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2023-504306地下鉄トンネル崩落の推進管工法によるレスキューの推力予測方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-02
(54)【発明の名称】地下鉄トンネル崩落の推進管工法によるレスキューの推力予測方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/06 20060101AFI20230126BHJP
【FI】
E21D9/06 311
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022549229
(86)(22)【出願日】2021-07-30
(85)【翻訳文提出日】2022-08-15
(86)【国際出願番号】 CN2021109421
(87)【国際公開番号】W WO2021244673
(87)【国際公開日】2021-12-09
(31)【優先権主張番号】202010780775.0
(32)【優先日】2020-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521052838
【氏名又は名称】中▲鉄▼九局集▲団▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】CHINA RAILWAY NO.9 GROUP CO., LTD
【住所又は居所原語表記】No.3-1 Jingbin Street, Shenhe District, Shenyang city, Liaoning 11013 P.R.China
(74)【代理人】
【識別番号】110001106
【氏名又は名称】弁理士法人キュリーズ
(72)【発明者】
【氏名】高岩
(72)【発明者】
【氏名】何▲長▼江
(72)【発明者】
【氏名】孟▲慶▼一
(72)【発明者】
【氏名】王君厚
(72)【発明者】
【氏名】▲銭▼坤
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼▲雲▼生
(72)【発明者】
【氏名】李▲飛▼
(72)【発明者】
【氏名】尹子涛
(72)【発明者】
【氏名】▲矯▼永岩
(72)【発明者】
【氏名】李▲徳▼柱
(72)【発明者】
【氏名】李旭▲軍▼
(72)【発明者】
【氏名】葛朝朝
【テーマコード(参考)】
2D054
【Fターム(参考)】
2D054AA10
2D054AC18
(57)【要約】
【課題】 地下鉄トンネル崩落の推進管工法によるレスキューの推力予測方法を提供することを課題とする。
【解決手段】 本発明は、地下鉄トンネルの崩落時に推進管工法でレスキューする時の推進管推力の予測方法に関する。前記方法は、崩壊ブロックの高さH、単位体積重量γを決定するステップと、推進管の中心軸からトンネルの底部までの距離H1を決定するステップと、物理探査、ボーリング調査又は推定法により、推進管の中心軸箇所の地すべりブロックの水平方向の長さLを決定するステップと、崩壊ブロックの凝集力c及び内部摩擦角を決定するステップと、崩壊ブロックと推進管の外壁との間の界面摩擦力τを決定するステップと、水平方向の長さLの範囲内の推進管本数m及びまる1本の推進管本数nを決定するステップと、水平方向の長さLの範囲内の部分的な推進管の普通セクションの長さL3及び拡径頭部セクションの長さL4を決定するステップと、普通セクションに必要な推力T1、拡径セクションに必要な推力T2及びテーパーヘッドに必要な推力T3を決定するステップと、推進管に必要な総推力Tを決定するステップとを含む。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地下鉄トンネル崩落の推進管工法によるレスキューの推力予測方法であって、
(1)崩壊ブロックの高さH、単位体積重量γを決定するステップであって、
トンネル不良地質體の高さH0に地山のゆるみ係数1.1~1.3を掛けて崩壊ブロックの高さH、すなわち、H=(1.1~1.3)H0を得、崩壊ブロックから典型的な土試料を採取し、リングナイフ法で崩壊ブロックの密度を測定し、次に重力加速度を乗じて崩壊ブロックの単位体積重量γを得るステップと、
(2)推進管の中心軸からトンネルの底部までの距離H1を決定するステップであって、
施工の便宜のため、通常H1は、1.0~3.0mの範囲にあるステップと、
(3)推進管の中心軸箇所の地すべりブロックの水平方向の長さLを決定するステップであって、
物理探査、ボーリング調査又は推定法により、推進管の中心軸箇所の地すべりブロックの水平方向の長さLを決定するステップと、
(4)推進管の普通セクションの外径d1、拡径セクションの外径d2及びテーパーヘッド外径D及び単一推進管の普通セクションの長さL1及び拡径セクションの長さL2を決定するステップであって、
これらのデータは、施工に選択された推進管を測定して得られるステップと、
(5)崩壊ブロックの凝集力c及び内部摩擦角φを決定するステップであって、
崩壊ブロックから典型的な土試料を採取し、実験室に運び、非固結急速せん断試験を実施して、岩体の凝集力c及び内部摩擦角φを得るステップと、
(6)崩壊ブロックと推進管の外壁との間の界面摩擦力τを次式により決定するステップと、
τ=(H-H1)γtanφ
(7)水平方向の長さLの範囲内の推進管本数m及びまる1本の推進管本数nを次式により決定するステップと、
【数1】

[但し、式中、intは、整数にする関数であり、]
(8)水平方向の長さLの範囲内の部分的な推進管の普通セクションの長さL3及び拡径頭部セクションの長さL4を次式により決定するステップと、
(m-n)(L1+L2)<L1の場合、L3=(m-n)(L1+L2)、L4=0となり、さもなければ、L3=L1、L4=(m-n)(L1+L2)-L1となり、
(9)普通セクションに必要な推力T1、拡径セクションに必要な推力T2及びテーパーヘッドに必要な推力T3を次式により決定するステップと、
【数2】

(10)推進管に必要な総推力Tを次式により決定するステップと、
T=T1+T2+T3
を有することを特徴とする、地下鉄トンネル崩落の推進管工法によるレスキューの推力予測方法。
【請求項2】
崩壊ブロックの高さHは、物理探査、ボーリング調査又は推定法により地上で崩壊ブロックを垂直探査して測定されることを特徴とする、請求項1に記載の地下鉄トンネル崩落の推進管工法によるレスキューの推力予測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インフラ整備分野に関し、特に、地下鉄トンネルの崩落時に推進管工法でレスキューする時の推進管推力の予測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネルの掘削や施工過程で、地質状態、外力を受けた状態、地下水の変化、不適切な設計又は不適切な工法などのさまざまな原因により、トンネルの崩落が引き起こされる可能性がある。トンネルが崩落すると、トンネル内での施工者の安全に大きな脅威をもたらす。したがって、トンネル崩落エリアで迅速な救助を実施することは非常に重要である。さまざまな救助方法の中で、推進管工法は優れた方法の1つである。この工法は、推力を利用して推進管を崩壊ブロックに強制的に押し込み、崩壊ブロックを貫通し、管路を介して空気及び救助物資を崩壊ブロックに送ることで閉じ込められた被災者に供給する。推進管工法の推力は、一般的にジャッキ又はショベルローダー等の機械を用いるが、ジャッキが反力架台を必要とし、反力と推力は作用力と反作用力のペアで、推進管工法を実施する時、推力の大きさを明確するのは、反力を加える構造にとって、重要な参考意味を持つ。しかしながら、これまでのところ、推力や反力の大きさは施工経験に基づいており、トンネルレスキューの推進管工法推力の理論的予測法は、ほぼ見られない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】《土質試験法の標準》(GB-T50123-1999)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、地下鉄トンネル崩落の推進管工法によるレスキューの推力予測方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明の技術的手段である地下鉄トンネル崩落の推進管工法によるレスキューの推力予測方法は、以下のステップを有する。
【0006】
(1)崩壊ブロックの高さH、単位体積重量γを決定する。
トンネル不良地質體の高さH0に地山のゆるみ係数1.1~1.3を掛けて崩壊ブロックの高さH、すなわち、H=(1.1~1.3)H0を得る、又は物理探査、ボーリング調査或いは推定法により地上で崩壊ブロックを垂直探査して、崩壊ブロックの高さHを測定し、崩壊ブロックから典型的な土試料を採取し、リングナイフ法で崩壊ブロックの密度を測定し、次に重力加速度を乗じて崩壊ブロックの単位体積重量γを得る。
【0007】
(2)推進管の中心軸からトンネルの底部までの距離H1を決定する。
施工の便宜のため、通常H1は、1.0~3.0mの範囲にある。
【0008】
(3)推進管の中心軸箇所の地すべりブロックの水平方向の長さLを決定する。
物理探査、ボーリング調査又は推定法により、推進管の中心軸箇所の地すべりブロックの水平方向の長さLを決定する。
【0009】
(4)推進管の普通セクションの外径d1、拡径セクションの外径d2及びテーパーヘッド外径D及び単一推進管の普通セクションの長さL1及び拡径セクションの長さL2を決定する。
これらのデータは、施工に選択された推進管を測定して得られる。
【0010】
(5)崩壊ブロックの凝集力c及び内部摩擦角φを決定する。
崩壊ブロックから典型的な土試料を採取し、実験室に運び、非特許文献1に従って、非固結急速せん断試験を実施して、岩体の凝集力c及び内部摩擦角φを得る。
【0011】
(6)崩壊ブロックと推進管の外壁との間の界面摩擦力τを次式により決定する。
【0012】
τ=(H-H1)γtanφ
【0013】
(7)水平方向の長さLの範囲内の推進管本数m及びまる1本の推進管本数nを次式により決定する。
【0014】
【数1】

但し、式中、intは、整数にする関数である。
【0015】
(8)水平方向の長さLの範囲内の部分的な推進管の普通セクションの長さL3及び拡径頭部セクションの長さL4を決定する。
(m-n)(L1+L2)<L1の場合、L3=(m-n)(L1+L2)、L4=0となり、さもなければ、L3=L1、L4=(m-n)(L1+L2)-L1となる。
【0016】
(9)普通セクションに必要な推力T1、拡径セクションに必要な推力T2及びテーパーヘッドに必要な推力T3を次式により決定する。
【0017】
【数2】
【0018】
(10)推進管に必要な総推力Tを次式により決定する。
【0019】
T=T1+T2+T3
【発明の効果】
【0020】
本発明の実施後、地下鉄トンネルの崩落が発生した時、推進管工法でレスキューする時の推力を予測することができ、予測方法は簡単で、結果は信頼できるため、推力設備を合理的に選択してトンネルのレスキューに技術的サポートを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
トンネルは、貫入接触帯を通過し、断層に隣接した岩石の特性が悪く、地下水位が高いため、崩落事故に遭遇し、3人が閉じ込められ、推進管工法によるレスキューを決定し、本発明の予測方法で推進管に必要な推力を予測した。物理探査方法により、トンネルの不良地質体の高さH0は22.0mであると決定され、これに地山のゆるみ係数1.2を掛け、式H=(1.1~1.3)H0に基づいて、崩壊ブロックの高さHは26.4mであることを得た。崩壊ブロックから典型的な土試料を採取し、リングナイフ法で密度が1.65g/cm3であると測定され、次に重力加速度を乗じて単位体積重量γが16.5kN/m3であると得られた。
【0022】
施工経験により推進管の中心軸からトンネルの底部までの距離H1は、1.5mであると決定され、物理探査方法により推進管の中心軸箇所の地すべりブロックの水平方向の長さLは14.8mであると決定された。施工に選択された推進管を測定し、推進管の普通セクションの外径d1は、0.30m、拡径セクションの外径d2は0.35m、テーパーヘッドの外径Dは0.35m、及び単一推進管の普通セクションの長さL1は1.8m、拡径セクションの長さL2は0.2mであると得られた。崩壊ブロックから典型的な土試料を採取して、実験室に運び、非固結急速せん断試験を実施して、岩体の凝集力cは3.7kPa、内部摩擦角φは12°であると測定された。
【0023】
τ=(H-H1)γtanφ
上式により崩壊ブロックと推進管の外壁との間の界面摩擦力τは87.3kPaであると計算された。
【0024】
【数3】

上式により、水平方向の長さLの範囲内の推進管本数mは、7.8、まる1本の推進管本数nは7.0であると計算された。さらに、(m-n)(L1+L2)=1.6m<L1=1.8mとなり、水平方向の長さLの範囲内の不完全な推進管の普通セクションの長さL3は(m-n)(L1+L2)=1.6mで、拡径頭部セクションL4は0であった。
【0025】
T1=πd1τnL1
上式により、普通セクションに必要な推力T1は、1167.8kNであると計算された。
【0026】
T2=πd2τnL2
上式により、拡径セクションに必要な推力T2は、134.3kNであると計算された。
【0027】
【数4】

上式により、テーパーヘッドに必要な推T3は、60.9kNであると計算され、最後に推進管に必要な総推力Tは1363.0kNであると計算された。

【国際調査報告】