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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-03
(54)【発明の名称】圧縮リミッター
(51)【国際特許分類】
   F16B 31/02 20060101AFI20230127BHJP
   C08L 77/06 20060101ALI20230127BHJP
   C08K 7/02 20060101ALI20230127BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20230127BHJP
【FI】
F16B31/02 H
C08L77/06
C08K7/02
C08K3/013
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022529405
(86)(22)【出願日】2020-12-03
(85)【翻訳文提出日】2022-05-19
(86)【国際出願番号】 EP2020084561
(87)【国際公開番号】W WO2021110882
(87)【国際公開日】2021-06-10
(31)【優先権主張番号】19213769.3
(32)【優先日】2019-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】62/950300
(32)【優先日】2019-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503220392
【氏名又は名称】ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】DSM IP ASSETS B.V.
【住所又は居所原語表記】Het Overloon 1, NL-6411 TE Heerlen,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】ハーディング, ジェフ
(72)【発明者】
【氏名】ハサノビッチ, アドナン
(72)【発明者】
【氏名】ファン ヴィッセン, ベンジャミン
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CL031
4J002DA016
4J002DL006
4J002FA046
4J002FD016
4J002GM00
4J002GN00
(57)【要約】
本発明は、半結晶性半芳香族ポリアミドを含む第1の熱可塑性組成物でできた圧縮リミッターに関する。本発明は更に、圧縮リミッターを作製するためのプロセス、及び圧縮リミッターと、第2の熱可塑性ポリアミド組成物でできた熱可塑性物体とを含むアセンブリに関する。本発明によれば、圧縮リミッターは、熱可塑性組成物でできている。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性材料でできている圧縮リミッターであって、前記熱可塑性材料は、
(A)35~65重量%のポリアミド成分(A)(少なくとも90重量%の前記ポリアミド成分(A)は、
〇45~50モル%のジアミン、
〇40~50モル%の芳香族ジカルボン酸、及び
〇0~10モル%の1つ以上の他のモノマーから誘導される繰り返し単位からなる、半結晶性半芳香族ポリアミド(A-1)からなり、
前記モル%は、ジアミン、芳香族ジカルボン酸、及び1つ以上の他のモノマーの総モル量に対してであり、
(A-1)は、少なくとも110℃のガラス転移温度(Tg)及び少なくとも280℃の融解温度を有する)と、
(B)35~65重量%の繊維強化剤(
(A)及び(B)の重量パーセントは、前記組成物の総重量に対してである)と、を含む、圧縮リミッター。
【請求項2】
前記半結晶性半芳香族ポリアミド(A-1)は、120~170℃の範囲のガラス転移温度(Tg)及び290~340℃の範囲の融解温度を有する、請求項1に記載の圧縮リミッター。
【請求項3】
-少なくとも70モル%の前記ジアミンは、直鎖状又は分岐状脂肪族C4~C10ジアミン、又は脂環式ジアミン、又はこれらの組み合わせであり、
-少なくとも70モル%の前記芳香族ジカルボン酸は、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸若しくはビフェニルジカルボン酸、又はこれらの組み合わせであり、
-1つ以上の他のモノマーから誘導される繰り返し単位の量は、0~5モル%であり、前記モル%は、ジアミン、芳香族ジカルボン酸、及び1つ以上の他のモノマーの総モル量に対してである、請求項1又は2に記載の圧縮リミッター。
【請求項4】
-ポリアミド成分(A)は、40~60重量%の量で存在し、
-前記繊維強化剤(B)は、40~60重量%の量で存在し、
-0~10重量%の無機フィラー、
-0~5重量%の別のポリマー、及び
-0~5重量%の少なくとも1つの添加剤、
(A)~(E)の重量パーセントは、前記組成物の総重量に対してであり、(A)~(E)の合計量は、100重量%である、請求項1~3のいずれか一項に記載の圧縮リミッター。
【請求項5】
前記強化剤は、ガラス繊維若しくは炭素繊維、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の圧縮リミッター。
【請求項6】
前記熱可塑性材料は、23℃で少なくとも10,000MPA、好ましくは少なくとも12,500MPA、より好ましくは少なくとも15,000MPAの弾性率、及び200℃で少なくとも4,000MPa、好ましくは少なくとも5,000MPa、より好ましくは少なくとも6,000MPaの弾性率を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の圧縮リミッター。
【請求項7】
前記圧縮リミッターは、
-円筒形、任意選択で先細の円筒形、又は
-窪み若しくは突起を含む外面、又は
-フランジ付き端部、又は
-これらの任意の組み合わせを有する主物体を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の圧縮リミッター。
【請求項8】
熱可塑性物体と、少なくとも1つの圧縮リミッターとを含むアセンブリであって、前記圧縮リミッターは、第1の熱可塑性ポリアミドポリマー組成物でできており、前記熱可塑性物体は、第2のポリアミドポリマー組成物でできており、前記第1のポリアミドポリマー組成物は、請求項1に記載の組成物を有する、アセンブリ。
【請求項9】
前記第1の熱可塑性材料は、前記第2のポリマー組成物の23℃での弾性率よりも少なくとも50パーセント(50%)大きい23℃での弾性率を有する、請求項8に記載のアセンブリ。
【請求項10】
前記第2の熱可塑性材料は、好ましくはPA-6、PA-66、PA46及びPA-410、並びにこれらの任意のコポリアミドから選択される熱可塑性脂肪族ポリアミドからその少なくとも50重量%はなるポリマー成分を含む、請求項8又は9に記載のアセンブリ。
【請求項11】
前記アセンブリは、エンジンのフロントカバー、吸気マニホールド、アクチュエータハウジング、又は充電コネクタの部品、又は高電圧スイッチのアセンブリである、請求項8~10のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項12】
-鋳型にキャビティを提供する工程と、
-前記キャビティにおいて少なくとも1つの圧縮リミッターを提供する工程と、
-第2の熱可塑性ポリアミド組成物を前記キャビティ中に射出成形し、これにより前記圧縮リミッターを前記第2の熱可塑性ポリアミド組成物でオーバーモールドし、射出成形された熱可塑性物体を作製する工程と、
-前記射出成形された熱可塑性物体を、その中に組み込まれた前記圧縮リミッターをオーバーモールドして前記キャビティから取り外す工程と、を含み、
-前記少なくとも1つの圧縮リミッターは、請求項1に記載の第1のポリアミドポリマー組成物でできている、請求項8に記載のアセンブリを作製するためのプロセス。
【請求項13】
エンジン、自動車用動力車システム、産業機械又は電子製品における、請求項8に記載のアセンブリの使用。
【請求項14】
キャリアに取り付けられ、好ましくは、前記アセンブリにおいて圧縮リミッターを通過するフランジを有する少なくとも1つのボールドで、又はワッシャー及び前記圧縮リミッターを通過するボールドで取り付けられ、前記圧縮リミッターは、端部を有し、前記ワッシャー又は前記ボールドのフランジの表面は、前記圧縮リミッターの前記端部の表面と少なくとも重なり、好ましくはそれを超えて延びる、請求項8に記載のアセンブリを含む構造体。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、圧縮リミッター(compression limiter)に関する。本発明は更に、圧縮リミッターを作製するためのプロセス、及び、熱可塑性物体と、圧縮リミッターとを含むアセンブリ(assembly)に関する。本発明によれば、圧縮リミッターは、熱可塑性組成物でできている。
【0002】
プラスチック部品は、ねじ又はボルトを使用して、キャリア、例えば車両のエンジンの中に又はそれに対して固定されることができる。圧縮リミッターは、高い耐荷重能力のために設計されており、これにより、ボルトの締め付けによって発生する圧縮荷重からアセンブリのプラスチック部品を保護し、ボルト接合の継続的な完全性を保証する。
【0003】
圧縮リミッターは、ねじの垂直力がプラスチック部品の許容荷重に対して制限されることを保証し、こうすることで、部品を損傷から保護する。荷重は、締め付けトルクによる圧縮を引き起こし、これは、圧縮リミッターがないと、熱可塑性物体に亀裂及びクリープが発生する、又は損傷が生じる可能性がある。又、圧縮リミッターは、ねじの垂直力が、固定されたジョイントの寿命を通して適切な程度で維持されることを保証する。
【0004】
圧縮リミッターは、典型的には、プラスチックの成形された部品で使用するために設計されたプレインホールの金属インサートである。プレインホールは、ボルトの間隔(bolt clearance)を提供し、圧縮リミッターの壁は、嵌合ねじ又はボルトのアセンブリの際に誘発される圧縮力に耐える。実際には、圧縮リミッターは、プラスチックのホストの厚さよりわずかに短くなる必要がある。
【0005】
ボルトを締めると、プラスチックが圧縮され、ボルトの頭、又は使用されている場合はワッシャーが、圧縮リミッターに接触するまで、プラスチックの応力が増加する。その後、圧縮リミッター及びプラスチックは、大幅に減少するが、同じ速度で圧縮されることになる。圧縮リミッターは、プラスチック材料に更に大きな圧縮又は増加した応力を加えることなく、更なるクランプ荷重を吸収することになる。
【0006】
熱可塑性物体と、1つ以上の圧縮リミッターとを含むアセンブリは、インサート成形によって作成できる、即ち、圧縮リミッターを鋳型の所定の位置に配置した後、熱可塑性物体を射出成形によって圧縮リミッターの周囲に成形する、又は圧縮リミッターは、熱可塑性物体が成形された後に挿入され得る。挿入は、手動又は自動で行うことができる。
【0007】
圧縮リミッターの一般的な問題は、圧縮リミッターと圧縮リミッターを受け入れる主物体との間の適切な係合である。多くの圧縮リミッターシステムの更なる問題は、圧縮リミッターと圧縮リミッターを受け入れる開口との間の寸法の一致である。開口部が小さすぎる、又は圧縮リミッターのサイズが大きすぎると、圧縮リミッターを押して所定の位置に配置するときに、熱可塑性物体が損傷する可能性がある。一方、開口部が大きすぎる、又は圧縮リミッターのサイズが小さすぎると、2つの間の接続が失われすぎて、更に操作中の熱可塑性物体の取り扱い及び取り付けに又は引き抜きに問題が生じる可能性がある。これらの後者の問題を克服するために接着剤を使用することは又、更なる操作を必要とし故障にも敏感であるため、望ましくない。
【0008】
物体部品と、圧縮リミッターとを含むアセンブリは、例えば、米国特許出願公開第2018261812A1号明細書に記載されている。米国特許出願公開第2018261812A1号明細書のアセンブリは、電動車両用の電池アセンブリである。電池アセンブリは、電池アセンブリの構造部材を係合するように構成された1つ以上の圧縮リミッターを含む。圧縮リミッターは、電池アセンブリ内の荷重を運び、電池アセンブリの部品を結合するための留め具をガイドする。圧縮リミッターは、物体、及び物体の第1の端部の近くに取り付けヘッドを含む。電池アセンブリの構造部材への圧縮リミッターの適切な係合は、圧縮リミッターの特別な構成で達成される。
【0009】
圧縮リミッターの別の例は、米国特許出願公開第2008157483A1号明細書に記載されている。米国特許出願公開第2008157483A1号明細書は、圧縮リミッターに関し、より具体的には、プラスチック部品の荷重を伝達するために使用される圧縮リミッターに関する。圧縮リミッターは、金属でできている。米国特許出願公開第2008157483A1号明細書に記載されるように、金属の圧縮リミッターは、プラスチック部品に圧縮荷重がかかる用途で一般的に使用される。金属の圧縮リミッターはプラスチックを強化し、加えられる荷重に抵抗する。従って、プラスチックの完全性は損なわれない。更に、金属の圧縮リミッターは、時間の経過とともに留め具の締め付けトルクの低下を引き起こす可能性のあるプラスチック材料のクリープを防止/低減する。しかしながら、米国特許出願公開第2008157483A1号明細書によると、まだ解決すべき問題がある。典型的には、金属の圧縮リミッターは、プラスチック部品における穴に押し込まれ、留め具を受け入れる。押し込まれた圧縮リミッターがプラスチック部品に最終的に取り付けられる前に脱落することが多いため、押し込まれた圧縮リミッターのプラスチック部品に対する保持が懸念される。更に、押し込まれた圧縮リミッターは、プラスチック部品が固定されている第2の部品の材料を押し込んで変形させることができ、留め具のかけられた荷重を軽減する。自動車及び他の用途では、プラスチック部品には、典型的には、留め具を受け入れる少なくとも3つの取り付け孔がある。孔の1つは、典型的には、プラスチック部品を配置する小さな直径の基準孔であり、孔の1つはプラスチック部品を方向付ける長孔であり、孔の少なくとも1つは、他の部品に対してプラスチック部品を保持するための逃げ孔(clearance hole)である。これには、単一のプラスチック部品において少なくとも3つの異なる圧縮リミッターが必要であり、これにより圧縮リミッターが間違った孔に挿入され得るリスクが生じる。これらの問題の解決策として、米国特許出願公開第2008157483A1号明細書の圧縮リミッターは、中央の通路を形成する外面及び内面を有する管状の壁、及び外面から内面まで壁を通って延びる複数の穿孔を組み合わせて含む。
【0010】
圧縮リミッターの更なる例は、米国特許出願公開第2012107659A1号明細書に記載されている。米国特許出願公開第2012107659A1号明細書は、電池パック、より具体的には、その中に形成された開口を有する主物体と、主物体の開口部に配置され、圧縮ロッドをその中に挿入できる中空の圧縮リミッターとを含む角柱状の繰り返しフレームアセンブリ(frame assembly)を含む電池パックに関する。米国特許出願公開第2012107659A1号明細書によると、金属製の圧縮リミッターは、繰り返しフレームアセンブリとは別に機械加工する必要がある。電池パックには高度な清浄度が望まれ、機械加工された金属製の圧縮リミッターは、望ましくないが、挿入プロセス中に金属製のフレークなどの破片を電池パックに導入する可能性がある。又、金属製の圧縮リミッターは、時間の経過とともに酸化し、電池パックを更に汚染する可能性がある。金属製の圧縮リミッターを取り付けるための熱挿入装置の使用も、電池パックアセンブリの複雑さを増す。米国特許出願公開第2012107659A1号明細書の角柱状の繰り返しフレームアセンブリは、ナイロン又はポリプロピレンから選択された第1のポリマーから形成された主物体と、共射出成形で作られた、ポリフェニレンスルフィド(PPS)及びポリエーテルエーテルケトン(PEEK)から選択された第2のポリマーから形成された圧縮リミッターとを含む。
【0011】
射出成形された部品は、一般に、射出成形プロセスに起因する溶接線での弱い所に悩まされる。一般的な圧縮リミッターに関する上記の問題とは別に、金属でできている圧縮リミッターは、その耐荷重特性が高く、特に高温及び動的条件下での性能がより良好であるため、プラスチックでできている圧縮リミッターよりも好まれる。耐荷重特性、及びボルトの締め付けによって発生する圧縮荷重によるアセンブリのプラスチック部品の損傷の防止に関する圧縮リミッターの要件はすでに高くなっているが、これらの要件は、アセンブリがエンジンの近くに又は更にはエンジンに対して取り付けられる可能性がある車両のボンネット内用途では更により厳しくなる。本明細書において、堅固な取り付けは、一般に、取り付けられたアセンブリを所定の位置に維持するだけでなく、又、例えば、組み立てられた電池パック内の冷却液の漏れを防ぐために、漏れのない密閉性を確保する。本明細書において、取り付けられたアセンブリは、室温で動作している車両からの振動による動的な機械的荷重の下で実行する必要があるだけでなく、又、低温で、例えば、-30℃更には-30℃未満、及び120℃又は更には150℃更には150℃を超える高温の両方で、180℃までの又は更には180℃を超えるピーク温度の様々な熱条件下で、加えて乾燥条件及び湿潤条件、並びにこれらの全ての組み合わせ、例えば80℃で80~100%の相対湿度までさえで実行する必要がある。更に、圧縮リミッターを含むプラスチック物体の開口部の寸法との組み合わせでの圧縮リミッターの寸法制御は、アセンブリの際だけでなく、又、温度及び湿度のこれらの変動の際にも重要である。
【0012】
従って、本発明の目的は、広い温度範囲に渡って高い耐荷重特性を示す、例えば、高い静的圧縮破壊力(static compression failure force)及び圧縮力の高い保持力を示す、圧縮リミッター、並びに熱可塑性物体と、圧縮リミッターとを含むアセンブリを提供することであり、これは、広範囲の熱及び/又は湿度変動下での良好な密閉性能を示している。
【0013】
この目的は、圧縮リミッターによって及び本発明によるアセンブリによって達成される。
【0014】
本発明による圧縮リミッターは、請求項1に記載の第1の熱可塑性ポリアミド組成物でできている。
【0015】
本明細書において、圧縮リミッターは、
(A)35~65重量%のポリアミド成分(A)(少なくとも90重量%のポリアミド成分(A)は、
〇45~50モル%のジアミン、
〇40~50モル%の芳香族ジカルボン酸、及び
〇0~10モル%の1つ以上の他のモノマーから誘導される繰り返し単位からなる、半結晶性半芳香族ポリアミド(A-1)からなり、
モル%は、ジアミン、芳香族ジカルボン酸、及び1つ以上の他のモノマーの総モル量に対してであり、
(A-1)は、少なくとも110℃のガラス転移温度(Tg)及び少なくとも280℃の融解温度を有する)と、
(B)35~65重量%の繊維強化剤((A)及び(B)の重量パーセントは、組成物の総重量に対してである)と、を含む熱可塑性材料でできている。
【0016】
本発明によるアセンブリは、第2の熱可塑性ポリアミド組成物でできている熱可塑性物体を含み、上記の圧縮リミッターを更に含む。
【0017】
本明細書において、アセンブリは、最初に第1の熱可塑性ポリアミド組成物の射出成形によって圧縮リミッターを作製し、次いで第2の熱可塑性ポリアミド組成物の射出成形によって熱可塑性物体を作製し、これにより圧縮リミッターを第2の熱可塑性ポリアミド組成物でオーバーモールドすることによって適切に作製される。
【0018】
このような作製は、2段階の射出成形プロセスとして、又は圧縮リミッターが別個のプロセスで作製され、オーバーモールドプロセスの前に鋳型に挿入されるインサート成形プロセスとして実施することができる。
【0019】
圧縮リミッターが第1の熱可塑性ポリアミド組成物でできており、熱可塑性物体が圧縮リミッターを第2の熱可塑性ポリアミド組成物でオーバーモールドすることによって作製されている、本発明による圧縮リミッター及びアセンブリの効果は、広い温度範囲での長時間に渡る高い耐荷重特性、圧縮リミッターと熱可塑性物体の間の良好な接着性、並びに様々な温度及び/又は湿度条件及び/又は動的な機械的荷重の下での長時間の動作中の漏れのない密閉性である。
【0020】
本発明による圧縮リミッターは、熱可塑性材料でできており、本明細書では第1の熱可塑性材料とも呼ばれ、熱可塑性材料は、35~65重量%のポリアミド成分(A)と、35~65重量%の繊維強化剤(B)とを含む。適切なポリアミド(A)及びその製造方法は、例えば、国際公開第2018/060271A1号パンフレットに記載されている。
【0021】
本明細書において、少なくとも90重量%のポリアミド成分(A)は、
〇45~50モル%のジアミン、
〇40~50モル%の芳香族ジカルボン酸、及び
〇0~10モル%の1つ以上の他のモノマーから誘導される繰り返し単位からなる、半結晶性半芳香族ポリアミド(A-1)からなり、
この場合、モル%は、ジアミン、芳香族ジカルボン酸、及び1つ以上の他のモノマーの総モル量に対してであり、(A-1)は、少なくとも110℃のガラス転移温度(Tg)及び少なくとも280℃の融解温度を有する。
【0022】
好ましくは、半結晶性半芳香族ポリアミド(A-1)は、
〇45~50モル%のジアミン、
〇45~50モル%の芳香族ジカルボン酸、及び
〇0~5モル%の1つ以上の他のモノマーから誘導される繰り返し単位からなり、
この場合、モル%は、ジアミン、芳香族ジカルボン酸、及び1つ以上の他のモノマーの総モル量に対してである。
【0023】
半結晶性ポリマーは、従来技術においてよく知られており、典型的には、融解温度及び融解エンタルピーによって特徴付けられる結晶ドメインと、ガラス転移温度によって特徴付けられる非晶質ドメインとを含む形態を有する。
【0024】
ガラス転移温度という用語は、本明細書において、加熱及び冷却速度20℃/分でN(窒素)雰囲気での事前乾燥試料(「事前乾燥」とは、試料の質量が3日間連続して一定であるまでを意味し得る)で、ISO-11357-1/2、2011に従って示差走査熱量測定(DSC)法で測定される温度と理解される。本明細書において、Tgは、親熱曲線の変曲点に対応する、親熱曲線の一次導関数(時間に関して)のピークでの温度から決定される。
【0025】
融解温度という用語は、本明細書において、加熱及び冷却速度20℃/分でN(窒素)雰囲気での事前乾燥試料(「事前乾燥」とは、試料の質量が3日間連続して一定であるまでを意味し得る)で、ISO-11357-1/3、2011に従って示差走査熱量測定(DSC)法によって測定される温度と理解される。本明細書において、Tmは、第2の加熱サイクルで最も高い融解ピークのピーク値から計算される。
【0026】
半結晶性ポリアミドにおける半結晶性という用語は、本明細書において、ポリアミドが融解温度(Tm)及び融解エンタルピー(ΔHm)、並びにガラス転移温度(Tg)を有することであると理解される。適切には、半結晶性ポリアミドは、少なくとも5J/g、好ましくは少なくとも10J/g、更により好ましくは少なくとも25J/gの融解エンタルピーを有する。
【0027】
融解エンタルピー(ΔHm)という用語は、本明細書において、加熱及び冷却速度20℃/分でN(窒素)雰囲気での事前乾燥試料(「事前乾燥」とは、試料の質量が3日間連続して一定であるまでを意味し得る)で、ISO-11357-1/3、2011に従ってDSC法によって測定される融解エンタルピーと理解される。本明細書において、(ΔHm)は、第2の加熱サイクルの融解ピーク下の表面から計算されている。
【0028】
本発明による圧縮リミッターの好ましい実施形態では、半結晶性半芳香族ポリアミド(A-1)は、少なくとも120℃、好ましくは少なくとも130℃、好ましくは多くとも170℃のガラス転移温度(Tg)を有し、少なくとも290℃、好ましくは少なくとも300℃、好ましくは多くとも340℃の融解温度を有する。より好ましくは、Tgは、140~170℃の範囲の範囲にある。又、より好ましくは、Tmは、310~340℃の範囲の範囲にある。
【0029】
本発明による圧縮リミッターにおける半結晶性半芳香族ポリアミド(A-1)は、ジアミンの総モル量に対して、少なくとも70モル%の直鎖状又は分岐状脂肪族C4~C10ジアミン、又は脂環式ジアミン、又はこれらの組み合わせを適切に含む。好ましくは、少なくとも70モル%、より好ましくは少なくとも80モル%のジアミンは、直鎖状脂肪族C4~C10ジアミン、又は脂環式ジアミン、又はこれらの組み合わせからなる。C4~C10直鎖状脂肪族ジアミンの例は、1,4-ジアミノブタン、1,6-ヘキサンジアミン、1,8-オクタメチレンジアミン及び1,10-デカムテチレンジアミンである。脂環式ジアミンには、1,4-シクロヘキサンジアミン及びイソホロンジアミンが含まれる。分岐状脂肪族ジアミンの例は、2-メチルペンタメチレンジアミンである。
【0030】
本発明による圧縮リミッターにおける半結晶性半芳香族ポリアミド(A-1)は、適切には、芳香族ジカルボン酸の総モル量に対して、少なくとも70モル%のテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸若しくはビフェニルジカルボン酸、又はこれらの組み合わせを含む。好ましくは、少なくとも70モル%、より好ましくは少なくとも80モル%の芳香族ジカルボン酸は、テレフタル酸からなる。
【0031】
半結晶性半芳香族ポリアミド(A-1)における芳香族ジカルボン酸は、他の芳香族ジカルボン酸、例えばイソフタル酸を含み得る。しかしながら、その量は、芳香族ジカルボン酸の総モル量に対して、好ましくは多くとも20モル%に制限され、より好ましくは0~10モル%の範囲に制限される。その利点は、高温での耐荷重特性がより良好に保持されることである。
【0032】
半結晶性半芳香族ポリアミド(A-1)は、任意選択で、1つ以上の他のモノマーから誘導される繰り返し単位を含むが、その量は、ジアミン、芳香族ジカルボン酸及び他のモノマーの総モル量に対して、多くとも5モル%であり、好ましくは0~2.5モル%の範囲にある。他のモノマーは、例えば、連鎖停止剤として使用できる単官能性アミン(モノアミン)及び単官能性カルボン酸(一酸)、並びに分岐剤として使用できる三官能性アミン(即ち、トリアミン)及び三官能性アミンカルボン酸(即ち、三酸)である。
【0033】
本発明による圧縮リミッターが繊維強化剤を含む組成物。適切には、繊維強化剤は、ガラス繊維若しくは炭素繊維、又はこれらの組み合わせを含む。繊維強化剤の量は、35~65重量%の範囲内である必要がある。含有量が低すぎると、35重量%未満で、高温での耐荷重特性が劣り、一方、低含有量が高すぎると、65重量%超で、圧縮リミッター自体の耐荷重特性が低下しすぎる。この範囲内で、繊維強化剤は、必要とされる耐荷重特性及び適用される繊維長に応じて変動することができる。より長い繊維長の中央値及びより低い耐荷重特性が必要とされる場合、その量は、適切には約30重量%又はそれよりいくらか上である。より短い繊維長の中央値及びより高い耐荷重特性が必要とされる場合、その量は、適切には約70重量%又はそれよりいくらか下である。組成物中の繊維強化剤は、適切には、0.05~1mmの範囲、好ましくは0.1~0.5mm、より具体的には0.15~0.35mmの範囲の繊維長の中央値を有する。
【0034】
本明細書において、繊維長の中央値は、繊維の50重量%がより短い長さを有し、50重量%がより長い長さを有する長さの値である。繊維長の中央値は、組成物中の繊維の代表的な試料を採取し、その試料の顕微鏡写真を作成し、試料中の全ての個々のガラス繊維の長さを測定することによって決定される。繊維は全てについて等しいと見なされ、又それに基づいて繊維の長さは繊維の重量を直接表す。
【0035】
圧縮リミッターで使用される組成物は、無機充填剤(成分C)及び他のポリマー(成分D)などの制限された量での他の成分、並びに更なる添加剤を含み得る。ここで本明細書において、成分(C)下の他のポリマーは、ポリアミド成分(A)以外のポリマーを意味する。本明細書において、成分(D)下に更なる添加剤があるということは、成分(A)~(D)とは異なる成分を意味する。(C)、(D)及び(E)の量は、組成物の耐荷重特性を補強しないように制限されなければならない。適切には、前述の成分は、以下の量で存在する:
(C)0~10重量%の無機フィラー、
(D)0~5重量%の別のポリマー、及び
(E)0~5重量%の少なくとも1つの添加剤、
この場合、(C)~(E)の重量パーセントは、組成物の総重量に対してであり、(A)~(E)の合計量は、100重量%である。
【0036】
最適な組成物では、組成物の総重量に対して、
-ポリアミド成分(A)は、40~60重量%の量で存在し、
-繊維強化剤(B)は、40~60重量%の量で存在し、
-成分(C)、(D)及び(E)は、存在する場合でも、0~10重量%の合計量で存在し、重量%は前記熱可塑性組成物の総重量に対するものである、熱可塑性組成物。
【0037】
好ましくは、成分(C)、(D)及び(E)は、存在する場合でも、0~10重量%の合計量で存在する。
【0038】
圧縮リミッターにおける熱可塑性材料の組成物は、室温でだけでなく高温でも良好な機械的特性を有する。適切には、熱可塑性材料は、23℃で少なくとも15,000MPA、好ましくは少なくとも17,000MPA、より好ましくは少なくとも18,000MPAの引張り弾性率、及び120℃で少なくとも10,000MPA、好ましくは少なくとも12,000MPA、より好ましくは少なくとも14,000MPaの引張り弾性率を有する。本明細書において、引張り弾性率は、ISO 6721-4:2008に従った方法を用いて、10Hzで、乾燥試験試料(例えば、試料の質量が3日間連続して一定であるまで)を使用して測定される。室温及び高温での引張り弾性率が高いほど、動的耐荷重条件下での圧縮リミッターの性能が良好である。
【0039】
本発明による圧縮リミッターは、リミッターが使用される用途の要件に応じて、様々な形状及び可変の寸法で作製することができる。適切には、圧縮リミッターは、圧縮リミッターを含むアセンブリを取り付けるためのボルトを受け入れるのに適した中空の経路を備えた主物体を有する。適切には、中空の経路は円筒形の経路である。円筒形の経路は、孔の全長に渡って均一な円形の断面を有する孔である。このような円筒形の経路は、圧縮リミッターを含むアセンブリを取り付けるためのボルトを受け入れるのに理想的に適している。
【0040】
一実施形態では、圧縮リミッターは、適切には、均一な円筒形の主物体を有する。均一な円筒形とは、本明細書では、
-円筒形の中空の経路を規定し、中空の経路の全長に渡って均一な円形断面を有する内壁、及び
-主物体の全長に渡って均一な円形断面を有する外壁によって規定される中空の形状であると理解される。
【0041】
別の実施形態では、圧縮リミッターは、適切には、先細の円筒形の主物体を有する。先細の円筒形とは、本明細書では、
-円筒形の中空の経路を規定し、中空の経路の全長に渡って均一な円形断面を有する内壁、及び
-主物体の全長に渡って徐々に増加する円形断面を有する外壁によって規定される中空の形状であると理解される。
【0042】
これらの実施形態のそれぞれ、圧縮リミッターは、適切には、中空の経路を備えた主物体、及び窪み又は突起を含む外面を有する。
【0043】
圧縮リミッターは、適切には、中空の経路を備えた主物体、及びフランジ付き端部を備えた主物体を有する。
【0044】
これらの形状、又はこれらの改変、又はこれらの組み合わせの1つを備えた圧縮リミッターは、一段階射出成形によって作製することができ、このような射出成形プロセスは当技術分野で周知である。先細の円筒形、窪み又は突起を含む外面、又はフランジ付き端部、及びこれらの組み合わせのいずれかによる改変は、圧縮リミッターが熱可塑性物体においてより良好に擦られるように保持されるという利点を有する。
【0045】
圧縮リミッターに使用される組成物の調製は、溶融混合プロセスによって適切に行うことができる。このようなプロセスは、当技術分野で知られているように、例えば、二軸スクリュー押出機で実施することができる。調製には、適切に細断されたガラス繊維、又は細断された炭素繊維、又はこれらの組み合わせが使用される。適切には、これらの細断された繊維は、0.5~5cmの範囲、より具体的には1.0~2.5cmの範囲の長さを有する。調製中に、適用されるプロセスの装置及び条件は、当業者に知られているように調整することができ、これにより組成物中の繊維の長さを短縮及び最適化することができる。
【0046】
本発明は又、本発明による圧縮リミッターを作製するためのプロセスに関する。本発明によるプロセスは、上で記載され、第1の熱可塑性組成物とも呼ばれる熱可塑性組成物が、溶融押出又は射出成形され、これにより中空の経路を備えた成形された部品を形成する工程を含む。
【0047】
一実施形態では、プロセスは、当技術分野で知られている方法を適用することにより、熱可塑性組成物を鋳型に射出成形する工程であって、鋳型は、適切な形状を有するキャビティを含む工程と、鋳型を開放し又は取り外し、得られた成形された部品を鋳型から排出し、これにより本発明による圧縮リミッターを得る工程とを含む。本明細書において、キャビティは、1つ以上の狭いゲートを有し得る。溶接線が存在する可能性があるにもかかわらず、得られた圧縮リミッターは、非常に良好な耐荷重特性を有し、後処理は必要としない。
【0048】
有利には、射出成形によってこのように作製された圧縮リミッターは、先細の円筒形、又は窪み若しくは突起を含む外面、又はフランジ付き端部、又はこれらの任意の組み合わせのいずれかを有する。その利点は、圧縮リミッターが熱可塑性物体を有するアセンブリにおいて良好に擦られるように保持されることである。
【0049】
別の実施形態では、プロセスは、当技術分野で知られている任意の方法を適用することによって熱可塑性組成物を溶融押出して、これにより中空の管を形成する工程と、管を円筒形部品に分割して、これにより本発明による圧縮リミッターの一実施形態を得る工程とを含む。このプロセスの利点は、結果として得られる圧縮リミッターに溶接線がなく(即ち、繊維配向がニットライン(knit line)の視覚的な形跡を示さなかった)、耐荷重特性が更に向上したことである。
【0050】
本発明は又、熱可塑性物体と、少なくとも1つの圧縮リミッターとを含むアセンブリに関する。本発明によるアセンブリでは、圧縮リミッターは、第1の熱可塑性ポリアミドポリマー組成物でできており、熱可塑性物体は、第2の熱可塑性ポリアミドポリマー組成物でできている。本明細書において、圧縮リミッターは、本明細書において上記で規定された第1のポリアミドポリマー組成物でできている。本明細書の好ましい実施形態では、熱可塑性物体は、圧縮リミッターを第2の熱可塑性ポリアミド組成物でオーバーモールドすることによって作製される。
【0051】
本発明によるアセンブリの利点は、アセンブリが、広い温度範囲に渡る高い耐荷重特性、圧縮リミッターと熱可塑性物体の間の良好な接着性、並びに様々な温度及び湿度条件と動的な機械的荷重の下での長時間の動作中の漏れのない密閉性を有することである。
【0052】
熱可塑性物体に使用される第2の熱可塑性材料は、第2のポリアミドポリマー組成物である。この組成物は、適切には、第1のポリマー組成物と異なり、第1の熱可塑性組成物における半芳香族ポリアミドとは異なるポリアミドを含み得、且つ/又は第1の熱可塑性組成物よりも少ない繊維強化剤を含む、又は更には繊維強化剤を全く含まない。適切には、第2の熱可塑性ポリアミド材料は、270℃未満の融解温度(Tm)を有する半結晶性半芳香族ポリアミド、又は脂肪族ポリアミド、又はこれらの組み合わせからその少なくとも50重量%はなるポリマー成分を含む。好ましくは、第2の熱可塑性ポリアミド材料は、PA-6、PA-66、PA46及びPA-410、並びにこれらの任意のコポリアミドから選択され得る脂肪族ポリアミドを含む。第2のポリアミドポリマー組成物は、例えば、
-30~100重量%の、融点(Tm)が270℃未満の前述の半結晶性半芳香族ポリアミド、又は熱可塑性脂肪族ポリアミド、又はこれらの組み合わせと、
-0~30重量%の、前述の半結晶性半芳香族ポリアミド以外の別のポリアミド、又は前述の半結晶性半芳香族ポリアミド以外の別のポリマー、又はこれらの組み合わせと、
-0~60重量%、好ましくは0~30重量%の繊維強化剤と、
-0~30重量%の無機フィラーと、
-0~25重量%の少なくとも1つの更なる添加剤と、を含み得、
この場合、パーセントは、組成物の総重量に対してであり、全ての前述の成分の合計量は、合計で100重量%になる。
【0053】
第2のポリアミドポリマー組成物及びそれからできた熱可塑性物体の耐荷重特性は、第1のポリアミドポリマー組成物及びそれからできた圧縮リミッターの耐荷重特性よりもはるかに低くさえあるが、耐荷重取り付け条件下でのアセンブリの性能は、本発明及びその様々な実施形態による圧縮リミッターの存在により強化される。
【0054】
本発明によるアセンブリの実施形態では、第1の熱可塑性材料は、適切には、120℃での第2のポリマー組成物の引張り弾性率よりも120℃で少なくとも50パーセント(50%)、好ましくは少なくとも75%大きい引張り弾性率を有する。
【0055】
又、本発明は、アセンブリを作製するためのプロセスに関する。このプロセスは、
-鋳型にキャビティを提供する工程と、
-キャビティにおいて少なくとも1つの圧縮リミッターを提供する工程と、
-第2の熱可塑性ポリアミド組成物をキャビティ中に射出成形し、これにより圧縮リミッターを第2の熱可塑性ポリアミド組成物でオーバーモールドし、射出成形された熱可塑性物体を作製する工程と、
-射出成形された熱可塑性物体を、その中に組み込まれた圧縮リミッターをオーバーモールドしてキャビティから取り外す工程と、を含む射出成形プロセスであり、
この場合、圧縮リミッターは、本明細書において上記で規定された第1のポリアミドポリマー組成物でできている。
【0056】
本発明によるアセンブリは、自動車用途及びE&E用途(E&E application)を含む様々な用途、より具体的には、エンジン、自動車用動力車システム、産業機械又は電子製品に使用することができる。特に好ましくは、アセンブリは、エンジンのフロントカバー、吸気マニホールド、アクチュエータハウジング、又は充電コネクタの部品、又は高電圧スイッチのアセンブリである。
【0057】
又、本発明は、本明細書で上記の通り、キャリアにおいて取り付けられる、本発明によるアセンブリを含む構造体に関する。好ましくは、アセンブリは、アセンブリにおいて圧縮リミッターを通過するフランジを有する少なくとも1つのボールド(bold)で、又はワッシャー及び圧縮リミッターを通過するボールドで取り付けられ、圧縮リミッターは、端部を有し、この場合、ワッシャー又はボールドのフランジの表面は、圧縮リミッターの端部表面と少なくとも重なり、好ましくはそれを超えて延びる。これには、アセンブリがキャリアに更に良好に固定され、動的な荷重、温度、及び湿度の条件下での構造体の有用な耐用年数が向上するという利点がある。
【0058】
本発明は、以下の実施例及び比較実験で更に例示される。
【0059】
[材料]
PPA-1 50重量%の細断されたガラス繊維と、0.3重量%の補助添加剤と、49.7重量%の半結晶性半芳香族ポリアミドとを含む射出成形可能なポリマー組成物であり、ポリアミド(PA)は、それぞれ、1,6-ヘキサンジアミンとテレフタル酸(6Tと略記)、1,4-ブタンジアミンとテレフタル酸(4Tと略記)、及び2-メチル-ペンタメチレンジアミンとテレフタル酸(DTと略記)から誘導される繰り返し単位からなるPA-6T/4T/DTコポリマー(58/32/10のモル比)組成物(DSMから)である。ポリアミドは、160℃のTg及び335℃のTmを有する。コポリマーを基づいたガラスが充填された化合物は、23℃で約18000MPaの弾性率、及び200℃で約5500MPaの弾性率を有し、前述の特性は記載された方法で測定される。
APA-1 50重量%の細断されたガラス繊維と、0.6重量%の補助添加剤と、49.4重量%のポリアミドPA-66とを含む射出成形可能なポリマー組成物であり、PA-66は、260℃のTmを有し、溶融重合とそれに続く固体状態後縮合(solid state post condensation)を伴う従来のプロセスにより調製される(DSMから)。
【0060】
[試験の方法]
圧縮荷重下の静的強度は、標準の引張り試験機にてそれぞれ23℃と120℃の試験バーにおいて測定した。試験バーは、標準試験バーにおけるシングルゲートモールド(single gated mold)又は溶接線を備えた試験バーの作製におけるダブルゲートモールド(double gated mold)のいずれかを使用して調製し、各ゲートは、標準の試験バーと同じ条件を適用中に、試料の反対側の端部に配置され、溶接線を形成する。試験バー(寸法:外径14.4mm、内径7.2mm、及び長さ約28mm)は、最初に120℃で1週間アニールして、試験の間の結晶化後の影響を排除し、次いで2つの金属表面の間に配置した。下側の表面は動かなかったが、上側の表面は、不良になるまで圧縮リミッターを圧縮した。加えられた力(荷重セルを介して)と圧縮リミッターの上側の表面の移動距離を測定した。120℃での測定では、試験はオーブン内で行い、ここで試験前に試料を最初に30分間120℃に加熱した。
【0061】
力の保持の測定では、試験バー(寸法:外径14.4mm、内径7.2mm、及び長さ約28mm)は、標準試験バーにおけるシングルゲートモールド又は溶接線を備えた試験バーの作製におけるダブルゲートモールドのいずれかを使用して調製し、各ゲートは、標準の試験バーと同じ条件を適用中に、試料の反対側の端部に配置され、溶接線を形成する。試験バーは、最初に120℃で1週間アニールして、試験の間の結晶化後の影響を排除し、次いでワッシャーと鋼板の間に配置し、室温(23℃、及び50%の相対湿度の条件)でM6ボルトによってボルトで固定した。ドーナツ型(donut)荷重セルを鋼板と圧縮リミッターの間に配置し、ボルトが圧縮リミッターに向かって加える力を測定した。この場合、10kNの予張力(pre-tension force)に達するまでボルトを締めた。1時間後、このセットアップ(setup)を最初に室温のオーブンに入れ、次いでオーブンを120℃に設定した。8時間後、オーブンのスイッチを切り、温度を23℃の温度まで冷やした。
【0062】
[射出成形による圧縮リミッターの作製]
[実施例1]
鋳型には、外径14.4mm、内径7.2mm、及び長さ約28mmの円筒形のキャビティが設けられた。PPA-1を溶融押出し、標準押出機(一軸押出機)と射出成形機を使用して鋳型キャビティに射出した。射出成形機のTメルト(T-melt)の設定温度は、約350℃であり、鋳型の温度は、約140℃であった。成形された部品を鋳型から取り外し、これにより射出成形された圧縮リミッターを得た。実施例1の射出成形された圧縮リミッターの3つの試験片を、試験方法において本明細書で上記の通り更に試験した。
【0063】
[比較実験A]
PPA-1の代わりにAPA1を使用したことを除いて、実施例1を繰り返した。射出成形機のTメルトの設定温度は、約295℃であり、鋳型の温度は、約70℃であった。
【0064】
[実施例2]
鋳型には、3次元形状を有するキャビティが設けられた。実施例1の射出成形された圧縮リミッターを鋳型に配置した。ポリマー組成物APA-1を溶融押出し、鋳型キャビティに射出し、これにより圧縮リミッターをオーバーモールドした。成形された部品を鋳型から取り外し、これにより実施例2の射出成形されたアセンブリを得た。実施例2を2回繰り返した。実施例2のアセンブリの2つの試験片を更に試験した。
【0065】
[比較実験B]
実施例1の射出成形された圧縮リミッターの代わりに、金属製の圧縮リミッターが鋳型に配置され、金属製の圧縮リミッターがAPA-1でオーバーモールドされたことを除いて、実施例2のアセンブリの作製を繰り返した。
【0066】
[比較実験C]
実施例2のアセンブリの作製は、実施例1の射出成形された圧縮リミッターの代わりに、比較Aの圧縮リミッターを鋳型に配置し、APA-1でオーバーモールドされたように改変した。
【0067】
[圧縮リミッターの試験]
圧縮リミッターのそれぞれの1つの試験片は、本明細書で上記の通り機械試験装置において圧縮試験にかけた。実施例1の圧縮リミッターは、比較Aの圧縮リミッターよりもはるかに大きな静的圧縮破壊力に耐えた(表1での結果)。
【0068】
アセンブリのそれぞれの別の試験片を圧縮試験にかけ、圧縮力の保持を試験した。比較Cのアセンブリでは、圧縮力の保持は、実施例1のものと比較してはるかに悪かった。
【0069】
表1及び2に示される結果は、本発明による圧縮リミッターが、広い温度範囲に渡る高い耐荷重特性、即ち、23℃及び120℃で高い静的圧縮破壊力及び圧縮力の保持を示したことを実証しており、これも又、良好な密閉性能を示している。
【0070】
【表1】
【0071】
【表2】
【国際調査報告】