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特表2023-504238複合酵素および耐性デキストリンの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-02
(54)【発明の名称】複合酵素および耐性デキストリンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12P 19/08 20060101AFI20230126BHJP
   C08B 30/18 20060101ALI20230126BHJP
   C12N 9/26 20060101ALN20230126BHJP
   C12N 9/44 20060101ALN20230126BHJP
   C12N 9/42 20060101ALN20230126BHJP
【FI】
C12P19/08
C08B30/18
C12N9/26
C12N9/44
C12N9/42
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022526515
(86)(22)【出願日】2021-08-24
(85)【翻訳文提出日】2022-05-09
(86)【国際出願番号】 CN2021114247
(87)【国際公開番号】W WO2022156211
(87)【国際公開日】2022-07-28
(31)【優先権主張番号】202110097960.4
(32)【優先日】2021-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517312490
【氏名又は名称】ヂェァジァン ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】No.866,Yuhangtang Road,Xihu District,Hangzhou, Zhejiang China
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】シュイ エンボー
(72)【発明者】
【氏名】リウ ドンホン
(72)【発明者】
【氏名】フォン ジンソン
(72)【発明者】
【氏名】ウー ジォンゾン
(72)【発明者】
【氏名】タン ジュンユィ
(72)【発明者】
【氏名】マー シュオハン
(72)【発明者】
【氏名】ジョウ ジェンウェイ
(72)【発明者】
【氏名】リー ダンダン
(72)【発明者】
【氏名】チョン ホァン
(72)【発明者】
【氏名】ティェン ジンフゥ
(72)【発明者】
【氏名】チェン ジェンチュウ
(72)【発明者】
【氏名】イエ シンチェン
【テーマコード(参考)】
4B050
4B064
4C090
【Fターム(参考)】
4B050CC07
4B050CC08
4B050LL05
4B064AF14
4B064CA21
4B064DA16
4C090AA04
4C090BA07
4C090BB12
4C090BB32
4C090BB36
4C090BB38
4C090BB52
4C090BC10
4C090BC12
4C090CA29
4C090CA42
4C090DA23
(57)【要約】
本発明は、複合酵素、および同時押出を組み合わせて耐性デキストリンを製造する方法を開示し、デンプン精密加工技術分野に属す。本発明は、異なるグリコシド結合作用部位に基づき、配合するアミラーゼの割合を選定し、複合酵素とデンプンを高せん断共押出加工し、押出チャンバー内の熱機械的マルチフィジックスカップリング(μmスケールの非指向性せん断)および共同酵素分解定点脱凝集作用(nmスケールの特異性せん断)によって、デンプン直鎖および分岐の切断順序および程度を精細に制御し、差異性鎖長分布を形成することができる。この方法は、内蔵された二軸チャンバーを、デンプンを効率的に酵素分解する反応器とし、その軸方向の拡散速度、滞留時間および作用面積を増大させる条件の下、酵素液用量を低減し、高結晶度の耐性デキストリン(Mw:0.5~8 kDa)を形成する。本発明は、押出前後の酵素分解ステップを簡素化し、制御が精細で、効率的で連続しており、節水でき経済的なデンプンマイクロドメイン制御方法を実現する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作用部位がα-1,4グリコシド結合またはβ-1,4グリコシド結合であるA類アミラーゼと、作用部位がα-1,6グリコシド結合であるB類アミラーゼとを含み、A類アミラーゼの総酵素活性とB類アミラーゼの総酵素活性との比が1:1.5~6であることを特徴とする複合酵素。
【請求項2】
前記A類アミラーゼは、任意の配合比のα-アミラーゼ、β-アミラーゼから選ばれる一種または複数種からなることを特徴とする請求項1に記載の複合酵素。
【請求項3】
前記B類アミラーゼは、プルラナーゼ、イソアミラーゼの一種または複数種であることを特徴とする請求項1に記載の複合酵素。
【請求項4】
耐性デキストリンの製造における請求項1に記載の複合酵素の用途。
【請求項5】
請求項1に記載の複合酵素とデンプンとの混合材料を、スクリューせん断共押出処理し、冷却老化した後、高結晶度の低分子量耐性デキストリンを形成し、前記混合材料において、A類アミラーゼの酵素活性は5~20U/gであり、B類アミラーゼの酵素活性は7.5~120U/gであり、上記酵素活性は材料無水ベース(g)で計算されることを特徴とする耐性デキストリンの製造方法。
【請求項6】
前記スクリューせん断共押出処理は、五段階温度領域押出を含み、温度は順に、20~50℃、40~70℃、60~90℃、80~110℃、100~130℃であり、五段階温度領域の温度は順に高くなり、スクリュー回転速度は150~400r/分であることを特徴とする請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記デンプンは、コーンスターチ、ハイアミロースコーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、馬鈴薯デンプン、小麦デンプン、タピオカデンプン、甘藷デンプン、米デンプンの一種または複数種であることを特徴とする請求項5に記載の製造方法。
【請求項8】
複合酵素とデンプンの混合材料の含水量が20~40wt%であることを特徴とする請求項5に記載の製造方法。
【請求項9】
前記冷却老化は、スクリューせん断共押出処理後に得られた構造再構築デンプン糊を0~10℃の条件下に置き、2~8日間冷却再結晶することを特徴とする請求項5に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高耐性(難消化性)構造を有する多糖類製品の製造に関し、特に、複合酵素、ならびに高せん断・熱エネルギー、機械的エネルギーを入力する押出環境において、マルチフィジックスカップリングおよび共同指向性分解作用によってデンプン鎖の秩序ある分解程度を制御することにより、耐性デキストリンを効率的に形成する加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
耐性デキストリン(Resistant dextrin、RD)は、デンプン糊化・結合切断またはグリコシル化転移後に構造の再構築が発生した小分子水溶性食物繊維であり、その分子にはα-1,2グリコシド結合、α-1,3グリコシド結合、縮合グルコースおよびβ-1,6グリコシド等の構造が含まれ、大腸がんの予防、コレステロール値の低下、血糖代謝の調節、Ca2+、Fe3+ミネラルの促進吸収などの機能を有する。しかしながら、酵素耐性は、一般に、高度に緻密なラメラ構造に由来するため、その変性生成物は、分子量が大きく、硬度が高く、口当たりが悪いなどの制限があり、その市場での用途は限られていた。そのため、微細構造の制御戦略に基づき食用安全性の高い低分子量RDおよびその派生機能食品を製造する意義は大きい。
【0003】
現在、RDの製造方法は、主として、物理法、化学法およびバイオ酵素法等がある。しかしながら、化学法は、デンプン構造が化学試薬に誘導され不均一になり、得られる生成物の化学試薬残留および生産排水などが依然として課題となっている。そのため、物理的およびバイオ酵素的な手段が、加工デンプンの製造において突出した優位性をもっている。しかしながら、バイオ酵素は、人体の健康・安全に対して信頼性が高いものの、変性生成物の収率を高めるために、大量の酵素または長い酵素分解時間を必要とすることがよくあり、製造コストが高くなり、効率が低下するため、実際の生産における限界は明らかである。押出は、デンプン系材料でよく用いられる加工方式であり、搬送、混合、加熱、せん断および成形等のユニットを一体化した連続式の物理的な加工技術である。押出チャンバーは、酵素反応器として、効率が高く、時間が短い酵素反応微細混合環境を提供することができる。近年、酵素反応押出は、黄酒、白酒、デンプン糖などの製品の生産工程において適用が試みられている。しかしながら、実際の適用においては、上記複合手段の酵素分解前処理時間が依然として長く、複合酵素の正確な配合が考慮されておらず、そのマルチフィジックスカップリングの効率的な加工環境と合理的に相乗効果をもたせることが難しいため、鎖長分布(Chain length of distribution,CLD)、分枝度または分子量を制御可能なRDが得られるよう、バイオ酵素-押出加工は、従来の基礎の上で新しい構想を考え出す必要がある。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、作用部位がα-1,4グリコシド結合またはβ-1,4グリコシド結合、α-1,6グリコシド結合を含み、その配合比を調整することにより、デンプン鎖に対する指向性結合切断の目的を達成し、低重合度(Degree of polymerization,DP)CLDを有する老化基質を形成する、複合酵素を提供する。
【0005】
本発明は、また、上記複合酵素を採用して低分子量RDを効率的に製造する方法であって、段階的に昇温する温度領域分布を用い、「分岐結合切断、直鎖等級分け」の制限的糊化酵素分解順序により、複合酵素の誘導の下、老化したCLDの基礎を形成し、再結晶させ、標的構造を有するRDを得る方法を提供する。
【0006】
本発明の一態様として、本発明は、A類アミラーゼと、B類アミラーゼとを含み、調製方法が次のとおりである、複合酵素を提供する。A類アミラーゼおよびB類アミラーゼを酢酸塩緩衝液(pH 5.2)の中で混合して調製し、50℃の水浴条件で30分活性化させる。A類アミラーゼの総酵素活性とB類アミラーゼの総酵素活性の比は、1:1.5~6である。
【0007】
さらに、A類アミラーゼは、任意の配合比のα-アミラーゼ、β-アミラーゼから選ばれる一種または複数種からなる。
【0008】
さらに、B類アミラーゼは、プルラナーゼ、イソアミラーゼの一種または複数種である。
【0009】
本発明のもう一つの態様として、本発明は、RDの製造における複合酵素の用途を提供する。
【0010】
本発明のもう一つの態様として、本発明は、RDの製造方法を提供し、この方法は、次のとおりである。複合酵素とデンプンを混合し、押出装置で加える各設定温度領域が安定した後、チャンバーの中に混合材料を投入する。スクリューせん断共押出処理後に冷却老化し、高結晶度の低分子量RDを形成する。前記スクリューせん断共押出処理は、段階的に昇温する温度場を採用し、すなわち、少なくとも前段の低温スクリューせん断共押出処理と、後段の高温スクリューせん断共押出処理とを含み、前段の処理温度は70℃以下であり、後段の処理温度は前段よりも高く、かつ60℃以上である。
【0011】
押出時に、低温場は、B類アミラーゼが、まずα-1,6グリコシド結合部位の加水分解作用を奏するようにし、デンプン結晶クラスター外部の分岐二重らせんを切断する。低温領域を経て、A類アミラーゼを再度活性化し、スクリュー混練領域および逆方向遮断領域の軸方向混合搬送を組み合わせ、この酵素は、高温領域においてα-1,4グリコシド結合またはβ-1,4グリコシド結合を効果的に加水分解でき、酵素とデンプン粒子との接触面積が増大した状況で、直鎖をより容易に分解することができる。押出機チャンバー内は、実質的に酵素の「高基質」環境であり、基質が酵素を包み、「中心から周辺に向かって放射する」分解形式で、酵素の中心と基質との反応配位と入れ替え速度が加速することにより、酵素の作用効率が極めて大きく向上する。また、押出の多くは、非分子レベルの構造変性手段であり、分子レベルの酵素に対して、その活性低下の多くは、極端な高温高圧条件の印加による。しかしながら、本発明で採用する段階的な昇温手順は、押出機チャンバー内部の圧力を0.8Mpa以下にし、アミラーゼが短時間で酵素活性力を十分に発揮するようにし、押出材料がダイ領域に入って糊化するようにする。
【0012】
さらに、A類アミラーゼの酵素活性は5~20U/gであり、B類アミラーゼの酵素活性は7.5~120U/gであり、上記酵素活性は材料無水ベース(g)である。
【0013】
さらに、スクリューせん断共押出処理は、五段階温度領域押出を含み、温度は順に、20~50℃(I領域)、40~70℃(II領域)、60~90℃(III領域)、80~110℃(IV領域)、100~130℃(ダイ領域)であり、五段階温度領域の温度は順に高くなり、スクリュー回転速度は150~400r/分である。
【0014】
さらに、押出材料は、コーンスターチ、ハイアミロースコーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、馬鈴薯デンプン、小麦デンプン、タピオカデンプン、甘藷デンプン、米デンプンの一種または複数種である。
【0015】
好ましい形態として、前記押出前に、複合酵素とデンプンの混合材料の水分含有量を20~40wt%に調節する。
【0016】
好ましい形態として、前記冷却老化は、スクリューせん断共押出処理後に得られた構造再構築デンプン糊を0~10℃の条件下に置き、2~8日間冷却再結晶する。
【0017】
発明の有益な技術的効果は次のとおりである。
1.本発明は、従来の酵素法押出加工工程に比べ、合理的にスクリュー押出(μmスケールの非指向性せん断)と酵素(nmスケールの特異性せん断)の同期作用を用いて、デンプンの秩序(一重/二重らせん)、無秩序(非晶質領域)ならびに分子構造の分解順序および程度を制御して差異性CLDを形成し、この基礎の上で、分岐二重らせん、直鎖一重らせんおよび直鎖-分岐混合らせんなどを含む異なるDP鎖を主とする耐性らせん構造を結晶で形成する。
【0018】
2.本発明で採用するCLD制御戦略は、複合酵素法押出を効率的なデンプンマイクロドメインの分解・再構築手段とし、酵素液前処理時間を短縮し、酵素法補助押出の多くの工程を合わせて簡素化する一方で、デンプンCLDとその耐性精細構造との関係を確立し、生産実践の指導に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明で製造するRDの工程流れ図である。
図2】本発明の実施例および比較例で製造するRDのX線回折(XRD)チャートであり、本発明で製造するRDの結晶形の変化を説明するために用いる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、実施例によって本発明についてさらに説明する。以下の実施例は、説明を目的としており、本発明の範囲を制限するためのものではない。
【0021】
実施例1
RDの同時押出および制限的酵素分解の製造方法のステップは次のとおりである。
【0022】
(1)混合酵素液予備活性化:予め調整しておいた混合材料の水分含有量およびデンプン無水ベース質量に基づき、調製したA類アミラーゼ(耐高温α-アミラーゼ)の酵素液濃度は5U/g、調製したB類アミラーゼ(プルラナーゼ)の酵素液濃度は30U/gとした。酵素液を混合した後、耐高温α-アミラーゼ:プルラナーゼ=1:6の混合酵素液を配合した。押出前に、50℃水浴条件下で30分予備活性化した。
(2)温度制御高せん断押出:普通のコーンスターチの水分含有量を40wt%に調節し、押出時に、ステップ(1)で配合した混合酵素液を同時に添加した。二軸押出機バレルのシステムパラメータは、温度領域分布が順に40℃、60℃、80℃、100℃、120℃(ダイ領域)であり、スクリュー回転速度が250r/分であり、1回でデンプン糊を押出した。
(3)老化制御:押出したデンプン糊を0℃の条件下で2日間冷却老化した。真空凍結乾燥後に、200メッシュで研磨し、前記RDを得た。
(4)分子量測定:高速液体分子排斥クロマトグラフィーと多角度光散乱検出器および示差屈折率検出器マルチシステム(HPSEC-MALLS-RI)を採用し、Mark-Houwinkパラメータを用いて計算し較正して、サンプルの重量平均分子量(Mw)を得た。
(5)in vitroシミュレーション消化:その場で配合した混合酵素液を用い、37℃でサンプルを計時消化した。混合酵素液の酵素活性配合比は、パンクレアチン(500 U/ml):グリコシダーゼ(700 U/ml):インベルターゼ(400 U/ml)とした。グルコースオキシダーゼ測定キット(GOPOD-FORMAT)を用いて遊離グルコース(Free-sugar glucose, FSG)、消化20 分後グルコース(Glucose of 20, G20)、消化120 分後グルコース(Glucose of 120, G120)および総グルコース(Total glucose, TG)における吸光度を測定し、耐性デンプン(Resistant starch, RS)の収率(%)を計算した。公式は次のとおりである。
RS(%)=(TG-G120)× 0.9/ TS ×100
式中、換算係数0.9を用いて多糖グルコースを異なる消化成分のデンプン値に変換した。TSは総デンプン質量(g)である。
(6)CLDの測定:ゲル補助糖電気泳動技術を採用し、すなわちPA-800Plus Faceシステムで、N-CHOでコーティングしたキャピラリーにおいて分岐デンプン鎖の数量分布を測定し、すなわち検出器信号を用いてNde(X)を得た。
【0023】
本実施例で得られたRDは、Mwが6.128kDaであり、デンプン中のRD含有量は46.60%であり、低DP分岐(DP<6)の含有量は58.24%であった。
【0024】
実施例2
RDの同時押出および制限的酵素分解の製造方法のステップは次のとおりである。
【0025】
(1)混合酵素液予備活性化:予め調整しておいた混合材料の水分含有量およびデンプン無水ベース質量に基づき、調製したA類アミラーゼ(中温α-アミラーゼ)の酵素液濃度は10U/g、調製したB類アミラーゼ(プルラナーゼ)の酵素液濃度は30U/gとした。酵素液を混合した後、中温α-アミラーゼ:プルラナーゼ=1:3の混合酵素液を配合した。押出前に、50℃水浴条件下で30分予備活性化した。
(2)温度制御高せん断押出:普通のコーンスターチの水分含有量を30wt%に調節し、押出時に、ステップ(1)で配合した混合酵素液を同時に添加した。二軸押出機バレルのシステムパラメータは、温度領域分布が順に30℃、50℃、70℃、90℃、110℃(ダイ領域)であり、スクリュー回転速度が200r/分であり、1回でデンプン糊を押出した。
(3)老化制御:押出したデンプン糊を5℃の条件下で2日間冷却老化した。真空凍結乾燥後に、200メッシュで研磨し、前記RDを得た。
(4)分子量測定:高速液体分子排斥クロマトグラフィーと多角度光散乱検出器および示差屈折率検出器マルチシステム(HPSEC-MALLS-RI)を採用し、Mark-Houwinkパラメータを用いて計算し較正して、サンプルの重量平均分子量(Mw)を得た。
(5)in vitroシミュレーション消化:その場で配合した混合酵素液を用い、37℃でサンプルを計時消化した。混合酵素液の酵素活性配合比は、パンクレアチン(500 U/ml):グリコシダーゼ(700 U/ml):インベルターゼ(400 U/ml)とした。グルコースオキシダーゼ測定キット(GOPOD-FORMAT)を用いてFSG、G20、G120およびTGにおける吸光度を測定し、RSの収率(%)を計算した。公式は次のとおりである。
RS(%)=(TG-G120)× 0.9/ TS ×100
式中、換算係数0.9を用いてグルコースを異なる消化成分のデンプン値に変換した。TSは総デンプン質量(g)である。
(6)CLDの測定:ゲル補助糖電気泳動技術を採用し、すなわちPA-800Plus Faceシステムで、N-CHOでコーティングしたキャピラリーにおいて分岐デンプン鎖の数量分布を測定し、すなわち検出器信号を用いてNde(X)を得た。
【0026】
本実施例で得られたRDは、Mwが2.835kDaであり、デンプン中のRD含有量は58.27%であり、低DP分岐(DP<6)の含有量は64.73%であった。
【0027】
実施例3
RDの同時押出および制限的酵素分解の製造方法のステップは次のとおりである。
【0028】
(1)混合酵素液予備活性化:予め調整しておいた混合材料の水分含有量およびデンプン無水ベース質量に基づき、調製したA類アミラーゼ(β-アミラーゼ)の酵素液濃度は20U/g、調製したB類アミラーゼ(イソアミラーゼ)の酵素液濃度は30U/gとした。酵素液を混合した後、β-アミラーゼ:イソアミラーゼ=1:1.5の混合酵素液を配合した。押出前に、50℃水浴条件下で30分予備活性化した。
(2)温度制御高せん断押出:普通のコーンスターチの水分含有量を20wt%に調節し、押出時に、ステップ(1)で配合した混合酵素液を同時に添加した。二軸押出機バレルのシステムパラメータは、温度領域分布が順に20℃、40℃、60℃、80℃、100℃(ダイ領域)であり、スクリュー回転速度が150r/分であり、1回でデンプン糊を押出した。
(3)老化制御:押出したデンプン糊を10℃の条件下で8日間冷却老化した。真空凍結乾燥後に、200メッシュで研磨し、前記RDを得た。
(4)分子量測定:高速液体分子排斥クロマトグラフィーと多角度光散乱検出器および示差屈折率検出器マルチシステム(HPSEC-MALLS-RI)を採用し、Mark-Houwinkパラメータを用いて計算し較正して、サンプルの重量平均分子量(Mw)を得た。
(5)in vitroシミュレーション消化:その場で配合した混合酵素液を用い、37℃でサンプルを計時消化した。混合酵素液の酵素活性配合比は、パンクレアチン(500 U/ml):グリコシダーゼ(700 U/ml):インベルターゼ(400 U/ml)とした。グルコースオキシダーゼ測定キット(GOPOD-FORMAT)を用いてFSG、G20、G120およびTGにおける吸光度を測定し、RSの収率(%)を計算した。公式は次のとおりである。
RS(%)=(TG-G120)× 0.9/ TS ×100
式中、換算係数0.9を用いてグルコースを異なる消化成分のデンプン値に変換した。TSは総デンプン質量(g)である。
(6)CLDの測定:ゲル補助糖電気泳動技術を採用し、すなわちPA-800Plus Faceシステムで、N-CHOでコーティングしたキャピラリーにおいて分岐デンプン鎖の数量分布を測定し、すなわち検出器信号を用いてNde(X)を得た。
【0029】
本実施例で得られたRDは、Mwが0.908kDaであり、デンプン中のRD含有量は65.43%であり、低DP分岐(DP<6)の含有量は69.22%であった。
【0030】
比較実施例1
RDの同時押出の製造方法のステップは次のとおりである。
【0031】
(1)デンプンマイクロドメインに対する本発明における複合酵素の制御効果を証明するため、本比較実施例は、無酵素押出として設け、すなわち、前記複合酵素を添加しない。
(2)温度制御高せん断押出:普通のコーンスターチの水分含有量を30wt%に調節した。二軸押出機バレルのシステムパラメータは、温度領域分布が順に30℃、50℃、70℃、90℃、110℃(ダイ領域)であり、スクリュー回転速度が150r/分であり、1回でデンプン糊を押出した。
(3)老化制御:押出したデンプン糊を4℃の条件下で4日間冷却老化した。真空凍結乾燥後に、200メッシュで研磨し、前記RDを得た。
(4)分子量測定:高速液体分子排斥クロマトグラフィーと多角度光散乱検出器および示差屈折率検出器マルチシステム(HPSEC-MALLS-RI)を採用し、Mark-Houwinkパラメータを用いて計算し較正して、サンプルの重量平均分子量(Mw)を得た。
(5)in vitroシミュレーション消化:その場で配合した混合酵素液を用い、37℃でサンプルを計時消化した。混合酵素液の酵素活性配合比は、パンクレアチン(500 U/ml):グリコシダーゼ(700 U/ml):インベルターゼ(400 U/ml)とした。グルコースオキシダーゼ測定キット(GOPOD-FORMAT)を用いてFSG、G20、G120およびTGにおける吸光度を測定し、RSの収率(%)を計算した。公式は次のとおりである。
RS(%)=(TG-G120)× 0.9/ TS ×100
式中、換算係数0.9を用いてグルコースを異なる消化成分のデンプン値に変換した。TSは総デンプン質量(g)である。
(6)CLDの測定:ゲル補助糖電気泳動技術を採用し、すなわちPA-800Plus Faceシステムで、N-CHOでコーティングしたキャピラリーにおいて分岐デンプン鎖の数量分布を測定し、すなわち検出器信号を用いてNde(X)を得た。
【0032】
本実施例で得られたサンプルは、Mwが37.23kDaであり、RS含有量は42.50%であり、低DP分岐(DP<6)の含有量は19.52%であり、すなわち、小分子量のRDを製造できなかった。
【0033】
比較実施例2
RDの同期押出および単一酵素分解の製造方法のステップは次のとおりである。
【0034】
(1)デンプンマイクロドメインに対する本発明における複合酵素の制御効果を証明するため、本実施例は、単一アミラーゼと押出加工を組み合わせ、すなわち、調製したA類アミラーゼ(β-アミラーゼ)の酵素液濃度は20U/gとした。押出前に、50℃水浴条件下で30分予備活性化した。
(2)温度制御高せん断押出:普通のコーンスターチの水分含有量を30wt%に調節した。二軸押出機バレルのシステムパラメータは、温度領域分布が順に20℃、40℃、60℃、80℃、100℃(ダイ領域)であり、スクリュー回転速度が150r/分であり、1回でデンプン糊を押出した。
(3)老化制御:押出したデンプン糊を4℃の条件下で4日間冷却老化した。真空凍結乾燥後に、200メッシュで研磨し、前記RDを得た。
(4)分子量測定:高速液体分子排斥クロマトグラフィーと多角度光散乱検出器および示差屈折率検出器マルチシステム(HPSEC-MALLS-RI)を採用し、Mark-Houwinkパラメータを用いて計算し較正して、サンプルの重量平均分子量(Mw)を得た。
(5)in vitroシミュレーション消化:その場で配合した混合酵素液を用い、37℃でサンプルを計時消化した。混合酵素液の酵素活性配合比は、パンクレアチン(500 U/ml):グリコシダーゼ(700 U/ml):インベルターゼ(400 U/ml)とした。グルコースオキシダーゼ測定キット(GOPOD-FORMAT)を用いてFSG、G20、G120およびTGにおける吸光度を測定し、RSの収率(%)を計算した。公式は次のとおりである。
RS(%)=(TG-G120)× 0.9/ TS ×100
式中、換算係数0.9を用いてグルコースを異なる消化成分のデンプン値に変換した。TSは総デンプン質量(g)である。
(6)CLDの測定:ゲル補助糖電気泳動技術を採用し、すなわちPA-800Plus Faceシステムで、N-CHOでコーティングしたキャピラリーにおいて分岐デンプン鎖の数量分布を測定し、すなわち検出器信号を用いてNde(X)を得た。
【0035】
本実施例で得られたサンプルは、Mwが24.86kDaであり、RS含有量は46.54%であり、低DP分岐(DP<6)の含有量は27.13%であり、すなわち、小分子量のRDを製造できなかった。
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2022-05-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作用部位がα-1,4グリコシド結合またはβ-1,4グリコシド結合であるA類アミラーゼと、作用部位がα-1,6グリコシド結合であるB類アミラーゼとを含み、A類アミラーゼの総酵素活性とB類アミラーゼの総酵素活性との比が1:1.5~6である複合酵素とデンプンとの混合材料を、スクリューせん断共押出処理し、冷却老化した後、高結晶度の低分子量耐性デキストリンを形成し、前記混合材料において、A類アミラーゼの酵素活性は5~20U/gであり、B類アミラーゼの酵素活性は7.5~120U/gであり、上記酵素活性は材料無水ベース(g)で計算されることを特徴とする耐性デキストリンの製造方法。
【請求項2】
前記スクリューせん断共押出処理は、五段階温度領域押出を含み、温度は順に、20~50℃、40~70℃、60~90℃、80~110℃、100~130℃であり、五段階温度領域の温度は順に高くなり、スクリュー回転速度は150~400r/分であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記デンプンは、コーンスターチ、ハイアミロースコーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、馬鈴薯デンプン、小麦デンプン、タピオカデンプン、甘藷デンプン、米デンプンの一種または複数種であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
複合酵素とデンプンの混合材料の含水量が20~40wt%であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記冷却老化は、スクリューせん断共押出処理後に得られた構造再構築デンプン糊を0~10℃の条件下に置き、2~8日間冷却再結晶することを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【国際調査報告】