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特表2023-504267ケナフ-ポリオレフィン複合材及び作製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-02
(54)【発明の名称】ケナフ-ポリオレフィン複合材及び作製方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/00 20060101AFI20230126BHJP
   C08L 1/00 20060101ALI20230126BHJP
   C08J 5/04 20060101ALI20230126BHJP
   C08J 3/20 20060101ALI20230126BHJP
【FI】
C08L23/00
C08L1/00
C08J5/04 CES
C08J3/20 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022532744
(86)(22)【出願日】2020-12-04
(85)【翻訳文提出日】2022-07-04
(86)【国際出願番号】 US2020063250
(87)【国際公開番号】W WO2021113602
(87)【国際公開日】2021-06-10
(31)【優先権主張番号】62/943,634
(32)【優先日】2019-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522216352
【氏名又は名称】キリングスワース、シャリーナ
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キリングスワース、シャリーナ
【テーマコード(参考)】
4F070
4F072
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA02
4F070AC72
4F070FA01
4F070FA03
4F070FB06
4F070FC05
4F072AA02
4F072AB03
4F072AC05
4F072AD04
4F072AG04
4F072AH23
4J002AB012
4J002BB031
4J002BB121
4J002FA042
4J002FB262
4J002FD012
4J002GC00
4J002GG01
4J002GT00
(57)【要約】
1または複数の糖類または多糖類で任意選択的にコーティングされており、ポリオレフィンのマトリックス中に分散している、ヘンプ、ケナフ、ジュート、及び/または亜麻の木質コア繊維を備える組成物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結合剤で少なくとも部分的にコーティングされており、ポリオレフィンのマトリックス中に分散している木質コア繊維を備える組成物。
【請求項2】
靱皮繊維を本質的に備えない、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記木質コア繊維は、ヘンプ、ケナフ、ジュート、及び亜麻のうちの少なくとも1つの木質コアを有する、請求項1または請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
ケナフ木質コア繊維を備える、請求項1または請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
約20重量%~約90重量%のケナフ木質コア繊維を備える、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
約90重量%~約98重量%のケナフ木質コア繊維を備える、請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
前記結合剤は、糖類または多糖類を含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項8】
前記結合剤は、デンプン及び糖のうちの少なくとも1つを含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項9】
前記ポリオレフィンは、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項4に記載の組成物。
【請求項10】
請求項9に記載の組成物を備える押出生成物。
【請求項11】
請求項9に記載の組成物を備える成形生成物。
【請求項12】
複合物品を作製するためのプロセスであって、
ケナフ木質コア繊維を粉末状ポリオレフィンと混合してケナフ-ポリオレフィン粉末混合物を形成する段階であって、前記ケナフ木質コア繊維は、約6%またはそれ未満の水分含有量を有し、前記粉末状ポリオレフィンは、-35Tylerメッシュ(0.42mmまたはそれ未満)の粒径を有する、段階と、
押出及び射出成形から選択されるプロセスを使用して前記ケナフ-ポリオレフィン粉末混合物から複合物品を形成する段階と
を備えるプロセス。
【請求項13】
前記ポリオレフィンは、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びこれらの混合物から成る群から選択される、請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
前記ケナフ木質コア繊維を前記粉末状ポリオレフィンと混合する前記段階は、約135℃~約165℃の範囲内の温度で実施される、請求項12または請求項13に記載のプロセス。
【請求項15】
粉砕されたケナフ木質コア粒子を結合剤及びポリオレフィンと混合して、約90重量%~約98重量%の範囲内のケナフ木質コア含有量を有するポリオレフィン-繊維混合物を形成する段階であって、ケナフ木質コア繊維は、約6%またはそれ未満の水分含有量を有する、段階と、
前記ポリオレフィン-繊維混合物を押出してマスターバッチペレットを形成する段階と
を備えるプロセス。
【請求項16】
前記ポリオレフィンは、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びこれらの混合物から成る群から選択される、請求項15に記載のプロセス。
【請求項17】
前記結合剤は、糖及びデンプンのうちの少なくとも1つを含む、請求項15または請求項16に記載のプロセス。
【請求項18】
押出及び射出成形から選択されるプロセスを使用して、ポリオレフィン及び前記マスターバッチペレットから複合物品を形成する段階を更に備える、請求項17に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照/参照による組み込みの記載]
本出願は、2019年12月4日に出願された米国特許仮出願第62/943,634号に基づく優先権を主張し、その全体を参照することにより本明細書に明確に組み込むものである。
【0002】
本明細書で開示され主張される発明概念は、概して、ポリマー複合材料に関し、限定としてではないが、より詳細には、セルロース系繊維強化ポリマーに関する。
【背景技術】
【0003】
熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂の両方で、セルロース系充填剤を添加剤として使用することが注目を得ている。このような充填剤には、木材パルプ、ピーナッツまたはクルミの殻、トウモロコシの穂軸、もみ殻、植物性繊維、及び草が含まれてきた。セルロース系繊維のコスト上の利点は、これらをプラスチックに使用することの初期の動機付けとなった。また、天然繊維は、ガラス繊維強化ポリマーと比較して軽い複合材をもたらすよう意図されていた。天然繊維の再生可能かつ生分解性の質は、セルロース系繊維-プラスチック複合材への新たな関心を刺激している。
【0004】
ケナフ(Hibiscus cannabinus)は、南アジア原産の植物である。ケナフは、工業的用途に利用され得る2つの主成分で構成された靱皮繊維植物である。第1は、植物の茎の外層のすぐ内側に位置する靱皮繊維である。ケナフ繊維はこれまで、ロープ、撚糸、粗布、及び他の製織品を作製するために使用されてきた。この植物の第2の有用な部分はコアである。ケナフハード(kenaf hurd)として知られているコアは、木質の性質であり、典型的には、動物用床材及び園芸用媒体のために使用されている。
【0005】
靱皮は、植物の約40%を構成し、約2~6mmの長さで厚い(6.3μm)細胞壁を有する細長い繊維細胞を含む。コアは、植物の約60%であり、比較的厚い(約38μm)が短く(0.5mm)かつ薄壁(3μm)の繊維細胞を有する。
【0006】
ケナフを作物として活用するには、付加価値のある生成物に組み込まなければならない。ケナフ靱皮繊維は、他の繊維と比較して靱性及び高アスペクト比をもつため、熱可塑性プラスチック複合材中の強化繊維としての可能性があることで知られている。ケナフ靱皮繊維を含む天然繊維をポリマーマトリックス中に添加する際に生じる主な不利益は、極性繊維表面と非極性マトリックスとの間の良好な界面接着の欠如であり、そのため、繊維が凝集し、最終生成物の特性が不十分になる。
【0007】
ケナフ木質コア繊維が強化繊維としてプラスチック中に使用されていないのは、部分的には、ケナフ靱皮繊維と比較してアスペクト比が低く、かつ、極性繊維表面とポリマーマトリックスとの間の界面接着が不十分だからである。
【0008】
靱皮植物には内部木質コアが大量にあるため、付加価値のある複合材料のために木質コア繊維を使用する手段を見出すことが望ましい。また、植物繊維と熱可塑性樹脂との間の界面接着を改善することが望ましい。
【発明の概要】
【0009】
結合剤でコーティングされており、ポリオレフィンのマトリックス中に分散している木質コア繊維の複合材が、環境に配慮した押出生成物または成形生成物を作製するために使用され得る。
【0010】
一実施形態において、ケナフ木質コア粒子が、結合剤及び粉末状ポリオレフィンと混合されて、ケナフ-ポリオレフィン粉末混合物が形成される。ケナフ木質コア粒子は、6%またはそれ未満の水分含有量を有し、粉末状ポリオレフィンは、-35Tylerメッシュ(0.42mmまたはそれ未満)の粒径を有する。押出または射出成形を使用して、ケナフ-ポリオレフィン粉末混合物から複合物品が形成される。
【0011】
別の実施形態において、ケナフ木質コア粒子が、結合剤及びポリオレフィンと混合されて、約90重量%~約98重量%の範囲内のケナフ木質コア含有量を有するポリオレフィン-繊維混合物が形成される。ケナフ木質コア粒子は、6%またはそれ未満の水分含有量を有する。ポリオレフィン-繊維混合物が押出されて、マスターバッチペレットが形成される。マスターバッチペレットは、ポリオレフィン-繊維複合物品を形成するために使用することができる。
【0012】
本明細書に組み込まれ、その一部を構成する添付図面は、本明細書に記載される1または複数の実施態様を図示し、本明細書と共に、これらの実施態様を説明する。図面は、正確な縮尺で描写することを意図しておらず、図の特定の特徴及び特定の見方は、明確性及び簡潔性のために、縮尺に対して、または概略として、誇張して示され得る。すべての構成要素がすべての図面で表示されているとは限らない。図における同様の参照番号は、同じまたは同様の要素または機能を表し、指し得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本明細書で開示される発明概念に従うポリオレフィン-木質コア繊維複合材を形成するプロセスのブロック図である。
【0014】
図2】いくらか砂っぽくざらついて見える実施例3のような90~98%植物ベースのマスターバッチを示す。
【0015】
図3】複合材ストローを作製するためのパイロット試験において使用した押出機を示す。
【0016】
図4】実施例4において生成された複合材の黒、青、及び赤色のストローを示す。
【0017】
図5】80%のケナフ芯を含む複合材ストローの大量生産の一例を示す。
【0018】
図6】実施例3のように生成され、実施例5のようにポリエチレン及びポリプロピレンの溶融物と混合されたマスターバッチを使用して押出された、ストローの一例を示す。
【0019】
図7】90%のケナフ芯を有し、ポリプロピレンホモポリマーを使用して実施例6のように射出成形された、複合材容器の一例を示す。
【0020】
図8】実施例7のように生成されたケナフ芯を含み、後にポリエチレンフィルムの製造のために使用される、淡いクリーム色のペレットの一例を示す。
【0021】
図9】ポリプロピレン及び80%ケナフ芯の淡褐色複合ペレットを示す。
【0022】
図10】再生ポリプロピレン及び80%ケナフ芯から作製された、より暗い褐色の複合ペレットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本願で開示される発明概念の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本願で開示される発明概念が、その用途において、以下の説明に記載されるまたは図面に示される構成要素もしくは段階の構造及び構成または方法論の詳細に限定されないことを理解されたい。本願で開示される発明概念は、他の実施形態、または様々な方法での実践もしくは実行が可能である。また、本明細書で用いられる表現法及び用語法は、説明を目的としており、限定的とみなされるべきではないことを理解されたい。
【0024】
本明細書に別段の定義がない限り、本願で開示される発明概念との関連で使用される専門用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有するものとする。更に、文脈上別の意味に解する必要がない限り、単数形の用語は複数形を含むものとし、複数形の用語は単数形を含むものとする。
【0025】
本明細書で開示される物品及び/または方法のすべては、本開示に鑑み、過度の実験をせずに作製及び実行することができる。本願で開示される発明概念の物品及び方法は好ましい実施形態の観点から記載されているが、当業者には、本願で開示される発明概念の概念、精神、及び範囲から逸脱することなく、本明細書に記載される物品及び/または方法ならびに方法の段階または段階の順序に変更を加えてもよいことが明らかであろう。当業者にとって明らかであるこのような同様の代替及び修正はすべて、本願で開示される発明概念の精神、範囲、及び概念に入ると考えられる。
【0026】
本開示に従って用いられる場合、以下の用語は、別段の記載がない限り、以下の意味を有すると理解されるものとする。
【0027】
特許請求の範囲及び/または本明細書において「備える(comprising)」という用語と併せて使用される場合の「a」または「an」という単語の使用は、「1」を意味し得るが、「1または複数」、「少なくとも1つ」、及び「1または1を超える」の意味とも矛盾しない。特許請求の範囲における「または」という用語の使用は、代替案だけを指すこと、または代替案が相互に排他的であることが明示的に示されていない限り、「及び/または」を意味するよう使用されるが、本開示は、代替案だけ及び「及び/または」を指す定義を支持する。
【0028】
本出願の全体を通して、「約」という用語は、ある値が、その値を決定するために用いられる装置もしくは方法に固有の誤差の変動、または研究対象の間に存在する変動を含むことを示すために使用される。例えば、限定としてではないが、「約」という用語が用いられる場合、指定される値は、±12パーセント、または±11パーセント、または±10パーセント、または±9パーセント、または±8パーセント、または±7パーセント、または±6パーセント、または±5パーセント、または±4パーセント、または±3パーセント、または±2パーセント、または±1パーセント変動してもよい。「X、Y、及びZのうちの少なくとも1つ」という用語の使用は、Xのみ、Yのみ、及びZのみ、ならびにX、Y、及びZの任意の組み合わせを含むものと理解される。序数の専門用語(すなわち、「第1」、「第2」、「第3」、「第4」など)の使用は、2つ以上の項目間を区別することのみを目的とし、順序もしくは順番、または1つの項目の別の項目と比べた重要度、あるいは、例えば、追加の順番を暗示するものではない。
【0029】
本明細書及び特許請求の範囲において使用される、単語「備える(comprising)」(ならびに、「comprise」及び「comprises」など、comprisingの任意の形態)、「有する(having)」(ならびに、「have」及び「has」など、havingの任意の形態)、「含む(including)」(ならびに、「includes」及び「include」など、includingの任意の形態)、または「含む(containing)」(ならびに、「contains」及び「contain」など、containingの任意の形態)は、包括的または非限定的であり、記載されていない追加の要素または方法の段階を除外しない。
【0030】
本明細書で使用される「またはこれらの組み合わせ」という用語は、この用語に先行する列挙された項目のあらゆる並べ替え及び組み合わせを指す。例えば、「A、B、C、またはこれらの組み合わせ」は、A、B、C、AB、AC、BC、またはABC、また、特定の文脈において順番が重要であれば、BA、CA、CB、CBA、BCA、ACB、BAC、またはCABのうちの少なくとも1つを含むことが意図される。この例を続けると、BB、AAA、AAB、BBC、AAABCCCC、CBBAAA、CABABB等といった、1または複数の項目または用語の繰り返しを含む組み合わせが明確に含まれる。当業者であれば、別の意味が文脈から明らかでない限り、典型的には、任意の組み合わせにおける項目または用語の数に制限がないことを理解するであろう。
【0031】
本明細書で使用される場合、「実質的に」という用語は、続いて記載される事象もしくは状況が完全に起こること、または続いて記載される事象もしくは状況がかなりの程度もしくは度合いまで起こることを意味する。例えば、特定の事象または状況と関連付けられる場合、「実質的に」という用語は、続いて記載される事象または状況が、少なくとも80%の確率で、または少なくとも85%の確率で、または少なくとも90%の確率で、または少なくとも95%の確率で起こることを意味する。「実質的に隣接する」という用語は、2つの項目が互いに100%隣接していること、または2つの項目が互いに極めて近いが互いに100%隣接してはいないこと、または2つの項目の一方の一部分が他方の項目に100%隣接してはいないが他方の項目に極めて近いことを意味し得る。
【0032】
本明細書で使用される「関連付け」という用語は、2つ以上の項目の直接的または間接的な関連を指すと理解される。
【0033】
本明細書で使用されるすべての割合は、別段の記載がない限り、重量%と解釈されるものとする。
【0034】
過去数10年間にわたり、ヘンプ、ケナフなどの天然繊維を利用した複合材への関心が増加している。ヘンプ、ケナフ、及び他の繊維植物の茎は、主に2種類の繊維、すなわち靱皮及び芯を含む。芯は、本明細書では、木質コア、または内部コア、または内部木質コアとも呼ばれ、短い繊維を備え、幹の中心に位置する。靱皮は、長い繊維を備え、茎の外皮(皮)に見られる。「繊維」に関する従来技術の参考文献は、典型的には、靱皮繊維に言及している。師部繊維とも呼ばれる靱皮繊維は、幹を囲む師部または靱皮から収集され、幹で師部の通道細胞を支え、幹に強度を与える。亜麻、ヘンプ、ケナフ、ジュートなどといった植物から得られる靱皮繊維は、カーペット、織り糸、及び網などの織物用途に使用されてきた。ヘンプの靱皮繊維の不織布用途には、自動車ドアパネル及びヘッドライナなどの複合材用途が含まれる。ケナフの靱皮繊維は、他の繊維と比較して優れた靱性及び高アスペクト比をもつことから、複合熱可塑性プラスチックに強化繊維として使用される可能性のために注目を受けている。ケナフの(靱皮)繊維一本が、それぞれ11.9GPa及び60GPaと同じ高さの引張強度及び弾性率を有し得る。ケナフ幹のフィブリルサイズ及び化学物質含有量を下記の表1に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
他の文献には、ケナフ靱皮が、植物の40%を構成し、個々の繊維細胞が約2~6mmの長さで細長く、6.3μmの細胞壁厚を有すると記載されている。逆に、コアは、植物の約60%であり、厚い(約38μm)が短く(0.5mm)かつ薄壁(3μm)の繊維細胞を有する。
【0037】
数千年間にわたり、ヘンプは靱皮繊維のために生育されてきたが、内部木質コアまたは芯は、靱皮生産の廃棄副産物とみなされてきた。後に、木質コア繊維は、動物用床材、夏季飼料、及び園芸用媒体など、生成物に応用されるようになった。しかしながら、このたび、木質コア繊維をプラスチックに組み込んで熱可塑性プラスチック複合材を作製できることが見出された。
【0038】
本願で開示される発明概念の一実施形態は、ポリマーマトリックス中に分散している木質コア繊維を備える組成物を含む。木質コア繊維は、繊維をポリマー中に分散させるのを助けるために糖類または多糖類などの結合剤でコーティングされる。一実施形態において、組成物中の繊維の50%超が木質コア繊維であり、繊維の50%未満が靱皮繊維である。別の実施形態において、組成物中の繊維の90%またはそれより多くが木質コア繊維であり、10%またはそれ未満が靱皮繊維である。なおも別の実施形態において、組成物中の繊維は本質的にすべて木質コア繊維であり、靱皮繊維は本質的に含まれない。
【0039】
木質コア繊維は、双子葉植物の幹または茎に由来する。適切な植物の非限定的な例は、ケナフ、ヘンプ、ジュート、及び亜麻を含む。一実施形態において、組成物は、ケナフ木質コア繊維を備える。
【0040】
組成物中の木質コア繊維の量は様々であり得る。一実施形態において、木質コア繊維は、約25重量%~約90重量%の範囲の量で組成物中に存在する。別の実施形態において、木質コア繊維は、約90重量%~約98重量%の範囲の量でマスターバッチ組成物中に存在する。
【0041】
木質コア繊維を得るには、採取されたケナフ、ヘンプなどを剥皮して、靱皮繊維を芯から分離させる。剥皮工程は様々であり、手作業でもよい。しかし、一般的なプロセスは、繊維植物を機械的ストレスにかけて、内部木質コアと靱皮との間の結合を物理的に破断させる、自動化された機械を用いる。機械は次に、靱皮を内部コアから分離させる。靱皮を内部木質コアから分離させるために一般に用いられる別のプロセスは「レッティング」であり、これは、水中に植物の茎を沈め、それらを一定期間にわたって浸漬して、茎の外側の繊維を他の成分から緩めるプロセスである。レッティングは、切断された作物を野外に放置して大気中水分に曝露させることによって行うこともできる。細菌作用がペクチン及びリグニンに及んで、セルロース繊維が遊離する。次に茎を取り出し、洗浄し、機械的処理にかけて柔らかい組織を取り出し、次に乾燥させる。レッティングと剥皮機との組み合わせを用いるプロセスを使用して、靱皮繊維を得ることもできる。
【0042】
木質(内部)コアまたは芯は、木質コア繊維を分離させ繊維サイズを低減させる磨砕によって更に処理されてもよい。磨砕の機器及び方法は、当業者に公知であり、理解されている。例えば、木質コア繊維は、回転粉砕機または他の回転磨砕機器において磨砕され得る。
【0043】
一実施形態において、組成物中の木質コア繊維は、550μm未満の繊維長を有する。別の実施形態において、木質コア繊維は、約60μm~約100μmの範囲内の重量平均長を有する。
【0044】
木質コア繊維は、ヘンプ、ケナフ、ジュート、亜麻などに由来し得る。一実施形態において、木質コア繊維は、ケナフ木質コア繊維である。
【0045】
天然繊維をポリマーマトリックス中に組み込むことの主な不利益のうちの1つは、繊維表面とポリマーとの間の良好な界面接着の欠如である。この結果、最終生成物の特性が不十分になる。不十分な界面接着は、実際には非極性マトリックスによって反発される極性ヒドロキシル基が繊維表面上にあることに起因すると考えられる。メカニズムにかかわらず、天然繊維の固有の極性かつ親水性の性質は、疎水性のポリオレフィンマトリックス中に繊維を混和させることを困難にする。しかしながら、これは、糖類または多糖類などの結合剤で繊維をコーティングすることによって緩和され得ることが見出された。例えば、繊維をポリオレフィンペレットとの混合に先立って液状デンプンと混合することができ、混合物を押出して優れた複合材特性をもたらすことができる。
【0046】
良好な処理特性及び良好な複合材特性をもたらした、試験された他の糖類の非限定的な例には、水中のコーンスターチ及び水中の透明な糖濃縮物が含まれる。糖類及び多糖類は、木質コア繊維及びポリオレフィン樹脂のためのカップリング剤として機能すると仮定される。
【0047】
ポリオレフィンが、乾燥させた木質コア繊維との混合に先立って、かつ以下に詳細に記載されるように粉末化される場合、糖類または多糖類の結合剤を添加する必要はない。木質コア繊維を水分6%またはそれ未満に乾燥させ、ポリオレフィンをマイナス35メッシュ(Tyler)あるいは0.420mmまたはそれ未満の粒径に粉末化すると、優れた結果が得られる。
【0048】
適切なポリオレフィンの非限定的な例には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ならびにこれらの混合物及びコポリマーが含まれる。使用されるポリエチレンは、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、鎖状低密度ポリエチレン、及びこれらの組み合わせであり得る。
【0049】
ここで図1を見ると、一実施形態において、剥皮された木質コア繊維が磨砕され、結合剤(例えば糖類または多糖類の結合剤)及びポリオレフィン樹脂と混合される。ポリオレフィン樹脂は粉末化してもよいが、その必要はない。結合剤の添加により、ペレット形態または他の粉末化されていない形態のポリマーの使用が可能になる。混合物は、熱可塑性プラスチック複合ペレット及び形状を形成する当業者に公知の手順を使用して、押出または射出成形することができる。
【0050】
一実施形態において、混合段階は、周囲温度で実施される。別の実施形態において、混合段階は、約100℃~約200℃の範囲内の温度で実施される。なおも別の実施形態において、混合段階は、約135℃~約165℃の範囲内の温度で実施される。
【0051】
一実施形態において、混合に先立ち、ポリオレフィン樹脂を粉末化し、木質コア繊維を水分6%またはそれ未満に乾燥させて、結合剤の添加を不要にする。例えば、ポリオレフィン樹脂は、-35Tylerメッシュ(0.42mmまたはそれ未満)の粉末を形成するよう粉末化され得る。粉末化されたポリオレフィンの表面積の増加と、乾燥させた木質コア繊維の親水性の減少との組み合わせにより、十分なカップリングの機会がもたらされると仮定される。
【0052】
一実施形態において、乾燥させた木質コア繊維とポリオレフィン粉末との混合は、約100℃~約200℃の範囲内の温度で実施される。別の実施形態において、同じ混合段階が、約135℃~約165℃の範囲内の温度で実施される。
【0053】
木質コア繊維と、ポリオレフィンと、任意選択的に糖類結合剤との加熱混合物は、少なくとも部分的に溶融され、複合ペレットまたは他の複合物品に形成される。複合形状を形成するためのプロセスは、押出プロセス及び射出成形などの成形プロセスを含むが、これらに限定されない。
【0054】
複合ペレットが形成されると、複合ペレットを使用して、他の複合形状を形成することができる。
[実施例1]
【0055】
ケナフ芯を1~550μmの粒径に粉砕した。1.2lb(約0.54キログラム)の粉砕した粒子を4lb(約1.81キログラム)のポリ乳酸(PLA)と混合し、押出してストローを形成した。1.2lb(約0.54キログラム)のケナフ芯粒子を4lb(約1.81キログラム)の高密度ポリエチレン(HDPE)と混合した第2の試験において、押出を繰り返した。第3の試験では、1.2lb(約0.54キログラム)のケナフ芯粒子を4lb(約1.81キログラム)の低密度ポリエチレン(LDPE)と混合した。より高い芯濃度を試みた。しかしながら、30%よりも高いバイオマテリアルを処理するのは可能ではなく、そうであっても、一様に分配されなかった。未溶融のバイオマテリアルからの高背圧に起因して工具が壊れた。試験を続けるには再設計が必要であった。HDPEは、一貫した流量のために最良の担体樹脂であると思われた。しかしながら、バイオマテリアルの凝集により、押出中にストローが断裂した。
[実施例2]
【0056】
1~550μmの粒径に粉砕されたケナフ芯粒子を、2%~10%の液状デンプン(STA-FLO(商標))と混合して、繊維表面をコーティングし、更に、様々な量のLDPEと混合し、押出してストローを形成した。製造はスムーズであった。しかしながら、生成されたストローはもろかった。
[実施例3]
【0057】
ケナフ芯粒子(6lb(約2.72キログラム))を1~550μmの粒径範囲に粉砕した。粉砕された粒子は、8~12%の水分を含んでいたが、水分5%またはそれ未満に乾燥させ、次に、2%~10%の液状デンプン(STA-FLO(商標))と混合して繊維表面をコーティングし、更に、少量の溶融したポリオレフィンと混合した。混合物を押出型ペレタイザでペレット化して、90~98%植物ベースのマスターバッチを作製した。図2は、いくらか砂っぽくざらついて見えるマスターバッチペレットを示す。
[実施例4]
【0058】
上記の実施例3のように生成されたマスターバッチをポリエチレン及びポリプロピレンの溶融物と様々な比で混合し、押出してストローを形成した。図3は、パイロット試験において使用した押出機を示す。20%から85%までの植物含有量(ケナフ芯)を有する、断裂を本質的に示さない複合材ストローが生成された。
【0059】
異なる色素または着色剤を混合機に添加して、図4に示す複合材の黒、青、及び赤色のストローを作製した。これらのストローは80%のケナフ芯を含んでおり、強度及び繊維分布の均一性について検査した。生成されたストローは強く、わずかな凝集を伴う良好な繊維分布を示した。図5は、80%のケナフ芯を含む複合材ストローの大量生産を示す。
[実施例5]
【0060】
上記の実施例3のように生成されたマスターバッチをポリエチレン及びポリプロピレンの溶融物と混合し、押出して、65%の植物含有量(ケナフ芯)を有するストローを形成した。図6に示すストローには、着色剤を添加しなかった。
[実施例6]
【0061】
上記の実施例3のように生成されたマスターバッチをポリプロピレンホモポリマーと混合し、射出成形して、図7に示す複合材容器を生成した。これらの複合材容器は、90%の植物含有量(ケナフ芯)を有する。また、異なる最終生成物に所望される特性(柔軟性、硬さなど)をもたらすよう、ポリプロピレンホモポリマー、ポリプロピレンコポリマー、及びポリエチレンの組み合わせを成形した。
[実施例7]
【0062】
一部の製造業者は、予め混合されたプラスチックまたは複合プラスチックを使用することを好む。これに適応するため、実施例3のように生成され、所望の溶融ポリマーと混合されたマスターバッチを使用して、複合ペレットを生成した。低密度ポリエチレン(LDPE)と混合した実施例3のようなマスターバッチを使用して、図8に示す淡いクリーム色のペレットを作製した。LDPE複合ペレットは、70%のケナフ芯を含んでおり、ポリエチレンフィルムの製造に使用することができた。
【0063】
実施例3のようなマスターバッチを使用し、溶融したポリプロピレンのホモポリマーまたはコポリマーと混合して、他の複合ペレットを作製した。図9には、85%のケナフ芯を含む淡褐色のポリプロピレン複合ペレットが示されている。図10には、同様に85%のケナフ芯を含む、より暗い褐色のペレットが示されている。より暗い褐色のペレットは、再生ポリプロピレンを使用して作製した。
【0064】
本願で開示される発明概念は、本明細書上記の特定の文言と併せて記載されているが、多くの代替案、修正、及び変更が当業者に明らかとなることは明白である。したがって、本願で開示される発明概念の精神及び広い範囲に含まれるこのような代替案、修正、及び変更のすべてを包含することが意図される。本願で開示される発明概念の精神及び範囲から逸脱することなく、本明細書に記載される様々な構成要素、要素、及び組み立ての構造及び動作、ならびに本明細書に記載される方法の段階または段階の順序を変更することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】