(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-03
(54)【発明の名称】グラフェン変換器
(51)【国際特許分類】
H04R 23/00 20060101AFI20230127BHJP
H04R 31/00 20060101ALI20230127BHJP
B81B 3/00 20060101ALI20230127BHJP
B81C 1/00 20060101ALI20230127BHJP
H04R 19/01 20060101ALI20230127BHJP
H04R 19/00 20060101ALI20230127BHJP
【FI】
H04R23/00 330
H04R31/00 330
B81B3/00
B81C1/00
H04R19/01
H04R19/00 330
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022529929
(86)(22)【出願日】2020-11-24
(85)【翻訳文提出日】2022-06-10
(86)【国際出願番号】 US2020061957
(87)【国際公開番号】W WO2021167669
(87)【国際公開日】2021-08-26
(32)【優先日】2019-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-08-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521051299
【氏名又は名称】グラフオーディオ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(74)【代理人】
【識別番号】100208258
【氏名又は名称】鈴木 友子
(72)【発明者】
【氏名】ファウラー・バート
(72)【発明者】
【氏名】ケイル・デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】ファン・ユエンジン
(72)【発明者】
【氏名】エックストロム・ジェームズ・ワイアット
(72)【発明者】
【氏名】ウィルソン・ローレンス
【テーマコード(参考)】
3C081
5D019
5D021
【Fターム(参考)】
3C081AA13
3C081BA22
3C081BA45
3C081BA48
3C081BA53
3C081CA05
3C081CA14
3C081CA29
3C081CA32
3C081DA04
3C081DA25
3C081DA29
3C081DA31
3C081DA32
3C081EA21
5D019DD01
5D019HH01
5D021CC02
5D021CC06
5D021CC20
(57)【要約】
【課題】広帯域応答が可能な超音波変換器の利用可能性を広げる。
【解決手段】本発明は、超小型機械化超音波変換器とエレクトレット変換器を含むグラフェンベースの変換装置に関する。本願の複数の例示的実施形態は例示的装置、そのような装置への組み込み用回路、そのような装置を作る方法及び使用方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
裏打ち層と、
スペーサ層と、
振動板とを備える超小型機械化超音波変換器において、
裏打ち層が、第1のエッチングされた半導体、ガラス、又は高分子を含有し、
スペーサ層が、第2のエッチングされた半導体、ガラス、又は高分子を含有する、
超小型機械化超音波変換器。
【請求項2】
前記振動板がグラフェンを備える、請求項1に記載の超小型機械化超音波変換器。
【請求項3】
裏打ち層が、
(a)第1のエッチングされた半導体、ガラス、又は高分子上に配置された電極層、あるいは
(b)第1のエッチングされた半導体、ガラス、又は高分子上に配置された酸化物層
をさらに備える、請求項1に記載の超小型機械化超音波変換器。
【請求項4】
電極層は、銅、白金、金、イリジウム、タングステン、チタン、銀、パラジウム、金属合金(TiW、TiNなど)、ドープされたシリコン、金属ケイ化物(NiSi、PtSi、TiSi2、WSi2など)、インジウムスズ酸化物(ITO)、フルオレンドープスズ酸化物(FTO)、ドープ亜鉛酸化物、ポリ(3,4-エチレンジオキシチフェン)(PEDOT)及びその誘導体、カーボンナノチューブ、グラフェン、グラファイト、又は導電性又は半導電性カーボンからなる群から選択された材料を含有する、請求項3に記載の超小型機械化超音波変換器。
【請求項5】
スペーサ層が、
(a)第2のエッチングされた半導体、ガラス、又は高分子上に配置された導電性層、あるいは
(b)第2のエッチングされた半導体、ガラス、又は高分子上に配置された酸化物層
をさらに備える、請求項1に記載の超小型機械化超音波変換器。
【請求項6】
電極層は、銅、白金、金、イリジウム、タングステン、チタン、銀、パラジウム、金属合金(TiW、TiNなど)、ドープされたシリコン、金属ケイ化物(NiSi、PtSi、TiSi2、WSi2など)、インジウムスズ酸化物(ITO)、フルオレンドープスズ酸化物(FTO)、ドープ亜鉛酸化物、ポリ(3,4-エチレンジオキシチフェン)(PEDOT)及びその誘導体、カーボンナノチューブ、グラフェン、グラファイト、又は導電性又は半導電性カーボンからなる群から選択された材料を含有する、請求項5に記載の超小型機械化超音波変換器。
【請求項7】
第2スペーサ層をさらに備え、第2スペーサ層が第3のエッチングされた半導体、ガラス、又は高分子を含有し、最上層が第4のエッチングされた半導体又はガラスを含有している、請求項1に記載の超小型機械化超音波変換器。
【請求項8】
裏打ち層又は最上層が、裏打ち層又は最上層全体を貫通した複数の音響孔を備える、請求項7に記載の超小型機械化超音波変換器。
【請求項9】
装置を密閉すべく音響孔を覆って配置された音響整合材を備える、請求項8に記載の超小型機械化超音波変換器。
【請求項10】
音響整合材がグラフェンを含有する、請求項9に記載の超小型機械化超音波変換器。
【請求項11】
振動板又は裏打ち層が、永久埋め込み双極子モーメントを持つ誘電体材料をさらに含有する、請求項2に記載の超小型機械化超音波変換器。
【請求項12】
誘電体材料は、PTFE、過フッ素化ジオキソール、シクロオレフィン共重合体、BCB、PFCB、FEP、PFA、PVDF、VDF、PE、PP、PET、PI、PMMA、EVA、及びそれらの共重合体からなる群から選択された、請求項11に記載の超小型機械化超音波変換器。
【請求項13】
誘電体材料は、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、ガラス、PZT、遷移金属酸化物、酸化グラフェン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択された、請求項11に記載の超小型機械化超音波変換器。
【請求項14】
ケイ素、ガラス及び高分子からなる群から選択された材料を含有する裏打ち層を設けることと、
前記裏打ち層に第1導電性層を載せて設けることと、
複数の貫通孔を前記裏打ち層及び前記第1導電性層内に設けることと、
ケイ素、ガラス及び高分子からなる群から選択された材料を含有する第1スペーサ層を設けることと、
前記第1スペーサ層に第2導電性層を載せて設けることと、
1つの中央孔を前記第1スペーサ層及び第2導電性層に設けることと、
永久的に裏打ち層と、第1スペーサ層と、振動板とをつなげることであって、振動板は、グラフェン、h-BN、二硫化モリブデン及びそれらの組み合わせからなる群から選択された材料を含有する、前記つなげることと
を備える、超小型機械化超音波変換器の製造方法。
【請求項15】
前記振動板がグラフェンを備える請求項14に記載の方法。
【請求項16】
裏打ち層及びスペーサ層が、ケイ素を含有し、
第1導電性層及び第2導電性層を設ける前に、第1導電性層及び第2導電性層が第1酸化物層及び第2酸化物層に載るように、第1酸化物層を裏打ち層に載せ、第2酸化物層をスペーサ層に載せて設けることをさらに備える、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
ケイ素、ガラス及び高分子からなる群から選択された材料を含有する最上層を設けることと、
第3導電性層を最上層に載せて設けることと、
前記最上層及び第3導電性層に複数の貫通孔を設けることと、
ケイ素、ガラス及び高分子からなる群から選択された材料を含有する第2スペーサ層を設けることと、
第2スペーサ層に中央孔を設けることと、
裏打ち層と、振動板と、第2スペーサ層と、最上層とを永久的につなげることと
を備える、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
振動板が、第2導電性層に電気的に接続されている、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
裏打ち層と、スペーサ層と、振動板とを備える超小型機械化超音波変換器を提供することであって、振動板は、グラフェン、h-BN、二硫化モリブデン及びそれらの組み合わせからなる群から選択された材料を含有する、超小型機械化超音波変換器を提供することと、
裏打ち層に物理的に接している振動板を動かすのに十分な電場を生成することと
を備えた超小型機械化超音波変換器の動作方法。
【請求項20】
前記振動板がグラフェンを備える、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
裏打ち層が、振動板が裏打ち層に物理的に接するときに振動板と電極とが短絡を形成しないように構成された双極子の層を伴う電極を備える、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
振動板の中央が双極子の層に接触を続けている間、超小型機械化変換器を動作することをさらに備える、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
振動板を繰り返し(a)双極子の層に接触させることと、(b)振動板が双極子の層に接触しないように離すこととを含んで、超小型機械化変換器を動作することをさらに備える、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
複数の超小型機械化超音波変換器であって、各超小型機械化超音波変換器が、裏打ち層と、スペーサ層と、振動板とを備えて、振動板は、グラフェン、h-BN、二硫化モリブデン及びそれらの組み合わせからなる群から選択された材料を含有する、前記複数の超小型機械化超音波変換器と、
各超小型機械化超音波変換器内の応答を駆動又は検出すべく、各超小型機械化超音波変換器を処理回路に接続する複数の金属製相互接続部と
を備える変換器の配列。
【請求項25】
振動板がグラフェンを含有する、請求項24に記載の変換器の配列。
【請求項26】
全ての超小型機械化超音波変換器に電気的にひとまとめにアドレスが付けられている、請求項24に記載の変換器の配列。
【請求項27】
各超小型機械化超音波変換器に個別に電気的にアドレスが付けられている、請求項24に記載の変換器の配列。
【請求項28】
処理回路と個々の超小型機械化超音波変換器との間の金属製相互接続部が、実質的に同じワイヤ長さとインピーダンスとを持って、金属製相互接続部が処理回路と個々の超小型機械化超音波変換器との間に実質的に同じ信号伝送時間も持つ、請求項24に記載の変換器の配列。
【請求項29】
グラフェン振動板と、
第1電極と、
前記グラフェン振動板又は前記第1電極に適用された帯電エレクトレット材料と
を備える変換器。
【請求項30】
第2電極をさらに備える、請求項29に記載の変換器。
【請求項31】
エレクトレット材料が、グラフェンの前記振動板に適用されている、請求項29に記載の変換器。
【請求項32】
エレクトレット材料が、第1電極又は第2電極に適用されている、請求項30に記載の変換器。
【請求項33】
エレクトレット材料は、PTFE(例えば、テフロン)、過フッ素化ジオキソール(例、テフロンAF)、シクロオレフィン共重合体、BCB、PFCB、FEP、PFA、PVDF、VDF、PE、PP、PET、PI、PMMA、EVA、ポリエーテルイミド(PEI又は「Ultem」)及びそれらの共重合体からなる群から選択された、請求項30に記載の変換器。
【請求項34】
エレクトレット材料が、二酸化ケイ素(例えば、水晶)、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、ガラス、PZT、遷移金属酸化物、酸化グラフェン、フッ素ドープ酸化ケイ素(例、F-TEOS)、二酸化ハフニウム、ケイ酸ハフニウム、二酸化ジルコニウム、及びそれらの組み合わせからなる群から選択された、請求項30に記載の変換器。
【請求項35】
前記変換器の動作に必要な電圧は、エレクトレット材料を省いた変換器の動作に必要な電圧より低い、請求項30に記載の変換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連する特許出願の参照による組み込み
この出願は、米国特許法第119条(e)項に準じて、2019年11月26日出願の米国特許出願第62/940516号、及び2020年8月11日出願の米国特許出願第63/064062号に基づくと共に当該両出願について優先権を主張するものであり、それら特許出願の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本出願は、超小型機械化(マイクロメカニカル)超音波変換器及びエレクトレット変換器を含む、グラフェンベースの変換装置に関する。本出願の例示的な実施形態は、例示的な装置、そのような装置に組み込む回路、及びそのような装置を製造及び使用する方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
変換器は、エネルギーをある形式から別の形式に変換する。なじみのある変換装置は、電気エネルギーを音響エネルギーに変換するスピーカーである。よって、一連の音を電気信号として表すことが可能であり、その信号は、電気信号に対応する異なる周波数で振動させられるスピーカーの部分によって、スピーカーによって音に変換される。マイクロフォンは、音響エネルギーを電気エネルギーに変換するもう1つの変換装置である。音波によってマイクロフォンの特定の部品が振動するため、マイクロフォンは電気信号を生成する。これらの信号は、後でスピーカー再生するよう分析又は保存されることがある。
【0004】
音響エネルギーは波の形で伝えられる。このような波は、変換装置に到達する前に、空気中の気体粒子などの物質を伝播することがある。波の周波数に応じて、音響エネルギーは人間に聞こえるものがあり、聞こえないものもある。人間は、約20Hzから20kHzの周波数、つまり可聴範囲内の音波しか知覚できない。この範囲を超える周波数、つまり20kHzを超える周波数を持つ音波は、周波数の高い音で、「超音速」と言われている。この範囲より低い周波数、つまり20Hz未満の周波数を持つ音波は、周波数の低い音と呼ばれ、超低周波音と呼ばれる。
【0005】
変換装置の重要な側面の1つは、装置がどのように音の振動を生成又は計測するかである。動的システムでは、(ワイヤーのコイルのような)導体が振動板に接続され、永久磁場内に配置される。ダイナミックスピーカーは、導体に交流電流を流して振動板を振動させることで音を出し、ダイナミックマイクは、振動板が入ってくる音で振動するときに導体で発生する電流を計測することで音を録音する。対照的に、静電システムでは、導体は永久電界内に配置された振動板に接続される。静電スピーカーは、振動板又は電界を生成するコンポーネントに交流電流を流すことによって音を生成し、静電マイクは、振動板が振動するときに生成される電流を計測することによって音を録音する。
【0006】
コンデンサ(又はキャパシタ)マイク、及びエレクトレットコンデンサマイク(ECM)は、静電変換装置の一種である。
コンデンサマイクとECMは、電子機器、商用オーディオテクノロジー、スタジオサウンドレコーディング、ガスイオン検出器など、研究や業界のさまざまな適用で非常に有用である。コンデンサマイクロフォンの検知や変換要素は、通常、導電性材料の薄層でコーティングされたポリエチレンテレフタレート(PET)で作られた振動板(又はメンブレン)、固定されたバックプレート電極、前述の要素間の間隙を作るスタンドオフ周辺ライニング絶縁体を備える。誘電性の空気の間隙はこの設計の特徴であり、一緒になってマイクロフォンカプセルを形成する。
【0007】
全てのマイクロフォンに共通しているのは、電極と振動板の間の誘電体間隙にかかるバイアス電圧である。
振動板にいくらかの圧力がかかると、電圧は、入ってくる音波と同じ周波数で、変位の比率δ(t)対d0、つまり平衡間隔に比例して変化する。このAC信号は、振動板と相互作用する際の着信音の性質を解釈するために使用される。コンデンサマイクでは、可変コンデンサにバイアスをかけるためにDC電源が必要だが、ECMプラットフォームではエレクトレットを使用して自己バイアスをかける。純粋なコンデンサマイクは、通常、バッテリー又はファンタム電源によって供給される偏波電圧として外部電力を受け取る。ECMは、エレクトレット層を使用してバイアス電圧として機能するという点で、純粋なコンデンサマイクとは異なる。製品の寿命が長いため、消費電力が少なくなる。ECMマイクは、動作に必要な電力が少ないため、一般に、さまざまな状況でより便利で効率的である。エレクトレットコンデンサの設計に与えられる利点の中には、軽量で携帯性のある組立体、拡張された周波数ピックアップ範囲、サイズの小型化、及び均一な周波数応答がある。
【0008】
エレクトレット帯電層は、典型的にはテフロン(登録商標)でできているが、他の帯電誘電体にしてもよい。他の帯電誘電体としては、PMMA、水晶、又はエレクトレット帯電方法で帯電したときに準永久的な電圧を提供する他の材料などがある。
帯電は、空間電荷、表面電荷、整列した双極子モーメント、又は帯電方法に応じたそれらの組み合わせによって促進される。歴史的に、エレクトレット膜はマイクロフォンで使用され、振動板の別の層として適用される。これは、フォイルタイプのECMとしても知られている。最終的に、エレクトレットは振動板から重量を減らすため電極に移動され、マイクの性能が向上した。その後、これがECMの標準構成になった。製造面では、エレクトレットマイクは、装置間で優れた再現性のある性能を持ち大量生産できる。
【0009】
静電型スピーカーとコンデンサマイクは、動作原理が似ているため、多くの構造上の類似点を共有している。したがって、音を生成する同じ構造要素は、基礎となる電子機器が再構成された場合にも音をとらえられる。
静電型スピーカーは、単一の電極のみが必要であるという意味のオープンフェイス構成か、第2電極が等距離にあり振動板の反対側にあるプッシュプル構成になるだろう。どちらの構成でも、振動板接着層又は電極接着層としてエレクトレットに対応できる。プッシュプルラウドスピーカー構成では、第2固定子は、単一電極の非線形性に対応する振動板に垂直な静電力を均等化するのに役立つ。2つの孔あき固定子が交流(AC)信号を伝送している間、導電性膜には直流(DC)バイアス電圧が印加される。
【0010】
静電型スピーカーとマイクロフォンは、一般的に動的システムと比較して優れた音響特性を備えているが、重要な欠点もある。
特に、ほとんどの市販の静電型スピーカーで使用されているバイアス電圧は数千ボルトであり、ヘッドホン製品は数百ボルトである。ポータブル電池はその電圧はるかに低い電圧(例えば、最大12ボルト)を提供するため、ポータブル静電装置は、比較的複雑な回路構成を伴ってかさばり、実用的ではない増幅器を要することになる。この要件は、主流のオーディオ消費者間のユーザーシップを制限する。したがって、静電装置を動作させるために必要な動作電圧を下げる必要がある。
【0011】
本出願の発明者は、前述のことに対処するグラフェン静電変換器を開発してきた。特に、本出願による変換器は、グラフェンエレクトレットを使った手法(アプローチ)を利用し、これは、現在の技術よりも高品質のオーディオを提供し、変換装置の駆動に必要な電圧を下げる。
【0012】
特に超音波装置に関しては、変換器の設計が進化し、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)などの圧電セラミックをアレイに取り付け、高度な高分子材料と統合した最先端の技術が普及している。
圧電ベースの技術は、装置の形状によって決定される狭くて離散的な超音波周波数範囲内でのみ動作する狭帯域変換装置を製造している。従来の圧電ベースの手法では、電気刺激を使用して、圧電結晶の共振周波数で機械的振動を誘発する。このようなシステムでは、電圧を2つの金属電極に印加して、PZT内の電気双極子の急速な再配向に基づいて圧電材料をその固有振動数で膨張、収縮可能である。従来のPZTベースの装置の例を
図1に示す。装置(10)は、下部電極(12)、上部電極(13)、及び圧電材料(14)を備える筐体(11)を備える。下部電極(12)の後ろには、裏打ち材(15)がある。上部電極の上には、1つ又は複数のインピーダンス整合層(15、16)がある。最後に、PZTベースの装置には音響レンズと保護高分子が(17、18)使われている。
【0013】
実際には、圧電ベースのシステムには、したがって、複数のPZT変換器が含まれ、それぞれが特定の目標周波数で共振するように設計されている。このようなアレイは、通常、
図2に示すように、PZT材料を切断することによって作成される。製造はバルクPZT材料(20)から始めて、これは複数の第1カット(21)を作成するためにダイシングされる。材料(20)は、第1カット(21)に直交する方向にダイシングされ、複数の第2カット(22)が作成される。第1カット(21)と第2カット(22)は、縦横に切れ目が入った柱状部(23)を形成する。カット(21、22)によって作成された空間は、エポキシ又は他の適切な材料で満たされ、次に、PZT材料(20)の底部が覆われてPZTアレイ(25)が作成される。システムのサイズ、重量、及び電力は周波数の数に比例するため、圧電ベースのシステムは、使用可能な周波数の数が少ない場合にのみ制限される。
【0014】
従来のPZT変換器技術は非常に成熟していて、現在、ほとんどの超音波センサーの主要な選択肢となっている。しかし、最近では、容量性超小型機械化超音波変換器(CMUT)又は圧電超小型機械化超音波変換器(PMUT)の形で懸架振動板を使用する変換器が導入された。
例示的なCMUT断面を
図3に示す。装置(30)は、シリコン製の電極(31、32)及び膜(33)を備える。膜(33)は、AC電圧及びDC電圧の組み合わせを電極(31、32)に与えることによって、膜(33)及び絶縁層(36)によって境界を付けた空洞(35)にたわませられる(34)。装置(30)は、シリコン基板(37)上に製造される。
【0015】
例示的なPMUT断面を
図4に示す。装置(40)は、電極(41、42)及び圧電層(43)を備える。電極(42)の下には、二酸化ケイ素層(44)がある。装置(40)は、圧電層(43)に結合された二酸化ケイ素(S
1O
2)層(44)の曲げ運動に基づいて音を生成する。二酸化ケイ素層(44)は、二酸化ケイ素層(44)及びシリコン基板(46)によって境界を付けた空洞(46)にたわませられる(45)。
【0016】
これらの装置は合わせて、一般に超小型機械化超音波変換器(MUT)として知られている。
【0017】
MUTは、従来のバルクPZT変換器技術に比べて、従来のBJT及びCMOS集積回路技術に直接統合できて、既存の半導体ベースの製造装置、インフラストラクチャ、及び技術プラットフォームを使用して製造できるなど、いくつかの利点がある。
超音波周波数に必要な一般的に小さい変換器サイズと成熟した超小型機械化基盤技術が組み合わさって、半導体製造業を推進するものと同様の規模の経済的有利点を提供する。例えば、直径8インチ(約0.2m)の単一の基板で数千のCMUT装置を生成できる。これは、低コスト、大量生産につながる。
【0018】
MUTの一般的なサイズでは、単一の装置に、多くの場合アレイに配置された多くの個別の変換器を組み込み可能である。この構成により、アレイスタイルのMUTを、バルクPZTベースの技術を使用する場合よりもはるかに多くの周波数に調整できる。このように、MUTは88鍵のグランドピアノのようなもので、より多様な超音波周波数を生成(及び検出)する性能である一方、バルクはPZTは、子供の4鍵ピアノのようなもので、比較的限られた音のセットを生成(及び検出)する性能である。
【0019】
さらに、CMUT変換器は通常、オーディオスペクトルの単一周波数線幅(通常は半値全幅)を示す。これは、バルク圧電ベースの装置よりも本質的にはるかに狭いため、特定の通過帯域内で実質的により多くの情報を送受信できる。したがって、通信暗号化の改善、例えば医療への適用での高解像度画像、及びより高電力密度の信号を生成する一般的な機能に直接つながる。
【0020】
各装置の通過帯域は、基本的にMUTサイズによって制限される。アレイ形式で製造された場合、複数の周波数プロファイルとより大きなシステム帯域幅を提供するために、必要に応じて装置サイズをアレイ全体で変更可能である。静電容量ベースのCMUTの高インピーダンスの性質は、アレイ形式に適した低電力要件に直接つながる。CMUT技術は、「コヒーレントフォーカルプレーンアレイ」構成でも使用できる。この構成では、アレイ内の全ての要素からの全ての送信信号と受信信号が位相整合されて、コヒーレンシー(音の干渉性)が実現される。
【0021】
よって、MUTは、バルク圧電ベースの手法と比較していくつかの利点を提供する。
【0022】
MUTは、MEMSスタイルの表面超小型機械化(マイクロマシニング)製造手法を使用して製造され、MUT内の個々の懸架部(サスペンション)の直径は約500μm未満である。
これらの装置は通常、1から40MHzの範囲で動作し、装置の寸法や振動板のプロパティを変更することで、さまざまな周波数に調整できる。
MUTは周波数が高い動作範囲であるため、より低い超音波周波数を必要とする物体探知装置(SONAR)のような多くの超音波の適用には適さない。代わりに、MUTは一般に、医用画像、顕微鏡、インクジェット印刷、非破壊検査、ジェスチャ検出、指紋読み取りのような短距離、高解像度の画像への適用に使用される。従来の圧電ベースの変換器と同様に、MUTも、その構造が鋭い共振曲線を促進するため、狭い共振器のような応答を示す。
図5は、従来のCMUT装置の周波数応答曲線を示し、振動板の直径によって周波数応答がどのように変化するかを示す。PMUTは同様の応答曲線を示す。つまり、両方のクラスの装置は、装置の材料特性と直径のサイズに基づいて調整可能な共振周波数を備えた共振器として本質的に機能する。
【0023】
ただし、特にアレイ構成でのPMUT技術のよく知られた欠点は、大きな消費電力と関連する加熱の問題である。よって、多くの適用では、MUTは、複数の周波数にわたる送信又は検出が必要な状況で、複数のMUT変換器を備えたアレイ構成で使用する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
よって、MUTは、特定の適用で従来の圧電ベースのバルク装置に勝る有利点を提供するが、それでも同じ欠点の多くを示し、さらに全てのタイプの超音波探知に対応できるわけではない。
広帯域伝送を生成する機能がない場合、従来のバルク圧電ベースの装置とMUTの両方を、目的の適用ごとに設計する必要があり、複数の周波数にわたる応答を実現するために変換器のアレイを利用する必要がある。アレイであっても、これらの構成は、広い超音波範囲ではなく、一連の周波数にわたってのみ機能するため、真に広帯域ではない。さらに、複数の周波数にわたる応答に必要なアレイは、エネルギーとリソースの効率が悪く、そうでなければ製造と運用に費用がかかる。
【0025】
超音波技術は、ますます多くの最新システムに組み込まれている。
これらの異種システム全体の多様な工学的要件に対応するには、MUTの利点を備えながら、アレイ構成を頼みとせず、超音波(及び潜在的に可聴)範囲で広帯域応答を生成できる広帯域超音波送信機及び受信機が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0026】
要約
低質量、高弾性率、優れたキャリア移動度、及び化学的不活性を備えたグラフェンベースの振動板は、同等の材料よりも優れた音響性能を発揮するために望ましいものである。
本出願は、エレクトレット対応の音響適用のグラフェン振動板に部分的に関連している。
2次元グラフェン振動板を備えたエレクトレット対応のマイク又はスピーカーは、優れたパフォーマンスを提供しながら自己バイアスをかける。これは、グラフェン膜の薄さと強度により、PETなどの他の膜よりも大幅に質量が少ない補完的なハイブリッド膜の積層体としてエレクトレット膜を追加できるためである。振動板又は電極に接着されたエレクトレット膜を利用すること(これは、静電スピーカー設計)により、本出願の実施形態は、スピーカーの新時代の到来を告げるのを助けるために、より効率的で省スペースの電子駆動手段を可能にする。
【0027】
本発明に使用されるエレクトレット材料は、電界を生成する永久電荷を維持できる固有の絶縁体又は誘電体である。
これらの電荷は、表面電荷、材料の表面から任意の距離内の空間電荷、又は恒久的に配向された双極子の形をとることがある。本出願の発明では、フルオロ高分子、シリコンベースの絶縁体、又は他のタイプの双極子含有高分子を備える、多くの異なるエレクトレット材料を使用できる。
【0028】
本出願によるグラフェンエレクトレット変換器の1実施形態は、銅、真ちゅう、又は他の同様の材料などの導電性材料の環状の懸架グラフェン振動板を備える。
環部は任意の形状(正方形、長方形、又は楕円形やそらまめ形などの他の複雑な形状など)してよく、グラフェン振動板の形状は環部の形状と一致する。一般に、グラフェン振動板の直径は、全体的な形状と用途に応じて、3から9、9から18、18から30、又は30から50mmの範囲内に収まるように設計されている。振動板は、60nmから120nmのグラフェンの厚さと、60nmから180nmのエレクトレット膜で構成されている。これらの膜は、マイラー又はPET膜を使用する通常の装置(通常は2μmから6μm)で従来可能であったものよりもはるかに薄く、(物理的)コンプライアンスに準拠している。グラフェン振動板は、システムの特定の音響ニーズに応じて粘性減衰を管理するために剛性とコンプライアンスを調整できるため、マイラー振動板やPET振動板よりもうまく全体的な大きさを小さく(スケールダウン)できる。エレクトレット膜は、振動板の損傷を防ぎ、その完全性を維持する機械的支持層として機能する。
【0029】
本出願による1実施形態では、縁の環部上に懸架された、エレクトレット材料を備えた振動板は、それを1つ又は複数の電極から分離する誘電体スペーサを持つであろう。
誘電体スペーサは、例えば、ナイロン、PET、マイラー、又はポリカーボネートであってよい。誘電体スペーサは、振動板が導電性電極で短絡するのを防ぎ、振動板変調のためのエア間隙を確立するために使用される。電極も真ちゅう、銅、アルミニウム、又はその他の導電性材料でできているか、FR-4(ガラスエポキシ基板)(FR4)などの複合材料である場合がある。その上に銅電極面がある。電極をコーティングするためにエレクトレット膜を動かすという、より従来の構成を選択する場合、これは構造的に許容されるであろう。
【0030】
一般に、静電力は電極間隔に対して非線形であるため、間隙が小さいほど、変換器の効率が高くなる。
より小さな駆動手段とより小さな間隙もまた、一般的に超音波適用を可能にする。プッシュプル構成を使用して、静電力の非線形性を克服できる。一部の構成では、特に低周波数範囲で、振動板エクスカーションの両端の変位が大きくなるため、より大きな間隙が必要になる場合がある。エレクトレット材料の追加は、通常はDC電源を必要とする自己バイアスを導入するため、特に有利である。このようにして、本出願によるグラフェンエレクトレット変換器は、より少ない電力を消費し、したがって、ドライバの電子機器を単純化する。振動板又は電極にエレクトレット材料を塗布してもよい。
【0031】
本出願の発明者はまた、二次元材料、特にグラフェンベースの変換器を利用して、MUTのようなプラットフォーム内で広帯域超音波応答を生成する新規のMUTを発明した。
このような装置は、単一の変換器で広帯域応答を生成できる。したがって、そのようなグラフェンベースのMUTのアレイは、広帯域応答には必要ではなく、そのようなグラフェンベースのMUTのアレイが提供される場合、アレイは、電力出力の増加、あるいは独自の指向性の特性を持つ信号の送受信のような他の目的のために構成されてよい。
【0032】
よって、1観点では、本出願は、グラフェンMUTを提供し、これを、本出願の発明者は、ある状況では、GMUT(「グラフェン超小型機械化超音波変換器」)という。
いくつかの実施形態では、GMTUは、CMUT又はPMUTと同様の設計を持つであろう。例えば、いくつかの実施形態では、GMUTは、筐体及び裏打ち材料を備えるであろう。いくつかの実施形態では、GMUTは、下部電極及び/又は上部電極を備えるであろう。いくつかの実施形態では、GMTUは、1つ又は複数のインピーダンス整合層を備えるであろう。いくつかの実施形態では、GMUTは、音響レンズ及び保護高分子を備えるであろう。いくつかの実施形態では、GMTTは、シリコン又はガラス基板を備える。いくつかの実施形態では、GMUTは、従来の静電変換器のように、より高い効率及びより良い感度(振動板のたわみ/電圧)を達成するために、プッシュプルモードで動作する第2電極を備えてよい。重要なのは、グラフェンの物理的特性に基づいて、GMUTがシングル又はデュアルステーター装置として構成されていることである。広帯域機能、非常に低い質量、及びグラフェンの重量あたりの強度が高いため、標準の圧電ベース及びMUT変換器に比べて大きな有利点がある。
【0033】
別の観点では、本出願は、裏打ち層、スペーサ層、グラフェン振動板を備えるグラフェン超小型機械化超音波変換器を提供し、裏打ち層は第1のエッチングされた半導体又はガラスを含有し、スペーサ層は第2のエッチングされた半導体又はガラスを含有する。
別の観点では、裏打ち層は、(a)第1のエッチングされた半導体又はガラス上に堆積された電極層、又は(b)第1のエッチングされた半導体又はガラス上に堆積された酸化物層をさらに備える。
別の観点では、電極層は、銅、白金、金、イリジウム、タングステン、チタン、銀、パラジウム、金属合金(TiW、TiNなど)、ドープされたシリコン、金属ケイ化物(NiSi、PtSi、TiSi2、WSi2など)、インジウムスズ酸化物(ITO)、フルオレンドープスズ酸化物(FTO)、ドープ亜鉛酸化物、ポリ(3,4-エチレンジオキシチフェン)(PEDOT)及びその誘導体、炭素ナノチューブ、グラフェン、グラファイト、又は導電性又は半導電性炭素からなる群から選択されている。
別の観点では、スペーサ層は、(a)第2のエッチングされた半導体又はガラス上に堆積された導電性層、又は(b)第2のエッチングされた半導体又はガラス上に堆積された酸化物層をさらに備える。
別の観点では、電極層は、銅、白金、金、イリジウム、タングステン、チタン、銀、パラジウム、金属合金(TiW、TiNなど)、ドープされたシリコン、金属ケイ化物(NiSi、PtSi、TiSi2、WSi2など)、インジウムスズ酸化物(ITO)、フルオレンドープスズ酸化物(FTO)、ドープ亜鉛酸化物、ポリ(3,4-エチレンジオキシチフェン)(PEDOT)及びその誘導体、炭素ナノチューブ、グラフェン、グラファイト、又は導電性又は半導電性炭素からなる群から選択されている。
【0034】
別の観点では、本出願は、グラフェン超小型機械化超音波変換器に第2スペーサ層及び最上層を提供し、第2スペーサ層は第3のエッチングされた半導体又はガラスを含有し、最上層は第4のエッチングされた半導体又はガラスを含有する。
別の観点では、裏打ち層又は最上層は、裏打ち層全体又は最上層を通って延在している音響孔を備える。
さらなる観点では、グラフェン超小型機械化超音波変換器は、装置を密封するために音響孔の上に配置された音響整合材料を持つ。
別の観点では、音響整合材料はグラフェンを備える。
【0035】
別の観点では、本出願は、グラフェン超小型機械化超音波変換器を製造する方法を提供し、この方法は、
第1シリコンウェーハを提供し、
第1シリコンウェーハ上に第1酸化物層を提供し、
第1酸化物層又は第1シリコンウェーハ上に第1導電性層を提供し、
第1シリコンウェーハ、第1酸化物層、第1導電性層を貫通して孔を作成すべく第1シリコンウェーハをエッチングし、
第2シリコンウェーハを提供し、
第2シリコンウェーハ上に第2酸化物層を提供し、
第2シリコンウェーハ又は第2酸化物層上に導電性層を提供し、
第2シリコンウェーハ、第2酸化物層、及び後に第2導電性層を貫通する孔を作成すべく第2シリコンウェーハをエッチングし、
エッチングされた第1シリコンウェーハ、第2シリコンウェーハ、グラフェン振動板を永久的に接合する
工程を備える。
別の観点では、この方法は、
第3シリコンウェーハを提供し、
第3シリコンウェーハ上に第3酸化物層を提供し、
第3シリコンウェーハ及び第3の酸化物層を貫通する孔を作成すべく第3シリコンウェーハをエッチングし、
第4シリコンウェーハを提供し、
第4シリコンウェーハ上の第4酸化物層を提供し、
第4シリコンウェーハと第4酸化物層を貫通する孔を作成すべく第4シリコンウェーハをエッチングし、
エッチングされた第1シリコンウェーハ、エッチングされた第2シリコンウェーハ、グラフェン振動板、エッチングされた第4シリコンウェーハ、及びエッチングされた第3シリコンウェーハを永久的に接合する
工程を備える。
別の観点では、グラフェン振動板は、第2導電性層に電気的に接続されている。別の観点では、この方法は、第3酸化物層又は第3シリコンウェーハ上に第3導電性層を提供することを備える。
【0036】
別の観点では、本出願は、グラフェン超小型機械化超音波変換器を作動する方法を提供し、この方法は、裏打ち層、スペーサ層、及びグラフェン振動板を備えるグラフェン超小型機械化超音波変換器を提供し、グラフェン振動板を裏打ち層に物理的に接触させる。
別の観点では、裏打ち層は、グラフェン振動板が裏打ち層と物理的に接触するように移動するときに、グラフェン振動板及び電極が短絡を引き起こすのを防ぐ絶縁層を備えた電極を備える。別の観点では、この方法は、グラフェン振動板の中心を絶縁層に接触させたまま、グラフェン超小型機械化超音波変換器を操作することを備える。
別の観点では、この方法は、グラフェン振動板が絶縁層に接触し、次にグラフェン振動板が絶縁層に接触しないように解放することを含んで、グラフェン超小型機械化超音波変換器を作動することを備える。
【0037】
別の観点では、本願は、複数のグラフェン超小型機械化超音波変換器を備える変換器のアレイを提供する。各グラフェン超小型機械化超音波変換器は、裏打ち層、スペーサ層、及びグラフェン振動板を備え、各グラフェン超小型機械化超音波変換器を処理回路構成に接続する金属相互接続を備える。左記の処理回路構成は、各グラフェンマイクロマシン超音波変換器の応答を駆動又は検出するように構成されている。
別の観点では、グラフェン超小型機械化超音波変換器は、電気的に一緒にアドレスが付与される(すなわち、それらは全て電気的に接続される)。
別の観点では、変換器のグループは個別に扱われる。
別の観点では、グラフェン超小型機械化超音波変換器のそれぞれは、個別に扱われる。
別の観点では、処理回路と個々の変換器との間の金属相互接続は、例えば、高精度のビーム形成を可能にするために、同じワイヤ長を持つ。
【発明の効果】
【0038】
本出願の主題の結果として、複数のCMUTセルの必要性(複数波長機能を実現するために、各セルが異なる共振周波数を持つ必要がある場合)なしで、単一のGMUTセルからの広帯域伝送の提供が可能になり、周波数変調(FM)伝送、周波数掃引、スペクトラム拡散、周波数ホッピング、及びその他の高度な信号変調方法が可能になる。
【0039】
広帯域幅機能により、PMUTベース又は同様のディスクリート周波数装置の各周波数に追加の変換器が必要になるため、物理的なサイズと重量がはるかに小さいGMUT送信機受信機(TxRx)システムが実現するが、単一のGMUT変換器セルから数十万の周波数を利用できる可能性がある。
ほぼ同じサイズのセルを使用すると、GMUTは、現在のCMUT及びPMUT機能をはるかに超える周波数を包含しながら、はるかに低い超音波周波数まで拡張できる。
さらに、より広い周波数応答を実現するためにCMUT及びPMUT装置で通常使用されるアレイ構成をGMUT装置に実装して、代わりにはるかに高い電力密度とビーム操縦機能を生成できる。
【0040】
本出願の装置は、必要なエンジニアリング及びカスタマイズが少なくて済み、多様な技術分野で使用できる。
例えば、本出願のGMUTは、物体探知(SONAR)適用(オーディオ以下)で使用できる。各GMUTセルは、他のMUT技術とは異なり、これらの範囲で機能できるため、超音波範囲は1から800kHzである。さらに、本出願のGMUTは、各GMUTセルもこれらの範囲で機能できるため、約1から40MHzのより高い超音波周波数範囲を必要とする高解像度医用画像、顕微鏡検査、及び欠陥分析にも役立つ。本出願のGMUTは、空間要件が厳しい特定の適用に対してもより効果的である。例えば、GMUTは、異なる周波数を提供するために複数のセルを必要としないため、小型プローブカテーテルの適用でより効果的に使用できる。
【0041】
本出願のGMUT装置はまた、従来のMUT技術と比較して、超広帯域応答性でより良い受信感度を提供する。これらのGMUTは、例えば、広帯域送信機(Tx)受信機(Rx)装置として、近距離無線通信(NFC)装置として、又は自動運転車やオーディオマイク用のNFCや反響定位装置として使用できる。本出願のGMUT装置は、極端な動作条件に対しても耐久性がある。
【0042】
本出願のグラフェンエレクトレット変換器の実施形態の要素は、本出願のGMUT装置の要素と互換性があることが理解されよう。言い換えると、GMUT装置はエレクトレット設計を採用可能であり、エレクトレット変換器はGMUTであることが理解されよう。同様に、本出願によるグラフェンエレクトレット変換器は、GMUT以外の設計で具体化できて、本出願によるGMTは、エレクトレット設計を組み込む必要がないことが理解されよう。
【0043】
本出願のさらなる目的、特徴、及び有利点は、図及び図と一緒に検討されたときに以下に記載される好ましい実施形態の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】
図1は、基本的な従来のPZT変換器プローブ構造を示す
【
図5】
図5は、従来のCMUT装置の周波数応答曲線を示し、振動板の直径によって周波数応答がどのように変化するかを示す。
【
図6】
図6は、グラフェン又は別の超高強度2次元膜を使用した容量性変換器装置の例を示す。
【
図8A】
図8は、下がりモードアーキテクチャの例示的な実施形態を示す。
【
図8B】
図8は、下がりモードアーキテクチャの例示的な実施形態を示す。
【
図9】
図9は、後部電極に音響ベントホールを備えた空気減衰装置の例示的な実施形態を示す。
【
図10】
図10は、連続的な背面電極を備えた空気減衰装置の例示的な実施形態を示す。
【
図11】
図11は、グラフェン又は別の超高強度2次元膜を使用した静電プッシュプル変換器装置の例示的な実施形態を示す。
【
図12】
図12は、高圧環境用の外部密封部を備えたプッシュプルGMUTeの例示的な実施形態を示す。
【
図13】
図13は、高圧環境用の外部密封部を備えたプッシュプルGMUTeの別の例示的な実施形態を示す。
【
図14】
図14は、オープンフェイス変換器用の送信機及び受信機の電子配置の例示的な実施形態を示す。
【
図15A】
図15は、単一及びアレイ構成で本出願の発明者によって製造された例示的なグラフェン変換器を示す。
【
図15B】
図15は、単一及びアレイ構成で本出願の発明者によって製造された例示的なグラフェン変換器を示す。
【
図15C】
図15は、単一及びアレイ構成で本出願の発明者によって製造された例示的なグラフェン変換器を示す。
【
図16】
図16は、誘電性流体又は気体で密封された変換器装置の例示的な実施形態を示す。
【
図17A】
図17は、同軸変換器アーキテクチャの例示的な実施形態を示す。
【
図17B】
図17は、同軸変換器アーキテクチャの例示的な実施形態を示す。
【
図18A】
図18は、位相整合フラクタルアンテナアーキテクチャの例示的な実施形態を示す。
【
図18B】
図18は、位相整合フラクタルアンテナアーキテクチャの例示的な実施形態を示す。
【
図18C】
図18は、位相整合フラクタルアンテナアーキテクチャの例示的な実施形態を示す。
【
図19A】
図19は、本出願の特定の実施形態を製造する製造方法の例示的な実施形態を示す。
【
図19B】
図19は、本出願の特定の実施形態を製造する製造方法の例示的な実施形態を示す。
【
図20A】
図20は、本出願の特定の実施形態を製造する別の製造方法の例示的な実施形態を示す。
【
図20A1】
図20は、本出願の特定の実施形態を製造する別の製造方法の例示的な実施形態を示す。
【
図20B】
図20は、本出願の特定の実施形態を製造する別の製造方法の例示的な実施形態を示す。
【
図20B1】
図20は、本出願の特定の実施形態を製造する別の製造方法の例示的な実施形態を示す。
【
図20C】
図20は、本出願の特定の実施形態を製造する別の製造方法の例示的な実施形態を示す。
【
図20C1】
図20は、本出願の特定の実施形態を製造する別の製造方法の例示的な実施形態を示す。
【
図20D】
図20は、本出願の特定の実施形態を製造する別の製造方法の例示的な実施形態を示す。
【
図20D1】
図20は、本出願の特定の実施形態を製造する別の製造方法の例示的な実施形態を示す。
【
図20E】
図20は、本出願の特定の実施形態を製造する別の製造方法の例示的な実施形態を示す。
【
図20E1】
図20は、本出願の特定の実施形態を製造する別の製造方法の例示的な実施形態を示す。
【
図20E2】
図20は、本出願の特定の実施形態を製造する別の製造方法の例示的な実施形態を示す。
【
図20F】
図20は、本出願の特定の実施形態を製造する別の製造方法の例示的な実施形態を示す。
【
図20F1】
図20は、本出願の特定の実施形態を製造する別の製造方法の例示的な実施形態を示す。
【
図20F2】
図20は、本出願の特定の実施形態を製造する別の製造方法の例示的な実施形態を示す。
【
図20F3】
図20は、本出願の特定の実施形態を製造する別の製造方法の例示的な実施形態を示す。
【
図21】
図21は、優れた信号統合性のための高度な伝送線路シールド方法の例示的な実施形態を示す。
【
図22】
図22は、グラフェン変換器を有する片面エレクトレット装置の例示的な実施形態の断面を示す。
【
図23】
図23は、グラフェン変換器を有するプッシュプル(両面)エレクトレット装置の例示的な実施形態の断面を示す。
【
図24】
図24は、本出願によるプッシュプル変換装置の斜視図を示す。
【
図25】
図25は、振動板の両面にエレクトレット膜が塗布されたグラフェン振動板の一実施形態の断面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本出願の発明者は、二次元材料、特にグラフェンベースの変換器、及びエレクトレット材料を利用して、従来の静電手法よりも低い電力要件で広帯域超音波応答を生成する、新規のグラフェンエレクトレット変換器(GET)を発明した。
【0046】
本出願の発明者はまた、二次元材料、特にグラフェンベースの変換器を利用して、MUTのようなプラットフォーム内で広帯域超音波応答を生成する、新規のグラフェンベースのMUT(GMT)を発明した。従来のCMUTやPMUTとは異なり、GMUTは単一の変換器で広帯域応答を生成できる。よって、GMUTのアレイは、広帯域応答を生成するのに必要ではない。そのため、グラフェンベースのMUTのアレイが提供される場合には、アレイは、電力出力の増加、信号の方向性の認識又は送信、あるいはここに説明する、より複雑な適用などの他の目的に利用できる。
【0047】
本出願の複数のGETの要素は、本出願のGMTと相互互換性があることが理解されよう。
換言すると、GMUT装置はエレクトレット設計を採用可能であり、エレクトレット変換器はGMUTであることが理解されよう。同様に、本出願によるグラフェンエレクトレット変換器は、GMUT以外の設計で具体化してもよく、本出願によるGMTは、エレクトレット設計を組み込む必要がないこと場合があることは理解されよう。
【0048】
音波を指すときの「超低周波音」という用語は、音波が人間の可聴範囲より低い、すなわち20Hzより低い周波数を持つことを意味する。
音波を指す場合の「超音波」とは、音波が人間の可聴範囲を超える、つまり20kHzを超える周波数を持っていることを意味する。音波を指すときの「人間の可聴範囲」などの用語は、音波が人間の可聴範囲内、すなわち20Hzから20kHzの間の周波数を持つことを意味する。
【0049】
「約」又は「およそ」などの用語は同義語であり、この用語によって変更された値に、±20%、±15%、±10%、±5%、又は±1%の範囲が関連付けられた理解可能な範囲があることを示すのに使用される。
「実質的に」という用語は、値が目標値に近いことを示すために使用される。ここで、近いとは、例えば、値が目標値の80%以内、目標値の85%以内、目標値の90%以内、目標値の95%以内、又は目標値の99%以内であることを意味する。
【0050】
音響波を、この出願のさまざまな部分で音波ということがあり、その逆もある。
【0051】
GMUT装置
よって、1観点では、本出願は、本出願の発明者がGMUT(「グラフェン超小型機械化超音波変換器」)と呼ぶグラフェンMUTを提供する。
いくつかの実施形態では、GMUTは、CMUT(容量性超小型機械化超音波変換器)又はPMUT(圧電超小型機械化超音波変換器)と同様の設計を持つであろう。いくつかの実施形態では、GMUTは、従来の静電変換器のように、より高い効率及びより良い感度(振動板のたわみ/電圧)を達成するために、プッシュプルモードで作動する第2電極を備えてよいだろう。
最も重要なことは、グラフェンの物理的特性に基づいて、単一又はデュアル固定子装置として構成されたGMUTは、広帯域機能、非常に低い質量、及び重量あたりの高い強度により、標準の圧電ベース及びMUT変換器に対して大きな有利点を持つ。
【0052】
本出願のGMTの特定の実施形態の特定の詳細を論じる前に、これらの実施形態が、本出願で論じられるグラフェンエレクトレット変換器(GET)の複数観点を備えるように変更されてよいことを、本発明者らは言及しておく。
【0053】
図15は、本出願の発明者によって調製された、本出願の実施形態で使用されるグラフェン変換器を示す。これらの変換器は、超音波範囲で広帯域応答を示す。
図15bは、グラフェン変換器の簡単なアレイ構成を示す。
【0054】
図6は、本出願による、グラフェン又は別の超高強度二次元膜を使用する例示的な容量性変換器装置(60)を示す。
図6の変換器は、単一の電極(61)を備えるが、第2電極は、振動板(62)の反対側に提供されてもよい。
図6の最下層は、音響裏打ち(バッキング)材(63)である。音響裏打ち材は、誘電体材料を備えてよい。
誘電体材は、ウェーハの上と下の一方又は両方に酸化物層を持つシリコンウェーハであってよい。誘電体はガラスであってもよい。誘電体材(63)の上には、導電性材料で作られた電極層(61)がある。
導電性材料は、銅、白金、金、イリジウム、タングステン、銀、パラジウム、又は他の金属、及びそれらの合金などの金属化層であってよい。
導電性材料は、ドープされたシリコン又は別のドープされた半導体であってよい。
そのような材料はまた、インジウムスズ酸化物(ITO)、フルオレンドープ酸化スズ(FTO)、ドープ酸化亜鉛、及びポリ(3,4-エチレンジオキシチフェン)(PEDOT)及びその誘導体であってよい。
導電性材料はまた、炭素ナノチューブベースの材料、グラフェンベースの材料、グラファイトベースの材料、又は別の導電性又は半導電性の炭素ベースの材料であってよい。
本出願を通して、電極に言及するとき、そのような電極は、上述の材料、又は当業者に既知の他の材料でできていてもよいと、本発明者らは述べておく。
図6は、導電性層(63)の上の任意選択の酸化物又は他の誘電体層(64)を示す。酸化物層は、振動板(62)が電極(63)と直接電気的に接触して短絡を引き起こすのを防ぐ。
【0055】
図6では、音響裏打ち材と、電極と、誘電体又は酸化物(層)との上にスペーサ(65)がある。
いくつかの実施形態では、スペーサは、ガラス又は二酸化ケイ素などの誘電体材料を備える。
いくつかの実施形態では、スペーサは、ケイ素のような半導体材料を備える。
シリコンは、上面と下面との少なくとも1面(67)で酸化されてもよい。振動板(62)に面するスペーサの部分において、スペーサは、振動板(62)への電気的接続を提供する導電性層(66)を備えてよい。導電性層は、電極層と同じ種類の材料でできていてもよい。
【0056】
図6では、スペーサの上に2次元材料を備える振動板(62)がある。
好ましい実施形態では、二次元材料はグラフェンを備える。好ましい実施形態では、二次元振動板材料は、原子的に単一又は複数層のグラフェン膜(最大数千層のグラフェン)である。
【0057】
別の好ましい実施形態では、振動板は、窒化ホウ素(h-BN)と、二硫化モリブデン(MoS2)と、2次元グラフェン振動板材料及びh-BN、MoS2を備える2層膜と、又は別の単層、又は複数層二次元膜からなる群から選択される。
【0058】
図6では、グラフェン振動板(62)の上に別のスペーサ(68)がある。グラフェン振動板(62)の上のスペーサは、前述のグラフェン振動板(62)の下のスペーサ(65)と同様の方法で作られてよい。
【0059】
図6では、スペーサ(68)の上に音響適合材料(69)があり、これは任意選択である。整合材料は、変換器(60)と周囲の媒体との間のエネルギー伝達を改善するために選択される。整合材料は、変換器のインピーダンスと周囲の媒体との間に音響インピーダンスを持つ材料であってよい。したがって、整合層は、変換器と周囲の媒体との間のインピーダンスの不一致のために、周囲の媒体によって変換器に向かって反射されるエネルギーを低減できる。
【0060】
別の観点では、本願は、超音波及び超音波周波数の広帯域にわたって無線機モードで動作可能な高品質の超音波変換装置を提供する。
そのような変換装置の例示的な実施形態は、二次元(2D)材料を備える振動板を備える。この振動板は、振動板を懸架する開いた範囲を画定する導電性の周囲に取り付けられている。いくつかの実施形態では、導電性周囲は、円形、楕円形として具体化される。他の実施形態では、導電性周縁部は、正方形、長方形、星、そらまめ、nポリゴン、又は不規則な形状などの別の形状を備えてよい。いくつかの実施形態では、導電性周縁部は環部と呼ばれ、そのような議論でこれらの形状のいずれかを参照することが発明者の意図である。
【0061】
例示的な実施形態では、変換装置は、振動板及び導電環部(振動板サスペンション)を電極などの他の構成要素から分離するスペーサを備える。
一実施形態では、スペーサは、振動板の形状に実質的に対応する中央領域に開口部を持つ誘電体の層である。スペーサは、一方の側で導電環部に、もう一方の側で電極に結合されている。電極は、振動板サスペンションに面し、懸架振動板に実質的に平行な側面を持つ連続導電性層を備える。変換装置は、懸架振動板の両側にスペーサ及び電極を備えてよい。電極が1つしかない場合、装置は「シングル固定子」装置である。2つの電極が提供されている場合、装置は「デュアル固定子」装置である。(振動板を)懸架(する)空隙は、その下側と上側が振動板と電極で囲まれ、その周囲がスペーサの開口部の壁で囲まれた領域である。
【0062】
1実施形態では、電極システムは、構造に剛性及び平面性を提供する安定した裏打ち材料上の薄い導電性層であってよい。
別の実施形態では、電極システムは、その表面の一方又は両方(上部又は下部)において任意選択で不動態化されるより厚い金属シートである。任意選択で、第2導電環部を振動板の上部に追加するか、又は第1スペーサと同等の厚さで取り付けられた単に別の誘電体スペーサを追加できる。このような構成の1つの目的は、振動板が最適な方法で振動可能にするために、振動板の両側に適切で同一の間隔を持つことを可能にすることである。
【0063】
いくつかの実施形態では、振動板は、任意選択で、カット又は孔がグラフェン振動板に導入される、事前に決めた孔のパターンを持つ。
他の実施形態では、グラフェン振動板は連続的である。
いくつかの実施形態では、孔のパターンを利用して、誘電性流体の自由流及び圧力の均等化を可能にする。誘電性流体は、空気又は他の気体又は流体であり得る。
いくつかの実施形態では、孔のパターンは、音響性能を調整する手段としても使用できる。
いくつかの実施形態では、振動板は、グラフェン又は他の同様の超高強度、低質量の二次元材料、例えば六方晶窒化ホウ素(HBN)、二硫化モリブデン(MOS2)、又は他のものから作製してよいだろう。
【0064】
いくつかの実施形態では、振動板において、振動板に追加の機械的強度を提供するために、グラフェン層の片側又は両側にHBN、MОS2又はより従来の材料の薄層を備える複合グラフェン構造の使用が望ましい場合がある。振動板の外周に沿った、より柔軟で剛性の低い機械的支持、又は振動板表面全体に望ましい変位パターンを作成して、加えられた静電力に応じて振動板の可動域の外形を本質的に「調整」又は「強化」する。
そのようなパターンは、例えば、円形振動板において、中心でディスクをパターン化すること、又は円形振動板に特定の幅及び半径を持つ環部をパターン化することを備えるであろう。使用できる従来の材料には、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、FEP(フッ素化エチレンプロピレン)、又は広範囲のアクリル、ポリエステル、シリコーン、ポリウレタン、ハロゲン化プラスチックなどの高分子が含まれるが、これらに限定されない。
パターン化されたディスクは、振動板の質量を増やして、パターン化されたディスクのない振動板と比較してその変位を減らすだろう。
別のパターン、例えば振動板の周縁にある環部は、振動板に剛性を追加し、その変位を減らすが、耐久性を高める。例えば、その外周に沿ってパターン化された環部を備えた振動板は、パターン化された環部を備えていない振動板と比較して、より高い電圧で駆動できるであろう。
【0065】
いくつかの実施形態では、グラフェン振動板を備える装置は、任意選択で、懸架空隙を密封する音響キャッピング層を組み込んで、装置をさらに保護するか、又は誘電性流体を保持できる。音響キャッピング層は、グラフェンを含有してもよい。
【0066】
本明細書で説明される実施形態は、一般に、装置の前面から単一の装置で送信及び受信の両方を行うことができるであろう。
このような構成では、装置内の電極を減衰システムに取り付けるか、電極自体を、電極としても機能するのに十分な電気的特性を実現するようにコーティングされた(つまり、減衰材料でできている)減衰器にしてよいだろう。当業者は、そのような電極や減衰システムの多くの可能な構成が存在することを理解するであろう。
【0067】
本明細書に記載の実施形態はまた、一般に、装置の前面及び背面の両方から単一の装置で送信及び受信の両方が可能であろう。そのような構成では、装置は、任意選択で、別個のマイクロフォン変換器(ダンプ後部電極)を利用して、入ってくる信号の方向を区別できるだろう。
【0068】
本明細書に記載の実施形態は、既存のCMUT装置の寸法に匹敵する寸法を持ってよいが、任意の所与のサイズで、本出願の実施形態は、既存のCMUT及びPMUT装置と比較してはるかに広い動作(周波数)帯域幅を持つ。
本願のいくつかの実施形態は、グラフェン振動板を備える。本願のいくつかの実施形態は、直径50マイクロメートルから500マイクロメートルを持つ振動板を備える。特定の実施形態では、本出願の装置は、MEMSスタイルのフォーマットを使用して製造できる。これらの装置のとり得るサイズは、10から2000マイクロメートルになる。
【0069】
本出願の一実施形態では、超音波伝送を生成する装置は、スペーサの厚さが比較的薄く、振動板と電極は0.25マイクロメートルから300マイクロメートルである。そのような実施形態では、変換器の直径は、約10マイクロメートルから300マイクロメートルの間である。一般に、本出願の実施形態では、より小さな直径の振動板はより小さな間隙を必要とする。超音波装置では、間隙は、同様のグラフェンベースのオーディオ送信機(スピーカーなど)で使用される間隙よりもはるかに小さくなる。これは、より高い超音波周波数の送信には、振動板と電極間の空隙又は間隙内で、同程度の「移動距離」又は音の伝送距離を要しないからである。
【0070】
表Iに、動作用の10μmから12,000μmまでの直径で、オーディオ波長帯の共振周波数が2MHzから1.7kHzまでの、さまざまな変換器の直径と装置変数の例示的関係を示す。
【0071】
【0072】
いくつかの実施形態では、GMUT変換器の動作は、帯域幅及び線形性を最大化する第1共振モードより下であることに留意されたい。しかしながら、いくつかの実施形態では、GMUTは、出力レベルを増加させるために、共振周波数以上で作動されてもよい。
【0073】
本出願の実施形態では、間隙サイズ及び動作電圧は、電極と振動板との間の電界の大きさ及び方向を決定する。いくつかの実施形態では、電界は約1V/μmである。
より小さな間隙は、より大きな大きさの電界の印加を可能にし、それは次に、帯電した振動板により大きな力を加える。その結果、間隙が小さいほど、特定の電圧入力に対してより高い音響出力を生成するだろう。
本出願のいくつかの実施形態では、グラフェン振動板を持つ装置は、100から200マイクロメートルの公称間隙で2交流電圧(VAC)から650V AC実効値(RMS)信号電圧で、0.25直流電圧(VDC)から1000V DCで機能すると予想される。
各装置で他の間隙設定が可能であり、電圧変数と周波数を任意の装置で調整して、最適なオーディオ又は超音波のパフォーマンスのために装置を調整できる。
【0074】
本出願の別の実施形態では、装置は、任意選択で、流体又は空気の減衰を備える。流体又は空気による減衰は任意選択であり、
図9及び
図10は、単一電極構成のこのような装置を示す。
特に、
図9は、電極又は装置の裏側を通るエネルギー伝達を改善可能にする音響ベント孔を持つ装置を備える。具体的には、
図9は、背面電極に音響ベント孔(901)を備えた空気減衰装置(900)の例示的な実施形態を示す。装置(900)は、電極層(902)、第1スペーサ層(903)、第2スペーサ層(904)、及び振動板(905)を備える。第1電極層(902)は、音響裏打ち材料又は誘電体層(913)、(電極を形成する)導電性層(906)、酸化物又は誘電体層(907)を備える。
導電性層(906)は、電極層(902)全体にわたって続き、全体にベント孔(901)を持つ。第1スペーサ層(903)は、任意選択の酸化表面層(908)、誘電体層(909)、(振動板(905)に電気的に接続されている)導体層(910)を備える。第2スペーサ層(904)は、誘電体層(911)を備える。装置(900)は、任意選択の音響整合材又は蓋(912)も備える。
前述の各層は、本出願で前述した材料でできていてよい。
【0075】
図10は、連続的な背面電極を備えた空気減衰装置(1000)の例示的な実施形態を示す。
装置(1000)は、電極層(1002)、第1スペーサ層(1003)、第2スペーサ層(1004)、振動板(1005)を備える。第1電極層(1002)は、音響裏打ち材又は誘電体層(1013)、(電極を形成する)導電性層(1006)、酸化物又は誘電体層(1007)を備える。第1スペーサ層(1003)は、任意選択の酸化表面層(1008)、誘電体層(1009)、(振動板(1005)に電気的に接続されている)導体層(1010)を備える。第2スペーサ層(1004)は、誘電体層(1011)を備える。装置(1000)はまた、任意選択の音響整合材料/蓋(1012)を備える。前述の各層は、本出願で前述した材料でできていてもよい。装置(1000)は、誘電性の気体又は流体(1018)で囲まれていてもよい。
【0076】
図9と
図10の両方に、電極の下に任意選択の音響裏打ち部と、振動板の「蓋」として機能する音響整合材が含まれている。
【0077】
本出願の別の実施形態では、装置は、任意選択で、振動板の上及び下に1つ、2つの電極を備える。この構成により、振動板に加えられるより直線的な押し引き力ができるようになる。例示的な一実施形態を
図11に示す。
図11は、グラフェン又は別の超高強度二次元膜を使用する静電プッシュプル変換器装置(1100)の例示的な実施形態を示す。装置(1100)は、第1電極層(1101)、第2電極層(1102)、第1スペーサ層(1103)、第2スペーサ層(1104)、振動板(1105)を備える。第1電極層(1001)は、音響裏打ち材又は誘電体層(1113)、導電性層(1106)(電極を形成する)、酸化物又は誘電体層(1107)を備える。第2電極層(1102)は、音響裏打ち材又は誘電体層(1112)、導電性層(1113)(電極を形成する)、酸化物又は誘電体層(1114)を備える。第1スペーサ層(1103)は、任意選択の酸化表面層(1108)、誘電体層(1109)、(振動板(1105)に電気的に接続されている)導体層(1110)を備える。
第2スペーサ層(1104)は、任意選択の酸化表面層(1116)、誘電体層(1111)、(振動板(1105)に電気的に接続されている)導体層(1115)を備える。2つの導体層(1115、1110)の両方を備える必要はない。さらに、導体層(1117)は、スペーサ層(1103、1104)とは独立して提供されてもよく、この場合、両方の導体層(1115、1110)を必要としないが、代わりに両方は任意選択である。装置(1100)は、誘電性の気体又は流体(1118)で囲まれていてもよい。前述の各層は、本出願で前述した材料でできていてもよい。
【0078】
図11に示す構成は、片面、又は
図9及び
図10に示す「オープンフェイス」変換器に似ている。ただし、音響蓋を取り付けるのではなく、第2電極が提供されている点が異なる。
この第2電極は、静電変換器で通常使用されるプッシュプル構成を提供する。第2電極は、下部電極と同様の材料で作製してよく、あるいは異なる音響特性の材料で作製してよく、異なる伝送特性を提供できる。
【0079】
図12及び
図13に示す実施形態には、両側に音響ベントを備えた変換器の任意選択事項が含まれている。
図12は、高圧環境用の外部密封を備えたプッシュプルGMUTe装置(1200)の例示的な実施形態を示す。図示のように、装置(1200)は、音響ベント孔(1201)、第1電極層(1202)、第2電極層(1203)、第1スペーサ層(1204)、第2スペーサ層(1205)、振動板(1206)を備える。音響ベント孔(1201)は音響伝達を可能にする。第1電極層(1202)と第2電極層(1203)の少なくとも一方の外側で、そして、ベント孔(1201)を覆って、第1密封層(1205)と第2密封層(1208)の少なくとも1つが存在する。第1密封層(1270)は、グラフェン又は別の2D膜でできていてもよい。第2密封層(1208)は、ダイヤモンド、ダイヤモンド様炭素、又は他の同様の材料でできていてもよい。第1密封層(1205)と第2密封層(1280)の少なくとも1つは、変換器を環境や周囲に対して密封し、そこに音響信号を送信する第1電極層(1202)、第2電極層(1203)、第1スペーサ層(1204)、第2スペーサ層(1205)、振動板(1206)は、
図11に記載されたものと同じ構造を有し、
図11の層(1117)に相当する
図12に示した層(1209)を持つ。
【0080】
いくつかの実施形態は、前部音響孔、後部音響孔、又はその両方を備える。オーディオ出力を調整するには、前面と背面の両方の組み合わせ、又はおそらく前方又は背面のみの音響ホールのいずれかが望ましい場合がある。必要に応じて、グラフェンを備える音響蓋をベント孔の外側の上又は上に配置して、変換器を密閉できる。グラフェンのこの薄い2D層は、非常に効果的なシールを提供し、音響エネルギーを効果的に結合するだろう。この密封方法により、グラフェンの機械的強度により、装置を高圧で、例えばかなりの深度で動作可能となると期待される。
【0081】
本出願のいくつかの実施形態では、GMUTは、同軸変換器設計を備える。例えば、
図17は、外側の環部変換器で囲まれた中央の円形グラフェン懸架部を備えた同軸変換器設計の一実施形態を示す。この構成は、環部変換器が反射信号を受信している間に中央変換器が超音波信号を送信する反響定位及び同様の適用に使用できる。
図17は、この例示的な実施形態の金属化手法も示す。2つの断面図(断面A-A)は、片側変換器(
図17の上部)とプッシュプル構成(
図17の下部)を示す。どちらも、同軸変換器の組を実現に実装可能である。
【0082】
【0083】
図17aの最上部は、片側アーキテクチャ(1701)を示す。
図17bの最上部は、プッシュプルアーキテクチャ(1702)を示す。両方の構成(1701、1702)で、外側環状変換器(1704)に囲まれた、中央で円形の懸架グラフェン(1703)を持つアーキテクチャ(1700)が示されている。両構成(1701、1702)は、シリコン(1706)に取り付けられたグラフェン振動板(1705)を備える。金属層(1707)は、電極として機能するようにシリコン(1706)の一部に提供され、シリコン貫通ビア(TSV)(1708)は、金属層(1707)への電気的接続用に提供されている。両構成には、シリコン(1706)と金属層(1707)を通過する音響ベント孔(1709)が含まれている。
【0084】
図17aの下部は、構成(1701)、すなわち片面装置の上面図を示す。この図では、中央の変換器(1703)は中央の円として表示され、外側の環部変換器(1704)は周囲の環部として表示される。凡例(1710)を参照すると、この視点で上面から見える材料もわかる。
【0085】
図17bの下部は、構成の底面図(1701)及び構成の上面と底面図(1702)を示す。凡例(1711)を参照すると、この視点の図は、この視点から見える材料を示す。特に、図示の裏打ち部の金属は、シリコン貫通ビア(1708)に電気的接続を提供する。
【0086】
本出願のいくつかの実施形態では、他の膜をグラフェン又は高強度2D膜の上に追加して、それらが比較的薄い限り、追加の属性を提供できる。いくつかの実施形態では、ダイヤモンド様コーティング、酸化アルミニウム(AI
2O
3)のような高硬度材料、及びPMMA、PEEK、又はポリイミドのような有機膜が提供され、機械的強度を高め、剛性を変更し、又は内部部品を電気アークから保護する。
図13は、深海ソナー及び反響定位の極圧、又は他の同様の用途に望ましい可能性がある圧力安定化システム(「誘電体貯留部及び圧力制御」)を利用するそのような構成の例示的な実施形態を示す。
【0087】
図13は、高圧環境用の外部密封を備えたプッシュプルGMUTe装置(1300)の別の例示的な実施形態を示す。図示のように、装置(1300)は、音響伝達を可能にすべく、装置(1300)の両側に音響ベント孔(1301、1302)を備える。装置はさらに、第1電極層(1303)、第2電極層(1304)、第1スペーサ層(1305)、第2スペーサ層(1306)、振動板(1307)を備える。
第1及び第2電極層(1303、1304)の外側にあってベント孔(1301、1302)を覆い、第1密封層(1309)と第2密封層(1310)の少なくとも1つが存在する。第1密封層(1309)は、グラフェン又は別の2D膜でできている。第2密封層(1310)は、ダイヤモンド、ダイヤモンド様炭素、又は他の同様の材料でできていてもよい。第1密封層(1309)と第2密封層(1310)の少なくとも1つは、変換器を環境や周囲に対して密封し、そこに音響信号を送信する。第1電極層(1303)、第2電極層(1304)、第1スペーサ層(1305)、第2スペーサ層(1306)、振動板(1307)は、
図11で説明したものと同じ構造で、
図11の層(1117)に相当する
図13に示した層(1308)を持つ。
装置(1300)はまた、振動板(1307)が存在する空洞(1312)に取り付けられた誘電体貯留部及び圧力制御(1311)を備える。よって、空洞(1312)は誘電性流体で満たされている。振動板(1307)は、貯留部(1311)からの誘電性流体が振動板(1307)の一方の側から他方の側に空隙(1312)内で自由に移動できるようにする穿孔(例えば、孔、スリットなど)を備えてよい。
図16は、誘電性流体又は気体で密封された変換器装置(1600)の例示的な実施形態を示す。図示のように、装置(1600)は、音響伝達を可能にすべく、装置(1600)の両側に音響ベント孔(1601、1602)を備える。装置はさらに、第1電極層(1603)、第2電極層(1604)、第1スペーサ層(1605)、第2スペーサ層(1606)、振動板(1607)を備える。第1及び第2電極層(1603、1604)の外側にあってベント孔(1601、1602)を覆う、第1密封層(1609)と第2密封層(1610)の少なくとも1つがある。
第1密封層(1609)は、グラフェン又は別の2D膜でできていてもよい。第2密封層(1610)は、ダイヤモンド、ダイヤモンド様炭素、又は他の同様の材料でできていてもよい。第1密封層(1609)と第2密封層(1610)の少なくとも1つは、変換器を環境や周囲に対して密封し、そこに音響信号を送信する。第1電極層(1603)、第2電極層(1604)、第1スペーサ層(1605)、第2スペーサ層(1606)、振動板(1607)は、
図11で説明したものと同じ構造で、
図11の層(1117)に相当する
図13に示した層(1608)を持つ。装置(1600)はまた、振動板(1607)が存在する空洞(1612)を備える。空洞(1612)は、第1及び/又は第2密封層(1609、1601)によって密封され、誘電性流体を備えてよい。振動板(1607)は、誘電性流体が振動板(1607)の一方の側から他方の側に空隙(1612)内で自由に移動することを可能にする穿孔(例えば、孔、スリットなど)を備えてよい。
【0088】
いくつかの実施形態では、装置は、スペーサが取り付けられた剛性電極を備える。
いくつかの実施形態では、剛性電極は、アルミニウムのシートであり、そのシートは装置を内部で弓状にしないように絶縁しかつ外部で隔離すべく、両面に陽極酸化又は非導電性のペイントパワーコーティングが施されている。
いくつかの実施形態では、剛性電極は、銅、アルミニウム、グラフェン又は他のそのような材料のような薄膜導電性コーティングを持ち、ガラス、ガラスエポキシ基板(FR-4)(FR4)、プラスチック又は他の絶縁材料のいずれかである。
いくつかの実施形態では、剛性電極は、エポキシ、二酸化ケイ素(SiO2)、窒化ケイ素、ダイヤモンド又は他のそのような絶縁材料などの追加の薄膜絶縁キャッピング層を備えた薄膜導電性コーティングを持ち、ガラス、FR4、プラスチック又は他の絶縁材料のいずれかである。いくつかの実施形態では、剛性電極は、パターン化された音響孔を持つ。
【0089】
いくつかの実施形態では、剛性電極は、パターン化された貫通孔を持つ。いくつかの実施形態では、孔は、円形、正方形、長方形、そらまめ形、又は他のそのような望ましい形状である。いくつかの実施形態では、円形の孔は100マイクロメートルから20000マイクロメートルの直径を有し、他の形状の形状は同様の変換領域を持つ。
【0090】
別の好ましい実施形態では、振動板は、1μmから10μmの直径を持つ。
別の好ましい実施形態では、振動板は、10μmから100μmの直径を持つ。
別の好ましい実施形態では、振動板は、100μmから1mmの直径を持つ。
別の好ましい実施形態では、振動板は、40μmから1mmの直径を持つ。
別の好ましい実施形態では、振動板は、1mmから10mmの直径を持つ。
別の好ましい実施形態では、振動板は、1mmから35mmの直径を持つ。
別の好ましい実施形態では、振動板は、1mmから100mmの直径を持つ。
別の好ましい実施形態では、振動板は、10mmから20mmの直径を持つ。
別の好ましい実施形態では、振動板は、10mmから100mmの直径を持つ。
別の好ましい実施形態では、振動板は、100mmから1000mmの直径を持つ。
別の好ましい実施形態では、振動板は、1000mmから10cmの直径を持つ。
別の好ましい実施形態では、振動板は約1mmの直径を持つ。
別の好ましい実施形態では、振動板は約10mmの直径を持つ。
別の好ましい実施形態では、振動板は約20mmの直径を持つ。
別の好ましい実施形態では、振動板は約30mmの直径を持つ。
別の好ましい実施形態では、振動板は約40mmの直径を持つ。
別の好ましい実施形態では、振動板は約50mmの直径を持つ。
別の好ましい実施形態では、振動板は約60mmの直径を持つ。
別の好ましい実施形態では、振動板は約70mmの直径を持つ。
別の好ましい実施形態では、振動板は約80mmの直径を持つ。
別の好ましい実施形態では、振動板は約90mmの直径を持つ。
別の好ましい実施形態では、振動板は約100mmの直径を持つ。
【0091】
別の好ましい実施形態では、振動板は、50μmから100μmの直径を持つ。
別の好ましい実施形態では、振動板は、50μmから200μmの直径を持つ。
別の好ましい実施形態では、振動板は、50μmから300μmの直径を持つ。
別の好ましい実施形態では、振動板は、50μmから400μmの直径を持つ。
別の好ましい実施形態では、振動板は、50μmから500μmの直径を持つ。
別の好ましい実施形態では、振動板は、100μmから200μmの直径を持つ。
別の好ましい実施形態では、振動板は、100μmから300μmの直径を持つ。
別の好ましい実施形態では、振動板は、100μmから400μmの直径を持つ。
別の好ましい実施形態では、振動板は、100μmから500μmの直径を持つ。
別の好ましい実施形態では、振動板は、200μmから300μmの直径を持つ。
別の好ましい実施形態では、振動板は、200μmから400μmの直径を持つ。
別の好ましい実施形態では、振動板は、200μmから500μmの直径を持つ。
別の好ましい実施形態では、振動板は、300μmから400μmの直径を持つ。
別の好ましい実施形態では、振動板は、300μmから500μmの直径を持つ。
別の好ましい実施形態では、振動板は、400μmから500μmの直径を持つ。
【0092】
別の好ましい実施形態では、振動板は約50μmの直径を持つ。
別の好ましい実施形態では、振動板は約100μmの直径を持つ。
別の好ましい実施形態では、振動板は約200μmの直径を持つ。
別の好ましい実施形態では、振動板は約300μmの直径を持つ。
別の好ましい実施形態では、振動板は約400μmの直径を持つ。
別の好ましい実施形態では、振動板は約500μmの直径を持つ。
【0093】
いくつかの実施形態では、本出願の装置は、20Hzから10GHzの音を出せる。
いくつかの実施形態では、本出願の装置は、20kHzから10GHzの音を出せる。
いくつかの実施形態では、本出願の装置は、100kHzから10GHzの音を出せる。
いくつかの実施形態では、本出願の装置は、1MHzから10GHzまでの音を出せる。
いくつかの実施形態では、本出願の装置は、10MHzから10GHzまでの音を出せる。
いくつかの実施形態では、本出願の装置は、100MHzから10GHzまでの音を出せる。
いくつかの実施形態では、本出願の装置は、1GHzから10GHzまでの音を出せる。
いくつかの実施形態では、本出願の装置は、20Hzから1GHzの音を出せる。
いくつかの実施形態では、本出願の装置は、20kHzから1GHzの音を出せる。
いくつかの実施形態では、本出願の装置は、100kHzから1GHzの音を出せる。
いくつかの実施形態では、本出願の装置は、1MHzから1GHzまでの音を出せる。
いくつかの実施形態では、本出願の装置は、10MHzから1GHzまでの音を出せる。
いくつかの実施形態では、本出願の装置は、100MHzから1GHzまでの音を出せる。
いくつかの実施形態では、本出願の装置は、20Hzから100MHzまでの音を出せる。
いくつかの実施形態では、本出願の装置は、20kHzから100MHzまでの音を出せる。
いくつかの実施形態では、本出願の装置は、100kHzから100MHzまでの音を出せる。
いくつかの実施形態では、本出願の装置は、1MHzから100MHzまでの音を出せる。
いくつかの実施形態では、本出願の装置は、10MHzから100MHzまでの音を出せる。
いくつかの実施形態では、本出願の装置は、20Hzから10MHzまでの音を出せる。
いくつかの実施形態では、本出願の装置は、20kHzから10MHzまでの音を出せる。
いくつかの実施形態では、本出願の装置は、100kHzから10MHzまでの音を出せる。
いくつかの実施形態では、本出願の装置は、1MHzから10MHzまでの音を出せる。
いくつかの実施形態では、本出願の装置は、20Hzから1MHzまでの音を出せる。
いくつかの実施形態では、本出願の装置は、20kHzから1MHzまでの音を出せる。
いくつかの実施形態では、本出願の装置は、100kHzから1MHzまでの音を出せる。
いくつかの実施形態では、本出願の装置は、20Hzから100kHzまでの音を出せる。
いくつかの実施形態では、本出願の装置は、20kHzから100kHzまでの音を出せる。
【0094】
いくつかの実施形態では、本出願の装置は、0.25μmから300μmの各スペーサによって作成された間隙を持つ。
いくつかの実施形態では、本出願の装置には、2.5μmから300μmの間隙がある。
いくつかの実施形態では、本出願の装置は、100μmから300μmの間隙を持つ。
いくつかの実施形態では、本出願の装置は、200μmから300μmの間隙を持つ。
いくつかの実施形態では、本出願の装置は、0.25μmから200μmの間隙を持つ。
いくつかの実施形態では、本出願の装置は、2.5μmから200μmの間隙を持つ。
いくつかの実施形態では、本出願の装置は、25μmから200μmの間隙を持つ。
いくつかの実施形態では、本出願の装置は、100μmから200μmの間隙を持つ。
いくつかの実施形態では、本出願の装置は、0.25μmから100μmの間隙を持つ。
いくつかの実施形態では、本出願の装置は、2.5μmから100μmの間隙を持つ。
いくつかの実施形態では、本出願の装置は、25μmから100μmの間隙を持つ。
いくつかの実施形態では、本出願の装置は、0.25μmから25μmの間隙を持つ。
いくつかの実施形態では、本出願の装置は、2.5μmから25μmの間隙を持つ。
いくつかの実施形態では、本出願の装置は、0.25μmから2.5μmの間隙を持つ。
【0095】
いくつかの実施形態では、装置の孔のサイズは、0.125μmから150μmである。
いくつかの実施形態では、装置の孔のサイズは、1.25μmから150μmである。
いくつかの実施形態では、装置の孔のサイズは、12.5μmから150μmである。
いくつかの実施形態では、装置の孔のサイズは、50μmから150μmである。
いくつかの実施形態では、装置の孔のサイズは、100μmから150μmである。
いくつかの実施形態では、装置の孔のサイズは、0.125μmから100μmである。
いくつかの実施形態では、装置の孔のサイズは、1.25μmから100μmである。
いくつかの実施形態では、装置の孔のサイズは、12.5μmから100μmである。
いくつかの実施形態では、装置の孔のサイズは、50μmから100μmである。
いくつかの実施形態では、装置の孔のサイズは、0.125μmから50μmである。
いくつかの実施形態では、装置の孔のサイズは、1.25μmから50μmである。
いくつかの実施形態では、装置の孔のサイズは、12.5μmから50μmである。
いくつかの実施形態では、装置の孔のサイズは、0.125μmから12.5μmである。
いくつかの実施形態では、装置の孔のサイズは、1.25μmから12.5μmである。
いくつかの実施形態では、装置の孔のサイズは、0.125μmから1.25μmである。
【0096】
いくつかの実施形態では、振動板に印加されるバイアス電圧は、0.25Vから300Vである。
いくつかの実施形態では、振動板に印加されるバイアス電圧は、2.5Vから300Vである。
いくつかの実施形態では、振動板に印加されるバイアス電圧は、25Vから300Vである。
いくつかの実施形態では、振動板に印加されるバイアス電圧は、100Vから300Vである。
いくつかの実施形態では、振動板に印加されるバイアス電圧は、200Vから300Vである。
いくつかの実施形態では、振動板に印加されるバイアス電圧は、0.25Vから200Vである。
いくつかの実施形態では、振動板に印加されるバイアス電圧は、2.5Vから200Vである。
いくつかの実施形態では、振動板に印加されるバイアス電圧は、25Vから200Vである。
いくつかの実施形態では、振動板に印加されるバイアス電圧は、100から200Vである。
いくつかの実施形態では、振動板に印加されるバイアス電圧は、0.25Vから100Vである。
いくつかの実施形態では、振動板に印加されるバイアス電圧は、2.5Vから100Vである。
いくつかの実施形態では、振動板に印加されるバイアス電圧は、25Vから100Vである。
いくつかの実施形態では、振動板に印加されるバイアス電圧は、0.25Vから25Vである。
いくつかの実施形態では、振動板に印加されるバイアス電圧は、2.5Vから25Vである。
いくつかの実施形態では、振動板に印加されるバイアス電圧は、0.25Vから2.5Vである。
【0097】
いくつかの実施形態では、振動板の厚さは25nmから100nmである。
いくつかの実施形態では、振動板の厚さは100nmから200nmである。
いくつかの実施形態では、振動板の厚さは200nmから300nmである。
いくつかの実施形態では、振動板の厚さは300nmから400nmである。
いくつかの実施形態では、振動板は、グラフェンの単層を備える。
いくつかの実施形態では、振動板は、グラフェンの1から10層を備える。
いくつかの実施形態では、振動板は、グラフェンの1から100層を備える。
いくつかの実施形態では、振動板は、グラフェンの1から1000層を備える。
いくつかの実施形態では、振動板は、10から100層のグラフェンを備える。
いくつかの実施形態では、振動板は、100から1000層のグラフェンを備える。
いくつかの実施形態では、振動板は、100から1000層のグラフェンを備える。
いくつかの実施形態では、振動板は、最大数千層のグラフェンを備える。
【0098】
いくつかの実施形態では、グラフェンの層間の層間相互作用は、層間結合を改善するために調整されるであろう。
いくつかの実施形態では、グラフェン振動板の片側又は両側に誘電体層が存在する。
【0099】
自己バイアス/エレクトレット
別の態様では、本出願は、本出願の発明者がGET(「グラフェンエレクトレット変換器」)と呼ぶ、グラフェンエレクトレット変換器の設計を提供する。
いくつかの実施形態では、GETは、GMUT又は他の設計を備える、グラフェン静電変換器と同様の設計を持つ可能性がありつつ、エレクトレット材料を使っている。いくつかの実施形態では、GETは、従来の静電変換器のように、より高い効率及びより良い感度(振動板のたわみ/電圧)を達成するために、プッシュプルモードで動作する第2電極を持ってよいだろう。最も重要なことは、グラフェンの物理的特性に基づいて、シングル又はデュアル固定子装置として構成されたGETは、パフォーマンスの向上と電力要件の低下により、標準の静電変換器に対して大きな有利点を持つ。
【0100】
本出願のGETの特定の実施形態の特定の詳細を論じる前に、これらの実施形態は、本出願で論じられるGMTの複数の観点を備えるように修正されてもよいことを、本発明者らは述べておく。
【0101】
本出願の複数の実施形態は、エレクトレット構成を持つGET装置を提供する。特に、エレクトレットは、静的な電気双極子モーメントが恒久的に埋め込まれた安定した材料である。いくつかの実施形態では、材料は複合材料である。
【0102】
本出願のいくつかの実施形態では、エレクトレット構成を使用して、GETを駆動するために必要な動作電圧を低減する。永久双極子の存在は、永久双極子を持たない材料と比較して、機械的な力を生成し、変換器を駆動するために必要なバイアス電圧を低減する。
【0103】
いくつかの実施形態では、エレクトレットは、電極に関連する材料、例として、変換器の裏側板材、又は振動板に関連する材料に電荷を注入することによって製造してよい。この電荷は、電荷に対向する板と静電的に相互作用し、送信モードと受信モードでそれぞれ電気信号からの機械的運動又は機械的運動からの電気信号を変換する。電荷は、誘電体の表面又は材料のバルクボリューム(まとまった大きさのところ)のいずれかに蓄積できる。
【0104】
よって、いくつかの実施形態では、電荷は、絶縁体によってカプセル化された電気的に絶縁された導体に注入される。導体や絶縁体の組み合わせは、1つ又は複数の電極又は変換器の振動板に、層で重ねてよいし、適用してよい。
【0105】
他の実施形態では、電荷は、電極上に適用されることと、電極を覆うこととの少なくとも一方で誘電体絶縁体層の上面又は下面に注入される。
いくつかの実施形態では、誘電体の絶縁体が背面電極に適用され、他の実施形態では、誘電体が前面電極に適用される。
【0106】
別の実施形態では、電荷は、電極上に適用されることと、電極を覆うこととの少なくとも一方で、誘電体の絶縁体層のバルクに注入される。
いくつかの実施形態では、誘電体の絶縁層が背面電極に適用され、他の実施形態では、誘電体が前面電極に適用される。
【0107】
別の実施形態では、電荷は、振動板に接続された誘電性コーティングの表面又はバルクに注入される。
いくつかの実施形態では、誘電性コーティングは、振動板の片側又は両側を覆ってもよく、一方又は両方の誘電体は、帯電されてもよい。
【0108】
いくつかの実施形態では、前述の実施形態で使用される誘電体材料は、高分子、例えば、高分子、例としてフルオロ高分子が使用される。
いくつかの実施形態では、誘電体材料は、PTFE(例えば、テフロン(登録商標))、過フッ素化ジオキソール(例、テフロンAF)、シクロオレフィン共重合体、BCB、PFCB、FEP、PFA、PVDF、VDF、PE、PP、PET、PI、PMMA、EVA、ポリエーテルイミド(PEI又は製品名「Ultem(登録商標)」)及びそれらの共重合体からなる群から選択されている。
いくつかの実施形態では、誘電体材料は、前述の高分子材料のうちの1つ又はそれより多い材料を使っているラミネートである。
【0109】
いくつかの実施形態では、使用される誘電体材料は無機材料である。
いくつかの実施形態では、無機材料は、二酸化ケイ素(例えば、水晶)、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、ガラス、PZT、遷移金属酸化物、酸化グラフェン、フッ素ドープ酸化ケイ素(例、F-TEOS)、二酸化ハフニウム、ケイ酸ハフニウム、二酸化ジルコニウム、及びそれらの組み合わせである。
いくつかの実施形態では、誘電体材料は、前述の無機材料のうちの1つ又は複数を備える複数層構造である。
いくつかの実施形態では、電荷は、コロナ帯電、熱ポーリング、接触帯電、電子ビーム照射の少なくとも1つを使用して、前述の誘電体材料に与えられる。
【0110】
図22は、グラフェン変換器を持つ片面エレクトレット装置(2200)の例示的な実施形態の断面を示す。
この装置は、マイク又はスピーカーとして構成してよいが、この構成がマイクとして推奨される。このエレクトレットコンデンサマイクの場合、エレクトレットは前面のECMのようにグラフェン振動板に取り付けられる。オープンフェイスECMの別の実施形態では、エレクトレットは下部電極に取り付けられる。この代替実施形態を意味するべく、エレクトレットは実線に替えて破線で輪郭を描いている。
【0111】
具体的には、図示の装置(2200)は、グラフェン振動板(2202)に電気的に接続された導電性環状電極(2201)を備える。振動板(2202)の片側にエレクトレット膜(2203)が設けられている。
図22では、膜(2203)が振動板(2202)の(電極(2204)に最も近い)裏側に示されているが、振動板(2202)の反対側に膜(2203)を構成することは可能である。代替の実施形態では、エレクトレット膜(2203A)が代わりに電極(2204)上に提供される。エレクトレット膜は、本出願に記載されている任意の形態であってよい。
装置(2200)はまた、上記で参照されたように、導電性電極(2204)を備える。示した構成では、電極(2204)にエア間隙(2205)があるが、これは装置(2200)の動作に厳密に必要なわけではない。電極(2204)と膜(2203)を備えた振動板(2202)の間には、間隙又は空隙(2206)がある。
【0112】
図23は、グラフェン変換器を持つプッシュプル(両面)エレクトレット装置(2300)の例示的な実施形態の断面を示す。
この装置は、マイク又はスピーカーとして構成してよいものの、この構成はスピーカーとして推奨される。この変換器は、プッシュプルマイク又はスピーカーとして機能するものとしてよく、2つの導電性電極が平行に固定され、振動板から等距離にある。別の実施形態では、エレクトレットは、上部及び下部導電性電極の両方に固定できる。この代替の実施形態を意味するために、エレクトレットは実線に替えて破線で輪郭が描かれている。
【0113】
具体的には、図示の装置(2300)は、グラフェン振動板(2307)に電気的に接続された導電性環状電極(2306)を備える。
グラフェン振動板は、片面又は両面にエレクトレット膜(2308)とエレクトレット膜(2308B)の少なくとも1つが塗布されていてもよい。
別の実施形態では、エレクトレット膜(2308A)が一方又は両方の電極(2309)に適用される。エレクトリック膜は、本出願に記載されている任意の形態であってよい。装置(2300)はまた、2つの電極(2309)を備える。示した構成では、電極(2309)に空気の間隙(2310)があるが、これは、装置(2300)の動作に厳密に必要とされるわけではない。電極(2309)と振動板(2307)の間には、間隙又は空隙(2311)がある。
【0114】
図24は、本出願によるプッシュプル変換装置(2400)の斜視図を示す。装置(2400)は、周囲把持(2412)の内側の変換器(2413)の構成要素に把持力を加えるための周縁部の把持部(2412)を備える。変換器(2413)は、有孔電極、すなわち、空気の間隙を備えた電極とともに示す。装置(2400)は、周縁部の把持部(2412)(原文は「クレーム」)から延在している電極接点(2414)を備える。3つの接点(2414)を図示し、そのうちの2つは電極に電気的に接続され、1つはグラフェン振動板に電気的に接続されている。接点(2414)は、変換装置と装置を駆動する回路構成との間の電気的接続を可能にする。
【0115】
図25は、振動板の両面にエレクトレット膜が適用されたグラフェン振動板(2500)の一実施形態の断面を示す。この実施形態における振動板(2500)の設計は、エレクトレット層においてより高い電荷密度を可能にする。これにより、より薄く、より低質量のエレクトレット層が可能になり、振動板(2500)の音響特性が向上する。
【0116】
特に、振動板(2500)は、複数層グラフェン(MLG)のコア層(2501)を備える。MLGコア層(2501)の上に、エレクトレット層(2502)、2層グラフェン(2LG)層(2503)、エレクトレット層(2504)、2LG層(2505)がある。この実施形態では、2LGは、グラフェンの2つの原子層を備えるが、MLGは、最大数千のグラフェンの原子層を備える。この実施形態では、エレクトレット層(2504)及び2LG層(2505)は任意である。同様に、MLGコア層(2501)の下部には、エレクトレット層(2506)、2LG層(2507)、エレクトレット層(2508)、及び2LG層(2509)がある。この実施形態では、エレクトレット層(2508)及び2LG層(2509)は任意である。
【0117】
エレクトレット層(2502、2504、2506、2508)は、このような層に適した、本出願全体で説明されている材料のいずれかを備えてよい。
【0118】
他の実施形態では、2LG層は、それぞれ独立して、グラフェンの1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10原子層を備えてよい。
他の実施形態では、2LG層はそれぞれ、グラフェンの10から100原子層を備えてよい。
これらの原子的に薄い層は、例えば
図25内のように、振動板構造に組み込まれている場合、埋め込み電極として使用してエレクトレットの帯電処理を改善し、エレクトレット層内に蓄積された電荷の密度を高めるべく、使用してよい。これにより、より薄く、より質量の小さいエレクトレット層を使用できるようになる。グラフェンは導電性が高く、しかも非常に薄いため、2LG層を使用すると、振動板にごくわずかな質量を追加しながら、帯電機能を強化できる。
【0119】
図25のパネルAとBは、振動板(2500)の2つの異なる電流双極子(ダイポール)構成を示す。パネルAでは、エレクトレット層の双極子(2502、2504、2506、2508)は全て、振動板(2500)が両側に正味の正の表面電荷を持つように配向されている。パネルBでは、エレクトレット層の双極子(2502、2504、2506、2508)は、振動板(2500)の上面に正味の正の表面電荷があり、下面に正味の負の表面電荷があるように配向されている。パネルCの挿入図は、両方の構成をより詳細に示す。
【0120】
複数層グラフェン層(例えば、
図25のMLG層)は、低質量と高機械的強度を提供し、エレクトレット層は、永久電荷を提供し、全体的な振動板強度を向上させる。エレクトレット材料に対するMLGの割合は、目的の構造、用途、及び電荷蓄積要件に応じて、90%MLGから10%MLGまで変わる可能性がある。
【0121】
図26は、
図25による実施形態に準永久電荷を与える1つの方法を示す。
特に、パネルAは、装置(2600)の上面図を示し、電極パッド(2601、2602、2603)を収容するために電極が延長されている。換言すると、電極パッド(2601、2602、2603)は、MLGコア層及び装置(2600)内の2LG層のうちの少なくとも2つに個別に電気的に接続されている。よって、2LG層は、エレクトレット帯電処理帯電を支援する埋め込み電極として機能する。断面A-Aは、基板(2604)上に置かれている装置(2600)を示す。パネルBは、電極パッド(2601、2603)に与えられる電圧(-V)と、基板(2604)に熱が与えられている間に電極パッド(2602)に印加される電圧(+V)を示す。このようにして、準永久電荷を装置(2600)のエレクトレット層に与えられる。
【0122】
プッシュプル構成では、2つのエレクトレット誘電体層をエレクトレット層の帯電前又は帯電後に振動板に適用できる。
帯電前に適用した場合、複数層グラフェン(MLG)層を帯電処理中に共通の電極として使用できるため、電極層間の2つのエレクトレット層が同時に帯電される。試験構造への熱の適用は、帯電プロセス中に誘電体キュリー温度よりも高くなるように温度を上げるために使用される。他の帯電構成を実装するために、
図Yに示す電極層の各組間の誘電体材は、一度に2つの隣接する電極層のみに接触することによって別々に帯電させられる。いずれの場合も、エレクトレット帯電後、プローブパッドを誘電体で覆えるので、エレクトレット構造全体が誘電体材料で覆われ、電荷の漏れ経路が排除される。
【0123】
1代替実施形態では、電荷は、一度に2つの電極に電圧を与えることによってのみ、振動板の上面及び下面に別々に与えられる。代替的に、エレクトレット層は、振動板に与える前に帯電可能である。いずれにせよ、電極パッド(2601、2602、及び2603)は、帯電後に誘電体で覆えて、エレクトレット構造を誘電体材料で包み、電荷漏れ経路を排除できる。
【0124】
いくつかの実施形態では、振動板において、振動板に追加の機械的強度を提供するために、グラフェン層の片側又は両側にHBN、MOS2又はより従来の材料の薄層を備える複合グラフェン構造を使用することが望ましい場合がある。振動板の外縁に沿った、より柔軟で剛性の低い機械的支持、又は振動板表面全体に望ましい変位パターンを作成して、加えられた静電力に応じて振動板の可動域プロファイルを本質的に「調整」又は「強化」する。
そのようなパターンは、例えば、円形振動板において、中心でディスクをパターン化すること、又は円形振動板に特定の幅及び半径を持つ環部のパターン化を含むだろう。使用できる従来の材料には、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、FEP(フッ素化エチレンプロピレン)、又は広範囲のアクリル、ポリエステル、シリコーン、ポリウレタン、ハロゲン化プラスチックなどの高分子が含まれるが、これらに限定されない。パターン化されたディスクは、パターン化されたディスクのない振動板と比較して、振動板の質量を増加させ、その変位を減少させる。別のパターン、例えば振動板の外縁にある環部は、振動板に剛性を追加し、その変位を減らすが、耐久性を高める。例えば、その外周に沿ってパターン化された環部を備えた振動板は、パターン化された環部を備えていない振動板と比較して、より高い電圧で駆動できるであろう。
【0125】
本明細書で説明される実施形態は、一般に、装置の前面から単一の装置で送信及び受信の両方を行うことができるであろう。このような構成では、装置内の電極を減衰システムに取り付けるか、電極自体を、電極としても機能するのに十分な電気的特性を実現するようにコーティングされた減衰器(つまり、減衰材料でできている)にできる。当業者は、そのような電極/減衰システムの多くの可能な構成が存在することを理解するであろう。
【0126】
本明細書に記載の実施形態はまた、一般に、装置の前面及び背面の両方から単一の装置で送信及び受信の両方を行うことができるであろう。そのような構成では、装置は、任意選択で、別個のマイクロフォン変換器(ダンプした後部電極)を利用して、入ってくる信号の方向を区別できる。
【0127】
いくつかの実施形態では、装置は、スペーサが取り付けられた剛性電極を備える。
いくつかの実施形態では、剛性電極は、装置を内部でアーチ状になり、外部で隔離することから装置を絶縁するために、両面が陽極酸化又は非導電性のペイントパワーコーティングされたアルミニウムのシートである。
いくつかの実施形態では、剛性電極は、ガラス、FR-4(FR4)、プラスチック又は他の絶縁材料のいずれかであり、銅、アルミニウム、グラフェン又は他のそのような材料などの薄膜導電性コーティングを備えている。
いくつかの実施形態では、剛性電極は、ガラス、FR4、プラスチック又は他の絶縁材料のいずれかであり、エポキシ、SiO2、窒化ケイ素、ダイヤモンド又は他のそのような絶縁材料などの追加の薄膜絶縁キャッピング層を備えた薄膜導電性コーティングを備えている。
いくつかの実施形態では、剛性電極は、パターン化された音響孔を持つ。
【0128】
いくつかの実施形態では、剛性電極は、パターン化された貫通孔を持つ。
いくつかの実施形態では、孔は、円形、正方形、長方形、そらまめ形、又は他のそのような望ましい形状である。
いくつかの実施形態では、円形の孔は100マイクロメートルから20,000マイクロメートルの直径を有し、他の形状の形状は同様の変換領域を持つ。
【0129】
別の好ましい実施形態では、振動板は、1μmから10μmの直径を持つ。
別の好ましい実施形態では、振動板は、10μmから100μmの直径を持つ。
別の好ましい実施形態では、振動板は、100μmから1mmの直径を持つ。
別の好ましい実施形態では、振動板は、40μmから1mmの直径を持つ。
別の好ましい実施形態では、振動板は、1mmから10mmの直径を持つ。
別の好ましい実施形態では、振動板は、1mmから35mmの直径を持つ。
別の好ましい実施形態では、振動板は、1mmから100mmの直径を持つ。
別の好ましい実施形態では、振動板は、10mmから20mmの直径を持つ。
別の好ましい実施形態では、振動板は、10mmから100mmの直径を持つ。
別の好ましい実施形態では、振動板は、100mmから1000mmの直径を持つ。
別の好ましい実施形態では、振動板は、1000mmから10cmの直径を持つ。
別の好ましい実施形態では、振動板は、約1mmの直径を持つ。
別の好ましい実施形態では、振動板は、約10mmの直径を持つ。
別の好ましい実施形態では、振動板は、約20mmの直径を持つ。
別の好ましい実施形態では、振動板は、約30mmの直径を持つ。
別の好ましい実施形態では、振動板は、約40mmの直径を持つ。
別の好ましい実施形態では、振動板は、約50mmの直径を持つ。
別の好ましい実施形態では、振動板は、約60mmの直径を持つ。
別の好ましい実施形態では、振動板は、約70mmの直径を持つ。
別の好ましい実施形態では、振動板は、約80mmの直径を持つ。
別の好ましい実施形態では、振動板は、約90mmの直径を持つ。
別の好ましい実施形態では、振動板は、約100mmの直径を持つ。
【0130】
別の好ましい実施形態では、振動板は、50μmから100μmの直径を持つ。
別の好ましい実施形態では、振動板は、50μmから200μmの直径を持つ。
別の好ましい実施形態では、振動板は、50μmから300μmの直径を持つ。
別の好ましい実施形態では、振動板は、50μmから400μmの直径を持つ。
別の好ましい実施形態では、振動板は、50μmから500μmの直径を持つ。
別の好ましい実施形態では、振動板は、100μmから200μmの直径を持つ。
別の好ましい実施形態では、振動板は、100μmから300μmの直径を持つ。
別の好ましい実施形態では、振動板は、100μmから400μmの直径を持つ。
別の好ましい実施形態では、振動板は、100μmから500μmの直径を持つ。
別の好ましい実施形態では、振動板は、200μmから300μmの直径を持つ。
別の好ましい実施形態では、振動板は、200μmから400μmの直径を持つ。
別の好ましい実施形態では、振動板は、200μmから500μmの直径を持つ。
別の好ましい実施形態では、振動板は、300μmから400μmの直径を持つ。
別の好ましい実施形態では、振動板は、300μmから500μmの直径を持つ。
別の好ましい実施形態では、振動板は、400μmから500μmの直径を持つ。
【0131】
別の好ましい実施形態では、振動板は約50μmの直径を持つ。
別の好ましい実施形態では、振動板は約100μmの直径を持つ。
別の好ましい実施形態では、振動板は約200μmの直径を持つ。
別の好ましい実施形態では、振動板は約300μmの直径を持つ。
別の好ましい実施形態では、振動板は約400μmの直径を持つ。
別の好ましい実施形態では、振動板は約500μmの直径を持つ。
【0132】
いくつかの実施形態では、本出願の装置は、20Hzから10GHzの音を出せる。
いくつかの実施形態では、本出願の装置は、20kHzから10GHzの音を出せる。
いくつかの実施形態では、本出願の装置は、100kHzから10GHzの音を出せる。
いくつかの実施形態では、本出願の装置は、1MHzから10GHzまでの音を出せる。
いくつかの実施形態では、本出願の装置は、10MHzから10GHzまでの音を出せる。
いくつかの実施形態では、本出願の装置は、100MHzから10GHzまでの音を出せる。
いくつかの実施形態では、本出願の装置は、1GHzから10GHzまでの音を出せる。
いくつかの実施形態では、本出願の装置は、20Hzから1GHzの音を出せる。
いくつかの実施形態では、本出願の装置は、20kHzから1GHzの音を出せる。
いくつかの実施形態では、本出願の装置は、100kHzから1GHzの音を出せる。
いくつかの実施形態では、本出願の装置は、1MHzから1GHzまでの音を出せる。
いくつかの実施形態では、本出願の装置は、10MHzから1GHzまでの音を出せる。
いくつかの実施形態では、本出願の装置は、100MHzから1GHzまでの音を出せる。
いくつかの実施形態では、本出願の装置は、20Hzから100MHzまでの音を出せる。
いくつかの実施形態では、本出願の装置は、20kHzから100MHzまでの音を出せる。
いくつかの実施形態では、本出願の装置は、100kHzから100MHzまでの音を出せる。
いくつかの実施形態では、本出願の装置は、1MHzから100MHzまでの音を出せる。
いくつかの実施形態では、本出願の装置は、10MHzから100MHzまでの音を出せる。
いくつかの実施形態では、本出願の装置は、20Hzから10MHzまでの音を出せる。
いくつかの実施形態では、本出願の装置は、20kHzから10MHzまでの音を出せる。
いくつかの実施形態では、本出願の装置は、100kHzから10MHzまでの音を出せる。
いくつかの実施形態では、本出願の装置は、1MHzから10MHzまでの音を出せる。
いくつかの実施形態では、本出願の装置は、20Hzから1MHzまでの音を出せる。
いくつかの実施形態では、本出願の装置は、20kHzから1MHzまでの音を出せる。
いくつかの実施形態では、本出願の装置は、100kHzから1MHzまでの音を出せる。
いくつかの実施形態では、本出願の装置は、20Hzから100kHzまでの音を出せる。
いくつかの実施形態では、本出願の装置は、20kHzから100kHzまでの音を出せる。
【0133】
いくつかの実施形態では、本出願の装置は、0.25μmから300μmの各スペーサによって作成された間隙を持つ。
いくつかの実施形態では、本出願の装置は、2.5μmから300μmの間隙がある。
いくつかの実施形態では、本出願の装置は、100μmから300μmの間隙を持つ。
いくつかの実施形態では、本出願の装置は、200μmから300μmの間隙を持つ。
いくつかの実施形態では、本出願の装置は、0.25μmから200μmの間隙を持つ。
いくつかの実施形態では、本出願の装置は、2.5μmから200μmの間隙を持つ。
いくつかの実施形態では、本出願の装置は、25μmから200μmの間隙を持つ。
いくつかの実施形態では、本出願の装置は、100μmから200μmの間隙を持つ。
いくつかの実施形態では、本出願の装置は、0.25μmから100μmの間隙を持つ。
いくつかの実施形態では、本出願の装置は、2.5μmから100μmの間隙を持つ。
いくつかの実施形態では、本出願の装置は、25μmから100μmの間隙を持つ。
いくつかの実施形態では、本出願の装置は、0.25μmから25μmの間隙を持つ。
いくつかの実施形態では、本出願の装置は、2.5μmから25μmの間隙を持つ。
いくつかの実施形態では、本出願の装置は、0.25μmから2.5μmの間隙を持つ。
【0134】
いくつかの実施形態では、装置の孔のサイズは、0.125μmから150μmである。
いくつかの実施形態では、装置の孔のサイズは、1.25μmから150μmである。
いくつかの実施形態では、装置の孔のサイズは、12.5μmから150μmである。
いくつかの実施形態では、装置の孔のサイズは、50μmから150μmである。
いくつかの実施形態では、装置の孔のサイズは、100μmから150μmである。
いくつかの実施形態では、装置の孔のサイズは、0.125μmから100μmである。
いくつかの実施形態では、装置の孔のサイズは、1.25μmから100μmである。
いくつかの実施形態では、装置の孔のサイズは、12.5μmから100μmである。
いくつかの実施形態では、装置の孔のサイズは、50μmから100μmである。
いくつかの実施形態では、装置の孔のサイズは、0.125μmから50μmである。
いくつかの実施形態では、装置の孔のサイズは、1.25μmから50μmである。
いくつかの実施形態では、装置の孔のサイズは、12.5μmから50μmである。
いくつかの実施形態では、装置の孔のサイズは、0.125μmから12.5μmである。
いくつかの実施形態では、装置の孔のサイズは、1.25μmから12.5μmである。
いくつかの実施形態では、装置の孔のサイズは、0.125μmから1.25μmである。
【0135】
いくつかの実施形態では、振動板に印加されるバイアス電圧は、0.25Vから300Vである。
いくつかの実施形態では、振動板に印加されるバイアス電圧は、2.5Vから300Vである。
いくつかの実施形態では、振動板に印加されるバイアス電圧は、25Vから300Vである。
いくつかの実施形態では、振動板に印加されるバイアス電圧は、100Vから300Vである。
いくつかの実施形態では、振動板に印加されるバイアス電圧は、200Vから300Vである。
いくつかの実施形態では、振動板に印加されるバイアス電圧は、0.25Vから200Vである。
いくつかの実施形態では、振動板に印加されるバイアス電圧は、2.5Vから200Vである。
いくつかの実施形態では、振動板に印加されるバイアス電圧は、25Vから200Vである。
いくつかの実施形態では、振動板に印加されるバイアス電圧は、100から200Vである。
いくつかの実施形態では、振動板に印加されるバイアス電圧は、0.25Vから100Vである。
いくつかの実施形態では、振動板に印加されるバイアス電圧は、2.5Vから100Vである。
いくつかの実施形態では、振動板に印加されるバイアス電圧は、25Vから100Vである。
いくつかの実施形態では、振動板に印加されるバイアス電圧は、0.25Vから25Vである。
いくつかの実施形態では、振動板に印加されるバイアス電圧は、2.5Vから25Vである。
いくつかの実施形態では、振動板に印加されるバイアス電圧は、0.25Vから2.5Vである。
【0136】
いくつかの実施形態では、振動板の厚さは25nmから100nmである。
いくつかの実施形態では、振動板の厚さは100nmから200nmである。
いくつかの実施形態では、振動板の厚さは200nmから300nmである。
いくつかの実施形態では、振動板の厚さは300nmから400nmである。
いくつかの実施形態では、振動板は、グラフェンの単層を備える。
いくつかの実施形態では、振動板は、グラフェンの1から10層を備える。
いくつかの実施形態では、振動板は、グラフェンの1から100層を備える。
いくつかの実施形態では、振動板は、グラフェンの1から1000層を備える。
いくつかの実施形態では、振動板は、10から100層のグラフェンを備える。
いくつかの実施形態では、振動板は、100から1000層のグラフェンを備える。
いくつかの実施形態では、振動板は、100から1000層のグラフェンを備える。
いくつかの実施形態では、振動板は、最大数千層のグラフェンを備える。
【0137】
いくつかの実施形態では、グラフェンの層間の層間相互作用は、層間結合を改善するために調整されるであろう。いくつかの実施形態では、グラフェン振動板の片側又は両側に誘電体層が存在する。
【0138】
エレクトロニクスと作動
本出願の特定の実施形態は、本明細書で論じられるような送信及び受信回路構成を持つGETを備える。信号を送信するいくつかの実施形態では、超音波信号を増幅し、信号を正と負の成分に分割して出力電力を実現すべく、変換器は、電圧増幅器(と、ステップアップ変換回路との少なくとも一方)に接続される。
信号を受信するために、変換器を電圧検出回路又は電流検出トランスインピーダンス増幅器のいずれかに接続して、振動板と電極の間の間隔の変化の結果として振動板の電荷の変化を監視できる。コンデンサベースの静電受信機は、電流検出トランスインピーダンス増幅器を使用するとより高い周波数で動作し、主にコンデンサを流れる電流が可能なコンデンサの基本的な動作原理により、電圧検出回路と比較してより高い周波数でより一貫したゲインを達成できる瞬時に流れるが、コンデンサの両端の電圧は瞬時に変化できない。
【0139】
本出願の特定の実施形態は、本明細書で論じられるような送信及び受信回路構成を持つGMTを備える。
いくつかの実施形態では、信号を送信するために、変換器を電圧増幅器(及び/又は昇圧変圧器回路)に接続して超音波信号を増幅し、信号を正及び負の成分に分割して出力電力を達成する。信号を受信するために、変換器を電圧検出回路又は電流検出トランスインピーダンス増幅器のいずれかに接続して、振動板と電極の間の間隔の変化の結果として振動板の電荷の変化を監視できる。コンデンサベースの静電受信機は、電流検出トランスインピーダンス増幅器を使用するとより高い周波数で動作し、主にコンデンサを流れる電流が可能なコンデンサの基本的な動作原理により、電圧検出回路と比較してより高い周波数でより一貫したゲインを達成できる瞬時に流れるが、コンデンサの両端の電圧は瞬時に変化できない。
【0140】
図7は、例示的なGMUT装置の電気回路構成を示す。具体的には、
図7は、本出願の実施形態を操作するために使用され得る電気回路構成を示す。
図7aは、GMUT伝送回路(700)を示す。ここで、PSは高電圧電源(701)、R1は抵抗(702)、AMPは増幅器(703)である。回路(700)はまた、昇圧変圧器(704)を備える。示されているように、回路(700)は、電極(705、706)及び振動板(707)に電気的に接続されている。
図7b及び
図7cは、2つのGMUT受信機回路構成を示す。
図7bは、GMUT受信回路(710)を示す。回路(710)は、RCP時間定数によって帯域幅が制限されるようになる電圧検出増幅器を使用する。
図7cは、GMUT受信回路(720)を示す。回路(720)は、高速、低ノイズ、電流検出トランスインピーダンス増幅器を使用している。高周波検出機能を備えている。
図7b及び
図7cでは、振動板(715)は50V電源に接続されて示され、電極(716、717)は回路(710)及び回路(720)に接続されて示されている。
【0141】
図14は、オープンフェイス変換器用の送信機及び受信機の電子配置の例示的な実施形態、特に、送信及び受信モードで本出願の実施形態の動作に使用され得る簡略化された回路を示す。
左側の装置(1400)では、超音波(1401)が膜(1402)を振動させ、回路(1403)に電気出力信号を生成する。この信号は、超音波(1401)の特性を計測するのに計測できる。右側の装置(1404)では、駆動信号が回路(1405)で生成され、回路(1405)が膜(1406)を振動させて超音波(1407)を生成する。両方の装置(1400、1401)は、本出願の実施形態のいずれかとして構築され得る。
【0142】
別の実施形態では、GMUTの寸法は、変換器が、例えば、20Hzから20kHzの間の音域の信号を受信可能なものである。このような変換器は、MEMSマイクロフォンとして構成できる。
いくつかの実施形態では、MEMSマイクロフォンは、本出願で説明される他のGMUT実施形態で説明されるのと同じサイズ及び形状を備えてよい。MEMSマイクロフォンの実施形態は、必然的に受信モードで動作し、本出願で説明される他のGMUTの実施形態で説明されるレベルでバイアスされる。特に好ましい実施形態では、MEMSマイクロフォンは、本出願で説明される他のGMUT実施形態で説明されるサイズで音が通過する孔を持つであろう。
【0143】
本出願の別の実施形態では、GMUTは、下がりモード又は下がり状態復帰(スナップバック)モードで構成される。
これらの2つの構成では、グラフェン振動板の1つ又は複数の電極で生成された電界によって印加される電圧は、「プルイン」電圧よりも大きくなる。その結果、グラフェン振動板の中央領域は、電極の上に堆積した絶縁材料と半永久的に物理的に接触する。特に、電界が引き込み電圧よりも大きい限り、グラフェンの少なくとも中央部分は絶縁材料と物理的に接触したままになる。振動板と電極との間の短絡を防ぐために、絶縁材料が存在することが好ましい。
いくつかの実施形態では、絶縁層は、代わりに、高分子又はALD堆積絶縁体などの形態でグラフェン振動板上に配置され得る。グラフェン振動板には後で絶縁があり、電極上に絶縁層は必要ない。つまり、振動板が電極と直接接触する可能性がある。
【0144】
下がりモード構成では、電極及び任意選択の絶縁材料に孔を設けてよい。
このような孔は、絶縁材料と半永久的に物理的に接触している間、グラフェン振動板の中央領域で覆われている。中央領域は絶縁材料との接触を維持するが、孔を覆うグラフェン振動板の部分は効果的に吊り下げられ(懸架され)ている。グラフェンのこれらの効果的に懸架された部分は、電極で生成された電界に応答して音を生成するために自由に振動する。下がりモードでは、「引き込み」電圧を維持しながら、孔を覆うグラフェン振動板の部分を作動させるように電界を作動できる。
【0145】
別の下がりモードの実施形態では、中央領域と振動板の縁との間の周辺領域が懸架されている。
そのような実施形態では、装置は、振動板の中心が絶縁材料に接触したままであり、まだ自由である周辺領域のみを作動させながら操作される。このようにして、周辺領域は応答を生成できる。
いくつかの実施形態では、グラフェン振動板によって覆われる周辺領域及び孔のいずれか又は両方が作動されて、応答を生成する。
【0146】
下がり状態復帰モードでは、振動板が絶縁材料に接触してから解放するという方法で装置が動作する。下がり状態復帰モードの特定の実施形態では、装置が絶縁材料に接触しない通常の動作モードと比較して、変換器の圧力出力はほぼ2倍になる。この作動方法は、今日使用されている従来の金属化窒化ケイ素又はドープされたポリシリコンCMUTよりも機械的強度が高いため、グラフェンでの使用に特に魅力的である。
【0147】
下がりモード構成又は下がり状態復帰モード構成の例を
図8に示す。ここでは、懸架された部分が音の放出を示す線で示されている。
図8aは、振動板(801)が連続空洞(802)に下がっていることを示し、
図8bは、振動板(811)が孔(813)を持つ空洞(812)に下がっていることを示す。
図8bでは、振動板は各孔に重なる部分(814)から音を出せて、必要に応じて応答を調整する追加の機会を提供する。図示の両方の構成
図8a及び
図8bは、下がりモード又は下がり状態復帰モードでの操作に使用できる。
図8a及び
図8bでは、懸架された部分は、音の放出を示す線(803、813)で示されている。
図8a及び
図8bに示されている装置(800、810)は、本出願に開示されているGMUTの実施形態のいずれかに従って構築できる。
図8aに示した装置(800)は、基板層(804)、電極及び/又は誘電体層(805)、及び結合層(806)を備える。層(805)が誘電体である場合、電極は他の場所に提供されるであろう。
図8bに示した装置(810)は、基板(816)(FR4から作製されて示されている)、電極層(817)(銅から作製されたものを示す)、マスク層(818)、及びエポキシ層(819)を備える。
【0148】
本出願の別の実施形態では、本明細書で論じられるような装置は、送信Tx又は受信Rx及びビームフォーミング用途のためのアンテナ設計に配置され得る。
このような適用の例示的な一実施形態を、64チャネルのHツリーフラクタルアンテナ設計を意味する
図18に示す。図示したように、単一の金属層を使用して、アレイ内の64個の変換器のそれぞれを個別にアドレス指定できる。図示したように、代替構成では、第2金属層を追加して、64個の要素全てが位相整合されているアレイを実現できる。位相整合は、処理回路と個々の変換器間の全ての相互接続が同じワイヤ長を持っているために発生する。位相整合により、例えばいわゆる「トータルフォーカシング法」を使用して、高精度のビームフォーミングを実現できる。
【0149】
図18a及び
図18bは、位相整合フラクタルアンテナアーキテクチャ(1800)の例示的な実施形態を示す。凡例(1801)を参照すると、アーキテクチャ(1800)は、挿入図(1803、1804)に示されるように、それぞれ個別にアドレス指定され、任意選択で位相整合された複数の変換器(1802)を備える。
図18aは、送信機Tx受信機Rx駆動、検出、調整、制御、及びデータ処理回路(1805)も示す。図示の構成では、回路(1805)は、64本の信号線(1806)で複数の変換器(1802)に電気的に接続されている。
【0150】
図18bは、
図18aの線B-Bを通る断面(1810)と、
図18aの線C-Cを通る断面(1820)を示す。
両方の断面(1810、1820)は、2つの変換器(1811、1812)を示す。凡例(1811)に関して、変換器は、シリコン(1814)に取り付けられたグラフェン膜(1813)を備える。金属層(1815)は、電極として機能するシリコン(1814)の一部上に提供され、シリコンを貫通する。ビア(TSV)(1816)は、金属層(1815)への電気接続用に提供されている。両方の断面は、シリコン(1814)と金属層(1815)を通過する音響ベント孔(1817)を示す。両方の断面に示されているシリコン(1814)は、2枚のウェーハ(1818、1819)で構成されている。断面(1820)では、ウェーハ(1819)の底面に二酸化ケイ素層(1821)がある。いくつかのシリコン貫通ビア(1816)が二酸化ケイ素層(1821)を通過する。
【0151】
図18cは、このアレイアーキテクチャを実装する材料に関連する詳細を示す。
図18cは、グラフェン振動板(1831)と振動板に電気的に接続された2つの金属層(1832、1833)を示す。金属層(1832、1833)の隣りは、上面と下面の誘電体層(1834、1835、1838、1839)、例として二酸化ケイ素、を持つ第1シリコンウェーハ(1836、1837)である。誘電体層(1834、1835)の隣に、バルクシリコンウェーハ材(1836、1837)がある。第1シリコンウェーハ(1836、1837)に結合されているのは、第2シリコンウェーハ(1840、1841)である。第2シリコンウェーハにも誘電体層(1842、1843、1844、1845)、例として上面と下面に二酸化ケイ素、がある。シリコン貫通ビア(1846)は、第2ウェーハ(1840、1841)を通過して、金属層(1847、1848、1849、1850)を電気的に接続する。右側に示すように、個々の変換器を電気的に絶縁するトレンチ(1851)を設けてよい。音響ベント(1852)も用意されている。図示のように、変換器(1830)の2つの半分は同一であり、各半分は2つのウェーハから製造されている。
【0152】
製造
振動板として使用される複数層グラフェン膜は、CFU及びH2環境で110℃の成長触媒としてニッケル箔を使用する化学蒸着(CVD)によって正常に製造される。
CVDで処理すると、グラフェンは箔の両面で成長し、化学灰化プロセスによって片面が除去又はエッチングされる。
次に、反対側は、PMMAなどの高分子膜又は高分子上の他の同様のスピンでコーティングされる。このコーティングは、後続の処理中にグラフェン膜に構造強度を提供するのに役立ち、最終的にはそのキュリー温度(原文は「currie」)で帯電してエレクトレット電圧を取得する。このステップの後、ニッケル膜を化学的に除去し、グラフェンとPMMAの残りの膜を懸架して振動板を作成する。
【0153】
変換器の振動板がグラフェンのみで構成されている別の処理では、溶媒浸漬を使用して膜を懸架した後、PMMA又は他のスピンオン高分子を代わりに除去する。次に、テフロン(登録商標)又は他の膜などの別の高分子膜を、電子ビーム蒸着、蒸着、又はスピンコーティングによって、グラフェン振動板の片面又は両面のいずれかにコーティングできる。
【0154】
エレクトレットの帯電に使用される一般的な方法は、熱帯電である。これは、強い電界の下でガラス転移又はキュリー温度を超えて材料を加熱し、続いて強烈な冷却を行って、双極子、空間電荷、及び実電荷を「凍結」する。
エレクトレットを帯電するために一般的に使用される他の方法は、コロナ放電、電子ビーム、又は摩擦帯電である。これらの方法は全て、絶縁破壊や極性などの誘電体の特性に応じて、本発明に使用される。エレクトレット帯電方法の選択は、厚さや面積などの誘電体の寸法特性にさらに依存する。
【0155】
本出願の実施形態は、MEMSスタイルの手法を使用して製造できる。
図19は、本出願の実施形態を製造するために使用される製造技術及び/又は方法の一実施形態を示す。特に、
図19は、ウェーハ1(Wfr1)とウェーハ2(Wfr2)の2つのウェーハを備える製造を示す。
【0156】
図19a及び
図19bは、本出願の特定の実施形態を製造する製造方法の例示的な実施形態を示す。特に、
図19aは、
図19bに示されている中間構造に相関するメソッドステップを示す。
図19bに関して、工程9に示す中間構造は、工程10に示す最終構造の半分である。
【0157】
ウェーハ1に関して、示されている処理工程は、
ウェーハ研削及び/又は研磨を伴うラッピングを使用して、ウェーハ1(Wfr1)を所望の(スペーサ)厚さに薄くする。
熱酸化物を成長させる。
金属と犠牲酸化物を堆積させる。
酸化物と金属をパターン化してエッチングする。
変換器の空洞を作るためのディープシリコンエッチングを行う。
超小型機械化の当業者は、必要に応じて、シリコンウェーハの代わりにガラスウェーハを使用して、本質的に同じ最終装置アーキテクチャを提供できることを認識するだろう。この場合、ガラスウェーハのエッチングは、異なるエッチング化学及び別のエッチングマスク材料を使用して行われる。
【0158】
ウェーハ2(Wfr2)に関しては、必要なアーキテクチャに応じて、処理に2つの任意選択がある。
Wfr2でシリコン貫通ビア(TS-Via)を使用してアーキテクチャを実現するために必要な処理手順は、次のとおりである。
ウェーハの研削、ラッピング、研磨を使用してWfr2を薄くする。
所望の(電極)厚さに熱酸化物を成長させる。
ウェーハの両面に金属と犠牲酸化物を堆積させる。Wfr2上面の酸化物及び金属層をパターン化及びエッチングする。
電極孔を作るためのディープSiエッチングを行う。
Wfr2裏面の酸化物/金属層をパターン化してエッチングする。この場合、Wfr2には低濃度にドープされた絶縁Siウェーハを使用するのが有利である。超小型機械化の当業者は、必要に応じて、シリコンウェーハに替えてガラスウェーハを使用して、本質的に同じ最終装置アーキテクチャを提供可能なことを認識するだろう。この場合、ガラスウェーハのエッチングは、異なるエッチング化学及び別のエッチングマスク材料を使用して行われる。
【0159】
代替的に、ウェーハ2は、裏面にパターン化された1つの金属層のみで処理できる。
この場合、低損失のSi電極材料を提供するために、Wfr2を高濃度にドープする必要がある。さらに、
図19の右下の図に示すように、Wfr2の高い導電率には、隣りの変換器との間の短絡から保護するためにトレンチアイソレーションが必要である。
【0160】
図20Aから
図20Eは、本出願の特定の実施形態を製造する別の製造方法の例示的な実施形態を示す。
特に、
図20Aは、開始基板としてSOIウェーハを使用する2番目の製造手法の実物大(1.8インチ=1mm)の図面を示す。
この実施例では、直径1mmの変換器が使用されているが、この出願の開示に基づいて、当業者は、他の直径が可能であることを認識するであろう。
図20Aに示す例では、簡単にするために、各ステップで幅2mmのダイを1つだけ示す。開始基板は、
図20A1に示すように、厚さ1μmの二酸化ケイ素層と厚さ25μmのSOI層を備えた厚さ500μmのシリコンハンドルウェーハである。この手法では、間隙の厚さはSOIの厚さによって決定される。これは、SOI層を正確な目標値に研磨することで制御できる。
【0161】
図20Bは、トップ二酸化ケイ素層をディープSiエッチングハードマスクとして堆積した後の結果を示す。そして、SOI層の下の二酸化ケイ素層で停止するSOI層を通る直径1mmの開口部を作成するディープSiエッチングを行う。
図20B1は、SOI層の開口部の角にある
図20Bの拡大部分を示す。
【0162】
図20Cは、SOIウェーハを(一時的な)シリコンハンドルウェーハに裏返し、クリスタルボンド509(製品名Crystalbond 509、耐熱仮接着剤)などの除去可能な材料を使用して2つを結合した後の構造を示す。これは、イソプロピルアルコール(IPA)のような穏やかな溶媒で劣化しない強力な結合を提供するワックスである。ワックスは、例えばアセトンなどのより強力な溶媒を使用して2つのウェーハを分離する場合は、完全に除去できる。
【0163】
図20Dは、Siウェーハを100μmに薄くした後の結果を示す(例)。
図20D1に示すように、金属化、パターニング、シリコンハンドルウェーハ、1μmの二酸化ケイ素層、及び25μm SOI層を介したエッチングは、金属層で停止する。続いて、パターン及び結晶学的エッチングにより、中心電極領域上からSiを除去する。ここで、結晶学的エッチング(Si100ウェーハの)は、電極領域への下位の一連の作業(サブシーケンス)の金属回路形成と互換性のある傾斜縁部を提供する。その後、金属の堆積、パターン化、エッチングを行って、振動板と電極の相互接続を形成した。
【0164】
図20Eは、一時的なSiハンドルウェーハを取り外して、完成した変換器の半分を表す完全に処理されたウェーハを得た後の結果を示す。
次に、エポキシ又は接着剤をウェーハ表面の特定の領域に塗布して、後続のグラフェン結合工程の準備ができる。次に、2つの変換器の半分が、下部のウェーハ上に懸架グラフェンが張られた状態でわずかな距離だけ離れるように配置される。グラフェンがウェーハ全体(直径が25から300mmのウェーハで実現可能である)に完全に張力をかけられると、2つのウェーハを結合して、グラフェンを変換器の上部と下部の両方に接着する。
【0165】
特定の実施形態では、グラフェン振動板が、振動板の緩みを回避するのに十分な張力を持つことが重要であり、これは、特定の実施形態において望ましくない特性を生み出す可能性がある。
下がりモード又は下がり状態復帰モードを採用するものなどの他の実施形態では、グラフェン振動板は張力をかけるステップを必要としない場合があることに留意されたい。本明細書に示される実施形態では、張力は、
図20E1及び
図20E2に示されるように、ニッケル(Ni)環部上に懸架されたグラフェン層を使用して作用させてよい。グラフェンがNi基板上で成長することを考えると、懸架Ni環部は製造が簡単な部品である。例えば、SOIウェーハは直径200mmで、グラフェンは直径300mmのNi基板上で成長可能なため、標準的な方法を使用して懸架グラフェンを形成すると、Ni環部が変換器ウェーハ上に適合し、適切なグラフェン張力が得られる。
【0166】
図20Fは、懸架グラフェンが所定の位置に結合された状態で結合された2つの変換器の半分を示す。
図20F1は、示されている
図20Fの拡大領域である。サイズが約12.5マイクロメートルの電極の孔部が見られ、電極間隙は20マイクロメートルである。処理フローの最後の工程は、
図20F1をさらに拡大した
図20F2に示すように、懸架グラフェンの上部と下部に薄い機械的支持層を堆積させることである。この層は、原子層堆積(ALD)又は気相堆積(デポジション)を使用して堆積してよく、ダイヤモンド様炭素(DLC)、酸化アルミニウム(AI
2O
3)、又はPMMA、PEEK、ポリイミドなどの有機材料で作製してよい。
図20F3は、示されているように
図20F1をさらに拡大したものでもある。
【0167】
追加の詳細を
図20F1、
図20F2、
図20F3に示す。表Iにリストしているように、
図20で説明されている直径1mmの変換器の例では、電極の孔の直径は約12.5μmで、間隙は約25μmである。グラフェン層は通常、約0.1μmの厚さである。ALD層は、必要に応じて厚くしても薄くしてもよいが、約0.05μmまで薄くするように制御できるため、電気的絶縁と機械的強度を提供しながら、振動板のかさばりと質量を最小限に抑制可能である。
【0168】
図20で説明されているGMUT製造手法では、直径200mmの単一のシリコンウェーハから直径1mmの変換器(2mmx2mmのダイ)が6000個(片面)をはるかに超える。
【0169】
図21は、信号線間のクロストークを排除又は低減するためにGMUTアレイ内で利用できる一般的な方法の例を示す。これは、各信号線が隣接する接地線によって他の信号線及び外部ノイズからシールドされる同軸シールド手法を使用する。これは、大面積アレイを使用する場合(
図18を参照)、又は低ノイズで優れた伝送線路信号品質を必要とする複数の密集した信号線がある場合に特に重要である。
【0170】
図21は、優れた信号統合性のための高度な伝送線路シールド方法の例示的な実施形態を示す。特に、
図21は、信号線間のクロストークを排除又は低減するためにGMUTアレイ内で利用できる一般的な方法の例を示す。これは、各信号線(2101)が他の信号線(2101)からシールドされ、外部ノイズが隣接する接地線(2102)によってシールドされる同軸シールド手法を使用する。これは、大面積アレイを使用する場合(
図18を参照)、又は低ノイズで優れた伝送線路信号品質を必要とする複数の密集した信号線がある場合に特に重要である。
【国際調査報告】