(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-01
(54)【発明の名称】医療デバイス用のコーティング、コーティングを含んで成る医療デバイス、および被覆することを含む使用および方法、コーティングを含んで成る医療デバイス、コーティングを製造する方法、ならびに医療デバイスをコーティングするためのキット
(51)【国際特許分類】
A61L 33/06 20060101AFI20230125BHJP
A61L 33/12 20060101ALI20230125BHJP
【FI】
A61L33/06 200
A61L33/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022532032
(86)(22)【出願日】2020-11-06
(85)【翻訳文提出日】2022-07-27
(86)【国際出願番号】 EP2020081383
(87)【国際公開番号】W WO2021104835
(87)【国際公開日】2021-06-03
(32)【優先日】2019-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522065613
【氏名又は名称】スマート リアクターズ サービス リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Smart Reactors Service LTD
【住所又は居所原語表記】GMIT, IHUB, Dublin Road, Galway H91 DCH9 Ireland
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【氏名又は名称】江間 晴彦
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】ブラッシル,マーク
【テーマコード(参考)】
4C081
【Fターム(参考)】
4C081BA01
4C081CA082
4C081DC03
4C081EA06
(57)【要約】
医療デバイス用コーティングについて記載されている。コーティングは、表層と、任意のオプションでベース層とを含んで成り、表面層は、耐凝固基に結合したポリマー鎖を含んで成り、耐凝固基は、スルホン酸基、スルホンアミド基、スルファミン酸基、硫酸水素基、およびそれらの共役塩基から選択される。また、コーティングを含んで成る医療デバイス、ならびにコーティングおよび医療デバイスを含む使用および方法についても記載されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療デバイス用コーティングであって、
表層と、任意のベース層とを含んで成り、
前記表層は、耐凝固基に結合したポリマー鎖を含んで成り、前記耐凝固基は、スルホン酸基、スルホンアミド基、スルファミン酸基、硫酸水素基およびそれらの共役塩基から選択される、コーティング。
【請求項2】
耐凝固基に結合した前記ポリマー鎖は、式(C-2):
【化1】
[式(C-2)中、
各Y
1は、O
-、OH、NH
-、およびNH
2から選択され、好ましくはO
-およびOHから選択され、
Y
2は、O
-およびOHから選択され、
各L
1は、C
2-5アルケンであり、好ましくはエチレンであり、
L
2は、C
2-5アルケンであり、好ましくはエチレンであり、
R
Aは、HおよびC
1-6アルキルから選択され、好ましくはHおよびメチルから選択され、
n
1は、整数であり、好ましくは5以上であり
n
2は、整数であり、好ましくは5以上である]
により表される、請求項1に記載のコーティング。
【請求項3】
前記ポリマー鎖は、複数の耐凝固基に結合し、各耐凝固基は、リンカー基によって前記ポリマー鎖に結合しており、好ましくは前記複数の耐凝固基は、複数の、スルホン酸基、スルホネート基、またはそれらの組み合わせである、請求項1または2に記載のコーティング。
【請求項4】
前記ポリマー鎖は、式(A-1):
【化2】
[前記式(A-1)中、
X
1Aは、O
-、OH、OR
1A、NH
2、NHR
1AおよびA
1Aから選択され、
X
1Bは、O
-、OH、OR
1B、NH
2、NHR
1BおよびA
1Bから選択され、
R
1AおよびR
1Bのそれぞれは、独立に、C
1-6アルキル、C
6-10アリールおよびC
6-10アリール-C
1-6アルキルから選択され、
A
1AおよびA
1Bのそれぞれは、独立に、式(S-1):
【化3】
{前記式(S-1)中、
Z
1は、O、NHおよびNR
1から選択され、
R
1は、C
1-6アルキル、C
6-10アリールおよびC
6-10アリール-C
1-6アルキルから選択され、
Y
1は、O
-およびOHから選択され、
L
1は、式(L-1):
【化4】
〔前記式(L-1)中、
P
1は、単結合、C
1-10アルケン、C
2-10アルケニレン、C
2-10アルキニレンおよびフェニレンから選択され、
Q
1は、単結合、O、NH、NR
1Cおよびフェニレンから選択され、
W
1は、単結合、C
1-10アルケン、C
2-10アルケニレン、C
2-10アルキニレンおよびフェニレンから選択され、
R
1Cは、C
1-6アルキル、C
6-10アリールおよびC
6-10アリール-C
1-6アルキルから選択される〕
により表される}
により表される]
により表される繰り返し単位を含む、請求項1または2に記載のコーティング。
【請求項5】
(a)X
1Aの少なくとも1つがA
1Aであるか、もしくはX
1BがA
1Bであるか、または(b)両X
1AがA
1Aであり、X
1BがA
1Bである、請求項4に記載のコーティング。
【請求項6】
各Z
1はOおよびNHから選択され、
好ましくは各Z
1はNHである、請求項4または5に記載のコーティング。
【請求項7】
各P
1は、C
1-10アルケン、C
2-10アルケニレンおよびC
2-10アルキニレンから選択され、
Q
1は単結合であり、
各W
1は単結合であり、
好ましくは各P
1はC
1-10アルキレンであり、任意のC
2-6アルキレンであり、または
より好ましくは各P
1はエチレンである、請求項4~6のいずれか1項に記載のコーティング。
【請求項8】
各P
1は、C
1-10アルキレン、C
2-10アルケニレンおよびC
2-10アルキニレンから選択され、
各Q
1は、O、NHおよびNR
1Cから選択され、
各W
1は、単結合であり、
好ましくは各Q
1は、OおよびNHから選択される、請求項4~6のいずれか1項に記載のコーティング。
【請求項9】
前記ポリマー鎖は、式(B-1):
【化5】
[式(B-1)中、
R
Aは、HおよびC
1-6アルキルから選択され、
X
2は、O
-、OH、OR
2A、NH
2、NHR
2AおよびA
2から選択され、
R
2Aは、C
1-6アルキル、C
6-10アリールおよびC
6-10アリール-C
1-6アルキルから選択され、
A
2は式(S―2):
【化6】
{式(Sー2)中、
Z
2は、O、NHおよびNR
2から選択され、
R
2は、C
1-6アルキル、C
6-10アリールおよびC
6-10アリール-C
1-6アルキルから選択され、
Y
2は、O
-およびOHから選択され、
L
2は、式(L-2):
【化7】
〔式(L-2)中、
P
2は、単結合、C
1-10アルキレン、C
2-10アルケニレン、C
2-10アルキニレンおよびフェニレンから選択され、
Q
2は、単結合、O、NH、NR
2Cおよびフェニレンから選択され、
W
2は、単結合、C
1-10アルケン、C
2-10アルケニレン、C
2-10アルキニレンおよびフェニレンから選択され、
R
2Cは、C
1-6アルキル、C
6-10アリールおよびC
6-10アリール-C
1-6アルキルから選択される〕
により表される}
により表される]
によって表される繰り返し単位を含む、請求項1または2に記載のコーティング。
【請求項10】
X
2はA
2である、請求項9に記載のコーティング。
【請求項11】
R
Aは、Hおよびメチルから選択され、
好ましくはR
AはHである、請求項9または10に記載のコーティング。
【請求項12】
Z
2は、OおよびNHから選択され、
好ましくはZ
2はNHである、請求項9~11のいずれか1項に記載のコーティング。
【請求項13】
P
2は、C
1-10アルキレン、C
2-10アルケニレンおよびC
2-10アルキニレンから選択され、
Q
2は、単結合であり、
W
2は、単結合であり、
好ましくはP
2はC
1-10アルキレン、任意にC
2-6アルキレンであり、または
より好ましくはP
2はエチレンである、請求項9~12のいずれか1項に記載のコーティング。
【請求項14】
P
2は、C
1-10アルキレン、C
2-10アルケニレンおよびC
2-10アルキニレンから選択され、
Q
2は、O、NHおよびNR
2Cから選択され、
W
2は単結合であり、
好ましくはQ
2はOおよびNHから選択される、請求項9~12のいずれか1項に記載のコーティング。
【請求項15】
前記ポリマー鎖は、式(C-1):
【化8】
[式(C-1)中、
X
1A、X
1B、R
1A、R
1B、A
1A、A
1B、Z
1、R
1、Y
1、L
1、P
1、Q
1およびW
1のそれぞれは、請求項4~8で規定されている通りであり、
R
A、X
2、R
2A、A
2、Z
2、R
2、Y
2、L
2、P
2、Q
2およびW
2は、請求項9~14で規定されている通りであり、
n
1は、整数であり、
n
2は、整数である]
により表されるブロックコポリマーである、請求項3~14のいずれか1項に記載のコーティング。
【請求項16】
R
AはHおよびメチルから選択され、好ましくはR
AはHである、請求項15に記載のコーティング。
【請求項17】
X
1A、X
1BおよびX
2の少なくとも1つは、それぞれA
1A、A
1BおよびA
2であり、
好ましくはX
2はA
2であり、X
1AおよびX
1Bの少なくとも1つは、それぞれA
1AおよびA
1Bである、請求項15または16に記載のコーティング。
【請求項18】
各Z
1はOおよびNHから選択され、Z
2はOおよびNHから選択され、
好ましくはZ
2および各Z
1はNHである、請求項15~17のいずれか1項に記載のコーティング。
【請求項19】
各P
1は、C
1-10アルキレン、C
2-10アルケニレンおよびC
2-10アルキニレンから選択され、
各Q
1は単結合であり、
各W
1は単結合であり、
P
2はC
1-10アルキレン、C
2-10アルケニレンおよびC
2-10アルキニレンから選択され、
Q
2は単結合であり、
W
2は単結合であり、
好ましくは各P
1はC
1-10アルキレンであり、P
2はC
1-10アルキレンであり、任意に、各P
1およびP
2はC
2-6アルキレンであり、または、
より好ましくは各P
1およびP
2はエチレンである、請求項15~18のいずれか1項に記載のコーティング。
【請求項20】
各P
1は、C
1-10アルキレン、C
2-10アルケニレンおよびC
2-10アルキニレンから選択され、
各Q
1はO、NHおよびNR
1Cから選択され、
各W
1は単結合であり、
P
2は、C
1-10アルキレン、C
2-10アルケニレンおよびC
2-10アルキニレンから選択され、
Q
2は、O、NHおよびNR
2Cから選択され、
W
2は単結合であり、
好ましくは各Q
1はOおよびNHから選択され、Q
2はOおよびNHから選択される、請求項15~18のいずれか1項に記載のコーティング。
【請求項21】
n
1は5~500であり、および/またはn
2は5~500であり、
好ましくはn
1は10~300であり、n
2は10~300である、請求項15~20のいずれか1項に記載のコーティング。
【請求項22】
ベース層を含んで成り、
前記ベース層はタンパク質を含んで成り、
好ましくは前記タンパク質はヒトアルブミンである、請求項1または2に記載のコーティング。
【請求項23】
請求項1~22のいずれか1項に記載のコーティングで被覆された表面を有する、医療デバイス。
【請求項24】
医療デバイス用コーティングを製造するための方法であって、
カップリング剤を使用して、抗凝固剤を含んで成る化合物をポリマーに結合させることを含んでなり、
耐凝固基を含んで成る前記化合物は、式(E-1):
【化9】
[前記(E-1)中、
Z
3は、OH、NH
2およびNHR
3から選択され、
R
3は、C
1-6アルキル、C
6-10アリールおよびC
6-10アリール-C
1-6アルキルから選択され、
L
3は、式(L-3):
【化10】
{式(L-3)中、
P
3は、単結合、C
1-10アルキレン、C
2-10アルケニレン、C
2-10アルキニレンおよびフェニレンから選択され、
Q
3は、単結合、O、NH、NR
3Cおよびフェニレンから選択され、
W
3は、単結合、C
1-10アルキレン、C
2-10アルケニレン、C
2-10アルキニレンおよびフェニレンから選択され、
R
3Cは、C
1-6アルキル、C
6-10アリールおよびC
6-10アリール-C
1-6アルキルから選択される}
により表される]
により表され、
前記ポリマーは、式(D-1):
【化11】
[式(D-1)中、X
3は、OH、OR
3A、NH
2およびNHR
3Aから選択され、R
3Aは、C
1-6アルキル、C
6-10アリールおよびC
6-10アリール-C
1-6アルキルから選択される]
により表される繰り返し単位を含む、方法。
【請求項25】
(a) 請求項24で規定されたポリマーと、
(b) 請求項24で規定された耐凝固基を含んで成る化合物と、
(c) カップリング剤と、任意の
(d) 前記ベース層形成用コーティングと
を含んで成る、医療デバイスのコーティング用キット。
【請求項26】
手術もしくは治療による人体もしくは動物の体の手当てでの、および/または人体もしくは動物の体で行われる診断方法での使用するための、請求項1~22のいずれか1項に記載のコーティングまたは請求項23に記載の医療デバイス。
【請求項27】
血液の凝固を低減または防止に使用するための、請求項1~22のいずれか1項に記載のコーティング、請求項23に記載の医療デバイス、または請求項26に記載の使用のためのコーティングもしくは使用のための医療デバイス。
【請求項28】
医療デバイスを血液と接触させることを含んで成り、
前記医療デバイスは、請求項23に規定されている、血液凝固を低減または予防する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]
本発明は、医療デバイス用のコーティングに関する。本発明はさらに、コーティングを含んで成る医療デバイス、および被覆することを含む使用および方法、またはコーティングを含んで成る医療デバイスに関する。本発明はまた、コーティングを製造する方法、および医療デバイスをコーティングするためのキットに関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]
臓器または組織内の血餅(または血栓;blood clot)の形成は、生命を脅かす可能性のある状態を示し得る。医療デバイスを使用する場合、血液が機器の異物表面に接触し、血餅の形成を引き起こす可能性がある。その結果、患者は、血液凝固および血餅の形成を抑制するために、医療デバイスを使用する前に抗凝固剤を投与される可能性がある。しかしながら、考慮しなければならない抗凝固剤の投与に関連するかなりの副作用がある。一部の患者にそのような抗凝固剤を投与することは安全ではないかもしれない。
【0003】
[0003]
ステントなどの一部の医療デバイスは、血餅の形成を防ぐ抗凝固剤であるヘパリンでコーティングされている。ヘパリンはグリコサミノグリカンである。医療デバイスにコーティングするのは難しい場合があり、比較的高価である。ヘパリンの使用は、出血、激しい痛み(注射部位など)、吐き気、異常な倦怠感など、いくつかの副作用にも関連している。ヘパリン起因性血小板減少症など、ヘパリンの使用に関連する深刻な副作用もある。ヘパリンは、脳の手術、脊椎の手術、眼の手術、血友病、抗凝固剤の欠乏、重大な制御不能な高血圧、心臓弁の亜急性感染、脳の出血、膨らみ、および大動脈血管壁の裂傷、胃または腸の潰瘍、潰瘍性大腸炎、腸の炎症状態、憩室炎、重度の肝疾患、胆管および胆嚢の問題、骨粗鬆症、およびステージ4(重度)またはステージ5(障害)である慢性腎臓病を含むいくつかの条件で禁忌である。
【0004】
[0004]
他のタイプのコーティングが医療デバイスに適用されている。これらのコーティングは、典型的には、多機能重合性化合物を含む。このようなコーティングの問題は、コーティング性能が低く、比較的短時間で劣化する可能性があることである。コーティングが機械的堅牢性を欠いている場合、劣化の副産物が患者に浸出する可能性があり、これは特定のタイプのコーティングにとって望ましくない場合がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の概要
[0005]
本発明は、表層(または表面層;surface layer)と、任意のベース層とを含んで成る医療デバイス用のコーティングを提供し、表層は、抗凝固基(または耐凝固基;anti-clotting group)に取り付けたまたは結合したポリマー鎖を含んで成る。
【0006】
[0006]
本発明のコーティングは、血餅形成性ではなく、血液適合性である。コーティングは、血餅の形成を防止または阻害することができるという点で予防効果を有し、これは、次に、血餅に関連する疾患および状態の発症、進行または再発を防止または阻害する。
【0007】
[0007]
本発明者らは、特にそれが抗凝固基に取り付けられている場合に、医療デバイス用のコーティングとして使用するのに有利な特性を有するポリマー材料(例えば、ポリマー鎖)を発見した。抗凝固基はまた、血液適合性基(hemocompatible group)と呼ばれることもある(すなわち、「抗凝固基」という用語は、「血液適合性基」と同義である)。血液適合性基地は、コーティングの全体的な血液適合性に寄与する。
【0008】
[0008]
典型的には、抗凝固基は、スルホン酸基、スルホンアミド基、スルファミン酸基、硫酸水素基またはそれらの共役塩基である。理論に拘束されることを望まないが、コーティング中のこれらの基がイオン化されたとき、負に帯電した共役塩基(例えば、スルホン酸基など)が血小板の付着をはじき、それによりコーティングの表面での血餅の形成を阻害または防止すると考えられる。
【0009】
[0009]
本発明はまた、医療デバイスを提供する。医療デバイスは、本発明のコーティングで被覆された表面を有する。医療デバイスの表面にコーティングが施されていると、使用時にデバイスに血栓が形成されるのを防止または抑制する。
【0010】
[0010]
本発明はさらにポリマー化合物を提供する。ポリマー化合物は、式(C-2):
【化1】
[式(C-2)中、
各Y
1は、O
-、OH、NH
-およびNH
2から選択され、好ましくはO
-およびOHから選択され、
Y
2は、O
-およびOHから選択され、
各L
1は、C
2-5アルキレンであり、
L
2は、C
2-5アルキレンであり、
R
Aは、HおよびC
1-6アルキルから選択され、
n
1は、整数であり、
n
2は、整数である]
で表される。
【0011】
[0011]
本発明はまた、医療デバイス用のコーティングを製造する方法を提供する。この方法は、カップリング剤を使用して、抗凝固剤を含んで成る化合物をポリマーに取り付けるまたは結合させることを含んで成り得る。抗凝固剤は、血液適合性剤と呼ばれることもある(すなわち、「抗凝固剤」という用語は、「血液適合性剤」という用語と同義である)。この方法は、上記の式(C-2)で表されるようなポリマー化合物を生成することができる。
【0012】
[0012]
本発明は、医療デバイスの表面をコーティングする方法をさらに提供することができる。この方法は、任意で、医療デバイスの表面にベース層を適用すること、および医療デバイスの表面にコーティングを適用することを含んで成り得る。
【0013】
[0013]
本発明のさらなる態様は、医療デバイスをコーティングするためのキットに関する。キットは、(a)ポリマーと、(b)抗凝固基を含んで成る化合物と、(c)カップリング剤と、任意で(d)ベース層を形成するためのコーティングとを含んで成る。
【0014】
[0014]
本発明はさらに、コーティングおよび医療デバイスの使用に関する。
【0015】
[0015]
本発明のコーティングまたは本発明の医療デバイスは、手術もしくは治療による人体もしくは動物の体の治療、および/または人体もしくは動物の体で行われる診断方法で使用することができる。人体または動物の体で行われる診断方法は、典型的には、インビボ診断方法である。
【0016】
[0016]
本発明のコーティングまたは本発明の医療デバイスは、血液の凝固を低減または防止するのに使用するためのものである。
【0017】
[0017]
本発明はまた、血液の凝固を低減または防止する方法を提供する。この方法は、本発明の医療デバイスを血液と接触させることを含んで成る。
【0018】
[0018]
本発明の方法の一態様は、血液を処理するときなど、血液の凝固を低減または防止するインビトロの方法であり得る。この方法は、医療デバイスを血液と接触させることを含み得、血液は、人体または動物の体から除去されている。血液を医療デバイスと接触させて血液を処理することができる。処理された血液は、人体または動物の体、好ましくは血液が除去された人体または動物の体に戻されない場合がある。
【0019】
[0019]
本発明の方法の別の態様は、診断手順における血液の凝固を低減または防止する方法である。この方法は、医療デバイスを血液と接触させて診断情報を得ることを含んで成り得る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図面の簡単な説明
[0020]
本発明は、添付の図面を参照して以下にさらに説明される。
【0021】
【
図1】[0021]
図1は、全血アッセイ実験から得られたサンプルの血餅重量を示すヒストグラムである。
【
図2】[0022]
図2は、12時間のインキュベーション時間後の全血アッセイ実験からのサンプル上の血餅を示す一連の写真である。
【
図3】[0023]
図3は、第2全血アッセイ実験から得られたサンプルからの血餅重量(g)を示すボックスプロットである。
【
図4】[0024]
図4は、第2全血アッセイ実験からのサンプル上の血餅を示す一連の写真である。
【
図5】[0025]
図5は、ヒト全血アッセイ実験から得られたサンプルからの平均血餅重量を示すグラフである。
【
図6】[0026]
図6は、一晩のインキュベーション後のヒト全血アッセイ実験からのサンプル上の血餅を示す一連の写真である。
【
図7】[0027]
図7は、チャンドラーループモデルにおけるベースライン時および60分の灌流期間中/後のドナーの血液中の凝固因子トロンビン-アンチトロンビン複合体(TAT)の血中濃度のレベルを示すヒストグラムである(対照チューブおよび試験項目)。バーは平均および標準偏差を表す。
【
図8】[0028]
図8は、チャンドラーループモデルにおけるベースライン時および60分の灌流期間中/後のドナーの血液中の平均血小板数を示すヒストグラムである(対照チューブおよび試験項目)。バーは平均と標準偏差を表す。
【
図9】[0029]
図9は、チャンドラーループモデルにおけるベースライン時および60分の灌流期間中/後のドナーの血液中のβ-トロンボグロブリン(β-TG)のレベルを示すヒストグラムである(対照チューブおよび試験項目)。バーは平均と標準偏差を表す。
【
図10】[0030]
図10は、チャンドラーループモデルにおけるベースライン時および60分の灌流期間中/後のドナーの血液中の平均赤血球数を示すヒストグラムである(対照チューブおよび試験項目)。バーは平均と標準偏差を表す。
【
図11】[0031]
図11は、チャンドラーループモデルにおけるベースライン時および60分の灌流期間中/後のドナーの血液中の平均白血球数を示すヒストグラムである(対照チューブおよび試験項目)。バーは平均と標準偏差を表す。
【
図12】[0032]
図12は、チャンドラーループモデルにおけるベースライン時および60分の灌流期間中/後のドナーの血液中の平均溶血濃度を示すヒストグラムである(対照チューブおよび試験項目)。バーは平均と標準偏差を表す。
【
図13】[0033]
図13は、チャンドラーループモデルにおけるベースライン時および60分の灌流期間中/後のドナーの血液中の平均ヘモグロビン濃度を示すヒストグラムである(対照チューブおよび試験項目)。バーは平均と標準を表す。
【
図14】[0034]
図14は、チャンドラーループモデルにおけるベースライン時および60分の灌流期間中/後のドナーの血液中の平均ヘマトクリット濃度を示すヒストグラムである(対照チューブおよび試験項目)。バーは平均と標準偏差を表す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
定義
[0035]
本明細書で使用される「生体適合性」という用語は、特にコーティングまたはその構成要素の文脈において、特定の用途(例えば、ISO 10993-1(2018)において設定されたもの)において適切なホスト応答で機能する医療デバイスまたは材料の能力をいう。生体適合性」の定義、それに関連する用語、およびISO 10993-1(2018)での評価のための試験は、参照により本明細書に組み込まれる。一般的に、生体適合性とは、医療デバイスまたは材料が、その治療のレシピエントまたは受益者に望ましくない局所的または全身的な影響を誘発することなく、医療治療に関してその所望の機能をいうが、最も適切なものを生成する能力をいう。その特定の状況でもっとも適切で有益な細胞または組織を生成し、その治療の臨床的に関連するパフォーマンスの最適化する。
【0023】
[0036]
便宜上、「スルホン酸基」という用語が本明細書で使用される。一般に、「スルホン酸基」という用語は、スルホン酸基(-SO3H)またはスルホネート基(-SO3
-)である。複数の用語「スルホン酸基」は、文脈が別のことを示さない限り、スルホン酸基(-SO3H)、スルホネート基(-SO3
-)、または少なくとも1つのスルホン酸基(-SO3H)および少なくとも1つのスルホネート基(-SO3
-)の組み合わせを包含する。生理学的環境などの特定の環境では、スルホン酸基(-SO3H)がスルホネート基(-SO3
-)に解離するか、またはそれらの間に平衡が存在する可能性があることを理解されたい。
【0024】
[0037]
一般に、本明細書で使用される「スルホン酸基前駆体」という用語は、本明細書で定義されるスルホン酸基に加水分解され得る前駆体基をいう。前駆体基は、スルホンアミド基(例えば、-SO2NH2、-SO2NHRaまたは-SO2NRaRb)またはスルホン酸エステル基(-SO3Ra)であり得る。RaおよびRbは、各々独立に、C1~C6アルキル、フェニルおよびベンジルから選択され得る。
【0025】
[0038]
本明細書で使用される「アルキル」という用語は、炭素原子および水素原子からなり、不飽和を含まない、直鎖または分岐の炭化水素鎖ラジカルをいう。「C1-6アルキル」基には、1~6個の炭素原子を含む。本明細書で特に明記しない限り、アルキル基は非置換であるか、またはヒドロキシ、C1-6アルコキシおよびハロ(好ましくはフルオロ)から選択される1または複数の置換基で置換することができる。アルキル基は非置換であることが好ましい。
【0026】
[0039]
本明細書で使用される「アルケン」という用語は、炭素原子および水素原子からなり、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含む、直鎖または分岐の炭化水素鎖ラジカル基をいう。
【0027】
[0040]
本明細書で使用される「アルコキシ」という用語は、式-O-アルキルの酸素原子を介して結合したラジカルをいい、ここでアルキル基は上記で定義される。本明細書で使用される「アリールオキシ」という用語は、式-O-アリールの酸素原子を介して結合したラジカルをいい、ここでアリール基は上記で定義される。
【0028】
[0041]
本明細書で使用される「アリール」という用語は、環炭素原子から水素原子を除去することにより、芳香族の単環式または多環式炭化水素環系に由来するラジカルをいう。芳香族の単環式または多環式炭化水素環系は、水素原子と炭素原子のみを含み、環系の環の少なくとも1つは完全に不飽和である(つまり、ヒュッケル理論に沿った環系の非局在化[4n+2]π電子系を含む。ヒュッケル理論)。アリール基が誘導され得る環系には、例えば、ベンゼン、インダン、インデン、テトラリンおよびナフタレンが含まれる。
【0029】
[0042]
本明細書で使用される「アリール-アルキル」という用語は、上記で定義されたようなアルキル基に結合したラジカルをいい、このアルキル基は、上記で定義されたようなアリール基によってさらに置換される(または結合される)。アリール-アルキル基の例には、ベンジル(PhCH2-)およびフェニルエチルが含まれる。
【0030】
[0043]
本明細書で使用される「アルキレン」という用語は、炭素原子および水素原子からなり、不飽和を含まない、直鎖または分岐の二価炭化水素鎖をいう。好ましいアルキレン基の例には、-CH2-、-CH2-CH2-、-CH2-CH2-CH2-、-CH(CH3)-、および-C(CH3)2-CH2-が含まれる。「C1-10アルキレン」基は、1~10個の炭素原子を含む。アルキレンは直鎖である(例えば、分岐していない)ことが好ましい。
【0031】
[0044]
本明細書で使用される「アルケニレン」という用語は、炭素原子および水素原子からなり、少なくとも1つの二重結合を含む、直鎖または分岐の二価炭化水素鎖をいう。アルケン基は、シスまたはトランス配置を有し得る。アルケニレン基の例には、-CH=CH-、-CH2-CH=CH-、-C(CH3)=CH-CH2-、-CH2-C(CH3)=CH-CH2-、および-CH2-CH=C=CH-CH2-が含まれる。「C2-10アルケニレン」基は、2~10個の炭素原子を含む。アルケニレンが複数の二重結合を含む場合、二重結合は共役または非共役であり得る。アルケニレン基はアレン基を含まないことが好ましい。より好ましくは、アルケニレン基が単一の二重結合を含むことが好ましい。
【0032】
[0045]
本明細書で使用される「アルキニレン」という用語は、炭素原子および水素原子からなり、少なくとも三重二重結合を含む、直鎖または分岐の二価炭化水素鎖をいう。アルキレン基の例には、-C≡C-、-CH2-C≡C-、CH(CH3)C≡C-CH2-、および-CH2-C≡C-C≡CC(CH3)=CH-CH2-が含まれる。「C2-10アルキニレン」基には、2~10個の炭素原子が含まれている。アルキニレンが複数の三重結合を含む場合、三重結合は共役または非共役であり得る。好ましくは、アルキニレン基は二重結合(例えば、炭素-炭素二重結合)を含まない。より好ましくは、アルキニレン基は単一の三重結合を含んで成る。
【0033】
[0046]
本明細書で使用される「フェニレン」という用語は、ベンゼンに由来する二価ラジカル(例えば、-C6H4-)をいう。二価ラジカル(例えば、二置換ベンゼン環)は、置換基のオルト配置、置換基のメタ配置、または置換基のパラ配置を有し得る。
【0034】
[0047]
本明細書で特に明記しない限り、上記の各基(例えば、アルキル、アルケン、アルコキシ、アリール、アリール-アルキル、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、フェニレン)は非置換である。
【0035】
詳細な説明
[0048]
本発明は、医療デバイスのためのコーティングを提供する。コーティングは、血液の凝固を低減または防止する。コーティングは、典型的には、抗凝固性コーティングおよび/または抗血小板コーティング、好ましくは抗血小板コーティングのような抗血栓性コーティングである。コーティングは、典型的には、血液適合性コーティングである。
【0036】
[0049]
本明細書で使用される「血液」への任意の言及は、一般に、ヒトまたは哺乳動物のような非ヒト動物の血液をいう。本発明は、獣医用途で使用することができる。「血液」という用語は、好ましくは、ヒトの血液をいう。
【0037】
[0050]
典型的には、コーティングは生体適合性であり、好ましくは生体適合性および/または血液適合性である。
【0038】
[0051]
コーティングは、表層を含むか、または本質的にそれからなり得る。表層はコーティングの最上層である。したがって、表層は、コーティングまたは被覆された医療デバイスの外表層であり得る。使用中、コーティングの表層は血液と接触する。
【0039】
[0052]
表層またはコーティング(例えば、全体として)は、ゲル、好ましくはヒドロゲルの形態であり得る。ヒドロゲルは、医療デバイスに滑らかな表面を提供することができる。表層またはコーティングがゲルの形態である場合、それは医療デバイスに容易に適用することができる。
【0040】
[0053]
表層は、抗凝固基に結合または結合(例えば、共有結合)されたポリマー鎖を含んで成る、または本質的にそれからなり得る。
【0041】
[0054]
抗凝固基は、典型的には、スルホン酸基、スルホンアミド基、スルファミン酸基、硫酸水素基およびそれらの共役塩基から選択される。各基の構造を以下に示す;ここで、波線は、基がポリマー鎖に直接または間接的に取り付けられるポイントを示している。
【化2】
【0042】
[0055]
一般に、抗凝固基は、スルホン酸基、スルファミン酸基、硫酸水素基およびそれらの共役塩基から選択されることが好ましい。
【0043】
[0056]
各基の共役塩基を以下に示す。各基の共役塩基は、それぞれスルホネート基、スルホンアミドアニオン基、スルファメート基または硫酸基を指す。
【化3】
【0044】
[0057]
一般に、抗凝固基は、スルホン酸基、スルファミン酸基または硫酸水素基の共役塩基であることが好ましい。よって、抗凝固基は、好ましくは、上記のように、スルホネート基、スルファメート基、または硫酸基である。
【0045】
[0058]
ポリマー鎖は、複数の抗凝固基に取り付けられているまたは結合していることが好ましい。複数の抗凝固基の各抗凝固基は、典型的には、上記で定義されるように、スルホン酸基、スルファミン酸基、硫酸水素基、およびそれらの共役塩基から選択される。
【0046】
[0059]
一般に、抗凝固基は、リンカー基によってポリマー鎖に取り付けられているまたは結合している。原則として、任意のリンカー基を使用して、ポリマー鎖を抗凝固基に接続することができる。しかしながら、特定のリンカー基は、コーティングの有利な特性を提供するか、またはそれに寄与し得る。
【0047】
[0060]
リンカー基は、少なくとも1つの抗凝固基をポリマー鎖に共有結合させる。よって、リンカー基は、ポリマー鎖に共有結合している第1末端と、少なくとも1つの抗凝固基に共有結合している第2末端とを有し得る。
【0048】
[0061]
単一の抗凝固基は、リンカー基(例えば、単一のリンカー基)によってポリマー鎖に取り付けられまたは結合され得る。あるいは、2つまたは3つの抗凝固基のような複数の抗凝固基が、リンカー基(例えば、単一のリンカー基)によってポリマー鎖に結合され得る。
【0049】
[0062]
ポリマー鎖は、線状のポリマー鎖または分岐のポリマー鎖であり得る。ポリマー鎖は線状のポリマー鎖であることが好ましい。
【0050】
[0063]
一般に、表層は生体適合性である。ポリマー鎖が生体適合性であることがさらに好ましい。
【0051】
[0064]
ポリマー鎖は、典型的には、例えば、300~50,000g/モル、好ましくは500~30,000g/モル、より好ましくは1,000~10,000g/molのような少なくとも300g/モルの数平均(number average)(例えば、平均(mean))分子量(Mn)を有する。数平均(例えば平均)分子量(Mn)は、光散乱によって決定することができる。
【0052】
[0065]
典型的には、抗凝固基は、スルホン酸基またはスルホネート基である。複数の抗凝固基の各抗凝固基は、スルホン酸基またはスルホネート基であることが好ましい。
【0053】
[0066]
上記のように、本明細書で使用される「スルホン酸基」という用語は、スルホン酸基(-SO3H)またはスルホネート基(-SO3
-)をいうための省略形として使用される。本明細書で使用される「スルホン酸基」という複数の用語は、文脈で別段の指示がない限り、スルホン酸基(-SO3H)、スルホネート基(-SO3
-)、または少なくとも1つのスルホン酸基(-SO3H)および少なくとも1つのスルホネート基(-SO3
-)の組み合わせをいう。
【0054】
[0067]
したがって、表層は、複数のスルホン酸基に取り付けられまたは結合したポリマー鎖を含んで成るか、または本質的にそれからなり得る。
【0055】
[0068]
本発明の第1態様では、抗凝固基、特にスルホン酸基は、抗凝固基を含むモノマーを重合する代わりに、重合によって形成された後にポリマー鎖に結取り付けることができる。この文脈において、抗凝固基または複数の抗凝固基に取り付けられたまたは結合されたポリマー鎖は、本明細書では、特に、そのまたは各抗凝固基がスルホン酸基である場合、抗凝固基または複数の抗凝固基に連結されたまたは結合されたポリマー鎖と呼ばれ得る。
【0056】
[0069]
各スルホン酸基は、リンカー基によってポリマー鎖に連結または結合され得る。
【0057】
[0070]
コーティングの表面が血小板に対して高い負電荷密度を示すことを確実にするために、リンカー基は比較的短く(例えば、長さが1~3原子)なければならないと考えられている。より長いリンカー基が使用される場合、リンカー基のコンフォメーションの柔軟性のために、コーティングの表面が抗凝固基、特にスルホン酸基の無秩序な配置を有する可能性がある。これにより、コーティングの表面によって提供される負の電荷密度を低減することができる。
【0058】
[0071]
一般に、リンカー基は生体適合性であることが好ましい。
【0059】
[0072]
ポリマー鎖は、式(A-0):
【化4】
[式(A-O)中、
各G
1は同じまたは異なり、O、NH、およびNR
1Aから独立して選択され、
各R
1Aは、独立に、C
1-6アルキル、C
6-10アリール、およびC
6-10アリール-C
1-6アルキルから選択される]
によって表されるような部分を含む繰り返し単位を含み得る。
【0060】
[0073]
各G1が同じであることが好ましい。
【0061】
[0074]
ポリマー鎖は、以下の式(A-1):
【化5】
によって表される繰り返し単位を含み得る。
【0062】
[0075]
上記の式(A-1)中
X
1Aは、O
-、OH、OR
1A、NH
2、NHR
1A、およびA
1Aから選択され、
X
1Bは、O
-、OH、OR
1B、NH
2、NHR
1B、およびA
1Bから選択され、
R
1AおよびR
1Bのそれぞれは、独立に、C
1-6アルキル、C
6-10アリール、およびC
6-10アリール-C
1-6アルキルから選択され、
A
1AおよびA
1Bのそれぞれは、独立して式(S-1):
【化6】
[式(S-1)中、
Z
1は、O、NH、およびNR
1から選択され、
R
1は、C
1-6アルキル、C
6-10アリール、およびC
6-10アリール-C
1-6アルキルから選択され、
Y
1は、O
-およびOHから選択され、
L
1は、式(L-1):
【化7】
{式(L-1)中、
P
1は、単結合、C
1-10アルキレン、C
2-10アルケニレン、C
2-10アルキニレン、およびフェニレンから選択され、
Q
1は、単結合、O、NH、NR
1C、およびフェニレンから選択され、
W
1は、単結合、C
1-10アルキレン、C
2-10アルケニレン、C
2-10アルキニレン、およびフェニレンから選択され、
R
1Cは、C
1-6アルキル、C
6-10アリール、およびC
6-10アリール-C
1-6アルキルから選択される}
により表される]
により表される。
【0063】
[0076]
式(L-1)が式(S-1)と組み合わされる場合、A
1AおよびA
1Bのそれぞれは、独立に、式(S-1A):
【化8】
により表される。
【0064】
[0077]
上記の式(A-1)により表される繰り返し単位は、例えば、マレイン酸モノマーまたはマレイミドモノマーから得ることができる。
【0065】
[0078]
式(A-1)中、部分-L1-はリンカー基を表す。
【0066】
[0079]
複数のスルホン酸基に連結されているまたは結合されているポリマー鎖は、本明細書に記載の式(A-1)~(A-3)のいずれか1つで表される繰り返し単位を含み得る。
【0067】
[0080]
ポリマー鎖において、式(A-1)によって表される繰り返し単位における各単位は、同じであっても異なっていてもよい。
【0068】
[0081]
典型的には、表層は、複数のポリマー化合物(例えば、分布)を含み、各ポリマー化合物は、本明細書に記載の式(A-1)から(A-3)のいずれか1つにより表される繰り返し単位を含むポリマー鎖を含んで成る。
【0069】
[0082]
マレイン酸またはマレイミドのような適切なモノマーの重合後、リンカー基およびスルホン酸基がポリマー鎖に取り付けられる。リンカー基およびスルホン酸基は、カルボニル基での反応などにより繰り返し単位に導入される。これは、以下に説明するように、カップリング剤を使用して、抗凝固剤を含んで成る化合物をポリマーと反応させることによって達成することができる。いくつかのカルボニル基は、反応を受けず(つまり、100%の変換がない)、リンカー基およびスルホン酸基を含み得る。これが発生するとき、(a)X1Aは、O-、OH、OR1A、NH2、またはNHR1Aであり得、および/または(b)X1Bは、O-、OH、OR1B、NH2、またはNHR1Bであり得る。
【0070】
[0083]
一般に、例えば、表層が複数のポリマー化合物を含んで成る場合、式(A-1)によって表される単位の少なくとも90%が、上記で定義されたA1Aおよび/またはA1B(すなわち、X1AはA1Aでありおよび/またはX1BはA1Bである)を含むことが好ましく、より好ましくは式(A-1)で表される単位の少なくとも95%がA1Aおよび/またはA1Bを含み、さらにより好ましくは式(A-1)で表される単位の少なくとも99%がA1Aおよび/またはA1Bを含む。
【0071】
[0084]
典型的には、式(A-1)によって表される繰り返し単位の各単位は、上で定義されたA1AまたはA1Bの少なくとも1つを含み(すなわち、X1AはA1Aであるか、またはX1BはA1Bである)、より好ましくは、式(A-1)により表される繰り返し単位の各単位は、上記で定義されたA1AおよびA1Bが含まれる(すなわち、X1AはA1Aであり、X1BはA1Bである)。よって、X1AはA1Aであり、X1BはA1Bである。
【0072】
[0085]
式(A-1)により表される繰り返し単位における各単位は同一であることが好ましい。
【0073】
[0086]
ポリマー鎖は、以下の式(A-2)によって表される繰り返し単位を含み得る。
【化9】
【0074】
[0087]
式(A-2)において、X1A、X1B、R1A、R1B、A1A、A1B、Z1、R1、Y1、L1、P1、Q1、W1およびR1Cのそれぞれは、上で定義された通りであり、ここで、少なくとも1つのX1AはA1AでありまたはX1BはA1Bであり、n1は整数である。
【0075】
[0088]
式(A-1)または式(A-2)において、X
1Aは、O
-、OH、OR
1AおよびA
1Aから選択され、X
1Bは、O
-、OH、OR
1B、およびA
1Bから選択されることが好ましい。より好ましくは、X
1Aは、O
-、OHおよびA
1Aから選択され、X
1Bは、O
-、OH、およびA
1Bから選択される。さらにより好ましくは、以下の式(A-3):
【化10】
で表され、X
1AはA
1Aであり、X
1BはA
1Bである。
【0076】
[0089]
式(A-1)または式(A-2)において、X1AがOR1AまたはNHR1Aであるとき、R1AはC1-6アルキル、特にメチルまたはエチルであることが好ましい。あるいは、または加えて、X1BがOR1BまたはNHR1Bであるとき、R1BがC1-6アルキル、特にメチルまたはエチルであることが好ましい。
【0077】
[0090]
式(A-1)または式(A-2)において、A1AおよびA1Bは、同じであっても異なっていてもよい。一般に、A1AおよびA1Bは同じであることが好ましい。
【0078】
[0091]
上記の式(A-1)から(A-3)において、Z1がNR1であるとき、R1はC1-6アルキル、特にメチルまたはエチルであることが好ましい。
【0079】
[0092]
典型的には、上記の式(A-1)~(A-3)における各Z1は、好ましくはOおよびNHから選択される。各Z1はOであり得る。より好ましくは各Z1はNHであり得る。Z1がOまたはNHであるとき、リンカー基は、典型的な生体適合性基である、エステルまたはアミド基によってポリマー鎖に取り付けられる。特に、アミド基は、例えば、ペプチドに存在するため、生体適合性を有する。
【0080】
[0093]
一般に、式(A-1)~(A-3)において、各L1は、同じであっても異なっていてもよい。各L1は同じであることが好ましい。
【0081】
[0094]
各P1は、典型的には、単結合、C1-10アルキレンおよびフェニレンから選択され、各W1は、単結合、C1-10アルキレンおよびフェニレンから選択され得る。より好ましくは、各P1は、単結合およびC1-10アルキレンから選択され、各W1は、単結合およびC1-10アルキレンから選択され得る。
【0082】
[0095]
あるいは、各P1は、C1-10アルキレン、C2-10アルケニレンおよびC2-10アルキニレンから選択され、各Q1はO、NH、NR1Cから選択され、各W1は単結合である。より好ましくは、各Q1は、OおよびNHから選択される。この配置において、抗凝固基は、スルファメート基、硫酸基、またはそれらの共役塩基である。
【0083】
[0096]
典型的には、各L1について、P1、Q1およびW1のうちの少なくとも1つは単結合ではないことが好ましい。
【0084】
[0097]
Q1がOであるとき、P1は単結合ではないことが一般に好ましい。より好ましくは、Q1がOであるとき、P1はC1-10アルキレンであることが好ましく、より好ましくは、P1はC2-4アルキレンである。
【0085】
[0098]
Q1がOであり、P1が単結合ではないとき、W1が単結合ではないことが好ましい場合がある。より好ましくは、Q1がOであるとき、P1はC1-10アルキレンであり、W1はC1-10アルキレンであり、より好ましくは、P1はC2-4アルキレンであり、W1はC2-4アルキレンである。
【0086】
[0099]
Q1がフェニレンであるとき、P1は単結合またはC1-10アルキレンであり、W1は単結合またはC1-10アルキレンであることが一般に好ましい。より好ましくは、Q1がフェニレンであるとき、P1は単結合またはC1-3アルキレンであり、W1は単結合またはC1-3アルキレンであることが好ましい。
【0087】
[0100]
一般に、各P1は、C1-10アルキレン、C2-10アルケニレンおよびC2-10アルキニレンから選択され、各Q1は単結合であり、各W1は単結合であることが好ましい。より好ましくは、各P1は、C1-10アルキレン、特にC2-5アルキレンのようなC2-6アルキレンである。さらにより好ましくは、各P1は、ブチレン、プロピレンまたはエチレン、好ましくはエチレンである。P1がエチレンで、Q1およびW1の両方が単結合であるとき、(S-1)で表される部分はタウリンから形成できる。タウリンは人体に自然に見られ、ポリマー化合物の分解が起こると形成できる。
【0088】
[0101]
典型的には、n1で表される整数は、少なくとも5、好ましくは少なくとも10である。例えば、n1は10~300のような5~500、より好ましくは15~100であり得る。
【0089】
[0102]
ポリマー鎖は、X1A、X1BまたはY1がO-であるときのようなアニオン性であり得る。ポリマー鎖がアニオン性であるとき、Na+またはK+がカウンターカチオンとして存在し得る。
【0090】
[0103]
便宜上、式(A-0)~(A-3)で表される繰り返し単位は、本明細書では、「第1繰り返し単位」というラベルを使用して参照される。この文脈での「第1」というラベルは、この繰り返し単位を他のタイプの繰り返し単位と区別するために使用される。「第2繰り返し単位」、「第3繰り返し単位」等を参照するとき、「第1繰り返し単位」が存在する必要はない。
【0091】
[0104]
上記式(A-0)~(A-3)で表される繰り返し単位に加えて、またはその代替として、ポリマー鎖は、式(B-0):
【化11】
[式(B-0)中、
G
2は、O、NH、およびNR
2Aから選択され、
R
2Aは、独立に、C
1-6アルキル、C
6-10アリール、およびC
6-10アリール-C
1-6アルキルから選択され、
R
AはHおよびC
1-6アルキルから選択される]
により表される部分を含んで成る繰り返し単位を含み得る。
【0092】
[0105]
ポリマー鎖は、式(B-1):
【化12】
により表される繰り返し単位を含み得る。
【0093】
[0106]
上記の式(B-1)中、
R
Aは、HおよびC
1-6アルキルから選択され、
X
2は、O
-、OH、OR
2A、NH
2、NHR
2A、およびA
2から選択され、
R
2Aは、C
1-6アルキル、C
6-10アリール、およびC
6-10アリール-C
1-6アルキルから選択され、
A
2は式(S-2):
【化13】
[式(S-2)中、
Z
2は、O、NH、およびNR
2から選択され、
R
2は、C
1-6アルキル、C
6-10アリール、およびC
6-10アリール-C
1-6アルキルから選択され、
Y
2は、OとOHから選択され、
L
2は、式(L-2):
【化14】
{式(L-2)中、
P
2は、単結合、C
1-10アルキレン、C
2-10アルケニレン、C
2-10アルキニレンおよびフェニレンから選択され、
Q
2は、単結合、O、NH、NR
2C、およびフェニレンから選択され、
W
2は、単結合、C
1-10アルキレン、C
2-10アルケニレン、C
2-10アルキニレン、およびフェニレンから選択され、
R
2Cは、C
1-6アルキル、C
6-10アリール、およびC
6-10アリール-C
1-6アルキルから選択される}
により表される]
により表される。
【0094】
[0107]
式(L-2)が式(S-2)と組み合わされるとき、A
2は式(S-2A):
【化15】
により表される。
【0095】
[0108]
上記の式(B-1)により表される繰り返し単位は、例えば、アクリル酸モノマー、メタクリル酸モノマー、アクリルアミドモノマー、またはメタクリルアミドモノマーから得てもよい。
【0096】
[0109]
式(B-1)中、部分-L2-はリンカー基を表す。
【0097】
[0110]
複数のスルホン酸基に連結されたまたは結合されたポリマー鎖は、本明細書に記載の式(B-1)~B-3)のいずれか1つにより表される繰り返し単位を含み得る。
【0098】
[0111]
ポリマー鎖において、式(B-1)により表される繰り返し単位の各単位は、同じであっても異なっていてもよい。
【0099】
[0112]
典型的には、表層は、複数のポリマー化合物(例えば、分布)を含み、各ポリマー化合物は、本明細書に記載の式(B-1)~(B-3)のいずれか1つにより表される繰り返し単位を含むポリマー鎖を含んで成る。
【0100】
[0113]
リンカー基およびスルホン酸基は、アクリル酸またはメタクリル酸のような適切なモノマーの重合後にポリマー鎖に取り付けられる。リンカー基およびスルホン酸基は、カルボニル基での反応などにより繰り返し単位に導入される。いくつかのカルボニル基は、反応を受けず(つまり、100%の変換がない)、リンカー基およびスルホン酸基を含み得る。これが発生するとき、X2は、O-、OH、OR2A、NH2、またはNHR2Aであり得る。
【0101】
[0114]
一般に、例えば、表層が複数のポリマー化合物を含んで成るとき、式(B-1)により表される単位の少なくとも90%が、上記で定義されたA2を含む(すなわち、X2はA2である)ことが好ましく、より好ましくは、式(B-1)により表される単位の少なくとも95%がA2を含み、さらにより好ましくは、式(B-1)により表される単位の少なくとも99%がA2を含む。
【0102】
[0115]
典型的には、式(B-1)により表される繰り返し単位における各単位は、A2を含む(すなわち、X2はA2である)。
【0103】
[0116]
式(B-1)により表される繰り返し単位における各単位は同一であることが好ましい。
【0104】
[0117]
ポリマー鎖は、以下の式(B-2):
【化16】
により表される繰り返し単位を含み得る。
【0105】
[0118]
式(B-2)中、RA、X2、R2A、A2、Z2、R2、Y2、L2、P2、Q2、W2およびR2Cのそれぞれは、上記で定義された通りであり、n2は整数である。
【0106】
[0119]
式(B-1)または式(B-2)中、X
2は、O
-、OH、OR
2AおよびA
2から選択されることが好ましい。より好ましくは、X
2は、O
-、OHおよびA
2から選択される。さらにより好ましくは、X
2は、以下の式(B-3):
【化17】
により表されるようなA
2である。
【0107】
[0120]
典型的には、上記の式(B-1)~(B-3)中、RAは、HおよびC1-3アルキルから選択され、好ましくは、RAは、Hおよびメチルから選択される。さらにより好ましくは、RAはHである。
【0108】
[0121]
式(B-1)または式(B-2)中、X2がOR2AまたはNHR2Aであるとき、R2AがC1-6アルキル、特にメチルまたはエチルであることが好ましい。
【0109】
[0122]
上記の式(B-1)~(B-3)中、Z2がNR2である場合、R2はC1-6アルキル、特にメチルまたはエチルであることが好ましい。
【0110】
[0123]
典型的には、上記の式(B-1)~(B-3)中、Z2は、好ましくは、OおよびNHから選択される。Z2はOであり得る。より好ましくは、Z2はNHであり得る。Z2がOまたはNHであるとき、リンカー基は、典型的な生体適合性基である、エステルまたはアミド基によりポリマー鎖に取り付けられる。アミド基は、特にペプチドに存在するため、生体適合性である。
【0111】
[0124]
P2は、典型的には、単結合、C1-10アルキレンおよびフェニレンから選択され、W2は、単結合、C1-10アルキレンおよびフェニレンから選択され得る。より好ましくは、P2は、単結合およびC1-10アルキレンから選択され得、W2は、単結合およびC1-10アルキレンから選択され得る。
【0112】
[0125]
あるいは、P2は、C1-10アルキレン、C2-10アルケニレンおよびC2-10アルキニレンから選択され、Q2は、O、NH、NR2Cから選択され、W2は単結合である。より好ましくは、Q2は、OおよびNHから選択される。この配置において、抗凝固基は、スルファメート基、硫酸基、またはそれらの共役塩基である。
【0113】
[0126]
典型的には、L2の場合、P2、Q2およびW2のうちの少なくとも1つは単結合ではないことが好ましい。
【0114】
[0127]
Q2がOであるとき、P2は単結合ではないことが一般に好ましい。より好ましくは、Q2がOであるとき、P2はC1-10アルキレンであることが好ましく、より好ましくは、P2はC2-4アルキレンである。
【0115】
[0128]
Q2がOであり、P2が単結合ではないとき、W2が単結合ではないことが好ましい場合がある。より好ましくは、Q2がOであるとき、P2はC1-10アルキレンであり、W2はC1-10アルキレンであり、より好ましくは、P2はC2-4アルキレンであり、W2はC2-4アルキレンである。
【0116】
[0129]
Q2がフェニレンであるとき、P2が単結合またはC1-10アルキレンであり、W2が単結合またはC1-10アルキレンであることが一般に好ましい。より好ましくは、Q2がフェニレンであるとき、P2は単結合またはC1-3アルキレンであり、W2は単結合またはC1-3アルキレンであることが好ましい。
【0117】
[0130]
一般に、P2は、C1-10アルキレン、C2-10アルケニレンおよびC2-10アルキニレンから選択され、Q2は単結合で、W2は単結合であることが好ましい。より好ましくは、P2は、C1-10アルキレン、特に、C2-5アルキレンのようなC2-6アルキレンである。さらにより好ましくは、P2は、ブチレン、プロピレンまたはエチレン、好ましくはエチレンである。P2がエチレンで、Q2およびW2の両方が単結合であるとき、(S-2)により表される部分はタウリンから形成できる。上述のように、ポリマー化合物の分解が起こると、タウリンが形成され得る。
【0118】
[0131]
典型的には、n2により表される整数は、少なくとも5、好ましくは少なくとも10である。例えば、n2は、10~300のような5~500、より好ましくは15~100であり得る。
【0119】
[0132]
ポリマー鎖は、X2またはY2がOである場合など、アニオン性であり得る。ポリマー鎖がアニオン性であるとき、Na+またはK+がカウンターカチオンとして存在し得る。
【0120】
[0133]
便宜上、式(B-0)~(B-3)で表される繰り返し単位は、本明細書では、「第2繰り返し単位」というラベルを使用して参照される。この文脈での「第2」というラベルは、この繰り返し単位を「第1繰り返し単位」と区別するために使用される。上述のように、このラベルは、「第2繰り返し単位」に加えて「第1繰り返し単位」が存在しなければならないことを必要としない。
【0121】
[0134]
複数のスルホン酸基に連結されているまたは結合されているポリマー鎖は、コポリマーであり得る。
【0122】
[0135]
コポリマーは、式(A-0)~(A-3)のいずれか1つにより表される第1繰り返し単位と、式(B-0)~(B-3)のいずれか1つにより表される第2繰り返し単位とを含んで成る交互コポリマー(または交互共重合体)であり得る。交互コポリマーは、交互の第1および第2の繰り返し単位(例えば、-(A-1)-(B-1)-(A-1)-(B-1)-・・・)、好ましくは規則的に交互の第1および第2の繰り返し単位を含む。
【0123】
[0136]
交互コポリマーは、例えば、以下の式:
【化18】
[上記式中、nは整数である]
により表すことができる。
【0124】
[0137]
典型的には、nは、少なくとも5、好ましくは少なくとも10である。例えば、nは、10~300のような5~500、より好ましくは15~100であり得る。
【0125】
[0138]
コポリマーは、以下の式(C-1):
【化19】
により表されるようなブロックコポリマーなどのブロックコポリマーであり得る。
【0126】
[0139]
式(C-1)中、X1A、X1B、R1A、R1B、A1A、A1B、Z1、R1、Y1、L1、P1、Q1、W1、R1Cおよびn1は、式(A-1)~(A-3)のいずれかについて上記で定義した通りであり、RA、X2、R2A、A2、Z2、R2、Y2、L2、P2、Q2、W2、R2C、およびn2は、式(B-1)~(B-3)のいずれかについて上記で定義された通りである。
【0127】
[0140]
X
1AがA
1Aであり、および/またはX
1BがA
1Bであり、および/またはX
2がA
2であることが好ましい。よって、X
1A、X
1B、およびX
2の少なくとも1つは、それぞれA
1A、A
1B、およびA
2である。より好ましくは、X
2はA
2であり、X
1AおよびX
1Bの少なくとも1つは、それぞれA
1AおよびA
1Bである。さらにより好ましくは、以下の式(C-2):
【化20】
に表されるように、X
1AはA
1Aであり、X
1BはA
1Bであり、X
2はA
2である。
【0128】
[0141]
上記の式(C-1)および式(C-2)中、RAは、HおよびC1-3アルキルから選択され、好ましくは、RAは、Hおよびメチルから選択される。さらにより好ましくは、RAはHである。
【0129】
[0142]
式(C-1)中、X1AがOR1AまたはNHR1Aであるとき、R1AはC1-6アルキル、特にメチルまたはエチルであることが好ましく、X1BがOR1BまたはNHR1Bであるとき、R1Bは、C1-6アルキル、特にメチルまたはエチルであることが好ましく、X2がOR2AまたはNHR2Aであるとき、R2AはC1-6アルキル、特にメチルまたはエチルであることが好ましい。
【0130】
[0143]
式(C-1)中、A1AおよびA1Bは、同じであっても異なっていてもよい。一般に、A1AおよびA1Bは、同じであることが好ましい。
【0131】
[0144]
上記の式(C-1)中、Z1がNR1であるとき、R1は、C1-6アルキル、特にメチルまたはエチルであることが好ましく、Z2がNR2であるとき、R2はC1-6アルキル、特にメチルまたはエチルであることが好ましい。
【0132】
[0145]
典型的には、上記の式(C-1)および(C-2)中、各Z1は、好ましくは、OおよびNHから選択され、Z2は、好ましくは、OおよびNHから選択される。Z2および各Z1は、Oであり得る。より好ましくは、Z2および各Z1はNHである。
【0133】
[0146]
一般に、式(C-1)および(C-2)中、各L1は、同じであっても異なっていてもよい。各L1は同じであることが好ましい。
【0134】
[0147]
各P1は、単結合、C1-10アルキレンおよびフェニレンから選択され得、W1は、単結合、C1-10アルキレンおよびフェニレンから選択され得、P2は、単結合、C1-10アルキレンおよびフェニレンから選択され得、各W2は、単結合、C1-10アルキレンおよびフェニレンから選択され得る。より好ましくは、各P1は、単結合およびC1-10アルキレンから選択され得、各W1は、単結合およびC1-10アルキレンから選択され得、P2は単結合およびC1-10アルキレンから選択され得、W2は、単結合およびC1-10アルキレンから選択され得る。
【0135】
[0148]
典型的には、各L1の場合、P1、Q1およびW1のうちの少なくとも1つは単結合ではないことが好ましく、L2の場合、P2、Q2、およびW2の少なくとも1つが単結合ではないことが好ましい。
【0136】
[0149]
Q1がOであるとき、P1は単結合ではないことが一般に好ましい。Q2がOであるとき、P2は単結合ではないことが一般的に好ましい。より好ましくは、Q1がOであるとき、P1はC1-10アルキレンであることが好ましく、Q2がOであるとき、P2はC1-10アルキレンであることが好ましい。より好ましくは、P1はC2-4アルキレンであり、P2はC2-4アルキレンである。
【0137】
[0150]
Q1がOであり、P1が単結合ではないとき、W1は単結合ではないことが好ましい場合がある。Q2がOで、P2が単結合ではないとき、W2は単結合ではないことが望ましい場合がある。より好ましくは、Q1がOであるとき、P1はC1-10アルキレンであり、W1はC1-10アルキレンであることが好ましく、Q2がOであるとき、P2はC1-10アルキレンであり、W2はC1-10アルキレンであることが好ましく、より好ましくは、P1はC2-4アルキレンであり、W1はC2-4アルキレンであり、P2はC2-4アルキレンで、W2はC2-4アルキレンである。
【0138】
[0151]
Q1がフェニレンであるとき、P1が単結合またはC1-10アルキレンであり、W1が単結合またはC1-10アルキレンであることが一般に好ましい。より好ましくは、Q1がフェニレンであるとき、P1は単結合またはC1-3アルキレンであり、W1は単結合またはC1-3アルキレンであることが好ましい。
【0139】
[0152]
Q2がフェニレンであるとき、一般に、P2が単結合またはC1-10アルキレンであり、W2が単結合またはC1-10アルキレンであることが好ましい。より好ましくは、Q2がフェニレンであるとき、P2は単結合またはC1-3アルキレンであり、W2は単結合またはC1-3アルキレンであることが好ましい。
【0140】
[0153]
一般に、各P1は、C1-10アルキレン、C2-10アルケニレンおよびC2-10アルキニレンから選択され、各Q1は単結合であり、各W1は単結合であり、P2は、C1-10アルキレン、C2-10アルケニレン、およびC2-10アルキニレンから選択され、Q2は単結合で、W2は単結合であることが好ましい。より好ましくは、各P1は、C1-10アルキレン、特にC2-5アルキレンのようなC2-6アルキレンであり、P2はC1-10アルキレン、特にC2-5アルキレンのようなC2-6アルキレンである。さらにより好ましくは、各P1はエチレンであり、P2はエチレンである。
【0141】
[0154]
式(C-2)中、各Y1は、O-およびOHから選択され、Y2はOおよびOHから選択される。L1はC2-5アルキレンであり、L2はC2-5アルキレンであり、n1は整数である。n2は整数であることが好ましい。より好ましくは、L1はエチレンであり、L2はエチレンであり、n1は5以上の整数であり、n2は5以上の整数である。
【0142】
[0155]
典型的には、上記の式(C-1)または(C-2)中、n1により表される整数は、少なくとも5、好ましくは少なくとも10である。例えば、n1は、10~300のような5~500、より好ましくは15~100であり得る。
【0143】
[0156]
n2により表される整数は、典型的には少なくとも5、好ましくは少なくとも10である。例えば、n2は、10~300のような5~500、より好ましくは15~100であり得る。
【0144】
[0157]
ポリマー鎖は、X1A、X1B、X2、Y1またはY2がOである場合など、アニオン性であり得る。ポリマー鎖がアニオン性であるとき、Na+またはK+がカウンターカチオンとして存在し得る。
【0145】
[0158]
ポリマー鎖が複数のスルホン酸基に連結されているまたは結合されているとき、ポリマー鎖(例えば、複数のスルホン酸基に連結されているまたは結合される前)は、例えば、300~50,000g/モル、好ましくは500~30,000g/モル、より好ましくは1,000~10,000g/モルのような少なくとも300g/モルの数平均(例えば、平均)分子量(Mn)(number average (e.g. mean) molecular weight (Mn))を有する。
【0146】
[0159]
上記の第1態様において、抗凝固基に連結されたまたは結合されたポリマー鎖は、特に、式(A-0)~(A-3)のいずれか1つにより表される繰り返し単位を含むとき、とりわけ式(C-1)または(C-2)で表されるとき、有利な特性を有する。表層またはコーティングは、ヒドロゲルであり得る。また、抗凝固基に連結されたまたは結合されたポリマー鎖の分解が生体適合性副産物の形成をもたらす可能性があるため、コーティングは生分解性であり得る。血液の凝固を低減または防止することに加えて、表層の抗凝固成分はまた、特にヘパリンのような当技術分野の他の抗凝固成分と比較したとき、優れた安定性を有し、比較的安価であり得る。
【0147】
[0160]
第2態様では、スルホン酸基のような抗凝固基を含んで成るモノマーの重合は、抗凝固基に取り付けられたまたは結合したポリマー鎖を提供することができる。モノマー自体は、例えば、スルホン酸基またはスルホン酸基前駆体を含んで成る。これに関連して、抗凝固基または複数の抗凝固基に取り付けられたまたは結合したポリマー鎖は、本明細書では、特に各抗凝固基はスルホン酸基であるとき、抗凝固基または複数の抗凝固基を含んで成るポリマーと呼ばれ得る。
【0148】
[0161]
スルホン酸基を含んで成るモノマーは、アルケン基およびスルホン酸基を含んで成る化合物であり得る。そのような化合物の例としては、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸(例えば、4-スチレンスルホン酸)、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸またはそれらの共役塩基(例えば、スルホネート)が挙げられる。
【0149】
[0162]
スルホン酸前駆体基を含んで成るモノマーは、アルケン基およびスルホン酸前駆体基を含んで成る化合物であり得る。
【0150】
[0163]
スルホン酸基を含んで成るポリマーは、ホモポリマーであり得る。よって、ポリマーは、スルホン酸基を含んで成るホモポリマーである。
【0151】
[0164]
スルホン酸基を含んで成るホモポリマーの例としては、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸)またはそれらの共役塩基が挙げられる。スルホン酸基を含んで成るホモポリマーは、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸)であることが好ましい。
【0152】
[0165]
スルホン酸基を含んで成るポリマーは、コポリマー(例えば、スルホン酸基を含んで成るコポリマー)であり得る。スルホン酸基を含んで成るコポリマーは、交互コポリマーまたはブロックコポリマーであってもよい。
【0153】
[0166]
スルホン酸基を含んで成るコポリマーは、少なくとも2つのモノマーから、または2つのモノマーのみから得ることができる。
【0154】
[0167]
スルホン酸基を含んで成るコポリマーは、第1モノマーおよび第2モノマーから得ることができ、第1モノマーは第2モノマーとは異なる。コポリマーは、第1モノマーおよび第2モノマーとの共重合により得ることができる。
【0155】
[0168]
第1モノマーは、スルホン酸基またはスルホン酸基前駆体を含んで成る。スルホン酸基を含んで成るモノマーは、アルケン基およびスルホン酸基を含んで成る化合物であってもよい。そのような化合物の例としては、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸(例えば、4-スチレンスルホン酸)、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸またはそれらの共役塩基(例えば、スルホネート)が挙げられる。第1モノマーは、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸またはその共役塩基であることが好ましい。
【0156】
[0169]
同様に、スルホン酸前駆体基を含んで成るモノマーは、アルケン基およびスルホン酸前駆体基を含んで成る化合物であり得る。
【0157】
[0170]
第2モノマーは、アルケン基を含んで成る。第2モノマーは、アクリル酸、イタコン酸、酢酸ビニルおよびマレイン酸から選択され得る。第2モノマーはマレイン酸であることが好ましい。
【0158】
[0171]
スルホン酸基を含んで成るコポリマーは、例えば、ポリ(スチレンスルホン酸-コ-マレイン酸)またはポリ(2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸-コ-マレイン酸)、好ましくはポリ(2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸-コ-マレイン酸)であり得る。
【0159】
[0172]
ポリマーがスルホン酸基を含んで成るとき、ポリマー(例えば、スルホン酸基を含む)は、300~50,000g/モル、好ましくは500から30,000g/モル、より好ましくは1,000~10,000g/モルのような少なくとも300g/モルの数平均(例えば、平均)分子量(Mn)を有する。
【0160】
[0173]
一般に、コーティングは、抗菌剤をさらに含んで成り得る。ベース層および/または表層は、抗菌剤を含んで成り得る。抗菌剤は、例えば、表層またはベース層の成分と混合することができる。
【0161】
[0174]
抗菌剤は銀を含んで成り得る。
【0162】
[0175]
本発明のコーティングは、典型的には、医療デバイスの表面に配置される。医療デバイスの表面は、医療デバイスの内面または内表面(例えば、カテーテル内の内面)または医療デバイスの外面であり得る。コーティングは、血液または血小板を含んで成る血液製剤が入る医療デバイスの表面に配置することができる。
【0163】
[0176]
コーティングは、医療デバイスの表面の完全または部分的な被覆を提供し得る。
【0164】
[0177]
本発明のコーティングにおいて、表層は、医療デバイスの表面上に配置される。
【0165】
[0178]
いつかの場合では、表層は、医療デバイスの表面上に直接配置され得る。よって、表層は医療デバイスの表面と直接接触している。
【0166】
[0179]
表層は、特にそれがこの表面に付着または結合することができると、医療デバイスの表面に直接適用され得る。
【0167】
[0180]
医療デバイスの表面は、ベースコーティングを適用することなどによって、ポリマー鎖に結合することができる基で機能化することができる。医療デバイスの表面はアミン基を有し得る。アミン基は、ポリマー鎖におけるカルボニル基と反応してアミド基を形成し、それによってコーティングの表面層を医療デバイスの表面に結合させることができる。
【0168】
[0181]
複数の層を医療デバイスの表面に配置することができる。各層は、上記で定義されたように、抗凝固剤に取り付けられたまたは結合されたポリマー鎖を含んで成り得る。最上層または最外層は、上記の表層になる。
【0169】
[0182]
一般に、コーティングはまた、ベース層を含んで成り得る。ベース層は、典型的には、表層の下に配置される。ベース層と表層との間に1または複数の層が存在し得、ここで、または各層は、上述の抗凝固基に取り付けられたまたは結合されたポリマー鎖を含んで成る。あるいは、表層は、ベース層上に直接配置されてもよい。
【0170】
[0183]
表層は、ベース層上に直接配置されることが好ましい。よって、表層は、典型的には、ベース層上にコーティングされる。
【0171】
[0184]
ベース層は、医療デバイスの表面上に配置され得る。ベース層は、典型的には、医療デバイスの表面に直接配置される。よって、ベース層は表面と直接接触している。
【0172】
[0185]
ベース層は、医療デバイスの表面に付着するまたは結合する、好ましくは付着することが一般的に好ましい。
【0173】
[0186]
典型的には、ベース層は生体適合性である。
【0174】
[0187]
ベース層は、タンパク質、好ましくはヒトタンパク質を含んで成り得るか、または本質的にそれからなり得る。
【0175】
[0188]
タンパク質は、アルブミンであり得る。アルブミンは、ヒトアルブミン、好ましくは組換えヒトアルブミンであることが好ましい。
【0176】
[0189]
アルブミン、特に組換えヒトアルブミンは、ヒトの循環系に見られるアルブミンを模倣することができる。それは、静的な引力によって、多種多様な表面、特に医療デバイスの表面に付着することができる。また、血小板の活性化から保護できるバイオパッシブ表面を提供する。
【0177】
[0190]
一般に、コーティングの表層は、ベース層に結合されている。表層は、ベース層に接着結合するか、またはベース層に共有結合することができる。塩基層がアルブミンを含んで成るとき、アルブミンはポリマー鎖に共有結合し得る。
【0178】
[0191]
本発明はまた、医療デバイスを提供する。医療デバイスは、血液または血小板を含む血液製剤と接触する場所で使用できる。
【0179】
[0192]
コーティングは、医療デバイスの表面に配置される。よって、医療デバイスは、本発明のコーティングで被覆された表面を有する。便宜上、本発明のコーティングで被覆された表面は、「被覆された表面」と呼ばれる。被覆された表面は、血液または血小板を含む血液製剤、好ましくは血液と接触して使用するためのものである。
【0180】
[0193]
典型的には、コーティングは、0.05μm~300μm、好ましくは0.1μm~200μm、より好ましくは1μm~100μmの厚さを有する。一般に、コーティングの厚さは、患者内で使用するための医療デバイスのプロファイルを大幅に増加させないように選択される。
【0181】
[0194]
医療デバイスは、本発明のコーティングの単層で被覆することができる。あるいは、医療デバイスは、本発明のコーティングの複数の層で被覆され得る。よって、医療デバイスの表面は、ベース層と、抗凝固基に取りつけられたポリマー鎖を含んで成る層とのいくつかの交互の層で被覆することができる。
【0182】
[0195]
医療デバイスは、移植可能な医療デバイスまたは体外医療デバイスであり得る。移植可能な医療デバイスは、恒久的に移植可能な医療デバイスまたは一時的に移植可能な医療デバイスであり得る。
【0183】
[0196]
医療デバイスは、一過性の血液接触デバイスであり得、これは、例えば、移植可能または体外であり得ない。
【0184】
[0197]
医療デバイスは、インビボ使用またはインビトロ使用のためのものであり得る。医療デバイスは、好ましくはインビボ使用のためのものである。
【0185】
[0198]
医療デバイスは、インビボで使用するための構成要素を有し得る。構成要素の少なくとも表面が本発明のコーティングで被覆されていることが好ましい。
【0186】
[0199]
医療デバイスの被覆された表面または医療デバイスの構成要素は、身体の患部などの身体の領域に挿入され得る。身体の領域は、例えば、冠状動脈または静脈、頸動脈または静脈などの動脈または静脈;腎動脈または腎静脈;腸骨動脈または静脈;大腿動脈または大腿静脈;膝窩動脈または膝窩;鎖骨下動脈または静脈;頭蓋間動脈または静脈;大動脈;大静脈;または末梢動脈または静脈であり得る。
【0187】
[0200]
所定の位置に配置されると、被覆された表面は、医療デバイスまたは医療デバイスの構成要素の上およびその周辺の血液凝固を防止し、それにより、血栓症、特に亜急性機器血栓症を阻害する。
【0188】
[0201]
医療デバイスまたはその構成要素は、針、カテーテル、ステント、移植片、シャント、ドレッシング、外科用ステープル、ガイドワイヤー、カニューレ、外科用器具、内視鏡、人工器官またはオルガノイド(例えば、インスリン分泌デバイス)、埋め込み型モニターまたはセンサー、除細動器、心室補助装置、ペースメーカー(例えば、心臓ペースメーカー)、埋め込み型ポンプ(例えば、大動脈内バルーンポンプもしくは心室補助ポンプ)、細胞リザーバー(例えば、幹細胞配置用)、人工器官(例えば、人工心臓弁)、整形外科用デバイス、電気刺激リードもしくはリードチップ、埋め込み型血管アクセスポート、血液貯蔵バッグ、血液チューブ、乳房インプラント、疼痛管理デバイス、前立腺癌治療デバイス、歯科インプラント、限局性てんかん治療デバイス、神経再生導管、大静脈フィルター、脊椎修復デバイス、脊髄刺激装置、内部聴力補助装置、神経動脈瘤治療デバイス、心臓弁修復デバイス、硝子体内薬物送達デバイス、関節置換、眼内インプラント、血液酸素供給器、血液フィルター、中隔欠損デバイス、血液透析ユニット、血液灌流ユニット、またはプラズマフェレーシスユニットまたは吻合デバイスであり得る。
【0189】
[0202]
カテーテルの例としては、バルーンまたはインフレーションカテーテル、注射カテーテル、中心静脈カテーテル、動脈カテーテル、および吸引カテーテルが挙げられる。医療デバイスは中心静脈カテーテルまたは吸引カテーテルであることが好ましい場合がある。
【0190】
[0203]
移植片の例としては、血管移植片、ステント移植片またはバイパス移植片が挙げられる。医療デバイスはバイパス移植片であることが好ましい場合がある。
【0191】
[0204]
ステントの例としては、血管ステント、尿道ステント、胆管ステント、胆管ステント、食道ステント、および気管または気管支ステントが挙げられる。
【0192】
[0205]
一般に、医療デバイスは、中心静脈カテーテル、吸引カテーテル、バイパス移植片、灌流ライン、心臓バイパス装置、ならびに体外酸素化および熱交換回路から選択されることが好ましい場合がある。
【0193】
[0206]
医療デバイスまたはその構成要素は、金属、ポリマー材料、ガラスまたはセラミックを含んで成り得る。よって、本発明のコーティングは、金属、プラスチック、またはセラミックを含んで成る表面に被覆することができる。
【0194】
[0207]
金属は、例えば、ステンレス鋼、チタン、ニッケル、タンタル、コバルト、クロム、ニッケル、モリブデン、マンガン、金、白金、イリジウム、銀、タングステン、チタン合金(例えば、ニチノール)、ニッケル-クロム合金(例えば、インコネル)、コバルトクロム合金(例えば、エルジロイ)、鉄合金、パラジウム合金、レニウム合金、またはマグネシウム合金であり得る。
【0195】
[0208]
ポリマー材料は、例えば、酢酸セルロース、硝酸セルロース、シリコーン、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル(例えば、ナイロン)、ポリオルトエステル、ポリ無水物、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、またはポリテトラフルオロエチレンであり得る。
【0196】
[0209]
セラミックは、例えば、チタン酸化物、ハフニウム酸化物、イリジウム酸化物、クロム酸化物、アルミニウム酸化物、およびジルコニウム酸化物のような遷移金属の酸化物、炭化物、または窒化物を含み得る。
【0197】
[0210]
本発明はまた、ポリマー化合物を提供する。ポリマー化合物は式(C-2):
【化21】
[式(C-2)中、
各Y
1は、O
-およびOHから選択され、
Y
2は、O
-およびOHから選択され、
各L
1は、C
2-5アルキレンであり、
L
2は、C
2-5アルキレンであり、
R
Aは、HおよびC
1-6アルキルから選択され、好ましくはHおよびメチルから選択され、
n
1は、整数であり、
n
2は、整数である]
で表される。
【0198】
[0211]
各L1がエチレンであり、L2がエチレンであることが好ましい。
【0199】
[0212]
RAは、好ましくは、Hおよびメチルから選択される。より好ましくは、RAはHである。
【0200】
[0213]
n1によって表される整数は、少なくとも5、好ましくは少なくとも10である。例えば、n1は、10~300のような5~500、より好ましくは15~100であり得る。
【0201】
[0214]
n2により表される整数は、典型的には少なくとも5、好ましくは少なくとも10である。例えば、n2は、10~300のような5~500、より好ましくは15~100であり得る。
【0202】
[0215]
また、本発明によって提供されるのは、コーティングおよび医療デバイスの使用である。
【0203】
[0216]
コーティングまたはコーティングを含んで成る医療デバイスは、手術もしくは治療による人体または動物の体の治療、ならびに/または人体もしくは動物の体で行われる診断方法で使用することができる。
【0204】
[0217]
ヒトまたは動物の体で行われる診断方法は、典型的には、インビボ診断方法である。
【0205】
[0218]
外科または治療による診断方法または治療は、典型的には、コーティング、またはコーティングを含んで成る医療デバイスが血液と接触することを伴う。
【0206】
[0219]
コーティングまたはコーティングを含んで成る医療デバイスは、血液の凝固を低減または防止するのに使用するためのものであり、好ましくは、医療デバイスの被覆された表面上の血液の凝固を低減または防止するためのものである。
【0207】
[0220]
本発明はまた、血液の凝固を低減または防止する方法を提供する。この方法は、本発明の医療デバイスを血液と接触させることを含む。医療デバイスは、コーティングの存在が、特に医療デバイスのコーティングされた表面での血餅の形成を阻害または防止することを除いて、通常の方法で使用される。
【0208】
[0221]
この方法の一態様は、インビトロ方法である。例えば、この方法は、血液を処理するときに血液の凝固を低減または防止するインビトロ方法であり得る。血液は、処理された血液または貯蔵用の血液製剤のような血液製剤を生成するために処理され得る。
【0209】
[0222]
この方法は、医療デバイスを血液と接触させることを含んで成り得、ここで、血液は、ヒトまたは動物の体から除去されている。血液を医療デバイスと接触させて血液を処理し得る。
【0210】
[0223]
この方法は、処理された血液または血液製剤を人体または動物の体に投与するステップを含まない場合がある。血液製剤または処理された血液は、人体または動物の体、好ましくは血液が除去された人体または動物の体に戻されない場合がある。
【0211】
[0224]
この方法のさらなる態様は、診断方法、特にインビトロおよび/またはエクスビボ診断方法である。
【0212】
[0225]
この方法は、診断手順における血液の凝固を低減または防止する方法に関連し得る。この方法は、診断情報を得るために医療デバイスを血液と接触させることを含んで成り得る。医療デバイスは、事前に取得された、または事前に配送された血液と接触し得る。
【0213】
[0226]
診断手順は、人体または動物の体に対して実行されないか、または診断手順は、非生物(例えば、死んだ)人体または動物の体に対して実行される。よって、診断方法は、人体または動物の体、特に生きている人体または動物の体から血液を除去するステップを含まない場合がある。
【0214】
[0227]
本発明はまた、医療デバイス用のコーティング、特に、第1態様に係る抗凝固基に付着または結合したポリマー鎖を含んで成る表層を含んで成るコーティングを製造する方法を提供する。
【0215】
[0228]
この方法は、カップリング剤を使用して、抗凝固剤を含んで成る化合物をポリマーに(例えば、カップリング反応によって)取り付けるまたは結合することを含む。抗凝固剤を含んで成る化合物は、アミド基を形成することにより、ポリマーに取り付けられるまたは結合することができる。
【0216】
[0229]
本発明はさらに、特にコーティングが、第1態様に係る抗凝固基に取り付けたまたは結合したポリマー鎖を含んで成る表層を有するとき、医療デバイスを被覆するためのキットを提供する。
【0217】
[0230]
キットは、(a)ポリマーと、(b)抗凝固基を含んで成る化合物と、(c)カップリング剤と、および任意の(d)ベース層を形成するためのコーティングとを含んで成る。
【0218】
[0231]
ポリマーは、例えば、溶液またはゲルに分散され得る。
【0219】
[0232]
製造方法またはキットにおいて、ポリマーは、抗凝固基に取り付けられたまたは結合されたポリマー鎖を形成する。
【0220】
[0233]
典型的には、ポリマーは、以下の式(D-1):
【化22】
により表される繰り返し単位を含む。
【0221】
[0234]
上記の式(D-1)中、X3は、OH、OR3A、NH2およびNHR3Aから選択され、R3Aは、C1-6アルキル、C6-10アリール、およびC6-10アリール-C1-6アルキルから選択される。
【0222】
[0235]
X3は、OHおよびNH2から選択されることが好ましく、より好ましくは、X3は、OHである。
【0223】
[0236]
上記の式(D-1)により表される繰り返し単位は、例えば、マレイン酸モノマーまたはマレイミドモノマーから得ることができる。
【0224】
[0237]
ポリマーは、以下の式(D-2):
【化23】
により表される繰り返し単位を含み得る。
【0225】
[0238]
式(D-2)中、X3は上記で定義された通りであり、n1は整数である。典型的には、n1は少なくとも5、好ましくは少なくとも10である。例えば、n1は、10~300のような5~500、より好ましくは15~100であり得る。
【0226】
[0239]
ポリマーは、コポリマーであり得る。コポリマーは、典型的には、以下の式(D-3):
【化24】
によって表されるようなブロックコポリマーなどのブロックコポリマーである。
【0227】
[0240]
式(D-3)中、X3およびn1は、式(D-1)または(D-2)について上で定義された通りであり、RAは、HおよびC1-6アルキルから選択され、X4は、OH、OR4、NH2、およびNHR4から選択され、R4は、C1-6アルキル、C6-10アリール、およびC6-10アリール-C1-6アルキルから選択され、n2は整数である。
【0228】
RAは、好ましくは、HおよびC1-3アルキルから選択される。より好ましくは、RAは、Hおよびメチルから選択される。さらにより好ましくは、RAはHである。
【0229】
[0242]
X4は、OHおよびNH2から選択されることが好ましく、より好ましくは、X4は、OHである。
【0230】
[0243]
典型的には、n2により表される整数は、少なくとも5、好ましくは少なくとも10である。例えば、n2は、10~300のような5~500、より好ましくは15~100であり得る。
【0231】
[0244]
抗凝固基を含んで成る化合物は、式(E-1):
【化25】
[式(E-1)中、
Z
3は、OH、NH
2、およびNHR
3から選択され、
R
3は、C
1-6アルキル、C
6-10アリール、およびC
6-10アリール-C
1-6アルキルから選択され、
L
3は、式(L-3):
【化26】
{式(L-3)中、
P
3は、単結合、C
1-10アルキレン、C
2-10アルケニレン、C
2-10アルキニレンおよびフェニレンから選択され、
Q
3は、単結合、O、NH、NR
3C、およびフェニレンから選択され、
W
3は、単結合、C
1-10アルキレン、C
2-10アルケニレン、C
2-10アルキニレンおよびフェニレンから選択され、
R
3Cは、C
1-6アルキル、C
6-10アリール、およびC
6-10アリール-C
1-6アルキルから選択される}
により表される]
により表され得る。
【0232】
[0245]
Z3がNH2であることが好ましい。
【0233】
[0246]
P3は、典型的には、単結合、C1-10アルキレンおよびフェニレンから選択され、W3は、単結合、C1-10アルキレンおよびフェニレンから選択され得る。より好ましくは、P3は単結合およびC1-10アルキレンから選択され得、W3は、単結合およびC1-10アルキレンから選択され得る。
【0234】
[0247]
あるいは、P3は、C1-10アルキレン、C2-10アルケニレンおよびC2-10アルキニレンから選択され、Q3は、O、NH、NR3Cから選択され、W3は単結合である。より好ましくは、Q3は、OおよびNHから選択される。
【0235】
[0248]
典型的には、L3の場合、P3、Q3およびW3のうちの少なくとも1つは単結合ではないことが好ましい。
【0236】
[0249]
Q3がOであるとき、P3は単結合ではないことが一般に好ましい。より好ましくは、Q3がOであるとき、P3はC1-10アルキレンであることが好ましく、より好ましくは、P3はC2-4アルキレンである。
【0237】
[0250]
Q3がOであり、P3が単結合ではないとき、W3は単結合ではないことが好ましい場合がある。より好ましくは、Q3がOであるとき、P3はC1-10アルキレンであり、W3はC1-10アルキレンであることが好ましく、より好ましくは、P3はC2-4アルキレンであり、W3はC2-4アルキレンである。
【0238】
[0251]
Q3がフェニレンであるとき、P3は単結合またはC1-10アルキレンであり、W3は単結合またはC1-10アルキレンであることが一般に好ましい。より好ましくは、Q3がフェニレンであるとき、P3は単結合またはC1-3アルキレンであり、W3は単結合またはC1-3アルキレンであることが好ましい。
【0239】
[0252]
一般に、P3は、C1-10アルキレン、C2-10アルケニレンおよびC2-10アルキニレンから選択され、Q3は単結合で、W3は単結合であることが好ましい。より好ましくは、P3は、C1-10アルキレン、特にC2-5アルキレンのようなC2-6アルキレンである。さらにより好ましくは、P3は、ブチレン、プロピレンまたはエチレン、好ましくはエチレンである。
【0240】
[0253]
式(E-1)により表される化合物は、タウリンであり得る。
【0241】
[0254]
カップリング剤は、カルボジイミドカップリング剤であり得る。カルボジイミドカップリング剤の例としては、N、N'-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、N、N'-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)および1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)が挙げられる。カップリング剤はEDCであることが好ましい。
【0242】
[0255]
本発明のキットにおいて、カップリング剤は粉末であり得る。
【0243】
[0256]
ベース層を形成するためのコーティングは、タンパク質、好ましくはヒトタンパク質を含んで成る溶液、懸濁液またはゲルであり得る。ベース層を形成するためのコーティングは、安定化された溶液などの溶液であることが好ましい。上述のように、タンパク質はアルブミンであり得る。アルブミンは、ヒトアルブミン、好ましくは組換えヒトアルブミンであることが好ましい。
【0244】
[0257]
本発明の製造方法は、カップリング剤を使用して、ポリマーのカルボン酸またはアミド基を、抗凝固剤を含む化合物のヒドロキシ基またはアミノ基にカップリングさせることを含む。そのようなカップリング反応は当技術分野で知られている。
【0245】
[0258]
カップリング反応は、抗凝固基に結合または結合したポリマー鎖を生成する。残っているカップリング剤は、水ですすぐなどで除去してコーティングを形成することができる。
【0246】
[0259]
コーティングは、例えば、ディップコーティング、スプレー、ウォッシュ、ブラシ、ローラー、またはスピンコーティングにより医療デバイスの表面に塗布することができる。あるいは、コーティングは、医療デバイスの内面を被覆するためなどに、医療デバイスを通してポンプで送られてもよい。
【0247】
[0260]
コーティングの厚さは、浸漬時間、流速など、およびコーティングステップの数を変更することによって制御され得る。各コーティングは、一連の用途において本明細書に記載されるように、医療デバイスの表面に提供することができる。用途の数は、必要に応じて、適切な厚さの個々の被覆された層、ならびに複数のコーティングの所望の総数を提供するように選択し得る。
【0248】
[0261]
コーティングがベース層を含むとき、ベース層は、表面層の前に医療デバイスの表面に適用され得る。医療デバイスの表面は、タンパク質、好ましくはヒトタンパク質を含んで成る溶液、懸濁液、またはゲルで被覆することができる。タンパク質はアルブミンであり得る。アルブミンは、ヒトアルブミン、好ましくは組換えヒトアルブミンであることが好ましい。
【0249】
[0262]
本発明はまた、医療デバイスの表面を被覆する方法を提供し得る。この方法は、上記のようなコーティングを医療デバイスの表面に塗布することを含んで成る。コーティングは、表面層を形成するために適用され、例えば、上記のように適用され得る。
【0250】
[0263]
表面層のコーティングは、予め形成され得る。よって、本発明に従って抗凝固基に取り付けられたまたは結合されたポリマー鎖は、医療デバイスの表面に、または存在する場合は医療デバイスの表面のベース層に直接適用することができる。
【0251】
[0264]
あるいは、抗凝固基に取り付けられたまたは結合したポリマー鎖は、医療デバイスの表面上に(例えば、インサイチュで)形成され得るか、または存在する場合、医療デバイスの表面上のベース層に形成され得る。したがって、コーティングは、好ましくは医療デバイス用のコーティングを製造する方法に従って、医療デバイスの表面またはベース層上に製造することができる。したがって、抗凝固剤、ポリマー、およびカップリング剤を含んで成る化合物を、医療デバイスの表面、または存在する場合はベース層に適用することができる。抗凝固剤を含む化合物は、医療デバイス用のコーティングを製造する方法について説明したように、カップリング剤を使用してポリマーに取り付けるまたは結合する(取り付けてまたは結合して、例えば、コーティングを形成する)ことができる。
【0252】
[0265]
この方法は、カップリング剤を使用して、抗凝固剤を含んで成る化合物をポリマーに取り付けるまたは結合させることを含み得る。抗凝固剤は、血液適合性剤と呼ばれることもある(すなわち、「抗凝固剤」という用語は、「血液適合性剤」という用語と同義である)。
【0253】
[0266]
医療デバイスの表面は、すでにベース層で被覆されていてもよい。よって、この方法はまた、医療デバイスの表面にベース層を適用(または塗布)すること、または医療デバイスにコーティングを適用して、上記のようなベース層を形成することを含み得る。この文脈におけるコーティングは、ベース層を形成するためのコーティングである。
【0254】
[0267]
ベース層がすでに医療デバイスの表面に塗布されているとき、表面層を形成するために塗布されたコーティングは、医療デバイスの表面上のベース層に塗布され得る。
【実施例】
【0255】
実施例
[0268]
本発明は、以下の非限定的な例によって説明される。
【0256】
実施例1
ウシ血清アルブミンコーティング
[0269]
ウシ血清アルブミン溶液を、pH4.5(HClおよびNaOH滴定による)および約25mg/100mLの濃度の蒸留水緩衝液中で調製した。
【0257】
[0270]
PVCチューブのサンプルを、この溶液中で室温で0~1時間穏やかに回転させながらインキュベートして、ウシ血清アルブミンで被覆されたサンプルを生成した。
【0258】
[0271]
続いて、すべてのアルブミン被覆サンプルをDI水に15分間浸し、そして乾燥させた。
【0259】
ポリ(マレイン酸-コ-アクリル酸)コーティング
[0272]
pH4.5のポリ(マレイン酸-コ-アクリル酸)ポリマーの1mL/200mL溶液を調製した。サンプルをこの溶液中で室温で0~1時間穏やかに回転させながらインキュベートした。続いて、すべてのサンプルを脱イオン(DI)水に15分間浸し、そして乾燥させた。
【0260】
[0273]
アルブミンおよびポリ(マレイン酸-コ-アクリル酸)を架橋するために、pH4.5の蒸留水中の500mgのEDC(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩)を使用した。アルブミンおよびポリ(マレイン酸-コ-アクリル酸)の両方で被覆されたサンプルを、この溶液中で15分~1時間インキュベートした。次に、被覆されたサンプルを取り出し、脱イオン水ですすぎ、そして乾燥させた。
【0261】
[0274]
スルホン酸基改質コーティング
次に、サンプルを処理して、ポリ(マレイン酸-コ-アクリル酸)ポリマーをタウリンで架橋させた。HClおよびNaOHの滴定により、pH8.3の蒸留水溶液を調製した。500mgのEDC(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩)および500mgのタウリン(2-アミノスルホン酸)を、100mLのpH8.3溶液中の被覆されたサンプルに添加した。被覆されたサンプルは、架橋が起こることを可能にするために3~24時間インキュベートされた。次に、被覆されたサンプルを脱イオン水ですすぎ、そして乾燥させた。
【0262】
[0275]
被覆されたサンプルをトルイジンブルーで処理した。トルイジンブルーは、コーティングに存在するスルホン酸基のような酸性基に対して高い親和性を有する。処理後、被覆されたサンプルは青/紫の色を示し、スルホン酸基の存在を確認した。
【0263】
ヘパリンコーティング(比較)
[0276]
市販のコーティングは、Coatings2Go(商標)から入手し、提供された指示を使用して基材に塗布した。コーティングは親水性コーティングであり、アクリレートに由来するポリマー繰り返し単位を含んでいた。ヘパリンは、上記のようにEDCを使用した化学架橋によって被覆された基材に結合された。
【0264】
研究と結果
全血アッセイ法
[0277]
コーティングの抗凝固活性を測定するために、全血アッセイ実験を実施した。
【0265】
実験1-羊の全血
瀉血後24時間以内にクエン酸ヒツジ全血を使用して実験を実施した。実験開始直前(T0)に、塩化カルシウム0.025M(Hemosil)を9:1の比率で使用して血液を再石灰化した。実験は、以下のPVCチューブサンプルを使用して実行された。
【表1】
【0266】
[0279]
測定を行う前に、各サンプルの3部構成(またはトリプリケート;triplicate)を、静的条件(T3時間、T6時間、およびT12時間)で37℃で1mLの血液と共にインキュベートした。表1に示すように、被覆されていない2mLチューブ(サンプルC)を対照(control)として使用した。インキュベーションの前後にチューブの重さを量った。続いて、チューブを計量ボートで逆さにし、血餅に触れることなくティッシュペーパーを使用して余分な液体を吸収した。各血餅の重量は、微天秤を使用して測定され、計量ボートの重量を差し引くことによって得られた。それらの結果を表2および
図1のヒストグラムに示す。
【表2】
【0267】
[0280]
各血餅も写真撮影された(
図2を参照)。左の写真((E)のラベル)は対照に対応している。右側の写真((A)~(D)のラベルを付して、上記の表2のサンプルに対応されている)は、各タイプのサンプルの3部構成を示している。被覆されていないサンプル(C)と他のサンプル((A)、(B)、(D))との血餅形成の違いを写真で見ることができる。
【0268】
[0281]
3時間後、対照チューブ(E)または4つのサンプル(A)~(D)のいずれにも凝固は観察されなかった。6時間後には非常に限られた凝固が観察されたが、実際の固い血餅は形成されませんでした。12時間後、サンプル(A)、(B)、(D)で凝固がはっきりと観察された。血餅の測定を行った(参照:表2および
図1を参照)。次に、以下の統計分析を実行した後、Post-Hoc試験を実行した。
【0269】
統計分析
[0282]
一元配置分散分析(one-way ANOVA)を4つのサンプルすべてに対して実施し、続いてテューキーHSD試験を実施した。
【表3】
【表4】
【0270】
[0283]
ANOVA分析からの結論として、一元配置分散分析のF統計量に対応する表4のp値は0.05未満であり、1つまたは複数の処理が有意に異なることを示唆している。
【0271】
[0284]
Post-Hoc試験は、処理の対のどれが互いに有意に異なるかを特定する可能性が高い(テューキーHSD試験)。
【表5】
【0272】
[0285]
テューキーHSD試験において、一元配置分散分析のF統計量に対応するp値が0.01未満であるとき、結果は、サンプルの対に関連する効果が有意に異なっていたことを強く示唆している。
【0273】
[0286]
本発明のコーティング(D)とヘパリンコーティング(A)との間の血餅形成に統計的に有意な差はなかった。
【0274】
実験2-羊の全血
[0287]
実験1の全血アッセイについての上記の実験条件もまた、この実験に使用された。簡単に説明すると、サンプルを静的条件で37℃の血液1mLとともに3部構成において一晩インキュベートした。クエン酸処理した全血は、実験開始直前(T0)に塩化カルシウム0.025 M(Hemosil)を9:1の比率で使用して再石灰化した。表6に示すサンプルは、上記の方法を使用して準備された。
【表6】
【0275】
[0288]
0.5U/mLの最終濃度の液体ヘパリンからなる3部構成の対照が実験に含まれた(「H」とラベルを付された)。
【0276】
[0289]
前述のように、血餅を微妙なバランスで秤量し(参照:表7および
図3)、また写真を撮った(
図4を参照)。
【表7】
【0277】
[0290]
4つのサンプルタイプ間の分散分析の形での統計分析を実施し、続いてPost-Hoc試験を実施した。Levene試験は分散が等しい(p=391)と仮定したため、ANOVAを実行し(参照:表8)、続いてテューキー試験およびBonderroni試験を実行した(表3)。
【表8】
【0278】
[0291]
一元配置分散分析のF統計量に対応する表8のp値は、サンプルが有意差を示すことを示唆している。以下のPost Hoc試験は、サンプル間のペアワイズ統計比較を示す。
【表9】
【0279】
[0292]
両方のPost Hoc試験は、同様の結果を示した(参照:表9、特に、ptukeyおよびpbonfを用いる)。サンプルB3は、他のすべてのサンプル、つまりB4、B5、および対照Hとの有意差を示している。サンプルB4は、対照Hとは大幅に異なるが、サンプルB5とは異なる。サンプルB5および対照Hは大きな違いを示していない。
【0280】
実験3-人間の全血
[0293]
上記の全血アッセイの実験条件はまた、ヒトの血液が使用されことを除き、この実験に使用されたが、追加の複製(3回ではなく6回)、実験前のチューブの生理食塩水リンス(PBS 0.1M)および測定前の血餅の回転ステップ(0.1g、1分)があった。
【0281】
[0294]
ヒト全血を、前日(午後4時)にクエン酸ナトリウム緩衝液(3.2%)に瀉血によって収集し、実験前に4℃で一晩保存した。実験開始直前に、塩化カルシウム(2.06%)を9:1の比率で使用して血液を再石灰化した。サンプル(それぞれの6つの複製)を静的条件で37℃で1mLの血液とともに一晩インキュベートした。2mLポリプロピレンエペンドルフチューブを上記のように被覆した。試験されたサンプルは、ヘパリン被覆されたチューブ(H)、アルブミン被覆されたチューブ(A)、本発明のスルホン酸基修飾コーティング(S)、PEGで被覆されたチューブ(P)および被覆されていないチューブ(U)であった。0.5U/mLの最終濃度の液体ヘパリンからなる追加の対照(L)が実験に含まれていた。血栓は微妙なバランスで計量された。結果を表10に示し、
図5にグラフで示す。サンプルの写真を
図6に示す。さまざまな化合物でコーティングされたチューブで一晩インキュベートした後の全血の血餅からの質量を比較した(重量と写真)。
【表10】
【0282】
[0295]
6つのサンプルタイプ間の分散分析(表11)の形での統計分析を実施し、続いてPost-Hoc試験(表4)を実施した。
【表11】
【表12】
【0283】
[0297]
コーティングについては、血餅Sが最も軽く、血餅Uが最も高い質量を示した。全血と液体ヘパリンのインキュベーションからのサンプルLは、予想通り最も軽いものであった。視覚的には、両方ともヘパリンと接触している血餅サンプルLおよびHは、他のすべての血餅とは対照的に、より液体に見え、被覆されていないチューブで得られたものに似ていた(ネガティブ対照)。
【0284】
[0298]
分散分析(ANOVA)の形での統計分析は、6つのタイプのサンプル間の有意差を示した。テューキーPost-Hoc試験は、サンプルLと他のすべてのサンプルの違いを予想どおりに特定した。サンプルUとSとの間でも違いは有意であったが、SとHとの間では有意ではなかった。
【0285】
実験2
[0299]
本発明のコーティングを、インビトロチャンドラーループシステム(商標)を使用して市販のコーティングと比較した。
【0286】
コーティング
[0300]
試験されたコーティングは、以下の表13に示されている。各コーティングは、コーティングをチューブに塗布することによって試験された。市販の参照コーティングには、R1~R4の番号が付けられている。コーティング番号5は、本発明のコーティング(スルホン酸基修飾コーティング)であり、実施例1に記載されるように調製された。被覆された各サンプルの長さは47cmであり、「n」は血液供与者の数である。
【表13】
【0287】
[0301]
対照として、血液サンプル対照の両方を使用してベースラインを提供し、被覆されていないチューブを参照として使用した。
【0288】
チャンドラーループモデル
[0302]
コーティングを臨床設定で使用する前に、標準化された条件下で血液に接触する医療デバイスの血液適合性を試験することが不可欠である。インビトロチャンドラーループモデルは、ヒト止血システムの異なるカスケード反応(凝固、細胞変化、補体および炎症)を開始するための人工表面の効果を調査することができる閉鎖系である。チャンドラーループシステムでは、部分的に血液で満たされたポリマーチューブが再閉鎖可能なループに形成され、温度制御された水槽内で10~40RPMの回転速度で回転して、動脈の流れの条件をシミュレートする。マルチパラメトリックアプローチを使用して表面を評価し、これは、血栓症の評価だけでなく、止血システム内で中心的な重要性を有する表現マーカーも測定した。被覆チューブは、新鮮なヒト全血を用いたインビボ チャンドラーループモデルを使用して、血液適合性について試験された。
【0289】
[0303]
対照(ベースライン)は、血液ループ接触を有さなかったが、各被覆されたチューブは、ループ内で60分間の血液灌流に供された。血液は5人の健康なボランティアから使用された。これらの実験に使用される血液の質は決定的に重要である。血液提供者の次の除外基準を厳密に満たす必要がある:過去2週間の止血に影響を与える薬物摂取。
【表14】
【0290】
血栓形成性
[0304]
2つの実験(ドナー1および2)のSEM(LEO 1430、Zeiss)分析は、すべてのグループにおいて実際の血栓形成の兆候を示さなかった。被覆されていないチューブの表面、およびコーティング番号R1、R4、および5で、血小板の付着が少ないことが観察された。
【0291】
凝固
[0305]
血液と物質の接触は、第XII因子、第XI因子、およびプロトロンビン変換を調節するさらなる第X因子を介して内因性凝固を開始する。トロンビン形成の反応中に、プロトロンビンフラグメントF 1+2が分離される。生成されたトロンビンは、アンチトロンビンがいわゆるTAT複合体を形成する複合体形成によって不活化される。TATの血漿中濃度は、凝固活性化を検出するためのマーカーであり、ELISAを備えたSiemens(商標)自動イムノアッセイアナライザーを使用して免疫化学的に測定された。
【0292】
[0306]
結果を
図7に示し、ここで、x軸上のコーティングは、上記の表13に記載された番号付けを使用し、「B」はベースラインを表し、「C」は対照を表す。この調査において、本発明のコーティングは、R1、R2およびR4と番号が付けられた市販のコーティングに匹敵することが見出された。減少したTAT濃度は、コーティング番号R3についてのみ測定された。
【0293】
血小板
[0307]
血液と人工表面との接触は、血小板の活性化および変化をもたらし、血小板機能の連続的な喪失をもたらす。血小板が人工表面と接触すると、血小板はこの表面に付着し始める。その後、それらは互いにくっつき始め、集合体を形成する。結果として生じる血小板数の低下は、血液接触装置の血液適合性の重要なマーカーである。血小板は、セルカウンター(Micros 60、ABX Hematology、モンペリエ、フランス)を使用してカウントされた。
【0294】
[0308]
結果を
図8に示す。60分の試験期間中、血小板数は、対照群(C)において穏やかに減少した。同様の値がコーティング番号R1~R4および5で検出された。
【0295】
β-トロンボグロブリン(β-TG)
[0309]
血小板の活性化は、4つのステップで起こる:仮足の形成を伴う形状変化、接着、凝集、およびα顆粒からの血小板因子(血小板因子4、β-TGなど)の放出。血漿中のβ-トロンボグロブリン(β-TG)の濃度は、血小板の活性化の程度に対応している。β-TGの濃度を免疫化学的に測定した(ELISA、Diagnostica Stago S.A.S、アニエールシュル セーヌ、フランス)。
【0296】
[0310]
循環のために、β-TGの濃度は、血小板活性化の穏やかな増加を示す対照チューブにおいて増加した。
図9に示す結果を参照されたい。コーティング番号R4および5でも同様のレベルが測定された。コーティング番号R1~R3は、これらのグループと比較してβ-TG濃度の低下を示した。
【0297】
血液学的パラメータ
[0311]
赤血球、白血球、溶血、HGBおよびHCT(下記参照)の数は、それぞれ、セルカウンター(Micros 60、ABX血液学、モンペリエ、フランス)を使用して測定された。
【0298】
赤血球(RBC)および白血球(WBC)
[0312]
任意の人工表面と接触しているWBCは、この表面に付着し、想定される病理学的インベーダー(または侵入者;invader)と戦おうとする可能性がある。この反応は、WBC数の低下につながり、血液接触デバイスの血液適合性の重要なマーカーである。RBCの膜が高せん断力によって破壊されたとき、この反応はRBCの低下につながる。
【0299】
[0313]
図10および
図11の結果を参照されたい。赤血球および白血球の数は、60分の灌流期間の間安定していた。
【0300】
溶血
[0314]
赤血球破壊は、遊離血漿ヘモグロビンを測定することによって定量化された。結果を
図12に示す。試験群の間で有意差は検出されなかった。
【0301】
ヘモグロビン(HGB)およびヘマトクリット(HCT)
[0315]
結果を
図13および
図14に示す。HGB濃度およびHCT濃度は、60分の灌流期間中非常に安定していた。
【0302】
結論
[0316]
60分のインキュベーション期間中、活性化マーカーの血漿濃度、血球変化、ならびに血小板接着は、本発明のコーティング(番号5)で被覆されたチューブが、市販のコーティングで被覆されたすべての他のチューブと比較したとき、いくつかの止血活性化カスケードに対して同等の効果を有することを示した。凝固活性化の検出のための優れたマーカーであるTAT形成に関して、本発明のコーティング(番号5)により誘導され、測定されたTAT濃度は非常に低かった。全体として、本発明のコーティングの血液適合性試験の結果は、良好な血液適合性を示している。
【0303】
実施例3
細胞毒性試験法
[0317]
この方法は、インビトロで哺乳動物細胞の生物学的応答を決定するように設計されている。マウス線維芽細胞L929細胞を増殖培地で培養して使用した:L929細胞(血清にアールの塩を補充したダルベッコのMOD培地(改変))。
【0304】
[0318]
本発明のコーティング(スルホン酸基修飾コーティング)のサンプルは、実施例1に記載されるように調製された。要求された抽出比6cm2/mlを達成するために、それぞれ285.89cm2の内部表面積を表す2つのサンプルは、攪拌条件下で、それぞれ47.7mlの抽出培地:各チューブ内のL929細胞で別々に抽出した。抽出後、抽出剤を滅菌ガラス瓶にプールした。抽出剤は、ウシ胎児血清(5%)およびペニシリンおよびストレプトマイシン(50001U)を添加した、アール塩を含む最小必須培地イーグル(改変)から調製した。計算では、すべての主要な表面の面積が考慮されたが、試験品のエッジや多孔性は考慮されていなかった。
【0305】
[0319]
最終抽出物体積1ミリリットルあたりのポジティブおよびネガティブ対照材料の界面面積は、1mlあたり0.5cm2以上であると計算された。
【0306】
[0320]
ポジティブ対照ストリップ(ハタノ研究所製品コード:RM-B)、0.25%のジブチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZDBC)を含むポリウレタンフィルムを使用した。材料は非滅菌で受け取った。その材料は必要なサイズ(1cm×1cm)に事前にカットされた。各テストランには3個の材料が必要なため、すべてのピースをオートクレーブバッグにパッケージし、121℃で15分間滅菌した(各バッグに3個入り)。6.6cm2の総表面積を表す、それぞれが1.0cm×1.0cm×0.05cmの3つの断片を、攪拌条件下で、13.2mlの抽出媒体で抽出した。
【0307】
[0321]
ネガティブ対照については、この試験において細胞毒性応答を生じないことが知られている一片のポリエチレンチューブ(科学実験室用品製品コード:TUB3708)を使用した。ネガティブ対照は長さ2.0cm、外径0.6cm、内径0.4mmであり、攪拌条件下で12.6mlの抽出媒体に抽出された総表面積は6.3cm2であった。
【0308】
[0322]
試験手順は、ISO 19093-5およびMV033に従って実施された。サンプルおよび対照は37±1℃で24時間抽出された。以下の濃度の試験品抽出物およびポジティブ対照抽出物を試験に使用した:100%、50%、25%、13%および6%。細胞培養物を37±1℃で24時間抽出物に曝露した。細胞培養物の顕微鏡検査は、固定および染色せずに抽出物への曝露の完了時に行われた。細胞毒性の決定は定性的に行われ、観察は数値的に等級分けされた。各培養物で観察された細胞毒性の程度は、以下のように数値的に等級分けされた。
【表15】
【0309】
結果
[0323]
細胞対照についての表16および表17の結果から分かるように、ネガティブ対照およびポジティブ対照は、試験が有効であったことを示している。表18に示すように、100%の濃度での試験サンプル(本発明)の反応性等級付けは、使用された試験条件下で0であった。本発明のコーティングは、細胞培養に対して非反応性であった。
【0310】
[0324]
ISO 10993-5:2009に従って、表15に基づく2より大きい数値等級の達成は、細胞毒性効果と見なされる。
【表16】
【表17】
【表18】
【国際調査報告】