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特表2023-504262疾患の治療のためのセスロマイシンの塩及び多形体 セスロマイシンの塩及び多形体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-02
(54)【発明の名称】疾患の治療のためのセスロマイシンの塩及び多形体 セスロマイシンの塩及び多形体
(51)【国際特許分類】
   C07H 17/08 20060101AFI20230126BHJP
   A61K 31/7052 20060101ALI20230126BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20230126BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20230126BHJP
   A61P 33/02 20060101ALI20230126BHJP
   A61P 33/06 20060101ALI20230126BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230126BHJP
【FI】
C07H17/08 B CSP
A61K31/7052
A61P31/00
A61P31/04
A61P33/02
A61P33/06
A61K45/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022532716
(86)(22)【出願日】2020-12-02
(85)【翻訳文提出日】2022-07-25
(86)【国際出願番号】 US2020062882
(87)【国際公開番号】W WO2021113357
(87)【国際公開日】2021-06-10
(31)【優先権主張番号】62/942,508
(32)【優先日】2019-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522215676
【氏名又は名称】アリクァンタムアールエクス,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ALIQUANTUMRX, INC.
【住所又は居所原語表記】1812 Ashland Avenue, 1st Floor, Suite 100, Baltimore, Maryland 21205, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100130443
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 真治
(72)【発明者】
【氏名】デヴィッド サリヴァン
(72)【発明者】
【氏名】アマンダ ヒル
(72)【発明者】
【氏名】ケート ウィッタリング
(72)【発明者】
【氏名】エイミー タッパー
(72)【発明者】
【氏名】ニコラ カルドフ
【テーマコード(参考)】
4C057
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C057AA14
4C057AA15
4C057CC03
4C057DD03
4C057KK12
4C084AA19
4C084NA05
4C084ZB351
4C084ZB352
4C084ZB381
4C084ZB382
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086EA13
4C086GA13
4C086GA15
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA02
4C086NA03
4C086NA11
4C086NA14
4C086ZB32
4C086ZB35
4C086ZB38
(57)【要約】
本明細書に開示されるのは、細菌及びある種の原生動物(例えば、マラリア、バベシア症、トキソプラズマ症、下痢症、呼吸器疾患、性行為細菌感染症が含まれる)、並びにいくつかのバイオテロ細菌(例えば、ペスト、野兎病、及び吸入炭疽が含まれる)による感染に起因する疾患の治療のための、セスロマイシンの新規の塩及び多形体である。本明細書に開示されるのはまた、炎症性疾患(例えば、骨盤内炎症性疾患及び消化性潰瘍疾患が含まれる)の治療のための、セスロマイシンの新規の塩及び多形体である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造式Iの化合物
【化1】

又はその多形体(ここでは:
aは、約0.5と3.5の間(端値を含む)の分数又は整数であり;
bは、約0と10の間(端値を含む)の分数又は整数であり;
Mは、塩酸、リン酸、及び酢酸から選択される)。
【請求項2】
aが、約1.0である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Mが、塩酸である、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
約14.1、12.9、10.1、8.8、8.5、6.5、5.5、5.1、4.8、及び4.4Åの面間隔dを有する、4つ以上のピークの存在を特徴とする、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
約14.1、12.9、10.1、8.8、8.5、6.5、5.5、5.1、4.8、及び4.4Åの面間隔dを有する、6つ以上のピークの存在を特徴とする、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
約14.1、12.9、10.1、8.8、8.5、6.5、5.5、5.1、4.8、及び4.4Åの面間隔dを有する、8つ以上のピークの存在を特徴とする、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
約16.5、14.5、10.5、9.1、8.3、7.8、7.6、5.2、4.7、及び4.1Åの面間隔dを有する、4つ以上のピークの存在を特徴とする、請求項3に記載の化合物。
【請求項8】
約16.5、14.5、10.5、9.1、8.3、7.8、7.6、5.2、4.7、及び4.1Åの面間隔dを有する、6つ以上のピークの存在を特徴とする、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
約16.5、14.5、10.5、9.1、8.3、7.8、7.6、5.2、4.7、及び4.1Åの面間隔dを有する、8つ以上のピークの存在を特徴とする、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
Mが、酢酸である、請求項2に記載の化合物。
【請求項11】
約14.6、10.6、9.4、8.0、7.4、6.6、5.1、4.3、4.0、及び3.9Åの面間隔dを有する、4つ以上のピークの存在を特徴とする、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
約14.6、10.6、9.4、8.0、7.4、6.6、5.1、4.3、4.0、及び3.9Åの面間隔dを有する、6つ以上のピークの存在を特徴とする、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
約14.6、10.6、9.4、8.0、7.4、6.6、5.1、4.3、4.0、及び3.9Åの面間隔dを有する、8つ以上のピークの存在を特徴とする、請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
医薬品としての使用のための、請求項1~13のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項15】
疾患の治療に使用するための、請求項1~13のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項16】
疾患の予防又は治療のための医薬品の製造に使用するための、請求項1~13のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項17】
薬学的に許容し得る担体と共に、請求項1~13のいずれか一項に記載の化合物を含む、医薬組成物。
【請求項18】
請求項1~13のいずれか一項に記載の化合物と細菌を接触させることを含む、微生物タンパク質合成の阻害の方法。
【請求項19】
前記微生物が、細菌である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記微生物が、原生動物である、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
感染症の治療の方法であって、請求項1~13のいずれか一項に記載の治療有効量の化合物の、それを必要とする患者への投与を含む方法。
【請求項22】
a.請求項1~13のいずれか一項に記載の治療有効量の化合物;及び
b.別の治療薬
の投与を含む、感染症の治療の方法。
【請求項23】
前記感染症が、炭疽である、請求項21又は22に記載の方法。
【請求項24】
前記感染症が、マラリアである、請求項21又は22に記載の方法。
【請求項25】
前記感染症が、細菌によって引き起こされる、請求項21又は22に記載の方法。
【請求項26】
前記感染症が、原生動物によって引き起こされる、請求項21又は22に記載の方法。
【請求項27】
患者における効果であって、前記効果は、
微生物レベルを低下させること;
微生物死滅の速度を増大させること;
治癒(例えば、微生物のレベルの、検出不可能なレベルへの低下)のための最小用量を減少させること;及び
治癒(例えば、微生物のレベルの、検出不可能なレベルへの低下)に必要とされる期間を短縮すること
から選択される、効果を達成するための方法であって、請求項1~13のいずれか一項に記載の治療有効量の化合物の、患者への投与を含む方法。
【請求項28】
前記微生物が、細菌である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記微生物が、原生動物である、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記細菌が、バクテロイデス属(Bacteroides)(例えば、B.テクタム(B.tectum)が含まれる);コリネバクテリウム属(Corynebacterium);クラミジア属(Chlamydia)(例えば、C.ニューモニエ(C.pneumoniae)及びC.トラコマチス(C.trachomatis)が含まれる);エイケネラ属(Eikenella)(例えば、E.コローデンス(E.corrodens)が含まれる);腸内細菌科(Enterobacteriaceae);フソバクテリウム属(Fusobacterium)(例えば、F.ヌクレアタム(F.nucleatum)が含まれる);ヘモフィルス属(Haemophilus)(例えば、H.インフルエンザエ(H.influenzae)が含まれる);レジオネラ属(Leigonella)(例えば、L.ニューモフィラ(L.pneumophila)が含まれる);モラクセラ属(Moraxella)(例えば、M.カタラーリス(M.catarrhalis)が含まれる);マイコバクテリウム属(Mycobacterium)(例えば、M.アビウム(M.avium)、M.イントラセルラーレ(M.intracellulare)、M.キマエラ(M.chimaera)、M.カンサシ(M.kansasii)、M.マルモエンセ(M.malmoense)、M.ゼノピ(M.xenopi)、M.アブセサス(M.abscessus)、M.フォーチュイタム(M.fortuitum)複合体、及びM.ケロネー(M.chelonae)が含まれる);マイコプラズマ属(Mycoplasma)(例えば、M.ホミニス(M.hominis)、M.ゲニタリウム(M.genitalium)、及びM.ニューモニエ(M.pneumoniae)が含まれる);ナイセリア属(Neisseria)(例えば、淋菌(N.gonorrhoeae)が含まれる);パスツレラ属(Pasturella)(例えば、P.セプチカ(P.septica)及びP.ムルトシダ(P.multocida)が含まれる);ペプトストレプトコッカス属(Peptostreptococcus)(例えば、P.マグヌス(P.magnus)及びP.ミクロス(P.micros)が含まれる);プレボテラ属(Prevotella)(例えば、P.メラニノゲニカ(P.melaninogenica)及びP.ヘパリノリティカ(P.heparinolytica)が含まれる);ポルフィロモナス属(Porphyromonas);プロピオニバクテリウム属(Propionibacterium);ブドウ球菌属(Staphylococcus)(例えば、黄色ブドウ球菌(S.aureus)が含まれる);連鎖球菌属(Streptococcus)(例えば、肺炎球菌(S.pneumoniae)が含まれる);ウレアプラズマ属(Ureaplasma)(例えば、U.ウレアリチカム(U.urealyticum)及びU.パルバム(U.parvum)が含まれる);及びベイロネラ属(Veillonella)から選択される、請求項19、25、及び28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記原生動物が、クリプトスポリジウム属(Cryptosporidium);コクシジウム亜綱(Coccidia);プラスモジウム属(Plasmodium);トキソプラズマ属(Toxoplasma);バベシア属(Babesia);及びネオスポラ属(Neospora)から選択される、請求項20、26、及び29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記原生動物が、トキソプラズマ原虫(Toxoplasma gondii)である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記原生動物が、プラスモジウム属(Plasmodium)の種である、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記プラスモジウム属(Plasmodium)が、熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)、三日熱マラリア原虫(P.vivax)、卵形マラリア原虫(P.ovale)、四日熱マラリア原虫(P.malariae)、及び二日熱マラリア原虫(P.knowlesi)から選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記プラスモジウム属(Plasmodium)が、熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)である、請求項34に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、その開示が完全な形で本明細書に書かれているかのように参照によって組み込まれる、2019年12月2日に出願された米国仮特許出願第62/942,508号明細書の優先権の利益を主張する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0002】
本明細書に開示されるのは、新規の置換されたセスロマイシン塩及び多形体及び組成物、並びに疾患の治療のための医薬品としてのその適用である。細菌及びある種の原生動物(例えば、マラリア、バベシア症、トキソプラズマ症、下痢症、呼吸器疾患、性行為細菌感染症が含まれる)、並びにいくつかのバイオテロ細菌(例えば、ペスト、野兎病、及び吸入炭疽が含まれる)による感染に起因する疾患の治療の方法も提供される。本明細書に開示されるのはまた、炎症性疾患(例えば、骨盤内炎症性疾患及び消化性潰瘍疾患が含まれる)の治療のための、セスロマイシンの新規の塩及び多形体である。
【0003】
そのうちのいくらかは、細菌、マイコバクテリア、及びある種の原生動物におけるタンパク質合成を阻害することが判明している、新規の化合物及び医薬組成物、それに加えて、これらの化合物を合成及び使用する方法(これらの化合物を投与することによる患者における感染症の治療のための方法が含まれる)。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1】実施例1化合物のH NMRスペクトル(DMSO-d)を示す。
図2】供給されたままのセスロマイシンのHPLC及び熱分析を示す。(a)原寸及び(b)拡大したHPLC。(c)熱分析:(i)4.5%重量減少;(ii)熱流(右目盛り、W/g)。
図3】供給されたままのセスロマイシンの温度変調DSCを示す。
図4】(a)等温及び(b)動力学的方式でのセスロマイシンについてのGVS挙動を示す。
図5】アセトン中での塩形成実験からの生成物についてのPXRDを示す。
図6】EtOAc中での塩形成実験からの生成物についてのPXRDを示す。
図7】塩形成実験からのリン酸塩パターン1のPXRD及びTGA特性を示す。
図8】塩形成実験からの酢酸塩パターン1のPXRD及びTGA特性を示す。
図9】塩形成実験からの塩化物パターン1のPXRD及びTGA特性を示す。
図10】酢酸塩パターン1の遊離塩基パターン1への変換についてのVT PXRD研究を示す。
図11】遊離塩基パターン1についてのPXRDを示す。
図12】(a)等温及び(b)動力学的方式でのリン酸セスロマイシンパターン1についてのGVS挙動を示す。
図13】酢酸塩パターン1スケールアップ材料についてのGVS挙動を示す。
図14】(a)GVS前及び(b)GVS後の酢酸塩パターン1の(a)PXRDを示す。
図15】(a)HO及び(b)PBSから得られた遊離塩基パターン2のPXRD特性を示す。
図16】手順1を使用する塩化セスロマイシンについての多形体実験のPXRD特性を示す。
図17】手順2を使用する塩化セスロマイシンについての多形体実験のPXRD特性を示す。
図18】手順3を使用する塩化セスロマイシンについての多形体実験のPXRD特性を示す。
図19】手順4を使用する塩化セスロマイシンについての多形体実験のPXRD特性を示す。
図20】塩化物パターン2についての(a)PXRD及び(b)H NMRを示す。
図21】塩化物パターン2についてのGVS挙動を示す。
図22】スラリー実験のPXRD分析を示す。
図23】塩化セスロマイシンパターン2の保管に関するPXRD研究を示す。
図24】塩化セスロマイシンパターン1及び2、並びに混合物の、個々の試料についてのPXRDを示す。
図25】溶解度実験後に得られた固体の重ね合わせを示す。
図26】溶解度実験後に得られた固体の重ね合わせを示す。
図27】ネズミマラリア原虫(P.berghei)に対する、セスロマイシン遊離塩基に対する塩化セスロマイシンの試験の結果を示す;セスロマイシン塩(4日、経口)は、遊離塩基の2倍の速度で死滅させ、最初の寄生虫血症に戻るまで1日遅い。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本明細書で提供されるのは、実施形態1:構造式Iを有する化合物
【化1】

又はその多形体(ここでは:
aは、約0.5と3.5の間(端値を含む)の分数又は整数であり;
bは、約0と10の間(端値を含む)の分数又は整数であり;
Mは、塩酸、リン酸、及び酢酸から選択される)
である。
【0006】
本明細書に開示されるある種の化合物は、細菌タンパク質合成の阻害に有用な活性を有し、細菌タンパク質合成が活性な役割を果たす疾患の治療又は予防に使用することができる。ある種の実施形態は、細菌タンパク質合成を阻害するための方法を提供する。他の実施形態は、こうした治療を必要とする患者において、細菌感染によって引き起こされる疾患を治療するための方法であって、治療有効量の本明細書に開示される通りの化合物又は組成物を前記患者に投与することを含む方法を提供する。提供されるのはまた、細菌タンパク質合成の阻害によって寛解する疾患の治療のための医薬品の製造に使用するための、本明細書に開示されるある種の化合物の使用である。
【0007】
いくつかの実施形態では、細菌は、バクテロイデス属(Bacteroides)(例えば、B.テクタム(B.tectum)が含まれる);コリネバクテリウム属(Corynebacterium);クラミジア属(Chlamydia)(例えば、C.ニューモニエ(C.pneumoniae)及びC.トラコマチス(C.trachomatis)が含まれる);エイケネラ属(Eikenella)(例えば、E.コローデンス(E.corrodens)が含まれる);腸内細菌科(Enterobacteriaceae);フソバクテリウム属(Fusobacterium)(例えば、F.ヌクレアタム(F.nucleatum)が含まれる);ヘモフィルス属(Haemophilus)(例えば、H.インフルエンザエ(H.influenzae)が含まれる);レジオネラ属(Leigonella)(例えば、L.ニューモフィラ(L.pneumophila)が含まれる);モラクセラ属(Moraxella)(例えば、M.カタラーリス(M.catarrhalis)が含まれる);マイコバクテリウム属(Mycobacterium)(例えば、M.アビウム(M.avium)、M.イントラセルラーレ(M.intracellulare)、M.キマエラ(M.chimaera)、M.カンサシ(M.kansasii)、M.マルモエンセ(M.malmoense)、M.ゼノピ(M.xenopi)、M.アブセサス(M.abscessus)、M.フォーチュイタム(M.fortuitum)複合体、及びM.ケロネー(M.chelonae)が含まれる);マイコプラズマ属(Mycoplasma)(例えば、M.ホミニス(M.hominis)、M.ゲニタリウム(M.genitalium)、及びM.ニューモニエ(M.pneumoniae)が含まれる);ナイセリア属(Neisseria)(例えば、淋菌(N.gonorrhoeae)が含まれる);パスツレラ属(Pasturella)(例えば、P.セプチカ(P.septica)及びP.ムルトシダ(P.multocida)が含まれる);ペプトストレプトコッカス属(Peptostreptococcus)(例えば、P.マグヌス(P.magnus)及びP.ミクロス(P.micros)が含まれる);プレボテラ属(Prevotella)(例えば、P.メラニノゲニカ(P.melaninogenica)及びP.ヘパリノリティカ(P.heparinolytica)が含まれる);ポルフィロモナス属(Porphyromonas);プロピオニバクテリウム属(Propionibacterium);ブドウ球菌属(Staphylococcus)(例えば、黄色ブドウ球菌(S.aureus)が含まれる);連鎖球菌属(Streptococcus)(例えば、肺炎球菌(S.pneumoniae)が含まれる);ウレアプラズマ属(Ureaplasma)(例えば、U.ウレアリチカム(U.urealyticum)及びU.パルバム(U.parvum)が含まれる);及びベイロネラ属(Veillonella)から選択される。
【0008】
本明細書に開示されるある種の化合物は、原生動物タンパク質合成の阻害に有用な活性を有し、細菌タンパク質合成が活性な役割を果たす疾患の治療又は予防に使用することができる。ある種の実施形態は、原生動物タンパク質合成を阻害するための方法を提供する。他の実施形態は、こうした治療を必要とする患者において、原生動物感染によって引き起こされる疾患を治療するための方法であって、治療有効量の本明細書に開示される通りの化合物又は組成物を前記患者に投与することを含む方法を提供する。提供されるのはまた、原生動物タンパク質合成の阻害によって寛解する疾患の治療のための医薬品の製造に使用するための、本明細書に開示されるある種の化合物の使用である。
【0009】
いくつかの実施形態では、原生動物は、クリプトスポリジウム属(Cryptosporidium);コクシジウム亜綱(Coccidia);プラスモジウム属(Plasmodium);トキソプラズマ属(Toxoplasma);(例えば、トキソプラズマ原虫(T.gondii)が含まれる);バベシア属(Babesia);及びネオスポラ属(Neospora)から選択される。いくつかの実施形態では、原生動物は、トキソプラズマ原虫(Toxoplasma gondii)である。いくつかの実施形態では、原生動物は、プラスモジウム属(Plasmodium)の種である。いくつかの実施形態では、プラスモジウム属(Plasmodium)は、熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)、三日熱マラリア原虫(P.vivax)、卵形マラリア原虫(P.ovale)、四日熱マラリア原虫(P.malariae)、及び二日熱マラリア原虫(P.knowlesi)から選択される。いくつかの実施形態では、プラスモジウム属(Plasmodium)、熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)である。
【0010】
提供されるのはまた、薬学的に許容し得る担体と共に、本明細書に開示される1種以上の化合物を含む、医薬組成物、並びにこれらの化合物及び組成物を作成及び使用する方法である。
【0011】
本開示は、さらなる実施形態を提供する:
【0012】
実施形態2:Mが酢酸である、実施形態1の化合物。
【0013】
実施形態3:Mがリン酸である、実施形態1の化合物。
【0014】
実施形態4:Mが塩酸である、実施形態1の化合物。
【0015】
実施形態5:化合物が、固体形態である、実施形態1~4のいずれか一項の化合物。
【0016】
実施形態6:化合物が、結晶形態である、実施形態1~5のいずれか一項の化合物。
【0017】
実施形態7:aが、約0.5と3.0の間(端値を含む)の分数又は整数である、実施形態1の化合物。
【0018】
実施形態8:aが、約0.5と2.0の間(端値を含む)の分数又は整数である、実施形態7の化合物。
【0019】
実施形態9:aが、約0.5と1.5の間(端値を含む)の分数又は整数である、実施形態8の化合物。
【0020】
実施形態10:aが、約0.5と1.0の間(端値を含む)の分数又は整数である、実施形態9の化合物。
【0021】
実施形態11:aが、約1.0である、実施形態10の化合物。
【0022】
実施形態12:aが、1.0である、実施形態11の化合物。
【0023】
実施形態13:Mが、酢酸である、実施形態12の化合物。
【0024】
実施形態14:約14.6、10.6、9.4、8.0、7.4、6.6、5.1、4.3、4.0、及び3.9Åの面間隔dを有する4つ以上のピークの存在を特徴とする、実施形態13の化合物。
【0025】
実施形態15:約14.6、10.6、9.4、8.0、7.4、6.6、5.1、4.3、4.0、及び3.9Åの面間隔dを有する5つ以上のピークの存在を特徴とする、実施形態14の化合物。
【0026】
実施形態16:約14.6、10.6、9.4、8.0、7.4、6.6、5.1、4.3、4.0、及び3.9Åの面間隔dを有する6つ以上のピークの存在を特徴とする、実施形態15の化合物。
【0027】
実施形態17:約14.6、10.6、9.4、8.0、7.4、6.6、5.1、4.3、4.0、及び3.9Åの面間隔dを有する7つ以上のピークの存在を特徴とする、実施形態16の化合物。
【0028】
実施形態18:約14.6、10.6、9.4、8.0、7.4、6.6、5.1、4.3、4.0、及び3.9Åの面間隔dを有する8つ以上のピークの存在を特徴とする、実施形態17の化合物。
【0029】
実施形態19:約6.0、8.3、9.4、11.0、12.0、13.4、17.3、20.9、22.2、及び22.6度の、CuKα放射線を使用する2-シータ値を有する4つ以上のピークの存在を特徴とする、実施形態13の化合物。
【0030】
実施形態20:約6.0、8.3、9.4、11.0、12.0、13.4、17.3、20.9、22.2、及び22.6度の、CuKα放射線を使用する2-シータ値を有する5つ以上のピークの存在を特徴とする、実施形態19の化合物。
【0031】
実施形態21:約6.0、8.3、9.4、11.0、12.0、13.4、17.3、20.9、22.2、及び22.6度の、CuKα放射線を使用する2-シータ値を有する6つ以上のピークの存在を特徴とする、実施形態20の化合物。
【0032】
実施形態22:約6.0、8.3、9.4、11.0、12.0、13.4、17.3、20.9、22.2、及び22.6度の、CuKα放射線を使用する2-シータ値を有する7つ以上のピークの存在を特徴とする、実施形態21の化合物。
【0033】
実施形態23:約6.0、8.3、9.4、11.0、12.0、13.4、17.3、20.9、22.2、及び22.6度の、CuKα放射線を使用する2-シータ値を有する8つ以上のピークの存在を特徴とする、実施形態22の化合物。
【0034】
実施形態24:Mが、塩酸である、実施形態12の化合物。
【0035】
実施形態25:約14.1、12.9、10.1、8.8、8.5、6.5、5.5、5.1、4.8、及び4.4Åの面間隔dを有する、4つ以上のピークの存在を特徴とする、実施形態24の化合物。
【0036】
実施形態26:約14.1、12.9、10.1、8.8、8.5、6.5、5.5、5.1、4.8、及び4.4Åの面間隔dを有する、5つ以上のピークの存在を特徴とする、実施形態25の化合物。
【0037】
実施形態27:約14.1、12.9、10.1、8.8、8.5、6.5、5.5、5.1、4.8、及び4.4Åの面間隔dを有する、6つ以上のピークの存在を特徴とする、実施形態26の化合物。
【0038】
実施形態28:約14.1、12.9、10.1、8.8、8.5、6.5、5.5、5.1、4.8、及び4.4Åの面間隔dを有する、7つ以上のピークの存在を特徴とする、実施形態27の化合物。
【0039】
実施形態29:約14.1、12.9、10.1、8.8、8.5、6.5、5.5、5.1、4.8、及び4.4Åの面間隔dを有する、8つ以上のピークの存在を特徴とする、実施形態28の化合物。
【0040】
実施形態30:約6.3、6.9、8.7、10.0、10.5、13.7、16.0、17.5、18.6、及び20.2度の、CuKα放射線を使用する2-シータ値を有する4つ以上のピークの存在を特徴とする、実施形態24の化合物。
【0041】
実施形態31:約6.3、6.9、8.7、10.0、10.5、13.7、16.0、17.5、18.6、及び20.2度の、CuKα放射線を使用する2-シータ値を有する5つ以上のピークの存在を特徴とする、実施形態30の化合物。
【0042】
実施形態32:約6.3、6.9、8.7、10.0、10.5、13.7、16.0、17.5、18.6、及び20.2度の、CuKα放射線を使用する2-シータ値を有する6つ以上のピークの存在を特徴とする、実施形態31の化合物。
【0043】
実施形態33:約6.3、6.9、8.7、10.0、10.5、13.7、16.0、17.5、18.6、及び20.2度の、CuKα放射線を使用する2-シータ値を有する7つ以上のピークの存在を特徴とする、実施形態32の化合物。
【0044】
実施形態34:約6.3、6.9、8.7、10.0、10.5、13.7、16.0、17.5、18.6、及び20.2度の、CuKα放射線を使用する2-シータ値を有する8つ以上のピークの存在を特徴とする、実施形態33の化合物。
【0045】
実施形態35:100℃への加熱時の、約5.3%以下の質量損失を特徴とする、実施形態24~34のいずれか一項の化合物。
【0046】
実施形態36:カール・フィッシャー滴定によって測定された場合の、約3.3以下の水当量の水分含有量を特徴とする、実施形態24~34のいずれか一項の化合物。
【0047】
実施形態37:人工胃液(SGF)中での2時間での約27mg/mL以上の動力学的溶解度を特徴とする、実施形態24~34のいずれか一項の化合物。
【0048】
実施形態38:リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中での24時間での約27mg/mL以上の熱力学的溶解度を特徴とする、実施形態24~34のいずれか一項の化合物。
【0049】
実施形態39:約16.5、14.5、10.5、9.1、8.3、7.8、7.6、5.2、4.7、及び4.1Åの面間隔dを有する、4つ以上のピークの存在を特徴とする、実施形態24の化合物。
【0050】
実施形態40:約16.5、14.5、10.5、9.1、8.3、7.8、7.6、5.2、4.7、及び4.1Åの面間隔dを有する、5つ以上のピークの存在を特徴とする、実施形態39の化合物。
【0051】
実施形態41:約16.5、14.5、10.5、9.1、8.3、7.8、7.6、5.2、4.7、及び4.1Åの面間隔dを有する、6つ以上のピークの存在を特徴とする、実施形態40の化合物。
【0052】
実施形態42:約16.5、14.5、10.5、9.1、8.3、7.8、7.6、5.2、4.7、及び4.1Åの面間隔dを有する、7つ以上のピークの存在を特徴とする、実施形態41の化合物。
【0053】
実施形態43:約16.5、14.5、10.5、9.1、8.3、7.8、7.6、5.2、4.7、及び4.1Åの面間隔dを有する、8つ以上のピークの存在を特徴とする、実施形態42の化合物。
【0054】
実施形態44:約5.3、6.1、8.4、9.8、10.7、11.4、11.6、17.0、18.8、及び21.4度の、CuKα放射線を使用する2-シータ値を有する4つ以上のピークの存在を特徴とする、実施形態24の化合物。
【0055】
実施形態45:約5.3、6.1、8.4、9.8、10.7、11.4、11.6、17.0、18.8、及び21.4度の、CuKα放射線を使用する2-シータ値を有する5つ以上のピークの存在を特徴とする、実施形態44の化合物。
【0056】
実施形態46:約5.3、6.1、8.4、9.8、10.7、11.4、11.6、17.0、18.8、及び21.4度の、CuKα放射線を使用する2-シータ値を有する6つ以上のピークの存在を特徴とする、実施形態45の化合物。
【0057】
実施形態47:約5.3、6.1、8.4、9.8、10.7、11.4、11.6、17.0、18.8、及び21.4度の、CuKα放射線を使用する2-シータ値を有する7つ以上のピークの存在を特徴とする、実施形態46の化合物。
【0058】
実施形態48:約5.3、6.1、8.4、9.8、10.7、11.4、11.6、17.0、18.8、及び21.4度の、CuKα放射線を使用する2-シータ値を有する8つ以上のピークの存在を特徴とする、実施形態47の化合物。
【0059】
実施形態49:100℃への加熱時の、約5.1%以下の質量損失を特徴とする、実施形態24~48のいずれか一項の化合物。
【0060】
実施形態50:医薬品としての使用のための、実施形態1~48のいずれかに記載した通りの化合物。
【0061】
実施形態51:疾患の治療に使用するための、実施形態1~48のいずれかに記載した通りの化合物。
【0062】
実施形態52:疾患の予防又は治療のための医薬品の製造に使用するための、実施形態1~48のいずれかに記載した通りの化合物。
【0063】
実施形態53:薬学的に許容し得る担体と共に、実施形態1~48のいずれかに記載した通りの化合物を含む、医薬組成物。
【0064】
実施形態54:実施形態1~48のいずれかに記載した通りの化合物と細菌を接触させることを含む、微生物タンパク質合成の阻害の方法。
【0065】
実施形態55:微生物が、細菌である、実施形態54に記載した通りの方法。
【0066】
実施形態56:微生物が、原生動物である、実施形態54に記載した通りの方法。
【0067】
実施形態57:感染症の治療の方法であって、実施形態1~48のいずれかに記載した通りの治療有効量の化合物の、それを必要とする患者への投与を含む方法。
【0068】
実施形態58:実施形態1~48のいずれかに記載した通りの治療有効量の化合物;及び
別の治療薬
の投与を含む、感染症の治療の方法。
【0069】
実施形態59:前記感染症が、炭疽である、実施形態57及び58のいずれか一項に記載した通りの方法。
【0070】
実施形態60:前記感染症が、マラリアである、実施形態57及び58のいずれか一項に記載した通りの方法。
【0071】
実施形態61:前記感染症が、細菌によって引き起こされる、実施形態57及び58のいずれか一項に記載した通りの方法。
【0072】
実施形態62:前記感染症が、原生動物によって引き起こされる、実施形態57及び58のいずれか一項に記載した通りの方法。
【0073】
実施形態63:患者における効果(ここでは、効果は、
微生物レベルを低下させること;
微生物死滅の速度を増大させること;
治癒(例えば、微生物のレベルの、検出不可能なレベルへの低下)のための最小用量を減少させること;及び
治癒(例えば、微生物のレベルの、検出不可能なレベルへの低下)に必要とされる期間を短縮すること
から選択される)を達成するための方法であって、実施形態1~48のいずれかに記載した通りの治療有効量の化合物の、患者への投与を含む方法。
【0074】
実施形態64:微生物が、細菌である、実施形態63に記載した通りの方法。
【0075】
実施形態65:微生物が、原生動物である、実施形態63に記載した通りの方法。
【0076】
実施形態66:細菌が、バクテロイデス属(Bacteroides)(例えば、B.テクタム(B.tectum)が含まれる);コリネバクテリウム属(Corynebacterium);クラミジア属(Chlamydia)(例えば、C.ニューモニエ(C.pneumoniae)及びC.トラコマチス(C.trachomatis)が含まれる);エイケネラ属(Eikenella)(例えば、E.コローデンス(E.corrodens)が含まれる);腸内細菌科(Enterobacteriaceae);フソバクテリウム属(Fusobacterium)(例えば、F.ヌクレアタム(F.nucleatum)が含まれる);ヘモフィルス属(Haemophilus)(例えば、H.インフルエンザエ(H.influenzae)が含まれる);レジオネラ属(Leigonella)(例えば、L.ニューモフィラ(L.pneumophila)が含まれる);モラクセラ属(Moraxella)(例えば、M.カタラーリス(M.catarrhalis)が含まれる);マイコバクテリウム属(Mycobacterium)(例えば、M.アビウム(M.avium)、M.イントラセルラーレ(M.intracellulare)、M.キマエラ(M.chimaera)、M.カンサシ(M.kansasii)、M.マルモエンセ(M.malmoense)、M.ゼノピ(M.xenopi)、M.アブセサス(M.abscessus)、M.フォーチュイタム(M.fortuitum)複合体、及びM.ケロネー(M.chelonae)が含まれる);マイコプラズマ属(Mycoplasma)(例えば、M.ホミニス(M.hominis)、M.ゲニタリウム(M.genitalium)、及びM.ニューモニエ(M.pneumoniae)が含まれる);ナイセリア属(Neisseria)(例えば、淋菌(N.gonorrhoeae)が含まれる);パスツレラ属(Pasturella)(例えば、P.セプチカ(P.septica)及びP.ムルトシダ(P.multocida)が含まれる);ペプトストレプトコッカス属(Peptostreptococcus)(例えば、P.マグヌス(P.magnus)及びP.ミクロス(P.micros)が含まれる);プレボテラ属(Prevotella)(例えば、P.メラニノゲニカ(P.melaninogenica)及びP.ヘパリノリティカ(P.heparinolytica)が含まれる);ポルフィロモナス属(Porphyromonas);プロピオニバクテリウム属(Propionibacterium);ブドウ球菌属(Staphylococcus)(例えば、黄色ブドウ球菌(S.aureus)が含まれる);連鎖球菌属(Streptococcus)(例えば、肺炎球菌(S.pneumoniae)が含まれる);ウレアプラズマ属(Ureaplasma)(例えば、U.ウレアリチカム(U.urealyticum)及びU.パルバム(U.parvum)が含まれる);及びベイロネラ属(Veillonella)から選択される、実施形態55、61、及び64のいずれかに記載した通りの方法。
【0077】
実施形態67:原生動物が、クリプトスポリジウム属(Cryptosporidium);コクシジウム亜綱(Coccidia);プラスモジウム属(Plasmodium);トキソプラズマ属(Toxoplasma);バベシア属(Babesia);及びネオスポラ属(Neospora)から選択される、実施形態56、62、及び65のいずれか一項に記載した通りの方法。
【0078】
実施形態68:原生動物が、トキソプラズマ原虫(Toxoplasma gondii)である、実施形態67に記載した通りの方法。
【0079】
実施形態69:原生動物が、プラスモジウム属(Plasmodium)の種である、実施形態67に記載した通りの方法。
【0080】
実施形態70:プラスモジウム属(Plasmodium)が、熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)、三日熱マラリア原虫(P.vivax)、卵形マラリア原虫(P.ovale)、四日熱マラリア原虫(P.malariae)、及び二日熱マラリア原虫(P.knowlesi)から選択される、実施形態69に記載した通りの方法。
【0081】
実施形態71:プラスモジウム属(Plasmodium)が、熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)である、実施形態70に記載した通りの方法。
【0082】
提供されるのはまた、実施形態であり、ここでは、上のあらゆる実施形態を、組み合わせが相互排他的ではないという条件で、これらの実施形態のいずれか1つ以上と組み合わせることができる。
【0083】
本明細書で使用する場合、2つの実施形態は、一方が他方とは異なる何かであると定義される場合に「相互排他的」である。例えば、塩が塩化物塩であると特定される実施形態は、塩が酢酸塩であると特定される実施形態と相互排他的である。
【0084】
ある種の実施形態では、bは0である(すなわち、非存在である)。ある種の実施形態では、bは、約1.0である。ある種の実施形態では、bは、約2.0である。
【0085】
本開示はまた、細菌及びある種の原生動物などの微生物におけるタンパク質合成を阻害する方法であって、本明細書に記載した通りの化合物と細菌を接触させるステップを含む方法に関する。細胞表現型、細胞増殖、タンパク質合成活性、タンパク質合成に関連する生化学的アウトプットの変化、又は本明細書に開示される化合物とリボソームの結合、又は生体分子とリボソームの結合は、モニタリングすることができる。こうした方法は、疾患の治療、生物学的アッセイ、細胞アッセイ、生化学的アッセイなどの方式であり得る。
【0086】
本明細書で提供されるのはまた、本明細書に開示される通りの治療有効量の化合物、又はその多形体の、それを必要とする患者への投与を含む、感染症の治療の方法である。
【0087】
本明細書で提供されるのはまた、医薬品としての使用のための、本明細書に開示される通りの化合物である。
【0088】
本明細書で提供されるのはまた、感染症の治療のための医薬品としての使用のための、本明細書に開示される通りの化合物である。
【0089】
提供されるのはまた、医薬品としての、本明細書に開示される通りの化合物の使用である。
【0090】
提供されるのはまた、感染症の治療のための医薬品としての、本明細書に開示される通りの化合物の使用である。
【0091】
提供されるのはまた、感染症の治療のための医薬品の製造に使用するための、本明細書に開示される通りの化合物である。
【0092】
提供されるのはまた、感染症の治療のための、本明細書に開示される通りの化合物の使用である。
【0093】
ある種の実施形態では、感染症は、肺炎である。
【0094】
ある種の実施形態では、感染症は、マラリアである。
【0095】
ある種の実施形態では、感染症は、バベシア症である。
【0096】
ある種の実施形態では、感染症は、トキソプラズマ症である。
【0097】
ある種の実施形態では、感染症は、下痢症である。
【0098】
ある種の実施形態では、感染症は、呼吸器疾患である。
【0099】
ある種の実施形態では、感染症は、性行為細菌感染症である。
【0100】
ある種の実施形態では、感染症は、ペストである。
【0101】
ある種の実施形態では、感染症は、野兎病である。
【0102】
ある種の実施形態では、感染症は、ブルセラ症である。
【0103】
ある種の実施形態では、感染症は、炭疽(例えば、吸入炭疽が含まれる)である。
【0104】
提供されるのはまた、炎症性疾患の治療のための方法である。ある種の実施形態では、炎症性疾患は、骨盤内炎症性疾患である。
【0105】
提供されるのはまた、性行為感染症の治療のための方法である。ある種の実施形態では、性行為感染症は、淋菌(N.gonorrhoeae)によって引き起こされる。ある種の実施形態では、性行為感染症は、C.トラコマチス(C.trachomatis)によって引き起こされる。ある種の実施形態では、性行為感染症は、M.ゲニタリウム(M.genitalium)によって引き起こされる。ある種の実施形態では、性行為感染症は、鼠径リンパ肉芽腫症(「LGV」)である。
【0106】
提供されるのはまた、消化性潰瘍疾患の治療のための方法である。ある種の実施形態では、その治療は、マクロライド耐性のリスクファクターを有しない患者に提供される。
【0107】
本明細書で提供されるのはまた、タンパク質合成の阻害の方法であって、本明細書に開示される通りの化合物、又はその多形体と、細菌又は原生動物を接触させることを含む方法である。
【0108】
本明細書で提供されるのはまた、患者における効果(ここでは、効果は、微生物レベルを低下させること;微生物死滅の速度を増大させること;治癒(例えば、微生物のレベルの、検出不可能なレベルへの低下)のための最小用量を減少させること;治癒(例えば、微生物のレベルの、検出不可能なレベルへの低下)に必要とされる期間を短縮すること;及び細菌及び/又は原生動物におけるタンパク質合成の減少から選択される)を達成するための方法であって、本明細書に開示される通りの治療有効量の化合物、又はその多形体の、患者への投与を含む方法である。
【0109】
提供されるのはまた、薬学的に許容し得る担体と共に、本明細書に開示される通りの化合物を含む、医薬組成物である。
【0110】
ある種の実施形態では、医薬組成物は、経口投与のために製剤化される。
【0111】
ある種の実施形態では、医薬組成物は、非経口投与のために製剤化される。
【0112】
ある種の実施形態では、経口用医薬組成物は、錠剤及びカプセルから選択される。
【0113】
その実施形態に対応する請求項を示さない実施形態の開示は、実施形態の放棄を表明することを意図しない。
【0114】
略語及び定義
本明細書で使用する場合、以下の用語は、示された意味を有する。
【0115】
値の範囲が開示され、表記「nからnまで」又は「nとnの間」(ここではn及びnは数である)が使用される場合、他に指定されない限り、この表記には、それらの数自体と、それらの数の間の範囲が含まれることが意図される。この範囲は、整数又はその間の連続部分であり得、端値を含む。例として、炭素は整数単位であるので、範囲「2個から6個までの炭素」には、2、3、4、5、及び6個の炭素が含まれることが意図される。それと比較して、例として、範囲「1から3μM(マイクロモル濃度)まで」には、1μM、3μM、及びあらゆる数の有効数字の間のすべて(例えば、1.255μM、2.1μM、2.9999μMなど)が含まれることが意図される。
【0116】
用語「約」は、本明細書で使用する場合、数値を修飾することが意図される、これが修飾するものは、誤差の範囲内の変数などの値を表す。データのチャート又は表中に示される、平均値に対する標準偏差などの特定の誤差の範囲が記載されていない場合、用語「約」は、記載された値を包含するであろう範囲、また、有効数字を考慮して切り上げ又は切り捨てしてその数字になることによって含まれるであろう範囲を意味するものと理解するべきである。
【0117】
用語「アルキル」は、単独又は組み合わせで、本明細書で使用する場合、1個から20個までの炭素原子を含有する直鎖又は分枝鎖アルキルラジカルを指す。ある種の実施形態では、前記アルキルは、1個から10個までの炭素原子を含むこととなる。さらなる実施形態では、前記アルキルは、1個から8個までの炭素原子を含むこととなる。アルキル基は、本明細書で定義した通りに、任意に置換することができる。アルキルラジカルの例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソ-アミル、ヘキシル、オクチル、ノニルなどが挙げられる。用語「アルキレン」は、単独又は組み合わせで、本明細書で使用する場合、2つ以上の位置で付着される、直鎖又は分枝鎖の飽和した炭化水素由来の、飽和した脂肪族基、例えばメチレン(-CH-)を指す。他に指定されない限り、用語「アルキル」には、「アルキレン」基が含まれ得る。
【0118】
用語「アミノ」は、単独又は組み合わせで、本明細書で使用する場合、-NRR’(ここでは、R及びR’は、独立に、水素、アルキル、アシル、ヘテロアルキル、アリール、シクロアルキル、ヘテロアリール、及びヘテロシクロアルキル(これらのいずれかが、それ自体、任意に置換されていてもよい)から選択される)を指す。さらに、R及びR’が組み合わされてヘテロシクロアルキル(これらのいずれかが任意に置換されていてもよい)を形成していてもよい。
【0119】
用語「アリール」は、単独又は組み合わせで、本明細書で使用する場合、1、2、又は3個の環(ここでは、こうした多環の環は、共に縮合されている)を含有する炭素環式の芳香族系を意味する。用語「アリール」は、フェニル、ナフチル、アントラセニル、及びフェナントリルなどの芳香族基を包含する。
【0120】
用語「ベンゾ」及び「ベンズ」は、単独又は組み合わせで、本明細書で使用する場合、ベンゼン由来の二価のラジカルC=を指す。例としては、ベンゾチオフェン及びベンズイミダゾールが挙げられる。
【0121】
用語「カルボニル」は、本明細書で使用する場合、単独の場合にはホルミル[-C(O)H]が含まれ、組み合わせでは-C(O)-基である。
【0122】
用語「カルボキシル」又は「カルボキシ」は、本明細書で使用する場合、-C(O)OH、又は、対応する「カルボン酸」陰イオン、例えばカルボン酸塩中にあるものなどを指す。「O-カルボキシ」基は、RC(O)O-基(ここでは、Rは、本明細書で定義した通りである)を指す。「C-カルボキシ」基は、-C(O)OR基(ここでは、Rは、本明細書で定義した通りである)を指す。
【0123】
用語「シアノ」は、単独又は組み合わせで、本明細書で使用する場合、-CNを指す。
【0124】
用語「シクロアルキル」又はもう一つの選択肢として「炭素環」は、単独又は組み合わせで、本明細書で使用する場合、飽和した又は部分的に飽和した、単環式、二環式、又は三環式アルキル基(ここでは、各環部分は、3個から12個までの炭素原子の環員を含有し、任意に、本明細書で定義した通りに任意に置換されたベンゾ縮合環であり得る)を指す。ある種の実施形態では、前記シクロアルキルは、5個から7個までの炭素原子を含むこととなる。こうしたシクロアルキル基の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、テトラヒドロナフチル、インダニル、オクタヒドロナフチル、2,3-ジヒドロ-1H-インデニル、アダマンチルなどが挙げられる。本明細書で使用される「二環式」及び「三環式」には、デカヒドロナフタレン、オクタヒドロナフタレンなどの縮合環と、複数環式の(多中心の)飽和した又は部分的に不飽和型の両方が含まれることが意図される。後者の型の異性体は、一般に、ビシクロ[1,1,1]ペンタン、樟脳、アダマンタン、及びビシクロ[3,2,1]オクタンによって例示される。
【0125】
用語「エステル」は、単独又は組み合わせで、本明細書で使用する場合、炭素原子で連結される2つの部分を架橋するカルボキシ基を指す。
【0126】
用語「ハロ」又は「ハロゲン」は、単独又は組み合わせで、本明細書で使用する場合、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素を指す。
【0127】
用語「ヘテロアルキル」は、単独又は組み合わせで、本明細書で使用する場合、指定された数の炭素原子と、N、O、及びSから選択される1個から3個までのヘテロ原子からなる(ここでは、N及びS原子は、任意に酸化されていてもよく、Nヘテロ原子は、任意に四級化されていてもよい)、完全に飽和した又は1から3までの不飽和度を含有する、安定な直鎖若しくは分枝鎖又はその組み合わせを指す。ヘテロ原子は、ヘテロアルキル基のあらゆる内部位置に位置することができる。最大2つまでのヘテロ原子が連続していてもよい(例えば、-CH-NH-OCHなど)。
【0128】
用語「ヘテロアリール」は、単独又は組み合わせで、本明細書で使用する場合、N、O、及びSから選択される少なくとも1つの原子を含有する、縮合環の少なくとも1つが芳香族である、3から15員の不飽和ヘテロ単環式環、又は縮合された単環式、二環式、又は三環式の環を指す。ある種の実施形態では、前記ヘテロアリールは、環員として1個から4個までのヘテロ原子を含むこととなる。さらなる実施形態では、前記ヘテロアリールは、環員として1個から2個までのヘテロ原子を含むこととなる。ある種の実施形態では、前記ヘテロアリールは、5個から7個までの原子を含むこととなる。この用語はまた、縮合された多環の基を包含し、ここでは、複素環はアリール環と縮合されている、又はヘテロアリール環は他のヘテロアリール環と縮合されている、又はヘテロアリール環はヘテロシクロアルキル環と縮合されている、又はヘテロアリール環はシクロアルキル環と縮合されている。ヘテロアリール基の例としては、ピロリル、ピロリニル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、トリアゾリル、ピラニル、フリル、チエニル、オキサゾリル、イソキサゾリル、オキサジアゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、イソチアゾリル、インドリル、イソインドリル、インドリジニル、ベンズイミダゾリル、キノリル、イソキノリル、キノキサリニル、キナゾリニル、インダゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾジオキソリル、ベンゾピラニル、ベンゾキサゾリル、ベンゾキサジアゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾフリル、ベンゾチエニル、クロモニル、クマリニル、ベンゾピラニル、テトラヒドロキノリニル、テトラゾロピリダジニル、テトラヒドロイソキノリニル、チエノピリジニル、フロピリジニル、ピロロピリジニルなどが挙げられる。例示的な三環式の複素環式基には、カルバゾリル、ベンズインドリル、フェナントロリニル、ジベンゾフラニル、アクリジニル、フェナントリジニル、キサンテニルなどが含まれる。
【0129】
用語「ヘテロシクロアルキル」、及び、交換可能に「複素環」は、単独又は組み合わせで、本明細書で使用する場合、それぞれ、環員として少なくとも1つのヘテロ原子を含有する(ここでは、それぞれの前記ヘテロ原子は、独立に、窒素、酸素、及び硫黄から選択される)、飽和した、部分的に不飽和の、又は完全に不飽和の(しかし非芳香族の)、単環式、二環式、又は三環式の複素環式基を指す。ある種の実施形態では、前記ヘテロシクロアルキルは、環員として1個から4個までのヘテロ原子を含むこととなる。さらなる実施形態では、前記ヘテロシクロアルキルは、環員として1個から2個までのヘテロ原子を含むこととなる。ある種の実施形態では、前記ヘテロシクロアルキルは、各環内に3個から8個までの環員を含むこととなる。さらなる実施形態では、前記ヘテロシクロアルキルは、各環内に3個から7個までの環員を含むこととなる。いっそうさらなる実施形態では、前記ヘテロシクロアルキルは、各環内に5個から6個までの環員を含むこととなる。「ヘテロシクロアルキル」及び「複素環」には、スルホン、スルホキシド、三級窒素環員のN-オキシド、及び炭素環式の縮合及びベンゾ縮合環が含まれることが意図され;さらに、どちらの用語にも、複素環が、本明細書で定義した通りのアリール基、又は追加の複素環基と縮合された系が含まれる。複素環基の例としては、アジリジニル、アゼチジニル、1,3-ベンゾジオキソリル、ジヒドロイソインドリル、ジヒドロイソキノリニル、ジヒドロシンノリニル、ジヒドロベンゾジオキシニル、ジヒドロ[1,3]オキサゾロ[4,5-b]ピリジニル、ベンゾチアゾリル、ジヒドロインドリル、ジヒドロピリジニル、1,3-ジオキサニル、1,4-ジオキサニル、1,3-ジオキソラニル、イソインドリニル、モルホリニル、ピペラジニル、ピロリジニル、テトラヒドロピリジニル、ピペリジニル、チオモルホリニルなどが挙げられる。複素環基は、特に禁止されない限り、任意に置換することができる。
【0130】
用語「ヒドロキシ」は、単独又は組み合わせで、本明細書で使用する場合、-OHを指す。
【0131】
用語「スルホン酸~」、「スルホン酸」、及び「スルホン酸の」は、単独又は組み合わせで、本明細書で使用する場合、スルホン酸が塩の形態で使用されることから、-SOH基及びその陰イオンをいう。
【0132】
本明細書のあらゆる定義を、複合構造基を説明するためのあらゆる他の定義と組み合わせて使用することができる。慣例により、あらゆるこうした定義の付随要素は、親部分に付着するものである。例えば、複合基アルキルアミドは、アミド基を介して親分子に付着されるアルキル基を表し、用語アルコキシアルキルは、アルキル基を介して親分子に付着されるアルコキシ基を表すであろう。
【0133】
基が「空白」であると定義される場合、それが意味することは、前記の基が存在しないことである。
【0134】
数値指定を伴わずにそれ自体で存在する用語R又は用語R’は、他に定義されない限り、そのいずれかが任意に置換されていてもよい、水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、及びヘテロシクロアルキルから選択される部分を指す。こうしたR及びR’基は、本明細書で定義した通りに任意に置換されると理解されるべきである。R基の数値指定があろうとなかろうと、あらゆるR基(R、R’、及びR(ここではn=(1、2、3、…n))が含まれる)、あらゆる置換基、及びあらゆる用語は、基からの選択に関して、他のすべてのものから独立していると理解されるべきである。万一、いずれかの変数、置換基、又は用語(例えば、アリール、複素環、Rなど)が、式又は一般構造中に2回以上存在する場合には、各存在でのその定義は、あらゆる他の存在での定義から独立している。当分野の技術者は、ある種の基が、親分子と付着することができる、又は書かれた通りのいずれかの末端から、要素の鎖内の位置を占めることができることをさらに理解するであろう。例えば、-C(O)N(R)-などの非対称の基は、炭素又は窒素のいずれかで、親部分に付着することができる。
【0135】
本明細書に開示される化合物には、不斉中心が存在する。これらの中心は、キラル炭素原子の周りの置換基の配置に応じて、記号「R」又は「S」で称される。本開示が、ジアステレオマー、鏡像異性体、及びエピマー形態、並びにd-異性体及び1-異性体、並びにそれらの混合物を含めた、すべての異性体型を包含することを理解するべきである。化合物の個々の立体異性体は、キラル中心を含有する市販品として入手可能な出発材料から合成によって、又は、鏡像異性体生成物の混合物の調製、それに続くジアステレオマーの混合物への変換などの分離、それに続く分離又は再結晶、クロマトグラフィー技術、キラルクロマトグラフィーカラムでの鏡像異性体の直接的分離、又は当技術分野で公知の他のあらゆる適切な方法によって、調製することができる。特定の立体化学の出発化合物は、市販品として入手可能であるか、又は当技術分野で公知の技術によって製造及び分離することができる。さらに、本明細書に開示される化合物は、幾何異性体として存在することができる。本開示には、すべてのシス、トランス、シン(syn)、アンチ(anti)、反対側(entgegen)(E)、及び同じ側(zusammen)(Z)異性体、並びに適切なそれらの混合物が含まれる。さらに、化合物は、互変異性体として存在することができる;本開示によって、すべての互変異性体が提供される。さらに、本明細書に開示される化合物は、水、エタノールなどなどの薬学的に許容し得る溶媒を伴う、非溶媒和並びに溶媒和形態で存在することができる。一般に、溶媒和形態は、非溶媒和形態と等価であるとみなされる。
【0136】
用語「結合」は、2つの原子の間、又は結合によって連結される原子がより大きな部分構造の一部であるとみなされる場合には2つの部分の間の共有結合を指す。結合は、他に指定されない限り、単結合、二重結合、又は三重結合であり得る。分子の図面中の2つの原子間の破線は、その位置に追加の結合が存在してもしなくてもよいことを示す。
【0137】
本明細書で使用される用語「塩」及びその複数形の「塩」は、化合物(例えば薬物セスロマイシン)のイオン、及び対イオンを含む、イオン化合物を指す。塩は、本明細書では、当技術分野でよく行われる通り、それを形成するために使用される酸又は塩基によって(例えば、「塩酸(hydrochloric acid)」塩又は「塩酸(hydrochloride)」塩)、又は「塩化物」塩として、意味の区別なく称することができる。塩(及び一般に化合物)は、1つ以上の異なる多形体として存在することができる。
【0138】
本明細書で使用される用語「疾患」は、すべてが、正常な機能を損なうヒト又は動物の体の又はその部分の一つの異常状態を反映し、典型的には特徴的徴候及び症状によって現れ、ヒト又は動物の寿命又は生活の質を低下させるという点において、用語「障害」、「症候群」、及び「状態」(医学的状態などのようなもの)と概ね同義であることが意図され、これらと意味の区別なく使用される。
【0139】
用語「併用療法」は、本開示に記載された治療状態又は障害を治療するための、2種以上の治療薬の投与を意味する。こうした投与は、実質的に同時の方式での、例えば、固定された割合の活性成分を有する単一のカプセルでの、又は各活性成分のための複数の別のカプセルでの、これらの治療薬の同時投与を包含する。さらに、こうした投与はまた、連続方式でのそれぞれの種類の治療薬の使用を包含する。いずれの場合でも、治療レジメンは、本明細書に記載された状態又は障害を治療する際に、薬物の組み合わせの有益な効果を提供することとなる。
【0140】
表現「治療的に有効な」は、疾患又は障害の治療に、又は臨床エンドポイントの達成で使用される活性成分の量を修飾することが意図される。
【0141】
用語「治療的に許容し得る」は、過度の毒性、刺激性、及びアレルギー反応を伴わずに患者の組織と接触して使用するのに適しており、且つ妥当なベネフィット/リスク比に見合い、且つその意図される使用に有効である化合物(又は塩、プロドラッグ、互変異性体、双性イオン形態など)を指す。
【0142】
本明細書で使用する場合、患者の「治療」への言及には、予防が含まれることが意図される。治療は、事実上、先制的でもあり得る、すなわち、治療には、疾患の予防が含まれ得る。疾患の予防は、例えば病原体による感染症の予防の場合のように、疾患からの完全な防護も含むことができるし、疾患進行の予防も含むことができる。例えば、疾患の予防は、いずれかのレベルの疾患に関連するいずれかの影響の完全な除外を意味しない可能性があり、代わりに、臨床的に有意な又は検出可能なレベルまでの疾患の症状の予防を意味することができる。疾患の予防は、疾患の、疾患の後期までの進行の予防も意味することができる。
【0143】
用語「患者」は、用語「対象」と概ね同義であり、例えばヒトを含めたすべての哺乳類が含まれる。患者の例としては、ヒト、家畜、例えばウシ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、及びウサギなど、並びに伴侶動物、例えばイヌ、ネコ、ウサギ、及びウマなどが挙げられる。好ましくは、患者はヒトである。
【0144】
用語「プロドラッグ」は、インビボで、より活性となる化合物を指す。本明細書に開示されるある種の化合物は、Hydrolysis in Drug and Prodrug Metabolism:Chemistry,Biochemistry,and Enzymology(Testa,Bernard及びMayer,Joachim M.Wiley-VHCA,Zurich,Switzerland 2003)に記載されている通り、プロドラッグとして存在することもできる。本明細書に記載された化合物のプロドラッグは、生理的条件下で容易に化学変化を受けてこの化合物を提供する、化合物の構造的に改変された形態である。さらに、プロドラッグは、エクスビボ環境において、化学的又は生化学的方法によって、この化合物に変換することができる。例えば、プロドラッグは、好適な酵素又は化学試薬と共に経皮パッチのリザーバー層に入れられた場合に、化合物に、ゆっくりと変換させることができる。プロドラッグは、状況によっては、親薬物よりも容易に投与することができることから、しばしば有用である。プロドラッグは、例えば、経口投与によって生体利用可能であるが、親薬物はそうではない可能性がある。プロドラッグはまた、親薬物をしのぐ、医薬組成物中の向上された溶解度を有することができる。プロドラッグの加水分解的切断又は酸化的活性化に頼るものなどの、非常に様々なプロドラッグ誘導体が、当技術分野で公知である。プロドラッグの例は、限定はされないが、エステル(「プロドラッグ」)として投与されるが、その後代謝によって加水分解されてカルボン酸、すなわち活性な実体となる化合物であろう。追加の例としては、化合物のペプチジル誘導体が挙げられる。
【0145】
医薬組成物
対象の開示の化合物を、未加工の化学物質として投与することも可能であり得るが、これを医薬製剤として提供することも可能である。したがって、本明細書で提供されるのは、その1種以上の薬学的に許容し得る担体及び任意に1種以上の他の治療成分と共に、本明細書に開示されるある種の化合物の1種以上、又はその1種以上の薬学的に許容し得る塩、多形体、エステル、プロドラッグ、アミド、又は溶媒和物を含む、医薬製剤である。担体は、製剤の他の成分と適合性があり、且つそのレシピエントに対して有害でないという意味で、「許容し得る」ものでなければならない。適切な製剤は、選択される投与経路に依存する。周知の技術、担体、及び賦形剤のいずれかを、当技術分野で適切であるように且つ当技術分野で理解される通りに使用することができる。本明細書に開示される医薬組成物は、当技術分野で公知のあらゆる方式で、例えば、従来の混合、溶解する、造粒、糖衣錠作製、研和、乳化、カプセル封入、封入、又は圧縮プロセスを用いて製造することができる。
【0146】
製剤には、経口、非経口(例えば、皮下、皮内、筋肉内、静脈内、関節内、及び髄内が含まれる)、腹腔内、経粘膜、経皮、直腸内、並びに局所(例えば、経皮、頬側、舌下、及び眼内が含まれる)投与に適したものが含まれるが、最も好適な経路は、例えばレシピエントの状態及び障害に依存し得る。製剤は、好都合には、単位剤形で提供することができ、また、薬学の技術分野で周知の方法のいずれかによって調製することができる。典型的には、これらの方法は、対象の開示の化合物、又はその薬学的に許容し得る塩、エステル、アミド、プロドラッグ、若しくは溶媒和物(「活性成分」)を、1種又は複数の副成分を構成する担体と混合するステップを含む。一般に、製剤は、活性成分を、液体担体若しくは微粉化された固体担体、又はこれらの両方と均一且つ十分に混合し、次いで、必要ならば、生成物を、所望される製剤に成形することによって調製される。
【0147】
投与及び治療
化合物は、1日あたり0.1から500mg/kgまでの用量で、経口的に又は注射を介して投与することができる。成人のヒトについての用量範囲は、一般に、5mgから2g/日までである。不連続な単位で提供される錠剤又は他の形態の提示物は、好都合には、こうした投薬量で又は複数の同じものとして有効である量の1種以上の化合物、例えば、5mgから500mg、通常およそ10mgから200mgを含有する単位を含有することができる。
【0148】
単一の剤形を生成するために担体材料と組み合わせることができる活性成分の量は、治療される宿主及び投与の特定の様式に応じて変動することとなる。
【0149】
化合物は、様々な様式で、例えば、経口的に、局所的に、又は注射によって、投与することができる。患者に投与される化合物の正確な量は、担当する医師の責任となる。いずれかの特定の患者に対する具体的な用量レベルは、例えば、用いられる具体的な化合物の活性、年齢、体重、健康全般、性別、食事、投与の時刻、投与経路、排出の速度、薬物の組み合わせ、治療されている詳細な障害、及び治療されている徴候又は状態の重症度を含めた、様々な因子に依存することとなる。また、投与経路は、状態及びその重症度に応じて変わることとなる。
【0150】
経口投与
本開示の化合物は、例えば嚥下を含めて、経口的に投与することができ、それにより、化合物は、胃腸管に入る、又は、例えば舌下又は頬側投与を含めて、口から直接的に血流に吸収される。
【0151】
経口投与に適した組成物としては、固体の製剤、例えば錠剤、丸剤、カシェ剤、ロゼンジ、及びハード又はソフトカプセル(これらは液体を含有することができる)、ゲル、散剤、又は顆粒剤、液剤又は懸濁剤(水性液体若しくは非水性液体中、又は水中油型液体エマルション若しくは油中水型液体エマルションとして)が挙げられる。活性成分はまた、ボーラス、舐剤、又はペーストとして提供することもできる。
【0152】
錠剤又はカプセル剤形では、存在する薬物の量は、剤形の約0.05重量%から約95重量%まで、より典型的には約2重量%から約50重量%までであり得る。
【0153】
さらに、錠剤又はカプセルは、剤形の約0.5重量%から約35重量%まで、より典型的には約2%から約25%までを占める崩壊剤を含有することができる。崩壊剤の例としては、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム又はカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、デンプンなどが挙げられる。
【0154】
錠剤に使用するのに適した結合剤としては、ゼラチン、ポリエチレングリコール、糖、ガム、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロースなどが挙げられる。錠剤に使用するのに適した希釈剤としては、マンニトール、キシリトール、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、及びデンプンが挙げられる。
【0155】
錠剤又はカプセルに使用するのに適した界面活性剤及び流動化剤は、約0.1重量%から約3重量%までの量で存在することができ、ポリソルベート80、ドデシル硫酸ナトリウム、タルク、及び二酸化ケイ素が挙げられる。
【0156】
錠剤又はカプセルに使用するのに適した滑沢剤は、約0.1重量%から約5重量%までの量で存在することができ、ステアリン酸カルシウム、亜鉛、又はマグネシウム、フマル酸ステアリルナトリウムなどが挙げられる。
【0157】
錠剤は、任意に1種以上の補助成分と共に、圧縮又は成型によって製造することができる。圧縮錠剤は、結合剤、不活性な希釈剤、又は滑沢剤、界面活性剤、若しくは分散剤と任意に混合される、粉末又は顆粒などの自由流動形態の活性成分を、好適な機械中で圧縮することによって調製することができる。湿製錠(molded tablet)は、液体希釈剤で湿らせた粉末状の化合物の混合物を、好適な機械内で成型することによって製造することができる。識別のために、又は活性な化合物の用量の異なる組み合わせを特徴付けるために、錠剤に染料又は顔料を添加することができる。
【0158】
液体製剤には、乳剤、液剤、シロップ、エリキシル、及び懸濁剤(これらは、ソフト又はハードカプセル中で使用することができる)が含まれ得る。こうした製剤は、薬学的に許容し得る担体、例えば、水、エタノール、ポリエチレングリコール、セルロース、又は油を含むことができる。製剤はまた、1種又は複数の乳化剤及び/又は懸濁化剤も含むことができる。
【0159】
経口投与のための組成物は、任意に腸溶コーティングと共に、例えば遅延又は持続放出を含めた、即時放出又は放出調節製剤として製剤化することができる。
【0160】
別の実施形態では、医薬組成物は、治療有効量の式(I)の化合物又はその薬学的に許容し得る塩と、薬学的に許容し得る担体とを含む。
【0161】
経口的に使用することができる医薬調製物には、錠剤、ゼラチンで作られたプッシュフィット(push-fit)カプセル、並びにゼラチン及び可塑剤(グリセロール又はソルビトールなど)で作られた柔らかいシールドカプセルが含まれる。錠剤は、任意に1種以上の補助成分と共に、圧縮又は成型によって製造することができる。圧縮錠剤は、結合剤、不活性な希釈剤、又は滑沢剤、界面活性剤、若しくは分散剤と任意に混合される、粉末又は顆粒などの自由流動形態の活性成分を、好適な機械中で圧縮することによって調製することができる。湿製錠は、液体希釈剤で湿らせた粉末状の化合物の混合物を、好適な機械内で成型することによって製造することができる。錠剤は、任意に、コーティング又は割線付けすることができ、また、錠剤中の活性成分の徐放又は制御放出を提供するように製剤化することができる。経口投与のためのすべての製剤は、こうした投与に適した投薬量であるべきである。プッシュフィットカプセルは、ラクトースなどの充填剤、デンプンなどの結合剤、及び/又はタルク若しくはステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、及び任意に安定剤と混合した、活性成分を含有することができる。ソフトカプセルでは、活性な化合物を、好適な液体、例えば脂肪油、流動パラフィン、又は液体ポリエチレングリコールに溶解又は懸濁することができる。さらに、安定剤を添加することができる。糖衣錠コアは、好適なコーティングと共に提供される。この目的では、濃縮された糖溶液を使用することができ、これは、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、Carbopolゲル、ポリエチレングリコール、及び/又は二酸化チタン、ラッカー溶液、及び好適な有機溶媒又は溶媒混合物を任意に含有することができる。識別のために、又は活性な化合物の用量の異なる組み合わせを特徴付けるために、錠剤又は糖衣錠コーティングに染料又は顔料を添加することができる。
【0162】
非経口投与
本開示の化合物は、注射によって、例えば、ボーラス注入又は持続注入によって、血流、筋肉、又は内臓器官に、直接的に投与することができる。非経口投与のための好適な手段には、静脈内、筋肉内、皮下、動脈内、腹腔内、くも膜下腔内、頭蓋内などが含まれる。非経口投与のための好適な装置には、注射器(例えば、針及び無針注射器が含まれる)及び注入方法が含まれる。製剤は、単位用量又は反復用量容器、例えば密封されたアンプル及びバイアルで提供することができる。
【0163】
大抵の非経口製剤は、賦形剤(例えば、塩、緩衝、懸濁、安定化、及び/又は分散剤、抗酸化剤、静菌剤、保存剤、並びに対象となるレシピエントの血液と等張な製剤を与える溶質、並びに炭水化物が含まれる)を含有する水溶液である。
【0164】
非経口製剤は、脱水形態で(例えば凍結乾燥によって)、又は無菌の非水溶液として調製することもできる。これらの製剤は、滅菌水などの好適なビヒクルと共に使用することができる。非経口溶液の調製には、溶解度増強剤も使用することができる。非経口投与のための組成物は、例えば遅延又は持続放出を含めた、即時放出又は放出調節製剤として製剤化することができる。化合物はまた、デポー製剤として製剤化することもできる。こうした長時間作用性製剤は、植込によって(例えば皮下又は筋肉内に)又は筋肉内注射によって投与することができる。したがって、例えば、化合物は、好適なポリマー又は疎水性の材料(例えば、許容し得る油中のエマルションとして)又はイオン交換樹脂と共に、又はやや溶けにくい誘導体として、例えば、やや溶けにくい塩として製剤化することができる。
【0165】
化合物は、注射による、例えば、ボーラス注入又は持続注入による非経口投与のために製剤化することができる。注射のための製剤は、保存剤を添加して、単位剤形で、例えば、アンプルで又は反復用量容器で提供することができる。組成物は、油性又は水性ビヒクル中の懸濁液、溶液、又はエマルションなどの形をとることができ、また、懸濁、安定化、及び/又は分散剤などの調製用薬剤を含有することができる。製剤は、単位用量又は反復用量容器、例えば密封されたアンプル及びバイアルで提供することができ、また、使用の直前に無菌の液体担体、例えば、生理食塩水又は無菌のパイロジェンフリー水の添加のみを必要とする、粉末形態で又はフリーズドライされた(凍結乾燥された)状態で保管することができる。使用直前に調合される注射溶液及び懸濁液は、先に記載した種類の無菌の粉末、顆粒、及び錠剤から調製することができる。
【0166】
非経口投与のための製剤には、抗酸化剤、緩衝液、静菌剤、及び対象となるレシピエントの血液と等張な製剤を与える溶質を含有することができる、活性な化合物の水性及び非水性の(油性の)無菌の注射溶液;並びに懸濁化剤及び増粘剤を含むことができる水性及び非水性の無菌の懸濁液が含まれる。好適な親油性の溶媒又はビヒクルには、ゴマ油などの脂肪油、又はオレイン酸エチルなどの合成の脂肪酸エステル、又はトリグリセリド、又はリポソームが含まれる。水性の注射用懸濁剤は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、又はデキストランなどの、懸濁剤の粘度を増大させる物質を含有することができる。任意に、懸濁剤はまた、好適な安定剤、又は高度に濃縮された溶液の調製を可能にするための化合物の溶解度を増大させる薬剤を含有することもできる。
【0167】
先に記載した製剤に加えて、化合物はまた、デポー製剤として製剤化することもできる。こうした長時間作用性製剤は、植込によって(例えば皮下又は筋肉内に)又は筋肉内注射によって投与することができる。したがって、例えば、化合物は、好適なポリマー又は疎水性の材料(例えば、許容し得る油中のエマルションとして)又はイオン交換樹脂と共に、又はやや溶けにくい誘導体として、例えば、やや溶けにくい塩として製剤化することができる。
【0168】
局所投与
本開示の化合物は、局所的に(例えば、皮膚、粘膜、耳、鼻、又は眼に)又は経皮的に投与することができる。局所投与のための製剤には、限定はされないが、ローション、液剤、クリーム、ゲル、ヒドロゲル、軟膏、フォーム、植込錠、パッチなどが含まれ得る。局所投与製剤のための薬学的に許容し得る担体には、水、アルコール、鉱油、グリセリン、ポリエチレングリコールなどが含まれ得る。局所投与はまた、例えば、電気穿孔、イオン導入、超音波導入などによって実施することもできる。
【0169】
典型的には、局所投与のための活性成分は、製剤の0.001%から10%w/w(重量で)までを構成することができる。ある種の実施形態では、活性成分は、製剤の最大10%w/w;5%w/w未満;2%w/wから5%w/wまで;又は0.1%から1%w/wまでを構成することができる。
【0170】
局所投与のための組成物は、例えば遅延又は持続放出を含めた、即時放出又は放出調節製剤として製剤化することができる。
【0171】
本明細書に開示されるある種の化合物は、局所的に、すなわち非全身的投与によって投与することができる。これには、化合物が血流にそれほど入らないような、本明細書に開示される化合物の表皮又は頬側口腔の外側への適用、並びにこうした化合物の耳、眼、及び鼻への滴下が含まれる。対照的に、全身投与は、経口、静脈内、腹腔内、及び筋肉内投与を指す。
【0172】
局所投与に適した製剤には、ゲル、リニメント、ローション、クリーム、軟膏又は泥膏、及び眼、耳、及び鼻への投与に適した滴剤などの、皮膚を通した炎症部位への浸透に適した液体又は半液体調製物が含まれる。局所投与のための活性成分は、例えば、製剤の0.001%から10%w/w(重量で)を構成することができる。ある種の実施形態では、活性成分は、最大10%w/wを構成することができる。他の実施形態では、活性成分は、5%w/w未満を構成することができる。ある種の実施形態では、活性成分は、2%w/wから5%w/wまでを構成することができる。他の実施形態では、活性成分は、製剤の0.1%から1%w/wまでを構成することができる。
【0173】
直腸内、頬側、及び舌下投与
本開示の化合物の直腸内投与のための座剤は、活性な薬剤を、カカオ脂、合成のモノ、ジ、又はトリグリセリド、脂肪酸、又はポリエチレングリコールなどの好適な非刺激性の賦形剤(これらは、常温では固体であるが直腸温では液体であるので、直腸内で溶けて薬物を放出することとなる)と混合することによって調製することができる。
【0174】
頬側又は舌下投与については、組成物は、従来の方式で製剤化された錠剤、ロゼンジ、香錠、又はゲルの形をとることができる。こうした組成物は、スクロース及びアラビアゴム又はトラガカントなどの風味付けされた主成分中に活性成分を含むことができる。
【0175】
化合物は、例えば、カカオ脂、ポリエチレングリコール、又は他のグリセリドなどの従来の座剤基剤を含有する、座剤又は停留浣腸などの直腸内組成物に製剤化することもできる。
【0176】
吸入による投与
吸入による投与については、化合物は、好都合には、吸入器、ネブライザー加圧パック、又はエアロゾルスプレーを送達する他の好都合な手段から送達することができる。加圧パックは、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、又は他の好適な気体などの好適な噴射剤を含むことができる。加圧エアロゾルの場合、定量を送達するためのバルブを提供することによって、投薬単位を決定することができる。或いは、吸入又は通気による投与については、本開示による化合物は、ドライパウダー組成物、例えば、化合物と、ラクトース又はデンプンなどの好適な粉末ベースとの粉末混合物の形をとることができる。粉末組成物は、単位剤形で、例えば、吸入器又は通気器の助けを借りてそこから粉末を投与することができる、カプセル、カートリッジ、ゼラチン、又はブリスター・パックで提供することができる。
【0177】
医薬分野で公知の他の担体材料及び投与様式も使用することができる。本開示の医薬組成物は、有効な製剤及び投与手順などの、薬学の周知の技術のいずれかによって調製することができる。好ましい単位投薬量製剤は、本明細書で以下に挙げた通りの有効な用量又はその適切な分数量の活性成分を含有するものである。
【0178】
上に詳細に言及した成分に加えて、上に記載した製剤は、当該の製剤の種類を考慮して、当技術分野で通常の他の薬剤を含むことができる、例えば、経口投与に適したものは、着香料を含むことができることを理解するべきである。
【0179】
組み合わせ及び併用療法
ある種の場合には、本明細書に記載された化合物(又はその薬学的に許容し得る塩)の少なくとも1つを、別の治療薬と組み合わせて投与することが適切であり得る。例示目的に過ぎないが、もし、本明細書の化合物の一つを受ける際に患者が経験する副作用の一つが、高血圧であるならば、降圧薬を、最初の治療薬と組み合わせて投与することが適切であり得る。又は、例示目的に過ぎないが、本明細書に記載された化合物の一つの治療有効性を、補助剤の投与によって高めることができる(すなわち、補助剤は、それ自体で、最小限の治療的利益を有することができるに過ぎないが、別の治療薬と組み合わせると、患者に対する治療的利益全体が高められる)。又は、例示目的に過ぎないが、患者が受ける利益を、本明細書に記載された化合物の一つを、同様に治療的利益を有する別の治療薬(これには治療レジメンも含まれる)と共に投与することによって増大させることができる。例示目的に過ぎないが、本明細書に記載された化合物の一つの投与を含む糖尿病の治療では、治療的利益の増大は、患者に糖尿病のための別の治療薬を提供することによって得ることもできる。いずれの場合でも、治療されている疾患、障害、又は状態にかかわらず、患者が受ける利益全体
は、単に2種の治療薬の相加的なものである可能性もあるし、患者が相乗的利益を受ける可能性もある。
【0180】
可能な併用療法の具体的な非限定的な例には、ドネペジル、リバスチグミン、ガランタミン、及びメマンチンと、本開示のある種の化合物との使用が含まれる。さらなる例には、抗アミロイド抗体及びワクチン、抗Ab抗体及びワクチン、抗タウ抗体及びワクチン、β-セクレターゼ阻害剤、5-HT4アゴニスト、5-HT6アンタゴニスト、5-HT1aアンタゴニスト、α7ニコチン受容体アゴニスト、5-HT3受容体アンタゴニスト、PDE4阻害剤、O-GlcNAcase阻害剤、及びアルツハイマー病の治療について承認された他の医薬が含まれる。さらなる例には、メトホルミン、ミノサイクリン、組織プラスミノーゲンアクチベーター、及び神経生存を向上させる他の治療法が含まれる。
【0181】
さらなる例には、リファマイシンと、本開示のある種の化合物との使用が含まれる。ある種の実施形態では、併用療法は、例えば、M.アビウム(M.avium)、M.イントラセルラーレ(M.intracellulare)、M.キマエラ(M.chimaera)、M.カンサシ(M.kansasii)、M.マルモエンセ(M.malmoense)、M.ゼノピ(M.xenopi)、M.アブセサス(M.abscessus)、M.フォーチュイタム(M.fortuitum)複合体、及びM.ケロネー(M.chelonae)を含めたマクロライド感受性非結核性マイコバクテリアに対して有効である。
【0182】
さらなる例には、エタンブトールと、本開示のある種の化合物との使用が含まれる。ある種の実施形態では、併用療法は、例えば、M.アビウム(M.avium)、M.イントラセルラーレ(M.intracellulare)、M.キマエラ(M.chimaera)、M.カンサシ(M.kansasii)、M.マルモエンセ(M.malmoense)、M.ゼノピ(M.xenopi)、M.アブセサス(M.abscessus)、M.フォーチュイタム(M.fortuitum)複合体、及びM.ケロネー(M.chelonae)を含めたマクロライド感受性非結核性マイコバクテリアに対して有効である。
【0183】
さらなる例には、フルオロキノリンと、本開示のある種の化合物との使用が含まれる。ある種の実施形態では、併用療法は、ペスト、炭疽、野兎病、及びブルセラ症に対して有効である。
【0184】
さらなる例には、アミノグリコシドと、本開示のある種の化合物との使用が含まれる。ある種の実施形態では、併用療法は、ペスト、炭疽、野兎病、及びブルセラ症に対して有効である。
【0185】
さらなる例には、ドキシサイクリンと、本開示のある種の化合物との使用が含まれる。ある種の実施形態では、併用療法は、ペスト、炭疽、野兎病、及びブルセラ症に対して有効である。
【0186】
さらなる例には、例えばオセルタミビルを含めたインフルエンザ抗ウイルス薬と、本開示のある種の化合物との使用が含まれる。ある種の実施形態では、併用療法は、炎症に対して有効である。
【0187】
さらなる例には、例えばマクロライド感受性M.アブセサス(M.abscessus)を含めたM.アブセサス(M.abscessus)によって引き起こされる疾患の治療のための、組み合わせでの本開示のある種の化合物の使用が含まれる。本開示の化合物との組み合わせで有用であり得るある種の化合物には、以下:アミノグリコシド、ベータラクタム、ドキシサイクリン、フルオロキノロン、及びトリメトプリム-スルファメトキサゾールのうちの1つ以上が含まれる。
【0188】
さらなる例には、バベシア属(Babesia)によって引き起こされる疾患の治療のための、組み合わせでの本開示のある種の化合物の使用が含まれる。ある種の実施形態では、疾患は、バベシア症である。本開示の化合物との組み合わせで有用であり得るある種の化合物には、以下:アトバコン、アトバコン-プログアニル、タフェノキン、キニーネ、及びピリメタミンのうちの1つ以上が含まれる。
【0189】
さらなる例には、トキソプラズマ属(Toxoplasma)によって引き起こされる疾患の治療のための、組み合わせでの本開示のある種の化合物の使用が含まれる。ある種の実施形態では、疾患は、トキソプラズマ症である。本開示の化合物との組み合わせで有用であり得るある種の化合物には、以下:アトバコン、ピリメタミン、及びトリメトプリム-スルファメトキサゾールのうちの1つ以上が含まれる。
【0190】
さらなる例には、プラスモジウム属(Plasmodium)によって引き起こされる疾患の治療のための、組み合わせでの本開示のある種の化合物の使用が含まれる。本開示の化合物との組み合わせで有用であり得るある種の化合物には、以下:キノリン化合物(例えば、8-アミノキノリン、4-アミノキノリン、4-キノリンアルコール、プリマキン、タフェノキン、クロロキン、メフロキン、ピロナリジン、ルメファントリン、アモジアキン、キニーネ、及びキニジンが含まれる);アトバコン;ピリメタミン;並びにアルテミシニンのうちの1つ以上が含まれる。
【0191】
さらなる例には、呼吸器疾患の治療のための、組み合わせでの本開示のある種の化合物の使用が含まれる。本開示の化合物との組み合わせで有用であり得るある種の化合物には、以下:ベータ-ラクタム、カルバペネム、及びフルオロキノリンのうちの1つ以上が含まれる。
【0192】
さらなる例には、消化性潰瘍疾患の治療のための、組み合わせでの本開示のある種の化合物の使用が含まれる。ある種の実施形態では、その治療は、マクロライド耐性のリスクファクターを有しない患者に提供される。本開示の化合物との組み合わせで有用であり得るある種の化合物には、以下:プロトンポンプ阻害剤(例えば、オメプラゾール、ランソプラゾール、デクスランソプラゾール、エソメプラゾール、パントプラゾール、及びラベプラゾールが含まれる);アモキシシリン;並びにメトロニダゾールのうちの1つ以上が含まれる。
【0193】
さらなる例には、性行為感染症の治療のための、組み合わせでの本開示のある種の化合物の使用が含まれる。ある種の実施形態では、性行為感染症は、淋菌(N.gonorrhoeae)によって引き起こされる。ある種の実施形態では、性行為感染症は、C.トラコマチス(C.trachomatis)によって引き起こされる。ある種の実施形態では、性行為感染症は、M.ゲニタリウム(M.genitalium)によって引き起こされる。ある種の実施形態では、性行為感染症は、鼠径リンパ肉芽腫症(「LGV」)である。本開示の化合物との組み合わせで有用であり得るある種の化合物には、以下:ベータ-ラクタム(例えば、セフトリアキソンが含まれる);ドキシサイクリン;及びフルオロキノリンのうちの1つ以上が含まれる。
【0194】
さらなる例には、炎症性疾患の治療のための、組み合わせでの本開示のある種の化合物の使用が含まれる。ある種の実施形態では、炎症性疾患は、骨盤内炎症性疾患である。本開示の化合物との組み合わせで有用であり得るある種の化合物には、メトロニダゾール及び安息香酸メトロニダゾールが含まれる。
【0195】
さらなる例には、腸チフスの治療のための、組み合わせでの本開示のある種の化合物の使用が含まれる。本開示の化合物との組み合わせで有用であり得るある種の化合物には、セフトリアキソン及びベータラクタムが含まれる。
【0196】
いずれの場合でも、複数の治療薬(そのうちの少なくとも1つは本明細書に開示される化合物である)を、任意の順序で又は同時に投与することができる。同時にならば、複数の治療薬を、単一の一体化された形態で、又は複数の形態で(例示目的に過ぎないが、単一の丸剤として、又は2つの別の丸剤として)提供することができる。治療薬の一方を反復投与で与えることもできるし、両方を反復投与として与えることもできる。同時でないならば、反復投与間のタイミングは、数分から4週までのあらゆる期間であり得る。
【0197】
したがって、別の態様では、ある種の実施形態は、こうした治療を必要とするヒト又は動物対象における感染性障害を治療するための方法であって、前記対象における前記障害を軽減又は予防するのに有効な量の本明細書に開示される化合物を、当技術分野で公知である前記障害の治療のための少なくとも1種の追加の薬剤と組み合わせて、対象に投与することを含む方法を提供する。関連する態様では、ある種の実施形態は、本明細書に開示される少なくとも1種の化合物を、感染性障害の治療のための1種以上の追加の薬剤と組み合わせて含む、治療用組成物を提供する。
【0198】
ある種の実施形態では、本明細書に開示される化合物、組成物、及び方法は、別の治療薬と同時投与することができる。
【0199】
本明細書に開示されるある種の化合物及び製剤は、ヒト治療に有用であるのに加えて、伴侶動物、外来動物、及び家畜動物(例えば、哺乳類、げっ歯類などが含まれる)の獣医学的治療にも有用であり得る。より好ましい動物としては、ウマ、イヌ、及びネコが挙げられる。
【0200】
略語のリスト
H NMR=プロトン核磁気共鳴;ACN=MeCN=アセトニトリル;AcO=無水酢酸;AcCl=塩化アセチル;AcOH=酢酸;API=医薬品有効成分;ASR=分析サービス報告;AUC=曲線下面積;ca.=およそ;CDOD=重水素化メタノール;CDCl=重水素化クロロホルム;cHex=シクロヘキサン;DCM=ジクロロメタン;DCM=ジクロロメタン;DIEA=DIPEA;DMAP=4-ジメチルアミノ-ピリジン;DMF=N,N-ジメチルホルムアミド;DMSO=ジメチルスルホキシド;DMSO=ジメチルスルホキシド;DMSO-d=重水素化ジメチルスルホキシド;DSC=示差走査熱量測定;DVS=動的水蒸気吸着;eq=当量;EtO=ジエチルエーテル;EtOAc=酢酸エチル;EtOAc=酢酸エチル;EtOH=エタノール;EtOH=エタノール;GVS=重量分析蒸気吸着;h=時間;HO=水;Hept=n-ヘプタン;HPLC=高速液体クロマトグラフィー;HR=高分解能;IC=イオンクロマトグラフィー;ID=同一性;IP=知的所有権;IPA=2-プロパノール;iPrOH=イソプロパノール;iPrOAc=酢酸イソプロピル;ISA=イオン強度調整;KF=カール・フィッシャー;MDSC=温度変調示差走査熱量測定;MeCN=アセトニトリル;MEK=メチルエチルケトン;MeOH=メタノール;MeOH=メタノール;MIBK=メチルイソブチルケトン;min=分;MTBE=メチルターシャリーブチルエーテル;N/A=該当なし;NMR=核磁気共鳴;No.=番号;PLM=偏光顕微鏡;PBS=リン酸緩衝生理食塩水;PXRD=PXRD=X線粉末回折;Pyr=ピリジン;RH=相対湿度;RT=室温;RT=室温;sat.=飽和;SEM=走査型電子顕微鏡;SGF=人工胃液;ss=飽和溶液;TBME=tert-ブチルメチルエーテル;t-BuOH=tert-ブタノール;TEA=EtN;TFA=トリフルオロ酢酸;TFAA=無水トリフルオロ酢酸;TGA=熱重量分析;THF=テトラヒドロフラン;Tol=トルエン;USP=米国薬局方;UV=紫外線;vol=体積;VT-PXRD=温度可変型X線粉末回折。
【実施例
【0201】
実施例1:セスロマイシン。
【化2】

セスロマイシンは、化学名(3aS,4R,7R,9R,10R,11R,13R,15R,15aR)-10-(((2S,3R,4S,6R)-4-(ジメチルアミノ)-3-ヒドロキシ-6-メチルテトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)-4-エチル-3a,7,9,11,13,15-ヘキサメチル-11-(((E)-3-(キノリン-3-イル)アリル)オキシ)オクタヒドロ-2H-[1]-オキサ-シクロテトラデシノ[4,3-d]オキサゾール-2,6,8,14(1H,7H,9H)-テトラオン、式C425910、モル質量765.95g/molを有し、市販品として入手可能である。PXRD(図示せず)は、結晶性の証拠を示さなかった。供給されたままの化合物についてのDMSO-d溶液中でのH NMRを、図1に示す。
【0202】
図2は、セスロマイシンのHPLC及び熱分析を示す:(a)原寸及び(b)拡大したHPLC。HPLC分析から、供給されたままのセスロマイシンは、>98%純粋であった。(c)熱分析:左軸及び(i):加熱中の重量(元の重量の%);右軸及び(ii)熱流(右目盛り、W/g)。25℃から約125℃までの重量減少は、元の重量の約4.5%の喪失に相当する。
【0203】
図3は、セスロマイシンの温度変調DSCを示す:(a)(i)RTから120℃への加熱;-80℃への冷却;(iii)260℃への温度変調加熱;横軸=温度(℃);縦軸=熱流(W/g)。
【0204】
図4は、(a)等温及び(b)動力学的方式でのセスロマイシンについてのGVS挙動を示す。(a):横軸=ターゲットRH(%);縦軸=質量の変化(%);(i)サイクル1 吸着;(ii)サイクル1 脱離;(iii)サイクル2 吸着;(iv)サイクル2 脱離;(v)サイクル3 吸着。(b)横軸=時間(分);左軸及び(i)=質量の変化(%);右軸及び(ii)=ターゲットRH(%)。DSC実験の前及び後のセスロマイシン試料の粉末XRDは、結晶性の徴候を示さなかった(図示せず)。
【0205】
実施例2:方法。
粉末X線回折(「PXRD」)
Cu Kα放射線(40kV、40mA)、自動化されたXYZステージ、自動試料位置決定のためのレーザービデオ顕微鏡、及びVantec-500 2次元面積検出器を使用する、Bruker AXS C2 GADDS回折計で、一定のXRPDディフラクトグラムを収集した。X線オプティクスは、0.3mmのピンホールコリメータと一体化された単一のGoebel多層ミラーから構成される。
【0206】
ビーム発散角、すなわち試料に対するX線ビームの有効な大きさは、およそ4mmであった。1.5°~32.5°という有効な2θ範囲を与える20cmの試料-検出器の距離と共に、θ-θ連続スキャンモードを用いた。典型的には、試料は、120秒間、X線ビームに曝露させた。データ収集及び分析のために使用されるソフトウェアは、それぞれ、GADDS(Win7/XP用)及びDiffrac Plus EVAであった。
【0207】
温度可変型(VT-XRPD)実験のために、試料を、周囲条件で、Anton Paar DHS 900加熱ステージにマウントした。次いで、試料を、20℃/分で、適切な温度まで加熱し、続いて、データ収集まで1分間、一定温度に保持した。試料を、熱伝導ペーストを使用して加熱ステージにマウントされたシリコンウェハー上で調製及び分析した。
【0208】
XRPDディフラクトグラムは、Cu Kα放射線(40kV、40mA)、及びGeモノクロメータが取り付けられたθ-2θゴニオメータを使用する、Bruker D8回折計で収集した。入射ビームは、2.0mmの発散スリット、それに続いて0.2mmの散乱防止スリット、及びナイフエッジを通過する。回折ビームは、2.5°のSollerスリットを備えた8.0mmの受光スリット、それに続いてLynxeye検出器を通過する。データ収集及び分析のために使用されるソフトウェアは、それぞれ、Diffrac Plus XRD Commander及びDiffrac Plus EVAであった。
【0209】
試料を、周囲条件下で、入手されたままの粉末を使用して、平板試料として実行した。この試料は、平面に穏やかに押し付ける又はカットされた窪みに詰めることによって、磨かれたゼロ-バックグラウンド(510)シリコンウェハー上で調製した。kこの試料を、その平面上で回転させた。
【0210】
透過幾何学におけるCu Kα放射線(45kV、40mA)を使用する、PANalytical Empyrean回折計で、一定のXRPDディフラクトグラムを収集した。入射ビームに対して、集束ミラーと共に、0.5°のスリット、4mmのマスク、及び0.04ラドのSollerスリットを使用した。回折ビーム上に置かれたPIXcel3D検出器には、受光スリット及び0.04ラドのSollerスリットが取り付けられた。データ収集のために使用されるソフトウェアは、X’Pert Operator Interfaceを使用するX’Pert Data Collectorであった。データを、Diffrac Plus EVA又はHighScore Plusを使用して分析及び提供した。
【0211】
試料を調製し、金属又はMillipore 96ウェルプレートで、伝送モードで分析した。金属ウェルプレート上の金属シートの間に、X線透過フィルムを使用し、粉末(およそ1~2mg)は、入手されたまま使用した。Milliporeプレートは、少量の懸濁液をこのプレートに直接的に添加し、その後軽い真空下で濾過を行うことによって、懸濁液からの固体を単離及び分析するために使用した。金属プレートについてのスキャンモードは、ゴニオスキャン軸を使用したのに対して、Milliporeプレートについては、2θスキャンが利用された。
【0212】
H NMR
H NMRスペクトルは、オートサンプラーを備え付けた、DRX400コンソールによって制御される、Bruker 400MHz装置で収集した。試料は、他に記述されない限り、DMSO-d溶媒中で調製した。標準のBruker搭載実験を使用する、Topspinソフトウェア内のICON-NMR設定を使用して、自動化された実験が獲得された。ACD Spectrus Processorを使用して、オフライン分析を実施した。
【0213】
示差走査熱量測定(「DSC」)
一定のDSCデータは、50ポジションオートサンプラーを備え付けたTA Instruments Q2000で収集した。典型的には、ピンホール付きのアルミニウムパン中の0.5~3mgの各試料を、10℃/分で、25℃から250℃まで加熱した。この試料に対して、50ml/分での乾燥窒素のパージを維持した。
【0214】
温度変調DSCは、2℃/分の基本加熱速度及び60秒(期間)ごとに±0.636℃(振幅)の温度変調パラメータを使用して実施した。装置制御ソフトウェアは、Advantage for Q Series及びThermal Advantageであり、Universal Analysis又はTRIOSを使用して、データを分析した。
【0215】
一定のDSCデータは、50ポジションオートサンプラーを備え付けたTA Instruments Discovery DSCで収集した。典型的には、ピンホール付きのアルミニウムパン中の0.5~3mgの各試料を、10℃/分で、25℃から300℃まで加熱した。この試料に対して、50ml/分での乾燥窒素のパージを維持した。装置制御ソフトウェアは、TRIOSであり、データは、TRIOS又はUniversal Analysisを使用して分析した。
【0216】
熱重量分析(「TGA」)
TGAデータは、25ポジションオートサンプラーを備え付けたTA Instruments Discovery TGAで収集した。典型的には、5~10mgの各試料を、あらかじめ風袋を計ったアルミニウムDSCパンに負荷し、周囲温度から350℃まで10°C/minで加熱した。この試料に対して、25ml/分での窒素のパージを維持した。装置制御ソフトウェアは、TRIOSであり、データは、TRIOS又はUniversal Analysisを使用して分析した。
【0217】
重量分析蒸気吸着(「GVS」)
吸着等温線は、DVS Intrinsic Controlソフトウェアによって制御されるSMS DVS Intrinsic水蒸気吸着測定装置を使用して得た。試料温度は、装置制御によって、25℃に維持された。湿度は、200ml/分の全流速で、乾燥窒素と湿った窒素の流れを混合することによって制御された。相対湿度は、試料の近くに位置する較正されたRotronicプローブ(1.0~100%RHの動的範囲)によって測定した。RH(%)の関数としての、試料の重量変化(質量緩和)は、微量天秤(精度±0.005mg)によって常にモニタリングした。
【0218】
典型的には、5~30mgの試料を、周囲条件下で、風袋を計ったメッシュステンレススチールバスケットに入れた。試料は、40%RH及び25℃(典型的な室内条件)で、負荷した及び付加しなかった。水分収着等温線を、下に概説した通りに実施した(全サイクルあたり2回のスキャン)。標準の等温線を、0~90%RH範囲にわたる区間、10%RHで25°Cで、実施した。典型的には、2重のサイクル(4回のスキャン)を実施した。データ分析は、DVS Analysis Suiteを使用して、Microsoft Excel内で実施した。
【0219】
カール・フィッシャー(「KF」)滴定
各試料の水分含有量を、Hydranal Coulomat AGオーブン試薬及び窒素パージを使用して、851 Titrano Coulometerを備えた150℃のMetrohm 874 Oven Sample Processorで測定した。計量した固体試料を、密封試料バイアルに導入した。滴定あたりおよそ10mgの試料を使用し、2連の測定を行った。他に記述されない限り、これらの結果の平均が示される。データ収集及び分析は、Tiamoソフトウェアを使用して実施した。
【0220】
イオンクロマトグラフィー(「IC」)
データは、IC MagicNetソフトウェアを使用して、858 Professionalオートサンプラー及び800 Dosino投薬単位モニターを備えたMetrohm 930 Compact IC Flexで収集した。正確に計量した試料を、好適な溶媒中のストック溶液として調製した。定量化は、分析されるイオンの濃度がわかっている標準溶液との比較によって達成された。分析は、2連で実施し、他に記述されない限り、値の平均が与えられる。陽イオン及び陰イオンのための分析方法を、それぞれ、表1及び2に提供する。
【0221】
【表1】
【0222】
【表2】
【0223】
高速液体クロマトグラフィー(「HPLC」)
純度分析は、ダイオードアレイ検出器を備え付けたAgilent HP1100/Infinity II 1260シリーズシステムで、またOpenLABソフトウェアを使用して実施した。完全な方法の詳細を、表3に提供する。
【0224】
【表3】
【0225】
実施例3:予備的な溶解度調査。
塩形成の研究のために、以下の酸溶液を使用した。示されている場合、酸を、反応混合物に、固体として直接的に添加した。
【0226】
HPLCバイアルに入れた非晶質セスロマイシン(25mg)を、材料が完全に溶解するまで、又は最大の60体積(1.5ml)が添加されてしまうまで、溶媒の体積を増大させながら処理した。溶媒のそれぞれの添加後、バイアルを撹拌し、50℃まで穏やかに加熱し、その後、新しい一定分量の溶媒を添加した。評価するが完了した後、およそ1当量のHClを50℃で添加し、試料を、0.1℃/分で、5℃までゆっくりと冷却した。次いで、すべての固体を濾過によって単離し、吸引下で乾燥させた。貧溶媒(n-ヘプタン、10又は20体積)を、あらゆる溶液に添加し、得られたガムを、4時間ごとに25℃から50℃に切り替わるチャンバー中で熟成させた。単離されたすべての固体を、PXRDによって分析した。
【0227】
セスロマイシンは、貧溶媒とみなされるn-ヘプタンを伴う、10体積のTHF:HO(9:1)、2-プロパノール、EtOH、EtOAc、アセトン、MeCN、THF、TBME、及びDCMに、容易に溶解した。予備的な塩形成実験後に、結晶性固体は得られなかった。溶解度結果に基づいて、メタノールだけでなく、EtOAc及びアセトンを、塩形成実験のための溶媒として選択した。
【0228】
【表4】
【0229】
実施例4:塩形成の予備的調査。
セスロマイシン塩を調製することが可能であるかどうか、また、これらの塩のいずれかが、遊離塩基に勝る好都合な特性を呈するかどうかを確認するために、セスロマイシンを、様々なpKa値をカバーする18種の異なる酸で処理した。
【0230】
【表5】
【0231】
非晶質セスロマイシン(25mg)を、50℃の10体積(250μl)の3種の溶媒(MeOH、アセトン、及びEtOAc)のうちの1つに溶解した。次いで、この溶液を、合計で54種の試料について、選択された18種の異なる対イオン(表5)で処理した。次いで、得られた溶液/懸濁液/ガムを、0.1℃/分で、5℃まで冷却し、5℃で4時間保持した。始めから終わりまで撹拌を維持した。あらゆる残留溶媒を、バイアルのキャップを外すことによって、周囲条件で蒸発させた。得られたあらゆるガム/油に、貧溶媒(ヘプタン、10体積)を添加し、次いで、これを、4時間ごとに25℃から50℃を繰り返すチャンバー中で熟成させた。得られたあらゆるペーストを、スライドガラス上に塗り広げることによって乾燥させた。得られたあらゆる固体を、フィルターにかけ/単離し、最初にPXRDによって分析した。新たなPXRDディフラクトグラムを示したすべての固体を、単離し、さらに特性決定を行った。非晶質であった又は出発材料と一致していたあらゆる固体を、14日間、25~50℃で熟成させた。次いで、固体を単離し、PXRDによって分析した。
【0232】
セスロマイシンに関する塩形成実験の結果を、表6、7、及び8にまとめる(凡例は後述する)。リン酸、酢酸、及び塩酸を用いて、セスロマイシンについての3つの異なる塩形態が観察され、それぞれ、リン酸塩パターン1、酢酸塩パターン1、及び塩化物パターン1と名付けた。
【0233】
【表6】
【0234】
【表7】
【0235】
【表8】
【0236】
【表9】
【0237】
3つの異なる溶媒系(MeOH、アセトン、及びEtOAc)中で18種の対イオンを使用して、セスロマイシンに関する塩形成実験を実施した。これらの実験から、4つの新しいパターン:リン酸塩パターン1、酢酸塩パターン1、遊離塩基パターン1、及び塩化物パターン1を特定した。
【0238】
図5は、アセトン中での塩形成実験からの生成物についてのPXRDを示す:(a)(i)リン酸セスロマイシンパターン1及び(ii)SO4、並びに(iii)遊離塩基セスロマイシン;(b)(i)MSA、(ii)pTSA、(iii)BSA、(iv)OXA、(v)TAR、(vi)AcOHパターン1(n-ヘプタン中での14日の成熟後)。
【0239】
図6は、EtOAc中での塩形成実験からの生成物についてのPXRDを示す。(a)酢酸塩パターン1(i)塩化物パターン1、(ii)MSA、(iii)pTSA;PHOA:(iv)実験、(v)参照;酢酸塩パターン1:(vi)実験、(vii)参照。(b)(i)SO4、(ii)BSA、(iii)OXA、(iv)MEA、(v)DHBA、(vi)TAR、(vii)FUA、(viii)CA、及び(ix)MA。
【0240】
リン酸塩パターン1は、アセトン及びEtOAcから単離された、不十分に結晶性の形態であり、これは、潜在的に、溶媒和ヘミリン酸塩と特徴付けられた。リン酸塩パターン1についてのH NMR(図示せず)は、遊離塩基セスロマイシンについてのものと実質的に同じである。
【0241】
酢酸塩パターン1は、ヘプタン中で最初に得られたガムを熟成させた後に、アセトンとEtOAcの両方中での塩形成実験から単離された結晶性固体である。これは、潜在的に、一水和であるモノ酢酸塩である。酢酸塩パターン1についてのH NMR(図示せず)は、酢酸についてのδ1.9でのピークを含有し、その他の点では遊離塩基セスロマイシンについてのものと実質的に同じである。
【0242】
塩化物パターン1は、5℃への冷却を介する、EtOAc塩形成実験から単離された結晶性固体である。塩化物パターン1についてのH NMR(図示せず)は、遊離塩基セスロマイシンについてのものと実質的に同じである。この試料は、NMRによれば、ほんの微量のEtOAcを含有するが、周囲温度から100℃までに、この形態が水和されたことを示す有意な質量損失を有する。
【0243】
リン酸塩パターン1、酢酸塩パターン1、及び塩化物パターン1を、スケールアップのために先へ進めた。
【0244】
図7は、塩形成実験からのリン酸塩パターン1のPXRD及びTGA特性を示す。(a)PXRD。(b)TGA、横軸=温度(℃)、左軸及び(i)=重量(%);右軸及び(ii)=熱流(W/g)。
【0245】
図8は、塩形成実験からの酢酸塩パターン1のPXRD及びTGA特性を示す。(a)PXRD。20個の最も強いピークについての関連するディフラクトグラムからのピーク情報を、表10に提供する。(b)TGA、横軸=温度(℃)、左軸及び(i)=熱流(W/g);右軸及び(ii)=重量(%);さらなる詳細は表9に提供した。
【0246】
【表10】
【0247】
図9は、塩形成実験からの塩化物パターン1のPXRD及びTGA特性を示す。(a)PXRD。20個の最も強いピークについての関連するディフラクトグラムからのピーク情報を、表11に提供する。(b)TGA、横軸=温度(℃)、縦軸 重量(%);約110℃への加熱時の質量の5.7%減少。
【0248】
【表11】
【0249】
実施例5:温度可変型PXRD。
酢酸塩パターン1の熱分析は、複雑な熱プロファイルを示した。これをさらに調査するために、この材料に対してVT PXRD実験を実施した。加熱すると、当初の白色粉末は、最初に130℃までに半透明の固体に、次いで170℃までに半透明の白色固体に変換される。この変換は、元々の回折パターンの喪失及び新しい回折パターンの出現を伴う。図10は、変換プロセス:(i)rtでの酢酸塩パターン1、それに続く(ii)90℃、(iii)130℃、及び(iv)170℃への加熱、及び最後に(v)rtに戻す冷却、をたどる。H NMR分析は、この材料が酢酸を含有しないことを明らかにし、したがって、新しい回折パターンは、遊離塩基パターン1と表される遊離塩基形態に起因する。この材料は、RTで安定である。図11は、遊離塩基パターン1のPXRDを示す。
【0250】
実施例6:塩形成スケールアップの調査。
リン酸塩パターン1スケールアップのセスロマイシン(250.5mg)を、10体積(2.5ml)のEtOAcで処理し、50℃のPolar Bear中で温めた。リン酸(1M THFストック溶液、359μl、1当量)を添加した。濃い黄色のガムが認められ、これは、撹拌と共に粒子を失うように見えた。この試料を、30分間50℃に維持し、次いで、1分あたり0.1℃で、5℃までゆっくりと冷却し、いくらかの黄色のガムを伴う白色のペーストをもたらした。この白色の材料(120.3mg)を、ブフナー漏斗で濾過によって単離した。この白色粉末のPXRD分析(図示せず)は、この固体が非常に弱い結晶性であることを明らかにした。
【0251】
リン酸塩パターン1は、スケールアップ時に、弱い結晶性であり、およそ3当量の水を含有し、ヘミ塩である可能性が高い。これは、HPLCによれば98.5%純粋であり、25℃/97% RHでの加速保存下で潮解する。この材料は、非常に吸湿性であり、0%から90%のRHで21.0%の吸湿量を有する。この材料は、ガラス状の細片の形態で現れる。
【0252】
図12は、(a)等温及び(b)動力学的方式でのリン酸塩パターン1についてのGVS挙動を示す。(a):横軸=ターゲットRH(%);縦軸=質量の変化(%);(i)サイクル1 吸着;(ii)サイクル1 脱離;(iii)サイクル2 吸着;(iv)サイクル2 脱離;(v)サイクル3 吸着。(b)横軸=時間(分);左軸及び(i)=質量の変化(%);右軸及び(ii)=ターゲットRH(%)。
【0253】
その不十分な結晶化度により、この材料を、さらに調べることはしなかった。
【0254】
酢酸塩パターン1スケールアップのセスロマイシン(250.0mg)を、10体積(2.5ml)のEtOAcで処理し、50℃のPolar Bear中で温めた。酢酸(1M THF、359μl、1当量)を添加した。この試料を、30分間50℃に維持し、次いで、1分あたり0.1℃で、5℃までゆっくりと冷却した。これにより、無色透明な溶液がもたらされ、次いで、これを、周囲条件下で蒸発させた。これにより、ごく薄い黄色のガムが生じた。この材料を、スパチュラで撹拌し、10体積のヘプタンで処理し、4時間ごとに25℃から50℃を繰り返して、2日間熟成させた。得られた白色懸濁液を、ブフナー漏斗で濾過によって単離し、白色粉末(228.4mg)をもたらした。
【0255】
酢酸塩パターン1は、単塩水和物であり、98.5%の純度で単離された。この材料は、吸湿性であり、0%から90%のRHで8.6%の吸湿量を有し、その吸湿性により、水の化学量論は決定できなかった。酢酸塩パターン1スケールアップについてのH NMR及びPXRD(図示せず)は、実施例4の酢酸塩パターン1材料についてのものと実質的に同じである。
【0256】
酢酸塩パターン1は、複雑な熱プロファイルを有し、およそ130℃から酢酸を失い、遊離塩基パターン1に変換する。この試料はまた、高湿度(加速保存条件及びGVS)でも酢酸を失う。酢酸塩パターン1は、この材料を、GVS条件又は40℃/75% RHでの保管にかけることによって、酢酸塩パターン2と称される新しい形態に変換することが判明した。酢酸塩パターン2は、97% RHでも変化しないままであったが、より低い酢酸塩含有量を有することが証明された。加熱時の遊離塩基への明らかな解離により、化合物の熱プロファイルのさらなる調査は実施されなかった。
【0257】
図13は、(a)等温及び(b)動力学的方式での酢酸塩パターン1スケールアップ材料についてのGVS挙動を示す。(a):横軸=ターゲットRH(%);縦軸=質量の変化(%);(i)サイクル1 吸着;(ii)サイクル1 脱離;(iii)サイクル2 吸着;(iv)サイクル2 脱離;(v)サイクル3 吸着。(b)横軸=時間(分);左軸及び(i)=質量の変化(%);右軸及び(ii)=ターゲットRH(%)。
【0258】
図14は、(1)GVS前及び(ii)GVS後の酢酸塩パターン1のPXRDを示す。
【0259】
塩化物パターン1スケールアップのセスロマイシン(249.7mg)を、10体積(2.5ml)のEtOAcで処理し、50℃のPolar Bear中で温めた。HCl(1M THF、359μl、1当量)を添加した。酸添加後、黄色のガムが認められた。この試料を、30分間50℃に維持し、次いで、1分あたり0.1℃で、5℃までゆっくりと冷却した。得られた黄色のガムを、スパチュラで撹拌し、5℃で一晩撹拌させておいた。これにより、白色懸濁液が与えられた。この固体を、ブフナー吸引で濾過によって単離し、冷却n-ヘプタンで洗浄した。これにより、オフホワイトの粉末(168.6mg)がもたらされた。塩化物パターン1スケールアップについてのH NMR、PXRD、及びTGA(図示せず)は、実施例4の塩化物パターン1材料についてのものと実質的に同じである。
【0260】
塩化物パターン1のNMR分析は、塩形成についてのものと一致するピークシフトを示す。塩化物パターン1は、微結晶性の凝集された粉末として得られ、単塩水和物である。この材料は、吸湿性であり、0%から90%のRHで8.6%の吸湿量を有する。この吸湿性により、水和物の化学量論を定量化するのが困難である。単離された材料は、HPLCによれば98.6%純粋であり、この固体形態は、加速保存条件下で安定である。
【0261】
塩形態の溶解度を測定し、非晶質セスロマイシン遊離塩基について収集された溶解度データと比較した。SGF媒体において収集された動力学的溶解度データは、非晶質遊離塩基(25mg/ml)と比較して、リン酸塩及び酢酸塩パターン1について35mg/ml超まで増大し、およそ10mg/mlの溶解度の増大を示す。SGFにおける塩化物パターン1の溶解度(27mg/ml)は、非晶質遊離塩基と有意差がない。特定されるすべての塩形態及び非晶質遊離塩基にわたって、PBSにおける熱力学的溶解度には有意差がない。DI水における熱力学的溶解度は、すべての塩形態について、遊離塩基と比較して向上した。この増大のうちの一部は、酸性の対イオンの存在によるpHの低下に起因する可能性がある;しかし、pH7のリン酸について、遊離塩基の0.4mg/mlからリン酸塩パターン1の35mg/ml超までの、有意な増大が存在した。
【0262】
今後の多形性研究のために、塩化物パターン1を選択した。何故なら、この塩は、最も好都合な固体状態特性、及び、特にDI水における、いくらかの溶解度の向上を有していたからである。
【0263】
【表12】
【0264】
3種の塩に対してさらなる特性決定を実施し、以下の表13に詳述する。
【0265】
【表13】
【0266】
【表14】
【0267】
実施例7:遊離塩基セスロマイシンの多形体。
酢酸塩パターン1材料を、次の手順によって、遊離塩基パターン1に変換した。酢酸塩パターン1(およそ10mg、実施例4)を、TGAパンに移した。次いで、この材料を、TGA装置を使用して、1分あたり10℃で150℃まで加熱し、20分間150℃で一定温度に保持し、次いで、1分あたり10℃で冷却して、RTに戻した。試料をTGAパンから取り出し、PXRDによって分析した。遊離塩基パターン1スケールアップについてのPXRD(図示せず)は、VT PXRDによる実施例5の遊離塩基パターン1材料についてのものと実質的に同じである。次いで、遊離塩基パターン1のこの回分及び他の回分を使用して、この形態の特性決定を行った。
【0268】
遊離塩基パターン2と称される、セスロマイシンの他の多形体を得ることができる。セスロマイシン(100mg)を、25体積(2.5ml)の脱イオン水に、及びPBSに懸濁した。得られた懸濁液は、25℃で24時間でスラリー化した。この試料を、ブフナー漏斗で濾過し、次いで、PXRDによって分析した。遊離塩基パターン2についてのH NMR(図示せず)は、遊離塩基セスロマイシンについてのものと実質的に同じである。
【0269】
図15は、(a)HO及び(b)PBSから得られた遊離塩基パターン2のPXRD特性を示す。
【0270】
【表15】
【0271】
実施例8:塩化物パターン1のスケールアップ調査
セスロマイシン(2498.8mg)を、10体積(25ml)のEtOAcで処理し、40℃のPolar Bear中で温め、ごく薄い褐色の溶液を形成させた。HCl(1M THF ストック溶液、3590μl、1.1当量)を添加した。酸添加後、黄色のガムが認められた。この試料を、5分間40℃に維持し、次いで、1分あたり0.1℃で、5℃までゆっくりと冷却した。この試料を、3日間5℃に維持した。これにより、白色懸濁液が与えられ、これを、ブフナー漏斗で濾過した。これにより、白色粉末(2177mg)がもたらされた。塩化物パターン1スケールアップについてのH NMR及びPXRD(図示せず)は、実施例4の塩化物パターン1材料についてのものと実質的に同じである。
【0272】
実施例9:非晶質塩化セスロマイシンの調査。
塩化セスロマイシンパターン1(実施例8、25mg)の3つの部分を、それぞれ、ACN:HO(1:1 v/v)、THF:HO(7:3 v/v)、及びt-ブタノール:HO(1:1 v/v)、(0.5ml)に溶解した。同じ材料をt-ブタノール(30体積、0.75ml)に溶解する試みは、不成功であった。次いで、得られた溶液を濾過して、あらゆる残留する固体粒子を除去した。次いで、これらの溶液を、ドライアイス-アセトン浴中で凍結させ、溶媒を凍結乾燥によって除去した。残留固体を、PXRD及びNMRによって分析した。HPLC純度も、ACN:HO(1:1)から得られた試料上で実施した。
【0273】
非晶質塩化セスロマイシンの調製を、4種の異なる溶媒中で試みた(表24)。ACN:HO(1:1 v/v)、THF:HO(7:3 v/v)、及びt-ブタノール:HO(1:1 v/v)では、調製は成功であった。ACN:HO(1:1 v/v)から調製された試料は、NMRによれば、残留溶媒を含有していなかった;したがって、この溶媒系を、非晶質材料のさらなる調製のために選択した。この溶媒系からの化合物のHPLC分析により、その純度が>98.9%であることが示された。
【0274】
【表16】
【0275】
実施例10:非晶質塩化セスロマイシンのスケールアップ。
塩化セスロマイシンパターン1(1g)を、20ml(20体積)のACN:HO(1:1 v/v)に溶解し、ナイロンフィルターで濾過して、あらゆる残留種粒子を除去した。得られた溶液を、500μl分量(バイアルあたりおよそ25mgのHCl塩)で、40本のHPLCバイアルにピペッティングした。試料を、アセトン/ドライアイス浴中で凍結させ、次いで、-80℃、1mbar圧力の凍結乾燥器に、16時間入れた。試料は、白色の低密度固体を形成した。
【0276】
PXRD分析を、これらのバイアルのうちの4本に対して実施し、いくつかの試料に対して、さらなる特性決定も実施した。最初の回分(回分「A」)は、非晶質であり、H NMRにより塩化セスロマイシンと一致し、微量の残留溶媒を有していた。TGAでは、水に起因する可能性が高い、かなりの質量損失が認められた。DSCでは、およそ161℃で、ガラス転移が認められた。試料中には、およそ0.9当量のHClが存在しており、純度の有意な低下(98.7から89.0%)が存在していることが注目された。この純度の低下は、溶媒先端の地点の周囲の低い保持ピーク、およそ10% auc、RRT=0.18に起因していた。この分析は、不適当な材料に起因して、繰り返すことができなかった。
【0277】
2つのさらなる回分(回分「B」及び「C」)を、PXRD及びH NMRによって分析し、塩化セスロマイシンと一致していた。最後の回分(回分「D」)を、PXRD、H NMR、IC、HPLC、及び9日間の40℃/75% RHでの保管後によって分析した。PXRDは、材料が非晶質であることを示した。非晶質塩化セスロマイシンについてのH NMR(図示せず)は、実施例4の塩化物パターン1材料についてのものと実質的に同じである。IC分析は、材料が、ICによると1当量の塩化物を含有していることを示した。材料は、高い温度及び湿度での保管中に結晶化しなかった。この回分では、純度の低下は認められなかった。
【0278】
調製された40本の試料のうち、18本を、その後、非晶質塩化セスロマイシンの溶解度評価に使用した。
【0279】
【表17】
【0280】
実施例11:非晶質塩化セスロマイシンの溶解度評価。
非晶質セスロマイシン(実施例10の材料の18本の個々のバイアル、バイアルあたりおよそ25mg)を、25℃の選択された個々の溶媒で処理した。この研究は、最大5体積のそれぞれの溶媒を用いて実施した。非晶質塩化セスロマイシンは、調査された18種の溶媒のうち10種に溶解することが判明した(表17)。ヘプタン、EtOAc、酢酸イソプロピル(iPrOAc)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルエチルケトン(MEK)、メチルt-ブチルエーテル(MTBE)、シクロヘキサン(cHex)、及びトルエンでは、スラリーが得られた。
【0281】
【表18】
【0282】
実施例12.塩化セスロマイシンに関する多形体実験。
塩化セスロマイシンについての多形体実験は、新規形態を発見する可能性を最大にするための様々な技術を使用して実施した。
【0283】
手順1:塩化物パターン1の冷却及び熟成
塩化物パターン1からの多形体の形成を、以下に記載される手順を使用して調べた。最初のステップでは、50℃の選択された個々の溶媒中での材料の溶解度を調査した。60体積までの溶媒量を使用した。この拡張研究の結果を、表18に示す。
【0284】
【表19】
【0285】
多形体形成の検討のための手順を、各試料について、その試料についての溶解度実験の結果に基づいて選択した。50℃で完全に溶解した次の試料を、冷却させた。1週後に溶液中に残存していた試料を、周囲条件下で蒸発させた。
【0286】
【表20】
【0287】
50℃で完全に溶解しなかった次の試料を、4時間ごとに25℃から50℃を繰り返すシェーカーインキュベーター中で1週間熟成させた。飽和溶液を、1分あたり0.1℃で、5℃まで冷却し、次いで、冷蔵庫中で、1週間、5℃に維持した。
【0288】
【表21】
【0289】
図16は、手順1を使用する塩化セスロマイシンについての多形体実験のPXRD特性を示す。トレース(a)は、実施例8からの塩化物パターン1である;残りのトレースについての表示は、表19中の実験番号に対応する。実験(vi)及び(xiv)については、PXRDディフラクトグラムは得られなかった。
【0290】
手順2:非晶質塩化セスロマイシンの熟成(5~25℃)
多形体形成の検討のための手順を、各試料について、実施例11に記載したその試料についての溶解度実験の結果に基づいて選択した。実施例11において25℃で懸濁液を形成した次の試料を、4時間ごとに5℃から25℃を繰り返すPolar Bear中で4日間熟成させた。処理の1日後、試料を観察した。熟成後、ペーストを形成した試料を、スパチュラ先端で乾燥させた。
【0291】
【表22】
【0292】
実施例11において25℃で溶液を形成した次の試料を、Polar Bear中で1日間熟成させた。この期間後に固体沈殿を形成した試料を乾燥させた。溶液中に残存している試料に、追加の非晶質塩化セスロマイシン(追加の25~50mg)を播種し、同じ条件下で、さらに3~4日間熟成させた。
【0293】
【表23】
【0294】
MeOH中で実施した実験(xii)は、塩化物パターン2と分類される新規の多形体を提供した。この材料の特性全体は、以下、実施例13中にある。
【0295】
図17は、手順2を使用する塩化セスロマイシンについての多形体実験のPXRD特性を示す。トレース(a)は、実施例8の材料である;残りのトレースについての表示は、表21中の実験番号に対応する。実験(ii)、(iv)、及び(v)については、PXRDディフラクトグラムは得られなかった。
【0296】
手順3:非晶質塩化セスロマイシンの熟成(25~50℃)
非晶質塩化セスロマイシン(25mg)を、10体積の溶媒(250μl)で処理した。試料を、4時間ごとに25℃から50℃を繰り返すシェーカーインキュベーター中で熟成させた。ペーストを形成した試料を、スパチュラ先端で乾燥させることによって単離した。
【0297】
【表24】
【0298】
図18は、手順3を使用する塩化セスロマイシンについての多形体実験のPXRD特性を示す。トレース(a)は、実施例8の材料である;残りのトレースについての表示は、表22中の実験番号に対応する。実験(vii)については、PXRDディフラクトグラムは得られなかった。非晶質材料に相当する、実験(i)及び(viii)についてのディフラクトグラムは、図示されていない。
【0299】
手順4:貧溶媒添加
塩化セスロマイシンパターン1(25mg、実施例8)を、50℃で溶液が形成される、又は最大の100体積に到達するまで、最小限の溶媒で処理した。この試料を、最初に、等体積の貧溶媒(n-ヘプタン)で処理し、これを1:3の比(溶媒:貧溶媒)まで増大させた。最初の大きい体積の溶媒(100体積)を有する試料を、1等体積のヘプタン(1:1比)で処理した。すべての試料を、0.1℃/分で5℃まで冷却した。あらゆる得られた固体を、単離し、PXRDによって分析した。あらゆる存続する溶液を、周囲条件下で蒸発させ、PXRDによって分析した。
【0300】
図19は、手順4を使用する塩化セスロマイシンについての多形体実験のPXRD特性を示す。トレース(a)は、実施例8の材料である;残りのトレースについての表示は、表22中の実験番号に対応する。実験(vii)については、PXRDディフラクトグラムは得られなかった。非晶質材料に相当する、実験(i)及び(viii)についてのディフラクトグラムは、図示されていない。
【0301】
【表25】
【0302】
実施例13.塩化物パターン2の特性。
塩化セスロマイシンパターン2(実施例12、手順2、実験xii:MeOH)を、様々な技術を使用して特徴付けた。これは、単塩水和物である可能性が高く、単離時に結晶性を失うことが判明した。TGAは、水に起因する5.1%の質量損失を示す。これは、2.4当量の水に相当するが、この材料は吸湿性であるので、厳密な化学量論を明確にすることは難しい。DSCでは、この喪失に相当するブロードな吸熱、それに続いて、おそらく融解である186.5℃での第2の吸熱が観察される。HPLCでは、純度が出発材料と一致することが確認された。
【0303】
【表26】
【0304】
図20は、(i)塩化物パターン2(実施例8)及び(ii)塩化物パターン2についての(a)PXRDを示す。18個の最も強いピークについての関連するディフラクトグラムからのピーク情報を、表25に提供する。示されるのはまた、塩化物パターン2についての(b)熱分析である。さらなる詳細を、表24に提供する。
【0305】
【表27】
【0306】
図21は、塩化物パターン2についてのGVS挙動を示す。
【0307】
非晶質セスロマイシン(凍結乾燥によって調製)と結晶性塩化セスロマイシンの両方のインプット材料を使用して、冷却、温度サイクリング、貧溶媒添加、及び蒸発技術を使用して、多形体形成実験を実施した。試料の大部分は、非晶質又は塩化物パターン1であった。メタノールからの2つの場合に、塩化物パターン2と表される、他の結晶性固体が単離された。塩化物パターン2の最初の特性決定により、材料が、TGAによると水に起因するかなりの質量損失を伴い、1H NMRによると残留溶媒を伴わず、結晶性であることが示される。この材料は、98.8%純粋であり、ICにより、0.97当量という塩化物含有量が確認される。単離後のバルク試料では、小さい分量に対して実施される最初の分析と比較して、結晶化度の低下が存在していた。
【0308】
実施例14.塩化物パターン2の調製。
塩化セスロマイシンパターン1(350mg、実施例8)を、5体積のMeCN:水(1:1)(v/v)(1.75ml)に溶解した。この溶液を、ナイロンフィルターを通過させて25ml丸底フラスコに入れた。次いで、この試料を、アセトン/ドライアイス浴中で凍結させ、次いで、-80℃、1mbar圧力で凍結乾燥させて、非晶質塩化セスロマイシンをもたらした。この材料は、PXRDによると非晶質、HPLCによると98.7%純粋であった。非晶質塩化セスロマイシンについてのH NMR(図示せず)は、実施例4の塩化物パターン1材料についてのものと実質的に同じである。
【0309】
先のステップからの非晶質塩化セスロマイシンを、25℃の1体積(290μl)のメタノールで処理し、固体の小さい粒子が残存している薄い褐色の溶液をもたらした。次いで、この試料を、4時間ごとに25℃から5℃を繰り返すPolar Bear中で1日熟成させ、これにより、白色懸濁液の形成がもたらされた。この試料を、25℃から5℃まで冷却し(最大の冷却速度)、沈殿を最大にするために、30分間この温度に維持した。濾過を試みたが、懸濁液は、粘度が高すぎて濾過できないことが判明した。したがって、周囲条件下で蒸発によって2日間、試料を乾燥させた。
【0310】
【表28】
【0311】
実施例15.競合的スラリー実験。
塩化物パターン1の調製
非晶質セスロマイシン(2500mg)を、10体積(25ml)のEtOAcで処理し、薄い褐色の濁った溶液をもたらした。これを、40℃に温め、1.1当量のHCl(3590μlの1M THFストック溶液)で処理した。これにより、薄い黄色のガムの形成がもたらされた。この試料を、0.1℃/分で5℃まで冷却し、2日間撹拌しながらこの温度に維持した。この試料に、塩化物パターン1を播種し、さらに3日間、5℃で撹拌した。この期間の後、白色懸濁液が認められ、この試料をブフナー漏斗で濾過し、次いで、吸引下で20分間乾燥させた。これにより、オフホワイトの粉末がもたらされ、PXRDにより塩化物パターン1と確認され、収量=2316.3mg(88.4%)であった。塩化物パターン1スケールアップについてのH NMR(図示せず)は、実施例4の塩化物パターン1材料についてのものと実質的に同じである。
【0312】
非晶質塩化セスロマイシンの調製
塩化セスロマイシンパターン1(600mg)を、MeCN:HO(1:1、v/v)(3ml、5体積)に溶解した。さらなる1mlのMeCN(水溶液)溶媒を添加した(小さい粒子は溶解しないままであったので)。次いで、この溶液を、ナイロンフィルターで50mlフラスコに濾過して、あらゆる残留する種粒子を除去した。次いで、溶液を、アセトン/ドライアイス浴中で凍結させ、次いで、-80℃、1mbar圧力で、24時間、凍結乾燥させた。これにより、低密度白色固体がもたらされ、PXRDにより非晶質と確認された。非晶質塩化セスロマイシンについてのH NMR(図示せず)は、実施例4の塩化物パターン1材料についてのものと実質的に同じである。
【0313】
塩化物パターン2の調製
非晶質塩化セスロマイシン(520mg)を、MeOH(520μl、1体積)で処理した。得られた薄い褐色の溶液を、4時間ごとに25℃から5℃に切り替わるPolar Bear中で、1日熟成させた。得られた白色懸濁液を、(25℃から)5℃に冷却し、30分間この温度に維持した。次いで、この試料を、周囲条件下で蒸発によって乾燥させた。これにより、オフホワイトの固体がもたらされ、PXRDにより塩化物パターン2と確認され、収量=499.9mgであった。非晶質塩化セスロマイシンについてのPXRD及びH NMR(図示せず)は、実施例14の実験による塩化物パターン2についてのものと実質的に同じである。
【0314】
【表29】
【0315】
塩化セスロマイシンパターン1を使用して、表28に示す通りに、40℃の飽和溶液を調製した。EtOAcを除くすべての試料を、40℃で12時間撹拌した。EtOAc懸濁液は、この温度で1時間(蒸発のリスクを低下させるために)撹拌した。次いで、この飽和溶液を濾過した。
【0316】
【表30】
【0317】
およそ350mg分量の塩化物パターン1及び塩化物パターン2を、乳棒及び乳鉢で穏やかに(別々に)粉砕して、均一な大きさの粒子をもたらした。粉砕された塩化物パターン1と粉砕された塩化物パターン2との1:1混合物を、300mgの各材料をローラーミキサーで24時間混合することによって調製した。図24は、(i)塩化セスロマイシンパターン1(実施例15より)、(b)塩化セスロマイシンパターン2(実施例15より)、及び(III)混合物についてのPXRDを示す。
【0318】
上述の材料の一部を、12本のHPLCバイアルに計り分け、表29に示す通りに番号付けした。各バイアルを、MeOH中で実施される試料(これは、0.35mlのMeOH飽和溶液で処理された)を除いて、0.3mlの飽和溶液で処理した。飽和溶液の添加の前に、各飽和溶液を、相当する温度にし、30分間平衡化させた。得られた懸濁液を沈降させ、上部から飽和溶液を採取した。注:HCl塩のメタノール(及び限られた材料)中の高い溶解度に起因して、MeOH溶液を飽和させることは可能ではなかった。部分的に飽和したMeOH溶液で処理された場合、固体は、完全に溶解した。したがって、MeOH中で競合的スラリーを実施することは可能ではなかった。他のすべての試料は、3日間、5℃、25℃、及び40℃でスラリー化し、次いで、PXRDによって分析した。
【0319】
図22は、スラリー実験のPXRD分析を示す。塩化セスロマイシン(a)パターン1、(b)パターン2、(c)パターン1+パターン2の混合;(d)5℃、(e)25℃、(f)40℃でTHFを;(g)5℃、(h)25℃、(i)40℃でHOを;(d)5℃、(e)25℃、(f)40℃でEtOAcを用いるスラリー。
【0320】
【表31】
【0321】
実施例16.塩化セスロマイシンに関する動力学的溶解度研究
およそ40mg/mlの推定される最大濃度の遊離形態の化合物のために十分な試料を、0.25mlの媒体に懸濁した。次いで、得られた懸濁液を、25℃/750rpmで2時間振盪させた。平衡化後、外観を記録し、飽和溶液のpHを測定した。次いで、試料を、ガラス「C」繊維フィルター(粒子保持1.2μm)で濾過した。すべての試料を、SGF媒体で100倍希釈した。定量化は、およそ0.15mg/mlの標準の溶液に準拠する、HPLCによるものであった。異なる体積の標準及び希釈された試料溶液を注入した。溶解度は、標準の注入における主要ピークと同じ保持時間に見つけられるピークの積分によって決定されるピーク面積を使用して算出した。
【0322】
【表32】
【0323】
実施例17.塩化セスロマイシンに関する熱力学的溶解度研究
およそ40mg/mlの推定される最大濃度の遊離形態の化合物のために十分な試料を、0.25mlの媒体に懸濁した。次いで、得られた懸濁液を、25℃/750rpmで24時間振盪させた。PBS(pH7.4)に懸濁させた試料のpHを確認し、2時間後に、必要であれば(pHの>0.05の変化)調整した。平衡化後、外観を記録し、飽和溶液のpHを測定した。次いで、試料を、ガラス「C」繊維フィルター(粒子保持1.2μm)で濾過した。PBS(pH7.4)緩衝液に懸濁させた試料を、PBS緩衝液で10倍希釈し、DI水に懸濁させた試料を、で100倍希釈した。
【0324】
【表33】
【0325】
塩化物パターン1に対して実施される分析からの溶解度の結果は、一般に、分析された両方の回分を通して一貫していた。セスロマイシンパターン2は、パターン1と比較して、増大された溶解度を示すが、これは、DI水及びSGFではおよそ6mg/ml、PBSでは0.4mg/mlの差であるに過ぎない。
【0326】
塩化セスロマイシンの溶解度は、PBS媒体とSGF媒体の両方において、非晶質遊離塩基に対する溶解度に匹敵する溶解度であるが、結果によれば、DI水では、塩化セスロマイシン(パターン1とパターン2の両方とも)は、非晶質遊離塩基よりも有意に溶解性であることが示される。これは、pHのわずかな変化に起因する可能性があり、塩化物塩についてはpH4.5から5.2に平衡化するが、遊離塩基についてはpH7.0のままであり、これは、セスロマイシンが、より酸性の条件下で、より溶解性であるという一般的な傾向に従っている。
【0327】
溶解度分析後に溶解しないままであった残渣に対して、PXRD分析を実施して、固体形態の変化について確認した。PBSでは、塩化物パターン1とパターン2は両方とも、PBS又は水において遊離塩基パターン1を24時間スラリー化させることによって以前に観察された遊離塩基パターン2に変換した。SGF及び脱イオン水では、塩化物パターン2について、透明な溶液が得られたので、この形態については、溶解度値を報告することができない。SGF及び脱イオン水では、塩化物パターン1は変化しないままであった
【0328】
実施例18.塩化セスロマイシンに関する溶解度研究。
【0329】
【表34】
【0330】
【表35】
【0331】
【表36】
【0332】
溶解度実験からの次の試料は、塩化セスロマイシンパターン1と特徴付けられる材料を提供した。図25は、比較のために含められる(a)実施例8からの塩化セスロマイシンパターン1についてのディフラクトグラムと共に、4つの試料についてのディフラクトグラムを示す。
【0333】
【表37】
【0334】
溶解度実験からの次の試料は、セスロマイシン遊離塩基パターン2と特徴付けられる材料を提供した。図26は、比較のために含められる(a)実施例8からの塩化セスロマイシンパターン1、(b)実施例14からの塩化セスロマイシンパターン2、及び(c)実施例7からのセスロマイシン遊離塩基パターン2についてのディフラクトグラムと共に、4つの試料についてのディフラクトグラムを示す。
【0335】
【表38】
【0336】
実施例19.塩化セスロマイシンに関する安定性研究。
保管についての安定性を決定するために、種々のセスロマイシン形態に関して研究を実施した。
【0337】
図23は、塩化物パターン2の保管に関するPXRD研究を示す。(a)(i)保管(25℃、97% RH、9日)後の塩化物パターン2、(ii)実施例8からの塩化物パターン1、及び(iii)実施例14からの塩化物パターン2のPXRD。(b)(i)保管(40℃、75% RH、9日)後の塩化物パターン2、及び(ii)実施例14からの塩化物パターン2のPXRD。
【0338】
実施例20.塩化セスロマイシンと塩基のインビボ活性の比較
塩化セスロマイシンの血液期抗マラリア活性を、セスロマイシン遊離塩基と比較するアッセイを実施した。Balbcマウス(n=3/投与)に、500,000個のネズミマラリア原虫(P.berghei)(げっ歯類に感染するプラスモジウム属(Plasmodium)の種)感染赤血球をi.p.で与え、次いで、60mg/kgの1日用量の塩化セスロマイシン又はセスロマイシン遊離塩基を、強制経口投与を介して、4日間、1日1回投与した。血液を毎日採取して、感染の経過を追跡し、ルシフェラーゼアッセイによって定量化した。図27に示す通り、セスロマイシン塩は、塩基よりも優れており、遊離塩基の2倍の速度で死滅させ、最初の寄生虫血症に戻るまで1日遅いという結果になる。したがって、セスロマイシン塩は、ヒト(他のプラスモジウム属(Plasmodium)の種によって感染を受ける)、及び同様に他の哺乳類におけるマラリアの治療において、遊離塩基よりも優れていることが予想される。
【0339】
実施例21.インビトロでのヒト肝細胞毒性研究。
熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)(又は他のプラスモジウム属(Plasmodium)の種)に対して、インビトロで、塩化セスロマイシン、そのM1代謝産物のN-脱メチルセスロマイシン、及び/又はセスロマイシン遊離塩基を比較するために、当技術分野で公知の方法に従ってクロロキン感受性及び耐性分離株を使用して、抗マラリア活性及び肝細胞毒性を評価することができる。
【0340】
一実施形態、追加の48時間細胞毒性プレートを用いるHIATアッセイでは、凍結保存されたヒト肝細胞を、384ウェルのコラーゲンコーティングされた組織培養プレート(黒色壁、透明底)にプレーティングし、10点の用量反応範囲の濃度を使用する試験化合物又は対照で処理し、次いで、2つの時点:24及び48時間の間、インキュベートした。インキュベーション期間の最後に、細胞に、それぞれの細胞健康マーカーのための妥当な色素/抗体を負荷した。次いで、これらのプレートを、自動化されたハイコンテントイメージャー(ArrayScanTM VTI HCS Reader)を使用してスキャンした。核の強度、GSH枯渇、ミトコンドリア電位(TMRE)、及びROS(活性酸素種)を、例えば24時間時点で評価することができ、AC50値が報告され;細胞喪失及び核の大きさを、例えば48時間時点で評価することができる。これらの読み取りのそれぞれに対する陽性対照も、含めることができる。細胞生存率以外の読み取りについては、データ分析に対する統計学的手法が使用される。各パラメータについての「正常」の定義を定めるために、ビヒクル対照が使用される。次いで、ビヒクル対照ウェルを使用して、予想される割合を超える低い又は高い反応者を有するウェルのための有意限界を決定する。
【0341】
ある種の実施形態では、塩化セスロマイシンは、肝臓毒性の回避において、遊離塩基よりも、また、M1代謝産物よりも優れていることが予想される。
【0342】
実施例22.塩化セスロマイシンと塩基のインビボ活性の比較
熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)又は他のマラリアを引き起こすプラスモジウム属(Plasmodium)の種のインビボでの死滅において、塩化セスロマイシン、そのM1代謝産物のN-脱メチルセスロマイシン、及び/又はセスロマイシン遊離塩基を比較するアッセイを、本明細書に開示される及び当技術分野で公知の方法に従って実施することができる。各化合物を、ある期間にわたって、1つ以上の用量レベルで投与することができ;寄生虫レベル、マラリア疾患、治癒までの期間の短縮、生存延長、毒性(特に肝臓毒性)、及び他の尺度を、生存中と死後の両方の方法を使用して、研究中及びその後に評価することができる。ある種の実施形態では、塩化セスロマイシンは、寄生虫レベルを低下させること、マラリア疾患を治療すること、治癒までの期間を短くすること、生存を延長させること、及び毒性(特に肝臓毒性)を回避することにおいて、遊離塩基よりも優れていることが予想される。
【0343】
実施例23.追加のインビボでのマウス活性アッセイ
塩化セスロマイシン、及び/又はそのM1代謝産物、N-脱メチルセスロマイシンの肝臓期活性を、当技術分野で公知の方法に従って、蚊に刺された後又は感染性スポロゾイトの注射後のマウスマラリアモデル(n=5マウス/投与)において試験することができる。定量化可能な評価項目には、マラリアに対する測定される活性が含まれ得る。塩化セスロマイシン塩の活性は、M1代謝産物及び遊離塩基の活性よりも優れていることが予想される。ある種の実施形態では、M1代謝産物の活性は、塩化セスロマイシンの活性の30%未満であることが予想される。
【0344】
さらに又は或いは、マウスマラリア血液期活性を、上に開示した通りに、及び/又は当技術分野で公知の方法に従って、死滅の速度及び最小用量及び治癒のための期間を評価するための高寄生虫血症寄生虫死滅モデル(n=5マウス/投与)において試験することができる。定量化可能な評価項目には、マラリアに対する測定される活性が含まれ得る。塩化セスロマイシン塩の活性は、例えば、死滅の速度を増大させること及び最小用量及び治癒のための期間を低減させることにおいて、M1代謝産物及び遊離塩基の活性よりも優れていることが予想される。ある種の実施形態では、M1代謝産物の活性は、塩化セスロマイシンの活性の30%未満であることが予想される。
【0345】
実施例24.インビトロでのヒト肝細胞毒性研究。
塩化セスロマイシン、セスロマイシン遊離塩基、及びセスロマイシンM1代謝産物のN-脱メチルセスロマイシンを、他のマクロライド、例えばクラリスロマイシン、アジスロマイシン、及び/又はテリスロマイシンと比較するヒト3次元初代肝細胞毒性研究を、当技術分野で公知の方法に従って実施することができる。インビトロアッセイを実施して、例えば14日の反復投与化合物曝露後に、ヒト肝細胞における細胞健康マーカーグルタチオン、ROS形成、ミトコンドリア機能不全、及び細胞ATP inを測定することによって決定することができる、薬物性肝障害を評価することができる。定量化可能な評価項目には、当技術分野で公知の方法によって決定される通りの、他のマクロライドと比較される測定される毒性が含まれ得る。塩化セスロマイシンは、許容できる程度に低いレベルの肝臓毒性、また、ある種の実施形態では、他のマクロライド全般又はセスロマイシン遊離塩基ほど大きくない肝臓毒性作用を有するであろうことが予想される。
【0346】
まとめ
リン酸セスロマイシンパターン1は、スケールアップ時に結晶化度の低下を示し、25℃/97% RHでの加速保存下で潮解した。酢酸塩パターン1は、複雑な熱挙動を呈し、150℃で及び高い湿度で酢酸を失う。その固体状態特性に基づいて、今後、多形性研究へ進められることとなるこの研究において検討した塩の中から、塩化セスロマイシンパターン1を選択した。
【0347】
塩化セスロマイシンパターン1と塩化セスロマイシンパターン2との競合的スラリー実験(1:1の物理的混合物)を、THF、HO、及びEtOAc中で、3つの異なる温度(5℃、RT、及び40℃)で実施した。すべての実験において、懸濁液中で、3日以内に、塩化物パターン1への変換が認められた。塩化物パターン1は、調査された条件下で、最も安定な塩化物塩であると決定された。塩化物パターン2は、塩化物パターン1と比較して、溶解度のわずかな増大を示すに過ぎない。化合物が、機能的な固体形態を形成する、また、生理学的に妥当な状態で適切な溶解度を提供する、また、十分な安定性を示す能力が、医薬品としての化合物の開発にとって、それぞれ重要な考慮事項である。多くの場合、好ましい化合物形態の選択は、これらの因子のバランスに相当する。したがって、ある種の実施形態では、塩化セスロマイシンパターン1は、薬物としての開発のための適切な候補である。
【0348】
塩化セスロマイシンはまた、疾患のマウスモデルによって実証される通り、マラリアの治療において、遊離塩基よりも優れていると思われる。マラリアの治療及び毒性の回避における、塩化セスロマイシンの、遊離塩基及びM1代謝産物に対する優位性が、本明細書に開示される及び当技術分野で公知のアッセイによって実証されることとなることがさらに予測される。
【0349】
本出願に引用されたすべての参考文献、特許、又は出願(米国又は外国)を、本明細書にその全体が書かれているかのように、参照によって本明細書に組み込む。何らかの矛盾が生じる場合、本明細書に文字によって開示されている実体が支配する。
【0350】
前述の説明から、当業者は、本開示の基本的特徴を容易に突き止めることができ、様々な使用法及び条件に適合させるために、その趣旨及び範囲を逸脱せずに、本開示の様々な変更及び改変を行うことができる。
図1
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【国際調査報告】