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▶ アルコ フューエル セルズ ソチエタ レスポンサビリタ リミタータの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-01
(54)【発明の名称】電源システム
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/00 20060101AFI20230125BHJP
   H02J 7/34 20060101ALI20230125BHJP
   H02J 1/00 20060101ALI20230125BHJP
   H01M 8/249 20160101ALI20230125BHJP
   H01M 8/04537 20160101ALI20230125BHJP
   H01M 8/04858 20160101ALI20230125BHJP
   H01M 8/04992 20160101ALI20230125BHJP
   H01M 8/00 20160101ALI20230125BHJP
【FI】
H02M3/00 H
H02J7/34 D
H02J1/00 306B
H01M8/249
H01M8/04537
H01M8/04858
H01M8/04992
H01M8/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022532036
(86)(22)【出願日】2020-11-26
(85)【翻訳文提出日】2022-07-01
(86)【国際出願番号】 IB2020061181
(87)【国際公開番号】W WO2021105921
(87)【国際公開日】2021-06-03
(31)【優先権主張番号】102019000022389
(32)【優先日】2019-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522211357
【氏名又は名称】アルコ フューエル セルズ ソチエタ レスポンサビリタ リミタータ
【氏名又は名称原語表記】ARCO FUEL CELLS S.R.L.
【住所又は居所原語表記】Via Ercolana 670, 40059 Medicina (Bologna), Italy
(74)【代理人】
【識別番号】100159905
【弁理士】
【氏名又は名称】宮垣 丈晴
(74)【代理人】
【識別番号】100142882
【弁理士】
【氏名又は名称】合路 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100158610
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 新吾
(74)【代理人】
【識別番号】100132698
【弁理士】
【氏名又は名称】川分 康博
(72)【発明者】
【氏名】ダンツィ,アンジェロ
【テーマコード(参考)】
5G165
5G503
5H126
5H127
5H730
【Fターム(参考)】
5G165DA01
5G165EA02
5G165EA04
5G165HA01
5G503AA05
5G503BA01
5G503BB02
5H126AA21
5H127AB04
5H127AB11
5H127AB29
5H127BA02
5H127BB02
5H127DB53
5H127DC47
5H730AA02
5H730AA15
5H730AA17
5H730AA20
5H730AS01
5H730AS04
5H730AS17
5H730FD11
5H730FF01
5H730FF09
5H730XX02
5H730XX12
5H730XX22
5H730XX32
5H730ZZ07
(57)【要約】
電源システム(1)が説明される。電源システム(1)は、燃料電池のスタック(2)およびスタック(2)の極での電圧を調整するためのデバイス(4)を備える。デバイス(4)は、スタック(2)の極間も接続され且つそれらの間の電圧降下を生成するための抵抗負荷(5)、および抵抗負荷(5)と直列に挿入され且つ開構成と閉構成との間で作動することができる制御スイッチ(6)を備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源システムであって、
複数の燃料電池を備え且つ正極(2a)および負極(2b)を有する燃料電池のスタック(2)を備える発電システム(2、3)と、
前記正極(2a)と前記負極(2b)との間の電圧を調整するためのデバイス(4)と、を備え、前記調整デバイス(4)は、
前記正極(2a)と前記負極(2b)との間に電圧降下を生成するために、前記正極(2a)と前記負極(2b)とに接続された少なくとも1つの抵抗負荷(5)と、
前記正極(2a)と前記負極(2b)との間に前記抵抗負荷(5)と直列に挿入され且つ開構成と閉構成との間で作動することができる少なくとも1つの制御スイッチ(6)と、
前記制御スイッチ(6)と通信する制御デバイス(7)であって、前記スタックの端子の前記正極(2a)と前記負極(2b)との間で測定された電圧値と所定の最大電圧値との間の差として電圧誤差(ΔV)を計算するためのコンパレータ(8)を備え、前記電圧誤差(ΔV)の関数として、前記開構成から前記閉構成に、および前記閉構成から前記開構成に、前記制御スイッチ(6)を作動させるように構成されている、制御デバイス(7)と、を備える電源システム。
【請求項2】
前記所定の最大電圧値は、前記スタック(2)を構成する前記燃料電池の数の関数である、請求項1に記載の電源システム。
【請求項3】
前記所定の最大電圧値は、前記電源システムによって再充電可能な電池パック(101)の要素の数の関数である、請求項1または2に記載の電源システム。
【請求項4】
前記コンパレータ(8)は電圧センサを備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の電源システム。
【請求項5】
前記コンパレータ(8)は電流センサを備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の電源システム。
【請求項6】
前記制御デバイス(7)は、前記コンパレータ(8)と通信するコンピュータ化されたコマンドおよび制御ユニット(9)を備え、前記コンピュータ化されたコマンドおよび制御ユニット(9)は、前記電圧誤差(ΔV)の関数として制御信号(S)を生成し、前記制御信号(S)によって前記制御スイッチ(6)を作動させるように構成されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の電源システム。
【請求項7】
前記制御スイッチ(6)は、前記コンパレータ(8)と通信する電圧制御リレーによって規定されており、前記リレーは、前記電圧誤差(ΔV)によって、前記開構成と前記閉構成との間で作動される、請求項1から6のいずれか一項に記載の電源システム。
【請求項8】
技術システムであって、請求項1から7のいずれか一項に記載の電源システム、燃料電池の前記スタック(2)によって電力が供給される複数の個別の要素を備える電池パック(101)、燃料電池の前記スタック(2)および/または前記電池パック(101)によって電力が供給される電気負荷(102)を備え、前記電気負荷(102)および前記電池パック(101)は、前記抵抗負荷(5)および前記制御スイッチ(6)を含む系と並列に燃料電池の前記スタック(2)に接続されている、技術システム。
【請求項9】
前記所定の最大値は、前記電池パック(101)によって許容される最大電圧値に対応する、請求項8に記載の技術システム。
【請求項10】
前記コンピュータ化されたコマンドおよび制御ユニット(9)は、前記電池パック(101)の個々の要素の数の関数として前記制御信号(S)を生成するように構成される、請求項8または9および6に記載の技術システム。
【請求項11】
前記コンピュータ化されたコマンドおよび制御ユニット(9)は、燃料電池の前記スタック(2)の燃料電池の数の関数として前記制御信号(S)を生成するように構成される、請求項8から10のいずれか一項および6に記載の技術システム。
【請求項12】
前記電気負荷(102)は、燃料電池の前記スタック(2)によって電力を供給される動作負荷(103)を備える、請求項8から11のいずれか一項に記載の技術システム。
【請求項13】
前記電気負荷(102)は、燃料電池の前記スタック(2)の動作のために燃料電池の前記スタック(2)と通信する補助構成要素(3)を備える、請求項8から12のいずれか一項に記載の技術システム。
【請求項14】
前記電池パック(101)はリチウム電池パックである、請求項8から13のいずれか一項に記載の技術システム。
【請求項15】
請求項8から14のいずれか一項に記載の技術システムを制御するための方法であって、
燃料電池の前記スタックの前記正極と前記負極との間の電圧値を測定するステップと、
燃料電池の前記スタックの前記正極と前記負極との間で測定された前記電圧値と、好ましくは前記電池パックの前記最大許容電圧値に対応する前記所定の最大電圧値との間の前記電圧誤差を計算するステップと、
前記電圧誤差が正の場合に、前記制御スイッチを作動させて、それを前記閉構成に移行させるステップと、を含む方法。
【請求項16】
前記電圧誤差が負の場合に、前記制御スイッチを作動させて、それを前記開構成に移行させるステップを含む、請求項15に記載の制御方法。
【請求項17】
燃料電池のスタックから電池パックを再充電するための方法であって、
燃料電池の前記スタックから前記電池パックに直接電力を供給するステップと、
燃料電池の前記スタックの前記正極(2a)と前記負極(2b)との間の電圧を調整するステップとを含み、
前記調整ステップは、もっぱら調整デバイス(4)によって実行され、前記調整デバイス(4)は、前記正極(2a)と前記負極(2b)との間の電圧降下を生成するための、前記正極(2a)および前記負極(2b)に接続された少なくとも1つの抵抗負荷(5)と、前記正極(2a)と前記負極(2b)との間に前記抵抗負荷(5)と直列に挿入され且つ開構成と閉構成との間で作動することができる少なくとも1つの制御スイッチ(6)とを備え、
前記再充電方法は、燃料電池の前記スタックの前記端子の前記正極(2a)と前記負極(2b)との間で測定された電圧値と所定の最大電圧値との差として計算される電圧誤差(ΔV)の関数として前記制御スイッチを制御するステップを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源システム、特に、電池、例えばリチウム電池の充電に適した、燃料電池に基づく発電システムから始まる電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、概略的に、水素と酸素を直接化学結合させる発電デバイスである。これらの2つの試薬は、燃料電池のスタック、すなわち、適切な触媒膜によって分離された適切な材料で作られた一連のプレートに適切に運ばれる。各々触媒膜の片側にあるプレートの表面に形成された適切なフローチャネル内を流れる試薬は、水蒸気と、電流であり且つスタックの極の電圧を決定する電子の流れと、を生成するように結合する。
【0003】
この電圧は調整されず、非常に可変の値をとり得、また、スタックすなわち燃料電池のいわゆる分極曲線(その例は図3に示される)の関数として、スタックによって吸収される出力電流によって決まる。
【0004】
スタックに加えて、発電システムは、燃料電池の正しい動作に必要な追加のデバイスによって形成される、いわゆるバランスオブプラント(BOP)を備える。スタックから供給される一定量の電流を吸収するBOPは、例えば、スタックの内部に空気をポンプで送り込むための換気システムと、水素用の、およびセルを冷却するためのシステム用の一連の弁とを備える。
【0005】
スタックの極で測定される電圧は、前述のように、スタックに必要な電流の関数として大きなばらつきを持ち得る。特有の分極曲線に従う燃料電池の出力電圧は、例えば、開回路電圧、すなわち、出力負荷がない場合の電圧に対して、半分に減少し、3分の1以下になり得る。
【0006】
図3に示されているように、スタックの極での電圧降下は、負荷が加えられた場合(つまり、電流が吸収された場合)に完全に線形になる傾向を持たない。負荷の同じ変動は、所定の電圧において、より低い電圧で見られるよりも大きな電圧の低下を引き起こす。
【0007】
言い換えれば、スタックが開回路を持つ場合に所与の負荷変動がセルに加えられると、以前の負荷がスタックでアクティブである場合よりも大幅に大きな電圧降下を発生させる。
【0008】
リチウムイオン電池パック(以下、単に電池またはリチウム電池とも呼ばれる)は通常、一連の個々の要素からなり、その最大および最小公称電圧は、電池で使用される特定の化学物質に依存する。
【0009】
電池の各要素には、最大適用電圧があり、最大適用電圧は、電池パック内の要素数を乗じると、例えば再充電中に、パック自体に適用できる最大電圧をもたらす。
【0010】
したがって、リチウム電池に適用される電圧は、正確な範囲内にとどまる必要がある。
【0011】
電池の極の過電圧は、例えば、電池に損傷を与える、またはリチウム電池内に非常に高い電流を持つことにつながり、結果として過熱および火災または爆発のリスクを伴い得る。
【0012】
したがって、少なくとも電池パックへのスタックの接続には、燃料電池の極の電圧を調整でき且つ関連する電流を扱うことができる特定の中間デバイスが必要である。
【0013】
従来の接続デバイスは、燃料電池の電圧をリチウム電池パックが許容できる電圧に調整するために、スタックと電池パックとの間に配置された適切な能動電子回路、例えばDC/DC電力コンバータを使用する。
【0014】
さらに、一般に、DC/DCコンバータは、調整された電圧を必要とする負荷にスタックを接続することを可能にするのみであるが、電池パックがまた接続されている場合、適切な電池充電器がまた必要であり、適切な電池充電器は、DC/DCからの出力で調整された電圧を入力として受け取り、電池の充電をさらに調整する。
【0015】
特許文書US2018026463A1は、いわゆるブーストコンバータを使用して、燃料電池の電圧をリチウム電池パックが許容できる電圧に調整する電源システムを示す。上記のシステムがいかに単純であり得るかにも関わらず、ブーストコンバータはかなりの複雑さとコストを持つ。
【0016】
一般に、スタックと電池パックの間に挿入されたデバイス、例えば言及がなされるDC/DCコンバータ、つまり能動デバイスまたは電子回路は、時間の経過に伴うかなりの変動を受け入れながら、燃料電池からの出力電圧を変換して実質的に安定した電圧を提供する。
【0017】
DC/DCコンバータは、電池パックとそれに接続されている関連する負荷とに送信できる電流全体と関連する電力とを制御できる必要がある。
【0018】
数千または数万ワットのオーダーのかなりの出力の場合、そのようなデバイスの複雑さ、および初めに関連するコストは、それぞれ非常に高い値に達し得る。
【0019】
さらに、DC/DCコンバータの効率は85%に達しそうになく、したがって、エネルギーの一部が熱の形で失われ、当該熱はサイズおよび重量を増加させる適切な散逸装置または液体冷却システムによってコンバータ内で放散される必要がある。
【0020】
電力コンバータに関連する別の問題は、MOSFETやIGBTなどの能動電力スイッチング部品の使用によって引き起こされる電磁放射の問題である。これらの部品は、スイッチング中に重大な電磁波による障害を生成するので、適切に保護される必要がある。
【0021】
市場で入手可能なDC/DCコンバータは通常、また、標準の電池電圧、つまり、例えば公称24Vまたは36Vまたは48Vまたは96Vを扱うことができる。
【0022】
前述のように、各電池パックが直列の複数の個々の要素を備えるという事実を考慮すると、ユーザは、したがって、専用のDC/DCコンバータが開発またはカスタマイズされない限り、必要な数の要素を選択する可能性に悪影響を与える所定数の要素を使用する必要がある。
【0023】
さらに、DC/DC電力コンバータは、動作中に火花を発生させ得るので、適切な対抗策がない限り(例えば、ATEX規格を参照)、可燃物の近くで使用することはできない。
【0024】
航空機など、十分に換気できない、爆発の危険性を持つ環境向けに特別に設計されたDC/DCコンバータの代替の解決策は、特許文書US2016159492A1に記載および図示されている。
【0025】
特に特許文書US2016159492A1の図面に示され且つそのセクション43-48に記載されているように、DC/DCコンバータの代わりに、燃料電池と電池との間に配置された電池充電器29が概略的に使用される。実際には、接触システムを使用することにより、エネルギーが電池充電器に供給され、電池充電器は適切な充電曲線で電池に電力を供給して充電する。このように、上記の理由により、燃料電池が電池に直接接続されることは決してない。
【0026】
電池充電器でさえ、燃料電池の電圧のような非調整電圧で入力に電力を供給することができないので、特許US2016159492A1によるシステムは、セルからの出力の電圧を電池充電器の許容値にするために、電池充電器に常に並列に接続される抵抗器34を備えることに留意されたい。
【発明の概要】
【0027】
これに関連して、本発明の主な目的は、上記の欠点を克服することである。
【0028】
本発明の目的は、従来技術のシステムよりも単純な、燃料電池に基づく電源システムを提供することである。
【0029】
本発明の目的は、電池、例えば、好ましくは任意の数の要素を有するリチウム電池を充電するためにも使用することができる、燃料電池に基づく電源システムを提供することである。
【0030】
本発明の目的は、従来の解決策よりも低い動作温度を有する、リチウム電池を充電するためにも設計された電源システムを提供することである。
【0031】
本発明の目的は、電磁放射が低減された、電池を充電するための電源システムを提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
本発明のさらなる特徴および利点は、電源の好ましいが非排他的な実施形態の以下の非限定的な説明においてより明白である。
図1】本発明による電源システムの第1の実施形態の技術システムのブロック図を示す。
図2】本発明による電源システムの第2の実施形態の技術システムのブロック図を示す。
図3】燃料電池の分極曲線の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
特に図1および2を参照すると、数字100は、本発明による技術システムを示す。
【0034】
技術システム100は、ブロック101で概略的に示されている電池パックと、電池パック101によって電力が供給されるブロック102で概略的に示されている電気負荷とを備える。
【0035】
電池パック101は、図示されていない実質的に既知のタイプの複数の個々の再充電可能で且つ適切に接続された基本要素を備える。電池パック101は、正極101aおよび負極101bを有する。
【0036】
リチウム電池パック101内の要素の数は、例えば、電池パックの充電中または再充電中に、電池パックに適用可能な最大電圧を提供する。
【0037】
好ましくは、個々の基本要素、および、したがって、電池パックはまた、リチウムイオンタイプである。
【0038】
システム100は、電力を供給するための、すなわち、電池パック101を充電するための、および/または電気負荷102に電力を供給するための、総称的に1でラベル付けされた電源システムを備える。
【0039】
したがって、電気負荷102は、好ましくは、電池パック101および/または電源システム1によって電力を供給される。
【0040】
電源システム1は、実質的に既知のタイプの燃料電池のスタックを備える、ブロック2で概略的に示される発電システムを備え、燃料電池のスタックは、スタックの「端子」とも呼ばれる正極2aおよび負極2bを有し、図示されていない複数の燃料電池を形成する。
【0041】
概略的に、スタック2は、水素と酸素の直接的な結合を可能にし、これらは、適切なフローチャネル内を流れ、スタックの端子の電圧V、つまり正極2aおよび負極2bの間の電圧Vを決定する電子の流れと水蒸気とを生成するように結合する。
【0042】
発電システムはまた、スタック2の動作のために燃料電池のスタック2と通信する、ブロック3で概略的に示された補助構成要素を備える。
【0043】
これらの補助構成要素は、以下で言及がなされるスタック2のいわゆるBOP(バランスオブプラント)を構成する。
【0044】
スタック2のBOPは実質的に既知であり、燃料電池の正しい自動動作のために必要なさらなるデバイスによって形成される。スタック2によって一般的に供給される一定量の電流を吸収する、すなわち、好ましくはスタック自体によって電力を供給されるBOPは、例えば、スタック2内に空気を送り込むための換気システムと、水素用の、およびスタック2の燃料電池を冷却するためのシステム用の一連の電磁弁とを備える。
【0045】
電気負荷102は、BOP3および動作負荷(working load)の両方を備え、動作負荷はブロック103で概略的に示され、スタック2および/または電池パック101によって電力を供給され得る。
【0046】
動作負荷の種類は、技術システムの種類に依存する。
【0047】
自動車用途では、動作負荷103は、例えば、自動車移送用のモータによって規定され得る。
【0048】
本発明による好ましい用途では、動作負荷は、リフトトラックの牽引システムによって、および関連するアクチュエータの少なくとも一部によって規定される。
【0049】
電源システム1は、総称的に4でラベル付けされた、スタック2の正極2aと負極2bとの間の電圧を調整するためのデバイスを備える。
【0050】
言い換えれば、調整デバイス4は、実際には、電池パック101の極の電圧を調整する。
【0051】
調整デバイス4は、スタック2の正極2aおよび負極2bに接続されたブロック5で概略的に示された抵抗負荷であって、それらの間に電圧降下を生成するための抵抗負荷を備える。
【0052】
抵抗負荷5は、電流を吸収および放散するように設計された少なくとも1つの電気放散抵抗を備える。
【0053】
抵抗負荷および/または上記抵抗のサイズは、好ましくは、電池パックの個々の基本要素の数および/またはスタック2を構成する燃料電池の数に従って決定される。
【0054】
例えば図3に示す燃料電池の分極曲線を参照すると、既知のように、X軸は電流密度(mA/cm)を示し、Y軸はセル電圧(V)を示し、セルの端子に抵抗負荷をかけると、電流が発生し、セルの端子で電圧降下が発生することに留意されたい。
【0055】
調整デバイス4は、抵抗負荷5と直列に挿入されたブロック6として概略的に表される少なくとも1つの制御スイッチを備え、これは、開構成と閉構成との間で動作することができる。
【0056】
抵抗負荷5と制御スイッチ6は、スタック2の正極2aと負極2bとの間に配置された調整デバイス4の分岐を規定する系を形成し、当該系は、抵抗負荷5がスタック2から電力を供給されない開構成と、抵抗負荷5がスタック2から電力を供給され且つ実際には端子の電位の低下を引き起こす閉構成とを切り替えることができる。
【0057】
したがって、技術システム100は、概略的に、電源システム1、スタック2によって電力が供給される複数の個々の要素を含む電池パック101、および同じくスタック2によって電力が供給される電気負荷102を備え、電気負荷102および電池パック101は、抵抗負荷5および制御スイッチ6を備える系と並列にスタック2に接続されている。
【0058】
好ましくは、制御スイッチ6は、電池パック101によって電力を供給される。
【0059】
調整デバイス4は、制御スイッチ6と通信し且つスタック2の正極2aおよび負極2bと通信する制御デバイス7を備える。
【0060】
制御デバイス7は、スタック2の極での正極2aと負極2bとの間で測定された電圧値Vと所定の最大電圧値Vmaxとの間の差として電圧誤差ΔVを計算するための、ブロック8として概略的に示されるコンパレータを備える。
【0061】
所定の最大電圧値Vmaxは、好ましくは、スタック2を構成する燃料電池の数の関数である。
【0062】
本発明の一態様による技術システム100を考慮すると、所定の最大電圧値Vmaxは、好ましくは、電池パック101の個々の基本要素の数、すなわち、電池パックの充電中または再充電中に電池パック101に適用可能な最大電圧の関数である。
【0063】
好ましい実施形態によれば、所定の最大電圧値Vmaxは、電池パックの充電中または再充電中に電池パック101に適用可能な最大電圧値に対応する。
【0064】
制御デバイス7は、コンパレータ8によって計算された電圧誤差ΔVの関数として、開構成から閉構成に、および閉構成から開構成に、制御スイッチ6を作動させるように構成される。
【0065】
一実施形態によれば、コンパレータ8は、電圧センサを備え得る。
【0066】
一実施形態によれば、コンパレータ8は、電圧センサと組み合わせて、または電圧センサの代替として、電流センサを備え得る。
【0067】
本発明によれば、調整デバイス4は基本的に、正極2aおよび負極2bに接続された抵抗負荷5を備え、抵抗負荷5は、制御スイッチ6を制御するためのデバイス7によって、抵抗負荷5と直列に挿入された制御スイッチ6によって、それらの間に電圧降下を生成させる。
【0068】
図1を参照すると、例として示される実施形態によれば、制御スイッチ6は、好ましくは、電圧制御リレーによって規定される。
【0069】
リレー6は、コンパレータ8と通信しており、開構成と閉構成との間で、正確にはアナログ電圧信号である電圧誤差ΔVによって直接作動する。
【0070】
図2を参照すると、例として示される実施形態によれば、制御デバイス7は、コンパレータ8と通信して電圧誤差ΔVを入力として受け取る、ブロック9として概略的に表されたコンピュータ化されたコマンドおよび制御ユニットを備える。
【0071】
コンピュータ化されたユニット9は、電圧誤差ΔVの関数としてデジタル制御信号Sを生成し、信号Sによって制御スイッチ6を作動させるように構成される。
【0072】
有利には、調整デバイス4は、制御スイッチ6を作動させるための信号Sを決定するために、コンピュータ化されたユニット9と通信する複数の電圧センサを備え得る。
【0073】
この実施形態によれば、制御スイッチ6は、デジタル制御スイッチであり得る。
【0074】
好ましくは、コンピュータ化されたユニット9は、電池パック101の個々の要素の数の関数として制御信号Sを生成するように構成される。
【0075】
好ましくは、コンピュータ化されたユニット9は、スタック2の燃料電池の数の関数として制御信号Sを生成するように構成される。
【0076】
説明されているような技術システム100の好ましい用途は、リフトトラックである。
【0077】
実質的に既知のタイプのリフトトラックは一般に、説明したような技術システム100を備える。
【0078】
実際、リフトトラックは一般に、電気牽引システムおよび複数の電気アクチュエータを備える。
【0079】
電気牽引システムおよび複数の電気アクチュエータは、技術システム100の動作負荷を規定する。
【0080】
リフトトラックは、技術システム100の電池パック101に対応する電池パックを備える。
【0081】
リフトトラックは、スタック2に対応する燃料電池のスタックと、補助構成要素3に対応するBOPとを備える。
【0082】
したがって、リフトトラックのBOP、牽引システムおよびアクチュエータは、リフトトラックのスタックと電池パックの電気負荷を規定する。
【0083】
例えば、電気負荷102に電力を供給し且つ電池パック101の充電を維持することを目的とした、技術システム100を制御するための方法は、
-燃料電池のスタック2の正極2aと負極2bとの間の電圧値Vを測定するステップと、
-測定された電圧値Vと、好ましくは電池パック101の最大許容電圧値に対応する所定の最大電圧値Vmaxとの間の電圧誤差ΔVを計算するステップと、
-電圧誤差ΔVが正の場合、制御スイッチ6を作動させて閉構成に移行させるステップと、
-電圧誤差ΔVが負の場合、制御スイッチ6を作動させて開構成に移行させるステップと、を含む。
【0084】
スタック2からの出力電圧は、抵抗5によって適切に変調された電池パック101への入力に直接供給される。
【0085】
したがって、電源システム1の動作は、図3の分極曲線も参照して要約できる。スタック2および補助構成要素3を備える発電のためのシステムのセットアップの時に、一時的なステップの間、動作負荷103がアクティブになり且つBOP3の消費がスタック2を作動させるために十分な最小値になるまで、コンパレータ8によって測定された燃料電池の出力電圧Vはとり得る最大値になり、スタック2の開回路電圧値に近くなり、通常、スタックのセル当たりのボルトは、Vmaxよりも大幅に大きくなる。
【0086】
これらの状態において、コンパレータ8は、電池パック102によって許容される最大値Vmaxに簡単に対応するために、例えばアルゴリズムに基づいて、スタック2の出力電圧と所定の最大値Vmaxとの間の正の電圧誤差ΔVを測定する。
【0087】
コンパレータ8は、この情報を制御デバイス7に送信し、制御デバイス7は、制御スイッチ6を閉じることを要求し、したがって、抵抗負荷5上の電流の流れをそらす。
【0088】
したがって、調整デバイス4は、所定量の電流を瞬時に吸収することを可能にし、その結果、スタック2の端子、したがって電池パック101の端子の電圧Vが即座に低下する。
【0089】
電池パック101は、他の接続デバイスまたは電子回路もコンバータまたは電池充電器も介在させることなく、スタック2から転送によって直接再充電される。
【0090】
上記の特許文書US2016159492A1に記載されている従来技術を参照すると、本発明による解決策は、電池充電器29および接触器40および36を不要にし、記載されたシステムの基本的なダイオードさえも不要にする。
【0091】
電流が動作負荷103を増加させ始め、BOP3が定常状態に移行するとすぐに、スタック2の端子での電圧がさらに低下し、これは、コンパレータ8によって再び測定され得る。
【0092】
総電気負荷102が、スタック2の端子の電圧Vをリチウム電池2が許容できる最大値Vmaxを下回るように減少させるとすぐに、制御デバイス7は、制御スイッチ6を使用して抵抗負荷5を切断する。
【0093】
図1および2に示されるように、制御スイッチ6は、コンピュータ化されたユニット9によってまたはコンパレータ8によって直接作動され得る。
【0094】
電源システム1には重要な利点がある。
【0095】
能動スイッチング構成要素がないので、電磁ノイズの発生が回避され、システムの効率が向上し、コストが大幅に削減される。
【0096】
調整デバイスは、実際には、一時的なスイッチオンの間、および動作負荷がゼロに向かって移行する傾向があるまれな場合にのみ介入する。
【0097】
これらのイベントは、事実上、ほとんどすべての用途、特にリフトトラックの用途ではわずかである。一方、現在のシステムはスタックと電池パックの間で常にアクティブであり、効率に継続的に悪影響を及ぼす。
【0098】
追加の抵抗負荷の冷却ははるかに簡単であり、または不要ですらある。
【0099】
上記の電源システムは、任意の且つ所望の数の個々の要素によって形成された任意の電池パックに電力を供給するために使用され得る。
【0100】
抵抗負荷およびコンパレータの適切な選択により、スタックの燃料電池の数と電池パックの要素の数とを任意に組み合わせることが可能になる。
【0101】
調整デバイスのコストは、他のデバイスは必要ないので、抵抗負荷、関連するコマンドおよび電圧コンパレータのコストのみに実質的に削減される。
【0102】
制御スイッチにより管理される必要のある電流は、スタックの公称電流のごく一部である。
【0103】
もう1つの利点は、構成要素が簡素化されることであり、当該構成要素は、プラント全体ではなく、始動過渡(starting transient)で寸法決定される。
【0104】
さらに、実際に必要なのは、DC/DC電力コンバータまたは電池充電器などの他のデバイスを構成する数十または数百の構成要素に対して、いくつかの構成要素のみであるので、ボリュームおよび重量の節約はまた明らかである。
【0105】
上記の利点は、任意のタイプの電池での動作中に同様に達成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0106】
【特許文献1】US2018026463A1
【特許文献2】US2016159492A1
図1
図2
図3
【国際調査報告】