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特表2023-504362単層カーボンナノチューブの調製方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-03
(54)【発明の名称】単層カーボンナノチューブの調製方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/162 20170101AFI20230127BHJP
   C01B 32/164 20170101ALI20230127BHJP
【FI】
C01B32/162
C01B32/164
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022529109
(86)(22)【出願日】2020-11-25
(85)【翻訳文提出日】2022-06-30
(86)【国際出願番号】 GB2020052997
(87)【国際公開番号】W WO2021111106
(87)【国際公開日】2021-06-10
(31)【優先権主張番号】1917638.7
(32)【優先日】2019-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501484851
【氏名又は名称】ケンブリッジ・エンタープライズ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CAMBRIDGE ENTERPRISE LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100179903
【弁理士】
【氏名又は名称】福井 敏夫
(72)【発明者】
【氏名】アダム ボイズ
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン マッケンジー グレイヴス
(72)【発明者】
【氏名】シャオ チャン
【テーマコード(参考)】
4G146
【Fターム(参考)】
4G146AA12
4G146AC02B
4G146BA12
4G146BC01
4G146BC08
4G146BC25
4G146DA02
4G146DA23
4G146DA26
4G146DA27
4G146DA28
4G146DA40
4G146DA43
(57)【要約】
本発明は、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)を備える炭素材料(例えば、カーボンナノ材料)の製造および炭素材料自体に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SWCNTを備える炭素材料の製造方法であって、前記方法は、
(a)キャリアガス中に浮遊した耐熱金属材料の流を生成することと、
(b)前記耐熱金属材料の前記流を温度制御されたフロースルー炉に導入することと、
(c)前記耐熱金属材料の前記流を耐熱金属物質の流を生成するのに十分な温度に供することであって、
ここで、前記耐熱金属物質の前記流は、前記耐熱金属物質を蒸発させるのに十分な第1の温度ゾーンと前記第1の温度ゾーンの下流の第2の温度ゾーンとに曝露され、ここで、前記第2の温度ゾーンは、前記耐熱金属物質を再核化してナノ粒子の耐熱金属物質の流を生成するのに十分である、前記耐熱金属材料の前記流を耐熱金属物質の流を生成するのに十分な温度に供することと、
(d)前記ナノ粒子耐熱金属物質の前記流から、ナノ粒子サイズの選択的分布を示す前記ナノ粒子耐熱金属物質の離散流を分離することと、
(e)前記ナノ粒子耐熱金属物質の前記離散流を温度制御された反応器に導入することと、
(f)必要に応じて、還元剤の流を前記温度制御された反応器に放出することであって、ここで、前記還元剤の前記流および前記ナノ粒子耐熱金属物質の前記離散流は、ナノ粒子耐熱金属の流を生成するのに十分な第3の温度ゾーンに曝露される、還元剤の流を前記温度制御された反応器に放出することと、
(g)炭素源の流を前記温度制御された反応器に放出することと、
(h)前記ナノ粒子耐熱金属および前記炭素源を、前記温度制御された反応器内で支持形態もしくは自己支持形態に適応可能であるかまたは前記温度制御反応器から収集可能であるSWCNTを備える前記炭素材料を生成するのに十分な第4の温度ゾーンに曝露させることと、
を含む、SWCNTを備える炭素材料の製造方法。
【請求項2】
前記耐熱金属は、W、MoまたはReである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(d)は、前記ナノ粒子耐熱金属物質の前記ナノ粒子を、それらの質量、空気動力学的径または電気移動度に従って分級することによって実行される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ナノ粒子耐熱金属物質の前記離散流における前記ナノ粒子耐熱金属物質の幾何平均径(GMD)は、3nm以下である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ナノ粒子耐熱金属物質の前記離散流中の前記ナノ粒子耐熱金属物質の個数濃度は、10cm-3以上である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ナノ粒子耐熱金属の前記幾何平均径(GMD)は、2nm以下である、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ナノ粒子耐熱金属物質の前記離散流中の前記ナノ粒子耐熱金属物質は、実質的に単分散である、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ナノ粒子耐熱金属物質の前記直径の幾何標準偏差(GSD)は、1.1未満である、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
(e’)前記温度制御された反応器に第2のナノ粒子耐熱金属物質の離散流を導入すること、をさらに備える、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
SWCNTを備える炭素材料を製造するためのアセンブリであって、前記アセンブリは、
(A)キャリアガス中に浮遊した耐熱金属材料のエアロゾル流を生成するためのエアロゾル化デバイスと、
(B)前記エアロゾル化デバイスに動作可能に接続されおよび前記エアロゾル化デバイスから下流にある、温度制御されたフロースルー炉であって、前記温度制御されたフロースルー炉は、使用中、前記耐熱金属材料の前記流を受け取り、ナノ粒子耐熱金属物質の流を排出する、温度制御されたフロースルー炉と、
(C)前記温度制御されたフロースルー炉に動作可能に接続され、その下流にある、粒子サイズ分級器であって、前記粒子サイズ分級器は、使用中、粒子サイズの選択的分布に従って、前記ナノ粒子耐熱金属物質の離散流を分離する、粒子サイズ分級器と、
(D)前記粒子サイズ分級器に動作可能に接続され前記粒子サイズ分級器の下流にある、温度制御された反応器であって、ここで、前記温度制御された反応器は、使用中、前記ナノ粒子耐熱金属物質の前記離散流、必要に応じた還元剤の流および炭素源の流を受け取り、それによってSWCNTを備える炭素材料を生成する、温度制御された反応器と、
を備える、SWCNTを備える炭素材料を製造するためのアセンブリ。
【請求項11】
SWCNTを備える炭素材料を製造するためのプロセスであって、前記プロセスは、
(1)キャリアガス中に浮遊した耐熱金属材料の流を生成することと、
(2)前記耐熱金属材料の前記流を温度制御されたフロースルー炉に導入することと、
(3)前記耐熱金属材料の前記流を耐熱金属物質の流を生成するのに十分な温度に供することであって、ここで、前記耐熱金属物質の前記流は、前記耐熱金属物質を蒸発させるのに十分な第1の温度ゾーンと、前記第1の温度ゾーンの下流の第2の温度ゾーンと、に曝露され、ここで、前記第2の温度ゾーンは、前記耐熱金属物質を再核化してナノ粒子の耐熱金属物質の流を生成するのに十分である、前記耐熱金属材料の前記流を耐熱金属物質の流を生成するのに十分な温度に供することと、
(4)前記ナノ粒子耐熱金属物質の前記流から、ナノ粒子サイズの選択的分布を示す前記ナノ粒子耐熱金属物質の離散流を分離することと、
(5)必要に応じた還元剤および前記ナノ粒子耐熱金属物質を、ナノ粒子耐熱金属を生成するのに十分な第3の温度ゾーンに曝露することと、
(6)炭素源と前記ナノ粒子耐熱金属を、SWCNTを備える前記炭素材料を生成するのに十分な第4の温度ゾーンに曝露することと、
を含み、
ここで、前記プロセスは、ステップ(4)の後に前記ナノ粒子耐熱金属物質を基板上に堆積させることまたはステップ(5)の後に前記ナノ粒子耐熱金属を基板上に堆積させることのいずれかをさらに含む、
SWCNTを備える炭素材料を製造するためのプロセス。
【請求項12】
SWCNTを備える炭素材料を製造するための装置であって、前記装置は、
(A)キャリアガス中に浮遊した耐熱金属材料のエアロゾル流を生成するためのエアロゾル化デバイスと、
(B)前記エアロゾル化デバイスに動作可能に接続され前記エアロゾル化デバイスの下流にある、温度制御されたフロースルー炉であって、前記温度制御されたフロースルー炉は、使用中、前記耐熱金属材料の前記流を受け取り、ナノ粒子耐熱金属物質の流を排出する、温度制御されたフロースルー炉と、
(C)前記温度制御されたフロースルー炉に動作可能に接続され前記温度制御されたフロースルー炉の下流にある、粒子サイズ分級器であって、前記粒子サイズ分級器は、使用中、粒子サイズの選択的分布に従って、前記ナノ粒子耐熱金属物質の離散流を分離する、粒子サイズ分級器と、
(D)必要に応じた還元剤および前記ナノ粒子耐熱金属物質を、ナノ粒子耐熱金属を生成するのに十分な温度に曝露するための第1のデバイスと、
(E)炭素源および前記ナノ粒子耐熱金属を、SWCNTを備える前記炭素材料を生成するのに十分な温度に曝露するための第2のデバイスと、を備え、
ここで、前記装置は、さらに、前記粒子サイズ分級器に作動可能に接続され前記粒子サイズ分級器の下流にあり、使用中、前記ナノ粒子耐熱金属物質を基板上に堆積させる集塵器か、または前記第1のデバイスに作動可能に接続され前記第1のデバイスの下流にあり、使用中、前記ナノ粒子の耐熱金属を基板上に堆積させる集塵器、のいずれかである集塵器を備える、
SWCNTを備える炭素材料を製造するための装置。
【請求項13】
(2n±2,n)、(2n±1,n)および(2n,n)からなる群から選択されるカイラル指数の1つ以上の対がSWCNTの大部分によって示される、SWCNTを備える炭素材料。
【請求項14】
カイラル指数の前記対は、(12,6)である、請求項13に記載の炭素材料。
【請求項15】
SWCNTを備える炭素材料であって、12~26°の範囲のカイラル角は、前記SWCNTの大部分によって示される、SWCNTを備える炭素材料。
【請求項16】
SWCNTを備える炭素材料であって、前記SWCNTの平均カイラル角は、18~20°の範囲にある、SWCNTを備える炭素材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)を備える炭素材料(例えば、カーボンナノ材料)の製造、および炭素材料自体に関する。
【背景技術】
【0002】
SWCNTが次世代のトランジスタおよびセンサーでの期待に沿う可能性は、それらのカイラリティの制御を欠くことによって妨げられてきた。カイラリティの制御は、湿式選択精製によって実験室規模で達成されているが、これは必然的に元来のSWCNTに損傷を与える。このため、直接化学気相蒸着(CVD)が好ましい製造方法である。しかし、何十年にもわたる研究の後でさえ、狭いカイラリティ分布を有するSWCNTの直接成長は依然として困難である。
【0003】
CVD中に触媒粒子の構造および形態がCNTの特性に決定的な役割を果たしていることは広く認められている。例えば、従来の液体状態の触媒(鉄、コバルトおよびニッケルなど)のオストワルト熟成および柔軟な形態は、カイラリティの直接制御が達成できないままであることを意味する。あるいは、成長中に固体状態で持続する触媒は、その場でのカイラリティ制御の実現への希望を維持する。新しい炭素原子を組み込むことに対する固体触媒のより高いエネルギー障壁を制御方法として利用できることが示唆されている(Artyukhov, V. I., Penev, E. S. & Yakobson, B. I. Why nanotubes grow chiral. Nat. Commun. 5, 4892, doi:10.1038/ncomms5892を参照されたい)。
【0004】
もう1つの長年の目標は、小さく、正確に制御されたナノ粒子を大規模に生成する方法である。SWCNTの径および触媒の径の間には相関関係があるため、カイラリティ制御は、狭いサイズ分布の固体触媒の容易な製造に直接結びつけられ得る。固体触媒を製造するための近年の方法は、固定金属比を有する分子クラスター(Yang, F. et al. Chirality-specific growth of single-walled carbon nanotubes on solid alloy catalysts. Nature 510, 522, doi:10.1038/nature13434を参照)または特別な基板反応制限(Zhang, S. et al. Arrays of horizontal carbon nanotubes of controlled chirality grown using designed catalysts. Nature advance online publication, doi:10.1038/nature21051を参照)のいずれかを使用した。基板に制限のないスケールアップされた方法は、カイラリティ制御されたSWCNT製造の工業化に多大な利益をもたらす。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、連続気相(エアロゾル)プロセスからほぼ単分散サイズで調製された高融点金属ナノ粒子を使用することによって、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)の連続または半連続製造を改善しようとする。特に、単分散金属ナノ粒子は、反応器に供給され得るか、または基板上に堆積され得、ランダムなまたは狭い範囲に制御されたカイラリティで整列したSWCNTを正常に成長させるために使用され得る。
【0006】
したがって、第1の態様から見ると、本発明は、SWCNTを備える炭素材料の製造方法を提供し、この方法は、
(a)キャリアガス中に浮遊した耐熱金属材料の流を生成することと、
(b)耐熱金属材料の流を温度制御されたフロースルー炉に導入することと、
(c)耐熱金属材料の流を耐熱金属物質の流を生成するのに十分な温度に供することであって、ここで、耐熱金属物質の流は、耐熱金属物質を蒸発させるのに十分な第1の温度ゾーンと第1の温度ゾーンの下流の第2の温度ゾーンとに曝露され、ここで、第2の温度ゾーンは、耐熱金属物質を再核化してナノ粒子の耐熱金属物質の流を生成するのに十分である、耐熱金属材料の流を耐熱金属物質の流を生成するのに十分な温度に供することと、
(d)ナノ粒子耐熱金属物質の流から、ナノ粒子サイズの選択的分布を示すナノ粒子耐熱金属物質の離散流を分離することと、
(e)ナノ粒子耐熱金属物質の離散流を温度制御された反応器に導入することと、
(f)必要に応じて、還元剤の流を温度制御された反応器に放出することであって、ここで、還元剤の流およびナノ粒子耐熱金属物質の離散流は、ナノ粒子耐熱金属の流を生成するのに十分な第3の温度ゾーンに曝露される、還元剤の流を温度制御された反応器に放出することと、
(g)炭素源の流を温度制御された反応器に放出することと、
(h)ナノ粒子耐熱金属および炭素源を、温度制御された反応器内で支持形態もしくは自己支持形態に適応可能であるかまたは温度制御反応器から収集可能であるSWCNTを備える炭素材料を生成するのに十分な第4の温度ゾーンに曝露することと、を含む。
【0007】
その(または各々の)流は、エアロゾル流であり得る。
【0008】
耐熱金属材料は、固体粒子(好ましくは固体ナノ粒子)としてキャリアガス中に浮遊し得る。耐熱金属材料は、粉末分散液中に形成され得る。
【0009】
耐熱金属材料は、耐熱金属元素(例えば、耐熱金属元素粉末)または耐熱金属化合物であり得る。
【0010】
耐熱金属化合物は、耐熱金属錯体、塩または有機金属であり得る。
【0011】
キャリアガスは、通常、窒素、アルゴン、ヘリウムまたは水素の1つ以上である。好ましくは、キャリアガスは、窒素である。
【0012】
好ましくは、ステップ(a)は、
(a’)耐熱金属化合物の液体配合物を噴霧すること、を含む。
【0013】
液体配合物は、スラリーであり得る。液体配合物は、水溶性配合物であり得る。液体配合物は、溶液、分散液または懸濁液であり得る。ステップ(a’)は、ネブライザーで実行され得る。
【0014】
好ましい実施形態では、耐熱金属化合物の液体製剤は、耐熱金属塩溶液である。特に好ましくは、耐熱金属塩溶液は、非常に希薄である。非常に希薄な耐熱金属塩溶液を使用すると、温度制御されたフロースルー炉から排出されるナノ粒子耐熱金属物質の粒子サイズを容易かつ正確に制御することが可能になる。
【0015】
耐熱金属塩溶液の濃度は、(金属原子に関して)1.0mM以下であり得、好ましくは0.7mM以下、特に好ましくは0.3mM以下である。
【0016】
好ましくは、ステップ(a)は、
(a’’)耐熱金属化合物の流を乾燥させること、をさらに含む。
【0017】
ステップ(a’’)は、乾燥剤乾燥器によって実行され得る。
【0018】
ステップ(a’)および(a’’)は、スプレー乾燥によって共に実行され得る。
【0019】
ステップ(a)は、熱ワイヤを使用して実行され得る。
【0020】
好ましくは、ステップ(a)は、
(a1)耐熱金属材料の流をキャリアガスに分散させること、を含む。
【0021】
ステップ(a1)は、流動層フィーダー、ジェットミルまたは置換式フィーダーで実行され得る。
【0022】
耐熱金属物質は、耐熱金属元素であり得る。
【0023】
好ましくは、耐熱金属物質は、耐熱金属酸化物である。
【0024】
好ましくは、ステップ(f)は、還元剤の流を温度制御された反応器に放出することであり、ここで、還元剤の流およびナノ粒子耐熱金属物質の離散流は、ナノ粒子の耐熱金属の流を生成するのに十分な第3の温度ゾーンに曝露される。
【0025】
還元剤は、水素であり得る。
【0026】
炭素材料は、多層カーボンナノチューブ(例えば、二重壁カーボンナノチューブ)を備え得る。通常、炭素材料は、主にSWCNTである。SWCNTは、高純度SWCNTであり得る。カーボンナノチューブ中のSWCNTの数は、通常50%超である。好ましくは、カーボンナノチューブ構造中のSWCNTの数は、80%超、特に好ましくは、90%超、より好ましくは、95wt%超である。
【0027】
好ましくは、SWCNTを備える炭素材料において、(2n±2,n)、(2n±1,n)および(2n,n)からなる群から選択されるカイラル指数の1つ以上の対は、SWCNTの大部分によって示される。特に好ましくは、SWCNTを備える炭素材料において、SWCNTの大部分によって示されるカイラル指数の対は、(2n,n)である。
【0028】
通常、カイラル指数の対は、ラジアルブリージングモード領域の炭素材料に対して実行されるラマン分光法によって決定される。
【0029】
好ましくは、nは4~7の範囲の整数であり、特に好ましくは、5~7の範囲の整数である。
【0030】
カイラル指数の対は、(12,6)、(10,5)、(8,4)、(12,5)または(9,4)であり得る。
【0031】
好ましくは、カイラル指数の対は、(12,6)および/または(10,5)である。
【0032】
好ましくは、カイラル指数の対は、(12,6)である。
【0033】
好ましくは、(2n±2,n)、(2n±1,n)および(2n,n)からなる群から選択される1つ以上のカイラル指数の対は、50wt%以上のSWCNT、特に好ましくは60wt%以上のSWCNT、より好ましくは75wt%以上のSWCNT、さらにより好ましくは85wt%以上のSWCNT、特に好ましくは90wt%以上のSWCNTによって示される。
【0034】
好ましくは、SWCNTを備える炭素材料において、12~26°(好ましくは13~24°、特に好ましくは16~22°、より好ましくは17~21°、さらにより好ましくは18~20°)の範囲のカイラル角は、SWCNTの大部分によって示される。
【0035】
好ましくは、12~26°の範囲のカイラル角は、50wt%以上のSWCNT、特に好ましくは60wt%以上のSWCNT、より好ましくは75wt%以上のSWCNT、さらにより好ましくは85wt%以上のSWCNT、特に好ましくは90wt%以上のSWCNTによって示される。
【0036】
好ましくは、SWCNTを備える炭素材料において、SWCNTの平均カイラル角は、18~20°の範囲である。
【0037】
耐熱金属の融点は、2500℃を超え得る。
【0038】
耐熱金属は、W、Mo、Re、V、Nb、Ir、Ru、OsおよびRhからなる群の1つ以上であり得る。
【0039】
好ましくは、耐熱金属は、W、MoまたはReである。特に好ましくは、耐熱金属は、Wである。特に好ましくは、耐熱金属はMoである。特に好ましくは、耐熱金属はReである。
【0040】
ステップ(h)において、ナノ粒子耐熱金属は、その元素形態で触媒として作用し得る。あるいは、ナノ粒子耐熱金属は、炭素と反応して触媒として作用するナノ粒子耐熱金属炭化物を形成し得る。
【0041】
第1の温度ゾーンは、250℃以上であり得、好ましくは500℃以上、特に好ましくは950℃以上である。
【0042】
第2の温度ゾーンは、第1の温度ゾーンの温度よりも低い温度であり得る。第2の温度ゾーンは、温度制御されたフロースルー炉の中または下流にあり得る。第2の温度ゾーンは、冷却ゾーンであり得る。
【0043】
第3の温度ゾーンは、200℃以上であり得る。
【0044】
第4の温度ゾーンは、500℃以上であり得、好ましくは700℃以上である。
【0045】
好ましくは、ステップ(d)は、ナノ粒子耐熱金属物質のナノ粒子を、それらの質量、空気動力学径、または電気移動度に従って分級することによって実行される。
【0046】
ステップ(d)は、粒子サイズ分級器(例えば、エアロゾル分級器)によって実行され得る。分級器は、微分型移動度分級器、空力エアロゾル分級器または遠心粒子質量分析器であり得る。
【0047】
ナノ粒子耐熱金属物質の離散流におけるナノ粒子耐熱金属物質の幾何平均径GMD(例えば、移動度径)は、10nm以下であり得、好ましくは7nm以下、特に好ましくは3nm以下である。ナノ粒子耐熱金属物質の離散流におけるナノ粒子耐熱金属物質の幾何平均径(GMD)は、1~5nmの範囲であり得る。
【0048】
ナノ粒子耐熱金属物質の離散流におけるナノ粒子耐熱金属物質の個数濃度は、10cm-3以上であり得、好ましくは10cm-3以上、特に好ましくは10cm-3以上である。
【0049】
好ましくは、ナノ粒子耐熱金属物質の離散流中のナノ粒子耐熱金属物質は、実質的に単分散である。ナノ粒子耐熱金属物質の径(例えば、移動度径)の幾何標準偏差(GSD)は、好ましくは2未満、特に好ましくは1.5未満、より好ましくは1.1未満である。
【0050】
ナノ粒子耐熱金属の幾何平均径(GMD)は、8nm以下、好ましくは5nm以下、特に好ましくは2nm以下であり得る。ナノ粒子耐熱金属の幾何平均径(GMD)は、1~5nmの範囲であり得る。
【0051】
好ましくは、この方法は、
(e’)温度制御された反応器に第2のナノ粒子耐熱金属物質の離散流を導入すること、をさらに備える。
【0052】
第2のナノ粒子耐熱金属物質の離散流は、第2の耐熱金属材料を、ステップ(a)~(d)を共に、または耐熱金属材料に対して実行されるステップ(a)~(d)を個別に、のいずれかで供することによって調製され得る。例えば、ステップ(a)~(d)は、耐熱金属化合物と第2の耐熱金属化合物とを混合してまたは合金もしくは金属間化合物として、共に実行され得る。
【0053】
第2の耐熱金属化合物は、W、Mo、Re、V、Nb、Ir、RuまたはRh化合物であり得る。
【0054】
支持された形態では、SWCNTを備える炭素材料は、基板上に支持され得る(例えば、堆積される)。
【0055】
自己支持形態では、SWCNTを備える炭素材料は、粉末、繊維、フィルム、またはマットであり得る。
【0056】
SWCNTを備える炭素材料は、SWCNTを備える炭素材料を、温度制御されたフロースルー反応器の排出口を通して連続排出として置換し、連続排出を収集することによって、温度制御された反応器から収集可能であり得る。SWCNTを備える炭素材料は、機械的力、静電力または磁力によって変位し得る。連続排出は、機械的に収集され得る。例えば、連続排出は、回転スピンドルまたはドラム上で収集され得る。
【0057】
ステップ(e)でのナノ粒子耐熱金属物質の離散流の流量は、最大50g/時間(例えば、約7g/時間)であり得る。
【0058】
ナノ粒子の耐熱金属物質は、ステップ(e)において、線形、軸方向、渦状、らせん状、層状または乱流の流路に導入(例えば、注入)され得る。ナノ粒子耐熱金属物質は、複数の場所に導入され得る。ステップ(e)において、ナノ粒子耐熱金属物質は、軸方向または半径方向に、温度制御されたフロースルー反応器に(プローブまたはインジェクターを介して)導入され得る。
【0059】
ステップ(g)の前に、炭素源は、加熱され得る。ステップ(g)の前に、炭素源は、赤外線、可視光線、紫外線、X線、高周波またはマイクロ波エネルギー源による放射熱伝達にさらされ得る。
【0060】
ステップ(g)において、炭素源は、線形、軸方向、渦状、らせん状、層状または乱流の流路に導入(例えば、注入)され得る。
【0061】
ステップ(g)において、炭素源は、軸方向または半径方向に、温度制御されたフロースルー反応器に導入され得る。炭素源は、プローブまたはインジェクターを介して軸方向に導入され得る。炭素源は、複数の場所に導入され得る。
【0062】
炭素源は、必要に応じて置換および/または必要に応じてヒドロキシル化された芳香族または脂肪族、非環式または環状炭化水素(例えば、アルキン、アルカンまたはアルケン)であり得、これは、必要に応じて、1つ以上のヘテロ原子(例えば、酸素)によって中断される。好ましくは、必要に応じてハロゲン化されたC1-6-炭化水素(例えば、メタン、プロパン、エチレン、アセチレンまたはテトラクロロエチレン)、必要に応じて一置換、二置換または三置換ベンゼン誘導体(例えば、トルエン)またはC1-6-アルコール(例えば、エタノール)である。
【0063】
好ましくは、炭素源は、必要に応じて(しかし好ましくは)、必要に応じて置換および/または必要に応じてヒドロキシル化された芳香族または脂肪族、非環式または環状炭化水素(例えば、アルキン、アルカンまたはアルケン)の存在下でのメタンであり、これは、任意で1つ以上のヘテロ原子(例えば、酸素)によって中断される。
【0064】
炭素源は、メタン、エチレンまたはアセチレンなどのC1-6-炭化水素であり得る。
【0065】
炭素源は、エタノールまたはブタノールなどのアルコールであり得る。
【0066】
炭素源は、ベンゼンまたはトルエンなどの芳香族炭化水素であり得る。
【0067】
好ましい実施形態では、炭素源は、場合によってプロパンまたはアセチレンの存在下でのメタンである。
【0068】
炭素源の流量は、0.5~30000sccm(例えば、2000sccm)の範囲であり得る。
【0069】
通常、ステップ(g)では、炭素源にヘリウム、水素、窒素、アルゴンなどのキャリアガスを導入する。
【0070】
温度制御されたフロースルー反応器および/または温度制御されたフロースルー炉は、円筒形または別の形状であり得る。温度制御されたフロースルー反応器および/または温度制御されたフロースルー炉は、実質的に垂直または水平であり得る。
【0071】
温度制御されたフロースルー反応器および/または温度制御されたフロースルー炉の壁は、水、液体窒素または液体ヘリウムなどの冷却流体への曝露によって選択的に冷却され得る。
【0072】
温度制御されたフロースルー反応器および/または温度制御されたフロースルー炉は、軸方向の温度勾配を提供するように適合され得る。軸方向の温度勾配は、不均一であり得る(例えば、階段状)。温度制御されたフロースルー反応器および/または温度制御されたフロースルー炉の温度は、抵抗加熱、プラズマまたはレーザーによって制御され得る。温度制御されたフロースルー反応器および/または温度制御されたフロースルー炉の温度プロファイルは、実質的に放物線状であり得る。
【0073】
温度制御されたフロースルー反応器および/または温度制御されたフロースルー炉は、(例えば、注入ノズル、ランス、プローブまたはマルチオリフィシャルインジェクター(例:シャワーヘッドインジェクター)によって)反応物を導入するように適合され得る。
【0074】
さらなる態様を見ると、本発明は、SWCNTを備える炭素材料を製造するためのアセンブリを提供し、ここで、アセンブリは、
(A)キャリアガス中に浮遊した耐熱金属材料のエアロゾル流を生成するためのエアロゾル化デバイスと、
(B)エアロゾル化デバイスに動作可能に接続されエアロゾル化デバイスから下流にある、温度制御されたフロースルー炉であって、温度制御されたフロースルー炉は、使用中、耐熱金属材料の流を受け取り、ナノ粒子耐熱金属物質の流を排出する、温度制御されたフロースルー炉と、
(C)温度制御されたフロースルー炉に動作可能に接続され温度制御されたフロースルー炉の下流にある、粒子サイズ分級器であって、粒子サイズ分級器は、使用中、粒子サイズの選択的分布に従って、ナノ粒子耐熱金属物質の離散流を分離する、粒子サイズ分級器と、
(D)粒子サイズ分級器に動作可能に接続され粒子サイズ分級器の下流にある、温度制御された反応器であって、ここで、温度制御された反応器は、使用中、ナノ粒子耐熱金属物質の離散流、必要に応じた還元剤の流および炭素源の流を受け取り、それによってSWCNTを備える炭素材料を生成する、温度制御された反応器と、
を備える。
【0075】
本発明のこの態様では、ステップおよび特徴は、類似のステップおよび特徴について前述したとおりであり得る。
【0076】
さらに別の態様を見ると、本発明は、SWCNTを備える炭素材料の製造のためのプロセスを提供し、このプロセスは、
(1)キャリアガス中に浮遊した耐熱金属材料の流を生成することと、
(2)耐熱金属材料の流を温度制御されたフロースルー炉に導入することと、
(3)耐熱金属材料の流を耐熱金属物質の流を生成するのに十分な温度に供することであって、ここで、耐熱金属物質の流は、耐熱金属物質を蒸発させるのに十分な第1の温度ゾーンと第1の温度ゾーンの下流の第2の温度ゾーンとに曝露され、ここで、前記第2の温度ゾーンは、前記耐熱金属物質を再核化してナノ粒子の耐熱金属物質の流を生成するのに十分である、前記耐熱金属材料の前記流を耐熱金属物質の流を生成するのに十分な温度に供することと、
(4)前記ナノ粒子耐熱金属物質の前記流れから、ナノ粒子サイズの選択的分布を示す前記ナノ粒子耐熱金属物質の離散流を分離することと、
(5)必要に応じた還元剤および前記ナノ粒子耐熱金属物質を、ナノ粒子耐熱金属を生成するのに十分な第3の温度ゾーンに曝露することと、
(6)炭素源と前記ナノ粒子耐熱金属を、SWCNTを備える前記炭素材料を製造するのに十分な第4の温度ゾーンに曝露することと、
を含み、
ここで、本プロセスは、ステップ(4)の後に前記ナノ粒子耐熱金属物質を基板上に堆積させるか、またはステップ(5)の後に前記ナノ粒子耐熱金属を基板上に堆積させることのいずれかをさらに含む。
【0077】
本発明のこの態様では、ステップおよび特徴は、類似のステップおよび特徴について前述したとおりであり得る。
【0078】
(A)キャリアガス中に浮遊した耐熱金属材料のエアロゾル流を生成するためのエアロゾル化デバイスと、
(B)前記エアロゾル化デバイスに動作可能に接続されエアロゾル化デバイスの下流にある、温度制御されたフロースルー炉であって、前記温度制御されたフロースルー炉は、使用中、前記耐熱金属材料の前記流を受け取り、ナノ粒子耐熱金属物質の流を排出する、温度制御されたフロースルー炉と、
(C)前記温度制御されたフロースルー炉に動作可能に接続され温度制御されたフロースルー炉の下流にある、粒子サイズ分級器であって、前記粒子サイズ分級器は、使用中、粒子サイズの選択的分布に従って、前記ナノ粒子耐熱金属物質の離散流を分離する、粒子サイズ分級器と、
(D)必要に応じた還元剤および前記ナノ粒子耐熱金属物質をナノ粒子耐熱金属を生成するのに十分な温度に曝露するための第1のデバイスと、
(E)炭素源および前記ナノ粒子耐熱金属をSWCNTを備える前記炭素材料を生成するのに十分な温度に曝露するための第2のデバイスと、を備え、
ここで、前記装置は、さらに、前記粒子サイズ分級器に作動可能に接続され粒子サイズ分級器の下流にあり、使用中、前記ナノ粒子耐熱金属物質を基板上に堆積させる集塵器か、または前記第1のデバイスに作動可能に接続され第1のデバイスの下流にあり、使用中、前記ナノ粒子の耐熱金属を基板上に堆積させる集塵器、のいずれかである集塵器を備える。
【0079】
本発明のこの態様では、ステップおよび特徴は、類似のステップおよび特徴について前述したとおりであり得る。
【0080】
好ましい実施形態では、集塵器は、電気集塵器である。
【0081】
さらに別の態様を見ると、本発明は、SWCNTを備える炭素材料を提供し、ここで、(2n±2,n)、(2n±1,n)および(2n,n)からなる群から選択されるカイラル指数の1つ以上の対は、SWCNTの大部分によって示される。
【0082】
通常、カイラル指数は、ラジアルブリージングモード領域の炭素材料に対して実行されるラマン分光法によって決定される。
【0083】
好ましくは、SWCNTを備える炭素材料において、SWCNTの大部分によって示されるカイラル指数の対は(2n,n)である。
【0084】
好ましくは、nは4~7の範囲の整数であり、特に好ましくは5~7の範囲の整数である。
【0085】
カイラル指数の対は、(12,6)、(10,5)、(8,4)、(12,5)または(9,4)であり得る。
【0086】
好ましくは、カイラル指数の対は、(12,6)および/または(10,5)である。
【0087】
好ましくは、カイラル指数の対は、(12,6)である。
【0088】
好ましくは、(2n±2,n)、(2n±1,n)および(2n,n)からなる群から選択される1つ以上のカイラル指数の対は、50wt%以上のSWCNT、特に好ましくは60wt%以上のSWCNT、より好ましくは75wt%以上のSWCNT、さらにより好ましくは85wt%以上のSWCNT、特に好ましくは90wt%以上のSWCNTによって示される。
【0089】
さらに別の態様を見ると、本発明は、SWCNTを備える炭素材料を提供し、ここで、12~26°(好ましくは13~24°、特に好ましくは16~22°、より好ましくは17~21°、さらにより好ましくは18~20°)の範囲のカイラル角は、SWCNTの大部分によって示される。
【0090】
好ましくは、12~26°の範囲のカイラル角は、50wt%以上のSWCNT、特に好ましくは60wt%以上のSWCNT、より好ましくは75wt%以上のSWCNT、さらにより好ましくは85wt%以上のSWCNT、特に好ましくは90wt%以上のSWCNTによって示される。
【0091】
さらなる態様を見ると、本発明は、SWCNTを備える炭素材料を提供し、SWCNTの平均カイラル角は18~20°の範囲にある。
【0092】
ここで、本発明は、以下の添付の図を参照して、非限定的な意図で説明される。
【図面の簡単な説明】
【0093】
図1】連続的ナノ粒子の生成および収集のためのエアロゾル生成およびサイズ選択機器構成の概略図、ならびに付随する本発明の方法の様々な段階で取られた移動度相当径のプロットである。
図2図2aは、SiO/Si基板上に均一に堆積したWoNPのAFM画像である。約1.2nmを含む平均径の狭いサイズ分布を有する粒子集団を示す。図2bは、SiO/Si基板上に均一に堆積したWoNPのAFM画像である。約2.0nm含む平均径の狭いサイズ分布を有する粒子集団を示す。図2cは、SiO/Si基板上に均一に堆積したWoNPのAFM画像である。約3.2nmを含む平均径の狭いサイズ分布を有する粒子集団を示す。図2dは、TEMおよびAFMによって測定された直径約7nmに対応する移動度相当径10nmを有する多結晶MooNPのHRTEM画像である。mNPの直径は、oNPの直径の約60%である。図2eは、還元および再構築後の単結晶MomNPのHRTEM画像である。mNPの直径は、oNPの直径の約60%である。図2fは、DMAを使用して規定されたいくつかの移動度相当径の粒子生成およびCNT成長の段階を経たMo NPの観測された直径の変化を示す。黒い矢印は、図2dと2eとの間で直径が約60%減少したことを示す。成長段階の間、MoCは、CNTの直径を強く決定するmNPのサイズを保持する。
図3図3aは、マークされたSiO2/Si基板上で(a)低面積密度NPから成長したSWCNTのSEM画像を示す。図3bは、マークされたSiO2/Si基板上で(b)高面積密度NPから成長したSWCNTのSEM画像を示す。図3cは、成長段階でのW、MoおよびRe触媒のXRDプロファイルを示す(全てのナノ粒子はアルミナフィルター上に支持されていた)。図3dは、2.4nmのMo oNPで成長したSWCNTのTEM画像を示す。図3eは、4.3nmのW oNPで成長したSWCNTのTEM画像を示す。図3fは、6.7nmのMo oNPで成長したSWCNTのTEM画像を示す。より多くの欠陥を伴う壁に囲まれたCNTはほとんど生成されなかった。
図4図4aは、W触媒(oNP直径約2.5nm、mNP直径約1.5nm)から成長したSWCNTのラマンマッピング結果である。RBM領域のラマンスペクトルは、532nmのレーザーで検出され、全てのベースラインが差し引かれる。図4bは、W触媒(oNP直径約2.5nm、mNP直径約1.5nm)から成長したSWCNTのラマンマッピング結果である。RBM領域のラマンスペクトルは、638nmのレーザーで検出され、全てのベースラインが差し引かれる。図4cは、W触媒(oNP直径約2.5nm、mNP直径約1.5nm)から成長したSWCNTのラマンマッピング結果である。RBM領域のラマンスペクトルは、785nmのレーザーで検出され、全てのベースラインが差し引かれる。図4dは、正規化スケールを有する532nmレーザーからの質量存在量の統計である。図4eは、。正規化スケールを有する638nmレーザーからの質量存在量の統計である。図4fは、正規化スケールを有する785nmレーザーからの質量存在量の統計である。図4gは、0.65~2nmの直径範囲のグラフェンマップに表示された質量存在量の統計である。図4hは、電子回折同定から得られる要約された存在量のグラフェンマップである。図4iは、(12,5)チューブの電子回折パターンである(左:実験、右:シミュレーション)。
図5図5aは、フローティング触媒CVD(FCCVD)の機器構成と概略図である。図5bは、サイズを選択せずにFCCVDから成長させたCNTの対応する予備結果である。図5cは、サイズを選択せずにFCCVDから成長させたCNTの対応する予備結果である。図5dは、サイズを選択せずにFCCVDから成長させたCNTの対応する予備結果である。
図6図6は、SiO/Si基板上に直接成長したSWCNTアレイの修正された片浦プロットの一部である。532nm、638nmおよび785nmのレーザー共鳴領域は破線でマークされ、広幅化係数は各々100meVに設定される。
図7図7aは、噴霧溶液の濃度と平均径(GMD)との関係を示す。図7bは、噴霧溶液の濃度と標準偏差(GSD)との関係を示す。図7cは、噴霧溶液の濃度と図1の位置IVで測定されたoNPの濃度との関係を示す。
図8図8aは、Wナノ粒子のXRDパターンを示す。図8bは、Moナノ粒子のXRDパターンを示す。図8cは、Reナノ粒子のXRDパターンを示す。図8dは、炭素源の存在下で形成されたReナノ粒子のXRDパターンを示す。
図9a】SWCNTがサファイア基板上に堆積したNPから成長したときに原子ステップからのガイダンスによって整列したアレイを形成したことを示すTEM画像である。挿入図は、(a)のFFTである。
図9b】SWCNTが石英基板上に堆積したNPから成長したときに原子ステップからのガイダンスによって整列したアレイを形成したことを示すTEM画像である。
図10図10は、DMAカラムの概略図である。
図11図11aは、532nmのレーザーによって検出された約2.8nmのW oNPから成長したSWCNTのRBM領域でのラマンマッピングからの質量存在量統計を示す。図11bは、638nmのレーザーによって検出された約2.8nmのW oNPから成長したSWCNTのRBM領域でのラマンマッピングからの質量存在量統計を示す。図11cは、785nmのレーザーによって検出された約2.8nmのW oNPから成長したSWCNTのRBM領域でのラマンマッピングからの質量存在量統計を示す。図11dは、約2.8nmのW oNPから成長したSWCNTのRBM領域でのラマンマッピングからの質量存在量統計を示す。結果は正規化スケールであり、直径範囲0.65~2nmのグラフェンマップに表示される。図11eは、532nmのレーザーによって検出された約2.5nmのMo oNPから成長したSWCNTのRBM領域でのラマンマッピングからの質量存在量統計を示す。図11fは,638nmのレーザーによって検出された約2.5nmのMo oNPから成長したSWCNTのRBM領域でのラマンマッピングからの質量存在量統計を示す。図11gは、785nmのレーザーによって検出された約2.5nmのMo oNPから成長したSWCNTのRBM領域でのラマンマッピングからの質量存在量統計を示す。図11hは、約2.5nmのMo oNPから成長したSWCNTのRBM領域でのラマンマッピングからの質量存在量統計を示す。結果は正規化スケールであり、直径範囲0.65~2nmのグラフェンマップに表示される。図11iは、532nmのレーザーによって検出された約3.0nmのRe oNPから成長したSWCNTのRBM領域でのラマンマッピングからの質量存在量統計を示す。図11jは、638nmのレーザーによって検出された約3.0nmのRe oNPから成長したSWCNTのRBM領域でのラマンマッピングからの質量存在量統計を示す。図11kは、785nmのレーザーによって検出された約3.0nmのRe oNPから成長したSWCNTのRBM領域でのラマンマッピングからの質量存在量統計を示す。図11lは、(i-l)約3.0nmのRe oNPから成長したSWCNTのRBM領域でのラマンマッピングからの質量存在量統計を示す。結果は正規化スケールであり、直径範囲0.65~2nmのグラフェンマップに表示される。
図12図12aは、Mo mNP(約1.5nm)からのSWCNTのラマンマッピングの結果を示す。図12bは、Mo mNP(約1.5nm)からのSWCNTのラマンマッピングの結果を示す。図12cは、Mo mNP(約1.5nm)からのSWCNTのラマンマッピングの結果を示す。図12dは、Mo mNP(約1.5nm)からのSWCNTの低炭素成長(C/H約6)の存在量統計を示す。図12eは、Mo mNP(約1.5nm)からのSWCNTの低炭素成長(C/H約6)の存在量統計を示す。 図12fは、Mo mNP(約1.5nm)からのSWCNTの低炭素成長(C/H約6)の存在量統計を示す。
図13a】カーボンブラインド触媒およびW mNP(約2.6nm)からの短いCNTのHRTEM画像を示す。
図13b】カーボンブラインド触媒およびW mNP(約2.6nm)からの短いCNTのHRTEM画像を示す。
図13c】カーボンブラインド触媒およびW mNP(約2.6nm)からの短いCNTのHRTEM画像を示す。
図13d】カーボンブラインド触媒およびMo mNP(約4.5nm)からの短いCNTのHRTEM画像を示す。
図13e】カーボンブラインド触媒およびMo mNP(約4.5nm)からの短いCNTのHRTEM画像を示す。
図13f】カーボンブラインド触媒およびMo mNP(約4.5nm)からの短いCNTのHRTEM画像を示す。
図14図14aは、さまざまな係数に基づく存在量の定性的な計算を示す。核生成熱力学係数のみを考慮した液体触媒からのSWCNTの質量存在量(SWCNTはアームチェア型領域の近くに集中する)の定性的な計算を示す。図14bは、らせん転位理論に基づく成長速度係数のみを考慮した液体触媒からのSWCNTの質量存在量(SWCNTの成長速度はカイラル角に比例する)の定性的な計算を示す。図14cは、図14aおよびbの両方の係数を考慮した液体触媒からのSWCNTの質量存在量(好ましい領域はアームチェア型カイラリティの周りであるが、実験では、存在量は主に図14bの成長速度によって決定され、結果として大きいカイラル角を有するより広いカイラリティ分布となることが示される)の定性的な計算を示す。図14dは、報告された界面エネルギー値に基づく核生成熱力学係数のみを考慮した固体触媒からのSWCNTの質量存在量(SWCNTはジグザグ型領域の近くに集中する)の定性的な計算を示す。図14eは、成長速度論のみを考慮した固体触媒からのSWCNTの質量存在量(成長速度は約19.1°のカイラル角で最大に達する)の定性的な計算を示す。図14fは、図14dおよびeの両方の係数を考慮した、固体触媒からのSWCNTの質量存在量(同じ界面エネルギー値を有するPenev, E. S., Bets, K. V., Gupta, N. & Yakobson, B. I. Transient Kinetic Selectivity in Nanotubes Growth on Solid Co-W Catalyst. Nano Letters 18, 5288-5293,(2018)によって報告されているように、カイラリティは好ましくはジグザグ型に近い)の定性的な計算を示す。図14gは、触媒からのSWCNTの直径サイズのガイダンスを考慮した、固体触媒からのSWCNTの質量存在量(分布はより集中する)の定性的な計算を示す。図2aに示すように、平均径が1.2nm、標準偏差が0.3nmの正規分布を使用した。図14hは、カイラリティ依存の成長時間を考慮した固体触媒からのSWCNTの質量存在量(炭素富化環境でSWCNTを成長させることによって、カイラリティ依存の成長時間係数は、存在量の(2n,n)付近への集中につながり、しきい値は、約1/2の触媒毒に設定される)の定性的な計算を示す。図14iは、約1/4の被毒触媒を有する、分布が狭く、触媒のサイズが薄い(0.8±0.2nm)固体触媒からのSWCNTの質量存在量((8,4)、(10,3)、(9,4)および(11,3)などの半導体カイラリティは、濃縮されると予測される)の定性的な計算を示す。(モデリングは、直径0.65~2nm、T=850℃の全てのカイラリティに対して行われた。液体触媒の場合、AまたはZタイプのエッジ原子のCNT触媒相互作用エネルギー値は、それぞれ0.09eV/atomおよび0.345eV/atomであり、これは、分離されたA|Z界面を有するCo(111)触媒について報告される(Bets, K. V., Penev, E. S. & Yakobson, B. I. Janus Segregation at the Carbon Nanotube-Catalyst Interface. ACS Nano, (2019)を参照)。固体触媒の場合、EInt は、0.147eV/atom、EInt は、0.144eV/atomであり、それぞれ、分離されたA|Z界面を有する(003)Wスラブを備えたCo固体触媒について報告される(Betsら[上記]を参照)。
【実施例
【0094】
この実施例は、SWCNTカイラリティ制御のためのサイズ選択的高融点触媒の連続気相生成が存在する本発明の実施形態に関する。タングステン(W)、モリブデン(Mo)およびレニウム(Re)の3つの耐熱金属を調査した。図1は、エアロゾルの生成および連続的ナノ粒子の生成と収集とのためのサイズ選択機器構成ならびにさまざまな段階で取得された移動度相当径の付随するプロットの概略図である。
【0095】
(NH1240(Sigma-Aldrich463922)、(NHMo24(Sigma-Aldrich09878)およびNHReO(Sigma-Aldrich316954)の各々の高度に希釈された金属塩水溶液を、金属原子について0.3mMの濃度で調整した。高度に希釈された水溶液を、TSI Inc.9302噴霧器を介して3.6slpmの流量を使用して、窒素中に浮遊した液滴へと噴霧した。得られた微小液滴ミスト(図1の位置I)には、約1.5μmの直径を有する溶液滴が含まれた。ミストを乾燥剤乾燥器に通し、そこで水を除去して、沈殿した金属塩ナノ粒子(sNP)をエアロゾルとしてキャリアガスに浮遊させたままにした(図1の位置II)。次に、金属sNPを、950℃に設定した炉内のアルミナチューブに送り、そこで分解および焼成され、金属酸化物を形成した。耐熱金属の酸化物は、高い飽和蒸気圧を有するため、金属酸化物は、炉の高温ゾーン(場所III)で完全に蒸発した。炉を出て冷却されると、金属酸化物蒸気は、再核化して金属酸化物ナノ粒子(oNP)となった(図1の位置IV)。高度に希釈された塩溶液を使用することによって、金属sNPの入力量を簡単かつ正確に制御し、位置IVでの金属oNPのサイズを正確に制御することが可能になった。
【0096】
収集用のほぼ単分散の金属oNPの集団を生成するために、炉からの多分散金属oNPを、最初に放射性電荷中和機(TSI3077)を使用して充填し、次に、電荷と抗力(直径)との比に基づいて非常に狭い範囲の粒子を選択したDMA(TSI3085)を介して送った。DMAサイズの選択中、エアロゾル流量を1.5lpmに設定し、DMAのシース流を最大20lpmに設定し、最も狭い粒子サイズ範囲を生成した。
【0097】
基板ベースの成長または特性評価のためにナノ粒子を収集するため、DMAで選別されたナノ粒子(帯電したまま)を電気集塵器に送り、そこでナノ粒子を電界(約50V/mm)で偏向させ、ターゲット基板に堆積させた(位置V)。基板上のoNPの面積密度(n)は、エアロゾル濃度(c)、収集効率(δ)、エアロゾル流量(v)および基板のサイズ(A)を考慮して、堆積時間(t)を変更することで容易に調整され得る。
【0098】
【数1】
【0099】
集塵器の前後のNPの濃度を、凝縮粒子カウンター(CPC、TSI 3756)によって観察した。
【0100】
SWCNTの基板ベースのCVD成長は、Yangら[上記]およびZhangeら[上記]に概説されている方法に従った。具体的には、H中のさまざまな基板堆積oNPを温度プログラムされた還元プロセスに供し、固体金属ナノ粒子(mNP)を得た。次に、炭素供給原料としてのエタノール蒸気を、アルゴンキャリアガスにおいて反応ゾーンに導入した。成長環境の炭素:水素(C/H)比を調整するために、H流量を変更した。設定した成長時間の後、炭素富化環境をHによって排出し、次に室温まで冷却した。
【0101】
(粒子サイズ選択のメカニズム)
DMAは、上限約1μmから下限約1.7nmの間の特定の粒子サイズを選択し得る。具体的には、DMAは電荷と空力抗力との比によって粒子を分級する。粒子の帯電状態が既知である場合は、抗力または粒子の「移動度」および移動度相当径(問題の粒子と同じ空力抵抗を示す球の直径)を決定し得る。したがって、ほぼ球形の粒子の場合、移動度相当径は、物理的直径に近くなる。移動度は、次の式を使用して直径に関連付けられる。
【0102】
【数2】
【0103】
ここで、Bは移動度(機械的移動度とも呼ばれる)、μは気体粘度、dは移動度相当径、Cはカニンガムスリップ補正係数(遷移中の粒子とガスとの相互作用の変化を補正する経験的関係、または連続レジームではなく自由分子流レジーム)である。カニンガムスリップ補正は、次のように決定され得る。
【0104】
【数3】
【0105】
ここで、λはガス分子の平均自由経路である。このことから、電荷と抗力との比または「電気移動度」(Z)は、機械的移動度と粒子の電荷との積から計算され得る。
【0106】
【数4】
【0107】
ここで、nは電荷(電子)の数、eは基本電荷である。
【0108】
DMAはまず、エアロゾルを、粒子サンプルにWeidensolar電荷分布を与える電荷中和機に通すことによって、電気移動度によって選択する(Wiedensohler, A. An approximation of the bipolar charge distribution for particles in the submicron size range. Journal of Aerosol Science 19, 387-389, (1988)を参照)。分布は、全体的にほぼ中性であるが、任意の数の電荷を有する粒子を含有し、粒子サイズの関数でもある。非常に小さい粒子の場合、大部分は中性(約98%)であり、帯電しているほとんど全ての粒子は単一の電子を獲得または喪失するが、ごくわずかな数は、少なくとも2つの電荷を有する。次に、粒子は、「エアロゾル流」Q中のDMAカラムの2つの同心円筒間の環状領域(図10を参照)に送られる。電圧は、内側のシリンダーに印加され、逆に帯電した粒子は、このシリンダーに向かって半径方向に移動すると同時に、シースガス流Qshにおいてカラムを軸方向に下に移動する。電気移動度が設定値よりも高い粒子は、シリンダーに衝撃を与え、そこに堆積する。移動度の低い粒子は、バルクガス流とともに排出され、濾過される。設定値と一致する電気移動度を有する粒子は、内筒の基部にある小さなポートを通過し、サンプルフローQを介してDMAを離れて「分級」される。
【0109】
図10のDMAカラムの概略図は、次のように左から右に識別された第1から第5の粒子を示す。第1の粒子の移動度は、高すぎるため、これは、内筒に衝突する。第2の粒子は、所定の電気移動度を有し、分級される。第3の粒子の移動度は、低すぎるため、シース流中でカラムから出る。第4の粒子は中性であり、電界の影響を受けないため、シース流中にも存在する。第5の粒子は、不適切な電荷極性を有し、外筒に向かって反発する。
【0110】
DMAの性能は、触媒粒子のサイズ範囲、したがってCNTの直径範囲に影響する。DMAは、三角形伝達関数に従って粒子を分級する。つまり、理論的には、指定されたサイズの粒子の100%がDMAを介して透過され、これよりも大きい直径と小さい直径の粒子は透過されるが、それらの移動度相当径が設定値から外れるにつれて、効率が低下する。実際には、粒子の拡散によって、シリンダー壁への粒子の損失が発生し、伝達関数がわずかに広がることとなる。伝達関数によって分級される最小電気移動度(最大移動度相当径)は、次の関係を使用して決定され得る。
【0111】
【数5】
【0112】
ここで、rとrは、それぞれ内側および外側のシリンダー半径、Vは、シリンダー間の電圧、Lは、カラムの有効長である。同様に、DMA伝達関数によって分級される最大電気移動度(最小移動度相当径)は、次に等しい。
【0113】
【数6】
【0114】
この例では、Qは、Qに等しいため、伝達関数のピーク電気移動度(Z)は、次に等しい。
【0115】
【数7】
【0116】
シース流が一定に保たれる場合、シリンダー間の電圧が、分級された電気移動度を決定する。さらに、ガス流量は、伝達関数の幅(つまり、分級された粒子のサイズ範囲)を決定する。具体的には、幅は、DMA内のシースガスとDMAに出入りするサンプル流との比によって決まる。シース流量とサンプル流量との比は、分解能として知られており、伝達関数の正規化された半値全幅に相当する。したがって、DMA分解能を最大化して、最も狭い範囲の触媒粒子を生成することが重要である。三角形分布の場合、正規化された半値全幅は、透過電気移動度の最小と最大との差の半分をピーク電気移動度で割ったものとなる。
【0117】
【数8】
【0118】
上記のように、DMAシース流がエアロゾル/サンプル流と比較して大きいとき、粒子の最も狭いサイズ範囲が分級される。幸いなことに、電気移動度は、シース流量に比例する。つまり、シース流量が高いとき、最大の電気移動度、したがって最小の移動度相当径は、分級され得る。したがって、サイズ範囲と伝達関数の分解能との両方が高いシース流で有利であるため、この値を最大化することが重要である。この例では、エアロゾル流量は、1.5lpmで、シースの流量は、20lpmに設定された。これは、標準の分解能である10よりも大きい13.3の分解能に対応する。
【0119】
帯電した粒子はDMAを使用して確実に分級され得るが、帯電していない小さな粒子が、分級されるのにも十分な速さでブラウン運動を介してDMAを通って移動可能であるかどうかを判断するべきである。この現象は、エアロゾルがDMA中において費やす時間の長さを考慮して、粒子が拡散できるおおよその距離を計算することによって確認され得る。一次元の二乗平均平方根拡散距離(xrms)は、次のように決定され得る。
【0120】
【数9】
【0121】
ここで、Dは、粒子の拡散定数、tは拡散時間である。拡散定数は、次に等しい。
【0122】
【数10】
【0123】
ここで、kはボルツマン定数、Tは温度、Bは上記で定義した機械的移動度である。拡散時間は、DMAの環状領域内の速度を計算し、この値を有効なDMA長と組み合わせることによって決定される。DMAの拡散時間(t)は、次の通りである。
【0124】
【数11】
【0125】
ここで、LはDMAの長さ、Vはガス速度、Qは体積流量、AはDMA内の環状断面、rおよびrはそれぞれDMAカラムの外側および内側の半径である。
【0126】
モデル3085DMAの形状、1.5lpmのエアロゾル流、20lpmのシース流およびキャリアガスとして標準条件の空気を使用すると、1nmの粒子は、1.13mm拡散するはずである。ほぼ10mmの環状ギャップ距離と比較すると、特に、この計算が1次元であり、実際には、粒子のブラウン運動の一部もまた、DMAの軸方向および円周方向でありうることを考慮すると、この拡散速度は、中性NPをターゲット基板に移動させることが可能であるほどには十分ではない。
【0127】
(特性評価)
粒子サイズ分布を、DMAとCPCとの組み合わせからなる走査移動度粒子選別分光計(SMPS)を使用して分析した。DMAは、その粒子サイズ範囲をスキャンし、CPCは、各サイズビンの対応する数の濃度(具体的には粒子の移動度相当径)を記録する。図1の縦軸dN/dlogdは、ビン幅によって正規化されたそのビンの数濃度を表す。測定データを、エアロゾル科学の標準的な手法である対数正規分布を使用して適合した。これらは、サンプリングされたエアロゾルの幾何平均径(GMD、ピーク位置)、幾何標準偏差(GSD、幅)および総個数濃度(Ntot、分布下の面積)を示す。
【0128】
AFMを、Veeco DimensionProAFMでPeakforceモードにおいて実行した。
【0129】
HRTEMを、FEI Talos F200X TEM(NPの場合は200kV、CNTの場合は80kV)で実行し、oNPをSiグリッドに収集した。還元およびCNT成長段階を、特性評価の前にSiグリッド上で、その場で実施した。
【0130】
浮遊CNTの電子回折(ED)を、80kVで動作するSTEMナノビームモードでFEITecnai F20FEGTEMで実行した。成長したCNTを有するSiグリッドに時々穴を開けて、基板から伸びる浮遊CNTを得た。
【0131】
XRDの特性評価では、oNPをAnodiscアルミニウム酸化物メンブレンフィルター(AAO、Whatman FIL3010)で真空フィルター処理した。oNPのサイズは、塩水溶液の濃度によって制御および制約された。AAO上のoNPは、H中で減少し、結果としてmNPが生成され、通常のCNT成長に使用された。XRDの特性評価を、各段階で実行した。
【0132】
ラマンマッピングを、532、638および785nmのレーザーを使用してRBM範囲(70~350 cm-1)で実行した。詳細を表1に示す。レーザースポットラスタースキャンされたランダム配向CNTは、位置マークのあるSiO/Si基板上に成長した。ステップサイズを、x方向とy方向との両方で3μmに設定した。RBMラマンマップにおける各スペクトルのピークを、バックグラウンド除去後に識別し、片浦プロットに基づいてカイラリティと関連付けた(Kataura, H. et al. Optical properties of single-wall carbon nanotubes. Synthetic Metals 103, 2555-2558, doi:https://doi.org/10.1016/S0379-6779(98)00278-1 (1999)を参照)。さまざまなレーザーによって得られた存在量の統計を、ピクセル数とピクセルサイズとによって正規化した。
【0133】
【表1】
【0134】
片浦プロットに基づいて(n,m)を決定するために、EiiとωRBM-dtは、CNTが配置される環境の影響を強く受けることは既知である。適切な環境修正で片浦プロットを使用することは、信頼できる識別を得るために不可欠である。したがって、図6に示すように修正された片浦プロットを使用した。全てのデータについて、出発点は、電子回折およびレイリー散乱に基づいて、浮遊単一分離SWCNTから開発されたナノチューブの光学遷移の実験データであった(Liu K. H. et al. An atlas of carbon nanotube optical transitions. Nat. Nanotechnol. 7, 325-329, doi:10.1038/Nnano.2012.52 (2012)を参照)。SWCNTとシリカ基板との間の環境相互作用のため、Eiiを、40meVのレッドシフトで変更した。共鳴ウィンドウ(広幅化係数)を100meVに設定した(Saito, R., Hofmann, M., Dresselhaus, G., Jorio, A. & Dresselhaus, M. S. Raman spectroscopy of graphene and carbon nanotubes. Adv. Phys. 60, 413-550, doi:10.1080/00018732.2011.582251 (2011)を参照)。一部の金属製の薄いSWCNTは、励起子-フォノン結合のために、より大きな値を有し得(Doorn, S. K., Araujo, P. T., Hata, K. & Jorio, A. Excitons and exciton-phonon coupling in metallic single-walled carbon nanotubes: Resonance Raman spectroscopy. Phys. Rev. B 78, 165408, doi:10.1103/PhysRevB.78.165408 (2008)を参照)、これは、(n,m)の識別中にも考慮された。ωRBM-dtの関係については、SiO/Si基板上で成長したSWNTについて報告されたωRBM=235.9/d+5.5に従った(Zhang, D. et al. (n,m) Assignments and quantification for single-walled carbon nanotubes on SiO2/Si substrates by resonant Raman spectroscopy. Nanoscale 7, 10719-10727, doi:10.1039/C5NR01076D (2015)を参照)。
【0135】
図6に示すように、RBMが155cm-1(対応する直径は約1.76nm)未満に位置するカイラリティは密に分布している。ラマン分解能を考慮すると、明確な識別は不可能となる。したがって、直径の小さいSWCNTのカイラリティの存在量を正確に計算することのみが可能であった。大きい径のピークは、カウントされたが、特定のカイラリティには割り当てられなかった。
【0136】
同じレーザースポットの下でのカイラリティおよび複数の同じカイラリティチューブの明白な割合を説明するために、0.81nm(295cm-1)~1.53nm(160cm-1)の範囲内の(n,m)SWNTの割合を定量化する、報告された方法を続いて行った(Zhang[上記]を参照)。
【0137】
(結果)
図1は、位置II、IVおよびVでのReのsNP、oNPおよびサイズ選別されたoNPのエアロゾルサイズ分布を示す。ナノ粒子サイズ分布のピーク位置、ピーク幅(高さに依存しない)および総個数濃度は、それぞれ幾何平均径(GMD)、幾何標準偏差(GSD)およびNtotによって記述される。
【0138】
溶液滴(図1の位置II)を乾燥させた後、sNPは、数十ナノメートルの移動度相当径および広い分布を有する。図1は、55nmのGMD、1.83のGSDを有するsNPを示す。この分布は、平衡状態で対数的に分布するエアロゾルサイズ分布が約1.4のGSDを有することを考慮すると、非常に広い。これらの粒子は明らかに大きすぎて、SWCNTの成長にとっては多分散である。炉内での気化と再核化とによって、(位置IVで示されるように)非常に小さな酸化物粒子が非常に高濃度で生成される。oNPは、サイズが1桁小さく(GMDは4.8nmである)、以前のsNPよりもほぼ2桁多くなっている。分布もまた狭く、1.38のGSDを有し、これは、平衡または「自己保存」サイズ分布に非常に近い値である。このGMDおよびGSDを考慮すると、分布の半値全幅は、3.7nmである。したがって、再核化後、oNPのサイズは、事前に制限される。oNPの主要なサイズはまた、噴霧溶液の濃度を変化させて事前に調整され得る(図7を参照)。
【0139】
位置IVのoNPのピークサイズは、位置IIのsNPよりもはるかに小さいが、分布は、依然として多分散である。さらに狭いサイズ範囲を得るために、DMAを、位置Vで使用し、出力分布を4.15nmの規定のGMDに設定した。結果として得られたGMDは、4.31nmであったため、SMPSスキャンは、この設定との優れた一致を示す。分布は、非常に狭く(ほぼ単分散)、わずか1.05のGSDを有した。1のGSDは、正確に1つのサイズ(完全に単分散)の粒子の無限に薄い分布を表す。
【0140】
DMAを通過した後、サイズ分布の半値全幅は、設定値の7.5%となるであろう。4.15nmの設定値の場合、これは0.31nmの非常に狭い半値全幅に対応する。実際には、分布はわずかに広がり、約0.52nmであった。分布の幅は中間点の設定に比例するため、小さいサイズを選択すると、対応する半値全幅も小さくなる。
【0141】
AFMとTEMとを使用して、NPのサイズ分布を正確に特性評価した。図2a-cに示すように、さまざまな狭いサイズ範囲の粒子は、電気集塵によってターゲット基板上に均一に堆積した。NPのサイズは、DMA設定値を変更することによって正確に調整され得(図2fを参照)、DMA設定値が小さいほど対応する分布が狭くなる。大小にかかわらず、SWCNTの成長に使用される堆積NPのサイズ分布は狭く、標準偏差(σ)は最大で0.6nmであった。この例で観察されたものと同じくらい狭い分布は、他の方法から達成することは困難であり、今日まで、他の全ての方法は、複雑な製造技術または特殊な高価な前駆体のいずれかに依存し、特定の基板組成に依存することが多いバッチプロセスである。この実施例における本発明の方法は、任意の基板上に直接堆積され得る、狭い分布を有するナノ粒子を連続的に生成することが可能である。
【0142】
収集の時点で、NPは、酸化された金属の形であった(図8に示されるXRDプロファイルから判定される)。HRTEM(図2dの挿入図を参照)から、oNPは、密に詰まった多結晶のように見えた。Hにおいて高温で還元した後、oNPは、単結晶元素mNPに再構築された(図2eを参照)。Moの図2fには、さまざまな段階でのサイズ分布のHRTEM結果が要約される。還元および再構築によって、mNPの直径は、収集されたままのoNPの直径の約60%に縮小された(図2fの黒い矢印)。炭素成長中、触媒粒子は、mNPと比較して直径の顕著な変化を示さなかった。mNPのサイズは、対応するCNTの直径と厳密に一致していた。
【0143】
XRDプロファイルを図3cおよび8に示す。oNPは、Hで減少し、mNPとなる。炭素源を導入することによって、mNPは、CNTの成長をサポートした。図3cおよび8は、成長プロセス中にWおよびMoがそれぞれWCおよびMoCを形成し、一方で、Reは、その元素状態を保持することを示す。MoCは、斜方晶系および空間群Pbcn(点群D2h)を有する。対照的に、WCおよびReは、それぞれ空間群P6m2(点群D3h)およびP6/mmc(点群D6h)を有する六角形の結晶システムを示す。WC、Mo2CおよびReは、非常に高い融点を有するため、成長中に固体状態が維持される。重要なことに、この機能によって、SWCNTのカイラリティを確実に制御する能力に関して、触媒が液体触媒を凌駕することが可能になる。還元および成長中の固体状態の維持はまた、オストワルト熟成が抑制されるため、液体触媒のサイズ選択と比較して、サイズ選択をより価値のあるものとする。図8dに関して、ReCのパターンは、Alの部分的なパターンとオーバーラップする。したがって、約46°のピークを有するRemのNPおよびRe触媒のプロファイルは正規化された。61°、33°、36°付近の2つのプロファイルのピークもまた、Alと一致するため、ReCの存在が除外される。
【0144】
XRDの特性評価中に、oNP(特にReのoNP)が環境から水蒸気を吸収して水和物または弱酸を形成するのを防ぐことは困難である。oNPにおけるナトリウムイオンは、不可避不純物である。しかしながら、触媒は、不純物の影響を受けなかった。アモルファスAAOは、還元および成長中に部分的に還元およびアニールされた。
【0145】
(SWCNTの成長および触媒の制約)
SWCNTの濃度は、典型的な成長パラメータを使用して、堆積したoNPの面積密度を変化させることによって制御された。これは、単に収集時間を変更することによって達成された。低面積密度の場合および高面積密度の場合をそれぞれ図3aおよびbに示す。触媒形成の気相の性質のため、粒子は、基板に依存しない。さまざまな基板は、SWCNTの成長のためのoNPを支持するために使用され得る。マークされたSiO/Si(図3aおよびb)では、ランダムSWCNTは、exsitu伝達プロセスなしで直接成長した。サファイアおよびSTカット石英基板からのステップガイダンスによって、整列したSWCNTアレイもまた、合成された(図9を参照)。
【0146】
図3d~fに示すように、SWCNTの直径は、mNPのサイズ、そして最終的には先行するoNP(図2f)の影響を強く受ける。所与の基板上で成長したほとんどのSWCNTは、同様の直径を示す。これらの結果は、得られるSWCNT構造に対する触媒サイズの主要な役割を再度確認する。約6.7nmのoNP(約4.5nmのmNP)では、数十マイクロメートルの長さの主要な生成物は、多数のキンクを伴う数個の壁のCNTであった(図3f)。約4.3nmのoNP(約2.6nmのmNP)では、約3nmの直径を有するより長く高品質のSWCNTが成長した(図3e)。約2.4nmのoNP(約1.4nmのmNP)では、約1.5nmの直径を有するSWCNTが支配的である(図3d)。これらの小さくて狭く分布したサイズのoNP(通常2.5nm未満、mNPは1.5nm未満)では、SWCNTの微細なカイラリティ制御が達成された。
【0147】
TEMから、CNTは、固体触媒からの接線方向の成長が液体触媒の場合のように再形成することなく、球形を維持した触媒を有する「ピーポッド」構造(図3eおよびfを参照)をもたらすことを示す。CNTが正常に成長したかどうかに関係なく、触媒が炭素の層によって完全に囲まれていることが頻繁に見られたことは注目に値する(図3e、f、および図13)。
【0148】
(固体触媒によるカイラリティの制約)
SWCNTのカイラリティ分布または存在量は、主に、図3aに示すようにマークされた基板上に成長したランダムに分布したSWCNTのラマンRBM(ラジアルブリージングモード)マッピングによって特徴付けられた。高効率、低コストおよび非破壊の特性評価方法として、共鳴ラマン(RR)分光法は、SWCNTのカイラリティ同定、特に基板上で成長したSWCNTの大面積統計において、依然として不可欠な特性評価方法である。532、638および785nmのレーザーを使用すると、カイラリティの異なるSWCNTは、片浦プロットで見られるものに対応する励起応答を示し(環境要因の対応する整流を伴う)、直径に依存するRBMピークを示す。ラマンxy-2Dマッピングを使用して、レーザースポットで表面をラスタースキャンし、各ピクセルのスペクトルを取得した。これは、チューブの数および各チューブの長さ、つまり質量存在量の両方に関して、SWCNTの存在量を説明する。質量存在量は、RBMのピークの高さよりも、対応するピークの発生頻度により多く反映される。マップの各ピクセルからピークが抽出され、図4a~cに累積的に表示される。各ピークの統計的存在量を、3つの励起レーザー波長(図4d~f)を使用して各サンプルから取得し、グラフェンマップ(図4g)にまとめた。
【0149】
片浦プロット(図6を参照)では、1.57nmを超える直径を有するカイラリティ(RBMピーク約155cm-1)が密集しすぎているため、カイラリティ指数を明確に特定できない。明確な識別を保証するために、グラフェンマップのペイントは、直径1.57nm未満(図4a~gの青い破線で表されるRBMピーク約155cm-1)に対してのみ行われたが、全ての可能なSWCNTに基づく存在量値を使用した。532、638および785nmのレーザーと共鳴され得ないカイラリティの場合、ハニカムセルは空のままになる。(2n,n)付近のカイラリティは、おそらく濃縮されており、ジグザグ型領域の近くにはほとんど見られ得ない。
【0150】
ナノビーム電子回折(ED)もまた、CNTのカイラリティを決定するために使用され、結果を図4hに示すグラフェンマップにまとめる。非効率的であるが、EDは、全ての可能なチューブの(n,m)カイラル指数を明確に認識するための最良の方法である。EDパターン(図4i)は、基板から時折伸びる浮遊CNTから得られた。この方法のために、存在量は、質量存在量からチューブ量の存在量に逸脱し、チューブの長さに関する情報が不足する。ただし、この手法では、チューブの核生成条件についてより多くの手がかりが得られ、(2n,n)付近の好ましいカイラリティを引き続き確認し得る。
【0151】
図4gからのW(oNP直径約2.5nm、mNP直径約1.5nm)について、明白な最も濃縮されたカイラリティは、19.1°に近いカイラル角で(2n,n)の周りに配置される(12,6)、(10,5)、(8,4)、(12,5)および(9,4)である。(12,6)、(10,5)および(8,4)の最大質量存在量は、薄いSWCNT(0.81~1.52nm、これは明確な識別が可能な範囲)の中で約30%、約20%および約15%ならびに0.81~2nmの範囲で約20%、約15%および約10%に達した。全ての明白な(2n,n)、(2n±1,n)および(2n±2,n)カイラリティは、薄いSWCNT間でほぼ90%に達した。ほぼジグザグ型の領域またはアームチェア型領域とは対照的に、カイラリティは、ほとんど識別されなかった。隣接するカイラリティ(10,5)および(13,8)、(15,5)および(14,7)それぞれのために存在量が過大評価されなかった場合、(8,7)および(11,10)のみが中程度の存在量を有する(図6に示されている修正された片浦プロットを参照)。全ての明白な(2n,n)、(2n±1,n)および(2n±2,n)カイラリティ(各々同じ直径のチューブと比較)については、(10,4)、(11,5)のみがあまり濃縮されていない。(10,4)および(11,5)の両方を考慮すると、EDの結果に豊富な存在量および532または638nmレーザーの0.1eV共鳴ウィンドウのエッジ近くに位置する(10,4)および(11,5)のE11 が見られ得、少量の存在量は、依然として悪い共振状態に起因するように見える。(11,5)のE11 もまた、532nmレーザーとの共鳴が悪いように見える。
【0152】
EDの結果については、直径1.3nm未満の集中分布も見られ得、これは、図4d~fにおける(12,6)、(10,5)および(8,4)と比較して(13,6)、(14,7)および(16,7)の存在量が少ないことを説明する。上記のように、EDは、チューブの量、したがってチューブの核生成条件に関する情報を明らかにする。結果に基づいて、カイラル角19±5°のチューブは、依然として濃縮される。いくつかのジグザグ型チューブが現れる一方で、アームチェア型チューブは識別されない。ジグザグ型チューブの外観は、核生成中の濃縮に起因する。ラマンRBMマッピングと比較したEDからのより広いカイラリティ分布は、近年報告された固体触媒チューブの界面でのA|Z偏析によって説明され得、これによって、全てのカイラルチューブについて界面エネルギーが大幅に減少し、これによって平衡CNT核生成確率分布が広がる。
【0153】
WCと比較して、MoCとReは同様の傾向を示し、より近い(2n,n)カイラリティを生成するが(図11e~l)、いくつかの独特のカイラリティの選択をも示す。WCと比較して、MoCは、(8,5)、(9,6)、(14,4)および(13,4)の中程度の存在量を生成したが、より少ない(7,6)、(10,6)および(8,4)を生成した。Reの場合、(9,4)、(11,4)(12,5)は多かったが、(8,5)は少なかった。固体触媒および同様のCVDパラメータによって、製品はより近い(2n,n)チューブで濃縮された。ただし、チューブと触媒との界面エネルギーの違いと、その結果としての核生成および成長の違いによって、これらの触媒間にわずかな違いが生じる。実際、この研究は、カイラリティが制御されたSWCNTが初めてReから成長し、成長後も元素状態および固体状態を固有に維持していることを表す。
【0154】
上記のように、WC、MoCおよびReの点群は、それぞれ3、2および6倍の対応する対称性で異なる。ただし、実験結果の統計に基づくと、WC、MoCおよびReは、(2n,n)の近くでより多くのSWCNTを生成し、最もまれに検出されるカイラリティは、常にグラフェンマップのジグザグ(ZZ)型およびアームチェア(AC)型領域に向かって配置される(図4のWおよび図11のMo、Re)。6倍および5倍の対称性を有する(12,6)および(10,5)SWCNTは、3つの触媒全てに豊富に含まれる。触媒の対称性は、SWCNTのカイラリティの存在量に限定的な影響を与えるようである。
【0155】
カイラリティ選択のための固体触媒の要件に加えて、水素に対する炭素の比も重要であるとわかる。過剰な炭素供給(C:H>1:15)では、カイラリティの選択がより明確になり、(12,6)と(10,5)が常に支配的になり、全てのカイラリティが(2n,n)線の近くに配置される。対照的に、C/H<1:5の場合(図12を参照)、カイラリティ制御はあまり明白ではない。他の多くのカイラリティは、(2n,n)線の近くのものに匹敵する存在量で観察される。
【0156】
成長の結果に基づいて、触媒サイズが通常oNP直径3nm未満で十分に小さい場合にのみ、最良のカイラリティ制御に到達し得る。より大きな直径の触媒は、より大きな直径のより多くのチューブを生成し、より多くのカイラリティをもたらす。さらに、接線方向の成長が支配的であり、触媒とSWCNTの直径との間の正しく正の相関もまた、HRTEMによって検証される(図3および13を参照)。成長中に固体を維持することによって、触媒はカイラリティ制御の実現に不可欠な固定直径を保持する。
【0157】
さらに、Fe、CoおよびNi触媒とは異なり、固体のW、ReおよびMo触媒は、空気中での酸化温度が比較的低いため、CVD後に簡単に除去され、ターゲット基板上に純粋なCNTを残すことが可能である。
【0158】
(定性的モデリング)
観察された優先的なカイラリティ分布を理解するための対称マッチングメカニズムなしで、核生成中の管触媒界面熱力学、成長速度論および自己発達カイラリティ依存性成長時間の要因を調査した。
【0159】
Artyukhov[上記]で報告されているように、時間tでの(n,m)SWCNTの質量ベースの存在量は、次の積分によって与えられる。
【0160】
【数12】
【0161】
ここで、p(τ,n,m)およびv(τ,n,m)は、それぞれ時間τで(n,m)SWCNTを成長させる触媒の累積確率と成長速度である。成長時間はカイラリティに依存しないという仮定に基づいて、全ての時間項を、次のようにEq.2のカイラリティ依存項(n,m)から分離した。
【0162】
【数13】
【0163】
ここで、N(n,m)は触媒からの(n,m)SWCNTの核生成確率、R(n,m)は(n,m)SWCNTの成長速度、S(t)は、全ての期間の集合である。
【0164】
ただし、Eq.3は、触媒の不活性化がカイラリティに依存しないときまたは触媒が常に活性でありしたがってCNTの長さが成長速度によってのみ制約されるときにのみ、有効である。ただし、CNT合成後は、比較的短いCNTとともに不活性触媒が常に観察される(図13を参照)。触媒の不活性化は、SWCNTの成長を促進するために効率的に供給されない、増え続ける表面炭素に起因し得る。図3eおよびfに示すように、触媒は、常に炭素キャップによって包まれており、「ピーポッド」の形態であった。この現象は、効率的な液体触媒よりもむしろ、鉄のように、非効率的な固体触媒を使用した場合により明白になり得る。
【0165】
さらに、成長速度論における差は、カイラリティの関数としての触媒の不活性化につながり得る。十分な成長速度を持つカイラリティのみが、表面の蓄積および触媒毒ではなく、CNTの成長に向けて入ってくる炭素を取り込むことが可能である。したがって、より速い成長速度に加えて、これらのカイラリティはまた、触媒毒から停止される前にそれらの成長時間を延長し得る。特定のカイラリティの成長速度が十分に速い場合、炭素供給速度は、CNTの成長速度およびCNTの長さを制限する要因となる。要約すると、カイラリティ依存成長時間差係数は、成長速度係数と区別するべきである。
【0166】
ここで、現象論的に関与したものは、CNTの成長を促進するかまたはそれを妨害するかのいずれかのために触媒に入射する炭素の速度に比例するトラップ率Rtrapであった。もう1つのパラメータは、触媒の炭素許容能力U(d)である。触媒は成長中に固体であり、炭素表面拡散は、バルク拡散よりもむしろ支配的な成長モードであるという知識から、U(d)は触媒表面積に比例すると仮定した。次に、時間tでの(n,m)SWCNTの存在量は、次のように修正され得る。
【0167】
【数14】
【0168】
ここで、V(n,m,t)は、成長速度の項であり、カイラリティに依存する成長時間を説明する。
【0169】
【数15】
【0170】
ここで、tは、実験中の設定された成長時間である。さらに、tが十分に長いとき、欠陥の形成などのためにCNTの成長がランダムに終了することが、tについての上限を形成するであろう。
【0171】
V(n,m,t)は、成長が炭素供給(Eq.5.1)、成長時間(Eq.5.2)または触媒炭素許容性(Eq.5.3)のいずれかによって制約されていると結論付けられる。
【0172】
存在量の計算に関連する追加のモデリングの詳細は、下記の附記に記載される。
【0173】
C:H比が低いとき、SWCNTの成長は、炭素供給によって制約され得る(Eq.5.1)(成長速度が遅すぎるジグザグ型およびアームチェア型SWCNTを除く)。この場合、核生成の優先度の違いは、結果として生じるカイラリティ分布を支配する。固体触媒の場合、熱力学的優先度は主に、異なる触媒-チューブ界面エネルギー(EInt ,EInt )の値の差によって決定される。上記のように、界面で新たに報告されたA|Z偏析は、全てのカイラルチューブの界面エネルギーを大幅に低減し、平衡CNT核生成確率分布を広げる。成長は設定された時間までに終了するか、欠陥によってランダムに終了する。
【0174】
対照的に、成長環境が炭素で強化されるとき、成長速度の遅いSWCNTは、触媒をはるかに早く毒し、成長の速いカイラリティのみを残して成長を続け、製品におけるこれらの急速に成長するカイラリティのより高い質量ベースの存在量をもたらす。固体触媒では、成長速度は、二峰性であり、ACおよびZZ端で最小になり、(2n,n)SWCNTの19.1°ラインで最大となる(図14eを参照)。その結果、存在量分布は(2n,n)、(2n±1,n)および(2n±2,n)カイラリティを優先し(図14hを参照)、これにより実験的な存在量の結果が確認される。
【0175】
核生成の熱力学、成長速度論およびカイラリティに依存する成長時間に加えて、触媒のサイズは、可能なカイラリティの領域を直接決定し、それによって最終的なカイラリティの存在量に影響を与える(図14f~gと図14h~iとの比較)。
【0176】
液体触媒からの成長もモデル化され、図14a~cに示される。同じモデリングパラメータのセットを使用すると、主にカイラル角に比例した成長速度のため、ACおよびACに近いSWCNTが推奨される。しかし、オストワルト熟成から、液体触媒は、固体触媒よりもはるかに広いサイズ分布を持つ傾向があり、それに対応してSWCNTの直径とカイラリティの分布が広くなる。エネルギー障壁が非常に低いため、液体触媒からのSWCNTの核生成も無秩序になる。
【0177】
(結論)
触媒形成プロセスの気相の性質のため、粒子は、基板に依存しない。したがって、基板は、完全に除去され得、完全に連続的なプロセスを実現する。ガスラインに水素および炭素源を取り込むことによって、固体触媒からの連続浮遊触媒CVD(FCCVD)の成長が初めて達成された(図5を参照)。図5bおよびcは、W固体触媒を使用したFCCVDからの予備製品を示す。CNTの生成速度を増加させるために、FCCVDの成長は、細かいサイズを選択せずに、大きな触媒(oNPs5nm超)を使用して実行した。固体触媒の比較的低い効率、還元プロセスに対する耐熱金属酸化物の感度および基板から触媒への炭素移動の欠如は、従来の液体触媒よりもさらなる課題であった。
【0178】
エアロゾルベースのサイズ選択法によって、直径2nm未満のほぼ単分散のW、MoおよびRe酸化物ナノ粒子を生成するための高度に適応可能な方法が達成された。これらのナノ粒子は還元され、十分に制御されたCNT直径およびカイラリティ分布を生成可能である固体触媒を形成した。既知の対称性マッチングおよびエピタキシー成長にもかかわらず、カイラリティ制御メカニズムは、カイラリティ間の成長速度の違いだけでなく、急速に成長するCNTで利用可能な成長時間の延長にも起因した。高炭素成長環境では、3つの金属が同様の(2n,n)カイラリティSWCNTを生成し、特に(12,6)および(10,5)の存在量が高くなった。カイラル角19±5°のカイラリティは特に一般的であり、その存在量は90%を超える。正確なサイズのNPを製造するエアロゾル法のおかげで、カイラリティ制御されたSWCNTの連続製造を達成可能であり、科学および工学の多くの分野でこの注目に値する材料の影響を増大させるのに役立ち得る。
【0179】
(附記)
Artyukhov[上記]で報告されているように、時間tで、(n,m)SWCNTの存在量は、次の積分によって与えられる。
【0180】
【数16】
【0181】
ここで、p(t,n,m)およびv(t,n,m)は、この触媒が時間tで(n,m)SWCNTを成長させる累積確率および成長速度である。
【0182】
上記のように、カイラリティに依存する成長時間差係数を考慮すると、時間tでの(n,m)SWCNTの存在量は次のように修正される。
【0183】
【数17】
【0184】
ここで、N(n,m)は、触媒からの(n,m)SWCNTの核生成確率であり、V(n,m,t)は成長速度の項であり、カイラリティに依存する成長時間を説明する。
【0185】
【数18】
【0186】
ここで、tは、実験中に設定された成長時間である。V(n,m,t)は、成長が、炭素供給(Eq.5.1)、成長時間(Eq.5.2)または触媒炭素許容性(Eq.5.3)のいずれかによって制約されると結論付ける。Rtrapは、触媒への炭素の入射速度に比例するトラップ率である。U(d)は、触媒の炭素許容能力、dは、SWCNTの直径である。R(n,m)は、(n,m)SWCNTの成長率である。
【0187】
Artyukhov[上記]で報告されているように、核生成中の熱力学的モデルは次のとおりである。
【数19】
【0188】
ここで、Γn,mは、CNTエッジと触媒との間の接触界面エネルギーであり、Gn,m capは、キャップフリーエネルギーである。
【0189】
【数20】
【0190】
ここで、Eint A,Zは、AまたはZタイプのエッジ原子のCNT-触媒相互作用エネルギーである。
【0191】
【数21】
【0192】
α=0.039eV・nm/atomは、グラフェンの曲げ剛性、dは、(n,m)SWCNTの直径である。
【0193】
【数22】
【0194】
ここで、En,m capは、半球形の弾性シェルに対して一定であるCNTキャップの弾性エネルギーである。Sn,m capおよびNn,m capは、それぞれ(n,m)カイラリティSWCNTのキャップエントロピーおよびキャップ数である。kは、ボルツマン定数である。
【0195】
CNT-固体触媒界面では、再構築された非対称CNTエッジ(分離されたA|Zエッジ)とカイラリティ依存の欠陥形成が理論モデリングから報告された。前者の結果は、nが2m超であるチューブの優先的な核生成を示すが、nが2m以下であるカイラルチューブの成長がはるかに速く、カイラルSWCNTの好ましくない核生成を大幅に解放した。後者の結果は、(12,6)A|Z分離界面が欠陥形成の可能性が最も低く、ZからAへのカイラリティ進化傾向において「トランジェントアトラクター」として現れることをさらに明らかにした。ここでは、分離されたA|Zエッジが報告されるため、界面構成のエントロピーを追加する代わりに、キャップエントロピーのみが考慮された。
【0196】
ただし、動的モンテカルロ(kMC)シミュレーション機能がないため、従来の円形エッジ界面が使用された。これにより、カイラリティスイッチングなしでkMCの結果と同様の存在量が得られる。欠陥形成からのカイラリティスイッチングの欠落は、(2n,n)チューブの存在量をさらに増加させるであろう。
【0197】
固体触媒の場合、Wスラブ上のCo固体触媒から報告された値に従って、0.147eV/atomのEInt および0.144eV/atomのEInt が使用された。液体触媒の場合、分離されたA|Z界面を有するCo(111)触媒について報告されているように、0.09eV/atomのEInt と0.345eV/atomのEInt が使用された。所与のEInt A,Z値を有する液体触媒の図14aに示すように、核生成熱力学は、大きなカイラル角を持つ濃縮されたカイラリティをもたらす。所与のEInt A,Z値を有する固体触媒に関しては、核生成はより小さなカイラル角が好ましい傾向があるが、より広い分布を有する(図14dを参照)。
【0198】
成長速度論に関しては、速度論的モンテカルロ(kMC)シミュレーション機能がないため、従来の円形エッジ界面が使用され、成長率R(n,m)は次のようである。
【0199】
【数23】
【0200】
【数24】
【0201】
らせん転位理論に基づく液体触媒の場合、Aエッジにキンクの対を作成するためのコストEInt はほぼゼロであり、その結果、SWCNTの成長速度は、カイラル角に比例する(図14bを参照)。核生成熱力学と成長速度論との結果の組み合わせの場合、好ましい領域は、アームチェア型カイラリティの周りである(図14cを参照)。存在量は、主に成長速度論によって決定され、大きなカイラル角でより広く分布したカイラリティをもたらした。
【0202】
ただし、固体表面では、キンクの対を作成すると、CNTと基板との間の完全な接触が破壊され、EInt とEInt とは、全て顕著な大きさを有し、依存関係は、AおよびZの端で最小となり、19.1°で最大のバイモーダルとなる(図14eを参照)。存在量に対する複合効果は、(n,1)および(n,2)カイラリティを優先する(図14fを参照)。
【0203】
触媒サイズを選択すると、触媒からの誘導効果によって、存在量の分布がシフトする(図14gを参照)。さらに、触媒が大きすぎると、得られるCNTには壁の少ないCNTが多く含まれ、カイラリティ制御を損なう。
【0204】
炭素富化環境では、カイラリティに依存する成長時間係数が展開された。図14eにしきい値を設定した。所与のEInt A,Z値の例では、カイラリティの約1/2が制約される0.65~2nmの範囲に設定される場合、存在量分布は19.1°にシフトし、主に(12,6)を濃縮する(図14hを参照)。
【0205】
触媒の分布がさらに狭く、サイズが薄く(0.8±0.2nm)、一部成長の遅いSWCNTの成長時間が適切に制限されているため、(8,4)、(10,3)、(9,4)、(11,3)などの半導体カイラリティは、濃縮されると予測される(図14iを参照)。
図1
図2
図3
図4-1】
図4-2】
図4-3】
図5
図6
図7
図8-1】
図8-2】
図9a
図9b
図10
図11-1】
図11-2】
図11-3】
図11-4】
図12-1】
図12-2】
図13
図14-1】
図14-2】
図14-3】
【国際調査報告】