(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-01
(54)【発明の名称】視神経脊髄炎スペクトラム障害の治療のための抗C5抗体
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20230125BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20230125BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230125BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230125BHJP
A61K 35/16 20150101ALI20230125BHJP
A61K 31/58 20060101ALI20230125BHJP
A61K 31/52 20060101ALI20230125BHJP
A61K 31/343 20060101ALI20230125BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20230125BHJP
A61K 31/706 20060101ALI20230125BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20230125BHJP
C07K 16/18 20060101ALN20230125BHJP
【FI】
A61K39/395 D
A61P27/02
A61K45/00
A61P43/00 121
A61K39/395 N
A61K35/16 Z
A61K31/58
A61K31/52
A61K31/343
A61K31/519
A61K31/706
A61P25/00
C07K16/18 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022534708
(86)(22)【出願日】2020-12-08
(85)【翻訳文提出日】2022-07-13
(86)【国際出願番号】 US2020063781
(87)【国際公開番号】W WO2021118999
(87)【国際公開日】2021-06-17
(32)【優先日】2019-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503102674
【氏名又は名称】アレクシオン ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】アレン, カースティン
(72)【発明者】
【氏名】ユーンス, マーカス
(72)【発明者】
【氏名】オルティス, ステファン
(72)【発明者】
【氏名】オブライエン, ファニー
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZA02
4C084ZA33
4C084ZC75
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4C086AA01
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4C086ZC75
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB35
4C087MA66
4C087NA14
4C087ZA02
4C087ZA33
4C087ZC75
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045DA76
4H045EA20
(57)【要約】
抗C5抗体又はその抗原結合断片を使用する視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)の臨床的治療のための方法が提供される。本開示は、補体成分5(C5)に特異的に結合する抗体を投与することにより、視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)の治療を、それを必要とする対象において行う方法を提供する。特定の実施形態では、C5に特異的に結合する抗体は、C5がインビボでC5a及びC5bに切断される速度を低下させる。他の実施形態では、C5に特異的に結合する抗体は、C5a及び/又はC5b断片の一方又は両方に結合する。これらの実施形態のいずれかにおいて、C5に特異的に結合する抗体は、C5における補体カスケードを減少させ、それにより炎症誘発性メディエーターの放出及び細胞溶解孔の形成を減少させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)の治療を、それを必要とするヒト対象において行う方法であって、有効量の、それぞれ配列番号19、18及び3に示されるCDR1、CDR2及びCDR3重鎖配列並びにそれぞれ配列番号4、5及び6に示されるCDR1、CDR2及びCDR3軽鎖配列を含む抗C5抗体又はその抗原結合断片を前記ヒト対象に投与することであって、前記抗C5抗体又はその抗原結合断片は、配列番号13に示されるアミノ酸配列を含むFc領域を含み、前記アミノ酸配列は、配列番号13に示される前記アミノ酸配列において最大で4つのアミノ酸置換を含み、前記アミノ酸置換は、ロイシン307及びセリン313を含まない、投与することを含み、それにより前記対象においてNMOSDを治療する、方法。
【請求項2】
前記抗C5抗体又はその抗原結合断片は、配列番号12に示される重鎖可変領域及び配列番号8に示される軽鎖可変領域を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記抗C5抗体又はその抗原結合断片は、配列番号13に示される重鎖定常領域を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記抗体又はその抗原結合断片は、配列番号14のアミノ酸配列を含む重鎖ポリペプチド及び配列番号11のアミノ酸配列を含む軽鎖ポリペプチドを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記抗C5抗体又はその抗原結合断片は、pH7.4及び25℃において、0.1nM≦K
D≦1nMの範囲の親和性解離定数(K
D)でヒトC5に結合する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記抗C5抗体又はその抗原結合断片は、pH6.0及び25℃において、≧10nMのK
DでヒトC5に結合する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記対象は、18歳以上の年齢である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記対象は、抗AQP4抗体について陽性である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記対象は、過去12ヶ月間に少なくとも1回の発作又は再発を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記対象は、≦7の拡張障害状態スケール(EDSS)スコアを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記抗C5抗体は、追加の免疫抑制療法(IST)なしで投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記抗C5抗体は、少なくとも1つのISTと共に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つのISTは、コルチコステロイド、アザチオプリン(AZA)、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)、メトトレキサート(MTX)及びタクロリムス(TAC)からなる群から選択される、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記対象は、少なくとも40kgの体重である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記治療有効用量は、前記対象の体重に基づく、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記対象は、NMOSDの少なくとも1つの症状を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記対象が≧40kg且つ<60kgの体重である場合、
(a)前記抗C5抗体は、投与サイクルの1日目に2400mgの負荷用量で投与され;及び
(b)前記投与サイクルの15日目及びその後8週間毎に3000mgの維持用量で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記対象が≧60kg且つ<100kgの体重である場合、
(a)前記抗C5抗体は、投与サイクルの1日目に2700mgの負荷用量で投与され;及び
(b)前記投与サイクルの15日目及びその後8週間毎に3300mgの維持用量で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記対象が≧100kgの体重である場合、
(a)前記抗C5抗体は、投与サイクルの1日目に3000mgの負荷用量で投与され;及び
(b)前記投与サイクルの15日目及びその後8週間毎に3600mgの維持用量で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記治療は、前記投与サイクル中、100μg/mL以上の前記抗C5抗体又はその抗原結合断片の血清トラフ濃度を維持する、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記治療は、前記投与サイクル中、200μg/mL以上の前記抗C5抗体又はその抗原結合断片の血清トラフ濃度を維持する、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記治療は、0.309~0.5μg/mL以下の遊離C5濃度を維持する、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記抗C5抗体又はその抗原結合断片は、前記投与サイクル後、8週間毎に3000mg、3300mg又は3600mgの用量で2年間まで投与される、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記抗C5抗体又はその抗原結合断片は、静脈内投与のために処方される、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記患者は、以前に補体阻害剤で治療されていない、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記投与サイクルは、合計26週間の治療である、請求項17~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記治療は、終末補体阻害をもたらす、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記対象は、血漿交換(PE)/プラズマフェレシス(PP)を受ける、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
前記対象は、PE/PPが完了した後、4時間以内にラブリズマブの追加用量を任意選択で受ける、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記追加用量は、1200~1800mgの抗C5抗体である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記ヒト対象は、ラブリズマブの投与後、NMOSD進行に関する1つ以上の臨床マーカーにおいて臨床的に意味のある改善を経験する、請求項1記載の方法。
【請求項32】
NMOSD進行に関する臨床マーカーは、評価された治験中ARR、EDSSスコア、EQ-5D、SF-36、HAI及びOSISからなる群から選択される、請求項31に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2019年12月9日に出願された米国仮特許出願第62/945,644号明細書に対する優先権の利益を主張し、その全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
電子的に提出された配列表の参照
ASCIIテキストファイル(名称:710476_AX9-007PC_ST25_Sequence_Listing.txt;サイズ:56.0KB;及び作成日:2020年12月8日)で電子的に提出された配列表の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
デビック病又はデビック症候群としても知られている、視神経脊髄炎(NMO)を含む視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)は、視神経及び脊髄を主に侵し、多くの場合、失明、単/対/四肢麻痺及び呼吸不全に至る、中枢神経系(CNS)の稀で重度の身体障害を伴う自己免疫性炎症性疾患の一種である。NMOSDは、再発する疾患過程を特徴とし、有意な神経学的障害が段階的に蓄積するため、そこからの回復は、不良となることがある。
【0004】
NMOの臨床的特徴は、3つを超える椎骨レベルを頻繁に侵す急性視神経炎及び横断性脊髄炎であり、縦方向に広範な横断性脊髄炎(LETM)として記述される。これらの臨床事象は、同時に又は単独で起こり得る。視神経及び脊髄を越えた病変に起因する徴候及び症状は、NMO患者にも発生する可能性があり、患者の約15%で報告される。NMOの臨床像は、極めて多様であり、初回発作時又は2回目の発作時にさえ診断に迷うことがある。
【0005】
アクアポリン-4(AQP4)は、主に星状細胞によりCNSで発現する水チャンネルタンパク質である。AQP4免疫グロブリンG(IgG)は、NMOSD患者の65~88%に存在する抗体であり、炎症性、脱髄性CNS障害に特異的な初めてのバイオマーカーである。前臨床データは、AQP4-IgGが補体カスケードを誘発し、炎症及び補体媒介膜攻撃複合体(MAC)の形成を導くことを示す。AQP4-IgG誘発性MACは、星状細胞破壊及びバイスタンダー神経損傷に関与しているが、補体阻害薬の存在下では見られない。NMO-IgGの発見により、NMOの診断基準は、この疾患特異的抗体の試験を含むように2006年に改訂された。
【0006】
NMOは、重大な障害を引き起こす可能性のある疾患であることを踏まえると、NMO及び関連疾患を認識し、他の脱髄性疾患と鑑別する能力は、臨床的観点から重要である。再発性NMOの予後は、不良である。NMOの5年死亡率は、30%と報告されており、50%は、永続的な重度障害、視覚(片眼又は両眼が盲目)又は歩行可能(車椅子を必要とする)を持続する。死亡のほとんどは、高位頸髄又は脳幹病変に続発する神経原性呼吸不全に起因する。頻繁な早期再発は、予後不良を予測する。したがって、再発予防は、主要な治療上の必須要件である。
【0007】
NMOに関する治療選択肢が近年承認されている(AQP4-IgG陽性患者14例を対象とした非盲検試験において、Soliris(登録商標)(エクリズマブ)が再発頻度を減少させることが証明されている)が、標準的な治療選択肢には、ステロイド及び他の免疫抑制薬が含まれている。これは、経験及び合意に基づく支持療法である。急性NMO再発は、一般に、奏効しない患者に対するレスキュー療法として多くの場合に使用される血漿交換(PE)を伴う高用量の静注ステロイドで治療される。再発に対する支持療法は、現在、広域スペクトル又は選択的Bリンパ球免疫抑制薬を使用している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
免疫抑制剤のうち、コルチコステロイド、AZA、ミコフェノール酸モフェチル及びリツキシマブは、おそらく長期予防に最も一般的に使用される。地域の医学的選択肢により、NMOに対する支持療法の選択肢は、様々であり得る。米国では、選択肢には、コルチコステロイド、AZA、MMF、リツキシマブ及びミトキサントロンが含まれるが、日本では、経口プレドニゾン又はパルス高用量ステロイド(IV)を含むコルチコステロイドが一般的な治療である。かなりの数の患者(50%超)は、さらなる永続的な神経学的欠損及び障害をもたらす発作を起こし続けるであろう。疾患の重症度及び治療の選択肢が限られていることを考慮すると、NMOのための有効且つ安全な治療のための、満たされていない重大な医学的必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書では、NMOSD(例えば、NMO)の治療のための材料及び方法が記載される。特に、そのような材料及び方法は、C5阻害剤(例えば、ラブリズマブ)を含む。
【0010】
一実施形態において、本開示は、視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)の治療を、それを必要とするヒト対象において行う方法であって、有効量の、それぞれ配列番号19、18及び3に示されるCDR1、CDR2及びCDR3重鎖配列並びにそれぞれ配列番号4、5及び6に示されるCDR1、CDR2及びCDR3軽鎖配列を含む抗C5抗体又はその抗原結合断片をヒト対象に投与することであって、抗C5抗体又はその抗原結合断片は、配列番号13に示されるアミノ酸配列を含むFc領域を含み、アミノ酸配列は、配列番号13に示されるアミノ酸配列において最大で4つのアミノ酸置換を含み、アミノ酸置換は、ロイシン307及びセリン313を含まない、投与することを含み、それにより対象においてNMOSDを治療する、方法に関する。特定の実施形態では、抗C5抗体又はその抗原結合断片は、配列番号12に示される重鎖可変領域及び配列番号8に示される軽鎖可変領域を含む。特定の実施形態では、抗C5抗体又はその抗原結合断片は、配列番号13に示される重鎖定常領域を含む。特定の実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、配列番号14のアミノ酸配列を含む重鎖ポリペプチド及び配列番号11のアミノ酸配列を含む軽鎖ポリペプチドを含む。特定の実施形態では、抗C5抗体又はその抗原結合断片は、pH7.4及び25℃において、0.1nM≦KD≦1nMの範囲の親和性解離定数(KD)でヒトC5に結合する。特定の実施形態では、抗C5抗体又はその抗原結合断片は、pH6.0及び25℃において、≧10nMのKDでヒトC5に結合する。特定の実施形態では、対象は、18歳以上の年齢である。特定の実施形態では、対象は、抗AQP4抗体について陽性である。特定の実施形態では、対象は、過去12ヶ月間に少なくとも1つの発作又は再発を有する。特定の実施形態では、対象は、≦7の拡張障害状態スケール(EDSS)スコアを有する。特定の実施形態では、抗C5抗体は、追加の免疫抑制療法(IST)なしで投与される。特定の実施形態では、抗C5抗体は、少なくとも1つのISTと共に投与される。特定の実施形態では、少なくとも1つのISTは、コルチコステロイド、アザチオプリン(AZA)、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)、メトトレキサート(MTX)及びタクロリムス(TAC)からなる群から選択される。特定の実施形態では、対象は、少なくとも40kgの体重である。特定の実施形態では、治療有効用量は、対象の体重に基づく。特定の実施形態では、対象は、NMOSDの少なくとも1つの症状を示す。特定の実施形態では、対象は、≧40kg且つ<60kgの体重であり、(a)抗C5抗体は、投与サイクルの1日目に2400mgの負荷用量で投与され;及び(b)投与サイクルの15日目及びその後8週間毎に3000mgの維持用量で投与される。特定の実施形態では、対象は、≧60kg且つ<100kgの体重であり、(a)抗C5抗体は、投与サイクルの1日目に2700mgの負荷用量で投与され;及び(b)投与サイクルの15日目及びその後8週間毎に3300mgの維持用量で投与される。特定の実施形態では、対象は、≧100kgの体重であり、(a)抗C5抗体は、投与サイクルの1日目に3000mgの負荷用量で投与され;及び(b)投与サイクルの15日目及びその後8週間毎に3600mgの維持用量で投与される。特定の実施形態では、治療は、投与サイクル中、100μg/mL以上の抗C5抗体又はその抗原結合断片の血清トラフ濃度を維持する。特定の実施形態では、治療は、投与サイクル中、200μg/mL以上の抗C5抗体又はその抗原結合断片の血清トラフ濃度を維持する。特定の実施形態では、治療は、0.309~0.5μg/mL以下の遊離C5濃度を維持する。特定の実施形態では、抗C5抗体又はその抗原結合断片は、投与サイクル後、8週間毎に3000mg、3300mg又は3600mgの用量で2年間まで投与される。特定の実施形態では、抗C5抗体又はその抗原結合断片は、静脈内投与のために処方される。特定の実施形態では、患者は、以前に補体阻害剤で治療されていない。特定の実施形態では、投与サイクルは、合計26週間の治療である。特定の実施形態では、治療は、終末補体阻害をもたらす。特定の実施形態では、対象は、血漿交換(PE)/プラズマフェレシス(PP)を受け、対象は、PE/PPが完了した後、4時間以内に例えば1200~1800mgの抗C5抗体などのラブリズマブの追加用量を任意選択で受ける。特定の実施形態では、ヒト対象は、ラブリズマブの投与後、NMOSD進行に関する1つ以上の臨床マーカーにおいて臨床的に意味のある改善を経験する。特定の実施形態では、NMOSD進行に関する臨床マーカーは、評価された治験中ARR(adjudicated On-Trial ARR)、EDSSスコア、EQ-5D、SF-36、HAI及びOSISからなる群から選択される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本明細書に開示される臨床試験の全体的な設計の概略図である。
【
図2-1】本明細書に開示される臨床試験のための活動のスケジュール(SoA)を示す表である。
【
図3-1】本明細書に開示される臨床試験についての再発評価期間についての活動のスケジュール(SoA)を示す表である。
【
図4-1】Kurtzke拡張障害状態スケールを示す表である。
【
図5-1】EuroQoL 5次元(EQ-5D-3L)スケールについてのチェックリスト及びチャートである。
【
図7】ハウザー歩行指数(HAI)のチェックリストである。
【
図8】視神経脊髄障害スコア(OSIS)のチャートである。
【
図9】視神経脊髄障害スケールによって測定された再発重症度を示す表である。
【
図10-1】コロンビア自殺重症度評価スケール(C-SSRS)-スクリーニング/ベースラインのチェックリストである。
【
図11-1】最終来院以降のコロンビア自殺重症度評価スケール(C-SSRS)のチェックリストである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示は、補体成分5(C5)に特異的に結合する抗体を投与することにより、視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)の治療を、それを必要とする対象において行う方法を提供する。特定の実施形態では、C5に特異的に結合する抗体は、C5がインビボでC5a及びC5bに切断される速度を低下させる。他の実施形態では、C5に特異的に結合する抗体は、C5a及び/又はC5b断片の一方又は両方に結合する。これらの実施形態のいずれかにおいて、C5に特異的に結合する抗体は、C5における補体カスケードを減少させ、それにより炎症誘発性メディエーターの放出及び細胞溶解孔の形成を減少させる。
【0013】
特定の実施形態では、C5に特異的に結合する抗体は、ラブリズマブ又はその断片である。ラブリズマブ(BNJ441、ALXN1210又はUltomiris(登録商標)としても知られる)は、それぞれ配列番号14及び11に示される配列を有する重鎖及び軽鎖又はその抗原結合断片及び改変体を含む抗C5抗体である。ラブリズマブは、PCT/米国特許出願公開第2015/019225号明細書及び米国特許第9,079,949号明細書に記載されており、これらの全教示は、参照により本明細書に組み込まれる。ラブリズマブは、ヒト補体タンパク質C5に選択的に結合し、補体活性化中にC5a及びC5bへのその切断を阻害する。この阻害は、微生物のオプソニン化及び免疫複合体のクリアランスに不可欠な補体活性化の近位又は初期成分(例えば、C3及びC3b)を保存しながら、炎症誘発性メディエーターC5aの放出及び細胞溶解孔形成膜攻撃複合体(MAC)、C5b-9の形成を妨げる。
【0014】
定義
本明細書で使用される場合、用語「対象」又は「患者」は、ヒト患者(例えば、視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)を有する患者)である。本明細書で使用される場合、用語「対象」及び「患者」は、交換可能である。
【0015】
本明細書で使用される場合、臨床的安定性を維持するために「慢性血漿交換を必要とする」という語句は、過去12ヶ月にわたって少なくとも3ヶ月毎に筋力低下を管理するために、定期的に患者に血漿交換療法を使用することを指す。
【0016】
本明細書で使用される場合、「有効な治療」は、有益な効果(例えば、疾患又は障害の少なくとも1つの症状の回復)を生じる治療を指す。有益な効果は、ベースラインを上回る改善、即ち本方法による治療の開始前に行われる測定又は観察を上回る改善の形態をとることができる。有効な治療は、NMOSDの少なくとも1つの症状の軽減を指し得る。
【0017】
用語「有効量」は、所望の生物学的、治療的及び/又は予防的結果を提供する薬剤の量を指す。その結果は、疾患の徴候、症状又は原因の1つ以上の減少、回復、緩和、減少、遅延及び/若しくは軽減又は生物学的系の任意の他の所望の変化であり得る。一例において、「有効量」は、NMOSDの少なくとも1つの症状を軽減することが臨床的に証明された抗C5抗体又はその抗原結合断片の量である。有効量は、1回又は複数回の投与において投与され得る。
【0018】
本明細書で使用される場合、用語「誘導」及び「誘導段階」は、交換可能に使用され、臨床試験における治療の第一相を指す。
【0019】
本明細書で使用される場合、用語「維持」及び「維持段階」は、交換可能に使用され、臨床試験における治療の第2の段階を指す。特定の実施形態では、治療は、臨床的利益が観察される限り又は管理不能な毒性若しくは疾患進行が生じるまで継続される。ラブリズマブ投与の維持段階は、6週間~対象の寿命にわたって持続することができる。他の実施形態によれば、維持段階は、26~52、26~78、26~104、26~130、26~156、26~182、26~208週間又はそれを超えて継続する。他の実施形態では、維持段階は、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、78、104、130、156又は182週間を超えて継続する。他の実施形態によれば、維持段階は、維持段階は、1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80年又はそれを超えて継続する。特定の実施形態では、維持段階は、対象の生涯の残りにわたって継続する。
【0020】
特定の実施形態では、ラブリズマブ多段階投与レジメンは、第3段階を含む。この第3段階は、NMOSD患者が臨床的安定性を維持するために救助治療を受けなければならない場合に使用され、血漿交換/プラズマフェレシス(PE/PP)を投与することを含む。血漿交換後のこの段階では、血漿交換/プラズマフェレシスで失われた薬物を補充するためにラブリズマブの1用量を投与する。特定の実施形態によれば、PE/PP救援療法が非投与日に提供される場合、追加治験薬(又はプラセボ)投与が必要である。別の実施形態では、PE/PP注入が投与日に提供される場合、これは、治験薬投与の前に行わなければならない。いくつかの実施形態では、PE/PPが予定外の投与来院で投与される場合、PE/PPを受けている患者は、PE/PPセッションが完了した後1、2、3、4、5、6、7又は8時間以内に追加用量を投与される。いくつかの実施形態では、PE/PPが予定外の投与来院で投与される場合、PE/PPを受けている患者は、PE/PPセッションが完了した後4時間以内に追加用量を投与される。特定の実施形態では、追加用量は、PE/PPに応じて変化しても又はしなくてもよい。他の実施形態では、PE/PPが予定された投与来院時に投与される場合、PE/PPの完了後60分で定期的な投与に従う。特定の実施形態では、追加用量と定期的な予定用量との間にギャップは必要とされない。
【0021】
いくつかの実施形態では、ラブリズマブの追加用量は、1000~2000mgで投与される。いくつかの実施形態では、ラブリズマブの追加用量は、ラブリズマブの直近の負荷又は維持用量の約半分で投与される。いくつかの実施形態では、直近の負荷用量が2200mg~3000mgのラブリズマブである場合、追加用量は、1000~1500mgのラブリズマブである。いくつかの実施形態では、直近の負荷用量が約2400mgのラブリズマブである場合、追加用量は、約1200mgのラブリズマブである。いくつかの実施形態では、直近の負荷用量が2400mgのラブリズマブである場合、追加用量は、1200mgのラブリズマブである。いくつかの実施形態では、直近の負荷用量が約2700mgのラブリズマブである場合、追加用量は、約1500mgのラブリズマブである。いくつかの実施形態では、直近の負荷用量が2700mgのラブリズマブである場合、追加用量は、1500mgのラブリズマブである。いくつかの実施形態では、直近の負荷用量が約3000mgのラブリズマブである場合、追加用量は、約1500mgのラブリズマブである。いくつかの実施形態では、直近の負荷用量が3000mgのラブリズマブである場合、追加用量は、1500mgのラブリズマブである。いくつかの実施形態では、直近の維持用量が約3000mgのラブリズマブである場合、追加用量は、約1500mgのラブリズマブである。いくつかの実施形態では、最大維持負荷用量が3000mgのラブリズマブである場合、追加用量は、1500mgのラブリズマブである。いくつかの実施形態では、直近の維持用量が約3300mgのラブリズマブである場合、追加用量は、約1800mgのラブリズマブである。いくつかの実施形態では、最大維持負荷用量が3300mgのラブリズマブである場合、追加用量は、1800mgのラブリズマブである。いくつかの実施形態では、直近の維持用量が約3600mgのラブリズマブである場合、追加用量は、約1800mgのラブリズマブである。いくつかの実施形態では、最大維持負荷用量が3600mgのラブリズマブである場合、追加用量は、1800mgのラブリズマブである。
【0022】
本明細書で使用される場合、用語「負荷用量」は、患者に投与される初期用量を指す。いくつかの実施形態では、負荷用量は、2000~4000mgのラブリズマブである。いくつかの実施形態では、負荷用量は、2100~2700mg、2400~3000mg又は2700~3300mgのラブリズマブである。いくつかの実施形態では、負荷用量は、2300~2500mg、2600~2800mg又は2900~3100mgのラブリズマブである。いくつかの実施形態では、負荷用量は、約2400mg、約2700mg又は約3000mgのラブリズマブである。いくつかの実施形態では、負荷用量は、2400mg、2700mg又は3000mgのラブリズマブである。負荷用量は、体重に基づいて漸増(titer)することができる。
【0023】
いくつかの実施形態では、40kg以上であるが60kg未満の体重を有する患者は、2100~2700mg、2300~2500mg、約2400mg又は2400mgのラブリズマブを投与される。いくつかの実施形態では、60kg以上であるが100kg未満の体重を有する患者は、2400~3000mg、2600~2800mg、約2700mg又は2700mgのラブリズマブを投与される。いくつかの実施形態では、100kgを超える体重を有する患者は、2700~3300mg、2900~3100mg、約3000mg又は3000mgのラブリズマブを投与される。
【0024】
本明細書で使用される場合、用語「維持用量」又は「維持段階」は、負荷用量の後に患者に投与される用量を指す。いくつかの実施形態では、負荷用量は、2000~4000mgのラブリズマブである。いくつかの実施形態では、負荷用量は、2800~3200mg、3100~3500mg又は3400~3800mgのラブリズマブである。いくつかの実施形態では、負荷用量は、2900~3100mg、3200~3400mg又は3500~3700mgのラブリズマブである。いくつかの実施形態では、負荷用量は、約3000mg、約3300mg又は約3600mgのラブリズマブである。いくつかの実施形態では、負荷用量は、3000mg、3300mg又は3600mgのラブリズマブである。維持用量は、体重に基づいて漸増することができる。
【0025】
いくつかの実施形態では、40kg以上であるが60kg未満の体重を有する患者は、2800~3200mg、2900~3100mg、約3000mg又は3000mgのラブリズマブを投与される。いくつかの実施形態では、60kg以上であるが100kg未満の体重を有する患者は、3100~3500mg、3200~3400mg、約3300mg又は3300mgのラブリズマブを投与される。いくつかの実施形態では、100kgを超える体重を有する患者は、3400~3800mg、3500~3700mg、約3600mg又は3600mgのラブリズマブを投与される。
【0026】
本明細書で使用される場合、用語「血清トラフレベル」は、薬剤(例えば、抗C5抗体又はその抗原結合断片)又は医薬が血清中に存在する最低レベルを指す。対照的に、「ピーク血清レベル」は、血清中の薬剤の最高レベルを指す。「平均血清レベル」は、血清中の薬剤の経時的な平均レベルを指す。
【0027】
一実施形態において、記載される治療レジメンは、抗C5抗体又はその抗原結合断片の特定の血清トラフ濃度を維持するのに十分である。一実施形態では、例えば、治療は、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、200、205、210、215、220、225、230、240、245、250、255、260、265、270、280、290、300、305、310、315、320、325、330、335、340、345、350、355、360、365、370、375、380、385、390、395又は400μg/mL以上の、抗C5抗体又はその抗原結合断片の血清トラフ濃度を維持する。一実施形態では、治療は、100μg/mL以上の抗C5抗体又はその抗原結合断片の血清トラフ濃度を維持する。別の実施形態では、治療は、150μg/mL以上の抗C5抗体又はその抗原結合断片の血清トラフ濃度を維持する。別の実施形態では、治療は、200μg/mL以上の抗C5抗体又はその抗原結合断片の血清トラフ濃度を維持する。別の実施形態では、治療は、250μg/mL以上の抗C5抗体又はその抗原結合断片の血清トラフ濃度を維持する。別の実施形態では、治療は、300μg/mL以上の抗C5抗体又はその抗原結合断片の血清トラフ濃度を維持する。別の実施形態では、治療は、100μg/mL~200μg/mLの抗C5抗体又はその抗原結合断片の血清トラフ濃度を維持する。別の実施形態では、治療は、約175μg/mLの抗C5抗体又はその抗原結合断片の血清トラフ濃度を維持する。
【0028】
別の実施形態では、有効な応答を得るために、抗C5抗体は、患者の血液1ミリリットルあたり少なくとも50μg、55μg、60μg、65μg、70μg、75μg、80μg、85μg、90μg、95μg、100μg、105μg、110μg、115μg、120μg、125μg、130μg、135μg、140μg、145μg、150μg、155μg、160μg、165μg、170μg、175μg、180μg、185μg、190μg、195μg、200μg、205μg、210μg、215μg、220μg、225μg、230μg、235μg、240μg、245μg、250μg、255μg又は260μgの抗体を維持する量及び頻度で患者に投与される。別の実施形態では、抗C5抗体は、患者の血液1ミリリットルあたり50μg~250μgの抗体を維持する量及び頻度で患者に投与される。別の実施形態では、抗C5抗体は、患者の血液1ミリリットルあたり100μg~200μgの抗体を維持する量及び頻度で患者に投与される。別の実施形態では、抗C5抗体は、患者の血液1ミリリットルあたり約175μgの抗体を維持する量及び頻度で患者に投与される。
【0029】
別の実施形態では、有効な応答を得るために、抗C5抗体は、最小遊離C5濃度を維持する量及び頻度で患者に投与される。一実施形態では、例えば、抗C5抗体は、0.2μg/mL、0.3μg/mL、0.4μg/mL、0.5μg/mL以下の遊離C5濃度を維持する量及び頻度で患者に投与される。別の実施形態では、抗C5抗体は、0.309~0.5μg/mL以下の遊離C5濃度を維持する量及び頻度で患者に投与される。別の実施形態では、本明細書に記載される治療は、治療期間を通して遊離C5濃度を、99%を超えて減少させる。別の実施形態では、治療は、治療期間を通して99.5%を超えて遊離C5濃度を減少させる。
【0030】
用語「終末補体阻害」は、補体カスケードの後期段階の阻害を指す。一実施形態では、終末補体阻害は、補体成分5(「C5」)がC5コンバーターゼによってC5a及びC5bに切断されるのを阻害することを指す。
【0031】
用語「抗体」は、少なくとも1つの抗体由来抗原結合部位(例えば、VH/VL領域若しくはFv又はCDR)を含むポリペプチドを記載する。抗体には、既知の形態の抗体が含まれる。抗体は、例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体、ラクダ抗体、二重特異性抗体又はキメラ抗体であり得る。抗体は、Fab、Fab’2、ScFv、SMIP、Affibody、ナノボディ又はドメイン抗体でもあり得る。抗体は、以下のアイソタイプのいずれかのものでもあり得る:IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、IgAsec、IgD及びIgE。抗体は、天然に存在する抗体であり得るか、又はタンパク質工学技術によって(例えば、突然変異、欠失、置換、非抗体部分への結合によって)改変された抗体であり得る。抗体は、例えば、抗体の特性(例えば、機能的特性)を変化させる1つ以上の改変体アミノ酸(天然に存在する抗体と比較して)を含み得、これは、例えば、抗体の特性(例えば、機能的特性)を変化させる。患者における半減期、エフェクター機能及び/又は抗体に対する免疫応答に影響を及ぼす多数のこのような改変が、当技術分野で公知である。抗体という用語は、少なくとも1つの抗体由来抗原結合部位を含む人工又は操作されたポリペプチド構築物も含む。
【0032】
C5結合タンパク質
用語「抗体」は、少なくとも1つの抗体由来抗原結合部位(例えば、VH/VL領域若しくはFv又はCDR)を含むポリペプチドを記載する。抗体には、既知の形態の抗体が含まれる。抗体は、例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体、ラクダ抗体、二重特異性抗体又はキメラ抗体であり得る。抗体は、Fab、Fab’2、ScFv、SMIP、Affibody、ナノボディ又はドメイン抗体でもあり得る。抗体は、以下のアイソタイプのいずれかのものでもあり得る:IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、IgAsec、IgD又はIgE。抗体は、天然に存在する抗体であり得るか、又はタンパク質工学技術によって(例えば、突然変異、欠失、置換、非抗体部分への結合によって)改変された抗体であり得る。抗体は、例えば、抗体の特性(例えば、機能的特性)を変化させる1つ以上の改変体アミノ酸(天然に存在する抗体と比較して)を含み得、これは、例えば、抗体の特性(例えば、機能的特性)を変化させる。患者における半減期、エフェクター機能及び/又は抗体に対する免疫応答に影響を及ぼすこのような改変が、当技術分野で公知である。抗体という用語は、少なくとも1つの抗体由来抗原結合部位を含む人工又は操作されたポリペプチド構築物も含む。
【0033】
本明細書に記載される抗C5抗体は、補体成分C5(例えば、ヒトC5)に結合し、C5の断片C5a及びC5bへの切断を阻害する。本明細書に記載される方法での使用に適した抗C5抗体(又はそれに由来するVH/VLドメイン)は、当技術分野で公知の方法を使用して生成することができる。代わりに、当技術分野で認識されている抗C5抗体を使用することができる。C5への結合についてこれらの当技術分野で認識されている抗体のいずれかと競合する抗体も使用することができる。
【0034】
エクリズマブ(Soliris(登録商標)としても知られる)は、それぞれ配列番号10及び11に示される配列を有する重鎖及び軽鎖又はその抗原結合断片及び改変体を含む抗C5抗体である。エクリズマブは、PCT/米国特許出願公開第2007/006606号明細書に記載されており、その教示は、参照により本明細書に組み込まれる。一実施形態では、抗C5抗体は、配列番号7に示される配列を有するエクリズマブのVH領域のCDR1、CDR2及びCDR3ドメイン並びに配列番号8に示される配列を有するエクリズマブのVL領域のCDR1、CDR2及びCDR3ドメインを含む。別の実施形態では、抗体は、それぞれ配列番号1、2及び3に示される配列を有する重鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメイン並びにそれぞれ配列番号4、5及び6に示される配列を有する軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメインを含む。別の実施形態では、抗体は、それぞれ配列番号7及び配列番号8に示されるアミノ酸配列を有するVH及びVL領域を含む。
【0035】
ラブリズマブ(BNJ441、ALXN1210又はUltomiris(登録商標)としても知られる)は、それぞれ配列番号14及び11に示される配列を有する重鎖及び軽鎖又はその抗原結合断片及び改変体を含む抗C5抗体である。ラブリズマブは、PCT/米国特許出願公開第2015/019225号明細書及び米国特許第9,079,949号明細書に記載されており、その教示は、参照により本明細書に組み込まれる。ラブリズマブは、ヒト補体タンパク質C5に選択的に結合し、補体活性化中にC5a及びC5bへのその切断を阻害する。この阻害は、微生物のオプソニン化及び免疫複合体のクリアランスに不可欠な補体活性化の近位又は初期成分(例えば、C3及びC3b)を保存しながら、炎症誘発性メディエーターC5aの放出及び細胞溶解孔形成膜攻撃複合体(MAC)C5b-9の形成を妨げる。
【0036】
一実施形態では、抗体は、ラブリズマブの重鎖及び軽鎖CDR又は可変領域を含む。したがって、一実施形態では、抗体は、配列番号12に示される配列を有するラブリズマブのVH領域のCDR1、CDR2及びCDR3ドメイン並びに配列番号8に示される配列を有するラブリズマブのVL領域のCDR1、CDR2及びCDR3ドメインを含む。別の実施形態では、抗体は、それぞれ配列番号19、18及び3に示される配列を有する重鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメイン並びにそれぞれ配列番号4、5及び6に示される配列を有する軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメインを含む。別の実施形態では、抗体は、それぞれ配列番号12及び配列番号8に示されるアミノ酸配列を有するVH及びVL領域を含む。
【0037】
別の例示的な抗C5抗体は、それぞれ配列番号20及び11に示される配列を有する重鎖及び軽鎖を含む抗体BNJ421又はその抗原結合断片及び改変体である。BNJ421(ALXN1211としても知られる)は、PCT/米国特許出願公開第2015/019225号明細書及び米国特許第9,079,949号明細書に記載されており、その教示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0038】
他の実施形態では、抗体は、BNJ421の重鎖及び軽鎖CDR又は可変領域を含む。したがって、一実施形態では、抗体は、配列番号12に示される配列を有するBNJ421のVH領域のCDR1、CDR2及びCDR3ドメイン並びに配列番号8に示される配列を有するBNJ421のVL領域のCDR1、CDR2及びCDR3ドメインを含む。別の実施形態では、抗体は、それぞれ配列番号19、18及び3に示される配列を有する重鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメイン並びにそれぞれ配列番号4、5及び6に示される配列を有する軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメインを含む。別の実施形態では、抗体は、それぞれ配列番号12及び配列番号8に示されるアミノ酸配列を有するVH及びVL領域を含む。
【0039】
CDRの正確な境界は、異なる方法に従って異なるように定義されている。いくつかの実施形態では、軽鎖又は重鎖可変ドメイン内のCDR又はフレームワーク領域の位置は、Kabat et al.[(1991)“Sequences of Proteins of Immunological Interest.” NIH Publication No.91-3242,U.S.Department of Health and Human Services,Bethesda,MD]によって定義されるとおりであり得る。そのような場合、CDRは、「Kabat CDR」(例えば、「Kabat LCDR2」又は「Kabat HCDR1」)と呼ぶことができる。いくつかの実施形態では、軽鎖又は重鎖可変領域のCDRの位置は、Chothia et al.,Nature,342:877-83,1989によって定義されるとおりであり得る。したがって、これらの領域は、「Chothia CDR」(例えば、「Chothia LCDR2」又は「Chothia HCDR3」)と呼ぶことができる。いくつかの実施形態では、軽鎖及び重鎖可変領域のCDRの位置は、Kabat-Chothia組み合わせ定義によって定義されるとおりであり得る。そのような実施形態では、これらの領域は「Kabat-Chothia CDRの組み合わせ」と呼ぶことができる。Thomas et al.(Mol.Immunol.,33:1389-401,1996)は、Kabat及びChothiaの定義によるCDR境界の特定を例示する。
【0040】
別の例示的な抗C5抗体は、米国特許第8,241,628号明細書及び同第8,883,158号明細書に記載されている7086抗体である。一実施形態では、抗体は、7086抗体の重鎖及び軽鎖CDR又は可変領域を含む(米国特許第8,241,628号明細書及び同第8,883,158号明細書を参照されたい)。別の実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、それぞれ配列番号21、22及び23に示される配列を有する重鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメイン並びにそれぞれ配列番号24、25及び26に示される配列を有する軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメインを含む。別の実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、配列番号27に示される配列を有する7086抗体のVH領域及び配列番号28に示される配列を有する7086抗体のVL領域を含む。
【0041】
別の例示的な抗C5抗体は8110抗体であり、これも米国特許第8,241,628号明細書及び同第8,883,158号明細書に記載されている。一実施形態では、抗体は、8110抗体の重鎖及び軽鎖CDR又は可変領域を含む。別の実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、それぞれ配列番号29、30及び31に示される配列を有する重鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメイン並びにそれぞれ配列番号32、33及び34に示される配列を有する軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメインを含む。別の実施形態では、抗体は、配列番号35に示される配列を有する8110抗体のVH領域及び配列番号36に示される配列を有する8110抗体のVL領域を含む。
【0042】
別の例示的な抗C5抗体は、米国特許出願公開第2016/0176954A1号明細書に記載されている305LO5抗体である。一実施形態では、抗体は、305LO5抗体の重鎖及び軽鎖CDR又は可変領域を含む。別の実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、それぞれ配列番号37、38及び39に示される配列を有する重鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメイン並びにそれぞれ配列番号40、41及び42に示される配列を有する軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメインを含む。別の実施形態では、抗体は、配列番号43に示される配列を有する305LO5抗体のVH領域及び配列番号44に示される配列を有する305LO5抗体のVL領域を含む。
【0043】
別の例示的な抗C5抗体は、Fukuzawa,T.et al.(Sci.Rep.,7:1080,2017)に記載されているSKY59抗体である。一実施形態では、抗体は、SKY59抗体の重鎖及び軽鎖CDR又は可変領域を含む。別の実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、配列番号45を含む重鎖及び配列番号46を含む軽鎖を含む。
【0044】
別の例示的な抗C5抗体は、PCT/米国特許出願公開第2017/037226号明細書及び米国特許出願公開第2017/0355757A1号明細書に記載されているH4H12166PP抗体である。一実施形態では、抗体は、H4H12166PP抗体の重鎖及び軽鎖CDR又は可変領域を含む。別の実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、配列番号47に示される配列を有するH4H12166PP抗体のVH領域及び配列番号48に示される配列を有するH4H12166PP抗体のVL領域を含む。別の実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、配列番号49を含む重鎖及び配列番号50を含む軽鎖を含む。
【0045】
一実施形態では、患者をエクリズマブで治療し、次いで7086抗体、8110抗体、305LO5抗体、SKY59抗体、H4H12166PP抗体又はラブリズマブによる治療に切り替える。別の実施形態では、患者は、治療過程中、抗C5抗体(例えば、エクリズマブ、7086抗体、8110抗体、305LO5抗体、SKY59抗体又はH4H12166PP抗体)から別の抗C5抗体(例えば、ラブリズマブ)に切り替えられる。特定の実施形態では、患者は、治療過程中、エクリズマブからラブリズマブに切り替えられる。
【0046】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される抗C5抗体は、以下のアミノ酸配列:GHIFSNYWIQ(配列番号19)を含むか又はそれからなる重鎖CDR1を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される抗C5抗体は、以下のアミノ酸配列:EILPGSGHTEYTENFKD(配列番号18)を含むか又はそれらからなる重鎖CDR2を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される抗C5抗体は、以下のアミノ酸配列:
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGHIFSNYWIQWVRQAPGQGLEWMGEILPGSGHTEYTENFKDRVTMTRDTSTSTVYMELSSLRSEDTAVYYCARYFFGSSPNWYFDVWGQGTLVTVSS(配列番号12)
を含む重鎖可変領域を含む。
【0047】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される抗C5抗体は、以下のアミノ酸配列:
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCGASENIYGALNWYQQKPGKAPKLLIYGATNLADGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQNVLNTPLTFGQGTKVEIK(配列番号8)
を含む軽鎖可変領域を含む。
【0048】
本明細書に記載される抗C5抗体は、いくつかの実施形態では、改変ヒトFc定常領域が由来する天然ヒトFc定常領域よりも高い親和性でヒト新生児Fc受容体(FcRn)に結合する改変ヒトFc定常領域を含み得る。例えば、Fc定常領域は、改変ヒトFc定常領域が由来する天然ヒトFc定常領域と比較して、1つ以上(例えば、2、3、4、5、6、7又は8つ以上)のアミノ酸置換を含み得る。置換は、相互作用のpH依存性を維持しながら、pH6.0でFcRnに対する改変Fc定常領域を含むIgG抗体の結合親和性を増加させることができる。抗体のFc定常領域における1つ以上の置換が(相互作用のpH依存性を維持しながら)pH6.0でのFcRnに対するFc定常領域の親和性を増加させるか否かを試験するための方法は、当技術分野で公知であり、作業実施例において例示されている(PCT/米国特許出願公開第2015/019225号明細書及び米国特許第9,079,949号明細書、これらのそれぞれの開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0049】
FcRnに対する抗体Fc定常領域の結合親和性を増強する置換は、当技術分野で公知であり、例えば、(1)Dall‘Acqua,W.et al.(J.Biol.Chem.,281:23514-24,2006)によって記載されるM252Y/S254T/T256E三重置換;(2)Hinton,P.et al.(J.Biol.Chem.,279:6213-6,2004)及びHinton,P.et al.(J.Immunol.,176:346-56,2006)に記載されるM428L又はT250Q/M428L置換;並びに(3)Petkova,S.et al.(Int.Immunol.,18:1759-69,2006)に記載されるN434A又はT307/E380A/N434A置換を含む。追加の代替ペア:P257I/Q311I、P257I/N434H及びD376V/N434Hについても記載されている(Datta-Mannan,A.et al.,J.Biol.Chem.,282:1709-17,2007、その開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0050】
いくつかの実施形態では、改変定常領域は、バリンに対するEUアミノ酸残基255での置換を有する。いくつかの実施形態では、改変定常領域は、アスパラギンに対するEUアミノ酸残基309での置換を有する。いくつかの実施形態では、改変定常領域は、イソロイシンに対するEUアミノ酸残基312での置換を有する。いくつかの実施形態では、改変定常領域は、EUアミノ酸残基386に置換を有する。
【0051】
いくつかの実施形態では、改変Fc定常領域は、それが由来する天然定常領域に対して30以下(例えば、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3又は2つ以下)のアミノ酸置換、挿入又は欠失を含む。いくつかの実施形態では、改変Fc定常領域は、M252Y、S254T、T256E、N434S、M428L、V259I、T250I及びV308Fからなる群から選択される1つ以上のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、改変ヒトFc定常領域は、各EU番号付けにおいて、428位にメチオニン及び434位にアスパラギンを含む。いくつかの実施形態では、改変Fc定常領域は、例えば、米国特許第8,088,376号明細書に記載されるように、428L/434S二倍置換を含む。
【0052】
いくつかの実施形態では、これらの変異の正確な位置は、抗体工学に起因して、天然ヒトFc定常領域位置からシフトされ得る。428L/434S二倍置換は、例えば、IgG2/4キメラFcにおいて使用される場合、BNJ441(ラブリズマブ)において見出され、米国特許第9,079,949号明細書(その開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるM429L及びN435S改変体におけるような429L及び435Sに対応し得る。
【0053】
いくつかの実施形態では、改変定常領域は、天然ヒトFc定常領域に対してアミノ酸位置237、238、239、248、250、252、254、255、256、257、258、265、270、286、289、297、298、303、305、307、308、309、311、312、314、315、317、325、332、334、360、376、380、382、384、385、386、387、389、424、428、433、434又は436(EU番号付け)に置換を含む。いくつかの実施形態では、置換は、237位のグリシンに対するメチオニン;238位のプロリンに対するアラニン;239位のセリンに対するリジン;248位のリジンに対するイソロイシン;250位のトレオニンに対するアラニン、フェニルアラニン、メチオニン、グルタミン、セリン、バリン、トリプトファン又はチロシン;252位のメチオニンに対するフェニルアラニン、トリプトファン又はチロシン;254位のセリンに対するトレオニン;255位のアルギニンに対するグルタミン酸;256位のトレオニンに対するアスパラギン酸、グルタミン酸又はグルタミン;257位のプロリンに対するアラニン、グリシン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、アスパラギン、セリン、トレオニン又はバリン;258位のグルタミン酸に対するヒスチジン;265位のアスパラギン酸に対するアラニン;270位のアスパラギン酸に対するフェニルアラニン;286位のアスパラギンに対するアラニン又はグルタミン酸;289位のトレオニンに対するヒスチジン;297位のアスパラギンに対するアラニン;298位のセリンに対するグリシン;303位のバリンに対するアラニン;305位のバリンに対するアラニン;307位のトレオニンに対するアラニン、アスパラギン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、リジン、ロイシン、メチオニン、アスパラギン、プロリン、グルタミン、アルギニン、セリン、バリン、トリプトファン又はチロシン;308位のバリンに対するアラニン、フェニルアラニン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、プロリン、グルタミン又はトレオニン;309位のロイシン又はバリンに対するアラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、プロリン又はアルギニン;311位のグルタミンに対するアラニン、ヒスチジン又はイソロイシン;312位のアスパラギン酸に対するアラニン又はヒスチジン;314位のロイシンに対するリジン又はアルギニン;315位のアスパラギンに対するアラニン又はヒスチジン;317位のリジンに対するアラニン;325位のアスパラギンに対するグリシン;332位のイソロイシンに対するバリン;334位のリジンに対するロイシン;360位のリジンに対するヒスチジン;376位のアスパラギン酸に対するアラニン;380位のグルタミン酸に対するアラニン;382位のグルタミン酸に対するアラニン;384位のアスパラギン又はセリンに対するアラニン;385位のグリシンに対するアスパラギン酸又はヒスチジン;386位のグルタミンに対するプロリン;387位のプロリンに対するグルタミン酸;389位のアスパラギンに対するアラニン又はセリン;424位のセリンに対するアラニン;428位のメチオニンに対するアラニン、アスパラギン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、リジン、ロイシン、アスパラギン、プロリン、グルタミン、セリン、トレオニン、バリン、トリプトファン又はチロシン;433位のヒスチジンに対するリジン;434位のアスパラギンに対するアラニン、フェニルアラニン、ヒスチジン、セリン、トリプトファン又はチロシン;及び436位のチロシン又はフェニルアラニンに対するヒスチジン(全てEU番号付けにおいて)からなる群から選択される。
【0054】
本明細書に記載される方法において使用するための適切な抗C5抗体は、いくつかの実施形態では、配列番号14に示されるアミノ酸配列を含む重鎖ポリペプチド及び/又は配列番号11に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖ポリペプチドを含む。代わりに、本明細書に記載される方法において使用するための抗C5抗体は、いくつかの実施形態では、配列番号20に示されるアミノ酸配列を含む重鎖ポリペプチド及び/又は配列番号11に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖ポリペプチドを含む。
【0055】
一実施形態において、抗体は、pH7.4及び25℃(又は他に生理学的条件下)で少なくとも0.1(例えば、少なくとも0.15、0.175、0.2、0.25、0.275、0.3、0.325、0.35、0.375、0.4、0.425、0.45、0.475、0.5、0.525、0.55、0.575、0.6、0.625、0.65、0.675、0.7、0.725、0.75、0.775、0.8、0.825、0.85、0.875、0.9、0.925、0.95又は0.975)nMの親和性解離定数でC5に結合する。いくつかの実施形態では、抗C5抗体又はその抗原結合断片のKDは、1nM以下(例えば、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3又は0.2nM以下)である。
【0056】
他の実施形態では、[(25℃でのpH6.0におけるC5に対する抗体のKD)/(25℃でのpH7.4におけるC5に対する抗体のKD)]は、21を超える(例えば、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、350、400、450、500、600、700、800、900、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000、5500、6000、6500、7000、7500又は8000を超える)。
【0057】
抗体がタンパク質抗原に結合するか否か及び/又は抗体がタンパク質抗原に結合する親和性を決定するための方法は、当技術分野で公知である。例えば、タンパク質抗原への抗体の結合は、ウェスタンブロット、ドットブロット、表面プラズモン共鳴(SPR)方法(例えば、BIAcore system;Pharmacia Biosensor AB,Uppsala,Sweden及びPiscataway,N.J.)又は酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)(Benny K.C.Lo(2004)“Antibody Engineering:Methods and Protocols,”Humana Press(ISBN:1588290921);Johne,B.et al.,J.Immunol.Meth.,160:191-8,1993;Joensson,U.et al.,Ann.Biol.Clin.,51:19-26,1993;and Joensson,U.et al.,Biotechniques,11:620-7,1991)などであるがこれらに限定されない多様な技術を用いて検出及び/又は定量化することができる。さらに、親和性(例えば、解離定数及び会合定数)を測定するための方法は、作業実施例に記載される。
【0058】
本明細書で使用される用語「ka」は、抗原に対する抗体の会合の速度定数を指す。用語「kd」は、抗体/抗原複合体からの抗体の解離の速度定数を指す。また、用語「KD」は、抗体-抗原相互作用の平衡解離定数を指す。平衡解離定数は、運動速度定数の比率kD=Ka/Kdから推定される。このような決定は、好ましくは、25℃又は37℃で測定される(作業実施例を参照されたい)。例えば、ヒトC5に結合する抗体の動態は、BIAcore 3000装置上で、抗Fc捕捉法を用いて抗体を固定化して、表面プラズモン共鳴(SPR)によってpH8.0、7.4、7.0、6.5及び6.0で決定することができる。
【0059】
一実施形態において、抗C5抗体又はその抗原結合断片は、C5タンパク質(例えば、ヒトC5タンパク質)のC5a及び/又はC5b活性断片の生成又は活性を遮断する。この遮断効果により、抗体は、例えば、C5aの炎症誘発効果及び細胞表面でのC5b-9膜攻撃複合体(MAC)の生成を阻害する。
【0060】
本明細書に記載される特定の抗体がC5切断を阻害するか否かを決定するための方法は、当技術分野で公知である。ヒト補体成分C5の阻害は、対象の体液中の補体の細胞溶解能力を低下させることができる。体液中に存在する補体の細胞溶解能力のそのような低下は、例えば、Kabat and Mayer(eds.),“Experimental Immunochemistry,2nd Edition,”135-240,Springfield,IL,CC Thomas(1961),135-139頁に記載されている溶血アッセイなどの従来の溶血アッセイ又はニワトリ赤血球溶血法などのそのアッセイの従来の変法(Hillmen,P.et al.,N.Engl.J.Med.,350:552-9,2004)など、当技術分野で公知の方法によって測定することができる。候補化合物がヒトC5のC5a及びC5b形態への切断を阻害するか否かを決定するための方法は、当技術分野で公知である(Evans,M.et al.,Mol.Immunol.,32:1183-95,1995)。体液中のC5a及びC5bの濃度及び/又は生理活性は、例えば、当技術分野で公知の方法によって測定することができる。C5bについては、本明細書で議論されるように、溶血アッセイ又は可溶性C5b-9についてのアッセイが使用され得る。当技術分野で知られている他のアッセイも使用することができる。これら又は他の適切なタイプのアッセイを使用して、ヒト補体成分C5を阻害できる候補薬剤をスクリーニングすることができる。
【0061】
ELISAなどであるがこれに限定されない免疫学的技術を用いて、C5のタンパク質濃度及び/又はそのスプリット生成物を測定して、抗C5抗体又はその抗原結合断片がC5の生物学的に活性な生成物への変換を阻害する能力を決定することができる。いくつかの実施形態では、C5a生成が測定される。いくつかの実施形態では、C5b-9ネオエピトープ特異的抗体を使用して、終末補体の形成を検出する。
【0062】
いくつかの実施形態では、C5活性又はその阻害は、CH50eqアッセイを用いて定量化される。CH50eqアッセイは、血清中の全古典的補体活性を測定するための方法である。この試験は溶解アッセイであり、これは、古典的補体経路のアクチベーターとして抗体感作赤血球を使用し、試験血清の様々な希釈を用いて、50%溶解(CH50)を与えるために必要な量を決定する。溶血パーセントは、例えば、分光光度計を用いて決定することができる。CH50eqアッセイは、終末補体複合体(TCC)形成の間接的測定を提供し、これはTCC自体が測定される溶血に直接関与するためである。
【0063】
例えば、終末補体活性に関連する阻害は、類似の条件下及び等モル濃度での対照抗体(又はその抗原結合断片)の効果と比較して、終末補体の活性の少なくとも5%(例えば、少なくとも6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55又は60%)の減少を含む。本明細書で使用される実質的な阻害は、少なくとも40%(例えば、少なくとも45、50、55、60、65、70、75、80、85、90又は95%以上)の所与の活性(例えば、終末補体活性)の阻害を指す。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される抗C5抗体は、エクリズマブのCDR(即ち配列番号1~6)に対して1つ以上のアミノ酸置換を含むが、エクリズマブの補体阻害活性の少なくとも30%(例えば、少なくとも31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、55、60、65、70、75、80、85、90又は95%)を保持する。
【0064】
本明細書に記載される抗C5抗体は、ヒトにおける血清半減期が少なくとも20日(例えば、少なくとも21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54又は55日)である。別の実施形態では、本明細書に記載される抗C5抗体は、ヒトにおける血清半減期が少なくとも40日である。別の実施形態では、本明細書に記載される抗C5抗体は、ヒトにおける血清半減期が約43日である。別の実施形態では、本明細書に記載される抗C5抗体は、ヒトにおける血清半減期が39~48日である。抗体の血清半減期を測定するための方法は、当技術分野で公知である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される抗C5抗体又はその抗原結合断片は、例えば、作業実施例に記載されるマウスモデル系(例えば、C5欠損/NOD/scidマウス又はhFcRnトランスジェニックマウスモデル系)の1つにおいて測定されるように、エクリズマブの血清半減期よりも少なくとも20%(例えば、少なくとも30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、125、150、175、200、250、300、400又は500%)大きい血清半減期を有する。
【0065】
一実施形態において、抗体は、本明細書に記載される抗体と同じC5上のエピトープとの結合について競合し、且つ/又はそのエピトープに結合する。2つ以上の抗体に関する用語「同じエピトープに結合する」は、所与の方法によって決定して、抗体がアミノ酸残基の同じ部分に結合することを意味する。抗体が、本明細書に記載される抗体と「同じC5上のエピトープ」に結合するか否かを決定するための技術は、例えば、エピトープの原子分解を提供する抗原:抗体複合体の結晶のx線分析及び水素/重水素交換質量分析(HDX-MS)のようなエピトープマッピング方法を含む。他の方法は、抗原配列内のアミノ酸残基の修飾による結合の喪失が多くの場合にエピトープ成分の指標と考えられる、ペプチド抗原断片又は抗原の変異体への抗体の結合をモニターする。さらに、エピトープマッピングのための計算コンビナトリアル法も使用することができる。これらの方法は、コンビナトリアルファージディスプレイペプチドライブラリーから特定の短いペプチドを親和性単離する目的の抗体の能力に依存する。同じVH及びVL又は同じCDR1、2及び3配列を有する抗体は、同じエピトープに結合すると予想される。
【0066】
「標的への結合について別の抗体と競合する」抗体は、標的への他方の抗体の結合を(部分的又は完全に)阻害する抗体を指す。2つの抗体が標的への結合について互いに競合するか否か、即ち1つの抗体が標的への他方の抗体の結合を阻害するか否か及びどの程度阻害するかは、公知の競合実験を使用して決定され得る。特定の実施形態では、抗体は、標的への別の抗体と少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は100%競合し、その結合を阻害する。阻害又は競合のレベルは、どの抗体が「遮断抗体」(即ち最初に標的とインキュベートされる低温抗体)であるかに依存して異なり得る。競合する抗体は、同じエピトープ、オーバーラップするエピトープ又は隣接するエピトープに結合する(例えば、立体障害によって証明されるように)。
【0067】
本明細書に記載される方法において使用される、本明細書に記載される抗C5抗体又はその抗原結合断片は、当技術分野で認識される多様な技術を使用して生成され得る。モノクローナル抗体は、当業者によく知られた様々な技術によって得ることができる。簡潔には、所望の抗原で免疫化された動物由来の脾臓細胞が、一般に骨髄腫細胞との融合によって不死化される(Koehler,G.&Milstein,C.,Eur.J.Immunol.,6:511-9,1976)。不死化の代替方法は、エプスタイン・バーウイルス、癌遺伝子若しくはレトロウイルス又は当技術分野で周知の他の方法による形質転換を含む。単一の不死化細胞から生じるコロニーを、抗原に対する所望の特異性及び親和性の抗体の産生についてスクリーニングし、このような細胞によって産生されるモノクローナル抗体の収率は、脊椎動物宿主の腹腔への注射を含む種々の技術によって増強され得る。代わりに、ヒトB細胞からDNAライブラリーをスクリーニングすることにより、モノクローナル抗体又はその結合断片をコードするDNA配列を単離し得る(Huse,W.et al.,Science,246:1275-81,1989)。
【0068】
組成物
ラブリズマブを単独で又は予防剤、治療剤及び/若しくは薬学的に許容され得る担体と組み合わせて含む医薬組成物が提供される。本明細書で提供されるラブリズマブを含む医薬組成物は、障害の診断、検出若しくはモニタリング、障害若しくはその1つ以上の症状の予防、治療、管理若しくは回復及び/又は研究における使用のためのものであるが、これらに限定されない。単独で又は予防剤、治療剤及び/若しくは薬学的に許容され得る担体と組み合わせた、医薬組成物の製剤は、当業者に公知である。
【0069】
一実施形態では、組成物は、配列番号12に示される配列を有する重鎖可変領域中のCDR1、CDR2及びCDR3ドメイン並びに配列番号8に示される配列を有する軽鎖可変領域中のCDR1、CDR2及びCDR3ドメインを含む抗C5抗体を含む。別の実施形態では、抗C5抗体は、それぞれ配列番号14及び11に示される配列を有する重鎖及び軽鎖を含む。
【0070】
組成物は、例えば、NMOSDの治療又は予防のために対象に投与するための医薬溶液として処方することができる。医薬組成物は、一般に、薬学的に許容され得る担体を含む。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容され得る担体」は、生理学的に適合性である任意の及び全ての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤などを指し、それらを含む。組成物は、薬学的に許容され得る塩、例えば、酸付加塩若しくは塩基付加塩、糖、炭水化物、ポリオール及び/又は浸透圧調整剤を含むことができる。
【0071】
組成物は、標準的な方法に従って処方することができる。医薬製剤は、よく確立された技術であり、例えば、Gennaro(2000)“Remington:The Science and Practice of Pharmacy,”20th Edition,Lippincott,Williams&Wilkins(ISBN:0683306472);Ansel et al.(1999)“Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems,”7th Edition,Lippincott Williams&Wilkins Publishers(ISBN:0683305727);及びKibbe(2000)“Handbook of Pharmaceutical Excipients American Pharmaceutical Association,”3rd Edition(ISBN:091733096X)にさらに記載されている。いくつかの実施形態では、組成物は、例えば、適切な濃度で、2~8℃(例えば、4℃)での貯蔵に適切な緩衝溶液として処方され得る。いくつかの実施形態では、組成物は、0℃未満の温度(例えば、-20℃又は-80℃)での貯蔵のために処方され得る。いくつかの実施形態では、組成物は、2~8℃(例えば、4℃)で2年間まで(例えば、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、1年、1.5年又は2年)貯蔵するために処方され得る。したがって、いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物は、2~8℃(例えば、4℃)で少なくとも1年にわたって貯蔵において安定である。
【0072】
医薬組成物は、多様な形態であり得る。それらの形態は、例えば、液体、半固体及び固体の剤形、例えば液体溶液(例えば、注射可能及び注入可能な溶液)、分散液又は懸濁液、錠剤、丸剤、粉末、リポソーム及び坐剤)を含む。好ましい剤形は、部分的に、意図される投与様式及び治療適用に依存する。例えば、全身送達又は局所送達が意図される組成物を含む組成物は、注射可能又は注入可能な溶液の形態であり得る。組成物は、非経口様式(例えば、静脈内、皮下、腹腔内又は筋肉内注射)による投与のために処方することができる。本明細書で使用される「非経口投与」、「非経口投与される」及び他の文法的に均等な語句は、通常、注射による経腸及び局所投与以外の投与様式を指し、静脈内、鼻腔内、眼内、肺、筋肉内、動脈内、髄腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、肺内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、硬膜外、脳内、頭蓋内、頸動脈内及び胸骨内注射及び注入を含むが、これらに限定されない。一実施形態において、抗体は、静脈内投与のために処方される。
【0073】
治療的又は予防的に有効な量のラブリズマブ又は他の抗C5抗体、例えば本明細書に提供されるエクリズマブ、BNJ 421、7086、8110、SKY59及びH4H12166PPについての例示的な非限定的な範囲は、600~5000mg、例えば900~2000mgである。軽減される状態のタイプ及び重症度により投与量値が変化し得ることに注意しなければならない。任意の特定の対象について、特定の投与レジメンは、個々の必要性及び組成物を投与し又は投与を監督する人の専門的判断に従って経時的に調製され得、本明細書に示される投与範囲は、例示のみであり、特許請求される方法の範囲又は実践を限定することを意図するものではないことをさらに理解するべきである。
【0074】
視神経脊髄炎の治療方法
本開示は、C5に特異的に結合する抗体を投与することにより、NMOSDに罹患している対象を治療する方法を提供する。本明細書で使用される場合、用語「対象」及び「患者」は、交換可能である。特定の実施形態では、対象及び/又は患者は、例えば、霊長類、例えばヒト、げっ歯類、ウサギ類、ラクダ類、有蹄動物、イヌ及びネコを含む哺乳動物である。特定の実施形態では、本明細書に記載されるNMOSDに罹患している対象又は患者は、ヒトである。
【0075】
NMOSDは、再発する疾患過程を特徴とし、有意な神経学的障害が段階的に蓄積するため、そこからの回復は不良となることがある。デビック病又はデビック症候群としても知られる視神経脊髄炎(NMO)は、NMOSDの一部であり、視神経及び脊髄を主に侵し、多くの場合、失明、単/対/四肢麻痺及び呼吸不全に至る、中枢神経系(CNS)の稀で重度の障害を伴う自己免疫性炎症性疾患である。
【0076】
いくつかの実施形態では、NMOは、アクアポリン4に対するNMO-IgG抗体(抗AQP4)によって特徴付けられる。いくつかの実施形態では、NMO患者のサブセットは、抗AQP4+である。別の実施形態では、NMO患者のサブセットは、抗-MOG+(ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質)である。
【0077】
いくつかの実施形態では、AQP4自己抗体は、NMOと診断されるべき臨床要件を満たさないNMO様症状を有する患者において見出される。いくつかの実施形態では、NMOと診断されるべき要件の1つは、再燃性且つ同時の視神経及び脊髄炎症である。
【0078】
いくつかの実施形態では、NMOSDは、縦方向に広範な脊髄炎の単一又は再燃事象及び両側同時又は再燃性視神経炎など、限定された形態のデビック病を包含する。いくつかの実施形態では、NMOSDは、アジア視神経脊髄型MS(OSMS)又はAQP4+ OSMSを包含する。いくつかの実施形態では、NMOSDは、全身性自己免疫疾患に関連する縦方向に広範な脊髄炎又は視神経炎及び視床下部、周室核及び脳幹などの特定の脳領域における病変に関連する視神経炎又は脊髄炎をさらに包含する。
【0079】
特定の実施形態では、NMOSDの治療は、NMOSDに関連する1つ以上の症状の回復又は改善を含む。NMOSDに関連する症状には、視力障害、視力低下、視野欠損、色覚消失、脊髄機能不全、筋力低下、感覚低下及び膀胱又は腸の制御喪失などがある。
【0080】
他の実施形態では、NMOSDの治療は、NMOSD進行に関する臨床マーカーの改善を含む。これらのマーカーには、例えば、再発までの時間、年間再発率(ARR)、拡張障害スケールスコア(EDSS)、修正ランキンスケール(mRS)、生活の質(ED-5D)、ハウザー歩行指数(HAI)、スネレンチャートを用いた視力の変化及び視神経脊髄障害スコア(OSIS)を用いた再発の重症度が含まれる。
【0081】
NMOSD再発は、症状が以前に成功裏に回復した対象において生じるNMOSDの症状によって証明される。再発は、視覚又は感覚に関連する症状の発症又は悪化によって示される。NMOSDの再発に関連する視覚の変化には、眼痛の急速な発症、視覚のぼけ、正しく見えない色、視野の欠如、視野内の斑点又は点、視野内の点滅又は明滅、焦点合わせの困難さ、読書の困難さ及び視野が不正確に思われる感覚が含まれる。NMOSDの再発に関連する感覚の変化には、疼痛、刺痛、しびれ、腕、脚又は顔が入眠すると思われる、空間内の位置感覚の喪失、四肢の感覚喪失、僅かな接触が痛い、衣服又はベッドシートが痛みを引き起こし、且つ対象が対象の損傷を検出できないことを含む。年間再発率(ARR)は、1年あたりの平均再発数である。
【0082】
特定の実施形態では、NMOSDについて治療された対象は、ラブリズマブが投与される前の24ヶ月間に3回以上の再発を有している。他の実施形態では、NMOについて治療された対象は、ラブリズマブが投与される前の24ヶ月間に2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12以上の再発を有する。特定の実施形態では、NMOSDについて治療された対象は、ラブリズマブが投与される前の24ヶ月間に1.0以上のARRを有する。他の実施形態では、NMOSDについて治療された対象は、ラブリズマブが投与される前の24ヶ月間に少なくとも1.0、1.2、1.4、1.6、1.8、2.0、25、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5.7.0以上のARRを有する。
【0083】
障害は、2つの治療群のベースラインからの変化を比較したEDSSスコアに基づいて評価することができる。Kurtzke拡張障害スケールスコア(EDSS)は、多発性硬化症における障害を定量化する方法である。EDSSは、多発性硬化症(MS)で使用された以前の障害状態スケールを置き換えた。EDSSは、障害を8つの機能システム(FS)に定量化し、神経科医がこれらのそれぞれに機能システムスコア(FSS)を割り当てることを可能にした。機能システムは、錐体、小脳、脳幹、感覚、腸及び膀胱、視覚、大脳及びその他である。EDSSステップ1.0~4.5は、完全に歩行可能なMS患者を指す。EDSSステップ5.0~9.5は、歩行障害によって定義される。障害は、2つの治療群のベースラインからの変化を比較するmRSスコアに基づいても評価する。mRSスコアは、治験実施計画書に規定された時点で治療医師が評価する。
【0084】
特定の実施形態では、NMOSDについて治療された対象は、ラブリズマブが投与される前の24ヶ月間に、少なくとも1.0のEDSSスコアを有する。他の実施形態では、NMOSDについて治療された対象は、ラブリズマブが投与される前の24ヶ月間に、少なくとも1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0以上のEDSSスコアを有する。他の実施形態では、NMOSDについて治療された対象は、ラブリズマブが投与される前の24ヶ月間に、1.0~7.0のEDSSスコアを有する。特定の実施形態では、NMOSDについて治療された対象は、ラブリズマブが投与される前の24ヶ月間に、少なくとも2.0のHAIスコアを有する。他の実施形態では、NMOSDについて治療された対象は、ラブリズマブが投与される前の24ヶ月間に、少なくとも0.0、1.0、2.0、3.0、4.0、5.0、6.0、7.0、8.0又は9.0のHAIスコアを有する。他の実施形態では、NMOSDについて治療された対象は、ラブリズマブが投与される前の24ヶ月間に、0.0~8.0のHAIスコアを有する。特定の実施形態では、NMOSDについて治療された対象は、ラブリズマブが投与される前の24ヶ月間に、少なくとも0.0のmRSスコアを有する。他の実施形態では、NMOSDについて治療された対象は、ラブリズマブが投与される前の24ヶ月間に、少なくとも0.0、1.0、2.0、3.0、4.0、5.0又はそれを超えるmRSスコアを有する。他の実施形態では、NMOSDについて治療された対象は、ラブリズマブが投与される前の24ヶ月間に、0.0~2.5のmRSスコアを有する。
【0085】
生活の質(QOL)は、治験実施計画書に規定された時点で、患者の自己評価質問票EQ-5D及びSF-36により評価することができる。EQ-5Dのサンプル質問票を
図5に示す。EUROQOL(EQ-5D)は、対象が記入する、移動能力、セルフケア、通常の活動、疼痛/不快感及び不安/抑うつの5領域における健康状態の信頼性の高い、検証された調査である。各領域は、レベル1(問題なし)、レベル2(問題あり)、レベル3(極端な問題あり)の3つのレベルを有する。EQ-5Dは、1日目、4、8、12、24、36、48、60、72、84、96及び104週目又はET(来院2、6、8、10、16、22、28、34、40、46、52及び56日目又はET)に管理される。患者のEQ-5Dの臨床的に意味のある改善は、26週間の治療後のスコアの増加として反映される。SF-36のサンプル質問票は、
図5に示される。
【0086】
歩行機能は、例えば、HAIスケールによって評価することができる。視力は、例えば、Snellenチャートを用いて評価することができる。再発の重症度は、例えば、視神経脊髄障害スコア(OSIS)を用いて評価することができる。OSISスコアは、表1に要約される。
【0087】
特定の実施形態によれば、ラブリズマブを投与された対象は、NMOSDの再発間の時間隔の増加を示す。特定の実施形態では、対象は、6週間を超える再発前の期間を有する。他の実施形態では、再発前の期間は、6、12、18、24、30、36、42、48、54、60、66、72、78、84、90、96、102週間以上である。他の実施形態では、再発前の期間は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48週間以上である。他の実施形態では、再発前の期間は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれを超える年を超える。他の実施形態では、再発前の期間は、6~52週間、6~26週間、6~10週間、26~52週間、1~2年間、1~5年間、5~10年間であるか、又は再発は、対象の生涯にわたって起こらない。他の実施形態では、再発前の期間は、6、12、18、24、30、36、42、48、54、60、66、72、78、84、90、96、102ヶ月以上を超える。
【0088】
特定の実施形態によれば、ラブリズマブによる治療の過程は、108週間継続する。他の実施形態によれば、治療の過程は、26~52、26~78、26~120、26~130、26~156、26~104、26~130、26~156、26~182、26~208週間以上継続する。他の実施形態では、治療の過程は、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、78、104、130、156又は182週間を超えて継続する。他の実施形態によれば、治療の過程は、1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80年以上継続する。特定の実施形態では、治療の過程は、対象の生涯の残りにわたって継続する。
【0089】
特定の実施形態によれば、治療過程中、NMOSDに関連する1つ以上の症状又はスコアは、治療過程中に改善し、治療を通して改善されたレベルに維持される。EDSSは、例えば、C5に特異的に結合する治療用抗体による26週間の治療後に改善することができ、次いで、例えば、C5に特異的に結合する治療用抗体による52週間の治療であり得る治療中、改善されたレベルにとどまる。C5に結合する治療用抗体の一例は、ラブリズマブである。
【0090】
特定の実施形態では、改善の最初の徴候は、C5に特異的に結合する治療用抗体による26週間の治療までに生じる。他の実施形態によれば、改善の最初の徴候は、C5に特異的に結合する治療用抗体による治療の1~26、26~52、52~78、78~104、104~130、130~156、156~182又は182~208週目に生じる。他の実施形態では、改善の最初の徴候は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、78、104、130、156又は182週目に生じる。
【0091】
特定の実施形態によれば、改善の最初の徴候は、ラブリズマブなどのC5に特異的に結合する結合タンパク質による治療中、数週間維持される。特定の実施形態によれば、この週数は、少なくとも26である。他の実施形態によれば、この週数は、1~26、26~52、52~78、78~104、104~130、130~156、156~182又は182~208である。他の実施形態では、この週数は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、78、104、130、156又は182である。特定の実施形態によれば、改善の最初の徴候が維持される場合、これは、NMOSDの治療についての測定基準(metric)が改善の最初の徴候の値を下回らないことを意味する。測定基準は、改善し続けることができ、これは、依然として、改善の最初の徴候の維持として定義される。
【0092】
一実施形態において、抗C5抗体(例えば、ラブリズマブ)又はその抗原結合断片は、投与サイクルの1日目に1回、投与サイクルの15日目に1回及びその後8週間毎に投与される。一実施形態において、抗C5抗体又はその抗原結合断片は、投与サイクル後、8週間毎に2年間までの延長期間(例えば、3000mg、3300mg又は3600mgの用量で)投与される。
【0093】
別の実施形態では、抗C5抗体(例えば、ラブリズマブ)又はその抗原結合断片は、1つ以上の投与サイクルにわたって投与される。一実施形態では、投与サイクルは、26週間である。別の実施形態では、治療は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又は11サイクルを含む。別の実施形態では、治療は、ヒト患者の生涯にわたって継続される。
【0094】
別の実施形態では、NMOSDを用いてヒト患者を治療する方法が提供され、この方法は、有効量の、それぞれ配列番号19、18及び3に示されるCDR1、CDR2及びCDR3重鎖配列並びにそれぞれ配列番号4、5及び6に示されるCDR1、CDR2及びCDR3軽鎖配列を含む抗C5抗体(例えば、ラブリズマブ)又はその抗原結合断片を投与サイクル中に患者に投与することを含み、抗C5抗体又はその抗原結合断片は、(a)投与サイクルの1日目に1回、体重≧40~<60kgの患者に2400mg、体重≧60~<100kgの患者に2700mg又は体重≧100kgの患者に3000mgの用量で投与され;及び(b)投与サイクルの15日目及びその後8週間毎に、体重≧40~<60kgの患者に3000mg、体重≧60~<100kgの患者に3300mg又は体重≧100kgの患者に3600mgの用量で投与される。
【0095】
別の実施形態では、NMOSDを用いてヒト患者を治療する方法が提供され、この方法は、それぞれ配列番号19、18及び3に示されるCDR1、CDR2及びCDR3重鎖配列、それぞれ配列番号4、5及び6に示されるCDR1、CDR2及びCDR3軽鎖配列並びにヒト新生児Fc受容体(FcRn)に結合する改変ヒトFc定常領域を含む有効量の抗C5抗体(例えば、ラブリズマブ)又はその抗原結合断片を投与サイクル中に患者に投与することを含み、改変ヒトFc CH3定常領域は、メチオニン428及びアスパラギン434に対応する残基にMet-429-Leu及びAsn-435-Ser置換を含み(それぞれEU番号付け)、抗C5抗体(例えば、ラブリズマブ)又はその抗原結合断片は、(a)投与サイクルの1日目に1回、体重≧40~<60kgの患者に2400mg、体重≧60~<100kgの患者に2700mg又は体重≧100kgの患者に3000mgの用量で投与され;及び(b)投与サイクルの15日目及びその後8週間毎に、体重≧40~<60kgの患者に3000mg、体重≧60~<100kgの患者に3300mg又は体重≧100kgの患者に3600mgの用量で投与される。
【0096】
別の実施形態では、抗C5抗体(例えば、ラブリズマブ)又はその抗原結合断片は、(a)投与サイクルの1日目に1回、2400mgの用量で;及び(b)投与サイクルの15日目及びその後8週間毎に3000mgの用量で、体重≧40~<60kgの患者に投与される。
【0097】
別の実施形態では、抗C5抗体(例えば、ラブリズマブ)又はその抗原結合断片は、(a)投与サイクルの1日目に1回、2700mgの用量で;及び(b)投与サイクルの15日目及びその後8週間毎に3300mgの用量で、体重≧60~<100kgの患者に投与される。
【0098】
別の実施形態では、抗C5抗体(例えば、ラブリズマブ)又はその抗原結合断片は、(a)投与サイクルの1日目に1回、3000mgの用量で;及び(b)投与サイクルの15日目及びその後8週間毎に3600mgの用量で、体重≧100kgの患者に投与される。
【0099】
別の実施形態では、患者は、治療過程中、1つのC5阻害剤の受容を異なるC5阻害剤に切り替える。異なる抗C5抗体は、別々の治療期間中に投与することができる。一実施形態では、例えば、エクリズマブで治療されている補体関連障害(例えば、NMOSD、例えばNMO)を有するヒト患者を治療する方法が提供され、この方法は、エクリズマブによる治療を中止し、患者を代替補体阻害剤(例えば、ラブリズマブ)による治療に切り替えることを含む。別の実施形態では、ラブリズマブで治療されている補体関連障害を有するヒト患者を治療する方法が提供され、この方法は、ラブリズマブによる治療を中止し、患者を代替補体阻害剤による治療に切り替えることを含む。
【0100】
例示的な代替補体阻害剤としては、抗体又はその抗原結合断片、小分子、ポリペプチド、ポリペプチドアナログ、ペプチド模倣物、siRNA及びアプタマーが挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、代替補体阻害剤は、補体成分C1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、D因子、B因子、プロパージン、MBL、MASP-1、MASP-2又はそれらの生物学的に活性な断片の1つ以上を阻害する。別の実施形態では、代替補体阻害剤は、C5aに関連するアナフィラトキシー活性の生成及び/又はC5bに関連する膜攻撃複合体の集合の一方又は両方を阻害する。別の実施形態では、代替補体阻害剤は、CR1、LEX-CR1、MCP、DAF、CD59、H因子、コブラ毒因子、FUT-175、コンプスタチン及びK76 COOHからなる群から選択される。
【0101】
別の実施形態では、エクリズマブで治療されている補体関連障害を有するヒト患者を治療する方法が提供され、この方法は、エクリズマブによる治療を中止し、患者を代替抗C5抗体による治療に切り替えることを含む。別の実施形態では、ラブリズマブで治療されている補体関連障害を有するヒト患者を治療する方法が提供され、この方法は、ラブリズマブによる治療を中止し、患者を代替抗C5抗体による治療に切り替えることを含む。
【0102】
例示的な代替抗C5抗体としては、(i)エクリズマブ、(ii)それぞれ配列番号21、22及び23を含む重鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメイン並びにそれぞれ配列番号24、25及び26を含む軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメインを含む抗体又はその抗原結合断片、(iii)配列番号27を含む重鎖可変領域及び配列番号28を含む軽鎖可変領域を含む抗体又はその抗原結合断片、(iv)それぞれ配列番号29、30及び31を含む重鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメイン並びにそれぞれ配列番号32、33及び34を含む軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメインを含む抗体又はその抗原結合断片、(v)配列番号35を含む重鎖可変領域及び配列番号36を含む軽鎖可変領域を含む抗体又はその抗原結合断片、(vi)それぞれ配列番号37、38及び39を含む重鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメイン並びにそれぞれ配列番号40、41及び42を含む軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3ドメインを含む抗体又はその抗原結合断片、(vii)配列番号43を含む重鎖可変領域及び配列番号44を含む軽鎖可変領域を含む抗体又はその抗原結合断片、及び(viii)配列番号45を含む重鎖及び配列番号46を含む軽鎖を含む抗体又はその抗原結合断片が挙げられるが、これらに限定されない。
【0103】
別の実施形態では、患者は、ラブリズマブで治療され、次いで、7086抗体、8110抗体、305LO5抗体、SKY59抗体、H4H12166PP抗体又はエクリズマブによる治療に切り替えられる。別の実施形態では、患者は、治療過程中、抗C5抗体(例えば、エクリズマブ、7086抗体、8110抗体、305LO5抗体、SKY59抗体又はH4H12166PP抗体)から別の抗C5抗体(例えば、ラブリズマブ)に切り替えられる。特定の実施形態では、患者は、治療過程中、エクリズマブからラブリズマブに切り替えられる。
【0104】
別の態様では、記載される治療レジメンは、抗C5抗体又はその抗原結合断片の特定の血清トラフ濃度を維持するのに十分である。一実施形態では、例えば、治療は、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、200、205、210、215、220、225、230、240、245、250、255、260、265、270、280、290、300、305、310、315、320、325、330、335、340、345、350、355、360、365、370、375、380、385、390、395又は400μg/mL以上の、抗C5抗体又はその抗原結合断片の血清トラフ濃度を維持する。一実施形態では、治療は、100μg/mL以上の抗C5抗体又はその抗原結合断片の血清トラフ濃度を維持する。別の実施形態では、治療は、150μg/mL以上の抗C5抗体又はその抗原結合断片の血清トラフ濃度を維持する。別の実施形態では、治療は、200μg/mL以上の抗C5抗体又はその抗原結合断片の血清トラフ濃度を維持する。別の実施形態では、治療は、250μg/mL以上の抗C5抗体又はその抗原結合断片の血清トラフ濃度を維持する。別の実施形態では、治療は、300μg/mL以上の抗C5抗体又はその抗原結合断片の血清トラフ濃度を維持する。別の実施形態では、治療は、100μg/mL~200μg/mLの抗C5抗体又はその抗原結合断片の血清トラフ濃度を維持する。別の実施形態では、治療は、約175μg/mLの抗C5抗体又はその抗原結合断片の血清トラフ濃度を維持する。
【0105】
別の実施形態では、有効な応答を得るために、抗C5抗体は、患者の血液1ミリリットルあたり少なくとも50μg、55μg、60μg、65μg、70μg、75μg、80μg、85μg、90μg、95μg、100μg、105μg、110μg、115μg、120μg、125μg、130μg、135μg、140μg、145μg、150μg、155μg、160μg、165μg、170μg、175μg、180μg、185μg、190μg、195μg、200μg、205μg、210μg、215μg、220μg、225μg、230μg、235μg、240μg、245μg、250μg、255μg又は260μgの抗体を維持する量及び頻度で患者に投与される。別の実施形態では、抗C5抗体は、患者の血液1ミリリットルあたり50μg~250μgの抗体を維持する量及び頻度で患者に投与される。別の実施形態では、抗C5抗体は、患者の血液1ミリリットルあたり100μg~200μgの抗体を維持する量及び頻度で患者に投与される。別の実施形態では、抗C5抗体は、患者の血液1ミリリットルあたり約175μgの抗体を維持する量及び頻度で患者に投与される。
【0106】
一実施形態において、抗C5抗体は、特定の臨床投与レジメンに従って(例えば、特定の用量において且つ/又は特定の投与スケジュールに従って)投与される(又は投与のためである)。
【0107】
別の実施形態では、抗C5抗体の用量は、患者の体重に基づく。一実施形態では、10mg、20mg、25mg、50mg、75mg、100mg、125mg、150mg、175mg、200mg、225mg、250mg、275mg、300mg、325mg、350mg、375mg、400mg、425mg、450mg、475mg、500mg、525mg、550mg、575mg、600mg、625mg、650mg、675mg、700mg、725mg、750mg、775mg、800mg、825mg、850mg、875mg、900mg、925mg、950mg、975mg、1000mg、1100mg、1200mg、1300mg、1400mg、1500mg、1600mg、1700mg、1800mg、1900mg、2000mg、2100mg、2200mg、2300mg、2400mg、2500mg、2600mg、2700mg、2800mg、2900mg、3000mg、3100mg、3200mg、3300mg、3400mg、3500mg、3600mg、3700mg、3800mg、3900mg、4000mg、4100mg、4200mg、4300mg、4400mg、4500mg、4600mg、4700mg、4800mg、4900mg、5000mg、5100mg、5200mg、5300mg、5400mg、5500mg、5600mg、5700mg、5800mg、5900mg、6000mg、6100mg、6200mg、6300mg、6400mg、6500mg、6600mg、6700mg、6800mg、6900mg、7000mg、7100mg、7200mg、7300mg、7400mg、7500mg、7600mg、7700mg、7800mg、7900mg、8000mg、8100mg、8200mg、8300mg、8400mg、8500mg、8600mg、8700mg、8800mg、8900mg、9000mg、9100mg、9200mg、9300mg、9400mg、9500mg、9600mg、9700mg、9800mg、9900mg、10000mg、10100mg、10200mg、10300mg、10400mg、10500mg、10600mg、10700mg、10800mg、10900mg又は11000mgの抗C5抗体又はその抗原結合断片が、体重≧40~<60kgの患者に投与される。
【0108】
別の実施形態では、10mg、20mg、25mg、50mg、75mg、100mg、125mg、150mg、175mg、200mg、225mg、250mg、275mg、300mg、325mg、350mg、375mg、400mg、425mg、450mg、475mg、500mg、525mg、550mg、575mg、600mg、625mg、650mg、675mg、700mg、725mg、750mg、775mg、800mg、825mg、850mg、875mg、900mg、925mg、950mg、975mg、1000mg、1100mg、1200mg、1300mg、1400mg、1500mg、1600mg、1700mg、1800mg、1900mg、2000mg、2100mg、2200mg、2300mg、2400mg、2500mg、2600mg、2700mg、2800mg、2900mg、3000mg、3100mg、3200mg、3300mg、3400mg、3500mg、3600mg、3700mg、3800mg、3900mg、4000mg、4100mg、4200mg、4300mg、4400mg、4500mg、4600mg、4700mg、4800mg、4900mg、5000mg、5100mg、5200mg、5300mg、5400mg、5500mg、5600mg、5700mg、5800mg、5900mg、6000mg、6100mg、6200mg、6300mg、6400mg、6500mg、6600mg、6700mg、6800mg、6900mg、7000mg、7100mg、7200mg、7300mg、7400mg、7500mg、7600mg、7700mg、7800mg、7900mg、8000mg、8100mg、8200mg、8300mg、8400mg、8500mg、8600mg、8700mg、8800mg、8900mg、9000mg、9100mg、9200mg、9300mg、9400mg、9500mg、9600mg、9700mg、9800mg、9900mg、10000mg、10100mg、10200mg、10300mg、10400mg、10500mg、10600mg、10700mg、10800mg、10900mg又は11000mgの抗C5抗体又はその抗原結合断片が、体重≧60~<100kgの患者に投与される。
【0109】
別の実施形態では、10mg、20mg、25mg、50mg、75mg、100mg、125mg、150mg、175mg、200mg、225mg、250mg、275mg、300mg、325mg、350mg、375mg、400mg、425mg、450mg、475mg、500mg、525mg、550mg、575mg、600mg、625mg、650mg、675mg、700mg、725mg、750mg、775mg、800mg、825mg、850mg、875mg、900mg、925mg、950mg、975mg、1000mg、1100mg、1200mg、1300mg、1400mg、1500mg、1600mg、1700mg、1800mg、1900mg、2000mg、2100mg、2200mg、2300mg、2400mg、2500mg、2600mg、2700mg、2800mg、2900mg、3000mg、3100mg、3200mg、3300mg、3400mg、3500mg、3600mg、3700mg、3800mg、3900mg、4000mg、4100mg、4200mg、4300mg、4400mg、4500mg、4600mg、4700mg、4800mg、4900mg、5000mg、5100mg、5200mg、5300mg、5400mg、5500mg、5600mg、5700mg、5800mg、5900mg、6000mg、6100mg、6200mg、6300mg、6400mg、6500mg、6600mg、6700mg、6800mg、6900mg、7000mg、7100mg、7200mg、7300mg、7400mg、7500mg、7600mg、7700mg、7800mg、7900mg、8000mg、8100mg、8200mg、8300mg、8400mg、8500mg、8600mg、8700mg、8800mg、8900mg、9000mg、9100mg、9200mg、9300mg、9400mg、9500mg、9600mg、9700mg、9800mg、9900mg、10000mg、10100mg、10200mg、10300mg、10400mg、10500mg、10600mg、10700mg、10800mg、10900mg又は11000mgが、体重≧100kgの患者に投与される。特定の実施形態では、投与レジメンは、最適な所望の応答(例えば、有効な応答)を提供するように調整される。
【0110】
別の実施形態では、抗C5抗体は、ミリグラム/キログラム(mg/kg)用量で投与される。例えば、一実施形態では、抗C5抗体又はその抗原結合断片は、0.1mg/kg、0.25mg/kg、0.5mg/kg、0.75mg/kg、1.0mg/kg、1.25mg/kg、1.50mg/kg、1.75mg/kg、2.0mg/kg、2.25mg/kg、2.50mg/kg、2.75mg/kg、3.0mg/kg、3.25mg/kg、3.50mg/kg、3.75mg/kg、4.0mg/kg、4.25mg/kg、4.50mg/kg、4.75mg/kg、5.0mg/kg、5.25mg/kg、5.50mg/kg、5.75mg/kg、6.0mg/kg、6.25mg/kg、6.50mg/kg、6.75mg/kg、7.0mg/kg、7.25mg/kg、7.50mg/kg、7.75mg/kg、8.0mg/kg、8.25mg/kg、8.50mg/kg、8.75mg/kg、9.0mg/kg、9.25mg/kg、9.50mg/kg、9.75mg/kg、10.0mg/kg、11.25mg/kg、11.50mg/kg、11.75mg/kg、12.0mg/kg、12.25mg/kg、12.50mg/kg、12.75mg/kg、13.0mg/kg、13.25mg/kg、13.50mg/kg、13.75mg/kg、14.0mg/kg、14.25mg/kg、14.50mg/kg、14.75mg/kg、15.0mg/kg、15.25mg/kg、15.50mg/kg、15.75mg/kg、16.0mg/kg、16.25mg/kg、16.50mg/kg、16.75mg/kg、17.0mg/kg、17.25mg/kg、17.50mg/kg、17.75mg/kg、18.0mg/kg、18.25mg/kg、18.50mg/kg、18.75mg/kg、19.0mg/kg、19.25mg/kg、19.50mg/kg、19.75mg/kg、20.0mg/kg、20.25mg/kg、20.50mg/kg、20.75mg/kg、21.0mg/kg、21.25mg/kg、21.50mg/kg、21.75mg/kg、22.0mg/kg、22.25mg/kg、22.50mg/kg、22.75mg/kg、23.0mg/kg、23.25mg/kg、23.50mg/kg、23.75mg/kg、24.0mg/kg、24.25mg/kg、24.50mg/kg、24.75mg/kg又は25.0mg/kgの用量で投与される。
【0111】
一実施形態では、抗C5抗体は、週に1回、週に2回、週に3回、週に4回、週に5回、週に6回又は毎日投与される。別の実施形態では、抗C5抗体は、1日2回投与される。別の実施形態では、抗C5抗体は、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、5週間に1回、6週間に1回、7週間に1回、8週間に1回、9週間に1回、10週間に1回、11週間に1回又は12週間に1回投与される。別の実施形態では、抗C5抗体は、1日目に負荷用量で投与され、続いて15日目及びその後8週間毎に異なる維持用量で投与される。
【0112】
別の実施形態では、有効な応答を得るために、抗C5抗体は、最小遊離C5濃度を維持する量及び頻度で患者に投与される。一実施形態では、抗C5抗体は、0.2μg/mL、0.3μg/mL、0.4μg/mL、0.5μg/mL以下の遊離C5濃度を維持する量及び頻度で患者に投与される。別の実施形態では、抗C5抗体は、0.309~0.5μg/mL以下の遊離C5濃度を維持する量及び頻度で患者に投与される。
【0113】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法に従って治療される患者は、治験薬を開始する前の3年以内又は開始時に髄膜炎菌感染症に対してワクチン接種されている。一実施形態において、髄膜炎菌ワクチンを受けた後2週間未満で治療を開始する患者は、ワクチン接種後2週間まで適切な予防的抗生物質による治療を受ける。別の実施形態では、本明細書に記載される方法に従って治療される患者は、髄膜炎菌血清型A、C、Y、W135及び/又はBに対してワクチン接種される。
【0114】
本開示によれば、従来の分子生物学、微生物学及び組換えDNA技術を当業者の範囲内で使用することができる。そのような技術は、文献で全て説明されている。例えば、Sambrook,Fritsch&Maniatis,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Second Edition(1989)Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(本明細書では「Sambrook et al.,1989」);DNA Cloning:A Practical Approach,Volumes I and II(D.N.Glover ed.1985);Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait ed.1984);Nucleic Acid Hybridization[B.D.Hames&S.J.Higgins eds.(1985)];Transcription And Translation[B.D.Hames&S.J.Higgins,eds.(1984)];Animal Cell Culture[R.I.Freshney,ed.(1986)];Immobilized Cells And Enzymes[IRL Press,(1986)];B.Perbal,A Practical Guide To Molecular Cloning(1984);F.M.Ausubel et al.(eds.),Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley&Sons,Inc.(1994)を参照されたい。これらの参考文献のそれぞれは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0115】
特に明記しない限り、本明細書に提供される配列同一性/類似性値は、デフォルトパラメーターを使用するプログラムのBLAST 2.0スイートを使用して得られる値を指す(その全体が参照により本明細書に組み込まれるAltschul,S.et al.,Nucleic Acids Res.,25:3389-402,1997))。
【0116】
本明細書で使用される場合、2つのポリペプチド配列の文脈における「配列同一性」又は「同一性」は、特定の比較ウィンドウにわたって最大の対応で整列された場合に同じである2つの配列における残基に対する参照を含む。配列同一性の百分率がタンパク質に関して使用される場合、同一ではない残基位置は、多くの場合、保存的アミノ酸置換によって異なり、ここでアミノ酸残基は、類似の化学的特性(例えば、電荷又は疎水性)を有する他のアミノ酸残基と置換され、したがって、分子の機能的特性を変化させないことが認識される。配列が保存的置換において異なる場合、パーセント配列同一性は、置換の保存的性質を補正するために上方に調節され得る。このような保存的置換によって異なる配列は、「配列類似性」又は「類似性」を有すると言われる。この調整を行うための手段は、当業者に公知である(典型的には、これは完全なミスマッチではなく部分的な置換として保存的置換をスコア化することを含み、それによって配列同一性の百分率を増大させる)。したがって、例えば、同一のアミノ酸に1のスコアが与えられ、非保存的置換に0のスコアが与えられる場合、保存的置換には、0~1のスコアが与えられる。保存的置換のスコアリングは、例えば、Meyers,E.and Miller,W.(Compute.Appl.Biosci.,4:11-7,1988)のアルゴリズムに従って、例えば、プログラムPC/GENE(Intelligenetics,Mountain View,Calif.,USA)において実施されるように計算される。これらの参考文献のそれぞれは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0117】
本明細書で使用される場合、「配列同一性の百分率」は、比較ウィンドウにわたって2つの最適に整列された配列を比較することによって決定される値を意味し、ここで比較ウィンドウ中のポリヌクレオチド配列の一部は、2つの配列の最適な整列のために、参照配列(付加又は欠失を含まない)と比較して、付加又は欠失(即ちギャップ)を含み得る。百分率は、同一の核酸塩基又はアミノ酸残基が両方の配列において生じる位置の数を決定して、一致した位置の数を得、この一致した位置の数を比較のウィンドウにおける位置の総数で割り、結果に100を掛けて配列同一性の百分率を得ることによって計算される。
【0118】
ポリヌクレオチド配列の文脈における用語「実質的同一性」又は「実質的に同一」は、記載されたアラインメントプログラムの1つを使用して標準パラメーターを用いて参照配列と比較して、ポリヌクレオチドが50~100%の配列同一性、例えば少なくとも50%の配列同一性、少なくとも60%の配列同一性、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%又は少なくとも95%の配列同一性を有する配列をポリヌクレオチドが含むことを意味する。当業者は、これらの値がコドン縮重、アミノ酸類似性、リーディングフレーム位置などを考慮することにより、2つのヌクレオチド配列によってコードされるタンパク質の対応する同一性を決定するために適切に調整され得ることを認識するであろう。これらの目的のためのアミノ酸配列の実質的同一性は、通常、55~100%、例えば、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%又は少なくとも95%の配列同一性を意味する。
【実施例】
【0119】
実施例1.成人患者における視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)の治療におけるラブリズマブの有効性及び安全性
1.試験設計
1.1.全体的な設計
これは、NMOSDの成人患者におけるラブリズマブの有効性及び安全性を評価するための第3相外部プラセボ対照非盲検多施設共同試験である。北米、ヨーロッパ、アジア太平洋及び日本からのNMOSDを有する約55人の適格な成人患者を本試験に登録する。
【0120】
本試験には、スクリーニング期間、一次治療期間、長期延長期間及び安全性フォローアップ期間の4期がある(
図1)。患者は、スクリーニング期間中、6週間まで、適格性についてスクリーニングされる。全患者が26週目の来院を完了し又は早期に中止したとき、一次治療期間が終了し、長期延長期間が開始し、次いで一次治療期間の終了(EOPT)来院が完了する。全患者は、長期延長期間中、2年間まで又はラブリズマブが承認及び/若しくは利用可能になるまで(国別規制に従い)のいずれかが発生するまで、ラビズマブの受容を継続する。NMOSD患者の推定登録率に基づけば、各患者の総治療期間は、4年間までである。治験薬の最終投与又は早期中止(ED)後、患者を8週間追跡する。
【0121】
適格患者が試験に登録した場合、患者はラブリズマブの静脈内注入を受ける。各患者のラブリズマブ用量は、体重に基づく。投与レジメンは、負荷投与と、続く8週間毎(q8w)の維持投与からなる。維持投与は、負荷投与の2週間後から開始する必要がある。
【0122】
各患者について、試験参加の総期間は、スクリーニング期間(6週間まで)、一次治療期間(26週間~2年間)、長期延長期間(2年間まで)及び安全性フォローアップ期間(8週間)を含む4年14週間までである。
【0123】
1.2.試験設計の科学的根拠
この試験は、NMOSD患者の治療に対するラブリズマブの利益-リスクプロファイルを適切に特徴付けるデータを提供するように設計されており、NMOSDの治療に対するエクリズマブの使用を外部対照として検討した別の試験のプラセボデータを用いている。
【0124】
外部プラセボ対照としてNCT01892345試験(2014~2018年に実施)のプラセボ群を用いた単群設計により、NMOSDの治療選択肢としてラブリズマブを確実に評価することが可能となる。可能な限り、有効な比較を保証するために、類似の患者集団を組み入れることを含め、NCT01892345試験との間で一定性を維持することにより、併用薬、評価手順及びエンドポイントを許容する。
【0125】
1.2.1.選択されたエンドポイントの根拠
1.2.1.1.有効性エンドポイント
NMOSDにおいて、測定可能な生物学的局面は、再発及び障害を含む。NMOSDにおける障害は、再発の直接的な結果であり、有効性エンドポイントとして再発を測定することの関連性を支持している。
【0126】
本試験では、再発の発生を、一次エンドポイントTFR及び二次エンドポイントARRを用いて評価する。最初の再発までの時間は、ラブリズマブの有効性に関する有用な情報を提供する。治療の有効性は、再発の遅延及び/又は減少に基づく可能性があるため、NMOSDにおけるプロスペクティブに設計された試験では、TFRが有効性の適切なエンドポイントである。NCT01892345試験の外部プラセボ群は、その試験の一次エンドポイントもTFRであり、判定プロセス及び再燃定義が2試験間で一定であることを考慮すると、適切な対照群として利用される。さらに、ラブリズマブが再発の頻度に及ぼす影響は、評価された治験中(Adjudicated On-Trial)ARRを用いて測定される。95%信頼区間は、ARRの周りで計算される。この試験の目的及びエンドポイントを以下の表1に要約する。
【0127】
【0128】
【0129】
1.2.2.一次治療期間の根拠
この試験では、全患者が26週目の来院を完了し又は早期に中止したとき、一次治療期間を終了する。その時点で、推定登録率に基づき、最初に登録された患者が約2年間治療中であり、残りの患者が26週間~2年間(両端を含む)の範囲の治療中の時間を有することが期待される。
【0130】
最後の患者のカットオフ値26週間は、いくつかの理由で選択される。エクリズマブに関する以前の試験では、主要な観察結果をその時間までに得ることができた。エクリズマブ群で観察された3件の評価された治験中の再発のうちの2件が観察され、プラセボ群では、20件の評価された治験中の再発のうちの12件が観察されている。この設計により、最初に評価された治験中の再発と判定されるまでの時間の分析において、最初の26週間に打ち切りとなる患者数が限られることが保証される。また、予想される登録タイムラインに基づき、多くの患者は、最終患者が26週目の来院を完了するまでに1年以上治療を受けており、NCT01892345試験のプラセボ群で同様の時間枠で収集したデータとの頑健な比較が可能な有効性及び安全性の経時データが得られることも認識される。
【0131】
1.2.3.選択される患者集団の根拠
補体活性化は、抗AQP4陽性NMOSD患者における疾患病因の主要な決定因子である。したがって、ラブリズマブによる終末補体活性化の阻害は、抗AQP4陽性NMOSD患者の治療に対する生物学的に合理的なアプローチとなる。臨床現場でラブリズマブによる治療を受ける可能性が高い抗AQP4陽性NMOSD集団と一致する成人患者集団を反映するように、試験の組み入れ基準を慎重に選択する。
【0132】
1.3.用量の妥当性
1.3.1.ラブリズマブ
NMOSD患者の治療における治療戦略として、完全な終末補体阻害を標的とすることは、エクリズマブ臨床プログラムのデータによって検証されている。ラブリズマブの投与レジメンは、患者における終末補体の即時、完全且つ持続的な阻害を標的とするように設計される。以前のPNHプログラムにおけるラブリズマブの体重に基づく用量は、健康な成人志願者及びPNH患者における初期及び後期臨床開発試験のPK/PDデータを前提としている。提案されたラブリズマブ投与レジメン(セクション3.1、セクション5.1.6.1)は、PNH患者に対する承認されたレジメンであり(Ultomiris(登録商標)United States Prescribing Information(USPI))、EUの初回販売承認申請(MAA)においても同じ投与レジメンが含まれている。したがって、本試験では、同じ投与レジメンを選択する。
【0133】
1.3.2.追加用量
治験中の再発後の急性期治療として血漿交換(PE)/プラズマフェレシス(PP)(セクション3.5.1.3)を受ける患者には、ラブリズマブの追加用量(セクション5.1.6.2)を投与することができる。ラブリズマブの追加用量は、PKシミュレーションに基づいて選択されている。aHUSの成人及び小児患者、全身型重症筋無力症(gMG)の成人患者及びNMOSDの成人患者を治療するために承認されているエクリズマブの添付文書と一致して、PP/PE併用療法の設定において、50%の量のラブリズマブの追加投与(バイアルの構成により300mgの積分値ではない場合には四捨五入)が行われる。
【0134】
1.4.一次治療の終了
全患者が26週目の来院を終了するか又は早期に中止した後、患者は14日以内に一次治療の終了(EOPT)来院のために戻る:
・EOPT来院が、今後の予定された試験来院と同時の場合、患者はEOPT来院の全ての評価を完了する必要があり、また予定された用量のラブリズマブを投与することもできる。
・患者が最初の再発についての再発評価期間にある場合(1日目後の最初の再発と定義)、6週目の再発評価来院は、患者のEOPT来院である。
【0135】
一次治療期間の終了は、全患者が26週目の来院を完了した日又は早期に中止し、その後、EOPT来院を完了した日と定義する。
【0136】
1.5.試験終了の定義
以下の条件のいずれか1つを満たすことにより、患者は試験を完了したものとみなされる:
・患者が活動のスケジュールに示された最終来院を含む試験の全ての段階を完了する。
・ラブリズマブが登録又は承認されたため、患者が試験を早期に完了する。
【0137】
試験の終了は、全世界の治験における最後の患者の最終来院日(
図2)と定義される。
【0138】
2.試験集団
治験実施計画書の免除又は除外としても知られる、採用及び登録基準に対する治験実施計画書からの逸脱の前向きな承認は、許可されていない。
【0139】
2.1.選択基準
参加者は、2.2.1.~2.2.5.の全ての基準が適用される場合にのみ、試験に組み入れる資格がある。
【0140】
2.1.1.年齢
インフォームド・コンセントに署名する時点で、患者は18歳以上でなければならない。
【0141】
2.1.2.患者のタイプ及び疾患特性
組み入れのための患者及び疾患特性は、以下のとおりである:
・抗AQP4 Ab陽性及び2015年国際コンセンサス診断基準(Wingerchuk,D.et al.,Neurology,85:177-89,2015)によって定義されるNMOSDの診断。過去に陽性の抗AQP4 Ab試験は、試験が認定された研究室からの許容可能な検証済み細胞ベースのアッセイを用いて実施されている場合、許容可能である。この場合、試験治療を開始する前に、過去の試験結果及び関連情報を、治験依頼者のメディカルモニターが検討及び承認する必要がある。
・スクリーニング期間前の過去12ヵ月間に少なくとも1回の発作又は再発(注:発作が過去12ヵ月間に起こった場合、1回の生涯発作の患者は、この選択基準を満たすと考えられる。)
・拡張障害状態スケール(EDSS)スコア≦7
・再発予防のために、併用又は単独療法のいずれかで、支持的IST(例えば、コルチコステロイド、アザチオプリン[AZA]、ミコフェノール酸モフェチル[MMF]、メトトレキサート[MTX]及びタクロリムス[TAC])を受ける治験に参加する患者は、スクリーニング前に十分な期間の安定した投与レジメンを受けていなければならず、以下のように試験期間中の用量を変更するプランはない:
a.試験に参加する患者がAZAを受けている場合、患者はAZAの投与を6ヵ月以上受けており、スクリーニング前に2ヵ月を超えて安定した用量を投与されていなければならない。
b.試験に参加する患者が他のIST(例えば、MMF、MTX又はTAC)を受けている場合、患者はISTの投与を3ヵ月以上受けており、スクリーニング前に4週間を超えて安定した用量を投与されていなければならない。
c.試験に参加する患者が経口コルチコステロイドを受けている場合、スクリーニング前に4週間を超えて安定した用量を投与されていなければならない。
d.他のISTを伴う又は伴わない経口コルチコステロイドを受けている患者が治験に入った場合、スクリーニング前の1日コルチコステロイド用量は、プレドニゾン20mg/日(又は均等な用量)以下でなければならない。
・ラブリズマブを開始する前の3年以内又は開始時の髄膜炎菌(N.meningitidis)に対するワクチン接種。髄膜炎菌ワクチンを受けた後2週間未満で、治験薬治療を開始する患者は、ワクチン接種後2週間まで適切な予防的抗生物質を受けなければならない。
【0142】
2.1.3.重量
体重は、40kg以上である。
【0143】
2.1.4.性別
男女とも、男性又は女性による避妊法の使用は、臨床試験に参加する者の避妊法に関する地域の規制と一致させるべきである。男性患者は、治療期間中及び治験薬最終投与後少なくとも8ヵ月間は、避妊を行うことに同意し、この期間中は精子の提供を控える必要がある。
【0144】
女性患者は、妊娠していない、授乳していない及び適用される以下の条件の少なくとも1つが該当する場合、参加に適格である:
・妊娠可能性のある女性(WOCBP)ではないか、又は
・WOCBPであり、治療期間中及び治験薬最終投与後最低8ヶ月間は、非常に有効又は許容可能な避妊法を用いている。
○治験責任医師は、治験薬の初回投与との関係において、避妊法の有効性を評価する。WOCBPは、治験薬の初回投与前24時間以内に高感度妊娠検査(血清妊娠検査)が陰性でなければならない。治験責任医師は、妊娠が早期に発見されていない女性を選択するリスクを低下させるため、既往歴、月経歴及び最近の性行為の検討に責任を負う。
【0145】
2.1.5.インフォームド・コンセント
インフォームド・コンセント用紙(ICF)及び本治験実施計画書に列挙されている要件及び制限事項の遵守を含む署名付きインフォームド・コンセントを与えることができる。
【0146】
2.2.除外基準
2.2.1.~2.2.4の基準のいずれかが該当する場合、患者を試験から除外する。
【0147】
2.2.1.医学的状態
・髄膜炎菌(N.meningitidis)感染症の既往。
・ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症(HIV-1又はHIV-2抗体価により証明される)
・未解明の感染症の既往
・1日目の治験薬投与前14日以内の活動性の全身性細菌、ウイルス又は真菌感染症
・1日目の治験薬投与前7日以内の38℃(100.4°F)以上の発熱の存在
・マウスタンパク質又はラブリズマブの賦形剤の1つに対する過敏性
・治験責任医師の判断で、患者の治験参加に支障をきたし、患者のリスクが増大するか、又は患者の評価に混乱をきたす虞のある任意の医学的状態。
【0148】
2.2.2.事前/同時療法
・補体阻害薬により以前に又は現在治療されている。
・スクリーニング前3ヵ月以内のリツキシマブの使用。
・スクリーニング前3ヵ月以内のミトキサントロンの使用。
・スクリーニング前3週間以内の静脈内免疫グロブリン(IVIg)の使用。
【0149】
2.2.3.事前/同時臨床試験の経験及び他の除外
・スクリーニングから30日以内又は試験薬の5半減期のいずれか長い方の、任意の他の治験薬試験の参加又は治験薬若しくは装置に対する暴露。
・試験過程中の妊娠、授乳又は妊娠の意思
【0150】
2.3.生活様式に関する考慮事項
この試験には、生活様式の制約はない。
【0151】
2.4.スクリーニング不合格
スクリーニング不合格は、臨床試験への参加に同意したが、その後、治験薬で治療されない患者と定義する。回復が見込まれるか又は回復したという理由により本試験への参加基準を満たさない(スクリーニング不合格)個人は、治験責任医師とメディカルモニターとの協議及び合意に基づいて再スクリーニングを行うことができる。スクリーニング期間中に治験中の再発の治験実施計画書の定義(5.2.3.2項)を満たす再発を経験した患者は、スクリーニング不合格とみなす。このような患者は、再発に対する治療を受けた後、治験責任医師及びメディカルモニターの意見により、患者が医学的に安定している場合、治験への登録のために再スクリーニングを受けることができる(セクション2.1;セクション2.2)。本試験に参加するためには、患者は再スクリーニング時に登録基準を満たさなければならない。
【0152】
3.治験薬
治験薬は、治験実施計画書に従って試験患者に投与することを意図した任意の治験薬、市販製品、プラセボ又は医療装置と定義される。
【0153】
3.1.投与される治験薬
本試験では、患者は全治療期間中にラブリズマブを非盲検下で受ける(表2;治験薬の投与量及び投与についてのセクション5.1.6を参照し、投与スケジュールについてはSoA(
図2)を参照する)。
【0154】
【0155】
3.2.調製/取扱い/保管/説明責任
治験薬が治験実施医療機関に到着したら、治験薬キットを出荷容器から取り出し、2~8℃(35~47°F)の冷蔵条件下で元々のカートンに保管し、光から保護する。ラブリズマブは凍結されない。治験薬は、毎日温度をモニタリングしながら、安全な、アクセスが制限された保管場所に保管される。
【0156】
治験薬の輸液は、無菌的手法を用いて調製されなければならない。ラブリズマブは、適合する希釈液で1:1の比でさらに希釈される。ラブリズマブは、注入時に0.2ミクロンのフィルターで濾過される。さらに、治験薬の注入は、以下の規定に従う:
・治験責任医師又は被指名人は、受領した全ての治験薬について、輸送中に適切な温度条件が維持されていることを確認し、不一致が報告され、治験薬の使用前に解決される。
・試験に登録された患者のみが治験薬を受けることができ、許可された実施医療機関スタッフのみが治験薬を供給又は投与することができる。全ての治験薬は、治験責任医師及び許可された実施医療機関スタッフにアクセスを制限し、表示された保管条件に従って、安全な、環境的に管理され、監視される(手動又は自動)領域に保管される。
・治験責任医師、医療機関又は医療機関の長(該当する場合)は、治験薬の説明責任、調整及び記録の維持(例えば、受領、調整及び最終処分記録)に責任を負う。
・未使用の治験薬の最終処分についてのさらなるガイダンス及び情報は、薬局マニュアルに提供される。
【0157】
3.3.バイアスを最小限に抑えるための対策:無作為化及び盲検化
これは単群非盲検試験である。治験の実施に直接関連する全ての試験患者、実施医療機関の職員、治験依頼者の被指名人及び全てのスタッフは、患者の治療割り付けについて盲検解除される。
【0158】
この非盲検試験におけるバイアスの可能性を最小限に抑えるために、有効性エンドポイント及び評価プロセスに関する運用上の尺度が採用される。治験データベースは、予め指定されたガイドラインに従ってモニタリングされて、全ての潜在的な再発が収集及び解析されることを確認する。独立した再発評価委員会は、各治験中の再発を評価し、それがNMOSD再発の治験実施計画書に定義された基準を満たしているか否かを確認した(セクション5.2.3.2)。さらに、EDSS評価者は、全ての患者がラブリズマブを投与されていることを認識しているが、EDSS評価者は、評価を行う際に全ての治験データを知らされていない。
【0159】
3.4.治験薬の遵守状況
患者への治験薬の注入は、試験中の適切な時点で患者が適切な用量を投与されることを保証するため、治験責任医師又はその被指名人の監督下に置かれる。
【0160】
クリニックで投与された各用量の日付と時刻を原資料に記録し、症例報告書(CRF)に記録する。
【0161】
投与時、治験薬投与者以外の治験実施医療機関スタッフにより、治験薬の用量及び試験患者の識別が確認される。
【0162】
3.5.併用療法
患者が登録時に受けているか又は試験中に受けているあらゆる薬剤(市販薬若しくは処方薬、ビタミン、ミネラル及び/又はハーブサプリメントを含む)又はワクチンは、患者の原資料/医療カルテ及び電子症例報告書(eCRF)に以下と一緒に記録される:
・使用理由
・投与開始日及び終了日を含む投与日
・用量及び頻度を含む投与量情報
【0163】
併用薬の変更があった場合、患者の原資料/医療カルテ及びeCRFにも記録する。可能であれば、ラブリズマブの初回注入から患者が試験を中止又は完了するまで併用薬を記録する。
【0164】
ステロイドを含むISTの使用に関する情報を収集する。髄膜炎菌感染症の予防のために投与された髄膜炎菌ワクチン接種及び抗生物質(該当する場合)も記録する。
【0165】
試験中に患者のケアに必要と判断された併用薬又はAEの治療に必要と判断された併用薬は、セクション3.5.2の禁止薬以外の他の薬剤と共に、治験責任医師の判断により投与することができる。ただし、治験責任医師は、全ての薬剤に関する詳細を患者の原資料/医療カルテ及びeCRFに完全に確実に記録する責任を負う。
【0166】
併用療法又は前治療に関して何らかの疑問がある場合、メディカルモニターに連絡する。
【0167】
3.5.1.許容される薬物及び治療法
本試験では、以下の併用薬及び治療法を許容する。
【0168】
3.5.1.1.緩和ケアと支持療法
基礎疾患に対しては、治験過程中、緩和ケア及び支持療法を許可する。
【0169】
3.5.1.2.免疫抑制剤
再発予防のための支持的免疫抑制療法(IST)は、併用療法又は単独療法のいずれにおいても、治験責任医師の判断により以下のように認められる:
・コルチコステロイド
・アザチオプリン(AZA)
・ミコフェノール酸モフェチル(MMF)
・メトトレキサート(MTX)
・タクロリムス(TAC)
・シクロスポリン
・シクロホスファミド
【0170】
患者が試験前に支持的ISTを受け、試験中に安定した維持療法を継続している場合、試験基準(セクション2)に記載されているように、患者が本試験に必要な限界内で安定した用量で投与されていることを保証するために、ISTに関する要件の選択基準(セクション2.1)を参照する。
【0171】
患者が再発又は安全性事象を経験し、治験責任医師が患者の安全性を保証するためにISTの用量又はレジメンの変更が必要と判断した場合を除き、各患者について、最初の106週間は、ISTの用量の調整は行わず、新規ISTは認められない。
【0172】
免疫抑制療法の変更は、併用薬の原資料及びeCRFページに記録する。
【0173】
3.5.1.3.再発に対する標準治療
再発の治療は、治療医師の判断で行う。専門家の意見に従い、確認された治験中の再発に対する以下の標準化された治療レジメン(セクション5.2.3.2)が推奨される:
1グラム(1g)のメチルプレドニゾロン(IVMP)静注を毎日3~5日間行い、その後、経口プレドニゾンを漸減する。
・患者が改善した場合、本治験実施計画書のスケジュールに従って治験評価を継続する。
・IVMPに対する応答がないか又は最小限である場合、PE/PPは、治療する神経科医の判断で許可される。IVMPに反応しない発作の治療には、それぞれ1.0~1.5容量の循環血漿を除去する5サイクルのPEが推奨される。
○患者が治療期間中に治験中の再発に対するPE/PPを受ける場合、セクション5.1.6.2の追加用量に記載されているとおり、各PE/PP後に治験薬の追加用量を投与する必要がある。追加用量を受けた後、患者はSoA(
図2)の治験実施計画書で規定された投与スケジュールを継続する。
【0174】
3.5.2.否認される薬剤及び治療法
試験中、以下の薬剤及び治療法を禁止する。
・ミトキサントロン
・リツキシマブ又はトシリズマブなどの他の生物学的製剤
・インターフェロンβ-1b;インターフェロンβ-1a、酢酸グラチラマー、ナタリズマブ、アレムツズマブ、フマル酸ジメチル、テリフルノミド、シポニモド及びフィンゴリモドを含む免疫調節療法。
・再発予防のためのIVIg
・再発予防のためのPE
【0175】
3.6.用量変更
本試験では、用量変更は認められない。
【0176】
3.7.試験終了後の介入
最後に予定された投与を行った後の患者には、ラブリズマブは提供されない(
図2及び
図3)。治験薬の最終投与又は早期中止後さらに8週間、全患者の安全性を追跡する。
【0177】
4.治験薬の中止及び患者の中止又は離脱
4.1.治験薬の中止
稀に、患者は、治験薬を永久的に中止する(最終的な中止)必要がある場合がある。治験薬が最終的に中止された場合、安全性フォローアップの評価のために患者は試験を継続する。治験薬の中止時及びフォローアップ時に収集すべきデータ並びに完了する必要があるさらなる評価については、SoA(
図2及び
図3)を参照されたい。
【0178】
試験中に以下のいずれかが発生した場合、患者は、治験薬の中止を検討する:
・重篤な過敏反応;
・制御不能の重症感染症;
・セクション3.5.2に定義されている禁止薬の使用
・妊娠若しくは計画された妊娠;又は
・治験依頼者若しくは治験責任医師が患者に必要であると判断する。
【0179】
4.2.患者の試験中止/離脱
スクリーニング手順を実施する前に、患者が試験参加を遵守する意思を有することを保証するためにあらゆる努力を払うべきである。試験スタッフは、可能な限り速やかに全ての治験離脱を治験依頼者及びその実施医療機関モニターに通知するものとする。患者の中止理由を原資料及びeCRFに記録する。
・患者は、自らの要求によりいつでも試験から離脱することができるか、又は安全性、行動遵守若しくは管理上の理由により、治験責任医師の判断によりいつでも離脱することができる。これは珍しいことが予想される。
・試験を中止した時点で、可能であれば、SoA(
図2)に示すように早期中止来院を実施する。早期に中止した患者は、さらに8週間、安全性を追跡し、完了する必要があるさらなる評価について追跡する。
・患者は、その時点で治験薬及び試験の両方を永久に中止する。
・患者が今後の情報開示に対する同意を撤回した場合、治験依頼者は、そのような同意撤回前に収集したデータを保存し、継続して使用し得る。
【0180】
4.3.フォローアップ不能
患者が受け入れ可能な来院時間枠内で予定来院のために戻らないか又は利用できない場合(
図2)、実施医療機関の試験スタッフは、患者と連絡を取り、予約漏れの理由を決定する合理的な試みを行う。
【0181】
予定された来院のために戻らなかった患者は、実施医療機関の試験スタッフから連絡を受けて、予約漏れの理由を決定する。来院しなかった患者の来院情報を入手することは、来院しなかった患者がAE又は再発の可能性によるものではないことを保証するために重要であるため、治験実施計画書に規定された安全性フォローアップ手順を実施するためにあらゆる努力を払う。
【0182】
患者が検査のために治験実施医療機関に来ることができないか又は来ない例外的な状況では、患者は、その地域の神経科医又は医師の診察を受けるように指導される。この場合、可能であれば、治療医師又は被指名人が地域の神経科医又は医師に連絡を取って、患者の医学的及び神経学的状態について可能な限り多くの情報を入手し、必要に応じて臨床ガイダンスを提供する。治験実施医療機関は、地域の医師の診察から関連する診療記録を文書として入手し、関連するデータを再発評価来院フォーム又は必要に応じてAEフォームに記入する。
【0183】
患者が予定された来院のために戻らないことを繰り返しており、治験実施医療機関から連絡を受けることができない場合、フォローアップ不能とみなす。
【0184】
患者が必要な試験来院のためにクリニックに戻らなかった場合、以下の措置を講じる:
・実施医療機関は、患者と連絡をとり、逃した来院をできるだけ早く再スケジュールし、割り付けられた来院スケジュールを維持することの重要性について患者にカウンセリングを行い、患者が試験を希望し、且つ/又は継続すべきか否かを確認する。
・患者がフォローアップ不能と判断される前に、治験責任医師又は被指名人は、患者との連絡を取り戻すためにあらゆる努力を払う(可能であれば、電話3回及び必要に応じて患者の最後に知っている郵送住所への配達証明便又は地域の同等の方法)。これらの接触の試みは、患者の医療記録に記録される。
・患者が到達不能であり続ける場合、フォローアップ不能とみなす。
【0185】
5.試験の評価及び手順
試験の手順及びそれらのタイミングをSoA(
図2)に要約する。治験実施計画書の免除又は除外は認められない。患者が治験薬の投与を受けるべきか否かを判断するために、安全性に関する即座の懸念を発現又は認識した時点で直ちに治験依頼者と話し合う。SoAに規定されているものを含む試験設計要件の遵守は、試験実施に不可欠であり、必要である。全てのスクリーニング評価を完了及び検討して、潜在的な患者が全ての適格基準を満たしていることを確認する。治験責任医師は、スクリーニングログを維持して、スクリーニングした全患者の詳細を記録し、適格性を確認し又はスクリーニング不合格の理由を必要に応じて記録する。患者のルーチンの臨床管理(例えば、血球数)の一部として実施され、ICFの署名前に得られた手順は、その手順が治験実施計画書に規定された基準を満たし、SoAで定義された時間枠内に実施されるならば、スクリーニング又はベースライン目的のために利用することができる。
【0186】
5.1.一般的な評価及び手順
5.1.1.インフォームド・コンセント
治験責任医師又は資格を有する被指名人は、試験手順を実施する前に、各患者から署名と日付が記入されたインフォームド・コンセントを入手する。スクリーニングの手順を実施する前に、患者が治験参加を遵守する意思を有することを保証するためにあらゆる努力を払う。
【0187】
5.1.2.治療医師
治療医師は、患者の適格性評価、治験薬投与の監督、AEの記録及び治療並びに安全性評価のモニタリングを含む、患者管理全般を担当する、試験のための治験責任医師(PI)/治験分担医師である。
【0188】
再発時には、治療医師は、完全な神経学的検査を行い、患者の症状及び徴候が治験中の再発の基準(セクション5.2.3.2)を満たすか否かを判断する。治療医師は、患者の再発を、推奨される治験中の再発治療レジメンに従って治療する場合もある。最終的には、治験中の再発に対する治療及び治療選択肢並びに治験中の再発後のISTの変化は、治療医師の判断である。
【0189】
5.1.3.病歴及びNMOSD病歴
治験責任医師は、患者の病歴及び診断を検討し、スクリーニング来院時に以下を記録した:
・NMOSD診断日及び診断に寄与する以前の磁気共鳴画像法(MRI)。患者が診断のために満たす特定の基準を含む、NMO診断のための国際パネル(IPND)基準(セクション7.1)によって定義されるNMOSD診断の確認。抗AQP4抗体陽性及びそれ以外に2015年IPND基準を満たす患者のみが参加に適格である。
・以下を含む、スクリーニング前に起こり、過去の再発の治験実施計画書の定義(セクション5.2.3.1)を満たす再発に関する全ての入手可能な情報を記録する
○再発の回数(発症日)
○各再発の臨床像(例えば、視神経炎[ON]、横断性脊髄炎[TM]、脳幹、最後野又はその他)
○急性期及び維持段階の治療及び投与レジメン、及び
○EDSSスコアなどの任意の障害測定値。
【0190】
5.1.4.ワクチン及び抗生物質による予防
終末補体アンタゴニストと同様に、ラブリズマブの使用は、髄膜炎菌感染症(髄膜炎菌(N.meningitidis))に対する患者の感受性を高める。髄膜炎菌感染症のリスクを低下させるために、治験薬開始前3年以内又は開始時、全ての患者に髄膜炎菌感染症のワクチンを接種する。
・髄膜炎菌ワクチンを受けた後2週間未満で治験薬を開始した患者は、ワクチン接種後2週間まで適切な予防的抗生物質による治療を受ける。
・患者は、補体阻害剤(例えば、エクリズマブ、ラブリズマブ)を用いたワクチン使用のために、現行の国家ワクチン接種ガイドライン又は現地慣行に従い、ワクチン接種又は再接種を行う。
・一般的な病原性髄膜炎菌血清型を予防するために、利用可能であれば、血清型A、C、Y、W135、Bに対するワクチンが推奨される。
・ワクチン接種は、髄膜炎菌感染を予防するのに十分ではない場合がある。抗菌薬の適切な使用については、公的なガイダンス及び現地慣行に従って考慮される。
・全ての患者を髄膜炎菌感染の初期徴候についてモニタリングし、感染が疑われる場合には直ちに評価し、必要に応じて適切な抗生物質で治療する。
【0191】
5.1.5.選択/除外の基準
選択基準(セクション2.1)及び除外基準(セクション2.2)は、全て、治験責任医師又は資格を有する被指名人が検討して、患者が試験参加に適格であることを保証する。治験責任医師及び治験依頼者の両方は、登録前に患者の適格性を承認しなければならない。
【0192】
5.1.6.治験薬投与
本セクションでは、治験薬の投与レジメンについて記載する。予定された投与来院時(
図2)に、PK及び遊離C5についての投与後採血を除いて、他の全ての試験及び治療が完了した後に治験薬投与を実施する。
【0193】
5.1.6.1.ラブリズマブ
患者は、1日目にIV注入を介したラブリズマブの体重に基づく負荷用量を受け、その後、15日目(表3)、その後、8週間に1回(q8w)、体重に基づく維持用量を受ける。全治療期間は、4年間までであり、全ての患者が2年間の長期延長期間を完了するか、又はラブリズマブが承認され、且つ/若しくは利用可能になるまで(国別規制に従って)のいずれかが発生するまでである。
【0194】
再発が起こった時期によっては、ラブリズマブの予定された投与来院と再発評価来院及び/又はフォローアップ再発評価来院とが重複する場合もあれば、重複しない場合もある。ラブリズマブの投与来院は、再発評価期間中に予定通り継続する。
【0195】
【0196】
5.1.6.2.追加用量
試験中、PE/PPは、治験中の再発のために治療医師の判断で許可される(セクション3.5.1.3)。SoA(
図2)で規定した非投与来院時にPE/PPを投与した場合、PE/PPの完了後4時間以内に追加用量を投与し、直近に投与されたラブリズマブの用量に基づいて投与する(表4)。SoA(
図2)で規定した予定された投与来院時にPE/PPを投与した場合、ラブリズマブの追加用量は投与しない。患者はPE/PP完了から60~120分後にラブリズマブの定期的な用量を受ける(セクション5.1.6.1)(治験中の再発中のPK及び遊離C5サンプル収集については、セクション5.6.2を参照されたい)。
【0197】
追加用量を受けた後、患者は、治験実施計画書に規定された投与スケジュール(
図2)に従って治験薬の注入を継続する。
【0198】
【0199】
5.2.有効性評価
5.2.1.神経学的検査
完全な全身神経学的検査は、試験期間を通じて、治験責任医師であり、且つ臨床評価者として適切に訓練された治療医師、好ましくは同じ治療医師(セクション5.1.2)が、予定した来院時に実施する(
図2)。
【0200】
完全な全身神経学的検査には、以下の系の評価が含まれる:精神状態、眼底検査、脳神経、深部腱反射、足底反応、パワー/強度、感覚、協調運動及び歩行/バランス。
【0201】
5.2.2.NMO症状カード及び評価
1日目の来院時に治験薬の初回投与を受ける前に、NMOSD再発の潜在的徴候及び症状と連絡先を列挙するNMO症状カードを患者に渡す。
【0202】
試験期間を通じて、来院のたびに、試験スタッフは、患者がNMO症状カードを有することを確認する。治療医師は、再発を示す徴候又は症状について患者の検討及び評価を行う。
【0203】
5.2.3.再発
5.2.3.1.過去の再発
過去の再発は、最初のNMOSD発作を含む、スクリーニング来院前に起こった再発である。この治験実施計画書では、過去の再発とは、24時間を超えて持続する、神経学的検査(臨床所見若しくはMRI所見又はその両方)で客観的変化が認められる神経症状の新規発現又は既存の神経症状の悪化と定義される。30日以内に発生した事象は、1回の再発とみなす。
【0204】
5.2.3.2.治験中の再発
5.2.3.2.1 治験中の再発の定義
治験中の再発は、試験治療期間中に発生する急性発作である。この治験実施計画書では、「治験中の再発」とは、治療医師が確認して、24時間を超えて持続する、神経学的検査で客観的な変化(臨床徴候)が認められる神経症状の新規発現又は既存の神経症状の悪化と定義される(セクション5.1.2)。徴候及び症状は、NMOSDに起因しなければならない(即ち感染症、過剰な運動又は過度に高い周囲温度などの識別可能な原因によって引き起こされない)。MRI又は他の画像検査で孤立性の変化が認められ、関連する臨床所見が認められない場合、治験中の再発とみなさない。
【0205】
5.2.3.2.2 治験中の再発の評価
治験中の再発は、試験期間を通じてモニタリングされる。治験責任医師又は資格を有する被指名人は、来院のたびに患者と共に再発の可能性がある徴候及び症状を詳細に検討する。
【0206】
患者には、NMOSD再発の潜在的徴候及び症状について教育し、再発の可能性がある最初の徴候又は症状が現れた時点で治験実施医療機関に連絡するよう指導する。
【0207】
再発の可能性を示唆する徴候又は症状の通知から24時間以内(且つ48時間以降ではない)に患者を評価する。
【0208】
治験中の再発の評価には、以下が含まれる:
・臨床徴候、症状及び検査所見が治験中の再発の定義に合致するか否かを判定するための完全な神経学的検査
・OSISに基づく再発重症度の評価(セクション5.2.8;
図8)。OSIS視力(VA)サブスケールスコアは、ONの重症度を分類するために使用される。OSIS運動サブスケールスコア及び感覚サブスケールスコアは、TMの重症度を分類するために使用される。
・Kurtzkeの機能システムスコア(FSS)に基づく神経機能システムの評価及びEDSSスコアに基づく障害レベル(セクション5.2.4)。
・HAIを用いた歩行機能評価(セクション5.2.7)。
・VA、対立視野(VF)及び色覚を含む眼科学的検査(セクション5.2.9)。
・MRI +/ガドリニウム及び/又は眼球干渉断層撮影(OCT)検査を実施して、治験責任医師が判定した再発の可能性を評価する(セクション5.2.10)。
・SoA(
図3)に規定されている追加の試験及びフォローアップ評価
【0209】
5.2.3.2.3 治験中の再発に対する治療
再発が疑われる時点で、治療医師(セクション5.1.2)は、患者が治験中の再発を経験しているか否かを判断するために、完全な神経学的検査を実施した。治療医師により治験中の再発と判定された場合、再発に対する治療及び再燃後のISTの変化は、治験責任医師の判断による。
【0210】
治験中の再発に対する推奨される標準治療は、セクション3.5.1に提供されている。
【0211】
治験中の再発中のラブリズマブ追加用量の投与については、セクション5.1.6を参照されたい。
【0212】
5.2.3.2.4 治験中の再発のフォローアップ
再発の過程をモニタリングするための再発評価来院は、SoAに規定されたスケジュールに従って行われる(
図3)。規定時点以外の追加(予定外)のフォローアップ再発評価来院は、治験責任医師又は治験分担医師の判断により行う。
【0213】
再発後、患者と治験責任医師/治験分担医師が治験薬の受容を継続することが適切と判断した場合、患者は、治験を継続することができる。
【0214】
可能性のある再発の全ての報告及び可能性のある再発に対する行為は、患者の原資料に記録し、eCRFに記録する。
【0215】
5.2.3.2.5 治験中の再発の評価
治験中の再発は、NMOSDに特化した専門知識を有し、治験中の再発の独立した検討を実施する医師で構成される再発評価委員会(Relapse Adjudication Committee)(RAC)により独立して検討される。委員会は、過半数の投票により、報告された各治験中の再発が治験中の再発の客観的基準を満たすか否かを決定する。別の憲章には、本試験の全ての判定基準及び手順が記述されている。
【0216】
5.2.4 拡張障害状態スケール(EDSS)
10点Kurtzke EDSS(セクション7.2)は、障害を定量化し、障害の変化を経時的にモニタリングするための有効なツールとして広く使用され、受け入れられている(Kurtzke,J.,Neurology,33:1444-52,1983)。EDSSスケールの範囲は、0~10.0で、0.5単位刻みである。
【0217】
5.2.4.1.拡張障害状態スケール
総EDSSスコアは、以下に記載するように、2つの因子:歩行及びFSS(セクション5.2.4.2)によって決定される:
・4.0未満のEDSSスコアは、FSS単独によって決定される。
・EDSSスコアが4.0以上の人は、ある程度の歩行障害を有する可能性がある。
・4.0~9.5のEDSSスコアは、歩行能力及びFSSの両方によって決定される。
【0218】
5.2.4.2.機能システムスコア
機能システム(FS)は、特定のタスク/機能を担うニューロンシステムのネットワークを表す。EDSSは、以下の8つのFSにおける機能障害を評価するFSSを用いて、患者の臨床状態に重症度スコアを割り当てる(セクション7.2)。機能システム1~7のFSは、臨床的に観察される障害のレベルを最もよく反映するために、0(低レベルの問題)~5又は6(高レベルの問題)のスケールでスコア付けされる。「その他」のカテゴリーは、NMOSDに起因する他のあらゆる神経学的所見からなり、2値であり、0はなし、1はいずれかが存在する。
【0219】
5.2.4.3.EDSS及びFSSの評価者
EDSS及びFSSは、訓練された評価者によって直接投与される。EDSS評価者は、完全なKurtzke神経学的検査を実施し、FSS及びEDSSスコアを記録する。以下の規則が適用される:
・EDSS評価者は、PIではなく、治験患者の管理に直接関与することはできない。可能であれば、EDSS評価者は医師であるべきである。医師以外のEDSS評価者(例えば、専門看護師)を使用する場合、評価を実施する前に、評価者を治験依頼者が承認しなければならない。
・EDSS評価者は、他の全ての試験データ及び他の全ての患者の臨床データに対して盲検性を維持している。
・盲検化されたEDSS評価者は、再発時を含む試験期間を通じてEDSS評価を実施する責任を負う。可能であれば、同じ盲検化された評価者がSoAに指定された来院時に各患者のEDSSを実施する。
・EDSS評価者は、セクション7.2に記載されるように、完全なKurtzke神経学的検査を実施し、機能システムスコア(FSS)及びEDSSスコアを記録した(Kurtzke,1983)。
【0220】
EDSS評価者の資格認定に関する具体的な要件については、治験依頼者が提供する訓練資料を参照されたい。治験責任医師及びEDSS評価者の役割及び責任については、表5を参照されたい。
【0221】
【0222】
5.2.5.EuroQoL 5次元(EQ-5D)
ヨーロッパ生活の質(EQ-5D)(
図5)は、NMOSDを含む広範囲の健康状態において使用されている、健康関連QoLを測定するための自己評価の標準化された手段である(Schrag,A.et al.,J.Neurol.Neurosurg.Psychiatry,69:67-73,2000)。EQ-5Dは、EQ-5D記述システムとEQ視覚的アナログスケール(EQ VAS)の2ページからなる(
図5)。EQ-5Dは、各来院時に他の試験手順の前に行われる。
【0223】
5.2.5.1.EQ-5D記述システム
記述システムは、移動能力、セルフケア、通常の活動、疼痛/不快感及び不安/抑うつを含む5要素のスケールである。各レベルは、その領域における問題の程度を記述するスケールで評価される。
【0224】
5.2.5.2.EQ視覚的アナログスケール
EQ-5D VASは、患者が健康状態を記述するために0~100の数を選択する全体的な健康状態スケールであり、100は「想像できる最良の健康状態」であり、0は「想像できる最悪の健康状態」である。
【0225】
この情報は、個々の回答者によって判断される健康転帰の定量的尺度として使用することができる。EuroQolグループのメンバーが以前に発表した試験では、この手段の実現可能性、信頼性及び妥当性の予備的証拠が示されている。
【0226】
5.2.6.短形健康調査(SF-36)
SF-36は、健康関連の生活の質の36項目の自己報告である(Stewart,A.L.,&Ware,J.E.,Jr.(Eds.).(1992).Measuring functioning and well-being:The medical outcomes study approach.Durham,NC:Duke University Press.;Ware,J.E.,Jr.(1988).How to score the revised MOS short-form health scales.Boston:Institute for the Improvement of Medical Care and Health,New England Medical Center.)。これは、健康関連の生活の質の異なる領域を測定する8つのサブスケールを含む:身体機能、身体的問題による役割制限、身体的疼痛、一般的な健康認識、活力、社会的機能、情緒的問題による役割制限及び精神的健康。2つの要約スコアは、身体的要素の要約と精神的要素の要約である。SF-36について単一の総合スコアは存在しない。
【0227】
5.2.7.ハウザー歩行指数(HAI)
HAIは、25フィート歩くのに必要とされる補助の時間及び程度を評価することによって移動能力を評価するために開発された評価スケールである(
図7)。治療医師又は適切に訓練された被指名人は、以下に簡単に説明するように、治験実施計画書に規定された来院時にHAI試験を実施する(
図3)。
・患者は、可能な限り迅速且つ安全に、印を付けた25フィートのコースを歩くように求められる。
・検査者は、必要な補助の時間及びタイプ(例えば、つえ、歩行器、松葉づえ)を記録する。評価スケールは、歩行できない患者のためのカテゴリーも有する。
【0228】
患者の歩行は計時されるが、この時間は直接使用されず、しかし他の因子と併せて利用されて、11の階調の順序スケールで患者を評価する(Bethoux,F.and Bennett,S.,Int.J.Care,13:4-14,2011)。この評価は、本試験の全患者について実施する。
【0229】
5.2.8.視神経脊髄障害スコア(OSIS)
OSISは、再発の重症度を評価するためのスコアリングシステムである(
図8)。OSIS VAサブスケールスコアは、ONの重症度を分類するために使用される。OSIS運動サブスケールスコア及び感覚サブスケールスコアは、TMの重症度を分類するために使用される。OSISは、ベースライン時及び治験中の再発時、治療医師により評価される。治験中の再発のOSIS評価に関するさらなる指示は、セクション5.2.3.2に提供されている。
【0230】
5.2.9.眼科学的検査
5.2.9.1.対立視野
対立VFは、治療医師が評価する。この評価では、ベースラインの眼科学的状態を把握しておくことが重要であり、その結果、検査における変化を用いて以前の及び継続中のONの評価を行うことができる。中心暗点は、ONを経験する患者において一般的である。しかしながら、視野欠損は、広いスペクトルのパターンを示し得る(Keltner,J.et al.,Am.J.Ophthalmol.,128:543-53,1999)。
【0231】
5.2.9.2.色覚
色覚は、治療医師又は任意の適切に訓練された被指名人により、石原プレートを使用して評価される。色覚喪失は、ONのマーカーであり得、従ってNMOSDにおける重要な評価ツールである。
【0232】
5.2.9.3.視力
視力は、通常ONの影響を受け、数時間から数日の期間にわたって進行する。ランドルトCリングチャートは、VAを評価するために使用される。
【0233】
ランドルトCは、ギャップを有するリングからなり、それ故、文字Cと同様に見える。ギャップは、様々な位置(通常、左、右、下、上及びその間の45°の位置)にあることができ、試験される人のタスクは、ギャップがいずれの側にあるかを決定することである。Cのサイズ及びそのギャップは、患者が特定のエラー率を生じるまで減少される。ギャップの最小の知覚可能な角度は、視力の尺度として採用される。
【0234】
治療医師又は適切に訓練された被指名人は、以下に記載されるように、治験実施計画書に規定された来院時にVA試験を実施する(
図3)。
・試験は、標準的な距離、典型的には6メートル又は20フィートで行われる。
・ランドルトチャートは、典型的には、視力比距離(6メートル又は20フィート)として記録されるため、通常のVAについては、20/20又は6/6として記録される。これは、ランドルト分数(米国)の分母又は小数(米国外)として入力されることがある。
・試験は、常に、必要に応じて、可能な限り最良の矯正(例えば、眼鏡の装着)で行われ、各眼は独立して試験される。
【0235】
5.2.10 磁気共鳴画像法及び眼球干渉断層撮影
脳、頸椎及び胸椎のベースラインMRI(コントラストは任意)とOCT検査を実施する。例外は、Alexionメディカルモニターによって承認された場合、(例えば、試験に利用可能な最近の病歴結果に基づいて)付与され得る。
【0236】
再発時には、臨床的に重要であると判断された場合、治験責任医師の判断により、脳、頸椎及び/若しくは胸椎のMRI(コントラストは任意)並びに/又はOCTを実施して、再発の可能性を評価する。
【0237】
治験責任医師が適応と判断した場合、治験中の再発後、速やかにフォローアップ評価を実施する(セクション5.2.3)。
【0238】
5.3.安全性評価
全ての安全性評価の予定時点をSoA(
図2及び3)に提供する。
【0239】
5.3.1.身体検査
完全な身体検査には、少なくとも以下の臓器/身体系の評価が含まれる:皮膚、頭部、耳、眼、鼻、咽喉、頸部、リンパ節、脈拍、胸部、心臓、腹部、四肢及び筋骨格。標的身体検査には、少なくとも、治験責任医師の判断及び患者の症状に基づく身体系に関連する検査が含まれる。
【0240】
治験責任医師は、過去の重篤な疾患に関連する臨床徴候に特に注意を払う。一貫性を保つために、各試験来院時に資格を有する同じ試験スタッフが身体検査を実施するように全ての努力を払う。治験責任医師の判断により、試験中に医学的に示されるように追加の身体検査を実施することができる。
【0241】
5.3.2.身長及び重量
体重は、ポンド又はキログラムで測定される。身長は、インチ又はセンチメートルで測定される。
【0242】
5.3.3.バイタルサイン
口腔温(℃又は°F)、脈拍数、呼吸数(RR)、収縮期及び拡張期血圧(BP)(mm Hg)を評価する。血圧及び脈拍の測定値は、完全に自動化された装置を用いて評価される。手動技術は、自動化された装置が利用できない場合にのみ使用される。血圧及び脈拍の測定に先立って、気を散らすことなく(例えば、テレビ、携帯電話)静かな環境で患者を少なくとも5分間休ませる。理想的には、各患者に対して同じ群が測定のために使用される。
【0243】
5.3.4.心電図
単一の12誘導心電図は、心拍数とPR、QRS、QT及びQTc間隔の測定値とを得るためにECG装置を用いて、SoA(
図2及び
図3)の治験実施計画書に規定された来院時に実施する。患者は、ECG収集の約5~10分前から仰臥位になり、ECG収集中は仰臥位のままであるが覚醒状態にある。治験責任医師又は資格を有する被指名人は、心電図が正常範囲内にあるか否かを評価し、結果の臨床的意義を判定するため、心電図を検討する責任を負う。これらの評価は、原資料及びeCRFに記録される。
【0244】
5.3.5.患者安全カード
治験薬の初回投与前には、常に携帯するために患者安全カードを試験患者に渡す。このカードは、感染症、特に髄膜炎菌感染症のリスクに対する患者の認識を高め、試験期間中に試験患者が経験する感染症の潜在的な徴候又は症状の迅速な認識及び開示を促進し、感染症の徴候又は症状を経験している場合にどのような措置を講じなければならないかを患者に知らせるために提供される。
【0245】
試験中の各来院において、試験スタッフは、患者が患者安全カードを持っていることを確実にする。
【0246】
5.3.6.事前及び同時医学的検討
治験責任医師又は資格を有する被指名人が、試験開始前及び各来院時に患者が服用している各薬剤を検討することが重要である。
【0247】
5.3.6.1.前治療薬
スクリーニング開始前30日以内又はラブリズマブの初回投与前のスクリーニング期間中に患者が服用し又は受けた前治療薬及び/又はワクチン(ビタミン、ハーブ製剤、除外基準セクション2.2で考察したものを含む)、並びに手技(手術/生検又は理学療法などの治療的介入)、並びに過去3年以内に投与された髄膜炎菌ワクチンを、患者のeCRFに記録する。さらに、ラブリズマブの初回投与前に、NMOSDの再発予防又は急性期治療にこれまで使用した全ての薬剤又は治療法(ステロイドを含む)を収集する。
【0248】
5.3.6.2.併用薬
試験中、併用薬及び非薬物療法(セクション6.5)の使用を評価する。各来院時、最終来院以降の新たな薬剤若しくは非薬物療法又は併用薬及び非薬物療法への変更について患者に質問する。併用薬及び非薬物療法は、原資料及び患者のeCRFに記録する。
【0249】
5.3.7.臨床安全性研究所評価(Clinical Safety Laboratory Assessments)
治験責任医師は研究所報告書を検討し、この検討内容を文書化し、試験期間中に生じた臨床的に重要な変化をCRFのAEセクションに記録する。研究所報告書は、原資料と共に提出される。臨床的に有意な異常な研究所所見は、治験責任医師が患者の状態について予測されるよりも重度であると判断した場合を除き、基礎疾患と関連のないものを指す。
【0250】
試験参加中又は治験薬最終投与後8週間以内に臨床的に有意な異常と考えられる値を有する全ての臨床検査を、値が正常若しくはベースラインに回復するか、又は治験責任医師若しくはメディカルモニターによりもはや臨床的に重要ではないと判断されるまで繰り返す。治験責任医師が妥当と判断した期間内にそのような値が正常/ベースラインに回復しない場合、病因を特定し、治験依頼者に知らせる。付録2に定義されているように、治験実施計画書が要求する全ての研究所評価は、研究所マニュアル及びSoAに従って実施される。施設の地元の研究所で実施された、治験実施計画書に規定されていない研究所評価による研究所値が、患者管理の変更を必要とした場合又は治験責任医師により臨床的に重要と判断された場合(又は例えばAE又は用量変更など)、その結果をCRFに記録する。
【0251】
5.3.8.自殺念慮及び行動リスクのモニタリング
治験薬は神経学的適応症で評価されているため、治験薬の投与を受けている患者を適切にモニタリングし、特に治験薬過程の開始時と終了時又は用量変更時間に、自殺念慮若しくは行動又は他の異常な行動の変化について綿密に観察する。
【0252】
自殺念慮及び行動のベースライン評価並びに介入により出現した自殺念慮及び行動は、コロンビア自殺重症度評価スケール(C-SSRS)を用いて本試験中にモニタリングする。
【0253】
試験中に実施されるC-SSRS評価には、ベースライン時のC-SSRS(
図10)と最終来院以降のC-SSRS(
図11)の2種類がある。C-SSRSは、自殺念慮又は行動を経験している患者が適切に認識され、十分に管理され又はさらなる評価のために紹介されていることを保証するために、SoAに指定された来院時に治療医師又は適切に訓練された被指名人が実施する。必要に応じて、追加のC-SSRS評価が許可される。
【0254】
5.4.有害事象及び重篤な有害事象
有害事象は、患者(又は適切な場合、介護者、代理人若しくは患者の代諾者)によって治験責任医師に報告される。
【0255】
治験責任医師及び資格を有する被指名人は、AE又はSAEの定義を満たす事象を検出、記述及び記録する責任を負い、また重篤な、治験薬若しくは試験手順との関連性があると考えられるか、又は患者に治験薬の中止を促すAEのフォローアップの責任を負う(セクション4を参照されたい)。
【0256】
本治験では、SAE基準を満たさない再発に関する情報を、再発評価来院の一部として原資料及びeCRFに記録し、AEとして報告しない。
【0257】
5.4.1.有害事象及び重篤な有害事象情報を収集するための期間及び頻度
全てのAE及びSAEは、ICFの署名から、SoAに指定された時点での最終来院まで収集される(
図2及び3)。
【0258】
全てのSAEを記録し、直ちに治験依頼者又は被指名人に報告し、
図2及び3に示すように、いかなる状況下でもこれが24時間を超えることはない。治験責任医師は、SAEの最新データを、知り得てから24時間以内に治験依頼者に提出する。
【0259】
治験責任医師は、試験参加の終了後にAE又はSAEを積極的に求める義務はない。しかしながら、治験責任医師は、対象が試験を中止した後、死亡を含むSAEが発現し、治験薬又は試験参加と合理的に関連があると判断した場合、速やかに治験依頼者に通知する。
【0260】
5.4.2.AE及びSAEの検出方法
AE及び/又はSAEを検出する際に、バイアスを生じさせないよう注意する。患者のオープンエンドで先導的ではない口頭質問は、AEの発生について質問するための好ましい方法である。
【0261】
5.4.3.AE及びSAEのフォローアップ
初回のAE/SAE報告後、治験責任医師は、その後の来院/接触時に各患者を積極的にフォローアップすることが求められる。全てのSAE及び特に注目すべきAE(AESI;セクション5.4.6で定義)については、回復、安定化、他の理由による事象の説明又は患者のフォローアップ不能(セクション4.3で定義)が認められるまでフォローアップを行う。治験実施計画書に規定された安全性フォローアップ手順を実施するため、あらゆる努力が払われる。
【0262】
5.4.4.SAEの規制報告要件
治験責任医師がSAEを治験依頼者に速やかに通知することは、患者の安全性及び臨床調査下での治験薬の安全性に関する法的義務及び倫理的責任を満たすために不可欠である。
【0263】
治験依頼者は、臨床調査下での治験薬の安全性について、各国の規制当局及び他の規制当局の双方に通知する法的責任を有する。治験依頼者は、規制当局、治験審査委員会(IRB)/独立倫理委員会(IEC)及び治験責任医師への安全性報告に関する各国固有の規制要件を遵守する。
【0264】
予測できない重篤な副作用(SUSAR)が疑われる場合、各国の規制要件及び治験依頼者の方針に従って報告し、必要に応じて治験責任医師に転送する。
【0265】
治験依頼者からSAE又は他の特定の安全性情報(例えば、SAEの要約又は一覧表)を記載した治験責任医師の安全性報告書を受領した治験責任医師は、検討した後、治験薬概要書と共に提出し、現地の要件に従って適切であればIRB/IECに通知する。
【0266】
5.4.5.妊娠
妊娠検査は、SoA(
図2及び
図3)の治験実施計画書で規定された時点で、全WOCBPに対して実施する。妊娠検査(尿又は血清)は、治験責任医師の判断により試験中のいずれかの時点で実施することもできる。
【0267】
治験薬投与前のWOCBPには、妊娠検査が陰性であることが必要である。以下の規則が適用される:
・女性患者及び適応があれば男性患者の女性パートナーの全妊娠の詳細を、治験薬開始後及び妊娠終了まで収集する。
・妊娠が報告された場合、治験責任医師は、妊娠を知ってから24時間以内に治験依頼者に通知する。
・妊娠の異常な転帰(例えば、自然流産、胎児死亡、死産、先天異常、子宮外妊娠)は、SAEとみなす。妊娠のみでは、AEとはみなされない。
【0268】
患者が妊娠した場合、治験薬を直ちに中止し、治験依頼者に通知する。各妊娠は、満期まで追跡され、治験依頼者は転帰に関して通知される。
【0269】
5.4.6.特に注目すべき有害事象
髄膜炎菌感染症は、特に注目すべき有害事象(AESI)として収集される。
【0270】
5.5.過量投与の治療
本試験では、治験実施計画書で規定された用量を超える治験薬の投与は、過量投与とみなす。
【0271】
臨床検査値異常及び臨床症状との関連が認められない偶発的な過量投与は、AEとはみなされない。過量投与は、AEの有無にかかわらず、治験責任医師が24時間以内に治験依頼者に報告する。
【0272】
治験依頼者は、過量投与に対する特定の治療を推奨しない。
【0273】
過量投与の場合、治験責任医師は、
・直ちにメディカルモニターに連絡する。
・AE/SAEについて患者を綿密にモニタリングする。
・メディカルモニターの要請があれば、PK解析用の血漿サンプルを採取する(ケースバイケースで判定)。
・過剰投与の量及び過量投与の時期をCRFに記録する。
【0274】
投与中断の判断は、患者の臨床評価に基づき、治験責任医師がメディカルモニターと協議の上、行う。
【0275】
5.6.薬物動態及び薬力学
血清中薬物濃度の測定用及びPD評価用の血液サンプルは、SoA(
図2及び
図3)に規定された時点で治験薬投与前後に収集する。PK及びPD評価のための脳脊髄液(CSF)サンプルは、治験実施計画書に規定された時点で任意であり(
図2及び3)、CSF収集に同意した患者からのみ得る。生物学的サンプルの収集及び取扱いについての指示は、治験依頼者により提供される。各サンプルの実際の日付及び時刻(24時間の時計時刻)は、eCRF及び中央検査依頼書に記録される。血液量要件を含む、サンプル収集に関する追加情報は、研究所マニュアルに提供されている。
【0276】
5.6.1 試験期間中のサンプル収集
ベースライン(B)及びトラフ(T)のPK及びPDの血液サンプルは、SoA(セクション1.3)に規定された来院時に治験薬を投与する前90分以内に、投与前に収集する。投与前の血液サンプルは、用量の投与前に、用量注入のために作成された静脈アクセスを介して採取することができる。投与後(P)のPK及びPDの血液サンプルは、投与後、治験薬注入完了後120分以内に収集する。投与後の血液サンプルは、患者の反対側の非注入腕から採取する。非投与来院時の血液サンプルは、任意の時間に収集することができる。予定外の来院があった場合、可能な限り速やかにPK及びPD用血液サンプルを収集する。
【0277】
5.6.2 試験期間中のサンプル収集
PK及びPD解析用の血液サンプルは、予定された再発評価来院中の任意の時点で収集する。しかしながら、再発に伴う血液サンプル収集スケジュールがSoA(
図2及び
図3)に規定された定期的なサンプル収集と一致する場合、試験中の定期的なPK及びPDサンプル収集の指示(セクション5.6.1)に従わなければならない。
【0278】
治験中の再発中、患者が再発評価来院時にPE/PP及びラブリズマブの追加投与を受けた場合、PK及びPD用の3回の血液サンプルを以下の間隔で収集する:
1.PE/PPの約5~90分前
2.PE/PP後且つ治験薬注入前
3.治験薬注入の完了から少なくとも60分後
【0279】
患者が再発評価来院以外のいずれかの来院時にPE/PPを受けた場合、PE/PPの各セッションの直前及び直後にPK及びPD用の血液サンプルを収集する。投与後のサンプル(例えば、追加治験薬注入の完了の1時間後)も収集される。
【0280】
5.7.遺伝学
本試験では、事前に規定した遺伝子解析は存在しない。
【0281】
5.8.バイオマーカー研究
5.8.1.探索的バイオマーカー研究
バイオマーカー研究用の血液サンプルは、SoA(
図2及び3)に規定された時点で全患者から収集する。CSFサンプルは、バイオマーカー研究用の任意のサンプルであり、CSFサンプル収集に同意した患者からのみ収集すべきである。バイオマーカーは、測定され、以下の評価を含むが、これらに限定されない:
・再発評価期間中を含む、治験実施計画書に規定された時点(セクション1.3 SoA)におけるAQP4-Ab(詳細は、セクション5.2.3.2を参照されたい)。
・補体生成物
・インターロイキン6(IL-6)などの神経炎症のマーカー
・ニューロフィラメント軽鎖(NfL)などの神経損傷のマーカー
【0282】
5.8.2.将来のバイオマーカー研究
DNA及びRNAサンプルの収集は、任意である。DNA及びRNAの血液サンプルは、それに同意した患者からのみ収集しなければならない。これらのサンプルに関する将来のDNA及びRNA検査には、特定の候補遺伝子/全ゲノム解析が含まれるが、これらに限定されない。
【0283】
薬物動態、薬力学、免疫原性及びバイオマーカー検査の残余サンプルは、将来のバイオマーカー研究のために保管する。NMOSDの活動性/進行又はラブリズマブに対する治療応答に役割を果たすと考えられるバイオマーカー変異について解析を実施することがある。これらのサンプルは、治験薬標的、疾患過程、疾患状態に関連する経路及び/又は治験薬の作用機序に関連する方法、アッセイ、予後及び/又はコンパニオン診断を開発するためにも使用され得る。
【0284】
サンプルは、さらなる解析を可能にするために、治験依頼者によって選択された施設での試験のための最後の患者の最終来院後、地域の規則に従って最大期間保管され得る。
【0285】
5.9.免疫原性評価
ラブリズマブに対する抗薬物抗体(ADA)は、SoA(
図2及び
図3)に従って全患者から投与前(治験薬の注入開始前5~90分以内)に収集した血清サンプルで評価する。
【0286】
さらに、治験薬を中止した患者又は試験を離脱した患者からも、最終来院時に血清サンプルを収集するべきである。
【0287】
ラブリズマブに結合する抗体について血清サンプルをスクリーニングし、陽性が確認されたサンプルの力価を報告する。ラブリズマブに対する抗体の安定性を検証するため及び/又はラブリズマブの免疫原性をさらに特徴付けるために、他の解析を実施し得る。
【0288】
ラブリズマブに対する抗体の検出及び特徴付けは、検証されたアッセイ方法を用いて、治験依頼者の監督によって又は監督下で実施する。必要と考えられる場合、サンプルをさらに特徴付けて、力価及び中和抗体の存在を決定し得る。ラブリズマブに対する免疫応答をさらに解析できるように、治験依頼者が選択した施設において、試験のための最後の患者の最終来院後、地域の規制に従い、サンプルを最長期間保管し得る。
【0289】
5.10.医療資源利用及び健康経済学
医療資源利用及び医療経済学的データは、医療上の遭遇に関連して、治験責任医師及び治験実施医療機関の職員が試験を通して全ての患者についてCRFに収集する。治験実施計画書に定められた手順、試験及び遭遇は、除外する。
【0290】
収集されたデータは、探索的経済解析を実施するために使用することができ、以下を含む:
・手術件数及び他の選択された治療(入院患者及び外来患者)
・入院期間
・診断及び治療の検査及び手順の数及びタイプ
【0291】
6.統計的考察
6.1.統計的仮説
最初の評価された治験中の再発までの期間は、ログランク検定を用いて評価し、帰無仮説は、ラブリズマブ投与群とプラセボ投与群の生存曲線に差がないこととする。代替仮説は、2つの生存曲線間に差があり、ラブリズマブがプラセボよりも優れているというものであろう。
【0292】
評価されたARRに95%信頼区間(CI)を提示して、ラブリズマブで治療された患者の評価されたARR率の推定値を提供する。評価されたARRの正式な仮説検定は実施しないが、ラブリズマブで治療された患者は低いARRを有し、95% CIの上限は、0.25再発/患者・年を超えないと予想される。
【0293】
HAIについては、帰無仮説は、より良好な成績のオッズは、ラブリズマブ群とプラセボ群間で同じであるというものになる。代替仮説は、治療群間でより良好な治療成績のオッズに差があり、ラブリズマブは、より良好な臨床成績のオッズがより高いというものになる。
【0294】
EQ-5D指数及びEQ-5D VASについては、帰無仮説は、ラブリズマブ群とプラセボ群の分布に差がないことになる。代替仮説は、治療群の分布に差があり、ラブリズマブがプラセボより優れていることになる。
【0295】
EDSSについては、帰無仮説は、より不良な成績のオッズは、ラブリズマブ群とプラセボ群間で同じであるというものになる。代替仮説は、治療群間でより不良な治療成績のオッズに差があり、より不良な治療成績のオッズは、プラセボ群の方が高いというものになる。
【0296】
6.2.サンプルサイズ決定
本試験は、NMOSD患者においてラブリズマブを評価するための非盲検、外部プラセボ対照試験であり、最初の評価された治験中の再発までの時間を一次エンドポイントとする。NCT01892345試験におけるプラセボ治療群は、外部対照としての役割を果たす。
【0297】
一次エンドポイントである最初の再発までの時間を用いた本試験のサンプルサイズ及び検出力計算の前提は、以下のとおりである:
・ラブリズマブとプラセボの比較のためのログランク検定
・プラセボ治療群における47患者
・検出力90%
・両側5%の有意水準
・ドロップアウト率2~10%
・12ヵ月時点でのラブリズマブ群の無再発率92%
・12ヵ月時点でのプラセボ群の無再燃率63%
【0298】
これらの仮定により、ラブリズマブ治療群の最大サンプルサイズ約55患者は、最初に陽性と評価された再発までの時間における治療差を検出する少なくとも90%の検出力を提供する。
【0299】
6.3.解析のための集団
解析の目的のために、以下の集団を表6に示すように定義する。
【0300】
【0301】
6.4.統計解析
一次解析は、全患者が一次治療期間を完了したときに実施する。この解析には、規制当局への提出を目的とした全ての有効性、安全性、PK/PD試験データが含まれ、一次治療期間の最終解析となる。一次解析をサポートするSAPは、治験実施計画書が最終的なものとなった直後に開発され、最終的なものとなる。必要に応じて、長期延長期間の完了前に最終SAPを開発して、追加の長期有効性及び安全性解析を記述する。本セクションは、有効性の一次エンドポイント、二次エンドポイントの計画された統計解析及び安全性解析の概要である。
【0302】
要約統計量は、治療群毎及び該当する場合には来院毎に計算及び表示される。連続変数の記述統計には、最小限に患者数、平均、標準偏差、最小値、中央値及び最大値が含まれる。カテゴリー変数については、頻度及び百分率が提示される。グラフィック表示は、必要に応じて提供される。全ての統計解析は、特に断らない限り、5%の両側タイプIエラーに基づいて行われる。欠落したデータは、帰属されない。
【0303】
解析は、SAS(登録商標)ソフトウエアバージョン9.4以降を使用して行う。
【0304】
6.4.1.有効性解析
ラブリズマブ群と外部プラセボ対照とのベースライン特性の潜在的な差を説明するため、有効性解析には、必要に応じて共変量調整方法論を含める。詳細は、SAPに提供される。
【0305】
6.4.1.1.一次エンドポイント
有効性の一次エンドポイントは、最初に治験中の再発と評価されるまでの期間である。一次エンドポイントである最初に評価された治験中の再発までの期間について、ラブリズマブ治療群とプラセボ群との間に統計学的な有意差(例えば、p値<0.05)が認められた場合、その治験は、その一次有効性目的を満たしたとみなされる。一次エンドポイントに対する治療群の比較には、ログランク検定を用いる。ハザード比及びリスク低減は、Cox比例ハザードモデルから要約される。信頼区間(95%)は、補完的な両対数変換に基づいて、様々な時点(例えば、26週目、50週目)で無再発である患者の推定割合について提示する。両治療群のKaplan-Meier曲線を作成する。
【0306】
一次エンドポイントの感度解析は、SAPに記載される。
【0307】
6.4.1.2.二次エンドポイント
6.4.1.2.1.評価された治験中のARR
評価された治験中のARRを提示し、これは、ラブリズマブ治療群の推定値と、試験期間中の時間の対数をオフセット変数とし、過去のARRをモデルの共変量とするポアソン回帰モデルからの95% CIとを記述的に示す。このエンドポイントは、95% CIの上限が1年あたり≦0.25回の再発であれば、統計的に有意であると考えられる。
【0308】
6.4.1.2.2.EuroQoL 5次元(EQ-5D)指数スコア及びEQ-5D VAS
EQ-5D指数スコアのベースラインから再発後6週間/一次治療期間終了時点までの変化(即ちプラセボ群について、再発した患者について再発後6週間又は再発しなかった患者について試験のNCT01892345試験終了(EOS);ラブリズマブ群について、再発した患者について最初に観察された再発後6週間、再発しなかった患者について一次治療期間終了時のEQ-5D指数スコア)を、ベースラインEQ-5D指標スコアで調整したノンパラメトリック共分散分析(ANCOVA)を用いて解析する。ベースラインとは、治療群にかかわらず、全ての患者について治療前の最後の利用可能な評価と定義される。
【0309】
EQ-5D VASにおけるベースラインから再発後6週間/EOPT期間時点までの変化を、ベースラインEQ-5D VASについて調整したノンパラメトリックANCOVAを用いて、EQ-5D指数スコアの変化について記載したように分析する。
【0310】
6.4.1.2.3.拡張障害状態スケール(EDSS)
EDSSスコアのベースラインから再発後6週間/EOPT期間解析時点までの変化を、EQ-5Dエンドポイントについて記載したように計算する。EDSSについては、このベースラインからの変化は、臨床的に重要な悪化(悪化なし、臨床的悪化)に分類する。このエンドポイントは、治療群及びベースラインのEDSSを共変量としたロジスティック回帰モデルを用いて解析する。詳細は、SAPに提供される。
【0311】
6.4.1.2.4.ハウザー歩行指数(HAI)
HAIスコアのベースラインから再発後6週間/EOPT期間分析時点までの変化を、EQ-5Dエンドポイントについて記載したように計算する。HAIについては、このベースラインからの変化は、臨床的に重要な変化(臨床的改善、安定、臨床的悪化)に分類する。この3段階のエンドポイントは、治療群及びベースラインのHAIを共変量として含む比例オッズモデルを用いて解析する。詳細は、SAPに提供する。
【0312】
6.4.1.2.5.多重比較の説明
一次エンドポイント及び二次エンドポイントの解析のためのI型エラーを制御するために、クローズドテスト手順が適用される。一次エンドポイントがラブリズマブを支持する統計学的に有意である場合、二次エンドポイントは、以下の順位に従って評価する:
1.評価された治験中のARR
2.HAIで測定した歩行機能のベースラインからの臨床的に重要な変化
3.EQ-5D指数スコアのベースラインからの変化
4.EQ-5D VASスコアのベースラインからの変化
5.EDSSスコアのベースラインからの臨床的に重要な悪化
【0313】
仮説検定は、評価された治験中のARRの最高ランク(#1)からEDSSスコアの最低ランク(#5)に進み、エンドポイントで統計的有意性が得られない場合(p≧0.05又はARRの上限CIが>0.25)、下位ランクのエンドポイントは、統計的に有意ではないと考えられる。信頼区間及びp値は、クローズドテスト手順の結果にかかわらず、記述目的のために全ての二次有効性エンドポイントについて提示する。
【0314】
6.4.1.3.三次/探索的エンドポイント
三次及び探索的エンドポイントの要約及び解析は、SAPに記載される。
【0315】
6.4.2.安全性解析
安全性セットを使用して、全ての安全性データを要約する。
【0316】
6.4.2.1.有害事象の解析
AEの解析及び報告は、ラブリズマブの初回投与時又は初回投与後に発現したAEと定義される、治療下で発現した有害事象(TEAE)に基づく。TEAEの発生率は、器官別大分類(SOC)及び基本語により要約され、さらに重症度、治験薬との関連性、治験薬中止に至ったTEAE及び死亡に至ったTEAEを要約する。TESAEの要約もSOC及び基本語別により要約され、治験薬との関連性を示す要約を追加する。これらの要約は、治療群(ラブリズマブ、プラセボ)により提示する。
【0317】
6.4.2.2.臨床検査パラメーター、バイタルサイン測定値及び心電図パラメーターの解析
検査測定値及びそれらの来院時のベースラインからの変化及び該当する場合、ベースラインからのシフトを要約する。ECG解釈心拍数、PR、QRS、QT及びQTcを含むECGを要約し、バイタルサインも要約する。
【0318】
6.4.2.3.他の安全性解析
C-SSRSの各カテゴリーにおける患者の数及び百分率並びにベースラインからのシフトを提示する。
【0319】
6.4.3.人口統計学及びベースライン特性
安全性セットを使用して、患者の人口統計学及びベースライン特性を治療群毎に要約する。要約統計を提示する。正式な仮説検定は実施しない。
【0320】
6.4.4.患者の内訳
スクリーニングした患者数、治療した患者数、試験を完了した患者数、試験を中止した患者数、中止理由及び各解析セットに含まれた患者数を要約する。主な治験実施計画書からの逸脱は、予め定められた逸脱カテゴリーによって要約される。
【0321】
6.4.5.既往歴及び手術歴及び視神経脊髄炎スペクトラム障害歴
既往歴及び手術歴は、Medical Dictionary for Regulatory(MedDRA)Activities,Version 21.0又はそれ以降、SOC及びPTにより要約する。NMOSD歴についても要約する。
【0322】
6.4.6.前治療薬及び併用薬
治験薬の初回投与前に服用した薬剤を前治療薬とみなし、治験薬の初回投与時又は後に服用した薬剤を併用薬とみなす。再発予防及び急性再発治療のためのISTを含め、安全性解析セットの全患者について、前治療薬及び併用薬を要約する。薬剤は、世界保健機関薬物辞書(World Health Organization Drug Dictionary)(WHODrug;解析時に入手可能な最新バージョン)を使用してコード化される。
【0323】
6.4.7.薬物動態、薬力学及び抗薬物抗体の解析
ラブリズマブを少なくとも1用量受け、PKデータが評価可能な全患者の個々の血清濃度データを使用して、ラブリズマブのPKパラメーターを導出する。
【0324】
平均血清濃度-時間プロファイルのグラフを構築する。個々の患者の血清濃度-時間プロファイルのグラフを提供することもできる。実際の用量投与及びサンプル採取時間を全ての計算に使用する。各サンプル採取時の血清濃度データについて、適宜、記述統計量を計算する。集団-PKの評価は、この試験のデータを用いて又は他の試験のデータと組み合わせて考慮し得る。
【0325】
薬力学的解析は、ラブリズマブを少なくとも1用量受け、評価可能なPDデータを有する全ての患者について実施する。
【0326】
各サンプリング時点(セクション1.3)における全てのラブリズマブPDエンドポイントについて記述統計を提示する。ラブリズマブのPD効果は、適宜、遊離C5血清濃度の絶対値並びにベースラインからの経時的な変化及び変化率を評価することにより評価する。ラブリズマブのPK/PD関係の評価は、本試験のデータを用いて又は他の試験のデータと組み合わせて探索することができる。
【0327】
免疫原性の評価のために、確認された陽性ADAの存在を要約する。さらに、陽性ADAの確認後、サンプルをADA力価及び中和抗体の存在について評価する。
【0328】
6.5.中間解析
一次解析は、全患者が一次治療期間を完了したときに実施する。この解析には、規制当局への提出を目的とした全ての有効性、安全性、PK/PD試験データが含まれ、一次治療期間の最終解析となる。この解析は、中間解析とはみなされない。長期延長中に収集されたデータを含む中間解析は、提出要件をサポートするために実施することができる。
【0329】
6.6.データモニタリング委員会(DMC)
この試験には、DMCは、含まれない。
【0330】
7.文書化及び運用上の考慮事項のサポート
7.1.付録1:視神経脊髄炎スペクトラム障害の診断基準
AQP4-IgGを用いたNMOSDのNMO診断基準に関する国際パネル(Wingerchuk,D.et al.,Neurology,85:177-89,2015)-この試験では、NMOSDの診断のために、以下の3つの基準全てを満たさなければならない:
1.少なくとも1つの中心的な臨床的特徴:
○視神経炎
○急性脊髄炎
○最後野症候群:説明のつかないしゃっくり又は吐き気と嘔吐のエピソード
○急性脳幹症候群
○NMOSDに典型的な間脳MRI病変を伴う症候性ナルコレプシー又は急性間脳臨床症候群
○MRIで視覚化されるNMOSDに典型的な脳病変を伴う症候性脳症候群
2.利用可能な最良の検出方法(この試験で必要とされる細胞ベースのアッセイ)を用いた抗AQP4 Ab陽性試験
3.代替診断の除外
【0331】
7.2.付録2:拡張障害状態スケール(EDSS)
Kurtzke EDSSは、多発性硬化症(MS)における障害を定量化する方法である。EDSSは、MSで使用されていた以前の障害状態スケールを置き換えた。EDSSは、8つの機能システム(FS)の障害を定量化し、神経科医がこれらのそれぞれに機能システムスコア(FSS)を割り当てることを可能にする。FSは、
・錐体
・小脳
・脳幹
・感覚
・腸及び膀胱
・視覚
・大脳
・その他
である。
【0332】
図4に示すように、EDSSステップ1.0~4.5は、完全に歩行可能なMS患者を指し、EDSSステップ5.0~9.5は、歩行障害によって定義される。
【0333】
【0334】
【0335】
【0336】
【0337】
【0338】
【0339】
【0340】
【0341】
【0342】
【配列表】
【国際調査報告】