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特表2023-504282タンパク質を搭載したPLGAナノスフィア
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-02
(54)【発明の名称】タンパク質を搭載したPLGAナノスフィア
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/51 20060101AFI20230126BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20230126BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20230126BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20230126BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20230126BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20230126BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20230126BHJP
   A61K 38/20 20060101ALI20230126BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230126BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20230126BHJP
【FI】
A61K9/51
A61K47/34
A61K47/02
A61K47/22
A61K47/26
A61K47/10
A61K47/42
A61K38/20
A61P35/00
A61P37/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022534255
(86)(22)【出願日】2020-12-04
(85)【翻訳文提出日】2022-07-29
(86)【国際出願番号】 US2020063314
(87)【国際公開番号】W WO2021113638
(87)【国際公開日】2021-06-10
(31)【優先権主張番号】62/944,191
(32)【優先日】2019-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502347102
【氏名又は名称】ウエストバージニア ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】WEST VIRGINIA UNIVERSITY
(71)【出願人】
【識別番号】522222744
【氏名又は名称】ウエスト バージニア ユニバーシティー ボード オブ ガバナーズ オン ビハーフ オブ ウエスト バージニア ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】リンジー, ブロック エー.
(72)【発明者】
【氏名】マーケル, ジャスティン イー.
(72)【発明者】
【氏名】ラチンスキ, ライアン エー.
(72)【発明者】
【氏名】ノーア, ジャビーン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
【Fターム(参考)】
4C076AA65
4C076AA94
4C076CC07
4C076CC27
4C076DD01F
4C076DD26Z
4C076DD61Z
4C076DD67Z
4C076EE23F
4C076EE24A
4C076EE41
4C076GG50
4C084AA02
4C084BA44
4C084DA12
4C084MA05
4C084MA38
4C084NA12
4C084ZB07
4C084ZB26
(57)【要約】
本開示は、タンパク質をカプセル封入したナノ粒子を含む組成物、および前記組成物を作製する方法を提供する。一態様では、組成物は、薬物送達ベクターおよび治療物質を含むことができ、組成物は、薬物送達ベクター放出緩衝液の条件下で、一定期間にわたり、100,000個の粒子の薬物送達ベクターあたり少なくとも1.0pgの治療物質を溶出し、治療物質、薬物送達ベクターおよび薬物送達ベクター放出緩衝液が溶液を構成し、溶液が遠心分離され、一部が約1~10℃で保管され、治療物質の溶出量が、ELISAアッセイによって決定される。本開示は、免疫系に影響を及ぼす疾患に罹患している患者における、免疫表現型を制御する方法をさらに記載する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ(D,L-乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)ナノスフィアおよび治療物質を含む組成物であって、
溶液中に前記組成物を入れてから72時間より後に、前記治療物質の少なくとも一部が前記組成物から溶出する、
組成物。
【請求項2】
前記治療物質の少なくとも一部が、溶液に前記組成物を入れてから96時間より後に前記組成物から溶出する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記治療物質の少なくとも一部が、溶液に前記組成物を入れてから120時間より後に前記組成物から溶出する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記治療物質の少なくとも一部が、溶液に前記組成物を入れた後72~288時間の間で前記組成物から溶出する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記治療物質がIL-12である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記溶液が、リン酸緩衝塩溶液(DPBS)中の哺乳動物の血清および約100単位/mLのペニシリン-ストレプトマイシン(Pen-Strep)である、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
ポリ(D,L-乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)ナノスフィアおよびIL-12を含む組成物であって、
IL-12が、少なくとも2%のカプセル封入効率で前記PLGAナノスフィアに取り込まれている、
組成物。
【請求項8】
IL-12が、少なくとも10%のカプセル封入効率で前記PLGAナノスフィアに取り込まれている、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
IL-12が、少なくとも20%のカプセル封入効率で前記PLGAナノスフィアに取り込まれている、請求項7に記載の組成物。
【請求項10】
IL-12が、少なくとも40%のカプセル封入効率で前記PLGAナノスフィアに取り込まれている、請求項7に記載の組成物。
【請求項11】
IL-12が、約2%~約40%のカプセル封入効率で前記PLGAナノスフィアに取り込まれている、請求項7に記載の組成物。
【請求項12】
前記IL-12が、生物活性IL-12である、請求項7に記載の組成物。
【請求項13】
薬物送達ベクターおよび治療物質を含む組成物であって、
前記組成物が、薬物送達ベクター放出緩衝液の条件下で、100,000個の粒子の前記薬物送達ベクターあたり少なくとも1.0pgの前記治療物質を溶出し、
前記組成物が、3日間を超えて治療物質を溶出し続け、
前記治療物質、薬物送達ベクターおよび薬物送達ベクター放出緩衝液が溶液を構成し、
前記溶液が遠心分離されて、一部が約1~10℃で保管され、
前記治療物質の溶出が、ELISAアッセイによって決定される、
組成物。
【請求項14】
前記薬物送達ベクターが、ポリ(D,L-乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)を含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記治療物質がタンパク質である、請求項13に記載の組成物。
【請求項16】
タンパク質がサイトカインである、請求項14に記載の組成物。
【請求項17】
前記サイトカインがIL-12である、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記薬物送達ベクター放出緩衝液が、リン酸緩衝塩溶液(DPBS)中に約10%のFetal Bovine Serum Qualified Heat Inactivated(HI-FBS)および約100単位/mLのペニシリン-ストレプトマイシン(Pen-Strep)を含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項19】
界面活性剤をさらに含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項20】
前記界面活性剤が、Tween(登録商標)80およびSpan(登録商標)60を含む、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
種特異的な全血清、種特異的な操作された血清アルブミン、または種特異的な全胎児血清をさらに含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項22】
約100~1000nmの直径を含む、タンパク質を搭載したポリ(D,L-乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)ナノスフィア、
界面活性剤、および
種特異的な全血清、操作されたまたは天然の血清アルブミン
を含む、組成物。
【請求項23】
前記タンパク質が、IL-12を含む、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
前記界面活性剤が、Tween(登録商標)80およびSpan(登録商標)60を含む、請求項22に記載の組成物。
【請求項25】
タンパク質をカプセル封入したナノスフィアを作製する方法であって、
時間の増加および/または超音波処理のワット数の増加に伴う前記タンパク質の解離速度を決定するステップと、
前記タンパク質の解離速度と、時間および/または超音波処理のワット数の増加に伴う前記ナノスフィアの形成速度とを比較するステップと、
前記タンパク質の解離速度と前記ナノスフィアの形成速度との交点における、時間および超音波処理のワット数を決定するステップと、
第1の界面活性剤を含む溶媒にPLGAを溶解させることによって第1の相を調製するステップと、
第2の界面活性剤および哺乳動物の血清を含む水にアルコールを溶解させることによって第2の相を調製するステップと、
水性媒体に構成成分を懸濁するステップと、
前記水性媒体および前記第1の相を含む第1のエマルションを形成するステップと、
前記第1のエマルションおよび前記第2の相を含む第2のエマルションを形成して、前記交点において決定した前記時間および超音波処理出力で前記第2のエマルションを超音波処理するステップと、
前記第2のエマルションから前記溶媒を蒸発させて水溶液を形成するステップと、
前記水溶液から前記構成成分を含有するPLGAナノスフィアを回収するステップと
を含む、方法。
【請求項26】
ナノスフィアに構成成分をカプセル封入する方法であって、
溶媒にポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)を溶解させることによって第1の相を調製するステップと、
水にアルコールを溶解させることによって第2の相を調製するステップと、
水性媒体に前記構成成分を懸濁させるステップと、
前記水性媒体および前記第1の相を含む第1のエマルションを形成するステップと、
前記第1のエマルションおよび前記第2の相を含む第2のエマルションを形成するステップと、
前記第2のエマルションから前記溶媒を蒸発させて水溶液を形成するステップと、
前記水溶液から前記構成成分を含むPLGAナノスフィアを回収するステップと
を含む、方法。
【請求項27】
前記構成成分がタンパク質を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記タンパク質がIL-12を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記構成成分が、界面活性剤および哺乳動物の血清をさらに含む、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記PLGAが、50%~90%のラクチドを含み、
前記溶媒が、ハロゲン化C1~C3有機溶媒、C2~C3ニトリル溶媒、C2~C5アルキルエステル溶媒、C3~C5ケトン溶媒、およびそれらの混合物からなる群から選択される、
請求項26に記載の方法。
【請求項31】
前記溶媒が、アセトニトリル、アセトン、酢酸エチルまたはジクロロメタンである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記PLGAが75%~90%のラクチドを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項33】
前記PLGAが、50%~75%のラクチドを含み、
前記溶媒が、ハロゲン化C1~C3有機溶媒、アセトニトリル、C3~C4ケトン溶媒およびそれらの混合物からなる群から選択される、
請求項26に記載の方法。
【請求項34】
前記第1の相に前記水性媒体を添加して、前記第1のエマルションを形成するステップ、および組織ホモジナイザーを用いて、13,000RPM~20,000RPMの速度で前記第1のエマルションを撹拌するステップ、ならびに
前記第1のエマルションを前記第2の相に添加して、前記第2のエマルションを形成するステップ、および組織ホモジナイザーを用いて、13,000RPM~20,000RPMの速度で前記第2のエマルションを撹拌するステップ
を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項35】
前記第1の相に前記水性媒体を添加して、前記第1のエマルションを形成するステップ、および超音波処理によって前記第1のエマルションを撹拌するステップ、ならびに
前記第1のエマルションを前記第2の相に添加して、前記第2のエマルションを形成するステップ、および超音波処理によって前記第2のエマルションを撹拌するステップ
を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項36】
前記第1のエマルションを撹拌するステップが、5秒~30秒の一定期間、30W~50Wの電力レベルでの超音波処理を含み、
前記第2のエマルションを撹拌するステップが、5秒~30秒の一定期間、30W~50Wの電力レベルでの超音波処理を含む、
請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記第1のエマルションを撹拌するステップが、10秒~20秒の一定期間の超音波処理を含み、
前記第2のエマルションを撹拌するステップが、10秒~20秒の一定期間の超音波処理を含む、
請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記タンパク質が、サイトカインまたは球状タンパク質である、請求項27に記載の方法。
【請求項39】
前記タンパク質が、インターロイキン、リンホカイン、モノカイン、インターフェロン、コロニー刺激因子およびケモカインからなる群から選択されるサイトカインである、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記サイトカインが、インターロイキンおよび非免疫学的サイトカインからなる群から選択される、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記タンパク質が、N末端シグナル配列、A~Dと標識した4本のヘリックスを含む4ヘリックスバンドルを有し、前記Dヘリックスの後にC末端伸長部を有さないサイトカインである、請求項38に記載の方法。
【請求項42】
前記サイトカインが、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、顆粒球コロニー刺激因子、インターフェロンアルファ-1、インターフェロンベータ、インターフェロンガンマ、インターフェロンカッパ、インターフェロンタウ-1、インターフェロンオメガ-1、またはIL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-5、IL-6、IL-7、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12からなる群から選択されるインターロイキン、IL-12、IL-13、IL-15、IL-19、IL-20、IL-21、IL-22、IL-23、IL-24、IL-26およびIL-27のアルファ鎖である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記タンパク質が、
a)細胞性免疫応答、または
b)抗体応答
のどちらか一方を増強する免疫学的サイトカインである、請求項38に記載の方法。
【請求項44】
前記サイトカインが、TNFα、IFN-γおよびインターロイキン-12からなる群から選択される、細胞性免疫応答を増強する免疫学的サイトカインである、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記サイトカインがIL-12である、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記サイトカインが、TGF-β、IL-4、IL-10およびIL-13からなる群から選択される、抗体応答を増強する免疫学的サイトカインである、請求項43に記載の方法。
【請求項47】
前記第1および第2のエマルションがそれぞれ、組織ホモジナイザーを用いて、13,000RPM~20,000RPMの速度で撹拌され、
IL-12が、約0.5%~約2.1%のカプセル封入効率で前記PLGAナノスフィアに取り込まれる
請求項45に記載の方法。
【請求項48】
前記第1および第2のエマルションがそれぞれ、5秒~30秒の一定期間、30W~50Wの電力レベルの超音波処理により撹拌され、
IL-12が、約4.5%~約10%のカプセル封入効率で前記PLGAナノスフィアに取り込まれる、
請求項45に記載の方法。
【請求項49】
PLGAマトリックスおよびタンパク質を含む、請求項26に記載の方法により生成される、ナノスフィアであって、
前記タンパク質の第1の部分が、前記ナノスフィアの表面に吸着されており、
前記タンパク質の第2の部分が、前記ナノスフィアのコアにおいて前記PLGAマトリックスに取り込まれている、
ナノスフィア。
【請求項50】
前記タンパク質が、IL-12であり
前記IL-12が、約0.5%~約10%のカプセル封入効率で前記ナノスフィアに取り込まれている、
請求項49に記載のナノスフィア。
【請求項51】
前記第2の相が、ポリビニルアルコールおよび哺乳動物の血清を含有する、請求項26に記載の方法。
【請求項52】
前記第1の相が、第1の界面活性剤を含有する、および/または
前記第2の相が、第2の界面活性剤を含有する、
請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記第1の界面活性剤が、ソルビタン脂肪酸エステルである、および/または
前記第2の界面活性剤が、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルである、
請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記第2の相が、ポリビニルアルコールおよび胎児血清を含有する、請求項26に記載の方法。
【請求項55】
PLGAマトリックスおよびタンパク質を含む、請求項53に記載の方法により生成される、ナノスフィアであって、
前記タンパク質の第1の部分が、前記ナノスフィアの表面に吸着されており、
前記タンパク質の第2の部分が、前記ナノスフィアのコアにおいて前記PLGAマトリックスに取り込まれており、
前記ナノスフィアが、哺乳動物の血清アルブミン、トレハロース、前記第1および前記第2の界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤を含む、
ナノスフィア。
【請求項56】
前記ナノスフィアが、哺乳動物の血清アルブミンおよび界面活性剤を含む、請求項55に記載のナノスフィア。
【請求項57】
請求項26に記載の方法により生成される複数のナノスフィアを含む剤形であって、各ナノスフィアがPLGAマトリックスおよびタンパク質を含み、
前記タンパク質の第1の部分が、前記ナノスフィアの表面に吸着されており、
前記タンパク質の第2の部分が、前記ナノスフィアのコアにおいて前記PLGAマトリックスに取り込まれている、
剤形。
【請求項58】
前記タンパク質が、IL-12であり
前記IL-12が、少なくとも2%のカプセル封入効率で前記ナノスフィアに取り込まれている、
請求項57に記載の剤形。
【請求項59】
ナノスフィアにタンパク質をカプセル封入する方法であって、
第1の界面活性剤を必要に応じて含有する有機溶媒に2.5%w/v~17%w/vのポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)を溶解させることによって油相を調製するステップと、
ポリビニルアルコール、ならびに哺乳動物の血清、トレハロースおよび第2の界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤を含有する水性相を調製し、水性媒体に前記タンパク質を懸濁させるステップと、
前記水性媒体を前記油相に添加して第1のエマルションを形成し、前記第1のエマルションを撹拌するステップと、
前記第1のエマルションを前記水性相に添加して第2のエマルションを形成し、前記第2のエマルションを撹拌するステップと、
前記第2のエマルションから前記有機溶媒を蒸発させて、水溶液を形成するステップと、
前記水溶液から前記タンパク質を含有するポリ(乳酸-co-グリコール酸)ナノスフィアを回収するステップと
を含む、方法。
【請求項60】
免疫系に影響を及ぼす疾患に罹患している患者における、免疫表現型を制御する方法であって、
a) 患者の初期免疫表現型を決定するステップ、
b) 前記初期免疫表現型が免疫抑制を示す場合、免疫系を刺激する第1の薬物を投与するステップ、または
前記初期免疫表現型が免疫系の過剰刺激を示す場合、免疫系を抑制する第2の薬物を投与するステップ、
c) ステップ(b)の後に、時間の関数として前記患者の免疫表現型をモニタリングするステップ、ならびに
d) 前記患者の免疫表現型が、所望の範囲外である場合、前記第1および/もしくは第2の薬物の投与を調節するステップ
を含む、方法。
【請求項61】
免疫系に影響を及ぼす疾患に罹患している患者における、免疫表現型を制御する方法であって、
a) 患者の疾患状態を判定するステップであり、前記疾患状態が診断および初期免疫表現型を含む、ステップと、
b) 前記患者の前記疾患状態とデータベース内の複数の疾患状態とを比較するステップであり、前記データベースにおける各疾患状態が、診断、初期免疫表現型および処置プロトコルを含む、ステップと、
c) 前記比較するステップ(b)に基づいて、前記データベースから処置プロトコルを選択するステップであり、前記処置プロトコルが免疫モジュレート薬を投与することを含む、ステップと
を含む、方法。
【請求項62】
d) 前記患者に前記免疫モジュレート薬を投与するステップと、
e) ステップ(d)の後に、前記患者の免疫表現型を時間の関数としてモニタリングするステップと、
f) 前記患者の免疫表現型が所望の範囲の外側に収まる場合、前記免疫モジュレート薬の投与を調節するステップと
をさらに含む、請求項61に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、2019年12月5日出願の米国仮出願第62/944,191号に基づく利益を主張する。
【0002】
政府により支援された研究に関する記載
本出願は、国立衛生研究所/国立総合医科研究所によって助成された助成金番号2U54GM104942-02、S10OD016165、P30GM103488およびP20GM103434の下、政府支援により行われた。連邦政府は、本発明において、ある程度の権利を有する。
【0003】
分野
本明細書に開示されている様々な実施形態は、概して、タンパク質含有ナノスフィアの調製に関する。
【0004】
本明細書に開示されている様々な実施形態は、免疫分析のための免疫表現型解析に関する。
【背景技術】
【0005】
背景
免疫刺激は、1)悪性細胞の増殖および/または腫瘍転移の形成を阻害することができる、ならびに2)ウイルスおよび細菌感染を排除することができる重要な機構である。免疫療法がん処置は、プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)および細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)の軸を含めた、特異的免疫調節性チェックポイントのモノクローナル抗体の遮断を含むことができる。
【0006】
歴史的には、腫瘍微小環境および免疫応答に焦点が置かれてきた。しかし、全身性応答は、持続的な免疫学的応答をもたらして、疾患を治癒することができる。多数のグループが、患者に免疫学的に発生していることをリアルタイムに説明する一助となるため、処置の免疫表現型解析に着目してきた。多数の疾患に対する免疫療法剤が一層主流となり、これらの応答の生きたデータベースを開発することが、この過程を著しく前に推し進めることになるので、上記の情報は、重要な役割を果たすことになろう。
【0007】
前臨床検討により、インターロイキンは、多数の悪性腫瘍に対する抗腫瘍応答を誘発することができることが示されてきた。全身に投与されると最大化される抗腫瘍活性を有する免疫刺激性サイトカインであるインターロイキン-12(IL-12)は、このような抗腫瘍応答を誘発することができる。IL-12の高用量投与は、毒性副作用を有するおそれがあるが、低用量のIL-12は、安全と考えることができる。
【0008】
ポリ(D,L-乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)薬物送達ベクターが、FDAによって承認されており、ポリマーが分解する際に、幅広い物質を溶出することができる。治療目的の場合、PLGAナノスフィア内に免疫刺激性インターロイキンタンパク質を潜在的に含むペプチドをカプセル封入すると、有毒な搭載用量を必要とすることなく、全身送達および組織沈着が可能となり得る。全身的状況で使用されるため、ナノスフィアは、血液による、安全かつ効果的な生物の大血管および微小血管の移動を実現することができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
要旨
サイトカイン投与法の改善が、現在必要とされていることに照らし合わせて、様々な例示的な実施形態の簡単な要旨を提示する。以下の要旨において、一部の単純化および省略が行われ得、この要旨は、本明細書において開示されているある特定の実施形態の態様を強調して導入することが意図されているが、本開示の範囲を制限するものではない。当業者が、本明細書において開示されている概念の実施および使用を可能にするのに適切な様々な実施形態の詳細説明が、これ以降の項目に続く。
【0010】
本明細書に開示されている様々な実施形態によれば、タンパク質は、ナノスフィアにカプセル封入され得る。このカプセル封入法は、二重エマルションを作製することによって行うことができ、第1の水相が油相中に乳化され得、この油相は、第2の水相中に乳化されている。タンパク質はサイトカインであることができ、これは、細胞シグナル伝達においてある役割を果たす、小さなタンパク質(約5~20kDa)であることができる。好適なサイトカインは、以下:
Tヘルパー細胞によって産生されるインターロイキン
リンパ球によって産生されるリンホカイン
単球によって専ら産生されるモノカイン
抗ウイルス応答に含まれるインターフェロン
半固体培地中での細胞の成長を支持するコロニー刺激因子、および
細胞間での化学誘引を媒介するケモカイン
を含む。
【0011】
様々な実施形態では、ナノスフィアにカプセル封入したタンパク質は、4acヘリックスのバンドルを有する三次元構造を有するサイトカインであることができ、このサイトカインは、インターフェロン、インターロイキン、例えばインターロイキン-2またはインターロイキン-12、またはエリスロポエチンおよびトロンボポエチンを含めた非免疫学的サイトカインであることができる。ナノスフィアにカプセル封入されたタンパク質は、インターロイキン-12(IL-12)であることができる。
【0012】
油相は、有機溶媒に、2.5%w/v~17%w/vのポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)を溶解させることによって調製することができる。第1の水性相は、水性媒体にタンパク質を懸濁させることによって作製することができる。最後に、第2の水性相は、水にポリビニルアルコール(PVA)を溶解させることによって作製することができる。
【0013】
PLGAは、50%~90%のラクチドを含むことができ、有機溶媒は、ハロゲン化C1~C3有機溶媒、C2~C3ニトリル溶媒、C2~C5アルキルエステル溶媒、C3~C5ケトン溶媒またはそれらの混合物であることができる。PLGAは、75%~90%のラクチドを含むことができる。PLGAは、50%~75%のラクチドを含むことができ、有機溶媒は、ハロゲン化C1~C3有機溶媒、アセトニトリル、C3~C4ケトン溶媒またはそれらの混合物であることができる。様々な実施形態では、PLGAは、50%~90%ラクチドを含み、有機溶媒は、アセトニトリル、アセトン、酢酸エチルまたはジクロロメタンであることができる。
【0014】
撹拌しながら、タンパク質含有水性媒体を油相に添加し、第1のエマルションを形成することができる。撹拌しながら、第1のエマルションをPVA含有水性相に加えて、第2のエマルションを形成することができる。次に、有機溶媒を第2のエマルションから蒸発させて、水溶液を形成することができる。第2の水性相に由来するタンパク質を含有するPLGAナノスフィアを水溶液から回収することができる。
【0015】
一態様では、本開示は、ポリ(D,L-乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)ナノスフィアおよび治療物質を含む組成物であって、溶液中に組成物を入れてから72時間より後に、治療物質の少なくとも一部が組成物から溶出することができる、組成物を記載する。
【0016】
様々な実施形態では、治療物質の少なくとも一部は、溶液に組成物を入れてから96、120、144、168、192、216、240、264、288、312、336時間より後に組成物から溶出することができる。治療物質の少なくとも一部は、溶液に組成物を入れた後72~288時間の間で組成物から溶出することができる。治療物質は、IL-12であることができる。溶液は、リン酸緩衝塩溶液(DPBS)中の哺乳動物の血清および約100単位/mLのペニシリン-ストレプトマイシン(Pen-Strep)であることができる。
【0017】
一態様では、本開示は、ポリ(D,L-乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)ナノスフィアおよびIL-12を含む組成物であって、IL-12が、少なくとも2%のカプセル封入効率でPLGAナノスフィアに取り込まれ得る、組成物を記載する。
【0018】
様々な実施形態では、IL-12は、少なくとも10%、20%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%のカプセル封入効率でPLGAナノスフィアに取り込まれ得る。IL-12は、約2%~約40%のカプセル封入効率でPLGAナノスフィアに取り込まれ得る。IL-12は、生物活性なIL-12であることができる。
【0019】
一態様では、本開示は、薬物送達ベクターおよび治療物質を含む組成物であって、該組成物が、薬物送達ベクター放出緩衝液の条件下で、100,000個の粒子の薬物送達ベクターあたり少なくとも1.0pgの治療物質を溶出することができ、該組成物が、3日を超えて治療物質を溶出し続け、治療物質、薬物送達ベクターおよび薬物送達ベクター放出緩衝液が溶液を構成し、該溶液が遠心分離されて、一部が約1~10℃で保管され、治療物質の溶出量が、ELISAアッセイによって決定される、組成物を記載する。本組成物は、界面活性剤を含むことができる。界面活性剤は、Tween(登録商標)80およびSpan(登録商標)60であることができる。本組成物は、含むことができる
【0020】
様々な実施形態では、薬物送達ベクターは、ポリ(D,L-乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)を含むことができる。治療物質は、タンパク質であることができる。タンパク質は、サイトカインであることができる。サイトカインは、IL-12であることができる。薬物送達ベクター放出緩衝液は、リン酸緩衝塩溶液(DPBS)中の約10%Fetal Bovine Serum Qualified Heat Inactivated(HI-FBS)および約100単位/mLのペニシリン-ストレプトマイシン(Pen-Strep)を含むことができる。上記組成物は、種特異的な全血清、種特異的な、操作された血清アルブミン、または種特異的な全胎児血清をさらに含み得る。
【0021】
一態様では、本開示は、タンパク質を搭載したポリ(D,L-乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)ナノスフィアを含む組成物であって、ナノスフィアが、約100~1000nmの直径、界面活性剤、および種特異的な、全血清、操作されたまたは天然の血清アルブミンを含むことができる、組成物を記載する。
【0022】
様々な実施形態では、タンパク質は、IL-12を含むことができる。界面活性剤は、Tween(登録商標)80およびSpan(登録商標)60を含むことができる。
【0023】
一態様では、本開示は、タンパク質をカプセル封入したナノスフィアを作製する方法であって、時間の増加および/または超音波処理のワット数の増加に伴うタンパク質の解離速度を決定するステップと、タンパク質の解離速度と、時間および/または超音波処理のワット数の増加に伴うナノスフィアの形成速度とを比較するステップと、タンパク質の解離速度とナノスフィアの形成速度との交点における、時間および超音波処理のワット数を決定するステップと、第1の界面活性剤を含む溶媒にPLGAを溶解させることによって第1の相を調製するステップと、第2の界面活性剤および哺乳動物の血清を含む水にアルコールを溶解させることによって第2の相を調製するステップと、水性媒体に構成成分を懸濁するステップと、水性媒体および第1の相を含む第1のエマルションを形成するステップと、第1のエマルションおよび第2の相を含む第2のエマルションを形成して、交点において決定した時間および超音波処理出力で第2のエマルションを超音波処理するステップと、第2のエマルションから溶媒を蒸発させて水溶液を形成するステップと、水溶液から構成成分を含有するPLGAナノスフィアを回収するステップとを含む、方法を記載する。
【0024】
一態様では、本開示は、ナノスフィアに構成成分をカプセル封入する方法であって、溶媒にポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)を溶解させることによって第1の相を調製するステップと、水にアルコールを溶解させることによって第2の相を調製するステップと、水性媒体に構成成分を懸濁するステップと、水性媒体および第1の相を含む第1のエマルションを形成するステップと、第1のエマルションおよび第2の相を含む第2のエマルションを形成するステップと、第2のエマルションから溶媒を蒸発させて水溶液を形成するステップと、水溶液から構成成分を含有するPLGAナノスフィアを回収するステップとを含む、方法を記載する。
【0025】
様々な実施形態では、構成成分は、タンパク質を含むことができる。タンパク質は、IL-12を含むことができる。構成成分は、界面活性剤および哺乳動物の血清を含むことができる。PLGAは、50%~90%のラクチドを含むことができ、溶媒は、ハロゲン化C1~C3有機溶媒、C2~C3ニトリル溶媒、C2~C5アルキルエステル溶媒、C3~C5ケトン溶媒、およびそれらの混合物からなる群から選択することができる。溶媒は、アセトニトリル、アセトン、酢酸エチルまたはジクロロメタンであることができる。PLGAは、75%~90%のラクチドを含むことができる。PLGAは、50%~75%のラクチドを含むことができ、溶媒は、ハロゲン化C1~C3有機溶媒、アセトニトリル、C3~C4ケトン溶媒およびそれらの混合物からなる群から選択することができる。本方法は、第1の相に水性媒体を添加して、第1のエマルションを形成するステップ、および組織ホモジナイザーを用いて、13,000RPM~20,000RPMの速度で第1のエマルションを撹拌するステップ、ならびに第1のエマルションを第2の相に添加して、第2のエマルションを形成するステップ、および組織ホモジナイザーを用いて、13,000RPM~20,000RPMの速度で第2のエマルションを撹拌するステップを含むことができる。本方法は、第1の相に水性媒体を添加して、第1のエマルションを形成するステップ、および超音波処理によって第1のエマルションを撹拌するステップ、ならびに第1のエマルションを第2の相に添加して、第2のエマルションを形成するステップ、および超音波処理によって第2のエマルションを撹拌するステップを含むことができる。本方法は、第1のエマルションを撹拌するステップが、5秒~30秒の一定期間、30W~50Wの電力レベルでの超音波処理を含み、第2のエマルションを撹拌するステップが、5秒~30秒の一定期間、30W~50Wの電力レベルでの超音波処理を含むことを含むことができる。タンパク質は、サイトカインまたは球状タンパク質とすることができる。タンパク質は、インターロイキン、リンホカイン、モノカイン、インターフェロン、コロニー刺激因子およびケモカインからなる群から選択されるサイトカインであることができる。サイトカインは、インターロイキンおよび非免疫学的サイトカインからなる群から選択することができる。タンパク質は、N末端シグナル配列、A~Dと標識した4本のヘリックスを含む4ヘリックスバンドルを有し、Dヘリックスの後にC末端伸長部を有さないサイトカインであることができる。サイトカインは、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、顆粒球コロニー刺激因子、インターフェロンアルファ-1、インターフェロンベータ、インターフェロンガンマ、インターフェロンカッパ、インターフェロンタウ-1、インターフェロンオメガ-1、またはIL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-5、IL-6、IL-7、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12からなる群から選択されるインターロイキン、IL-12、IL-13、IL-15、IL-19、IL-20、IL-21、IL-22、IL-23、IL-24、IL-26およびIL-27のアルファ鎖であることができる。タンパク質は、a)細胞性免疫応答を増強するか、またはb)抗体応答を増強するかのどちらか一方を行う、免疫学的サイトカインであることができる。サイトカインは、TNFα、IFN-γおよびインターロイキン-12からなる群から選択される、細胞性免疫応答を増強する免疫学的サイトカインであることができる。サイトカインは、IL-12であることができる。サイトカインは、TGF-β、IL-4、IL-10およびIL-13からなる群から選択される、抗体応答を増強する免疫学的サイトカインであることができる。第1および第2のエマルションはそれぞれ、組織ホモジナイザーを用いて、13,000RPM~20,000RPMの速度で撹拌することができ、IL-12は、約0.5%~約2.1%のカプセル封入効率でPLGAナノスフィアに取り込まれる。第1および第2のエマルションはそれぞれ、5秒~30秒の一定期間、30W~50Wの電力レベルの超音波処理により撹拌することができ、IL-12は、約4.5%~約10%のカプセル封入効率でPLGAナノスフィアに取り込まれる。第2の相は、ポリビニルアルコールおよび哺乳動物の血清を含むことができる。第1の相は、第1の界面活性剤を含むことができる、および/または第2の相は、第2の界面活性剤を含有することができる。第1の界面活性剤は、ソルビタン脂肪酸エステルであることができる、および/または第2の界面活性剤は、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルであることができる。第2の相は、ポリビニルアルコールおよび胎児血清を含有することができる。
【0026】
様々な実施形態では、タンパク質の第1の部分は、ナノスフィアの表面に吸着されることができ、タンパク質の第2の部分は、ナノスフィアのコアにおいてPLGAマトリックスに取り込まれ得、ナノスフィアは、哺乳動物の血清アルブミン、トレハロース、第1および第2の界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤を含むことができる。ナノスフィアは、哺乳動物の血清アルブミンおよび界面活性剤を含むことができる。
【0027】
様々な実施形態では、本開示は、記載されている方法によって生成される複数のナノスフィアを含む剤形であって、各ナノスフィアが、PLGAマトリックスおよびタンパク質を含み、タンパク質の第1の部分が、ナノスフィアの表面に吸着されることができ、タンパク質の第2の部分が、ナノスフィアのコアにおいてPLGAマトリックスに取り込まれている、剤形を記載する。タンパク質は、IL-12であることができ、IL-12は、少なくとも2%のカプセル封入効率でナノスフィアに取り込まれ得る。
【0028】
一態様では、本開示は、ナノスフィアにタンパク質をカプセル封入する方法であって、第1の界面活性剤を必要に応じて含有する有機溶媒に2.5%w/v~17%w/vのポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)を溶解させることによって油相を調製するステップと、ポリビニルアルコール、ならびに哺乳動物の血清、トレハロースおよび第2の界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤を含有する水性相を調製し、水性媒体にタンパク質を懸濁させるステップと、水性媒体を油相に添加して第1のエマルションを形成し、第1のエマルションを撹拌するステップと、第1のエマルションを水性相に添加して第2のエマルションを形成し、第2のエマルションを撹拌するステップと、第2のエマルションから有機溶媒を蒸発させて、水溶液を形成するステップと、水溶液からタンパク質を含有するポリ(乳酸-co-グリコール酸)ナノスフィアを回収するステップとを含む、方法を記載する。
【0029】
一態様では、本開示は、免疫系に影響を及ぼす疾患に罹患している患者における免疫表現型を制御する方法であって、(a)患者の疾患状態を判定するステップであり、疾患状態が診断および初期免疫表現型を含む、ステップと、(b)患者の疾患状態とデータベース内の複数の疾患状態とを比較するステップであり、データベースにおける各疾患状態が、診断、初期免疫表現型および処置プロトコルを含む、ステップと、(c)ステップ(b)の比較に基づいて、データベースから処置プロトコルを選択するステップであり、処置プロトコルが免疫モジュレート薬を投与する、ステップとを含む、方法を記載する。
【0030】
様々な実施形態では、本方法は、(d)患者に免疫モジュレート薬を投与するステップ、(e)ステップ(d)の後に、患者の免疫表現型を時間の関数としてモニタリングするステップ、および患者の免疫表現型が所望の範囲の外側に収まる場合、免疫モジュレート薬の投与を調節するステップを含むことができる。
【0031】
様々な実施形態では、組織ホモジナイザーによって、13,000RPM~20,000RPMの速度で撹拌しながら、タンパク質含有水性媒体を油相に加えて、第1のエマルションを形成することができる。組織ホモジナイザーによって、13,000RPM~20,000RPMの速度で撹拌しながら、第1のエマルションをPVA含有水性相に加えて、第2のエマルションを形成することができる。次に、有機溶媒を第2のエマルションから蒸発させて、水溶液を形成することができる。第2の水性相に由来するタンパク質を含有するPLGAナノスフィアを水溶液から回収することができる。
【0032】
様々な実施形態では、タンパク質含有水性媒体中のタンパク質は、サイトカインであることができる。好適なサイトカインは、インターロイキン、リンホカイン、モノカイン、インターフェロン、コロニー刺激因子およびケモカインを含む。タンパク質は、4acヘリックスのバンドルを有する三次元構造を有するサイトカイン、例えば、インターロイキン、例えば、インターロイキン-2またはインターロイキン-12、またはエリスロポエチンおよびトロンボポエチンを含めた非免疫学的サイトカインであることができる。
【0033】
様々な実施形態では、タンパク質含有水性媒体中のタンパク質は、IL-12であることができる。組織ホモジナイザーを用いて、13,000RPM~20,000RPMの速度で第1および第2のエマルションを撹拌することによって、IL-12はPLGAナノスフィアに取り込まれ得る。IL-12は、得られたPLGAナノスフィアに、約0.5%~約2.1%のカプセル封入効率で取り込まれ得る。
【0034】
様々な実施形態では、超音波処理によって撹拌しながら、タンパク質含有水性媒体を油相に添加し、第1のエマルションを形成することができる。超音波処理によって撹拌しながら、第1のエマルションをPVA含有水性相に加えて、第2のエマルションを形成することができる。第1および第2のエマルションの一方または両方が形成している間の撹拌は、5秒~30秒、10秒~30秒、10秒~20秒または10秒~15秒という一定期間、30W~50W、30W~40Wまたは40W~50Wの電力レベルでの超音波処理を含むことができる。次に、有機溶媒を第2のエマルションから蒸発させて、水溶液を形成することができる。次に、第2の水性相に由来するタンパク質を含有するPLGAナノスフィアを水溶液から回収することができる。
【0035】
様々な実施形態では、組織ホモジナイザーによって、13,000RPM~20,000RPMの速度で撹拌しながら、タンパク質含有水性媒体を油相に加えて、第1のエマルションを形成することができる。5秒~30秒の一定期間の間、30W~50W、30W~40Wまたは40W~50Wの電力レベルの超音波処理による撹拌をしながら、PVA含有水性相に第1のエマルションを添加して、第2のエマルションを形成することができる。次に、有機溶媒を第2のエマルションから蒸発させて、水溶液を形成することができる。第2の水性相に由来するタンパク質を含有するPLGAナノスフィアを水溶液から回収することができる。
【0036】
様々な実施形態では、タンパク質含有水性媒体中のタンパク質は、IL-12であることができる。IL-12は、10秒~20秒の一定期間、30W~50Wの電力レベルの超音波処理によってPLGAナノスフィアに取り込まれ得る。約2%~約85%、約4.5%~約70%、約5%~60%、約7%~約50%、約8%~約40%、約10%~30%または約5%~10%のカプセル封入効率で、IL-12は得られたPLGAナノスフィアに取り込まれ得る。
【0037】
本明細書に開示されている様々な実施形態は、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)マトリックスおよびタンパク質を含むナノスフィアであって、タンパク質の第1の部分が、ナノスフィアの表面に吸着されることができ、タンパク質の第2の部分が、ナノスフィアのコアにおいてポリ(乳酸-co-グリコール酸)マトリックスに取り込まれ得る、ナノスフィアを対象とする。ナノスフィアは、二重エマルションを作製することによって生成することができ、第1のタンパク質含有水相が油相中で乳化され得、この油相は、次に、第2の水相中に乳化され得る。タンパク質は、IL-12などのサイトカインであることができる。約0.5%~約85%、約1%~約70%、約2%~60%、約3%~約50%、約4%~約40%、約5%~30%、約0.5%~10%、約1%~8%または約2%~5%のカプセル封入効率で、IL-12をナノスフィアに取り込ませることができる。少なくとも0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、20%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、99%または100%のカプセル封入効率で、IL-12をPLGAナノスフィアに取り込まれ得る。
【0038】
本明細書に開示されている様々な実施形態は、第1の界面活性剤を必要に応じて含有する有機溶媒に2.5%w/v~17%w/vのポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)を溶解させることにより油相を調製することによる、ナノスフィアにタンパク質をカプセル封入する方法であって、ポリビニルアルコール、ならびに哺乳動物の全血清、組換え/天然哺乳動物アルブミン、トレハロースおよび第2の界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤を含有する水性相を調製するステップと、水性媒体にタンパク質を懸濁させるステップとを含む、方法に関する。第1の界面活性剤は、ソルビタン脂肪酸エステルであることができる。水性媒体を油相に添加し、第1のエマルションを形成することができる。第1のエマルションを撹拌することができ、第1のエマルションを水性相に加えて、第2のエマルションを形成することができ、これを次に、撹拌することができる。有機溶媒を第2のエマルションから蒸発させて、水溶液を形成することができる。タンパク質を含有するポリ(乳酸-co-グリコール酸)ナノスフィアを、水溶液から回収することができる。水性相は、ポリビニルアルコールおよび哺乳動物の血清、例えば胎児血清を含有することができる。水性相は、ポリビニルアルコールおよび第2の界面活性剤を含有することができ、第1の界面活性剤は、ソルビタン脂肪酸エステルであることができ、第2の界面活性剤は、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルであることができる。
【0039】
本明細書に開示されている様々な実施形態は、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)マトリックスおよびタンパク質を含むナノスフィアであって、タンパク質の第1の部分が、ナノスフィアの表面に吸着されることができ、タンパク質の第2の部分が、ナノスフィアのコアにおいてポリ(乳酸-co-グリコール酸)マトリックスに取り込まれ得る、ナノスフィアに関する。ナノスフィアは、哺乳動物の血清アルブミン、トレハロースおよび界面活性剤からなる群から選択される、少なくとも1種の添加剤をさらに含むことができる。ナノスフィアは、哺乳動物の血清アルブミン、哺乳動物の組換え/天然アルブミンおよび界面活性剤を含むことができる。ナノスフィアは、哺乳動物の全血清、哺乳動物の組換え/天然アルブミン、第1の界面活性剤および第2の界面活性剤を含むことができる。
【0040】
多数の疾患状態、例えば、がんおよび自己免疫性障害において、ヒト免疫系は常に変化している状態にあり得る。このような疾患を処置するため、医師が、患者の免疫系をリアルタイムに評価して、免疫系状態を経時的に追跡することが有益となり得る。がん、感染および/または自己免疫性障害が、免疫モジュレート剤を用いて処置されている場合、免疫モジュレート剤が免疫抑制性または免疫賦活性であるかどうかに関わらず、医師が免疫系に及ぼすこのような薬剤の影響を追跡することが可能であることが有益となり得る。
【0041】
本明細書に開示されている様々な実施形態は、検査施設において分析され得る採血またはフィンガースティック採血から免疫系の全身性分析を可能にする方法に関する。疾患状態、例えば、がんまたは自己免疫疾患への免疫系の応答は、選択した時間に分析することができ、処置プロトコルへの免疫応答を、疾患または処置の経過にわたり追跡することができる。
【0042】
この診断方法は、がん、自己免疫疾患および感染を含めた、多数の疾患の処置、監視および診断に有用となり得る。免疫モジュレート剤は、一層、一般的になっているので、本方法は、医師に、疾患の病因において、特定の時間における免疫系の状態を評価する能力を提供することができ、免疫モジュレート処置は、疾患の対処に最も有効となり得るかに関する予測を可能にすることができる。これは、処置の総合的な有効性を高めることができ、疾患過程における患者の免疫状態の評価の改善を可能にすることができる。この情報はまた、以前の経験に基づいて医師が施す処置に関するより多くの情報を医師に提供することが可能な疾患特異的分類にわたる免疫プロファイルの生きたデータベースに体系化され得る。
【0043】
本明細書に開示されている様々な実施形態は、免疫系に影響を及ぼす疾患に罹患している患者において、免疫表現型を制御する方法であって、
患者の初期免疫表現型もしくは免疫状態を判定するステップ、および
初期免疫表現型が免疫抑制を示す場合、免疫系を刺激する第1の薬物を投与するステップ、または
初期免疫表現型が免疫系の過剰刺激を示す場合、免疫系を抑制する第2の薬物を投与するステップ
のうちのいずれか一方のステップ
を含む、方法に関する。
【0044】
選択した薬物を投与した後、患者の免疫表現型を時間の関数としてモニタリングすることができる。患者の免疫表現型が所望の範囲の外側に収まる場合、第1および/または第2の薬物の投与を調節することができる。
【0045】
本明細書に開示されている様々な実施形態は、免疫系に影響を及ぼす疾患に罹患している患者における免疫表現型を制御する方法であって、患者の疾患状態を判定するステップであり、疾患状態が診断および初期免疫表現型を含むステップと、患者の疾患状態とデータベース内の複数の疾患状態とを比較するステップであり、データベースにおける各疾患状態が、診断、初期免疫表現型および処置プロトコルを含む、ステップとによる、方法に関する。患者の疾患状態(単数または複数)とデータベースからの処置プロトコルとの間の比較に基づいて、処置プロトコルは、データベースから選択することができ、この場合、処置プロトコルは、免疫モジュレート薬を投与するステップを含む。本方法は、患者に免疫モジュレート薬を投与するステップと、薬物の投与後に、患者の免疫表現型を時間の関数としてモニタリングするステップと、患者の免疫表現型が所望の範囲の外側に収まる場合、免疫モジュレート薬の投与を調節するステップとを含むことができる。
【0046】
患者の血液試料の免疫表現型解析は、適切にデータを解析および評価する能力を含むことができる。このシステムによって、いくつかの疾患状態全体に行われる、適切な投与、処置および修正が可能となり得る。データの収集量が増加するにつれて、増えたデータベースはまた、最も広い意味において、直接の医療専門家が診断、処置および免疫治療剤の投与を行う一助にすることを可能にし得る。
【0047】
参照による組込み
本明細書において明記されている、刊行物、特許および特許出願はすべて、あたかも個々の刊行物、特許または特許出願のそれぞれが、具体的かつ個々に、参照により組み込まれるように示されているかのごとく同じ程度に参照により本明細書に組み込まれている。参照により組み込まれている刊行物および特許または特許出願が本明細書に含まれる開示と矛盾する範囲について、本明細書は、このような矛盾する資料のいずれよりも優先すること、および/または上位にあることが意図されている。
【0048】
本開示の新規な特徴は、添付の特許請求の範囲に具体的に記載されている。本開示の特徴および利点の一層良好な理解は、本開示の原理を利用する例示的な実施形態を説明する以下の詳細説明、および添付の図面(同様に、本明細書における「図(Figure)」および「図(FIG.)」)を参照することにより得られる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1A-1B】図1Aおよび1Bは、PLGAナノスフィア中のフルオレセインイソチオシアネート標識ウシ血清アルブミンタンパク質の分布を示す。
【0050】
図1C図1Cは、ナノスフィアの表面に吸着したタンパク質の初期放出と、その後のPLGAナノスフィアにより捕捉されたタンパク質の制御放出による、PLGAナノスフィアからの二相タンパク質溶出曲線を示す。
【0051】
図1D図1Dは、PLGAナノスフィアからの二相タンパク質放出の機構を示す。
【0052】
図2図2は、滅菌生理食塩水に溶解されたAlexa Flour(登録商標)647を搭載したナノスフィア1mg/kgを、腹腔内(左側のマウス)または静脈内(右側のマウス)のどちらかに注射することによって接種したBALB/cマウスにおける、67分間の期間にわたるフルオロフォア分布を示す。
【0053】
図3図3は、10、20、30、40または60秒間、3つの異なるワット数で超音波処理されたIL-12に及ぼす超音波処理の効果を示す。
【0054】
図4A-4B】図4Aおよび4Bは、それぞれ、11,000X(図3a)および13,000X(図3b)において、25mMのトレハロースを含まないで凍結乾燥した、非搭載(ブランク)ポリ(ラクチド-co-グリコリド)酸(PLGA)ナノスフィアの走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す。
【0055】
図4C図4Cは、25mMトレハロースと共に凍結乾燥した非搭載(ブランク)PLGAナノスフィアの、5,000X倍率での走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す。
【0056】
図5A図5Aは、共焦点顕微鏡によりタンパク質の取り込みを可視化したFITC-コンジュゲートされているウシ血清アルブミンを搭載したPLGAナノスフィアを示す。
【0057】
図5B-5C】図5Bおよび5Cは、凍結乾燥した組換えマウスIL-12を搭載したPLGAナノスフィアの、それぞれ8,000Xおよび25,000X倍率での走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す。
【0058】
図6A-6B】図6Aおよび6Bは、摂氏25度における、それぞれ、水中に1:50および1:14の希釈ファクターで、非搭載(ブランク)PLGA酸ナノスフィアおよび組換えマウスのIL-12(IL-12)を搭載したPLGAナノスフィアのサイズ分布分析を示す。
【0059】
図6C-6D】図6Cおよび6Dは、それぞれ、摂氏25度における、水中に1:50の希釈ファクターで、非搭載ブランクおよびIL-12を搭載したPLGAナノスフィアのゼータ電位分布を示す。
【0060】
図7A-7B】図7Aおよび7Bは、総タンパク質(図7A)および100,000個の粒子あたりのタンパク質(図7B)に関して、組換えマウスIL-12を搭載したPLGAナノスフィアから経時的に溶出したタンパク質の推定総量を示す。
【0061】
図7C図7Cは、3種の異なる粒子濃度(5億個の粒子/mL、7.5億個の粒子/mLおよび10億個の粒子/mL)の場合の、各溶出プロファイルの曲線下面積(AUC)を使用して計算した、組換えマウスのIL-12を搭載したナノスフィアのカプセル封入効率(encapsulation efficiency:EE)を示す。
【0062】
図8A-8C】図8A~8Cは、超音波処理出力および超音波処理時間の様々な条件下で超音波処理を使用して調製したIL-12を搭載したナノスフィアを示す。
【0063】
図9図9は、超音波処理出力および超音波処理時間の様々な条件下で超音波処理を使用して調製したナノスフィアからのIL-12の溶出プロファイルを示す。
【0064】
図10図10は、7.5億個の粒子/mLのナノスフィア濃度を使用する、撹拌速度の関数としての、高速撹拌を使用して調製したPLGAナノスフィアからのIL-12の溶出プロファイルを示す。
【0065】
図11図11は、転移性骨肉腫を処置するための、PLGAナノスフィアに由来するIL-12の施用を示す。
【0066】
図12図12は、PLGAナノスフィアからのIL-12溶出に及ぼすトレハロースおよびマグネシウム化合物の影響を示す。
【0067】
図13図13は、PLGAナノスフィアからのIL-12溶出に及ぼすウシ胎児血清(FBS)の影響を示す。
【0068】
図14図14は、PLGAナノスフィアからのIL-12溶出量に及ぼす、界面活性剤単独およびFBSと組み合わせた界面活性剤の影響を示す。
【0069】
図15A図15Aおよび15Bは、ナノスフィアが様々な条件下で調製された、経時的なタンパク質の溶出率、および全溶出量パーセントとしての溶出量をそれぞれ示す。
図15B図15Aおよび15Bは、ナノスフィアが様々な条件下で調製された、経時的なタンパク質の溶出率、および全溶出量パーセントとしての溶出量をそれぞれ示す。
【0070】
図16図16は、実験設計を図示する概略図を示す。
【0071】
図17図17は、末梢血液中のヘルパーTリンパ球、細胞傷害性Tリンパ球および調節性Tリンパ球のサブセットの組換えマウスIL-12(rmIL-12)誘発性T細胞の疲弊を示す。
【0072】
図18図18は、末梢血液におけるrmIL-12誘発性多形核骨髄由来抑制因子細胞(PMN-MDSC)骨髄球増加症を示す。
【0073】
図19図19は、ナチュラルキラー(NK)細胞の循環のIL-12誘発性低下を示す。
【0074】
図20A図20Aおよび20Bは、切断時における、それぞれ、12週間の7つの時間点全体で比較した健常マウス対疾患マウスの末梢血液中のNKp46+ ナチュラルキラー(NK)細胞の平均百分率、および末梢血液中のマウスのNK細胞の百分率で階層化したマウスを示す。
図20B図20Aおよび20Bは、切断時における、それぞれ、12週間の7つの時間点全体で比較した健常マウス対疾患マウスの末梢血液中のNKp46+ ナチュラルキラー(NK)細胞の平均百分率、および末梢血液中のマウスのNK細胞の百分率で階層化したマウスを示す。
【発明を実施するための形態】
【0075】
詳細な説明
本明細書および特許請求の範囲において使用する場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が特に明白に示さない限り、複数の参照物を含む。例えば、用語「試料」は、それらの混合物を含めた、複数の試料を含む。
【0076】
「ナノスフィア」または「ナノ粒子」は、超微粒子であることができる。このような粒子は、以下に限定されないが、ポリ(D,L-乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)を含めた、様々な物質から作製することができる。
【0077】
PLGA薬物送達ベクターは、FDA承認を受けており、ポリマーコーティングがKrebs回路の中間体に分解されると、幅広い物質を溶出することができる。薬物溶解度、生体利用率および安定性はすべて、有機コーティングによって改変することができ、カプセル封入した基質の薬物動態および薬力学特性の大きなシフトが可能となる。腫瘍および感染の治療目的の場合、PLGAナノスフィア内にIL-12をカプセル封入すると、有毒な搭載用量を必要とすることなく、全身送達および組織沈着が可能となり得る。負に荷電した表面は、グリコカリックスによって撃退され、そのサイズが一層小さいことに連動して、グリコカリックスがその中身を乱すことなく溶出することができる間質空間において沈着を増加させることが可能となる。しかし、現在まで、サブミクロンスケールのPLGA粒子内にIL-12をカプセル封入することに成功していない。ナノスフィアは、塞栓を形成するリスクを最小限にしながら、血液による、安全かつ効果的な生物の微小血管(毛細血管は、約4~9ミクロンの直径となり得る)の移動を実現することができる。
【0078】
カプセル封入したタンパク質を有するPLGAナノスフィアは、以下:
有機溶媒に、2.5%w/v~17%w/vのPLGAを溶解させることによって油相を調製する
水性溶媒に、1%w/v~3%w/vのポリビニルアルコールを溶解させることによって水性相を調製する
水性媒体にタンパク質を懸濁させる
水性媒体を油相に添加して第1のエマルションを形成して、第1のエマルションを均質化する
第1のエマルションを水性相に添加して、第2のエマルションを形成して、第2のエマルションを均質化する
第2のエマルションから有機溶媒を蒸発させて、水溶液を形成する、および
水溶液からタンパク質を含有するPLGAナノスフィアを回収する
ことによって生成することができる。
【0079】
タンパク質
様々な実施形態では、タンパク質は、インターロイキン、リンホカイン、モノカイン、インターフェロン、コロニー刺激因子およびケモカインからなる群から選択されるサイトカインであることができる。サイトカインは、インターロイキンまたは非免疫学的サイトカインであることができる。
【0080】
サイトカインは、N末端シグナル配列、A~Dと標識した4本のヘリックスを含む4ヘリックスバンドル、およびDヘリックスの後に必要に応じたC末端伸長部を有することができる。サイトカインは、実質的なC末端伸長部を欠如することができ、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、顆粒球コロニー刺激因子、インターフェロンアルファ-1、インターフェロンベータ、インターフェロンガンマ、インターフェロンカッパ、インターフェロンタウ-1、インターフェロンオメガ-1、またはIL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-5、IL-6、IL-7、IL-9、IL-10、IL-11からなる群から選択されるインターロイキン(IL)、IL-12、IL-12、IL-13、IL-15、IL-19、IL-20、IL-21、IL-22、IL-23、IL-24、IL-26およびIL-27のアルファ鎖であることができる。
【0081】
様々な実施形態では、サイトカインは、細胞性免疫応答を増強するか、または抗体応答を増強するかのどちらか一方を行う、免疫学的サイトカインであることができる。サイトカインが、細胞性免疫応答を増強する免疫学的サイトカインである場合、サイトカインは、腫瘍壊死因子-アルファ(TNFoc)、インターフェロン-ガンマ(IFN-’)およびインターロイキン-12(これは、IFN-’およびTNFocの産生を刺激することができる)からなる群から選択することができる。サイトカインが、抗体応答を増強する免疫学的サイトカインである場合、サイトカインは、トランスフォーミング成長因子ベータ(TGF-f3)、IL-4、IL-10およびIL-13からなる群から選択することができる。
【0082】
様々な実施形態では、ナノスフィアにカプセル封入されるタンパク質は、球状タンパク質であることができる。好適な球状タンパク質は、血清アルブミンタンパク質;酵素、例えば、エステラーゼ;ホルモン、例えば、インスリン;および輸送体タンパク質を含むことができる。
【0083】
様々な実施形態では、PLGAナノスフィアは、医薬品活性成分;ビタミン;栄養補給食品活性成分、例えば、フィトケミカル;および有機色素または造影剤をカプセル封入するために使用することができる。PLGAナノスフィアは、可溶性に乏しいクラスIIIおよびクラスIVの薬物を含めた、様々な薬物の制御放出に使用することができる。
【0084】
ナノ粒子の製作方法
油相を生成するため、2.5%w/v~17%w/vのPLGAは、有機溶媒に溶解させることができる。PLGAは、50%~90%のラクチド、65%~90%のラクチドまたは75%~90%のラクチドを含有することができる。有機溶媒は、ハロゲン化C1~C3有機溶媒、例えば、ジクロロメタン、クロロホルムまたは1,1,1-トリクロロエタン;C2~C3ニトリル溶媒、例えば、アセトニトリルもしくはプロピオニトリル;またはC2~C5アルキルエステル溶媒、例えば酢酸エチルもしくは酢酸ブチル;またはC3~C5ケトン溶媒、例えば、アセトンまたはペンタノンであることができる。有機溶媒は、1.1~3.5の間の双極子モーメントを有する半極性溶媒であることができる。油相は、撹拌しながら、室温(RT)において有機溶媒にPLGAを溶解させることによって作製することができ、この場合、撹拌は、300~600RPM、350~550RPMまたは425~500RPMであることができる。
【0085】
様々な実施形態では、溶媒選択は、PLGA中のラクチド含有量に基づいて行うことができる。PLGAが、75%~90%のラクチドを含有する場合、有機溶媒は、ハロゲン化C1~C3有機溶媒、C2~C3ニトリル溶媒、またはC2~C5アルキルエステル溶媒またはC3~C5ケトン溶媒であることができる。PLGAが、75%未満のラクチドを含有する場合、有機溶媒は、ハロゲン化C1~C3有機溶媒、アセトニトリルまたはC3~C4ケトン溶媒であることができる。
【0086】
エマルションの水性相を生成するため、1%w/v~3%w/vのポリビニルアルコール(PVA)を、水または緩衝食塩水溶液、例えば、リン酸緩衝生理食塩水であることができる水性溶媒に溶解させることができる。
【0087】
次に、タンパク質、例えば、IL-12またはウシ血清アルブミンは、緩衝食塩水溶液、例えば、リン酸緩衝生理食塩水であることができる水性媒体に懸濁することができ、得られたタンパク質懸濁液をPLGA含有油相に添加することができ、この油相に、急速撹拌、例えば、10,000~20,000RPM;12,000~19,500RPM;13,000~19,000RPM;15,000~18,000RPMまたは16,000~17,500RPMを施して、第1のエマルションを生成することができる。代替的に、超音波処理をしながら、タンパク質懸濁液をPLGA含有油相に加えて、第1のエマルションを生成することができる。
【0088】
次に、急速撹拌(例えば、10,000~20,000RPM;12,000~19,500RPM;13,000~19,000RPM;15,000~18,000RPMまたは16,000~17,500RPM)しながら、均質化しながら、または超音波処理しながら第1のエマルションをPVA水性相に加えて、第2のエマルションを生成することができる。次に、第2のエマルションから有機溶媒を蒸発させることができる。水性媒体に由来するタンパク質を含有するPLGAナノ粒子は、遠心分離によって回収されて、液体窒素中で急速凍結することができる、および/または凍結乾燥することができる。
【0089】
いかなる理論によっても拘泥されないが、経時的に超音波処理を使用すると、ナノ粒子の数を増加させて、前記ナノ粒子のサイズを低下させて、ナノ粒子の均質性を向上することによって、ナノ粒子の形成を増加せることができる。さらに一層高い超音波処理のワット数によっても、ナノ粒子の形成を増加させることができる。しかし、タンパク質は、特に、一層長い期間にわたり、より高い超音波処理のワット数で経時的に超音波処理に曝露されると、解離することができる。したがって、ここで開示されている通り、タンパク質を搭載したナノ粒子の生成において、超音波処理のワット数および時間のパラメータを個々のタンパク質の種類に最適化することができる。
【0090】
第2のエマルションが形成され得ると、タンパク質は、PLGAマトリックスポリマーの鎖に巻かれた状態になることができ、有機溶媒が除去され得ると、融合して球体に沈殿することができる。このプロセスの間に、タンパク質は、ポリマーマトリックス内部に捕捉された状態(図1A、この場合、タンパク質は、フルオレセインイソチオシアネート標識ウシ血清アルブミン[BSA-FITC]であることができる)、および外側表面に吸着(図1B)された状態の両方になって、図1Cに示されている特徴的な二相溶出曲線を生成することができる。ベースラインと2日間の間で発生し得るバースト相は、水性媒体中での再懸濁時に、ナノスフィアの表面に吸着したタンパク質が放出されることに起因し得る(図1D)。制御放出期は、捕捉されたタンパク質に起因することができ(図1D)、タンパク質は、PLGAが加水分解すると、経時的にゆっくりと放出され得る。
【0091】
比較の目的のため、上記のプロセスは、タンパク質懸濁液の代わりに、緩衝食塩水溶液を使用し、この生理食塩水溶液をPLGA含有油相に添加して、第1のエマルションを生成して行うことができる。この第1のエマルションをPVA水性相に添加すると、タンパク質不含ブランクのナノ粒子を生成することができる。
【0092】
ブランクのナノスフィアおよびIL-12を搭載したPLGAナノスフィアは、上記の技法を使用して合成することができる。ブランクおよびタンパク質を搭載したPLGAナノスフィアの幾何形状は、走査型電子顕微鏡により、50nm~500nm、100~250nm、100~150nmまたは175~225nmの平均粒子径を有する球体の形状であると求めることができる。様々な実施形態では、IL-12を搭載したPLGAナノスフィアは、100、150、200、300、400、500、600、700、800、900、1000nmの直径を有することができる。ブランク、すなわちタンパク質不含ナノスフィアは、175~225nmの直径を有することができる。
【0093】
ゼータ電位
ブランクとIL-12を搭載したPLGAナノスフィアの両方のゼータ電位もまた、脱イオン水媒体中で決定した。ゼータ電位は、分散媒体と、分散粒子に結合した流体の固定層との間の電位差であることができ、合成の間にタンパク質を搭載した場合、12.5~25ugの組換えマウスIL-12(rmIL-12)の導入後、それぞれ、-15~-25mVの範囲であることができる。ゼータ電位の大きさが増加するにつれて、ナノスフィア分散液の安定性が増加し得る。
【0094】
カプセル封入効率
タンパク質は、ナノスフィア放出緩衝液中のナノスフィアから溶出することができる。ナノスフィアによってカプセル封入されて放出された(カプセル封入効率、EE)IL-12の量(パーセント)は、各溶出プロファイルの曲線下面積(AUC)、粒子濃度(PC;粒子/mL)、合成した粒子の全量(V、mL)、および合成中に添加したIL-12の全重量(mg)を使用して、以下の式:
【数1】
によって推定することができる。
【0095】
溶出は、ナノスフィア放出緩衝液中に、2億個の粒子/mL~1000億個の粒子/mL、3億個の粒子/mL~500億個の粒子/mL、4億個の粒子/mL~200億個の粒子/mL、または5億個の粒子/mL~10億個の粒子/mLのタンパク質を搭載したPLGAナノスフィアを分散させて、得られた分散液の経時的に放出されたタンパク質濃度を分析することによって測定することができる。タンパク質濃度は、生物活性であってもよい。IL-12の場合、上記の粒子濃度から溶出したrmIL-12の総量は、曲線下面積(AUC)分析によって、1500~4,000pgと求めることができる。100,000個のナノスフィアあたりに溶出されるIL-12の量は、それぞれ、0.3~0.45pg/100,000個のナノスフィアと求めることができ、均質化法により作製された粒子の場合、最も効率的な溶出速度は、7.5億個の粒子/mLの濃度において得られ、最も効率が低い溶出速度は、10億個の粒子/mLの濃度において得られる。式(1)に基づくと、平均カプセル封入効率(EE)は、0.4%~0.5%の範囲と求まった。最高のEEは、7.5億個の粒子/mLの濃度において得られた。
【0096】
合成されたナノスフィアが、実際に、タンパク質をカプセル封入することができ、単に外壁にタンパク質を吸着させたのではないかどうかを判定するため、フルオレセインイソチオシアネート標識ウシ血清アルブミンを含有するPLGAナノスフィアを合成した。得られたナノスフィアは、内部構造を視覚化するため、共焦点顕微鏡によって画像化した。分析によって、標識したBSAは、ナノスフィア内部に首尾よく取り込まれたことが確認された。
【0097】
全身への分布
様々な投与経路の後に傷害を引き起こすことなく、PLGAナノスフィアの含有物が全身に分布するかどうかを判定するため、蛍光色素であるAlexa Fluor(登録商標)647を搭載したPLGAナノスフィアを尾部静脈から静脈内、または腹腔内のどちらか一方で、雌マウスに注射し、in vivoでの画像化システムによりモニタリングすることができる。どちらの投与経路も、図2に図示されている通り、罹患または致死の何ら兆候なしに、ナノスフィア内容物の全身への分布をもたらすことができる。
【0098】
水不溶性ペイロード
同様の技法を使用して、PLGAナノスフィア中に、薬物の水不溶性遊離塩基もしくは塩、または水不溶性色素、または造影剤をカプセル封入することができ、この場合、「水不溶性」という用語は、薬物または塩が、PLGAポリマーを溶解させる有機溶媒よりも水への可溶性の方が低いことを意味する。同様の技法を使用して、可溶性薬物、色素または造影剤をカプセル封入することができ、この場合、PLGAポリマーによる制御放出は、急速初期放出に起因する毒性副作用を回避すると同時に、治療的に安全かつ有効な用量をもたらすことが望ましい。
【0099】
油相を生成するため、2.5%w/v~17%w/vのPLGAを有機溶媒、例えば、ハロゲン化C1~C3有機溶媒;C2~C3ニトリル溶媒;C2~C5アルキルエステル溶媒;またはC3~C5ケトン溶媒に溶解させることができる。エマルションの水性相を生成するため、1%w/v~3%w/vのポリビニルアルコール(PVA)を、水または緩衝食塩水溶液、例えば、リン酸緩衝生理食塩水であることができる水性溶媒に溶解させることができる。
【0100】
次に、薬物の水不溶性遊離塩基もしくは塩、水不溶性色素、または造影剤を、水性媒体に懸濁することができ、PLGAを含有する油相に得られたタンパク質懸濁液を添加することができ、この油相に急速撹拌または超音波処理を施して、第1のエマルションを生成することができる。
【0101】
次に、急速撹拌または超音波処理しながら、第1のエマルションをPVA水性相に添加し、第2のエマルションを生成することができる。次に、有機溶媒を第2のエマルションから蒸発させることができる。水性媒体に由来する薬物、色素または造影剤を含有するPLGAナノ粒子を遠心分離によって回収することができ、凍結乾燥することができる。
【0102】
添加剤
ナノスフィア調製のためのプロセスへの様々なさらなる改変により、カプセル封入効率を増加させて、ナノスフィアの溶出プロファイルを変えることができる。1.5%w/vのトレハロースを含有する1.2mLのDPBS中に、IL-12を12.5マイクログラム懸濁させることによって作製したタンパク質溶液を使用するナノスフィアの調製によって、遅延放出溶出プロファイルを有するナノスフィアを生成することができる。初期バースト相は、溶出検討を開始して2日後まで遅延させることができるが、カプセル封入効率が低下するおそれがある。
【0103】
2%w/vのMg(OH)を含有する1.2mLのDPBS中に、IL-12を12.5マイクログラム懸濁させることによって作製したタンパク質溶液を使用するナノスフィアの調製によって、カプセル封入効率の低下したナノスフィアを生成することができる。
【0104】
患者に種特異的である、3%~15%、5%~12%、8%~12%または約10%の全血清、血清アルブミン、胎児血清または胎児血清アルブミンを含有する1.2mLのDPBS中にIL-12を12.5マイクログラム懸濁させることによって作製したタンパク質溶液を使用するナノスフィアの調製により、遅延放出を有するナノスフィアを生成することができる。初期バースト相は、溶出検討を開始して2日後まで遅延させることができ、カプセル封入効率を増加させることができる。ナノスフィア調製の前に、24時間、IL-12懸濁液を胎児血清と共にインキュベートした場合、バースト相は、溶出検討を開始して3日後まで遅延させることができる。48時間、全血清、血清アルブミンまたは胎児血清と共にさらにインキュベートすると、バースト相の溶出が延長もし、カプセル封入効率が増加する。in vitro検討の場合、任意のタイプの血清、血清アルブミン(合成により製造した血清アルブミンを含む)、胎児血清または胎児血清アルブミン、例えばウシ胎児血清または胎児マウス血清を使用することができる。代替的に、ヒト血清を使用することができる。ナノスフィアをヒトまたは非ヒト患者に投与することができるin vivo検討の場合、血清または血清アルブミンの選択は、処置される種に特異的となり得る。ウシの処置の場合、ウシ胎児血清を含有するDPBSにIL-12を懸濁することによって作製されるナノスフィアを使用することができる。マウスの処置の場合、ナノスフィアは、胎児マウス血清を含有するDPBSを用いて作製されるべきである。ヒトの処置の場合、ナノスフィアは、ヒト血清を含有するDPBSを用いて作製することができる。1種の種から異なる種までの血清または胎児血清と共に処理したナノスフィアを投与すると、移植片対宿主病が引き起こされるおそれがある。同様に、全血清または採集した天然ヒトアルブミンを使用する場合、いずれの血液生成物の場合にもあり得るように、これらの生成物の投与を受ける各患者の交差適合法を行うことができる。一部の場合、治療物質(例えば、IL-12)の少なくとも一部は、溶液に組成物を入れてから24、48、72、96、120、144、168、192、216、240、264、288、312、336時間より後に組成物(例えば、ナノスフィア)から溶出することができる。一部の場合、治療物質(例えば、IL-12)の少なくとも一部は、溶液に組成物を入れた後約24時間~約48時間、約48時間~約72時間、約72時間~約192時間、約72時間~約168時間、約96時間~約168時間、約120時間~約168時間、約144時間~約192時間で、組成物(例えば、ナノスフィア)から溶出することができる。
【0105】
ナノスフィア調製の間に界面活性剤が存在すると、カプセル封入効率を増加させることができる。界面活性剤は、PLGA含有油相、またはPVA/水相に取り込まれ得る。好適な界面活性剤には、油溶性ソルビタン脂肪酸エステル(例えば、Span(登録商標)20、Span(登録商標)40、Span(登録商標)60およびSpan(登録商標)80)、および/または水溶性ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(例えば、Tween(登録商標)20、Tween(登録商標)40、Tween(登録商標)60およびTween(登録商標)80)が含まれる。様々な実施形態では、ナノスフィアは、4%~20%w/wのSpan(登録商標)界面活性剤を含有するPLGA含有油相、2%~10%w/vのTween(登録商標)界面活性剤を含有するPVA/水相、またはそれらの両方を用いて調製することができる。例えば、
油相は、4%~20%w/wのSpan(登録商標)60、10%~16%w/wのSpan(登録商標)60または約14%w/wのSpan(登録商標)60を含有することができる、
PVA/水相は、2%~10%w/vのTween(登録商標)80、3%~8%w/vのTween(登録商標)80または4%~6%w/vのTween(登録商標)80を含有することができる、または
油相は、4%~20%w/wのSpan(登録商標)60を含有することができ、PVA/水相は、2%~10%w/vのTween(登録商標)80を含有することができる。
【0106】
界面活性剤および胎児血清の両方が存在すると、カプセル封入効率を増加させることができる。10%胎児血清を含有する1.2mLのDPBSに12.5マイクログラムのIL-12を懸濁することによって作製されるタンパク質溶液を使用してナノスフィアを調製すると、2%~10%の間、4%~8%の間または5%~7%の間のカプセル封入効率でIL-12を含むナノスフィアを生成することができる。24時間、DPBS中でインキュベートした、10%胎児血清を含有する1.2mLのDPBSに12.5マイクログラムのIL-12を懸濁することによって作製されるタンパク質溶液を使用してナノスフィアを調製すると、10%~50%の間、20%~45%の間または30%~40%の間のカプセル封入効率でIL-12を含むナノスフィアを生成することができる。10%胎児血清と界面活性剤の両方を含有する1.2mLのDPBSに12.5マイクログラムのIL-12を懸濁することによって作製されるタンパク質溶液を使用してナノスフィアを調製すると、50%~95%の間、60%~85%の間または70%~80%の間のカプセル封入効率でIL-12を含むナノスフィアを生成することができる。様々な実施形態では、サイトカイン、胎児血清および界面活性剤を含有するタンパク質溶液を使用すると、PLGAナノスフィアへのサイトカインのカプセル封入効率が相乗的に増加する。
【0107】
免疫表現型解析
本明細書に開示されている様々な実施形態は、採血から、またはランセットおよびMicrotainer(登録商標)を使用して得られたフィンガースティック採血を使用して得られた血液2~3滴から、患者の免疫系を医療専門家が全身的に分析することを可能にする技法に関する。採血は、家庭で、医療専門家のオフィスで、クリニックで、または病院で行うことができる。
【0108】
様々な実施形態では、採血は、家庭で、医療専門家のオフィスで、クリニックで、または病院で行うことができる。採血は、検査施設または医療施設で分析することができる。
【0109】
血液試料は、患者の身体に元々存在する免疫化学のレベル、および/または患者に投与された免疫モジュレート薬のレベルに関して分析され得る。血液試料は、時間の関数として、患者の身体に元々存在する免疫化学のレベルに関して分析され得、これによって、医療専門家は、免疫化学レベルに及ぼす処置レジメンの効果を観察することが可能となる。採血は、定期的な間隔で採取して分析することができ、これによって、医療専門家は、処置の経過期間にわたり、免疫状態または免疫表現型の変化を評価することが可能となる。
【0110】
図11を参照すると、4つの主要な免疫表現型が考慮される:
抑制、例えば、がん、自己免疫疾患または感染によって誘発される免疫抑制
ベースライン、例えば、疾患のない対象の免疫状態
ベースラインレベルより上の免疫系の刺激、および
疲弊、すなわちリンパ球アネルギー、全身性炎症応答症候群および/または器官不全を特徴とする、免疫細胞疲弊(TCE)として知られている免疫系の過活性化の生命を脅かす状態。
【0111】
図11は、様々な免疫モジュレート治療により処置している間の、骨肉腫がん患者の免疫表現型の変化を示す。患者の初期免疫表現型は、がん誘発性免疫抑制のために抑制となる。プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)は、骨肉腫の間に発現されることが多く、したがって、PD-L1に対する抗体(抗PD-L1)が投与され得る。図11の線Aを参照されたい。インターロイキン-12(IL-12)は、骨肉腫の腫瘍成長を阻害することが示されており、したがって、遊離IL-12は、免疫モジュレーターとして投与することができる。図11の線Cを参照されたい。
【0112】
時間T1では、抗PD-L1は、患者の免疫表現型の変化には無効であるように思われる一方、IL-12は、免疫表現型を刺激に変化させたように見える。しかし、時間T2では、処置が進行するにつれて、IL-12は、毒性副作用を引き起こし、患者の免疫表現型を疲弊に変化させる。時間T2では、抗PD-L1は患者の免疫表現型をベースラインに変化させ、がんと戦うために免疫系を刺激することなく、がん誘発性免疫抑制と戦う。
【0113】
図11の線Bにおいて分かる通り、抗PD-L1と、PGLAナノスフィアで投与された低用量のIL-12とを組み合わせると、免疫系の過活性化を引き起こすことなく、免疫系を刺激してがんと戦うことができる。したがって、免疫表現型を経時的にモニタリングすることにより、医師は免疫モジュレート治療を調節して、T細胞疲弊を伴わずに免疫刺激をもたらすことが可能となる。
【0114】
がん治療法への免疫応答に関するデータは、データベースに登録することができる。例えば、図11を参照すると、免疫系を抑制するまたは過剰刺激する第1の疾患を有する任意の所与の患者に関するデータベースに、以下の情報を登録することができる:
a) 疾患のタイプ
b) 処置前の免疫表現型
c) 第1の疾患のために行った処置
d) 時間の関数としての免疫表現型の変化
e) 臨床的転帰
f) 第2の疾患のために患者によって服用された医薬
g) 疾患ステージまたは疾患レベル
h) 医療的併存症、および
i) 患者の年齢。
【0115】
それらのパラメータのうちのいずれか1つの変化が、他のパラメータに影響し得る。例えば、免疫系に影響を及ぼす第1の疾患のための処置を受けている患者が、処置の開始後に、第2の疾患、すなわち医療的併存症と診断された場合、第2の疾患の原因因子または第2の疾患の症状のどちらか一方は、以下:
第1の疾患の処置の臨床的転帰
経時的な患者の免疫表現型の変化
第1の疾患のステージもしくはレベル、および/または
第1の疾患のために行われた処置の有効性
に影響を及ぼし得る。
【0116】
同様に、第1の疾患の疾患ステージまたは疾患レベルの変化、例えば、ステージ2からステージ3へのがんの進行は、時間の関数としての患者の免疫表現型、第1の疾患の処置のプロトコル、および第1の疾患の処置の臨床的転帰に影響を及ぼし得る。
【0117】
したがって、データベースは、免疫モジュレート薬を用いた様々な疾患の処置に関する情報を含み、その疾患を呈する特定の患者がどのように所与の免疫モジュレート治療に応答するかに関する予測を可能にする。
【0118】
このようなデータベースの使用により、医療専門家は所与の疾患状態に対する患者の免疫系の応答を予測すること、および疾患または処置の経過期間にわたる患者の免疫表現型の変化を予測することが可能となる。データベースは、がん、自己免疫疾患および感染を含めた、多数の疾患の処置、監視および診断に有用となろう。免疫モジュレート剤は、一層一般的になっているので、このようなデータベースは、疾患の病因において、特定の時間における免疫系の状態を評価する能力、およびどの免疫モジュレート処置がその疾患を処置するのに最も有効であると思われるかを予測する能力を提供する。
【0119】
患者の採血またはフィンガースティック採血から得た血液試料はそれぞれ、採血の時に患者の免疫表現型について分析することができる。患者の疾患状態および現行の処置に関する情報と一緒にした上記の分析の結果は、存在する場合、データベースに存在するデータを比較して、患者の免疫表現型を効果的にモジュレートする可能性が最も高い処置計画を展開することができる。採血は、定期的な間隔で採取して分析することができ、これによって、医療専門家は、処置の経過期間にわたり、免疫状態または免疫表現型の変化を評価することが可能となる。現在の患者からのデータをデータベースに追加して、他の患者の評価を改善することができる可能性があり得る。これは、この分析が、がん、感染または自己免疫疾患のためのものであるかに関わりなく、複雑な免疫表現型解析を含めた、患者の血液の分析に関する膨大な商業的可能性を有する。免疫表現型解析を含む疾患の相互参照により生成することができるデータベースは、将来に患者を処置する強力な手段になろう。データベースは、免疫表現型解析および処置の状態に関して常に更新した情報を生成する生きたデータベースとなろう。患者の血液試料の免疫表現型解析は、適切にデータを解析および評価する能力を含む。このシステムによって、いくつかの疾患状態全体に行われる、適切な投与、処置および修正が可能となろう。データの収集量が増加につれて、増えたデータベースはまた、最も広い意味において、直接の医療専門家が診断、処置および免疫治療剤の投与を行う一助になり得るであろう。
【0120】
様々な例示的な実施形態は、ある特定の例示的なその態様に対する特定の参照物と共に詳細に記載されているが、本開示は、他の実施形態を可能にし得ること、およびその詳細は、様々な明白な点における修正を可能にし得ることを理解すべきである。当業者に容易に明白な通り、本開示の趣旨および範囲内に依然として留まりながら、変形および修正を行うことができる。したがって、上述の開示、記載および図は、例示目的に過ぎず、本開示を決して限定するものではなく、本開示は、特許請求の範囲によってのみ規定される。
【0121】
項目Fにおいて議論されている通り、骨肉腫の免疫適格性K7M2同所性マウスモデルにおける、転移に及ぼすIL-12を搭載したPLGAナノスフィアの効果を探索する。nIL-12処置マウスの方が、用量に関係なく、未処置マウスよりもかなり良好な転帰を示したことが観察された。さらに、転移率の低下が、切断時の末梢血液中のNK細胞百分率の増加とリンクした。血液免疫表現型(NK細胞百分率>8.21%)の特定の構成成分は、このような早期の臨床的な時間点(切断)における完全応答者と非応答者とを潜在的に区別することができるという観察は、明白な臨床的関連性を有する。これは、十分に情報が提供された仮説の生成に対する強固な基盤を提供する。実際に、遊離rmIL-12の毒性検討は、nIL-12処置、すなわちTCE状態、PMN-MDSC骨髄球増加症およびNK細胞の枯渇と共に調査することができる、BALB/cマウスに特異的なIL-12誘導毒性に着目したものであった。これにより、遊離rmIL-12が、BALB/c全身性免疫表現型の識別可能な変化を誘発することが確立された。さらに、nIL-12治療は、転移性OS腫瘍に有効となり得、疾患再発の機会を低減することが示され得る。さらに、末梢血液中のNK細胞百分率のモニタリングにより、nIL-12に対する応答および転帰に関する情報を提供することができる。このデータは、全身性免疫表現型解析および実験的な免疫療法を連携して使用し、転移性OSに対する有効な免疫治療レジメンを生成することができることを支持する。
【0122】
本開示の様々な実施形態が、本明細書に示されて、記載されているが、このような実施形態が単なる例として提示されていることは、当業者に明白である。本発明から逸脱することなく、多数の変形形態、変更形態および置換形態を当業者が思いつくことができる。本明細書に記載されている本開示の実施形態の様々な代替形態を使用することができることを理解すべきである。
【実施例
【0123】
以下の実施例では、ジクロロメタン(DCM、#320269)、PLGA(Resomer RG756S、75%ラクチド、#719927)、NaCl(#7647-14-5)およびポリ(ビニルアルコール)(#341584)は、Sigma Aldrich(St.Louis、MO)から購入した。フルオレセインイソチオシアネート標識ウシ血清アルブミン(BSA-FITC、#A23015)、ペニシリン-ストレプトマイシン(Pen-Strep、10,000U/ml、#15140122)およびAlexa Fluor(登録商標)647カルボン酸、トリス(トリエチルアンモニウム)塩は、Thermofisher Scientific(Waltham、MA)から購入した。組換えマウスIL-12(p70、rmIL-12、#577008)およびマウスIL-12 ELISA MAX deluxe ELISAキット(#433606)は、Biolegend(San Diego、CA)から購入した。
【0124】
Gibco Fetal Bovine Serum Qualified Heat Inactivated US Origin(HI-FBS、#MT35011CV)およびDulbecco’s Phosphate-Buffered Salt Solution 1X(DPBS、#21031CV)は、Fisher Scientific(Pittsburgh、PA)から購入した。
【0125】
雌BALB/cマウス(6~8週齢)(#000651)は、Jackson Laboratory(Bar Harbor、ME)から購入した。
【0126】
項目A. IL-12安定性検討。
(実施例1)
酸性溶液および塩基性溶液中のIL-12の安定性。
IL-12が、PLGAナノスフィアの酸性ナノ環境で取り扱うことができるかどうかを判定するため、3時間の様々なpHの溶液への曝露後の生物活性な組換えマウスIL-12の回収を試験した。具体的には、IL-12をpH1の溶液、pH3の溶液、pH7.4の溶液、pH11の溶液およびpH13の溶液中で3時間、インキュベートした。これらの結果が、表1に示されている。酵素結合免疫吸着検査法(ELISA)を使用して、初期濃度に対する、回収した活性なIL-12の百分率を求め、その天然でのタンパク質の量、およびしたがって、生物活性な立体構造を決定した。
【表1】
【0127】
表1において分かる通り、IL-12は、7.4~11のpHの値において良好な安定性を有しており、この範囲の外側になる変性を受け得る。
【0128】
(実施例2)
有機溶媒中のIL-12の安定性。
PLGAナノスフィアを合成する二重エマルション法は、有機溶媒にPLGAを溶解させることを含むことができる。したがって、IL-12の安定性を様々な極性のいくつかの非プロトン性溶媒中で試験した。試験した有機溶媒は、親水性が増加する順序で、ジクロロメタン(DCM)、酢酸エチル(EA)およびアセトン(AC)であった。DCMは、PLGAを十分に溶解させるが、DCMは、最も疎水性でもあり、したがって、IL-12の生物活性に最大の効果を及ぼすことができる。PLGAは、アセトンへの溶解度は乏しいものとなり得るが、この溶媒は最も極性であり、したがって、IL-12の生物活性への影響は最も低くなり得る。
【0129】
溶媒とリン酸緩衝塩溶液とが1:1の溶液にIL-12を加え、撹拌して有機溶媒を完全に除去し、残留した生物活性なIL-12濃縮物を次に、ELISAを使用して決定し、初期濃度に対する百分率として表した。これらの結果が、表2に示されている。興味深いことに、ACは、タンパク質に対して最も有害な作用を有し、わずか43%(SE=1.06%)が回収された一方、EAは、63%(SE=0.77%)という最高の回収率を示した。DCMは、タンパク質の約半分がその元々の形態で残った(49%、SE=0.55)。
【表2】
【0130】
特に示さない限り、DCMをさらなる例において、ナノスフィアバッチを生成するために使用した。DCMを溶媒として使用すると、酢酸エチルと比較して、タンパク質回収率の低下がもたらされたが、DCMは、PLGAをより良く溶解させ、良好なナノスフィア幾何形状をもたらす。
【0131】
(実施例3)
超音波処理時のIL-12の安定性。
エマルションを形成するため、PLGAナノスフィアを合成する際には、IL-12に超音波処理を2回、施すことができる。ナノスフィアを調製している間の超音波処理により、一様かつより小さなナノスフィアをもたらすことができる。しかし、IL-12のような感受性の高いタンパク質は、強力な撹拌に曝露されると、変性状態になる。
【0132】
したがって、様々な超音波処理のワット数および時間を試験して、IL-12を搭載したPLGAナノスフィア合成のための好適な条件を求めた。IL-12をリン酸緩衝塩溶液に懸濁させて、30ワット、40ワットまたは50ワットで超音波処理した。超音波処理の時間は、10、20、30、40または60秒とし、ベースラインを比較した。次に、超音波処理後に残留した生物活性なIL-12濃縮物をELISAを使用して求め、初期濃度に対する百分率として表した。図3において分かる通り、IL-12は、30秒を過ぎた場合のタンパク質の回収率が、すべてのワット数の場合で10%未満であったので、ワット数よりも時間の方に感受性が高いことが判明した。様々なIL-12を搭載したバッチの走査型電子顕微鏡(SEM)画像を図4A~4Cに示す。図3における、四角形の囲みは、大部分のタンパク質を回収した時間/ワット数、すなわち、30ワット~50ワットで5~30秒間の超音波処理の組合せを表示している。
【0133】
特に示さない限り、後の実施例において超音波処理によって作製したナノスフィアは、以下を使用して調製した:
10~20秒間で30ワットの超音波処理
10~15秒間で40ワットの超音波処理、または
10~15秒間で50ワットの超音波処理。
【0134】
項目B. PLGAナノスフィアに関する検討。
(実施例4)
PLGAナノスフィアの合成
油相を生成するため、800mgのPLGAを、500RPMの磁気撹拌子を使用して、2時間、室温で32mlのDCMに溶解させた。
【0135】
エマルションの水性相を生成するため、2400mgのPVAおよび96mgのNaClを120mlの脱イオン水に溶解させ、濁りが無くなるまで、標準的な調理用マイクロ波において、HIGHという設定で10秒間のバーストでマイクロ波処理した。次に、水性相を氷上で冷却した。
【0136】
第1のエマルション(w1)は、カプセル封入した物質を1.2mLのDPBSに懸濁させることによって作製し、得られた懸濁液を油相に加え、組織ホモジナイザーを使用してこれを6分間、17,500RPMで撹拌した。撹拌を氷上で行った。対照として、ブランク粒子は、DPBS中で懸濁した非カプセル封入物質を用いて作製した。
【0137】
第2のエマルション(w2)は、第1のエマルションを120mlの水性相にゆっくりと注ぎ入れることによって形成した。第1のエマルションの添加中、組織ホモジナイザーを用いて、水性相を17,500RPMで撹拌した。第1のエマルションの添加後、撹拌を合計で8分間、継続した。次に、得られた懸濁液を750RPMの磁気撹拌子を用いて16時間、撹拌し、有機溶媒を蒸発させた。
【0138】
溶媒が一旦蒸発すると、得られた溶液を3回、3500RPMで遠心分離した。各遠心分離工程後、ナノスフィアのペレットを回収して再懸濁させた一方、遠心分離中に生成した上清を収集して、氷上に保管した。次に、ナノスフィアを20,000RPMで40分間、摂氏4度で超遠心分離することにより2回、洗浄し、液体窒素中で急速凍結して、摂氏-20度で保管した。
【0139】
次に、ナノスフィアを真空下で凍結乾燥し、ナノスフィアから水を除去することができる。
【0140】
得られたナノスフィアの特性を表3に要約する。表3に記載されている、FITC標識BSAを含有するナノスフィアを共焦点顕微鏡により画像化し、内部構造を可視化した。図5Aに示されている通り、Zスタック分析によって、FITC標識したBSAは、ナノスフィア内部に首尾よく取り込まれたことが確認された。
【0141】
ブランク(図4A~4C)とIL-12を搭載した(図5Bおよび5C)PLGAナノスフィアの両方の幾何形状を走査型電子顕微鏡(SEM)により、形状が球体であると求まり、平均粒子直径は、それぞれ、201.7±6.7nm(図6A)および138.1±10.8nm(図6B)であった。ブランクと搭載したPLGAナノスフィアの両方のゼータ電位もまた決定し、電圧の大きさは、それぞれ、-21.3±0.808mV(図6C)から-15.1±1.249mV(図6D)に低下した。
【0142】
Alexa647色素およびフルオレセインイソチオシアネート標識ウシ血清アルブミン(BSA-FITC)を含有するナノスフィアもまた、上記の手順を使用して、首尾よく調製した。
【表3】
【0143】
(実施例5)
ナノスフィアIL-12溶出プロファイル。
IL-12をカプセル封入するPLGAナノスフィアは、実施例4の方法によって得た。3種の異なる濃度(5億個の粒子/mL、7.5億個の粒子/mLおよび10億個の粒子/mL)のIL-12を搭載したPLGAナノスフィアを500μlのナノスフィア放出緩衝液(NRB、DPBS中の10% HI-FBSおよび100単位/mlのPen-Strep)中で調製した。次に、この懸濁液を4℃で15分間、遠心分離し、ナノスフィアをペレット化し、この後、一定分量の上清250ulを抜き取り、4℃で保管した。次に、氷上で、250μlのNRBをペレットに加え、全量を500μlに戻し、これを再懸濁させて、一定撹拌(750RPM)しながら24時間、37℃でインキュベートした。このプロセスを12日間にわたり、合計で12個の試料に繰り返した(1時間点の試料/24時間)。各一定分量を少なくとも24時間、摂氏4度で保管して放出緩衝液と平衡にした後、IL-12濃度をELISAで決定した。経時的な放出された生物活性なIL-12濃度について、一定分量をELISAにより分析した。
【0144】
溶出したIL-12の総量をELISAおよび続いて曲線下面積(AUC)分析によって、以下の通り求まった:
5億個の粒子/mLのナノスフィア濃度では、1907.66±162.00pg
7.5億個の粒子/mLのナノスフィア濃度では、3329.77±162.67pg、および
10億個の粒子/mLのナノスフィア濃度では、3415.64±848.94pg。
【0145】
100,000個のナノスフィアあたり溶出されたIL-12の量は、以下と求まった:
5億個の粒子/mLのナノスフィア濃度では、0.3815±0.03240pg/100,000個の粒子
7.5億個の粒子/mLのナノスフィア濃度では、0.4440±0.02169pg/100,000個の粒子および
10億個の粒子/mLのナノスフィア濃度では、0.3416±0.08489pg/100,000個の粒子。
【0146】
7.5億個の粒子/mL試料が、試験した3種の濃度の最も有効な溶出速度であると報告した。
【0147】
図7Aにおいて分かる通り、7.5億個の粒子/mLのナノスフィア濃度における、時間の関数として溶出されたIL-12濃度の方が、5億個の粒子/mLのナノスフィア濃度における、時間の関数として溶出されたIL-12濃度よりもかなり高い。しかし、7.5億個の粒子/mLのナノスフィア濃度における、時間の関数としてのIL-12溶出量と、10億個の粒子/mLのナノスフィア濃度における、時間の関数としてのIL-12溶出量との間に差はほとんどあり得なかった。図7Aにおいてやはり分かる通り、IL-12ナノ粒子は、二相溶出プロファイルを示し、バースト相は、約2日間、続き、持続放出相は、ほぼ、約3日目~11日目まで続いた。さらに、7.5億個の粒子/mLのナノスフィアの濃度における、経時的に溶出したIL-12の総量は、5億個の粒子/mLのナノスフィアの濃度において溶出したIL-12の総量よりも約75%高くなり得る。しかし、10億個の粒子/mLのナノスフィアの濃度において溶出したIL-12の総量は、7.5億個の粒子/mLの濃度において溶出したIL-12の総量よりも約2.6%しか高くなり得ない。図7Bで分かる通り、100,000個の粒子あたりの時間の関数として溶出したIL-12濃度は、500,000個の粒子/mLまたは10億個の粒子/mLのどちらか一方の濃度における場合よりも、7.5億個の粒子/mLのナノスフィア濃度の場合の方が高くなり得る。
【0148】
図7Cに示されている通り、組換えマウスIL-12(rmIL-12)を搭載したナノスフィアのカプセル封入効率(EE)は、式1を使用し、検討した3種の異なる粒子濃度に関して、各溶出プロファイルの曲線下面積(AUC)を使用して計算した。100,000個のナノスフィアあたり溶出されたIL-12の量は、5億個の粒子/mLのナノスフィア濃度では、0.44%、7.5億個の粒子/mLのナノスフィア濃度では、0.50%、および10億個の粒子/mLのナノスフィア濃度では、0.39%と求まった。平均カプセル封入効率(EE)は、0.443%±0.0551%となり得る。試験濃度からの溶出速度が様々となるため、EEを3種の濃度のすべてに関して報告し、続いて、平均して全EEに反映させた。
【0149】
上記のデータに基づくと、ナノスフィア濃度を7.5億個の粒子/mLより高く増加させると、薬物の溶出プロファイルの有意な増加はもたらすことができない。これは、高い粒子濃度ではカプセル封入効率が低下するためである可能性がある。しかし、これは、少量(500μL)の溶出溶媒において、in vitroでの粒子の溶出が制限されたことに起因し得る。ナノスフィア濃度が7.5億個の粒子/mLを超えて増加すると、より多い量での溶出、例えば、より多い量のin vitro溶出溶媒またはin vivoでの血液供給により、溶出プロファイルが増加する可能性がある。
【0150】
(実施例6)
in vivoでのAlexa647を搭載したPLGAナノスフィア基質の生体分布。
表1に記載されている蛍光色素であるAlexa647を搭載したPLGAナノスフィアを雌のBALB/cマウスに注射した。第1のマウスの群では、色素を搭載したPLGAナノスフィアを尾部静脈から静脈内に注射した。第2のマウスの群では、色素を搭載したPLGAナノスフィアを腹腔内に注射した。色素分布を、76分間の期間にわたり、IVIS画像化によりモニタリングした。注射して35分後に、図2に図示されている通り、両方の投与経路により、ナノスフィア内容物が全身に分布した。静脈内注射により、対象マウスの身体から標識色素の一般的な分布がもたらされた。腹腔内注射により、対象マウスの腹腔(abdominal cavity)内に標識色素が局所分布し、腹膜腔(peritoneal cavity)内に色素が最も集中して分布した。分布は、罹患または致死の何ら兆候なしに起こった。
【0151】
項目C. 超音波処理によるPLGAナノスフィアに関する検討。
(実施例7)
超音波処理によるPLGAナノスフィアの合成。
油相を生成するため、250mgのPLGAを、室温で1.51mlのDCMに溶解させた。1gのPVAを100mlの脱イオン水に溶解させ、水性相を生成した。次に、この水性相を氷上で冷却した。第1のエマルション(w1)は、約20±6マイクロリットルのDPBS中に12.5マイクログラムのIL-12を懸濁し、得られた懸濁液を、30~50ワットで10~20秒間、超音波処理しながら油相に添加することによって作製した。
【0152】
第2のエマルション(w2)は、第1のエマルションを5mlの水性相にゆっくりと添加することによって形成した。第1のエマルションを添加している間、水性相に10~30秒間、30~50ワットの超音波処理を施した。次に、磁気撹拌子を用いて、得られた懸濁液を1,000RPMで3時間、撹拌し、有機溶媒を蒸発させた。
【0153】
溶媒が一旦、蒸発すると、摂氏4度で15分間、10,000gでの3回の超遠心分離処理によって、得られた溶液からナノスフィアを回収し、液体窒素中で急速凍結させて、摂氏-20度で保管した。
【0154】
次に、ナノスフィアを真空下で凍結乾燥し、ナノスフィアから水を除去することができる。
【0155】
図8Aは、30ワットの超音波処理出力および10秒~20秒の範囲の超音波処理時間で、超音波処理を使用して調製したIL-12を搭載したナノスフィアを示している(表2のバッチ30W10S、30W15Sおよび30W20S)。
【0156】
図8Bは、40ワットの超音波処理出力および10~15秒の範囲の超音波処理時間での超音波処理を使用して調製した、IL-12を搭載したナノスフィアを示している(表2のバッチ40W10Sおよび40W15S)。
【0157】
図8Cは、50ワットの超音波処理出力および10秒~15秒の範囲の超音波処理時間での超音波処理を使用して調製した、IL-12を搭載したナノスフィアを示している(表2の回分50W10Sおよび50W15S)。
【0158】
表4において分かる通り、10~20秒間、30ワット~50ワットの出力での超音波処理によって、約5%~約10%のカプセル封入効率および-30~-40mVの間のゼータ電位で、IL-12を搭載したPLGAナノスフィアが一般に生成する。
【表4】
【0159】
(実施例8)
超音波処理により調製したPLGAナノスフィアの溶出。
実施例5の手順によって、表2に示されているIL-12を搭載したナノスフィアの溶出特性を試験した。1日あたりのタンパク質濃度をELISAによって求め、放出されたタンパク質の総量を未加工の溶出曲線下面積を使用して求めた。
【0160】
上記の手順によって得られた溶出曲線が、図9に示されている。表2の各バッチに関する溶出曲線は、初期バースト相、および持続放出相を伴う二相曲線を示す。バースト相は、水性媒体中での再懸濁時に、ナノスフィアの表面に吸着したタンパク質が放出されることに起因し得る一方、制御放出相は、PLGAマトリックス内に捕捉されたタンパク質によるものであることができる。図8において分かる通り、一定の超音波処理期間、例えば10秒の場合、バースト相の間の薬物放出の初期速度は、超音波処理出力の増加に伴って低下した。30Wの出力で10秒間(30W10S)、超音波処理したバッチでは、60%~65%の間のIL-12が1日以内に溶出され得る。50Wの出力で10秒間(50W10S)、超音波処理したバッチでは、50%未満のIL-12が1日以内に溶出され得る。これは、ナノスフィアコア中のPLGAマトリックス内のタンパク質の百分率は、超音波処理出力が増加するにつれて増加することを示唆している。
【0161】
項目D. PLGAナノスフィアに及ぼす撹拌速度の影響。
(実施例9)
油相を生成するため、磁気撹拌子を使用して、500RPMで800mgのPLGAを室温で2時間、32mlのDCMに溶解させた。
【0162】
エマルションの水性相を生成するため、2400mgのPVAおよび96mgのNaClを120mlの脱イオン水に溶解させ、濁りが無くなるまで、標準的な調理用マイクロ波において、HIGHという設定で10秒間のバーストでマイクロ波処理した。次に、水性相を氷上で冷却した。
【0163】
1.2mLのDPBS中に25マイクログラムのIL-12を懸濁することによって、IL-12懸濁液を調製した。
【0164】
ナノスフィアは、実施例4に記載されている通りに調製した。
【0165】
PLGAナノスフィアにおけるIL-12のカプセル封入効率、およびPLGAナノスフィアからのIL-12の溶出プロファイルに及ぼす撹拌速度の影響を観察するため、第1および第2のエマルションを調製している間の撹拌を、13,125RPM;15,312RPM;17,500RPM;19,688RPM;21,875RPM;24,063RPM;および26,250RPMの速度で行った。撹拌速度の関数としてのカプセル封入効率を表5に示す。
【表5】
【0166】
図10で分かる通り、7.5億個の粒子/mLのナノスフィア濃度において、超音波処理よりもむしろ高速撹拌を使用して調製したPLGAナノスフィアからのIL-12の溶出プロファイルが、撹拌速度に高度に依存し得る。17,500RPMでの撹拌により、高いカプセル封入効率、および12日間の期間にわたり、約4500pgとなるIL-12の全薬物放出量をもたらす。約13,000~約20,000RPMで撹拌すると、12日間の期間にわたり、約3500pgまたはそれより多いIL-12の許容される薬物放出量をもたらす。約22,000RPMより高い撹拌により、低いカプセル封入効率、および12日間の期間にわたり、3,000pg未満のIL-12の全薬物放出量をもたらす。IL-12を搭載したPLGAナノスフィアを生成するための最適撹拌速度は、約17,500RPMであることができる。
【0167】
項目E. 可溶性サイトカインの放出に及ぼすナノスフィアの効果。
(実施例10)
遊離IL-12対ナノスフィアにカプセル封入したIL-12の放出。
骨肉腫(OS)は、マウスにおいて、図11に示されている通り、チェックポイント遮断剤である抗PD-L1によって反転し得る、全身性免疫抑制を誘発する。抗PD-L1を使用すると、全身性免疫表現型はベースライン状態に戻り、OSから免疫抑制を緩和する。しかし、ベースライン状態は、進行したOSを有するマウスでは、腫瘍負荷を効果的に軽減するほど十分な免疫刺激をもたらさない。図11の線Aを参照されたい。しかし、再発性および難治性の非ホジキンリンパ腫(NHL)に対する、IL-12が遊離ペプチドとして投与される、リツキシマブ/IL-12併用療法の第II相検討において、患者は、用量規定毒性(DLT)の兆候を示した。それらの免疫状態または免疫表現型は、刺激のレベルを超えて、免疫細胞疲弊として知られている免疫系の過活性化の生命を脅かす状態の領域にまで押しのけられた。図11の線Cを参照されたい。この目的は、過剰刺激または免疫細胞疲弊なしに、免疫系をベースラインレベルより上に刺激させることである。
【0168】
しかし、活性化T細胞の脱抑制をもたらす抗PD-L1チェックポイント遮断の背景では、PLGAナノスフィア(IL-12-NS)の加水分解からの全身性腫瘍のマクロ環境への低用量IL-12(一般に安全と考えられている)のゆっくりとした持続的な送達は、図11の線Bに示されている通り、依然として疲弊閾値を下回った状態を維持しながらも、全身刺激をもたらして、腫瘍負荷を効果的に軽減することができる。リアルタイム免疫表現型のモニタリングプラットフォームは、本明細書に記載されているもののように、この用途に対して大きな価値があると思われる。
【0169】
したがって、可溶性薬物のための送達用ビヒクルとしての生分解性PLGAナノスフィアの使用は、治療的に有効な程の低い用量の投与を可能にすることができる。これは、薬物の有効投与量と毒性用量との間の差が小さい場合に有用となり得る。
【0170】
項目E. 可溶性サイトカインの放出に及ぼすナノスフィア添加剤の効果。
(実施例11)
薬物IL-12を含有する7つのバッチのナノスフィアを調製した。これらのバッチの溶出プロファイルは、10秒間、50ワット出力での超音波処理により、実施例5の手順に従うことによって得た。
【0171】
第1のバッチは、約20±6マイクロリットルのDPBSおよびPVA/水相に12.5マイクログラムのIL-12を懸濁させることによって作製したタンパク質溶液を使用し、実施例7の手順に従うことによって作製した。実施例7に列挙されていない添加剤を含めなかった。図12に示されている通り、実施例5の方法による第1のバッチの溶出時に、初期バースト相が1~2日間続く、薬物の放出があり、2日目に、-P65,000pg/mLのピークIL-12濃度に到達した。
【0172】
第2のバッチは、1.5%w/vのトレハロースを含有する約20±6マイクロリットルのDPBSに12.5マイクログラムのIL-12を懸濁させることによって作製したタンパク質溶液を使用したことを除き、実施例7の手順に従うことによって作製した。第2のバッチの場合、初期バースト相が3日間続く、薬物の放出があり、3日目に、-P75,000pg/mLのピークIL-12濃度に到達した。図12で分かる通り、ナノスフィアを作製するために使用したタンパク質溶液中にトレハロースが存在すると、追加の添加剤なしに作製したナノスフィアからの薬物放出量に比べて、全薬物放出量(曲線下面積として測定される)が顕著に増加した。
【0173】
第3のバッチは、2%w/vのMg(OH)を含有する約20±6マイクロリットルのDPBSに12.5マイクログラムのIL-12を懸濁させることによって作製したタンパク質溶液を使用したことを除き、実施例7の手順に従うことによって作製した。実施例5の方法による第3のバッチの溶出時に、初期バースト相が1日間続き、-P10,000pg/mLのピークIL-12濃度となる薬物の放出があった。図12で分かる通り、ナノスフィアを作製するために使用したタンパク質溶液中にMg(OH)が存在すると、追加の添加剤なしに作製したナノスフィアからの薬物放出量に比べて、全薬物放出量が低下した。
【0174】
第4のバッチの場合、10%のウシ胎児血清(FBS)を含有する約20±6マイクロリットルのDPBSに12.5マイクログラムのIL-12を懸濁させることによって作製したタンパク質溶液を使用し、実施例7の手順に従うことによってナノスフィアを作製した。実施例5の方法による溶出時に、初期バースト相が3日間続く、薬物の放出があり、2日目に、-P115,000pg/mLのピークIL-12濃度に到達した。図13で分かる通り、タンパク質溶液中に10%FBSが存在すると、追加の添加剤なしに作製したナノスフィアからの薬物放出量に比べて、全薬物放出量(曲線下面積として測定される)が顕著に増加した。
【0175】
第5のバッチの場合、10%のウシ胎児血清(FBS)を含有する約20±6マイクロリットルのDPBSに12.5マイクログラムのIL-12を懸濁させることによって作製したタンパク質溶液であって、ナノスフィアの生成前に24時間、インキュベートしたタンパク質溶液を使用し、実施例7の手順に従うことによってナノスフィアを作製した。実施例5の方法による溶出時に、初期バースト相が3日間続く、薬物の放出があり、3日目に、-P105,000pg/mL~-P110,000pg/mLのピークIL-12濃度に到達した。図13Aで分かる通り、タンパク質溶液中に10%のインキュベートしたFBSが存在すると、追加の添加剤なしに作製したナノスフィア、またはインキュベート工程の非存在下でFBSを使用して作製したナノスフィアのどちらか一方からの薬物放出量と比べて、ナノスフィアからの全薬物放出量(曲線下面積として測定される)が顕著に増加した。図13Bのゲル溶出に見られる通り、ナノスフィアの生成前の48時間、タンパク質溶液をインキュベートすると、IL-12の全放出量の低下がもたらされ、カプセル封入効率が低下した。
【0176】
第6のバッチの場合、ナノスフィアは、以下:
4%w/vのTween(登録商標)80を含有するPVA/水相、および
14%w/vのSpan(登録商標)60を含有する油相
を使用して実施例7の手順に従うことによって作製した。
実施例5の方法による溶出時に、初期バースト相が1日間続き、-P120,000pg/mL~-P125,000pg/mLとなるピークIL-12濃度で、薬物の放出があった。図14において分かる通り、タンパク質溶液中に界面活性剤Tween(登録商標)80およびSpan(登録商標)60が存在すると、追加の添加剤なしに作製されたナノスフィアからのピーク薬物放出量に比べて、ナノスフィアからのピーク薬物放出量が約2倍、増加した。Tween(登録商標)80が存在しても、全薬物放出量が実質的に増加した。
【0177】
第7のバッチの場合、ナノスフィアは、以下:
10%w/vのFBSおよび4%w/vのTween(登録商標)80を含有するPVA/水相;および14%w/vのSpan(登録商標)60を含有する油相
を使用して実施例7の手順に従うことによって作製した。
実施例5の方法による溶出時に、初期バースト相が1日間続き、約-580,000pg/mLのピークIL-12濃度で、薬物の放出があった。図14において分かる通り、タンパク質溶液中にFBSと界面活性剤の両方が存在すると、追加の添加剤なしに作製されたナノスフィアからの-65,000pg/mLとなるピーク薬物放出量に比べて、ナノスフィアからのピーク薬物放出量がほぼ、約9倍、増加した。FBSおよびTween(登録商標)80の両方が存在するとやはり、
FBS単独で作製されたナノスフィアからの-115,000pg/mLとなるピーク薬物放出量に比べて、ナノスフィアからのピーク薬物放出量がほぼ、約4.5倍、増加し、Tween(登録商標)80単独で作製されたナノスフィアからの-120,000pg/mLとなるピーク薬物放出量に比べて、ナノスフィアからのピーク薬物放出量が、ほぼ、約4.5倍、増加した。
【表6】
【0178】
これらの改変したナノスフィアバッチに関するピーク薬物放出量、全薬物放出量、薬物放出量/100,000個の粒子、カプセル封入効率(EE)およびゼータ電位が、表6に記録されている。この表に示されている通り、ナノスフィアからの薬物IL-12の溶出時のピーク薬物放出量および全薬物放出量は、トレハロース、FBS、24時間のインキュベートを伴うFBS、界面活性剤、またはそれらの混合物からなる群から選択される添加剤の存在下でナノスフィアを作製することによって増加させることができる。同様に、24時間のインキュベートを伴うFBS、界面活性剤、またはFBSと界面活性剤との混合物は、カプセル封入効率の劇的な増加をもたらす。溶出時のピーク薬物放出量および全薬物放出量は、FBSと界面活性剤の両方の存在下で、ナノスフィアを作製することによって相乗的に増加させることができる。
【0179】
図15Aおよび15Bにおいて分かる通り、溶液を10秒間、50Wで超音波処理した(50W10S)ナノスフィアのバッチ、インキュベートのないFBS(「ベースライン」)(B)、24時間のインキュベートを伴うFBS(24H)、および48時間のインキュベートを伴うFBS(48H)を、溶出率(図15A)および全溶出量のパーセント(図15B)として比較した。全量のパーセントにより、改変したバッチに対する溶出プロファイルの正確な比較が可能となる。これらの図に関する値が、表7に見られる。50W10Sの溶出とベースラインおよびインキュベートしたバッチとの比較が、表8に示されている。
【表7】
【表8】
【0180】
項目F. 骨肉腫の免疫適格性K7M2同所性マウスモデルにおける、転移および治癒速度に及ぼす、IL-12を搭載したポリ(乳酸-CO-グリコール酸)(PLGA)ナノスフィアの効果
マウス
4~5週齢の雄および雌のBALB/cマウス(ストック番号:000651)をJackson Laboratoryから得て、12時間の明/暗サイクルで、自動でlixit水を、および食物を自由摂取させて、トウモロコシ穂軸の寝床で特定の病原体不含施設内の換気されたAllentownケージで個別に収容した。実験はすべて、施設内動物管理委員会(IACUC)によって承認を受けた。
【0181】
OS腫瘍を有するマウスのin vivo画像化システム(IVIS)による画像化
疾病負荷をモニタリングするためのLiving Imageバージョン4.5ソフトウェアを用い、IVISスペクトルCT画像化システム(PerkinElmer Life Sciences、Waltham、MA)を使用して、動物を触診可能な原発腫瘍の最初の兆候から、およびその後は毎週の間隔で、IVISで画像化した。各セッションにおいて、マウスは、150mg/kg i.p.のD-ルシフェリン(Caliper Life Sciences、Hopkinton、MA)の投与を受け、肺における転移性疾患を可視化し、マウスは、さらに15mg/kgの鼻内へのD-ルシフェリン(ほぼ、30μL)の投与を受けた。画像は、最大生物発光の所定の間隔内で、自動露出を使用してキャプチャした。
【0182】
フローサイトメトリー(FC)
赤血球をRed Blood Cell(RBC)Lysis Solution(Miltenyi Biotec、Auburn、CA)を用いて溶解させた。単一細胞懸濁液を分けて、製造業者の使用説明書に準拠して、最適化リンパ球(L)および骨髄(M)抗体パネルと共にインキュベートした。1×104の事象の最小値を各試料について分析した。
【0183】
組織学
安楽死の際にIVISで陽性な肺腫瘍転移を有していなかったすべてのnIL-12処置マウスの肺に対して組織学を行った。未処置対照群の転移率は、組織学とIVIS陽性との組合せにより評価した。安楽死後、nIL-12処置マウスの肺をまとめて直ちに採取し、中性の緩衝ホルマリンに入れて、ミクロトームにマウントした。50μmの切片を250μm毎に取得し、ヘマトキシリンおよびエオシンにより染色して、認定病理学者によって、試験体の腫瘍転移の有無について分析した。
【0184】
統計解析
分類した臨床データ(転移率および無病率)間の有意性を判定するため、両側カイ二乗検定を使用した。健常なマウスおよび疾患のあるnIL-12処置マウス間の末梢血液中のNK集団率を比較するため、両群の平均値を各時間点で求め、標準偏差(SD)を計算した。統計学的有意性は、対応のない両側t検定によって求めた。
【0185】
実験設計
30匹の雄BALB/cマウスの頬から100μLの全血を出血させた後(赤い矢印)、1×10個のluc-K7M2 OS腫瘍細胞を脛骨内接種した。原発腫瘍を定着させた第1の12匹のマウスの頬を再度、出血させて、続いて、3つのn=4のnIL-12投与群(低用量:0.1mg、中用量1mgまたは高用量10mg)に無作為化した。原発腫瘍のIVISによる確認後、nIL-12の第1の用量(青色矢印)を腹腔内(i.p.)注射により投与した。マウスをIVISにより画像化し、これ以降、毎週の間隔で投与し、頬からの出血を連続して5、6、8、10および12週目に行った。12週目の頬の出血直後、マウスを安楽死させた。5週間目に、腫瘍を有する四肢を切断した。
【0186】
健常なマウスにおける遊離IL-12毒性のin vivo誘発
4匹のBALB/cマウス(群あたり2匹の雌および2匹の雄)の2つの群の頬から、4mmの滅菌Goldenrod Animal Lancet(Braintree Scientific、Braintree、MA)を使用して、顔面の静脈叢を刺すことによって頬を出血させて、ベースライン免疫表現型解析のために100μLの全血を集めた。頬を出血させた直後に、150μLのDPBS中に0.1%のマウス血清アルブミン(MSA、Sigma、St.Louis、MO)を含む、低(100ng)用量または高(100μg)用量の遊離組換えマウス(rm)IL-12(eBiolegend、San Diego、CA)の一方を、眼窩後(r.o.)注射して各群に投与した。r.o.注射後、24時間および48時間時に、免疫表現型解析を行うために、マウスの頬をさらに出血させた。
nIL-12合成
nIL-12ナノスフィアは、二重エマルション溶媒蒸発技法を使用して調製した(33)。手短に述べると、DPBS中に10%のマウス血清アルブミン(MSA、Sigma、St.Louis、MO)を含む、150μLの83.3mg/mL組換えマウスのIL-12(rmIL-12、eBiolegend、San Diego、CA)を、14%w/wのSpan(登録商標)60(Sigma)を含む1.51mLのジクロロメタン(dicholoromethane)(Sigma)に溶解された250mgのPLGA resomer RG 503H(Sigma)に加えた。得られたエマルションを、氷上で10秒間、50Wで超音波処理した後、4%w/vのTween(登録商標)80(Sigma)を含む1%w/vのポリビニルアルコール(PVA、Sigma)5mLに加え、氷上で再度、同じパラメータで超音波処理した。得られた混合物を室温で3時間、撹拌し、4回、洗浄した。使用するまで、粒子を-80℃で保管した。
【0187】
転移性OSのK7M2同系同所性BALB/cマウスモデル
K7M2マウスOS腫瘍細胞(ATCC CRL-2836、ATCC)は、2014年4月に、Kurt Weiss博士、MD(University of Pittsburgh Medical Center、Pittsburgh、PA)によって親切なことに寄贈され、既に記載したPromega luc2リポーターベクター(luc-K7M2)を非ウイルス的にトランスフェクトした(34)。Luc-K7M2細胞は、マイコプラズマ不含であり、その同一性は、2018年にIDEXX BioResearch Case #6926-2018(ID3)により確認された。同所性接種の場合、DMEM培地に懸濁したluc-K7M2細胞(1×10)を既に記載した通り、30匹のマウスに脛骨内注射した(34)。4週間後、最小の原発腫瘍、および大部分が同様のサイズであることをIVISにより確認した原発腫瘍を有する12匹のマウスを3つの対数スケールの用量処置群1)低用量(0.1mgのnIL-12)、2)中用量(1mgのnIL-12)および3)高用量(10mgのnIL-12)に無作為化した。原発腫瘍をIVISにより確認して1週間後、マウスは、既に記載した通り、その腫瘍を有する肢の切断を受けた(34)。接種して12週間後に、マウスを安楽死させた。実験設計の全体の概略図を図16に見ることができる。
【0188】
OS腫瘍を有するマウスにおける頬出血の時間点
腫瘍細胞の接種前(0週目)に、ベースライン免疫表現型解析用に30匹の雄BALB/cマウスのすべての頬を出血させて、100μLの全血を収集した。図16に示されている通り、触診可能な原発腫瘍の最初の兆候時(4週目)、その後の罹患した肢の切断前(5週目)、ならびに6(T1)、8(T2)、10(T3)および12(安楽死/EUTH)週目に再度、頬出血を繰り返した。
【0189】
OS腫瘍を有するマウスのnIL-12処置
腫瘍を有する12匹のマウスを3つのn=4の用量群に無作為化した;0.1mg(低)、1mg(中)または10mg(高)のnIL-12を滅菌DPBS中の0.1%MSAに懸濁させた。図16に示されている通り、触診可能な原発腫瘍をIVISにより確認した後、および次に、これ以降、合計で8回の用量について、1週間毎の時間点において、マウスに第1の用量のnIL-12を投与した。nIL-12用量をそれぞれ、全量500μLで腹腔内(i.p.)投与した。
【0190】
実験12.末梢血液中のヘルパーTリンパ球、細胞傷害性Tリンパ球および調節性Tリンパ球のサブセットのrmIL-12誘発性T細胞疲弊
100μLの全血(ベースライン)のために、12匹のBALB/cマウスの頬を出血させた後に、100ng(L:低用量)または100μg(H:高用量)の組換えマウス(rm)IL-12を眼窩後(r.o.)注射により投与した。24時間および48時間(48h)時にマウスの頬から再度出血させて、血液試料をフローサイトメトリーにより免疫表現型解析した。CD8CD4ヘルパーT細胞(左、白色)、CD4CD8細胞傷害性T細胞(中央、灰色)およびCD8CD4FOXP3CD25+/-調節性T細胞(右、黒色)のPD1TIM-3が陽性になる程度を評価し、これを疲弊の指標とすることができる。ベースラインおよび48時間の時間点からのT細胞データが図17に示されている。個々の棒(上半分)は、平均値+標準偏差の群を表す。表(下半分)は、各処置群およびT細胞のサブセットに関する平均値±標準偏差の群を示す。対応のない両側t検定を使用して、ベースライン血液試料(n=4;群あたり雄2匹および雌2匹)を48時間時の試料と比較した。p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。
【0191】
実験13.末梢血液におけるrmIL-12誘発性多形核骨髄由来抑制因子細胞(PMN-MDSC)骨髄球増加症
100μLの全血(ベースライン)のために、12匹のBALB/cマウスの頬を出血させた後に、100ng(L:低用量)または100μg(H:高用量)の組換えマウス(rm)IL-12を眼窩後(r.o.)注射により投与した。24時間および48時間(48h)時にマウスの頬から再度出血させて、血液試料をフローサイトメトリーにより免疫表現型解析した。ベースラインおよび48時間の時間点からのPMN-MDSCデータが図18に示されている。個々の棒(上半分)は、平均値+標準偏差の群を表す。表(下半分)は、各処置群に関する平均値±標準偏差の群を示す。対応のない両側t検定を使用して、ベースライン血液試料(n=4;群あたり雄2匹および雌2匹)を48時間時の試料と比較した。p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。
【0192】
実験14.循環ナチュラルキラー(NK)細胞のIL-12誘発性低下
100μLの全血(ベースライン)のために、12匹のBALB/cマウスの頬を出血させた後に、100ng(L:低用量)または100μg(H:高用量)の組換えマウス(rm)IL-12を眼窩後(r.o.)注射により投与した。24時間および48時間(48h)時にマウスの頬から再度出血させて、血液試料をフローサイトメトリーにより免疫表現型解析した。図19は、個々の棒(上半分)が平均値+標準偏差の群を表すことを示している。表(下半分)は、各処置群に関する平均値±標準偏差の群を示す。対応のない両側t検定を使用して、ベースライン血液試料(n=4;群あたり雄2匹および雌2匹)を48時間時の試料と比較した。p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。
【0193】
実験15.切断時に8.21%を超える血液NK細胞の百分率により、12週時に非転移性マウスと転移性マウスとに分かれる。
n=8の疾患(転移および/または局所再発陽性)マウスおよびn=4の健常(転移陰性と局所再発陰性の両方)マウスを含めた、nIL-12処置したOS腫瘍を有するマウスを12週目に疾患状態に基づいて2つの群に分けた。図20は、以下を示す:(A)12週間、7つの時間点にわたり比較した、健常(12週目に腫瘍負荷が陰性、緑色の丸)対罹患(12週目に腫瘍負荷が陽性、赤色三角)マウスの末梢血液における、NKp46ナチュラルキラー(NK)細胞の平均(±標準偏差)百分率(p<0.05;**、p<0.01;***、p<0.001、対応のない両側t検定を使用)、および(B)マウスを、切断時の末梢血液におけるそのNK細胞の百分率に基づいて階層化した。各棒は、その個々のマウスのNK細胞の百分率がメジアン値(8.21%)から逸脱した程度を表す。片側カイ二乗検定を使用して、メジアンより高いマウスの転移率をメジアンより下のマウスの転移率と比較した;pmet=切断時のメジアンより高いおよび低いNK細胞百分率を有する群間の転移率に関するP値。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図6A-6B】
図6C-6D】
図7A-7B】
図7C
図8A
図8B
図8C
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B
図16
図17
図18
図19
図20A
図20B
【国際調査報告】