバイスの斜視図である。
図5】ロボットデバイスの位置変化をトリガする方法のフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本ロボットデバイスは、基部、現在の面又は軸を画定するエンドエフェクタ、及び基部に対してエンドエフェクタを移動させるために、エンドエフェクタに連結されている電動作動ユニットを備える。
【0028】
一部の実施形態では、エンドエフェクタは、鋸などの骨切断ツール、バー又はドリルとすることができる。このツールが外科用鋸である場合、エンドエフェクタは、鋸刃が振動する面となる現在の面を画定する。このツールが、バー又はドリルである場合、エンドエフェクタは、このバー又はドリルの長手方向軸となる電流軸を画定する。
【0029】
他の実施形態では、エンドエフェクタは、切断ガイドを含むことができ、これは、現在の面又は軸に従って、ユーザによる自由可動性骨切断ツールを案内するよう構成されている、スロット(現在の面を画定する)又は円筒形の穴(電流軸を画定する)の形態の少なくとも1つの貫通アパーチャを備える剛性ブロックである。
【0030】
他の実施形態では、エンドエフェクタは、電流軸に従い、インプラントインパクタ又はスクリュードライバなどのインプラント挿入ツールを案内するためのガイド用ツールを備えてもよい。
【0031】
一部の実施形態では、エンドエフェクタは、切断面内にある切断ツールの移動を拘束するよう構成されている平面機構によって、作動ユニットに接続されていてもよい。
【0032】
有利なことに、切断ツールは、平面機構から連結解除させることができる。好ましくは、とりわけ、切断ツールがトラッカーを収容するよう意図されていない場合、切断ツールの取り付け手段は、再現可能な固定を実現する。
【0033】
平面機構を実装するために、いくつかの異なるアーキテクチャが存在する。例えば、平面機構は、1つの回転軸と切断ツールをその長手方向に沿って搬送する1つの並進軸とのみで作製され得る。あるいは、平面機構は、2つの直交する並進軸と回転軸から作製することができる。別の実施形態によれば、平面機構は、回転軸と切断ツールを搬送する並進軸とを含むアーチ形態のスライダとすることができる。
【0034】
実施形態によれば、平面機構は受動的であり、この機構が電動化されておらず、ユーザによって自由に操作され得ることを意味する。このような受動的機構の利点の1つは、鋸を骨内で操作するときにユーザの全感覚を失わないことである。例えば、外科医は、切断ブロック内で鋸を自由に操作し、骨の抵抗の変化を感知することによって、鋸刃が骨の背後に到達したときを検出するために使用され、この感覚は、その関節において非常に低い摩擦を有する受動的平面機構によって完全に保たれる。
【0035】
あるいは、平面機構はまた、少なくとも部分的に能動的であってもよく、すなわち、少なくとも1つの電動自由度を含む。平面機構が能動的である場合、すなわち、この平面機構は、少なくとも2つの電動自由度を含む場合、切断は自動的に実行され得る。当該電動自由度はすべて、切断面内で切断ツールを移動させるように構成されていることに留意されたい。
【0036】
実施形態にかかわらず、平面機構は、切断面が一旦、目標面と整合すると、その各自由度を係止する係止システムを備えてもよい。
【0037】
作動ユニットは、複数の可動セグメントから作製されたシリアルアーキテクチャを有することができる。一部の実施形態では、作動ユニットは、各目標面に対する切断面の位置及び向きを調節するための3つの電動回転自由度を有する。他の実施形態では、作動ユニットは、2つの電動回転自由度及び1つ又は2つの電動並進自由度を有する。一般に述べると、作動ユニットは、3つ~5つの電動自由度を含み、そのうちの少なくとも2つは、互いに対して直交する回転自由度となる。セグメント及びそれらのコンポーネントは、ロボットデバイスが、平面機構及び手術用ツールを保持することが可能な程度に十分な強靭さを保ち、ユーザが手術用ツールを操作する際にユーザによって適用されるある程度の標準圧に抵抗しつつも、可能なかぎりコンパクトで軽量であるように最適に一体化されている。
【0038】
一部の実施形態では、作動ユニットのアーキテクチャは、3つの回転自由度を有して作製されている。
【0039】
一部の実施形態では、セグメントは、第1及び第3の回転軸が互いに実質的に平行であり、第2の軸が第1及び第3の軸に実質的に直交するように配置されている。
【0040】
他の実施形態では、第1及び第2の軸、又は第2及び第3の軸のいずれかは、互いに実質的に平行であり、第1の軸は、第3の軸に実質的に直交している。
【0041】
膝関節形成術(TKA、UKAなど)のために使用する場合、対象とする脚部の内側(内方)又は外側(外方)にロボットデバイスを配置することができる。第1の回転軸は、膝の矢状面に実質的に直交するよう意図されている。ロボットシステムのいずれの用途の場合でも、作動ユニットを大体の範囲で整合するために識別及び使用しやすい何らかの解剖学的目印を定義することができる。
【0042】
一部の実施形態では、作動ユニットのアーキテクチャは、切断面内において、電動化され得る、又は電動化され得ない更なる移動を可能にすることができる。
【0043】
以下で一層詳細に説明するとおり、作動ユニットは、制御ユニットによって制御される。制御ユニットは、ロボットデバイス内に一体化されていてもよく、又はロボットデバイスから離れていてもよい。
【0044】
本システムは、ロボットデバイスの基部を支持する関節接合されている係止可能保持アームであって、手術台、脚部ホルダなどの機械的支持体に接続するのに、又はホイールをブロックすることができる可動カートにマウントするのに適した、上記係止可能保持アームを備えていてもよい。脚部ホルダは、患者が手術台に横たわっているとき、脚部を所定の屈曲位置に維持するように構成されている調節可能な機構である。
【0045】
保持アームは、玉継手、回転継手、及び/又は並進継手を使用する、いくつかの関節接合セグメントからなってもよい。
【0046】
保持アームは、手動でノブ(機械的ロックシステム)によって、又はロックシステムの専用アクチュエータによって能動的に係止可能である。ロックシステムは、電気システム、圧電システム、油圧システム、空気圧システム、又はこのようなシステムの組合せ(例えば、電気モータによって駆動される油圧シリンダ)であってもよい。例えば、SMITH&NEPHEW社は、SPIDER(商標)の名称で、能動的に係止可能な受動的保持アームを販売している。アクチュエータは、ボタン、フットスイッチ、遠隔ボタンなどであり得る。ロボットデバイスを操作するために、ユーザは、ロボットデバイスの所望のポーズが達成されるまでアクチュエータを作動させ続けなければならない。
【0047】
保持アームは、ロボットデバイスの重量を支え、治療される解剖学的構造に対するロボットデバイスの大まかな位置決めを維持する。このため、デバイスを操作する際のユーザの運動が制限され、有利な実施形態では、ユーザ及び/又は患者の運動、切断ツールの振動、及び作動ユニットの運動によって引き起こされる反発力が減衰される。
【0048】
実施形態によれば、保持アームは受動的である。
【0049】
有利なことに、保持アームは、ロボットデバイスと、患者に固定されたトラッカーに対するロボットデバイスの目標位置との間の距離に応じて漸進的に制動されてもよい。例えば、制動力は、ロボットデバイスの目標位置までの距離に反比例してもよい。あるいは、1つ又は複数の同心体積(例えば、立方体又は球体)が、ロボットデバイスの目標位置の周囲に画定されてもよい。制動力は、当該体積のうちの1つにおけるロボットデバイスの存在に応じて調節することができる。したがって、ロボットデバイスが目標位置に近接しているとき、保持アームは制動され、ユーザは力フィードバック情報を受け取ることができる。あるいは、フィードバック情報は、光信号又は音響信号の形態で提供されてもよい。例えば、光信号の可変フラッシュ周波数及び/又は強度は、ロボットデバイスと目標位置との間の距離を示すことができる。同様に、音響信号の可変周波数、反復速度、及び/又は振幅が、上記距離を示すことができる。いずれの場合も、制動は完全ではないため、ユーザは常に、最終的な所望の位置までロボットデバイスを操作することができる。次に、保持アームは、ユーザからの動作(例えば、アクチュエータの操作、例えば、ボタンの解放又は押圧)に応じて係止される。ロボットデバイスを再び移動させることを望む場合、ユーザは恐らく上述の制動力で、再度アクチュエータを操作して保持アームを解放しなければならない。ロボットデバイスの新たな目標位置が規定される場合、新たな制動量が規定され、当該新たな量に基づいて制動が調節される。
【0050】
好ましくは、レバーアームの効果を最小限に抑えるために、保持アームと作動ユニットとの間の接続部を、作動ユニットの第1のセグメント又はロボットデバイスの重心に可能なかぎり近づける。保持アームに取り付けられた作動ユニットの一部は、ロボットデバイスの基部と呼ばれる。
【0051】
実施形態によれば、ロボットデバイスの基部は、保持アームに固定されていてもよい。このアーキテクチャは、作動ユニットの移動コンポーネントの重量を最小限に抑えるという点で有利である。その結果、本ロボットデバイスは応答性が一層、高くなり得、切断面又は軸のリアルタイム制御に好都合である。
【0052】
本システムは、切断対象の解剖学的構造に対する鋸の姿勢をリアルタイムで判定するように構成されている追跡ユニットを更に含む。
【0053】
追跡ユニットは、典型的には、追跡システムを備えてもよく、それ自体は公知である。
【0054】
コンピュータ支援手術において一般的に使用される追跡システムは、個別に又は組み合わせて使用することができるさまざまな技術(受動光学、能動光学、電磁、ジャイロスコープ慣性測定、超音波など)を使用する。好ましい実施形態によれば、追跡システムは、受動光学技術に基づく。
【0055】
追跡ユニットは、作動ユニットの任意のコンポーネント、例えば、可動セグメントのうちの1つに取り付けることができる、少なくとも1つのトラッカーを備える。
【0056】
作動ユニットの各セグメントの位置は、サーボモータのエンコーダ又はセンサ、並びに作動ユニットのセグメントのすべての軸及び距離を含むロボットデバイスの較正済みモデルにより、リアルタイムで既知となる。このモデル、及びロボット工学における周知の幾何学的モデリング技術を用いて、すべてのセグメントの相対位置を計算することが可能であり、したがって、外部トラッカーを使用してロボットデバイスの基部に付与されている座標系において1つの測定値が既知である場合、どのセグメント位置も同じ座標系において既知となる。更に、トラッカーが作動ユニットの基部に取り付けられ、第2のトラッカーが解剖学的構造に取り付けられている場合、作動ユニットのいかなるセグメントの姿勢も、解剖学的構造のトラッカーに付与された座標系において既知となる。
【0057】
制御ユニットは、追跡ユニットに連結されており、解剖学的構造を処置するためにエンドエフェクタの現在の面又は軸を複数の目標面及び/又は軸のそれぞれ1つと整合させるように、作動ユニットを制御するよう構成されている。
【0058】
図3は、外科用システムの一般概説を示している。本ロボットデバイスの例示されている実施形態では、エンドエフェクタ2は、バーを備えている。しかし、本システムの他のコンポーネントが、上記の他のエンドエフェクタと共に使用されてもよい。
【0059】
本ロボットデバイス1は、基部10、電動作動ユニット11、及び外科手術用バーであるエンドエフェクタ2を備える。バーは、平面機構12によって作動ユニットに連結されており、第1の端部は、作動ユニットの端子セグメントに取り付けられており、第2の端部は、バー2にしっかりと取り付けられている。
【0060】
とりわけ、バーヘッドが小さい場合(例えば、3mm程度の直径を有する場合)、切断面内に拘束されているバーの操作により、面状切断を実行することが可能となる。バーの先端部は、球状又は円筒形とすることができる。通常、円筒軸に対して平行な面内に留まるように平面機構によって拘束された直径3mmの円筒形バーの先端部は、大きな切断を行うのに十分な剛性を有し、高速切断を実行するのに十分に小型である。
【0061】
基部10は、係止可能な保持アーム(図3には例示されていない)に取り付けられていてもよい。
【0062】
トラッカー30は、切断対象の骨Bに取り付けられている。
【0063】
トラッカー31は、エンドエフェクタ2に取り付けられており、別のトラッカー32は、本ロボットデバイスの基部10に取り付けられて、エンドエフェクタ及び切断対象の骨の相対位置をリアルタイムで決定する。
【0064】
例示されている実施形態では、トラッカー30、31、32は、光学的トラッカーであり、局所カメラ3によって追跡される。他の実施形態では、トラッカーは、電磁追跡ユニットによって追跡される、電磁トラッカーとすることができる。
【0065】
制御ユニット(図示せず)は、患者又は外科医からの小さな動きをリアルタイムで補償するため、目標軸に沿ったバーの電流軸を維持するよう、作動ユニットを制御する。
【0066】
本ロボットデバイスのモデル及び作動ユニットのサーボモータの位置は公知であるので、基部10に取り付けられているトラッカー32は、本ロボットデバイスを制御するのに十分となり得るが、エンドエフェクタに取り付けられたトラッカー31は、バーの位置及び向きに関する追加情報を提供する。
【0067】
図4は、本ロボットデバイスの別の実施形態を示しており、この場合、エンドエフェクタは鋸を備えている。図3の要素と同じ参照によって表示された要素は、同じ機能を果たし、したがって、再度、説明しなくてもよい。
【0068】
本ロボットデバイス1は、基部10、電動作動ユニット11、及び外科手術用鋸であるエンドエフェクタ2を備える。この鋸は、平面機構12によって、作動ユニット11に接続されている。
【0069】
基部10は、係止可能な保持アーム13の端部にしっかりと取り付けられている。アーム13の対向端部は、図4では見えないが、手術台に、又は手術台の近傍に置かれているカートにしっかりと取り付けることができる。
【0070】
トラッカー(例えば、光学的トラッカー又は電磁トラッカー)は、例示されていないが、患者の解剖学的構造、及び本ロボットデバイスに取り付けられている(例えば、基部に、及び有利には、やはりエンドエフェクタに取り付けられている)。
【0071】
図5は、制御ユニットによって実施される方法の実施形態を例示するフローチャートである。
【0072】
当該方法を実施する前に、複数の目標面又は軸が、ユーザによって計画されてもよい。この計画ステップは、それ自体公知の技法によって行われてもよく、本文には記載されていない。通常、ユーザは、解剖学的構造に関する目標面又は軸のそれぞれの位置及び向きだけではなく、行われる切断の順序も決定する。したがって、計画は、所定の順序で行われるさまざまな目標面又は軸に従って、一連の少なくとも2つの切断を含むことができる。計画は、制御ユニットそれ自体によって生成されてもよく、又は別のデバイスによって生成されて、制御ユニットに移されてもよい。
【0073】
安全上の理由のため、エンドエフェクタは、切断が行われる際に、別の位置に移動することができない。
【0074】
このように、第1のステップ(ステップ100)では、制御ユニットは、本ロボットデバイスが、エンドエフェクタを目標面又は軸と整合させる指示を受ける待機中であることを判定しなければならない(待機モード)。
【0075】
この判定は、さまざまな技法によって行うことができ、これは、恐らく、組み合わされてもよい。
【0076】
例えば、エンドエフェクタが動力付きツール(例えば、外科用鋸、ドリル又はバー)である場合、ツールがオフ状態にあることは、前の切断ステップが達成されたこと、及びエンドエフェクタが次の目標面又は軸と整合されなければならないことの指標となり得る。実際に、エンドエフェクタは、処置が行われている間、移動することができない(作業モード)。
【0077】
しかし、このオフ状態は単独で、十分にはなり得ず、制御ユニットによって実行されるアルゴリズムによる切断の完全性の計算などの別の情報によって補足され得る。当該計算は、例えば、骨の幾何形状、及びエンドエフェクタの経路又は位置に基づいてもよい。
【0078】
別の可能性は、医療画像及び/又は解剖学的目印を使用して、解剖学的構造に対するエンドエフェクタの位置を決定することである。実際に、切断が終了すると、ユーザ又はロボットデバイスは、骨からエンドエフェクタを後退させて、行われる予定の次の切断のために待機してもよい。したがって、エンドエフェクタと解剖学的構造との間の所与の距離は、本ロボットデバイスの待機状態の指標となり得る。
【0079】
解剖学的構造、及びトラッカーによってもたらされるエンドエフェクタの局在データのおかげで、制御ユニットは、解剖学的構造の表面とエンドエフェクタとの間の距離を計算することができる。
【0080】
解剖学的構造の医療画像が利用可能な場合、解剖学的構造の表面とエンドエフェクタとの間の距離を画像の処理から求めることがやはり可能となり得る。当該医療画像は、エンドエフェクタをナビゲートするために使用される、術前3D画像(例えば、CTスキャン又はMRI画像)であってもよい。あるいは、当該医療画像は、2D又は3D術中画像であってもよい。
【0081】
無画像システムでは、追跡ユニットによるポインタトラッカーによって解剖学的目印を術中に取得することによって、解剖学的構造の表面とエンドエフェクタとの間の距離を求めることがやはり可能となり得る。
【0082】
第2のステップ(ステップ200)では、制御ユニットは、エンドエフェクタ又は作動ユニットへの少なくとも1つの第1の方向に適用された外力を検出しなければならない。この力はまた、存在する場合、平面機構に適用されてもよい。更に一般には、力は、保持アームにしっかりと連結されていない、ロボットデバイスのいずれの部分に適用されてもよい。
【0083】
このような外力は、位置変化が望ましいことが示されるよう、ユーザによってエンドエフェクタに適用されてもよい。
【0084】
当該外力(本文では、「トリガ力」とも呼ばれる)は、線形力及び/又はトルクの形態にあってもよい。
【0085】
安全上の理由のため、トリガ力は、所与の時間枠内での異なる方向若しくは同じ方向による、少なくとも1つの線形力及び少なくとも1つのトルク、又は少なくとも2つの線形力、あるいは所与の時間枠内での異なる方向に沿った若しくは同じ方向に沿った少なくとも2つのトルクを組み合わせることが好ましいことがある。そうでない場合、当該トリガ力は、所定の並びに従い、少なくとも2つの力又はトルクを組み合わせてもよい。並びは、所定の空間パラメータ(例えば、一方向又は複数の方向)、及び時間パラメータ(例えば、力若しくはトルクの適用期間、及び/又は連続的な力若しくはトルクを適用している間の持続期間)によって好ましくは規定されてよく、これらのパラメータは、新しい位置までエンドエフェクタを移動させる順序として、制御ユニットによって解釈される所定の信号を一緒に構成する。このように、望ましくない位置変化をトリガするリスクを最小化することができる。
【0086】
好ましくは、当該並びは、意図せずに起こる可能性が低くなるように設計することができる。例えば、並びは、エンドエフェクタの第1の方向に連続的に適用される、少なくとも1つの正のトルク及び1つの負のトルクを含むことができる。あるいは、並びは、第1の軸の周りにかけられる少なくとも1つのトルク、及び第1の軸に垂直な第2の軸に沿ってかけられる1つの力を含んでもよい。更に別の例において、力は、作動ユニットに適用されてもよく、エンドエフェクタは、平面機構のために、大きな振幅で前後に揺り動かされてもよい。
【0087】
トリガ力の検出は、いくつかの技法によって行われてもよく、これらの技法は組み合わされてもよい。これらの技法は、一般に、本システムに既に存在するコンポーネントを含む。
【0088】
一部の実施形態では、トリガ力の検出は、第1の閾値よりも大きな、少なくとも1つのサーボモータにおける電流値を感知することによって行われ得る。実際に、作動ユニット又はエンドエフェクタへの外力の適用により、かけられた力の下で作動して電流の待機位置にエンドエフェクタを維持する、少なくとも1つのサーボモータによる力又はトルクが発生する。サーボモータによって適用される力又はトルクは、サーボモータにおける電流消費量の増加をもたらす。当該電流は、サーボモータ、制御ユニット、及び/又はサーボモータへの電力供給ユニットのセンサによって測定され得る(アンペア)。
【0089】
作動ユニット又はエンドエフェクタに適用される外力の方向に応じて、作動ユニットの1つ又は複数のモータにおいて、電流が増加し得る。特定の閾値は、関係するサーボモータの各々に対して規定することができる。
【0090】
有利には、トリガ力が予期される方向は、例えば、これらの方向に対向力又はトルクを働かせることが可能なサーボモータに対して、より小さな閾値を要求することによって一層精密にモニタリングすることができる。
【0091】
一部の実施形態では、トリガ力の検出は、第2閾値よりも大きなエンドエフェクタの変位を感知することによって行われ得る。
【0092】
当該変位は、エンドエフェクタに取り付けられたトラッカーを使用する追跡データに基づいて感知され得る。
【0093】
有利には、トリガ力が予期される方向は、例えば、これらの方向へのより小さな変位閾値を要求することによって、一層精密にモニタリングすることができる。
【0094】
検出はまた、ユーザによってかけられた力の方向に加え、持続期間が第3の閾値を超えた場合のみ、トリガ力を適用した当該持続期間を検出すること、及びトリガ力を検出することを含むことができる。これは、エンドエフェクタ又は作動ユニットにかかる衝撃又は意図しない圧力によってトリガされることになる、新しい位置へのエンドエフェクタの移動を回避することを意図するものである。
【0095】
このために、制御ユニットは、予期される信号を潜在的に表す、第1の事象の検出によってトリガされるタイマーを含むことができる。例えば、外圧は、ロボットデバイスの移動をトリガするのに十分に長い必要があり得る。その場合、制御ユニットは、所与のサーボモータの電流が第1の閾値を超えると直ちにタイマーをトリガし、電流が第3の閾値よりも大きい持続期間の間に第1の閾値よりも依然として大きい場合、適用された力が信号に属することを検出することができる。一部の実施形態では、トリガ力は、同じ方向で、又はさまざまな方向でかけられた、さまざまな個々の力の並びとなり得る。その場合、制御ユニットは、各個々の力の持続期間を決定し、各持続期間が所与の範囲内にあるかどうかを確認することができる。
【0096】
検出されるトリガ力が、個々の力又はトルクの組合せとなる場合、連続的な個々の力又はトルクを適用している間の期間も測定されて、所定の範囲と比較することができる。したがって、制御ユニットは、個々の力又はトルクを連続的に適用している間の期間が、当該所定の範囲内にある場合のみ、トリガ力を検出することができる。
【0097】
上記のとおり、上記の検出技法を組み合わせてもよい。例えば、ユーザは、平面機構のために、所定のパターン(例えば、左/右又は右/左)に応じて、エンドエフェクタを最初に揺り動かすことができる。この動きは制御ユニットを警告状態にする。制御ユニットは、適用されたトリガ力の形態にあるこのような最初の事象と次の事象との間の期間を測定するため、タイマーをトリガすることができる。したがって、ユーザは、エンドエフェクタ又は作動ユニットの所定の方向に当該力を適用することができ、これが、制御ユニットによって検出される。
【0098】
一部の実施形態では、制御ユニット及びロボットデバイスは、ユーザに「押しボタン」の感覚をもたらすように構成されていてもよい。その場合、第1の方向にトリガ力を適用することにより、制御ユニットは、所定の振幅によってエンドエフェクタの第1の方向への変位をトリガし得、これによって、その最初の位置に対するエンドエフェクタのオフセットが生じる。例えば、線形力がユーザによって適用されている場合、エンドエフェクタは、1~10mmだけ通常、並進することができる。トルクがユーザによって適用される場合、エンドエフェクタは、0.5~5°だけ回転することができる。エンドエフェクタの当該オフセットは、トリガ力の解放時に取り消すことができる。
【0099】
当該「押しボタン」作用は、トリガ力がユーザによって一旦、解放された場合にのみ、エンドエフェクタの変位が始まるか、又はトリガ力が適用されたときに変位が始まるかのどちらか一方となるかぎり短くてもよく、次に、移動が始まった後の任意の時間にトリガ力が解放され得る。その作用はまた、エンドエフェクタの変位が始まるかぎり長くてもよく、ユーザがトリガ力を適用するかぎり続く。後者の場合では、当該変位の間、エンドエフェクタの瞬間的な位置は、オフセット時に、この「押しボタン」動作が使用されない場合にエンドエフェクタが有する位置と比較される。トリガ力が一旦、解放されると、当該オフセットが取り消される。
【0100】
エンドエフェクタ及び/又は作動ユニットに適用される力は、検出ステップにおいて考慮される唯一のパラメータではないことがある。例えば、エンドエフェクタが、動力付きツールである場合、トリガ力の検出は、そのツールのトリガをユーザが押したことを検出することと組み合わされてもよい。本ロボットデバイスが待機状態にある場合、トリガを押してもツールを作動させることはできないが、制御ユニットによって検出可能な電気信号を発生させることができる。したがって、エンドエフェクタ及び/又は作動ユニットの所与の方向にかかるトリガ力と動力付きツールのトリガにおける電気信号の検出を組み合わせると、必要な信号として解釈することができる。
【0101】
第1及び第2の検出ステップの結果として、制御ユニットは、現在の面又は軸を次の目標面又は軸と整合させるよう、作動ユニットによってエンドエフェクタの位置変化をトリガする(ステップ300)。
【0102】
一部の実施形態では、次の目標面又は軸は、現在の面又は軸に空間的に最も近くてもよく、これは、この面又は軸が、エンドエフェクタの現在の位置からの最小変位を必要とすることを意味する。当該最小変位は、トリガ力を適用する方向で考えられてもよい。
【0103】
他の実施形態では、次の目標面又は軸は、計画された外科ワークフローに従い、次の若しくは前の面又は軸であってもよい。例えば、切断が再度行われなければならない場合、又は改善されなければならない場合、前の目標面又は軸に戻る必要があり得る。有利には、計画したワークフローに関する方向(すなわち、次の若しくは前の目標面又は軸)は、トリガ力の反対の方向によって示すことができる。例えば、上方に働いた力は、計画したワークフローにおいて、次のステップへの移行をトリガすることができ、下方に働いた力は、計画したワークフローにおいて、前のステップへの移行をトリガすることができる。
【0104】
一部の実施形態では、トリガ力とは異なる外力(又は、力及び/若しくはトルクの並び)を使用して、例えば、制御ユニットによって前に検出された信号を取り消すために、エンドエフェクタの移動を停止することができる。
【0105】
有利には、当該制御ユニットは、所与の切断ステップの状態を記録するよう構成されている。そうでない場合、制御ユニットは、所与の面又は軸による切断が、既に行われたか否かを判定することが可能となり得る。
【0106】
例えば、行われた前方切断の終了時に、ユーザは、鋸刃を用いて面を確認するため、遠位切断部に戻ることを望むことがあり得る。この場合、この切断が既に行われたときに、本ロボットが再度、遠位面に存在する場合、このロボットデバイスは待機モードに留まるであろう。ユーザが、鋸刃を用いて行った切断をまさに確認したい場合、ユーザは、トリガ力を直接適用し、そうして、ロボットデバイスは、切断を再度、行うことなく、次の切断部へと移動することができる。
【0107】
これまでの説明は、6つ未満の自由度を有するロボットデバイスに焦点をあてており、これは、とりわけ第1の軸に従うより小さな慣性によって、したがって、リアルタイムで骨の動きを補償するために特に必要な一層高い応答性によって、大型の外科用ロボットとは区別するものであり、本開示は、6つの自由度を有する外科用ロボットにも適用可能である。実際に、これらのロボットはまた、サーボモータ又は他の手段を統合するものであり、これによって、ロボット、又はトリガ力に応答して、エンドエフェクタの位置変化をトリガするよう構成され得るエンドエフェクタ及び制御ユニットへのこのようなトリガ力の適用を検出することが可能となる。
参照文献
国際公開第2018/103945号
【0108】
〔実施の態様〕
(1) 複数の目標面及び/又は軸に従って解剖学的構造を処置するための外科用システムであって、
ロボットデバイス(1)であって、
現在の面又は軸を画定するエンドエフェクタ(2)と、
前記エンドエフェクタ(2)に連結されている作動ユニット(11)と
を備える、前記ロボットデバイス(1)と、
前記現在の面又は軸の姿勢を判定するよう構成されている追跡ユニット(3)と、
前記追跡ユニットに連結されている制御ユニットであって、前記解剖学的構造を処置するために前記エンドエフェクタ(2)の前記現在の面又は軸を前記複数の目標面及び/又は軸のそれぞれ1つと整合させるように、前記作動ユニット(11)を制御するよう構成されている、前記制御ユニットと
を備え、
前記ロボットデバイスが、少なくとも以下のモード:
作業モードであって、処置が、前記作動ユニットによって1つの目標面又は軸に拘束された前記エンドエフェクタを用いて行われている、前記作業モード、及び
待機モードであって、処置が行われておらず、前記作動ユニットが、別の目標面又は軸と整合して前記エンドエフェクタを移動するよう動作可能である、前記待機モード
で動作可能であり、
前記制御ユニットが、
(a)前記ロボットデバイス(1)が前記待機モードにあることを判定するよう、
(b)少なくとも1つの第1の方向で、前記エンドエフェクタ(2)及び/又は前記作動ユニット(11)に適用されるトリガ力を検出するよう、
(c)判定(a)及び検出(b)の結果として、前記現在の面又は軸を次の目標面又は軸と整合させるように、前記作動ユニット(11)によって前記エンドエフェクタ(2)の位置変化をトリガするよう、
更に構成されている、
前記外科用システム。
(2) 前記エンドエフェクタ(2)が、鋸などの切断ツール、バー又はドリル、切断ガイド及びガイド用ツールのうちの少なくとも1つを備える、実施態様1に記載の外科用システム。
(3) 前記追跡ユニット(3)が、前記エンドエフェクタ(2)及び/又は前記作動ユニット(11)にしっかりと取り付けられたトラッカー(31、32)を備える、実施態様1又は2に記載の外科用システム。
(4) 複数の目標面及び/又は軸に従って解剖学的構造を処置するためのロボットデバイス(1)の位置変化をトリガする方法であって、前記ロボットデバイスが、現在の面又は軸を画定するエンドエフェクタ(2)、及び前記エンドエフェクタ(2)に連結されている作動ユニット(11)を備えており、前記ロボットシステムが、少なくとも以下のモード:
作業モードであって、処置が、前記作動ユニットによって1つの目標面又は軸に拘束された前記エンドエフェクタを用いて行われている、前記作業モード、及び
待機モードであって、処置が行われておらず、前記作動ユニットが、別の目標面又は軸と整合して前記エンドエフェクタを移動するよう動作可能である、前記待機モード
で動作可能であり、
(a)前記ロボットデバイス(1)が前記待機モードにあることを判定するステップと、
(b)少なくとも1つの第1の方向で、前記エンドエフェクタ(2)及び/又は前記作動ユニット(11)に適用されるトリガ力を検出するステップと、
(c)ステップ(a)及び(b)において行われた前記判定及び前記検出の結果として、前記エンドエフェクタ(2)を次の目標面又は軸と整合させるために、前記作動ユニット(11)によって前記エンドエフェクタの位置変化をトリガするステップと、
を含む、前記方法。
(5) 前記トリガ力が、線形力及びトルクのうちの少なくとも1つを含む、実施態様4に記載の方法。
【0109】
(6) ステップ(b)が、第1の閾値よりも大きな、前記作動ユニット(11)の少なくとも1つのサーボモータにおける電流値を感知するステップを含む、実施態様4又は実施態様5に記載の方法。
(7) ステップ(b)が、第2の閾値よりも大きな、前記エンドエフェクタ(2)の変位を感知するステップを含む、実施態様4~6のいずれかに記載の方法。
(8) 前記追跡ユニット(3)の追跡データに基づいて前記エンドエフェクタ(2)の前記変位を感知するステップを含む、実施態様7に記載の方法。
(9) ステップ(b)が、前記エンドエフェクタ及び/又は前記作動ユニットに適用される一連の外部線形力及び/又はトルクを検出するステップを含む、実施態様4~8のいずれかに記載の方法。
(10) 前記エンドエフェクタが、トリガを含む動力付きツールを備えており、ステップ(b)が、前記ツールがオフ状態にある間、前記トリガに働く圧力を検出するステップを更に含む、実施態様4~9のいずれかに記載の方法。
【0110】
(11) 前記エンドエフェクタの前記位置変化が、前記第1の方向に従って実質的に実行される、実施態様5~10のいずれかに記載の方法。
(12) 前記トリガ力とは異なる外力を前記検出する結果として、前記ロボットデバイスのトリガされた移動を停止させるステップを更に含む、実施態様4~11のいずれかに記載の方法。
(13) ステップ(a)が、医療画像及び/又は解剖学的目印を使用して、前記解剖学的構造(B)に対する前記エンドエフェクタ(2)の位置を決定するステップを含む、実施態様4~12のいずれかに記載の方法。
(14) ステップ(b)が、前記外力が適用された持続期間を感知するステップ、及び前記感知された持続期間と持続期間の閾値を比較するステップを更に含む、実施態様4~13のいずれかに記載の方法。
(15) ステップ(c)において、前記制御ユニットが、前記第1の方向における求められたオフセット振幅によって、前記エンドエフェクタ(2)の変位をトリガし、前記オフセットが、前記トリガ力が解放されると取り消される、実施態様4~14のいずれかに記載の方法。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図3
図4
図5
【国際調査報告】