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特表2023-504126液化廃プラスティックをスチームクラッカーフィードへと変換するための2段階プロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-01
(54)【発明の名称】液化廃プラスティックをスチームクラッカーフィードへと変換するための2段階プロセス
(51)【国際特許分類】
   C10G 67/04 20060101AFI20230125BHJP
   C10G 45/08 20060101ALI20230125BHJP
   C10G 21/06 20060101ALI20230125BHJP
【FI】
C10G67/04
C10G45/08 Z
C10G21/06
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022531635
(86)(22)【出願日】2020-11-27
(85)【翻訳文提出日】2022-07-27
(86)【国際出願番号】 EP2020083582
(87)【国際公開番号】W WO2021105326
(87)【国際公開日】2021-06-03
(31)【優先権主張番号】20196034
(32)【優先日】2019-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505081261
【氏名又は名称】ネステ オサケ ユキチュア ユルキネン
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ティーッタ、マルヤ
(72)【発明者】
【氏名】アールト、ペッカ
(72)【発明者】
【氏名】ペレス ネブレダ、アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】パーシカッリオ、ビッレ
(72)【発明者】
【氏名】オヤラ、アンチ
【テーマコード(参考)】
4H129
【Fターム(参考)】
4H129CA22
4H129CA29
4H129HA09
4H129HA11
4H129HA16
4H129HB03
4H129HB10
4H129KC03X
4H129KC04X
4H129KD15X
4H129KD22X
4H129KD24X
4H129MA01
4H129MA12
4H129MB05A
4H129MB14B
4H129NA01
4H129NA20
4H129NA26
4H129NA27
4H129NA43
(57)【要約】
本発明は、液化廃プラスティックをアップグレードするための方法に関し、該方法は、
液化廃プラスティック(LWP)材料を提供する工程(A)、前処理された液化廃プラスティック材料を製造するために、該液化廃プラスティック材料を少なくとも7のpHをもつ水性溶媒と、200℃以上の温度で接触させ、その後液-液分離を行うことにより、該液化廃プラスティック材料を前処理することを含む工程(B)、水素化処理された材料を得るために、該前処理された液化廃プラスティック材料を、任意にはコーフィードと組み合わせて、水素化処理することを含む工程(C)、および、スチームクラッカーフィードを得るために、該水素化処理された材料を後処理する工程(D)を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化廃プラスティックをアップグレードするための方法であって、
液化廃プラスティック(LWP)材料を提供する工程(A)、
前処理された液化廃プラスティック材料を製造するために、前記液化廃プラスティック材料を少なくとも7のpHをもつ水性溶媒と、200℃以上の温度で接触させ、その後液-液分離を行うことにより、前記液化廃プラスティック材料を前処理することを含む工程(B)、
水素化処理された材料を得るために、前記前処理された液化廃プラスティック材料を、任意にはコーフィードと組み合わせて、水素化処理することを含む工程(C)、および、
スチームクラッカーフィードを得るために、前記水素化処理された材料を後処理する工程(D)
を含む方法。
【請求項2】
前記スチームクラッカーフィードをスチームクラッキングに付す工程(E)をさらに含む請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記前処理された液化廃プラスティック材料が、5wt.-ppm以上、10wt.-ppm以上、15wt.-ppm以上、または20wt.-ppm以上の塩素含有量を有しており、および/または、前記前処理された液化廃プラスティック材料が、10wt-%以上、15wt-%以上、20wt-%以上、30wt-%以上、40wt-%以上、または50wt-%以上のオレフィン含有量を有している請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記前処理された液化廃プラスティック材料が、500wt.-ppm以下、300wt.-ppm以下、または200wt.-ppm以下のシリコン含有量を有している請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも7のpHをもつ水性溶媒が、水および前記水に溶解されたアルカリ性物質を含むアルカリ性水性溶媒であり、および、好ましくは水に溶解された金属水酸化物を含み、前記金属水酸化物が、好ましくはアルカリ金属の水酸化物および/またはアルカリ土類金属の水酸化物、より好ましくはアルカリ金属の水酸化物である請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記水性溶媒が、少なくとも0.3wt-%の金属水酸化物、より好ましくは少なくとも0.5wt-%、少なくとも1.0wt-%、少なくとも1.5wt-%の金属水酸化物を含む請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記処理工程(B)において前記液化廃プラスティック材料を少なくとも7のpHをもつ水性溶媒と接触させることが、210℃以上、好ましくは220℃以上、240℃以上、または260℃以上の温度で行われる請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記スチームクラッカーフィードが、5.0wt-%以下、好ましくは4.0wt-%以下、好ましくは3.5wt-%以下、3.0wt-%以下、2.5wt-%以下、2.0wt-%以下、1.0wt-%以下、0.5wt-%以下、または0.3wt-%以下であるオレフィン含有量を有する請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記工程(A)で提供される前記液化廃プラスティック(LWP)材料が、液化廃プラスティックの留分である請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記工程(C)における前記水素化処理が、水素化処理触媒の存在下で行われ、前記工程(C)における前記水素化処理触媒が、好ましくは担持されたNiMo触媒、または担持されたCoMo触媒であり、および、担体が、アルミナおよび/またはシリカを含み、前記触媒が、より好ましくはNiMo/Al23またはCo-Mo/Al23である請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
後処理工程(D)が、前記水素化処理された材料をパラフィン系材料と混合する工程を含み、前記パラフィン系材料が、好ましくは、60wt-%以上、好ましくは65wt-%以上、70wt-%以上、75wt-%以上、80wt-%以上、85wt-%以上、または90wt-%以上のパラフィン含有量を有し、および、前記パラフィン系材料が、好ましくは再生可能な材料である請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記工程(D)が、気液分離を含む請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
酸性液体溶媒を用いて前記水素化処理工程(C)からの気体状流出物を洗浄する工程(D’)をさらに含み、前記酸性液体溶媒が、好ましくは溶媒中に酸性物質を有する溶液であり、より好ましくは水中に酸性物質を有する溶液であり、および、前記酸性物質が、好ましくはHCl、H2SO2、H2SO3、HNO3、H3PO4、H3PO3、またはH3PO2またはそれらの混合物などの無機酸性物質であり、または、前記酸性物質が、好ましくは有機酸性物質であり、より好ましくは酢酸またはギ酸などのカルボン酸である請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載の方法によって得られる炭化水素の混合物。
【請求項15】
例えばポリプロピレンおよび/またはポリエチレンなどの化学品および/またはポリマーを製造するための、請求項14記載の炭化水素の混合物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃プラスティック原材料、特には液化廃プラスティック(liquefied waste plastics、LWP)をスチームクラッカーフィードへと変換するための2段階プロセスに関する。特には、本発明は、スチームクラッキングプロセスにおいて使用されるフィードを提供するために、2段階プロセスを用いてプラスティック廃棄物から、化学工業のための原料を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
より価値の高い(純粋な)物質を得るための液化廃プラスティック(LWP)の精製および液化廃プラスティック(LWP)のより価値の高い材料、例えば化学工業において原料として(例えばモノマーとして)使用され得る低分子オレフィンなどへの変換は、数年にわたり研究されてきている。
【0003】
LWPは、典型的には、廃プラスティックの水熱液化(hydrothermal liquefaction、HTL)または熱分解によって製造される。廃プラスティックの供給源に依存して、LWPは様々なレベルの不純物を含む。典型的な不純物成分は、塩素、窒素、硫黄、および酸素であり、そのうち腐食性塩素が精製/石油化学プロセスにおいて特に問題となる。これらの不純物はまた、廃プラスティックの最も大きなスケールの潜在的な供給源として認識されているポストコンシューマー廃プラスティック(リサイクルされたコンシューマープラスティック)においても一般的である。同様に、臭素含有不純物は、工業由来の廃プラスティック(例えば難燃剤由来など)において主に含まれている。さらに、熱分解プロセスまたは水熱液化によって製造されるLWPは、通常、顕著な量のオレフィンおよび芳香族化合物を含んでおり、これは、例えば高温での重合(またはコーキング)などの下流プロセスにおいて問題を引き起こし得る。
【0004】
LWPが通常の精製プロセス(例えば分画および任意には水素化処理などを含む)に単に付される、または、典型的な石油化学変換プロセス(例えばクラッキングプロセスなど)に送られるにかかわらず、LWP材料は、例えばリアクターの腐食または触媒毒などの施設の劣化を防ぐためにこれらのプロセスのための不純物レベルと合致する必要がある。
【0005】
精製に加えて、LWPのプラスティックへ(またはモノマーへ)と戻す化学的リサイクルは、非常に興味深い選択肢である。この選択肢は、昨年時、石油化学工業において非常に大きな関心をひいた。この関心は、さらに、共に廃プラスティックのリサイクルのための野心的な目標を設定した新規の廃棄物指令およびEUプラスティック戦略によってさらに押し上げられた。
【0006】
したがって、化学的リサイクルは、将来、廃プラスティックをプラスティックおよび化学品へと戻すようにリサイクルするための重要な方法となるであろう。廃プラスティックを液化することおよびクラッカー(例えば接触クラッカー、水素添加分解、またはスチームクラッカーなど)のためのフィードストックとしてそれを使用することもまた、現存するインフラストラクチャーによりプラスティックをリサイクルする有望な方法である。しかしながら、クラッカーフィードストックとしてのLWPの可能性は、その品質に依存しており、そしてこれゆえ、LWPを精製するための方法および/またはクラッキング手順を改変するための方法が、LWPの様々な不純物内容物を処理するために提案されてきた。
【0007】
特許文献1は、例えばハイドロワックス、水素化処理真空ガスオイル、廃プラスティック由来の熱分解オイル、軽油、またはスラックワックスなどの主にパラフィン系である炭化水素フィードの前処理を含むスチームクラッキングプロセスを開示している。前処理は、例えば多環芳香族化合物および樹脂などの汚染成分を減少させるように溶媒抽出を使用して行われる。
【0008】
特許文献2は、熱分解工程、水素化処理工程、最終精製(polishing)工程、およびスチームクラッキング工程をこの順番で含む、廃プラスティックをアップグレードするためのプロセスを開示している。
【0009】
特許文献3は、アルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物の熱水溶液と接触させ、その後、液-液分離を行うことによって、廃プラスティック熱分解オイル中に含まれる塩素および窒素汚染物質を除去するための方法を開示している。
【0010】
非特許文献1は、水素化処理装置の前の熱交換機の汚染を防止するために、廃プラスティックからの石油留分および軽質の熱分解オイルのブレンドを水素化処理することを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第2018/10443号
【特許文献2】米国特許公開第2016/0264874号明細書
【特許文献3】特開2003-034749号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Kawanishi, T., Shiratori, N., Wakao, H., Sugiyama, E., Ibe, H., Shioya, M., & Abe, T., “Upgrading of Light Thermal Cracking Oil Derived from Waste Plastics in Oil Refinery. Feedstock recycling of plastics.” Universitatsverlag Karlsruhe, Karlsruhe (2005), p. 43-50
【発明の概要】
【0013】
上記の先行技術のアプローチは、複雑な精製手順を実行するものであり、そのうち、抽出の技法は、顕著な量の汚染された抽出物材料をもたらし得、または、スチームクラッキングにはまだ十分に適切ではない材料を提供し、そしてスチームクラッカーの汚染および稼働寿命の短縮を導き得る。少ない量の廃棄生成物だけを生成しながら、多量のLWPをリサイクルすることを可能にするより持続可能なプロセスの必要性が依然として存在する。
【0014】
本発明は、上述の課題に照らしてなされたものであり、LWPをアップグレードするための改良されたプロセス、特には、少ない量の廃棄生成物だけを生成しながら、および/または、スチームクラッカーの改良された稼働寿命を達成しながら、多量のLWPをリサイクルすることを可能にするより持続可能なプロセスを提供することが本発明の目的である。
【0015】
LWPをアップグレードするための改良されたプロセスを提供することへのこの課題は、請求項1に記載の方法によって解決され、それは、液化廃プラスティック(LWP)材料を提供する工程(A)、前処理された液化廃プラスティック材料を製造するために、液化廃プラスティック材料を少なくとも7のpHである水性溶媒と200℃以上の温度で接触させ、その後液-液分離を行うことにより、該液化廃プラスティック材料を前処理する工程(B)、水素化処理された材料を得るために、該前処理された液化廃プラスティック材料を(任意にはコーフィードと共に)水素化処理する工程(C)、および、スチームクラッカーフィードを得るために該水素化処理された材料を後処理する工程(D)を含む。
【0016】
本発明の方法は、200℃以上の温度でのpH7以上である水溶液を用いた反応性抽出とその後の水素化処理との組み合わせが、さらなる精製または希釈の必要性無しにスチームクラッカーへと導入され得る状態である材料(スチームクラッカーフィード)を提供し得るという発見を活用するものである。
【0017】
スチームクラッカーには典型的には、塩素含有量に関する厳格な仕様があり、およびいくつかの他の不純物/成分、例えばN、S、O、オレフィンおよび芳香族化合物などのレベルもまた制御されているが、本発明においては、その不純物に係る堅牢性に起因してスチームクラッキングが行われる。
【0018】
例えば、水素化処理は、廃プラスティック中に通常存在しているいくつかの不純物、例えば塩素および硫黄汚染物質などの除去のために、先行技術において使用されてきた。しかしながら、単なる水素化処理は、多量の水素を必要とし、それゆえ、特に、世界の水素生成の耐部分が依然として化石源に基づいていることを鑑みれば、持続可能な方法とは言えない。
【0019】
他のアプローチ、例えば国際公開第2018/10443号は、有機溶媒または水ベースの溶媒を用いた溶媒抽出を用いた前処理を行っている。しかしながら、有機溶媒を用いた場合、汚染された多量の溶媒が生成され、これは、エネルギー消費を必要とする回収手順を必要とするか、または、低品質な燃料として使用され、それゆえ、同様に、持続可能なプロセスを達成することはできない。
【0020】
本発明の発明者らは、反応性抽出および水素化処理の組み合わせが、低い不純物レベルしか有さず、過度の汚染を引き起こさないスチームクラッカーフィードを提供することを見出した。特には、本発明の発明者らは、200℃以上の温度でのpH7以上である水性溶媒を用いた反応性抽出が塩素汚染物質およびある程度の窒素汚染物質(これらは両方ともスチームクラッカーフィードにおける望ましくないものである)を除去するだけでなく、シリコン含有汚染物質(例えば有機シリコン化合物および/またはコロイド状無機シリコン材料など)をもさらに除去でき、したがって、前精製されたLWP材料の効率的な水素化処理を可能にすることを見出した。
【0021】
本発明において、したがって、水素化処理工程は、前処理工程よりも先に行われることが不可欠であり、このため、シリコン含有不純物が除去される。このようなSi不純物は、除去されなければ、水素化処理触媒の触媒毒となり得るであろう。前処理工程のあいだ、硫黄不純物もまた除去され得る。したがって、この場合、水素化処理触媒の触媒活性を確認するために、水素化処理の前に、硫黄材料を添加する(スパイクする)ことも選択肢の一つである。
【0022】
簡潔にいうと、本発明は、一またはそれ以上の以下の項目に関連する。
【0023】
1.液化廃プラスティックをアップグレードするための方法であって、
液化廃プラスティック(LWP)材料を提供する工程(A)、
前処理された液化廃プラスティック材料を製造するために、該液化廃プラスティック材料を少なくとも7のpHをもつ水性溶媒と、200℃以上の温度で接触させ、その後液-液分離を行うことにより、該液化廃プラスティック材料を前処理することを含む工程(B)、
水素化処理された材料を得るために、該前処理された液化廃プラスティック材料を、任意にはコーフィード(水素化処理コーフィード)と組み合わせて(または一緒に)、水素化処理することを含む工程(C)、および、
スチームクラッカーフィードを得るために、該水素化処理された材料を後処理する工程(D)
を含む方法。
【0024】
2.該スチームクラッカーフィードをスチームクラッキングに付すことを含む工程(E)をさらに含む項目1に記載の方法。
【0025】
3.該前処理された液化廃プラスティック材料が、5wt.-ppm以上の塩素含有量を有している項目1または2に記載の方法。
【0026】
4.該前処理された液化廃プラスティック材料が、10wt.-ppm以上、15wt.-ppm以上、または20wt.-ppm以上の塩素含有量を有している項目1~3のいずれか1つに記載の方法。
【0027】
5.該前処理された液化廃プラスティック材料が、1000wt.-ppm以下、600wt.-ppm以下、400wt.-ppm以下、300wt.-ppm以下、200wt.-ppm以下、100wt.-ppm以下。または10wt.-ppm以下の塩素含有量を有している項目1~4のいずれか1つに記載の方法。
【0028】
6.該前処理された液化廃プラスティック材料が、10wt-%以上、15wt-%以上、20wt-%以上、30wt-%以上、40wt-%以上、または50wt-%以上のオレフィン含有量を有している項目1~5のいずれか1つに記載の方法。
【0029】
7.該前処理された液化廃プラスティック材料が、85wt-%以下、80wt-%以下、70wt-%以下、または65wt-%以下のオレフィン含有量を有している項目1~6のいずれか1つに記載の方法。
【0030】
8.該前処理された液化廃プラスティック材料が、10wt.-ppm以上、15wt.-ppm以上、または20wt.-ppm以上の窒素含有量を有している項目1~7のいずれか1つに記載の方法。
【0031】
9.該前処理された液化廃プラスティック材料が、2000wt.-ppm以下、1500wt.-ppm以下、1000wt.-ppm以下、または800wt.-ppm以下の窒素含有量を有している項目1~8のいずれか1つに記載の方法。
【0032】
10.該前処理された液化廃プラスティック材料が、10wt.-ppm以上、15wt.-ppm以上、または20wt.-ppm以上の硫黄含有量を有している項目1~9のいずれか1つに記載の方法。
【0033】
11.該前処理された液化廃プラスティック材料が、500wt.-ppm以下、300wt.-ppm以下、または200wt.-ppm以下の硫黄含有量を有している項目1~10のいずれか1つに記載の方法。
【0034】
12.該前処理された液化廃プラスティック材料が、10wt.-ppm以上、15wt.-ppm以上、または20wt.-ppm以上のシリコン含有量を有している項目1~11のいずれか1つに記載の方法。
【0035】
13.該前処理された液化廃プラスティック材料が、500wt.-ppm以下、300wt.-ppm以下、または200wt.-ppm以下のシリコン含有量を有している項目1~12のいずれか1つに記載の方法。
【0036】
14.該水性溶媒が、少なくとも50wt-%の水、好ましくは少なくとも70wt-%の水、より好ましくは少なくとも85wt-%の水、または、少なくとも90wt-%の水を含み、および、水と混合されるかまたは水中に溶解されるさらなる成分を含んでいてもよい項目1~13のいずれか1つに記載の方法。
【0037】
15.該少なくとも7のpHをもつ水性溶媒が、水および該水に溶解されたアルカリ性物質を含むアルカリ性水性溶媒である項目1~14のいずれか1つに記載の方法。
【0038】
16.該少なくとも7のpHをもつ水性溶媒が、水に溶解された金属水酸化物を含む項目1~15のいずれか1つに記載の方法。
【0039】
17.該金属水酸化物が、アルカリ金属の水酸化物および/またはアルカリ土類金属の水酸化物、好ましくはアルカリ金属の水酸化物である項目16記載の方法。
【0040】
18.該水性溶媒が、8またはそれ以上のpH,およびより好ましくは9またはそれ以上のpHを有する項目1~17のいずれか1つに記載の方法。
【0041】
19.該水性溶媒が、少なくとも0.3wt-%の金属水酸化物、より好ましくは少なくとも0.5wt-%、少なくとも1.0wt-%、少なくとも1.5wt-%の金属水酸化物を含む項目1~18のいずれか1つに記載の方法。
【0042】
20.該水性溶媒が、少なくとも0.5wt-%、好ましくは少なくとも1.0wt-%、または少なくとも1.5wt-%のアルカリ金属水酸化物を含む項目1~19のいずれか1つに記載の方法。
【0043】
21.前処理工程(B)において該液化廃プラスティック材料を少なくとも7のpHをもつ水性溶媒と接触させることが、210℃以上の温度で行われる項目1~20のいずれか1つに記載の方法。
【0044】
22.前処理工程(B)において該液化廃プラスティック材料を少なくとも7のpHをもつ水性溶媒と接触させることが、220℃以上、240℃以上、または260℃以上の温度で行われる項目1~21のいずれか1つに記載の方法。
【0045】
23.前処理工程(B)において該液化廃プラスティック材料を少なくとも7のpHをもつ水性溶媒と接触させることが、450℃以下、好ましくは400℃以下、350℃以下、320℃以下、または300℃以下の温度で行われる項目1~22のいずれか1つに記載の方法。
【0046】
24.前処理工程(B)において該液化廃プラスティック材料を少なくとも7のpHをもつ水性溶媒と接触させることが、200℃~350℃、好ましくは240℃~320℃、または260℃~300℃の範囲の温度で行われる項目1~23のいずれか1つに記載の方法。
【0047】
25.前処理工程(B)の前の該液化廃プラスティック(LWP)材料の塩素含有量が、1wt.-ppm~4000wt.-ppmの範囲である項目1~24のいずれか1つに記載の方法。
【0048】
26.前処理工程(B)の前の該液化廃プラスティック(LWP)材料の塩素含有量が、100wt.-ppm~4000wt.-ppmの範囲である項目1~25のいずれか1つに記載の方法。
【0049】
27.前処理工程(B)の前の該液化廃プラスティック(LWP)材料の塩素含有量が、300wt.-ppm~4000wt.-ppmの範囲である項目1~24のいずれか1つに記載の方法。
【0050】
28.前処理工程(B)の前の該液化廃プラスティック(LWP)材料の塩素含有量が、400wt.-ppm以下、好ましくは300wt.-ppm以下であり、該スチームクラッカーフィードが、5.0wt-%以下のオレフィン含有量を有する項目1~27のいずれか1つに記載の方法。
【0051】
29.該スチームクラッカーフィードが、4.0wt-%以下、好ましくは3.5wt-%以下、3.0wt-%以下、2.5wt-%以下、2.0wt-%以下、1.0wt-%以下、0.5wt-%以下、または0.3wt-%以下であるオレフィン含有量を有する項目1~28のいずれか1つに記載の方法。
【0052】
30.該工程(A)で提供される該液化廃プラスティック(LWP)材料が、液化廃プラスティックの留分である項目1~29のいずれか1つに記載の方法。
【0053】
31.該工程(A)で提供される該液化廃プラスティック(LWP)材料が、25℃以上の5%沸点または550℃以下の95%沸点、好ましくは30℃以上の5%沸点または500℃以下の95%沸点、より好ましくは35℃以上の5%沸点または400℃以下の95%沸点、さらにより好ましくは35℃以上の5%沸点または360℃以下の95%沸点を有する項目1~30のいずれか1つに記載の方法。
【0054】
32.該工程(C)における該水素化処理が、水素化処理触媒の存在下で行われる項目1~31のいずれか1つに記載の方法。
【0055】
33.該工程(C)における該水素化処理触媒が、UPACの元素周期表の6、8、または10族から選択される少なくとも一つの成分を含む項目32に記載の方法。
【0056】
34.該工程(C)における該水素化処理触媒が、担持されたNiMo触媒、または担持されたCoMo触媒であり、および、担体が、アルミナおよび/またはシリカを含み、該触媒が好ましくはNiMo/Al23またはCo-Mo/Al23である項目32または33に記載の方法。
【0057】
35.該工程(C)における該水素化処理触媒が、担持されたNiMo触媒であり、および、担体がアルミナを含む(NiMo/Al23)項目32~34のいずれか1つに記載の方法。
【0058】
36.後処理工程(D)が、該水素化処理された材料をパラフィン系材料と混合する工程を含む項目1~35のいずれか1つに記載の方法。
【0059】
37.該パラフィン系材料が、60wt-%以上のパラフィン含有量を有する項目36に記載の方法。
【0060】
38.該パラフィン系材料が、65wt-%以上、70wt-%以上、75wt-%以上、80wt-%以上、85wt-%以上、または90wt-%以上のパラフィン含有量を有する項目36または37に記載の方法。
【0061】
39.該パラフィン系材料が、ナフサ留分、中間蒸留物留分、VGO留分、またはLPG留分、またはこれらの2つまたはそれ以上の混合物のうちの少なくとも一つであり、好ましくはナフサ留分および中間蒸留物留分のうちの少なくとも一つである項目36~38のいずれか1つに記載の方法。
【0062】
40.該パラフィン系材料が、93wt-%以上、または95wt-%以上のパラフィン含有量を有する項目36~39のいずれか1つに記載の方法。
【0063】
41.該パラフィン系材料が、該パラフィン系材料中のn-パラフィンおよびi-パラフィンの合計量を100wt-%としてそれに対して、5wt-%以上のi-パラフィン含有量を有する項目36~40のいずれか1つに記載の方法。
【0064】
42.該パラフィン系材料が、8wt-%以上、好ましくは10wt-%以上、15wt-%以上、20wt-%以上、25wt-%以上、30wt-%以上、35wt-%以上、40wt-%以上、45wt-%以上、50wt-%以上のi-パラフィン含有量を有する項目36~41のいずれか1つに記載の方法。
【0065】
43.該パラフィン系材料が、該パラフィン系材料中のn-パラフィンおよびi-パラフィンの合計量を100wt-%としてそれに対して、45wt-%~70wt-%、好ましくは50wt-%~65wt-%の範囲のi-パラフィン含有量を有する項目36~42のいずれか1つに記載の方法。
【0066】
44.該パラフィン系材料が、該パラフィン系材料中のn-パラフィンおよびi-パラフィンの合計量を100wt-%としてそれに対して、50wt-%~25wt-%。好ましくは45wt-%~30wt-%の範囲のn-パラフィン含有量を有する項目36~43のいずれか1つに記載の方法。
【0067】
45.該パラフィン系材料が、該パラフィン系材料の総計の重量に対して、0.01wt-%~15.00wt-%、好ましくは0.01wt-%~5.00wt-%の範囲のナフテン含有量を有する項目36~44のいずれか1つに記載の方法。
【0068】
46.該パラフィン系材料が、該パラフィン系材料の総計の重量に対して、95wt-%以上のパラフィン含有量、および、該パラフィン系材料中のn-パラフィンおよびi-パラフィンの合計量を100wt-%としてそれに対して、65wt-%~100wt-%、好ましくは75wt-%~99wt-%、または85wt-%~100wt-%の範囲のi-パラフィン含有量を有する項目36~45のいずれか1つに記載の方法。
【0069】
47.該パラフィン系材料が、再生可能な材料である項目36~46のいずれか1つに記載の方法。
【0070】
48.該工程(D)が、気液分離を含む項目1~47のいずれか1つに記載の方法。
【0071】
49.該前処理された液化廃プラスティック材料の窒素含有量が、該前処理された液化廃プラスティック材料の硫黄含有量および塩素含有量を足した量の2倍~200倍(モルで)である項目1~48のいずれか1つに記載の方法。
【0072】
50.酸性液体溶媒を用いて該水素化処理工程(C)からの気体状流出物を洗浄する工程(D’)をさらに含む項目1~49のいずれか1つに記載の方法。
【0073】
51.該酸性液体溶媒が、溶媒中に酸性物質を有する溶液である項目50に記載の方法。
【0074】
52.該酸性液体溶媒が、水中に酸性物質を有する溶液である項目50または51に記載の方法。
【0075】
53.該酸性物質が、無機酸性物質である項目51または52に記載の方法。
【0076】
54.該無機酸性物質が、HCl、H2SO2、H2SO3、HNO3、H3PO4、H3PO3、またはH3PO2またはそれらの混合物である項目52に記載の方法。
【0077】
55.該酸性物質が、有機酸性物質であり、好ましくは酢酸またはギ酸などのカルボン酸である項目51または52に記載の方法。
【0078】
56.該液化廃プラスティック(LWP)材料を提供する該工程(A)が、好ましくは例えば熱分解または水素化熱分解または類似のプロセス工程などの廃プラスティックの熱分解によって、廃プラスティックを液化する工程を含む項目1~55のいずれか1つに記載の方法。
【0079】
57.ソートされた廃プラスティックを提供するために廃プラスティックをソートし、好ましくは、例えばポリビニルクロライド、PVCなどの塩素含有廃プラスティックの(廃プラスティック中の、例えばPVCなどの塩素含有廃プラスティックの初めの含有量に対して)少なくとも50wt-%、より好ましくは少なくとも55wt-%、少なくとも60wt-%、少なくとも65wt-%、少なくとも70wt-%、少なくとも75wt-%、少なくとも80wt-%、または少なくとも85wt-%を除去する工程(A’)をさらに含む項目1~56のいずれか1つに記載の方法。
【0080】
58.液化されソートされた廃プラスティック(LSWP)材料を提供するために、ソートされた廃プラスティックを液化するこうていをさらに含む項目57に記載の方法。
【0081】
59.該工程(C)において利用される該コーフィードが、液化されソートされた廃プラスティック(LSWP)材料であり、該液化されソートされた廃プラスティック(LSWP)材料が、ソートされた廃プラスティックを液化する(および任意には分画する)ことによって得られ得る材料である項目1~58のいずれか1つに記載の方法。
【0082】
60.該ソートされた廃プラスティック中の塩素含有廃プラスティックの量が、5wt-%以下、好ましくは3wt-%以下、2wt-%以下、または1wt-%以下である項目59に記載の方法。
【0083】
61.該ソートされた廃プラスティック中のPVCの量が、5wt-%以下、好ましくは3wt-%以下、2wt-%以下、または1wt-%以下である項目59または60に記載の方法。
【0084】
62.項目1~60のいずれか1つに記載の方法によって得られる炭化水素の混合物。
【0085】
63.例えばポリプロピレンおよび/またはポリエチレンなどの化学品および/またはポリマーを製造するための、項目62に記載の炭化水素の混合物の使用。
【発明を実施するための形態】
【0086】
本発明は、液化プラスティックをアップグレードするための方法、および特には、液化廃プラスティックをスチームクラッカーフィードへと変換するための2段階プロセスに関する。
【0087】
例えば収集されたコンシューマープラスティックの熱分解生成物などのLWP材料は、スチームクラッキングにおいて、または、下流プロセスにおいて有害となるであろう多量かつ様々な量の汚染物質を含む。このような汚染物質としては、様々なものがあるが、例えば、ハロゲン化されたプラスティック(例えばPVCおよびPTFE)由来であるハロゲン(主に塩素)、ゴムポリマー(例えば保守終了タイヤなど)の架橋剤由来である硫黄、および複合材料および添加物(例えば金属または金属化合物によってコーティングされているフィルム、保守終了タイヤ、またはプラスティック加工助剤など)由来の金属(例えばSi、Al)汚染物質などが挙げられる。これらの汚染物質は、元素の形状で、イオン形状で、または、有機または無機化合物の一部として、存在し得る。
【0088】
これらの不純物/汚染物質は、従来のスチームクラッキング法においてコーキングを生じさせ得、および、(望ましくない)副反応を同様にもたらし得、これゆえ、より価値の低い生成物へとまたは廃棄しなければならない生成物(すなわち廃棄物)へと生成物分布をシフトさせ得る。同様に、これらの不純物は、腐食性を有する、または分解作用を有し得るため、スチームクラッキング装置の稼働寿命を短くさせる。この点において、塩素(および塩化化合物)が、水素化処理装置またはスチームクラッキング装置において腐食を引き起こす高い傾向をもつ不純物の一つである。加えて、金属不純物、例えばSi含有不純物などが、水素化処理リアクターの触媒毒を引き起こし得る。
【0089】
さらに、LWP材料の製造プロセスは、通常、少なくとも一種類の熱分解、例えば熱分解または水熱液化または類似のプロセス工程などを含む。結果として得られるLWPがオレフィンの高い含有量を有しているということはこれらのプロセスに固有のものである。前処理工程(B)の反応性抽出は、LWP材料中のオレフィンの含有量を顕著には変えない(例えば液-液分離のあいだにおける不純物の除去または損失に起因していくらかの変化は起こり得る)。本発明の水素化処理工程(C)は、LWP材料中(および、場合によっては、任意的なコーフィード中)のオレフィン含有量を低下させ、そしてそれゆえ、(顕著に)低下した含有量のオレフィンしか含まない水素化処理材料を生成する。
【0090】
本発明の方法は、液化廃プラスティック(LWP)材料を提供する工程(A)を含む。液化廃プラスティック材料を提供するモードは、特に制限される訳ではない。すなわち、液化廃プラスティック材料は、本発明のプロセスの一部として製造されてもよく、また、購入されてもまたは任意の他の方法によって調達されてもよい。
【0091】
本発明の方法はさらに、前処理された液化廃プラスティック(LWP)材料を製造するための前処理工程(B)を含む。工程(B)は、液化廃プラスティック材料を少なくとも7のpHである水性溶媒と200℃以上の温度で接触させ、その後液-液分離を行うことにより、液化廃プラスティック(LWP)材料を前処理することを含む。下記において、LWP材料を少なくとも7のpHである水性溶媒と200℃以上の温度で接触させ、その後液-液分離を行うことによるLWP材料の前処理は、しばしば、「反応性抽出(reactive extraction)」と簡単に参照されるであろう。
【0092】
工程(B)における反応性抽出によって、触媒毒(主にSi)の量は、顕著に低下され、したがって、水素化処理プロセスの効率を増大させると共に、水素化処理触媒の寿命も増加させ得る。さらに、他の不純物の含有量も顕著に低下される。結果として、水素化処理は、効率よく行われ得、そして、比較的少量の水素のみが廃棄物生成物中に失われる(例えばH2SおよびHClなど)だけで、スチームクラッカーへと導入され得る状態であるフィードストックの製造を可能にする。
【0093】
本発明の文脈において、用語「接触させる(contacting)」は、物理的な接触を含み、そして、バッチ式で、例えばブレンドまたは混合を用いて、または、継続的に、例えば並流もしくは逆流のフローを用いて、または、それらの両方を用いて行われ得る。取扱いの容易さから、並流フローが好ましい。
【0094】
水性溶媒は好ましくは、少なくとも50wt-%の水、好ましくは少なくとも70wt-%の水、より好ましくは少なくとも85wt-%の水、または、少なくとも90wt-%の水を含み、および、水と混合されるかまたは水中に溶解されるさらなる成分を含んでいてもよい。
【0095】
水性溶媒は、好ましくは、水および水に溶解されたアルカリ性物質(塩基性物質)を含むアルカリ性水溶液溶媒である。アルカリ性物質は、好ましくは、金属水酸化物であるかそれを含み、より好ましくは、アルカリ金属の水酸化物および/またはアルカリ土類金属の水酸化物であるかそれらを含む。好ましくは、アルカリ性物質は、少なくともアルカリ金属イオンを含み、好ましくは、Na+およびK+のうちの少なくとも一つを含む。アルカリ性水性溶媒は、好ましくは、少なくとも0.3wt-%の、好ましくは少なくとも0.5wt-%、少なくとも1.0wt-%、少なくとも1.5wt-%の金属水酸化物を含む。
【0096】
本発明において、水性溶媒は、少なくとも7のpHを有する。好ましくは、水性溶媒は、8またはそれ以上のpH,およびより好ましくは9またはそれ以上のpHを有する。
【0097】
工程(B)の反応性抽出は、LWP材料を少なくとも7のpHである水性溶媒と200℃以上の温度で接触させることによって行われる。反応性抽出のあいだの(すなわち、接触時の)温度は、十分な反応性を確実にするためおよびそれによって不純物の十分な除去を確実にするために、好ましくは210℃以上、220℃以上、240℃以上、または260℃以上、である。通常、前処理の温度(反応性抽出のあいだの温度)の上限は、過度の分解を避けるために、600℃である。温度は好ましくは450℃以下、好ましくは400℃以下、350℃以下、320℃以下、または300℃以下である。前処理工程(B)における反応性抽出が200℃~350℃、好ましくは240℃~320℃、または260℃~300℃の範囲の温度で行われることが特に好ましい。
【0098】
高温は、反応性抽出の反応を促進し、そしてそれゆえ、より迅速かつより効率的な前処理をもたらす。前処理工程(B)は、前処理リアクター中の材料が液体のまま維持されていることを確実にするために、高圧で行われてもよい。反応性抽出のあいだの有用な(絶対)圧力は、1bar以上、10bar以上、40bar以上、または60bar以上である。機器のコストを合理的な限度内に抑えるために、圧力は400barを超えるべきではなく、および、好ましくは200bar以下、150bar以下、または100bar以下である。前処理リアクター(反応性抽出リアクター)は、連続流リアクターであってもよく、また、バッチリアクターであってもよく、またはその両方であってもよく、そして、プロセスの他の工程において使用されるリアクターのうちの一つと同じであってもよいが、異なるリアクターまたは同じリアクターの異なるセクションであることが好ましい。
【0099】
反応性抽出に加えて、工程(B)が水素化処理を含まない場合、他の前処理が工程(B)において行われてもよい。例えば、工程(B)は、反応性抽出に加えて、分画、分離、またはろ過を含んでいてもよい。追加の前処理(2以上の追加の前処理工程が行われる場合、それぞれ独立して)は、反応性抽出の前または後のどちらに行われてよく、また、反応性抽出の前および後の両方に行われてもよい。
【0100】
前処理工程は、LWP材料中の汚染物質の含有量を顕著に低下させ、これは、その後の水素化処理工程(C)にふさわしいものにする。前処理工程は、LWP材料中の汚染物質の少なくとも一つの量(含有量)を低下させるためのものである。特には、Si、Cl、NおよびSの汚染物質のうちの少なくとも一つの含有量が低下され、より好ましくは、ClまたはSi汚染物質のうちの少なくとも一つ含有量が低下される。
【0101】
本発明の方法は、したがって、幅広い含有量範囲の不純物に適切であり、および、様々な種類のLWP材料中を効率よく処理し得る。例えば、前処理工程(B)の前のLWP材料の塩素含有量は、本発明の方法をもちいて簡単に処理することができる範囲であるため、好ましくは1wt.-ppm~4000wt.-ppmの範囲である。本発明の精製能力を完全に発揮するためには、方法は、好ましくは、汚染されたLWP材料を使って行われ、そしてこれゆえ、前処理工程(B)の前のLWP材料の塩素含有量が、100wt.-ppm~4000wt.-ppmの範囲内、200wt.-ppm~4000wt.-ppmの範囲内、または300wt.-ppm~4000wt.-ppmの範囲内にあることがより好ましい。前処理工程(B)は、不純物の含有量を低下させるように適用されており、そしてそれゆえ、前処理されたLWP材料の塩素含有量は好ましくは、前処理工程(B)の前のLWP材料の塩素含有量よりも低い。特には、前処理されたLWP材料の塩素含有量が400wt.-ppm以下、より好ましくは、300wt.-ppm以下、200wt.-ppm以下、100wt.-ppm以下、または50wt.-ppm以下であることが好ましい。
【0102】
汚染物質は、LWP材料中に任意の形状で存在し得、例えば、元素の形状(溶解された、または分散された)、または通常は、有機または無機(通常は有機)化合物としての形状で存在し得る。
【0103】
本発明の方法は、水素化処理された材料を得るための水素化処理工程(C)を含む。工程(C)は、前処理された液化廃プラスティック材料を、任意にはコーフィード(水素化処理コーフィード)と共に(一緒に)組み合わせられて水素化することを含む(および好ましくはそれからなる)。
【0104】
(水素化処理)コーフィードは、特に工程(B)で生成された前処理されたLWP材料と組み合わされた(一緒に使用される)、水素化処理工程(C)のためのフィードとして使用されるのに適切である材料である。水素化処理コーフィードは、液化によって廃プラスティックから得られ得る(または得られる)材料であってもよいが、再生可能な材料(例えば酸素含有再生可能な材料)またはそれらの混合物(またはそれらのうちの一つまたは両方と別の材料との混合物)であってもよい。好ましくは、コーフィードは、ソートされた廃プラスティック材料を液化することによって得られ得る(得られる)材料、すなわちソートされた液化廃プラスティック(LWP)であり、ここでソートは、好ましくは、例えばPVCなどの塩素含有廃プラスティックの量が低下するように行われる。好ましくは、ソートされた廃プラスティック中の塩素含有廃プラスティックの量は、(ソートされた廃プラスティックの全体に対して)5wt-%以下、好ましくは3wt-%以下、または2wt-%以下、または1wt-%以下である。特には、ソートされた廃プラスティック中のPVCの量は、(ソートされた廃プラスティックの全体に対して)5wt-%以下、好ましくは3wt-%以下、または2wt-%以下、または1wt-%以下である。この点に関して、塩素含有廃プラスティック(またはPVC)の量(または含有量)は、塩素を含むプラスティック(またはPVC)のピース(物理的に単離されたパーツ)の量(質量)に関連する。
【0105】
コーフィードは、水素化処理工程(C)中で(例えば、水素化処理リアクターに並行して導入されて)前処理されたLWP材料に添加されてもよく、また、工程(C)の前にLWP材料にブレンドされてもよく、またはこれら両方であってもよい。
【0106】
(前処理されていない)LWP材料および/またはLSWP材料を使用される場合、工程(C)の(総計の)フィードが、少なくとも10wt-%、好ましくは少なくとも225wt-%、少なくとも50wt-%、少なくとも75wt-%、または少なくとも90wt-%の工程(B)の前処理されたLWP材料を含むことが好ましい。この文脈において、総計のフィード(total feed)」とは、以下に記載されるように、希釈材料は含まない。
【0107】
工程(C)は、希釈材料と用いて前処理された材料を希釈するサブ工程をさらに含んでいてもよい。希釈のサブ工程は、工程(C)中の水素化処理のあいだのより簡単な温度制御を可能にする。これゆえ、希釈のサブ工程が存在する場合、それは、工程(C)中の水素化処理の前に行われる。適切な温度制御を可能にするために、希釈材料は、好ましくは、工程(C)の水素化処理に対して基本的に不活性である。換言すると、希釈材料は、好ましくは、少量(希釈材料の総計の量に対して、10wt-%以下、好ましくは5wt-%以下、より好ましくは3wt-%以下、およびさらにより好ましくは1wt-%以下)のオレフィンしか含まない。希釈材料が工程(C)において得られた水素化処理された材料を含む、それから本質的になる、またはそれからなることが特に好ましい。すなわち、水素化処理工程(C)の生成物は、希釈材料として水素化処理工程(C)へと再循環されてもよい。
【0108】
本発明において、工程(C)がプロセスの最初の水素化処理工程であることが好ましい。換言すると、工程(C)に付される材料は、水素化処理された材料ではなく、および/または、プロセスが工程(C)の前に水素化処理工程を含まないことが好ましい。特には、LWP材料(特には、ソートされていないLWP材料)が生成されてからその後(すなわち、液化された後)および工程(C)の前に水素化処理に付されていないことが好ましい。
【0109】
本発明の方法は、後処理工程(D)を含む、工程(D)において、水素化処理された材料は、スチームクラッカーフィード(しばしば、単純に「クラッカーフィード(cracker feed)」と称される)を得るために後処理される。任意の従来の後処理が適用可能である。特には、後処理が、分離および分画から選択される少なくとも一つを含むことが好ましい。特には、工程(D)は、気液分離または分画を含んでいてもよい。好ましくは、少なくとも分離技術が、水素化処理された材料から気体状の水素が除去され得るように、前処理されたLWP材料を水素化処理した(少なくとも)後に行われる。
【0110】
後処理工程(D)は、さらに、水素化処理された材料をスチームクラッキングのための追加のフィード材料とブレンドする混合サブ工程を含んでいてもよい。追加のフィード材料は、好ましくは、パラフィン系材料である。追加のフィード材料は、好ましくは、再生可能なフィード材料またはパラフィン系炭化水素(すなわち直鎖または分岐のアルカン)の高い含有量(少なくとも50wt.-%)を有するフィード材料、より好ましくは、
パラフィン系炭化水素の高い含有量(少なくとも50wt.-%)を有する再生可能なフィード材料である。混合サブ工程は、分離または分画の前または後で行われ得、工程(D)中の唯一の作用として行われてもよい。例えば、工程(D)は、混合サブ工程および(気液)分離工程から構成されるか、または、混合サブ工程が分画および/または、分離の後に行われる。追加のフィード材料(クラッカーフィード)は、前処理されていないLWP材料(および/または、前述されるように、前処理されていないLSWP材料)を、好ましくは上述されたパラフィン系材料と共に、さらに含んでいてもよい。
【0111】
工程(D)中の混合サブ工程は、クラッカーフィードが、スチームクラッカーの塩素含有量およびオレフィン含有量の要件を満たすようになる方法で(水素化処理された材料によってではこれらの要件がまだ満たされない場合)、行われ得る。換言すると、混合サブ工程は、好ましくは、パラフィン系材料を、フレンド(すなわちクラッカーフィード)がこれらの要件を満たすことになるような量で添加することを含む。好ましくは、ブレンドは、バッチ式ミキサーまたは連続プロセスにおける混合手段またはそれらの両方を用いて、スチームクラッカーに導入される前に十分混合される。
【0112】
好ましくは、工程(D)中の混合サブ工程は、水素化処理された材料の塩素濃度およびオレフィン濃度のうちの少なくとも一つを決定する第一の段階、スチームクラッカーの塩素含有量およびオレフィン含有量の要件を満たすことになるように添加されるのに必要とされるパラフィン系材料の量を決定する第二の段階、および、少なくとも算出された量のパラフィン系材料を添加する第三の段階を含む。
【0113】
第一、第二、および第三の段階は、連続式またはバッチ形式で行われ得る。第一、第二および第三の段階のうちの一つまたは二つが、連続式で行われ、そして、他の一つまたは他の二つがバッチ式で行われてもよい。操作のモード(連続式またはバッチ式)が、第一および第二の段階で同じであることが好ましい。連続式添加の場合、第二の段階および第三の段階は、好ましくは、水素化処理された材料のフローレートに対するフローレートとして、パラフィン系材料の「量」を提供する。
【0114】
本発明の方法は、任意には、スチームクラッキング工程(E)をさらに含んでいてもよい。工程(E)において、スチームクラッカーフィードは、クラッカー生成物を得るためにスチームクラッカー中でのスチームクラッキングへと付される。コーフィード(クラッキングコーフィード)が、追加でスチームクラッカーフィードに使用されてもよい。
【0115】
水素化処理工程(C)は、さらなる精製を結果としてもたらし、および、特には、前処理されたLWP材料中(および、場合によっては、水素化処理されたコーフィード中)のオレフィンの含有量を低下させるために適切であり、そしてしたがって、工程(C)において使用される前処理されたLWP材料(または混合物)は、オレフィンの幅広い含有量範囲を有しうる。好ましくは、前処理された液化廃プラスティック材料は、10wt-%以上、15wt-%以上、20wt-%以上、30wt-%以上、40wt-%以上、または50wt-%以上のオレフィン含有量を有し得る。同様に、前処理された液化廃プラスティック材料が、85wt-%以下、80wt-%以下、70wt-%以下、または65wt-%以下のオレフィン含有量を有していることが好ましい。通常、LWP材料の、および前処理されたLWP材料の結果としてのオレフィン含有量は、若干高く、主に水素化処理工程(C)によって許容可能な含有量にまで低下される。
【0116】
他に記載されていない限り、成分および/または不純物の含有量は、100%である全体としての材料(例えば、前処理されたLWP材料またはスチームクラッカーフィードなど)に対して与えられる。
【0117】
本発明において、オレフィン(n-オレフィン、イソ-オレフィン、ジオレフィン、より高次のオレフィン、およびオレフィン系ナフテン)、パラフィン(n-パラフィンおよび/またはi-パラフィン)、ナフテン(オレフィン系ナフテンを除く)、および芳香族化合物の含有量は、PIONA法を用いて水素炎イオン化検出器(FID)と組み合わされたガスクロマトグラフィー(GC)によって(GC-FID)測定され得る。PIONA法は、ガソリン範囲の生成物、すなわち約25~180℃の範囲で沸騰する生成物に対して適切である。より高温の沸点をもつ炭化水素、すなわち約180~440℃の範囲の生成物の含有量(パラフィン、イソ-パラフィン、オレフィン、ナフテン、芳香族化合物)は、水素炎イオン化検出器と組み合わされた包括的なガスクロマトグラフィー(GC×GC-FID)によって測定され得る。広範な沸点範囲である場合、両方の方法が組み合わされて使用されてもよい。
【0118】
F、Cl、およびBrの含有量は、ASTM-D7359-18にしたがって測定され得る。ヨウ素(I)および硫黄(S)の含有量は、XFS(蛍光X線分析)によって測定され得る。窒素(N)含有量は、ASTM-D5762にしたがって測定され得る。リン、硫黄および酸素の含有量は、既知の方法を使用して、例えばPについて(ASTM D5185)、Sについて(ASTM D6667M)およびOについて(ASTM D7423)などによって測定され得る。金属原子の含有量は、ASTM D5185規格にもとづいて、ICP発光分光分析法(ICP-AES)を使用して測定され得る。炭素(C)、水素(H)および他の含有量は、例えばASTM D5291などを用いて元素分析により測定され得る。
【0119】
本発明において、前処理された液化廃プラスティック材料(すなわち、工程(B)において得られる材料)は、好ましくは、5wt.-ppm以上の塩素含有量を有する。通常、塩素含有量は、工程(B)によってそれほど低下されず、大幅な低下は、過剰な努力を必要とするであろう。前処理された液化廃プラスティック材料の塩素含有量は、好ましくは、10wt.-ppm以上、15wt.-ppm以上、または20wt.-ppm以上である。さらに、前処理された液化廃プラスティック材料の塩素含有量は、好ましくは、1000wt.-ppm以下、600wt.-ppm以下、400wt.-ppm以下、300wt.-ppm以下、200wt.-ppm以下、または100wt.-ppm以下が好ましく、これは、高すぎる塩素含有量は有害であるためである。最小含有量の硫黄は、完全な触媒効率を確実にするために水素化処理工程において有益であるかもしれない。したがって、前処理された液化廃プラスティック材料が、10wt.-ppm以上、15wt.-ppm以上、または20wt.-ppmv以上の硫黄含有量を有していることがさらに好ましい。必要な場合、工程(C)における最小含有量の硫黄を確実にするために(すなわち、硫黄含有材料がこうてい(C)におけるさらなるコーフィードとして使用され得る)、スパイキングが工程(B)の後に行われてもよい。前処理された液化廃プラスティック材料が、500wt.-ppm以下、300wt.-ppm以下、または200wt.-ppm以下の硫黄含有量を有していることが同様に好ましい。
【0120】
シリコン含有不純物は、水素化処理触媒に触媒毒を引き起こし得る。したがって、本発明は、Siベースの不純物の含有量を低下させるために工程(B)の反応性抽出を適用している。特には、前処理された液化廃プラスティック材料が、500wt.-ppm以下、300wt.-ppm以下、または200wt.-ppm以下であるシリコン含有量を有することが好ましい。このような上限は、本発明の反応性抽出を使用することによって簡単に達成され得、そしてこれゆえ、複雑な精製手順は必要とされない。
【0121】
反応性抽出プロセスをシンプルなものに維持するために、前処理された液化廃プラスティック材料が、3wt.-ppm以上、5wt.-ppm以上、10wt.-ppm以上、15wt.-ppm以上、または20wt.-ppm以上であるシリコン含有量を有することが許容可能である。約10wt.-ppmより多くの含有量も、水素化処理触媒にとって許容可能であり得る。含有量が10wt.-ppmを超える場合、希釈材料を使用すること(上述されるように)、および/または、水素化処理触媒の前(上流)に触媒床を使用することが好ましい。
【0122】
本発明において、スチームクラッカーフィード(クラッカーフィード)は好ましくは、スチームクラッカーの塩素含有量およびオレフィン含有量の要件を満たす。
【0123】
スチームクラッカーの塩素含有量およびオレフィン含有量の要件を満たすクラッカーフィードは、好ましくは、重量あたり10ppm(wt.-ppm)以下の塩素含有量を有する。塩素不純物は、スチームクラッカー装置にとって非常に有害であり、したがって、厳密に制御されるべきである。より好ましくは、スチームクラッカーの塩素含有量およびオレフィン含有量の要件を満たすクラッカーフィードは、8wt.-ppm以下、6wt.-ppm以下、5wt.-ppm以下、4wt.-ppm以下、または3wt.-ppm以下である塩素含有量を有する。
【0124】
スチームクラッカーの塩素含有量およびオレフィン含有量の要件を満たすクラッカーフィードは、好ましくは、5.0wt-%以下であるオレフィン含有量を有する。オレフィンは、スチームクラッカーにおいてコーキングまたはファウリングを引き起こす傾向があり、したがって、それらの含有量は、比較的低いレベルに制御されるべきである。したがって、より好ましくは、スチームクラッカーの塩素含有量およびオレフィン含有量の要件を満たすクラッカーフィードは、4.0wt-%以下、3.5wt-%以下、3.0wt-%以下、2.5wt-%以下、2.0wt-%以下、1.0wt-%以下、0.5wt-%以下、または0.3wt-%以下であるオレフィン含有量を有する。結果的に、工程(C)が、水素化処理された材料としてすでに上述のオレフィン含有量が達成されるように調整されていることが好ましい。水素化処理工程(C)は、事実上全てのオレフィンを除去する(すなわちオレフィン系結合の完全な水素化)ように簡単に調整され得る。
【0125】
他で言及されない限り、フィード成分および不純物の含有量は、100%である全体としてのフィードに対して与えられる。
【0126】
本発明において、前処理された液化廃プラスティック材料は、好ましくは、10wt.-ppm以上、15wt.-ppm以上、または20wt.-ppm以上の窒素含有量を有する。窒素含有量は、100wt.-ppm以上、150wt.-ppm以上、または200wt.-ppm以上であってもよい。前処理された液化廃プラスティック材料が、2000wt.-ppm以下、1000wt.-ppm以下、または800wt.-ppm以下である窒素含有量を有していることがさらに好ましい。
【0127】
本発明の前処理工程(B)を使用することにより、窒素除去は塩素除去ほどいつも効果的である訳ではないが、50~90%(重量当たり)の窒素除去の効率が通常達成され得る。塩素および窒素はしばしば、LWP材料中、特にはポストコンシューマープラスティック由来のLWP材料中の主な汚染物質であるため、塩素汚染物質の顕著に高い除去効率は、過度の窒素汚染物質をもたらす。すなわち、前処理されたLWP材料中の窒素含有量(モルで)は、しばしば、硫黄および塩素を足した量(モルで)の少なくとも2倍および100倍までであり得る。したがって、通常のLWP材料の水素化処理とは異なり、水素化処理装置の気体状流出物は、酸性ではなくむしろ塩基性である。すなわち、前処理は、LWP材料中の塩素(これは水素化処理においてHClへと変換され、そして通常気体状流出物を強酸性にさせる)の量を顕著に低下させる一方、窒素の量はそれほど低下されないことがある。
【0128】
したがって、本発明の前処理工程(B)およびそれに続く水素化処理の結果として、驚くべきことに塩基性の気体状流出物が、水素化処理工程(C)において製造され得る。本発明はしたがって、好ましくは、酸性の液体溶媒を用いて水素化処理工程(C)からの気体状流出物を洗浄する工程(D’)を含む。
【0129】
気体状流出物を提供するために、特には連続式フロー水素化処理において、工程(D)は、好ましくは、気液分離を含む。酸性液体溶媒は、好ましくは、溶媒中に酸性物質を有する溶液である。
【0130】
溶媒は、水であり得る。酸性物質は、無機酸性物質または有機酸性物質であり得る。無機酸性物質は、HCl、H2SO2、H2SO3、HNO3、H3PO4、H3PO3、またはH3PO2またはそれらの混合物であり得る。有機酸性物質は、例えば酢酸またはギ酸などのカルボン酸であり得る。
【0131】
本発明において、前処理工程(B)は、LWP材料が、抽出工程のあいだに化学的に改変される反応性抽出を含む。本発明の発明者らは、汚染された材料を、7またはそれ以上のpHを有する水性溶媒と接触させることによって、水性溶媒が、反応性抽出の溶媒として作用でき、それゆえ汚染物質(有機化合物を含む)が水溶性の汚染物質(および水溶性または水に不溶性である他の生成物)に変換されること、およびこれらはしがたって水を用いて一緒に抽出され得ることを発見した。
【0132】
特には、前処理工程(B)は、LWP材料を、200℃以上の温度で、少なくとも7であるpHを有する水性溶媒を接触させる(例えば混合する)し、その後、液-液分離を行うことを含む。相分離(液-液分離のあいだの)は、例えば物理的方法(例えば遠心分離など)または化学的方法(例えば、分離助剤、例えば水性溶媒以外の溶媒、水性溶媒または異なる濃度の例えばアルカリ性物質などの追加の成分を有する水性溶媒など)を用いることなどによって誘導される相分離、または例えば重力による相分離など非誘導型の相分離であってもよい。
【0133】
好ましくは、前処理工程(B)において使用される水性溶媒の量(Aq)と前処理工程(B)に導入されたLWP材料の量(LW)のあいだの質量比、Aq:LWは、1:10~9:1の範囲内にある。これは、Aq+LWに対するExの含有量が、9.09~90wt-%であることを意味している。したがって、良好な不純物除去効率が達成され得る。比は、好ましくは1:5~5:1、より好ましくは1:5~2:1、または1:5~1.5:1である。
【0134】
本発明において、前処理工程(B)において水素が添加されないこと、および/または、水素化触媒が存在しないことが好ましい。すなわち、前処理工程は、水素化処理、例えば塩素の場合HClとして、またはオレフィンの飽和を生じることなどによって不純物が除去される水素化処理工程を含まない。好ましくは、前処理工程において、水素および水素化処理触媒の少なくとも一つが存在せず(少なくとも同時に)、より好ましくは両方が存在しない。
【0135】
より好ましくは、水素ガス(溶解された水素ガスを含む)が前処理工程(B)のあいだに存在しないことが好ましい。
【0136】
本発明において、前処理された液化廃プラスティック(LWP)材料の臭素数(BN2)および液化廃プラスティック(LWP)材料の臭素数(BN1)のあいだの比、BN2/BN1、が0.90以上、0.95以上であることが好ましい。本発明において、臭素数は、ASTM D1159-07(2017)にしたがって測定され得る。
【0137】
前処理された液化廃プラスティック(LWP)材料の臭素数(BN2)は、前処理工程(B)の直後の臭素数を意味する。液化廃プラスティック(LWP)材料の臭素数(BN1)は、前処理工程(B)の直前の臭素数を意味する。換言すると、本実施形態において、前処理は、オレフィンの量を顕著には低下させない。これは同様に、前処理工程は、実質的にオレフィンの飽和を実質的にもたらしていないことを意味している。すなわち、オレフィンはスチームクラッカーにとって有害であり得るが、本発明は、水素化処理工程(C)を適用し、そしてそれゆえスチームクラッカーのオレフィン条件を満たしている。通常、オレフィン含有量は、前処理では増加せず(不純物成分の除去に起因するマイナー効果を除き)そしてそれゆえ、比の上限は1.2であり得、および好ましくは1.1または1.0であり得る。
【0138】
工程(A)において提供される液化廃プラスティック(LWP)材料は、液化廃プラスティックの留分であってもよい、工程(A)は、液化廃プラスティックを分画するサブ工程(A2)を含んでいてもよいが、液化廃プラスティックの留分は、同様に購入されたり、他の手段によって提供されてもよい。
【0139】
工程(A)は、サブ工程(A2)を一緒にまたはそれだけのどちらかで、廃プラスティックを液化するサブ工程(A1)をさらに含み得る。液化は、例えば高速熱分解および水素化熱分解を含む熱分解などの既知の方法によって行われ得る。
【0140】
工程(A)において提供される液化廃プラスティック(LWP)材料は好ましくは、25℃以上の5%沸点または550℃以下の95%沸点を有する。LWP材料の5%および95%沸点は、ASTM D2887-16にしたがって測定され得る。
【0141】
水素化処理工程(C)は、水素化処理された材料を得るために前処理された液化廃プラスティック材料を(任意にはコーフィードと一緒に)水素化処理することを含む。好ましくは、工程(C)における水素化処理は、水素化処理触媒の存在下で行われる。もちろん、水素化処理は、水素(水素ガス、H2)の存在下で行われる。
【0142】
工程(C)における水素化処理触媒は、好ましくは、IUPACの元素周期表の6、8、または10族から選択される少なくとも一つの成分を含む。例えば、工程(C)における水素化処理触媒は、担持されたNiMo触媒、または担持されたCoMo触媒であり担体は、アルミナおよび/またはシリカである。触媒は、好ましくは、NiMo/Al23またはCo-Mo/Al23である。より好ましくは、工程(C)における水素化処理触媒は、担持されたNiMo触媒であり、そして、担体はアルミナである(NiMo/Al23)。
【0143】
前述されるように、工程(C)は、前処理された材料を希釈材料を用いて希釈するサブ工程を含み得る。希釈材料は、工程(C)の条件によって(実質的に)改変されない任意の材料であり得る。好ましくは、希釈材料は、水素化処理工程(C)の流出物またはそれらの留分であるかそれらを含んでいる。さらに、工程(D)は、水素化処理された材料をスチームクラッキングのための追加のフィード材料と混合するサブ工程を含んでいてもよい。追加のフィード材料は、パラフィン系材料であり得る。パラフィン系材料は、好ましくは、高い含有量(少なくとも50wt-%)のパラフィン系炭化水素を有する材料である。
【0144】
好ましくは、パラフィン系材料は、少なくとも90wt-%の、5またはそれ以上の炭素原子を有する化合物(C5-プラス材料)を含む。換言すると、少なくとも90wt-%のパラフィン系材料が、5以上の炭素原子を有する化合物からなりたっていることが好ましい。特には、パラフィン系材料は、あまり多くのC4-マイナス材料(4以下の炭素原子を有する化合物)を有するべきでなく、これは、これらの化合物は、揮発性であり、それゆえ、特に材料を水素化処理された材料と混合する際の取扱いが困難であるためである。さらに、C5-プラス材料は、スチームクラッキング工程の生成物分布においてより顕著な効果をもつ。パラフィン系材料が、少なくとも90wt-%の、5~40の範囲の炭素数(炭素原子の数)を有する化合物を含んでいることが特に好ましい。
【0145】
パラフィン系材料は、好ましくは、20℃~300℃の範囲の5%沸点(ASTM D86に基づく)を有する。換言すると、パラフィン系材料は、通常の(例えば化石)燃料留分の沸騰開始点に匹敵する沸騰開始点(5%沸点)を有し得る。
【0146】
パラフィン系材料は、好ましくは、ナフサ留分、中間蒸留物留分、VGO留分、またはLPG留分、またはこれらの2つまたはそれ以上の混合物のうちの少なくとも一つ、好ましくは、ナフサ留分および中間蒸留物留分のうちの少なくとも一つである。
【0147】
好ましくは、これらの留分のただ一つが、パラフィン系材料として適用される。本発明の文脈において、ナフサ留分は、好ましくは25℃以上の沸騰開始点、および、200℃以下の沸騰終了点(ASTM D86)を有し、中間蒸留物は、好ましくは、180℃以上の沸騰開始点および360℃以下の沸騰終了点(ASTM D86)を有し、VGO留分は、好ましくは、360℃以上の沸騰開始点(ASTM D2887-16)を有し、ならびに、LPG留分は、好ましくは、25℃以下の沸騰終了点(ASTM D86)を有する。
【0148】
本発明において、パラフィン系材料が60wt-%以上のパラフィン含有量を有することが好ましいが、これは、スチームクラッキング生成物分布における有益な効果がそれゆえにより明確になるであろうためである。本発明の文脈において、パラフィン含有量は、n-パラフィンおよびi-パラフィンの総計の含有量を意味し、そして、全体としてのパラフィン系材料に対して決定される。より好ましくは、パラフィン系材料は、65wt-%以上、70wt-%以上、75wt-%以上、80wt-%以上、85wt-%以上、90wt-%以上、93wt-%以上、または95wt-%以上のパラフィン含有量を有する。
【0149】
i-パラフィン(イソパラフィン)を含むパラフィン系材料を適用する場合、さらに良好な結果さえも達成され得る。パラフィン系材料が、5wt-%以上のi-パラフィン含有量を有することが好ましい。本発明において、i-パラフィン含有量は、パラフィン系材料の総計のパラフィン含有量を100%としてそれに対して決定される。より好ましくは、パラフィン系材料は、8wt-%以上、10wt-%以上、好ましくは15wt-%以上、20wt-%以上、25wt-%以上、30wt-%以上、35wt-%以上、40wt-%以上、45wt-%以上、50wt-%以上のi-パラフィン含有量を有する。
【0150】
一実施形態において、パラフィン系材料は、45wt-%~70wt-%、好ましくは50wt-%~65wt-%の範囲のi-パラフィン含有量を有する。
【0151】
別の実施形態において、パラフィン系材料は、95wt-%以上のパラフィン含有量、および、65wt-%~100wt-%、好ましくは75wt-%~99wt-%、80wt-%~99wt-%、または85wt-%~99wt-%の範囲のi-パラフィン含有量を有する。
【0152】
さらなる実施形態において、パラフィン系材料は、95wt-%以上のパラフィン含有量、および、80wt-%~100wt-%、または85wt-%~99wt-%のi-パラフィン含有量を有する。
【0153】
パラフィン系材料は、好ましくは、50wt-%~25wt-%。好ましくは45wt-%~30wt-%の範囲のn-パラフィン含有量を有する。パラフィン系材料は、好ましくは、0wt-%~15.00wt-%、好ましくは0.01wt-%~5.00wt-%の範囲のナフテン含有量を有する。
【0154】
持続可能性の観点から、パラフィン系材料が再生可能な材料であることが特に好ましい。
【0155】
本発明の文脈における再生可能とは、95wt-%以上の再生可能成分含有量(バイオ材料、より具体的にはバイオ材料由来の炭素、すなわちバイオ炭素の含有量)を意味する。バイオ炭素(バイオ材料)の含有量は、ASTM D 6866-18にしたがって決定され得る。
【0156】
特には、トリグリセリドおよび/または脂肪酸の水素化処理、および任意には異性化、再生可能な材料留分を得るためのその後の分画によって得られる再生可能な材料が本発明においては好ましい。このような材料は、本発明の方法の生成物分布をさらに改良することが発見された良好に規定されたおよび非常に均一な炭素数分布を提供し得る。
【0157】
特には、再生可能なディーゼル(トリグリセリドの水素化処理、その後の異性化および分画によって得られるディーゼル留分)は、いくつかの理由により、非常に高い可能性をもったLWPのための混合成分である。第一に、LWPおよび再生可能なディーゼルは、両方のフィードストックがいくつかの持続可能な開発目標を満たし得る得るため、補完的である。第二に、再生可能なディーゼルは、市場に低い不純物、オレフィンまたは芳香族化合物レベルを有する卓越した混合フィードストックである。したがって、再生可能なディーゼルは、不純物レベルを低下させるため、および、LWPの性能を高めるため、そしてそれゆえ、それをとりわけナフサクラッカーのためのより適切なフィードストックとするために使用され得る。
【0158】
本発明のスチームクラッキングプロセスは、従来技術において既知の通常の条件下で行われ得る。本発明の中心は、スチームクラッカーフィード材料であるため、スチームクラッキングプロセスそれ自体のプロセスは、完全に詳細には記載されないが、適切なバリエーションについては従来技術が参照され得るであろう。
【0159】
一般的には、スチームクラッキングプロセスは、高温で、好ましくは650~1000℃の範囲で、より好ましくは、750~850℃の範囲で行われる。スチームは、クラッキングゾーンの前に炭化水素フィードと混合され、これは、クラッキング反応を不純物およびコークス前駆体に対してより堅牢なものとする。クラッキングは、通常、酸素の非存在下で起こる。クラッキング条件における滞留時間は非常に短く、典型的にはミリ秒のオーダーである。クラッカーからは、クラッカー流出物が得られ、これは芳香族化合物、オレフィン、水素、水、一酸化炭素および他の炭化水素化合物を含み得る。得られる具体的な生成物は、フィードの組成、炭化水素-スチームの比、およびクラッキング温度および炉内滞留時間に依存する。スチームクラッカーからの分解された生成物は、次いで、分解された生成物の温度を迅速に低下させるために、一またはそれ以上熱交換機(しばしばTLEとも称される)を通過させられる。TLEは好ましくは、400~550℃の範囲の温度まで分解された生成物を冷却する。
【0160】
(任意的な)工程(E)は、クラッカー生成物(cracker product)(「分解生成物(racked product)」または「分解生成物(cracking product)」とも称される)を提供する、本発明において、用語「分解生成物」(または「分解生成物」または「クラッカー生成物」)は、スチームクラッキング工程(steam cracking step)(以下では、熱分解工程(thermal cracking step)とも称される)の直後に得られる生成物、またはそれらの誘導体を意味しており、すなわち、本明細書で使用される「分解生成物」とは、炭化水素の混合物中の炭化水素種およびそれらの誘導体を意味する。「スチームクラッキング工程の直後に得られる(obtained directly after the steam cracking step)」とは、任意的な分離および/または精製工程を含むと解釈され得る。本明細書中で使用されるように、用語「分解生成物」はまた、スチームクラッキング工程それ自体の直後に得られる炭化水素混合物を意味し得る。
【0161】
本発明は、本発明による方法によって得られ得る炭化水素の混合物を提供する。炭化水素の混合物は、さらなる精製なしに熱分解後に直接得られる混合物に対応する。
【0162】
本発明は、化学品および/またはポリマーを製造するための炭化水素の混合物の使用をさらに提供する。化学品および/またはポリマーを製造するための炭化水素の混合物の使用は、炭化水素の混合物から少なくとも一つの炭化水素化合物を分離するための分離工程を含んでいてもよい。
【0163】
本明細書中に記載される分解生成物は、本発明を用いて得られ得る分解生成物の例である。ある実施形態の分解生成物は、以下で記載される分解生成物の一またはそれ以上を含み得る。
【0164】
好ましい実施形態において、分解生成物は、水素、メタン、エタン、エテン、プロパン、プロペン、プロパンジエン、ブタンおよびブチレン、例えばブテン、イソブテン、およびブタジエンなど、C5+炭化水素、例えば芳香族化合物、ベンゼン、トルエン、キシレンなど、および、C5~C18パラフィンまたはオレフィン、およびそれらの誘導体のうちの一またはそれ以上を含む。
【0165】
このような誘導体は、例えば、メタン誘導体、エテン誘導体、プロペン誘導体、ベンゼン誘導体、トルエン誘導体、およびキシレン誘導体、およびそれらの誘導体である。
【0166】
メタン誘導体としては、例えば、アンモニア、メタノール、ホスゲン、水素、オキシケミカル、およびそれらの誘導体、例えばメタノール誘導体などが挙げられる。メタノール誘導体としては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ポリメチル、ホルムアルデヒド、フェノール樹脂、ポリウレタン、メチル-tert-ブチルエーテル、およびそれらの誘導体等が挙げられる。
【0167】
エテン誘導体としては、例えば、エチレンオキサイド、二塩化エチレン、アセトアルデヒド、エチルベンゼン、α-オレフィン、およびポリエチレン、およびそれらの誘導体、例えばエチレンオキサイド誘導体、エチルベンゼン誘導体、およびアセトアルデヒド誘導体などが挙げられる。エチレンオキサイド誘導体としては、例えば、エチレングリコール、エチレングリコールエーテル、エチレングリコールエーテルアセテート、ポリエステル、エタノールアミン、エチルカーボネートおよびそれらの誘導体などが挙げられる。エチルベンゼン誘導体としては、例えば、スチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン、スチレン-アクリロニトリル樹脂、ポリスチレン、不飽和ポリエステル、スチレン-ブタジエンゴム、およびそれらの誘導体などが挙げられる。アセトアルデヒド誘導体としては、例えば、酢酸、酢酸ビニルモノマー、ポリ酢酸ビニルポリマー、およびそれらの誘導体などが挙げられる。エチルアルコール誘導体としては、例えば、エチルアミン、酢酸エチル、アクリル酸エチル、アクリル酸エラストマー、合成ゴム、およびそれらの誘導体等が挙げられる。さらに、エテン誘導体としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリスチレンなどの高分子、およびそれらの誘導体等が挙げられる。
【0168】
プロペン誘導体としては、例えば、イソプロパノール、アクリロニトリル、ポリプロピレン、プロピレンオキサイド、アクリル酸、塩化アリル、オキソアルコール、クメン、アセトン、アクロレイン、ヒドロキノン、イソプロピルフェノール、4-ヘチルペンテン-1、アルキレート、ブチルアルデヒド、エチレン-プロピレンエラストマー、およびそれらの誘導体等が挙げられる。プロピレンオキサイド誘導体としては、例えば、プロピレンカーボネート、アリルアルコール、イソプロパノールアミン、プロピレングリコール、グリコールエーテル、ポリエーテルポリオール、ポリオキシプロピレンアミン、1,4-ブタンジオール、およびそれらの誘導体などが挙げられる。塩化アリル誘導体としては、例えば、エピクロルヒドリン、およびエポキシ樹脂などが挙げられる。イソプロパノール誘導体としては、例えば、アセトン、酢酸イソプロピル、イソホロン、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ポリメチル、およびそれらの誘導体などが挙げられる。ブチルアルデヒド誘導体としては、例えば、アクリル酸、アクリル酸エステル、イソブタノール、イソブチルアセテート、n-ブタノール、n-ブチルアセテート、エチルヘキサノール、およびそれらの誘導体などが挙げられる。アクリル酸誘導体としては、例えば、アクリル酸エステル、ポリアクリル酸エステル、および高吸水性樹脂などの吸水性ポリマー、およびそれらの誘導体等が挙げられる。
【0169】
ブチレン誘導体としては、例えば、アルキレート、メチルtert-ブチルエーテル、エチルtert-ブチルエーテル、ポリエチレンコポリマー、ポリブテン、バレルアルデヒド、1,2-ブチレンオキシド、プロピレン、オクテン、sec-ブチルアルコール、ブチレンゴム、メタクリル酸メチル、イソブチレン、ポリイソブチレン、例えばp-tert-ブチルフェノール、ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、および2,6-ジ-tert-ブチルフェノールなどの置換フェノール、ポリオール、およびそれの誘導体などが挙げられる。その他のブタジエン誘導体は、スチレンブチレンゴム、ポリブタジエン、ニトリル、ポリクロロプレン、アジポニトリル、アクリロニトリルブタジエンスチレン、スチレン-ブタジエンコポリマーラテックス、スチレンブロックコポリマー、スチレン-ブタジエンゴムなどであり得る。
【0170】
ベンゼン誘導体としては、例えば、エチルベンゼン、スチレン、クメン、フェノール、シクロヘキサン、ニトロベンゼン、アルキルベンゼン、無水マレイン酸、クロロベンゼン、ベンゼンスルホン酸、ビフェニル、ハイドロキノン、レゾルシノール、ポリスチレン、スチレン-アクリロニトリル樹脂、スチレン-ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂、スチレンブロックコポリマー、ビスフェノールA、ポリカーボネート、メチルジフェニルジイソシアネート、およびそれの誘導体などが挙げられる。シクロヘキサン誘導体としては、例えば、アジピン酸、カプロラクタム、およびそれの誘導体などが挙げられる。ニトロベンゼン誘導体としては、例えば、アニリン、メチレンジフェニルジイソシアネート、ポリイソシアネート、およびポリウレタンなどが挙げられる。アルキルベンゼン誘導体としては、例えば、直鎖アルキルベンゼンなどが挙げられる。クロロベンゼン誘導体としては、例えば、ポリスルホン、ポリフェニレンサルファイド、ニトロベンゼンなどが挙げられる。フェノール誘導体としては、例えば、ビスフェノールA、フェノール形アルデヒド樹脂、シクロヘキサノン-シクロヘキセノール混合物(KA-オイル)、カプロラクタム、ポリアミド、p-ノニルフェノールおよびp-デドシルフェノールなどのアルキルフェノール、オルソ-キシレノール、アリールホスフェート、o-クレゾール、およびシクロヘキサノールなどが挙げられる。
【0171】
トルエン誘導体としては、例えば、ベンゼン、キシレン、トルエンジイソシアネート、安息香酸、およびそれらの誘導体などが挙げられる。
【0172】
キシレン誘導体としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸無水物などの芳香族ジカルボン酸および無水物、およびフタル酸、およびそれらの誘導体などが挙げられる。テレフタル酸の誘導体としては、例えば、テレフタル酸ジメチルなどのテレフタル酸エステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、およびポリエステルポリオールなどのポリエステルを挙げることができる。フタル酸誘導体としては、例えば、不飽和ポリエステル、およびPVC
可塑剤などが挙げられる。イソフタル酸誘導体としては、例えば、不飽和ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート共重合体、およびポリエステルポリオールなどが挙げられる。
【0173】
本発明による方法を用いて得られる、または得られ得る炭化水素は、従来の石油化学、および高分子工業の原料として特に好適である。具体的には、本発明から得られる炭化水素の混合物は、従来の原料、すなわち純化石原料の熱(スチーム)クラッキングから得られる生成物分布に類似し、さらにはそれを上回るほど好ましい生成物分布を示す。したがって、これらの炭化水素は、生産プロセスの大幅な変更を必要とすることなく、既知の付加価値連鎖に加えることができる。
【0174】
本発明の分解生成物は、広範な用途に使用することができる。そのような用途としては、例えば、家電製品、複合材料、自動車、包装、医療機器、農薬、冷媒、履物、紙、コーティング剤、接着剤、インク、医薬品、電気および電子機器、スポーツ用品、使い捨て品、塗料、繊維、高吸収剤、建築および建設、燃料、洗剤、家具、スポーツウェア、溶媒、可塑剤、および界面活性剤などが挙げられる。
【実施例
【0175】
スチームクラッキングが、LWP留分および化石ナフサを用いて、温度条件を変化させて行われた。
【0176】
実施例1
LWP材料の中間蒸留物留分(「LWP-MD」;5~95wt-%蒸留範囲172~342℃)が前処理され、および続いて水素化処理に付された。
【0177】
前処理が、300部のLWP MDおよび200部の2wt.%の水性NaOHを用いて、撹拌バッチリアクター内で行われた。リアクターは、常圧、常温で密閉され、およびその後240℃まで加熱され、この温度で30分間保持され、およびその後、リアクターを再び冷却させた。水相が、有機相からおおまかにデカントされ、次いで有機相の遠心分離(20℃、4300rpm、30分)が行われ、そして分離された有機相が回収された。
【0178】
前処理されたLWP材料が、次いで水素化処理に付された。水素化処理は、450mLのオートクレーブリアクター内で、(アルミナに担持された)硫化NiMo触媒を用いて、300℃、および90barのH2圧で行われた。反応時間は6時間であった。反応中は、40l/hである一定のH2フローが維持された。前処理されたLWP材料の量は、215gであり、および、触媒量は43gであった。触媒は、液中に直接投入され、および、気液分離およびろ過による触媒の除去が行われた(後処理)。その結果が、表1にしめされており、および、前処理工程後のLWP中間蒸留物留分中に残存していたヘテロ原子(不純物)が、水素化処理工程において、効果的に除去されたことを明らかに示している。
【0179】
【表1】
【0180】
LWP中間蒸留物留分中の不飽和化合物の量の減少は、IS03839(前処理されたLWP材料に関して;g/100g)およびASTMD2710(水素化処理された材料に関して;mg/l00g)にしたがった臭素(Br)数/指数分析を介して観察可能であった。オレフィン系材料の本質的に完全な飽和は、赤外線(IR)分光法によってさらに確認され得、それによると、水素化処理されたLWPは、もはや注目に値するような量のオレフィン系炭化水素を含んでいなかった。
【0181】
この結果得られたクラッカーフィードは、化石または再生可能なクラッカーフィードと共にスチームクラッキングするためのドロップインスチームクラッカーフィードとして適切であった。
【0182】
実施例2
実施例1の手順が、同様の方法で、ただし粗(未蒸留)LWP材料を初期フィードとして使用して繰り返された。
【0183】
得られた水素化処理材料が、いくつかの留分を得るために、触媒を濾別した後に分留に付され、そのうちの留分のうち、実施例1のスチームクラッカーフィードと同様に、少なくとも中間蒸留物留分が、少量の不純物を含んでいた(結果は示さず)。
【0184】
実施例3
LWP材料のガソリン留分(LWP-ガソリン;5%~95%沸点範囲85~174℃)が、実施例1と同様の手順で前処理された。この前処理は、表2に示されるように、不純物の量を顕著に減少させ、一方、オレフィン含有量はわずかに増加していた。
【0185】
得られた前処理されたLWP材料が、実施例1と同じ条件下で水素化処理に付された。生成物は、赤外分光法によって分析され、その結果オレフィンの非存在が確認された。
【0186】
【表2】
【0187】
実施例4
実施例1の水素化処理材料が、820℃、850℃、880℃のコイル出口温度(COT)でのスチームクラッキングに付された。炭化水素に対する水の比(gH2O/HC)は0.5であった。炭化水素に対する水の比は、水留分を0.075kg/hの速さで、および炭化水素留分を0.15kg/hの速度でフィードすることにより調整された。全ての実験において、コイル出口圧力(COP)は、1.7bar(a)であった。硫黄含有量(HC含有量に関連する)は、二硫化ジメチル(DMDS)により250ppmに調整された。参考として、化石ナフサが、同条件下でスチームクラッキングされた。
【0188】
エチレン、プロピレン、およびCOの収率が、表3に示されている。
【0189】
【表3】
【0190】
この結果は、水素化処理された材料が、高度に汚染された廃棄生成物から得られているものでありながら、ドロップインスチームクラッカーフィードとして、化石ナフサに匹敵する良好な特性を有していること、およびそれゆえ、結果として得られる製品の持続可能性に寄与することを示している。
【0191】
実施例5
実施例1の前処理手順が、粗(未蒸留)LWPサンプル(LWP-crude;5~95wt-%蒸留範囲67~476℃)を使用して繰り返された。その結果、前処理手順の効果は、塩素不純物の除去に関して特に高い一方、窒素および硫黄の除去効率は、より限定的であることが発見された。このサンプルでは、初めの硫黄含有量は中程度であった一方、初めの窒素含有量は比較的高かった。したがって、結果として得られた前処理材料は、硫黄および塩素の含有量の合計量よりもはるかに高い窒素含有量(質量ベースでもモルベースであっても)を有していた。結果が表4に示されている。
【0192】
【表4】
【0193】
したがって、通常のLWP材料の水素化処理とは異なり、水素化処理工程の気体状流出物は、驚くべきことに、塩基性の特性を有しており、および、気体状流出物は、酸性の液体溶媒(硫酸の水溶液)を用いて後処理された。
【手続補正書】
【提出日】2022-07-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化廃プラスティックをアップグレードするための方法であって、
液化廃プラスティック(LWP)材料を提供する工程(A)、
前処理された液化廃プラスティック材料を製造するために、前記液化廃プラスティック材料を少なくとも7のpHをもつ水性溶媒と、200℃以上の温度で接触させ、その後液-液分離を行うことにより、前記液化廃プラスティック材料を前処理することを含む工程(B)、
水素化処理された材料を得るために、前記前処理された液化廃プラスティック材料を、任意にはコーフィードと組み合わせて、水素化処理することを含む工程(C)、および、
スチームクラッカーフィードを得るために、前記水素化処理された材料を後処理する工程(D)
を含む方法。
【請求項2】
前記スチームクラッカーフィードをスチームクラッキングに付す工程(E)をさらに含む請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記前処理された液化廃プラスティック材料が、5wt.-ppm以上、10wt.-ppm以上、15wt.-ppm以上、または20wt.-ppm以上の塩素含有量を有しており、および/または、前記前処理された液化廃プラスティック材料が、10wt-%以上、15wt-%以上、20wt-%以上、30wt-%以上、40wt-%以上、または50wt-%以上のオレフィン含有量を有している請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記前処理された液化廃プラスティック材料が、500wt.-ppm以下、300wt.-ppm以下、または200wt.-ppm以下のシリコン含有量を有している請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも7のpHをもつ水性溶媒が、水および前記水に溶解されたアルカリ性物質を含むアルカリ性水性溶媒であり、および、好ましくは水に溶解された金属水酸化物を含み、前記金属水酸化物が、好ましくはアルカリ金属の水酸化物および/またはアルカリ土類金属の水酸化物、より好ましくはアルカリ金属の水酸化物である請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記水性溶媒が、少なくとも0.3wt-%の金属水酸化物、より好ましくは少なくとも0.5wt-%、少なくとも1.0wt-%、少なくとも1.5wt-%の金属水酸化物を含む請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前処理工程(B)において前記液化廃プラスティック材料を少なくとも7のpHをもつ水性溶媒と接触させることが、210℃以上、好ましくは220℃以上、240℃以上、または260℃以上の温度で行われる請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記スチームクラッカーフィードが、5.0wt-%以下、好ましくは4.0wt-%以下、3.5wt-%以下、3.0wt-%以下、2.5wt-%以下、2.0wt-%以下、1.0wt-%以下、0.5wt-%以下、または0.3wt-%以下であるオレフィン含有量を有する請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
記液化廃プラスティック(LWP)材料が、少なくとも一種類の熱分解を含むプロセスによって得られる請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記工程(A)で提供される前記液化廃プラスティック(LWP)材料が、液化廃プラスティックの留分である請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記工程(C)における前記水素化処理が、水素化処理触媒の存在下で行われ、前記工程(C)における前記水素化処理触媒が、好ましくは担持されたNiMo触媒、または担持されたCoMo触媒であり、および、担体が、アルミナおよび/またはシリカを含み、前記触媒が、より好ましくはNiMo/Al23またはCoMo/Al23である請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
後処理工程(D)が、前記水素化処理された材料をパラフィン系材料と混合する工程を含み、前記パラフィン系材料が、好ましくは、60wt-%以上、好ましくは65wt-%以上、70wt-%以上、75wt-%以上、80wt-%以上、85wt-%以上、または90wt-%以上のパラフィン含有量を有し、および、前記パラフィン系材料が、好ましくは再生可能な材料である請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記工程(D)が、気液分離などの、分画および分離から選択される少なくとも一つを含む請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
酸性液体溶媒を用いて前記水素化処理工程(C)からの気体状流出物を洗浄する工程(D’)をさらに含請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記酸性液体溶媒が、溶媒中に酸性物質を有する溶液であり、より好ましくは水中に酸性物質を有する溶液であり、および、前記酸性物質が、好ましくはHCl、H 2 SO 2 、H 2 SO 3 、HNO 3 、H 3 PO 4 、H 3 PO 3 、またはH 3 PO 2 またはそれらの混合物などの無機酸性物質であり、または、前記酸性物質が、好ましくは有機酸性物質であり、より好ましくは酢酸またはギ酸などのカルボン酸である請求項14記載の方法。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1項に記載の方法によって得られる炭化水素の混合物。
【請求項17】
例えばポリプロピレンおよび/またはポリエチレンなどの化学品および/またはポリマーを製造するための、請求項16記載の炭化水素の混合物の使用。
【国際調査報告】