(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-03
(54)【発明の名称】キノリノン系化合物の結晶形及びその用途
(51)【国際特許分類】
C07D 215/56 20060101AFI20230127BHJP
A61K 31/4704 20060101ALI20230127BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20230127BHJP
A61P 7/06 20060101ALI20230127BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20230127BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20230127BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20230127BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230127BHJP
【FI】
C07D215/56 CSP
A61K31/4704
A61P3/00
A61P7/06
A61P9/00
A61P9/10
A61P17/02
A61P43/00 111
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022531553
(86)(22)【出願日】2020-11-26
(85)【翻訳文提出日】2022-07-26
(86)【国際出願番号】 CN2020131683
(87)【国際公開番号】W WO2021104353
(87)【国際公開日】2021-06-03
(31)【優先権主張番号】201911187714.7
(32)【優先日】2019-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515014990
【氏名又は名称】サンシャイン・レイク・ファーマ・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SUNSHINE LAKE PHARMA CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Northern Industrial Area,Songshan Lake,Dongguan,Guangdong 523000,China
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】王 ▲曉▼▲軍▼
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼ ▲亮▼
(72)【発明者】
【氏名】左 ▲應▼林
(72)【発明者】
【氏名】宗 ▲喬▼
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC29
4C086GA15
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA03
4C086NA11
4C086ZA36
4C086ZA55
4C086ZA89
4C086ZC20
4C086ZC21
(57)【要約】
本発明は、キノリノン系化合物の結晶形及びその用途に関する。本発明は、さらに、前記結晶形を含む医薬組成物と、HIF関連及び/又はEPO関連の疾患(例えば貧血)を治療又は予防するための薬物の製造における前記結晶形又は前記医薬組成物の用途とに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で表される化合物の結晶形Iであって、前記結晶形IのX線粉末回折パターンが6.20°±0.2°、18.16°±0.2°、19.30°±0.2°、26.89°±0.2°、27.31°±0.2°の2θ角に回折ピークを有する、ことを特徴とする結晶形I。
【化1】
【請求項2】
前記結晶形IのX線粉末回折パターンが6.20°±0.2°、9.05°±0.2°、13.72°±0.2°、18.16°±0.2°、18.70°±0.2°、19.30°±0.2°、19.92°±0.2°、22.06°±0.2°、26.89°±0.2°、27.31°±0.2°の2θ角に回折ピークを有する、ことを特徴とする請求項1に記載の結晶形I。
【請求項3】
前記結晶形IのX線粉末回折パターンが6.20°±0.2°、7.32°±0.2°、9.05°±0.2°、13.72°±0.2°、14.66°±0.2°、15.18°±0.2°、16.55°±0.2°、18.16°±0.2°、18.70°±0.2°、19.30°±0.2°、19.92°±0.2°、20.28°±0.2°、21.78°±0.2°、22.06°±0.2°、22.76°±0.2°、23.39°±0.2°、25.36°±0.2°、25.68°±0.2°、26.89°±0.2°、27.31°±0.2°、29.15°±0.2°、29.49°±0.2°、30.85°±0.2°、31.39°±0.2°、33.27°±0.2°、34.36°±0.2°、36.33°±0.2°、37.15°±0.2°、37.87°±0.2°、38.43°±0.2°、39.44°±0.2°、40.71°±0.2°、42.56°±0.2°、42.94°±0.2°、43.62°±0.2°、44.25°±0.2°の2θ角に回折ピークを有する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の結晶形I。
【請求項4】
前記結晶形IのX線粉末回折パターンが6.20°±0.2°、7.32°±0.2°、9.05°±0.2°、12.44°±0.2°、13.72°±0.2°、14.66°±0.2°、15.18°±0.2°、16.55°±0.2°、18.16°±0.2°、18.70°±0.2°、19.30°±0.2°、19.92°±0.2°、20.28°±0.2°、20.88°±0.2°、21.78°±0.2°、22.06°±0.2°、22.76°±0.2°、23.39°±0.2°、25.36°±0.2°、25.68°±0.2°、26.89°±0.2°、27.31°±0.2°、29.15°±0.2°、29.49°±0.2°、30.85°±0.2°、31.39°±0.2°、33.27°±0.2°、34.36°±0.2°、36.33°±0.2°、37.15°±0.2°、37.87°±0.2°、38.43°±0.2°、39.44°±0.2°、40.71°±0.2°、42.56°±0.2°、42.94°±0.2°、43.62°±0.2°、44.25°±0.2°、45.46°±0.2°、46.60°±0.2°、48.43°±0.2°、49.75°±0.2°、52.66°±0.2°、55.45°±0.2°、56.36°±0.2°、57.93°±0.2°の2θ角に回折ピークを有する、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の結晶形I。
【請求項5】
前記結晶形Iは、実質的に
図1に示すようなX線粉末回折パターンを有する、ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の結晶形I。
【請求項6】
前記結晶形Iの示差走査熱量測定パターンは、222.82℃±3℃の吸熱ピークを含む、ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の結晶形I。
【請求項7】
前記結晶形Iは、実質的に
図2に示すような示差走査熱量測定パターンを有する、ことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の結晶形I。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の結晶形Iと、薬学的に許容される担体、賦形剤、希釈剤、補助剤又はそれらの組み合わせとを含む、医薬組成物。
【請求項9】
前記薬物は、患者の低酸素誘導因子関連及び/又はエリスロポエチン関連の疾患を予防、治療又は軽減するために用いられる、請求項1~7のいずれか1項に記載の結晶形I又は請求項8に記載の医薬組成物の薬物製造における用途。
【請求項10】
前記疾患は、貧血、虚血、血管疾患、狭心症、心筋虚血、心筋梗塞、代謝障害又は傷口癒合である、請求項9に記載の用途。
【請求項11】
前記薬物は、低酸素誘導因子プロリルヒドロキシラーゼによって媒介される患者の少なくとも一部の疾患を予防、治療又は軽減するために用いられる、請求項1~7のいずれか1項に記載の結晶形I又は請求項8に記載の医薬組成物の薬物製造における用途。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2019年11月28日に出願された中国特許出願第201911187714.7号の優先権を主張し、その全ての内容は参照により本文に取り組みまれるものとする。
【0002】
本発明は、医薬の技術分野に属し、キノリノン系化合物の結晶形及びその用途に関し、具体的には2-(4-ヒドロキシ-1-メチル-2-オキソ-7-フェノキシ-1,2-ジヒドロキノリン-3-ホルミルアミノ)酢酸の結晶形及びその用途に関し、さらに上記結晶形を含む医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
貧血、外傷、組織壊死及び欠損等の場合に、組織又は細胞は、常に低酸素状態にある。低酸素により一連の転写誘導因子が発現し、血管形成、鉄、糖代謝、細胞の成長及び増殖に関与する。低酸素誘導因子(hypoxia inducible factor、HIF)は、体細胞が酸素低減の場合に起動する転写因子であり、体内の各部分に広く分布し、特に血管内膜、心臓、脳、腎臓、肝臓等である。HIFは、酸素で調節されたα-サブユニット(HIF α)と、構成的に発現しているβ-サブユニット(HIF β/ARNT)とを含むヘテロダイマーである。酸素含有(酸素含有量が正常である)細胞において、HIFαサブユニットは、フォンヒッペル-リンドウ腫瘍サプレッサー(von Hippel-Lindau tumor suppressor、pVHL)E3により酵素複合物のユビキチン化(ubiquitination)のメカニズムにより迅速に分解される。低酸素条件下で、HIF αが分解されず、活性HIF α/β複合物は、核内に蓄積され、糖分解酵素、グルコース輸送タンパク質、エリスロポエチン(EPO)及び血管内皮細胞増殖因子(VEGF)を含む様々な遺伝子の発現を活性化する。
【0004】
エリスロポエチン(EPO)は、HIFαに伴って生成される天然に存在するホルモンであり、酸素を運んで全身をめぐる赤血球細胞(赤血球)の生成を刺激する。EPOは、一般的に腎臓によって分泌され、かつ内因性EPOは、酸素減少(低酸素)の条件下で増加する。全てのタイプの貧血は、血液の酸素を運ぶ能力の低下によって特徴付けられ、したがって、皮膚及び粘膜の蒼白、虚弱、眩暈、易疲労性、及び傾眠を含む類似の徴候及び症状を伴い、生活の質の低下につながる。貧血は、一般的に血液中に赤血球細胞又はヘモグロビンが不足した病状に関連する。貧血の一般的な原因は、鉄、ビタミンB12及び葉酸の不足を含むが、慢性疾患、例えば骨髄の付随的炎症抑制を伴う疾患等を含む炎症性疾患の合併症につながる場合もある。貧血も、腎機能障害に関連するため、よく透析をする腎不全患者の多くは、慢性貧血に罹っている。
【0005】
プロリルヒドロキシラーゼ(prolyl hydroxylase domain、PHD)は、HIFを調節する重要な因子である。正常酸素状態では、PHDは、HIF αの2つの重要なプロリン残基であるPro402とPro564をヒドロキシ化して、pVHLとの親和力を向上させて、分解過程を加速することができる。低酸素及び他の病理学的状態下で、PHDによって触媒されるHIF反応が阻害されて、プロテアーゼの分解速度が低下するため、HIF αは、細胞内に蓄積して、更に細胞の低酸素に対する一連の適応反応を引き起こす。PHD阻害剤でPHDを阻害することで、HIFの作用を延長させて、更にEPO等の遺伝子の発現を向上させ、HIF関連及び/又はEPO関連の病気、例えば貧血、虚血及び低酸素の病気を効果的に治療し予防することできる。
【0006】
国際出願WO2016034108A1には、2-(4-ヒドロキシ-1-メチル-2-オキソ-7-フェノキシ-1,2-ジヒドロキノリン-3-ホルミルアミノ)酢酸である化合物(式(I)で表される化合物)が開示されており、貧血等のようなHIF関連及び/又はEPO関連の疾患を治療するか又は軽減することができる。しかしながら、従来技術において該化合物の結晶形に関する研究報告がない。
【化1】
【0007】
薬物の結晶多形は、薬物研究において一般的な現象であり、薬物の品質に影響する重要な要因である。同じ薬物でも、結晶構造によって、外観、溶解度、融点、溶出度、生物学的有効性等が大きく異なる可能性があり、薬物の安定性、生物学的利用率及び治療効果等の面に様々な影響を与える可能性がある。したがって、薬物開発において、薬物の結晶多形の問題は、全面的に考慮するべきである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【0009】
本発明は、式(I)で表される化合物の結晶形を提供し、前記結晶形、特に結晶形Iは、化合物の安定性及び薬物動態学等の性質を明らかに改善することができ、それにより優れた製薬可能性を有する。
【0010】
具体的には、本発明は、式(I)で表される化合物の結晶形と、HIF関連及び/又はEPO関連の疾患を治療又は予防するための薬物の製造における前記化合物の結晶形又は前記医薬組成物の用途とに関する。本発明に係る結晶形は、溶媒和物の形態、例えば水和物形態であってもよい。
【0011】
一態様において、本発明は、式(I)で表される化合物の結晶形を提供する。
【化2】
【0012】
いくつかの実施形態において、本発明に係る式(I)で表される化合物の結晶形は、結晶形I又は結晶形IIである。
【0013】
いくつかの実施形態において、本発明に係る結晶形Iは、前記結晶形IのX線粉末回折パターンが6.20°±0.2°、18.16°±0.2°、19.30°±0.2°、26.89°±0.2°、27.31°±0.2°の2θ角に回折ピークを有することを特徴とする。
【0014】
他の実施形態において、本発明に係る結晶形Iは、前記結晶形IのX線粉末回折パターンが6.20°±0.2°、9.05°±0.2°、18.16°±0.2°、19.30°±0.2°、26.89°±0.2°、27.31°±0.2°の2θ角に回折ピークを有することを特徴とする。
【0015】
他の実施形態において、本発明に係る結晶形Iは、前記結晶形IのX線粉末回折パターンが6.20°±0.2°、9.05°±0.2°、13.72°±0.2°、18.16°±0.2°、18.70°±0.2°、19.30°±0.2°、19.92°±0.2°、22.06°±0.2°、26.89°±0.2°、27.31°±0.2°という2θ角度で回折ピークを有することを特徴とする。
【0016】
いくつかの実施形態において、本発明に係る結晶形Iは、前記結晶形IのX線粉末回折パターンが6.20°±0.2°、7.32°±0.2°、9.05°±0.2°、13.72°±0.2°、14.66°±0.2°、15.18°±0.2°、16.55°±0.2°、18.16°±0.2°、18.70°±0.2°、19.30°±0.2°、19.92°±0.2°、20.28°±0.2°、21.78°±0.2°、22.06°±0.2°、22.76°±0.2°、23.39°±0.2°、25.36°±0.2°、25.68°±0.2°、26.89°±0.2°、27.31°±0.2°、29.15°±0.2°、29.49°±0.2°、30.85°±0.2°、31.39°±0.2°、33.27°±0.2°、34.36°±0.2°、36.33°±0.2°、37.15°±0.2°、37.87°±0.2°、38.43°±0.2°、39.44°±0.2°、40.71°±0.2°、42.56°±0.2°、42.94°±0.2°、43.62°±0.2°、44.25°±0.2°という2θ角度で回折ピークを有することを特徴とする。
【0017】
いくつかの実施形態において、本発明に係る結晶形Iは、前記結晶形IのX線粉末回折パターンが6.20°±0.2°、7.32°±0.2°、9.05°±0.2°、13.72°±0.2°、14.66°±0.2°、15.18°±0.2°、16.55°±0.2°、18.16°±0.2°、18.70°±0.2°、19.30°±0.2°、19.92°±0.2°、20.28°±0.2°、20.88°±0.2°、21.78°±0.2°、22.06°±0.2°、22.76°±0.2°、23.39°±0.2°、25.36°±0.2°、25.68°±0.2°、26.89°±0.2°、27.31°±0.2°、29.15°±0.2°、29.49°±0.2°、30.85°±0.2°、31.39°±0.2°、33.27°±0.2°、34.36°±0.2°、36.33°±0.2°、40.71°±0.2°、42.56°±0.2°、42.94°±0.2°、43.62°±0.2°、44.25°±0.2°という2θ角度で回折ピークを有することを特徴とする。
【0018】
他の実施形態において、本発明に係る結晶形Iは、前記結晶形IのX線粉末回折パターンが6.20°±0.2°、7.32°±0.2°、9.05°±0.2°、12.44°±0.2°、13.72°±0.2°、14.66°±0.2°、15.18°±0.2°、16.55°±0.2°、18.16°±0.2°、18.70°±0.2°、19.30°±0.2°、19.92°±0.2°、20.28°±0.2°、20.88°±0.2°、21.78°±0.2°、22.06°±0.2°、22.76°±0.2°、23.39°±0.2°、25.36°±0.2°、25.68°±0.2°、26.89°±0.2°、27.31°±0.2°、29.15°±0.2°、29.49°±0.2°、30.85°±0.2°、31.39°±0.2°、33.27°±0.2°、34.36°±0.2°、36.33°±0.2°、37.15°±0.2°、37.87°±0.2°、38.43°±0.2°、39.44°±0.2°、40.71°±0.2°、42.56°±0.2°、42.94°±0.2°、43.62°±0.2°、44.25°±0.2°、45.46°±0.2°、46.60°±0.2°、48.43°±0.2°、49.75°±0.2°、52.66°±0.2°、55.45°±0.2°、56.36°±0.2°、57.93°±0.2°という2θ角度で回折ピークを有することを特徴とする。
【0019】
いくつかの実施形態において、本発明に係る結晶形Iは、前記結晶形Iが実質的に
図1に示すようなX線粉末回折パターンを有することを特徴とする。
【0020】
いくつかの実施形態において、本発明に係る結晶形Iは、前記結晶形Iの示差走査熱量測定パターンが222.82℃±3℃の吸熱ピークを含むことを特徴とする。
【0021】
いくつかの実施形態において、本発明に係る結晶形Iは、前記結晶形Iが実質的に
図2に示すような示差走査熱量測定パターンを有することを特徴とする。
【0022】
いくつかの実施形態において、本発明に係る結晶形Iは、前記結晶形Iが約70℃~150℃の範囲内で1.315%重量損失し、前記重量損失比率の許容誤差が±0.1%であることを特徴とする。
【0023】
いくつかの実施形態において、本発明に係る結晶形IIは、前記結晶形IIのX線粉末回折パターンが5.23°、13.61°、25.90°の2θ角に回折ピークを有し、前記回折ピークの許容誤差が±0.2°であることを特徴とする。
【0024】
いくつかの実施形態において、本発明に係る結晶形IIは、前記結晶形IIのX線粉末回折パターンが5.23°、13.61°、17.42°、18.06°、20.29°、25.90°、27.94°という2θ角度で回折ピークを有し、前記回折ピークに±0.2°の許容誤差が存在することを特徴とする。
【0025】
いくつかの実施形態において、本発明に係る結晶形IIは、前記結晶形IIのX線粉末回折パターンが5.23°、8.73°、10.12°、10.52°、13.61°、15.80°、17.42°、18.06°、19.99°、20.29°、20.93°、21.54°、22.72°、24.08°、25.18°、25.90°、27.94°、30.04°、32.19°、33.13°、35.21°、35.99°、36.95°、40.09°、41.17°、45.55°、48.48°、51.97°、55.75°という2θ角度で回折ピークを有し、前記回折ピークに±0.2°の許容誤差が存在することを特徴とする。
【0026】
いくつかの実施形態において、本発明に係る結晶形IIは、実質的に
図4に示すようなX線粉末回折パターンを有することを特徴とする。
【0027】
いくつかの実施形態において、本発明に係る結晶形IIは、前記結晶形IIの示差走査熱量測定パターンが223.69℃±3℃の吸熱ピークを含むことを特徴とする。
【0028】
いくつかの実施形態において、本発明に係る結晶形IIは、実質的に
図5に示すような示差走査熱量測定パターンを有することを特徴とする。
【0029】
いくつかの実施形態において、本発明に係る結晶形IIは、70℃~160℃の範囲内で0.406%重量損失し、前記重量損失比率の許容誤差が±0.1%であることを特徴とする。
【0030】
別の態様において、本発明に係る医薬組成物は、本発明に係るいずれかの結晶形と、薬学的に許容される担体、賦形剤、希釈剤、補助剤又はそれらの組み合わせとを含む。
【0031】
一態様において、本発明に係る前記いずれかの結晶形又は前記医薬組成物の薬物製造における用途において、前記薬物は、患者の低酸素誘導因子関連及び/又はエリスロポエチン関連の疾患を予防、治療又は軽減するために用いられる。
【0032】
いくつかの実施形態において、本発明に係る疾患は、貧血、虚血、血管疾患、狭心症、心筋虚血、心筋梗塞、代謝障害又は傷口癒合である。
【0033】
別の態様において、本発明に係る前記いずれかの結晶形又は前記医薬組成物の薬物製造における用途において、前記薬物は、低酸素誘導因子プロリルヒドロキシラーゼによって媒介される患者の少なくとも一部の疾患を予防、治療又は軽減するために用いられる。
【0034】
いくつかの実施形態において、本発明に係る疾患は、貧血、虚血、血管疾患、狭心症、心筋虚血、心筋梗塞、代謝障害又は傷口癒合である。
【0035】
本発明の一態様に係る患者の低酸素誘導因子関連及び/又はエリスロポエチン関連の疾患を予防、治療又は軽減する方法は、本発明に係る結晶形又は医薬組成物を薬学的に許容される有効投与量で患者に投与することを含む。
【0036】
別の態様では、本発明は、さらに式(I)で表される化合物の結晶形の製造方法に関する。
【0037】
本発明に係る結晶形の製造方法に使用される溶媒は、特に限定されず、出発原料をある程度溶解し、かつその性質に影響を与えない任意の溶媒は、いずれも本発明に含まれる。なお、本分野の多くの類似の変更、同等置換、又は本発明に記載されたものと等しい溶媒、溶媒の組み合わせ、及び溶媒を組み合わせる様々な比率は、いずれも本発明の包含範囲と見なされる。本発明は、各反応工程で使用される好ましい溶媒を与える。
【0038】
本発明に係る結晶形の製造実験は、実施例の部分で詳細に説明する。同時に、本発明は、前記結晶形の活性試験実験(例えば薬物動態学実験)、溶解度実験、安定性試験及び吸湿性試験等を提供する。実験により、本発明に係る結晶形Iは、結晶形IIに対してより高い生物活性、溶解性及び安定性を有することが証明される。安定性の点で、結晶形IIは、不安定であり、常温常圧条件下で静置すると、結晶転移が発生して、混晶に変換し、かつ最終的に安定した結晶形Iになりやすいが、本発明に係る結晶形Iは、非常に安定し、一般的な条件で結晶転移が発生せず、かつ高温高湿条件下でも安定し、外観及び純度がほとんど変化しない。したがって、本発明に係る結晶形Iは、優れた生物活性、優れた溶解性、高い安定性を有し、製薬用途に適する。
【0039】
また、吸湿性の実験結果によれば、本発明に係る結晶形Iは、高湿度の影響を受けて潮解しにくく、薬物として容易に長期保存することができる。
定義及び一般的な用語
【0040】
特に断りのない限り、本発明に使用される全ての技術及び科学的用語は、本発明の属する分野の当業者に一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本発明に係る全ての特許及び公開出版物は、引用により全体として本発明に組み込まれている。本発明の実践又は試験において、本発明の上記類似又は同様の任意の方法及び物質を使用することができるが、本発明に記載されたのは好ましい方法、装置及び物質である。
【0041】
「結晶形」又は「結晶形態」とは、高度に規則的な化学構造を有する固体を指し、単一成分又は多成分結晶、及び/又は化合物の結晶多形体、溶媒和物、水和物、包接化合物、共晶、塩、塩の溶媒和物、塩の水和物を含むが、これらに限定されるものではない。物質の結晶形態は、本分野で知られている多くの方法により得ることができる。このような方法は、溶融結晶化、溶融冷却、溶媒結晶、ナノポア又はキャピラリー等の限定された空間における結晶化、ポリマー等の表面又はテンプレートでの結晶化、共結晶カウンター分子のような添加剤の存在下での結晶化、溶媒除去、脱水、急速蒸発、急速冷却、徐冷、蒸気拡散、昇華、反応結晶、貧溶媒添加、研磨及び溶媒滴下粉砕等を含むが、これらに限定されるものではない。
【0042】
「溶媒」とは、物質(典型的には液体)であって、他の物質(典型的には固体)を完全に又は部分的に溶解することができる物質をいう。本発明の実施に用いられる溶媒は、水、酢酸、アセトン、アセトニトリル、ベンゼン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロメタン、ジメチルスルホキシド、1,4-ジオキサン、エタノール、酢酸エチル、ブタノール、t-ブチルアルコール、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ホルムアミド、ギ酸、ヘプタン、ヘキサン、イソプロパノール、メタノール、メチルエチルケトン、メシチレン、ニトロメタン、ポリエチレングリコール、プロパノール、ピリジン、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン、それらの混合物等を含むが、それらに限定されるものではない。
【0043】
「貧溶媒」とは、生成物(又は生成物前駆体)が溶媒から沈殿することを促進する流体を意味する。貧溶媒は、冷ガス、又は化学反応により沈殿を促進する流体、又は生成物の溶媒における溶解度を低下させる流体を含むことができ、それは、溶媒と同じ液体であるが、異なる温度のものであってもよく、溶媒と異なる液体であってもよい。
【0044】
「溶媒和物」とは、表面、格子内、又は表面及び格子内に、溶媒を有する化合物を意味し、上記溶媒は、水、酢酸、アセトン、アセトニトリル、ベンゼン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロメタン、ジメチルスルホキシド、1,4-ジオキサン、エタノール、酢酸エチル、ブタノール、t-ブチルアルコール、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ホルムアミド、ギ酸、ヘプタン、ヘキサン、イソプロパノール、メタノール、メチルエチルケトン、メチルピロリドン、メシチレン、ニトロメタン、ポリエチレングリコール、プロパノール、ピリジン、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン及びそれらの混合物等であってもよい。溶媒和物の1つの具体例は、水和物であり、表面、格子内、又は表面及び格子内の溶媒は、水である。物質の表面、格子内、又は表面及び格子内に、水和物は、水以外の他の溶媒を有してもよいし、有していなくてもよい。
【0045】
結晶形は、例えばX線粉末回折(XRPD)、赤外吸収スペクトル法(IR)、融点法、示差走査熱量測定法(DSC)、熱重量分析法(TGA)、核磁気共鳴法、ラマンスペクトル、X線単結晶回折、溶解熱量測定法、走査型電子顕微鏡(SEM)、定量分析、溶解度及び溶解速度等の様々な技術手段により同定することができるものである。
【0046】
X線粉末回折(XRPD)は、結晶形の変化、結晶化度、結晶構造状態等の情報を測定することができ、結晶形を同定する一般的な手段である。XRPDパターンのピーク位置は、主に結晶形の構造に依存し、実験の詳細に対して相対的に感受性が低く、その相対ピーク高さは、試料の調製及び機器の幾何学的形状に関する多くの要因に依存する。したがって、いくつかの実施形態において、本発明に係る結晶形は、いくつかのピーク位置を有するXRPDパターンによって特徴付けられ、それは、実質的に本発明の図面に提供されるXRPDパターンに示すとおりである。また、XRPDパターンの2θの計測に実験誤差があってよく、異なる機器及び異なる試料によるXRPDパターンの2θの計測はわずかに異なる可能性があるため、上記2θの数値は、絶対的なものと見なすことができない。本試験に用いられる機器の状況に従い、回折ピークの許容誤差は±0.2℃である。
【0047】
示差走査熱量(DSC)は、手順制御下で、絶えず加熱するか又は降温することにより、試料と不活性参照物(一般的なα-Al2O3)との間のエネルギー差の温度による変化を測定する技術である。DSC曲線の吸熱ピーク高さは、試料の調製及び機器の幾何学的形状に関する多くの要因に依存するが、ピーク位置は、実験の詳細に対して相対的に感受性が低い。したがって、いくつかの実施形態において、本発明に係る結晶形は、特徴的なピークの位置を有するDSCパターンによって特徴付けられ、それは実質的に本発明の図面に提供されたDSC図に示すとおりである。また、DSCパターンに実験誤差があり、異なる機器及び異なる試料によるDSCスペクトルのピーク位置及びピーク値はわずかに異なる可能性があるため、上記DSC吸熱ピークのピーク位置又はピーク値の数値は、絶対的なものと見なすことができない。本試験に用いられる機器の状況に従い、吸熱ピークの許容誤差は±3℃である。
【0048】
熱重量分析(TGA)は、手順制御下で、物質の質量の温度に伴う変化を測定する技術であり、結晶中の溶媒の喪失又は試料の昇華、分解の過程を検査することに適し、結晶中に結晶水又は結晶溶媒が含まれることを推測することができる。TGA曲線が示す質量変化は、試料の調製及び機器等の多くの要因に依存し、異なる機器及び異なる試料による、TGAによって検出される質量変化は、わずかに異なる。本試験に使用される機器の状況に従い、質量変化の許容誤差は±0.1℃である。
【0049】
本発明の文脈において、X線粉末回折図における2θ値は、いずれも度(°)を単位とする。
【0050】
「実質的に図に示すような」という用語とは、X線粉末回折パターン、DSCパターン、ラマンスペクトルパターン又は赤外スペクトルパターンにおける少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも99%のピークがその図に表示されることを意味する。
【0051】
明細書で使用するとき、スペクトル及び/又はグラフに示すデータについて言及する場合、用語「ピーク」は、当業者がバックグラウンドノイズに起因しないと認識する特徴をいう。
【0052】
本発明に係る2-(4-ヒドロキシ-1-メチル-2-オキソ-7-フェノキシ-1,2-ジヒドロキノリン-3-ホルミルアミノ)酢酸の新しい結晶形、例えば、結晶形I又はIIは、実質的に純粋な結晶形態で存在する。
【0053】
「実質的に純粋」とは、1つの結晶形が、他の1つ以上の結晶形を実質的に含まず、すなわち、結晶形の純度が少なくとも80%、若しくは少なくとも85%、若しくは少なくとも90%、若しくは少なくとも93%、若しくは少なくとも95%、若しくは少なくとも98%、若しくは少なくとも99%、若しくは少なくとも99.5%、若しくは少なくとも99.6%、若しくは少なくとも99.7%、若しくは少なくとも99.8%、若しくは少なくとも99.9%であること、又は、結晶形に他の結晶形を含むが、上記他の結晶形の、結晶形の総体積又は総重量に対する百分率は、20%未満、若しくは10%未満、若しくは5%未満、若しくは3%未満、若しくは1%未満、若しくは0.5%未満、若しくは0.1%未満、若しくは0.01%未満であることを意味する。
【0054】
「実質的に含まない」とは、結晶形の総体積又は総重量に対する一種又は複数種の他の結晶形の百分率が20%未満、若しくは10%未満、若しくは5%未満、若しくは4%未満、若しくは3%未満、若しくは2%未満、若しくは1%未満、若しくは0.5%未満、若しくは0.1%未満、若しくは0.01%未満であることを意味する。
【0055】
XRPDパターンにおける「相対強度」(又は「相対ピーク高さ」)とは、X線粉末回折(XRPD)の全ての回折ピークにおける第1の強ピークの強度を100%とする場合、第1の強ピークの強度に対する他のピークの強度の比を意味する。
【0056】
本発明の文脈において、「約」又は「おおよそ」等の単語が用いられているか否かにかかわらず、所定の値又は範囲の10%以内に、好ましくは5%以内、特に1%以内であることを意味する。或いは、当業者にとって、「約」又は「おおよそ」という用語は、平均値の許容可能な標準誤差の範囲内にあることを意味する。値Nを有する数が開示される場合、N+/-1%、N+/-2%、N+/-3%、N+/-5%、N+/-7%、N+/-8%又はN+/-10%以内の値を有する任意の数が明示的に開示され、ここで、「+/-」とは、プラス又はマイナスを意味する。
【0057】
本発明において「室温」とは、約10oCから約40oCの温度を意味する。いくつかの実施例において、「室温」とは、約20oCから約30oCの温度を意味し、他のいくつかの実施例において、「室温」とは、20oC、22.5oC、25oC、27.5oC等を意味する。
【0058】
本発明に係る結晶形の組成物、製剤、投与及び用途
本発明の医薬組成物は、式(I)で表される化合物の結晶形と、薬学的に許容される担体、補助剤、又は賦形剤とを含むことを特徴とする。本発明の医薬組成物における化合物の結晶形の量により、患者のHIF関連及び/又はEPO関連の疾患を効果的で検出可能に治療するか又は軽減することができる。
【0059】
本発明に記載されるように、本発明の薬学的に許容される組成物は、薬学的に許容される担体、補助剤、又は賦形剤をさらに含み、本発明に使用されるこれらは、特有の目標剤形に適する溶媒、希釈剤、又は他の液体賦形剤、分散剤又は懸濁剤、界面活性剤、等張化剤、増粘剤、乳化剤、防腐剤、固体結合剤又は潤滑剤等のいずれかを含む。文献In Remington: The Science and Practice of Pharmacy、21st edition、2005、ed. D.B. Troy、Lippincott Williams& Wilkins、Philadelphia、and Encyclopedia of Pharmaceutical Technology、eds. J. Swarbrick and J. C. Boylan、1988-1999、Marcel Dekker、New Yorkというの文献の内容を組み合わせば、薬学的に許容される組成物の製剤において使用可能な様々な担体及びそれらの公知の調製方法が明らかになる。いずれかの望ましくない生物学的効果を生じたり、薬学的に許容される組成物の他のいずれかの成分とは有害な方式で相互作用したりするような、任意の通常の担体媒質が本発明の化合物に適しない場合を除いて、それらの用途が本発明の範囲に含まれる。
【0060】
薬学的に許容される担体とする物質は、イオン交換剤、アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、ヒト血清タンパク質のような血清タンパク質、リン酸塩のような緩衝物質、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩等の塩又は電解質、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸エステル、ワックス、ポリエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックポリマー、羊毛脂、ラクトース、グルコース及びスクロースのような糖、トウモロコシデンプン及びジャガイモデンプンのようなデンプン、セルロースとカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース及び酢酸セルロースのような誘導体、粉末トラガカント、麦芽、ゼラチン、タルク、ココアバター及び坐薬ワックスのような補助材料、ピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油及びダイズ油のような油、プロピレングリコール及びポリエチレングリコールのようなジオール系化合物、オレイン酸エチル及びラウリン酸エチルのようなエステル系、寒天、水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウムのような緩衝剤、アルギン酸、発熱物質を含まない水、等張食塩液、リンガー溶液、エタノール、リン酸緩衝溶液、及びラウリル硫酸ナトリウム及びステアリン酸マグネシウムのような他の無毒で適切な潤滑剤、着色剤、放出剤、コーティング剤、甘味剤、調味料、香料、防腐剤及び酸化防止剤を含むが、これらに限定されるものではない。
【0061】
本発明の医薬組成物は、カプセル、錠剤、丸剤、粉剤、粒剤及び水性懸濁液又は溶液であってよく、経口投与、注射投与、噴霧吸入法、局所投与、経直腸投与、経鼻投与、舌下投与、投与、膣投与又は埋込型薬液注入装置による投与という方法で投与することができる。
【0062】
経口投与は、錠剤、丸剤、カプセル、分散可能な粉末、顆粒又は懸濁液、シロップ、エリキシル剤等の形式で投与することができ、外用方式投与は、軟膏剤、ゲル、薬物含有テープ等の形式で投与することができる。
【0063】
好ましくは、本発明の結晶形は、投与量の軽減及び用量の均一性のために製剤の配合方法に応じて投与単位剤型として製造される。ここでの「投与単位剤型」という用語は、患者の適切な治療に必要な薬物の物理的に分離した単位を意味する。しかしながら、本発明の式(I)の化合物又はその結晶形、又は本発明の医薬組成物の一日の使用量の合計は、妥当な医学的判断の範囲内で主治医によって決定されることを理解すべきである。具体的な有効投与量レベルは、いずれかの特殊な患者又は有機体に対して、治療される病気及び病気の重大性、具体的な化合物又はその結晶形の活性、使用される具体的な組成物、患者の年齢、体重、健康状態、性別及び食習慣、投与時間、投与経路及び使用される具体的な化合物又は結晶形の排出速度、治療の持続時間、薬物の併用投与又は特殊効果を有する化合物又はその結晶形との併用、及び他のいくつかの薬学的分野に公知の要因を含む多くの要因に依存する。
【0064】
使用される活性成分の有効投与量は、使用される化合物又はその結晶形、投与様式及び治療される疾患の重症度に応じて変化することができる。しかしながら、一般的には本発明の化合物又はその結晶形は、毎日おおよそ0.25~1000mg/kgの動物体重の投与量で投与する場合、望ましい効果を得ることができ、好ましくは、毎日2-4回に分けられた投与量で投与するか、又は徐放方式で投与する。この投与量計画を調整することにより最適な治療応答を提供することができる。また、治療状況によって、毎日複数回の分けられた投与量で投与するか、又は投与量を比例的に減少させることができる。
【0065】
本発明に係る化合物又はその結晶形、本発明の医薬組成物は、HIFヒドロキシラーゼ活性を阻害することにより、HIFの安定性及び/又は活性を調節しHIFを活性化して遺伝子の発現を調節する。上記化合物又はその結晶形又は前記医薬組成物は、HIF関連の病気を治療し、予備的に治療するか又はその発作又は発展を遅延させる方法に用いることができ、上記疾患は、貧血、虚血及び低酸素の各方面の病気を含むが、これらに限定されるものではない。
【0066】
具体的には、本発明に係る化合物又はその結晶形は、内因性エリスロポエチン(EPO)を増加させるために用いられる。貧血及び神経系障害等を含むEPO関連の病気を予防、予備的に治療するか又は治療するために、上記化合物又はその結晶形を適用することができる。貧血関連の病気は、急性又は慢性腎臓症、糖尿病、癌、潰瘍、ウイルス(例えばHIV)、細菌又は寄生虫感染、炎症等を含むが、これらに限定されるものではない。貧血の病気は、さらに、例えば、放射線療法、化学療法、透析及び手術等を含む手順又は治療に関連してもよい。なお、貧血は、ヘモグロビン及び/又は赤血球細胞異常、例えば小球性貧血、低色性貧血、再生不良性貧血等の障害に見られる異常に関連する。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【
図1】式(I)で表される化合物の結晶形IのX線粉末回折(XRPD)パターンである。
【
図2】式(I)で表される化合物の結晶形Iの示差走査熱量測定(DSC)パターンである。
【
図3】式(I)で表される化合物の結晶形Iの熱重量損失(TGA)分析図である。
【
図4】式(I)で表される化合物の結晶形IIのX線粉末回折(XRPD)パターンである。
【
図5】式(I)で表される化合物の結晶形IIの示差走査熱量測定(DSC)パターンである。
【
図6】式(I)で表される化合物の結晶形IIの熱重量損失(TGA)分析図である。
【
図7】式(I)で表される化合物の結晶形Iの動的水分吸着(DVS)図である。
【発明を実施するための形態】
【0068】
以下、実施例の態様によって本発明をさらに説明するが、本発明は、上記実施例の範囲内に限定されるものではない。
【0069】
本発明に使用されるX線粉末回折分析方法は、以下のとおりである。Empyrean回折装置でCu-Kα放射(45KV、40mA)を用いてX線粉末回折パターンを得る。単結晶シリコン試料ホルダー上で粉末状試料から薄層にし、回転試料ステージに置き、3°-60°の範囲内で0.0167°ステップサイズで分析する。Data Collectorソフトウェアでデータを収集し、HighScore Plusソフトウェアでデータを処理し、Data Viewerソフトウェアでデータを読み取る。
【0070】
本発明に使用される示差走査熱量測定(DSC)の分析方法は、熱分析コントローラ付きのTAQ2000モジュールを用いて示差走査熱量測定を行うことである。データを収集し、TA Instruments Thermal Solutionsソフトウェアを用いて分析する。おおよそ1~5mgの試料を正確に計量してカバー付きの特製アルミニウムるつぼにいれ、線形加熱装置を用いて10℃/分で加熱し、室温から約300℃まで試料を分析した。使用中、DSCセルを、乾燥窒素を用いてパージする。
【0071】
本発明に使用される熱重量損失(TGA)分析方法は以下のとおりである。熱分析コントローラ付きのTAQ500モジュールを用いて熱重量損失分析を行う。データを収集し、TA Instruments Thermal Solutionsソフトウェアを用いて分析する。おおよそ10mgの試料を正確に計量して白金試料ディスクに入れ、線形加熱装置を用いて10℃/分で加熱し、室温から約300℃まで分析する。使用中、TGA炉室を、乾燥窒素ガスを用いてパージする。
【0072】
本発明の溶解度は、Aglient 1200高速液体クロマトグラフDAD/VWD測定器を用いて測定し、クロマトグラフィーカラムのモデルは、Agilent XDB-C18(4.6×50mm、5μm)である。波長は266nmであり、流速は1.0mL/minであり、カラム温度は35℃であると測定し、移動相Aは、アセトニトリル-0.01M酢酸アンモニウム=10:90(V:V)であり、分析方法について、アセトニトリル-移動相A=70:30(V:V)、動作時間は、10分間である。
【0073】
本発明の吸湿性は、英国のSurface Measurement Systems公司のDVS INT-Std型動的水分とガス吸着分析器で測定され、湿度試験範囲は、0%~95%であり、ガス流は、200mL/minであり、温度は、25oCであり、試験点は、1リットル当たり5%の湿度で1つの試験点を取る。
具体的な実施例
【0074】
式(I)で表される2-(4-ヒドロキシ-1-メチル-2-オキソ-7-フェノキシ-1,2-ジヒドロキノリン-3-ホルミルアミノ)酢酸という化合物の具体的な合成方法は、国際出願WO2016034108A1における実施例1を参照する。
実施例
実施例1 本発明の結晶形I
【0075】
1.結晶形Iの製造
方法1について、
従来技術の方法に従って製造された2-(4-ヒドロキシ-1-メチル-2-オキソ-7-フェノキシ-1,2-ジヒドロキノリン-3-ホルミルアミノ)酢酸(40.0mg)に1,4-ジオキサン(1.5mL)を加え、固体が完全に溶解した後に水(1.5mL)を滴下し、結晶を析出させた後に吸引濾過し、濾過ケーキを室温で真空乾燥させることにより、灰白色の固体(38.8mg、97.0%)を得る。
【0076】
方法2について、
従来技術の方法に従って製造された2-(4-ヒドロキシ-1-メチル-2-オキソ-7-フェノキシ-1,2-ジヒドロキノリン-3-ホルミルアミノ)酢酸(26.3mg)にメタノール(6.0mL)を加え、60℃に加熱して固体を完全に溶解し、30分間保温した後に-10℃まで急冷し、結晶を析出させた後に吸引濾過し、濾過ケーキを室温で真空乾燥させることにより、灰白色の固体(12.2mg、46.4%)を得る。
【0077】
2.結晶形Iの同定
(1)EmpyreanによるX線粉末回折(XRPD)分析同定Cu-Kα放射を使用したが、6.20°、7.32°、9.05°、12.44°、13.72°、14.66°、15.18°、16.55°、18.16°、18.70°、19.30°、19.92°、20.28°、20.88°、21.78°、22.06°、22.76°、23.39°、25.36°、25.68°、26.89°、27.31°、29.15°、29.49°、30.85°、31.39°、33.27°、34.36°、36.33°、37.15°、37.87°、38.43°、39.44°、40.71°、42.56°、42.94°、43.62°、44.25°、45.46°、46.60°、48.43°、49.75°、52.66°、55.45°、56.36°及び57.93°の2θ角で表される特徴的なピークを有し、許容誤差が±0.2℃である。
【0078】
(2)TAQ2000による示差走査熱量(DSC)の分析同定走査速度は10℃/分間であり、222.82℃の吸熱ピークを含み,許容誤差は±3℃である。
【0079】
(3)TAQ500による熱重量損失(TGA)の分析同定昇温速度は10℃/分間であり、重量損失の範囲は1.315%であり、許容誤差は±0.1%である。
実施例2 本発明の結晶形II
【0080】
1.結晶形IIの製造
方法1について、
従来技術の方法に従って製造された2-(4-ヒドロキシ-1-メチル-2-オキソ-7-フェノキシ-1,2-ジヒドロキノリン-3-ホルミルアミノ)酢酸(50.7mg)をジメチルホルムアミド(2.0mL)に加えて溶解し、水(1.5mL)を滴下し、結晶を析出させた後に吸引濾過し、濾過ケーキを室温で真空乾燥させることにより、灰白色の固体(39.7mg、78.3%)を得る。
【0081】
方法2について、
従来技術の方法に従って製造された2-(4-ヒドロキシ-1-メチル-2-オキソ-7-フェノキシ-1,2-ジヒドロキノリン-3-ホルミルアミノ)酢酸(75.1mg)にジメチルホルムアミド(1.0mL)を加えて溶解し、さらに反応液に水(5.0mL)を滴下し、結晶を析出させた後に吸引濾過し、室温で真空乾燥させることにより、灰白色の固体(64.5mg、85.9%)を得る。
【0082】
2.結晶形IIの同定
(1)EmpyreanによるX線粉末回折(XRPD)分析同定について、Cu-Kα放射線を使用し、5.23°、8.73°、10.12°、10.52°、13.61°、15.80°、17.42°、18.06°、19.99°、20.29°、20.93°、21.54°、22.72°、24.08°、25.18°、25.90°、27.94°、30.04°、32.19°、33.13°、35.21°、35.99°、36.95°、40.09°、41.17°、45.55°、48.48°、51.97°及び55.75°という角度2θで表される特徴ピークを有する。許容誤差が±2℃である。
【0083】
(2)TAQ2000による示差走査熱量(DSC)の分析同定について、走査速度は10℃/分間であり、223.69℃の吸熱ピークを含み,許容誤差は±3℃である。
【0084】
(3)TAQ500による熱重量損失(TGA)の分析同定について、昇温速度は10℃/分間であり、重量損失の範囲は0.406%であり、許容誤差は±0.1%である。
実施例3 本発明に係る結晶形の薬物動態学実験
【0085】
本発明に係る式(I)で表される化合物の結晶形の充填カプセルは、経口投与される。
【0086】
3匹の8~12kgの雄性Beagle犬を1組とし、供試試料を入れたカプセルを経口投与し、投与量が10mg/kgであり、0.25、0.5、1.0、2.0、4.0、6.0、8.0及び24hの時点で採血する。試料濃度に基づいて適切な範囲の標準曲線を確立し、AB SCIEX API4000型LC-MS/MSを使用し、MRMモードで血漿試料における供試試料の濃度を測定し、かつ定量分析を行う。薬物濃度-時間曲線に基づいて、WinNonLin 6.3ソフトウェアにより非コンパートメントモデル法を用いて薬物動態パラメータを計算する。実験結果を表1に示す。
【0087】
表1 本発明に係る結晶形の薬物動態学実験データ
【表1】
実験結論:
表1から分かるように、本発明に係る結晶形Iは、ビーグル犬の体内の暴露量が大きく、優れた薬物動態学的性質を有する。
実施例4 本発明に係る結晶形の安定性試験
【0088】
(1)高温試験:適量の供試試料をフラット秤量瓶に入れ、5mm以下の厚さの薄層に広げ、60℃±2℃の温度で30日間放置し、6、10、30日目にサンプリングして安定性の重点調査項目に従って測定し、試料の色の変化を観察し、HPLCで試料の純度を測定する。実験結果を表2に示す。
【0089】
(2)高湿試験:適量の供試品をフラット秤量瓶に入れ、5mm以下の厚さの薄層に広げ、25oC、RH 90%±5%の条件下で30日間静置し、6、10、30日目にサンプリングして安定性の重点考察項目に応じて検出し、試料の色の変化を観察し、HPLCで試料の純度を測定する。実験結果を表2に示す。
【0090】
(3)光照射試験:適量の供試品をフラット秤量瓶に入れ、5mm以下の厚さの薄層に広げ、開口して光照射試験用箱内(紫外線ランプ付き)に入れ、照度4500±500lx、紫外光≧0.7w/m2の条件で30日間静置し、6、13及び30日目にサンプリングし、HPLCで試料の純度を測定する。実験結果を表2に示す。
【0091】
(4)加速試験:1つのバッチの適量の供試品を単層PEで包装してアルミニウム箔で包装し、40±2℃/75%±5%RHの条件下で6ヶ月間静置し、1、2、3及び6ヶ月目にサンプリングし、試料の色の変化を観察し、HPLCで試料の純度を測定し、TGAで水分を試験する。実験結果を表3に示す。
【0092】
表2 本発明の結晶形Iの高温、高湿、光照射実験の結果
【表2】
表3 本発明の結晶形Iの加速試験(40±2℃/75%±5%RH)の結果
【表3】
実験結論:
表2の実験結果から分かるように、高温(60℃)、高湿(25℃、RH90%±5%)、光照射条件下で30日間静置すると、本発明に係る結晶形Iの外観及び純度は、いずれも明らかに変化しない。
【0093】
表3の実験結果から分かるように、加速試験条件下で、本発明に係る結晶形Iの外観、純度及び水分含有量は、いずれも明らかに変化しない。
【0094】
以上より、本発明に係る結晶形Iは、各静置条件での安定性が高く、製薬用途に適する。
実施例5 本発明に係る結晶形の吸湿性試験
【0095】
適量の供試試料に対して、動的水分吸着装置を用いてその吸湿性を試験する。
【0096】
本発明の結晶形Iの吸湿性試験DVSパターンは、実質的に
図7に示すとおりであり、具体的な実験結果は、表4に示すとおりである。吸湿性の特徴の説明及び吸湿性の質量増加の定義(中国薬局方2015年版、付属書9103、薬物吸湿性の指針、詳細を表5に示す)に基づいて、本発明に係る結晶形Iは、わずかに吸湿性を有し、高湿度の影響を受けて潮解しにくい。
【0097】
表4 本発明の結晶形Iの吸湿性試験
【表4】
表5 吸湿性の特徴の説明及び吸湿性の質量増加の定義(25℃± 1℃、80%±2%相対湿度)
【表5】
以上で述べた内容は、本発明の構想の基本的な説明であり、本発明の技術的解決手段に基づいて行われた任意の等価変換は、いずれも本発明の保護範囲に属すべきである。
【0098】
本明細書の説明において、参照用語「一実施例」、「幾つかの実施例」、「例」、「具体的な例」又は「いくつかの例」等の説明は、該実施例又は例を組み合わせて説明された具体的な特徴、構造、材料又は特徴が本発明の少なくとも1つの実施例又は例に含まれることを意味する。本明細書において、上記用語の例示的な表現は、必ずしも同一の実施例又は例に限定されるものではない。そして、説明された具体的な特徴、構造、材料又は特徴は、任意の1つ以上の実施例又は例において適切な方式で組み合わせることができる。また、互いに矛盾しない限り、当業者であれば、本明細書で説明された異なる実施例又は例、及び異なる実施例又は例の特徴を結合するか又は組み合わせることができる。
【0099】
以上、本発明の実施例を例示し、説明したが、理解できるように、上記実施例は、例示的なものに過ぎず、本発明を限定するものと理解すべきではなく、当業者であれば、本発明の範囲内で上記実施例に対して変更、修正、置換、変形を行うことができる。
【国際調査報告】