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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-01
(54)【発明の名称】密閉した酸化還元電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/18 20060101AFI20230125BHJP
【FI】
H01M8/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022532150
(86)(22)【出願日】2020-12-07
(85)【翻訳文提出日】2022-05-30
(86)【国際出願番号】 US2020063558
(87)【国際公開番号】W WO2021118913
(87)【国際公開日】2021-06-17
(31)【優先権主張番号】62/945,729
(32)【優先日】2019-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517019603
【氏名又は名称】スタンダード エナジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Standard Energy Co., Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】リー・ドンヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム・ブギ
(72)【発明者】
【氏名】キム・ドンハン
(72)【発明者】
【氏名】パーク・サンヨン
(72)【発明者】
【氏名】チェ・カンヨン
【テーマコード(参考)】
5H126
【Fターム(参考)】
5H126BB10
5H126JJ03
5H126JJ04
(57)【要約】
開示の技術は、一般にエネルギー貯蔵装置に関し、特に、酸化還元電池に関する。一側面において、酸化還元電池は、第1ハーフ(half)セル及び第2ハーフセルを含む。前記第1ハーフセルは、正電極に接触し、第1の酸化還元半反応が起こるように構成された、第1の酸化還元対が内部に溶解されている第1電解質を含む、正極電解質貯蔵所を含む。前記第2ハーフセルは、負電極に接触し、第2の酸化還元半反応が起こるように構成された、第2の酸化還元対が内部に溶解されている第2電解質を含む、負極電解質貯蔵所を含む。前記密閉した酸化還元電池は、さらに前記正極電解質貯蔵所と前記負極電解質貯蔵所を分離するイオン交換膜を含む。前記第1ハーフセル、前記第2ハーフセル、および前記イオン交換膜は、ケーシングで密閉した酸化還元電池セルを定義する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正電極に接触し、第1の酸化還元半反応が起こるように構成された、第1の酸化還元対が内部に溶解されている第1電解質を含む、正極電解質貯蔵所を含む第1ハーフセルと、
負電極に接触し、第2の酸化還元半反応が起こるように構成された、第2の酸化還元対が内部に溶解されている第2電解質を含む、負極電解質貯蔵所を含む第2ハーフセルと、
前記正極電解質貯蔵所と前記負極電解質貯蔵所を分離するイオン交換膜と、を含み、
前記第1ハーフセル、前記第2ハーフセル、および前記イオン交換膜は、ケーシングで密閉した酸化還元電池セルを定義する、
酸化還元電池。
【請求項2】
前記第1の酸化還元対と前記第2の酸化還元対は、同じ金属のイオンを含む、
請求項1記載の酸化還元電池。
【請求項3】
前記第1の酸化還元対または前記第2の酸化還元対は、バナジウム(V)、亜鉛(Zn:zinc)、ブロム(Br:bromine)、クロム(Cr:chromium)、マンガン(Mn:manganese)、チタニウム(Ti:titanium)、鉄(Fe:iron)、セリウム(Ce:cerium)、およびコバルト(Co:cobalt)
のうち一つ又はそれ以上のイオンを含む、
請求項1記載の酸化還元電池。
【請求項4】
前記第1及び第2の酸化還元対は、Vイオンを含む、
請求項3記載の酸化還元電池。
【請求項5】
前記囲まれられたセル内の前記正極電解質貯蔵所と前記負極電解質貯蔵所はいずれも、前記第1又は第2電解質それぞれを貯蔵する別途電解質タンクに連結されない、
請求項1記載の酸化還元電池。
【請求項6】
前記酸化還元電池は、前記第1及び第2電解質が液体循環装置の補助を受けず、前記第1及び第2ハーフセルのそれぞれ内で自体循環するように構成された、
請求項1記載の酸化還元電池。
【請求項7】
動作中に、前記正極電解質貯蔵所と前記負極電解質貯蔵所のうち一つ又は両方における圧力の累積を減らすか、少なくとも部分的に防止するための減圧構造をさらに含む、
請求項1記載の酸化還元電池。
【請求項8】
前記減圧構造は、前記第1及び第2電解質を統制可能に混合して、前記圧力の累積を防止するか、少なくとも部分的に防止するように構成された、
請求項7記載の酸化還元電池。
【請求項9】
前記減圧構造は、前記正極電解質貯蔵所と前記負極電解質貯蔵所を直接に連結する減圧導管を含む、
請求項8記載の酸化還元電池。
【請求項10】
前記減圧導管は、前記第1及び第2電解質の総体積の0.001%及び10%間の体積を有する、
請求項9記載の酸化還元電池。
【請求項11】
前記減圧構造は、前記イオン交換膜を介して形成された一以上の開口を含む、
請求項8記載の酸化還元電池。
【請求項12】
前記一以上の開口は、10nm~1mmの側面寸法を有する、
請求項11記載の酸化還元電池。
【請求項13】
前記減圧構造は、多孔性構造を有する、前記イオン交換膜を含む、
請求項8記載の酸化還元電池。
【請求項14】
前記多孔性構造は、1nm~100μmの側面寸法を有する複数の孔(pores)を有する、
請求項13記載の酸化還元電池。
【請求項15】
前記減圧構造は、前記第1及び第2の電解質それぞれが充填(filled)されていない、前記正極及び負極電解質貯蔵所のうち一つ又は両方に超過自由体積(excess
free volume)を含む、
請求項8記載の酸化還元電池。
【請求項16】
前記超過自由体積は、前記第1及び第2電解質の総体積の0.001%及び50%間の体積を有する、
請求項15記載の酸化還元電池。
【請求項17】
前記減圧構造は、バッファー体積を囲む側壁を有するバッファー体積構造に取り替えられる部分を有する、前記イオン交換膜を含み、前記側壁それぞれは、これを通して形成された孔を有する、
請求項8記載の酸化還元電池。
【請求項18】
前記減圧構造は、前記正極電解質貯蔵所及び前記負極電解質貯蔵所内に突出した突出部を含む、電気短絡防止構造に取り替えられた部分を含む、前記イオン交換膜を含み、前記電気短絡防止構造は、これを通して形成された孔を有する、
請求項8記載の酸化還元電池。
【請求項19】
前記減圧構造は、前記圧力の累積に反応して、弾性的に膨脹するように構成された柔軟な材料で形成された、前記正極電解質貯蔵所及び前記負極電解質貯蔵所のうち一つ又は両方を含む、
請求項7記載の酸化還元電池。
【請求項20】
前記減圧構造は、前記正極及び負極電解質貯蔵所のうち一つ又は両方における気体の累積を減少させて、前記圧力の累積を防止するか、少なくとも部分的に防止するように構成された、
請求項7記載の酸化還元電池。
【請求項21】
前記減圧構造は、前記第1及び第2ハーフセルのうち一つ又は両方に形成された気体還元層(gas-reducing layer)を含む、
請求項20記載の酸化還元電池。
【請求項22】
前記気体還元層は、水素気体を選択的に還元するように構成された、
請求項21記載の酸化還元電池。
【請求項23】
前記気体還元層は、白金(Pt:platinum)を含む、
請求項22記載の酸化還元電池。
【請求項24】
前記減圧構造は、液体は、自己を通して放出することを防止しつつ、気体は、自己を通して、前記第1又は第2ハーフセルの外部に選択的に放出するように構成された気体放出弁を含む、
請求項20記載の酸化還元電池。
【請求項25】
各々が前記第1ハーフセル、前記第2ハーフセル、および前記イオン交換膜を含む、複数の酸化還元電池セルをさらに含み、前記酸化還元電池セルは、互いに電気的に連結される、
請求項1記載の酸化還元電池。
【請求項26】
前記酸化還元電池セルが積層されている、
請求項25記載の酸化還元電池。
【請求項27】
前記酸化還元電池セルは、半径方向に積層された同心円筒状シェル(shell)から構成される、
請求項25記載の酸化還元電池。
【請求項28】
前記正電極は、前記第1の酸化還元半反応に参加せず、前記負電極は、前記第2の酸化還元半反応に参加しない、
請求項1記載の酸化還元電池。
【請求項29】
正電極に接触し、第1の酸化還元半反応が起こるように構成された、第1の酸化還元対が内部に溶解されている第1電解質を含む、正極電解質貯蔵所を含む第1ハーフセルと、
負電極に接触し、第2の酸化還元半反応が起こるように構成された、第2の酸化還元対が内部に溶解されている第2電解質を含む、負極電解質貯蔵所を含む第2ハーフセルと、
前記正極電解質貯蔵所と前記負極電解質貯蔵所を分離するイオン交換膜と、
動作中に、前記正極電解質貯蔵所と前記負極電解質貯蔵所のうち一つ又は両方における圧力の累積を減らすか、少なくとも部分的に防止するための減圧手段を含む、
酸化還元電池。
【請求項30】
前記第1ハーフセル、前記第2ハーフセル、および前記イオン交換膜は、ケーシングで密閉した酸化還元電池セルを定義する、
請求項29記載の酸化還元電池。
【請求項31】
前記囲まれられたセル内の前記正極電解質貯蔵所と前記負極電解質貯蔵所はいずれも、導管によって、前記第1又は第2電解質それぞれを貯蔵する別途電解質タンクに連結されない、
請求項29記載の酸化還元電池。
【請求項32】
前記酸化還元電池は、前記第1及び第2電解質が液体循環装置の補助を受けず、前記第1及び第2ハーフセルのそれぞれ内で自体循環するように構成された、
請求項31記載の酸化還元電池。
【請求項33】
前記減圧手段は、前記第1及び第2電解質を混合して、前記圧力の累積を防止するか、少なくとも部分的に防止するように構成された、
請求項32記載の酸化還元電池。
【請求項34】
前記減圧手段は、前記正極及び負極電解質貯蔵所のうち一つ又は両方における気体の累積を減少させて、前記圧力の累積を防止するか、少なくとも部分的に防止するように構成された、
請求項32記載の酸化還元電池。
【請求項35】
前記第1の酸化還元対と前記第2の酸化還元対は、同じ金属のイオンを含む、
請求項29記載の酸化還元電池。
【請求項36】
前記第1の酸化還元対または前記第2の酸化還元対は、バナジウム(V)、亜鉛(Zn:zinc)、ブロム(Br:bromine)、クロム(Cr:chromium)、マンガン(Mn:manganese)、チタニウム(Ti:titanium)、鉄(Fe:iron)、セリウム(Ce:cerium)、およびコバルト(Co:cobalt)
のうち一つ又はそれ以上のイオンを含む、
請求項29記載の酸化還元電池。
【請求項37】
前記第1及び第2の酸化還元対は、Vイオンを含む、
請求項31記載の酸化還元電池。
【請求項38】
各々が前記第1ハーフセル、前記第2ハーフセル、および前記イオン交換膜を含む、複数の酸化還元電池セルをさらに含み、前記酸化還元電池セルは、互いに電気的に連結される、
請求項29記載の酸化還元電池。
【請求項39】
前記酸化還元電池セルが積層されている、
請求項38記載の酸化還元電池。
【請求項40】
前記酸化還元電池セルは、半径方向に積層された同心円筒状シェル(shell)から構成される、
請求項38記載の酸化還元電池。
【請求項41】
前記正電極は、前記第1の酸化還元半反応に参加せず、前記負電極は、前記第2の酸化還元半反応に参加しない、
請求項29記載の酸化還元電池。
【請求項42】
正電極に接触する第1電解質に溶解されて、第1の酸化還元半反応が起こるように構成された、第1の酸化還元対を含む、正極電解質貯蔵所を含む第1ハーフセルと、
負電極に接触する第2電解質に溶解されて、第2の酸化還元半反応が起こるように構成された、第2の酸化還元対を含む、負極電解質貯蔵所を含む第2ハーフセルと、
前記正極電解質貯蔵所と前記負極電解質貯蔵所を分離するイオン交換膜と、を含み、
前記第1電解質貯蔵所は、前記第1ハーフセルのため前記第1電解質の実質的な全体体積を貯蔵し、
前記第2電解質貯蔵所は、前記第2ハーフセルのため前記第2電解質の実質的な全体体積を貯蔵する、
酸化還元電池。
【請求項43】
前記正極電解質貯蔵所と前記負極電解質貯蔵所はいずれも、前記第1又は第2電解質それぞれを貯蔵する別途電解質タンクに連結されない、
請求項42記載の酸化還元電池。
【請求項44】
動作中に、前記正極電解質貯蔵所と前記負極電解質貯蔵所のうち一つ又は両方における圧力の累積を減らすか、少なくとも部分的に防止するための減圧手段をさらに含む、
請求項43記載の酸化還元電池。
【請求項45】
前記減圧手段は、前記第1及び第2電解質を混合して、前記圧力の累積を防止するか、少なくとも部分的に防止するように構成された、
請求項44記載の酸化還元電池。
【請求項46】
前記減圧手段は、前記正極及び負極電解質貯蔵所のうち一つ又は両方における気体の累積を減少させて、前記圧力の累積を防止するか、少なくとも部分的に防止するように構成された、
請求項44記載の酸化還元電池。
【請求項47】
前記第1ハーフセル、前記第2ハーフセル、および前記イオン交換膜は、ケーシングで密閉した酸化還元電池セルを定義する、
請求項44記載の酸化還元電池。
【請求項48】
前記酸化還元電池は、前記第1及び第2電解質が液体循環装置の補助を受けず、前記第1及び第2のハーフセルのそれぞれ内で自体循環するように構成された、
請求項44記載の酸化還元電池。
【請求項49】
前記第1の酸化還元対と前記第2の酸化還元対は、同じ金属のイオンを含む、
請求項42記載の酸化還元電池。
【請求項50】
前記第1の酸化還元対または前記第2の酸化還元対は、バナジウム(V)、亜鉛(Zn:zinc)、ブロム(Br:bromine)、クロム(Cr:chromium)、マンガン(Mn:manganese)、チタニウム(Ti:titanium)、鉄(Fe:iron)、セリウム(Ce:cerium)、およびコバルト(Co:cobalt)
のうち一つ又はそれ以上のイオンを含む、
請求項42記載の酸化還元電池。
【請求項51】
前記第1及び第2の酸化還元対は、Vイオンを含む、
請求項49記載の酸化還元電池。
【請求項52】
各々が前記第1ハーフセル、前記第2ハーフセル、および前記イオン交換膜を含む、複数の酸化還元電池セルをさらに含み、前記酸化還元電池セルは、互いに電気的に連結される、
請求項42記載の酸化還元電池。
【請求項53】
前記酸化還元電池セルが積層されている、
請求項52記載の酸化還元電池。
【請求項54】
前記酸化還元電池セルは、半径方向に積層された同心円筒状シェル(shell)から構成される、
請求項47記載の酸化還元電池。
【請求項55】
前記正電極は、前記第1の酸化還元半反応に参加せず、前記負電極は、前記第2の酸化還元半反応に参加しない、
請求項52記載の酸化還元電池。
【請求項56】
正電極に接触し、第1の酸化還元半反応が起こるように構成された、第1の酸化還元対が内部に溶解されている第1電解質を含む、正極電解質貯蔵所を含む第1ハーフセルと、
負電極に接触し、第2の酸化還元半反応が起こるように構成された、第2の酸化還元対が内部に溶解されている第2電解質を含む、負極電解質貯蔵所を含む第2ハーフセルと、
前記正極電解質貯蔵所と前記負極電解質貯蔵所を分離するイオン交換膜と、を含み、
前記酸化還元電池は、前記第1及び第2の電解質が、前記第1及び第2ハーフセルのそれぞれ内で自体循環するように構成された、
酸化還元電池。
【請求項57】
前記微細流体電池は、前記第1電解質又は前記第2電解質を循環させるためのポムピング装置を含まない、
請求項56記載の酸化還元電池。
【請求項58】
前記酸化還元電池は、前記第1及び第2の電解質の自体循環が、前記第1及び第2の電解質貯蔵所の間の浸透圧差によって引き起こされるように構成される、
請求項57記載の酸化還元電池。
【請求項59】
前記酸化還元電池は、前記第1及び第2電解質の自体循環が、前記第1及び第2電解質のうち一つ又は両方において、密度変化によって引き起こされるように構成される、
請求項57記載の酸化還元電池。
【請求項60】
前記酸化還元電池は、前記第1及び第2電解質の自体循環が、前記イオン交換膜にわたって、前記第1及び第2電解質のうち一つ又は両方の拡散によって引き起こされるように構成される、
請求項56記載の酸化還元電池。
【請求項61】
前記酸化還元電池は、前記第1及び第2電解質の自体循環が、前記第1及び第2電極それぞれに対する、前記第1及び第2電解質のうち一つ又は両方の親和度によって引き起こされるように構成される、
請求項56記載の酸化還元電池。
【請求項62】
前記酸化還元電池は、前記第1及び第2電解質の自体循環が、前記第1及び第2の酸化還元半反応によって引き起こされるように構成される、
請求項56記載の酸化還元電池。
【請求項63】
前記酸化還元電池は、前記第1及び第2電解質の自体循環が、前記第1及び第2電解質のうち一つ又は両方の熱的膨脹又は収縮によって引き起こされるように構成される、
請求項56記載の酸化還元電池。
【請求項64】
前記第1電解質貯蔵所は、前記第1ハーフセルのため前記第1電解質の実質的な全体体積を貯蔵し、前記第2電解質貯蔵所は、前記第2ハーフセルのため前記第2電解質の実質的な全体体積を貯蔵する、
請求項56記載の酸化還元電池。
【請求項65】
前記正極電解質貯蔵所と前記負極電解質貯蔵所はいずれも、前記第1又は第2電解質それぞれを貯蔵する別途電解質タンクに連結されない、
請求項56記載の酸化還元電池。
【請求項66】
動作中に、前記正極電解質貯蔵所と前記負極電解質貯蔵所のうち一つ又は両方における圧力の累積を減らすか、少なくとも部分的に防止するための減圧手段をさらに含む、
請求項56記載の酸化還元電池。
【請求項67】
前記減圧手段は、前記第1及び第2電解質を混合して、前記圧力の累積を防止するか、少なくとも部分的に防止するように構成された、
請求項56記載の酸化還元電池。
【請求項68】
前記減圧手段は、前記正極及び負極電解質貯蔵所のうち一つ又は両方における気体の累積を減少させて、前記圧力の累積を防止するか、少なくとも部分的に防止するように構成された、
請求項56記載の酸化還元電池。
【請求項69】
前記第1ハーフセル、前記第2ハーフセル、および前記イオン交換膜は、ケーシングで密閉した酸化還元電池セルを定義する、
請求項56記載の酸化還元電池。
【請求項70】
前記酸化還元電池は、前記第1及び第2電解質が液体循環装置の補助を受けず、前記第1及び第2ハーフセルのそれぞれ内で自体循環するように構成された、
請求項56記載の酸化還元電池。
【請求項71】
前記第1の酸化還元対と前記第2の酸化還元対は、同じ金属のイオンを含む、
請求項56記載の酸化還元電池。
【請求項72】
前記第1の酸化還元対または前記第2の酸化還元対は、バナジウム(V)、亜鉛(Zn:zinc)、ブロム(Br:bromine)、クロム(Cr:chromium)、マンガン(Mn:manganese)、チタニウム(Ti:titanium)、鉄(Fe:iron)、セリウム(Ce:cerium)、およびコバルト(Co:cobalt)
のうち一つ又はそれ以上のイオンを含む、
請求項56記載の酸化還元電池。
【請求項73】
前記第1及び第2の酸化還元対は、Vイオンを含む、
請求項72記載の酸化還元電池。
【請求項74】
各々が前記第1ハーフセル、前記第2ハーフセル、および前記イオン交換膜を含む、複数の酸化還元電池セルをさらに含み、前記酸化還元電池セルは、互いに電気的に連結される、
請求項56記載の酸化還元電池。
【請求項75】
前記酸化還元電池セルが積層されている、
請求項74記載の酸化還元電池。
【請求項76】
前記酸化還元電池セルは、半径方向に積層された同心円筒状シェル(shell)から構成される、
請求項74記載の酸化還元電池。
【請求項77】
前記正電極は、前記第1の酸化還元半反応に参加せず、前記負電極は、前記第2の酸化還元半反応に参加しない、
請求項56記載の酸化還元電池。
【請求項78】
前記正極電解質及び前記負極電解質のうち一つ又は両方は、20cmを超えないイオン性膜の表面に垂直な方向の厚さを有する、
請求項1乃至77のうちいずれか一項に記載の酸化還元電池。
【請求項79】
前記正極電解質貯蔵所及び前記負極電解質貯蔵所のうち一つ又は両方の少なくとも一部分は、弾性的に膨脹するように構成された柔軟な材料から構成されたことを特徴とする、
請求項1乃至78のうちいずれか一項に記載の酸化還元電池。
【請求項80】
前記正極電解質貯蔵所及び前記負極電解質貯蔵所のうち一つ又は両方の少なくとも一部分は、ポリ塩化ビニル(polyvinyl chloride)、ポリエチレン(polyethylene)、ポリスチレン(polystyrene)、ポリプロピレン(polypropylene)、ポリカーボネート(polycarbonate)、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体(acrylonitrile
butadiene styrene copolymer)、又は強化プラスチック(reinforced plastics)
のうち一つ又はそれ以上で形成された、
請求項1乃至79のうちいずれか一項に記載の酸化還元電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の技術は、一般にエネルギー貯蔵装置に関し、特に、密閉した酸化還元電池に関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化をもたらす世界経済の成長が継続することによって、再生可能エネルギー(例:太陽及び風のエネルギー)に基づく再生可能、かつ継続可能なエネルギーシステムに対する必要性が急がれている。かかる形態のエネルギーの間欠的可用性による変動に備えて、グリッドネットワークの安全性を向上させるために、エネルギー貯蔵システム(ESS:Energy Storage Systems)の発達が余剰電気を貯蔵するのに利用され、必要な際にこれは、最終顧客や電力グリッドに伝達され得る。その他の中でも、電気化学エネルギーに基づくESS(例:充電可能な、或いは二次電池)は、コスト効率が高くてきれいな形態のエネルギー貯蔵ソルーションを提供することができる。電気化学エネルギー貯蔵システムの例として、リチウムイオン、鉛酸、ナトリウム硫黄、およびレドックス・フロー(redox-flow)電池が挙げられる。短期貯蔵(short-term storage)、中期貯蔵(medium-term
storage)、および長期貯蔵(long-term storage)のような互いに異なる適用に対しては、互いに異なる貯蔵回数が必要である。電気化学エネルギー貯蔵システムの互いに異なる類型は、互いに異なる物理的及び/又は化学的性質を有する。前記電気化学エネルギー貯蔵システムの特定の適用に対する適合性を決定する要因として、幾つかを例に挙げると、投資費、電力、エネルギー、寿命、リサイクル可能性、効率性、拡張性(scalability)、およびメンテナンスコストなどがある。適宜な電気化学貯蔵システムを選択して設計する際、競争要因が考えられる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
第1側面において、酸化還元電池は、第1ハーフ(half)セル及び第2ハーフセルを含む。前記第1ハーフセルは、正電極に接触し、第1の酸化還元半反応が起こるように構成された、第1の酸化還元対が内部に溶解されている第1電解質を含む、正極電解質貯蔵所を含む。前記第2ハーフセルは、負電極に接触し、第2の酸化還元半反応が起こるように構成された、第2の酸化還元対が内部に溶解されている第2電解質を含む、負極電解質貯蔵所を含む。前記密閉した酸化還元電池は、さらに前記正極電解質貯蔵所と前記負極電解質貯蔵所を分離するイオン交換膜を含む。前記第1ハーフセル、前記第2ハーフセル、および前記イオン交換膜は、ケーシングで密閉した酸化還元電池セルを定義する。
【0004】
第2側面において、酸化還元電池は、第1ハーフセル及び第2ハーフセルを含む。前記第1ハーフセルは、正電極に接触し、第1の酸化還元半反応が起こるように構成された、第1の酸化還元対が内部に溶解されている第1電解質を含む、正極電解質貯蔵所を含む。前記第2ハーフセルは、負電極に接触し、第2の酸化還元半反応が起こるように構成された、第2の酸化還元対が内部に溶解されている第2電解質を含む、負極電解質貯蔵所を含む。前記酸化還元電池は、動作中に、前記正極電解質貯蔵所と前記負極電解質貯蔵所のうち一つ又は両方における圧力の累積を減らすか、少なくとも部分的に防止するための減圧手段をさらに含む。
【0005】
第3側面において、酸化還元電池は、第1ハーフセル及び第2ハーフセルを含む。前記第1ハーフセルは、正電極に接触し、第1の酸化還元半反応が起こるように構成された、第1の酸化還元対が内部に溶解されている第1電解質を含む、正極電解質貯蔵所を含む。前記第2ハーフセルは、負電極に接触し、第2の酸化還元半反応が起こるように構成された、第2の酸化還元対が内部に溶解されている第2電解質を含む、負極電解質貯蔵所を含む。前記第1電解質貯蔵所は、前記第1ハーフセルのため第1電解質の実質的な全体体積を貯蔵し、前記第2電解質貯蔵所は、前記第2ハーフセルのため第2電解質の実質的な全体体積を貯蔵する。
【0006】
第4側面において、酸化還元電池は、第1ハーフセル及び第2ハーフセルを含む。前記第1ハーフセルは、正電極に接触し、第1の酸化還元半反応が起こるように構成された、第1の酸化還元対が内部に溶解されている第1電解質を含む、正極電解質貯蔵所を含む。前記第2ハーフセルは、負電極に接触し、第2の酸化還元半反応が起こるように構成された、第2の酸化還元対が内部に溶解されている第2電解質を含む、負極電解質貯蔵所を含む。前記酸化還元電池は、前記第1及び第2の電解質が、前記第1及び第2ハーフセルのそれぞれ内で自体循環するように構成される。
【0007】
第5側面において、酸化還元電池は、第1電解質に溶解されて、第1の酸化還元半反応が起こるように構成された、第1の酸化還元対を含む正極電解質貯蔵所と、第2電解質に溶解されて、第2の酸化還元半反応が起こるように構成された、第2の酸化還元対を含む負極電解質貯蔵所を含む。前記酸化還元電池は、前記正極電解質貯蔵所と前記負極電解質貯蔵所を分離して、前記第1電解質又は前記第2電解質が、これを介して伝達されることを実質的に防止するように構成された、イオン交換膜をさらに含む。前記正極電解質貯蔵所、前記負極電解質貯蔵所、および前記イオン交換膜は、囲まれているか密閉したセルに配置される。
【0008】
第6側面において、酸化還元電池は、第1電解質に溶解されて、第1の酸化還元半反応が起こるように構成された、第1の酸化還元対を含む正極電解質貯蔵所と、第2電解質に溶解されて、第2の酸化還元半反応が起こるように構成された、第2の酸化還元対を含む負極電解質貯蔵所を含む。前記酸化還元電池は、前記正極電解質貯蔵所と前記負極電解質貯蔵所を分離して、前記第1電解質又は前記第2電解質が、これを介して伝達されることを実質的に防止するように構成されたイオン交換膜をさらに含む。前記正極電解質貯蔵所と前記負極電解質貯蔵所はいずれも、別途電解質タンクに連結されない。
【0009】
第7側面において、酸化還元電池は、第1電解質に溶解されて、第1の酸化還元半反応が起こるように構成された、第1の酸化還元対を含む正極電解質貯蔵所と、第2電解質に溶解されて、第2の酸化還元半反応が起こるように構成された、第2の酸化還元対を含む負極電解質貯蔵所を含む。前記酸化還元電池は、前記正極電解質貯蔵所と前記負極電解質貯蔵所を分離して、前記第1電解質または前記第2電解質が、これを介して伝達されることを実質的に防止するように構成された、イオン交換膜をさらに含む。前記酸化還元電池は、前記第1電解質または前記第2電解質を流すためのポムピング装置を含まない。
【0010】
第8側面において、酸化還元電池は、第1電解質に溶解されて、第1の酸化還元半反応が起こるように構成された、第1の酸化還元対を含む正極電解質貯蔵所と、第2電解質に溶解されて、第2の酸化還元半反応が起こるように構成された、第2の酸化還元対を含む負極電解質貯蔵所を含む。前記酸化還元電池は、前記正極電解質貯蔵所と前記負極電解質貯蔵所を分離して、前記第1電解質または前記第2電解質が、これを介して伝達されることを実質的に防止するように構成された、イオン交換膜をさらに含む。前記正極電解質貯蔵所は、前記第1の酸化還元半反応に参加しない正電極をさらに含み、前記負極電解質貯蔵所は、前記第2の酸化還元半反応に参加しない負電極をさらに含む。
【0011】
第9側面において、酸化還元電池は、第1電解質に溶解されて、第1の酸化還元半反応が起こるように構成された、第1の酸化還元対を含む正極電解質貯蔵所と、第2電解質に溶解されて、第2の酸化還元半反応が起こるように構成された、第2の酸化還元対を含む負極電解質貯蔵所を含む。前記第1及び第2の酸化還元半反応は、前記正極電解質貯蔵所と前記負極電解質貯蔵所を分離するイオン交換膜を介して、第1の酸化還元対や第2の酸化還元対のイオンが実質的に伝達されなくても、第1及び第2の酸化還元半反応が起こる。前記正極電解質貯蔵所、前記負極電解質貯蔵所、および前記分離膜は、囲まれているか密閉したセルに配置される。
【0012】
第10側面において、酸化還元電池は、第1電解質に溶解されて、第1の酸化還元半反応が起こるように構成された、第1の酸化還元対を含む正極電解質貯蔵所と、第2電解質に溶解されて、第2の酸化還元半反応が起こるように構成された、第2の酸化還元対を含む負極電解質貯蔵所を含む。前記第1及び第2の酸化還元半反応は、前記正極電解質貯蔵所と前記負極電解質貯蔵所を分離するイオン交換膜を介して、第1の酸化還元対や第2の酸化還元対のイオンが実質的に伝達されなくても、第1及び第2の酸化還元半反応が起こる。前記正極電解質貯蔵所と前記負極電解質貯蔵所はいずれも、別途電解質タンクに連結されない。
【0013】
第11側面において、酸化還元電池は、第1電解質に溶解されて、第1の酸化還元半反応が起こるように構成された、第1の酸化還元対を含む正極電解質貯蔵所と、第2電解質に溶解されて、第2の酸化還元半反応が起こるように構成された、第2の酸化還元対を含む負極電解質貯蔵所を含む。前記第1及び第2の酸化還元半反応は、前記正極電解質貯蔵所と前記負極電解質貯蔵所を分離する分離膜を介して、第1の酸化還元対や第2の酸化還元対のイオンが実質的に伝達されなくても、第1及び第2の酸化還元半反応が起こる。前記酸化還元電池は、前記正極電解質貯蔵所へ/から前記第1電解質を流すか、前記負極電解質貯蔵所へ/から前記第2電解質を流すためのポムピング装置を含まない。
【0014】
第12側面において、酸化還元電池は、第1電解質に溶解されて、第1の酸化還元半反応が起こるように構成された、第1の酸化還元対を含む正極電解質貯蔵所を含み、前記正極電解質貯蔵所は、前記第1の酸化還元半反応に参加しない正電極をさらに含む。前記酸化還元電池は、第2電解質に溶解されて、第2の酸化還元半反応が起こるように構成された、第2の酸化還元対を含む負極電解質貯蔵所を含み、前記負極電解質貯蔵所は、前記第2の酸化還元半反応に参加しない負電極をさらに含む。前記第1及び第2の酸化還元半反応は、前記正極電解質貯蔵所と前記負極電解質貯蔵所を分離するイオン交換膜を介して、第1の酸化還元対や第2の酸化還元対のイオンが実質的に伝達されなくても、第1及び第2の酸化還元半反応が起こる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】例示的なレドックス・フロー電池(redox flow battery)に関する概略図。
図2A】実施形態による密閉した酸化還元電池に関する概略図。
図2B】一部の実施形態に従って、積層構成により複数の密閉した酸化還元電池セルを含む、密閉した酸化還元電池に関する概略図。
図2C】一部の他の実施形態に従って、積層構成により複数の密閉した酸化還元電池セルを含む、密閉した酸化還元電池に関する概略図。
図2D】実施形態に従って、円筒状積層構成により複数の密閉した酸化還元電池セルを含む、密閉した酸化還元電池に関する概略図。
図3A】一部の実施形態に従って、正極電解質貯蔵所と負電極貯蔵所のうち一つ又は両方において、これらの間に連結された導管を用いて、圧力の累積(buildup)を減らすか、少なくとも部分的に防止するように構成された、密閉した酸化還元電池を概略的に示す図。
図3B】一部の他の実施形態に従って、正極電解質貯蔵所と負電極貯蔵所のうち一つ又は両方において、これらを貫通して形成された一以上の開口を有するイオン交換膜を用いて、圧力の累積を減らすか、少なくとも部分的に防止するように構成された、密閉した酸化還元電池を概略的に示す図。
図3B-1】一部の他の実施形態に従って、正極電解質貯蔵所と負電極貯蔵所のうち一つ又は両方において、これらを貫通して形成された一以上の開口を有するイオン交換膜を用いて、圧力の累積を減らすか、少なくとも部分的に防止するように構成された、密閉した酸化還元電池を概略的に示す図。
図3B-2】一部の他の実施形態に従って、正極電解質貯蔵所と負電極貯蔵所のうち一つ又は両方において、これらを貫通して形成された一以上の開口を有するイオン交換膜を用いて、圧力の累積を減らすか、少なくとも部分的に防止するように構成された、密閉した酸化還元電池を概略的に示す図。
図3C】さらに他の一部の実施形態に従って、正極電解質貯蔵所と負電極貯蔵所のうち一つ又は両方において、多孔性イオン交換膜を用いて、圧力の累積を減らすか、少なくとも部分的に防止するように構成された、密閉した酸化還元電池を概略的に示す図。
図4】実施形態に従って、正極電解質貯蔵所と負極電解質貯蔵所のうち一つ又は両方における圧力の累積を減らすか、少なくとも部分的に防止するように構成された、密閉した酸化還元電池を概略的に示す図。
図5A】実施形態に従って、正極電解質貯蔵所と負極電解質貯蔵所のうち一つ又は両方における圧力の累積を減らすか、少なくとも部分的に防止するように構成された、密閉した酸化還元電池を概略的に示す図。
図5B】実施形態に従って、正極電解質貯蔵所と負極電解質貯蔵所のうち一つ又は両方における圧力の累積を減らすか、少なくとも部分的に防止するように構成された、密閉した酸化還元電池を概略的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
上述したように、特定の適用に適宜な電気化学エネルギー貯蔵システムの選択及び設計において考えられる競争要因は、その他の中でも、投資費、電力、エネルギー、寿命、リサイクル可能性、効率性、拡張性、およびメンテナンスコストを含む。様々な電気化学エネルギー貯蔵システムのうち、レドックス・フロー電池(RFB:Redox Flow Battery)は、固定(stationary)エネルギー貯蔵所に有望なものとされる。RFBは、電気化学エネルギー変換装置であり、溶液に溶解された酸化還元種(redox
species)の酸化還元過程を利用する。前記溶液は、外部タンクに貯蔵されて、必要な際にRFBセルへ流入する。RFB技術の幾つか有利な特徴は、電力及びエネルギーの独立的な拡張性、高い放電深度(DOD:Depth of Discharge)、および環境影響の減少である。これら特徴は、広範囲な作動電力及び放電時間を可能にして、RFBを再生可能な資源から生成した電気の貯蔵に好適にする。
【0017】
図1は、例示的なレドックス・フロー電池(RFB:Redox
Flow Battery)に関する概略図である。前記RFB100は、電池セル104を含む。前記電池セル104は、分離膜(separator)又はイオン交換膜112によって分離された、第1ハーフ(half)セル104A及び第2ハーフセル104Bを有する。前記第1ハーフセル104Aは、第1又は正極電解質及び正電極が内部に配置された正極電解質貯蔵所106Aを含み、前記第2ハーフセル104Bは、第2又は負極電解質及び負電極が内部に配置された負極電解質貯蔵所106Bを含む。前記正電極は、正極集電体(positive current collector)108Aに電気的に連結され、前記負電極は、負極集電体(negative
current collector)108Bに電気的に連結される。前記正極電解質貯蔵所106Aは、流体連通して、正極電解質タンク116Aに物理的に連結され、前記負極電解質貯蔵所106Bは、流体連通して、正極電解質タンク116Bに物理的に連結される。動作中は、前記正極電解質は、矢印で示されたように、正極電解質ポンプ128Aを用いて、出口及び入口の導管120A,124Bを介して、前記正極電解質タンク116Aと前記正極電解質貯蔵所106Aとの間で循環する。同様、前記負極電解質は、出口及び入口の導管120B,124Bを介して、前記負極電解質タンク116Bと前記負極電解質貯蔵所106Bとの間で循環する。
【0018】
一部の構成において、複数の電池セル104-1,104-2,...,104-nが積層されて、RFBセル150を形成し、各セルは、前記電池セル104と同様の方式で構成される。前記複数の電池セル104-1,104-2,...,104-nは、互いに流体連通可能な正極電解質貯蔵所106Aの各々と、互いに流体連通可能な負極電解質貯蔵所106Bの各々を含む。前記正極電解質貯蔵所106Aの連結された各々は、順に前記正極電解質タンク116Aと流体連通し、前記負極電解質貯蔵所106Bの連結された各々は、順に前記負極電解質タンク116Bと流体連通する。
【0019】
リチウムイオン、鉛酸、およびナトリウム硫黄電池のような他の電気化学貯蔵技術に比べて、RFBは、エネルギー貯蔵所からの電力変換の分離を含む幾つかの長所を提供して、独立的な電力及びエネルギーの拡張を可能にする。例えば、RFBは、適用によって柔軟かつ分散された方式で調整することができ、例えば、国内貯蔵所のため数kW/kWhから、グリッド貯蔵所のため数~数十MW/MWhのシステムに至る電力及びエネルギーを提供するように拡張することができる。また、燃料セルとは違って、RFB内反応は、可逆的であり、同じセルが電気を化学エネルギーに、又はその逆に変換する変換器で作動できるようにする。RFBは、イオン金属を消費せず、金属イオン原子価を変更して動作し、長い周期のサービス寿命を可能にする。電解質の相対的に高い熱質量が部分的に起因して、セル温度は、電解質の流れを調節して、相対的に易しく調整することができる。充電状態(SOC:State of Charge)がセル電圧を介して易しくモニタリングされつつ、かつ、非常に深いDODを達成することができる。
【0020】
RFBの様々な長所にもかかわらず、数十年にわたる技術において、相対的に大きな資本、研究及び開発投資がなされてきたが、その商用化は、他の電気化学貯蔵技術に比べて広く普及されていない。特に、ESSの適用に対する電池需要が最近急増し、火事及び爆発に対するより高い安全性を含む、これら適用にRFBが明白に好適であるものの、広範囲な商業化は、まだ実現されておらず、長い間、必要性を感じたにもかかわらず、RFBの商業化に相当障害物が存在することを示唆する。本発明者らは、相対的に低い信頼性、低い効率性、大きいシステム面積、および高いシステムの複雑性を含むような幾つかの障害物を認知した。
【0021】
RFBの広範囲な商用化に対する第1障害物は、図1について前述したRFB100のような、RFBの比較的に高い複雑性と、それに関する信頼性問題に連関する。前述したように、RFBは、電解質を電池セル104へ/から伝達するための複数の導管120A,120B,124A,124B、電解質を循環させるためのポンプ128A,128B、および電解質を貯蔵するためのタンク116A,116Bを含む。比較的に高い複雑性により、電池セル104とタンク116A,116Bとの間の導管120A,120B,124A,124Bに関連した多様な連結点が信頼性誤り(例:漏れ(leakage))につながり得る。誤り(failure)可能性と頻度は、これら導管の数に比例して増加し、これは、ESSの大きさによって拡張する。誤りが発生すると、これは安全リスクのみならず、予定になかった修理につながる。また、そういった故障可能性を減らし、予防保全によって中断のない動作を保障すれば、運営コストが追加される。
【0022】
RFBの幅広い使用化に対する第2障害物は、RFBの比較的に低い効率性に関連する。比較的に低い効率性に対する一要因は、電解質を循環させるのに消費するエネルギーに関連する。例えば、バナジウム系(vanadium-based)RFB用の電解質は、硫酸を含み、相対的に粘度が高いことがある。無作為の配方炭素線維フェルト系電極の微細な多孔性構造によって電解質、特に、相対的に粘度の高い電解質を循環させて、相対的に多量の外部エネルギーを消費し、RFBの外的効率性を低くする。RFBシステムのより低い外的効率性は、リチウムイオン電池(LIB:Lithium
Ion Battery)技術のような競争する二次電池技術に比べて、低い商業的競争力の主な原因の一つである。
【0023】
RFBの広範囲な商用化に対する第3障害物は、他の電気化学貯蔵技術に比べて、相対的に低い電力密度及びエネルギー密度に関連し、これらモバイルの適用に障害となる。上述したように、電力及びエネルギー密度は、エネルギー貯蔵装置の総体積に対する貯蔵装置の電力出力及びエネルギー貯蔵をそれぞれ示す。よって、RFBの場合、電力及びエネルギー密度は、セル体積、タンク体積、および電解質を伝達するための導管の体積を含む、総体積に対する電力出力及びエネルギー貯蔵の割合を示す。より低い電力及びエネルギー密度を部分的に償うためにRFBは、たびたび比較的に大きなセル活性領域と膜を有することになり、セル寸法の増加した電解質貯蔵所116A,116Bの内部の電解質の横軸傾きが高くなり得る。よって、RFBの平均電流密度と公称(nominal)電流は、均一な最大電流密度に基づく最大理論値に比べて、実質的にさらに低くてもよい。また、別途タンクと導管を含む循環システムに対する必要に応じて、全体的なシステム水準の空間効率性がさらに減少する。
【0024】
RFBの広範囲な商業化に対する第4障害物は、システムの複雑性に関連して、化学工場システムの複雑性に匹敵する。RFBシステムを設計する複雑性が高くて、開発サイクルが増加し、これにより、技術開発が顕著に遅くなる。しかも、システムの複雑性は、労動及び資本集約的であり、ESS現場における設置、メンテナンス、および撤去において高水準の専門性が求められる。システムの複雑性は、全体コストによる増加のみならず、システムを構築して維持するのに要する人力の配置、および訓練増加の潜在的必要性から消費者に諦められる。
【0025】
RFBによって付与される利益のうちほとんどを維持しつつ、かつ、これら及び他の限界を解決するために本開示は、密閉した酸化還元電池に関する。
【0026】
<密閉した酸化還元電池>
ここに開示の酸化還元電池の様々な実施形態は、酸化還元電池に関する。実施形態による前記酸化還元電池は、上述したRFBの商用化障害物のうち一部を、少なくても部分的に克服するか緩和しつつ、かつRFBの長所を維持する。特に、一部のRFBとは違って、酸化還元反応に参加する酸化還元対を利用しつつ、ここに開示の酸化還元電池の実施形態は、密閉した電池セルを含み、電池セルに連結された別途電解質タンクや、電池セルの外部から電解質を供給するためポンプのような電解質循環装置を有しない。
【0027】
図2Aは、実施形態による密閉した酸化還元電池に関する概略図である。上記図示の密閉した酸化還元電池200Aは、第1ハーフセル204Aと第2ハーフセル204Bとを含む。前記第1ハーフセル204Aは、正電極に接触する第1又は正極電解質が内部に配置された正極電解質貯蔵所106Aを含む。前記第1電解質には、第1の酸化還元半反応が起こるように構成された、第1の酸化還元対が溶解されている。前記第2ハーフセル204Bは、負電極に接触する第2又は負極電解質が内部に配置された負極電解質貯蔵所106Bを含む。前記第2電解質には、第2の酸化還元半反応が起こるように構成された、第2の酸化還元対が溶解されている。前記正極及び負極電解質貯蔵所106A,106Bは、各々の半反応に対して反応空間を定義する。前記密閉した酸化還元電池200Aは、さらに前記正極電解質貯蔵所106Aと前記負極電解質貯蔵所106Bを分離するイオン交換膜112を含む。前記正電極は、正極集電体108Aに電気的に連結され、前記負電極は、負極集電体108Bに電気的に連結される。一部の具現において、第1両極板(bipolar plate)208Aは、前記正極集電体108Aと前記正極電解質貯蔵所106Aとの間に介在し、第2両極板208Bは、前記負極集電体108Bと前記負極電解質貯蔵所106Bとの間に介在する。
【0028】
従来RFBとは違って、密閉した酸化還元電池200において、前記第1ハーフセル204A、前記第2ハーフセル204B、および前記イオン交換膜112は、ケーシングやフレーム212に密閉した酸化還元電池セルを定義する。前記密閉したケーシング212は、正常動作中、これの内部内容物が外部から物理的に接近不可能であるようにする。すなわち、前記正極及び負極電解質は、電解質タンクのような外部容器と流体連通しない。前記ケーシング212は、完全に及び/又は永久的に酸化還元電池200Aを蜜閉する。それら構成は、従来レドックス・フロー電池と対照されて、前記酸化還元電池セルは、外部タンクと流体連通する。すなわち、前記密閉した酸化還元電池200Aにおいて、図1について前述したRFB100とは違って、囲まれたセルの正極電解質貯蔵所106Aや負極電解質貯蔵所106Bとも、第1又は第2電解質それぞれを貯蔵する別途電解質タンクと流体連通するか物理的に連結されない。このように、前記正極及び負極電解質の実質的な全体用量が、前記酸化還元電池内に貯蔵されて、前記ケーシング212によって密閉して囲まれる。すなわち、前記第1電解質貯蔵所106Aは、前記第1ハーフセル204Aのため第1電解質の実質的な全体体積を貯蔵し、前記第2電解質貯蔵所106Bは、前記第2ハーフセル204Bのため第2電解質の実質的な全体体積を貯蔵する。前記密閉した酸化還元電池200Aが、別途貯蔵タンクに連結されない一部の理由により、図1に示されたRFB100とは違って、前記密閉した酸化還元電池200Aは、有利に、電解質を電池セルへ/から伝達するための導管120A,120B,124A,124B(図1)や、電解質を循環させるためのポンプ128A,128B(図1)を含まない。
【0029】
前述したように、前記密閉した酸化還元電池200Aの目立つ構造的相違は、ポンプ128A,128B(図1)の省略である。その代わりに、実施形態による前記密閉した酸化還元電池200Aは、前記第1ハーフセル204Aの正極電解質貯蔵所106Aと、前記第2ハーフセル204Bの負極電解質貯蔵所106Bそれぞれの内部において、第1及び第2電解質が自体循環するように構成される。様々な構成において、第1及び第2電解質の自体循環は、第1及び第2電解質貯蔵所の間の浸透圧差、第1及び第2電解質のうち一つ又は両方の密度変化、前記第1及び第2電解質のうち一つ又は両方の拡散或いは移動、第1及び第2電極それぞれに対する第1及び第2電解質のうち一つ又は両方の親和度、第1及び第2の酸化還元半反応、および第1及び第2電解質のうち一つ又は両方の熱膨脹又は収縮のうち一以上によって引き起こされる。前記発明者は、図2Aの断面図における正極及び負極電解質貯蔵所106A,106Bの厚さが20cm、15cm、10cm、5cm、2cm、1cm、又はこれら値のうちいずれかによって定義された範囲の値を超えない場合、自体循環が電力及びエネルギー出力の安全性を提供するのに効果的であることを知見した。
【0030】
図2Aを参照すれば、前記ケーシング212は、極酸性であってもよい正極及び負極電解質を収容するように適宜な耐食性材料で形成される。耐食性を提供すると共に、前記ケーシング212は、前記密閉した酸化還元電池200に対する機械的支持を提供するため堅いケーシングである。一部の実施形態において、実施形態によるケーシング212の少なくとも一部分は、正極及び負極電解質貯蔵所106A,106B内に内部圧力の変化を収容かつ変形するように構成された柔軟な素材で形成することができる。内部圧力の増加は、例えば、圧力が調節された密閉した酸化還元電池に対して、後述する多様な効果によって引き起こされる。前記ケーシングの部分のみが柔軟な材料で形成される構成において、その他部分は、堅い材料で形成されてもよい。前記柔軟な部分は、例えば、圧力の増加によって膨脹して、前記正極及び負極電解質貯蔵所106A,106Bのうち一つ又は両方が、0.1%、0.2%、0.5%、1%、2%、5%、10%、20%、50%よりも大きい、各体積の増加時にも収容できるように構成されてもよい。前記ケーシング212の適宜な材料は、ポリ塩化ビニル(PVC:polyvinyl
chloride)、ポリエチレン(PE:polyethylene)、ポリスチレン(PS:polystyrene)、ポリプロピレン(PP:polypropylene)、ポリカーボネート(PC:polycarbonate)、ABS、強化プラスチックなどを含むことができる。
【0031】
このように構成された、密閉した酸化還元電池200Aは、様々な技術的及び商業的長所を含む。例えば、電解質を循環させるポンプのみならず、電池セルとタンクとの間の導管(例:管継手)に係る多様な信頼性誤りが実質的に減少するか除去されて、密閉した酸化還元電池200の動作に関連した安全リスクと運営コストのみならず、予定になかった修理を減らす。また、前記RFB100(図1)について前述したように、外的効率性は、ポンプを用いて電池セルとタンクとの間に電解質を循環させる必要性をなくして、実質的に向上する。本発明者らは、前記セルと電解質タンクとの間で電解質を循環させる必要性をなくして、密閉した酸化還元電池200Aは、システムの大きさによって、従来RFBに比べて、最大2-50倍まで電力密度を向上させることができる。上述したように、電力密度は、エネルギー貯蔵装置の総体積に対する貯蔵装置の電力出力を示す。よって、密閉した酸化還元電池の場合、前記電力密度は、密閉した酸化還元電池の内部の総体積に対する電力出力の割合を示す。また、別途タンク、ポンプ、および導管を含む循環システムを省略して、空間効率性がさらに向上する。しかも、前記システムの複雑性は、大きく減少して、密閉した酸化還元電池200の商業的具現に対する障壁が大きく減る。例えば、従来RFBとは違って、前記密閉した酸化還元電池200Aは、モジュール化した具現に対するリチウムイオン電池に類似するパックに製造されて、従来RFBを設置するのに必要である、障る構造が必要なく、自動化と大量生産にさらに好適となる。
【0032】
下記では、前記密閉した酸化還元電池200Aの作動原理及び側面が、バナジウム(V:vanadium)基盤の酸化還元対に基づく、密閉したバナジウム酸化還元電池の一例を挙げて説明する。しかしながら、実施形態は、それらに制限されず、ここに説明していない原理は、様々な他の酸化還元対によって酸化還元電池に適用され得ることが理解される。
【0033】
実施形態による密閉したV酸化還元電池において、前記第1ハーフセル204Aの前記第1又は正極電解質に溶解された第1の酸化還元対は、V4+/V5+酸化還元対であってもよく、前記第2ハーフセル204Bの前記第2又は負極電解質に溶解された第2の酸化還元対は、V2+/V3+酸化還元対であってもよい。充電及び放電中の酸化還元反応は、下記の数式を用いて説明することができ、→は、放電反応方向を示し、←は、充電反応方向を示す。
第2ハーフセル/負電極:V2+←→V3++e
第1ハーフセル/正電極:V5++e←→V4+
全体反応:V2++V5+←→V4++V3+
【0034】
充電する間、前記第1ハーフセル204Aにおいて、V4+イオン内の4価バナジウムは、V5+イオン内の5価バナジウムに酸化される反面、前記第2ハーフセル204Bでは、3価イオンV3+が2価イオンV2+に還元される。放電する間、前記第1ハーフセル204Aにおいて、V5+イオン内の5価バナジウムは、V4+イオン内の4価バナジウムに還元される反面、前記第2ハーフセル204Bでは、2価イオンV2+が3価イオンV3+に酸化される。これら酸化還元反応が起こる間、電子は、外部回路を介して伝達されて、特定のイオンは、イオン交換膜112を横切って拡散し、各々正のハーフセルと負のハーフセルの電気的中性のバランスを取る。
【0035】
他の酸化還元反応は、実施形態による密閉した酸化還元電池200で具現することができる。様々な実施形態に従って、前記第1の酸化還元対や第2の酸化還元対は、バナジウム(V)、亜鉛(Zn:zinc)、ブロム(Br:bromine)、クロム(Cr:chromium)、マンガン(Mn:manganese)、チタニウム(Ti:titanium)、鉄(Fe:iron)、セリウム(Ce:cerium)
、およびコバルト(Co:cobalt)のうち一つ又はそれ以上のイオンを含む。一部の実施形態において、前記第1及び第2の酸化還元対は、前述したV酸化還元電池でのように、同じ金属のイオンを含む。これら実施形態では、有利に、正極及び負極電解質の混合でよって、これら電解質の交差汚染が生じない。
【0036】
上述したように、酸化還元電池の電解質は、イオン化によって電流を電導する溶液である。前記電解質は、酸化還元対の酸化及び還元中、溶液内イオンの電荷のバランスを取るために、還元及び酸化した形態の酸化還元対を支援し、該カチオンとアニオンも支援する。実施形態による前記正極及び負極電解質は、酸性水溶液を含む。密閉したV酸化還元電池の場合、Vイオンの濃度は、電解質のエネルギー密度に関連する。さらに高いエネルギー密度は、有利に与えられた正のエネルギーと電力出力に要求される正極及び負極電解質貯蔵所106A,106Bの体積を減らす役割が可能である。しかし、非常に高いVイオンの濃度は、Vイオンの安全性を低下し得る。よって、与えられた適用についてVイオンの最適な範囲が存在する。例えば、第1及び第2電解質のうち一つ又は両方に溶解されたバナジウムイオンは、1.0M、1.5M、2.0M、2.5M、又はこれら値のうちいずれかによって定義された範囲の値よりも大きくてもよい。一方、1.0Mよりも低いVイオン濃度は、一部の適用に不適合なエネルギー水準につながり得る。一方、2.5Mよりも大きいVイオン濃度は、例えば、50℃以上の動作温度でV5+イオンの安全性がさらに低くてもよく、例えば、-20℃以下の動作温度では、電解質のV2+とV3+イオンの溶解度限界に至ることができる。
【0037】
好ましくは、実施形態によれば、正極及び負極電解質は、同じ溶媒(等)及び/又は同じ金属のイオンを含むことができる。これら実施形態において、前記イオン交換膜112を介する正極及び負極電解質の混合により、各ハーフセルが汚染しない。また、正極及び負極電解質は、同じ出発溶媒(等)及び溶質(等)から設けることができる。例えば、一部の実施形態に従う、密閉したV酸化還元電池の場合、正極及び負極電解質はいずれも、硫酸を含む。4価バナジウムイオン(V4+)及び/又は3価バナジウムイオン(V3+)を形成するために例えば、水溶液で0.1M~2.5M VOSO(バナジル硫酸塩)を0.1M~6M
SOに溶解して、電解質を設けることができる。前記4価/3価バナジウムイオンが電気化学的に酸化して、正極電解質(負極液)を形成し、これは、5価バナジウムイオン(V5+)の溶液である。逆に、前記4価/3価バナジウムイオンが電子化学的に還元して、負極電解質(正極液)を形成し、これは、2価バナジウムイオン(V2+)の溶液である。
【0038】
図2Aを参照すれば、様々な実施形態において、前記正極及び負極電解質貯蔵所106A,106Bにそれぞれ配置された前記正電極及び負電極は、幾つかを例に挙げると、炭素又は黒煙フェルト、炭素布、カーボンブラック、黒煙粉末、およびグラフェンのような炭素系材料を含む。前記炭素系材料は、有利にかつ相対的に高い作動範囲、優れた安全性及び高い可塑性を提供する。前記電極は、相対的に高い電気化学的活性、低いバルク抵抗率、および広い非表面積に最適化する。前記電極の電気化学的活性の改善は、密閉した酸化還元電池200Aのエネルギー効率性を増加させる。前記密閉した酸化還元電池200Aの性能を向上させるために、前記電極の表面は、例えば、金属でコーティングして、表面粗さを増加させるか、添加物でドーピングして修正されてもよい。
【0039】
前記反応空間を定義する正極及び負極電解質貯蔵所106A,106Bが存在する場合、イオン交換膜112と第1及び第2両極板208A,208Bそれぞれの間や、イオン交換膜112と正極及び負極集電体108A、108Bそれぞれの間に、各電極で部分的に又は完全に満たされる。各電極で満たされた後、正極及び負極電解質貯蔵所106A,106Bの残る空間が存在する場合、イオン交換膜112と第1及び第2両極板208A,208Bそれぞれの間や、イオン交換膜112と正極及び負極集電体108A、108Bそれぞれの間に、各電解質で部分的に又は完全に満たされる。様々な実施形態において、後述するように、意図的に穿孔されるか多孔性になった場合を除いては、前記イオン交換膜112は、2つのハーフセルを実質的に分離して、2つの電解質と酸化還元対が混合することを実質的に防止し、電流が流れる間に回路を完成するために、2つのハーフセルの間の電荷均衡を合わせるためHのようなイオン輸送を可能にする。前記イオン交換膜112は、アニオン交換膜又はカチオン交換であってもよい。前記イオン交換膜112は、材料の幾つか範疇を例に挙げると、過フッ素化イオノマー(perfluorinated ionomer)、部分的フッ素化ポリマー(partially fluorinated polymer)、および非フッ素化炭化水素(non-fluorinated
hydrocarbons)を含むことができる。前記イオン交換膜112の特定例は、Nafion(登録商標),Flemion(登録商標),NEOSEPTA-F(登録商標)、およびGore
Select(登録商標)を含み、優れた化学的安全性、高い伝導性、および機械的強度を提供する。
【0040】
例示された様々な実施形態は、特定のイオン類型(例:アニオン又はカチオン)に選択できるイオン交換膜112を含むものの、実施形態がこれらに制限されるものではない。例えば、様々な実施形態において、前記イオン交換膜112は、非選択的膜(例:多孔性膜)であってもよい。
【0041】
図2Aを参照すれば、一部の実施形態において、出力電力は、セルスタックを形成するために、多くの単一酸化還元電池セルを、例えば、直列連結して拡張することができる。かかる構成において、第1及び第2両極板208A,208Bは、単一セルの直列連結を容易にして、隣接した両極板の間の集電板108A,108Bが除去されてもよい。前記第1及び第2両極板208A,208Bは、黒煙、炭素、炭素プラスチックなどのような適宜な材料で形成され、セルステックの高い電気伝導性と低い内部抵抗を提供する。また、第1及び第2両極板208A,208Bは、電気伝導性を増加するために、電極に押された際に受ける接触圧力を支持する。しかも、第1及び第2両極板208A,208Bは、集電板108A,108Bの腐食や酸化を防止するために、高い耐酸性(acid
resistance)を有するように提供される。
【0042】
正極及び負極集電体108A,108Bは、銅やアルミニウムのような高い電気伝導性を有する金属を含み、充電及び放電過程で電流を流す役割を担う。
【0043】
前述した単一の密閉した酸化還元電池200Aは、例えば、約1.65V以下の電気化学的反応が特徴である出力電圧を有するため、追加セルが電気的に直列又は並列連結されて、上述したように、より高い電圧及び電流をそれぞれ達成することができる。
【0044】
図2Bは、一部の実施形態に従って、積層構成により複数の密閉した酸化還元電池セルを含む、密閉した酸化還元電池に関する概略図である。前記図示の密閉した酸化還元電池200Bは、積層可能な複数の電池セル200B-1,200B-2,...,200B-nを含み、各セルは、前記密閉した酸化還元電池200A(図2A)と同様の方式で構成される。前記複数の電池セル200B-1,200B-2,...,200B-nそれぞれは、正極電解質貯蔵所106A、負極電解質貯蔵所106B、およびイオン交換膜112を含む。例示の実施形態において、複数の電池セル200B-1,200B-2,...,200B-nそれぞれは、別途ケーシング212によって囲まれる。前記複数の電池セル200B-1,200B-2,...,200B-nは、電気的に直列連結されて、出力電圧を増加させる。
【0045】
図2Cは、一部の他の実施形態に従って、積層構成により複数の密閉した酸化還元電池セルを含む、密閉した酸化還元電池に関する概略図である。前記図示の密閉した酸化還元電池200Cは、積層可能な複数の電池セル200C-1,200C-2,...,200C-nを含み、前記複数の電池セル200C-1,200C-2,...,200C-nそれぞれは、正極電解質貯蔵所106A、負極電解質貯蔵所106B、およびイオン交換膜112を含む、前記密閉したレドックス・フロー電池200(図2A)と同様の方式で構成される。しかし、前記密閉した酸化還元電池200B(図2B)とは違って、上記例示の実施形態において、複数の電池セル200C-1,200C-2,...,200C-nは、共通ケーシング222によって囲まれる。前記密閉した酸化還元電池200B(図2B)と同様の方式で、前記複数の電池セル200C-1,200C-2, 200C-nは、電気的に直列連結されて、出力電圧を増加させる。また、一部の実施形態において、前記複数の電池セル200C-1, 200C-2,...,200C-nの正極電解質貯蔵所106Aは、互いに流体連通することができ、前記複数の電池セル200C-1,200C-2,...,200C-nの負極電解質貯蔵所106Bは、互いに流体連通することができる。前記密閉した酸化還元電池200Cは、パウチ型電池や剛体(rigid)ケース型電池から構成することができる。
【0046】
図2Dは、実施形態に従って、円筒状積層構成により複数の密閉した酸化還元電池セルを含む、密閉した酸化還元電池に関する概略図である。前記図示の密閉した酸化還元電池200Dは、円筒状で積層可能な複数の電池セル200D-1,200D-2,...,200D-nを含み、前記複数の電池セル200D-1,200D-2,...,200D-nそれぞれは、正極電解質貯蔵所106A、負極電解質貯蔵所106B、およびイオン交換膜112を含む、前記密閉したレドックス・フロー電池200(図2A)と同様の方式で構成される。前記複数の電池セル200D-1,200D-2,...,200C-nは、前記密閉した酸化還元電池200B(図2B)について前述したのと同様の方式で、ケーシングに個別的に囲まれてもよい。または、前記複数の電池セル200D-1,200D-2,...,200C-nは、前記密閉した酸化還元電池200C(図2C)について前述したのと同様の方式で、共通ケーシング222に囲まれてもよい。前記密閉した酸化還元電池200B(図2B)と同様の方式で、前記複数の電池セル200D-1,200D-2...,200D-nは、電気的に直列連結されて、出力電圧を増加する。また、一部の実施形態において、前記複数の電池セル200D-1,200D-2,...,200D-nの正極電解質貯蔵所106Aは、互いに流体連通することができ、前記複数の電池セル200D-1,200D-2,...,200D-nの負極電解質貯蔵所106Bは、互いに流体連通することができる。
【0047】
図2B及び2Cについて前述した、前記積層された構成の各々における複数の電池セルの一部又は両方は、セルの一部又は両方の反対極性の集電体を適宜に電気的に連結して、電気的に直列連結されるか、全セルのうち一部の同じ極性の集電体を適宜に電気的に連結して、電気的に並列連結することができると理解される。
【0048】
<既存の二次電池に対する密閉した酸化還元電池の相違点>
従来RFBに対する実施形態による密閉した酸化還元電池の相違点及び長所は、上述されており、これらは、既存のRFBの遅い商業的具現の原因となる電解質タンク、ポムピングシステム、および導管ネットワークの省略を含む。別途電解質タンクは存在しないが、前記密閉した酸化還元電池200A-200D(図2A-2D)は、既存のRFBにおける使用することができる固有の設計柔軟性の一部を維持する。例えば、液体の固有の順応性により、セル幾何学の設計は、既存の二次電池に比べてさらに柔軟である。しかも、電力及びエネルギー貯蔵用量は、電極表面積に対する電解質体積の割合を調節するのと同様、制限された程度に独立に分離されるか拡張することができる。前記割合は、前述したように、例えば、前記正極及び負極電解質貯蔵所106A,106Bの厚さを利用して調節することができる。一方、実施形態による前記密閉した酸化還元電池は、モジュール化した具現を可能にするように、完全に密閉したため、従来電池の主な長所も共有する。実施形態による密閉した酸化還元電池と、従来二次電池(例:LIB)は、類似の用語を使って参照される構成要素を有し得るが、上述したように、実施形態による密閉した酸化還元電池の構成要素と、これら動作原理は、従来二次電池の構成要素と、これら動作原理と区別され得ることを認識することができる。下記では、実施形態による密閉した酸化還元電池とLIBを比較したが、他の従来二次電池とも比較できることを理解することができる。
【0049】
第一に、実施形態による密閉した酸化還元電池の電解質の構造、機能的役割と動作原理は、従来二次電池(例:LIB)の構造、機能的役割と動作原理とは区別され得る。動作時、LIBにおいて、前記電解質は、それ自体でエネルギーを貯蔵するか、充電/放電過程で電気化学的反応に参加しない。その代わりに、LIBの電解質は、充電/放電過程で、正電極及び負電極の間にリチウムイオンが輸送される経路を主に提供する役割を持つ。よって、前記電解質の移動は、分離膜(separator)によって実質的に制限されない。逆に、実施形態による密閉した酸化還元電池200において、電気化学的エネルギーは、溶解された活性物質、例えば、充電/放電過程で電気化学的反応を経た正極及び負極電解質に溶解された各酸化還元対の形態として電解質に貯蔵される。よって、前記電解質は、実施形態による密閉した酸化還元電池にエネルギーを貯蔵する媒体と言える。V酸化還元電池の例において、前述したように、正極及び負極電解質に溶解されたVイオン種の酸化状態は、各半反応によって変更される。よって、前記密閉した酸化還元電池の正極及び負極電解質の化学的構成は、LIBの電解質とは異なる。また、LIBとは違って、実施形態による前記密閉した酸化還元電池において、正極電解質及び負極電解質の化学的構成の相違による起電力がエネルギー貯蔵につながるため、正極及び負極電解質が混合して、貯蔵されたエネルギーが損失する。
【0050】
第二に、実施形態による密閉した酸化還元電池の電極の構造、機能的役割と動作原理は、従来二次電池(例:LIB)の構造、機能的役割と動作原理とは区別され得る。LIBにおいて、電極に含まれる活性物質は、直接に電気化学反応に参加する。動作時、LIBにおいて、リチウムイオンは、正極の活物質と負極の活物質との間を移動して、電気化学的バランスを取り、前記電極自体がエネルギー貯蔵のため主な媒体の役割を持つ。逆に、実施形態による前記密閉した酸化還元電池の電極は、他の役割を持つ。密閉した酸化還元電池の正電極は、第1の酸化還元半反応に参加せず、前記密閉した酸化還元電池の負電極は、第2の酸化還元半反応に参加しない。上述したように、酸化還元半反応に参加しない電極は、触媒と同様の方式で、電気化学的反応のための物理的サイトを提供する電極の機能を排除しない。しかし、前記電極自体は、電気化学的反応に参加せず、酸化還元イオンは、電池の充電及び放電中に正電極及び負電極の間で移動しない。構成によって、触媒の役割を持つ作用基は、表面上に存在し得る。しかし、これは、LIBの場合でのように、電気化学的反応に能動的に参加する電極とは区別され得る。むしろ、前記電極は、電気化学的反応によって生成される電子を実質的かつ能動的に輸送する。
【0051】
第三に、実施形態による密閉した酸化還元電池のイオン交換膜の構造、機能的役割と動作原理は、従来二次電池(例:LIB)の構造、機能的役割と動作原理とは区別され得る。LIBにおいて、電気化学的反応が起こる電極の活性物質は、一般に固体状態であり、正電極及び負電極の間に配置された分離膜は、主にこれらの間の電気的短絡を防止する役割を持つ。よって、前記分離膜が正電極と負電極との間の電気的接触を防止する役割を持つ反面、LIBにおいて、前記分離膜は、リチウムイオンがこれらを通して輸送されることを制限するか、これら間の電気化学的反応を制限するように別途設計されない。言い換えれば、LIBの分離膜は、充電及び放電のため電気化学的反応の一部であり、イオンの輸送を干渉せず、正電極と負電極を互いに電気的に絶縁する役割を主に担う。よって、LIBのための分離膜は、前記電極の間のリチウムイオンを自由に輸送するように設計される。逆に、実施形態による密閉した酸化還元電池において、前記酸化還元活性種は、電解質で溶解され、前記イオン交換膜112(図2A)は、正極及び負極電解質を電気的に分離させて、互いに混合しないようにする。一般に、前記イオン交換膜112は、アニオンとカチオンが互いに輸送されて、2つのハーフセルの間に電荷のバランスを取る選択的通過膜を含む。例えば、前記イオン交換膜は、アニオンとカチオンを選択的に通過させるように構成することができる。よって、実施形態による密閉した酸化還元電池において、エネルギーを貯蔵する電解質は、液体であるため、前記イオン交換膜112がなければ、正電極及び負電極が互いに接触するか否かにかかわらず、正極及び負極電解質が混合して、電気的短絡が発生する。よって、実施形態による密閉した酸化還元電池において、前記第1及び第2の酸化還元半反応は、前記正極電解質貯蔵所106Aと前記負極電解質貯蔵所106Bを分離するイオン交換膜112を介して、第1の酸化還元対や第2の酸化還元対のイオンが実質的に伝達されなくても、第1及び第2の酸化還元半反応が起こる。上述したように、前記酸化還元対のイオンを実質的に伝達しないイオン交換膜112は、正極及び負極電解質貯蔵所106A,106B(図2A)の間の電解質のクロスオーバー(crossover)を実質的に防止する役割を持つイオン交換膜112を示す。よって、前記イオン交換膜112の母材は、V酸化還元電池の電解質、例えば、Vイオンにおける酸化還元種の移動を防止しつつ、ハーフセル間の電荷均衡のため、V酸化還元電池における他のイオン、例えば、Hイオンの移動を選択的に許容する膜であってもよい。しかし、酸化還元対のイオンを実質的に伝達しないイオン交換膜112は、後述するように、依然として意図していない交差を許容するか、内部圧力の累積(buildup)を減らすために、制限かつ意図された混合を許容する。
【0052】
<圧力が調節される密閉した酸化還元電池>
前述したように、実施形態による密閉した酸化還元電池は、部分的に電解質タンク、ポムピングシステム、および導管ネットワークを省略することによって、従来RFBの商業化の主な障害物を克服する。一方、部分的に密閉した構造により、さらに単純かつコンパクトな設計を含み、従来二次電池が提供する主な長所も提供する。これら主な長所を提供しつつ、発明者は、実施形態による密閉した酸化還元電池の密閉した構造から、特定の技術的問題が発生することが分かった。下記では、これら及び他の問題を解決するための技術的特徴と共に、その問題を説明する。
【0053】
発明者らは、密閉した酸化還元電池に関連するこれら技術的問題が、イオン交換膜の構造的限界点から発生する点が分かった。前述したように、イオン交換膜112(図2A)の材料は、選択的に特定のイオン、例えば、V酸化還元電池のHイオンを通過させつつ、かつ理想的には、酸化還元活性種、例えば、V酸化還元電池のVイオンが溶解されている正極及び負極電解質を電気的に分離して、これらの混合を防止する。しかし、実際は、電解質と酸化還元活性種の好ましくない混合がイオン交換膜112(図2A)を介して発生する。例えば、V酸化還元電池において、水、硫酸、およびVイオンの混合は、正極及び負極電解質貯蔵所106A,106Bの間のイオン交換膜112を介して発生する。クロスオーバーと総称するこれら現象は、一般に、酸化還元電池の長期間寿命とエネルギー効率を低下する現象とされる。これらクロスオーバーは、充電/放電過程でさらに加速化する。例えば、V酸化還元電池の場合、クロスオーバーは、充電過程中、そして逆方向に放電過程中、パーフルオロスルホン酸(PFSA:perfluorosulfonic acid)を含むイオン交換膜を介して、正極電解質貯蔵所106Aから負極電解質貯蔵所106Bに発生する。酸化還元作用とイオン交換膜の特性によって、クロスオーバーは、順方向(net directional)であってもよい。発明者らは、V酸化還元電池のような一部のシステムの場合、放電過程中のクロスオーバーの程度が、充電過程中のクロスオーバーの程度よりも大きくて、充電及び放電が繰り返されつつ、正極電解質の体積と負極電解質の体積との間の不均衡が蓄積されることを見つけた。これにより、電解質量とイオンの濃度において、正極及び負極電解質貯蔵所106A,106Bの間の不均衡が発生する。これら不均衡は、正極及び負極電解質貯蔵所106A,106Bのうち一つ又は両方において、負圧又は正圧が蓄積され得る。充電及び放電過程が繰り返されつつ、正極及び負極電解質貯蔵所106A,106Bの間の蓄積された不均衡と、これによる圧力の蓄積は、エネルギー用量及び効率性を減少させ、結局、密閉した酸化還元電池が永久的に損傷する。
【0054】
クロスオーバーによって引き起こされる芳香性物質の伝達の影響は、従来RFBに比べて、実施形態による密閉した酸化還元電池においてさらに深刻であることが理解される。これは、RFBの電解質タンクは、正極及び負極電解質貯蔵所106A,106B内の電解質体積の変化の一部補償を許容する反面、実施形態による密閉した酸化還元電池の正極及び負極電解質貯蔵所106A,106B内の体積は、電解質タンクがなくて、相対的に固定的である。その結果、正極及び負極電解質貯蔵所106A,106Bの間の電解質体積の不均衡、及びこれの結果的な圧力の累積は、前記イオン交換膜112、前記正電極及び負電極、前記正極及び負極電解質貯蔵所106A,106B、及び/又はケーシング212を含む電池の様々な構成要素に対する変形及び損傷可能性を増加させる。クロスオーバーによる圧力の累積に加えて、実施形態による密閉した酸化還元電池は、電池セルと電解質タンクとの間の電解質交換によって、一部の熱交換を許容する既存のRFBに比べてさらに熱的に隔離されるため、前記密閉した酸化還元電池は、電解質の温度変化にさらに弱い。より高い温度は、電解質を熱的に膨脹させるだけでなく、水素の発生及びCOの発生のような副反応を起こすか加速化することができ、これは、前記密閉した酸化還元電池内の圧力の累積をさらに増加させることができる。以下では、前記密閉した酸化還元電池に関連する、これら及び他の技術的問題点を解決する様々な実施形態を説明する。
【0055】
図3A~3Cは、実施形態に従って、正極電解質貯蔵所と負電極貯蔵所のうち一つ又は両方における圧力の累積を減らすか、少なくとも部分的に防止するように構成された、密閉した酸化還元電池を概略的に示す。図3A~3Cに例示された密閉した酸化還元電池それぞれは、図2Aについて前述した、前記密閉した酸化還元電池200Aの様々な特徴に加えて、動作中に、前記正極電解質貯蔵所と前記負極電解質貯蔵所のうち一つ又は両方における圧力の累積を減らすか、少なくとも部分的に防止するための減圧手段を含む。前記減圧手段は、前記正極電解質貯蔵所106Aの正極電解質と、前記負極電解質貯蔵所106Bの負極電解質を統制可能であるように混合、例えば、直接に混合して、前記圧力の累積を防止するか、少なくとも一部を防止するように構成される。電解質の混合は、実施形態による密閉した酸化還元電池の電池効率性の減少につながるが、電池効率の減少による電力出力の損失は、電解質を循環させるため従来RFBにおいて、エネルギー消費よりもかなり低いことを理解することができる。下記では、前記ケーシングは、明確性のため、示された密閉した酸化還元電池から省略する。しかし、前記図示の密閉した酸化還元電池構成それぞれは、図2A~2Dについて前述したのと同様の方式でケーシング212を含むと理解することができる。
【0056】
図3Aは、一部の実施形態に従って、前記正極及び負極電解質貯蔵所を連結する導管を用いて、前記正極及び負極電解質の混合を統制可能に許容し、正極電解質貯蔵所と負極電解質貯蔵所のうち一つ又は両方における圧力の累積を減らすか、少なくとも部分的に防止するように構成された、密閉した酸化還元電池を概略的に示している。前記密閉した酸化還元電池300Aは、前記密閉した酸化還元電池300Aが、前記正極電解質貯蔵所106Aと前記負極電解質貯蔵所106Bを直接に連結する減圧導管304をさらに含むことを除いては、図2Aについて前述した、密閉した酸化還元電池200Aと同様の方式で構成される。前記正極及び負極電解質貯蔵所106A,106Bの間で発生する圧力差を緩和するために前記導管304は、さらに高い圧力を有する電解質貯蔵所から、さらに低い圧力を有する電解質貯蔵所へ、電解質の統制された伝達を許容することで、前記正極及び負極電解質貯蔵所106A,106Bの間の電解質混合を可能にする。前述したように、一般に、前記正極及び負極電解質の混合は、エネルギー用量及び効率の減少や、さらには、密閉した酸化還元電池の損傷を引き起こす。しかし、前記導管304は、電解質クロスオーバーの体積に比例する統制された低い水準で電解質の混合量を統制可能に制限するように構成される。実施形態によれば、前記正極及び負極電解質貯蔵所106A,106Bの一つから他の一つへと、電解質の許容された流れの量は、前記導管304がない場合、前記正極及び負極電解質貯蔵所106A,106Bの一つから他の一つへと、発生する電解質クロスオーバーの量よりも少ないか同様に統制される。これは、例えば、クロスオーバーの結果、伝達される電解質の量と同じか大きい導管304内のバッファー体積を提供して達成される。実施形態によれば、前記正極及び負極電解質貯蔵所106A,106Bの間に、充電又は放電サイクル当たり、伝達されるか交差伝達される電解質の体積は、0.001%、0.01%、0.1%、1%、10%、又はこれら値のうちいずれかに定義された範囲内の、前記正極及び負極電解質貯蔵所106A,106Bのうち一つ又は両方の電解質の体積の百分率よりも小さくてもよい。前記導管304によって提供されるバッファー体積は、例えば、一つの充電又は放電サイクル内で、前記正極及び負極電解質貯蔵所106A,106Bの間に伝達されるか、交差伝達される電解質の体積と大体に同じか大きくてもよい。
【0057】
図3B、3B-1及び3B-2は、一部の他の実施形態に従って、正極電解質貯蔵所と負電極貯蔵所のうち一つ又は両方において、これらを貫通して形成された一以上の開口を有するイオン交換膜を用いて、前記正極及び負極電解質の混合を統制可能に許容し、圧力の累積を減らすか、少なくとも部分的に防止するように構成された、密閉した酸化還元電池を概略的に示している。図3Bを参照すれば、前記例示の密閉した酸化還元電池300Bは、前記密閉した酸化還元電池300Bが自己を通して形成される一つ又はそれ以上の孔や開口308を含むイオン交換膜312Bを含む点を除いては、図2Aについて前述した、密閉した酸化還元電池200Aと同様の方式で構成される。前記例示のイオン交換膜312Bは、前記一つ又はそれ以上の開口308を除いては、図2Aに示されたイオン交換膜112と実質的に類似である。前記正極及び負極電解質貯蔵所106A,106Bの間で発生する圧力差を緩和するために、前記一以上の孔308は、より高い圧力を有する電解質路から、より低い圧力を有する電解質貯蔵所へと、電解質の統制された伝達を許容することにより、前記正極及び負極電解質貯蔵所106A,106Bの間の電解質の混合を可能にする。前記孔308の大きさ、位置、および数は、意図的に、混合の量を電解質クロスオーバーの体積に比例する、統制された低い水準に許容するように設計される。実施形態によれば、前記正極及び負極電解質貯蔵所106A,106Bの一つから他の一つへと、電解質の許容された流れの量は、前記孔308がない場合、前記正極及び負極電解質貯蔵所106A,106Bの一つから他の一つへと、発生する電解質クロスオーバーの量よりも少ないか同様に統制される。実施形態によれば、前記孔(等)308は、10nm、100nm、1μm、10μm、100μm、1mm、10mm、又はこれら値のうちいずれかによって定義された範囲の値よりも大きい側面寸法、例えば、直径を有し得る。実施形態によれば、前記正極及び負極電解質貯蔵所106A,106Bのうち一つから他の一つへと、電解質の許容された流れの全体体積及び割合は、図3Aについて前述した、密閉した酸化還元電池300Aについて上述した値と同様であるように統制される。前記イオン交換膜112(図2A)を介するクロスオーバーの割合は、電力出力に比例して増加することを理解することができる。よって、より高い電力出力で、増加されたクロスオーバーによって引き起こされた電解質の不均衡は、比較的に早く緩和しなければならない。電解質不均衡を相殺するために、孔308を介して逆方向の混合を意図的に許容することで、より高い電力出力により電力の安全性が向上し得る。混合が増加して、電池効率性が低下し得るが、より高出力により電力出力の安全性が増加すれば、密閉した酸化還元電池300Bの構成を利用して、少なくとも部分的に低下した電池効率性を補うことができる。
【0058】
図3B-1は、代案的な実施形態に従って、正極電解質貯蔵所と負電極貯蔵所のうち一つ又は両方において、これらを貫通して形成された一以上の開口を有するイオン交換膜を用いて、圧力の累積を減らすか、少なくとも部分的に防止するように構成された、密閉した酸化還元電池を概略的に示している。前記密閉した酸化還元電池300B-1は、前記一つ又はそれ以上の開口308(図3B)を除いては、前記イオン交換膜112(図2A)と実質的に類似の前記イオン交換膜312B(図3B)の代わりに、前記密閉した酸化還元電池300B-1が、それぞれ部分的に囲まれたバッファー体積を有する一つ又はそれ以上のバッファー体積構造309に取り替えられた部分を有するイオン交換膜312B-1を含む点を除いては、前記密閉した酸化還元電池300B(図3B)と同様の方式で構成される。前記部分的に囲まれたバッファー体積は、各々がそれを通して形成された開口を有する側壁によって定義される。動作時、前述したように、前記正極及び負極電解質貯蔵所106A,106Bのうち一つ又は両方において、増加した圧力に反応して、前記正極及び負極電解質貯蔵所106A,106Bのうち一つ又は両方からの電解質(等)が、開口(等)を通して、前記正極及び負極電解質のうち一つ又は両方において、前記部分的に囲まれたバッファー体積を充填する。このように構成された、部分的に囲まれたバッファー体積は、前記正極及び負極電解質貯蔵所106A,106Bの間の電解質の交差混合を制限する役割が可能である。
【0059】
図3B-2は、他の代案的な実施形態に従って、正極電解質貯蔵所と負電極貯蔵所のうち一つ又は両方において、これらを貫通して形成された一以上の開口を有するイオン交換膜を用いて、圧力の累積を減らすか、少なくとも部分的に防止するように構成された、密閉した酸化還元電池を概略的に示している。前記密閉した酸化還元電池300B-2は、前記イオン交換膜112(図2A)と実質的に類似する前記イオン交換膜312B(図3B)の代わりに、前記密閉した酸化還元電池300B-2は、各々それを通して形成された開口を有する一つ又はそれ以上の電気短絡防止構造310に取り替えられた部分を有するイオン交換膜312B-2を含む点を除いては、前記密閉した酸化還元電池300B(図3B)と同様の方式で構成される。前記電気短絡防止構造310それぞれは、前記正極及び負極集電体108A,108Bに対して、逆方向に突出した部分を含む。動作時、前述したように、前記正極及び負極電解質貯蔵所106A,106Bのうち一つ又は両方において、増加した圧力に反応して、前記正極及び負極電解質貯蔵所106A,106Bのうち一つ又は両方からの電解質(等)は、図3Bについて前述したのと同様の方式で開口(等)を通す。また、前記電気短絡防止構造309は、前記正電極及び負電極が、前記開口を介して互いに接触しないように防止する役割を持つ。これら接触は、電気的短絡を引き起こし得る。
【0060】
前記密閉した酸化還元電池300B(図3B)、300B-1(図3B-1)、および300B-2(図3B-2)各々において、開口に又は近くに形成されたバッファー体積が存在し、前記電解質は、電極が互いに接触しないように防止しつつ混合するように許容される。前記酸化還元電池300B(図3B)において、前記バッファー体積は、前記イオン交換膜312Bに形成された開口(等)308の体積によって生成される。前記酸化還元電池300B-1(図3B-1)において、前記バッファー体積は、前記部分的に囲まれたバッファー体積と、前記バッファー体積構造309の側壁を通して形成された開口の体積によって生成される。前記酸化還元電池300B-2(図3B-2)において、前記バッファー体積は、前記電気短絡防止構造(等)309を通して形成される開口(等)の体積によって形成される。前記密閉した酸化還元電池300B (図3B)、300B-1(図3B-1)、および300B-2(図3B-2)各々に提供されるバッファー体積は、クロスオーバーの結果、伝達される電解質の体積と同様であるか大きく設計される。前述したように、前記正極及び負極電解質貯蔵所106A,106Bの間に、充電又は放電サイクル当たり、伝達されるか交差伝達される電解質の体積は、0.001%、0.01%、0.1%、1%、10%、又はこれら値のうちいずれかに定義された範囲内の、前記正極及び負極電解質貯蔵所106A,106Bのうち一つ又は両方の電解質の体積の百分率よりも小さくてもよい。
【0061】
図3Cは、さらに他の一部の実施形態に従って、正極及び負極電解質の混合を統制可能に許容し、正極電解質貯蔵所と負電極貯蔵所のうち一つ又は両方における圧力の累積を減らすか、少なくとも部分的に防止するように構成された、密閉した酸化還元電池を概略的に示している。前記密閉した酸化還元電池300Cは、前記密閉した酸化還元電池300Cが、多孔性構造を有するイオン交換膜312Cを含む点を除いては、図2Aについて前述した、前記密閉した酸化還元電池200Aと同様の方式で構成される。前記正極及び負極電解質貯蔵所106A,106Bの間で発生する圧力差を緩和するために、前記多孔性構造は、より高い圧力を有する電解質から、より低い圧力を有する電解質貯蔵所へと、電解質の統制された伝達を許容することで、前記正極及び負極電解質貯蔵所106A,106Bの間の電解質混合を可能にする。前記多孔性構造の孔(pores)の大きさ及び面密度は、意図的な混合量を電解質クロスオーバーの体積に比例する、統制した低い水準に許容するように設計される。実施形態によれば、前記正極及び負極電解質貯蔵所106A,106Bの一つから他の一つへと、電解質の許容された流れの量が、非多孔性(nonporous)イオン交換膜である場合、前記正極及び負極電解質貯蔵所106A,106Bの一つから他の一つへと発生する電解質クロスオーバーの量よりも少ないか同様であるように統制される。実施形態によれば、前記イオン交換膜312Cの孔(等)(pores)は、1nm、10nm、100nm、1μm、10μm、100μm、1mm、又はこれら値のうちいずれかによって定義された範囲の値よりも大きい側面寸法、例えば、直径を有し得る。一部の実施形態において、前記イオン交換膜は、多孔性部分と非多孔性部分とを含む。実施形態によれば、前記正極及び負極電解質貯蔵所106A,106Bのうち一つから他の一つへと、電解質の許容された流れの全体量及び割合は、前述した密閉した酸化還元電池300A(図3A)について上述した値と同様であるように統制される。前記密閉した酸化還元電池300B(図3B)について同様の方式で混合が増加して、電池効率性が低下し得るが、より高出力により電力出力の安全性が増加すれば、密閉した酸化還元電池300Cの構成を利用して、少なくても部分的に低下した電池効率性を補うことができる。
【0062】
図4は、一部の他の実施形態に従って、正極電解質貯蔵所と負電極貯蔵所のうち一つ又は両方における圧力の累積を減らすか、少なくとも部分的に防止するように構成された、密閉した酸化還元電池を概略的に示している。前記密閉した酸化還元電池400は、図4に示された、前記密閉した酸化還元電池400が、図2Aについて前述した、前記密閉した酸化還元電池200Aの様々な特徴に加えて、動作中に、前記正極電解質貯蔵所と前記負極電解質貯蔵所のうち一つ又は両方における圧力の累積を減らすか、少なくとも部分的に防止するための減圧手段を含むという点を除いては、図2Aについて前述した、前記密閉した酸化還元電池200Aと同様の方式で構成される。前記減圧手段は、前記正極及び負極電解質貯蔵所106A,106Bの内部に液体又は気体の体積増加を収容して、前記圧力の累積を防止するか、部分的に防止するように構成される。示された実施形態において、前記減圧手段は、前記正極電解質106Aと、前記負極電解質貯蔵所106Bのうち一つ又は両方に形成された超過又は自由体積404を含む。上述したように、超過又は自由体積は、各電解質で意図的に充填された前記正極及び負極電解質貯蔵所106A,106B内の体積を意味する。よって、これら実施形態において、前記正極及び負極電解質貯蔵所106A,106Bのうち一つ又は両方は、前記正極及び負極電解質各々に部分的にのみ充填される。前記正極及び負極電解質貯蔵所106A,106Bのうちいずれか電解質は、例えば、前述したように、クロスオーバーや電解質の熱的膨脹によって膨脹すれば、前記超過又は自由体積404が、前記正極及び負極電解質貯蔵所106A,106Bのうち一つ又は両方における圧力の累積を減らすか、防止するように、前記増加された体積を収容することができる。例えば、前記密閉した酸化還元電池400の内部温度が内部的に生成された熱や外部環境からの熱によって増加すれば、これによる圧力の累積は、熱的膨脹による電解質の増加した体積を収容して、前記超過又は自由体積404によって少なくとも部分的に収容することができる。これら圧力の累積は、例えば、電解質の熱的膨脹、溶解度の減少によって電解質から溶解された気体の進化(evolution)及び前記電池の内部気体の生成や膨脹から発生し得る。前記超過又は自由体積404の大きさは、基準温度、例えば、常温に対する予想ピーク温度(例:60℃)における電解質の予想熱的膨脹、及び予想気体生成、及び/又は膨脹に基づいて決定することができる。実施形態によれば、前記超過又は自由体積404は、前記それぞれの正極及び負極電解質貯蔵所106A,106Bの総体積に基づいて、0.1%、0.2%、0.5%、1%、2%、5%、10%、20%、50%、又はこれら値のうちいずれかによって定義される範囲内の値よりも大きい体積を占めることができる。
【0063】
図5Aと5Bは、一部の他の実施形態に従って、正極電解質貯蔵所と負電極貯蔵所のうち一つ又は両方における圧力の累積を減らすか、少なくとも部分的に防止するように構成された、密閉した酸化還元電池を概略的に示している。図5A及び図Bに例示の密閉した酸化還元電池500A,500B各々は、図2Aについて前述した、前記密閉した酸化還元電池200Aの様々な特徴に加えて、動作中に、前記正極電解質貯蔵所と前記負極電解質貯蔵所のうち一つ又は両方における圧力の累積を減らすか、少なくとも部分的に防止するための減圧手段を含む。前記減圧手段は、前記正極及び負極電解質貯蔵所106A,106Bのうち一つ又は両方におけるガス累積を減少させて、前記圧力の累積を防止するか、少なくとも部分的に防止するように構成される。前述したように、充電及び/又は放電中に、副反応は、幾つかを例に挙げると、水分解、炭素基盤電極の酸化によるCO及びOによる水素のような気体を発生することができる。これら副反応は、前記密閉した酸化還元電池の内部圧力の累積につながり得、前記圧力の累積の強度は、より高い温度で加速化することができる。
【0064】
図5Aは、一部の実施形態に従って、前記正極及び負極電解質貯蔵所106A,106Bのうち一つ又は両方におけるガス累積を減少させて、前記正極電解質貯蔵所と、前記負極電解質貯蔵所のうち一つ又は両方における圧力の累積を減らすか、少なくとも部分的に防止するように構成された、密閉した酸化還元電池を概略的に示している。前記密閉した酸化還元電池500Aは、前記密閉した酸化還元電池500Aが、前記正極及び負極電解質貯蔵所106A,106Bのうち一つ又は両方に形成された気体還元層504をさらに含むという点を除いては、図2Aについて前述した、前記密閉した酸化還元電池200Aと同様の方式で構成される。前記気体還元層504は、適宜な手段、例えば、吸収、反応又は触媒転換によって動作中に生成し得る気体種を還元、例えば、選択的に還元するように構成することができる。前記気体還元層504は、前記正極及び負極電解質貯蔵所106A,106Bの上部内面(upper inner surface)に形成されるように示されたが、実施形態は、これに制限されず、前記気体還元層504は、各電極の表面を含み、前記正極及び負極電解質貯蔵所106A,106B内の任意の表面に形成することができる。
【0065】
一実施形態において、前記気体還元層504は、前述したように、副反応で生成され得る水素を選択的に還元するように構成される。例えば、前記気体還元層504は、水素と酸素を熱と水に変える触媒の役割を持つ白金(Pt:platinum)を含むことができる。前記気体還元層504は、白金-炭素(Pt/C:platinum-carbon)複合材料または白金-炭素-高分子(Pt/C/polymer:platinum-carbon-polymer)複合材料を含むことができる。前記Pt/C又はPt/C/高分子複合材料は、CB(Carbon
Black)のような炭素基盤構造の表面に形成されるナノ結晶質Pt白金を含むことができる。与えられた体積の場合、前記ナノ結晶質Ptは、水素と酸素の効率的な触媒転換のため多少大きい表面対体積の割合を有する。このように構成された気体還元層504は、水素及び酸素気体の発生による気体の累積を実質的に減少させるか除去することができる。前記気体還元層504の量は、動作温度の範囲で生成されると予想される気体の量に基づいて決定することができる。実施形態によれば、前記気体還元層は、前記各々の正極及び負極電解質貯蔵所106A,106Bの総体積に基づいて、0.1%、0.2%、0.5%、1%、2%、5%、10%、20%、又はこれら値のうちいずれかによって定義される範囲内の値よりも大きい体積を占めることができる。
【0066】
図5Bは、一部の実施形態に従って、前記正極及び負極電解質貯蔵所106A,106Bのうち一つ又は両方におけるガス累積を減少させて、前記正極電解質貯蔵所と前記負極電解質貯蔵所のうち一つ又は両方における圧力の累積を減らすか、少なくとも部分的に防止するように構成された、密閉した酸化還元電池を概略的に示している。前記密閉した酸化還元電池500Bは、前記正極及び負極電解質貯蔵所106A,106Bのうち一つ又は両方に連結された気体放出弁508と、前記気体を収容する超過又は自由体積404を含む点を除いては、図2Aについて前述した、前記密閉した酸化還元電池200Aと同様の方式で構成される。前記気体放出弁508は、液体が通して放出されることを防止しつつ、前記第1及び/又は正極及び負極電解質貯蔵所106A,106Bの外部に電池に蓄積されてもよい気体を放出するように構成することができる。前記気体放出弁508は、前記超過体積404内の気体圧力が設定された圧力に到逹すれば、前記気体がこれを介して放出されて、前記正極及び負極電解質貯蔵所106A,106Bの内部圧力の累積を減少させるか、部分的に減少させるように構成することができる。
【0067】
文脈上明白に他に要求されない限り、説明及び全請求範囲における「包む(comprise)」、「包含し(comprising)」、「含む(include)」、「含み(including)」などの単語は、排他的であるか完全な意味に比べて、つまり、「含むものの、これに限られない」の意味であり、包括的な意味として解釈される。ここで、一般に使われる「結合された」という単語は、直接に連結されるか、一以上の中間要素を介して連結されてもよい二以上の要素を示す。ここで、一般に使われる「結合された」という単語は、直接に連結されるか、一以上の中間要素を介して連結されてもよい二以上の要素を示す。また、「ここに」、「上」、「下に」、およびこれに類似する意味の単語は、本出願で使われるとき、本出願の特定部分ではなく、本出願を全体的に示す。文脈が許容する場合、単数又は複数を使う上記の詳細な説明の単語は、それぞれ複数又は単数を含むことができる。二以上の項目のリストを参照して、「又は」という単語は、リストの項目のうちいずれか、リストの全項目、およびリストの項目のいずれか組み合わせという解釈をいずれも含む。
【0068】
また、その他の中でも、「できる」、「できた」、「こともできた」、「こともできる」、「例」、「例えば」、「のような」など、ここで使われる条件付言語は、特に他に言及されない限り、又は使われた文脈内で他に理解されない限り、一般に特定の実施形態が特定の特徴、要素及び/又は状態を含むものの、他の実施形態は含まないことを伝達するためのものである。よって、これら条件付言語は、一般に特徴、要素及び/又は状態が、一以上の実施形態についてどのような方式でも必要であるか、これら特徴、要素及び/又は状態が、任意の特定の実施形態に含まれるか行われるか否かを暗示するように意図するものではない。
【0069】
特定の実施形態を説明したが、これら実施形態は、単に例として提示されたものであり、本開示の範囲を制限するように意図するものではない。実際は、上述した新しい装置、方法及びシステムは、様々な他の形態に具現することができ、本明細書に記述された方法及びシステムの形態に様々な省略、代替及び変更は、本開示の精神を外れずに行われてもよい。例えば、ブロックは、与えられた配列に提示されるものの、代案的な実施形態は、他の構成要素及び/又は回路トポロジーにより類似の機能を行うことができ、一部のブロックは、除去、移動、追加、細分化(subdivided)、組み合わせ及び/又は修正されてもよい。これらブロックそれぞれは、互いに異なる様々な方式で具現することができる。前述した様々な実施形態の構成要素及び動作の任意の適切な組み合わせは、さらなる実施形態を提供するために組み合わせることができる。前述した様々な特徴及び過程は、互いに独立的に具現されるか、様々な方式で組み合わせることができる。本開示の特徴の可能な組み合わせ及び下位の組み合わせは、いずれも本開示の範囲内に含まれるように意図される。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3B-1】
図3B-2】
図3C
図4
図5A
図5B
【国際調査報告】